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特表2025-501251圧力駆動ろ過プロセスおよびシステムを使用する再生可能エネルギー源
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-17
(54)【発明の名称】圧力駆動ろ過プロセスおよびシステムを使用する再生可能エネルギー源
(51)【国際特許分類】
   C25B 13/08 20060101AFI20250109BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20250109BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20250109BHJP
   C25B 11/052 20210101ALI20250109BHJP
   C25B 11/081 20210101ALI20250109BHJP
   C02F 1/44 20230101ALI20250109BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20250109BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20250109BHJP
   B01D 63/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C25B13/08 301
C25B1/04
C25B9/00 A
C25B11/052
C25B11/081
C02F1/44 A
B01D69/10
B01D69/12
B01D63/00 500
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024539596
(86)(22)【出願日】2022-12-29
(85)【翻訳文提出日】2024-07-31
(86)【国際出願番号】 IB2022062890
(87)【国際公開番号】W WO2023126881
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】2119106.9
(32)【優先日】2021-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】289506
(32)【優先日】2021-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(31)【優先権主張番号】2206994.2
(32)【優先日】2022-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】293000
(32)【優先日】2022-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(31)【優先権主張番号】299462
(32)【優先日】2022-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】324003598
【氏名又は名称】アイ・ディ・イー ウォーター テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】リーベルマン,ボリス
(72)【発明者】
【氏名】エフラト,トメール
【テーマコード(参考)】
4D006
4K011
4K021
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA06
4D006GA07
4D006GA14
4D006HA41
4D006JA05Z
4D006JA06Z
4D006JA42A
4D006JA42C
4D006KA31
4D006KB01
4D006PA01
4D006PB02
4D006PC80
4K011AA10
4K011AA11
4K011AA32
4K011AA69
4K011BA07
4K011BA12
4K011DA03
4K021AA01
4K021AB01
4K021BA03
4K021BA17
4K021BB03
4K021BC01
4K021DB21
4K021DB40
4K021DB53
4K021DC03
(57)【要約】
逆浸透、順浸透、圧力遅延浸透、限外ろ過などの圧力駆動型の脱塩/ろ過プロセスで生成される水8から水素11を共同生成(コージェネレーション)する。脱塩/ろ過プロセスに関与する供給、原塩水および/または浸透液のごく一部は、電気分解に供され、それによって水を分解して水素を生成する。これは、膜内に電極9、10を組み込んで電気分解による水の分解を可能にする新規なRO型半透膜やUF型膜の提供によって達成される。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を共生成しながら水を濾過するように構成された膜エレメントであって、
少なくとも1つのアノード電極および少なくとも1つのカソード電極を含み、それぞれが前記膜と連通しており、さらに、前記膜が、前記水の少なくとも一部を電気分解して、そこから少なくとも部分的に水素を生成するように適合されている、膜エレメント。
【請求項2】
請求項1に記載の膜エレメントであって、前記膜は、前記膜を横切って圧力差が提供されたときに水を濾過するように構成されている、膜エレメント。
【請求項3】
前記膜が、水の浸透圧および/またはゲージ圧駆動濾過用に構成されている、請求項1に記載の膜エレメント。
【請求項4】
前記膜は、前記膜を横切って圧力差が提供されたときに供給水を少なくとも部分的に浄化するように構成された選択浸透膜である、請求項1に記載の膜エレメント。
【請求項5】
前記少なくとも1つのアノード電極、前記少なくとも1つのカソード電極、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つが、チタン、炭素繊維、炭素布、グラフェン、およびそれらの任意の組み合わせから選択される少なくとも1つの材料で作られている、請求項1に記載の膜エレメント。
【請求項6】
前記少なくとも1つのアノード電極、前記少なくとも1つのカソード電極、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つが、少なくとも1つの触媒で少なくとも部分的に被覆(コーティング)または少なくとも部分的に被覆(クラッディング)されている、請求項1に記載の膜エレメント。
【請求項7】
前記触媒が、酸化イリジウム、酸化ルテニウム、酸化タンタル、酸化チタン、白金、および酸化白金、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項6に記載の膜エレメント。
【請求項8】
前記少なくとも1つのアノード電極、前記少なくとも1つのカソード電極、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つが、メッシュ、板、布、繊維、焼結体、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの形態で提供される、請求項1に記載の膜エレメント。
【請求項9】
前記膜が、脱塩層と支持層とを含み、少なくとも1つのアノード電極および/または少なくとも1つのカソード電極が、脱塩層を備える、請求項1~8のいずれか1項に記載の膜エレメント。
【請求項10】
前記膜エレメントが、供給(feed)スペーサ、浸透液スペーサ、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを含み、少なくとも1つのアノード電極および/または少なくとも1つのカソード電極が、供給スペーサまたは浸透(permeate)スペーサによって提供されるか、供給スペーサおよび/または浸透スペーサの一方または他方に提供されるか、または供給スペーサ、浸透スペーサからなる群から選択される少なくとも1つに結合されるか、または供給スペーサ、浸透スペーサ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つに少なくとも部分的に被覆される、請求項1~9のいずれか1項に記載の膜エレメント。
【請求項11】
少なくとも1つの電極がグラフェンから形成されている、請求項1~10のいずれか1項に記載の膜エレメント。
【請求項12】
少なくとも1つの電極が、格子状または平行に間隔をあけて配置されたストリップの形態で設けられている、請求項1~11のいずれか1項に記載の膜エレメント。
【請求項13】
少なくとも1つの電極が、浸透スペーサおよび/または供給スペーサの全コーティングまたは部分コーティング、あるいは全クラッドまたは部分クラッディングの形態である、請求項12に記載の膜エレメント。
【請求項14】
アノード電極およびカソード電極の一方または両方に触媒が設けられている、請求項1~13のいずれか1項に記載の膜エレメント。
【請求項15】
製品水または任意のリジェクト流中の溶存水素を、その後の脱ガスまたは気体膜分離による抽出のために回収する回収手段をさらに備える、請求項1~14のいずれか1項に記載の膜エレメント。
【請求項16】
水濾過プロセスが、逆浸透、圧力遅延浸透(PRO)、順浸透(FO)、限外濾過、精密濾過、およびナノ濾過からなる群から選択される、請求項1~15のいずれか1項に記載の膜エレメント。
【請求項17】
水の電気化学的分離を可能にするために、電極間に100mA/cm2以下の低電流密度が印加され、好ましくは10mA/cm2以下であり、特に5mA/cm2以下であり、理想的には1mA/cm2以下である、請求項1~15のいずれか1項に記載の膜エレメント。
【請求項18】
圧力駆動型海水淡水化プロセス中に水素を発生させる方法であって、
a.少なくとも1つのアノード電極および少なくとも1つのカソード電極を含み、前記膜と連通する少なくとも1つの膜に供給水を供給するステップと、
b.水素を共生成しながら、前記水を濾過するステップと、
を含み、前記水素を共生成するステップは、前記少なくとも1つのアノード電極と前記少なくとも1つのカソード電極との間に電位差または電流のいずれかを印加するステップを含み、それにより、供給水、生成水、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される少なくとも1つの少なくとも一部から、電気分解により水素および酸素を生成することを特徴とする方法。
【請求項19】
前記水を濾過するステップが、さらに、前記膜に亘って圧力差を印加して前記膜を通して供給水を引き込み、生成水を形成するステップを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つのアノード電極、前記少なくとも1つのカソード電極、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つが、チタン、炭素繊維、炭素布、グラフェン、およびそれらの任意の組み合わせから選択される少なくとも1つの材料で作られている、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも1つのアノード電極、前記少なくとも1つのカソード電極、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される少なくとも1つが、少なくとも1つの触媒で少なくとも部分的に被覆(コート)されるか、または少なくとも部分的に被覆(クラッド)される、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記触媒が、酸化イリジウム、酸化ルテニウム、酸化タンタル、酸化チタン、白金、および酸化白金、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記少なくとも1つのアノード電極、前記少なくとも1つのカソード電極、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される少なくとも1つが、メッシュ、板、布、繊維、焼結体、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される少なくとも1つの形態で提供される、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
脱ガスまたは気体膜分離によるその後の抽出のために、製品水または任意のリジェクト流中の溶存水素を回収することをさらに含む、請求項18~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
水濾過プロセスが、逆浸透、圧力遅延浸透(PRO)、順浸透(FO)、限外濾過、精密濾過、およびナノ濾過からなる群から選択される、請求項18~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
水の電気化学的分離を可能にするために、電極間に100mA/cm2未満の低電流密度が印加され、好ましくは10mA/cm2未満であり、特に5mA/cm2未満であり、理想的には1mA/cm2未満である、請求項18~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
水の圧力駆動濾過と、水素の共同生成(コージェネレーション)のための水の少なくとも一部の電気化学的分解のために構成された水濾過モジュールであって、
給水入口と、
請求項1~17のいずれか1項に記載の少なくとも1つの膜エレメントと、
生成水出口と、
任意にリジェクト水出口と、
を備えることを特徴とする水濾過モジュール。
【請求項28】
前記膜が、脱塩層と支持層とを備え、少なくとも1つのアノード電極および/または少なくとも1つのカソード電極が、脱塩層を備え、および/または脱塩層と支持層との一方もしくは両方の中、上もしくは間に設けられている、請求項27に記載のモジュール。
【請求項29】
前記膜エレメントが、供給スペーサ、浸透スペーサ、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを含み、少なくとも1つのアノード電極および/または少なくとも1つのカソード電極が、供給スペーサまたは浸透スペーサによって提供されるか、または供給スペーサおよび/または浸透スペーサの一方または他方上にまたは近接して提供されるか、または供給スペーサ、浸透スペーサからなる群から選択される少なくとも1つに結合されるか、または供給スペーサ、浸透スペーサ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つに少なくとも部分的に被覆(コート)されるか、または少なくとも部分的に被覆(クラッド)される、請求項27~28のいずれか1項に記載のモジュール。
【請求項30】
少なくとも1つの電極がグラフェンから形成されている、請求項27~29のいずれか1項に記載のモジュール。
【請求項31】
少なくとも1つの電極が、グリッドまたは平行に間隔をあけて配置されたストリップの形態で提供される、請求項27~30のいずれか1項に記載のモジュール。
【請求項32】
少なくとも1つの電極が、浸透スペーサおよび/または供給スペーサの全体的または部分的な被覆(コート)または全体的または部分的な被覆(クラッド)の形態である、請求項29に記載のモジュール。
【請求項33】
アノード電極およびカソード電極の一方または両方に触媒が設けられている、請求項27~32のいずれか1項に記載のモジュール。
【請求項34】
脱ガスまたは気体膜分離によるその後の抽出のために、製品水または任意のリジェクト流中の溶存水素を回収する回収手段をさらに含む、請求項27~33のいずれか1項に記載のモジュール。
【請求項35】
水濾過プロセスが、逆浸透、圧力遅延浸透(PRO)、順浸透(FO)、限外濾過、精密濾過、およびナノ濾過からなる群から選択される、請求項27~34のいずれか1項に記載のモジュール。
【請求項36】
水の電気化学的分裂が起こることを可能にするために、100mA/cm2未満の低電流密度が電極間に印加され、好ましくは10mA/cm2未満であり、特に5mA/cm2未満であり、理想的には1mA/cm2未満である、請求項27~35のいずれか1項に記載のモジュール。
【請求項37】
水素の共同生成(コージェネレーション)を伴う圧力駆動型浄水システムであって、
給水入口と、
請求項1~17のいずれか1項に記載の少なくとも1つの膜エレメントまたは請求項27~36のいずれか1項に記載のモジュールと、
給水に対して圧力を加える少なくとも1つのポンプと、
膜エレメントの電極に電位差を与える電源と、
生成水出口と、任意のリジェクト流出口と、
生成物および/またはリジェクト流内の水素出口と、
を含むシステム。
【請求項38】
水素の共同生成(コージェネレーション)を伴う圧力駆動型浄水プロセスであって、
請求項1~17のいずれか1項に記載の膜エレメントまたは請求項27~36のいずれか1項に記載のモジュールに、供給水入口から供給水を供給する工程と、
膜エレメントの選択浸透性膜間に圧力差を印加して、膜を通して供給水を引き込み、生成水および任意選択でリジェクト流を形成する工程と、
膜エレメントの電極間に電位差を印加して、供給水および/または生成水の少なくとも一方の少なくとも一部を電気化学的に分解し、水素および酸素を形成する工程と、
生成水および任意選択でリジェクト流、および水素を回収する工程と、
を含むプロセス。
【請求項39】
さらに、脱ガスまたは気体膜分離によるその後の抽出のために、製品水または任意のリジェクト流中の溶存水素を回収することを含む、請求項38に記載のプロセス。
【請求項40】
圧力駆動水濾過プロセスが、逆浸透、圧力遅延浸透(PRO)、順浸透(FO)、限外濾過、精密濾過およびナノ濾過からなる群から選択される、請求項38~39のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項41】
供給水および/または生成水の5%未満が水素を形成するために分離され、好ましくは1%未満、より好ましくは0.05%未満、特に0.01%未満、理想的には0.01%未満である、請求項38~40のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項42】
水の電気化学的分離を可能にするために、電極間に100mA/cm2未満の低電流密度が印加され、好ましくは10mA/cm2以下、特に5mA/cm2以下、理想的には1mA/cm2以下である、請求項38~41のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項43】
選択浸透性膜エレメントの対向する側に、浸透圧およびゲージ圧の異なる供給溶液および誘導溶液を供給する工程と、膜の電極間に電流を流して低塩濃度溶液を水素と酸素に分離する工程と、水素と酸素を回収する工程と、をさらに含む、請求項38~42のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項44】
膜が、第1の側および第1の側とは反対側の第2の側を有するRO型膜であり、
膜の第1の側に入るための浸透圧POrおよびゲージ圧PGrを有する誘導(ドロー)溶液を備える第1の生理食塩水と、
浸透圧POpおよび膜の第2側に入るためのゲージ圧PGpを有する供給(フィード)溶液を備える第2の生理食塩水と、
圧力PGr、POr、PopおよびPGpのバランスによって定義される正味駆動圧力に従って第1側に浸透する膜の第2側からの供給溶液の少なくとも一部と、を有し、
誘導溶液および浸透した供給溶液の一部は、残留塩水出口を介して膜の第1側から残留塩水流として出て、
供給溶液の残りは、少なくとも周期的に、出口を介して膜の第2側から残留流体蒸気として出て、
低塩濃度溶液流の少なくとも一部は、膜を通過する際に水素と酸素に分解するために、第2側から第1側へ通過する、請求項43に記載のプロセス。
【請求項45】
膜が、第1の側および第1の側とは反対側の第2の側を有するRO型膜であり、
膜の第1の側に入るための浸透圧POrおよびゲージ圧PGrを有する誘導(ドロー)溶液を備える第1の生理食塩水と、
浸透圧POpおよび膜の第2側に入るためのゲージ圧PGpを有する供給(フィード)溶液を備える第2の生理食塩水と、
圧力PGr、POr、PopおよびPGpのバランスによって定義される正味駆動圧力に従って第1側に浸透する膜の第2側からの供給溶液の少なくとも一部と、を有し、
誘導溶液および浸透した供給溶液の一部は、残留塩水出口を介して膜の第1側から残留塩水流として出て、
供給溶液の残りは、少なくとも周期的に、出口を介して膜の第2側から残留流体蒸気として出て、
第1の食塩水溶液および/または第2の供給溶液の少なくとも一部は、膜に沿って通過する際に、電気化学的に水素と酸素に分離される、請求項43に記載のプロセス。
【請求項46】
誘導溶液が岩塩ドーム内で岩塩を溶解することにより供給される圧力遅延浸透を使用して発電することをさらに含む、請求項38~45のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項47】
岩塩の溶解が、PGrと等しいかまたはそれに近い圧力下で実施される、請求項46に記載の浸透圧プロセス。
【請求項48】
生成した水素を岩塩ドーム内に貯蔵することをさらに含む、請求項38~47のいずれか1項に記載の浸透圧プロセス。
【請求項49】
水から水素および酸素を製造するための、請求項38に記載のシステムであって、
カソードおよびアノードを備える少なくとも2つの電極を有する少なくとも1つのRO型膜を有する筐体をさらに含み、膜は、第1の側および該第1の側に対向する第2の側を有し、該膜の該第1の側に入るための浸透圧POrおよびゲージ圧PGrを有する誘導溶液を備える第1の食塩水を供給するための第1の入口と、膜の第2側に入るための浸透圧POpおよびゲージ圧PGpを有する供給溶液を備える第2の食塩水溶液を供給するための第2の入口と、膜の第2側からの供給溶液の少なくとも一部は、圧力PGr、POr、POpおよびPGpのバランスによって定義される正味の駆動圧力に従って第1側に浸透し、誘導溶液および供給溶液の浸透した部分は、残留塩水出口を介して膜の第1側から残留塩水流として出て、供給溶液の残りは、少なくとも周期的に、出口を介して膜の第2側から残留流体蒸気として出て、低塩濃度溶液ストリームが形成され、第2側から第1側に通過し、膜の電極は、低塩濃度の溶液の流れの少なくとも一部を、RO型膜を通過する際に水素と酸素に分離する役割を果たす、システム。
【請求項50】
水から水素と酸素を製造するための、請求項38に記載のシステムであって、
カソードとアノードを備える少なくとも2つの電極を有する少なくとも1つのRO型膜を有する筐体をさらに含み、膜は、第1の側と第1の側とは反対側の第2の側とを有し、
膜の第1の側に入るための浸透圧POrおよびゲージ圧PGrを有する誘導溶液を備える第1の生理食塩水を供給するための第1の注入口と、膜の第2の側に入るための浸透圧POpおよびゲージ圧PGpを有する供給溶液を備える第2の生理食塩水を供給するための第2の注入口と、膜の第2側からの供給溶液の少なくとも一部は、圧力PGr、POr、POpおよびPGpのバランスによって定義される正味の駆動圧力に従って第1側に浸透し、誘導溶液および浸透した供給溶液の一部は、残留塩水出口を介して膜の第1側から残留塩水流として出て、供給溶液の残りは、少なくとも周期的に、残留流体ストリームとして膜の第2側から出口を介して出て、低塩濃度溶液ストリームが形成され、第2側から第1側へ通過し、膜の電極は、RO型膜に沿って通過する際に、第1の食塩水溶液および/または第2の食塩水溶液の少なくとも一部を水素と酸素に分離する役割を果たす、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、圧力駆動濾過プロセスおよびシステムを使用する再生可能エネルギー源、特に水素の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化およびその他の環境問題に対処するために、再生エネルギー源の開発がますます重要になってきている。水素はエネルギー貯蔵に適したエネルギー・キャリアであり、水素は燃焼して水を生成し、CO2排出はゼロである。したがって、エネルギー生成のための水素の効率的な製造と貯蔵は、非常に魅力的な提案である。
水から水素を製造する技術としては、水電解技術が知られている。水が反応物であり、直流電流を用いて水素と酸素に分解される。
【0003】
アノード:H2O→1/2O2+2H++2e-
カソード:2H+2e-→H2
全体:H2O→H2+1/2O2
【0004】
アルカリ水電解、プロトン交換膜水電解、固体酸化物水電解、アルカリ陰イオン交換膜水電解など、水素製造のために多くの異なるタイプの水電解プロセスが研究されてきた。
【0005】
水素製造の満足なスケールアップは、適切な水源、再生可能エネルギー源、および/または製造された水素の貯蔵に便利な場所の不足によって妨げられる可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、これらの問題の一部またはすべてに対処する、水素生成のための改良された装置、プロセスおよびシステムを提供することである。
【発明の概要】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、水の浸透圧および/またはゲージ圧駆動濾過、ならびに水素の共同生成(コージェネレーション)のための水の少なくとも一部の電気化学的分解のために構成された膜エレメントが提供され、膜エレメントは、膜に亘って圧力差が提供されたときに供給水を少なくとも部分的に浄化するように構成された少なくとも1つの選択浸透性膜を含み、膜エレメントは、少なくとも1つのアノード電極および少なくとも1つのカソード電極を含む。
【0008】
本開示の文脈において、選択浸透性膜は、水の浸透圧および/またはゲージ圧駆動濾過に使用され得る任意のタイプの逆浸透(RO)または限外濾過(UF)タイプの膜である。「RO」タイプの膜には、逆浸透、圧力遅延浸透(PRO)、順浸透(FO)およびナノろ過(NF)に使用される膜が含まれる。「UF」タイプの膜には、限外濾過(UF)、精密濾過(MF)、その他の懸濁物質からの浄化プロセスに使用される膜が含まれる。これらのタイプの膜は、最大孔径0.1ミクロンの選択浸透性である。この点で、膜の種類は特定の孔径を持つことになり、例えばMF膜は一般に約0.1ミクロンの最大孔径を持ち、UF膜は一般に0.01~0.1ミクロンの孔径を持ち、NF膜は一般に0.01ミクロンの最大孔径を持ち、RO膜は一般に0.0001ミクロンの孔径を持つ。しかし、当技術分野で知られているように、これらのタイプの膜を特徴付けるために他のパラメータを使用してもよい。
【0009】
第1の態様の膜エレメントは、好ましくは、水の圧力駆動ろ過と、水素の共同生成(コージェネレーション)のための水の少なくとも一部の電気化学的分解のために構成されたモジュールに組み込まれる。この目的のために、本発明の第2の態様は、供給水入口と、本発明の第1の態様による少なくとも1つの膜エレメントと、製品水出口および任意にリジェクト水出口と、を含むモジュールを提供する。
【0010】
オプションのリジェクト水出口は、膜を通過しない供給水の一部であるリジェクト流のためのものであり、選択浸透性膜の適用において塩水として拒絶される。このリジェクト流は、UFやMFアプリケーションでは存在しない場合がある。
【0011】
さらに、モジュールには水素および/または酸素排出口が設けられていてもよい。しかし、より好ましくは、溶存水素は、例えば、脱ガスまたはガス分離膜によって、リジェクト流または製品水から後で抽出するために、リジェクト流または製品水中に供給される。
【0012】
本発明の第1の態様による膜エレメントおよび本発明の第2の態様によるモジュールは、少なくとも部分的に精製された水と水素の同時共同生成(コージェネレーション)を提供するために、任意の圧力駆動型水濾過プロセスまたはシステムに組み込むことができる。
【0013】
従って、本発明の第3の態様は、水素の共同生成(コージェネレーション)を伴う圧力駆動水濾過のプロセスを提供し、このプロセスは、
給水入口から本発明の第1の態様による膜エレメントに給水を供給する工程と、
膜エレメントのROおよびUF型の選択浸透性膜間に圧力差を印加して、膜を通して給水を引き込み、生成水を形成する工程と、
膜エレメントの電極間に電位差を印加して、水素および酸素を形成するために、給水および/または生成水の少なくとも一部を電気化学的に分解させる工程と、
生成水および任意選択でリジェクト流、及び水素を回収する工程と、
を含む。
【0014】
好ましくは、水素は、製品水またはリジェクト流の少なくとも一方に溶解され、例えば、脱ガスまたは膜ガス分離によって、そこから抽出される。
【0015】
本発明の第4の態様は、水素の共同生成(コージェネレーション)を伴う圧力駆動型水濾過のためのシステムを提供し、このシステムは、
供給水入口と、
本発明の第1の態様による少なくとも1つの膜エレメントと、
供給水に圧力を加えるための少なくとも1つのポンプと、
膜エレメントの電極に電位差を与えるための電源と、
製品出口および任意選択でリジェクト水出口と、
製品および/またはリジェクト水内の水素出口と、
を備えている。
【0016】
実施形態では、本発明の第1および第2の形態の膜エレメントおよびモジュールはそれぞれ、水素の共同生成(コージェネレーション)とともに水から電気を供給する圧力遅延浸透(PRO)システムの一部を形成することができる。しかし、より好ましくは、膜エレメントまたはモジュールは、水の脱塩および水素の共同生成(コージェネレーション)のための逆浸透(RO)またはナノろ過(NF)または他の銘柄のシステムに組み込まれる。
【0017】
あるいは、エレメントまたはモジュールを限外濾過または精密濾過システムなどの他の水濾過システムに組み込んで、精製水と水素発生を提供することもでき、これらすべてについては本明細書でさらに説明する。RO、PRO、NFのUFおよびMFとの主な違いは、RO、PRO、NFが脱塩半透膜を実装し、阻止流を有することである。UFおよびMF膜は脱塩半透膜ではなく、リジェクト流を有しない。しかしながら、全ては、本発明に従って水分解を可能にするために、膜内または膜上に電極を備えることができる。
【0018】
本開示の文脈では、半透性脱塩層が膜に含まれる逆浸透(RO)分離プロセスは、逆浸透(RO)、ナノろ過(NF)、およびRO溶解イオン分離プロセスが行われる他の任意の脱塩半透性膜に及ぶ。半透膜が浸透圧ポンプとして機能し、低塩分濃度の水が高塩分濃度の水に浸透するようなプロセスには、膜に半透性脱塩層が含まれる圧力遅延浸透(PRO)プロセスが適用される。これは、RO溶存イオン分離プロセスとは異なる物理的プロセスであり、順浸透(FO)、および膜が浸透圧ポンプとして作用するその他のプロセスにも適用される。
【0019】
本発明の水濾過プロセスおよびシステムには、限外濾過(UF)、精密濾過(MF)、および非脱塩半透膜に基づくその他のプロセスが含まれ、水処理(懸濁物質からの浄化)を目的として、ゲージ圧によって駆動される任意の膜を水が移動し、水素発生は補完的な共同生成(コージェネレーション)活動である。本発明では、UF、MFおよびその他の懸濁物質からの浄化プロセスに使用される膜を、一般的な名称である "UF型膜 "と呼ぶ。
【0020】
本発明のモジュール、プロセスまたはシステムの実施形態内に設けられる入口および出口の特定の数および配置は、水の電気化学的分離が組み込まれる海水淡水化または水処理プロセスのタイプに依存する。ROやNFプロセスの場合、モジュールは1つの入口「原塩水」と2つの出口を有し、「残留塩水流」(「リジェクト流」または「リジェクト出口」)と「浸透水流」である。水素は、これらの出口の一方または両方から出ることができる。
【0021】
PROプロセス用のモジュールには、2つの入口と2つの出口がある。「ドロー溶液」用と「給水」用の入口と、「残留流体ストリーム」用出口と「残留塩水」用出口の2つの出口がある。水素はこれらの出口の一方または両方から出る。
【0022】
対照的に、UFおよびMFプロセスの場合、モジュールには通常、1つの入口「供給水」と1つの出口「ろ過水」がある。水素は片方の出口からしか出ない。
【0023】
前述のすべてのシステムおよびプロセスにおいて、RO、NF、PRO、UF、MFに関与する水のごく一部だけが、膜内で水素を形成するために電気化学的分解を受け、残りは製品またはろ過水、あるいは不合格のドロー溶液を生成する。好ましくは、上記の水の5%未満が分離される。より好ましくは、すべてのプロセスにおいて、その量は1%未満、特に0.05%、より特に0.01%、理想的には0.01%未満である。
【0024】
本発明による膜、モジュール、システムおよびプロセスは、水の電気化学的分離を可能にするために電極間に電流を印加できるように、適切な電源を備えるべきである。好ましくは低い電流密度が使用され、好ましくは100mA/cm2以下、より好ましくは10mA/cm2以下、特に5mA/cm2以下、理想的には1mA/cm2以下である。
【0025】
このプロセスでは、電極間で起こる反応を最適化するために、例えば酸素発生反応の可逆電位を低下させるために、pH補正を行うこともできる。
【0026】
供給水の浸透圧濾過および/またはゲージ圧駆動濾過を実施するためのモジュール内には、任意のタイプのROおよびUFタイプの膜を設けることができることを理解されたい。しかし、膜はアノードとカソードを含み、オプションとして、浸透した水の一部を電気化学的に分離して水素を生成するための追加電極を含むように設けられる。これらの電極を組み込んだ適切な膜は、非常に広い範囲の構成で提供され得、本明細書で開示される特定の順列に限定されない。
【0027】
例えば、一実施形態では、モジュールは、脱塩層および支持層を含む少なくとも1つのRO型膜を含み、膜は、少なくとも1つのアノード電極および少なくとも1つのカソード電極を含み、電極は、脱塩層を備え、および/または脱塩層および支持層の一方もしくは両方の中、上もしくは間に設けられる。
【0028】
実施形態において、膜エレメントまたはモジュールは、供給および/または浸透スペーサを組み込むことができる。電極は、供給および/または浸透スペーサの一方または他方に設けられるか、またはそれに隣接して設けられることがある。
【0029】
脱塩層、支持層、供給または浸透液スペーサは、電極の機械的支持体として機能する。したがって、RO、PRO、NF、FOモジュールの既存の浸透液および供給液スペーサ、ならびにRO、PRO、NF、FO膜の半透膜層は、本発明の膜エレメントに組み込まれたアノード電極とカソード電極の分離のためにそのまま使用することができる。
【0030】
UFタイプの膜では、カソードとアノードは、これらの中空糸膜の内側および/または外側のいずれか一方または両方に配置することができる。
【0031】
電極は、多くの異なる構成でRO型膜に組み込むことができる。例えば、少なくとも2つの電極は、脱塩層と支持層との間に設けることができる。あるいは、少なくとも1つの電極を脱塩層と支持層の間に配置し、少なくとも1つの電極を脱塩層の外面に設けてもよい。別の実施形態では、少なくとも2つの電極は両方とも脱塩層の外面に設けてもよい。
【0032】
さらに別の実施形態では、電極は浸透物および/または供給スペーサ上に配置されてもよく、より好ましくは、電極は浸透物または供給スペーサのいずれかの側に配置される。代替の実施形態では、両方の電極が浸透液および/または供給スペーサの片側に配置されてもよい。他の実施形態では、一方の電極は浸透液および/または供給スペーサの片側に配置され、他方の電極は浸透液および/または供給スペーサの反対側の部位に配置されてもよい。
【0033】
本発明の代替実施形態において、電極(アノードおよび/またはカソード)は浸透液または供給スペーサに結合されてもよい。好ましくは、供給スペーサは浸透液チューブに機械的に結合される。一実施形態では、アノードは供給スペーサに結合され、カソードは浸透液スペーサに結合されてもよい。別の実施形態では、カソードが供給スペーサに結合され、アノードが浸透液スペーサに結合されてもよい。さらに他の実施形態では、スペーサの極性は、どの電極がカソードとして利用され、どの電極がアノードとして利用されるかを制御するように変更可能であってもよい。
【0034】
他の実施形態において、電極(アノードおよび/またはカソード)は、供給および/または浸透スペーサを備えていてもよい。そのような実施形態において、スペーサは、少なくとも部分的に導電層および/または触媒層で被覆され、それにより、電極を導電性および電気触媒的に活性なアノード(O2発生のため)または電気触媒的に活性なカソード(H2発生のため)またはその両方にする。スペーサは、例えばPt、Irおよびそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの触媒で少なくとも部分的に被覆されていてもよい。
【0035】
スペーサの導電性は、例えば、ポリマースペーサをニッケルまたは銅金属で被覆し、次いでこれらの金属を、例えば酸化還元置換または他の技術によって、Pt-またはIr-基触媒で置換することによって得ることができる。
【0036】
実施形態において、電極は、格子状または平行に間隔をあけて配置されたストリップの形態で提供されてもよい。あるいは、電極は、浸透物および/または供給スペーサの全体的または部分的なコーティングの形態で提供されてもよい。
【0037】
さらに、脱塩層またはスペーサは、それらが電極の1つとして機能することを可能にし得る材料、すなわち、十分な導電性を有する材料(例えば、グラファイト、ポリマーと導電性粒子との複合体、または金属など)で形成されてもよい。
【0038】
さらに好ましくは、少なくとも1つの電極はグラフェンから形成されてもよい。一実施形態では、電極(アノードおよび/またはカソード)は、グラフェンまたは炭素繊維/炭素布である。
【0039】
好ましくは、炭素は、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、Pt-lr、ルテニウム(Ru)金属およびそれらの任意の組み合わせから選択される混合金属酸化物(MMO)で被覆するための基材である。これらの実施形態において、MMO/C電極は、無電解または電着を介して炭素上に犠牲銅またはニッケル層を形成し、犠牲金属をPt、Ir、RuまたはPt-lrで置換することからなる2段階プロセスによって調製することができる。
【0040】
実施形態では、脱塩層はグラフェンから形成され、電極の1つを備えていてもよい。支持層は好ましくは多孔質材料で構成され、好ましくはセラミック材料である。
【0041】
あるいは、電極(アノードおよび/またはカソード)は、耐久性を高めるためにチタン材料であってもよい。
【0042】
電極は、どのような構成で設けられてもよいが、好ましくは、メッシュ、プレート、繊維で形成された布、および焼結体からなる群から選択され、より好ましくは、チタン製である。
【0043】
半透膜はさらに参照電極を含んでいてもよい。任意に、少なくとも2つの電極の間に少なくとも1つの誘電体材料を設けてもよい。供給および/または浸透スペーサは、スペーサの両側に印刷、コーティングまたは配置された電極の誘電体材料として機能することができる。
【0044】
さらに、少なくとも1つの触媒を電極の少なくとも1つまたは両方に設けて、所望の反応を促進してもよく、例えば、酸素および水素の発生を促進し、塩素の発生を妨げる。
【0045】
一実施形態では、電極は少なくとも部分的に少なくとも1つの触媒で被覆されていてもよい。好ましくは、触媒は、酸化イリジウム、酸化ルテニウム、酸化タンタル、酸化チタン、白金、および酸化白金、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群の少なくとも1つから選択される。
【0046】
上述したように、本発明の第3および第4の態様によるプロセスおよびシステムは、多くの異なるタイプの圧力駆動型水濾過プロセスおよびシステムに適用することができる。
【0047】
好ましい実施形態では、プロセスおよびシステムは、少なくとも1つの、好ましくは複数の膜エレメントを含む浸透分離モジュールにおいて水を水素と酸素に分解するための逆浸透(RO)プロセスおよびシステムを備え、前記膜は、少なくとも2つの電極がRO型膜、および/または支持層、および/または膜エレメントの供給および/または浸透スペーサ上に配置された供給側および浸透側を有する。原料塩水はモジュールに供給され、原料塩水の一部は残留塩水流としてモジュールから流出し、原料塩水の一部は通常の逆浸透プロセスで膜を浸透し、ゲージ圧と浸透圧のバランスの正味の駆動力によって脱塩水を生成し、浸透水流として膜エレメントの浸透水側から流出する。
【0048】
このプロセスには、膜電極に連続的に、または所定の期間、電流を印加することが含まれ、これにより、原料塩水および/または浸透水流の一部が水素ガスと酸素ガスに分離され、残留塩水流および/または浸透水流とともに浸透分離モジュールから排出される。このように、ROモジュールは、商業利用のための食塩水の脱塩と、水の水素と酸素への同時分解を組み合わせている。好ましくは、原料塩水の5%未満、より好ましくは1%未満が水素生成に使用される。
【0049】
あるいは、このプロセスおよびシステムは、UFまたはMFプロセスにおける限外ろ過膜や精密ろ過膜のような非脱塩半透膜上で実施される水浄化プロセスに適用することもできる。この実施形態では、濾過水の1%未満、好ましくは濾過水の0.1%未満を水素発生に使用する。
【0050】
水の濾過および水素の共同生成(コージェネレーション)を提供するためのこのようなプロセスおよびシステムは、懸濁固体ファウリング濾過モジュールを含むことができ、前記膜エレメントは、膜、および/または支持層、および/または供給および/または濾過水スペーサ上に配置された少なくとも2つの電極を有する供給側および濾過側を有し、原塩水がモジュールの供給流側に入り、ゲージ圧の駆動力によって通常の濾過プロセスで少なくとも部分的に膜を浸透し、濾過流として濾過側から出て、水を水素および酸素に分解するための前記方法は、連続的に、または所定の期間、電極に電流を印加し、これにより浸透流の一部を水素ガスと酸素ガスに分解して、濾過された水流とともに濾過モジュールから排出する。
【0051】
別の実施形態では、浸透圧およびゲージ圧の異なる第1および第2の溶液をRO型半透膜の対向する側に供給して膜全体で低塩濃度溶液を生成することと、半透膜は少なくとも2つの電極を含むことと、RO型半透膜の電極間に電流を印加して低塩濃度溶液を水素と酸素に分離することと、水素と酸素を回収することとを含む、水を水素と酸素に分離する浸透圧プロセスおよびシステムが提供される。
【0052】
一般に、第1の溶液は誘導(ドロー)溶液として知られ、第2の溶液は供給溶液として知られる。例えば、供給溶液は、海水、汽水、廃水、または河川水や地下水などの淡水を含む。
【0053】
浸透圧プロセスは、圧力遅延浸透または順浸透を含むことができ、RO型半透膜は、第1の側および第1の側とは反対側の第2の側を有し、浸透圧POrおよび膜の第1の側に入るためのゲージ圧PGrを有する誘導(ドロー)溶液を含む第1の食塩水溶液と、浸透圧POpおよび膜の第2側に入るためのゲージ圧PGpを有する供給溶液を含む第2の生理食塩水と、膜の第2側からの供給溶液の少なくとも一部は、圧力PGr、POr、POpおよびPGpのバランスによって定義される正味の駆動圧力に従って第1側に浸透し、ここで、誘導(ドロー)溶液および浸透した供給溶液の一部は、残留塩水出口を介して膜の第1側から残留塩水流として出て、供給溶液の残りは、少なくとも周期的に、出口を介して膜の第2側から残留流体流として出て、および低塩濃度溶液流の少なくとも一部は、半浸透性膜を通過する際に水素および酸素に分離するために、第2側から第1側へ通過する。
【0054】
さらに、または代替的に、膜に沿って通過する第1の食塩水溶液および/または第2の供給溶液の少なくとも一部は、半透膜に沿って通過する際に水素と酸素に分解するために流れる。
【0055】
本発明の第3および第4の態様によるプロセスおよびシステムは、先行技術のプロセスおよびシステムで使用されている、これらのプロセスおよびシステムを実施するための従来のステップおよび構成要素を組み込んでもよく、好ましくはそうすることを理解されたい。例えば、取水路および排出路、前処理ユニットおよび後処理ユニット、ポンプ、制御弁、送出管および制御ユニットなどである。
【0056】
好ましくは、プロセスおよびシステムの運転のためのエネルギーは効率的に生産される。例えば、膜の電極を作動させるための電気は、圧力遅延浸透を使用して供給することができ、この場合、誘導(ドロー)溶液は、岩塩ドーム内で岩塩を溶解することによって供給される。岩塩の溶解は、PGrに等しいか近い圧力下で行うことができる。あるいは、溶解は大気圧下で行ってもよい。塩ドームは、プロセスで発生した水素を貯蔵するためにも使用される。
【0057】
あるいは、生成された水素は、後で使用するために貯蔵タンクに貯蔵されるか、または使用するためにネットワークグリッドに供給される。
【図面の簡単な説明】
【0058】
本発明をよりよく理解し、本発明がどのように実施され得るかをより明確に示すために、添付の図面を例示的にのみ参照する。
図1A】従来技術によるアルカリ水電解の原理を示す概略図である。
図1B】従来技術によるプロトン交換膜(PEM)水電解の原理を示す概略図である。
図2A】本発明の実施形態による電極を組み込んだFOまたはPRO半透膜を通る断面の概略上面図である。
図2B】脱塩層4および供給7を除去した、図2Aに示す半透膜の立体図である。
図3】本発明の代替実施形態による一対の電極を組み込んだ半透膜の立体図である。
図4】本発明のさらに別の実施形態による一対の電極を組み込んだ半透膜の立体図である。
図5】本発明のさらに別の実施形態による一対の電極を組み込んだ半透膜の立体図である。
図6A】浸本発明のさらに別の実施形態による、透スペーサおよび供給スペーサを有し、電極を組み込んだ半透膜の断片的立体図である。
図6B】鏡面対称に配置された図6Aによる2つの膜を示す図である。
図7】本発明による1つまたは複数の半透膜が組み込まれ得る海水淡水化プラントおよびプロセススキームの概略図である。
図8】塩素発生、酸素発生および水素発生反応の可逆電位をpHの関数として示したグラフであり、T=25℃、[Cl-]=20g/L、気体のフガシティ=1、錯形成なし、無限希釈である。
図9】水素生成および貯蔵のための本発明のシステムの一実施形態を示す概略図である。
図10】本発明の実施形態による、一対のスペーサおよびそれに結合された電極を有する浸透管の概略図である。
図11】本発明の別の実施形態による、複数のスペーサおよび電極が結合された浸透管の概略図である。
図12】チタン箔とプラスチックスペーサとの間に追加の導電体がある場合とない場合における、浸透および/または供給スペーサに対するチタン箔クラッド300の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
本発明は、一般に、RO膜またはUF膜を使用する海水淡水化または水処理プロセス中に生成される水からの新規な水素生成に関し、供給水は、膜に対して(例えば、浸透圧およびゲージ圧によって)圧力駆動され、特定の成分が膜を通過する一方で他の成分が拒絶され、水の一部が電気化学的に分離されて水素が生成される。
【0060】
幾つかの例では、このプロセスは、圧力遅延浸透プロセスPROまたは順浸透プロセスFO中に溶液を引き込むために、ROタイプの半透膜を介して浸透した供給水を利用する。非常に塩分濃度の低い水は、ROタイプの半透膜を通過して、供給水流から誘導(ドロー)溶液水流に至る。この低塩分水の一部は電気分解され、水を分解して水素を生成する。これは、このような圧力駆動型エネルギー生成プロセスで従来使用されているRO型半透膜に1つまたは複数の電極を組み込むことによって達成され、これらのタイプの膜を使用して従来実施されている標準的なPROプロセスに加え、電気分解による水の同時分解を可能にする改良膜を提供する。
【0061】
圧力遅延浸透(PRO)は浸透圧駆動膜プロセスであり、高塩濃度流と低塩濃度流の混合から利用されるエネルギーを利用して機械的エネルギー(混合のギブの自由エネルギーの利用)を生成する。水はROタイプの半透膜を通り、低濃度の供給流から高濃度で部分的に加圧された塩水流(「ドロー溶液」)へと浸透する。水圧は浸透圧より小さく、その結果、水(浸透水流)は供給水流から塩水流に正味の浸透圧駆動力で輸送される。浸透水流は加圧され、塩水流を希釈し、加圧された浸透水流のエネルギーはタービン発電機を介して機械エネルギーまたは電気エネルギーに変換することができる。
【0062】
順浸透は、浸透圧で駆動する別の膜プロセスであり、ROタイプの膜を使用して2つの液体供給ストリームを処理する。膜の片側は浸透圧の低い供給溶液(FS)であり、膜のもう片側は浸透圧の高い誘導(ドロー)溶液(DS)である。浸透圧の差により、水は膜を通過してFS側からDS側に流れ、同時にDSは希釈され、FSは濃縮される。RO膜は活性層(または脱塩層)と多孔質支持層から成り、一般にFS側が活性層に面している。
【0063】
これらのプロセスはいずれも、膜を横切る非常に塩分濃度の低い水流を生成する。本発明は、この水流を水素製造に利用する。しかし、本発明はこれらのタイプの膜に限定されるものではなく、逆浸透膜やナノろ過膜など、他のタイプの膜でも実施可能である。ROタイプの半透膜は、基本的に非常に薄い高分子材料の層であり、バリア層として機能し、印加された圧力が浸透圧より大きい場合に溶解イオンまたは分子を水から分離する。
【0064】
一実施形態では、本発明はPROまたはFO中に生成される浸透液の流れを利用する。この流れは、膜から取り出すことができず、極めて薄いため、直接測定することができない。しかし、本発明者らは、この流れは塩分濃度が極めて低いため、水素製造に使用できる可能性があることを初めて認識した。この点に関して、FO膜および/またはPRO膜の脱塩層と支持層との間の接触面において、FO/PRO膜の一方の側(FS)を移動する供給溶液(海水)の約1000分の1の塩分濃度を有し、他方の側の誘導溶液(DS)の約1万分の1の塩分濃度を有する低塩分濃度の水の連続的な移動があることは、容易に知られていない。本技術革新は、水素と酸素の生成のための水の分離を目的として、この極めて薄い低塩濃度の流れの中に電極を配置する。このように、本発明は、水の分離を可能にする新規な浸透性膜を提供し、さらに、水から水素と酸素を生成する新規な方法とシステムを提供する。
【0065】
本発明はまた、ROおよびNFプロセスにも組み込むことができ、そこでは、原料塩濃度の供給水および/または浸透水の小部分が電気分解に供され、それによって水を分解して水素を生成する。この場合も、これらの圧力駆動型脱塩プロセスで従来使用されているRO型半透膜に1つまたは電極を組み込むことによって達成され、RO型膜を使用して従来行われている標準的な脱塩に加えて、電気分解による水の同時分離を可能にする改良膜を提供する。
【0066】
或いは、本発明をUFおよびMFプロセスに組み込んで、供給水および/または濾過水の一部を電気分解し、水を分解して水素を生成することもできる。この場合も、圧力駆動型の水処理プロセスで従来使用されているUFタイプの膜に1つまたは複数の電極を組み込み、UFタイプの膜を使用して従来行われていた標準的な水処理に加えて、電気分解による水の同時分解を可能にする改良膜を提供することによって達成される。
【0067】
以下の説明は、RO、NF、PRO、UF、MFプロセスを本発明に従って改良し、水素発生を提供するプロセスにも同様に適用される。
【0068】
本発明は、水の脱塩(RO、NF)または水処理(UF、MF、FO)または浸透圧発電(PRO)と、電気エネルギーの変換および貯蔵のための水素ガスの電気化学的生産(水素経済)を同時に提供する。電気化学リアクターと膜リアクターには、スペーサと膜という少なくとも2つの共通部品がある。さらに、最新の水電解システムは超純水を利用する。同じ膜、スペーサ、制御・自動化ユニット、油圧システム、その他の機器や材料を使用して、脱イオン水を脱塩モジュールやろ過モジュールで直接電解すれば、水電解の運転コストや資本コストを大幅に削減でき、脱塩プラントや水処理プラントに付加価値を提供できる。
【0069】
従来の水電解プロセスは、200~2000mA/cm2(あるいはそれ以上)の電流密度で運転されている。このような高い電流密度は、反応器の設置面積を減らし、これらのプロセスの資本コストを最小限に抑えるために必要である。現在、水電解(WE)を利用した水素製造には、(i) アルカリ水電解(図1A参照)、(ii) 高分子電解質膜(PEM)電解(図1B参照)、(iii) 水蒸気または固体酸化物電解(SOE)の3つの主要なプロセスがある。SOEプロセスは高温(>500℃)で行われ、本発明には関係しないため、これ以上詳しく説明しない。
【0070】
すべてのWE技術は、アノードとカソードでの水分子またはH+イオンとOH-イオンの酸素ガスと水素ガスへの酸化と還元に基づいている。これらのプロセスは電気エネルギーと熱を消費し、アノードとカソードで起こる反応は、以下に示すように電解液のpHに依存する。
【0071】
アルカリ溶液の場合(図1A参照)
アノード:2OH-→0.5O2+H2O+2e- Er=0.401V VS. SHE (1)
カソード:2H2O+2e-→H2+2OH- Er=-0.828V VS. SHE (2)
酸性溶液の場合(図1B参照):
アノード:H2O→0.5O2+2H++2e- Er=1.229V VS. SHE (3)
カソード:2H++2e-→H2 Er0=0.0V VS. SHE (4)
全体: H2O→H2(g)+0.5O2(g) Vrev=1.229V (5)
(ここで、Vrevは可逆電圧(ボルト)、Er°は標準還元電位(ボルト対標準水素電極、SHE)である)。
【0072】
酸化と還元のプロセスは、それぞれアノードとカソードで進行する。すべての電解セルにおいて、アノードはカソードよりもプラスである。電子は、直流(DC)電源に接続された外部ワイヤー(または他の、通常は金属導体)を介して、アノードからカソードへ(すなわち、電流の流れと反対方向へ)流れる。電気化学セルの電気回路は、電解液中の電荷(すなわちイオン)の移動を必要とする。言い換えれば、WEプロセスを維持するためには、水中に電解質が存在しなければならない。低温(すなわち、T<100℃)の水電解プロセスでは、(1)塩、酸、および塩基と(2)固体電解質の2つの主要なタイプの電解質が使用される。
【0073】
上記の式(1)~(4)から導かれるように、アノード反応とカソード反応により、電解液中にH+イオンとOHイオンが生成される。これらのイオンは、水の電気分解でイオン電流を流すのに利用できる。この場合、外部電解質の添加は必要ない。図1Bに示されているように、この原理は、固体電解質水電解プロセスで使用される。「固体電解質」とは、電気化学セルのアノードとカソードの間にあるイオン交換膜のことである。通常、高分子陽イオン交換膜(例えば、ナフィオン、スルホン化テトラフルオロエチレンをベースとするフルオロポリマー-コポリマー)が、この種のWEデバイスに使用される。このため、専門文献では「プロトン交換膜(PEM)水電解」という用語とPEMという略語が使用されている。本来の膜は、負に帯電した固定スルホン基と交換可能なH+イオンを含んでいる。反応式(3)による酸素のアノード生成により、H+イオンが発生する。これらのイオンは膜を通って流れ(「固体」電解質中のイオン電流)、反応式(4)を介してカソードで進行する水素発生反応内で消費される。このようにして、膜内のH+イオン全体の濃度は一定に保たれる。PEM電解には、超高純度の脱イオン水(膜の劣化を防ぐため、全溶解固形分が0.5ppm以下)と高価な貴金属触媒(アノードにはlrO2、カソードにはPtなど)が必要である。
【0074】
このような従来の水電解プロセスでは、(1)電解水(例えば、海水)に元々含まれているイオン性キャリア、(2)脱イオン水に添加されたイオン性キャリア(例えば、アルカリ水電解)、または(3)イオン交換膜が必要である。純水の電気分解は一般的に行われていない。
【0075】
海水は、電気化学的に水素を発生させるための無限の水源となる可能性がある。しかし、海水電解による工業規模の水素製造の開発には、克服しなければならない2つの重大な障害がある。(1) CaやMgが沈殿したカソードのスケーリング、(2) 塩化物イオンのアノード酸化による塩素種の生成である。
【0076】
スケーリングの問題に関しては、海水には多量のマグネシウムイオンとカルシウムイオンが含まれており、水素発生反応によりカソード近傍の局所的なpHが高くなるため、アルカリ溶液中やカソード上に析出する。100mA/cm2以上の電流密度では、カソード近傍のpHはpH=12にもなる。その結果、電流密度200 mA/cm2以上での海水の直接電解は、必然的にカソード上にCaとMgの有害な析出をもたらす。
【0077】
さらに、塩素ガスのアノード生成も大きな問題となる。この点で、海水には高濃度の塩化物イオンが含まれており、アノードで酸化されて塩素ガスが発生する可能性がある。これは次亜塩素酸(HOCI)に加水分解され、次亜塩素酸イオン(OCI-)と平衡状態になる。海水に典型的なCl-濃度(約20 g/L)では、Cl2発生反応の電流密度は70%以上にもなる。これは、典型的な水電解アノード(グラファイト、Pt、混合金属酸化物、lrO2など)を用いて直接海水電解プロセスを行った場合、Cl2が主要なアノード生成物であることを意味する。H2の大量生産を目的とした海水電解では、塩素の発生を防止しなければならない。
【0078】
本発明は、海水淡水化または水処理プロセスで利用される従来の圧力駆動膜に電極を組み込むことにより、これらすべての問題を軽減または解消する。これは、利用しやすい水源からの水素生成における重要なステップを意味する。
【0079】
水の圧力駆動膜ろ過と水の電気化学的分解を同時に行って水素を生成する本発明のプロセスとシステムは、先行技術の大規模な水の電気化学的分解とは大きく異なる。本発明は、"1g/m/h"の範囲の水素製造を提供する。これは、"3mA/cm2"の電流密度に相当し、最先端のアルカリおよび固体電解質水電解リアクターに適用される電流(200~2000mA/cm2)と比較すると極めて低い。しかし、電気化学プロセスを本発明による水の脱塩またはろ過モジュールに統合しても、すでに存在する脱塩または水処理施設の設置面積が大きくなることはないと予想される。さらに、運転コストは、確立された水電解技術よりもさらに低くなると予想される。これは、例えば、非常に低い電流密度での海水(またはRO塩水やその他の浄化すべき水)の電気分解は、(1)生成される水素ガスの単位体積あたりのエネルギー消費が少ない、(2)水素ガス生成を目的とした海水電気分解では不要な塩素を生成しない、(3)運転寿命の長い安価な触媒を使用して実施できる、(4)カソード上に例えばCa塩やMg塩などの有害な沈殿物を生成しない、からである。
【0080】
通常、脱塩水にはCa、Mg、Na、CO3、SO4、HCO3、Clなどのイオンが10~300ppm含まれている。分水の間、浸透水流中の溶存固形物濃度は増加する。(i)CaCO3、CaSO4等のスケーリングの発生、(ii)浸透水の導電率の上昇により水素生成のための電力消費が増加する。1つの膜エレメントで2つのプロセス(脱塩と分解)、(エネルギー生成と分解)または(水ろ過と分解)を組み合わせることで、この矛盾が解決される。さらに、本発明は、2つの組み合わせプロセスに一般的な送水装置と水ろ過装置を使用するため、コスト効率が高い。
【0081】
RO膜、NF膜、PRO膜、FO膜、UF膜、MF膜など、水の脱塩またはろ過を行う任意の圧力駆動膜を、本発明による水素の同時生成に適合させることができる。本開示の文脈では、これらはRO型またはUF型膜と呼ばれ、一般にこれらは最大孔径0.1ミクロンの半透膜からなる。この点で、膜のタイプは特定の孔径を有し、例えばMF膜は一般に約0.1ミクロンの最大孔径を有し、UF膜は一般に0.01~0.1ミクロンの孔径を有し、NF膜は一般に0.01ミクロンの最大孔径を有し、RO膜は一般に0.0001ミクロンの孔径を有する。
【0082】
添付図面の図2Aおよび図2Bは、上記のようなプロセスを実施するためにPROまたはFOモジュールに組み込むことができる、本発明による新規な半透膜3の一実施形態を示す。膜は電極9、10を備え、従来の用途に加えて水素生成にも使用できる。
【0083】
図2Aを参照すると、供給流(生理食塩水、FS)7が半透膜3の供給側2に送られる。膜3は、脱塩層4と支持層5からなり、脱塩層4と支持層5の間に一連の平行電極9、10が配置されている。順浸透(FO)または圧力遅延浸透(PRO)の間、供給流7(生理食塩水)の一部は、半透膜の供給側2から脱塩層4(簡略化のため図1Bでは省略)および支持層5を通って、浸透液8として反対側1(誘導(ドロー)側)に移動する。この浸透液の流れ8は、塩分濃度が非常に低く(約2%)、したがって浸透圧が供給液7(POf)よりも低く、誘導(ドロー)溶液の流れ6(POr)よりも低い。
【0084】
流れ8(浸透液)の移動は、浸透圧とゲージ圧のバランスPor、POf、PGr、PGfの下で行われる。この流れ8(浸透液)は、アクティブなFOまたはPROプロセスの間、移動する流れとしてのみ存在する。液体として抽出することはできないが、塩分濃度が非常に低いため、半透膜3の本体を通過する間に電気化学的に分離することができる。これは、膜3に組み込まれた電極9、10によって達成され、浸透流8に直流電流を印加することで、水が水素11と酸素12に解離し、後に使用するために回収することができる。
【0085】
添付図面の図3、4および5は、本発明による半透膜3の代替実施形態を示し、膜3は、膜内の異なる位置に電極9、10を備える。図2Aおよび図2Bに関連して既に説明した同一の特徴には、同じ参照数字が付されている。
【0086】
図3は、両方の電極9、10(アノードおよびカソード)が脱塩層4の表面上に外部に配置された膜3を示す。対照的に、図4は、両電極9、10が支持層5と脱塩層4との間に配置された膜3を示す。図5では、一方の電極10が支持層5と脱塩層4の間に配置され、他方の電極9は脱塩層4の外面に配置されている。
【0087】
さらに、半透膜は、浸透チューブと、膜エレメントを提供するためにチューブの周りに巻かれ、浸透および/または供給スペーサ(膜シート間の支持層)を組み込んだ平膜シートと、を有するモジュールを備えてもよい。これらのタイプの膜エレメントまたはモジュールは、本発明に従って電極を組み込むように適合させることもできる。図6Aは、このような膜3の配置の断片を示している。これは、原料供給流42および浸透液流43を有するRO膜の単一断片である。支持層5と脱塩層4が膜3全体を形成している。
【0088】
膜3の支持層側5には浸透液スペーサ41が設けられ、膜3の脱塩層側4には供給スペーサ40が設けられている。これは図6Aに示した典型的な配置である。しかし、脱塩層4を浸透液スペーサ41に対向させるなど、他の配置を設けてもよいことは理解されよう。電極9と10は浸透液スペーサ41の反対側に配置される。別の実施形態では、電極は同じ側に配置されてもよい(図示せず)。他の実施形態では、3つ以上の電極が浸透液スペーサ41の同じ側または両側に配置されてもよい(これも図示せず)。
【0089】
他の実施形態では、1つ、2つ、3つ、およびそれ以上の電極が、浸透液スペーサ41の同じ側または両側に、および/または供給スペーサ40(図示せず)上に配置されてもよい。供給スペーサ40および/または浸透液スペーサ41上に配置された電極のこの配置は、上述のように膜3の脱塩層4および支持層5上に配置された電極と組み合わせてもよい。膜によっては、脱塩層の位置が、供給チャネルの代わりに浸透チャネルに向いている場合がある(これも添付図には示されていない)。
【0090】
このように、電極9、10は、複数のタイプのろ過膜に組み込むことができ、本明細書で示され説明されるものに限定されない。これには、脱塩層4のみからなり、支持層5および/または供給もしくは浸透スペーサを有しない膜も含まれる。
【0091】
図6Bは、ROモジュール内に鏡面対称に配置された2つの膜3の断片を、膜3間を通過する原料供給流42と浸透液の流れ43の矢印で示す。膜3上で生成された浸透液流は矢印44で示されており、モジュール内に配置された他の膜からの浸透液流43と合流している。これは、原塩水供給チャネル42が供給スペーサ40を含み、浸透液チャネル43がそれに配置された浸透液スペーサ41を含む、典型的なミラーRO膜の配置形式を表している。
【0092】
このように、水の分解を可能にするために、膜内にどのようなタイプ、数、配置の電極を設けてもよいことが理解されよう。脱塩層と支持層の間に2つまたは複数の電極を設置してもよいし、支持層のみに電極を設置してもよいし、除去層のみに電極を設置してもよいし、両方の層に電極を設置してもよい。
【0093】
電極は必要な導電性を持たなければならず、電極の一つが活性層または脱塩層4を備えていてもよい。半透膜の好ましい実施形態は、電極の一方を形成する脱塩層も有する。活性層または脱塩層4を備える電極の好ましい材料の一つはグラフェンである。しかし、他の適切な材料はチタンである。電極の基材は、例えば、メッシュ、プレート、繊維で形成された布、または焼結体から構成することができる。電極間の膜に誘電体層を組み込むこともできる。層は相互接続されていてもよく、鋳造または印刷、接着または成長などの技術によって製造することができる。
【0094】
電極(アノードおよび/またはカソード)はまた、酸化イリジウム、酸化ルテニウム、酸化タンタル、酸化チタン、白金、および酸化白金、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるものなどの少なくとも1つの触媒で少なくとも部分的に被覆されてもよい。
【0095】
電極がグラフェンまたは炭素繊維/布を備える実施形態では、炭素基材は、好ましくは、Pt、Ir、Pt-lrおよびRu金属、ならびにそれらの任意の組み合わせから選択される混合金属酸化物(MMO)で被覆される。
【0096】
好ましくは、炭素は、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、Pt-lr、ルテニウム(Ru)金属およびそれらの任意の組み合わせから選択される混合金属酸化物(MMO)で被覆するための基材である。これらの実施形態において、MMO/C電極は、無電解または電着によって炭素上に犠牲銅またはニッケル層を形成し、犠牲金属をPt、Ir、RuまたはPt-lrによって置換することからなる2段階プロセスによって調製することができる。
【0097】
本出願は、カソード、アノード、参照電極などの2電極系、3電極系、またはそれ以上の電極系にも同様に適している。追加の非脱塩層(膜)を電極の近くに設置することができる。
【0098】
当技術分野で知られているように、供給スペーサは、膜シートを離すため、また混合を促進するために、らせん状に巻かれた逆浸透膜モジュールで使用される。供給スペーサは膜性能に有益であるが、圧力損失が増加する。供給スペーサは、逆浸透膜の平らなシートの間に置かれる網状の材料で、供給/濃縮液の流れの乱れを促進する。通常、供給スペーサはプラスチック製のポリプロピレン製である。
【0099】
浸透水または流路スペーサは「浸透水キャリア」または「メッシュスペーサ」とも呼ばれる。膜エレメントの構造上、浸透水スペーサは平坦なシート膜の2つの層の間に配置される。このスペーサは、高圧運転時にRO膜が閉じてしまうのを防ぐために使用される。浸透水は、製品流路スペーサを螺旋状の経路で横切って製品回収チューブに流れ込む。浸透水スペーサはエンベロープの内側にあり、浸透水の流路を形成する。さらに、膜シートを(高い)供給圧力に対して機械的に支持するため、必要な剛性を持たせるために浸透率の低い織物スペーサで作られている。通常、浸透水または流路スペーサは薄いプラスチック(例えば、トリコットと呼ばれるニット織物)で織られている。
【0100】
電極(アノードおよび/またはカソード)はまた、例えば、スペーサを導電性にするための導電層および/またはアノード(O2発生)もしくはカソード(H2発生)またはその両方として電極触媒的に活性にするための触媒層で、少なくとも部分的に被覆された、上述したような供給または浸透スペーサを含んでいてもよいことが理解されよう。触媒は、例えばPt、Ir、Ni、Cu金属、またはそれらの組み合わせであってもよい。
【0101】
あるいは、電極(アノードまたはカソードのいずれか)は、浸透管と機械的に共働する浸透スペーサまたは供給スペーサに結合することもできる。このような実施形態の一例が添付図面の図10に示されており、2つの電極402が、浸透液チューブ400の一端に取り付けられたスペーサに結合されている。図11に示すように、浸透液チューブ400に一端が結合されたスペーサに結合された20個の電極402を有する任意の数の電極およびスペーサを設けることができる。
【0102】
本発明の別の実施形態によれば、チタン箔とプラスチックスペーサとの間に付加的な電気伝導体がある場合とない場合とで、浸透液および/または供給スペーサにチタン箔をクラッドする。したがって、電極は本質的にチタン箔クラッドである。
【0103】
次に、チタン箔とプラスチックスペーサとの間に追加の導電体がある場合とない場合とで、スペーサを浸透および/または給電するためのチタン箔クラッド300を示す図12を参照されたい。図12に示された例では、チタン箔300は浸透液スペーサ41にクラッドされている。しかしながら、上記で規定したように、このようなクラッディングは、供給スペーサ40に対しても同様に行うことができる。一実施形態によれば、クラッディングは浸透スペーサおよび/または供給スペーサの片側に行われる。別の実施形態によれば、このようなクラッディングは、浸透液および/または供給スペーサの両側で行われる。
【0104】
一実施形態によれば、クラッディングは真空印加によって行われる。このような実施形態によれば、浸透スペーサ及び/又は供給スペーサの一方の側に箔が配置され、他方の側に真空が適用される。このような吸引により、チタン箔300が浸透体及び/又は供給スペーサに接着される。このようなチタン箔300の厚さは、必要とされる電気伝導度に応じて変えることができる。
【0105】
別の実施形態によれば、チタン箔クラッド300に加えて、電流伝達を可能にするために電気ワイヤを加えることができる。そのようなことは、図12にも見られる。したがって、図12に見られるように、ある実施形態によれば、電気ワイヤ301も浸透液スペーサ41に追加される。
【0106】
膜内で実施される水分離の方法は、水電解(WE)、PEM電解、微生物電解、固体酸化物電解、アルカリ電解などの水電解の従来技術のいずれか1つを使用して実施することができる。従って、本発明は、水分解の1つの特定のプロセスに限定されるものではない。
【0107】
膜システムからガスを除去するために、異なるタイプの水素および酸素排出システム(図面には示されていない)を適用することができる。好ましくは、水素および酸素は、それらが発生した水流とともに膜エレメントまたはモジュールから排出される。水素と酸素の抽出は、その後に脱ガス装置で行われる。水素と酸素の水への溶解度は大きく異なるため、脱ガス装置では酸素が溶解している圧力で水素を抽出することができる。酸素は水流とともに、ゲージ圧の低い次の脱ガス装置へ送られ、そこで酸素が抽出される。別の方法として、ガス分離膜を利用することもできる。
【0108】
本発明により、海水、鹹水、汽水などの水処理中に生成される塩分濃度の低い水を電気化学的に分離し、処理水に加えて水素を供給することができる。
【0109】
供給水の脱塩にRO型膜を利用する実施形態では、1つのROモジュールに複数の膜エレメントを設けることができ、供給海水は、モジュール内の1つの膜から次の膜エレメントに移動する際に濃縮される。例えば、モジュール内の最初の膜エレメントでは海水のTDSが3.5%で、8番目の膜エレメントではTDSが8%である。塩分濃度が異なる膜エレメントでは、水の電気分解が異なる。電気システムは、モジュール内の異なる膜に異なる電流(電圧)を供給するように調整することができる。
【0110】
通常、1つのROモジュールには5~8個の膜エレメントが含まれる。浸透水の溶存固形分が少なく、電気伝導度が低く、分離効率が高い圧力容器内の最初の数枚の膜エレメントのみに水分離用電極を設置することが望ましい。
【0111】
好ましくは、ROプロセス中に生成される脱塩された浸透水流の一部、多くても5%(好ましくは2.5%未満)のみが水素と酸素に分離される。これにより、浸透液に溶解懸濁固形物が含まれないという重要な技術的利点が得られる。
【0112】
添付図面の図7は、従来の海水淡水化プラントを示しており、このプラントは、電極付き膜を含むように改造して、二重の海水淡水化および水素生成プラントを提供することができる。簡単に説明すると、海水SWは、取水路101を経由して、様々な前処理サイト102、103、104、105を経て、ポンプ108により複数の逆浸透パス110、112を通って加圧送水され、脱塩された生成水114と濃縮海水または塩水116を形成する。製品水は後処理118を施され、保持タンク120に保持され、塩水116は排出チャネル122を介して海に排出される。
【0113】
逆浸透パス110、112はそれぞれ複数の膜エレメント201で構成され、そのうちの1つが図8に例示され、拡大されている。中央の有孔製品チューブ202が各エレメントの中央を貫通して延び、チューブの周囲に巻かれた半透膜204のシートによって囲まれ、供給スペーサシート206と浸透液スペーサシート208によってそこから分離されている。両端には脱落防止キャップ210が設けられている。上述したように、原食塩水供給溶液は、エレメント201の一端に供給され、エレメントの層を通る浸透液流PFを有する浸透液流114および残留塩水流116を供給する。電極(図示せず)をエレメント内に組み込んで、残留塩水流116および/または浸透生成水114の主出力とともに、水素生成(図示せず)の小出力を生成するために、原料塩水および/または浸透液の電気化学的分離を可能にすることができる。
【0114】
本発明による水の処理と電気化学的分離を同時に行うためのプロセスおよびシステムは、海水および他の水源からの水素の先行技術の生成に関連する多くの問題に対処する。
【0115】
例えば、水処理とH2の同時生成のために本出願人によって提案されたハイブリッド反応器におけるCaCO3、Ca(OH)2、Mg(OH)2および他の種のカソード析出の可能性は、(i)非常に低い電流密度、(ii)非常に高い水フラックス、および(iii)海水のpH緩衝能(カソードが供給区画および/または濃縮区画に配置される場合にのみ関連する)のために著しく低い。
【0116】
さらに、海水電解における塩素発生反応は、アノード電流密度が1 mA/cm2と非常に小さいため、抑制される可能性がある。
【0117】
これは、塩素発生、酸素発生、および水素発生反応の可逆電位をpHの関数として示したグラフである添付図面の図8に示されている。T=25℃、[Cl-]=20g/L、気体のフガシティ=1、錯形成なし、無限希釈である。これは、海水電解の典型的な条件(すなわち、[Cl-]=20g/L, 気体のフガシティ=1, 錯形成の影響なし, 無限希釈)における酸素発生(前掲の式(3))、塩素発生(前掲の式(6))、および水素発生(前掲の式(4))の可逆電位(対SHE)の値をpHの関数として示している。WEでは、アノード反応の電極電位は可逆電位より高くなければならない。カソードH2生成の場合、カソード電位はこの反応の可逆電位より低くなければならない。図8に示すように、海水(pH=8.1)中の塩素発生に必要な最小セル電位(すなわち、アノードとカソードの電位差)は1.78Vである。一方、アノードでの酸素発生とカソードでの水素発生に必要な最小セル電位は、わずか1.23ボルトである。その結果、アノードでは酸素のみが発生し、カソードでは水素が発生するセル電位の範囲が存在する。通常、この最大セル電位は、アノード電流密度をわずか数mA/cm2という非常に低い電流密度に制限する。アルカリ水電解では200~400mA/cm2、PEM水電解では600~2000mA/cm2の電流密度が一般的であり、塩素の発生が問題となる。これに対して、本発明では電流密度が非常に小さいため、塩素の発生を抑えることができる。
【0118】
さらに、提案された技術は、従来の水電解プロセスと同じ熱力学を有している。一般に、高い電流密度での操作(すなわち、反応器体積当たりの生成速度が大きい)は、より高いエネルギー入力(またはセル電位)を必要とし、一方、エネルギー/H2比は高い電流密度で増加する。言い換えれば、本発明のプロセスに利用される非常に低い電流密度は、最先端技術と比較して、水素製造のための電気エネルギー消費を低くすることが期待される。このエネルギー消費量低下の主な理由は以下の通りである。(1)より低い電流密度を達成するために、より低い活性化過電位が必要であること、(2)提案されたシステムでは物質輸送が非常に効果的であるため、拡散過電位および濃度過電位が非常に低いこと、(3)気泡が形成されない状態でガスが発生することである。最後の理由は、比較的低いH2およびO2生成速度と、生成ガスの完全溶解をもたらす非常に高い水流量である。従来の水電解システムは、H2生成システムの設置面積と建設コストが不当に高くなるため、非常に低い電流密度では運転できない。
【0119】
この点から、最新の水電解プロセスに対する主な要求事項の1つは、十分な(すなわち、200mA/cm2を超える)電流密度での低エネルギー消費である。高い電流密度は、建設費、設置面積、触媒、膜、バイポーラプレートなどの高価な材料の量を減らすために必要である。簡単に言えば、非常に低い電流密度で運転される従来の大型水電解槽の建設は、建設コストが非常に高く、低エネルギー消費の利点が薄れるため、経済的に実現不可能である。
【0120】
しかし、本発明により、従来の水脱塩/ろ過システムに水素生成プロセスを組み込むことは、そのサイズの増大や水処理性能の大幅な低下なしに可能である。例えば、RO、NF、UF、およびFOモジュールの浸透液および供給スペーサ、ならびにNF、MF、およびUF膜の膜層は、所望の水素発生を提供するために、そこに組み込まれたアノードおよびカソードの分離のために現在と同様に使用することができる。その結果、提案されるH2製造システムの資本コストは、圧力駆動型膜ろ過プロセスにすでに存在する材料、水の前処理システム、その他のユニットを利用するため、比較的低いと予想される。
【0121】
低電流密度運転のもう一つの重要な潜在的利点は、安価な触媒を適用できる可能性である。通常、電流密度が高いほど触媒の消耗速度が速くなるからである。これは、従来のPEM電解槽で貴金属触媒を使用する重要な理由である。要約すると、提案された技術では(生成される水素の単位体積あたり)より大量の材料を使用しなければならないにもかかわらず、耐用年数が長く、材料の価格が大幅に低いため、帰属する水素コストは従来のWEプロセスより低くなると予想される。
【0122】
従来の水電解電極は、非常に薄い(数ミクロン)触媒層である「実電極」と、ガス拡散層(GDL)などの二次層で構成されている。GDLは、電極からのガス状生成物の高速大量輸送を実現し、電子を電極へ(あるいは電極から)駆動するために使用される。最新のPEM水電解槽のGDLには、気体種を高速輸送するための疎水性粒子が含まれている。GDLの隣には集電体があり、GDLと触媒層へ(または触媒層から)電子の流れを供給する。集電体には、電極表面に水を分散させ、発生したガスを捕集するための流れ場がある。集電体の厚さは通常3mm以上で、導電性の高い材料(グラファイト、ポリマーと導電性粒子の複合体、金属など)で作られている。
【0123】
対照的に、本出願人の半透膜が提案する電解セルの電極は、比較的長く(すなわち、膜の内側で最大100cm迄)、比較的細い(見かけ上、最大100μm迄)導電性繊維で作られなければならない。このような形状は、高電流密度で運転される従来のWEではほとんど不可能である。これはファイバー型電極の抵抗が高いためである。しかし、単純な計算では、このファイバータイプの形状は、本明細書で提案するシステムとプロセスに適用可能である。
仮定:電極の厚さ=100μm、膜の面積=100~100cm・cm、電極が占める断面の割合=50%、電流密度=3mA/cm2、有効電解面積は膜面積に等しい。
【0124】
上記のパラメータを考慮すると、断面電流密度(電流と繊維電極の断面積の比)は、=0.6A/mm2となる。これは、電極の電気伝導率が1.27・105(S/m)(基底面におけるグラファイトの典型)である場合、30Aの電流における100cmの長さの電極のオーミック電圧降下は、わずか"50mV"であることを意味する。この単純な計算は、ファイバータイプの電極が高い電気伝導率を有する材料(すなわち、ステンレス鋼やチタンの範囲内)で作られていれば、提案された電気化学セルが実現可能であることを示している。
【0125】
添付図面の図9は、本明細書に記載した水素生成システムを組み込むことができる1つのスキームを示している。特に、この方式では、塩ドームからの浸透圧発電を使用してグリーンエネルギーを生産することができ、エネルギーはその後、本明細書で前述したように水の分離に利用され、その後、空の塩洞窟に水素が貯蔵される。このようにして、本発明は水素の形でグリーンエネルギーを生産するための極めてエネルギー効率の高い方法を提供する。
【0126】
その計画は、海水2と塩ドーム26からの溶解塩水との間の異なる塩濃度を使用したPROによる効率的なエネルギー生成を含むサイクル100と、サイクル100で生成された電気を使用した水の電気分解による水素生成を含むサイクル200と、サイクル200で生成された水素を排出し、サイクル100のPROの塩抽出中に形成された塩ドーム洞窟35に貯蔵するために供給するサイクル300と、の3つのサイクルを含む。
【0127】
さらに詳細には、サイクル100は、圧力遅延浸透プロセス(PRO)を使用して電気を生成する。PROは、塩ドーム26から溶解した10~25%の高濃度塩(ドロー溶液DS)と3.6~4.5%の海水(供給溶液FS)との塩分濃度の差によって駆動される。オプションとしての塩洞窟26内の塩岩の溶解は、約200バールの高ガス圧PGr下で行われ、誘導(ドロー)溶液を形成することができる。あるいは、溶解は大気圧下で行うこともできる。この誘導(ドロー)溶液は、管路23を経由してポンプ25により第一PROモジュール100に送られ、第一側の入口22を経由してモジュール100の第一側に入る。供給流(FS)は、入口20を経由してPROモジュール100の第2側に入る。供給流の一部は、低塩分浸透液として第2側から膜3の第1側に浸透し、誘導(ドロー)溶液と混合する。誘導(ドロー)溶液と浸透液の混合物は、出口23を通ってモジュール100を出る。この混合物の一部は、発電用のタービン27に導かれる。
【0128】
供給ストリームの残留量は、出口21を介してモジュール100から環境(例えば、図5に示すように海)に排出される。
【0129】
モジュール100からの出力からタービン27または同様の装置で生成された電力は、次に、電気化学的に水素と酸素に水を分離するためのエネルギー源として順浸透(FO)モジュール200に導かれ、水を分離するための低塩濃度の水はFOプロセスから供給され、水の分離は、電気分解を行うための電極を有するモジュールに本発明による膜を組み込むことによって達成される。供給液30には海水2を使用することができる。
【0130】
モジュール200 FOは、構造的にはPROモジュール100と同様である。膜の供給側から誘導(ドロー)側への浸透液流の移動も、浸透圧とゲージ圧のバランスPor、POf、PGr、PGfの下で行われる。しかし、モジュール100と200の違いはゲージ圧PGr、PGfにある。モジュール200では、PGrとPGfが低く、浸透圧POr'とPOfの差のもとで、FS側からDS側への浸透液の移動がほとんど行われる。膜には電極(図1Aから図4では9,10)があり、オプションでさらに参照電極(図面には示されていない)がある。これらの電極は、モジュール100からの電力とともに、水素と酸素を生成する低塩分浸透水流の分解を可能にする。残留水33はすべて海2に戻すことができる。
【0131】
本発明による電極を組み込んだ半透膜は、モジュール100とモジュール200に設置することができ、モジュール100とモジュール200で同時に水の分離を行うことができる。あるいは、電極をモジュール100のみ、またはモジュール200のみに設置することもできる。
【0132】
サイクル200での水素製造後、水素はPROプロセス100の塩抽出中に生成された塩ドーム洞窟35に貯蔵される。
【0133】
RO膜またはUF/MFろ過プロセスに電気化学的水素製造を統合することで、先行技術の水の電気化学的処理と比較して、重要かつ驚くべき利点が得られる。水処理と水素製造プロセスを1つのモジュールに統合することで、水素ガス製造の運転コストと資本コストを大幅に削減し、水処理施設に付加価値を生み出すことが期待される。提案された技術は、従来の水電解技術よりもエネルギー消費量が大幅に少ないと予想される。ハイブリッド・プロセスは、運転寿命が非常に長い安価な触媒を使用して運転することができる。本発明によるこれらの新規かつ発明的なシステムおよび方法は、同じハイブリッド反応器を用いて、水の圧力駆動膜ろ過(例えば、逆浸透、順浸透、ナノろ過、限外ろ過)と水の電気化学的分解を同時に行う。
【0134】
本明細書で説明および図示される実施例で具体化される原理から逸脱することなく、前述の膜、プロセスおよびシステムに変更を加えることができることを理解されたい。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2024-08-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を同時に共生成しながら水を濾過するように構成された膜エレメントであって、
少なくとも1つのアノード電極および少なくとも1つのカソード電極を含み、それぞれが前記膜と連通しており、さらに、前記膜が、前記水の少なくとも一部を電気分解して、そこから少なくとも部分的に水素を同時に生成するように適合されている、膜エレメント。
【請求項2】
請求項1に記載の膜エレメントであって、(a)前記膜は、前記膜を横切って圧力差が提供されたときに水を濾過するように構成されていること(b)前記膜が、水の浸透圧および/またはゲージ圧駆動濾過用に構成されている、(c)前記膜は、前記膜を横切って圧力差が提供されたときに供給水を少なくとも部分的に浄化するように構成された選択浸透膜であること、(d)前記少なくとも1つのアノード電極、前記少なくとも1つのカソード電極、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つが、チタン、炭素繊維、炭素布、グラフェン、およびそれらの任意の組み合わせから選択される少なくとも1つの材料で作られていること、(e)前記少なくとも1つのアノード電極、前記少なくとも1つのカソード電極、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つが、少なくとも1つの触媒で少なくとも部分的に被覆(コーティング)または少なくとも部分的に被覆(クラッディング)されていること、(f)前記触媒が、酸化イリジウム、酸化ルテニウム、酸化タンタル、酸化チタン、白金、および酸化白金、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されること、(g)前記少なくとも1つのアノード電極、前記少なくとも1つのカソード電極、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つが、メッシュ、板、布、繊維、焼結体、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの形態で提供されること、の上記(a)~(g)のうちの少なくとも1つが当てはまる、膜エレメント。
【請求項3】
(a)前記膜が、脱塩層と支持層とを含み、少なくとも1つのアノード電極および/または少なくとも1つのカソード電極が、脱塩層を備えること、(b)前記膜エレメントが、供給(feed)スペーサ、浸透液スペーサ、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを含み、少なくとも1つのアノード電極および/または少なくとも1つのカソード電極が、供給スペーサまたは浸透(permeate)スペーサによって提供されるか、供給スペーサおよび/または浸透スペーサの一方または他方に提供されるか、または供給スペーサ、浸透スペーサからなる群から選択される少なくとも1つに結合されるか、または供給スペーサ、浸透スペーサ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つに少なくとも部分的に被覆されること、(c)少なくとも1つの電極がグラフェンから形成されていること、(d)少なくとも1つの電極が、格子状または平行に間隔をあけて配置されたストリップの形態で設けられており、少なくとも1つの電極が、浸透スペーサおよび/または供給スペーサの全コーティングまたは部分コーティング、あるいは全クラッドまたは部分クラッディングの形態であること、(e)アノード電極およびカソード電極の一方または両方に触媒が設けられていること、(f)製品水または任意のリジェクト流中の溶存水素を、その後の脱ガスまたは気体膜分離による抽出のために回収する回収手段をさらに備えること、の上記(a)~(f)のうちの少なくとも1つ、およびそれらの組み合わせが当てはまる、請求項1に記載の膜エレメント。
【請求項4】
水濾過プロセスが、逆浸透、圧力遅延浸透(PRO)、順浸透(FO)、限外濾過、精密濾過、およびナノ濾過からなる群から選択される、請求項1に記載の膜エレメント。
【請求項5】
水の電気化学的分離を可能にするために、電極間に100mA/cm2以下の低電流密度が印加され、好ましくは10mA/cm2以下であり、特に5mA/cm2以下であり、理想的には1mA/cm2以下である、請求項1に記載の膜エレメント。
【請求項6】
圧力駆動型海水淡水化プロセス中に水素を発生させる方法であって、
a.少なくとも1つのアノード電極および少なくとも1つのカソード電極を含み、前記膜と連通する少なくとも1つの膜に供給水を供給するステップと、
b. 水素を同時に共生成しながら、前記水を濾過するステップと、
を含み、前記水素を共生成するステップは、前記少なくとも1つのアノード電極と前記少なくとも1つのカソード電極との間に電位差または電流のいずれかを印加するステップを含み、それにより、供給水、生成水、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される少なくとも1つの少なくとも一部から、電気分解により水素および酸素を生成することを特徴とする方法。
【請求項7】
(a)前記水を濾過するステップが、さらに、前記膜に亘って圧力差を印加して前記膜を通して供給水を引き込み、生成水を形成するステップを含むこと、
(b)前記少なくとも1つのアノード電極、前記少なくとも1つのカソード電極、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つが、チタン、炭素繊維、炭素布、グラフェン、およびそれらの任意の組み合わせから選択される少なくとも1つの材料で作られていること、(c)前記少なくとも1つのアノード電極、前記少なくとも1つのカソード電極、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される少なくとも1つが、少なくとも1つの触媒で少なくとも部分的に被覆(コート)されるか、または少なくとも部分的に被覆(クラッド)されており、前記触媒が、酸化イリジウム、酸化ルテニウム、酸化タンタル、酸化チタン、白金、および酸化白金、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されること、(d)前記少なくとも1つのアノード電極、前記少なくとも1つのカソード電極、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される少なくとも1つが、メッシュ、板、布、繊維、焼結体、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される少なくとも1つの形態で提供されること、(e)脱ガスまたは気体膜分離によるその後の抽出のために、製品水または任意のリジェクト流中の溶存水素を回収すること、の上記(a)~(e)のうちの少なくとも1つ、およびそれらの組合せが当てはまる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
水濾過プロセスが、逆浸透、圧力遅延浸透(PRO)、順浸透(FO)、限外濾過、精密濾過、およびナノ濾過からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
水の電気化学的分離を可能にするために、電極間に100mA/cm2未満の低電流密度が印加され、好ましくは10mA/cm2未満であり、特に5mA/cm2未満であり、理想的には1mA/cm2未満である、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
水の圧力駆動濾過と、水素の共同生成(コージェネレーション)のための水の少なくとも一部の同時の電気化学的分解のために構成された水濾過モジュールであって、
給水入口と、
請求項1~のいずれか1項に記載の少なくとも1つの膜エレメントと、
生成水出口と、
任意にリジェクト水出口と、
を備えることを特徴とする水濾過モジュール。
【請求項11】
(a)前記膜が、脱塩層と支持層とを備え、少なくとも1つのアノード電極および/または少なくとも1つのカソード電極が、脱塩層を備え、および/または脱塩層と支持層との一方もしくは両方の中、上もしくは間に設けられていること(b)前記膜エレメントが、供給スペーサ、浸透スペーサ、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを含み、少なくとも1つのアノード電極および/または少なくとも1つのカソード電極が、供給スペーサまたは浸透スペーサによって提供されるか、または供給スペーサおよび/または浸透スペーサの一方または他方上にまたは近接して提供されるか、または供給スペーサ、浸透スペーサからなる群から選択される少なくとも1つに結合されるか、または供給スペーサ、浸透スペーサ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つに少なくとも部分的に被覆(コート)されるか、または少なくとも部分的に被覆(クラッド)されること、(c)少なくとも1つの電極がグラフェンから形成されていること、(d)少なくとも1つの電極が、グリッドまたは平行に間隔をあけて配置されたストリップの形態で提供されること、(e)少なくとも1つの電極が、浸透スペーサおよび/または供給スペーサの全体的または部分的な被覆(コート)または全体的または部分的な被覆(クラッド)の形態であること、(f)アノード電極およびカソード電極の一方または両方に触媒が設けられていること、(g)脱ガスまたは気体膜分離によるその後の抽出のために、製品水または任意のリジェクト流中の溶存水素を回収する回収手段をさらに含むこと、の上記(a)~(g)のうちの少なくとも1つ、およびそれらの組み合わせが当てはまる、請求項10に記載のモジュール。
【請求項12】
水濾過プロセスが、逆浸透、圧力遅延浸透(PRO)、順浸透(FO)、限外濾過、精密濾過、およびナノ濾過からなる群から選択される、請求項10に記載のモジュール。
【請求項13】
水の電気化学的分裂が起こることを可能にするために、100mA/cm2未満の低電流密度が電極間に印加され、好ましくは10mA/cm2未満であり、特に5mA/cm2未満であり、理想的には1mA/cm2未満である、請求項10に記載のモジュール。
【請求項14】
水素の同時の共同生成(コージェネレーション)を伴う圧力駆動型浄水システムであって、
給水入口と、
請求項1~5のいずれか1項に記載の少なくとも1つの膜エレメントまたは請求項10~13のいずれか1項に記載のモジュールと、
給水に対して圧力を加える少なくとも1つのポンプと、
膜エレメントの電極に電位差を与える電源と、
生成水出口と、任意のリジェクト流出口と、
生成物および/またはリジェクト流内の水素出口と、
を含むシステム。
【請求項15】
水素の同時の共同生成(コージェネレーション)を伴う圧力駆動型浄水プロセスであって、
請求項1~のいずれか1項に記載の膜エレメントまたは請求項1013のいずれか1項に記載のモジュールに、供給水入口から供給水を供給する工程と、
膜エレメントの選択浸透性膜間に圧力差を印加して、膜を通して供給水を引き込み、生成水および任意選択でリジェクト流を形成する工程と、
膜エレメントの電極間に電位差を印加して、供給水および/または生成水の少なくとも一方の少なくとも一部を同時に電気化学的に分解し、水素および酸素を形成する工程と、
生成水および任意選択でリジェクト流、および水素を回収する工程と、
を含むプロセス。
【請求項16】
(a)脱ガスまたは気体膜分離によるその後の抽出のために、製品水または任意のリジェクト流中の溶存水素を回収することを含むこと(b)圧力駆動水濾過プロセスが、逆浸透、圧力遅延浸透(PRO)、順浸透(FO)、限外濾過、精密濾過およびナノ濾過からなる群から選択されること、(c)供給水および/または生成水の5%未満が水素を形成するために分離され、好ましくは1%未満、より好ましくは0.05%未満、特に0.01%未満、理想的には0.01%未満であること、(d)水の電気化学的分離を可能にするために、電極間に100mA/cm 2 未満の低電流密度が印加され、好ましくは10mA/cm 2 以下、特に5mA/cm 2 以下、理想的には1mA/cm 2 以下であること、(e)選択浸透性膜エレメントの対向する側に、浸透圧およびゲージ圧の異なる供給溶液および誘導溶液を供給する工程と、膜の電極間に電流を流して低塩濃度溶液を水素と酸素に分離する工程と、水素と酸素を回収する工程と、それらの組み合わせを含むこと、の上記(a)~(e)のうちの少なくとも1つが当てはまる、請求項15に記載のプロセス。
【国際調査報告】