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特表2025-501259がんに対する組合せ免疫療法としてのワクチン接種を伴うT細胞療法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-17
(54)【発明の名称】がんに対する組合せ免疫療法としてのワクチン接種を伴うT細胞療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/17 20250101AFI20250109BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20250109BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20250109BHJP
   C07K 14/435 20060101ALI20250109BHJP
   C07K 14/005 20060101ALI20250109BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20250109BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20250109BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
A61K35/17
C12N5/10 ZNA
C12N5/0783
C07K14/435
C07K14/005
A61K39/00 H
A61K39/39
A61K39/395 D
A61K39/395 U
A61P43/00 121
A61P35/00
A61P35/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539628
(86)(22)【出願日】2022-12-29
(85)【翻訳文提出日】2024-08-22
(86)【国際出願番号】 US2022082579
(87)【国際公開番号】W WO2023130040
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】63/295,762
(32)【優先日】2021-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510002280
【氏名又は名称】アメリカ合衆国
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】クリシュナ、シュリ
(72)【発明者】
【氏名】ユ、ジヤ
(72)【発明者】
【氏名】花田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】ローゼンバーグ、スティーヴン エー.
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AB01
4B065BA01
4B065CA24
4B065CA44
4C085AA03
4C085AA38
4C085BB01
4C085EE03
4C085EE06
4C085FF13
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB37
4C087CA04
4C087MA02
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZB27
4C087ZC75
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA01
4H045CA40
4H045DA86
4H045EA31
(57)【要約】
哺乳動物においてがんを治療または予防する方法が開示され、該方法は以下を含む:(a)哺乳動物からの腫瘍試料からT細胞を単離する工程であって、ここで、単離されたT細胞は、疲弊した状態および分化した状態の一方または両方であり、該単離されたT細胞は、哺乳動物からの腫瘍試料によって発現される腫瘍特異的抗原に対する抗原特異性を有し、腫瘍特異的抗原は、腫瘍特異的ネオ抗原または腫瘍特異的ドライバー変異を有する抗原である、工程;および、任意に、単離された腫瘍抗原特異的T細胞の数を拡大する工程;および(b)哺乳動物に(i)(a)の単離されたT細胞、および(ii)単離されたT細胞が抗原特異性を有する腫瘍特異的抗原に対する免疫応答を特異的に刺激するワクチンを投与する工程。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、哺乳動物におけるがんの治療または予防に使用するためのセット:
(i)哺乳動物の腫瘍試料から単離されたT細胞、
ここで、単離されたT細胞は、疲弊した状態および分化した状態の一方または両方であり、単離されたT細胞は、哺乳動物からの腫瘍サンプルによって発現される腫瘍特異的抗原に対する抗原特異性を有し、
ここで、該腫瘍特異的抗原は、腫瘍特異的ネオ抗原または腫瘍特異的ドライバー変異を有する抗原であり;および
単離された腫瘍抗原特異的T細胞の数は任意に拡大され;および
(ii)単離されたT細胞が抗原特異性を有する腫瘍特異的抗原に対する免疫応答を特異的に刺激するワクチン。
【請求項2】
単離された腫瘍抗原特異的T細胞の数が拡大される、請求項1に記載のセット。
【請求項3】
以下を含む、腫瘍を有する哺乳動物におけるがんの治療または予防に使用するためのセット:
(i)腫瘍を有する哺乳動物からの生物学的試料から単離されたT細胞、
ここで、核酸が、単離されたT細胞に導入されており、ここで、核酸が、哺乳動物の腫瘍によって発現される腫瘍特異的抗原に対する抗原特異性を有する外来性受容体をコードするヌクレオチド配列を含み、かつ、ここで、T細胞が、外来性受容体を発現し、ここで、腫瘍特異的抗原が、腫瘍特異的ネオ抗原または腫瘍特異的ドライバー変異を有する抗原であり;および
ここで、外来性受容体を発現するT細胞の数が任意に拡大され;および
(ii)外来性受容体が抗原特異性を有する腫瘍特異的抗原に対する免疫応答を特異的に刺激するワクチン。
【請求項4】
外来性受容体を発現するT細胞の数が拡大される、請求項3に記載のセット。
【請求項5】
生物学的試料から単離されたT細胞が、疲弊した状態および分化した状態の一方または両方である、請求項3または4に記載のセット。
【請求項6】
生物学的試料が腫瘍の試料である、請求項3~5のいずれか1項に記載のセット。
【請求項7】
単離されたT細胞がTILである、請求項1~6のいずれか1項に記載のセット。
【請求項8】
生物学的試料が末梢血試料である、請求項3~5のいずれか1項に記載のセット。
【請求項9】
外来性受容体がT細胞受容体(TCR)である、請求項3~8のいずれか1項に記載のセット。
【請求項10】
外来性受容体がキメラ抗原受容体(CAR)である、請求項3~8のいずれか1項に記載のセット。
【請求項11】
(i)および(ii)が哺乳動物に同時に投与される、請求項1~10のいずれか1項に記載のセット。
【請求項12】
(i)および(ii)が、同一組成物中で一緒に哺乳動物に投与される、請求項1~11のいずれか1項に記載のセット。
【請求項13】
(i)および(ii)が連続して哺乳動物に投与される、請求項1~10のいずれか1項に記載のセット。
【請求項14】
(i)が(ii)の前に哺乳動物に投与される、請求項13に記載のセット。
【請求項15】
(ii)が(i)の前に哺乳動物に投与される、請求項13に記載のセット。
【請求項16】
(i)が、(ii)が哺乳動物に投与される前の24時間以内に哺乳動物に投与される、請求項13に記載のセット。
【請求項17】
(i)が、(ii)が哺乳動物に投与されてから24時間以内に哺乳動物に投与される、請求項13に記載のセット。
【請求項18】
腫瘍特異的ドライバー変異が、変異ALK、変異APC、変異ATRX、変異BRAF、変異CDKN2A、変異DDX3X、変異DNMT3A、変異EGFR、変異ESR1、変異EWSR1、変異FGFR1、変異FLI1、変異HRAS、変異IDH1、変異IDH2、変異KMT2C、変異KRAS、変異MYC、変異NOTCH1、変異NRAS、変異PIK3CA、変異PTCH1、変異PTEN、変異RB1、変異RUNX1、変異SETD2、変異SMARCA4、変異STK11、または変異TP53である、請求項1~17のいずれか1項に記載のセット。
【請求項19】
ワクチンが、がん細胞ワクチン、結合体多糖類ワクチン、樹状細胞ワクチン、DNAワクチン、不活化ワクチン、生-弱毒化ワクチン、ナノ粒子ワクチン、ペプチドワクチン、タンパク質ワクチン、組換えワクチン、RNAワクチン、サブユニットワクチン、またはウイルスワクチンである、請求項1~18のいずれか1項に記載のセット。
【請求項20】
単離されたT細胞が、以下のT細胞疲弊マーカーのいずれか1つ以上を発現する、請求項1~19のいずれか1項に記載のセット:
(a)以下のいずれか1つ以上をコードするRNA:4-1BB、CCL3、CD28-、CD39、CD62L-(SELL-)、CD69、CTLA4、CX3CR1、CXCL13、CXCR6、GZMA、GZMB、GZMK、IL7R-、LAG-3、LAYN、LEF1-、PD-1、PRF1、TCF7-、TIGIT、TIM-3、およびTOX;ならびに
(b)以下のタンパク質のいずれか1つ以上:4-1BB、CCL3、CD28-、CD39、CD62L-(SELL-)、CD69、CTLA4、CX3CR1、CXCL13、CXCR6、GZMA、GZMB、GZMK、IL7R-、LAG-3、LAYN、LEF1-、PD-1、PRF1、TCF7-、TIGIT、TIM-3、およびTOX
【請求項21】
腫瘍特異的抗原の発現について腫瘍がスクリーニングされている、請求項1~20のいずれか1項に記載のセット。
【請求項22】
ワクチンの単回用量以下が哺乳動物に投与される、請求項1~21のいずれか1項に記載のセット。
【請求項23】
ワクチンの2回、3回またはそれ以上の用量が哺乳動物に投与される、請求項1~21のいずれか1項に記載のセット。
【請求項24】
T細胞が哺乳動物に投与される最初の日から1日おきにワクチンが哺乳動物に投与される、請求項23に記載のセット。
【請求項25】
単離されたT細胞が、以下の分化マーカーのいずれか1つ以上を発現する、請求項1~24のいずれか1項に記載の使用のためのセット:
(a)以下のいずれか1つ以上をコードするRNA:CCR7-、CD27-、CD45RA、CD45RO-、CD95、EOMES-、FOXO1-、KLRG1、T-BET、TCF7-、TOX、およびZEB2;ならびに
(b)以下のタンパク質のいずれか1つ以上:CCR7-、CD27-、CD45RA、CD45RO-、CD95、EOMES-、FOXO1-、KLRG1、T-BET、TCF7-、TOX、およびZEB2
【請求項26】
ワクチンが哺乳動物に筋肉内、皮下、静脈内または腹腔内で投与される、請求項1~25のいずれか1項に記載のセット。
【請求項27】
T細胞が、静脈内または腹腔内で哺乳動物に投与される、請求項1~26のいずれか1項に記載のセット。
【請求項28】
単離されたT細胞がCD4である、請求項1~27のいずれか1項に記載のセット。
【請求項29】
単離されたT細胞がCD8である、請求項1~27のいずれか1項に記載のセット。
【請求項30】
哺乳動物がヒトである、請求項1~29のいずれか1項に記載のセット。
【請求項31】
(i)および(ii)が、互いに24時間以内に哺乳動物に投与される、請求項1~30のいずれか1項に記載のセット。
【請求項32】
アジュバントが哺乳動物に投与される、請求項1~31のいずれか1項に記載のセット。
【請求項33】
アジュバントが抗CD40抗体または抗PD-1抗体を含む、請求項32に記載のセット。
【請求項34】
腫瘍特異的ネオ抗原が、哺乳動物の腫瘍に特有の1つ以上の体細胞変異によってコードされる個体ネオ抗原であり、任意に、腫瘍特異的ネオ抗原が腫瘍特異的ドライバー変異ではない、請求項1~33のいずれか1項に記載のセット。
【請求項35】
単離されたT細胞が終末分化している、請求項1~34のいずれか1項に記載のセット。
【請求項36】
哺乳動物においてがんを治療または予防する方法であって、以下を含む方法:
(a)哺乳動物からの腫瘍試料からT細胞を単離する工程であって
ここで、単離されたT細胞は、疲弊した状態および分化した状態の一方または両方であり、かつ単離されたT細胞は、哺乳動物からの腫瘍サンプルによって発現される腫瘍特異的抗原に対する抗原特異性を有し、
ここで、該腫瘍特異的抗原は、腫瘍特異的ネオ抗原または腫瘍特異的ドライバー変異を有する抗原であり;および
任意に、単離された腫瘍抗原特異的T細胞の数を拡大する工程;および
(b)(i)(a)の単離されたT細胞、および(ii)単離されたT細胞が抗原特異性を有する腫瘍特異的抗原に対する免疫応答を特異的に刺激するワクチンを、哺乳動物に投与する工程。
【請求項37】
単離された腫瘍抗原特異的T細胞の数を拡大する工程を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
腫瘍を有する哺乳動物においてがんを治療または予防する方法であって、以下の工程を含む、方法:
(a)腫瘍を有する哺乳動物からの生物学的試料からT細胞を単離する工程
(b)外来性受容体を発現するT細胞を産生するために、哺乳動物の腫瘍によって発現される腫瘍特異的抗原に対して抗原特異性を有する外来性受容体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を、単離されたT細胞に導入する工程であって、ここで、腫瘍特異的抗原は、腫瘍特異的ネオ抗原または腫瘍特異的ドライバー変異を有する抗原である、工程;および
任意に、外来性受容体を発現するT細胞の数を拡大する工程;および
(c)(i)(b)の外来性受容体を発現するT細胞、および(ii)外来性受容体が抗原特異性を有する腫瘍特異的抗原に対する免疫応答を特異的に刺激するワクチンを、哺乳動物に投与する工程。
【請求項39】
外来性受容体を発現するT細胞の数を拡大する工程を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
生物学的試料から単離されたT細胞が、疲弊した状態および分化した状態の一方または両方である、請求項38または39に記載の方法。
【請求項41】
生物学的試料が腫瘍の試料である、請求項38~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
単離されたT細胞がTILである、請求項36~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
生物学的試料が末梢血試料である、請求項38~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
外来性受容体がT細胞受容体(TCR)である、請求項38~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
外来性受容体がキメラ抗原受容体(CAR)である、請求項38~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
(i)および(ii)が哺乳動物に同時に投与される、請求項36~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
(i)および(ii)が、同一組成物中で一緒に哺乳動物に投与される、請求項36~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
(i)および(ii)が連続して哺乳動物に投与される、請求項36~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
(i)が(ii)の前に哺乳動物に投与される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
(ii)が(i)の前に哺乳動物に投与される、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
(i)が、(ii)が哺乳動物に投与される前の24時間以内に哺乳動物に投与される、請求項48に記載の方法。
【請求項52】
(i)が、(ii)が哺乳動物に投与された後24時間以内に哺乳動物に投与される、請求項48に記載の方法。
【請求項53】
腫瘍特異的ドライバー変異が、変異ALK、変異APC、変異ATRX、変異BRAF、変異CDKN2A、変異DDX3X、変異DNMT3A、変異EGFR、変異ESR1、変異EWSR1、変異FGFR1、変異FLI1、変異HRAS、変異IDH1、変異IDH2、変異KMT2C、変異KRAS、変異MYC、変異NOTCH1、変異NRAS、変異PIK3CA、変異PTCH1、変異PTEN、変異RB1、変異RUNX1、変異SETD2、変異SMARCA4、変異STK11、または変異TP53である、請求項36~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
ワクチンが、がん細胞ワクチン、結合体多糖類ワクチン、樹状細胞ワクチン、DNAワクチン、不活化ワクチン、生-弱毒化ワクチン、ナノ粒子ワクチン、ペプチドワクチン、タンパク質ワクチン、組換えワクチン、RNAワクチン、サブユニットワクチン、またはウイルスワクチンである、請求項36~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
単離されたT細胞が、以下のT細胞疲弊マーカーのいずれか1つ以上を発現する、請求項36~54のいずれか1項に記載の方法:
(a)以下のいずれか1つ以上をコードするRNA:4-1BB、CCL3、CD28-、CD39、CD62L-(SELL-)、CD69、CTLA4、CX3CR1、CXCL13、CXCR6、GZMA、GZMB、GZMK、IL7R-、LAG-3、LAYN、LEF1-、PD-1、PRF1、TCF7-、TIGIT、TIM-3、およびTOX;ならびに
(b)以下のタンパク質のいずれか1つ以上:4-1BB、CCL3、CD28-、CD39、CD62L-(SELL-)、CD69、CTLA4、CX3CR1、CXCL13、CXCR6、GZMA、GZMB、GZMK、IL7R-、LAG-3、LAYN、LEF1-、PD-1、PRF1、TCF7-、TIGIT、TIM-3、およびTOX
【請求項56】
腫瘍特異的抗原の発現について腫瘍をスクリーニングする工程をさらに含む、請求項36~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
哺乳動物にワクチンの単回用量以下を投与する工程を含む、請求項36~56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
哺乳動物に2回、3回またはそれ以上の用量のワクチンを投与する工程を含む、請求項36~56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
T細胞が哺乳動物に投与される最初の日から1日おきにワクチンを哺乳動物に投与する工程を含む、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
単離されたT細胞が、以下の分化マーカーのいずれか1つ以上を発現する、請求項36~59のいずれか1項に記載の方法:
(a)以下のいずれか1つ以上をコードするRNA:CCR7-、CD27-、CD45RA、CD45RO-、CD95、EOMES-、FOXO1-、KLRG1、T-BET、TCF7-、TOX、およびZEB2;ならびに
(b)以下のタンパク質のいずれか1つ以上:CCR7-、CD27-、CD45RA、CD45RO-、CD95、EOMES-、FOXO1-、KLRG1、T-BET、TCF7-、TOX、およびZEB2
【請求項61】
ワクチンを哺乳動物に筋肉内、皮下、静脈内または腹腔内投与する工程を含む、請求項36~60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
T細胞を哺乳動物に静脈内または腹腔内投与する工程を含む、請求項36~61のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
単離されたT細胞がCD4である、請求項36~62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
単離されたT細胞がCD8である、請求項36~62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
哺乳動物がヒトである、請求項36~64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
(i)および(ii)が、互いに24時間以内に哺乳動物に投与される、請求項36~65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
アジュバントを哺乳動物に投与する工程をさらに含む、請求項36~66のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
アジュバントが抗CD40抗体または抗PD-1抗体を含む、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
腫瘍特異的ネオ抗原が、哺乳動物の腫瘍に特有の1つ以上の体細胞変異によってコードされる個体ネオ抗原であり、任意に、腫瘍特異的ネオ抗原が腫瘍特異的ドライバー変異ではない、請求項36~68のいずれか1項に記載の方法。
【請求項70】
単離されたT細胞が終末分化している、請求項36~69のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本特許出願は、2021年12月31日に出願された米国仮特許出願第63/295,762号の利益を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府が支援する研究または開発に関する声明
本発明は、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)国立がん研究所(National Cancer Institute)によるプロジェクト番号ZIABC010985の下、政府の支援を受けて行われた。政府は、本発明について一定の権利を有する。
【0003】
電子的に提出された資料の参照による組み込み
本明細書においてその全体が参照により組み込まれるのは、本明細書と同時に提出され、以下のように同定される、コンピュータ読み取り可能なヌクレオチド/アミノ酸配列リストである: 2022年12月28日付けの、「766239.xml」という名称の1つの2,650バイトのXMLファイル。
【背景技術】
【0004】
腫瘍特異的抗原を標的とするT細胞を用いた養子細胞療法(ACT)は、一部の患者に良好な臨床応答をもたらすことができる。それにもかかわらず、がんおよび他の病態の治療にACTを成功裏に使用するには、いくつかの障害が残っている。例えば、疲弊した表現型の抗腫瘍T細胞は、腫瘍に対して持続的な免疫応答を行うことができない可能性がある。従って、がんに対する改善された免疫療法が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本発明の一態様は、哺乳動物においてがんを治療または予防する方法を提供し、該方法は以下を含む:(a)哺乳動物からの腫瘍試料からT細胞を単離する工程であって、単離されたT細胞は、疲弊した状態および分化した状態の一方または両方であり、単離されたT細胞は、哺乳動物からの腫瘍試料によって発現される腫瘍特異的抗原に対する抗原特異性を有し、ここで、腫瘍特異的抗原は、腫瘍特異的ネオ抗原または腫瘍特異的ドライバー変異を有する抗原である、工程;および任意に、単離された腫瘍抗原特異的T細胞の数を拡大する工程;および(b)哺乳動物に、(i)(a)の単離されたT細胞、および(ii)単離されたT細胞が抗原特異性を有する腫瘍特異的抗原に対する免疫応答を特異的に刺激するワクチンを投与する工程。
【0006】
本発明の一局面は、腫瘍を有する哺乳動物においてがんを治療または予防する方法を提供し、該方法は以下を含む:(a)腫瘍を有する哺乳動物からの生物学的試料からT細胞を単離する工程;(b)単離されたT細胞に、哺乳動物の腫瘍によって発現される腫瘍特異的抗原に対して抗原特異性を有する外来性受容体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を導入して、外来性受容体を発現するT細胞を産生する工程であって、ここで、腫瘍特異的抗原は、腫瘍特異的ネオ抗原または腫瘍特異的ドライバー変異を有する抗原である、工程;および任意に、外来性受容体を発現するT細胞の数を増殖させる工程;および(c)(i)(b)の外来性受容体を発現するT細胞、および(ii)外来性受容体が抗原特異性を有する腫瘍特異的抗原に対する免疫応答を特異的に刺激するワクチンを、哺乳動物に投与する工程。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の一局面によるネオ抗原ワクチン接種と組み合わせたネオ抗原特異的T細胞ACTのための工程を示すフローチャートである。
図2A図2Aは、本発明の一局面によるB16マウスにおけるネオ抗原ワクチン接種と組み合わせたネオ抗原特異的T細胞ACTの時系列を示す概略図である。
図2B図2Bは、2回の刺激後、低群(CD39lo)、中群(CD39med)、および高群(CD39hi)に分類された分化クラスタ39(CD39)の発現レベルを有するPmelT細胞の数を示すフローサイトメトリーグラフである。
図2C図2Cは、CD39loおよびCD39hi T細胞におけるPD-1およびTIM3発現のヒートマップグラフ、ならびにCD39loおよびCD39hi T細胞における4-1BB活性化のグラフを示す。
図3A図3Aは、PBS、バルクPmelT細胞(バルク)、高レベル(CD39hi)、中レベル(CD39med)、および低レベル(CD39lo)でCD39を発現するPmelT細胞で処置したマウスにおける、ACT後の日数にわたるB16マウスの腫瘍サイズ(mm2)を示すグラフである。
図3B図3Bは、PBS、バルクPmelT細胞(バルク)、CD39lo、CD39hi+アイソタイプコントロール抗体(IgG)、CD39hi+抗CD40抗体、またはCD39hi+抗PD1抗体で処置したマウスにおける、ACT後の日数にわたるB16マウスの腫瘍サイズ(mm2)を示すグラフである。
図4A図4Aは、PBS、バルクPmelT細胞(Bulk Pmel)、低発現CD39 PmelT細胞(CD39lo)+アイソタイプコントロール抗体(Rat IgG)、高発現CD39 Pmel+ T細胞(CD39hi)+抗CD40抗体、CD39hi+抗PD1抗体、またはCD39hi+ヒト糖タンパク質100エピトープ配列KVPRNQDWL(SEQ ID NO:2)に対する関連ワクシニアウイルス(r. VACVhgp100)で処置した群(n=5)における、ACT後の日数にわたるB16マウスの生存率を示すグラフである。
図4B図4Bは、PBS、バルク、CD39lo、CD39hi+IgG、CD39hi+抗CD40抗体、CD39hi+抗PD1抗体、またはCD39hi+r.VACVhgp100で処置したマウスにおける、ACT後の日数にわたるB16マウスの腫瘍サイズ(mm2)を示すグラフである。
図5A図5A~5Cは、単独で、または様々な組み合わせで、以下で処置したマウスにおける、ACT後の日数にわたるB16+マウスの腫瘍サイズ(mm2)を示すグラフである:PBS、低発現CD39 Pmel+ T細胞(CD39lo)、高発現CD39 Pmel+T細胞(CD39hi)、アイソタイプコントロール抗体(IgG)、ヒト糖タンパク質100ペプチド(Pep)、ヒト糖タンパク質100に対するワクシニアウイルス(VACVhgp100)(図5A)、ヒト糖タンパク質100に対するアデノウイルス(ADVhgp100)(図5B)、または抗CD40抗体(図5C)。
図5B図5A~5Cは、単独で、または様々な組み合わせで、以下で処置したマウスにおける、ACT後の日数にわたるB16+マウスの腫瘍サイズ(mm2)を示すグラフである:PBS、低発現CD39 Pmel+ T細胞(CD39lo)、高発現CD39 Pmel+T細胞(CD39hi)、アイソタイプコントロール抗体(IgG)、ヒト糖タンパク質100ペプチド(Pep)、ヒト糖タンパク質100に対するワクシニアウイルス(VACVhgp100)(図5A)、ヒト糖タンパク質100に対するアデノウイルス(ADVhgp100)(図5B)、または抗CD40抗体(図5C)。
図5C図5A~5Cは、単独で、または様々な組み合わせで、以下で処置したマウスにおける、ACT後の日数にわたるB16+マウスの腫瘍サイズ(mm2)を示すグラフである:PBS、低発現CD39 Pmel+ T細胞(CD39lo)、高発現CD39 Pmel+T細胞(CD39hi)、アイソタイプコントロール抗体(IgG)、ヒト糖タンパク質100ペプチド(Pep)、ヒト糖タンパク質100に対するワクシニアウイルス(VACVhgp100)(図5A)、ヒト糖タンパク質100に対するアデノウイルス(ADVhgp100)(図5B)、または抗CD40抗体(図5C)。
図5D図5Dは、(VACVhgp100)またはADVhgp100と組み合わせた低発現CD39 Pmel+ T細胞(CD39lo)または高発現CD39 Pmel+ T細胞(CD39hi)で処置したACT後の日数にわたるB16+マウスの生存率を示すグラフである(n=5)。
図6A図6Aは、PBSまたは低発現CD39 Pmel+ T細胞(CD39lo)の単独またはヒト糖タンパク質100に対する関連ワクシニアウイルス(r.VACVhgp100)との組み合わせで処置したマウスにおける、ACT後の日数にわたるB16+マウスの腫瘍サイズ(mm2)を示すグラフである(図6A)。
図6B図6Bは、PBSまたはPD1およびTIM3発現Pmel+ T細胞(PD1+TIM3+)単独またはr.VACVhgp100との併用で処置したマウスの腫瘍サイズを示すグラフである。
図6C図6Cは、PBSまたはCD39およびCD69を発現するPmel+ T細胞(CD39+CD69+)単独またはr.VACVhgp100と組み合わせて処置したマウスにおける腫瘍サイズを示すグラフである。
図7A図7Aは、PBSまたはCD39 Pmel T細胞(CD39lo)単独または無関係なHLA-A2拘束性ヒト糖タンパク質100(hgp100)エピトープに対するワクシニアウイルス(VACVhgp100(209).irr)または関連するhgp100エピトープ25(hgp10025)に対するワクシニアウイルス(VACVhgp100(25))と組み合わせて処置したマウスにおける、ACT後の日数にわたるB16マウスの腫瘍サイズ(mm2)を示すグラフである。
図7B図7Bは、CD39およびCD69発現Pmel+T細胞(CD39+CD69)単独またはVACVhgp100(209).irrもしくはVACVhgp100(25)と組み合わせて処置したマウスにおける、ACT後の日数にわたるB16マウスの腫瘍サイズ(mm2)を示すグラフである。
図8A図8A~8Fは、CD39低発現Pmel+T細胞(CD39lo)、CD39loおよびヒト糖タンパク質100に対する関連ワクシニアウイルス(rVACVhgp100)、またはrVACVhgp100のみで処置したB16+マウスの脾臓(図8A)、流入領域リンパ節(LN)(図8B)、および腫瘍(図8C)におけるACT後3日目、7日目、10日目の全CD8+T細胞に対するThy1.1+ Vβ13+ CD8+T細胞の割合を示す棒グラフであり、また、CD39およびCD69を発現するPmel+ T細胞(CD39+CD69+)、CD39+CD69+およびrVACVhgp100、またはrVACVhgp100のみで処置したB16+マウスの脾臓(図8D)、流入領域リンパ節(図8E)、および腫瘍(図8F)におけるACT後3日目、7日目、10日目の全CD8+T細胞に対するThy1.1+ Vβ13+ CD8+T細胞の割合を示す棒グラフである。
図8B図8A~8Fは、CD39低発現Pmel+T細胞(CD39lo)、CD39loおよびヒト糖タンパク質100に対する関連ワクシニアウイルス(rVACVhgp100)、またはrVACVhgp100のみで処置したB16+マウスの脾臓(図8A)、流入領域リンパ節(LN)(図8B)、および腫瘍(図8C)におけるACT後3日目、7日目、10日目の全CD8+T細胞に対するThy1.1+ Vβ13+ CD8+T細胞の割合を示す棒グラフであり、また、CD39およびCD69を発現するPmel+ T細胞(CD39+CD69+)、CD39+CD69+およびrVACVhgp100、またはrVACVhgp100のみで処置したB16+マウスの脾臓(図8D)、流入領域リンパ節(図8E)、および腫瘍(図8F)におけるACT後3日目、7日目、10日目の全CD8+T細胞に対するThy1.1+ Vβ13+ CD8+T細胞の割合を示す棒グラフである。
図8C図8A~8Fは、CD39低発現Pmel+T細胞(CD39lo)、CD39loおよびヒト糖タンパク質100に対する関連ワクシニアウイルス(rVACVhgp100)、またはrVACVhgp100のみで処置したB16+マウスの脾臓(図8A)、流入領域リンパ節(LN)(図8B)、および腫瘍(図8C)におけるACT後3日目、7日目、10日目の全CD8+T細胞に対するThy1.1+ Vβ13+ CD8+T細胞の割合を示す棒グラフであり、また、CD39およびCD69を発現するPmel+ T細胞(CD39+CD69+)、CD39+CD69+およびrVACVhgp100、またはrVACVhgp100のみで処置したB16+マウスの脾臓(図8D)、流入領域リンパ節(図8E)、および腫瘍(図8F)におけるACT後3日目、7日目、10日目の全CD8+T細胞に対するThy1.1+ Vβ13+ CD8+T細胞の割合を示す棒グラフである。
図8D図8A~8Fは、CD39低発現Pmel+T細胞(CD39lo)、CD39loおよびヒト糖タンパク質100に対する関連ワクシニアウイルス(rVACVhgp100)、またはrVACVhgp100のみで処置したB16+マウスの脾臓(図8A)、流入領域リンパ節(LN)(図8B)、および腫瘍(図8C)におけるACT後3日目、7日目、10日目の全CD8+T細胞に対するThy1.1+ Vβ13+ CD8+T細胞の割合を示す棒グラフであり、また、CD39およびCD69を発現するPmel+ T細胞(CD39+CD69+)、CD39+CD69+およびrVACVhgp100、またはrVACVhgp100のみで処置したB16+マウスの脾臓(図8D)、流入領域リンパ節(図8E)、および腫瘍(図8F)におけるACT後3日目、7日目、10日目の全CD8+T細胞に対するThy1.1+ Vβ13+ CD8+T細胞の割合を示す棒グラフである。
図8E図8A~8Fは、CD39低発現Pmel+T細胞(CD39lo)、CD39loおよびヒト糖タンパク質100に対する関連ワクシニアウイルス(rVACVhgp100)、またはrVACVhgp100のみで処置したB16+マウスの脾臓(図8A)、流入領域リンパ節(LN)(図8B)、および腫瘍(図8C)におけるACT後3日目、7日目、10日目の全CD8+T細胞に対するThy1.1+ Vβ13+ CD8+T細胞の割合を示す棒グラフであり、また、CD39およびCD69を発現するPmel+ T細胞(CD39+CD69+)、CD39+CD69+およびrVACVhgp100、またはrVACVhgp100のみで処置したB16+マウスの脾臓(図8D)、流入領域リンパ節(図8E)、および腫瘍(図8F)におけるACT後3日目、7日目、10日目の全CD8+T細胞に対するThy1.1+ Vβ13+ CD8+T細胞の割合を示す棒グラフである。
図8F図8A~8Fは、CD39低発現Pmel+T細胞(CD39lo)、CD39loおよびヒト糖タンパク質100に対する関連ワクシニアウイルス(rVACVhgp100)、またはrVACVhgp100のみで処置したB16+マウスの脾臓(図8A)、流入領域リンパ節(LN)(図8B)、および腫瘍(図8C)におけるACT後3日目、7日目、10日目の全CD8+T細胞に対するThy1.1+ Vβ13+ CD8+T細胞の割合を示す棒グラフであり、また、CD39およびCD69を発現するPmel+ T細胞(CD39+CD69+)、CD39+CD69+およびrVACVhgp100、またはrVACVhgp100のみで処置したB16+マウスの脾臓(図8D)、流入領域リンパ節(図8E)、および腫瘍(図8F)におけるACT後3日目、7日目、10日目の全CD8+T細胞に対するThy1.1+ Vβ13+ CD8+T細胞の割合を示す棒グラフである。
図9図9は、CD39低発現Pmel+ T細胞(CD39lo)、CD39loおよびヒト糖タンパク質100に対する関連ワクシニアウイルス(rVACVhgp100)、CD39およびCD69を発現するPmel+T細胞(CD39+CD69+)、またはCD39+CD69+およびrVACVhgp100のいずれかで処置したB16+マウスにおけるACT後3日目、7日目、10日目に腫瘍から単離された末期に疲弊したPD1+TIM3+の養子移入されたThy1.1+Vβ13+ ネオ抗原特異的T細胞の割合を示す3つの棒グラフである。
図10図10は、PBSまたはCD39およびCD69を発現するPmel+ T細胞(CD39+CD69+)単独または無関係なペプチドインフルエンザヌクレオプロテイン(Flu.NP)、関連するhgp100エピトープ25に対するワクシニアウイルス(hgp10025)に対するワクシニアウイルス(VACVhgp100(25))、抗CD40抗体、およびアイソタイプコントロール抗体(Rat IgG)の1またはそれ以上の様々な組み合わせで処置したマウスのACT後の日数にわたるB16+マウスの腫瘍サイズ(mm2)を示すグラフである。
図11図11は、PBSまたはPmel+ T細胞単独または無関係なインフルエンザペプチド(Irr.Pep)または関連するネオエピトープ(hgp100KVP)を負荷した骨髄由来樹状細胞(DC)との組み合わせで処置したマウスのACT後の日数にわたるB16+マウスの腫瘍サイズ(mm2)を示すグラフである。
図12A図12A~12Cは、PBS単独またはhgp100に対するワクシニアウイルス(VACVhgp100)との組み合わせ(図12A)、CD39低発現Pmel+ T細胞(CD39lo)単独またはVACVhgp100との組み合わせ(図12B)、またはCD39およびCD69を発現するPmel+ T細胞(CD39+CD69+)単独またはVACVhgp100との組み合わせ(図12C)で処理されたマウスにおけるACT後の日数にわたるC57BL/6マウスのMC38腫瘍サイズ(mm2)を示すグラフである。
図12B図12A~12Cは、PBS単独またはhgp100に対するワクシニアウイルス(VACVhgp100)との組み合わせ(図12A)、CD39低発現Pmel+ T細胞(CD39lo)単独またはVACVhgp100との組み合わせ(図12B)、またはCD39およびCD69を発現するPmel+ T細胞(CD39+CD69+)単独またはVACVhgp100との組み合わせ(図12C)で処理されたマウスにおけるACT後の日数にわたるC57BL/6マウスのMC38腫瘍サイズ(mm2)を示すグラフである。
図12C図12A~12Cは、PBS単独またはhgp100に対するワクシニアウイルス(VACVhgp100)との組み合わせ(図12A)、CD39低発現Pmel+ T細胞(CD39lo)単独またはVACVhgp100との組み合わせ(図12B)、またはCD39およびCD69を発現するPmel+ T細胞(CD39+CD69+)単独またはVACVhgp100との組み合わせ(図12C)で処置したマウスにおけるACT後の日数にわたるC57BL/6マウスのMC38腫瘍サイズ(mm2)を示すグラフである。
図13A図13A~13Bは、PBS単独または関連するhgp10025に対するワクシニアウイルス(VACVhgp100(25))との組み合わせ、および、CD39低発現Pmel+ T細胞(CD39lo)単独またはVACVhgp100(25)との組み合わせ(図13A)、または、CD39およびCD69を発現するPmel+T細胞(CD39+CD69+)単独またはVACVhgp100(25)との組み合わせ(図13B)で処置したマウスにおけるACT後の日数にわたるβ2Mノックアウト(KO)マウスの腫瘍サイズ(mm2)を示すグラフである。
図13B図13A~13Bは、PBS単独または関連するhgp10025に対するワクシニアウイルス(VACVhgp100(25))との組み合わせ、および、CD39低発現Pmel+ T細胞(CD39lo)単独またはVACVhgp100(25)との組み合わせ(図13A)、または、CD39およびCD69を発現するPmel+T細胞(CD39+CD69+)単独またはVACVhgp100(25)との組み合わせ(図13B)で処置したマウスにおけるACT後の日数にわたるβ2Mノックアウト(KO)マウスの腫瘍サイズ(mm2)を示すグラフである。
図14A図14A~14Bは、単独でまたは様々な組み合わせで、以下のいずれかで処置したマウスにおける、ACT後の日数にわたるC57BL/6マウスのB16KVP腫瘍サイズ(mm2)を示すグラフである:PBS、抗B7.1および抗B7.2抗体(抗B7.1/2)、アイソタイプコントロール抗体(IgG)、関連するhgp10025に対するワクシニアウイルス(VACVhgp100(25))、および低発現CD39 Pmel+ T細胞(CD39lo)(図14A)、またはCD39およびCD69発現Pmel+ T細胞(CD39+CD69+)(図14B)。
図14B図14A~14Bは、単独でまたは様々な組み合わせで、以下のいずれかで処置したマウスにおける、ACT後の日数にわたるC57BL/6マウスのB16KVP腫瘍サイズ(mm2)を示すグラフである:PBS、抗B7.1および抗B7.2抗体(抗B7.1/2)、アイソタイプコントロール抗体(IgG)、関連するhgp10025に対するワクシニアウイルス(VACVhgp100(25))、および低発現CD39 Pmel+ T細胞(CD39lo)(図14A)、またはCD39およびCD69発現Pmel+ T細胞(CD39+CD69+)(図14B)。
図15A図15Aは、患者の治療経過を示すフローチャートである。
図15B図15Bは、輸液製剤(Rx1およびRx3)内のCD8+TILのパーセンテージとしてのHLA-A0201拘束性GP100四量体の頻度を示すフローサイトメトリーグラフであり、ワクチンなしの1回目の静脈内治療(Rx1)およびGP100ワクチンと併用した2回目の静脈内治療(Rx3)の経過中に患者に投与されたGP100 TIL頻度に明らかな差がないことを示している。
図15C図15Cは、Rx1およびRx3内のGP100 TCRのクローン頻度を示す散布図であり、免疫優性GP100 TCRを標識した治療産物のクローン分布に明らかな差異はないことを示している。
図15D図15D~15Gは、輸液製剤(Rx1およびRx3)内のGP100 TILsのヒートマップグラフを示しており、Rx1およびRx3の治療期間中に患者に投与されたGP100 TIL頻度の表現型状態に明らかな違いがないことを示す。図には、CD39およびCD69(図15D)、CD62LおよびCD8(図15E)、TIM3およびCD8(図15F)、ならびに、CD39およびCD8(図15G)の発現を示すプロットが含まれる。このように、Rx1およびRx3の両方が、同様に分化した機能不全抗腫瘍TILを含み、このTILは、Rx3時にワクチンを投与した場合にのみ腫瘍退縮を惹起することができたが、ワクチンの非投与時(Rx1)にはできなかった。
図15E図15D~15Gは、輸液製剤(Rx1およびRx3)内のGP100 TILsのヒートマップグラフを示しており、Rx1およびRx3の治療期間中に患者に投与されたGP100 TIL頻度の表現型状態に明らかな違いがないことを示す。図には、CD39およびCD69(図15D)、CD62LおよびCD8(図15E)、TIM3およびCD8(図15F)、ならびに、CD39およびCD8(図15G)の発現を示すプロットが含まれる。このように、Rx1およびRx3の両方が、同様に分化した機能不全抗腫瘍TILを含み、このTILは、Rx3時にワクチンを投与した場合にのみ腫瘍退縮を惹起することができたが、ワクチンの非投与時(Rx1)にはできなかった。
図15F図15D~15Gは、輸液製剤(Rx1およびRx3)内のGP100 TILsのヒートマップグラフを示しており、Rx1およびRx3の治療期間中に患者に投与されたGP100 TIL頻度の表現型状態に明らかな違いがないことを示す。図には、CD39およびCD69(図15D)、CD62LおよびCD8(図15E)、TIM3およびCD8(図15F)、ならびに、CD39およびCD8(図15G)の発現を示すプロットが含まれる。このように、Rx1およびRx3の両方が、同様に分化した機能不全抗腫瘍TILを含み、このTILは、Rx3時にワクチンを投与した場合にのみ腫瘍退縮を惹起することができたが、ワクチンの非投与時(Rx1)にはできなかった。
図15G図15D~15Gは、輸液製剤(Rx1およびRx3)内のGP100 TILsのヒートマップグラフを示しており、Rx1およびRx3の治療期間中に患者に投与されたGP100 TIL頻度の表現型状態に明らかな違いがないことを示す。図には、CD39およびCD69(図15D)、CD62LおよびCD8(図15E)、TIM3およびCD8(図15F)、ならびに、CD39およびCD8(図15G)の発現を示すプロットが含まれる。このように、Rx1およびRx3の両方が、同様に分化した機能不全抗腫瘍TILを含み、このTILは、Rx3時にワクチンを投与した場合にのみ腫瘍退縮を惹起することができたが、ワクチンの非投与時(Rx1)にはできなかった。
【発明を実施するための形態】
【0008】
がんに対するACTには、患者自身の腫瘍を標的とする自己抗腫瘍T細胞のin vitroでの増殖とin vivo投与が含まれる。抗腫瘍T細胞、例えば腫瘍特異的変異(「ネオ抗原」)を標的とする抗腫瘍T細胞は、末端に分化した、疲弊した状態で存在する可能性がある。このような疲弊した抗腫瘍T細胞は、確立した腫瘍に対するACT中の有効性が限定的であり、治療後の患者のin vivoでの持続性も限定的である可能性がある。抗腫瘍T細胞を用いた従来の細胞療法では、有意な応答が得られないことがある。(i)疲弊した状態および分化した状態の一方または両方であり、腫瘍特異的抗原に対する抗原特異性を有するT細胞と、(ii)腫瘍特異的抗原に対する免疫応答を特異的に刺激するワクチンとを含む組合せ免疫療法が、in vivoで優れた抗腫瘍効果をもたらすことが見出された。腫瘍特異的抗原に対する免疫応答を特異的に刺激するワクチンの投与は、疲弊した状態および分化した状態の一方または両方であり、同じ腫瘍特異的抗原に対する抗原特異性を有するT細胞を用いたACTを増強することができる。この組合せ免疫療法の抗腫瘍効果は、ワクチン単独や、疲弊した状態および分化した状態の一方または両方を有するT細胞を単独で用いたACTよりも優れている可能性がある。このように、疲弊した状態および分化した状態の一方または両方のT細胞、あるいは遺伝子改変T細胞(TCR導入T細胞)を用いたACTは、同じ腫瘍特異的抗原に対する免疫応答を特異的に刺激するワクチンを用いて相乗的に増強することができる。本発明の方法は、腫瘍に対して持続的な免疫応答を引き起こすことができないであろう疲弊した表現型を有する抗腫瘍T細胞を用いて効果的な免疫療法を開発する際の課題を有利に克服し得る。
【0009】
本発明の方法は、有利なことに、がんによる死亡の約90%以上を引き起こす上皮がんなどの転移性がんを標的とすることができる。このようながんは、従来の免疫療法に応答しない可能性があり、単剤としての抗腫瘍ワクチンにも応答しない可能性がある。
【0010】
ワクチンと、疲弊した状態および分化した状態の一方または両方であるT細胞の投与を組み合わせることにより、本発明の方法は、疲弊した状態および/または分化した状態のT細胞の抗腫瘍活性をレスキューすることができる。この点に関して、本発明の一局面は、哺乳動物においてがんを治療または予防する方法を提供する。この方法は、哺乳動物からの腫瘍試料からT細胞を単離することを含み得る。腫瘍試料は、例えば、原発性腫瘍からの組織または転移性腫瘍の部位からの組織であってよい。このように、腫瘍試料は、吸引、生検、切除を含むがこれらに限定されない、任意の適切な手段によって得ることができる。
【0011】
単離されたT細胞は、疲弊した状態および分化した状態の一方または両方であってもよい。T細胞の疲弊は、慢性抗原刺激に応答して生じるT細胞機能不全の状態である。T細胞疲弊は、エフェクター機能の低下、抑制性受容体の持続的発現、および機能的エフェクターT細胞やメモリーT細胞とは異なる表現型によって定義される。本発明の方法においては、本明細書に記載されるように、疲弊したT細胞が標的とする抗原と同じ抗原を標的とするワクチンと疲弊したT細胞を組み合わせることにより、典型的に疲弊したT細胞が示すエフェクター機能の低下を改善または克服することができる。本発明の一局面において、単離されたT細胞は、以下のT細胞疲弊マーカーのいずれか1つ以上を発現する:(a)いずれか1つ以上をコードするRNA:4-1BB、CCL3、CD28-、CD39、CD62L-(SELL-)、CD69、CTLA4、CX3CR1、CXCL13、CXCR6、GZMA、GZMB、GZMK、IL7R-、LAG-3、LAYN、LEF1-、PD-1、PRF1、TCF7-、TIGIT、TIM-3、およびTOX;および(b)以下のタンパク質のいずれか1つ以上:4-1BB、CCL3、CD28-、CD39、CD62L-(SELL-)、CD69、CTLA4、CX3CR1、CXCL13、CXCR6、GZMA、GZMB、GZMK、IL7R-、LAG-3、LAYN、LEF1-、PD-1、PRF1、TCF7-、TIGIT、TIM-3、およびTOX。本明細書で使用される場合、T細胞疲弊の示されたマーカーの発現に関する記号「」は、T細胞疲弊の示されたマーカーの「高」(「hi」)および「中」(「med」)発現を包含し、細胞が、より疲弊していないT細胞と比較して、示されたマーカーの発現をアップレギュレートすることを意味する。アップレギュレートされた発現は、例えば、T細胞疲弊の示されたマーカーの発現における、平均対数倍変化(2を底とする)約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30、約31、約32、約33、約34、約35、または前述の値のいずれか2つの範囲、またはそれ以上の量的増加を包含し得る。本明細書で使用される場合、T細胞疲弊の示されたマーカーの発現に関する記号「-」は、示されたマーカーの発現の欠如および「低」(「lo」)発現を包含し、細胞が、より疲弊していないT細胞と比較して、示されたマーカーの発現をダウンレギュレートすることを意味する。ダウンレギュレートされた発現は、例えば、T細胞疲弊の示されたマーカーの発現における、平均対数倍変化(2を底とする)約-1、約-2、約-3、約-4、約-5、約-6、約-7、約-8、約-9、約-10、約-20、約-30、約-40、約-50、約-60、約-70、約-80、約-90、約-100、約-110、約-120、約-130、約-140、約-150、約-160、約-170、約-180、約-190、約-200、約-210、約220、約-230、約-240、約-250、約-260、約-270、約-280、約-290、約-300、約-310、約-320、約-330、約-340、約-350、約-360、約-370、約-380、約-390、約-400、約-410、約-420、約-430、約-440、約-450、約-460、約-470、約-480、約-490、約-500、約-510、約-520、約-530、約-540、約-550、約-560、約-570、約-580、約-590、約-600、または前述の値のいずれか2つ以上の範囲またはそれ以上の量的減少を包含し得る。マーカーの発現を区別するためにアイソタイプコントロールを使用することができる。所与のマーカーに対するゲート内で、下部の三分位発現を「lo」、中間の三分位を「med」、上部の三分位を「hi」と指定することができる。
【0012】
T細胞の分化とは、前駆細胞がより成熟したT細胞の特徴を獲得する過程を指す。T細胞の分化は、主要なクラスタ(例えば、以下の順序で進行する:ナイーブT細胞(TN)、Tメモリー幹細胞(TSCM)、セントラルメモリーT細胞(TCM)、エフェクターメモリーT細胞(TEM)、およびターミナルエフェクター(TTE)細胞)の連続体に沿った直線的な進行に従うが、そこでは、より分化度の低い細胞が抗原刺激に応答して、より分化度の高い子孫細胞を生じる。分化が進むにつれて、メモリーT細胞は徐々に特定の機能を獲得したり失ったりする。例えば、T細胞の分化が進むと、T細胞が生体内で機能する能力に悪影響を及ぼすと考えられている。分化したT細胞が典型的に示すエフェクター機能の低下は、本発明の方法において、本明細書に記載されるように、分化したT細胞と、分化したT細胞が標的とする抗原と同じ抗原を標的とするワクチンとを組み合わせることにより、改善または克服され得る。本発明の一局面において、単離されたT細胞は終末分化している。
【0013】
本発明の一局面において、単離されたT細胞は、以下の分化マーカーのいずれか1つ以上を発現する:(a)以下のいずれか1つ以上をコードするRNA:CCR7-、CD27-、CD45RA、CD45RO-、CD95、EOMES-、FOXO1-、KLRG1、T-BET、TCF7-、TOX、およびZEB2;ならびに(b)以下のタンパク質のいずれか1つ以上:CCR7-、CD27-、CD45RA、CD45RO-、CD95、EOMES-、FOXO1-、KLRG1、T-BET、TCF7-、TOX、およびZEB2。本明細書において、T細胞分化マーカーの発現に関する記号「」は、T細胞分化マーカーの「高発現」(「hi」)および「中発現」(「med」)を包含し、その細胞が、分化の少ないT細胞と比較して、示されたマーカーの発現をアップレギュレートすることを意味する。アップレギュレートされた発現は、例えば、T細胞分化の示されたマーカーの発現が、平均対数倍変化(2を底とする)約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30、約31、約32、約33、約34、約35、または前述の値のいずれか2つの範囲、またはそれ以上の量的増加を包含し得る。本明細書で使用される場合、T細胞分化の示されたマーカーの発現に関する記号「-」は、示されたマーカーの発現の欠如および「低」(「lo」)発現を包含し、細胞が、より分化していないT細胞と比較して、示されたマーカーの発現をダウンレギュレートすることを意味する。ダウンレギュレートされた発現は、例えば、T細胞分化の示されたマーカーの発現が、平均対数倍変化(2を底とする)約-1、約-2、約-3、約-4、約-5、約-6、約-7、約-8、約-9、約-10、約-20、約-30、約-40、約-50、約-60、約-70、約-80、約-90、約-100、約-110、約-120、約-130、約-140、約-150、約-160、約-170、約-180、約-190、約-200、約-210、約220、約-230、約-240、約-250、約-260、約-270、約-280、約-290、約-300、約-310、約-320、約-330、約-340、約-350、約-360、約-370、約-380、約-390、約-400、約-410、約-420、約-430、約-440、約-450、約-460、約-470、約-480、約-490、約-500、約-510、約-520、約-530、約-540、約-550、約-560、約-570、約-580、約-590、約-600、または前述の値のいずれか2つの範囲、またはそれ以上の量的減少を包含し得る。本発明の他の一局面に関して本明細書に記載するように、マーカー発現を区別するためにアイソタイプコントロールを使用することができる。
【0014】
単離されたT細胞は、哺乳動物からの腫瘍試料によって発現された腫瘍特異的抗原に対する抗原特異性を有することができる。本明細書で使用される「抗原特異的」および「抗原特異性」という語句は、T細胞が抗原またはそのエピトープに特異的に結合し、免疫学的に認識することができ、抗原またはそのエピトープへのT細胞の結合が免疫応答を惹起することを意味する。
【0015】
「腫瘍特異的抗原」または「腫瘍抗原」という用語は、本明細書で使用される場合、抗原が腫瘍と関連するように、腫瘍細胞によって単独または優勢に発現または過剰発現される任意の分子(例えば、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、脂質、炭水化物など)を指す。腫瘍特異的抗原はさらに、正常細胞、非腫瘍細胞、または非がん細胞によっても発現され得る。しかし、そのような場合、正常細胞、非腫瘍細胞、または非がん細胞による腫瘍特異的抗原の発現は、腫瘍による発現ほど強固ではない。この点で、腫瘍細胞は、正常細胞、非腫瘍細胞、または非がん細胞による抗原の発現と比較して、抗原を過剰発現するか、または有意に高いレベルで抗原を発現し得る。また、腫瘍特異的抗原はさらに、異なる発生状態または成熟状態の細胞によっても発現され得る。例えば、腫瘍特異的抗原は、成体宿主には通常見られない胚期や胎児期の細胞によっても追加的に発現され得る。あるいは、腫瘍特異的抗原は、通常、成体宿主には存在しない幹細胞または前駆細胞によって追加的に発現され得る。
【0016】
本発明の一局面において、腫瘍特異的抗原は腫瘍特異的ネオ抗原であってもよい。ネオ抗原は、発現タンパク質のがん特異的変異から生じる腫瘍特異的抗原の一種である。「ネオ抗原」という用語は、腫瘍細胞によって発現されるペプチドまたはタンパク質であって、正常な(がんでない)細胞によって発現される対応する野生型(変異していない)ペプチドまたはタンパク質と比較して、1つ以上のアミノ酸改変を含むものに関する。ネオ抗原は患者特異的であってもよい。本発明の一局面において、腫瘍特異的ネオ抗原は、哺乳動物の腫瘍に特有の1つ以上の体細胞変異によってコードされる個体ネオ抗原(personal neoantigen)であり、任意に、腫瘍特異的ネオ抗原は腫瘍特異的ドライバー変異ではない。
【0017】
本発明の一局面において、腫瘍特異的抗原は腫瘍特異的ドライバー変異を有する抗原であり得る。腫瘍特異的ドライバー変異とは、正常(非がん)細胞ではなく腫瘍細胞で認められ、細胞増殖と腫瘍成長を誘導する変異である。ドライバー変異は、それを持つ腫瘍細胞に増殖の利点を与える。腫瘍特異的ドライバー変異の例としては、変異ALK、変異APC、変異ATRX、変異BRAF、変異CDKN2A、変異DDX3X、変異DNMT3A、変異EGFR、変異ESR1、変異EWSR1、変異FGFR1、変異FLI1、変異HRAS、変異IDH1、変異IDH2、変異KMT2C、変異KRAS、変異MYC、変異NOTCH1、変異NRAS、変異PIK3CA、変異PTCH1、変異PTEN、変異RB1、変異RUNX1、変異SETD2、変異SMARCA4、変異STK11、および変異TP53が挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
本発明の一局面において、本方法は、腫瘍特異的抗原の発現について腫瘍をスクリーニングすることを含む。抗原の発現について腫瘍をスクリーニングする方法は、当該分野で公知である。例えば、腫瘍特異的抗原の発現について腫瘍をスクリーニングすることは、腫瘍の細胞の全エクソーム、全ゲノム、または全トランスクリプトームを配列決定することを含み得る。配列決定は、当技術分野で公知の任意の適切な方法で実施することができる。本発明の方法において有用であり得る配列決定技術の例には、次世代配列決定(NGS)(「超並列配列決定技術」とも呼ばれる)または第3世代配列決定が含まれる。
【0019】
本発明の一局面において、本方法は任意に、単離された腫瘍抗原特異的T細胞の数を拡大することを含む。T細胞の数の拡大は、本技術分野で知られている多くの方法のいずれかによって達成することができ、例えば、米国特許第8,034,334号;米国特許第8,383,099号;米国特許第11,401,503号;Dudleyら、J. Immunother.26:332-42(2003);およびRiddellら、J. Immunol. Methods, 128:189-201(1990)に記載されている。例えば、T細胞の数の拡大は、OKT3抗体、IL-2、およびフィーダーPBMC(例えば、放射線照射された同種PBMC)を用いてT細胞を培養することにより実施される。本発明の一局面において、本方法は、単離された腫瘍抗原特異的T細胞の数を拡大することをさらに含む。
【0020】
本方法は、(i)単離されたT細胞、および(ii)単離されたT細胞が抗原特異性を有する腫瘍特異的抗原に対する免疫応答を特異的に刺激するワクチンを哺乳動物に投与することを含むことができる。本発明の一局面において、本方法は、哺乳動物にT細胞を静脈内または腹腔内に投与することを含む。本発明の一局面において、単離されたT細胞は腫瘍浸潤リンパ球(TIL)である。本発明の一局面において、単離されたT細胞はCD4+である。本発明の別の一局面では、単離されたT細胞はCD8+である。
【0021】
本方法は、単離されたT細胞および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を投与することを含むことができる。注射用細胞のための薬学的に許容される担体としては、例えば、通常の生理食塩水(水中約0.90%w/vのNaCl、水中約300mOsm/LのNaCl、または水1リットル当たり約9.0gのNaCl)、NORMOSOL R電解質溶液(Abbott, Chicago, IL)、PLASMA-LYTE A(Baxter, Deerfield, IL)、水中約5%のブドウ糖、または乳酸リンゲルなどの任意の等張性担体を挙げることができる。一実施形態において、薬学的に受容可能なキャリアは、ヒト血清アルブミンを補充される。
【0022】
ワクチンは、腫瘍特異的抗原に対する免疫応答を特異的に刺激する任意のタイプのワクチンであり得る。ワクチンの例としては、がん細胞ワクチン、結合体多糖類ワクチン、樹状細胞ワクチン、DNAワクチン、不活化ワクチン(任意のタイプ)、生-弱毒化ワクチン、ナノ粒子ワクチン、ペプチドワクチン、タンパク質ワクチン、組換えワクチン、RNAワクチン、サブユニットワクチン、およびウイルスワクチンが挙げられるが、これらに限定されない。ウイルスワクチンの例としては、アデノウイルス(ADV)ワクチン、ワクシニアウイルス(VACV)ワクチン、および鳥痘ウイルスワクチンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
本発明の一局面において、本方法は、哺乳動物にワクチンの単回用量以下を投与することを含む。本発明の他の一局面において、本方法は、2、3、またはそれ以上の用量のワクチンを哺乳動物に投与することを含む。本発明の一局面において、本方法は、T細胞が哺乳動物に投与される最初の日から1日おきにワクチンを哺乳動物に投与することを含む。局面において、本方法は、哺乳動物にワクチンを筋肉内、皮下、静脈内または腹腔内に投与することを含み得る。
【0024】
本発明の一局面において、本方法は、哺乳動物にアジュバントを投与することをさらに含む。アジュバントは、腫瘍特異的抗原に対する免疫応答の大きさおよび耐久性を増強し得る。本発明の一局面において、アジュバントは、抗CD40抗体または抗PD-1抗体を含む。
【0025】
本発明の一局面において、本方法は、単離されたT細胞と、腫瘍特異的抗原に対する免疫応答を特異的に刺激するワクチンとを、互いに30日以内に投与することを含む。本発明の一局面において、本方法は、単離されたT細胞およびワクチンを、互いから30日、29日、28日、27日、26日、25日、24日、23日、22日、21日、20日、19日、18日、17日、16日、15日、14日、13日、12日、11日、10日、9日、8日、7日、6日、5日、4日、3日、2日、または1日以内に投与することを含み得る。例えば、本方法は、単離されたT細胞とワクチンとを、互いに48時間以内、互いに36時間以内、互いに24時間以内、または互いに12時間以内に投与することを含み得る。本発明の一局面において、本方法は、単離されたT細胞を投与する前の14日、13日、12日、11日、10日、9日、8日、7日、6日、5日、4日、3日、2日、または1日以内に、腫瘍特異的抗原に対する免疫応答を特異的に刺激するワクチンを投与することを含み得る。本発明の一局面において、本方法は、単離されたT細胞を投与する前の48時間、36時間、24時間、または12時間以内に、腫瘍特異的抗原に対する免疫応答を特異的に刺激するワクチンを投与することを含み得る。
【0026】
本発明の一局面において、単離されたT細胞とワクチンは同時に哺乳動物に投与される。本発明の一局面において、単離されたT細胞とワクチンは、同じ組成物中で一緒に哺乳動物に投与される。本発明の一局面において、単離されたT細胞とワクチンは、同時に、しかし別々に哺乳動物に投与される。
【0027】
本発明の一局面では、単離されたT細胞とワクチンは哺乳動物に連続して投与される。例えば、ワクチンが哺乳動物に投与される前に、単離されたT細胞が哺乳動物に投与され得る。本発明の一局面において、単離されたT細胞は、ワクチンが哺乳動物に投与される前の24時間以内に哺乳動物に投与される。本発明の一局面において、ワクチンは、単離されたT細胞が哺乳動物に投与される前に哺乳動物に投与される。例えば、単離されたT細胞は、ワクチンが哺乳動物に投与された後24時間以内に哺乳動物に投与され得る。
【0028】
本発明の方法は、有利なことに、必ずしも疲弊した状態および分化した状態の一方または両方ではないT細胞の抗腫瘍活性を増強することもできる。例えば、本発明の方法は、外来性受容体を発現するように改変されているが、必ずしも疲弊した状態および分化した状態の一方または両方ではないT細胞の抗腫瘍活性も増強し得る。
【0029】
本発明の一局面は、腫瘍を有する哺乳動物においてがんを治療または予防する方法を提供する。本方法は、腫瘍を有する哺乳動物からの生物学的試料からT細胞を単離することを含み得る。本発明の一局面において、生物学的試料は腫瘍の試料である。腫瘍試料は、本発明の他の一局面に関して本明細書に記載されるようなものであってよい。単離されたT細胞は、TILであってもよい。本発明の一局面において、生物学的試料は末梢血試料である。
【0030】
本発明の一局面において、生物学的試料から単離されたT細胞は、疲弊した状態および分化した状態の一方または両方であってもよいが、好ましくは、生物学的試料から単離されたT細胞は、疲弊した状態および分化した状態ではなく、その代わりに、あまり分化していない表現型を有していてもよい。
【0031】
本方法は、外来性受容体を発現するT細胞を産生するために、哺乳動物の腫瘍によって発現される腫瘍特異的抗原に対する抗原特異性を有する外来性受容体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を、単離されたT細胞に導入することを含み得る。「外来性」とは、その受容体がT細胞に固有でない(天然に存在しない)ことを意味する。腫瘍特異的抗原は、腫瘍特異的ネオ抗原または腫瘍特異的ドライバー変異を有する抗原であってもよい。抗原特異性および腫瘍特異的抗原は、本発明の他の一局面に関して本明細書に記載したとおりであり得る。
【0032】
本発明の一局面において、腫瘍特異的抗原に対する抗原特異性を有する外来性受容体は、T細胞受容体(TCR)である。外来性TCRは組換えTCRであってもよい。組換えTCRとは、1つ以上の外来性TCRα鎖、β鎖、γ鎖、および/またはδ鎖コード遺伝子の組換え発現により生成されたTCRである。組換えTCRは、単一の哺乳動物種に完全に由来するポリペプチド鎖を含むことができ、または組換えTCRは、2つの異なる哺乳動物種由来のTCRに由来するアミノ酸配列から構成されるキメラTCRまたはハイブリッドTCRであることができる。例えば、抗原特異的TCRはヒトTCRに由来する可変領域とマウスTCRの定常領域を含み、TCRを「マウス化」することができる。腫瘍特異的抗原に対する抗原特異性を有する外来性TCRであれば、本発明の方法に有用である。TCRは一般に、TCRのα鎖、TCRのβ鎖、TCRのγ鎖、TCRのδ鎖、またはそれらの組み合わせなどの2つのポリペプチド(すなわち、ポリペプチド鎖)を含む。このようなTCRのポリペプチド鎖は本技術分野で公知である。TCRは、腫瘍特異的抗原またはそのエピトープに特異的に結合し、免疫学的に認識することができれば、任意のアミノ酸配列を含むことができる。本方法に有用な外来性TCRの例としては、例えば以下の文献に開示されているものが挙げられるが、これらに限定されるものではない:米国特許第7,820,174号;同第7,915,036号;同第8,088,379号;同第8,216,565号;同第8,431,690号;同第8,613,932号;同第8,785,601号;同第9,128,080号;同第9,345,748号;同第9,487,573号;同第9,879,065号;同第11,306,131号および米国特許出願公開第2013/0116167号に開示されているものが挙げられ、これらの各特許は参照により本明細書に組み込まれる。
【0033】
本発明の一実施形態において、外来性受容体はキメラ抗原受容体(CAR)である。典型的には、CARは、抗体の抗原結合ドメイン、例えば、TCRの膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインと融合した単鎖可変フラグメント(scFv)を含む。したがって、CARの抗原特異性は、がん抗原またはそのエピトープに特異的に結合するscFvによってコードされ得る。腫瘍特異的抗原に対する抗原特異性を有する任意のCARが、本発明の方法に有用であり得る。本発明の方法に有用なCARの例としては、例えば、米国特許第8,465,743号;同第9,266,960号;同第9,765,342号;同第9,359,447号;同第9,868,774号;および同第10,287,350号に開示されているものが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらの各特許は参照により本明細書に組み込まれる。
【0034】
外来性受容体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸は、例えば、Green and Sambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual (4th Ed.), Cold Spring Harbor Laboratory Press (2012)に記載されているように、遺伝子編集、トランスフェクション、形質転換、または形質導入などの任意の適切な技術によって単離されたT細胞に導入され得る。多くのトランスフェクション技術が本技術分野で知られており、例えば、リン酸カルシウムDNA共沈;DEAE-デキストラン;エレクトロポレーション;カチオン性リポソーム媒介トランスフェクション;タングステン粒子促進微粒子ボンバードメント;およびリン酸ストロンチウムDNA共沈が挙げられる。ファージまたはウイルスベクターは、その多くが市販されている適切なパッケージング細胞中で感染性粒子を増殖させた後、T細胞に導入することができる。
【0035】
本方法は任意に、外来性受容体を発現するT細胞の数を増加させることを含んでいてもよい。T細胞の数を拡大することは、本発明の他の一局面に関して本明細書に記載したとおり実施することができる。本発明の一実施形態では、本方法は、外来性受容体を発現するT細胞の数を拡大することを含む。
【0036】
本方法はさらに、(i)外来性受容体を発現するT細胞、および(ii)外来性受容体が抗原特異性を有する腫瘍特異的抗原に対する免疫応答を特異的に刺激するワクチンを哺乳動物に投与することを含む。ワクチンは、本発明の他の一局面に関して本明細書に記載したとおりであってよい。
【0037】
本方法は、(i)外来性受容体を発現するT細胞および(ii)ワクチンを、互いに30日以内に哺乳動物に投与することを含み得る。本発明の一局面において、本方法は、外来性受容体を発現するT細胞とワクチンとを、互いに30日、29日、28日、27日、26日、25日、24日、23日、22日、21日、20日、19日、18日、17日、16日、15日、14日、13日、12日、11日、10日、9日、8日、7日、6日、5日、4日、3日、2日、または1日以内に投与することを含み得る。例えば、本方法は、外来性受容体を発現するT細胞とワクチンとを、互いに48時間以内、互いに36時間以内、互いに24時間以内、または互いに12時間以内に投与することを含み得る。T細胞の投与およびワクチンの投与は、本発明の他の一局面に関して本明細書に記載したとおりであってよい。本発明の一局面において、本方法は、外来性受容体を発現するT細胞を投与する前に、14日、13日、12日、11日、10日、9日、8日、7日、6日、5日、4日、3日、2日、または1日以内に、腫瘍特異的抗原に対する免疫応答を特異的に刺激するワクチンを投与することを含み得る。本発明の一局面において、本方法は、外来性受容体を発現するT細胞を投与する前の48時間、36時間、24時間、または12時間以内に、腫瘍特異的抗原に対する免疫応答を特異的に刺激するワクチンを投与することを含むことができる。
【0038】
本明細書で使用される「治療する」および「予防する」という用語、ならびにそれらに由来する語は、必ずしも100%または完全な治療または予防を意味するものではない。むしろ、本技術分野において当業者が潜在的な利益または治療効果を有すると認識する治療または予防の程度は様々である。この点で、本発明の方法は、哺乳動物におけるがんの任意の量または任意のレベルの治療または予防を提供し得る。さらに、本発明の方法によって提供される治療または予防は、治療または予防される1つ以上のがんまたはがんの症状の治療または予防を含み得る。例えば、治療または予防は、腫瘍の退縮を促進することを含み得る。また、本明細書の目的上、「予防」は、がん、またはその症状、状態、もしくは再発の発症を遅延させることを包含し得る。
【0039】
がんは、有利には、以下のいずれかを含む任意のがんであり得る。急性リンパ球がん、急性骨髄性白血病、肺胞横紋筋肉腫、骨がん、脳腫瘍、乳がん、肛門、肛門管、または肛門直腸のがん、眼のがん、肝内胆管のがん、関節のがん、頸部、胆嚢、または胸膜のがん、鼻、鼻腔、または中耳のがん、口腔のがん、膣のがん、外陰部のがん、胆管がん、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性がん、大腸がん、食道がん、子宮頸がん、胃がん、胃腸カルチノイド腫瘍、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、腎臓がん、喉頭がん、肝臓がん、肺がん(例えば非小細胞肺がん)、悪性中皮腫、黒色腫、多発性骨髄腫、上咽頭がん、非ホジキンリンパ腫、中咽頭がん、卵巣がん、陰茎がん、膵臓がん、腹膜がん、大網がん、腸間膜がん、咽頭がん、前立腺がん、直腸がん、腎臓がん、皮膚がん、小腸がん、軟部組織がん、胃がん、精巣がん、甲状腺がん、子宮がん、尿管がん、膀胱がん、固形腫瘍、および液状腫瘍。好ましくは、癌は上皮性のがんである。一実施形態において、がんは、胆管がん、黒色腫、大腸がん、直腸がん、乳がん、肺がん、肛門がん、食道がん、または胃がんである。好ましくは、がんは腫瘍特異抗原を発現する。本発明の一局面において、がんはウイルス関連がんである。ウイルス関連がんには、HBV、HCV、HIV、HPV、HTLV、HHV8、MCPyVおよびEBV関連がんが含まれるが、これらに限定されない。
【0040】
本方法で言及される哺乳動物は、任意の哺乳動物であり得る。本明細書で使用される場合、用語「哺乳動物」は、マウスおよびハムスターのような齧歯目の哺乳動物、ならびにウサギのようなLogomorpha目の哺乳動物を含むが、これらに限定されない任意の哺乳動物を指す。哺乳動物は、ネコ目(ネコ)およびイヌ目(イヌ)を含む食肉目(Carnivora)のものであることが好ましい。好ましくは、哺乳動物は、ウシ目(ウシ)およびブタ目(ブタ)を含む偶蹄目(Artiodactyla)のもの、またはウマ目(ウマ)を含む偶蹄目(Perssodactyla)のものである。好ましくは、哺乳動物は霊長目、ネコ目、シモ目(サル)、または人類目(ヒトおよび類人猿)のものである。より好ましい哺乳動物はヒトである。特に好ましい一実施形態において、哺乳動物は腫瘍特異的抗原を発現する患者である。
【0041】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するが、当然ながら、その範囲をいかなる形でも限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例
【0042】
以下の材料および方法は、実施例1~13に記載される実験において採用された。
【0043】
マウスおよび腫瘍株
B16黒色腫マウス腫瘍株を、ヒトGP100エピトープ配列をそのマウス対応部位に挿入することによって改変し、Pmel TCRトランスジェニックマウスT細胞によって標的化され得るネオエピトープとした(EGSRNQDWL(SEQ ID NO:1)→KVPRNQDWL(SEQ ID NO:2)(Hanada et al, JCI Insight, 4(10): e124405 (2019))。
【0044】
マウスおよびヒトのgp100の両方に由来するペプチドエピトープ25~33を認識するT細胞受容体を発現するPmelマウス系統のマウスを、排出されたT細胞を得るために使用した。マウス腫瘍株B16KVP(または「B16」)(ヒト黒色腫モデル)およびMC38KVP(または「MC38」)マウス腫瘍株(ヒト大腸がんモデル)を、腫瘍進行に対する治療の有効性を試験するために使用した。B16とMC38はともにC57BL/6バックグラウンドマウス由来で、Pmel-1 T細胞に認識される抗原エピトープを発現している。腫瘍治療実験には、野生型C57BL/6マウスおよびb2M KOマウスを用いた。
【0045】
B16およびMC38細胞株は、完全培地(CM):10%FBS、1mMピルビン酸ナトリウム(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)、1X非必須アミノ酸(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)、55μM 2-メルカプトエタノール(ギブコ社製)、1X抗生物質-抗真菌剤(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)、および50μg/mlゲンタマイシン(ギブコ社製)を添加したRPMI1640において培養した。改変B16細胞株は、ブラステイジンS(10μg/ml;インビボジェン社製)またはピューロマイシン(5μg/ml;インビボジェン社製)を添加したCM中で維持した。
【0046】
細胞培養
Pmel TCRトランスジェニックマウスを、ACT用のT細胞として使用した。マウスからの脾臓細胞を単細胞懸濁により単離した。Hgp100ネオエピトープ(KVPRNQDWL)(SEQ ID NO: 2)を10μg/mLの濃度で細胞懸濁液に添加し、30 IU/ml組換えヒトIL-2(rhIL-2; Prometheus Laboratories)とともにCM中で培養した。5日目に細胞を分割し、24ウェルプレートで抗CD3抗体と抗CD28抗体を用いて再刺激した。10日目(治療日)に、Pmelマウスから疲弊したT細胞を得て、CD39発現、CD39とCD69の高共発現、またはPD1とTIM3の共発現に基づいてFACSで選別した。CD39loおよび陰性のT細胞、またはCD39/CD69低発現T細胞をソートすることにより、あまり疲弊していないT細胞を得た。
【0047】
養子細胞療法
養子細胞療法(ACT)を、図2Aに示すように実施した。疲弊したT細胞を得るためにPmelマウスを用い、腫瘍を有するB16、MC38、またはβ2M KOマウスのいずれかをレシピエントとして用いた。マウスに5×105個の腫瘍細胞を皮下注射した。10日後、腫瘍を持つマウスは5Gyの全身照射を受けた。腫瘍接種後11日目に、2×107 PFUの組換えヒトgp100ワクチニア(rVVhgp100)と共に、あるいはhgp100ネオエピトープを発現する1E8 PFUの組換えアデノウイルスを用いて、あるいは抗CD40アゴニスト抗体(i.p.またはi.v.)とともにペプチドワクチン(i.p.またはi.v.)を用いて、疲弊したまたは疲弊していない培養Pmel T細胞(マウスあたり1E6 T細胞)をi.v.投与しマウスを治療した。さらに、180,000 IUのrhIL-2を細胞移植後3日間毎日マウスにi.p.注射した。
【0048】
ACT相補ワクチン接種または免疫調節剤治療
ACTと組み合わせて、図2Aに示すように、PBS、ワクチン、抗体、およびペプチドの組み合わせをマウスに注射した。使用したネオ抗原ワクチンは、ヒト糖タンパク質100に対するワクシニアウイルス(r.VACVhgp100)、ヒト糖タンパク質100アミノ酸25-33エピトープに対するワクシニアウイルス(VACVhgp100(25))、無関係なHLA-A2拘束性hgp100エピトープに対するワクシニアウイルス(VACVhgp100(209)irr.)、ヒト糖タンパク質100に対するアデノウイルス(ADVhgp100)、関連するヒト糖タンパク質100アミノ酸25-33エピトープ(DC+hgp100KVPPep)または関連しないインフルエンザウイルスペプチド(DC+Irr.Pep)のいずれかで4時間のペプチドパルシングを介して負荷した骨髄由来樹状(BMDC)であり、これらを、2E7 PFUの濃度で、注入日に1回静脈内(i.v.)注射した。抗CD40抗体、抗PD1抗体、抗B7.1抗体、抗B7.2抗体(抗B7.1/2抗体)、アイソタイプコントロール(IgG)抗体は、100μgを腹腔内(i.p.)で投与し、注入当日から1日おきに3回、または注入当日に1回静脈内(i.v.)で投与した。使用したペプチドは、ヒト糖タンパク質100(hgp100)ペプチドまたはインフルエンザ核タンパク質(Flu.NP)ペプチドで、注入当日に1回100μgの濃度で皮下(s.c.)または静脈内(i.v.)注射した。
【0049】
腫瘍サイズの評価
腫瘍の処置および測定は、二重盲検法で独立した研究者によって実施された。垂直な2つの直径をノギスを用いて測定し、腫瘍サイズを2つの直径の積で計算した。
【0050】
生存率評価
生存率を、各処置群におけるACT後の各日に生存しているマウス(n=5)の割合を測定することにより評価した。
【0051】
統計
群間の比較は、Wilcox順位和検定を使用して行った。図中、NS、*、**、および***は、それぞれ、有意ではない、p<0.05、<0.01、および<0.001を示す。
【0052】
実施例1
本実施例は、終末疲弊したT細胞のモデルとしてのCD39hi Pmel T細胞の使用を示す。
【0053】
終末疲弊したT細胞のモデルを確立するために、メラノサイトタンパク質(Pmel)変異を有する系統のマウスに、100μg/mlのヒト糖タンパク質100(hgp100)ペプチドを注射した。5日後、これらのマウスに抗CD3/抗CD28抗体を注射した。11日目に、低レベル(CD39lo)、中レベル(CD39med)または高レベル(CD39hi)のCD39を発現するPmel T細胞を移植することにより、B16+マウスをACTで処置した。CD39の発現を区別するためにアイソタイプコントロールを用いた。CD39ゲート内では、下位3分位の発現をCD39lo、中位3分位をCD39med、上位3分位をCD39hiとした。
【0054】
次に、メラノーマのモデルであるB16腫瘍保有マウスに、Pmelマウスから抽出した移入CD39medまたは高CD39hi T細胞を注入し、続いてインターロイキン2(IL-2)を3回注射し、腫瘍の成長をモニターした(図2A)。CD39low、CD39med、およびCD39hiの疲弊したT細胞は、in vitroで2回刺激した後、B16+腫瘍を有するマウスに中等度の細胞量である7.5e5-1e6の刺激された細胞を投与して、表現型T細胞の不全について試験した。Pmel+ T細胞を単離し、図2Bに示すように、CD39の発現レベルによって低(CD39lo)、中(CD39med)、高(CD39hi)に分類した。CD39lo細胞はCD39hi細胞よりもTIM3とPD1の発現レベルが低かった。CD39loとCD39hiのT細胞をB16hgp100 Mel細胞と共培養し、細胞の疲弊の指標として4-1BBの活性化を測定した。CD39lo T細胞はCD39hi T細胞よりも4-1BB活性化が高く、したがってあまり疲弊していなかった(図2C)。
【0055】
腫瘍サイズを、ACT処置後数日間モニターした。CD39med、CD39hi、PBS、およびバルクコントロール処置は、B16hgp100腫瘍の進行を抑制しなかった。しかしながら、CD39lo処置は腫瘍の進行を有意に遅延させた(図3A)。CD39hi+抗PD1抗体およびCD39hi+抗CD40抗体処置は、CD39hiの疲弊したT細胞単独よりも腫瘍の進行を抑制したが、あまり疲弊していないCD39lo細胞単独ほどではなかった(図3B)。これらの結果は、PmelマウスのT細胞が疲弊したT細胞の有効なモデルとして機能することを示している。
【0056】
実施例2
本実施例は、hgp100ネオ抗原ワクチンがCD39hiの疲弊した抗腫瘍T細胞をレスキューできることを示す。
【0057】
CD39hi+hgp100ネオ抗原ワクチン接種(r.VACVhgp100)の治療群を追加して、本実施例1に記載のACT治療を繰り返した。以下の投与量を、図4Aおよび4Bに示す該当する治療群に投与した:VACV:2E7PFU(1回);抗CD40抗体100μg(i.p.)3回;抗PD1抗体100μg(i.p.)3回。CD39hi+r.VACVhgp100治療群は40日後に100%の確率で生存し、CD39loは80%の確率で生存し、残りの治療群はすべて20%以下の確率で生存した(図4A)。また、CD39hi+r.VACVhgp100治療は、他のすべての治療群よりも効果的に腫瘍の進行を抑制し、腫瘍を縮小させた唯一の治療であった(図4B)。この結果から、バルクでの腫瘍治療効果は、あまり疲弊していないCD39loT細胞によって概ね達成されることが示された。また、この結果は、VACV.hgp100 i.v.がCD39hi Pmel抗腫瘍T細胞をレスキューすることも示した。これらの実験のマウスは腫瘍が小さかった。
【0058】
実施例3
本実施例は、CD39hiの疲弊した抗腫瘍T細胞のACTを用いた、異なるネオ抗原ワクチンモダリティの試験を示す。
【0059】
ACTを用いたネオ抗原ワクチンモダリティをさらに試験するために、約200mmの大きな腫瘍を有するマウスを用いてさらなる実験を行った。B16+マウスに、CD39hi(より疲弊した)またはCD39lo(あまり疲弊していない)T細胞を注入し、組み合わせて以下のいずれかを与えた:(i)細胞注入当日にVACV100hgpを単回静脈内(i.v.)投与、(ii)細胞注入当日にADVhgp100を単回i.v.投与、(iii)細胞注入当日から1日おきに抗CD40抗体100μgを3回腹腔内投与、または(iv)注入当日に100μgのhgp100ペプチドを1回皮下(s.c.)投与し、細胞注入当日から1日おきに100μgの抗CD40抗体を3回腹腔内(i.p.)投与。
【0060】
CD39hi+VACV100hgp処置は、対照のCD39hi処置単独と比較して、腫瘍の進行を有意に遅延させることができた(図5A)。CD39hi+ADVhgp100処置(図5B)および種々の抗CD40抗体処置(図5C)は、いずれも腫瘍進行をいくらか遅延させたが、いずれもCD39hi+VACV100hgp処置よりも効果的ではなかった。ACT後50日目の生存率は、CD39lo+VACV100hgp(80%)およびCD39hi+VACV100hgp(60%)治療が最も高かったが、CD39lo+ADVhgp100(40%)およびCD39hi+ADVhgp100(20%)治療も、他のすべての治療(0%)に比べて生存を増加させた(図5D)。CD39loのあまり疲弊していないT細胞のみを対照とした。これらの結果は、ネオ抗原特異的ワクチンが、疲弊したT細胞の能力をレスキューして腫瘍の進行を遅らせ、生存の確率を高めることができることを示していた。
【0061】
実施例4
本実施例は、ネオ抗原ワクチンが疲弊した抗腫瘍T細胞の異なるサブセットをレスキューすることを示す。
【0062】
ワクチンによるレスキューは、CD39hiの疲弊した抗腫瘍T細胞だけに限定されない。
【0063】
実施例1に記載の担癌マウスを、PD1TIM3細胞(単独またはrVACV100hgpとの組み合わせ)またはPBS(単独またはrVACV100hgpとの組み合わせ)で処置した。PD1TIM3の終末疲弊したネオ抗原特異的T細胞もネオ抗原ワクチンでレスキューした(図6B)。
【0064】
実施例1に記載の担癌マウスを、CD39CD69細胞(単独またはrVACV100hgpとの組み合わせ)またはPBS(単独またはrVACV100hgpとの組み合わせ)で処置した。ネオ抗原ワクチンはまた、CD39CD69の終末疲弊したネオ抗原特異的T細胞の腫瘍進行をレスキューした(図6C)。
【0065】
実施例1に記載の担癌マウスを、CD39lo細胞(単独またはrVACV100hgpとの組み合わせ)またはPBS(単独またはrVACV100hgpとの組み合わせ)で処置した。CD39lo治療単独でも腫瘍の進行を阻害したが、ネオ抗原ワクチンもまた、CD39loのあまり疲弊していない抗腫瘍細胞をレスキューした(図6A)。
【0066】
実施例5
本実施例は、関連するネオエピトープが、ACT中のワクチンによる疲弊したT細胞のレスキューに必要であることを示す。
【0067】
疲弊したT細胞のレスキューに必要なネオエピトープを決定するために、関連性のないHLA-A2拘束性hgp100エピトープ(hgp100209)および関連性のあるhgp100エピトープ(hgp10025)を試験した。本実施例1に記載の担癌マウスを、PBS単独もしくはhgp100209またはhgp10025との組み合わせで処置するか、またはCD39loT細胞単独もしくはhgp100209またはhgp10025との組み合わせで処置した。
【0068】
CD39loのあまり疲弊していないT細胞は、関連するVACVhgp100(25)との組み合わせにおいてのみ、腫瘍の進行を阻害することができた(図7A)。CD39loT細胞の単独処置は、この実験では腫瘍の進行を有意に阻害することができなかった(図7A)。CD39CD69の疲弊したネオ抗原特異的T細胞もまた、関連するVACVhgp100(25)との組み合わせでのみ腫瘍の進行を抑制できた(図7B)。これらの結果は、疲弊したT細胞の抗腫瘍活性のレスキューには、関連するネオエピトープがネオ抗原ワクチンに必要であることを示した。
【0069】
実施例6
本実施例は、ネオ抗原ワクチンが、ACT後のCD8の疲弊したT細胞の頻度を増加させることを実証する。
【0070】
本実施例1に記載の担癌マウスを、CD39lo T細胞単独、rVACVhgp100単独、またはCD39lo T細胞とrVACVhgp100の組み合わせで処置し(図8A~8C)、あるいはCD39CD69T細胞単独、rVACVhgp100単独、またはCD39CD69T細胞とrVACVhgp100の組み合わせで処置した(図8D~8F)。
【0071】
疲弊した抗腫瘍T細胞の異なるサブグループに対するネオ抗原ワクチンの効果をさらに調べるために、Thy1.1Vβ13CD8移入T細胞の割合を、ACT後のマウスの脾臓、流入領域リンパ節、および腫瘍における全CD8+T細胞と比較した。
【0072】
CD39loのあまり疲弊していないT細胞のACT注入に続くrVACVhgp100処理は、ACT後3、7および10日目のB16マウスの脾臓(図8A)、流入領域リンパ節(図8B)および腫瘍(図8C)における養子移入T細胞の頻度を増加させた。CD39loのあまり疲弊していないT細胞を用いた場合、ACT後10日目の移入T細胞に差はない。機能不全に分化したCD39hiまたはCD39CD69T細胞をワクチンとのACTに用いた場合、その差はより明らかになる。CD39CD69の高度に疲弊したT細胞のACT注入に続くrVACVhgp100処理もまた、ACT後3、7および10日目のB16マウスの脾臓(図8D)、流入領域リンパ節(図8E)および腫瘍(図8F)における養子移入T細胞の頻度を増加させた。ACT後の移入CD8+細胞の倍数変化は、あまり疲弊していないT細胞よりも終末疲弊したT細胞において有意に高かった。
【0073】
実施例7
本実施例は、ネオ抗原ワクチンが、PD1TIM3終末疲弊したT細胞の頻度をACT後に減少させることを示す。
【0074】
実施例1に記載の担癌マウスを、CD39lo T細胞単独もしくはrVACVhgp100との組み合わせで処置するか、またはCD39CD69T細胞単独もしくはrVACVhgp100との組み合わせで処置した。
【0075】
疲弊した抗腫瘍T細胞に対するネオ抗原ワクチンの効果をさらに調べるために、Thy1.1Vβ13ネオ抗原特異的移入T細胞の割合を、ACT後のマウスの腫瘍において調べた。rVACVhgp100処置は、ACT後3日目と10日目に、マウスの腫瘍から単離された全生存CD8T細胞の割合として、PD1TIM3養子移入されたThy1.1Vβ13hgp100ネオ抗原特異的CD39loT細胞およびCD39CD69T細胞の頻度を有意に減少させた(図9)。これらの結果は、ネオ抗原ワクチン接種とACTとの組み合わせが、ACT後の腫瘍における移入された疲弊したT細胞の頻度を減少させることを示唆した。
【0076】
実施例8
本実施例は、抗CD40抗体およびネオエピトープの静脈内ワクチン接種が、疲弊したT細胞を用いたACT中の腫瘍の進行を遅延させることを示す。
【0077】
ワクチン投与経路が、ACTにおける疲弊したT細胞のワクチン媒介レスキューの成否にどのように影響するかをさらに調べるために、追加の実験を行った。ペプチドワクチン接種と組み合わせた抗CD40抗体の腹腔内投与を用いた以前の実験では、終末疲弊したCD39CD69T細胞のACTに対する効果はわずかであった。そこで、抗CD40抗体とペプチドの静脈内投与が試験された。
【0078】
その結果、ワクチン接種は終末疲弊したCD39CD69T細胞のACTに対する効果を遅延させることが示された(図10)。本実施例1に記載の担癌マウスは、CD39CD69hgp100ネオ抗原特異的Pmel T細胞単独、または、hgp100(25-33)をコードするワクシニアウイルスワクチンの共投与を伴うCD39CD69hgp100ネオ抗原特異的Pmel T細胞、または、抗CD40抗体またはアイソタイプコントロール(Rat IgG)の静脈内への共投与を伴う若しくは伴わない関連するネオエピトープ(hgp100(25))、または、抗CD40抗体またはRat IgGの静脈内への共投与を伴う若しくは伴わない無関係なペプチド(Flu.NP)によりACTを受けた。無関係なペプチドが疲弊したT細胞ACTをレスキューできないことから、関連するネオエピトープが、終末疲弊した状態および分化した状態のT細胞ベースのACTをワクチンによってレスキューする決定因子であることがさらに示唆される(Flu NP vs. hgp100参照)。さらに、ペプチドまたは抗体の投与経路、すなわち静脈内または腹腔内投与が、疲弊したT細胞ACTのワクチン媒介レスキューの成否に関与している可能性を示唆している。ペプチドおよび抗CD40抗体が、ワクシニアウイルスワクチンが腫瘍サイズに及ぼしたのと同様の効果を示したことから、非ワクシニアウイルスワクチンであっても終末疲弊したCD39CD69T細胞によるACTレスキューを介することができることが示唆される。
【0079】
実施例9
本実施例は、ワクチンとしてACTとともに投与されたネオエピトープを負荷した樹状細胞が、腫瘍の進行を遅延させることを示す。
【0080】
非ワクチニアウイルスワクチンを調べるために、骨髄由来樹状細胞(BMDC)を試験した。バルクの、選別されていない、トランスジェニックhgp100ネオ抗原特異的Pmel T細胞単独(Pmel)、またはBMDCと共投与したPmel T細胞で処置した実施例1に記載の担癌マウスにおいて、腫瘍の進行を測定した。BMDCは、無関係なインフルエンザウイルスペプチド(Pmel+DC+Irr.Pep)または関連するネオエピトープ(Pmel+DC+hgp100KVPPep)で4時間ペプチドパルスされた。無処置マウス(PBS)を対照とした。関連するネオエピトープでパルスしたBMDCを用いた治療は、hgp100ネオ抗原特異的Pmel T細胞単独または無関係なペプチドでパルスしたBMDCsとの共投与よりも、腫瘍の進行を有意に遅らせた(P<0.01)(図11)。これらのデータは、DCベースのワクチンも分化T細胞ACTを介して腫瘍退縮を媒介できることを示唆した。
【0081】
実施例10
本実施例は、疲弊したT細胞ACTを伴うネオ抗原ワクチンが、大腸腫瘍モデルにおいて腫瘍の進行を遅延させることを実証する。
【0082】
非黒色腫腫瘍モデルにおいて疲弊したT細胞ACTを伴うネオ抗原ワクチンの有効性を試験するために、hgp100KVPネオエピトープを発現するMC38大腸がん腫瘍において腫瘍進行を試験する実験を行った。同じhgp100KVPネオエピトープを発現するワクシニアウイルスを同時ネオ抗原ワクチンとして用いた。 単独で投与した場合、ネオ抗原ワクチンは未処置(PBS)と比較して腫瘍の進行に有意な影響を与えなかった(図12A)。MC38腫瘍の進行は、CD39loのあまり疲弊していないT細胞を単独で、またはネオ抗原ワクチンを同時投与してACTを行った後にも測定され、いずれも長期の腫瘍制御を媒介した(図12B)。終末疲弊したCD39CD69PmelトランスジェニックT細胞にネオ抗原ワクチンを共投与してACTを行った後、MC38腫瘍の進行を試験したところ、CD39CD69PmelトランスジェニックT細胞単独よりも腫瘍の進行が有意に減少した(P<0.01)。CD39CD69PmelトランスジェニックT細胞単独では腫瘍の制御はできなかった(図12C)。これらのデータは、ネオ抗原ワクチンによるACTが、黒色腫および非黒色腫腫瘍モデルの両方において、大きな腫瘍の持続的な腫瘍退縮を媒介することを示唆した。
【0083】
実施例11
本実施例は、宿主細胞による抗原提示が、ワクチンによる疲弊したT細胞のレスキューに必要であることを示す。
【0084】
ネオ抗原特異的ワクチンによる疲弊したT細胞のレスキューにおける宿主細胞による抗原提示の役割を調べるために、β2ミクログロブリンノックアウト(β2M KO)マウスで実験を行った。β2MノックアウトマウスにCD39lo PmelトランスジェニックT細胞単独、hgp100(25-33)をコードするワクシニアウイルスワクチンとT細胞の共投与、ワクシニアウイルス単独、または未処置(PBS)でACT後、腫瘍の進行を測定した。CD39loのあまり疲弊していないネオ抗原特異的T細胞は、β2M KOマウスの体内ではACT中に影響を受けなかった(図13A)。しかし、終末疲弊したCD39CD69PmelトランスジェニックT細胞を用いて同様の実験を行ったところ、ネオ抗原ワクチンでレスキューすることはできなかった(図13B)。このことは、疲弊したT細胞ACTのレスキューには、宿主細胞からの抗原提示が必要である可能性を示唆している。
【0085】
実施例12
本実施例は、ワクチンによる疲弊したT細胞のレスキューが、B7.1/B7.2遮断によって影響を受けることを示す。
【0086】
疲弊したT細胞のネオ抗原ワクチンによるレスキューのメカニズムをさらに調べるために、B7.1(CD80)およびB7.2(CD86)の役割を試験した。抗B7.1および抗B7.2(抗B7.1/2)抗体(100μg)またはアイソタイプコントロール(100μg)、あるいは未処置(PBS)またはB7.1/B7.2遮断を伴う未処置(PBS+抗B7.1/2)を用いて、CD39lo PmelトランスジェニックT細胞を単独、またはB7.1およびB7.2の遮断を伴うまたは伴わないネオ抗原ワクチンの共投与でACTした後、腫瘍の進行を試験した(図14A)。終末疲弊したCD39CD69PmelトランスジェニックT細胞を用いて同じ実験を行った(図14B)。CD39CD69の終末疲弊したネオ抗原特異的T細胞のネオ抗原をコードするワクシニアウイルスを介したレスキューは、B7.1/B7.2の遮断によって有意に(P<0.01)影響を受けた。このことは、終末疲弊したT細胞ACTのワクチンを介したレスキューに、宿主抗原提示細胞(APC)の共刺激が関与している可能性を示唆している。B7.1/B7.2の遮断は、CD39loのあまり疲弊していないネオ抗原特異的T細胞ACTには影響が少なかった。
【0087】
実施例13
本実施例は、TIL ACTを伴うヒト患者のワクチンに基づく治療による疲弊したT細胞のレスキューの遡及的証拠を示す。
【0088】
ネオ抗原ワクチンによる疲弊したT細胞のレスキューの有効性のさらなる証拠は、ワクチンを使用した腫瘍浸潤リンパ球(TIL)療法とワクチンを使用しない腫瘍浸潤リンパ球(TIL)療法で治療された黒色腫患者2463の臨床経過によって提供された。患者2463は最初にTILのみの治療(静脈内TIL(Rx1)と動脈内TIL(Rx2))を受けた。病勢進行後、この患者はTIL+腫瘍抗原GP100をコードする鳥痘ワクチンで再治療された。Rx1とRx3はそれぞれTIL輸液製剤を用いた最初の治療と3回目の治療を意味する。この患者は輸液製剤2(Rx2)として動脈内TILを受けたが応答がなかった。Rx2は動脈内TIL投与であったため、本解析から除外した。この臨床経過はSmith et al, J. Immunother: 870-874 (2009)に発表されている(図15A)。
【0089】
最初の2回のTIL療法が失敗した後、1回目の静脈内投与(Rx1)およびGP100鳥痘ワクチンと同時の2回目の静脈内投与(Rx3)で投与されたTIL輸液製剤は、テトラマー染色により同等のGP100特異的TILを有した(図15B)。数字はRx1とRx3におけるHLA-A0201拘束性GP100テトラマー頻度をCD8+TILの割合で示したものである。これらのデータは、応答を媒介したワクチンと共に投与されたTIL輸液は、臨床応答を媒介しなかったRx1と比較して、より多くの抗腫瘍TILを有していないことを示唆した。
【0090】
TCRクローン頻度は、Rx1とRx3の間で高い相関があった(図15C)。患者2463のTILから同定された標識免疫優性GP100 TCR-1は、クローンレパートリーがRx1とRx3の間で同じであることを示し、GP100鳥痘ワクチンが輸液製剤中の同様の頻度の抗腫瘍TILに作用したことを示唆した。
【0091】
抗腫瘍GP100 TILの表現型はRx1とRx3で同等であった。Rx1とRx3間のGP100テトラマー陽性抗腫瘍TILの表現型は、テトラマー陽性TIL内のパーセントを示す数に基づいている。したがって、TILと共投与された鳥痘GP100ワクチンは、輸液製剤中のテトラマー陽性TIL内のCD39CD69の頻度が非常に低く、CD39CD69の頻度が高いこと(図15D)、および単一マーカーCD62L細胞(図15E)、TIM3細胞(図15F)、またはCD39細胞(図15G)が示すように、機能不全の抗腫瘍TILに作用した可能性が高い。この臨床例は、疲弊したT細胞のネオ抗原ワクチンレスキューが、ヒトにおける長期制御の媒介に有効であることを示唆した。
【0092】
本明細書において引用される刊行物、特許出願、および特許を含む全ての参考文献は、各参考文献が参照により組み込まれることが個別にかつ具体的に示され、その全体が本明細書に記載される場合と同じ程度まで、参照により本明細書に組み込まれる。
【0093】
本発明を記載する文脈における(特に以下の特許請求の範囲の文脈における)用語「a」および「an」並びに「the」および「at least one」および類似の参照語の使用は、本明細書に特に示されない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数および複数の両方をカバーするものと解釈される。 用語「少なくとも1つ」の後に1つ以上の項目のリスト(例えば、「AおよびBのうちの少なくとも1つ」)が続く用語の使用は、本明細書において特に示されない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、列挙された項目(AまたはB)から選択される1つの項目、または列挙された項目(AおよびB)の2つ以上の任意の組み合わせを意味すると解釈される。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、および「含む(containing)」は、特に断りのない限り、オープンエンド用語(すなわち、「含むが、これらに限定されない」という意味)として解釈される。本明細書における値の範囲の言及は、本明細書において別段の指示がない限り、単に、範囲内に入る各別個の値を個々に参照するための省略法として機能することを意図しており、各別個の値は、本明細書において個々に記載されているかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に記載したすべての方法は、本明細書で特に指示しない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行することができる。本明細書で提供されるあらゆる実施例、または例示的な言語(例えば、「~のような」)の使用は、単に本発明をより良く説明することを意図しており、別段の主張がない限り、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書中のいかなる文言も、請求されていない要素が本発明の実施に必須であることを示すものとして解釈されるべきではない。
【0094】
本発明の好ましい一局面が、本発明を実施するために本発明者らが知る最良の態様を含めて本明細書に記載されている。それらの好ましい局面の変形は、前述の説明を読めば本技術分野の当業者には明らかになるであろう。本発明者らは、当業者がそのような変形を適宜採用することを期待しており、本発明者らは、本明細書に具体的に記載したとおりでなくても本発明が実施されることを意図している。従って、本発明は、適用される法律によって許容される、本明細書に添付された特許請求の範囲に言及された主題のすべての変更および均等物を含む。さらに、本明細書に記載したとおりであるか、または文脈上明らかに矛盾する場合を除き、上述した要素のあらゆる可能な変形における組み合わせは、本発明に包含される。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図14A
図14B
図15A
図15B
図15C
図15D
図15E
図15F
図15G
【配列表】
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【国際調査報告】