(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-17
(54)【発明の名称】活電極物質
(51)【国際特許分類】
H01M 4/485 20100101AFI20250109BHJP
H01M 4/131 20100101ALI20250109BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20250109BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20250109BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20250109BHJP
H01M 4/1391 20100101ALI20250109BHJP
H01M 10/0525 20100101ALI20250109BHJP
C01G 33/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H01M4/485
H01M4/131
H01M4/36 E
H01M4/587
H01M4/38 Z
H01M4/36 C
H01M4/1391
H01M10/0525
C01G33/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024540572
(86)(22)【出願日】2023-05-05
(85)【翻訳文提出日】2024-07-03
(86)【国際出願番号】 GB2023051198
(87)【国際公開番号】W WO2023214181
(87)【国際公開日】2023-11-09
(32)【優先日】2022-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522145144
【氏名又は名称】エチオン テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】マーティン,ダニエル・ジギー・チャドニー
(72)【発明者】
【氏名】ルイス,ジョシュア・リス
(72)【発明者】
【氏名】グルームブリッジ,アレクサンダー・サイモン
【テーマコード(参考)】
4G048
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA03
4G048AB01
4G048AC06
4G048AD04
4G048AD06
4G048AE05
5H029AJ02
5H029AK11
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029HJ01
5H029HJ02
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5H050AA02
5H050BA17
5H050CA17
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050EA08
5H050FA18
5H050GA22
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA13
5H050HA19
(57)【要約】
本発明は、例えばリチウムイオン電池またはナトリウムイオン電池において活電極物質として使用するための混合相酸化物に関する。この混合相酸化物は、Nb及びTiを含み、さらにM(III)及び/またはM(II)を含み、M(III)が、Cr、Al、Ga、及びこれらの混合物から選択され、M(II)が、Zn、Cu、Mg、及びこれらの混合物から選択され、混合相酸化物が、第1の相と第2の相との相互浸透混合物を含み、第1の相は、TiNb
2O
7の結晶構造を有し、第2の相は、Zn
2Nb
34O
87の結晶構造を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活電極物質として使用するための混合相酸化物であって、
前記混合相酸化物が、Nb及びTiを含み、さらに、M(III)及び/またはM(II)を含み、
M(III)は、Cr、Al、Ga、及びそれらの混合物から選択され、
M(II)はZn、Cu、Mg、及びそれらの混合物から選択され、
前記混合相酸化物が、第1の相と第2の相との相互浸透混合物を含み、
前記第1の相は、TiNb
2O
7の結晶構造を有し、前記第2の相は、Zn
2Nb
34O
87の結晶構造を有する、前記混合相酸化物。
【請求項2】
前記混合相酸化物のXRDパターンが、2θ=26.0±0.1°で前記第1の相に帰属するピークAを示す、請求項1に記載の混合相酸化物。
【請求項3】
前記混合相酸化物のXRDパターンが、2θ=24.9±0.1°で前記第2の相に帰属するピークBを示す、いずれかの先行請求項に記載の混合相酸化物。
【請求項4】
前記ピークBの強度I
Bの前記ピークAの強度I
Aに対する比率が、0<I
B/I
A≦0.4、または0.01≦I
B/I
A≦0.25、または0.05≦I
B/I
A≦0.22、または0.07≦I
B/I
A≦0.16である、請求項2及び3に記載の混合相酸化物。
【請求項5】
前記第1の相と前記第2の相との重量比が、199:1~1:1、または99:1~3:1、または50:1~8:1である、いずれかの先行請求項に記載の混合相酸化物。
【請求項6】
前記第1の相が、前記混合相酸化物の少なくとも85重量%、または少なくとも90重量%、または少なくとも92重量%を形成する、いずれかの先行請求項に記載の混合相酸化物。
【請求項7】
前記第1の相及び前記第2の相は、前記混合相酸化物の少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、または少なくとも95重量%を形成する、いずれかの先行請求項に記載の混合相酸化物。
【請求項8】
すべての陽イオンに対して、66~80at%のNbと、33~17at%のTiとを含み、さらに、>0~1at%のM(III)及び/または>0~2at%のM(II)を含む、いずれかの先行請求項に記載の混合相酸化物。
【請求項9】
M(III)とM(II)との前記組み合わせの量が、前記Nbの量に対して、≧0.05at%、または、≧0.5at%、または、≧0.6at%である、いずれかの先行請求項に記載の混合相酸化物。
【請求項10】
Ti:Nbの原子の比が、少なくとも0.3:1、または少なくとも0.4:1、または0.42:1~0.5:1である、いずれかの先行請求項に記載の混合相酸化物。
【請求項11】
M(III)を含むか、またはM(III)及びM(II)を含む、いずれかの先行請求項に記載の混合相酸化物。
【請求項12】
M(III)が、Cr、Al、及びそれらの混合物であり、M(II)がZnである、いずれかの先行請求項に記載の混合相酸化物。
【請求項13】
M(III)が、Cr、Al、及びそれらの混合物であるか、M(III)がCrである、いずれかの先行請求項に記載の混合相酸化物。
【請求項14】
M(II)が、Zn、Cu、及びそれらの混合物であるか、M(II)がZnである、いずれかの先行請求項に記載の混合相酸化物。
【請求項15】
M(III)及びM(II)を含み、M(III)がCrであり、M(II)がZnである、いずれかの先行請求項に記載の混合相酸化物。
【請求項16】
前記混合相酸化物が粒子形態であり、任意選択で前記混合相酸化物が0.1~100μm、または0.5~50μm、または1~20μmの範囲のD
50の粒径を有する、いずれかの先行請求項に記載の混合相酸化物。
【請求項17】
前記混合相酸化物は、0.1~100m
2/g、または0.25~50m
2/g、または0.5~20m
2/gの範囲のBET表面積である、いずれかの先行請求項に記載の混合相酸化物。
【請求項18】
前記混合相酸化物が、180nmを超える、または200nmを超える、または225nmを超える、または250nmを超える結晶子径を有する、いずれかの先行請求項に記載の混合相酸化物。
【請求項19】
少なくとも1つの追加の元素をさらに含み、任意選択で、前記追加の元素は、
(i)Zr、Hf、V、Fe、Ta、Mo、W、Mn、Co、Ni、Cd、B、Si、Sn、P、及びそれらの混合物、または
(ii)Zr、V、Fe、Mo、W、Mn、Co、Ni、Cd、B、Si、P、及びそれらの混合物、または
(iii)Zr、V、Fe、Mo、W、P、及びそれらの混合物から選択される、いずれかの先行請求項に記載の混合相酸化物。
【請求項20】
前記少なくとも1つの追加の元素が、前記Nbの量に対して、≦5at%、または≦1at%、または≦0.5at%の総量で存在する、請求項19に記載の混合相酸化物。
【請求項21】
(i)F、Cl、Br、I、N、S、Se及びそれらの混合物、または
(ii)F、Cl、N、S、及びそれらの混合物、または
(ii)F、N、及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの電気陰性元素をさらに含む、いずれかの先行請求項に記載の混合相酸化物。
【請求項22】
前記少なくとも1つの電気陰性元素が、前記Oの量に対して、≦5at%または≦1at%の総量で存在する、請求項21に記載の混合相酸化物。
【請求項23】
前記第1の相及び前記第2の相の前記相互浸透混合物が、コア/シェル構造を形成しない、いずれかの先行請求項に記載の混合相酸化物。
【請求項24】
前記混合相酸化物が、炭素で被覆されている、いずれかの先行請求項に記載の混合相酸化物。
【請求項25】
請求項1~24のいずれかに記載の混合相酸化物、及び少なくとも1つの他の成分を含み、任意選択で、前記少なくとも1つの他の成分が、結合剤、溶媒、導電性添加剤、異なる活電極物質、及びそれらの混合物から選択される、組成物。
【請求項26】
請求項1~24のいずれかに記載の混合相酸化物を活電極物質として含む電極。
【請求項27】
前記混合相酸化物が、前記電極の前記総合的な活電極物質の少なくとも25重量%、少なくとも50重量%、または少なくとも75重量%を形成するか、または前記混合相酸化物が前記電極の前記唯一の活電極物質である、請求項26に記載の電極。
【請求項28】
結合剤、導電性添加剤、異なる活電極物質、及びそれらの混合物から選択される、少なくとも1つの他の成分をさらに含む、請求項26または請求項27に記載の電極。
【請求項29】
前記異なる活電極物質が、リチウムチタン酸化物、チタンニオブ酸化物、異なる混合相酸化物、グラファイト、ハードカーボン、ソフトカーボン、シリコン、それらのドープ及び/またはカーボンコーティングバージョン、及びそれらの混合物から選択される、請求項28に記載の電極。
【請求項30】
任意選択で、金属イオン電池がリチウムイオン電池であり、前記電極がアノードを形成する、請求項26~29のいずれかに記載の電極を含む金属イオン電池。
【請求項31】
23mA/gで230mAh/gより大きい可逆的アノード活物質比容量を有するリチウムイオン電池であり、23mA/gで初期のセル容量の70%超を保持しながら、前記電池は、230mA/g以上、または1000mA/g以上、または2000mA/g以上、または4000mA/g以上の前記アノード活物質に対する電流密度で充電及び放電することができる、請求項30に記載の金属イオン電池。
【請求項32】
混合相酸化物の使用であって、前記混合相酸化物は、金属イオン電池における活電極物質として請求項1~24のいずれかに記載の通りであり、任意選択でリチウムイオン電池のアノードにおけるものである、前記使用。
【請求項33】
電極の製造方法であって、
請求項1~24のいずれかに記載の混合相酸化物を得ること、及び
前記混合相酸化物を集電体上に堆積させて前記電極を形成すること、を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活電極物質、活電極物質の製造方法、及び活電極物質を含む電極に関する。
このような物質は、例えば、アノードの物質として、金属イオン電池、例えばリチウムイオン電池またはナトリウムイオン電池の活電極物質としての関心物質である。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン(Liイオン)電池は、一般的に使われている充電式電池の一種であり、世界市場は2030年には2000億ドルに成長すると予測されている。Liイオン電池は、技術的能力から環境への影響まで複数の要求がある電気自動車に最適な技術であり、環境に優しい自動車産業への実現可能な道程を授ける。
【0003】
典型的なリチウムイオン電池は、直列または並列に接続された複数のセルで構成されている。個々のセルは、通常、アノード(負極性電極)とカソード(正極性電極)とで構成されており、多孔質の電気絶縁膜(セパレータと呼ばれる)で分離され、リチウムイオンの輸送を可能にする液体(電解液と呼ばれる)に浸されている。
【0004】
ほとんどのシステムでは、電極は、活電極物質で構成されており、このことはリチウムイオンと化学的に反応して、それらを制御された状態で可逆的に吸蔵及び放出できることを意味し、これは必要に応じて導電性添加剤(炭素など)及び高分子結合剤と混合される。これらの成分のスラリーが集電体(一般的には銅またはアルミニウムの薄箔)に薄膜としてコーティングされ、そのため乾燥時に電極を形成する。
【0005】
既知のLiイオン電池技術においては、黒鉛アノードは電池充電時の安全性の限界があり、高出力の電子機器、自動車及び産業への応用の大きな障害となっている。最近提案された様々な有望な代替物の中で、チタン酸リチウム(LTO)及びニオブ混合酸化物が、黒鉛に代わる、高出力で早い充電の用途に最適な活物質として有力な候補である。
【0006】
黒鉛アノードに依存する電池は、根本的に充電レートの点で制限される。公称条件下では、充電時にリチウムイオンがアノード活物質に挿入される。充電レートが高くなると、一般的な黒鉛の電圧プロファイルは、過電圧によりアノードの部位の電位がLi/Li+に対して0Vよりも低くなる危険性が高いものになり、リチウムイオンが代わりにリチウム金属として黒鉛電極の表面に析出するリチウムデンドライト電気メッキと呼ばれる現象を引き起こす。この結果、活性リチウムが不可逆的に失われ、したがってセルの容量が急速に低下する。場合によって、これらの樹枝状の析出物は非常に大きなサイズに成長するので、電池のセパレータを貫通してしまい、セルの短絡につながる可能性がある。これが引金となり、セルが突発的に故障し、出火または破裂が生じることもある。そのため、黒鉛アノードを有する最も速く充電が可能な電池では、充電レートが5~7Cに制限されているが、たいていはそれよりも大幅に低くされている。
【0007】
チタン酸リチウム(LTO)アノードは、高電位(Li/Li+に対して1.6V)のために高充電レートでのデンドライト電気メッキの影響を受けず、3D結晶構造に対応しているためリチウムイオンのインターカレーション時に活物質の大幅な体積膨張の影響を受けないので優れたサイクル寿命を有する。これら2つの理由から、LTOセルは一般に安全性の高いセルと見なされている。しかし、LTOは比較的劣った電子伝導体及びイオン伝導体であるため、物質をナノ化して比表面積を大きくし、炭素被覆して電子的伝導率を高めない限り、高レートでの容量維持率及び得られる電力の能力に限界がある。この粒子レベルの材料工学により、活物質の多孔性と比表面積が増加し、電極で達成可能な充填密度が大幅に低下する。このことは、電極の密度が低くなり、電気化学的に不活性な物質(例えば結合剤、炭素添加剤)の割合が高くなり、重量エネルギー密度と体積エネルギー密度の大幅な低下に至るためである。
【0008】
アノードの能力の重要な指標は、電極の体積比容量(mAh/cm3)、つまり、アノードの単位体積あたりに蓄積できる電荷(つまりリチウムイオン)の量である。この量は、カソード及び適切なセル設計パラメータと組み合わせたとき、体積ベースでの電池全体のエネルギー密度(Wh/L)を決定する重要な要素である。電極の体積比容量は、電極密度(g/cm3)、活物質の比容量(mAh/g)、及び電極内の活物質の割合の積として概算できる。LTOアノードは通常、比容量が比較的小さく(約165mAh/gであり、黒鉛の約330mAh/gと比較)、これが上記の小さい電極密度(通常2.0g/cm3未満)及び活物質の小さい割合(90%未満)と相まって、体積比容量が非常に小さくなり(300mAh/cm3未満)、したがって電池エネルギー密度も小さくなり、様々な用途においてkWhあたりの$金額コストが高くなる。結果的として、LTO電池/セルは、長いサイクル寿命、急速充電性能、及び高い安全性にもかかわらず、ニッチな特定の用途に一般に限定されている。
【0009】
チタンニオブ酸化物は、活電極物質としての使用が提案されている。US2012/0052401A1は、一般式LixM1-yNbyNb2O7の酸化物を開示しており、式中、0≦x≦3、0≦y≦1であり、MはTiまたはZrを表す。US2015/0086872A1は、特定の形態の炭素被覆を有するTiNb2O7を基にする酸化物を開示する。US2019/0296343A1及びUS2014/0120404A1は、TiNb2O7相と、Ti2Nb10O29、Nb14TiO37、TiNb24O64、及び/またはTiO2相との混合物を開示する。US2021/0376307A1は、Tiに対するNbのモル比率が>2であり、100~2,000ppmのK、Fe、及び/またはPを含むNb-Ti酸化物を開示している。EP3667805A1は、Zn、In、Sn、Pb、Hg、Cu、Cd、Ag、及び/またはBiを含む被覆層を有するTi含有酸化物を開示している。US2015/0125753A1は、表面にP化合物を有するNb複合酸化物を開示している。
【0010】
しかし、特に高出力/急速充電用途向けのLiイオンセルでの使用に際して良好な特性を備えた、さらなる活電極物質を特定する必要性が依然としてある。例えば、大規模な粒子レベルの工学を必要とせず、及び/またはコーティングも必要としない、これらの物質を特定することは、マスマーケットでの採用に向けた低コストの電池物質への重要なステップである。
【発明の概要】
【0011】
第1の態様では、本発明は、活電極物質として使用するための混合相酸化物を提供し、
混合相酸化物が、Nb及びTiを含み、さらに、M(III)及び/またはM(II)を含み、
M(III)は、Cr、Al、Ga、及びそれらの混合物から選択され、
M(II)はZn、Cu、Mg、及びそれらの混合物から選択され、
混合相酸化物が、第1の相と第2の相との相互浸透混合物を含み、
第1の相は、TiNb2O7の結晶構造を有し、第2の相は、Zn2Nb34O87の結晶構造を有する。
【0012】
本発明者らは、第1の態様による混合相酸化物が、本実施例によって示されるように、例えば5C及び10Cの高レートで高容量を維持するなど、高速充電/放電のために設計された高出力電池での使用に優れた特性を有することを発見した。
【0013】
第2の態様では、本発明は、活電極物質として第1の態様の混合相酸化物を含む電極を提供する。
【0014】
第3の態様では、本発明は、第2の態様の電極を含む金属イオン電池を提供する。任意選択で、金属イオン電池はリチウムイオン電池またはナトリウムイオン電池であり、好ましくはリチウムイオン電池である。好ましくは、電極は、金属イオン電池のアノードを形成する。
【0015】
第4の態様において、本発明は、第1の態様で定義した混合相酸化物の金属イオン電池、任意選択でアノードでの活電極物質としての使用を提供する。任意選択で、金属イオン電池はリチウムイオン電池またはナトリウムイオン電池であり、好ましくはリチウムイオン電池である。
【0016】
第5の態様において、本発明は、第1の態様において定義された混合相酸化物を得ること、及び混合相酸化物を集電体上に堆積させて、それによって電極を形成することを含む、電極の製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【発明を実施するための形態】
【0018】
混合相酸化物は、Nb、Ti、M(III)、及びM(II)を含む。Nb及び少なくとも1つの他の陽イオンを含む酸化物は、リチウムに対する高い酸化還元電圧が0.8Vを超え得るため、安全で長い寿命の動作が可能になり、バッテリーセルの急速充電に不可欠となる。さらに、Nb陽イオンは原子あたり2つの酸化還元反応を起こすことができ、LTOなどよりも高い理論容量になる。
【0019】
混合相酸化物は、第1の相と第2の相の相互浸透混合物を含む。相互浸透混合物は、混合相酸化物を破壊することなく第1及び第2の相を分離することができないものである。
【0020】
第1の相は、TiNb2O7の結晶構造を有し、第2の相はZn2Nb34O87の結晶構造を有する。これらの相の相互浸透混合物は、M(III)及び/またはM(II)の存在と相まって、結晶構造を定義する2つの「ベース」酸化物のそれぞれ(すなわち、TiNb2O7及び純粋なZn2Nb34O87)が、元素を置換することによって同時に改質され、例えば、第1の相は、Ti及びNbに加えてM(III)及び/またはM(II)を含有し、第2の相は、M(II)及びNbに加えて、M(III)及び/またはTiを含有すると考えられている。本発明者らは、この同時置換アプローチが、2相の相互浸透混合物と組み合わせると、第1及び第2の相を別々に比較して、相乗的な利点を提供する「ベース」酸化物の各々の特性を改善することを見出した。例えば、本発明の混合相酸化物は、5C以上の高レートで驚くほど改善された性能を提供する。さらに、M(II)陽イオン及び/またはM(III)陽イオンを添加すると、系のエントロピーが増加し、所望の結晶構造の形成が促進される。
【0021】
第1の相は、TiNb2O7の結晶構造を有し、これは、Wadsley-Roth結晶構造として知られるクラスのReO3由来のMO3-x結晶構造を有すると見なすことができる。Wadsley-Roth結晶構造は、結晶学的せん断を含むMO3(ReO3)結晶構造の結晶学的オフストイキオメトリであると考えられており、MO3-xの簡略化された式がある。結果として、これらの構造には通常、結晶構造に[MO6]の八面体サブユニットが含まれる。これらの構造を有する相は、例えばリチウムイオン電池において活電極物質として使用するのに有利な特性を有すると考えられている。
【0022】
開いたトンネル様のMO3結晶構造により、高容量のLiイオン貯蔵と高い比率のインターカレーション/デインターカレーションの理想的な候補が得られる。結晶構造に存在する結晶学的オフストイキオメトリは、Wadsley-Rothの結晶学的超構造を引き起こす。これらの超構造は、ヤーン・テラー効果や、複数の混合陽イオンを利用することによりいっそう結晶学的に無秩序になることなどの他の特性によって複合され、結晶を安定させ、インターカレーション中にトンネルを開いて安定性を保ち、高いリチウム拡散レート(約10-13cm2s-1と報告)による非常に高いレートの能力を可能にする。
【0023】
TiNb2O7の結晶構造は、[MO6]八面体で構成される3x3x∞の結晶学的ブロック構造を有すると説明でき、式中MはTiまたはNbである。結晶構造は一般的に単斜晶系である。TiNb2O7の結晶構造は、PDFカード00-039-1407で見出すことができる。単位格子パラメータa、b、及びcは、aが17.66~17.74Å、好ましくは17.68~17.72Åであり、bが3.77~3.84Å、好ましくは3.79~3.82Åであり、cが11.86~11.94Å、好ましくは11.88~11.92Åであり得る。第1の相の結晶構造は、単位格子パラメータαとγを有し、それぞれ約90°、好ましくはα=γ=90°、βは、95.30~95.37°、好ましくは95.32~95.36°であり得る。
【0024】
理論に拘束されることを望まないが、本発明者らは、Wadsley-Roth結晶構造に、より大きな陽イオン、例えばZn2+を追加すると、構造の格子パラメータを変化させ、それによって、リチウムイオンのより良好な拡散を可能にし得ると考える。さらに、そのような非レドックス活性陽イオンのドープは、充電及び放電の際に八面体が傾斜するのを回避し、構造的安定性を付与し得る。
【0025】
第2の相は、Zn2Nb34O87の結晶構造を有し、これはまた、ReO3由来のMO3-xWadsley-Roth結晶構造を有すると見なされ得る。Zn2Nb34O87の結晶構造は、[MO6]八面体で構成される3x4x∞の結晶学的ブロック構造を有すると説明でき、式中MはZn、またはNbである。M(II)が存在しない場合、結晶構造Zn2Nb34O87は、Zn部位を採用したM(III)またはTiで実現される。ブロックサイズが大きいことは、八面体ブロックサイズがより小さい他のWadsley-Roth構造に比べて、速いリチウムの挿入及び除去について有利であり、八面体ブロックサイズが大きいものよりも安定性が高くなる可能性があると考えられている。Znの八面体は、構造内にランダムに分布している場合もあれば、ブロックのエッジまたはコーナーなどの特定の場所を好む場合もある。これは、ブロックごとに1つのZn陽イオンの2/3に等しい。
【0026】
第2の相の結晶構造は、単斜晶系または直方晶系であり得、または単斜晶系と直方晶系との混合物と見なされ得る。単斜晶系Zn2Nb34O87の結晶構造は、ICDD結晶学データベースエントリPDFカード00-013-0317で見出すことができる。直方晶Zn2Nb34O87の結晶構造は、PDFカード04-021-7859で見出すことができる。
【0027】
単斜晶構造に精密化される場合、単位格子パラメータa、b、及びcは、aが15.52~15.58Å、好ましくは15.53~15.57Å、bが3.79~3.84Å、好ましくは3.80~3.83Å、であり得、cが20.53~20.66Åであり、好ましくは20.54~20.65Åであり、単位格子パラメータα及びγはそれぞれ約90°であり、好ましくは、α=γ=90°であり、βは、113.00~113.75°、好ましくは113.06~113.69°であり得る。
【0028】
相の結晶構造は、広く知られているように、Cu K-α線を用いて得られたX線回折(XRD)のパターンの分析によって決定することができる。例えば、特定の物質から得られたXRDのパターンを既知のXRDのパターンと比較して、例えばICDD結晶学データベースなどの公開データベースを介して結晶構造を確認できる。Rietveld解析及びPawley解析は、物質の結晶構造、特に単位格子パラメータを決定するためにも使用できる。したがって、第1の相及び第2の相の結晶構造は、XRDによって決定され得る。
【0029】
混合相酸化物のXRDパターンは、好ましくは、2θ=26.0±0.1°で第1の相に帰属するピークAを示す。混合相酸化物のXRDパターンは、好ましくは、2θ=24.9±0.1°で第2の相に帰属するピークBを示す。ピークAの強度IAに対するピークBの強度IBの比率は、0<IB/IA≦0.4、または0.01≦IB/IA≦0.25、または好ましくは、0.05≦IB/IA≦0.22であり得る。特定の例において、比率は、0.07≦IB/IA≦0.16である。ピーク強度比率は、ピークA及びBの正規化された高さを使用して簡便に計算され得る。
【0030】
第1の相と第2の相との重量比は、199:1~1:1、または99:1~3:1、または50:1~8:1であり得る。混合相酸化物中の相の重量比は、混合相酸化物のXRDパターンの精密化によって決定され得る。標的重量比は、合成で使用される相対的な量の元素前駆体を制御することによって得ることができる。
【0031】
他の相が混合相酸化物に存在する場合がある。例えば、第1の相及び第2の相は、混合相酸化物の少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、または少なくとも95重量%を形成し得る。第1の相及び第2の相は、例えば1重量%未満の他の相と、実質的にすべての混合相酸化物を形成し得る。好ましくは、第1の相は、混合相酸化物の少なくとも85重量%、または少なくとも90重量%、または少なくとも92重量%を形成する。
【0032】
Nbは、好ましくは、混合相酸化物中に存在する主要な陽イオンである。例えば、混合相酸化物は、全陽イオンに対して66~80at%、または66.5~75at%、または66.9~69.9at%のNbを含み得る。
【0033】
混合相酸化物は、すべての陽イオンに対して33~17at%、または33.1~24at%、または33.2~30at%のTiを含み得る。
【0034】
混合相酸化物は、全陽イオンに対して>0~1at%、または0.01~0.4at%、または0.01~0.2at%のM(III)を含み得る。
【0035】
混合相酸化物は、全陽イオンに対して>0~2at%、または0.01~1at%、または0.02~0.5at%のM(II)を含み得る。
【0036】
M(III)とM(II)とを合わせた量は、Nbの量と比較して、≧0.05at%、≧0.5at%、または≧0.6at%であってもよい。
【0037】
Ti:Nbの原子の比は、少なくとも0.3:1、または少なくとも0.4:1、または0.42:1~0.5:1であってよい。
【0038】
Nb、Ti、M(III)、及び/またはM(II)の量を組み合わせて、混合相酸化物をさらに規定できることが理解されよう。
【0039】
M(III)は、通常、酸化物において3+の酸化状態をとる陽イオンを表す。M(III)が、Cr、Al、Ga、及びこれらの混合物、またはCr、Al、及びこれらの混合物から選択される。好ましくは、M(III)はCrである。
【0040】
M(II)は、通常、酸化物において2+の酸化状態をとる陽イオンを表す。M(II)は、Zn、Cu、Mg、及びこれらの混合物、またはZn、Cu、及びこれらの混合物から選択される。好ましくは、M(II)はZnである。
【0041】
好ましくは、混合相酸化物は、特にM(III)がCrでM(II)がZnである場合に、M(III)を含み、最も好ましくは、M(III)及びM(II)を含む。
【0042】
混合相酸化物は、任意選択で、少なくとも1つの追加の元素をさらに含み得る。任意選択で、追加の元素が、Zr、Hf、V、Fe、Ta、Mo、W、Mn、Co、Ni、Cd、B、Si、Sn、P、及びそれらの混合物、またはZr、V、Fe、Mo、W、Mn、Co、Ni、Cd、B、Si、P、及びこれらの混合物、または好ましくは、Zr、V、Fe、Mo、W、Cu、P、及びこれらの混合物から選択される。少なくとも1つの追加の元素は、全陽イオンに対して1.5at%以下、または0.01~1.0at%の量で存在し得る。少なくとも1つの追加の元素は、Nbの量に対して、≦5at%、または≦1at%、または0.01~0.5at%の総量で存在し得る。
【0043】
M(III)及び/またはM(II)が好ましい元素に限定される場合、任意選択の追加の元素は、代替的なM(III)及び/またはM(II)元素を含み得る。例えば、M(III)がCrであり、M(II)がZnである場合、少なくとも1つの追加の元素は、Al、Ga、Cu、Mg、及びこれらの混合物からさらに選択され得る。
【0044】
あるいは、混合相酸化物の陽イオンは、Nb、Ti、M(III)、及び/またはM(II)からなり得、またはNb、Ti、M(III)、及びM(II)からなり得る。
【0045】
混合相酸化物は、Li及び/またはNaをさらに含むことができ、これらは、酸化物が金属イオン電池で活電極物質として機能するときに、インサイチュで可逆的に挿入され得る。
【0046】
有利なことに、混合相酸化物は、本実施例によって示されるように、単純な固相合成法によって形成され得ることが分かった。さらに、第1の相と第2の相との相互浸透混合物によって得られる改善された特性は、粒子レベルの工学を必要とすることなく、例えば、通常は複雑な合成を必要とし得るコア/シェル構造を形成する必要なく得られる。したがって、好ましくは、第1の相と第2の相との相互浸透混合物は、コア/シェル構造を形成しない。例えば、第1の相と第2の相との相互浸透混合物は、第1の相がシェル部分を形成し、第2の相がシェル部分によって取り囲まれたコア部分を形成する構造を形成しない。
【0047】
混合相酸化物は粒状であることが好ましい。混合相酸化物は、0.1~100μm、または0.5~50μm、または1~20μmの範囲のD50の粒径を有し得る。これらの粒度は、電極への加工及び製造が容易であるため有利である。さらに、これらの粒度により、ナノサイズの粒子をもたらすための複雑な方法、及び/または高額な方法を使用する必要性がなくなる。ナノサイズの粒子(例えば、100nm以下のD50の粒径を有する粒子)は、通常、合成がより複雑であり、さらに安全性を考慮する必要がある。
【0048】
混合相酸化物は、少なくとも0.05μm、または少なくとも0.1μm、または少なくとも0.5μm、または少なくとも1μmのD10の粒径を有し得る。D10の粒径をこれらの範囲に維持することにより、表面積の減少によるLiイオンセルの寄生反応の可能性が低減され、より少ない電極スラリーの結合剤で、加工がより容易になる。
【0049】
混合相酸化物は、200μm以下、100μm以下、50μm以下、または20μm以下のD90の粒径を有し得る。D90の粒径をこれらの範囲に維持することによって、大きな粒度での粒度分布の割合が最小化され、物質を均質な電極に製造することがより容易になる。
【0050】
「粒径」という用語は、等しい球の直径(esd)、すなわち所与の粒子と同じ体積を有する球の直径を指し、粒子の体積は、いずれかの粒子内細孔の体積を含むと理解される。「Dn」及び「Dnの粒径」という用語は、それ未満で粒子集団のn体積%が見出される直径を指す。すなわち、「D50」及び「D50の粒径」という用語は、それ未満で粒子集団の50体積%が見出される、体積ベースの中央値の粒径を指す。物質が二次粒子に凝集した一次微結晶を含む場合、粒径は二次粒子の直径を指すことが理解されるであろう。粒径は、レーザー回折によって決定できる。粒径はISO13320:2009に準拠して測定可能であり、例えば、ミー理論を使用する。
【0051】
混合相酸化物は、0.1~100m2/g、または0.25~50m2/g、または0.5~20m2/gの範囲のBET表面積を有することができる。一般に、混合相酸化物と電解質との反応を最小限に抑えるために、例えば、物質を含む電極の最初の充放電サイクル中の固体電解質相間(SEI)層の形成を最小限に抑えるために、低いBET表面積が好ましい。しかし、BET表面積が小さすぎると、混合相酸化物の大部分が周囲の電解質中の金属イオンに接近できないため、許容できないほど低い充電レート及び容量が生じる。
【0052】
「BET表面積」という用語は、Brunauer-Emmett-Tellerの理論を使用して、固体表面でのガス分子の物理的吸着の測定から計算された、単位質量あたりの表面積を指す。例えば、BET表面積は、ISO9277:2010に準拠して求めることができる。
【0053】
混合相酸化物は、180nmを超える、または200nmを超える、または225nmを超える、または好ましくは250nmを超える結晶子径を有し得る。結晶子径は、180nm~20μm、または200nm~10μm、または225nm~5μm、または250nm~3μmの範囲であってもよい。これらの結晶子径の範囲では、材料内に粒界が少なく、したがって界面抵抗が少ないため、より小さな結晶子を有する材料と比較して、イオン輸送が改善されると考えられる。より高密度の粒子及びより高密度の電極はまた、より大きな結晶子径で製造することができる。結晶子径は、破砕したSi結晶を標準として用いたシェラー法により好都合に測定され得る。
【0054】
粉末X線回折パターンでは、回折ピークの形状は、回折計の光学系によって生成されるラインプロファイル(機器の寄与)と、試料によって生成されるもの(試料依存のピーク広がり)との畳み込みによって決定される。試料中の有限のサイズの回折結晶子は、回折ピークの幅に寄与している。機器の寄与を考慮することができ、次にシェラーの式を使用することによって、回折ピーク幅を使用して、体積加重平均結晶子径を決定することができる。シェラーの式は、所与のブラッグ角における回折ピークの幅と最小結晶子直径とを相関させる。
【数1】
式中、Kはシェラー定数であり、その値はこの場合0.9である。λはX線の波長であり、βはβ
試料、β
標準から計算された補正ピーク幅であり、これらは、それぞれ、調査する試料及び標準試料における選択した回折ピークの半値全幅から測定され、θは、調査する試料のピークのブラッグ角である。
【0055】
好ましくは、シェラー法を使用して試料の体積加重平均結晶子径を決定し、機器の寄与は、標準試料の測定から決定することができる。標準試料は、大きな結晶子径、例えば平均結晶子径>1μmの結晶性物質であるべきで、理想的には、試験試料の分析のために選択されたピークと同じ角度でブラッグピークを有する。LaB6(例えばNIST SRM 660C)または破砕されたSi結晶(例えばNIST SRM 640C)が使用されることが多い。分析のために選択される試料ピークは、単一のブラッグ反射であるべきで、好ましくは、最高の散乱強度のピークであるべきである。ピークの半値での全幅を、散乱強度がバックグラウンド強度とピークの最大強度との間の中間である回折ピークの点を見つけ出し、これらの散乱強度の値におけるピークの2θブラッグ角の値の差を測定することによって、測定する。
【0056】
好ましくは、標準試料と試験試料とは、同じ機器で同じ条件を用いて測定するべきである。回折測定のスキャン速度及びステップサイズは、調査を意図するピークが、最大値の半分の点を超える少なくとも8つのデータ点の測定値を含み、ピークの最大強度点が、背景の強度の少なくとも10倍を有するようにすべきである。
【0057】
透過型電子顕微鏡(TEM)検査をさらに使用して、シェラー法によって決定された結晶子径を確認することができる。粒度分布で測定された直径D50に近い全体的なサイズの粒子を、選択面積電子回折(SAED)によって調べて、粒子内の結晶ドメインの程度を調査する。ゾーン軸がアライメントされ、明確な回折パターンが取得された場合、粒界に遭遇するまで空間間隔で回折パターンを測定することによって、空間マップを作成することができる。
【0058】
混合相酸化物を炭素でコーティングして、例えば表面の電気伝導性を向上させる、及び/または電解質との反応を防止することができる。
【0059】
混合相酸化物は保護コーティングを有していてもよく、任意選択で、保護コーティングは、ニオブ酸化物、アルミニウム酸化物、ジルコニウム酸化物、有機または無機フッ化物、有機または無機リン酸塩、チタン酸化物、それらのリチウム化バージョン、及びそれらの混合物を含む。
【0060】
第2の態様の電極は、典型的には、集電体と電気的に接触する電極組成物の形態であり、それにおいて電極組成物は混合相酸化物を含む。集電体は、通常、銅箔またはアルミ箔などの金属箔である。
【0061】
任意選択的に、混合相酸化物は、電極の全活電極物質の少なくとも25重量%、50重量%、または75重量%を形成する。混合相酸化物は、電極の唯一の活電極物質を形成し得る。
【0062】
電極組成物は、結合剤、導電性添加剤、異なる活電極物質(例えば、本明細書で定義されるさらなる混合相酸化物)及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの他の成分をさらに含み得る。例えば、1つの電極組成物は、電極組成物の全乾燥重量に基づいて、約92重量%の混合相酸化物、約5重量%の導電性添加剤(例えば、カーボンブラック)、及び約3重量%の結合剤(例えば、ポリ(二フッ化ビニル))を含む。
【0063】
適切な結合剤の例としては、ポリフッ化ビニリデン及びその共重合体(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及びその共重合体、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリ(メチル)メタクリレートまたはポリ(ブチル)メタクリレート、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリビニルホルマール、ポリエーテルアミド、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリイタコン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸(PAA)及びそのアルカリ金属塩、変性ポリアクリル酸(mPAA)及びそのアルカリ金属塩、セルロース系ポリマー、カルボキシメチルセルロース(CMC)、変性カルボキシメチルセルロース(mCMC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(Na-CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸塩及びそのアルカリ金属塩、ブタジエンアクリロニトリルゴム(NBR)、NBRの水素化形態(HNBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、及びポリイミドが挙げられる。結合剤は、電極組成物の全乾燥重量に基づいて、電極組成物に0~30重量%、または0.1~10重量%、または0.1~5重量%存在することができる。
【0064】
導電性添加剤は、好ましくは、活電極物質間、及び活電極物質と集電体との間の電気伝導性を改善するために含まれる非活物質である。導電性添加剤は、グラファイト、カーボンブラック、炭素繊維、気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ、グラフェン、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、金属繊維、金属粉末、及び導電性金属酸化物から適宜選択することができる。好ましい導電性添加剤としては、カーボンブラック及びカーボンナノチューブが挙げられる。導電性添加剤は、電極組成物の全乾燥重量に基づいて、電極組成物に0~20重量%、0.1~10重量%、または0.1~5重量%存在することができる。
【0065】
混合相酸化物は、電極組成物の全乾燥重量に基づいて、電極組成物に100~50重量%、99.8~80重量%、または99.8~90重量%で存在することができる。活電極物質が電極組成物の100重量%存在する場合、それは固体の電極として使用され得る。
【0066】
混合相酸化物に加えて異なる活電極物質が存在する場合、それはリチウムチタン酸化物、チタンニオブ酸化物、異なる混合相酸化物、グラファイト、ハードカーボン、ソフトカーボン、シリコン、それらのドープバージョン、及びそれらの混合物から選択され得る。
【0067】
混合相酸化物は、リチウムチタン酸化物と組み合わせて活電極物質を形成することができる。
【0068】
リチウムチタン酸化物は、好ましくは、例えばX線回折によって決定されるように、スピネルまたはラムスデライト結晶構造を有する。スピネル結晶構造を有するリチウムチタン酸化物の例は、Li4Ti5O12である。ラムスデライト結晶構造を有するリチウムチタン酸化物の例は、Li2Ti3O7である。これらの物質は、活電極物質として使用するための優れた特性を有することが示されている。したがって、リチウムチタン酸化物は、Li4Ti5O12及び/またはLi2Ti3O7に対応するX線回折によって決定される結晶構造を有し得る。リチウムチタン酸化物は、Li4Ti5O12、Li2Ti3O7、及びそれらの混合物から選択することができる。リチウムチタン酸化物には追加の陽イオンまたは陰イオンがドープされていてもよい。リチウムチタン酸化物は、酸素欠乏であり得る。リチウムチタン酸化物はコーティングを含むことができ、任意選択に、コーティングは、炭素、ポリマー、金属、金属酸化物、半金属、リン酸塩、及びフッ化物から選択される。リチウムチタン酸化物は、従来のセラミック技術、例えば固相合成またはゾルゲル合成によって合成することができる。あるいは、リチウムチタン酸化物は商業的供給業者から得ることができる。
【0069】
リチウムチタン酸化物は粒状であることが好ましい。リチウムチタン酸化物は、0.1~50μm、または0.25~20μm、または0.5~15μmの範囲のD50の粒径を有し得る。リチウムチタン酸化物は、少なくとも0.01μm、または少なくとも0.1μm、または少なくとも0.5μmのD10の粒径を有し得る。リチウムチタン酸化物は、100μm以下、50μm以下、または25μm以下のD90の粒径を有し得る。D90の粒径をこの範囲に維持することにより、混合相酸化物粒子との混合物におけるリチウムチタン酸化物粒子の充填が改善される。
【0070】
リチウムチタン酸化物は、通常、物質の電子伝導率が低いため、小さな粒度で電池のアノードに使用される。対照的に、本明細書で定義されている混合相酸化物は、典型的にはリチウムチタン酸化物よりも高いリチウムイオン拡散係数を有するので、より大きい粒度で使用することができる。有利なことに、組成物において、リチウムチタン酸化物は、混合相酸化物よりも小さい粒度を有し得、例えば混合相酸化物のD50の粒径に対するリチウムチタン酸化物のD50の粒径の比率が、0.01:1~0.9:1、または0.1:1~0.7:1の範囲であるようにする。このようにして、より小さいリチウムチタン酸化物粒子は、より大きい混合相酸化物粒子間の空隙に収容され得、組成物の充填効率を増加させる。
【0071】
リチウムチタン酸化物は、0.1~100m2/g、または1~50m2/g、または3~30m2/gの範囲のBET表面積を有することができる。
【0072】
混合相酸化物に対するリチウムチタン酸化物の質量比は、0.5:99.5~99.5:0.5の範囲であってよく、好ましくは2:98~98:2の範囲である。1つの実施態様では、活電極物質は、混合相酸化物よりも高い比率のリチウムチタン酸化物を含み、例えば、少なくとも2:1、少なくとも5:1、または少なくとも8:1の質量比である。有利なことに、これにより、製造技術を大幅に変更する必要なく、混合相酸化物をリチウムチタン酸化物に基づく既存の電極に徐々に導入することができ、既存の電極の特性を改善する効率的な方法が得られる。別の実施態様では、活電極物質は、リチウムチタン酸化物よりも混合相酸化物の割合が高く、例えば混合相酸化物に対するリチウムチタン酸化物の質量比が、1:2未満、または1:5未満、または1:8未満である。有利なことに、このことは、混合相酸化物の一部をリチウムチタン酸化物で置き換えることにより、活電極物質のコストを削減することを可能にする。
【0073】
混合相酸化物はニオブ酸化物と組み合わせて活電極物質を形成することができる。ニオブ酸化物は、Nb12O29、NbO2、NbO及びNb2O5好ましくは、ニオブ酸化物はNb2O5である。
【0074】
ニオブ酸化物は、例えば、ニオブ酸化物の結晶構造がNb及びOからなる酸化物の結晶構造、例えば、Nb12O29、NbO2、NbO、及びNb2O5に対応するという条件で、追加の陽イオンまたは陰イオンでドープされ得る。ニオブ酸化物は、酸素欠乏であり得る。ニオブ酸化物はコーティングを含んでもよく、任意選択に、コーティングは、炭素、ポリマー、金属、金属酸化物、半金属、リン酸塩、及びフッ化物から選択される。
【0075】
ニオブ酸化物は、X線回折によって決定されるように、Nb12O29、NbO2、NbO、またはNb2O5の結晶構造を有することができる。例えば、ニオブ酸化物は、斜方晶Nb2O5の結晶構造または単斜晶Nb2O5の結晶構造を有することができる。好ましくは、ニオブ酸化物は単斜晶Nb2O5の結晶構造を有し、最も好ましくはH-Nb2O5の結晶構造を有する。Nb2O5の結晶構造に関するさらなる情報は、Griffith et al., J. Am. Chem. Soc. 2016, 138, 28, 8888-8899で見出すことができる。ニオブ酸化物は、従来のセラミック技術、例えば固相合成またはゾルゲル合成によって合成することができる。あるいは、ニオブ酸化物は商業的供給業者から入手することができる。
【0076】
ニオブ酸化物は粒状であることが好ましい。ニオブ酸化物は、0.1~100μm、または0.5~50μm、または1~20μmの範囲のD50の粒径を有し得る。ニオブ酸化物は、少なくとも0.05μm、または少なくとも0.5μm、または少なくとも1μmのD10の粒径を有し得る。ニオブ酸化物は、100μm以下、50μm以下、または25μm以下のD90の粒径を有し得る。D90の粒径をこの範囲に維持することにより、混合相酸化物粒子との混合物におけるニオブ酸化物粒子の充填が改善される。
【0077】
ニオブ酸化物は、0.1~100m2/g、または1~50m2/g、または1~20m2/gの範囲のBET表面積を有することができる。
【0078】
混合相酸化物に対するニオブ酸化物の質量比は、0.5:99.5~99.5:0.5の範囲、または2:98~98:2の範囲、または好ましくは15:85~35:55の範囲であってもよい。
【0079】
本発明はまた、本明細書で定義される混合相酸化物の金属イオン電池のアノードでの使用を提供し、任意選択で、金属イオン電池はリチウムイオン電池またはナトリウムイオン電池、好ましくはリチウムイオン電池である。リチウムイオン電池には、液体ベースの電池、ポリマーベースの電池、半固体ベースの電池、及び全固体ベースの電池が含まれる。
【0080】
本発明のさらなる実施態様は、アノード、カソード、及びアノードとカソードとの間に配置された電解質を含む電気化学デバイスであり、アノードは、本発明の第1の態様による混合相酸化物を含み、任意選択で、電気化学デバイスは、リチウムイオン電池またはナトリウムイオン電池などの金属イオン電池である。好ましくは、電気化学デバイスは、23mA/gで230mAh/gより大きい可逆的アノード活物質比容量を有するリチウムイオン電池であり、23mA/gで初期のセル容量の70%超を保持しながら、電池は、200mA/g以上、または1000mA/g以上、または2000mA/g以上、または4000mA/g以上のアノード活物質に対する電流密度で充電及び放電することができる。本発明の第1の態様の活電極物質を使用することにより、この特性の組み合わせを有するリチウムイオン電池の製造が可能になり得、高い充電電流密度と放電電流密度が所望されている用途での使用に特に適したリチウムイオン電池を表すことが見出された。特に、実施例は、本発明の第1の態様による活電極物質が、高いCレートで優れた容量を有することを示した。
【0081】
混合相酸化物は、従来のセラミック技術によって合成することができる。例えば、それは、固体合成またはゾル-ゲル合成のうちの1つ以上によって製造されてもよく、好ましくは、実施例によって示されるような微粒子状前駆体を使用して、固体合成によって製造され得る。混合相酸化物は、水熱合成またはマイクロ波水熱合成、ソルボサーマル合成またはマイクロ波ソルボサーマル合成、共沈合成、スパークまたはマイクロ波プラズマ合成、燃焼合成、エレクトロスピニング、スプレー熱分解、化学蒸着、原子層堆積、及びメカニカルアロイングなど、一般的に使用される代替技術の1つまたは複数によってさらに合成され得る。
【0082】
混合相酸化物は、1つ以上の前駆体物質を得るステップ、前駆体物質を混合して、前駆体物質混合物を形成するステップ、及び前駆体物質混合物を800℃~1350℃または1000℃~1300℃の温度範囲で熱処理して、それにより混合相酸化物を得るステップを含む方法によって得ることができる。
【0083】
混合相酸化物は、少なくとも1つの電気陰性元素を含むように改質され、F、Cl、Br、I、N、S、Se、及びそれらの混合物、またはF、Cl、N、S、及びこれらの混合物、または好ましくは、F、N、及びそれらの混合物から選択される代替の陰イオンで、酸素陰イオンを部分的に置き換え得る。少なくとも1つの電気陰性元素は、Oの量に対して≦5at%または≦1at%の総量で存在し得る。電気陰性元素は、混合相酸化物を電気陰性元素を含む前駆体と混合して、さらなる前駆体材料混合物を得ること、及びさらなる前駆体材料混合物を、300~1200℃または800~1100℃という温度の範囲で、任意選択で還元条件下で熱処理して、それにより、さらなる電気陰性元素を含む混合相酸化物を得るという方法によって導入され得る。
【0084】
例えば、Nを含む混合相酸化物を得るために、方法は、混合相酸化物を、Nを含む前駆体(例えば、メラミンまたは尿素)と混合して、さらなる前駆体物質混合物を得るステップと、さらなる前駆体物質混合物を、還元条件下(例えば、N2の下で)で300~1200℃の温度範囲で熱処理し、それにより、Nを含む混合相酸化物を得るステップをさらに含み得る。
【0085】
例えば、Fを含む混合相酸化物を得るために、方法は、混合相酸化物を、Fを含む前駆体(例えば、ポリフッ化ビニリデン、またはNH4F)と混合して、さらなる前駆体物質混合物を得るステップと、さらなる前駆体物質混合物を、酸化条件下(例えば、空気中)で300~1200℃の温度範囲で熱処理し、それにより、Fを含む混合相酸化物を得るステップとをさらに含み得る。
【0086】
方法は、混合相酸化物を還元条件下で400~1350℃または800~1250℃の温度範囲で熱処理し、それによって混合相酸化物に酸素空孔を誘発するさらなるステップを含んでもよい。
【0087】
混合相酸化物を作るための前駆体物質は、1つ以上の金属酸化物、金属水酸化物、金属塩またはアンモニウム塩を含むことができる。例えば、前駆体物質は、異なる酸化状態及び/または異なる結晶構造の1つ以上の金属酸化物または金属塩を含むことができる。適切な前駆体物質の例は、Nb2O5、Nb(OH)5、ニオブ酸、NbO2、シュウ酸ニオブ酸アンモニウム、NH4H2PO4、(NH4)2PO4、(NH4)3PO4、P2O5、H3PO3、Ta2O5、WO3、ZrO2、TiO2、MoO3、V2O5、ZrO2、CuO、ZnO、Al2O3、K2O、KOH、CaO、GeO2、Ga2O3、SnO2、CoO、Co2O3、Fe2O3、Fe3O4、Cr2O3、MnO、MnO2、NiO、Ni2O3、H3BO3、ZnO、Li2CO3、Na2CO3、H3BO3、NiO、Mg5(CO3)4(OH)2.5H2O、及びMgOを含むが、これらに限定されない。前駆体物質は、金属酸化物を含まなくてもよく、または酸化物以外のイオン源を含んでもよい。例えば、前駆体物質は、金属塩(例えばNO3
-、SO3
-)または他の化合物(例えばシュウ酸塩、炭酸塩)を含み得る。酸素の陰イオンを他の電気陰性陰イオンで置換する場合、前駆体には、1つ以上の有機化合物、ポリマー、無機塩、有機塩、ガス、またはアンモニウム塩が含まれ得、例としては、メラミン、NH4HCO3、NH3、NH4F、PVDF、PTFE、NH4Cl、NH4Br、NH4I、Br2、Cl2、I2、アンモニウムオキシクロリドアミド、及びヘキサメチレンテトラミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
前駆体物質の一部または全部は、粒状物質であってもよい。それらが粒状物質である場合、好ましくは、それらは直径20μm未満、例えば250nm~20μmのD50の粒径を有する。このような粒径を有する粒状物質を得ることは、前駆体物質のより密接な混合を促進するのに役立ち、それによって、熱処理ステップの間のより効率的な固相反応をもたらすことができる。しかし、前駆体物質混合物を形成するために当該前駆体物質を混合するステップの間に、1つ以上の前駆体物質の粒度を機械的に減少させることができるので、前駆体物質が20μm未満の初期の粒度を有することは必須でない。
【0089】
前駆体物質を混合して前駆体物質混合物及び/またはさらなる前駆体物質混合物を形成するステップは、乾式または湿式/遊星溶媒和ボールミリング、ローリングボールミリング、高エネルギーボールミリング、ビーズミリング、ピンミリング、分級ステップ、高せん断ミリング、エアジェットミリング、スチームジェットミリング、遊星型ミキシング、高せん断混合、衝撃混合、粉末混合、及び/または衝撃ミリングから選択されるプロセスによって実行され得る。混合/ミリングに用いる力は、前駆体物質の形態に依存し得る。例えば、前駆体物質の一部またはすべてが、より大きな粒度(例えば、20μmを超えるD50の粒径)を有する場合、ミリング力は、前駆体物質混合物の粒径が直径20μm以下に減少するように、前駆体物質の粒径を減少させるように選択され得る。前駆体混合物の粒子の粒径が20μm以下であると、熱処理ステップの間、前駆体物質混合物の前駆体物質の固相反応を、より効率的に促進することができる。固相合成は、前駆体粉末から高圧(10MPa超)で形成されたペレットで行うこともできる。
【0090】
前駆体物質混合物及び/またはさらなる前駆体物質混合物を熱処理するステップは、1時間~24時間、より好ましくは3時間~18時間の時間で行うことができる。例えば、熱処理ステップを、1時間以上、2時間以上、3時間以上、6時間以上、または12時間以上行ってもよい。熱処理ステップは、24時間以下、18時間以下、16時間以下、または12時間以下行われ得る。
【0091】
前駆体物質混合物を熱処理するステップは、気体雰囲気、好ましくは空気中で行うことができる。好適な気体雰囲気は、空気、N2、Ar、He、CO2、CO、O2、H2、NH3及びそれらの混合物を含む。気体雰囲気は、還元性雰囲気であってもよい。酸素欠損物質を作製することが望まれる場合、好ましくは、前駆体物質混合物を熱処理するステップは、不活性雰囲気または還元性雰囲気で行われる。
【0092】
さらなる前駆体物質混合物を熱処理するステップは、還元条件下で実施され得る。還元条件には、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスの下、または不活性ガスと水素の混合気の下、または真空下が含まれる。好ましくは、さらなる前駆体物質混合物を熱処理するステップは、不活性ガスの下で加熱することを含む。
【0093】
混合相酸化物及び/または追加の電気陰性陰イオンを含む混合相酸化物を任意選択で還元条件下で熱処理するさらなるステップは、0.5時間~24時間、より好ましくは2時間~18時間の時間にわたって行うことができる。例えば、熱処理ステップを、0.5時間以上、1時間以上、3時間以上、6時間以上、または12時間以上行ってもよい。さらなるステップの熱処理は、24時間以下、18時間以下、16時間以下、または12時間以下行われ得る。還元条件には、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスの下、または不活性ガスと水素の混合気の下、または真空下が含まれる。好ましくは、還元条件下での加熱は、不活性ガス下での加熱を含む。
【0094】
いくつかの方法では、2ステップの熱処理を行うことが有益であり得る。例えば、前駆体物質混合物及び/またはさらなる前駆体物質混合物を第1の温度で第1の時間加熱し、続いて第2の温度で第2の時間加熱することができる。好ましくは、第2の温度は第1の温度よりも高い。このような2ステップの熱処理を行うことにより、固相反応を補助して所望の結晶構造を形成することができる。これは、連続して実施することができ、または中間の再粉砕ステップで実施することができる。
【0095】
この方法は、混合相酸化物の形成後に1つ以上の後処理のステップを含むことができる。場合によっては、この方法は、「アニーリング」と呼ばれることもある混合相酸化物を熱処理する後処理ステップを含むことができる。この後処理の熱処理ステップは、混合相酸化物を形成するために前駆体物質混合物を熱処理するステップとは異なるガス雰囲気で実行され得る。後処理の熱処理ステップは、不活性ガス雰囲気または還元ガス雰囲気で実施することができる。このような後処理の熱処理ステップは、500℃を超える温度、例えば約900℃で行うことができる。後処理の熱処理ステップを含むことは、例えば、酸素欠乏を誘発するなど、混合相酸化物に欠乏または欠陥を形成するのに、または形成された混合相酸化物で陰イオン交換、例えばO陰イオンのN交換を実行するのに、有益であり得る。
【0096】
この方法は、混合相酸化物をミリング及び/または分級して(例えば、衝撃ミリング、ジェットミリング、スチームジェットミリング、高エネルギーミリング、ボールミリング、高せん断ミリング、ピンミリング、空気分級、ホイール分級、ふるい分け、サイクロン分離、ビーズミリング)、上記の粒度パラメータのいずれかを有する物質を得るステップを含むことができる。
【0097】
本発明は、本明細書において定義された混合相酸化物を得ることと、混合相酸化物を集電体上に堆積させて電極を形成することとを含む、電極の製造方法を提供する。混合相酸化物を得ることは、本明細書で提供される方法によって混合相酸化物を合成することを含み得る。堆積ステップは、混合相酸化物と溶媒のスラリーを形成することを含み得る。スラリーは、結合剤、導電性添加剤、異なる活電極物質、及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの他の成分を含むことができる。スラリーを集電体上に堆積させ、溶媒を除去することにより、集電体に電極層を形成することができる。必要に応じて、いずれかの結合剤を硬化させるための熱処理、及び/または電極層のカレンダー処理などのさらなるステップを実行することもできる。例えば、溶媒は、例えば、30~100℃の温度で乾燥することによって除去することができる。電極は、密度2~3.5または2.6~2.9gcm-3にカレンダー加工され得る。電極層の厚さは、5μm~2mm、好ましくは5μm~1mm、好ましくは5μm~500μm、好ましくは5μm~200μm、好ましくは5μm~100μm、好ましくは5μm~50μmの範囲を有し得る。
【0098】
あるいは、スラリーは、例えば、適切な鋳造テンプレートの上にスラリーを鋳造し、溶媒を除去し、次いで鋳造テンプレートを除去することによって、混合相酸化物を含む自立型フィルムまたはマットに形成され得る。得られたフィルムまたはマットは凝集性があり自立した塊の形をしており、その後、公知の方法によって集電体に結合できる。
【実施例】
【0099】
混合相酸化物は、固相の経路によって合成された。最初のステップで、前駆体物質(Nb
2O
5,TiO
2,ZnO,Cr
2O
3,CuO,MgO,Al
2O
3,及びGa
2O
3)を、20μm未満のD
50の粒径にミリングした。その後、適切な量の前駆体を合わせ、20,000rpmの衝撃式ミルで混合して、均質な粉末混合物(総計50g)を得た。得られた粉末は、所望のWadsley-Roth相に応じて、マッフル炉を使用してアルミナるつぼで、1~24時間、1100~1200℃で熱処理された。試料3~12を炉から取り除き、20,000rpmで衝撃ミル粉砕し、同じ条件を使用して2回加熱した。すべての加熱処理条件で5℃/分の加熱レートが使用された。必要に応じて、最後に、20,000rpmで少なくとも2分間衝撃ミル粉砕することによる脱凝集ステップを利用し、所望の粒度分布の調整をした。粒度分布は、Horiba社製の乾燥粉末用レーザー回折式粒子分析器で取得した。空気圧は0.3MPaに保った。結果を表1に示す。
【表1】
【0100】
例えば95TiNb
2O
7:5Cr
0.6Zn
1.6Nb
33.8O
87という表記は、95重量部のTiNb
2O
7と5重量部のCr
0.6Zn
1.6Nb
33.8O
87の混合物の元素比になるように秤量された前駆体から作製された混合相酸化物を指す。合成された混合相酸化物の第1及び第2の相は、「ベース」酸化物と比較して追加の置換元素が含まれる。具体的には、
試料3~5では、第1の相は、TiNb
2O
7の結晶構造を有するが、Cr及び/またはZnをさらに含有し、第2の相は、Zn
2Nb
34O
87の結晶構造を有するが、Cr及び/またはTiをさらに含有し、
試料6では、第1の相は、TiNb
2O
7の結晶構造を有するが、Al及び/またはZnをさらに含有し、第2の相は、Zn
2Nb
34O
87の結晶構造を有するが、Al及び/またはTiをさらに含有し、
試料7では、第1の相は、TiNb
2O
7の結晶構造を有するが、Crをさらに含有し、第2の相は、Zn
2Nb
34O
87の結晶構造を有するが、Cr及び/またはTiを含有し、
試料8では、第1の相は、TiNb
2O
7の結晶構造を有するが、Cr及び/またはAlをさらに含有し、第2の相は、Zn
2Nb
34O
87の結晶構造を有するが、Cr、Al、及び/またはTiを含有し、
試料9では、第1の相は、TiNb
2O
7の結晶構造を有するが、Ga及び/またはAlをさらに含有し、第2の相は、Zn
2Nb
34O
87の結晶構造を有するが、Ga、Al、及び/またはTiを含有し、
試料10では、第1の相は、TiNb
2O
7の結晶構造を有するが、Cu及び/またはGaをさらに含有し、第2の相は、Zn
2Nb
34O
87の結晶構造を有するが、Cu、Ga、及び/またはTiを含有し、
試料11では、第1の相は、TiNb
2O
7の結晶構造を有するが、Znをさらに含有し、第2の相は、Zn
2Nb
34O
87の結晶構造を有するが、Tiをさらに含有し、
試料12では、第1の相は、TiNb
2O
7の結晶構造を有するが、Mg及び/またはCrをさらに含有し、第2の相は、Zn
2Nb
34O
87の結晶構造を有するが、Mg、Cr、及び/またはTiを含有する。
【表2】
【0101】
本明細書の実施例の合成の利点は、参照系TiNb2O7及び95TiNb2O7:5Ti2Nb10O29に対して示されている。これらのデータを、Rigaku SmartLab SE粉末X線回折計から可変温度加熱ステージを使用して収集し、そこで未反応の試料を6℃/分で加熱し、2分ごとにXRDスキャンを行った。表2に結果を提示する。試料3及び5の合成は、アナターゼピークがないことによって示されるものとして、1200℃未満の温度で完了に達したが、試料1*及び13*の合成は完了しなかった。試料1*及び13*を1200℃で12時間熱処理した後、試料13*の合成は完了に達したが、試料1*の合成は完了しなかった。これは、試料1*のXRDのパターンに存在するルチルTiO2(110)ピークによって証明される。これらのデータは、本発明で試料の合成効率を改善することを示しており、このことは、よりコスト効率の良い製造を促進する。
【0102】
物質の特性評価
試料の相純度を、Rigaku Miniflex粉末X線回折計を用いて、2θの範囲(10~70°)をスキャンレート1°/分で分析した。
図1は、試料1~8の測定されたXRD回折パターンを示す。表3は、各試料のXRDパターンの精密化から得られた結晶構造パラメータを提示する。TiNb
2O
7の結晶構造を有する第1の相は、ICDDエントリ00-039-1407(空間群I12/m1)に一致する同じ位置にピークがあることが判明した(結晶の変化により最大約0.2°のいくらかのシフトがある)。Zn
2Nb
34O
87の結晶構造を有する第2の相は、ICDDデータベースエントリ00-013-0317(空間群A12/m1)に一致する同じ位置にピークを有することが判明した(結晶の変化により最大約0.2°のいくらかのシフトがある)。試料2を、単斜晶系(A12/m1)と直方晶系(Amma-PDFカード04-021-7859)との両方の結晶構造を組み合わせて使用して、精密化した。混合相酸化物の第2の相を、単斜結晶構造のみを使用して精密化した。「ベース」結晶構造の参照データベースエントリと比較したピークシフトは、イオン半径が異なる置換元素(例えば、Cr及び/またはZnで置換されたTiNb
2O
7、及びCr及び/またはTiで置換されたZn
2Nb
34O
87)の組み込みを反映する。精密化に起因する第1の相と第2の相との質量比は、前駆体の量に基づいて予想された比と良好に適合し、再度、小差が予想された置換元素を反映していることが判明した。
【0103】
試料3をTEM-EDX分析に供した。分析により、観察された粒子全体で陽イオンの均一な分布が示され、特定のドメインへの陽イオンの局在化はなかった。これは、第1の相と第2の相との相互浸透混合物の存在と、「ベース」相の同時の置換とを裏付ける。
【表3】
【表4】
【0104】
電気化学的特性評価
Liイオン電池の充電レートは、通常「Cレート」で表される。1C充電レートとは、セルが1時間で完全に充電されるような充電電流を意味し、10C充電とは、電池が1時間の1/10(6分)で完全に充電されることを意味する。ここでのCレートは、2回目の脱リチウム化サイクルで適用される電圧制限内でアノードに見られる可逆容量から定義される、つまり、1.1~3.0Vの電圧制限内で1.0mAh cm
-2の容量を示すアノードの場合、1Cレートは、1.0mA cm
-2の印加された電流密度に相当する。本明細書に記載の典型的な物質では、これは約250mA/g活物質に相当する。分析のため、ハーフコインセル(CR2032サイズ)で電気化学試験を行った。ハーフコイン試験では、活物質を電極でLi金属電極に対して試験して、活物質の基本的能力を評価する。以下の例では、試験しようとしている活物質組成物をN-メチルピロリドン(NMP)、導電性添加剤として作用するカーボンブラック(Super P)、及びポリ(ビニルジフルオライド)(PVDF)結合剤と組み合わせ、実験室規模の遠心式遊星型ミキサでスラリー状に混合した。スラリーの非NMP組成は、92重量%の活物質、5重量%の導電性添加剤、3重量%の結合剤であった。このスラリーをドクターブレードコーティングによりAl箔集電体に所望の塗布量69~75g m
-2までコーティングし、加熱により乾燥させた。次に、電極を80℃で2.6~2.9g cm
-3の密度にカレンダー加工して、30~35%という目標の空隙率を達成した。電極を所望の大きさに打ち抜き、スチール製コインセルケース内でセパレータ(Celgard社製多孔質PP/PE)、Li金属、及び電解質(EC/DEC中に1.3MのLiPF
6)と組み合わせ、圧力下で密封した。その後、25℃の低電流レートにて(C/10)、サイクルを1.1~3.0Vの間でリチウム化と脱リチウム化の2回のフルサイクルで実行した。その後、電流密度を上げてセルの能力を試験した。これらの試験の間、セルは25℃で遅いリチウム化(C/5)と、その後、脱リチウム化のレートを上げる(例えば、5C、10C)非対称サイクルにかけられ、容量を得た。データは、同じ電極コーティングから調製された3~5のセルから平均化されており、誤差は標準偏差から示されている。したがって、データは、従来の物質と比較して、本発明による物質によって改善が達成されたことを示す揺るぎない研究であることを表す。これらのデータを表5に示す。
【表5】
【0105】
考察
第1の相と第2の相との相互浸透混合物、ならびに「ベース」相の同時の置換は、単相のいずれかと比較して、混合相酸化物の特性に驚くべき改善をもたらすことが分かった。特に、5C以上の高レートでは、試料3~5(Nb、Ti、Cr、及びZnを含有する混合相酸化物)の脱リチウム化比容量は、試料1*(TiNb2O7)及び試料2*(Cr0.6Zn1.6Nb33.8O87)の両方よりも高く、相乗的な改善を表すことが判明した。同様に、試料6(Nb、Ti、Al、及びZnを含有する混合相酸化物)、試料7(Nb、Ti、及びCrを含有する混合相酸化物)、試料8(Nb、Ti、Cr、及びAlを含む混合相酸化物)、試料9(Nb、Ti、Ga、及びAlを含む混合相酸化物)、試料10(Nb、Ti、Cu、及びGaを含む混合相酸化物)、試料11(Nb、Ti、及びZnを含有する混合相酸化物)、及び試料12(Nb、Ti、Mg、及びCrを含有する混合相酸化物)の各々の5C以上での脱リチウム化比容量は、試料1*及び試料2*の両方より高いことが判明した。
【0106】
記載された元素M(III)及びM(II)の範囲についても、同様の利点が示されることが予想される。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活電極物質として使用するための混合相酸化物であって、
前記混合相酸化物が、Nb及びTiを含み、さらに、M(III)及び/またはM(II)を含み、
M(III)は、Cr、Al、Ga、及びそれらの混合物から選択され、
M(II)はZn、Cu、Mg、及びそれらの混合物から選択され、
前記混合相酸化物が、第1の相と第2の相との相互浸透混合物を含み、
前記第1の相は、TiNb
2O
7の結晶構造を有し、前記第2の相は、Zn
2Nb
34O
87の結晶構造を有する、前記混合相酸化物。
【請求項2】
前記混合相酸化物のXRDパターンが、2θ=26.0±0.1°で前記第1の相に帰属するピークAを示す、請求項1に記載の混合相酸化物。
【請求項3】
前記混合相酸化物のXRDパターンが、2θ=24.9±0.1°で前記第2の相に帰属するピークBを示す
、請求項
2に記載の混合相酸化物。
【請求項4】
前記ピークBの強度I
Bの前記ピークAの強度I
Aに対する比率が、0<I
B/I
A≦0.4、または0.01≦I
B/I
A≦0.25、または0.05≦I
B/I
A≦0.22、または0.07≦I
B/I
A≦0.16である、請求
項3に記載の混合相酸化物。
【請求項5】
前記第1の相と前記第2の相との重量比が、199:1~1:1、または99:1~3:1、または50:1~8:1である
、請求項
1~4のいずれかに記載の混合相酸化物。
【請求項6】
前記第1の相が、前記混合相酸化物の少なくとも85重量%、または少なくとも90重量%、または少なくとも92重量%を形成する
、請求項
1~4のいずれかに記載の混合相酸化物。
【請求項7】
前記第1の相及び前記第2の相は、前記混合相酸化物の少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、または少なくとも95重量%を形成する
、請求項
1~4のいずれかに記載の混合相酸化物。
【請求項8】
すべての陽イオンに対して、66~80at%のNbと、33~17at%のTiとを含み、さらに、>0~1at%のM(III)及び/または>0~2at%のM(II)を含む
、請求項
1~4のいずれかに記載の混合相酸化物。
【請求項9】
M(III)とM(II)との前記組み合わせの量が、前記Nbの量に対して、≧0.05at%、または、≧0.5at%、または、≧0.6at%である
、請求項
1~4のいずれかに記載の混合相酸化物。
【請求項10】
Ti:Nbの原子の比が、少なくとも0.3:1、または少なくとも0.4:1、または0.42:1~0.5:1である
、請求項
1~4のいずれかに記載の混合相酸化物。
【請求項11】
M(III)を含むか、またはM(III)及びM(II)を含む
、請求項
1~4のいずれかに記載の混合相酸化物。
【請求項12】
M(III)が、Cr、Al、及びそれらの混合物であり、M(II)がZnである
、請求項
1~4のいずれかに記載の混合相酸化物。
【請求項13】
M(III)が、Cr、Al、及びそれらの混合物であるか、M(III)がCrである
、請求項
1~4のいずれかに記載の混合相酸化物。
【請求項14】
M(II)が、Zn、Cu、及びそれらの混合物であるか、M(II)がZnである
、請求項
1~4のいずれかに記載の混合相酸化物。
【請求項15】
M(III)及びM(II)を含み、M(III)がCrであり、M(II)がZnである
、請求項
1~4のいずれかに記載の混合相酸化物。
【請求項16】
前記混合相酸化物が粒子形態であり、任意選択で前記混合相酸化物が0.1~100μm、または0.5~50μm、または1~20μmの範囲のD
50の粒径を有する
、請求項
1~4のいずれかに記載の混合相酸化物。
【請求項17】
前記混合相酸化物は、0.1~100m
2/g、または0.25~50m
2/g、または0.5~20m
2/gの範囲のBET表面積である
、請求項
1~4のいずれかに記載の混合相酸化物。
【請求項18】
前記混合相酸化物が、180nmを超える、または200nmを超える、または225nmを超える、または250nmを超える結晶子径を有する
、請求項
1~4のいずれかに記載の混合相酸化物。
【請求項19】
少なくとも1つの追加の元素をさらに含み、任意選択で、前記追加の元素は、
(i)Zr、Hf、V、Fe、Ta、Mo、W、Mn、Co、Ni、Cd、B、Si、Sn、P、及びそれらの混合物、または
(ii)Zr、V、Fe、Mo、W、Mn、Co、Ni、Cd、B、Si、P、及びそれらの混合物、または
(iii)Zr、V、Fe、Mo、W、P、及びそれらの混合物から選択される
、請求項
1~4のいずれかに記載の混合相酸化物。
【請求項20】
前記少なくとも1つの追加の元素が、前記Nbの量に対して、≦5at%、または≦1at%、または≦0.5at%の総量で存在する、請求項19に記載の混合相酸化物。
【請求項21】
(i)F、Cl、Br、I、N、S、Se及びそれらの混合物、または
(ii)F、Cl、N、S、及びそれらの混合物、または
(ii)F、N、及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの電気陰性元素をさらに含む
、請求項
1~4のいずれかに記載の混合相酸化物。
【請求項22】
前記少なくとも1つの電気陰性元素が、前記Oの量に対して、≦5at%または≦1at%の総量で存在する、請求項21に記載の混合相酸化物。
【請求項23】
前記第1の相及び前記第2の相の前記相互浸透混合物が、コア/シェル構造を形成しない
、請求項
1~4のいずれかに記載の混合相酸化物。
【請求項24】
前記混合相酸化物が、炭素で被覆されている
、請求項
1~4のいずれかに記載の混合相酸化物。
【請求項25】
請求項1~
4のいずれかに記載の混合相酸化物、及び少なくとも1つの他の成分を含み、任意選択で、前記少なくとも1つの他の成分が、結合剤、溶媒、導電性添加剤、異なる活電極物質、及びそれらの混合物から選択される、組成物。
【請求項26】
請求項1~
4のいずれかに記載の混合相酸化物を活電極物質として含む電極。
【請求項27】
前記混合相酸化物が、前記電極の前記総合的な活電極物質の少なくとも25重量%、少なくとも50重量%、または少なくとも75重量%を形成するか、または前記混合相酸化物が前記電極の前記唯一の活電極物質である、請求項26に記載の電極。
【請求項28】
結合剤、導電性添加剤、異なる活電極物質、及びそれらの混合物から選択される、少なくとも1つの他の成分をさらに含む、請求項2
6に記載の電極。
【請求項29】
前記異なる活電極物質が、リチウムチタン酸化物、チタンニオブ酸化物、異なる混合相酸化物、グラファイト、ハードカーボン、ソフトカーボン、シリコン、それらのドープ及び/またはカーボンコーティングバージョン、及びそれらの混合物から選択される、請求項28に記載の電極。
【請求項30】
任意選択で、金属イオン電池がリチウムイオン電池であり、前記電極がアノードを形成する、請求項2
6に記載の電極を含む金属イオン電池。
【請求項31】
23mA/gで230mAh/gより大きい可逆的アノード活物質比容量を有するリチウムイオン電池であり、23mA/gで初期のセル容量の70%超を保持しながら、前記電池は、230mA/g以上、または1000mA/g以上、または2000mA/g以上、または4000mA/g以上の前記アノード活物質に対する電流密度で充電及び放電することができる、請求項30に記載の金属イオン電池。
【請求項32】
混合相酸化物の使用であって、前記混合相酸化物は、金属イオン電池における活電極物質として請求項1~
4のいずれかに記載の通りであり、任意選択でリチウムイオン電池のアノードにおけるものである、前記使用。
【請求項33】
電極の製造方法であって、
請求項1~
4のいずれかに記載の混合相酸化物を得ること、及び
前記混合相酸化物を集電体上に堆積させて前記電極を形成すること、を含む、前記方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0106
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0106】
記載された元素M(III)及びM(II)の範囲についても、同様の利点が示されることが予想される。
本発明の具体的態様は以下のとおりである。
[態様1]
活電極物質として使用するための混合相酸化物であって、
前記混合相酸化物が、Nb及びTiを含み、さらに、M(III)及び/またはM(II)を含み、
M(III)は、Cr、Al、Ga、及びそれらの混合物から選択され、
M(II)はZn、Cu、Mg、及びそれらの混合物から選択され、
前記混合相酸化物が、第1の相と第2の相との相互浸透混合物を含み、
前記第1の相は、TiNb
2
O
7
の結晶構造を有し、前記第2の相は、Zn
2
Nb
34
O
87
の結晶構造を有する、前記混合相酸化物。
[態様2]
前記混合相酸化物のXRDパターンが、2θ=26.0±0.1°で前記第1の相に帰属するピークAを示す、態様1に記載の混合相酸化物。
[態様3]
前記混合相酸化物のXRDパターンが、2θ=24.9±0.1°で前記第2の相に帰属するピークBを示す、いずれかの先行態様に記載の混合相酸化物。
[態様4]
前記ピークBの強度I
B
の前記ピークAの強度I
A
に対する比率が、0<I
B
/I
A
≦0.4、または0.01≦I
B
/I
A
≦0.25、または0.05≦I
B
/I
A
≦0.22、または0.07≦I
B
/I
A
≦0.16である、態様2及び3に記載の混合相酸化物。
[態様5]
前記第1の相と前記第2の相との重量比が、199:1~1:1、または99:1~3:1、または50:1~8:1である、いずれかの先行態様に記載の混合相酸化物。
[態様6]
前記第1の相が、前記混合相酸化物の少なくとも85重量%、または少なくとも90重量%、または少なくとも92重量%を形成する、いずれかの先行態様に記載の混合相酸化物。
[態様7]
前記第1の相及び前記第2の相は、前記混合相酸化物の少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、または少なくとも95重量%を形成する、いずれかの先行態様に記載の混合相酸化物。
[態様8]
すべての陽イオンに対して、66~80at%のNbと、33~17at%のTiとを含み、さらに、>0~1at%のM(III)及び/または>0~2at%のM(II)を含む、いずれかの先行態様に記載の混合相酸化物。
[態様9]
M(III)とM(II)との前記組み合わせの量が、前記Nbの量に対して、≧0.05at%、または、≧0.5at%、または、≧0.6at%である、いずれかの先行態様に記載の混合相酸化物。
[態様10]
Ti:Nbの原子の比が、少なくとも0.3:1、または少なくとも0.4:1、または0.42:1~0.5:1である、いずれかの先行態様に記載の混合相酸化物。
[態様11]
M(III)を含むか、またはM(III)及びM(II)を含む、いずれかの先行態様に記載の混合相酸化物。
[態様12]
M(III)が、Cr、Al、及びそれらの混合物であり、M(II)がZnである、いずれかの先行態様に記載の混合相酸化物。
[態様13]
M(III)が、Cr、Al、及びそれらの混合物であるか、M(III)がCrである、いずれかの先行態様に記載の混合相酸化物。
[態様14]
M(II)が、Zn、Cu、及びそれらの混合物であるか、M(II)がZnである、いずれかの先行態様に記載の混合相酸化物。
[態様15]
M(III)及びM(II)を含み、M(III)がCrであり、M(II)がZnである、いずれかの先行態様に記載の混合相酸化物。
[態様16]
前記混合相酸化物が粒子形態であり、任意選択で前記混合相酸化物が0.1~100μm、または0.5~50μm、または1~20μmの範囲のD
50
の粒径を有する、いずれかの先行態様に記載の混合相酸化物。
[態様17]
前記混合相酸化物は、0.1~100m
2
/g、または0.25~50m
2
/g、または0.5~20m
2
/gの範囲のBET表面積である、いずれかの先行態様に記載の混合相酸化物。
[態様18]
前記混合相酸化物が、180nmを超える、または200nmを超える、または225nmを超える、または250nmを超える結晶子径を有する、いずれかの先行態様に記載の混合相酸化物。
[態様19]
少なくとも1つの追加の元素をさらに含み、任意選択で、前記追加の元素は、
(i)Zr、Hf、V、Fe、Ta、Mo、W、Mn、Co、Ni、Cd、B、Si、Sn、P、及びそれらの混合物、または
(ii)Zr、V、Fe、Mo、W、Mn、Co、Ni、Cd、B、Si、P、及びそれらの混合物、または
(iii)Zr、V、Fe、Mo、W、P、及びそれらの混合物から選択される、いずれかの先行態様に記載の混合相酸化物。
[態様20]
前記少なくとも1つの追加の元素が、前記Nbの量に対して、≦5at%、または≦1at%、または≦0.5at%の総量で存在する、態様19に記載の混合相酸化物。
[態様21]
(i)F、Cl、Br、I、N、S、Se及びそれらの混合物、または
(ii)F、Cl、N、S、及びそれらの混合物、または
(ii)F、N、及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの電気陰性元素をさらに含む、いずれかの先行態様に記載の混合相酸化物。
[態様22]
前記少なくとも1つの電気陰性元素が、前記Oの量に対して、≦5at%または≦1at%の総量で存在する、態様21に記載の混合相酸化物。
[態様23]
前記第1の相及び前記第2の相の前記相互浸透混合物が、コア/シェル構造を形成しない、いずれかの先行態様に記載の混合相酸化物。
[態様24]
前記混合相酸化物が、炭素で被覆されている、いずれかの先行態様に記載の混合相酸化物。
[態様25]
態様1~24のいずれかに記載の混合相酸化物、及び少なくとも1つの他の成分を含み、任意選択で、前記少なくとも1つの他の成分が、結合剤、溶媒、導電性添加剤、異なる活電極物質、及びそれらの混合物から選択される、組成物。
[態様26]
態様1~24のいずれかに記載の混合相酸化物を活電極物質として含む電極。
[態様27]
前記混合相酸化物が、前記電極の前記総合的な活電極物質の少なくとも25重量%、少なくとも50重量%、または少なくとも75重量%を形成するか、または前記混合相酸化物が前記電極の前記唯一の活電極物質である、態様26に記載の電極。
[態様28]
結合剤、導電性添加剤、異なる活電極物質、及びそれらの混合物から選択される、少なくとも1つの他の成分をさらに含む、態様26または態様27に記載の電極。
[態様29]
前記異なる活電極物質が、リチウムチタン酸化物、チタンニオブ酸化物、異なる混合相酸化物、グラファイト、ハードカーボン、ソフトカーボン、シリコン、それらのドープ及び/またはカーボンコーティングバージョン、及びそれらの混合物から選択される、態様28に記載の電極。
[態様30]
任意選択で、金属イオン電池がリチウムイオン電池であり、前記電極がアノードを形成する、態様26~29のいずれかに記載の電極を含む金属イオン電池。
[態様31]
23mA/gで230mAh/gより大きい可逆的アノード活物質比容量を有するリチウムイオン電池であり、23mA/gで初期のセル容量の70%超を保持しながら、前記電池は、230mA/g以上、または1000mA/g以上、または2000mA/g以上、または4000mA/g以上の前記アノード活物質に対する電流密度で充電及び放電することができる、態様30に記載の金属イオン電池。
[態様32]
混合相酸化物の使用であって、前記混合相酸化物は、金属イオン電池における活電極物質として態様1~24のいずれかに記載の通りであり、任意選択でリチウムイオン電池のアノードにおけるものである、前記使用。
[態様33]
電極の製造方法であって、
態様1~24のいずれかに記載の混合相酸化物を得ること、及び
前記混合相酸化物を集電体上に堆積させて前記電極を形成すること、を含む、前記方法。
【国際調査報告】