(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-17
(54)【発明の名称】トランスアミナーゼ突然変異体及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 9/10 20060101AFI20250109BHJP
C12N 15/54 20060101ALI20250109BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20250109BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20250109BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20250109BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20250109BHJP
C12P 13/00 20060101ALI20250109BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20250109BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C12N9/10
C12N15/54 ZNA
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P13/00
C12P21/02 C
C12N15/63 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539635
(86)(22)【出願日】2022-01-24
(85)【翻訳文提出日】2024-06-28
(86)【国際出願番号】 CN2022073561
(87)【国際公開番号】W WO2023123589
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】202111645514.9
(32)【優先日】2021-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516336828
【氏名又は名称】凱菜英医藥集團(天津)股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】ASYMCHEM LABORATORIES (TIANJIN) CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホン,ハオ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ,ゲイジ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ナー
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ,シュエチョン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ルイ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,イーミン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,イエンチン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AE01
4B064AG01
4B064CA02
4B064CA05
4B064CA06
4B064CA10
4B064CA11
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA20
4B065AA01X
4B065AA26X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA29
4B065CA60
(57)【要約】
トランスアミナーゼ突然変異体及びその使用を提供する。該トランスアミナーゼ突然変異体は、SEQ ID NO: 1で示される配列においてアミノ酸突然変異が起こった配列を有し、アミノ酸突然変異が起こった部位はV242W部位を含む。上記のトランスアミナーゼ突然変異体は、SEQ ID NO: 1で示されるトランスアミナーゼを基にして、部位特異的突然変異誘発方法によって突然変異を行うことで、そのアミノ酸配列を変え、タンパク質構造及び機能を変えたものであり、次に、指向性スクリーニング方法によって、上記の突然変異部位を有するトランスアミナーゼが得られ、得たトランスアミナーゼは、高い触媒活性、特異的選択性、及び広い基質スペクトルを有しており、産業化が期待できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスアミナーゼ突然変異体であって、
SEQ ID NO: 1で示される配列においてアミノ酸突然変異が起こった配列を有し、前記アミノ酸突然変異が起こった部位は、V242W部位を含み、又は
前記トランスアミナーゼ突然変異体のアミノ酸配列は、前記アミノ酸突然変異が起こった部位を有し、SEQ ID NO: 1で示される配列と90%以上の相同性を有し、トランスアミナーゼ触媒活性を有するアミノ酸配列である、ことを特徴とするトランスアミナーゼ突然変異体。
【請求項2】
前記アミノ酸突然変異が起こった部位は、以下の組み合わせの突然変異部位のいずれかを含む、ことを特徴とする請求項1に記載のトランスアミナーゼ突然変異体。
V242W+L59Q、V242W+F164C、V242W+F164Q、V242W+F164W、V242W+F164Y、V242W+L272G、V242W+L272I、V242W+L272K、V242W+L272M、V242W+L272P、V242W+L272V、V242W+L272Y、V242W+V328C、V242W+V328K V242W+V328L、V242W+V328M、V242W+V328Q、V242W+V328S、V242W+V328T、V242W+V328W、V242W+T330F、V242W+T330I、V242W+T330S、V242W+A436H、V242W+A436K、V242W+A436L、V242W+A436N、V242W+A436P、V242W+A436Q、V242W+A436S、V242W+A436Y、V242W+R442A、V242W+R442C、V242W+R442F、V242W+R442G、V242W+R442H、V242W+R442N、V242W+R442Q、V242W+R442S、V242W+R442T、V242W+F164Q+V328A、V242W+F164Q+V328C、V242W+F164Q+V328D、V242W+F164Q+V328E、V242W+F164Q+V328F、V242W+F164Q+V328G、V242W+F164Q+V328H、V242W+F164Q+V328I、V242W+F164Q+V328L、V242W+F164Q+V328M、V242W+F164Q+V328P、V242W+F164Q+V328Q、V242W+F164Q+V328R、V242W+F164Q+V328S、V242W+F164Q+V328W、V242W+F164Q+V328T、V242W+F164Q+V328Y、V242W+F164Q+R442T、V242W+F164Q+V328I+G2S、V242W+F164Q+V328I+T46M、V242W+F164Q+V328I+G48D、V242W+F164Q+V328I+C185Y、V242W+F164Q+V328I+S186N、V242W+F164Q+V328I+S194P、V242W+F164Q+V328I+T197M、V242W+F164Q+V328I+N202D、V242W+F164Q+V328I+Y205L、V242W+F164Q+V328I+T245A、V242W+F164Q+V328I+V252I、V242W+F164Q+V328I+S268N、V242W+F164Q+V328I+L353F、V242W+F164Q+V328I+N359D、V242W+F164Q+V328I+R409T、V242W+F164Q+V328I+E424K、V242W+F164Q+V328I+A436V、V242W+F164Q+V328I+R442T、V242W+F164Q+V328I+R442T+G48D、V242W+F164Q+V328I+R442T+S194P、V242W+F164Q+V328I+R442T+V252I、V242W+F164Q+V328I+R442T+S194P+V252I、V242W+F164Q+V328I+R442T+V252I+G48D、V242W+F164Q+V328I+R442T+S194P+G48D、又はV242W+F164Q+V328I+R442T+S194P+V252I+G48D
【請求項3】
請求項1又は2に記載のトランスアミナーゼ突然変異体をコードする、ことを特徴とするDNA分子。
【請求項4】
請求項3に記載のDNA分子を含有する、ことを特徴とする組換えプラスミド。
【請求項5】
前記組換えプラスミドは、pET-22a(+)、pET-22b(+)、pET-3a(+)、pET-3d(+)、pET-11a(+)、pET-12a(+)、pET-14b(+)、pET-15b(+)、pET-16b(+)、pET-17b(+)、pET-19b(+)、pET-20b(+)、pET-21a(+)、pET-23a(+)、pET-23b(+)、pET-24a(+)、pET-25b(+)、pET-26b(+)、pET-27b(+)、pET-28a(+)、pET-29a(+)、pET-30a(+)、pET-31b(+)、pET-32a(+)、pET-35b(+)、pET-38b(+)、pET-39b(+)、pET-40b(+)、pET-41a(+)、pET-41b(+)、pET-42a(+)、pET-43a(+)、pET-43b(+)、pET-44a(+)、pET-49b(+)、pQE2、pQE9、pQE30、pQE31、pQE32、pQE40、pQE70、pQE80、pRSET-A、pRSET-B、pRSET-C、pGEX-5X-1、pGEX-6p-1、pGEX-6p-2、pBV220、pBV221、pBV222、pTrc99A、pTwin1、pEZZ18、pKK232-8、pUC-18、又はpUC-19である、ことを特徴とする請求項4に記載の組換えプラスミド。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の組換えプラスミドを含有する、ことを特徴とする宿主細胞。
【請求項7】
原核細胞又は真核細胞を含む、ことを特徴とする請求項6に記載の宿主細胞。
【請求項8】
前記原核細胞は、BL21-DE3細胞又は大腸菌Rosetta-DE3細胞であり、前記真核細胞は酵母細胞である、ことを特徴とする請求項7に記載の宿主細胞。
【請求項9】
ケトン系化合物及びアミノ供与体のアミノ基転移反応をトランスアミナーゼで触媒するステップを含む、キラルアミンの生産方法であって、
前記トランスアミナーゼは、請求項1又は2に記載のトランスアミナーゼ突然変異体である、ことを特徴とするキラルアミンの生産方法。
【請求項10】
前記ケトン系化合物は、
【化1】
(n=0、1、2又は3、X=C、N、O又はS、R=H、F、Cl、Br、CH
3又はCH
2CH
3)である、ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ケトン系化合物は、
【化2】
である、ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記アミノ供与体は、イソプロピルアミン又はアラニンである、ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記アミノ供与体は、イソプロピルアミンである、ことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ケトン系化合物及びアミノ供与体のアミノ基転移反応をトランスアミナーゼで触媒する反応系において、酵素の使用量が1.5~6.6mg/mLである、ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項15】
ケトン系化合物及びアミノ供与体のアミノ基転移反応をトランスアミナーゼで触媒する反応系において、酵素の使用量が1.7mg/mLである、ことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ケトン系化合物及びアミノ供与体のアミノ基転移反応をトランスアミナーゼで触媒する反応系の温度が、20℃~45℃である、ことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
ケトン系化合物及びアミノ供与体のアミノ基転移反応をトランスアミナーゼで触媒する反応系の温度が、30℃である、ことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物技術分野に関し、具体的には、トランスアミナーゼ突然変異体及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
キラルアミン系化合物は、キラル薬物の重要な中間体であり、医薬などの分野で広く使用されている。その工業化生産は、主に遷移金属触媒の不斉合成に依存しているが、このプロセスには触媒として高価な遷移金属錯体が必要であり、これらの遷移金属の資源は限られており、高価であるため、このアプローチは持続可能性を達成することが困難である。生体酵素触媒法は、基質のケトンが入手されやすく、反応条件が穏やかで、生成物選択性が高いため、多くの注目を集めている。
【0003】
アミノトランスフェラーゼ(aminotransferase)としても知られるトランスアミナーゼ (transaminase、TA、EC2.6.1.X)は、ケトン基とアミノ基の間のアミノ転移反応を可逆的に触媒できる。中でもトランスアミナーゼは、優れた立体選択性、再現性のある補因子、強力な反応性や環境に優しい性質を持ち、キラルアミンの生体触媒生産に使用され、医薬品中間体や農薬中間体の合成に広く使用されている。
【0004】
トランスアミナーゼ反応には、通常、トランスアミナーゼの活性中心にあるリジン残基のε-アミノ基に共有結合しているリン酸ピリドキサールが補酵素として必要であるが、反応に参加するアミノ供与体も必要であり、一般的に使用されるアミノ供与体には、イソプロピルアミン、フェニルエチルアミンなどが含まれる。
【0005】
キラルアミンの生産にトランスアミナーゼを使用する進歩は大きな注目を集めているが、酵素法は、スケールアップ生産の用途においては多くの問題を抱えている。例えば、既存のトランスアミナーゼは、選択性が低く、可逆反応の存在により変換率が低くなり、工業化生産に不利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、トランスアミナーゼの選択性を向上させる、トランスアミナーゼ突然変異体及びその使用を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成させるために、本発明の一態様によれば、トランスアミナーゼ突然変異体を提供する。該トランスアミナーゼ突然変異体は、SEQ ID NO: 1で示される配列においてアミノ酸突然変異が起こった配列を有し、アミノ酸突然変異が起こった部位は、V242W部位を含み、又はトランスアミナーゼ突然変異体は、上記の突然変異部位を含み、突然変異部位を有するアミノ酸配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、又は前記トランスアミナーゼ突然変異体のアミノ酸配列は、前記アミノ酸突然変異が起こった部位を有し、SEQ ID NO: 1で示される配列と90%以上の相同性を有し、トランスアミナーゼ触媒活性を有するアミノ酸配列である。
【0008】
さらに、アミノ酸突然変異が起こった部位は、V242W+L59Q、V242W+F164C、V242W+F164Q、V242W+F164W、V242W+F164Y、V242W+L272G、V242W+L272I、V242W+L272K、V242W+L272M、V242W+L272P、V242W+L272V、V242W+L272Y、V242W+V328C、V242W+V328I、V242W+V328L、V242W+V328M、V242W+V328Q、V242W+V328S、V242W+V328T、V242W+V328W、V242W+T330F、V242W+T330I、V242W+T330S、V242W+A436H、V242W+A436K、V242W+A436L、V242W+A436N、V242W+A436P、V242W+A436Q、V242W+A436S、V242W+A436Y、V242W+R442A、V242W+R442C、V242W+R442F、V242W+R442G、V242W+R442H、V242W+R442N、V242W+R442Q、V242W+R442S、V242W+R442T、V242W+F164Q+V328A、V242W+F164Q+V328C、V242W+F164Q+V328D、V242W+F164Q+V328E、V242W+F164Q+V328F、V242W+F164Q+V328G、V242W+F164Q+V328H、V242W+F164Q+V328I、V242W+F164Q+V328L、V242W+F164Q+V328M、V242W+F164Q+V328P、V242W+F164Q+V328Q、V242W+F164Q+V328R、V242W+F164Q+V328S、V242W+F164Q+V328W、V242W+F164Q+V328T、V242W+F164Q+V328Y、V242W+F164Q+R442T、V242W+F164Q+V328I+G2S、V242W+F164Q+V328I+T46M、V242W+F164Q+V328I+G48D、V242W+F164Q+V328I+C185Y、V242W+F164Q+V328I+S186N、V242W+F164Q+V328I+S194P、V242W+F164Q+V328I+T197M、V242W+F164Q+V328I+N202D、V242W+F164Q+V328I+Y205L、V242W+F164Q+V328I+T245A、V242W+F164Q+V328I+V252I、V242W+F164Q+V328I+S268N、V242W+F164Q+V328I+ L353F、V242W+F164Q+V328I+N359D、V242W+F164Q+V328I+ R409T、V242W+F164Q+V328I+E424K、V242W+F164Q+V328I+A436V、V242W+F164Q+V328I+R442T、V242W+F164Q+V328I+R442T+G48D、V242W+F164Q+V328I+R442T+S194P、V242W+F164Q+V328I+R442T+V252I、V242W+F164Q+V328I+R442T+S194P+V252I、V242W+F164Q+V328I+R442T+V252I+G48D、V242W+F164Q+V328I+R442T+S194P+G48D、又はV242W+F164Q+V328I+R442T+S194P+V252I+G48Dの組み合わせの突然変異部位のいずれかを含み、又はトランスアミナーゼ突然変異体は、上記の突然変異部位を含み、突然変異部位を有するアミノ酸配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0009】
本発明の別の態様によれば、DNA分子を提供する。該DNA分子は、上記のトランスアミナーゼ突然変異体のいずれかをコードする。
【0010】
本発明の更なる態様によれば、組換えプラスミドを提供する。該組換えプラスミドは、上記のDNA分子のいずれかを含有する。
【0011】
さらに、組換えプラスミドは、pET-22a(+)、pET-22b(+)、pET-3a(+)、pET-3d(+)、pET-11a(+)、pET-12a(+)、pET-14b(+)、pET-15b(+)、pET-16b(+)、pET-17b(+)、pET-19b(+)、pET-20b(+)、pET-21a(+)、pET-23a(+)、pET-23b(+)、pET-24a(+)、pET-25b(+)、pET-26b(+)、pET-27b(+)、pET-28a(+)、pET-29a(+)、pET-30a(+)、pET-31b(+)、pET-32a(+)、pET-35b(+)、pET-38b(+)、pET-39b(+)、pET-40b(+)、pET-41a(+)、pET-41b(+)、pET-42a(+)、pET-43a(+)、pET-43b(+)、pET-44a(+)、pET-49b(+)、pQE2、pQE9、pQE30、pQE31、pQE32、pQE40、pQE70、pQE80、pRSET-A、pRSET-B、pRSET-C、pGEX-5X-1、pGEX-6p-1、pGEX-6p-2、pBV220、pBV221、pBV222、pTrc99A、pTwin1、pEZZ18、pKK232-8、pUC-18、又はpUC-19である。
【0012】
本発明の別の態様によれば、宿主細胞を提供する。該宿主細胞は、上記の組換えプラスミドのいずれかを含有する。
【0013】
さらに、宿主細胞は、原核細胞又は真核細胞を含み、好ましくは原核細胞は、BL21-DE3細胞又は大腸菌Rosetta-DE3細胞であり、真核細胞は、酵母細胞である。
【0014】
本発明の更なる態様によれば、キラルアミンの生産方法を提供する。該方法は、ケトン系化合物及びアミノ供与体のアミノ基転移反応をトランスアミナーゼで触媒するステップを含み、トランスアミナーゼは、上記のトランスアミナーゼ突然変異体のいずれかである。
【0015】
さらに、ケトン系化合物は、
【化1】
(n=0、1、2又は3、X=C、N、O又はS、R=H、F、Cl、Br、CH
3又はCH
2CH
3)であり、好ましくは、ケトン系化合物は、
【化2】
である。
【0016】
さらに、アミノ供与体は、イソプロピルアミン又はアラニン、好ましくはイソプロピルアミンである。
【0017】
さらに、ケトン系化合物及びアミノ供与体のアミノ基転移反応をトランスアミナーゼで触媒する反応系において、酵素の使用量が、1.5~6.6mg/mL、好ましくは1.7mg/mLであり、好ましくは、ケトン系化合物及びアミノ供与体のアミノ基転移反応をトランスアミナーゼで触媒する反応系の温度が、20℃~45℃、より好ましくは30℃である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の上記のトランスアミナーゼ突然変異体は、SEQ ID NO: 1で示されるトランスアミナーゼを基にして、部位特異的突然変異誘発方法によって突然変異を行うことで、そのアミノ酸配列を変え、タンパク質構造及び機能を変えたものであり、次に、指向性スクリーニング方法によって、上記の突然変異部位を有するトランスアミナーゼが得られ、本発明で得られたトランスアミナーゼは、高い触媒活性、特異的選択性、及び広い基質スペクトルを有しており、産業化が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
なお、本願における実施例及び実施例の特徴は、矛盾することなく互いに組み合わされてもよい。以下、実施例を参照して本発明について詳細に説明する。
【0020】
トランスアミナーゼは、タンパク質を主成分とする生体触媒であり、それが触媒する反応は、以下の反応式で表されてもよい。
【化3】
(n=0、1、2又は3、X=C、N、O又はS、R=H、F、Cl、Br、CH
3又はCH
2CH
3)
従来のトランスアミナーゼは、選択性が悪く、変換率の低下を招く可逆性が存在するため、工業化生産に不利である。この技術的課題に鑑み、本発明は、SEQ ID NO: 1で示されるトランスアミナーゼを基に、定向進化方法によりトランスアミナーゼの選択性及び活性を向上させ、高い触媒活性及び特異的選択性を有するトランスアミナーゼを得るものである。
【0021】
まず、部位特異的突然変異誘発によってトランスアミナーゼに突然変異部位を導入し、その突然変異体について選択性を検出し、選択性が向上した突然変異体を選択する。ここで、突然変異体V242Wは、開始テンプレートに比べて約2倍高い選択性を持っているが、活性が劣っている。続いて、選択性と活性のより顕著な向上を有する突然変異体を得るために、V242Wをテンプレートとして突然変異を継続する。
【0022】
部位特異的突然変異誘発とは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの方法により、DNA断片(ゲノム又はプラスミド)の特定の部位に塩基の変更、又は断片の挿入や欠失を導入することを指す。部位特異的突然変異誘発は、DNAによって発現される標的タンパク質の特性と特性評価を迅速かつ効率的に改善することができ、遺伝子研究において非常に有用な手段である。
【0023】
全プラスミドPCRを利用して単一又は複数の部位特異的突然変異を導入することには、単純さと効率という利点がある。原理は以下の通りである。突然変異部位を含む一対のプライマー(順方向及び逆方向)及びテンプレートプラスミドをアニーリングし、その後、ポリメラーゼを用いて「サイクル伸長」を行い、いわゆるサイクル伸長とは、ポリメラーゼがテンプレートに従ってプライマーを伸長し、1サイクル後、プライマー5'末端に戻り、加熱、アニーリング、伸長のサイクルを繰り返すことを指し、この反応は、ローリングサークル増幅とは異なり、複数のタンデムコピーを形成することはない。順方向プライマー及び逆方向プライマーの伸長産物がアニールされ、対になって、ニックが入ったオープンサーキュラープラスミドが形成される。Dpn Iで伸長産物を消化する際には、元のテンプレートプラスミドが従来の大腸菌由来であり、damメチル化により修飾されているため、Dpn Iに感受性があり切断されるが、in vitroで合成された突然変異配列を有するプラスミドは、メチル化されていないため、切断されていないので、その後の形質転換をうまく行うことができ、突然変異プラスミドのクローンが得られる。
【0024】
突然変異プラスミドを大腸菌宿主細胞に形質転換し、その後、超音波処理により細胞を破砕して粗酵素を取得し、反応検証を行った。トランスアミナーゼ誘導発現の最適条件:20℃、0.06 mM IPTG、16h。
【0025】
本発明の1つの代表的な実施形態によれば、トランスアミナーゼ突然変異体を提供する。該トランスアミナーゼ突然変異体は、SEQ ID NO: 1で示される配列においてアミノ酸突然変異が起こった配列を有し、アミノ酸突然変異が起こった部位は、V242W部位を含み、又は前記トランスアミナーゼ突然変異体のアミノ酸配列は、前記アミノ酸突然変異が起こった部位を有し、SEQ ID NO: 1で示される配列と90%、95%又は99%以上の相同性を有し、トランスアミナーゼ触媒活性を有するアミノ酸配列である。
【0026】
本明細書で使用される「相同性」という用語は、当技術分野で一般に知られている意味を有し、異なる配列間の相同性を決定するための規則及び基準も当業者によく知られている。当業者は、本開示の教示に基づいてそのようなバリアント配列を得ることができる。
【0027】
好ましくは、アミノ酸突然変異が起こった部位は、以下の組み合わせ突然変異部位のいずれかを含む。V242W+L59Q、V242W+F164C、V242W+F164Q、V242W+F164W、V242W+F164Y、V242W+L272G、V242W+L272I、V242W+L272K、V242W+L272M、V242W+L272P、V242W+L272V、V242W+L272Y、V242W+V328C、V242W+V328I、V242W+V328L、V242W+V328M、V242W+V328Q、V242W+V328S、V242W+V328T、V242W+V328W、V242W+T330F、V242W+T330I、V242W+T330S、V242W+A436H、V242W+A436K、V242W+A436L、V242W+A436N、V242W+A436P、V242W+A436Q、V242W+A436S、V242W+A436Y、V242W+R442A、V242W+R442C、V242W+R442F、V242W+R442G、V242W+R442H、V242W+R442N、V242W+R442Q、V242W+R442S、V242W+R442T、V242W+F164Q+V328A、V242W+F164Q+V328C、V242W+F164Q+V328D、V242W+F164Q+V328E、V242W+F164Q+V328F、V242W+F164Q+V328G、V242W+F164Q+V328H、V242W+F164Q+V328I、V242W+F164Q+V328L、V242W+F164Q+V328M、V242W+F164Q+V328P、V242W+F164Q+V328Q、V242W+F164Q+V328R、V242W+F164Q+V328S、V242W+F164Q+V328W、V242W+F164Q+V328T、V242W+F164Q+V328Y、V242W+F164Q+R442T、V242W+F164Q+V328I+G2S、V242W+F164Q+V328I+T46M、V242W+F164Q+V328I+G48D、V242W+F164Q+V328I+C185Y、V242W+F164Q+V328I+S186N、V242W+F164Q+V328I+S194P、V242W+F164Q+V328I+T197M、V242W+F164Q+V328I+N202D、V242W+F164Q+V328I+Y205L、V242W+F164Q+V328I+T245A、V242W+F164Q+V328I+V252I、V242W+F164Q+V328I+S268N、V242W+F164Q+V328I+L353F、V242W+F164Q+V328I+N359D、V242W+F164Q+V328I+R409T、V242W+F164Q+V328I+E424K、V242W+F164Q+V328I+A436V、V242W+F164Q+V328I+R442T、V242W+F164Q+V328I+R442T+G48D、V242W+F164Q+V328I+R442T+S194P、V242W+F164Q+V328I+R442T+V252I、V242W+F164Q+V328I+R442T+S194P+V252E V242W+F164Q+V328I+R442T+V252I+G48D、V242W+F164Q+V328I+R442T+S194P+G48D、又はV242W+F164Q+V328I+R442T+S194P+V252I+G48D
本発明の上記のトランスアミナーゼ突然変異体は、SEQ ID NO: 1で示されるトランスアミナーゼを基にして、部位特異的突然変異誘発方法によって突然変異を行うことで、そのアミノ酸配列を変え、タンパク質構造及び機能を変えたものであり、次に、指向性スクリーニング方法によって、上記の突然変異部位を有するトランスアミナーゼが得られ、本発明で得られたトランスアミナーゼは、高い触媒活性、特異的選択性、及び広い基質スペクトルを有しており、産業化が期待できる。
【0028】
本発明の1つの代表的な実施形態によれば、DNA分子を提供する。上記DNAがコードするトランスアミナーゼ突然変異体は、選択性と活性を向上させており、アミノ酸の工業化生産において酵素添加量を削減でき、後処理の難度も軽減できる。
【0029】
本発明の上記のDNA分子は、「発現カセット」の形態で存在してもよい。「発現カセット」とは、特定のヌクレオチド配列を適切な宿主細胞において発現させることを指導できるDNA及びRNA配列を包含する、線状又は環状の核酸分子をいう。一般に、目的ヌクレオチドに有効に連結されたプロモーターが含まれ、これは任意にターミネータシグナル及び/又は他の調節要素に有効に連結されている。発現カセットはまた、ヌクレオチド配列の正確な翻訳に必要な配列を含んでもよい。コード領域は、通常、目的タンパク質をコードするが、アンチセンスRNA又は非翻訳RNAのような目的機能性RNAも、センス方向又はアンチセンス方向にコードする。目的ポリヌクレオチド配列を含む発現カセットは、その少なくとも1つの成分が他の少なくとも1つの成分と異種であることを意味するキメラであってもよい。発現カセットは、天然に存在するものであってもよいが、異種発現のための効率的な組換え形成によって得られる。
【0030】
本発明の1つの代表的な実施形態によれば、組換えプラスミドを提供する。該組換えプラスミドは、上記のDNA分子のいずれかを含有する。上記組換えプラスミドのDNA分子は、上記DNA分子が正確かつスムーズにコピー、転写、又は発現できるように、組換えプラスミド内の適切な位置に配置される。
【0031】
本発明において上記DNA分子を限定する時に「含有する」という限定語が使用されているが、DNA配列の両端にその機能に関係のない他の配列を任意に付加できることを意味するものではない。当業者は、組換え操作の要件を満たすために、DNA配列の両端に適切な制限酵素切断部位を追加するか、追加の開始コドン、終止コドンなどを追加する必要があることを知っている。したがって、クローズな表現で限定すれば、これらの状況を現実的にカバーすることはできない。
【0032】
本発明で使用される「プラスミド」という用語は、二本鎖又は一本鎖の線状又は環状の任意のプラスミド、コスミド、ファージまたはアグロバクテリウムの二元核酸分子を含み、好ましくは、組換え発現プラスミドであり、原核生物発現プラスミドまたは真核生物発現プラスミドであり得るが、原核生物発現プラスミドが好ましい。いくつかの実施態様では、組換えプラスミドに使用されるベクターは、以下から選択される。pET-22a(+)、pET-22b(+)、pET-3a(+)、pET-3d(+)、pET-11a(+)、pET-12a(+)、pET-14b、pET-15b(+)、pET-16b(+)、pET-17b(+)、pET-19b(+)、pET-20b(+)、pET-21a(+)、pET-23a(+)、pET-23b(+)、pET-24a(+)、pET-25b(+)、pET-26b(+)、pET-27b(+)、pET-28a(+)、pET-29a(+)、pET-30a(+)、pET-31b(+)、pET-32a(+)、pET-35b(+)、pET-38b(+)、pET-39b(+)、pET-40b(+)、pET-41a(+)、pET-41b(+)、pET-42a(+)、pET-43a(+)、pET-43b(+)、pET-44a(+)、pET-49b(+)、pQE2、pQE9、pQE30、pQE31、pQE32、pQE40、pQE70、pQE80、pRSET-A、pRSET-B、pRSET-C、pGEX-5X-1、pGEX-6p-1、pGEX-6p-2、pBV220、pBV221、pBV222、pTrc99A、pTwin1、pEZZ18、pKK232-8、pUC-18、又はpUC-19
本発明の1つの代表的な実施形態によれば、上記の組換えプラスミドのいずれかを含有する宿主細胞を提供する。本発明に適切な宿主細胞は、原核細胞又は真核細胞を含むが、これらに限定されない。好ましくは、原核細胞は、BL21-DE3細胞又は大腸菌Rosetta-DE3細胞であり、真核細胞は、酵母である。
【0033】
本発明の1つの代表的な実施形態によれば、キラルアミンの生産方法を提供する。該方法は、ケトン系化合物及びアミノ供与体のアミノ基転移反応をトランスアミナーゼで触媒するステップを含み、トランスアミナーゼは、本発明のトランスアミナーゼ突然変異体である。好ましくは、ケトン系化合物は、
【化4】
(n=0、1、2又は3、X=C、N、O又はS、R=H、F、Cl、Br、CH
3又はCH
2CH
3)である。
【0034】
ケトン系化合物及びアミノ供与体のアミノ基転移反応を本発明のトランスアミナーゼで触媒する反応系において、pHは、7~11、好ましくは7.5である。ケトン系化合物及びアミノ供与体のアミノ基転移反応をトランスアミナーゼで触媒する反応系の温度が、20~45℃、より好ましくは30℃であり、つまり、温度の値は、20~45℃におけるいずれかの値、例えば、20、21、22、25、27、28、29、20、31、32、35、37、38、39、40、42、45などであってもよい。ケトン系化合物及びアミノ供与体のアミノ基転移反応をトランスアミナーゼで触媒する反応系において、酵素の使用量が、1.5~6.6mg/mL;好ましくは1.7mg/mLであり、つまり、酵素量の値は、1.5~6.6mg/mLにおけるいずれかの値、例えば、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.5、3.0、3.6、3.8、4.0、4.4、4.5、4.9、5.1、5.5、6.6などであってもよい。
【0035】
本発明の一実施形態では、本発明のトランスアミナーゼ突然変異体の基質は以下の通りである。
【0036】
基質1:
【化5】
Tetr ahydrofuran-3-one
テトラヒドロフラン-3-オン
基質2:
【化6】
2-メチルチオラン-3-オン
2-Methylthiolan-3-one
基質3:
【化7】
2-Chlorocyclopentanone
2-クロロシクロペンタノン
基質4:
【化8】
Cyclopentanone
シクロペンタノン
基質5:
【化9】
3-Methylcyclobutan-l-one
3-メチルシクロブタン-1-オン
本発明の1つの代表的な実施形態によれば、基質1、基質2、基質3、基質4、基質5の反応を検証する方法は以下の通りである。
【0037】
5mL遠心分離管に基質10mg、酵素1mg、リン酸ピリドキサール0.1mg、6 Mイソプロピルアミン塩酸塩20mgをそれぞれ加え、0.1Mリン酸緩衝液pH 7.5を全体積0.5mLまで補充し、45℃、200rpmで16h反応させた。
【0038】
反応終了後、基質1、2、及び3の選択性の検出
反応系0.06mLに0.1Mリン酸緩衝液pH 7.5を0.04mL加え、希釈系0.1mLにアセトニトリル、水、及び重炭酸ナトリウムの等体積溶液0.3mLを加え、均一に混合し、0.1mLを採取し、5mg/mL Nα-(2,4-ジニトロ-5-フルオロフェニル)-L-アラニンアミド試薬0.9mLを加え、50℃の金属浴にて3h放置し、誘導系を取り出して12000rpmで5 min遠心分離し、0.5mLを採取し、アセトニトリルと水の等体積溶液0.5mLを加え、均一に混合し、e.e.検出に供した。本願では、活性(基質変換率で表される)検出方法は以下の通りである。酵素で基質反応を触媒した後の反応系から100μLを採取し、メタノール900μLを加え、振とうさせて遠心分離し、上清を採取してサンプルを得る。HPLC(高速液体クロマトグラフィー)により検出された、生成物が占める相対ピーク面積は、酵素活性を表す。
【0039】
本発明の1つの代表的な実施形態では、アミノ供与体は、イソプロピルアミン又はアラニン、好ましくはイソプロピルアミンである。
【0040】
以下、実施例を参照して本発明の有益な効果についてさらに説明する。
【0041】
実施例1
C60Y(Template、例えば、SEQ ID NO: 1,Arthrobacter citreus由来、MGLTVQKINWEQVKEWDRKYLMRTFSTQNEYQPVPIESTEGDYLITPGGTRLLDFFNQLYCVNLGQKNQKVNAAIKEALDRYGFVWDTYATDYKAKAAKIIIEDILGDEDWPGKVRFVSTGSEAVETALNIARLYTNRPLVVTREHDYHGWTGGAATVTRLRSFRSGLVGENSESFSAQIPGSSCSSAVLMAPSSNTFQDSNGNYLKDENGELLSVKYTRRMIENYGPEQVAAVITEVSQGVGSTMPPYEYVPQIRKMTKELGVLWISDEVLTGFGRTGKWFGYQHYGVQPDIITMGKGLSSSSLPAGAVVVSKEIAAFMDKHRWESVSTYAGHPVAMAAVCANLEVMMEENLVEQAKNSGEYIRSKLELLQEKHKSIGNFDGYGLLWIVDIVNAKTKTPYVKLDRNFRHGMNPNQIPTQIIMEKALEKGVLIGGAMPNTMRIGASLNVSRGDIDKAMDALDYALDYLESGEWQQSLEHHHHHH;対応するヌクレオチド配列はSEQ ID NO:2である。Arthrobactercitreus由来、atgggcctgaccgtacagaagatcaactgggaacaagtaaaggagtgggaccgcaagtacctgatgcgcactttttccactcagaacgaataccagccggtaccgattgaatctacggaaggtgattatctgatcaccccgggtggcacccgtctgctggacttcttcaaccaactgtattgcgttaacctgggccagaaaaaccagaaagtcaacgccgcgattaaagaggcactggaccgctacggcttcgtatgggacacttatgctaccgactacaaggcgaaagccgcgaaaatcattatcgaggatattctgggtgacgaggattggcctggtaaagttcgttttgttagcactggctccgaagccgtggaaaccgcgctgaatatcgcgcgtctgtataccaatcgtccgctggttgtgacccgtgaacacgactatcacggttggaccggcggcgctgcaaccgtcactcgtctgcgtagcttccgttctggtctggtgggtgaaaactccgaaagcttctctgctcagatcccgggttcttcttgtagctctgcagtcctgatggccccgtcttccaacaccttccaggactctaacggcaactacctgaaagacgaaaacggtgaactgctgtccgttaaatacacccgtcgcatgattgaaaactacggcccggagcaggtagccgcagtgattacggaagttagccagggtgttggttctacgatgccgccatacgaatatgttccacagatccgtaaaatgactaaagagctgggcgttctgtggatctccgacgaggtcctgaccggttttggtcgtaccggtaaatggttcggttaccagcattatggcgttcaaccagatatcattactatgggcaagggcctgtcttcttcctctctgccggcgggcgcagtagttgtgtccaaagaaatcgctgcgtttatggacaaacaccgctgggaatctgtttccacctacgcgggtcacccggtggcgatggcagctgtgtgcgctaacctggaagtgatgatggaagaaaacctggtggaacaagctaaaaatagcggcgaatacatccgtagcaaactggaactgctgcaggaaaagcataaaagcatcggcaacttcgacggttacggtctgctgtggattgttgatatcgtgaatgcgaaaactaaaaccccgtatgtcaaactggatcgcaacttccgccacggcatgaacccgaaccagatcccgacgcagattatcatggaaaaagctctggaaaaaggcgttctgatcggtggtgcaatgcctaacactatgcgtatcggcgcatctctgaacgtatctcgtggtgatatcgataaagctatggatgctctggattacgcgctggattacctggagtccggtgaatggcagcagagcctcgagcaccaccaccaccaccactga)に対して部位特異的突然変異誘発を行い、L59、Y60、Y148、H149、F164、E237、V242、V271、L272、及びV328で突然変異を行い、合計10個の突然変異部位では、72個の突然変異体を得た。
【0042】
基質1について反応検証を行い、反応系は、基質10mg、リン酸ピリドキサール0.1mg、6Mイソプロピルアミン塩酸塩20mg、酵素1mg、0.1Mリン酸緩衝液pH7.5(全体積0.5mLまで補充)とし、反応条件は、45℃、200rpm、16hとした。ここで、突然変異体L59Q、L59W、H149D、H149I、H149R、F164W、V242W、V242H、V242Q、V328Iでは、向上が明らかであり、その中でも、V242Wでは、e.e.は最も高く、Templateよりも約2倍向上したが、活性(基質変換率)がある程度低下した。結果を表1に示す。
【0043】
【表1】
注:-は-50%<e.e.<1%を示し、+は1-30%を示し、++は30-60%を示し、+++は60~80%を示し、++++は80~90%を示し、+++++は90~95%を示し、++++++は95%超を示す。
【0044】
注:*は活性1~30%を示し、**は30~60%を示し、***は60~70%を示し、****は70~80%を示し、*****は80~90%を示し、******は90~95%を示し、*******は95%超を示す。
【0045】
実施例2
V242Wをテンプレートとして、L59、F164、L272、V328、T330、A436、及びR442の6つの部位について突然変異を持続し、合計40個の突然変異体を得た。基質1について反応検証を行い、反応系は、基質10mg、リン酸ピリドキサール0.1mg、6 Mイソプロピルアミン塩酸塩20mg、酵素1mg、0.1Mリン酸緩衝液pH 7.5(全体積0.5mLまで補充)とし、反応条件は、45℃、200rpm、16hとした。表2に示す結果から、V242W+F164Q、V242W+L272K、V242W+V328M、V242W+V328I、及びV242W+R442Tなどは、e.e.がV242Wよりも大きく向上し、V242W+F164Qの活性(変換率)及び選択性がテンプレートV242Wよりも大きく向上したことから、V242W+F164Qを後のテンプレートとした。
【0046】
【表2】
注:-は-50%<e.e.<1%を示し、+は1-30%を示し、++は30-60%を示し、+++は60~80%を示し、++++は80~90%を示し、+++++は90~95%を示し、++++++は95%超を示す。
【0047】
注:*は活性1~30%を示し、**は30~60%を示し、***は60~70%を示し、****は70~80%を示し、*****は80~90%を示し、******は90~95%を示し、*******は95%超を示す。
【0048】
実施例3
V242W+F164Qをテンプレートとして、V328の17種類のアミノ酸部位及びR442Tの合計18個の単一点突然変異部位を構築した。基質1について反応検証を行い、反応系は、基質10mg、リン酸ピリドキサール0.1mg、6 Mイソプロピルアミン塩酸塩20mg、酵素1mg、0.1Mリン酸緩衝液pH7.5(全体積0.5mLまで補充)とし、反応条件は、45℃、200rpm、16hとした。表3に示す結果から、活性(変換率で表される)が明らかに向上したものとしてスクリーニングされた2つの突然変異体は、それぞれ、V242W+F164Q+V328I、及びV242W+F164Q+R442Tであった。V242W+F164Q+V328Iを次のステップのテンプレートとした。
【0049】
【表3】
注:-は-50%<e.e.<1%を示し、+は1-30%を示し、++は30-60%を示し、+++は60~80%を示し、++++は80~90%を示し、+++++は90~95%を示し、++++++は95%超を示す。
【0050】
注:*は活性1~30%を示し、**は30~60%を示し、***は60~70%を示し、****は70~80%を示し、*****は80~90%を示し、******は90~95%を示し、*******は95%超を示す。
【0051】
実施例4
V242W+F164Q+V328Iをテンプレートとして、G2S、T46M、G48D、C185Y、S186N、S194P、T197M、N202D、Y205L、T245A、V252I、S268N、L353F、N359D、R409T、E424K、A436V、及びR442の18個の単一点突然変異部位を構築した。基質1について反応検証を行い、反応条件は、基質10mg、リン酸ピリドキサール0.1mg、6 Mイソプロピルアミン塩酸塩20mg、酵素0.25mg、0.1Mリン酸緩衝液pH7.5(全体積0.5mLまで補充)、45℃、200rpm、16hとした。V242W+F164Q+V328I+R442Tは、活性が大きく向上したため、次のステップのテンプレートとした、表4は、対応するe.e.及び活性の結果を示す。
【0052】
【表4】
注:-は-50%<e.e.<1%を示し、+は1-30%を示し、++は30-60%を示し、+++は60~80%を示し、++++は80~90%を示し、+++++は90~95%を示し、++++++は95%超を示す。
【0053】
注:*は活性1~30%を示し、**は30~60%を示し、***は60~70%を示し、****は70~80%を示し、*****は80~90%を示し、******は90~95%を示し、*******は95%超を示す。
【0054】
実施例5
V242W+F164Q+V328I+R442Tをテンプレートとして、単一点突然変異を行い、プライマーとしてG48D、S194P、及びV252Tとした。基質1について反応検証を行い、反応系は、基質10mg、リン酸ピリドキサール0.1mg、6 Mイソプロピルアミン塩酸塩20mg、酵素0.25mg、0.1Mリン酸緩衝液pH7.5(全体積0.5mLまで補充)とし、反応条件は、45℃、200rpm、16hとした。V242W+F164Q+V328I+R442T+S194P、及びV242W+F164Q+V328I+R442T+V252Iは、活性が最も高く、タンパク質電気泳動の結果によれば、上清中で突然変異体のタンパク質発現が明らかになった。
【0055】
【表5】
注:-は-50%<e.e.<1%を示し、+は1-30%を示し、++は30-60%を示し、+++は60~80%を示し、++++は80~90%を示し、+++++は90~95%を示し、++++++は95%超を示す。
【0056】
注:*は活性1~30%を示し、**は30~60%を示し、***は60~70%を示し、****は70~80%を示し、*****は80~90%を示し、******は90~95%を示し、*******は95%超を示す。
【0057】
#はSDS-PAGEバンドの百分率が10~25%の間であることを示し、##はSDS-PAGEバンドの百分率が25%~40%の間であることを示し、###はSDS-PAGEバンドの百分率が40%~55%の間であることを示し、####はSDS-PAGEバンドの百分率が55%~70%の間であることを示し、#####はSDS-PAGEバンドの百分率が70%~85%の間であることを示し、######はSDS-PAGEバンドの百分率が85%~90%の間であることを示す。
【0058】
実施例6
V242W+F164Q+V328I+R442T+S194Pをテンプレートとして単一点突然変異を行い、突然変異部位をV252I及びG48Dとした。V242W+F164Q+V328I+R442T+V252Iをテンプレートとし、突然変異部位をG48Dとした。基質1について反応検証を行い、反応系は、基質10mg、リン酸ピリドキサール0.1mg、6 Mイソプロピルアミン塩酸塩20mg、酵素0.25mg、0.1Mリン酸緩衝液pH 7.5(全体積0.5mLまで補充)とし、反応条件は、45℃、200rpm、16hとした。表6に示す結果から、突然変異体V242W+F164Q+V328I+R442T+V252I+G48Dは、活性が向上し、上清中でタンパク質の発現が明らかになった。
【0059】
【表6】
注:-は-50%<e.e.<1%を示し、+は1-30%を示し、++は30-60%を示し、+++は60~80%を示し、++++は80~90%を示し、+++++は90~95%を示し、++++++は95%超を示す。
【0060】
注:*は活性1~30%を示し、**は30~60%を示し、***は60~70%を示し、****は70~80%を示し、*****は80~90%を示し、******は90~95%を示し、*******は95%超を示す。
【0061】
#はSDS-PAGEバンドの百分率が10~25%の間であることを示し、##はSDS-PAGEバンドの百分率が25%~40%の間であることを示し、###はSDS-PAGEバンドの百分率が40%~55%の間であることを示し、####はSDS-PAGEバンドの百分率が55%~70%の間であることを示し、#####はSDS-PAGEバンドの百分率が70%~85%の間であることを示し、######はSDS-PAGEバンドの百分率が85%~90%の間であることを示す。
【0062】
実施例7
V242W+F164Q+V328I+R442T+S194P+V252Iをテンプレートとして、単一点突然変異を行い、突然変異部位をG48Dとした。基質1について反応検証を行い、反応系は、基質10mg、リン酸ピリドキサール0.1mg、6 Mイソプロピルアミン塩酸塩20mg、酵素0.25mg、0.1Mリン酸緩衝液pH 7.5(全体積0.5mLまで補充)とし、反応条件は、45℃、200rpm、40hとした。表7に示す結果から、突然変異体V242W+F164Q+V328I+R442T+S194P+V252I+G48Dは、活性が最も高かった。
【0063】
【表7】
注:-は-50%<e.e.<1%を示し、+は1-30%を示し、++は30-60%を示し、+++は60~80%を示し、++++は80~90%を示し、+++++は90~95%を示し、++++++は95%超を示す。
【0064】
注:*は活性1~30%を示し、**は30~60%を示し、***は60~70%を示し、****は70~80%を示し、*****は80~90%を示し、******は90~95%を示し、*******は95%超を示す。
【0065】
実施例8
酵素量を1mgにした条件下で、基質1の様々な基質濃度について検証を行った。反応条件:リン酸ピリドキサール0.1mg、様々な濃度の6Mイソプロピルアミン塩酸塩、全体積 2mL、0.1Mリン酸緩衝液pH 7.5、45℃、200rpm、40hとした。表8に示す結果から、e.e.は基質濃度の上昇に応じて上昇したが、基質変換率は基質濃度の上昇に応じて低下し、好ましくは基質濃度は30mg/mLであった。
【0066】
【表8】
注:-は-50%<e.e.<1%を示し、+は1-30%を示し、++は30-60%を示し、+++は60~80%を示し、++++は80~90%を示し、+++++は90~95%を示し、++++++は95%超を示す。
【0067】
注:*は活性1~30%を示し、**は30~60%を示し、***は60~70%を示し、****は70~80%を示し、*****は80~90%を示し、******は90~95%を示し、*******は95%超を示す。
【0068】
実施例9
基質1の濃度を30mg/mLにした条件下で、様々な酵素の使用量について検証を行った。反応系は、リン酸ピリドキサール0.5mg、6 Mイソプロピルアミン塩酸塩90mg、0.1Mリン酸緩衝液pH 7.5、全体積1.5mLとし、反応条件は、45℃、200rpm、40hとした。表9に示す結果から、e.e.は、酵素量の低下に応じて僅かに向上したが、突然変異体の活性には大きな変化が認められず、好ましくは1.7mg/mL酵素量である。
【0069】
【表9】
注:-は-50%<e.e.<1%を示し、+は1-30%を示し、++は30-60%を示し、+++は60~80%を示し、++++は80~90%を示し、+++++は90~95%を示し、++++++は95%超を示す。
【0070】
注:*は活性1~30%を示し、**は30~60%を示し、***は60~70%を示し、****は70~80%を示し、*****代表 80-90%、******は90~95%を示し、*******は95%超を示す。
【0071】
実施例10
基質1について反応温度を最適化させた。反応系は、基質60mg、酵素3mg、リン酸ピリドキサール0.6mg、6Mイソプロピルアミン塩酸塩120mg、0.1Mリン酸緩衝液pH 7.5(全体積1.8mLまで補充)とし、反応条件は、45℃、200rpm、40hとした。表10に示す結果から、e.e.は、温度の低下に応じた明らかな変化が認められなかったが、20℃では活性は明らかに低下し、30℃で反応させるのが好ましい。
【0072】
【表10】
注:-は-50%<e.e.<1%を示し、+は1-30%を示し、++は30-60%を示し、+++は60~80%を示し、++++は80~90%を示し、+++++は90~95%を示し、++++++は95%超を示す。
【0073】
注:*は活性1~30%を示し、**は30~60%を示し、***は60~70%を示し、****は70~80%を示し、*****代表 80-90%、******は90~95%を示し、*******は95%超を示す。
【0074】
実施例11
基質1の反応をスケールアップし、反応系は、基質1g、酵素0.05g、リン酸ピリドキサール10mg、6Mイソプロピルアミン塩酸塩2g、0.1Mリン酸緩衝液pH 7.5(全体積30mLまで補充)とし、反応条件は、30℃、200rpm、60hとした。250mL三角フラスコにて反応を行った。表11に示す結果から、突然変異体は、e.e.及び活性が母本のe.e.及び活性よりも有意に向上した。
【0075】
【表11】
注:-は-50%<e.e.<1%を示し、+は1-30%を示し、++は30-60%を示し、+++は60~80%を示し、++++は80~90%を示し、+++++は90~95%を示し、++++++は95%超を示す。
【0076】
注:*は活性1~30%を示し、**は30~60%を示し、***は60~70%を示し、****は70~80%を示し、*****は80~90%を示し、******は90~95%を示し、*******は95%超を示す。
【0077】
反応終了後の系を以下の具体的なステップで処理した。不純物を除去し、系を50mL遠心分離管に移した。系の体積の半分の酢酸エチルを加えて振とうさせ、2つの50mL遠心分離管に分包し、4000rpmで10min遠心分離した。上清を捨てて、下層の系に系の体積の半分の酢酸エチルを加えて振とうさせ、4000rpmで10min遠心分離した。これを1回繰り返した。下層の系に系の体積の半分の酢酸エチルを加えて振とうさせ、4000rpmで10min遠心分離した。これを1回繰り返した。下層の系を250mL丸底フラスコに移し、重量を量った。基質を除去するために、水酸化ナトリウム乾燥粉末を残りの系の重量の半分に相当する量で丸底フラスコ中の系に加えて、このプロセスに亘って系を40℃未満に維持した。0.5倍の系(系の体積の半分)のメチル第3級ブチルエーテルを加え、2つの50mL遠心分離管に移し、4000rpmで10min遠心分離した。上清に0.5倍の系(上清の体積の半分)のメチル第3級ブチルエーテルを加えて振とうさせ、4000rpmで10min遠心分離した。これを1回繰り返した。上清を丸底フラスコに移し、回転蒸発させた。生成物の収率は53%であった。
【0078】
実施例12
最適かされた反応条件で、基質2、基質3、基質4、基質5について検証を行い、反応系は、基質10mg、リン酸ピリドキサール0.1mg、6 Mイソプロピルアミン塩酸塩20mg、酵素0.5mg、0.1Mリン酸緩衝液pH 7.5(全体積0.3mLまで補充)とし、反応条件は、30℃、200rpm、60hとした。表12に示す結果から、いずれの基質でも、突然変異体活性は向上した。
【0079】
【表12】
注:-は-50%<e.e.<1%を示し、+は1-30%を示し、++は30-60%を示し、+++は60~80%を示し、++++は80~90%を示し、+++++は90~95%を示し、++++++は95%超を示す。
【0080】
注:*は活性1~30%を示し、**は30~60%を示し、***は60~70%を示し、****は70~80%を示し、*****は、80~90%を示し、******は90~95%を示し、*******は95%超を示す。
【0081】
また、トランスアミナーゼの立体構造をコンピューターシミュレーション解析ソフトを用いて解析したところ、突然変異部位の多くが活性中心付近に位置しており、この突然変異により基質と酵素の結合が強化される可能性があることが判明した。したがって、選択性と触媒効率が向上した。
【0082】
上記は、本発明の好ましい実施例にすぎず、本発明を限定するものではなく、当業者にとって本発明は様々な変更及び変化が可能である。本発明の精神及び原則において行われる補正、均等置換、改良などであれば、本発明の保護範囲内に含まれるものとする。
【配列表】
【国際調査報告】