(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-17
(54)【発明の名称】電解液、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0569 20100101AFI20250109BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20250109BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20250109BHJP
【FI】
H01M10/0569
H01M10/052
H01M10/0568
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539867
(86)(22)【出願日】2022-07-29
(85)【翻訳文提出日】2024-07-01
(86)【国際出願番号】 CN2022108958
(87)【国際公開番号】W WO2024021020
(87)【国際公開日】2024-02-01
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524304976
【氏名又は名称】香港時代新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】CONTEMPORARY AMPEREX TECHNOLOGY (HONG KONG) LIMITED
【住所又は居所原語表記】LEVEL 19, CHINA BUILDING, 29 QUEEN’S ROAD CENTRAL, CENTRAL, CENTRAL AND WESTERN DISTRICT, HONG KONG, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100159329
【氏名又は名称】三縄 隆
(72)【発明者】
【氏名】王 瀚森
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 成勇
(72)【発明者】
【氏名】▲謝▼ ▲張▼荻
(72)【発明者】
【氏名】黄 ▲聖▼源
(72)【発明者】
【氏名】胡 波兵
【テーマコード(参考)】
5H029
【Fターム(参考)】
5H029AJ05
5H029AJ12
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL01
5H029AL06
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM02
5H029AM04
5H029AM07
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ10
(57)【要約】
本願は電解液を提供し、式Iに示される第1の溶媒と式II、式IIIのうちの1種または複数種から選ばれる第2の溶媒とを含み、ただし、R
1はC1-C6のフルオロ鎖アルキル基から選ばれ、R
2は水素原子、C1-C6の鎖アルキル基またはC1-C6のフルオロ鎖アルキル基から選ばれ、nは1または2を示し、R
3~R
10はそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子、C1-C6の鎖アルキル基またはC1-C6のフルオロ鎖アルキル基から選ばれる。本願による電解液は、電池の循環安定性と安全性を改善することができる。本願はさらに上記電解液を含む二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解液であって、
第1の溶媒であって、式Iに示され、
【化1】
ただし、
R
1はC1-C6のフルオロ鎖アルキル基から選ばれ、
R
2は水素原子、C1-C6の鎖アルキル基及びC1-C6のフルオロ鎖アルキル基から選ばれ、
nは1または2を示す、前記の第1の溶媒と、
第2の溶媒であって、式IIと式III化合物のうちの1種または複数種から選ばれ、
【化2】
ただし、
R
3~R
10はそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子、C1-C6の鎖アルキル基及びC1-C6のフルオロ鎖アルキル基から選ばれる、前記の第2の溶媒と、を含む、電解液。
【請求項2】
前記式Iでは、R
1はC1-C3のフルオロ鎖アルキル基から選ばれ、好ましくはフルオロメチルであり、及び/又は、R
2は水素原子、C1-C3の鎖アルキル基及びC1-C3のフルオロ鎖アルキル基から選ばれ、好ましくは、水素原子、メチル、フルオロメチル、エチル及びフルオロエチルから選ばれる請求項1に記載の電解液。
【請求項3】
前記式IIでは、R
3~R
8はそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子及びC1-C6のフルオロ鎖アルキル基から選ばれ、好ましくは、水素原子、フッ素原子及びC1-C3のフルオロ鎖アルキル基から選ばれ、及び/又は
式IIIでは、R
9~R
10はそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子及びC1-C6の鎖アルキル基から選ばれ、好ましくは、水素原子、フッ素原子、C1-C3の鎖アルキル基及びC1-C3のフルオロ鎖アルキル基から選ばれ、より好ましくは、R
9~R
10はそれぞれ独立して水素原子またはフッ素原子から選ばれる請求項1または2に記載の電解液。
【請求項4】
前記第1の溶媒と第2の溶媒の重量比は0.5~3、好ましくは0.7~1.5、より好ましくは0.9~1.1である請求項1~3のいずれか1項に記載の電解液。
【請求項5】
酸化防止剤をさらに含み、好ましくは、前記酸化防止剤は硝酸リチウム、過塩素酸リチウムのうちの少なくとも1種から選ばれる請求項1~4のいずれか1項に記載の電解液。
【請求項6】
前記酸化防止剤の濃度は電解液の総重量に基づき0.5重量%~3重量%、好ましくは0.7重量%~1.5重量%、より好ましくは0.9重量%~1.1重量%である請求項5に記載の電解液。
【請求項7】
含フッ素電解質塩をさらに含み、好ましくは、前記含フッ素電解質塩は、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、六フッ化リン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、六フッ化ヒ酸リチウム、ビストリフルオロメタンスルホニルイミドリチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、二フッ化リン酸リチウム、二フッ化シュウ酸ホウ酸リチウム、二フッ化ビス(シュウ酸)リン酸リチウム及び四フッ化シュウ酸リン酸リチウムのうちの少なくとも1種から選ばれ、より好ましくは、前記含フッ素電解質塩はリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドである請求項1~6のいずれか1項に記載の電解液。
【請求項8】
前記含フッ素電解質塩の濃度は0.5M~3M、好ましくは1Mである請求項7に記載の電解液。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の電解液を含む二次電池。
【請求項10】
請求項9に記載の二次電池を含む電池モジュール。
【請求項11】
請求項10に記載の電池モジュールを含む電池パック。
【請求項12】
電力消費装置であって、請求項9に記載の二次電池、請求項10に記載の電池モジュールまたは請求項11に記載の電池パックのうちから選ばれる少なくとも1種を含む電力消費装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願はリチウム電池技術の分野に関し、特に電解液、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、家電製品、電気自動車及びエネルギー貯蔵などの多くの分野で広く使用されている。一般的なリチウムイオン二次電池について、そのエネルギー密度の改善は理論的限界に近づいている。今後、高航続電気自動車、電動飛行機など、より高いエネルギー密度の需要を満たすシーンでの応用に対応するために、より高いエネルギー密度の潜在力のある二次電池、例えば、金属リチウム負極と三元系などの高圧正極を適合させる金属リチウム二次電池の開発が求められている。しかしながら、金属リチウム負極は高い反応活性を有し、電解液と自発的に反応しやすく、機械的強度、化学的安定性ともによくない固体電解質界面層(SEI)を生成し、デンドライト状の成長形態を引き起こすため、循環能力が悪く、安全リスクがあり、急速なリチウム源の消費による寿命の低下がある。
【0003】
金属リチウム電池の循環能力を高めるには、電解液の設計と最適化が非常に重要である。しかしながら、従来の技術では、電解液が金属リチウム負極二次電池で体系的な「一過性」の過充電問題を起こし、抑制しにくい電池管理の難しさと安全リスクをもたらす可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願は、上記の問題を鑑みて、過充電現象を回避でき、リチウムイオン二次電池の循環安定性と安全性を改善するとともに、循環寿命を延長することができる電解液を提供することを目的とする。
【0005】
上記の目的を達成するために、本願は、電解液、該電解液を含む二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願による第1の態様は、電解液を提供し、
第1の溶媒であって、式Iに示され、
【化1】
ただし、
R
1はC1-C6のフルオロ鎖アルキル基から選ばれ、
R
2は水素原子、C1-C6の鎖アルキル基及びC1-C6のフルオロ鎖アルキル基から選ばれ、
nは1または2を示す、前記の第1の溶媒と、
第2の溶媒であって、式IIと式IIIの化合物のうちの1種または複数種から選ばれ、
【化2】
ただし、
R
3~R
10はそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子、C1-C6の鎖アルキル基及びC1-C6のフルオロ鎖アルキル基から選ばれる、前記の第2の溶媒と、を含む。本願による電解液は、二次電池の長循環における「一過性」の過充電問題を回避でき、循環安定性と安全性を改善することができる。なお、本願による電解液は、高い酸化安定性を有し、金属または合金負極二次電池の循環寿命を向上させることができる。
【0007】
任意の実施形態において、前記式Iでは、R1はC1-C3のフルオロ鎖アルキル基から選ばれ、好ましくはフルオロメチルであり、及び/又は、R2は水素原子、C1-C3の鎖アルキル基及びC1-C3のフルオロ鎖アルキル基から選ばれ、好ましくは、水素原子、メチル、フルオロメチル、エチル及びフルオロエチルから選ばれる。
【0008】
任意の実施形態において、前記式IIでは、R3~R8はそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子及びC1-C6のフルオロ鎖アルキル基から選ばれ、好ましくは、水素原子、フッ素原子及びC1-C3のフルオロ鎖アルキル基から選ばれ、及び/又は前記式IIIでは、R9~R10はそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子、C1-C6の鎖アルキル基及びC1-C6のフルオロ鎖アルキル基から選ばれ、好ましくは、水素原子、フッ素原子、C1-C3の鎖アルキル基及びC1-C3のフルオロ鎖アルキル基から選ばれ、より好ましくは、R9~R10はそれぞれ独立して水素原子とフッ素原子から選ばれる。
【0009】
上記第1及び第2の溶媒を更に選択することにより、電解液が高い酸化安定性を有し、過充電を回避し、循環寿命を改善する。
【0010】
任意の実施形態において、前記第1の溶媒と第2の溶媒の重量比は0.5~3、好ましくは0.7~1.5、より好ましくは0.9~1.1である。2種の溶媒の重量比を上記範囲内にすれば、過充電を回避でき、電解質塩の電解液への良好な溶解を確保し、電解液に優れた抗酸化能力と長い循環寿命をもたらす。
【0011】
任意の実施形態において、前記電解液は酸化防止剤をさらに含み、好ましくは、前記酸化防止剤は、硝酸リチウム、過塩素酸リチウムのうちの少なくとも1種から選ばれる。酸化防止剤の添加は、循環寿命の更なる向上に寄与する。
【0012】
任意の実施形態において、前記酸化防止剤の濃度は電解液の総重量に基づき0.5重量%~3重量%、好ましくは0.7重量%~1.5重量%、より好ましくは0.9重量%~1.1重量%である。酸化防止剤の添加は、酸化安定性の臨界電圧値を更に向上させるとともに、循環寿命をさらに延長することができる。同時に、酸化防止剤の含有量を上記範囲内にすれば、上述の効果を十分に発揮するとともに、リチウムイオンの正常な輸送に過剰な影響を与え、循環寿命の低下を招くことを避けることができる。
【0013】
任意の実施形態において、前記電解液は含フッ素電解質塩をさらに含み、好ましくは、前記含フッ素電解質塩は、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、六フッ化リン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、六フッ化ヒ酸リチウム、ビストリフルオロメタンスルホニルイミドリチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、二フッ化リン酸リチウム、二フッ化シュウ酸ホウ酸リチウム、二フッ化ビス(シュウ酸)リン酸リチウム及び四フッ化シュウ酸リン酸リチウムのうちの少なくとも1種から選ばれ、より好ましくは、前記含フッ素電解質塩はリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドである。上記電解質塩を採用すれば、負極界面の安定性の向上や、循環性能の改善に寄与する。
【0014】
任意の実施形態において、前記含フッ素電解質塩の濃度は0.5M~3M、好ましくは1Mである。該濃度の電解質塩は、循環性能の更なる改善に寄与する。
【0015】
本願の第2の態様は、本願の第1の態様による電解液を含む二次電池を提供する。
【0016】
本願の第3の態様は、本願の第2の態様による二次電池を含む電池モジュールを提供する。
【0017】
本願の第4の態様は、本願の第3の態様による電池モジュールを含む電池パックを提供する。
【0018】
本願の第5の態様は、本願の第2の態様による二次電池、第3の態様による電池モジュールまたは第4の態様による電池パックから選ばれる少なくとも1種を含む電力消費装置を提供する。
【0019】
本願の電解液は、リチウムイオン二次電池の循環安定性を改善し、循環寿命を延長し、過充電現象を回避し、電池安全性能を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】従来技術の電解液を含む二次電池の循環寿命図である。
【
図2】従来技術の電解液の酸化安定性のテスト結果である。
【
図3】通常のエーテル系電解液とフッ素系電解液の酸化安定性のテスト結果である。
【
図4】本願の一実施形態による電解液を含む二次電池の循環寿命図である。
【
図5】比較例1の二次電池の循環電圧-容量曲線である。
【
図6】比較例2の電解液を含む二次電池を含む循環寿命図である。
【
図7】比較例3の電解液を含む二次電池の循環寿命図である。
【
図8】比較例4の電解液を含む二次電池の循環寿命図である。
【
図9】比較例5の電解液を含む二次電池の循環寿命図である。
【
図10】比較例6の電解液を含む二次電池の循環寿命図である。
【
図11】本願の一実施形態による二次電池の模式図である。
【
図12】
図11に示す本願の一実施形態による二次電池の分解図である。
【
図13】本願の一実施形態による電池モジュールの模式図である。
【
図14】本願の一実施形態による電池パックの模式図である。
【
図15】
図14に示す本願の一実施形態による電池パックの分解図である。
【
図16】本願の一実施形態による二次電池を電源として用いる電力消費装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を適切に参照して本願の電解液、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電気装置を具体的に開示した実施形態を詳細に説明する。しかし、必要ではない詳細な説明を省略する場合がある。例えば、すでに知られている事項の詳細な説明や、実際に同じ構造の重複した説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、図面及び以下の説明は、当業者が本願を十分に理解するために提供され、請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0022】
本願で開示された「範囲」は下限と上限の形態で限定され、所定の範囲は1つの下限と1つの上限を選択して限定され、選択された下限と上限によって特別な範囲の境界が限定される。このように限定される範囲は、境界値を含むものであっても、境界値を含まないものであってもよく、且つ任意に組み合わせることができ、即ち、任意の下限は任意の上限と組み合わせて1つの範囲を形成することができる。例えば、特定のパラメータに対して60-120と80-110の範囲がリストされている場合、60-110と80-120の範囲も予想されると理解される。なお、最小範囲値1と2、最大範囲値3、4及び5がリストされていると、以下の範囲、1-3、1-4、1-5、2-3、2-4及び2-5はすべて予想できる。本願では、他の説明がない限り、数値の範囲「a-b」は、aからbまでの任意の実数の組み合わせの省略表現を示し、aとbの両方が実数である。例えば数値範囲「0-5」は、本明細書でリストされている「0-5」の間のすべての実数を示し、「0-5」は、ただこれらの数値の組み合わせの省略表現である。また、あるパラメータが≧2の整数を示すと、該パラメータは、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12などの整数である。
【0023】
特別な説明がない限り、本願の全ての実施形態及び好ましい実施形態は互いに組み合わせて新しい技術的解決手段を形成することができる。
【0024】
特別な説明がない限り、本願の全ての技術的特徴及び好ましい技術的特徴は互いに組み合わせて新しい技術的解決手段を形成することができる。
【0025】
特別な説明がない限り、本願の全てのステップは順番に行っても、ランダムに行ってもよく、順番に行うことが好ましい。例えば、前記方法はステップ(a)と(b)を含むのは、前記方法が順番に行われるステップ(a)と(b)を含んでもよく、順番に行われるステップ(b)と(a)を含んでもよいことを示す。例えば、以上で言及された前記方法はステップ(c)を含んでもよいのは、ステップ(c)を任意の順番で前記方法に加えることができることを示し、例えば、前記方法はステップ(a)、(b)及び(c)を含んでもよく、ステップ(a)、(c)及び(b)を含んでもよく、ステップ(c)、(a)及び(b)を含んでもよい。
【0026】
特別な説明がない限り、本願で言及された「備える」と「含む」は、非限定的なものであっても、限定的なものであってもよいことを示す。例えば、前記「備える」と「含む」は、リストされていない他の成分をさらに備えるまたは含むことができ、リストされた成分のみを備えるまたは含むことができる。
【0027】
特別な説明がない限り、本願において、「または」という用語は包括的である。例えば、「AまたはB」という単語は、「A、B、またはAとBの両方」を示す。より具体的に、以下の、Aが真(または存在する)で且つBは偽(または存在しない)である条件、Aは偽(または存在しない)であるが、Bが真(または存在する)である条件、またはAとBの両方とも真(または存在する)である条件のいずれかがいずれも「AまたはB」という条件を満たす。
【0028】
二次電池は、家電製品、電気自動車及びエネルギー貯蔵などの多くの分野で広く使用されている。一般的なリチウムイオン二次電池について、そのエネルギー密度の改善は理論的限界に近づいている。今後、高航続電気自動車、電動飛行機など、より高いエネルギー密度の需要を満たすシーンでの応用に対応するために、より高いエネルギー密度の潜在力のある二次電池、例えば、金属又は合金負極イオン二次電池の開発が求められている。
【0029】
しかしながら、既知のように、金属又は合金負極は高い反応活性を有し、良好な固体電解質界面層(SEI)を生成しにくく、デンドライト状の成長形態を引き起こすため、循環能力が理想的ではなく、安全リスクがあり、活性イオンを急速に消費することによる寿命の低下がある。
【0030】
金属と合金負極二次電池の循環能力を向上させるには、電解液の設計が非常に重要である。多くのエーテル系電解液、特にエーテル系による局所高濃度電解液は、近年、金属負極二次電池系に応用され、良好な効果が得られている。
【0031】
しかしながら、発明者は、従来技術のエーテル系電解液をさらに評価する過程で、従来の局所高濃度の電解液を金属負極二次電池(例えば、金属-リチウム遷移金属酸化物電池)に用いた場合、二次電池は長循環(即ち、50サイクル以上の循環)過程で体系的な過充電問題が発生することを発見した。既知の電池過充電現象と異なり、このような過充電現象は「一過性」である。換言すれば、このような過充電問題は、循環過程で短時間内(または一定の循環サイクル数範囲内)にしか発生せず、その後、正常な循環状態に戻る。例えば、
図1に示すように、従来技術の電解液(例えば、LiFSI-DME-TTE体系)を含む二次電池は長循環過程において、一定の循環サイクル数範囲内(
図1に示すように、40-65回程度)で充電容量は定格容量を超えるが、放電容量は正常に保持されるか、わずかに低下する過充電現象が発生し、このサイクル数範囲の後に循環を続けると、上記の過充電現象が次第に弱くなり、消失してひいては正常な循環状態に戻る。発明者は、現在の研究に基づいて、このような「一過性」過充電現象はセルの循環寿命を著しく短縮したり、性能を低下させたりしないかもしれないと考えているが、そのため、一定の隠蔽性を有し、発見されにくい。
【0032】
しかし、金属負極二次電池におけるこのような一過性の過充電問題は非常に重視されるべきである。特に、ところで、単一のセルの「一過性」の過充電はほとんど影響がないように見えるが、電池モジュール製品には直列に組み立てられた同種のセルが多く含まれているため、このような大量のセルが循環過程でこの一過性の過充電を起こすと、電圧が安全範囲を超え、発熱、ガスと電池の副反応を引き起こすことになり、これらから分かるように、このとき、該過充電問題は、抑制しにくい電池管理の難しさと安全リスクを引き起こす可能性がある。このため、このような「一過性」の過充電問題は、隠蔽性があるが、早急に解決しなければならない。本願以前に、従来技術ではこのような特殊な過充電現象の存在は認識されておらず、電池の安全管理における潜在的な危害性も認識されていなかった。
【0033】
上記問題を解決するために、本願は、電解液を提供し、上記「一過性」の過充電問題を回避し、金属または合金負極二次電池の安全性を向上させ、循環性能を改善することができる。
【0034】
電解液
本願の一実施形態において、電解液を提供し、
第1の溶媒であって、式Iに示され、
【化3】
ただし、
R
1はC1-C6のフルオロ鎖アルキル基から選ばれ、
R
2は水素原子、C1-C6の鎖アルキル基及びC1-C6のフルオロ鎖アルキル基から選ばれ、
nは1または2を示す、前記の第1の溶媒と、
第2の溶媒であって、式IIと式IIIの化合物のうちの1種または複数種から選ばれ、
【化4】
ただし、
R
3~R
10はそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子、C1-C6の鎖アルキル基及びC1-C6のフルオロ鎖アルキル基から選ばれる、前記の第2の溶媒と、を含む。
【0035】
本願による電解液は二次電池、特に金属または合金負極のリチウムイオン二次電池の長循環における上記「一過性」の過充電問題を回避でき、これにより電池の循環安定性と安全性を改善するとともに、本願による電解液は、高い酸化安定性を有し、金属または合金負極二次電池の循環寿命を向上させることができる。
【0036】
いかなる理論によっても制限されることを望まないが、本発明者らは、従来技術におけるエーテル系電解液の本質的な抗酸化能力がそれほど悪くないことを発見し、例えば、Li-Al電池の走査ボルタンメトリー(LSV)試験におけるジメチルエーテル(DME)-1,1,2,2-ジフルオロエチル-2,2,3,3-ジフルオロプロピルエーテル(TTE)電解液系の酸化安定ウィンドウは5.3V(
図2参照)に達することができ、しかし、該電解液は例えばLi-NMC811セルに適用して長循環を行うと、例外なく、前述「一過性」の過充電問題(例えば、下記の比較例3と
図7参照)が発生する。本願の電解液は、良好な耐酸化性を有し、該「一過性」の過充電現象の発生を効果的に回避することができる。
【0037】
幾つかの実施形態において、前記式Iでは、R1は、C1-C3のフルオロ鎖アルキル基から選ばれ、好ましくはフルオロメチルである。幾つかの実施形態において、R1はモノフルオロメチルまたはジフルオロメチルであることがより好ましい。幾つかの実施形態において、前記式Iでは、R2は水素原子、C1-C3の鎖アルキル基及びC1-C3のフルオロ鎖アルキル基から選ばれ、好ましくは、水素原子、メチル、フルオロメチル、エチル及びフルオロエチルから選ばれる。幾つかの実施形態において、R2は、水素原子、メチル、モノフルオロメチル、ジフルオロメチル、エチル、モノフルオロエチル及びジフルオロエチから選ばれることがより好ましい。
【0038】
幾つかの実施形態において、前記式Iの第1の溶媒は、以下の化合物
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
から選ばれる。
【0039】
幾つかの実施形態において、前記式Iの第1の溶媒は、式I-1~I-16、及び式I-60~I-71のうちの少なくとも1種から選ばれ、より好ましくは、式I-2とI-65のうちの少なくとも1種である。
【0040】
本願における第1の溶媒として、炭素鎖の長さが長い及び/又はフッ素含有量が高い鎖アルキル基を有するエーテルよりも、炭素鎖の長さが小さく(例えば、C1-3の鎖アルキル基)、フッ素含有量があまり高くない(例えば、モノフルオロまたはジフルオロ)のエーテルがより好ましい。第1の溶媒は、電解液に高い沸点と高い酸化安定性をもたらし、その正極側の酸化安定性を高めることができ、また、第1の溶媒は電解質塩に対して良好な溶解能力(例えば、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)の第1の溶媒中の溶解濃度が2M以上にすることができる)を有する。同時に、第1の溶媒を単独で使用し、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド塩濃度1Mで、Li-AlハーフセルLSV試験の電解液の酸化安定性は少なくとも約5.3V(
図3参照)に達する。
【0041】
式II及び式IIIに示すような第2の溶媒は、電解質リチウム塩を溶解しないかまたはわずかに溶解し、相分離することなく、任意の割合で第1の溶媒と互いに溶解することができる。
【0042】
幾つかの実施形態において、前記式IIでは、R3~R8はそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子及びC1-C6のフルオロ鎖アルキル基から選ばれる。好ましくは、R3~R8はそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子及びC1-C3のフルオロ鎖アルキル基から選ばれる。幾つかの実施形態において、前記式IIでは、R3~R8はそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子及びフルオロメチルから選ばれる。
【0043】
幾つかの実施形態において、前記式IIの溶媒は、以下の化合物
【化9】
から選ばれる。
【0044】
幾つかの実施形態において、前記式IIの第2の溶媒は、ジフルオロベンゼン、フルオロメチルベンゼンのうちの少なくとも1種から選ばれ、好ましくは、ジフルオロベンゼン及びトリフルオロメチルベンゼンのうちの少なくとも1種から選ばれ、より好ましくは、式II-7、II-8、II-9及びII-12の化合物のうちの少なくとも1種から選ばれる。
【0045】
幾つかの実施形態において、前記式IIIでは、R9~R10はそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子、C1-C6の鎖アルキル基及びC1-C6のフルオロ鎖アルキル基から選ばれる。幾つかの実施形態において、好ましくは、R9~R10はそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子、C1-C3の鎖アルキル基及びC1-C3のフルオロ鎖アルキル基から選ばれる。幾つかの実施形態において、より好ましくは、R9~R10はそれぞれ独立して水素原子またはフッ素原子から選ばれる。
【0046】
本明細書に記載のフルオロ鎖アルキル基における、鎖アルキル基の1つまたは複数の水素原子は、それぞれ独立してフッ素原子で置換される。
【0047】
幾つかの実施形態において、式IIIの溶媒は、以下の化合物
【化10】
から選ばれる。
【0048】
幾つかの実施形態において、前記式IIIの第2の溶媒は、フルオロメトキシベンゼンから選ばれ、好ましくは、式III-1、III-2及びIII-3の化合物のうちの少なくとも1種から選ばれる。幾つかの実施形態において、前記式IIIの第2の溶媒は式III-3の化合物である。
【0049】
幾つかの実施形態において、前記第2の溶媒は式IIIの化合物である。
【0050】
本願において、第1の溶媒と第2の溶媒を配合することで、過充電現象の発生を避けることができる。また、第2の溶媒はベンゼン環構造を有し、共役の大きなπ結合は、溶媒分子が電気化学的過程で電子を失うのを抑制するのに役に立ち、さらに、電解液の抗酸化能力の向上に役に立ち、ベンゼン環と酸素原子が直接連結すると、酸素原子の電子雲も引き寄せられ、ベンゼン環の共役結合に添加され、その耐酸化能力も更に向上する。
【0051】
幾つかの実施形態において、前記第1の溶媒と第2の溶媒の重量比は0.5~3、好ましくは0.7~1.5、より好ましくは0.9~1.1である。幾つかの実施形態において、前記第1の溶媒と第2の溶媒の重量比は1である。2種の溶媒の重量比を上記範囲内にすれば、一過性の過充電現象の発生を回避でき、電解質塩の電解液への良好な溶解を確保し、電解液に優れた抗酸化能力と長い循環寿命をもたらす。
【0052】
幾つかの実施形態において、本願の電解液は酸化防止剤をさらに含み、好ましくは、前記酸化防止剤は硝酸リチウム、過塩素酸リチウムのうちの少なくとも1種から選ばれる。幾つかの実施形態において、前記酸化防止剤は硝酸リチウムである。第1、第2の溶媒及び酸化防止剤の三者を組み合わせて使用すると、金属リチウム負極二次電池、特に金属リチウム負極-三元正極二次電池の長循環過程における過充電現象を効果的に回避できる。上記抗酸化添加剤(特に電解液中のフッ素エーテル系化合物と組み合わせる)を添加すると、正極と電解液の界面で局所的な溶媒和構造を変化することができ、その陰イオン部分(例えば硝酸根と過塩素酸根)は、充電中に三元正極表面の電気二重層に吸引され、且つ活性イオン(例えば、リチウムイオン電池の場合、リチウムイオン)とより密接に結合し、電気二重層中の活性イオンの周囲の溶媒分子の関与度合いを低減し、これにより、溶媒分子と三元正極との接触を減少し、溶媒分子が遷移金属で触媒酸化されることを低減し、正極を更に保護して、循環寿命を延長する。
【0053】
幾つかの実施形態において、前記酸化防止剤の濃度は電解液の総重量に基づき0.5重量%~3重量%、好ましくは0.7重量%~1.5重量%、より好ましくは0.9重量%~1.1重量%である。酸化防止剤の添加は、酸化安定性の臨界電圧値を更に向上させるとともに、循環寿命をさらに延長することができる。同時に、酸化防止剤の含有量を上記範囲内にすれば、以上の効果を十分に発揮するとともに、リチウムイオンの正常な輸送に過剰な影響を与え、循環寿命の低下を招くことを避けることができる。
【0054】
幾つかの実施形態において、本願の電解液は、含フッ素電解質塩をさらに含み、好ましくは、前記含フッ素電解質塩は、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、六フッ化リン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、六フッ化ヒ酸リチウム、ビストリフルオロメタンスルホニルイミドリチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、二フッ化リン酸リチウム、二フッ化シュウ酸ホウ酸リチウム、二フッ化ビス(シュウ酸)リン酸リチウム及び四フッ化シュウ酸リン酸リチウムのうちの少なくとも1種から選ばれる。幾つかの実施形態において、好ましくは、前記含フッ素電解質塩はリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドである。上記含フッ素電解質塩は、本発明の電解液中(特に第1の溶媒)で良好な溶解性を有し、また、金属または合金負極(例えば、金属リチウム負極)の表面で分解して無機フッ素リッチなSEI成分を形成することができ、負極界面の安定性を改善し、金属または合金負極二次電池の循環寿命の更なる改善に有利である。
【0055】
幾つかの実施形態において、前記含フッ素電解質塩の濃度は0.5M~3M、好ましくは1Mである。上記濃度を採用すると、二次電池の循環寿命を改善することができる。
【0056】
幾つかの実施形態において、前記電解液は添加剤をさらに含むことが好ましい。例えば添加剤は負極膜形成添加剤、正極膜形成添加剤を含んでよく、電池のある性能を改善できる添加剤、例えば電池の過充電性能を改善する添加剤、電池の高温または低温性能を改善する添加剤などを含んでもよい。
【0057】
二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置
【0058】
本願の他の実施形態において、以上のような電解液を含む二次電池を提供する。
【0059】
幾つかの実施形態において、前記二次電池はリチウムイオン二次電池である。
【0060】
幾つかの実施形態において、前記二次電池は金属または合金負極の二次電池である。幾つかの実施形態において、前記二次電池は金属リチウム負極二次電池であり、好ましくは金属リチウム負極-リチウム遷移金属酸化物正極二次電池である。
【0061】
本発明による二次電池は、本願の電解液を含むため、循環がより安定で、過充電現象がなく、同時に、より長い循環寿命を実現できる。
【0062】
通常の場合、二次電池は正極シート、負極シート、電解質及びセパレータを含む。電池の充放電過程で、活性イオンは正極シートと負極シートとの間で往復的に吸蔵、脱離する。電解質は正極シートと負極シートとの間でイオンを伝導する役割を果たす。セパレータは正極シートと負極シートとの間に設けられ、主に正と負極の短絡を防止する役割を果たし、同時に、イオンを通過することができる。
【0063】
[正極シート]
【0064】
正極シートは正極集電体及び正極集電体の少なくとも1つの表面に設けられる正極膜層を含み、前記正極膜層はリチウム遷移金属酸化物及び/又はオリビン構造から選ばれるリチウムリン酸塩を含む正極活性材料を含む。幾つかの実施形態において、前記正極活性材料はリチウム遷移金属酸化物から選ばれる。幾つかの実施形態において、前記リチウム遷移金属酸化物はリチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物またはその組み合わせから選ばれる。
【0065】
リチウム遷移金属酸化物の例として、リチウムコバルト酸化物(例えばLiCoO2)、リチウムニッケル酸化物(例えばLiNiO2)、リチウムマンガン酸化物(例えばLiMnO2、LiMn2O4)、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(例えばLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2(NCM333と略称することもできる)、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2(NCM523と略称することもできる)、LiNi0.5Co0.25Mn0.25O2(NCM211と略称することもできる)、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2(NCM622と略称することもできる)、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2(NCM811と略称することもできる)、LiNi0.96Co0.02Mn0.02O2(Ni96と略称することもできる)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(例えばLiNi0.85Co0.15Al0.05O2)及び変性化合物などのうちの少なくとも1種を含むが、これらに限定されない。
【0066】
オリビン構造のリチウム含有リン酸塩の例として、リン酸鉄リチウム(例えばLiFePO4(LFPと略称することもできる))、リン酸鉄リチウムと炭素の複合材料、リン酸マンガンリチウム(例えばLiMnPO4)、リン酸マンガンリチウムと炭素の複合材料、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素の複合材料のうちの少なくとも1種を含むが、これらに制限されない。
【0067】
例として、正極集電体は、自体の厚さ方向に対向する2つの表面を有し、正極膜層は正極集電体の対向する2つの表面のいずれか一方または両方に設けられる。
【0068】
幾つかの実施形態において、前記正極集電体の両側にいずれも正極膜層が設けられる。
【0069】
幾つかの実施形態において、前記正極集電体には金属箔シートまたは複合集電体が採用することができる。例えば、金属箔シートとして、アルミニウム箔を用いることができる。複合集電体は、高分子材料基材層と高分子材料基材層の少なくとも1つの表面に形成される金属層を含む。複合集電体は、金属材料(アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を高分子材料基材(例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)に形成することによって形成されることができる。
【0070】
幾つかの実施形態において、正極活性材料には本分野において周知の電池用正極活性材料が採用することができる。例として、正極活性材料は、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩、リチウム遷移金属酸化物及びそのそれぞれの変性化合物の材料のうちの少なくとも1つを含むことができる。しかし、本願はこれらの材料に制限されず、他の電池正極活性材料として使用できる従来の材料を使用してもよい。これらの正極活性材料は、単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0071】
幾つかの実施形態において、正極膜層は、結着剤をさらに含むことが好ましい。例として、前記結着剤はポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-プロピレン三元共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン三元共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体及び含フッ素アクリレート樹脂のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0072】
幾つかの実施形態において、正極膜層はさらに導電剤を含むことが好ましい。例として、前記導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、コーチンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0073】
幾つかの実施形態において、以下のように正極シートを製造することができ、正極シートを製造するための上記の成分、例えば正極活性材料、導電剤、結着剤及び任意の他の成分を溶剤(例えばN-メチルピロリドン)に分散して、正極スラリーを形成し、正極スラリーを正極集電体にコーティングし、乾燥、冷間プレスなどの工程を経てから、正極シートを取得することができる。
【0074】
[負極シート]
【0075】
負極シートは、負極集電体及び負極集電体の少なくとも1つの表面に設けられる負極膜層を含み、前記負極膜層は、純金属、金属間合金、または金属-非金属合金の負極活性材料から選ばれる。幾つかの実施形態において、前記金属はリチウム(Li)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、銀(Ag)、金(Au)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、プラチナ(Pt)またはその組み合わせから選ばれる。幾つかの実施形態において、上記非金属はホウ素(B)、炭素(C)、シリコン(Si)またはその組み合わせから選ばれる。
【0076】
これらの負極活性材料は、単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0077】
例として、負極集電体は、自体の厚さ方向に対向する2つの表面を有し、負極膜層は負極集電体の対向する2つの表面のいずれか一方または両方に設けられる。
【0078】
幾つかの実施形態において、前記負極集電体には金属箔シートまたは複合集電体が採用することができる。例えば、金属箔シートとして、銅箔を用いることができる。複合集電体は高分子材料基材層と高分子材料基材層の少なくとも1つの表面に形成される金属層を含むことができる。複合集電体は、金属材料(銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を高分子材料基材(例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)に形成することによって形成されることができる。
【0079】
幾つかの実施形態において、負極膜層はさらに結着剤を含むことが好ましい。前記結着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸ナトリウム(PAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)、ポリメタクリル酸(PMAA)及びカルボキシメチルキトサン(CMCS)のうちの少なくとも1つから選ばれることができる。
【0080】
幾つかの実施形態において、負極膜層はさらに導電剤を含むことが好ましい。導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、コーチンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの少なくとも1つから選ばれることができる。
【0081】
幾つかの実施形態において、負極膜層はさらに、増粘剤(例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na))などの他の補助剤を含むことが好ましい。
【0082】
幾つかの実施形態において、以下のように負極シートを製造することができ、負極シートを製造するための上記の成分、例えば負極活性材料、導電剤、結着剤及び任意の他の成分を溶剤(例えば脱イオン水)に分散して、負極スラリーを形成し、負極スラリーを負極集電体にコーティングし、乾燥、冷間プレスなどの工程を経てから、負極シートを取得することができる。
【0083】
[セパレータ]
【0084】
幾つかの実施形態において、二次電池にさらにセパレータが含まれる。本願はセパレータの種類に対して特別に制限されず、任意の公知の良好な化学的安定性と機械的安定性を有する多孔質構造セパレータを選択することができる。幾つかの実施形態において、セパレータは、ポリエチレン多孔質フィルム、ポリプロピレン多孔質フィルム、ポリイミド多孔質フィルム及び複数のポリマーを複合した多孔質フィルムを用いることができるが、これらに限定されない。
【0085】
セパレータは、特に制限されず、単層の薄膜であってもよく、多層の複合薄膜であってもよい。セパレータが多層の複合薄膜である場合、各層の材料は、特に制限されず、同様でも、異なってもよい。
【0086】
幾つかの実施形態において、正極シート、負極シート及びセパレータは巻回プロセスまたはラミネートプロセスによって電極アセンブリを製造することができる。
【0087】
幾つかの実施形態において、二次電池は外装を含んでもよい。該外装は、上記電極アセンブリ及び電解質を封止するために使用できる。
【0088】
幾つかの実施形態において、二次電池の外装は、例えば硬質プラスチックシェル、アルミニウムシェル、スチールシェルなどのハードシェルであってもよい。二次電池の外装は、パウチソフトバッグなどのソフトバッグであってもよい。ソフトバッグの材質は、プラスチックであってもよく、プラスチックとして、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート及びポリブチレンサクシネートなどが挙げられる。
【0089】
本願は、二次電池の形状に対して特に制限されず、円柱形、角形またはその他の任意の形状であってもよい。
【0090】
本願のさらなる実施形態において、以上のような二次電池を含む電池モジュールを提供する。
【0091】
本願のさらなる実施形態において、以上のような電池モジュールを含む電池パックを提供する。
【0092】
本願のさらなる実施形態において、以上のような二次電池、電池モジュールまたは電池パックのうちから選ばれる少なくとも1種を含む電力消費装置を提供する。
【0093】
以下、図面を参照して本願の二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置を説明する。
【0094】
図11は、一例として、角形構造の二次電池5である。
【0095】
幾つかの実施形態において、
図12を参照し、外装は、ハウジング51とカバープレート53を含むことができる。ハウジング51は底板と底板に接続される側板を含むことができ、底板と側板が収納室を形成するように囲むことができる。ハウジング51は収納室に連通される開口を有し、カバープレート53は、前記収納室を閉鎖するように前記開口に覆われることができる。正極シート、負極シート及びセパレータは巻回プロセスまたはラミネートプロセスによって電極アセンブリ52を形成することができる。電極アセンブリ52は前記収納室内に封止される。電解液が電極アセンブリ52内に浸潤する。二次電池5に含まれる電極アセンブリ52の数は1つまたは複数であってもよく、当業者は具体的な実際の必要に応じて選択することができる。
【0096】
幾つかの実施形態において、二次電池は電池モジュールとして組み立てることができ、電池モジュールに含まれる二次電池の数は1つまたは複数であってもよく、具体的な数について、当業者は電池モジュールの応用と容量に応じて選択できる。
【0097】
図13は電池モジュール4の一例である。
図13を参照し、電池モジュール4では、複数の二次電池5は電池モジュール4の長さ方向に沿って順次に配列して設置される。無論、他の任意の方式で配布されてもよい。さらに該複数の二次電池5をファスナーで固定することができる。
【0098】
好ましくは、電池モジュール4は、収納スペースを有する外部ケースをさらに含んでもよく、複数の二次電池5は該収納スペースに収納される。
【0099】
幾つかの実施形態において、上記電池モジュールはさらに、電池パックとして組み立てることもでき、電池パックに含まれる電池モジュールの数は1つまたは複数であってもよく、具体的な数について、当業者は電池モジュールの応用と容量に応じて選択できる。
【0100】
図14及び
図15は電池パック1の一例である。
図14及び
図15を参照し、電池パック1には、電池箱と電池箱内に設けられる複数の電池モジュール4が含まれてもよい。電池箱は上箱体2と下箱体3を含み、上箱体2は下箱体3に覆われることができ、電池モジュール4を収納するための閉鎖空間を形成する。複数の電池モジュール4は任意の方式で電池箱内に配布されることができる。
【0101】
また、本願は電力消費装置をさらに提供し、前記電力消費装置は本願によって提供された二次電池、電池モジュール、または電池パックのうちの少なくとも1つを含む。前記二次電池、電池モジュール、または電池パックは前記電気装置の電源として使用でき、前記電気装置のエネルギー貯蔵ユニットとしても使用できる。前記電力消費装置としては、モバイル機器(例えば携帯電話、ノートパソコンなど)、電動車両(例えば純粋な電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクーター、電動ゴルフカート、電動トラックなど)、電車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システムなどを含むが、これらに制限されない。
【0102】
前記電力消費装置として、その使用の必要に応じて二次電池、電池モジュールまたは電池パックを選択できる。
【0103】
図16は電力消費装置の一例である。該電力消費装置は純粋な電気自動車、ハイブリッド電気自動車、またはプラグインハイブリッド電気自動車などである。該電力消費装置の二次電池の高出力と高エネルギー密度の需要を満たすために、電池パックまたは電池モジュールを用いることができる。
【0104】
装置の他の例として、携帯電話、タブレット、ノートパソコンなどであってもよい。該装置は、通常、薄型化が要求され、二次電池を電源として用いることができる。
【実施例】
【0105】
以下、本願の実施例を説明する。以下で説明する実施例は例示的なものであり、本願を解釈するためにのみ使用され、本願を制限するものとして理解されるべきではない。実施例に具体的な技術または条件が示されない場合、当該分野の文献に記載されている技術または条件に従って、または製品の明細書に従って実行する必要がある。用いられる試薬または機器にメーカーが示されない場合、市販によって購入できる従来の製品である。
【0106】
実施例1
1. 調製
1.1 電解液の調製:
等質量の式I-2の第1の溶媒と式III-3の第2の溶媒を混合して攪拌することにより、無色透明で均質な混合溶媒を得た。0.935gのリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド塩を取り、5mlの前述混合溶媒に入れ、十分に攪拌し、1M濃度の無色透明溶液を形成し、所望の電解液とする。
1.2 正極シートの調製:
正極活性材料であるLiNi0.8Co0.1Mn0.1O2(NCM811)、導電剤であるアセチレンブラック、接着剤PVDFを質量比98:1:1で混合し、溶媒であるN-メチルピロリドン(NMP)を加えて系が均一になるように攪拌し、正極スラリー(固形分70重量%)を取得し、正極スラリーを約25mg/cm2の担持量で正極集電体アルミニウム箔に均一に両面塗工し、室温で乾かした後、オーブンに移して乾燥を続け、次に、40mm*50mmの長角形に切断して正極シートとし、正極面の容量は3.5mAh/cm2である。
1.3 負極シートの調製:
50μmのリチウム箔を12μmの銅箔の一方の表面にロールプレスで被覆し、次に、41mm*51mmの長角形に切断して負極シートとして後で使用する。
1.4 セパレータ:
ポリエチレン多孔質フィルムを選択し、45mm*55mmの長角形に切断して後で使用する。
1.5 二次電池の組立:
裁断した正極1枚と裁断した負極2枚をマッチングさせ、それらの間に上記セパレータを使用して正負極を遮断し、アルミフィルムバッグに包んでラミネートドライセルを構成する。0.3gの前述調製した電解液を注入し、アルミフィルムバッグを真空ホットプレス封止し、室温下で少なくとも6時間静置した後、以下の2.1の循環試験を開始することができる。このような方法によって調製された二次電池の定格容量は140mAhである。
【0107】
2. 試験
2.1 二次電池の循環試験:
セル循環の環境温度を25℃とし、Neware循環テスターを使用して0.5Cのレート(即ち70mA)で上記の1.5で得られた二次電池を充放電循環する。充放電のカットオフ電圧をそれぞれ4.3Vと2.8Vに設定する。放電容量が1サイクル目の放電容量の80%まで減衰したとき、電池の寿命が切れると考えられ、このときの循環サイクル数は循環寿命である。
同時に、循環過程で、サイクル数とそれに対応する試験対象電池の循環充放容量とクーロン効率(CE)を
図4に示す。
図4から分かるように、電池の循環寿命は171サイクルであり、また、寿命周期を通して、充電容量が定格容量より著しく高い過充電現象がない。
2.2 電解液の酸化安定性のLi-AlハーフセルLSV試験
50μmの前述1.3で調製された負極を取って、アルミニウム箔を正極とし、直径1cm
2の丸い片に裁断し、同じ大きさのポリエチレン多孔質フィルムをセパレータとし、20μlの前述1で調製された電解液を注入し、測定対象であるボタン電池を組み立てる。
Solartron電気化学ステーションを使用し、開放電圧から6Vまでの電圧区間で、5mV/sの掃引速度で走査ボルタンメトリー(LSV)試験を行い、該ボタン電池の電流応答を記録する。電流密度が10μA/cm
2に達すると、対応する電圧は該電解液の酸化安定性の臨界電圧値である。
該方法によって測定したところ、実施例1で得られた電解液の酸化安定性は5.4Vである。
【0108】
実施例2-9
実施例1を参照して電解液、二次電池を調製し、対応する試験を行い、その相違点は、これらの実施例における第1と第2の溶媒が異なる点で異なる。
【0109】
実施例10-17
実施例1を参照して電解液、二次電池を調製し、対応する試験を行い、その相違点は、これらの実施例における第1と第2の溶媒の質量比の値が異なる点で異なる。
【0110】
比較例1
以下のように、従来技術における通常のエーテル系電解液を調製し、実施例1を参照して試験する。
0.935gのリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド塩を取って、5mlのジエチレングリコールジメチルエーテル(DME)溶媒に加え、十分に攪拌し、1M濃度の無色透明電解液を形成し、酸化安定性試験と液体金属リチウム二次電池の長循環試験に用いられる。
テストしたところ、該電解液の酸化安定性は4Vである。
図5を参照し、液体金属リチウム二次電池では、1サイクル目から大幅な過充電が始まり、定格容量140mAhのセルが450mAh充電されてカットオフ電圧に達し、電解液が明らかに酸化分解したことを示す。
【0111】
比較例2
以下のように、従来技術の含フッ素エーテル系電解液を調製し、実施例1を参照して試験を行った。
0.935gのリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド塩を取って、5mlの式I-2の溶媒に入れ、十分に攪拌し、1M濃度の無色透明電解液を形成し、酸化安定性試験と液体金属リチウム二次電池の長循環試験に用いられる。
テストしたところ、該電解液の酸化安定性は5.4Vである。
図6を参照し、液体金属リチウム二次電池では、循環過程において、約50-70のサイクル数区間でわずかな過充電現象が現れたが、該区間内で放電容量が受けた影響は小さく、自己回復が可能であり、循環寿命が146サイクルである。
【0112】
比較例3
以下のように、従来技術の局所高濃度の電解液を調製し、実施例1を参照して試験を行った。
等質量のジエチレングリコールジメチルエーテル(DME)と1,1,2,2-ジフルオロエチル-2,2,3,3-ジフルオロプロピルエーテル(TTE)を混合して攪拌し、無色透明で均一な液体を形成して後で使用する。0.935gのリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド塩を取って、5mlの前述混合溶媒に入れ、十分に攪拌し、1M濃度の無色透明溶液を形成する。後続の性能試験とセル循環に用いられる。
テストしたところ、該電解液の酸化安定性は5.3Vである。
図7を参照し、液体金属リチウム二次電池では、循環過程において、約40-60サイクル数区間で明らかな過充電現象が現れたが、該区間内で放電容量が受けた影響は小さく、自己回復が可能であり、循環寿命が110サイクルである。
【0113】
比較例4
以下のように、従来技術の局所高濃度の電解液を調製し、実施例1を参照して試験を行った。
等質量のジエチレングリコールジエチルエーテル(DEE)と1,2-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)-エタン(TFE)を混合して攪拌し、無色透明で均一な液体を形成して後で使用する。0.935gのリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド塩を取って、5mlの前述混合溶媒に入れ、十分に攪拌し、1M濃度の無色透明溶液を形成する。後続の性能試験とセル循環に用いられる。
テストしたところ、該電解液の酸化安定性は5.3Vである。
図8を参照し、液体金属リチウム二次電池では、循環過程において、約45-55サイクル数区間で過充電現象が現れたが、該区間内で放電容量が受けた影響は小さく、自己回復が可能であり、循環寿命が135サイクルである。
【0114】
下記表1に上記実施例1-16と比較例1-4における電解液及び性能テスト結果を示す。
【0115】
【表1】
*ここで、「溶媒質量比」は第1の溶媒と第2の溶媒の質量比を意味する。以下で、同じ表現は同じ意味を示す。
【0116】
表1から分かるように、本願の電解液は、二次電池の長循環における上記「一過性」の過充電問題を効果的に回避することができ、また、高い酸化安定性臨界電圧(即ち、高酸化安定性)を有し、循環寿命を延長することができる。比較例1の通常のエーテル系電解液は金属リチウム負極-三元正極二次電池では正常に循環し難く、比較例2から分かるように、含フッ素溶媒を単独に使用すると、酸化安定性を向上できるとしても、長循環における過充電問題を解決することができない。
【0117】
実施例17-25
実施例17と実施例1は、1M濃度の無色透明溶液を調製した後に、その中に硝酸リチウム粉末を加え、前記溶液と硝酸リチウムの重量比を99:1とし、溶液に加え、十分に攪拌し、無色透明の電解液を形成し、所望の電解液とする点で異なる。
実施例18-25と実施例17は、第1及び/又は第2の溶媒の重量比が異なる点で異なる。
【0118】
実施例26-39
実施例26と実施例17は、第1と第2の溶媒がそれぞれ異なる点で異なり、実施例27-32と実施例26は、第1と第2の溶媒の重量比が異なる点で異なる。実施例33と実施例17は、第1と第2の溶媒がそれぞれ異なる点で異なり、実施例34-39と実施例33は、第1と第2の溶媒の重量比が異なる点で異なる。
【0119】
実施例40-46
実施例40-46と実施例17-25は、加えた酸化防止剤が異なる点で異なる。
【0120】
比較例5
以下のように抗酸化添加剤含有の従来のエーテル系電解液を調製し、実施例1を参照して試験を行った。
0.935gのリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド塩を取って、5mlのジエチレングリコールジメチルエーテル(DME)溶媒に加え、その総質量の1%の硝酸リチウム粉末を加え、十分に撹拌し、抗酸化添加剤含有の1M濃度の無色透明な電解液を形成して、酸化安定性試験と液体金属リチウム二次電池の長循環試験に用いられる。
テストしたところ、該電解液の酸化安定性臨界電圧は5.1Vである。
図9を参照し、液体金属リチウム二次電池では、循環過程において、約35-60サイクル数区間で明らかな過充電現象が現れ、且つ放電容量が該区間で明らかな影響を受け、循環寿命は92サイクルである。
【0121】
比較例6
以下のように抗酸化添加剤を含むフッ素エーテル系電解液を調製し、実施例1を参照して試験を行った。
0.935gのリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド塩を取って、5mlの式I-2の溶媒に加え、その総質量の1%の硝酸リチウム粉末を加え、十分に撹拌し、抗酸化添加剤含有の1M濃度の無色透明な電解液を形成して、酸化安定性試験と液体金属リチウム二次電池の長循環試験に用いられる。
テストしたところ、該電解液の酸化安定性は5.4Vである。
図10を参照し、液体金属リチウム二次電池では、循環過程において、100-170サイクル数区間でわずかな過充電現象が現れたが、該区間内で放電容量が受けた影響は小さく、自己回復が可能であり、循環寿命が159サイクルである。
【0122】
下記表2に実施例17-46と比較例5-6における電解液及びその性能試験データを示す。
【0123】
【0124】
表2から分かるように、酸化防止剤を添加した電解液は、過充電が発生しないことに加えて、電解液の酸化安定性を改善し、循環寿命を延長する。比較例3-4から分かるように、通常のエーテル系溶媒と酸化防止剤の組み合わせを使用すると、過充電を回避する効果は得られず、含フッ素エーテル系溶媒と酸化防止剤とを組み合わせると、抗酸化性と循環寿命を改善できるが、過充電を回避することができない。
【0125】
実施例47-52
実施例47-52と実施例17は、加えた酸化防止剤の濃度が異なる点で異なる。
【0126】
実施例53-64
実施例53-58と実施例26は、酸化防止剤の濃度が異なる点で異なる。実施例59-64と実施例33は、酸化防止剤の濃度が異なる点で異なる。
【0127】
実施例65-70
実施例65-70と実施例17は、加えた酸化防止剤及びその濃度が異なる点で異なる。
【0128】
実施例71-78
実施例71-72と実施例17は、電解質塩濃度が異なる点で異なる。実施例73-74と実施例26は、電解質塩濃度が異なる点で異なる。実施例75-76と実施例33は、電解質塩濃度が異なる点で異なる。実施例77-78と実施例71-72は、酸化防止剤が異なる点で異なる。
【0129】
下記表3に実施例47-78の電解液及びその性能テスト結果を示す。
【0130】
【0131】
表3から分かるように、上記濃度範囲にある酸化防止剤を採用すると、酸化安定性をさらに改善して循環寿命を延長することができる。
【0132】
以上のように、第1の溶媒と第2の溶媒の重量比が1で、抗酸化添加剤の含有量が1%で、且つ電解質塩濃度が1Mである場合、最適な性能を実現できる。
【0133】
なお、本願は上記実施形態に限定されない。上記実施形態は例示に過ぎず、本願の技術的解決手段の範囲内で技術思想と実質に同じ構成を有し、同じ作用効果を発揮する実施形態はいずれも本願の技術範囲内に含まれる。なお、本願の主旨から逸脱しない範囲内で、実施形態に当業者が想到できる様々な変形を行い、実施形態における一部の構成要素を組み合わせて構築する他の形態も本願の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0134】
1電池パック
2上箱体
3下箱体
4電池モジュール
5二次電池
51ハウジング
52電極アセンブリ
53トップカバーアセンブリ
【手続補正書】
【提出日】2024-07-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解液であって、
第1の溶媒であって、式Iに示され、
【化1】
ただし、
R
1はC1-C6のフルオロ鎖アルキル基から選ばれ、
R
2は水素原子、C1-C6の鎖アルキル基及びC1-C6のフルオロ鎖アルキル基から選ばれ、
nは1または2を示す、前記の第1の溶媒と、
第2の溶媒であって、式IIと式III化合物のうちの1種または複数種から選ばれ、
【化2】
ただし、
R
3~R
10はそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子、C1-C6の鎖アルキル基及びC1-C6のフルオロ鎖アルキル基から選ばれる、前記の第2の溶媒と、を含む、電解液。
【請求項2】
前記式Iでは、R
1はC1-C3のフルオロ鎖アルキル基から選ばれ、好ましくはフルオロメチルであり、及び/又は、R
2は水素原子、C1-C3の鎖アルキル基及びC1-C3のフルオロ鎖アルキル基から選ばれ、好ましくは、水素原子、メチル、フルオロメチル、エチル及びフルオロエチルから選ばれる請求項1に記載の電解液。
【請求項3】
前記式IIでは、R
3~R
8はそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子及びC1-C6のフルオロ鎖アルキル基から選ばれ、好ましくは、水素原子、フッ素原子及びC1-C3のフルオロ鎖アルキル基から選ばれ、及び/又は
式IIIでは、R
9~R
10はそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子及びC1-C6の鎖アルキル基から選ばれ、好ましくは、水素原子、フッ素原子、C1-C3の鎖アルキル基及びC1-C3のフルオロ鎖アルキル基から選ばれ、より好ましくは、R
9~R
10はそれぞれ独立して水素原子またはフッ素原子から選ばれる請求項
1に記載の電解液。
【請求項4】
前記第1の溶媒と第2の溶媒の重量比は0.5~3、好ましくは0.7~1.5、より好ましくは0.9~1.1である請求項
1に記載の電解液。
【請求項5】
酸化防止剤をさらに含み、好ましくは、前記酸化防止剤は硝酸リチウム、過塩素酸リチウムのうちの少なくとも1種から選ばれる請求項
1に記載の電解液。
【請求項6】
前記酸化防止剤の濃度は電解液の総重量に基づき0.5重量%~3重量%、好ましくは0.7重量%~1.5重量%、より好ましくは0.9重量%~1.1重量%である請求項5に記載の電解液。
【請求項7】
含フッ素電解質塩をさらに含み、好ましくは、前記含フッ素電解質塩は、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、六フッ化リン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、六フッ化ヒ酸リチウム、ビストリフルオロメタンスルホニルイミドリチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、二フッ化リン酸リチウム、二フッ化シュウ酸ホウ酸リチウム、二フッ化ビス(シュウ酸)リン酸リチウム及び四フッ化シュウ酸リン酸リチウムのうちの少なくとも1種から選ばれ、より好ましくは、前記含フッ素電解質塩はリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドである請求項
1に記載の電解液。
【請求項8】
前記含フッ素電解質塩の濃度は0.5M~3M、好ましくは1Mである請求項7に記載の電解液。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の電解液を含む二次電池。
【請求項10】
請求項9に記載の二次電池を含む電池モジュール。
【請求項11】
請求項10に記載の電池モジュールを含む電池パック。
【請求項12】
電力消費装置であって、請求項9に記載の二次電
池を含む電力消費装置。
【国際調査報告】