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特表2025-501307最初の細胞を標的とする二重特異性分子
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-17
(54)【発明の名称】最初の細胞を標的とする二重特異性分子
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/46 20060101AFI20250109BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20250109BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20250109BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20250109BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20250109BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20250109BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20250109BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20250109BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20250109BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C07K16/46 ZNA
C07K16/30
C07K19/00
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N7/01
C12N5/10
A61K39/395 Y
A61P35/00
A61P35/02
A61K39/395 T
A61K47/68
A61K38/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539913
(86)(22)【出願日】2022-12-30
(85)【翻訳文提出日】2024-07-12
(86)【国際出願番号】 US2022082628
(87)【国際公開番号】W WO2023130073
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】63/295,681
(32)【優先日】2021-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501306715
【氏名又は名称】ザ トラスティース オブ コロンビア ユニバーシティ イン ザ シティ オブ ニューヨーク
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラザ、アズラ
(72)【発明者】
【氏名】アリ、アブドゥラ、エム.
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA45
4B065CA46
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C084AA02
4C084CA53
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZB26
4C084ZB27
4C085AA14
4C085AA26
4C085AA27
4C085BB11
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045EA51
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本明細書に記載の主題は、最初の細胞の表面上の異なる組織系統の2つの抗原マーカーを認識する二重特異性分子を使用して、がんの処置を必要とする対象のがんを処置する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重特異性分子であって、少なくとも2つの抗原結合領域を含み、各抗原結合領域が、がんの最初の細胞(TFC)上の異なる抗原に結合する、前記二重特異性分子。
【請求項2】
第1の抗原が、上皮細胞系統マーカーである、請求項1に記載の二重特異性分子。
【請求項3】
前記上皮細胞系統マーカーが、図2のマーカーのいずれか1つである、請求項2に記載の二重特異性分子。
【請求項4】
前記上皮細胞系統マーカーが、上皮細胞接着分子(EpCAM)である、請求項2に記載の二重特異性分子。
【請求項5】
EpCAMが、配列番号7または配列番号12を含む、請求項4に記載の二重特異性分子。
【請求項6】
第2の抗原が、マクロファージ細胞系統マーカーである、請求項1~5のいずれか1項に記載の二重特異性分子。
【請求項7】
前記マクロファージ細胞系統マーカーが、図1のマーカーのいずれか1つである、請求項6に記載の二重特異性分子。
【請求項8】
前記マクロファージ細胞系統マーカーが、CD163である、請求項6に記載の二重特異性分子。
【請求項9】
CD163が、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、または配列番号13を含む、請求項8に記載の二重特異性分子。
【請求項10】
前記がんが、固形腫瘍を含む、請求項1~9のいずれかに記載の二重特異性分子。
【請求項11】
前記がんが、乳癌、脳癌、消化器癌、膵癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、胸腺癌、卵巣癌、前立腺癌、または子宮内膜癌である、請求項1に記載の二重特異性分子。
【請求項12】
前記消化器癌が、胃癌または大腸癌である、請求項11に記載の二重特異性分子。
【請求項13】
前記がんが、液体癌を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の二重特異性分子。
【請求項14】
前記液体癌が、白血病、リンパ腫、または骨髄腫である、請求項13に記載の二重特異性分子。
【請求項15】
前記液体癌が、急性骨髄性白血病(AML)である、請求項13に記載の二重特異性分子。
【請求項16】
前記液体癌が、B細胞悪性腫瘍である、請求項13に記載の二重特異性分子。
【請求項17】
前記液体癌が、骨髄性腫瘍、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性腫瘍(MPN)、MDS/MPN重複症候群、急性骨髄性白血病、または慢性骨髄性白血病である、請求項13に記載の二重特異性分子。
【請求項18】
第1の抗原結合領域が、軽鎖可変(VL)領域及び重鎖可変(VH)領域を含み、前記VL領域が、配列番号36の軽鎖CDR1(CDRL1)、配列番号37の軽鎖CDR2(CDRL2)、配列番号38の軽鎖CDR3(CDRL3)を含み、前記VH領域が、配列番号33の重鎖CDR1、配列番号34の重鎖CDR2、及び配列番号35の重鎖CDR3を含む、請求項1~17のいずれかに記載の二重特異性分子。
【請求項19】
第2の抗原結合領域が、軽鎖可変(VL)領域及び重鎖可変(VH)領域を含み、前記VL領域が、配列番号42の軽鎖CDR1(CDRL1)、配列番号43の軽鎖CDR2(CDRL2)、配列番号44の軽鎖CDR3(CDRL3)を含み、前記VH領域が、配列番号39の重鎖CDR1、配列番号40の重鎖CDR2、及び配列番号41の重鎖CDR3を含む、請求項18に記載の二重特異性分子。
【請求項20】
第2の抗原結合領域が、軽鎖可変(VL)領域及び重鎖可変(VH)領域を含み、前記VL領域が、配列番号48の軽鎖CDR1(CDRL1)、配列番号49の軽鎖CDR2(CDRL2)、配列番号50の軽鎖CDR3(CDRL3)を含み、前記VH領域が、配列番号45の重鎖CDR1、配列番号46の重鎖CDR2、及び配列番号47の重鎖CDR3を含む、請求項18に記載の二重特異性分子。
【請求項21】
第1の抗原結合領域が、配列番号28の軽鎖可変(VL)領域及び配列番号27の重鎖可変(VH)領域を含む、請求項1~17のいずれかに記載の二重特異性分子。
【請求項22】
第2の抗原結合領域が、配列番号30の軽鎖可変(VL)領域及び配列番号29の重鎖可変(VH)領域を含む、請求項21に記載の二重特異性分子。
【請求項23】
第2の抗原結合領域が、配列番号32の軽鎖可変(VL)領域及び配列番号31の重鎖可変(VH)領域を含む、請求項21に記載の二重特異性分子。
【請求項24】
前記第1の抗原及び前記第2の抗原が、マクロファージ細胞系統マーカーである、請求項13~17に記載の二重特異性分子。
【請求項25】
前記第1の抗原が、CD117、CD34、またはCD123であり、前記第2の抗原が、CD163である、請求項24に記載の二重特異性分子。
【請求項26】
TFCが、転移性TFCである、請求項1に記載の二重特異性分子。
【請求項27】
前記二重特異性分子が、二重特異性抗体またはその抗原結合フラグメントである、請求項1~26のいずれかに記載の二重特異性分子。
【請求項28】
前記二重特異性抗体が、薬物にコンジュゲートされている、請求項27に記載の二重特異性分子。
【請求項29】
前記薬物が、毒素である、請求項28に記載の二重特異性抗体。
【請求項30】
前記薬物が、化学療法剤である、請求項28に記載の二重特異性抗体。
【請求項31】
前記二重特異性分子が、二重ナノボディ、BiTE、tandAb、DART、DART-Fc、DARPin、scFv、scFv-HAS-scFV、及びDNL-Fab3を含む、請求項1~26のいずれかに記載の二重特異性分子。
【請求項32】
前記二重特異性分子が、二重特異性キメラ抗原受容体(CAR)である、請求項1~26のいずれかに記載の二重特異性分子。
【請求項33】
前記二重特異性分子が、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドを含むCo-LOCKRであり、前記第1のポリペプチド及び前記第2のポリペプチドがそれぞれ、がんのTFC上の異なる抗原に結合する、請求項1~26のいずれかに記載の二重特異性分子。
【請求項34】
前記第1のポリペプチドが、配列番号14、配列番号15、配列番号18、または配列番号19を含む、請求項33に記載の二重特異性分子。
【請求項35】
前記第2のポリペプチドが、配列番号16、配列番号17、配列番号20、または配列番号21を含む、請求項33に記載の二重特異性分子。
【請求項36】
前記二重特異性CARが、synNotch CARである、請求項32に記載の二重特異性分子。
【請求項37】
前記二重特異性分子が、第1ポリペプチド、第2ポリペプチド、及び第3ポリペプチドを含むCo-LOCKRであり、前記第1ポリペプチド及び前記第2ポリペプチドがそれぞれ、がんのTFC上の異なる抗原に結合し、前記第3のポリペプチドが、CARに結合し、前記第3のポリペプチドが、前記第1のポリペプチドまたは前記第2のポリペプチドに作動可能に連結されている、請求項1~26に記載の二重特異性分子。
【請求項38】
前記二重特異性分子が、キメラ抗原受容体(CAR)モジュール及びキメラ共刺激受容体(CCR)モジュールを含むスプリットCAR-Tシステムを含み、
前記CARモジュールが、第1の抗原結合領域及びCD3zシグナル伝達ドメインを含むポリペプチドを含み、
前記CCRモジュールが、第2の抗原結合領域及び2つ以上の共刺激ドメインを含むポリペプチドを含み、
前記CARモジュール及び前記CCRモジュールがそれぞれ、がんのTFC上の異なる抗原に結合する、請求項1~26に記載の二重特異性分子。
【請求項39】
前記スプリットCAR-Tシステムが、表4のポリペプチド配列のうちの1つ以上を含む、請求項28に記載の二重特異性分子。
【請求項40】
請求項1~39のいずれかに記載の二重特異性分子を含む、医薬組成物。
【請求項41】
請求項1~39のいずれかに記載の二重特異性分子をコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項42】
請求項41に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項43】
請求項41に記載のポリヌクレオチドを含む、ウイルス。
【請求項44】
請求項1~39のいずれかに記載の二重特異性分子を含む、遺伝子改変型細胞。
【請求項45】
請求項41に記載のポリヌクレオチドを含む、遺伝子改変型細胞。
【請求項46】
がんの処置または予防を必要とする対象の前記がんを処置または予防する方法であって、前記方法が、少なくとも2つの抗原結合領域を含む二重特異性分子を前記対象に投与することを含み、各抗原結合領域が、がんの最初の細胞(TFC)上の異なる抗原に結合する、前記方法。
【請求項47】
第1の抗原が、上皮細胞系統マーカーである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記上皮細胞系統マーカーが、図2のマーカーのいずれか1つである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記上皮細胞系統マーカーが、上皮細胞接着分子(EpCAM)である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
EpCAMが、配列番号7または配列番号12を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
第2の抗原が、マクロファージ細胞系統マーカーである、請求項46~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記マクロファージ細胞系統マーカーが、図1のマーカーのいずれか1つである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記マクロファージ細胞系統マーカーが、CD163である、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
CD163が、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、または配列番号13を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記がんが、固形腫瘍を含む、請求項46~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記がんが、乳癌、脳腫瘍、胃腸癌、膵癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、胸腺癌、卵巣癌、前立腺癌、または子宮内膜癌である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記消化器癌が、胃癌または大腸癌である、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記がんが、液体癌である、請求項46~54に記載の方法。
【請求項59】
前記液体癌が、白血病、リンパ腫、または骨髄腫である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記液体癌が、急性骨髄性白血病(AML)である、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
前記液体癌が、B細胞悪性腫瘍である、請求項58に記載の方法。
【請求項62】
前記液体癌が、骨髄性腫瘍、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性腫瘍(MPN)、MDS/MPN重複症候群、急性骨髄性白血病、または慢性骨髄性白血病である、請求項58に記載の方法。
【請求項63】
第1の抗原結合領域が、軽鎖可変(VL)領域及び重鎖可変(VH)領域を含み、前記VL領域が、配列番号36の軽鎖CDR1(CDRL1)、配列番号37の軽鎖CDR2(CDRL2)、配列番号38の軽鎖CDR3(CDRL3)を含み、前記VH領域が、配列番号33の重鎖CDR1、配列番号34の重鎖CDR2、及び配列番号35の重鎖CDR3を含む、請求項46~62のいずれかに記載の方法。
【請求項64】
第2の抗原結合領域が、軽鎖可変(VL)領域及び重鎖可変(VH)領域を含み、前記VL領域が、配列番号42の軽鎖CDR1(CDRL1)、配列番号43の軽鎖CDR2(CDRL2)、配列番号44の軽鎖CDR3(CDRL3)を含み、前記VH領域が、配列番号39の重鎖CDR1、配列番号40の重鎖CDR2、及び配列番号41の重鎖CDR3を含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
第2の抗原結合領域が、軽鎖可変(VL)領域及び重鎖可変(VH)領域を含み、前記VL領域が、配列番号48の軽鎖CDR1(CDRL1)、配列番号49の軽鎖CDR2(CDRL2)、配列番号50の軽鎖CDR3(CDRL3)を含み、前記VH領域が、配列番号45の重鎖CDR1、配列番号46の重鎖CDR2、及び配列番号47の重鎖CDR3を含む、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
第1の抗原結合領域が、配列番号28の軽鎖可変(VL)領域及び配列番号27の重鎖可変(VH)領域を含む、請求項46~62のいずれかに記載の方法。
【請求項67】
第2の抗原結合領域が、配列番号30の軽鎖可変(VL)領域及び配列番号29の重鎖可変(VH)領域を含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
第2の抗原結合領域が、配列番号32の軽鎖可変(VL)領域及び配列番号31の重鎖可変(VH)領域を含む、請求項66に記載の方法。
【請求項69】
前記第1の抗原及び前記第2の抗原が、マクロファージ細胞系統マーカーである、請求項58~62に記載の方法。
【請求項70】
前記第1の抗原が、CD117、CD34、またはCD123であり、前記第2の抗原が、CD163である、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
TFCが、転移性TFCである、請求項46に記載の方法。
【請求項72】
前記二重特異性分子が、二重特異性抗体またはその抗原結合フラグメントである、請求項46~71のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
前記二重特異性抗体が、薬物にコンジュゲートされている、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記薬物が、毒素である、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記薬物が、化学療法剤である、請求項73に記載の方法。
【請求項76】
前記二重特異性分子が、二重ナノボディ、BiTE、tandAb、DART、DART-Fc、DARPin、scFv、scFv-HAS-scFV、及びDNL-Fab3を含む、請求項46~71のいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
前記二重特異性分子が、二重特異性キメラ抗原受容体(CAR)である、請求項46~71のいずれか1項に記載の方法。
【請求項78】
前記二重特異性分子が、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドを含むCo-LOCKRであり、前記第1のポリペプチド及び前記第2のポリペプチドが、それぞれ、がんのTFC上の異なる抗原に結合する、請求項46~71のいずれか1項に記載の方法。
【請求項79】
第1のポリペプチドが、配列番号14、配列番号15、配列番号18、または配列番号19を含む、請求項66に記載の方法。
【請求項80】
第2のポリペプチドが、配列番号16、配列番号17、配列番号20、または配列番号21を含む、請求項66に記載の方法。
【請求項81】
二重特異性CARが、synNotchCARである、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記二重特異性分子が、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、及び第3のポリペプチドを含むCo-LOCKRであり、前記第1のポリペプチド及び前記第2のポリペプチドがそれぞれ、がんのTFC上の異なる抗原に結合し、前記第3のポリペプチドが、前記二重特異性CARに結合し、前記第3のポリペプチドが、前記第1のポリペプチドまたは前記第2のポリペプチドに作動可能に連結されている、請求項80のいずれか1項に記載の方法。
【請求項83】
前記二重特異性分子が、キメラ抗原受容体(CAR)モジュール及びキメラ共刺激受容体(CCR)モジュールを含むスプリットCAR-Tシステムを含み、
前記CARモジュールが、第1の抗原結合領域及びCD3zシグナル伝達ドメインを含むポリペプチドを含み、
前記CCRモジュールが、第2の抗原結合領域及び2つ以上の共刺激ドメインを含むポリペプチドを含み、
前記CARモジュール及び前記CCRモジュールがそれぞれ、がんのTFC上の異なる抗原に結合する、請求項46~71に記載の方法。
【請求項84】
前記スプリットCAR-Tシステムが、表4のポリペプチド配列の1つ以上を含む、請求項63に記載の方法。
【請求項85】
少なくとも1つの上皮細胞系統マーカー及び少なくとも1つのマクロファージ細胞系統マーカーを発現する、改変型細胞。
【請求項86】
前記少なくとも1つの上皮細胞系統マーカーが、図2のマーカーのいずれか1つである、請求項85に記載の細胞。
【請求項87】
前記少なくとも1つの上皮細胞系統マーカーが、上皮細胞接着分子(EpCAM)である、請求項85に記載の細胞。
【請求項88】
EpCAMが、配列番号7または配列番号12を含む、請求項87に記載の細胞。
【請求項89】
前記少なくとも1つマクロファージ細胞系統マーカーが、図1のマーカーのいずれか1つである、請求項85~88のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項90】
前記少なくとも1つのマクロファージ細胞系統マーカーが、CD163である、請求項85に記載の細胞。
【請求項91】
CD163が、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、または配列番号13を含む、請求項90に記載の細胞。
【請求項92】
がんを診断する方法であって、前記方法が、少なくとも1つの上皮細胞系統マーカー及び少なくとも1つのマクロファージ細胞系統マーカーを発現する細胞を検出することを含む、前記方法。
【請求項93】
前記少なくとも1つの上皮細胞系統マーカーが、図2のマーカーのいずれか1つである、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
前記少なくとも1つの上皮細胞系統マーカーが、上皮細胞接着分子(EpCAM)である、請求項92に記載の方法。
【請求項95】
EpCAMが、配列番号7を含む、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
前記少なくとも1つマクロファージ細胞系統マーカーが、図1のマーカーのいずれか1つである、請求項92~95のいずれか1項に記載の方法。
【請求項97】
前記少なくとも1つのマクロファージ細胞系統マーカーが、CD163である、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
CD163が、配列番号8、配列番号9、配列番号10、または配列番号11を含む、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
前記検出することが、二重特異性分子が前記少なくとも1つの上皮細胞系統マーカー及び前記少なくとも1つのマクロファージ細胞系統マーカーに結合するアッセイを含む、請求項92に記載の方法。
【請求項100】
前記がんが、固形腫瘍を含む、請求項92~99のいずれかに記載の方法。
【請求項101】
前記がんが、乳癌、脳癌、消化器癌、膵癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、胸腺癌、卵巣癌、前立腺癌、または子宮内膜癌である、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
前記消化器癌が、胃癌または大腸癌である、請求項101に記載の方法。
【請求項103】
前記がんが、液体癌である、請求項92~99のいずれか1項に記載の方法。
【請求項104】
前記液体癌が、白血病、リンパ腫、または骨髄腫である、請求項103に記載の方法。
【請求項105】
前記液体癌が、急性骨髄性白血病(AML)である、請求項103に記載の方法。
【請求項106】
前記液体癌が、B細胞悪性腫瘍である、請求項103に記載の方法。
【請求項107】
前記液体癌が、骨髄性腫瘍、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性腫瘍(MPN)、MDS/MPN重複症候群、急性骨髄性白血病、または慢性骨髄性白血病である、請求項103に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年12月31日に出願された米国仮特許出願第63/295,681号の利益及び優先権を主張し、この内容は、全体が本明細書に参照により組み込まれる。
【0002】
本特許開示は、著作権保護の対象となる資料を含有する。著作権所有者は、米国特許出願に記載されている特許文書または特許開示を、米国特許商標庁の特許ファイルまたは記録に記載されているとおりに、如何なる者が複写することにも異議を唱えないが、他の点では、ありとあらゆる著作権を留保する。
【0003】
引用されている全ての特許、特許出願、及び出版物は、全体が参照により本明細書に組み込まれる。全体におけるこれらの刊行物の開示は、本明細書に記載の発明の日付時点で、本明細書で当業者らに既知の技術水準をより詳細に記載するために、それにより参照により本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
がんは、異常な細胞成長を特徴とする一群の状態を指す。がん細胞は、体の他の臓器に広がり、侵入する可能性がある。がんの最も一般的な症状は、しこり、異常な出血、長引く咳、及び原因不明の体重減少を含む。細胞塊を形成しない血液がんも存在する。100種類以上のがんが、ヒトの体内で発生し得、それらのほとんどは、不治である。
【発明の概要】
【0005】
特定の態様では、本明細書に記載の主題は、少なくとも2つの抗原結合領域を含む二重特異性分子を提供し、各抗原結合領域は、がんの最初の細胞(TFC)上の異なる抗原に結合する。
【0006】
いくつかの実施形態では、第1の抗原は、上皮細胞系統マーカーである。いくつかの実施形態では、上皮細胞系統マーカーは、図2のマーカーのいずれか1つである。いくつかの実施形態では、上皮細胞系統マーカーは、上皮細胞接着分子(EpCAM)である。いくつかの実施形態では、EpCAMは、配列番号7または配列番号12を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原は、マクロファージ細胞系統マーカーである。いくつかの実施形態では、マクロファージ細胞系統マーカーは、図1のマーカーのいずれか1つである。いくつかの実施形態では、マクロファージ細胞系統マーカーは、CD163である。いくつかの実施形態では、CD163は、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、または配列番号13を含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、がんは、固形腫瘍を含む。いくつかの実施形態では、がんは、乳癌、脳癌、消化器癌、膵癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、胸腺癌、卵巣癌、前立腺癌、または子宮内膜癌である。いくつかの実施形態では、消化器癌は、胃癌または大腸癌である。
【0008】
いくつかの実施形態では、がんは、液体癌を含む。いくつかの実施形態では、液体癌は、白血病、リンパ腫、または骨髄腫である。いくつかの実施形態では、液体癌は、急性骨髄性白血病(AML)である。いくつかの実施形態では、液体癌は、B細胞悪性腫瘍である。いくつかの実施形態では、液体癌は、骨髄性腫瘍、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性腫瘍(MPN)、MDS/MPN重複症候群、急性骨髄性白血病、または慢性骨髄性白血病である。
【0009】
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合領域は、軽鎖可変(VL)領域及び重鎖可変(VH)領域を含み、VL領域が、配列番号36の軽鎖CDR1(CDRL1)、配列番号37の軽鎖CDR2(CDRL2)、配列番号38の軽鎖CDR3(CDRL3)を含み、VH領域が、配列番号33の重鎖CDR1、配列番号34の重鎖CDR2、及び配列番号35の重鎖CDR3を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合領域は、軽鎖可変(VL)領域及び重鎖可変(VH)領域を含み、VL領域が、配列番号42の軽鎖CDR1(CDRL1)、配列番号43の軽鎖CDR2(CDRL2)、配列番号44の軽鎖CDR3(CDRL3)を含み、VH領域が、配列番号39の重鎖CDR1、配列番号40の重鎖CDR2、及び配列番号41の重鎖CDR3を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合領域は、軽鎖可変(VL)領域及び重鎖可変(VH)領域を含み、VL領域が、配列番号48の軽鎖CDR1(CDRL1)、配列番号49の軽鎖CDR2(CDRL2)、配列番号50の軽鎖CDR3(CDRL3)を含み、VH領域が、配列番号45の重鎖CDR1、配列番号46の重鎖CDR2、及び配列番号47の重鎖CDR3を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合領域は、配列番号28の軽鎖可変(VL)領域及び配列番号27の重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合領域は、配列番号30の軽鎖可変(VL)領域及び配列番号29の重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合領域は、配列番号32の軽鎖可変(VL)領域及び配列番号31の重鎖可変(VH)領域を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、第1の抗原及び第2の抗原は、マクロファージ細胞系統マーカーである。いくつかの実施形態では、第1の抗原は、CD117、CD34、またはCD123であり、第2の抗原は、CD163である。いくつかの実施形態では、TFCは、転移性TFCである。
【0012】
いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、二重特異性抗体またはその抗原結合フラグメントである。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、薬物にコンジュゲートされている。いくつかの実施形態では、薬物は、毒素である。いくつかの実施形態では、薬物は、化学療法剤である。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、二重ナノボディ、BiTE、tandAb、DART、DART-Fc、DARPin、scFv、scFv-HAS-scFV、及びDNL-Fab3を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、二重特異性キメラ抗原受容体(CAR)である。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドを含むCo-LOCKRであり、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドは、それぞれ、がんのTFC上の異なる抗原に結合する。
【0013】
いくつかの実施形態では、第1のポリペプチドは、配列番号14、配列番号15、配列番号18、または配列番号19を含む。いくつかの実施形態では、第2のポリペプチドは、配列番号16、配列番号17、配列番号20、または配列番号21を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、二重特異性CARは、synNotch CARである。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、及び第3のポリペプチドを含むCo-LOCKRであり、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドが、それぞれ、がんのTFC上の異なる抗原に結合し、第3のポリペプチドが、CARに結合し、第3のポリペプチドが、第1のポリペプチドまたは第2のポリペプチドに作動可能に連結されている。
【0015】
いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、キメラ抗原受容体(CAR)モジュール及びキメラ共刺激受容体(CCR)モジュールを含むスプリットCAR-Tシステムを含み、CARモジュールが、第1の抗原結合領域及びCD3zシグナル伝達ドメインを含むポリペプチドを含み、CCRモジュールが、第2の抗原結合領域及び2つ以上の共刺激ドメインを含むポリペプチドを含み、CARモジュール及びCCRモジュールが、それぞれ、がんのTFC上の異なる抗原に結合する。いくつかの実施形態では、スプリットCAR-Tシステムは、表4のポリペプチド配列の1つ以上を含む。
【0016】
特定の態様では、本明細書に記載の主題は、本明細書に記載の任意の実施形態による二重特異性分子を含む医薬組成物を提供する。
【0017】
特定の態様では、本明細書に記載の主題は、本明細書に記載の任意の実施形態による二重特異性分子をコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0018】
特定の態様では、本明細書に記載の主題は、本明細書に記載の任意の実施形態によるポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
【0019】
特定の態様では、本明細書に記載の主題は、本明細書に記載の任意の実施形態によるポリヌクレオチドを含むウイルスを提供する。
【0020】
特定の態様では、本明細書に記載の主題は、本明細書に記載の任意の実施形態による二重特異性分子を含む遺伝子改変型細胞を提供する。
【0021】
特定の態様では、本明細書に記載の主題は、本明細書に記載の任意の実施形態によるポリヌクレオチドを含む遺伝子改変型細胞を提供する。
【0022】
特定の態様では、本明細書に記載の主題は、それを必要とする対象におけるがんを処置または予防する方法を提供し、方法は、少なくとも2つの抗原結合領域を含む二重特異性分子を対象に投与することを含み、各抗原結合領域が、がんの最初の細胞(TFC)上の異なる抗原に結合する。
【0023】
いくつかの実施形態では、第1の抗原は、上皮細胞系統マーカーである。いくつかの実施形態では、上皮細胞系統マーカーは、図2のマーカーのいずれか1つである。いくつかの実施形態では、上皮細胞系統マーカーは、上皮細胞接着分子(EpCAM)である。いくつかの実施形態では、EpCAMは、配列番号7または配列番号12を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、第2の抗原は、マクロファージ細胞系統マーカーである。いくつかの実施形態では、マクロファージ細胞系統マーカーは、図1のマーカーのいずれか1つである。いくつかの実施形態では、マクロファージ細胞系統マーカーは、CD163である。いくつかの実施形態では、CD163は、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、または配列番号13を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、がんは、固形腫瘍を含む。いくつかの実施形態では、がんは、乳癌、脳腫瘍、胃腸、膵癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、胸腺癌、卵巣癌、前立腺癌、または子宮内膜癌である。いくつかの実施形態では、消化器癌は、胃癌または大腸癌である。
【0026】
いくつかの実施形態では、がんは、液体癌である。いくつかの実施形態では、液体癌は、白血病、リンパ腫、または骨髄腫である。いくつかの実施形態では、液体癌は、急性骨髄性白血病(AML)である。いくつかの実施形態では、液体癌は、B細胞悪性腫瘍である。いくつかの実施形態では、液体癌は、骨髄性腫瘍、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性腫瘍(MPN)、MDS/MPN重複症候群、急性骨髄性白血病、または慢性骨髄性白血病である。
【0027】
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合領域は、軽鎖可変(VL)領域及び重鎖可変(VH)領域を含み、VL領域が、配列番号36の軽鎖CDR1(CDRL1)、配列番号37の軽鎖CDR2(CDRL2)、配列番号38の軽鎖CDR3(CDRL3)を含み、VH領域が、配列番号33の重鎖CDR1、配列番号34の重鎖CDR2、及び配列番号35の重鎖CDR3を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合領域は、軽鎖可変(VL)領域及び重鎖可変(VH)領域を含み、VL領域が、配列番号42の軽鎖CDR1(CDRL1)、配列番号43の軽鎖CDR2(CDRL2)、配列番号44の軽鎖CDR3(CDRL3)を含み、VH領域が、配列番号39の重鎖CDR1、配列番号40の重鎖CDR2、及び配列番号41の重鎖CDR3を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合領域は、軽鎖可変(VL)領域及び重鎖可変(VH)領域を含み、VL領域が、配列番号48の軽鎖CDR1(CDRL1)、配列番号49の軽鎖CDR2(CDRL2)、配列番号50の軽鎖CDR3(CDRL3)を含み、VH領域が、配列番号45の重鎖CDR1、配列番号46の重鎖CDR2、及び配列番号47の重鎖CDR3を含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合領域は、配列番号28の軽鎖可変(VL)領域及び配列番号27の重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合領域は、配列番号30の軽鎖可変(VL)領域及び配列番号29の重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合領域は、配列番号32の軽鎖可変(VL)領域及び配列番号31の重鎖可変(VH)領域を含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、第1の抗原及び第2の抗原は、マクロファージ細胞系統マーカーである。いくつかの実施形態では、第1の抗原は、CD117、CD34、またはCD123であり、第2の抗原は、CD163である。
【0030】
いくつかの実施形態では、TFCは、転移性TFCである。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、二重特異性抗体またはその抗原結合フラグメントである。
【0031】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、薬物にコンジュゲートされている。いくつかの実施形態では、薬物は、毒素である。いくつかの実施形態では、薬物は、化学療法剤である。
【0032】
いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、二重ナノボディ、BiTE、tandAb、DART、DART-Fc、DARPin、scFv、scFv-HAS-scFV、及びDNL-Fab3を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、二重特異性キメラ抗原受容体(CAR)である。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドを含むCo-LOCKRであり、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドは、それぞれ、がんのTFC上の異なる抗原に結合する。いくつかの実施形態では、第1のポリペプチドは、配列番号14、配列番号15、配列番号18、または配列番号19を含む。いくつかの実施形態では、第2のポリペプチドは、配列番号16、配列番号17、配列番号20、または配列番号21を含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、二重特異性CARは、synNotch CARである。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、及び第3のポリペプチドを含むCo-LOCKRであり、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドが、それぞれ、がんのTFC上の異なる抗原に結合し、第3のポリペプチドが、二重特異性CARに結合し、第3のポリペプチドが、第1のポリペプチドまたは第2のポリペプチドに作動可能に連結されている。
【0034】
いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、キメラ抗原受容体(CAR)モジュール及びキメラ共刺激受容体(CCR)モジュールを含むスプリットCAR-Tシステムを含み、CARモジュールが、第1の抗原結合領域及びCD3zシグナル伝達ドメインを含むポリペプチドを含み、CCRモジュールが、第2の抗原結合領域及び2つ以上の共刺激ドメインを含むポリペプチドを含み、CARモジュール及びCCRモジュールが、それぞれ、がんのTFC上の異なる抗原に結合する。いくつかの実施形態では、スプリットCAR-Tシステムは、表4のポリペプチド配列の1つ以上を含む。
【0035】
特定の態様では、本明細書に記載の主題は、少なくとも1つの上皮細胞系統マーカー及び少なくとも1つのマクロファージ細胞系統マーカーを発現する改変型細胞を提供する。
【0036】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの上皮細胞系統マーカーは、図2のマーカーのいずれか1つである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの上皮細胞系統マーカーは、上皮細胞接着分子(EpCAM)である。いくつかの実施形態では、EpCAMは、配列番号7または配列番号12を含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、マクロファージ細胞系統の少なくとも1つのマーカーは、図1のマーカーのいずれか1つである。いくつかの実施形態では、マクロファージ細胞系統の少なくとも1つのマーカーは、CD163である。いくつかの実施形態では、CD163は、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、または配列番号13を含む。
【0038】
特定の態様では、本明細書に記載の主題は、がんを診断する方法を提供し、方法は、少なくとも1つの上皮細胞系統マーカー及び少なくとも1つのマクロファージ細胞系統マーカーを発現する細胞を検出することを含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの上皮細胞系統マーカーは、図2のマーカーのいずれか1つである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの上皮細胞系統マーカーは、上皮細胞接着分子(EpCAM)である。いくつかの実施形態では、EpCAMは、配列番号7を含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、マクロファージ細胞系統の少なくとも1つのマーカーは、図1のマーカーのいずれか1つである。いくつかの実施形態では、マクロファージ細胞系統の少なくとも1つのマーカーは、CD163である。いくつかの実施形態では、CD163は、配列番号8、配列番号9、配列番号10、または配列番号11を含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、検出は、二重特異性分子が、少なくとも1つの上皮細胞系統マーカー及び少なくとも1つのマクロファージ細胞系統マーカーに結合するアッセイを含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、がんは、固形腫瘍を含む。いくつかの実施形態では、がんは、乳癌、脳癌、消化器癌、膵癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、胸腺癌、卵巣癌、前立腺癌、または子宮内膜癌である。いくつかの実施形態では、消化器癌は、胃癌または大腸癌である。いくつかの実施形態では、がんは、液体癌である。いくつかの実施形態では、液体癌は、白血病、リンパ腫、または骨髄腫である。いくつかの実施形態では、液体癌は、急性骨髄性白血病(AML)である。いくつかの実施形態では、液体癌は、B細胞悪性腫瘍である。いくつかの実施形態では、液体癌は、骨髄性腫瘍、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性腫瘍(MPN)、MDS/MPN重複症候群、急性骨髄性白血病、または慢性骨髄性白血病である。
【0043】
図の1つ以上が、カラーで提示される。PCT特許出願の要件に準拠するため、本明細書で提示されている図の多くは、元々カラーで作成された画像を白黒表示したものである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1-1】優勢または排他的なマクロファージを発現する抗原を示す。最後の2つの列では、「+」は、発現が存在することを示し、「-」は、発現が存在しないことを示し、空白は、発現が不明であることを示す。
図1-2】優勢または排他的なマクロファージを発現する抗原を示す。最後の2つの列では、「+」は、発現が存在することを示し、「-」は、発現が存在しないことを示し、空白は、発現が不明であることを示す。
図1-3】優勢または排他的なマクロファージを発現する抗原を示す。最後の2つの列では、「+」は、発現が存在することを示し、「-」は、発現が存在しないことを示し、空白は、発現が不明であることを示す。
図1-4】優勢または排他的なマクロファージを発現する抗原を示す。最後の2つの列では、「+」は、発現が存在することを示し、「-」は、発現が存在しないことを示し、空白は、発現が不明であることを示す。
図1-5】優勢または排他的なマクロファージを発現する抗原を示す。最後の2つの列では、「+」は、発現が存在することを示し、「-」は、発現が存在しないことを示し、空白は、発現が不明であることを示す。
図1-6】優勢または排他的なマクロファージを発現する抗原を示す。最後の2つの列では、「+」は、発現が存在することを示し、「-」は、発現が存在しないことを示し、空白は、発現が不明であることを示す。
図1-7】優勢または排他的なマクロファージを発現する抗原を示す。最後の2つの列では、「+」は、発現が存在することを示し、「-」は、発現が存在しないことを示し、空白は、発現が不明であることを示す。
図1-8】優勢または排他的なマクロファージを発現する抗原を示す。最後の2つの列では、「+」は、発現が存在することを示し、「-」は、発現が存在しないことを示し、空白は、発現が不明であることを示す。
図1-9】優勢または排他的なマクロファージを発現する抗原を示す。最後の2つの列では、「+」は、発現が存在することを示し、「-」は、発現が存在しないことを示し、空白は、発現が不明であることを示す。
図1-10】優勢または排他的なマクロファージを発現する抗原を示す。最後の2つの列では、「+」は、発現が存在することを示し、「-」は、発現が存在しないことを示し、空白は、発現が不明であることを示す。
図2-1】優勢または排他的な上皮を発現する抗原を示す。最後の2つの列では、「+」は、発現が存在することを示し、「-」は、発現が存在しないことを示し、空白は、発現が不明であることを示す。
図2-2】優勢または排他的な上皮を発現する抗原を示す。最後の2つの列では、「+」は、発現が存在することを示し、「-」は、発現が存在しないことを示し、空白は、発現が不明であることを示す。
図2-3】優勢または排他的な上皮を発現する抗原を示す。最後の2つの列では、「+」は、発現が存在することを示し、「-」は、発現が存在しないことを示し、空白は、発現が不明であることを示す。
図3】Co-LOCKRの一実施形態を示す。Aは、Co-LOCKRの立体配座の変化を示す。Bは、CAR-T細胞を動員するCo-LOCKRを示す。
図4】大きな細胞が選択されるサイズによる細胞の分離を示す。
図5】系統特異的抗原(LSA)を発現していない細胞(A)、各LSAのみを発現している細胞(B及びC)、または両方の抗原を一緒に発現している細胞(D)の概略図を示す。個々のLSA発現の発現がない細胞または発現している細胞は、標的に対して試験された様々なモダリティの特異性を示すための対照として使用される。
図6A】CD163(A)もしくはEpCAM(B)、またはCD163とEpCAMの両方(C)、の発現のフローサイトメトリー分析を示す。左のパネルは、アイソタイプ対照を示し、右のパネルは、EpCAM(クローン9C4、PerCP/Cyanine5.5マウスモノクローナルIgG2;カタログ番号324213 Biolegend)またはCD163(クローンRM3/1、PEコンジュゲートマウスモノクローナルIgG2;カタログ番号326506 Biolegend)を認識する抗体を用いる染色を示す。
図6B】CD163(A)もしくはEpCAM(B)、またはCD163とEpCAMの両方(C)、の発現のフローサイトメトリー分析を示す。左のパネルは、アイソタイプ対照を示し、右のパネルは、EpCAM(クローン9C4、PerCP/Cyanine5.5マウスモノクローナルIgG2;カタログ番号324213 Biolegend)またはCD163(クローンRM3/1、PEコンジュゲートマウスモノクローナルIgG2;カタログ番号326506 Biolegend)を認識する抗体を用いる染色を示す。
図6C】CD163(A)もしくはEpCAM(B)、またはCD163とEpCAMの両方(C)、の発現のフローサイトメトリー分析を示す。左のパネルは、アイソタイプ対照を示し、右のパネルは、EpCAM(クローン9C4、PerCP/Cyanine5.5マウスモノクローナルIgG2;カタログ番号324213 Biolegend)またはCD163(クローンRM3/1、PEコンジュゲートマウスモノクローナルIgG2;カタログ番号326506 Biolegend)を認識する抗体を用いる染色を示す。
図7】抗原A(パネルA)または抗原B(パネルB)のいずれかを発現する細胞への、ケージ及びキーそれぞれの結合の概略図を示す。キーがケージと共局在していない場合、ケージは、閉じた立体配座になっており、ラッチを隔離する(パネルA)が、ラッチは、キー及びケージが同じ細胞上の抗原A及びBと共に共局在している場合、ケージから放出される(パネルC)。
図8】Co-LOCKR構成要素であるケージ及びキータンパク質(パネルA)、またはケージ及びキータンパク質のバリアント(パネルB)、の様々な構成要素の概略図を示す。AまたはBタンパク質への抗原結合ドメインは、最適な組み合わせを特定するように、ケージとキーの両方の組み合わせで作成される。
図9】Co-LOCKRタンパク質の発現及び精製を示す。A)クマシーG250染色ゲル。B)抗HIs6抗体を使用した免疫ブロット。1)PageRuler(商標)Plusプレステインプロテインラダー。2)His6_TEV_EpCAM-ScFV_ケージ(約64kDa)。3)His6_TEV_キー_EpCAM-ScFV(約38kDa)。4)His6_TEV_キー_N3_EpCAM-ScFV(約37kDa)。5)PageRuler(商標)Plusプレステインプロテインラダー。6)His6_TEV_CD163-ScFV_ケージ(約62kDa)。7)His6_TEV_キー_CD163-ScFV(約35.8kDa)。8)His6_TEV_CD163-ScFV_ケージ_I287A(約62kDa)。9.His6_TEV_キー_N3_CD163-ScFV(約35.5kDa)。
図10】CARモジュール及びCCRモジュールを発現するスプリットCAR-T細胞の結合の概略図を示す。スプリットCAR-Tは、抗原AとBの両方を発現する標的細胞に結合する場合、活性化及び共刺激されて、A及びBを発現する細胞の根絶を生じる。スプリットCAR-TがAまたはBのいずれかを発現する細胞と結合すると、準最適な活性化が生じる。
図11】スプリットCAR-TシステムのCARモジュール及びCCRモジュールの様々な構成要素の概略図を示す。AまたはBタンパク質への抗原結合ドメインは、最適な組み合わせを特定するように、CARとCCRの両方の組み合わせで作成される。
【発明を実施するための形態】
【0045】
特定の態様では、本明細書に記載の主題は、少なくとも2つの抗原結合領域を含む二重特異性分子を提供し、各抗原結合領域は、がんの最初の細胞(TFC)上の異なる抗原に結合する。
【0046】
いくつかの実施形態では、第1の抗原は、上皮細胞系統マーカーである。いくつかの実施形態では、上皮細胞系統マーカーは、図2のマーカーのいずれか1つである。いくつかの実施形態では、上皮細胞系統マーカーは、上皮細胞接着分子(EpCAM)である。いくつかの実施形態では、EpCAMは、配列番号7または配列番号12を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原は、マクロファージ細胞系統マーカーである。いくつかの実施形態では、マクロファージ細胞系統マーカーは、図1のマーカーのいずれか1つである。いくつかの実施形態では、マクロファージ細胞系統マーカーは、CD163である。いくつかの実施形態では、CD163は、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、または配列番号13を含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、がんは、固形腫瘍を含む。いくつかの実施形態では、がんは、乳癌、脳癌、消化器癌、膵癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、胸腺癌、卵巣癌、前立腺癌、または子宮内膜癌である。いくつかの実施形態では、消化器癌は、胃癌または大腸癌である。
【0048】
いくつかの実施形態では、がんは、液体癌を含む。いくつかの実施形態では、液体癌は、白血病、リンパ腫、または骨髄腫である。いくつかの実施形態では、液体癌は、急性骨髄性白血病(AML)である。いくつかの実施形態では、液体癌は、B細胞悪性腫瘍である。いくつかの実施形態では、液体癌は、骨髄性腫瘍、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性腫瘍(MPN)、MDS/MPN重複症候群、急性骨髄性白血病、または慢性骨髄性白血病である。
【0049】
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合領域は、軽鎖可変(VL)領域及び重鎖可変(VH)領域を含み、VL領域が、配列番号36の軽鎖CDR1(CDRL1)、配列番号37の軽鎖CDR2(CDRL2)、配列番号38の軽鎖CDR3(CDRL3)を含み、VH領域が、配列番号33の重鎖CDR1、配列番号34の重鎖CDR2、及び配列番号35の重鎖CDR3を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合領域は、軽鎖可変(VL)領域及び重鎖可変(VH)領域を含み、VL領域が、配列番号42の軽鎖CDR1(CDRL1)、配列番号43の軽鎖CDR2(CDRL2)、配列番号44の軽鎖CDR3(CDRL3)を含み、VH領域が、配列番号39の重鎖CDR1、配列番号40の重鎖CDR2、及び配列番号41の重鎖CDR3を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合領域は、軽鎖可変(VL)領域及び重鎖可変(VH)領域を含み、VL領域が、配列番号48の軽鎖CDR1(CDRL1)、配列番号49の軽鎖CDR2(CDRL2)、配列番号50の軽鎖CDR3(CDRL3)を含み、VH領域が、配列番号45の重鎖CDR1、配列番号46の重鎖CDR2、及び配列番号47の重鎖CDR3を含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合領域は、配列番号28の軽鎖可変(VL)領域及び配列番号27の重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合領域は、配列番号30の軽鎖可変(VL)領域及び配列番号29の重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合領域は、配列番号32の軽鎖可変(VL)領域及び配列番号31の重鎖可変(VH)領域を含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、第1の抗原及び第2の抗原は、マクロファージ細胞系統マーカーである。いくつかの実施形態では、第1の抗原は、CD117、CD34、またはCD123であり、第2の抗原は、CD163である。いくつかの実施形態では、TFCは、転移性TFCである。
【0052】
いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、二重特異性抗体またはその抗原結合フラグメントである。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、薬物にコンジュゲートされている。いくつかの実施形態では、薬物は、毒素である。いくつかの実施形態では、薬物は、化学療法剤である。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、二重ナノボディ、BiTE、tandAb、DART、DART-Fc、DARPin、scFv、scFv-HAS-scFV、及びDNL-Fab3を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、二重特異性キメラ抗原受容体(CAR)である。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドを含むCo-LOCKRであり、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドは、それぞれ、がんのTFC上の異なる抗原に結合する。
【0053】
いくつかの実施形態では、第1のポリペプチドは、配列番号14、配列番号15、配列番号18、または配列番号19を含む。いくつかの実施形態では、第2のポリペプチドは、配列番号16、配列番号17、配列番号20、または配列番号21を含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、二重特異性CARは、synNotch CARである。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、及び第3のポリペプチドを含むCo-LOCKRであり、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドが、それぞれ、がんのTFC上の異なる抗原に結合し、第3のポリペプチドが、CARに結合し、第3のポリペプチドが、第1のポリペプチドまたは第2のポリペプチドに作動可能に連結されている。
【0055】
いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、キメラ抗原受容体(CAR)モジュール及びキメラ共刺激受容体(CCR)モジュールを含むスプリットCAR-Tシステムを含み、CARモジュールが、第1の抗原結合領域及びCD3zシグナル伝達ドメインを含むポリペプチドを含み、CCRモジュールが、第2の抗原結合領域及び2つ以上の共刺激ドメインを含むポリペプチドを含み、CARモジュール及びCCRモジュールが、それぞれ、がんのTFC上の異なる抗原に結合する。いくつかの実施形態では、スプリットCAR-Tシステムは、表4のポリペプチド配列の1つ以上を含む。
【0056】
特定の態様では、本明細書に記載の主題は、本明細書に記載の任意の実施形態による二重特異性分子を含む医薬組成物を提供する。
【0057】
特定の態様では、本明細書に記載の主題は、本明細書に記載の任意の実施形態による二重特異性分子をコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0058】
特定の態様では、本明細書に記載の主題は、本明細書に記載の任意の実施形態によるポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
【0059】
特定の態様では、本明細書に記載の主題は、本明細書に記載の任意の実施形態によるポリヌクレオチドを含むウイルスを提供する。
【0060】
特定の態様では、本明細書に記載の主題は、本明細書に記載の任意の実施形態による二重特異性分子を含む遺伝子改変型細胞を提供する。
【0061】
特定の態様では、本明細書に記載の主題は、本明細書に記載の任意の実施形態によるポリヌクレオチドを含む遺伝子改変型細胞を提供する。
【0062】
特定の態様では、本明細書に記載の主題は、それを必要とする対象におけるがんを処置または予防する方法を提供し、方法は、少なくとも2つの抗原結合領域を含む二重特異性分子を対象に投与することを含み、各抗原結合領域が、がんの最初の細胞(TFC)上の異なる抗原に結合する。
【0063】
いくつかの実施形態では、第1の抗原は、上皮細胞系統マーカーである。いくつかの実施形態では、上皮細胞系統マーカーは、図2のマーカーのいずれか1つである。いくつかの実施形態では、上皮細胞系統マーカーは、上皮細胞接着分子(EpCAM)である。いくつかの実施形態では、EpCAMは、配列番号7または配列番号12を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原は、マクロファージ細胞系統マーカーである。いくつかの実施形態では、マクロファージ細胞系統マーカーは、図1のマーカーのいずれか1つである。いくつかの実施形態では、マクロファージ細胞系統マーカーは、CD163である。いくつかの実施形態では、CD163は、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、または配列番号13を含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、がんは、固形腫瘍を含む。いくつかの実施形態では、がんは、乳癌、脳腫瘍、胃腸、膵癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、胸腺癌、卵巣癌、前立腺癌、または子宮内膜癌である。いくつかの実施形態では、消化器癌は、胃癌または大腸癌である。
【0065】
いくつかの実施形態では、がんは、液体癌である。いくつかの実施形態では、液体癌は、白血病、リンパ腫、または骨髄腫である。いくつかの実施形態では、液体癌は、急性骨髄性白血病(AML)である。いくつかの実施形態では、液体癌は、B細胞悪性腫瘍である。いくつかの実施形態では、液体癌は、骨髄性腫瘍、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性腫瘍(MPN)、MDS/MPN重複症候群、急性骨髄性白血病、または慢性骨髄性白血病である。
【0066】
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合領域は、軽鎖可変(VL)領域及び重鎖可変(VH)領域を含み、VL領域が、配列番号36の軽鎖CDR1(CDRL1)、配列番号37の軽鎖CDR2(CDRL2)、配列番号38の軽鎖CDR3(CDRL3)を含み、VH領域が、配列番号33の重鎖CDR1、配列番号34の重鎖CDR2、及び配列番号35の重鎖CDR3を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合領域は、軽鎖可変(VL)領域及び重鎖可変(VH)領域を含み、VL領域が、配列番号42の軽鎖CDR1(CDRL1)、配列番号43の軽鎖CDR2(CDRL2)、配列番号44の軽鎖CDR3(CDRL3)を含み、VH領域が、配列番号39の重鎖CDR1、配列番号40の重鎖CDR2、及び配列番号41の重鎖CDR3を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合領域は、軽鎖可変(VL)領域及び重鎖可変(VH)領域を含み、VL領域が、配列番号48の軽鎖CDR1(CDRL1)、配列番号49の軽鎖CDR2(CDRL2)、配列番号50の軽鎖CDR3(CDRL3)を含み、VH領域が、配列番号45の重鎖CDR1、配列番号46の重鎖CDR2、及び配列番号47の重鎖CDR3を含む。
【0067】
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合領域は、配列番号28の軽鎖可変(VL)領域及び配列番号27の重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合領域は、配列番号30の軽鎖可変(VL)領域及び配列番号29の重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合領域は、配列番号32の軽鎖可変(VL)領域及び配列番号31の重鎖可変(VH)領域を含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、第1の抗原及び第2の抗原は、マクロファージ細胞系統マーカーである。いくつかの実施形態では、第1の抗原は、CD117、CD34、またはCD123であり、第2の抗原は、CD163である。
【0069】
いくつかの実施形態では、TFCは、転移性TFCである。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、二重特異性抗体またはその抗原結合フラグメントである。
【0070】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、薬物にコンジュゲートされている。いくつかの実施形態では、薬物は、毒素である。いくつかの実施形態では、薬物は、化学療法剤である。
【0071】
いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、二重ナノボディ、BiTE、tandAb、DART、DART-Fc、DARPin、scFv、scFv-HAS-scFV、及びDNL-Fab3を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、二重特異性キメラ抗原受容体(CAR)である。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドを含むCo-LOCKRであり、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドは、それぞれ、がんのTFC上の異なる抗原に結合する。いくつかの実施形態では、第1のポリペプチドは、配列番号14、配列番号15、配列番号18、または配列番号19を含む。いくつかの実施形態では、第2のポリペプチドは、配列番号16、配列番号17、配列番号20、または配列番号21を含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、二重特異性CARは、synNotch CARである。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、及び第3のポリペプチドを含むCo-LOCKRであり、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドが、それぞれ、がんのTFC上の異なる抗原に結合し、第3のポリペプチドが、二重特異性CARに結合し、第3のポリペプチドが、第1のポリペプチドまたは第2のポリペプチドに作動可能に連結されている。
【0073】
いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、キメラ抗原受容体(CAR)モジュール及びキメラ共刺激受容体(CCR)モジュールを含むスプリットCAR-Tシステムを含み、CARモジュールが、第1の抗原結合領域及びCD3zシグナル伝達ドメインを含むポリペプチドを含み、CCRモジュールが、第2の抗原結合領域及び2つ以上の共刺激ドメインを含むポリペプチドを含み、CARモジュール及びCCRモジュールが、それぞれ、がんのTFC上の異なる抗原に結合する。いくつかの実施形態では、スプリットCAR-Tシステムは、表4のポリペプチド配列の1つ以上を含む。
【0074】
特定の態様では、本明細書に記載の主題は、少なくとも1つの上皮細胞系統マーカー及び少なくとも1つのマクロファージ細胞系統マーカーを発現する改変型細胞を提供する。
【0075】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの上皮細胞系統マーカーは、図2のマーカーのいずれか1つである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの上皮細胞系統マーカーは、上皮細胞接着分子(EpCAM)である。いくつかの実施形態では、EpCAMは、配列番号7または配列番号12を含む。
【0076】
いくつかの実施形態では、マクロファージ細胞系統の少なくとも1つのマーカーは、図1のマーカーのいずれか1つである。いくつかの実施形態では、マクロファージ細胞系統の少なくとも1つのマーカーは、CD163である。いくつかの実施形態では、CD163は、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、または配列番号13を含む。
【0077】
特定の態様では、本明細書に記載の主題は、がんを診断する方法を提供し、方法は、少なくとも1つの上皮細胞系統マーカー及び少なくとも1つのマクロファージ細胞系統マーカーを発現する細胞を検出することを含む。
【0078】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの上皮細胞系統マーカーは、図2のマーカーのいずれか1つである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの上皮細胞系統マーカーは、上皮細胞接着分子(EpCAM)である。いくつかの実施形態では、EpCAMは、配列番号7を含む。
【0079】
いくつかの実施形態では、マクロファージ細胞系統の少なくとも1つのマーカーは、図1のマーカーのいずれか1つである。いくつかの実施形態では、マクロファージ細胞系統の少なくとも1つのマーカーは、CD163である。いくつかの実施形態では、CD163は、配列番号8、配列番号9、配列番号10、または配列番号11を含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、検出は、二重特異性分子が、少なくとも1つの上皮細胞系統マーカー及び少なくとも1つのマクロファージ細胞系統マーカーに結合するアッセイを含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、がんは、固形腫瘍を含む。いくつかの実施形態では、がんは、乳癌、脳癌、消化器癌、膵癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、胸腺癌、卵巣癌、前立腺癌、または子宮内膜癌である。いくつかの実施形態では、消化器癌は、胃癌または大腸癌である。いくつかの実施形態では、がんは、液体癌である。いくつかの実施形態では、液体癌は、白血病、リンパ腫、または骨髄腫である。いくつかの実施形態では、液体癌は、急性骨髄性白血病(AML)である。いくつかの実施形態では、液体癌は、B細胞悪性腫瘍である。いくつかの実施形態では、液体癌は、骨髄性腫瘍、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性腫瘍(MPN)、MDS/MPN重複症候群、急性骨髄性白血病、または慢性骨髄性白血病である。
【0082】
がん細胞の特異的標的化は、がん分野における主要課題を有しており。化学療法及び放射線療法などのがん処置の最も一般的なアプローチは、無差別であり、がん細胞と正常細胞(非がん細胞または健康な細胞)の両方を標的として、患者に多くの痛みを伴う副作用を経験させる。抗体及びキメラ抗原療法(CAR-T)を含む免疫療法アプローチなどの、がん細胞を殺傷する標的化アプローチは、1つ以上の事前に決定された抗原を発現する細胞を正確に排除する能力を有する。しかし、最大の課題は、標的とすることができるがん細胞に特有の抗原を特定することである1、2。この課題は、がん細胞にのみ存在し、正常細胞には存在しない単一の固有の抗原が存在しないことに起因する。がん細胞を区別するための方策は、2つ以上の抗原を標的とすることを含む
【0083】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示の主題は、ほとんどが自然的に発生しないという発見に関する。臓器または組織にストレスを加えると、ストレスを受けた細胞は、勇敢な生存方策を展開し得る。いくつかの実施形態では、これらの細胞生存方策の1つは、血液由来のマクロファージとの融合を含む3~6。このハイブリッド組織細胞及びマクロファージは、最初の細胞(TFC)と呼ばれ、がん性成長を引き起こす。従って、がんは、必ずしも1つの細胞で生じるわけではなく、2つの細胞で生じ得る。
【0084】
いくつかの実施形態では、このTFCは、ゲノム再構成及び再改変を受け、以下を含む複数の結果が生じる。
【0085】
いくつかの実施形態では、TFCは、免疫システムを回避する能力を有する-TFCは、マクロファージマーカーを発現するので、免疫システムを回避し得る4、5、7~13
【0086】
いくつかの実施形態では、TFCは、ハイブリッドであり、これは、両方の起源組織の特性を保持している。TFCは、マクロファージの1つの部分であるので、体中を自由に移動し得、転移と大きく関連し得る4、5、7~13
【0087】
いくつかの実施形態では、TFCは、視覚的に識別することができる。いくつかの実施形態では、TFCは、巨大な倍数体細胞として現れる。いくつかの実施形態では、TFCは、固形腫瘍の100%において巨大な倍数体細胞として観察することができる。いくつかの実施形態では、TFCは、骨髄異形成症候群(MDS)の場合に、巨大な倍数体細胞として観察することができる。いくつかの実施形態では、TFCは、急性骨髄性白血病(AML)の場合に、巨大な倍数体細胞として観察することができる
【0088】
固形腫瘍では、TFCは、それが由来する上皮組織の少なくとも1つのマーカーと、マクロファージの少なくとも1つのマーカーを発現し得る5、14。いくつかの実施形態では、上皮組織マーカーは、上皮細胞接着分子(EpCAM)である。EpCAMは、体の表面及び空洞を覆う上皮細胞に存在する。EpCAMは、上皮細胞の膜に及び得、細胞接着に重要である。いくつかの実施形態では、マクロファージマーカーは、ハプトグロビン-ヘモグロビン複合体のスカベンジャー受容体であるCD163である。
【0089】
いくつかの実施形態では、TFCは、他の腫瘍細胞とは異なる。いくつかの実施形態では、TFCは、循環腫瘍細胞(CTC)とは異なる
【0090】
いくつかの実施形態では、TFCは、CAML(がん関連マクロファージ様細胞)またはPACC(多異数体がん細胞)またはPGCC(多倍体巨大がん細胞)などとも呼ばれる。いくつかの実施形態では、TFCは、融合細胞または巨大細胞と呼ばれることがある。
【0091】
いくつかの実施形態では、TFCは、EpCAM及びCD163マーカーを発現するという点で特異である。EpCAMの発現は、上皮系統の細胞に限定され、CD163の発現は、マクロファージ系統の細胞に限定される。いくつかの実施形態では、これらの抗原の両方を発現する正常細胞は存在しない。
【0092】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の主題は、患者のがん療法の一部として、TFCを除去するために2つの抗原を標的とすることに関する。いくつかの実施形態では、抗原は、上皮細胞系統マーカー及びマクロファージ細胞系統マーカーである。いくつかの実施形態では、抗原は、EpCAM及びCD163である。いくつかの実施形態では、2つの抗原は、本明細書に記載の2つの抗原を認識する二重特異性分子のいずれか(限定されないが、2つの抗原を認識する二重特異性抗体を含む)により標的とされる。
【0093】
いくつかの実施形態では、これらの抗原のいずれかのみを発現する細胞を標的とすることを回避するために、ブール論理演算子ANDシステムを使用することができる。いくつかの実施形態では、このシステムは、両方の抗原(EpCAM及びCD163)が存在するので、TFCのみを標的とする。いくつかの実施形態では、この方策は、CD163(マクロファージ系統)またはEpCAM(上皮系統)のいずれかのみを発現する細胞を見逃す。
【0094】
ブール演算子は、数学的なセット及びデータベース論理の基礎を形成して、検索用語の結合により、検索結果を絞り込むか、または広げることができる。基本的なブール演算子は3つある:AND、OR、及びNOT。AND演算子を使用すると、全ての検索用語が結果のレコードに存在する必要があるので、検索結果が絞り込まれるであろう。2つの状態のみを有する論理ベースモデルは、ブールモデルと呼ばれる。いくつかの実施形態では、集積回路の設計及び機能に主に使用されるブール論理ゲートの原理が、1つ以上の入力を感知し、これらの入力を統合して所望の生物学的出力を生成するために本明細書で実装される。いくつかの実施形態では、論理ANDゲートは、指定された全ての入力が存在する場合に出力を生成する。本明細書に開示の主題のいくつかの実施形態では、論理ANDゲートが分子回路の設計で実装されている。いくつかの実施形態では、抗原(入力)EpCAMとCD163の両方が同じ細胞上に存在する場合にのみ、細胞傷害性応答(出力)を可能にすることができる。
【0095】
いくつかの実施形態では、TFC上の2つの抗原を標的とする場合、下記のアプローチの1つ以上を利用することができる。いくつかの実施形態では、アプローチは、大きな生体分子(例えば、タンパク質)に基づいている。いくつかの実施形態では、アプローチは、養子細胞療法(例えば、CAR-T)に基づいている。
【0096】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示の主題は、がん細胞を選択的に標的とする方法に関し、方法は、少なくとも2つの抗原結合領域を標的とすることを含み、各抗原結合領域が、がんの最初の細胞(TFC)上の異なる抗原に結合する。いくつかの実施形態では、第1の抗原は、上皮細胞系統マーカーである。いくつかの実施形態では、上皮細胞系統マーカーは、図2のマーカーのいずれか1つである。いくつかの実施形態では、上皮細胞系統マーカーは、上皮細胞接着分子(EpCAM)である。いくつかの実施形態では、第2の抗原は、マクロファージ細胞系統マーカーである。いくつかの実施形態では、マクロファージ細胞系統マーカーは、図1のマーカーのいずれか1つである。いくつかの実施形態では、マクロファージ細胞系統マーカーは、CD163である。いくつかの実施形態では、TFCは、図2のマーカーの1つ以上と、図1のマーカーの1つ以上を発現する。いくつかの実施形態では、例えば、骨髄性白血病または骨髄起源のがんでは、第1の抗原及び第2の抗原は、双方ともに、マクロファージ細胞系統マーカーである。いくつかの実施形態では、マクロファージ細胞系統の両方のマーカーは、図1のマーカーのいずれか1つから選択される。いくつかの実施形態では、第1の抗原は、CD117、CD34、CD123、またはそれらの任意の組み合わせであり、第2の抗原は、CD163である。いくつかの実施形態では、がんは、固形腫瘍を含む。いくつかの実施形態では、がんは、乳癌、脳腫瘍、胃癌及び大腸癌を含む消化器癌、膵癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、胸腺癌、卵巣癌、前立腺癌、または子宮内膜癌である。いくつかの実施形態では、がんは、液体癌である。いくつかの実施形態では、液体癌は、白血病、リンパ腫、または骨髄腫である。いくつかの実施形態では、液体癌は、限定されないが、多発性骨髄腫、B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、または慢性リンパ性白血病(CLL)を含むB細胞悪性腫瘍である。いくつかの実施形態では、液体癌は、急性骨髄性白血病(AML)である。いくつかの実施形態では、液体癌は、骨髄性腫瘍である。いくつかの実施形態では、液体癌は、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性腫瘍(MPN)、MDS/MPN重複症候群、急性骨髄性白血病、または慢性骨髄性白血病である。いくつかの実施形態では、TFCは、転移性TFCである。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、二重特異性抗体またはその抗原結合フラグメントである。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体またはその抗原結合フラグメントは、毒素にコンジュゲートされている。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、二重ナノボディ、DARPins、BiTE、tandAb、DART、DART-Fc、scFv、scFv-HAS-scFV、及びDNL-Fab3を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、二重特異性キメラ抗原受容体(CAR)である。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドを含む共ラッチング直交ケージ-キータンパク質(Co-LOCKR)であり、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドが、それぞれ、がんのTFC上の異なる抗原に結合する。
【0097】
いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、及び第3のポリペプチドを含むCo-LOCKRであり、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドが、それぞれ、がんのTFC上の異なる抗原に結合し、第3のポリペプチドが、CARに結合し、第3のポリペプチドが、第1のポリペプチドまたは第2のポリペプチドに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、それぞれの抗原に結合した後に、第1及び第2のポリペプチドの立体配座の変化がある。いくつかの実施形態では、立体配座の変化は、第3のポリペプチドが周囲のタンパク質にさらされるようにする。いくつかの実施形態では、CARは、T細胞の表面上に発現する。いくつかの実施形態では、二重特異性CARは、synNotch CARである。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、設計されたアンキリンリピートタンパク質(DARPin)を含む。いくつかの実施形態では、Co-LOCKRの第1及び第2のポリペプチドは、DARPinドメインを使用して、がんのTFC上のそれぞれの抗原(例えば、EpCAM及びCD163)に結合する。
【0098】
本発明の二重特異性分子
特定の態様では、本発明は、少なくとも2つの抗原結合領域を含む二重特異性分子を提供し、各抗原結合領域は、がんの最初の細胞(TFC)上の異なる抗原に結合する。
【0099】
いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、二重特異性抗体、その機能的同等物、その抗原結合フラグメント、その誘導体、または抗体様二重特異性分子である。そのような分子は、当該技術分野で既知であり、全長重鎖及び軽鎖、全長重鎖、全長軽鎖、Fabフラグメント、単鎖Fv(scFv)フラグメント、二価単鎖抗体、またはダイアボディを含むが、これらに限定されず、これらのそれぞれは、標的抗原、単一ドメイン抗体、または標的抗原に特異的な1つ以上のペプチドである。様々な二重特異性分子フォーマットが、例えば、以下の図2に記載されるように、当該技術分野で既知である:Konterman R.E.et al.,Bispecific Antibodies,Drug Discov.Today 20(July(7))(2015)838-847の図2と、Suurs F.V.,et al.,A review of bispecific antibodies and antibody constructs in oncology and clinical challenges,Pharmacol.Ther.2019 Sep;201:103-119の図1(それぞれの内容は、全体が参照により本明細書に組み込まれる)。本発明の二重特異性分子は、免疫グロブリン(Ig)様二重特異性抗体及び小さな二重特異性分子を含むが、これらに限定されず、これらのほとんどは、Fc領域(限定されないが、二重ナノボディ、DARPin、BiTE、tandAb、DART、DART-Fc、scFv、scFv-HAS-scFV、及びDNL-Fab3を含む)を有さない。アフィボディ、ペプチド、及びCo-LOCKRなどの代替品も多数ある。実際には、当業者らが理解するように、がんのTFC上の特定の抗原に高い親和性で結合するほぼ全ての分子が、抗原結合領域として使用することができる。二重特異性分子が特定の抗原に高い親和性で結合するかどうかを判定する方法は、当業者らに既知であり、これらは、ELISA及びBiacoreなどの直接的及び間接的な固相アッセイを含むが、これらに限定されない。
【0100】
IgG抗体の構造上の性質は、2つの抗原結合部位があるものであり、これらは、双方ともに、同じエピトープに特異的である。それ故、それらは、単一特異性である。二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対する結合特異性を有する抗体である。二重特異性抗体は、その臨床治療効果がモノクローナル抗体よりも優れている可能性があるので、腫瘍免疫療法に幅広く応用されている。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の主題は、二重特異性抗体、その機能的同等物、その抗原結合フラグメント、その誘導体、または抗体様二重特異性分子に関し、これは、がん細胞上の2つの異なる抗原に結合する。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体、その機能的同等物、その抗原結合フラグメント、その誘導体、または抗体様二重特異性分子は、TFCの表面上の2つの異なる抗原に結合する。いくつかの実施形態では、一方の抗原は、上皮細胞系統マーカーであり、他方の抗原は、マクロファージ細胞系統マーカーである。いくつかの実施形態では、上皮細胞系統マーカーは、EpCAMである。いくつかの実施形態では、マクロファージ細胞系統マーカーは、CD163である。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体、その機能的同等物、その抗原結合フラグメント、その誘導体、または抗体様二重特異性分子は、2つの異なる抗原(一方は、図1から選択され、他方は、図2から選択される)に結合する。いくつかの実施形態では、両方の抗原は、マクロファージ細胞系統マーカーである。いくつかの実施形態では、第1の抗原は、CD117、CD34、CD123、またはそれらの任意の組み合わせであり、第2の抗原は、CD163である。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体、その機能的同等物、その抗原結合フラグメント、その誘導体、または抗体様二重特異性分子は、図1から選択される2つの異なる抗原に結合する。
【0101】
いくつかの実施形態では、本発明は、2つの抗原結合領域を含む二重特異性分子を提供し、第1の抗原結合領域は、EpCAMに結合し、第2の抗原結合領域は、CD163に結合する。EpCAMに特異的な抗原結合領域は、本明細書に記載されており、これは、「EpCAMに特異的な抗原結合領域またはドメイン」という名称のセクションを含むが、これに限定されない。CD163に特異的な抗原結合領域は、本明細書に記載されており、これは、「CD163に特異的な抗原結合領域またはドメイン」という名称のセクションを含むが、これに限定されない。本発明の二重特異性分子は、CD163に特異的な抗原結合領域のいずれかと組み合わせて、EpCAMに特異的な抗原結合領域のいずれかを含む。
【0102】
様々な種類の二重特異性抗体を生成するための様々なプラットフォームが存在する。二重特異性抗体を生成するいくつかの技術は、重鎖及び軽鎖の異種組み換えに基づいている。2つの異なる抗体の抗原結合部位から誘導される二重特異性抗体を生成するための様々な方策は、例えば、以下に記載されるように、当該技術分野で知られている:Konterman R.E.et al.,Bispecific Antibodies,Drug Discov.Today 20(July(7))(2015)838-847(これらの内容は、全体が本明細書に参照により組み込まれる)。
【0103】
特定の態様では、上記の二重特異性分子、二重特異性分子をコードするポリヌクレオチド、二重特異性分子をコードするポリヌクレオチドを含むベクター、二重特異性分子をコードするポリヌクレオチドを含むウイルス、遺伝子改変型細胞、形質転換もしくは形質導入宿主細胞を含む医薬組成物も提供され、これは、二重特異性分子及び/または二重特異性分子をコードするポリヌクレオチドを含む。
【0104】
CAR-T療法
キメラ抗原受容体技術(CAR-T)療法は、患者自身のT細胞が体内のがん細胞を攻撃するようにプログラムされるタイプのがん処置である。この療法では、患者の血液から、T細胞を採取することができる。患者の腕の静脈の血液を、アフェレシス装置に通す。これは、T細胞を含む白血球を除去し、残りの血液を患者に戻す。次に、実験室環境で、患者のがん細胞上の特定のタンパク質に結合する特定の受容体の遺伝子を、採取されたT細胞に導入することができる。受容体は、キメラ抗原受容体(CAR)と呼ばれる。これらの多数の改変型CAR-T細胞は、実験室環境に成長させることができ、患者の血流に注入することができる。CAR-T細胞療法は、追加処置なしで、持続的な寛解が得られる成功率が30%~40%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、CAR-T療法と組み合わせて投与することができる。
【0105】
特定の態様では、本発明の二重特異性分子は、少なくとも2つの抗原結合領域を含む二重特異性CARであり、各抗原結合領域は、がんの最初の細胞(TFC)上の異なる抗原に結合する。いくつかの実施形態では、二重特異性CARは、TFCの表面上の2つの異なる抗原に結合する。いくつかの実施形態では、一方の抗原は、上皮細胞系統マーカーであり、他方の抗原は、マクロファージ細胞系統マーカーである。いくつかの実施形態では、上皮細胞系統マーカーは、EpCAMである。いくつかの実施形態では、マクロファージ細胞系統マーカーは、CD163である。いくつかの実施形態では、二重特異性CARは、2つの異なる抗原(一方は、図1から選択され、他方は、図2から選択される)に結合する。いくつかの実施形態では、両方の抗原は、マクロファージ細胞系統マーカーである。いくつかの実施形態では、第1の抗原は、CD117、CD34、CD123、またはそれらの任意の組み合わせであり、第2の抗原は、CD163である。いくつかの実施形態では、両方の抗原は、マクロファージ細胞系統マーカーである。いくつかの実施形態では、二重特異性CARは、図1から選択される2つの異なる抗原に結合する。
【0106】
いくつかの実施形態では、本発明は、2つの抗原結合領域を含む二重特異性CARを提供し、第1の抗原結合領域は、EpCAMに結合し、第2の抗原結合領域は、CD163に結合する。EpCAMに特異的な抗原結合領域は、本明細書に記載されており、これは、「EpCAMに特異的な抗原結合領域またはドメイン」という名称のセクションを含むが、これに限定されない。CD163に特異的な抗原結合領域は、本明細書に記載されており、これは、「CD163に特異的な抗原結合領域またはドメイン」という名称のセクションを含むが、これに限定されない。本発明の二重特異性CARは、CD163に特異的な抗原結合領域のいずれかと組み合わせて、EpCAMに特異的な抗原結合領域のいずれかを含む。
【0107】
特定の態様では、上記の二重特異性CAR、二重特異性CARをコードするポリヌクレオチド、二重特異性CARをコードするポリヌクレオチドを含むベクター、二重特異性CARをコードするポリヌクレオチドを含むウイルス、ならびに二重特異性CAR及び/または二重特異性CARをコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子改変型細胞を含む医薬組成物も提供される。
【0108】
いくつかの実施形態では、1つの抗原のみを発現する細胞を標的とすることを回避するアプローチを使用することができる。そのようなアプローチは、当該技術分野で既知であり、Co-LOCKR、SynNotch CAR細胞、及び組み合わせ抗原認識システムを含むが、これらに限定されない。
【0109】
Co-LOCKR細胞標的化
Co-LOCKRは、AND、OR、及びNOTの論理演算を実行する共局在依存性タンパク質スイッチである15。システムは、合成タンパク質で作られた設計されたナノスケールデバイスを含み、これは、細胞表面マーカーの特有な所定の組み合わせで、細胞のみに治療薬または抗体を標的とする。いくつかの実施形態では、これらのタンパク質スイッチは、細胞表面上でAND論理を実施する。いくつかの実施形態では、Co-LOCKRタンパク質は、混合細胞集団内で2入力及び3入力の論理演算を実行する。いくつかの実施形態では、ラッチング直交ケージ-キータンパク質(LOCKR)スイッチは、別の「キー」タンパク質の結合により「エフェクター」タンパク質への結合を可能にする立体配座の変化が誘導されるまで、「ラッチ」ドメインを使用して、機能ペプチドを不活性立体配座に隔離する構造「ケージ」タンパク質で構成される。いくつかの実施形態では、ケージ、キー、及びエフェクターは、3方向の平衡で結合し、スイッチの感度は、相対的なケージ-ラッチ親和性及びケージ-キー親和性を調整することにより調整することができる。Co-LOCKRシステムの追加の実施形態は、以下に記載されており:Lajoie,M.J.,et al.,Designed protein logic to target cells with precise combinations of surface antigens,Science.2020 Sep 25;369(6511):1637-1643(これらは、全文が本明細書に組み込まれる)。いくつかの実施形態では、合成タンパク質は、分離されると、効果を持たない分子スイッチである。しかし、それらは、標的細胞の表面で結合すると、立体配座が変化して、分子ビーコンが活性化される。細胞表面上のこれらのビーコンは、事前に決定された生物活性(例えば、細胞の除去)を、特定の標的細胞に誘導し得る。いくつかの実施形態では、これらの分子ビーコンは、図3A~Bに示すように、分子ビーコンに特異的に結合するCAR-T細胞を動員する。いくつかの実施形態では、分子ビーコンは、Bim-Bcl2システムを含む。いくつかの実施形態では、Bimは、隔離されたペプチドとしてLOCKRシステムのラッチにコードされる。いくつかの実施形態では、Bcl2は、LOCKRシステムのエフェクターとして使用される。
【0110】
いくつかの実施形態では、Co-LOCKRシステムは、システムのエフェクター分子として使用されるBcl2に結合するCAR-T細胞を含む。一実施形態では、本明細書に記載のCAR-Tシステムは、以下のアミノ酸配列を含むBcl2 CAR配列を含む:
METDTLLLWVLLLWVPGSTGDYKDEYPYDVPDYAGSAHAGRTGYDNREIVMKYIHYKLSQRGYEWDAGDDAEENRTEAPEGTESEVVHRALRDAGDDFERRYRRDFAEMSSQLHLTPDTARQRFETVVEELFRDGVNWGRIVAFFEFGGVMCVESVNREMSPLVDNIAEWMTEYLNRHLHTWIQDNGGWDAFVELYGPSMRGGGGSGGGGSESKYGPPCPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFQSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGKMFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWVRSKRSRGGHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRSRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPRLEGGGEGRGSLLTCGDVEENPGPRMLLLVTSLLLCELPHPAFLLIPRKVCNGIGIGEFKDSLSINATNIKHFKNCTSISGDLHILPVAFRGDSFTHTPPLDPQELDILKTVKEITGFLLIQAWPENRTDLHAFENLEIIRGRTKQHGQFSLAVVSLNITSLGLRSLKEISDGDVIISGNKNLCYANTINWKKLFGTSGQKTKIISNRGENSCKATGQVCHALCSPEGCWGPEPRDCVSCRNVSRGRECVDKCNLLEGEPREFVENSECIQCHPECLPQAMNITCTGRGPDNCIQCAHYIDGPHCVKTCPAGVMGENNTLVWKYADAGHVCHLCHPNCTYGCTGPGLEGCPTNGPKIPSIATGMVGALLLLLVVALGIGLFM(配列番号1)。
【0111】
いくつかの実施形態では、LOCKRシステムのBcl2エフェクターは、配列番号1と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%の同一性を有するBcl CARである。いくつかの実施形態では、LOCKRシステムのBcl2エフェクターは、配列番号1の配列を含むBcl CARである。いくつかの実施形態では、LOCKRシステムのBcl2エフェクターは、配列番号1の配列からなるBcl CARである。いくつかの実施形態では、Bcl CARは、CAR-Tシステムの一部である。
【0112】
いくつかの実施形態では、本発明の二重特異性分子は、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドを含むCo-LOCKRであり、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドは、がんの第1の細胞(TFC)上の異なる抗原に結合する。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、及び第3のポリペプチドを含むCo-LOCKRであり、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドが、それぞれ、がんのTFC上の異なる抗原に結合し、第3のポリペプチドが、CARに結合し、第3のポリペプチドが、第1のポリペプチドまたは第2のポリペプチドに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、一方の抗原は、上皮細胞系統マーカーであり、他方の抗原は、マクロファージ細胞系統マーカーである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の主題は、EpCAM及びCD163を認識する二重特異性Co-LOCKRシステムの生成に関する。いくつかの実施形態では、第1のポリペプチドが結合する上皮細胞系統マーカーは、EpCAMである。いくつかの実施形態では、第2のポリペプチドが結合するマクロファージ細胞系統マーカーは、CD163である。いくつかの実施形態では、第1のポリペプチドは、図1から選択される任意の抗原に結合し、第2のポリペプチドは、図2から選択される任意の抗原に結合する。いくつかの実施形態では、両方の抗原は、マクロファージ細胞系統マーカーである。いくつかの実施形態では、第1の抗原は、CD117、CD34、CD123、またはそれらの任意の組み合わせであり、第2の抗原は、CD163である。いくつかの実施形態では、第1のポリペプチドは、図1から選択される任意の抗原に結合し、第2のポリペプチドは、図1から選択される他の任意の抗原に結合する。いくつかの実施形態では、第1及び第2のポリペプチドが、がんのTFCに結合すると、分子ビーコンは、例えば、キラーT細胞を誘導してがんのTFCを殺傷するように活性化される。
【0113】
いくつかの実施形態では、本発明は、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドを含む二重特異性Co-LOCKRを提供し、第1のポリペプチドが、EpCAMに結合する抗原結合領域を含み、第2のポリペプチドは、CD163に結合する抗原結合領域を含む。EpCAMに特異的な抗原結合領域は、本明細書に記載されており、これは、「EpCAMに特異的な抗原結合領域またはドメイン」という名称のセクションを含むが、これに限定されない。CD163に特異的な抗原結合領域は、本明細書に記載されており、これは、「CD163に特異的な抗原結合領域またはドメイン」という名称のセクションを含むが、これに限定されない。本発明の二重特異性Co-LOCKRは、CD163に特異的な抗原結合領域のいずれかと組み合わせて、EpCAMに特異的な抗原結合領域のいずれかを含む。
【0114】
いくつかの実施形態では、本発明は、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドを含む二重特異性Co-LOCKRを提供し、第1のポリペプチドが、キーまたはケージドメインと、EpCAMに結合する抗原結合領域を含み、第2のポリペプチドが、キーまたはケージドメインと、CD163に結合する抗原結合領域を含み、第1のポリペプチドがキードメインを含む場合、第2のポリペプチドが、ケージドメインを含むか、または、第1のポリペプチドがケージドメインを含む場合、第2のポリペプチドが、キードメインを含む。二重特異性Co-LOCKRをコードする配列は、さらに、シグナルペプチド、精製タグ、及び/またはプロテアーゼ部位を含み得る。二重特異性Co-LOCKRをそれを必要とする対象に投与する前に、シグナルペプチド及び/または精製タグが、任意のポリペプチドから切断または除去されることを、当業者は理解している。例示的なキードメイン及びケージドメイン、ならびにシグナルペプチド、精製タグ、及びプロテアーゼ部位は、例2に記載されている。
【0115】
特定の態様では、本明細書に記載のCo-LOCKR、本明細書に記載のCo-LOCKRをコードするポリヌクレオチド、本明細書に記載のCo-LOCKRをコードするポリヌクレオチドを含むウイルス、ならびに本明細書に記載のCo-LOCKR及び/または本明細書に記載のCo-LOCKRをコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子改変型細胞を含む医薬組成物が本明細書に提供される。
スプリットCAR-T
【0116】
スプリットキメラ抗原受容体T細胞(スプリットCAR-T)システムは、2つのモジュール(CARを含むモジュール及びキメラ共刺激受容体(CCR)を含むモジュール)を含む。T細胞を完全に活性化するために、CARとCCRの両方の結合が必要となる。2つの異なる標的抗原を発現する標的細胞(例えば、第1の細胞)に対して、バランスのとれたシグナル伝達及び最大のT細胞細胞傷害活性を達成するために、CAR及びCCRを同じT細胞で発現させることができる。いくつかの実施形態では、CARモジュールは、第1の抗原を特異的に認識する抗原結合ドメインと、CD3zシグナル伝達ドメインを含むポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、CARモジュールは、1)膜標的化のためのシグナルペプチド(GM-CSFまたはCD8アルファ由来)、2)ScFv配列(抗EpCAMまたは抗CD163抗体のいずれか由来)、3)ヒンジ領域(CD8由来)、4)膜貫通ドメイン(CD8由来)、及び、5)CD3zシグナル伝達ドメイン、を含む。
【0117】
いくつかの実施形態では、CCRモジュールは、第2の抗原を特異的に認識する抗原結合ドメインと、2つ以上の共刺激ドメインを含むポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、CCRモジュールは、1)膜標的化のためのシグナルペプチド(GM-CSF由来)、2)ScFv配列(抗EpCAM抗体または抗CD163抗体のいずれか由来)、3)ヒンジ領域(CD28由来)、4)膜貫通ドメイン(CD28由来)、及び、5)CD28共刺激ドメイン、及び6)4-1BB共刺激ドメイン、を含む。
【0118】
いくつかの実施形態では、本発明は、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドを含む二重特異性スプリットCAR-Tを提供し、第1のポリペプチドが、EpCAMに結合する抗原結合領域を含み、第2のポリペプチドは、CD163に結合する抗原結合領域を含む。EpCAMに特異的な抗原結合領域は、本明細書に記載されており、これは、「EpCAMに特異的な抗原結合領域またはドメイン」という名称のセクションを含むが、これに限定されない。CD163に特異的な抗原結合領域は、本明細書に記載されており、これは、「CD163に特異的な抗原結合領域またはドメイン」という名称のセクションを含むが、これに限定されない。本発明の二重特異性スプリットCAR-Tは、CD163に特異的な抗原結合領域のいずれかと組み合わせて、EpCAMに特異的な抗原結合領域のいずれかを含む。
【0119】
いくつかの実施形態では、本発明は、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドを含む二重特異性スプリットCAR-Tを提供し、第1のポリペプチドは、EpCAMに結合する抗原結合領域、ならびにスペーサードメイン、膜貫通ドメイン、及びCD3zシグナル伝達ドメインを含み、第2のポリペプチドは、CD163に結合する抗原結合領域、スペーサードメイン、膜貫通ドメイン、第1の共刺激ドメイン、及び第2の共刺激ドメインを含む。いくつかの実施形態では、本発明は、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドを含む二重特異性スプリットCAR-Tを提供し、第1のポリペプチドは、CD163に結合する抗原結合領域、ならびにスペーサードメイン、膜貫通ドメイン、及びCD3zシグナル伝達ドメインを含み、第2のポリペプチドは、EpCAMに結合する抗原結合領域、スペーサードメイン、膜貫通ドメイン、第1の共刺激ドメイン、及び第2の共刺激ドメインを含む。ポリペプチド配列は、さらに、シグナルペプチドを含み得る。いくつかの実施形態では、スペーサードメインは、CD8ヒンジドメインである。いくつかの実施形態では、スペーサードメインは、CD28ヒンジドメインである。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8膜貫通ドメインである。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CD28膜貫通ドメインである。いくつかの実施形態では、第1の共刺激ドメインは、CD28共刺激ドメインである。いくつかの実施形態では、第2の共刺激ドメインは、4-1BB共刺激ドメインである。シグナルペプチドが翻訳後処理中に任意のポリペプチドから切断または除去されることを、当業者は理解している。例示的なスペーサードメイン、膜貫通ドメイン、及び共刺激ドメイン、ならびにシグナルペプチドは、例3に記載されている。
【0120】
いくつかの実施形態では、本発明は、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドを含む二重特異性スプリットCAR-Tを提供し、第1のポリペプチドが、EpCAMに結合する抗原結合領域、ならびにCD8ヒンジドメイン、CD8膜貫通ドメイン、及びCD3zシグナル伝達ドメインを含み、第2のポリペプチドが、CA163に結合する抗原結合領域、CD28ヒンジドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD28共刺激ドメイン、及び4-1BB共刺激ドメインを含む。いくつかの実施形態では、本発明は、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドを含む二重特異性スプリットCAR-Tを提供し、第1のポリペプチドが、CD163に結合する抗原結合領域、ならびにCD8ヒンジドメイン、CD8膜貫通ドメイン、及びCD3zシグナル伝達ドメインを含み、第2のポリペプチドが、EpCAMに結合する抗原結合領域、CD28ヒンジドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD28共刺激ドメイン、及び4-1BB共刺激ドメインを含む。
【0121】
特定の態様では、本明細書に記載のスプリットCAR-T、本明細書に記載のスプリットCAR-Tをコードするポリヌクレオチド、本明細書に記載のスプリットCAR-Tをコードするポリヌクレオチドを含むウイルス、ならびに本明細書に記載のスプリットCAR-T及び/または本明細書に記載のスプリットCAR-Tをコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子改変型細胞、を含む医薬組成物も提供される。
【0122】
SynNotch CAR細胞16、17
合成ノッチ(synNotch)経路は、哺乳動物細胞において事前に決定された機能的応答を駆動し得る。個々のsynNotch経路は、共通のシグナル伝達中間体を共有せず、これにより、経路が機能的に直交する。ブール応答プログラムを含む複数の外部キューの統合を達成するために、従って、複数のsynNotch受容体を同じ細胞内で使用することができる。SynNotch-CAR-T細胞は、プライム及びキル分子回路である。synNotch受容体は、関連抗原が全て、標的細胞上に存在する場合にのみ、CAR-T細胞を準備し、活性化する。これにより、CAR-T細胞が、がん細胞のみを標的とし、正常細胞を見逃すことが可能になる。追加のCARベースのアプローチは、SUPRA CAR19、20、RevCAR21、22、及びAvidCARを含む23。いくつかの実施形態では、二重特異性CARは、SynNotchCARである。いくつかの実施形態では、TFCは、タンパク質スイッチのCo-LOCKRシステムを使用して、二重特異性分子で標的化される。いくつかの実施形態では、TFCは、synCARシステム、SUPRA CARシステム、RevCARシステム、またはAvidCARシステムを使用して、二重特異性分子で標的化される。いくつかの実施形態では、TFCは、コンビナトリアル抗原認識システムを使用する二重特異性抗体により標的とされる。いくつかの実施形態では、TFCは、毒素にコンジュゲートされた二重特異性抗体により標的とされる。
【0123】
組み合わせ抗原認識システム18
組み合わせ抗原認識システムは、改変型T細胞による選択的な腫瘍根絶を促進し得る。それにより、真に腫瘍特異的標的抗原が存在しない場合でも、改変型T細胞が腫瘍に特異的になることが可能になる。
【0124】
DARPins
設計されたアンキリンリピートタンパク質(DARPins)は、遺伝子改変型抗体模倣タンパク質である。DARPinは、高い特異性及び高い親和性で標的タンパク質に結合する。それらは、多様な細胞機能に関与している結合タンパク質のクラスであるアンキリンリピートタンパク質から誘導することができる。いくつかの実施形態では、DARPinは、2つ以上のリピートポリペプチドモチーフから構成され、N末端キャップ及びC末端キャップで保護された疎水性コアを有する。
【0125】
いくつかの実施形態では、本発明の二重特異性分子は、少なくとも第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドを含むDARPin分子であり、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドは、がんの第1の細胞(TFC)上の異なる抗原に結合する。いくつかの実施形態では、一方の抗原は、上皮細胞系統マーカーであり、他方の抗原は、マクロファージ細胞系統マーカーである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の主題は、EpCAM及びCD163を認識する二重特異性DARPin分子を生成することに関する。いくつかの実施形態では、第1のポリペプチドが結合する上皮細胞系統マーカーは、EpCAMである。いくつかの実施形態では、第2のポリペプチドが結合するマクロファージ細胞系統マーカーは、CD163である。いくつかの実施形態では、第1のポリペプチドは、図1から選択される任意の抗原に結合し、第2のポリペプチドは、図2から選択される任意の抗原に結合する。いくつかの実施形態では、両方の抗原は、マクロファージ細胞系統マーカーである。いくつかの実施形態では、第1の抗原は、CD117、CD34、CD123、またはそれらの任意の組み合わせであり、第2の抗原は、CD163である。いくつかの実施形態では、第1のポリペプチドは、図1から選択される任意の抗原に結合し、第2のポリペプチドは、図1から選択される他の任意の抗原に結合する。いくつかの実施形態では、二重特異性DARPin分子は、キラーT細胞を誘導してがんのTFCを殺傷する。いくつかの実施形態では、CAR抗原認識ドメインは、二重特異性DARPin分子を含む。いくつかの実施形態では、Co-LOCKRシステムの抗原結合ドメインは、DARPinを含む。いくつかの実施形態では、標的細胞上のEpCAM及びCD163に特異的に結合する1つ以上のDARPinが、1つ以上のDAPRinライブラリをスクリーニングすることにより特定される。いくつかの実施形態では、1つ以上のDAPRinライブラリが市販されている。
【0126】
一本鎖可変フラグメント
単鎖可変フラグメント(scFv)は、1つ以上の免疫グロブリンの重鎖(VH)及び軽鎖(VL)の可変領域の融合タンパク質である。2つの鎖は、10~約25個のアミノ酸からなる短いリンカーペプチドで連結することができる。リンカーは、柔軟性を目的にグリシンを豊富に含み、溶解性を目的にセリンまたはトレオニンを豊富に含み得る。リンカーは、VHのN末端をVLのC末端に、またはその逆も連結することができる。このタンパク質は、元の1つ以上の免疫グロブリンの特異性を保持する。scFVは、本明細書に記載のいずれかの二重特異性分子の抗原結合ドメインとして表現することができる。scFvは、CARの抗原結合ドメインとして表現することができる。いくつかの実施形態では、多価scFvは、2つ以上のscFvフラグメントを連結することにより設計することができる。いくつかの実施形態では、多価scFvは、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE抗体構築物)として既知の二重特異性タンデムscFvに設計することができる。
【0127】
いくつかの実施形態では、本発明の二重特異性分子は、少なくとも2つのscFvを含み、各scFvの抗原結合部位は、それぞれ、がんの第1の細胞(TFC)上の異なる抗原に結合する。いくつかの実施形態では、一方の抗原は、上皮細胞系統マーカーであり、他方の抗原は、マクロファージ細胞系統マーカーである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の主題は、EpCAM及びCD163を認識する少なくとも2つのscFvを含む二重特異性分子を生成することに関する。いくつかの実施形態では、第1のscFVが結合する上皮細胞系統マーカーは、EpCAMである。いくつかの実施形態では、第2のscFVにより結合されるマクロファージ細胞系統マーカーは、CD163である。いくつかの実施形態では、第1のscFVは、図1から選択される任意の抗原に結合し、第2のscFVは、図2から選択される任意の抗原に結合する。いくつかの実施形態では、両方の抗原は、マクロファージ細胞系統マーカーである。いくつかの実施形態では、第1の抗原は、CD117、CD34、CD123、またはそれらの任意の組み合わせであり、第2の抗原は、CD163である。いくつかの実施形態では、第1のscFVは、図1から選択される任意の抗原に結合し、第2のscFVは、図1から選択される他の任意の抗原に結合する。いくつかの実施形態では、二重特異性scFvフラグメントは、キラーT細胞を誘導してがんのTFCを殺傷する。いくつかの実施形態では、CAR抗原認識ドメインは、二重特異性scFvフラグメントを含む。EpCAMに特異的に結合する抗体分子の実施形態及び配列は、米国特許第7,632,925B2号に開示され、この内容は、全体が本明細書に参照により組み込まれる。CD163に特異的に結合する抗体分子の実施形態及び配列は、米国特許出願公開番号:US2017/0119790A1、US9,724,426、及びUS11,034,770に開示されており、それぞれの内容は、全体が本明細書に参照により組み込まれる。
【0128】
薬物コンジュゲート二重特異性抗体
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の主題は、薬物コンジュゲート二重特異性抗体の生成に関する。いくつかの実施形態では、薬物は、毒素である。いくつかの実施形態では、毒素は、化学療法剤である。いくつかの実施形態では、化学療法剤は、エムタンシンである。いくつかの実施形態では、薬物は、メトトレキサート、チオグアニン、5-フルオロウラシル、シトシンアラビノシド(ARA-C)、シスプラチン、アクチノマイシンD、アントラサイクリン、またはビンカアルカロイドである。いくつかの実施形態では、薬物は、微小管破壊剤である。いくつかの実施形態では、微小管破壊剤は、アウリスタチンである。いくつかの実施形態では、微小管破壊剤は、メイタンシノイドを含む。いくつかの実施形態では、薬物は、DNA損傷剤である。いくつかの実施形態では、DNA損傷剤は、カリケアマイシンである。いくつかの実施形態では、DNA損傷剤は、デュオカルマイシンである。いくつかの実施形態では、DNA損傷剤は、ドキソルビシンである。いくつかの実施形態では、毒素は、標的がん細胞を殺傷する。いくつかの実施形態では、薬物は、ビオチン-ストレプトアビジン相互作用を介して二重特異性抗体にコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、薬物は、二重特異性抗体に共有結合的にコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、薬物は、リンカーを介して抗体にコンジュゲートされる。抗体薬物コンジュゲートのさらなる実施形態は、以下に開示される:Khongorzul,P.,Antibody-Drug Conjugates:A Comprehensive Review,Mol Cancer Res.,2020,18(1):3-19(全体が本明細書に組み込まれる)。
【0129】
いくつかの実施形態では、薬物コンジュゲート抗体療法の目的は、特定の担体を使用して、毒性の高い薬物を、その標的細胞に送達することである。いくつかの実施形態では、胃酸及び抗体のタンパク質分解酵素による分解を避けるために、静脈内から血流への、そのような療法の投与が行われる。いくつかの実施形態では、標的細胞が認識されると、薬物コンジュゲート抗体及びその抗原は、受容体介在性エンドサイトーシスにより細胞内に内在化される。いくつかの実施形態では、内部化すると、遊離細胞毒性薬が細胞質に放出され、薬物が細胞機序を妨害し、アポトーシスを誘導し、及び/または最終的に細胞死を誘導する。
【0130】
特定の態様では、本発明の二重特異性分子は、少なくとも2つの抗原結合領域を含む薬物コンジュゲート二重特異性抗体であり、各抗原結合領域は癌の最初の細胞(TFC)上の異なる抗原に結合する。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、TFCの表面上の2つの異なる抗原に結合する。いくつかの実施形態では、一方の抗原は、上皮細胞系統マーカーであり、他方の抗原は、マクロファージ細胞系統マーカーである。いくつかの実施形態では、上皮細胞系統マーカーは、EpCAMである。いくつかの実施形態では、マクロファージ細胞系統マーカーは、CD163である。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、2つの異なる抗原(一方は、図1から選択され、他方は、図2から選択される)に結合する。いくつかの実施形態では、両方の抗原は、マクロファージ細胞系統マーカーである。いくつかの実施形態では、第1の抗原は、CD117、CD34、CD123、またはそれらの任意の組み合わせであり、第2の抗原は、CD163である。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、図1から選択される2つの異なる抗原に結合する。
【0131】
いくつかの実施形態では、本発明は、2つの抗原結合領域を含む薬物コンジュゲート二重特異性抗体を提供し、第1の抗原結合領域は、EpCAMに結合し、第2の抗原結合領域は、CD163に結合する。EpCAMに特異的な抗原結合領域は、本明細書に記載されており、これは、「EpCAMに特異的な抗原結合領域またはドメイン」という名称のセクションを含むが、これに限定されない。CD163に特異的な抗原結合領域は、本明細書に記載されており、これは、「CD163に特異的な抗原結合領域またはドメイン」という名称のセクションを含むが、これに限定されない。本発明の薬物コンジュゲート二重特異性抗体は、CD163に特異的な抗原結合領域のいずれかと組み合わせて、EpCAMに特異的な抗原結合領域のいずれかを含む。
【0132】
特定の態様では、上記の薬物コンジュゲート二重特異性抗体、薬物コンジュゲート二重特異性抗体をコードするポリヌクレオチド、薬物コンジュゲート二重特異性抗体をコードするポリヌクレオチドを含むベクター、薬物コンジュゲート二重特異性抗体をコードするポリヌクレオチドを含むウイルス、ならびに二重特異性抗体及び/または薬物コンジュゲート二重特異性抗体をコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子改変型細胞を含む医薬組成物も提供される。
【0133】
改変型ハイブリッド細胞
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の主題は、少なくとも1つの上皮細胞系統マーカー及び少なくとも1つのマクロファージ細胞系統マーカーを発現する細胞または細胞集団の改変に関する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの上皮細胞系統マーカーは、図2のマーカーのいずれか1つである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの上皮細胞系統マーカーは、上皮細胞接着分子(EpCAM)である。いくつかの実施形態では、マクロファージ細胞系統の少なくとも1つのマーカーは、図1のマーカーのいずれか1つである。いくつかの実施形態では、マクロファージ細胞系統の少なくとも1つのマーカーは、CD163である。いくつかの実施形態では、細胞は、EpCAMまたはCD163のいずれかのみ、またはEpCAM及びCD163マーカーの両方を発現する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の主題は、少なくとも2つのマーカーマクロファージ細胞系統を発現する細胞または細胞集団の改変に関する。いくつかの実施形態では、少なくとも2つのマーカーは、CD117、CD34、CD123、またはそれらの任意の組み合わせ及びCD163のいずれかである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の主題は、両方の抗原を発現する改変型細胞を特異的に標的として、いずれかの抗原のみを発現する細胞を見逃すことを実証することに関する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の主題は、二重特異性分子の特異性及び毒性を実証するためのin vitro及びin vivoアッセイ研究を実施することに関する。いくつかの実施形態では、アッセイで使用される標的細胞は、少なくとも1つの上皮細胞系統マーカー及び少なくとも1つのマクロファージ細胞系統マーカーを発現するように改変されている。いくつかの実施形態では、アッセイで使用される標的細胞は、マクロファージ細胞系統の少なくとも2つのマーカーを発現するように設計される。いくつかの実施形態では、アッセイで使用される標的細胞は、2つの異なる抗原(一方は、図1から選択され、他方は、図2から選択される)を発現する改変型細胞の集団を含む。いくつかの実施形態では、アッセイで使用される標的細胞は、図1から選択される2つの異なる抗原を発現する改変型細胞の集団を含む。いくつかの実施形態では、アッセイで使用される標的細胞は、EpCAM及びCD163マーカーの両方を発現する改変型細胞の集団を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の主題は、限定された系統特異的発現を示し、図1及び図2の抗原の組み合わせが使用される場合、潜在的に標的とすることができるいくつかの他の抗原の同定に関する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のがん処置アプローチは、全てのがんにおいて普遍的にTFCを標的として、除去する。
【0134】
抗原結合領域またはドメイン
抗体は、少なくとも2つの重鎖及び2つの軽鎖を含むヘテロ多量体糖タンパク質である。IgMを除き、インタクト抗体は、通常、2つの同一の軽鎖(L)と2つの同一の重鎖(H)から構成されるヘテロ四量体糖タンパク質である。通常、各軽鎖は、ジスルフィド結合で重鎖に連結される。それぞれの重鎖及び軽鎖は、鎖内ジスルフィド結合を有する。各重鎖は、一端に可変ドメイン(VH)を、その後に、多数の定常領域を有する。各軽鎖は、可変ドメイン(VL)を有し、他端に、定常領域を有する。ほとんどの脊椎動物種の抗体の軽鎖は、定常領域のアミノ酸配列に基づいて、カッパ及びラムダと呼ばれる2つのタイプの1つに割り当てることができる。抗体の可変ドメインは、抗体に結合特異性を付与し、特定の領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる固有の可変性を示す。可変領域のより保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。抗体のインタクトな重鎖及び軽鎖可変ドメインは、3つのCDRによって結合された4つのFRをそれぞれ含む。各鎖のCDRは、他の鎖のCDRと共にFR領域により密接に保持され、抗体の抗原結合部位の形成に関与する。特定の抗原に対して非ヒト抗体を調製する場合、修飾されるべきヒト抗体中に存在するFRに非ヒト抗体由来のCDRを移植することにより、可変領域をヒト化することができる。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体は、全てのCDR配列を保存する(例えば、マウス抗体の6つのCDR全てを含有するヒト化マウス抗体)。他の実施形態では、ヒト化抗体は、元の抗体に対して変更された1つ以上のCDR(1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つ)を有し、これらは、元の抗体由来の1つ以上のCDRから誘導された1つ以上のCDRとも呼ばれる。
【0135】
所望の標的(例えば、限定されないが、EpCAM及びCD163)に結合する抗体に由来する所望の標的に結合する抗原結合領域またはドメインに関して、これらの抗体の可変軽(VL)鎖及び可変重(VH)鎖の例示的なアミノ酸配列が以下に示される。それ故、当業者らは、該VH鎖及びVL鎖のCDRを有する二重特異性分子、ならびに、これらの抗体により認識されるエピトープに結合可能な抗体及びその誘導体(ヒト化誘導体を含む)を構築することができる。
【0136】
親和性は、2つの作用物質の可逆的な結合の平衡定数を指し、KDとして表される。いくつかの実施形態では、二重特異性分子及び/またはその抗原結合領域もしくはドメインは、ナノモル範囲(10-7~10-9M)以下の結合親和性(CD163またはEpCAMに対するKD(平衡解離定数)で測定)を示す。特定の実施形態では、本明細書に記載の抗体は、10nM以下のKDで、ヒトCD163ポリペプチドに特異的に結合する。特定の実施形態では、本明細書に記載の抗体は、10nM以下のKDで、ヒトEpCAMポリペプチドに特異的に結合する。
【0137】
EpCAMに特異的な抗原結合領域またはドメイン
EpCAM(Uniprot ID:P16422)に対応するアミノ酸配列が、以下に提示される:
MAPPQVLAFGLLLAAATATFAAAQEECVCENYKLAVNCFVNNNRQCQCTSVGAQNTVICSKLAAKCLVMKAEMNGSKLGRRAKPEGALQNNDGLYDPDCDESGLFKAKQCNGTSMCWCVNTAGVRRTDKDTEITCSERVRTYWIIIELKHKAREKPYDSKSLRTALQKEITTRYQLDPKFITSILYENNVITIDLVQNSSQKTQNDVDIADVAYYFEKDVKGESLFHSKKMDLTVNGEQLDLDPGQTLIYYVDEKAPEFSMQGLKAGVIAVIVVVVIAVVAGIVVLVISRKKRMAKYEKAEIKEMGEMHRELNA(配列番号2)。
【0138】
いくつかの実施形態では、二重特異性分子の抗原結合領域の1つは、EpCAMに結合する。いくつかの実施形態では、二重特異性分子の抗原結合領域の1つは、配列番号2のエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、本発明は、IgGベースの構造、例えば、EpCAM特異的抗体の重鎖及び軽鎖配列をコードするポリヌクレオチド及びポリペプチド配列に関する。EpCAMに特異的に結合する抗体分子の実施形態及び配列は、当該技術分野で既知であり、これは、米国特許第7,632,925B2号(この内容は、全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されるものも含む。
【0139】
いくつかの実施形態では、EpCAMに特異的な抗原結合領域は、EpCAM特異的DARPinである配列番号3を含む:
DLGKKLLEAARAGQDDEVRILVANGADVNAYFGTTPLHLAAAHGRLEIVEVLLKNGADVNAQDVWGITPLHLAAYNGHLEIVEVLLKYGADVNAHDTRGWTPLHLAAINGHLEIVEVLLKNVADVNAQDRSGKTPFDLAIDNGNEDIAEVLQKAAKLN(配列番号3)。
【0140】
いくつかの実施形態では、EpCAMに特異的な抗原結合領域は、配列番号3と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。EpCAMへのDARPinのさらなる詳細は、以下に見出すことができる:Stefan,N.et al.,DARPins recognizing the tumor-associated antigen EpCAM selected by phage and ribosome display and engineered for multivalency.J Mol Biol,2011,413(4):826-843(全体が本明細書に組み込まれる)。
【0141】
いくつかの実施形態では、EpCAMに特異的な抗原結合領域は、DARPinによりEpCAMに標的化される共LOCKRケージである配列番号4を含む:
MGSHHHHHHGSGSENLYFQGSGGSDLGKKLLEAARAGQDDEVRILVANGADVNAYFGTTPLHLAAAHGRLEIVEVLLKNGADVNAQDVWGITPLHLAAYNGHLEIVEVLLKYGADVNAHDTRGWTPLHLAAINGHLEIVEVLLKNVADVNAQDRSGKTPFDLAIDNGNEDIAEVLQKAAKLNSGSGSGKPGQASGSELARKLLEASTKLQRLNIRLAEALLEAIARLQELNLELVYLAVELTDPKRIRDEIKEVKDKSKEIIRRAEKEIDDAAKESEKILEEAREAISGSGSELAKLLLKAIAETQDLNLRAAKAFLEAAAKLQELNIRAVELLVKLTDPATIREALEHAKRRSKEIIDEAERAIRAAKRESERIIEEARRLIEKGSGSGSELARELLRAHAQLQRLNLELLRELLRALAQLQELNLDLLRLASELTDEIWIAQELRRIGDEFNAYYADAERLIREAAAASEKISREAERLIR(配列番号4)。
【0142】
いくつかの実施形態では、EpCAMに特異的な抗原結合領域は、配列番号4と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0143】
いくつかの実施形態では、EpCAMに特異的な抗原結合領域は、DARPinによりEpCAMに標的化される共LOCKRのキーである配列番号5を含む:
MGSHHHHHHGSGSENLYFQGSGGSDEARKAIARVKRESKRIVEDAERLIREAAAASEKISREAERLIRGGGSGSGSGSGKPGQASGSDLGKKLLEAARAGQDDEVRILVANGADVNAYFGTTPLHLAAAHGRLEIVEVLLKNGADVNAQDVWGITPLHLAAYNGHLEIVEVLLKYGADVNAHDTRGWTPLHLAAINGHLEIVEVLLKNVADVNAQDRSGKTPFDLAIDNGNEDIAEVLQKAAKLN(配列番号5)。
【0144】
いくつかの実施形態では、EpCAMに特異的な抗原結合領域は、配列番号5と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0145】
いくつかの実施形態では、EpCAMに特異的な抗原結合領域は、配列番号27のVH鎖を含む:
【化1】

CDRは、太字及び下線で示され、アミノ酸31~35(CDRH1)、50~66(CDRH2)、及び98~117(CDRH3)を含む。配列番号27をコードする核酸は、米国特許第7,632,925号(本明細書に参照により組み込まれる)の配列番号143である。CDRH1は、nt91~nt105を含み、CDRH2は、nt148~nt198を含み、CDRH3は、nt292~nt351を含む。
【0146】
いくつかの実施形態では、EpCAMに特異的な抗原結合領域は、配列番号27と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0147】
いくつかの実施形態では、EpCAMに特異的な抗原結合領域は、以下から選択される1つ以上のCDR配列を含むVH領域を含む:
SYGMH(配列番号33)
VISYDGSNKYYADSVKG(配列番号34)
KDMGWGSGWRPYYYYGMDVW(配列番号35)。
【0148】
いくつかの実施形態では、EpCAMに特異的な抗原結合領域は、配列番号28のVL鎖を含む:
【化2】

CDRは、太字及び下線で示され、アミノ酸24~34(CDR1)、50~56(CDR2)、及び89~98(CDR3)を含む。配列番号28をコードする核酸は、米国特許第7,632,925号(本明細書に参照により組み込まれる)の配列番号147である。CDRL1は、nt70~nt102を含み、CDRL2は、nt148~nt168を含み、CDRL3は、nt265~nt294を含む。
【0149】
いくつかの実施形態では、EpCAMに特異的な抗原結合領域は、配列番号28と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0150】
いくつかの実施形態では、EpCAMに特異的な抗原結合領域は、以下から選択される1つ以上のCDR配列を含むVL領域を含む:
RASQSISSYLN(配列番号36)
WASTRES(配列番号37)
QQSDSLPITF(配列番号38)。
【0151】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のポリペプチドは、所望の標的(例えば、限定されないが、EpCAM)に結合する抗体のVL鎖及び/またはVH領域の1つ以上を含むポリペプチドである。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、所望の標的(例えば、限定されないが、EpCAM)に結合する抗体のVL鎖及び/またはVH鎖CDRの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、抗体のVL鎖及び/またはVH鎖の3つのCDRを含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、以下のいずれかを有する抗体のアミノ酸配列を含む:EpCAMに結合する抗体の配列の少なくとも5個の連続アミノ酸、EpCAMに結合する抗体の少なくとも8個の連続アミノ酸、EpCAMに結合する抗体の少なくとも約10個の連続アミノ酸、EpCAMに結合する抗体の少なくとも約15個の連続アミノ酸、EpCAMに結合する抗体の少なくとも約20個の連続アミノ酸、EpCAMに結合する抗体の少なくとも約25個の連続アミノ酸、EpCAMに結合する抗体の少なくとも約30個の連続アミノ酸。別の実施形態では、5個(またはそれ以上)の連続アミノ酸は、抗体のCDR由来のものである。
【0152】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列(配列番号27)と、少なくとも80%の同一性を有する重鎖可変領域(VH)を含む抗原結合領域を含む二重特異性分子が本明細書に記載されている。
【0153】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列(配列番号27)と、少なくとも90%の同一性を有する重鎖可変領域(VH)を含む抗原結合領域を含む二重特異性分子が本明細書に記載されている。
【0154】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列(配列番号27)と、少なくとも95%の同一性を有する重鎖可変領域(VH)を含む抗原結合領域を含む二重特異性分子が本明細書に記載されている。
【0155】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列(配列番号27)と少なくとも99%の同一性を有する重鎖可変領域(VH)を含む抗原結合領域を含む二重特異性分子が本明細書に記載されている。
【0156】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列(配列番号27)と100%同一性を有する重鎖可変領域(VH)を含む抗原結合領域を含む二重特異性分子が本明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、さらに、アミノ酸配列(配列番号28)と少なくとも80%の同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、さらに、アミノ酸配列(配列番号28)と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、さらに、アミノ酸配列(配列番号28)と少なくとも95%の同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、さらに、アミノ酸配列(配列番号28)と少なくとも99%の同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、さらに、アミノ酸配列(配列番号28)と100%同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0157】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列(配列番号28)と少なくとも80%の同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む抗原結合領域を含む二重特異性分子が本明細書に記載されている。
【0158】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列(配列番号28)と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む抗原結合領域を含む二重特異性分子が本明細書に記載されている。
【0159】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列(配列番号28)と少なくとも95%の同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む抗原結合領域を含む二重特異性分子が本明細書に記載されている。
【0160】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列(配列番号28)と少なくとも99%の同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む抗原結合領域を含む二重特異性分子が本明細書に記載されている。
【0161】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列(配列番号28)と100%同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む抗原結合領域を含む二重特異性分子が本明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、さらに、アミノ酸配列(配列番号27)と少なくとも80%の同一性を有する重鎖可変領域(VH)を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、さらに、アミノ酸配列(配列番号27)と少なくとも90%の同一性を有する重鎖可変領域(VH)を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、さらに、アミノ酸配列(配列番号27)と少なくとも95%の同一性を有する重鎖可変領域(VH)を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、さらに、アミノ酸配列(配列番号27)と少なくとも99%の同一性を有する重鎖可変領域(VH)を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、さらに、アミノ酸配列(配列番号27)と100%同一性を有する重鎖可変領域(VH)を含む。
【0162】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列(配列番号27)と少なくとも80%の同一性を有する重鎖可変領域(VH)、及びアミノ酸配列(配列番号28)と少なくとも80%の同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む二重特異性分子が本明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号28)と少なくとも85%の同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号28)と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号28)と少なくとも95%の同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号28)と少なくとも99%の同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号28)と100%同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号27)と少なくとも85%の同一性を有する重鎖可変領域(VH)を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号27)と少なくとも90%の同一性を有する重鎖可変領域(VH)を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号27)と少なくとも95%の同一性を有する重鎖可変領域(VH)を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号27)と少なくとも99%の同一性を有する重鎖可変領域(VH)を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号27)と少なくとも100%の同一性を有する重鎖可変領域(VH)を含む。
【0163】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列(配列番号33)と少なくとも80%の同一性を有する相補性決定領域(CDR)H1、アミノ酸配列(配列番号34)と少なくとも80%の同一性を有するCDRH2、及びアミノ酸配列(配列番号35)と少なくとも80%の同一性を有するCDRH3を含む重鎖配列と、アミノ酸配列(配列番号36)と少なくとも80%の同一性を有するCDRL1、アミノ酸配列(配列番号37)と少なくとも80%の同一性を有するCDRL2、及びアミノ酸配列(配列番号38)と少なくとも80%の同一性を有するCDRL3を含む軽鎖配列を含む二重特異性分子が本明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号36)と少なくとも85%の同一性を有するCDRL1、アミノ酸配列(配列番号37)と少なくとも85%の同一性を有するCDRL2、及びアミノ酸配列(配列番号38)と少なくとも85%の同一性を有するCDRL3を含む軽鎖配列を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号36)と少なくとも90%の同一性を有するCDRL1、アミノ酸配列(配列番号37)と少なくとも90%の同一性を有するCDRL2、及びアミノ酸配列(配列番号38)と少なくとも90%の同一性を有するCDRL3を含む軽鎖配列を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号36)と少なくとも95%の同一性を有するCDRL1、アミノ酸配列(配列番号37)と少なくとも95%の同一性を有するCDRL2、及びアミノ酸配列(配列番号38)と少なくとも95%の同一性を有するCDRL3を含む軽鎖配列を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号36)と少なくとも99%の同一性を有するCDRL1、アミノ酸配列(配列番号37)と少なくとも99%の同一性を有するCDRL2、及びアミノ酸配列(配列番号38)と少なくとも99%の同一性を有するCDRL3を含む軽鎖配列を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号36)と100%の同一性を有するCDRL1、アミノ酸配列(配列番号37)と100%の同一性を有するCDRL2、及びアミノ酸配列(配列番号38)と少なくとも100%の同一性を有するCDRL3を含む軽鎖配列を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号33)と少なくとも85%の同一性を有するCDRH1、アミノ酸配列(配列番号34)と少なくとも85%の同一性を有するCDRH2、及びアミノ酸配列(配列番号35)と少なくとも85%の同一性を有するCDRH3を含む重鎖配列を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号33)と少なくとも90%の同一性を有するCDRH1、アミノ酸配列(配列番号34)と少なくとも90%の同一性を有するCDRH2、及びアミノ酸配列(配列番号35)と少なくとも90%の同一性を有するCDRH3を含む重鎖配列を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号33)と少なくとも95%の同一性を有するCDRH1、アミノ酸配列(配列番号34)と少なくとも95%の同一性を有するCDRH2、及びアミノ酸配列(配列番号35)と少なくとも95%の同一性を有するCDRH3を含む重鎖配列を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号33)と少なくとも99%の同一性を有するCDRH1、アミノ酸配列(配列番号34)と少なくとも99%の同一性を有するCDRH2、及びアミノ酸配列(配列番号35)と少なくとも99%の同一性を有するCDRH3を含む重鎖配列を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号33)と少なくとも100%の同一性を有するCDRH1、アミノ酸配列(配列番号34)と少なくとも100%の同一性を有するCDRH2、及びアミノ酸配列(配列番号35)と少なくとも100%の同一性を有するCDRH3を含む重鎖配列を含む。
【0164】
いくつかの実施形態では、配列番号36として記載されているアミノ酸配列と、少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;配列番号37として記載されているアミノ酸配列と、少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;及び、配列番号38として記載されているアミノ酸配列と、少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3、のうちの少なくとも1つを含む、EpCAMに結合する二重特異性分子が本明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、EpCAMに結合する二重特異性分子は、配列番号36として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;配列番号37として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;及び配列番号38として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3、のうちの少なくとも1つを含む。
【0165】
いくつかの実施形態では、配列番号33として記載されているアミノ酸配列と、少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;配列番号34として記載されているアミノ酸配列と、少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;及び、配列番号35として記載されているアミノ酸配列と、少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3、のうちの少なくとも1つを含む、EpCAMに結合する二重特異性分子が本明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、EpCAMに結合する二重特異性分子は、配列番号33として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;配列番号34として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;及び配列番号35として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3、のうちの少なくとも1つを含む。
【0166】
いくつかの実施形態では、配列番号36として記載されているアミノ酸配列と、少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;配列番号37として記載されているアミノ酸配列と、少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;配列番号38として記載されているアミノ酸配列と、少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;配列番号33として記載されているアミノ酸配列と、少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;配列番号34として記載されているアミノ酸配列と、少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;及び、配列番号35として記載されているアミノ酸配列と、少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3、のうちの少なくとも1つを含む、EpCAMに結合する二重特異性分子が本明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、EpCAMに結合する二重特異性分子は、配列番号36として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;配列番号37として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;配列番号38として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;配列番号33として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;配列番号34として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;及び配列番号35として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3、のうちの少なくとも1つを含む。
【0167】
いくつかの実施形態では、フレームワーク内のアミノ酸を変更することができる、EpCAMに結合特異性を付与するVL鎖及びVH鎖を含む二重特異性分子が本明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、アミノ酸の変化は、保存的アミノ酸置換の導入を含む。いくつかの実施形態では、EpCAMに結合する二重特異性分子は、軽鎖可変(VL)領域及び重鎖可変(VH)領域を含み;VL領域が、配列番号36として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1(CDRL1)、配列番号37として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2(CDRL2)、配列番号38として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3(CDRL3)を含み;CDRL1、CDRL2、及びCDRL3の外側のVL領域のアミノ酸配列が、配列番号28と、少なくとも75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性の全体的な配列同一性を有し;VH領域が、配列番号33として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1(CDRH1)、配列番号34として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2(CDRH2)、配列番号35として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3(CDRH3)を含み;CDRH1、CDRH2、及びCDRH3の外側のVH領域のアミノ酸配列が、配列番号27と少なくとも75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性の全体的な配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3の外側のVL領域のアミノ酸配列は、配列番号28と少なくとも90%の同一性の全体的な配列同一性を有し、CDRH1、CDRH2、及びCDRH3の外側のVH領域のアミノ酸配列は、配列番号27と少なくとも90%の同一性の全体的な配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3の外側のVL領域のアミノ酸配列は、配列番号28と少なくとも95%の同一性の全体的な配列同一性を有し、CDRH1、CDRH2、及びCDRH3の外側のVH領域のアミノ酸配列は、配列番号27と少なくとも95%の同一性の全体的な配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3の外側のVL領域のアミノ酸配列は、配列番号28と少なくとも99%の同一性の全体的な配列同一性を有し、CDRH1、CDRH2、及びCDRH3の外側のVH領域のアミノ酸配列は、配列番号27と少なくとも99%の同一性の全体的な配列同一性を有する。
【0168】
いくつかの実施形態では、EpCAMに結合する二重特異性分子は、軽鎖可変(VL)領域及び重鎖可変(VH)領域を含み;VL領域が、配列番号36として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1(CDRL1)、配列番号37として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2(CDRL2)、配列番号38として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3(CDRL3)を含み;CDRL1、CDRL2、及びCDRL3の外側のVL領域のアミノ酸配列が、配列番号28と少なくとも75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性の全体的な配列同一性を有し;VL領域のV遺伝子の使用が、カッパ軽鎖であり;VH領域が、配列番号33として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1(CDRH1)、配列番号34として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2(CDRH2)、配列番号35として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3(CDRH3)を含み;CDRH1、CDRH2、及びCDRH3の外側のVH領域のアミノ酸配列が、配列番号27と少なくとも75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性の全体的な配列同一性を有し;VH領域のV遺伝子の使用が、IGHV遺伝子である。いくつかの実施形態では、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3の外側のVL領域のアミノ酸配列は、配列番号28と少なくとも90%の同一性の全体的な配列同一性を有し、CDRH1、CDRH2、及びCDRH3の外側のVH領域のアミノ酸配列は、配列番号27と少なくとも90%の同一性の全体的な配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3の外側のVL領域のアミノ酸配列は、配列番号28と少なくとも95%の同一性の全体的な配列同一性を有し、CDRH1、CDRH2、及びCDRH3の外側のVH領域のアミノ酸配列は、配列番号27と少なくとも95%の同一性の全体的な配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3の外側のVL領域のアミノ酸配列は、配列番号28と少なくとも99%の同一性の全体的な配列同一性を有し、CDRH1、CDRH2、及びCDRH3の外側のVH領域のアミノ酸配列は、配列番号27と少なくとも99%の同一性の全体的な配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、VL領域のV遺伝子使用は、カッパ5.1軽鎖である。
【0169】
CD163に特異的な抗原結合領域またはドメイン
CD163(Uniport ID:Q86VB7)配列に対応するアミノ酸配列が以下に提示される:
MSKLRMVLLEDSGSADFRRHFVNLSPFTITVVLLLSACFVTSSLGGTDKELRLVDGENKCSGRVEVKVQEEWGTVCNNGWSMEAVSVICNQLGCPTAIKAPGWANSSAGSGRIWMDHVSCRGNESALWDCKHDGWGKHSNCTHQQDAGVTCSDGSNLEMRLTRGGNMCSGRIEIKFQGRWGTVCDDNFNIDHASVICRQLECGSAVSFSGSSNFGEGSGPIWFDDLICNGNESALWNCKHQGWGKHNCDHAEDAGVICSKGADLSLRLVDGVTECSGRLEVRFQGEWGTICDDGWDSYDAAVACKQLGCPTAVTAIGRVNASKGFGHIWLDSVSCQGHEPAIWQCKHHEWGKHYCNHNEDAGVTCSDGSDLELRLRGGGSRCAGTVEVEIQRLLGKVCDRGWGLKEADVVCRQLGCGSALKTSYQVYSKIQATNTWLFLSSCNGNETSLWDCKNWQWGGLTCDHYEEAKITCSAHREPRLVGGDIPCSGRVEVKHGDTWGSICDSDFSLEAASVLCRELQCGTVVSILGGAHFGEGNGQIWAEEFQCEGHESHLSLCPVAPRPEGTCSHSRDVGVVCSRYTEIRLVNGKTPCEGRVELKTLGAWGSLCNSHWDIEDAHVLCQQLKCGVALSTPGGARFGKGNGQIWRHMFHCTGTEQHMGDCPVTALGASLCPSEQVASVICSGNQSQTLSSCNSSSLGPTRPTIPEESAVACIESGQLRLVNGGGRCAGRVEIYHEGSWGTICDDSWDLSDAHVVCRQLGCGEAINATGSAHFGEGTGPIWLDEMKCNGKESRIWQCHSHGWGQQNCRHKEDAGVICSEFMSLRLTSEASREACAGRLEVFYNGAWGTVGKSSMSETTVGVVCRQLGCADKGKINPASLDKAMSIPMWVDNVQCPKGPDTLWQCPSSPWEKRLASPSEETWITCDNKIRLQEGPTSCSGRVEIWHGGSWGTVCDDSWDLDDAQVVCQQLGCGPALKAFKEAEFGQGTGPIWLNEVKCKGNESSLWDCPARRWGHSECGHKEDAAVNCTDISVQKTPQKATTGRSSRQSSFIAVGILGVVLLAIFVALFFLTKKRRQRQRLAVSSRGENLVHQIQYREMNSCLNADDLDLMNSSENSHESADFSAAELISVSKFLPISGMEKEAILSHTEKENGNL(配列番号6)。
【0170】
いくつかの実施形態では、二重特異性分子の抗原結合領域の1つは、CD163に結合する。いくつかの実施形態では、二重特異性分子の抗原結合領域の1つは、配列番号6のエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、本発明は、IgGベースの構造、例えば、CD163特異的抗体の重鎖及び軽鎖配列をコードするポリヌクレオチド及びポリペプチド配列に関する。米国特許出願公開第US2017/0119790A1号(この内容は、全体が本明細書に参照により組み込まれる)に開示されているものを含む、CD163に特異的に結合する抗体分子の実施形態及び配列は、当該技術分野で既知である。
【0171】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のポリペプチドは、所望の標的(例えば、限定されないが、CD163)に結合する抗体のVL鎖及び/またはVH領域の1つ以上を含むポリペプチドである。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、所望の標的(例えば、限定されないが、CD163)に結合する抗体のVL鎖及び/またはVH鎖CDRの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、抗体のVL鎖及び/またはVH鎖の3つのCDRを含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、以下のいずれかを有する抗体のアミノ酸配列を含む:CD163に結合する抗体の配列の少なくとも5個の連続アミノ酸、CD163に結合する抗体の少なくとも8個の連続アミノ酸、CD163に結合する抗体の少なくとも約10個の連続アミノ酸、CD163に結合する抗体の少なくとも約15個の連続アミノ酸、CD163に結合する抗体の少なくとも約20個の連続アミノ酸、CD163に結合する抗体の少なくとも約25個の連続アミノ酸、CD163に結合する抗体の少なくとも約30個の連続アミノ酸。別の実施形態では、5個(またはそれ以上)の連続アミノ酸は、抗体のCDR由来のものである。
【0172】
いくつかの実施形態では、CD163に特異的な抗原結合領域は、配列番号29のVH鎖を含む:

【化3】

CDRは、太字及び下線で示され、アミノ酸26~33(CDR1)、54~56(CDR2)、及び96~107(CDR3)を含む。
【0173】
いくつかの実施形態では、CD163に特異的な抗原結合領域は、配列番号29と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0174】
いくつかの実施形態では、CD163に特異的な抗原結合領域は、以下から選択される1つ以上のCDR配列を含むVH領域を含む:
GYSITSDY(配列番号39)
YSG(配列番号40)
CVSGTYYFDYWG(配列番号41)。
【0175】
いくつかの実施形態では、CD163に特異的な抗原結合領域は、配列番号30のVL鎖を含む:
【化4】

CDRは、太字及び下線で示され、アミノ酸25~33(CDR1)、50~52(CDR2)、及び90~97(CDR3)を含む。
【0176】
いくつかの実施形態では、CD163に特異的な抗原結合領域は、配列番号30と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0177】
いくつかの実施形態では、CD163に特異的な抗原結合領域は、以下から選択される1つ以上のCDR配列を含むVL領域を含む:
ASQSVSSDV(配列番号42)
YAS(配列番号43)
QDYTSPRT(配列番号44)。
【0178】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列(配列番号29)と少なくとも80%の同一性を有する重鎖可変領域(VH)を含む抗原結合領域を含む二重特異性分子が本明細書に記載されている。
【0179】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列(配列番号29)と少なくとも90%の同一性を有する重鎖可変領域(VH)を含む抗原結合領域を含む二重特異性分子が本明細書に記載されている。
【0180】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列(配列番号29)と少なくとも95%の同一性を有する重鎖可変領域(VH)を含む抗原結合領域を含む二重特異性分子が本明細書に記載されている。
【0181】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列(配列番号29)と少なくとも99%の同一性を有する重鎖可変領域(VH)を含む抗原結合領域を含む二重特異性分子が本明細書に記載されている。
【0182】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列(配列番号29)と100%同一性を有する重鎖可変領域(VH)を含む抗原結合領域を含む二重特異性分子が本明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、さらに、アミノ酸配列(配列番号30)と少なくとも80%の同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、さらに、アミノ酸配列(配列番号30)と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、さらに、アミノ酸配列(配列番号30)と少なくとも95%の同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、さらに、アミノ酸配列(配列番号30)と少なくとも99%の同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、さらに、アミノ酸配列(配列番号30)と100%同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0183】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列(配列番号30)と少なくとも80%の同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む抗原結合領域を含む二重特異性分子が本明細書に記載されている。
【0184】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列(配列番号30)と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む抗原結合領域を含む二重特異性分子が本明細書に記載されている。
【0185】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列(配列番号30)と少なくとも95%の同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む抗原結合領域を含む二重特異性分子が本明細書に記載されている。
【0186】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列(配列番号30)と少なくとも99%の同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む抗原結合領域を含む二重特異性分子が本明細書に記載されている。
【0187】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列(配列番号30)と100%同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む抗原結合領域を含む二重特異性分子が本明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、さらに、アミノ酸配列(配列番号29)と少なくとも80%の同一性を有する重鎖可変領域(VH)を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、さらに、アミノ酸配列(配列番号29)と少なくとも90%の同一性を有する重鎖可変領域(VH)を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、さらに、アミノ酸配列(配列番号29)と少なくとも95%の同一性を有する重鎖可変領域(VH)を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、さらに、アミノ酸配列(配列番号29)と少なくとも99%の同一性を有する重鎖可変領域(VH)を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、さらに、アミノ酸配列(配列番号29)と100%同一性を有する重鎖可変領域(VH)を含む。
【0188】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列(配列番号29)と少なくとも80%の同一性を有する重鎖可変領域(VH)、及びアミノ酸配列(配列番号30)と少なくとも80%の同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む二重特異性分子が本明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号30)と少なくとも85%の同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号30)と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号30)と少なくとも95%の同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号30)と少なくとも99%の同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号30)と100%同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号29)と少なくとも85%の同一性を有する重鎖可変領域(VH)を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号29)と少なくとも90%の同一性を有する重鎖可変領域(VH)を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号29)と少なくとも95%の同一性を有する重鎖可変領域(VH)を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号29)と少なくとも99%の同一性を有する重鎖可変領域(VH)を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号29)と少なくとも100%の同一性を有する重鎖可変領域(VH)を含む。
【0189】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列(配列番号39)と少なくとも80%の同一性を有する相補性決定領域(CDR)H1、アミノ酸配列(配列番号40)と少なくとも80%の同一性を有するCDRH2、及びアミノ酸配列(配列番号41)と少なくとも80%の同一性を有するCDRH3を含む重鎖配列と、アミノ酸配列(配列番号42)と少なくとも80%の同一性を有するCDRL1、アミノ酸配列(配列番号43)と少なくとも80%の同一性を有するCDRL2、及びアミノ酸配列(配列番号44)と少なくとも80%の同一性を有するCDRL3を含む軽鎖配列を含む二重特異性分子が本明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号42)と少なくとも85%の同一性を有するCDRL1、アミノ酸配列(配列番号43)と少なくとも85%の同一性を有するCDRL2、及びアミノ酸配列(配列番号44)と少なくとも85%の同一性を有するCDRL3を含む軽鎖配列を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号42)と少なくとも90%の同一性を有するCDRL1、アミノ酸配列(配列番号43)と少なくとも90%の同一性を有するCDRL2、及びアミノ酸配列(配列番号44)と少なくとも90%の同一性を有するCDRL3を含む軽鎖配列を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号42)と少なくとも95%の同一性を有するCDRL1、アミノ酸配列(配列番号43)と少なくとも95%の同一性を有するCDRL2、及びアミノ酸配列(配列番号44)と少なくとも95%の同一性を有するCDRL3を含む軽鎖配列を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号42)と少なくとも99%の同一性を有するCDRL1、アミノ酸配列(配列番号43)と少なくとも99%の同一性を有するCDRL2、及びアミノ酸配列(配列番号44)と少なくとも99%の同一性を有するCDRL3を含む軽鎖配列を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号42)と100%の同一性を有するCDRL1、アミノ酸配列(配列番号43)と100%の同一性を有するCDRL2、及びアミノ酸配列(配列番号44)と少なくとも100%の同一性を有するCDRL3を含む軽鎖配列を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号39)と少なくとも85%の同一性を有するCDRH1、アミノ酸配列(配列番号40)と少なくとも85%の同一性を有するCDRH2、及びアミノ酸配列(配列番号41)と少なくとも85%の同一性を有するCDRH3を含む重鎖配列を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号39)と少なくとも90%の同一性を有するCDRH1、アミノ酸配列(配列番号40)と少なくとも90%の同一性を有するCDRH2、及びアミノ酸配列(配列番号41)と少なくとも90%の同一性を有するCDRH3を含む重鎖配列を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号39)と少なくとも95%の同一性を有するCDRH1、アミノ酸配列(配列番号40)と少なくとも95%の同一性を有するCDRH2、及びアミノ酸配列(配列番号41)と少なくとも95%の同一性を有するCDRH3を含む重鎖配列を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号39)と少なくとも99%の同一性を有するCDRH1、アミノ酸配列(配列番号40)と少なくとも99%の同一性を有するCDRH2、及びアミノ酸配列(配列番号41)と少なくとも99%の同一性を有するCDRH3を含む重鎖配列を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号39)と少なくとも100%の同一性を有するCDRH1、アミノ酸配列(配列番号40)と少なくとも100%の同一性を有するCDRH2、及びアミノ酸配列(配列番号41)と少なくとも100%の同一性を有するCDRH3を含む重鎖配列を含む。
【0190】
いくつかの実施形態では、配列番号42として記載されているアミノ酸配列と、少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;配列番号43として記載されているアミノ酸配列と、少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;及び、配列番号44として記載されているアミノ酸配列と、少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3、のうちの少なくとも1つを含む、CD163に結合する二重特異性分子が本明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、CD163に結合する二重特異性分子は、配列番号42として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;配列番号43として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;及び配列番号44として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3、のうちの少なくとも1つを含む。
【0191】
いくつかの実施形態では、配列番号39として記載されているアミノ酸配列と、少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;配列番号40として記載されているアミノ酸配列と、少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;及び、配列番号41として記載されているアミノ酸配列と、少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3、のうちの少なくとも1つを含む、CD163に結合する二重特異性分子が本明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、CD163に結合する二重特異性分子は、配列番号39として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;配列番号40として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;及び配列番号41として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3、のうちの少なくとも1つを含む。
【0192】
いくつかの実施形態では、配列番号42として記載されているアミノ酸配列と、少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;配列番号43として記載されているアミノ酸配列と、少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;配列番号44として記載されているアミノ酸配列と、少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;配列番号39として記載されているアミノ酸配列と、少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;配列番号40として記載されているアミノ酸配列と、少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;及び、配列番号41として記載されているアミノ酸配列と、少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3、のうちの少なくとも1つを含む、CD163に結合する二重特異性分子が本明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、CD163に結合する二重特異性分子は、配列番号42として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;配列番号43として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;配列番号44として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;配列番号39として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;配列番号40として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;及び配列番号41として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3、のうちの少なくとも1つを含む。
【0193】
いくつかの実施形態では、フレームワーク内のアミノ酸を変更することができる、CD163に結合特異性を付与するVL鎖及びVH鎖を含む二重特異性分子が本明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、アミノ酸の変化は、保存的アミノ酸置換の導入を含む。いくつかの実施形態では、CD163に結合する二重特異性分子は、軽鎖可変(VL)領域及び重鎖可変(VH)領域を含み;VL領域が、配列番号42として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1(CDRL1)、配列番号43として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2(CDRL2)、配列番号44として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3(CDRL3)を含み;CDRL1、CDRL2、及びCDRL3の外側のVL領域のアミノ酸配列が、配列番号30と、少なくとも75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性の全体的な配列同一性を有し;VH領域が、配列番号39として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1(CDRH1)、配列番号40として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2(CDRH2)、配列番号41として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3(CDRH3)を含み;CDRH1、CDRH2、及びCDRH3の外側のVH領域のアミノ酸配列が、配列番号29と少なくとも75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性の全体的な配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3の外側のVL領域のアミノ酸配列は、配列番号30と少なくとも90%の同一性の全体的な配列同一性を有し、CDRH1、CDRH2、及びCDRH3の外側のVH領域のアミノ酸配列は、配列番号29と少なくとも90%の同一性の全体的な配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3の外側のVL領域のアミノ酸配列は、配列番号30と少なくとも95%の同一性の全体的な配列同一性を有し、CDRH1、CDRH2、及びCDRH3の外側のVH領域のアミノ酸配列は、配列番号29と少なくとも95%の同一性の全体的な配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3の外側のVL領域のアミノ酸配列は、配列番号30と少なくとも99%の同一性の全体的な配列同一性を有し、CDRH1、CDRH2、及びCDRH3の外側のVH領域のアミノ酸配列は、配列番号29と少なくとも99%の同一性の全体的な配列同一性を有する。
【0194】
いくつかの実施形態では、CD163に結合する二重特異性分子は、軽鎖可変(VL)領域及び重鎖可変(VH)領域を含み;VL領域が、配列番号42として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1(CDRL1)、配列番号43として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2(CDRL2)、配列番号44として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3(CDRL3)を含み;CDRL1、CDRL2、及びCDRL3の外側のVL領域のアミノ酸配列が、配列番号30と少なくとも75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性の全体的な配列同一性を有し;VL領域のV遺伝子の使用が、カッパ軽鎖であり;VH領域が、配列番号39として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1(CDRH1)、配列番号40として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2(CDRH2)、配列番号41として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3(CDRH3)を含み;CDRH1、CDRH2、及びCDRH3の外側のVH領域のアミノ酸配列が、配列番号29と少なくとも75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性の全体的な配列同一性を有し;VH領域のV遺伝子の使用が、IGHV遺伝子である。いくつかの実施形態では、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3の外側のVL領域のアミノ酸配列は、配列番号30と少なくとも90%の同一性の全体的な配列同一性を有し、CDRH1、CDRH2、及びCDRH3の外側のVH領域のアミノ酸配列は、配列番号29と少なくとも90%の同一性の全体的な配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3の外側のVL領域のアミノ酸配列は、配列番号30と少なくとも95%の同一性の全体的な配列同一性を有し、CDRH1、CDRH2、及びCDRH3の外側のVH領域のアミノ酸配列は、配列番号29と少なくとも95%の同一性の全体的な配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3の外側のVL領域のアミノ酸配列は、配列番号30と少なくとも99%の同一性の全体的な配列同一性を有し、CDRH1、CDRH2、及びCDRH3の外側のVH領域のアミノ酸配列は、配列番号29と少なくとも99%の同一性の全体的な配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、VL領域のV遺伝子使用は、カッパ8軽鎖である。いくつかの実施形態では、VL領域のV遺伝子使用は、IGKV1D-39*01である。いくつかの実施形態では、VH領域のV遺伝子使用は、IGHV4遺伝子である。いくつかの実施形態では、VH領域のV遺伝子使用は、IGHV4-b*01である。
【0195】
いくつかの実施形態では、CD163に特異的な抗原結合領域は、配列番号31のVH鎖を含む:

【化5】

CDRは、太字及び下線で示され、アミノ酸31~35(CDR1)、50~65(CDR2)、及び99~122(CDR3)を含む。
【0196】
いくつかの実施形態では、CD163に特異的な抗原結合領域は、配列番号31と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0197】
いくつかの実施形態では、CD163に特異的な抗原結合領域は、以下から選択される1つ以上のCDR配列を含むVH領域を含む:
SYAMH(配列番号45)
VISYDGSNKYYADSVK(配列番号46)
ENVRPYYDFWSGYYSEYYYYGMDV(配列番号47)。
【0198】
いくつかの実施形態では、CD163に特異的な抗原結合領域は、配列番号32のVL鎖を含む:
【化6】

CDRは、太字及び下線で示され、アミノ酸24~34(CDR1)、50~55(CDR2)、及び89~98(CDR3)を含む。
【0199】
いくつかの実施形態では、CD163に特異的な抗原結合領域は、配列番号32と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0200】
いくつかの実施形態では、CD163に特異的な抗原結合領域は、以下から選択される1つ以上のCDR配列を含むVL領域を含む:
RASQSISSYLN(配列番号48)
AASSLQS(配列番号49)
QQSYSTPRGT(配列番号50)。
【0201】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列(配列番号31)と少なくとも80%の同一性を有する重鎖可変領域(VH)を含む抗原結合領域を含む二重特異性分子が本明細書に記載されている。
【0202】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列(配列番号31)と少なくとも90%の同一性を有する重鎖可変領域(VH)を含む抗原結合領域を含む二重特異性分子が本明細書に記載されている。
【0203】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列(配列番号31)と少なくとも95%の同一性を有する重鎖可変領域(VH)を含む抗原結合領域を含む二重特異性分子が本明細書に記載されている。
【0204】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列(配列番号31)と少なくとも99%の同一性を有する重鎖可変領域(VH)を含む抗原結合領域を含む二重特異性分子が本明細書に記載されている。
【0205】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列(配列番号31)と100%同一性を有する重鎖可変領域(VH)を含む抗原結合領域を含む二重特異性分子が本明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、さらに、アミノ酸配列(配列番号32)と少なくとも80%の同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、さらに、アミノ酸配列(配列番号32)と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、さらに、アミノ酸配列(配列番号32)と少なくとも95%の同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、さらに、アミノ酸配列(配列番号32)と少なくとも99%の同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、さらに、アミノ酸配列(配列番号32)と100%同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0206】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列(配列番号32)と少なくとも80%の同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む抗原結合領域を含む二重特異性分子が本明細書に記載されている。
【0207】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列(配列番号32)と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む抗原結合領域を含む二重特異性分子が本明細書に記載されている。
【0208】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列(配列番号32)と少なくとも95%の同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む抗原結合領域を含む二重特異性分子が本明細書に記載されている。
【0209】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列(配列番号32)と少なくとも99%の同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む抗原結合領域を含む二重特異性分子が本明細書に記載されている。
【0210】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列(配列番号32)と100%同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む抗原結合領域を含む二重特異性分子が本明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、さらに、アミノ酸配列(配列番号31)と少なくとも80%の同一性を有する重鎖可変領域(VH)を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、さらに、アミノ酸配列(配列番号31)と少なくとも90%の同一性を有する重鎖可変領域(VH)を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、さらに、アミノ酸配列(配列番号31)と少なくとも95%の同一性を有する重鎖可変領域(VH)を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、さらに、アミノ酸配列(配列番号31)と少なくとも99%の同一性を有する重鎖可変領域(VH)を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、さらに、アミノ酸配列(配列番号31)と100%同一性を有する重鎖可変領域(VH)を含む。
【0211】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列(配列番号31)と少なくとも80%の同一性を有する重鎖可変領域(VH)、及びアミノ酸配列(配列番号32)と少なくとも80%の同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む二重特異性分子が本明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号32)と少なくとも85%の同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号32)と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号32)と少なくとも95%の同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号32)と少なくとも99%の同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号32)と100%同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号31)と少なくとも85%の同一性を有する重鎖可変領域(VH)を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号31)と少なくとも90%の同一性を有する重鎖可変領域(VH)を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号31)と少なくとも95%の同一性を有する重鎖可変領域(VH)を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号31)と少なくとも99%の同一性を有する重鎖可変領域(VH)を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号31)と少なくとも100%の同一性を有する重鎖可変領域(VH)を含む。
【0212】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列(配列番号45)と少なくとも80%の同一性を有する相補性決定領域(CDR)H1、アミノ酸配列(配列番号46)と少なくとも80%の同一性を有するCDRH2、及びアミノ酸配列(配列番号47)と少なくとも80%の同一性を有するCDRH3を含む重鎖配列と、アミノ酸配列(配列番号48)と少なくとも80%の同一性を有するCDRL1、アミノ酸配列(配列番号49)と少なくとも80%の同一性を有するCDRL2、及びアミノ酸配列(配列番号50)と少なくとも80%の同一性を有するCDRL3を含む軽鎖配列を含む二重特異性分子が本明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号48)と少なくとも85%の同一性を有するCDRL1、アミノ酸配列(配列番号49)と少なくとも85%の同一性を有するCDRL2、及びアミノ酸配列(配列番号50)と少なくとも85%の同一性を有するCDRL3を含む軽鎖配列を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号48)と少なくとも90%の同一性を有するCDRL1、アミノ酸配列(配列番号49)と少なくとも90%の同一性を有するCDRL2、及びアミノ酸配列(配列番号50)と少なくとも90%の同一性を有するCDRL3を含む軽鎖配列を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号48)と少なくとも95%の同一性を有するCDRL1、アミノ酸配列(配列番号49)と少なくとも95%の同一性を有するCDRL2、及びアミノ酸配列(配列番号50)と少なくとも95%の同一性を有するCDRL3を含む軽鎖配列を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号48)と少なくとも99%の同一性を有するCDRL1、アミノ酸配列(配列番号49)と少なくとも99%の同一性を有するCDRL2、及びアミノ酸配列(配列番号50)と少なくとも99%の同一性を有するCDRL3を含む軽鎖配列を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号48)と100%の同一性を有するCDRL1、アミノ酸配列(配列番号49)と100%の同一性を有するCDRL2、及びアミノ酸配列(配列番号50)と少なくとも100%の同一性を有するCDRL3を含む軽鎖配列を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号45)と少なくとも85%の同一性を有するCDRH1、アミノ酸配列(配列番号46)と少なくとも85%の同一性を有するCDRH2、及びアミノ酸配列(配列番号47)と少なくとも85%の同一性を有するCDRH3を含む重鎖配列を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号45)と少なくとも90%の同一性を有するCDRH1、アミノ酸配列(配列番号46)と少なくとも90%の同一性を有するCDRH2、及びアミノ酸配列(配列番号47)と少なくとも90%の同一性を有するCDRH3を含む重鎖配列を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号45)と少なくとも95%の同一性を有するCDRH1、アミノ酸配列(配列番号46)と少なくとも95%の同一性を有するCDRH2、及びアミノ酸配列(配列番号47)と少なくとも95%の同一性を有するCDRH3を含む重鎖配列を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号45)と少なくとも99%の同一性を有するCDRH1、アミノ酸配列(配列番号46)と少なくとも99%の同一性を有するCDRH2、及びアミノ酸配列(配列番号47)と少なくとも99%の同一性を有するCDRH3を含む重鎖配列を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、アミノ酸配列(配列番号45)と少なくとも100%の同一性を有するCDRH1、アミノ酸配列(配列番号46)と少なくとも100%の同一性を有するCDRH2、及びアミノ酸配列(配列番号47)と少なくとも100%の同一性を有するCDRH3を含む重鎖配列を含む。
【0213】
いくつかの実施形態では、配列番号48として記載されているアミノ酸配列と、少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;配列番号49として記載されているアミノ酸配列と、少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;及び、配列番号50として記載されているアミノ酸配列と、少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3、のうちの少なくとも1つを含む、CD163に結合する二重特異性分子が本明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、CD163に結合する二重特異性分子は、配列番号48として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;配列番号49として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;及び配列番号50として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3、のうちの少なくとも1つを含む。
【0214】
いくつかの実施形態では、配列番号45として記載されているアミノ酸配列と、少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;配列番号46として記載されているアミノ酸配列と、少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;及び、配列番号47として記載されているアミノ酸配列と、少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3、のうちの少なくとも1つを含む、CD163に結合する二重特異性分子が本明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、CD163に結合する二重特異性分子は、配列番号45として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;配列番号46として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;及び配列番号47として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3、のうちの少なくとも1つを含む。
【0215】
いくつかの実施形態では、配列番号48として記載されているアミノ酸配列と、少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;配列番号49として記載されているアミノ酸配列と、少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;配列番号50として記載されているアミノ酸配列と、少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;配列番号45として記載されているアミノ酸配列と、少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;配列番号46として記載されているアミノ酸配列と、少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;及び、配列番号47として記載されているアミノ酸配列と、少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3、のうちの少なくとも1つを含む、CD163に結合する二重特異性分子が本明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、CD163に結合する二重特異性分子は、配列番号48として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;配列番号49として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;配列番号50として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;配列番号45として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;配列番号46として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;及び配列番号47として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3、のうちの少なくとも1つを含む。
【0216】
いくつかの実施形態では、フレームワーク内のアミノ酸を変更することができる、CD163に結合特異性を付与するVL鎖及びVH鎖を含む二重特異性分子が本明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、アミノ酸の変化は、保存的アミノ酸置換の導入を含む。いくつかの実施形態では、CD163に結合する二重特異性分子は、軽鎖可変(VL)領域及び重鎖可変(VH)領域を含み;VL領域が、配列番号48として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1(CDRL1)、配列番号49として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2(CDRL2)、配列番号50として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3(CDRL3)を含み;CDRL1、CDRL2、及びCDRL3の外側のVL領域のアミノ酸配列が、配列番号32と、少なくとも75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性の全体的な配列同一性を有し;VH領域が、配列番号45として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1(CDRH1)、配列番号46として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2(CDRH2)、配列番号47として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3(CDRH3)を含み;CDRH1、CDRH2、及びCDRH3の外側のVH領域のアミノ酸配列が、配列番号31と少なくとも75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性の全体的な配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3の外側のVL領域のアミノ酸配列は、配列番号32と少なくとも90%の同一性の全体的な配列同一性を有し、CDRH1、CDRH2、及びCDRH3の外側のVH領域のアミノ酸配列は、配列番号31と少なくとも90%の同一性の全体的な配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3の外側のVL領域のアミノ酸配列は、配列番号32と少なくとも95%の同一性の全体的な配列同一性を有し、CDRH1、CDRH2、及びCDRH3の外側のVH領域のアミノ酸配列は、配列番号31と少なくとも95%の同一性の全体的な配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3の外側のVL領域のアミノ酸配列は、配列番号32と少なくとも99%の同一性の全体的な配列同一性を有し、CDRH1、CDRH2、及びCDRH3の外側のVH領域のアミノ酸配列は、配列番号31と少なくとも99%の同一性の全体的な配列同一性を有する。
【0217】
いくつかの実施形態では、CD163に結合する二重特異性分子は、軽鎖可変(VL)領域及び重鎖可変(VH)領域を含み;VL領域が、配列番号48として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1(CDRL1)、配列番号49として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2(CDRL2)、配列番号50として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3(CDRL3)を含み;CDRL1、CDRL2、及びCDRL3の外側のVL領域のアミノ酸配列が、配列番号32と少なくとも75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性の全体的な配列同一性を有し;VL領域のV遺伝子の使用が、カッパ軽鎖であり;VH領域が、配列番号45として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1(CDRH1)、配列番号46として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2(CDRH2)、配列番号47として記載されているアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3(CDRH3)を含み;CDRH1、CDRH2、及びCDRH3の外側のVH領域のアミノ酸配列が、配列番号31と少なくとも75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性の全体的な配列同一性を有し;VH領域のV遺伝子の使用が、IGHV遺伝子である。いくつかの実施形態では、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3の外側のVL領域のアミノ酸配列は、配列番号32と少なくとも90%の同一性の全体的な配列同一性を有し、CDRH1、CDRH2、及びCDRH3の外側のVH領域のアミノ酸配列は、配列番号31と少なくとも90%の同一性の全体的な配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3の外側のVL領域のアミノ酸配列は、配列番号32と少なくとも95%の同一性の全体的な配列同一性を有し、CDRH1、CDRH2、及びCDRH3の外側のVH領域のアミノ酸配列は、配列番号31と少なくとも95%の同一性の全体的な配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3の外側のVL領域のアミノ酸配列は、配列番号32と少なくとも99%の同一性の全体的な配列同一性を有し、CDRH1、CDRH2、及びCDRH3の外側のVH領域のアミノ酸配列は、配列番号31と少なくとも99%の同一性の全体的な配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、VL領域のV遺伝子使用は、VK1.O12である。いくつかの実施形態では、VH領域のV遺伝子使用は、IGHV3遺伝子である。いくつかの実施形態では、VH領域のV遺伝子使用は、IGHV3.30-3である。
【0218】
処置方法
特定の態様では、本明細書に記載の主題は、がんに罹患している対象における、がんを処置または予防する方法に関する。いくつかの実施形態では、方法は、少なくとも2つの抗原結合領域を含む二重特異性分子を対象に投与することを含み、各抗原結合領域が、がんの第1の細胞(TFC)上の異なる抗原に結合する。いくつかの実施形態では、方法は、本明細書に記載の二重特異性分子のいずれか1つを含む医薬組成物を対象に投与することを含む。
【0219】
いくつかの実施形態では、第1の抗原は、上皮細胞系統マーカーである。いくつかの実施形態では、上皮マーカーは、図2のマーカーのいずれか1つであり、上皮細胞系統マーカーは、図2のマーカーのいずれか1つである。いくつかの実施形態では、上皮細胞系統マーカーは、上皮細胞接着分子(EpCAM)である。いくつかの実施形態では、第2の抗原は、マクロファージ細胞系統マーカーである。いくつかの実施形態では、マクロファージマーカーは、図1のマーカーのいずれかである。いくつかの実施形態では、マクロファージ細胞系統マーカーは、CD163である。いくつかの実施形態では、両方の抗原は、マクロファージ細胞系統マーカーである。いくつかの実施形態では、第1の抗原は、CD117、CD34、CD123、またはそれらの任意の組み合わせであり、第2の抗原は、CD163である。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体、その機能的同等物、その抗原結合フラグメント、その誘導体、または抗体様二重特異性分子は、図1から選択される2つの異なる抗原に結合する。
【0220】
いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、二重特異性抗体である。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、薬物にコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、薬物は、毒素である。いくつかの実施形態では、薬物は、化学療法剤である。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、二重ナノボディ、BiTE、tandAb、DART、DART-Fc、DARPin、scFv、scFv-HAS-scFV、及びDNL-Fab3を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、二重特異性キメラ抗原受容体(CAR)である。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、スプリットCAR-Tである。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドを含むCo-LOCKRであり、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドは、それぞれ、がんのTFC上の異なる抗原に結合する。いくつかの実施形態では、二重特異性CARは、synNotch CARである。いくつかの実施形態では、二重特異性CARは、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、及び第3のポリペプチドを含むCo-LOCKRに結合し、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドが、それぞれ、がんのTFC上の異なる抗原に結合し、第3のポリペプチドが、二重特異性CARに結合し、第3のポリペプチドが、第1のポリペプチドまたは第2のポリペプチドに作動可能に連結されている。
【0221】
いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書に記載の二重特異性分子のいずれか1つを含む医薬組成物を対象に投与することを含む方法を提供し、第1の抗原結合領域が、EpCAMに結合し、第2の抗原結合領域が、CD163に結合する。EpCAMに特異的な抗原結合領域は、本明細書に記載されており、これは、「EpCAMに特異的な抗原結合領域またはドメイン」という名称のセクションを含むが、これに限定されない。CD163に特異的な抗原結合領域は、本明細書に記載されており、これは、「CD163に特異的な抗原結合領域またはドメイン」という名称のセクションを含むが、これに限定されない。本発明の処置方法は、CD163に特異的な抗原結合領域のいずれかと組み合わせて、EpCAMに特異的な抗原結合領域の、本明細書に記載の二重特異性分子のいずれかを使用することを含む。
【0222】
いくつかの実施形態では、がんは、固形腫瘍を含む。いくつかの実施形態では、がんは、乳癌、脳腫瘍、胃癌及び大腸癌を含む消化器癌、膵癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、胸腺癌、卵巣癌、前立腺癌、または子宮内膜癌である。いくつかの実施形態では、がんは、液体癌である。いくつかの実施形態では、液体癌は、白血病、リンパ腫、または骨髄腫である。いくつかの実施形態では、液体癌は、B細胞悪性腫瘍である。いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍は、多発性骨髄腫である。いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍は、B細胞リンパ腫である。いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)である。いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍は、非ホジキンリンパ腫(NHL)である。いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍は、慢性リンパ性白血病(CLL)である。いくつかの実施形態では、液体癌は、急性骨髄性白血病(AML)である。いくつかの実施形態では、液体癌は、骨髄性腫瘍である。いくつかの実施形態では、液体癌は、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性腫瘍(MPN)、MDS/MPN重複症候群、急性骨髄性白血病、または慢性骨髄性白血病である。いくつかの実施形態では、TFCは、転移性TFCである。
【0223】
骨髄性白血病
いくつかの実施形態では、がんは、骨髄性白血病である。いくつかの実施形態では、骨髄性白血病TFCは、第1抗原及び第2抗原を発現する。いくつかの実施形態では、第1の抗原及び第2の抗原は、双方ともに、マクロファージ細胞系統マーカーである。いくつかの実施形態では、第1抗原及び第2抗原は、図1のマーカーのいずれか1つのペアである。いくつかの実施形態では、第1の抗原は、CD117、CD34、CD123、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、第2の抗原は、CD163である。いくつかの実施形態では、本明細書に開示の二重特異性分子は、2つの抗原(これらの両方は、マクロファージ細胞系統マーカーである)に結合する。
【0224】
骨髄性腫瘍
いくつかの実施形態では、がんは、骨髄性腫瘍である。いくつかの実施形態では、骨髄性腫瘍は、骨髄異形成症候群(MDS)である。いくつかの実施形態では、骨髄性腫瘍は、骨髄増殖性腫瘍(MPN)である。いくつかの実施形態では、骨髄性腫瘍は、MDS/MPN症候群の重複である。いくつかの実施形態では、骨髄性腫瘍は、急性または慢性骨髄性白血病である。
【0225】
がん処置
現在、利用可能ながん処置の選択肢が多数ある。手術は、がんまたは腫瘍塊を除去するために行われる。化学療法は、がん細胞を殺傷するために患者に有毒薬物を投与することを含む。放射線療法では、X線または陽子などの高出力のエネルギービームを利用してがん細胞を殺傷する。健常個体から、がん患者に骨髄を移植して、患者自身の罹患骨髄を置き換えることができる。骨髄は、血液幹細胞から血液細胞を生成し、骨髄移植は、液体癌の処置または治癒の目的で実施される。骨髄移植は、がん患者を処置するための高用量の化学療法の使用も可能にする。免疫療法は、がんと闘うために体自身の免疫システムを利用する。免疫療法は、患者の免疫システムが、がん細胞を認識して攻撃するのを助け得る。ホルモン療法は、体内のホルモンによりサポートされ得る乳癌または前立腺癌の処置に使用することができる。それらの体への影響をブロックすると、がんの成長が停止し得る。冷凍アブレーションは、患者の皮膚を通してがん腫瘍に直接挿入された細い針(冷凍プローブ)を使用して温度を低下させることにより、がん細胞を殺傷する。高周波アブレーションは、電気エネルギーを使用して、がん細胞を加熱し、それにより、がん細胞を殺傷する。高周波エネルギーが、針を通して誘導され、周囲の組織が加熱される。これらの各処置は、本明細書に記載の方法と組み合わせて投与することができる。
【0226】
診断方法
特定の態様では、本明細書に記載の主題は、がんを診断する方法に関する。いくつかの実施形態では、方法は、少なくとも1つの上皮細胞系統マーカー及び少なくとも1つのマクロファージ細胞系統マーカーを発現する細胞を検出することを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの上皮細胞系統マーカーは、図2のマーカーのいずれか1つである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの上皮細胞系統マーカーは、上皮細胞接着分子(EpCAM)である。いくつかの実施形態では、マクロファージ細胞系統の少なくとも1つのマーカーは、図1のマーカーのいずれか1つである。いくつかの実施形態では、マクロファージ細胞系統の少なくとも1つのマーカーは、CD163である。いくつかの実施形態では、方法は、少なくとも2つのマクロファージ細胞系統マーカーを発現する細胞を検出することを含む。いくつかの実施形態では、第1のマーカーは、CD117、CD34、CD123、またはそれらの任意の組み合わせであり、第2のマーカーは、CD163である。いくつかの実施形態では、少なくとも2つのマクロファージ細胞系統マーカーは、図1のマーカーのいずれか2つである。いくつかの実施形態では、検出は、二重特異性分子が、少なくとも1つの上皮細胞系統マーカー及び少なくとも1つのマクロファージ細胞系統マーカーに結合するアッセイを含む。いくつかの実施形態では、検出は、二重特異性分子が少なくとも2つのマクロファージ細胞系統マーカーに結合するアッセイを含む。いくつかの実施形態では、検出は、フローサイトメトリーアッセイを含む。いくつかの実施形態では、検出は、免疫染色アッセイを含む。いくつかの実施形態では、各抗原に結合する抗体は、それぞれ、異なる蛍光色素とコンジュゲートされ、蛍光色素は、フローサイトメトリーまたは免疫染色のいずれかを使用して検出される。いくつかの実施形態では、免疫染色は、免疫蛍光染色である。いくつかの実施形態では、検出は、アッセイの前に、図4に示されるように、細胞をサイズで分離するステップを含む。いくつかの実施形態では、サイズ分離中に大きな細胞が選択され、アッセイされる。
【0227】
いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、二重特異性抗体である。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、薬物にコンジュゲートされている。いくつかの実施形態では、薬物は、毒素である。いくつかの実施形態では、薬物は、化学療法剤である。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、二重ナノボディ、BiTE、tandAb、DART、DART-Fc、DARPin、scFv、scFv-HAS-scFV、及びDNL-Fab3を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、二重特異性キメラ抗原受容体(CAR)である。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドを含むCo-LOCKRであり、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドは、それぞれ、がんのTFC上の異なる抗原に結合する。いくつかの実施形態では、二重特異性CARは、synNotch CARである。いくつかの実施形態では、二重特異性CARは、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、及び第3のポリペプチドを含むCo-LOCKRに結合し、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドが、それぞれ、がんのTFC上の異なる抗原に結合し、第3のポリペプチドが、二重特異性CARに結合し、第3のポリペプチドが、第1のポリペプチドまたは第2のポリペプチドに作動可能に連結されている。
【0228】
いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書に記載の二重特異性分子のいずれか1つを使用して、少なくとも1つの上皮細胞系統マーカー及び少なくとも1つのマクロファージ細胞系統マーカーを発現する細胞を検出することを含む方法を提供し、第1の抗原結合領域が、EpCAMに結合し、第2の抗原結合領域が、CD163に結合する。EpCAMに特異的な抗原結合領域は、本明細書に記載されており、これは、「EpCAMに特異的な抗原結合領域またはドメイン」という名称のセクションを含むが、これに限定されない。CD163に特異的な抗原結合領域は、本明細書に記載されており、これは、「CD163に特異的な抗原結合領域またはドメイン」という名称のセクションを含むが、これに限定されない。本発明の診断方法は、CD163に特異的な抗原結合領域のいずれかと組み合わせて、EpCAMに特異的な抗原結合領域の、本明細書に記載の二重特異性分子のいずれかを使用することを含む。
【0229】
医薬組成物
特定の態様では、上記の二重特異性分子を含む医薬組成物も提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の主題は、本明細書に記載の二重特異性分子の有効量と、薬学的に許容される希釈剤、担体、または賦形剤を含む医薬組成物に関する。
【0230】
本明細書で使用される場合、「医薬組成物」は、本発明による治療上有効な製剤を意味する。本明細書で使用される「治療有効量」または「有効量」または「治療的に有効な」は、所定の状態及び投与計画に対して治療効果をもたらす量を指す。治療有効量は、当該技術分野で周知のように、患者特性、例えば、年齢、体重、性別、状態、合併症、他の疾患など、に基づいて、当業者が決定することができる。
【0231】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、固体組成物として投与することができる。いくつかの実施形態では、固体組成物は、限定されないが、ラクトース、デンプン、セルロース、乳糖、または高分子量のポリエチレングリコールを含む賦形剤を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、水性懸濁液及び/またはエリキシル剤として投与することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、様々な甘味料または香味料、着色料または染料と、乳化剤及び/または懸濁剤と、希釈剤(例えば、水、エタノール、プロピレングリコール、及びグリセリン)と、ならびにそれらの組み合わせで、組み合わされ得る。
【0232】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、非経口、例えば、静脈内、動脈内、腹膜内、髄腔内、脳室内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内、もしくは皮下に投与することができるか、または注入手法で投与され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、他の物質、例えば、血液と等張にするのに十分な塩またはグルコース、を含有し得る滅菌水溶液の形態で投与することができる。無菌条件下での好適な非経口製剤の調製は、当業者らに既知の標準的な製薬手法により容易に達成される。
【0233】
いくつかの実施形態では、非経口投与に適した医薬組成物には、抗酸化剤、緩衝剤、殺菌剤、及び溶質(意図されたレシピエントの血液と製剤を等張にする)を含有し得る水性及び非水性の滅菌注射液と、懸濁剤及び増粘剤を含み得る水性及び非水性の滅菌懸濁液を含む。医薬組成物は、単位用量または複数用量の容器で提供することができる。医薬組成物は、密封アンプルまたはバイアルであり得る。医薬組成物は、使用直前に、注射用水などの滅菌液体担体を添加することのみを必要とする凍結乾燥(凍結乾燥)状態で保存することができる。
【0234】
ポリヌクレオチド
特定の態様では、本明細書に記載の二重特異性分子またはその一部をコードするポリヌクレオチドも提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の二重特異性分子またはその一部をコードするポリヌクレオチドは、ポリメラーゼ連鎖反応による増幅を含む当該技術分野で利用可能な方法に従って、本明細書に記載の二重特異性分子またはその一部を発現する細胞から単離される。本明細書に記載の1つ以上の二重特異性分子またはその一部をコードする1つ以上のポリヌクレオチドは、1つ以上の発現ベクターにサブクローニングすることができる。いくつかの実施形態では、二重特異性分子またはその一部をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターは、当該技術分野で既知の手順を使用して、本明細書に記載の二重特異性分子またはその一部を組み換え生成するために使用することができる。
【0235】
ベクター
特定の態様では、本明細書に記載の1つ以上の二重特異性分子またはその一部をコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含むベクターも提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の二重特異性分子またはその一部は、当該技術分野で既知の任意の好適なベクター及び方法を使用して組み換え生成される。好適な発現ベクターとしては、pcDNA3.4、pcDNA3.3 Topo、pOptiVec、pSG5L、pDEST27、pCI、pIRES、pBApo、pSF-CMV、及びpEF4/V5HisAが挙げられるが、これらに限定されない。
【0236】
ウイルス
特定の態様では、二重特異性分子をコードするポリヌクレオチドを含むウイルスも提供される。好適なウイルスベースのタンパク質発現システムは、当該技術分野で既知であり、レンチウイルス発現システム及びアデノウイルス発現システムを含むが、これらに限定されない。好適なレンチウイルスベクターは、pHIV-dTomato、pAWp11、LRG2.1、LT3、LentiV、pCCL、pCS、及びpHIV-eGFPなどが含まれるが、これらに限定されない。好適なアデノウイルスベクターとしては、pAd/CMV/V5-DEST、pAdenoX、pICPIS、pAAV、及びpAd/PL-DESTが挙げられるが、これらに限定されない。ウイルスベースの発現システムを使用したタンパク質発現の方法は、当該技術分野で周知である。
【0237】
細胞
特定の態様では、二重特異性分子及び/または二重特異性分子をコードするポリヌクレオチドを含む、遺伝子改変型細胞、形質転換または形質導入宿主細胞も提供される。当該技術分野で既知の好適な細胞としては、T細胞、HL-60細胞、CHO細胞、HEK293細胞、293T細胞、E.coli、DH5aが挙げられるが、これらに限定されない。これらの細胞は、当該技術分野で既知の任意の方法に従って、二重特異性分子及び/または二重特異性分子をコードするポリヌクレオチドで、遺伝子改変、形質転換、または形質導入することができる。
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【0238】
実施例1.系統特異的抗原の発現のための細胞株モデルの生成。
本明細書で腫瘍マクロファージハイブリッド(TMH)標的細胞とも呼ばれる「最初の細胞」上の2つの系統特異的抗原(LSA)の発現を繰り返す細胞株モデルを生成した(図5A~D)。
【0239】
LSA選択:TMH細胞は、2つの異なる系統由来の細胞の融合により形成される。融合により、クロマチン、トランスクリプトーム、及びプロテオームを含む生体分子の再編成がもたらされ、これにより、両方の系統の特定の抗原の発現を保持するハイブリッド細胞が生じる(1~3)。理論的には、いずれかの系統由来のLSAが、ハイブリッド細胞に存在するはずである。図1及び図2は、上皮またはマクロファージ系統のCD抗原のリストを示す。TMHにおける、いくつかのLSAの発現が報告されている(4、5)。TMH上のこれらの抗原の発現に基づいて選択されたLSAは、EpCAM及びCD163であった(1、2、4、6~19)。EpCAMまたはCD163のタンパク質配列と、それらのアイソフォームは、以下の表1に見出され得る。
【0240】
細胞株:HL-60(CCL-240;ATCC)細胞株は、LSAを発現させるために使用される。10%のウシ胎児血清(FBS)及び1Xのペニシリン及びストレプトマイシンが補充されたIMDM培地中、加湿チャンバー内で37℃、5%のCOで、HL-60細胞を培養した。
【0241】
プラスミドDNA:レンチウイルスバックボーン(pLenti6.3/V5-DEST)及びC末端のV5タグを有するプラスミドをコードするEpCAM(HsCD00954335;DNASUリポジトリ)及びCD163(HsCD00861066;DNASUリポジトリ)を、E.coli(DH5a)細胞で増幅し、Qiagen Maxiキットを使用して、プラスミドDNAを精製した。HL-60細胞で発現したEpCAMまたはCD163の配列が表2に示される。
【0242】
レンチウイルス:293個の細胞でヘルパープラスミド(VSVGコートタンパク質をコードする)と共トランスフェクトすることにより、EpCAM及びCD163発現プラスミドのレンチウイルス粒子を得た。10%のウシ胎児血清(FBS)及び1Xのペニシリン及びストレプトマイシンが補充されたDMEM培地中、加湿チャンバー内で、37℃、5%のCOで、239個の細胞を培養した。PEGを使用して、細胞上清からのレンチウイルス粒子を精製し、IMDM培地に再懸濁した。
【0243】
ウイルスの導入及び選択:レンチウイルス粒子を使用して、HL-60細胞を導入した。濃縮レンチウイルス粒子を、フィブロネクチン処理細胞培養物及びHL-60細胞と共インキュベートした。48時間の共培養後、抗生物質ブラストサイジンを使用して、EpCAMもしくはCD163またはその両方を発現する細胞を選択した。
【0244】
表現型解析:フローサイトメトリーを使用して、EpCAM及びCD163の発現を測定した(図6A~C)。蛍光色素古樹ゲートモノクローナル抗体(ヒトEpCAM(PerCP/Cyanine5.5にコンジュゲートされたクローン9C4、Biolegend 324213)またはCD163(PEにコンジュゲートされたクローンRM3/1、Biolegend 326506)を認識する)の1:100希釈液で、細胞を染色し、BD LSRIIフローサイトメーター及びDivaソフトウェアでデータを取得した。FlowJo(FlowJo LLC)またはFCS Express(De NovoS oftware)を使用して、フローサイトメトリーデータを分析した。
【0245】
【表1-1】
【0246】
【表1-2】
【0247】
【表1-3】
【0248】
【表1-4】
【0249】
【表2】
【0250】
実施例2.Co-LOCKRタンパク質の生成
2つの異なる系統由来のLSAの発現を特徴とするTMHの正確な標的化を行い、親系統の細胞(単一のLSAを発現)を見逃すために、表面抗原(EpCAMまたはCD163)の正確な組み合わせでTMHを標的とするために、ANDブール論理演算を実行する共局在依存性タンパク質ベースのロジックゲート設計を使用した(20)。AND論理を計算するために共局在されると起動されるde novoタンパク質スイッチについて記載されており、これは、ラッチング直交ケージ-キータンパク質(Co-LOCKR)を含む。Co-LOCKRは、ケージ及びキーが共局在すると、立体配座の変化を介して活性化するケージ及びキータンパク質で構成される(図7A~C)(20)。ケージモジュールは、不活性な立体配座で機能ペプチド(Bim)を隔離するが、立体配座の変化時にエフェクター(Bcl2)に結合し得る「ラッチ」で構成される。エフェクターは、タンパク質薬物コンジュゲート(細胞傷害性化合物にコンジュゲートされたBcl2)またはBcl2CARを発現するキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)であり得る(20)。ケージ及びキーは、双方ともに、モジュール式であり、標的抗原(EpCAMまたはCD163)を発現する細胞に、ケージ及びキーを動員するために、抗原結合ドメインに結合することができる。抗原結合ドメインは、単鎖可変フラグメント(ScFv)もしくはDarpin、または標的に対して親和性を有する任意の分子、であり得る。
【0251】
設計:EpCAM及びCD163を標的とするケージ及びキーの概略設計が、図8A~Bに示される。典型的なケージ及びキー標的タンパク質は、マウス免疫グロブリンカッパ(mIgk)からのシグナルペプチド、タンパク質精製用の6xのヒスチジンタグ(His6)、タグを除去するためのタバコエッチングウイルス(TEV)プロテアーゼ部位、キーまたはケージドメイン、及び抗原結合ドメインを含有する。キー及びケージの「野生型」配列またはバリアントの両方を使用して、EpCAMとCD163の両方に対して、ケージ及びキータンパク質を設計して、合計8つのタンパク質が得られた(表3)。EpCAMに結合する抗原結合ドメインでは、本発明者らは、抗EpCAM ScFvを選択した:抗EpCAM ScFvの可変軽鎖(VL)及び可変重鎖(VH)配列は、特許US7,632,925B2に記載されており、この内容は、全体として参照により本明細書に組み込まれる。CD163に結合する抗原結合ドメインでは、本発明者らは、抗CD163 ScFvを選択した:抗CD163 ScFvの可変軽鎖(VL)及び可変重鎖(VH)配列は、特許US9,724,426B2に記載されており、この内容は、全体として参照により本明細書に組み込まれる。CD163に結合する抗原結合ドメインでは、抗CD163 ScFvの可変軽鎖(VL)及び可変重鎖(VH)配列は、特許US11,034,770B2に記載されており、この内容は、全体として参照により本明細書に組み込まれ、使用することもできる。ケージ配列及びキー配列は、以下に記載されている:Lajoie,M.J.et al.,Science.2020;369(6511):1637-43(この内容は、全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0252】
ケージ及びキータンパク質の合成及びクローニング:表2のタンパク質配列をコードするコドン最適化DNA配列をフラグメントとして合成し、哺乳動物発現ベクターpcDNA3.4にクローニングした。得られたプラスミドを、E.coli(DH5a)細胞で増幅し、Qiagen Maxiキットを使用して、プラスミドDNAを精製した。
【0253】
Co-LOCKRタンパク質の発現及び精製
MIRUS BIO(商標)TRANSIT(商標)-293トランスフェクション試薬(MIR 2700 Mirus Bio)の製造者のプロトコールに従って、293細胞をトランスフェクションした。トランスフェクションの24時間前に、10cmの組織培養処理済みディッシュに、293細胞をプレーティングし、トランスフェクション当日に、80%のコンフルエンスを達成した。各Co-LOCKRプラスミドのMaxi DNAを、TRANSIT(商標)-293試薬及び無血清培地と混合し、室温で25分間インキュベートした。インキュベーション後、混合物を293細胞に滴加した。細胞を72~96時間インキュベーターに戻した。最後に、細胞培養上清を収集し、遠心分離して、孤立した細胞を分離し、精製中にセリンプロテアーゼ活性を阻害するために、最終濃度1mMのフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)を補充した。Co-LOCKRタンパク質を精製するために、上清1ml当たりTALON(登録商標)Metal Affinity Resin(Takara Bio USA、San Jose、California)10μLを、PBSTで洗浄した。Co-LOCKRタンパク質を含有する培養上清を、4℃で一晩回転させた。翌日、サンプルを4℃で5分間、500gで遠心分離し、上清を吸引した。樹脂をPBSTに再懸濁させ、4℃で10分間回転させて、以前と同様に、遠心分離した。この洗浄プロセスを合計3回繰り返した。樹脂100μL当たり、溶出バッファー300μL、PBS中のイミダゾール150mMを樹脂ベッドに添加し、サンプルを4℃で少なくとも1時間回転させた。サンプルを、4℃、500gで5分間遠心分離し、ピペッティングで穏やかに再懸濁し、その後、MICRO BIO-SPIN(商標)クロマトグラフィーカラム(Bio-Rad Laboratories、Hercules、California)に移した。カラムを微小遠心管に入れ、4℃、10,000gで1分間遠心分離した。TALON(登録商標)樹脂からの溶出液を、PBS中で最終容量6mLに希釈し、30kDaのMWCOタンパク質濃縮器(ThermoFisher)に添加した。サンプルを、3,000gで15分間遠心分離した。濃縮器の下部チャンバーからのフロースルーを廃棄し、濃縮サンプルを5mLのPBSで希釈し、その後、上記条件下で遠心分離した。His精製実験構成物を含有する濃縮サンプルを収集し、後続の実験にすぐに使用するか、使用するまで-20℃で凍結した。
【0254】
染色及び免疫ブロット分析:Co-LOCKRタンパク質溶出液を、β-メルカプトエタノールを含有する2X-Laemmliサンプルバッファー(Bio-Rad)と混合した。混合物を95℃で10分間加熱し、サンプル25μLを、Novex 4-20%トリスグリシンミニゲル(Invitrogen、Waltham、Massachusetts)で分離した。発現及び純度を確認するために、ゲルをクマシーG-250染色で染色した(図9A)。ゲルを脱イオン水で5分間洗浄し、クマシーG-250で20分間染色した後、10分間脱色した。LiCORイメージングシステムを使用して、ゲルを撮影した。免疫ブロット分析では、ゲルからのタンパク質を、ナイロン膜に転写し、PBSTで調製された5%のミルクを使用してブロックし、PBSTで調製された0.5%のミルク中の抗His6一次抗体と共に一晩インキュベートした。一晩インキュベートした後、膜をPBSTで合計4回洗浄する。LI-COR Biosciences(Lincoln、Nebraska)から入手した抗マウス800CW二次抗体で室温で30分間、膜をプローブした。二次抗体を廃棄し、上記のように、膜を4回洗浄した。ImageStudioソフトウェア(LI-COR)を使用して、Odyssey XFイメージングシステム(LI-COR)で、膜を分析した(図9B)。
【0255】
【表3-1】
【0256】
【表3-2】
【0257】
【表3-3】
【0258】
実施例3-スプリットCAR-Tの生成
スプリットキメラ抗原受容体T細胞(スプリットCAR-T)システムでは、2つのモジュール(一方はCARを有し、他方はキメラ共刺激受容体(CCR)を有する)は、同じT細胞で発現し、2つの異なる標的抗原を発現する標的細胞での、シグナル伝達のバランスとT細胞の細胞傷害活性の最大化を達成した(図10)(21)。CARモジュールは、1つの抗原を標的とする抗原結合ドメインと、CD3zシグナル伝達ドメインを含む。CCRモジュールは、別の抗原を標的とする抗原結合ドメインと、2つ以上の共刺激ドメインを含有する。
【0259】
設計:CAR及びCCRモジュールを標的とするEpCAM及びCD163の概略設計が図11に示される。いくつかの実施形態では、CARモジュールは、1)膜標的化のためのシグナルペプチド(GM-CSFまたはCD8アルファ由来)、2)ScFv配列(抗EpCAMまたは抗CD163抗体のいずれか由来)、3)ヒンジ領域(CD8由来)、4)膜貫通ドメイン(CD8由来)、及び、5)CD3zシグナル伝達ドメイン、を含むように設計された。いくつかの実施形態では、CCRモジュールは、1)膜標的化のためのシグナルペプチド(GM-CSF由来)、2)ScFv配列(抗EpCAM抗体または抗CD163抗体のいずれか由来)、3)ヒンジ領域(CD28由来)、4)膜貫通ドメイン(CD28由来)、及び、5)CD28共刺激ドメイン、及び6)4-1BB共刺激ドメイン、を含むように設計された。EpCAMに結合する抗原結合ドメインでは、本発明者らは、抗EpCAM ScFvを選択した:抗EpCAM ScFvの可変軽鎖(VL)及び可変重鎖(VH)配列は、特許US7,632,925B2に記載されており、この内容は、全体として参照により本明細書に組み込まれる。CD163に結合する抗原結合ドメインでは、本発明者らは、抗CD163 ScFvを選択した:抗CD163 ScFvの可変軽鎖(VL)及び可変重鎖(VH)配列は、特許US9,724,426B2及びUS11,034,770B2に記載されており、これらのそれぞれの内容は、全体が参照により本明細書に組み込まれる。様々なスプリットCARモジュールの配列は、表4に記載されている。
【0260】
スプリットCARモジュールの合成及びクローニング:表4のタンパク質配列をコードするコドン最適化DNA配列を、フラグメントとして合成し、pHIV-dTomatoまたはpHIV-eGFPレンチウイルスベクターバックボーン内にクローニングした。得られたプラスミドを、E.coli(DH5a)細胞で増幅し、Qiagen Maxiキットを使用して、プラスミドDNAを精製した。
【0261】
【表4-1】
【0262】
【表4-2】
【0263】
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図1-2】
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図5
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図6B
図6C
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図9
図10
図11
【配列表】
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【国際調査報告】