(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-17
(54)【発明の名称】自然免疫活性化因子に応答するための転写バイオマーカー
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6886 20180101AFI20250109BHJP
C12Q 1/6844 20180101ALI20250109BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20250109BHJP
C12Q 1/6874 20180101ALI20250109BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20250109BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250109BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20250109BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250109BHJP
A61K 31/711 20060101ALI20250109BHJP
A61K 51/00 20060101ALI20250109BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20250109BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20250109BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20250109BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20250109BHJP
A61P 5/14 20060101ALI20250109BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20250109BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20250109BHJP
A61P 11/04 20060101ALI20250109BHJP
A61P 13/08 20060101ALI20250109BHJP
A61P 13/10 20060101ALI20250109BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20250109BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20250109BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20250109BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20250109BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20250109BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20250109BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C12Q1/6886 Z ZNA
C12Q1/6844 Z
C12Q1/6869 Z
C12Q1/6874 Z
A61K45/00
A61P35/00
A61P37/02
A61P43/00 111
A61K31/711
A61K51/00 100
A61P1/02
A61P1/04
A61P1/16
A61P1/18
A61P5/14
A61P11/00
A61P11/02
A61P11/04
A61P13/08
A61P13/10
A61P13/12
A61P15/00
A61P17/00
A61P19/08
A61P21/00
A61P25/00
A61P35/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539940
(86)(22)【出願日】2022-12-30
(85)【翻訳文提出日】2024-08-05
(86)【国際出願番号】 US2022082627
(87)【国際公開番号】W WO2023130072
(87)【国際公開日】2023-07-06
(32)【優先日】2022-01-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517228342
【氏名又は名称】チェックメイト ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】アーサー・クリーグ
(72)【発明者】
【氏名】ホン・リュウ
【テーマコード(参考)】
4B063
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4B063QA19
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4C086ZB07
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC06
4C086ZC41
(57)【要約】
本明細書において、vidutolimodコアシグネチャの発現レベル、及び/またはELF2の高発現、及び/またはGABA B細胞シグネチャの低発現、及び/または腫瘍中のTregもしくはマクロファージ/単球の低いレベルの検出に基づいて、TLR9アゴニストまたは他の自然免疫活性化因子またはがん免疫療法を用いた治療に応答する可能性が高いがん患者を診断するための方法及びキットを提供する。本明細書ではまた、例えばvidutolimod応答シグネチャのエンリッチメントを判定した後に、ウイルス様粒子中で製剤化されたCpGオリゴヌクレオチドを投与することと、さらに任意選択で、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体などのチェックポイント阻害剤を投与することとを含む、がんの治療方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然免疫活性化因子を含むがん免疫療法から恩恵を受ける可能性が高い対象の同定方法であって、前記方法が、
(i)がんに罹患している対象から腫瘍試料を採取することと、
(ii)SEC16B、AREG、COL7A1、SEC24D、CNIH2、MAPK15、TGFA、CUL3、SAR1B、USO1、TRAPPC6A、SEC24A、TMED2、SEC31A、BET1、GOLGA2、RAB1A、NAPA、LMAN1、TRAPPC3、PREB、SCFD1、SEC23A、CTSC、TRAPPC1、ANKRD28、SEC24B、MCFD2、CD59、TMED10、STX5、TRAPPC6B、PPP6R3、SEC13、TRAPPC9、CEP19、ARFGAP3、GOSR1、SEC23B、MIA3、及びVAPAからなる群から選択される少なくとも5つのvidutolimod応答コアシグネチャ遺伝子転写産物の前記試料中の発現レベルを検出することとを含み、
濃縮された発現レベルの前記検出により、自然免疫活性化因子を含むがん免疫療法から恩恵を受ける可能性が高い対象が同定される、前記同定方法。
【請求項2】
自然免疫活性化因子を含むがん免疫療法から恩恵を受ける可能性が高い対象の同定方法であって、前記方法が、
(i)がんに罹患している対象から腫瘍試料を採取することと、
(ii)前記腫瘍が「ホット」ではないことを確認することと、
(iii)SEC16B、AREG、COL7A1、SEC24D、CNIH2、MAPK15、TGFA、CUL3、SAR1B、USO1、TRAPPC6A、SEC24A、TMED2、SEC31A、BET1、GOLGA2、RAB1A、NAPA、LMAN1、TRAPPC3、PREB、SCFD1、SEC23A、CTSC、TRAPPC1、ANKRD28、SEC24B、MCFD2、CD59、TMED10、STX5、TRAPPC6B、PPP6R3、SEC13、TRAPPC9、CEP19、ARFGAP3、GOSR1、SEC23B、MIA3、及びVAPAからなる群から選択される少なくとも5つのvidutolimod応答コアシグネチャ遺伝子転写産物の前記試料中の発現レベルを検出することとを含み、
「ホット」ではない腫瘍における少なくとも5つのvidutolimodコアシグネチャ遺伝子転写産物の濃縮された発現レベルの前記検出により、自然免疫活性化因子を含むがん免疫療法から恩恵を受ける可能性が高い対象が同定される、前記同定方法。
【請求項3】
自然免疫活性化因子を含むがん免疫療法から恩恵を受ける可能性が高い対象の同定方法であって、前記方法が、
(i)対象から腫瘍試料を採取することと、
(ii)SEC16B、AREG、COL7A1、SEC24D、CNIH2、MAPK15、TGFA、CUL3、SAR1B、USO1、TRAPPC6A、SEC24A、TMED2、SEC31A、BET1、GOLGA2、RAB1A、NAPA、LMAN1、TRAPPC3、PREB、SCFD1、SEC23A、CTSC、TRAPPC1、ANKRD28、SEC24B、MCFD2、CD59、TMED10、STX5、TRAPPC6B、PPP6R3、SEC13、TRAPPC9、CEP19、ARFGAP3、GOSR1、SEC23B、MIA3、及びVAPAからなる群から選択される少なくとも5つのvidutolimod応答コアシグネチャ遺伝子転写産物の前記試料中の発現レベルの上昇を検出することと、
(iii)低マクロファージ及び/または単球細胞集団の存在を検出することとを含み、
前記検出により、自然免疫活性化因子を含むがん免疫療法から恩恵を受ける可能性が高い対象が同定される、前記同定方法。
【請求項4】
自然免疫活性化因子を含むがん免疫療法から恩恵を受ける可能性が高い対象の同定方法であって、前記方法が、
(i)対象から腫瘍試料を採取することと、
(ii)SEC16B、AREG、COL7A1、SEC24D、CNIH2、MAPK15、TGFA、CUL3、SAR1B、USO1、TRAPPC6A、SEC24A、TMED2、SEC31A、BET1、GOLGA2、RAB1A、NAPA、LMAN1、TRAPPC3、PREB、SCFD1、SEC23A、CTSC、TRAPPC1、ANKRD28、SEC24B、MCFD2、CD59、TMED10、STX5、TRAPPC6B、PPP6R3、SEC13、TRAPPC9、CEP19、ARFGAP3、GOSR1、SEC23B、MIA3、及びVAPAからなる群から選択される少なくとも5つのvidutolimodコアシグネチャ遺伝子転写産物の前記試料中の発現レベルの上昇を検出することと、
(iii)前記腫瘍試料において、
(a)ELF2の発現の上昇、及び/または
(b)低T
reg細胞集団の存在、及び/または
(c)GABA B細胞シグネチャの低発現
のうちの1つ以上を検出することとを含み、
前記検出により、自然免疫活性化因子を含むがん免疫療法から恩恵を受ける可能性が高い対象が同定される、前記同定方法。
【請求項5】
自然免疫活性化因子を含むがん療法から恩恵を受ける可能性が高い対象の同定方法であって、前記対象から腫瘍試料を採取することと、前記腫瘍試料において、
(a)低マクロファージ及び/または単球細胞集団の存在、
(b)ELF2の高発現、及び/または
(c)低T
reg細胞集団の存在、
(d)GABA B細胞シグネチャの低発現
のうちの1つ以上を検出することとを含み、
前記検出により、自然免疫活性化因子を含むがん療法から恩恵を受ける可能性が高い対象が同定される、前記同定方法。
【請求項6】
自然免疫活性化因子を含むがん免疫療法による、がんに罹患した対象の治療方法であって、前記方法が、
(i)がんに罹患している対象から腫瘍試料を採取することと、
(ii)SEC16B、AREG、COL7A1、SEC24D、CNIH2、MAPK15、TGFA、CUL3、SAR1B、USO1、TRAPPC6A、SEC24A、TMED2、SEC31A、BET1、GOLGA2、RAB1A、NAPA、LMAN1、TRAPPC3、PREB、SCFD1、SEC23A、CTSC、TRAPPC1、ANKRD28、SEC24B、MCFD2、CD59、TMED10、STX5、TRAPPC6B、PPP6R3、SEC13、TRAPPC9、CEP19、ARFGAP3、GOSR1、SEC23B、MIA3、及びVAPAからなる群から選択される少なくとも5つのvidutolimod応答コアシグネチャ遺伝子転写産物の前記試料中の発現レベルを検出することであって、その場合に濃縮された発現レベルが検出される、前記検出することと、
(iii)自然免疫活性化因子を含むがん免疫療法を前記対象に投与することとを含む、前記治療方法。
【請求項7】
自然免疫活性化因子を含むがん免疫療法による、がんに罹患した対象の治療方法であって、前記方法が、
(i)がんに罹患している対象から腫瘍試料を採取することと、
(ii)前記腫瘍が「ホット」ではないことを確認することと、
(iii)SEC16B、AREG、COL7A1、SEC24D、CNIH2、MAPK15、TGFA、CUL3、SAR1B、USO1、TRAPPC6A、SEC24A、TMED2、SEC31A、BET1、GOLGA2、RAB1A、NAPA、LMAN1、TRAPPC3、PREB、SCFD1、SEC23A、CTSC、TRAPPC1、ANKRD28、SEC24B、MCFD2、CD59、TMED10、STX5、TRAPPC6B、PPP6R3、SEC13、TRAPPC9、CEP19、ARFGAP3、GOSR1、SEC23B、MIA3、及びVAPAからなる群から選択される少なくとも5つのvidutolimod応答コアシグネチャ遺伝子転写産物の前記試料中の発現レベルを検出することであって、その場合に濃縮された発現レベルが検出される、前記検出することと、
(iv)自然免疫活性化因子を含むがん免疫療法を前記対象に投与することとを含む、前記治療方法。
【請求項8】
自然免疫活性化因子を含むがん免疫療法による、がんに罹患した対象の治療方法であって、前記方法が、
(i)対象から腫瘍試料を採取すること、
(ii)SEC16B、AREG、COL7A1、SEC24D、CNIH2、MAPK15、TGFA、CUL3、SAR1B、USO1、TRAPPC6A、SEC24A、TMED2、SEC31A、BET1、GOLGA2、RAB1A、NAPA、LMAN1、TRAPPC3、PREB、SCFD1、SEC23A、CTSC、TRAPPC1、ANKRD28、SEC24B、MCFD2、CD59、TMED10、STX5、TRAPPC6B、PPP6R3、SEC13、TRAPPC9、CEP19、ARFGAP3、GOSR1、SEC23B、MIA3、及びVAPAからなる群から選択される少なくとも5つのvidutolimod応答コアシグネチャ遺伝子転写産物の前記試料中の発現レベルの上昇を検出すること、及び/または
(iii)低マクロファージ及び/または単球細胞集団の存在を検出すること、ならびに
(iv)(ii)において濃縮された発現レベルが検出される場合、及び/または低マクロファージ及び/または単球細胞集団が検出される場合、自然免疫活性化因子を含むがん免疫療法を前記対象に投与することを含む、前記治療方法。
【請求項9】
自然免疫活性化因子を含むがん免疫療法による、がんに罹患した対象の治療方法であって、前記方法が、
(i)対象から腫瘍試料を採取することと、
(ii)SEC16B、AREG、COL7A1、SEC24D、CNIH2、MAPK15、TGFA、CUL3、SAR1B、USO1、TRAPPC6A、SEC24A、TMED2、SEC31A、BET1、GOLGA2、RAB1A、NAPA、LMAN1、TRAPPC3、PREB、SCFD1、SEC23A、CTSC、TRAPPC1、ANKRD28、SEC24B、MCFD2、CD59、TMED10、STX5、TRAPPC6B、PPP6R3、SEC13、TRAPPC9、CEP19、ARFGAP3、GOSR1、SEC23B、MIA3、及びVAPAからなる群から選択される少なくとも5つのvidutolimodコアシグネチャ遺伝子転写産物の前記試料中の発現レベルの上昇を検出することと、
(iii)前記腫瘍試料において、
(a)ELF2の発現の上昇、及び/または
(b)低T
reg細胞集団の存在、及び/または
(c)GABA B細胞シグネチャの低発現
のうちの1つ以上を検出することと、
(iv)自然免疫活性化因子を含むがん免疫療法を前記対象に投与することとを含む、前記治療方法。
【請求項10】
自然免疫活性化因子を含むがん免疫療法による、がんに罹患した対象の治療方法であって、前記方法が、前記対象から腫瘍試料を採取することと、前記腫瘍試料において、
(a)低マクロファージ及び/または単球細胞集団の存在、
(b)ELF2の高発現、
(c)低T
reg細胞集団の存在、及び/または
(d)GABA B細胞シグネチャの低発現
のうちの1つ以上を検出することと、
自然免疫活性化因子を含むがん免疫療法を前記対象に投与することとを含む、前記治療方法。
【請求項11】
前記自然免疫活性化因子が、TLRアゴニストからなる群から選択される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記TLRアゴニストが、TLR9、TLR4、TLR7、及びTLR8アゴニストからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記TLRアゴニストがTLR9アゴニストである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記TLR9アゴニストが、AクラスCpG DNA、CクラスCpG DNA、EクラスCpG DNA、A/EクラスCpG DNA、PクラスCpG DNA、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記TLR9アゴニストが、AクラスCpG DNAである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記AクラスCpG DNAが、配列GGGGGGGGGGGACGATCGTCGGGGGGGGGG(配列番号1)を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記AクラスCpG DNAを、ウイルス様粒子(VLP)として製剤化する、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記VLPが、バクテリオファージQβコートタンパク質を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記腫瘍が、
(a)TIDEスコア<-1、
(b)CD3D、IDO1、CIITA、CD3E、CCL5、GZMK、CD2、HLA-DRA、CXCL13、IL2RG、NKG7、HLA-E、LAG3、TAGAP、CXCL10、STAT1、GZMB、CXCR6遺伝子転写産物のうちの5つ以上を含む、IFN-γ転写シグネチャの低発現、
(c)低Immunoscore、及び/または
(d)PD-L1 CPS<10
のうちの1つ以上に基づいて「ホット」ではないと判定される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記腫瘍が、PD-1及びPD-L1からなる群から選択されるチェックポイント阻害剤に対して抵抗性である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記対象が、1つ以上のがん性腫瘍に罹患したヒトである、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記がん性腫瘍が、リンパ腫であるか、または皮膚、頭頸部、食道、胃、肝臓、結腸、直腸、膵臓、肺、乳房、子宮頸部、卵巣、腎臓、膀胱、前立腺、甲状腺、脳、筋肉、及び骨からなる群から選択される組織もしくは器官のがん性腫瘍である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記がん性腫瘍が、黒色腫、NSCLC、及びHNSCCである、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記対象が、放射線療法、化学療法、免疫療法、チェックポイント阻害剤を含む療法、外科手術、ホルモン療法からなる群から選択される療法を受けている、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
遺伝子転写産物の前記検出が、RNAシーケンシング(RNA-Seq)、mRNAシーケンシング(mRNA-Seq)、標的化RNA-Seq、及び非コードRNA-Seq、ナノストリング、マイクロアレイ、または他のハイブリダイゼーションベースの技術からなる群から選択される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
10、15、20、25、30、35、またはそれより多いvidutolimodコアシグネチャ遺伝子転写産物の存在を検出する、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記検出したvidutolimodコアシグネチャ遺伝子転写産物が、前記腫瘍型についての患者生検の最高80%においてエンリッチメントスコアを有する、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記検出したvidutolimodコアシグネチャ遺伝子転写産物が、形質細胞様樹状細胞(pDC)、形質細胞、マスト細胞、活性化単球、マクロファージ、樹状細胞、及び/またはT細胞からなる群から選択される1つ以上の細胞内で発現する、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記がん免疫療法を、腫瘍内、腫瘍周囲、全身、静脈内、腹腔内、腸内、経口、筋肉内、皮下、経粘膜、局所、小胞内、及び/または経皮経路を介して投与する、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記組成物を腫瘍内投与する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
チェックポイント阻害剤(CPI)を含む組成物の少なくとも1用量を前記対象に投与することをさらに含む、請求項29~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記CPIが、PD-1、PD-L1、LAG-3、TIM-3、及びCTLA-4からなる群から選択される抗原に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記CPIが、PD-1に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記TLR9アゴニストがvidutolimodであり、前記CPIがPD-1阻害剤である、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
SEC16B、AREG、COL7A1、SEC24D、CNIH2、MAPK15、TGFA、CUL3、SAR1B、USO1、TRAPPC6A、SEC24A、TMED2、SEC31A、BET1、GOLGA2、RAB1A、NAPA、LMAN1、TRAPPC3、PREB、SCFD1、SEC23A、CTSC、TRAPPC1、ANKRD28、SEC24B、MCFD2、CD59、TMED10、STX5、TRAPPC6B、PPP6R3、SEC13、TRAPPC9、CEP19、ARFGAP3、GOSR1、SEC23B、MIA3、及びVAPAからなる群から選択される少なくとも5つのvidutolimodコアシグネチャ遺伝子転写産物を検出することができる試薬を含む1つ以上の組成物を含むキット。
【請求項36】
(a)低マクロファージ及び/または単球細胞集団の存在、
(b)ELF2の高発現、及び/または
(c)低T
reg細胞集団の存在、及び/または
(d)GABA B細胞シグネチャの低発現
のうちの1つ以上を検出することができる試薬を含む1つ以上の組成物を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2022年1月3日に提出された米国仮特許出願第63/296,098号の利益を主張するものであり、その全開示内容は参照により本明細書に援用される。
【0002】
電子的に提出される資料の参照による援用
本明細書と同時に提出され、以下のように識別されるコンピュータ読み取り可能な配列表は、参照によりその全体が援用される:ファイル名:RGN9-009PC-SL26.xml、サイズ:2,125バイト、作成日:2022年12月20日。
【背景技術】
【0003】
がん免疫療法は、主にPD-1/PD-L1経路の阻害剤などの免疫チェックポイント遮断の成功に基づいて、相当程度の興奮を引き起こしている。この興奮にもかかわらず、ほとんどの患者、特にその腫瘍がIFNシグネチャを欠いている患者はPD-1遮断に応答しない。これは、例えば、腫瘍浸潤形質細胞様樹状細胞(pDC)を活性化し、それにより腫瘍特異的T細胞応答を増強することができる薬剤の腫瘍内(IT)送達を含む、自然免疫活性化因子などの、IFN応答を誘導するように設計されたアプローチの評価につながる。
【0004】
合成の非メチル化CGリッチCpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)は、原核生物DNAを模倣し、TLR9を活性化する。以前、PCT/US2015/067269(WO/2016/109310として公開)において、VLP中で製剤化されたCpG-A ODNであるCMP-001(vidutolimod)とチェックポイント阻害剤(CPI)との併用が開示された。PD-1遮断によるネオアジュバント治療を受けている早期黒色腫の患者では、病理学的治癒を含む応答率は、IT vidutolimodの追加によっておよそ2倍になった(Davar,Diwakar,et al.“303 Phase II trial of neoadjuvant nivolumab(Nivo)and intra-tumoral(IT)CMP-001 in high-risk resectable melanoma(Neo-C-Nivo):final results.”(SITC 2020)。PD-1遮断に抵抗性の転移性黒色腫患者では、IT vidutolimodにより8/40人(20%)の患者で、及びIT vidutolimodとPD-1遮断の併用により23/98人(23%)の患者でRECIST v1.1客観的応答が誘導された(Kirkwood,John,et al.“950 Final analysis:phase 1b study investigating intratumoral injection of toll-like receptor 9 agonist vidutolimod ± pembrolizumab in patients with PD-1 blockade-refractory melanoma.”(SITC 2021)。
【0005】
療法の実施前に、特定の抗がん療法に応答する可能性が高い患者を同定することにより、がん療法の有効性を改善する必要が依然としてある。例えば、がん免疫療法の分野では、i)PD-L1に対するIHC(合計陽性スコア;CPS)、ii)immunoscore、iii)TIDE(doi.org/10.1038/s41591-018-0136-1)、iv)IFN18シグネチャ(Ayers,M.,et al.,J Clin Invest.,2017,127(8):2930-2940;及びWO/2016/094377)、ならびに当業者に公知の他のアッセイなどの標準的なアッセイによる判定で、PD-1遮断が、「ホット」、すなわち炎症している腫瘍の治療に最も効果的であり、腫瘍がコールド、すなわちベースラインで炎症が起こっていない患者には治療が効果的である可能性がはるかに低いことが十分に確立されている。PD-1遮断に対する応答を予測するためのこれらのアッセイは、vidutolimodまたは他の自然免疫活性化因子への応答を予測しない(Luke,Jason John,et al.“Abstract CT032:CMP-001 demonstrates improved response in noninflamed anti-PD-1 refractory melanoma and response is associated with serum CXCL10.”(SITC 2021):CT032-CT032.)。したがって、理想的には患者の腫瘍のベースラインの生検由来、もしくは腫瘍細胞を含む血液試料などの液体生検由来のvidutolimod及び他のTLR9アゴニスト、または他のTLRアゴニスト(例えば、TLR4、TLR7、及びTLR8アゴニストを含む)、及び/または他の自然免疫活性化因子に対する応答を予測するためのアッセイが必要である。そのようなアッセイは、治療前にそのような療法に応答する可能性が最も高い患者を同定することによって、及びvidutolimodまたは他のTLRアゴニストまたは自然免疫活性化因子に応答する可能性が低いことがベースラインの生検によって示されている患者に他の治療の選択肢を提供することによって、vidutolimod及び他のTLRアゴニストまたは自然免疫活性化因子に対する応答率を大幅に改善することを可能にするであろう。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、がんを治療するための製剤、組成物、及び方法を提供する。本明細書に記載の通り、一実施形態では、自然免疫活性化因子を含むがん免疫療法から恩恵を受ける可能性が高い対象を特定する方法を提供し、前記方法は、(i)がんを有する対象から腫瘍試料を採取することと、(ii)試料中のSEC16B、AREG、COL7A1、SEC24D、CNIH2、MAPK15、TGFA、CUL3、SAR1B、USO1、TRAPPC6A、SEC24A、TMED2、SEC31A、BET1、GOLGA2、RAB1A、NAPA、LMAN1、TRAPPC3、PREB、SCFD1、SEC23A、CTSC、TRAPPC1、ANKRD28、SEC24B、MCFD2、CD59、TMED10、STX5、TRAPPC6B、PPP6R3、SEC13、TRAPPC9、CEP19、ARFGAP3、GOSR1、SEC23B、MIA3、及びVAPAからなる群から選択される少なくとも5つのvidutolimod応答コアシグネチャ遺伝子転写産物の発現レベルを検出することとを含み、濃縮した発現レベルの前記検出により、自然免疫活性化因子を含むがん免疫療法から恩恵を受ける可能性が高い対象が同定される。
【0007】
本開示の別の実施形態では、自然免疫活性化因子を含むがん免疫療法から恩恵を受ける可能性が高い対象を同定する方法を提供し、前記方法は、(i)がんを有する対象から腫瘍試料を採取することと、(ii)腫瘍が「ホット」ではないことを確認することと、(iii)その試料中のSEC16B、AREG、COL7A1、SEC24D、CNIH2、MAPK15、TGFA、CUL3、SAR1B、USO1、TRAPPC6A、SEC24A、TMED2、SEC31A、BET1、GOLGA2、RAB1A、NAPA、LMAN1、TRAPPC3、PREB、SCFD1、SEC23A、CTSC、TRAPPC1、ANKRD28、SEC24B、MCFD2、CD59、TMED10、STX5、TRAPPC6B、PPP6R3、SEC13、TRAPPC9、CEP19、ARFGAP3、GOSR1、SEC23B、MIA3、及びVAPAからなる群から選択される少なくとも5つのvidutolimod応答コアシグネチャ遺伝子転写産物の発現レベルを検出することとを含み、「ホット」ではない腫瘍中の少なくとも5つのvidutolimodコアシグネチャ遺伝子転写産物の濃縮した発現レベルの前記検出により、自然免疫活性化因子を含むがん免疫療法から恩恵を受ける可能性が高い対象が同定される。
【0008】
さらに別の実施形態では、本開示は、自然免疫活性化因子を含むがん免疫療法から恩恵を受ける可能性が高い対象を同定する方法を提供し、前記方法は、(i)対象から腫瘍試料を採取することと、(ii)その試料中のSEC16B、AREG、COL7A1、SEC24D、CNIH2、MAPK15、TGFA、CUL3、SAR1B、USO1、TRAPPC6A、SEC24A、TMED2、SEC31A、BET1、GOLGA2、RAB1A、NAPA、LMAN1、TRAPPC3、PREB、SCFD1、SEC23A、CTSC、TRAPPC1、ANKRD28、SEC24B、MCFD2、CD59、TMED10、STX5、TRAPPC6B、PPP6R3、SEC13、TRAPPC9、CEP19、ARFGAP3、GOSR1、SEC23B、MIA3、及びVAPAからなる群から選択される少なくとも5つのvidutolimod応答コアシグネチャ遺伝子転写産物の発現レベルの上昇を検出することと、(iii)マクロファージ及び/または単球細胞集団の存在が少ないことを検出することとを含み、前記検出により、自然免疫活性化因子を含むがん免疫療法から恩恵を受ける可能性が高い対象が同定される。
【0009】
さらに別の実施形態では、本開示は、自然免疫活性化因子を含むがん免疫療法から恩恵を受ける可能性が高い対象を同定する方法を提供し、前記方法は、(i)対象から腫瘍試料を採取することと、(ii)その試料中のSEC16B、AREG、COL7A1、SEC24D、CNIH2、MAPK15、TGFA、CUL3、SAR1B、USO1、TRAPPC6A、SEC24A、TMED2、SEC31A、BET1、GOLGA2、RAB1A、NAPA、LMAN1、TRAPPC3、PREB、SCFD1、SEC23A、CTSC、TRAPPC1、ANKRD28、SEC24B、MCFD2、CD59、TMED10、STX5、TRAPPC6B、PPP6R3、SEC13、TRAPPC9、CEP19、ARFGAP3、GOSR1、SEC23B、MIA3、及びVAPAからなる群から選択される少なくとも5つのvidutolimodコアシグネチャ遺伝子転写産物の発現レベルの上昇を検出することと、(iii)腫瘍試料中の(a)ELF2の発現上昇、及び/または(b)Treg細胞集団の存在が少ないこと、及び/または(c)GABA B細胞シグネチャの発現低下のうちの1つ以上を検出することとを含み、前記検出により、自然免疫活性化因子を含むがん免疫療法から恩恵を受ける可能性が高い対象が同定される。
【0010】
さらに別の実施形態では、本開示は、対象から腫瘍試料を採取することと、腫瘍試料中の(a)マクロファージ及び/または単球細胞集団の存在が少ないこと、(b)ELF2の高発現、及び/または(c)Treg細胞集団の存在が少ないこと、(d)GABA B細胞シグネチャの発現が低いことのうちの1つ以上を検出することとを含み、前記検出により、自然免疫活性化因子を含むがん療法から恩恵を受ける可能性が高い対象が同定される、自然免疫活性化因子を含むがん療法から恩恵を受ける可能性が高い対象を同定する方法を提供する。
【0011】
いくつかの実施形態では、本開示は、自然免疫活性化因子を含むがん療法から恩恵を受ける可能性が高い対象を同定する方法を提供し、その場合、自然免疫活性化因子はvidutolimodである。いくつかの実施形態では、本開示は、vidutolimodがん療法から恩恵を受ける可能性が高い対象を同定する方法を提供する。
【0012】
別の実施形態では、本開示は、自然免疫活性化因子を含むがん免疫療法による、がんに罹患した対象の治療方法を提供し、前記方法は、(i)がんに罹患した対象から腫瘍試料を採取することと、(ii)試料中の、SEC16B、AREG、COL7A1、SEC24D、CNIH2、MAPK15、TGFA、CUL3、SAR1B、USO1、TRAPPC6A、SEC24A、TMED2、SEC31A、BET1、GOLGA2、RAB1A、NAPA、LMAN1、TRAPPC3、PREB、SCFD1、SEC23A、CTSC、TRAPPC1、ANKRD28、SEC24B、MCFD2、CD59、TMED10、STX5、TRAPPC6B、PPP6R3、SEC13、TRAPPC9、CEP19、ARFGAP3、GOSR1、SEC23B、MIA3、及びVAPAからなる群から選択される少なくとも5つのvidutolimod応答コアシグネチャ遺伝子転写産物の発現レベルを検出することであって、その場合に濃縮された発現レベルが検出される、検出することと、(iv)自然免疫活性化因子を含むがん免疫療法を対象に投与することとを含む。
【0013】
さらに別の実施形態では、本開示は、自然免疫活性化因子を含むがん免疫療法による、がんに罹患した対象の治療方法を提供し、前記方法は、(i)がんに罹患した対象から腫瘍試料を採取することと、(ii)腫瘍が「ホット」ではないことを確認することと、(iii)その試料中の、SEC16B、AREG、COL7A1、SEC24D、CNIH2、MAPK15、TGFA、CUL3、SAR1B、USO1、TRAPPC6A、SEC24A、TMED2、SEC31A、BET1、GOLGA2、RAB1A、NAPA、LMAN1、TRAPPC3、PREB、SCFD1、SEC23A、CTSC、TRAPPC1、ANKRD28、SEC24B、MCFD2、CD59、TMED10、STX5、TRAPPC6B、PPP6R3、SEC13、TRAPPC9、CEP19、ARFGAP3、GOSR1、SEC23B、MIA3、及びVAPAからなる群から選択される少なくとも5つのvidutolimod応答コアシグネチャ遺伝子転写産物の発現レベルを検出することであって、その場合に濃縮された発現レベルが検出される、検出することと、(iv)自然免疫活性化因子を含むがん免疫療法を対象に投与することとを含む。
【0014】
さらに別の実施形態では、本開示は、自然免疫活性化因子を含むがん免疫療法による、がんに罹患した対象の治療方法を提供し、前記方法は、(i)対象から腫瘍試料を採取すること、(ii)その試料中の、SEC16B、AREG、COL7A1、SEC24D、CNIH2、MAPK15、TGFA、CUL3、SAR1B、USO1、TRAPPC6A、SEC24A、TMED2、SEC31A、BET1、GOLGA2、RAB1A、NAPA、LMAN1、TRAPPC3、PREB、SCFD1、SEC23A、CTSC、TRAPPC1、ANKRD28、SEC24B、MCFD2、CD59、TMED10、STX5、TRAPPC6B、PPP6R3、SEC13、TRAPPC9、CEP19、ARFGAP3、GOSR1、SEC23B、MIA3、及びVAPAからなる群から選択される少なくとも5つのvidutolimod応答コアシグネチャ遺伝子転写産物の上昇した発現レベルを検出すること、及び/または(iii)マクロファージ及び/または単球細胞集団の存在が少ないことを検出すること、ならびに(iv)(ii)において濃縮された発現レベルが検出される場合、及び/またはマクロファージ及び/または単球細胞集団の存在が少ないことが検出される場合、自然免疫活性化因子を含むがん免疫療法を対象に投与することを含む。
【0015】
一実施形態では、本開示は、自然免疫活性化因子を含むがん免疫療法による、がんに罹患した対象の治療方法を提供し、前記方法は、(i)対象から腫瘍試料を採取することと、(ii)その試料中のSEC16B、AREG、COL7A1、SEC24D、CNIH2、MAPK15、TGFA、CUL3、SAR1B、USO1、TRAPPC6A、SEC24A、TMED2、SEC31A、BET1、GOLGA2、RAB1A、NAPA、LMAN1、TRAPPC3、PREB、SCFD1、SEC23A、CTSC、TRAPPC1、ANKRD28、SEC24B、MCFD2、CD59、TMED10、STX5、TRAPPC6B、PPP6R3、SEC13、TRAPPC9、CEP19、ARFGAP3、GOSR1、SEC23B、MIA3、及びVAPAからなる群から選択される少なくとも5つのvidutolimodコアシグネチャ遺伝子転写産物の上昇した発現レベルを検出することと、(iii)腫瘍試料中の(a)ELF2の発現の上昇、及び/または(b)Treg細胞集団の存在が少ないこと、及び/または(c)GABA B細胞シグネチャの発現が低いことのうちの1つ以上を検出することと、(iv)自然免疫活性化因子を含むがん免疫療法を対象に投与することとを含む。
【0016】
さらに別の実施形態では、本開示は、がんに罹患した対象を、自然免疫活性化因子を含むがん免疫療法で治療する方法を提供し、前記方法は、対象から腫瘍試料を採取することと、腫瘍試料中の(a)マクロファージ及び/または単球細胞集団の存在が少ないこと、(b)ELF2の高発現、(c)Treg細胞集団の存在が少ないこと、及び/または(d)GABA B細胞シグネチャの発現が低いことのうちの1つ以上を検出することと、(iv)自然免疫活性化因子を含むがん免疫療法を対象に投与することとを含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、本開示は、自然免疫活性化因子を含むがん免疫療法による、がんに罹患した対象の治療方法を提供し、その場合、自然免疫活性化因子はvidutolimodである。いくつかの実施形態では、本開示は、vidutolimodがん免疫療法による、がんに罹患した対象の治療方法を提供する。
【0018】
いくつかの実施形態では、自然免疫活性化因子がTLRアゴニストからなる群から選択される前述の方法を提供する。一実施形態では、TLRアゴニストは、TLR9、TLR4、TLR7、及びTLR8アゴニストからなる群から選択される。別の実施形態では、TLRアゴニストはTLR9アゴニストである。さらに別の実施形態では、TLR9アゴニストは、AクラスCpG DNA、CクラスCpG DNA、EクラスCpG DNA、A/EクラスCpG DNA、PクラスCpG DNA、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。さらに別の実施形態では、TLR9アゴニストはAクラスCpG DNAである。一実施形態では、AクラスCpG DNAは、配列GGGGGGGGGGGACGATCGTCGGGGGGGGGG(配列番号1)を含む。さらに他の実施形態では、AクラスCpG DNAは、ウイルス様粒子(VLP)として製剤化される。別の実施形態では、VLPは、バクテリオファージQβコートタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、本開示は、自然免疫活性化因子を含むがん免疫療法による、がんに罹患した対象の治療方法を提供し、その場合、自然免疫活性化因子は、配列GGGGGGGGGGGACGATCGTCGGGGGGGGGG(配列番号1)を含むAクラスCpG DNAであり、バクテリオファージQβコートタンパク質を含むVLPとして製剤化される。いくつかの実施形態では、前述の方法のいずれかにおいて列挙される自然免疫活性化因子はvidutolimodである。
【0019】
別の実施形態では、(a)TIDEスコア<-1、(b)CD3D、IDO1、CIITA、CD3E、CCL5、GZMK、CD2、HLA-DRA、CXCL13、IL2RG、NKG7、HLA-E、LAG3、TAGAP、CXCL10、STAT1、GZMB、CXCR6遺伝子転写産物のうちの5つ以上を含むIFN-γ転写シグネチャの低発現、(c)低いImmunoscore、及び/または(d)PD-L1 CPS<10のうちの1つ以上に基づいて腫瘍が「ホット」ではないと判定される前述の方法を提供する。
【0020】
いくつかの実施形態では、腫瘍が、PD-1及びPD-L1からなる群から選択されるチェックポイントの阻害剤に対して抵抗性である前述の方法を提供する。さらに他の実施形態では、対象が1つ以上のがん性腫瘍に罹患したヒトである前述の方法を提供する。一実施形態では、がん性腫瘍は、リンパ腫であるか、または皮膚、頭頸部、食道、胃、肝臓、結腸、直腸、膵臓、肺、乳房、子宮頸部、卵巣、腎臓、膀胱、前立腺、甲状腺、脳、筋肉、及び骨からなる群から選択される組織もしくは器官のがん性腫瘍である。さらに別の実施形態では、がん性腫瘍は、黒色腫、NSCLC、及びHNSCCである。さらに別の実施形態では、対象は、放射線療法、化学療法、免疫療法、チェックポイント阻害剤を含む療法、外科手術、ホルモン療法からなる群から選択される療法を受けている。
【0021】
いくつかの実施形態では、遺伝子転写産物の検出が、RNAシーケンシング(RNA-Seq)、mRNAシーケンシング(mRNA-Seq)、標的化RNA-Seq、及び非コードRNA-Seq、ナノストリング、マイクロアレイ、または他のハイブリダイゼーションベースの技術からなる群から選択される前述の方法を提供する。
【0022】
さらに他の実施形態では、本開示は、10、15、20、25、30、35、またはそれより多くのvidutolimodコアシグネチャ遺伝子転写産物の存在を検出する前述の方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、または41のvidutolimodコアシグネチャ遺伝子転写産物を検出する前述の方法を提供する。さらに他の実施形態では、本開示は、検出したvidutolimodコアシグネチャ遺伝子転写産物が、腫瘍型について、最高で80%の患者生検においてエンリッチメントスコアを有する前述の方法を提供する。他の実施形態では、本開示は、検出したvidutolimodコアシグネチャ遺伝子転写産物が、形質細胞様樹状細胞(pDC)、形質細胞、マスト細胞、活性化単球、マクロファージ、樹状細胞、及び/またはT細胞からなる群から選択される1つ以上の細胞内で発現する前述の方法を提供する。
【0023】
さらに他の実施形態では、本開示は、がん免疫療法を、腫瘍内、腫瘍周囲、全身、静脈内、腹腔内、腸内、経口、筋肉内、皮下、経粘膜、局所、小胞内、及び/または経皮経路を介して投与する前述の方法を提供する。一実施形態では、組成物を腫瘍内に投与する。さらに別の実施形態では、方法は、チェックポイント阻害剤(CPI)を含む組成物の少なくとも1用量を対象に投与することをさらに含む。さらに別の実施形態では、CPIは、PD-1、PD-L1、LAG-3、TIM-3、及びCTLA-4からなる群から選択される抗原に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片である。一実施形態では、CPIは、PD-1に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片である。さらに別の実施形態では、TLR9アゴニストはvidutolimodであり、CPIはPD-1阻害剤である。
【0024】
本開示はまた、キットも提供する。一実施形態では、SEC16B、AREG、COL7A1、SEC24D、CNIH2、MAPK15、TGFA、CUL3、SAR1B、USO1、TRAPPC6A、SEC24A、TMED2、SEC31A、BET1、GOLGA2、RAB1A、NAPA、LMAN1、TRAPPC3、PREB、SCFD1、SEC23A、CTSC、TRAPPC1、ANKRD28、SEC24B、MCFD2、CD59、TMED10、STX5、TRAPPC6B、PPP6R3、SEC13、TRAPPC9、CEP19、ARFGAP3、GOSR1、SEC23B、MIA3、及びVAPAからなる群から選択される少なくとも5つのvidutolimodコアシグネチャ遺伝子転写産物を検出することができる試薬を含む1つ以上の組成物を含むキットを提供する。別の実施形態では、(a)マクロファージ及び/または単球細胞集団の存在が少ないこと、(b)ELF2の高発現、及び/または(c)Treg細胞集団の存在が少ないこと、及び/または(d)GABA B細胞シグネチャの発現が低いことのうちの1つ以上を検出することができる試薬を含む1つ以上の組成物を含むキットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】ベースラインの「コールド腫瘍」由来のRNA Seqデータに対して実施した、分子シグネチャデータベース(MSigDB)内のすべてのシグネチャに対して臨床試験NCT02680184のその後のレスポンダーとPDとを比較する遺伝子セットエンリッチメント解析(GSEA;www.gsea-msigdb.org/gsea/index.jsp;2群比較)の結果を示す。レスポンダー及びPD(FDR<0.25、デフォルトカットオフ)において濃縮された4つの遺伝子シグネチャが同定された。
【
図2】臨床試験NCT02680184においてPD-1抵抗性黒色腫を有する、ベースラインの「コールド」腫瘍生検を有していたvidutolimodレスポンダーにおいて、非常に高度に濃縮された4つのシグネチャにおけるコア遺伝子を同定するために、どのようにLeading edge analysisを使用したかを示す。
【
図3】「COPII_COATED_VESICLE_BUDDING」及び「VESICLE_TARGETING_TO_FROM_OR_WITHIN_GOLGI」コア遺伝子が35個の共通遺伝子を含めて、互いに高度に重複していることを説明するためのベン図を示す。対照的に、これら2つのシグネチャは、vidutolimod応答に最初に関連していた他の2つのシグネチャと最小限の重複を共有している。
【
図4A】「コールド」腫瘍を有していた、臨床試験NCT02680184においてPD-1抵抗性黒色腫を有する患者のベースラインの生検について、単剤療法としての、またはペムブロリズマブと併用してのvidutolimodへの応答が、ゴルジコアシグネチャの発現(「エンリッチメントスコア」)の増加と関連していたことを示すプロットの例である(本実施例については1つのみを示す)。PDに移行する患者は、エンリッチメントスコアが最も低く、SDを達成した患者は、エンリッチメントスコアが中間であった。
【
図4B】「コールド」、「中間」、または「ホット」として特徴付けられるものを含む、ベースラインの生検のすべてに関するエンリッチメントスコアの同じプロットを示す。
【
図4C】ベースラインの「ホット」生検を有する患者における、vidutolimodに対するその後の応答とゴルジコアシグネチャのエンリッチメントスコアとの間に関係がないことを示す。
【
図5】ベースラインの「ホット」、「中間」、または「コールド」の生検の患者間でゴルジコアシグネチャの全体的なエンリッチメントに有意差がないことを示す。
【
図6】全ベースライン集団(左側のパネル)における応答状態による、及びIFN18シグネチャを使用した生検のベースラインの炎症状態による、ゴルジコアシグネチャの総合エンリッチメントを示す。ベースラインの「中間」の生検由来の患者データは、ゴルジシグネチャのオリジナルの同定には使用されていなかったため、これらのデータは、ゴルジシグネチャのエンリッチメントスコアとvidutolimod+ペムブロリズマブ療法への応答の確率との間の有意な相関性の独立した確認を提供する。
【
図7】PD-1抵抗性がん(この場合、臨床試験NCT03438318のNSCLC)患者におけるゴルジシグネチャのエンリッチメントスコアとvidutolimod+PD-1遮断(この場合、抗PD-L1アテゾリズマブ)療法に対する腫瘍収縮の確率との間の有意な相関性を確認する別の独立したデータセットを示す。
【
図8】公開データセットから、ゴルジコアシグネチャのエンリッチメントスコアが、PD-1もしくはCTLA-4遮断に対する応答またはPD-1もしくはCTLA-4遮断による誘導と関連していないことを示す。
【
図9】様々な腫瘍由来(この場合、黒色腫由来)の公開されている単細胞RNA Seqデータセットを使用して、ゴルジシグネチャが、次いでpDC、悪性細胞、マクロファージ、及び未成熟DCが腫瘍関連血漿細胞内で最も高度に発現していることを示す。
【
図10】in vitroで活性化された精製pDC由来の公開された単細胞RNA Seqデータセットを使用して、ゴルジシグネチャが、I型IFNを産生する主要なサブセットとしても同定されたP1 pDCサブセット内で最も高度に発現していることを示す。
【
図11】数千の腫瘍由来のRNA SeqのTCGAデータベース内で、ゴルジシグネチャが、ほとんどの腫瘍型にわたって高度に発現していることを示す。
【
図12】照射された組織及び正常組織由来の公開されたRNA Seqデータセットを使用して、照射された正常細胞または悪性細胞においてゴルジコアシグネチャが高エンリッチメントの傾向にあることを示す。
【
図13】ベースラインの腫瘍生検の遺伝子発現データから、vidutolimod(及び他の自然免疫活性化因子またはTLRアゴニスト)に対する応答をより良好に予測し得る新規のアルゴリズムを使用して、ゴルジシグネチャの潜在的な「パートナー」遺伝子としてELF2を同定する、AIツールであるQlatticeを使用した解析の結果を示す。
【
図14】ELF2の発現が、ベースラインの腫瘍炎症状態に関係なく、vidutolimodに対する応答と独立した相関性を示すことを示す。
【
図15】PD-1抵抗性黒色腫患者の本発明者らのRNA Seqデータセットについて、BRAF V600E変異状態が、公開されたIFN18シグネチャと相関しているがゴルジシグネチャとは相関していないこと、及びゴルジシグネチャの発現と以前のBraf阻害剤治療との相関性がないことを示す。
【
図16】ゴルジコアシグネチャのエンリッチメントが、免疫療法に対する黒色腫の応答に関する既知の有害な予後因子であるベースラインのLDHまたは肝臓転移と相関していないことを示す。
【
図17】ゴルジコアシグネチャのエンリッチメントが、免疫療法に対する黒色腫の応答に関する別の既知の予後不良因子であるベースラインの腫瘍量と相関していないことを示す。
【
図18】マクロファージ/単球について高シグネチャを有するベースラインの「ホット」生検が、vidutolimod+ペムブロリズマブに応答する可能性が低いことを示す。
【
図19】TLR8、TGF-b、TNFR、C1QC、またはPD-L2を含めたマクロファージ/単球発現遺伝子の低発現が、ベースラインの「ホット」腫瘍生検における臨床応答を予測することを示す。
【
図20】TNF-aまたはTLR9の低発現により、コールド腫瘍生検における臨床応答が予測されるが、ホット腫瘍生検では予測されないことを示す。
【
図21】すべてのベースラインの生検の中で、T
regの高シグネチャを有する生検は、vidutolimod+ペムブロリズマブに応答する可能性が低い。
【
図22】ベースラインのホット生検の中で、GABA B細胞活性化について高シグネチャを有する生検が、vidutolimod+ペムブロリズマブに応答する可能性が低いことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本開示は、例えば、がん免疫療法を含むがん治療に応答するバイオマーカーを提供する。本明細書で使用される場合、用語「がん免疫療法」とは、腫瘍細胞に対する直接的な効果ではなく、主にまたは大部分、免疫機能への影響を介して効果をもたらすがん治療を指す。がん免疫療法には、i)本質的に免疫系の「ブレーキを除去する」ように機能するチェックポイント阻害剤、ならびにii)抗腫瘍免疫をもたらす自然免疫及び適応免疫を刺激するように機能する自然免疫活性化因子が含まれる。本明細書で使用される場合、がん免疫療法に関連する自然免疫活性化因子には、例えば、様々なToll様受容体(TLR)、特にTLR3、TLR4、TLR7、TLR8、及びTLR9、RIG-I様受容体(RLR)、cGAS/STING、サイトカイン、インターフェロン、及び腫瘍溶解性ウイルスが含まれる。
【0027】
本明細書で使用される場合、「バイオマーカー(複数可)」とは、試料中の遺伝子産物(例えば、転写産物もしくはタンパク質)、細胞型もしくは細胞型集団、及び/またはタンパク質、サイトカイン、もしくはホルモンの存在または非存在を指す。本明細書に記載のバイオマーカーの個別または集合的な存在または非存在は、TLR9アゴニストなどの自然免疫活性化因子を含むがん治療から恩恵を受ける可能性が高い患者を判定または同定するために使用される。
【0028】
いくつかの実施形態では、がん免疫療法は、TLR9アゴニストと、PD-1に対する抗体などのチェックポイント阻害剤との併用を含み得る。本明細書において、例示的なTLR9アゴニスト及びチェックポイント阻害剤を提供する。さらに、当業者には理解されようが、本明細書に記載されるシグネチャ及び方法は、TLR3、TLR4、TLR7、及びTLR8アゴニストを含めた他のTLRアゴニストを含むがん治療も包含する。
【0029】
本明細書で使用されるがん療法から恩恵を受ける可能性が高い患者は、例えば、抗腫瘍応答の誘導によるものを含む、1つ以上のがん症状の緩和を示す患者である。抗腫瘍応答とは、治療剤、TLR9アゴニスト(任意選択でPD-1に対する抗体などのチェックポイント阻害剤と併用して)で治療されたがん患者を指す場合、例えば、がん細胞数の低減、腫瘍サイズの低減、末梢器官へのがん細胞浸潤速度の低減、腫瘍転移もしくは腫瘍増殖速度の低減、または無増悪生存期間などの少なくとも1つのプラスの治療効果を意味する。がんにおけるプラスの治療効果は、いくつかの方法で測定することができる(W.A.Weber,J.Null.Med.50:1S-10S(2009);Eisenhauer et al.,前出を参照のこと)。いくつかの実施形態では、PD-1アンタゴニストに対する抗腫瘍応答を、RECIST1.1基準、二次元irRCまたは一次元irRCを使用して評価する。いくつかの実施形態では、抗腫瘍応答は、SD(不変)、PR(部分奏効)、CR(完全奏効)、PFS(無増悪生存期間)、DFS(無病生存期間)、またはOS(全生存期間)のいずれかである。いくつかの実施形態では、本開示の転写シグネチャは、固形腫瘍を有する対象がPRまたはCRを達成する可能性が高いかどうかを予測する。
【0030】
本明細書に記載の方法を使用して得られる転写シグネチャ及びシグネチャまたは遺伝子バイオマーカーは、TLR9アゴニスト(任意選択で、PD-1に対する抗体などの1つ以上のチェックポイント阻害剤と併用して)による治療で臨床的有用性が得られる可能性が最も高いがん患者を同定するのに有用であり得る。この有用性は、TLR9アゴニストなどの自然免疫活性化因子(任意選択でPD-1に対する抗体などのチェックポイント阻害剤と併用して)の臨床試験を含むがこれらに限定されない様々な研究及び商業的用途でのそのようなバイオマーカーの使用を支持するものであり、その場合、患者は、遺伝子シグネチャもしくは遺伝子バイオマーカーに関して陽性もしくは陰性と判定されるか、患者の遺伝子シグネチャスコアを決定するための、または患者を遺伝子シグネチャ及び/または遺伝子バイオマーカーに関して陽性もしくは陰性として分類するための診断方法及び製品、患者の遺伝子シグネチャスコアまたはバイオマーカーの状態に基づいて患者の薬物療法を調整することを含む個別化された治療方法、ならびに遺伝子シグネチャバイオマーカーに関して陽性と判定された患者の治療に使用するためのTLR9アゴニストを(任意選択でPD-1に対する抗体などのチェックポイント阻害剤と組み合わせて)含む医薬組成物及び医薬品に基づいて選択される。
【0031】
本明細書で特許請求される研究及び商業的用途のいずれかの有用性は、遺伝子シグネチャバイオマーカーに陽性と判定された患者の100%が、TLR9アゴニストなどの自然免疫活性化因子(任意選択で、PD-1に対する抗体などのチェックポイント阻害剤と併用して)に対する抗腫瘍応答を達成する必要はなく、また、すべての対象においてバイオマーカーの有無を判定する際に特定の程度の特異性または感度を有する診断方法またはキットを必要とせず、また、すべての対象について、その対象がTLR9アゴニストなどの自然免疫活性化因子(任意選択でPD-1に対する抗体などのチェックポイント阻害剤と併用して)に対して有益な応答を有する可能性が高いかどうかを予測する際に、本明細書で特許請求される診断方法が100%の精度であることを必要としない。したがって、本明細書の本開示は、用語「判定する(determine)」、「決定する(determining)」、及び「予測する(predicting)」が、明確または特定の結果を必要とするかのように解釈されるべきではないことを規定し、代わりに、これらの用語は、特許請求される方法が少なくとも大部分の対象に対して正確な結果を提供するか、または任意の所与の対象についての結果もしくは予測が不正確であるよりも正確である可能性が高いことのいずれかを意味すると解釈すべきである。
【0032】
TLR9アゴニストがん療法に対する応答に関連するバイオマーカー
本開示は、がん療法に応答するためのバイオマーカーを提供する。本開示は、例えば、がん治療から恩恵を受ける可能性が高い患者が同定された後、がんを治療するために免疫活性化を促進し、免疫阻害を低減する、例えばメタファー的には、免疫系の「アクセルを踏み」ながら「ブレーキを解放する」、製剤、組成物、及び方法をさらに提供する。本開示は、例えば、「コールド」(炎症していない、治療抵抗性または治療不応性の)がんまたは腫瘍を、チェックポイント阻害による治療を含む治療に適した「ホット」(または炎症した)がんまたは腫瘍に変換するために使用することができる。例えば、本明細書に記載のTLR9アゴニストは、いわゆる「コールド腫瘍」(すなわち、活性化免疫細胞による浸潤の程度が低い腫瘍)、または中間腫瘍を、免疫原性腫瘍、すなわち、中間または高度の活性化免疫細胞浸潤を有する腫瘍である「ホット腫瘍」へと変換するために使用される。TLR9アゴニストはまた、「ホット」腫瘍を有する患者の治療においても、それ自体で、または例えばPD-(L)1遮断薬などのCPIと組み合わせて使用することができる。
【0033】
「コールド」腫瘍及び「ホット」腫瘍の概念は、当業者には周知である。コールド腫瘍は、免疫抑制性サイトカインで濃縮されることが多く、多数のTreg細胞及び/または骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)を有し得る。コールド腫瘍は通常、活性化TH1細胞、NK細胞、及びCD8+T細胞が比較的少なく、機能的抗原提示細胞(APC)(例えば、樹状細胞/DC)が少ない。対照的に、ホット腫瘍は、TH1型ケモカインで比較的濃縮され、活性化したエフェクター免疫細胞(TH1細胞、NK細胞、及びCD8+T細胞)の数が比較的多く、及び/または機能的DCの数が多い。
【0034】
免疫細胞浸潤の程度は、例えば、がん患者の臨床転帰を予測するために使用される、いわゆる「Immunoscore」によって測定することができる。コンセンサスImmunoscoreは、腫瘍内のCD3+及びCD8+T細胞の密度及びその侵襲マージンをまとめたスコアリングシステムである。例えば、Immunoscoreは、CD3+/CD8+T細胞密度に応じて低度、中間、高度に分類され得るが、参照研究において、0~25%の密度は好ましくは低度とスコアリングされ、25~70%の密度は好ましくは中間とスコアリングされ、70~100%の密度は好ましくは高度とスコアリングされる(Page F.et al.(2018)Lancet 391(10135):2128-2139)。コールド腫瘍は、免疫細胞浸潤の程度が低い、すなわち、好ましくは低度のImmunoscoreを有すると定義される。ホット腫瘍は、中間または高度の免疫細胞浸潤を有する、すなわち、好ましくは中間または高度のImmunoscoreを有すると定義され得る。
【0035】
いくつかの腫瘍型は、多くの場合、治療前であってもホット腫瘍型、例えば黒色腫に属する。これらのホット腫瘍は、コールド腫瘍よりもチェックポイント阻害剤に対して頻繁に応答する。コールド腫瘍は通常、チェックポイント阻害剤に十分に応答しない。本開示は、TLR9アゴニストが、腫瘍への免疫細胞の浸潤を増加させ、それによって腫瘍微小環境にプラスの影響を与えることによって、そのような応答性を改善し得ることを提供する。したがって、コールド腫瘍患者は、TLR9アゴニストによる治療から特に恩恵を受ける可能性がある。結果として、腫瘍はチェックポイント阻害剤に対してより良好な応答性を示し得る。それにより、コールド腫瘍がホット腫瘍へと変換され得る。
【0036】
腫瘍浸潤免疫細胞(存在する場合、ホット腫瘍であることが示唆され得る)は、特に活性化される場合、TH1細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、CD8+T細胞、及び/または樹状細胞(DC)を含むが、これらに限定されない。同様に、炎症性サイトカイン、例えば、インターフェロン、IL-12、IFN-g、及び/またはI型IFNが存在する場合も、ホット腫瘍であることが示唆される。
【0037】
TIDEは、CPIに応答する可能性が高い腫瘍を、腫瘍炎症のレベルに部分的に基づいて、そうでない腫瘍と機能的に区別するための別のアプローチとして、腫瘍における免疫機能不全のレベルを推定するために開発されたアルゴリズムである。
【0038】
WO/2016/094377には、ホット/炎症した腫瘍とコールド/炎症していない腫瘍とを区別するためのいくつかのアプローチのうちの1つが記載されており、この場合、転写プロファイリングを使用して、「IFN18」遺伝子CD3D、IDO1、CIITA、CD3E、CCL5、GZMK、CD2、HLA-DRA、CXCL13、IL2RG、NKG7、HLA-E、LAG3、TAGAP、CXCL10、STAT1、GZMB、CXCR6のRNA転写産物のレベルを決定する。
【0039】
対象から取り出した腫瘍組織の試料中で、転写シグネチャ(すなわち、TLR9アゴニストがん療法に対する応答に関連するバイオマーカーシグネチャ)を判定する。腫瘍は、原発性または再発性であってもよく、任意の型(上記のような)、任意の病期(例えば、ステージI、II、III、もしくはIV、または他のステージングシステムの同等のもの)、及び/または組織学であってもよい。対象は、任意の年齢、性別、治療歴、及び/または寛解の程度及び期間のものであってよい。腫瘍試料は、外科的切除、吸引、または生検を含むがこれらに限定されない様々な手順によって得ることができる。いくつかの実施形態では、腫瘍細胞を検出し、試験することができる「液体生検」または血液試料から腫瘍試料を取得してもよい。組織試料を、新鮮な標本として切片化し、アッセイしてもよく、あるいは、組織試料をさらなる切片化のために凍結させてもよい。いくつかの実施形態では、組織試料を、パラフィンなどの中に固定し包埋することにより保存する。
【0040】
腫瘍組織の適切な試料が得られると、いくつかの実施形態では、それを解析して、vidutolimod応答コアシグネチャ遺伝子もしくは本明細書で提供される他の遺伝子及びシグネチャ、またはそれらに由来する遺伝子シグネチャのそれぞれ、または1つ以上、または5つ以上などについて、RNA発現レベルを定量化する。いくつかの実施形態では、試料を分析して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、または41のvidutolimod応答コアシグネチャ遺伝子もしくは本明細書で提供される他の遺伝子及びシグネチャ、またはそれらに由来する遺伝子シグネチャについて、RNA発現レベルを定量化する。本明細書で使用される場合、語句「遺伝子のRNA発現レベルを決定する」とは、その遺伝子から転写されたRNAを検出し、定量することを指す。用語「RNA転写産物」には、遺伝子から転写されたmRNA、及び/またはその特定のスプライシングバリアント、及び/またはそのようなmRNA及びスプライシングバリアントの断片が含まれる。
【0041】
当業者であれば、いくつかの方法を使用して、分析用に組織試料からRNAを単離することができることを理解するであろう。例えば、凍結組織試料から、イソチオシアン酸グアニジニウム中のホモジナイゼーション及び酸フェノール-クロロホルム抽出によってRNAを単離してもよい。FFPE試料からRNAを単離するための市販のキットが入手可能であり、多くの企業が腫瘍生検でこのサービスを提供している。腫瘍試料がスライドガラス上のホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織切片である場合、単離された全RNA上ではなく、全細胞溶解物上で遺伝子発現解析を実施することが可能である。
【0042】
当業者はまた、単離されたRNAまたは全細胞溶解物内のRNA転写産物のレベルを検出し、定量するのに有用ないくつかの方法を認識している。定量的検出方法としては、アレイ(すなわち、マイクロアレイ)、定量的リアルタイムPCR(RT-PCR)、マルチプレックスアッセイ、ヌクレアーゼ保護アッセイ、及びノーザンブロット分析が挙げられるが、これらに限定されない。一般に、そのような方法では、検出しようとする各転写産物の一部に相補的な標識プローブを用いる。これらの方法に用いるためのプローブは、遺伝子及びそこから発現させる転写産物の既知の配列に基づいて容易に設計することができる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるvidutolimod応答コアシグネチャ遺伝子の転写産物を検出するためのプローブは、その遺伝子の標的領域に特異的にハイブリダイズするように設計されている。プローブの適切な標識は周知であり、例えば、蛍光、化学発光、及び放射性標識が含まれる。
【0043】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるvidutolimod応答コアシグネチャ遺伝子、またはそれに由来する転写シグネチャの発現についての腫瘍試料のアッセイでは、分子ビーコン検出分子と組み合わせた核酸配列ベースの増幅(NASBA)を使用したリアルタイムでのRNAレベルの検出及び定量化を使用する。NASBAは、例えばCompton J.,Nature 350(6313):91-92(1991)に記載されている。NASBAは、単一ステップの等温RNA特異的増幅法である。他の実施形態では、アッセイ形式は、Invader(商標)アッセイ(Third Wave Technologies)などのflapエンドヌクレアーゼベースの形式である。さらに他の実施形態では、このアッセイ形式は、分岐状DNAによる直接的なmRNA捕捉(QuantiGene(商標)、Panomics)またはHybrid Capture(商標)(Digene)を用いる。
【0044】
本発明の遺伝子発現プラットフォームにおける遺伝子の発現を測定する際の使用に適したアレイ技術の一例は、HTG Molecular,Tucson Arizonaによって販売され、Martel,R.R.,et al,Assay and Drug Development Technologies 1(1):61-71,2002に記載されているArrayPlate(商標)アッセイ技術である。
【0045】
別の実施形態では、本明細書で提供されるvidutolimod応答コアシグネチャ遺伝子の転写産物の存在量を測定するための1つのアッセイ法は、NanoString(登録商標)Technologies(Seattle,Washington USA)が販売するnCounter(登録商標)分析システムを利用する。Geiss et al.,Nature Biotechnol.2(3):317-325(2008)に記載されているこのシステムは、検出すべき転写産物に相補的な35~50塩基配列を各々が含む捕捉プローブ及びレポータープローブという一対のプローブを利用する。捕捉プローブはさらに、固定化タグ、例えば、データ収集のために複合体を固定化することを可能にするアフィニティータグにカップリングされた短い共通配列を含む。レポータープローブはさらに、検出可能なシグナルまたは標識を含み、例えば、色分けされたタグに結合される。ハイブリダイゼーション後、過剰なプローブを試料から除去し、ハイブリダイズしたプローブ/標的複合体をアラインし、カートリッジ内のアフィニティータグまたは他のタグを介して固定化する。次いで、試料を、例えば、この目的に適合したデジタルアナライザまたは他のプロセッサを用いて分析する。一般に、各転写産物の色分けされたタグを各標的転写産物についてカウントし、表にすることで、試料中の各転写産物の発現レベルが得られる。このシステムは、NanoStringによって設計された捕捉プローブ及びレポータープローブを使用して、単一のマルチプレックスアッセイで数百のユニークな遺伝子転写産物の発現を測定することができる。
【0046】
vidutolimod応答コアシグネチャ遺伝子及び本明細書で提供される他の遺伝子の発現を測定する際、いくつかの実施形態では、腫瘍試料中の遺伝子の各々の絶対発現を、同じ腫瘍試料の1つ以上のハウスキーピング遺伝子または構成的発現遺伝子などの対照と比較する。この方法により、バイオマーカーシグネチャまたは遺伝子の発現レベルが各試料内で正規化され、試料間でのバイオマーカーシグネチャまたは遺伝子の発現の相対レベルを比較することが可能になり、それによって、特定の集団またはデータセットについての平均発現レベルと比較した、特定の試料または試料セットのエンリッチメントスコアが定義される。比較の感度を増加させるために、発現レベル値を、好ましくは、いくつかの方法のいずれかで変換する。したがって、本明細書で使用される場合、語句「…の発現の濃縮されたレベルを検出する」とは、自然免疫活性化因子を用いた治療に応答する可能性が高いがん患者を区別するための用途に関する場合、バイオマーカーシグネチャまたは遺伝子のRNA発現の大きさが、TLR9アゴニストなどの自然免疫活性化因子による治療に応答する確率が低い患者における大きさに比べて相対的に大きいことを示すことを意味する。当業者であれば理解するであろうが、療法で治療される患者を選択するためのアッセイとして使用されるエンリッチメントスコアのカットオフは、特定の患者集団における応答を予測するためのバイオマーカーの感度及び特異性に基づいており、バイオマーカーの分野における標準的な方法を使用して決定される。理想的には、エンリッチメントスコアのカットオフは、治療に応答するであろうすべての患者を含み、応答しないであろうすべての患者を除外する。したがって、閾値は、患者の個人的な特性及び他の利用可能な治療の選択肢に応じて、個々の患者に腫瘍治療の成功の最大の可能性を提供すると考えられる多くの要因に依存し得る。例えば、エンリッチメントスコアのカットオフは、少なくとも5つのvidutolimod応答コアシグネチャ遺伝子転写産物についてのデータセットにおける平均発現レベルに基づいて決定することができる(例えば、Jiang et al.Nature Medicine,24(2018):1550-1558を参照のこと)。いくつかの実施形態では、エンリッチメントスコアのカットオフを、Ayers et al.(WO/2016/094377)(その全体が参照により本明細書に援用される)に記載されている統計的手法のいずれかを使用して決定する。
【0047】
エンリッチメントスコアを他の予後因子またはバイオマーカーと併用して、この予測を行ってもよい。他の予後因子またはバイオマーカーの非限定的な例としては、(a)低マクロファージ及び/または単球細胞集団の存在/非存在、(b)ELF2の発現レベル、(c)低Treg細胞集団の存在/非存在、及び/または(d)GABA B細胞シグネチャの発現レベルが挙げられる。
【0048】
がん療法で治療される患者を選択することを目的として、異なる生検及びデータセットにわたってエンリッチメントスコアを標準化するために、当業者に周知の標準的な方法を使用して、内部対照として選択されたハウスキーピングまたは他のRNAに対してシグネチャ発現が正規化されるように、所望のエンリッチメントレベルを設定する。腫瘍の病期及び位置、腫瘍型、他の治療の既往歴、ならびに他のバイオマーカーシグネチャ及び遺伝子の存在または非存在に応じて、異なるエンリッチメントスコアを使用して、治療のために患者を選択してもよい。いくつかの実施形態では、「パートナー」遺伝子またはシグネチャをバイオマーカー遺伝子またはシグネチャと数学的に組み合わせることにより、レスポンダーであると考えられる患者を除外することなく、治療に対して応答する確率が最も高い患者を選択する際に、より高いレベルの識別がもたらされる。これらの因子のすべてを考慮すると、レスポンダーを予測することを目的とした濃縮された発現レベルは、最低10%の発現(すなわち、エンリッチメントスコアのカットオフは、特定の集団内で90%の患者を含み得る)、もしくは最低20%の発現、もしくは最低30%、もしくは最低40%を有する患者における発現レベルよりも高い場合があるか、またはいくつかの実施形態では、濃縮された発現レベルは、全集団中の平均発現レベルよりも高い。いくつかの実施形態では、治療のために患者を選択するために使用するエンリッチメントスコアは、発現の最高10%、もしくは最高20%、もしくは最高30%、もしくは最高40%、またはこれらの値のいずれかの間の中間レベルのみを含む。
【0049】
同様に、他のシグネチャまたは遺伝子を検出または測定する場合、細胞集団の存在量、遺伝子発現、または他のマーカーの測定を、周知の標準に基づいて、または対照試料と比較することによって行う。例えば、本明細書で使用される場合、語句「ELF2の発現の上昇」とは、上記のエンリッチメントスコアの使用と同様に、対照遺伝子と比較して相対的に低いレベルのELF2 RNAを含有する腫瘍を有する患者と比較して、TLR9アゴニストなどの自然免疫活性化因子に対する応答の確率がより高いことと関連する発現レベルを意味する。本明細書で提供されるいくつかのバイオマーカーシグネチャ及び遺伝子は、自然免疫活性化因子またはTLR9アゴニストでの治療に対する耐性と関連しており、そのため、これらのバイオマーカーを使用した治療の選択は、応答と正の相関関係にあるバイオマーカーシグネチャ及び遺伝子について上記で説明した方法とは逆に、全集団と比較して発現レベルまたはエンリッチメントが低下していることを検出することに基づいている。
【0050】
本明細書に記載の免疫細胞についてのシグネチャは、分子シグネチャデータベース(MSigDB)内に含まれており、例えば、GABA B細胞シグネチャについてはREACTOME_GABA_B_RECEPTOR_ACTIVATION、TregについてはT_cell_regulatory_(Treg)_CIBERSORT、マクロファージ/単球についてはMacrophage/Monocyte_MCPCOUNTERなどの免疫細胞シグネチャが挙げられる。本明細書で使用される場合、語句「低Treg細胞集団」、「GABA B細胞シグネチャの低発現」、「マクロファージ/単球シグネチャの低発現」、またはTLR8、TLR9、TGFB2、TNFA、TNFRSF1A、TNFRSF1B、C1QC、及び/またはPD-L1のいずれかの低発現とは、本明細書に記載されているような特定の患者集団内で発現レベルが高い患者と比較して、TLR9アゴニストなどの自然免疫活性化因子に対する応答の確率の増加と関連することが示されているこれらのシグネチャ及び/または遺伝子のいずれか1つ以上の発現の相対レベルを指す。
【0051】
本明細書に記載の遺伝子発現プラットフォームにおける臨床応答遺伝子の生の発現値は、下記のいずれかによって正規化され得る:ハウスキーピング遺伝子のセットの平均RNAレベルによる共通の参照分布への分位正規化、パーセンタイル、例えば75パーセンタイルに依存するグローバル正規化、または当業者に公知の他の生物学的及び臨床的に関連する正規化アプローチ。
【0052】
例えば、各臨床応答遺伝子の発現レベルを、遺伝子発現プラットフォーム内の全遺伝子の平均RNA発現レベルによって、または正規化遺伝子のセット、例えば、ハウスキーピング遺伝子の平均発現レベルによって正規化することができる。したがって、一実施形態では、遺伝子発現プラットフォーム内の遺伝子は、プローブのセットによって表され、遺伝子の各々のRNA発現レベルは、表される遺伝子のすべてにわたる、すなわち、本明細書に記載の遺伝子発現プラットフォーム内の全臨床応答遺伝子及び正規化遺伝子にわたる平均発現レベルまたは発現レベル中央値によって正規化される。特定の実施形態では、正規化は、遺伝子発現プラットフォーム内の全遺伝子のRNA発現レベル中央値または平均レベルを除算することによって実行される。別の実施形態では、臨床応答遺伝子のRNA発現レベルを、正規化遺伝子セットの発現レベルの平均または中央値によって正規化する。特定の実施形態では、正規化遺伝子は、ハウスキーピング遺伝子を含む。別の特定の実施形態では、臨床応答遺伝子について測定したRNA発現レベルの正規化は、測定されたレベルを正規化遺伝子の発現レベル中央値または平均発現レベルで割ることによって達成される。
【0053】
対象の腫瘍試料を標準または対照と比較する場合、試料中の特定の遺伝子の発現値を、標準または対照におけるその遺伝子の発現値と比較する。いくつかの実施形態では、本発明の遺伝子シグネチャにおける各遺伝子について、標準または対照に対する個々の試料中の発現値について、対数(10)比を作成する。遺伝子シグネチャのスコアは、シグネチャ内の遺伝子の平均log(10)比を決定することによって計算される。被験試料の遺伝子シグネチャスコアが、その遺伝子シグネチャの所定の閾値以上の場合、その試料はその遺伝子シグネチャバイオマーカーに対して陽性であるとみなされる。所定の閾値はまた、標準または対照として使用される試料のコレクションまたはプールされた試料中のその遺伝子シグネチャのスコアの平均値、中央値、またはパーセンタイルであり得る。
【0054】
本明細書で得られるシグネチャは、PD-1遮断に抵抗性の患者において定義された。すなわち、PD-1遮断に対する応答を予測する腫瘍シグネチャを元々有していた患者は、通常、CPIに応答しており、vidutolimodを用いた臨床試験の候補ではないであろう。PD-1遮断にナイーブである患者が、チェックポイント阻害剤と併用した自然免疫活性化因子の併用療法による治療を検討している場合、別個のバイオマーカーを使用して、患者がチェックポイント阻害剤単独に応答する確率を予測するとともに、自然免疫活性化因子に対する応答を予測してもよい。チェックポイント阻害剤に対する応答を予測するバイオマーカー(例えば、TIDE、IFN18、CPS、Immunoscoreなど)を有する患者は、これらの患者が自然免疫活性化因子に対する応答を予測するための本明細書に記載のバイオマーカーのうちの1つ以上のエンリッチメントを示す場合、自然免疫活性化因子に応答するそれらのバイオマーカーのエンリッチメントレベルが、患者がPD-1遮断に対する応答を予測するシグネチャを有していない場合(すなわち、患者が「コールド」腫瘍を有していた場合)に使用されるであろう閾値を下回っている場合であっても、組み合わせによる治療のために選択され得る。チェックポイント阻害剤に自然免疫活性化因子を追加すると、チェックポイント阻害剤単独による治療と比較して、応答の期間及び深さが改善され得ると考えられており、本明細書に記載のバイオマーカー戦略は、そのような組み合わせから恩恵を受けることが最も多い患者の選択に役立ち得る。
【0055】
当業者であれば、log(10)比に加えて他の示差的な発現値を、その値が遺伝子の転写産物の存在量の客観的な測定値を表す限り、シグネチャスコアの計算に使用してもよいことを認識するであろう。例としては、xdev、誤差重み付け対数(比)、及び平均減算対数(強度)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
本明細書に記載の遺伝子発現プラットフォームまたは遺伝子シグネチャにおける遺伝子の発現についての腫瘍試料のアッセイを、この目的のために特別に設計されたキットを使用して実施してもよい。一実施形態では、キットは、本明細書に記載のvidutolimod応答コアシグネチャ遺伝子転写産物などの標的転写産物のセットにハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドプローブのセットを含む。オリゴヌクレオチドプローブのセットは、マイクロチップ、シリカビーズ(Illumina,San Diego,CAのBeadArray技術など)、またはスライドガラス(例えば、WO98/20020及びWO98/20019を参照のこと)などの固相表面上のオリゴヌクレオチドの規則的なアレイを含み得る。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドプローブを、液体形態または乾燥形態の1つ以上の組成物中に提供する。キットはまた、いくつかの実施形態では、RNAシーケンシング(RNA-Seq)、mRNAシーケンシング(mRNA-Seq)、標的化RNA-Seq、及び非コードRNA-Seq、ナノストリング、マイクロアレイ、または他のハイブリダイゼーションベースの技法のための試薬を含み得る。例えば、キットは、いくつかの実施形態では、本明細書に記載のvidutolimod応答コアシグネチャ遺伝子転写産物などの標的転写産物の1つ以上の存在を検出することができるか、またはその発現レベルを決定することができる試薬を含み得る。
【0057】
本開示のキットはまた、他の試薬、例えば、ハイブリダイゼーションバッファー、及び特定の標的分子とのハイブリダイゼーションがいつ生じたかを検出するための試薬を含み得る。検出試薬は、ビオチンまたは蛍光タグ付きオリゴヌクレオチド、及び/または酵素標識抗体、及び酵素によって作用される場合に検出可能なシグナルを生成する1つ以上の基質を含み得る。当業者であれば、アッセイを実施するためのオリゴヌクレオチド及び試薬のセットが、生物学的または化学的活性を保存し、アッセイにおける適切な使用を可能にするために適切な場合、キット容器に配置される別個のレセプタクル中に提供されることを理解するであろう。
【0058】
転写バイオマーカー
本明細書に記載されるように、本開示は、患者が例えばTLR9ベースのがん療法から恩恵を受けるかどうかを判断するために使用することができる転写マーカー(例えば、mRNA転写産物)を提供する。いくつかの実施形態では、転写マーカーは、ERからゴルジへの輸送及び小胞輸送に関与する遺伝子に関連している。いくつかの実施形態では、これらの遺伝子には、本明細書において「vidutolimod応答コアシグネチャ」または「vidutolimodコアシグネチャ」と称されるSEC16B、AREG、COL7A1、SEC24D、CNIH2、MAPK15、TGFA、CUL3、SAR1B、USO1、TRAPPC6A、SEC24A、TMED2、SEC31A、BET1、GOLGA2、RAB1A、NAPA、LMAN1、TRAPPC3、PREB、SCFD1、SEC23A、CTSC、TRAPPC1、ANKRD28、SEC24B、MCFD2、CD59、TMED10、STX5、TRAPPC6B、PPP6R3、SEC13、TRAPPC9、CEP19、ARFGAP3、GOSR1、SEC23B、MIA3、VAPAのうちの一部または全部が含まれる。
【0059】
密接に関連するエンドソーム自然免疫受容体TLR3、TLR7、及びTLR8と同様に、TLR9は、静止細胞内の小胞体(ER)で産生され、主にそこに常在する(Chockalingam,A.,et al.,Immunol.And Cell Biology,2009,87,209-217)。CpG-DNAで刺激すると、TLR9は、初期エンドソームに再分布する。エンドリソソーム局在化は、CpG DNAに対するTLR9応答にとって重要であり、なぜなら、IFN-a産生を最大に誘導するCpG-A DNAが初期エンドソームに蓄積する一方で、より強力な炎症性サイトカイン及び免疫細胞成熟を誘導するホスホロチオエート骨格を有するCpG-B及びCpG-C DNAが蓄積し、後期エンドソーム及び/またはリソソームにおいてTLR9を活性化するからである。TLR9のプールは、ERからゴルジ複合体を介して構成的に輸送され、エンドリソソームに存在すると考えられており、このTLR9のプールは、シグナル伝達に関与していると考えられている(Chockalingham et al)。タンパク質Unc93b1は、ERからゴルジを介したエンドリソソームへのTLR9輸送に必要である(Ewald,S.E.,and Barton,G.M.,Current Opin.Immunol.,2011,23:3-9に概説されている)。TLR9(及びTLR7)の外部ドメインは、エンドリソソーム中で切断され、おそらくカテプシンKなどのカテプシンによって切断され、TLR9外部ドメインの切断は、CpG DNAに対する応答に不可欠であると思われる(Ewald,S.E.,et al.,Nature Letters,doi.10.1038/nature07405;Ewald,S.E.,and Barton,G.M.,Current Opin.Immunol.,2011,23:3-9)。さらに、ゴルジ複合体を介するTLR9の移行は、CpG DNAに応答して生じ、最適なシグナル伝達に必要とされることが報告されている(Chockalingham et al)。
【0060】
共焦点顕微鏡法により、HMGB1がTLR9と事前に会合し、静止細胞のER、ERGIC、及びゴルジのマーカーと共局在することが明らかになる(Ivanov,S.,et al.,Blood,2007,110:6,1970-1981)。CpGオリゴデオキシヌクレオチド(CpG-ODN)で刺激すると、HMGB1及びTLR9は、初期エンドソームマーカーEEA1と共局在する。HMGB1の切除または枯渇により、CpG-ODNに応答した初期エンドソームへのTLR9の再分布が損なわれた。結果として、HMGB1欠損細胞は、CpG-ODNに対する応答の実質的な減少を示した(Ivanov et al)。Rabタンパク質は、細胞内膜輸送の重要な調節因子である。例えば、Rab7は、後期エンドソーム及びリソソームへの輸送を調節し、リソソーム及びファゴソームの生合成、ならびに後期自食性液胞の成熟に重要であり、一方、Rab7bは、エンドソームからトランスゴルジネットワーク(TGN)への小胞輸送を制御する(Bucci,C.,et al.,Commun.And Integrative Biology,2010,3:5,401-404)。マウスB細胞におけるRAB7の過剰発現は、TRAF6の活性を上方制御し、NF-kBの活性化を増強する(Yan,Hui,et al.,The Journal of Immunology,204.5(2020):1146-1157)。Rab7bの高レベルの発現は、TLR4及びTLR9を介した炎症反応を下方制御し、一方、枯渇は、これらの反応の上方制御をもたらす(Bucci,C.,et al.,Commun.And Integrative Biology,2010,3:5,401-404)。プロタンパク質転換酵素1/3(PC1/3)は、TLR4及びTLR9依存性シグナル伝達の別の重要な調節因子であり、CpG刺激後にCpG-ODN含有エンドソームにおいてTLR9と急速に共局在し、多小胞体(MVB)におけるTLR9のクラスター化及びRab7との共局在化を防止する(Duhamel,M.,et al.“Scientific reports,6.1(2016):1-13)。
【0061】
様々なTLR及び他の自然免疫受容体の基本的な生物学的性質の類似性は、TLR9アゴニストに対する応答のためのバイオマーカーが、他のTLR9アゴニストだけでなく、より一般的には他のTLRアゴニスト(特にTLR3、TLR4、TLR7、及びTLR8を含む)、ならびに、例えば、cGAS/STING及びRIG-Iアゴニスト、またはLGP2、MDA5、PKR、及び/またはAIM2の活性化因子を含む当業者に公知の他の自然免疫活性化因子に対する応答の予測に有用性を有し得ることを示唆している。
【0062】
ERからゴルジネットワーク及び他の細胞内区画へのTLR9の移行を調節するメカニズムは、in vitro及びin vivoで免疫応答を調節する上で重要である可能性が高いが、最近まで、これらのプロセスに関連するバイオマーカーは、がん患者の腫瘍生検では同定されていなかった。
【0063】
さらに、本開示は、単独でまたはゴルジシグネチャと組み合わせてのいずれかで、患者が例えばTLR9ベースのがん療法から恩恵を受けるかどうかを判断するために使用することができる他の転写シグネチャを提供する。例えば、ELF2の転写因子の高発現は、ベースラインのホット腫瘍及びコールド腫瘍全体にわたってvidutolimodに対する応答と関連しており、ELF2の発現をゴルジシグネチャのエンリッチメントと組み合わせて、がん患者の集団におけるいずれかのバイオマーカー単独よりも高いvidutolimodに対する応答の予測値を達成することができる。
【0064】
他のバイオマーカー
いくつかの実施形態では、自然免疫活性化因子を含むがん免疫療法から恩恵を受ける可能性が高い対象を同定することは、1つ以上の他の予後因子またはバイオマーカーと組み合わせて、vidutolimodコアシグネチャ遺伝子転写産物を検出することを含む。転写シグネチャは、予後因子の一例を表す。これらの他の予後因子またはバイオマーカーをゴルジシグネチャの1つ以上と組み合わせて、vidutolimod単独に対して、またはPD-1遮断などの他の免疫療法との併用においてvidutolimodに対して応答する確率をより正確に予測することができる。
【0065】
患者が、本発明に含まれるTLR9ベースのがん療法などの自然免疫活性化因子から恩恵を受ける可能性が高いと判断するために使用することができる他の転写シグネチャまたはバイオマーカーは、例えば、マクロファージ/単球の低ベースライン出現頻度(いくつかの公開された転写シグネチャのいずれかを使用して)、低ベースラインTregシグネチャ(具体的には、T_cell_regulatory_(Tregs)_CIBERSORT)、及び中程度/低B細胞由来GABAシグネチャである。この目的のためのバイオマーカーの一部を構成し得る個々の遺伝子としては、特にベースラインの「ホット」腫瘍においてはTLR8、TGFB2、TNFRSF1A、TNFRSF1B、C1QC、及び/またはPD-L1、または特にベースラインの「コールド」腫瘍においてはTLR9及び/またはTNFAが挙げられ、これらの遺伝子のうちの1つ以上の相対的に低いレベルの発現を使用して、自然免疫活性化因子による治療に応答する可能性が高い患者を同定する。
【0066】
転写バイオマーカーまたは他のバイオマーカーを提示する患者の治療方法
vidutolimod(CMP-001)は、自然免疫と適応免疫を繋ぐ形質細胞様樹状細胞(pDC)を活性化するウイルス様粒子におけるファーストインクラスのCpG-A TLR9アゴニストである。vidutolimodの腫瘍内(IT)注射は、in situ免疫化として機能し、ネオ抗原に対する全身応答を有する抗腫瘍CD8+T細胞の生成を促進するように腫瘍微小環境をリプログラミングすることができる。vidutolimodは、PD-1抵抗性及び/またはネオアジュバント黒色腫(NCT02680184及びNCT03618641)、NSCLC(NCT03438318)、ならびにHNSCC(NCT02554812)において、単独で、及び/またはPD-1遮断との併用において抗腫瘍活性のエビデンスを示しており、MSS CRC(NCT03507699)においても評価されている。
【0067】
いくつかの実施形態では、本開示のCpG ODNは、少なくとも部分的に、大量のI型IFNを誘導する傾向を特徴とする。例示的なCpG ODNは、PCT/US2015/067269(その全体が参照により本明細書に援用される)に記載されているCpG-Aクラスの分子である。本開示の様々な実施形態において、ウイルス様粒子(VLP)を使用して、1つ以上のCpG ODNを製剤化する。PCT/US2015/067269には、CMP-001を含めたAクラスCpGとのVLPの使用が記載され、これは本明細書で具体的に企図される。
【0068】
ウイルスカプシドは、ほとんどの天然のウイルスに対して様々なサイズの保護殻を提供する(Mannige,R.V.,and Brooks,C.L.,PLoSONE,5(3):e9423(2010);Perlmutter,J.D.,and Hagan,M.F.,J.Mol.Biol.,427(15):2451-2467(2015)。ssRNAファージであるQβについては、構造情報も入手可能である(Gorzlenik,K.V.,et al.,PNAS,113(41):11519-11524(2016)。様々なグループが、製剤中のVLPの安定化に注目している(Lang,r.,and Winter,G.,Drug Devt.And Industr.Pharm.,35:83-97(2009);Mertens,B.S.,and Velev,O.D.,Soft Matter,11(44):8621-8631(2015);及びShi,L.,et al.,J.Pharm.Sci.,94(7):1538-1551(2005))。
【0069】
本明細書で使用される場合、用語「治療有効量」とは、哺乳動物、好ましくはヒトに投与された場合に、化合物の非存在下で検出される応答と比較して、検出可能な治療応答を媒介する量を意味する。腫瘍成長(腫瘍サイズの静止を含む)、腫瘍サイズ、転移の阻害及び/または低減などであるがこれらに限定されない治療応答は、例えば、本明細書に開示されるような方法を含む、多数の当技術分野で認識されている方法によって容易に評価することができる。
【0070】
「治療有効量」は、腫瘍性障害の症状の1つ以上を検出可能にある程度軽減するのに必要な薬剤の量を限定することを意図しており、このことには限定されないが、1)がん細胞数の低減、2)腫瘍サイズの低減、3)末梢臓器へのがん細胞浸潤の抑制(すなわち、ある程度の遅延、好ましくは停止)、4)腫瘍転移の抑制(すなわち、ある程度の遅延、好ましくは停止)、5)腫瘍成長のある程度の抑制、6)障害に関連する症状の1つ以上のある程度の緩和もしくは軽減、及び/または7)抗がん剤の投与に伴う副作用の緩和もしくは軽減が含まれる。
【0071】
特定の好ましいCpG ODNは、多量または大量のI型IFNを誘導する。I型IFNを測定するためのアッセイは、当技術分野で周知であり、これにはin vitro酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)及び細胞ベースのアッセイ、例えば、本明細書に記載のアッセイが含まれる。限定することを意図しないが、多量または大量のI型IFNは、そのようなin vitroアッセイによる測定で約1000pg/mL以上のIFN-αを指し得る。特定の実施形態では、多量または大量のI型IFNは、そのようなin vitroアッセイによる測定で約2000pg/mL以上のIFN-αを指し得る。特定の実施形態では、多量または大量のI型IFNは、そのようなin vitroアッセイによる測定で約3000pg/mL以上のIFN-αを指し得る。特定の実施形態では、多量または大量のI型IFNは、そのようなin vitroアッセイによる測定で約4000pg/mL以上のIFN-αを指し得る。特定の実施形態では、多量または大量のI型IFNは、そのようなin vitroアッセイによる測定で約5,000pg/mL以上のIFN-αを指し得る。
【0072】
特記なき限り、用語「患者」または「対象」は同じ意味で使用され、ヒト患者及び非ヒト霊長類などの哺乳動物、ならびにウサギ、ラット、及びマウスなどの獣医学的対象、ならびに他の動物を指す。好ましくは、「患者」または「対象」は、ヒトを指す。特定の実施形態では、対象は、成人のヒトである。特定の実施形態では、対象は小児である。特定の実施形態では、対象は約18歳未満である。特定の実施形態では、対象は約12歳未満である。
【0073】
本明細書で使用される場合、「治療する」とは、疾患の症状(すなわち、腫瘍成長及び/または転移、または免疫細胞の数及び/または活性によって媒介される他の効果など)を患者が経験する頻度を低減することを意味する。治療は、予防的(疾患の発症を予防もしくは遅延させるか、またはその臨床症状もしくは無症候性の症状の発現を予防すること)であってもよく、または疾患の発現後の症状の治療的な抑制もしくは緩和であってもよい。用語「治療する」には、疾患、病態、または障害の(i)症状、合併症、もしくは生化学的徴候を予防するかもしくはその発症を遅延させ、(ii)症状を軽減し、及び/または(iii)さらなる発症を抑制もしくは停止させるために、本開示の化合物または薬剤を投与することが含まれる。
【0074】
CpGオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの非メチル化CpGジヌクレオチドを含む。少なくとも1つの非メチル化CpGジヌクレオチドを含有するオリゴヌクレオチドは、シトシン-グアニンジヌクレオチド配列(すなわち、「CpG DNA」すなわちリン酸結合によって3’グアニンへ連結された5’シトシンを含有するDNA)を含有するオリゴヌクレオチド分子である。CpGオリゴヌクレオチド全体を非メチル化とすることができ、または一部が非メチル化であってもよいが、少なくとも5’CG3’のCは非メチル化でなければならない。
【0075】
CpG ODNは一般に、約8~100ヌクレオチド長である。特定の実施形態では、CpG ODNは、約8~50ヌクレオチド長、約8~40ヌクレオチド長、約8~30ヌクレオチド長、約8~24ヌクレオチド長、約8~20ヌクレオチド長、または約8~16ヌクレオチド長である。
【0076】
本明細書で記載されるように、いくつかの実施形態では、本開示のCpG ODNは、少なくとも部分的に、多量のI型IFNを誘導する傾向を特徴とする。例示的なCpG ODNは、例えば、PCT/US2015/067269(その全体が参照により本明細書に援用される)に記載されているCpG-Aクラスの分子である。具体的には、完全にPO ODN G10(配列番号82、PCT/US2015/067269の
図6及び7中で「CYT003」と表記される)が、本明細書で企図される:
GGGGGGGGGGGACGATCGTCGGGGGGGGGG (配列番号1)
【0077】
本明細書に記載されるように、本明細書に記載の方法は、様々な実施形態において、放射線療法、化学療法、外科手術、及び/またはシクロホスファミド、小分子阻害剤、及び/またはCTLA-4、4-1BB(CD137)、4-1BBL(CD137L)、PDL1(PD-L1)、PDL2、PD1、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、TIM3、GAL9、LAG3、TIM3、B7H3、B7H4、VISTA、KIR、BTLA、SIGLEC9、及び2B4を含むがこれらに限定されないチェックポイント阻害剤、ならびにペムブロリズマブ、アベルマブ、アテゾリズマブ、セトレリマブ、ドスタリマブ、セミプリマブ、スパルタリズマブ、カムレリズマブ、デュルバルマブ、またはニボルマブなどだがこれらに限定されないチェックポイント阻害剤の投与を含み得る。
【0078】
本開示は、一実施形態において、がん性腫瘍内に、またはその近傍にCpG ODNを局所投与し、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、または抗CTLA-4抗体などのチェックポイント阻害剤を全身投与してがんを治療することを含む、併用腫瘍免疫療法に関する。
【0079】
高IFN誘導性CpG ODNと、抗PD-1、抗PD-L1、または抗CTLA-4との組み合わせは、原発性及び二次性(すなわち、転移性)がんの治療に有用である。より具体的には、多くの潜在的な治療選択肢の中で、CpG ODNと抗チェックポイントの併用療法を使用して、がんを治療することができる。特定の実施形態では、治療しようとするがんは、がん性腫瘍であるか、またはがん性腫瘍を含む。本明細書で使用される「がん性腫瘍」とは、正常な外部シグナルによって調節されないそれらの成長または増殖を特徴とする、異常な細胞を含む細胞の異常な腫脹または巨視的な集合体を指す。特定の実施形態では、がん性腫瘍は、がん腫、肉腫、または腺癌であり、これらは、固形腫瘍と称されることもある。特定の実施形態では、がん性腫瘍は、血液悪性腫瘍を除外する。特定の実施形態では、がん性腫瘍は、特定の悪性血液疾患、例えば、リンパ腫を含む。
【0080】
本開示の方法(例えば、1つ以上のCpG-ODNの単独の投与または1つ以上のCPIとの併用によるがんの治療方法)によって治療可能な代表的ながんとしては、具体的には、限定されないが、皮膚、頭頸部、食道、胃、肝臓、結腸、直腸、膵臓、肺、乳房、子宮頸部、卵巣、腎臓、膀胱、前立腺、甲状腺、脳、筋肉、及び骨のがんが挙げられる。本発明の方法で治療可能ながんの中には、具体的には、黒色腫、腎細胞癌、及び非小細胞肺癌(NSCLC)も含まれる。本発明の方法で治療可能ながんの中には、具体的には、リンパ腫、骨髄癌、カルチノイド腫瘍、及び神経芽細胞腫も含まれる。
【0081】
いくつかの実施形態では、前述のがんが好ましい一方で、本開示は、カポジ肉腫、滑膜肉腫、中皮腫、肝胆道(肝管及び胆管)、原発性脳腫瘍もしくは二次性脳腫瘍、肺癌(NSCLC及びSCLC)、骨癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚黒色腫もしくは眼内黒色腫、肛門部癌、胃(stomach)(胃(gastric))癌、胃腸(胃、結腸直腸、及び十二指腸)癌、結腸癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、膣癌、外陰癌、食道癌、小腸癌、内分泌系の癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟組織肉腫、尿道癌、前立腺癌、陰茎癌、精巣癌、膀胱癌、腎癌もしくは尿管癌、腎盪癌、膵臓癌、中枢神経系(CNS)の新生物(原発性または二次性CNS腫瘍を含む)、脊椎軸腫瘍、脳幹神経膠腫、神経膠芽腫、髄膜腫、筋芽腫、星細胞腫、下垂体腺腫、副腎皮質癌、胆嚢癌、胆管癌、線維肉腫、神経芽細胞腫、及び網膜芽細胞腫、ならびに、いくつかの実施形態では、非ホジキンリンパ腫(低悪性及び侵襲性を含むNHL)、ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、リンパ球性リンパ腫、原発性CNSリンパ腫、慢性もしくは急性骨髄性白血病、慢性もしくは急性リンパ性白血病、赤血球腫、及び多発性骨髄腫、または前述のがんのうちの2つ以上の組み合わせを含むがこれらに限定されない、多種多様な悪性細胞増殖性障害の治療に関する。
【0082】
がんと診断された、またはがんを有することが疑われる対象に適用される「腫瘍」とは、任意のサイズの悪性または潜在的に悪性の新生物または組織塊を指し、原発性腫瘍及び二次性新生物を含む。固形腫瘍は、通常嚢胞または液状領域を含まない組織の異常な成長または塊である。異なる型の固形腫瘍は、その腫瘍を形成している細胞型から名付けられる。固形腫瘍の例は、肉腫、がん腫、及びリンパ腫である。白血病(血液のがん)は一般に、固形腫瘍を形成しない(National Cancer Institute,Dictionary of Cancer Terms)。
【0083】
「腫瘍量」は「腫瘍負荷」とも称され、身体全体に分布する腫瘍物質の総量を指す。腫瘍量とは、リンパ節及び骨狭窄部を含む身体全体にわたるがん細胞の総数または腫瘍(複数可)の総サイズを指す。腫瘍量は、当技術分野で公知の様々な方法によって、例えば、対象から除去する際に、例えばノギスを用いて、または体内に存在する間に画像化技術、例えば、超音波、骨スキャン、コンピュータ断層撮影(CT)、または磁気共鳴イメージング(MRI)スキャンを用いて、腫瘍(複数可)の寸法を測定することによって決定することができる。
【0084】
用語「腫瘍サイズ」とは、腫瘍の長さ及び幅として測定され得る腫瘍の総サイズを指す。腫瘍サイズは、当技術分野で公知の様々な方法によって、例えば、対象から除去する際に、例えばノギスを用いて、または体内に存在する間に画像化技術、例えば、骨スキャン、超音波、CT、またはMRIスキャンを用いて、腫瘍(複数可)の寸法を測定することによって決定してもよい。
【0085】
治療しようとするがんは、抵抗性のがん、例えばPD-1に対して抵抗性のがんであってもよい。本明細書で使用される抵抗性のがんは、処方される通常の標準治療に抵抗性のがんである。これらのがんは、最初は治療に応答性であるように見える(そしてその後再発する)場合もあれば、治療に完全に応答しない場合もある。通常の標準治療は、対象におけるがんの型、及び進行の程度に応じて様々に異なる。標準治療は、化学療法、免疫療法、外科手術、放射線治療、またはそれらの組み合わせであってもよい。当業者は、そのような標準治療を認識している。したがって、抵抗性のがんについて本発明によって治療される対象は、それらのがんに対する別の治療にすでに曝露されている場合がある。あるいは、がんが抵抗性である可能性が高い場合(例えば、対象のがん細胞または病歴の分析が可能であれば)、対象は別の治療にまだ曝露されていない可能性がある。
【0086】
特定の実施形態では、抵抗性のがんには、チェックポイント阻害剤による治療に対して抵抗性であるがんが含まれる。このタイプのがんは、「コールド」と称されることがある。本発明の方法を使用して、そのような「コールド」のがんまたは腫瘍を治療して、それらを「ホット」のがんまたは腫瘍に、すなわちチェックポイント阻害剤、さらには同一のチェックポイント阻害剤による治療を含む、治療に応答するがんまたは腫瘍に変換することができる。
【0087】
抵抗性のがんの例としては、黒色腫、腎細胞癌、結腸癌、肝臓(肝)癌、膵臓癌、非ホジキンリンパ腫、他のリンパ腫、肺癌、前立腺癌、乳癌、及び白血病が挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
本開示の方法に従って、本明細書に記載されるがん療法を、様々な実施形態において、がん性腫瘍に局所的に、すなわち、腫瘍内投与または腫瘍周囲への投与によって投与する。あるいはまたはさらに、特定の実施形態では、CMP-001などのTLR9アゴニストを含むがん療法を、例えば、腹腔内注射もしくは注入または小胞内滴下注入によって、がん性腫瘍に局所的に投与する。当業者であれば理解するであろうが、本明細書に記載されるCMP-001などのTLR9アゴニストの投与を含むがん療法は、好ましい実施形態では、本明細書に記載されるように、VLP、例えばQβ、及びCMP-001を介した投与に関する投与量及び投与レジメンを含む。このように、VLPは、約1mg~約100mgの量のバクテリオファージQβコートタンパク質を含む。他の実施形態では、VLPは、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、25、50、または100mgの量のバクテリオファージQβコートタンパク質を含む。他の実施形態では、1.56mg、約3.125mg、約6.25mg、約12.5mg、約25mg、約50mg、または約100mgが企図される。
【0089】
いくつかの実施形態では、約80個のオリゴヌクレオチド、例えば、本明細書に記載のG10もしくは他のCpG ODN、またはおよそ760kDaの分子量のCpG ODN凝集体をVLPにパッケージングする。いくつかの実施形態では、1、5、10、50、80、100、120、150、もしくは200、またはそれ以上のオリゴをパッケージングする。
【0090】
CMP-001などのTLR9アゴニストの投与を含むがん療法の前に行われるXRTの免疫効果は、通常はCpGが誘導する応答の有効性を制限する抑制機構を破壊し、臨床応答の可能性を増大させる。さらに、腫瘍内のIFN-αの産生は、XRTに対する応答の向上と関連しており、また、そのために必要であり(Burnette et al,Cancer Res.2011 71:2488-2496)、XRT後の腫瘍内高IFN CpGの使用から恩恵を受ける、さらなるエビデンスを提供する。XRT及びTLR9アゴニストの投与のタイミングは様々に異なり得る。いくつかの実施形態では、XRTを、TLR9アゴニストの少なくとも1か月前、または少なくとも2週間前、または少なくとも1週間前に投与する。他の実施形態では、XRTを、TLR9アゴニスト療法中に生じる新規病変に投与し、TLR9アゴニストを、XRTの前、後、またはその最中に、新規照射した病変内に注射する。
【0091】
CMP-001などのTLR9アゴニストを含むがん療法の腫瘍内送達または腫瘍周囲への送達の方法には、直接注射だけでなく、局所送達、例えば、卵巣、膵臓、結腸、または胃などの腹部腫瘍に対する腹腔内送達、眼の悪性腫瘍に対する眼内送達、胃癌及び腸癌に対する経口投与、及び膀胱癌に対する小胞内投与も含まれ得る。CMP-001などのTLR9アゴニストを含むがん療法の腫瘍内投与については、腫瘍標的化アプタマー、抗体複合体、ナノ粒子、ISCOMS、VLP、多層小胞、pH感受性ペプチド、及びカチオン性ペプチドなどの腫瘍送達ビヒクルを使用した全身性送達も企図される。
【0092】
特定の実施形態では、腫瘍内送達及び腫瘍周囲への送達のためのCpG ODNの対象の用量は、通常、1回の投与当たり約10μg~約100mgの範囲であり、これは、用途に応じて、毎日、毎週、または毎月、及びそれらの間の任意の他の期間で与えられ得る。特定の実施形態では、腫瘍内送達及び腫瘍周囲への送達のためのCMP-001などのTLR9アゴニストを含むがん療法の対象の用量は、通常、1回の投与当たり約100μg~約100mgの範囲であり、これは、用途に応じて、毎日、毎週、または毎月、及びそれらの間の任意の他の期間で与えられ得る。特定の実施形態では、腫瘍内送達及び腫瘍周囲への送達のためのCMP-001などのTLR9アゴニストを含むがん療法の対象の用量は、通常、1回の投与当たり約1mg~約100mgの範囲であり、これは、用途に応じて、毎日、毎週、または毎月、及びそれらの間の任意の他の期間で与えられ得る。特定の実施形態では、腫瘍内送達及び腫瘍周囲への送達のためのCMP-001などのTLR9アゴニストを含むがん療法の対象の用量は、通常、1回の投与当たり約10mg~約100mgの範囲であり、これは、用途に応じて、毎日、毎週、または毎月、及びそれらの間の任意の他の期間で与えられ得る。
【0093】
特定の市販の抗PD-1抗体は、3週間に1回、2mg/kg体重での静脈内注入投与が現在、米国で承認されている。他の市販の抗PD-1抗体は、2週間に1回、3mg/kg体重での静脈内注入投与が現在、米国で承認されている。市販の抗CTLA-4抗体は、3週間に1回、3mg/kg体重での静脈内注入投与が現在、米国で承認されている。
【0094】
本開示の方法に従って、特定の実施形態では、CPI抗体を、少なくとも部分的に、全身的に、例えば静脈内に投与する。
【0095】
本明細書において別途定義されない限り、本開示に関連して使用される科学用語及び技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈上別途要求されない限り、単数形の用語は、複数形の用語を含むものとし、複数形の用語は単数形の用語を含むものとする。一般に、本明細書に記載される、細胞及び組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、ならびにタンパク質化学及び核酸化学、ならびにハイブリダイゼーションに関連して使用される命名法及びその技術は、当技術分野で周知であり、一般的に使用されているものである。
【0096】
本開示の方法及び技術は、別途指示されない限り、当技術分野で周知の方法に従って、また本明細書の全体を通して引用され、論じられる様々な一般的な及びより特定の参考文献に記載されるように、一般的に実行される。そのような参考文献としては、例えば、Sambrook and Russell,Molecular Cloning,A Laboratory Approach,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(2001)、Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,NY(2002)、及びHarlow and Lane Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1990)が挙げられ、これらは参照により本明細書に援用される。酵素反応及び精製技術は、当技術分野で一般的に達成されるように、または本明細書に記載されるように、製造業者の仕様書に従って実行する。本明細書に記載の分析化学、合成有機化学、ならびに医化学及び製薬化学に関連して用いられる命名法、ならびにその検査法及び技法は当技術分野で周知であり、一般に使用されるものである。標準的な技法は、化学合成、化学分析、医薬品の調製、製剤化、及び送達、ならびに患者の治療に使用される。
【0097】
本明細書で使用される場合、以下の用語の各々は、本節においてそれに関連付けられた意味を有する。
【0098】
冠詞「a」及び「an」は、その冠詞の文法上の対象が1つまたは複数(すなわち、少なくとも1つ)を指すように本明細書で使用される。本明細書で使用される場合、20種の従来のアミノ酸及びそれらの略称は、従来の使用法に従う。参照により本明細書に援用されるImmunology--A Synthesis(2nd Edition,E.S.Golub and D.R.Gren,Eds.,Sinauer Associates,Sunderland,Mass.(1991))を参照のこと。ポリペプチド配列を描写するために、本明細書では従来の表記を使用する:ポリペプチド配列の左側の端部はアミノ末端であり、ポリペプチド配列の右側の端部はカルボキシル末端である。「保存的アミノ酸置換」とは、あるアミノ酸残基を、類似の化学特性(例えば、電荷または疎水性)を有する側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基に置換するアミノ酸置換である。一般に、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能特性を実質的に変化させない。保存的置換によって互いに2つ以上のアミノ酸配列が異なる場合、配列同一性の割合または類似性の程度を上方調整して、置換の保存的な性質について補正してもよい。この調整を行うための手段は、当業者に周知である。例えば、Pearson,Methods Mol.Biol.243:307-31(1994)を参照のこと。
【0099】
本開示を詳細に説明してきたが、以下の実施例を参照することにより、本開示がより明確に理解されるであろう。これらの実施例は、単に説明のみを目的として本明細書に含まれており、本発明を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0100】
PCT/US2015/067269では、いくつかのAクラスのCpG ODNが開示されているが、これらの各々が企図され、参照により本明細書に援用される。本明細書で使用される場合、CMP-001とは、VLP中に製剤化され、G10及び配列番号1と称される、AクラスのCpG-ODNを指す。CMP-001は、CYT003及びQbG10としても知られており、その名称で、例えば、Klimek,L.,et al.,Clinical & Experimental Allergy,41.9(2011):1305-1312、及びCasale,T.B.,et al.,Allergy,70.9(2015):1160-1168において、非腫瘍学の適応症についてマウス及びヒトで以前に研究されている。
【0101】
実施例1
A. PD-1抵抗性黒色腫において小胞-ゴルジ輸送シグネチャ(「ゴルジシグネチャ」)はvidutolimod(CMP-001)に対する臨床応答と関連している
単剤療法群及びペムブロリズマブ処置併用群の両方を含む、PD-1抵抗性黒色腫における腫瘍内vidutolimodの臨床試験NCT02680184の設計及びアウトカムの測定基準については、以前に記載されている(Kirkwood,John,et al.“950 Final analysis:phase 1b study investigating intratumoral injection of toll-like receptor 9 agonist vidutolimod ± pembrolizumab in patients with PD-1 blockade-refractory melanoma,”SITC 2021)。vidutolimod療法は、非希釈(Kirkwood et al.,SITC 2021の「PS20A」)または0.9%生理食塩水での希釈(Kirkwood et al.,SITC 2021の「PS20B」)のいずれかであった。本臨床試験における患者のアーカイブまたはスクリーニングベースライン/治療前の腫瘍生検由来のRNA-seqデータを、標準的な方法を使用して処理し、正規化した。本試験の解析に含まれるこのデータセットは、RECIST v1.1(CR=完全奏効、PR=部分奏効、SD=不変、PD=進行性疾患)を使用して評価した、本治療後のその後のレスポンダーの状況別で、その後vidutolimod単剤療法またはペムブロリズマブとの併用療法を受けた患者に由来する98件のベースラインの生検(表A)を含んでいた。レスポンダー(R)がCRまたはPRを示す一方、ノンレスポンダー(NR)はSDまたはPDを示している。
【表1】
【0102】
応答に関連する遺伝子または遺伝子発現シグネチャを同定するための初期の試みでは、応答のベースラインの予測因子を同定するために、完全なRNA Seqデータセットの一部を、標準的なバイオインフォマティクスアプローチを使用して解析した。候補応答シグネチャの同定を含む、レスポンダーとノンレスポンダーとの間の遺伝子発現に多くの差異が見出されたが、レスポンダーとノンレスポンダーを有意に区別するための完全なデータセットにおいて、候補シグネチャまたは遺伝子発現の差異は確認されなかった。
【0103】
これらの解析により、「ホット」腫瘍、すなわち「炎症した」腫瘍を反映すると考えられる遺伝子シグネチャ(これらは、PD-1遮断に対する応答と関連することが以前に報告されていた)、例えば、Ayers et al.(WO/2016/094377)のIFN18シグネチャ、またはTIDE、またはPD-L1についての生検IHC複合病理学的スコア(CPS)、または腫瘍変異が、PD-1抵抗性黒色腫のデータセットにおけるvidutolimod応答と関連していなかったことが示された(Luke,Jason John,et al.“Abstract CT032:CMP-001 demonstrates improved response in noninflamed anti-PD-1 refractory melanoma and response is associated with serum CXCL10.”(SITC 2021):CT032-CT032)。この結果は、vidutolimodのユニークなメカニズムに基づいて、予想された結果であった。本明細書に記載されるように、一実施形態では、TIDE、Immunoscore、Ayers et al.(WO/2016/094377)のIFN18シグネチャ、及び/またはPD-L1についての生検IHC複合病理学的スコア(CPS)を含む、前述の及び本明細書に記載の技法のうちの1つ以上を使用して、腫瘍が「ホットではない」と判定される。
【0104】
TIDE及びIFN18シグネチャなどの腫瘍「炎症」の公開マーカーを用いたこれらの試験では、調べた患者集団内の高い度合の不均一性が明らかとなり、患者のほとんどが「コールド」、すなわち炎症していない腫瘍を有し、他は「ホット」すなわち炎症しており、残りはベースラインにおいて中間である。興味深いことに、免疫療法薬に対する応答に関連するベースラインの「コールド」腫瘍において、いかなるシグネチャの報告も存在していない。ベースラインの「コールド」腫瘍、「ホット」腫瘍、または「中間」腫瘍に固有であり得る潜在的なシグネチャを同定するために、TIDE、IFN18、及びCPSを含む公開ツールを使用して、上記のベースライン生検のセットを3つのサブセットに分割した。
【0105】
最初に、ベースラインの「コールド」及び「ホット」生検データセットのみを選択し、分子シグネチャデータベース(MSigDB;N=18,494)由来のすべてのシグネチャについて、及び各試料中のssGSEA(単一試料GSEA)を使用してCheckmate(N=555)によって開発され、Limmaを使用して、レスポンダー(CR及びPR)とノンレスポンダー(PDまたはSD)との間の調節不全を同定したシグネチャについて、エンリッチメントスコアを計算した。ベースラインのコールド生検を選択するためにIFN18を使用したこの解析の結果を、小胞輸送及びゴルジ輸送または機能に関連するシグネチャを強調表示して、以下の表Bに示す。
【表2】
【0106】
上位の遺伝子シグネチャのうち、レスポンダーとPDにおいて最も高度に濃縮されたのは、小胞出芽または標的化及びゴルジ輸送(例えば、COPII小胞出芽及び/またはゴルジ体へのまたはゴルジ体からの小胞輸送に関連する遺伝子)を伴うシグネチャであった。
【0107】
MSigDBにおけるシグネチャに対するレスポンダーとPD間で、追加の解析をGSEA(www.gsea-msigdb.org/gsea/index.jsp;2群比較)を用いて「コールド腫瘍」由来のデータ上で実施した(
図1)。COPII_COATED_VESICLE_BUDDING(73遺伝子)(FDR=0.115)、VESICLE_TARGETING_TO_FROM_OR_WITHIN_GOLGI(74遺伝子)(FDR=0.156)、HALLMARK_PROTEIN_SECRETION(96遺伝子)(FDR=0.173)、及びDITTMER_PTHLH_TARGETS_DN(70遺伝子)(FDR=0.234)を含む、レスポンダーとPD(FDR<0.25、デフォルトカットオフ)において濃縮された4つの遺伝子シグネチャが同定された(
図1)。
【0108】
この4つの遺伝子シグネチャのエンリッチメントシグナルに最も寄与するコア遺伝子サブセットを同定するために、Leading edge analysis(GSEA内のツール;Subramanian,A.,et al.,PNAS,2005,102(43):15545-50)を実施した(
図2)。
【0109】
次いで、ベン図を用いてこれらのコア遺伝子リストを調べて、4つのコア遺伝子シグネチャ間の共通の遺伝子を検出した。このベン図(
図3)から、DittmerとHallmarkのタンパク質分泌遺伝子リストの間での重複がごく少ないことが示されたため、これらをさらなる解析から除外した。
【0110】
この手段により、元の遺伝子数を削減し、35の共通遺伝子を含むCOPII_COATED_VESICLE_BUDDING及びVESICLE_TARGETING_TO_FROM_OR_WITHIN_GOLGIに由来する新規の高度に重複する「コア遺伝子セット」(本明細書では「共通コア」と称される)と、各シグネチャについての3つの追加のユニークな遺伝子を含む、合計41の遺伝子を定義したが(
図3)、これらには、SEC16B、AREG、COL7A1、SEC24D、CNIH2、MAPK15、TGFA、CUL3、SAR1B、USO1、TRAPPC6A、SEC24A、TMED2、SEC31A、BET1、GOLGA2、RAB1A、NAPA、LMAN1、TRAPPC3、PREB、SCFD1、SEC23A、CTSC、TRAPPC1、ANKRD28、SEC24B、MCFD2、CD59、TMED10、STX5、TRAPPC6B、PPP6R3、SEC13、TRAPPC9、CEP19、ARFGAP3、GOSR1、SEC23B、MIA3、VAPA(6つのユニークな遺伝子は最後に示される)が含まれ、これらを合わせて、ゴルジvidutolimod応答シグネチャ(本明細書では「ゴルジシグネチャ」または「vidutolimod応答コアシグネチャ」とも呼ばれる)が構成される。
【0111】
CMP-001-001ベースライン試料中の19,000超のすべての遺伝子シグネチャに加えて、新たに同定された4つのコアシグネチャ及び「共通コア」について、ssGSEA解析を再実行した。vidutolimod単剤療法またはペンブロリズマブとの併用療法で治療した患者のベースラインのコールド腫瘍についてレスポンダーとPD間で調節不全であった上位3つのシグネチャは、VESICLE_TARGETING_TO_FROM_OR_WITHIN_GOLGI_core(38遺伝子)(調整P=0.059)、COPII_COATED_VESICLE_BUDDING_core(38遺伝子)(調整P=0.059)、及びcommon_core(35遺伝子)(調整P=0.085)である。以下の追加の評価では、これら3つのコアシグネチャに焦点を当てた。
【0112】
B. 併用療法(vidutolimod+ペムブロリズマブ)及びvidutolimod単剤療法の両方に対するベースラインのコールドレスポンダーにおけるゴルジシグネチャのエンリッチメント。
ゴルジシグネチャの発現と応答との相関性の最初の同定は、併用療法または単剤療法を受けた患者を含む、未希釈のvidutolimodで治療されたベースラインのコールド腫瘍を有するすべての患者からプールされたデータに対して実施された。これらのサブセットの個別の解析からは、両方のサブセットにおける応答との同程度の相関性が示され、これは、この相関性が併用治療の生物学的特性だけでなく、むしろvidutolimodの生物学的特性を反映しているという仮説と一致する(
図4A)。ベースライン生検の全集団を群として解析した場合、ゴルジコアシグネチャと応答との相関に同様の強い傾向があった(
図4B)。
【0113】
C. ベースラインの「ホット」生検における共通のコアゴルジシグネチャのエンリッチメントの欠如
例えば、PD-1遮断への応答がベースラインのホット腫瘍においてコールド腫瘍と比較してはるかに頻繁であるという事実によって示されるように、ベースラインの「ホット」腫瘍と「コールド」腫瘍の生物学的性質はかなり異なる。この十分に確立された事実に基づいて、本発明者らは、異なるベースライン因子により、ベースラインの「コールド」腫瘍及び「ホット」腫瘍におけるvidutolimodに対する応答が予測され得るという仮説を立てた。実際、ベースラインの「ホット」腫瘍は、ゴルジシグネチャと応答との相関性を示さず(
図4C)、これらの腫瘍の特有の生物学的性質と一致していた。ゴルジシグネチャのエンリッチメントスコアは、すべてのベースラインの「コールド」腫瘍、及び「中間」腫瘍、及び「ホット」腫瘍にわたって同程度であったが、これにより、このシグネチャが、「コールド」腫瘍と「ホット」腫瘍との間の何らかの固有の生物学的差異の代理指標ではないことが示された(
図5)。
【0114】
D. 独立データセットにおける共通コアとゴルジvidutolimod応答シグネチャとの相関性の検証。
ベースラインの「コールド」未希釈腫瘍におけるゴルジシグネチャのエンリッチメントが、そのデータセットに特有であるかどうかを判定するために、vidutolimod±抗PD-(L)1で治療したPD-(L)-1抵抗性黒色腫(臨床試験NCT02680184)患者またはNSCLC(臨床試験NCT03438318)患者由来のベースラインの生検RNA Seqデータの独立サブセットにおいて、ゴルジシグネチャのエンリッチメントスコアを評価した。これらのデータは、ゴルジシグネチャの最初の同定には使用されていなかったため、シグネチャと応答とのより広範な相関性を試験するための妥当性確認データセットとして機能した。
【0115】
vidutolimod+ペムブロリズマブで治療されたベースラインの「中間」腫瘍を有するPD-1抵抗性黒色腫患者において、ゴルジシグネチャは、レスポンダーとPDにおいてベースラインの「コールド」腫瘍と同様のレベルに有意に濃縮され、SD患者は中間である(
図6;1つのシグネチャのみを示す;他のシグネチャ及び共通コアについては、同等の有意な相関性が認められた)。
【0116】
PD-1抵抗性黒色腫におけるこれらの所見の独立した妥当性確認のために、ゴルジシグネチャのエンリッチメントを、vidutolimod+アテゾリズマブで治療したPD-1抵抗性NSCLC患者由来のベースラインの生検においても評価した。その試験の患者2名は、腫瘍収縮を有し、治療後に不変が長期続いていた。これらの同2名の患者はまた、ベースラインの腫瘍におけるゴルジシグネチャのエンリッチメントが最も高く、これは、ノンレスポンダー患者のスコアをはるかに上回っていた(
図7)。これらのデータにより、vidutolimod療法に対する応答をベースラインの腫瘍生検から予測するためのゴルジシグネチャの妥当性についての独立した確認がもたらされる。
【0117】
E. ゴルジシグネチャについてのエンリッチメントスコアを定義するためのスコアリング方法
上記の分析において、スコアリング方法はssGSEAである。また、ssGSEAはexpressionByMean/expressionByMedianと比較してロバストであるが、様々な実施形態において、expressionByMeanとexpressionByMedianの両方のスコアリング方法が企図され、本明細書で提供される。
【0118】
F. コールド/ホット腫瘍をグループ化する方法
コールド/ホット腫瘍をグループ化する様々な方法を評価した:(1)IFNg_18遺伝子シグネチャ(Ayers,M.,et al.,J Clin Invest.,2017,127(8):2930-2940)、「コールド」腫瘍については低IFNg_18スコア(現在のデータ及び分析において<-0.5)、「ホット」腫瘍については高IFNg_18スコア(>0.5)、その他は「中間」腫瘍である。(2)TIDEスコア(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30127393/):「コールド」腫瘍については高TIDEスコア(>1、CPIに応答しないと予測される)、「ホット」腫瘍については低TIDEスコア(<-1、CPIに応答すると予測される)、その他は「中間」腫瘍である。(3)CPSスコア(PD-L1 IHCアッセイ):コールド:CPS<1;中間:1<CPS<10;ウォーム:CPS>10。
【0119】
G. ゴルジvidutolimod応答シグネチャとCPI(チェックポイント阻害剤)に対する応答との相関性の欠如
ゴルジシグネチャのエンリッチメントを、公開されているCPI処置RNA Seqデータセット由来のベースライン試料においても評価した。抗CTLA-4単剤療法(イピリムマブ)の一試験(Nathanson,T.,et al.,Cancer Immunol Res.,2017,5(1):84-91)では、ゴルジシグネチャと応答との相関性はなく、抗CTLA4治療後のゴルジシグネチャの誘導/低減もない(
図8)。抗PD-1単剤療法を用いた別の試験(Gide,T.N.,et al.,Cancer Cell,2019,35(2):238-255)では、この場合もゴルジコアシグネチャと臨床応答との相関性はなく、治療後のシグネチャの誘導もなく、これは、このシグネチャが任意のがん免疫療法に対する応答を予測する一般的なマーカーではないことを示している(
図8)。
【0120】
H. 形質細胞、IFN分泌pDC、及び他の免疫細胞におけるゴルジシグネチャのエンリッチメント
ゴルジシグネチャが多くの異なる細胞からの寄与を反映し得る可能性、及び単一の細胞がシグネチャ全体を発現し得ない可能性があった。異なる個々の免疫細胞におけるゴルジシグネチャのエンリッチメントを評価するために、独自の公開されている単一細胞RNA Seqデータセットにおいてシグネチャを評価した。複数の公開されている単一細胞データセットでは、ゴルジシグネチャの発現は、形質細胞で最も高く、次いでpDC、マクロファージ、及びいくつかの他の免疫細胞集団である(
図9は典型的なデータの例である)。さらに、in vitroで3つの別個のサブセット(P1、P2、P3)へと活性化される精製pDCについての公開データでは、ゴルジシグネチャは、最も高度にI型IFNを産生するpDCサブセットであるP1サブセットにおいて最も高度に発現している。(
図10)これらの試験はさらに、ゴルジシグネチャの生物学的性質を、抗腫瘍免疫を駆動するためのI型IFNの誘導に依存するTLR9活性化及びvidutolimodのMOAの生物学的性質と関連させる。
【0121】
I. ゴルジvidutolimod応答シグネチャは、多くの異なる腫瘍適応症において高度に発現する
公開されているTCGAを使用して、ゴルジシグネチャのエンリッチメントを様々な腫瘍適応症において評価した(
図11)。本解析は、シグネチャの発現が、黒色腫(SKCM)またはNSCLCに限定されないが、ほとんどの腫瘍型の間で高度に蔓延していることを示し、このシグネチャ単独での、またはvidutolimod単独療法もしくは他の薬剤との併用療法に応答する可能性が高いがん患者を選択するための他のバイオマーカーと組み合わせた広範な使用についての大きな潜在的可能性を示している。
【0122】
J. ゴルジシグネチャは、標準治療(SOC)化学療法と放射線療法(XRT)の併用によって誘導され得る
ゴルジシグネチャに対するXRT及びSOC治療の効果を評価するために、本発明者らは、CRCにおける公開データセットを解析し、それにより、シグネチャが、XRT処置の5週間後の照射された組織(正常及び腫瘍の両方)と、別個の対照において濃縮されたことが明らかとなった(
図12)。本試験では、各患者に、5週間の間に50Gy(2Gyの分画で25回送達)を与えた。さらに、全期間を通して、患者にカペシタビン(Xeloda(登録商標)、Roche)2500mg/mlを毎日投与した。術前の放射線療法の4~6週間後に直腸の切除を実施した。
【0123】
K. ベースラインの「ホット」に対するvidutolimod応答の予測を拡張し、レスポンダーとノンレスポンダーとの間の全体的な区別を高めるためのゴルジシグネチャを有する潜在的な「パートナー」の同定
vidutolimodで治療された患者に由来するすべてのベースラインの腫瘍における治療応答を予測するためにゴルジシグネチャと組み合わせて使用され得る可能性がある1つ以上の潜在的な「パートナー」遺伝子またはシグネチャを同定するために、QLatticeアルゴリズム(www.abzu.ai/より)を適用した。0.93のAUC(95%CI:0.82~1)を有する最良のモデルは、免疫調節において重要であることが知られている転写因子である遺伝子「パートナー」ELF2である(
図13)。ELF2の発現は、ホット及びコールドを含むPD-1抵抗性黒色腫のベースラインの生検の本発明者らのデータセット全体にわたって応答との強力な独立した相関性を示す(
図14)。わずかに低いAUCでゴルジシグネチャと作用する他の遺伝子/シグネチャ(例えば、MOOTHA_GLUCONEGENESIS、BOLL、BAZ2A、INSL6など)も同定された。
【0124】
L. 黒色腫におけるゴルジシグネチャとのシグネチャ相関性
腫瘍微小環境におけるゴルジシグネチャの潜在的な機能を明確にするために、すべての遺伝子シグネチャを、TCGA黒色腫(SKCM)におけるゴルジシグネチャとの相関性について評価した。それらの上位(陽性)の相関性のあるシグネチャは小胞-ゴルジ輸送に関連しており(表C)、これは本発明者らの予想と一致しているが、上位の反相関性のシグネチャは、特にマクロファージ、DC、及びpDCなどの骨髄細胞を含む免疫細胞またはそれらの状態(表D)に、より多く関与している。これらのデータは、ゴルジシグネチャの存在が、vidutolimodによる活性化に適した骨髄細胞の活性化または機能の状態を反映している可能性があることを示している。さらに、これらの反相関性のシグネチャは、がん免疫療法におけるvidutolimodなどの自然免疫活性化因子への応答に関連する新規遺伝子シグネチャの同定に対する独立したアプローチを提供し得る。
【表3】
【表4】
【0125】
M. ゴルジシグネチャとBRAF変異状態及びベースラインリスク因子との相関性
PD-1抵抗性黒色腫のデータセットでは、ゴルジシグネチャの発現は、BRAF変異の状態もしくはBRAFi/MEKiの前治療(
図15)、ベースラインのLDHレベルもしくは肝転移(
図16)、またはベースラインの腫瘍量(
図17)などのリスク因子との相関性を示さなかったが、これは、ゴルジシグネチャの発現が他の既知の予後因子の代用ではないというさらなるエビデンスを提供するものである。
【0126】
N. 高ベースラインマクロファージ/単球またはT
regは、vidutolimodとペムブロリズマブとの併用に対する非応答またはPDの独立した予測因子である
マクロファージ/単球シグネチャは、PD、特にCMP-001-001データ由来のベースラインの「ホット」腫瘍において、PDと関連していることが分かった(
図18)。高度の腫瘍内骨髄細胞は、免疫療法に対する抵抗性と相関していることが知られている。ベースラインの腫瘍生検における高度の骨髄細胞の存在のシグネチャまたは他の指標は、いくつかの実施形態では、単独で、またはゴルジvidutolimod応答シグネチャと連携して、vidutolimod療法に対する患者の選択に使用され得るシグネチャの構成要素であり得る。例えば、マクロファージ及び/または単球で発現し、特にベースラインのホット腫瘍においてvidutolimodへの応答との強力な逆相関を示す個々の遺伝子としては、TLR8、TGFB2、TNFRSF1A、TNFRSF1B、C1QC、及びPD-L1が挙げられる(
図19)。これらの遺伝子のうちの1つ以上のRNAレベルは、この目的のためのバイオマーカーの一部を構成することができ、これらの遺伝子の発現のレベルが比較的低いことは、免疫抑制性マクロファージまたは単球のレベルが低いことを示し、それにより、これらの遺伝子の発現が比較的低い患者は、患者のベースライン腫瘍生検におけるこれらの遺伝子の発現レベルが高い患者と比較して、自然免疫活性化因子に応答する確率が高いと予測される。本明細書で使用される場合、「低マクロファージ及び/または単球細胞集団の存在を検出する」とは、Macrophage/Monocyte_MCPCOUNTERなどの比較的低いマクロファージシグネチャ、または骨髄関連遺伝子TLR8、TGFB2、TNFRSF1A、TNFRSF1B、C1QC、及びPD-L1のうちの1つ以上の比較的低い発現レベルのいずれかを検出することを意味する。
【0127】
逆に、ベースラインの「コールド」腫瘍では(ホット腫瘍ではなく)、TLR9及びTNFAの発現が低いことは、それらのベースライン腫瘍生検においてこれらの遺伝子の発現レベルが高い患者と比較して、自然免疫活性化因子に対する応答の可能性が高いことと相関している(
図20)。
【0128】
さらに、制御性T(T
reg)シグネチャの高発現は、すべてのベースラインの試料においてPDと相関していることが分かった(
図21)。ベースライン腫瘍生検における高度のT
reg細胞の存在のシグネチャまたは他の指標は、いくつかの実施形態では、単独で、またはゴルジvidutolimod応答シグネチャと連携して、vidutolimod療法に対する患者の選択に使用され得るシグネチャの構成要素であり得る。
【0129】
最後に、GABA産生B細胞に関連するシグネチャ(REACTOME_GABA_B_RECEPTOR_ACTIVATION)は、ベースラインの「ホット」腫瘍においてPDと相関することが見出された(
図22)。ベースライン腫瘍生検における高度のGABA産生B細胞の存在のシグネチャまたは他の指標は、いくつかの実施形態では、単独で、またはゴルジvidutolimod応答シグネチャと連携して、vidutolimod療法に対する患者の選択に使用され得るシグネチャの構成要素であり得る。
【0130】
要約すると、本実施例は、vidutolimodについて、さらには、他のTLR9アゴニスト、他のTLRアゴニスト、及び他の自然免疫活性化因子について、集合的に示している。
【0131】
1. ゴルジvidutolimod応答シグネチャ内の遺伝子の一部またはすべての高発現は、特にベースラインの生検が「ホット」ではない患者における、vidutolimodに対する応答の独立した予測因子である。
【0132】
2. ELF2の高発現は、vidutolimodに対する応答の独立した予測因子であり、これをゴルジシグネチャの1つ以上と併用して、vidutolimod単独に、またはPD-1遮断などの他の免疫療法との組み合わせに応答する確率をより正確に予測し得る。
【0133】
3. Treg、及び/またはマクロファージ/単球に相関するシグネチャまたは遺伝子の低発現は、vidutolimod±PD-1遮断に対する応答の独立した予測因子であり、これをゴルジシグネチャの1つ以上と併用して、vidutolimod単独に、またはPD-1遮断などの他の免疫療法との組み合わせに応答する確率をより正確に予測し得る。
【0134】
4. B細胞GABAシグネチャの低発現は、ベースラインの「ホット」腫瘍を有する患者におけるvidutolimod±PD-1遮断に対する応答の独立した予測因子であり、これをゴルジシグネチャの1つ以上と併用して、vidutolimod単独に、またはPD-1遮断などの他の免疫療法との組み合わせに応答する確率をより正確に予測し得る。
【配列表】
【国際調査報告】