(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-17
(54)【発明の名称】高分子の精製
(51)【国際特許分類】
C12N 1/00 20060101AFI20250109BHJP
C12M 3/06 20060101ALI20250109BHJP
C12Q 1/34 20060101ALI20250109BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C12N1/00 Z
C12M3/06
C12Q1/34
C12M1/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024540610
(86)(22)【出願日】2022-12-29
(85)【翻訳文提出日】2024-08-02
(86)【国際出願番号】 US2022054220
(87)【国際公開番号】W WO2023132963
(87)【国際公開日】2023-07-13
(32)【優先日】2022-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523127981
【氏名又は名称】フィネクサス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PHYNEXUS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェルド,ダグラス
(72)【発明者】
【氏名】アプラオン,ドン
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA27
4B029BB11
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4B065BD18
4B065BD44
4B065BD50
4B065CA23
4B065CA60
(57)【要約】
本開示は、混合チャンバ内で細胞を化学的に処理するための自動化された方法を提供し、この自動化可能な方法は、細胞を提供することと、細胞を処理するための化学薬剤を提供することと、前記細胞および前記化学薬剤を含む液体混合物を形成することと、前記混合チャンバ内に往復液体流を提供することによって前記液体混合物を混合することと、を含む。プラスミド等の高分子を精製するための自動化されたプロセス、およびそのような高分子を精製するために構成されたワークステーションを含む自動化システムも提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合チャンバ内で細胞を化学的に処理するための自動化された方法であって、自動化可能な方法が、
細胞を提供することと、
細胞を処理するための化学薬剤を提供することと、
前記細胞および前記化学薬剤を含む液体混合物を形成することと、
前記混合チャンバ内に往復液体流を提供することによって前記液体混合物を混合することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記方法が、前記液体混合物を管に導入することをさらに含み、前記管が前記混合チャンバに接続可能であるように構成され、前記混合チャンバが前記管よりも広い、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記往復液体流が、少なくとも、前記混合チャンバに接続可能であるように構成されたポンプを使用して圧力勾配を生成することによって前記混合チャンバ内に液体を注入することによって提供される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記往復液体流が、少なくとも、前記混合チャンバに接続可能であるように構成されたポンプを使用して圧力勾配を生成することによって前記混合チャンバから液体を排出することによって提供される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記圧力勾配の方向が、複数回、好ましくは2~10回、より好ましくは4~6回交互する、請求項3および4に記載の方法。
【請求項6】
前記細胞が、細胞懸濁液の形態で提供される、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記化学薬剤が、溶解緩衝剤である、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記液体混合物が、DNaseまたはRNaseを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記液体混合物内に含まれる前記細胞の少なくとも一部が、前記混合チャンバ内で溶解を受ける、請求項7および8に記載の方法。
【請求項10】
前記液体混合物の前記細胞の少なくとも一部が、高分子を放出する、請求項7~9に記載の方法。
【請求項11】
前記化学薬剤が、沈殿剤である、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
高分子を精製するための自動化されたプロセスであって、
細胞を提供することと、
溶解緩衝剤を提供することと、
沈殿剤を提供することと、
前記細胞および前記溶解緩衝剤を含む液体混合物を形成し、混合チャンバ内に往復液体流を提供することによって前記液体混合物を混合することと、
前記液体混合物の少なくとも一部に前記沈殿剤を添加することによって非沈殿液体混合物を提供することと、
前記非沈殿液体混合物の少なくとも一部を少なくとも1つのフィルタに通すことによって濾液を提供することと、
を含む、プロセス。
【請求項13】
前記プロセスが、前記濾液の少なくとも一部をクロマトグラフィーカラムに通すことによって高分子を捕捉することと、
前記クロマトグラフィーカラムから前記高分子の少なくとも一部を溶出させることと、
をさらに含む、請求項12および13に記載のプロセス。
【請求項14】
前記プロセスが、前記クロマトグラフィーカラムから溶出した前記高分子を濃縮することをさらに含む、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記フィルタが、重力フィルタである、請求項12~14のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項16】
クロマトグラフィーカラムを横切る前記液体の前記通過が、往復液体流を含む、請求項13~16のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記液体混合物を混合すること、前記濾液を提供すること、および前記高分子を捕捉することの少なくとも1つが、自動化されるように構成されている、請求項12~16のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項18】
細胞によって産生された高分子を精製するために構成されたワークステーションを含む自動化システムであって、前記ワークステーションが、少なくとも、
往復液体流を実施するように構成された混合チャンバと、
重力濾過を実施するように構成されたフィルタと、
往復液体流を実施するように構成された液体クロマトグラフィーカラムと、
を含む、自動化システム。
【請求項19】
前記ワークステーションが、カルーセルである、請求項18に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2022年1月4日に出願された米国仮特許出願第63/296,224号および2022年3月2日に出願された欧州特許出願第22159731.3号の優先権を主張し、その各々の内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、高分子の精製の分野、ならびにその中で使用するための自動化可能なツールに関する。より具体的には、本発明は、混合チャンバ内での細胞の化学的処理のための自動化された方法、ならびにプラスミド等の高分子を精製するための自動化されたプロセスに関する。本発明はまた、そのような混合プロセス、ならびに高分子等の精製に使用するための装置およびシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
核酸のベクターとしての有用性から、現在、商業的にも科学的にも関心が高まっている1つの高分子がプラスミドである。プラスミドは、染色体DNAから物理的に分離され、それとは独立して複製することができる細胞内の小さな染色体外DNA分子である。ほとんどのプラスミドは二本鎖DNA分子であるが、一部は一本鎖DNAまたは主に二本鎖RNAからなる。染色体は大きく、通常の条件下で生存するための全ての必須の遺伝情報を含むが、プラスミドは通常非常に小さく、特定の状況または条件で有用であり得る追加の遺伝子のみを含む。プラスミドは、大量の所望のタンパク質を産生するために一般的に使用される細菌クローニングベクターであり、遺伝子治療の分野では、プラスミドを、例えば、哺乳動物細胞において欠いているタンパク質を発現させるように用意してもよい。今日、プラスミドの使用は、例えば、免疫応答が求められる抗原をコードするDNA配列を含有する遺伝子操作されたプラスミドが患者に導入される場合、ワクチン産生において非常に関連性が高い。
【0004】
大きな関心のある別の核酸ベクターは、非感染性の顕微鏡下病原体であるウイルスベクターである。ウイルスベクターは、遺伝子治療および癌治療ならびにワクチンの開発に広く使用されている。上記の医療用途で最も一般的に使用される3つのウイルスは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスおよびレンチウイルスである。ウイルスは多様であり、多種多様なゲノム構造を示す。レンチウイルスは、一本鎖RNAゲノムを有するエンベロープ型レトロウイルスである。アデノ随伴ウイルスは、一本鎖DNAゲノムを有するノンエンベロープウイルスである。アデノウイルスは、二本鎖DNAゲノムを有するノンエンベロープウイルスである。上記のウイルスの特に有用な特徴は、分裂細胞および非分裂細胞の両方に感染する可能性である。レンチウイルスおよびアデノウイルスの使用の更なる利点としては、取り扱いの容易さおよびより大きなDNAインサートを担持する能力が挙げられる。さらに、アデノウイルスは、CRISPR/Cas9遺伝子編集システムの送達およびウイルスベクターCOVID-19ワクチンの産生に使用されてきた。
【0005】
ある細胞から別の細胞への高分子の輸送のための別の媒介物は、エキソソームおよび他の細胞外小胞である。エキソソームは、ほとんどの真核細胞のエンドソーム区画で産生される膜結合細胞外小胞である。エキソソームはインビトロおよびインビボで強力な細胞応答を誘発する能力を有するため、エキソソームは潜在的な治療薬としてますます認識されている。例えば、エキソソームは、それらを非常に有効な薬物担体として独自に位置づける明確な利点を提供する。さらに、エキソソームは、低分子干渉RNAの効果的な送達のための有望な担体と見なすことができ、患者由来エキソソームは、いくつかの臨床試験において新規な癌免疫療法として使用されている。
【0006】
プラスミド精製では、成分が混合されると、ゲノムDNAが剪断され、精製されたプラスミドDNAと一緒に少なくとも部分的に回収され得、それにより、生成物が少なくとも医薬調製物としては役に立たなくなる。したがって、プラスミド放出に有効であり、かつゲノムDNAの剪断を引き起こさないという目的のプラスミドを含有する細胞のこのような処理を見出すことは困難である。
【0007】
手動で制御された手順では、成分を組み合わせて混合物を形成し、次いで、ボトルまたは管等の混合物を包含する担体を、均一な混合物を達成することを考慮して穏やかに反転させてもよい。混合プロセスの有効性を監視するために染料を混合物に添加してもよく、したがって、所望の有効性が達成されたときに混合プロセスが停止され得る。上記は、プロセスの持続時間を最小限に制限し、それによってプラスミド剪断の程度を低下させ得る。
【0008】
プラスミド精製のための現在提案されている自動化方法は、流れの混合、流れまたはパドルの撹拌を含む。これらの方法は全て、起こり得るゲノム剪断を引き起こすことを含む制限および欠点を有する。パドル混合は、パドルの末端において高い剪断速度を提供する。管またはチャンバ内の乱流混合に依存する流れ混合はもまた剪断を含み得る。したがって、従来技術の装置は、プラスミド精製のための完全に自動化されたプロセスまたはその装置もしくはシステムに組み込むことが困難である。
【0009】
欧州特許第0 811 055号(Genzyme Corp)は、将来の需要を満たすために大規模に高品質のプラスミドを単離するための自動化可能な方法を提供することを目的として記載している。より具体的には、第1の態様では、欧州特許第0 811 055号は、細胞を溶解する方法に言及する。この方法は、細胞懸濁液および溶解溶液をスタティックミキサに同時に流すことを含み、細胞は溶解された状態でスタティックミキサを出る。別の態様では、欧州特許第0 811 055号は、細胞溶解物または他のタンパク質含有溶液および沈殿溶液をスタティックミキサに同時に流す方法であって、溶解物またはタンパク質溶液は、沈殿可能な構成要素が沈殿した状態でスタティックミキサを出る方法に関する。2つの方法は、直列のスタティックミキサを使用することによって組み合わされ得る。好ましいものとして提示される実施形態では、適切なスタティックミキサは、2つの液体を対向する回転流で互いに接触させ、液体を乱流で混合させる内部螺旋構造を含む。欧州特許第0 811 055号の述べられた利点の1つは、大量の細胞を穏やかに連続的にインラインで溶解することができ、プラスミドDNAを損傷することなく大量の材料からプラスミドを単離するプロセスを大幅に単純化することである。
【0010】
米国特許第5,330,914号(CEMU Bioteknik)は、細胞懸濁液からのプラスミド等の染色体外DNAの自動精製のための方法であって、
細胞懸濁液をチャンバに導入することと、
溶解溶液をチャンバに導入し、それをその内容物と混合して、その中の細胞を溶解することと、
チャンバ内に沈殿溶液を導入し、それをその内容物と混合して、染色体DNA、ならびに任意にタンパク質および細胞残屑をその中に沈殿させることと、
フィルタを介してチャンバの内容物を濾過し、液体内容物を回収装置に供給することと、
回収装置の内容物から染色体外DNAを精製することと、
溶解溶液をチャンバ内に導入し、それをその内容物と混合して、その中に残っている沈殿物を溶解することと、
溶解した沈殿物をチャンバから廃棄物に供給することと、
を含む方法に関する。
【0011】
混合チャンバは、撹拌手段、例えば、細胞懸濁液と溶解液とを混合するための振動手段または回転手段を備えるものとして説明される。
【0012】
米国特許出願公開第2005/0026177号(Boehringer Ingelheim)は、生体分子、特に医薬品グレードのプラスミドDNAを生成するための拡張性のあるプロセスおよび装置に関する。米国特許出願公開第2005/0026177号の1つの目的は、細胞崩壊工程として改良されたアルカリ溶解法を含む製造規模で、目的のポリヌクレオチド、特にプラスミドDNAを単離するための自動化可能かつ拡張性のあるプロセスを提供することである。米国特許出願公開第2005/0026177号は、いくつかの混合技術が予備実験においてどのように試験されたかを記載しており、その後、ガラスビーズで満たされた管が、それぞれ細胞懸濁液および溶解溶液からなる2つの溶液の十分な混合および接触をもたらすことが見出された。さらに、米国特許出願公開第2005/0026177号は、記載されたプロセスが連続的かつ完全に自動化されて実行され得ることを教示している。
【0013】
国際公開第2012/134440号(Gjerde et al)は、DNAおよびRNA等の核酸、より詳しくはプラスミドの分離、抽出または精製等の試料調製のための方法および装置に関する。この方法は、高度に自動化可能であり、ピペットチップカラム形式で核酸を精製することを意図していると記載されている。しかしながら、国際公開第2012/134440号から、そこで使用されている「自動化可能」という用語が、溶解工程の直後に細胞ペレットから始まる精製手順を指すことは明らかである。
【0014】
既存の方法にもかかわらず、プラスミド精製のための自動化可能な方法が依然として必要とされており、この方法は、先行技術の方法と比較して、ゲノムDNAの剪断のリスクを小さくするか、または少なくとも低減させ、それによって最終生成物、例えば、抽出または精製されたプラスミドを汚染する。このような自動化可能な方法では、好ましくは全ての工程が自動化されているか、または少なくとも細胞を溶解緩衝剤と混合する重要な工程が自動化されている。また、そのような方法を可能にすることができる実際のハードウェア、例えば繊細なプラスミドを穏やかに処理し得る新規なミキサに対する関連する必要性が存在する。
【0015】
同様に、ウイルスベクターまたはウイルス粒子を精製する多くの異なる方法があるが、既存のプロセスのほとんどは欠点を抱えている。そのような欠点の1つは、大量のベクターまたはその一部を精製するために必要な拡張性の欠如である。別の欠点は、従来技術の方法およびプロセスが多数の非効率的な工程を必要とし、それによって累積的な収量低下のためにそれらを法外なコストおよび生産性の低いものにすることである。周知のタンパク質精製方法からの多くのプロセスはウイルス粒子精製に適合しているが、ウイルス粒子の複雑さは、対処する必要がある固有の課題を提供する。
【0016】
エキソソームの精製に関する限り、最も差し迫った問題の1つは、生物学的活性の喪失を伴う精製中の小胞の損傷リスク、十分に大きな試料の必要性、および単離の効率に関するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
概要
上記に照らして、本発明の目的は、添付の特許請求の範囲に定義されるように、2つ以上の成分を混合するための自動化可能な方法、高分子を精製するための自動化可能なプロセス、および高分子を精製ために構成されたワークステーションを含む自動化システムを提供することである。当該発明は、上記の問題を少なくとも部分的に緩和し、上記の1つ以上の必要性に少なくとも部分的に対処する。以下の詳細な開示および従属請求項から、更なる詳細および利点が続く。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の第1の態様によれば、混合チャンバ内で細胞を化学的に処理するための自動化された方法が提供され、この自動化可能な方法は、
細胞を提供することと、
細胞を処理するための化学薬剤を提供することと、
細胞および化学薬剤を含む液体混合物を形成することと、
混合チャンバ内に往復液体流を提供することによって液体混合物を混合することと、
を含む。
【0019】
本発明の別の態様によれば、高分子を精製するための自動化されたプロセスが提供され、このプロセスは、
細胞を提供することと、
溶解緩衝剤を提供することと、
沈殿剤を提供することと、
細胞および溶解緩衝剤を含む液体混合物を形成し、混合チャンバ内に往復液体流を提供することによって液体混合物を混合することと、
液体混合物の少なくとも一部に沈殿剤を添加することによって非沈殿液体混合物を提供することと、
非沈殿液体混合物の少なくとも一部を少なくとも1つのフィルタに通すことによって濾液を提供することと、
を含む。
【0020】
本発明の更に別の態様によれば、細胞によって産生された高分子を精製するために構成されたワークステーションを含む自動化システムが提供され、ワークステーションは、少なくとも、
往復液体流を実施するように構成された混合チャンバと、
重力濾過を実施するように構成されたフィルタと、
往復液体流を実施するように構成された液体クロマトグラフィーカラムと、
を含む。
【0021】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下に記載される実施形態を参照して明らかとなり、説明される。
【0022】
図面の簡単な説明
例示の目的のため、添付図面に示された実施形態を参照して、本発明を以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明による自動化精製プロセスの概要を概略的に示す。自動化精製プロセスは、細胞の懸濁からペレットの回収までの工程を含む。
【
図2】
図2は、本発明のミキサの配置を概略的に例示する図であり、ミキサは、自動化往復流モードで実施するように構成されている。
【
図3A】
図3Aは、混合チャンバを構成する垂直に配置された容器内のフローアップにおいて往復流混合がどのように達成され得るかを概略的に示す。
【
図3B】
図3Bは、混合チャンバを構成する垂直に配置された容器内のフローダウンにおいて、往復流混合がどのように達成され得るかを概略的に示す。
【
図4】
図4は、細胞によって産生された高分子を精製するために構成されたワークステーションを含む自動化システムの配置を概略的に例示し、ワークステーションはカルーセル型である。
【
図5】
図5は、高分子を精製するための自動化されたプロセスの工程を概略的に示し、このプロセスは、カルーセル型のワークステーション上で実施される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
実施形態の詳細な説明
以下の詳細な説明では、技術用語および表現が定義され、本発明の実施形態が説明される。
【0025】
一般に、出願本文で使用される全ての用語および表現は、本明細書で特に明示的に定義されない限り、関連する先行技術においてそれらに一般的に適用される意味に従って解釈されるべきである。
【0026】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかにそうでないことが示されない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「高分子(a macromolecule)」は、1つ以上の高分子を含み、「プラスミド(a plasmid)」は1つ以上のプラスミドを含み、「細胞(a cell)」は1つ以上の細胞等を含む。
【0027】
「高分子」という用語は、通常10オングストローム(10-6mm)未満の直径を有する通常の分子よりもかなり大きい任意の非常に大きな分子を指すと本発明の範囲内で理解される。高分子は、通常の分子よりもはるかに多くの原子から構成されている。そのような高分子の対応する分子量は、35000程度である。生物学的に重要なタンパク質および核酸は、高分子から構成される多くの物質の中にある。
【0028】
さらに、本出願の目的のために、特定の場合における「高分子」という用語は、プラスミド、ウイルスおよびその一部も包含する。
【0029】
「溶解緩衝液」という用語は、本発明の範囲内で、組み合わされた細胞を溶解することができる任意の添加剤を指すと理解される。言い換えれば、「溶解緩衝液」は、「溶解緩衝剤」を含む緩衝液である。
【0030】
同様に、「沈殿緩衝液」という用語は広い文脈で使用され、本発明の範囲内で、「沈殿剤」を含む緩衝液を指すと理解される。したがって、本明細書で使用される場合、「沈殿緩衝液」のいかなるpH緩衝効果の要件もなく、「沈殿緩衝剤」は、沈殿を提供することができる成分である。
【0031】
「溶解緩衝剤」および「沈殿剤」の両方の用語は、関連する技術分野の従来の意味で使用される。
【0032】
「チャンバ」という用語は、本発明の範囲内で、装置内等の密閉空間を指すと理解される。「混合チャンバ」、「チャンバ」および「混合カラム」という用語は、出願本文を通して互換的に使用される。
【0033】
本発明の例示的な実施形態を以下に説明する。
本発明者らは、プラスミドおよびウイルス等の少なくとも1種類の高分子を精製するための、本明細書では自動化ジェントルミキサ(AGM:Automated Gentle Mixer)と呼ばれることもある新規なミキサを開発した。以下の開示から明らかなように、精製のための細胞の処理および調製に関する本発明は、独立している。しかしながら、当業者は、本発明による自動化方法および自動化のための機器が、少なくとも1種類の高分子のための任意の精製プロセスの更なる自動化を可能にすることを理解するであろう。
【0034】
したがって、AGMの使用の1つの利点は、精製のための自動化可能なプロセスに完全に統合できることである。そのような自動化可能なプロセスは、任意の所望の規模に拡張可能であり得る。本発明の技術は、往復流プロセスに基づく。
【0035】
本発明の別の利点は、新規なミキサが、例えば、スーパーコイルドプラスミドおよびウイルス粒子のようなプラスミド等の非常に繊細な場合がある構成要素の穏やかな混合を提供することである。穏やかな混合は、乱流および/または機械的撹拌機の一般的に使用される過酷な条件を回避することによって得られる。代わりに、本発明によれば、組み合わせた構成要素または成分は、それらを一緒に「折り畳む」ことによって混合される。「折り畳む(Folding)」は、例えば、乱流の生成を回避するためにかき混ぜないでまたは撹拌せずに、構成要素または成分を穏やかな方法で一緒に組み合わせるプロセスを説明するために本明細書で使用される用語である。
【0036】
本発明は、層流によって提供される自動化混合に基づいている。液体のフローは、管に入り、管を通って流れ、チャンバ内へと膨張する。フローが膨張すると、液体および懸濁粒子は、それ自体の上に戻り、すなわち、折り返しが混合を引き起こす。下向きフローも層流であり、液体および微粒子の折り返しは混合チャンバ内で行われる。本発明の利点は、その中の混合プロセスが機械的であるが、穏やかで、拡張可能であり、高分子の精製のための完全に自動化されたプロセスに統合可能であることである。
【0037】
本発明の第1の態様によれば、混合チャンバ内で細胞を化学的に処理するための自動化された方法が提供され、この自動化可能な方法は、
細胞を提供することと、
細胞を処理するための化学薬剤を提供することと、
細胞および化学薬剤を含む液体混合物を形成することと、
混合チャンバ内に往復液体流を提供することによって液体混合物を混合することと、
を含む。
【0038】
当業者は、上記の「液体混合物」が懸濁液、すなわち、固体粒子を含有する流体の不均一混合物とも見なされ得ることを理解するであろう。往復液体流を提供することによって、液体混合物または懸濁液は混合に供され、その混合は、より均一な液体混合物またはより均一な懸濁液を提供し得る。
【0039】
上記の自動化可能な方法によれば、2つ以上の成分を混合チャンバ内で混合することができる。第1の成分は、細胞を含む液体であり得、第2の成分は、溶解緩衝液または沈殿緩衝液のいずれかであり得る。混合は、混合チャンバ内に往復液体流を提供することによって得られ得る。
【0040】
方法は、液体混合物を管に導入することをさらに含んでもよく、管は混合チャンバに接続可能に構成され、混合チャンバは管よりも広い。当業者はまた、上記の管および混合チャンバが別個の実体である必要はないことを理解するであろう。液体混合物は、通路に十分に導入され得て、ここで液体混合物は、最初に通路の第1の部分に入り、次いで通路の第2の部分に入り、通路の第1の部分は通路の第2の部分よりも広い。
【0041】
往復液体流は、少なくとも、混合チャンバに接続可能であるように構成されたポンプを使用して圧力勾配を生成することによって、混合チャンバ内に液体を注入することによって提供され得る。混合チャンバに真空を印加することは、混合チャンバ内への液体の吸引をもたらし得る。混合チャンバ内の液体の移動は、往復液体流として説明され得る。当業者であれば、この文脈における「真空」は絶対的な用語で理解されるべきではなく、相対的な用語で理解されるべきであることを理解するであろう。
【0042】
代替的には、往復液体流は、少なくとも、混合チャンバに接続可能であるように構成されたポンプを使用して圧力勾配を生成することによって、混合チャンバから液体を排出することによって提供され得る。ポンプ動作を混合チャンバに適用することにより、その中に収容された液体を吐出してもよい。液体の移動は、往復液体流として説明され得る。
【0043】
圧力勾配の方向は、複数回、好ましくは2~10回、より好ましくは4~6回交互し得る。往復流モードは、混合チャンバ内での吸引および混合チャンバからの吐出を任意の回数、1~10回等、例えば、2~5回繰り返すことによって得られ得る。
【0044】
往復流モードは、主にクロマトグラフィーにおける周知の原理であり、デュアルフロークロマトグラフィーとして知られていることもある(例えば、米国特許第7,482,169号(Gjerde et al)を参照)。したがって、当業者は、往復流モードを使用して特許請求された混合を実施するように市販のハードウェアを容易に構成することができる。
【0045】
本発明は、往復流が、プラスミドまたはウイルス等の高分子の精製のためのプロトコルにわたって液体構成要素の十分に満足のいく混合をもたらす方法で構成され得るという知見に基づいている。このフローを使用する1つの主な利点は、本発明による自動混合を任意の自動化された従来技術のプロセスに統合する機会を提供することによって、そのようなプロトコルを完全に自動化できるようにすることである。上記は、容器の手動の、したがって時間のかかる慎重な回転を回避することを可能にする。これまで、このような容器の回転は、高分子の精製のためのプロトコルにわたって液体構成要素の十分に満足のいく混合を達成するために必要とされてきた。
【0046】
最も好都合なのは、各成分を管に導入し、その後、それらを混合チャンバの頂部または上部に添加し、それらをその中で膨張させることである。本明細書で膨張チャンバと呼ばれることもある混合チャンバは、任意の適切な容器に配置されてもよい。本発明の1つの利点は、ミキサが容易に廃棄されることである。さらに、本発明のミキサは独立していてもよく、バルブ管等に組み込まれていなくてもよいため、その洗浄は従来技術の設備の洗浄よりも容易である。
【0047】
当業者には理解されるように、膨張チャンバの容積は、有利には、混合されている試料全体を処理するのに十分な大きさである。
【0048】
大規模用途では、ベッドボリュームが25mLのカラムボリューム1L(ギガスケール)、またはベッドボリュームが259mLのカラムボリューム10L(テラスケール)を使用することが適切であり得る。
【0049】
例示的な例では、ミキサ容積は約1Lであってもよく、管寸法は内径約4~8mmの管である。当業者は、管のサイズを混合チャンバのサイズに調整し得ることを理解するであろう。より小さいプラスミド調製物のためのより小さい混合チャンバには、より小さい管を使用してもよい。より大きなプラスミド調製物のためのより大きな混合チャンバには、より大きな管を使用してもよい。この目的のため、標準的な配管および他の設備は、当業者によって適切に容易に選択および適合され得る。例えば、配管および/または混合チャンバの寸法は、所望の程度の層状液体流、例えば、ほぼ完全に層状の液体流を提供するように選択され得る。
【0050】
したがって、有利な例では、条件、ハードウェアおよび設定は、混合チャンバ内、および任意に、使用されるセットアップの他の部分内に実質的に層流を提供するように選択または構成される。本発明者らは、層流混合のより緩やかな条件が、例えば、機械的撹拌手段を用いて得られたもののように、より激しい乱流を利用する従来技術のプロトコルを使用する場合にその内容物が損傷され得る細胞懸濁液等の液体の混合に効率的であることを予想外に見出した。
【0051】
一例では、混合チャンバ内のフローは、いくらかの乱流を可能にする。
有利な例では、
図3Aおよび
図3Bにそれぞれ示すように、真空は液体の上方への吸引を提供するように構成され、圧送は液体の下方への吐出を提供し得る。両方向に緩やかな混合が生じる。この目的のため、蠕動ポンプ等の任意の適切な設備を使用してもよい。当業者には理解されるように、往復流が達成される方法は、例えば、所望の混合度合、ならびに本明細書では「細胞液」と呼ばれることもある細胞を含む液体の性質に応じて、多くの異なる方法で得られ得て、したがって、これは本発明の限定的な特徴ではない。
【0052】
細胞は、細胞懸濁液の形態で提供され得る。細胞は、増殖培地等の固体培地の表面上または固体培地内に細胞コロニーの形態で提供され得る。
【0053】
細胞を含む液体、すなわち、細胞懸濁液等の細胞液は、本発明の混合チャンバに添加される前に、前処理および/またはコンディショニングの1つ以上の工程に供されていてもよい。そのような先行する工程は、例えば、pH調整、遠心分離、何らかの液体のデカンテーション、または当分野で一般的に使用される任意の他の適切な手段である。
【0054】
化学薬剤は、溶解緩衝剤または溶解緩衝液であり得る。有利には、液体混合物はDNaseもしくはRNaseを含み得るか、または溶解緩衝液はDNaseもしくはRNaseを含み得る。
【0055】
本発明の自動化方法によれば、液体混合物内に含まれる細胞の少なくとも一部は、混合チャンバ内で溶解を受けてもよい。溶解中、細胞はウイルスおよび/またはプラスミド等の高分子を放出する。液体混合物の細胞の少なくとも一部は、高分子を放出する。
【0056】
溶解緩衝液が細胞液体と混合される場合、細胞は有利には混合チャンバ内で溶解を受ける。このような溶解工程の持続時間は、細胞型および溶解剤、液体流量等の当業者に周知の要因に起因して調整され得る。そのような細胞は、真核細胞または原核細胞、例えば細菌細胞であり得る。有利な細胞は、精製された形態で治療またはワクチン等の医薬用途に有用な特定の遺伝子またはタンパク質を発現するように産生された組換え細胞である。したがって、溶解された細胞は、ウイルスおよび/またはプラスミド等の高分子を放出し得る。有利には、放出された高分子は、プラスミド、例えばスーパーコイルドプラスミドDNAである。
【0057】
化学薬剤は、沈殿剤または沈殿緩衝液であってもよい。
本発明の混合を、カオトロピックプラスミド精製またはイオン交換プラスミド精製のための調製を含む、任意の種類の溶解および沈殿試料調製化学に使用することができる。陰イオン交換プラスミド精製を含むイオン交換プラスミド精製は、参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2022/076543号および国際公開第2021/170564号のいずれかに記載されているとおりであり得る。
【0058】
細胞液、ならびに溶解緩衝液および/または沈殿緩衝液に加えて、本方法は、洗浄緩衝液等の少なくとも1つの追加成分も含み得る。そのような追加の成分は、
図2に示すように、別々に混合チャンバに圧送される試薬であってもよい。当業者は、一般的な一般知識を使用して、例えば、細胞ならびに精製される所望の高分子に応じて、どの追加の成分が適切であるかを結論付けることができる。
【0059】
さらに、開始された混合の後、すなわち、往復流の1つ以上のサイクルの後に、様々な成分を混合チャンバに添加してもよい。例えば、混合の第1の期間またはサイクル、例えば、細胞および溶解緩衝剤を含む液体混合物の混合の後、沈殿緩衝液または沈殿剤が、混合チャンバに添加され得る。
【0060】
本発明の別の態様によれば、高分子を精製するための自動化されたプロセスが提供され、このプロセスは、
細胞を提供することと、
溶解緩衝剤を提供することと、
沈殿剤を提供することと、
細胞および溶解緩衝剤を含む液体混合物を形成し、混合チャンバ内に往復液体流を提供することによって液体混合物を混合することと、
液体混合物の少なくとも一部に沈殿剤を添加することによって非沈殿液体混合物を提供することと、
非沈殿液体混合物の少なくとも一部を少なくとも1つのフィルタに通すことによって濾液を提供することと、
を含む。
【0061】
本発明はまた、細胞を含む液体から高分子を精製するための自動化可能なプロセスに関し、このプロセスは、細胞液を混合チャンバ内で往復液体流モードで溶解緩衝液または沈殿緩衝液の少なくともいずれかと混合して、溶解および/または沈殿した細胞を含む液体混合物を生成することを含む。一旦混合されると、溶解または沈殿した細胞は、膜、ビーズ、繊維またはカラム工程等の助けを借りて、精製のために一般的に使用される任意の更なる工程に供され得る。任意に、溶解および/または沈殿した細胞を含む当該液体混合物を、少なくとも1つのフィルタに通して濾液を生成し得る。
【0062】
フィルタは、自動化可能であり、混合チャンバを出る液体中に存在する他の構成要素から高分子を分離することができる任意の適切なフィルタ、例えば重力フィルタであってもよい。濾過工程によって分離される構成要素の例は、細胞残屑、凝集剤および特定のより大きなタンパク質である。本発明のプロセスは、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく2つ以上のフィルタを含み得るが、有利で自動化可能な例は重力濾過の原理に基づく単一の濾過工程を含む。高分子の収率を最大にするために、濾過工程は、混合液がフィルタを通過した後に適切な洗浄液を添加することによるフィルタの洗浄を含み得る。
【0063】
上記の自動化されたプロセスは、濾液の少なくとも一部をクロマトグラフィーカラムに通すことによって高分子を捕捉することと、クロマトグラフィーカラムから高分子の少なくとも一部を溶出させることと、をさらに含み得る。
【0064】
クロマトグラフィーカラムは、濾過された液体中に存在する他の構成要素、例えば依然として残っている任意の細胞残屑または凝集剤、ならびにより小さなタンパク質から高分子を分離することができる任意の適切なカラムであり得る。例えば、クロマトグラフィーカラムは、エンドトキシン、望ましくないウイルスまたはその一部から所望の高分子を選択的に分離するように構成することができる。この工程のための設備は市販されており、当業者が本発明に従って使用するために容易に適合され得る。
【0065】
有利な例では、クロマトグラフィーカラムを横切る液体の通過は、往復流を含む。上述のように、そのようなフローはクロマトグラフィーの分野で周知であり、当業者は、考案された分離のための最適条件を容易に選択することができる。
【0066】
上記の自動化されたプロセスは、クロマトグラフィーカラムから溶出した高分子を含む高分子を濃縮することをさらに含み得て、すなわち、このプロセスは、精製された高分子を含む固体沈殿物を生成するための濃縮工程を含み得る。いわゆるエタノール沈殿または(エタノール)カラム濃縮は、プロセスの最後の工程であり得る。この工程では、エタノールと共に、高濃度の塩、通常は酢酸カリウムまたは酢酸ナトリウムを添加してもよい。
【0067】
上述のように、本発明の1つの主な利点は、細胞液と溶解緩衝液等の他の成分との自動化混合を可能にすることである。したがって、本プロセスの一例では、少なくとも混合、ならびに好ましくは濾過およびクロマトグラフィーを使用する工程が自動化されるように構成される。
【0068】
本発明の更に別の態様によれば、細胞によって産生された高分子を精製するために構成されたワークステーションを含む自動化システムが提供され、ワークステーションは、少なくとも、
往復液体流を実施するように構成された混合チャンバと、
重力濾過を実施するように構成されたフィルタと、
往復液体流を実施するように構成された液体クロマトグラフィーカラムと、
を含む。
【0069】
本発明のシステムの有利な例では、ワークステーションはカルーセル、すなわち、細胞培養液の連続的な循環式プロセシングを可能にして、プラスミドまたはウイルス等の所望の高分子を精製する系である。カルーセル型ワークステーションを含むそのようなシステムの一例を
図4および
図5に示す。
【0070】
本発明によるシステムはまた、溶離液および洗浄液等の液体を保持する容器を含んでもよい。システムは、GigaPrepまたはTeraPrepの規模で精製するように構成されてもよく、これらの用語は一般的に使用され、この分野でよく知られている。
【0071】
システムのモジュールは、周知の原理に従って、Zドライブで取り付けられてもよい。有利には、ワークステーションは、プロセシングの速度を最適化しながら全ての利点から完全に利益を得るために特定の用途のために設計される。例えば、2段カルーセルを使用してもよく、これは頂部レベルが安定しており、下部レベルが移動可能である。
【0072】
本発明の第1の態様の上述の実施形態はまた、明示的に言及されていなくても、本発明の更なる態様にも適用され得ることが理解される。
【0073】
本発明は、主にいくつかの実施形態を参照して上に記載されている。しかしながら、当業者によって容易に理解されるように、上記で開示されたもの以外の他の実施形態も、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内で等しく可能である。
【0074】
図面の詳細な説明
図1は、本発明による自動化精製プロセスの概要を概略的に示す。自動化精製プロセスは、細胞の懸濁からペレットの回収までの工程を包含する。この概要は、混合工程が完全に自動化されたプラスミド精製プロセスにどのように組み込まれ得るかを例示する。より具体的には、プロセスは、Zドライブに取り付けられた自動化ジェントルミキサ(AGM)の適用から始まる。その後、重力フィルタが適用される。次いで、
(商標)カラム(Biotage AB)等のZドライブ搭載クロマトグラフィーカラムを適用する。Zドライブ搭載クロマトグラフィーカラムは、溶出前に高分子を捕捉すること、ならびにその洗浄を可能にするように構成される。最後に、エタノールを用いて濃縮するためのZドライブ搭載カラムを任意に使用してもよい。
【0075】
図2は、本発明のミキサの配置を概略的に例示し、ミキサは、自動化往復流モードで実施するように構成されている。試薬A、試薬Bおよび試薬C等の個々の成分は全て、それぞれの試薬ポンプによって、すなわち、試薬ポンプA2、試薬ポンプB3、および試薬ポンプC4によって混合チャンバ1に別々に提供される。懸濁細胞5も提供される。両方向に緩やかな混合が生じる。この目的のため、蠕動ポンプ6が使用される。
【0076】
図3Aは、混合チャンバを構成する垂直に配置された容器内のフローアップにおいて往復流混合がどのように達成され得るかを概略的に示す。
【0077】
図3Bは、混合チャンバを構成する垂直に配置された容器内のフローダウンにおいて往復流混合がどのように達成され得るかを概略的に示す。
【0078】
図4は、細胞によって産生された高分子を精製するために構成されたワークステーションを含む自動化システムの配置を概略的に例示し、ワークステーションはカルーセル型である。ワークステーションは、GigaPREPおよびTeraPREP固定タワーならびに緩衝液リザーバとしての容器を含む。
(商標)クロマトグラフィーカラムは、例示的なワークステーションで使用される。溶解、沈殿、エンドトキシン除去、水性濾液洗浄および溶出のプロセスのための消耗品はバルクである。
【0079】
図5は、高分子を精製するための自動化されたプロセスの工程を概略的に示し、このプロセスは、カルーセル型のワークステーション、より具体的にはGigaPREPおよびTeraPREPカルーセル回転ステーションで実施される。プロセス工程は、混合および濾過、それに続くカラムクロマトグラフィー、エタノールを使用した選択的溶出および濃縮の2つの後続の工程の前のカラム洗浄を含む。
【実施例】
【0080】
本実施例は、例示のみを目的として提供されており、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明を限定すると解釈されるべきではない。以下および本出願の他の箇所に提供される全ての参考文献は、参照により本明細書に含まれる。
【0081】
実施例1:プラスミド精製-完全に自動化された試料のフロー
以下のプロセスを行うために、必要なハードウェア要素に適合可能な市販のワークステーションが使用され得る。プロトコルは、以下のように読み取られ得る。
【0082】
1.15gの細胞ペレットを再懸濁する。ガラスビーズ、RNaseおよび色素を添加する。87mL振盪。機器内の試料容器に注入する。デュアルフロー混合カラムを用いて細胞ペレット再懸濁を自動化することが可能であるが、この工程は厳密な混合を必要とする。デュアルフロー混合カラムは穏やかな混合のために設計されており、この技術は、ゲノムDNAの剪断を防ぐための穏やかな溶解および沈殿における使用により適している可能性がある。
2.溶解緩衝液を圧送、103mL、およびデュアルフロー混合。
3.カラムヘッド圧力、真空および吐出量は、カラムの頂部に取り付けられた蠕動ポンプによって制御される。
4.沈殿緩衝液を圧送、123mLデュアルフロー混合。
5.25mL ERBエンドトキシン除去緩衝液を圧送、非常に穏やかなデュアルフロー混合、1サイクル。
注記:ゲノムDNAの気泡形成および剪断を回避するよう努力する。ERBは界面活性剤である。デュアルフロー混合カラムの頂部に圧送する。各バルク試薬について、ポンプは蠕動性である。溶解、沈殿、ERB除去および可能な水性濾液洗浄のプロセスのための消耗品はバルクである。
6.混合物をデュアルフロー混合カラム内に吸引し、カルーセルを時計回りに回転させ(
図4および
図5)て、デュアルフロー混合カラムの下にプロセシングリザーバを備えた重力フィルタを配置する。300mLの濾液を回収する。
注記:動作5および6が同時に行われる。
7.20mLのベッドカラムを60mLの平衡化緩衝液で平衡化する。60mLをカラムの上部に圧送、デュアルフロー混合。吐出。
注記:濾液は依然としてフィルタの下にあり、カラムは平衡化リザーバを下にしてコンディショニング位置にある。
8.反時計回りに回転させて、濾液試料を捕捉カラムの下に配置する。8回のデュアルフローサイクルで試料全体を捕捉する。
注記:カラムヘッドの圧力および真空は、カラムの上部に配置された蠕動ポンプによって制御される。
9.カルーセルを時計回りに回転させて洗浄試料リザーバにし、200mLを圧送し、デュアルフロー洗浄にする。
注記:洗浄を繰り返してもよい。洗浄はトップダウンフローであり得る。
10.カルーセルを溶出液リザーバまで時計回りに回転させる。60mLを圧送し、デュアルフロー溶出する。200mLのプラスチックキャプチャーボトルを使用する。
注記:溶出はトップダウンフローであり得る。
11.同じ試料の捕捉を繰り返してもよい。捕捉サイクルごとに、追加の洗浄位置および溶出位置が必要とされ得る。この例では、3つの溶出位置が利用されている。
12.カルーセルを時計回りに回転させ、エタノールを圧送して沈殿工程を行う。管を挿入してエタノールを圧送する。気泡混合を使用する。
【手続補正書】
【提出日】2024-10-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合チャンバ内で細胞を化学的に処理するための自動化された方法であって、自動化
された方法が、
混合チャンバを提供することと、
細胞を提供することと、
細胞を処理するための化学薬剤を提供することと、
液体混合物を形成するために前記細胞および前記化学薬剤を
前記混合チャンバ内で混ぜ合わせることと、
前記混合チャンバ内に往復液体流を提供することによって
、前記細胞と前記化学薬剤との混合を提供することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記方法が、前記液体混合物を管に導入することをさらに含み、前記管が前記混合チャンバに接続
されるように構成され、前記混合チャンバが前記管よりも広い、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記往復液体流が、少なくとも、前記混合チャンバに接続
されるように構成されたポンプを使用して圧力勾配を生成することによって前記混合チャンバ内に液体を注入することによって提供される、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
前記往復液体流が、少なくとも、前記混合チャンバに接続
されるように構成されたポンプを使用して圧力勾配を生成することによって前記混合チャンバから液体を排出することによって提供される、請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
前記圧力勾配の方向が、複数回、好ましくは2~10回、より好ましくは4~6回交互する、請求項3
または4に記載の方法。
【請求項6】
前記細胞が、細胞懸濁液の形態で提供される、
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記化学薬剤が、
溶解剤である、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記液体混合物が、DNaseまたはRNaseを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記液体混合物内に含まれる前記細胞の少なくとも一部が、前記混合チャンバ内で溶解を受ける、請求項7
または8に記載の方法。
【請求項10】
前記液体混合物の前記細胞の少なくとも一部が、高分子を放出する、請求項
7に記載の方法。
【請求項11】
前記化学薬剤が、沈殿剤である、
請求項1に記載の方法。
【請求項12】
高分子を精製するための自動化されたプロセスであって
細胞を提供することと、
溶解緩衝剤を提供することと、
沈殿剤を提供することと、
前記細胞および前記溶解緩衝剤を含む液体混合物を形成し、混合チャンバ内に往復液体流を提供することによって前記液体混合物を混合することと、
前記液体混合物の少なくとも一部に前記沈殿剤を添加することによって非沈殿液体混合物を提供することと、
前記非沈殿液体混合物の少なくとも一部を少なくとも1つのフィルタに通すことによって濾液を提供することと、
を含む、プロセス。
【請求項13】
前記プロセスが、前記濾液の少なくとも一部をクロマトグラフィーカラムに通すことによって高分子を捕捉することと、
前記クロマトグラフィーカラムから前記高分子の少なくとも一部を溶出させることと、
をさらに含む、請求項1
2に記載のプロセス。
【請求項14】
前記プロセスが、前記クロマトグラフィーカラムから溶出した前記高分子を濃縮することをさらに含む、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記フィルタが、重力フィルタである、請求項1
2に記載のプロセス。
【請求項16】
クロマトグラフィーカラムを横切る前記液体の前記通過が、往復液体流を含む、請求項1
3~15のいずれか1項に記載のプロセス。
【国際調査報告】