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特表2025-501261電気光学ディスプレイを駆動する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-17
(54)【発明の名称】電気光学ディスプレイを駆動する方法
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/34 20060101AFI20250109BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20250109BHJP
   G02F 1/1685 20190101ALI20250109BHJP
   G02F 1/16766 20190101ALI20250109BHJP
   G02F 1/167 20190101ALN20250109BHJP
【FI】
G09G3/34 C
G09G3/20 631B
G09G3/20 641G
G02F1/1685
G02F1/16766
G02F1/167
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539630
(86)(22)【出願日】2022-12-30
(85)【翻訳文提出日】2024-06-28
(86)【国際出願番号】 US2022054314
(87)【国際公開番号】W WO2023129692
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】63/295,492
(32)【優先日】2021-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500080214
【氏名又は名称】イー インク コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ブライアン ハンス
(72)【発明者】
【氏名】リン, クレッグ
【テーマコード(参考)】
2K101
5C080
【Fターム(参考)】
2K101AA04
2K101BD21
2K101BD61
2K101EC08
2K101EC77
2K101ED13
2K101EG52
2K101EJ16
5C080AA13
5C080BB05
5C080CC03
5C080EE19
5C080EE29
5C080GG06
5C080GG15
(57)【要約】
共通電極と、各々がピクセルトランジスタに結合されるピクセル電極のアレイを含むバックプレーンとの間に配置された電気光学材料の層を含む電気光学ディスプレイを駆動する方法方法。駆動する方法は、電気光学ディスプレイの表示可能領域をN個のBRAIDライン群に分配することを含み、N個のBRAIDライン群のうちの各々は、フレームバッファに関連付けられている。この方法は、電気光学ディスプレイの表示可能領域全体のための光学状態データを備えている第1の画像データを受信することと、第1の画像データの一部をN個のフレームバッファのうちの各々に順次書き込むこととも含み、N個のフレームバッファのうちの各々は、対応するBRAIDライン群に対応するデータで書き込まれる。この方法は、N個のフレームバッファのうちの各々におけるデータに基づいて、電気光学ディスプレイの表示可能領域の部分を順次更新することも含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通電極とバックプレーンとの間に配置された電気光学材料の層を備えている電気光学ディスプレイを駆動する方法であって、前記バックプレーンは、ピクセル電極のアレイを含み、各ピクセル電極は、ピクセルトランジスタに結合され、ディスプレイコントローラ回路が、前記ピクセルトランジスタを介して1つ以上の時間依存性電圧を前記共通電極と前記ピクセル電極のアレイとの間に印加することによって、波形を前記ピクセル電極のアレイに印加し、前記駆動する方法は、
前記電気光学ディスプレイの表示可能領域をN個のBRAIDライン群に分配することであって、前記N個のBRAIDライン群のうちの各々は、フレームバッファに関連付けられている、ことと、
前記電気光学ディスプレイの前記表示可能領域全体のための光学状態データを備えている第1の画像データを受信することと、
前記第1の画像データの一部を前記N個のフレームバッファのうちの各々に順次書き込むことであって、前記N個のフレームバッファのうちの各々は、前記対応するBRAIDライン群に対応するデータで書き込まれる、ことと
前記N個のフレームバッファのうちの各々における前記データに基づいて、前記電気光学ディスプレイの前記表示可能領域の部分を順次更新することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記N個のBRAIDライン群のうちの各々は、前記ピクセル電極のアレイからのディスプレイピクセルの複数の行に対応する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電気光学ディスプレイの前記表示可能領域を更新するための駆動スキームを選択することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記電気光学ディスプレイの前記表示可能領域を更新するために選択される前記駆動スキームは、直接更新駆動スキームである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の画像データは、ある画像サイズを有し、前記N個のフレームバッファのうちの各々は、Nで除算された前記画像サイズに対応する前記第1の画像データの一部を記憶するために十分なメモリを備えている、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記電気光学ディスプレイの前記表示可能領域全体のための光学状態データを備えている第2の画像データを受信することと、
前記第2の画像データの一部を前記N個のフレームバッファのうちの各々に順次書き込むことであって、前記N個のフレームバッファのうちの各々は、前記対応するBRAIDライン群に対応するデータで書き込まれ、前記N個のフレームバッファのうちの各々における前記第1の画像データの前記一部は、前記表示可能領域の前記一部が、前記N個のフレームバッファのうちの各々における前記第1の画像データの前記一部に基づいて更新された後、前記第2の画像データの前記一部によって上書きされる、ことと、
前記N個のフレームバッファのうちの各々における前記第2の画像データの前記一部に基づいて、前記電気光学ディスプレイの前記表示可能領域の部分を順次更新することと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記電気光学ディスプレイの前記表示可能領域は、2つのBRAIDライン群に分配される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記電気光学ディスプレイの前記表示可能領域は、3つのBRAIDライン群に分配される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
最後の画像データに基づいて前記電気光学ディスプレイの前記表示可能領域を更新した後、画像アーチファクトを除去するように構成された駆動スキームを使用して、前記電気光学ディスプレイの前記表示可能領域を更新することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の画像データをディザリングし、前記画像データを1ビットの画像データに変換することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、参照することによってその内容全体が本明細書に組み込まれる2021年12月30日に出願された米国仮特許出願第63/295,492号の優先権を主張する。さらに、本明細書で参照されるいかなる特許、公開された出願、または他の公開された著作物の内容全体も、参照することによって、それらの全体として組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本明細書に提示される主題は、電気光学ディスプレイデバイスに関する駆動方法を対象とする。具体的に、本明細書に提示される主題は、電気泳動ディスプレイに関する駆動方法を対象とする。
【背景技術】
【0003】
電気光学ディスプレイを駆動することにおいて、通常、駆動ソフトウェアは、ディスプレイのフレームレートに同期させられ、それは、メモリに書き込まれたものは何でも、次のフレーム更新中、現れることを意味する。液晶ディスプレイ(「LCD」)技術を例として使用すると、LCDディスプレイの画像メモリに書き込まれた第1の画像Aは、次のフレーム更新までディスプレイ上に提示されず、次のフレーム更新の時間において、その次の画像Bが、ディスプレイの画像メモリに書き込まれ得る(但し、ディスプレイ上にはまだ提示されていない)。その次の画像は、ディスプレイのフレームレートに従って、同じ様式においてディスプレイに書き込まれ、ディスプレイ上に提示される。
【0004】
電気泳動ディスプレイ、またはEPDは、LCDディスプレイの様式において更新されることができ、ディスプレイコントローラのCPUは、各フレーム中、2つ以上の画像を画像メモリに書き込むことを防止または遮断され、フレーム更新時、各その次の画像を提示するしかない。
【0005】
この方法を使用してEPDを駆動することは、ソフトウェアの観点からは実装するために単純であり得るが、しかしながら、それは、ディスプレイのフレームレートによって限定される。EPDを更新するために要求される時間は、EPDに一般的ないくつかの駆動スキームまたはモードを使用してビデオの画像を効果的に提示するために、持続時間におあまりにも長くあり得る。例えば、直接更新駆動スキームを使用して駆動されるEPDは、ある場合、1秒あたり4フレームのフレームレートに限定され得、それは、顕著なビデオ品質の不足をもたらし得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、特に、ビデオコンテンツ等の連続画像に関して、画像更新時間を減らすEPDのための駆動方法に対する必要性がある。
【0007】
故に、一側面において、本明細書に提示される主題は、共通電極とバックプレーンとの間に配置された電気光学材料の層を含む電気光学ディスプレイを駆動する方法を提供する。バックプレーンは、ピクセル電極のアレイを含み、各ピクセル電極は、ピクセルトランジスタに結合され、ディスプレイコントローラ回路が、ピクセルトランジスタを介して1つ以上の時間依存性電圧を共通電極とピクセル電極のアレイとの間に印加することによって、波形をピクセル電極のアレイに印加する。この駆動する方法は、電気光学ディスプレイの表示可能領域をN個のBRAIDライン群に分配することであって、N個のBRAIDライン群のうちの各々は、フレームバッファに関連付けられている、ことと、電気光学ディスプレイの表示可能領域全体のための光学状態データを備えている第1の画像データを受信することとを含む。この駆動する方法は、第1の画像データの一部をN個のフレームバッファのうちの各々に順次書き込むことであって、N個のフレームバッファのうちの各々は、対応するBRAIDライン群に対応するデータで書き込まれる、ことと、N個のフレームバッファのうちの各々におけるデータに基づいて、電気光学ディスプレイの表示可能領域の部分を順次更新することとも含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、N個のBRAIDライン群のうちの各々は、ピクセル電極のアレイからのディスプレイピクセルの複数の行に対応する。いくつかの実施形態において、駆動する方法は、電気光学ディスプレイの表示可能領域を更新するための駆動スキームを選択することを含む。いくつかの実施形態において、電気光学ディスプレイの表示可能領域を更新するために選択される駆動スキームは、直接更新駆動スキームである。
【0009】
いくつかの実施形態において、第1の画像データは、ある画像サイズを有し、N個のフレームバッファのうちの各々は、Nで除算された画像サイズに対応する第1の画像データの一部を記憶するために十分なメモリを備えている。
【0010】
いくつかの実施形態において、駆動する方法は、電気光学ディスプレイの表示可能領域全体のための光学状態データを備えている第2の画像データを受信することと、第2の画像データの一部をN個のフレームバッファのうちの各々に順次書き込むことであって、N個のフレームバッファのうちの各々は、対応するBRAIDライン群に対応するデータで書き込まれ、N個のフレームバッファのうちの各々における第1の画像データの一部は、表示可能領域の一部がN個のフレームバッファのうちの各々における第1の画像データの一部に基づいて更新された後、第2の画像データの一部によって上書きされる、こととをさらに含む。この駆動する方法は、N個のフレームバッファのうちの各々における第2の画像データの一部に基づいて、電気光学ディスプレイの表示可能領域の部分を順次更新することも含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、電気光学ディスプレイの表示可能領域は、2つのBRAIDライン群に分配される。いくつかの実施形態において、電気光学ディスプレイの表示可能領域は、3つのBRAIDライン群に分配される。
【0012】
いくつかの実施形態において、駆動する方法は、最後の画像データに基づいて電気光学ディスプレイの表示可能領域を更新した後、画像アーチファクトを除去するように構成される駆動スキームを使用して、電気光学ディスプレイの表示可能領域を更新することをさらに含む。いくつかの実施形態において、駆動する方法は、第1の画像データをディザリングし、画像データを1ビットの画像データに変換することをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本願の種々の側面および実施形態が、以下の図を参照して説明されるであろう。図は、必ずしも縮尺通りに描かれないことを理解されたい。複数の図に現れるアイテムは、その中にそれらが現れる全ての図において、同じ参照番号によって示される。
【0014】
図1図1は、本明細書に提示される主題による電気光学ディスプレイの概略描写を図示する。
【0015】
図2図2は、図1に図示される電気光学ディスプレイを表す等価回路を図示する。
【0016】
図3図3は、本明細書に提示される主題によるパイプライン化された更新方法を図示する。
【0017】
図4図4Aおよび4Bは、本明細書に提示される主題による2つの例示的BRAID駆動方法を図示する。
【0018】
図5図5は、本明細書に提示される主題による2つのBRAIDラインを使用する、BRAID駆動方法を図示する。
【0019】
図6図6は、本明細書に提示される主題による異なるBRAIDラインを使用するときの更新時間における差異を図示する。
【0020】
図7図7は、本明細書に提示される主題による例示的BRAID駆動システムを図示する。
【0021】
図8図8は、本明細書に提示される主題によるBRAID更新方法を図示する例示的フローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、電気光学ディスプレイ、特に、双安定電気光学ディスプレイ内で画像を更新する方法と、そのような方法での使用のための装置とに関する。より具体的に、本発明は、電気光学ディスプレイの迅速な更新を可能にする駆動方法および装置(例えば、ディスプレイコントローラ)に関する。本発明は、排他的ではないが、特に、粒子ベースの電気泳動ディスプレイとの使用のために意図され、粒子ベースの電気泳動ディスプレイにおいて、1つ以上のタイプの帯電粒子が、流体中に存在し、電場の影響下で流体を通して移動させられ、ディスプレイの外観を変化させる。
【0023】
用語「電気光学」は、材料またはディスプレイに適用されるように、結像技術分野におけるその従来の意味において、少なくとも1つの光学特性において異なる第1および第2の表示状態を有する材料を指すために本明細書で使用され、材料は、材料への電場の印加によって、その第1の表示状態からその第2の表示状態に変化させられる。光学特性は、典型的に、人間の眼に知覚可能なカラーであるが、それは、光学透過率、反射率、ルミネッセンス、または、機械読み取りのために意図されるディスプレイの場合、可視範囲外の電磁波長の反射率における変化の意味における擬似色等、別の光学特性であり得る。
【0024】
用語「グレー状態」は、結像技術分野におけるその従来の意味において、本明細書で使用され、2つの極端なピクセルの光学状態の中間の状態を指し、必ずしもこれらの2つの極端な状態の間の黒色-白色遷移を意味するわけではない。例えば、本明細書に参照されるE Inkの特許および公開された出願のうちのいくつかは、中間の「グレー状態」が、実際には薄青色であるように、極端な状態が白色および濃青色である電気泳動ディスプレイを説明している。実際、すでに記述されているように、光学状態の変化は、カラーの変化では全くない場合もある。用語「黒色」および「白色」は、ディスプレイの2つの極端な光学状態を指すために以降で使用され得、通常、厳密には黒色および白色ではない極端な光学状態、例えば、前述の白色および濃青色状態を含むものとして理解されるべきである。用語「単色」は、以降では、介在グレー状態を伴わず、ピクセルをそれらの2つの極端な光学状態のみに駆動する駆動スキームを指すために使用され得る。
【0025】
下記の議論の大部分は、初期のグレーレベル(または「グレートーン」)から最終のグレーレベル(初期のグレーレベルと異なることも、異ならないこともある)への遷移を通して、電気光学ディスプレイの1つ以上のピクセルを駆動する方法に焦点を当てるであろう。用語「グレー状態」、「グレーレベル」、および「グレートーン」は、本明細書では同義的に使用され、極端な光学状態および中間グレー状態を含む。
【0026】
用語「双安定」および「双安定性」は、当技術分野におけるそれらの従来の意味において、少なくとも1つの光学特性において異なる第1および第2の表示状態を有する表示要素を備えているディスプレイを指すために本明細書で使用され、それによって、その第1または第2の表示状態のいずれかをとるように有限持続時間のアドレスパルスを用いて任意の所与の要素が駆動された後、アドレスパルスが終了した後、その状態は、表示要素の状態を変化させるために要求されるアドレスパルスの最小持続時間の少なくとも数倍、例えば、少なくとも4倍、持続するであろう。米国特許第7,170,670号では、グレースケール対応のいくつかの粒子ベースの電気泳動ディスプレイが、それらの極端な黒色および白色状態においてだけではなく、それらの中間グレー状態においても、安定しており、同じことが、いくつかの他のタイプの電気光学ディスプレイにも当てはまることが示されている。このタイプのディスプレイは、適切に、双安定ではなく「多安定」と呼ばれるが、便宜上、用語「双安定」が、双安定および多安定ディスプレイの両方を網羅するために本明細書で使用され得る。
【0027】
用語「インパルス」は、時間に対する電圧の積分のその従来の意味において、本明細書で使用される。しかしながら、いくつかの双安定電気光学媒体は、電荷トランスデューサとして機能し、そのような媒体を用いる場合、インパルスの代替定義、すなわち、経時的な電流の積分(印加される全電荷に等しい)が、使用され得る。インパルスの適切な定義は、媒体が電圧時間インパルストランスデューサとして機能するか、電荷インパルストランスデューサとして機能するかに応じて使用されるべきである。
【0028】
用語「波形」は、ある特定の初期のグレーレベルから特定の最終のグレーレベルへの遷移をもたらすために使用される、時間に対する電圧全体の曲線を指すために使用されるであろう。典型的に、そのような波形は、複数の波形要素を備えているであろう。これらの要素が、本質的に長方形である場合(すなわち、所与の要素が、ある期間にわたって一定電圧の印加を備えている場合)、要素は、「パルス」または「駆動パルス」と呼ばれ得る。用語「駆動スキーム」は、特定のディスプレイに関するグレーレベル間のあらゆる可能な遷移をもたらすために十分な波形の組を指す。ディスプレイは、2つ以上の駆動スキームを利用し得る。例えば、前述の米国特許第7,012,600号は、駆動スキームが、ディスプレイの温度またはその寿命中に動作していた時間等のパラメータに応じて、修正される必要があり得、したがって、ディスプレイが、異なる温度等で使用されるべき複数の異なる駆動スキームを提供され得ることを教示する。この様式において使用される駆動スキームの組は、「関連駆動スキームの組」と称され得る。前述のMEDEOD出願のうちのいくつかに説明されるように、2つ以上の駆動スキームを同じディスプレイの異なるエリアにおいて同時に使用することも可能であり、この様式において使用される駆動スキームの組は、「同時駆動スキームの組」と称され得る。
【0029】
いくつかのタイプの電気光学ディスプレイが、公知である。1つのタイプの電気光学ディスプレイは、例えば、米国特許第5,808,783号、第5,777,782号、第5,760,761号、第6,054,071号、第6,055,091号、第6,097,531号、第6,128,124号、第6,137,467号、および第6,147,791号に説明されるような回転二色部材タイプである(このタイプのディスプレイは、多くの場合、「回転二色ボール」ディスプレイと称されるが、上記に言及される特許のうちのいくつかでは、回転部材が球形ではないので、用語「回転二色部材」が、より正確なものとして好ましい)。そのようなディスプレイは、異なる光学特性を伴う2つ以上の区分と、内部双極子とを有する多数の小さい本体(典型的に、球形または円筒形)を使用する。これらの本体は、マトリクス内の液体充填空胞内に懸濁され、空胞は、本体が自由に回転するように、液体で充填される。ディスプレイの外観は、それに電場を印加し、したがって、本体を種々の位置に回転させ、視認表面を通して見られる本体の区分の位置を変動させることによって、変化させられる。このタイプの電気光学媒体は、典型的に、双安定である。
【0030】
別のタイプの電気光学ディスプレイは、エレクトロクロミック媒体、例えば、少なくとも部分的に半導体金属酸化物から形成される電極と、電極に取り付けられる可逆的カラー変化が可能である複数の染色分子とを備えているナノクロミックフィルムの形態におけるエレクトロクロミック媒体を使用する。例えば、O‘Regan,B.,et al.、Nature 1991,353,737、およびWood,D.、Information Display,18(3),24(2002年3月)を参照されたい。また、Bach,U.,et al.、Adv. Mater.,2002,14(11),845も参照されたい。このタイプのナノクロミックフィルムは、例えば、米国特許第6,301,038号、第6,870,657号、および第6,950,220号にも説明されている。このタイプの媒体も、典型的に、双安定である。
【0031】
別のタイプの電気光学ディスプレイは、Philipsによって開発され、Hayes,R.A.,et al.「Video-Speed Electronic Paper Based on Electrowetting」、Nature,425,383-385(2003)において説明されているエレクトロウェッティングディスプレイである。米国特許第7,420,549号では、そのようなエレクトロウェッティングディスプレイが、双安定にされ得ることが示されている。
【0032】
長年にわたり精力的な研究および開発の関心の対象である1つのタイプの電気光学ディスプレイは、複数の荷電粒子が、電場の影響下で流体を通して移動する粒子ベースの電気泳動ディスプレイである。電気泳動ディスプレイは、液晶ディスプレイと比較したとき、良好な輝度およびコントラスト、広視野角、状態双安定性、および低電力消費の属性を有することができる。それにもかかわらず、これらのディスプレイの長期の画像品質に伴う問題は、それらの広範な利用を妨げている。例えば、電気泳動ディスプレイを構成する粒子は、沈降する傾向があり、これらのディスプレイに対して不適正な使用可能寿命をもたらす。
【0033】
上記のように、電気泳動媒体は、流体の存在を要求する。殆どの従来技術の電気泳動媒体では、この流体は、液体であるが、電気泳動媒体は、ガス状流体を使用して生産されることもできる。例えば、Kitamura,T.,et al.「Electrical toner movement for electronic paper-like display」、IDW Japan,2001,Paper HCS1-1、およびYamaguchi,Y.,et al.「Toner display using insulative particles charged triboelectrically」、IDW Japan,2001,Paper AMD4-4)を参照されたい。また、米国特許第7,321,459号および第7,236,291号も参照されたい。そのようなガスベースの電気泳動媒体は、例えば、媒体が垂直平面内に配置された看板において、媒体がそのような沈降を可能にする向きにおいて使用されるとき、粒子沈降に起因する液体ベースの電気泳動媒体と同じタイプの問題の影響を受けやすいと考えられる。実際、粒子沈降は、電気泳動粒子のより高速な沈降を可能にする液体の粘度と比較して、ガス状懸濁流体のより低い粘度により、液体ベースの電気泳動媒体よりガスベースの電気泳動媒体においてより深刻な問題であると考えられる。
【0034】
Massachusetts Institute of Technology(MIT)およびE Ink Corporationに譲渡された、またはそれらの名義の多数の特許および出願は、カプセル化電気泳動媒体および他の電気光学媒体内で使用される種々の技術を説明している。そのようなカプセル化媒体は、多数の小型カプセルを備え、それらの各々は、それ自体、電気泳動により移動可能な粒子を流体媒体中に含む内相と、内相を包囲するカプセル壁とを備えている。典型的に、カプセルは、それら自体、ポリマー結合剤内に保持され、2つの電極間に位置付けられるコヒーレント層を形成する。これらの特許および出願に説明される技術は、以下を含む:
【0035】
(a)電気泳動粒子、流体、および流体添加物(例えば、米国特許第7,002,728号および第7,679,814号参照);
【0036】
(b)カプセル、結合剤、およびカプセル化プロセス(例えば、米国特許第6,922,276号および第7,411,719号参照);
【0037】
(c)電気光学材料を含むフィルムおよびサブアセンブリ(例えば、米国特許第6,982,178号および第7,839,564号参照);
【0038】
(d)バックプレーン、接着剤層、他の補助層、およびディスプレイ内で使用される方法(例えば、米国特許第7,116,318号および第7,535,624号参照);
【0039】
(e)カラー形成およびカラー調節(例えば、米国特許第7,075,502号および米国特許出願公開第2007/0109219号参照);
【0040】
(f)ディスプレイを駆動する方法(例えば、米国特許第5,930,026号、第6,445,489号、第6,504,524号、第6,512,354号、第6,531,997号、第6,753,999号、第6,825,970号、第6,900,851号、第6,995,550号、第7,012,600号、第7,023,420号、第7,034,783号、第7,061,166号、第7,061,662号、第7,116,466号、第7,119,772号、第7,177,066号、第7,193,625号、第7,202,847号、第7,242,514号、第7,259,744号、第7,304,787号、第7,312,794号、第7,327,511号、第7,408,699号、第7,453,445号、第7,492,339号、第7,528,822号、第7,545,358号、第7,583,251号、第7,602,374号、第7,612,760号、第7,679,599号、第7,679,813号、第7,683,606号、第7,688,297号、第7,729,039号、第7,733,311号、第7,733,335号、第7,787,169号、第7,859,742号、第7,952,557号、第7,956,841号、第7,982,479号、第7,999,787号、第8,077,141号、第8,125,501号、第8,139,050号、第8,174,490号、第8,243,013号、第8,274,472号、第8,289,250号、第8,300,006号、第8,305,341号、第8,314,784号、第8,373,649号、第8,384,658号、第8,456,414号、第8,462,102号、第8,537,105号、第8,558,783号、第8,558,785号、第8,558,786号、第8,558,855号、第8,576,164号、第8,576,259号、第8,593,396号、第8,605,032号、第8,643,595号、第8,665,206号、第8,681,191号、第8,730,153号、第8,810,525号、第8,928,562号、第8,928,641号、第8,976,444号、第9,013,394号、第9,019,197号、第9,019,198号、第9,019,318号、第9,082,352号、第9,171,508号、第9,218,773号、第9,224,338号、第9,224,342号、第9,224,344号、第9,230,492号、第9,251,736号、第9,262,973号、第9,269,311号、第9,299,294号、第9,373,289号、第9,390,066号、第9,390,661号、および第9,412,314号、および、米国特許出願公開第2003/0102858号、第2004/0246562号、第2005/0253777号、第2007/0070032号、第2007/0076289号、第2007/0091418号、第2007/0103427号、第2007/0176912号、第2007/0296452号、第2008/0024429号、第2008/0024482号、第2008/0136774号、第2008/0169821号、第2008/0218471号、第2008/0291129号、第2008/0303780号、第2009/0174651号、第2009/0195568号、第2009/0322721号、第2010/0194733号、第2010/0194789号、第2010/0220121号、第2010/0265561号、第2010/0283804号、第2011/0063314号、第2011/0175875号、第2011/0193840号、第2011/0193841号、第2011/0199671号、第2011/0221740号、第2012/0001957号、第2012/0098740号、第2013/0063333号、第2013/0194250号、第2013/0249782号、第2013/0321278号、第2014/0009817号、第2014/0085355号、第2014/0204012号、第2014/0218277号、第2014/0240210号、第2014/0240373号、第2014/0253425号、第2014/0292830号、第2014/0293398号、第2014/0333685号、第2014/0340734号、第2015/0070744号、第2015/0097877号、第2015/0109283号、第2015/0213749号、第2015/0213765号、第2015/0221257号、第2015/0262255号、第2016/0071465号、第2016/0078820号、第2016/0093253号、第2016/0140910号、および第2016/0180777号参照);
【0041】
(g)ディスプレイの適用(例えば、米国特許第7,312,784号および米国特許出願公開第2006/0279527号参照);
【0042】
(h)米国特許第6,241,921号、第6,950,220号、および第7,420,549号、ならびに米国特許出願公開第2009/0046082号に説明されるような非電気泳動ディスプレイ。
【0043】
前述の特許および出願のうちの多くは、カプセル化電気泳動媒体における別々のマイクロカプセルを包囲する壁が、連続相によって置換され得、したがって、いわゆる「ポリマー分散電気泳動ディスプレイ」を生産し、ポリマー分散電気泳動ディスプレイにおいて、電気泳動媒体が、電気泳動流体の複数の別々の液滴と高分子材料の連続相とを備え、そのようなポリマー分散電気泳動ディスプレイ内の電気泳動流体の別々の液滴が、いかなる別々のカプセル膜も各個々の液滴に関連付けられない場合であっても、カプセルまたはマイクロカプセルと考えられ得ることを認識する。例えば、前述の米国特許第6,866,760号を参照されたい。故に、本願の目的のために、そのようなポリマー分散電気泳動媒体は、カプセル化電気泳動媒体の亜種と見なされる。
【0044】
関連タイプの電気泳動ディスプレイは、いわゆる「マイクロセル電気泳動ディスプレイ」である。マイクロセル電気泳動ディスプレイにおいて、荷電粒子および懸濁流体は、マイクロカプセル内にカプセル化されず、代わりに、キャリア媒体(典型的に、高分子フィルム)内に形成される複数の空洞内に保持される。例えば、米国特許第6,672,921号および第6,788,449号(両方は、Sipix Imaging,Inc.に譲渡されている)を参照されたい。
【0045】
電気泳動媒体は、不透過性であり(例えば、多くの電気泳動媒体では、粒子がディスプレイを通した可視光の透過を実質的に遮断するので)、反射モードで動作するが、いくつかの電気泳動ディスプレイは、一方の表示状態が実質的に不透過性であり、一方が光透過性である、いわゆる「シャッターモード」で動作するように作成されることができる。例えば、米国特許第5,872,552号、第6,130,774号、第6,144,361号、第6,172,798号、第6,271,823号、第6,225,971号、および6,184,856号を参照されたい。電気泳動ディスプレイと同様であるが、電場強度の変動に依拠する、誘電泳動ディスプレイは、同様のモードで動作することができる。米国特許第4,418,346号を参照されたい。他のタイプの電気光学ディスプレイも、シャッターモードで動作することが可能であり得る。シャッターモードで動作する電気光学媒体は、フルカラーディスプレイのための多層構造において有用であり得、そのような構造では、ディスプレイの視認表面に隣接する少なくとも1つの層は、シャッターモードで動作し、視認表面からより遠隔にある第2の層をさらすか、または隠す。
【0046】
カプセル化電気泳動ディスプレイは、典型的に、従来的な電気泳動デバイスのクラスタ化および沈降故障モードに悩まされることはなく、ディスプレイを多種多様な可撓性および剛体の基板上に印刷またはコーティングする能力等のさらなる利点を提供する(単語「印刷」の使用は、あらゆる形態の印刷およびコーティングを含むことが意図され、限定ではないが、前計量コーティング、例えば、パッチダイコーティング、スロットまたは押出コーティング、スライドまたはカスケードコーティング、カーテンコーティング等、ロールコーティング、例えば、ナイフオーバーロールコーティング、フォワード・リバースロールコーティング、グラビアコーティング、浸漬コーティング、吹き付けコーティング、メニスカスコーティング、スピンコーティング、ブラシコーティング、エアナイフコーティング、シルクスクリーン印刷プロセス、静電気印刷プロセス、熱印刷プロセス、インクジェット印刷プロセス、電気泳動析出(米国特許第7,339,715号参照)、および他の類似技法を含む)。したがって、結果として生じるディスプレイは、可撓性であり得る。さらに、ディスプレイ媒体は(様々な方法を使用して)印刷されることができるので、ディスプレイ自体は、安価に作製されることができる。
【0047】
他のタイプの電気光学媒体も、本発明のディスプレイにおいて使用され得る。
【0048】
粒子ベースの電気泳動ディスプレイ、および類似する挙動を表示する他の電気光学ディスプレイ(そのようなディスプレイは、以降、便宜上、「インパルス駆動ディスプレイ」と称され得る)の双安定または多安定な挙動は、従来の液晶ディスプレイのそれとは好対照である。捩れネマチック液晶は、双安定または多安定ではないが、電圧トランスデューサとして機能し、それによって、所与の電場をそのようなディスプレイのピクセルに印加することは、ピクセルにおいて先に存在するグレーレベルにかかわらず、ピクセルにおいて特定のグレーレベルを生じさせる。さらに、LCディスプレイは、1つの方向に(非透過性または「濃い」から透過性または「薄い」へ)のみ駆動され、より薄い状態からより濃い状態への逆の遷移は、電場を減らすこと、または排除することによってもたらされる。最後に、LCディスプレイのピクセルのグレーレベルは、電場の極性に敏感ではなく、その大きさにのみ敏感であり、実際、技術的な理由のために、商業用LCディスプレイは、通常、駆動場の極性を頻繁に逆にする。対照的に、双安定電気光学ディスプレイは、第1の近似値に対して、インパルストランスデューサとして機能し、それによって、ピクセルの最終的な状態は、印加される電場およびこの場が印加される時間のみならず、電場の印加に先立つピクセルの状態にも依存する。
【0049】
高分解能ディスプレイは、隣接するピクセルからの干渉なしでアドレス可能である個々のピクセルを含み得る。この目的を達成するための1つの方法は、「アクティブマトリクス」ディスプレイを生じさせるために、トランジスタまたはダイオード等の非線形要素のアレイを提供することであり、少なくとも1つの非線形要素は、各ピクセルに関連付けられている。1つのピクセルをアドレスするアドレスまたはピクセル電極は、関連付けられた非線形要素を通して、適切な電圧源に接続される。非線形要素がトランジスタであるとき、ピクセル電極は、トランジスタのドレインに接続され得、この配置が、以下の説明では仮定されるであろうが、それは、本質的に、恣意的であり、ピクセル電極は、トランジスタのソースにも接続され得る。高分解能アレイでは、ピクセルは、任意の特定のピクセルが、1つの規定される行および1つの規定される列の交点によって、一意に画定され得るように、行および列の2次元アレイにおいて配置され得る。各列内の全てのトランジスタのソースは、単一列電極に接続され得る一方、各行における全てのトランジスタのゲートは、単一行電極に接続される。行へのソースおよび列へのゲートの割り当ては、所望に応じて、逆転され得る。
【0050】
ディスプレイは、行毎様式で書き込まれ得る。行電極は、行ドライバに接続され、行ドライバは、選択された行における全てのトランジスタが伝導性であることを確実にするような電圧を選択された行電極に印加する一方、これらの選択されていない行における全てのトランジスタが非伝導性のままであることを確実にするような電圧を全ての他の行に印加し得る。列電極は、列ドライバに接続され、列ドライバは、選択された行におけるピクセルをそれらの所望の光学状態に駆動するために選択された電圧を種々の列電極にかける(前述の電圧は、共通前面電極に対するものであり、共通前面電極は、従来、電気光学媒体の非線形アレイと反対側に提供され、ディスプレイ全体にわたって広がっている。当技術分野において公知のように、電圧は、相対的であり、2つの点の間の電荷差の測定値である。一方の電圧値は、別の電圧値に対するものである。例えば、ゼロ電圧(「0V」)は、別の電圧に対して無電圧差を有することを指す)。「ラインアドレス時間」として公知である事前選択された間隔後に、選択された行が、選択解除され、別の行が、選択され、列ドライバ上の電圧は、ディスプレイの次のラインが書き込まれるように変化させられる。このプロセスは、ディスプレイ全体が行毎様式で書き込まれるように繰り返され得る。
【0051】
いくつかの適用では、EPDは「直接更新」駆動スキーム(「DUDS」または「DU」)を利用し得る。DU駆動スキームは、2つ以上のグレーレベル、典型的に、グレースケール駆動スキーム(「GSDS」)より少ないグレーレベルを有し得、GSDSは、全ての可能なグレーレベル間の遷移をもたらし得る。しかしながら、DUスキームの最も重要な特性は、GSDSにおいて頻繁に使用される「間接的な」遷移とは対照的に、遷移が、初期のグレーレベルから最終のグレーレベルまで一方向駆動によって取り扱われることであり、GSDSにおいて、少なくともいくつかの遷移において、ピクセルは、初期のグレーレベルから1つの極端な光学状態に駆動され、次いで、逆方向に最終のグレーレベルに駆動される。ある場合、遷移は、初期のグレーレベルから1つの極端な光学状態に、次いで、反対の極端な光学状態に駆動し、次に最終的な極端な光学状態に駆動することによって、もたらされ得る(例えば、前述の米国特許第7,012,600号の図11Aおよび11Bに図示される駆動スキームを参照されたい)。したがって、本発明の電気泳動ディスプレイは、DUスキームが、飽和パルスの長さに等しい最大更新時間または約200~300ミリ秒、典型的に、約250msを有し得るのに対し、飽和パルスの長さ(「飽和パルスの長さ」は、EPDのピクセルを1つの極端な光学状態から他方に駆動するために十分である特定の電圧における期間として定義される)の約2~3倍のグレースケールモードにおける更新時間または約700~900ミリ秒を有し得る。
【0052】
下記に提示される種々の実施形態は、本明細書に提示される主題による作用原理を図示するために、マイクロセルを伴う電気泳動材料を使用するにもかかわらず、同じ原理が、マイクロカプセル化された粒子(例えば、顔料粒子)を伴う電気泳動材料のために採択され得ることを理解されたい。マイクロセルを伴う電気泳動材料は、本明細書では図示のために使用され、限定としての役割を果たさない。
【0053】
図1は、本明細書に提起される主題による電気光学ディスプレイ、すなわち、EPDのディスプレイピクセル100の概略モデルを図示する。ピクセル100は、結像フィルム110を含むことができる。いくつかの実施形態において、結像フィルム110は、電気泳動材料の層であり、性質上、双安定である。この電気泳動材料は、流体中に配置され、電場の影響下で流体を通して移動することが可能である複数の帯電させられたカラー顔料粒子(例えば、黒色、白色、黄色、または赤色)を含むことができる。いくつかの実施形態において、結像フィルム110は、荷電顔料粒子を伴うマイクロセルを有する電気泳動フィルムである。いくつかの他の実施形態において、結像フィルム110は、限定ではないが、カプセル化電気泳動結像フィルムを含み、それは、それ自体、例えば、荷電顔料粒子を含むことができる。
【0054】
いくつかの実施形態において、結像フィルム110は、前面電極102と背面またはピクセル電極104との間に配置される。前面電極102は、結像フィルムとディスプレイの前面との間に形成されることができる。いくつかの実施形態において、前面電極102は、透明かつ光透過性である。いくつかの実施形態において、前面電極102は、限定ではないが、酸化インジウムスズ(ITO)を含む、任意の好適な透明材料から形成される。背面電極104は、前面電極102に対して結像フィルム110の反対側に形成されることができる。いくつかの実施形態において、寄生静電容量(図示せず)が、前面電極102と背面電極104との間に形成される。
【0055】
ピクセル100は、複数のピクセルのうちの1つであることができる。複数のピクセルは、任意の特定のピクセルが1つの規定される行および1つの規定される列の交点によって一意に画定されるように、行および列の2次元アレイにおいて配置され、マトリクスを形成することができる。いくつかの実施形態において、ピクセルのマトリクスは「アクティブマトリクス」であり、この場合、各ピクセルは、少なくとも1つの非線形回路要素120に関連付けられる。非線形回路要素120は、バックプレーン電極104とアドレス電極108との間に結合されることができる。いくつかの実施形態において、非線形要素120は、ダイオードおよび/またはトランジスタであり、限定ではないが、MOSFETまたは薄膜トランジスタ(TFT)を含む。MOSFETまたはTFTのドレイン(またはソース)は、バックプレーン電極またはピクセル電極104に結合されることができ、MOSFETまたはTFTのソース(またはドレイン)は、アドレス電極108に結合されることができ、MOSFETまたはTFTのゲートは、MOSFETまたはTFTのアクティブ化および非アクティブ化を制御するように構成される、ドライバ電極106に結合されることができる(便宜上、バックプレーン電極104に結合されるMOSFETまたはTFTの端子は、MOSFETまたはTFTのドレインと称され、アドレス電極108に結合されるMOSFETまたはTFTの端子は、MOSFETまたはTFTのソースと称されるであろう。しかしながら、当業者は、いくつかの実施形態において、MOSFETまたはTFTのソースおよびドレインが、交換され得ることを認識するであろう)。
【0056】
アクティブマトリクスのいくつかの実施形態において、各列における全てのピクセルのアドレス電極108は、同じ列電極に接続され、各行における全てのピクセルのドライバ電極106は、同じ行電極に接続される。行電極は、行ドライバに接続されることができ、行ドライバは、選択された行における全てのピクセル100の非線形要素120をアクティブ化するために十分な電圧を選択された行電極に印加することによって、ピクセルの1つ以上の行を選択し得る。列電極は、列ドライバに接続されることができ、列ドライバは、ピクセルを所望の光学状態に駆動するために好適な電圧を選択された(アクティブ化された)ピクセルのアドレス電極106にかけ得る。アドレス電極108に印加される電圧は、ピクセルのフロントプレーン電極102に印加される電圧(例えば、約ゼロボルトの電圧)に対して相対的であり得る。いくつかの実施形態において、アクティブマトリクス内の全てのピクセルのフロントプレーン電極102は、共通電極に結合される。
【0057】
使用時、アクティブマトリクスのピクセル100は、行毎様式で書き込まれることができる。例えば、ピクセルの行は、行ドライバによって選択されることができ、ピクセルの行に関する所望の光学状態に対応する電圧が、列ドライバによってピクセルに印加されることができる。「ラインアドレス時間」として公知である事前選択された間隔後に、選択された行が、選択解除され得、別の行が、選択され得、列ドライバ上の電圧は、変化させられ得、それによって、ディスプレイの別のラインが、書き込まれる。
【0058】
図2は、本明細書に開示される主題による前面電極102と背面電極104との間に配置された電気光学結像層110の回路モデルを示す。抵抗器202およびコンデンサ204は、電気光学結像層110、前面電極102、および背面電極104の抵抗および静電容量を表し得る(任意の接着剤層を含む)。抵抗器212およびコンデンサ214は、ラミネート加工接着剤層の抵抗および静電容量を表し得る。コンデンサ216は、前面電極102と背面電極104との間(例えば、結像層とラミネート加工接着剤層との間、および/またはラミネート加工接着剤層とバックプレーン電極との間の界面等の層間の界面接触エリア)に生じ得る静電容量、を表すことができる。ピクセルの結像フィルム110を横断する電圧Viは、ピクセルの残留電圧を含むことができる。
【0059】
直接更新駆動モードまたはスキームを採用する従来のEPDに関する更新時間は、典型的に、約250msである。故に、LCD同様の更新スキームおよびDU駆動モードを使用して、連続する3つの画像(例えば、画像A、B、およびC)を伴うEPDを更新することは、完了させるために(250ms×3)、すなわち、750msを要求する。結果として、EPDは、1秒あたり4フレーム(「FPS」)のフレームレートに限定され得、それは、注目に値するほどのビデオ品質の不足であり得る。
【0060】
図3は、本明細書に提示される主題によるパイプライン化された更新方法を図示する。本明細書に説明されるパイプライン化更新を使用すると、画像データは、図3に図示されるように、EPDのディスプレイコントローラによってパイプライン化され、漸増的な更新を実施することができる。
【0061】
有利なこととして、画像データをパイプライン化することは、先行する画像が、依然として、ディスプレイ画面に対して更新されている間にディスプレイコントローラが、フレームまたは画像メモリに書き込むことを可能にし、それによって、画像更新プロセスのいくつかの部分を重複させ、全体的な更新時間を減らす。例えば、図3に図示されるように、85Hzにおいて動作するディスプレイに関して、第1の画像、すなわち、画像Aは、DU駆動モードによって決定付けられるように、0ms時点でその更新を開始し、250ms時点で更新を終了する。続いて、12ms時点の近くで、画像Aの更新が依然として進行中である間に、第2の画像、すなわち、画像Bは、その漸増的な更新を開始する。画像Bは、262ms時点(図3には図示せず)の近くで更新を終了する。同様に、24ms時点で、画像AおよびBも更新している間に、第3の画像、すなわち、画像Cは、その更新を開始することができる。最後に、画像Cは、274ms時点で更新を完了する。
【0062】
この方式では、画像A、B、およびCの全ての3つが、画像データのパイプライン化がない場合に要求される750msと比較して、274ms以内に更新を終了し、ディスプレイ上に提示されることができる。この更新スキームは、EPDが、高速更新を実施することを可能にし得、それは、ペン入力を想定する適用にとって、または1つの画像から次のものまで重複するエリアを有しない動画にとって有用である。
【0063】
図4Aおよび図4Bの各々は、ブリスクリフレッシュ高度織り交ぜ設計、すなわち、「BRAID」駆動スキームと称される別の駆動スキームに従って分配されるディスプレイの例示的図を示す。BRAID駆動スキームを使用すると、ディスプレイのエリアは、異なる時間において更新される交互するラインの複数の組または群に分配されることができる。例えば、図4Aは、交互するBRAIDラインの2つの群(例えば、群401および群402)に分配されたディスプレイ405aの図400aを示し、図4Bは、交互するBRAIDラインの3つの群(例えば、群411、群412、および群413)に分配されたディスプレイ405bの図400bを示す。
【0064】
下記にさらに詳細に説明されるように、このスキームは、複数の画像からの画像データが、パイプライン化されることを可能にし、全体的な更新時間をかなり減らし得る。例えば、図4Aのように、ディスプレイのエリアを交互するラインの2つの群に分配することは、事実上、EPDが画像で更新され得るレートを2倍にすることができる。同様に、図4Bのように、ディスプレイのエリアを交互するラインの3つの群に分配することは、事実上、EPDが画像で更新され得るレートを3倍にすることができる。
【0065】
これらの例から、BRAID駆動スキームを使用することによって、画像更新レートまたはフレームレートは、[波形時間÷BRAIDライン群の数](式中、「波形時間」は、画像でEPDを更新するために要求される時間を指す)として計算され得ることが推測され得る。直接更新駆動スキームを採用する従来のEPDに関して上で説明される例では、波形時間は、典型的に、約250msである。
【0066】
上で説明されるように、LCD同様の更新スキームおよびDU駆動モードを使用して、連続する3つの画像(例えば、画像A、B、およびC)で従来のEPDを更新することは、完了させるために(250ms×3)、すなわち、750msを要求する。図5は、本明細書に提示される主題によるBRAIDラインの2つ群を使用する、BRAID駆動方法を図示する。図5に図示されるように、BRAIDラインの2つの群に分配されたディスプレイでBRAID方法を使用すると、画像Aの後の各画像に関する更新時間は、125msまで減らされることができる。さらに、BRAID方法を使用して画像データをパイプライン化することは、画像データのパイプライン化がない場合に要求される750msと比較して、更新を完了し、ディスプレイ上に提示されるために、画像A、B、およびCの全ての3つの画像に関する全体的な更新時間を500msまで減らすことができる。
【0067】
例えば、図5に図示されるように、85Hzにおいて動作するディスプレイに関して、第1の画像、すなわち、画像Aは、0ms時点でその更新を開始する。続いて、125ms時点の近くで、画像Aの更新が依然として進行中である間に、第2の画像、すなわち、画像Bが、その漸増的な更新を開始する。画像Aは、画像Bが漸増的に更新され続けている間にDU駆動スキームによって決定付けられるように250ms時点で更新を終了する。加えて、第3の画像、すなわち、画像Cは、250ms時点でその更新を開始する。画像Bは、画像Cが漸増的に更新され続けている間に375ms時点の近くで更新を終了する。最後に、画像Cは、500ms時点で更新を終了する。
【0068】
故に、BRAID方法を使用すると、画像A、B、およびCの全ての3つが、画像データのパイプライン化がない場合に要求される750msと比較して、500ms以内に更新を終了し、ディスプレイ上に提示されることができる。この更新スキームは、EPDが、高速更新を実施することを可能にし得、それは、ペン入力を想定する適用にとって、または1つの画像から次のものまで重複するエリアを有しない動画にとって有用である。
【0069】
図6は、BRAID更新方法およびDU駆動スキームを使用して、3つの画像で更新されるべきディスプレイに関する合計更新時間を列挙する表600を示す。BRAIDラインの群の数を増加させることはさらに、全体的な更新時間を減らすことができることが推測され得る。例えば、図6に示されるように、図5の例のように、BRAIDラインの2つの群に分配されたディスプレイでBRAID方法を使用すると、合計更新時間は、500msまで減らされる。合計更新時間は、BRAIDラインの追加の群を使用してさらに減らされることができる。例えば、BRAIDラインの3つの群に分配されたディスプレイでBRAID方法を使用すると、合計更新時間を417msまで減らし、BRAIDラインの4つの群は、合計更新時間を375msまで減らし、BRAIDラインの5つの群は、合計更新時間を350msまで減らす。当業者は、合計更新時間における追加の低減が、ディスプレイをBRAIDラインのより多くの群に分配することによって達成され得ることを理解するであろう。
【0070】
図7は、本明細書に提示される主題による例示的BRAIDシステム700のブロック図である。BRAIDシステム700は、ホストコントローラまたは他のデジタル媒体源によって供給される一連の画像またはビデオデータであり得る画像データ702を含む。BRAIDシステム700は、BRAIDスイッチ704と、複数のEPDフレームバッファ706と、選択論理708とも含み、選択論理708は、EPDフレームバッファ706からの出力のうちのどれがTCON710に送信させられるかを選定し、TCON710は、TFTのマトリクスを駆動するためのゲートおよびソースラインを制御するためのディスプレイの制御論理である。
【0071】
動作時、画像データ702は、BRAID群の数に従って固定されたレートにおいて、BRAIDスイッチ704に送信される。例えば、画像は、[波形時間÷BRAIDライン群の数](式中、「波形時間」は、画像でEPDを更新するために要求される時間を指す)として計算され得る画像更新レートまたはフレームレートにおいて、送信されることができる。
【0072】
BRAIDスイッチ704は、少なくとも1つの完全な画像を記憶するために十分なメモリリソースを含むことができ、フレームごとに上書きされることができる。EPDフレームバッファ706の各々は、少なくとも、1つのBRAIDライン群に対応する画像データを記憶するために十分なメモリリソースを含むことができる。いくつかの実施形態において、EPDフレームバッファ706の各々のサイズは、[画像の合計サイズ÷BRAIDライン群の数]によって決定され得る。さらに、EPDフレームバッファ706の数は、BRAIDライン群の数に対応し得る。例えば、3つのBRAIDライン群を使用するシステムでは、3つのEPDフレームバッファ706があり得る。
【0073】
BRAIDスイッチ704は、BRAIDライン群のうちの1つに対応する画像データをEPDフレームバッファ706のうちの1つに書き込むように構成されることができる。BRAIDスイッチ704によって書き込まれる画像データは、合計画像データの一部、すなわち、画像の一部を表示するために必要とされる画像データのみを含み、画像のその一部は、特定の群の各BRAIDラインにおいて表示されるであろう。例えば、図4BをBRAIDライン群の基準として使用すると、BRAIDスイッチ704は、BRAIDライン群411に対応する画像データをEPDフレームバッファ706aに書き込むことができる。例を続けると、BRAIDスイッチ704は、次いで、カウンタまたはポインタを前進させ、BRAIDライン群412に対応する画像データをEPDフレームバッファ706bに書き込む。BRAIDスイッチ704は、上で説明されるフレームレートに対応する固定されたレートにおいて、この方式において、画像データを受信し、書き込み続ける。
【0074】
BRAIDスイッチ704が、最後のEPDフレームバッファ706(例えば、EPDフレームバッファ706n)に書き込むと、そのカウンタは、1周して戻り、後続の画像からの画像データを含むであろう第1のEPDフレームバッファ706(例えば、EPDフレームバッファ706a)に書き込むことを再度開始する。
【0075】
選択論理708は、BRAIDスイッチ704と同じレートにおいて動作し、TCON710に送信されるべきEPDフレームバッファ706の出力を選択し、それは、次に、画像データを伴うディスプレイ上の対応するBRAIDライン群を更新する。このプロセスは、ビデオの最後の画像が到達されるまで継続する。
【0076】
図8は、BRAID更新方法を図示する、例示的フローチャート800を示す。この例では、8ビットのグレースケール画像が、Y8画像データ802において提供される。Y8画像データ802からの画像データは、随意に、Y8->Y1変換804によって黒色および白色1ビット画像に変換されることができる。いくつかの実施形態において、Y8->Y1変換804は、Y8画像データ802によって提供される画像データを変換するために、ディザリングアルゴリズムを使用する。いくつかの実施形態において、データフロイドスタインバーグルーチンまたはブルーノイズマスクアルゴリズムが、使用される。
【0077】
ステップ806において、Y8->Y1変換804によって提供される画像データが、BRAIDシステムのステップ810によって提供されるフレーム情報に基づいて、一連の画像またはビデオ内の第1の画像であるかどうかが決定される。いくつかの実施形態において、BRAIDシステムのステップ810は、ホストコントローラから、または画像データ内に埋め込まれた情報からフレーム情報を取得する。画像データが一連の画像内の第1の画像である場合、プロセスは、ステップ808に進み、駆動モード(例えば、DU駆動スキーム)が、第1の画像(例えば、図5における例からの画像A)でディスプレイ全体を更新するために使用されることができ、画像データは、上で説明され、図7においても図示されるBRAID処理のためのBRAIDシステムのステップ810に進入する。画像が、一連の画像内の第1の画像以外の画像であることが決定される場合、画像データは、ステップ810に進み、BRAID更新システムは、BRAID更新方法に従って、画像データを処理する。
【0078】
処理されたデータは、ステップ812に進み、処理されている画像データが、BRAIDシステムのステップ810によって提供されるフレーム情報に基づいて、一連の画像またはビデオ内の最後の画像からであるかどうかが決定される。画像データが一連の画像内の最後の画像からではない場合、処理された画像データは、パネル814にフィードされ、処理されているBRAIDライン群に対応するディスプレイの部分が、画像データで更新される。画像データが一連の画像内の最後の画像からのものである場合、最後の画像を処理するステップの完了時、ステップ816は、更新後に存在し得る残影またはブルーミング等の任意のアーチファクトを一掃するための波形をディスプレイに印加するために使用される。例えば、GLR波形(例えば、E Inkのリーガルアルゴリズムに基づいて修正されるグローバル限定波形)が、アーチファクトを一掃するために、最後の静止画像上に使用されることができる。いくつかの実施形態において、ステップ816は、最後の画像に関する画像データの全てが処理され、ディスプレイパネル814に送信された後、GLR波形をディスプレイに印加する。
【0079】
多数の変更および修正が、本発明の範囲から逸脱することなく、上で説明される本発明の具体的な実施形態において行われ得ることは、当業者に明白であろう。故に、前述の説明の全体は、限定的ではなく、例証的な意味において解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】