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特表2025-501329新規なPDL1単一ドメイン抗体の開発
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-17
(54)【発明の名称】新規なPDL1単一ドメイン抗体の開発
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20250109BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20250109BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20250109BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20250109BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20250109BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20250109BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20250109BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20250109BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20250109BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250109BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20250109BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20250109BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALN20250109BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61P35/00
A61K48/00
A61K39/395 D
A61K39/395 E
A61K39/395 M
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61K39/395 Y
C12N5/0783
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024540548
(86)(22)【出願日】2022-12-30
(85)【翻訳文提出日】2024-09-02
(86)【国際出願番号】 CN2022144146
(87)【国際公開番号】W WO2023125973
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】202111672054.9
(32)【優先日】2021-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524248957
【氏名又は名称】パーソンゲン バイオセラピューティクス(スーヂョウ)カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】PERSONGEN BIOTHERAPEUTICS(SUZHOU)CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Unit 413,B1 Building,Biobay,No.218 Xinghu Street,Suzhou Industrial Park,Suzhou,Jiangsu 215000,China
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,リン
(72)【発明者】
【氏名】ヨウ,フォンタオ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA13
4C084MA52
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB36
4C085CC22
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE05
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4C085GG08
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
PDL1に対するナノ抗体およびその使用。PDL1に対するナノ抗体およびその配列を提供する。上記ナノ抗体をコードするポリヌクレオチド、相応する発現ベクターおよび当該ナノ抗体を発現することができる宿主細胞、ならびにナノ抗体の生産方法。ナノ抗体は特異的にPDL1に結合することができ、かつ高い親和力を有する;良いPD-1-PDL1遮断活性を有する;ナノ抗体はPD-1およびPDL1経路のみを遮断し、そしてPD-1およびPD-L2経路に影響しないことで、間質性肺炎などの副作用の発生を避け、安全性を向上させた;ナノ抗体はより全面的に免疫系が活性化して腫瘍を殺傷するようにさせ、PD-1に効果がないかPD-1薬剤耐性の患者も治療効果が得られる;PDL1ナノ抗体はPD-1 - PDL1経路を抑制する以外、B7.1およびPDL1の共抑制機能を遮断することで、全面的なT細胞の機能およびサイトカインの生成の活性化に有利で、よってより良い免疫効果が得られる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PDL1に対するナノ抗体であって、前記PDL1に対するナノ抗体のVHH鎖の相補性決定領域CDRが以下の群から選ばれる一つまたは複数であることを特徴とするナノ抗体:
(1) 配列番号7で示されるCDR1、配列番号8で示されるCDR2、および配列番号 9で示されるCDR3;
(2) 配列番号10で示されるCDR1、配列番号11で示されるCDR2、および配列番号 12で示されるCDR3;
(3) 配列番号10で示されるCDR1、配列番号13で示されるCDR2、および配列番号 14で示されるCDR3;
(4) 配列番号10で示されるCDR1、配列番号13で示されるCDR2、および配列番号 15で示されるCDR3;
(5) 配列番号7で示されるCDR1、配列番号16で示されるCDR2、および配列番号 17で示されるCDR3;
(6) 配列番号18で示されるCDR1、配列番号19で示されるCDR2、および配列番号 20で示されるCDR3。
【請求項2】
前記PDL1に対するナノ抗体のVHH鎖は、さらに、フレームワーク領域FRを含み、前記のフレームワーク領域FRは以下の群から選ばれる一つまたは複数であることを特徴とする請求項1に記載のPDL1に対するナノ抗体:
(1) 配列番号21で示されるFR1、配列番号22で示されるFR2、配列番号23で示されるFR3、および配列番号 24で示されるFR4;
(2) 配列番号25で示されるFR1、配列番号26で示されるFR2、配列番号27で示されるFR3、および配列番号 24で示されるFR4;
(3) 配列番号28で示されるFR1、配列番号29で示されるFR2、配列番号30で示されるFR3、および配列番号 24で示されるFR4;
(4) 配列番号31で示されるFR1、配列番号29で示されるFR2、配列番号32で示されるFR3、および配列番号 24で示されるFR4;
(5) 配列番号33で示されるFR1、配列番号22で示されるFR2、配列番号34で示されるFR3、および配列番号 24で示されるFR4;
(6) 配列番号35で示されるFR1、配列番号36で示されるFR2、配列番号37で示されるFR3、および配列番号 24で示されるFR4。
【請求項3】
前記PDL1に対するナノ抗体のVHH鎖のアミノ酸配列は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれることを特徴とする請求項1に記載のPDL1に対するナノ抗体。
【請求項4】
一つまたは複数の請求項3に記載のPDL1に対するナノ抗体を含むことを特徴とするPDL1に対する抗体。
【請求項5】
前記抗体は単量体、二価抗体、および/または多価抗体を含むことを特徴とする請求項4に記載のPDL1に対する抗体。
【請求項6】
請求項1に記載のPDL1に対するナノ抗体、または請求項4に記載のPDL1に対する抗体からなる群から選ばれるタンパク質をコードすることを特徴とするポリヌクレオチド。
【請求項7】
請求項6に記載のポリヌクレオチドを含有することを特徴とする発現ベクター。
【請求項8】
請求項7に記載の発現ベクターを含有するか、あるいはゲノムに請求項6に記載のポリヌクレオチドが組み込まれていることを特徴とする宿主細胞。
【請求項9】
PDL1に対するナノ抗体を生成する方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする方法:
(a) ナノ抗体の生成に適する条件において、請求項8に記載の宿主細胞を培養することにより、PDL1に対するナノ抗体を含む培養物を得る;
(b) 前記培養物から前記のPDL1に対するナノ抗体を単離および/または回収する;ならびに
(c) 任意に、工程(b)得られたPDL1に対するナノ抗体を精製および/または修飾する。
【請求項10】
以下のものを含有することを特徴とする免疫複合体:
(a) 請求項1に記載のPDL1に対するナノ抗体、または請求項4に記載のPDL1に対する抗体;ならびに
(b) 検出可能なマーカー、薬物、サイトカイン、放射性核種、酵素、金ナノ粒子/ナノロッド、磁性ナノ粒子、ウイルスコートタンパク質またはVLP、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる複合部分。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、生物医学または生物製薬の技術分野に属し、具体的に、特異的にPDL1を標的とする単一ドメイン抗体およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
PD-1/PDL1免疫療法(Immunotherapy)は最も成功している腫瘍免疫療法の一つで、腫瘍治療の革命を起こし、癌治療の変革を率いている。免疫チェックポイント阻害剤は十分に人体自身の免疫系を利用して癌に抵抗するようなもので、PD-1/PDL1シグナル経路を遮断することによって癌細胞を死亡させ、多くの種類の腫瘍を治療する潜在能力を持ち、実質的に末期腫瘍患者の生存期間を改善し、腫瘍患者の「特効」薬になっている。
【0003】
現在、国内外において既にいくつかのPD-1抗体およびPD-1阻害剤が市販され、PD-1抗体に類似し、PDL1はPDL1とT細胞の表面のPD-1の結合が媒介する免疫抑制を遮断し、再びT細胞を腫瘍細胞を認識して殺傷するように活性化させることで、腫瘍の生長を抑制することができる。PD-1モノクローナル抗体と違うのは、腫瘍細胞または腫瘍浸潤免疫細胞に発現されたPDL1と結合するが、PD-1モノクローナル抗体はPD-1と結合する。
【0004】
しかしながら、現在のPD-1抗体は以下のことによって制限されている:(1) PD-1抗体はPD-1およびPDL1経路の遮断以外、PD-1およびPD-L2経路に影響する可能性があり、間質性肺炎などの副作用の発生につながる;(2) 一部の患者にPD-1モノクローナル抗体の治療が無効かPD-1薬剤耐性の場合があり、このような患者には、代わる薬物が必要である;(3) PD-1抗体の有効率と安全性はまだ改善が必要である。
【0005】
そのため、本分野では、より良い治療効果が得られ、適用の範囲がより広くかつ安全性がより良い、PD-1/PDL1シグナル経路を抑制する新規な薬物の開発が切望されている。
【発明の概要】
【0006】
発明の概要
本発明の目的は、PDL1に対するナノ抗体およびその使用を提供することにある。
本発明の第一の側面では、PDL1に対するナノ抗体を提供する。
もう一つの好適な例において、前記PDL1に対するナノ抗体は特異的にPDL1に結合することができる。
【0007】
もう一つの好適な例において、前記PDL1に対するナノ抗体の相補性決定領域CDRは、以下の群から選ばれる一つまたは複数である:
(1) 配列番号7で示されるCDR1、配列番号8で示されるCDR2、および配列番号 9で示されるCDR3;
(2) 配列番号10で示されるCDR1、配列番号11で示されるCDR2、および配列番号 12で示されるCDR3;
(3) 配列番号10で示されるCDR1、配列番号13で示されるCDR2、および配列番号 14で示されるCDR3;
(4) 配列番号10で示されるCDR1、配列番号13で示されるCDR2、および配列番号 15で示されるCDR3;
(5) 配列番号7で示されるCDR1、配列番号16で示されるCDR2、および配列番号 17で示されるCDR3;
(6) 配列番号18で示されるCDR1、配列番号19で示されるCDR2、および配列番号 20で示されるCDR3。
【0008】
もう一つの好適な例において、上記アミノ酸配列のうちの任意の一つのアミノ酸配列は、さらに、任意に少なくとも1個(たとえば1-3個、好ましくは1-2個、より好ましくは1個)のアミノ酸の付加、欠失、修飾および/または置換を経たもので、かつPDL1との特異的結合能力を維持できる誘導配列を含む。
【0009】
もう一つの好適な例において、前記の少なくとも1個のアミノ酸の付加、欠失、修飾および/または置換を経ており、かつPDL1との特異的結合能力を維持できる誘導配列は、相同性または配列同一性が少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%のアミノ酸配列である。
【0010】
もう一つの好適な例において、前記のCDR1、CDR2およびCDR3はVHH鎖のフレームワーク領域FR1、FR2、FR3およびFR4によって隔てられている。
もう一つの好適な例において、前記PDL1に対するナノ抗体は、さらに、フレームワーク領域FRを含む。
もう一つの好適な例において、前記フレームワーク領域FRは配列番号1-6で示されるアミノ配列由来のものである。
【0011】
もう一つの好適な例において、前記のフレームワーク領域FRは以下の群から選ばれる一つまたは複数である:
(1) 配列番号21で示されるFR1、配列番号22で示されるFR2、配列番号23で示されるFR3、および配列番号 24で示されるFR4;
(2) 配列番号25で示されるFR1、配列番号26で示されるFR2、配列番号27で示されるFR3、および配列番号 24で示されるFR4;
(3) 配列番号28で示されるFR1、配列番号29で示されるFR2、配列番号30で示されるFR3、および配列番号 24で示されるFR4;
(4) 配列番号31で示されるFR1、配列番号29で示されるFR2、配列番号32で示されるFR3、および配列番号 24で示されるFR4;
(5) 配列番号33で示されるFR1、配列番号22で示されるFR2、配列番号34で示されるFR3、および配列番号 24で示されるFR4;
(6) 配列番号35で示されるFR1、配列番号36で示されるFR2、配列番号37で示されるFR3、および配列番号 24で示されるFR4。
【0012】
もう一つの好適な例において、前記のPDL1に対するナノ抗体のVHH鎖のアミノ酸配列は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0013】
もう一つの好適な例において、前記のPDL1に対するナノ抗体はヒト化抗体、ラクダ由来抗体、キメラ抗体を含む。
もう一つの好適な例において、前記のPDL1に対するナノ抗体はリャマ由来抗体。
【0014】
本発明の第二の側面では、PDL1に対する抗体であって、一つまたは複数の本発明の第一の側面に記載のPDL1に対するナノ抗体のVHH鎖を含む抗体を提供する。
もう一つの好適な例において、前記のPDL1に対するナノ抗体のVHH鎖のアミノ酸配列は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0015】
もう一つの好適な例において、前記のPDL1に対する抗体は、単量体、二価抗体、および/または多価抗体でもよい。
もう一つの好適な例において、前記のPDL1に対する抗体は二価抗体である。
【0016】
本発明の第三の側面では、本発明の第一の側面に記載のPDL1に対するナノ抗体、または本発明の第二の側面に記載のPDL1に対する抗体を含む、細胞外ドメインを含有する、キメラ抗原受容体CARを提供する。
【0017】
もう一つの好適な例において、前記細胞外ドメインは、さらに、シグナルペプチドを含む。
もう一つの好適な例において、前記細胞外ドメインは、さらに、ほかの外因性タンパク質を含む。
もう一つの好適な例において、前記細胞外ドメインが含有する抗体は配列番号1-6で示されるアミノ酸配列を有する。
【0018】
もう一つの好適な例において、前記細胞外ドメインが含有する抗体はアミノ酸配列が配列番号7-17との相同性が≧85%、好ましくは≧90%、より好ましくは≧95%であるか、配列番号1-6と比べて1、2または3個のアミノ酸の違いがある。
もう一つの好適な例において、前記のCARは式Iaで示される構造を有する。
L1-Nb-H-TM-C-CD3ζ (Ia)
(式中において、
Lはなしか、シグナルペプチド配列である。
Nbは特異的結合ドメインである。
Hはなしか、ヒンジ領域である。
TMは膜貫通ドメインである。
Cは共刺激シグナルドメインである。
CD3ζはCD3ζ由来の細胞内シグナル伝達配列(野生型、またはその突然変異体/修飾体を含む)である。
前記「-」は連結ペプチドまたはペプチド結合である。)
【0019】
もう一つの好適な例において、前記Lは、それぞれ、CD8、GM-CSF、CD4、CD28、CD137、またはその突然変異/修飾体、あるいはこれらの組み合わせからなる群から選ばれるタンパク質のシグナルペプチドである。
もう一つの好適な例において、前記NbはPDL1を標的とする。
もう一つの好適な例において、前記NbはPDL1ナノ抗体である。
【0020】
もう一つの好適な例において、前記Hは、CD8、CD28、CD137、IgG、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれるタンパク質のヒンジ領域である。
もう一つの好適な例において、前記HはヒトIgG1 Fcヒンジ領域である。
【0021】
もう一つの好適な例において、前記TMは、CD28、CD3ε、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、CD278、CD152、CD279、CD233、またはその突然変異/修飾体、あるいはこれらの組み合わせからなる群から選ばれるタンパク質の膜貫通領域である。
【0022】
もう一つの好適な例において、前記Cは、OX40、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD70、CD134、4-1BB (CD137)、PD-1、Dap10、LIGHT、NKG2C、B7-H3、ICAM-1、LFA-1 (CD11a/CD18)、ICOS (CD278)、NKG2D、GITR、OX40L、2B4、TLR、またはその突然変異/修飾体、あるいはこれらの組み合わせからなる群から選ばれるタンパク質の共刺激ドメインである。
【0023】
本発明の第四の側面では、以下のものを有する組み換えタンパク質を提供する。
(i)本発明の第一の側面に記載のPDL1に対するナノ抗体、または本発明の第二の側面に記載のPDL1に対する抗体、または本発明の第三の側面に記載のキメラ抗原受容体;ならびに
(ii)任意の発現および/または精製を補助するタグ配列。
もう一つの好適な例において、前記のタグ配列はFcタグ、HAタグ、GGGS配列、FLAGタグ、Mycタグ、6Hisタグ、またはこれらの組み合わせを含む。
【0024】
もう一つの好適な例において、前記の組み換えタンパク質は特異的にPDL1に結合する。
もう一つの好適な例において、前記の組み換えタンパク質(またはポリペプチド)は融合タンパク質を含む。
もう一つの好適な例において、前記の組み換えタンパク質は、単量体、二量体、または多量体である。
【0025】
もう一つの好適な例において、前記の組み換えタンパク質は特異的にPDL1に結合する。
もう一つの好適な例において、前記のタグ配列はFcタグである。
【0026】
本発明の第五の側面では、本発明の第一の側面に記載のPDL1に対するナノ抗体、または本発明の第二の側面に記載のPDL1に対する抗体、または本発明の第三の側面に記載のキメラ抗原受容体、または本発明の第四の側面に記載の組み換えタンパク質からなる群から選ばれるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0027】
もう一つの好適な例において、前記ポリヌクレオチドは、本発明の第一の側面に記載のPDL1に対するナノ抗体、または本発明の第二の側面に記載ののPDL1に対する抗体からなる群から選ばれるタンパク質をコードする。
【0028】
もう一つの好適な例において、本発明は本発明のPDL1に対するナノ抗体をコードする核酸分子に関する。本発明の核酸はRNA、DNAまたはcDNAでもよい。
本発明の第六の側面では、本発明の第五の側面に記載のポリヌクレオチドを含有する発現ベクターを提供する。
【0029】
もう一つの好適な例において、前記の発現ベクターは、DNA、RNA、ウイルスベクター、プラスミド、トランスポゾン、ほかの遺伝子導入系、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。好適に、前記発現ベクターはウイルスベクター、たとえば、レンチウイルス、アデノウイルス、AAVウイルス、レトロウイルス、またはこれらの組み合わせを含む。
【0030】
もう一つの好適な例において、前記の発現ベクターは、pTomoレンチウイルスベクター、plenti、pLVTH、pLJM1、pHCMV、pLBS.CAG、pHR、pLVなどからなる群から選ばれる。
もう一つの好適な例において、前記の発現ベクターはpcDNA3.4-hIgG1-Fc2ベクターである。
もう一つの好適な例において、前記の発現ベクターは、さらに、プロモーター、転写エンハンサーエレメントWPRE、長鎖末端反復配列LTRなどからなる群から選ばれるものを含む。
【0031】
本発明の第七の側面では、本発明の第六の側面に記載の発現ベクターを含有するか、あるいはゲノムに本発明の第五の側面に記載のポリヌクレオチドが組み込まれた宿主細胞を提供する。
【0032】
もう一つの好適な例において、前記の宿主細胞は原核細胞または真核細胞を含む。
もう一つの好適な例において、前記の宿主細胞は、大腸菌、酵母細胞、哺乳動物細胞からなる群から選ばれる。
もう一つの好適な例において、前記の宿主細胞は293F細胞である。
【0033】
本発明の第八の側面では、本発明の第六の側面に記載の発現ベクターを含有するか、あるいは染色体に外来の本発明の第五の側面に記載のポリヌクレオチドが組み込まれたエンジニアリングされた免疫細胞を提供する。
【0034】
もう一つの好適な例において、前記エンジニアリングされた免疫細胞は以下の群から選ばれる:
(i) キメラ抗原受容体αβT細胞(CAR-T細胞);
(ii) キメラ抗原受容体γδT細胞(CAR-T細胞);
(iii) キメラ抗原受容体NKT細胞(CAR-NKT細胞);
(iv) キメラ抗原受容体NK細胞(CAR-NK細胞)。
【0035】
もう一つの好適な例において、前記エンジニアリングされた免疫細胞は自家または他家のαβT細胞、γδT細胞、NKT細胞、NK細胞、またはこれらの組み合わせを含む。
もう一つの好適な例において、前記エンジニアリングされた免疫細胞はCAR-T細胞である。
【0036】
本発明の第九の側面では、PDL1に対するナノ抗体を生成する方法であって、以下の工程を含む方法を提供する:
(a) ナノ抗体の生成に適する条件において、本発明の第七の側面に記載の宿主細胞を培養することにより、PDL1に対するナノ抗体を含む培養物を得る;
(b) 前記培養物から前記のPDL1に対するナノ抗体を単離および/または回収する;ならびに
(c) 任意に、工程(b)得られたPDL1に対するナノ抗体を精製および/または修飾する。
【0037】
本発明の第十の側面では、本発明の第八の側面に記載のエンジニアリングされた免疫細胞を製造する方法であって、本発明の第五の側面に記載のポリヌクレオチドまたは本発明の第六の側面に記載の発現ベクターを免疫細胞内に形質導入することにより、前記エンジニアリングされた免疫細胞を得る工程を含む方法を提供する。
もう一つの好適な例において、前記の方法は、さらに、得られた工学化された免疫細胞に対して機能および有効性の検出を行う工程を含む。
【0038】
本発明の第十一の側面では、以下のものを含有する免疫複合体を提供する:
(a) 本発明第一の側面に記載のPDL1に対するナノ抗体、または本発明第二の側面に記載のPDL1に対する抗体、または本発明の第四の側面に記載の組み換えタンパク質;ならびに
(b) 検出可能なマーカー、薬物、サイトカイン、放射性核種、酵素、金ナノ粒子/ナノロッド、磁性ナノ粒子、ウイルスコートタンパク質またはVLP、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる複合部分。
【0039】
もう一つの好適な例において、前記の(a)部分は本発明の第一の側面に記載のPDL1に対するナノ抗体、または本発明の第二の側面に記載のPDL1に対する抗体である。
もう一つの好適な例において、前記の(a)部分と前記の複合部分は化学結合またはリンカーを介して複合している。
【0040】
もう一つの好適な例において、前記の放射性核種は、以下のものを含む:
(i) Tc-99m、Ga-68、F-18、I-123、I-125、I-131、In-111、Ga-67、Cu-64、Zr-89、C-11、Lu-177、Re-188、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる診断用同位体;ならびに/あるいは
(ii) Lu-177、Y-90、Ac-225、As-211、Bi-212、Bi-213、Cs-137、Cr-51、Co-60、Dy-165、Er-169、Fm-255、Au-198、Ho-166、I-125、I-131、Ir-192、Fe-59、Pb-212、Mo-99、Pd-103、P-32、K-42、Re-186、Re-188、Sm-153、Ra223、Ru-106、Na24、Sr89、Tb-149、Th-227、Xe-133、Yb-169、Yb-177、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる治療用同位体。
【0041】
もう一つの好適な例において、前記複合部分は薬物または毒素である。
もう一つの好適な例において、前記の薬物はPDL1高発現疾患を標的治療する薬物である。
もう一つの好適な例において、前記PDL1高発現疾患は、胃癌、肺癌、肝臓癌、骨肉腫、乳癌、膵癌、リンパ腫などから選ばれる。
もう一つの好適な例において、前記の薬物は細胞毒性薬物である。
【0042】
もう一つの好適な例において、前記の細胞毒性薬物は、抗チューブリン薬、DNA副溝結合試薬、DNA複製阻害剤、アルキル化試薬、抗生物質、葉酸拮抗薬、抗代謝薬、化学療法増感剤、トポイソメラーゼ阻害剤、ビンカアルカロイド、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0043】
特に有用な細胞毒性薬物類の例は、たとえば、DNA副溝結合試薬、DNAアルキル化試薬、およびチューブリン阻害剤を含み、典型的な細胞毒性薬物は、たとえば、オーリスタチン(Auristatin)、カンプトテシン(Camptothecin)、デュオカルマイシン(Duocarmycin)、エトポシド(Etoposide)、メイタンシン(Maytansine)およびメイタンシノイド(Maytansinoid)(たとえばDM1やDM4)、タキサン(Taxane)、ベンゾジアゼピン類(Benzodiazepine)またはベンゾジアゼピン含有薬物(Benzodiazepine containing drug)(たとえばピロロ[1,4]ベンゾジアゼピン類(PBD)、インドリノベンゾジアゼピン類(Indolinobenzodiazepines)およびオキサゾリジノベンゾジアゼピン類(Oxazolidinobenzodiazepines))、ビンカアルカロイド(Vinca alkaloid)、またはこれらの組み合わせを含む。
【0044】
もう一つの好適な例において、前記の毒素は、オーリスタチン類(たとえば、オーリスタチンE、オーリスタチンF、MMAEおよびMMAF)、クロルテトラサイクリン、マイタンシノイド、リシン、リシンA-鎖、コンブレタスタチン、デュオカルマイシン、ドラスタチン、アドリアマイシン、ダウノルビシン、タキソール、シスプラチン、cc1065、臭化エチジウム、マイトマイシン、エトポシド、テニポシド(Tenoposide)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ジヒドロキシアントラセンジオン、アクチノマイシン、ジフテリア毒素、緑膿菌外毒素(PE)A、PE40、アブリン、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α-八連球菌、ゲロニン、ミトゲリン(Mitogellin)、レストリクトシン(Restrictocin)、フェノマイシン、エノマイシン、クリシン(Curicin)、クロチン、カリケアミシン、サボンソウ(Sapaonaria officinalis)阻害剤、糖質コルチコイド、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0045】
もう一つの好適な例において、前記複合部分は検出可能なマーカーである。
もう一つの好適な例において、前記複合部分は、蛍光または発光マーカー、放射性マーカー、MRI(磁気共鳴画像)またはCT(コンピューターX線断層撮影技術)造影剤、または検出可能な生成物を生成させる酵素、放射性核種、生物毒素、サイトカイン(たとえばIL-2など)、抗体、抗体Fc断片、抗体scFv断片、金ナノ粒子/ナノロッド、ウイルス粒子、リポソーム、磁性ナノ粒子、プロドラッグ活性化酵素(たとえば、DT-ジアホラーゼ(DTD)またはビフェニルヒドロラーゼ様蛋白質(BPHL))または任意の様態のナノ粒子からなる群から選ばれる。
【0046】
もう一つの好適な例において、前記免疫複合体は、多価(たとえば二価)の本発明の第一の側面に記載のPDL1に対するナノ抗体のVHH鎖を含有する。
もう一つの好適な例において、前記多価とは、前記免疫複合体のアミノ酸配列に複数の繰り返した同様か異なる本発明の第一の側面に記載のPDL1に対するナノ抗体のVHH鎖が含まれている。
【0047】
本発明の第十二の側面では、活性成分の使用であって、前記活性成分は、本発明の第一の側面に記載のPDL1に対するナノ抗体、または本発明の第二の側面に記載のPDL1に対する抗体、または本発明の第三の側面に記載のキメラ抗原受容体、または本発明の第四の側面に記載の組み換えタンパク質、または本発明の第八の側面に記載のエンジニアリングされた免疫細胞、または本発明の第十一の側面に記載の免疫複合体、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれ、前記活性成分は以下のものを製造するためである使用を提供する:
(a) PDL1高発現疾患を予防および/または治療する薬物;
(b) PDL1高発現疾患を検出する試薬。
【0048】
もう一つの好適な例において、前記試薬は診断試薬で、好ましくは、前記の診断試薬は検出シートまたは検出プレートである。
もう一つの好適な例において、前記診断試薬は、サンプルにおけるPDL1タンパク質またはその断片を検出するためのものである。
もう一つの好適な例において、前記PDL1高発現疾患は、胃癌、肺癌、肝臓癌、骨肉腫、乳癌、膵癌、リンパ腫などから選ばれる。
【0049】
本発明の第十三の側面では、体外においてサンプルにおけるPDL1タンパク質またはその断片を検出する方法であって、以下の工程を含む方法を提供する:
(1) 体外において、前記サンプルを本発明の第一の側面に記載のPDL1に対するナノ抗体、または本発明の第二の側面に記載のPDL1に対する抗体、または本発明の第三の側面に記載のキメラ抗原受容体、または本発明の第四の側面に記載の組み換えタンパク質、または本発明の第八の側面に記載のエンジニアリングされた免疫細胞、または本発明の第十一の側面に記載の免疫複合体、またはこれらの組み合わせと接触させる;
(2) 抗原-抗体複合体が形成したか検出し、ここで、複合体が形成すると、サンプルにPDL1タンパク質またはその断片が存在することを意味する。
もう一つの好適な例において、前記の検出は診断的なものまたは非診断的なものを含む。
【0050】
本発明の第十四の側面では、以下のものを含有する薬物組成物を提供する:
(i) 活性成分として、本発明の第一の側面に記載のPDL1に対するナノ抗体、または本発明の第二の側面に記載のPDL1に対する抗体、または本発明の第三の側面に記載のキメラ抗原受容体、または本発明の第四の側面に記載の組み換えタンパク質、または本発明の第八の側面に記載のエンジニアリングされた免疫細胞、または本発明の第十一の側面に記載の免疫複合体、またはこれらの組み合わせ;ならびに
(ii) 薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤。
【0051】
もう一つの好適な例において、前記薬物組成物の剤形は、注射剤、冷凍乾燥製剤からなる群から選ばれる。
【0052】
もう一つの好適な例において、前記の薬物組成物は、0.01~99.99%の本発明の第一の側面に記載のPDL1に対するナノ抗体、または本発明の第二の側面に記載のPDL1に対する抗体、または本発明の第三の側面に記載のキメラ抗原受容体、または本発明の第四の側面に記載の組み換えタンパク質、または本発明の第十一の側面に記載の免疫複合体、またはこれらの組み合わせ、ならびに0.01~99.99%の薬用担体を含み、前記百分率は前記薬物組成物で占める質量百分率である。
【0053】
もう一つの好適な例において、前記活性成分の中で、前記エンジニアリングされた免疫細胞の濃度が1×10-1×10個細胞/mL、好ましくは1×10-1×10個細胞/mLである。
【0054】
本発明の第十五の側面では、以下のものを含むキットを提供する:
(1) 本発明の第一の側面に記載のPDL1に対するナノ抗体、または本発明の第二の側面に記載のPDL1に対する抗体、または本発明の第三の側面に記載のキメラ抗原受容体、または本発明の第四の側面に記載の組み換えタンパク質、または本発明の第八の側面に記載のエンジニアリングされた免疫細胞、または本発明の第十一の側面に記載の免疫複合体、またはこれらの組み合わせを含有する、第一容器;ならびに/あるいは
(2) 前記第一容器の内容物に対する二次抗体を含有する、第二容器;
あるいは、
前記キットは、下地シート(支持プレート)と、本発明の第一の側面に記載のPDL1に対する抗体、または本発明の第二の側面に記載のPDL1に対する抗体、または本発明第三の側面に記載の組み換えタンパク質、または本発明の第八の側面に記載の免疫複合体、またはこれらの組み合わせを含有する測定バーとを含む検出プレートを含有する。
【0055】
もう一つの好適な例において、前記キットに、さらに、説明書が含まれており、前記の明細書の記載に従い、前記のキットは非侵襲的に被験対象のPDL1の発現を検出するために使用される。
【0056】
もう一つの好適な例において、前記の検出キットはPDL1高発現疾患の検出に使用される。
もう一つの好適な例において、前記PDL1高発現疾患は、胃癌、肺癌、肝臓癌、骨肉腫、乳癌、膵癌、リンパ腫などから選ばれる。
【0057】
本発明の第十六の側面では、PDL1高発現疾患を予防および/または治療する方法であって、必要な対象に本発明の第一の側面に記載のPDL1に対するナノ抗体、または本発明の第二の側面に記載のPDL1に対する抗体、または本発明の第三の側面に記載のキメラ抗原受容体、または本発明の第四の側面に記載の組み換えタンパク質、または本発明の第八の側面に記載のエンジニアリングされた免疫細胞、または本発明の第十一の側面に記載の免疫複合体、または本発明の第十四の側面に記載の薬物組成物、またはこれらの組み合わせを施用する工程を含む方法を提供する。
【0058】
もう一つの好適な例において、前記対象は哺乳動物、たとえば、ヒトを含む。
もう一つの好適な例において、前記PDL1高発現疾患は、胃癌、肺癌、肝臓癌、骨肉腫、乳癌、膵癌、リンパ腫などから選ばれる。
もう一つの好適な例において、前記のエンジニアリングされた免疫細胞または薬物組成物に含まれるCAR免疫細胞は前記対象由来の細胞(自家細胞)である。
【0059】
もう一つの好適な例において、前記のエンジニアリングされた免疫細胞または薬物組成物に含まれるCAR免疫細胞は健康な個体由来の細胞(他家細胞)である。
もう一つの好適な例において、前記の方法はほかの治療方法と併用してもよい。
もう一つの好適な例において、前記のほかの治療方法は化学治療、放射線治療、標的治療などの方法を含む。
【0060】
本発明の第十七の側面では、PDL1高発現疾患に対する診断方法であって、以下の工程を含む方法を提供する:
(i) 診断対象からサンプルを採取し、前記のサンプルを本発明の第一の側面に記載のPDL1に対するナノ抗体、または本発明の第二の側面に記載のPDL1に対する抗体、または本発明の第三の側面に記載のキメラ抗原受容体、または本発明の第四の側面に記載の組み換えタンパク質、または本発明の第八の側面に記載のエンジニアリングされた免疫細胞、または本発明の第十一の側面に記載の免疫複合体、またはこれらの組み合わせと接触させる;ならびに
(ii) 抗原-抗体複合体が形成したか検出し、ここで、複合体が形成すると、前記の対象がPDL1高発現疾患の確診患者であることを意味する。
【0061】
もう一つの好適な例において、前記のサンプルは血液サンプルまたは咽頭スワブサンプル、またはほかの組織器官におけるサンプルである。
もう一つの好適な例において、前記PDL1高発現疾患は、胃癌、肺癌、肝臓癌、骨肉腫、乳癌、膵癌、リンパ腫などから選ばれる。
【0062】
本発明の第十八の側面では、組み換えポリペプチドの製造方法であって、前記の組み換えポリペプチドは本発明の第一の側面に記載のPDL1に対するナノ抗体、または本発明の第二の側面に記載のPDL1に対する抗体、または本発明の第三の側面に記載のキメラ抗原受容体、または本発明の第四の側面に記載の組み換えタンパク質で、以下の工程を含む方法を提供する:
(a) 発現に適切な条件において、本発明の第五の側面に記載の宿主細胞を培養する;ならびに
(b) 培養物から前記の組み換えポリペプチドを単離する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図面の説明
図1図1は、SDS-PAGEによるPDL1-Fcタンパク質の同定の結果を示す。
図2図2は、免疫血清のELISA検出の結果を示す。
【0064】
図3図3は、アガロースゲル電気泳動によるPCR産物の検出の結果を示すが、ここで、図3Aは第一回でのPCRで得られた1000 bpおよび750 bp程度の二本のPCRバンドを示し、ゲルから750 bpの断片を回収して第二回のPCRの鋳型とし、図3Bは第二回のPCRで得られた450 bp程度のバンドを示し、アガロースゲル電気泳動によって同定したところ、VHH断片であると証明された。
図4図4は、ファージディスプレイライブラリーの配列アライメントの結果を示す。
【0065】
図5図5図9は、ファージディスプレイライブラリーの固相パンニングスクリーニング産物のファージELISAの結果を示すが、ここで、赤色の表示は同時にPDL1抗原およびFcの両方と結合するクローンで、青色はPDL1標的抗原のみと結合し、Fcと結合しないクローンを表し、緑色はPDL1標的抗原のみと結合し、Fcと結合せず、そしてPDL1標的抗原との結合が比較的に強いクローンを表す。
図6図5図9は、ファージディスプレイライブラリーの固相パンニングスクリーニング産物のファージELISAの結果を示すが、ここで、赤色の表示は同時にPDL1抗原およびFcの両方と結合するクローンで、青色はPDL1標的抗原のみと結合し、Fcと結合しないクローンを表し、緑色はPDL1標的抗原のみと結合し、Fcと結合せず、そしてPDL1標的抗原との結合が比較的に強いクローンを表す。
【0066】
図7図5図9は、ファージディスプレイライブラリーの固相パンニングスクリーニング産物のファージELISAの結果を示すが、ここで、赤色の表示は同時にPDL1抗原およびFcの両方と結合するクローンで、青色はPDL1標的抗原のみと結合し、Fcと結合しないクローンを表し、緑色はPDL1標的抗原のみと結合し、Fcと結合せず、そしてPDL1標的抗原との結合が比較的に強いクローンを表す。
図8図5図9は、ファージディスプレイライブラリーの固相パンニングスクリーニング産物のファージELISAの結果を示すが、ここで、赤色の表示は同時にPDL1抗原およびFcの両方と結合するクローンで、青色はPDL1標的抗原のみと結合し、Fcと結合しないクローンを表し、緑色はPDL1標的抗原のみと結合し、Fcと結合せず、そしてPDL1標的抗原との結合が比較的に強いクローンを表す。
図9図5図9は、ファージディスプレイライブラリーの固相パンニングスクリーニング産物のファージELISAの結果を示すが、ここで、赤色の表示は同時にPDL1抗原およびFcの両方と結合するクローンで、青色はPDL1標的抗原のみと結合し、Fcと結合しないクローンを表し、緑色はPDL1標的抗原のみと結合し、Fcと結合せず、そしてPDL1標的抗原との結合が比較的に強いクローンを表す。
【0067】
図10図10図11は、オーバーラップ産物の一過性形質移入産物のフローサイトメトリー分析の検出結果を示す。
図11図10図11は、オーバーラップ産物の一過性形質移入産物のフローサイトメトリー分析の検出結果を示す。
【0068】
図12図12図14は、フローサイトメーターによって検出された精製抗体のPDL1を過剰発現する組み換え細胞株CHO-K1/PDL1との結合の様子を示す。
図13図12図14は、フローサイトメーターによって検出された精製抗体のPDL1を過剰発現する組み換え細胞株CHO-K1/PDL1との結合の様子を示す。
図14図12図14は、フローサイトメーターによって検出された精製抗体のPDL1を過剰発現する組み換え細胞株CHO-K1/PDL1との結合の様子を示す。
【0069】
図15図15は、一価抗体のPD-1-PDL1遮断活性の検出結果を示す。
図16図16は、二価抗体のPD-1-PDL1遮断活性の検出結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0070】
具体的な実施形態
本発明者らは、幅広く深く研究し、大量のスクリーニングを行ったところ、初めて、いくつかのPDL1に対するナノ抗体およびそれで構築された二価抗体を開発した。具体的に、本発明では、ヒト由来のPDL1タンパク質でリャマを免疫させ、高品質の免疫ナノ抗体の遺伝子ライブラリーを得た。その後、PDL1タンパク質分子をマイクロプレートにカップリングさせ、抗原-抗体の特異的結合の原理を利用し、この形態の抗原でファージディスプレイ技術によって免疫ナノ抗体遺伝子ライブラリー(リャマ重鎖抗体ファージディスプレイ遺伝子ライブラリー)をスクリーニングすることで、PDL1特異的ナノ抗体の遺伝子を得た。また、関連する実験結果から、本発明で得られたPDL1に対するナノ抗体およびそれで構築された二価抗体はいずれも有効にPDL1タンパク質と結合することができ、同時に遮断機能を有し、そのリガンドであるPD-1との相互作用を遮断することができる。これに基づき、本発明を完成させた。本発明で開発されたPDL1を標的とするナノ抗体は、胃癌、肺癌、肝臓癌、骨肉腫、乳癌、膵癌、リンパ腫などの疾患を標的治療する、新たな治療手段として有用である。
【0071】
用語
本明細書で用いられるように、用語「本発明抗体」、「本発明の抗体」、「本発明のPDL1に対するナノ抗体」、「本発明PDL1に対するナノ抗体」、「PDL1に対するナノ抗体」、「PDL1に対するナノ抗体」は同様の意味を持ち、入れ替えて使用することができ、いずれも特異的にPDL1タンパク質(ヒトPDL1タンパク質を含む)を認識してそれに結合する抗体を指す。
【0072】
本発明のナノ抗体の抗体番号および相応する配列番号は下記表1に示す。
【表1】
注:表における各数値は配列番号を表し、すなわち、「1」は「配列番号1」を表し、表で示されたCDR1、CDR2、CDR3、FR1、FR2、FR3、FR4の配列番号はそのアミノ酸配列の番号である。
【0073】
本明細書で用いられるように、用語「抗体」または「免疫グロブリン」は同様な構造特徴を持つ、約150000ダルトンのヘテロテトラマーの糖タンパク質で、2つの同じ軽鎖(L)と2つの同じ重鎖(H)からなるものである。各軽鎖は、重鎖に1つの共有ジスルフィド結合によって結合しているが、重鎖間のジスルフィド結合の数は、免疫グロブリンのアイソタイプによるものである。各重鎖および軽鎖も、それぞれ一定の間隔の鎖内ジスルフィド結合を有する。各重鎖は、1つの末端に可変領域(VH)を有し、その先に多数の定常領域を有する。各軽鎖は、一方の末端に可変領域(VL)を有し、他方の末端に定常領域を有する。軽鎖の定常領域は重鎖の一つ目の定常領域と、軽鎖の可変領域は重鎖の可変領域と対向している。特殊なアミノ酸残基が軽鎖と重鎖の可変領域の間に界面を形成している。
【0074】
本明細書で用いられるように、用語「単一ドメイン抗体」、「VHH」、「ナノ抗体(Nanobody)」、「単一ドメイン抗体(Single domain antibody、adAb、またはナノ抗体nanobody)」は同様の意味を持ち、かつ入れ替えて使用することができ、クローン抗体の重鎖の可変領域を指し、1つの重鎖可変領域のみからなる単一ドメイン抗体(VHH)を構築し、完全な機能を有する最小の抗原結合断片である。通常、まず天然の軽鎖および重鎖の定常領域1(CH1)が欠けた抗体を得た後、さらに抗体の重鎖の可変領域をクローンし、1つの重鎖可変領域だけからなる単一ドメイン抗体(VHH)を構築する。
【0075】
本明細書で用いられるように、用語「可変」とは、抗体において可変領域のある部分が配列で異なっており、これによって各特定の抗体のその特定の抗原に対する結合および特異性が構成されることを指す。しかし、可変性は、均一に抗体の可変領域全体に分布しているわけではない。軽鎖と重鎖の可変領域における相補性決定領域(CDR)または超可変領域と呼ばれる3つの断片に集中している。可変領域において、比較的に保存的な部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖および軽鎖の可変領域に、それぞれ、基本的にβシート構造となっており、連結ループを形成する3つのCDRで連結され、場合によって部分βシート構造となる4つのFR領域が含まれる。各鎖におけるCDRは、FR領域で密接し、かつ他方の鎖のCDRと一緒に抗体の抗原結合部位(Kabatら、NIH Publ. No. 91-3242, 卷I, 647-669頁(1991)を参照する)を形成している。定常領域は、抗体と抗原との結合には直接関与しないが、たとえば抗体の抗体依存細胞毒性に参与するなどの異なるエフェクター機能を示す。
【0076】
当業者に知られるように、免疫複合体および融合発現産物は、薬物、毒素、サイトカイン(Cytokine)、放射性核種、酵素およびほかの診断または治療分子と本発明の抗体またはその断片が結合してなる複合体を含む。さらに、本発明は、前記のPDL1に対するナノ抗体またはその断片と結合した細胞表面マーカーあるいは抗原を含む。
【0077】
本明細書で用いられるように、用語「重鎖可変領域」と「VH」は入れ替えて使用することができる。
本明細書で用いられるように、用語「可変領域」と「相補性決定領域(Complementarity determining region、CDR)」は入れ替えて使用することができる。
【0078】
本発明の一つの好適な実施形態において、前記抗体の重鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3という3つの相補性決定領域を含む。
本発明の一つの好適な実施形態において、前記抗体の重鎖は上記重鎖可変領域および重鎖定常領域を含む。
【0079】
本発明において、用語「本発明の抗体」、「本発明のタンパク質」、または「本発明のポリペプチド」は入れ替えて使用することができ、いずれも特異的にPDL1タンパク質と結合するポリペプチド、たとえば重鎖可変領域を有するタンパク質またはポリペプチドをいう。これらは、開始のメチオニンを含有してもよく、含有しなくてもよい。
【0080】
また、本発明は、本発明の抗体のほかのタンパク質あるいは融合発現産物を提供する。具体的に、本発明は、可変領域が本発明の抗体の重鎖可変領域と同様であるか、あるいは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の相同性を持つものであれば、この可変領域を含有する重鎖を有する任意のタンパク質またはタンパク質複合体と融合発現産物(すなわち免疫複合体と融合発現産物)を含む。
【0081】
一般的に、抗体の抗原結合特性は、重鎖可変領域に位置する3つの特定の領域によって特徴付けられ、可変領域(CDR)と呼ばれ、4つのフレームワーク領域(FR)に分かれ、4つのFRのアミノ酸配列が比較的に保存され、直接結合反応に関与しない。これらのCDRは環状構造を形成し、その中のFRで形成されるβシートによって空間構造上で近づき、重鎖におけるCDRおよび相応の軽鎖におけるCDRが抗体の抗原結合部位を構成する。同類の抗体のアミノ酸配列の比較によってどのアミノ酸がFRあるいはCDR領域を構成するか確認することができる。
【0082】
本発明の抗体の重鎖の可変領域は、その少なくとも一部が抗原結合に関与するため、特に注目されている。そのため、CDR含有モノクローナル抗体の重鎖可変領域鎖を有する分子は、そのCDRはここで同定されるCDRと90%以上(好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上)の相同性を持つものであれば、本発明に含まれる。
【0083】
本発明は、完全の抗体だけではなく、免疫活性を有する抗体の断片または抗体とほかの配列からなる融合タンパク質も含む。そのため、本発明は、さらに、前記抗体の断片、誘導体および類似体を含む。
【0084】
本明細書で用いられるように、用語「断片」、「誘導体」および「類似体」とは、基本的に本発明の抗体と同じ生物学的機能または活性を維持するポリペプチドをいう。本発明のポリペプチドの断片、誘導体や類似体は、(i)1個または複数個の保存的または非保存的なアミノ酸残基(好ましくは保存的なアミノ酸残基)が置換されたポリペプチドでもよく、このような置換されたアミノ酸残基が遺伝コードでコードされてもされていなくてもよく、あるいは(ii)1個または複数個のアミノ酸残基に置換基があるポリペプチドでもよく、あるいは(iii)成熟のポリペプチドと別の化合物(たとえば、ポリエチレングリコールようなポリペプチドの半減期を延ばす化合物)と融合したポリペプチドでもよく、あるいは(iiiV)付加のアミノ酸配列がこのポリペプチドに融合したポリペプチド(たとえばリーダー配列または分泌配列またはこのポリペプチドを精製するための配列またはタンパク質前駆体配列、あるいは6Hisタグと形成した融合タンパク質)でもよい。本明細書の開示に基づき、これらの断片、誘導体および類似体は当業者に公知の範囲に入っている。
【0085】
本発明の抗体とは、PDL1タンパク質と結合する活性を有する、上記CDR領域を含むポリペプチドをいう。当該用語は、さらに、本発明の抗体と同じ機能を有する、上記CDR領域を含むポリペプチドの変異の様態を含む。これらの突然変異の様態は、1個または複数個(通常は1-50個、好ましくは1-30個、より好ましくは1-20個、最も好ましくは1-10個)のアミノ酸の欠失、挿入および/または置換、ならびにC末端および/またはN末端への1個または複数個(通常は20個以内、好ましくは10個以内、より好ましくは5個以内)のアミノ酸の付加を含むが、これらに限定されない。たとえば、本分野において、機能が近い、または類似のアミノ酸で置換する場合、通常、蛋白質の機能を変えることがない。また、C末端および/またはN末端への一つまたは複数のアミノ酸の付加も、通常、蛋白質の機能を変えることはない。この用語は、さらに、本発明の抗体の活性断片と活性誘導体を含む。
【0086】
当該ポリペプチドの変異の様態は、相同配列、保存的変異体、対立遺伝子変異体、天然突然変異体、誘導突然変異体、高いまたは低い厳格さの条件において本発明の抗体のコードDNAと交雑が可能なDNAがコードするタンパク質、および抗本発明の抗体の抗血清で得られるポリペプチドまたはタンパク質を含む。
【0087】
また、本発明は、ほかのポリペプチド、たとえば抗体またはその断片を含む融合タンパク質を提供する。ほとんど全長のポリペプチドのほか、本発明は、さらに、本発明の抗体の断片を含む。通常、当該断片は本発明の抗体の少なくとも約50個の連続のアミノ酸、好ましくは少なくとも約50個の連続のアミノ酸、より好ましくは少なくとも約80個の連続のアミノ酸、最も好ましくは少なくとも約100個の連続のアミノ酸を有する。
【0088】
本発明において、「本発明の抗体の保存的変異体」とは、本発明の抗体のアミノ酸配列と比較すると、10個以下、好ましくは8個以下、より好ましくは5個以下、最も好ましくは3個以下のアミノ酸が類似または近い性質を持つアミノ酸で置換されてなるポリペプチドをいう。これらの保存的変異ポリペプチドは、表2のようにアミノ酸の置換を行って生成することが好ましい。
【表2】
【0089】
さらに、本発明は、上記抗体またはその断片またはその融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド分子を提供する。本発明のポリヌクレオチドは、DNA形態でもRNA形態でもよい。DNA形態は、cDNA、ゲノムDNAまたは人工合成のDNAを含む。DNAは、一本鎖でも二本鎖でもよい。DNAは、コード鎖でも非コード鎖でもよい。
【0090】
本発明の成熟ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、成熟ポリペプチドだけをコードするコード配列、成熟ポリペプチドのコード配列および様々な付加コード配列、成熟ポリペプチドのコード配列(および任意の付加コード配列)および非コード配列を含む。
【0091】
用語「ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド」は、このポリペプチドをコードするポリヌクレオチドでもよく、さらに付加のコードおよび/または非コード配列を含むポリヌクレオチドでもよい。
【0092】
本発明は、さらに、上記の配列とハイブリダイズし、かつ2つの配列の間に少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%の相同性を有するポリヌクレオチドに関する。本発明は、特に、厳格な条件で本発明に係るポリヌクレオチドとハイブリダイズできるポリヌクレオチドに関する。本発明において、「厳格な条件」とは、(1)低いイオン強度および高い温度、例えば0.2×SSC、0.1%SDS、60℃でのハイブリダイズおよび溶離、あるいは(2)ハイブリダイズ時変性剤、たとえば42℃で50%(v/v)ホルムアミド、0.1%ウシ胎児血清/0.1% Ficollなどを入れること、あるいは(3)2つの配列の間の相同性が少なくとも90%以上、好ましくは95%以上の時だけハイブリダイズすることである。そして、ハイブリダイズできるポリヌクレオチドがコードするポリペプチドは、成熟ポリペプチドと同じ生物学的機能および活性を有する。
【0093】
本発明の抗体のヌクレオチド全長配列あるいはの断片は、通常、PCR増幅法、組換え法または人工合成の方法で得られる。適用できる方法として、特に断片の長さが短い場合、人工合成の方法で関連配列を合成する。通常、まず多数の小さい断片を合成し、そして連接させることにより、配列の長い断片を得ることができる。また、重鎖のコード配列を発現タグ(たとえば6His)一体に融合させ、融合タンパク質を形成してもよい。
【0094】
関連の配列を獲得すれば、組み換え法で大量に関連配列を獲得することができる。この場合、通常、その配列をベクターにクローンした後、細胞に導入し、さらに通常の方法で増殖させた宿主細胞から関連配列を単離して得る。本発明に係る生物分子(核酸、タンパク質など)は単離の形態で存在する生物分子を含む。
【0095】
現在、本発明のタンパク質(またはその断片、あるいはその誘導体)をコードするDNA配列は全部化学合成で獲得することがすでに可能である。さらに、このDNA配列を本分野で周知の各種の既知のDNA分子(あるいはベクターなど)や細胞に導入してもよい。また、化学合成で本発明のタンパク質配列に変異を導入することもできる。
【0096】
さらに、本発明は、上記の適当なDNA配列および適当なプロモーターあるいは制御配列を含むベクターに関する。これらのベクターは、タンパク質を発現するように、適当な宿主細胞の形質転換に用いることができる。
【0097】
宿主細胞は、原核細胞、たとえば細菌細胞、あるいは、低等真核細胞、たとえば酵母細胞、あるいは、高等真核細胞、たとえば哺乳動物細胞でもよい。代表例として、大腸菌、ストレプトマイセス属、ネズミチフス菌のような細菌細胞、酵母のような真菌細胞、ミバエS2若しくはSf9のような昆虫細胞、CHO、COS7、293細胞のような動物細胞などがある。
【0098】
DNA組み換えによる宿主細胞の形質転換は当業者に熟知の通常の技術で行ってもよい。宿主が原核細胞、たとえば大腸菌である場合、DNAを吸収できるコンピテントセルは指数成長期後収集でき、CaCl法で処理し、用いられる工程は本分野では周知のものである。もう一つの方法は、MgClを使用する。必要により、形質転換はエレクトロポレーションの方法でもよい。宿主が真核生物の場合、リン酸カルシウム沈殿法、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションのような通常の機械方法、リポフェクションなどのDNAトランスフェクションの方法が用いられる。
【0099】
得られる形質転換体は通常の方法で培養し、本発明の遺伝子がコードするポリペプチドを発現することができる。用いられる宿主細胞によって、培養に用いられる培地は通常の培地を選んでもよい。宿主細胞の成長に適する条件で培養する。宿主細胞が適当の細胞密度に成長したら、適切な方法(たとえば温度転換もしくは化学誘導)で選んだプロモーターを誘導し、さらに細胞を培養する。
【0100】
上記の方法における組み換えポリペプチドは細胞内または細胞膜で発現し、あるいは細胞外に分泌することができる。必要であれば、その物理・化学的特性およびほかの特性を利用して各種の単離方法で組み換えタンパク質を単離・精製することができる。これらの方法は、本分野の技術者に熟知である。これらの方法の例として、通用の再生処理、タンパク質沈殿剤による処理(塩析法)、遠心、浸透圧ショック、超音波処理、超遠心、分子篩クロマトグラフィー(ゲルろ過)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)およびほかの各種の液体クロマトグラフィー技術、ならびにこれらの方法の組合せを含むが、これらに限定されない。
【0101】
本発明の抗体は単独に使用してもよく、検出可能ななマーカー(診断目的)、治療剤、PK(タンパク質キナーゼ)修飾部分またはこれらの任意の組み合わせと結合またはカップリングしてもよい。
【0102】
診断の目的に使用される検出可能なマーカーは、蛍光または発光マーカー、放射性マーカー、MRI(磁気共鳴画像)またはCT(コンピューターX線断層撮影技術)造影剤、または検出可能な生成物を生成させる酵素を含むが、これらに限定されない。
本発明の抗体と結合または複合することができる治療剤は、1.放射性核種、2.生物毒素、3.サイトカイン、たとえばIL-2など、4.金ナノ粒子/ナノロッド、5.ウイルス粒子、6.リポソーム、7.磁性ナノ粒子、8.プロドラッグ活性化酵素(たとえば、DT-ジアホラーゼ(DTD)またはビフェニルヒドロラーゼ様蛋白質(BPHL))などを含むが、これらに限定されない。
【0103】
PDL1タンパク質
プログラム細胞死リガンド1(Programmed cell death 1 ligand 1、PDL1)は分化抗原群274(Cluster of differentiation 274、CD274)またはB7ホモログ(B7 homolog 1、B7-H1)とも呼ばれ、ヒトの体内の1種のタンパク質で、CD274遺伝子によってコードされる。PDL1は大きさが40 kDaのI型膜貫通タンパク質、一部の特殊な場合(たとえば、妊娠、組織移植、自己免疫疾患、および肝炎のようなある疾患)において、免疫系の抑制に関連するとされている。正常な場合、免疫系はリンパ節または脾臓に集まる外来の抗原に反応し、抗原特異性を有する細胞傷害性T細胞の発生(CD8+ T細胞の増殖)を促進する。一方、プログラム細胞死受容体1(PD-1)はプログラム細胞死リガンド1(PDL1)と結合すると、抑制性のシグナルを伝達し、リンパ節のCD8+ T細胞の増殖を減少させることができ、そしてPD-1はBcl-2遺伝子を調節することにより、リンパ節における抗原特異性T細胞の集まりを抑えることができる。
【0104】
PD-1/PDL1
PDL1とPD-1の結合はT細胞の活性化を媒介する抑制性シグナルとして、T細胞の殺傷機能を抑制し、人体の免疫応答に対して負の調節作用を果たす。
【0105】
薬物組成物
また、本発明は組成物を提供する。好ましくは、前記の組成物は薬物組成物で、上記の抗体またはその活性断片あるいはその融合タンパク質と、薬学的に許容される担体とを含有する。通常、これらの物質を無毒で不活性で薬学的に許容される水系担体で配合し、pH値は配合される物質の性質および治療しようとする疾患にもよるが、pH値は通常5-8程度、好ましくは6-8程度である。配合された薬物組成物は通常の経路で給与することができ、腹膜内、静脈内、あるいは局部給与が含まれるが、これらに限定されない。
【0106】
本発明の薬物組成物は、安全有効量(たとえば0.001-99 wt%、好ましくは0.01-90 wt%、より好ましくは0.1-80 wt%)の本発明の上記の抗体(またはその複合体)と、薬学的に許容される担体または賦形剤とを含有する。このような担体は、食塩水、緩衝液、ブドウ糖、水、グリセリン、エタノール、およびこれらの組み合せを含むが、これらに限定されない。薬物の製剤は投与形態に相応する。本発明の薬物組成物は、注射剤としてもよく、たとえば生理食塩水またはブドウ糖およびほかの助剤を含有する水溶液で通常の方法によって製造することができる。薬物組成物は、注射剤、溶液の場合、無菌条件で製造する。活性成分の投与量は治療有効量、たとえば毎日約10μg/kg体重-約50mg/kg体重である。また、本発明のポリペプチドはほかの治療剤と併用することが出来る。
【0107】
薬物組成物の使用時、安全有効量の免疫複合体を哺乳動物に施用するが、その安全有効量は、通常、少なくとも約10μg/kg体重で、かつ多くの場合、約50mg/kg体重未満で、好ましくは当該投与量が約10μg/kg体重-約10mg/kg体重である。勿論、具体的な投与量は、さらに投与の様態、患者の健康状況などの要素を考えるべきで、すべて熟練の医者の技能範囲以内である。
【0108】
PDL1に対するナノ抗体
本発明において、前記PDL1に対するナノ抗体は、単量体、二量体(二価抗体)、四量体(四価抗体)、および/または多量体(多価抗体)を含む。
本発明の一つの好適な例において、前記PDL1に対するナノ抗体は、一つまたは複数の配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6で示されるアミノ酸配列を有するVHH鎖を含む。
【0109】
標識された抗体
本発明の一つの好適な例において、前記抗体は検出可能なマーカーを持つものである。より好ましくは、前記のマーカーは、同位元素、コロイド金マーカー、有色マーカーまたは蛍光マーカーからなる群から選ばれる。
【0110】
コロイド金マーカーは当業者に既知の方法によって行ってもよい。本発明の一つの好適な形態において、PDL1タンパク質に対する抗体をコロイド金で標識し、金コロイドで標識された抗体を得る。
本発明のPDL1に対するナノ抗体は有効にPDL1タンパク質に結合することができる。
【0111】
検出方法
また、本発明は、PDL1タンパク質その断片を検出する方法にも関する。当該方法は、基本的に、細胞および/または組織のサンプルを得る工程と、サンプルを媒体に溶解させる工程と、前記溶解されたサンプルにおけるPDL1タンパク質のレベルを検出する工程とを含む。
本発明の検出方法において、使用されるサンプルは特に限定されず、代表的な例は細胞保存液に存在する細胞を含有するサンプルである。
【0112】
キット
また、本発明は、本発明の抗体(またはその断片)あるいはカセットを含有するキットを提供するが、本発明の一つの好適な例において、前記のキットはさらに容器、使用説明書、緩衝液などを含む。
【0113】
また、本発明は、PDL1タンパク質のレベルを検出する検出キットであって、PDL1タンパク質を認識する抗体と、サンプルを溶解させる分解媒体と、検出に必要な汎用の試薬および緩衝液、たとえば様々な緩衝液、検出マーカー、検出基質などとを含む。当該検出キットは体外診断装置でもよい。
【0114】
応用
上記のように、本発明の抗体は幅広い生物応用価値および臨床応用価値を有し、その応用はPDL1タンパク質に関連する疾患の診断と治療、基礎医療研究、生物学研究などの多くの分野にわたる。一つの好適な応用はPDL1タンパク質に対する臨床診断、予防および治療に使用されることである。
【0115】
本発明は、哺乳動物腫瘍細胞群または組織を標的とするT細胞による免疫応答を刺激する方法であって、哺乳動物に本発明のCAR-T細胞を施用する工程を含む方法も提供する。
【0116】
一つの実施形態において、本発明は、患者の自己T細胞(または異系ドナー)を分離し、活性化させて遺伝子改変し、CAR-T細胞が生成した後、同患者の体内に注入する細胞療法を含む。このような方法では、移植片対宿主反応の発生確率が極めて低く、抗原がT細胞によってMHCに拘束されずに認識される。また、一つのCAR-Tで当該抗原を発現するすべての癌を治療することができる。抗体療法と異なり、CAR-T細胞は体内で複製可能で、持続的に腫瘍を抑える長期間の持久性が生じる。
【0117】
一つの実施形態において、本発明のCAR-T細胞は安定した体内増殖を経て数か月から数年の時間で持続することができる。また、CARによる免疫応答は養子免疫療法の工程の一部でもよく、ここで、CAR-T細胞はCAR抗原結合ドメインによって認識される抗原を高発現する腫瘍細胞に対する特異的な免疫応答を誘導することができる。たとえば、本発明のCAR-T細胞はPDL1高発現の腫瘍細胞に対する特異的な免疫応答を引き起こす。
【0118】
治療可能な癌は、血管新生がしていない腫瘍または血管新生が基本的にしていない腫瘍、および血管新生がした腫瘍を含む。本発明のCARで治療する癌の種類は、胃癌、肺癌、肝臓癌、骨肉腫、乳癌、膵癌、リンパ腫などを含むが、これらに限定されない。
【0119】
通常、本明細書に記載のように、活性化および増殖された細胞は腫瘍などの疾患の治療および予防に使用することができる。そのため、本発明は、癌を治療する方法であって、それが必要な対象に治療有効量の本発明のCAR-T細胞を投与する工程を含む方法を提供する。
【0120】
本発明のCAR-T細胞は単独で投与するか、あるいは薬物組成物として希釈剤および/またはほかの成分、たとえばIL-2、IL-17やほかのサイトカインまたは細胞群と合わせて施用することができる。簡単に言えば、本発明の薬物組成物は、本明細書に記載の標的細胞群を含み、一つまたは複数の薬学または生理学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤と合わせてもよい。
【0121】
本発明の薬物組成物は、治療(または予防)が必要な疾患に適する形態によって施用することができる。施用の数量および頻度は、患者の病症、および患者の疾患の種類と重篤度などの要素によって決まるか、臨床試験によって決定する。
【0122】
「免疫学的な有効量」、「抗腫瘍有効量」、「腫瘍抑制有効量」または「治療量」と記載する場合、施用される本発明の組成物の精確な量は(患者(対象)の年齢、体重、腫瘍の大きさ、感染または転移の程度および病症の個体差を考慮し、医師によって決められる。本明細書に記載のT細胞を含む薬物組成物は、10-10個細胞/kg体重の投与量、好ましくは10-10個細胞/kg体重の投与量(範囲内におけるすべての整数値を含む)で施用することができる。T細胞の組成物はこれらの投与量で数回施用してもよい。細胞は、免疫療法で公知の注入技術(たとえばRosenbergら,NewEng.J. of Med.319:1676,1988)によって施用することができる。具体的な患者対する最適な投与量および治療プランは、医学分野の技術者により、患者の疾患の状況をモニタリングすることで容易に決定し、そしてそれによって治療を調整することができる。
【0123】
対象への組成物の投与は噴霧法、注射、経口、輸液、植込みまたは移植を含む任意の便利な手段によって行ってもよい。本明細書に記載の組成物は皮下、皮内、腫瘍内、節内、脊髄内、筋肉内、静脈内注射または腹膜内で患者に施用されてもよい。一つの実施形態において、本発明のT細胞の組成物は皮内または皮下注射によって患者に施用される。もう一つの実施形態において、本発明のT細胞の組成物は静脈内注射によって施用することが好ましい。T細胞の組成物は直接腫瘍、リンパ節または感染の箇所に注入してもよい。
【0124】
本発明のある実施形態において、本明細書に記載の方法または本分野で既知のほかのT細胞を治療的レベルに増殖させる方法によって活性化および増殖した細胞を使用し、任意の数量の関連治療手段と合わせて(たとえば、その前、同時またはその後に)患者に施用し、前記治療手段は、抗ウイルス療法、シドフォビルおよびインターロイキン-2、アザシチジン(ARA-Cとして知られる)のような試薬で治療するもの、あるいはMS患者に対するナタリズマブによる治療または乾癬患者に対するエファリズマブによる治療またはPML患者に対するほかの治療を含むが、これらに限定されない。さらなる実施形態において、本発明のT細胞は、化学治療、放射線、免疫抑制剤、たとえばシクロスポリンA、アザチオプリン、メトトレキセート、ミコフェノール酸モフェチルやFK506、抗体またはほかの免疫治療剤と併用することができる。さらなる実施形態において、本発明の細胞組成物は、骨髄移植、化学治療剤、たとえばフルダラビン、外部光線放射線療法(XRT)、シクロホスファミドと併用して(たとえば、その前、同時またはその後に)患者に施用する。たとえば、一つの実施形態において、対象は高投与量の化学治療の後、末梢血幹細胞移植してもよい。一部の実施形態において、移植後、対象は本発明の増殖した免疫細胞の注入を受ける。別の一つの実施形態において、増殖した細胞は外科手術前または外科手術後に施用される。
【0125】
患者に施用する以上の治療の投与量は治療する病症の精確な属性および治療するレシピエントによって変わる。ヒトへ施用する投与量の比率は本分野で許容される実践によって実施することができる。通常、1回の治療または1回の治療クールに、1×10個~1×1010個の本発明の修飾されたT細胞を、たとえば静脈輸液の手段によって、患者に施用することができる。
【0126】
試薬、資材および設備
主な試薬
寒天(Sigma, CAT# A1296)、ペプトン (Sigma, CAT#93926)、酵母抽出物(OXOID, CAT#: LP0021)、塩化ナトリウム(Aladdin,CAT#: C111533)、塩化カリウム(Aladdin,CAT#: P112133)、硫酸マグネシウム(国薬,CAT#: 10013018)、塩化マグネシウム(国薬,CAT#: 10012818)、ブドウ糖(生工,CAT#: GT1991)、SfiI (NEB, CAT#: R0123L)、T4 DNAリガーゼ(TaKaRa, CAT#: 2011A)、PrimeScript(商標) II 1st Strand cDNA合成キット(TaKaRa, CAT#: 6210B)、NuHi power mix(新海生物,CAT#: NH9303)、3 M酢酸ナトリウム(pH5.2-6)(Sigma, CAT#: 126-96-5)、DNA断片回収キット(TakaRa, CAT#: 9761)、ゲル回収キット(Qiagen, CAT#:28706)、天根プラスミドマキシキット(天根,CAT#:DP117)、HRP-M13(Sino Biolo, CAT#: 11973-MM05)、PE-抗ヒトIgG (eBioscience, Cat#:12-4998-82)、ウサギ抗リャマIgG (H+L)二次抗体[HRP] (Novus,CAT#NBP1-75095)、SS320感受性細胞(iCarTab)、pComFファージディスプレイベクター(iCarTab)、NHS-ビオチン(APExBIO, CAT#: A8002)、HRP-ストレプトアビジン(Boster, CAT#: BA1088)、ストレプトアビジン磁気ビーズ(NEB, CAT#:S14205)、抗体親和力検出緩衝液:HBS-EP+ 10X(GE, Cat# BR100669)、アミノカップリングキット(GE, Cat#BR100050)、10 mM グリシン 2.5(GE, Cat#BR100356)、SシリーズCM5チップ(GE,Cat#29149603)、PBS(Gbico, CAT# 14190-250)、DMEM(Gbico, CAT# 41965-062)、RPMI1640(Gbico, CAT# 61870044)、FBS(Gbico, CAT# 10099-141)、ゲノムDNA精製キット(Lifetech,CAT#K0512)、ポリブレン(Sigma,CAT#107689-10G)、LVtransm形質移入試薬(iCarTab, Cat# LVTran100)、リンパ球分離液(Stem Cell, CAT# 18051)。
【0127】
主な資材
50 mL Falcon遠心管(Corning, CAT#352070)、エレクトロポレーションカップ(Bio-Rad 0.2 cm)、RNase free 1.5 mL EPチューブ(QSP, CAT#: 509-GRD-Q)、200 μL RNase free PCRチューブ(Axygen, PCR-02D-C)、T125振とうフラスコ(Corning, CAT# 431143)、15 mL Falcon遠心管(Corning, CAT# 430052)、6ウェルプレート(Corning, CAT# 3516)、96ウェルプレート(Corning, CAT# 3365)。
【0128】
主な設備
エレクトロポレーション装置(EppendorfMultiporator)、遠心機(湘儀H1650R)、恒温インキュベーター(上海精宏DNP-9052)、恒温振とう培養インキュベーター(朗越DZ-85A)、クリーンベンチ(SUZHOU ANTAI AIR TECH CO.,LTD.、SW-CJ-1FD)、PCR装置(Applied Biosystems ABI2720)、安全キャビネット(Haier,HR40-IIA2)、フローサイトメーター(Thermo Attune Nxt flow cytometer)、Thermo 3111 COインキュベーター、BiaCore T200。
【0129】
アミノ酸配列
配列番号1(ナノ抗体17-A06)
MAQVKLEESGGGLVQAGGSLRLSCVASGRSFITYAVGWFRQAPGKEREFVASINWSGAMTYYTDSVNGRFAISRDNAKNTVYLQMNNLKLEDTAVYYCASTISAVTPTNGYQNWGQGTQVTVSS

配列番号2(ナノ抗体17-C12)
MAQVKLEESGGGLVQPGGSLTLSCAASGRTFGFYGWFRQAPGKEREFVAGITWGGSVTSYADSVKGRFTISRDNAKNTVYLQMNSLKPENTAVYYCARSPRVTTTPREFDVWGQGTQVTVSS

配列番号3(ナノ抗体17-A01)
MAAVQLVDSGGGLVQPGGSLRLSCAASGRTFGFYGWFRQAPGKEREFVAAITWGGSAISYEDSAKGRFTISRDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAVYYCARSTRVTTNPREYDYWGQGTQVTVSS

配列番号4(ナノ抗体17-G06)
MAAVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGRTFGFYGWFRQAPGKEREFVAAITWGGSAISYDDSAKGRFTISRDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAVYYCARSMRVTTNPREYDYWGQGTQVTVSS

配列番号5(ナノ抗体23-G3)
MAAVQLVESGGGLVQAGGSLRLSCVASGRSFITYAVGWFRQAPGKEREFVASVNWSGAMTYYADAVNGRFTISRDNAKNTVYLQMNNLKLEDTAVYYCAATISAVTPTNGYQNWGQGTQVTVSS
【0130】

配列番号6(ナノ抗体29-H9)
RLQLVESGGGLVQAGGSLRLSCAASGFTFSTYAMSWYRGVPEKERELVAFISSDGGGTTYRDSVKGRFTISRDNGKNTVYLQMNSLKPEDTGVYYCARGLAQIWGQGTQVTVSS

配列番号7(ナノ抗体17-A06、23-G3のCDR1)
GRSFITYA

配列番号8(ナノ抗体17-A06のCDR2)
INWSGAMT

配列番号9(ナノ抗体17-A06のCDR3)
ASTISAVTPTNGYQN

配列番号10(ナノ抗体17-C12、17-A01、17-G06のCDR1)
GRTFGF
【0131】

配列番号11(ナノ抗体17-C12のCDR2)
ITWGGSVT

配列番号12(ナノ抗体17-C12のCDR3)
ARSPRVTTTPREFDV

配列番号13(ナノ抗体17-A01、17-G06のCDR2)
ITWGGSAI

配列番号14(ナノ抗体17-A01のCDR3)
ARSTRVTTNPREYDY

配列番号15(ナノ抗体17-G06のCDR3)
ARSMRVTTNPREYDY
【0132】
配列番号16(ナノ抗体23-G3のCDR2)
VNWSGAMT

配列番号17(ナノ抗体23-G3のCDR3)
AATISAVTPTNGYQN

配列番号18(ナノ抗体29-H9のCDR1)
GFTFSTYA

配列番号19(ナノ抗体29-H9のCDR2)
ISSDGGGT

配列番号20(ナノ抗体29-H9のCDR3)
ARGLAQI
【0133】
配列番号21(ナノ抗体17-A06のFR1)
MAQVKLEESGGGLVQAGGSLRLSCVAS

配列番号22(ナノ抗体17-A06、23-G3のFR2)
VGWFRQAPGKEREFVAS

配列番号23(ナノ抗体17-A06のFR3)
YYTDSVNGRFAISRDNAKNTVYLQMNNLKLEDTAVYYC

配列番号24(ナノ抗体17-A06、17-C12、17-A01、17-G06、23-G3、29-H9のFR4)
WGQGTQVTVSS

配列番号25(ナノ抗体17-C12のFR1)
MAQVKLEESGGGLVQPGGSLTLSCAAS
【0134】
配列番号26(ナノ抗体17-C12のFR2)
YGWFRQAPGKEREFVAG

配列番号27(ナノ抗体17-C12のFR3)
SYADSVKGRFTISRDNAKNTVYLQMNSLKPENTAVYYC

配列番号28(ナノ抗体17-A01のFR1)
MAAVQLVDSGGGLVQPGGSLRLSCAAS

配列番号29(ナノ抗体17-A01、17-G06のFR2)
YGWFRQAPGKEREFVAA

配列番号30(ナノ抗体17-A01のFR3)
SYEDSAKGRFTISRDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAVYYC
【0135】
配列番号31(ナノ抗体17-G06のFR1)
MAAVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAAS

配列番号32(ナノ抗体17-G06のFR3)
SYDDSAKGRFTISRDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAVYYC

配列番号33(ナノ抗体23-G3のFR1)
MAAVQLVESGGGLVQAGGSLRLSCVAS

配列番号34(ナノ抗体23-G3のFR3)
YYADAVNGRFTISRDNAKNTVYLQMNNLKLEDTAVYYC

配列番号35(ナノ抗体29-H9のFR1)
RLQLVESGGGLVQAGGSLRLSCAAS
【0136】
配列番号36(ナノ抗体29-H9のFR2)
MSWYRGVPEKERELVAF

配列番号37(ナノ抗体29-H9のFR3)
TYRDSVKGRFTISRDNGKNTVYLQMNSLKPEDTGVYYC
【0137】
本発明の主な利点は以下の通りである。
1.本発明のPDL1ナノ抗体は特異的にPDL1に結合することができ、高い親和力を有する。
2.本発明のPDL1ナノ抗体は良いPD-1-PDL1遮断活性を有し、そしてPDL1に対する中和活性が高い。
3.本発明では、同時にPDL1の一価ナノ抗体および二価のPDL1ナノ抗体を構築し、そしていずれも明らな遮断活性を有する。
4.本発明のPDL1ナノ抗体はPD-1およびPDL1経路のみを遮断し、そしてPD-1およびPD-L2経路に影響しないことで、間質性肺炎などの副作用の発生を避け、安全性を向上させることができる。
5.本発明のPDL1ナノ抗体はより全面的に免疫系が活性化して腫瘍を殺傷するようにさせ、PD-1に効果がないかPD-1薬剤耐性の患者は明らかに利益を得ることができ、治療効果も得られ、よって患者の適応範囲が広がる。
【0138】
6.本発明のPDL1ナノ抗体はPD-1 - PDL1経路を抑制する以外、B7.1およびPDL1の共抑制機能を遮断することで、全面的なT細胞の機能およびサイトカインの生成の活性化に有利で、よってより良い免疫効果が得られる。
7.本発明のPDL1ナノ抗体はポリクローナル抗体よりも低価で量産しやすく、生産コストを低下させることで、それによって製造される薬物の価格を下げることができる。
8.本発明のPDL1ナノ抗体は適用条件が広く、より広い温度範囲において安定で、高温でも作用を発揮することができる。従来の抗体断片と違い、高温におけるナノ抗体の展開が完全に可逆的であることが証明された。また、ナノ抗体は極端なpH値でも安定で、そして胃液においても生存することができる。
9.構造の面において、ナノ抗体は親水の一面が存在するため、従来の抗体と比べ、本発明のPDL1ナノ抗体は従来の抗体に関連する溶解度および集合性の問題がない。
【0139】
以下、具体的な実施例によって、さらに本発明を説明する。これらの実施例は本発明を説明するために用いられるものだけで、本発明の範囲の制限にはならないと理解されるものである。下記実施例で具体的な条件が示されていない実験方法は、通常、たとえばSambrookら、「モレキュラー・クローニング:研究室マニュアル」(ニューヨーク、コールド・スプリング・ハーバー研究所出版社、1989) に記載の条件などの通常の条件に、あるいは、メーカーのお薦めの条件に従う。特に説明しない限り、百分率および部は重量百分率および重量部である。
【実施例
【0140】
実施例1.抗原製造の方案
1.遺伝子合成によってPDL1細胞外領域(19AA-238AA)の配列を製造し、C末端にIgG1 Fcタグを付加し、真核発現ベクターにサブクローニングし、抗原PDL1-Fcタンパク質発現ベクターを構築した。
2.構築できたPDL1-Fcタンパク質発現ベクターに対してプラスミド抽出を行い、293細胞に一過性形質移入した後、続いて8日培養し、遠心して培養上清を収集し、0.45 μmのろ膜でろ過し、ろ液を無菌遠心管に移し、プロテインAカラムによって精製してPDL1-Fcタンパク質を得た。
3.PDL1-Fcタンパク質をSDS-PAGE検出によって同定した。
【0141】
図1に示すように、SDS-PAGE検出では、PDL1-Fcの実際のSDS-PAGE分子量が約65 kDであったことが示され、ACRO社のPDL1-Fc製品の電気泳動の検出結果と一致し、かつ本発明のPDL1-Fcのバンドの純度が高かったことから、発現および精製の効果が良かったことがわかる。
前記精製されたPDL1-Fcタンパク質は抗原で、免疫原、免疫抗原とも呼ばれる。
【0142】
実施例2.抗原によるリャマの免疫
上記で製造されたPDL1-Fcタンパク質抗原で1頭のリャマに対して皮下の複数箇所で免疫させ、3回の免疫の流れを表3に示す。
【表3】
【0143】
実施例3.免疫力価の検出
1.5 mLの実施例1における3回目の免疫後の末梢血を採取し、血液サンプルを収集した遠心管を37℃のインキュベーター内において1時間置いた後、血液サンプルを4℃に移して一晩置いた。
2.血清を新しい無菌遠心管に移し、5000 rpmで20min遠心し、PDL1からFc抗原を切断してあらかじめコーディングされた96ウェルプレートを使用し、抗ラクダIgG(H+L)二次抗体および抗ラクダVHH二次抗体を選び、ELISA実験を行って免疫力価を検出した。
【0144】
図2のELISA検出結果に示すように、未免疫(陰性)血清と比べ、抗ラクダIgG(H+L)二次抗体で検出した場合、免疫血清が陽性で、かつ力価が高かった。
【0145】
上記結果から、免疫血清はPDL1と特異的に結合し、かつ血清の希釈勾配とともにOD450値が勾配的に変化したことがわかり、免疫が成功したことが示された。
100 mLの末梢血を採取し、ライブラリーの構築に備えた。
【0146】
実施例4.PBMCの分離およびVHH抗体断片の獲得
1.150 mLの実施例1で製造された末梢血を採取し、リンパ球分離液でPBMCを分離した。
【0147】
2.RNAを抽出し、PrimeScript(商標) II 1st Strand cDNA合成キットによって逆転写させ、cDNAを製造した。
(1) 200 μLPCRチューブにおいて表4の反応混合液Mix1を調製した。
【表4】
(2) 65℃で5 min保温した後、氷の上で迅速に冷却した。
(3) 上記PCRチューブにおいて表5の反応液を調製した。
【表5】
(4) 吹いて均一に混合した後、80 μL/管で分け、PCR装置において42℃で1時間置き、70℃で15分熱不活性化し、最後にcDNAサンプルを氷の上または-20℃で長期間保存した。
【0148】
3.VHH断片の増幅
(1) 表6の一回目のPCR反応系(50 μL/管)を調製した。
【表6】
PCR反応系を調製した後、表7のプログラムでPCR装置を設定した。
【表7】
(2) PCR産物のアガロースゲル電気泳動:
1%のアガロースゲルで電気泳動を行ってPCR産物を分析し、分子量の大きさが750 bp程度の片段を分離した。ゲル回収キットによってPCR産物を回収し、そしてNanoDropで濃度を測定した。
(3) 表8の二回目のPCR反応系(50 μL/管)を調製した。
【表8】
PCR反応系を調製した後、表9のプログラムでPCR装置を設定した。
【表9】
(4) 二回目のPCR産物のアガロースゲル電気泳動分析:
1%のアガロースゲルで電気泳動を行ってPCR産物を分析し、分子量の大きさが400 bp程度のVHH片段を分離した。ゲル回収キットによってVHHのPCR産物を回収し、そしてNanoDropで濃度を測定した。
【0149】
図3に示すように、アガロースゲル電気泳動のPCR産物の結果が示された。図3Aは第一回でのPCRで得られた1000 bpおよび750 bp程度の二本のPCRバンドを示し、ゲルから750 bpの断片を回収して第二回のPCRの鋳型とし、図3Bは第二回のPCRで得られた450 bp程度のバンドを示し、アガロースゲル電気泳動によって同定したところ、VHH断片であると証明された。
【0150】
VHH断片をSfiIで酵素切断した後、ファージディスプレイベクターpComFにサブクローニングし、連結産物でSS320大腸菌感受性細胞を電気的形質転換させ、単一ドメイン抗体ファージディスプレイライブラリーを構築した。
【0151】
実施例5.ファージディスプレイライブラリーの構築
1.ファージディスプレイベクターの構築:
(1) SfiIでそれぞれpCom Fベクターおよび上記実施例4で得られたVHH PCRゲル回収産物を酵素切断し、50℃で一晩酵素切断した。
(2) 1%アガロースゲルでpCom Fベクター断片を分離し、5000 bpのベクター断片を切り取ってゲル回収を行った。同時にDNA断片回収キットによってPCR酵素切断産物を精製し、そしてNanoDropで濃度を測定した。
(3) 酵素切断されたpCom FベクターおよびVHH断片をT4リガーゼによって連結し、16℃で一晩連結した。
【0152】
2.ファージ連結産物による大腸菌の電気的形質転換:
(1) エレクトロポレーションカップ、連結産物および電気的形質転換感受性細胞を用意して氷の上において予備冷却した。
(2) 予備冷却されたライブラリー構築連結産物を取って電気的形質転換感受性細胞に入れ、氷の上に1 min置き、各エレクトロポレーションカップに70 μLのDNA/感受性細胞の混合物を入れ、エレクトロポレーションカップを氷の上に置いた。
(3) 2500 Vで5 ms電気的形質転換を行った。
(4) 電撃終了後、すぐに室温に平衡化されたSOC培地で菌体を再懸濁させ、37℃で1時間シェーカー培養。
【0153】
(5) 菌液を15 mL取ってそのままファージレスキューを行い、残りの5 mLの電気的形質転換産物を等体積の50%グリセリンに入れ、均一に混合した後、-80℃で保存した。
(6) 別途に菌液を20 μL取り、980 μLの2YT培地を入れて希釈した後、100 μLの希釈された産物を取り、900 μLの2YT培地を入れて二回目の希釈を行い、50 μL取って均一にアンピシリン含有LBプレートに塗布し、37℃で一晩培養した。
(7) 翌日に、プレートを取り出し、各連結から得られたクローン数を計算し、ライブラリー容量を計算した。
(8) 同時にプレートにおける単一クローンを20取ってアンピシリン含有2YT培地に接種し、37℃で約6-8時間振とう培養し、菌液のシークエンシングに供し(シークエンシング共通プライマーM13R)、ライブラリーの多様性を計算した。
【0154】
図4に示すように、ファージディスプレイライブラリーの配列のアラインメントの結果から、ファージディスプレイライブラリーのブランク率および抗体重複率が良く、大腸菌ライブラリーの容量が6.53E8であったことが示された。
【0155】
実施例6.ファージディスプレイライブラリーの再生とレスキューおよびファージの沈殿
1.実施例5における電気的形質転換後の産物を2YTで希釈してOD600が0.2程度になるように調整し、最終濃度が100 μg/mLのアンピシリンを入れて恒温シェーカーに置き、37℃、225 rpmで培養し、OD600が0.5になった時点で停止した。
2.M13KO7を投入し、均一に振とうした後、37℃で30 min静置し、さらに37℃、225 rpmで1h培養した。
3.M13KO7体積=10 × 体積 × OD600 × 5 × 10 / M13KO7力価。
4.菌液を6000 rpmで10 min遠心した後、2YT-AK培地で再懸濁させ、25℃、200 rpmで一晩培養した。
5.菌液を10000 rpmで15 min遠心した。
【0156】
6.沈殿を捨て、上清を新しい遠心管に移し、管内に1/5菌液体積のPEG/NaClを入れ、均一に混合した後、4℃で2h静置した。
7.沈殿させたファージ上清を10000 rpm、4℃で30 min遠心し、上清を捨て、各50 mL遠心管の沈殿(ファージ)を1 mLの無菌PBSで再懸濁させた。
8.再懸濁させたファージを1.5 mLのEPチューブに移し、遠心機に置き、12000g、4℃で5 min遠心した。
9.上清を新しい1.5 mLのEPチューブに移し、管内に250μLのPEG/NaClを入れ、均一に混合した後、4℃で10 min静置した。
10.12000gで10 min遠心し、上清を捨て、1 mLのPBSを入れて再懸濁させた。
【0157】
11.12000gで5 min遠心し、沈殿を捨て、上清を新しい1.5 mLのEPチューブに移した。
12.12000gで5 min遠心し、上清を新しい1.5mLのEPチューブに移し、初期ファージライブラリーを得た。
13.10 μLの沈殿を取って90 μLの2YT培地に投入し、10-1とし、順に10-9まで10倍希釈し、10-7、10-8、10-9の三段の勾配の20 μLの希釈されたサンプルを取って200 μLの予め用意されたOD600が0.5のER2738に投入し、均一に混合した後、37℃の水浴鍋に置き、10 min静置し、LB-AMP固体プレートに108 μLずつ塗布し、37℃で一晩置き、翌日に集落を数えて力価を確定した。
14.力価の計算:集落数が30-300の間のプレートを選び、二枚のプレートの平均値を取り、集落数に希釈倍数をかけ、さらに100をかけて力価を得た。
再生、レスキューおよび計数を経たファージディスプレイライブラリーは後続のファージディスプレイライブラリーの溶液パンニングを行うことができる。
【0158】
実施例7.ファージディスプレイライブラリーの溶液パンニング
ストレプトアビジン磁気ビーズを使用し、予めビオチン化された標的抗原と結合させ、さらにスクリーニングされるファージライブラリーとインキュベートし、非特異的に結合したファージを洗浄して除去し、TEAで標的抗原に結合した組み換えファージを溶離させ、そして増幅した。3-4回のスクリーニング後、単一クレーンを取ってシークエンシングを行った。
【0159】
1.PBSでビオチン化された標的抗原を50、10、5、5 μg/mlに希釈し(毎回の使用濃度が異なる)、それぞれストレプトアジビン磁気ビーズと4℃で混合して1hインキュベートし、遊離の標的抗原を洗浄して除去した。
2.約6×1011 Pfu 150 μLのライブラリーファージまたは前回の増幅産物を600 μLに希釈し、予めFcがコーディングされたELISAウェルに入れ、Fc除去を計三回行い、Fcが結合したファージを除去した。
3.Fc除去されたファージをストレプトアビジン磁気ビーズと混合し、4℃で1hインキュベートし、ストレプトアビジンと結合したファージを除去した。
4.磁気ビーズを捨て、ファージを1% PBSAで約1 mLに希釈し、工程1で標的抗原と予め結合させた磁気ビーズと混合し、4℃で1hインキュベートした。
【0160】
5.ファージを吸い取り、PBSで磁気ビーズを3-5回洗浄し、毎回2-3 minで、同時にPBSで予めMPBSでブロッキングされた1.5 mLのEPチューブを洗浄した。
6.600 μLの1×TEAで磁気ビーズに結合したファージを10 min溶離させ、溶離した産物を予めブロッキングされたEPチューブに移し、300 μLのTris-HClを入れて中和した。
7.10 μLのアウトプット産物を取って90 μLの2YT培地に投入し、100とし、順に10-2まで10倍希釈し、10、10、10-1、10-2の四段の勾配の20 μLの希釈されたサンプルを取って200 μLの予め用意されたOD600が0.5のER2738に投入し(10はそのまま未希釈の産物20μLをER2738に入れ)、均一に混合した後、37℃の水浴鍋に置き、10 min静置し、LB-AMP固体プレートに108 μLずつ塗布し、37℃で一晩置き、翌日に集落を数えて力価を確定した。
8.力価の計算:集落数が30-300の間のプレートを選び、二枚のプレートの平均値を取り、集落数に希釈倍数をかけ、さらに溶離体積をかけた。
Fcタンパク質をコーティングし、構築されたファージディスプレイライブラリーを6回除去し、さらに予めビオチン-PDL1を結合させたストレプトアビジン磁気ビーズとインキュベートし、PDL1が特異的に結合したファージを濃縮し、四回濃縮した。毎回のインプットとアウトプットを統計し、そして毎回の濃縮因子を計算した。
【0161】
表10に示された計算結果から、濃縮因子(インプット/アウトプット)では、ファージライブラリーは明らかな濃縮があったことが示され、PDL1が特異的に結合したファージライブラリーの構築に成功したことがわかる。
【表10-1】
【表10-2】
【0162】
実施例8.ファージディスプレイライブラリーの細胞に基づくパンニング
標的タンパク質を過剰発現する組み換え細胞株を使用し、ファージライブラリーを順に空白細胞および標的タンパク質を過剰発現する細胞とインキュベートした後、数回の洗浄によって非特異的に結合したファージを除去した後、グリシンまたはTEAで細胞の表面に結合した組み換えファージを溶離させ、そして増幅した。3-4回のスクリーニングを経た後、単一クローンを取ってELISA検出を行った。
1.1日前に1% PBSAで1.5 mLのEPチューブをブロッキングし、4℃で一晩置いた。
2.標的細胞およびコントロール細胞をそれぞれ1×10取り、PBSで三回洗浄し、10 mLの1% PBSAで再懸濁させ、脱色シェーカーにおいて室温で1h低速ブロッキングした。
3.コントロール細胞に1×1011のファージを投入し、1hインキュベートし、標的細胞は続いてブロッキングした。
【0163】
4.インキュベート終了後の細胞を遠心機に置き、1000gで5 min遠心し、標的細胞上清(1%PBSA)を捨て、そしてコントロール細胞の上清を慎重に吸い取り、標的細胞管に入れ、再懸濁させた後、シェーカーに置き、1h低速インキュベートした。
5.標的細胞を遠心機に置き、1000gで5 min遠心し(同時にPBSで1日前にブロッキングした1.5 mLのEPチューブを三回洗浄し)、標的細胞上清を捨て、4mlのPBSを入れて再懸濁させ、分けてブロッキングした1.5 mLのEPチューブに入れ、PBSで遠心して5回洗浄し、さらに細胞を別の四本のEPチューブに打ちし、続いて5回洗浄した後、細胞を同一のEPチューブに移した。
6.200 μLのPBSで細胞を再懸濁させた後、200 μLの2×TEAを入れて迅速に吹いて吸い、溶液の粘稠がなくなるまで繰り返し、さらに200 μLのTris-HClを入れて中和し、産物を得た。
7.アウトライブラリーの力価を測定し、実施例7の溶液パンニングの方案における工程7、8と同様である。
【0164】
ファージライブラリーのスクリーニングは実験条件によって実施例7または実施例8における方法を選んで行うことができるが、本発明では、好適に実施例7における方法を使用した。
【0165】
実施例9.ファージELISA
1.2YT-Amp培地を分けて96ウェルディープウェルプレートに入れ、500 μL/ウェルで、アウトプットプレートにおける単一クローンを取り、37℃、225 rpmでOD600が0.5になるまで培養した。最後の二つのウェルのH11とH12はクローンを入れず、培地のみを入れ、ブランク対照とした。
2.同時にCBSで抗原をELISAプレートにコーティングし、濃度が1 μg/mLで、100 μL/ウェルで、37℃で2hコーティングした。
3.別途に一枚の96ウェルディープウェルプレートを取り、分けて2YT-A培地を500 μL/ウェル入れ、マルチチャンネルピペットで順にOD600が0.5の菌液を10 μL吸い取って新しい96ウェルプレートに入れ、37℃、225 rpmで一晩培養し、これをシークエンシング用サンプル菌液とした。
4.OD600が0.5の菌液に、M13KO7を入れ、均一に混合した後、37℃で15 min静置した。
5.M13KO7体積=10 × 体積 × OD600 × 5 × 10 / M13KO7力価。
【0166】
6.侵襲終了後の菌液をシェーカーに置き、37℃、225rpmで45 min培養した。
7.菌液を遠心機に置き、4000 rpmで10 min遠心し、上清を捨て、2YT-AK培地で再懸濁させ、800μL/ウェルで、シェーカーに置き、30℃、210 rpmで一晩培養した。
8.同時にELISAプレートから抗原を捨て、PBST洗液で三回洗浄した後、3% MPBSで250 μL/ウェルでブロッキングし、4℃で一晩置いた。そして余分に一枚のブランクプレートをブロッキングし、ブランクとした。
9.翌日に、96ウェルディープウェルプレートを遠心機に置き、4000 rpmで10 min遠心した。ELISAプレートにおけるミルクを捨て、200 μLのPBSTで4回洗浄した。各ウェルにまず50 μLのPBSTを入れ、さらにそれぞれ相応して50 μLの遠心後のファージ上清を入れ、4℃で1hインキュベートした。上清を捨て、そしてPBSTで5回洗浄した。PBSTでHRP-抗M13二次抗体を希釈し、100 μL/ウェルで、4℃で45 minインキュベートした後、二次抗体を洗浄して除去し、PBSTで5回洗浄し、TMBで常温で10 min呈色させ、塩酸で停止させ、数値を読み取り、S/N比が大きい値のクローンを選び、保存用の菌液を測定に供した。
【0167】
実施例7における第二回および第三回のアウトプット産物を選んでファージELISA検出を行った。それぞれストレプトアビジン、ビオチン-PDL1-FcおよびFcタンパク質をコーティングし、組み換えファージ上清を取ってELISA検出を行い、対照群はそのままブロッキングしたウェルプレートであった。
【0168】
図5-9に示すように、第二回および第三回のアウトプット産物のELISA検出の結果では、ここで、赤色の表示は同時にPDL1抗原およびFcの両方と結合するクローンで、青色はPDL1標的抗原のみと結合し、Fcと結合しないクローンを表し、緑色はPDL1標的抗原のみと結合し、Fcと結合せず、そしてPDL1標的抗原との結合が比較的に強いクローン(すなわち、シークエンシングに供するクローン)を表す。中からS/N比が4以上で、かつFcと結合しないクローンを選んでシークエンシングし、抗体の配列を分析した。
【0169】
分析したところ、ストレプトアビジン磁気ビーズおよびビオチン化抗原で溶液パンニングした結果、計6本の異なる抗体配列、すなわち、本発明の17-A06、17-C12、17-A01、17-G06、23-G3、29-H9を得た。
【0170】
標的クローンの菌液を取ってPCR増幅し、VHHのN末端にシグナルペプチドを付加し、C末端にIgG1-Fcを付加し、PCR産物をHEK293細胞に一過性形質移入し、発現された抗体上清を取ってFACS検出を行った。
【0171】
実施例10.オーバーラップPCR産物の増幅、一過性形質移入および検出
1.第一回のPCR:CMV、VHHおよびFcの増幅
(1) 表11のようなPCR反応系[50 μL系/反応]を調製した(CMVおよびFc断片は複数製造してもよい)(CMV断片増幅プライマー:CMV-FおよびPCom-R1;VHH断片増幅プライマー:PCom-F1およびPCom-R2;Fc断片増幅プライマー:PCom-F2およびPGK-R)。
【表11】
ここで、PCR反応のプログラムは以下の通りである:
95℃ 10 分
95℃ 15秒
56℃ 30秒 25サイクル
68℃ 60秒
68℃ 10 分
(2) 50 μLのPCR産物を取り、1/10体積の10×仕込み緩衝液を入れ、1%のアガロースゲルで電気泳動による分析を行ったところ、CMVおよびFcのバンドの大きさが750 bp程度で、VHHのバンドの大きさが560 bp程度であった。
(3) ゲルから標的バンドを切り取り、そしてPCR産物を精製し、NanoDropで濃度を測定した(濃度が高すぎると、希釈してから後続の反応を行う)。
【0172】
2.第二回のPCR:オーバーラップ発現PCRによるCMV、VHHおよびFcの連結
(1) 表12のようなPCR反応系を調製した。
【表12】
ここで、PCR反応のプログラムは以下の通りである:
95℃ 10 分
95℃ 15秒
60℃ 30秒 15サイクル
68℃ 120秒
【0173】
(2) PCR反応プログラム後、プライマーCMV-FおよびPGK-Rをそれぞれ2 μL入れ、さらに次のPCR反応プログラムを行った。
次のPCR反応のプログラムは以下の通りである:
95℃ 15秒
60℃ 30秒 20サイクル
68℃ 120秒
68℃ 10 分
(3) TakaRaのDNA断片回収キットによってオーバーラップPCR産物を精製し、そしてNanoDropで濃度を測定し、少なくとも10 μgのPCR産物が必要である。後続の細胞形質移入の検証に使用した。
(4) 形質移入の工程は真核発現ベクターの形質移入と同様である。
【0174】
実施例11.単一ドメイン抗体の一過性形質移入・発現
1.冷蔵庫からLVTransm形質移入試薬および抗体発現ベクターpcDNA3.4-hIgG1-Fc2またはオーバーラップPCR産物を取り出し、室温で解凍した後、ピペットで上下に吹いてかき混ぜて完全に均一に混合した。PBS緩衝液を取り出し、室温に温めた。500 μLのPBSを24ウェルプレートの一つのウェルに取り、4 μgのpcDNA3.4-hIgG1-Fc2を入れ、ピペットで上下に吹いてかき混ぜて完全に均一に混合した後、12 μLのLVTransmを入れ、すぐにピペットで上下に吹いてかき混ぜて完全に均一に混合し、室温において10分静置した。ここの混合物をDNA/LVTransm複合体を呼ぶ。
【0175】
2.上記532 μLのDNA/LVTransm複合体を1.5 mLの293F細胞に入れ、軽く振とうして十分に均一に混合した。細胞を37℃、5% COのインキュベーターに置き、130 RPMで6~8時間培養した後、1.5 mLの新鮮な293培地を入れ、細胞をインキュベーターに戻して続いて培養した。
3.連続3日培養した後、遠心して培地上清を収集し、0.45 μmのろ膜でろ過し、ろ液を無菌遠心管に移し、後続のフローサイトメトリーおよびELISA検出を行った。
【0176】
実施例12.VHH真核発現ベクターの構築
実施例9におけるファージ単一クローンのELISA検出の結果により、陽性クローンを選んでシークエンシングし、VHH抗体の配列を得た。得られたVHH抗体の配列を分析してそれぞれ遺伝子合成を行い、ヒトIgG1 Fcと直列に連結して発現ベクターpcDNA3.4-hIgG1-Fc2にサブクローニングした。ベクターはシークエンシングによって正確だと検証されると、Qiagenプラスミドマキシキットによって内毒素除去プラスミドを製造して使用に備えた。
【0177】
実施例13.フローサイトメトリーによる組み換え抗体と標的タンパク質の結合の検出
1.液体窒素からCHO-K1およびCHO-K1-PDL1細胞株を再生し、細胞の状態を対数生長期に調整した。
2.二種類の細胞をそれぞれいくつかに分け、細胞数は5×10個細胞ずつであった。
3.発現された抗体をそれぞれ標的細胞CHO-K1およびCHO-K1-PDL1とインキュベートし、十分に均一に混合した後、室温で1時間インキュベートした。
4.800×g、室温で5分遠心し、抗体を含有する上清を捨て、PBSで細胞を3回洗浄した。
【0178】
5.1 μLのPEまたはAlexa Fluor 488で標識された抗ヒトIgGを入れ、十分に均一に混合した後、室温で光を避けて30分インキュベートした。
6.800×g、室温で5分遠心し、二次抗体を含有する上清を捨て、PBSで細胞を3回洗浄した。
7.500 μLのPBSで細胞を再懸濁させ、フローサイトメトリーによる分析を行った。
【0179】
候補抗体の配列のN末端およびC末端にそれぞれ実施例10のオーバーラップPCRによってCMVプロモーター、シグナルペプチドおよびヒトIgG1 Fcタグを付加し、実施例11のようにPCR産物を精製して293細胞に一過性形質移入し、発現された抗体と取ってフローサイトメトリーによる検出を行った。
【0180】
図10図11に示すように、FACSによる検出の結果、17-A06,17-C12,17-A01,17-G06および23-G3、29-H9はCHO-K1/PDL1組み換え細胞株と特異的に結合することができたが、CHO-K1とは結合しなかったか、ほとんど結合しなかった。
当該配列を合成し、そして発現ベクターpcDNA3.4-hIgG1-Fc2に挿入し、候補抗体の発現および精製を行った。
【0181】
実施例14.抗体の発現・精製
1.冷蔵庫からLVTransm形質移入試薬および一本鎖抗体発現ベクターを取り出し、室温で解凍した後、ピペットで上下に吹いてかき混ぜて完全に均一に混合した。PBSまたはHBSS緩衝液を取り出し、室温に温めた。2 mLのPBSを6ウェルプレートの一つのウェルに取り、それぞれ130 μgのpcDNA3.4-hIgG1-Fc2を入れ、ピペットで上下に吹いてかき混ぜて完全に均一に混合した後、400 μLのLVTransmを入れ、すぐにピペットで上下に吹いてかき混ぜて完全に均一に混合し、室温において10分静置した。
2.上記DNA/LVTransm複合体を50 mLの293F細胞に入れ、軽く振とうして十分に均一に混合した。細胞を37℃、5% COのインキュベーターに置き、130RPMで6~8時間培養した後、50 mLの新鮮な293培地を入れ、細胞をインキュベーターに戻して続いて培養した。
【0182】
3.連続7日培養した後、遠心して培地上清を収集し、0.45 μmのろ膜でろ過し、ろ液を無菌遠心管に移し、プロテインAカラムで抗体を精製した。
候補のPDL1抗体(すなわち、17-A06、17-C12、17-A01、17-G06、23-G3、29-H9)の発現ベクターを293F細胞に一過性形質移入し、形質移入上清を収集し、プロテインAで候補抗体を精製した。
候補抗体を10μg/mLから、4段の勾配に5倍希釈し、フローサイトメーターによって精製抗体のPDL1を過剰発現する組み換え細胞株CHO-K1/PDL1との結合の様子を検出した。
図12-14に示すフローサイトメトリーの結果から、候補抗体の濃度の低下につれ、候補抗体と過剰発現細胞株の結合が変化したことが示され、精製された17-A06、17-C12、17-A01、17-G06および23-G3、29-H9抗体はいずれもPDL1過剰発現細胞株と特異的に結合することができることがわかる。
【0183】
実施例15.PD-1-PDL1遮断活性の検出
Jurkat-PD-1-NFAT-Lucレポーター遺伝子細胞株およびaAPCCHO-PDL1細胞を再生させ、連続的に対数生長期まで継代培養し、96ウェルプレートにおいて、各ウェルに2×10個のエフェクター細胞Jurkat-PD-1-NFAT-Lucを接種し、1:1で標的細胞aAPCCHO-PDL1を入れた。相応するウェルに勾配希釈された検出抗体(陽性抗体:ニボルマブ(Nivolumab);被験抗体)を入れ、3倍勾配で抗体を希釈し、連続的に9段の勾配に希釈し、最終濃度が順に30 μg/mL、10 μg/mL、3.333 μg/mL、1.111 μg/mL、0.3704 μg/mL、0.1235 μg/mL、0.04115 μg/mL、0.01372 μg/mL、0.004572 μg/mLで、さらに相応するウェルに入れた。18h共培養した後、各ウェルに25 μLのOne-Glo試薬を入れ、Tecan M1000proマクロプレートリーダーでウェルにおけるルシフェラーゼ活性数値を検出した。
【0184】
図15に示すように、陽性対照ニボルマブはPD-1/PDL1の相互作用を遮断することができ、EC50は0.3217 μg/mLであった。被験抗体のうち、PDL1単一ドメイン抗体17-A06、23-G3、29-H9はいずれもPD-1/PDL1の相互作用を遮断することができたが、残りの三つの後方抗体は遮断機能を有さない。しかし、PDL1候補抗体17-A06、23-G3、29-H9のEC50は陽性対照抗体ニボルマブよりも高かったが、単一ドメイン抗体が小さく、エピトープが占める空間が限られたからと推測され、遮断機能を有する3つの抗体をランダムに組み合わせて二価抗体を構築してさらに遮断活性の検出を行った。
【0185】
候補の3つの抗体をランダムに組み合わせて二価抗体を構築し、二価抗体の発現様態は17-A06-G4S-23-G3、17-A06-G4S-29-H9、23-G3-G4S-29-H9で、抗体を精製した後、Jurkat-PD-1-NFAT-Lucレポーター遺伝子細胞株およびaAPCCHO-PDL1細胞で二価抗体に対してPD-1-PDL1遮断活性の検出を行った。
【0186】
図16に示すように、陽性対照であるニボルマブ(PD-1抗体、NIV20)およびアテゾリズマブ(PDL1抗体、Atezolizumab)はPD-1/PDL1の相互作用を遮断することができ、EC50は相当した。被験二価PDL1抗体はいずれもPD-1/PDL1の相互作用を遮断することができ、二価抗体の遮断能力は陽性対照と一致する。
【0187】
実施例16.組み換え抗体の親和力の検出
PDL1候補抗体(Fcタグ)を5 μg/mLでプロテインAプローブに結合させ、勾配希釈されたPDL1-Hisを移動相とし、最終濃度が順に2.6 μg/mL、1.3 μg/mL、0.65 μg/mL、0.325 μg/mL、0.1625 μg/mLで、OCTET R2で親和力の検出を行った。
【0188】
OCTET R2で3つの二価PDL1抗体に対して親和力の検出を行ったが、親和力検出の結果を表13に示す。
【表13】
検出結果から、三つの二価抗体はいずれも親和力が高く、高い順でそれぞれ4.198×10-9 M、2.729×10-9 M、1.915×10-9 Mであったことが示された。
【0189】
各文献がそれぞれ単独に引用されるように、本発明に係るすべての文献は本出願で参考として引用する。また、本発明の上記の内容を読み終わった後、当業者が本発明を各種の変動や修正をすることができるが、それらの等価の形態のものは本発明の請求の範囲に含まれることが理解されるはずである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【配列表】
2025501329000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-09-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PDL1に対するナノ抗体であって、前記PDL1に対するナノ抗体のVHH鎖の相補性決定領域CDRが以下の群から選ばれる一つまたは複数であることを特徴とするナノ抗体:
(1) 配列番号7で示されるCDR1、配列番号8で示されるCDR2、および配列番号 9で示されるCDR3;
(2) 配列番号10で示されるCDR1、配列番号11で示されるCDR2、および配列番号 12で示されるCDR3;
(3) 配列番号10で示されるCDR1、配列番号13で示されるCDR2、および配列番号 14で示されるCDR3;
(4) 配列番号10で示されるCDR1、配列番号13で示されるCDR2、および配列番号 15で示されるCDR3;
(5) 配列番号7で示されるCDR1、配列番号16で示されるCDR2、および配列番号 17で示されるCDR3;
(6) 配列番号18で示されるCDR1、配列番号19で示されるCDR2、および配列番号 20で示されるCDR3。
【請求項2】
前記PDL1に対するナノ抗体のVHH鎖は、さらに、フレームワーク領域FRを含み、前記のフレームワーク領域FRは以下の群から選ばれる一つまたは複数であることを特徴とする請求項1に記載のPDL1に対するナノ抗体:
(1) 配列番号21で示されるFR1、配列番号22で示されるFR2、配列番号23で示されるFR3、および配列番号 24で示されるFR4;
(2) 配列番号25で示されるFR1、配列番号26で示されるFR2、配列番号27で示されるFR3、および配列番号 24で示されるFR4;
(3) 配列番号28で示されるFR1、配列番号29で示されるFR2、配列番号30で示されるFR3、および配列番号 24で示されるFR4;
(4) 配列番号31で示されるFR1、配列番号29で示されるFR2、配列番号32で示されるFR3、および配列番号 24で示されるFR4;
(5) 配列番号33で示されるFR1、配列番号22で示されるFR2、配列番号34で示されるFR3、および配列番号 24で示されるFR4;
(6) 配列番号35で示されるFR1、配列番号36で示されるFR2、配列番号37で示されるFR3、および配列番号 24で示されるFR4。
【請求項3】
前記PDL1に対するナノ抗体のVHH鎖のアミノ酸配列は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれることを特徴とする請求項1に記載のPDL1に対するナノ抗体。
【請求項4】
一つまたは複数の請求項3に記載のPDL1に対するナノ抗体を含むことを特徴とするPDL1に対する抗体。
【請求項5】
前記抗体は単量体、二価抗体、および/または多価抗体を含むことを特徴とする請求項4に記載のPDL1に対する抗体。
【請求項6】
請求項1に記載のPDL1に対するナノ抗体、または請求項4に記載のPDL1に対する抗体からなる群から選ばれるタンパク質をコードすることを特徴とするポリヌクレオチド。
【請求項7】
請求項6に記載のポリヌクレオチドを含有することを特徴とする発現ベクター。
【請求項8】
請求項7に記載の発現ベクターを含有することを特徴とする宿主細胞。
【請求項9】
PDL1に対するナノ抗体を生成する方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする方法:
(a) ナノ抗体の生成に適する条件において、請求項8に記載の宿主細胞を培養することにより、PDL1に対するナノ抗体を含む培養物を得る;
(b) 前記培養物から前記のPDL1に対するナノ抗体を単離および/または回収する;ならびに
(c) 任意に、工程(b)得られたPDL1に対するナノ抗体を精製および/または修飾する。
【請求項10】
以下のものを含有することを特徴とする免疫複合体:
(a) 請求項1に記載のPDL1に対するナノ抗体、または請求項4に記載のPDL1に対する抗体;ならびに
(b) 検出可能なマーカー、薬物、サイトカイン、放射性核種、酵素、金ナノ粒子/ナノロッド、磁性ナノ粒子、ウイルスコートタンパク質またはVLP、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる複合部分。
【請求項11】
宿主細胞は、エンジニアリングされた免疫細胞であり、好適には、CAR-T細胞またはCAR-NK細胞であることを特徴とする、前記宿主細胞。
【請求項12】
活性成分の使用であって、前記活性成分は、請求項1に記載のPDL1に対するナノ抗体、または請求項4に記載のPDL1に対する抗体、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれ、前記活性成分は以下:
(a) PDL1高発現疾患を予防および/または治療する薬物;
(b) PDL1高発現疾患を検出する試薬
を製造するために使用されることを特徴とする、前記使用。
【請求項13】
以下:
(a) 活性成分として、請求項1に記載のPDL1に対するナノ抗体、または請求項4に記載のPDL1に対する抗体、またはこれらの組み合わせ;ならびに
(ii) 薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤
を含有することを特徴とする、前記薬物組成物。
【国際調査報告】