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特表2025-501279フィッシャートロプシュ触媒システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-17
(54)【発明の名称】フィッシャートロプシュ触媒システム
(51)【国際特許分類】
   B01J 27/224 20060101AFI20250109BHJP
   B01J 32/00 20060101ALI20250109BHJP
   B01J 33/00 20060101ALI20250109BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20250109BHJP
   C10G 2/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B01J27/224 M
B01J32/00
B01J33/00 A
B01J37/02 301C
C10G2/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539759
(86)(22)【出願日】2022-12-29
(85)【翻訳文提出日】2024-08-28
(86)【国際出願番号】 US2022054299
(87)【国際公開番号】W WO2023129688
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】63/294,844
(32)【優先日】2021-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518329756
【氏名又は名称】ネクスセリス イノベーション ホールディングス, エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】NEXCERIS INNOVATION HOLDINGS, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・エム・シーボー
(72)【発明者】
【氏名】セルジオ・エイ・アイバニーズ
(72)【発明者】
【氏名】コーディ・ジェイ・ロックハート
(72)【発明者】
【氏名】アンナ・リー・トンコヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ワン
【テーマコード(参考)】
4G169
4H129
【Fターム(参考)】
4G169AA01
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA09
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA22C
4G169BA29C
4G169BB01A
4G169BB01B
4G169BC64A
4G169BC64B
4G169BC67A
4G169BC67B
4G169BD04A
4G169BD04B
4G169BD05A
4G169BD05B
4G169CC23
4G169DA06
4G169EA02X
4G169EA02Y
4G169EB14X
4G169EB14Y
4G169EB15X
4G169EB15Y
4G169EC02Y
4G169EC06Y
4G169EC14Y
4G169EC15Y
4G169EC25
4G169EC27
4G169EE01
4G169FA06
4G169FB14
4G169FB24
4G169FB30
4G169FB64
4G169FB77
4G169FB78
4G169FC05
4H129AA01
4H129BA12
4H129BB07
4H129BC44
4H129KA15
4H129KB02
4H129KB04
4H129KC03X
4H129KC03Y
4H129KC04X
4H129KC23Y
4H129KC25X
4H129KC25Y
4H129NA20
4H129NA21
4H129NA39
(57)【要約】
熱特性が改善され、ペレット上の高活性表面触媒コーティングにより、高い反応器温度でも高品質の炭化水素液体及びワックスを生成する新規なフィッシャートロプシュ(FT)触媒。この触媒は、高温での炭化水素及びワックスの形成の驚くべき増大、ならびにこれまで実証されているものよりもはるかに高い比触媒活性を示す。より一般的には、触媒支持体、触媒の製造方法、及びFT合成方法が記載されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3つの別個の層を含む触媒支持体であって、
前記触媒支持体は
Al、Si、C、及びOを含むコアと;
前記コアに隣接する、Al及びSi、C及びOを含む第1の層と;
前記第1の層に隣接する、Al、Si、C及びOを含む第2の層と;を備え、
ここで、前記第1の層は、前記第2の層よりも大きい多孔性を有し、前記コアのOの濃度は、前記第1の層よりも少なくとも2.5重量%少ないOであるか;または
Si、C、Al、及びOを含み、金属Al合金を少なくとも2容積%含むコアと;
Si、C、Al、及びOを含む前記コアに隣接する第1の層であって、1容積%以下の金属相(好ましくは、識別できない金属相)を含む前記第1の層と、
Si、C、Al、及びOを含む前記第1の層に隣接する第2の層であって、1容積%以下の金属相(好ましくは、識別できない金属相)を含む前記第2の層と、を備え、
前記第1の層は、前記第2の層よりも大きい多孔性を有し、前記コアのOの濃度は、前記第1の層よりも少なくとも2.5重量%少ないOである、
前記触媒支持体。
【請求項2】
前記第2の層の外側に配置されたAl及びOという外側保護層をさらに含み、前記保護アルミナ層が、前記コアの前記第2の層よりも少なくとも20%多孔性である、請求項1に記載の触媒支持体。
【請求項3】
酸化物粉末上に分散されたCo金属粒子が、Al及びOの前記外側の保護層上に沈着された層上に配置されている、請求項2に記載の支持体を含むフィッシャートロプシュ触媒であって、この構造は、前記Co触媒層を、前記外側保護層の上にスラリーとして沈着することによって得ることができる、前記フィッシャートロプシュ触媒。
【請求項4】
アルミニウムの外層が前記支持体の前記外側にスプレーコーティングされ、その後、これを酸化してアルミナ層を生成することができる、請求項1に記載の触媒。
【請求項5】
コア、前記第1の層、及び前記第2の層が、それぞれ、SiC及びAl23を含む、上記請求項のいずれか1項に記載の触媒支持体。
【請求項6】
表1.6.2のデータに対応する条件に従って測定した場合、1.0%以下(または0.50%以下または0.25%以下)の熱膨張を特徴とする、上記請求項のいずれか1項に記載の触媒支持体。
【請求項7】
フィッシャートロプシュ反応を行う方法であって、
COとH2との気体混合物を、少なくとも200℃の温度で熱伝導性触媒に通すことと;
前記熱伝導性触媒は、Al、Si、C、及びOを含むコアを含む触媒ペレットの外側に配置されたCo金属を含み、前記コアは、第1の多孔性と、前記コアを囲み前記コアに隣接する外側保護合金由来のコーティング層とを有し;前記合金由来のコーティングは、前記コアよりも高い多孔性を有し;前記合金由来のコーティングは、前記コアと前記Co金属との間に配置される、前記方法。
【請求項8】
前記熱伝導性触媒が、少なくとも0.7cm、好ましくは少なくとも5cmの内径を有する反応器内に配置されたペレットの層を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記Co金属が、Co及びReを含む、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
気体と液体を含む前記反応混合物が、前記粒子層を通って重力に関して下方に移動する、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
多孔性アルミナ層上に配置された金属粒子の形態のCo金属を含む外側触媒層を含み、前記外側触媒層の厚さが10~100μmまたは20~50μmである、上記の方法請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記コア及び前記合金コーティング層がコアペレットを規定し、前記コアペレットが、2と50W/m・Kとの間、または5と20W/m・Kとの間の熱伝導率を有する、上記の方法請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記温度が、210~280℃、または240~280℃、または260~280℃の範囲内で高い温度を有する、上記の方法請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
2:COの供給比が、1:2~3:1または1.6~2.0の範囲にある、上記の方法請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記気体混合物が、硫黄及び/またはアンモニアを1ppm以下に除去するように前処理される、上記の方法請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
反応混合物中の蒸気の分圧が、6barg以下に維持される、上記の方法請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記反応器内の圧力が、10~40bargの範囲内、または少なくとも20bargである、上記の方法請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記反応が、再生なしで500時間実行されるか;または1000もしくは2000時間ごとに再生される、上記の方法請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記反応が240℃以上で行われ、ワックスが生成される、上記の方法請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
メタン選択性が15%以下または10%以下である、上記の方法請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
表面から最も遠く、酸化アルミニウム、アルミニウム合金、及びSiCを含む10重量%のペレットを含む中心領域と、前記中心領域から最も遠い前記ペレットの容積に相当する10重量%のペレットを含む外側アルミナ領域とを備える前記ペレットであって、前記外側アルミナ領域が、酸化アルミニウム、SiCを含み、前記外側のアルミナ領域が、前記中心領域と比較して、少なくとも5%高い酸素濃度を含む、前記ペレット。
【請求項22】
前記中央アルミナ領域及び外側アルミナ領域が、触媒支持体の一部を画定し、前記ペレットの外側に配置された触媒層をさらに含む、請求項21に記載のペレット。
【請求項23】
請求項21~22のいずれか1項に記載のペレットであって、FT合成触媒コーティングを含み、メタン選択性≦15%、≦10%、≦8%、または≦6%で、1時間当たり触媒1グラム当たり少なくとも5、または少なくとも10、または少なくとも12、または少なくとも15gというCO変換によって特徴付けられ;前記特性評価は、チューブの内径ごとに約3の平均ペレット直径でチューブに充填した触媒ペレットと、合計約1グラムの活性触媒とを使用し、240℃に加熱し、H2及びCOをモル比2:1で、60と80%との間のCO変換率に設定された速度で、前記触媒を通過させて行われる、前記ペレット。
【請求項24】
請求項21~23のいずれか1項に記載のペレットであって、FT合成触媒コーティングを含み、かつ0.8より大きく、好ましくは0.84より大きく、より好ましくは0.85~0.95のアルファによって特徴付けられ得;前記特性評価は、チューブの内径ごとに約3の平均ペレット直径でチューブに充填した触媒ペレットと、合計約1グラムの活性触媒とを使用して、240℃に加熱し、H2及びCOをモル比2:1で、60と80%との間のCO変換率に設定された速度で前記触媒を通過させて行われる、前記ペレット。
【請求項25】
1~10mmの水力直径を有する、請求項21~24のいずれかに記載のペレット。
【請求項26】
触媒を製造する方法であって、
請求項1に記載の触媒コアを提供することと;
CoまたはRe;有機結合剤、及び可塑剤を含むスラリーで前記コアをコーティングすることと、を含む、前記方法。
【請求項27】
前記有機結合剤が、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、デンプン、ガム、ポリビニルブチラール、及びこれらの組合せからなる群より選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記可塑剤が、グリセロール、グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、及びこれらの組合せからなる群より選択される、請求項26または27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願:本出願は、2021年12月30日に出願の米国特許仮出願第63/294,844号の優先権の利益を主張するものである。
【0002】
政府の権利:本発明は、米国エネルギー省によって与えられた契約DE-SC0015800及びDE-SC0013114に基づいて政府の支援を受けてなされたものである。米国政府は、本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
序言
フィッシャートロプシュ(FT)化学は、主に石炭に由来するものとして、合成ガスから合成輸送燃料を製造するために1930年代に出現した。現在、世界はゼロ炭素まで炭素を減らした燃料の必要性を感じている。一酸化炭素(CO)及び水素(H2)を含むFT用の低炭素合成ガスまたは合成ガス原料は、熱分解、ガス化、または他の技術により変換された再生型非化石バイオマス源に由来するか、CO及び酸素を生成するための水素及び/または二酸化炭素の還元を行うための水の電気分解駆動の変換に由来するか、あるいはバイオガスまたは天然ガスから、部分酸化、水蒸気改質、または自己熱改質を含む合成ガスプロセスへの変換に由来し得る。
【0004】
フィッシャートロプシュは高度な発熱反応である。熱管理なしでは、反応は、熱暴走を回避するために生産性を低下させ、より低い温度で操作しなければならない。これらの折衷的な条件は、メタン、CO2、及び軽質炭化水素ガスの望ましくない副生成物の生成を低減させながら、好ましい液体炭化水素(ナフサ、軽油、またはジェット燃料など)及びワックスの生成に有利に働くように選択される。熱管理の問題に対処しようとするために、高度な反応器の設計が開発された。これらとしては、小型マイクロチャネル反応器、構造化触媒、及びDavy/Johnson Mattheyによって開発されたシリアルフローCANS間の熱除去が介在する、積層ラジアルフロー反応器CANSの小さな変換ステップに対応する「CANS」反応器設計が挙げられる。
【0005】
大型FT反応器は、熱を制御し、暴走を回避するために狭い操作ウインドウで作動するスラリー層または固定層反応器に基づいている。スラリー層の熱特性は改善されているが、実施に有用な経済性を実現するには大規模に構成する必要がある。最も複雑でなく低コストの反応器ハードウェアの概念は、単純な多管式固定層反応器である。この最も複雑でない反応器は、伝導性の低い充填層内での熱伝達によって制限され、それにより、反応器及び触媒生産性が低くなる。
【発明の概要】
【0006】
第1の態様では、本発明は、触媒支持体を提供し、これは、3つの別個の層(SEM及びEDS分析によって観察可能)を備え、かつ以下を含む: (1)Al、Si、C、及びOを含むコアと;前記コアに隣接する、Al及びSi、C、及びOを含む第1の層と;前記第1の層に隣接する第2の層であって、Al、Si、C、及びOを含む前記第2の層と(ここで前記第1の層は、前記第2の層よりも高い多孔性を有し、前記コアのOの濃度は、前記第1の層よりも少なくとも2.5重量%少ないOである);または(2) Si、C、Al、及びOを含み、金属Al合金を少なくとも2容積%含むコアと;Si、C、Al、及びOを含む前記コアに隣接する第1の層であって、1容積%以下の金属相(好ましくは、識別できない金属相)を含む第1の層と、Si、C、Al、及びOを含み、1容積%以下の金属相(好ましくは、識別できない金属相)を含む第1の層に隣接する第2の層(ここで前記第1の層は前記第2の層よりも高い多孔性を有し、前記コアのOの濃度は前記第1の層よりも少なくとも2.5重量%少ない)。Al、Si、C、及びOのこれらの重量比は、金属相の有無を含めて、SEM/EDSから確認することができる。
【0007】
本発明は、その態様のいずれにおいても、以下の特徴のうち1つまたは任意の組み合わせによってさらに特徴付けられ得る: コア及び各層は、Al、Si、C、及びOのそれぞれを10~50重量%で含み;前記コアが、32~41重量%のAl、30~39重量%のSi、3~13重量%のC、及び24~34重量%のOを含み;前記第1の層が、26~34重量%のAl、25~33重量%のSi、3~13重量%のC、及び37~45重量%のOを含み;前記第2の層が、25~36重量%のAl、25~34重量%のSi、3~13重量%のC、及び36~44重量%のOを含み;これらの比(コア:第1の層:第2の層)に従って定義されるか、または前記第1の層が、28~32重量%のAl、27~31重量%のSi、3~13重量%のC、及び39~43重量%のOを含み;前記第2の層は、27~34重量%のAl、27~32重量%のSi、3~13重量%のC、及び38~42重量%のOを含むか、あるいは代替として、これらの範囲に従って定義され、ここで
前記コアが、32.4%のAl、~30.6%のSi、~11.3%のC、及び ~25.7%のOであり;
前記コア第1の層が27.0%のAl、~26.2%のSi、~9.7%のC、及び~37.1%のOであり;
前記コア第2の層が27.5%のAl、~26.7%のSi、~9.9%のC、及び~36.0%のOであり;
前記触媒支持体は、前記第2の層の外側に配置されたAl及びOの外側保護層をさらに含み;前記保護アルミナ層は、前記コアの前記第2の層よりも少なくとも20%多孔性であり;フィッシャートロプシュ酵素は、支持体(本明細書に記載される)を含み、酸化物粉末上に分散されたCo金属粒子が、Al及びOの外側保護層上に沈着された層上に配置され(この構造は、Co触媒層を前記外側保護層の上にスラリーを沈着することによって得られる);前記第1の層が、100~1000マイクロメートル(μm)の厚さ、または250~750μmの厚さであり;前記第2の層が、500~2000μmの厚さ、または1000~1500μmの厚さであり、前記保護層は、25~150 μmの厚さ、または50~100μmの厚さであり、前記触媒層は、約5~200μmの厚さ、または約10~100μmの厚さであり、前記支持体の前記外側に、アルミニウムの外層がスプレーコーティングされ、その後、これを酸化して、アルミナ層を生成することができ、前記コア、前記第1の層、及び前記第2の層はそれぞれ、SiC及びAl23を含み、前記触媒支持体が、表1.6.2のデータに対応する条件に従って測定した場合、熱処理中の膨張が1.0%以下(または0.50%以下、または0.25%以下)であることによって特徴付けられる。
【0008】
支持体及び/または触媒は、組成及び/または物理的特性など、本明細書で提供される説明のいずれかによってさらに定義され得る。例えば、支持体または触媒は、本明細書に記載の測定条件を含み得る、本明細書に記載の特性のいずれかによって特徴付けられるか、または本明細書に記載される特性(SEM顕微鏡写真から測定可能な任意の特性を含む)のいずれかの±30%、±20%、または±10%以内として定義され得る。本発明はまた、支持体または触媒を備えるシステムを含み、これには、装置及び/または反応物、温度、及び/もしくは圧力などの任意の選択された反応条件(これらはさらに、±30%または±20%または±10%の任意の条件として定義され得る)を含む。例えば、触媒支持体は、表1.6.3のケース2から列挙される細孔特性の1つまたは任意の組み合わせを ±20%有することによって特徴付けられ得る。
【0009】
別の態様では、本発明は、フィッシャートロプシュ反応を行う方法を提供し、この方法は、COとH2の気体混合物を、少なくとも200℃の温度で熱伝導性ペレット触媒に通すこと(前記熱伝導性触媒は、第1の多孔性と前記コアを囲み前記コアに隣接する外側保護合金由来のコーティング層とを有する、Al、Si、C、及びOを含むコアを含む触媒ペレットの外側に配置されたCo金属を含む);ここで前記合金由来のコーティングは、前記コアよりも高い多孔性を有し、前記合金由来のコーティングは、前記コアと前記Co金属との間に配置される、ことを含む。
【0010】
本発明は、その態様のいずれにおいても、さらに、以下の特徴の1つまたは任意の組み合わせによって特徴付けることができる:ここで、熱伝導性触媒は、少なくとも0.7cm、好ましくは少なくとも5cmの内径を有する反応器に配置されたペレットの充填層を含み;ここで前記Co金属は、Co及び(または)Reを含み;ここで前記気体混合物は、前記粒子層を通って重力に関して下方に移動し;多孔性アルミナ層上に配置された金属粒子の形態の前記Co金属を含む外側触媒層を含み、前記外側触媒層の厚さは10~200μmの間、または20~50μmであり;ここでこのコア及び合金コーティング層がコアペレットを規定し、このコアペレットが、2~50W/m・K、または5~20W/m・Kの熱伝導率を有し;前記温度が、210~280℃、または240~280℃、または260~280℃の範囲内の高温であり;ここで、H2:COの供給比が、1:2~3:1または1.6~2.0の範囲であり、前記気体混合物が、硫黄及び/またはアンモニアを1ppm以下まで除去するように前処理されており;反応混合物中の水蒸気の分圧が、6barg以下に維持され;前記反応器内の圧力は、10~40bargの範囲内、または少なくとも20bargであり、前記反応が、再生なしで500時間行われ、この触媒は、反応中、1000時間または2000時間以上ごとに水素と再生され;前記反応が240℃以上で行われ、ワックスが周囲条件で液体である他の炭化水素とともに生成され;前記メタン選択性が15%以下または10%以下である。
【0011】
別の態様では、本発明は、表面から最も遠く、酸化アルミニウム、アルミニウム合金、及びSiCを含むペレットの10重量%を含む中心領域と、前記中心領域から最も遠い前記ペレットの容積に相当するペレットの10重量%を含む外側アルミナ領域とを備えるペレットであって、前記外側アルミナ領域が、酸化アルミニウム、SiCを含み、前記外側のアルミナ領域は、前記ペレットの前記中心領域と比較して、少なくとも5%高い酸素濃度を含む、ペレットを提供する。酸素濃度は、好ましくは電子分散型X線分光法によって測定される。ペレットは、本発明の態様のいずれかに記載の触媒支持体を含み得る;または別個の層を有しないこと以外は別の本発明の態様のいずれかに記載の触媒支持体を含み得る(例えば、中央領域から選択された距離によって画定される層、または中央領域から選択された距離によって画定される層による連続的もしくは段階的な勾配を有するペレット)。いくつかの実施形態では、中央アルミナ領域及び外側アルミナ領域は、触媒支持体の一部を画定し、ペレットの外側に配置された触媒層をさらに含む。
【0012】
本発明のシステムは、一酸化炭素及び水素を含む供給組成を含む、フィッシャートロプシュ触媒を含み得る。本発明は、本明細書に記載の触媒を使用したフィッシャートロプシュの方法を含む。
【0013】
さらなる態様では、本発明は、触媒を製造する方法であって、本明細書に記載されるタイプの触媒コアを提供することと、前記コアを、Co及び/またはRe;有機結合剤、及び可塑剤を含むスラリーでコーティングすることと、を含む。好ましくは、有機結合剤は、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、デンプン、ガム、ポリビニルブチラール、及びこれらの組合せからなる群より選択される。好ましくは、この可塑剤は、グリセロール、グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、及びこれらの組合せからなる群より選択される。
【0014】
別の態様では、本発明は、表面から最も遠く、酸化アルミニウム、アルミニウム合金、及びSiCを含む10重量%のペレットを含む中心領域と、前記中心領域から最も遠い前記ペレットの容積に相当する10重量%のペレットを含む外側アルミナ領域とを備えるペレット組成物であって、前記外側アルミナ領域が、酸化アルミニウム、SiCを含み、前記外側のアルミナ領域が、前記中心領域と比較して、少なくとも5%高い酸素濃度を含む、ペレット組成物を提供する。
【0015】
好ましくは、中央アルミナ領域及び外側アルミナ領域は、触媒支持体の一部を画定し、ペレットの外側に配置された触媒層をさらに含む。ペレット組成物は、FT合成触媒コーティングを含み得、メタン選択性≦15%、≦10%、≦8%、または≦6%で、1時間当たり触媒1グラム当たり少なくとも5、または少なくとも10、または少なくとも12、または少なくとも15gのCOが変換されることによって特徴付けられ、この特性評価は、チューブの内径ごとに約3の平均ペレット直径でチューブに充填した触媒ペレットと、合計約1グラムの活性触媒とを使用し、240℃に加熱し、H2及びCOをモル比2:1で、実施例20の活性試験で記載したように、60~80%のCO変換に設定された比率で、触媒を通過させて行われる。ペレット組成物は、FT合成触媒コーティングを含み得、0.8より大きく、好ましくは0.84より大きく、より好ましくは0.85~0.95のαによって特徴付けられ得;この特性評価は、チューブの内径ごとに約3の平均ペレット直径でチューブに充填した触媒ペレットと、合計約1グラムの活性触媒とを使用して、240℃に加熱し、H2 及びCOをモル比2:1で、実施例20の活性試験で記載したように、60~80%のCO変換に設定された比率で、触媒を通過させて行った。ペレットは、約1~10mmの水力直径を有し得る。
【0016】
本発明はまた、2gCO/gcat/h超もしくは5~30g/gcat/hのCO変換;及び/または240℃以上の反応温度でalpha>0.8により特徴付けられる触媒またはFT法を含む。FT反応に加えて、本発明は、メタノール、ジメチルエーテルの発熱生成、エチレンの酸化、吸熱性水蒸気改質反応、乾式改質反応などを含む他の高熱反応にも適用可能である。
【0017】
発明概念は、本明細書に記載される任意の支持体、触媒、中間体、合成方法、FT反応、及び/またはシステム等の反応を行う方法(組成物、条件、及び/または装置の組み合わせを含むように定義され得る)を含む。
本発明の様々な態様は、「含む(comprising)」という用語を使用して説明される;しかしながら、より狭い実施形態では、本発明は、代替的に、「から本質的になる(consisting essentially of)」またはより狭義には「からなる(consisting of)」という用語を使用して説明され得る。
【0018】
用語集:
「活性触媒」とは、活性触媒システムの一部とみなされ、実質的に高密度の熱伝導性ペレット上の薄膜コーティングとして塗布される高表面積の支持体上/高表面積支持体中に配置された金属を含む触媒を意味する。活性触媒の厚さは約2~200ミクロンの範囲であり、好ましい平均厚さは約10~100ミクロンである。触媒のグラムに基づく活性計算では、下層ペレットの重量を除き、金属及び高表面積支持体を含むコーティング全体が活性触媒とみなされる。
【0019】
「ペレット」とは、典型的には、造粒及び一軸圧縮または静的圧縮のプロセスによって製造される、固体粒子(金属、セラミック、または有機)の成形体として定義される。成形体の形状は、反応器設計の必要性を満たすために広範囲に変動し得る。この用語は、有機材料を揮発させ、残りの粒子の結合構造を形成するように熱処理された同じ成形体にも使用され得る。好ましくは、ペレットの熱伝導率は、約2W/m-Kより大きい。
【0020】
本明細書の全体を通じて、Al-Si合金とは、一般に、少なくとも約5%のSi、典型的には約7~約15%のSiの範囲、好ましくは10~14%の範囲のSiを含む合金を指す。本明細書全体を通して、材料組成に関連する「%」とは、別途明記されない限り、質量%を指す(重量%は、質量%と同じである)。
水力直径は、断面積の4倍を周囲長さで割ったものとして定義される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】1400℃に熱処理されたケース1の試料のSEM/EDS画像;(左上) 完全ペレット断面SEM;(左下)コアの領域A-コーティング界面;(右下)コアの領域B-コーティング界面。
図2】説明したプロセス条件を用いて焼成した保護コーティングを有するケース2のSEM/EDS画像。(左上)完全ペレット断面SEM;(右上)ペレットの中心(領域1)の断面SEM;(左下)ペレットの中央セクション(領域2)の断面SEM;(右下)コアの領域3-コーティング界面。
図3】ペレット外部、中間点、及び中心におけるO、Al、及びSiの組成。
図4】2つの合成方法(ケース1及び2)によるペレットの変化。
図5】FTコーティング触媒を作製するためのプロセスの説明。
図6】管状石英反応器に充填されたペレット。
図7】触媒を活性化し、操作するための準備をするステップの段階的な説明。
図8】粉末Co/Re/Al23及びCo/Re/Al23 コーティングペレット触媒の触媒性能の比較(条件:T=195℃、P=20barg、H2:CO=2:1、総流量は30cm3-1である)。
図9】Co/Re/Al23コーティングペレット(左)及び粉末Co/Re/Al23(右)触媒に対する温度の関数としてのCOの変換率及び生成物の選択性。操作条件:P=20barg、H2:CO=2:1。
図10】Co/Re/Al23コーティングペレット触媒に対するH2/CO比の触媒性能への影響。操作条件:T=225℃、P=20barg。
図11】Co/Re/Al23コーティングペレット触媒の温度に対する選択性/CO変換率。操作条件:P=20barg、H2:CO=1.8:1。
図12】Co/Re/Al23コーティングペレット触媒の温度に対する選択性/CO変換率。操作条件:P=20barg、H2/CO=1.6-1.65:1。
図13】選択性/CO変換率対H2/CO比(Co/Re/Al23コーティングペレット触媒における)。操作条件:T=255℃、P=20barg。
図14】3つの試験条件について、アルファの挿入値がH2/CO供給比1~1.8で240~255℃で操作され、例示的な触媒ペレットの高温蒸留によって回収された炭素数分布。
図15】259時間及び665時間という流通時間でのCo/Re/Al23コーティングペレット触媒の触媒性能。反応条件:T=225℃、P=20barg、H2/CO=2:1、流量=30ml/分。
図16】使用済み粉末及びペレットFT触媒のXRD分析。
図17】前の実施例で試験された、未使用及び使用済みの粉末及びペレットFT触媒のラマン分析。
図18】a)未使用Co/Re/Al23コーティングペレット触媒のSEM及びb)使用済みペレット触媒のSEM。FT触媒コーティング層の明らかな剥離または層間剥離はない。
図19】1時間あたりの触媒1gcatあたりのCO変換率が19.7gという触媒生産性であるFT条件下での、平均触媒の厚さが約20μmである触媒ペレット内の過渡温度上昇のグラフ。
図20】平均触媒厚さが約50μmの基本的な場合の、より高密度の界面または中間層(空隙率0.1に等しい)と比較した、多孔性界面層(空隙率0.4)内の一時的な温度上昇のグラフ。
図21】2g/g/h(破線)という低い触媒生産性と比較した、19.7g/g/h(実線)という高い触媒生産性のアルミナ系ペレットを使用し、推定内部空隙率が0.35に等しい直径300μmの球状ペレット内の過渡温度上昇のグラフ。
図22】方法#1(A)及び方法#2(B)を使用した触媒コーティングペレットのSEM。
図23】それぞれ、方法#1(A)及び方法#2(B)から得られた触媒コーティングペレットに関する生成物の選択性データ(パラフィンはCH4を含まない)及び総アルファ値(C2-C12)。試験条件:流量:10sccm/分 H2及び5sccm/分CO、20barg。
図24】215℃~240℃の温度について、barg単位での圧力に対するアルファ=0.8の例示的なFT合成生成組成に基づく、FT合成液体の体積分率を示す。
図25】215℃~255℃の温度について、barg単位での圧力に対するアルファ=0.825の例示的なFT合成生成組成に基づくFT合成液体の体積分率を示す。
図26】215℃~265℃の温度について、barg単位での圧力に対するアルファ=0.85の例示的なFT合成生成組成に基づくFT合成液体の体積分率を示す。
図27】アルファ0.8~0.85について、barg単位での圧力に対する215℃の例示的なFT合成生成組成に基づくFT合成液体の体積分率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明のペレット触媒構造は、活性触媒の薄層でオーバーコーティングされ、コアより高い多孔性を有するが、実質的に不浸透性である、介在する薄い界面または保護層を含む、熱伝導性が高く実質的に高密度のコア(35%未満の多孔性)を含む。コアは、SiC及び酸化アルミニウムを含む。界面(または保護)層は酸化アルミニウムで構成される。「実質的に不透過性」とは、コアが金属Al及びSiCを含む場合、空気中1400℃で3時間熱処理したときに、コア内の金属Al及びSiCの量が1%未満変化することを意味する。管状反応器または他の構成に充填される場合、この触媒構造は、従来の触媒ペレットよりも高い有効な層熱伝導率を可能にし、それにより反応器の熱制御を改善する。
【0023】
本発明の技術は、化石由来の原料と比較して、低~負の炭素強度の燃料及び材料を生成するためにCO2及び水から合成ガスを生成するために電解技術と組み合わせた使用を含む、合成燃料及びワックスを生成するための複数の用途を有する。二酸化炭素は、アミンスクラバー、直接空気捕捉(DAC)、膜などの技術を用いて大気ガスから捕捉され得る。あるいは、CO2は、入ってくる炭素のほぼ半分をCO2として放出するエタノールのバイオベースの生産などの他の産業プロセスから回収され得る。この場合、CO2は大気圧より上で自然に濃縮され、DACまたは同様の技術に関連する収集コストを削減する。合成ガスは、実質的に清浄であるか、または硫黄、ハロゲン化物及び/または窒素系の汚染物質を微量(約<1ppm)含むはずである。合成ガスを形成する前に、合成ガスをクリーンアップするか、またはガスを供給するために、プロセスユニット操作が必要となる場合がある。FT触媒、特にコバルト系の活物質は、これらの毒物の影響を特に受けやすく、エタノールまたは他の炭素質生成物を生成するために発酵中に副生成されるクリーンなCO2原料は、SOEC電解と組み合わされて、本発明のFT触媒を用いて水素と組み合わせてCOを産生するために特に有利である。
【0024】
あるいは、合成ガス源は、CO2とCH4の両方を含むバイオガスまたはフレアガスに由来し得る。バイオガスは、嫌気性消化の副産物として生成され、例えば、廃水の浄化、ウシ、ブタなどを含む動物の排泄物の低減、または廃棄食品もしくはバイオマスの変換に使用される。一実施形態では、CO2は、電気分解技術または逆水ガスシフト(RWGS)等の熱化学反応器を使用して、反応速度及び熱力学によって限定される場合に、COに部分的に変換し、その後、本発明のFT触媒で合成ガスを炭化水素の液体及びワックスに変換する。一実施形態では、バイオガスのメタン画分は、CO2での部分酸化、水蒸気改質、オートサーマル改質、または乾式改質(DRM)を使用して合成ガスに変換される。
【0025】
代替の実施形態では、天然ガスを原料として使用して、本発明のFT触媒を超える変換に関して合成のガスを生成し得る。ガス混合物は、好ましくは、FT触媒の非活性化速度を低減するために、約6barg未満の蒸気の分圧で維持される。蒸気は供給混合物中に存在し得、反応の化学量論に起因してFT反応中に炭化水素と共生成される。一実施形態では、有利なプロセスは、合成ガス混合物中の残存蒸気を最小にするか、及びまたはCO2の合成のガスへの変換を促進するために、3未満、より好ましくは2または1.5または1.2未満の水蒸気対炭素比で操作される合成ガスを生成するDRMプロセスを含み得る。DRMは、FT反応器よりも高圧で作動し、熱交換器を介在させてFTフィード合成ガスを供給して、より高温のDRMからより低温のFT反応へと温度を低下し得る。一実施形態では、合成ガス生成反応器は、約10.5~22bargの圧力で作動し、FT反応器は、約10~約21bargの圧力で作動する。中間の熱交換及びガス分離が含まれ得る。
【0026】
本発明は、限定するものではないが、FT合成入口流が、水の電気分解によって得られる合成ガスブレンドと、水素とCO2との逆水-ガスシフト反応によって得られるCOとを含むか;または前記FT合成入口流が、水及びCO2の電気分解によって得られる合成ガスブレンドであるか;またはFT合成入口流が、嫌気性消化槽、埋め込み、もしくは廃水処理施設からのバイオメタンのアップグレード及び改質に由来する合成ガスであるか、あるいはFT合成入口流が、電気分解または以前に化石燃料の燃焼、生物学的発酵プロセス、または直接的な空気捕捉プロセスからCO2を隔離した逆水ガスシフト反応である、FTプロセスを含む。
【0027】
触媒支持体(コア)は、0.09~0.17または0.10~0.15または012~0.14m2/gというBJH吸着細孔面積及び/またはBJH脱着細孔面積を有し得る(ただし、これらに限定されない)。いくつかの好ましい実施形態では、触媒支持体は、0.1~0.3、または0.15~0.25、または0.17~0.23m2/gのBET表面積を有する。ASTM E1461を用いて測定して、コアの熱伝導率は、400℃で8~20W/m・K、または9~17W/m・Kの範囲にあることが好ましい。
【0028】
本発明は、実施例で使用される粗及び微細なSiC画分の量に限定されない。混合SiC粉末中の粗SiCの体積百分率は、好ましくは50%~100%の間で変動し、一方、微細なSiCの体積百分率は、約0%~50%の間で変動する。好ましくは、粗いSiCは、230(平均直径約70μm)~600(平均直径約30μm)のグリットサイズを有するSiCから選択されてよく、一方、微細なSiCは、グリットサイズ600(平均直径約30μm)~1200(平均直径約15μm)のSiCから選択されてよい。
【0029】
Al-Si合金粉末については、共融合金(11~13%のSi)を、様々な粒子サイズ、例えば、2~50μmの中央粒子サイズで使用してもよい。特定の例としては、Valimet,Inc.のAl-Si共融合金4047粉末のS-2、S-5、S-8、S-10、S-15、S-20、及びS-25グレードが挙げられる。最大約25%のSi(モル基準)を有するものなどのその他のAl-Si合金を使用してもよい。混合物中のAl-Si(または、合金が使用されていない場合はAl)の容積は、SiCの容積の約2.5%~約80%、SiCの容積の約5%~約50%、SiCの容積の約5%~約30%、SiCの容積の約10%~約30%、またはSiCの容積の約10%~約25%の間で変化し得る。AlまたはAl-Si合金の代わりに、またはそれらに加えて、他の酸化物形成金属を使用する場合、その混合物中の同様の総量の酸化物形成金属(例えば、SiCの容積の2.5~80%、SiCの容積の5~50%、SiCの容積の5~30%、SiCの容積の10~30%、またはSiCの容積の10~25%)が用いられる。
【0030】
好ましくは、PVBとBBPを合わせたものの容積は、1%~15%(ペレット形成前の総製剤に基づく)であり、ステアリン酸及び炭素の重量百分率はそれぞれ、約0%~15%の間で変動し得る。BBP対PVBの体積比は、好ましくは約0%~50%の間である。バリエーションを表1に示しており、ここではSiC及びAl-Siの量は、SiC及びAl-Si粉末の総量の体積%として報告されており、PVP、BBP、ステアリン酸及び炭素の量は、同様にSiC及びAl-Si粉末の体積%として報告されている。
【表1】
【0031】
別の好ましい組成物を表2に示しており、ここでSiC及び Al23、及びAl-Siの量は、SiC、Al23、及びAl-Si粉末の総量の体積%として報告されており、PVP、BBP、ステアリン酸及び炭素の量は、同様にSiC及びAl-Si粉末の体積%として報告されている。いくつかの好ましい実施形態では、触媒支持体のコアは、20~40%(または25~40%)のAl-Si合金、20~40%(または25~40%)のアルミナ、20~40%(または25~40%)のSiC、及び最大10%(または1~8%または2~6%)の無機潤滑剤(好ましくは黒鉛)、及び最大20%(または2~15%、または4~12%)の有機添加剤(液体溶媒を含まない)を含むグリーンのペーストからなってもよい。いくつかの好ましい実施形態では、Al-Si合金、アルミナ、及びSiCを含む粉末前駆体は、約35~200(または直径約75~600μm)の範囲のメッシュサイズを有し、このサイズ範囲内の粉末前駆体の少なくとも80重量%であるように選択される。
【表2】
【0032】
SiC及びAl23を含む触媒コアを、これらの界面(または「保護」層)のうちの1つ以上でコーティングして、高温での酸化環境にさらされた場合、SiC構成要素を酸化からさらに保護してもよい。そのような条件下では、保護されていないSiC上で、成長の遅いシリカスケールが発生し、これが顆粒内へのさらなる酸素の拡散に対する障壁を創出し、したがって基材のさらなる侵食を妨げる。しかしながら、結果として得られるシリカスケールの主要な欠点は、揮発性(例えば、Si(OH)4の形成)及びアルカリ塩の存在下での腐食(例えば、Na2SiO4の形成)に対する感受性であり、適用性を制限する。これを軽減するために、外側の「界面」または「保護」コーティングは、大気とSiC表面との間の障壁として機能する。1つ以上の界面層のそれぞれは、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、または前述のうちの2つ以上の混合物もしくは酸化物化合物(例えば、ムライト)を含む。別の例として、アルミニウム、または他の遷移金属もしくは金属酸化物との金属混合物を含有するアルミニウム合金の外側保護層を、支持材料の表面上に薄いコーティングとして適用して、焼成時に実質的に高密度の酸化物層に変換される界面層を形成してもよい。
【0033】
このアプローチの一例は、コア表面に塗布されたアルミニウムの薄膜(薄いコーティング)である。コーティングは、ディップコーティング、スプレーコーティング、スピンコーティング、または真空浸潤を含むがこれらに限定されない多数の方法によって塗布することができる。
【0034】
保護(または界面)アルミナコーティングは、好ましくは周囲温度及び圧力下でエアロゾル沈着を使用して、SiC/Al複合コア上に沈着されるAl-Si合金粉末から得てもよい。例えば、コアペレットを楕円形の「パニング」容器内で混練してカスケード動作を生じさせてもよい。あるいは、コーティングは、同様のコーティング効果を達成するために、移動コンベヤ上で、または流動層内で、ペレット上で行ってもよい。
【0035】
外側、「界面」、または「保護」コーティングは、事前に焼成された支持材料に、または以下に開示されるように、形成されたままのコア形状に塗布してもよい。焼成に続いて、コーティング中のあらゆる金属(例えば、アルミニウム)は、実質的に酸化物に変換される。好ましくは、保護酸化物層の厚さは、1~200mmの範囲であり、より好ましくは、約10~100μmの間である。
【0036】
保護層または界面層の多孔性は、ペレットコアの多孔性よりも大きい。保護層は、ペレットの内部へのガスの流れまたは拡散を抑制する。コアの多孔性は、好ましくは約1~35容積%、または10~30容積%、または約12~20容積%の範囲にあり、一方、保護層の多孔性は40容積%未満、より好ましくは30容積%未満であり、いくつかの実施形態では、これは、約0.1%~30%の範囲内である。
【0037】
使用される「界面」コーティングスラリーは、有機溶媒及び結合剤系から、ポリマー結合剤を含む水性溶媒系まで、またはそれらの組み合わせまで変化し得る。コーティング材は、純粋なアルミナ材料から、他の金属、金属酸化物、または非金属と混合されたアルミナまで変化し得る。コアのサイズ及び界面層の厚さは、熱処理前のグリーンの状態では、より大きい。例えば、厚さが3~7倍、または4~6倍縮小する。
【0038】
いくつかの好ましい実施形態では、グリーンの支持体は、空気を含む雰囲気中で、約1300~1500℃、または1350~1450℃、または1380~1420℃の温度に、好ましくは毎分1~10℃、または毎分5℃以下の速度で加熱することによって熱処理され、好ましくはこの温度で少なくとも1時間もしくは少なくとも2時間、または1~5時間もしくは2時間~4時間の範囲で保持される。
【0039】
コーティングペレットは、好ましくは、乾燥させ、約800~1500℃、好ましくは、約1000~1450℃、さらにより好ましくは1250~1400℃の範囲の温度で焼成される。焼成中、ガス雰囲気は、通常、静的空気である。
【実施例
【0040】
実施例1.1-ペレットの作製の説明(ケース1)
製剤:
652.6gの400グリットSiC(平均直径約40μm)、163.2gの1200グリットSiC(平均直径約15μm)、及び169gのAl-Si合金粉末(Valimet共融合金4047(11~13%Si)(グレードS-2、平均直径2μm))を合わせて、粉末ミキサーに移し、そこで十分に混合する。混合物のそれぞれの重量パーセント値及び容積パーセント値を、表1.1.1に記録する。
【表3】
【0041】
造粒:
別個に、3.5gのPVBを、50gのエタノール中で、撹拌すること、及び温めることによって溶解させる。次いで、PVBのエタノール溶液を、連続的に混合しながら粉末にスプレー(吹き付け)する。その後、均一に湿った粉末を浅い層に広げ、完全に乾燥するまで120℃で乾燥させる。乾燥粉末は、乾燥後、35~200メッシュにふるい分けられる。この粉末に、4重量%のステアリン酸及び4重量%の黒鉛状炭素(KS-6)を粉末として添加し、均質化する。次いで、撹拌した粉末に十分なエタノールをスプレー(噴霧)して、混合物を湿らせる。この混合物を再度乾燥させ、プレスの前に35~200メッシュでふるい分ける。
【0042】
ペレット化:
乾燥粉末ブレンドを実験室規模のプレスを使用して乾式プレスしてペレットにする。プレスは、手動または自動ペレットプレスのいずれで実施してもよく、圧力は、一軸的または静的に加えてもよい。
【0043】
実施例1.2-コーティングプレスペレット(ケース1)
本実施例では、有機ベースのコーティングシステムを使用する。界面または保護層コーティング用のコーティングスラリーの組成を、表1.2.1に開示する。成功裏のコーティング配合物の範囲の例を列挙するが、潜在的なコーティングシステムに関して限定するものとみなされるべきではない。
【0044】
スラリーは、本開示の事前に焼成した材料コアまたは事前に焼成していない材料コアのいずれかに沈着される。本実施例では、コーティングは、手動及び代替として自動スプレー(噴霧)装置を使用した両方で、有機ベースのエアロゾルスプレーアプローチによりコア上に沈着される。いずれのアプローチでも、最終コーティングの所望の厚さに応じて、スプレー(吹き付け)は、1つのステップで、または中間の乾燥サイクルを伴う数回の繰り返しコーティングを通じてのいずれかで実行される。乾燥サイクルは、大気中、約60℃~150℃の様々な温度で行われてもよい。
【表4】
【0045】
実施例1.3:熱処理(ケース1)
乾燥したら、コーティングペレットを空気中、約800~1500℃、ただし好ましくは約1000~1450℃、さらにより好ましくは1250~1400℃の範囲の温度で焼成する。焼成プロファイルには400及び600℃で2つの中間滞留時間が含まれた。全体的な焼成プロファイルは次の通りであった:3℃/分で400℃まで上昇し、次いで400℃で1時間滞留した後、2℃/分で600℃まで上昇し、その後600℃で2時間、その後2℃/分で最終温度まで昇温させ、1時間滞留させた。得られた微細構造の例を、図1の顕微鏡写真に示す。
【0046】
実施例1.4(ケース2)
製剤:
触媒支持体のコアを製造するために、Al-Si合金(S-2、Valimet)、酸化アルミニウム(A-1000 SG Almatis)、及びSiC粉末(400グリット、Panadyne)の粉末を、最初にEirichミキサーEL10でブレンドした(モデル番号RV02E)。具体的な量を表1.4.1に示す。
【表5】
【0047】
造粒:
材料を乾式プレスに許容可能にするために、結合剤及び滑沢性材料を、粉末が均質化し、造粒するような方式で添加して、自動ペレット化プレスの動作中に乾式材料が良好に流れることを可能にする。粉末を秤量して、表1.4.1に記載する比率で無機材料の6000gバッチを製造し、Eirichミキサーのボウルの中で均質化する。粉末を毎秒10メートルのアーム速度で120秒間撹拌し、一方でボウルを低速で反時計回り方向に回転させる。撹拌を毎秒18メートルに調整し、ポリビニルブチラール(6.6重量%)及びブチルベンゼンフタル酸(0.5重量%)のエタノール溶液(92.9重量%)425gを5分間隔で混合物に徐々に添加する。溶液全体を添加した時点で、アーム速度を5分間増加させ、エタノール溶媒をエバポレートさせる。2つの追加の結合剤沈着-乾燥サイクルを実行して、結合剤の添加を完了する。得られた粘土様体を#14メッシュに通し、ステンレス鋼パンに分け、強制空気オーブン内で60℃で25分間乾燥させる。乾燥した材料をパンから取り除き、-35/+200メッシュを通してふるい分け、リサイクルのために+35及び-200メッシュ画分を分離する。
【0048】
次いで、ふるいにかけた粉末をEirichミキサーに戻し、ふるいにかけた粉末重量の4%のステアリン酸粉末(Alfa Aesar、A17673、90+%)及びふるいにかけた粉末重量の4%の合成黒鉛粉末(Timcal、KS-6))を、顆粒に添加し、5分間乾燥混合する。追加の結合剤溶液をブレンドされた粉末に添加して、材料をさらに凝集させ、滑沢剤を混入させる。結合剤溶液を、全量が添加されるまで中間乾燥させて段階的に添加する。
【0049】
粉末を再度#14メッシュでふるい分け、60℃のオーブンで5分間乾燥させ、次いで35~200メッシュでふるい分けて、最終生成物を生成する。この材料を60℃でさらに1時間乾燥させる。
【0050】
要約すると、ケース2の式は:乾燥後の最終的な材料組成の合計に補正した場合、29.96重量%のSiC-400、29.96重量%の Al23、29.96重量%のAl-Si、2.59重量%のPVB、0.19重量%のBBP、3.65重量%のステアリン酸、3.65重量%の炭素である。
【0051】
ペレット化:
造粒粉末は、ある範囲の一軸プレスまたは等張プレスを使用してペレット化してもよい。一例として、造粒粉末を自動一軸ペレット化プレス(Korsch、モデルEKO)のホッパーに添加し、これは、0.25gの粉末から直径6mm、高さ約4mmのペレットを製造する。得られたペレットは、機械的に堅牢であり、光沢があり、著しい欠陥のない均一な内部構造を有する。
【0052】
実施例1.5:Al-Siコーティングプレスペレット(ケース2)
界面または保護コーティング懸濁液を調製するために、D50が3.5μmのAl-Si合金粉末(Valimet S-2、11~13% Si)100gを1リットルのNalgene容器に加え、ここで300gの酢酸メチル、72.5gのアルファテルピノール、及び27.5gのスクリーン印刷ビヒクル(Heraeus V006A)の溶液を調製する。
【0053】
第3の層コーティング用のコーティングスラリーの組成を、表1.5.1に開示する。成功裏のコーティング配合物の範囲例を列挙するが、限定するものとみなされるべきではない。スラリーは、本開示の事前に焼成した材料コアまたは事前に焼成していない材料コアのいずれかに沈着される。本実施例では、コーティングは、手動及び代替として自動スプレー(噴霧)装置を使用した両方で、有機ベースのエアロゾルスプレーアプローチによりコア上に沈着される。いずれのアプローチでも、最終コーティングの必要な厚さに応じて、スプレー(吹き付け)は、1つのステップで、または中間の乾燥サイクルを伴う数回の繰り返しコーティングを通じてのいずれかで達成される。乾燥サイクルは、約60~150℃の様々な温度で行ってもよい。
【0054】
次いで、Nalgene容器を回転ラックに置き、25RPMで8時間ボールミル粉砕する。マイリング操作後、懸濁液をミルからリザーバにデカントする。下記に説明されるように、エアロゾルノズルを使用して、懸濁液を圧縮したままのSiC/Alペレット上に沈着させる。
【表6】
【0055】
ペレット(300g、直径約6mm、高さ約4mm)を、直径60cmの容器を備えたペレットコーター(BYC-600、Jiavansshu)に充填し、20RPMの回転速度で0.5時間回転させる。この操作は、ペレットから粗さ及び高曲率半径の特徴を除去するのに役立つ。研磨プロセスによる残留物は、コーティングの前にチャンバから除去する。
【0056】
コーティングは、直径20cmの容器を備えたペレットコーター(BY-200、Jiawans含む)を使用し、20RPMの回転速度で回転させて行う。コーティングは、10~15秒間隔で沈着されたエアロゾルであり、40~50秒間隔の温かで乾燥した空気の流れと交互に行われる。乾燥ステップと後続のコーティングステップとの間で、ペレットを15~20秒間平衡にさせる。コーティング-乾燥-平衡を5サイクルの反復で行う。
【0057】
ペレット1グラム当たり合金約0.04g、またはペレット0.25グラム当たり約0.01グラムという沈着目標を達成するために、追加のコーティング-乾燥平衡サイクルを実施する。
【0058】
周囲圧力または真空条件で水性または溶媒ベースの懸濁液を使用したディップコーティングまたはウォッシュコーティングにより、同様の微細構造を達成し得る。また、アルミニウム粉末と適切な結合剤との混合物を用いてコアを乾式タンブリングすることにより、同様のコーティングを達成できる場合もある。
コアのサイズ及び界面層の厚さは、熱処理前のグリーンの状態では、より大きい。寸法は、取り付けられた状態での約125~25μmの厚さから、焼成または熱処理後の約100~20μmの厚さに減少する。
【0059】
実施例1.6:HP3.0の熱処理
目標のコーティング重量をペレットに塗布した後、ペレットをアルミナサガーに入れ、空気中、毎分約3℃の速度で1400℃に加熱し、その後3時間保持し、毎分約5℃の速度で室温まで冷却する。焼成し、コーティングされたペレットに圧縮空気を吹き付けて、コーティング操作で緩い微粒子を除去する。
【0060】
いくつかの好ましい実施形態では、グリーンの支持体は、約1300~1500℃、または1350~1450℃、または1380~1420℃の温度に、好ましくは毎分1~10℃、または毎分5℃以下の速度で加熱することによって熱処理され、及び好ましくはこの温度で少なくとも1時間、または少なくとも2時間、または1~5時間もしくは2時間~4時間の範囲で保持される。
【0061】
得られたペレットの顕微鏡写真を取得した。代表的な例を図2に示す。図1の微細構造とは対照的に、得られたペレットの複数の好ましい特徴がある。外側から始まり、内側に作用する場合、表面にアルミナを含むコーティングは、組成及び微細構造がはるかに均一であり、EDSによって評価したときにSi含有相がないことによって、下にあるコアから描写され得る。これは図1とは異なっており、図1では、EDSによって示されるように、Siの顕著な偏析及びSi含有相の形成の証拠が存在する。
【0062】
さらに、ケース2のコーティング及びコアは、ケース1よりも多孔性が少ない。これは、Image Jソフトウェア(www.imagej.nih.gov)を使用して微細構造の立体学的分析によって実証され、ペレットの異なるセクションの微細構造中の細孔の割合が決定される。2D画像で観察される相の面積分率が、3次元構造で観察される同じ相の体積分率を表すことが十分に確立されている。表1.6.1は、1400℃で焼成したケース1及び2の部品のコア及び保護層で測定された細孔の割合をキャプチャする。保護層または界面層の多孔性は、コアの多孔性よりも大きい。
【0063】
ケース2の微細構造は、ペレット上にコーティングされる後続のコーティングスラリーに対して実質的に不浸透性であることが示されており、これにより別個の触媒コーティング層が発達する。
【0064】
コア及び保護層の多孔性の体積百分率は、2D断面顕微鏡写真の領域内の細孔の面積分率を測定することによって決定される。複数の試料領域(少なくとも5つ)を使用して、代表的な分析を提供する。同様に、様々な相の面積割合は、同様の2Dセクションのエネルギー分散型X線分光法(EDS)画像(少なくとも5つ)から決定され得る。
【表7】
【0065】
実施例1.2(ケース1)及び実施例1.4(ケース2)の酸素濃度の比較傾向:
ケース1とケース2の実施例の重要な相違は、ペレットの外部から内部までの酸素含有量の相違である。電子分散型X線分光法を使用して、SEM/EDS分析で得たペレットの表面、内部、及び中央に近い位置でO、Al、及びSiの濃度を測定した(例えば、以下に完全に複製されるかのように参照により組み込まれる、米国仮特許出願番号63/294,844に示された色図に示す)。これらの分析から、図3のグラフが得られる。
【0066】
ケース1.このケースでは、酸素、Al、及びSiのレベルは、部品の厚さ全体にわたってわずかな変動を示す。これは、熱処理中のペレットの外部から最内部コアへの拡散のための酸素経路を示しており、これはまた、概して一貫した微細構造にもつながる(図1)。結果として、Al、Si、及びOの濃度は比較的類似しており、ペレットの直径全体にわたって一貫している。
【0067】
ケース2.この場合、Al、Si、及びOの組成レベルは均一ではない。外側及び内側の層では、酸素の拡散経路が不十分である。結果として、Al、Si、及びOの濃度はペレットの層全体で均一ではない。
a.最外側の最も酸化された層は、合金の完全な酸化と一致する酸素含有量を有する。
b.中間層は、同様のレベルの酸化を有するが、より高い多孔性を示す傾向があり、場合によっては、Al系の合金の残存の証拠がある。
c.ペレットの最内側中心は、酸素含有量が明らかに低下しており、有意な割合のAl合金を有している。
【0068】
実施例1.2(ケース1)及び1.4(ケース2)のコアの熱焼結及び膨張挙動。
実施例1.2及び1.4のコーティングなしのコア試料の熱焼結及び膨張挙動は、試料を1℃/分で1400℃に加熱して、熱処理中の焼結収縮及び膨張の差を決定することによって評価した。図4に示すように、両方の試料は、焼結の類似の特徴を示し、複合体の結合剤の溶融及び再配置が210℃で始まるまでの初期の膨張を伴う。部品は、350~450℃の温度範囲で部品の膨張が開始するまで収縮し、600℃を超えると徐々に膨張するレベルに達する。冷却すると、試料は温度と共に名目上の線形収縮を示す。
【0069】
表1.6.2に示すように、実施例1.2(ケース1)の試料は、実施例1.4(ケース2)の試料と比較して、サーマルサイクルを通じて全体的な膨張が顕著であり、上限の設定値に達した後の熱膨張係数が低い。これらのコアが、移行するアルミニウムからアルミナへの保護コーティングとどのように相互作用し得るかを考慮すると、全体的な膨張/収縮を最小限に抑え(ケース2)、アルミナにより近い熱膨張係数(8.5ppm/℃)を有して、加熱及び冷却の間、応力を低減することが好ましい。これらの収縮挙動は、ケース1とケース2との間で観察された保護コーティング密度の差異に寄与し得る。
【表8】
【0070】
表面積:Brunauer-Emmett-Teller(BET)表面積は、粉末表面からの物理的に収着された窒素分子の吸着及び脱着によって測定される。別の並行した技術である、バレット・ジョイナー・ハレンダ(BJH)法は、細孔充填のケルビンモデルを用いて、実験的な等温線から細孔サイズの分布を算出するための手順である。上記のデータで観察されたように、ケース2の実施形態は、1グラム当たりの表面積がより小さく(ケース1の約半分の表面積)、これは、外側の保護コーティングが流体の侵入に対してより少ないことを示しており、これは、ケース2対ケース1について測定された細孔面積及び容積が小さいことによって裏付けられる観察結果である(表1.6.3)。
【表9】
【0071】
熱伝導率:ケース1及びケース2のコアの熱伝導率を、ASTM E1461(フラッシュ法による熱拡散率及び伝導率の標準試験方法)を使用して測定した。1300℃で焼結したコーティングされていないコア試料のケース1及びケース2の温度範囲にわたってデータを収集した。表1.6.4に示すように、炭化ケイ素とアルミナの組成の大きな違い、ならびにコアの空隙率の違いにもかかわらず、条件の全範囲にわたって、複合材料は、比較的好ましい高い熱伝導率を示す。
【表10】
【0072】
実施例2.触媒の調製
コバルト系フィッシャートロプシュ触媒を、実施例1.4~1.6に記載するように、顆粒形態及びペレットにコーティングした形態の両方で後続の試験のために粉末形態で調製する。
【0073】
材料及び化学物質
アルミナ支持体(98%のAl23、PURALOX(登録商標)TH 100/150 L4)を、Sasolから得る。Co(NO32・6H2O(98%)及びペルレニン酸溶液(HO4Re、H2O中75~80重量%)を、Sigma-Aldrichから購入し、そのまま使用する。実施例1に記載した方法を用いてペレットを調製した。
【0074】
触媒の調製
Al23支持体を、500℃で空気中2時間(上昇率:5℃/分)で予備焼成し、乾燥器内に保管する。46gのCo(NO32-6H2O及び1.1mLのHO4Re溶液を、ストック溶液として22mLのH2O中に溶解させる。8mLのストック溶液を20gの事前焼成 Al23支持体に、インシピエントウェットネス含浸法を介して加え、続いて90℃で8時間乾燥させ、傾斜率5℃/分で空気中、350℃で3時間焼成する。この手順を、22mLのストック溶液全体が使用されるまで、7mLのストック溶液を固体混合物に加えて、2回繰り返す。触媒を調製するプロセスを図5に示す。得られた粉末触媒の重量は約35gであり、Co/Re/Al23触媒と呼ばれる。Co及びReの公称ローディング量は、高表面積アルミナ支持体内で、それぞれ、30.3重量%、及び4.8重量%である。
【0075】
触媒スラリーを調製するために、Co/Re/Al23触媒3gを17mLの水と共に3時間ボールミル粉砕する。実施例1で調製したペレットを、この触媒スラリーにディップコーティングし、空気中80℃で乾燥させて、薄く均一なコーティングを行う。このディップコーティングプロセスを6回繰り返す。コーティングしたペレットを、550℃で4時間、空気中、5℃/分の傾斜率で焼成する。各ペレットは、約5.9±1.1mgのCo/Re/Al23を有する。触媒調製ステップを、受け取ったままのペレット(上)、及び薄いCo/Re/Al23コーティングを施したペレット(1)、及び過剰量のスラリーコーティングを有するペレット(2)とともに、図5に示す。薄いCo/Re/Al23コーティングを施したペレットを、実施例3~13に記載したように、さらなる試験に使用した。
【0076】
実施例3.反応器内の触媒ペレットのローディング
触媒は、内径7mmの石英管からなる固定層プラグフロー型反応器を使用して、フィッシャー・トロプシュ(F-T)反応において評価した。反応器石英管をステンレス鋼ハウジングの中央に配置した。粉末触媒試験のために、Co/Re/Al23触媒を最初に60~120メッシュ(または直径約125~250μm)でふるい分け、総ペレット重量0.4398gを、石英反応器(粒状触媒のいずれかの側をグラスウールで保持した高さ19mmの触媒固定層)に充填した。ペレット触媒試験のために、合計0.1108gのCo/Re/Al23コーティング触媒を有する20個のペレットを、図6に見られるように水平及び垂直なペレット配置を交互に用いて石英反応器に充填し、総充填層の高さは約0.105mであった。
【0077】
ローディング中、ペレットを実質的に水平方向に保ちながら、伸長したピンセットで保持してローディングした。ローディングされたまたは充填されたチューブを、反応器の操作のために所望される垂直方向に移動させた。このローディング構成の推定層ボイド率は0.56である。各ペレットは、触媒コーティング前に測定すると、高さ3.64mm、直径6.04mmである。充填時の各ペレットについて、ペレットと反応管の内面との間に約0.5mmの隙間がある。
【0078】
実施例4.操作前の触媒の活性化
粉末触媒及びペレット触媒の両方の活性化を、管状炉内で行い、これには2回の酸化還元サイクルを伴い、それぞれ以下の2つのステップからなる:1)触媒の還元であって、1barでN2中の10%H2を用い(50cm3-1で流動)、室温から250℃まで0.5℃/分の傾斜で、250℃で30分間保持し、続いて0.5℃分/分の率で400℃まで傾斜して、400℃で10時間保持した後、N2(50cm3-1)に切り替え、室温まで冷却する、触媒の還元;2)触媒の酸化であって、1bar(50cm3分-1)で、N2中で1%のO2を使用して、2℃/分の率で室温から350℃まで傾斜させて、350℃で2時間保持した後、続いてN2の流入(350℃、50cm3分-1)に切り替え、室温まで冷却する、触媒の酸化。上記の2つのステップを繰り返して2回の酸化還元サイクルを完了した後、その触媒を反応器の等温領域に移し、最終的な還元をin situで、1bar(25cm3-1)でH2を用いて、0.5℃/分の速度で12時間400℃まで行う。
【0079】
最初の触媒酸化還元活性化ステップは、操作のための反応器試験スタンドとは別の試験装置(管状炉)で行われる。この方法によって、例示的な触媒は、水素中での最終の還元ステップを除いて、最終的な反応器設備とは別に活性化され得る。触媒は、FT反応を操作する前に、水素中で還元される。触媒活性化の別個の酸化還元ステップは、複雑さ及びコストとを軽減するように機能し、同時に、フィッシャートロプシュ施設のin situでの酸化還元触媒活性化の安全性を向上させる。操作前の活性化及び還元を図7に示す。
【0080】
実施例5.反応器の操作
実施例4に記載されるように触媒を活性化した後、反応器温度を400℃から160℃まで傾斜して低下させ、そこで全圧を25sccmのH2流中で20bargに上げて、次いでガスをH2/CO比が2のH2及びCO供給混合物に切り替えた。0.1℃分/分の加熱速度を使用して目標温度に近づく。報告される全ての反応圧力は、測定されたゲージ圧を指し、barまたはbargのいずれかで表されることが理解される。
【0081】
触媒活性及び生成物の選択性は、少なくとも12時間のTOSの後、システムが定常状態に近づくときに、2つのサンプリングループ(GC-MS、Agilent 7890A-5975)を備えたオンラインクロマトグラフィー質量分析を使用して測定した。GC/MSシステムと反応器の出口とを毛細管を通して接続し、重生成物の凝縮を避けるために加熱テープで200℃に維持した。軽ガス(最大C3)を、3 Foot及び9 Foot Hayesep Q 80/100(バックフラッシュモード)の2つの接続カラムを有する熱伝導度検出器(TCD)によって測定し、一方C4+炭化水素及びアルコールを、MS検出器及びDB-1キャピラリーカラムによって分析した。COの転化率は、全ての炭素生成物の合計及び炭素平衡から計算した。
【0082】
製品分析
1-C3は、3 Foot及び9 Foot Hayesep Q80/100(バックフラッシュモード)の2つの接続カラムを有する熱伝導率検出器(TCD)によって分析し、一方C4-C13は、DB-1キャピラリーカラムを備えたMS検出器によって分析した。濃度(mol%)に対するTCD及びMSシグナルの較正を、標準較正ガス混合物を使用して実施した。
【0083】
4-C12の質量分率を使用してアルファ数を計算し、次いでC32まで外挿し(試料の外部分析によりC32までの炭化水素、HCの存在が確認される)、C1-C32に正規化した。GC-MSシステムによる制限により、パラフィンの定量分析はC1-C12画分でのみ正確に行うことができる。C1-C3画分は予想通りにシュルツ-フロリー分布に従わないので、パラフィンのアルファ数はC4-C12から算出した。試料の外部分析では、C32までHCが存在することが確認されたので、C4-C12から算出したアルファ数を用いることによって、C13-C32まで線形外挿したパラフィンを推定した。アルファ数は、Anderson-Schulz-Floryの式
【数1】
に基づいて算出し、式中、Wnは、n個の炭素原子を含む生成物の質量分率を表す。
CO変換率は、以下を使用して計算される。
【数2】
CH4選択性は、以下を使用して計算される:
【数3】
式中、
【数4】
は、モル基準での変換されていないCOの量である。
【数5】
は、モル基準で生成されたCH4の量である。
【数6】
触媒生産性(1時間あたりのgcatあたりの変換COのg単位)は、以下を使用して計算される。
【数7】
触媒の重量は、スラリーまたは他の方法によってコーティングされ、ペレットの外部に保持される乾燥触媒の重量によって定義される。触媒重量は、Co、Re、他の促進剤、及び活物質が置かれる高表面積支持体を含む。後続の生産性分析に使用する触媒の重量は、下にあるAl-Siペレットの重量もその保護層もしくは界面の重量も含まない。
【0084】
実施例6.195℃での粉末とペレットとの比較
粉末触媒と触媒コーティングペレット触媒との両方を、触媒層の端で熱電対によって測定して195℃の反応温度で比較した。さらに、圧力を20bargで一定に保ち、それぞれ110時間及び131時間という流通時間(TOS)でデータを収集した。H2/CO比を2に設定したH2とCOの供給ガス混合物を、追加の希釈剤なしで総流量30ml/分(STP)で制御した。図8に示すように、この温度のペレット触媒は、粉末触媒よりも低いCO変換率(57.03%に対して34.30%)、及び相対的に高いメタン選択率(12.63%に対して18.89%)を示した。液体生成物中に形成されたワックスはほとんどなく、これは、2つの液体生成物の分析(炭素数による質量分率の炭素分布を取得するための高温蒸留)によってさらに確認された。
【0085】
この低温でのペレット触媒はまた、オレフィン、アルコール(主にメタノール、エタノール、及び1-プロパノール)、及びCO2に対してわずかに高い選択性を示した。それにもかかわらず、ペレット触媒は粉末触媒よりもはるかに高いCO変換率を示した(すなわち、195℃で2.34対0.97というCO変換/gcat/h)。この計算における触媒のグラムは、造粒粉末試験のために直接ロードされたCo/Re/Al23触媒の総重量を指すか、またはペレット試験のためにコーティングされた総量及び少量のいずれかを指す。データを図8にグラフで、及び表6.2に表形式で示す。
【表11】
【0086】
実施例7.20bargにおける粉末及びペレットへの温度の影響
粉末及びペレットの両方の触媒性能に対する温度の影響を、H2及びCOの供給ガス混合物(H2/CO比が2)により180~220℃で評価した。ガス流量を粉末触媒の場合は30~40ml/分(STP)に、ペレット触媒の場合は15~30ml/分(STP)に調整して、CO変換を制御した。
【0087】
粉末触媒の場合、温度が185℃から195℃に上昇するにつれて、CO変換率は、0.69から0.97gというCO変換/gcat/hに増大した。オレフィン及びアルコールへの選択性は減少したが、CH4の選択性は約12.5%で比較的一定を維持した。温度が200℃まで上昇すると、粉末触媒は、ほぼ100%のCO変換、または2.27gというCO変換/gcat/hのCO変換率によって示される反応暴走を経験したが、一方で、CH4の選択性は、200℃で16時間のTOSでの28.92%から200℃での20時間のTOSでの63.07%まで連続的に増大した。
【0088】
暴走事象後に温度を195℃に低下させた後、COの変換は、100%を維持し(CO変換率は2.27g_CO変換/gcat/h)及び48.5%という高いCH4選択性が観察された。さらに190℃まで温度を下げても、CH4の選択性(48.09%)は低下せず、依然として約100%のCO変換が得られた(CO変換率は1.70g_CO変換/gcat/h)。200℃での反応暴走の前後の触媒性能は、COの変換率及びCH4 の選択性の点で有意に異なる。触媒は、反応が進行した後、失活性した。TEM、XRD、及びラマン分析による使用済み粉末触媒の更なる特性評価は、使用済み粉末触媒上に、望ましくないCoアルミン酸スピネル及び黒鉛状炭素の沈着物の形成を示した(特性評価データは実施例13に記載)。
【0089】
コーティングペレット触媒の場合、反応暴走はなかった。COの変換率は220℃以上まで温度とともに増大するが、CH4の選択性は比較的一定のままであった。アルコール、オレフィン、及びCO2への選択性は、温度の上昇とともに低下した。18.93%のCH4選択性を維持しながら、220℃で1時間あたり触媒1g当たり3.28gのCOという高いCO変換率に達した。データを図9に示す。
【0090】
実施例8.20barg及び225℃におけるペレット性能に対するH2/CO供給比の影響
ペレット触媒に対するH2/CO供給量比の影響を225℃で研究した。H2/CO供給比が1から2に増加するにつれて、CO変換率は46.68%から67.2%に増大し、一方、CH4選択性もまた、予想通り、約14%へわずかに増大した。パラフィン、オレフィン、及びアルコールに対する選択性は、このH2対CO供給比の範囲にわたって比較的一定のままであった。データを図10にグラフで示し、表8.2に要約する。
【表12】
【0091】
実施例9.20bargのペレットに対する1.8のH2/CO比での温度の影響
例示的なペレット触媒をより広い温度範囲にわたって試験するために、ペレット触媒の性能を230~250℃でH2/CO供給比2で研究した。コーティングペレット触媒は、いずれの条件下でも反応暴走を経験しなかった。ガス流量を56~140ml/分(STP)の間で変化させて、CO変換を約40.8~79%に維持した。温度が230℃から250℃に上昇するにつれて、CO変換率は、9.33から19.7CO変換/gcat/hに増大したが、CH4の選択性は10%未満に維持された。19.7gというCO変換/gcat/h(g/g/h)の生産性で7.29%というCH4選択性が得られた。データを図11に示す。
【0092】
アルコール、オレフィン及びCO2への選択性は、比較的一定のままであった。240℃及び245℃でも7%未満という低いCH4選択性は、高温蒸留を使用して行われる、液体生成物分析に基づくと、それぞれ、0.84及び0.82という高いアルファ数と一致する(図14の白色及び斜線のバーに見られるとおり)。C32ほどの長鎖炭化水素が液体試料の分析で検出され、これは、両方の試料で観察されたかなりの量のワックスと一致する。例示的なペレット触媒で達成される、250℃でかつ20bargで19.7gというCO変換/gcat/hでの高いCO変換率は、対応する粉末触媒よりも20倍を超える生産性を表し、かつ反応暴走なしでそうなる。
【0093】
実施例10.20bargにてペレットに対するH2/CO比1.6~1.65の温度の影響
ペレット触媒を、230~255℃のより高い温度で、及び約1.6近くのH2/COの供給比で研究し、CH4選択性を制御し、長鎖炭化水素製品を生成しながら、熱暴走のない高温操作への適用性を確認した。CO変換率を約39.4~80.5%に維持するように、ガス流量を56~130ml/分(STP)に調整した。
【0094】
温度が230℃から255℃に上昇するにつれて、CO変換率は、8.75から13.47gというCO変換/gcat/hに増大したが、CH4の選択性は6%未満に維持された。温度が上昇するにつれて、オレフィンへの選択性はわずかに増大し、パラフィンの選択性はわずかに低下した。アルコール及びCO2に対する選択性は、この温度範囲にわたって比較的一定のままであった。データを図12に示す。
【0095】
実施例11. 20bargのペレットに対する255℃での供給H2/CO比の影響
255℃で1及び1.25というはるかに低い供給H2/CO比での例示的なペレット触媒の性能が記載されている。H2/CO比がそれぞれ1及び1.25での実行では、ガス流量を80ml/分及び90ml/分(STP)に制御した。H2/COが1.25の場合、H2/COが1に等しい場合(CO変換率60%)と比較して、より高いCO変換率(66.3%)が得られ、これは、CO変換率がわずかに高いことに相当する(18.12対16.41gというCO変換/gcat/h)。
【0096】
図13に見られるように、供給H2/CO比1での選択性と比較して、わずかに高いCH4選択性が、1.25というH2/CO比で得られた。それにもかかわらず、両方のH22/CO供給比の下で、255℃で非常に低いCH4選択性(<5%)が達成され、これは、液体試料バイアル(図14に示す斜線の試料)で観察されたワックスと一致している。この場合、高温蒸留によって提供された液体試料の分析に基づいて、約0.81というアルファ数が算出された。この試料は、H2/CO比が1での実験から採取した。さらに、1という低いH2/CO比では、アルコールに対する選択性がわずかに高いことが観察された。
【0097】
554時間から568時間までの間のTOSでH2流が中断(停止)するシステムの動揺があった。このウインドウの間、COのみを反応器に供給した。具体的には、触媒試験を250℃及び20bargで一晩行い(公称H2:90cm3-1、CO:50cm3-1)、水素ボンベ内の圧力を20bargに低下させ、前記反応器内のH2ガス流量を約12時間にわたってゼロにさせた。翌日の未明、この問題が特定された後、H2ボンベを交換した。次に、触媒層を250℃、20bargで4時間、H2流(80cm3-1)下で操作した後、他の反応条件定数を維持しながらCOを50cm3-1の流量で再導入した。H2ボンベの交換の前後の触媒性能を以下の表に示す。表11.2に示すように、CO変換またはCO変換率に有意な変化は観察されなかった。
【表13】
【0098】
実施例12.ペレット触媒の安定性
ペレット触媒の安定性についての洞察するために、2つの流通時間(TOS)、すなわち、259h及び665hでの反応性能を同一の反応条件下で比較した:225℃、20barg、H2/COが2で、総ガス流量が30ml/分(STP)。この比較は、ペレット触媒を、260℃ほどの高い温度で、かつ259時間のTOS~665時間のTOSで1程度の低い供給H2/CO比で試験した後に行った。さらに、図15に見られるように、触媒は再生を受けなかった。COの変換率は、5.61から4.57というCOのg変換/gcat/h(82%から67%のCO変換)にわずかに減少し、10%未満のCH4選択性を維持することを含め、生成物の選択性の変化は無視できる程度であった。
【0099】
フィッシャートロプシュ(FT)触媒は、触媒細孔内で凝縮されるワックスまたは液体炭化水素の増加に起因して、TOSでの変換の低減を示すことは周知である。通常、初期の反応器作動温度は低レベル(例えば、200~210℃)から始まり、温度は運転中に段階的に上昇して(例えば、最大215~225℃)、遅い非活性化を補って、それにより、触媒の再生及び/または交換の間の期間にまたがる。従来のFT触媒は、熱の暴走または過剰なメタン形成に起因して反応温度の上限がある。
【0100】
本明細書に示される触媒性能は、本発明の触媒で操作される市販のFTシステムが、より高い生産性のためにより高い温度(例えば、210~250℃)で操作を開始し得、さらに段階的に温度を上昇させて、開始温度よりも10~50℃高いなど、さらに高い温度まで、熱暴走または過剰のメタン形成を経験することなく、ワックスの不活性化を補うことができることを示唆している。
【0101】
これらの結果は、コバルト系フィッシャートロプシュ触媒の場合、ペレット触媒が非常に高温でも安定であることを示唆している。安定性の結果は、実施例13に記載されるように、TEM、XRD、及びラマンを使用した使用済みペレット触媒の特性評価データと一致する。全ての技術によって、使用済み粉末触媒と比較して、コバルト(Co)焼結の形跡がないこと、Co2AlO4スピネル形成がないこと、及び炭素沈着が有意に少ないことが示される。別個のSEM分析ではまた、ペレット上にフレーキング(剥がれ)も触媒コーティングの層間剥離もないことが示される。
【0102】
実施例13.未使用及び使用済み触媒の粉末及びペレット分析
未使用及び使用済みの粉末及びペレット触媒の両方のTEM特性評価では、Co粒子(円)の明らかな焼結は示されず、いずれもサイズが20nm未満であった。未使用及び使用済みの粉末及びペレット触媒の両方のXRD分析を、図16に示す。XRD回折パターンから、使用済み粉末触媒は、優勢的なCH4の形成につながり得るアルミン酸Coスピネルの形成を示す。使用済みペレット触媒と比較して、使用済み粉末触媒は、はるかに強い黒鉛状炭素のピークを有し、これは、使用済みコーティングペレットと比較して、使用済み粉末触媒へのコークの沈着がより深刻であることを示唆している。未使用及び使用済みの粉末及びペレット触媒の両方のラマン分析を、図17に示す。使用済みペレット触媒と比較して、熱暴走事象に起因して、使用済み粉末触媒上で有意に多くの炭素形成が観察された。未使用及び使用済みFT触媒のSEM断面を図18に示す。
【0103】
実施例14.触媒ペレットの過渡熱応答
触媒コーティングペレットは、ペレットコアよりも大きい多孔性を有する中間層を含み、過渡熱伝達に対してロバストな性能を示す。高い触媒生産性を、熱暴走なしで達成し得る。コアと比較して、高い多孔性の中間層の有効熱伝導率が低いことにより、熱が横方向に広がる一時的な熱の勾配が大きくなる。実際、ペレットの内部温度は、より均一に上昇する。しかしながら、一時的な温度上昇は制御され続け、界面層内の内部温度上昇は、約5秒間以下で約15℃未満のままであり、これは、熱をペレットから部分的には反応物及び生成物の流れへ、ならびに部分的には充填ペレットのアレイを介して、及び熱伝達壁を介して、伝達するのに十分な時間である。
【0104】
実施例9で測定した場合、1時間あたりgcatあたり19.7gのCO変換という触媒生産性を、4147kg/m3のコーティング触媒密度、及び約20μmの測定値での平均コーティング厚を使用して、約2675W/m2という平均的な熱流束(q’)が得られる。この値は、この高度な発熱反応によって変換されたCO 1モルあたりに放出される165kJ/molの反応熱を使用して推定される。Bergman and Levineのテキストブック(Fundamentals ofheat Transfer,8th edition)の式5.62によって説明される非定常状態熱伝達を、一定の熱流束シナリオで使用し、以下に示す。この式は、フーリエ数(Fo)<0.2に対して有効であり、球状ペレット触媒の温度上昇を過小評価している。
【数8】
Fo>0.2及び球状ペレット形状の場合、Bergman及びLevineから表5.2bに定義される過渡商q*(Fo)を以下に示しており、ここで、rは触媒ペレットの半径であり、Foは、過渡時間を乗算して、有効熱伝達距離の2乗で除算する有効熱拡散率に等しい。熱流束(qs”)は、表面積当たりの反応熱放出から算出される。熱伝導率(k)は、複合試料の実効値である。計算されたTsは、時間=tでの過渡温度である。Tiは初期温度である。単位は全てSIである。
*(Fo)=(3Fo+1/5)-1
*=qs”xr/(k×(Ts-Ti)
球状粒子の過渡温度Tsの分解を以下に示す。
Ts=Ti+qs”xr/(kxq*
【0105】
アルファ(a)の値は、以下に定義される熱拡散率であり、ここで、kは熱伝導率、ρは密度、Cpは比熱容量である。界面層の有効な層特性は、その中の過渡温度変化を説明するために過渡方程式で使用される。
【数9】
有効な熱特性が使用され、式中、εは界面層の多孔性である。
eff=εkf+(1-ε)ks
(ρCpeff=e(ρCpf+(1-ε)(ρCps
250℃の基本温度を使用して、実施例9に記載したように結果を分析し、多孔性が0.4の中間層と、多孔性0.1の実質的に高密度の中間層とを比較する。
【0106】
一定の熱流束の場合、表14.1に見られるように、多孔性中間層では温度は速く上昇する。
【表14】
【0107】
図19に見られるように、ペレットの過渡温度は、多孔性が高いほどより速く上昇する。触媒生産性が高い実施例9の例示的な場合、1秒かけて温度は約2.2℃上昇するが、多孔性の少ない界面層は約1.5℃しか上昇しない。界面層の温度が高いと、ペレットの周りに温度が広がり、触媒全体の温度及び反応速度を上昇することを補助する。この温度上昇は、熱暴走を生じさせることなく、熱制御のままである。流れる反応物及び生成混合物への気相対流熱伝達を通じて、ならびにペレット(複数可)を介した反応器壁への効果的な半径方向伝導を通じて、熱がシステムから除去されるのに十分な時間があり、そこで熱が発熱反応器システムから除去される。
【0108】
実施例15.触媒厚の増大に伴う過渡熱応答
実施例6~12で試験した触媒は、測定した触媒厚が約20μmである。生産性をさらに高めるためには、より厚い触媒が有利であり得るが、過度の厚さでは堅牢性が低下するか、または反応器の熱暴走が生じると想定される。
【0109】
多孔性界面層上にコーティングされた平均触媒の厚さは50mmであると推定されて、1時間当たり触媒1g当たりのCO変換が19.7gという触媒生産性である比較の場合には、予想される過渡温度上昇を図20に示す。
【0110】
より多孔性の界面層を有する例示的な触媒システムは、より迅速に加熱され、ペレット周囲の外部熱除去とのバランスがとられて、高い発熱反応熱が除去され、熱制御維持される。
【0111】
実施例16.従来のペレットの過渡熱応答
ペレット全体に配置された活性触媒を有し、実施例9で測定されたものと同じ触媒生産性(1時間当たり触媒1g当たり19.7gのCOが変換された)を有する、平均直径300μmを有する従来のペレット触媒との比較を行い、予測される過渡温度の上昇を図21に示す。その結果、このペレットが、本発明の触媒が生産的に機能する条件下で熱暴走をする可能性があることが示唆される。2gCO変換/gcat/hの触媒生産性が低い場合は、活性がはるかに低い触媒ペレットFTシステムで反応熱を除去するのに十分な時間があり得ることを示す。触媒生産性が低いこの従来のペレットシステムは、安定した条件下で作動する可能性が高い。
【0112】
正味の結果は、高熱伝導性コアに高活性コーティング触媒を備えたFTシステムでは、ペレットが小型(図21に示すように、約150μm径、または直径300μm超)であっても、従来のペレットでは達成しそうにない安定したレベルの触媒生産性を達成できることを示している。そのような高活性の従来のペレットは、これらの小粒子がマイクロチャネルまたは同様の構成などの高熱効率反応器の内部に置かれたとしても、本発明のFTSコーティングペレット触媒で示される高い生産性レートで熱制御を維持しそうにない。この生産性の高い場合、熱伝達を制限するのは、触媒粒子自体の内部である。本発明のコーティングFT触媒システムは、この熱伝達の制限を克服し、好ましい触媒コーティングの範囲は約10~約100μmで、より好ましい範囲は約20~約50μmのコーティング厚で、高熱伝導性コア上に作動し、熱伝導率が2~50W/m・Kの範囲であり、より好ましい範囲は5~25W/m・Kであることが予想される。
【0113】
実施例17.他の触媒とのFT性能比較
実施例9に記載のコーティング触媒のフィッシャートロプシュ性能を、他のフィッシャートロプシュ反応器及び触媒の性能と比較する。表17.1では、本発明の触媒を、反応器の容積基準(1時間当たりの反応器容積1m3当たりのC5+のkg)で他と比較している。本発明のコーティングペレット触媒は、従来の反応器よりも高い体積生産性を有する。
【表15】
【0114】
表17.2に示すように、1時間当たり触媒1グラム当たりに変換されたg単位のCOに基づいて触媒を比較すると、本発明のFT触媒が先行技術よりも有意に優れていることが示される。この例示的なケースの触媒1グラム当たりの触媒活性は、マイクロチャネルFT触媒よりも大幅に上回る。19.7g/g/hという本発明の触媒の触媒生産性は、Inatec(2020)によって公開された最良の結果、及び最も高い理論上の場合(Daly et al,WO2012/107718)よりも3倍超高い。
【表16】
【0115】
先行技術の触媒は各々、式中のコバルトの量が異なっており、コバルト1グラム当たりで正規化すると、発明の触媒がかなり高い。本発明と比較した、公開されている触媒生産性を表17.4に示す。
【表17】
【0116】
実施例18.純粋水溶液に対して、グリセロール及びポリビニルアルコール(PVA)溶液を使用した場合の触媒コーティングの改善
コーティングの均一性及びフィッシャートロプシュ反応に対する触媒性能をさらに改善するために、触媒コーティングプロセスを改変した。新しい方法#2では、より完全な表面コーティングのために、コーティング厚の均一性が改善され、ペレット周囲のコーティングギャップを有する領域が少なくなり、コーティング品質が改善される。第2のコーティング方法の正味の結果は、改善されたFT合成性能であり、ここで、計算されたアルファ値で示される生成された炭化水素は、前の実施例で使用された方法#1のコーティングでは約0.84未満であったのと比較して、約0.88~0.94の範囲にある。
【0117】
材料及び化学物質
γ-アルミナ支持体(98%のAl23、PURALOX(登録商標)TH 100/150 L4)を、Sasolから得た。Co(NO32・6H2O(98%)及びペルレニン酸溶液(HO4Re、H2O中75~80重量%)を、Sigma-Aldrichから購入し、そのまま使用する。ペレットは、ケース2の合成プロトコルを用いて実施例1に記載されるようなコア材料であった。
【0118】
触媒の合成:30重量%のCo/4.5重量%のRe/γ-Al23触媒を、インシピエントウェットネス含浸法を用いて合成した。Al23支持体は、大気中、500℃で2時間、予備焼成し、乾燥器内に保管した。次に、46gのCo(NO32-6 H2O及び1.1mLのHO4Re溶液を、ストック溶液として22mLのH2Oに溶解させた。8mLのストック溶液を20gの事前に焼成したAl23支持体に、インシピエントウエットネス含浸法によって添加し、続いて90℃で8時間乾燥させ、大気中、350℃で3時間焼成した。ストック溶液のすべてが添加されるまで、同じ手順を、7mLのストック溶液をそのたびに固体混合物に加えて2回繰り返した。得られた粉末の重量は約35gであり、触媒のさらなる調製のためにCo-Re/Al23として表した。Co及びReのローディング比は、それぞれ30.3重量%、4.8重量%と推定された。
【0119】
コーティング方法#1:水性スラリーを使用したペレット上への触媒スラリーのディップコーティング手順。触媒スラリーを調製するために、3gのCo/Re/Al23触媒を17mLの水と共に3時間ボールミル粉砕した。次に、ペレット(通常は一度に5~10個のペレット)をスラリーにディップコーティングし、80℃で乾燥させて、薄いコーティングを作成した。ディップコーティングとそれに続く乾燥プロセスを約6回繰り返して、各ペレット上に約2.5mgの触媒コーティングを得た。次に、ペレットを550℃で4時間、空気中、5℃/分の傾斜率で焼成した。
【0120】
グリセロール及びPVAベースのスラリーを使用してペレット上に触媒スラリーをディップコーティングする手順のコーティング方法#2:2.5gのCo-Re/Al23触媒を、16mLの40重量%グリセロール溶液中で0.12gのPVAと共に4時間ボールミル粉砕して、触媒スラリーを調製した。通常、100個のペレットを80℃で触媒スラリーにディップコーティングして、薄いコーティングを作成した。ディップコーティングとそれに続く乾燥プロセスを約3回繰り返して、各ペレット上に約2.5mgの触媒コーティングを得た。次に、ペレットを550℃で4時間、空気中、5℃/分の傾斜率で焼成した。
【0121】
触媒評価:
フィッシャートロプシュ(FT)反応を、実施例3に記載した通りに行った。触媒の活性化は、管状炉内で2つの酸化還元サイクルを行い、そのそれぞれは2つのステップから構成された:第1のステップでは、触媒を1bar(50cm3-1)でN2中10%H2を用いて触媒を還元した。温度を、以下のようにプログラムした:室温~250℃まで0.5℃/分、30分間保持した後、0.5℃/分で400℃まで上昇させて10時間保持した。続いて、室温まで冷却しながらN2を導入した。第2のステップは、1bar(50cm3-1)のN2中1%O2で触媒を酸化させた。反応器を、2時間で維持された350℃まで2℃/分の速度で加熱した。次いで、反応器をN2を流しながら室温に冷却した。
【0122】
上記の2つのステップを繰り返して2回の酸化還元サイクルを完了した後、触媒を反応器の等温領域に移し、最終的な還元をin situで1bar(25cm3-1)のH2で、0.5℃/分の率で12時間、最大400℃まで行った。その後、温度は160℃まで低下させ、H2で全圧を20bargまで上昇させ、H2及びCO混合物に切り替えた。0.1℃分/分の加熱速度で合成温度に到達した。触媒活性及び生成物の選択性データは、2つのサンプリングループを装備したクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS、Agilent 7890A-5975)を用いてシステムが定常状態に達したとき、100時間超の最初の安定化相の後に状態の変化後に少なくとも12時間のTOSがかかった。GC-MSシステムと反応器の出口とを毛細管を通して接続し、重生成物の凝縮を避けるために加熱テープで200℃に維持した。軽ガス(最大C3)を、3 Foot及び9 Foot Hayesep Q 80/100(バックフラッシュモード)の2つの接続カラムを有する熱伝導度検出器(TCD)によって決定し、一方C4+炭化水素及びアルコールを、MS検出器及びDB-1キャピラリーカラムによって分析した。COの転化率は、全ての炭素生成物の合計及び炭素平衡から実施例5に記載のとおり算出した。
【0123】
結果及び考察:
図22のSEM画像は、コーティング方法#2が、コーティング方法#1と比較して、はるかに均一なコーティングをもたらしたことを示した。方法#1は、図22(A)の括弧で示されているコーティングされた触媒層、及び矢印で示されているペレットの非コーティング表面で「島」の形成につながる水性スラリーを使用した。EDX元素マッピングと重ね合わせた断面SEM画像によって、方法#2から得られた触媒コーティングにより、表18.1に示す方法#1に関して約5.6~37ミクロンの厚さ範囲から狭められた約15~23μmのコーティング厚範囲で、コーティングの均一性が改善されることが示された。
【表18】
【0124】
図23に示すように、方法#2で得られたより均一なコーティングペレットは、180~200℃の温度で同様の条件下で、C2-C12生成物の総アルファ値がより高くなった。コーティング方法#1由来のペレットは、0.65~0.83の範囲のアルファ値を示し、一方、コーティング方法#2由来のペレットは、0.88~0.94の範囲のアルファ値を示した。さらに、方法#2のペレットは、試験した全温度範囲にわたってCO2の選択性(<1.8%)及びCH4 の選択性(<14.3%)が抑制されたことに起因して、方法#1の対応物と比較してC2-C12パラフィンの選択性がはるかに改善されたことを示した。方法#2のペレット上のC2-C12オレフィン及びアルコールの選択性もまた、方法#1のペレット上のものよりも一般に低い。これらの結果によって、ペレット上のより均一にコーティングされた触媒層が、不均一にコーティングされた触媒層と比較して、C2-C12パラフィンのより選択的生成が有意に改善されたことが示される。
【0125】
合計100時間の操作後、各条件で少なくとも12時間の操作後の試験条件及び流量のCOの転化率を表18.2に示す。コーティングされた触媒の合計量は、ペレットコア上にコーティングされ、前の実施例において記載されるように4.04cm3の反応器容積で試験されたCo、Re、及び支持材料を含む108mgの活性物質であった。
【表19】
【0126】
実施例19.FT合成操作圧力の低下
一般に、フィッシャートロプシュ触媒の高品質の性能を得るために、動作圧力は少なくとも約20barg必要であることが知られている。前端圧力の低下がより高い平衡変換を可能にする、合成ガス生産のためのSMRまたはDRM前端プロセスと一致するように、FT合成反応器を低圧力で操作することが望ましい。理想的なプロセスでは、圧力は、フロントエンドDRM/SMRとFT合成との間の中間圧縮なしで動作するのに十分である。さらに、FT合成を2段階で操作し、ここでは第1のFT段階と第2のFT段階との間に水及び液体が凝縮されることが望ましい。第2の段階のFT合成の圧力は、追加のブースト圧縮機を回避するために、第1の段階のFT合成反応器よりも低いことが好ましい。この場合、FT合成プロセスで生成されるCH4及び/またはCO2をC5+炭化水素に変換するための全体的な炭素効率は、60%より大きく、より好ましくは65%より大きく、さらにより好ましくは70%より大きく、約60%~90%の範囲であってもよい。
【0127】
従来のFT合成固定層触媒では、触媒の導電性は低く、内部触媒部位の温度は、記録された壁またはガスの温度よりも最大数十℃高い。本発明の高導電性触媒は、発熱がより低くなり、触媒温度がより低くなる。高導電性ペレット上にコーティングされた本発明のFT触媒から生じる局所温度の低下により、触媒細孔内に形成される液膜は、従来の触媒ペレットから予想されるよりも低い圧力で安定したままであると予想される。
【0128】
例示的な触媒の結果から、CO変換率61.3%、メタン選択性10.3%、C2選択性2.7%、C3選択性1.4%、及びC5+炭化水素選択性7.6%について希釈剤なしの2:1という供給合成ガス比に基づいて生成物組成を算出した。残りのC5+ 選択性は76.6%であり、残りの炭素質種は、CO2 、またはその他の微量のアルコール及びアルデヒドである。生成されたC5+の画分を、Anderson-Schulz-Flory(ASF)分布で決定されるαを使用して、C5-C30の推定炭素種に調整した。得られた組成を、VLEフラッシュ計算を使用して分析し、反応器の温度及び圧力の関数として残存する液体の割合を評価した。
【0129】
図24では、液体の体積分率0.8の代表的なアルファは、215~240℃の温度に対して4~20bargと予測される。230℃で0.8というアルファで作動する触媒の場合、本発明の触媒では、作動圧力を20bargから約16bargに低減させることができると予想される。
【0130】
図25では、液体の体積分率0.825の代表的なアルファは、215~255℃の温度に対して4~20bargと予測される。230℃において0.825というアルファで作動する本発明の触媒の場合、優れた結果を依然として得ながら、本発明の触媒用に動作圧力を20bargから約8bargに低減させることができると予想される。
【0131】
図26では、液体の体積分率という0.85の代表的なアルファは、215~265℃の温度に対して4~20bargと予測される。230℃で0.85のアルファで作動する本発明の触媒の場合、作動圧力を20bargから約4bargに低減させることができると予想される。
【0132】
図27は、アルファが0.8~0.85までの圧力(barg)に対して215℃で、保持された液体画分にアルファが与える影響を示す。アルファが高いほど、本発明の触媒構造によって可能にされるとおり、安定した液膜を保持するために圧力の減少が大きくなることが予想される。
【0133】
実施例9の結果によって、20bargの圧力で作動する反応器について、測定された実験的アルファレベルが、255℃で0.806、245℃で0.816、及び240℃で0.838であることが示された。上昇した温度での高いアルファの値によって、圧力がさらに低減する可能性があり、アルファの値が高いほど予想されるより大きな低減が予想されることが示唆される。
【0134】
実施例18に記載の改変された触媒コーティングプロトコルは、最大約0.94のアルファを示す。高いアルファレベルで作動するコーティングFT合成触媒は、より低い作動圧力で作動できるはずであることが予想される。操作FT圧力の低下は、DRM及びまたはSMRのワンススループロセスで合成ガスを生成し、その後、連続して1段階または2段階のFT合成を行うことを可能にし得る。あるいは、本発明の触媒を使用するFT合成及び/またはSMR/DRMプロセスは、代替的に段階間分離及び熱交換も含み得るリサイクルモードで操作されてもよい。
【0135】
方法#2のコーティングプロセスを使用して作製されたFT合成触媒は、より高いプロセスアルファに起因する約280℃程度の高温で機能することが予想される。動作圧力は6barg程度の低さまで低下すると予想される。FT合成反応条件下で液体の体積分率が約1×10-5を超えるときに、触媒の表面に十分な液体膜が保持されている場合、圧力を低温でより低下させることができ、安定した方法で操作することができることがさらに予想される。
【0136】
実施例20.活性試験
触媒生産性をg/g/h単位で測定するための性能試験は、コバルトを含むFT合成触媒を使用して行う必要がある。ペレット形態の触媒を管状反応器内に充填し、相変化を受ける水の質量分率が最大約10%未満に維持される水の部分的な沸騰、または高温の油もしくは熱伝達流体(油の速度は約1m/sを上回る)の対流のいずれかによって達成されるような、反応器の長さに沿った十分な熱を除去する。触媒ペレットは、管径あたり約3の平均粒子径で十分に充填される。試験用の管は、コバルトまたは他の金属と、活性触媒が配置される高表面積の支持材料とによって測定して、約1グラムの活性触媒を収容する必要がある。操作の前に、触媒を、以下に記載する複数の交互の還元及び酸化ステップを使用して還元する。
【0137】
触媒の活性化は、管状炉内で2つの酸化還元サイクルを用いて行われ、そのそれぞれは2つのステップからなる:第1のステップは、10%のH2を含むN2で、1bar(触媒1グラムあたり0.5L分-1)で触媒を還元する。温度は、以下のように、プログラムされる:室温~250℃まで0.5℃/分、30分間保持した後、0.5℃/分で400℃まで上昇させて10時間保持する。室温まで冷却する間にN2を導入する。第2のステップは、1bar(触媒1グラム当たり0.5L分-1)のN2中1%O2で触媒を酸化させる。反応器を2℃/分の速度で350℃まで加熱し、2時間保持する。次いで、反応器を、少なくとも毎分1リットルでN2を流すことによって、室温まで冷却する。上記の2つのステップを繰り返して2つの酸化還元サイクルを完了した後、その触媒を反応器の等温領域に移し、最終的な還元をin situで1bar(触媒1グラムあたり0.25L分-1)のH2で、0.5℃/分の速度で、最大400℃まで12時間行う。
【0138】
最終的な還元ステップの後、温度を160℃まで傾斜して低下させ、H2で全圧を20bargまで上昇させた後、2:1の供給比でH2及びCO合成ガス混合物と交換する。合成ガスの始動流量は、触媒1グラム当たり約18L/hであるべきである。温度を0.5℃/分の速度で160℃から180℃に上昇させ、100時間保持する。その温度を同じ速度で5℃まで上昇させ、温度が210℃に達するまでさらに24時間繰り返し保持し、COの変換を測定する。始動後、触媒性能は反復的にゆっくりと増大する。流量または温度のいずれかを各変更した後、反応器を24時間保持して性能を安定させる。
【0139】
COの変換が30%未満の場合、温度を0.5℃/分で5℃ごとに上昇させ、変換が30%を超えるが60%を超えないまで24時間保持する。変換が30%を超える場合、総ガス流量は2倍になり、すなわち18~36L/h/gcatである。0.5℃/分の同じ速度で5℃まで温度を上昇させ、変換が再び30%を超えるが60%を超えないまで24時間保持する。少なくとも300L/h/グラムの触媒まで総ガス流量を20~50%増加させて、この反復を続ける。少なくとも240℃まで温度を上昇させ、触媒1グラム当たり1時間あたりのC5+に変換されたCOのg単位での触媒生産性が少なくとも2を超える。温度及びガス流量のさらなる上昇は、触媒生産性が約2~30g/g/hになるように維持される。COの変換が30%を超える場合、その後の温度上昇を約2℃に制限し、続いて24時間保持する必要がある。測定されたメタン選択性は約15%未満である。触媒生産性は、CO変換率が少なくとも約60%~約80%未満であるときに測定すべきである。
【0140】
触媒が少なくとも2g/g/hの生産性で動作しているときに液体を回収し、FTS用の高温蒸留カラムを用いて分析する。液体炭化水素のアルファは、実施例5に記載の炭化水素分布データから算出し、高生産性触媒については、アルファは0.8を超え、メタン選択性は15%未満である。
【0141】
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図1
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【国際調査報告】