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特表2025-501272不活性化されたSUV39H1及び改変TCRを有する免疫細胞
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-17
(54)【発明の名称】不活性化されたSUV39H1及び改変TCRを有する免疫細胞
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20250109BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20250109BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20250109BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20250109BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20250109BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20250109BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20250109BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250109BHJP
   A61K 35/17 20250101ALI20250109BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
C12N5/0783
C12N15/09 Z
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/62 Z
A61K39/00 H
A61K45/00
A61P35/00
A61K35/17
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539691
(86)(22)【出願日】2022-12-28
(85)【翻訳文提出日】2024-08-27
(86)【国際出願番号】 EP2022087979
(87)【国際公開番号】W WO2023126458
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】63/294,201
(32)【優先日】2021-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522029822
【氏名又は名称】ムネモ・セラピューティクス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フランソワ・ゴーデ
(72)【発明者】
【氏名】ミカエル・サイタキス
(72)【発明者】
【氏名】プリヤンカ・ナイル・グプタ
(72)【発明者】
【氏名】マダヴィ・ラタ・ソマラジュ
(72)【発明者】
【氏名】テオドロス・ギアヴリディス
(72)【発明者】
【氏名】サスワティ・パンダ
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】カイラ・ヴァンブレン
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ・ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】アルメル・ボヒヌスト
(72)【発明者】
【氏名】アンジェラ・インジェ・リ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA44
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084ZB072
4C084ZB212
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC032
4C084ZC75
4C085AA06
4C085BB11
4C085CC01
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE03
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BB65
4C087CA04
4C087MA02
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZC75
(57)【要約】
本開示は、SUV39H1が不活性化され、任意選択でTRAC遺伝子座の破壊及び/又は1つ若しくは複数のITAMの欠失と組み合わされている、CAR又はTCR等の抗原特異的受容体を発現する改良型免疫細胞に関する。また、本開示は、そのような細胞を含む組成物、そのような細胞を産生するための方法、及び養子細胞療法における、例えばがん又は炎症性疾患における、そのような細胞の使用も提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的抗原に特異的に結合する異種性抗原結合ドメインを含む改変TCRである抗原特異的受容体を発現する改変免疫細胞であって:
(a)前記免疫細胞のSUV39H1遺伝子が不活性化されている;及び
(b)任意選択で抗原特異的受容体が単一の活性ITAMドメインを含む、
改変免疫細胞。
【請求項2】
SUV39H1阻害物質をコードする核酸、任意選択で(a)ドミナントネガティブSUV39H1遺伝子、又は(b)SUV39H1遺伝子の断片に相補的なRNAi、lncRNA、shRNA、リボザイム若しくはアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む、請求項1に記載の改変免疫細胞。
【請求項3】
SUV39H1遺伝子は、欠失した又は非機能的なSUV39H1タンパク質をもたらす1つ又は複数の突然変異を含む、請求項1又は2に記載の改変免疫細胞。
【請求項4】
SUV39H1遺伝子は、免疫細胞をSUV39H1阻害物質、任意選択でエピポリチオジオキソピペラジン(ETP)クラスの阻害物質、例えば、エピジチオジオキソピペラジンアルカロイド又はETP69と接触させることによって不活性化される、請求項1に記載の改変免疫細胞。
【請求項5】
抗原特異的受容体は
(a)抗体の抗原結合断片、任意選択で重鎖可変領域(VH)を含む第1の抗原結合鎖;及び
(b)抗体の抗原結合断片、任意選択で軽鎖可変領域(VL)を含む第2の抗原結合鎖;
を含む改変TCRであって、
第1の及び第2の抗原結合鎖は、TRACポリペプチド又はTRBCポリペプチドをそれぞれ含み、任意選択でTRACポリペプチド及びTRBCポリペプチドの少なくとも1つは内因性であり、任意選択で内因性TRAC及びTRBCポリペプチドの一方又は両方は不活性化されている、
請求項1から4のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項6】
改変TCRは、(a)配列番号5又は6に少なくとも90%配列同一性を有するTCRベータ定常領域に連結されたVH又はその断片、及び(b)配列番号4に少なくとも90%配列同一性を有するTCRアルファ定常領域に連結されたVL又はその断片、及び任意選択で(c)単一のITAMを含むCD3ゼータポリペプチド、任意選択で配列番号7のアミノ酸90~164の欠失を含むCD3ゼータポリペプチドを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項7】
抗原結合ドメインは、約1×10-7以下、約5×10-8以下、約1×10-8以下、約5×10-9以下、約1×10-9以下、約5×10-10以下、約1×10-10以下、約5×10-11以下、約1×10-11以下、約5×10-12以下又は約1×10-12以下のKD親和性で抗原に結合する、請求項1から6のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項8】
第2の標的抗原に結合する第2の抗原特異的受容体を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項9】
SUV39H1細胞は:
(a)細胞外抗原結合ドメイン、
(b)膜貫通ドメイン、
(c)任意選択で1つ又は複数の共刺激ドメイン、並びに
(d)任意選択でITAM2及びITAM3が不活性化されている改変CD3ゼータ細胞内シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメイン
を含む、キメラ抗原受容体(CAR)も発現する、請求項1から8のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項10】
共刺激受容体、任意選択で、(a)CD86、41BBL、CD275、CD40L、OX40L、PD-1、TIGIT、2B4若しくはNRP1の細胞外及び膜貫通ドメイン、並びに(b)CD28、4-1BB、0X40、ICOS、CD27、CD40若しくはCD2の細胞内共刺激分子、を含む受容体;又は任意選択でCD80共刺激リガンド(配列番号14)及び4-1BB共刺激分子(配列番号10)を含む受容体、任意選択で配列番号33の受容体を更に含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項11】
異種性抗原結合ドメイン又は抗原特異的受容体をコードする核酸は、免疫細胞の内因性TRAC遺伝子座及び/又はTRBC遺伝子座に挿入され、任意選択で前記核酸は、内因性TCRプロモーターに作動可能に連結される、請求項1から10のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項12】
前記抗原特異的受容体及び/又は前記抗原結合ドメインをコードする核酸配列の挿入は、天然TCRアルファ鎖及び/又は天然TCRベータ鎖を含むTCRの内因性発現を破壊するか、又は消失させる、請求項1から11のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項13】
抗原は、細胞表面で、細胞あたり約10,000分子未満、又は約5,000分子未満、又は約2,000分子未満の低い密度を有する、請求項1から12のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項14】
細胞は、T細胞、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、CD4+及びCD8+ T細胞、NK細胞、Treg細胞、Tm細胞、メモリー幹T細胞(TSCM)、TCM細胞、TEM細胞、T細胞前駆細胞、NK細胞前駆細胞、多能性幹細胞、誘導多能性幹細胞(iPSC)、造血幹細胞(HSC)、脂肪由来幹細胞(ADSC)又は骨髄性若しくはリンパ系細胞系譜の多能性幹細胞である、請求項1から13のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項15】
細胞外抗原結合ドメインは、オーファンチロシンキナーゼ受容体ROR1、tEGFR、Her2、p95HER2、LI-CAM、CD19、CD20、CD22、メソセリン、CEA、クローディン18.2、B型肝炎表面抗原、抗葉酸受容体、CD23、CD24、CD30、CD33、CD38、CD44、CD70、EGFR、EGP-2、EGP-4、EPHa2、ErbB2、3若しくは4、FcRH5、FBP、胎児アセチコリンe受容体、GD2、GD3、HMW-MAA、IL-22R-アルファ、IL-13R-アルファ2、kdr、カッパ軽鎖、BCMA、Lewis Y、MAGE-A1、メソセリン、MUC1、MUC16、PSCA、NKG2Dリガンド、NY-ESO-1、MART-1、gplOO、腫瘍胎児性抗原、TAG72、VEGF-R2、がん胎児性抗原(CEA)、前立腺特異的抗原(PSMA)、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、エフリンB2、CD123、CS-1、c-Met、GD-2、MAGE A3、CE7又はウィルムス腫瘍1(WT-1)に結合する、或いは任意選択で細胞外抗原結合ドメインは、国際公開第2021/043804号パンフレットに開示される腫瘍新抗原性ペプチドのいずれかに結合する、請求項1から14のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項16】
SUV39H1発現又はSUV39H1タンパク質活性は、少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%又は95%低減される、請求項1から15のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項17】
内因性TCR発現は、少なくとも約75%、80%、85%、90%、又は95%低減される、請求項1から16のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項18】
前記免疫細胞は自己由来である、請求項1から17のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項19】
前記免疫細胞は同種異系である、請求項1から18のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項20】
HLA-A遺伝子座が不活性化されている、請求項1から19のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項21】
HLAクラスI発現は、少なくとも約75%、80%、85%、90%、又は95%低減される、請求項1から20のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項22】
請求項1から21のいずれか一項に記載の改変免疫細胞を含む無菌医薬組成物。
【請求項23】
請求項1から22のいずれか一項に記載の改変免疫細胞、及び送達デバイス又は容器を含むキット。
【請求項24】
請求項1から23のいずれか一項に記載の改変免疫細胞又は医薬組成物又はキットを使用して、抗原に関連付けられる疾患、任意選択でがん、に罹患している又はそのリスクがある患者を、治療有効量の前記免疫細胞又は医薬組成物を患者に投与する工程により治療するための、方法。
【請求項25】
前記免疫細胞はT細胞又はNK細胞であり、約5×107個未満の細胞、任意選択で約105~約107個の細胞の用量が患者に投与される、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
第2の療法剤、任意選択で1つ又は複数のがん化学療法剤、細胞傷害剤、ホルモン、抗血管新生物質、放射性標識化合物、免疫療法、外科手術、凍結療法、及び/又は放射線療法が患者に投与される、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項27】
免疫チェックポイント調節物質が患者に投与される、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項28】
免疫チェックポイント調節物質は、PD1、PDL1、CTLA4、LAG3、BTLA、OX2R、TIM-3、TIGIT、LAIR-1、PGE2受容体、EP2/4アデノシン受容体、若しくはA2ARに特異的に結合する抗体又はこれらの他の阻害物質である、請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、養子細胞療法の分野に関する。本開示は、改変TCRを発現し、SUV39H1が不活性化されており、特性の増強を呈する免疫細胞を提供する。
【背景技術】
【0002】
緒言
強力ながん治療代替療法として、組換えT細胞受容体(TCR)及びキメラ抗原受容体(CAR)技術で武装したT細胞を使用する養子T細胞療法(ATCT)が台頭しつつある(Lim WA & June CH. 2018年. Cell 168巻(4号):724~740頁)。治療用T細胞の効率的な生着、長期的持続性、及び疲弊低減は、肯定的な治療成績と相関する。加えて、養子移入細胞の持続性の増加は、セントラルメモリーT細胞(TCM)集団の獲得に依存すると考えられる(Powell DJら、Blood. 2005年、105巻(1号):241~50頁、Huang J、Khong HTら、J Immunother. 2005年、28巻:258~267頁)。
【0003】
固形腫瘍の細胞ベース療法を成功させるための主な障害は、活性化T細胞の疲弊であり、それにより、それらが増殖する能力及びそれらが標的細胞を破壊する能力が減少する。PD-1遮断は、T細胞機能を早期段階で回復させることができるが、このレスキューは不完全であるか又は一過性である可能性がある(Sen DRら、2016年. Science 354巻(6316号):1165~1169頁、Pauken KEら、2016年. Science 354巻(6316号):1160~1165頁)。更に、腫瘍中の免疫抑制微小環境は、T細胞疲弊を媒介する(Joyce JA、Fearon DT. 2015年. Science 348巻(6230号):74~80頁)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2019/157454号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2021/016174号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2021/043804号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2022/189620号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2022/189626号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2022189638号パンフレット
【特許文献7】国際公開第2017/062451号パンフレット
【特許文献8】国際公開第2017/180989号パンフレット
【特許文献9】国際公開第2014/055668号パンフレット
【特許文献10】国際公開第2018/132506号パンフレット
【特許文献11】国際公開第2019/133969号パンフレット
【特許文献12】国際公開第2018/067993号パンフレット
【特許文献13】国際公開第200014257号パンフレット
【特許文献14】国際公開第2013126726号パンフレット
【特許文献15】国際公開第2012/129514号パンフレット
【特許文献16】国際公開第2014031687号パンフレット
【特許文献17】国際公開第2013/166321号パンフレット
【特許文献18】国際公開第2013/071154号パンフレット
【特許文献19】国際公開第2013/123061号パンフレット
【特許文献20】米国特許出願第2002131960号明細書
【特許文献21】米国特許出願第2013287748号明細書
【特許文献22】米国特許出願公開第20130149337号明細書
【特許文献23】米国特許第6,451,995号明細書
【特許文献24】米国特許第7,446,190号明細書
【特許文献25】米国特許第8,252,592号明細書
【特許文献26】米国特許第8,339,645号明細書
【特許文献27】米国特許第8,398,282号明細書
【特許文献28】米国特許第7,446,179号明細書
【特許文献29】米国特許第6,410,319号明細書
【特許文献30】米国特許第7,070,995号明細書
【特許文献31】米国特許第7,265,209号明細書
【特許文献32】米国特許第7,354,762号明細書
【特許文献33】米国特許第7,446,191号明細書
【特許文献34】米国特許第8,324,353号明細書
【特許文献35】米国特許第8,479,118号明細書
【特許文献36】欧州特許出願第2537416号明細書
【特許文献37】米国特許出願第20020018783号明細書
【特許文献38】国際公開第2014055668号パンフレット
【特許文献39】米国特許第8,153,765号明細書
【特許文献40】米国特許第8,603477号明細書
【特許文献41】米国特許第8,008,450号明細書
【特許文献42】米国特許出願公開第20120189622号明細書
【特許文献43】国際公開第2006099875号パンフレット
【特許文献44】国際公開第2009080829号パンフレット
【特許文献45】国際公開第2012092612号パンフレット
【特許文献46】米国特許出願公開第2013/0316380号明細書
【特許文献47】国際公開第2010/000565号パンフレット
【特許文献48】国際公開第2021239965号パンフレット
【特許文献49】米国特許出願公開第2018/0118849号明細書
【特許文献50】国際公開第2018/234367号パンフレット
【特許文献51】国際公開第2022/189639号パンフレット
【特許文献52】国際公開第2011009173号パンフレット
【特許文献53】国際公開第2012135854号パンフレット
【特許文献54】米国特許出願公開第20140065708号明細書
【特許文献55】国際出願番号PCT/US91/08442
【特許文献56】国際出願番号PCT/US94/05601
【特許文献57】米国特許第6,040,177号明細書
【特許文献58】米国特許第5,219,740号明細書
【特許文献59】米国特許第6,207,453号明細書
【特許文献60】米国特許第5,399,346号明細書
【特許文献61】国際公開第2021/183884号パンフレット
【特許文献62】国際公開第2002/012514号パンフレット
【特許文献63】国際公開第2014066435号パンフレット
【特許文献64】米国特許第8,697,359号明細書
【特許文献65】米国特許出願公開第2014/0087426号明細書
【特許文献66】米国特許出願公開第2012/0178169号明細書
【特許文献67】米国特許第5,356,802号明細書
【特許文献68】米国特許第5,436,150号明細書
【特許文献69】米国特許第5,487,994号明細書
【特許文献70】米国特許出願公開第20110301073号明細書
【特許文献71】米国特許公開第2014/0120222号明細書
【特許文献72】米国特許公開第2013/0315884号明細書
【特許文献73】米国特許第5,049,386号明細書
【特許文献74】米国特許第4,946,787号明細書
【特許文献75】米国特許第4,897,355号明細書
【特許文献76】国際公開第91/17424号パンフレット
【特許文献77】国際公開第91/16024号パンフレット
【特許文献78】米国特許出願公開第2003/0170238号明細書
【特許文献79】米国特許第4,690,915号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Lim WA & June CH、2018年. Cell 168巻(4号):724~740頁
【非特許文献2】Powell DJら、Blood. 2005年、105巻(1号):241~50頁
【非特許文献3】Huang J, Khong HTら、J Immunother. 2005年、28巻:258~267頁
【非特許文献4】Sen DRら、2016年. Science 354巻(6316号):1165~1169頁
【非特許文献5】Pauken KEら、2016年. Science 354巻(6316号):1160~1165頁
【非特許文献6】Joyce JA, Fearon DT. 2015年. Science 348巻(6230号)74~80頁
【非特許文献7】SMITH及びWATERMAN(Ad. App. Math.、2巻、482頁、1981年)
【非特許文献8】NEDDLEMAN及びWUNSCH(J. Mol. Biol、48巻、443頁、1970年)
【非特許文献9】PEARSON及びLIPMAN(Proc. Natl. Acd. Sci. USA、85巻、2444頁、1988年)
【非特許文献10】Edgar, Robert C、Nucleic Acids Research、32巻、1792頁、2004年
【非特許文献11】Petrie HT、Kincade PW。 Many roads、one destination for T cell progenitors. The Journal of Experimental Medicine. 2005年、202巻(1号):11~13頁
【非特許文献12】Torikaiら、Blood、119巻(2号):5697~705頁(2012年)
【非特許文献13】Renら、Clin. Cancer Res. 2017年、23巻:2255~2266頁
【非特許文献14】Grahamら、Cells. 2018年10月、7巻(10号):155頁
【非特許文献15】Eyquemら、Nature. 2017年3月2日、543巻(7643号):113~117頁
【非特許文献16】Fedorovら、Sci. Transl. Medicine、5巻(215頁)(2013年12月)
【非特許文献17】Sadelain M、Brentjens R、Riviere I. The basic principles of chimeric antigen receptor (CAR) design. Cancer discovery. 2013年、3巻(4号):388~398頁
【非特許文献18】、Bridgemanら、Clin. Exp. Immunol. 175巻(2号):258~67頁(2014年)
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【非特許文献172】Tsukaharaら(2013年) Biochem Biophys Res Commun 438巻(1号):84~9頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
当技術分野には、養子細胞療法のための特性が向上された改変又は遺伝子操作T細胞に対する必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、1つ又は複数の改変された抗原特異的受容体を発現し、SUV39H1が不活性化されている免疫細胞、特にT細胞若しくはNK細胞又はその前駆細胞並びにそのような免疫細胞に関連する組成物、キット及び製造方法及び使用方法を提供する。本開示の改変免疫細胞は、標的抗原に特異的に結合する異種性抗原結合ドメインを含む抗原特異的受容体を発現する。抗原特異的受容体は、抗体の抗原結合断片又はCDR、好ましくは重鎖可変領域(VH)及び/又は軽鎖可変領域(VL)の3つすべてのCDRを含む細胞外ドメインを含んでもよい。抗原特異的受容体は、キメラ抗原受容体(CAR)又は異種性TCR、例えば改変TCRであってもよい。
【0008】
改変TCRは、(a)抗体の抗原結合断片又はCDR、好ましくは重鎖可変領域(VH)及び/又は軽鎖可変領域(VL)の3つすべてのCDRを含む細胞外ドメイン、並びに(b)アルファ、ベータ、ガンマ又はデルタ鎖の天然又はバリアント定常領域を含んでもよい。例えば、改変TCRは、1つ又は複数の異種性ポリペプチド、例えば、(a)TRAC(配列番号4)又はそれに少なくとも90%配列同一性を有するTRAC(配列番号4)の断片若しくはバリアントに融合された、或いはTRBC1(配列番号5)若しくはTRBC2(配列番号6)又はそれらに少なくとも90%配列同一性を有するTRBC1(配列番号5)若しくはTRBC2(配列番号6)の断片若しくはバリアントに融合された、抗体のVH又はそれらに少なくとも90%配列同一性を有する断片若しくはバリアント、及び(b)TRAC(配列番号4)又はそれに少なくとも90%配列同一性を有するTRAC(配列番号4)の断片若しくはバリアントに融合された、或いはTRBC1(配列番号5)若しくはTRBC2(配列番号6)又はそれらに少なくとも90%配列同一性を有するTRBC1(配列番号5)若しくはTRBC2(配列番号6)の断片若しくはバリアントに融合された、抗体のVL又はそれに少なくとも90%配列同一性を有する断片若しくはバリアント、を含んでもよい。図1Aを参照されたい。改変TCRは、天然若しくはバリアント、例えば、1つ又は2つのITAMドメイン(例えば、ITAM2及びITAM3)が欠失している改変CD3ゼータポリペプチド(配列番号7)であってもよいCD3ゼータポリペプチドと会合する(結果として活性化する)ことができる。一部の実施形態では、改変TCRは、天然又はバリアントCD3ゼータポリペプチド、例えば、1つ又は2つのITAMドメイン(例えば、ITAM2及びITAM3)が欠失している改変CD3ゼータポリペプチド(配列番号7)を任意選択で更に含んでもよい。図1Bを参照されたい。
【0009】
目的の抗原にHLA非依存的な様式で結合する組換えHLA非依存的(又は、HLAに限定されない)改変TCR(「HI-TCR」と称される)は、国際公開第2019/157454号パンフレットに記載されている。そのようなHI-TCRは:(a)抗原にHLA非依存的な様式で結合する異種性抗原結合ドメイン、例えば、免疫グロブリン可変領域の抗原結合断片;及び(b)CD3ゼータポリペプチドと会合する(結果として活性化する)ことができる定常ドメイン、を含む抗原結合鎖を含む。好ましくは、抗原結合ドメイン又はその断片は:(i)抗体の重鎖可変領域(VH)及び/又は(ii)抗体の軽鎖可変領域(VL)を含む。TCRの定常ドメインは、例えば、天然又は改変TRACポリペプチド(配列番号4又はそのバリアント)或いは天然又は改変TRBCポリペプチド(配列番号5若しくは6又はそのバリアント)である。TCRの定常ドメインは、例えば天然TCR定常ドメイン(アルファ若しくはベータ)又はその断片である。典型的には、それ自体が細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ抗原受容体とは異なり、HI-TCRは、活性化シグナルを直接産生せず;代わりに、抗原結合鎖がCD3ゼータポリペプチド(配列番号7)と会合し、結果として活性化する。組換えTCRを含む免疫細胞は、抗原が、細胞表面で、細胞あたり約10,000分子未満、例えば細胞あたり約5,000、4,000、3,000、2,000、1,000、500、250又は100分子未満の低い密度を有する場合に、優れた活性をもたらす。
【0010】
CD3ゼータポリペプチドは、任意選択で共刺激分子の細胞内ドメイン又はその断片を含む。代替的に、抗原結合ドメインは、抗原への抗原結合鎖の結合で免疫応答性細胞を刺激することができる共刺激ドメインを任意選択で含む。共刺激ドメイン例としては、CD28(配列番号8~9)、4-1BB(CD137)(配列番号10~11)、ICOS(配列番号12)、CD27、OX40(CD134)(配列番号13)、DAP10、DAP12、2B4、CD40、FCER1G又はGITR(AITR)に由来する刺激ドメイン又はその断片若しくはバリアントが挙げられる。T細胞について、CD28、CD27、4-1BB(CD137)、ICOSは、好ましい場合がある。NK細胞について、DAP10、DAP12、2B4は、好ましい場合がある。2つの共刺激ドメインの組合せ、例えば、CD28及び4-1BB、又はCD28及びOX40が企図される。
【0011】
抗原特異的受容体、例えば改変TCRを発現する前述の改変免疫細胞は、本明細書に記載の1つ又は複数の更なる特性を好ましくは含む:SUV39H1遺伝子の不活性化(例えば、突然変異若しくは阻害)及び/又は抗原特異的受容体のCD3ゼータ細胞内シグナル伝達領域の1つ若しくは2つのITAMドメインの不活性化、並びに/又は一方若しくは両方の内因性TCR鎖の不活性化(例えば、内因性TCRアルファ及び/若しくはTCRベータの欠失若しくは破壊)並びに/又は共刺激受容体の付加、或いはそのような特性の1つ、2つ、3つ又はすべての組合せ。
【0012】
一態様では、改変免疫細胞のSUV39H1遺伝子(配列番号15)は、不活性化されている。一部の実施形態では、改変免疫細胞は、SUV39H1タンパク質の欠失又は非機能的SUV39H1タンパク質をもたらす1つ又は複数の突然変異(挿入、置換、欠失)を含んでもよい。他の実施形態では、改変免疫細胞は、SUV39H1活性を少なくとも約50%、好ましくは60%、70%、80%、90%又はそれよりも大きく阻害する作用剤と接触され、特性の増強を生じるのに十分な期間についてそのようなSUV39H1阻害の条件下で培養される。SUV39H1を阻害する作用剤は、細胞によって発現されてもよく、又は公知のトランスフェクション法によって細胞に送達されてもよい。SUV39H1が不活性化又は阻害されている免疫細胞は、セントラルメモリー表現型の増強、養子移入後の生存及び持続性の増強、並びに疲弊の低減を呈する。特に、そのような細胞は蓄積し、長寿命セントラルメモリー細胞へと増加した効率で再プログラムされる。そのような細胞は、腫瘍細胞拒絶の誘導がより効率的であり、がん治療の有効性の増加を示す。
【0013】
別の態様では、抗原特異的受容体(例えば、改変TCR)は、単一の活性ITAMドメインを有する改変CD3を含み、任意選択でCD3は、1つ若しくは複数の又は2つ以上の共刺激ドメインを更に含んでもよい。例えば、抗原特異的受容体は、ITAM2及びITAM3が不活性化されている改変CD3ゼータ細胞内シグナル伝達ドメインを含む。一部の実施形態では、ITAM1及びITAM2が不活性化されているか、又はITAM2及びITAM3が不活性化されている。一部の実施形態では、改変TCRの改変CD3ゼータポリペプチドは、ITAM1のみを保持し、残りのCD3ゼータドメインは欠失している(配列番号7の残基90~164)。図1Bを参照されたい。別の例として、ITAM1は、ITAM2又はITAM3のいずれかのアミノ酸配列で置換されており、残りのCD3ゼータドメインは欠失している(配列番号7の残基90~164)。
【0014】
また更なる態様では、前述の改変免疫細胞の少なくとも1つのT細胞受容体(TCR)定常領域遺伝子は、抗原特異的受容体又は抗原結合ドメインをコードする核酸配列の挿入によって改変される。TCR定常領域は、TCRアルファ定常領域(TRAC)及び/又はTCRベータ定常領域(TRBC)である。本態様により、核酸配列の挿入は、天然TCRアルファ鎖及び/又は天然TCRベータ鎖を含むTCRの内因性発現を破壊できるか、又は消失させることができる。例えば、抗原特異的受容体をコードする核酸は、免疫細胞に対して異種性であってもよく、その発現が内因性プロモーターの制御下に入るようにT細胞受容体の内因性プロモーターに作動可能に連結していてもよい。一部の実施形態では、CARをコードする核酸は、内因性TRACプロモーターに作動可能に連結している。核酸配列の挿入は、内因性TCR発現を、少なくとも約75%、80%、85%、90%、又は95%低減させることができる。
【0015】
関連する態様では、抗原特異的受容体は、異種性抗原結合ドメイン及び天然TCR定常ドメイン(アルファ若しくはベータ)又はその断片を含む改変TCRであり、並びに抗原特異的受容体(改変TCR)は、CD3ゼータポリペプチドを活性化できる。一部の実施形態では、異種性抗原結合ドメインをコードする核酸は、免疫細胞の内因性TRAC遺伝子座及び/又はTRBC遺伝子座に挿入されてよい。例えば、抗原特異的受容体をコードする核酸は、免疫細胞に対して異種性であってもよく、その発現が内因性プロモーターの制御下に入るようにT細胞受容体の内因性プロモーターに作動可能に連結していてもよい。それにより核酸配列の挿入は、天然TCRアルファ鎖及び/又は天然TCRベータ鎖を含むTCRの内因性発現を破壊できるか、又は消失させることができる。核酸配列の挿入は、内因性TCR発現を少なくとも約75%、80%、85%、90%又は95%低減させることができる。本態様により、抗原結合ドメインをコードする核酸は、抗原結合ドメイン又はその断片を含み、TCRベータ定常領域又はその断片に融合された融合ポリペプチドを産生するようにTRBC遺伝子座に挿入されてよい。加えて又は代替的に、抗原結合ドメイン(TRBC遺伝子座に融合された抗原結合ドメインと同じであってよく、又は異なっていてもよい)は、それを含み、TCRアルファ定常領域又はその断片に融合された融合ポリペプチドを産生するようにTRAC遺伝子座に挿入されてよい。特に、抗体の重鎖可変領域(VH)又はその断片をコードする核酸は、VH又はその断片を含み、TCRベータ定常領域又はその断片に融合された融合ポリペプチドを産生するようにTRBC遺伝子座に挿入されてよい。加えて、抗体の軽鎖可変領域(VL)又はその断片をコードする核酸は、VL又はその断片を含み、TCRアルファ定常領域又はその断片に融合された融合ポリペプチドを産生するようにTRAC遺伝子座に挿入されてよい。代替的に、VH又はその断片はTCRアルファ定常領域又はその断片に融合されてよく、VL又はその断片は、TCRベータ定常領域又はその断片に融合されてよい。一部の実施形態では、改変TCRベータ鎖及び改変TCRアルファ鎖をコードする単一の核酸は、内因性TRACプロモーターに作動可能に連結される。図2Aを参照されたい。一部の実施形態では、改変TCRベータ鎖及びTCRアルファ鎖は、ペプチド2A等の自己切断可能なリンカーによって隔てられる。
【0016】
別の態様では、改変TCRを含む免疫細胞は、共刺激受容体も含む。他の態様では、改変TCRを含む免疫細胞は、共刺激受容体を含まない、例えば国際公開第2021/016174号パンフレットに記載されている通りCD80/4-1BBキメラ受容体を含まない。そのような共刺激受容体としては、少なくとも1つの又は少なくとも2つの共刺激分子に融合されている共刺激リガンドを含むキメラ受容体が挙げられる。共刺激リガンドとしては、CD80、CD86、41BBL、CD275、CD40L、OX40L又はこれらの任意の組合せが挙げられる。一部の実施形態では、共刺激リガンドはCD80又は4-1BBLである。共刺激分子の例は、CD28、4-1BB、0X40、ICOS、DAP-10、CD27、CD40、NKG2D、CD2又はこれらの任意の組合せである。一部の実施形態では、共刺激受容体は、(a)CD86、41BBL、CD275、CD40L、OX40L、PD-1、TIGIT、2B4若しくはNRP1の細胞外及び膜貫通ドメイン又はその断片若しくはバリアント、並びに(b)CD28、4-1BB、0X40、ICOS、CD27、CD40若しくはCD2の細胞内共刺激分子又はその断片若しくはバリアント、を含む。一部の実施形態では、キメラ受容体は、4-1BBである第1の共刺激分子及びCD28である第2の共刺激分子を含む。好ましいキメラ受容体は、CD80共刺激リガンド(配列番号14)及び4-1BB共刺激分子(配列番号10)を含む。共刺激受容体は、国際公開第2021/016174号パンフレットに記載されている。
【0017】
本明細書に開示の改変免疫細胞は、前述の態様の2つ以上の組合せを含んでもよい。
【0018】
例えば、改変免疫細胞は、(a)SUV39H1遺伝子は、不活性化又は阻害されており、並びに(b)抗原特異的受容体は、異種性抗原結合ドメイン及び少なくとも1つの天然TCR定常ドメイン又はその断片を含む改変TCRαβであり、TCRαβはCD3ゼータポリペプチドを活性化することができる、免疫細胞である。別の例として、改変免疫細胞は、(c)例えば、ITAM2及びITAM3が不活性化されている単一の活性ITAMドメインを含むCD3ゼータ細胞内シグナル伝達ドメイン、及び/又は(d)4-1BB細胞内共刺激ドメイン(配列番号10)に連結されている共刺激受容体、例えば、CD80細胞外ドメイン(配列番号14)、を更に含む。
【0019】
別の例として、改変免疫細胞は、(a)SUV39H1遺伝子が不活性化されており、(b)(i)細胞外抗原結合ドメイン、(ii)膜貫通ドメイン、(iii)任意選択で、1つ又は複数の共刺激ドメイン、及び(iv)例えばITAM2及びITAM3が不活性化されている、単一の活性ITAMドメインを含む改変CD3ゼータ細胞内シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)を発現する、免疫細胞である。
【0020】
本明細書の態様又は実施形態のいずれかでは、抗原結合ドメインは、10-7M以下、又は10-8M以下、又は10-9M以下(数字が小さいほど高い親和性を示す)の結合親和性Kdで標的抗原に結合できる。
【0021】
本明細書に記載の態様のいずれかでは、改変免疫細胞は、T細胞、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、CD4+及びCD8+ T細胞、NK細胞、Treg細胞、Tm細胞、メモリー幹T細胞(TSCM)、TCM細胞、TEM細胞、T細胞前駆細胞、NK細胞前駆細胞、多能性幹細胞、誘導多能性幹細胞(iPSC)、造血幹細胞(HSC)、脂肪由来幹細胞(ADSC)又は骨髄性若しくはリンパ系細胞系譜の多能性幹細胞であってもよい。
【0022】
本明細書に記載の態様のいずれかでは、抗原特異的受容体は:(a)細胞外抗原結合ドメイン;(b)膜貫通ドメイン、(c)任意選択で1つ又は複数の共刺激ドメイン、及び(d)細胞内シグナル伝達ドメインを含むCARである。細胞外抗原結合ドメインは、scFv、任意選択で本明細書に開示されるような標的抗原に特異的に結合するscFvであってもよい。
【0023】
本明細書に記載の態様のいずれかでは、抗原結合ドメインは、以下の抗原:ADGRE2、アルファフェトプロテイン(AFP)、BCMA、がん胎児性抗原(CEA)、CAIX、CCR1、サイクリンAl(CCNA1)又はサイクリン(D1)等のサイクリン、CEA、CE7、CD7、CD8、CD10、CD19、CD20、CD22、CD23、CD24、CD30、CD70、CLL1、CD33、CD34、CD38、CD41、CD44、CD44V6、CD49f、CD56、CD74、CD99、CD123、CD133、CD138、CS-1、クローディン18.2、c-Met、チトクロームP450 1 B1(CYP1 B)、EGF1R、EGFR、EGFR-VIII、EGP-2、EGP-4、EGP-40、EpCAM、EPHa2、エフリンB2、ERBB、Erb-B2、Erb-B3、Erb-B4、エストロゲン受容体、FBP、FcRH5、胎児アセチコリン受容体、葉酸受容体-a、GD2、GD3、GP100、gplOO、HMW-MAA、HER2/neu、B型肝炎表面抗原、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、IL-22R-アルファ、IL-13R-アルファ2、κ-軽鎖、KDR、Lewis Y、L1-細胞接着分子、LILRB2、LILRB4、LI-CAM、livin、MAGE-A1、MAGE-A3、MART-1、メソセリン、マウスダブルミニッツ2ホモログ(MDM2)、ムチン16(MUC16)、MUC1、NKCS1、NKG2Dリガンド、NY-ESO-1、腫瘍胎児性抗原(h5T4)、オーファンチロシンキナーゼ受容体(ROR1)、p53、pHER95、p95HER2、PRAME、プロゲステロン受容体、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、前立腺特異的抗原、プロテイナーゼ3(PR1)、PSCA、サバイビン、タグ-72、tEGFR、チロシナーゼ、VEGF-R2、ウィルムス腫瘍遺伝子1(WT-1)のいずれか1つ又は複数に結合する。一部の実施形態では、抗原は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第2021/043804号パンフレット、国際公開第2022/189620号パンフレット、国際公開第2022/189626号パンフレット及び国際公開第2022189638号パンフレットのいずれか1つに開示される腫瘍新抗原性ペプチドのいずれかであってもよい。抗原は、代替的に、感染性疾患、自己免疫性疾患又は炎症性疾患に関連する抗原であってもよい。
【0024】
こうした実施形態のいずれかでは、抗原特異的受容体は、(a)第1の抗原(例えば、がん抗原)及び(b)T細胞活性化抗原、例えば、CD3の両方に結合する二重特異性抗原特異的受容体であってもよい。
【0025】
こうした実施形態のいずれかでは、免疫細胞は、標的及びT細胞活性化抗原、例えばCD3イプシロン又はTCRの定常鎖(アルファ若しくはベータ)の両方に結合する非膜結合(可溶性)二重特異性抗体、例えば、BiTE(二重特異性T細胞エンゲージャー可溶性抗体)を更に分泌する。
【0026】
こうした実施形態のいずれかでは、免疫細胞は、第2の抗原に特異的に結合する第2の抗原特異的受容体、任意選択で改変TCR又はCARを更に含んでいてもよい。例えば、免疫細胞は、第1の抗原に結合する第1のTCR及び第2の抗原に結合する第2のTCR、又は第1の抗原に結合するTCR及び第2の抗原に結合するCARの2つのTCRを含んでいてもよい。
【0027】
こうした実施形態のいずれかでは、SUV39H1の不活性化は、SUV39H1タンパク質活性のSUV39H1遺伝子発現を、少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%低減させる。
【0028】
こうした実施形態のいずれかでは、免疫細胞は、自己由来であってもよく又は同種異系であってもよい。こうした実施形態のいずれかでは、免疫細胞は、免疫原性を低減するように改変される、例えばHLA-A遺伝子座は不活性化される及び/又はベータ-2-ミクログロブリンは不活性化される。一部の実施形態では、HLAクラスI発現は、少なくとも約75%、80%、85%、90%、又は95%低減される。
【0029】
別の態様では本開示は、本開示の改変免疫細胞(例えば、T細胞、NK細胞又はその前駆細胞)を形成する方法、及び改変免疫細胞を形成するためのベクターも提供する。そのような方法は、本明細書に記載の改変TCR、例えば(a)VH又はその断片若しくはバリアントを含む改変TCRベータ鎖、(b)VL又はその断片若しくはバリアントを含む改変TCRアルファ鎖、及び任意選択で(c)少なくとも2つのITAMが欠失された改変CDゼータ鎖、又は本明細書に記載のいずれかの代替的な実施形態の1つ又は複数の成分をコードする核酸(例えば、ベクター)を相同組換えにより免疫細胞(前駆細胞を含む)に導入すること、を含む。そのような方法は、本明細書に記載の共刺激受容体をコードする核酸を免疫細胞(前駆細胞を含む)に、導入することも含む。そのような方法は、本明細書に開示のいずれかの方法により、例えば、大部分若しくはすべての遺伝子に突然変異を導入すること又はそれをノックアウトすることによって、或いは細胞をSUV39H1遺伝子発現又はSUV39H1タンパク質活性を低減するSUV39H1阻害物質と接触させることによって、SUV39H1遺伝子を不活性化することを更に含んでもよい。
【0030】
また、本開示は、別の態様では、前述の改変免疫細胞のいずれかを含む無菌医薬組成物も提供する。また、本開示は、前述の改変免疫細胞のいずれか及び送達デバイス又は容器を含むキットも提供する。
【0031】
本開示は、前述の改変免疫細胞又は医薬組成物又はキットを使用して、抗原に関連付けられる疾患、任意選択でがんに罹患している又はそのリスクがある患者を、治療有効量の上記免疫細胞又は医薬組成物を患者に投与することにより治療するための方法を更に提供する。一部の実施形態では、免疫細胞はT細胞又はNK細胞であり、約5×107個の細胞未満、任意選択で約105~約107個の細胞の用量が患者に投与される。本方法は、第2の療法剤、任意選択で1つ又は複数のがん化学療法剤、細胞傷害剤、ホルモン、抗血管新生物質、放射性標識化合物、免疫療法、外科手術、凍結療法、及び/又は放射線療法を患者に投与することを更に含んでいてもよい。第2の療法剤は、免疫チェックポイント調節物質であってもよい。免疫チェックポイント調節物質の例としては、PD1、PDL1、CTLA4、LAG3、BTLA、OX2R、TIM-3、TIGIT、LAIR-1、PGE2受容体、EP2/4アデノシン受容体、若しくはA2ARに特異的に結合する抗体又はこれらの阻害物質が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1A及び1Bは、本開示の改変TCRを示す模式図である。
図2図2Aは、本明細書に記載の改変免疫細胞を産生するように免疫細胞に導入されたカセットの模式図である。図2Bは、発現されたTCR及び共刺激受容体の模式図である。
図3図3は、形質導入されたT細胞が、LNGFR(gRV-66HITについて)/CD80(gRV-66HITブースターについて)発現を示し、ヒトMSLN-Fc融合タンパク質に結合することを例示する図である。(A)gRV-66HIT及びgRV-66HITブースター(CD80)Galv9ウイルス上清を用いた形質導入の5日後の、scr/scr、SUV KO/Scr、SUV KO/TRAC KO Tリンパ球(ドナー1)の代表的なLNGFR/CD80-PE、huMSLN Fc融合タンパク質-FITCフロープロット。非形質導入T細胞(UT)は対照として使用された。図中に示されるプロットは、FSC-A/SSC-A>Singlets>Live cells>CD4+CD8+で予めゲーティングされた。(B)棒グラフは、2名の異なるドナー由来のLNGFR/CD80+ MSLN+細胞の%の平均±S.D.を示す。
図4図4は、形質導入されたT細胞が、組換えメソセリンへの表面結合を含むCD3再構成を示すことを例示する図である。(A)Galv9 gRV-66HIT及びgRV-66HITブースター(CD80)ウイルス上清を用いた形質導入の5日後の、scr/scr、SUV KO/Scr、SUV KO/TRAC KO Tリンパ球(ドナー1)の代表的なCD3-パシフィックブルー、huMSLN Fc融合タンパク質-FITCフロープロット。非形質導入T細胞(UT)は対照として使用された。図中に示されるプロットは、FSC-A/SSC-A>Singlets>Live cells>CD4+CD8+で予めゲーティングされた。(B)棒グラフは、2名の異なるドナー由来のCD3med+MSLN+細胞の%の平均±S.D.を示す。
図5図5は、SUV39H1ガイドRNAを用いたエレクトロポレーション法によるSUV39H1の効率的なノックダウンを例示する図である。(A)ドナー1に由来する非形質導入、gRV-66HIT及びgRV-66HITブースターT細胞のスクランブル対SUV39H1ノックダウン試料でのSUV39H1及びGAPDHについての代表的なウエスタンブロット。(B)2名の異なるドナーに由来するSUV39H1発現の平均±S.D.を示す棒グラフ。GAPDHはローディング対照として使用された。
図6図6は、SUV39H1欠損(deficient) gRV-66HIT細胞がOVCAR-3腫瘍細胞での細胞傷害性の増加(低いE:T比で)を示し、gRV-66HITブースター(CD80)細胞を用いて観察された活性に匹敵することを例示する図である。ルシフェラーゼ発現OVCAR-3細胞は、示されたE:T比でgRV-66HIT又はgRV-66HITブースター(scr/TRAC KO又はSUV KO/TRAC KO)T細胞と48時間共培養され、細胞溶解は発光に基づくBright-GloTMルシフェラーゼアッセイを使用して測定された。非形質導入(UT)T細胞(scr/TRAC KO又はSUV KO/TRAC KO)は対照として使用された。重複で2名の異なるドナーに由来する細胞傷害性の%の平均±S.D.を示す線グラフ。P値は二元配置ANOVA検定によって算出された。***p<0.0002、****p<0.0001。
図7図7は、SUV39H1枯渇gRV-66HIT細胞が、NOMO-1標的系を用いた反復抗原曝露で、T細胞拡大増殖、持続性、メモリー及び標的化死滅能力の増加を示すことを例示する図である。スクランブル及びSUV KO gRV-66HIT細胞は、NOMO-1標的系と1:2のE:Tで(1e5 HIT T細胞及び2e5標的細胞、0日目)で24ウェルG-REXプレートにおいて共培養され、フローサイトメトリーはHIT T細胞及び標的細胞数を概算するために続いて4日目ごとに行われた。標的細胞は、1:2のE:Tを維持するために分析後に再導入された。3、7及び10日目の(A)全gRV-66HIT細胞及び(B)全標的細胞、を示す棒グラフ。ドナー細胞:110046475。(C)CD45RO+ CD27+の%及び(D)CD45RO+ CCR7+形質導入されたHIT T細胞の%。(E)形質導入されたHiT細胞のCD8/CD4比を示すラインプロット。
図8図8は、SUV39H1不活性化gRV-66HITブースター(CD80ブースター)細胞がNOMO-1標的系を用いた反復抗原曝露で、T細胞拡大増殖、持続性、メモリー及び標的化死滅能力の増加を示すことを例示する図である。スクランブル及びSUV KO gRV-66HITブースター細胞は、NOMO-1標的系と1:2のE:Tで(HIT T細胞1e5個及び標的細胞2e5個、0日目)、24ウェルG-REXプレートにおいて共培養され、フローサイトメトリーはHIT T細胞及び標的細胞数を概算するために続いて4日目ごとに行われた。標的細胞は、1:2のE:Tを維持するために分析後に再導入された。3、7及び10日目の(A)全gRV-66HITブースター細胞及び(B)全標的細胞、を示す棒グラフ。ドナー3。(C)CD45RO+ CD27+の%及び(D)CD45RO+ CCR7+形質導入HIT T細胞の%を示すラインプロット。(E)形質導入されたHiTブースター(CD80)細胞のCD8/CD4比。
図9図9は、SUV39H1不活性化gRV-66HITブースター(CD80)細胞がNOMO-1標的系を用いた反復抗原曝露で、T細胞拡大増殖、持続性、メモリー及び標的化死滅能力の増加を示すことを例示する図である。スクランブル及びSUV KO gRV-66HITブースター細胞は、NOMO-1標的系と1:2のE:Tで(HIT T細胞1e5個及び標的細胞2e5個、0日目)、24ウェルG-REXプレートにおいて共培養され、フローサイトメトリーはHIT T細胞及び標的細胞数を概算するために続いて4日目ごとに行われた。標的細胞は、1:2のE:Tを維持するために分析後に再導入された。(A)8、19、22及び26日目の全gRV-66HITブースター細胞、並びに(B)8、19、22、26及び36日目の全標的細胞を示す棒グラフ。ドナー3。(C)CD45RO+ CD27+の%及び(D)CD45RO+ CCR7+形質導入HIT T細胞の%を示すラインプロット。(E)形質導入されたHiTブースター細胞のCD8/CD4比。
図10図10は、SUV39H1枯渇gRV-66HIT及びgRV-66HITブースター(CD80)細胞がNOMO-1標的系を用いた反復抗原曝露で、T細胞拡大増殖、持続性、メモリーの増加を示すことを例示する図である。スクランブル及びSUV KO gRV-66HIT及びSUV KO gRV-66HITブースター細胞は、NOMO-1標的系と1:2のE:Tで(HIT T細胞1e5個及び標的細胞2e5個、0日目、24ウェルG-REXプレートにおいて共培養され、フローサイトメトリーはHIT T細胞及び標的細胞数を概算するために4日目ごとに行われた。標的細胞は、1:2のE:Tを維持するために分析後に再導入された。7、28、34及び42日目の(A)全gRV-66HIT細胞及び(B)全gRV-66HITブースターT細胞を示す棒グラフ。0、7、28、34及び42日目の、CD45RO+ CCR7+形質導入(C)gRV-66 HIT及び(D)gRV-66HITブースターT細胞の%を示すラインプロット。ドナー細胞:888689798。
図11図11は、明細書で例示するガンマレトロウイルス(gRV)HIT構築物の模式図である。構築物Aは、形質導入マーカーLNGFRを含む。構築物Bは、ブースター分子を含む。
図12図12は、FMC63-HiT+ブースター及びmJ591-HiT+ブースター(CD80_4-1BB)遺伝子操作T細胞の代表的な試料でSUV-KOを決定するためのSUV39H1のウエスタンブロットを示す図である。(A)標準曲線に対する試料のタンパク質定量。図に示されるすべての試料は、範囲内であり、同等にロードされた。(B)ウエスタンブロット工程後の膜のPonceau染色。(C)ウエスタンブロットは、48kDaでのSUV39H1バンド(低いバンド、黒四角で強調)のノックアウトを確認している。上の非特異的バンドは、WTをKO試料と比較して、SUV39H1のKOで未変化であると確認された。左側に2つのラダーレーンが、右側に1つのラダーレーンがある。データはN=2ドナーを表し、エラーバーはSEMである。
図13図13は、gRV HiT構築物を用いたT細胞の形質導入の成功及びCD3発現の減少に基づくTRAC-KOの成功の代表的なドットプロットを示す図である。(A)ドットプロットは、LNGFR又はブースター発現のいずれかに基づいて、それらそれぞれのウイルスを用いて形質導入された場合の、gRV-FMC63-HiT(左)及びgRV-FMC63-HiT+ブースター細胞を示す。(B)TRAC-KOの成功は、発現マーカー(図4と同様のCD3+集団の低減)と比較して、CD3の減少で観察できる。データはN=2ドナーを表し、エラーバーはSEMである。
図14図14は、組換えCD19タンパク質のFMC63-HiT T細胞への特異的結合を示す代表的なドットプロットの図である。(A)TRACKO/スクランブルド(SCR)及び(B)TRACKO/SUVKO試料は、組換えavi-タグ付きCD19タンパク質と共にインキュベートされ、ストレプトアビジン-A647を用いて染色された。gRV-FMC63-HiT(中央)及びgRV-FMC63-HiT+ブースター(右)の両方は、それらのそれぞれの発現マーカー(LNGFR及びブースター)の組合せで、組換えCD19タンパク質への同様の結合を示す;陰性対照(左)は、ストレプトアビジン-A647のみを用い、組換えタンパク質を含まずに染色された。C)CD19相互作用細胞のパーセンテージ。データはN=2ドナーを表し、エラーバーはSEMである。
図15図15は、gRV HiT構築物を用いたT細胞の形質導入の成功及びCD3発現の減少に基づくTRAC-KOの成功の代表的なドットプロットを示す図である。(A)ドットプロットは、LNGFR又はブースター発現のいずれかに基づいて、それらそれぞれのウイルスを用いて形質導入された場合の、gRV-mJ591-HiT(左)及びgRV-mJ591-HiT+ブースター細胞を示す。(B)TRAC-KOの成功は、発現マーカー(図4と同様のCD3+集団の低減)と比較して、CD3の減少で観察できる。データはN=2ドナーを表し、エラーバーはSEMである。
図16図16は、組換えPSMAタンパク質のmJ591-HiT T細胞への特異的結合を示す代表的なドットプロットを示す図である。(A)TRACKO/スクランブルド(SCR)及び(B)TRACKO/SUVKO試料は、組換えavi-タグ付きPSMAタンパク質と共にインキュベートされ、ストレプトアビジン-A647を用いて染色された。陰性対照(左)は、ストレプトアビジン-A647のみを用い、組換えタンパク質を含まずに染色された。C)PSMA-相互作用細胞のパーセンテージ。データはN=2ドナーを表し、エラーバーはSEMである。
図17図17は、動態死滅アッセイ(kinetic kill assay)においてスクランブルド(SCR)対照と比較してSUV-KO HiT試料の死滅の増加を示すグラフである。TRAC-KO-スクランブル及びTRAC-KO-SUV-KO又はgRV-FMC63-HiT+ブースター細胞は、GFP+LNCaP-19標的系と共に1:20のE:Tで96ウェルプレートにおいて共培養され、GFP検出のために7日間InCucyte中に置かれた。非形質導入T細胞は陰性対照として使用された。2回の独立した実験及び試料に由来する代表的なグラフが示される。エラーバーはSDである。
図18図18は、動態死滅アッセイにおいてスクランブルド(SCR)対照と比較してSUV-KO HiT試料の死滅の増加を示すグラフである。TRAC-KO-スクランブル及びTRAC-KO-SUV-KO(A)gRV-mJ591-HiT又は(B)gRV-mJ591-HiT+ブースター細胞は、GFP+ LNCaP-19標的系と共に1:20のE:T比で96ウェルプレートにおいて共培養され、GFP検出のために7日間InCucyte中に置かれた。非形質導入T細胞は陰性対照として使用された。2回の独立した実験及び試料に由来する代表的なグラフが示される/エラーバーはSDである。
図19図19は、動態死滅アッセイでの2回目の刺激後にSUV-KO細胞が、スクランブルド(SCR)対照と比較して死滅の増加を示すことを例示するグラフである。1回目の抗原刺激を既に受けたTRAC-KO-スクランブルド及びTRAC-KO-SUV-KO gRV-FMC63-HiT細胞は、20uMフィルターを用いてろ過され、HiT+細胞の%を決定するためにFACS分析された。これらのgRV-FMC63-HiT+ブースター細胞は、GFP+ LNCap-19標的細胞と2つの異なるE:T比:(A)1:5及び(B)1:10で96ウェルプレートにおいて共培養され、GFP検出のために7日間InCucyte中に置かれた。「標的細胞のみ」は、これらの実験のための陰性対照として使用された。2回の独立した実験及び試料に由来する代表的なグラフが示される。エラーバーはSDである。
図20図20Aは、TRAC-KO-SUV-KO gRV FMC63-HiT+ブースター試料が、スクランブルド(SCR)対照と比較して拡大増殖が増加していたことを示すグラフである。TRAC-KO-スクランブル及びTRAC-KO-SUV-KO gRV-FMC63-HiT+ブースター細胞は、GFP+ LNCap-19標的細胞と、示されたE:T比で96ウェルプレートにおいて共培養され、GFP検出のために7日間InCucyte中に置かれた。7日後、共培養物を細胞計数のためにFACS分析に供した。データはN=2ドナーを表し、エラーバーはSEMである。図20Bは、HiT+ブースターSUV KO細胞が2回目の刺激後にスクランブルド(SCR)対照と比較して拡大増殖が増加したことを示す。TRAC-KO-スクランブル及びTRAC-KO-SUV-KO gRV-FMC63-HTi+ブースター細胞は、GFP+LNCap-19標的系と、示されたE:T比で96ウェルプレートにおいて共培養され、GFP検出のために7日間InCucyte中に置かれた。7日後、共培養物を細胞計数のためにFACS分析に供した。データはN=2ドナーを表し、エラーバーはSEMである。
図21図21は、SUV-KO gRV HiT細胞が、製造後にスクランブルド(SCR)対照と比較して、メモリー関連プロファイルの向上、エフェクター様プロファイルの低下及び疲弊マーカー表現型の低下を呈したことを示すグラフである。(A)gRV TRAC-KO及びスクランブルド/SUV-KO FMC63-HiT+ブースター並びに(B)gRV mJ591-HiT+ブースターT細胞の初回T細胞活性化後15日目の表現型。細胞を以下のゲーティング戦略:(A)及び(B)lymphocyte+singlet+alive+CD4+/-CD8+/-Booster+CD45RO+で表面マーカー発現について分析した。CCR7及びCD27発現を幹細胞性及び分解を確認するために適切に分析した。CM:セントラルメモリー、Ttm:移行性メモリー(transitional memory)、及びEM:エフェクターメモリー。(C)及び(D)それぞれCD57及びTIM3についてlymphocyte+singlet+alive+CD4+/-CD8+/-Booster+。データはN=2ドナーを表し、エラーバーはSEMである。
図22図22は、SUV-KO gRV HiT細胞が、1回目の抗原刺激後にスクランブルド(SCR)対照と比較して、メモリー関連プロファイルの向上、エフェクター様プロファイルの低下及び疲弊マーカー表現型の低下を呈したことを示すグラフである。(A)gRV TRAC-KO及びスクランブルド/SUV-KO FMC63-HiT+ブースター並びに(B)gRV mJ591-HiT+ブースターは、GFP+ LNCaP-19標的系と共に種々のE:Tで共培養された。以下のゲーティング戦略:(A)及び(B)lymphocyte+singlet+alive+CD4+/-CD8+/-Booster+CD45RO+での表面マーカー発現についてのプレーティング7日後の分析。CCR7及びCD27発現を幹細胞性及び分解を確認するために適切に分析した。CM:セントラルメモリー、Ttm:移行性メモリー、及びEM:エフェクターメモリー。(C)及び(D)それぞれCD57及びTIM3についてlymphocyte+singlet+alive+CD4+/-CD8+/-Booster+。データはN=2ドナーを表し、エラーバーはSEMである。
図23図23は、SUV-KO gRV HiT細胞が、2回目の抗原刺激後にスクランブルド(SCR)対照と比較して、メモリー関連プロファイルの向上、エフェクター様プロファイルの低下及び疲弊マーカー表現型の低下を呈したことを示すグラフである。1回目の抗原刺激を既に受けたTRAC-KO-スクランブルド及びTRAC-KO-SUV-KO gRV-HiT+ブースター細胞を20μMフィルターを用いてろ過し、HiT+細胞の%を決定するためにFACS分析した。これらのgRV-HiT+ブースター細胞をGFP+LNCap-19標的系と1:5(HIT T細胞1.5e3個及び標的細胞7.5e3個)のE:T比で96ウェルプレートにおいて共培養し、GFP検出のために7日間InCucyteに置いた。(A)及び(C)のグラフは、gRV FMC63-HiT+ブースター細胞を示し、(B)及び(D)のグラフは、gRV mJ591-HiT+ブースター細胞を示す。以下のゲーティング戦略:(A)及び(B)lymphocyte+singlet+alive+CD4+/-CD8+/-Booster+CD45RO+での表面マーカー発現についてのプレーティング7日後の分析。CCR7及びCD27発現を幹細胞性及び分解を確認するために適切に分析した。CM:セントラルメモリー、Ttm:移行性メモリー、及びEM:エフェクターメモリー。(C)及び(D)それぞれCD57及びTIM3についてlymphocyte+singlet+alive+CD4+/-CD8+/-Booster+)。データはN=2ドナーを表し、エラーバーはSEMである。
図24図24は、TRAC-HIT細胞生成の模式図である。相同アームを有するAAVはTRAC遺伝子座にCrisp/Cas9媒介二重鎖切断に続いてノックインされる。DNA修復機構は、HIT構築物の発現カセットを組み込み、内因性プロモーターの制御下に置く。手法は、SUV39H1遺伝子編集を促進する追加的Cas9 RNPを用いて多重化される。
図25図25Aは、HIT-AAV処理細胞におけるCD3+TCRab+集団の増加を伴うHIT再構成を例示する図である。図25Bは、ウエスタンブロットによって測定された、スクランブルgRNA処理細胞(SCR)と比較したSUV39H1 gRNA処理細胞(SUVKO)におけるSUV39H1タンパク質のレベルの減少を示す図である。図25Cは、フローサイトメトリーによって測定された、スクランブルgRNA処理細胞(SCR)と比較したSUV39H1 gRNA処理細胞(SUVKO)におけるH3K9me3のレベルの低下を示すグラフである。
図26図26Aは、ビオチン化可溶性CD19分子を使用するフローサイトメトリーによる19-HITの発現を示す図である。図26Bは、in vitro実験設計の模式図である。TRAC-19-HIT T細胞は、WTレベルのCD19を有するNALM6細胞と様々な比で10日間共培養された。10日目に、TRAC-19-HIT細胞表現型はフローサイトメトリーによって分析された。図26Cは、TRAC-19-HIT細胞におけるCD27及びCD45RO発現のフローサイトメトリー分析を示す図である。CD27+細胞のパーセンテージを示す。
図27図27Aは、in vivo実験設計の模式図である。WTレベルのCD19を有するNALM6細胞をNSGマウスに0日目に注射した。次いで、十分な(SCR)又は(SUVKO)のいずれかのTRAC-19-HIT細胞を3日目に注射した。図27Bは、生物発光画像化(平均ラジアンス、光子/秒/cm2)によってモニターした腫瘍成長を示すグラフである。C)TRAC-19-HIT処理マウスの生存パーセントを示す図である。
図28図28Aは、in vivo実験設計の模式図である。CD19のレベルが低いNALM6細胞をNSGマウスに0日目に注射した。十分な(SCR)又は(SUVKO)のいずれかのTRAC-19-HIT細胞を3日目に注射した。B)生物発光画像化(平均ラジアンス、光子/秒/cm2)によってモニターした腫瘍成長。
図29】メソセリン腫瘍抗原に方向付けられ、TRBC2配列に融合されたVH断片及びTRAC配列に融合されたVL断片を含むSFG(ガンマレトロウイルス)HIT構築物の例を例示する図である。ブースター配列(CCR)は、更に組換え発現されるようにできる。ブースター配列は、図29に例示される通り、別々の構築物(発現カセット)中に、又は同じ構築物中に提供されてもよい。一部の実施形態では、配列番号33に例示される通り、ブースター(CCR)配列は、CD80_4-1BBキメラ受容体である。
図30】メソセリン腫瘍抗原に方向付けられ、TRBC2配列に融合されたVH断片及びTRAC配列に融合されたVL断片を含むSFG(ガンマレトロウイルス)HIT構築物の例を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
定義
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明確に他を示さない限り、複数形を同様に含むと意図される。
【0034】
同様に、本明細書で使用される場合、「及び/又は」は、関連する列挙された項目の1つ又は複数の任意の及びすべての可能な組合せ、並びに選択肢(「又は」)と解釈される場合は組合せの欠如を指し、包含する。
【0035】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、例えば、ポリペプチド、用量、時間、温度、酵素活性又は他の生物学的活性等の量等の測定可能な値を参照する場合に、指定された値の±10%、±5%、±1%、±0.5%又は更に±0.1%の変動を包含することを意味する。
【0036】
「抗原認識受容体」という用語は、本明細書で使用される場合、抗原に対するその結合への応答において免疫又は免疫応答性細胞(例えば、T細胞)を活性化できる受容体を指す。抗原認識受容体の非限定的例としては、天然又は内因性T細胞受容体(「TCR」)及びキメラ抗原受容体(「CAR」)が挙げられる。
【0037】
本明細書における「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、インタクト抗体、キメラ、ヒト又はヒト化抗体並びに断片抗原結合性(Fab)断片、F(ab')2断片、Fab'断片、Fv断片、組換えIgG(rIgG)断片、抗原に特異的に結合することが可能な可変重鎖(VH)領域、単鎖可変断片(scFv)を含む単鎖抗体断片、及び単一ドメイン抗体(例えば、sdAb、sdFv、ナノボディ)断片を含む機能的(抗原結合性)抗体断片を含むポリクローナル及びモノクローナル抗体を含む。この用語は、イントラボディ、ペプチボディ、キメラ抗体、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、及びヘテロコンジュゲート抗体、多重特異性抗体、例えば二重特異性抗体、ダイアボディ、トライアボディ、及びテトラボディ、タンデムdi-scFv、タンデムtri-scFv等の免疫グロブリンの組換え型並びに/又は他の改変型を包含する。別様の記載がない限り、「抗体」という用語は、その機能的抗体断片を包含すると理解されるべきである。また、この用語は、IgG及びそのサブクラスIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgE、IgA、及びIgDを含む任意のクラス又はサブクラスの抗体を含むインタクト抗体又は完全長抗体を包含する。一部の実施形態では、抗体は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む。
【0038】
「抗体断片」は、インタクト抗体が結合する抗原に結合するインタクト抗体の部分を含む、インタクト抗体以外の分子を指す。抗体断片の例としては、これらに限定されないが、Fv、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')2、ダイアボディ、線状抗体、可変重鎖(VH)領域、VHH抗体、scFv等の単鎖抗体分子、及び単一ドメイン抗体(VH及びVL単一抗体を含む)、並びに抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられる。特定の実施形態では、抗体は、scFv等の、可変重鎖領域及び/又は可変軽鎖領域を含む単鎖抗体断片である。
【0039】
「単一ドメイン抗体」は、抗体の重鎖可変ドメインのすべて若しくは部分又は軽鎖可変ドメインのすべて若しくは部分を含む抗体断片である。ある特定の実施形態では、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である。
【0040】
遺伝子の「不活性化」又は「破壊」とは、遺伝子発現の低下若しくは消失を引き起こすか、又は非機能的遺伝子産物の発現を引き起こす、ゲノムDNA配列の変化を指す。例示的な方法としては、遺伝子サイレンシング、ノックダウン、ノックアウト、並びに/又は例えば切断及び/若しくは相同組換えの誘導による遺伝子編集等の遺伝子破壊技法が挙げられる。そのような遺伝子破壊の例は、遺伝子全体の欠失を含む、遺伝子又は遺伝子の一部の挿入、フレームシフト及びミスセンス突然変異、欠失、ノックイン、並びにノックアウトである。そのような破壊は、コード領域、例えば、1つ又は複数のエキソンで生じてもよく、終止コドンが挿入されること等により、完全長産物、機能性産物、又は任意の産物を産生することができなくなる。また、そのような破壊は、遺伝子の転写が防止されるように、プロモーター又はエンハンサー又は転写の活性化に影響を及ぼす他の領域を破壊することにより生じてもよい。遺伝子破壊としては、相同組換えによる標的遺伝子不活性化を含む遺伝子標的化が挙げられる。
【0041】
遺伝子の「阻害」又は「抑制」は、活性及び/又は遺伝子発現が、阻害又は抑制されていない野生型の活性又は発現レベルと比較して、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は99%、又はそれよりも大きく減少することを指す。遺伝子発現の阻害は、実質的で検出可能な活性又は機能的遺伝子産生物が細胞内に存在にしないことに結び付く。
【0042】
「非機能的」は、活性が低減されている又は検出可能な活性を欠如するタンパク質を指す。
【0043】
「ドミナントネガティブ」は、欠損遺伝子を産生する突然変異を指し、その欠損遺伝子は同じ細胞内の野生型産物の機能を妨害するか又は悪影響を及ぼす。野生型産物と同じエレメントと相互作用する欠損遺伝子の能力は残留するが、一部の機能的側面は遮断される。
【0044】
「発現する」又は「発現」は、遺伝子配列が転写され、任意選択で翻訳されることを意味する。遺伝子が非コードRNAを発現する場合、発現は、転写後にRNA及び、任意選択でスプライシングを典型的には生じる。遺伝子がコード配列である場合、発現は、転写及び翻訳後にポリペプチドの産生を典型的には生じる。
【0045】
「発現制御配列」は、関連するヌクレオチド配列の転写、RNAプロセシング、RNA安定性又は翻訳に影響を与えるヌクレオチド配列を指す。例としては、これらに限定されないが、プロモーター、エンハンサー、イントロン、翻訳リーダー配列、ポリアデニル化シグナル配列、転写開始並びに転写及び/又は翻訳終結領域(すなわち、終結領域)が挙げられる。「断片」は、全長配列の少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の長さを有する参照される配列(ポリヌクレオチド又はポリペプチド)の部分を指す。
【0046】
「外因性」によって、細胞中に内因的に存在しないか、又は過発現された場合に得られる機能的効果を達成するような十分なレベルで存在しない核酸分子(例えば、cDNA、DNA若しくはRNA分子)又はポリペプチドが意味される。「外因性」という用語は、したがって、外来の、異種性及び過発現される核酸分子及びポリペプチド等の細胞において発現される任意の組換え核酸分子又はポリペプチドを包含する。「外因性」核酸によって、天然の野生型細胞に存在しない核酸が意味され;例えば、外因性核酸は、配列によって、位置/場所によって、又は両方で内因性の対応物とは異なっていてもよい。明確にするために、外因性核酸は、その天然の内因性の対応物と比較して同じ又は異なる配列を有していてもよく;それは、細胞自体に又はその前駆細胞に遺伝子操作によって導入されてもよく、非天然プロモーター又は分泌配列等の代替的な制御配列に任意選択で連結されてもよい。
【0047】
「異種性」は、天然では互いに同じ関係では見出されない配列を含むポリヌクレオチド又はポリペプチドを指す。例えば、異種性配列は、別の種に由来する、又は同じ種若しくは生物に由来するかのいずれかであるが、細胞におけるその元の形態若しくは最初に発現された形態のいずれかから改変されている。したがって、異種性ポリヌクレオチドは、同じ天然で元の細胞型に由来し、それに挿入されたが、非天然で存在する、例えば、天然で見出されるものとは異なるコピー数及び/若しくは異なる制御性配列の制御下に存在する、並びに/又は元々配置されていたのとは異なる位置に配置された(異なるヌクレオチド配列に隣接している)ヌクレオチド配列を含む。
【0048】
「核酸」、「ヌクレオチド配列」及び「ポリヌクレオチド」は、互換的に使用され、cDNA、ゲノムDNA、mRNA、合成(例えば、化学的に合成された)DNA又はRNA並びにRNA及びDNAのキメラを含んでRNA及びDNAの両方を包含する。用語、ポリヌクレオチド、ヌクレオチド配列又は核酸は、鎖の長さに関わらずにヌクレオチドの鎖を指す。核酸は、二本鎖でも一本鎖であってもよい。一本鎖の場合、核酸は、センス鎖又はアンチセンス鎖であってもよい。核酸は、オリゴヌクレオチド類似体又は誘導体(例えば、修飾された骨格、糖又は塩基)を使用して合成されてよい。そのようなオリゴヌクレオチドは、例えば変化した塩基対合能力を有するか、又はヌクレアーゼへの抵抗性が増加している核酸を調製するために使用できる。本開示は、本明細書に記載の核酸、ヌクレオチド配列又はポリヌクレオチドの相補物である(完全な相補体又は部分的な相補体のいずれであってもよい)核酸を更に提供する。例えば、イノシン、5-メチルシトシン、6-メチルアデニン、ヒポキサンチン等の修飾された塩基(修飾された核酸塩基)は、アンチセンス、dsRNA及びリボザイム対形成のために使用されてもよい。例えば、ウリジン及びシチジンのC-5プロピレン類似物を含有するポリヌクレオチドは、RNAに高親和性で結合し、遺伝子発現の強力なアンチセンス阻害剤であることが示されている。他の修飾、例えばRNAのリボース糖基でのリン酸ジエステル骨格又は2'-ヒドロキシへの修飾等も行われてよい。
【0049】
「作動可能に連結した」は、発現制御配列等のエレメントが、目的のヌクレオチド配列においてその通常の機能を実施するように配置されていることを意味する。例えば、目的のヌクレオチド配列に作動可能に連結したプロモーターは、目的のヌクレオチド配列の発現に影響を及ぼすことができる。発現制御配列は、それらがその発現を方向付けるように機能する限り、目的のヌクレオチド配列に近接している必要はない。
【0050】
2つの配列間の「同一性パーセント」は、前記配列の最良のアラインメントで得られる、比較しようとする2つの配列間で同一である塩基又はアミノ酸のパーセンテージを意味し、このパーセンテージは、純粋に統計学的であり、こうした2つの配列間の差異は、2つの配列にわたってランダムに分散している。塩基は、それが通常条件下でハイブリダイズする場合に相補性であるとみなされる;例えば、修飾された核酸塩基は、それが模倣するハイブリダイゼーションパターンの塩基と同様の様式でアラインされてよい。本明細書で使用される場合、「最良のアラインメント」又は「最適なアラインメント」は、決定された同一性パーセンテージ(下記を参照)が最も高いアラインメントを意味する。2つの核酸配列(本明細書でヌクレオチド配列又は核酸塩基配列としても参照される)間の配列比較は、通常、最良のアラインメントに従って以前にアラインメントされているこうした配列を比較することにより実現される;この比較は、類似性のある局所領域を特定及び比較するために、比較セグメントに対して実現される。比較を実施するための最良の配列アラインメントは、手作業の他に、SMITH及びWATERMAN(Ad. App. Math.、2巻、482頁、1981年)により開発されたグローバルホモロジーアルゴリズムを使用することにより、NEDDLEMAN及びWUNSCH(J. Mol. Biol、48巻、443頁、1970年)により開発されたローカルホモロジーアルゴリズムを使用することにより、PEARSON及びLIPMAN(Proc. Natl. Acd. Sci. USA、85巻、2444頁、1988年)により開発された類似性の方法を使用することにより、そのようなアルゴリズムを使用するコンピューターソフトウェア(Wisconsin Genetics software Package、Genetics Computer Group、575 Science Dr.、マディソン、ウィスコンシン州、米国のGAP、BESTFIT、BLAST P、BLAST N、FASTA、TFASTA)を使用することにより、MUSCLE多重アラインメントアルゴリズム(Edgar, Robert C、Nucleic Acids Research、32巻、1792頁、2004年)を使用することにより、実現することができる。最良のローカルアラインメントを得るには、好ましくは、BLASTソフトウェアを使用することができる。2つの配列間の同一性パーセンテージは、最適にアラインされたこうした2つの配列を比較することにより決定され、配列は、こうした2つの配列間の最適なアラインメントを得るために、参照配列に対して付加又は欠失を含むことができる。同一性パーセンテージは、こうした2つの配列間で同一である位置の数を決定し、この数を比較した位置の総数で除算し、得られた結果に100を掛けて、こうした2つの配列間の同一性パーセンテージを得ることにより算出される。
【0051】
「免疫応答性細胞」によって、免疫応答において機能する細胞又はその前駆細胞若しくは後代が意味される。
【0052】
「治療」又は「治療すること」は、本明細書で使用される場合、がん等の疾患、又は疾患(例えば、がん)の任意の症状を治癒する、回復させる、緩和する、軽減する、変更する、治す、寛解させる、改善する、又は影響を及ぼす目的で、それを必要とする患者に、本開示による細胞又は細胞を含む組成物を適用又は投与することであると規定される。特に、「治療する」又は「治療」という用語は、がん等の疾患に関連付けられる少なくとも1つの有害な臨床症状、例えば、痛み、腫れ、血球数低下等を低減又は緩和することを指す。また、がん治療に関する「治療する」又は「治療」という用語は、新生物性脱制御細胞増殖の進行を遅延又は逆行させること、つまり、既存腫瘍を縮小させること及び/又は腫瘍成長を停止させることも指す。また、「治療する」又は「治療」という用語は、対象のがん又は腫瘍細胞にアポトーシスを誘導することを指す。
【0053】
「バリアント」は、突然変異(欠失、置換又は挿入)を有し、その全長にわたって、又は少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000若しくは1100ヌクレオチド若しくはアミノ酸の領域にわたって、参照される配列と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%同一である配列(ポリヌクレオチド又はポリペプチド)を指す。ポリヌクレオチド配列に関して、バリアントは、ストリンジェントな条件下で参照される配列又はその相補物にハイブリダイズするポリヌクレオチドも包含する。
【0054】
「調節する」によって、正の又は負の変化が意味される。例示的な調節としては、約1%、約2%、約5%、約10%、約25%、約50%、約75%又は約100%の変化が挙げられる。
【0055】
「増加」によって、正に少なくとも約5%変化することが意味される。変化は、約5%、約10%、約25%、約30%、約50%、約75%、約100%又はそれよりも大きくてもよい。
【0056】
「低減」によって、負に少なくとも約5%変化することが意味される。変化は、約5%、約10%、約25%、約30%、約50%、約75%又は更に約100%であってもよい。
【0057】
「有効量」によって、療法効果を得るために十分な量が意味される。ある特定の実施形態では、「有効量」は、新生物の増殖の継続、成長又は転移(例えば、浸潤若しくは移入)を停止、緩和又は阻害するために十分な量を意味する。
【0058】
「単離された細胞」によって、天然で細胞に付随している分子及び/又は細胞成分から分けられている細胞が意味される。
【0059】
「単離された」、「精製された」又は「生物学的に純粋な」という用語は、その天然状態で見出される場合に通常付随する成分を様々な程度で含まない材料を指す。「単離」は、元の供給源又は周囲環境からの分離の程度を記す。「精製」は、単離よりも高い分離の程度を記す。「精製された」又は「生物学的に純粋な」タンパク質は、いかなる不純物もタンパク質の生物学的特性に実質的に影響を与えないか、又は他の有害な結果を生じないように、他の材料を十分な程度含まない。すなわち、それが、組換えDNA技術によって産生された場合は細胞物質、ウイルス材料若しくは培養培地を、又は化学的に合成された場合は化学物質前駆体若しくは他の化学物質を実質的に含まない場合に、核酸又はペプチドは精製されている。純度及び均一性は、分析化学技術、例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動又は高速液体クロマトグラフィーを使用して典型的には決定される。「精製された」という用語は、核酸又はタンパク質が、電気泳動ゲルにおいて本質的に1本のバンドをもたらすことを記すことができる。例えばリン酸化又はグリコシル化等の修飾に供される場合があるタンパク質について、異なる修飾は、分離して精製できる異なる単離されたタンパク質をもたらすことができる。
【0060】
本明細書で使用される場合「抗原結合ドメイン」という用語は、細胞に存在する特定の抗原決定基又は一連の抗原決定基に特異的に結合することができるドメインを指す。
【0061】
「リンカー」は、本明細書で使用される場合、2つ以上のポリペプチド又は核酸をそれらが互いに繋がれるように共有結合で結合する機能的な群(例えば、化学物質又はポリペプチド)を意味するものとする。本明細書で使用される場合、「ペプチドリンカー」は、2つのタンパク質を一緒にカップリングする(例えば、VHドメインとVLドメインとをカップリングする)ために使用される1つ又は複数のアミノ酸を指す。ある特定の実施形態では、リンカーは、GGGGSGGGGSGGGGS[配列番号19]に記載の配列を含む。
【0062】
本明細書で使用される場合、「ベクター」は、細胞への核酸の移入又は細胞における核酸の発現のための任意の核酸分子である。「ベクター」という用語は、核酸を細胞にin vitro、ex vivo、及び/又はin vivoで導入するためのウイルス及び非ウイルス(例えば、プラスミド)核酸分子の両方を含む。ベクターは、発現制御配列、制限部位及び/又は選択可能マーカーを含んでもよい。「組換え」ベクターは、1つ又は複数の異種性ヌクレオチド配列を含むベクターを指す。
【0063】
「シグナル配列」又は「リーダー配列」によって、分泌経路へのタンパク質の進入を方向付ける、新たに合成されたタンパク質のN末端に存在するペプチド配列(例えば、5、10、15、20、25又は30アミノ酸)が意味される。例示的リーダー配列としては、これらに限定されないが、IL-2シグナル配列:MYRMQLLSCIALSLALVTNS[配列番号20](ヒト)、MY SMQLASC VTLTLVLLVN S[配列番号21](マウス);カッパリーダー配列:METP AQLLFLLLLWLPDTT G[配列番号22](ヒト)、METDTLLLW VLLLW VPGS T G [配列番号23](マウス);CD8リーダー配列:M ALP VT ALLLPL ALLLH A ARP [配列番号24](ヒト);短縮型ヒトCD8シグナルペプチド:M ALP VT ALLLPL ALLLH A [配列番号25](ヒト);アルブミンシグナル配列:MKWVTFISLLFSSAYS [配列番号26](ヒト);及びプロラクチンシグナル配列: MD SKGS SQKGSRLLLLLVV SNLLLCQGVV S [配列番号27](ヒト)が挙げられる。「可溶性」によって、水性環境において無制限に拡散できる(例えば、膜に結合しない)ポリペプチドが意味される。
【0064】
「特異的に結合」によって、目的の生物学的分子(例えば、ポリペプチド)を認識し、結合するが、試料、例えば本開示のポリペプチドを天然で含む生物学的試料の中の他の分子を実質的に認識及び結合しないポリペプチド又はその断片が意味される。
【0065】
「腫瘍抗原」という用語は、本明細書で使用される場合、正常な又は非IS新生物細胞と比較して腫瘍細胞で固有に、又は異なるように発現される抗原(例えば、ポリペプチド)を指す。ある特定の実施形態では、腫瘍抗原は、抗原認識受容体(例えば、CD19、MUC-16)を介して免疫応答を活性化若しくは誘導することができる、又は受容体リガンド結合(例えば、CD47、PD-L1/L2、B7.1/2)を介して免疫応答を抑制することができる、腫瘍によって発現される任意のポリペプチドを含む。
【0066】
発現ブースターは、本明細書において共刺激リガンド及び共刺激受容体(CCR)に対して使用される。ある特定の実施形態では、共刺激リガンドは、CD80、CD86、41BBL、CD275、CD40L、OX40L及びこれらの任意の組合せからなる群から選択される。ある特定の実施形態では、細胞は、1つの外因性共刺激リガンドを更に含むか、又は構成される。ある特定の実施形態では、1つの外因性共刺激リガンドは、CD80又は4-1BBLである。ある特定の実施形態では、細胞は、2つの外因性共刺激リガンドを更に含むか、又は構成される。ある特定の実施形態では、2つの外因性共刺激リガンドは、CD80及び4-1BBLである。ある特定の実施形態では、免疫応答性細胞は、少なくとも1つのキメラ共刺激受容体(CCR)を含む。ある特定の実施形態では、CCRは、CD80ポリペプチド、CD28ポリペプチド、4-1BBポリペプチド、0X40ポリペプチド、ICOSポリペプチド、DAP-10ポリペプチド及びこれらの任意の組合せからなる群から選択される共刺激分子を含む。共刺激リガンド、分子及び受容体(又は融合ポリペプチド)の例は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる国際公開第2021/016174号パンフレットに記載されている。例示的ブースター配列としては、配列番号32~33及び53~54が挙げられる。
【0067】
細胞
免疫細胞(免疫応答性細胞)
本開示による免疫細胞は、典型的には、哺乳動物細胞、例えばヒト細胞である。
【0068】
特に、本開示の細胞は、血液、骨髄、リンパ、又はリンパ器官(特に胸腺)に由来し、先天性免疫又は適応免疫の細胞等の免疫系の細胞(つまり、免疫細胞)、例えば、リンパ球を含む骨髄性若しくはリンパ系細胞、典型的にはT細胞及び/又はNK細胞である。
【0069】
好ましくは、本開示によると、細胞は、特に、T細胞、B細胞、NK細胞及びこれらの前駆細胞を含むリンパ球である。
【0070】
また、本開示による細胞は、リンパ系前駆細胞、より好ましくはT細胞前駆細胞等の免疫細胞前駆細胞であってもよい。T細胞前駆細胞の例としては、多能性幹細胞(PSC)、誘導多能性幹細胞(iPSC)、造血幹細胞(HSC)、ヒト胚性幹細胞(ESC)、脂肪細胞由来幹細胞(ADSC)、多能性前駆細胞(MPP)、リンパ球刺激多能性前駆細胞(LMPP)、リンパ系共通前駆細胞(CLP)、リンパ系前駆細胞(LP)、胸腺定着前駆細胞(TSP);又は初期胸腺前駆細胞(ETP)が挙げられる。造血幹細胞及び前駆細胞は、例えば、臍帯血から、又は末梢血から得ることができ、その例は、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)による動員処理後の末梢血由来CD34+細胞である。
【0071】
T細胞前駆細胞は、典型的には、CD44、CD117、CD135、及び/又はSca-1を含むコンセンサスマーカーのセットを発現するが、Petrie HT、Kincade PW. Many roads、one destination for T cell progenitors. The Journal of Experimental Medicine. 2005年、202巻(1号):11~13頁も参照されたい。
【0072】
細胞は、典型的には、対象から直接単離されたもの、及び/又は対象から単離され凍結されたもの等の初代細胞である。
【0073】
本開示の細胞は、治療しようとする対象に対して、同種異系であってもよく及び/又は自己由来であってもよい。
【0074】
自己免疫細胞療法では、免疫細胞は、患者から収集され、本明細書に記載されるように改変され、患者に戻される。同種異系免疫細胞療法では、免疫細胞は、患者ではなく健常ドナーから収集され、本明細書に記載されるように改変され、患者に投与される。典型的には、これらは、宿主による拒絶の可能性を低減するためにHLA一致である。また、免疫細胞は、HLAクラスI分子の破壊又は除去等の改変を含んでいてもよい。例えば、Torikaiら、Blood. 2013年、122巻:1341~1349頁では、ZFNを使用してHLA-A遺伝子座がノックアウトされ、Renら、Clin. Cancer Res. 2017年、23巻:2255~2266頁では、HLAクラスI発現に必要なベータ-2ミクログロブリン(B2M)がノックアウトされた。
【0075】
加えて、ユニバーサルな「既製」製品の免疫細胞は、TCRαβ受容体の不活性化(例えば、破壊又は欠失)等の、移植片対宿主病を低減するように設計された改変を含まなければならず、得られる細胞は、内因性TCR発現の著しい低減又はほぼ消失を呈する。総説は、Grahamら、Cells. 2018年10月、7巻(10号):155頁を参照されたい。アルファ鎖(TRAC)は、ベータ鎖のように2つの遺伝子によりコードされるのではなく、単一の遺伝子によりコードされるため、TRAC遺伝子座は、TCRαβ受容体発現を除去又は破壊するための典型的な標的であるが、TCRβ遺伝子座を代わりに破壊してもよい。その代わりに、TCRαβシグナル伝達の阻害物質を発現させてもよく、例えば、CD3ゼータの短縮型は、TCR阻害分子として作用することができる。Renらは、TCRαβ、B2M、及び免疫チェックポイントPD1を同時にノックアウトした。
【0076】
一部の実施形態では、細胞は、機能、活性化状態、成熟度、分化の可能性、拡大増殖、再循環、局在化、及び/又は持続能力、抗原特異性、抗原特異性、受容体のタイプ、特定の器官若しくは区画における存在、マーカー若しくはサイトカイン分泌プロファイル、及び/又は分化度により規定されるもの等の、全T細胞集団、CD4+細胞及び/又はCD8+細胞、並びにこれらの部分集団等の、T細胞又は他の細胞タイプの1つ又は複数のサブセットを含む。
【0077】
T細胞並びに/又はCD4+及び/若しくはCD8+ T細胞のサブタイプ及び部分集団には、幹細胞メモリーT(TSCM)細胞、セントラルメモリーT(TCM)細胞、エフェクターメモリーT(TEM)細胞、又は最終分化エフェクターメモリーT細胞等のナイーブT(TN)細胞、エフェクターT細胞(TEFF)、メモリーT細胞、及びこれらのサブタイプ、腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)、未熟T細胞、成熟T細胞、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、粘膜関連インバリアントT(MAIT)細胞、天然に存在する及び獲得された制御性T(Treg)細胞、TH1細胞、TH2細胞、TH3細胞、TH17細胞、TH9細胞、TH22細胞等のヘルパーT細胞、濾胞性ヘルパーT細胞、アルファ/ベータT細胞、並びにデルタ/ガンマT細胞がある。好ましくは、本開示による細胞は、SUV39H1の阻害による幹細胞性/メモリー特性及びより高い再構成能力を有するTEFF細胞、並びにTN細胞、TSCM細胞、TCM細胞、TEM細胞、及びこれらの組合せである。
【0078】
一部の実施形態では、T細胞集団の1つ又は複数は、表面マーカー等の1つ若しくは複数の特定のマーカーが陽性であるか又はそれらを高レベルで発現する細胞、或いは1つ若しくは複数のマーカーが陰性であるか又はそれらを比較的低レベルで発現する細胞が富化されているか又は枯渇している。一部の場合では、そのようなマーカーは、T細胞のある特定の集団(非メモリー細胞等)には存在しないか又は比較的低レベルで発現されるが、T細胞のある特定の他の集団(メモリー細胞等)では存在するか又は比較的高レベルで発現されるものである。一実施形態では、細胞(CD8+細胞又はT細胞、例えばCD3+細胞等)は、CD117、CD135、CD45RO、CCR7、CD28、CD27、CD44、CD127、及び/若しくはCD62Lが陽性であるか又はそれらを高い表面レベルで発現する細胞が富化されており、並びに/又はCD45RAが陽性であるか若しくはそれを高い表面レベルで発現する細胞が枯渇している(例えば、ネガティブ選択されている)。一部の実施形態では、細胞は、CD122、CD95、CD25、CD27、及び/若しくはIL7-Ra(CD127)が陽性であるか又はそれらを高い表面レベルで発現する細胞が富化又は枯渇している。一部の例では、CD8+ T細胞は、CD45RO陽性であり(又はCD45RAが陰性である)及びCD62L陽性である細胞が富化されている。CCR7+、CD45RO+、CD27+、CD62L+細胞である細胞のサブセットは、セントラルメモリー細胞サブセットを構成する。
【0079】
例えば、本開示によると、細胞としては、CD4+ T細胞集団及び/又はCD8+ T細胞部分集団、例えば、セントラルメモリー(TCM)細胞が富化された部分集団を挙げることができる。或いは、細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞、粘膜関連インバリアントT(MAIT)細胞、自然リンパ系細胞(ILC)、及びB細胞を含む、リンパ球の他のタイプであってもよい。
【0080】
本開示に従って遺伝子操作するための細胞及びそうした細胞を含む組成物は、試料、特に、例えば対象から得られるか又は対象に由来する生物学的試料から単離される。典型的には、対象は、細胞療法(養子細胞療法)を必要としており、及び/又は細胞療法を受けることになるものである。対象は、好ましくは哺乳動物、特にヒトである。本開示の一実施形態では、対象はがんを有する。
【0081】
試料としては、対象から直接採取される組織、液体、及び他の試料、並びに分離、遠心分離、遺伝子操作(例えば、ウイルスベクターによる形質導入)、洗浄、及び/又はインキュベーション等の1つ又は複数の処理工程からもたらされる試料が挙げられる。生物学的試料は、生物学的供給源から直接得られる試料であってもよく又は処理される試料であってもよい。生物学的試料としては、これらに限定されないが、組織若しくは器官に由来する組織試料、又は血液、血漿、血清、脳脊髄液若しくは滑液等の体液試料が挙げられ、それらに由来する処理試料を含む。好ましくは、細胞が由来する又は単離される試料は、血液若しくは血液由来試料であるか、又はアフェレーシス若しくは白血球アフェレーシス産物であるか若しくはそれに由来する。例示的な試料としては、全血、末梢血単核細胞(PBMC)、白血球、骨髄、胸腺、組織生検、腫瘍、白血病、リンパ腫、リンパ節、腸関連リンパ組織、粘膜関連リンパ組織、脾臓、他のリンパ組織、及び/又はこれらに由来する細胞が挙げられる。細胞療法(典型的には、養子細胞療法)の状況では、試料としては、自己供給源及び同種異系供給源に由来する試料が挙げられる。
【0082】
一部の実施形態では、細胞は、細胞株、例えば、T細胞株に由来する。また、細胞は、マウス、ラット、非ヒト霊長類、又はブタ等の異種供給源から得ることもできる。好ましくは、細胞はヒト細胞である。
【0083】
本開示の主題は、ここで開示されるHI-TCRを含む免疫応答性細胞を提供する。ある特定の実施形態では、HI-TCRは、免疫応答性細胞を活性化することができる。抗原への結合で、免疫応答性細胞は、抗原を有する細胞に向けて細胞溶解性効果を呈する。ある特定の実施形態では、HI-TCRを含む免疫応答性細胞は、同じ抗原を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)を含む細胞と比較して同等の又は更に良好な療法効力を呈する。ある特定の実施形態では、HI-TCRを含む免疫応答性細胞は、同じ抗原を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)を含む細胞と比較して同等の又は更に良好な細胞溶解性効果を呈する。ある特定の実施形態では、HI-TCRを含む免疫応答性細胞は抗腫瘍サイトカインを分泌する。免疫応答性細胞によって分泌されるサイトカインとしては、これらに限定されないが、TNFa、IFNy及びIL2が挙げられる。
【0084】
本主題により、典型的には免疫細胞(免疫応答性細胞)は、Suv39h1について欠損である。
【0085】
SUV39H1ヒトSUV39H1メチルトランスフェラーゼは、UNIPROTではO43463として参照されており、X染色体に位置する遺伝子SUV39H1(NCBIではgene ID:6839)によりコードされる。1つの例示的なヒト遺伝子配列は配列番号15であり、1つの例示的なヒトタンパク質配列は配列番号16であるが、種々の対象のゲノムには、異なる配列を有する多型又はバリアントが存在することが理解される。したがって、本開示によるSUV39H1という用語は、SUV39H1のすべての哺乳動物バリアント、及びSUV39H1活性(つまり、H3K9-ヒストンメチルトランスフェラーゼによるヒストンH3のLys-9のメチル化)を有する、配列番号16と少なくとも75%、80%、又は典型的には85%、90%、又は95%同一であるタンパク質をコードする遺伝子を包含する。
【0086】
本明細書で使用される場合、本発明による「Suv39h1について欠損」という表現は、本発明による細胞におけるSuv39h1活性(すなわち、H3K9-ヒストンメチルトランスフェラーゼによるヒストンH3のLys-9のメチル化)の阻害又は遮断を指す。
【0087】
本発明による「Suv39h1活性の阻害」は、阻害されていないSuv39h1タンパク質の活性又はレベルと比較して少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%若しくは99%又はそれよりも大きいSuv39h1活性の減少を指す。優先的には、Suv39h1活性の阻害は、Suv39h1の実質的で検出可能な活性が細胞内に存在にしないことに結び付く。
【0088】
Suv39h1活性の阻害は、Suv39h1遺伝子発現の抑制を通じて、又はSuv39h1遺伝子破壊を通じても達成できる。本発明により、前記抑制は、細胞において、特に本発明の免疫細胞において、抑制の非存在下で方法によって産生される同じ細胞と比較してSuv39h1の発現を少なくとも50、60、70、80、90又は95%低下させる。また、遺伝子破壊は、Suv39h1タンパク質の発現の低減、又は非機能的Suv39h1タンパク質の発現に結び付く場合もある。
【0089】
「非機能的」Suv39h1タンパク質とは、本明細書では、上記に記載されるような活性が低減されているか又は検出可能な活性を欠如するタンパク質が意図されている。したがって、本発明による細胞におけるSuv39h1活性の阻害剤は、天然の又は、H3K9-ヒストンメチルトランスフェラーゼによるヒストンH3のLys-9のメチル化を阻害する能力を有しない、若しくはH3K9-ヒストンメチルトランスフェラーゼSUV39H1遺伝子発現を阻害する任意の化合物又は作用剤の中から選択することができる。
【0090】
本発明による免疫細胞におけるSuv39h1の阻害は、恒久的及び不可逆的であってもよく、又は一過性であってもよく、又は可逆的であってもよい。しかし好ましくは、Suv39h1阻害は、恒久的及び不可逆的である。細胞内でのSuv39h1の阻害は、下記に記載されるように、標的とされる患者に細胞を注射する前に又は後で達成することができる。
【0091】
抗原特異的受容体
一部の実施形態では、免疫細胞は、表面上に抗原特異的受容体を発現する。したがって、細胞は、1つ又は複数の抗原特異的受容体をコードし、任意選択で異種調節性制御配列に作動可能に連結している1つ又は複数の核酸を含んでいてもよい。典型的には、そのような抗原特異的受容体は、10-6M以下、10-7M以下、10-8M以下、10-9M以下、10-10M以下、又は10-11M以下のKd結合親和性で標的抗原に結合する(数値が小さいほど結合親和性が高いことを示す)。一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、約1×10-7以下、約5×10-8以下、約1×10-8以下、約5×10-9以下、約1×10-9以下、約5×10-10以下、約1×10-10以下、約5×10-11以下、約1×10-11以下、約5×10-12以下又は約1×10-12以下のKD親和性で標的抗原に結合する。
【0092】
典型的には、核酸は、外因性(例えば異種性である)(つまり、例えば、遺伝子操作されている細胞に及び/又はそのような細胞が由来する生物に通常は見出されない)。一部の実施形態では、核酸は、天然に存在せず、複数の異なる細胞タイプに由来する種々のドメインをコードする核酸のキメラ組合せを含む。核酸及びそれらの調節性制御配列は、典型的には異種性である。例えば、抗原特異的受容体をコードする核酸は、免疫細胞に対して異種性であってもよく、その発現が内因性プロモーターの制御下に入るようにT細胞受容体の内因性プロモーターに作動可能に連結していてもよい。一部の実施形態では、改変TCR又はCARをコードする核酸は、内因性TRACプロモーターに作動可能に連結している。
【0093】
本開示による抗原特異的受容体には、組換え改変T細胞受容体(TCR)及びその成分、並びにキメラ抗原受容体(CAR)等の機能的非TCR抗原特異的受容体がある。
【0094】
免疫細胞は、特に同種異系の場合、移植片対宿主病を低減するように設計されていてもよく、細胞は、不活性化された(例えば、破壊又は欠失された)TCRαβ受容体を含む。アルファ鎖(TRAC)は、ベータ鎖のように2つの遺伝子によりコードされているのではなく、単一の遺伝子によりコードされているため、TRAC遺伝子座は、TCRαβ受容体発現を低減するための典型的な標的である。したがって、抗原特異的受容体(例えば、CAR又はTCR)をコードする核酸は、機能的TCRアルファ鎖の発現を著しく低減させる、TRAC遺伝子座の位置、好ましくは第1エキソンの5'領域(配列番号17)に組み込まれていてもよい。例えば、Jantzら、国際公開第2017/062451号パンフレット;Sadelainら、国際公開第2017/180989号パンフレット;Torikaiら、Blood、119巻(2号):5697~705頁(2012年)、Eyquemら、Nature. 2017年3月2日、543巻(7643号):113~117頁を参照されたい。内因性TCRアルファの発現は、少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、又は99%低減され得る。そのような実施形態では、抗原特異的受容体をコードする核酸の発現は、任意選択で、内因性TCR-アルファプロモーターの制御下にある。
【0095】
キメラ抗原受容体(CAR)
一部の実施形態では、遺伝子操作抗原特異的受容体は、活性化又は刺激性CAR、共刺激性CAR(国際公開第2014/055668号パンフレットを参照)、及び/又は阻害性CAR(iCAR、Fedorovら、Sci. Transl. Medicine、5巻(215号)(2013年12月)を参照)を含むキメラ抗原受容体(CAR)を含む。
【0096】
キメラ抗原受容体(CAR)(キメラ免疫受容体、キメラT細胞受容体、人工T細胞受容体としても知られている)は、免疫エフェクター細胞(T細胞)に任意の特異性を移植する遺伝子操作抗原特異的受容体である。典型的には、こうした受容体は、モノクローナル抗体の特異性をT細胞に移植するために使用され、それらのコード配列の移入はレトロウイルスベクターにより容易になる。
【0097】
CARは、一般に、一部の態様ではリンカー及び/又は膜貫通ドメインを介して、1つ若しくは複数の細胞内シグナル伝達成分に連結している細胞外抗原(又はリガンド)結合ドメインを含む。そのような分子は、典型的には、天然の抗原受容体を介したシグナル、共刺激受容体と組み合わせてそのような受容体を介したシグナル、及び/又は共刺激受容体のみを介したシグナルを模倣又は近似する。
【0098】
CARは、
(a)細胞外抗原結合ドメイン、
(b)膜貫通ドメイン、
(c)任意選択で共刺激ドメイン、及び
(d)細胞内シグナル伝達ドメイン
を含んでいてもよい。
【0099】
一部の実施形態では、がんマーカー等の、養子細胞療法により標的とされる特定の細胞タイプで発現される抗原等の特定の抗原(又はマーカー若しくはリガンド)に対する特異性を有するCARが構築される。CARは、典型的には、その細胞外部分に、1つ又は複数の抗原結合分子例えば、抗体の1つ又は複数の抗原結合断片、ドメイン、又は部分、典型的には1つ又は複数の抗体可変ドメイン等を含む。例えば、細胞外抗原結合ドメインは、軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインを、典型的にはscFvとして含んでいてもよい。
【0100】
抗原との結合に使用される部分としては、抗体に由来する単鎖抗体断片(scFv)、ライブラリーから選択されるFab、又はそれらの同種受容体に係合する天然リガンド(第1世代CARの場合)のいずれかの3つの基本カテゴリーが挙げられる。こうしたカテゴリーの各々での成功例は、特に、Sadelain M、Brentjens R、Riviere I. The basic principles of chimeric antigen receptor (CAR) design. Cancer discovery. 2013年、3巻(4号):388~398頁(特に表1を参照)に報告されており、それらは本出願に含まれる。
【0101】
抗体としては、キメラ抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体が挙げられ、上記に記載されるように更に親和性成熟及び選択することができる。げっ歯動物免疫グロブリン(例えば、マウス、ラット)に由来するキメラ又はヒト化scFvは、十分に特徴付けられているモノクローナル抗体から容易に導出されるため、広く使用されている。ヒト化抗体は、げっ歯動物配列由来のCDR領域を含み、典型的には、げっ歯動物CDRがヒトフレームワークに移植されており、ヒトフレームワーク残基の一部は、親和性を保存するために元のげっ歯動物フレームワーク残基に逆突然変異されていてもよく、及び/又は1つ若しくは少数のCDR残基は、親和性を増加させるために突然変異されていてもよい。完全ヒト抗体は、マウス配列を有しておらず、典型的には、ヒト抗体ライブラリーのファージディスプレイ技術により、又は天然の免疫グロブリン遺伝子座がヒト免疫グロブリン遺伝子座のセグメントに置き換えられているトランスジェニックマウスを免疫化することにより産生される。天然アミノ酸配列に1つ又は複数のアミノ酸置換、挿入、又は欠失を有する抗体のバリアントを産生することができ、抗体は、その特異的結合機能を保持するか又は実質的に保持する。アミノ酸の保存的置換は周知であり、上記に記載されている。抗原に対する親和性が向上された更なるバリアントを産生することもできる。
【0102】
典型的には、CARは、モノクローナル抗体(mAb)の可変重(VH)鎖及び可変軽(VL)鎖に由来する単鎖抗体断片(scFv)等の、抗体分子の1つ又は複数の抗原結合性部分を含む。
【0103】
一部の実施形態では、CARは、本明細書に記載されているか又は当技術分野で公知である標的抗原のいずれか等の、腫瘍細胞又はがん細胞等の標的とされる細胞又は疾患のがんマーカー又は細胞表面抗原等の抗原に特異的に結合する抗体重鎖可変ドメインを含む。
【0104】
一部の実施形態では、CARは、細胞の表面上に発現される、インタクト抗原等の抗原を特異的に認識する抗体又は抗原結合断片(例えば、scFv)を含む。
【0105】
一部の実施形態では、CARは、細胞表面にMHC-ペプチド複合体として提示される、腫瘍関連抗原等の細胞内抗原を特異的に認識する抗体又は抗原結合断片(例えば、scFv)等のTCR様抗体を含む。一部の実施形態では、MHC-ペプチド複合体を認識する抗体又はその抗原結合性部分は、抗原特異的受容体等の組換え受容体の一部として細胞上に発現されてもよい。抗原特異的受容体には、キメラ抗原受容体(CAR)等の機能的な非TCR抗原特異的受容体がある。一般に、ペプチド-MHC複合体に対するTCR様特異性を呈する抗体又は抗原結合断片を含むCARは、TCR様CARとも呼ばれる場合がある。
【0106】
一部の態様では、抗原特異的結合又は認識成分は、1つ又は複数の膜貫通ドメイン及び細胞内シグナル伝達ドメインに連結されている。一部の実施形態では、CARは、CARの細胞外ドメインに融合された膜貫通ドメインを含む。一実施形態では、CARのドメインの1つと天然で付随する膜貫通ドメインが使用される。一部の例では、膜貫通ドメインは、選択されるか、アミノ酸置換により修飾され、同じ又は異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインへのその結合を回避して、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小限に抑える。
【0107】
一部の実施形態では、膜貫通ドメインは、天然供給源又は合成供給源のいずれかに由来する。供給源が天然である場合、ドメインは、任意の膜結合タンパク質又は膜貫通タンパク質に由来してもよい。膜貫通領域としては、T細胞受容体のアルファ、ベータ若しくはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、ICOS又はGITR又はNKG2D、OX40、2B4、DAP10、DAP12又はCD40に由来する(つまり、少なくともそれらの膜貫通領域を含む)ものが挙げられる。T細胞について、CD8、CD28、CD3イプシロンは好ましい場合がある。NK細胞について、NKG2D、DAP10、DAP12は好ましい場合がある。また、膜貫通ドメインは合成であってもよい。一部の実施形態では、膜貫通ドメインは、CD28、CD8、又はCD3ゼータに由来する。
【0108】
一部の実施形態では、短鎖オリゴ又はポリペプチドリンカー、例えば、2~10アミノ酸長のリンカーが存在し、CARの膜貫通ドメインと細胞質シグナル伝達ドメインとの間の連結を形成する。
【0109】
CARは、例えば、T細胞受容体のTCRガンマ、デルタ、イプシロン若しくはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD3ゼータ、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、ICOS又はGITR又はNKG2D、OX40、2B4、DAP10、DAP12又はCD40の細胞内シグナル伝達ドメインに由来する、少なくとも1つ又は複数の細胞内シグナル伝達成分を一般に含む。T細胞についてCD8、CD28、CD3イプシロンは好ましい場合がある。NK細胞についてNKG2D、DAP10、DAP12は好ましい場合がある。第1世代CARは、典型的には、内因性TCRからのシグナルの主要な伝達機構である、CD3ゼータ鎖に由来する細胞内ドメインを有していた。第2世代CARは、典型的には、T細胞に追加のシグナルを提供するために、CARの細胞質側の末端に、種々の共刺激タンパク質受容体(例えば、CD28、41BB(CD28)、ICOS)に由来する細胞内シグナル伝達ドメインを更に含む。共刺激ドメインとしては、ヒトCD28、4-1BB(CD137)、ICOS-1、CD27、OX40(CD137)、DAP10、及びGITR(AITR)に由来するドメインが挙げられる。2つの共刺激ドメインの組合せ、例えば、CD28及び4-1BB、又はCD28及びOX40が企図される。第3世代CARでは、CD3ゼータ-CD28-4-1BB又はCD3ゼータ-CD28-OX40等の、複数のシグナル伝達ドメインの組合せにより効力が増大される。
【0110】
細胞内シグナル伝達ドメインは、T細胞活性化及び細胞傷害を媒介するTCR CD3+鎖、例えばCD3ゼータ鎖等の、TCR複合体の細胞内成分に由来してもよい。代替的な細胞内シグナル伝達ドメインとしては、FcεRIyが挙げられる。細胞内シグナル伝達ドメインは、その3つの免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)の1つ又は2つを欠如する改変CD3ゼータポリペプチドを含んでいてもよく、ITAMはITAM1、ITAM2、及びITAM3である(N末端からC末端へと付番されている)。CD3-ゼータの成熟領域は、配列番号7の残基22~164である。ITAM1はアミノ酸残基61~89周囲に位置し、ITAM2はアミノ酸残基100~128周囲に位置し、ITAM3は残基131~159周囲に位置する。したがって、改変CD3ゼータポリペプチドは、ITAM1、ITAM2、又はITAM3のいずれか1つが不活性化されていてもよい。その代わりに、改変CD3ゼータポリペプチドは、任意の2つのITAM、例えばITAM2及びITAM3、又はITAM1及びITAM2が不活性化されていてもよい。好ましくは、ITAM3が不活性化、例えば欠失されている。より好ましくは、ITAM2及びITAM3が不活性化、例えば欠失されており、ITAM1はそのままである。例えば、1つの改変CD3ゼータポリペプチドはITAM1のみを保持し、残りのCD3ゼータドメインが欠失されている(残基90~164)。別の例として、ITAM1はITAM3のアミノ酸配列で置換されており、残りのCD3ゼータドメインが欠失されている(残基90~164)。例えば、Bridgemanら、Clin. Exp. Immunol. 175巻(2号):258~67頁(2014年)、Zhaoら、J. Immunol. 183巻(9号):5563~74頁(2009年)、Mausら、国際公開第2018/132506号パンフレット、Sadelainら、国際公開第2019/133969号パンフレット、Feuchtら、Nat Med. 25巻(1号):82~88頁(2019年)を参照されたい。
【0111】
したがって、一部の態様では、抗原結合性分子は、1つ又は複数の細胞シグナル伝達モジュールに連結されている。一部の実施形態では、細胞シグナル伝達モジュールは、CD3膜貫通ドメイン、CD3細胞内シグナル伝達ドメイン、及び/又は他のCD膜貫通ドメインを含む。また、CARは、Fc受容体γ、CD8、CD4、CD25、又はCD16等の1つ又は複数の追加の分子の部分を更に含んでいてもよい。
【0112】
一部の実施形態では、CARがライゲーションすると、CARの細胞質ドメイン又は細胞内シグナル伝達ドメインは、対応する非遺伝子操作免疫細胞(典型的にはT細胞)の正常なエフェクター機能又は応答のうちの少なくとも1つを活性化する。例えば、CARは、細胞溶解活性又はTヘルパー活性等のT細胞の機能、サイトカイン又は他の因子の分泌を誘導することができる。
【0113】
一部の実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、T細胞受容体(TCR)の細胞質配列、また、一部の態様では、天然状況においてそのような受容体と協調して作用し、抗原特異的受容体係合後にシグナル伝達を開始させる共受容体及び/若しくはそのような分子のバリアントの細胞質配列、並びに/又は同じ機能的能力を有する任意の合成配列を含む。
【0114】
T細胞活性化は、一部の態様では、2つのクラスの細胞質シグナル伝達配列:TCRを介して抗原依存性一次活性化を開始させるもの(一次細胞質シグナル伝達配列)及び抗原非依存的な様式で作用して二次又は共刺激シグナルを提供するもの(二次細胞質シグナル伝達配列)により媒介されると記載されている。一部の態様では、CARは、そのようなシグナル伝達成分の一方又は両方を含む。
【0115】
一部の態様では、CARは、刺激性又は抑制性のいずれかでTCR複合体の一次活性化を調節する一次細胞質シグナル伝達配列を含む。刺激性様式で作用する一次細胞質シグナル伝達配列は、免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ又はITAMとして知られているシグナル伝達モチーフを含んでいてもよい。一次細胞質シグナル伝達配列を含むITAMの例としては、TCRゼータ、FcRガンマ、FcRベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CDS、CD22、CD79a、CD79b、及びCD66dに由来するものが挙げられる。一部の実施形態では、CARの細胞質シグナル伝達分子は、細胞質シグナル伝達ドメイン、その部分、又はCD3ゼータに由来する配列を含む。
【0116】
また、CARは、CD28、4-1BB、OX40、DAP10、及びICOS等の共刺激受容体のシグナル伝達ドメイン及び/又は膜貫通部分を含んでいてもよい。一部の態様では、同じCARが活性化成分及び共刺激成分を両方とも含み、その代わりに、活性化ドメインは1つのCARにより提供され、共刺激成分は、別の抗原を認識する別のCARにより提供される。
【0117】
また、CAR又は他の抗原特異的受容体は、阻害性CAR(例えば、iCAR)であってもよく、免疫応答等の応答を減弱又は抑制する細胞内成分を含む。そのような細胞内シグナル伝達成分の例は、PD-1、CTLA4、LAG3、BTLA、OX2R、TIM-3、TIGIT、LAIR-1、PGE2受容体、A2ARを含むEP2/4アデノシン受容体を含む免疫チェックポイント分子に見出されるものである。一部の態様では、遺伝子操作細胞は、細胞の応答を減弱させる役目を果たすように、そのような阻害性分子の又はそのような阻害性分子に由来するシグナル伝達ドメインを含む阻害性CARを含む。そのようなCARは、例えば、活性化受容体、例えばCARにより認識される抗原が、正常細胞の表面でも発現されるか又は発現され得る場合、オフターゲット効果の可能性を低減するために使用される。
【0118】
TCR及びその改変バージョン(例えば、Hi-TCR)
一部の実施形態では、抗原特異的受容体としては、組換えT細胞受容体(TCR)及び/又は天然に存在するT細胞からクローニングされたTCRが挙げられる。TCRをコードする核酸は、天然に存在するTCR DNA配列をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で増幅し、続いて抗体可変領域を発現させ、続いて抗原に対する特異的結合を選択する等により、様々な供給源から得ることができる。一部の実施形態では、TCRは、患者から単離されたT細胞から、又は培養T細胞ハイブリドーマから得られる。一部の実施形態では、標的抗原のTCRクローンは、ヒト免疫系遺伝子(例えば、ヒト白血球抗原系又はHLA)で遺伝子操作されたトランスジェニックマウスで生成されている。例えば、腫瘍抗原を参照されたい(例えば、Parkhurstら(2009年) Clin Cancer Res. 15巻:169~180頁及びCohenら(2005年) J Immunol. 175巻:5799~5808頁)。一部の実施形態では、ファージディスプレイを使用して、標的抗原に対するTCRを単離する ために使用される(例えば、Varela-Rohenaら、(2008年) Nat Med. 14巻:1390~1395頁及びLi(2005年) Nat Biotechnol. 23巻:349~354頁を参照されたい。1つ又は複数の異種性抗原結合ドメイン(例えば、VH若しくはその断片又はVL若しくはその断片)及び天然TCR(アルファ又はベータ)定常ドメインを含む改変TCRは、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第2019/157454号パンフレットに記載されている。
【0119】
「T細胞受容体」又は「TCR」は、可変a鎖及びβ鎖(それぞれTCRα及びTCRβとしても知られている)又は可変γ鎖及びδ鎖(それぞれTCRγ及びTCRδとしても知られている)を含み、MHC受容体に結合した抗原ペプチドに特異的に結合することが可能な分子を指す。例えば、TCR又はその細胞外抗原結合ドメインは、約1×10-7以下、約5×10-8以下、約1×10-8以下、約5×10-9以下、約1×10-9以下、約5×10-10以下、約1×10-10以下、約5×10-11以下、約1×10-11以下、約5×10-12以下又は約1×10-12以下のKD親和性で抗原に結合する。一部の実施形態では、TCRは、αβ形態である。典型的には、αβ形態及びγδ形態で存在するTCRは一般に構造的に類似しているが、それらを発現するT細胞は、異なる解剖学的位置又は機能を有する場合がある。TCRは、細胞表面に見出されてもよく又は可溶型であってもよい。一般に、TCRは、T細胞(又はTリンパ球)の表面に見出され、一般にはそこで、主要組織適合複合体(MHC)分子に結合した抗原の認識に関与する。また、一部の実施形態では、TCRは、定常ドメイン、膜貫通ドメイン、及び/又は短鎖細胞質尾部を含んでいてもよい(例えば、Janewayら、Immunobiology: The Immune System in Health and Disease、第3版、Current Biology Publications、4:33頁、1997年を参照)。例えば、一部の態様では、TCRの各鎖は、1つのN末端免疫グロブリン可変ドメイン、1つの免疫グロブリン定常ドメイン、膜貫通領域、及びC末端に短鎖細胞質尾部を有してもよい。一部の実施形態では、TCRは、シグナル伝達の媒介に関与するCD3複合体のインバリアントタンパク質と付随する。別様の記載がない限り、「TCR」という用語は、その機能的TCR断片を包含すると理解されるべきである。この用語は、αβ形態又はγδ形態のTCRを含む、インタクト又は完全長TCRも包含する。
【0120】
したがって、本明細書の目的では、TCRへの言及は、MHC分子に結合した特異的抗原ペプチド、つまりMHC-ペプチド複合体に結合するTCRの抗原結合性部分等の、任意のTCR又は機能的断片を含む。「TCR」という用語は、本明細書で使用される場合、抗体のVH及び/又はVLを含むように改変されたTCRも指す。TCRの「抗原結合性部分」又は「抗原結合断片」は、同義的に使用することができ、TCRの構造ドメインの部分を含むが、全長TCRが結合する抗原(例えば、MHC-ペプチド複合体)に結合する分子を指す。一部の場合では、抗原結合性部分は、一般に、各鎖が3つの相補性決定領域を含む等、特定のMHC-ペプチド複合体に結合するための結合部位を形成するのに十分な、TCRの可変a鎖及び可変β鎖等の、TCRの可変ドメインを含む。
【0121】
一部の実施形態では、TCR鎖の可変ドメインは、付随してループ、すなわち、抗原認識を付与し、TCR分子の結合部位を形成することによりペプチド特異性を決定する、免疫グロブリンと類似する相補性決定領域(CDR)を形成し、ペプチド特異性を決定する。典型的には、免疫グロブリンのように、CDRは、フレームワーク領域(FR)により隔てられている(例えば、Joresら、Pwc. Nat'lAcad. Sci. U.S.A. 87巻:9138頁、1990年、Chothiaら、EMBO J. 7巻:3745頁、1988年を参照。またLefrancら、Dev. Comp. Immunol. 27巻:55頁、2003年も参照)。一部の実施形態では、CDR3は、プロセシングされた抗原の認識に関与する主要なCDRであるが、アルファ鎖のCDR1も、抗原性ペプチドのN末端部分と相互作用することが示されており、ベータ鎖のCDR1は、ペプチドのC末端部分と相互作用する。CDR2は、MHC分子を認識すると考えられている。一部の実施形態では、β鎖の可変領域は、更なる超可変性(HV4)領域を含んでいてもよい。
【0122】
改変TCRは、(a)典型的には、抗原結合断片並びに抗体断片(抗体断片の例としては、これらに限定されないが、Fv、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')2;ダイアボディ;線状抗体;可変重鎖(VH)領域、VHH抗体、scFv等の単鎖抗体分子、及び単一ドメイン抗体;並びに抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられる)、特に抗体のCDR、例えば重鎖可変領域(VH)及び/又は軽鎖可変領域(VL)の3つすべてのCDRを含む、細胞外ドメイン、並びに(b)アルファ、ベータ、ガンマ又はデルタ鎖の天然又はバリアント定常領域、を含んでもよい。したがって、改変TCRは、本明細書に記載のTRAC若しくはTRBC又はそれらの断片若しくはバリアントの一方又は両方に融合された1つ又は複数の抗原結合ドメインを含んでもよい。既に規定した通り、抗原結合ドメインは、VH、VL、単一ドメイン抗体、例えばVHH若しくはナノボディ又はscFv又は本明細書に記載されるような抗体断片から形成された任意の多重特異性抗体であってもよい。実施形態では、1つの抗原結合ドメインがTRAC(又はその断片若しくはバリアント)に結合し、1つの抗原結合ドメインがTRBC(又はその断片若しくはバリアント)に結合し、両方の抗原結合ドメインが同じ又は異なっていてもよいことが、本明細書で意図される。それらは、同じ特異性(同じ抗原又は同じエピトープに結合する)を有していてもいなくてもよい。一部の実施形態では、改変TCRは、1つ又は複数の異種性ポリペプチド、例えば、(a)TRBC1(配列番号5)若しくはTRBC2(配列番号6)又は、これらに少なくとも90%配列同一性を有するTRBC1(配列番号5)、TRBC2(配列番号6)若しくはこれらのマウス化バージョン(配列番号28~29)の断片若しくはバリアント、に融合された、抗体のVH又は断片又はそれに少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%若しくは98%配列同一性を有する(及び、好ましくは、3つすべてのCDR又は親CDRと少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%若しくは98%同一のCDRを含む)バリアント、並びに(b)TRAC(配列番号4)、これに少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%若しくは98%配列同一性を有するTRAC(配列番号4)の断片若しくはバリアント、又はこれらのマウス化バージョン(配列番号30~31)に融合された、抗体のVL又は断片又はこれらに少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、若しくは98%配列同一性を有する(及び、好ましくは3つすべてのCDR又は親CDRと少なくとも90%同一のCDRを含む)バリアント、を含んでもよい。図1Aを参照されたい。改変TCRは、任意選択で、天然又はバリアントCD3ゼータポリペプチド、例えば、1つ又は2つのITAMドメイン(例えば、ITAM2及びITAM3)が欠失されている改変CD3ゼータポリペプチド(配列番号7)を更に含んでもよい。図1Bを参照されたい。
【0123】
一部の設計では、HI-TCRは、(a)天然若しくはバリアントTRAC又はその断片に融合された抗原結合ドメイン又はその断片例えば、VH又はその断片を含むキメラTCRアルファ鎖、任意選択で、ここでVH(又はTRAC)の1~3アミノ酸は除去されている、及び(b)天然若しくはバリアントTRBC又はその断片に融合された抗原結合ドメイン又はその断片、例えばVL又はその断片を含むキメラTCRベータ鎖、任意選択で、ここでVL(又はTRBC)の1~3アミノ酸は除去されている、を含む。他の設計では、HI-TCRは、(a)天然若しくはバリアントTRAC又はその断片に融合された抗原結合ドメイン又はその断片、例えばVL又はその断片を含むキメラTCRアルファ鎖、任意選択で、ここでVL(又はTRAC)の1~3アミノ酸が除去されている、及び(b)天然若しくはバリアントTRBC又はその断片に融合された抗原結合ドメイン又はその断片、例えばVH又はその断片を含むキメラTCRベータ鎖、任意選択で、ここで、VH(又はTRBC)の1~3アミノ酸は除去されている、を含む。更に他の設計では、HI-TCRは、天然若しくはバリアントTRAC又はその断片に融合された、或いは天然若しくはバリアントTRBC又はその断片に融合された抗原結合ドメイン又はその断片だけを、例えばscFv、VHH、VH又はその断片を含み、任意選択で、ここでVH(又はTRAC又はTRBC)の1~3アミノ酸は除去されている。HI-TCR(HIT-CAR)は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第2019/157454号パンフレットに記載されている。HLA非依存的な様式で目的の抗原に結合する、組換えHLA非依存的(又は非HLA限定的に)改変TCR(「HI-TCR」と称される)は、国際公開第2019/157454号パンフレットに記載されている。そのようなHI-TCRは:(a)HLA非依存的な様式で抗原に結合する異種性抗原結合ドメイン、例えば、免疫グロブリン可変領域の抗原結合断片;及び(b)CD3ゼータポリペプチドに会合(及びその結果として活性化)することができる定常ドメイン、を含む抗原結合鎖を含む。好ましくは抗原結合ドメイン又はその断片は:(i)抗体の重鎖可変領域(VH)及び/又は(ii)抗体の軽鎖可変領域(VL)を含む。TCRの定常ドメインは、例えば、天然若しくは改変TRACポリペプチド(配列番号4若しくはそのバリアント)、又は天然若しくは改変TRBCポリペプチド(配列番号5若しくは6又はこれらのバリアント)を含む。TCRの定常ドメインは、例えば、天然TCR定常ドメイン(アルファ若しくはベータ)又はその断片である。
【0124】
ある特定の実施形態では、細胞外抗原結合ドメインは、抗体の重鎖可変領域(VH)及び/又は軽鎖可変領域(VL)を含み、ここでVH又はVLは、VL又はVHを含む別の細胞外抗原結合ドメインと二量体化できる(例えば、可変性断片(Fv)を形成する)。ある特定の実施形態では、FvはヒトFvである。ある特定の実施形態では、Fvはヒト化Fvである。ある特定の実施形態では、FvはマウスFvである。ある特定の実施形態では、Fvは、抗原Fc融合タンパク質を含むFvファージライブラリーをスクリーニングすることによって特定される。
【0125】
目的の抗原を標的とする追加的細胞外抗原結合ドメインは、同じ抗原を標的とする既存の抗体の既存のscFv又はFab領域を配列決定によって得ることができる。
【0126】
ある特定の実施形態では、本開示のHI-TCRの二量体化細胞外抗原結合ドメインはマウスFvである。ある特定の実施形態では、二量体化細胞外抗原結合ドメインは、以前に規定のヒト腫瘍抗原に結合するFvである。
【0127】
ある特定の実施形態では、細胞外抗原結合ドメインはFvであり、ヒトCD19ポリペプチド(例えば、ヒトCD19ポリペプチド)に特異的に結合する。
【0128】
ある特定の実施形態では、Fvは、配列番号36又は40に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)を含む。ある特定の実施形態では、Fvは、配列番号37又は40に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。ある特定の実施形態では、Fvは、配列番号36又は40に記載のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号37又は41に記載のアミノ酸配列を含むVLを含む。ある特定の実施形態では、細胞外抗原結合ドメインは、配列番号36又は40に少なくとも約80%(例えば、少なくとも約85%、少なくとも約90%若しくは少なくとも約95%)相同であるか又は同一であるアミノ酸配列を含むVHを含む。例えば、細胞外抗原結合ドメインは、配列番号7に少なくとも約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%若しくは約99%相同であるか又は同一であるアミノ酸配列を含むVHを含む。ある特定の実施形態では、細胞外抗原結合ドメインは、配列番号37又は40に記載のアミノ配列を含むVHを含む。ある特定の実施形態では、細胞外抗原結合ドメインは、配列番号37又は41に少なくとも約80%(例えば、少なくとも約85%、少なくとも約90%又は少なくとも約95%)相同であるアミノ酸配列を含むVLを含む。例えば、細胞外抗原結合ドメインは、配列番号37又は41と少なくとも約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%若しくは約99%相同であるか、又は同一であるアミノ酸配列を含むVLを含む。ある特定の実施形態では、細胞外抗原結合ドメインは、配列番号37又は41に記載のアミノ酸配列を含むVLを含む。ある特定の実施形態では、細胞外抗原結合ドメインは、配列番号36又は40に少なくとも約80%(例えば、少なくとも約85%、少なくとも約90%又は少なくとも約95%)相同であるアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号37又は41に少なくとも約80%(例えば、少なくとも約85%、少なくとも約90%若しくは少なくとも約95%)相同であるか、又は同一であるアミノ酸配列を含むVLをそれぞれ含む。ある特定の実施形態では、細胞外抗原結合ドメインは、配列番号36又は40に記載のアミノ酸配列を含むVH及び配列番号37又は41に記載のアミノ酸配列を含むVLをそれぞれ含む。
【0129】
ある特定の実施形態では、細胞外抗原結合ドメインは、Fvであり、ヒトPSMAポリペプチド(例えば、ヒトPSMAポリペプチド)に特異的に結合する。
【0130】
ある特定の実施形態では、Fvは、配列番号44に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)を含む。ある特定の実施形態では、Fvは、配列番号45に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。ある特定の実施形態では、Fvは、配列番号44に記載のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号45に記載のアミノ酸配列を含むVLを含む。ある特定の実施形態では、細胞外抗原結合ドメインは、配列番号44に少なくとも約80%(例えば、少なくとも約85%、少なくとも約90%若しくは少なくとも約95%)相同であるか、又は同一であるアミノ酸配列を含むVHを含む。例えば、細胞外抗原結合ドメインは、配列番号44に少なくとも約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%若しくは約99%相同であるか、又は同一であるアミノ酸配列を含むVHを含む。ある特定の実施形態では、細胞外抗原結合ドメインは、配列番号44に記載のアミノ配列を含むVHを含む。ある特定の実施形態では、細胞外抗原結合ドメインは、配列番号45に少なくとも約80%(例えば、少なくとも約85%、少なくとも約90%又は少なくとも約95%)相同であるアミノ酸配列を含むVLを含む。例えば、細胞外抗原結合ドメインは、配列番号45に少なくとも約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%若しくは約99%相同であるか、又は同一であるアミノ酸配列を含むVLを含む。ある特定の実施形態では、細胞外抗原結合ドメインは、配列番号45に記載のアミノ酸配列を含むVLを含む。ある特定の実施形態では、細胞外抗原結合ドメインは、配列番号44に少なくとも約80%(例えば、少なくとも約85%、少なくとも約90%又は少なくとも約95%)相同であるアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号45に少なくとも約80%(例えば、少なくとも約85%、少なくとも約90%若しくは少なくとも約95%)相同であるか、又は同一であるアミノ酸配列を含むVLをそれぞれ含む。ある特定の実施形態では、細胞外抗原結合ドメインは、配列番号44に記載のアミノ酸配列を含むVH及び配列番号45に記載のアミノ酸配列を含むVLをそれぞれ含む。
【0131】
それ自体が細胞内シグナル伝達ドメインを典型的には含むキメラ抗原受容体とは異なり、HI-TCRは活性化シグナルを直接産生せず;代わりに、抗原結合鎖はCD3ゼータポリペプチド(配列番号7)と会合し、結果として活性化する。組換えTCRを含む免疫細胞は、抗原が、細胞表面で、細胞あたり約10,000分子未満、例えば、細胞あたり約5,000、4,000、3,000、2,000、1,000、500、250又は100分子未満の低い密度を有する場合に、優れた活性をもたらす。一部の実施形態では、抗原は、標的細胞によって低い密度、例えば、細胞あたり標的抗原約6,000分子未満で発現される。一部の実施形態では、抗原は、細胞あたり標的抗原約5,000分子未満、約4,000分子未満、約3,000分子未満、約2,000分子未満、約1,000分子未満又は約500分子未満の密度で発現される。一部の実施形態では、抗原は、細胞あたり標的抗原約2,000分子未満、例えば、約1,800分子未満、約1,600分子未満、約1,400分子未満、約1,200分子未満、約1,000分子未満、約800分子未満、約600分子未満、約400分子未満、約200分子未満又は約100分子未満等の密度で発現される。一部の実施形態では、抗原は、細胞あたり標的抗原約1,000分子未満、例えば、約900分子未満、約800分子未満、約700分子未満、約600分子未満、約500分子未満、約400分子未満、約300分子未満、約200分子未満又は約100分子未満等の密度で発現される。一部の実施形態では、抗原は、細胞あたり標的抗原約5,000~約100分子、例えば、細胞あたり標的抗原約5,000~約1,000分子、約4,000~約2,000分子、約3,000~約2,000分子、約4,000~約3,000分子、約3,000~約1,000分子、約2,000~約1,000分子、約1,000~約500分子、約500~約100分子等の範囲の密度で発現される。一部の実施形態では、組換えTCR T細胞療法は、野生型細胞における密度と比較して低い密度で発現される抗原を標的とする。
【0132】
CD3ゼータポリペプチドは、共刺激分子の細胞内ドメイン又はその断片を任意選択で含む。代替的に、抗原結合ドメインは、抗原への抗原結合鎖の結合で、免疫応答性細胞を刺激することができる共刺激ドメインを任意選択で含む。共刺激ドメインの例としては、CD28(配列番号8~9)、4-1BB(CD137)(配列番号10~11)、ICOS(配列番号12)、CD27、OX 40(CD134)(配列番号13)、DAP10、DAP12、2B4、CD40、FCER1G又はGITR(AITR)に由来する刺激ドメイン又はその断片若しくはバリアントが挙げられる。T細胞について、CD28、CD27、4-1BB(CD137)、ICOSは、好ましい場合がある。NK細胞について、DAP10、DAP12、2B4は、好ましい場合がある。2つの共刺激ドメインの組合せ、例えばCD28及び4-1BB又はCD28及びOX40は、企図される。
【0133】
抗原特異的受容体、例えば改変TCRを発現する前述の改変免疫細胞は、本明細書に記載の1つ又は複数の更なる特性:SUV39H1遺伝子の不活性化(例えば、突然変異若しくは阻害)及び/又は抗原特異的受容体のCD3ゼータ細胞内シグナル伝達領域の1つ若しくは2つのITAMドメインの不活性化、及び/又は一方若しくは両方の内因性TCR鎖の不活性化(例えば、内因性TCRアルファ及び/若しくはTCRベータの欠失又は破壊)、及び/又は共刺激受容体の付加、或いはそのような特性の1つ、2つ、3つ又はすべての組合せ、を好ましくは有する。
【0134】
一部の実施形態では、TCR鎖は定常ドメインを含有する。例えば、免疫グロブリンのように、TCR鎖(例えば、α鎖、β鎖)の細胞外部分は、2つの免疫グロブリンドメイン、N末端の可変ドメイン(例えば、Vα又はVβ、典型的には、Kabatら、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、US Dept. Health and Human Services、Public Health Service National Institutes of Health、1991年、第5版のKabat付番に基づき、アミノ酸1~116)、及び細胞膜に隣接する1つの定常ドメイン(例えば、α鎖定数ドメイン若しくはCα、典型的にはKabatに基づきアミノ酸117~259、又はβ鎖定数ドメイン若しくはCβ、典型的にはKabatに基づきアミノ酸117~295)を含んでいてもよい。例えば、一部の場合では、2つの鎖により形成されるTCRの細胞外部分には、2つの膜近位定常ドメイン、及びCDRを含む2つの膜遠位可変ドメインを含む。TCRドメインの定常ドメインは、システイン残基がジスルフィド結合を形成し、2つの鎖の間に連結を製作する短鎖接続配列を含む。一部の実施形態では、TCRは、TCRが定常ドメインに2つのジスルフィド結合を含むように、α鎖及びβ鎖の各々に追加のシステイン残基を有してもよい。
【0135】
一部の実施形態では、TCR鎖は、膜貫通ドメインを含んでいてもよい。一部の実施形態では、膜貫通ドメインは正に荷電している。一部の場合では、TCR鎖は、細胞質尾部を含む。一部の場合では、構造は、TCRが、CD3のような他の分子と付随することを可能にする。例えば、膜貫通領域を有する定常ドメインを含むTCRは、タンパク質を細胞膜に係留し、CD3シグナル伝達機構又は複合体のインバリアントサブユニットと付随させることができる。
【0136】
一般に、CD3は、哺乳動物では3つの別個の鎖(γ、δ、及びε)及びζ鎖を持してもよい多タンパク質複合体である。例えば、哺乳動物では、複合体は、CD3ガンマ鎖、CD3デルタ鎖、2本のCD3イプシロン鎖及びCD3ゼータ鎖のホモ二量体を含んでいてもよい。CD3ガンマ、CD3デルタ及びCD3イプシロン鎖は、単一の免疫グロブリンドメインを含む免疫グロブリンスーパーファミリーの高度に関連する細胞表面タンパク質である。CD3ガンマ、CD3デルタ、及びCD3イプシロン鎖の膜貫通領域は負に荷電しており、これは、こうした鎖が、正に荷電しているT細胞受容体鎖と付随することを可能にする特質である。CD3ガンマ、CD3デルタ、及びCD3イプシロン鎖の細胞内尾部は各々、免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ又はITAMとして知られている単一の保存モチーフを含むが、各CD3ゼータ鎖は3つを有する。一般に、ITAMは、TCR複合体のシグナル伝達能力に関与する。こうしたアクセサリー分子は、負に荷電している膜貫通領域を有し、TCRから細胞内へとシグナルを伝播させる役割を果たす。CD3ガンマ鎖、デルタ鎖、イプシロン鎖、及びゼータ鎖は、TCRと共に、T細胞受容体複合体として知られているものを形成する。
【0137】
一部の実施形態では、TCRは、2つの鎖アルファ及びベータ(任意選択で、ガンマ及びデルタ)のヘテロ二量体であってもよく、又はTCRは、単鎖TCR構築物であってもよい。一部の実施形態では、TCRは、1つ又は複数のジスルフィド結合により連結されている2つの別々の鎖(アルファ及びベータ鎖又はガンマ及びデルタ鎖)を含むヘテロ二量体である。TCRのバリアントは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第2018/067993号パンフレット及びBaeuerleら、Synthetic TRuC receptors engaging the complete T cell receptor for potent anti-tumor response. Nat Commun 10巻, 2087頁(2019年)に開示されている。例えば、アルファ、ベータ、ガンマ又はイプシロン鎖の任意の1つ若しくは複数又は2つ以上は、抗体可変領域、例えば、scFv等のVH及び/又はVLに融合されてもよい。
【0138】
CAR及び組換えTCRを含む例示的な抗原特異的受容体、並びに受容体を遺伝子操作するための及び細胞内に導入するための方法は、例えば、以下の文献に記載されているものが挙げられる:国際公開第200014257号パンフレット、国際公開第2013126726号パンフレット、国際公開第2012/129514号パンフレット、国際公開第2014031687号パンフレット、国際公開第2013/166321号パンフレット、国際公開第2013/071154号パンフレット、国際公開第2013/123061号パンフレット、米国特許出願第2002131960号明細書、米国特許出願第2013287748号明細書、米国特許出願公開第20130149337号明細書、米国特許第6,451,995号明細書、米国特許第7,446,190号明細書、米国特許第8,252,592号明細書、米国特許第8,339,645号明細書、米国特許第8,398,282号明細書、米国特許第7,446,179号明細書、米国特許第6,410,319号明細書、米国特許第7,070,995号明細書、米国特許第7,265,209号明細書、米国特許第7,354,762号明細書、米国特許第7,446,191号明細書、米国特許第8,324,353号明細書、及び米国特許第8,479,118号明細書、並びに欧州特許出願第2537416号明細書、並びに/又はSadelainら、Cancer Discov. 2013年4月、3巻(4号):388~398頁、Davilaら(2013年) PLoS ONE 8巻(4号):e61338; Turtleら、Curr. Opin. Immunol.、2012年10月、24巻(5号):633~39頁、Wuら、Cancer, 2012年3月18巻(2号):160~75頁。一部の態様では、抗原特異的受容体としては、米国特許第7,446,190号明細書に記載されているようなCAR、及び国際公開第2014056668号パンフレットに記載されているものが挙げられる。
【0139】
共刺激リガンド及び受容体
改変されたSUV39H1発現を有する本開示の細胞は、少なくとも1つの又は少なくとも2つの外因性共刺激リガンドを更に含んでもよい。
【0140】
ある特定の実施形態では、免疫細胞は、外因性又は組換え共刺激リガンド(例えば、細胞は少なくとも1つの共刺激リガンドを用いて形質導入されている)を含む。ある特定の実施形態では、免疫細胞は、CAR又は外因性TCR(改変TCRを含む)及び少なくとも1つの外因性共刺激リガンドを共発現する。CAR又は改変TCRと少なくとも1つの外因性共刺激リガンドとの間の相互作用は、免疫応答性細胞(例えば、T細胞)の完全な活性化のために重要な非抗原特異的シグナルをもたらす。共刺激リガンドとしては、これらに限定されないが、腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリー及び免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーリガンドのメンバーが挙げられる。TNFは、全身性の炎症に関与するサイトカインであり、急性期反応を刺激する。その主な役割は、免疫細胞の調節においてである。TNFスーパーファミリーのメンバーは、多数の共通の特性を共有している。大部分のTNFスーパーファミリーメンバーは、短い細胞質側セグメント及び比較的長い細胞外領域を含有するII型膜貫通タンパク質(細胞外C末端)として合成される。TNFスーパーファミリーメンバーとしては、これらに限定されないが、神経成長因子(NGF)、CD40L(CD40L)/CDl54、CD137L/4-1BBL、TNF-a、CD134L/OX40L/CD252、CD27L/CD70、Fasリガンド(FasL)、CD30L/CD153、腫瘍壊死因子ベータ(TNFP)/リンホトキシン-アルファ(LTa)、リンホトキシンベータ(TTb)、CD257/B細胞活性化因子(BAFF)/Blys/THANK/Tall-l、グルココルチコイド誘導性TNF受容体リガンド(GITRL)及びTNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、LIGHT(TNFSF14)が挙げられる。免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーは、細胞の認識、結合又は接着工程に関与する細胞表面タンパク質及び可溶性タンパク質の大きなグループである。これらのタンパク質は、免疫グロブリンと構造特性を共有する-免疫グロブリンドメイン(フォールド)を有する。免疫グロブリンスーパーファミリーリガンドとしては、これらに限定されないが、CD80及びCD86、両者はCD28に対するリガンド、が挙げられる。ある特定の実施形態では、少なくとも1つの共刺激リガンドは、4-1BBL、CD275、CD80、CD86、CD70、OX40L、CD48、TNFRSF14及びこれらの組合せからなる群から選択される。ある特定の実施形態では、免疫応答性細胞は、外因性又は組換え共刺激リガンドを含むか、又は構成される。ある特定の実施形態では、1つの外因性又は組換え共刺激リガンドは、4-1BBL又はCD80である。ある特定の実施形態では、1つの外因性又は組換え共刺激リガンドは、4-1BBLである。ある特定の実施形態では、免疫応答性細胞は、2つの外因性又は組換え共刺激リガンドを含むか、又は構成される。ある特定の実施形態では、2つの外因性又は組換え共刺激リガンドは、4-1BBL及びCD80である。
【0141】
ある特定の実施形態では、免疫応答性細胞は、少なくとも1つのキメラ共刺激受容体(CCR)を含んでよいか、又はこれで形質導入されてもよい。本明細書で使用される場合、「キメラ共刺激受容体」又は「CCR」という用語は、抗原に結合し、抗原へのその結合でCCRを含む細胞(例えばT細胞)に共刺激シグナルを提供するが、単独では細胞に活性化シグナルをもたらさないキメラ受容体を指す。CCRは、その全体が参照により組み込まれる、Krauseら、J. Exp. Med. (1998年);188巻(4号):619~626頁及び米国特許出願第20020018783号明細書に記載されている。CCRは共刺激シグナルを模倣するが、CARとは異なってT細胞活性化シグナルをもたらさず、例えば、CCRはE03zポリペプチドを欠いている。CCRは、抗原提示細胞での天然共刺激リガンドの非存在下で共刺激、例えば、CD284ikeシグナル、をもたらす。コンビナトリアル抗原認識、すなわち、CARとの組合せでのCCRの使用は、二重抗原発現T細胞に対するT細胞反応性を増強でき、それにより選択的腫瘍標的化を向上させる。その全体が参照により組み込まれる、国際公開第2014/055668号パンフレット、を参照されたい。Klossらは、コンビナトリアル抗原認識、スプリットシグナル伝達(split signaling)、及び、決定的には、T細胞活性化と、抗原の組合せを発現する標的細胞を、各抗原を個々に発現する細胞を温存しながら排除するT細胞を生成する共刺激とのバランスがとれた強度を統合する戦略を記載した(Klossら、Nature Biotechnololgy (20l3年);3l巻(l号):7l~75頁、内容はその全体が参照により組み込まれる)。この手法を用いてT細胞活性化は、1つの抗原のCAR媒介認識を必要とする一方で、共刺激は第2の抗原に特異的なCCRによって非依存的に媒介される。腫瘍選択性を達成するために、コンビナトリアル抗原認識手法は、T細胞活性化の効率を第2の抗原の同時CCR認識によってもたらされるレスキュー無しで無効であるレベルに減少させる。ある特定の実施形態では、CCRは、第2の抗原に結合する細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び少なくとも1つの共刺激分子を含む共刺激シグナル伝達領域を含む。ある特定の実施形態では、CCRは、単独では細胞に活性化シグナルを送達しない。共刺激分子の非限定的例としては、CD28、4-1BB、0X40、ICOS、DAP-10及びこれらの任意の組合せが挙げられる。ある特定の実施形態では、CCRの共刺激シグナル伝達領域は、1つの共刺激シグナル伝達分子を含む。ある特定の実施形態では、1つの共刺激シグナル伝達分子はCD28である。ある特定の実施形態では、1つの共刺激シグナル伝達分子は4-1BBである。ある特定の実施形態では、CCRの共刺激シグナル伝達領域は、2つの共刺激シグナル伝達分子を含む。ある特定の実施形態では、2つの共刺激シグナル伝達分子は、CD28及び4-1BBである。第2の抗原は、第1の抗原及び第2の抗原の両方の発現が、標的細胞(例えば、がん性組織又はがん性細胞)に限定されるように選択される。CARと同様に、細胞外抗原結合ドメインは、scFv、Fab、F(ab)2又は細胞外抗原結合ドメインを形成する異種性配列を含む融合タンパク質であってもよい。ある特定の実施形態では、CCRは、CAR又はCCRが結合する抗原とは異なる抗原に結合する改変されたTCRと共発現される、例えば、CAR又は改変TCRは第1の抗原に結合し、CCRは第2の抗原に結合する。
【0142】
共刺激リガンド、分子及び受容体(又は融合ポリペプチド)の例は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第2021/016174号パンフレットに開示されている。例示的なブースター配列としては、配列番号32~33及び53~54が挙げられる。
【0143】
抗原
抗原特異的受容体が標的とする抗原には、養子細胞療法により標的とされる疾患、状態、又は細胞タイプの状況で発現されるものがある。疾患及び状態には、増殖性、新生物性、及び悪性疾患及び障害、特にがんがある。感染性及び自己免疫疾患、炎症性又はアレルギー性疾患も企図される。
【0144】
がんは、固形がんであってもよく、又は血液、骨髄、及びリンパ系に影響を及ぼし、造血組織及びリンパ組織の腫瘍としても知られており、特に白血病及びリンパ腫を含むがん等の「液体腫瘍」であってもよい。液体腫瘍としては、例えば、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ性白血病(ALL)、及び慢性リンパ性白血病(CLL)(マントル細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、腺腫、扁平上皮癌、喉頭癌、胆嚢及び胆管がん、網膜芽細胞腫等の網膜のがん等の種々のリンパ腫を含む)が挙げられる。
【0145】
固形がんとしては、特に、結腸、直腸、皮膚、子宮内膜、肺(非小細胞肺癌を含む)、子宮、骨(骨肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、線維肉腫、巨大細胞腫瘍、アダマンチノーマ、及び脊索腫等)、肝臓、腎臓、食道、胃、膀胱、膵臓、子宮頸部、脳(髄膜腫、神経芽細胞腫、低悪性度星状細胞腫、オリゴデンドロサイトーマ(Oligodendrocytomas)、下垂体腫瘍、シュワン腫、及び転移性脳がん等)、卵巣、乳房、頭頸部領域、精巣、前立腺、及び甲状腺からなる群から選択される器官の1つに影響を及ぼすがんが挙げられる。
【0146】
好ましくは、本開示によるがんは、上記に記載されるような、血液、骨髄、及びリンパ系に影響を及ぼすがんである。一部の実施形態では、がんは、多発性骨髄腫であるか又はそれに関連付けられる。
【0147】
また、本開示による疾患は、これらに限定されないが、ウイルス、レトロウイルス、細菌、及び原生動物感染症、HIV免疫不全、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタインバーウイルス(EBV)、アデノウイルス、BKポリオーマウイルス等の感染性疾患又は状態を包含する。
【0148】
また、本開示による疾患は、関節炎、例えば関節リウマチ(RA)等の自己免疫性又は炎症性疾患又は状態、I型糖尿病、全身性エリテマトーデス(SLE)、炎症性腸疾患、乾癬、強皮症、自己免疫性甲状腺疾患、グレイブス病、クローン病、多発性硬化症、喘息、及び/又は移植に関連付けられる疾患若しくは状態を包含する。そのような状況では、制御性T細胞は、SUV39H1がノックアウトされている細胞であってもよい。
【0149】
一部の実施形態では、抗原はポリペプチドである。一部の実施形態では、抗原は、炭水化物又は他の分子である。一部の実施形態では、抗原は、正常又は非標的細胞又は組織と比較して、疾患又は状態の細胞、例えば、腫瘍又は病原性細胞上で選択的に発現又は過剰発現される。他の実施形態では、抗原は、正常細胞上で発現され、及び/又は遺伝子操作細胞上で発現される。一部のそのような実施形態では、本明細書で提供されるような多重標的指向性及び/又は遺伝子破壊手法は、特異性及び/又は有効性を向上させるために使用される。増殖性、新生物性、及び悪性疾患及び障害、特にがんの状況で抗原特異的受容体が標的とする抗原では、任意の腫瘍抗原(抗原性ペプチド)が使用されてもよい。抗原の供給源としては、これらに限定されないが、がんタンパク質が挙げられる。抗原は、ペプチドとして、又はインタクトタンパク質若しくはその一部として発現されてもよい。インタクトタンパク質又はその一部は、天然であってよく、又は突然変異誘発されていてよい。
【0150】
一部の実施形態では、抗原は、ユニバーサル腫瘍抗原である。「ユニバーサル腫瘍抗原」という用語は、一般に、非腫瘍細胞よりも腫瘍細胞にてより高いレベルで発現され、起源が異なる腫瘍でも発現される、タンパク質等の免疫原性分子を指す。一部の実施形態では、ユニバーサル腫瘍抗原は、ヒトがんの30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%超、又はそれよりも多くで発現される。一部の実施形態では、ユニバーサル腫瘍抗原は、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、又はそれよりも多くの異なるタイプの腫瘍で発現される。一部の場合では、ユニバーサル腫瘍抗原は、正常細胞等の非腫瘍細胞で発現される場合があるが、腫瘍細胞で発現されるよりも低いレベルで発現される。一部の場合では、ユニバーサル腫瘍抗原は、正常細胞では発現されない等、非腫瘍細胞では全く発現されない。例示的なユニバーサル腫瘍抗原としては、例えば、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、サバイビン、マウスダブルミニッツ2ホモログ(MDM2、mouse double minute 2 homolog)、チトクロームP450 1B1(CYP1B)、HER2/neu、p95HER2、ウィルムス腫瘍遺伝子1(WT1)、livin、アルファフェトプロテイン(AFP)、がん胎児性抗原(CEA)、ムチン16(MUC16)、MUC1、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、p53、又はサイクリン(D1)が挙げられる。
【0151】
一部の態様では、抗原は、CD38、CD138、及び/又はCS-1等の多発性骨髄腫で発現される。他の例示的な多発性骨髄腫抗原としては、CD56、TIM-3、CD33、CD123、及び/又はCD44が挙げられる。そのような抗原に対する抗体又は抗原結合断片は公知であり、例えば、以下の文献に記載のものが挙げられる:米国特許第8,153,765号明細書、米国特許第8,603477号明細書、米国特許第8,008,450号明細書、米国特許出願公開第20120189622号明細書、及び国際公開第2006099875号パンフレット、国際公開第2009080829号パンフレット、又は国際公開第2012092612号パンフレット。一部の実施形態では、そのような抗体又はそれらの抗原結合断片(例えば、scFv)を使用して、CAR又は改変TCR(Hi-TCR)を生成することができる。
【0152】
一部の実施形態では、抗原は、がん又は腫瘍細胞上で発現又は上方制御されるが、休止又は活性化T細胞等の免疫細胞でも発現され得るものであってもよい。例えば、一部の場合では、hTERT、サバイビン、及び他のユニバーサル腫瘍抗原の発現は、活性化Tリンパ球を含むリンパ球に存在することが報告されている(例えば、Wengら(1996年) J Exp. Med.、183巻:2471~2479頁、Hathcockら(1998年) J Immunol、160巻:5702~5706頁、Liuら(1999年) Proc. Natl Acad Sci.、96巻:5147~5152頁、Turksmaら(2013年) Journal of Translational Medicine、11巻:152頁を参照)。同様に、一部の場合では、CD38及び他の腫瘍抗原も、活性化T細胞で上方制御される等、T細胞等の免疫細胞で発現される場合がある。例えば、一部の態様では、CD38は、既知のT細胞活性化マーカーである。
【0153】
一部の実施形態では、がんは、HER2又はp95HER2の過剰発現を伴うか又は関連付けられる。p95HER2は、完全長HER2受容体をコードする転写産物のメチオニン611で翻訳が代替的に開始されることより産生される、HER2の構成的に活性なC末端断片である。p95HER2、細胞外ドメインのアミノ酸配列は、MPIWKFPDEEGACQPCPINCTHSCVDKDDKGCPAEQRASPLTである。
【0154】
HER2又はp95HER2は、乳がんで、並びに胃部(胃)がん、胃食道がん、食道がん、卵巣がん、子宮子宮内膜がん、子宮頸がん、結腸がん、膀胱がん、肺がん、及び頭頸部がんで過剰発現されることが報告されている。p95HER2断片を発現するがんを有する患者は、完全な形態のHER2を主に発現する患者よりも、転移を発症する可能性がより高く、予後がより不良である。Saezら、Clinical Cancer Research、12巻:424~431頁(2006年)。
【0155】
HER2と比較してp95HER2に特異的に結合することができる(つまり、p95HER2に結合するが、完全長HER2受容体には著しくは結合しない)抗体は、Sperindeら、Clin. Cancer Res. 16巻、4226~4235頁(2010年)及び米国特許出願公開第2013/0316380号明細書に開示されている。これらの文献は参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。HER2と比較してp95HER2に特異的に結合することができるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、国際公開第2010/000565号パンフレット及びParra-Palauら、Cancer Res. 70巻、8537~8546頁(2010年)に開示されている。例示的なCARは、10-7M以下、10-8M以下、10-9M以下、又は10-10M以下の結合親和性KDでp95HER2のエピトープPIWKFPDに結合する。一部の実施形態では、本明細書に記載されるようなCAR又は改変TCR(例えば、Hi-TCR)は、国際公開第2021239965号パンフレットに記載されるVH/VL配列を含む。
【0156】
本明細書に開示の改変免疫細胞、組成物及び方法は、任意選択で、SUV39H1遺伝子が不活性化されており、本明細書で開示されるHi-TCR等の改変TCR並びに/又は:a)標的抗原に、例えば、約10-7M以下、若しくは約10-8M以下、若しくは約10-9M以下、若しくは約10-10M以下の結合親和性で特異的に結合する細胞外抗原結合ドメイン、b)膜貫通ドメイン、c)任意選択で、1つ又は複数の共刺激ドメイン、及びd)単一の活性ITAMを保持している改変CD3ゼータ細胞内シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメイン、を含むキメラ抗原受容体(CAR)を発現する細胞を含む。このことは、当技術分野において公知の任意の手段によって達成でき、例えば、ITAM2及びITAM3が不活性化される、又はITAM1及びITAM2が不活性化される。例えば、改変CD3ゼータポリペプチドはITAM1のみを保持しており、残りのCD3ゼータドメインは欠失されている(残基90~164)。別の例として、ITAM1はITAM3のアミノ酸配列を用いて置換されており、残りのCD3ゼータドメインは欠失されている(残基90~164)。
【0157】
参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれるRius Ruizら、Sci. Transl. Med. 10巻、eaat1445(2018年)及び米国特許出願公開第2018/0118849号明細書には、p95HER2のエピトープPIWKFPD及びTCRのCD3イプシロン鎖に特異的に結合するT細胞二重特異的抗体が記載されている。p95HER2-TCBと名付けられた抗体は、CD3イプシロンとは一価性に及びp95HER2とは二価性に結合する非対称2アーム免疫グロブリンG1(IgG1)で構成されている。二重特異性抗体は、CD3イプシロンに対する一価性親和性が低く、約70~100nMであり、それにより非特異的活性化の可能性が低減され、p95HER2に対する二価性親和性が高く、約9nMである。
【0158】
抗原特異的受容体がp95HER2に特異的に結合する場合、本開示は、HER2及びT細胞活性化抗原、例えば、CD3イプシロン又はTCRの定常鎖(アルファ若しくはベータ)の両方に結合する可溶性(非膜結合)二重特異性抗体、例えば、BiTE(二重特異性可溶性抗体)を分泌するように更に改変された改変免疫細胞を提供する。二重特異性抗体を発現することは、p95HER及びHER2の両方を発現し不均一な腫瘍を治療できる、並びに/又はp95HER2を標的とするCAR-T細胞を用いた治療後のp95HER2抗原減少を通じた潜在的な腫瘍細胞エスケープの影響を軽減できる。例えば、Choiら、"CAR-Tcells secreting BiTEs circumvent antigen escape without detectable toxicity," Nature Biotechnology, 37巻:1049~1058頁(2019年)を参照されたい。
【0159】
本明細書で提供されるような一部の実施形態では、T細胞等の免疫細胞は、発現された抗原特異的受容体が、免疫細胞自体でのその発現の状況では抗原に特異的に結合しないように、抗原をコードする遺伝子が免疫細胞中で抑制又は破壊されるように遺伝子操作されていてもよい。したがって、一部の態様では、これは、遺伝子操作免疫細胞がそれら自体に対して結合することにより、例えば養子細胞療法との関連で、免疫細胞における遺伝子操作の有効性が低減される可能性があること等の、オフターゲット効果を回避することができる。
【0160】
阻害性CARの場合等、一部の実施形態では、標的は、疾患細胞又は標的とされる細胞上では発現されないが、同じ遺伝子操作細胞の活性化又は刺激性受容体により標的とされている疾患特異的標的も発現する正常又は非疾患細胞上で発現される抗原等のオフターゲットマーカーである。例示的なそのような抗原は、例えば、そのような分子が下方制御されるが非標的細胞では発現が維持される疾患又は状態の治療に関連するMHCクラスI分子等のMHC分子である。
【0161】
一部の実施形態では、遺伝子操作免疫細胞は、1つ又は複数の他の抗原を標的とする抗原特異的受容体(例えば、CAR及び/又はHi-TCR)を含んでいてもよい。一部の実施形態では、1つ又は複数の他の抗原は、腫瘍抗原又はがんマーカーである。本提供の免疫細胞上の抗原特異的受容体により標的とされる他の抗原としては、一部の実施形態では、以下のものが挙げられる:オーファンチロシンキナーゼ受容体ROR1、tEGFR、Her2、p95HER2、LI-CAM、CD19、CD20、CD22、メソセリン、CEA、クローディン18.2及びB型肝炎表面抗原、抗葉酸受容体、CD23、CD24、CD30、CD33、CD38、CD44、EGFR、EGP-2、EGP-4、EPHa2、ErbB2、ErbB3、若しくはErbB4、FBP、FcRH5、胎児アセチコリンe受容体、GD2、GD3、HMW-MAA、IL-22R-アルファ、IL-13R-アルファ2、kdr、カッパ軽鎖、Lewis Y、L1-細胞接着分子、MAGE-A1、メソセリン、MUC1、MUC16、PSCA、NKG2Dリガンド、NY-ESO-1、MART-1、gplOO、腫瘍胎児性抗原、ROR1、TAG72、VEGF-R2、がん胎児性抗原(CEA)、前立腺特異的抗原、PSMA、Her2/neu、p95HER2、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、エフリンB2、CD123、CS-1、c-Met、GD-2、及びMAGE A3、CE7、ウィルムス腫瘍1(WT-1)、サイクリンAl(CCNA1)等のサイクリン、並びに/又はビオチン化分子、並びに/又はHIV、HCV、HBV、若しくは他の病原体により発現される分子。
【0162】
一部の実施形態では、細胞外抗原結合ドメインは、グレイ又はダークゲノムに由来するe抗原に結合する。一部の実施形態では、細胞外抗原結合ドメインは、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第2021/043804号パンフレットに開示される腫瘍新抗原性ペプチドのいずれかに結合する。例えば、抗原結合ドメインは、配列番号1~117のペプチドのいずれか又は、国際公開第2021/043804号パンフレットの配列番号118~17492のいずれか1つ若しくは国際公開第2018/234367号パンフレット、国際公開第2022/189620号パンフレット、国際公開第2022/189626号パンフレット及び国際公開第2022/189639号パンフレットのいずれかに記載される融合転写物配列のいずれかの翻訳領域(ORF)の一部によってコードされる少なくとも8、9、10、11又は12アミノ酸を含む新抗原性ペプチドに結合する。一部の実施形態では、抗原特異的受容体は、病原体特異的抗原に結合する。一部の実施形態では、抗原特異的受容体は、ウイルス抗原(HIV、HCV、HBV等)、細菌抗原、及び/又は寄生虫抗原に特異的である。
【0163】
ウイルスの非限定的例としては、レトロウイルス科(例えば、ヒト免疫不全ウイルス、例えば、HIV-l(HDTV-III、LAVE若しくはHTLV-III/LAVとも称される、又はHIV-III;及び等の他の単離株、例えばHIV-LP;ピコルナウイルス科(例えば、ポリオウイルス、A型肝炎ウイルス;エンテロウイルス、ヒトコクサッキーウイルス、ライノウイルス、エコーウイルス);カリシウイルス科(例えば、胃腸炎を引き起こす株);トガウイルス科(例えば、ウマ脳炎ウイルス、風疹ウイルス);フラビウイルス科(例えば、デングウイルス、脳炎ウイルス、黄熱ウイルス);コロナウイルス科(例えば、コロナウイルス);ラブドウイルス科(例えば、水疱性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス);フィロウイルス(Fdoviridae)(例えば、エボラウイルス);パラミクソウイルス科(例えば、パラインフルエンザウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、RSウイルス);オルトミクソウイルス科(例えば、インフルエンザウイルス);ブニヤウイルス科(例えば、ハンタンウイルス、ブンガウイルス、フレボウイルス及びナイラウイルス(Naira virus));アレナウイルス科(出血熱ウイルス);レオウイルス科(例えば、レオウイルス、オルビウイルス及びロタウイルス);ビルナウイルス科、ヘパドナウイルス科(B型肝炎ウイルス);パルボウイルス科(パルボウイルス);パポーバウイルス科(パピローマウイルス、ポリオーマウイルス);アデノウイルス科(大部分のアデノウイルス);ヘルペスウイルス科(単純ヘルペスウイルス(HSV)1及び2、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、ヘルペスウイルス;ポックスウイルス科(痘瘡ウイルス、ワクチニアウイルス、ポックスウイルス);並びにイリドウイルス科(例えば、アフリカブタ熱ウイルス);並びに未分類ウイルス(例えば、デルタ肝炎因子(B型肝炎ウイルスの欠損サテライト(defective satellite)と考えられる)、非A、非B型肝炎因子(クラス1=内服的伝播(intemally transmitted);クラス2=非経口伝播(すなわち、C型肝炎);ノーウォーク及び関連ウイルス並びにアストロウイルス)が挙げられる。
【0164】
細菌の非限定的例としては、パスツレラ、ブドウ球菌、連鎖球菌、大腸菌(Escherichia coli)、シュードモナス種及びサルモネラ種が挙げられる。感染性細菌の具体的な例としては、これらに限定されないが、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、ボレリア・ブルグドフェリ(Borelia burgdorferi)、レジオネラ・ニューモフィリア(Legionella pneumophilia)、マイコバクテリア種(例えば、結核菌(M. tuberculosis)、M.アビウム(M. avium)、M.イントラセルラーレ(M. intracellulare)、M.カンサイ(M. kansaii)、M.ゴルドナエ(M. gordonae))、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、ナイセリア・ゴノレー(Neisseria gonorrhoeae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、リステリア菌(Listeria monocytogenes)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)(A群連鎖球菌)、ストレプトコッカス・アガラクチア(Streptococcus agalactiae)(B群連鎖球菌)、連鎖球菌(緑色連鎖球菌群)、ストレプトコッカス・フェカリス(Streptococcus faecalis)、ストレプトコッカス・ボビス(Streptococcus bovis)、連鎖球菌(嫌気性種)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、病原性カンピロバクター種、エンテロコッカス種、ヘモフィルス・インフルエンザエ(Haemophilus influenzae)、炭疽菌(Bacillus antracis)、コリネバクテリウム・ジフテリエ(corynebacterium diphtheriae)、コリネバクテリウム種、ブタ丹毒菌(Erysipelothrix rhusiopathiae)、クロストリジウム・パーフリンジェンス(Clostridium perfringers)、破傷風菌(Clostridium tetani)、エンテロバクター・エロゲネス(Enterobacter aerogenes)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、パスツレラ・マルトシダ(Pasturella multocida)、バクテロイデス種、フソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)、ストレプトバチルス・モニリフォルミス(Streptobacillus moniliformis)、トレポネーマ・パラジウム(Treponema palladium)、トレポネーマ・ペルテヌエ(Treponema pertenue)、レプトスピラ、リケッチア及びアクチノミセス・イスラエリ(Actinomyces israelii)が挙げられる。
【0165】
ある特定の実施形態では、病原体抗原は、サイトメガロウイルス(CMV)に存在するウイルス抗原、エプスタインバーウイルス(EBV)に存在するウイルス抗原、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に存在するウイルス抗原、又はインフルエンザウイルスに存在するウイルス抗原である。
【0166】
一部の実施形態では、抗原は、MHC制限抗原である。上に記載のようなユニバーサル腫瘍抗原又は病原体抗原を含む腫瘍抗原のペプチドエピトープは当技術分野で公知であり、一部の態様では、MHC制限抗原抗体又は抗体断片を生成するために使用することができる(例えば、国際公開第2011009173号パンフレット又は国際公開第2012135854号パンフレット及び米国特許出願公開第20140065708号明細書を参照されたい、同様に、Maus MV, Plotkin J, Jakka G, Stewart-Jones G, Riviere I, Merghoub T, Wolchok J, Renner C, Sadelain M. An MHC-restricted antibody-based chimeric antigen receptor requires TCR-like affinity to maintain antigen specificity. Mol Ther Oncolytics. 2017年1月 11巻;3号:1~9頁;及びDenkberg G, Reiter Y. Recombinant antibodies with T-cell receptor-like specificity: novel tools to study MHC class I presentation. Autoimmun Rev. 2006年;5巻:252~257頁;及びHulsmeyer M, Chames P, Hillig RC, Stanfield RL, Held G, Coulie PG. A major histocompatibility complex-peptide-restricted antibody and T cell receptor molecules recognize their target by distinct binding modes: crystal structure of human leukocyte antigen (HLA)-A1-MAGE-A1 in complex with FAB-HYB3. J Biol Chem. 2005年;280巻:2972~2980頁)。
【0167】
一部の実施形態では、本開示の細胞は、各々が異なる抗原を認識し、典型的には各々が異なる細胞内シグナル伝達成分を含む2つ又はそれよりも多くの抗原特異的受容体を細胞上に発現するように遺伝子操作されている。そのような多重標的指向性戦略は、例えば、国際公開第2014055668号パンフレット(例えば、オフターゲット、例えば正常細胞上では個々に存在するが、治療しようとする疾患又は状態の細胞上でのみ一緒になって存在する2つの異なる抗原を標的とする活性化及び共刺激CARの組合せが記載されている)、及びFedorovら、Sci. Transl. Medicine、5巻(215頁)(2013年12月)(活性化CARが、正常又は非疾患細胞及び治療しようとする疾患又は状態の細胞の両方で発現される1つの抗原に結合し、阻害性CARは、正常細胞上又は治療が所望ではない細胞上でのみ発現される別の抗原に結合する、活性化CAR及び阻害性CARを発現する細胞が記載されている)に記載されている。
【0168】
抗体の例としては、所望の抗原だけでなく、CD3イプシロン又はTCRの定常鎖(アルファ若しくはベータ)等の活性化T細胞抗原にも結合するT細胞活性化抗体である二重特異性抗体が挙げられる。
【0169】
一部の状況では、刺激因子(例えば、リンホカイン又はサイトカイン)の過剰発現は、対象にとって毒性であり得る。したがって、一部の状況では、遺伝子操作細胞は、養子細胞療法にて投与する場合等、細胞をin vivoでのネガティブ選択に対して感受性にする遺伝子セグメントを含む。例えば、一部の態様では、細胞は、それらが投与される患者のin vivo状態の変化の結果として排除され得るように遺伝子操作されている。ネガティブ選択可能な表現型は、投与される作用剤、例えば化合物に対する感受性を付与する遺伝子の挿入に起因してもよい。ネガティブ選択可能な遺伝子としては、ガンシクロビル感受性を付与する単純ヘルペスウイルスI型チミジンキナーゼ(HSV-I TK)遺伝子(Wiglerら、Cell II :223頁、1977年)、細胞性ヒポキサンチンホスフリボシルトランスフェラーゼ(phosphribosyltransferase)(HPRT)遺伝子、細胞性アデノシンホスホリボシルトランスフェラーゼ(APRT)遺伝子、細菌性シトシンデアミナーゼ(Mullenら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 89巻:33号(1992年))が挙げられる。
【0170】
本開示の他の実施形態では、細胞、例えばT細胞は、組換え抗原特異的受容体を発現するように遺伝子操作されておらず、むしろ、例えばインキュベーションステップ中に特定の抗原特異性を有する細胞の拡大増殖を促進するためにin vitro又はex vivoで培養された腫瘍浸潤性リンパ球及び/又はT細胞等、所望の抗原に特異的な天然に存在する抗原特異的受容体を含む。例えば、一部の実施形態では、養子細胞療法のための細胞は、腫瘍特異的T細胞、例えば、自己腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)を単離することにより産生される。自己腫瘍浸潤性リンパ球を使用したヒト腫瘍の直接標的化は、一部の場合では、腫瘍退縮を媒介することができる(Rosenberg SAら(1988年) N Engl J Med. 319巻:1676~1680頁を参照)。一部の実施形態では、リンパ球は、切除腫瘍から抽出される。一部の実施形態では、そのようなリンパ球は、in vitroで拡大増殖される。一部の実施形態では、そのようなリンパ球は、リンホカイン(例えば、IL-2)と共に培養される。一部の実施形態では、そのようなリンパ球は、自己腫瘍細胞の特異的溶解を媒介するが、同種異系腫瘍又は自己正常細胞では媒介しない。
【0171】
追加の核酸、例えば、導入するための遺伝子には、移入細胞の生存能及び/又は機能を促進すること等により療法の有効性を向上させるもの、in vivo生存又は局在化を評価するため等の、細胞を選択及び/又は評価するための遺伝子マーカーを提供する遺伝子、例えば、Lupton S.Dら、Mol. and Cell Biol.、11巻:6頁(1991年)及びRiddellら、Human Gene Therapy 3巻:319~338頁(1992年)により記載されているように、細胞をin vivoでのネガティブ選択に感受性にすることにより安全性を向上させる遺伝子がある。また、ドミナントポジティブ選択可能マーカーとネガティブ選択可能マーカーとの融合から導出される二機能性選択可能融合遺伝子の使用が記載されているLuptonらによる国際出願番号PCT/US91/08442及び国際出願番号PCT/US94/05601の公報を参照されたい。例えば、Riddellら、米国特許第6,040,177号明細書の14~17欄を参照されたい。
【0172】
発現カセット、ベクター及び標的化構築物
一部の態様では、遺伝子操作は、遺伝子破壊タンパク質又は核酸をコードする成分等の、細胞内に導入するための遺伝子操作された成分又は他の成分をコードする核酸を導入することを含む。
【0173】
一般に、CARを免疫細胞(T細胞等)内に遺伝子操作するには、細胞を培養して、形質導入及び拡大増殖を可能にする必要がある。形質導入には、様々な方法を使用することができるが、クローン的に拡大増殖し遺伝子操作細胞が持続するようにCAR発現の維持を可能にするには、安定的な遺伝子移入が必要である。
【0174】
一部の実施形態では、遺伝子移入は、最初に細胞成長、例えば、T細胞成長、増殖、及び/又は活性化を刺激し、続いて活性化細胞を形質導入し、臨床応用に十分な個数へと培養中で拡大増殖させることにより達成される。
【0175】
伝統的技術は、好適な発現ベクターを利用しており、この場合免疫細胞は、導入遺伝子、例えば、CAR又は改変TCRをコードする外因性核酸を含む発現カセットを用いて形質導入される。典型的には、導入遺伝子又は発現カセットは、標的化構築物にクローニングされ、ゲノム内の標的化部位(例えば、TCRでの、又はSUV39H1遺伝子座での)発現カセット又は導入遺伝子の標的化組込みをもたらす。
【0176】
本発明の細胞、特に免疫細胞における発現のために好適な任意の好適な標的化構築物は、使用できる。具体的な実施形態では、標的化構築物は、細胞のゲノム内の部位(例えば、SUV39H1遺伝子座)での核酸配列(導入遺伝子)の標的化組込みのために好適な相同組換え系を用いた使用のために適合である。
【0177】
公知のベクターとしては、ウイルスベクター及びシュードタイプ化ウイルスベクター、例えば、レトロウイルス(例えば、モロニーマウス白血病ウイルス、ハーベイマウス肉腫ウイルス、マウス乳房腫瘍ウイルス及びラウス肉腫ウイルス)、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アルファウイルス、ワクチニアウイルス、ポックスウイルス、SV40-型ウイルス、ポリオーマウイルス、エプスタイン・バーウイルス、単純ヘルペスウイルス、パピローマウイルス、ポリオウイルス、フォーミウイルス(foamivirus)若しくはセムリキ森林ウイルスベクター;又はトランスポサーゼ系、例えば、スリーピングビューティートランスポサーゼベクター(Sleeping Beauty transposase vector)が挙げられる(例えば、Kosteら、(2014年) Gene Therapy 2014年4月3日;Carlensら、(2000年) Exp Hematol 28巻(10号):1137~46頁; Alonso-Caminoら、(2013年) Mol Ther Nucl Acids 2巻, e93;Parkら、Trends Biotechnol. 2011年11月; 29巻(11号):550~557頁)。多数の例示的レトロウイルス系が記載されている(例えば、米国特許第5,219,740号明細書; 米国特許第6,207,453号明細書; 米国特許第5,219,740号明細書;Miller and Rosman (1989年) BioTechniques 7巻:980~990頁;Miller, A. D. (1990年) Human Gene Therapy 1巻:5~14頁;Scarpaら、(1991年) Virology 180巻:849~852頁; Burnsら、(1993年) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90巻:8033~8037頁;及びBoris-Lawrie and Temin (1993年) Cur. Opin. Genet. Develop. 3巻:102~109頁。
【0178】
レンチウイルス形質導入法も公知である。例示的な方法は、例えば、Wangら(2012年) J. Immunother. 35巻(9号):689~701頁、Cooperら(2003年) Blood. 101巻:1637~1644頁、Verhoeyenら(2009年) Methods Mol Biol. 506巻:97~114頁;及びCavalieriら(2003年) Blood. 102巻(2号):497~505頁に記載されている。
【0179】
細胞へのネイキッドプラスミドの送達のための非ウイルス系としては、リポフェクション、ヌクレオフェクション、マイクロインジェクション、遺伝子銃、ビロソーム、脂質、カチオン性脂質複合体、リポソーム、免疫リポソーム、ナノ粒子、金粒子又はポリマー複合体、ポリリジンコンジュゲート、合成ポリアミノポリマー、他の作用剤増強DNA取込み、及び人工ウイルスエンベロープ又はビリオンが挙げられる。
【0180】
一部の実施形態では、組換え核酸は、エレクトロポレーションによりT細胞内に移入される(例えば、Chicaybamら、(2013年) PLoS ONE 8巻(3号):e60298及びVan Tedelooら(2000年) Gene Therapy 7巻(16号):1431~1437頁を参照)。一部の実施形態では、組換え核酸は、転位によりT細胞内に移入される(例えば、Manuriら(2010年) Hum Gene Ther 21巻(4号):427~437頁、Sharmaら(2013年) Molec Ther Nucl Acids 2巻、e74、及びHuangら(2009年) Methods Mol Biol 506巻:115~126頁を参照)。免疫細胞に遺伝物質を導入し発現させるための方法としては、リン酸カルシウムトランスフェクション(例えば、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、ニューヨーク市、ニューヨーク州に記載されるような)、原形質融合、カチオン性リポソーム媒介性トランスフェクション、タングステン粒子促進性マイクロ粒子銃(Johnston、Nature、346巻:776~777頁(1990年)) 、及びリン酸ストロンチウムDNA共沈殿(Brashら、Mol. Cell Biol.、7巻:2031~2034頁(1987年))が挙げられる。
【0181】
相同組換え媒介標的化のための導入遺伝子ベクター化をもたらす標的構築物を生成するために特に有用なベクターとしては、これらに限定されないが、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)、組換え非組込みレンチウイルス(rNILV)、組換え非組込みガンマ-レトロウイルス(rNIgRV)、一本鎖DNA(直鎖状又は環状)等が挙げられる。そのようなベクターは、標的化構築物を作製することによって、本発明の免疫細胞に導入遺伝子を導入するために使用できる(例えば、Miller, Hum. Gene Ther. 1巻(1号):5~14頁 (1990年);Friedman, Science 244巻: 1275~1281頁 (1989年); Eglitisら、BioTechniques 6巻:608~614頁 (1988年);Tolstoshevら、Current Opin. Biotechnol. 1巻 :55~61頁 (1990年);Sharp, Lancet 337巻: 1277~1278頁 (1991年);Cornettaら、Prog. Nucleic Acid Res. Mol. Biol. 36巻:311~322頁 (1989年);Anderson, Science 226巻:401~409頁 (1984年);Moen, Blood Cells 17巻:407~416頁 (1991年);Millerら、Biotechnology 7巻:980~990頁 (1989年);Le Gal La Salleら、Science 259巻:988~990頁 (1993年);及びJohnson, Chest 107巻:77S- 83S (1995年);Rosenbergら、N. Engl. J. Med. 323巻:370頁 (1990年);Andersonら、米国特許第5,399,346号明細書; Schollerら、Sci. Transl. Med. 4巻:132~153頁 (2012年);Parente-Pereiraら、J. Biol. Methods l(2):e7 (1-9)(2014年);Lamersら、Blood 117(l):72~82頁 (2011年);Reviereら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92巻:6733~6737頁 (1995年);Wangら、Gene Therapy 15巻: 1454~1459頁 (2008年)を参照)。
【0182】
一部の実施形態では、外因性核酸又は標的化構築物は、ヌクレアーゼ切断部位での細胞ゲノムへの核酸配列の組換えを促進する5'相同アーム及び3'相同アームを含む。
【0183】
一部の実施形態では、外因性核酸は、一本鎖DNA鋳型を使用して細胞に導入されてもよい。一本鎖DNAは、外因性核酸を含んでもよく、好ましい実施形態では、相同組換えによるヌクレアーゼ切断部位への核酸配列の挿入を促進するための5'及び3'相同アームを含んでもよい。一本鎖DNAは、5'相同アームの5'上流の5'AAV逆位末端リピート(ITR)配列及び3'相同アームの3'下流の3'AAV ITR配列を更に含んでもよい。他の具体的な実施形態では、標的化構築物は、5'から3'の順に:第1のウイルス配列、左側相同アーム、ポリシストロニック発現カセット(例えば、種々のウイルス及び非ウイルス配列内リボソーム進入部位(IRES、例えば、FGF-l IRES、FGF-2 IRES、VEGF IRES、IGF-II IRES、NF-kB IRES、RUNX1 IRES、p53 IRES、A型肝炎IRES、C型肝炎IRES、ペスチウイルスIRES、アフトウイルスIRES、ピコルナウイルス(picomavirus)IRES、ポリオウイルスIRES及び脳心筋炎ウイルスIRES)並びに切断可能リンカー(例えば、2Aペプチド、例えば、P2A、T2A、E2A及びF2Aペプチド)、好ましくは切断可能リンカー)を創出するエレメントをコードする核酸配列、導入遺伝子、ポリアデニル化配列、右側相同アーム並びに第2のウイルス配列、を含む。好ましい実施形態では、標的化構築物は、5'から3'の順に:第1のウイルス配列、左側相同アーム、自己切断リンカー(ブタテッショウウイルス2A等)をコードする核酸配列、CAR又は改変TCR(例えば、Hi-CTR)をコードする核酸配列、ポリアデニル化配列、右側相同アーム及び第2のウイルス配列を含む。別の好適な標的化構築物は、組込み欠損レンチウイルス由来の配列を含んでもよい(例えば、Wanischら、Mol. Ther. 17巻(8号): 1316~1332頁(2009年)を参照)。
【0184】
一部の実施形態では、ウイルス核酸配列は、組込み欠損レンチウイルスの配列を含む。使用される相同組換え系と適合性の任意の好適な標的化構築物は、利用されてもよいことは理解される。標的化構築物の一部として機能するAAV核酸配列は、幾つかの天然又は組換えAAVカプシド又は粒子にパッケージングされてもよい。具体的な実施形態では、AAV粒子はAAV6である。具体的な実施形態では、AAV2ベースの標的化構築物は、AAV6ウイルス粒子を使用して標的細胞に送達される。具体的な実施形態では、AAV配列は、AAV2、AAV5又はAAV6配列である。
【0185】
一部の実施形態では、本発明の外因性核酸配列をコードする遺伝子は、直鎖化DNA鋳型を用いたトランスフェクションによって細胞に導入されてもよい。一部の例では、外因性核酸配列をコードするプラスミドDNAは、環状プラスミドDNAが直鎖化され、骨格ベクター配列を含まない外因性DNAの正確なインフレーム組込みを可能にする、左側相同アームの両側にヌクレアーゼ切断部位(例えば、クラスII、II型、V型又はVI型Casヌクレアーゼ)を含んでもよい(例えば、Hisano Y, Sakuma T, Nakade Sら、Precise in-frame integration of exogenous DNA mediated by CRISPR/Cas9 system in zebrafish. Sci Rep. 2015年;5巻:8841頁を参照)。
【0186】
一部の実施形態では、ベクターは、TCRプロモーター等の内因性プロモーターを組み入れる。そのようなベクターは、内因性プロモーター、例えばTCRプロモーターによってもたらされるのと同様の様式で発現を提供できる。そのようなベクターは、例えば、組込み部位が導入遺伝子の効率的な発現をもたらさない場合、又は内因性プロモーターによって制御される内因性遺伝子の破壊がT細胞に有害であるか若しくはT細胞療法の有効性の減少を生じる場合に、有用である場合がある。好ましい実施形態では、そのようなベクターは、例えば、組込みの部位が、CAR又は改変TCRをコードする核酸配列の効率的な発現をもたらさない場合に、有用である場合がある。プロモーターは、誘導性プロモーター又は構成的プロモーターであってもよい。内因性又はベクター関連プロモーターの制御下での核酸配列の発現は、核酸を発現する細胞のために好適な条件、例えば成長条件下で、又は誘導性プロモーターを用いた誘導剤の存在下等で生じる。そのような条件は、当業者によって十分理解される。
【0187】
標的化構築物は、ポリシストロニック発現カセット(これらに限定されないが、種々のウイルス及び非ウイルス配列内リボソーム進入部位(IRES、例えば、FGF-l IRES、FGF-2 IRES、VEGF IRES、IGF-II IRES、NF-kB IRES、RUNX1 IRES、p53 IRES、A型肝炎IRES、C型肝炎IRES、ペスチウイルスIRES、アフトウイルスIRES、ピコルナウイルスIRES、ポリオウイルスIRES及び脳心筋炎ウイルスIRES)並びに切断可能リンカー(例えば、2Aペプチド、例えば、P2A、T2A、E2A及びF2Aペプチド)が挙げられる)を、導入遺伝子をコードする核酸配列のすぐ上流に創出するエレメントを含むように任意選択で設計されてもよい。好ましい実施形態では、標的化構築物は、切断可能に連結された(例えば:P2A、T2A等)配列を、療法タンパク質(例えば、遺伝子操作された抗原受容体)をコードする核酸配列のすぐ上流に含むように任意選択で設計されてもよい。P2A及びT2Aは、自己切断ペプチド配列であり、タンパク質配列のバイシストロニックな又はマルチシストロニックな発現のために使用されてもよい(Szymczakら、Expert Opin. Biol. Therapy 5巻(5号) :627~638頁 (2005年)を参照)。
【0188】
本出願による免疫応答性細胞におけるHIT発現のために適合したAAV構築物は、例えば、Mansilla-Soto, J., Eyquem, J., Haubner, S.ら、HLA-independent T cell receptors for targeting tumors with low antigen density. Nat Med 28巻、345~352頁(2022年)に記載されており、特にin vivo実験について、本明細書に含まれる結果において使用された。
【0189】
典型的な適合構築物は、TRBC又はTRAC配列(本明細書に記載のマウス配列を含む、天然若しくは改変されたTRBC若しくはTRAC配列であってもよい)、切断可能リンカー配列(上に規定の通りだが、2A配列等)、TRAC又はTRBC配列(本明細書に記載のマウス配列を含む、天然若しくは改変されたTRBC若しくはTRAC配列であってもよい)を典型的には含む。TRBC及び/又はTRAC配列は、上に記載された抗体断片(例えば、VH、VH、scFv、単一ドメイン抗体、VHH等)をコードする配列に(好ましくは5'で)典型的には融合される。一部の実施形態では、ブースター(共刺激リガンド)配列は、好ましい実施形態では、構築物が切断可能リンカー配列(例えば、2A配列)及びブースター(共刺激リガンド)配列を更に含むように、構築物に含まれる。典型的には、構築物の3'末端のTRAC又はTRBC配列は、ブースター(共刺激リガンド及び又は共刺激受容体CCR)配列にも融合される切断可能リンカーに融合される(図11及び図29図30を参照)。ブースター((共刺激リガンド及び/又は共刺激受容体CCR)配列は、本明細書に記載されるもののいずれか、及び特に、本明細書に記載されるCD80配列又はCD80_4-1BB配列であってもよい(例えば、配列番号32~33及び52~53を参照)。
【0190】
所望により、標的化構築物は、形質導入された細胞の特定をもたらすレポーター、例えば、レポータータンパク質を含むように任意選択で設計されてもよい。例示的レポータータンパク質としては、これらに限定されないが、蛍光タンパク質、例えば、mCherry、緑色蛍光タンパク質(GFP)、青色蛍光タンパク質、例えば、EBFP、EBFP2、Azurite及びmKalamal、シアン蛍光タンパク質、例えば、ECFP、Cerulean及びCyPet、並びに黄色蛍光タンパク質、例えば、YFP、Citrine、Venus及びYPetが挙げられる。典型的には、標的化構築物は、導入遺伝子の3'にポリアデニル化(ポリA)配列を含む。好ましい実施形態では、標的化構築物は、CAR及び/又は改変TCR(例えば、Hi)-TCR)をコードする核酸配列の3'にポリアデニル化(ポリA)配列を含む。
【0191】
本開示による細胞を得るための方法
ある特定の非限定的実施形態では、本明細書に開示のHI-TCR、共刺激リガンド、CCR又は任意の他の分子/導入遺伝子は、改変されたゲノム遺伝子座を通じて免疫応答性細胞によって発現される。ある特定の実施形態では、導入遺伝子の発現カセットは、標的化ゲノム編集法を用いて免疫応答性細胞の標的化ゲノム遺伝子座に組み込まれる。ある特定の実施形態では、標的化ゲノム遺伝子座は、SUV39H1、CD3S、CD3e、CD247、B2M、TRAC、TRBC1、TRBC2、TRGC1及び/又はTRGC2遺伝子座であってもよい。
【0192】
任意の好適な遺伝子編集法及び系は、内因性T細胞受容体遺伝子座を改変するために使用できる。本明細書に開示のゲノム編集法は、内因性T細胞受容体遺伝子座を改変するために使用できる。ある特定の実施形態では、CRISPR系はT細胞受容体遺伝子座を改変するために使用される。ある特定の実施形態では、CRISPR系は、ヒトTRAC遺伝子座のエキソン1を標的とする。ある特定の実施形態では、CRISPR系は、ヒトTRAC遺伝子座のエキソン1を標的とするガイドRNA(gRNA)を含む。
【0193】
典型的には、導入遺伝子、例えば、本明細書に規定される抗原受容体(例えば、本明細書に記載のHi-TCR)(ノックイン)をコードするものの組込み(ノックイン)は、内因性タンパク質(例えば、内因性TCR又はSUV39H1)の発現を同時に除去する(ノックアウト)。外因性遺伝子又は導入遺伝子(例えば、Hi-TCR構築物をコードする)は、上記の通り、ノックアウトされる内因性遺伝子のエキソン位置に組み込まれてよい。他の実施形態では、外因性遺伝子は、国際公開第2021/183884号パンフレットに記載の通り、ノックアウトされる内因性遺伝子のイントロン遺伝子座に組み込まれてよい(例示のために、図9A図9Cを参照)。例えば、イントロンKI戦略がエキソンの5'末端に近い場合。導入遺伝子の配列は、エキソンに並置されており、新規スプライス受容部が加えられる。イントロンKI戦略がエキソンの3'末端に近い場合、導入遺伝子の配列は、エキソンに並置されていてよく、新規スプライスドナーが典型的には加えられる。イントロンKI戦略がイントロンの中央の場合、スプライス受容部及びスプライスドナーは、転写物に新規エキソンを典型的には加える。これら3つの例について、ドナー鋳型構築物は、内因性遺伝子の転写調節を保存するために、典型的な自己切断ペプチド(例えば、P2A、E2A、T2A又はF2A)によって隣接された導入遺伝子を典型的には含む。終止コドン及びポリアデニル化配列は、翻訳及び転写を終結するためにドナー鋳型構築物に加えられてよい。
【0194】
所望の遺伝子変化は、内因性タンパク質遺伝子座内(例えば、T細胞受容体アルファ定常鎖(TRAC)ゲノム遺伝子座又は、SuV39H1遺伝子座内)の選択したgRNA配列に二本鎖又は一本鎖切断を導入する、Casタンパク質(例えば、Cas9又はCas12タンパク質)及びガイドRNA(gRNA)リボヌクレオタンパク質(RNP)の導入によって典型的には刺激される。これらの切断の修復は、修復結果を方向付ける相同性DNA鋳型を使用できるようにする相同組換え修復(HDR)によって、又は、周囲の塩基(インデル)の頻繁な挿入又は欠失をもたらすエラーが発生しやすい様式で切断末端を直接ライゲーションする非相同末端結合(NHEJ)によってのいずれかで進めることができる。NHEJ媒介インデルの効果は、gRNA標的配列の配置に依存する。コード配列又は近くの構造エレメントを標的とするこれらのgRNAは、タンパク質又はmRNA発現を破壊する傾向があり、標的化遺伝子のNHEJ媒介ノックアウトに結び付く。NHEJとHDR事象とのバランスは、gRNA標的配列の選択及びHDR鋳型(HDRT)の利用能の両方に依存する。
【0195】
T細胞受容体遺伝子座の操作
ある特定の実施形態では、HI-TCR等の抗原受容体は、改変された内因性T細胞受容体遺伝子座を通じて免疫応答性細胞によって発現される。ある特定の実施形態では、HI-TCR発現カセットは、内因性T細胞受容体遺伝子座に組み込まれる。ある特定の実施形態では、HI-TCR発現カセットは、T細胞受容体アルファ遺伝子座(TRA、GenBank ID:6955)内に組み込まれる。ある特定の実施形態では、HI-TCR発現カセットは、T細胞受容体ベータ遺伝子座(TRB、GenBank ID:6957)内に組み込まれる。ある特定の実施形態では、HI-TCR発現カセットは、T細胞受容体ガンマ遺伝子座(TRG、GenBank ID:6965)内に組み込まれる。
【0196】
ある特定の実施形態では、HI-TCR発現カセットは、TCR定常ドメイン遺伝子座の第1のエキソンに組み込まれている細胞外抗原結合ドメインを含み、それにより細胞外抗原結合ドメイン及びTCR定常ドメインはHI-TCRの1つの抗原結合鎖に含まれる。ある特定の実施形態では、TCR定常ドメイン遺伝子座は、TRAC、TRBC1、TRBC2、TRGC1又はTRGC2であってもよい。ある特定の実施形態では、HI-TCR発現カセットは、TRAC遺伝子座の第1のエキソンに組み込まれている細胞外抗原結合ドメインを含み、それにより細胞外抗原結合ドメイン及びTRACペプチドはHI-TCRの第1の抗原結合鎖に含まれる。ある特定の実施形態では、HI-TCR発現カセットは、細胞外抗原結合ドメイン及びTRBCペプチドを任意選択で含む第2の抗原結合鎖を更に含む。ある特定の実施形態では、HI-TCR発現カセットは、TRBC遺伝子座の第1のエキソンに組み込まれている細胞外抗原結合ドメインを含み、それにより細胞外抗原結合ドメイン及びTRBCペプチドはHI-TCRの第1の抗原結合鎖に含まれる。ある特定の実施形態では、HI-TCR発現カセットは、細胞外抗原結合ドメイン及びTRACペプチドを任意選択で含む第2の抗原結合鎖を更に含む。ある特定の実施形態では、発現カセットは、ポリシストロニック発現カセットを創出するエレメント、例えば、切断可能ペプチド、例えば、2Aペプチドを含む。
【0197】
ある特定の実施形態では、組換えTCRは、免疫応答性細胞の内因性TRAC遺伝子座及び/又はTRBC遺伝子座に置かれた発現カセットから発現される。ある特定の実施形態では、組換えTCR発現カセットの設置(ノックイン)は、免疫応答性細胞において天然TCRアルファ鎖及び/又は天然TCRベータ鎖を含むTCRの内因性発現を破壊するか、又は消失させる(ノックアウト)。ある特定の実施形態では、組換えTCR発現カセットの設置は、免疫応答性細胞において組換えTCRと天然TCR a鎖及び/又は天然TCR b鎖の間のミスペアリングを予防するか、又は排除する。
【0198】
一部の実施形態では、抗原受容体(例えば、Hi-TCR)を典型的にはコードする導入遺伝子は、TRAC及び/又はTRBC遺伝子座のイントロン位置に置かれる。そのような実施形態では、gRNAは、国際公開第2021/183884号パンフレットの配列番号2~9のいずれか1つの配列(例えば、gRNA G526、gRNA G527、gRNA G528、gRNA G529、gRNA G530、gRNA G531、gRNA G532及びgRNA G533)に少なくとも85%(例えば、85%、87%、89%、91%、93%、95%、97%、99%又は100%)同一性を有する配列を有してもよい。一部の実施形態では、gRNAは、国際公開第2021/183884号パンフレットの配列番号17~28のいずれか1つの配列(例えば、gRNA G542、gRNA G543、gRNA G544、gRNA G545、gRNA G546、gRNA G547、gRNA G548、gRNA G549、gRNA G550、gRNA G551、gRNA G552及びgRNA G553)に少なくとも85%(例えば、85%、87%、89%、91%、93%、95%、97%、99%又は100%)同一性を有する配列を有してもよい。
【0199】
SUV遺伝子座操作
本発明は、本明細書に記載されるような免疫細胞、好ましくは、ヒトT細胞又はその前駆細胞中のSuv39H1遺伝子部位への発現カセットの標的化組込みも含み、ここで導入遺伝子(外因性核酸)は、遺伝子操作された抗原受容体、改変TCR(例えば、Hi-TCR)及び/又は任意の他の療法タンパク質を少なくともコードする。導入遺伝子は、エキソン1~6のいずれか1つの中、又はエキソン1の上流の非コード制御領域中、又はエキソン1と2との間、エキソン2と3との間、エキソン3と4との間、エキソン4と5との間及びエキソン5と6との間の任意のイントロン領域中に組み込まれてもよい。
【0200】
外因性タンパク質の組込み
外因性タンパク質(例えば、外因性細胞内又は細胞表面タンパク質(例えば、外因性Hi-tCR))のT細胞へのgRNA標的部位での組込みは、ゲノム切断(それぞれ、LHA及びRHA)及び周辺の外因性タンパク質(例えば、外因性細胞内又は細胞表面タンパク質(例えば、外因性Hi-TCR))挿入物に隣接する配列に相同を有する左側及び右側相同アームを含む、HDRTの共送達によって典型的には方向付けられてもよい。一部の実施形態では、外因性タンパク質(例えば、外因性細胞内又は細胞表面タンパク質(例えば、外因性Hi-TCR))は、典型的には、イントロン遺伝子座が標的とされた場合に、自己切断ペプチド(例えば、P2A、E2A、T2A又はF2A)に続いて内因性細胞表面タンパク質遺伝子座(例えば、TRAC遺伝子座)でインフレームに組み込まれる。このことは、内因性細胞表面タンパク質(例えば、内因性TCR)の発現を同時に妨害しながら、CAR又は外因性タンパク質(例えば、外因性細胞内又は細胞表面タンパク質(例えば、外因性Hi-TCR))挿入物の発現をもたらす。
【0201】
ノックイン効率は、HDRTの核濃度に直接相関し、例えば国際公開第2021/183884号パンフレットに規定される通り、例えば、組換えウイルスベクター又はssDNA/dsDNAハイブリッドCas9シャトルのいずれかを用いてHDRTを送達することによって増加される場合がある。一部の実施形態では、本明細書に記載の組成物中のHDRT及び/又はgRNAは、ウイルスベクターを使用するウイルス送達により細胞に導入されてもよい。例えば、ウイルスベクターは、ワクチニアウイルス、ポリオウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)(例えば、組換えAAV(rAAV))、SV40、単純ヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス等に基づいていてよい。レトロウイルスベクターは、マウス白血病ウイルス、脾臓壊死ウイルス、及びレトロウイルスに由来するベクター、例えば、ラウス肉腫ウイルス、ハーベイ肉腫ウイルス、トリ白血病ウイルス、レンチウイルス(例えば、組込み欠損レンチウイルス)、ヒト免疫不全ウイルス、骨髄増殖性肉腫ウイルス、乳房腫瘍ウイルス等に基づいていてよい。一部の実施形態では、レトロウイルスベクターは、組込み欠損ガンマレトロウイルスベクターであってもよい。他の有用な発現ベクターは、当業者に公知であり、多くは市販されている。続く例示的ベクターは、真核宿主細胞について例示の方法によって提供される:pXTl、pSG5、pSVK3、pBPV、pMSG及びpSVLSV40。細胞にウイルスベクターを導入するために使用できる技術の例としては、これらに限定されないが、ウイルス又はバクテリオファージ感染、トランスフェクション、原形質融合、リポフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリエチレンイミン(PEI)媒介トランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、リポソーム媒介トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ナノ粒子媒介核酸送達等が挙げられる。
【0202】
発現カセットは、単一シストロニック、マルチシストロニック発現カセットにおいて、単一のベクターの複数の発現カセットにおいて、又は複数のベクターにおいて補助的分子(例えば、サイトカイン)を用いて構築されてもよい。ポリシストロニック発現カセットを創出するエレメントの例としては、これらに限定されないが、種々のウイルス及び非ウイルス配列内リボソーム進入部位(IRES、例えば、FGF-l IRES、FGF-2 IRES、VEGF IRES、IGF-II IRES、NF-kB IRES、RUNX1 IRES、p53 IRES、A型肝炎IRES、C型肝炎IRES、ペスチウイルスIRES、アフトウイルスIRES、ピコルナウイルスIRES、ポリオウイルスIRES及び脳心筋炎ウイルスIRES)並びに切断可能リンカー(例えば、2Aペプチド、例えば、P2A、T2A、E2A及びF2Aペプチド)が挙げられる。
【0203】
一部の実施形態では、発現カセットは、導入遺伝子の発現が内因性プロモーターの制御下にあるような「プロモーターレス」である。一部の他の実施形態では、発現カセットは、導入遺伝子の発現を駆動するプロモーターを含む。例としては、CMV、EF-1a、hPGK及びRPBSAが挙げられる。CAGプロモーターは、lncRNAを過発現するために使用される。Yinら、Cell Stem Cell. 2015年5月7日;16巻(5号):504~16頁。活性化T細胞由来のシグナルによって駆動される誘導性プロモーターは、活性化T細胞(NFAT)プロモーターの核内因子を含む。RNAのT細胞発現のための他のプロモーターとしては、CIFTキメラプロモーター(サイトメガロウイルス(CMV)エンハンサーの一部、コアインターフェロンガンマ(IFN-γ)プロモーター、JeTプロモーター(国際公開第2002/012514号パンフレット)、及びTリンパ球向性ウイルス末端反復配列(TLTR)を含有する)、内因性TRACプロモーター又はTRBCプロモーターが挙げられる。誘導性、構成的又は組織特異的プロモーターは、企図される。
【0204】
ある特定の非限定的実施形態では、標的化ゲノム遺伝子座(例えば、SUV39H1遺伝子座)に組み込まれた発現カセットの発現は、ゲノム遺伝子座の内因性転写ターミネーターによって調節される。ある特定の実施形態では、標的化ゲノム遺伝子座に組み込まれた発現カセットの発現は、ゲノム遺伝子座に導入された改変された転写ターミネーターによって調節される。任意の標的化ゲノム編集法は、標的化ゲノム遺伝子座の転写ターミネーター領域を改変するために使用でき、それにより、本発明の免疫細胞における発現カセットの発現を変更する。ある特定の実施形態では、改変は、代替的転写ターミネーターを用いた内因性転写ターミネーターの置換え、又は標的化ゲノム遺伝子座の転写ターミネーター領域への代替的転写ターミネーターの挿入を含む。ある特定の実施形態では、代替的転写ターミネーターは、遺伝子の3'UTR領域又はポリA領域を含む。ある特定の実施形態では、代替的転写ターミネーターは内因性である。ある特定の実施形態では、代替的転写ターミネーターは外因性である。ある特定の実施形態では、代替的転写ターミネーターとしては、これらに限定されないが、TK転写ターミネーター、GCSF転写ターミネーター、TCRA転写ターミネーター、HBB転写ターミネーター、ウシ成長ホルモン転写ターミネーター、SV40転写ターミネーター及びP2Aエレメントが挙げられる。
【0205】
優先的には、SUV39H1活性の不活性化は、SUV39H1の実質的で検出可能な活性が細胞内に存在にしないことに結び付く。SUV39H1活性の不活性化は、SUV39H1遺伝子発現の抑制により、又は細胞のSUV39H1遺伝子の突然変異により、又は外因性阻害物質の発現、送達又はそれとの接触により達成することができる。例えば、抑制は、細胞におけるSUV39H1の発現を、抑制の非存在下で本方法により産生される同じ細胞と比べて、少なくとも50、60、70、80、90、又は95%低減させることができる。遺伝子破壊(突然変異)は、SUV39H1タンパク質の発現の低減、又は非機能的SUV39H1タンパク質の発現に結び付く場合もある。本開示による免疫細胞におけるSUV39H1の阻害は、恒久的及び不可逆的であってもよく、又は一過性であってもよく、又は可逆的であってもよい。好ましくは、SUV39H1阻害は、恒久的及び不可逆的である。細胞内でのSUV39H1の阻害は、下記に記載されるように、標的とされる患者に細胞を注射する前又は後で達成することができる。
【0206】
一部の実施形態では、本明細書に開示の遺伝子操作免疫細胞におけるSUV39H1活性の阻害は、SUV39H1の発現及び/又は活性を阻害又は遮断する少なくとも1つの作用剤、つまり「SUV39H1阻害物質」を送達又は発現することにより達成される。
【0207】
小分子SUV39H1阻害物質は、公知である、例えば、カエトシン(chaetocin)、ETP69又は他のエピジチオジオキソピペラジンアルカロイド等のメチルトランスフェラーゼ阻害剤のエピポリチオジオキソピペラジン(ETP)クラスの阻害剤。
【0208】
H3K9-ヒストンメチルトランスフェラーゼSUV39H1の1つの阻害剤は、Greiner D, Bonaldi T, Eskeland R, Roemer E, Imhof A. "Identification of a specific inhibitor of the histone methyltransferase SU(VAR)3-9". Nat Chem Biol. 2005年8月;l(3):143~5頁.;Weber, H. P.ら、"The molecular structure and absolute configuration of chaetocin", Acta Cryst, B28, 2945~2951頁 (1972年);Udagawa, S.ら、"The production of chaetoglobosins, sterigmatocystin, O-methylsterigmatocystin, and chaetocin by Chaetomium spp. and related fungi", Can. J. microbiol, 25巻, 170~177頁 (1979年);及びGardiner, D. M.ら、"The epipolythiodioxopiperazine (ETP) class of fungal toxins: distribution, mode of action, functions and biosynthesis", Microbiol, 151巻, 1021~1032頁 (2005年)によって記載される通りカエトシン(CAS 28097-03-2)である。カエトシンは、Sigma Aldrich社から市販されている。
【0209】
Suv39h1の阻害剤は、ETP69 (Rac-(3S,6S,7S,8aS)-6-(ベンゾ[d][1,3]ジオキソル-5-イル)-2,3,7-トリメチル-1,4-ジオキソヘキサヒドロ-6H-3,8a-エピジチオピロロ[1,2-a]ピラジン-7-カルボニトリル)、エピジチオジケトピペラジンアルカロイドカエトシンAのラセミ類似物、であってもよい(国際公開第2014066435号パンフレットを参照されたい、更に、Baumann M, Dieskau AP, Loertscher BMら、Tricyclic Analogues of Epidithiodioxopiperazine Alkaloids with Promising In Vitro and In Vivo Antitumor Activity. Chemical science (Royal Society of Chemistry:2010年). 2015年;6巻:4451~4457頁、及びSnigdha S, Prieto GA, Petrosyan Aら、H3K9me3 Inhibition Improves Memory, Promotes Spine Formation, and Increases BDNF Levels in the Aged Hippocampus. The Journal of Neuroscience. 2016年;36巻(12号):3611~3622頁も参照)。
【0210】
化合物の阻害活性は、Greiner D.ら、Nat Chem Biol. 2005年8月;l(3): 143~5頁又はEskeland, R.ら、Biochemistry 43巻、3740~3749頁(2004年)に記載の通り種々の方法を使用して決定されてもよい。
【0211】
細胞におけるSuv39h1の阻害は、患者又は対象での注射の前又は後に達成できる。一部の実施形態では、以前規定された阻害は、対象への細胞の投与の後にin vivoで実施される。代替的に、本明細書に規定されるSuv39h1阻害物質は、細胞を含有する組成物に含まれてよい。Suv39h1は、対象への細胞の投与の前、同時又は後に別々に投与されてもよい。
【0212】
一部の実施形態では、本発明によるSuv39h1の阻害は、既に記載された少なくとも1つの薬理学的阻害剤を含有する組成物と本発明による細胞とのインキュベーションで達成されてもよい。阻害剤は、in vitroでの抗腫瘍T細胞の拡大増殖の際に含まれ、それにより養子移入後のそれらの再構成、生存及び療法有効性を変更する。
【0213】
他の好適なSUV39H1阻害物質としては、例えば、SUV39H1の発現又は活性を遮断又は阻害するアプタマー等の、SUV39H1遺伝子又はその調節エレメントにハイブリダイズ又は結合する作用剤;SUV39H1に相補的なアンチセンス分子等の、転写又は翻訳を遮断する核酸分子、RNA干渉剤(低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、長鎖非コードRNA(lncRNA)、マイクロRNA(miRNA)、又はpiwiRNA(piRNA)等)、リボザイム、及びこれらの組合せが挙げられる。
【0214】
アンチセンスlncRNA、AF196970.3がヒト細胞においてSUV39H1に対するサイレンシング機能を有し、SUV39H1発現を阻害し、それにより細胞におけるSUV39H1タンパク質のレベルを低下させることが示された。AF196970.3は、SUV39H1の発現パターンと非常によく似た発現パターンを有する。これは、多数の異なる細胞型において検出され、SUV39H1と同様に内皮細胞、線維芽細胞及び筋細胞は最も高いレベルを示す。SUV39H1の遺伝子座は、X染色体上にある(位置p11.23、48695554~48709016、GRCh38.p13アセンブリ)。同じ遺伝子座では、逆平行方向で、アノテートされてない遺伝子ENSG00000232828が、48698963~48737163位に位置している。両遺伝子は、アノテートされたプロモーター領域を有する。配列番号55:lncRNA AF196970.3 RNA配列:
【0215】
【化1】
【0216】
は、ENSG00000232828から転写及びスプライシング後に発現される予測RNA配列である。配列番号1は、3つのエキソンを含む925塩基配列である。AF196970.3エキソン1は、長さ125塩基であり、SUV39H1遺伝子に顕著な相補性を有しない。AF196970.3エキソン2は、長さ600塩基であり、100%類似性を有してSUV39H1遺伝子のエキソン3の大部分に逆平行である。AF196970.3エキソン3は、長さ200塩基であり、SUV39G1遺伝子のエキソン2の一部(42.5%類似性)及び隣接イントロンの一部に逆平行である。細胞における使用のための本開示の阻害性ポリヌクレオチド及び本開示の方法は、AF196970.3(配列番号1)又はその断片若しくはバリアントを含む。
【0217】
また、好適なSUV39H1阻害物質としては、a)SUV39H1ゲノム核酸配列とハイブリダイズする遺伝子操作された天然に存在しない、クラスターを形成し規則正しい間隔を持つ短いパリンドロームリピート(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats、CRISPR)ガイドRNA、及び/又はb)CRISPRタンパク質(典型的には、II型Cas9タンパク質)をコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸を挙げることができ、任意選択で、細胞は、Cas9タンパク質又はガイドRNA及びCRISPRタンパク質を含むRNPを発現するためにトランスジェニックである。また、作用剤は、ジンクフィンガータンパク質(ZF)又はTALタンパク質であってもよい。Cas9タンパク質、TALタンパク質、及び/又はZFタンパク質は、リプレッサー及び/若しくは阻害物質に直接的に若しくは間接的に連結されているか、又は遺伝子編集活性を付与するヌクレアーゼに連結されている。
【0218】
また、好適なSUV39H1阻害物質としては、非機能的SUV39H1が挙げられる。一部の実施形態では、野生型SUV39H1遺伝子は不活性化されておらず、むしろSUV39H1阻害物質が細胞内で発現される。一部の実施形態では、阻害物質は、野生型SUV39H1の活性を阻害するレベルで非機能的遺伝子産物を発現するドミナントネガティブSUV39H1遺伝子である。これは、ドミナントネガティブSUV39H1の過剰発現を含んでいてもよい。
【0219】
免疫細胞におけるSUV39H1の不活性化、及び標的抗原に特異的に結合する抗原特異的受容体の導入は、同時に又は任意の順序で連続して実施することができる。
【0220】
また、本開示による細胞でのSUV39H1の不活性化は、欠失、例えば、遺伝子全体、エキソン、又は領域の欠失、及び/又は外因性配列による置換え等による、SUV39H1遺伝子の抑制又は破壊により、及び/又は遺伝子内、典型的には遺伝子のエキソン内の突然変異、例えばフレームシフト若しくはミスセンス突然変異により達成することができる。一部の実施形態では、破壊により、早期終止コドンが遺伝子に組み込まれることがもたらされ、SUV39H1タンパク質は発現されないか又は非機能性である。破壊は一般にDNAレベルで実施される。破壊は、一般に、恒久的、不可逆的、又は非一過性である。
【0221】
一部の実施形態では、遺伝子不活性化は、遺伝子に特異的に結合又はハイブリダイズするDNA結合タンパク質若しくはDNA結合性核酸、又はそれを含む複合体、化合物、若しくは組成物等の、DNA標的指向性分子等の遺伝子編集作用剤を使用して達成される。一部の実施形態では、DNA標的指向性分子は、DNA結合ドメイン、例えば、亜鉛フィンガータンパク質(ZFP)DNA結合ドメイン、転写活性化因子様タンパク質(TAL)、又はTALエフェクター(TALE)DNA結合ドメイン、クラスターを形成し規則正しい間隔を持つ短いパリンドロームリピート(CRISPR)DNA結合ドメイン、又はメガヌクレアーゼに由来するDNA結合ドメインを含む。
【0222】
ジンクフィンガー、TALE、及びCRISPR系結合ドメインは、所定のヌクレオチド配列に結合するように「遺伝子操作」することができる。
【0223】
一部の実施形態では、DNA標的指向性分子、複合体、又は組合せは、DNA結合性分子、及び遺伝子の抑制又は破壊を促進するためのエフェクタードメイン等の1つ又は複数の追加のドメインを含む。例えば、一部の実施形態では、遺伝子破壊は、DNA結合性タンパク質及び異種性調節ドメイン又はそれらの機能的断片を含む融合タンパク質により実施される。
【0224】
典型的には、追加のドメインは、ヌクレアーゼドメインである。したがって、一部の実施形態では、遺伝子破壊は、ヌクレアーゼ、及びヌクレアーゼ等の非特異的DNA切断分子と融合又は複合体化された配列特異的DNA結合ドメインで構成されるヌクレアーゼ含有複合体又は融合タンパク質等の、遺伝子操作されたタンパク質を使用して、遺伝子編集又はゲノム編集により促進される。
【0225】
こうした標的化キメラヌクレアーゼ又はヌクレアーゼ含有複合体は、標的化二本鎖切断又は一本鎖切断を誘導し、エラーが発生しやすい非相同末端結合(NHEJ)及び相同組換え修復(homology-directed repair、HDR)を含む細胞DNA修復機序を刺激することにより、正確な遺伝子改変を実施する。一部の実施形態では、ヌクレアーゼは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)等のエンドヌクレアーゼ、TALEヌクレアーゼ(TALEN)、CRISPR関連(Cas)タンパク質等のRNA誘導性エンドヌクレアーゼ(RGEN)、又はメガヌクレアーゼである。そのような系は当技術分野で周知である(例えば、以下の文献を参照されたい:米国特許第8,697,359号明細書、Sander及びJoung(2014年) Nat. Biotech. 32巻:347~355頁、Haleら(2009年) Cell 139巻:945~956頁、Karginov及びHannon(2010年) Mol. Cell 37巻:7頁、米国特許出願公開第2014/0087426号明細書及び米国特許出願公開第2012/0178169号明細書、Bochら(2011年) Nat. Biotech. 29巻: 135~136頁、Bochら(2009年) Science 326巻: 1509~1512頁、Moscou及びBogdanove (2009年) Science 326巻: 1501頁、Weberら(2011年) PLoS One 6:el9722、Liら(2011年) Nucl. Acids Res. 39巻:6315~6325頁、Zhangら(2011年) Nat. Biotech. 29巻:149~153頁、Millerら(2011年) Nat. Biotech. 29巻: 143~148頁、Linら(2014年) Nucl. Acids Res. 42:e47).そのような遺伝子戦略では、当技術分野で周知の方法に従って、構成的発現系又は誘導性発現系を使用することができる。
【0226】
ZFP及びZFN、TAL、TALE、及びTALEN
一部の実施形態では、DNA標的指向性分子は、エンドヌクレアーゼ等のエフェクタータンパク質に融合された、1つ又は複数の亜鉛フィンガータンパク質(ZFP)又は転写活性化因子様タンパク質(TAL)等のDNA結合性タンパク質を含む。例としては、ZFN、TALE、及びTALENが挙げられる。Lloydら、Frontiers in Immunology、4巻(221号)、1~7頁(2013年)を参照されたい。
【0227】
一部の実施形態では、DNA標的指向性分子は、配列特異的な様式でDNAに結合する1つ又は複数のジンクフィンガータンパク質(ZFP)又はそれらのドメインを含む。ZFP又はそのドメインは、亜鉛イオンの配位により構造が安定化される結合ドメイン内のアミノ酸配列の1つ又は複数のジンクフィンガー領域を介して、配列特異的な様式でDNAに結合する、より大きなタンパク質内のタンパク質又はドメインである。一般に、ZFPの配列特異性は、ジンクフィンガー認識ヘリックスの4つのヘリックス位置(-1、2、3、及び6)にてアミノ酸置換をなすことにより変更することができる。したがって、一部の実施形態では、ZFP又はZFP含有分子は、天然に存在せず、例えば、選択した標的部位に結合するように遺伝子操作されている。例えば、Beerliら(2002年) Nature Biotechnol. 20巻:135~141頁、Paboら(2001年) Ann. Rev. Biochem. 70巻:313~340頁、Isalanら(2001年) Nature Biotechnol. 19巻:656~660頁、Segalら(2001年) Curr. Opin. Biotechnol. 12巻:632~637頁、Chooら(2000年) Curr. Opin. Struct. Biol. 10巻:411~416頁を参照されたい。
【0228】
一部の実施形態では、DNA標的指向性分子は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を形成するようにDNA切断ドメインに融合されたジンクフィンガーDNA結合ドメインであるか、又はそれを含む。一部の実施形態では、融合タンパク質は、少なくとも1つのIIS型制限酵素に由来する切断ドメイン(又は切断ハーフドメイン)及び1つ又は複数のジンクフィンガー結合ドメインを含み、それらは、遺伝子操作されていてよく又はされていなくてもよい。一部の実施形態では、切断ドメインは、IIS型制限エンドヌクレアーゼFok Iに由来する。例えば、米国特許第5,356,802号明細書、米国特許第5,436,150号明細書、及び米国特許第5,487,994号明細書、並びにLiら(1992年) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89巻:4275~4279頁、Liら(1993年) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90巻:2764~2768頁、Kimら(1994年a) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91巻:883~887頁、Kimら(1994年b) J. Biol. Chem. 269巻:31,978~31,982頁を参照されたい。
【0229】
一部の態様では、ZFNは、例えば、標的遺伝子(つまり、SUV39H1)のコード領域の所定の部位で、二本鎖切断(DSB)を効率的に生成する。典型的な標的化遺伝子領域としては、エキソン、N末端領域をコードする領域、第1のエキソン、第2のエキソン、及びプロモーター又はエンハンサー領域が挙げられる。一部の実施形態では、ZFNの一過性発現は、遺伝子操作細胞における標的遺伝子の非常に効率的で恒久的な破壊を促進する。特に、一部の実施形態では、ZFNの送達は、50%を超える効率で遺伝子の恒久的な破壊をもたらす。多くの遺伝子特異的遺伝子操作ジンクフィンガーが市販されている。例えば、Sangamo Biosciences社(リッチモンド、カリフォルニア州、米国)は、Sigma-Aldrich社(セントルイス、ミズーリ州、米国)と共同で、研究者がジンクフィンガー構築及び検証をすべて迂回することを可能にする、ジンクフィンガー構築用のプラットフォーム(CompoZr)を開発し、何千個ものタンパク質に対して特異的に標的化されたジンクフィンガーを提供している。Gajら、Trends in Biotechnology、2013年、31巻(7号)、397~405頁。一部の実施形態では、市販のジンクフィンガーが使用されるか、又は特注設計される。(例えば、Sigma-Aldrich社カタログ番号CSTZFND、CSTZFN、CTI1-1KT、及びPZD0020を参照)。
【0230】
一部の実施形態では、DNA標的指向性分子は、転写活性化因子様タンパク質エフェクター(TALE)タンパク質にあるもの等の、天然に存在するか又は遺伝子操作された(天然に存在しない)転写活性化因子様タンパク質(TAL)DNA結合ドメインを含む。例えば、米国特許出願公開第20110301073号明細書を参照されたい。一部の実施形態では、分子は、TALEヌクレアーゼ(TALEN)等のDNA結合性エンドヌクレアーゼである。一部の態様では、TALENは、TALEに由来するDNA結合ドメイン、及び核酸標的配列を切断するためのヌクレアーゼ触媒ドメインを含む融合タンパク質である。一部の実施形態では、TALE DNA結合ドメインは、標的抗原及び/又は免疫抑制分子をコードする遺伝子内の標的配列に結合するように遺伝子操作されている。例えば、一部の態様では、TALE DNA結合ドメインは、CD38及び/又はA2AR等のアデノシン受容体を標的とすることができる。
【0231】
一部の実施形態では、TALENは、遺伝子中の標的配列を認識及び切断する。一部の態様では、DNAの切断は、二本鎖切断をもたらす。一部の態様では、切断は、相同組換え又は非相同末端結合(NHEJ)の速度を刺激する。一般に、NHEJは不完全な修復プロセスであり、切断部位のDNA配列に変化をもたらすことが多い。一部の態様では、修復機序は、直接再ライゲーション(Critchlow及びJackson、Trends Biochem Sc.1998年10月、23巻(10号):394~8頁)又はいわゆるマイクロホモロジー媒介性末端結合により、2つのDNA末端の残りのものを再結合することを含む。一部の実施形態では、NHEJによる修復は、小型の挿入又は欠失をもたらすため、遺伝子を破壊し、それにより遺伝子を抑制するために使用することができる。一部の実施形態では、改変は、少なくとも1つのヌクレオチドの置換、欠失、又は付加であってもよい。一部の態様では、切断誘導性突然変異誘発事象、つまり、NHEJ事象に続く突然変異誘発事象が生じた細胞は、当技術分野で周知の方法により特定及び/又は選択することができる。
【0232】
TALEリピートは、SUV39H1遺伝子を特異的に標的とするようにアセンブリすることができる。(Gajら、Trends in Biotechnology、2013年、31巻(7号) 、397~405頁)。18,740個のヒトタンパク質コード遺伝子を標的とするTALENのライブラリーが構築されている(Kimら、Nature Biotechnology. 31巻、251~258頁(2013年))。特注設計のTALEアレイは、Cellectis Bioresearch社(パリ、フランス)、Transposagen Biopharmaceuticals社(レキシントン、ケンタッキー州、米国)、及びLife Technologies社(グランドアイランド、ニューヨーク州、米国)から市販されている。具体的には、CD38を標的とするTALENが市販されている(Gencopoeia社、カタログ番号HTN222870-1、HTN222870-2、及びHTN222870-3を参照されたい。これらは、www.genecopoeia.com/product/search/detail.php?prt=26&cid=&key=HTN222870のワールドワイドウェブで入手可能である)。例示的な分子は、例えば、米国特許公開第2014/0120222号明細書、及び米国特許公開第2013/0315884号明細書に記載されている。
【0233】
一部の実施形態では、TALENは、1つ又は複数のプラスミドベクターによりコードされる導入遺伝子として導入される。一部の態様では、プラスミドベクターは、そのベクターを受け取った細胞の特定及び/又は選択を提供する選択マーカーを含んでいてもよい。
【0234】
RGEN(CRISPR/Cas系)
遺伝子抑制は、RNA誘導エンドヌクレアーゼ(RGEN)による破壊、又は別のRNA誘導エフェクター分子による他の形態の抑制等、1つ又は複数のDNA結合性核酸を使用して実施することできる。例えば、一部の実施形態では、遺伝子抑制は、クラスターを形成し規則正しい間隔を持つ短いパリンドロームリピート(CRISPR)及びCRISPR関連タンパク質を使用して実施することができる。Sander及びJoung、Nature Biotechnology、32巻(4号):347~355頁を参照されたい。
【0235】
一般に、「CRISPR系」は、CRISPR関連(「Cas」)遺伝子の発現、又はその活性の指図に関与する転写物及び他のエレメントを指す総称であり、Cas遺伝子をコードする配列、tracr(トランス活性化CRISPR)配列(例えば、tracrRNA又は活性な部分的tracrRNA)、tracr-mate配列(内因性CRISPR系の状況での「定方向反復」及びtracrRNAでプロセシングされた部分的定方向反復を包含する)、ガイド配列(内因性CRISPR系の状況では「スペーサー」とも呼ばれる)、及び/又はCRISPR遺伝子座からの他の配列及び転写物が挙げられる。
【0236】
典型的には、CRISPR/Casヌクレアーゼ又はCRISPR/Casヌクレアーゼ系は、DNAと配列特異的に結合する非コードRNA分子(ガイド)RNA、及びヌクレアーゼ機能性(例えば、2つのヌクレアーゼドメイン)を有するCRISPRタンパク質を含む。CRISPR系の1つ又は複数のエレメントは、Casヌクレアーゼ等のI型、II型、又はIII型CRISPR系に由来してもよい。好ましくは、CRISPRタンパク質は、Cas9等のCas酵素である。Cas酵素は、当分野で周知であり、例えば、化膿レンサ球菌(S. pyogenes)Cas9タンパク質のアミノ酸配列は、SwissProtデータベースの受入番号Q99ZW2に見出すことができる。一部の実施形態では、Casヌクレアーゼ及びgRNAが細胞内に導入される。一部の実施形態では、CRISPR系は、標的部位でDSBを誘導し、続いて本明細書で考察されるように破壊を起こす。他の実施形態では、「ニッカーゼ」とみなされるCas9バリアントを使用して、標的部位で一本鎖にニックを入れることができる。また、各々が、異なるgRNA標的指向性配列の対により指図される対のニッカーゼを使用して、例えば特異性を向上させることができる。更に他の実施形態では、触媒的に不活性なCas9を、転写リプレッサー等の異種性エフェクタードメインに融合させて、遺伝子発現に影響を及ぼすことができる。
【0237】
一般に、CRISPR系は、標的配列の部位におけるCRISPR複合体の形成を促進するエレメントにより特徴付けられる。典型的には、CRISPR複合体の形成の状況では、「標的配列」は、一般に、ガイド配列が相補性を有するように設計されている配列を指し、標的配列とガイド配列とのハイブリダイゼーションは、CRISPR複合体の形成を促進する。ハイブリダイゼーションを引き起こし、CRISPR複合体の形成を促進するのに十分な相補性があれば、完全な相補性は必ずしも必要ではない。標的配列は、DNA又はRNAポリヌクレオチド等の任意のポリヌクレオチドを含んでいてもよい。一般に、標的配列を含む標的化遺伝子座への組換えに使用することができる配列又は鋳型は、「編集鋳型」又は「編集ポリヌクレオチド」又は「編集配列」と呼ばれる。一部の態様では、外因性鋳型ポリヌクレオチドは、編集鋳型と呼ばれる場合がある。一部の態様では、組換えは相同組換えである。
【0238】
一部の実施形態では、CRISPR系の1つ又は複数のエレメントの発現を駆動する1つ又は複数のベクターは、CRISPR系のエレメントの発現が1つ又は複数の標的部位でのCRISPR複合体の形成を指図するように細胞内に導入される。例えば、Cas酵素、tracr-mate配列に連結されたガイド配列、及びtracr配列は各々、別々のベクターの別々の調節エレメントに作動可能に連結していてもよい。その代わりに、同じ又は異なる調節エレメントから発現されるエレメントの2つ又はそれよりも多くを単一のベクター内に組み合わせ、1つ又は複数の追加のベクターが、第1のベクターに含まれていないCRISPR系の任意の成分を提供してもよい。一部の実施形態では、単一のベクター内に組み合わされているCRISPR系エレメントは、任意の好適な方向に配置されていてもよい。一部の実施形態では、CRISPR酵素、ガイド配列、tracr-mate配列、及びtracr配列は、同じプロモーターに作動可能に連結しており、同じプロモーターから発現される。一部の実施形態では、ベクターは、Casタンパク質等のCRISPR酵素をコードする酵素コード配列に作動可能に連結した調節エレメントを含む。
【0239】
一部の実施形態では、ガイド配列と組み合わせた(及び任意選択で複合体化された)CRISPR酵素が細胞に送達される。典型的には、CRISPR/Cas9技術を使用して、遺伝子操作細胞においてSUV39H1の遺伝子発現をノックダウンすることができる。例えば、Cas9ヌクレアーゼ及びSUV39H1遺伝子に特異的なガイドRNAを、例えば、レンチウイルス送達ベクター、又はCas9分子及びガイドRNAを送達するための少なからぬ公知の方法若しくはビヒクルのいずれか等の、少なからぬ公知の送達方法若しくは細胞移入用ビヒクルのいずれかを使用して細胞内に導入することができる(以下も参照)。
【0240】
遺伝子破壊分子及び複合体をコードする核酸の送達
一部の実施形態では、DNA標的指向性分子、複合体、又は組合せをコードする核酸は、細胞に投与又は導入される。典型的には、ウイルス及び非ウイルスベースの遺伝子移入法を使用して、CRISPR、ZFP、ZFN、TALE、及び/又はTALEN系の成分をコードする核酸を、培養中の細胞に導入することができる。
【0241】
一部の実施形態では、ポリペプチドは、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを細胞内に導入した結果として、細胞にてin situで合成される。一部の態様では、ポリペプチドは、細胞の外で産生され、次いで細胞内に導入されてもよい。
【0242】
ポリヌクレオチド構築物を動物細胞内に導入するための方法は公知であり、非限定的な例としては、ポリヌクレオチド構築物が細胞のゲノム内に組み込まれる安定的形質転換法、ポリヌクレオチド構築物が細胞のゲノム内に組み込まれない一過性形質転換法、及びウイルスを媒介とする方法が挙げられる。
【0243】
一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、例えば、組換えウイルスベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス)、及びリポソーム等により細胞内に導入してもよい。一過性形質転換法としては、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、又は微粒子銃法が挙げられる。核酸は、発現ベクターの形態で投与される。好ましくは、発現ベクターは、レトロウイルス発現ベクター、アデノウイルス発現ベクター、DNAプラスミド発現ベクター、又はAAV発現ベクターである。
【0244】
核酸の非ウイルス送達法としては、リポフェクション、ヌクレオフェクション、マイクロインジェクション、遺伝子銃、ビロソーム、リポソーム、免疫リポソーム、ポリカチオン又は脂質核酸コンジュゲート、ネイキッドDNA、人工ビリオン、及び作用剤増強DNA取込みが挙げられる。リポフェクションは、例えば、米国特許第5,049,386号明細書、米国特許第4,946,787号明細書、及び米国特許第4,897,355号明細書)に記載されており、リポフェクション試薬は市販されている(例えば、Transfectam(商標)及びLipofectin(商標))。ポリヌクレオチドの効率的な受容体認識リポフェクションに好適なカチオン性及び中性脂質としては、Feigner、国際公開第91/17424号パンフレット、国際公開第91/16024号パンフレットのものが挙げられる。送達は、細胞に対してであってもよく(例えば、in vitro又はex vivo投与)又は標的組織に対してであってもよい(例えば、in vivo投与)。
【0245】
RNA又はDNAウイルスベース系としては、遺伝子移入用のレトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、及び単純ヘルペスウイルスベクターが挙げられる。
【0246】
遺伝子治療手順の総説については、以下の文献を参照されたい:Anderson、Science 256巻:808~813頁(1992年)、Nabel & Feigner、TIBTECH 11巻:211~217頁(1993年)、Mitani & Caskey、TIBTECH 11巻:162~166頁(1993年)、Dillon. TIBTECH 11巻:167~175頁(1993年)、Miller、Nature 357巻:455~460頁(1992)、Van Brunt、Biotechnology 6巻(10号):1149~1154頁(1988年)、Vigne、Restorative Neurology and Neuroscience 8巻:35~36頁(1995年)、Kremer & Perricaudet、British Medical Bulletin 51巻(1号):31~44頁(1995年)、Haddadaら、in Current Topics in Microbiology and Immunology Doerfler and Bohm (編)(1995年)、及びYuら、Gene Therapy 1巻:13~26頁(1994年).
【0247】
グルタチオン-5-トランスフェラーゼ(GST)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、クロランフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)ベータ-ガラクトシダーゼ、ベータ-グルクロニダーゼ、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、HcRed、DsRed、シアン蛍光タンパク質(CFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、及び青色蛍光タンパク質(BFP)を含む自己蛍光タンパク質を含むがこれらに限定されないレポーター遺伝子を細胞内に導入して、遺伝子産物発現の変更又は改変を測定するためのマーカーとしての役目を果たす遺伝子産物をコードすることができる。
【0248】
本明細書で規定される免疫応答性細胞(例えば、T細胞又はNKT細胞)の遺伝的改変は、実質的に均一な細胞組成物を組換えDNA構築物を用いて形質導入することによって達成されてもよい。一部の実施形態では、レトロウイルスベクター(ガンマレトロウイルス又はレンチウイルスのいずれか)は、DNA構築物の細胞への導入のために使用されてもよい。例えば、本明細書において開示されるHi-TCR等の抗原受容体をコードするポリヌクレオチドはレトロウイルスベクターにクローニングされてよく、発現はその内因性プロモーターから、レトロウイルス末端反復配列から、又は目的の標的細胞型のために特異的なプロモーターから駆動されてもよい。非ウイルスベクターも同様に使用されてよい。
【0249】
HI-TCRを含むための免疫応答性細胞の最初の遺伝子改変のために、レトロウイルスベクターは、形質導入のために一般に使用されるが、任意の他の好適なウイルスベクター又は非ウイルス送達系が使用されてよい。HI-TCRは、単一シストロニック発現カセット、マルチシストロニック発現カセット、単一のベクターの複数の発現カセットにおいて、又は複数のベクターにおいて補助的分子(例えば、サイトカイン)を含んで構築されてもよい。ポリシストロニック発現カセットを創出するエレメントの例としては、これらに限定されないが、種々のウイルス及び非ウイルス配列内リボソーム進入部位(IRES、例えば、FGF-l IRES、FGF-2 IRES、VEGF IRES、IGF-II IRES、NF-kB IRES、RUNX1 IRES、p53 IRES、A型肝炎IRES、C型肝炎IRES、ペスチウイルスIRES、アフトウイルスIRES、ピコルナウイルスIRES、ポリオウイルスIRES及び脳心筋炎ウイルスIRES)並びに切断可能リンカー(例えば、2Aペプチド、例えば、P2A、T2A、E2A及びF2Aペプチド)が挙げられる。カプシドタンパク質がヒト細胞に感染することに機能的であろう場合は、レトロウイルスベクターと適切なパッケージングラインとの組合せも好適である。種々の両種指向性ウイルス産生細胞株は、公知であり、これらに限定されないが、PA12(Millerら、(1985年) Mol. Cell. Biol. 5巻:431~437頁);PA317 (Millerら、(1986年) Mol. Cell. Biol. 6巻:2895~2902頁);及びCRIP(Danosら、(1988年) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85巻:6460~6464頁)が挙げられる。
【0250】
一部の実施形態では、AAV構築物は、特異的遺伝子座にある本明細書に記載されるような抗原受容体構築物(例えば、Hi-TCR構築物)の標的化送達のために使用できる。例えば、本出願による適合している配列は、Mansilla-Soto, J., Eyquem, J., Haubner, S.ら、HLA-independent T cell receptors for targeting tumors with low antigen density. Nat Med 28巻、345~352頁(2022年)に記載されている。
【0251】
非両種指向性粒子、例えば、VSVG、RD114又はGALVエンベロープ及び当技術分野において公知の任意の他のものを用いてシュードタイプ化された粒子も好適である。
【0252】
形質導入の可能な方法としては、例えば、Bregniら、(1992年) Blood 80巻: 1418~1422頁の方法による、細胞と産生細胞との直接共培養、或いは例えば、Xuら、(1994年) Exp. Hemat. 22巻:223~230頁;及びHughesら、(1992年) J. Clin. Invest. 89巻:1817頁の方法による、ウイルス上清単独又は適切な成長因子及びポリカチオンを含むか若しくは含まない濃縮したベクター保存物との培養、が挙げられる。
【0253】
他の形質導入ウイルスベクターは、免疫応答性細胞を改変するために使用できる。ある特定の実施形態では、選択されたベクターは、高い感染効率並びに安定した組込み及び発現を呈する(例えば、Cayouetteら、Human Gene Therapy 8巻:423~430頁、1997年;Kidoら、Current Eye Research 15巻:833~844頁、1996年;Bloomerら、Journal of Virology 71巻 :6641~6649頁、1997年;Naldiniら、Science 272巻:263~267頁、1996年;及びMiyoshiら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S. A. 94巻:10319頁、1997年を参照)。使用できる他のウイルスベクターとしては、例えば、アデノウイルス、レンチウイルス及びアデノ随伴(adena-associated)ウイルスベクター、ワクチニアウイルス、ウシパピローマウイルス又はヘルペスウイルス、例えば、エプスタイン・バーウイルスが挙げられる(例えば、Miller, Human Gene Therapy 15~14頁、1990年;Friedman, Science 244巻: 1275~1281頁、1989年;Eglitisら、BioTechniques 6巻:608~614頁、1988年;Tolstoshevら、Current Opinion in Biotechnology 1巻:55~61頁、1990年;Sharp, Lancet 337巻:1277~1278頁、1991年;Comettaら、Nucleic Acid Research and Molecular Biology 36巻:311~322頁、1989年;Anderson, Science 226巻:401~409頁、1984年;Moen, Blood Cells 17巻:407~416頁 1991年;Millerら、Biotechnology 7巻:980~990頁、1989年;Le Gal La Salleら、Science 259巻:988~990頁、1993年;及びJohnson, Chest l07巻:77S- 83S、1995年、のベクターを参照)。レトロウイルスベクターは、特に十分に開発されており、臨床の場で使用されている(Rosenbergら、N. Engl. J. Med 323巻:370頁、1990年;Andersonら、米国特許第 5,399,346号明細書)。
【0254】
非ウイルス性手法は、免疫応答性細胞の遺伝的改変のためにも使用できる。例えば、核酸分子は、リポフェクションの存在下で核酸を投与すること(Feignerら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S. A. 84巻:7413頁、1987年;Onoら、Neuroscience Letters 17巻:259頁、1990年;Brighamら、Am. J. Med. Sci. 298巻:278頁、1989年;Staubingerら、Methods in Enzymology 101巻 :512頁、1983年)、アシアロオロソムコイド-ポリリジンコンジュゲーション(Wuら、Journal of Biological Chemistry 263巻:14621頁、1988年;Wuら、Journal of Biological Chemistry 264巻:16985頁、1989年)によって、又は外科的条件下でのマイクロインジェクションによって(Wolffら、Science 247巻:1465頁、1990年)、免疫応答性細胞に導入できる。遺伝子移入のための他の非ウイルス性の手段としては、リン酸カルシウム、DEAEデキストラン、エレクトロポレーション法及び原形質融合を使用するin vitroでのトランスフェクションが挙げられる。リポソームは、細胞へのDNAの送達ために潜在的に有益である場合もある。対象の感染組織への正常遺伝子の移植は、正常な核酸を培養可能な細胞型に移入することによってex vivo(例えば、自己由来又は異種の一次細胞又はその後代)で達成することができ、その後、細胞(又はその子孫)は標的組織に注射されるか、又は全身に注射される。
【0255】
組換え受容体は、トランスポサーゼ又は標的化ヌクレアーゼ(例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ又はTALEヌクレアーゼ、CRISPR)に由来するか、又はそれを使用しても得ることができる。一過的発現は、RNAエレクトロポレーション法によって得ることができる。ある特定の実施形態では、組換え受容体は、トランスポゾンベースのベクターによって導入されてもよい。ある特定の実施形態では、トランスポゾンベースのベクターは、トランスポゾン(別名、転位因子)を含む。ある特定の実施形態では、トランスポゾンは、トランスポサーゼによって認識される場合がある。ある特定の実施形態では、トランスポサーゼはスリーピングビューティートランスポサーゼである。
【0256】
クラスターを形成し規則正しい間隔を持つ短いパリンドロームリピート(CRISPR)系は、原核細胞において発見されたゲノム編集ツールである。ゲノム編集に利用される場合、系は、Cas9(crRNAをそのガイドとして利用するDNAを改変することができるタンパク質)、CRISPR RNA(crRNA、宿主DNAの正しいセクションにガイドするためにCas9によって使用されるRNAを、Cas9と活性複合体を形成するtracrRNA(一般に、ヘアピンループ形態にある)に結合する領域と共に含有する)、トランス活性化crRNA(tracrRNA、crRNAに結合し、Cas9と活性複合体を形成する)、及びDNA修復鋳型(特異的DNA配列の挿入を可能にする細胞性修復工程をガイドするDNA)の任意選択のセクションを含む。CRISPR/Cas9は、標的細胞をトランスフェクトするためにプラスミドをしばしば使用する。crRNAは、これが、細胞において標的DNAを特定し、直接結合するためにCas9が使用する配列であることから、各適用のために設計される必要がある。修復鋳型を保有するCAR発現カセットも、切断のいずれかの側の配列と重複し、挿入配列をコードしなければならないことから、各適用のために設計される必要がある。複数のcrRNA及びtracrRNAは、単一のガイドRNA(sgRNA)を形成するように一緒にパッケージングされてもよい。このsgRNAは、Cas9遺伝子と一緒につながれてよく、細胞にトランスフェクトされるようにプラスミド中に作られてもよい。
【0257】
ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)は、ジンクフィンガーDNA結合ドメインをDNA切断ドメインと組み合わせることによって生成された人工制限酵素である。ジンクフィンガードメインは、ジンクフィンガーヌクレアーゼがゲノム内の所望の配列を標的にできるようにする特定のDNA配列を標的とするように遺伝子操作されてよい。個々のZFNのDNA結合ドメインは、複数の個別のジンクフィンガーリピートを典型的には含有し、複数の塩基対をそれぞれ認識できる。新規ジンクフィンガードメインを生成するための最も一般的な方法は、公知の特異性の小さなジンクフィンガー「モジュール」を組み合わせることである。ZFN中の最も一般的な切断ドメインは、II型制限エンドヌクレアーゼFoklに由来する非特異的切断ドメインである。内因性相同組換え(HR)機構及び相同性DNA鋳型を保有するCAR発現カセットを使用して、ZFNは、ゲノムにCAR発現カセットを挿入するために使用できる。標的化配列がZFNによって切断される場合、HR機構は、損傷した染色体と相同性DNA鋳型との間の相同を探し、次に染色体の2つの破壊された末端の間の鋳型の配列を複製し、それにより相同性DNA鋳型をゲノムに組み込む。
【0258】
転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)はDNAの特異的配列を切断するように遺伝子操作できる制限酵素である。TALEN系は、ZFNとほとんど同じ原理で作動する。それらは、転写活性化因子様エフェクターDNA結合ドメインとDNA切断ドメインとを組み合わせることによって生成される。転写活性化因子様エフェクター(TALE)は、特定のヌクレオチドを強く認識する2つの可変位置を含む33~34アミノ酸の反復モチーフから構成される。これらのTALEのアレイをアセンブリすることによって、TALE DNA結合ドメインは、所望のDNA配列に結合するように遺伝子操作されてよく、それによりゲノム中の特異的位置を切断するようにヌクレアーゼをガイドする。ポリヌクレオチド療法における使用のためのcDNA発現は、任意の好適なプロモーター(例えば、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)、サルウイルス40(SV40)又はメタロチオネインプロモーター)から方向付けられてもよく、任意の適切な哺乳動物調節エレメント若しくはイントロン(例えば、伸長因子laエンハンサー/プロモーター/イントロン構造)によって調節されてもよい。例えば、所望により、特定の細胞型における遺伝子発現を優先的に方向付けることが公知であるエンハンサーは、核酸の発現を方向付けるために使用できる。使用できるエンハンサーとしては、非限定的に、組織又は細胞特異的エンハンサーとして特徴付けられているものが挙げられる。代替的に、ゲノムクローンを療法構築物として使用する場合、制御は、同族の調節配列によって、又は所望により、上に記載される任意のプロモーター若しくは調節エレメントを含む異種性の供給源に由来する調節配列によって媒介されてもよい。
【0259】
得られる細胞は、未改変細胞についてのものと同様の条件下で成長されてよく、それにより改変細胞は、様々な目的のために拡大増殖され、使用されてよい。
【0260】
細胞調製
細胞の単離は、当分野で周知の技法による1つ又は複数の調製及び/又は非親和性ベース細胞分離ステップを含む。一部の例では、細胞を洗浄し、遠心分離し、及び/又は1つ又は複数の試薬の存在下でインキュベートして、例えば、不要な成分を除去し、所望の成分を富化し、特定の試薬に感受性である細胞を溶解又は除去する。一部の例では、細胞は、密度、付着特性、サイズ、特定の成分に対する感受性及び/又は耐性等の1つ又は複数の特性に基づいて分離される。
【0261】
一部の実施形態では、細胞調製物は、単離、インキュベーション、及び/又は遺伝子操作の前又は後のいずれかで、細胞を凍結、例えば凍結保存するためのステップを含む。一部の態様では、様々な既知の凍結用溶液及びパラメーターのいずれかを使用することができる。
【0262】
インキュベーションステップは、培養、インキュベーション、刺激、活性化、拡大増殖、及び/又は増殖を含んでいてもよい。
【0263】
一部の実施形態では、組成物又は細胞は、刺激条件又は刺激剤の存在下でインキュベートされる。そのような条件としては、集団内の細胞の増殖、拡大増殖、活性化、及び/又は生存を誘導し、抗原曝露を模倣し、及び/又は抗原特異的受容体の導入等の遺伝子操作のために細胞を初期刺激するように設計された条件が挙げられる。
【0264】
インキュベーション条件としては、特定の培地、温度、酸素含有量、二酸化炭素含有量、時間、作用剤、例えば、栄養素、アミノ酸、抗生物質、イオン、及び/又はサイトカイン、ケモカイン、抗原、結合パートナー、融合タンパク質、組換え可溶性受容体等の刺激因子、及び細胞を活性化するように設計された任意の他の作用剤の1つ又は複数を挙げることができる。
【0265】
一部の実施形態では、刺激条件又は作用剤は、TCR複合体の細胞内シグナル伝達ドメインを活性化することが可能な1つ又は複数の作用剤、例えばリガンドを含む。一部の態様では、作用剤は、T細胞においてTCR/CD3細胞内シグナル伝達カスケードをオンにするか又は開始させる。そのような作用剤としては、TCR成分及び/又は共刺激受容体、例えば、ビーズ等の固体支持体に結合されている抗CD3、抗CD28、及び/又は1つ若しくは複数のサイトカインに特異的なもの等の抗体を挙げることができる。任意選択で、拡大増殖法は、抗CD3及び/又は抗CD28抗体を培養培地に(例えば、少なくとも約0.5ng/mlの濃度で)添加するステップを更に含んでいてもよい。一部の実施形態では、刺激剤は、IL-2及び/又はIL-15を含み、例えば、IL-2濃度は少なくとも約10単位/mLである。
【0266】
一部の態様では、インキュベーションは、Riddellらの米国特許第6,040,177号明細書、Klebanoffら、J Immunother. 2012年、35巻(9号): 651~660頁、Terakuraら、Blood. 2012年、1巻:72~82頁、及び/又はWangら、J Immunother. 2012年、35巻(9号):689~701頁に記載のもの等の技法に準拠して実施される。
【0267】
一部の実施形態では、T細胞は、非分裂末梢血単核細胞(PBMC)等の培養開始組成物フィーダー細胞に添加し(例えば、得られる細胞集団が、拡大増殖しようとする初期集団中に、各Tリンパ球毎に少なくとも約5、10、20、又は40個、又はそれよりも多くのPBMCフィーダー細胞を含むように)、及び培養物をインキュベートする(例えば、T細胞数の拡大増殖に十分な時間にわたって)ことにより拡大増殖される。一部の態様では、非分裂フィーダー細胞は、ガンマ線照射されたPBMCフィーダー細胞を含んでいてもよい。一部の実施形態では、PBMCは、細胞分裂を防止するために、約3000~3600ラドの範囲のガンマ線で照射される。一部の態様では、フィーダー細胞は、T細胞の集団を添加する前に培地に添加される。
【0268】
一部の実施形態では、刺激条件は、ヒトTリンパ球の増殖に好適な温度、例えば、少なくとも約摂氏25度、一般に少なくとも約摂氏30度、及び一般に約摂氏37度を含む。任意選択で、インキュベーションは、非分裂EBV形質転換リンパ芽球様細胞(LCL)をフィーダー細胞として添加することを更に含んでいてもよい。LCLは、約6000~10,000ラドの範囲のガンマ線で照射されていてもよい。一部の態様では、LCLフィーダー細胞は、LCLフィーダー細胞の初期Tリンパ球に対する比が少なくとも約10:1である等、任意の好適な量で提供される。
【0269】
実施形態では、抗原特異的CD4+及び/又はCD8+ T細胞等の抗原特異的T細胞は、ナイーブ又は抗原特異的Tリンパ球を抗原で刺激することにより得られる。例えば、サイトメガロウイルス抗原に対する抗原特異的T細胞株又はクローンは、感染した対象からT細胞を単離し、同じ抗原を用いて細胞をin vitroで刺激することにより生成することができる。
【0270】
一部の態様では、本方法は、遺伝子操作された細胞又は遺伝子操作されている細胞の表面上の1つ又は複数のマーカーの発現を評価するステップを含む。一実施形態では、本方法は、例えば、フローサイトメトリー等の親和性ベースの検出法により、養子細胞療法で標的としようとしている1つ又は複数の標的抗原(例えば、抗原特異的受容体により認識される抗原)の表面発現を評価する工程を含む。
【0271】
細胞遺伝子操作のためのベクター及び方法
一部の態様では、遺伝子操作は、遺伝子破壊タンパク質又は核酸をコードする成分等の、細胞内に導入するための遺伝子操作された成分又は他の成分をコードする核酸を導入することを含む。
【0272】
一般に、CARを免疫細胞(T細胞等)内に遺伝子操作するには、細胞を培養して、形質導入及び拡大増殖を可能にする必要がある。形質導入には、様々な方法を使用することができるが、クローン的に拡大増殖し遺伝子操作細胞が持続するようにCAR発現の維持を可能にするには、安定的な遺伝子移入が必要である。
【0273】
一部の実施形態では、遺伝子移入は、最初に細胞成長、例えば、T細胞成長、増殖、及び/又は活性化を刺激し、続いて活性化細胞を形質導入し、臨床応用に十分な個数へと培養中で拡大増殖させることにより達成される。
【0274】
遺伝子操作された成分、例えば、抗原特異的受容体、例えばCARを導入するための種々の方法は周知であり、本提供の方法及び組成物と共に使用することができる。例示的な方法としては、ウイルス、例えば、レトロウイルス又はレンチウイルス、形質導入、トランスポゾン、及びエレクトロポレーションによることを含む、受容体をコードする核酸を移入するための方法が挙げられる。
【0275】
一部の実施形態では、組換え核酸は、例えば、サルウイルス40(SV40)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)に由来するベクター等の、組換え感染性ウイルス粒子を使用して細胞内に移入される。一部の実施形態では、組換え核酸は、ガンマレトロウイルスベクター等の、組換えレンチウイルスベクター又はレトロウイルスベクターを使用してT細胞内に移入される(例えば、Kosteら(2014年) Gene Therapy 2014年4月3日、Carlensら(2000年) Exp Hematol 28巻(10号):1137~46頁、Alonso-Caminoら(2013年) Mol Ther Nucl Acids 2巻、e93、Parkら、Trends Biotechnol. 2011年11月、29巻(11号):550~557頁を参照されたい)。
【0276】
一部の実施形態では、レトロウイルスベクター、例えば、モロニーネズミ白血病ウイルス(MoMLV)、骨髄増殖性肉腫ウイルス(MPSV)、ネズミ胚性幹細胞ウイルス(MESV)、ネズミ幹細胞ウイルス(MSCV)、脾臓フォーカス形成ウイルス(SFFV)、又はアデノ関連ウイルス(AAV)に由来するレトロウイルスベクターは、長い末端反復配列(LTR)を有する。ほとんどのレトロウイルスベクターは、マウスレトロウイルスに由来する。一部の実施形態では、レトロウイルスとしては、任意のトリ又は哺乳動物細胞源に由来するものが挙げられる。レトロウイルスは、典型的には、両種指向性であり、これは、ヒトを含む幾つかの種の宿主細胞に感染することが可能であることを意味する。一実施形態では、発現させようとする遺伝子により、レトロウイルスのgag、pol、及び/又はenv配列が置き換えられている。少なからぬ例示的なレトロウイルス系が記載されている(例えば、米国特許第5,219,740号明細書、米国特許第6,207,453号明細書、米国特許第5,219,740号明細書、Miller及びRosman (1989年) BioTechniques 7巻:980~990頁、Miller, A. D.(1990年) Human Gene Therapy 1巻:5~14頁、Scarpaら(1991年) Virology 180巻:849~852頁、Burnsら(1993年) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90巻:8033~8037頁、並びにBoris-Lawrie及びTemin(1993) Cur. Opin. Genet. Develop. 3巻:102~109頁)。
【0277】
レンチウイルス形質導入法も公知である。例示的な方法は、例えば、Wangら(2012年) J. Immunother. 35巻(9号):689~701頁;Cooperら(2003年) Blood. 101巻:1637~1644頁;Verhoeyenら(2009年) Methods Mol Biol. 506巻:97~114頁;及びCavalieriら(2003年) Blood. 102巻(2号):497~505頁に記載されている。
【0278】
一部の実施形態では、組換え核酸は、エレクトロポレーションによりT細胞内に移入される(例えば、Chicaybamら、(2013年) PLoS ONE 8巻(3号):e60298及びVan Tedelooら(2000年) Gene Therapy 7巻(16号):1431~1437頁を参照)。一部の実施形態では、組換え核酸は、転位によりT細胞内に移入される(例えば、Manuriら(2010年) Hum Gene Ther 21巻(4号):427~437頁;Sharmaら(2013年) Molec Ther Nucl Acids 2巻、e74;及びHuangら(2009年) Methods Mol Biol 506巻:115~126頁を参照)。免疫細胞に遺伝物質を導入し発現させるための他の方法としては、リン酸カルシウムトランスフェクション(例えば、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、ニューヨーク市、ニューヨーク州に記載されるような)、原形質融合、カチオン性リポソーム媒介性トランスフェクション、タングステン粒子促進性マイクロ粒子銃(Johnston、Nature、346巻:776~777頁(1990年))、及びリン酸ストロンチウムDNA共沈殿(Brashら、Mol. Cell Biol.、7巻:2031~2034頁(1987年))が挙げられる。
【0279】
遺伝子操作産物をコードする遺伝子操作核酸を移入するための他の手法及びベクターは、例えば、国際公開第2014055668号パンフレット及び米国特許第7,446,190号明細書に記載されているものである。本開示の主題は、抗原特異的免疫応答性細胞を産生するための方法を更に提供する。ある特定の実施形態では、方法は、免疫応答性細胞に本明細書に記載の組換えTCRをコードする核酸配列を導入することを含む。核酸配列は、ベクターに含まれてもよい。ある特定の実施形態では、組換えTCRの少なくとも1つの抗原結合鎖の発現カセットは、免疫応答性細胞の内因性遺伝子遺伝子座に位置付けられている。ある特定の実施形態では、組換えTCRの2本の抗原結合鎖の発現カセットは、免疫応答性細胞の内因性遺伝子遺伝子座に位置付けられており、ここで2本の抗原結合鎖は、二量体化することができる。内因性遺伝子遺伝子座は、CD3S遺伝子座、CD3s遺伝子座、CD247遺伝子座、B2M遺伝子座、TRAC遺伝子座、TRBC遺伝子座、TRDC遺伝子座及び/又はTRGC遺伝子座であってもよい。ある特定の実施形態では、内因性遺伝子遺伝子座は、TRAC遺伝子座又はTRBC遺伝子座である。ある特定の実施形態では、組換えTCRの発現カセットの配置は、免疫応答性細胞における天然TCR a鎖及び/又は天然TCR b鎖を含むTCRの内因性発現を破壊するか、又は消失させ、それにより、免疫応答性細胞における組換えTCRと天然TCR a鎖及び/又は天然TCR b鎖との間の誤対合を予防するか又は除く。ある特定の実施形態では、内因性遺伝子遺伝子座は、改変された転写ターミネーター領域を含む。ある特定の実施形態では、改変された転写ターミネーター領域は、TK転写ターミネーター、GCSF転写ターミネーター、TCRA転写ターミネーター、HBB転写ターミネーター、ウシ成長ホルモン転写ターミネーター、SV40転写ターミネーター及びP2Aエレメントからなる群から選択されるゲノムエレメントを含む。ある特定の実施形態では、細胞中の1つの内因性T細胞受容体遺伝子座が、組換えTCRの少なくとも1つの抗原結合鎖を発現するように改変される場合、細胞中の1つ又は複数の他の内因性T細胞受容体遺伝子座は、内因性TCR鎖の発現を排除するように改変される。
【0280】
ある特定の実施形態では、1つ又は複数の他の内因性T細胞受容体遺伝子座は、目的の遺伝子を発現するために更に改変される。ある特定の実施形態では、目的の遺伝子は、抗腫瘍サイトカイン、共刺激分子リガンド、トラッキング遺伝子又は自殺遺伝子である。ここで開示される主題は、本明細書に記載の組換えTCRをコードするヌクレオチド酸(nucleotide acid)、及び本明細書に記載の組換えTCRを含む核酸組成物を更に提供する。ある特定の実施形態では、核酸配列はベクターに含まれる。
【0281】
本開示の主題は、本明細書に記載の核酸組成物を含むベクターも提供する。本明細書に記載の組換えTCR、本明細書に記載の免疫応答性細胞、本明細書に記載の医薬組成物、本明細書に記載の核酸組成物又は本明細書に記載のベクターを含むキットが更に提供される。ある特定の実施形態では、キットは、新生物、病原体感染、自己免疫性障害又は同種移植を治療する及び/又は予防するための指示書を更に含む。
【0282】
組成物
また、本開示は、本明細書に記載されるような及び/又は本提供の方法により産生される細胞を含む組成物を含む。典型的には、上記組成物は、投与用の医薬組成物及び製剤であり、好ましくは、養子細胞療法用等の無菌組成物及び製剤である。
【0283】
本開示の医薬組成物は、一般に、本開示の少なくとも1つの遺伝子操作免疫細胞及び無菌の薬学的に許容される担体を含む。
【0284】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」という文言は、医薬品投与と適合性である生理食塩水、溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張剤、及び吸収遅延剤等を含む。補完的な活性化合物を組成物に更に組み込むことができる。一部の態様では、医薬組成物中の担体の選択は、部分的には、特定の遺伝子操作CAR又はTCR、CAR又はTCRを発現するベクター又は細胞により、並びにCARを発現するベクター又は宿主細胞を投与するために使用される特定の方法により決定される。したがって、様々な好適な製剤が存在する。例えば、医薬組成物は、保存剤を含んでいてもよい。好適な保存剤としては、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウム、及び塩化ベンザルコニウムを挙げることができる。一部の態様では、2つ又はそれよりも多くの保存剤の混合物が使用される。保存剤又はその混合物は、典型的には、全組成物の約0.0001~約2質量%の量で存在する。
【0285】
医薬組成物は、その意図されている投与経路と適合するように処方される。
【0286】
治療法
また、本開示は、養子細胞療法(特に養子T細胞療法)に、典型的にはそれを必要とする対象のがんの治療に、並びに感染性疾患及び自己免疫性、炎症性、又はアレルギー性疾患の治療に使用するための、以前に規定の細胞に関する。上記の「抗原」セクションに列挙されている疾患のいずれかの治療が企図される。
【0287】
免疫細胞、特にSUV39H1が不活性化されているT細胞又はNK細胞は、セントラルメモリー表現型の増強、養子移入後の生存及び持続性の増強、及び疲弊の低減を呈する。効率及び有効性の増加は、本明細書に記載の向上を示さないそのような細胞と比較してより低いレベルでのそれらの投与を可能にすることができる。したがって、SUV39H1が不活性化されており、任意選択で本明細書に記載の他の特徴のいずれかを有する(例えば、CARを発現する、及び/又はT細胞受容体(TCR)アルファ定常領域遺伝子が、CAR又はTCRをコードする核酸配列の挿入により不活性化されている、並びに/又はCARが、a)細胞外抗原結合ドメイン、b)膜貫通ドメイン、c)任意選択で1つ又は複数の共刺激ドメイン、並びにd)ITAM2及びITAM3が不活性化又は欠失されている及び/又はHLA-A遺伝子が不活性化又は欠失されている改変CD3ゼータ細胞内シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含む)T細胞又はNK細胞を、ある特定の用量で投与することができる。例えば、SUV39H1が不活性化されている免疫細胞(例えば、T細胞)は、約108個未満の細胞、約5×107個未満の細胞、約107個未満の細胞、約5×106個未満の細胞、約106個未満の細胞、約5×105個未満の細胞、又は約105個未満の細胞の用量で成体に投与することができる。小児患者の用量は、約100分の1であってもよい。代替的な実施形態では、本明細書に記載の免疫細胞(例えば、T細胞又はNK細胞)のいずれかを、105~109個の細胞、又は105~108個の細胞、又は106~108個の細胞の範囲の用量で患者に投与することができる。
【0288】
本開示の対象(つまり、患者)は、哺乳動物、典型的にはヒト等の霊長類である。一部の実施形態では、霊長類は、サル又は類人猿である。対象は雄であってもよく又は雌であってもよく、幼仔対象、若年対象、青年対象、成体対象、及び老齢対象を含む任意の好適な年齢であってもよい。一部の実施形態では、対象は、げっ歯動物等の非霊長類哺乳動物である。一部の例では、患者又は対象は、疾患の、養子細胞療法の、及び/又はサイトカイン放出症候群(CRS)等の毒性転帰を評価するための検証動物モデルである。本開示の一部の実施形態では、上記対象は、がんを有するか、がんを有するリスクがあるか、又はがんの寛解状態にある。
【0289】
本開示の細胞は、慢性感染性疾患等の慢性疾患を治療するために投与される場合、又は難治性の、再発の又は抵抗性のがんを治療するために投与される場合に特に有益である。
【0290】
一部の実施形態では、患者は、がん再発を呈しているか、又はがん再発を呈する可能性がある。一部の実施形態では、患者は、がん転移を呈しているか、又はがん転移を呈する可能性がある。一部の実施形態では、患者は、1つ又は複数の先行するがん療法の後にがん寛解状態の維持を達成していない。一部の実施形態では、患者は、1つ又は複数の先行するがん治療に抵抗性、又は非反応性であるがんを罹患している。一部の実施形態では、患者は、難治性がんを罹患している。一部の実施形態では、患者は、永続性がない細胞療法に応答を示す可能性が高い。一部の実施形態では、患者は、免疫チェックポイント療法に不適格であるか、又は免疫チェックポイント療法に応答しなかった。一部の実施形態では、患者は、高用量の化学療法を用いた治療に不適格である、及び/又は高い養子細胞療法用量を用いた治療に不適格である。
【0291】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示の改変TCRを含む免疫細胞は、表面抗原の発現レベルが低い腫瘍細胞を有する対象を治療するために使用できる。一部の状態では、抗原は、疾患の再発が理由で低密度で発現される、典型的には、ここで対象は、残存腫瘍細胞を生じる治療を受けた。ある特定の実施形態では、腫瘍細胞は、標的化抗原、典型的には、腫瘍抗原が低密度で発現される(例えば、既に規定されたe-抗原等)ことから、腫瘍細胞の表面に低密度の標的分子を有する。ある特定の実施形態では、細胞表面で低密度の標的分子は、細胞あたり約5,000分子未満、細胞あたり約4,000分子未満、細胞あたり約3,000分子未満、細胞あたり約2,000分子未満、細胞あたり約1,500分子未満、細胞あたり約1,000分子未満、細胞あたり約500分子未満、細胞あたり約200分子未満、細胞あたり約100分子未満の密度を有する。ある特定の実施形態では、細胞表面で低密度の標的分子は、細胞あたり約2,000分子未満の密度を有する。ある特定の実施形態では、細胞表面で低密度の標的分子は、細胞あたり約1,500分子未満の密度を有する。ある特定の実施形態では、細胞表面で低密度の標的分子は、細胞あたり約1,000分子未満の密度を有する。ある特定の実施形態では、細胞表面で低密度の標的分子は、細胞あたり約4,000分子~細胞あたり約2,000分子の間の、細胞あたり約2,000分子~細胞あたり約1,000分子の間の、細胞あたり約1,500分子~細胞あたり約1,000分子の間の、細胞あたり約2,000分子~細胞あたり約500分子の間の、細胞あたり約1,000分子~細胞あたり約200分子の間の、又は細胞あたり約1,000分子~細胞あたり約100分子の間の密度を有する。
【0292】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示のHI-TCRを含む免疫応答性細胞は、疾患が再発している対象を治療するために使用できる。典型的には、細胞は、本明細書で先に規定した組換えブースター配列(CCR)も含む。典型的にはそのような細胞は、Suv39を、特に、suv39h1を欠損している。ある特定の実施形態では、腫瘍細胞は、腫瘍細胞の表面上に低密度の腫瘍特異的抗原(例えば、CD19、CD22、CD70又は先に規定した任意のe抗原)を有する。
【0293】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるような抗原受容体(例えば、Hi T細胞抗原受容体)を発現する免疫細胞は、細胞あたり約6,000分子未満の標的抗原の中央値を有する患者の治療のために使用されてもよい。一部の実施形態では、抗原は、細胞あたり約5,000分子未満、約4,000分子未満、約3,000分子未満、約2,000分子未満、約1,000分子未満、又は約500分子未満の標的抗原の密度(典型的には中央値)で発現される。一部の実施形態では、抗原は、細胞あたり約2,000分子未満、例えば約1,800分子未満、約1,600分子未満、約1,400分子未満、約1,200分子未満、約1,000分子未満、約800分子未満、約600分子未満、約400分子未満、約200分子未満又は約100分子未満等の標的抗原の密度(典型的には、中央値)で発現される。一部の実施形態では、抗原は、細胞あたり約1,000分子未満、例えば、約900分子未満、約800分子未満、約700分子未満、約600分子未満、約500分子未満、約400分子未満、約300分子未満、約200分子未満又は約100分子未満の標的抗原の密度で発現される。一部の実施形態では、抗原は、細胞あたり約5,000~約100分子の標的抗原の、例えば、細胞あたり約5,000~約1,000分子、約4,000~約2,000分子、約3,000~約2,000分子、約4,000~約3,000分子、約3,000~約1,000分子、約2,000~約1,000分子、約1,000~約500分子、約500~約100分子等の標的抗原の密度範囲で発現される。細胞あたりの標的抗原密度の定量は、Jasper, G. A., Arun, I., Venzon, D., Kreitman, R. J., Wayne, A. S., Yuan, C. M., Marti, G. E., & Stetler-Stevenson, M. (2011年)、Variables affecting the quantitation of CD22 in neoplastic Bcells. Cytometry. Part B, Clinical cytometry、80巻(2号)、83~90頁に記載の通り達成されてよい。
【0294】
ある特定の実施形態では、疾患はCDl9+ALLである。ある特定の実施形態では、腫瘍細胞は、腫瘍細胞上に低密度のCD19を有する。本発明の治療方法、又は適用は、標的化される抗原が腫瘍細胞の少なくとも50%で低密度で発現され、特に、腫瘍細胞の50%が前記抗原を発現する患者に特に適合する。
【0295】
細胞を、ある特定の用量で投与することができる。例えば、SUV39H1が阻害されている免疫細胞(例えば、T細胞又はNK細胞)は、約108個未満の細胞、約5×107個未満の細胞、約107個未満の細胞、約5×106個未満の細胞、約106個未満の細胞、約5×105個未満の細胞、又は約105個未満の細胞の用量で成体に投与することができる。小児患者の用量は、約100分の1であってもよい。代替的な実施形態では、本明細書に記載の免疫細胞(例えば、T細胞)のいずれかを、約105~約109個の細胞、又は約105~約108個の細胞、又は約105~約107個の細胞、又は約106~約108個の細胞の範囲の用量で患者に投与することができる。
【0296】
がんは、固形がんであってもよく、又は血液、骨髄、及びリンパ系に影響を及ぼし、造血組織及びリンパ組織の腫瘍としても知られており、特に白血病及びリンパ腫を含むがん等の「液体腫瘍」であってもよい。液体腫瘍としては、例えば、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ性白血病(ALL)、及び慢性リンパ性白血病(CLL)(マントル細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)等の種々のリンパ腫、腺腫、扁平上皮癌、喉頭癌、胆嚢及び胆管がん、網膜芽細胞腫等の網膜のがんを含む)が挙げられる。
【0297】
固形がんとしては、特に、結腸、直腸、皮膚、子宮内膜、肺(非小細胞肺癌を含む)、子宮、骨(骨肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、線維肉腫、巨大細胞腫瘍、アダマンチノーマ、及び脊索腫等)、肝臓、腎臓、食道、胃、膀胱、膵臓、子宮頸部、脳(髄膜腫、神経膠芽細胞腫、低悪性度星状細胞腫、オリゴデンドロサイトーマ、下垂体腫瘍、シュワン腫、及び転移性脳がん等)、卵巣、乳房、頭頸部領域、精巣、前立腺、及び甲状腺からなる群から選択される器官の1つに影響を及ぼすがんが挙げられる。
【0298】
好ましくは、本開示によるがんは、上記に記載されるような、血液、骨髄、及びリンパ系に影響を及ぼすがんである。典型的には、がんは、多発性骨髄腫であるか又はそれに関連付けられる。
【0299】
一部の実施形態では、対象は、これらに限定されないが、ウイルス、レトロウイルス、細菌、及び原生動物感染症、免疫不全、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタインバーウイルス(EBV)、アデノウイルス、BKポリオーマウイルス等の感染性疾患又は状態を罹患しているか又はそのリスクがある。
【0300】
一部の実施形態では、疾患又は状態は、関節炎、例えば関節リウマチ(RA)等の自己免疫性又は炎症性疾患又は状態、I型糖尿病、全身性エリテマトーデス(SLE)、炎症性腸疾患、乾癬、強皮症、自己免疫性甲状腺疾患、グレイブス病、クローン病、多発性硬化症、喘息、及び/又は移植に関連付けられる疾患若しくは状態である。
【0301】
また、本開示は、治療方法、特に養子細胞療法、好ましくは養子T細胞療法であって、それを必要とする対象に、以前に記載されるような組成物を投与するステップを含む方法にも関する。
【0302】
一部の実施形態では、細胞又は組成物は、がん又は上記で言及されているような疾患のいずれか1つを有するか又はそのリスクがある対象等の対象に投与される。一部の態様では、本方法は、それにより、例えば、遺伝子操作細胞により認識される抗原を発現するがんの腫瘍負荷を軽減することにより、がんに関するもの等の疾患又は状態の1つ又は複数の症状を治療、例えば寛解させる。
【0303】
養子細胞療法用に細胞を投与するための方法は公知であり、本提供の方法及び組成物と共に使用することができる。例えば、養子T細胞療法の方法は、例えば、Gruenbergらの米国特許出願公開第2003/0170238号明細書、Rosenbergの米国特許第4,690,915号明細書、Rosenberg(2011年) Nat Rev Clin Oncol. 8巻(10号):577~85頁)に記載されている。例えば、Themeliら(2013年) Nat Biotechnol. 31巻(10号):928~933頁、Tsukaharaら(2013年) Biochem Biophys Res Commun 438巻(1号):84~9頁、Davilaら(2013年) PLoS ONE 8巻(4号):e61338を参照されたい。
【0304】
一部の実施形態では、細胞療法、例えば、養子細胞療法、例えば、養子T細胞療法は、自己移入により実施され、細胞は、細胞療法を受けようとする対象から又はそのような対象に由来する試料から単離及び/又はそうでなければ調製される。したがって、一部の態様では、細胞は、治療を必要とする対象、例えば患者に由来し、細胞は、単離及び処理後に同じ対象に投与される。
【0305】
一部の実施形態では、細胞療法、例えば、養子細胞療法、例えば、養子T細胞療法は、同種異系移入により実施され、細胞は、細胞療法を受けようとするか又は最終的に受ける対象以外の対象、例えば第1の対象から単離及び/又はそうでなければ調製される。そのような実施形態では、細胞は、次いで、同じ種の異なる対象、例えば第2の対象に投与される。一部の実施形態では、第1及び第2の対象は遺伝的に同一である。一部の実施形態では、第1及び第2の対象は遺伝的に類似している。一部の実施形態では、第2の対象は、第1の対象と同じHLAクラス又は上位タイプを発現する。一部の実施形態では、HLA一致は、免疫細胞が、内因性TCR及びHLAクラスI分子の発現を低減させるように改変されている場合、それほど重要ではない。
【0306】
それを必要とする対象への本開示による少なくとも1つの細胞の投与は、同時に又は任意の順序で連続してのいずれかで、1つ又は複数の追加の療法剤と組み合わせて行ってもよく、又は別の療法介入と共に行ってもよい。一部の状況では、細胞は、細胞集団が1つ又は複数の追加の療法剤の効果を増強するように又はその逆になるように、別の療法と時間的に十分に近接して共投与される。一部の実施形態では、細胞集団は、1つ又は複数の追加の療法剤の前に投与される。一部の実施形態では、細胞集団は、1つ又は複数の追加の療法剤の後で投与される。
【0307】
がん治療に関して、併用がん治療としては、これらに限定されないが、がん化学療法剤、細胞傷害剤、ホルモン、抗血管新生物質、放射性標識化合物、免疫療法、外科手術、凍結療法、及び/又は放射線療法を挙げることができる。
【0308】
従来のがん化学療法剤としては、アルキル化剤、代謝拮抗剤、アントラサイクリン、トポイソメラーゼ阻害剤、微小管阻害剤、及びB-raf酵素阻害剤が挙げられる。
【0309】
アルキル化剤としては、ナイトロジェンマスタード(メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、及びクロラムブシル等)、エチレンアミン及びメチレンアミン誘導体(アルトレタミン、チオテパ等)、スルホン酸アルキル(ブスルファン等)、ニトロソ尿素(カルムスチン、ロムスチン、エストラムスチン等)、トリアゼン(ダカルバジン、プロカルバジン、テモゾロミド等)、及び白金含有抗新生物剤(シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン等)が挙げられる。
【0310】
代謝拮抗剤としては、5-フルオロウラシル(5-FU)、6-メルカプトプリン(6-MP)、カペシタビン(Xeloda(登録商標))、シタラビン(Ara-C(登録商標))、フロクスウリジン、フルダラビン、ゲムシタビン(Gemzar(登録商標))、ヒドロキシ尿素、メトトレキサート、ペメトレキセド(Alimta(登録商標))が挙げられる。
【0311】
アントラサイクリンとしては、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン(登録商標))、エピルビシン、イダルビシンが挙げられる。他の抗腫瘍抗生物質としては、アクチノマイシン-D、ブレオマイシン、マイトマイシン-C、ミトキサントロンが挙げられる。
【0312】
トポイソメラーゼ阻害剤としては、トポテカン、イリノテカン(CPT-11)、エトポシド(VP-16)、テニポシド、又はミトキサントロンが挙げられる。
【0313】
微小管阻害剤としては、エストラムスチン、イクサベピロン、タキサン(パクリタキセル、ドセタキセル、及びカバジタキセル等)、及びビンカアルカロイド(ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ビンデシン、及びビンフルニン等)が挙げられる。
【0314】
B-raf酵素阻害剤としては、ベムラフェニブ(Zelboraf)、ダブラフェニブ(Tafinlar)、及びエンコラフェニブ(Braftovi)が挙げられる。
【0315】
免疫療法としては、これらに限定されないが、免疫チェックポイント調節物質(つまり、阻害剤及び/又はアゴニスト)、サイトカイン、免疫調節性モノクローナル抗体、がんワクチンが挙げられる。
【0316】
好ましくは、本開示による養子T細胞療法における細胞の投与は、免疫チェックポイント調節物質の投与と併用される。例としては、PD-1、CTLA4、LAG3、BTLA、OX2R、TIM-3、TIGIT、LAIR-1、PGE2受容体、及び/又はA2ARを含むEP2/4アデノシン受容体の阻害物質(例えば、特異的に結合し、活性を阻害する抗体)が挙げられる。好ましくは、免疫チェックポイント調節物質は、抗PD-1及び/又は抗PDL-1阻害物質(例えば、抗PD-1及び/又は抗PDL-1抗体)を含む。
【0317】
また、本開示は、対象のがん、感染性疾患若しくは状態、自己免疫疾患若しくは状態、又は炎症性疾患若しくは状態を治療するための医薬を製造するための、本明細書に記載されるような遺伝子操作免疫細胞を含む組成物の使用にも関する。
【実施例
【0318】
(実施例1)
ヒトCD8+ T細胞(SUV39H1ノックアウトT細胞)におけるSUV39H1の不活性化
活性化ヒトCD8+ T細胞又はその前駆細胞に、SUV39H1遺伝子(配列番号15)のエキソンを欠失の標的としたgRNAを含むCas9リボヌクレオタンパク質粒子(RNP)をエレクトロポレーションする。エレクトロポレーションの4日後にRT-qPCRによりSUV39H1発現の一貫した減少が観察され、これは、下の実施例1Bに示す通りノックアウトが成功したことを示す。
【0319】
SUV39H1KO T細胞のメモリー表現型を評価する。細胞をaCD3+aCD28ビーズを用いて1週間刺激し、次いでフローサイトメトリーによって分析する。セントラルメモリーT細胞マーカーCCR7、CD27及びCD62Lは、SUV39H1KO細胞における発現のレベルの増加を示した。セントラルメモリー細胞サブセットを構成するCCR7+CD45RO+CD27+CD62L+細胞の画分は、SUV39H1 KO細胞において増加している。持続性の増加及び疲弊低減を1週間に1回、4週間、細胞を刺激することによって評価する。SUV39H1KO細胞は、下記実施例2Dに示す通り、一連の刺激後に増殖の増加を示し続ける。
【0320】
(実施例1A)
一実験例では、2名の健康なドナーに由来するpan CD3+(ネガティブ単離)T細胞を0日目に急速に融解し、IL-7(450U/ml)、IL-15(60U/ml)及びTransAct(1:100)を補充したX-vivo T細胞培地中で活性化させた。活性化およそ24時間後(1日目)、T細胞を、「scr」と名付けられたスクランブルした(対照)gRNA、又は「SUV KO」と名付けられたSUV39H1遺伝子のエキソン2を標的とするSUV39H1 gRNAのいずれかを含有するCRISPR-Cas9リボヌクレオタンパク質粒子(RNP)を用いたエレクトロポレーション法に供した。スクランブルドgRNAと接触させたT細胞は、機能的SUV39H1を保持している一方で、SUV39H1-標的化gRNAと接触させたT細胞は不活性化SUV39H1を含む。次に細胞を下記実施例2Aに記載の通りの改変TCRを産生するようにベクターを用いて形質導入した。
【0321】
(実施例1B)
実施例1A及び2Aに従って調製したHIT T細胞におけるSUV39H1タンパク質枯渇をウエスタンブロットによって評価した。形質導入したT細胞に由来するタンパク質を凍結の前の拡大増殖の最終日に収集した。細胞をプロテアーゼ阻害剤を含むPBSを用いて洗浄し、SDS溶解緩衝液を用いて溶解し、Qiashredderカラムを通した。可溶化物をタンパク質について定量し、還元条件で4× Laemmli緩衝液中に再懸濁し、10%のタンパク質ゲルにおいて分離し、次いでニトロセルロース膜に移した。膜をブロックし、次いでSUV39H1-特異的一次抗体又はGAPDHローディング対照抗体と共に一晩インキュベートした。洗浄後、膜を対応するHRP-コンジュゲート二次抗体と共にインキュベートし、TBS-T中で数回洗浄し、製造者の説明書に従ったECL基質の添加により発色させた。
【0322】
図5は、SUV39H1-標的化gRNAを用いてエレクトロポレーションした細胞が、SUV39H1の効率的なノックダウンを示したことを例示する。SUV39H1標的化gRNAを用いてエレクトロポレーションしたHiT細胞は、スクランブルド対照gRNAを用いてエレクトロポレーションしたHiT細胞とは対照的に、SUV39H1タンパク質レベルの枯渇を示した(図5A)。スクランブルド対照(図5B、2名のドナーの平均)と比較して、SUV39H1タンパク質の平均90~95%の減少が、SUV39H1 KO T細胞(HiT又はHiTブースターのいずれかを用いて形質導入)において観察された。これらのデータは、HiT/HiTブースターT細胞におけるSUV39H1の効率的な遺伝子編集を示す。
【0323】
(実施例2)
改変TCRの導入
SUV39H1ノックアウトと同時に、若しくは連続的に、新規配列の組込みを促進するのに十分相同性の、隣接領域に相補的な相同アームを有する、図2Aの挿入物(VH-TRBC、VL)を含有するドナーウイルスベクターを用いて細胞を、例えば、TRACエキソン1(配列番号17)の隣に形質導入する。VH及びVLは、例えば、CD19に特異的に結合する抗体の抗原結合断片を含む。CRISPR-Cas9 RNPを使用して、Eyquemら、Nature 543巻:113号:117頁(2017年)に示されているように、CAR遺伝子をT細胞受容体α定常(TRAC)遺伝子座に導入し、内因性TCRの発現が著しく低減又はほぼ排除されたT細胞を得た。得られたT細胞は、内因性TRACプロモーターの制御下でCARを発現する。
【0324】
改変TCRを発現する細胞のパーセンテージを評価する、下記実施例2Bに示す通り、相当な数の細胞が改変TCRを発現する。内因性TCRの発現も評価し、低減している。
【0325】
改変TCRを発現するSUV39H1KO細胞の特性を、標的抗原を発現する細胞、例えば、CD19陽性Raji細胞又はCD19陽性NALM-6細胞のin vitroでの、及び/又はマウスにおけるin vivoでの死滅について評価する。
【0326】
産生されたT細胞は、TRAC遺伝子座への改変TCRのノックイン、及びSUV39H1の特異的欠失を両方とも示した。
【0327】
(実施例2A)
一実験例では、上記の通り調製した(1)機能的SUV39H1遺伝子、又は(2)不活性化SUV39H1遺伝子のいずれかを有するT細胞をメソセリン抗原に特異的なHI-TCRを発現するように更に改変した。第1ラウンドのエレクトロポレーション法の2日後に、T細胞に「scr」と記載されるスクランブルド(対照)gRNA又は「TRAC KO」と記載されるTRAC gRNA(TRAC遺伝子座を標的とする(Mansilla-Soto, J., Eyquem, J., Haubner, S.ら、HLA-independent T cell receptors for targeting tumors with low antigen density. Nat Med 28巻, 345~52頁 (2022年)、に記載されるエキソン1、のいずれかを含有する、CRISPR-Cas9リボヌクレオタンパク質粒子(RNP)を用いた第2ラウンドのエレクトロポレーション法を受けさせた。およそ24時間後(3日目)、T細胞を、(a)図2Aの挿入物(抗メソセリンAbのVHをコードする、TRBC、2A自己切断リンカー、抗メソセリンAbのVL及びTRACポリペプチドを再構成するために十分なエキソン配列、2A自己切断リンカー、ブースター配列(CD80))、「RV-66HiTブースター」又は「HiTブースター」と名付けられた、(b)ブースター配列(TRACを再構成するVH-TRBC-2A-VL-エキソン)を含まない図2Aの挿入物、「RV-66HiT」若しくは「HiT」と名付けられた、を含有するレトロウイルス粒子(ドナーウイルスベクター)を用いて形質導入したか、又は(c)レトロネクチンをコートした6ウェルプレートにスピノキュレーションによってそのままにした(非形質導入対照、「UT」)。4日目に、細胞を6ウェルG-Rex、IL-7(450U/ml)及びIL-15(60U/ml)を含む合計30mlのX-vivo T細胞培地中に移した。
【0328】
(実施例2B)
8日目に、細胞を組換えメソセリンタンパク質(FITC)及び形質導入マーカーLNGFR(gRV-66HiTに対する)又はCD80(gRV-66HiTブースターに対する)を用いて染色することによって形質導入効率について評価した。細胞を、パシフィックブルーげっ歯類抗ヒトCD3抗体を用いて染色することによってCD3の再構成についても評価した。
【0329】
HiT+細胞を組換えMSLNへの結合によって規定し、HiTについてLNGFR、又はHiTブースターについてCD80の発現を染色した(図3)。図3は、形質導入したT細胞がLNGFR(gRV-66HITについて)/CD80(gRV-66HITブースターについて)発現を示し、ヒトMSLN-Fc融合タンパク質に結合することを例示する。HiT構築物を用いて形質導入したSUV39H1 KO TRAC KO T細胞は、およそ42.3%のHiT+(2名のドナーの平均)であった一方で、Hitブースター構築物を用いて形質導入したものは、8日目に41.5%のHiT+であった。この形質導入効率は、SUV39H1 WT対応物と同等であった(本実験では、HiTについて55.4%及びHiTブースター(CD80)について49.2%の平均(図3)。
【0330】
図4Aに示す通り(上パネルのscr/scr対照と比較する非形質導入の中央パネル及び下パネル)、内因性TRAC遺伝子座の破壊が、細胞表面CD3発現における実質的な減少をもたらすと考え、HiT+ T細胞を規定する代替法を利用した。MSLN結合と共にCD3複合体発現の再構成を評価した。実際に、部分的CD3再構成と共にMSLNタンパク質への同時結合をHiT形質導入細胞において観察した。図4は、形質導入したT細胞がCD3複合体再構成及び組換えメソセリンへの表面結合を示したことを例示する。具体的には、HiT構築物を用いて形質導入したSUV39H1 KO TRAC KO T細胞は、およそ50.8%のHiT+(2名のドナーの平均)であった一方で、Hitブースター構築物(CD80)を用いて形質導入したものは、8日目にHiTブースターT細胞について51.4%であった。この形質導入効率は、SUV39H1 WT対応物(平均、HiTについて61%、及びHiTブースターについて58.9%)と同等であった(図4B)。
【0331】
(実施例2C)
細胞傷害活性
ルシフェラーゼベースのアッセイを抗MSLN HiT+細胞のMSLN+及びMSLN-標的細胞に対する細胞傷害性能力を評価するために使用した。標的細胞を、HiT+エフェクターT細胞を2:1から1:64のE:T比の範囲、2倍希釈で合計体積200uL中に含む96ウェルプレートに細胞1×104個/ウェルの密度で播種した。標的細胞死滅を、HiT T細胞の播種48時間後に評価した。両方のドナーに由来するHiT+ T細胞は、MSLN+ OVCAR3腫瘍細胞の溶解を媒介した(図6)。細胞傷害性はSUV39H1 KO HiT+ T細胞に用量依存性であり、顕著に向上した細胞傷害性機能を1:8、1:16及び1:32の低E:T比で示している。
【0332】
加えて、ブースターを含まないSUV39H1 KO HiT+細胞は、SUV39H1を含んでも含まなくてもHiTブースター+T細胞と同等の細胞傷害性能力を呈した。重要なことに、この細胞傷害性は、MSLN-株HEK293T細胞がHiT+細胞からの応答を誘導しないことから、標的発現の存在に特異的であった(SUV39H1KO又はWT、ブースターの存在又は非存在において)。注目すべきことに、このデータは、SUV39H1不活性化がキメラブースター受容体と同程度に免疫細胞細胞傷害性活性が向上させたことを示す。
【0333】
(実施例2D)
反復刺激アッセイ
T細胞増殖及び持続性を分析するために、SUV39H1 KO及び対照HiT+細胞をMSLN+標的細胞株を用いて、1:2のE:T比で刺激した。初回刺激の3日後、HiT-ブースター+細胞数をフローサイトメトリーによって、ビーズ及び抗LNGFR若しくはCD80特異的抗体を数えることによって計数した。形質導入したT細胞をフローサイトメトリーによる分析の前にCD4、CD8、CCR7、CD27及びCD45ROに対して特異的な抗体についても染色した。細胞を、標的細胞を除外するためにCD33を用いても染色した。次に、T細胞を同じ条件下で3~4日ごとに再刺激した。これらのステップを初回刺激後36日目まで繰り返した。SUV欠損HiT-ブースター細胞の持続性及び機能性を扱うために、WT及びSUV39H1 KO HiT-ブースターT細胞の両方を内因的にMSLN+標的系を発現するNomo-1標的細胞を用いた反復抗原曝露に曝露した。
【0334】
8日目に(図9A)、SUV39H1 WT HiT-ブースター細胞は、SUV39H1 KO HiT-ブースター細胞と比較してわずかに増加した拡大増殖を示した。しかし、19日目までに、SUV39H1 KO HiT-ブースター細胞は、SUV39H1 WT細胞よりも増殖し、22及び26日目等の後の時点で拡大増殖し続けていた。加えて、SUV39H1 WT HiT-ブースター細胞とは対照的に、SUV39H1 KO HiT-ブースター細胞は、36日目までMSLN+標的細胞増殖を抑制し続けた(図9B)。SUV39H1 KO HiT-ブースター細胞もCD27+ CD45RO+及びCCR7+CD45RO+メモリー細胞細胞の割合の増加を示し、セントラルメモリーHiT-ブースター+ T細胞集団の増加を示している(図9C及び図9D)。この増強されたメモリー表現型は、MSLN+標的細胞を用いた刺激の前(0日目)及び後(15及び22日目)の種々の時点で観察された。CD8+HiT-ブースター+細胞の持続を反復ラウンドの刺激にわたって追跡した。後の時点(26日目以降)で、SUV39H1 KO HiT-ブースター+細胞は、CD8/CD4比の増加を示し(図9E)、SUV39H1の枯渇でのCD8+HiT-ブースター+ T細胞の優先的持続を示唆している。
【0335】
無関係のドナーでの反復実験(図8)は、メモリー表現型の増強及びCD8+HiTブースター+細胞の持続と共にT細胞増殖及び標的死滅の増加において一貫した傾向を示した。
【0336】
図7は、wt(src gSUV) gRV-66HIT細胞と比較して、SUV39H1欠損gRV-66HIT細胞が、NOMO-1標的系を用いた反復抗原曝露でT細胞拡大増殖、持続、メモリー及び標的死滅能力の増加を示すことも例示する。
【0337】
gRV-66HiTを用いた、及びgRV-66HiTブースターを用いたこれらの結果を別のドナーについて再度確認した(図10)。
【0338】
合わせてこれらの結果は、SUV39H1KO HiT+細胞が(ブースター構築物の存在又は非存在下で)、それらのWT対応物よりも良い持続性、死滅及びメモリーを示すことを示している。
【0339】
(実施例3~4)
ランダム組込みのためのPSMA(mJ591 HIT)又はCD19(FMC63 HIT)を標的とするガンマレトロウイルス(gRV)HIT構築物の産生及び検証
2日目に細胞を単一ステップでKO SUV39H1及びTRACへのCRISPR/Cas9を使用するLonza nucleofectorを使用してエレクトロポレーションした。3日目にT細胞をFMC63 HIT、mJ591 HIT、FMC63 HIT+ブースター及びmJ591 HIT+ブースター(CD80_4-1BB)をコードするガンマレトロウイルスを用いて形質導入した。
【0340】
本明細書で使用するガンマレトロウイルス(gRV)HIT構築物の模式図を図11に示す。構築物Aは形質導入マーカーLNGFRを含む。構築物Bはブースター分子を含む。
【0341】
SUV39H1のウエスタンブロットは、FMC63-HiT+ブースター及びmJ591-HiT+ブースター(CD80_4-1BB)遺伝子操作T細胞の代表的な試料で有効なSUV-KO(図12を参照されたい)を確認した。ウエスタンブロット(図12C)は、48kDaのSUV39H1バンド(低いバンド、黒四角で強調)のノックアウトを確認している。
【0342】
T細胞をgRV-FMC63-HiT及びgRV-FMC63-HiT+ブースター構築物を用いて形質導入した(図13)。ドットプロットは、LNGFR又はブースター発現のいずれかに基づいてそれらそれぞれのウイルスを用いて形質導入した場合の、gRV-FMC63-HiT(左)及びgRV-FMC63-HiT+ブースター細胞を示す(図13A)。TRAC-KOの成功は、発現マーカーと比較した場合に、CD3の減少を伴って観察できる(図13B図4においてと同様のCD3+集団の低減)。
【0343】
FMC63 HIT構築物を発現するHIT T細胞は、組換えCD19タンパク質に特異的に結合する(図14を参照)。TRACKO/スクランブルド(SCR)及びTRACKO/SUVKO試料を組換えビオチン化CD19タンパク質とインキュベートし、ストレプトアビジン-A647を用いて染色した。gRV-FMC63-HiT及びgRV-FMC63-HiT+ブースターの両方は、それらそれぞれの発現マーカー(LNGFR及びブースター)との組合せで組換えCD19タンパク質に同様の結合を示した。
【0344】
T細胞をgRV-mJ591-HiT(左)及びgRV-mJ591-HiT+ブースター構築物(図15)を用いて形質導入した。(A)ドットプロットは、それらそれぞれのウイルスを用いて形質導入した場合のgRV-mJ591-HiT(左)及びgRV-mJ591-HiT+ブースター細胞をLNGFR又はブースター発現に基づいて示す。(B)TRAC-KOの成功を発現マーカーと比較した場合に、CD3の減少を伴って観察した(図4においてと同様のCD3+集団の低減)。
【0345】
mJ591-HiT T細胞は、組換えPSMAタンパク質に特異的に結合した(図16)。(A)TRACKO/スクランブルド(SCR)及び(B)TRACKO/SUVKO試料を組換えビオチン化PSMAタンパク質とインキュベートし、ストレプトアビジン-A647を用いて染色した。
【0346】
SUV-KO HiT試料は、動態死滅アッセイにおいてスクランブルド(SCR)対照と比較して死滅の増加を呈した。TRAC-KO-スクランブル及びTRAC-KO-SUV-KO又はgRV-FMC63-HiT+ブースター細胞をGFP+ LNCaP-19標的系と1:20のE:Tで96ウェルプレートにおいて共培養し、GFP検出のために7日間InCucyteに置いた。非形質導入T細胞を陰性対照として使用した(図17)。TRAC-KO-スクランブル及びTRAC-KO-SUV-KO(図18A)gRV-mJ591-HiT又は(図18B)gRV-mJ591-HiT+ブースター細胞をGFP+ LNCaP-19標的系と1:20のE:T比で96ウェルプレート中において共培養し、GFP検出のために7日間InCucyteに置いた。非形質導入T細胞を陰性対照として使用した。
【0347】
SUV-KO細胞は、動態死滅アッセイにおいて2回目の刺激後にスクランブルド(SCR)対照と比較して死滅の増加を示した(図19)。1回目の抗原刺激を既に受けたTRAC-KO-スクランブルド及びTRAC-KO-SUV-KO gRV-FMC63-HiT細胞を20μMフィルターを用いてろ過し、HiT+細胞の%を決定するためにFACS分析した。これらのgRV-FMC63-HiT+ブースター細胞をGFP+ LNCap-19標的細胞と2つの異なるE:T比:(A)1:5及び(B)1:10で96ウェルプレートにおいて共培養し、GFP検出のために7日間InCucyteに置いた。「標的細胞のみ」をこれらの実験についての陰性対照として使用した。
【0348】
TRAC-KO-SUV-KO gRV FMC63-HiT+ブースターT細胞は、スクランブルド(SCR)対照と比較して拡大増殖の増加を示した(図20)。TRAC-KO-スクランブル及びTRAC-KO-SUV-KO gRV-FMC63-HiT+ブースター細胞をGFP+LNCap-19標的細胞と示されたE:T比で96ウェルプレートにおいて共培養し、GFP検出のために7日間InCucyteに置いた。7日後、共培養物を細胞計数のためにFACS分析に供した。
【0349】
SUV-KO gRV HiT細胞は、製造後にスクランブルド(SCR)対照と比較して、メモリー関連プロファイルの向上、エフェクター様プロファイルの低下及び疲弊マーカー表現型の低下を呈した(図21)。(A)gRV TRAC-KO及びスクランブルド/SUV-KO FMC63-HiT+ブースター並びに(B)gRV mJ591-HiT+ブースターT細胞の初回T細胞活性化後15日目の表現型。細胞を以下のゲーティング戦略:(A)及び(B)lymphocyte+singlet+alive+CD4+/-CD8+/-Booster+CD45RO+、で表面マーカー発現について分析した。CCR7及びCD27発現を幹細胞性及び分解を確認するために適切に分析した。CM: セントラルメモリー、Ttm:移行性メモリー、及びEM:エフェクターメモリー。(C)及び(D)それぞれCD57及びTIM3についてlymphocyte+singlet+alive+CD4+/-CD8+/-Booster+
【0350】
SUV-KO gRV HiT細胞は、1回目の抗原刺激後にスクランブルド(SCR)対照と比較して、メモリー関連プロファイルの向上、エフェクター様プロファイルの低下及び疲弊マーカー表現型の低下を呈した(図22)。(A)gRV TRAC-KO及びスクランブルド/SUV-KO FMC63-HiT+ブースター並びに(B)gRV mJ591-HiT+ブースターを種々のE:T比でGFP+ LNCap-19標的系と共培養した。以下のゲーティング戦略:(A)及び(B)lymphocyte+singlet+alive+CD4+/-CD8+/-Booster+CD45RO+での表面マーカー発現についてのプレーティング7日後の分析。CCR7及びCD27発現を幹細胞性及び分解を確認するために適切に分析した。CM:セントラルメモリー、Ttm:移行性メモリー、及びEM:エフェクターメモリー。(C)及び(D)それぞれCD57及びTIM3についてlymphocyte+singlet+alive+CD4+/-CD8+/-Booster+
【0351】
SUV-KO gRV HiT細胞は、2回目の抗原刺激後にスクランブルド(SCR)対照と比較して、メモリー関連プロファイルの向上、エフェクター様プロファイルの低下及び疲弊マーカー表現型の低下を呈した(図23)。1回目の抗原刺激を既に受けたTRAC-KO-スクランブルド及びTRAC-KO-SUV-KO gRV-HiT+ブースター細胞を20μMフィルターを用いてろ過し、HiT+細胞の%を決定するためにFACS分析した。これらのgRV-HiT+ブースター細胞をGFP+ LNCap-19標的系と1:5(HIT T細胞1.5e3個及び標的細胞7.5e3個)のE:T比で96ウェルプレートにおいて共培養し、GFP検出のために7日間InCucyteに置いた。(A)及び(C)のグラフは、gRV FMC63-HiT+ブースター細胞を示し、(B)及び(D)のグラフは、gRV mJ591-HiT+ブースター細胞を示す。以下のゲーティング戦略:(A)及び(B)lymphocyte+singlet+alive+CD4+/-CD8+/-Booster+CD45RO+での表面マーカー発現についてのプレーティング7日後の分析。CCR7及びCD27発現を幹細胞性及び分解を確認するために適切に分析した。CM:セントラルメモリー、Ttm:移行性メモリー、及びEM:エフェクターメモリー。(C)及び(D)それぞれCD57及びTIM3についてlymphocyte+singlet+alive+CD4+/-CD8+/-Booster+)。
【0352】
(実施例5)
不活性化SUV39H1を含むTRAC-HIT細胞の生成
HIT細胞の生成のための別の手法は、TRAC遺伝子座へのノックインの手法を使用する。簡潔には、左側及び右側相同アームを含むアデノ随伴ウイルス(HIT-AAV)ベクター修復マトリクスを設計した(Mansilla-Sotoら、Nat Med 2022年2月;28巻(2号):345~352頁)。この標的化構築物(HIT-AAV)は、スプライス受容部位に続いて、TRACエキソン1に接続されたP2A切断ペプチド及びCD19特異的HIT遺伝子エレメント(VH-Cβ遺伝子に続いてP2A及びVL遺伝子)を含有し;すべてにTRAC遺伝子座に相同性の配列(左側及び右側相同アーム:LHA及びRHA)が隣接している。TRAC遺伝子座を標的とし、二重鎖切断を媒介するCas9リボヌクレオ粒子の存在下で、DNA修復機構は、HIT-AAVマトリクスを組み込む。組み込まれると、VH-Cβ及びVL-Cα発現は、内因性TCRαプロモーター及びポリAエレメントによって駆動され、一方内因性TCRα発現は破壊される(図24)。VH-Cβ及びVL-Cα鎖は、HITヘテロ二量体を形成するように会合し、これは細胞表面でのCD3発現によって確認される。手法は、他の遺伝子座、すなわちSUV39H1を標的とする追加的Cas9 RNPを使用することによって多重化できる(図24)。CD19を標的とし、SUV39H1を欠損しているTRAC-HIT細胞を2つの異なるドナーから生成した(図25A)。19-HIT-AAV修復マトリクスの存在下で、二重陽性CD3+TCRαβ+集団が見られた通り、再構成の成功を検出した。TRAC-19-HIT-SUVKO T細胞は、低レベルのSUV39H1タンパク質(図25B)及び低レベルのH3K9me3を有した(図25C)。
【0353】
したがって、SUV39H1(SUVKO)について十分(SCR)又は欠損のいずれかであるTRAC-19-HIT T細胞は、成功裏に生成され、次いで、将来の使用のために凍結保存した。
【0354】
(実施例6)
SUV39H1 KO HIT T細胞はin vitroでのメモリー表現型が増強されている
SUV39H1(SUVKO)について十分(SCR)又は欠損のいずれかであるTRAC-19-HIT Tを37℃、2時間、培養培地で融解した。次いで細胞を生存率及びHIT発現について試験した。細胞表面でのHIT発現を決定するために、ビオチン化CD19可溶性分子を使用した。SCR及びSUVKO T細胞の両方は、良好な生存率及び可溶性CD19との反応性を示した(図26A)。次いでTRAC-19-HIT T細胞を様々なエフェクター:標的細胞比(CD19反応性のパーセンテージによって決定したエフェクター)での10日間のNALM6細胞とのin vitro共培養アッセイにおいて使用した(図26B)。アッセイ終了後、TRAC-19-HIT細胞をフローサイトメトリーによって表現型を決定した。TRAC-19-HIT-SUVKO T細胞は、TRAC-19-HIT-SCR T細胞と比較してCD27+細胞のパーセンテージにおいて増加を示した(図26C)。
【0355】
したがって、SUV39H1不活性化は、TRAC-19-HIT細胞のメモリー表現型を増強する。
【0356】
(実施例7)
SUV39H1 KO HIT T細胞は、液体腫瘍をより良好に拒絶する。
様々なレベルの抗原でHIT T細胞抗腫瘍性有効性へのSUV39H1不活性化の効果を調査するために、NSGマウスでの急性リンパ性白血病(ALL)の異種モデルを使用した。簡潔には、メスNSGマウスに、CD19の野生型レベル(細胞あたり20000分子)(WT)又はCD19の低レベル(細胞あたり200分子)(LOW)のいずれかを発現するNALM6-Luc細胞5×105個をD0に尾静脈注射した(Mansilla-Sotoら、Nat Med 2022年2月;28巻(2号):345~352頁)。D3に、腫瘍負荷をXenogen IVIS Imaging System (PerkinElmer社)を使用する生物発光画像化によって測定した。取得した生物発光データをLiving Image software (PerkinElmer社)を使用して分析し、平均放射ラジアンス(光子/秒/cm2/sr)で表し、マウスを群に無作為化した。同日に、SUV39H1(SUVKO)について十分(SCR)又は欠損のいずれかであるTRAC-19-HIT T細胞を尾静脈注射した(図27A)。次に腫瘍負荷を1週間に1又は2回評価した。
【0357】
細胞5×105個の用量で、TRAC-19-HIT-SUVKO T細胞は、TRAC-19-HIT-SCR T細胞よりもNALM6-WT細胞を良好に拒絶し(図27B)、マウス生存を増加させた(図27C)。
【0358】
図28は、NALM6-LOW細胞に対するTRAC-19-HIT細胞5×105個の応答を示す。SUVKO細胞は、in vivoでNALM6-LOW細胞のわずかに強い拒絶を示した(図28B右パネル)。したがって、SUV39H1不活性化は、低い抗原密度でさえ、液体腫瘍に対するTRAC-19-HIT T細胞の抗腫瘍性機能を増強する。
【0359】
合わせて、本明細書で提供する結果は、SUV39H1欠失(例えば、Suv KO)が、CCR(ブースター)受容体の非存在下でさえ、Hi-TCR T細胞のin vivo持続性、死滅及びメモリー表現型を予想外に向上することを実証する。
【0360】
(実施例8)
不活性化SUV39H1を有し、ITAM活性が低下した細胞
CD3ゼータポリペプチドを、欠失のためにCD3ゼータ(配列番号7)のアミノ酸90~164をコードする遺伝子を標的とするCRISPR-Cas9 RNPを用いて、SUV39H1ノックアウトと同時に又は連続的に、ITAM2及びITAM3を欠損するように改変する。得られた細胞を、セントラルメモリー細胞表現型(CCR7+CD45RO+CD27+CD62L+)、連続刺激後の増殖、及び疲弊特質(TIM-3、PD-1、LAG-3発現)について評価する。1XXの付加は、細胞傷害性活性の更なる向上をもたらす。
【0361】
配列
配列番号1:第14番染色体上のヒト(Homo sapiens)T細胞受容体アルファデルタ遺伝子座(TCRA/TCRD)
配列番号2~3:第7番染色体上のヒトT細胞受容体ベータ遺伝子座(TRB)
配列番号4:TRACポリペプチド
配列番号5~6 TRBCポリペプチド
配列番号5:TRBC1
配列番号6:TRBC2
配列番号7 CD3ゼータポリペプチド、例えば、改変CD3ゼータポリペプチド
配列番号8~9:CD28
配列番号10~11:4-1BB
配列番号12:ICOS
配列番号13:OX40
配列番号14:CD80共刺激リガンド
配列番号15:ヒトSUV39H1遺伝子
配列番号16:SUV39H1ヒトタンパク質配列
配列番号17:TRACエキソン1
配列番号18:p95HER2細胞外ドメイン:
MPIWKFPDEEGACQPCPINCTHSCVDKDDKGCPAEQRASPLT.
配列番号19:例示的リンカー配列GGGGSGGGGSGGGGS
配列番号20:IL-2シグナル配列(ヒト)MYRMQLLSCIALSLALVTNS
配列番号21:IL-2シグナル配列(マウス)MYSMQLASCVTLTLVLLVNS
配列番号22 カッパリーダー配列(ヒト)METPAQLLFLLLLWLPDTT G
配列番号23 カッパリーダー配列(マウス)METDTLLLWVLLLWVPGSTG
配列番号24 CD8リーダー配列MALPVTALLLPLALLLHAARP
配列番号25 短縮型ヒトCD8シグナルペプチド:MALPVTALLLPLALLLHA
配列番号26 アルブミンシグナル配列:MKWVTFISLLFSSAYS
配列番号27:プロラクチンシグナル配列:MD SKGS SQKGSRLLLLLVV SNLLLCQGVV S
配列番号28:マウスTRBCヌクレオチド配列
【0362】
【化2】
【0363】
配列番号29:マウスTRBC aa配列
【0364】
【化3】
【0365】
配列番号30:マウスTRAC1ヌクレオチド配列
【0366】
【化4】
【0367】
配列番号31:マウスTRAC1 aa配列
【0368】
【化5】
【0369】
配列番号32:CD80-4-1BBブースターヌクレオチド配列
【0370】
【化6】
【0371】
配列番号33:CD80-4-1BBブースターaa配列
【0372】
【化7】
【0373】
TRAC遺伝子座におけるKIのためのAAV6 HITに利用される配列は本明細書に記載された:Mansilla-Sotoら、https://doi.org/10.1038/s41591-021-01621-1
配列番号34:SJ25C1ヌクレオチドVH
【0374】
【化8】
【0375】
配列番号35:SJ25C1ヌクレオチドVL
【0376】
【化9】
【0377】
配列番号36:SJ25C1 aa VH
【0378】
【化10】
【0379】
配列番号37:SJ25C1 aa VL
【0380】
【化11】
【0381】
gRV HITについての配列は下記の通り
配列番号38:FMC63ヌクレオチドVH
【0382】
【化12】
【0383】
配列番号39:FMC63ヌクレオチドVL
【0384】
【化13】
【0385】
配列番号40:FMC63 aa VH
【0386】
【化14】
【0387】
配列番号41:FMC63 aa VL
【0388】
【化15】
【0389】
配列番号42:mJ591ヌクレオチドVH
【0390】
【化16】
【0391】
配列番号43:mJ591ヌクレオチドVL
【0392】
【化17】
【0393】
配列番号44:mJ591 aa VH
【0394】
【化18】
【0395】
配列番号45:mJ591 aa VL
【0396】
【化19】
【0397】
配列番号46:TRACヌクレオチド
【0398】
【化20】
【0399】
配列番号47:TRACヌクレオチド
【0400】
【化21】
【0401】
配列番号48:TRAC(aa)
【0402】
【化22】
【0403】
配列番号49:TRBCヌクレオチド
【0404】
【化23】
【0405】
配列番号50:TRBC aa
【0406】
【化24】
【0407】
配列番号51:P2A(nt)
Ggctctggcgctaccaatttttccctcctcaaacaggctggagatgtcgaagagaaccccggacct
配列番号52:CD8アルファ(nt)
Atggctctcccagtgactgccctactgcttcccctagcgcttctcctgcatgcagccaggccg
配列番号53:CD80ブースター(nt)
【0408】
【化25】
【0409】
配列番号54:CD80ブースター(aa)
【0410】
【化26】
【0411】
配列番号55:lncRNA AF196970.3 cDNA配列
【0412】
【化27】
図1
図2-1】
図2-2】
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25-1】
図25-2】
図26-1】
図26-2】
図27-1】
図27-2】
図28
図29
図30
【配列表】
2025501272000001.xml
【国際調査報告】