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特表2025-501256装飾フィルム及び装飾フィルムを有する車両
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  • 特表-装飾フィルム及び装飾フィルムを有する車両 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-17
(54)【発明の名称】装飾フィルム及び装飾フィルムを有する車両
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/04 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
B60R13/04 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539619
(86)(22)【出願日】2022-12-29
(85)【翻訳文提出日】2024-08-28
(86)【国際出願番号】 EP2022088006
(87)【国際公開番号】W WO2023126477
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】102022000005.9
(32)【優先日】2022-01-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592245937
【氏名又は名称】バイエリッシェ モトーレン ヴェルケ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Bayerische Motoren Werke Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Petuelring 130, D-80809 Muenchen, Germany
(71)【出願人】
【識別番号】500080214
【氏名又は名称】イー インク コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100229448
【弁理士】
【氏名又は名称】中槇 利明
(72)【発明者】
【氏名】クラーク,ステラ
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー-シュトルツ,ディルク
(72)【発明者】
【氏名】ランプロン,ジェニファー ビー.
(72)【発明者】
【氏名】デュシェーヌ,エリック ジェイ.
【テーマコード(参考)】
3D023
【Fターム(参考)】
3D023AA01
3D023AC04
3D023AC13
3D023AD06
(57)【要約】
非平面表面領域(17、18)を有する表面(10)に適用するための、装飾層(24)を備える装飾フィルム(2)であって、
本質的に剛性の前記装飾フィルム(2)には、複数の圧縮領域(4、4’、4”)及び/又は拡張領域(5、5’、5”)が設けられており、
各圧縮領域(4、4’、4”)は、星形又はダイヤモンド形の圧縮要素(40、40’、40”)を有し、
圧縮要素は、星形に延在するか又はダイヤモンド形に設計され、厚さ方向(D)に装飾フィルム(2)を貫通する複数の圧縮スリット(42、43、44、45、46、47;42’、43’、44’、45’、46’、47’)によって形成されており、
各拡張領域(5、5’、5”)は、装飾フィルム(2)を厚さ方向(D)に貫通する少なくとも1つの拡張スリット(52、54)によって形成された拡張要素(50、50’、50”)を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非平面表面領域(17、18)を有する表面(10)に適用するための、装飾層(24)を備える装飾フィルム(2)であって、
本質的に剛性の前記装飾フィルム(2)には、複数の圧縮領域(4、4’、4”)及び/又は拡張領域(5、5’、5”)が設けられており、
各圧縮領域(4、4’、4”)は、星形又はダイヤモンド形の圧縮要素(40、40’、40”)を有し、
前記圧縮要素は、星形に延在するか又はダイヤモンド形に設計され、厚さ方向(D)に装飾フィルム(2)を貫通する複数の圧縮スリット(42、43、44、45、46、47;42’、43’、44’、45’、46’、47’)によって形成されており、
各拡張領域(5、5’、5”)は、装飾フィルム(2)を前記厚さ方向(D)に貫通する少なくとも1つの拡張スリット(52、54)によって形成された拡張要素(50、50’、50”)を有する、
装飾フィルム。
【請求項2】
前記圧縮領域(4、4’、4”)及び前記拡張領域(5、5’、5”)は、少なくとも1つの前記拡張領域(5、5’、5”)が2つの隣り合う前記圧縮領域(4、4’、4”)の間に設けられるように、前記装飾フィルム(2)のエリアの上に分布している、
請求項1記載の装飾フィルム。
【請求項3】
隣り合う前記圧縮要素(40、40’、40”)は、互いに向かって少なくとも一対の収束する圧縮スリット(42、42’)を形成しており、それらの自由端の間には、前記装飾フィルム(2)のスリットのない完全なブリッジ領域(48)が設けられており、
少なくとも1つの拡張スリット(52、54)は、前記収束する圧縮スリット(42、42’)の各対と平行に、かつそれらから横方向に間隔を空けて設けられており、前記収束する圧縮スリット(42、42’)の対は、前記少なくとも1つの拡張スリット(52、54)とともに、前記拡張領域(5、5’、5”)の前記拡張要素(50)を形成している、
請求項1又は2記載の装飾フィルム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの拡張スリット(52、54)は、それぞれの圧縮スリット(42、42’)の自由端の領域のみに延在するか、又は、それに平行な前記一対の収束する圧縮スリット(42、42’)のそれぞれの圧縮スリット(42、42’)の長さの半分まで、好ましくは前方の3分の1のみに沿って延在する、
請求項3記載の装飾フィルム。
【請求項5】
前記少なくとも1つの拡張スリット(52、54)は、前記装飾フィルム(2)が平らに置かれたときに互いに平行な長手方向のエッジを有し、したがって一定のスリット幅を有する
請求項1乃至4いずれか1項記載の装飾フィルム。
【請求項6】
前記拡張要素(50)は、第1拡張スリット(52)及び第2拡張スリット(54)と、を有し、
前記第1拡張スリット(52)及び前記第2拡張スリット(54)は、一対の収束する圧縮スリット(42、42’)から横方向に間隔をおいて、前記一対の収束する圧縮スリット(42、42’)の互いに反対を向く2つの側面に、好ましくはそれらと平行に設けられている、
請求項1乃至5いずれか1項記載の装飾フィルム。
【請求項7】
装飾フィルム(2)が平坦に置かれるとき、星形に互いに離れるように延在する圧縮スリット(42、43、44、45、46、47;42’、43’、44’、45’、46’、47’)はそれぞれ、圧縮要素(40、40’)の中心(48)から関連する圧縮スリット(42、43、44、45、46、47)のそれぞれの自由端に向かって減少するスリット幅を有し、したがって、それぞれの圧縮スリット(42、43、44、45、46、47;42’、43’、44’、45’、46’、47’)はその自由端に向かってテーパ状である、
請求項1乃至6いずれか1項記載の装飾フィルム。
【請求項8】
星形の圧縮要素(40、40’、40”)は、星形に互いに離れるように延在する少なくとも3つ、好ましくは5つ、6つ又は7つの圧縮スリットを有する、
請求項1乃至7いずれか1項記載の装飾フィルム。
【請求項9】
前記装飾フィルム(2)は、星形に互いに離れるように延在する圧縮スリット(42、43、44、45、46、47;42’、43’、44’、45’、46’、47’)の数が異なる複数の星形圧縮要素(40、40’、40”)を有する、
請求項1乃至8いずれか1項記載の装飾フィルム。
【請求項10】
凸面表面領域(17)の曲率半径がより小さいほど、凸面表面領域(17)に適合可能な装飾フィルム(2)の領域における単位面積当たりの拡張要素(50)の数はより多い、
請求項1乃至9いずれか1項記載の装飾フィルム。
【請求項11】
凹面表面領域(18)の曲率半径がより小さいほど、凹面表面領域(18)に適合可能な装飾フィルム(2)の領域における単位面積当たりの圧縮要素(40,40’,40”)の数はより大きい、請求項1乃至10いずれか1項記載の装飾フィルム。
【請求項12】
前記装飾層の光反射特性又は光透過特性は、電圧を印加することにより変化可能である、
請求項1乃至11いずれか1項記載の装飾フィルム。
【請求項13】
前記装飾フィルム(2)は、第1電極層(20)、第2電極層(22)、及び、前記第1電極層と前記第2電極層との間に配置された装飾層(24)を有し、
前記装飾層の光反射特性又は光透過特性は電圧を印加することにより変化可能である、
請求項1乃至12いずれか1項記載の装飾フィルム。
【請求項14】
前記装飾層(24)は、スマートガラスLCD層又は電子ペーパー層である、
請求項1乃至13いずれか1項記載の装飾フィルム。
【請求項15】
車体(12)と、前記車体によって少なくとも部分的に取り囲まれた車両内部(11)を有する車両、特に自動車であって、
前記車体は、前記車両の外側に非平面表面領域を有する車体外皮が設けられており、
前記車両内部(11)は複数の内部コンポーネントを有し、前記内部コンポーネントには、前記車両の内側に非平面表面領域を有する表面がそれぞれ設けられており、
前記車両の内側の非平面表面領域及び/又は前記車両の外側の非平面表面領域には、光反射特性又は光透過特性を好ましく変更できる装飾層(24)を有する、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の装飾フィルム(2)が設けられる、
車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文による装飾フィルムに関する。さらに、車両、特に自動車に関し、その車体表皮は、少なくとも特定の領域において、外側にかかる装飾フィルムを備える。
【背景技術】
【0002】
自動車の顧客は、しばしば自身の車両の外装をカスタマイズして自分好みにしたいと考える。これまでは、車両の塗装や部分塗装をカスタマイズしたり、車体外皮をフィルムでラッピングしたりすることで可能であったが、このような個々の車両デザインは、かなりの労力をかけてしか変更できず、特に状況に応じて変更することはできない。装飾フィルムによるラッピングの場合、装飾フィルムは柔軟性、延伸性、圧縮性に優れていなければならず、より厚くより剛性の装飾フィルムでは困難である。また、営業車として使用する場合は真面目で抑制的な外観に、海辺でサーフィンを楽しむ休日には鮮やかな色彩の外観にするなど、特定の運転目的に合わせて車両の外観をフレキシブルに適応させることが望ましい場合もある。
【0003】
[先行技術]
高度に柔軟で、延伸可能で、圧縮可能な装飾フィルムで曲面や傾斜面を覆うことはすでに知られているが、これまでは、ウッドベニヤや電子ペーパーフィルムなどの剛性のフィルムでは不可能であった。また、電子ペーパー技術を使用して作動し、さまざまな視覚的外観を切り替えることができる表示装置を車体に設けることも知られているが、これまでは車体の平坦な表面上でしか可能でなかった。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、任意の三次元形状の表面に柔軟に適合させることができる装飾フィルムを特定することである。さらなる目的は、少なくとも1つのかかる装飾フィルムを備える自動車を特定することである。
【0005】
装飾フィルムに関する部分は、請求項1の特徴によって解決される。
【0006】
非平面、例えば湾曲及び/又は反った(gekruemmte und/oder gewoelbte)表面領域を有する表面に適用するために提供され、装飾層が設けられた装飾フィルムであって、本質的に剛性の装飾フィルムには、複数の圧縮領域及び/又は拡張領域が設けられており、各圧縮領域は、星形又はダイヤモンド形の圧縮要素を有し、圧縮要素は、星形に延在するか又はダイヤモンド形に設計され、厚さ方向に装飾フィルムを貫通する複数の圧縮スリットによって形成されており、各拡張領域は、装飾フィルムを厚さ方向に貫通する少なくとも1つの拡張スリットによって形成される拡張要素を有する。
【0007】
「本質的に剛性の(an sich steifen)」装飾フィルムは、ここでは、剛性の装飾フィルムとして理解されるのではなく、むしろ、その初期状態において限定的な可撓性を有する装飾フィルムであって、一方向に曲げることができるが、同時に2つの異なる方向、すなわち2つの異なる軸の周りに曲げることができない装飾フィルムとして理解される。また、その初期状態における装飾フィルムの曲げ性は、より大きな曲げ半径に制限され、きつい曲げ半径 を許容しない場合もある。
【0008】
[効果]
装飾フィルムを厚さ方向に貫通する個々のスリットのパターンを有する本発明による装飾フィルムの設計は、本発明のスリットパターンにより、スリットされていない、本来ほとんど剛性の装飾フィルムが三次元的に柔軟になるという事実をもたらす。スリットは、好ましくは、レーザービーム、カッティングプロッタ又は他のカッターを使用して実施されるので、個々のスリットは極めて狭く、したがって、装飾フィルムが平坦な状態にあるとき、ほとんど視認でいない。
【0009】
圧縮領域は、その星形構造又はダイヤモンド形構造により圧縮することができ、これは、例えば、装飾フィルムが、例えば車体外皮などの基材の窪み又は凹部に局所的に適合しなければならない場合に必要である。このようにして、星形の圧縮スリットの間に残る、装飾フィルムのテーパ状の表面領域は、収束し、あるいは重なり合って、それぞれの圧縮スリットを橋渡しすることができるので、装飾フィルムはこの点においてで収縮し、すなわちその面積が圧縮される。
【0010】
拡張領域において、装飾フィルムは、少なくとも1つの拡張スリットの長手方向に対して横方向、例えば直角方向に延伸され、すなわちその面積が拡大され、そのような膨張スリットの幅が、少なくともその中央領域において増大するようにすることができる。
【0011】
本発明による装飾的なフィルムのさらに好ましい有利な設計上の特徴は、従属請求項2乃至14の主題を形成する。
【0012】
圧縮領域及び拡張領域は、好ましくは、2つの隣り合う圧縮領域の間に少なくとも1つの拡張領域が設けられるように、装飾フィルムの領域にわたって分布する。このような圧縮領域と拡張領域との交互配置により、装飾フィルムが特に柔軟であることが保証される。
【0013】
さらに好ましくは、隣り合う圧縮要素が、互いに向かって収束する少なくとも1対の圧縮スリットを形成し、その自由端の間に、装飾フィルムの、スリットされていない無傷のブリッジ領域が設けられ、少なくとも1つの拡張スリットが、収束する圧縮スリットの各対に平行に、そこから横方向に間隔を隔てて設けられ、収束する圧縮スリットの対が、少なくとも1つの膨張スリットと共に、拡張領域の拡張要素を形成することが提供される。収束する圧縮スリットは、好ましくは、その長手方向に共通の中心軸を有し、したがって、少なくとも1つの拡張スリットが2つの収束する圧縮スリットの中心軸に平行に整列するようにする。各圧縮領域が、その放射の数、すなわちその中心から発せられる圧縮スリットの数に対応する数の拡張領域によって囲まれている場合、装飾フィルムは、ほぼあらゆる表面法線方向に三次元的に変形することができる。
【0014】
少なくとも1つの拡張スリットは、好ましくは、収束する一対の圧縮スリットのそれぞれの圧縮スリットの自由端の領域のみに、好ましくは圧縮スリットと平行に、延在する。これにより、個々の拡張スリットと圧縮スリットとの間に十分な空間が残され、装飾フィルムが十分に柔軟であれば、装飾フィルムの残されたスリットの無い領域間の安定した表面接続が確保される。
【0015】
本発明による装飾フィルムの代替的な有利なさらなる態様において、少なくとも1つの拡張スリットは、それに平行な一対の収束する圧縮スリットの、それぞれの圧縮スリットの長さの半分まで、好ましくは前部3分の1に沿ってのみ延在する。装飾フィルムの柔軟性は、十分な耐久性及び信頼性を依然として維持しながら、著しく改善される。
【0016】
本発明のすべての変形例において、有利には、少なくとも1つの拡張スリットは、装飾フィルムを平坦に敷いたときに互いに平行な長手方向の縁部を有し、したがって一定のスリット幅を有する
【0017】
また、有利には、他の実施形態と組み合わせることができる本発明の実施形態であり、この実施形態では、拡張要素は、一対の収束する圧縮スリットの両側で、好ましくはそれに平行に、一対の収束する圧縮スリットから横方向に距離を置いて設けられた第1拡張スリット及び第2拡張スリットを有する。一対の収束する圧縮スリットの両側に設けられたこれらの拡張スリットは、装飾フィルムの延伸性を向上させ、その結果、その可撓性を向上させる。
【0018】
また、有利には、他の実施形態とも組み合わせることができる本発明の実施形態であり、この実施形態では、装飾的なフィルムが平坦に置かれるときに、星形に互いに離れるように延在する圧縮スリットはそれぞれ、圧縮要素の中心から関連する圧縮スリットのそれぞれの自由端に向かって減少するスリット幅を有し、したがって、それぞれの圧縮スリットがその自由端に向かってテーパ状になる。このようにして、隣り合うスリットのない表面領域の端部が重なることなく、高い表面圧縮性が達成される。
【0019】
好ましくは、星形の圧縮要素は、星形に互いに離れるように延在する少なくとも3つの圧縮スリットを有する。さらに好ましくは、星形の圧縮要素は、星形に互いに離れるように延在する5つ、6つ又は7つの圧縮スリットを有し、それにより、装飾フィルムの可撓性をさらに増加させる。
【0020】
本発明の好ましい実施形態によれば、装飾フィルムは、複数の星形圧縮要素を有し、星形圧縮要素は、星形に互いに離れるように延在する、異なる数の圧縮スリットを有する。かかる装飾フィルムは、様々な柔軟性を有する領域を備え、従って、三次元成形の程度が異なる表面を有する基材に適合させることができる。
【0021】
凸面表面領域の曲率半径がより小さいほど、凸面表面領域に適合できる装飾的なフィルムの領域における、単位面積当たりの拡張要素の数がより多いと、特に有利である。
【0022】
また、凹面領域の曲率半径がより小さいほど、凹面領域に適合させることができる装飾フィルムの領域における単位面積当たりの圧縮要素の数がより多いと、特に有利である。
【0023】
好ましくは、装飾フィルムの装飾層の光反射特性又は光透過特性は、電圧を印加することにより変化可能である。
【0024】
好ましくは、装飾フィルムは、第1電極層、第2電極層、及び、第1電極層と前記第2電極層との間に配置された装飾層を有し、装飾層の光反射特性又は光透過特性は電圧を印加することにより変化可能である。装飾フィルムの厚さ方向のスリットは、電極層と装飾層とを貫通するが、電極層は連続的な導電性を失わないため、スリット形成後に残存する各電極の電極層領域を含む装飾フィルムの表面領域は互いに接続されたままであるため、装飾フィルムは2つの色状態を電気的に切り替えることができるという特性を失わない。
【0025】
星形の圧縮スリットは、少なくとも装飾フィルムの一部の圧縮要素では、共通の中心で合流し、そこで互いに接続されているが、他の圧縮要素では、より良好な導電性を達成するために、星形に互いに離れるように延在する圧縮スリットの内側端部が、圧縮要素の中心で互いに離間していると特に有利である。
【0026】
装飾フィルムの装飾層は、好ましくは、透明と不透明との間で切り替え可能なスマートガラスLCD層、又は2色間で切り替え可能な電子ペーパー層である。しかしながら、装飾層は、例えば、木材べニア層であることもできる。
【0027】
車両に関する対象の一部は、請求項15によれば、車両、特に自動車であって、車両本体とそれによって、少なくとも部分的に周囲を取り囲まれた車両内部とを有し、車両本体は、例えば車両の外側に湾曲及び/又は反った表面領域を有する非平面的な車体外皮を備え、及び/又は、車両内部は、例えば車両の内側に湾曲及び/又は反った表面領域を有する非平面表面を各々備える車両内部を備える車両によって解決される。本発明によれば、車両内部の非平面状表面領域及び/又は車両外部の非平面表面領域には、少なくとも部分的に、好ましくは光反射特性又は光透過特性を変更することができる装飾層を有する、請求項のいずれかに記載の装飾フィルムが設けられる。装飾層を車両外側又は車両内側に設けることにより、例えば、車両内又は車両上の三次元的に湾曲した自由曲面の新しいデザインの可能性が広く開かれる。
【0028】
装飾フィルムを電子ペーパーフィルムとして構成し、これを少なくとも外皮の一部領域に設ければ、電子ペーパーフィルムの状態を切り替えることにより、このようなフィルムラッピングされた外皮の外観を変化させることができる。例えば、着色された電子ペーパーフィルムによれば、ボディカラーを変更することが可能である。
【0029】
設計の詳細及びさらなる利点を追加した本発明の好ましい実施形態を、添付図面を参照して以下にさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】車体外皮を有する車体をs萎えた自動車を示す図である。
図2】電子ペーパー表示デバイスの構造を拡大した長手方向断面図で模式的に示す図である。
図3】本発明による装飾フィルムの3次元的に変形した表面区画を示す図である。
図4】拡大した圧縮領域を示す図である。
図5】展開領域を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、車体外皮10を有する車体12と、少なくとも部分的にそれに囲まれた車内11とを有する自動車1を示す。フロントボンネット13及びフロントウイング14、15の領域において、破線で概略的に示すように、後述する装飾フィルム2を有するサンドイッチフィルム19でラッピングされている。この領域において、車体外皮10は、凸部17及び凹部18を有する非平面表面16を形成する。
【0032】
図2は、本発明による装飾フィルム2を形成する、それ自体公知の電子ペーパーフィルム2’の構造を表す拡大した長手方向断面図である。電子ペーパーフィルム2’は、透明カバー層21を有する平坦で透明な第1(上側)電極層20と、支持層23を有する、平坦で透明な第2(下側)電極層22と、2つの電極層20,22の間に配置された表示層とを有し、これが変化可能な装飾層24を形成している。
【0033】
第1電極層20は、第1導電性接続部247を介して電気制御デバイス3に接続され、第2電極層22も第2導電性接続部248を介して制御デバイス3に接続されている。制御デバイス3には電源Qから電気エネルギーが供給される。制御デバイス3は制御ライン30を介して制御信号も受信する。
【0034】
電子ペーパーフィルム2’の装飾層24を形成する表示層は、マイクロカプセルとして構成された複数の表示球体240を備える。表示球体240の各々は、表示球体240の内部246を囲む透明ハウジング壁241を有する。内部246には、透明流体243によって取り囲まれている、第1色(ここでは白色)の複数の第1顔料242と、第2色(ここでは黒色)の複数の第2顔料244が含まれており、通常、黒色顔料244は正に帯電しており、白色顔料242は負に帯電している。
【0035】
電極20、22に電圧を印加することによって正又は負の電界を活性化すると、黒色顔料244と白色顔料242がそれぞれの対向電極20、22に移動する。(透明な)上側電極20に移動した顔料粒子量は、観察者には黒又は白の点として視認される。白色顔料242の代わりに着色顔料を含む複数の異なる表示球体を有するこの図示の電子ペーパーフィルム2’のさらなる発展形態は、色を表示することができる。
【0036】
制御デバイス3は、例えば、表示球体240を黒から白に、又はその逆に切り替えるために、電極20、22に対応する極性を有する電気スイッチング信号を供給する。電子ペーパーフィルム2’の表示層が異なる色を表示できる場合、制御デバイス3は、電子ペーパーフィルム2’が使用者の望む色を表示するように、表示球体240を制御することができる。
【0037】
図3は、本発明による装飾フィルム2、例えば電子ペーパーフィルム2’の表面の区画を示す。この装飾フィルム2には、複数の圧縮領域4、4’、4”と拡張領域5、5’、5”とが設けられている。各圧縮領域4、4’、4”は、図4に詳細に示される星形圧縮要素40、40’、40”を有し、これは複数の圧縮スリット42、43、44、45、46、47;42’、43’、44’、45’、46’、47’によって形成されており、圧縮スリットは、共通の中心41から星形に延在し、装飾フィルム2を厚さ方向Dに貫通する。装飾フィルム2を図4に示すように平らに置くと、圧縮スリット42、43、44、45、46、47;42’、43’、44’、45’、46’、47’はそれぞれ、圧縮要素40の中心41から関連する圧縮スリット42、43、44、45、46、47;42’、43’、44’、45’、46’、47のそれぞれの自由端に向かって減少するスリット幅を有し、したがって、それぞれの圧縮スリット42、43、44、45、46、47;42’、43’、44’、45’、46’、47’は、自由端に向かって先細になっている。
【0038】
隣り合う圧縮要素40、40’はそれぞれ、互いに向かって収束する一対の圧縮スリット42、42’を形成する。これらの収束する圧縮スリット42、42’の自由端は、互いに接触せず、間隔をあけて配置され、それらの自由端の間にスリットのないブリッジ領域48が残り、装飾フィルム2が無傷であり、したがって、電子ペーパーフィルム2’の場合には電気的に機能する。これらの収束する圧縮スリット42、42’は、その長手方向の延長において共通の中心軸Mを有する。
【0039】
拡張領域5を形成する拡張要素50は、常に2つの隣り合う圧縮要素40、40’の間に設けられる。この目的のために、図5に示すように、互いに平行に整列された第1拡張スリット52及び第2拡張スリット54が、収束する圧縮スリット42、42’の各対に平行に延在し、互いに反対を向く一対の収束する圧縮スリット42、42’の2つの側面に横方向に離間している。装飾フィルム2が平坦に置かれると、それぞれの拡張スリット52、54は、図5に示すように、互いに平行な長手方向の縁部を有し、したがって、一定のスリット幅を有する。
【0040】
拡張スリット52,54も装飾フィルム2を厚さ方向Dに貫通している。従って、電子ペーパーフィルム2’の場合、圧縮スリット42,43,44,45,46,47;42’,43’,44’,45’,46’,47’及び拡張スリット52,54はいずれも、カバー層21、第1電極層20、表示層24、第2電極層22及び支持層23を局所的に貫通してカッティングされている。
【0041】
圧縮スリット42、42’の共通の中心軸Mと平行に走る拡張スリット52、54は、自由端に向かってそれぞれ関連する圧縮スリット42、42’の長手方向の延在部の前方3分の1又は半分まで延在している。
【0042】
フィルム表面の装飾フィルム2に、例えば直角に、拡張スリット52、54の長手方向の延在部に対して横方向に作用する引張力が加わると(図5に矢印Eで象徴的に示すように)、拡張スリット52、54の開口幅、すなわちその広がりが増大し、この領域の装飾フィルム2が共通の中心軸Mに沿って長手方向の延在部に対して局所的に横方向に延伸する。
【0043】
圧縮要素40の中心41に向かって作用する(図4に矢印Kで象徴的に示すように)圧縮力又は剪断力がフィルム表面の装飾フィルム2に加えられると、少なくとも1つの圧縮スリット42、42’の開口幅が減少し、したがって、装飾フィルム2はこの領域で局所的に圧縮される。
【0044】
本発明は、本発明の中心となる概念を一般的に説明するためにのみ役立つ上記の例示的な実施形態に限定されるものではない。保護の範囲内で、本発明による装置は、上記以外の実施形態も想定することができる。この装置は、特に、特許請求の範囲のそれぞれの個別の特徴の組み合わせを表す特徴を有することができる。
【0045】
特許請求の範囲、説明および図面における参照番号は、本発明の理解を容易にすることのみを目的としており、保護範囲を限定することを意図したものではない。
【符号の説明】
【0046】
1 自動車(Kraftfahrzeug)
2 装飾フィルム(Dekorfolie)
2’ 電子ペーパーフィルム(E-Paper-Folie)
3 制御デバイス(Steuerungseinrichtung)
4 圧縮領域(Kompressionsbereich)
4’ 圧縮領域
4” 圧縮領域
5 拡張開領域(Expansionsbereich)
5’ 拡張開領域
5” 拡張開領域
10 車体外皮(Karosserieausenhaut)
11 車両内部(Fahrzeuginnenraum)
12 車両本体(Fahrzeugkarosserie)
13 ボンネット(Haube)
14 ウィング(Kotfluegel)
15 ウィング
16 非平面表面(nicht-ebene berflaeche)
17 10の凸面部分(konvexer Abschnitt von 10)
18 10の凹面部分(konkaver Abschnitt von 10)
19 サンドイッチフィルム(Sandwich-Folie)
20 第1平坦(上側)透明電極層(erste flaechige (obere) transparente Elektrodenschicht)
21 カバー層(Deckschicht)
22 第2平坦(上側)透明電極層(zweite flaechige (untere) transparente Elektrodenschicht)
23 支持層(Traegerschicht)
24 装飾層(Dekorschicht)
30 制御ライン(Steuerleitungen)
40 圧縮要素(Kompressionselement)
40’ 圧縮要素
40” 圧縮要素
41 中心(Zentrum)
42 圧縮スリット(Kompressionsschlitz)
42’ 圧縮スリット
43 圧縮スリット
43’ 圧縮スリット
44 圧縮スリット
44’ 圧縮スリット
45 圧縮スリット
45’ 圧縮スリット
46 圧縮スリット
46’ 圧縮スリット
47 圧縮スリット
47’ 圧縮スリット
48 スリットなしブリッジ領域(ungeschlitzter Brueckenbereich)
50 拡張要素(Expansionselement)
52 拡張スリット(Expansionsschlitz)
54 拡張スリット
240 表示球体(Anzeigekugel)
241 透明ハウジング壁(transparente Gehaesewandung)
242 第1色素(erste Pigmente)
243 透明な流体(transparentes Fluid)
244 第2色素(zweite Pigmente)
246 内部スペース(Innenraum)
247 第1電気伝導接続(erste elektrisch leitende Verbindung)
248 第2電気伝導接続(zweite elektrisch leitende Verbindung)
D 厚さ方向(Dickenrichtung)
E 矢印(延伸)(Pfeil (Dehnung))
K 矢印(圧縮)(Pfeil (Stauchung))
M 中心線(Mittelachse)
Q 電源(elektrische Stromquelle)
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】