(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-17
(54)【発明の名称】血管疾患の治療のための血管形成バルーンカテーテル
(51)【国際特許分類】
A61M 25/10 20130101AFI20250109BHJP
【FI】
A61M25/10 510
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024540559
(86)(22)【出願日】2022-10-27
(85)【翻訳文提出日】2024-08-30
(86)【国際出願番号】 EP2022080074
(87)【国際公開番号】W WO2023126091
(87)【国際公開日】2023-07-06
(32)【優先日】2022-01-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517124859
【氏名又は名称】シーティーアイ バスキュラー アーゲー
【氏名又は名称原語表記】CTI Vascular AG
【住所又は居所原語表記】Industrieplatz 1e, 8212 Neuhausen am Rheinfall, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】ジアノッティ,マルク
(72)【発明者】
【氏名】ボードマー,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】フリッツ,ウルフ
(72)【発明者】
【氏名】マルゲタ,ドラガナ
(72)【発明者】
【氏名】ジェッター,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】シルヴァ,サビーナ
(72)【発明者】
【氏名】リヒター,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,エイドリエン
(72)【発明者】
【氏名】カウリック,ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】ピストル,ルシアン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイサー,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ラップキック ファズリヤ,アディラ
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA06
4C267AA28
4C267BB10
4C267BB28
4C267CC09
4C267DD01
4C267HH04
(57)【要約】
本開示によれば、複雑な病変に制御可能な集中圧力を伝達することを容易にする血管形成カテーテルシステムおよびそのような血管形成カテーテルシステムを使用する方法が提供される。血管形成カテーテルは、近位端、遠位端、および少なくとも部分的に細長い部材を貫通する少なくとも1つのルーメンを有する上記細長い部材と、上記遠位端に隣接して上記細長い部材の近位に取り付けられて少なくとも1つのルーメンと流体連通する拡張可能部材とを備え、当該拡張可能部材は半径Rを有するとともに少なくとも2つの葉状部(32、34)を含み、当該少なくとも2つの葉状部は、2つの脚(91、92)およびウエスト部長さ(37)によって定義される1つ以上のウエスト部(44)によって互いに分離されており、加圧時に、上記ウエスト部の周囲の半径方向応力は血管壁から離れる方向に向けられ、上記ウエスト部(44)の上側ベースおよび下側ベースの脚(91、92)に対してほぼ垂直な角度で病変に集中し、(70、73)から(70’、73’)への可変方向力を生み出し、その結果、拡張可能部材のウエストで病変の破砕が優先的に形成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルーンカテーテル(10)は、
近位端(19)、遠位端(12)、および少なくとも部分的に細長い部材を貫通する少なくとも1つのルーメン(25、26)を有する上記細長い部材(15)と、
上記遠位端に隣接して上記細長い部材の近位に取り付けられ、少なくとも1つのルーメン(26)と流体連通する拡張可能部材(13)とを有し、
上記拡張可能部材は半径R(42)を有するとともに少なくとも2つの葉状部(32、34)を含み、当該少なくとも2つの葉状部は1つ以上のウエスト部(44、45)によって互いに分離されており、
加圧されていない状態では、上記拡張可能部材(13)の上記少なくとも2つの葉状部(32、34)はそれぞれ折り畳まれてプリーツ状になっており、上記拡張可能部材をその後加圧すると、上記2つ以上の葉状部のそれぞれが個別に展開され、
加圧された状態では、上記拡張可能部材を上記少なくとも2つ以上の葉状部に分割することで、
上記拡張可能部材と治療対象領域(65、66)との間で伝達されるねじり荷重(79、82)を分散し、それによって上記ねじり荷重を減少し、
上記葉状部間(ウエスト部)で反対の軸方向力(72、75)を制御可能に伝達し、それによって上記拡張可能部材と治療対象領域との間で伝達される軸方向荷重量を減少し、
そして、上記葉状部(32、34)間および上記ウエスト部(44)の周囲に、上記葉状部によって伝達される半径方向の力とは異なる大きさの等方向の半径方向の力(71、74)を制御可能に伝達し、それによって上記ウエスト部(44)の周囲の血管壁(65)から半径方向の応力を遠ざけ、
上記ウエスト部(44)の周囲の反対方向の軸方向の力(72、75)と等方向の半径方向の力(71、74)の組み合わせによって可変方向力(70、73)が生成され、当該可変方向力が治療対象領域(65)の一部(66)に伝達されると、制御可能に応力変曲点が誘発され、圧力干渉および部分変曲をもたらし、上記拡張可能部材の各ウエスト部(44)で病変の破砕(67、68)が優先的に形成されることを特徴とするバルーンカテーテル(10)。
【請求項2】
さらに、カテーテル先端部(12)、キンク防止スリーブ(16)およびマニホールド(19)を有する請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項3】
マニホールド(19)がさらに、膨張ポート(18)およびガイドワイヤポート(19、27)を有する請求項2に記載のバルーンカテーテル。
【請求項4】
細長い部材(15)がさらに、膨張ルーメン(26)およびガイドワイヤルーメン(25)を有し、上記ガイドワイヤルーメンが上記細長い部材を少なくとも部分的(27)に貫通する請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項5】
ガイドワイヤルーメン(25)がカテーテル先端部(12)をガイドワイヤポート(19、27)に接続し、膨張ルーメン(26)が膨張可能部材(13)と流体連通する請求項4に記載のバルーンカテーテル。
【請求項6】
膨張ルーメン(26)は同時に薬剤灌流ルーメンであり、膨張ポート(18)は同時に薬剤灌流ポートである請求項1~5のいずれか1項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項7】
細長い部材は二重ルーメンシャフトとして構成され、上記細長い部材の二重ルーメン構造は、平行配置、同軸配置および同軸配置と平行配置の組み合わせからなる群から選択される請求項1~6のいずれか1項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項8】
マニホールド(19)は薬剤灌流ポートをさらに有し、細長い部材(15)は薬剤灌流ルーメン(51)をさらに有する請求項2~5のいずれか1項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項9】
拡張可能部材(13)の1つ以上のウエスト部(77)は、少なくとも1つの薬剤放出開口部(50)をさらに有する請求項1、6および8のいずれか1項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項10】
少なくとも1つの薬剤放出開口部(50)が、細長い部材(15)内の薬剤灌流ルーメン(26、51)と流体連通している請求項6~9のいずれか1項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項11】
細長い部材(15)が三重ルーメンシャフトとして構成され、細長い部材の三重ルーメン構造が、平行配置、同軸配置、および同軸配置と平行配置との組み合わせからなる群から選択される請求項1、8~10のいずれか1項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項12】
さらに、拡張可能部材(13)に作動可能に結合された脈動圧力調整に適した圧力発生器(300)を有する請求項1~11のいずれか1項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項13】
脈動圧力調整に適した圧力発生器(300)は、拡張可能部材に作動可能に結合されたときに、位相、振幅、周波数、パルス、周期、圧力および圧力プロフィルの形状のうちの1つ以上を調整する請求項12に記載のバルーンカテーテル。
【請求項14】
圧力発生器(300)は、拡張装置、機械式圧力変換器、油圧圧力変換器、電気油圧式圧力変換器、超音波送信機、結石破砕エミッター、ポンプおよびそれらから形成される組み合わせからなる群から選択される請求項12または13に記載のバルーンカテーテル。
【請求項15】
圧力発生器(300)は拡張装置に組み込まれる請求項13または14に記載のバルーンカテーテル。
【請求項16】
1つ以上のウエスト部(44、45)は1つ以上の構造要素(52)をさらに含む請求項1~15のいずれか1項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項17】
1つ以上の構造要素(52)が1つ以上のウエスト部(44、45)の少なくとも1つ以上を補強する請求項16に記載のバルーンカテーテル。
【請求項18】
1つ以上のウエスト部(44、45)の少なくとも1つを補強する手段として機能する1つ以上の構造要素(52)が、繊維、縫い目、糸、リング、チューブ、接着剤、架橋ポリマー、点状、線状、螺旋状、円形、円筒状、半円形、弧状、層状、および細長い部材への織り交ぜた取付物およびそれらから形成される組み合わせからなる群から選択される請求項16または17に記載のバルーンカテーテル。
【請求項19】
1つ以上の構造要素(52)が非対称である請求項16~18のいずれか1項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項20】
1つ以上の構造要素(52)が拡張可能部材(13)の長さ方向の軸に対して一方向の向きに配置されている請求項16~19のいずれか1項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項21】
1つ以上の構造要素(52)が拡張可能部材(13)の長さ方向の軸に対して双方向の向きに配置されている請求項16~19のいずれか1項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項22】
構造要素(52)が拡張可能部材(13)の長さ方向の軸に対して一方向の向きと双方向の向きを交互に組み合わせて配置されている請求項16~21のいずれか1項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項23】
拡張可能部材(13)の1つ以上のウエスト部(44、45)は、細長い部材(15)に取り付けられている、部分的に取り付けられている、および取り付けられていない、のうちの1つ以上である請求項1~22のいずれか1項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項24】
拡張可能部材(13)の1つ以上のウエスト部(44、45)は、0~20mm、1~2mm、2~4mm、4~6mm、6~8mm、8~10mm、10~12mm、12~14mm、14~16mm、16~18mmおよび18~20mmを含む少なくとも1組の範囲から選択される1つ以上の長さL(37)を有する請求項1~23のいずれか1項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項25】
拡張可能部材(13)の1つ以上のウエスト部(44、45)の長さL(37)は、加圧状態で半径R(42)の2倍以下であり、これにより、拡張可能部材の各ウエスト部(44)に病変の破砕(67、68)が優先的に形成される応力変曲点を誘発する請求項1~24のいずれか1項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項26】
加圧されて病変に接触した状態で、拡張可能部材(13)の少なくとも2つの葉状部(32、34)と治療対象領域(65、66)との間のウエスト部(44)は、実質的に台形の形状の衝撃ゾーンを形成し、
台形の形状は、
ウエスト部の長さに等しい第1の長さ(37)を有する上側ベース;
第1の長さより短い第2の長さ(33)を有する下側ベース;
上側ベースと下側ベースとの間の半径方向距離(40)に等しい第1の深さ;
下側ベースと拡張可能部材の回転軸との間の半径方向距離(41)に等しい第2の深さ;および
下側ベースと上側ベースとの間の第1および第2の長さ(37、33)および半径方向距離(40、41)によって定義される角度(76)で形成される2つの脚(91、92)を
含み、
ここで、第1および第2の深さ(40、41)の合計は拡張可能部材の半径(42)に等しく、第1の深さはウエスト部の深さに等しい請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項27】
加圧されていない状態で、折り畳まれてプリーツ加工された拡張可能部材(13)の少なくとも2つの葉状部(32、34)のプリーツの数が3以上の奇数である請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項28】
折り畳まれてプリーツ加工された拡張可能部材(13)の少なくとも2つの葉状部(32、34)のフラップ長さが、少なくとも上記拡張可能部材の半径(42)の約0.25~0.75の比率、より好ましくは0.5~0.66の比率の長さ範囲から選択され、上記拡張可能部材の最大フラップ長さがウエスト部(44、45)の第1の深さ(40)によって決定され、それによって、上記拡張可能部材と治療対象領域の間で伝達されるねじり荷重(79、82)が低減される請求項1、26および27のいずれか1項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項29】
加圧されていない状態において折り畳まれてプリーツ加工された拡張可能部材(13)の少なくとも2つの葉状部(32、34)のプリーツの数の少なくとも1つおよびフラップの長さの少なくとも1つが変化する請求項1および26~28のいずれか1項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項30】
拡張可能部材(13)の長さ(39)が、0~240mm、5~10mm、10~30mm、30~60mm、60~90mm、90~120mm、120~150mm、150~180mm、180~210mmおよび210~240mmを含む少なくとも1組の範囲から選択される請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項31】
拡張可能部材(13)の少なくとも2つの葉状部(32、34)の長さ(36、38)が、0~240mm、1~5mm、5~10mm、10~30mm、30~60mm、60~90mm、90~120mm、120~150mm、150~180mm、180~210mmおよび210~240mmを含む少なくとも1組の範囲から選択される請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項32】
拡張可能部材の少なくとも2つの葉状部(32、34)の長さ(36、38)が、複数の異なる長さを含む請求項1または31に記載のバルーンカテーテル。
【請求項33】
拡張可能部材の少なくとも2つの葉状部(32、34)の直径(43)が、0~20mm、1~2mm、2~4mm、4~6mm、6~8mm、8~10mm、10~12mm、12~14mm、14~16mm、16~18mmおよび18~20mmを含む少なくとも1組の範囲から選択される請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項34】
拡張可能部材の少なくとも2つの葉状部(32、34)の直径(43)が、複数の異なる直径を含む請求項1または33に記載のバルーンカテーテル。
【請求項35】
少なくとも2つの葉状部(32、34)の長さの少なくとも1つおよび直径の少なくとも1つが変化する請求項1、31および33のいずれか1項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項36】
拡張可能部材がさらに遠位事前拡張部および近位拡張部を備える請求項1~35のいずれか1項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項37】
遠位事前拡張部が少なくとも4つの葉状部からなり、各長さ(36、38)が1~10mm以下、好ましくは1~5mmの範囲から選択され、加圧されていない状態での各直径(43)が0.5~2mm、好ましくは1~2mmの範囲から選択され、近位拡張部は少なくとも4つの葉状部から構成され、各長さ(36、38)は1~10mm、好ましくは1~5mmの範囲から選択され、加圧された状態における各直径(43)は0.5~2mm、好ましくは1~2mmの範囲から選択される請求項36に記載のバルーンカテーテル。
【請求項38】
拡張可能部材は、さらに、それぞれ第1の壁厚(61)を有する近位端および遠位端、それぞれ第2の壁厚(62)を有する少なくとも2つの葉状部(32、34)およびそれぞれ第3の壁厚(63)を有する1つ以上のウエスト部(44、45)を含む請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項39】
拡張可能部材の第1の壁厚(61)は第2の壁厚(62)を超え、第2の壁厚は第3の壁厚(63)を超え、それによって1つ以上のウエスト部(44、45)における柔軟性が増大し、治療対象領域の一部(66)に伝達される可変方向力(70、73)の大きさが増大する請求項38に記載のバルーンカテーテル。
【請求項40】
拡張可能部材の第1の壁厚(61)が第2の壁厚(62)を超え、第3の壁厚(63)が第2の壁厚を超え、それによって1つ以上のウエスト部(44、45)の柔軟性が低下し、上記拡張可能部材と治療対象領域との間で伝達される軸方向荷重量が低減される請求項38に記載のバルーンカテーテル。
【請求項41】
1つ以上のウエスト部(44、45)の第3の壁厚(63)の変化によって、可変方向力(70、73)の大きさおよび方向が変化し、病変の破砕の深さ、方向、位置および数が確実に制御される請求項26および38~40のいずれか1項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項42】
拡張張可能部材(13)の少なくとも2つの葉状部(32、34)のウエスト部(44、45)における第3の壁厚(63)は、第1の壁厚(61)および第2の壁厚(62)に対して変化し、可変方向力(70、73)の軸方向の安定性、大きさおよび方向の少なくとも1つが確実に制御される請求項26および38~41のいずれか1項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項43】
複雑な病変の治療および臓壁内薬剤送達におけるさらなる医療用途のためのものである請求項1~42のいずれか1項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項44】
請求項1~43のいずれか1項に記載のバルーンカテーテルを用いて血管病変を治療する方法であって、
一連のフェーズを実行する方法は、
第1フェーズ、またはコンディショニングフェーズ(100)を実行すること;
第2フェーズ、または制御された病変破砕フェーズ(101)を実行すること;
第3フェーズ、または可動化フェーズ(102)を実行すること;および
第4フェーズ、または病変モデリングフェーズ(103)を実行すること
を含む方法。
【請求項45】
一連のフェーズはさらに、1つ以上の薬剤送達フェーズ(104)を実行することを含む請求項44に記載の方法。
【請求項46】
第1フェーズ、またはコンディショニングフェーズ(100)は、拡張可能部材の圧力を1.5分間かけて2バールずつ増加させて約4バールの第1圧力プラトーまで上昇させることからなり、
第2フェーズ、または制御された病変破砕フェーズ(101)は、圧力を1.5分間かけて2バールずつ増加させて約4バールの第1圧力プラトーから約8バールの第2圧力プラトーまで上昇させることからなり、
第3フェーズ、または可動化フェーズ(102)は、約8バールの第2圧力プラトーから約0バールまで圧力を下げ、約1.5分間にわたって0バールと第3圧力プラトーである約2バールの間で交互に圧力を増減し、
第4フェーズ、または病変モデリングフェーズ(103)は、約2バールの第3圧力プラトーから約8バールの第4圧力プラトーまで圧力を上げ、当該圧力プラトーを1~1.5分間保持し、続いて圧力を約10~12バールの第5圧力プラトーまで上げ、その圧力プラトーを1~1.5分間保持し、続いて約0.5分間にわたって0バールの最終圧力までゆっくりと減圧する、
請求項44に記載の方法。
【請求項47】
薬剤送達フェーズ(104)は、
拡張可能部材の少なくとも2つの葉状部を部分的に拡張させて、治療対象領域への血流を遮断し、
灌流ポートから薬剤灌流ルーメン(51)および薬剤放出開口部(50)を介して治療対象領域(65、66)に位置するウエスト部領域(77)に治療薬を投与し、
治療時間を維持し、
残留治療薬を薬剤灌流ルーメン(51)に回収し、および
上記拡張可能部材(13)の少なくとも2つの葉状部(32、34)を収縮させて、標的治療領域への血流を回復する、
請求項45に記載の方法。
【請求項48】
一連のフェーズには、静的圧力調整および脈動圧力調整を適用した圧力プロファイル(107)が含まれる請求項44~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
脈動圧力調整が少なくとも1つ以上のフェーズで実行される請求項44~48のいずれかに1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
出願人は、2022年1月3日に提出された対応米国仮出願63/295991に基づく優先権を主張し、その内容は本明細書に全体として参照により組み込まれている。
【0002】
分野
本発明は、血管疾患の治療における医療機器及びそのような機器の使用方法に関する。より具体的には、本発明は、デバイスと組織の相互作用の強化されたモードを可能にする独特な構成の拡張可能部材を含む血管形成バルーンカテーテルに関する。特に、本発明は、近位端、遠位端、および少なくとも部分的に細長い部材を貫通して延びる少なくとも1つのルーメンを有する細長い部材と、上記遠位端に隣接して上記細長い部材の近位に固定され、前記少なくとも1つのルーメンと流体連通する拡張可能部材とを備える血管形成バルーンカテーテルに関する。上記拡張可能部材は半径Rを有し、少なくとも2つの葉状部を含み、上記少なくとも2つの葉状部は1つ以上のウエスト部によって互いに分離されている。本発明の装置は、静的圧力手段または脈動圧力手段によって操作することができ、制御可能なマルチ破壊モードによる三次元プラーク修正を可能にし、複雑な病変の治療および臓壁内薬物送達におけるさらなる医療用途に使用することができる。
【背景技術】
【0003】
背景
血管形成術はバルーンカテーテルを使用し、大腿動脈、鎖骨下動脈、橈骨動脈、上腕動脈などのアクセスポイントを通して患者の血管に挿入する。カテーテルをガイドワイヤに沿って誘導することでバルーンを前進させ、カテーテルのバルーン部分を治療対象領域に配置する。その後、バルーンは拡張し、通常はバルーンカテーテルの拡張ポートに生理食塩水と造影剤の混合物を塗布して病変内でバルーンを制御しつつ拡張させ、病変を破砕して血管壁に押し込み、その後、デバイスを収縮させて除去すると、標的血管を開放して再び血流を生じさせる。病変を効果的に治療するために、医師はまず、対象病変の大きさに応じて適切なサイズのバルーンカテーテルを選択し、その後、前記バルーンを治療対象の病変まで前進させる。次に、バルーンは医師が適切に決定した速度と圧力範囲で拡張される。個々の臨床診断に応じて、適用される拡張圧力は通常6~30バール程度、あるいはそれ以上である。拡張操作中、適切に配置されたバルーンは拡張圧力に応じて半径方向の力を伝達し、病変などの血管の指定された標的領域に寸法変化をもたらす。この処置の有効性は、三次元病変形態、病変の組成および石灰化の程度、バルーンと血管の直径の比率、バルーンの拡張挙動および追随性、バルーンの形状、バルーンと病変の間に形成される接触面積、バルーンによって加えられる圧力の量、加圧速度および病変内での滞留時間などを含む複数の要因に依存することが予知できる。
【0004】
従来のバルーンは、典型的には、単一の細長い管状部材として形成される。上記バルーンは、拡張前の初期状態では、交差プロファイルを最小にするために折り畳まれてプリーツが付けられている。バルーンが拡張すると、バルーンのプリーツが広がり、バルーンと血管にねじり荷重がかかる。細長い管状部材は、半径方向の直径の変化および軸方向の長さの変化を通じて、さらなる圧力の付加に対応する。バルーンが広げられて、バルーンの半径方向と軸方向に異なる速度で寸法が変化すると、拡張操作のさまざまな段階に実質的に影響を及ぼす。バルーンの半径方向の拡張が実質的に完了した後に、バルーンの軸方向の成長が起こる。したがって、血管形成術中に従来のバルーンを拡張させると、望ましい半径方向の拡張だけでなく、周囲の血管壁にねじれ、せん断、および/又は軸方向の応力が望ましくない形で形成される。バルーンの過拡張および/又は非常に高い圧力の適用などによって生じる半径方向の応力は、血管の望ましくない持続的な拡張を引き起こす可能性があり、その結果、拡張部内および拡張部付近の層流血流が妨げられ、治療した病変の再成長や新しい病変の形成につながる可能性がある。バルーンの拡張によって生じる局所的な力は、血管壁の内側のライニングに亀裂や裂傷を誘発する可能性があり、その結果、血管壁間の偽腔またはチャネルに血流が流れ込む。この現象は「解離」と呼ばれる。解離は、内膜を含むプラークの一部が血管壁から持ち上げられ、付着したままでなくなるときに発生する。解離によって破壊されたプラークの部分は、血管腔内に突出する可能性がある。プラークが血管壁から完全に剥離すると、血流がさらに妨げられ、血管の急性閉塞を引き起こしたり、治療部位のさらに下流で塞栓イベントを引き起こしたりする可能性がある。より深刻なケースでは、これらの局所的な力により、破裂、血腫、または偽動脈瘤が発生する可能性がある。軸方向のストレスにより、病変に隣接する健康な組織の近位および/又は遠位の好ましくない拡張が引き起こされる可能性がある。健康な軟組織は、病変、硬化および/又は石灰化組織と比較して、ストレスの適用に対してより容易に反応するため、結果として生じる軸方向の歪みにより、病変の近位および遠位で望ましくない解離や破裂が発生する可能性がある。一方、ねじり応力および/又はせん断応力は、バルーンの全長に沿って病変および/又は血管壁に接線方向の力を加え、病変を擦りむき、血管を損傷し、血管壁を弱め、それによって解離および破裂の形成をさらに悪化させる可能性がある。
【0005】
血管形成術用バルーンは一般に非追随性または半追随性であるために比較的硬く、湾曲した血管構造への可撓性および/又は適合性が低い。従って、従来の血管形成バルーンの拡張は、その下にある血管の形態に関係なく、バルーンが真っ直ぐになる傾向がしばしば伴われる。真っ直ぐになることによる効果は、特に曲がりくねった構造で悪化し、血管形成術治療中に血管に過度の曲げ応力または直線応力をもたらす可能性がある。さらに、病変とバルーンとの間の適合接触面は、あらゆる状況で確実に確立できるわけではない。したがって、治療する血管に対するバルーンの適合接触が欠如している場合、血管を均一に拡張できない、バルーンの拡張力が制御不能に解放される、および/又はバルーンの位置が不安定になるという固有のリスクがある。さらに、半追随性または非追随性のバルーンを偏心病変に対して拡張させる場合、またはプラークの一部がプラークの残りの部分よりも拡張に対して抵抗が大きい場合、バルーンは抵抗が最も少ない経路をたどる傾向があり、それによってバルーンによって拘束されていない部分が最初に拡張するように強いられる。それでも、石灰化した病変と比較して柔らかい組織はより簡単に変位するため、病変と組織の境界面で望ましくない剥離や破裂が発生する可能性がある。さらに、複雑な病変は一般に性質が不均質であるため、バルーンの拡張は不均一に進行し、病変の破砕の深さ、方向、場所、および数を確実に制御することはできない。
【0006】
従来のバルーン拡張カテーテルは、中程度の血管狭窄および閉塞を適切に治療するのに十分な性能を発揮するが、血管内の硬化したプラークが石灰化によりますます貫通不能となったり、硬化したり、従来の血管形成バルーンでは病変に効果的に到達したり、拡張したり、修正したり、または破壊したりできないような、より曲がりくねった血管経路に病変が位置したり、複雑な病変が現れたり、またはその両方の場合がよくある。このような状況において、比較的高い手順成功の可能性で適用できる他の種類の特殊な医療機器および手順が開発されている。このような装置および方法には、例えば、高圧バルーン血管形成術、ならびにいわゆる「カッティングバルーン」または「スコアリングバルーン」が含まれる場合がある。カッティングバル-ンまたはスコアリングバルーンは、通常バルーンの外面に取り付けられるカッティング要素またはスコアリング要素を含むバルーンカテーテルである。カッティングバルーンまたはスコアリングバルーンが拡張すると、カッティング要素またはスコアリング要素は、バルーンによって生成された背圧を集中させ、それらを標的病変表面に直接集中させる応力集中部位として機能し、バルーンの拡張時に病変/プラークの望ましい破砕を促進するためのより効果的な方法となり得る。前記装置および方法に関して、高圧バルーン血管形成術は血管壁に外傷を与える可能性があり、しばしば血管壁解離を伴い、ステントの配置または即時の外科的介入が必要になる場合がある。手順的には、バルーン血管形成術の圧力が高くなるほど、および標的圧力に近づく速度が速くなるほど、より重度の解離のリスクが増大する。それに比べて、カッティングバルーンまたはスコアリングバルーンは、高圧バルーン血管形成術よりも低い圧力で拡張でき、カッティング要素またはスコアリング要素の集中した力が病変を含む血管壁を直接貫通できる。カッティングバルーンまたはスコアリングバルーンの展開には、拡張中にバルーンが広がることなどにより、ねじり応力および/又はせん断応力が伴われ、またカッティング要素もしくはスコアリング要素が設計上血管壁に接触するため、従来の高圧血管形成バルーンと比較して、望ましくない血管壁の損傷および/又は解離が発生するリスクが本質的に高くなる。血管壁の損傷または傷害は、傷害部位で血管を通過する血球の付着を促進して短期的には急性血栓性閉塞につながる可能性があるだけでなく、長期的には再狭窄を促進し、最終的には再介入が必要になる。その結果、血管の外傷、解離およびリコイルにより、治療した病変にステントが配置されたとしても、長期的な臨床結果が悪くなり、再狭窄を引き起こす可能性がある。
【0007】
現在の血管形成バルーンカテーテルシステムおよび利用可能な血管形成術治療手順を総合すると、以下の欠陥または問題の少なくとも1つ以上が見られる。
a)バルーンが一体型構造のため軸方向の柔軟性が不十分で、バルーン、血管および病変間の適合性接触が不十分であること。
b)適合性接触の欠如と真っすぐになる傾向により位置安定性が欠如していること。
c)一体型バルーンの構造により、軸方向および/又は半径方向の安定性および/又は追随性が不十分となり、標的血管および/又は病変部の長さおよび/又は直径の不一致が生じること。
d)バルーンの拡張中に血管や病変にねじり荷重を付加する、バルーンの折り目やバルーン全体の長さに沿ったカッティング要素もしくはスコアリング要素などの表面の特徴による、ねじり安定性が欠如していること。
e)バルーンの形状、バルーンの拡張挙動、軸方向、半径方向および/又はねじれ方向の安定性または追随性を含む設計要因により、複雑な病変に局所的な圧力をかける際の制御が不十分であること、およびバルーンと病変の間に形成される接触面積が不足していること
f)バルーンによる圧力の大きさ、加圧速度および病変内での滞留時間を含む手順上の要因により、標的病変およびプラークの効率的な調節、修飾、および/又は破砕を達成するための制御が不十分であること
これらの制限により、均一な病変の破砕が実現できず、病変の破砕の深さ、方向、位置および数を確実に制御できず、血管の十分な開放性を確実に達成できないという問題が生じる。したがって、製品設計の固有の制限と患者の解剖学的複雑さにより、手順の非効率性と制限が依然として存在する。複雑な病変を含む血管疾患を治療するための、改善された医療機器と方法を提供するというニーズが満たされていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の考慮点を考慮すると、既知の血管形成カテーテルシステムの制限や欠点を持たずに、複雑な病変に制御可能な集中圧力を加えることを可能にする、改良された血管形成カテーテルシステムおよびそのような血管形成カテーテルシステムの使用方法を提供することが望ましい。特に、病変に集中圧力を加えると、好ましくは複数の場所で病変を制御可能な形で破砕する、血管形成カテーテルシステムおよびそのような血管形成カテーテルシステムの使用方法を提供することが望ましい。さらに、病変の三次元形態に柔軟に適応し、病変との適合性を最大限に高めるとともに、軸方向、半径方向、および/又はねじり方向の安定性または追随性を維持する、改良された血管形成カテーテルシステムおよびそのような血管形成カテーテルシステムの使用方法を提供することが望ましい。それでもなお、従来の血管形成カテーテルおよび関連する血管形成術と比較して、大幅に低い圧力範囲で標的病変の効率的かつ選択的な調節、修飾、および/又は破砕を容易にし、その結果、外傷を軽減し、患者の安全で臨床的により効果的な治療を可能にする血管形成カテーテルシステムおよびそのような血管形成カテーテルシステムの使用方法を提供することが望ましい。最後に、静的圧力手段または脈動圧力手段を使用して介入処置の実行前、実行中、または実行後に、双方向対話形式で制御可能な臓壁内薬剤送達アプリケーションを容易にする、改良された血管形成カテーテルシステムおよびそのような血管形成カテーテルシステムの使用方法を提供することが望ましい。
【0009】
以下の先行技術文献には、いくつかのカテーテルシステムが開示されている。しかしながら、既知のカテーテルシステムのいずれも、本発明のカテーテルシステムの特定の特徴の組み合わせを備えておらず、したがって、既知のシステムのいずれも、上記問題を解決するものではない。
【0010】
関連先行技術
セグメント化、ノッチ付き、多葉型および/又は複数の個別バルーンは、当該技術分野で一般に知られている。例えば、米国特許第4983167号明細書は、動脈の形状に容易に変形して、動脈を真っ直ぐにするという大きなリスクなしに急峻な屈曲部を拡張することができる多葉型拡張バルーンを教示している。個々のバルーン葉状部は、実質的に球形またはダンベル形である。米国特許第539533号明細書は多葉型灌流バルーンカテーテルを教示しており、複数の独立したバルーン葉状部がカテーテル本体から延びて血管壁に係合し、血液が血管を灌流できるようにする流路を形成するように配向されている。米国特許第7658744号明細書は複数のバルーンを備えたバルーンカテーテルを教示しており、少なくとも1つのバルーンは少なくとも1つのブレードを含むことができる。1つ以上のブレードは、より大きな柔軟性を実現するために、バルーンの全長に沿って形成されていない。米国特許第6761734号明細書は、分岐病変にステントを留置するためのセグメント化バルーンカテーテルを教示しており、そのセグメント化バルーンカテーテルは、細長いシャフトと、シャフトの遠位端に取り付けられ、シャフトに固定されて密封された第1および第2の円筒形バルーン部分とを備えている。当該セグメント化バルーンカテーテルは、血管の分岐部またはその近傍にステントを送達および展開するという問題を解決する。米国特許第6022359号明細書は、ノッチによって軸方向に互いに離間した個別のセクションに分割された外面を有するバルーンと、当該バルーンの詳細な構造に適合する柔軟なリンクを有するセグメント化ステントを特徴とする外科用ステント位置決め及び放射状拡張システムを教示する。ノッチは軸方向に容易に曲がることができるため、バルーンは曲がりくねった動脈経路に容易に適合する。ステントが放射状に拡張されると、バルーンは、直線化する傾向を最小限に抑えながらステントを放射状に拡張することができる。引用された先行技術では、バルーンセグメント、葉状部、またはノッチが軸方向の柔軟性の技術的効果を達成している。しかし、先行技術のいずれも、病変の破砕の深さ、方向、位置、および数が確実に制御され、複雑な病変の治療および臓壁内薬物送達におけるさらなる医療用途のために、三次元プラーク修飾および多重破砕を可能にする静的圧力手段または脈動圧力手段によってデバイスが操作される、本開示による血管形成カテーテルを教示していない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、近位端、遠位端、および少なくとも部分的に細長い部材を貫通して延びる少なくとも1つのルーメンを有する細長い部材と、上記遠位端に隣接して上記細長い部材の近位に取り付けられて上記少なくとも1つのルーメンと流体連通する拡張可能部材とを備え、当該拡張可能部材は半径Rを有するとともに少なくとも2つの葉状部を含み、当該少なくとも2つの葉状部は1つ以上のウエスト部によって互いに分離されている、血管形成バルーンカテーテルを提供することによって複雑な病変に局所的な圧力を制御可能に伝達する血管形成カテーテルシステムおよびそのような血管形成カテーテルシステムを使用する方法によって、上記課題を解決できることを見出した。
【0012】
本発明によれば、近位端、遠位端、および少なくとも部分的に細長い部材を貫通して延びる少なくとも1つのルーメンを有する細長い部材と、上記遠位端に隣接して上記細長い部材の近位に固定されて上記少なくとも1つのルーメンと流体連通する拡張可能部材とを備え、当該拡張可能部材は半径Rを有するとともに少なくとも2つの葉状部を含み、当該少なくとも2つの葉状部は1つ以上のウエスト部によって互いに分離されている血管形成バルーンカテーテルが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1は、本開示による血管形成バルーンカテーテルの斜視図である。
【0014】
図2は、オーバーザワイヤー(OTW)タイプで使用するための本開示の血管形成バルーンカテーテルの二重ルーメン構造の拡張可能部材の横断面図である。
【0015】
図3は、ラピッドエクスチェンジ(RX)タイプで使用するための本開示の血管形成バルーンカテーテルの二重ルーメン構造の拡張可能部材の横断面図である。
【0016】
図4-10は、本開示による血管形成バルーンカテーテルの拡張可能部材の断面図である。
【0017】
図11Aおよび
図11Bは、本開示によるバルーンブローイングおよび/又は熱成形によって製造された拡張可能部材のウエスト部の断面図である。
【0018】
図12は、本開示の拡張可能部材を石灰化した病変に適用したときに観察される病変破砕効果の図示である。
【0019】
図13は、本開示の拡張可能部材の寸法関係の横断面図であり、本開示に従って異なる加圧レジメンで制御された力の方向を特徴付ける。
【0020】
図14A~14Dは、本開示に従って可変ウエスト部長さを有する拡張可能部材を使用して閉塞血管部分に加えられた力から生じる応力分布図である。
【0021】
図15A~15Dは、本開示に従って拡張可能部材を使用して閉塞血管部分に加えられた異なる大きさの力から生じる応力分布図である。
【0022】
図16A~16Dは、本開示に従って拡張可能部材の異なる加圧量から生じる病変における応力分布を示す偏光顕微鏡画像である。
【0023】
図17A~17Dは、本開示に従ってバルーンブローイングにより製造された拡張可能部材の異なる加圧量から生じる病変における応力分布を示す偏光顕微鏡画像である。
【0024】
図18A~18Dは、本開示に従ってバルーンブローイングおよび熱成形により製造された拡張可能部材の異なる加圧量から生じる病変における応力分布を示す偏光顕微鏡画像である。
【0025】
図19A~19Dは、本開示に従って拡張可能部材の等しい加圧量におけるウエスト部長さの変化から生じる病変における応力分布を示す偏光顕微鏡画像である。
【0026】
図20A~20Bは、従来の拡張可能部材(A)と、本開示による少なくとも2つ以上の葉状部(B)を含む拡張可能部材によって治療部位に加えられたねじり荷重の図示である。
【0027】
図21は、本開示に従って血管形成治療を行うための本開示の血管形成バルーンカテーテルおよび補助デバイスの斜視図である。
【0028】
図22は、本開示に従って血管形成治療を行う一連の様々なフェーズを示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
血管形成カテーテルシステム
次に、本発明の血管形成バルーンカテーテルシステムの様々な構成要素および特徴について、
図1~
図11を参照して説明する。
図1は、本開示による血管形成バルーンカテーテルの斜視図である。
図1において、バルーンカテーテル10は、左から右に、カテーテル先端部12、拡張可能部材またはバルーン13、細長い管状部材またはカテーテルシャフト15、キンク防止スリーブ16およびマニホールド17を含み、マニホールド17は、拡張ポート18およびガイドワイヤポート19を含む。細長い管状部材15は、カテーテル先端部12またはカテーテルの遠位端からガイドワイヤポート19またはカテーテルの近位端まで延びている。細長い管状部材15は、カテーテル10の遠位端12に隣接して取り付けられた拡張可能部材13と流体連通する少なくとも1つのルーメンを含む。
図1に示す実施形態では、カテーテルシャフト15は、(1)拡張ポート18に接続された拡張ルーメンとして意図された第1ルーメンと、(2)ガイドワイヤポート19に接続されたガイドワイヤルーメンとして意図された第2ルーメンからなる2つのルーメンを含む。血管形成カテーテルは、オーバーザワイヤータイプで示されており、ガイドワイヤ11は、カテーテルの遠位端または先端部12の開口部から近位端のガイドワイヤポート19の開口部まで延びている。
【0030】
OTWタイプ
図2は、オーバーザワイヤー(OTW)タイプで使用するための本開示の血管形成バルーンカテーテルの二重ルーメン構造の拡張可能部材の横断面図である。
図2では、
図1のバルーンカテーテルシステム10がオーバーザワイヤータイプ20で示されており、カテーテルシャフト15は、ガイドワイヤルーメン25と拡張ルーメン26からなる二重ルーメンを備える。ガイドワイヤルーメン25はカテーテル10の全長に沿って配置され、カテーテル先端部12またはカテーテルの遠位端の開口部からバルーン13を通ってカテーテルの近位端のガイドワイヤポート19の開口部まで延びる。この特定のガイドワイヤルーメン構造により、カテーテルのオーバーザワイヤー(OTW)操作が可能になる。すなわち、血管形成バルーンカテーテルをガイドワイヤ11上にスライド可能に取り付け、カテーテルシャフトの一部を患者の血管に挿入する際に、ガイドワイヤルーメンの留置部分全体に沿ってどちらの方向にも移動させることができる。したがって、OTW操作では、キンク防止スリーブ16の遠位端からカテーテルの遠位端またはカテーテル先端部12まで及ぶカテーテルの使用可能な長さ全体を利用することができる。
【0031】
RXタイプ
図3は、ラピッドエクスチェンジ(RX)タイプで使用するための本開示の血管形成バルーンカテーテルの二重ルーメン構造の拡張可能部材の横断面図である。
図3では、
図1のバルーンカテーテルシステム10がラピッドエクスチェンジタイプ30で示されており、カテーテルシャフト15は、ガイドワイヤルーメン25と拡張ルーメン26からなる二重ルーメン内を遠位方向に延びる単一のルーメン29を含む。ガイドワイヤルーメン25は、カテーテル先端部12またはカテーテルの遠位端の開口部から、バルーン13の最近位葉状部22の近位側に位置するガイドワイヤポート27まで延びており、それゆえ、細長い部材15を少なくとも部分的に貫通している。ガイドワイヤポート27は、ガイドワイヤ11を開口部に導くのに役立つ傾斜面28をさらに含んでもよい。
図1および
図2の上記OTWタイプと比較すると、
図3のRXタイプ30は、マニホールド17に追加のガイドワイヤポート19が存在する必要はない。これにより、そのガイドワイヤルーメン構造はカテーテル10の迅速交換(RX)操作を可能にする。すなわち、バルーンカテーテルをガイドワイヤ11にスライド可能に取り付けていずれかの方向に移動させて、シャフトの一部を患者の血管に挿入する際にガイドワイヤがガイドワイヤルーメン25の一部を通過することができる。したがって、RXタイプ30では、ガイドワイヤポート27の遠位端からカテーテルの遠位端またはカテーテル先端部12まで及ぶ、カテーテルの使用可能な長さを短くすることができる。その結果、RXタイプでは、OTWタイプと比較してかなり短い長さのガイドワイヤを使用できる。RX操作では、ガイドワイヤ11は留置部分内にあるときにカテーテルシャフトに沿って部分的に露出するが、OTW操作では、ガイドワイヤ11は留置部分内にあるときにカテーテルシャフトによって完全にシールドされる。
【0032】
図2および
図3の両方に示されているように、拡張ルーメン26は、カテーテル10の近位端に隣接する拡張ポート18から、バルーン13の第1葉状部22の内部空間またはルーメン23に接続された開口部24まで延びている。バルーン13の第1葉状部22のルーメン23は、1つ以上のウエスト部21を介して1つ以上の隣接する葉状部に流体によって接続されている。これにより、造影剤および生理食塩水製剤、薬剤製剤、空気、およびその他のそのような液体および/又は気体を含む治療用および診断用の液体および気体が、拡張ルーメン内または拡張ポートで正圧下において、それぞれ拡張ポート18から拡張ルーメン26を通って拡張可能部材13の1つ以上の葉状部22に送られ、カテーテルバルーンが拡張する。各種の液体および/又は気体は、拡張ルーメン26内または拡張ポートで負圧下において、拡張したバルーン13から拡張ルーメンを通って戻り、拡張ポート18から排出され、カテーテルバルーンを収縮させる。「正圧」および「負圧」は、それぞれバルーン13の周囲の圧力より大きい、または小さい圧力を示す。
【0033】
拡張可能部材
図4~10は、本開示による血管形成バルーンカテーテルの拡張可能部材の断面図である。
図4では、拡張可能部材13が血管形成バルーンカテーテル10のカテーテルシャフト15に部分的に固定されている。拡張可能部材13は、1つ以上のウエスト部44、45によって離間している少なくとも2つの葉状部32、34から形成されている。ウエスト部44は、下側ベース長さ33と上側ベース長さ37及び2つの脚91、92を有する。次に、拡張可能部材13の(マントル)長さ39は、少なくとも2つの葉状部32、34の個々の長さ36、38及び1つ以上のウエスト部44、45の個々の長さ37(L)の合計によって提供される。さらに、拡張可能部材13のウエスト部44の上側ベースは、ウエスト部44の下側ベースに対して第1の半径方向距離または深さ40を示し、拡張可能部材13の下側ベースは、拡張可能部材13の回転軸(一点鎖線で示されている)に対して第2の半径方向距離または深さ41を示す。続いて、ウエスト部44の第1および第2の距離または深さ40、41の合計は、拡張可能部材13の半径42(R)に一致する。拡張可能部材13の少なくとも2つ以上の葉状部32、34の1つ以上のウエスト部44は、特定の意図された用途または臨床適応症、特に病変の制御された連続的な破砕および/又はまたは薬剤の臓壁内送達に適合した1つ以上の長さ37(L)を示す。薬物送達用途の場合、拡張可能部材13の少なくとも2つ以上の葉状部32、34の1つ以上のウエスト部44、45の1つ以上の長さ37(L)は、好ましくは病変の長さに適合させることができ、長さ(37)は、0~240mm、5~10mm、10~30mm、30~60mm、60~90mm、90~120mm、120~150mm、150~180mm、180~210mmおよび210~240mmを含む少なくとも1組の範囲から選択される。制御された病変の破砕の場合、拡張可能部材13の少なくとも2つ以上の葉状部32、34の1つ以上のウエスト部44、45の1つ以上の長さ37(L)は、病変の直径に適合されることが好ましく、長さ(37)は、0~20mm、1~2mm、2~4mm、4~6mm、6~8mm、8~10mm、10~12mm、12~14mm、14~16mm、16~18mmおよび18~20mmを含む少なくとも1組の範囲から選択される。本開示の血管形成カテーテルは、薬物送達と病変の制御された破砕という複合的な使用を意図しているため、上記の範囲の両方の組み合わせが望まれる可能性があり、したがって、拡張可能部材13の少なくとも2つ以上の葉状部32、34の1つ以上のウエスト部44は、病変の長さ及び直径にそれぞれ適合する上記2つの範囲の組み合わせから選択される1つ以上の長さ37(L)を示す。上記2組の長さのうち、より小さい直径の長さの範囲が好ましい範囲である。したがって、本開示の拡張可能部材の特定の特徴として、ウエスト部44は、拡張可能部材の半径42(R)の2倍を超えない長さ37(L)であることが好ましい。したがって、ウエスト部44、45の上側ベース長さ37は、加圧状態での拡張可能部材の外径43を寸法的に超えないよう設計することができる。拡張可能部材を1つ以上のウエスト部を介して少なくとも2つ以上の葉状部に分割することの具体的な技術的効果については、
図12~20を参照してさらに説明する。
【0034】
上記の例では、拡張可能部材13の遠位端および近位端はそれぞれカテーテルシャフト15の一部に固定され、拡張可能部材の内面とカテーテルシャフトの外面との間に液密空間またはルーメン23を形成する。
図2~3に示すように、拡張ルーメン26は、カテーテル10の近位端に隣接する拡張ポート18から、拡張可能部材13の少なくとも2つの葉状部32、34のうちの第1の、又は最も近位の葉状部のルーメン23に接続されている開口部24まで延びている。この実施形態では、ウエスト部44はカテーテルシャフト15に接着されていないため、ウエスト部45とは異なり、拡張可能部材13のルーメン23は、1つ以上のウエスト部44を介して、1つ以上の隣接する葉状部32に流体的に接続される。代替実施形態では、1つのウエスト部45、または複数のウエスト部44、45を、カテーテルシャフト15の壁に取り付けずに、1つ以上の葉状部32、34間において流体的に接続することができる。したがって、カテーテル10の拡張可能部材13の1つ以上のウエスト部44、45は、細長い部材15に取り付けられているか、部分的に取り付けられているか、および取り付けられていないかのうちの1つ以上である。
【0035】
血管造影による視認性を可能にするために、カテーテルシャフト15のシャフト位置には、葉状部の位置を示す、および/又は拡張可能部材13の近位端と遠位端またはマントル表面を区切る、放射線不透過性マーカー31、35が取り付けられている。
図1を参照すると、本開示の拡張可能部材13は、複数の葉状部を含むことができ、例えば、拡張可能部材またはバルーンは、2~20、2~15、2~10、3~8、4~6及び2~4の葉状部を有する。さらに、葉状部の数は、奇数または偶数から選択することができる。実際の葉状部の数は、複雑な病変の治療に適して効果的である長さ及び直径を有するバルーンの組み合わせから決定することができる。
【0036】
一般に、加圧されていない状態では、拡張可能部材13の少なくとも2つの葉状部32、34はそれぞれ折り畳まれてプリーツ状になっており、その後の拡張可能部材の加圧により、2つ以上の葉状部のそれぞれが個別に展開される。好ましくは、加圧されていない状態で折り畳まれてプリーツ状になった拡張可能部材13の少なくとも2つの葉状部32、34のプリーツの数は、3以上の奇数である。
【0037】
さらに、折り畳まれてプリーツ加工された拡張可能部材13の少なくとも2つの葉状部32、34のフラップ長さは、少なくとも拡張可能部材の半径42の約0.25~0.75の比率、より好ましくは0.5~0.66の比率の長さから選択されるのが好ましく、拡張可能部材の最大フラップ長さは、ウエスト部44、45の第1の深さ40によって決定され、それによって、拡張可能部材と治療対象領域(65、66)との間で伝達されるねじり荷重が低減される。折り畳まれてプリーツ加工された拡張可能部材13の少なくとも2つの葉状部32、34の回転軸に対する第2の深さ41は、上記比率の残りから選択するのが好ましく、拡張可能部材の半径42の0.25(1-0.75)~0.75(1-0.25)の比率であり、より好ましくは0.34(1-0.66)~0.5(1-0.5)の比率である。さらに、第2の深さ41は、加圧状態の拡張可能部材の公称直径43に対する比率が0.5を超えないのが好ましい。追加の実施形態では、加圧されていない状態の折り畳まれてプリーツ加工された拡張可能部材13の少なくとも2つの葉状部32、34のプリーツの数の少なくとも1つとフラップの長さの少なくとも1つが変化する。
【0038】
好ましくは、拡張可能部材13の長さ39は、0~240mm、5~10mm、10~30mm、30~60mm、60~90mm、90~120mm、120~150mm、150~180mm、180~210mmおよび210~240mmを含む少なくとも1組の範囲から選択される。さらに、拡張可能部材13の少なくとも2つの葉状部32、34の長さ36、38は、0~240mm、1~5mm、5~10mm、10~30mm、30~60mm、60~90mm、90~120mm、120~150mm、150~180mm、180~210mmおよび210~240mmを含む少なくとも1組の範囲から選択される。さらに、拡張可能部材13の少なくとも2つの葉状部32、34の長さ36、38は、複数の異なる長さを含むことができる。
【0039】
好ましくは、拡張可能部材13の少なくとも2つの葉状部32、34の直径43は、0~20mm、1~2mm、2~4mm、4~6mm、6~8mm、8~10mm、10~12mm、12~14mm、14~16mm、16~18mm及び18~20mmを含む少なくとも1組の範囲から選択される。さらに、膨張可能部材の少なくとも2つの葉状部32、34の直径43は、複数の異なる直径を含むことができる。
【0040】
上記に基づいて、少なくとも2つの葉状部32、34の長さの少なくとも1つおよび直径の少なくとも1つは、変化させることができる。
【0041】
さらに、バルーンカテーテル10の拡張可能部材13は、遠位の事前拡張部分と近位の拡張部分を備えることができる。上記において、遠位の事前拡張部分は少なくとも4つの葉状部から構成され、各々の長さ36、38は、1~10mm、好ましくは1~5mmの範囲から選択され、加圧されていない状態での各直径43は、0.5~2mm、好ましくは1~2mmの範囲から選択され、近位の拡張部分は少なくとも4つの葉状部から構成され、各々の長さ36、38は、1~10mm、好ましくは1~5mmの範囲から選択され、加圧されている状態での各直径43は、0.5~2mm、好ましくは1~2mmの範囲から選択される。
【0042】
追加の実施形態では、少なくとも2つ以上の葉状部の長さ36、38および半径41、42または直径43及び1つ以上のウエスト部の長さ37および深さ40、41は、同じ長さ、類似する長さもしくは異なる長さ、同じ半径、類似する半径もしくは異なる半径、同じ深さ、類似する深さもしくは異なる深さから選択することができる。葉状部および/又はウエスト部は、それらの特定の用途に応じて、互いに等しい距離、類似する距離または異なる距離で間隔をあけることができる。
【0043】
図1~4の実施形態では、拡張可能部材13の二重ルーメンは、横並び(または平行)構造で配置されている。代替実施形態では、2つ以上のルーメンが存在し、各ルーメンは平行および/または同軸配置であり、また、それらから選択された組み合わせである。このような例は、
図5~7に示されている。
【0044】
さらに詳しく説明すると、
図5は、同軸二重ルーメン構造の拡張可能部材13の実施形態を示す。
図5は、カテーテルシャフト15の拡張ルーメン26がガイドワイヤルーメン25の周囲に同軸に形成され、拡張可能部材13の近位端を越えて遠位端または先端部12まで遠位に延びている点で、
図4に示した前記の二重ルーメン構造と異なっている。さらに、少なくとも2つ以上の葉状部32、34の1つ以上のウエスト部45がカテーテルシャフト15の壁に取り付けられ、第1または最も近位の葉状部34に位置する追加の開口部48、49と、第2または最も遠位の葉状部32に位置する追加の開口部46、47が、拡張ルーメン26を、各葉状部の内面とカテーテルシャフトの外面との間に存在する各流体密封空間まで個別に伸ばしている。これにより、少なくとも2つの葉状部32、34を含む拡張可能部材13は、拡張ルーメン26を介して拡張ポート18と流体連通する。
図5の同軸二重ルーメン構造は、各葉状部の個別の拡張/収縮が望まれる場合、または治療液と診断液を別々に投与するための追加のルーメンが必要な場合、平行配置よりも特に有利である。
【0045】
比較のために、
図6は、
図4に示す二重ルーメン構造に類似している、平行二重ルーメン構造の代替実施形態を示す。しかし、その二重ルーメン構造は、拡張ルーメン26が拡張可能部材13の近位端を超えて遠位端またはカテーテル先端部12まで遠位に延び、少なくとも2つ以上の葉状部32、34の1つ以上のウエスト部45がカテーテルシャフト15の壁に取り付けられている点で異なる。カテーテルシャフトには、さらに、拡張ルーメン26からカテーテルシャフト15の壁を貫通して各葉状部32、34の内面とカテーテルシャフトの外面との間に存在する各流体密封空間まで個別に伸びる少なくとも2つの開口部46、48が含まれる。これにより、少なくとも2つの葉状部32、34を含む拡張可能部材13は、拡張ルーメン26を介して拡張ポート18と流体連通する。
図6の平行二重ルーメン構造は、各葉状部の個別の拡張/収縮が望まれる場合、または拡張可能部材13の剛性を高める必要がある場合に、
図4に示す二重ルーメン構造より特に有利である。
【0046】
図7は、
図5に示す同軸二重ルーメン構造に類似する同軸三重ルーメン構造の代替実施形態を示す。しかしながら、
図7では、三重ルーメン構造は、中央ガイドワイヤルーメン25、拡張ルーメン26及び追加の薬剤灌流ルーメン51から構成され、拡張ルーメンおよび薬剤灌流ルーメンは互いに流体連通しない別々のルーメンであり、ガイドワイヤルーメンの周囲に同軸に形成されている。葉状部32の下の追加の挿入図には、細長い部材15の長さに沿った位置「A」において垂直方向に破線が示され、同軸三重ルーメン構造を示すA-A矢示縦断面が示されている。水平断面および縦断面から明らかなように、薬剤灌流ルーメン51は、マニホールド17(図示せず)にある薬剤灌流ポートから、拡張可能部材13の少なくとも2つの葉状部32、34のウエスト部77にある薬剤放出開口部50まで延びて伸びている。これにより、三重ルーメン構造は、治療手順の実質的に同じ、類似、または異なる段階で、少なくとも2つの葉状部32、34の拡張/収縮と、ウエスト部45/77への治療液および診断液または薬剤の灌流を可能にする。例えば、所望の標的部位に治療を施す前に、拡張可能部材13の葉状部32、34を拡張させて標的部位を通る血流を防止し、患者の血流に治療液が誤って放出されるのを防ぎ、続いて標的治療部位に位置するウエスト部45/77に治療液を送達することができる。所望の治療時間が経過した後、残留治療薬を薬剤灌流ルーメン51に回収し、拡張可能部材13の葉状部32、34を収縮させて標的治療部位への血流を回復させることができる。
図7の実施形態では、ウエスト部45、77がカテーテルシャフト15に接着されているが、
図4に示すように、ウエスト部はシャフトに非接着とするか、接着するか、または部分的に接着することもできる。代替の実施形態では、拡張ルーメン26は同時に薬剤灌流ルーメンであり、拡張ポート18は同時に薬剤灌流ポートである。追加の実施形態では、個々の同軸ルーメンは、ルーメンの長さに沿って互いに接着するか、部分的に接着するか、または非接着とすることができる。このような手段は、細長い部材に対する1つ以上の同軸ルーメンの位置を強化または安定化するのに役立つ。例えば、同軸ルーメン構造には、好ましくは細長い部材の近位ルーメン部分に沿った安定化溶接を含めることができる。さらに、ガイドワイヤの交換や、治療用および診断用の液体および/又はガスの移送に使用される細長い部材および/又はウエスト部のさまざまな開口部およびポートは、構造的に強化することができる。
【0047】
本開示によるバルーンカテーテルの上記の構造的側面および特徴を要約すると、バルーンカテーテル10は、少なくとも、近位端19、遠位端12および少なくとも部分的に細長い部材を貫通する少なくとも1つのルーメン25、26を有する細長い部材15と、上記遠位端に隣接して上記細長い部材に取り付けられて少なくとも1つのルーメン26と流体連通する拡張可能部材13とを含む。当該拡張可能部材は半径R(42)を有し、少なくとも2つの葉状部32、34を含み、当該少なくとも2つの葉状部は1つ以上のウエスト部44、45によって互いに分離されている。 加圧されていない状態では、上記拡張可能部材13の上記少なくとも2つの葉状部32、34はそれぞれ折り畳まれてプリーツ状になっており、その後に上記拡張可能部材を加圧することによって、上記2つ以上の葉状部のそれぞれが個別に展開される。
【0048】
さらに、バルーンカテーテル10は、カテーテル先端部12、キンク防止スリーブ16及びマニホールド17を備えている。
【0049】
さらに、バルーンカテーテル10のマニホールド17は、拡張ポート18及びガイドワイヤポート19、27-28を備えている。
【0050】
さらに、バルーンカテーテル10の細長い部材15は、拡張ルーメン26及びガイドワイヤルーメン25を備え、ガイドワイヤルーメンは細長い部材(15)を少なくとも部分的に貫通している。
【0051】
上記において、バルーンカテーテル10の細長い部材15のガイドワイヤルーメン25は、カテーテル先端12をガイドワイヤポート19、28に接続し、拡張ルーメン26は拡張可能部材13と流体連通している。
【0052】
一実施形態では、拡張ルーメン26は同時に薬剤灌流ルーメンであり、拡張ポート18は同時に薬剤灌流ポートである。
【0053】
上記に基づいて、バルーンカテーテル10の細長い部材15は、二重ルーメンシャフトとして構成され、細長い部材の二重ルーメン構造は、平行配置、同軸配置及び同軸配置と平行配置の組み合わせからなる群から選択される。
【0054】
代替実施形態では、バルーンカテーテル10のマニホールド19は薬剤灌流ポートをさらに備え、細長い部材15は薬剤灌流ルーメン51をさらに備える。代替実施形態および上記の実施形態では、拡張可能部材13の1つ以上のウエスト部77は少なくとも1つの薬剤放出開口部50を備え、少なくとも1つの薬剤放出開口部50は細長い部材15内の薬剤灌流ルーメン26、51と流体連通している。
【0055】
代替実施形態では、細長い部材15は三重ルーメンシャフトとして構成され、細長い部材の三重ルーメン構造は、平行配置、同軸配置及び同軸配置と平行配置の組み合わせからなる群から選択される。
【0056】
構造上の補強要素
図8~10は、本開示による拡張可能部材13のさらなる代替実施形態を示す。
図8において、拡張可能部材13は、
図4に関して記載した二重ルーメン構造に基づいており、少なくとも2つ以上の葉状部32、34と、1つ以上のウエスト部44、45を含む。しかし、
図4と比較すると、1つ以上のウエスト部44、45は、カテーテルシャフト15に部分的に又は完全に接着されておらず、ウエスト部44、45内にそれぞれ配置される1つ以上の追加の構造要素52を含む。1つ以上の構造要素52は、1つ以上のウエスト部44、45の下側ベースを保持するように構成されており、拡張可能部材13が加圧されると、ウエスト部44、45は拡張可能部材13の回転軸に対して所定の深さ41(
図4参照)に保持される。下側ベースの深さは構造要素52の直径によって定められるが、拡張可能部材の少なくとも2つの葉状部32、34は、
図4に示すように、直径43まで自由に拡張できる。1つ以上の構造要素52は、1つ以上のウエスト部44,45の少なくとも1つ以上の下側ベースを補強し、拡張可能部材13の安定化を助け、拡張可能部材13が加圧されると、拡張可能部材の軸方向の安定性または追随性がさらに向上し、特に1つ以上のウエスト部44、45がカテーテルシャフト15に接着されていない場合に顕著となる。この例では、1つ以上の構造要素52は、ウエスト部を拡張可能部材13および/又はカテーテルシャフト15に固定するのに役立つ。カテーテルシャフト15への取り付けによる1つ以上のウエスト部44、45の1つ以上の下側ベースの追加補強、または拡張可能部材13の1つ以上のウエスト44、45に配置される追加の1つ以上の構造要素52の提供は、拡張可能部材の追加の軸方向および半径方向の安定性または追随性が望まれるか、またはウエスト部の半径方向の拡張を抑制する必要がある場合に特に有利である。
【0057】
さらなる実施形態では、1つ以上の構造要素52は、拡張可能部材13の外面に固定して取り付けられるか、または拡張可能部材13の壁または外面を形成する複数の層の間に配置される。構造要素52は、膨張可能部材に固定して取り付けられず、代わりに、構造要素52がウエスト部44、45内に配置され、拡張可能部材の幾何学的形状が、ウエスト部44、45内での構造要素52の位置を固定することも考えられる。1つ以上のウエスト部の少なくとも1つの補強手段として機能するための構造要素52は、繊維、縫い目、糸、リング、チューブ、接着剤、架橋ポリマー、点状、線状、螺旋状、円形、円筒状、半円形、弧状、層状または細長い部材への織り交ぜ取付物、及びそれらから形成される組み合わせからなる群から選択される。さらに、構造要素52は、剛性材料、延性材料、弾性材料および/又はバネ状材料の形態で提供することができ、さらに、その材料は、固体、半固体、メッシュ状または多孔質材料の形態で提供することができ、および/又はそれらから選択される適切な組み合わせから構成される。構造要素として使用するのに好ましくは適切な材料には、拡張可能部材を形成する材料と同等以上の機械的強度を有する材料から構成されるものを含み、例えば、構造要素は、熱可塑性または熱硬化性ポリマー、非架橋または架橋ポリマー、接着剤、セラミック、放射線不透過性材料および放射線不透過性材料組成物、およびステンレス鋼、ニチノール、コバルトクロム、又は同じもしくは類似の生体適合性材料を含む金属から構成することができる。好ましい一例では、構造要素は、バルーンを形成する材料と同じ材料から作られる。この場合、構造要素は、バルーンの製造中にバルーンと一体的に形成することもでき、また構造要素は、接着剤取り付け機構、化学的取り付け機構、もしくはレーザー溶接、超音波溶接、摩擦溶接、プラズマ溶接、熱接着、熱成形、又はそれらから形成される任意の適切な組み合わせなどの他の物理的取り付けプロセスを使用して、バルーンに直接取り付けることもできる。本開示の別の例では、構造要素52は、構造要素52の所望の位置でバルーン材料の光架橋によって一体的に形成される。さらに別の例では、バルーンは多層材料で形成され、構造要素52は製造中にバルーンのいくつかの層の間に配置される。好ましくは、構造要素52は、バルーン本体上に配置され、機械的および/又は寸法安定性が達成されるまで熱処理される熱収縮チューブ材料の円筒形部分である。一般に、構造要素52は、繊維、縫い目、糸、リング、チューブ、接着剤、ポリマー、点状、線状、螺旋状、円形、円筒状、半円形、弧状、層状または織り交ぜ取付物のいずれかであり、好ましくは一定の幅および厚さを有する。好ましくは、構造要素は、その円周にわたって変化する幅を有し、言い換えれば、構造要素は非対称である。
【0058】
さらに説明すると、
図9~10は、本開示に従った拡張可能部材のいくつかの代替実施形態を示す。これらの実施形態では、拡張可能部材13は、少なくとも2つ以上の葉状部の1つ以上のウエスト部に配置された1つ以上の構造要素をさらに備える。
図9では、拡張可能部材は、一連の6つの葉状部53、54、55、56、57、58を備え、これらの葉状部は、一連の5つのウエスト部によって等間隔に配置され、各ウエスト部は非対称構造要素59で補強されている。この例の構造要素は、一連の収縮チューブから形成され、各収縮チューブは等脚台形に切断されている。これらの非対称収縮チューブ片は、次に、拡張可能部材13の各ウエスト部の上に配置され、熱収縮されて、図に示すように、本開示に従った拡張可能部材を形成する。この例では、非対称構造要素は、拡張可能部材の長さに沿って同じ方向に配置されている。これにより、加圧時に、非対称構造要素の一方向の方向性と配置により、拡張可能部材が連続的に湾曲した形状になり、必要に応じて曲げモードの強化が可能になる。さらに、上記の例は、構造要素を正確に配置することに限定されないことが想起される。たとえば、収縮チューブの代わりに、前記の構造要素のいずれかを非対称の形で同等に実装できる。
【0059】
比較すると、
図10は、一連の4つの葉状部53、54、55および56を含む拡張可能部材を示しており、これらの葉状部は、一連の3つのウエスト部によって等間隔に配置され、各ウエスト部は非対称構造要素60で補強されている。しかし、
図10では、非対称構造要素60は交互に配置されており、拡張可能部材の長さに沿って1つおきにその向きが反転している。これにより、加圧時に、非対称構造要素の双方向の向きによって、拡張可能部材が蛇行形状/波打つ形状になり、必要に応じて、曲げモードが強化される。代替の実施形態には、非対称構造要素を拡張可能部材の長さに沿って螺旋状の向きに配置すること、または特定の用途に応じて、拡張可能部材の他の適切な曲げモードを促進する他の特定の配置および向きに配置することが含まれる。本開示のこのような強化された拡張可能部材は、拡張したバルーン部分の自然な血管解剖術への適合性の向上を促進するのに適しており、さらに、病変した血管部分の望ましくない直線化および拡張を防止することができる。
【0060】
本開示に従って拡張可能部材を提供することにより、拡張可能部材の追加の曲げモードが可能になり、病変の3Dプラーク調整をさらに強化する。これにより、血管形成バルーンカテーテルは、閉塞または病変血管部分で制御可能に拡張する、さらに強化された方向性能力を適切に発揮することができ、病変に焦点を絞った圧力を加えると、好ましくは複数の場所で病変を制御可能に破砕することができ、その結果、従来の血管形成カテーテルと比較して大幅に低い圧力範囲で、標的病変の効率的かつ選択的な調節、修飾および/又は破砕が容易になる。その結果、外傷を軽減でき、患者に対して安全で臨床的に効果的な治療を行うことができる。
【0061】
本開示によるバルーンカテーテル10の前記の構造的側面および特徴を要約すると、バルーンカテーテル10の1つ以上のウエスト部44、45は、1つ以上の構造要素52を含むことができる。次に、1つ以上の構造要素52は、1つ以上のウエスト部44、45の少なくとも1つ以上を補強する。様々な実施形態において、バルーンカテーテル10の1つ以上の構造要素52は、1つ以上のウエスト部44、45の少なくとも1つを補強する手段として機能し、繊維、縫い目、糸、リング、チューブ、接着剤、架橋ポリマー、点状、線状、螺旋状、円形、円筒状、半円形、弧状、層状、および細長い部材への織り交ぜた取付物、およびそれらから形成される組み合わせからなる群から選択される。さらに、バルーンカテーテル10の1つ以上の構造要素52は、好ましくは非対称であり、拡張可能部材13の長さ方向に対して一方向の向きで配置することも、拡張可能部材13の長さ方向に対して双方向の向きで配置することも、および/又は拡張可能部材13の長さ方向に対して一方向と双方向の向きを交互に組み合わせて配置することもできる。
【0062】
製造的観点
本開示の血管形成カテーテルシステムの一般的な構造的観点に関して、カテーテル部品は、生体適合性、ポリマー、金属、およびセラミック材料から製造することができる。例えば、拡張可能部材を含むカテーテル要素は、脂肪族、半芳香族、および芳香族ポリアミド(PA)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテル、ポリイミド(PI)、線状および非線状、分岐または非分岐、低分子量、中分子量、または高分子量、ポリエチレン(PE、LD-PE、HD-PE)およびポリプロピレン(PP)を含む低密度ポリオレフィン、中密度ポリオレフィンもしくは高密度ポリオレフィン、シリコーン、ポリウレタン(TPEs)およびフルオロエラストマーのような熱可塑性エラストマー、例えば、FEPもしくはPTFE、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)のようなポリエステルおよび組み合わせ、およびこれらの材料のブレンドおよびコポリマー(ポリエーテルブロックアミド(PEBAなど)から製造することができる。
【0063】
さらに、拡張可能部材を含むカテーテル要素は、単層、二層、または多層構造で製造することができる。二層または多層構造の場合、例えばシャフトまたは拡張可能部材を含む特定のカテーテル要素は、各層に同じ材料を使用するか、または各層に異なる材料を使用することができる。複数の層は、接着剤の有無にかかわらず、共押し出しまたは溶接プロセスを使用して、接着、溶融、または融着することができる。あるいは、複数の層を一緒に取り付けたり、接着したり、溶接したりする必要はなく、代わりに、複数の層が独立して動くようにすることができる。さらに、カテーテルシステムの各層または部品のために選択された材料の弾性率、デュロメーター、または硬度を変更して、個々のカテーテル部品の性能を有利に変えることができる。
【0064】
さらに、カテーテル材料の化学的機能および/又は物理的極性を変更して、異なる層間の界面接着を強化したり、ガイドワイヤ、治療用および診断用液体または機能性コーティングなどと接触したときに、表面ルーメンおよび/又は内側ルーメンの潤滑性を高めたり表面エネルギーを変えたりすることができる。これらの化学的処理および物理的処理または変更には、例えば、界面に別の化学的機能を導入することができる化学添加剤が含まれ、この化学添加剤は、カテーテル部品の1つ以上の層を形成することを意図した例示的なベースポリマー配合物に添加され、例えば、カルボキシ基および/又はアミノ基などの官能基を含み、層および基板の基本的な極性を効果的に強化し、カテーテル要素の1つ以上の層状構造間の接着および機械的強度の向上を促進する。
【0065】
コーティングおよび/又はプラズマ技術などの他の表面改質は、血管形成カテーテルシステムの材料、層または構成要素の化学的特性および/又は機械的特性をさらに変更するために使用することができ、カテーテル材料の改質は、カテーテル構成要素の層および/又は表面の極性、表面エネルギーおよび/もしくは摩擦係数に影響を及ぼすことがある。さらに、他の適切な技術は、カテーテル材料に他の有益な特性を導入することができる添加剤、接着剤および/又は充填剤を含むことができる。例えば、カテーテルシステムの構成要素は、所望の場所で蛍光透視の可視性を選択的に高めるために、ポリマー材料内に埋め込まれた放射線不透過性要素を含むことができる。代替的に、または補足的に、カテーテルシステムの構成要素は、治療される人に目に見える色表示を提供するために、選択された場所に染料または顔料を含むことができる。さらに、シャフトは、未処理のベースポリマー配合物または活性化可能な使い捨てコーティングと比較して摩擦係数を永久的に低下させるために、フルオロポリマーベースの充填粒子/繊維を含むことができる。さらに、シャフトおよび拡張可能部材を含むカテーテル要素は、補強されて提供されることがあり、ベース材料に層、セクションまたは領域として埋め込まれた金属もしくはポリマーベースの撚り糸、繊維、ワイヤ、編組、メッシュおよび/又は織物を含むことができる。
【0066】
拡張可能部材の構造特性に関しては、バルーンが外部圧力の付加に対して特定の方法で応答するように、構造に使用される材料を選択し、配置し、および体系化することができる。構造上、細長い管状部材は、2つの異なる拡大メカニズム、すなわち軸方向長さおよび半径方向直径の変化によって、圧力の付加に応答する。圧力付加中のバルーンの寸法特性のこの特徴的な変化は、一般に寸法コンプライアンスと呼ばれる。特に、治療される病変の標的血管径に関して、製品ラベルに記載されている「バルーンコンプライアンス」と呼ばれることが多い半径方向コンプライアンス(または「コンプライアンス曲線」として記録されている)は、バルーンの直径が圧力の付加に対してどのように応答するかを表す。したがって、軸方向(長手方向)寸法の変化は、軸方向コンプライアンスと呼ばれる。材料の選択によって、拡張要素またはバルーンは、コンプライアントバルーン、セミコンプライアントバルーン、および非コンプライアントバルーンとして具体化することができる。コンプライアント医療用バルーンは、拡張時に、100%以上拡張することがある。非コンプライアント拡張バルーンは、公称直径から定格破裂圧力まで加圧されても、ほとんど拡張せず、7%を超えることない。セミコンプライアントバルーンは、公称圧力または動作圧力(バルーンが公称直径に達する圧力など)から定格破裂圧力(バルーンが破裂又は破れる可能性のある望ましくない圧力閾値など)まで加圧されると、中程度の拡張を示す(7-12%以上)。材料や構造の選択以外に、拡張可能部材の望ましいコンプライアンス特性は、製造プロセスを通じて適切に制御できる。
【0067】
本開示の拡張可能部材は、バルーンブロー、ブロー成形、熱成形、ディップ成形、またはバルーンの製造に適したその他の製造方法などの既知の製造方法を使用して製造することができる。当業者であれば、本開示のバルーンの製造において、従来のバルーン製造技術を利用できることを理解するであろう。例えば、バルーンの材料には、バルーンの製造前、製造中、または製造後に機械的処理を施すことができる。例えば、製造プロセスにブロー成形プロセスが利用される場合、バルーンを形成する管状部材は、ブロー成形プロセスの前、ブロー成形プロセス中、またはブロー成形プロセス後に引き伸ばすことができる。それでも、製造プロセス中に温度、膨張圧力、または他のパラメータを変更して、製造されたバルーンの特性に影響を与えることができる。
【0068】
さらに説明すると、
図11Aおよび
図11Bは、本開示に従ってバルーンブローおよび/又は熱成形によって製造された拡張可能部材のウエスト部の断面図を示す。
図11Aには、単一段階のバルーンブロープロセスによって製造された拡張可能部材の特徴的な壁の厚み比率が示されている。拡張可能部材は、それぞれ第1の壁厚61を有する近位端および遠位端、それぞれ第2の壁厚62を有する少なくとも2つ以上の葉状部32、34、およびそれぞれ第3の壁厚63を有する1つ以上のウエスト部44を含む。
図11Aおよび
図11Bでは、第1の壁厚61は、拡張可能部材13の近位端および遠位端(ネック/コーン)における1つ以上の壁厚の平均として例示的に示されている。第2の壁厚62は、少なくとも2つの葉状部32、34の長さ36、38にわたる1つ以上の(マントル)壁厚の平均として例示的に示され、第3の壁厚63は、それぞれ1つ以上のウエスト部44、45のウエスト部長さ37にわたる1つ以上の壁厚の平均として示されている。単一段階のバルーンブローの結果、第1の壁厚61は第2の壁厚62を超え、第3の壁厚63は第2の壁厚62を超える。これにより、単一段階バルーンブローの適用により、ウエスト部44の壁厚63が、通常、拡張可能部材の少なくとも2つ以上の葉状部32、34の壁厚62よりも厚くなる拡張可能部材が得られる。したがって、この特定の単一段階製造工程は、柔軟性を低下させた強化ウエスト部が望まれるような状況に有利となり得る。ウエスト部の柔軟性の低下は、拡張可能部材と治療対象領域65、66との間で伝達される軸方向荷重量を減らすのに特に有益である。
【0069】
しかしながら、好ましくは、本開示の拡張可能部材は、少なくとも2つ以上の葉状部32、34における第2の壁厚62を超えない、1つ以上のウエスト部44における第3の壁厚63を示すことが望ましい場合がある。本開示の発明者は、バルーンブロープロセスと連続した熱成形プロセスとを組み合わせることによって、前記の特徴を達成できることを発見した。さらに説明すると、
図11Bは、第1段階のバルーンブローと第2段階の熱成形からなる2段階プロセスによって製造された拡張可能部材の特徴的な壁の厚み比率を示す。
図11Bに示すように、拡張可能部材は、それぞれ第1の壁厚61を有する近位端および遠位端、それぞれ第2の壁厚62を有する少なくとも2つ以上の葉状部32、34、およびそれぞれ第3の壁厚63を有する1つ以上のウエスト部44を含む。第1段階のバルーンブロープロセスおよび第2段階の熱成形プロセスを実行した結果、第1の壁厚61は第2の壁厚62を超え、第2の壁厚62は第3の壁厚63を超える。これにより、第1段階のバルーンブロープロセスおよび第2段階の熱成形プロセスからなる2段階プロセスを適用することで、ウエスト部44の壁厚63が拡張可能部材の少なくとも2つ以上の葉状部32、34の壁厚62よりも薄い拡張可能部材が得られる。この特定の2段階製造プロセスは、薄くして柔軟性を高めたウエスト部44が望まれるような状況に有利となり得る。ウエスト部における柔軟性の向上は、治療対象領域の一部66に伝達される可変方向力70、73の大きさを高めるのに特に有益である。これらの特定の効果については、
図12~13および
図17~18を参照してさらに説明する。
【0070】
追加の実施形態では、少なくとも2つ以上の葉状部の1つ以上のウエスト部における柔軟性は変えることができ、例えば、柔軟性の増加および減少のセットとして提供され、これらを組み合わせると、軸方向の安定性の向上とウエスト部で生成される可変方向力の大きさの増加との好ましい組み合わせが得られる。
【0071】
本開示によるバルーンカテーテルの追加の構造および特徴を要約すると、バルーンカテーテル10の拡張可能部材13は、さらに、それぞれが第1の壁厚61を有する近位端および遠位端、それぞれ第2の壁厚62を有する少なくとも2つの葉状部32、34、およびそれぞれ第3の壁厚63を有する1つ以上のウエスト部44、45を含む。
【0072】
一実施形態では、バルーンカテーテル10の拡張可能部材の第1の壁厚61は第2の壁厚62を超え、第2の壁厚は第3の壁厚63を超え、それによって1つ以上のウエスト部44、45の柔軟性が増加され、治療対象領域65の一部66に伝達される可変方向力70、73の大きさが高められる。
【0073】
別の実施形態では、拡張可能部材の第1の壁厚61が第2の壁厚62を超え、第3の壁厚63が第2の壁厚を超えるため、1つ以上のウエスト部44、45の柔軟性が低下し、拡張可能部材と治療対象領域(65、66)との間で伝達される軸方向荷重量が減少する。
【0074】
図1~11に関して説明されている拡張可能部材は、本開示に従って血管形成術を行うために利用されるように設計されている。単一部材の血管形成バルーンを含む従来の血管形成カテーテルとは異なり、本開示の血管形成カテーテルは、近位端、遠位端、および少なくとも部分的に細長い部材を貫通する少なくとも1つのルーメンを有する細長い部材と、上記遠位端に隣接して細長い部材の近位に取り付けられて少なくとも1つのルーメンと流体連通する拡張可能部材とを含む。拡張可能部材は半径Rを有するとともに少なくとも2つの葉状部を含み、少なくとも2つの葉状部は1つ以上のウエスト部によって互いに分離されており、加圧されていない状態では、拡張可能部材の少なくとも2つの葉状部は、それぞれ折り畳まれてプリーツ状になっており、その後の拡張可能部材の加圧により、2つ以上の葉状部のそれぞれが個別に展開される。上記および後記の基準に従って拡張可能部材を提供することにより、本開示の拡張可能部材は、協調した半径方向の拡張と同時の縦方向の曲げモードの新規な組み合わせを提供することができ、これにより、病変に焦点を絞った圧力を伝達することができ、その結果、好ましくは複数の場所で病変を制御可能に破砕することができる。本開示の拡張可能部材は、従来の血管形成バルーンと比較して比較的低い圧力で使用できるため、実質的に外傷のない三次元プラーク調整が達成される。さらに、具体的な技術的効果について、
図12~20を参照して次に説明する。
【0075】
図12は、本開示の拡張可能部材を石灰化した病変に適用したときに観察される病変破砕効果を示す。
図12には、少なくとも2つの葉状部32、34と、1つ以上のウエスト部44とを含む拡張可能部材が示されている。拡張可能部材が血管65内に位置する病変66に接触している状態が示されている。
図4を参照して、拡張可能部材13を加圧すると、ウエスト部44の位置(下側ベース)が第2の位置44’にシフトし、拡張可能部材が病変に押し込まれる。加圧状態では、拡張可能部材13の少なくとも2つ以上の葉状部32、34が、葉状部と治療対象領域(65、66)との間で、反対方向の軸方向および等方向の半径方向の荷重または力を制御可能に伝達し、その結果、
図12に一点鎖線で示される特定の応力分布プロファイルがもたらされる。拡張可能部材のマントル表面に沿った応力分布は、少なくとも2つ以上の葉状部32、34の真上にある最大半径方向応力状態から、ウエスト部44の真上にある半径方向応力緩和ゾーンに変化する。その結果、ウエスト部に存在する軸方向力成分と半径方向力成分との協調的な相互作用によって、黒矢印で示される可変方向力が生じる。次に、これらの方向の力は、治療対象領域65のうち、ウエスト部44の周囲に位置する部分66に付加される。これらの方向の力は、病変66を有利に破砕する追加の劈開面67、68を作製する。言い換えると、葉状部間およびウエスト部周囲に伝達される可変方向性の力は、拡張可能部材の葉状部および治療対象領域の残りの部分によって伝達される半径方向の力とは異なるため、拡張可能部材の葉状部とウエスト部の間に可変圧力差が誘導され、治療対象領域に伝達されると、拡張可能部材のウエスト部周囲に病変の破砕が優先的に形成される。方向性の力は、拡張可能部材の加圧状態に応じて大きさと方向が異なる。半径方向の拡張と同時の縦方向の曲げの協調動作により、病変に焦点を絞った圧力が伝達され、その結果、ウエスト部周辺の複数の場所で病変が制御可能に破砕される。言い換えれば、少なくとも2つ以上の葉状部で拡張可能部材を分割すると、加圧状態の拡張可能部材のウエスト部における軸方向および半径方向の力成分の組み合わせ又は重なりから生じる圧力干渉が誘発される。次に、応力変曲点が制御可能に形成されて、病変の部分変曲が誘発され、圧力を病変に方向性を持って付加して血管壁から遠ざけることが可能になり、それにより、非外傷性で制御された病変の破砕が促進される。
【0076】
図13は、本開示の拡張可能部材の寸法関係の横断面図であり、本開示の異なる加圧状態における力の制御された方向を特徴づける。
図13では、少なくとも2つの葉状部32、34と1つ以上のウエスト部44とを含む拡張可能部材の輪郭が、黒の実線で示されている低加圧状態と、破線で示されている高加圧状態とで示されている。拡張可能部材の回転軸は、一点鎖線で示されている。加圧されていない状態または低加圧状態から加圧された状態または高加圧状態への圧力の適用により、ウエスト部44の上側ベースは、ウエスト部44の下側ベースに対して距離または深さ40から深さ40’へシフトし、ウエスト部44の下側ベースは、拡張可能部材の回転軸の上方の距離または深さ41から深さ41’へシフトする。さらに、上側ベース37および下側ベース33の長さは、長さ37’および33’に圧縮され、上側ベースおよび下側ベースの脚91、92の間に形成される角度76は、加圧時に角度76’に変化する。加圧されていない状態または低加圧状態から加圧された状態または高加圧状態への圧力の適用により、方向力70(半径方向力成分71と軸方向力成分72のベクトル加算の結果)および方向力73(半径方向力成分74と軸方向力成分75のベクトル加算の結果)の方向と大きさが変化し、新しい方向力70’および73’が生成される。可変方向力70、73の大きさと方向の変化から明らかなように、加圧時に、ウエスト部周囲の半径方向応力は血管壁から離れる方向に向けられ、ウエスト部44の上側ベースおよび下側ベースの脚91、92に対してほぼ垂直の角度で病変に集中される。葉状部、ウエスト部および病変の間で伝達される可変方向力の特定の効果として、加圧の異なる段階で、方向力の方向に沿って破砕面が形成され、ウエスト部44の周囲に位置する複数の場所67、68で病変の制御可能な破砕が生じる。同時に、集中した半径方向応力は血管壁65から離れる方向に向けられる。発明者らは、拡張可能部材のウエスト部44の長さ37(L)が拡張可能部材の半径42(R)の2倍以下である場合に、拡張可能部材のウエスト部周囲の病変の破砕の前記効果を最大化できることを発見した。さらに、発明者らは、拡張可能部材の少なくとも2つ以上の葉状部32、34の壁厚62に対して、ウエスト部44の壁厚63をそれぞれ減少または増加することで、加圧状態における可変方向力70、73の大きさと方向が変化することを発見した。例えば、壁厚63を薄くすると、治療対象領域65の一部66に伝わる可変方向力70、73の大きさが増大し、さらに、脚91、92の間に形成される角度76が減少し、それによって、方向力70、73の間に存在する対応する入射角が増大する。これは驚くべきことに、壁厚63の変化によって、可変方向力が病変に集中する角度を制御できるようになり、それによって、病変の破砕の深さ、方向、位置および数を確実に制御するための追加の手段が提供されることを示唆している。さらに説明すると、1つ以上のウエスト部を介して拡張可能部材を少なくとも2つ以上の葉状部に分割することによる特定の技術的効果について、
図14~19を参照してさらに説明する。
【0077】
図14A~14Dは、本開示に従って、可変ウエスト部長さを有する拡張可能部材を使用して閉塞血管部分に加えられた力から生じる応力分布図である。
図14Aは、単一部材の標準的な血管形成バルーン13によって石灰化病変66に加えられた力を示す。
図14Aは、血管形成バルーン13の断面と、単位長さあたりのフォンミーゼス応力(MPa)で示された応力ゾーンを有する石灰化病変66とを示す(凡例を参照)。
図14Aに示すように、従来の血管形成バルーンは、病変の全長にわたって病変にほぼ均一な力を与える。応力が均一に分散され、応力集中部位がないため、従来の血管形成カテーテルでは、病変を破砕するために比較的高い圧力を使用する必要がある。さらに、これらの制限により、病変の破砕が均一に行われなくなり、病変の破砕の深さ、方向、位置および数を確実に制御することができず、血管の十分な開放を確実に達成することができない。
【0078】
図14Bから
図14Dは、
図2から
図8の拡張可能部材設計を利用して病変に加えられた力を示す。したがって、提供された例では、拡張可能部材13は、少なくとも2つ以上の葉状部32、34と、1つ以上のウエスト部44とを含む。
図14B、
図14C、
図14Dでは、拡張可能部材のウエスト部の長さ37は、破線で示されるように、2mm、4mmおよび6mmと変化しているが、葉状部36、38の長さはそれぞれ20mmで同一のままであり、拡張可能部材の直径43はそれぞれ6mmで同一のままである。ウエスト部周囲に生じる応力分布プロファイルから分かるように、方向性力の重なりから生じる応力強度の変化はウエスト部の長さに依存し、拡張可能部材のウエスト部44の長さ37(L)が拡張可能部材の半径42(R)の2倍以下である場合に最大となる。葉状部間およびウエスト周囲に伝達される可変方向性力は、拡張可能部材の葉状部および治療対象領域の残りの部分によって伝達される半径方向の力とは異なるため、半径方向応力はウエスト部上部の血管壁から遠ざかる方向に向けられる。したがって、ウエスト部周囲の応力強度は、従来の血管形成バルーンの応力強度よりも低くなる。さらに、拡張可能部材の葉状部とウエスト部との間に応力勾配が生じるため、応力集中部位または屈曲点が生成され、その結果、
図13の説明と同様に、拡張可能部材のウエスト部周囲に病変破砕が優先的に形成される。
【0079】
図15A~15Dは、本開示による拡張可能部材を利用して閉塞血管部分に加えられた異なる大きさの力から生じる応力分布を示す。
図15A~15Dにおいて、拡張可能部材13は、少なくとも2つ以上の葉状部32、34と、1つ以上のウエスト部44とを含む。提供された例では、ウエスト部長さ37は4mm、葉状部36、38の長さは20mm、拡張可能部材の直径43は6mmである。
図15A~15Dにおいて、異なる膨張圧力で病変66に加えられる力は、15Nずつ増分して、15Nから60Nの間で変化する。ウエスト部周囲に発生する応力分布プロファイルからわかるように、方向性のある力の重なりから生じる応力強度の変化は、病変に加えられる拡張圧力または力に依存する。葉状部間およびウエスト部周囲に伝達される可変方向性の力は、拡張可能部材の葉状部および治療対象領域の残りの部分によって伝達される半径方向の力とは異なるため、半径方向の応力は血管壁から離れる方向に向けられる。したがって、ウエスト部周囲の半径方向の応力強度は、従来の血管形成バルーンの応力強度よりも低くなる。さらに、拡張可能部材の葉状部とウエスト部の間に応力勾配が生じるため、応力集中部位または変曲点が生成され、その結果、
図13~14の説明と同様に、膨張可能部材のウエスト部周囲に病変の破砕が優先的に形成される。
【0080】
図16A~16Dは、本開示による拡張可能部材の異なる量の加圧から生じる病変における応力分布を示す偏光顕微鏡画像である。
図16A~16Dのそれぞれにおいて、拡張可能部材13は、少なくとも2つ以上の葉状部32、34と、1つ以上のウエスト部44を含む。提供された例では、拡張可能部材のウエスト長さ37はそれぞれ3mmであり、公称圧力(16バール)での直径はそれぞれ3mmであるが、葉状部36、38の長さはそれぞれ80mmである。
図16A~16Dのそれぞれにおいて、左から右に、拡張可能部材はモデル病変66と直接接触しており、圧力4バール、6バール、8バールおよび12バールの加圧状態に保持されている。各画像では、圧力が2バールごとに段階的に増加するにつれて、傾斜が増しながら血管壁からモデル病変に向かって徐々に曲がる暗い等色線として主応力線78が観察される。主応力線78は、
図12に示されているように、劈開面67、68の方向と同じ方向を向いている。次に、応力集中部位、つまり応力変曲点がウエスト部44に制御可能に生成され、暗いコントラストと明るいコントラストの領域が交互に現れ、病変66を望みどおりに破砕する。提供された例では、圧力が増加すると、主応力線は、
図12の角度76、76’に対応する角度で血管壁から病変に向かって曲がる。したがって、拡張可能部材を1つ以上のウエスト部を介して少なくとも2つ以上の葉状部に分割することによる特定の技術的効果として、可変方向力が生成され、この力が葉状部、ウエスト部および病変の間で異なる加圧段階で伝達されると、可変方向力の方向に沿って劈開面が生成され、その結果、ウエスト部の周囲にある多くの場所で病変が制御可能に破砕される。
【0081】
図17A~17Dおよび
図18A~18Dは、それぞれ、本開示に従ってバルーンブロー法、およびバルーンブロー法と熱成形法によって製造された拡張可能部材の異なる加圧量から生じる病変部の応力分布を示す偏光顕微鏡画像である。
図17A~17Dでは、拡張可能部材は、単一段階のバルーンブロープロセスによって製造されている。
図17A~17Dの例のように、拡張可能部材が単一段階のバルーンブロー法によって製造される場合、第2の壁厚(62)は、例示的に約0.020~0.025mmの範囲であり、第3の壁厚(63)は、例示的に約0.025~0.050mmの範囲である。そこで、
図11Aを参照すると、拡張可能部材の第1の壁厚(61)は第2の壁厚(62)を超えており、第3の壁厚(63)は第2の壁厚(62)を超えている。これに対して、
図18A~18Dでは、拡張可能部材は第1段階のバルーンブロープロセスと第2段階の熱成形プロセスによって製造されている。そこで、
図11Bを参照すると、第1の壁厚(61)は第2の壁厚(62)を超えており、第2壁厚(62)は第3壁厚(63)を超えている。
【0082】
図17A~17Dおよび
図18A~18Dのそれぞれにおいて、拡張可能部材13は、少なくとも2つ以上の葉状部32、34と1つ以上のウエスト部分44と含む。提供された例では、拡張可能部材のウエスト(または下底)長さ37はそれぞれ1mmであり、公称圧力(16バール)での直径はそれぞれ3mmであるが、葉状部36、38の長さはそれぞれ20mmである。
図17A~17Dおよび
図18A~18Dのそれぞれにおいて、左から右に、拡張可能部材はモデル病変66と直接接触しており、圧力4バール(A)、6バール(B)、8バール(C)および12バール(D)の加圧状態に保持されている。各画像では、圧力が2バールごとに段階的に増加するにつれて、傾斜が増しながら血管壁からモデル病変に向かって徐々に曲がる暗い等色線または縞模様として主応力線78が観察される。
図17A~17Dと
図18A~18Dを直接比較するとわかるように、第1段階のバルーンブロープロセスと第2段階の熱成形プロセスによって製造された拡張可能部材の場合、同じ加圧量で追加の主応力線または縞模様が存在する (
図18D)。これは、加圧量が等しい場合、2つの異なる製造プロセスによって製造された拡張可能部材の応力分布プロファイルが異なり、さらに、第1の壁厚(61)が第2の壁厚(62)を超え、第2の壁厚(62)が第3の壁厚(63)を超える場合の応力負荷状態が、第1の壁厚(61)が第2の壁厚(62)を超え、第3の壁厚(63)が第2の壁厚(62)を超える場合の応力負荷状態よりも高いことを示している。これにより、治療対象領域65の一部66に伝達される可変方向力70、73の大きさが強化される。その結果、1つ以上のウエスト部44、45の壁厚63の変化により、可変方向力70、73の大きさおよび方向が変わり、病変破砕の深さ、方向、位置および数が確実に制御される。
【0083】
代替の実施形態では、
図11A~11Bを参照すると、拡張可能部材10の少なくとも2つの葉状部32、34の1つ以上のウエスト部44、45の1つ以上の第3の壁厚63が、第1の壁厚(61)および第2の壁厚(62)に対して変化し、その結果、組み合わせると、改善された軸方向安定性と、ウエスト部で生成される可変方向力の大きさの増加との好ましい組み合わせが得られることがさらに考えられる。例えば、遠位事前拡張部分および近位拡張部分を有する拡張可能部材13を含むバルーンカテーテル10は、2段階のバルーンブロープロセスおよび熱成形プロセスによって製造される遠位事前拡張部分と、1段階のバルーンブロープロセスによって製造される近位拡張部分とから構成され得る。これにより、遠位事前拡張部分は、遠位事前拡張部分の長さにわたってウエスト部における可変方向力の大きさの好ましい増加を示すことができ、近位拡張部分は、近位拡張部分の長さにわたって軸方向の安定性を向上させることができる。
【0084】
図19A~19Dは、本開示による拡張可能部材の等量の加圧におけるウエスト部長さの変化から生じる病変における応力分布を示す偏光顕微鏡画像である。
図19A~19Dにおいて、拡張可能部材13は、少なくとも2つ以上の葉状部32、34と1つ以上のウエスト部44を含む。提供された例では、拡張可能部材のウエスト部長さ37は、左から右に向かって、1mm(A)、2mm(B)、4mm(C)および6mm(D)と変化している。公称圧力(16バール)での直径はそれぞれ3mmであるが、葉状部32、34の長さ36、38はそれぞれ20mmである。
図19A~19Dのそれぞれにおいて、拡張可能部材はモデル病変66と直接接触し、圧力8バールの加圧状態に保たれている。
図19Aおよび19Bでは、拡張可能部材の隣接する葉状部32、34の間に、血管壁からモデル病変に向かって徐々に曲がる暗い等色線または縞として見える、重なり合っているか又は相互に関連している主応力線78が形成されている。
図19Cおよび19Dでは、このような主応力線78は存在しない。その結果、ウエスト部の長さL(37)が加圧状態での拡張可能部材の半径R(42)の2倍を超えない場合、主応力線は拡張可能部材の少なくとも2つ以上の隣接する葉状部32、34間で最適に重なり合ったり形成されたりするが、ウエスト部の長さが拡張可能部材の半径R(42)の2倍を超えると、このような協調的な相互作用は存在せず、またはより高い加圧状態でのみ存在し、したがってあまり望ましくない加圧状態となる。したがって、拡張可能部材13の少なくとも2つの葉状部32、34の1つ以上のウエスト部44、45の長さL(37)が加圧状態で半径R(42)の2倍以下である場合、応力変曲点が制御可能に導入され、その結果、圧力干渉および部分変曲が生じ、拡張可能部材の各ウエスト部44に病変の破砕67、68が優先的に形成され、それによって拡張可能部材のウエスト部周囲の病変破砕の効果が最大化される。
【0085】
本発明者らは、さらに、本開示による少なくとも2つ以上の葉状部および1つ以上のウエスト部を含む拡張可能部材は、従来の単一部材バルーンと比較して、拡張可能部材、病変および治療部位の周囲の領域の間で伝達され得る、少なくとも2つ以上の葉状部の展開中に生成されるねじり荷重量を分散し、それによってねじり荷重量を低減できることを見出した。さらに説明すると、
図20A~20Bは、従来の拡張可能部材(A)と、本開示による少なくとも2つ以上の葉状部を含む拡張可能部材(B)とによって治療領域に加えられるねじり荷重を示す。
図20A~20Bでは、部分的に折り畳まれてプリーツのある拡張可能部材13が、血管65に位置する病変66に接触している様子が示されている。
図20Aは従来の単一の拡張可能部材を示し、
図20Bは、本開示による遠位葉状部、中間葉状部、近位葉状部および2つのウエスト部を含む拡張可能部材を示す。いずれの場合も、バルーンの遠位端は寸法的に拘束され、部分的に拡張した状態で半径42に保持され、近位端は血管によって拘束されず、半径42’の拡張状態で保持される。さらに、長い破線で示されるプリーツライン85が遠位葉状部および近位葉状部上に示され、それぞれが拡張していない状態で開始位置79、81を持ち、拡張すると、展開角度83、84でそれぞれ回転する。
【0086】
しかしながら、2つの異なるタイプの拡張可能部材が拡張すると、
図20Aでは、従来の単一部材の血管形成バルーンの拡張により、バルーンの全長にわたって固定点79と82の間にねじり荷重が生じるのに対し、
図20Bでは、遠位葉状部が固定点79と80の間にねじり荷重を生じ、近位葉状部が固定点81と82との間にねじり荷重を生じる。その結果、
図20Bでは、本開示の拡張可能部材13の個々の葉状部36の長さが減少されるため、個々の葉状部のトルクも同じ程度に減少される。個々の葉状部の個々のトルクの合計は、バルーンの全長にわたって発生するトルクを超えることはできない。したがって、本開示による少なくとも2つ以上の葉状部と1つ以上のウエスト部を含む拡張可能部材は、拡張可能部材、病変および治療部位の周囲の領域の間で伝達される、少なくとも2つ以上の葉状部の展開中に発生するねじり荷重量を減少することができる。さらに、各葉状部によって発生するねじり荷重は、各ウエスト部で遮断される。その結果、本開示の拡張可能部材のねじり荷重の発生は、個々の葉状部に局在したままとなり、同じ長さおよび直径の単一部材バルーン構造が使用される場合のように、病変の全長にわたるねじり荷重によって発生する潜在的な損傷を減らすことができる。
【0087】
上記の説明に基づいて、本開示によるバルーンカテーテル10は、近位端19、遠位端12および少なくとも部分的に細長い部材を貫通する少なくとも1つのルーメン25、26を有する細長い部材15と、上記遠位端に隣接する細長い部材に固定されて少なくとも1つのルーメン26と流体連通する拡張可能部材13を有する。
拡張可能部材は半径R(42)を有し、少なくとも2つの葉状部32、34を含み、少なくとも2つの葉状部は1つ以上のウエスト部44、45によって互いに分離されている。
加圧されていない状態では、拡張可能部材13の少なくとも2つの葉状部32、34はそれぞれ折り畳まれてプリーツ状になっており、その後の拡張可能部材の加圧により、2つ以上の葉状部のそれぞれが個別に展開される。;
加圧された状態では、拡張可能部材を少なくとも2つ以上の葉状部に分割することで、次の効果が得られることが実証されている:
拡張可能部材と治療対象領域65、66の間で伝達されるねじり荷重79、82を分散し、それによってねじり荷重量を減少する。;
葉状部間(ウエスト部)で反対方向の軸方向力72、75を制御可能に伝達し、それによって拡張可能部材と治療対象領域の間で伝達される軸荷重量を減少する。;そして、
葉状部32、34間およびウエスト部44の周囲に、葉状部によって伝達される半径方向の力とは異なる大きさの等方向の半径方向の力71、74を制御可能に伝達し、それによってウエスト部44の周囲の血管壁65から半径方向の応力を遠ざける。
ウエスト部44の周囲の反対方向の軸方向力72、75と等方向の半径方向の力71、74の組み合わせによって、可変方向力70、73が生成され、この可変方向力が治療対象領域65の一部66に伝達されると、制御可能に応力変曲点が誘発され、圧力干渉および部分変曲が生じ、拡張可能部材の各ウエスト部44に病変の破砕67、68が優先的に形成される。
【0088】
上記において、拡張可能部材13の1つ以上のウエスト部44、45は、0~20mm、1~2mm、2~4mm、4~6mm、6~8mm、8~10mm、10~12mm、12~14mm、14~16mm、16~18mmおよび18~20mmを含む少なくとも1組の範囲から選択される1つ以上の長さL(37)を有する。好ましくは、拡張可能部材13の1つ以上のウエスト部44、45は、加圧状態での半径R(42)の2倍以下の長さL(37)を有し、これにより、制御可能な応力変曲点を誘発し、その結果、圧力干渉および部分変曲が生じ、拡張可能部材の各ウエスト部44に病変の破砕67、68が優先的に形成される。
【0089】
さらに、加圧され病変に接触した状態では、拡張可能部材の少なくとも2つの葉状部と治療対象領域65、66の間のウエスト部は、実質的に台形の形状の衝撃ゾーンを形成する。;
ここで、台形の形状は、以下を含む:
ウエスト部の長さに等しい第1の長さ37を有する上側ベース;
第1の長さより短い第2の長さ33を有する下側ベース;
上側ベースと下側ベースとの間の半径距離40に等しい第1の深さ;
下側ベースと膨張可能部材の回転軸との間の半径距離41に等しい第2の深さ;
2つの脚91、92は、(第1および第2の)長さ37、33と、下側ベースと上側ベースの間の半径距離40、41とによって定義される角度76で形成され、第1および第2の深さ40、41の合計は、拡張可能部材の半径42に等しく、第1の深さは、ウエスト部の深さに等しい。
【0090】
さらに、上記において、1つ以上のウエスト部44、45の第3の壁厚63の変化は、可変方向力70、73の大きさおよび方向を変化させ、その結果、病変破砕の深さ、方向、位置および数が確実に制御される。
【0091】
上記に関して、本開示のバルーンカテーテル10の拡張可能部材13の少なくとも2つの葉状部32、34のウエスト部44、45における第3の壁厚63は、第1および第2の壁厚に対して変化させることができ、その結果、軸方向安定性および可変方向力70、73の大きさおよび方向の少なくとも1つが確実に制御される。言い換えれば、本開示のバルーンカテーテル10の拡張可能部材13の少なくとも2つの葉状部32、34のウエスト部44、45の1つ以上の第3の壁厚63は、複数の異なる壁厚63から構成することができ、拡張可能部材の第1の壁厚61は第2の壁厚62を超え、第2の壁厚62は第3の壁厚63を超えるか、または拡張可能部材の第1の壁厚61は第2の壁厚62を超え、第3の壁厚63は第2の壁厚62を超える。
【0092】
血管形成カテーテルの静的モードおよび脈動モードの動作
現在のバルーンカテーテルの従来の動作モードには、標準的な拡張装置を使用してバルーンを拡張させることが含まれる。バルーンは、公称圧力と定格破裂圧力未満の間の圧力状態まで手動で拡張させ、静的(または一定)圧力で短時間保持し、その後収縮させて患者から引き抜く。現在の血管形成バルーンカテーテルシステムおよび利用可能な血管形成治療手順の制限を考慮すると、本開示の血管形成カテーテルは、好ましくは脈動および/又は変調圧力状態で動作することがさらに考えられる。脈動圧力変調は、使用中に拡張可能部材に動的圧力変調を重ね合わせることにより、治療領域内での破砕形成を強化および/又は促進することを意図している。脈動圧力変調は、拡張可能部材および病変に作用する振動モードをさらに生成することにより、さらなる利点をもたらすことができる。拡張可能部材の形状と、その下にある病変の形状に応じて、拡張可能部材と病変の両方に特定のモードを生成することができ、それによって膨張可能部材のウエスト部で可変方向力を制御された形で形成し、既知の血管形成カテーテルシステムおよび手順の制限や欠点なしに、複雑な病変に焦点を絞った圧力を伝達することができる。次に、
図21~22を参照して、静的モードおよび脈動モードの動作について説明する。
【0093】
さらに説明すると、
図21は、本開示に従って血管形成治療を行うための血管形成バルーンカテーテルおよび補助デバイスの斜視図である。
図21では、血管形成カテーテルシステム10が、マニホールド88、止血弁89、フラッシングポート86およびサポートカテーテルシャフト87を含むサポートカテーテル400に挿入されているのが示されている。サポートカテーテル400は、本開示のバルーンカテーテル10と併用して、輸送および操作中に血管が損傷する可能性を低減する外部管状シールドとして、追加の実質的な構造的ガイダンスおよびサポートを提供することができる。さらに、サポートカテーテルは、必要に応じて、バルーンカテーテル10の拡張可能部材13に長さ調整機能を提供することができる。血管形成カテーテルの拡張可能部材13は、サポートカテーテルシャフトの遠位端を超えて延び、ガイドワイヤ11上を経由し、ガイドワイヤ11は、血管形成カテーテルバルーン12の先端からガイドワイヤポート19まで延びている。拡張ポート18は、標準拡張装置200に操作可能に結合して手動制御で操作することができるが、好ましくは、上記のように、プログラム可能な脈動圧力変調を生成できる圧力発生器300に操作可能に結合することができる。したがって、脈動圧力変調に適した圧力発生器300は、拡張可能部材に操作可能に結合されているとき、位相、振幅、周波数、パルス、周期、圧力および圧力プロファイルの形状のうちの1つ以上を調整することができる。圧力発生器300は、拡張ポート18を介してバルーンカテーテル10の拡張可能部材13に作動可能に結合されているため、圧力発生器300は、カテーテルシャフト15内部にある拡張ルーメンを介して拡張可能部材13と直接流体連通している。好ましい実施形態では、圧力発生器300は、拡張可能部材13内の圧力状態を調節できる単一の装置である。あるいは、一実施形態では、バルーンカテーテル10は拡張装置200に作動可能に接続され、拡張装置は追加の圧力発生器300に結合され、圧力発生器300は、拡張装置によって生成された静圧状態などに、調節された脈動圧力プロファイルを重ね合わせる。他の可能な実施形態では、圧力発生器300は拡張装置に直接組み込まれる。それでもなお、圧力発生器は、例えば電気油圧式または超音波エミッターの形で拡張可能部材13に直接組み込むことができる。圧力発生器300は、拡張装置、機械式圧力変換器、油圧圧力変換器、電気油圧式圧力変換器、超音波送信機、結石破砕用エミッター、ポンプ、および/又はそれらから形成される適切な組み合わせからなる群から選択されることが好ましい。圧力発生器および/又はポンプには、回転ポンプ、ピストンポンプ、ギアポンプ、蠕動ポンプ、圧電駆動ポンプ、または一般に、本開示に従って脈動圧力変調が可能な任意の装置が含まれるが、これらに限定されない。
【0094】
上記をまとめると、本開示によるバルーンカテーテル10は、拡張可能部材に作動可能に結合されたとき、位相、振幅、周波数、パルス、周期、圧力および圧力プロファイルの形状のうちの1つ以上を調整する脈動圧力変調に適した圧力発生器300を含むことができる。上記において、圧力発生器300は、拡張装置、機械式圧力変換器、油圧圧力変換器、電気油圧式圧力変換器、超音波送信機、結石破砕エミッター、ポンプ、およびそれらから形成される組み合わせからなる群から選択される。さらに、圧力発生器300は、拡張装置に組み込まれて提供され得る。基礎となる開示で説明されているように、このようなバルーンカテーテル10は、複雑な病変の治療および臓壁内薬物送達におけるさらなる医療用途を目的としている。
【0095】
制御された経皮血管形成術(C-PTA)
動脈硬化性疾患のさまざまな症状を治療するために、過去数十年間にわたり、さまざまな種類の血管介入処置およびデバイスが開発されてきた。第1世代のバルーン血管形成術(普通のバルーン血管形成術またはPOBA)は、通常、6~8バールの圧力で数分間実施され、主にプラークの圧迫によって血管のルーメン径を拡大することで、狭窄した血管の再灌流を一時的に実現する。第2世代の血管形成術は、通常、約12~16バールのより高い圧力で、通常1分未満の非常に短い時間で実施され、主に病変を破砕し、続いて破砕した病変を圧迫および/又は移動させることで、狭窄した血管および複雑な病変の再灌流を促進する。第1世代および第2世代のバルーン血管形成術はどちらも急性の弾性反動、急激な血管閉塞および解離に悩まされる可能性があるが、第2世代の血管形成術では弾性反動はそれほど顕著ではなく、解離はより高い圧力をかけることでより顕著になる傾向がある。しかし、バルーン血管形成術は、約2~3%の患者で緊急バイパス手術を必要とする急激な血管閉塞、および30~50%の患者で再血行再建を必要とする再狭窄のため、依然として限界がある。カッティングバルーンやスコアリングバルーンなどの新しい次世代バルーンは、複雑な病変の治療における処置の有効性の改善に今のところ完全には成功しておらず、血管外傷を引き起こす可能性が本質的に高いことを考えると、従来のバルーン血管形成カテーテルの処置後の血管開存率を超える可能性は低い。本開示の発明者は、本開示の血管形成バルーンカテーテルと脈動圧力変調を実行できる補助デバイスとの組み合わせを利用して血管形成術を実行するための新規な手順アプローチを考案した。この組み合わせにより、本開示の血管形成カテーテルと併用して、治療手順のさまざまな段階にわたって最適化された脈動圧力プロファイルが適用される、制御された経皮経管血管形成術(略して、C-PTA)手順が実現される。
【0096】
さらに説明すると、
図22は、本開示に従って血管形成術を行う一連の様々なフェーズを示す。
図22において、500は、血管形成術の経過時間にわたって適用できる様々な圧力プロファイルを示す。図のY軸は、圧力をバール単位で表し、X軸は、処置時間を分単位で表す。短い一点鎖線で示される第1の圧力プロファイル106は、第1世代のPOBA血管形成術の圧力プロファイルを示しており、血管形成バルーンは、約0.5~1分かけて約8バールの圧力まで膨張し、治療する病変内に最大約3分間保持され、その後収縮して患者から取り出される。長い一点鎖線で示される第2の圧力プロファイル105は、第2世代の高圧血管形成術の典型的な進行を示しており、血管形成バルーンが約16バール以上の圧力まで拡張し、約0.5~1分間の比較的短い時間にわたって治療領域内に保持され、その後収縮して患者から取り出される。本開示による血管形成術の手順では、治療手順を複数のフェーズに分割し、各フェーズに合わせて調整された特定の圧力プロファイルまたはレジメンを提供する。フェーズは、図に文字A~Eで示され、X軸上で破線で区切られている。多段階血管形成術の手順は、コンディショニングフェーズ(A)、制御された病変破砕フェーズ(B)、可動化フェーズ(C)、病変モデリングフェーズ(D)およびオプションまたは補足的な薬剤送達フェーズ(E)を含む一連のフェーズで構成される。
【0097】
改良された血管形成術の各フェーズに適用可能な調整圧力プロファイルは、点線107で示され、例示的には以下のように実行される:
フェーズ(A):第1フェーズ、またはコンディショニングフェーズ100は、拡張可能部材の圧力を、例示的には1~3バールの増分、好ましくは約2バールの増分で、例示的には1~2分、好ましくは約1.5分の間にわたって段階的に上昇させ、例示的には2~4バール、好ましくは約4バールの第1圧力プラトーまで上昇させることで構成される。フェーズAは、バルーンをゆっくりと展開し、治療する対象領域の寸法まで非外傷的に拡張させ、バルーンを病変に当てはめ、血管壁の平滑筋細胞を引き伸ばし、病変/プラークを機械的に疲労させ、それによって病変をコンディショニングし、病変の拡張を開始することを意図している。拡張可能部材は、病変内でゆっくりと安定または固定され、高圧血管形成術で典型的に見られる破裂、解離または膨張の可能性に関して外傷性のない低圧状態(約2~4バール)まで拡張される。コンディショニングを実行する時間は、平滑筋細胞がバルーンによって加えられる張力に十分に適応し、プラークが低圧状態(約1~2分)で機械的に疲労するように選択される。
フェーズ(B): 第2フェーズ、または制御された病変破砕フェーズ101は、拡張可能部材の圧力を、第1圧力プラトー、例示的には、2-4バール、好ましくは約4バールから、第2圧力プラトー、例示的には、6-10バール、好ましくは約8バールまで、例示的には、1~2分、好ましくは約1.5分かけて、例示的には、1~3バールの増分、好ましくは約2バールの増分で段階的に上昇させることから構成される。フェーズBは、本開示の拡張可能部材を使用して、制御された病変の破砕を実行するためのものであり、病変に焦点を絞った圧力を加えると、好ましくは複数の場所で病変が制御可能に破砕される。拡張可能部材を少なくとも2つ以上の葉状部に分割すると、加圧状態の拡張可能部材のウエスト部における軸方向および半径方向の力成分の組み合わせ又は重なりから生じる圧力干渉が誘発される。その結果、応力変曲点が制御可能に形成され、病変の部分変曲を誘発し、圧力を方向性を持って病変に付加して病変を血管壁から離れるようにすることが可能となり、それによって、非外傷性で制御された連続的な病変の破砕が促進される。適用可能な圧力状態(約6~10バール)は、本開示の拡張可能部材の設計により、低くて、第1世代POBA血管形成カテーテルの非外傷性圧力状態と一致している。第1世代POBA血管形成カテーテルの圧力状態は、第2世代および高圧バルーン血管形成カテーテルよりも低いが、線維性プラークを圧縮して移動させるのに適しているほか、複雑な病変内の石灰化プラークを制御可能に破砕するのにも適している。適用される低圧状態の結果、より重度の解離のリスクが低減される。制御された病変の破砕を実行する時間(約1~2分)は、病変/プラークが低圧状態で適切に機械的疲労状態を維持し続けるように選択される。
フェーズ(C):第3フェーズ、または可動化フェーズ102は、第2圧力プラトー、例示的には、6~10バール、好ましくは、約8バールから、拡張可能部材の実質的に減圧された状態 (ただし、病変に対する内膜接触は失わずに、例示的には、0~2バール、好ましくは約0バール)まで圧力を急劇に下げ、約0バールと第3圧力プラトーのあいだで圧力を増減すること、例示的には、約0バールと、1~3バール、好ましくは約2バールの圧力を、約1~3分、好ましくは1.5分間にわたって、交互に繰り返すことからなる。フェーズCは、血管に弛緩と緊張を与えることで、治療領域および/又は病変血管部分への血流を可動化し、血管に蓄積されたストレスを軽減することを意図している。バルーンの振動運動は、低圧状態で血管壁内の実質的に休眠状態の平滑筋細胞を温める又は活性化する役割を果たし、それによって細胞への酸素供給を促進し、その後の血管の血行再建を促進する。可動化フェーズでは、次に続く病変モデリングフェーズ Dに向けて血管を準備する。
フェーズ(D): 第4フェーズ、または病変モデリングフェーズ103は、第3圧力プラトー、例示的には、1~3バール、好ましくは約2バールから第4圧力プラトー、例示的には、6~10バール、好ましくは約8バールまで圧力を上昇させ、その圧力プラトーを、例示的には、0.5~2分、好ましくは、1~1.5分間保持し、続いて圧力を第5圧力プラトー、例示的には、8~14バール、好ましくは、約10~12バールまで上昇させ、その圧力プラトーを、例示的には、0.5~2分、好ましくは、1~1.5分間保持し、続いて、例示的には、0.25~1分、好ましくは、約0.5分間かけて0バールの最終圧力までゆっくりと減圧することから構成される。フェーズDは、拡張可能部材の公称直径で血管の3次元再モデリングを完了することを目的としている。病変内に設置された拡張可能部材は、バルーンの追随特性を使用して、公称圧力で公称直径まで拡張し、血管の形状を最終決定する。モデリングを実行する時間(約1~2分以上)は、平滑筋細胞を含む血管壁が拡張可能部材の公称直径に適切に適応できるように選択される。これにより、平滑筋細胞を含む血管壁と血管直径が安定し、モデリングフェーズ後の血管の反動が軽減される。
フェーズ(E)薬剤送達フェーズ104は、一連のフェーズA~Dの完了前、完了中、または完了後に、例えば、本開示の
図7に記載されている拡張可能部材を使用して実行されるオプションまたは補足的なフェーズである。フェーズEは、治癒を早め、炎症を防ぎ、病変血管部分の再狭窄を抑制するなど、他の可能性のある症状に役立つ治療薬を投与することにより、血管形成術の臨床的長期有効性をさらに向上させることを意図している。上記のマルチフェーズ血管形成術手順は、第1世代および第2世代の血管形成術手順の特定の欠点を伴わずに、第1世代および第2世代の血管形成術手順の利点を有利に組み合わせ、それによって、高品質で制御された経皮経管血管形成術(C-PTA)を可能にする。
【0098】
上記の血管形成術における圧力上昇、圧力維持、圧力低下の具体的な圧力条件、ならびに圧力上昇、圧力維持、圧力低下の具体的な時間は、例示的なものであり、限定するものではない。圧力条件および時間は、血管の解剖学的構造、デバイスおよび病変の長さおよび直径など、追加の手順的要因および臨床的症状に応じて変化してもよい。
【0099】
基礎となる開示に従ってバルーンカテーテル10で血管病変を治療するための上記方法を要約すると、この方法は、以下の一連のフェーズを含む:
第1フェーズ、またはコンディショニングフェーズ100を実行する。
第2フェーズ、または制御された病変破砕フェーズ101を実行する。
第3フェーズ、または可動化フェーズ102を実行する。
第4フェーズ、または病変モデリングフェーズ103を実行する。
【0100】
代替的にまたは補足的に、上記の方法において、一連のフェーズには、以下のフェーズがさらに含まれる:
1つ以上の薬剤送達フェーズ104を実行する。
【0101】
上記に関して、
第1フェーズ、またはコンディショニングフェーズ100は、拡張可能部材の圧力を1.5分間にわたって2バールずつ増加させて、約4バールの第1圧力プラトーまで上昇させることからなる。
第2フェーズ、または制御された病変破砕フェーズ101は、約4バールの第1圧力プラトーから約8バール第2圧力プラトーまで、1.5分間にわたって2バールずつ圧力を上昇させることからなる。
第3フェーズ、または可動化フェーズ102は、約8バールの第2圧力プラトーから約0バールまで圧力を急劇に下げ、約1.5分間にわたって0バールと約2バールの第3圧力プラトーの間で交互に圧力を増減することからなる。
第4フェーズ、または病変モデリングフェーズ103は、約2バールの第3圧力プラトーから約8バールの第4圧力プラトーまで圧力を上昇させ、その圧力プラトーを1分から1.5分間保持し、続いてその圧力を10バールから12バールの第5圧力プラトーまで上昇させ、その圧力プラトーを1分から1.5分間保持し、続いて約0.5分間にわたって0バールの最終圧力までゆっくりと減圧することからなる。
【0102】
一連のフェーズのうちのオプションまたは補足的なフェーズに関して、薬剤送達フェーズ104は、以下のフェーズからなる:
拡張可能部材の少なくとも2つの葉状部を部分的に拡張させて、治療対象領域への血流を遮断する。;
灌流ポートから薬剤灌流ルーメン51および薬剤放出開口部50を横切って、治療対象領域 (65、66)にあるウエスト領域77に治療薬を投与する。;
治療時間を維持する。;
残留治療薬を薬剤灌流ルーメン51に回収する。
拡張可能部材13の少なくとも2つの葉状部32、34を収縮させて、対象治療領域への血流を回復させる。
【0103】
上記のいずれにおいても、一連のフェーズには、静的および脈動圧力調整を適用した圧力レジメンまたはプロファイル107を含めることができる。さらに、脈動圧力調整は、1つ以上のフェーズで実行することができる。
【0104】
上記の説明は、説明の目的で、本発明を完全に理解できるように特定の名称を参照している。しかし、当業者には、本発明を実施するために特定の詳細が必要ではないことは明らかである。本発明の特定の実施形態に関する上記の説明は、例示および説明の目的で提示されている。それらは完璧であること、または本発明を開示された正確な形態に限定することを意図したものではない。確かに、上記の教示を考慮すると、多くの修正および変更が可能である。実施形態は、本発明の原理および実際の用途を最もよく説明するために示され、説明されており、それによって、当業者が、想定される特定の用途に適したさまざまな修正を加えた本発明およびさまざまな実施形態を最もよく利用できるようにしている。本発明の範囲は、以下の請求項およびそれらの同等物によって定義されることが意図されている。
【国際調査報告】