(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-17
(54)【発明の名称】患者の体内にインプラント型医療機器を装着するシミュレーション方法
(51)【国際特許分類】
A61B 34/10 20160101AFI20250109BHJP
【FI】
A61B34/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024540044
(86)(22)【出願日】2022-12-23
(85)【翻訳文提出日】2024-08-27
(86)【国際出願番号】 EP2022087773
(87)【国際公開番号】W WO2023126360
(87)【国際公開日】2023-07-06
(32)【優先日】2021-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524247617
【氏名又は名称】オックスフォード ハートビート リミテッド
【氏名又は名称原語表記】OXFORD HEARTBEAT LTD.
【住所又は居所原語表記】85 Great Portland Street First Floor London England W1W 7LT UNITED KINGDOM
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】イオリ,フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】シュプランガー,カテリーナ
(57)【要約】
概略的には、本発明は、患者の血管のための最適な機器を決定するための1つ以上のインプラント型医療機器の性能を発揮する技術的解決策を提供する。この技術的解決策は有利にはインプラント型医療機器の展開を計画するときに、臨床医が、壁の密着、多孔性、流れの減少および閉塞、ならびに血管の形状などの配置のための重要な要素の多くを考慮に入れることができることを確実にする。加えて、インプラント型医療機器の展開計画を実行するための計算効率の良い方法を提供する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の血管構造内の配置ターゲット配置位置に最適なインプラント型医療機器を決定するために、複数のインプラント型医療機器の配置をシミュレートするためのコンピュータ実施方法であって、
患者の血管構造に対応する画像データの受信(202)と、
前記画像データに基づいて前記患者の血管構造の3次元モデルを作成するステップ(204)と、
前記患者の血管構造の3次元モデル内のターゲット位置において複数のインプラント型医療機器の展開構成をシミュレートすること(206)と、
それぞれのシミュレートされたインプラント型医療機器に対する適合性メトリック決定すること(208)であって、前記適合性メトリックは、前記患者の血管構造内の展開されたインプラント型医療機器の適合性の尺度を提供し、展開構成におけるインプラント型医療機器と血管構造の壁との間の密着の尺度を含み、
前記適合性メトリックに基づいて最適なインプラント型医療機器の指示を出力すること(210)と、を含む、コンピュータ実施方法。
【請求項2】
前記適合性メトリックは、前記展開構成における前記インプラント型医療機器の寸法と前記ターゲット位置の対応する寸法との間の一致の尺度を含む、請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項3】
前記密着の尺度は、前記血管構造の前記壁から第1のしきい値内にある前記インプラント型医療機器の表面の割合を含む密着指数を含む、請求項1または2に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項4】
前記ターゲット位置が動脈瘤を含む血管を含み、
前記密着指数が、
前記動脈瘤の頸部に対応する前記血管の部分を決定することと、
前記血管の決定された部分に対応するインプラント型医療機器の外表面の部分を除外することと、
インプラント型医療機器の外表面の残りの部分に対する密着指数を計算することと、
によって計算される、請求項3に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項5】
前記ターゲット位置が動脈瘤を含む血管を含み、前記適合性メトリックがランディングゾーン指数を含み、前記ランディングゾーン指数は、
インプラント型医療機器のランディングゾーンの長さの尺度を含み、前記ランディングゾーンはターゲット位置における動脈瘤頸部のすぐ遠位および近位に配置された、配置されたインプラント型医療機器の長手方向セクションを含み、前記ランディングゾーンは、ランディングゾーンの長さがしきい値を上回る場合に、適合性が向上している機器であることを示す、先行するいずれかの請求項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項6】
前記適合性メトリックはポロシティ指数を含み、前記ポロシティ指数は前記展開構成における前記血流改変機器のポロシティの尺度を含み、前記ターゲット位置は動脈瘤を含む血管を含み、前記ポロシティ指数は、
動脈瘤頸部に対応する血管構造の部分を決定することと、
前記血管の決定された部分に対応する、配置されたインプラント型医療機器の外表面の部分を選択することと、
配置されたインプラント型医療機器の外表面の選択された部分の前記ポロシティを決定することと、
によって計算され、
前記ポロシティ指数は、前記ポロシティが外表面の選択された部分のしきい値を下回る場合に、適合性の高い機器であることを示す、先行するいずれかの請求項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項7】
適合性メトリックは、
血管構造の3次元モデル内で、配置されたインプラント型医療機器が側枝を閉塞する程度の尺度を提供する閉塞値であって、前記閉塞値は、閉塞される側枝が少ないほどより適合性の高い機器であることを示す閉塞値と、
配置されたインプラント型医療機器が、血管構造の3次元モデルにおいてしきい値以下の曲率半径を含む1つ以上の屈曲部を横切って延在する程度の尺度を提供する血管形状値であって、前記血管形状値は、前記曲率半径がしきい値以下の屈曲部が少ないほど、より適合性の高い機器であることを示す血管形状値と、
のうち1つまたは複数を含む、先行するいずれかの請求項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項8】
前記適合性メトリックは血流改変指数を含み、前記血流改変指数は、
インプラント型医療機器を使用せずに血管構造を通る血流をシミュレートすることと、
インプラント型医療機器の展開構成を含む、患者の血管構造を通る血流をシミュレートすることと、
配置されたインプラント型医療機器による血流の変化の尺度を含む、血流改変指数を決定することと、
によって計算される、先行するいずれかの請求項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項9】
前記ターゲット位置が動脈瘤を含む血管を含み、
前記適合性メトリックが配置されたインプラント型医療機器が前記動脈瘤頸部の外側から前記血管内に突出する距離の尺度となる頸部突出値を含み、前記頸部突出値が、ゼロに近づくにつれて、適合性が向上している機器であることを示す、先行するいずれかの請求項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項10】
前記患者の血管構造の3次元モデル内のターゲット位置において複数のインプラント型医療機器の展開構成をシミュレートすることは、
患者の血管構造の3次元モデル内でインプラント型医療機器の拡張を数値的にシミュレートすることを含む、先行するいずれかの請求項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項11】
前記患者の血管構造の3次元モデル内のターゲット位置において複数のインプラント型医療機器の展開構成をシミュレートすることは、
前記複数のインプラント型医療機器の展開構成を、インプラント型医療機器の非拘束寸法の順に順次シミュレートすることを含む、先行するいずれかの請求項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項12】
前記患者の血管構造の3次元モデル内のターゲット位置において複数のインプラント型医療機器の展開構成をシミュレートすることは、
前記患者の血管構造の3次元モデルから中心線を抽出することであって、前記中心線が患者の血管構造内の血管の中軸であることと、
患者の血管構造の3次元モデル内の中心線に沿ったインプラント型医療機器の拡張を数値的にシミュレートすることと、を含む、先行するいずれかの請求項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項13】
前記患者の血管構造の3次元モデル内の前記インプラント型医療機器の拡張を数値的にシミュレートすることは、
前記インプラント型医療機器の特性、前記患者の血管構造によって生じる幾何学的制約、および前記患者の血管構造によって前記インプラント型医療機器に加えられる力のうちの1つまたは複数に基づく、請求項10または12に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項14】
前記コンピュータ実装方法は、
第1の適合性メトリックに基づいて、複数のインプラント型医療機器の第1の選択を決定することと、
第2の適合性メトリックに基づいて、インプラント型医療機器の第1の選択のうち最適な機器を決定することと、を含む、先行するいずれかの請求項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項15】
前記第1の適合性メトリックに基づいて、複数のインプラント型医療機器の第1の選択を決定することは、
複数のインプラント型医療機器の展開構成をシミュレートし、展開構成におけるインプラント型医療機器の長さとターゲット位置の長さとの間の差を決定することと、
展開構成におけるインプラント型医療機器の長さとターゲット位置の長さとの間の差が長さ差しきい値以下である複数のインプラント型医療機器の第1の選択を決定することと、を含む、請求項14に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項16】
前記複数のインプラント型医療機器の展開構成をシミュレートすることは、
複数のインプラント型医療機器の展開構成を、インプラント型医療機器の非拘束長さが増加する順に順次シミュレートすることを含む、請求項15に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項17】
前記複数のインプラント型医療機器の展開構成をシミュレートする前に、前記複数のインプラント型医療機器が、
動脈瘤に対応するターゲット位置の一部を除いて3次元モデルのターゲット位置における最大血管直径を決定することと、
候補機器のデータベースにアクセスし、シミュレートされる複数のインプラント型医療機器を、最大血管直径に基づくターゲット範囲内の非拘束直径を有するデータベース内のインプラント型医療機器として選択することと、によって選択される、請求項15または16に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項18】
前記第2の適合性メトリックに基づいて、インプラント型医療機器の第1の選択のうち最適な機器を決定することは、請求項1~13のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法を含む、請求項14~17のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項19】
前記複数のインプラント型医療機器は、複数のインプラント型神経血管医療機器を含む、先行するいずれかの請求項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項20】
プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、請求項1~19のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法を実行させる命令を含む、非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、外科手術の前に最適な機器を決定するために、患者の体内の、血流改変機器またはインプラント型血管内機器などのインプラント型医療機器のシミュレーションに関する。
【背景技術】
【0002】
ステントやその他の血管内もしくはインプラント型神経血管機器などのインプラント型医療機器を使用する臨床医は、多くの場合、それらを、送達システムにおいて、患者の体のアクセスが困難な部分に放射状に圧縮された状態で配置する。次いで、インプラント型医療機器は、配置されると、送達システムによって展開される。特定の処置後の機器の有効な機能は、インプラント型医療機器の特定の最終的な展開寸法および配置に依存する。この最終的な位置における機器の「適合」の質は、インプラント型機器の特性、展開中に加えられる力、および患者の体によって加えられる力を含む多くの要因に依存する。
【0003】
インプラント型医療機器が展開後に短すぎる場合、意図された目的を十分に満たさない可能性がある。逆に、インプラント型医療機器が、展開後に長すぎる場合、インプラント型医療機器によって遮断されることが意図されていない血流が遮断される可能性がある。
【0004】
インプラント型医療機器は、その長手方向軸に沿ってその展開構成において可変直径を有してもよく、その長手方向軸に沿った直径に関連してその長手方向軸に沿って長さが延びたり縮んだりしてもよい。したがって、インプラント型医療機器の直径が不正確である場合、その後、機器の長さに影響を及ぼし、上述の問題を引き起こす可能性がある。正しく適合しない機器はさらに、不十分な性能、意図した位置からの機器の移動、および/または血栓塞栓症の合併症を引き起こす可能性がある。機器の全体的な展開寸法に加えて、ワイヤの配置などの特定の最終構成の特徴もまた、インプラント型機器の性能に影響を及ぼす。
【0005】
したがって、臨床医または他の医療専門家にとって、特定の用途に適した特性を有する正しいサイズのインプラント型医療機器が使用されること、および送達システムによってインプラント型医療機器を展開する場所を計画することを確実にすることが重要である。特に、半径方向に圧縮されたインプラント型医療機器は配置された領域内に拡張し、その最終的な構成はいくつかの要因に依存するため、展開後の機器の最終的な構成を正確に予測することは困難である。
【0006】
臨床医がインプラント型医療機器の展開を計画することを可能にする現在のシステムでは、患者の配置位置の2次元または3次元画像を利用することが多い。しかしながら、これらのシステムを利用すると、臨床医は特定の処置のための最適な機器を客観的かつ再現可能な方法で決定するために、上述の重要な要素の多くを考慮することができない。したがって、個々の臨床医によってなされる決定は、個人的な好みおよび経験によって大きく異なる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、患者の体内の特定の領域に配置されたときに最良の性能を発揮する特性を有するインプラント型医療機器を決定し、患者に機器を配置するための外科手術を開始する前に、選択されたインプラント型医療機器を配置するのに最良の場所を決定する際に、臨床医を支援するためのソフトウェアが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様では、本発明が患者の血管構造内のターゲット配置位置に最適なインプラント型医療機器を決定するために複数のインプラント型医療機器の配置をシミュレートするためのコンピュータ実装方法を提供し、本方法は患者の血管構造に対応する画像データを受信することと、画像データに基づいて患者の血管構造の3次元モデルを作成することと、血管構造の3次元モデル内のターゲット位置において複数のインプラント型医療機器の展開構成をシミュレートすることと、シミュレートされたインプラント型医療機器それぞれの適合性メトリックを決定することであって、適合性メトリックが患者の血管構造内の展開されたインプラント型医療機器の適合性の尺度を提供することと、適合性メトリックに基づいて最適なインプラント型医療機器の表示を出力することとを含む。
【0009】
複数のインプラント型医療機器の配置された位置をシミュレートし、シミュレートされた各機器について適合性メトリックを計算することによって、臨床医、または医療専門家は外科手術前に最適な機器を決定することができる。機器の特性、患者の体内、および配置手順が手術前の機器の性能に及ぼす影響を正確に予測することが困難であり得ることを考慮すると、本方法は最適な機器の正確な予測を可能にし、特定の処置のための最適な機器を選択する際に臨床医を支援することができる。手術前に最適な機器を決定することによって、成功の可能性が大幅に増加し、患者の転帰が改善され、その後の手術の可能性が減少する。最適な機器の選択を自動化することによって、臨床医の個人的好みや過去の経験に基づく偏りに大きく依存する既存の方法と比較して、より客観的な尺度が提供される。
【0010】
大まかに言えば、本発明は、最適な機器を決定するために、血管内インプラント型医療機器を患者の体内でシミュレートすることができる技術的解決策を提供する。この技術的解決策は、有利にはインプラント型医療機器の展開を計画するとき、臨床医または他の医療専門家が、容易に理解可能で自動的に生成されるメトリックにおいて、壁の密着、ポロシティ、血流障害、ならびに血管の形状などの配置のための重要な要素の多くを考慮することができることを保証する。さらに、本発明は、インプラント型医療機器の展開計画を実行するための計算効率の良い方法を提供する。
【0011】
本明細書において、インプラント型医療機器という用語は、例えば、低侵襲外科手術によって体腔、特に血管構造に、埋め込まれる医療機器を意味するものとする。
【0012】
好ましい実施形態では、インプラント型医療機器はインプラント型血管内機器、ブレイデッドステントまたは嚢内機器などの血流改変機器であるが、代替的に、ステントグラフト、レーザーカットステント、またはインプラント型神経血管医療機器であってもよい。インプラント型神経血管医療機器は、例えば、動脈ステント、頭蓋内ステント、または頸動脈ステントなどのステント、塞栓コイル、動脈瘤コイル、フローダイバータ、塞栓保護機器、または神経血栓摘出機器などを含むことができる。血流改変機器は、動脈瘤を形成する病的血管を閉塞し、正常な血流の方向を転換することによって治療する機器である。ステントグラフトは、大動脈瘤および大動脈解離の治療に使用されることが多く、レーザーカットステントは狭窄の治療にも使用される。塞栓コイルは、血栓を誘発することによって頭蓋内動脈瘤の治療によく使用される。
【0013】
カテーテル、バルーンシステム、ガイドワイヤ、またはステントリトリーバーなどのインプラント型医療機器を埋め込むときに使用される機器またはツールは、ターゲット位置における複数のインプラント型医療機器の展開構成をシミュレートするときに追加的にシミュレートされる場合がある。前記機器またはツールは、インプラント型医療機器を埋め込むときの使用、またはインプラント型医療機器の埋め込みを中止するときの使用をシミュレートするためにシミュレートされてもよい。代替的にまたは追加的に、前記機器またはツールは、インプラント型医療機器の配置のシミュレーションを支援するようにシミュレートされてもよい。
【0014】
ターゲット位置は、血管構造内でインプラント型医療機器が埋め込まれる位置である。ターゲット位置は開始点と終了点との間に画定されてもよく、好ましくはインプラント型医療機器が開始点で展開され、展開中に終了点に向かって延在する。ターゲット位置は好ましくは血管構造内の血管の一部分、すなわち、遠位点と近位点との間の血管の長さである。インプラント型機器は好ましくは遠位点から展開を開始し、展開中に近位点に向かって延在する。ターゲット位置の開始点(遠位)と終了点(近位)との間の長さは、ターゲット長さとして定義される。機器が(遠位点から近位点に向かって)延在するターゲット長さの比率は、インプラント型機器の非拘束長さ(外力が加えられないと仮定した場合の完全に拡張した状態における機器の長さ)、患者の血管構造によって加えられる力、展開中に送達システムによって加えられる力、および機器の機械的特性のうちの1つまたは複数を含む、いくつかの要因に依存する。いくつかの例では、ターゲット位置は動脈瘤内にあってもよい。これは特に嚢内機器の場合である。この場合、ターゲット位置は、動脈瘤の内壁によって画定することができる。
【0015】
好ましくは、血管構造の3次元モデル内のターゲット位置における複数のインプラント型医療機器の展開構成をシミュレートすることは、インプラント型医療機器の1つ以上の特性および患者の血管構造の1つ以上の特性に基づいて、インプラント型医療機器の配置の数値シミュレーションを実行することを含む。特に、シミュレーションは、機器の拡張の機械的および/または幾何学的シミュレーションを含むことができる。より具体的には、数値シミュレーションは、患者の血管構造の形状によって課される制約内で、インプラント型医療機器の拡張をシミュレートすることを含むことが好ましい。いくつかの例では、シミュレーションは、患者の血管構造、および任意選択で、機器を配置するために使用される送達システムによって、インプラント型医療機器に加えられる力をシミュレートすることを含む。本方法は、3次元モデルにおいて定義されるような患者の血管形状によって課される制約内でインプラント型医療機器の拡張構成を数値的にシミュレートすることを含むことができ、数値シミュレーションは、好ましくはインプラント型医療機器の機械的制約、例えば機器のワイヤの編組にも基づく。
【0016】
インプラント型医療機器の展開構成をシミュレートするいくつかの例では、以下のステップを含むことができる:
a.血管構造の局所形態の関数として、ステントの長さの変化を示す比率を決定する;
b.血管構造の3次元モデルから3次元中心線を得る;
c.血管構造の3次元モデルに機器を配置する開始点の位置を定義する;
d.血管構造の中心線を複数に分割する;
e.複数のセグメントのうちの第1のセグメントについての前記血管構造の形態の記述パラメータを決定し、ここで、記述パラメータは、幾何学的パラメータおよび/または機械的要因を含む;
f.ステップa)の指数比率を用いて、前記第1のセグメントのステントの長さを計算する;
g.ステップf)で計算されたセグメントの前記長さをステントの公称長さから減算して新しい公称長さを得る;前記新しい公称長さが0と異なる場合、ステップe)~g)は先行するセグメントと連続するセグメントについて繰り返される;新しい公称長さがほぼ0である場合、各セグメントの全ての距離が合計され、この合計が展開後の前記ステントの最終長さとなる。
【0017】
ステップa)の比率は、数学的モデリングに基づいて決定することができる。
【0018】
適合性メトリックは、好ましくは展開構成におけるインプラント型医療機器の寸法と、ターゲット位置の対応する寸法との間の対応の尺度を含む。このようにして、最適の評価は、周囲のターゲット位置に対する展開構成内の機器の寸法の対応関係に基づく。展開構成内の機器の寸法は、長さ、体積、厚さ、直径、または高さを含むことができる。好ましくは、ターゲット位置は遠位位置と近位位置との間のターゲット長さを有する血管部分であり、適合性メトリックは機器の展開長とターゲット位置のターゲット長さとの間の対応の尺度を提供する。あるいはターゲット位置はターゲット直径を有する動脈瘤であってもよく、適合性メトリックは機器の展開された直径とターゲット直径との対応の尺度を提供する。展開構成における機器の寸法と機器の対応する寸法との間の対応の尺度は、寸法指数と呼ばれることがある。寸法指数は0と1との間の値の形態を取ることができ、1は最適を示し、0は適合性が低いことを示す。寸法指数は、配置された機器の寸法がターゲット寸法の所定の範囲内にある場合、1の値をとることができる。
【0019】
適合性メトリックは好ましくは展開構成のインプラント型医療機器と血管構造の壁との間の密着の尺度、特に展開構成のインプラント型機器の表面と血管の隣接壁との間の密着の尺度を含み、ここで、動脈瘤頸部に対応する血管壁の部分は、好ましくは除外される。密着の尺度は、密着指数と呼ばれることがある。密着の尺度は、好ましくは展開構成におけるインプラント型医療機器の外表面と血管構造の壁との間の距離の尺度を含む。好ましくは、本方法は展開構成におけるインプラント型医療機器の外表面と血管構造の壁との間の平均距離を決定することを含み、好ましくは、動脈瘤頸部に対応するインプラント型医療機器の表面積の一部を除外する。
【0020】
密着の尺度は、好ましくは血管構造の壁からしきい値内にある、好ましくは動脈瘤頸部に対応するインプラント型医療機器の表面積の一部を除外する、インプラント型医療機器の表面の割合を含む密着指数を含む。しきい値間隔は0.1~1mm、好ましくは0.5mmであってもよく、この場合、インプラント型医療機器の表面と、この範囲内の血管構造の隣接壁との間の距離は良好な密着を示す(したがって、適合性の高い機器を示す)。
【0021】
ターゲット位置が動脈瘤を含む血管を含む場合、密着指数は、動脈瘤頸部に対応する血管の部分を決定すること、血管の決定された部分に対応するインプラント型医療機器の外表面の一部を除外すること、およびインプラント型医療機器の外表面の残りの部分にわたって密着指数を計算することによって計算することができる。このようにして、動脈瘤の周りの密着が予想されない場合、密着の改善された尺度が提供される。
【0022】
動脈瘤頸部に対応する血管または血管構造の部分を決定することは、以下のうちの1つまたは複数を含むことができる:血管部分の半径がターゲット位置における血管の残りの部分にわたって平均半径よりも大きい、血管の部分を決定すること;血管部分の半径が中心線血管半径よりも、しきい値以上大きい、血管の部分を決定すること;ターゲット位置における血管の長さに沿って血管半径に頂点がある、血管の部分を決定すること。
【0023】
中心線半径は、血管の中心線と血管壁との間の最小距離、または血管の中心線と血管壁との間の平均距離として定義することができる。
【0024】
ターゲット位置が動脈瘤を含む血管を含む場合、適合性メトリックはランディングゾーン指数を含むことができ、ランディングゾーン指数はインプラント型医療機器のランディングゾーンの長さの尺度を含み、ランディングゾーンはターゲット位置における動脈瘤頸部に対して遠位および近位に位置付けられた配置されたインプラント型医療機器の長手方向セクションを含み、ランディングゾーン指数は、ランディングゾーンの長さがしきい値を上回るか、またはしきい値範囲内で機器の適合性が向上していることを示す。ランディングゾーンの長さがしきい値を超えると、これにより、良好な基点、良好な密着が保証され、機器の移動が回避される。インプラント型血管内機器または血流改変機器のランディングゾーンの長さの尺度を適合性メトリックに含めることによって、特にランディングゾーンがしきい値を上回る場合、および好ましくはランディングゾーン内の密着がしきい値を上回る場合、ランディングゾーンがより適合性の高い機器を示すので、患者の血管構造内のターゲット配置位置に最適な機器をより正確に決定することができる。いくつかの実施形態におけるランディングゾーン指数は、しきい値を上回る密着指数を有する動脈瘤頸部の近位および遠位に位置付けられた機器の長手方向セクションの長さの尺度を提供することができる。
【0025】
ランディングゾーン指数は、機器のランディングゾーンの適合の尺度を含むことができる。ランディングゾーン指数は、ランディングゾーン内の血管の直径と機器の直径との間のパーセンテージ差の尺度を含んでもよい。パーセンテージ差は、最適なランディングゾーン長さに対応するランディングゾーン内の機器の長さにわたって決定することができる。一例では、ランディングゾーン指数は、機器の適合に従って0から1までの重みを割り当てる重み関数をランディングゾーンにわたって積分することによって計算されてもよい。
【0026】
ランディングゾーン指数は、次のとおり計算することができる:
ここで、
ここで、S
pは近位ランディングゾーンのサイズ指数であり、S
dは遠位ランディングゾーンのサイズ指数であり、L
optはインプラント型医療機器の最適ランディングゾーン長であり、L
deviceは配置されたインプラント型医療機器の長さであり、Wfは重み関数である。
【0027】
重み関数Wfは機器が最適サイズである場合には値1をとり、機器が準最適サイズである場合には値1未満をとることができる。例えば、重み関数は、インプラント型医療機器がランディングゾーン内の血管の直径に対して、展開直径が、1%、5%、または10%未満の大きさである場合、または20%、40%、または60%超の大きさである場合、0の重みを割り当てることができる。重み関数は、インプラント型医療機器がランディングゾーン内の血管のサイズに基づいて0%~20%の大きさである展開直径を有する場合、1の重みを割り当てることができる。
【0028】
重み関数は過大サイズ/過小サイズ範囲と最適サイズ範囲との間の領域、例えば、5%~0%過小サイズ(すなわち、機器が血管直径の0%~5%小さい直径を有する場合)において、5%過小サイズで0の値をとり、直径が完全に一致するときに1の値をとる、線形に増加する関数であってもよい。同様に、重み関数は20%~60%の過大サイズ(すなわち、配置された機器が、血管直径の20%~60%大きい直径を有する場合)の間で、20%の過大サイズで1、60%の過大サイズで0の値をとる線形に減少する関数であってもよい。
【0029】
好ましくは、適合性メトリックはポロシティ指数を含む。好ましくは、ポロシティ指数は、展開構成における血流改変機器のポロシティの尺度を含む。
【0030】
適合性メトリックに、展開構成におけるインプラント型血管内機器または血流改変機器のポロシティの尺度を含めることによって、患者の血管構造内のターゲット配置位置に最適な機器をより正確に決定することができる。特に、インプラント型血管内機器または血流改変機器のポロシティは機器のメッシュが様々な領域に変形、拡張および収縮することにつれて変化する可能性があるため、その配置位置および構成に依存し、このポロシティは、配置された機器の性能に影響を及ぼす可能性がある。
【0031】
ターゲット位置が動脈瘤を含む血管を含む場合、ポロシティ指数は、動脈瘤頸部に対応する血管構造の部分を決定すること;血管の決定された部分に対応する配置されたインプラント型医療機器の外表面の部分を選択すること;配置されたインプラント型医療機器の外表面の選択された部分のポロシティを決定することによって計算することができる。
【0032】
動脈瘤頸部に対応する血管または血管構造の部分を決定することは、以下のうちの1つまたは複数を含むことができる:血管部分の半径がターゲット位置における血管の残りの部分にわたって平均半径よりも大きい、血管部分を決定すること;血管部分の半径が中心線血管半径よりも、しきい値以上大きい、血管の部分を決定すること;ターゲット位置における血管の長さに沿って血管半径に頂点がある、血管の部分を決定すること。
【0033】
ポロシティ指数は、好ましくはポロシティ指数が、外表面の選択された部分のポロシティがしきい値を下回る、より適合性の高い機器を示すように決定される。平均ポロシティは、外表面の選択された部分にわたって決定され、しきい値と比較されてもよい。あるいは、重み関数が選択された部位の表面積にわたって積分されてもよく、重み関数はポロシティがターゲットポロシティ範囲内である場合には1の値をとり、ポロシティがポロシティ範囲外である場合には1未満の値をとる。重み関数は、低ポロシティ範囲と最適ポロシティ範囲との間の遷移ポロシティ範囲において、0と1との間の線形関数であってもよい。
【0034】
任意選択的に、適合性メトリックは配置されたインプラント型血管内機器または血流改変機器が血管構造の3次元モデル内で側枝を閉塞する程度の尺度を提供する閉塞値に基づき、閉塞値は、閉塞される側枝が少ないほどより適合性の高い機器を示す。
【0035】
血管構造の3次元モデル内で、配置されたインプラント型血管内機器または血流改変機器が側枝を閉塞する程度の尺度を提供する閉塞値を含めることによって、血管構造内のターゲット位置のための最適な機器をより正確に決定することができる。特に、側枝の閉塞が少なく、血流障害が制限されている場所では、機器の適合性が向上するためである。
【0036】
任意選択的に、適合性メトリックは配置されたインプラント型血管内機器または血流改変機器がしきい値未満の曲率半径を含む血管構造の3次元モデルの1つまたは複数の屈曲部にわたって延在する程度の尺度を提供する血管形状値に基づき、血管形状値は、機器の配置位置に曲率半径しきい値未満である屈曲がほとんど存在しない、より適合性の高い機器を示す。
【0037】
配置されたインプラント型血管内機器または血流改変機器が、適合性メトリックにおいてしきい値を下回る曲率半径を含む血管構造の3次元モデルの1つまたは複数の屈曲部にわたって延在する程度の尺度を含めることによって、患者の血管構造内のターゲット配置位置に最適な機器をより正確に決定することができる。特に、インプラント型血管内機器または血流改変機器を血管屈曲部の内側に配置することは困難であり、インプラント型血管内機器または血流改変機器が屈曲していると完全な拡張がより困難であるため、密着不良をもたらす可能性がある。したがって、機器曲率半径しきい値を下回る屈曲部が少ないほど、機器の適合性が向上する。
【0038】
好ましくは適合性メトリックが血流改変指数を含み、血流改変指数は患者の血管構造を通る血流の変化の尺度を含む。好ましくは、血流改変指数は、例えば動脈瘤頸部を通る動脈瘤への血流の減少の尺度を含む。好ましくは、血流改変指数は、インプラント型医療機器の存在なしに患者の血管構造を通る血流をシミュレートすること、インプラント型医療機器の展開構成を含む患者の血管構造を通る血流をシミュレートすること、および配置されたインプラント型医療機器による血流の変化の尺度を含む血流改変指数を決定することによって計算される。好ましくはターゲット位置が動脈瘤を含む血管を含み、配置されたインプラント型医療機器による血流の変化の尺度は、例えば動脈瘤頸部を通る動脈瘤への血流の減少の尺度を含む。
【0039】
これらの実施形態の方法は、インプラント型医療機器の配置に先立って患者の血管構造内の血流の第1の数値流体力学シミュレーションを実行することと、患者の血管構造内の血流の第2の数値流体力学シミュレーションを実行することと、第1および第2の数値流体力学シミュレーションの間で患者の血管構造における血流の変化を決定することと、を含むことができる。
【0040】
より具体的には、第1および第2の数値流体力学シミュレーション間の患者の血管構造における血流の変化を決定することは、第1および第2の数値流体力学シミュレーションについて、動脈瘤内の最大血流速度および空間平均血流速度の一方または両方を決定することと、動脈瘤内の血流減少率(血流速度)を決定することとを含む。
【0041】
あるいは、第1および第2の数値流体力学シミュレーション間の患者の血管構造における血流の変化を決定することは、第1および第2の数値流体力学シミュレーション間の動脈瘤頸部を通る血流速度(例えば、m3/s単位)を決定すること、および第1のシミュレーションに対する第2のシミュレーションにおける血流速度の減少率を決定することを含む。
【0042】
血流改変指数は、血流減少率がしきい値を上回るか、またはターゲット範囲内の場合に、より適合性の高い機器を示す可能性がある。例えば、血流改変指数は0と1との間の値をとることができ、1は、最適な血流改変を示す。血流改変指数は、血流減少率がしきい値を上回るか、またはターゲット範囲内である1の値と、血流改変率が最適範囲外である1を下回る値とをとることができる。
【0043】
数値流体力学シミュレーションは、ナビエ・ストークス方程式を解くことができる任意の既知の方法、例えば有限体積法、有限要素法、スペクトル要素法、格子ボルツマン法を含むことができる。
【0044】
血流改変指数を含む適合性メトリックの使用により、機器手術の前に機器の性能をシミュレートして、その性能を判断することができる。これにより、サイジングのような他の要因だけでは明らかにならない、最良の性能を有する機器の識別が可能になる。また、血流改変指数の使用により、様々な種類のインプラント型医療機器、例えば、ステントなどの血流改変機器、または嚢内およびインプラント型神経血管機器のランク付けを可能にし、医療従事者が、特定の症例に最適な種類のインプラント型医療機器を識別することができる。
【0045】
いくつかの例では、適合性メトリックは、寸法指数、密着指数、ランディングゾーン指数、血流改変指数、障害値、および血管形状値から選択される複数のパラメータを含む。各パラメータは0~1の間の値をとることができ、ここで、1は適合性の高い機器を示し、0は、適合性の低い機器を示す。適合性メトリックは、選択されたパラメータの各々の加重合計を含むことができる。
【0046】
適合性メトリックの構成パラメータに適用される重みは、パラメータ(独立変数)と臨床結果の尺度(従属変数)、例えば動脈瘤閉塞の成功率または合併症率との間の重回帰(例えば、線形または多項式)によって決定することができる。
【0047】
特に好ましい例では、適合性メトリックが密着指数およびランディングゾーン指数を含む。これらのパラメータは共に、良好に適合する機器の正確な指数を提供する。
【0048】
好ましくは、適合性メトリックは、配置されたインプラント型医療機器が血管の動脈瘤頸部の外側から血管内に突出する距離の尺度を提供する頸部突出値を含む。頸部突出値は、ゼロに近づくにつれて、機器の適合性が向上していることを示す。
【0049】
好ましくは、患者の血管構造の3次元モデル内のターゲット位置における複数のインプラント型医療機器の展開構成をシミュレートするための方法は、複数のインプラント型医療機器の展開構成を、インプラント型医療機器の非拘束寸法の順に順次シミュレートすることを含む。
【0050】
好ましくは、患者の血管構造の3次元モデル内のターゲット位置における複数のインプラント型医療機器の展開構成をシミュレートする方法は、患者の血管構造の3次元モデルから中心線を抽出することを含み、中心線は患者の血管構造内の血管の中軸であり、患者の血管構造の3次元モデル内の中心線に沿ったインプラント型医療機器の拡張を数値的にシミュレートする。
【0051】
好ましくは、患者の血管構造の3次元モデル内の中心線に沿ったインプラント型医療機器の拡張を数値的にシミュレートする方法は、インプラント型医療機器の特性、患者の血管構造によって生じる幾何学的制約、および患者の血管構造によってインプラント型医療機器に加えられる力のうちの1つまたは複数に基づく。
【0052】
好ましくは、複数のインプラント型血管内機器の配置をシミュレートして、患者の血管構造内のターゲット配置位置に最適な機器を決定する方法は、第1の適合性メトリックに基づいて、インプラント型血管内機器における複数のインプラント型の第1の選択を決定することと、第2の適合性メトリックに基づいて、インプラント型血管内機器の第1の選択のうち最適な機器を決定することと、をさらに含む。
【0053】
最初に、第1の適合性メトリックを使用して複数のインプラント型血管内機器を第1の選択に絞り込み、次いで、第2の適合性メトリックを使用してさらに絞り込むことによって、最適な機器の決定を、より計算効率よく行うことができる。特に、第1の適合性メトリックの計算は、第2の適合性メトリックの計算よりも計算負荷が低くなる場合がある。例えば、第1の適合性メトリックは、寸法指数を含むことができ、第2の適合性メトリックは、密着指数、ランディングゾーン指数、ポロシティ指数、および血流改変指数のうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0054】
第1の適合性メトリックに基づいて複数のインプラント型医療機器の第1の選択を決定することは、複数のインプラント型医療機器の展開構成をシミュレートすること、展開構成におけるインプラント型医療機器の寸法と対応するターゲット位置の寸法との間の差を決定すること、および展開構成におけるインプラント型医療機器の寸法とターゲット位置の寸法との間の差がしきい値を下回る、複数のインプラント型医療機器の第1の選択を決定することを含むことができる。
【0055】
ターゲット位置がターゲット長さを有する血管部分を含む場合、インプラント型機器の寸法は展開構成における機器の長さであってもよく、対応するターゲット位置の寸法は血管部分のターゲット長さである。
【0056】
本方法は、複数のインプラント型医療機器の展開構成を、インプラント型医療機器の非拘束寸法の順に、好ましくは非拘束寸法が増加する順に、順次シミュレートすることを含むことができる。特に、ターゲット位置がターゲット長さを有する血管部分を含む場合、複数のインプラント型医療機器の展開構成をシミュレートすることは、複数のインプラント型医療機器の非拘束長さが増加する順序で、複数のインプラント型医療機器の展開構成を順次シミュレートすることを含む。非拘束寸法が非拘束長さである例において、本方法は、ターゲット位置の長さ未満である非拘束長さを有する第1の機器を選択すること、および第1の機器の展開構成をシミュレートして、機器の展開長をターゲット長さと比較することを含み、ここで、展開長がターゲット長さ未満である場合、第1の機器と比較して非拘束長さが増加した第2の機器を選択し、選択された機器がターゲット長さに基づいてターゲット長さ範囲内に配置されたと決定されるまで、これらのステップを繰り返す。ターゲット長さ範囲はターゲット長さを中心とすることができ、またはターゲット長さは、ターゲット長さ範囲の下限とすることができる。本方法は、好ましくは、正しい範囲内の展開長を有する1つまたは複数の選択された機器について第2の適合性メトリックを決定することを含む。このプロセスは、他の寸法、例えば、嚢内機器の直径、またはターゲット位置の対応する寸法に対する配置されたインプラント型機器の寸法に使用することができ、座標は、患者の体内に対して定義することができる。
【0057】
複数のインプラント型血管内機器の展開構成を、最短の機器から最長の機器まで(またはより一般的には機器の最短の寸法から最長の寸法まで)順次シミュレートすることによって、シミュレーションプロセスの計算効率が向上する。特に、機器全体を毎回完全に再シミュレートする必要がないため、機器に少し長さを追加した部分のみがシミュレートされる必要がある場合がある。これにより、複数の機器のシミュレーションの計算負荷が軽減される。
【0058】
本方法は、複数のインプラント型医療機器の展開構成をシミュレートする前に、複数のインプラント型医療機器が、動脈瘤(動脈瘤の位置は上記で定義されたように決定されてもよい)に対応するターゲット位置の一部を除いて、3次元モデルのターゲット位置における最大血管直径を決定すること、および候補機器のデータベースにアクセスして、最大血管直径に基づいてターゲット範囲内の非拘束直径を有するデータベース内のインプラント型医療機器としてシミュレートされる複数のインプラント型医療機器を選択することによって選択されることを含むことができる。これにより、最初に直径サイズによって選択することによって、多数の候補機器をフィルタリングするための追加のステップが提供される。この段階では、血管構造の特性および形態、ならびに候補機器の非拘束直径に基づいて機器が選択されるので、シミュレーションは必要ない。したがって、多数の候補機器から最適な機器を決定するプロセスの計算効率が向上する。
【0059】
第2の適合性メトリックに基づいてインプラント型医療機器の第1の選択のうち最適な機器を決定することは、上述の適合性メトリックを決定する方法を使用して決定することができる。特に、第2の適合性メトリックは、密着指数、ランディングゾーン指数、ポロシティ、血流改変、閉塞値、血管形状値のうちの1つ以上を含んでもよい。好ましい例では、本方法は、ターゲット位置の対応する寸法に対する展開寸法の対応関係に基づいて複数のインプラント型医療機器の選択を決定し、次いで、最適な機器を決定するために、選択されたインプラント型医療機器の各々についての密着指数を決定することを含む。
【0060】
任意選択的に、患者の血管構造内のターゲット配置位置に最適な機器を決定するために複数のインプラント型医療機器の配置をシミュレートするための機器は、適合性メトリックに基づいて複数のシミュレートされたインプラント型医療機器をランク付けすることをさらに含む。
【0061】
任意選択的に、複数のインプラント型医療機器は、ブレイデッドステントなどのステントを含む。あるいは、複数のインプラント型医療機器は、インプラント型血管内機器、嚢内機器、血流改変機器、またはインプラント型神経血管医療機器を含む。インプラント型神経血管医療機器は、例えば、動脈ステント、頭蓋内ステント、または頸動脈ステントなどのステント、塞栓コイル、動脈瘤コイル、フローダイバータ、塞栓保護機器、または神経血栓摘出機器などを含むことができる。カテーテル、バルーンシステム、ガイドワイヤ、またはステントリトリーバーなどのインプラント型医療機器を埋め込むときに使用される機器またはツールは、ターゲット位置における複数のインプラント型医療機器の展開構成をシミュレートするときに追加的にシミュレートすることができる。前記機器またはツールは、インプラント型医療機器を埋め込むときのそれらの使用、またはインプラント型医療機器の埋め込みを中止するときのそれらの使用をシミュレートするためにシミュレートされてもよい。代替的にまたは追加的に、前記機器またはツールは、インプラント型医療機器の配置のシミュレーションを支援するようにシミュレートされてもよい。
【0062】
いくつかの例では、複数の機器は、複数のインプラント型機器の種類、例えば、血流改変機器および嚢内機器、または本明細書で言及されるインプラント型医療機器のいずれかのうちの2つ以上を含む。本方法は、異なるインプラント型機器の種類に対する適合性メトリックを決定し、それによって特定の用途に最適な機器の種類を提供することを含んでもよい。これらの例では、好ましくは、適合性メトリックは血流改変メトリックを含み、本方法は、適合性メトリックに基づいて、複数のインプラント型機器の種類から、最適な機器を選択する。
【0063】
本発明の第2の態様によれば、サーバは、本発明の第1の態様の方法およびそのオプション機能を実行するように構成される。
【0064】
本発明の第3の態様によれば、プロセッサによって実行されると、プロセッサに、本発明の第1の態様の方法およびそのオプション機能を実行させる命令を含む非一時的コンピュータ可読媒体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0065】
本発明の実施形態は、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明される:
【
図1】本発明の態様を実施するのに適したシステムを概略的に示す図である。
【
図2】一実施形態によるシステムによって実行される、複数のインプラント型医療機器の配置をシミュレートするための方法を設定するフロー図である。
【
図3】一実施形態によるシステムによって実行される、3次元モデルを作成するための方法を設定するフロー図である。
【
図4a】一実施形態による関心領域の選択のためのユーザインターフェースを示す図である。
【
図4b】3次元モデルの作成プロセス中、特にセグメンテーション中の3次元モデルの例を示す図である。
【
図4c】3次元モデルの作成プロセス中、特に中心線抽出中の3次元モデルの例を示す図である。
【
図4d】インプラント型医療機器の展開構成のシミュレーション中の3次元モデルの例を示す図である。
【
図5a】展開構成におけるインプラント型医療機器と血管構造の壁との間の密着の尺度を決定するときの3次元モデルの例を示す図である。
【
図5b】特に動脈瘤頸部を強調した、密着の尺度を決定するときの3次元モデルの例を示す図である。
【
図6a】血管構造内の嚢状動脈瘤の例を示す図である。
【
図6b】半径の相違にマークが付された血管構造の3次元モデルの例を示す図である。
【
図7a】血管構造の長さに対して中心線半径と断面積半径をプロットしたグラフである。
【
図7b】血管構造内の紡錘状動脈瘤の例を示す図である。
【
図8a】血管構造内に配置されたインプラント型医療機器の例を示す図である。
【
図8b】
図8aで使用されるサイズ比率重み関数のキーを示す図である。
【
図9a】インプラント型医療機器のサイズ要件にマークが付された血管構造のモデルの例を示す図である。
【
図9b】インプラント型医療機器のサイズ要件にマークが付された血管構造のモデルの例を示す図である。
【
図10】患者の血管構造内に特定のインプラント型医療機器を配置するための製造元の推奨事項の例を示す表である。
【
図11】一実施形態による、シミュレーションのためのインプラント型医療機器の選択のためのユーザインターフェースを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0066】
図1は、本発明の実施形態を実施するのに適したシステム100のブロック図を示す。システム100は、メモリデバイス104およびプロセッサ106に通信可能に結合されたサーバ102を含む。
【0067】
図2は、患者の血管構造内のターゲット配置に最適な機器を決定するために、複数のインプラント型医療機器の配置をシミュレートするための方法を示す。
図2の方法は、上述のシステムなどの定義された方法ステップを実行するように構成された任意のプロセッサによって実行することができる。
図3は患者の血管構造の3次元モデルを作成し、インプラント型医療機器、この事例ではステントの展開位置をシミュレートする際に使用されるアルゴリズムを示すフロー図である。ステップ300~306は、
図2に示される本発明による方法のステップ202および204に対応する。次いで、ステント展開のシミュレーション(
図3のステップ307)が複数のインプラント型医療機器の配置位置をシミュレートするように繰り返され、ここで、それぞれについて適合性メトリックが計算され、最適な機器が決定される。
【0068】
シミュレートされる複数のインプラント型医療機器は、候補機器のデータベースおよびそれらの関連する製造元のガイダンスから取得することができる。データベースは、メモリデバイス104上に記憶され、そこから取り出すことができる。データベースは、様々な製造元によって製造された候補機器の様々なモデルを含むことができ、これらの各々について、様々なサイズ(例えば、様々な直径や長さ)を含むことができ、これらの各々は、製造元のガイダンスにおいて指定される、推奨される血管展開直径範囲を有する。関連する製造元のガイダンスは、特定のサイズの血管に必要とされる機器のサイズ、ならびに展開後の機器の長さとその直径との間の関係を含むことができる。機器の拡張が血管の直径によって制限されると仮定することによって、機器の展開長の推定値を得ることが可能である。しかしながら、これは血管が規則的な円形断面を有することを前提とする過度の単純化であり、実際にはそうではない場合がある。したがって、一実施形態では、製造元のガイダンスを使用して、各製造元のモデルから、ターゲット位置における最大血管直径よりも大きい最小直径を有する最初の複数の機器を選択し、長さサイズにわたって連続的に作業する前にシミュレートすることができる。
図10は、患者の血管構造内に特定のインプラント型医療機器を配置するための製造元の推奨事項を示す表の例である。
【0069】
ステップ202では、患者の血管構造に対応する画像データが受信される。画像データは患者の血管構造の一連の2D画像であってもよく、
図3の300に示されるように、単一フレームまたは複数フレームの医用デジタル画像および通信(DICOM)画像の形式で読み込まれてもよい。画像データは、プロセッサ106によってメモリデバイス104から受信されてもよい。画像データは例えば、インターネットなどの公衆ネットワーク、またはプライベートネットワークもしくは仮想プライベートネットワーク、またはデータバスを介して、プロセッサ106に画像データを転送するために、プロセッサ106に通信可能に結合されたメモリデバイス104上に記憶されてもよい。
【0070】
任意選択的に、血管形状の完全な3次元再構築を行ってステップ204に進む前に、画像データに基づいて、最高輝度投影(MIP)モデル、ボリュームレンダリング、または他の3次元レンダリングを作成することもできる。これらの3次元レンダリング技法は、血管形状の実際の再構築の前に画像データの内容を表示するために使用することができる。MIPモデルまたはボリュームレンダリングが作成されると、ユーザ入力、例えば、マウス、トラックパッド、キーボードを使用して、MIPモデルまたはボリュームレンダリングを回転、移動、および/または拡大して、ユーザがモデルのすべての態様を閲覧し、関心領域を選択することを可能にすることができる。
【0071】
図3のステップ301において、領域ボリューム初期化が実行される。このステップでは、関心領域が選択される。選択は、ユーザがユーザインターフェースを使用して関心領域を手動で定義することによって行われてもよく、あるいは関心領域がソフトウェアによって自動的に選択されてもよい。
図4aは、ユーザが関心領域を選択するためのユーザインターフェースの例を示す。ユーザインターフェースは、画像データに対する患者の識別番号、および画像データが撮影された日時を含む、画像データファイルの詳細を左上隅に示す。ユーザインターフェースは、血管形状の初期の3次元レンダリング上に重ね合わされた3次元ボックスをさらに示す。この3次元ボックスは関心領域の選択領域であり、ユーザがモデルの全ての側面を見て、適切な関心領域を選択することを可能にするために、ユーザインプット、例えば、マウス、トラックパッド、キーボードを使用して、回転、移動、および/または拡大することができる。ユーザインターフェースは、関心領域の選択サイズを調整するためのスライドバーを含む右側のウィジェットをさらに含む。
【0072】
ユーザインターフェースは右側の下方に配置されたバナーメニューをさらに含み、これは、ユーザが、画像データの新しいセットを開くこと、関心領域を選択すること、モデルの表示オプションを選択すること、配置するステントを選択すること、プログラムを支援するヒントを選択すること、モデルを保存すること、またはプログラムを終了するなどのオプションを選択するための複数のボタンを含む。配置するステントを選択するオプションがユーザインターフェースにおいて選択される場合、
図11のウィジェットが表示され、これにより、ユーザが機器の製造元のモデル、機器の直径、および機器の長さを選択することができ、シミュレートされるときに機器の展開長が表示される。これらの各々がユーザによって変更されると、
図4dに示されるようなシミュレートされた機器の対応する表示が変更される。
【0073】
関心領域は、インプラント型医療機器を配置することができる患者の血管構造内の選択された領域、例えば動脈瘤の位置である。画像化された領域全体ではなく、患者の血管構造内の関心領域のみに焦点を合わせることによって、処理すべきデータ量が軽減され、それによって、計算コストが削減され、本方法の残りのステップが高速化される。上述のように、例えば、上述のようなROI選択ツールを用いたUIを提供することによって、ユーザによる関心領域の選択を受信するのではなく、関心領域は、ソフトウェアによって自動的に決定されてもよい。例えば、ソフトウェアは画像を検索して、動脈瘤の位置を決定し(例えば、以下で説明する技法のうちの1つを使用して)、特定された動脈瘤の周囲にROIを自動的に定義することができる。複数の動脈瘤または関心領域の可能性がソフトウェアによって特定される場合、ソフトウェアは、ユーザが方法のさらなる処理ステップにおいて意図したROIを選択できるように、いくつかの候補ROIをユーザに提示することができる。
【0074】
関心領域がユーザ選択される場合、関心領域の選択を支援するために、モデルを異なる表示オプションで見ることができる。例えば、(後述するように血管構造の中心線と共に)血管構造のシェルのみが示されるシェルモード(またはアワーグラスモード)、または血管構造全体の鮮明な画像を得るために血管構造を不透明にする不透明モードである。関心領域が選択されたとき、方法はステップ204に進むことができる。
【0075】
ステップ204では、画像データに基づいて、患者の血管構造の3次元モデルが作成される。3次元モデルは術前計画を支援するために血管形状の3次元モデルを再構築するために使用される画像データから、患者の血管構造に関する臨床的に関連する情報を抽出することによって作成されてもよい。3次元モデルはさらに、患者の血管構造の中心線を示してもよい。中心線は血管構造内の血管の中軸を表し、以下に説明するように抽出することができる。中心線半径は、血管の一般的な半径の尺度である。それは、多くの方法で計算することができる。例えば、それは、中心線上の点から関心領域内の患者の血管壁上の最も近い点までの最小距離として定義することができる。それはまた、その円周/断面において、中心線上の点から血管壁上の最も近い点までの平均または最大距離として定義することができる。
【0076】
3次元モデルの作成は、画像データのボリュームレンダリングを、
図3のステップ302に示され、
図4bに示されるように、例えば、前景としての血管および動脈瘤、ならびに背景としての残りのボリュームに対応するボリュームの別々の部分にセグメント化することによって実行することができる。ボリュームの別個の部分は、そのようにラベル付けされてもよく、画像処理中に使用された造影剤を含む血管および動脈瘤によって識別されてもよい。
図4bは血管および動脈瘤を着色することによって前景としてこの分離を示し、残りの部分は背景として指定した3次元モデルの例である。この例の図は血管構造全体の鮮明なイメージを得るために、血管構造を不透明にする不透明モードである。この例は、レンダリングをこのようにセグメント化することの利点を明確に示しており、その結果、患者の血管構造を容易に識別することができる。血管構造の自動化されたセグメンテーションは、以下の方法の1つによって得ることができる:しきい値化、領域拡張、およびアクティブ輪郭法やレベルセット法などの変形可能なモデル。
【0077】
3次元モデルの作成は、
図3のステップ303に示すように、セグメンテーション中に生成されたラベルを患者の血管構造の表面メッシュに変換するために、メッシュ化によってさらに実行される。
【0078】
このステップは、矩形グリッド上、すなわちDICOM画像上でサンプリングされた3次元スカラーフィールドを通じて等値面の多角形表面表現を作成することからなる。メッシュ化には、マーチングキューブアルゴリズムを使用できる。マーチングキューブアルゴリズムは、3次元スカラーフィールドから表面を生成するための反復アルゴリズムである。一実施形態では、3次元スカラーフィールドは、元のDICOM画像の強度、または派生関数、例えば、レベルセットセグメンテーション法から得られたレベルセット関数である。
【0079】
次に、
図3の304に示されるように、良好な品質のメッシュを生成するために、表面を単純化およびクリーンアップするために、生成された表面メッシュに後処理が適用される。メッシュ後処理は、最大の接続コンポーネントを識別するステップ(例えば、グラフ理論、深さ優先探索を使用し、小さな切断されたコンポーネントを破棄する)、三角形の数を減らし、メッシュを簡素化するメッシュ簡素化ステップ(例えば、エッジコラプス法を使用する)、およびメッシュの表面を正規化してノイズを除去するメッシュスムージングステップ(例えば、ラプラシアンスムージングまたは多角形メッシュを滑らかにするのに適した別のアルゴリズムを使用する)を含むことができる。
【0080】
3次元モデルの作成は
図3の305に示され、
図4cによって示されるように、中心線抽出をさらに必要としてもよい。中心線は、例えば、血管構造の中軸を表し、血管の縮小表現と、インプラント型医療機器の模擬配置をガイドする手段を提供してもよい。中心線の抽出は、Antiga,L.,&Remuzzi,A.(2002);Patient-Specific Modeling of Geometry and Blood Flow in Large Arteriesに記載されているように実施することができ、これには、手動でまたは完全に自動化された方法で選択することができる、血管の末端に配置されたソースおよびターゲットシードポイントの指定が必要である。
図4cは、抽出された中心線を、血管構造の中心軸を表す線として示し、血管構造自体を透明なシェルでレンダリングした3次元モデルの例である。この例の図は、血管構造のシェルのみが血管構造の中心線と共に示されるシェルモードである。抽出された中心線は、
図3の306に示されるように、さらに後処理に付されてもよい。点座標および関連する半径は、スムージングおよび再補間によって正規化されてもよい。
【0081】
ステップ206およびステップ307において、血管構造の3次元モデル内のターゲット位置における複数のインプラント型医療機器の展開構成がシミュレートされる。シミュレーションは、機器の拡張の機械的および/または幾何学的シミュレーションを含むことができる。ステップ206および307のシミュレーションは、インプラント型医療機器の1つまたは複数の特性および患者の血管構造の1つまたは複数の特性に基づいて、インプラント型医療機器の拡張の数値シミュレーションを実行することを含んでもよい。インプラント型医療機器の1つまたは複数の特性は、機器の機械的特性、機器の幾何学的制約、または長さ、体積、厚さ、直径、半径、または高さなど、機器の非拘束寸法を含んでもよい。患者の血管構造の1つまたは複数の特性は、構造の幾何学的制約、構造の寸法、または構造の局所形態を含むことができる。数値シミュレーションは、EP3025638「展開前のステントの最終長さを決定するための方法」またはMa,D.,Dumont,T.M.,Kosukegawa,H.et al. High Fidelity Virtual Stenting(HiFiVS) for Intracranial Aneurysm Flow Diversion: In Vitro and In Silico . Ann Biomed Eng 41,2143-2156(2013)に記載されるように、または他のシミュレーション技術によって実行される。数値シミュレーションは、患者の血管構造の形状によって課される制約の下で、インプラント型医療機器の拡張をシミュレートすることを含んでもよい。シミュレーションは、患者の血管構造によってインプラント型医療機器に加えられる力をシミュレートすること、および任意選択で、機器を展開または配置するために使用される送達システム、機器またはツールを含むことができる。本方法は3次元モデルにおいて定義された患者の血管形状によって課される制約内でインプラント型医療機器の拡張構成を数値的にシミュレートすることを含むことができ、数値シミュレーションは、好ましくはインプラント型医療機器の機械的制約、例えば機器のワイヤの編組にも基づく。
【0082】
インプラント型医療機器の展開構成をシミュレートするいくつかの例では、以下のステップを含むことができる:
h.血管構造の局所形態の関数としてステントの長さの変化を示す比率を決定する;
i.血管構造の3次元モデルから3次元中心線を取得する;
j.血管構造の3次元モデルに機器を配置する開始点の位置を定義する;
k.血管構造の中心線を複数のセグメントに分割する;
l.複数のセグメントのうちの第1のセグメントについての前記血管構造の形態の記述パラメータを決定し、記述パラメータは、幾何学的パラメータおよび/または機械的要因を含む;
m.ステップa)の指数比率を用いて、前記第1のセグメントのステントの長さを計算する;
n.ステップf)で計算されたセグメントの前記長さをステントの公称長さから減算して新しい公称長さを取得する;前記新しい公称長さが0と異なる場合、先行するセグメントと連続するセグメントについてステップe)~g)が繰り返される;新しい公称長さがほぼ0である場合、各セグメントの全ての距離が合計され、この合計が展開後の前記ステントの最終長さとなる。
【0083】
ステップa)の比率は、数学的モデリングに基づいて決定することができる。
【0084】
ステップ310において、展開されたステント構成を出力することができる。
図4cは抽出された中心線を、血管構造の中心軸を表す線として示す例示的な3次元モデルであり、血管構造自体の透明なシェルレンダリングと、模擬配置されたインプラント型医療機器をメッシュとして示す。
【0085】
本方法は、シミュレーション中にインプラント型医療機器が配置されるべき血管構造内のターゲット位置を規定することを必要とする。ターゲット位置の性質および定義は、機器の特定の種類およびそれがどのように配置されるかに依存する。例えば、ステントまたは他の種類の血流改変機器の場合、ターゲット位置は、(血管部分が開始位置と終了位置との間の血管部分の長さとして定義される長さを有するように)開始位置および終了位置によって定義される血管構造内の血管部分である可能性が高い。これらは、機器が体内に挿入される進入位置に対する(または血管内の血流に対する)それらの位置に基づいて、遠位および近位位置として定義されてもよい。対照的に、嚢内機器は動脈瘤内で拡張することを目的としているため、ターゲット位置は開始位置と終了位置との間の血管の長さとしてではなく、動脈瘤の体積として定義される場合がある。
【0086】
本実施形態では、ステントのシミュレーションが示されており、ターゲット位置は血管の開始位置と終了位置との間に延びる血管構造内の血管の一部分として定義される。図の例では、これらは遠位および近位位置と呼ばれる。
図4dは、「D」とマークされた中心線上の遠位位置と、「P」とマークされた中心線上の近位位置とを示す。
図9aおよび9bは、「遠位」とマークされた中心線上の遠位位置および「近位」とマークされた中心線上の近位位置をさらに図示する。この例のターゲット位置は、遠位位置と近位位置との間のターゲット長さを有する血管構造の一部である。
【0087】
動脈瘤を含む血管の長さに対応するこの種類のターゲット位置は、代替的な方法で画定されてもよい。例えば、ターゲット位置は、特定された動脈瘤から所定の長さだけ遠位および近位に延在する血管構造の一部として定義されてもよい。いくつかの例では、遠位位置および近位位置(あるいは開始位置および終了位置)は、ユーザインターフェースを使用してユーザによって選択された動脈瘤の位置からの推奨長さに基づいて自動的に選択されてもよい。あるいは動脈瘤が後述するように自動的に検出されてもよく、検出された動脈瘤からの推奨長さが、遠位位置および近位位置を自動的に選択するために使用されてもよい。
【0088】
この例では、遠位位置および近位位置がユーザによって選択され、3次元モデルの中心線上にマークされてもよい。これにより、ユーザは、機器が配置されるべき血管の長さを選択することができる。ターゲット長さはインプラント型医療機器が展開後に短すぎないことを確実にし、本来の目的を十分に果たすことができるように十分な長さにする必要がある。ターゲット長さは、インプラント型医療機器によって遮断されることが意図されていない流れが遮断されないことを確実にするために十分に短くする必要がある。
【0089】
インプラント型医療機器の展開長および展開構成は、中心線によって表される、患者の血管構造の3次元モデル内のインプラント型医療機器の拡張の数値シミュレーションによって得ることができる。特に、展開構成は、患者の血管構造によって生じる幾何学的制約、および/または患者の血管構造によってインプラント型医療機器に加えられる力、および任意選択で送達システムなど、インプラント型医療機器の1つまたは複数の特性、および/または患者の血管構造の1つまたは複数の特性に基づいてシミュレートされる。数値シミュレーションは、EP3025638「展開前のステントの最終的な長さを決定するための方法」に記載されているように、またはMa,D.,Dumont,T.M.,Kosukegawa, H. et al. High Fidelity Virtual Stenting (HiFiVS) for Intracranial Aneurysm Flow Diversion: In Vitro and In Silico. Ann Biomed Eng 41,2143-2156(2013)記載されるように、または他のシミュレーション技術によって、実行される。
【0090】
この方法を使用して、機器の長さ、体積、厚さ、直径、半径、または高さなどの機器の展開寸法は、インプラント型医療機器の完全な配置展開構成を計算する必要なくシミュレーションによって決定でき、必要に応じて後の段階で決定できる。このようにして、2段階のシミュレーションを実行することができ、より少ない計算要件を有する初期シミュレーションを、より広い範囲の機器に対して最初に実行して、機器の1つまたは複数の展開寸法を決定することができる。次いで、選択された数の初期機器に対して、第2の、より計算負荷の高いシミュレーションステップを実行し、最終構成の完全なシミュレーションが実行される。
【0091】
複数のインプラント型医療機器の展開構成がシミュレートされるとき、機器は、ターゲット位置の遠位位置から開始して、近位位置に向かって延在するように配置されてもよい。
【0092】
任意選択的に、血管構造の3次元モデル内の複数のインプラント型医療機器の各々のシミュレートされた展開構成は、ユーザに表示されてもよい。
図4dに示されるように、シミュレートされた展開構成はユーザに表示されてもよい。
【0093】
ステップ208では、各シミュレートされたインプラント型医療機器に対する適合性メトリックが決定される。適合性メトリックは、患者の血管構造のターゲット位置内に配置されたインプラント型医療機器の適合の尺度を提供する。適合性メトリックは、推奨されるステントモデル、長さ、または直径などの、患者の血管構造内でのインプラント型医療機器の配置に関する製造元の推奨事項を任意に考慮することができる。
【0094】
図10は、患者の血管構造内での特定のインプラント型医療機器の配置に関する製造元の推奨事項の例を示す表である。表は、対応する非拘束直径、対応する推奨血管直径、および機器のメッシュ内の対応するワイヤ数を有する、機器モデルの様々な直径オプションを含む。表は、各様々な直径オプションにおける機器モデルの様々な長さオプションと、各オプションの対応する機器モデル番号とをさらに含む。
図9aは、ターゲット位置の近位点における血管径(Dvessel)をさらに示す。
【0095】
適合性メトリックは以下に記載されるように、複数の異なるパラメータを含み、考慮される場合がある。コンピュータで実施される方法は、適合性メトリックに従って最も高いスコアを得た機器に応じて、最適な機器の指示を出力する。任意選択で、いくつかの例では、ユーザは、適合性メトリックが特定のシナリオに対して特に必須のメトリックを有する機器を促進するように、適合性メトリックの異なるパラメータを重み付けすることが可能であってもよい。他の例では、適合性メトリックの様々な構成パラメータの重み付けは、例えば、インプラント型医療機器の種類およびターゲット位置に基づいて、自動的に実行される。
【0096】
適合性メトリックは、(シミュレーションによって予測されるように)展開構成におけるインプラント型医療機器の1つまたは複数の寸法と、ターゲット位置の対応する寸法との間の対応の尺度を含んでもよい。例えば、ターゲット位置が遠位点と近位点との間に画定される血管の長手方向部分である場合(ターゲット位置を画定するためにユーザが選択または自動的に選択することができる)、適合性メトリックは、シミュレーションによって決定される配置された機器の長さと、遠位点と近位点との間の血管の長さとの間の相違の尺度を提供することができる。機器が嚢内機器である場合、寸法は、動脈瘤の測定された直径と比較される、配置された機器の半径または直径であってもよい。あるいは、配置された機器の寸法を決定し、動脈瘤の寸法と比較することができる。寸法は、長さ、体積、厚さ、直径、または他の寸法を含むことができる。適合性メトリックはシミュレートされた展開された寸法と対応するターゲット寸法との間のより密接な一致がより良好な一致を示すように、対応の尺度に依存する。
【0097】
インプラント型医療機器の長さとターゲット位置の長さとの対応の尺度は次の式を使用して計算することができる:
ここで、L
targetはターゲット位置(すなわち、配置のためのターゲット血管セグメント)の長さであり、L
deviceはシミュレーションに基づく機器の展開長である。他の機器寸法の対応関係は、同じ方法で決定され、適合性メトリック内で考慮されてもよい。寸法指数は、正確に適合する機器に対して1の値を提供するために、上で定義されたように1-寸法相違として定義されてもよい。あるいは、重み関数を使用して、寸法が目標寸法に基づいてターゲット範囲内にある場合に1の値を割り当てることができる。
【0098】
適合性メトリックは加えて、または代替的に、展開構成におけるインプラント型医療機器と血管構造の壁との間の密着の尺度を含んでもよい。密着は、例えば、展開構成におけるインプラント型医療機器上の特定の点と、血管構造の壁上の最も近い点など、2つの項目が互いにどれだけ近いかを測定する。インプラント型医療機器が動脈瘤治癒のために使用されているシナリオ例では、不完全な密着により動脈瘤への残存血流が発生し、動脈瘤の閉塞に影響を及ぼし、動脈瘤の治癒を低下させる可能性がある。また、密着不良は、血栓塞栓症の合併症やインプラント型医療機器の移動などの有害事象とも関連している。
【0099】
密着の尺度は、展開構成のインプラント型医療機器の外表面と血管構造の壁との間の距離の尺度を含む。展開構成のインプラント型医療機器の外表面上の複数の点は、インプラント型医療機器の外表面上の複数の点のそれぞれについて、血管構造の壁上の対応する最も近い点まで測定されてもよい。
【0100】
密着の尺度は、血管構造の壁からしきい値内にあるインプラント型医療機器の表面の割合を含む密着指数を含むことができる。
図5aは、血管構造の透明なシェルレンダリングを示す3次元モデルの実例と、模擬配置されたインプラント型医療機器をメッシュとして示す。メッシュは、配置されたインプラント型医療機器の密着が良好な領域と密着が不良な領域をユーザに対して表示するために、様々な色で網掛けされている。
【0101】
代替的に、密着の尺度は、血管構造の壁と接しているインプラント型医療機器の表面の割合を含む密着指数を含んでもよい。一実施形態では、血管構造の壁と接しているインプラント型医療機器の表面積の割合が高いほど、機器はより良好に密着し、より良好に適合する。
【0102】
密着指数の計算において、動脈瘤頸部に対応する領域は、明らかに動脈瘤頸部が良好な密着を有さないので、この計算から除外されるべきである。特に、動脈瘤頸部に近接するインプラント型医療機器の表面積は除外されるべきであり、表面積のこの部位から血管壁までの距離は、密着指数の算出に使用されない。
図5bは、血管構造の透明なシェルレンダリングと、除外されるべき動脈瘤頸部における密着異常の強調された領域を示す3次元モデルの例を示す。動脈瘤頸部に対応する血管構造の部分の検知は、以下に記載されるように決定することができる。
【0103】
血流改変機器の場合、動脈瘤頸部は、血管内から動脈瘤のドーム内に見られる。嚢内機器の場合、動脈瘤頸部は、動脈瘤のドーム内から血管内に見られる。両方の実施形態において、最良の適合のために良好な被覆率および低いポロシティが望まれる。嚢内機器の実施形態では、機器が動脈瘤のドームへの入口を可能な限り遮断するように、機器の高い密着が最良の適合のために望まれる。動脈瘤頸部におけるフローダイバータの密着は、フローダイバータが動脈瘤のドームに入らない(一方、嚢内機器は入る)ため、考慮されない。
【0104】
血管の対応する部分は、血管構造の半径が異常であるターゲット位置における血管構造の部分を決定することによって決定することができる。より具体的には、動脈瘤の位置は、モデル内の血管の半径が血管の残りの部分よりもはるかに大きい場合に識別することができる。測定された血管半径のこれらの急激な変化は動脈瘤に対応する血管の部分を識別するために使用することができ、次いで、血管のこの部分に直接隣接する配置された機器の表面積の部分を算出から除外することができる。
【0105】
半径におけるこの種の偏差は、多くの方法で決定することができる。例えば、動脈瘤に対応する血管の部分は血管構造の半径がターゲット位置の残りの部分の平均よりもしきい値量を超えて大きい、ターゲット位置における血管構造の部分を決定することによって決定されてもよい。血管構造の半径に大きな相違がある場合、この決定された部位に嚢状動脈瘤が位置すると仮定することができる。
図6aは、血管構造内の動脈瘤の例を示す。血管の中心線は点線で示され、内側リング(点線を中心とする)は中心線半径を表す。上述のように、中心線半径は、血管部分の平均半径の尺度を提供する。1つの近似は、中心線と血管壁との間の最小距離を使用することによって計算される。外側リング(内側リングを囲む)は、モデル内の選択された位置における血管構造の実際の半径を表す。中心線半径と実際の半径との大きな相違により、嚢状動脈瘤が存在することは明らかである。
【0106】
図6bは、血管構造の中心線の拡大によって示される半径の相違を有する3次元モデルの例を示す。図示された半径の相違は、以下の式を用いて得られる:
ここで、absは絶対値であり、R
centerlineは中心線半径であり、R
cross-sectionは断面が取られている点における半径である。
【0107】
代替的に、部分は血管構造の断面積半径がターゲット位置の残りの部分の中心線半径よりもしきい値を超えて大きい、ターゲット位置における血管構造の部分を決定することによって決定されてもよい。血管構造の半径に大きなピークがある場合、正常な生理学的動脈は遠位にゆっくりと先細るので、この決定された部位に紡錘状動脈瘤が位置すると仮定することができる。
図7aは、血管構造の長さにわたって中心線半径および断面積半径をプロットしたグラフである。中心線半径と比較して断面積半径における大きなピークは、紡錘状動脈瘤がこのピークの長さにわたって位置することを示す。グラフ上の垂直線は、この検出された紡錘状動脈瘤の境界を示す。
図7bは、血管構造、中心線、および中心線上のそれぞれの点における断面積半径を示すために様々な色で網掛けされたメッシュの透明なシェルレンダリングを示す3次元モデルの例を示している。この図は、メッシュの陰影の変化によって特徴付けられる、血管構造内の紡錘状動脈瘤を示す。
【0108】
密着指数は、動脈瘤に対応する血管構造の決定された部分に対応するインプラント型医療機器の外表面の部分を除外することによって計算されてもよい。最後に、インプラント型医療機器の外表面の残りの部分の密着指数を計算する。
【0109】
上述のように、
図5aおよび5bは、フローダイバータ機器の場合の密着指数の計算を示す。フローダイバータ機器の密着指数は、以下の積分を使用して計算することができる:
ここで、S
FDは配置されたフローダイバータ機器の総表面積であり、S
Neckは動脈瘤頸部に対応する血管の表面積であり、Γ
FDはフローダイバータ機器の表面積であり、Γ
Neckは動脈瘤頸部に対応する(すなわち、隣接する)フローダイバータ機器の表面積であり、GAはabs(d
FD-Wall)≦d
thresholdであるとき1であり、GAは(abs(d
FD-Wall)>d
threshold)であるとき0である。
【0110】
任意選択で、適合性メトリックはインプラント型医療機器によって覆われた動脈瘤頸壁の割合の尺度を提供する頸部被覆値を含み、この尺度は、好ましくはこの実施形態では嚢内機器である。頸壁は、動脈瘤頸部からしきい値内にある血管構造の壁の範囲として分類することができる。一例では、インプラント型医療機器によって覆われる動脈瘤の頸壁のパーセンテージが高いほど、機器の適合性は高くなる。あるいは、頸部被覆値は、インプラント型医療機器(好ましくはこの実施形態では嚢内機器である)と接触しているか、またはそのしきい値距離内にある動脈瘤頸壁のパーセンテージの尺度を提供する。一例では、動脈瘤頸壁がインプラント型医療機器と接触しているか、またはインプラント型医療機器のしきい値範囲内にある割合が高いほど、機器の適合性は高くなる。
【0111】
任意選択的に、適合性メトリックは、インプラント型医療機器が動脈瘤頸部の外側から血管内に突出する距離の尺度となる頸部突出値を含む。頸部突出値は好ましくは最適な適合のためにはゼロであり、頸部突出値がゼロに近いほど、機器はより良好に適合する。この実施形態では、インプラント型医療機器は好ましくは嚢内機器である。
【0112】
適合性メトリックは、加えて、または代替として、配置された機器によって達成される血流改変の尺度を提供する血流改変指数を含んでもよい。血流改変指数は、配置されたインプラント型医療機器によってより多量の血流改変が達成される、より適合性の高い機器を示す可能性がある。例えば、血流改変指数はシミュレートされた血流改変がしきい値を上回るか、または所定の範囲内にある場合に、最適な血流改変を示す場合がある。具体的には、血流改変メトリックは、配置されたインプラント型医療機器によって達成される動脈瘤への血流の減少の尺度を提供することができる。
【0113】
血流改変の程度を計算するために、本方法は2つの数値流体力学(CFD)シミュレーション、すなわち、基線として機能し、インプラント型医療機器が装着されていない患者の血管構造内の血流の第1のシミュレーションと、インプラント型医療機器が最終構成で配置されたときのシミュレーションを比較することを含んでもよい。次いで、最大速度ならびに空間的に平均化された速度(両方とも動脈瘤内で計算される)を使用して、動脈瘤内の血流減少率を計算することができる。
【0114】
血流減少を計算するための別の方法は、動脈瘤頸部(動脈瘤頸部がポロシティ指数に関して上述したように位置している可能性がある)を通る総流量(m3/s)を直接測定し、次いで、機器を用いたシミュレーションと用いないシミュレーションとの間の減少率を計算することによって達成することができる。
【0115】
ナビエ・ストークス方程式を解くことができる周知のCFD法(例えば、有限体積法、有限要素法、スペクトル要素法、格子ボルツマン法)のいずれかを使用して、上述の2つのシミュレーションを実行することができる。
【0116】
適合性メトリックは追加的にまたは代替的に、ランディングゾーン指数を含むことができる。ランディングゾーン指数は、インプラント型医療機器のランディングゾーンの長さの尺度を含む。ランディングゾーンは
図8aにおいてS
dおよびS
pとラベル付けされているように、ターゲット位置における動脈瘤頸部のすぐ遠位および近位に位置付けられた、配置されたインプラント型医療機器の長手方向部分を含む。好ましくは、遠位および近位ランディングゾーンが壁との良好な密着を確実にするために、直線状の血管部分にある。ランディングゾーンは、ランディングゾーンの長さがしきい値を上回る、適合性の高い機器を示す。ランディングゾーンの長さがしきい値を超えると、良好な基点、良好な密着が保証され、機器の移動が回避される。
図8aは血管構造の輪郭と、配置されたインプラント型医療機器を表すメッシュを示すモデルの例を示し、メッシュは、インプラント型医療機器の各部に適用されるサイズ比率重み関数(
図8bに示される)を示すために網掛けされる。近位ランディングゾーンはS
pとマークされたボックスによって図示され、遠位ランディングゾーンはS
dとマークされたボックスによって図示される。
図8bは以下で説明するように、適用されるサイズ比率重み関数を示すために使用されるシェーディングのキーを示す。
【0117】
ランディングゾーンにおける密着は、インプラント型医療機器の直径とランディングゾーンにおける血管の直径との間の比を使用して、サイズ比を決定することによって計算することができる。このサイズ比は、インプラント型医療機器がその特定の血管セグメントに対してどの程度適切にサイズ設定されているかを判断するのに役立つ。
【0118】
ランディングゾーン指数は、以下の2つの積分を用いて算出することができる:
ここで、S
pは
図8aに示されるような近位ランディングゾーンのサイズ指数であり、S
dは
図8aに示されるような遠位ランディングゾーンのサイズ指数であり、L
optは
図8aに示されるような特定のインプラント型医療機器(例えば、製造元のガイダンスに示されるよう)のための最適ランディングゾーン長であり、L
deviceは配置されたインプラント型医療機器の長さであり、Wfは、
図8bに示されるような重み関数である。ランディングゾーンのサイズ指数Sは、次式に従って計算される:
インプラント型医療機器のサイズおよび長さが適切である場合、Sは1に向かう傾向がある。インプラント型医療機器のサイズが適切ではない、またはランディングゾーンが短すぎる場合、Sは0に向かう傾向がある。
【0119】
重み関数Wfは、領域に1未満の重みを割り当てることによって、インプラント型医療機器の領域にペナルティを課すために使用することができる。
図8bは、
図8aで使用されているサイズ比率重み関数のキーを示している。この例では、重み関数が以下のように構成される:重み関数は、インプラント型医療機器の展開直径がランディングゾーン内の血管の直径に対して5%未満の大きさである場合、0の重みを割り当てる。重み関数は5%~0%の過小サイズ(すなわち、機器の直径が血管直径の0%~5%小さい場合)の間で線形に増加する関数であり、5%小さい場合は0の値をとり、直径が完全に一致する場合は1の値をとる。重み関数は、機器ランディングゾーン内の血管のサイズに基づいて、インプラント型医療機器の展開直径が0%~20%の大きさである場合、1の重みを割り当てる。重み関数は、20%~60%の過大サイズ(すなわち、配置された機器の直径が血管直径の20%~60%大きい場合)の間では線形に減少する関数であり、20%の過大サイズで1、60%の過大サイズで0の値をとる。重み関数は、機器のサイズが60%以上の過大サイズの場合、重み0を適用する。上記のように、このサイズ不足またはサイズ過剰は、血管の局所直径に対する機器の展開直径に基づいて決定される。上記の重み関数は、過小サイズまたは過大サイズの場合の機器の有害な影響を考慮に入れるために使用することができる関数の一例にすぎない。一般に、配置された直径が血管直径に対応するか、またはわずかに大きい場合、メトリックは、機器が良好に適合していることを示すはずである。
【0120】
適合性メトリックは追加的または代替的に、ポロシティ指数を含んでもよい。ポロシティ指数は、展開構成におけるインプラント型医療機器のポロシティの尺度を含む。ポロシティは、メッシュの全体積に対するメッシュ内の空隙の体積の比である。インプラント型医療機器のポロシティは、機器のメッシュがその展開構成に応じて、様々な領域に形を変え、拡張し、収縮することにつれて変化する可能性がある。ポロシティ指数は、配置されたインプラント型医療機器の外表面の選択された部分においてポロシティがしきい値を下回る、より適合性の高い機器を示すことができる。配置されたインプラント型医療機器の外表面の選択された部分は動脈瘤頸部(すなわち、
図5bのΓ
neck)に対応する表面積の部分であってもよい。頸部領域の低ポロシティは、動脈瘤の閉塞を早める。ポロシティは、例えば、機器を圧縮するために、展開中に多少の「プッシュプル(push-pull)」(すなわち、配置システムを用いてユーザによって加えられる力)を加えることによって制御することができる。前記「プッシュプル」力は、様々な領域に機器を収縮または拡張させるために、配置されたインプラント型医療機器を配置システムと共にユーザが押したり引いたりして加えることができる。これにより、様々な領域における機器のメッシュの密度が変化し、機器のポロシティを制御できるようになる。
【0121】
ポロシティ指数は、動脈瘤に対応する血管構造の部分を決定することによって計算されてもよい。この部分は、血管構造の半径がターゲット位置の残りの部分の平均よりもしきい値量を超えて大きいターゲット位置における血管構造の部分(またはより具体的には、密着指数に関して上述した方法のうちの1つ)を決定することによって決定されてもよい。さらに、動脈瘤に対応する血管構造の決定された部分に対応する、配置されたインプラント型医療機器の外表面の部分を選択する。最後に、配置されたインプラント型医療機器の外表面の選択された部分のポロシティを決定する。これは、配置されたインプラント型医療機器の構成をシミュレートし、メッシュの総体積に対するメッシュ内の空隙の体積の比を計算することによって決定することができる。上記のように、重み関数を適用して、ポロシティが最適範囲内である値1、ポロシティがしきい値未満またはしきい値を上回る値0を適用し、線形関数を適用して、ポロシティが最適範囲のちょうど外側である値0と1との間で変化する値を適用することができ、これは、ランディングゾーン指数に関して上記で説明した通りである。
【0122】
あるいは、動脈瘤頸部に対応する血管の一部分を決定し、動脈瘤頸部開口部の断面領域にわたってポロシティの平均を計算することによって、ポロシティ指数を計算することができる。動脈瘤頸部開口部の断面領域全体にわたるポロシティの平均が低いほど、機器の適合性は良好である。例えば、動脈瘤頸部開口部を可能な限り広く覆うほど、機器の適合性が向上する。一例において、いくつかの嚢内機器のポロシティは上部/下部においてより低いため、理想的にはこれらの低ポロシティ面が動脈瘤頸部に対して垂直に配置され、被覆される頸部壁の面積が大きいほど、頸部開口部におけるポロシティは低くなり、機器の適合性が向上する。
【0123】
適合性メトリックは追加的または代替的に、閉塞値を含んでもよい。閉塞値は、血管構造の3次元モデル内で、配置されたインプラント型医療機器が側枝を閉塞する程度の尺度を提供する。閉塞値は、閉塞される側枝が少なく、血流障害が制限される、より適合性の高い機器を示す。インプラント型医療機器が短いほど血流障害が最大限制限され、閉塞される側枝の数も少なくなるため、好ましい。
【0124】
適合性メトリックは追加的または代替的に、血管形状値を含んでもよい。血管形状値は、配置されたインプラント型医療機器が、血管構造の3次元モデルにおいて、しきい値以下の曲率半径を含む1つ以上の屈曲部を横切って延在する度合いの尺度を提供する。血管形状値は、曲率半径しきい値未満の屈曲が少なく、機器の適合性が向上していることを示す。血管屈曲部の内側にインプラント型医療機器を配置することは困難であり、インプラント型医療機器が屈曲していると完全な拡張が困難になるため、密着性が悪くなる可能性がある。したがって、少ない血管屈曲部を覆うより短い配置機器の方が、適合性が良く、好ましい。本明細書に記載される適合性メトリックパラメータの各々と同様に、血管形状値および閉塞値は、1~0の値を取ることができ、1は最適な機器を示し、0は適合性の低い機器を示す。
【0125】
任意選択で、適合性メトリックまたはその構成パラメータのうちの任意の1つの表示は、血管構造の3次元モデル内の複数のインプラント型医療機器の各々の対応するシミュレートされた展開構成上に表示されてもよい。適合性メトリックの表示は、3次元モデル内の各ポイントにおける配置されたインプラント型医療機器の適合性を示す場合がある。これは、配置されたインプラント型医療機器のフィット感や適合性が良好でない赤色領域マーク、および配置されたインプラント型医療機器のフィット感や適合性が良好である緑色領域マーク領域と共に、カラーレンジとして表示されてもよい。
【0126】
適合性メトリックは、数値として要約され、機器または複数の機器のモデルの隣に表示される場合がある。特に、複数のインプラント型医療機器をシミュレートし、適合性メトリックを決定した後、機器のうちの1つまたは複数を、適合性メトリックを表す数値と共に表示することができる。機器は、適合性メトリックに基づいて、適合順にランク付けされ、リスト化することができる。
【0127】
特定の実施形態では、適合性メトリックの各構成パラメータが0と1との間の値をとり、1は良好な適合を示し、0は適合性が低いことを示す。適合性メトリックは構成パラメータの合計に基づいて計算されてもよく、構成パラメータは任意選択で、計算におけるそれらの相対的な重要性を選択するために係数によって重み付けされてもよい。
【0128】
任意選択的に、この表示に基づいて、ステップ308で設定されるように、ユーザは、シミュレートされたインプラント型医療機器の配置位置を移動させ、インプラント型医療機器の適合性を改善するためにシミュレーションを再実行することができる。具体的には、特定の実施形態ではユーザが開始点および終了点(代替的に、近位点および遠位点)を調整して、機器が配置されるべきターゲット位置を変更することができる。これは、開始点および終了点(例えば、
図4dに表示されるP点およびD点)をドラッグすることによって達成されてもよく、これにより、シミュレーションが再実行され、適合性メトリックが再計算される。代替的に、機器の適合性メトリックがその配置位置を動かすことによって改善される場合に、これは自動的に行われてもよい。例えば、シミュレーションは最適な位置を決定するために、ターゲット位置を自動的に変更することができる。
【0129】
ステップ210では、適合性メトリックに基づいて、最適なインプラント型医療機器の指示が出力される。上述のように、適合性メトリックは、配置された機器の寸法とターゲット位置の対応する寸法との間の対応の尺度(寸法指数)、展開構成におけるインプラント型医療機器と血管構造の壁との間の密着の尺度(密着指数)、ランディングゾーン指数、ポロシティ指数、血流改変指数、閉塞値、頸部被覆値のうちの1つ以上を含んでもよい。最適なインプラント型医療機器の指示は、インプラント型医療機器の製造元、インプラント型医療機器の製造元モデル、直径、長さ、機器が作製される材料、または血管構造内での機器の配置など、インプラント型医療機器の1つ以上の識別子を含んでもよい。指示は代替的に、それらの個々の適合性メトリックに基づいてランク付けされた、複数の最適なインプラント型医療機器の指示であってもよい。指示は、ユーザが解釈するのに適した形式でディスプレイ上に出力されてもよい。
【0130】
代替実施形態では、複数のインプラント型医療機器の第1の選択が第1の適合性メトリックに基づいて決定される。次いで、インプラント型医療機器の第1の選択のうち最適なインプラント型医療機器が、第2の適合性メトリックに基づいて決定される。この決定は、上述の決定方法、特にステップ208およびステップ210に記載されている決定方法を使用して実行することができる。第1の適合性メトリックおよび第2の適合性メトリックに基づいて、この最適なインプラント型医療機器の指示が出力される。指示は、ユーザが解釈するのに適した形式でディスプレイ上に出力されてもよい。
【0131】
まず、第1の適合性メトリックを使用して複数のインプラント型医療機器を第1の選択に絞り込み、次いで、第2の適合性メトリックを使用してさらに絞り込むことによって、最適な機器の決定をより計算的に効率的に行うことができる。一例では、第1の適合性メトリックは、インプラント型医療機器の長さおよび直径の適切な範囲を決定すること、または展開構成におけるインプラント型医療機器の長さとターゲット位置のターゲット長さとの間の対応の尺度などの、計算的に単純な計算である。第2の適合性メトリックは、その後、展開構成におけるインプラント型医療機器と血管構造の壁との間の密着の尺度のうちの1つまたは複数、ランディングゾーン指数、ポロシティ指数、血流改変指数、閉塞値、頸部被覆値、頸部突出値、および血管形状値などの、より計算コストの高い計算を含む場合がある。計算コストの高い計算を行う前にインプラント型医療機器の選択がすでに絞り込まれているため、この方法は計算効率が高くなる。しかしながら、第1および第2の適合性メトリックは、上述の適合性メトリックパラメータのうちの任意の1つまたは複数に基づいている場合がある。
【0132】
一実施形態では、シミュレートされる複数のインプラント型医療機器は、まず、動脈瘤に対応するターゲット位置の一部分を除いて、3次元モデルのターゲット位置における最大血管直径を決定することによって選択されてもよい。次に、候補機器のデータベースにアクセスし、複数のインプラント型医療機器は、最大血管直径に基づいて、ターゲット範囲内の非拘束直径を有するデータベース内のインプラント型医療機器を決定することによって選択される。
図9aは、ターゲット範囲を決定するために使用される血管内の近位位置における血管直径を示す。ターゲット範囲は
図10に示されているような、血管の直径サイズに使用される機器の直径を定義する製造元のガイダンスによって定義される場合がある。一般に、機器の直径は、最大血管直径以上であるべきである。したがって、ターゲット範囲は、最大血管直径に等しい最小境界と、最大血管直径の追加のパーセンテージによって決定される最大境界とを有する場合がある。
【0133】
好ましくは、選択された複数のインプラント型医療機器は、良好な密着を確実にするために、最大血管直径を超える最小の非拘束直径を有する。シミュレートされる選択された複数のインプラント型医療機器は、直径および長さに関して、初期のサイズの機器の周りをサンプリングすることによって拡張することができる。
【0134】
第1の適合性メトリックに基づく複数のインプラント型医療機器の第1の選択の決定は、複数のインプラント型医療機器の展開構成をシミュレートすることと、展開構成におけるインプラント型医療機器の長さとターゲット位置のターゲット長さとの間の差を決定することとを含む。
【0135】
複数のインプラント型医療機器の展開構成のシミュレーションは、インプラント型医療機器の非拘束長さの順に順次実行されてもよい。一例では、機器の展開長が血管部分よりも長くなるまで、選択された直径を有する最短の機器から選択された直径を有する最長の機器まで、展開長が増加する順序で順次実行されてもよい。別の例では、順序は、選択された直径を有するターゲット長さよりもわずかに短い長さを有する機器から、選択された直径を有する最も長い機器まで、長さが増加する順序であってもよい。最短機器から最長機器まで順次複数のインプラント型医療機器の展開構成をシミュレートすることによって、シミュレーションプロセスの計算効率が向上する。これは、機器全体が毎回完全に再シミュレートされる必要がないためであり、機器に少し長さを追加した部分のみをシミュレートすればよいためである。これにより、複数の機器のシミュレーションの計算負荷が軽減される。
図9aおよび9bは、機器の展開長が
図9bのL
vesselとマークされた血管部分よりも長くなるまで、機器を徐々に長く配置する例を示す。
【0136】
第1の適合性メトリックに基づく複数のインプラント型医療機器の第1の選択の決定は、展開構成におけるインプラント型医療機器の長さとターゲット位置のターゲット長さとの間の差が長さ差しきい値未満である複数のインプラント型医療機器の第1の選択を決定することをさらに含む。
【0137】
2段階のプロセスにおいて2つの適合性メトリックを使用する方法の特に有利な実装は、以下のように説明される。
【0138】
まず、上述したように、血管構造のモデルから、ターゲット位置内の最大血管径を決定する。これは、動脈瘤を含む血管の一部を除外する。動脈瘤は(例えば、中心線半径と比較した)血管の半径の相違に基づいて、上述のように識別されてもよい。したがって、最大血管直径は、動脈瘤頸部または任意の分岐部を除いた最大血管直径である。
【0139】
第2に、少なくとも1つの機器がデータベースから選択され、機器モデルは、最大血管直径よりも大きい直径を有する。上述のように、データベースは、1つまたは複数の異なるインプラント型機器モデルを含む。これらの各々のモデルは、様々な直径サイズの範囲で、各直径サイズにおいて、様々な長さで利用可能である。したがって、その直径における長さの範囲のその後のシミュレーションのために、適切な直径を有する単一の機器が選択されてもよい。より好ましくは、様々な長さで後続のシミュレーションに進むために正しいサイズの直径を有する多数の機器が選択される。これらは、ターゲット血管に適した直径を有する、様々な製造元からの様々な異なるモデルに対応してもよい。それらはまた、後続のシミュレーションに引き継ぐために同じモデルの様々な直径サイズを含んでもよい。特に、ソフトウェアは、最大直径を上回る最小直径を有する機器を選択するだけでなく、任意選択で、指定された直径範囲内のすべての機器を選択することができる。このようにして、各モデルの直径サイズを、後続のシミュレーションに引き継ぐことができる。直径範囲は、選択される機器の数を変えるために変更することができる。このステップの終わりに、方法は1つ以上の機器、好ましくは、同じ直径を有する異なるモデル、異なる直径サイズを有する単一のモデル、または複数の異なる直径サイズを有する複数の異なるモデルである複数の機器を識別し、これらはすべて、必要な直径範囲の基準を満たす。
【0140】
第3に、これらの複数の機器の各々について、初期長さサイズがターゲット位置の長さよりも小さい場合、初期長さサイズが選択される。最小の利用可能な長さサイズは初期長さサイズとして選択されてもよく、あるいはターゲット位置よりも短いパーセンテージ値または絶対値である長さサイズが選択される。次に、展開構成は、展開長を決定するために、初期長さサイズについてシミュレートされる。展開長がターゲット位置の長さ(「ターゲット長さ」)のターゲット範囲内にある場合、機器(すなわち、特定のモデル、直径サイズ、および長さ)は、第2の適合性メトリックの決定に進む。このように、展開長とターゲット長さとの間の対応は第1の適合性メトリックと考えることができ、この場合、これが要件を満たす場合にのみ、第2の適合性メトリックの計算に進む機器である(計算負荷が大きくなる場合がある)。展開長がターゲット長さ範囲内に収まらない場合、増加した長さサイズがシミュレートされ(例えば、初期長さから次の長さサイズ)、それがターゲット範囲内に収まるかどうかが決定される。上述のように、長さサイズをこのように段階的に増やすと、既にシミュレートされた機器上に、小さな追加のコンポーネントを追加するだけで済むため、計算効率が高くなる。機器の長さサイズを増加させ、再シミュレーションするプロセスは、機器(そのモデルおよび直径)が第1の要件(長さ対応)を満たすと判断されるまで継続される。次に、このプロセスを、残りの複数の機器(異なるモデルおよび/または異なる直径サイズ)の各々について繰り返して、第2の適合性メトリックが決定される複数の機器の選択を決定する。
【0141】
第4のステップでは、次に、長さ要件を満たす選択された複数の機器の各々がシミュレートされ、展開構成および第2の適合性メトリックの計算を決定する。これは、例えば、密着指数、ランディングゾーン指数、またはポロシティ指数の正確な尺度を決定するために、機器上の多数のポイントを計算しなければならない、より計算負荷の高い計算である場合がある。第2の適合性メトリックは、選択された機器の各々について計算され、最適な機器または複数の最適な機器のランキングがそれらの適合性メトリックおよび/または構成パラメータの数値と共に表示される。
【0142】
代替実施形態では、ステップ210の代わりに、複数のシミュレートされたインプラント型医療機器が、ステップ208で決定された個々の適合性メトリックに基づいてランク付けされる。ユーザには、ユーザが解釈するのに適した形態で機器のランキングが提供される。任意選択的に、機器のランク付けが特に必須のメトリックを有する機器を優先できるように、ユーザはポロシティ指数などの適合性メトリックの様々な側面に重み付けすることができる。
【0143】
本開示の態様を詳細に説明してきたが、添付の特許請求の範囲に定義される本開示の態様の範囲から逸脱することなく、修正および変形が可能であることは明らかであろう。本開示の態様の範囲から逸脱することなく、上記の構成、製品、および方法において様々な変更を行うことができ、上記の説明に含まれ、添付の図面に示されるすべての事項は、限定的な意味ではなく、例示的なものとして解釈されるべきであることが意図される。
【0144】
例えば、図に示される例は方法を示すためにステントの例を使用するが、本方法は他の種類のインプラント型機器にも等しく適用可能である。例えば、本方法は、動脈瘤内に埋め込むための嚢内機器にも同様に適用することができる。上記パラメータの各々は、嚢内機器について計算されてもよい。この場合、ターゲット血管位置の長さに対する機器の「長さ」ではなく、他の寸法が使用される。特に、動脈瘤の内部形状および機器の対応する寸法を画定する3つの寸法である。
【0145】
上述のプロセスは、コンピュータを使用して実施することができることが理解されるのであろう。ここで、「コンピュータ」は、広義にはデジタルデータ上で動作することができる処理リソースの任意の集合を指すと理解される。これには、ラップトップ、デスクトップコンピュータ、タブレット、携帯電話などの従来の物理コンピュータ、およびクラウドベースの仮想マシン、サーバ、サーバクラスタなどの仮想コンピュータも含まれる。
【0146】
本明細書において、「非一時的コンピュータ可読媒体」という用語は、コンピュータ可読命令、データ構造体、プログラムモジュールおよびサブモジュール、または任意の機器内の他のデータなど、情報の短期および長期記憶のための任意の方法または技法で実装される任意の有形のコンピュータベースの機器を表すものとする。したがって、本明細書で説明する方法の任意の1つまたは複数のステップは、限定はしないが、記憶装置および/またはメモリデバイスを含む、有形の非一時的コンピュータ可読媒体中で実施される実行可能命令として符号化されてもよい。そのような命令はプロセッサによって実行されると、プロセッサに、本明細書で説明する方法の少なくとも一部を実行させる。さらに、本明細書で使用される場合、「非一時的コンピュータ可読媒体」という用語は、限定はしないが、揮発性および不揮発性媒体を含む非一時的コンピュータ記憶装置、ならびにファームウェア、物理および仮想記憶装置、CD-ROM、DVD、およびネットワークまたはインターネットなどの任意の他のデジタルソースなどの取り外し可能および非取り外し可能媒体、ならびにまだ開発されていないデジタル手段を含む、すべての有形のコンピュータ可読媒体を含み、唯一の例外は一時的な伝搬信号である。
【0147】
前述の明細書に基づいて理解されるように、本開示の上記の実施形態はコンピュータソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、またはそれらの任意の組合せもしくはサブセットを含むコンピュータプログラミングまたはエンジニアリング技法を使用して実装されてもよく、技術的効果はインプラント型医療機器の展開の計画を可能にすることであり、その結果、臨床医は壁の密着、ポロシティ、血流障害、および血管の形状などの配置のための重要な要素の多くを考慮することができる。さらに、インプラント型医療機器の展開計画を実行するための計算効率の良い方法を提供する。コンピュータ可読コード手段を有する、そのような結果として得られる任意のプログラムは1つまたは複数のコンピュータ可読媒体内で具現化または提供されてもよく、それによって、本開示の論じられる実施形態による、コンピュータプログラム製品、すなわち、製造品を作製する。コンピュータコードを含む製造品は、1つの媒体から直接コードを実行することによって、1つの媒体から別の媒体へコードをコピーすることによって、またはネットワークを介してコードを送信することによって、製造および/または使用することができる。
【国際調査報告】