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特表2025-501246局所ロフルミラストエアゾールフォーム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-17
(54)【発明の名称】局所ロフルミラストエアゾールフォーム
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/44 20060101AFI20250109BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20250109BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20250109BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20250109BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20250109BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20250109BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
A61K31/44
A61K9/12
A61K47/10
A61K47/24
A61K47/06
A61K47/14
A61K45/00
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P29/00
A61P37/08
A61P17/06
A61P17/04
A61P17/00
A61P17/02
A61P17/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539568
(86)(22)【出願日】2022-08-19
(85)【翻訳文提出日】2024-08-27
(86)【国際出願番号】 US2022040929
(87)【国際公開番号】W WO2023129215
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】63/294,179
(32)【優先日】2021-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518194257
【氏名又は名称】アーキュティス・バイオセラピューティクス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100122644
【弁理士】
【氏名又は名称】寺地 拓己
(74)【代理人】
【識別番号】100220098
【弁理士】
【氏名又は名称】宮脇 薫
(72)【発明者】
【氏名】オズボーン,デビッド・ダブリュー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA24
4C076BB31
4C076CC18
4C076CC19
4C076CC20
4C076DD30Z
4C076DD34
4C076DD37
4C076DD38
4C076DD39
4C076DD45
4C076DD63
4C076FF54
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA13
4C084MA63
4C084NA05
4C084NA10
4C084ZA89
4C084ZA92
4C084ZC20
4C086AA01
4C086BC17
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA13
4C086MA63
4C086NA05
4C086NA10
4C086ZA89
4C086ZA92
4C086ZC20
(57)【要約】
本発明は、ロフルミラストと、セテアリルアルコール、ジセチルホスフェートおよびセテアレス-10ホスフェートを含有する乳化剤ブレンドと、炭化水素噴射剤とを含むエアゾールフォーム組成物を対象とする。エアゾールフォーム組成物は、好ましくは水中油型エマルションである。噴射剤は、液化炭化水素ガスの混合物、好ましくはプロパン/イソブタン/ブタンブレンドである。炭化水素噴射剤は、安定で、一貫した物理的特性を有し、優れた審美性を有し、長期間または促進貯蔵条件の後に識別可能な分解を有さない、エアゾールフォームをもたらす。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中油型エマルション中のロフルミラスト、セテアリルアルコール、ジセチルホスフェート、セテアレス-10ホスフェートと、プロパン/イソブタン/ブタン噴射剤ブレンドとを含むエアゾールフォームであって、前記水中油型エマルションが4000~11000cPの粘度を有し、前記噴射剤および水中油型エマルションが約1:8~1:6の比にあり、前記エアゾールフォームが、容器から放出されるが対象の皮膚への適用後に崩壊する、前記エアゾールフォーム。
【請求項2】
水中油型エマルションとプロパン/イソブタン/ブタン噴射剤ブレンドとを含むエアゾールフォームであって、水中油型エマルションが以下からなる、前記エアゾールフォーム:
ロフルミラスト 0.3%w/w
白色ワセリン 5.0%w/w
イソプロピルパルミテート 2.5%w/w
セテアリルアルコール、ジセチルホスフェート、およびセテス-10ホスフェートを含む乳化剤ブレンド 2.0%w/w
ヘキシレングリコール 2.0%w/w
ジエチレングリコールモノエチルエーテル 25.0%w/w
メチルパラベン 0.2%w/w
プロピルパラベン 0.05%w/w
pH調整剤 pH5.5まで適量
精製水 100まで適量。
【請求項3】
水中油型エマルションとプロパン/イソブタン/ブタン噴射剤ブレンドとを含むエアゾールフォームであって、水中油型エマルションが以下からなる、前記エアゾールフォーム:
ロフルミラスト 0.3%w/w
白色ワセリン 5.0%w/w
イソプロピルパルミテート 2.5%w/w
セテアリルアルコール、ジセチルホスフェート、およびセテアレス-10ホスフェートを含む乳化剤ブレンド 2.0%w/w
ジエチレングリコールモノエチルエーテル 25.0%w/w
メチルパラベン 0.2%w/w
プロピルパラベン 0.05%w/w
pH調整剤 pH5.5まで適量
精製水 100まで適量。
【請求項4】
さらに、0%w/w~4.00%w/wの量のヘキシレングリコールおよび/または25%w/w~35%w/wの量のジエチレングリコールモノエチルエーテルを含む、請求項1に記載のエアゾールフォーム。
【請求項5】
前記ヘキシレングリコールが2.00%w/w~4.00%w/wの量であり、および/または前記ジエチレングリコールモノエチルエーテルが25%w/w~35%w/wの量である、請求項4に記載のエアゾールフォーム。
【請求項6】
さらに、溶媒、保湿剤、界面活性剤または乳化剤、ポリマーまたは増粘剤、防腐剤、酸化防止剤、金属イオン封鎖剤、安定剤、緩衝剤、pH調整剤溶液、皮膚浸透促進剤、フィルム形成剤、染料、顔料、および香料からなる群より選択される少なくとも1つの追加的成分を含む、請求項1に記載のエアゾールフォーム。
【請求項7】
さらに、アントラリン、アザチオプリン、タクロリムス、コールタール、メトトレキサート、メトキサレン、サリチル酸、乳酸アンモニウム、尿素、ヒドロキシ尿素、5-フルオロウラシル、プロピルチオウラシル、6-チオグアニン、スルファサラジン、ミコフェノール酸モフェチル、フマル酸エステル、コルチコステロイド、コルチコトロピン、ビタミンD類似体、アシトレチン、タザロテン、シクロスポリン、レゾルシノール、コルヒチン、アダリムマブ、ウステキヌマブ、インフリキシマブ、気管支拡張薬、および抗生物質からなる群より選択される追加的な活性薬剤を含む、請求項1に記載のエアゾールフォーム。
【請求項8】
前記ロフルミラストが全組成物の0.05~2重量%の量で存在する、請求項1に記載のエアゾールフォーム。
【請求項9】
前記プロパン/イソブタン/ブタン噴射剤ブレンドがAP-70である、請求項1に記載のエアゾールフォーム。
【請求項10】
患者においてホスホジエステラーゼ4を阻害する方法であって、水中油型エマルション中のロフルミラスト、セテアリルアルコール、ジセチルホスフェート、セテアレス-10ホスフェートと、プロパン/イソブタン/ブタン噴射剤ブレンドとを含むエアゾールフォームを、必要とする患者に局所投与することを含み;前記水中油型エマルションが4000~11000cPの粘度を有し、前記噴射剤および水中油型エマルションが約1:8~1:6の比にあり、前記エアゾールフォームが、容器から放出されるが患者の皮膚への適用後に崩壊する、前記方法。
【請求項11】
前記患者が、増殖性、炎症性および/またはアレルギー性皮膚疾患に罹患している、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記増殖性、炎症性およびアレルギー性皮膚疾患が、乾癬(尋常性)、湿疹、座瘡、単純苔癬、硬化性苔癬、結節性痒疹、日焼け、そう痒症、円形脱毛症、肥厚性瘢痕、円板状エリテマトーデス、および膿皮症からなる群より選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記患者が炎症性皮膚炎を患っている、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記患者がアトピー性皮膚炎を患っている、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記エアゾールフォームがさらに、ヘキシレングリコールおよびジエチレングリコールモノエチルエーテルからなる群より選択される少なくとも1つの成分を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記組成物が1日1回以上投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記組成物が1日1~2回投与される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記エアゾールフォームがヘキシレングリコールを含まない、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
前記エアゾールフォームが、25%w/w~35%w/wの量のジエチレングリコールモノエチルエーテルをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項20】
水中油型エマルション中のロフルミラスト、セテアリルアルコール、ジセチルホスフェート、セテアレス-10ホスフェートおよびジエチレングリコールモノエチルエーテルと、プロパン/イソブタン/ブタン噴射剤ブレンドとを含むエアゾールフォームであって、前記水中油型エマルションが4000~11000cPの粘度を有し、前記フォームがヘキシレングリコールを含まず、前記ジエチレングリコールモノエチルエーテルが25% w/w~35%w/wの量であり、前記エアゾールフォームが、容器から放出されるが皮膚への適用後に崩壊し、前記エアゾールフォームが30秒以上のフォーム半減期を有する、前記エアゾールフォーム。
【請求項21】
前記エアゾールフォームが5分以上の半減期を有する、請求項20に記載のエアゾールフォーム。









【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキルホスフェートアニオン界面活性剤またはアルキルホスフェート界面活性剤のブレンドを乳化剤として有する水中油型エマルションエアゾールフォーム組成物を対象とする。より詳細には、本発明は、ロフルミラスト、水および油を含み、セテアリルアルコール、ジセチルホスフェートおよびセテアレス-10ホスフェート(セテス-10ホスフェートとしても知られる)のブレンドによって乳化された、医薬的に許容可能なエマルションエアゾールフォーム組成物に関する。エアゾールフォームは、噴射剤ブレンドを使用して吐出(dispense)される。
【背景技術】
【0002】
フォーム配合物は、数十年間、化粧品および医薬用途のための送達システムとして使用されてきた。フォームは、より容易に広がり、摩擦を最小限に抑えるので、いくつかの適用において好ましい。これは、毛髪で覆われている炎症を起こした皮膚または皮膚領域を治療する場合に特に有利である。フォームビヒクルは適用しやすく、粘着性が低く、脂っぽい感触が少ないため、軟膏、ゲルおよびクリームよりも好ましい。患者がフォームビヒクルを好むということは、患者のコンプライアンスの向上、したがって、より良好な治療結果につながる可能性がある。
【0003】
活性構成成分を送達するために使用することができるフォーム配合物には、水性、水性アルコール性(hydroalcoholic)、エモリエント性、溶媒系、ワセリン系および油系フォームを含む、さまざまな種類がある。異なる配合物は異なる特性を有し、例えば、エモリエントフォームは鎮静、保湿効果を有し、水性アルコールフォームは、活性薬剤の皮膚浸透および溶解性を促進する。フォームは、AIRSPRAY(登録商標)フォームディスペンサー(液体ポンプと、空気ポンプと、液体ポンプおよび空気ポンプを同時に作動させるための共通の作動部とを包含するポンプアセンブリーを有するフォームディスペンサー)など噴射剤を含まない発生法を使用して、または加圧容器および噴射剤を使用することによって、作製することができる。
【0004】
局所フォームは、フォームビヒクルの特性が変化する点で軟膏およびクリームとは異なる。適用前に、フォーム配合物は、通常、懸濁液またはエマルションの形態にある。エアゾールフォーム配合物が容器から放出されると、液体噴射剤が揮発して、気相噴射剤で膨張している半固体フォーム製剤が生じる。噴射剤を含まない発生方法が使用される場合、フォームが吐出されると同時に、空気が懸濁液またはエマルション中に送り込まれる。フォームを発生させるために使用される方法は、フォームの外観および安定性に影響を及ぼす。
【0005】
フォームは、治療される状態、治療される身体領域、および配合物中の活性医薬構成成分などの因子に応じて特定の特性を有するように設計することができる。フォームビヒクルは、容器から放出された後に崩壊しないように適した安定性を有するべきであり;最小限の擦りのみが必要となるように低い剪断感受性を有するべきであり;非刺激性、非アレルギー誘発性、および非毒性であるべきであり;そして、活性薬剤を可溶化された状態に保つべきである。さらに、エアゾールフォームビヒクルは、大気のオゾン層への影響が最小限であるか、または全くない噴射剤を含有すべきである。悪臭を隠すための香料の添加は医薬品にとって好ましくないので、顔または上部胴体前面に適用されるフォームの臭気は最小限であるべきである。フォーム構造は、成分の種類および濃度、液相の粘度、塩濃度、配合物の温度およびpHを含む、さまざまなパラメータの影響を受ける。
【0006】
商業化可能な3相医薬エアゾールは、内部油相内および外部水相内の両方において限定された溶解度を有する界面活性剤に依存する。振盪すると、液体炭化水素噴射剤は、分散している油相小球と混合する。界面活性剤は噴射剤/油相と水相との間の界面で濃縮して、「ラメラ」とよばれる薄いフィルムを形成する。このラメラの特定の組成は、医薬エマルションがエアゾールキャニスターの加圧環境から出た直後に内部相中の液体噴射剤がガスに転移するときに形成されるフォームの構造的強度および一般的特性を決定付ける。この液相から気相への転移により、フォームの泡が形成する。厚く密な層状ラメラは、自重を支えることができる非常に構造化されたフォームをもたらす。必ずしも安定なフォームが形成されるとは限らない。望ましい構造を有する安定なフォームの形成は、多くの因子、例えば、限定されるものではないが、特定の成分、成分の濃度、液相の粘度、および噴射剤に依存する。これらの因子は、膨張性のフォーム、急速分解性(quick breaking)フォーム、硬質な(stiff)フォーム、および頑丈な(stout)フォームなど、さまざまな構造を有する安定なフォームが生成するように調整することができる。
【0007】
フォームの崩壊は、膨張する内部気相によって生じる圧力がフォームラメラの凝集強度を超えるときに起こる。膨張する内部気相の3つの発生源は、1)より蒸気圧が低い液体炭化水素噴射剤のさらなる脱ガス、2)擦り込み中のフォームに対する機械的圧力(押圧)、および3)フォーム濃縮物(70psig)がバルブを通過し、周囲圧力でフォームになるときの、断熱冷却に続く周囲温度(20~25℃)または皮膚温度(32℃)へのフォームの一般的な温度上昇、である。アルキルホスフェート界面活性剤によって安定化された3相エマルション医薬フォームの場合、ラメラが単一の界面活性剤二層フィルムまで減少すると、内部気相のさらなる膨張によりフォームセルが破裂し、皮膚表面上へ製剤が流出する。
【0008】
膨張性のフォームおよび急速分解性のフォームは、内部気相が急速に膨張してラメラを破裂させ、明らかにより大きなフォームセルを作り出すことを特徴とする。膨張性のフォームは、最初は内部フォームセルが結合するときに「膨らむ」ように見えるが、表面上のフォームセルが崩壊するにつれて、製剤の流出により活性物質が皮膚適用部位に送達される。
【0009】
硬質なフォームおよび頑丈なフォームの場合、皮膚温度まで温度を上昇させた完全に脱ガスされた内部相は、ラメラの凝集強度を超えるのに十分な圧力を生じない。ガスセルは、追加の擦り込み圧力が生じるまで破裂しない。これらのより安定なフォームは頭皮への適用に理想的である。これは、フォームを「毛髪の一部」における頭皮病変に対して配置した後、擦り込んでフォームを破壊し、製剤の毛髪への損失を最小限に抑えながら、皮膚疾患部に活性薬剤を適用することができるためである。
【0010】
3相医薬エマルションフォームが商業的に許容可能であるためには、製剤がキャニスターから出たときにフォームが形成するように、液体炭化水素噴射剤はエマルションの内部油相と適切に混合しなければならない。噴射剤が適切に混合しない場合、液体噴射剤がガスに転移するときにわずかなフォームセルしか形成せず、噴射剤の大部分は、作動させたときに、エマルションの外側のガスに転移する。振盪し、即座にバルブに通して作動させると、不均一で非常に密度の高い許容できない「はじき出されたような(sputtering)」フォームが吐出される。キャニスターを適切に振盪し倒立状態にしてもエマルション濃縮物から分離した噴射剤が吐出されるので、噴射剤は製剤の全量が噴出される前にキャニスターからなくなる。このフォーム製剤は、キャニスターが完全に空にならないため、商業的に許容できない。例えば、処方製剤が60グラムのフォーム(1ヶ月の供給量)を送達するようにラベル付けされているが、48グラムのフォームを送達した後に噴射剤が完全に使い果たされた場合、患者は完全な処方された治療を受けないことになる。このようなフォームキャニスターは、最小送達質量の要件を満たさず、市場から回収される。
【0011】
安定なフォームを必ず形成することはできない。望ましい構造を有する安定なフォームの形成は、多くの因子、例えば、限定されるものではないが、特定の成分、成分の濃度、液相の粘度、および噴射剤に依存する。外部水相への界面活性剤の溶解度を向上させる、配合物に添加される任意の賦形剤は、エマルションを不安定化し、ラメラの剛性を低下させ、液体噴射剤がガスに転移するとすぐにフォームの泡を破裂させる。言い換えれば、キャニスターから吐出される流体エマルションは、擦り込みによりラメラが破壊されて薬物製剤が望ましい治療部位に放出されるまで適用部位に残存する局所フォームを形成するものではなく、皮膚適用部位から急速に流れ去るものである。
【0012】
化粧品および医薬用の溶媒であるジエチレングリコールモノエチルエーテル(DEGEE)は、乳化プロセス中に、エマルションの水性連続相に存在し、界面活性剤およびラメラのろう状成分の連続水性相への溶解度を向上させることが示されている(Hernandez, et al., Journal of Dispersion Science and Technology, Investigating the effect of transcutol on the physical properties of an O/W cream, Vol 41, No. 4, pp 600-606, 2020)。DEGEE濃度が25%を超えて上昇したときのポリオキシエチレン-20-ステアリルエーテルおよびポリオキシエチレン-2-ステアリルエーテルエマルションの劇的な不安定化は、25%以上のDEGEEの存在下で安定なフォームを生成するのに十分に厚く密な層状ラメラを維持することが驚異的であることを示唆している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Hernandez,et al.,Journal of Dispersion Science and Technology,Investigating the effect of transcutol on the physical properties of an O/W cream,Vol41,No.4,pp600-606,2020
【発明の概要】
【0014】
フォーム安定性は、フォーム半減期を決定することによって評価することができる。フォーム半減期は、フォーム製剤の液体連続相の体積の半分が流出するのに必要な時間である。半減期が短いほど、フォーム安定性は低くなる。望ましいフォーム半減期は、フォームの使用目的に基づく。フォームが身体表面の広い領域に適用される特定のフォーム適用(例えば、セルフタンニングフォームおよび日焼け止めフォーム)では、フォーム半減期は、適用時間を最小限にするために30秒未満であることが好ましい。本発明の局所医薬フォームについては、30秒を超えるフォーム半減期が望ましく、1分を超えるフォーム半減期が好ましい。
【0015】
エアゾールフォームは、原薬(API)の局所適用に適した安定なフォームをもたらすことが見出されている。エアゾールフォーム配合物は、2つの成分、すなわち、製剤濃縮物および噴射剤からなる。製剤濃縮物は、活性薬物を、安定かつ有効な製剤を作製するのに要する追加の構成成分または共溶媒と組み合わせたものである。医薬エアゾール配合物の濃縮物は、溶液、懸濁液、エマルション、半固体、または粉末であることができる。局所フォーム製剤は、通常、エマルション製剤濃縮物を有する。噴射剤は、製剤濃縮物を容器から噴出する力を提供し、さらに、フォームとしての配合物の送達に関与する。噴射剤はまた、製剤濃縮物を構成する医薬活性物質または機能性賦形剤のための溶媒としての役割を果たすことができ、追加の溶媒の必要性を低減する。
【0016】
噴射剤
噴射剤は、容器内に圧力を作り出し、容器から製剤濃縮物を噴出するために使用される。噴射剤は、40℃(105°F)で大気圧を超える蒸気圧を有する化学薬品である。医薬エアゾールは一般に、クロロフルオロカーボン、フルオロカーボン(トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン)、炭化水素(プロパン、ブタン、イソブタン)、ヒドロクロロフルオロカーボンおよびヒドロフルオロカーボン、ならびに圧縮ガス(窒素、NO、CO)などの噴射剤を使用して作製される。
【0017】
クロロフルオロカーボン(CFC)噴射剤は長年使用されてきたが、オゾン層を激減させる作用に起因して、CFCの使用は著しく減少してきている。
ヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)およびヒドロフルオロカーボン(HFC)は、塩素を含有していても含有していなくてもよく、1以上の水素原子を有するという点で、CFCとは異なる。HCFCおよびHFCは、大気中でCFCよりも速い速度で分解するので、オゾン層への影響がより少ない。HCFCおよびHFCは、局所医薬品に使用される。HCFCおよびHFCは水との混和性がより高く、したがって、他の噴射剤と比較して溶媒としてより有用である。水中油型エマルションからなるフォーム濃縮物の場合、HCFCおよびHFCはエマルションの連続相と容易に混ざり合い、尿素およびサリチル酸のような水溶性の高い活性物質のための優れた局所薬物送達ビヒクルを提供する。KERAFOAM(登録商標)42エモリエントフォームは、皮膚および/または爪のための組織軟化剤である角質溶解性エモリエントフォームであり、保存剤、緩衝剤、水、セテアレス-10ホスフェート、セテアリルアルコールおよびジセチルホスフェートを含有する。SALKERA(登録商標)エモリエントフォームは、保湿剤、保存剤、緩衝剤、水、セテアレス-10ホスフェート、セテアレス-20ホスフェート、セトステアリルアルコール、ジセチルホスフェートおよびプロピレングリコールを含有する水性ベースのエモリエントフォームビヒクルに組み込まれた6%サリチル酸USPを含有する角質溶解薬である。
【0018】
炭化水素(HC)噴射剤は、環境への影響がより少なく、毒性が低く、非反応性であるため、局所医薬エアゾールに使用される。HCはまた、密度が1未満であり、水と混和しないので、3相(2層)エアゾールを作製するのに有用である。炭化水素は水性層の最上部にあり続け、内容物を容器から押し出す力を提供する。それらはハロゲンを含有せず、したがって加水分解が起こらないので、水性エアゾール用のこれらの良好な噴射剤となる。残念ながら、炭化水素噴射剤は引火性であり、爆発する可能性がある。引火性は、炭化水素を他の液化ガスと混合することによって低下させることができる。キャニスター内の液体炭化水素噴射剤は水中油型エマルションの内部油相と十分に混合することができず、フォーム濃縮物を不安定化する可能性がある。これは、キャニスターから放出される用量についての含量均一性の欠如をもたらす。
【0019】
【表1】
【0020】
プロパン、ブタン、およびイソブタンは、もっとも一般的に使用される炭化水素である。それらは、望ましい蒸気圧、密度および引火性の程度を得るために単独で、または混合物として、使用される。プロパン、イソ-ブタンおよびn-ブタンのブレンドは、通常、「AP」または「NIP」と、これに続くダッシュ記号と、70°Fにおける個別の噴射剤ブレンドについてのポンド毎平方インチでの圧力(圧力計で決定される)である数字とで表される。例えば、AP-48噴射剤は31:23:46のプロパン:イソブタン:ブタンブレンドであり、70°Fの缶内に48psigをもたらす一方、AP-70噴射剤は55:15:30のプロパン:イソブタン:ブタンブレンドであり、70°Fの缶内に70psigをもたらす。
【0021】
不活性な圧縮ガス噴射剤は、製剤濃縮物を、それが容器内に配置されたのと実質的に同じ形態で噴出する。圧縮ガスの圧力は、エアゾール容器の上部空間にある。圧縮ガス噴射剤は容易に入手可能であり、安価であり、非引火性であるが、缶内の圧力は製剤が使い尽くされるにつれて低下する。医薬製剤の場合、各作動に伴うこの定常の圧力低下により、キャニスターから送達される活性物質の最初の用量は、送達される活性物質の最後の用量と著しく異なるものになることがある。また、圧縮ガスが枯渇すると、キャニスター内に残存する製剤を患者に投与することができなくなる。これらの理由から、圧縮ガス噴射剤は、典型的には医薬エアゾールには使用されない。
【0022】
製剤濃縮物
エアゾールフォームは、水中油型エマルション製剤濃縮物が噴射剤と混合され、噴射剤がエマルションの内部油相にある場合に生成される。噴射剤が外部相にある場合(すなわち、油中水型エマルションのように)、フォームは生成されず、飛沫または湿潤流が生じる。急速分解性のフォームは、容器から放出されたときにフォームを作り出すが、フォームは比較的短時間で崩壊する。このタイプのフォームは、製剤を手で擦り込んだり広げたりすることなく、製剤濃縮物を広い領域に適用するために使用される。フォームが急速に崩壊するので、活性薬物はより迅速に利用可能である。安定なフォームは、有機相および水性相の両方において限定された溶解度を有する界面活性剤を使用する場合に生成される。界面活性剤は噴射剤/油相と水性相との間の界面で濃縮して、「ラメラ」とよばれる薄いフィルムを形成する。このラメラの特定の組成は、フォームの構造強度および一般的特性を決定付ける。厚く密な層状ラメラは、自重を支えることができる非常に構造化されたフォームをもたらす。
【0023】
製剤濃縮物を配合するために使用される乳化剤または界面活性剤、および配合物におけるアルコールの使用は、局所医薬フォームにおけるもっとも重要な要素のうちの2つである。エマルションエアゾール中の界面活性剤としては、トリエタノールアミンで鹸化した脂肪酸、アニオン界面活性剤、ならびに、より最近の例では、ポリオキシエチレン脂肪エステル、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、アルキルフェノキシエタノールおよびアルカノールアミドなどの非イオン性界面活性剤を挙げることができる。最初の皮膚科用フォームは高レベルのアルコール(約60%のエタノール)を含有し、非イオン性界面活性剤ポリソルベート60および炭化水素噴射剤を使用して、急速分解性のフォームを作り出していた。局所フォームのOlux(登録商標)(クロベタゾール)、Luxiq(登録商標)(ベタメタコン(betamethacone))、Lexette(登録商標)(ハロベタゾール)およびEvoclin(登録商標)(クリンダマイシン)は、高アルコールフォームである。残念ながら、高アルコールフォームは一部の乾癬患者でチクチクしたりヒリヒリすることが見出されており、アルコールをクロベタゾールフォームから除去し、ポリソルベート60をポリオキシル20セトステアリルエーテルで置き換えて、最初のエモリエント局所医薬フォームOlux-E(登録商標)が発売された。Finacea(登録商標)局所フォームは、プロピレングリコールを含有するが、アルコールを含有せず、ポリソルベート80とステアリン酸ポリオキシル40との界面活性剤ブレンドを使用してフォームラメラを形成するので、Olux-E(登録商標)と非常に類似した組成を有する。局所医薬フォーム技術の最近の進歩は、座瘡および酒さの治療のためのAmzeeq(登録商標)局所ミノサイクリンフォームである。この製剤は溶媒を含有しないが、ミノサイクリンを溶解するための複数の天然油のブレンドを、界面活性剤としての水素化ヒマシ油と組み合わせて使用して、フォームラメラを形成する。
【0024】
本発明は、ロフルミラストを含むエアゾールフォーム組成物を対象とする。エアゾールフォーム組成物は、好ましくは、水中油型エマルションを噴射剤と組み合わせたものである。噴射剤は、液化炭化水素ガスの混合物、好ましくはプロパン/イソブタン/ブタンブレンドである。炭化水素噴射剤は、安定で、一貫した物理的特性を有し、優れた審美性を有し、長期間(周囲温度での24ヶ月を超える貯蔵)または促進貯蔵条件(40℃および相対湿度75%での6ヶ月間の保存)後に識別可能なロフルミラスト分解を有さない、ロフルミラストエアゾールフォームをもたらす。好ましくは、ロフルミラストエアゾールフォームは、アルコールまたはプロピレングリコールを含有しない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1A~1Eは、許容可能なフォームおよび許容できないフォームを示す。
図1A図1Aは、吐出直後および吐出5分後の発泡フォームの許容可能なフォーム構造を示す。
図1B図1Bは、吐出直後および吐出5分後の急速に破壊するフォームの許容可能なフォーム構造を示す。
図1C図1Cは、吐出直後および吐出5分後の硬質なフォームの許容可能なフォーム構造を示す。
図1D図1Dは、吐出直後および吐出5分後の頑丈なフォームの許容可能なフォーム構造を示す。
図1E図1Eは、噴射剤と濃縮物が適切に混合せず、結果として吐出中にはじき出された、許容できないフォームを示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
皮膚疾患を治療するためのロフルミラストのような強力な薬理学的作用のある薬剤の局所適用は、優れた送達、より低い全身暴露、および患者にとって良好な使用しやすさを提供することが見出されている。化合物の分子構造が、最終的に、製剤が適用される組織の上皮を横切る薬物の能力を決定付ける。皮膚適用では、配合物の成分の選択が、配合者が達成することができる最大の皮膚浸透を決定付ける。クリーム、ローション、ゲル、軟膏、エアゾールフォームおよび溶液は、本明細書中で参考として援用する米国特許第5712298号(「298号特許」)に開示されているように(第12欄、第37~64行)、完全に溶解している皮膚適用のための原薬(API)を含有することが多い局所ロフルミラスト配合物のより身近な形態のうちのごく一部である。そのような皮膚疾患の治療に関し、局所適用のためのロフルミラストのエマルション、懸濁液、ゲルまたは溶液が記載されているが、化合物の溶解度が低いためそれらの適用は制限されている。
【0027】
組成物は、ロフルミラスト、ロフルミラストの塩、ロフルミラストのN-オキシドまたはその塩を、投与量単位あたり好ましくは0.005~2%w/w、より好ましくは0.05~1%w/w、もっとも好ましくは0.1~0.5%w/wの量で含有する。局面型乾癬の治療に有効であり、十分に忍容されることが既に示されている水中油型エマルションである0.3%ロフルミラストクリーム(ARQ-151)配合物を、噴射剤と組み合わせた。ロフルミラストフォーム濃縮物を配合して、容器からの放出後に崩壊せず、最小限の擦りのみが必要となるように低い剪断感受性を有し、非刺激性、非アレルギー性および非毒性であり、そして、ロフルミラストを可溶化された状態で保つフォームを生成した。さらに、ロフルミラストエアゾールフォームビヒクルは、大気のオゾン層への影響が最小限であるか、または全くない噴射剤を含有する。ロフルミラストフォーム濃縮物および噴射剤中の成分を調整して、膨張性のフォーム、急速分解性のフォーム、硬質なフォームおよび頑丈なフォームなど、異なる特性を有するフォームをもたらすことができる。好ましくは、キャニスターから発現される製剤は、擦り込みが開始するまで自重を支えることができる均一な泡を有する滑らかな白色またはオフホワイトのフォームである。擦り込みが開始するとすぐに、フォームは急速に破壊して、適用部位の全体にわたり均等に広がる。製剤は、好ましくは60秒を超えるフォーム半減期を有する。キャニスターによって吐出されるフォームの量は、一貫した量のフォームおよび一貫した投与量のロフルミラストが吐出されるように計量されてもよく、または計量されなくてもよい。
【0028】
ロフルミラストエアゾールフォームは、噴射剤との混合を確実にするために、アルキルホスフェートアニオン界面活性剤またはアルキルホスフェート界面活性剤のブレンドを含有する乳化剤を1~5%、好ましくは2%包含する。エモリエント剤は、審美的に好ましいフォームをもたらす量で包含される。好ましくは、エモリエント剤は、2~6%、好ましくは5%のワセリン;および2~3%、好ましくは2.5%のイソプロピルパルミテートを包含する。
【0029】
噴射剤は、製剤濃縮物を容器から噴出する力を提供し、さらに、フォームとしての配合物の送達に関与する。ロフルミラストエアゾールフォーム噴射剤は液化炭化水素ガスの混合物であるので、ロフルミラスト用の溶媒としての役割を果たすこともでき、または製剤濃縮物のエマルションの内部油相と混合することができる。炭化水素噴射剤の使用は、ヘキシレングリコールおよびDEGEE(ジエチレングリコールモノエチルエーテル)などの追加の溶媒の必要性を低減または排除することができる。ヘキシレングリコールは0~20%w/wの量で存在することが好ましく、DEGEEは10~35%w/wの量で存在することが好ましい。炭化水素噴射剤はロフルミラスト濃縮物と部分的に混合するが、主として缶の内部に別個の液体層(濃縮物よりも密度が低い)を形成する。これは、一般に、3相医薬エアゾールとよばれる。したがって、放出されたフォームが患者の皮膚に適用される前に最終製剤の全体にわたり噴射剤を均等に配分するために、缶を振盪することが必要である。
【0030】
0.3%ロフルミラストフォームの最終組成を表2に示す。この組成を有するロフルミラスト放出フォーム製剤は、一貫した物理的特性を有し、優れた審美性を有し、長期間(周囲条件下での24ヶ月以上の貯蔵)または促進貯蔵(40℃および相対湿度75%での6ヶ月間の貯蔵)条件の後に識別可能なロフルミラスト分解がなく、開発中に、許容可能であるがばらつきのあるロフルミラストアッセイ結果を示した。試料調製の分析法、製剤濃縮物の最適化、および包装適合性の特性決定に焦点を当てた設計よる一連の品質実験を完了した。アッセイ結果のばらつきは、試料調製中にヘキサン抽出を包含させることにより最小限に抑えることができると決定された。
【0031】
【表2】
【0032】
製剤濃縮物
ロフルミラストフォーム中の製剤濃縮物は、活性構成成分ロフルミラストの水中油型エマルション、すなわち約90%の水混和性連続相、7.5%の油相(保湿剤ワセリンとイソプロピルパルミテートとのブレンド)、および1~5%、好ましくは2~4%、より好ましくは2%のアニオン界面活性剤ベースの乳化ワックスCrodafos CESまたはCrodafos CES-PA(PAはパーム核油出発材料が持続可能な供給源からのものであることを示す)からなる。これらの成分は、頭皮および顔の治療のためのロフルミラストの急速分解性のフォームをもたらす。急速分解性のフォームは、容器から放出されたときにフォームを形成する配合物であるが、フォームは皮膚への適用(擦り込み)後、比較的短時間で崩壊する。このタイプのフォームは、製剤を手で擦ったり広げたりすることなく製剤濃縮物を広い領域に適用するために使用される。フォームが急速に崩壊するので活性薬物はより迅速に利用可能であり、フォームは、高密度の硬毛を有する皮膚領域、すなわち頭皮に、より容易に適用される。乳化前にpH調整剤を添加してpHを調整する。pHは、最終製剤の規格上限のpH=6を超えるべきではない。好ましいpH調整剤としては、NaOHおよびHClが挙げられる。油相として10%のワセリンおよび5%のIPPを有するCrodafos CESのさまざまな濃度における粘度の値を表3に示す。10% Crodafos CESはロフルミラストクリーム製剤中にあり、フォームは缶から放出されるときに「はじき出された」ので、エアゾールフォームでの使用に適していないことに留意されたい。はじき出されるということは(図1Eに示す)、キャニスター内部での液体噴射剤とエマルションフォーム濃縮物との混合が不十分であることを示す。好ましい粘度は、4000~11000センチポアズ(cP)である。粘度は、試料中のスピンドルを所定の速度で回転させる力を測定することによって粘度を決定するブルックフィールド粘度計を使用して試験した。中粘度(regular viscosity)用バネ(RV)を#14スピンドルと共に30rpm、試料チャンバー6Rで使用した。しかしながら、デジタル粘度計(DVE、DV1、DV2、またはDV3)はいずれも、粘度を決定するのに適している。読み取り時間を2分とし、温度を室温に制御した(CRT、20~25℃)。
【0033】
【表3】
【0034】
ロフルミラストフォーム濃縮物の好ましい審美性は、エモリエント剤を半減させることによって得られた(ワセリンを10%ではなく5%、イソプロピルパルミテートを5.0%ではなく2.5%)。ロフルミラストフォーム配合物の審美性に関して、2つの2% Crodafos CESフォーム濃縮物配合物のみを比較した。保湿剤を組み合わせたものを15%有するフォーム濃縮物は、保湿剤を組み合わせたものを7.5%含有するフォーム濃縮物と比較して、擦り込み中に「油っぽい」と感じた。ロフルミラストフォーム製剤は、頭皮および顔の脂漏性皮膚炎の皮膚(両方とも、フォーム適用前に油性皮膚を有することが知られている解剖学的部位)を治療するために配合されたので、フォームの保湿剤含量をクリームと比較して低減することは審美的利点であるとみなされた。乳化剤/エモリエント剤の15.5%の除去を補うために、フォーム中の水の量を、ロフルミラストクリーム中の約50%の水と比較して、フォーム濃縮物中では65%をわずかに上回る量まで増加させた。8グラムのAP-70噴射剤でガス化された64グラムの製剤濃縮物配合物(表2)についての3ヶ月間の非公式安定性データを表4および5に示す。
【0035】
【表4】
【0036】
【表5】
【0037】
噴射剤
炭化水素噴射剤は、望ましい特性を有するロフルミラストフォームをもたらすことが見出されている。それらはハロゲンを含有せず、したがって加水分解が起こらないので、ロフルミラストを含む水中油型エマルションなどの水性エアゾール用のこれら良好な噴射剤となる。噴射剤として機能することに加えて、炭化水素噴射剤は溶媒として機能することもでき、有効で審美的に許容可能なフォームを生成するのに必要とされる追加の溶媒の量を減少させる可能性がある。使用される特定の炭化水素および噴射剤とエマルションの比は、エアゾールフォームの密度および安定性に影響を及ぼす。
【0038】
審美的に許容可能なロフルミラストフォームの配合における第1の開発段階として、7つの異なる炭化水素噴射剤および1つのN-ブタン/ジメチルエーテルブレンドを、Crodafos CESエマルション濃縮物と共にスクリーニングした。7つの炭化水素噴射剤は、イソブタン(A-31)、N-ブタン(A-17)、プロパン/イソブタン(A-46)、プロパン/イソブタン(A-70)、プロパン/イソブタン/N-ブタン(AP-70)、Aeropin 35(Aeropin 35は、70°Fで35 psigの蒸気圧を有するプロパン/イソブタン/N-ブタンのブレンドであり、例えばイソブタンとN-ブタンの比は2/3に固定されている)およびブタン48(ブタン48は、30.8/22.9/45.8/0.5の比のプロパン/イソブタン/N-ブタン/イソペンタンである)であった。ジメチルエーテル(DME)との炭化水素ブレンドは、53%のDMEおよび47%のN-ブタンであった。AP-70噴射剤は、最初のロフルミラストフォーム噴射剤スクリーニング試験において最良品質のフォームを生成した。表1(上記)に、「AP」と称されるエアゾール噴射剤を作り出すためにブレンドされる3つの炭化水素噴射剤の特性を提供する。
【0039】
AP-48またはAP-70噴射剤のいずれか8グラムでガス化した場合の、表2に示すARQ-154フォーム配合物(64グラムの濃縮物)の審美性を比較した。AP-48噴射剤は31:23:46のプロパン:イソブタン:ブタンブレンドである一方、AP-70噴射剤は同炭化水素の55:15:30ブレンドである。フォームは両方とも完全に許容可能であることが見出されたが、製剤の被験者の約3分の2は、AP-48噴射剤フォームのより安定した外観およびわずかに遅い破壊を好んだ。被験者の残りの3分の1は、より急速に分解するAP-70フォームについて、嗜好しないか、またはわずかに嗜好した。AP-48およびAP-70炭化水素ブレンドは両方とも、良好な局所フォーム特性および優れた審美性を示すと結論付けられた。プロパンとブタンの比を調整することによって、48~70psigの間の任意の圧力を達成することができる。審美性に関しては、70°Fで約48~70psigの圧力をもたらすプロパン/イソブタン/N-ブタンのあらゆる比の炭化水素噴射剤ブレンドが、許容可能であることが示されている。
【0040】
ロフルミラストフォーム製剤
エアゾールフォームは、水中油型エマルション製剤濃縮物が液体炭化水素噴射剤と混合され、噴射剤が内部油相にある場合に生成される。噴射剤が外部相にある場合(すなわち、油中水型エマルションのように)、フォームは生成されず、飛沫または湿潤流が生じる。安定なフォームは、内部油相および外部水性相の両方において限定された溶解度を有する界面活性剤を使用する場合に生成される。界面活性剤は噴射剤/油相と水性相との間の界面で濃縮して、「ラメラ」とよばれる薄いフィルムを形成する。このラメラの特定の組成は、フォームの構造強度および一般的特性を決定付ける。厚く密な層状ラメラは、自重を支えることができる非常に構造化されたフォームをもたらす。好ましい態様では、局所フォーム製剤に一般に使用されない2つのアルキルホスフェート界面活性剤を使用する。これらのアルキルホスフェート界面活性剤は、乳化剤Crodafos CES中に存在する。
【0041】
すべての局所医薬フォームについて、最後のラメラが破裂する(フォームの泡が破壊する)ときに、すべての噴射剤が配合物から放出されると推測される。フォームラメラの特定の組成は、フォームの構造強度および一般的特性を決定付ける。液晶安定化水中油型エマルションロフルミラスト濃縮物は、各油滴を取り囲む複数のCrodafos CESラメラを有する。溶媒DEGEE(ジエチレングリコールモノエチルエーテル)は水および油の両方に混和性を示し、したがって、油相と水相との間で分離され、エマルションの界面で複数のラメラ内に配分される可能性が高い。濃縮物を缶に加え、バルブを缶の最上部の所定の位置に圧着し(crimp)、噴射剤を一次容器閉鎖システムのバルブを通して加圧下で加える。缶内では、液体噴射剤の一部が油相中に分離される。缶を振盪すると、噴射剤はすぐに濃縮物の油滴と混合して、缶内に乳白色のエマルションが形成する。缶から放出されたときに噴射剤は加圧液体からガスに転移するので、油球内に存在する液体噴射剤の体積は急激に膨張して、フォームのラメラ内に捕捉された炭化水素ガス気泡になる。噴射剤が膨張するにつれて、液滴の複数のラメラは、急速にフォームの単一のラメラになる。ガス状噴射剤の体積に関連する圧力が界面活性剤ラメラの強度を超えると、フォームセルが破壊し、ロフルミラスト濃縮物が皮膚の表面に流出する。
【0042】
フォームの特性を変化させるために、異なる炭化水素ブレンドを噴射剤に使用することができる。例えば、AP-70噴射剤は、より高圧の噴射剤の泡を生成するために、より多くのプロパンを含有し、したがって、フォームの泡はわずかに大きくなるはずである。AP-70噴射剤はまた、フォームが缶から出た後にフォームの泡を幾分膨張させ、より低圧のAP-48を噴射剤として有するロフルミラストフォームよりも少し「より迅速に破壊する」はずである。AP-48噴射剤フォームのより安定な外観およびわずかに遅い破壊は、AP-48噴射剤またはAP-70噴射剤のいずれかでガス化されたビヒクルフォームの対照比較において好まれた。AP-48およびAP-70炭化水素ブレンドは両方とも、良好な局所フォーム特性および優れた審美性を示す。
【0043】
本発明による組成物は、化粧品および医薬品の局所用製剤に通常見出される充填剤、キャリアおよび賦形剤などの追加の成分と共に配合することができる。追加の成分、例えば、限定されるものではないが、防腐剤(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸エステル、ベンジルアルコール、フェニル水銀塩、クロロクレゾール)、酸化防止剤、金属イオン封鎖剤、安定剤、緩衝剤、pH調整剤、皮膚浸透促進剤、フィルム形成剤、染料、顔料、希釈剤、増量剤、香料、および安定性または審美性を改善するための他の賦形剤を、組成物に加えてもよい。
【0044】
本発明による組成物は、治療される状態に応じて、追加の活性薬剤と共に配合することができる。例えば、増殖性、炎症性およびアレルギー性皮膚疾患を治療する場合、追加の活性薬剤としては、限定されるものではないが、アントラリン(ジトラノール)、アザチオプリン、タクロリムス、コールタール、メトトレキサート、メトキサレン、サリチル酸、乳酸アンモニウム、尿素、ヒドロキシ尿素、5-フルオロウラシル、プロピルチオウラシル(Propylthouracil)、6-チオグアニン、スルファサラジン、ミコフェノール酸モフェチル、フマル酸エステル、コルチコステロイド(例えば、アクロメタゾン(Aclometasone)、アムシノニド、ベタメタゾン、クロベタゾール、クロコトロン(Clocotolone)、モメタゾン、トリアムシノロン、フルオシノロン、フルオシノニド、フルランドレノリド(Flurandrenolide)、ジフロラゾン、デソニド、デスオキシメタゾン、デキサメタゾン、ハルシノニド、ハロベタゾール、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニカルベート、プレドニゾン)、コルチコトロピン、ビタミンD類似体(例えば、カルシポトリエン、カルシトリオール)、アシトレチン、タザロテン、シクロスポリン、レゾルシノール、コルヒチン、アダリムマブ、ウステキヌマブ、インフリキシマブ、気管支拡張薬(例えば、β作動薬、抗コリン薬、テオフィリン)、および抗生物質(例えば、エリスロマイシン、シプロフロキサシン、メトロニダゾール)を挙げることができる。
【0045】
ロフルミラストは、組成物からの放出速度を制御し、ロフルミラストを分解から保護するために、カプセル化することができる。カプセル化はまた、皮膚浸透を改変するために用いることもできる。活性医薬構成成分をカプセル化するための方法は当技術分野で公知であり、リポソーム、ミクロ粒子、ナノ粒子、ナノキャリア、ナノスフェア、ミクロスフェア、ミクロカプセル、ナノカプセル、ナノスポンジ、およびミクロスポンジ中へのカプセル化を包含するが、これらに限定されない。
【0046】
フォーム組成物は、治療される状態に適したスケジュールで投与することができ、好ましくは、フォーム組成物は1日1回以上投与され、より好ましくは、組成物は1日1~2回投与される。
【0047】
組成物は、ロフルミラストを使用することによって治療可能または予防可能であるとみなされるすべての疾患を治療および予防するための獣医用およびヒト用医薬に用いることができ、そのような疾患としては、限定されるものではないが、増殖性、炎症性およびアレルギー性皮膚疾患;TNFおよびロイコトリエンの過剰放出に基づく障害;眼の障害;関節炎障害;および、PDE阻害剤の組織弛緩作用によって治療することができる障害が挙げられる。好ましくは、組成物は、乾癬(尋常性)、湿疹、座瘡、単純苔癬、硬化性苔癬、結節性痒疹、日焼け、そう痒症、円形脱毛症、肥厚性瘢痕、円板状エリテマトーデス、および膿皮症(pyodermias)などの増殖性、炎症性およびアレルギー性皮膚疾患を治療するために使用される。
【0048】
以下の実施例は、当業者が本発明の方法および組成物を作製および使用することを可能にするために提供される。これらの実施例は、本発明者が本発明とみなすものの範囲を限定することを意図するものではない。追加の利点および修正は、当業者には容易に明らかになるであろう。
【実施例
【0049】
実施例1
【0050】
【表6】
【0051】
8種の異なる炭化水素噴射剤、N-ブタン/ジメチルエーテルの47/53wt/wtブレンドおよびヒドロフルオロカーボンHFA134aを、表6に挙げたフォーム濃縮物[配合物1または配合物2のいずれか]に加え、キャニスターを穏やかに振盪した後に放出されたフォームの外観を記録した。目標の割合は、62グラムのフォーム濃縮物に5グラムの噴射剤を加えたものであった。表7に見られるように、噴射剤としてのN-ブタンまたはイソブタンのいずれかの単独使用、およびプロパンとイソブタンのブレンドは、審美的に許容できない垂れやすい製剤をもたらした。しかしながら、プロパン/イソブタン/N-ブタンをブレンドした噴射剤は、滑らかで白色の均一な放出フォームをもたらした。3つの炭化水素の噴射剤ブレンドを使用するこのフォームは、最初は自重を支持したが、擦り込み中にすぐに破壊した。プロパン/イソブタン/N-ブタン噴射剤ブレンドにイソペンタンを添加すると、放出されたフォームは不安定化し、垂れやすく見える製剤が生じた。
【0052】
ジメチルエーテルは、特にフォーム濃縮物がアルコール(エタノールまたはイソプロピルアルコール)を含有する場合、水不溶性活性物質のキャニスター中での溶解度を増大させるために、炭化水素噴射剤に一般に添加される。表7に見られるように、N-ブタンにジメチルエーテルを添加すると、吐出時に、外観要件を満たさない垂れやすく見える製剤が生じた。
【0053】
HFA-134a(1,1,1,2-テトラフルオロエタン)は、水溶性の高い尿素(KERAFOAM(登録商標)42)およびサリチル酸(SALKERA(登録商標)エモリエント剤フォームに使用される噴射剤であり、これを配合物1と組み合わせた。放出された製剤は、液体中に配分された気泡を含まない、塊が多くゼラチン状に見える材料であった。
【0054】
【表7】
【0055】
実施例2
キャニスター寿命を通しての分散した含量の均一性の決定
5、6、8または10グラムのAP-70噴射剤でガス化したときの64グラムのフォーム濃縮物(0.15%ロフルミラストを含有する配合物1)の外観を比較した。これら4つのフォーム濃縮物と噴射剤の比に関しての放出フォームの外観は、小さく均一なサイズの気泡を有する識別できない滑らかで白色のフォーム製剤であった。
【0056】
キャニスター寿命を通しての分散したロフルミラスト含量の均一性を決定するために、追加の分析試験を配合物1(0.3%ロフルミラストを含有する)で完了した。2つの臨床的に関連する用量(約1グラム)を、缶の開始時(缶を手で約5回振盪した後の最初の作動)から吐出した。吐出されたフォームの量を、缶の重量差の測定を完了することによって定量化し、2つの別個のフォーム抽出物のアッセイ結果を平均化して、「開始時平均」値を得た。15グラムのフォームを吐出し、キャニスターを放置して室温に戻した。キャニスターを手でさらに5~6回振盪した後、キャニスターの中間部から2つの臨床的に関連する用量(約1グラム)を吐出した。2つの別個のフォーム抽出物のアッセイ結果を平均化して、「中間平均」値を得た。さらに15グラムのフォームを吐出し、キャニスターを放置して室温に戻した。この一連のサンプリングを繰り返して、「終末平均」データを得た。10グラムのAP-70噴射剤を含有するロットPGX-Cを8グラムのAP-70噴射剤を含有するロットと比較して、「開始時平均」、「中間平均」および「終末平均」を比較したデータを表8に示す。
【0057】
USP<607> Pharmaceutical Foams-Product Quality Testsに従って、キャニスター寿命を通しての分散した含量の均一性は10%を超えてはならない。この公定書による方法では、ラベル表示された説明書に従った量を吐出して、個々に秤量された適切な量のフォーム薬物製剤を別個に収集するように指示されている。試料サイズは、1回の適用について製剤のラベル表示で推奨されている最大用量を超えるべきではない。ラベル表示された使用説明書は、フォームを噴出させる前に缶を振盪するべきかどうか、および吐出するときの方向付け(正立または倒立)を決定する。フォームの部分は、以下に対応して保持されるべきである:1)充填されたキャニスターからの最初の部分、2)キャニスターの中間部からの部分(ラベル表示されたキャニスター含量の40%~60%の範囲)、および3)ラベル表示された含量の85%が送達されているキャニスター含量に対応する部分。キャニスターは、室温で吐出されるべきである。キャニスターが吐出の結果として冷たくなっている場合、キャニスターは、次の送達の前に室温まで温められるべきである。適切な試料調製(例えば、ガス抜き)および分析方法を用いて、3つの部分の各々における医薬物質濃度を決定することができる。3つの結果のいずれも、製剤アッセイ範囲外ではなかった。キャニスター内で決定された活性構成成分の量の最大差は、開始時、中間および終末で10.0%以下である。
【0058】
表8に見られるように、10グラムのHC噴射剤の添加は、キャニスター中のO/Wエマルションを不安定化する。キャニスターを振盪すると、液体噴射剤(比重=0.54)は内部油相(ワセリン/イソプロピルパルミテート/セトステアリルアルコール-比重=0.83)と混合し、ここで膨潤したエマルション小球を浮上させて(エマルションのクリーミング)倒立状態のバルブ/アクチュエーターから離れさせる。水不溶性活性物質はエマルションの油相の周囲に不均衡に存在するので、キャニスターを振盪してフォームを放出させるこのプロセスを繰り返すことは、キャニスター中で活性物質を濃縮するのに役立つ。O/Wエマルションが、USP<607>に従ってキャニスター寿命を通しての含量均一性について指定された最大差限界(10%以下)を超える点まで不安定化される場合、エアゾールフォーム薬物製剤はもはや商業的に実行可能ではない。目標とする0.3%ロフルミラスト配合物1の64グラム充填の場合、AP-70炭化水素噴射剤の量を増加させると、フォーム濃縮物のエマルションが突然かつ予想外に不安定化されて、このフォーム薬物製剤はもはや商業用医薬品に許容可能ではなかった。
【0059】
【表8】
【0060】
実施例3
ジエチレングリコールモノエチルエーテル濃度上昇の影響
キャニスター寿命を通しての分散した含量の均一性を決定するために、実施例2に詳述されたものと同じUSP<607> Pharmaceutical Foams-Product Quality Testsを使用して、ジエチレングリコールモノエチルエーテルの濃度上昇の影響(表9)を決定した。
【0061】
【表9】
【0062】
O/Wエマルションが、USP<607>においてキャニスター寿命を通しての含量均一性について指定された最大差限界(10%以下)を超える点まで不安定化される場合、エアゾールフォーム薬物製剤はもはや商業的に実行可能ではない。目標とする0.3%ロフルミラストフォーム濃縮物の64グラム充填およびAP-70炭化水素噴射剤の8グラム充填の場合、キャニスター中のエマルションは、DEGEE濃度が35%から40%に増大すると、突然かつ予想外に不安定化する(表10)。40%のDEGEEを含有するこのフォーム薬物製剤のエマルションは、医薬品の商業化に許容可能ではない。
【0063】
【表10】
【0064】
実施例4
実施例2に詳述したように、2つの臨床的に関連する用量(約1グラム)を、缶の開始時、中間および終末から吐出した。吐出されたフォームの量を、缶の重量差の測定を完了することによって定量化し、2つの別個のフォーム抽出のアッセイ結果を平均化して、表10に示す開始時平均(B)、中間平均(M)または終末平均(E)の値を得た。臨床的に関連する各対の作動の後、約15グラムのフォームをガラス容器中に吐出し、密閉し、所望によるアッセイのために貯蔵した。これらの試料を、開始時保持(BR)、中間保持(MR)および終末保持(ER)とラベル表示した。表9からの配合物4についての6つのアッセイ値(キャニスターの含量全体のアッセイを表す)を表11に示す。
【0065】
【表11】
【0066】
表11に示すデータは、キャニスター内のフォーム濃縮物エマルションのクリーミングが、患者への活性物質の投薬レベルの劇的な変化をどのように引き起こし得るかの劇的な例を提供する。ロフルミラストエマルション配合物の開発から、DEGEEの量を25%から40%に増加させるとフォーム濃縮物中のロフルミラストの溶解度は増大するが、DEGEEを35%超に増大させるとエマルションの不安定化も起こることがわかっている。キャニスターを完全にアッセイした後のアッセイパターン(表11)は、活性物質が、作動中に、キャニスター中に保持されているエマルションのロフルミラスト含有部分に移動していることを示す。アッセイを段階的に説明することにより、表11からのデータを理解することができる。全缶の製剤を振盪し、開始時の1グラム試料を吐出すると、アッセイ値は96.4%である。缶を再び振盪し、約15グラムのフォームを1回の作動でジャー中に吐出する-不安定化したエマルション相のロフルミラストに富み噴射剤で膨潤した小球が分離し(クリーミング)、倒立キャニスターのバルブから移動して排出される。エマルションのクリーミングにより、エマルションと液体噴射剤との間の界面に向かって不均衡な量のロフルミラストが運ばれ、「開始時保持」が69.4%という非常に低いアッセイ値を有することが裏付けられる。缶を放置して室温に戻し、振盪し、短い作動で1グラムの中間試料を採取し、アッセイするとラベルの99.0%である。再度、不安定化したエマルションに起因して、ロフルミラストは、「中間保持」の吐出中の長い作動中にキャニスターから吐出されない(ラベルの72.2%)。3相医薬エアゾールの約3分の2が低い有効性で吐出されているので、終末の1グラムの作動は、ラベルの131.3%というもっとも高いアッセイ値を有する。「終末保持」アッセイ値をもたらすための最後の長い作動は、終末試料(131.3%ラベル)と比較して、より低いロフルミラストアッセイ値(111.0%ラベル)を有する傾向を維持する。キャニスターが振盪後に倒立で保持される時間に応じて、物理的に不安定なエマルションフォーム製剤は、ラベル表示用量の69%またはラベル表示用量の131%を送達することができた。配合物4は、商業的に実現可能な医薬エアゾールフォーム製剤としては適していない。
【0067】
実施例5 炭化水素ブレンドの比
AP-48またはAP-70噴射剤のいずれか8グラムでガス化した場合の、表2に示すARQ-154フォーム配合物(64グラムの濃縮物)の審美性を比較した。AP-48噴射剤は31:23:46のプロパン:イソブタン:N-ブタンブレンドである一方、AP-70噴射剤は55:15:30のプロパン:イソブタン:N-ブタンブレンドである。フォームは両方とも完全に許容可能であることが見出されたが、製剤の被験者の約3分の2は、AP-48噴射剤フォームのより安定した外観およびわずかに遅い破壊を好んだ。被験者の残りの3分の1は、より急速に分解するAP-70フォームについて、嗜好しないか、またはわずかに嗜好した。AP-48およびAP-70炭化水素ブレンドは両方とも、良好な局所フォーム特性および優れた審美性を示すと結論付けられた。プロパンとイソブタン:N-ブタン混合物の比を調整することによって、48~70psigの間の任意の圧力を達成することができる。審美性に関しては、70°Fで約48~70psigの圧力をもたらすプロパン/イソブタン/N-ブタンのあらゆる比の炭化水素噴射剤ブレンドが、許容可能であることが示されている。
【0068】
実施例6
ロフルミラストフォームの第2相臨床再供給-4%ロフルミラスト過多量バッチ
フォーム薬物製剤中のロフルミラストの定量に用いられる分析法を開発し、未使用のロフルミラストフォームを用いてバリデートした。ロフルミラストフォーム薬物製剤の安定性試験が完了したときに、ロフルミラストアッセイ値は、経時的に、既知のロフルミラスト分解生成物の対応する増大または未知のクロマトグラフィーピークの対応する増大を伴うことなく、低減することが観察された。さらなる調査により、ロフルミラストはフォーム製剤中で分解しないが、むしろ、未使用のフォーム薬物製剤試料に適していることが見出されている元の抽出条件では、時間が経ったフォーム薬物製剤からロフルミラストが完全に抽出されないことが確認された。ヘキサン:アセトニトリル抽出段階を包含する新規な試料調製方法をバリデートし、ロットPGW-CおよびPGX-C(テキサス州San AntonioのDPT Laboratoriesで製造された0.3%ロフルミラストフォームの二重GMPバッチ)に関し3ヶ月時点の安定性を特徴付けるために使用した。
【0069】
ロットPGW-CおよびPGX-Cの200kgバルク濃縮物は、6点サンプリングを有した(最上部中心、最上部エッジ0°、最上部エッジ180°、中間部中心、中間部エッジ0°および底部)。バルク濃縮物のアッセイデータを以下の表12に示す。バルク濃縮物をエアゾール缶に加え、バルブを缶に圧着し、噴射剤をバルブを通して缶に加え、最後にアクチュエーター/キャップアセンブリーを所定の位置にスナップ嵌めする。
【0070】
包装されたフォーム薬物製剤試料の調製の第1の段階において、すべての噴射剤をフォーム試料から除去し、ヘキサン:アセトニトリル抽出を完了し、フォーム製剤から噴射剤を差し引いたもの(バルク濃縮物と同じマトリックス)の中のロフルミラスト濃度を計算する。以下の表12に示すように、缶に加えられる濃縮物(噴射剤の添加前)と缶からの除去(安定性試験のため)との間に、平均して4%の有効性の損失(%ラベル)が生じる。
【0071】
【表12】
【0072】
4%過多量のロフルミラストを含有するロフルミラストフォームバルク濃縮物の525kgのGMPバッチを製造した。この過多量バッチのロット番号はRDS-Cであった。バリデートされた方法(試料調製はヘキサン:アセトニトリル抽出段階を包含する)を用い、放出試験の結果は、包装工程の開始時からの缶ではラベル(0.3%ロフルミラスト)の101.9%、包装工程の中間からのものはラベルの100.1%、および包装工程の終末からのものはラベルの100.1%であった。ロフルミラストフォームのアッセイ値の見かけ上の損失は、バルク濃縮物の配合中に4%過多量のロフルミラストを添加することによって補正された。
実施例7 放出フォーム用量の含量均一性
2つの臨床的に関連する用量(約1グラム)を、缶の開始時(缶を手で約5回振盪した後の最初の作動)から吐出した。吐出されたフォームの量を、缶の重量差の測定を完了することによって定量化し、2つの別個のフォーム抽出のアッセイ結果を平均化して、「開始時平均」値を得た。約15グラムのフォームをガラス容器中に吐出し、密閉し、「開始時保持」試料として後日の所望によりアッセイするために貯蔵した。この一連のサンプリングを繰り返して、「中間平均」および「終末平均」データを得た。2つの臨床的に関連する用量が缶の終末から吐出された後、残存するすべてのフォームを缶から吐出して、「終末保持」試料を得た。これらの6つの放出用量のアッセイ結果を表13に示す。放出フォーム用量はすべて規格内であり、ロットPGX-Cの「全缶」アッセイを用いての低いアッセイ結果(3.5%~4.9%のアッセイ損失)(表12)は、缶の開始時からの作動から放出されたフォーム用量に関するこの含量均一性試験においてのみ見られた。含量均一性の結果に対する高いRSD値を、より小さなパーセントのアッセイ損失と組み合わせることにより、第2相臨床試験で使用されたロフルミラストフォームの添加順序、組成、および噴射剤の改変を試験する実験設計を促進した。
【0073】
【表13】
【0074】
プロセス改変バッチは、1720-0204R01(‘204バッチ)および1720-0206R01(‘206バッチ)であった。‘204バッチでは、乳化前に活性物質相(DEGEE、パラベンおよびロフルミラスト)を油相中にブレンドした。‘206バッチでは、エモリエント剤のイソプロピルパルミテートは、Crodafos CESおよびワセリン油相に添加せず、むしろ、保持して活性物質相のDEGEEに溶解させ、これを乳化後にバッチに添加した。製剤濃縮物についてのこれら「添加順序」のプロセス変更の両方を、AP-70噴射剤でガス化した。表14に示すように、乳化前に油相と活性物質相とを組み合わせると、劇的に低い規格外のアッセイ値が得られ、RSDは6.2%であった。これは、96~100%の範囲のアッセイ値を2.1%のRSDで与えるバッチ‘206(活性物質相にIPPを添加したもの)と対照的である。活性物質相へのIPPの添加は、ロフルミラストフォーム第3相試験物質に対して行われたプロセス変更であった。
【0075】
4つの組成変更を行い、ヘキシレングリコールを4%に増加させ(DPTロット1720-0205R01)、IPPを5%に増加させ(DPTロット1720-0213R01)、DEGEEを35%に増加させ(DPTロット1720-0123R01)、DEGEEを40%に増加させた(DPTロット1720-0211R01)。DEGEEを35%まで増加させると、AP-70でガス化した場合、より高い平均アッセイ値および低い%RSDを有したが、DEGEEを40%まで増加させると、非常に不均質な放出フォームがもたらされた。‘123および‘211バッチの結果は、過剰なDEGEE(35%~40%)の添加が唐突な製剤の失敗を引き起こすことを示した。
【0076】
表2の組成を有する製剤濃縮物の試料を、AP-48およびAP-31(イソブタンのみ)噴射剤でガス化した。両方の低圧噴射剤はPGX-C全缶アッセイ結果と合致する低いアッセイ値を有したが、AP-31は1.4%のRSDを有し、AP-48は0.6%のRSDを有した。噴射剤としてDMEのみを使用する‘123バッチの外観、およびDMEとエアゾール充填装置との既知の不適合性により、DMEはもはやロフルミラストフォーム製剤のための噴射剤として考慮されなくなった。
【0077】
上記のように、AP-48またはAP-70噴射剤のいずれか8グラムでガス化されたロフルミラストフォームの審美性を比較した。フォームは両方とも完全に許容可能であることが見出され、製剤の被験者の約3分の2は、AP-48噴射剤フォームのより安定した外観およびわずかに遅い破壊を好んだ。被験者の残りの3分の1は、より急速に分解するAP-70フォームをについて、嗜好しないか、またはわずかに嗜好した。
【0078】
【表14】
【0079】
2つの臨床的に関連する用量(約1グラム)を、缶の開始時、中間および終末から吐出した。吐出されたフォームの量を、缶の重量差の測定を完了することによって定量化し、2つの別個のフォーム抽出のアッセイ結果を平均化して、表14に示す開始時平均(B)、中間平均(M)または終末平均(E)の値を得た。臨床的に関連する各対の作動の後、約15グラムのフォームをガラス容器中に吐出し、密閉し、所望によるアッセイのために貯蔵した。これらの試料を、開始時保持(BR)、中間保持(MR)および終末保持(ER)とラベル表示した。表13からの缶1(臨床ロットPGX-C)ならびに表14からのバッチ‘205、‘206、AP-48を伴う‘528、および‘211を、これらの所望による保持試料のアッセイのために選択した。保持試料をアッセイすることによりロフルミラストフォームの缶全体がアッセイされることに留意されたい。これら5つのロットのロフルミラストフォームの結果を表15に示す。
【0080】
【表15】
【0081】
実施例8 缶ライナーの適合性試験
ヘキサン抽出段階の導入はアッセイ結果のばらつきを著しく減少させたので、市販の缶ライナーのサンプリングを0.3%フォーム濃縮物で充填し、AP-70噴射剤でガス化した。3つの異なる缶サイズをガラス適合性ボトルと比較した。現行のロフルミラストフォーム60g缶を、275.2gの濃縮物(60g缶の場合は64gの濃縮物に相当)および34.4gのAP-70噴射剤(60g缶の場合は8gの噴射剤に相当)を充填した53mm×235mm缶である、より大きいTrivium缶(PPG-2845およびPPG-8900)と比較した。より小さいロフルミラストフォーム10gの試料の缶に、12.0gの濃縮物および2.3gのAP-70噴射剤を充填した。バルク濃縮物を包装し、噴射剤を加えた。缶を周囲条件において倒立および正立で貯蔵した。ボトルをガス化し、同じ日に送ったが、正立および水平で保存した。ロフルミラスト、メチルパラベンおよびプロピルパラベンのアッセイ結果を表16に示す。
【0082】
【表16】
【0083】
【表17】
【0084】
結果にばらつきがあり、ガラスボトル試料の値が予想よりも低いため、缶ライナーへの損失を正確に決定することは難しい。しかしながら、データの傾向は、目標に近いロフルミラスト値を保持するという点で、エポキシフェノール系ライナーが最良であり、MPEおよびBPAは類似しているが、エポキシフェノール系ライナーよりもわずかに劣り、現行のPAMライナーはロフルミラストフォーム製剤に対しもっとも適合性が低いライナーであることを示している。表16のデータから、エポキシフェノール系ライナーは、パラベン、特にプロピルパラベンとの適合性を示さない可能性があると思われる。防腐剤とエポキシフェノール系缶ライナーとの間のこの不適合性が確認される場合、ロフルミラストフォームのための一次容器におけるPAM缶ライナーの使用によるわずかなロフルミラスト損失を補うために、過多量のロフルミラストが必要とされ得る。
実施例9 ロフルミラストフォーム最終配合実験
3つの主要な安定性バッチの製造のための最終的なロフルミラスト配合物を選択するために、4つの包装/噴射剤の組み合わせのマトリックスを安定した状態に置く。4つの構成は、1)AP-70噴射剤でガス化された現行のPAMライニング缶(第2相IP)、2)AP-48噴射剤でガス化された現行のPAMライニング缶、3)AP-70噴射剤でガス化されたエポキシフェノール系ライニング缶、および4)AP-48噴射剤でガス化されたエポキシフェノール系缶である。製剤濃縮物は表2に示す組成を有し、処理中に活性物質相にIPPを添加する。目標充填重量は、製剤濃縮物は64.0グラムであり、噴射剤は8.0グラムである。4つの構成の各々の四十(40)個の缶を充填し、ガス化し、安定した状態に置く。各構成から三(3)個の缶を各時間に引き出し、アッセイ、不純物、および防腐剤について試験する。
実施例10 貯蔵安定性
以下の配合物を調製し、噴射剤AP-48またはAP-70と混合して、周囲条件下で30日間を超えて貯蔵した後に安定なフォームが形成されるかどうかを決定した。
【0085】
【表18】
【0086】
実施例11 フォーム品質の評価
フォームを調製し、フォーム品質およびフォーム膨張技術を用いて評価した。フォーム濃縮物ロフルミラスト配合物は、以下に示すように、ヘキシレングリコールを含む配合物および含まない配合物を含んでいた。
【0087】
【表19】
【0088】
エアゾール缶構成要素は、以下の表に従って用意した。
【0089】
【表20】
【0090】
試料の可変許容差は以下の通りであった。
【0091】
【表21】
【0092】
各変数についてN=3の試料を調製した。各缶に、ロフルミラストを含有する中間体64gを充填し、続いて圧着した。その後、缶を8gのNIP-70噴射剤で加圧した。噴霧剤はビュレットシステムを使用して手動で充填した後、個々の試料の重量分析を行った。目標重量からの+/-5%の範囲を許容可能とみなした。目標値から3%より大きく逸脱した試料はなかった。完成エアゾール製剤は、指定された缶のブリム充填容量の75%を利用していた。55℃の水浴中に10分間浸漬することにより、完成缶の漏れを試験した。浸漬缶の目視検査中に漏れは検出されなかった。完成缶を手で10秒以下振盪し、少なくとも2日間静置して、噴射剤とフォーム濃縮物との完全な混合を確実にした。
【0093】
試料は、吐出後のフォームの有無を決定するために視覚分析を用いて試験した。フォームは、外力によって撹拌されたときに破壊され得る、最小1つの液体フィルム壁を共有する複数の泡の視覚的存在として定義した。フォームの視覚分析を、吐出直後と、吐出5分後にも行った。配合物5および配合物8の両方とも、分配直後および吐出5分後に許容可能なフォームをもたらすことが見出された。フォームは、均一な泡を有する滑らかな白色またはオフホワイトのフォームであり、自重を支えることができた。フォーム半減期は60秒を超えた。ヘキシレングリコールが存在しないことは、フォームの許容可能性に影響しなかった。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
【国際調査報告】