(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-17
(54)【発明の名称】発光ダイオードのエピタキシャル構造および発光ダイオード
(51)【国際特許分類】
H10H 20/816 20250101AFI20250109BHJP
H10H 20/811 20250101ALI20250109BHJP
H10H 20/825 20250101ALI20250109BHJP
【FI】
H01L33/14
H01L33/04
H01L33/32
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539877
(86)(22)【出願日】2022-11-08
(85)【翻訳文提出日】2024-08-22
(86)【国際出願番号】 CN2022130718
(87)【国際公開番号】W WO2023124552
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】202211012734.2
(32)【優先日】2022-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202111655093.8
(32)【優先日】2021-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524245842
【氏名又は名称】淮安澳洋順昌光電技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUAIAN AUCKSUN OPTOELECTRONICS TECHNOLOGY CO., LTD
【住所又は居所原語表記】No. 6 Jingxiu Road, Qinghe New Zone Huaian, Jiangsu 223001 (CN)
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】黄理承
(72)【発明者】
【氏名】宋長偉
(72)【発明者】
【氏名】郭園
(72)【発明者】
【氏名】程志青
(72)【発明者】
【氏名】芦玲
【テーマコード(参考)】
5F241
【Fターム(参考)】
5F241AA03
5F241CA04
5F241CA05
5F241CA22
5F241CA40
5F241CA49
5F241CA57
5F241CA58
(57)【要約】
本発明は半導体技術分野に関し、具体的には発光ダイオードのエピタキシャル構造及び発光ダイオードに関する。この発光ダイオードのエピタキシャル構造は、多重量子井戸発光層と第1正孔注入層との間にMg変調層を設け、前記Mg変調層中の不純物ドーピングの平均濃度はAであり、前記第1正孔注入層中の不純物ドーピングの平均濃度はBであり、前記電子遮断層中の不純物ドーピングの平均濃度はCであり、B>A>C,この設定により、良好な電子の阻止および正孔注入効果が得られ、発光ダイオードの光効率を向上させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光ダイオードのエピタキシャル構造であって、基板と、N型半導体層と、多重量子井戸発光層と、P型半導体層とを備え、前記N型半導体層と前記多重量子井戸発光層と前記P型半導体層とが前記基板の上面に順次配置され、
前記P型半導体層は、第1正孔注入層と、電子遮断層と、第2正孔注入層とを含み、前記P型半導体層にはP型不純物Mgがドーピングされ、前記P型不純物Mgは、前記P型半導体層の異なるサブ層において異なるドーピング濃度又は濃度変化を有し、
前記多重量子井戸発光層と前記第1正孔注入層との間にMg変調層が設けられ、
前記Mg変調層における不純物ドーピングの平均濃度はAであり、前記第1正孔注入層における不純物ドーピングの平均濃度はBであり、前記電子遮断層における不純物ドーピングの平均濃度はCであり、B>A>Cである、ことを特徴とする発光ダイオードのエピタキシャル構造。
【請求項2】
前記第2正孔注入層から前記基板への方向を第1方向とし、
前記第1方向に沿って、前記Mg変調層におけるMgのドーピング濃度の最大値と最小値との差は、前記第1正孔注入層におけるMgのドーピング濃度の最大値と最小値との差と異なる、ことを特徴とする請求項1に記載の発光ダイオードのエピタキシャル構造。
【請求項3】
前記Mg変調層におけるMgのドーピング濃度は、前記第1方向に沿って先に増加してから減少し、且つ第1ピーク値が存在し、
前記第1正孔注入層におけるMgのドーピング濃度は、前記第1方向に沿って最初に増加した後に減少し、且つ第2ピーク値が存在し、
第1ピーク値は第2ピーク値よりも小さい、ことを特徴とする請求項2に記載の発光ダイオードのエピタキシャル構造。
【請求項4】
前記Mg変調層におけるMgのドーピング濃度は、前記第1方向に沿って一定の厚さ範囲内で変化しないまたは濃度の変動が極めて小さく、且つフラット値が存在し、
前記第1正孔注入層における不純物のドーピング濃度は、前記第1方向に沿って最初に増加した後に減少し、且つ第2ピーク値が存在し、
前記フラット値は第2ピーク値よりも小さい、ことを特徴とする請求項2に記載の発光ダイオードのエピタキシャル構造。
【請求項5】
前記第2ピーク値は1×10
20atom/cm
3よりも大きく、および/または、A>1×10
19atom/cm
3であり、および/または、C>5×10
18atom/cm
3である、ことを特徴とする、請求項3または4に記載の発光ダイオードのエピタキシャル構造。
【請求項6】
前記多重量子井戸発光層は元素Inを含み、
前記Inの濃度は前記第1方向に沿って変動し、Inの濃度の変動においてはいくつかのピーク値といくつかのボトム値を含む、ことを特徴とする請求項3または4に記載の発光ダイオードのエピタキシャル構造。
【請求項7】
前記P型半導体に最も近いIn元素のピーク値からMg元素の第2ピーク値までの直線距離がdであり、d≧15nmであり、好ましくは、20nm≦d≦50nmである、ことを特徴とする請求項6に記載の発光ダイオードのエピジェネリック構造。
【請求項8】
前記P型半導体層は元素Inを含み、前記P型半導体層において、元素Inの濃度は少なくとも2つの濃度ピーク値を含む、ことを特徴とする請求項3または4に記載の発光ダイオードのエピタキシャル構造。
【請求項9】
前記P型半導体層において、前記元素Inの濃度ピーク値が前記第2ピーク値の位置と重なる、ことを特徴とする請求項8に記載の発光ダイオードのエピタキシャル構造。
【請求項10】
前記Mg変調層におけるAlの濃度はDであり、前記第1正孔注入層におけるAlの濃度はEであり、前記電子遮断層におけるAlの濃度はFであり、前記第2正孔注入層におけるAlの濃度はGであり、F>D>E>Gであり、D>1×10
20atom/cm
3であり、E>1×10
20atom/cm
3であり、F>2×10
20atom/cm
3である、ことを特徴とする請求項1に記載の発光ダイオードのエピタキシャル構造体。
【請求項11】
前記Mg変調層におけるAlの濃度Dは、厚さ方向においてまず増加してから減少し、第3ピーク値が存在する、ことを特徴とする請求項10に記載の発光ダイオードのエピタキシャル構造。
【請求項12】
発光ダイオードであって、基板を備え、前記基板表面には、バッファ層と、N型半導体層と、多重量子井戸発光層と、P型半導体層と、P型コンタクト層とが順次積層され、前記N型半導体層表面にN電極が設けられ、前記P型半導体層表面にP電極が設けられ、
前記P型半導体層は、前記多重量子井戸発光層の表面に順次積層配置された、第1電子遮断層と、第1正孔注入層と、第2電子遮断層と、第2正孔注入層とを含み、
前記第1電子遮断層のエネルギー準位は前記第2電子遮断層のエネルギー準位よりも低く、
前記第1電子遮断層は複数のサブ層を含み、前記複数のサブ層のうちの少なくとも1つはP型添加窒化物層である、ことを特徴とする発光ダイオード。
【請求項13】
前記第1電子遮断層はMg変調層であり、前記Mg変調層におけるMg不純物ドーピングの平均濃度はAであり、前記第1正孔注入層中のMg不純物ドーピングの平均濃度はBであり、前記第2電子遮断層中のMg不純物ドーピングの平均濃度はCであり、B>A>Cである、ことを特徴とする請求項12に記載の発光ダイオード。
【請求項14】
前記第2正孔注入層から前記基板への方向を第1方向と定義し、
前記第1方向に沿って、前記Mg変調層におけるMgのドーピング濃度の最大値と最小値との差は、前記第1正孔注入層におけるMgのドーピング濃度の最大値と最小値との差と異なる、ことを特徴とする請求項13に記載の発光ダイオード。
【請求項15】
前記Mg変調層におけるMgのドーピング濃度は、前記第1方向に沿って一定の厚さ範囲内で変化しないまたは変動が極めて小さく維持され、且つフラット値が存在し、
前記第1正孔注入層における不純物のドーピング濃度は、前記第1方向に沿って最初に増加した後に減少し、且つ第2ピーク値が存在し、
フラット値は第2ピーク値よりも小さい、ことを特徴とする請求項14に記載の発光ダイオード。
【請求項16】
前記第1電子遮断層は、順次積層されて設けられた、第1サブ層と、第2サブ層と、第3サブ層とを含み、
前記第1サブ層は、アルミニウムを含む窒化物層および/またはアルミニウムを含まない窒化物層を含み、
前記第2サブ層は、アルミニウムを含む窒化物層および/またはアルミニウムを含まない窒化物層を含み、
前記第3サブ層は、アルミニウムを含むP型窒化物層および/またはアルミニウムを含まないP型窒化物層を含む、ことを特徴とする請求項13に記載の発光ダイオード。
【請求項17】
前記アルミニウムを含む窒化物層はAlGaN層および/またはAlN層を含み、
前記アルミニウムを含まない窒化物層はGaN層を含み、
前記アルミニウムを含むP型窒化物層は、P型AlGaN層および/またはP型AlN層を含み、
好ましくは、前記アルミニウムを含まないP型窒化物層はP型GaN層を含む、ことを特徴とする請求項16に記載の発光ダイオード。
【請求項18】
前記第1サブ層の厚さは、前記第2サブ層の厚さよりも大きく、および/または、前記第2サブ層の厚さが前記第3サブ層の厚さ以上であり、および/または、前記第2サブ層と前記第3サブ層の厚さの和は、前記第1サブ層の厚さよりも小さい、ことを特徴とする請求項16に記載の発光ダイオード。
【請求項19】
前記第1サブ層の厚さが8~12nmであり、および/または、前記第2サブ層の厚さが1~2nmであり、および/または、第3サブ層の厚さは1~2nmである、ことを特徴とする請求項18に記載の発光ダイオード。
【請求項20】
前記第1正孔注入層の厚さは、前記Mg変調層の厚さよりも大きく、および/または、前記第2電子遮断層の厚さは10nmよりも大きく、および/または、前記第2正孔注入層の厚さは5nmよりも大きい、ことを特徴とする請求項13に記載の発光ダイオード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本発明は、2021年12月30日に中国国家知識産権局に提出された出願番号が202111655093.8、名称が「発光ダイオード及びその製造方法」、及び2022年8月23日に中国国家知識産権局に出願された出願番号が202211012734.2、名称が「発光ダイオードのエピタキシャル構造及び発光ダイオード」である中国特許出願の優先権を主張し、そのすべての内容は参照により本発明に組み込まれている。
【0002】
本発明は半導体技術分野に関し、具体的には発光ダイオードのエピタキシャル構造及び発光ダイオードに関するものである。
【背景技術】
【0003】
発光ダイオード(LEDと略称する)は一種の発光デバイスであり、省エネ、環境に優しく、サイズが小さく、且つ発色性と応答速度が良いことなどから、照明、ディスプレイ、医療デバイスなどの分野に広く使用されている。
【0004】
従来技術における発光ダイオード構造は、基板と、基板上に順次設けられたN型半導体層と、多重量子井戸層と、電子遮断層と、P型半導体層とを含む。ここで、P型半導体層は通常P型不純物が添加(ドーピング)され、P型不純物の濃度設定は電子の阻止及び正孔注入に影響を与えることができる。
【0005】
ただし、現在のところ、添加された不純物濃度の制限はない。
【0006】
本発明はこの問題に鑑みてなされたものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、多重量子井戸発光層とP型半導体層の第1正孔注入層との間にMg変調層を設け、不純物のドーピング濃度を制御することにより、より優れた電子の阻止及び正孔注入の効果が得られる発光ダイオードのエピタキシャル構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的を達成するために、特に以下の技術案を採用する。
【0009】
本発明により提供される発光ダイオードのエピタキシャル構造は、基板と、N型半導体層と、多重量子井戸発光層と、P型半導体層とを備え、前記N型半導体層と前記多重量子井戸発光層と前記P型半導体層とが前記基板の上面に順次配置され、前記P型半導体層は、第1正孔注入層と、電子遮断層と、第2正孔注入層とを含み、前記P型半導体層にはP型不純物Mgがドーピングされ、前記P型不純物Mgは、前記P型半導体層の異なるサブ層において異なるドーピング濃度又は濃度変化を有し、前記多重量子井戸発光層と前記第1正孔注入層との間にMg変調層が設けられ、前記Mg変調層における不純物ドーピングの平均濃度はAであり、前記第1正孔注入層における不純物ドーピングの平均濃度はBであり、前記電子遮断層における不純物ドーピングの平均濃度はCであり、B>A>Cである。
【0010】
好ましくは、前記第2正孔注入層から前記基板への方向を第1方向とし、前記第1方向に沿って、前記Mg変調層におけるMgのドーピング濃度の最大値と最小値との差は、前記第1正孔注入層におけるMgのドーピング濃度の最大値と最小値との差と異なる。
【0011】
好ましくは、前記Mg変調層におけるMgのドーピング濃度は、前記第1方向に沿って先に増加してから減少し、且つ第1ピーク値が存在し、前記第1正孔注入層におけるMgのドーピング濃度は、前記第1方向に沿って最初に増加した後に減少し、且つ第2ピーク値が存在し、第1ピーク値は第2ピーク値よりも小さい。
【0012】
好ましくは、前記Mg変調層におけるMgのドーピング濃度は、前記第1方向に沿って一定の厚さ範囲内で変化しないまたは濃度の変動が極めて小さく、且つフラット値が存在し、前記第1正孔注入層における不純物のドーピング濃度は、前記第1方向に沿って最初に増加した後に減少し、且つ第2ピーク値が存在し、前記フラット値は第2ピーク値よりも小さい。
【0013】
好ましくは、前記第2ピーク値は1×1020atom/cm3よりも大きく、および/または、A>1×1019atom/cm3であり、および/または、C>5×1018atom/cm3である。
【0014】
好ましくは、前記多重量子井戸発光層は元素Inを含み、前記Inの濃度は前記第1方向に沿って変動し、Inの濃度の変動においてはいくつかのピーク値といくつかのボトム値を含む。
【0015】
好ましくは、前記P型半導体に最も近いIn元素のピーク値からMg元素の第2ピーク値までの直線距離がdであり、d≧15nmであり、好ましくは、20nm≦d≦50nmである。
【0016】
好ましくは、前記P型半導体層は元素Inを含み、前記P型半導体層においてIn元素の濃度値は少なくとも2つの濃度ピークを含む。
【0017】
好ましくは、前記P型半導体層において、前記元素Inの濃度ピーク値は、Mg元素の第2ピーク値の位置と一致する。
【0018】
好ましくは、前記P型半導体層は不純物を添加したAlInGaN構造であり、前記Mg変調層におけるAlの濃度はDであり、前記第1正孔注入層におけるAlの濃度はEであり、前記電子遮断層におけるAlの濃度はFであり、前記第2正孔注入層におけるAlの濃度はGであり、F>D>E>Gという関係を満たし、好ましくは、D>1×1020atom/cm3であり、好ましくは、E>1×1020atom/cm3であり、好ましくは、F>2×1020atom/cm3である。
【0019】
好ましくは、前記Mg変調層において、Dは最初に増加してから減少し、第3ピーク値が存在する。
【0020】
本発明は、発光ダイオードであって、基板を備え、前記基板表面には、バッファ層と、N型半導体層と、多重量子井戸発光層と、P型半導体層と、P型コンタクト層とが順次積層され、前記N型半導体層表面にN電極が設けられ、前記P型半導体層表面にP電極が設けられ、前記P型半導体層は、前記多重量子井戸発光層の表面に順次積層配置された、第1電子遮断層と、第1正孔注入層と、第2電子遮断層と、第2正孔注入層とを含み、前記第1電子遮断層のエネルギー準位は前記第2電子遮断層のエネルギー準位よりも低く、前記第1電子遮断層は複数のサブ層を含み、前記複数のサブ層のうちの少なくとも1つはP型添加窒化物層である、ことを特徴とする発光ダイオードを提供する。
【0021】
好ましくは、前記第1電子遮断層はMg変調層であり、前記Mg変調層におけるMg不純物ドーピングの平均濃度はAであり、前記第1正孔注入層中のMg不純物ドーピングの平均濃度はBであり、前記第2電子遮断層中のMg不純物ドーピングの平均濃度はCであり、B>A>Cである。
【0022】
好ましくは、前記第2正孔注入層から前記基板への方向を第1方向と定義し、前記第1方向に沿って、前記Mg変調層におけるMgのドーピング濃度の最大値と最小値との差は、前記第1正孔注入層におけるMgのドーピング濃度の最大値と最小値との差と異なる。
【0023】
好ましくは、前記Mg変調層におけるMgのドーピング濃度は、前記第1方向に沿って一定の厚さ範囲内で変化しないまたは変動が極めて小さく維持され、且つフラット値が存在し、前記第1正孔注入層における不純物のドーピング濃度は、前記第1方向に沿って最初に増加した後に減少し、且つ第2ピーク値が存在し、フラット値は第2ピーク値よりも小さい。
【0024】
好ましくは、前記第1電子遮断層は、順次積層されて設けられた、第1サブ層と、第2サブ層と、第3サブ層とを含み、前記第1サブ層は、アルミニウムを含む窒化物層および/またはアルミニウムを含まない窒化物層を含み、前記第2サブ層は、アルミニウムを含む窒化物層および/またはアルミニウムを含まない窒化物層を含み、前記第3サブ層は、アルミニウムを含むP型窒化物層および/またはアルミニウムを含まないP型窒化物層を含む。
【0025】
好ましくは、前記アルミニウムを含む窒化物層はAlGaN層および/またはAlN層を含み、前記アルミニウムを含まない窒化物層はGaN層を含み、前記アルミニウムを含むP型窒化物層は、P型AlGaN層および/またはP型AlN層を含み、好ましくは、前記アルミニウムを含まないP型窒化物層はP型GaN層を含む。
【0026】
好ましくは、前記第1サブ層の厚さは、前記第2サブ層の厚さよりも大きく、および/または、前記第2サブ層の厚さが前記第3サブ層の厚さ以上であり、および/または、前記第2サブ層と前記第3サブ層の厚さの和は、前記第1サブ層の厚さよりも小さい。
【0027】
好ましくは、前記第1サブ層の厚さが8~12nmであり、および/または、前記第2サブ層の厚さが1~2nmであり、および/または、第3サブ層の厚さは1~2nmである。
【0028】
好ましくは、前記第1正孔注入層の厚さは、前記Mg変調層の厚さよりも大きく、および/または、前記第2電子遮断層の厚さは10nmよりも大きく、および/または、前記第2正孔注入層の厚さは5nmよりも大きい。
【発明の効果】
【0029】
従来技術と比較して、本発明の有益な効果は以下の通りである。
【0030】
(1)本発明により提供される発光ダイオードのエピタキシャル構造は、その構造において、前記多量子井戸発光層と第1正孔注入層の間にMg変調層を含み、Mg変調層のMgの濃度は多量子井戸発光層と第1正孔注入層との間で、より良い電子の阻止及び正孔注入作用を果たすことができる。
【0031】
(2)本発明により提供される発光ダイオードのエピタキシャル構造は、Mg変調層において1つのAlのピーク値に対応し、Alが最大値を有することにより、より良い電子を阻止する効果が得られる。
【0032】
(3)本発明により提供される発光ダイオードは、その発光ダイオードはより良い電子を阻止する効果及びより良い正孔注入効果を有するため、より良い発光効率を有する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本発明の具体的な実施形態または先行技術における技術的解決策をより明確に説明するために、以下に、具体的な実施形態または先行技術の説明に使用する必要な図面を簡単に説明する。明らかに、以下の説明における図面は本発明のいくつかの実施形態であり、当業者であれば、創造的な作業をすることなくても、これらの図面に基づいて他の図面を得ることができる。
【
図1】本発明の実施例により提供される発光ダイオードのエピタキシャル構造を示す図である。
【
図2】本発明の実施例により提供される発光ダイオードのエピタキシャル構造のSIMS検出結果を示す図である。
【
図3】本発明の別の実施例により提供される発光ダイオードのエピタキシャル構造のSIMS検出結果を示す図である。
【
図4】本発明により提供される発光ダイオードの構造を示す図である。
【
図5】本発明により提供される発光ダイオードの他の構造を示す図である。
【
図6】本発明により提供される発光ダイオードのさらに別の構造の部分構造を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
10、110-基板
20、120-バッファ層、
30、130-N型半導体層、
40、140-多重量子井戸発光層、
300、150-P型半導体層、
151-Mg変調層、
80-第1電子遮断層、
81-第1サブ層;
81-第2サブ層;
81-第3サブ層;
90、152-第1正孔注入層、
153-電子遮断層、
50、第2電子遮断層
60、154-第2正孔注入層、
70-P型コンタクト層、
100-N電極、
200-P電極
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、添付図面及び具体的な実施形態を参照して本発明の技術的解決策を明確かつ完全に説明するが、当業者であれば、以下に記載する実施例は、本発明の一部の実施例であって全ての実施例ではなく、本発明の説明のためだけに使用され、本発明の範囲を限定するものとはみなされないことを理解する必要がある。本発明中の実施例に基づいて、当業者が創造的な作業をすることなしに取得した他のすべての実施例は、本発明保護の範囲に属する。実施例に具体的な条件が明記されていない者は、通常の条件またはメーカーが提案した条件に従って行う。使用する試薬や機器にメーカーが明記されていない者は、市販で購入できる通常の製品である。
【0036】
本発明により提供される発光ダイオードのエピタキシャル構造は、
図1に示すように、基板110と、順に前記基板110の上面に設けられたN型半導体層130と多重量子井戸発光層140とP型半導体層150とを含み、ここで、前記P型半導体層150は、第1正孔注入層152、電子遮断層153、及び第2正孔注入層154を含み、前記P型半導体層150は、P型不純物Mgで添加され(P型不純物Mgでドーピングされ)、前記P型不純物Mgは前記P型半導体層150の異なるサブ層に異なるドーピング濃度または濃度変化を有する。前記多重量子井戸発光層140と前記第1正孔注入層152との間にはMg変調層151が設けられ、前記Mg変調層151における不純物ドーピングの平均濃度はAであり、前記第1正孔注入層152における不純物ドーピングの平均濃度はBであり、前記電子遮断層153における不純物ドーピングの平均濃度はCであり、ここで、B>A>Cである。
【0037】
本発明により提供される発光ダイオードのエピタキシャル構造は、この構造において、前記多重量子井戸発光層140と第1正孔注入層152の間にMg変調層151を含み、Mg変調層151のMg濃度を制御することによって、多重量子井戸発光層140と第1正孔注入層152との間に、より良い電子の阻止と正孔注入の効果を得ることができる。
好ましい実施形態では、前記第2正孔注入層154から前記基板110への方向を第1方向と定義し、前記第1方向に沿って、前記Mg変調層151におけるMgのドーピング濃度の変化幅(濃度変化の範囲)は、前記第1正孔注入層152におけるMgのドーピング濃度の変化幅(濃度変化の範囲)とは異なる。すなわち、前記Mg変調層151におけるMgのドーピング濃度の最大値と最小値との差は、前記第1正孔注入層152におけるMgのドーピング濃度の最大値と最小値との差と異なる。
【0038】
図2は、本発明により提供される発光ダイオードのエピタキシャル構造のSIMS検出結果を示す図である。好ましい実施形態では、
図2に示すように、前記第1方向に沿って、前記Mg変調層151中のMgのドーピング濃度は増加した後に減少し、第1ピーク値が存在する。前記第1方向に沿って、前記第1正孔注入層152において、Mgのドーピング濃度が増加した後に減少し、第2ピーク値が存在する。
【0039】
好ましい実施形態では、前記第1ピーク値は前記第2ピーク値よりも小さい。
【0040】
図3は、本発明の別の実施例により提供される発光ダイオードのエピタキシャル構造SIMS検出結果を示す図である。好ましい実施形態では、
図3に示すように、前記第1方向に沿って、前記Mg変調層151中のMgのドーピング濃度は一定の厚さ範囲内で変化しない(または変化が極めて小さい)ように維持され、フラット値(一定で変わらない平らな部分の数値、flat value)が存在し、ここで、「一定の厚さ範囲」とは、Mg変調層151の厚さを超えない一定の厚さ区間(範囲)を指す、前記第1方向に沿って、前記第1正孔注入層152において、不純物のドーピング濃度が増加した後に減少し、第2ピーク値が存在する。
【0041】
好ましい実施形態では、前記フラット値は前記第2ピーク値よりも小さい。
【0042】
好ましい実施形態では、前記第2ピーク値は1×1020atom/cm3よりも大きく、および/または、A>1×1019atom/cm3、および/または、C>5×1018atom/cm3である。
【0043】
好ましい実施形態では、前記多重量子井戸発光層140は元素Inを含有し、前記第1方向に沿って、Inの濃度は変動する特徴があり、例えば、
図2に示すように、Inの濃度値の変動はいくつかのピーク値といくつかのボトム値を含む。
【0044】
好ましい実施形態では、前記P型半導体に最も近い前記ピーク値と前記第2ピーク値との直線距離はdであり、d≧15nmであり、より好ましくは、20nm≦d≦50nmである。
【0045】
好ましい実施形態では、前記P型半導体層150は元素Inを含み、前記P型半導体層150において、元素Inの濃度が少なくとも2つの濃度ピーク値を含む。
【0046】
好ましい実施形態では、前記P型半導体層150において、前記元素Inの濃度ピーク値が前記第2ピーク値の位置と重なる。
【0047】
Mg/Inの濃度比は正孔注入の効果に影響を与え、より良い光効率を実現することができる。
【0048】
好ましい実施形態では、前記P型半導体層150は不純物をドーピングされたAlInGaN構造であり、前記Mg変調層151において、Alの濃度はDであり、前記第1正孔注入層152において、Alの濃度はEであり、前記電子遮断層153において、Alの濃度はFであり、前記第2正孔注入層154において、Alの濃度はGであり、F>D>E>Gという関係を満たす。
【0049】
好ましい実施形態では、D>1×1020atom/cm3であり、好ましい実施形態では、E>1×1020atom/cm3であり、好ましい実施形態では、F>2×1020atom/cm3である。
【0050】
好ましい実施形態では、前記Mg変調層151において、Dはまず増加してから減少し、第3ピーク値が存在する。Mg変調層151には1つのAlのピーク値が対応しており、Alは最大値を有することにより、より良い電子を阻止する効果を得ることができる。
【0051】
また、Alの濃度はキャリアのオーバーフローを抑えるのに良い効果があり、Mg/Inの濃度と協同してダイオードのより良い光効率が得られる。
【0052】
本発明の1つの実施例は、一種の前記発光ダイオードのエピタキシャル構造の製造方法を提供し、以下のステップを含む。
【0053】
ステップ(1):基板110を提供し、前記基板110が例えばサファイア基板110であり、前記サファイア基板110が高温環境でパージされる(掃気される)。
【0054】
ステップ(2):サファイア基板上にバッファ層120を成長させる(形成させる)。
【0055】
ステップ(3):バッファ層120上にドーピングされていないGaN層を成長させる。
【0056】
ステップ(4):ドーピングされていないGaN層の上にn型のドーピングされたGaN層を成長させる。
【0057】
ステップ(5):n型のドーピングされたGaN層上に多重量子井戸発光層140を成長させる。
【0058】
ステップ(6):多重量子井戸発光層140上にMg変調層151、第1正孔注入層152、電子遮断層153、第2正孔注入層154を順次成長させる。
【0059】
また、本発明は発光ダイオードを提供する。
図4に示すように、発光ダイオードは基板10を含み、基板10の表面にバッファ層20、N型半導体層30、多重量子井戸発光層40、P型半導体層300、P型コンタクト層70が順次積層され、N型半導体層30の表面にはN電極100が設けられ、P型半導体層300の表面にP電極200が設けられる。
【0060】
P型半導体層300は、多重量子井戸発光層40の表面に順次積層されて設けられた第1電子遮断層80、第1正孔注入層90、第2電子遮断層50、第2正孔注入層60を含む。
【0061】
第1電子遮断層80及び第2電子遮断層50はいずれもアルミニウム元素を含み、第1電子遮断層80におけるアルミニウム元素の含有量は第2電子遮断層50中のアルミニウム元素の含有量よりも低い。
【0062】
さらに、第1電子遮断層80は、Mgを含むMg変調層であり、このMg変調層中のMg不純物ドーピングの平均濃度はAであり、第1正孔注入層中のMg不純物ドーピングの平均濃度はBであり、前記第2電子遮断層中のMg不純物ドーピングの平均濃度はCであり、ここで、B>A>Cである。
【0063】
前記第2正孔注入層から前記基板への方向を第1方向と定義すると、第1方向に沿って、Mg変調層におけるMgのドーピング濃度の最大値と最小値との差は、前記第1正孔注入層におけるMgのドーピング濃度の最大値と最小値との差と異なる。好ましくは、第1方向に沿って、Mg変調層において、Mgのドーピング濃度は一定の厚さ範囲内で変化しない(または変動が極めて小さい)のように維持され、フラット値が存在する、前記第1方向に沿って、第1正孔注入層において、不純物のドーピング濃度が最初に増加した後に減少し、第2ピーク値が存在する、このフラット値は第2ピーク値より小さい。
【0064】
別の実施形態では、
図5に示すように、第1電子遮断層80は、順に積層配置された、第1サブ層81、第2サブ層82及び第3サブ層83を含む。さらに、第1サブ層81は、アルミニウムを含む窒化物層および/またはアルミニウムを含まない窒化物層を含み、第2サブ層82は、アルミニウムを含む窒化物層および/またはアルミニウムを含まない窒化物層を含み、第3サブ層83は、アルミニウムを含むP型窒化物層および/またはアルミニウムを含まないP型窒化物層を含む。好ましくは、アルミニウムを含む窒化物層は、AlGaN層および/またはAlN層を含み、アルミニウムを含まない窒化物層はGaN層を含み、アルミニウムを含むP型窒化物層は、P型AlGaN層および/またはP型AlN層を含み、アルミニウムを含まないP型窒化物層は、P型GaN層を含む。
【0065】
第1電子遮断層80の厚さの30%以上はAlを含む窒化物であり、例えば、第1サブ層81はAlGaN層であり、第2サブ層82はAlN層であり、第3サブ層83はP型AlN層である。
【0066】
本発明のいくつかの具体的な実施例では、第1サブ層81は超格子構造層を含む。超格子構造層の交互周期は2~8周期であり、さらに3周期、4周期、5周期、6周期または7周期を選択することもできる。好ましくは、前記超格子構造層は、周期的に交互に積層されたAlGaN層及びGaN層を含む。
図6に示すように、第1サブ層81、第2サブ層82、および第3サブ層83は、前記多重量子井戸発光層40の表面に順次積層配置され、前記第1電子遮断層80において、前記第1サブ層81は、AlGaN/GaN超格子構造層であり、前記第2サブ層82はAlN層であり、前記第3サブ層83はP型AlN層である。
【0067】
一般に、第1サブ層81の厚さは、前記第2サブ層82の厚さよりも大きい。第2サブ層82の厚さは、前記第3サブ層の厚さよりも小さくない(前記第3サブ層の厚さ以上である)。第2サブ層82と前記第3サブ層83の厚さの和は、前記第1サブ層81の厚さよりも小さく、第3サブ層83の厚さは、前記第1電子遮断層80の厚さの20%未満である。具体的には、第1サブ層81の厚さは8~12nmであり、第2サブ層82の厚さは1~2nmであり、第3サブ層83の厚さは1~2nmである。
【0068】
第1正孔注入層90は、低温P型AlInGaN層を含む。好ましくは、低温P型AlInGaN層に用いられるP型不純物はMgであり、ドーピング濃度は1×1020atom/cm3以下であり、具体的に、例えば、3×1020atom/cm3、5×1020atom/cm3、8×1020atom/cm3または1×1021atom/cm3を選択することができる。第1正孔注入層90中のアルミニウム元素含有量は、前記第1電子遮断層80中のアルミニウム元素含有量よりも小さい。ただし、第1正孔注入層90の厚さは、第1電子遮断層80の厚さよりも大きい。
【0069】
第2正孔注入層60は、高温P型GaN層を含む。好ましくは、前記高温P型GaN層にドーピングされるP型不純物はMgであり、P型不純物のドーピング濃度は3×1019atom/cm3より大きく、さらに5×1019atom/cm3、8×1019atom/cm3、1×1020atom/cm3、5×1020atom/cm3または8×1021atom/cm3を選択することができる。
【0070】
第2電子遮断層50は、AlGaN層またはP型AlGaN層のうちの1つを含む。第2電子遮断層50の厚さは10nmより大きく、好ましくは10~100nmである(15nm、20nm、25nm、30nm、35nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nmまたは95nmを選択することもできる)、第2正孔注入層60の厚さは5nmより大きく、好ましくは5~100nmである(10nm、15nm、20nm、25nm、30nm、35nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nmまたは95nmを選択することもできる)。
【0071】
本発明のいくつかの具体的な実施例では、前記基板10の材料は、サファイア、炭化ケイ素、およびシリコン基板のうちの少なくとも1つを含む。
【0072】
本発明のいくつかの具体的な実施例では、前記バッファ層20は、AlNバッファ層20および/またはGaNバッファ層20を含む。
【0073】
本発明のいくつかの具体的な実施例では、前記N型半導体層30は、Siが添加されたN型GaN層を含む。
【0074】
本発明のいくつかの具体的な実施例では、前記多重量子井戸発光層40は、積層配置されたInGaNポテンシャル井戸層とGaNポテンシャル障壁層とを含む。好ましくは、前記多量子井戸発光層40はInGaN/GaN超格子構造であり、第1電子遮断層80は、InGaNポテンシャル井戸層上に配置され、多重量子井戸発光層40の最後のInGaNポテンシャルウェル層に相当する。
【0075】
本発明のいくつかの具体的な実施例では、前記P型コンタクト層70はP型GaN層を含む。好ましくは、前記P型コンタクト層70にドーピングされるP型不純物はMgである。より好ましくは、前記P型コンタクト層70におけるMgのドーピング濃度は、前記第2正孔注入層60(高温P型GaN層)におけるMgのドーピング濃度よりも大きく、前記P型コンタクト層70におけるMgのドーピング濃度は、前記第1正孔注入層90(低温P型AlInGaN層)におけるMgのドーピング濃度よりも小さい。
【0076】
本発明は具体的な実施例を用いて説明されたが、上記の各実施例は、本発明の技術的解決策を説明するためだけに使用され、それらに限定されるものではないことを認識すべきである。当業者であれば、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、上記の実施例に記載された技術案を修正したり、その一部又は全部の技術的特徴を均等に置き換えたりすることができ、これらの修正または置き換えは、対応する技術案の本質を本発明の各実施例の技術案の範囲から逸脱させるものではない。したがって、これは、本発明の範囲内に属するすべてのこれらの修正および置き換えが本発明に添付した請求の範囲に含まれることを意味する。
【国際調査報告】