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特表2025-501333電気療法及び/又は電気生理学のための装置並びに方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-17
(54)【発明の名称】電気療法及び/又は電気生理学のための装置並びに方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/372 20060101AFI20250109BHJP
   A61N 1/05 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
A61N1/372
A61N1/05
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024540557
(86)(22)【出願日】2022-12-20
(85)【翻訳文提出日】2024-08-05
(86)【国際出願番号】 EP2022087083
(87)【国際公開番号】W WO2023131523
(87)【国際公開日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】102022000000155
(32)【優先日】2022-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512252618
【氏名又は名称】ワイズ ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アントニーニ、アレッサンドロ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィドット、マルコ
(72)【発明者】
【氏名】モントローネ、フェデリカ
(72)【発明者】
【氏名】サイニ、マッテオ
(72)【発明者】
【氏名】コルドバ ヒメネス、ウィリアム デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】マローニ、セルジオ
(72)【発明者】
【氏名】カーティス、ステュアート ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】フリント、ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ペニー、マシュー ロバート
(72)【発明者】
【氏名】カスパニー、オマール
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053CC10
4C053KK10
(57)【要約】
電気療法及び/又は電気生理学のための装置1並びに送達システムを含むキットと、装置のための方法である。装置1は、リード2と、少なくとも1つの電極8を含むパドル5とを含み、パドル5は、動作構成と、より小さな横断範囲の搬送構成との間で再構成可能である。送達システムは、可撓性があり中空の外側シース28と、搬送構成において装置1の少なくともパドル5を受け入れるための中空の送達シース100とを含む。送達シース100は、外側シース28の近位端部へ挿入され、患者の身体11内の埋め込み部位に配置された又は埋め込み部位に向かって方向付けられた外側シース28の遠位端部まで装置1のパドル5を送達するために、外側シース28を通じて搬送されてよい。送達シース100は、搬送中にパドル5を保護し、パドルが展開されるときのパドル5の位置及び向きの制御を向上させることを可能にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気療法及び/又は電気生理学のための装置(1)並びに前記装置のための送達システムを備えるキットであって、
前記装置(1)は、
リード(2)と、
患者の身体(11)内の生体構造(10)と接触するように構成された露出した面を有するパドル電極(8)を備えるパドル(5)と、を備え、
前記パドル(5)は、搬送構成と動作構成との間で再構成可能であり、前記パドル(5)の横断範囲は、前記動作構成におけるよりも前記搬送構成においてより小さく、
前記送達システムは、
近位端部及び遠位端部を備える可撓性があり中空の外側シース(28)と、
前記搬送構成において前記装置(1)の少なくとも前記パドル(5)を受け入れるための中空の送達シース(100)と、を備え、
前記送達シース(100)は、前記装置(1)の前記パドル(5)を前記外側シース(28)の前記遠位端部まで送達するために、前記外側シース(28)の前記近位端部に挿入され、前記外側シース(28)を通って搬送されるように構成されている、キット。
【請求項2】
前記送達シース(100)は、近位端部及び遠位端部を備え、前記遠位端部は、遠位開口(102)を備え、前記遠位開口を通じて前記パドル(5)が受け入れられ且つ排出されることが可能である、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
前記送達シース(100)は、前記送達シース(100)の前記近位端部において近位開口(104)をさらに備え、前記近位開口を通じて前記装置(1)の前記リード(2)が通過することが可能である、請求項2に記載のキット。
【請求項4】
前記パドル(5)は、前記送達シース(100)から排出されたときに、自動的にその動作構成を採用するように構成されている、請求項1から3までのいずれか一項に記載のキット。
【請求項5】
前記装置(1)は、前記身体(11)の外側から前記リード(2)の動きを制御するためのスタイレットをさらに備える、請求項1から4までのいずれか一項に記載のキット。
【請求項6】
前記装置(1)は、少なくとも1つの蛍光マーカ(85)をさらに備え、前記蛍光マーカによって前記パドル(5)の向きが蛍光透視法を用いて決定され得る、請求項1から5までのいずれか一項に記載のキット。
【請求項7】
前記送達システムは、
前記患者の前記身体(11)内への経路を形成するための実質的に剛性があり中空の針(50)と、
前記針(50)を通過することができるガイドワイヤ(70)と、
前記ガイドワイヤ(70)の周囲での係合及び前記ガイドワイヤ(70)に沿った移動が可能な中空の拡張器(72)と、をさらに備え、
前記中空の外側シース(28)は、前記ガイドワイヤ(70)に沿って前記拡張器(72)と一緒に移動するように前記拡張器(72)の周囲に係合することが可能である、請求項1から6までのいずれか一項に記載のキット。
【請求項8】
電気療法及び/又は電気生理学のための装置(1)を患者の身体(11)内へ送達する方法であって、
前記装置(1)は、
リード(2)と、
患者の身体(11)内の生体構造(10)と接触するように構成された露出した面を有するパドル電極(8)を備えるパドル(5)と、を備え、
前記パドル(5)は、搬送構成と動作構成との間で再構成可能であり、前記パドル(5)の横断範囲は、前記動作構成におけるよりも前記搬送構成においてより小さく、
前記方法は、
可撓性があり中空の外側シース(28)を、前記外側シース(28)の遠位端部が前記患者の身体(11)内の埋め込み部位にある又は前記埋め込み部位に向かって方向付けられるように、前記患者の前記身体内へ挿入することと、
前記装置(1)の少なくとも前記パドル(5)を、前記パドル(5)が前記搬送構成の状態で中空の送達シース(100)内へ挿入することと、
前記装置(1)の前記パドル(5)を前記外側シース(28)の前記遠位端部へ送達するために、前記送達シース(100)を前記外側シース(28)の近位端部へ挿入し、前記外側シース(28)を通じて前記送達シース(100)を搬送することと、
前記パドル(5)を前記送達シース(100)から排出することと、を備える、方法。
【請求項9】
前記送達シース(100)は、近位端部及び遠位端部を備え、前記送達シース(100)内への前記パドル(5)の挿入及び前記送達シース(100)からの前記パドル(5)の排出が、前記送達シース(100)の前記遠位端部における遠位開口(102)を通じて行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記送達シース(100)の前記近位端部における近位開口(104)を通じて前記装置(1)の前記リード(2)を通過させるステップをさらに備える、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記パドル(5)は、前記送達シース(100)から排出されるときに、自動的にその動作構成を採用する、請求項8から10までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記患者の前記身体(11)内への経路を形成するために中空の針(50)を使用し、
前記針(50)を通じてガイドワイヤ(70)を挿入し、前記ガイドワイヤ(70)の遠位端部が前記埋め込み部位にある又は前記埋め込み部位に向かって方向付けられるように前記ガイドワイヤ(70)を方向付け、
前記針(50)を引き出す、予備ステップを備え、
前記外側シース(28)を挿入するステップは、
前記外側シース(28)を中空の拡張器の周囲に係合させることと、
前記拡張器(72)を前記ガイドワイヤ(70)の周囲に係合させることと、
前記拡張器(72)の遠位端部が前記埋め込み部位にある又は前記埋め込み部位に向かって方向付けられるまで、前記拡張器(72)及び前記外側シース(28)を前記ガイドワイヤ(70)に沿って移動させることと、
前記外側シース(28)を通じて前記拡張器(72)を引き出すことと、を備える、請求項8から11までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記パドルを前記送達シース(100)から排出するステップは、前記装置(1)上の少なくとも1つの蛍光マーカ(85)を観察するために蛍光透視法を用いることによって前記パドル(5)の位置又は向きを決定することを備える、請求項8から12までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記パドル(5)を前記送達シース(100)から排出するステップは、前記パドル(5)の向きを調整するために、前記パドル(5)が少なくとも部分的に前記送達シース(100)内にある間、前記送達シース(100)を回転させることを備える、請求項8から13までのいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気療法及び/又は電気生理学のための装置、並びに例えば、脊髄に隣り合う、患者の身体内へこのような装置を送達するためのシステム及び方法に関する。特に、装置は、電気療法のための刺激装置の一部として又は電気生理学のためのモニタの一部として使用されてよい。用途は、神経変調療法、神経モニタリング、神経機能代替及びブレイン・マシン・インターフェースを含む。
【背景技術】
【0002】
人体への埋め込み可能な装置の送達のための低侵襲手術手順は、一般に当該技術分野において知られている。例えば、門脈などを通じて標的生体構造へアクセスするための介入カテーテルを使用することが知られている。
【0003】
介入カテーテルの管腔に嵌合するための搬送構成にあるときに半径方向サイズを縮小することができ、最終的に、埋め込み部位に達したときに半径方向サイズを増大することができる埋め込み可能装置を展開することも知られている。これらの公知の埋め込み可能装置は、一般に、オペレータ、典型的には外科医又はその他の臨床医が、患者の身体の外に配置された制御ステーション、例えば、カテーテル・ハンドルから埋め込み可能装置の展開を制御することを可能にするように、カテーテルの長手方向管腔全体を通じて延びる制御ワイヤによって制御される。
【0004】
形状記憶材料、例えば、ニチノールなどの形状記憶合金及び/又は形状記憶架橋ポリマーも、生物医学的インプラントのために一般に使用され、適切な熱応力を受けたときに元の形状を回復する能力を有する。例えば、自己拡張ステント・グラフト及びその他の半径方向に拡張可能な埋め込み可能構造は、典型的には、患者の身体内の温度上昇により生体構造に埋め込まれたときに自己拡張する特性を有するために、ニチノールから形成されている。形状記憶架橋ポリマーは、典型的には、実質的にガラス材料のように、硬質相から軟質相への溶融転移による形状記憶効果を達成する。一般に擬弾性材料と呼ばれる超弾性材料も当該技術分野において知られており、元の形状を達成するために熱活性を必要とすることなく極めて大きな弾性可逆変形を受ける能力を示す。
【0005】
電気生理学の技術分野において、生体構造の電気活動を検出するための埋め込み可能電極を提供することが知られている。例えば、脳の電気活動を、患者の頭皮に挿入された針電極によって検出することができる。記録装置を含む制御ユニットは、典型的には、検出された信号、例えば、電気皮質脳波信号を記録及びフィルタリングするための埋め込み可能電極に関連している。
【0006】
電気療法のための埋め込み可能電極も当該技術分野において知られている。例えば、人工心臓ペーシングは、一般的に、心拍を制御するために心臓の収縮組織に刺激パターンを伝達することができる能動装置の埋め込みによって達成される。
【0007】
神経変調療法の技術分野において、埋め込み可能電極は、特定の電気的及び/又は磁気的刺激パターンを適用することによって神経組織の機能の制御された変更を誘発するために使用される。神経変調療法治療は、薬剤抵抗性てんかん、慢性頭痛状態、膀胱及び腸又は呼吸制御から聴力(人工内耳及び聴性人工脳幹)及び視力(網膜移植)などの感覚障害の改善にわたる機能治療における適用も含む。例えば、後頭神経の末梢神経刺激は、慣性的な片頭痛の痛みを緩和することを目的とする。
【0008】
さらに、ブレイン・コンピュータ・インターフェースの技術分野は、損傷を受けた動き、視力及び/又は聴力を回復するために、脳と装置との間の双方向直接通信を提供するための、主に神経機能代替のための、埋め込み可能電極を使用する。双方向通信は、電気刺激を伝達するための刺激電極として機能するためのいくつかの埋め込み可能電極及び標的生体構造の電気活動を感知するための記録電極としてのいくつかのその他の埋め込み可能電極を必要とする。したがって、複数のこのような電極が、通常、配列形式で配置される。
【0009】
加えて、心臓再同期療法の分野において、埋め込み可能電極が使用される。典型的には、これらの電極は、心臓に電気インパルスを伝達するための刺激電極と、心臓の電気状態及び活動についての情報を検出するための記録電極と、を含む。
【0010】
1つの例において、慢性痛を緩和することを目的とする脊髄電気刺激(SCS:spinal cord stimulation)のための電極を埋め込むことが知られている。これらの刺激電極は、硬膜上腔に挿入され、硬膜上腔は、脊柱の椎孔に沿って脊髄の背後に患者の身体の矢状面において延びるチャネルである。
【0011】
標的生体構造の組織との電気的相互作用の目的で標的生体構造内に埋め込み可能電極を導入する必要性が感じられているため、電極が、必然的に電極の最大サイズを制限する狭いアクセスを通じて埋め込まれることが望ましい。アクセスは、通常、経皮切開によるが、必ずしもそうではない。
【0012】
送達カテーテル又はその一部によって制約されていないときに横断方向サイズを増大することができる生体組織刺激のための展開可能な電極を提供することが当該技術分野において知られている。このような展開可能な電極は、通常、展開時に横断方向サイズを増大するために、展開可能構造の本体を付勢するためのばねを含む。例えば、米国特許出願第2008/140152号は、可撓性回路の薄膜から形成された埋め込み構造の本体を有する、横断方向に折り畳み可能なパドル電極を示す。このソリューションは、標的組織に達した後にパドルが展開することを可能にする。しかしながら、このソリューションは、高い可撓性により、パドル電極が送達カテーテル又はその一部によって制約されていないときに不十分な操作性を生じる。
【0013】
本出願人の名義である、WO2011/121017及びEP2553135の文書は、弾性可撓性基板の自由面の下及び基板のコア内へのナノメータ規模の中性粒子の埋め込みにより、電気的に官能化された伸縮可能な物品の製造のための技術を開示する。さらに、やはり本出願人の名義である、WO2017/203441の文書は、本質的に伸縮可能な官能化された伝導性ポリマーを剛性導電体に接続する技術を記載している。
【0014】
米国特許第6714822号の文書は、剛性のリード先端を示しており、このリード先端は、リード先端から横断方向に延びる複数の可撓性のパドル電極を有する。送達カテーテルを通じた搬送中、前記可撓性パドル電極は、剛性先端の周囲に折り畳まれている。このソリューションは、リードの長手方向軸線を中心とするリード全体の旋回運動によってパドル電極を展開させることができる。しかしながら、提案された展開方式は、展開中にリードに沿ってトルク応力を生じる。さらに、送達カテーテル内の搬送構成にあるときに、金属伝導性ラインを含むパドル電極は、金属の構造的完全性を妥協することなく所定の曲率半径を超えて曲がることができず、したがって、シース内に空隙容量の提供を必要とする。したがって、パドル幅に対する送達シース直径の比が高い。
【0015】
いくつかの用途において、例えば、パドル電極が脊髄の横で展開されるとき、リードの長手方向軸線を中心とするパドルの向きは、パドル電極が刺激を加えるように又は正しい位置において電気活動をモニタするために重要であり得る。米国特許第6714822に開示されたシステムにおいて、長手方向軸線を中心とするリード全体の旋回運動は、搬送構成から電極を展開するために用いられ、したがって、このような旋回運動は、軸線を中心とするパドルの所望の向きを設定するためにも用いることはできない。
【0016】
本出願人の名義である、WO2020/201252の文書は、長手方向に沿って延びる細長いリード本体を有する少なくとも1つのリードと、患者の身体内の生体構造と電気接触するように構成された少なくとも1つのパドル電極を含むパドルと、を含む電気療法及び/又は電気生理学のための装置を開示している。電極をリードに電気的に接続するための手段が開示されており、埋め込み部位へのパドルの送達中、パドル電極は、横断方向サイズを縮小するために「オメガ」形状に構成され得る。パドルは、経皮的針によって患者の生体構造内へ前もって導入されたシースを通してリードをスライドさせることによって送達され得る。シースは、患者の生体構造に入って生体構造を通って移動するときに最小限の損傷を生じるように十分に可撓性がなければならない一方、シースの遠位端部が埋め込み部位に向かって押されるときに患者の組織からの高い摩擦力及び圧縮力に打ち勝つために十分に堅い。この堅さは、パドル電極の正確な位置決めのためのシースの操作性を制限する。また、パドルがシースの頑丈な材料を超えてスライドするときに電極に損傷を与えるリスクがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/140152号
【特許文献2】WO2011/121017
【特許文献3】EP2553135
【特許文献4】WO2017/203441
【特許文献5】米国特許第6714822号
【特許文献6】WO2020/201252
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、電気療法及び/又は電気生理学のための装置並びに装置のための送達システムを含むキットであって、
装置は、
リードと、
患者の身体内の生体構造と接触するように構成された露出した面を有するパドル電極を含むパドルと、を含み、
パドルは、搬送構成と動作構成との間で再構成可能であり、パドルの横断範囲は、動作構成におけるよりも搬送構成においてより小さく、
送達システムは、
近位端部及び遠位端部を含む可撓性があり中空の外側シースと、
搬送構成において装置の少なくともパドルを受け入れるための中空の送達シースと、を含み、
送達シースは、装置のパドルを外側シースの遠位端部まで送達するために、外側シースの近位端部に挿入され、外側シースを通って搬送されるように構成されている、キットを提供する。
【0019】
したがって、埋め込み部位へのパドルの送達は、外側シースを通じて送達シースをスライドさせることを必要とする。パドルは、送達シース内への挿入及び送達シースからの排出の間を除き、送達シースに対してスライドする必要はない。したがって、各構成要素の設計及び材料の選択を、各構成要素が行う必要のある限定された機能のために最適化することができる。外側シースを、患者の組織に挿入される間に曝される摩擦力及び圧縮力に耐えるために比較的硬く且つ強く形成することができる(組織への損傷を最小限にすることが条件)。送達シースは、パドル及びパドル電極への損傷を回避し、搬送構成と動作構成との間で移行するときにパドルの変化する形状に対応するために、より柔軟且つより可撓性があることができる。また、柔軟な材料により、外側シースの遠位端部から埋め込み部位に向かって前進するときに周囲の解剖学的構造に対する最小限の損傷で、送達シースをより操作し易くする。加えて、送達シースは、従来技術のシースと比較して小さな外径を有することができ、より狭いスペースを通って前進し、解剖学的構造における障害物を克服することをより容易にする。
【0020】
送達シースの材料は、最小限の摩擦で外側シースを通ってスライドするために選択されることもできるが、パドルは、このようなスライディング接触のために設計される必要はない。送達シースと外側シースとの間の低摩擦は、オペレータが、身体内、例えば、硬膜上腔において送達シース及びパドルを前進させながら患者の身体内で経験され且つ加えられる力の非常にクリアなフィードバックを有することを可能にする。これは、埋め込み部位に向かってシースを前進させるときに経験される力が、隣り合う組織からの圧縮力によって支配されていた従来技術と比較して、手順をより安全にする。
【0021】
好ましくは、送達シースは、近位端部及び遠位端部を有する。遠位端部は、遠位開口を含み、遠位開口を通じてパドルが受け入れられ且つ排出されることが可能である。これは、埋め込み中にパドルがシースの近位端部に挿入され且つシースの遠位端部から排出され、取り出し中はその逆である従来技術とは対照をなす。したがって、従来技術において、パドルは、パドルのそれぞれの端部がシースのリムによって圧縮されるときに折り畳むこと又は開くことが可能であるように設計される必要がある。本発明の好ましい実施の形態において、送達シースの遠位端部に挿入される又は送達シースの遠位端部から排出されるのは、常にパドルの近位端部であり、したがって、パドルの設計を単純化することができる。
【0022】
送達シースは、送達シースの近位端部において近位開口をさらに含んでよく、近位開口を装置のリードが通過することができる。これは、送達シースとリードとの間の相対的な長手方向移動を可能にする便利な配列であり、その結果、パドルが、送達シースの遠位端部へ挿入又は送達シースの遠位端部から排出される。1つの適用において、オペレータは、リードが送達シースの近位開口を通って延びており、パドルが送達シースの遠位端部に挿入されていない、パッケージングされた装置を受け入れることができてよい。したがって、パドルは、使用前の搬送構成に折り畳まれず、使用前の搬送構成に折り畳まれると、長期間の装置の保管中にパドルの弾性又は電気接続が損なわれる可能性がある。また、これにより、オペレータは使用前にパドルを視覚的に検査することができる。次いで、オペレータは、この送達シースを取り上げ、リードの近位端部において引っ張りながら送達シースを保持する。これは、オペレータがパドルに全く触れることなくパドルが折り畳まれ、送達シースの遠位端部内へ挿入されることを可能にする。これは、パドルを手動で折り畳むときにオペレータがパドルに加え得る予測不能な、潜在的に損傷を与える力を回避するという利点を有する一方、オペレータがパドル自体に触れないため、無菌状態が維持される。
【0023】
好ましくは、パドルは、送達シースから排出されたときに自動的に動作構成を採用するように構成されている。これは、例えば、パドルを弾性材料から形成することによって、パドルの構造においてばね又はその他の弾性構造を埋め込むことによって、又は形状記憶材料の使用によって達成され得る。それに代わるものは、例えば、機械的、電気的又は液圧式手段を介して、オペレータの手動制御下でパドルの構成を変化させるための配置を提供することである。これは、移行のタイミングのより大きな制御を可能にするが、装置の複雑性も高める。本発明による、パドルが展開される前にパドルを正確に位置決めするために送達シースを使用する能力は、このような制御配置の利点を減じる。
【0024】
発明のいくつかの実施の形態において、装置は、身体の外側からリードの動きを制御するためのスタイレットをさらに含む。スタイレットは、オペレータが、リード及びパドルを前方へ押し付け、リードの遠位端部を埋め込み部位に向かって操作することを可能にする。
【0025】
装置は、少なくとも1つの蛍光マーカをさらに含んでよく、蛍光マーカによって装置の向きが蛍光透視法を用いて決定され得る。パドルが少なくとも部分的に送達シース内にとどまる間に、パドルの向きを調整するために送達シースを外側シース内で回転させることができることは、本発明による送達シースの使用の利点である。少なくとも1つの蛍光マーカがパドルに設けられている場合、パドルはまず、パドルが開き始め且つ装置の向きが明らかになるように送達シースから部分的に排出されてよい。好ましくは、パドルが搬送構成にとどまる間に装置の向きが既に明らかであるように、少なくとも1つの蛍光マーカがリードに設けられてもよい。
【0026】
発明のいくつかの実施の形態において、送達システムは、患者の身体内への経路を形成するための実質的に剛性があり中空の針と、針を通過することができるガイドワイヤと、ガイドワイヤの周囲での係合及びガイドワイヤに沿った移動が可能な中空の拡張器と、をさらに含み、中空の外側シースは、ガイドワイヤに沿って拡張器と一緒に移動するために拡張器の周囲に係合することが可能である。これらの構成要素は、その遠位端部が所望の埋め込み部位にある又は所望の埋め込み部位に向かって方向付けられるように外側シースを身体内へ導入するための便利な手段を提供する。
【0027】
本発明は、電気療法及び/又は電気生理学のための装置を患者の身体内へ送達する方法であって、
装置は、
リードと、
患者の身体内の生体構造と接触するように構成された露出した面を有するパドル電極を含むパドルと、を含み、
パドルは、搬送構成と動作構成との間で再構成可能であり、パドルの横断範囲は、動作構成におけるよりも搬送構成においてより小さく、
方法は、
可撓性があり中空の外側シースを、外側シースの遠位端部が患者の身体内の埋め込み部位にある又は埋め込み部位に向かって方向付けられるように患者の身体内へ挿入することと、
装置の少なくともパドルを、パドルが搬送構成の状態で中空の送達シース内へ挿入することと、
装置のパドルを外側シースの遠位端部へ送達するために、送達シースを外側シースの近位端部へ挿入し、外側シースを通じて送達シースを搬送することと、
パドルを送達シースから排出することと、を含む、方法をさらに提供する。
【0028】
装置を送達するこの方法の使用は、異なる機能を実行するための外側シース及び送達シースの設計から生じる、使用の容易さ及び患者に対する危害の減少したリスク、送達シースの高い操作性、装置の埋め込み中に経験される力のオペレータへの明確なフィードバックを含む、キットに関連して先に論じられた利点を提供する。
【0029】
好ましくは、送達シースは、近位端部及び遠位端部を含み、送達シース内へのパドルの挿入及び送達シースからのパドルの排出が、送達シースの遠位端部における遠位開口を通じて行われる。方法は、送達シースの近位端部における近位開口を通じて装置のリードを通過させるステップをさらに含んでよい。パドルは、好ましくは、送達シースから排出されるときに自動的にその動作構成を採用する。
【0030】
方法はまた、患者の身体内への経路を形成するために中空の針を使用し、
針を通じてガイドワイヤを挿入し、ガイドワイヤの遠位端部が埋め込み部位にある又は埋め込み部位に向かって方向付けられるようにガイドワイヤを方向付け、
針を引き出す、予備ステップを含んでよく、
外側シースを挿入するステップは、
外側シースを中空の拡張器の周囲に係合させることと、
拡張器をガイドワイヤの周囲に係合させることと、
拡張器の遠位端部が埋め込み部位にある又は埋め込み部位に向かって方向付けられるまで、拡張器及び外側シースをガイドワイヤに沿って移動させることと、
外側シースを通じて拡張器を引き出すことと、を含む。
【0031】
発明によるいくつかの方法において、パドルを送達シースから排出するステップは、装置上の少なくとも1つの蛍光マーカを観察するために蛍光透視法を用いることによってパドルの位置又は向きを決定することを含む。
【0032】
加えて、発明によるいくつかの方法において、パドルを送達シースから排出するステップは、パドルの向きを調整するために、パドルが少なくとも部分的に送達シース内にあるときに、送達シースを回転させることを含む。これは、パドルの向きを調整することが、外側シースの壁部に対して又は患者の組織に対してパドルを回転させることを必要とする従来技術と比較して、送達シースが、周方向及び長手方向において外側シース内で自由にスライドすることができるため、パドルの向きを制御することをより容易にする。
【0033】
要約すると、本発明は、生体構造内の少なくとも1つの電極の微調整された位置特定を提供することができると同時に、患者の身体内への送達のために小さな直径に適合することができる装置を提供する。
【0034】
本発明において使用される装置は、埋め込み可能な装置である。装置は、患者の身体の生体構造内に、長期間、おそらく永久に埋め込まれるように設計されてよい又は例えば患者に行われる手術を補助するために、一時的に埋め込まれるように設計されてよい。
【0035】
本発明において使用される装置は、痛みの軽減、埋め込まれた筋肉刺激、神経筋機能障害の治療、組織修復、尿及び便失禁の治療、男性勃起不全の治療、浮腫の治療、リンパ排液、末梢神経への刺激などの電気療法用途に適し得る。本発明による埋め込み可能な装置は、特に、排他的にではないが、脊髄電気刺激法に適している。
【0036】
本発明において使用される装置は、代替的に、末梢神経記録、心臓壁記録、皮質脳波検査法、脳波記録、筋電図検査などの電気生理学用途に適している場合がある。
【0037】
同じ装置が、電気療法用途及び電気生理学用途の両方に使用されてよい。
【0038】
本明細書において、「遠位」という用語は、装置が使用されるときの装置のオペレータから比較的より遠い装置の端部、又はオペレータから離れる方向を表す。「近位」という用語は、装置が使用されるときのオペレータに比較的より近い装置の端部、又はオペレータに向かう方向を表す。
【0039】
発明のさらなる特徴及び利点が、例として提供され且つ限定することを意図していない好ましい実施の形態の以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】パドルの第1の主面を示す、従来技術による装置の斜視図である。
図2】パドルの第2の主面を示す、従来技術による装置の斜視図である。
図3図1の装置のリードの正面図である。
図4】制御装置を備える図3のリードの近位部分を示す正面図である。
図5】搬送構成にあるときの、本発明による装置の斜視図である。
図6】動作構成にあるときの、本発明による装置の斜視図である。
図7】本発明による、患者に装置を埋め込む方法における一連のステップを示す図である。
図8】本発明による、患者に装置を埋め込む方法における一連のステップを示す図である。
図9】本発明による、患者に装置を埋め込む方法における一連のステップを示す図である。
図10】本発明による、患者に装置を埋め込む方法における一連のステップを示す図である。
図11】本発明による、患者に装置を埋め込む方法における一連のステップを示す図である。
図12】本発明による、患者に装置を埋め込む方法における一連のステップを示す図である。
図13】本発明による、患者に装置を埋め込む方法における一連のステップを示す図である。
図14】拡張器及び外側シースの部分的な縦断面図である。
図15】本発明による送達シース内へ引き込まれるパドルを示す図である。
図16】リード・スタイレットを含む、本発明において使用するための装置の部分的な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1図4は、WO2020/201252の文書から引用されており、それらの完全な説明のためにその文書が参照される。
【0042】
それらは、リード2及びパドル5を含む、電気療法又は電気生理学における用途に適した装置1の遠位部分を示す。1つ又は複数のさらなるパドル(図示せず)がリード2に沿って配置されることが可能である。リード2は、長手方向X-Xに沿って延び且つ近位端部3及び遠位端部4を含む細長いリード本体を含む。横断方向Y-Yは、前記長手方向X-Xに対して直交すると定義される。
【0043】
例示された装置において、リード2の少なくとも遠位端部4は、好ましくは前記長手方向X-Xを中心とする丸い横断面を有する、実質的に円筒状の本体を含む。リード2の遠位端部4は、装置1の横断方向又は半径方向の寸法又は範囲を縮小するように先細りにされていてよい。
【0044】
パドル5は、それらの間にパドル厚さを規定する2つの対向する主面6、7を含むパドル本体を有する。好ましくは、パドル5の2つの対向する主面6、7は、互いから離れる方向に面している。パドル5の2つの対向する主面6、7のそれぞれは、前記長手方向X-Xに沿って延びる長さと、横断方向Y-Yに沿って延びる幅と、を含む。好ましくは、パドル厚さは、それぞれの主面長手方向サイズ及び/又は幅の数分の一である。例えば、パドル5は、フィルム又は同様のものの形態であってよい。
【0045】
前記パドル5は、患者の身体11内の生体構造10と電気接触するように設計された露出した面9を有する少なくとも1つのパドル電極8を含む。例えば、前記生体構造は、生体組織及び/又は器官及び/又は体液を含んでよい。少なくとも1つの電極8の前記露出した面9は、装置1の電気端子として機能する。前記少なくとも1つの電極8を設けることにより、前記装置1は、前記生体構造10に電気刺激を提供し得る且つ/又は生体構造10の電気活動を記録し得る。
【0046】
例示された装置において、前記少なくとも1つのパドル電極8は、パドル5の前記第1の主面6から機能的に現れる露出した面9を含む。言い換えれば、前記少なくとも1つの電極8の前記露出した面9及び前記パドル本体5の第1の主面6は、共同でパドル5の外面を形成している。「前記第1の主面から機能的に現れる露出した面」という用語は、パドル5が、パドル電極8の前記露出した面9を示すことを意味する。露出した面9は、必ずしも第1の主面6から突出していないが、発明のいくつかの実施の形態において、露出した面9は、前記第1の主面6から突出している。「前記第1の主面から機能的に現れる露出した面」という用語はまた、前記少なくとも1つの電極8が、露出した面9を形成するパドル5の第1の主面6の全体を覆う例及び前記少なくとも1つの電極8が、パドルの本体半分、例えば、パドル・ウィング21の第1の主面6の全体を覆う事例も含む。発明のいくつかの実施の形態において、パドル電極8は、パドル5の前記第1及び第2の主面6、7の両方から機能的に現れる露出した面9を含んでよい。
【0047】
リード2の近位端部3は、リード2に沿って延びる導電体(図示せず)によって1つ又は複数のパドル電極8に電気的に接続された1つ又は複数の電気接点35を含む。リード2の近位端部3は、制御装置36と、リード2の電気接点35、次いでパドル電極8との間の電気通信を提供するために、制御装置36のケース55におけるポート56に収容されてよい。
【0048】
発明のいくつかの実施の形態において、前記制御装置36は、パルス発生器36を含む。これにより、電気療法のための刺激装置アセンブリが提供される。パルス発生器は、埋め込み可能であってよい。
【0049】
発明のいくつかの実施の形態において、前記制御装置36は、患者の生体構造10の電気活動についての情報を記憶するためのメモリを含む。これにより、電気生理学のためのレコーダ・アセンブリが提供される。メモリは、埋め込み可能であってよい。
【0050】
リード2は、その遠位端部4の近くに接続部分13を含む。リード2の接続部分13は、パドル5をリード2に固定し、リード2とパドル電極8との間に電気通信を提供するために、パドル5の相手側接続部分15と電気的及び機械的接続を形成する。例示された装置において、リード2の前記接続部分13とパドル5の前記相手側接続部分15とを機械的に接続する固定手段37、38が設けられている。前記固定手段は、リード2の前記接続部分13とパドル5の前記相手側接続部分15とを接続する接着剤37を含んでよい。好ましくは、前記接着剤37は、電気的に絶縁性である。前記固定手段は、リード2の前記接続部分13とパドル5の前記相手側接続部分15とを機械的に接続する複数のクリップ38をさらに含んでよい。好ましくは、前記複数のクリップ38は、リード2とパドル5との互いに面した導電性の面の間に電気接点を形成するために圧縮力を加える。
【0051】
好ましくは、リード2の接続部分13は、案内スタイレット16をホストするための長手方向キャビティ18を半径方向で区切っている。これにより、少なくともリード2の遠位端部4の近くの部分の細長い本体は、長手方向に中空である。好ましくは、リード2の遠位端部4は、前記長手方向キャビティ18を長手方向に閉鎖している。前記長手方向キャビティ18に設けられた案内スタイレット16は、装置1を患者の身体11内へ前進させ、患者の身体11内で装置1を操縦及び操作するために使用されてよい。好ましくは、リード2は、スタイレット16が作用してよい前記パドル5とは異なる遠位自由端部58を含む。これにより、装置1の操作性が高められる。
【0052】
例示された装置において、前記パドル5は、前記主面6、7の幅を区切る少なくとも1つのパドル横断方向縁部23を含む。パドル5の自由縁部23と相手側接続部分15との間には、前記少なくとも1つのパドル電極8の少なくとも一部を含むパドル・ウィング21が設けられている。発明の好ましい実施の形態によれば、前記パドル5は、それぞれが自由縁部23を有する少なくとも2つの対向するパドル・ウィング21を含む。
【0053】
好ましくは、前記少なくとも1つのパドル・ウィング21は、前記少なくとも1つのパドル電極8の前記露出した面9を前記リード2から様々な距離に配置するために、前記リード2に対するその向きを変化させることができる。さらに、前記少なくとも1つのパドル・ウィング21は、前記リード2に対してその向きを変化させることができ、これにより、少なくともパドル電極8の露出した面9を、生体構造11の標的部分に対して当接させられるように整列させることができる。好ましくは、前記少なくとも1つのパドル・ウィング21は、少なくとも横断方向において可撓性があり、これにより、生体構造11の湾曲した部分の形状に一致することができる。
【0054】
前記パドル5は、少なくとも1つの搬送構成及び少なくとも1つの動作構成を取ることができ、前記少なくとも1つの搬送構成のときのパドル5の横断方向又は半径方向範囲は、前記少なくとも1つの動作構成のときの同じパドル5の横断方向又は半径方向範囲よりも小さい。
【0055】
「横断方向範囲」という用語は、横断方向Y-Yにおけるパドルの最大寸法を意味するのに対し、「半径方向範囲」という用語は、軸線X-Xから離れる方向で測定されたパドルの最大寸法を意味する。好ましくは、パドル5の横断方向範囲は、概して軸線X-Xに対して平行であってよい折り目に沿ってパドル・ウィング21を折り畳む又は広げることによって変化させられる。パドル5のウィング21は、ちょうど2つであり、パドル5の前記相手側接続部分15に関して互いに反対側にあり、装置1の横断面は、「オメガ」形状、言い換えれば、Q字形を取ってよく、ウィング21はオメガの平らなセグメントであり、パドル5の相手側接続部分15はオメガのアーチ状のブリッジである。
【0056】
パドル5又は少なくとも1つ若しくは複数のパドル・ウィング21は、パドル5が搬送構成において制約されていないときに動作構成に向かって自然に広がる傾向がある弾性材料から形成されてよい。追加的に又は代替的に、前記装置1は、前記パドル5を前記動作構成に向かって付勢する少なくとも1つの付勢構造24を含んでよい。前記付勢動作は、好ましくは、弾性付勢動作である。前記付勢構造24は、閉鎖された経路を形成する少なくとも1つの細長いエレメント43を含んでよく、前記細長いエレメント43は、パドル5の横断方向縁部の近くに配置されている。好ましくは、前記細長いエレメント43は、パドル・ウィング21の自由縁部23に沿って延びている。前記付勢構造24は、前記少なくとも1つの細長いエレメント43に接続された1つ又は複数の補強エレメント45を含んでよい。好ましくは、前記1つ又は複数の補強エレメント45は、横断方向に延びるビームである。前記少なくとも1つの付勢構造24は、少なくとも1つのワイヤばね、板ばね又はコイルばねを含んでよい。発明のいくつかの実施の形態において、前記少なくとも1つの付勢構造24は、形状記憶材料から形成された少なくとも1つの形状記憶エレメントを含んでよい。
【0057】
このような装置1を使用することによって、生体構造10に局所的且つ指向性の刺激を提供することが可能であると同時に、低侵襲手術によって患者の身体11の内部の埋め込み部位に装置1を送達することが可能である。
【0058】
このような装置1を使用することによって、生体構造10の電気活動の局所的且つ指向性の記録を提供することが可能であると同時に、低侵襲手術によって患者の身体11の内部の埋め込み部位に装置1を送達することが可能である。
【0059】
このような装置1は、患者の身体11から装置1を取り出すために、患者の身体11内に装置を埋め込むための送達システムと組み合わせて使用されてよい。本発明によれば、送達システムは、外側シース28及び送達シース100を含む。有利には、送達シース100は、身体11における所望の埋め込み部位への装置1のパドル5の送達の間、搬送構成にあるときに前記装置1を収容する。
【0060】
図5は、リード2の遠位端部4の近くに電気的に且つ機械的に結合されたパドル5を含む、図1図4におけるものと類似の装置を簡略化された形式で示す。リード2の遠位自由端部58は、リード2を通って延びるスタイレット16によって装置1の操作性を高めるために、パドル5を超えて延びている。リード2は送達シース100によって包囲されており、送達シース100自体は外側シース28によって包囲されている。リード2は、中空の送達シース100を通って長手方向軸線X-Xに対して平行にスライドすることができ、送達シース100は、中空の外側シース28を通って長手方向X-Xに対して平行にスライドすることができる。全てのこのような動きは相対的であることを理解されたい。例えば、リード2は、静止した送達シース100内でスライドしてよい。送達シース100は、静止したリード2の外側に沿ってスライドしてよい。又はリード2及び送達シース100の両方が、同時に移動してよい。
【0061】
外側シース28は、近位及び遠位端部の両方において開放した管状構造であり、外側シース28が受ける圧縮力下で潰れないように十分に剛性がある一方で、患者の身体11に挿入されるときに方向を変化させるように十分に曲がることができる。近位端部には、特に外側シース28を身体11内に挿入し、その後、外側シース28を引き出すために、オペレータが外側シース28を制御するためのグリップが設けられてよい。外側シース28の外径は、遠位端部に向かって先細りになっていてよい。
【0062】
送達シース100も、中空の外側シース28内でスライドすることができる管状構造である。遠位端部において、送達シース100は、搬送構成においてパドル5を受け入れることができる遠位開口102を含む。近位端部において、送達シース100は近位開口104を含み、この近位開口104をリード2が通過することができる。近位開口104は、遠位開口102よりも小さくてよい。近位開口104は、近位開口104をリード2が通過することを容易にするために、ハブ(図示せず)を含んでよい。送達シース100の近位端部には、リード2からのトルクをよりうまく伝達するために、追加的な剛性、例えば、編組又はコイルを設けることができる。
【0063】
図5において、送達シース100の遠位端部は、外側シース28の遠位端部64を超えて突出している。リード2の長手方向位置は、パドル5が部分的に送達シース100によって包囲されるような位置であり、送達シース100は、搬送構成にとどまるようにパドル5を制約する。したがって、パドル・ウィング21は、リード2の周囲に横断方向に折り畳まれており、パドルは、小さな横断方向範囲12を占めている。
【0064】
図6において、リード2が遠位方向に前進させられ、及び/又は送達シース100が近位方向に引っ張られて、パドル5の全長が今では送達シース100の遠位開口102を超えて延びている。これは、パドル・ウィング21が最大横断方向範囲12に広げられた動作構成を採用するようにパドル5を解放する。
【0065】
好ましくは、パドル5は、前に説明したように、例えば、弾性材料から形成された又は少なくとも1つの付勢構造24を含む少なくともパドル・ウィング21によって、送達シース100から排出されたときに自動的に動作構成を採用するように構成されている。反対に、パドル5が送達シース100内へ引っ込められると、パドル・ウィング21の近位端部66と送達シース100の遠位開口102のリムとの間の接触が、動作構成に向かうパドル5の付勢に打ち勝ち、パドル・ウィング21が送達シース100内に入り込むことができるようにパドル・ウィング21を搬送構成に内方へ強制的に折り畳む。パドル・ウィング21の近位端部66は、パドル・ウィング21と、送達シース100の遠位端部との接触を仲介し、搬送構成と動作構成との間のそれぞれの方向における滑らかな移行を提供するために、遠位方向に先細りになっていてよい又はその他の形状になっていてよい。動作構成に向かうパドル5の付勢は、パドル・ウィングの近位端部66の適切な形状と組み合わされて、送達シース100からパドル5を排出する最終段階を補助するように機能し得る。反対に、これは、パドル5を送達シース100内へ引き込む初期段階に抵抗し得る。以下で説明するように、パドル5は、好ましくは、送達シース100の遠位開口102のみを通って送達シース100から排出され且つ送達シース100内へ挿入されるので、パドル・ウィング21の近位端部66の形状のみが、これらの要因を念頭に設計される必要がある。パドル・ウィングの遠位端部68は、パドル電極8の好ましいレイアウト及びパドル5の移動中の患者の生体組織への損傷の最小化などの、他の検討事項のみを考慮して設計され得る。
【0066】
患者の身体11に装置1を埋め込むための送達システムの使用をここで、脊髄電気刺激法(SCS)のための装置を埋め込む例を用いて、図7図13を参照して説明する。SCSにおいて、パドル5は、パドル電極8が脊髄と電気通信するように向けられて、脊髄54に隣り合う硬膜上腔53に埋め込まれる。要約すれば、主な手順ステップは、
・患者へのガイドワイヤの挿入
・患者への外側シースの挿入
・外側シース前進
・送達シースへのパドル装填
・送達シース前進
・パドルの向きの制御
・標的部位におけるパドルの展開
・パドルの位置の管理
・送達シースの除去
・外側シースの除去
からなる。
【0067】
患者内へのガイドワイヤ70の目的は、小さな直径のエレメントであることであり、このエレメントは、まず経路を決定するために挿入されることができ、次いで、身体内の外側シース28の標的位置へのより大きな直径の拡張器74及び外側シース58の進入及び前進を案内する。ガイドワイヤ70を、組織における開口、又は実質的に剛性のある針などの、ただしそれに限定されない装置を通じて、患者に挿入することができる。図7は、好ましくは浅い角度(45°未満)で、脊柱52の椎骨の間の開口を通って、ツーイ針などの中空の針50の挿入を示す。刃(図示せず)が、患者の皮膚における初期切開を形成するために使用されてよく、この初期切開を通じて針50が挿入される。針50の先端における開口が、パドル5のための所望の埋め込み部位に向かって面して、硬膜上腔に配置されるまで、針50が挿入される。
【0068】
図8は、針50を通してのガイドワイヤ70の挿入を示す。ガイドワイヤ70は、その遠位端部が針50の先端を超えて延び、硬膜上腔53に沿ってパドル5のための埋め込み部位に向かって移動するように押し込まれる。ガイドワイヤ70は、針50から硬膜上腔53内へ移動するときに方向を変化するように十分に可撓性がある。
【0069】
真っ直ぐの先端と比較して、先端と組織との間の接触角度を有効に縮小するために、ガイドワイヤ70の遠位先端が患者の身体11への進入時に曲げられる又は湾曲させられることが好ましい場合がある。これは、組織に直接加えられる力を低減する場合があり、これにより、局所的な損傷を生じる傾向を低減し、ユーザによって経験される挿入力も低減する。代替的に、ガイドワイヤ70は、ガイドワイヤの近位端部において開放した中央管腔と組み合わされて、可撓性を提供するためのコイルとともに構成されてよい。ガイドワイヤの遠位形状及び全体的剛性を修正するために、管腔を通じてガイドワイヤ・スタイレット(図示せず)を挿入することができる。スタイレットは、真っ直ぐの、曲がった又は湾曲したスタイレット先端を有することができ、スタイレット先端がガイドワイヤ先端に達するまでガイドワイヤの近位端部において挿入される。この構成では、ガイドワイヤ先端は、スタイレット先端の形状を取る。次いで、操作を補助するために、湾曲したガイドワイヤ先端の向きがガイドワイヤ本体に対して変化することができるように、スタイレットをガイドワイヤに対して回転させることができる。真っ直ぐな経路に沿ってガイドワイヤ70を押し込むことが望まれるときには、湾曲したスタイレットは、選択的に、真っ直ぐなスタイレットと交換されてよい。
【0070】
ガイドワイヤ70が所望の位置にあるとき、針50が引き出されてよい。次いで、患者の身体11内へガイドワイヤ70を辿るように、外側シース28がガイドワイヤ70上で導入される。身体11内へ導入される間、図14に示されるように、外側シース28は拡張器74によって支持される。
【0071】
拡張器74は、外側シース28内にスライド可能にはまる長い可撓性のある部材からなる。拡張器の近位部分は、オペレータによって操作することができるように設計されている。拡張器74の遠位部分76は、好ましくは、その断面積が遠位方向に先細りになるような形状になっている。外側シースは、同様に、遠位端部64に向かって先細りになっていてよい。拡張器74には、近位端部から遠位端部まで延びる中央管腔78が存在する。拡張器74の遠位部分76は、好ましくは、少なくともガイドワイヤ70が硬膜上腔に進入する角度の変化を通じて、曲がるように十分に柔軟であるが、組織における開口を通じて押し込まれ、開口を拡張させるように十分に弾性がある。外側シース28は、拡張器74の周囲にぴったりとはまる。外側シース28及び拡張期74を、予め組み立てるか又はオペレータによって組み立てることができる。
【0072】
図9に示されているように、ガイドワイヤ70は、拡張器の中央管腔78に挿入され、外側シース28及び拡張期74は、ガイドワイヤ70によって規定された経路に沿ってスライドする。拡張器74の先端が最初に患者の組織に達する経路に沿った箇所を超えると、拡張器74の遠位部分76は、周囲の組織に突き刺さり始め、パドル5のその後の挿入を提供することができる通路を形成するために周囲の組織を次第に拡張させる。
【0073】
手順のこのステップは、患者内のガイドワイヤ70に沿ったどこかに外側シース28の先端64を配置することを目的とする。外側シース先端64の好ましい配置位置は、以下で説明するように、埋め込み部位にあってよい、埋め込み部位に隣り合ってよい、又は埋め込み部位に向かって方向付けられていてよい。外側シース28の遠位端部は、蛍光透視法を用いてその位置を決定することができるような特徴及び材料を含むことができる。外側シース28が所望の位置に達すると、拡張器72及びガイドワイヤ70を、図10に示されているように、患者の身体11内への経路を規定する外側シース28を残すために、順次に又は同時に、除去することができる。
【0074】
方法の次のステップは、リード2及びパドル5を含む装置1と一緒に、送達シース100を外側シース28内へ挿入することである。パドル5はまず、送達シース100へ装填されなければならず、これは、挿入ステップの直前又はそれより早い任意の時間に行われてよい。装置1は、既に送達シース100に収容されたパドル5と一緒にオペレータへ送達されていてもよい。しかしながら、パドル5における起こり得る損傷又は弾性の損失を回避するために、パドル5は、搬送構成において折り畳まれたまま長期間保管されないことが好ましい。
【0075】
オペレータ又は製造業者は、リード2の近位端部を、まず送達シース100の遠位端部における開口102に通過させ、次いで、送達シース100の近位端部における開口104を通過させることによって、送達シース100に通す。次いで、動作構成にとどまりながら、パドル5が送達シース100の遠位端部の近くにあるまで、リード2が引っ張られてよい。装置1及び送達シース100の組合せは、必要であれば長期間、この配置において保管されてよいので便利である。その後、図15に示されているように、送達シース100を保持しながら、パドル5の近位端部66が送達シース100の遠位開口102と係合するまで、リード2がさらに引っ張られる。リード2を引き続き引っ張ることによって、パドル5は、送達シース100に完全に収容されるまで、次第に搬送構成になるように折り畳まれる。好ましくは、装置1の遠位チューブ58は、送達シース100の外側にとどまる。
【0076】
送達シース100の遠位開口102は、単純な円形のリムを有してよい。代替的に、遠位開口102は、パドル5が送達シース100に収容されるときにパドル・ウィング21の折り畳みを特に補助するために特徴(図示せず)を含んでよい。このような特徴は、開口102の形状、及び/又はパドル・ウィング21との係合を仲介するための、開口102内の柔軟で中空のコアなどの材料を含んでよい。これらの特徴は、送達シース100自体又は別個のパドル・ローダ(図示せず)に設けられてよく、この別個のパドル・ローダは、パドル5が送達シース100に挿入される間、遠位開口102に一時的に取り付けられ、次いで、送達シース100が外側シース28に挿入される前に除去されてよい。
【0077】
パドル5が送達シース100に装填された状態で、送達シース100は、次いで、図11に示されているように、外側シース28の近位端部内へ前進させられ、送達シース100が患者内の外側シース28の遠位端部64から出てくるまで外側シース28を通ってスライドする。これにより、パドル5は、パドル5の標的埋め込み部位にあってよい、標的埋め込み部位に隣り合ってよい、又は標的埋め込み部位に向かって方向付けられた、外側シース28の遠位端部64まで搬送される。
【0078】
この段階において、湾曲した先端を含むリード・スタイレット90が、リード2を通って中空内へ挿入されてよい。代替的に、パドル5が送達シース100内へ装填される前又は直後にリード・スタイレット90をリード2内へ挿入することが可能であり得る。設置されると、スタイレット90の先端は、好ましくはリードの遠位自由端部58において、リード2内の弾性のある面に係合する。リード・スタイレット90の近位端部は、スタイレット90に軸方向の力を加えるためにオペレータが使用することができるフィンガ・グリップ92を有し、これにより、リード・スタイレット90の先端は、リード2を遠位方向へ前進させるためにリード2内の接触面に力を加える。リード・スタイレット90は、好ましくは、図16に示された湾曲した先端94を有し、湾曲した先端94は、パドル遠位チューブ58において湾曲を生じる。リード2の長手方向軸線X-Xを中心とする湾曲したパドル遠位チューブ58の向きは、リード・スタイレット90のフィンガ・グリップ92を回転させることによって制御することができる。
【0079】
湾曲したパドル遠位チューブ58が送達シース100の外にある状態で、送達シース100は、外側シース28の遠位端部から、パドル埋め込み部位における又はパドル埋め込み部位の近くの所望の位置に向かって前進させられる。送達シース100の操作は、湾曲したパドル遠位チューブ58の向きを変化させることによって達成される。このシナリオにおいて、外側シース28は静止したままである。送達シース100の最終的な位置決めの前に外側シース28を患者から除去することさえ可能であり得る。
【0080】
送達シース100が、パドル5の所望の埋め込み部位のすぐ近位の標的位置に達すると、送達シース100が静止状態に保持されながらリード・スタイレット90が押し付けられてよく、これにより、パドル5が送達シース100から排出され、所望の埋め込み部位を占め、前に説明したように動作構成に自己拡張する。これは、図12に示された位置である。代替的に、送達シース100は、所望の埋め込み部位自体における標的位置に達するまで前進させられてもよい。次いで、パドル5が静止状態に保持されたまま送達シース100が引き出されてよく、これにより送達シース100をパドル5から分離させ、動作構成において所望の埋め込み部位を占めるパドル5を残してもよい。
【0081】
パドル5が展開されると、パドル5を意図した埋め込み部位に位置決めするために必要に応じてパドル5の位置を調整することができる。パドル5の位置を、オペレータがリード2を引っ張ることによって近位方向に調整することができ、オペレータがパドル・スタイレット90を押し付けることによって遠位方向に移動させることができる。湾曲した遠位パドルチューブ58の向きを交替させながらリード2を繰り返し前進及び後退させることによって、あらゆる横方向調整を行うことができる。
【0082】
パドル5の向きは、パドル電極8が、患者内の特定の位置に向かって、例えばSCSのために脊髄54に向かって方向付けられることが要求される所定の医療用途のために重要であり得る。向き制御は、以下の方法のうちの1つ又は組合せによって複数の方法で達成することができる。
【0083】
パドル5の向きは、パドル5が送達シース100内に折り畳まれている間に制御されてよい。X線蛍光透視法を用いて、パドル5及び/又はリード2上のX線不透過性蛍光マーカ85の向きが、患者の生体構造11に対するパドル5の向きを示す。パドル5が送達シース100に収容されたままでさえも、マーカ85は、パドル5が患者に対してどのように向けられているかについての情報を依然として提供することができる。パドル5が所望の向きにおいて展開されないことをマーカが示している場合、オペレータは、所望のマーカの向きが達せられるまで送達シース100を外側シース28内でねじる。送達シース100は特に外側シース28に対してスライドするように設計されているので、本発明は、この操作を行うことを特に容易にする。
【0084】
追加的に又は代替的に、パドル5の向きは、パドル5が送達シース100から排出されるときに制御されてよい。パドル5が送達シース100からゆっくりと押し出されながら(又は送達シース100が、静止したパドル5に対してゆっくりと引き出されながら)、パドル5は開き始め、パドル5の遠位端部の近くの蛍光マーカ85を見せる。蛍光マーカ85の位置は、パドル5におけるリング電極などの、ただしこれに限定されない別のX線不透過性レファレンスに対して知られているので、オペレータは、パドル5が所望の向きにおいて送達シース100から現れ始めているかどうかを確認することができる。パドル5を修正するために、必要であれば、オペレータは、近位端部をねじることによって送達シース100を回転させることができ、これ自体が、部分的に送達シース内にとどまるパドル5を回転させる。
【0085】
最後に、パドル5の向きは、パドル5が送達シース100から出た後にもなお制御されてもよい。この場合、ユーザは、外側シースからの完全な展開後に、正しくないパドル向きを識別する。ユーザは、次いで、パドル5と送達シース100との間の十分な係合を達成するために十分にパドル5を送達シース100内へ引き戻す。次いで、パドル5と送達シース100との間の摩擦が、パドル5を送達シース100と一緒に外側シース28に対して回転させる。パドル5上の蛍光マーカ85の形状及び位置を評価することによって、オペレータは、所望の蛍光マーカ構成が得られるまでパドル5を回転させることができる。この手順の間、オペレータは、蛍光マーカ85の最大限の視認性を可能にするために、繰り返しパドル5を再展開及び収納することを望む場合がある。
【0086】
外側シース28の遠位端部64から出た後に送達シース100の位置を制御し、送達シース100から展開された後にパドル5の位置を制御することができるため、外側シース28の遠位端部64がパドル5の埋め込み部位まで完全に延びていることが必須ではない(ただし、可能なままである)ことが理解されよう。特に、例えば、外側シース28を挿入するために拡張器72を使用することによって、抵抗組織を通って経路を形成するために、外側シース28が、必要な分だけ患者内へ延びているべきであることが望ましい場合がある。典型的にはより狭く且つより柔軟な送達シース100が埋め込み部位までの残りの距離を前進することが可能である場合、それが好ましい。例えば、SCS治療のための装置1を埋め込む図示された例において、遠位端部64が硬膜上腔53に進入し、所望の埋め込み部位に向かって方向付けられるまで、外側シース28が黄色靭帯のみを通って押し付けられれば十分である場合があり、次いで、パドル5を保持した送達シース100が、硬膜上腔53を通って残りの距離を前進させられてよい。
【0087】
パドル5が埋め込み部位において所定の位置に配置されると、送達シース100は、外側シース28を通って患者から引き出されてよい。次いで、図13に示されているように、外側シース28も患者から引き出されて、埋め込まれた装置1を残してよい。送達シース100及び外側シース28の引き出し中のパドル5の位置を損なわないために、オペレータは、送達シース100及び外側シース28を患者から引き出しながら、パドル・スタイレット90のフィンガ・グリップ92を保持してよい。リード2は、好ましくは、患者からの2つのシース28、100の完全な引き出し後にオペレータが依然としてフィンガ・グリップ92を保持することができるように十分に長く設計されている。最後に、望まれる場合にはスタイレット90がリード2から引き出されてよく、これは、除去される送達シース100及び外側シース28を解放する。
【0088】
治療が完了すると又は装置1の交換が必要である場合、装置1を患者から除去する(取り出す)必要がある。取り出しの1つの方法において、オペレータは、外側シース28が所望の位置に達するまで外側シース28をリード2に沿って遠位方向へ徐々にスライドさせる。次いで、オペレータは、パドル5の近くの位置に達するまで外側シース28を通って取り出しシース(図示せず)を徐々にスライドさせることができる。取り出しシースは、概して送達シース100と類似であってよい。次に、リード2の近位端部を引っ張ることによってパドル5を取り出しシース内へ引き込むことができる。これにより、パドル5が取り出しシース内で搬送構成に部分的又は完全に折り畳まれる。次いで、その内部にパドル5を保持した取り出しシースが、外側シース28を通って引き出されてよい。最後に、外側シースが患者から引き出される。
【0089】
代替的に、いくつかの状況において、パドル5を、単にリード2の近位端部を引っ張ることによって、シースを使用することなく取り出すことができる場合がある。この技術は、リード2の近位端部が依然として患者の皮膚から出ているため、配置に失敗した場合又は埋め込みの試行後に特に関係する場合がある。
【0090】
当業者は、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく不測のニーズを満たすために、上記で説明された実施の形態に対して多くの変更及び適応を行ってよい又はエレメントを機能的に同等の他のエレメントと置き換えてよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【国際調査報告】