(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-17
(54)【発明の名称】キナーゼ阻害剤として使用される化合物およびその使用
(51)【国際特許分類】
C07D 403/14 20060101AFI20250109BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20250109BHJP
C07D 413/14 20060101ALI20250109BHJP
C07D 401/14 20060101ALI20250109BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250109BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C07D403/14 CSP
A61K31/506
C07D413/14
C07D401/14
A61P43/00 111
A61P35/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024540994
(86)(22)【出願日】2023-03-15
(85)【翻訳文提出日】2024-07-05
(86)【国際出願番号】 CN2023081557
(87)【国際公開番号】W WO2023185468
(87)【国際公開日】2023-10-05
(31)【優先権主張番号】202210348367.7
(32)【優先日】2022-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519419832
【氏名又は名称】ティーワイケー メディシンズ インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】TYK MEDICINES INC.
【住所又は居所原語表記】Room 1403-2,Block A,Changxing World Trade Building,No.1278,Mingzhu Road,Changxing Economic Development Zone,Huzhou,Zhejiang 313100,CHINA
(71)【出願人】
【識別番号】523466400
【氏名又は名称】ティーワイケー メディシンズ(ジョンジョウ),インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】TYK MEDICINES(ZHENGZHOU),INC.
【住所又は居所原語表記】15/F,Building 1,Zhengzhou Linkong Biopharmaceutical Park,Northeast Corner Of The Intersection Of Huanghai Road And Biotechnology Second Street,Zhengzhou Airport Economy Zone,Zhengzhou,Henan 451162,China
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー,ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ユーション
(72)【発明者】
【氏名】ニウ,チョンシャン
(72)【発明者】
【氏名】グオ,ジョンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】リィアン,アペン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC42
4C086BC71
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC20
(57)【要約】
本発明は、窒素原子を複素環原子とする複素環化合物の薬物合成の分野に属し、具体的に、キナーゼ阻害剤として使用される化合物およびその使用に関し、また、当該化合物の遊離塩基結晶形の製造に関する。当該キナーゼ阻害剤として使用される化合物は式1で表される化合物、あるいはその重水素化物、または薬学的に許容される塩、溶媒和物またはプロドラッグである。以上の化合物は、生物活性実験により、EGFRおよびHer2のエクソン20挿入突然変異、EGFRのエクソン19欠失、エクソン21の点突然変異に良い抑制活性を有し、関連薬物の原料薬として有用であることが実証された。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キナーゼ阻害剤として用いられる化合物であって、式1で表される化合物、あるいはその重水素化物、または薬学的に許容される塩、溶媒和物またはプロドラッグであることを特徴とする、前記化合物。
【化1】
(式1において、XはCH、Nから選ばれる。
R
1は
【化2】
から選ばれ、R
5はH、C1-C3アルキル基、C1-C3フッ化アルキル基である。
R
20、R
21、R
22はそれぞれ独立にメチル基または重水素化メチル基から選ばれる。
R
3はC1-C3アルキル基、C1-C3ハロアルキル基から選ばれる。
R
40、R
41、R
42はそれぞれ独立にH、D、Fから選ばれる。)
【請求項2】
式2で表される化合物、あるいはその重水素化物、または薬学的に許容される塩、溶媒和物またはプロドラッグであることを特徴とする、請求項1に記載のキナーゼ阻害剤として用いられる化合物。
【化3】
【請求項3】
式2において、XはCH、Nから選ばれ、R
3は-CH
3、-CH
2CH
3、-CH
2CF
3から選ばれ、R
40、R
41はいずれもHで、R
42はHまたはFから選ばれることを特徴とする、請求項2記載のキナーゼ阻害剤として用いられる化合物。
【請求項4】
式3で表される化合物、あるいはその重水素化物、または薬学的に許容される塩、溶媒和物またはプロドラッグであることを特徴とする、請求項1に記載のキナーゼ阻害剤として用いられる化合物。
【化4】
【請求項5】
式3において、XはCH、Nから選ばれ、R
3は-CH
3、-CH
2CH
3、-CH
2CF
3で、R
40、R
41はいずれもHで、R
42はHまたはFから選ばれ、 R
5は-CH
3、-CF
3から選ばれることを特徴とする、請求項4に記載のキナーゼ阻害剤として用いられる化合物。
【請求項6】
式1で表される化合物は、以下:
【化5】
であることを特徴とする、請求項1に記載のキナーゼ阻害剤として用いられる化合物。
【請求項7】
前記化合物は、結晶形、無定形または前記溶媒和物で、前記溶媒和物に含まれる溶媒は、非水溶媒または非水溶媒と水からなる混合溶媒であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のキナーゼ阻害剤として用いられる化合物。
【請求項8】
構造が式Aで表される化合物で、
【化6】
結晶形が遊離塩基結晶形Iで、当該結晶形の粉末X線回折スペクトルでは、2θが9.76°±0.2°、10.45°±0.2°、16.54°±0.2°、18.66°±0.2°、20.07°±0.2°、25.90°±0.2°の箇所に特徴的な回折ピークがあることを特徴とする、請求項7に記載のキナーゼ阻害剤として用いられる化合物。
【請求項9】
前記遊離塩基結晶形Iの粉末X線回折スペクトルでは、2θが9.07°±0.2°、9.76°±0.2°、10.45°±0.2°、11.53°±0.2°、11.80°±0.2°、12.91°±0.2°、13.79°±0.2°、14.67°±0.2°、15.08°±0.2°、15.63°±0.2°、16.54°±0.2°、17.50°±0.2°、18.66°±0.2°、20.07°±0.2°、21.10°±0.2°、23.29°±0.2°、24.16°±0.2°、25.90°±0.2°の箇所に特徴的な回折ピークがあることを特徴とする、請求項8に記載のキナーゼ阻害剤として用いられる化合物。
【請求項10】
EGFR突然変異および/またはHER2突然変異による関連疾患を治療する薬物の製造における、請求項1~9のいずれか一項に記載のキナーゼ阻害剤として用いられる化合物の使用。
【請求項11】
前記EGFR突然変異および/またはHER2突然変異は、EGFRエクソン20挿入突然変異、HER2エクソン20挿入突然変異、EGFRエクソン19欠失、EGFRエクソン21の点突然変異、EGFRエクソン20の点突然変異のうちの一つまたは二つ以上の組み合わせを含むことを特徴とする、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記のEGFR突然変異および/またはHER2突然変異は、EGFR Del 19/T790M/C797S突然変異、EGFR L858R/T790M/C797S突然変異から選ばれることを特徴とする、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記疾患は、前記EGFR突然変異および/またはHER2突然変異による癌であることを特徴とする、請求項10、11または12に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒素原子を複素環原子とする複素環化合物の薬物合成の分野に属し、具体的に、キナーゼ阻害剤として使用される化合物およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
上皮成長因子受容体は受容体型チロシンキナーゼ(RTK)ファミリーに属し、EGFR/ERBB1、HER2/ERBB2/NEU、HER3/ERBB3およびHER4/ERBB4を含む。上皮成長因子受容体はホモ二量体化またはヘテロ二量体化によってそのチロシンキナーゼ活性を活性化させ、そしてその基質をリン酸化させることで、細胞内におけるそれに関連するいくつかの下流経路、たとえば、細胞生存に関与するPI3K-AKT-mTOR経路や細胞増殖に関与するRAS-RAF-MEK-ERK経路などを活性化させる。上皮成長因子受容体の突然変異や増幅などはヘテロ二量体キナーゼの活性化を引き起こすことで、ヒトの多くの疾患、たとえば、悪性腫瘍の発生につながる。たとえば、非小細胞肺癌の患者のうち、米国の患者における約10%以上の患者がEGFR突然変異があり、亜州の患者におけるEGFR突然変異の患者の比率が50%近くに達する。同時に、非小細胞肺癌の患者において、HER2突然変異のある発症率が約2-4%である。
【0003】
EGFR突然変異は主に欠失、挿入および点突然変異などを含み、中では、エクソン19欠失およびエクソン21のL858R点突然変異はEGFR突然変異の90%近くを占める。このようなEGFR突然変異のある腫瘍患者には、現在、既に市販のEGFR-TKIは第一世代のイレッサ、タルセバ、コンマナ、第二世代のアファチニブおよびダコミチニブならびに第三世代のオシメルチニブを含む。ほかの10%のEGFR突然変異は主にEGFRのエクソン18および20に関わり、そして、EGFRエクソン20の挿入突然変異はEGFR突然変異全体の9%程度を占める。HER2突然変異のある腫瘍患者は、最も見られるHER2突然変異はHER2エクソン20の挿入突然変異である。
【0004】
TAK-788はEGFRおよびHER2のエクソン20挿入突然変異に治療効果があり、当該化合物は既に米国で市販され、報告された臨床実験の結果から、客観的緩和率が43%である。最近、DZD9008はEGFRまたはHER2突然変異の晩期非小細胞肺癌の治療に効果があり、EGFRエクソン20insの客観的緩和率が40%で、治療効果が満足できるものではないという報告がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
臨床におけるEGFRおよびHER2突然変異の患者、特にEGFR、HER2エクソン20挿入突然変異の患者の薬物の需要を満足するため、WO2021180238では、一連の優れたEGFRおよびHER2エクソン20挿入突然変異ならびにEGFRエクソン19欠失およびエクソン21のL858R点突然変異に対する活性を有する化合物が開示され、関連疾患を治療する薬物として開発される潜在的な可能性が高い。中では、トリペンタアミン(tripentaamine)構造を有する化合物に関し、さらなる研究では、当該トリペンタアミン構造の立体配置は非常に重要で、トランスからシスになると、体内における薬物効果が良くなり、そして関連疾患の異なる突然変異にも良い治療作用があることが示された。後続の研究開発では、より安定で生物学的利用能がより高い遊離塩基の化合物を見つけるため、本発明では、遊離塩基の化合物の多形の研究およびスクリーニングを行った。
【0006】
本発明の目的は、キナーゼ阻害剤として使用される化合物であって、シストリペンタアミン構造に属し、EGFR、HER2エクソン20挿入突然変異、EGFRエクソン19欠失およびエクソン21の点突然変異に良い抑制活性を有する化合物を提供することである。本発明の化合物は特許WO2021180238における相応するトランス構造の化合物よりも薬物効果が良く、適用性が広い。
【0007】
本発明の第二の目的は、EGFR突然変異および/またはHER2突然変異による関連疾患を治療する薬物の製造における上記化合物の使用を提供することにある。
また、本発明は、上記化合物の遊離塩基の結晶形の製造に関し、多形の研究を行うことで、安定性が高くかつ生物学的利用能がより高い実用的な結晶形を確定する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の目的を実現するため、本発明で使用される技術方案は以下の通りである。
キナーゼ阻害剤として使用される化合物であって、式1で表される化合物、あるいはその重水素化物、または薬学的に許容される塩、溶媒和物またはプロドラッグである化合物。
【化1】
(式1において、XはCH、Nから選ばれる。
R
1は
【化2】
から選ばれ、R
5はH、C1-C3アルキル基、C1-C3フッ化アルキル基である。
R
20、R
21、R
22はそれぞれ独立にメチル基または重水素化メチル基から選ばれる。
R
3はC1-C3アルキル基、C1-C3ハロアルキル基から選ばれる。
R
40、R
41、R
42はそれぞれ独立にH、D、Fから選ばれる。)
【0009】
以上の化合物は、生物活性実験により、EGFRおよびHER2の突然変異に良い抑制活性を有し、関連薬物の原料薬として有用であることが実証された。
以上の原料薬に基づき、原料薬の「薬学的に許容される塩」とは薬学的に許容される、母体化合物の所望の薬理学的活性を有する塩である。このような塩は以下のようなものを含む。
【0010】
無機酸と形成した酸付加塩で、当該無機塩は、たとえば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などで、典型的な無機酸塩は塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、硝酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩から選ばれる。有機酸と形成した酸付加塩で、当該有機酸は、たとえば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンチルプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、琥珀酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタンジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、グルセプチン酸、4,4’-メチレンビス(3-ヒドロキシ2-エン-1-カルボン酸)、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、t-ブチル酢酸、ドデシル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸などで、あるいは母体化合物に存在する酸性プロトンが有機塩基(たとえば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタモール、N-メチルグルカミンなど)と配位してなる塩である。典型的な有機酸塩はギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、プロピオン酸塩、ピルビン酸塩、グリコール酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、サリチル酸塩、ピクリン酸塩、グルタミン酸塩、アスコルビン酸塩、カンファー酸塩、カンファースルホン酸塩から選ばれる。当該薬学的に許容される塩は無毒性のものであることは容易に理解される。
【0011】
溶媒和物は溶媒を含有する化合物で、たとえば、水和物、ジメチルスルホキシド和物などである。
プロドラッグとは、関連疾患を治療する時、代謝または化学プロセスの化学変換によって本発明における化合物、塩、または溶媒和物を生成する化合物である。
【0012】
好適に、上記キナーゼ阻害剤として使用される化合物は式2で表される化合物、あるいはその重水素化物、または薬学的に許容される塩、溶媒和物またはプロドラッグである。
【化3】
さらに好適に、式2において、XはCH、Nから選ばれ、R
3は-CH
3、-CH
2CH
3、-CH
2CF
3から選ばれ、R
40、R
41はいずれもHで、R
42はHまたはFから選ばれる。
【0013】
好適に、上記キナーゼ阻害剤として使用される化合物は式3で表される化合物、あるいはその重水素化物、または薬学的に許容される塩、溶媒和物またはプロドラッグである。
【化4】
式3において、XはCH、から選ばれ、R
3は-CH
3、-CH
2CH
3、-CH
2CF
3で、R
40、R
41はいずれもHで、R
42はHまたはFから選ばれ、R
5は-CH
3、-CF
3から選ばれる。
【0014】
好適に、式1で表される化合物は以下のものである:
【化5】
【0015】
EGFR突然変異および/またはHER2突然変異による関連疾患を治療する薬物の製造のための上記キナーゼ阻害剤として使用される化合物の使用。
上記化合物はEGFR、HER2のエクソン20挿入突然変異に良い抑制活性を有し、EGFRエクソン19欠失、エクソン21の点突然変異にも良い抑制活性を有する。
【0016】
好適に、前記EGFR突然変異および/またはHER2突然変異はEGFRエクソン20挿入突然変異、HER2のエクソン20挿入突然変異、EGFRエクソン19欠失、EGFRエクソン20点突然変異、EGFRエクソン21の点突然変異のうちの一つまたは二つ以上の組み合わせを含む。生物活性実験により、上記化合物は上記突然変異の種類に良い抑制効果があることが実証された。
【0017】
さらに好適に、前記EGFR突然変異および/またはHER2突然変異はEGFR Del 19/T790M/C797S突然変異、EGFR L858R/T790M/C797S突然変異から選ばれ、上記化合物は上記突然変異の種類に良い抑制効果がある。
【0018】
好適に、前記疾患は前記EGFR突然変異および/またはHER2突然変異による癌である。上記化合物はほかの薬物と併用し、癌の治療に使用してもよい。併用されるほかの薬物はERK阻害剤またはMEK阻害剤でもよい。
好適に、前記化合物は結晶形、無定形または前記溶媒和物で、前記溶媒和物に含まれる溶媒は非水溶媒または非水溶媒と水からなる混合溶媒である。
【0019】
より化合物の安定性および活性を向上させるため、一般式1で表される化合物に対し、一部を選んで結晶形の研究を行った。さらに、本発明における実施例1の化合物に対して結晶多形のスクリーニング研究を行い、安定で信頼性のある結晶形を見つけ、化合物の品質の安定性を保証しながら、薬物に臨床治療におけるより良い作用を発揮させる。実施例1の製品は結晶度の良い結晶であると見出し、かつ無水結晶形で、遊離塩基結晶形Iと名付けた。実施例1の化合物は式Aで表される化合物を有し、
【化6】
結晶形が遊離塩基結晶形Iで、当該結晶形の粉末X線回折スペクトルでは、9.76°±0.2°、10.45°±0.2°、16.54°±0.2°、18.66°±0.2°、20.07°±0.2°、25.90°±0.2°の箇所に特徴的な回折ピークがある。
【0020】
さらに、遊離塩基結晶形Iで、その粉末X線回折スペクトルでは、9.07°±0.2°、9.76°±0.2°、10.45°±0.2°、11.53°±0.2°、11.80°±0.2°、12.91°±0.2°、13.79°±0.2°、14.67°±0.2°、15.08°±0.2°、15.63°±0.2°、16.54°±0.2°、17.50°±0.2°、18.66°±0.2°、20.07°±0.2°、21.10°±0.2°、23.29°±0.2°、24.16°±0.2°、25.90°±0.2°の箇所に特徴的な回折ピークがある。
【0021】
実施例1の化合物の遊離塩基結晶形Iは多くの溶媒において懸濁結晶化、品溶媒沈殿、高低温循環や蒸発結晶化などの方法によって製造することができる。ここの溶媒はジクロロメタン、1,4-ジオキサン、ジクロロエタン、メチル-t-ブチルエーテル、N-メチルピロリドン、酢酸エチル、アセトン、メタノール、ジメチルスルホキシド、酢酸イソプロピル、ブタノン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、水、アセトニトリル、イソプロパノール、エタノール、n-ヘプタンのうちの一つまたは二つ以上の混合溶媒などを含むが、これらに限定されない。
【0022】
本発明では、実施例1の化合物は2種類の無水結晶形(遊離塩基結晶形Iおよび遊離塩基結晶形V)および3種類の溶媒和物があり、遊離塩基結晶形IIはエタノールの溶媒和物で、遊離塩基結晶形IIIはイソプロパノールの溶媒和物で、遊離塩基結晶形IVはジクロロエタンと水の溶媒和物であることが見出され、そしてこの数種類の溶媒和物のいずれも特徴づけされた。遊離塩基結晶形Iおよび遊離塩基結晶形Vの2種類の無水結晶形に対して競争懸濁実験を行ったところ、遊離塩基結晶形Iは熱力学的に安定した結晶形で、より後続の開発に適すると推測された。
【0023】
遊離塩基結晶形Iに対して結晶形の評価を行ったが、乾式研磨、湿式研磨、打錠(30 MPa)、安定性および吸湿性などの研究を含む。5 min乾式研磨すると、無定形になった。5 minの水を入れた湿式研磨をしてもほぼ変化せず、5 minのエタノールを入れた湿式研磨をすると、結晶度がやや低下した。打錠テストでは、圧力が30 MPaの場合、結晶度がある程度低下した。安定性の考察では、異なる温度および湿度において、遊離塩基結晶形Iは比較的に安定で、液相検出の結果が変わらなかった。動的水蒸気吸着(DVS)テストを行った結果、80 %RHの場合、吸水による重量増加が0.66%で、遊離塩基結晶形Iはやや吸湿性があることが示された。つまり、遊離塩基結晶形Iは比較的に安定した無水結晶形で、安定した固形の性質を有し、かつやや吸湿性があり、後続の薬物開発に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1はLU0387モデルにおける腫瘍体積の変化(mm
3)である。
【
図2】
図2はBa/F3 EGFR D770_N771 ins SVDモデルにおける腫瘍体積の変化(mm
3)である。
【
図3】
図3は実施例1の単結晶の単結晶回折スペクトルである。
【
図4】
図4は遊離塩基結晶形IのXRPDスペクトルである。
【
図5】
図5は遊離塩基結晶形IのDSCとTGAの重なったグラフである。
【
図6】
図6は乾式研磨法によって得られた無定形のサンプルのXRPDスペクトルである。
【
図7】
図7は遊離塩基結晶形IIのXRPDスペクトルである。
【
図8】
図8は遊離塩基結晶形IIのDSCとTGAの重なったグラフである。
【
図9】
図9は遊離塩基結晶形IIIのXRPDスペクトルである。
【
図10】
図10は遊離塩基結晶形IIIのDSCとTGAの重なったグラフである。
【
図11】
図11は遊離塩基結晶形IVのXRPDスペクトルである。
【
図12】
図12は遊離塩基結晶形IVのDSCとTGAの重なったグラフである。
【
図13】
図13は遊離塩基結晶形VのXRPDスペクトルである。
【
図14】
図14は遊離塩基結晶形VのDSCとTGAの重なったグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
特許WO2021180238におけるトランストリペンタアミン構造を有するに対し、本発明では、シストリペンタアミン構造の体内における薬物効果がより良く、かつ関連疾患の異なる突然変異においても優れた治療作用があることが実証された。
【0026】
本発明の化合物のXがCHである場合の製造方法は、反応経路が以下の通りである。
【化7】
【0027】
以下の工程を含む:
(1)化合物Aと化合物Bを有機溶媒においてフリーデル・クラフツ反応させ、化合物Cを得る;
(2)化合物Cと化合物Dを有機溶媒において、酸の触媒下で置換反応させ、化合物Eを得る;
(3)化合物Eと化合物Fを有機溶媒において、塩基の触媒下で置換反応させ、化合物Gを得る;
(4)化合物Gを還元させ、化合物Hを得る;
(5)化合物Hを塩基触媒の存在下で縮合反応させ、製品を得る。
【0028】
R
1が
【化8】
でかつR
5が-CF
3である場合、式1で表される化合物の合成は以下の反応経路によるものでもよい。
【化9】
【0029】
以下の工程を含む:
(1)化合物aと化合物bを有機溶媒において置換反応させ、化合物cを得る;
(2)化合物cを加水分解させ、化合物dを得る;
(3)化合物dを縮合反応させ、化合物eを得る;
(4)化合物eを脱保護させ、化合物fを得る;
(5)化合物fを塩基触媒の存在下でトリフルオロ酢酸無水物と閉環反応させ、化合物gを得る;
(6)化合物gを還元させ、化合物hを得る;
(7)化合物hを塩基触媒の存在下で縮合反応させ、製品を得る。
【0030】
本発明の化合物のXがNである場合の製造方法は、反応経路が以下の通りである。
【化10】
【0031】
以下の工程を含む:化合物A’と化合物B’を置換反応させ、製品を得る。
ここで、化合物A’はWO2021180238を参照して合成して得られるもので、化合物B’はフリーデル・クラフツ反応によって得られるものである。
【0032】
以下、具体的な実施例とともに本発明の実施過程をすべて詳細に説明する。
一.キナーゼ阻害剤として使用される化合物の合成の具体的な実施例
【0033】
実施例1
本実施例のキナーゼ阻害剤として使用される化合物は、構造式が以下のとおりである。
【化11】
【0034】
本実施例の化合物の合成経路は以下の通りである。
【化12】
【0035】
化合物3の合成:250mL三口フラスコにおいて、窒素ガスの保護下で、化合物1(2.01g,8.5mmol)を入れ、100mLのテトラヒドロフランで全部溶解させ、無水三塩化アルミニウム(2.26g,17mmol)を入れ、70℃で1時間撹拌した。化合物2(1.34g,10.2mmol)を滴下し、滴下完了後、続いて70℃で反応させ、プレートにサンプリングして反応をモニタリングし、4時間後、ほぼ完全に反応した。処理し、製品を1.31g得たが、収率が46.4%であった。
【0036】
化合物5の合成:化合物3(1.30g, 3.9mmol)、化合物4(0.88g, 4.68mmol)、およびp-トルエンスルホン酸(1.35g, 7.8mmol)を65mLの1,4-ジオキサンに入れ、N2の保護下で、80℃に昇温させ、一晩反応させた。プレートにサンプリングして反応をモニタリングし、完全に反応し、処理し、製品を1.50g得たが、収率が79.7%であった。
【0037】
化合物7の合成:化合物5(6.0g, 12.5mmol)、化合物6(6.3g,100mmol)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(3.2g, 50mmol)をN,N-ジメチルアセトアミド120mLに入れ、90℃で一晩反応させ、プレートにサンプリングしてモニタリングし、完全に反応した後、処理し、製品を8.0g得た。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 9.53 (s, 1H), 8.97 - 8.75 (m, 1H), 7.96 (s, 1H), 7.84 (s, 1H), 7.79 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.38 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 7.29 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 7.20 (t, J = 7.6 Hz, 1H), 6.81 (s, 1H), 5.09 (p, J = 6.4 Hz, 1H), 4.02 (s, 3H), 3.92 (s, 3H), 3.84 - 3.63 (m, 1H), 3.02 (t, J = 6.4 Hz, 1H), 2.84 (s, 3H), 2.70 (s, 3H), 2.43 (s, 2H), 2.32 (s, 1H), 1.27 (d, J = 7.2 Hz, 2H), 1.15 (d, J = 6.4 Hz, 6H).
【0038】
化合物8の合成:化合物7(7.7g, 41.6mmol)およびパラジウム炭素(2.4g, 湿潤パラジウム炭素55%)を100mLメタノールと100mL酢酸エチルの混合溶媒に入れ、水素ガスの雰囲気において、室温で4時間反応させ、プレートにサンプリングしてモニタリングし、原料が完全に反応した後、処理し、製品を7.0g得た。
【0039】
実施例1の合成:化合物8(7.00g, 12.6mmol)およびトリエチルアミン(3.82g, 37.8mmol)をジクロロメタンに溶解させ、窒素ガスの保護下で0℃に降温させた後、アクリルクロリド(1.72g, 18.9mmol)のジクロロメタン溶液を滴下し、0℃に維持しながら1時間反応させ、プレートにサンプリングしてモニタリングし、原料が完全に反応した後、処理した。すなわち、炭酸水素ナトリウム水溶液およびジクロロメタンを入れ、撹拌して分層させ、水相をさらにジクロロメタンで1回抽出し、有机相を合併し、乾燥し、回転乾燥し、カラムを通させた。得られた粗製品をまず少量のジクロロメタンで溶解させ、さらに石油エーテルを滴下すると大量の固体が析出し、ろ過し、ケーキをそのままメタノールに入れて混ぜ、乾燥した後、最終的に製品を3.5g得た。[M+H]+:610.8;1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 10.38 (s, 1H), 9.60 (s, 1H), 8.87 (s, 1H), 8.61 (s, 1H), 7.89 (s, 1H), 7.58 (s, 1H), 7.32 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 7.20 (t, J = 7.6 Hz, 1H), 7.13 (t, J = 7.6 Hz, 1H), 6.80 (s, 1H), 6.44 (m, 2H), 6.32(m,1H), 5.68 (m, 1H), 5.00 (p, J = 6.2 Hz, 1H), 3.94 (s, 3H), 3.88 (s, 3H), 3.06 (s, 2H), 2.66 (s, 3H), 2.61 (m, 3H), 2.36 (s, 3H), 1.67 (s, 2H), 1.03 (d, J = 6.4 Hz, 6H)。
【0040】
実施例1を参照し、実施例2、3、4の三つの重水素化物を合成したが、具体的に下記表1に示す。
表1 実施例2-4の化合物の構造と特徴付け
【表1】
【0041】
実施例5
本実施例のキナーゼ阻害剤として使用される化合物は、構造式が以下のとおりである。
【化13】
【0042】
本実施例の化合物の合成経路は以下の通りである。
【化14】
【0043】
合成過程は以下の通りである。
化合物2の合成:2000mLの単口フラスコにおいて、化合物1(54.6g,303mmol)、アセトヒドラジド(26.64g,395mmol)を入れ、1000mLの1Nの水酸化ナトリウム水溶液を入れ、80℃で4時間反応させ、大量の固体が析出した。降温させ、濃塩酸を80mL入れ、0℃程度の低温で30分撹拌し、吸引ろ過し、ケーキを水で一回撹拌し、55℃で一晩真空乾燥し、製品を32g得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 11.75 (s, 1H), 11.59 (s, 1H), 8.13 (s, 1H), 2.52 (s, 3H)。
【0044】
化合物3の合成:2000mLの単口フラスコにおいて、化合物2 (50.0g,258mmol)を入れ、室温でトルエン1500mL、塩化ホスホリル (237g,1550mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(133g, 1031mmol)を入れ、白い霧が生成した。80℃に加熱し、窒素ガスの保護下で、一晩撹拌した。次の日、降温させて処理し、製品を30g得た。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 9.19 (s, 1H), 2.71 (s, 3H)。
【0045】
化合物5の合成:2000mLの単口フラスコにおいて、化合物3(30.0g,130mmol)を入れ、1500mLの1,2-ジクロロエタンで全部溶解させ、無水三塩化アルミニウム(29.3g,220mmol)を入れ、まず室温で30分撹拌した。0℃に降温させ、化合物4(22.1g,169mmol)を滴下し、低温でまず30分撹拌した後、60℃に昇温して反応させ、プレートにサンプリングしてモニタリングした。4時間反応させた後、降温させ、処理して製品を20.0g得た。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 8.84 (s, 1H), 8.02 (dt, J = 7.8, 1.0 Hz, 1H), 7.97 (s, 1H), 7.40-7.27 (m, 3H), 3.86 (s, 3H), 2.50 (s, 3H)。
【0046】
化合物7の合成:化合物5(2g, 6.15mmol)、化合物6(1.37g, 7.38mmol)、およびp-トルエンスルホン酸(2.11g, 12.3mmol)を100mLのジオキサンに入れ、窒素ガスの保護下で80℃に昇温させ、一晩反応させた。プレートにサンプリングしてモニタリングし、反応完了後、処理し、製品を0.65g得た。
【0047】
化合物9の合成:化合物7(950mg, 2mmol)、化合物8(1.0g,8mmol)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(516m g, 4mmol)をN,N-ジメチルアセトアミド20mLに入れ、100 ℃で一晩反応させた。プレートにサンプリングしてモニタリングし、原料が完全に反応した後、処理し、製品を1.0g得た。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 9.56 (s, 1H), 8.88 (s, 1H), 7.92 (d, J = 14.6Hz, 2H), 7.54 (s, 1H), 7.40 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 7.32 (s, 1H), 7.15 (t, J = 7.6 Hz, 1H), 6.84 (s, 1H), 4.06 (s, 3H), 3.93 (s, 3H), 3.04 (t, J = 6.0 Hz, 1H), 2.88 (s, 3H), 2.72 (s, 3H), 2.44 (s, 2H), 2.38 (s, 3H), 1.28 (s, 4H)。
【0048】
化合物10の合成:化合物9(1.0g, 1.72mmol)およびパラジウム炭素(500mg, 湿潤パラジウム炭素55%)を50mLメタノールに入れ、水素ガスの雰囲気において、室温で4時間反応させた。プレートにサンプリングしてモニタリングし、原料が完全に反応した後、処理し、製品を900mg得た。
【0049】
実施例5の合成:化合物10(900mg, 1.63mmol)およびトリエチルアミン(495mg, 4.90mmol)をジクロロメタンに溶解させ、窒素ガスの雰囲気において0℃に降温させた後、アクリルクロリド(223mg, 2.45mmol)のジクロロメタン溶液を滴下し、0℃に維持しながら2時間反応させた。プレートにサンプリングしてモニタリングし、原料が完全に反応した後、処理し、製品を200mg得た。[M+H]+:606.8。
【0050】
実施例5を参照し、実施例6、7、8の三つの重水素化物を合成したが、具体的に下記表2に示す。
表2 実施例6-8の化合物の構造と特徴付け
【表2】
【0051】
実施例9
本実施例のキナーゼ阻害剤として使用される化合物は、構造式が以下のとおりである。
【化15】
【0052】
本実施例の化合物の合成経路は以下の通りである。
【化16】
【0053】
本実施例の化合物の合成過程は以下の通りである。
化合物3の合成:化合物1(6.0g, 13.30mmol)、化合物2(5.03g,39.91mmol)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(3.43g, 26.6mmol)をN,N-ジメチルアセトアミド60mLに入れ、80 ℃で一晩反応させた。プレートにサンプリングしてモニタリングし、原料が完全に反応した後、処理し、製品を6.17g得た。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d)-δ 9.50 (s, 1H), 8.90 (s, 1H), 8.24 -7.99 (m, 1H), 7.80 (s, 1H), 7.67 (s, 1H), 7.38 (dt, J = 8.2, 1.0 Hz, 1H), 7.31-7.23 (m, 1H), 7.23-7.16 (m, 1H), 6.65 (s, 1H), 3.95 (s, 3H), 3.94 (s, 3H) , 3.70 (s, 3H), 2.95 (s, 3H), 2.89 (t, J = 6.6 Hz, 1H), 2.85-2.76 (m, 2H), 2.27 (m, 2H), 2.15 (s, 3H), 1.91 - 1.81 (m, 2H)。
【0054】
化合物4の合成:化合物3(6.17g, 11.08mmol)、水酸化リチウム一水和物(2.33g, 55.39mmol)をテトラヒドロフラン/メタノール/水の体積比が6:3:1の混合溶媒に入れ、40℃で16時間反応させた。プレートにサンプリングしてモニタリングし、原料が完全に反応した後、処理し、製品を6.02g得た。
【0055】
化合物5の合成:化合物4(6.02g, 11.08mmol)、カルバジン酸t-ブチル(4.39g, 33.26mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(8.58g, 66.48mmol)を160 mL N,N-ジメチルホルムアミドに入れ、15min撹拌した後、さらに1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリピロリジノヘキサフルオロホスファート(6.90g, 13.30mmol)を入れ、25℃で16時間反応させた。プレートにサンプリングしてモニタリングし、原料が完全に反応した後、処理し、製品を1.67g得た。
【0056】
化合物6の合成:化合物5(1.67g, 2.54mmol)を15mLテトラヒドロフランに溶解させ、ゆっくり15mLの4Mの塩化水素のジオキサン溶液に入れ、窒素ガスの保護下において40 ℃で5時間反応させた。液体クロマトグラフィー-質量分析によってモニタリングし、原料が完全に反応した後、処理し、製品を1.20g得た。
【0057】
化合物7の合成:化合物6(1.0g, 1.68mmol)、トリエチルアミン(679 mg, 6.72mmol)を20 mLジクロロメタンに入れ、15分撹拌した後、トリフルオロ酢酸無水物(1.59g, 7.58mmol)を分けて入れ、40℃で8時間反応させ、反応が完了した。処理し、製品を521mg得た。
【0058】
化合物8の合成:化合物7(521mg, 0.82mmol)およびパラジウム炭素(156mg, 10%)を20mLメタノールに溶解させ、水素ガスの雰囲気において、25℃で撹拌しながら3時間反応させ、液体クロマトグラフィー-質量分析によってモニタリングし、原料が完全に反応した後、処理し、製品を412g得た。
【0059】
実施例9の合成:化合物8(412mg, 0.68mmol)およびトリエチルアミン(206mg, 2.04mmol)を15mLジクロロメタンに溶解させ、窒素ガスの雰囲気において0℃に降温させた後、アクリルクロリド(93mg, 1.02mmol)のジクロロメタン溶液を滴下し、0℃に維持しながら2時間反応させた。プレートにサンプリングしてモニタリングし、原料が完全に反応した後、処理し、製品を122 mg得た。[M+H]+:660.5; 1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 11.36 (m, 1H), 9.87 (m, 1H), 9.09 (m, 1H), 8.92 (s, 1H), 8.37 (m, 1H), 7.95 (m, 1H), 7.33 (m, 1H), 7.18 (m, 1H), 7.01 (m, 2H), 6.80 (m, 1H), 6.46 (d, J = 16.6 Hz, 1H), 5.74 (d, J = 10.2 Hz, 1H), 3.92 (d, J = 13.5 Hz, 6H), 3.29 (m, 2H), 3.04 (m, 1H), 2.78 (m, 8H), 2.21 (m, 2H)。
【0060】
実施例9を参照し、実施例10、11、12の三つの重水素化物を合成したが、具体的に下記表3に示す。
表3 実施例10-12の化合物の構造と特徴付け
【表3】
【0061】
実施例13
本実施例のキナーゼ阻害剤として使用される化合物は、構造式が以下のとおりである。
【化17】
【0062】
本実施例の化合物の合成経路は以下の通りである。
【化18】
【0063】
化合物2の合成:500mL単口フラスコにおいて、化合物1(10.00g,62.88mmol)を入れ、100mL テトラヒドロフランで完全に溶解させ、炭酸セシウム(20.50g,62.88mmol)、トリフルオロエタノール(6.29g,62.87mmol)を入れ、添加完了後、窒素ガスで保護した。プレートにサンプリングしてモニタリングし、23℃で6時間反応させ、ほぼ完全に反応させた。処理し、製品を14.35g得たが、収率が95.5%であった。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 8.01 (dd, J = 9.1, 5.8 Hz, 1H), 7.09 - 6.72 (m, 2H), 4.50 (q, J = 7.8 Hz, 2H)。
【0064】
化合物3の合成:化合物2(14.00g, 58.57mmol)を60mLエタノールに溶解させ、15mL水、塩化アンモニウム(9.60g,179.44mmol)、還元鉄粉(20.00g, 357.14mmol)を入れ、添加完了後、80℃に昇温させ、一晩反応させた。プレートにサンプリングして反応をモニタリングし、完全に反応し、処理し、製品を10.50g得たが、収率が85.78%であった。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 6.89 - 6.34 (m, 3H), 4.34 (q, J = 8.0 Hz, 2H), 3.84 - 3.27 (m, 2H)。
【0065】
化合物4の合成:250mL三口フラスコにおいて、化合物3(10.00g, 47.83mmol)を入れ、撹拌しながら50mL濃硫酸を入れ、0℃に降温させ、硝酸カリウム固体(6.10g,60.34mmol)を分けて入れ、添加完了後、窒素ガスで保護した。室温で4時間反応させた後、プレートにサンプリングして反応完了後、処理し、製品を8.26g得たが、収率が67.98%であった。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 7.44 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 6.66 (d, J = 11.5 Hz, 1H), 4.46 (q, J = 7.7 Hz, 2H), 4.01 (m, 2H)。
【0066】
化合物6の合成:化合物4(2.00g, 6.08mmol)および化合物5(2.00g, 7.87mmol)を50mLアセトニトリルに入れ、さらにp-トルエンスルホン酸一水和物(0.81g,4.26mmol)を入れ、80℃で一晩撹拌した。次の日、プレートにサンプリングしてモニタリングし、原料がほぼ完全に反応した。降温させ、反応液から固体が析出し、ろ過し、ケーキを回転乾燥した後、メタノールを入れて混ぜ、製品を1.67g得た。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 9.89 (s, 1H), 9.33 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 8.77 (s, 1H), 8.29 (s, 1H), 7.67 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.39 (m, 1H), 7.33 (m, 1H), 7.19 (m, 1H), 6.89 (d, J = 11.3 Hz, 1H), 5.14 (p, J = 6.2 Hz, 1H), 4.59 (q, J = 7.7 Hz, 2H), 3.95 (s, 3H), 1.22 (d, J = 6.2 Hz, 6H)。
【0067】
化合物8の合成:化合物6(1.52g, 2.78mmol)、化合物7(1.05g,8.33mmol)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(1.05g, 8.14mmol)をN,N-ジメチルアセトアミド25mLに入れ、90 ℃で一晩反応させた。プレートにサンプリングしてモニタリングし、原料が完全に反応した後、処理し、製品を1.16g得た。
【0068】
化合物9の合成:化合物8(0.59g, 0.90mmol)およびパラジウム炭素(400mg, 湿潤パラジウム炭素55%)を20mLメタノールと20mL酢酸エチルの混合溶媒に入れ、水素ガスの雰囲気において、室温で3時間反応させた。プレートにサンプリングしてモニタリングし、原料が完全に反応した後、処理し、製品を520mg得た。
【0069】
実施例13の合成:化合物9(520mg, 0.83mmol)およびトリエチルアミン(253mg, 2.50mmol)をジクロロメタンに溶解させ、窒素ガスの雰囲気下で0℃に降温させた後、アクリルクロリド(114mg, 1.25mmol)のジクロロメタン溶液を滴下し、0℃に維持しながら2時間反応させた。プレートにサンプリングしてモニタリングし、原料が完全に反応した後、処理し、製品を170mg得た。[M+H]+:606.8。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 10.63 (s, 1H), 10.11 (s, 1H), 8.82 (s, 1H), 8.16 (s, 1H), 7.66 (m, 2H), 7.29 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.22 - 7.16 (m, 1H), 7.15 - 7.09 (m, 1H), 6.80 (s, 1H), 6.37 (dd, J = 16.9, 2.0 Hz, 1H), 5.68 (dd, J = 10.1, 2.0 Hz, 1H), 5.00 (p, J = 6.2 Hz, 1H), 4.44 (q, J = 8.2 Hz, 2H), 3.85 (s, 3H), 3.27 - 2.99 (m, 2H), 2.87 - 2.51 (m, 6H), 2.11 (m, 2H), 1.18 - 0.91 (m, 6H)。
【0070】
実施例13を参照し、実施例14を合成したが、具体的に下記表4に示す。
表4 実施例14の化合物の構造と特徴付け
【表4】
【0071】
実施例15
本実施例のキナーゼ阻害剤として使用される化合物は、構造式が以下のとおりである。
【化19】
【0072】
本実施例の化合物の合成経路は以下の通りである。
【化20】
【0073】
実施例15の合成:50mL単口フラスコにおいて、化合物2(112mg,1.24mmol)、ジクロロメタン20ml、塩化オキサリル(142mg,1.12mmol)を入れ、窒素ガスの保護下で2時間撹拌した。0℃に降温させ、化合物1(438mg, 78.92mmol)のジクロロメタン溶液およびトリエチルアミン(152mg, 1.50mmol)を滴下し、0℃に維持しながら1時間反応させ、プレートにサンプリングしてモニタリングし、原料が完全に反応した後、処理し、最終的に製品を160mg得た。[M+H]+:628.8;1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d)δ 9.53 (m, 1H), 9.12 (m, 1H), 8.89 (s, 1H), 8.35 (m, 1H), 7.92 (s, 1H), 7.69 (s, 1H), 7.35 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.23 (t, J = 7.5 Hz, 1H), 7.15 (t, J = 7.5 Hz, 1H), 6.84 (s, 1H), 5.84 (dd, J = 48.2, 3.4 Hz, 1H), 5.28 (dd, J = 15.5, 3.4 Hz, 1H), 5.04 (p, J = 6.2 Hz, 1H), 3.92 (s, 6H), 3.49 (m, 2H), 2.64 (m, 9H), 2.19(m, 2H), 1.09 (m, 6H)。
【0074】
実施例16
本実施例のキナーゼ阻害剤として使用される化合物は、構造式が以下のとおりである。
【化21】
【0075】
本実施例の化合物の合成経路は以下の通りである。
【化22】
【0076】
化合物3の合成:100mL単口フラスコにおいて、化合物1(313mg,1mmol)を入れ、5mLアセトニトリルを入れ、さらに化合物2の粗製品(441mg)を入れ、添加完了後、窒素ガスで保護した。プレートにサンプリングしてモニタリングし、80℃で一晩反応させ、ほぼ完全に反応した。処理し、製品を300mg得た。
【0077】
化合物4の合成:化合物3(1.83g, 4.54mmol)を60mLメタノールに溶解させ、1.2mLの濃塩酸を入れ、添加完了後、60℃に昇温させ、一晩反応させた。プレートにサンプリングして反応をモニタリングし、完全に反応し、処理し、製品を0.89g得た。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 7.61 (s, 1H), 4.80 (q, J = 8.4 Hz, 2H), 3.57 (m, 2H), 3.10 (s, 3H), 3.02 (t, J = 6.9 Hz, 1H), 2.59 - 2.33 (m, 4H), 2.06 (s, 3H), 1.76 - 1.51 (m, 2H)。
【0078】
化合物6の合成:100mL単口フラスコにおいて、化合物4(73.8mg, 0.21mmol)を入れ、化合物5(56mg, 0.17mmol)、p-トルエンスルホン酸(48mg, 0.25mmol)を入れ、さらにジオキサン5mLを入れ、80℃で一晩撹拌し、窒素ガスで保護した。プレートにサンプリングしてモニタリングし、反応完了後、処理し、製品を50mg得た。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 9.76 (s, 1H), 8.90 (s, 1H), 7.94 (s, 1H), 7.80 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.56 (s, 1H), 7.39 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 7.33 - 7.27 (m, 1H), 7.24 - 7.17 (m, 1H), 5.10 (p, J = 6.2 Hz, 1H), 4.94 (s, 2H), 3.93 (s, 3H), 3.78 (m, 2H), 3.18 (t, J = 6.5 Hz, 1H), 3.01 (m, 3H), 2.57 (m, 5H), 2.31 (m, 2H), 1.16 (d, J = 6.2 Hz, 6H)。
【0079】
化合物7の合成:化合物6(98mg, 0.15mmol)およびパラジウム炭素(80mg, 湿潤パラジウム炭素55%)を3mLメタノールと2mL酢酸エチルの混合溶媒に入れ、水素ガスの雰囲気において、室温で2時間反応させた。プレートにサンプリングしてモニタリングし、原料が完全に反応した後、処理し、製品を98mg得た。
【0080】
実施例16の合成:化合物8(300mg, 0.48mmol)およびトリエチルアミン(150mg, 1.48mmol)をジクロロメタンに溶解させ、窒素ガスの雰囲気下で0℃に降温させた後、アクリルクロリド(70mg, 0.77mmol)のジクロロメタン溶液を滴下し、0℃に維持しながら2時間反応させた。プレートにサンプリングしてモニタリングし、原料が完全に反応した後、処理し、製品を118mg得た。[M+H]+:688.8。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 10.39 (s, 1H), 9.97 (s, 1H), 8.89 (s, 1H), 8.59 (m, 1H), 7.59 (m, 2H), 7.33 (m, 1H), 7.23 (m, 1H), 7.14 (m, 1H), 6.45 (m, 1H), 6.31 (m, 1H), 5.72 (d, J = 10.0 Hz, 1H), 5.01 (p, J = 6.5 Hz, 1H), 4.83 (q, J = 8.5 Hz, 2H), 3.96 (s, 3H), 3.14 - 2.88 (m, 2H), 2.85 - 2.52 (m, 6H), 2.33 (s, 3H), 1.69 (m, 2H), 1.04 (d, J = 6.3 Hz, 6H)。
【0081】
実施例17
本実施例のキナーゼ阻害剤として使用される化合物は、構造式が以下のとおりである。
【化23】
【0082】
本実施例の化合物の合成経路は以下の通りである。
【化24】
【0083】
化合物2の合成:100mL三口フラスコにおいて、化合物1(153mg,0.38mmol)を入れ、5mLテトラヒドロフランを入れ、さらに4-ジメチルアミノピリジン(17.8mg)を入れ、添加完了後、窒素ガスの保護下で、ジカルボン酸ジ-t-ブチル(1.06g,4.86mmol)を滴下した。プレートにサンプリングしてモニタリングし、80℃で2時間反応させ、ほぼ完全に反応させた。処理し、製品を104mg得た。
【0084】
化合物3の合成:化合物2(104mg, 0.21mmol)を2mlメタノールに溶解させ、5.4mol/Lのナトリウムメトキシドのメタノール溶液0.05mLを入れ、添加完了後、30分反応させた。プレートにサンプリングして反応をモニタリングし、完全に反応し、処理し、製品を30mg得た。
【0085】
化合物4の合成:化合物3(30mg, 0.065mmol)およびパラジウム炭素(15mg, 湿潤パラジウム炭素55%)を1mLメタノールと1mL酢酸エチルの混合溶媒に入れ、水素ガスの雰囲気において、室温で2時間反応させた。プレートにサンプリングしてモニタリングし、原料が完全に反応した後、処理し、製品を30mg得た。
【0086】
化合物5の合成:化合物4(30mg, 0.069mmol)およびトリエチルアミン(13mg, 0.14mmol)をジクロロメタンに溶解させ、窒素ガスの雰囲気において0℃に降温させた後、アクリルクロリド(7mg, 0.077mmol)のジクロロメタン溶液を滴下し、0℃に維持しながら2時間反応させた。プレートにサンプリングしてモニタリングし、原料が完全に反応した後、処理し、製品を12mg得た。
【0087】
実施例17の合成:化合物5(12mg, 0.024mmol)および化合物6(6mg, 0.018mmol)、p-トルエンスルホン酸(8mg, 0.042mmol)を1mLのN-メチルピロリドンおよび2mLのエチレングリコールモノメチルエーテルに溶解させ、窒素ガスの雰囲気において100℃に昇温させ、4時間反応させた。プレートにサンプリングしてモニタリングし、原料が完全に反応した後、処理し、製品を3mg得た。[M+H]+:675.8。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 10.42 (s, 0H), 9.97 (s, 0H), 8.91 (s, 0H), 8.70 (m, 1H), 7.68 (s, 1H), 7.33 (d, J = 8.2 Hz, 0H), 7.18 (m, 1H), 6.99 (m, 1H), 6.45 (m, 1H), 6.33 (m, 1H), 5.73 (m, 1H), 5.35 (m, 1H), 4.85 (m, 2H), 3.99 (s, 3H), 3.05 (m, 2H), 2.78 (m, 1H), 2.62(m,2H) , 2.35 (s, 3H), 2.22 (s, 3H), 2.10 - 1.95 (m, 2H)。
【0088】
二.化合物の生物学的テスト・評価
1.化合物の細胞増殖に対する抑制作用のテスト
1.1 EGFRおよびHER2のエクソン20挿入突然変異の細胞増殖抑制活性のテスト実験:
実験において選ばれた工学的細胞Ba/F3-FL-EGFR-V769-D770 ins ASV、Ba/F3-FL-EGFR-D770-N771 ins SVD、Ba/F3-FL-EGFR-H773-V774 ins NPH 、Ba/F3-FL-EGFR- A763-Y764 ins FQEA、Ba/F3-HER2-A775-G776 ins YVMAは合肥中科普瑞昇生物医薬科技有限公司によって提供され、そして本研究に使用される前に検証された。
20×の被験化合物母液を調製して使用に備え、9つの濃度で、3倍勾配希釈で、1μMから希釈した。
【0089】
対数期の細胞懸濁液を取り、96ウェル白色細胞培養プレートに接種し、各ウェルの体積が95 μL(2000 個細胞/ウェル)である。5 μLの20×被験化合物を取ってプレート接種の図を参照してそれぞれ上記95 μL細胞懸濁液を含有する培養プレートに入れ、均一に混合した。37℃、5% CO2のインキュベーターにおいて72時間インキュベートした。CellTiter-Glo法によって化合物の増殖抑制活性を測定した。SpectraMax Paradigmの読み値から相応する各ウェルの蛍光値RLUを得た。細胞増殖抑制率(Inhibition Rate)のデータは以下の式で処理された:Inhibition Rate (Inh%)=100-(RLU 化合物-RLU ブランク)/(RLU 対照-RLU ブランク)* 100%。EXCELにおいて異なる濃度の化合物に相応する細胞胞活力を計算した後、GraphPad Prismソフトで細胞活力曲線図を作ってIC50 値を計算した。表5は対照品の名称および構造である。
【0090】
【0091】
表6、表7および表8の実験結果では、IC
50値の大きさによって3種類に分かれ、ここで、A≦30nM、30nM<B≦100nM、C>100nMである。
表6 異なる化合物のEGFRエクソン20挿入突然変異の細胞増殖抑制活性のテスト結果
【表6】
【0092】
表7 異なる化合物のHER2エクソン20挿入突然変異の細胞増殖抑制活性のテスト結果
【表7】
【0093】
表6から、実施例における化合物はいずれもEGFRエクソン20挿入突然変異に対して良い抑制能力があることがわかる。DZD9008よりも優れ、TAK-788の活性に相当する。表7から、実施例5はHER2エクソン20挿入突然変異における細胞活性がTAK-788に相当し、DZD9008よりも良いことがわかる。
【0094】
1.2 化合物の細胞系NCI-H1975およびPC9の細胞増殖に対する抑制活性のテスト実験:
実験において選ばれた細胞系NCI-H1975およびPC9は中米冠科生物技術(北京)有限公司によって提供され、そして本研究に使用される前に検証された。
10×の被験化合物母液を調製して使用に備え、9つの濃度で、4倍勾配希釈で、10μMから希釈した。
【0095】
対数期の細胞懸濁液を取り、96ウェル培養プレートに接種し、各ウェルの体積が90 μL(2000 個細胞/ウェル)である。10 μLの10×被験化合物を取ってプレート接種の図を参照してそれぞれ培養プレートに入れ、均一に混合した。37℃、5% CO2のインキュベーターにおいてインキュベートした。CellTiter-Glo法によって化合物の増殖抑制活性を測定した。細胞増殖抑制率(Inhibition Rate)のデータはGraphPad Prism8.0ソフトで細胞活力曲線図を作ってIC50 値を計算した。結果は表8に示す。
【0096】
表8 異なる化合物の関連突然変異の細胞増殖抑制活性のテスト結果
【表8】
【0097】
表8から、本発明の化合物は細胞系NCI-H975およびPC9の細胞増殖に対して優れた抑制作用があり、そしてDZD9008よりも良いことがわかる。
【0098】
2.化合物の体内薬効実験
2.1 肺癌LU0387PDXモデルに対する薬効学の研究
肺癌LU0387PDXモデルは冠科の常用の異種移植腫瘍モデルで、当該モデルの実験状況の説明は以下の通りである。腫瘍担持マウスを安楽死させた後、無菌の状態において腫瘍塊を取出し、腫瘍塊を洗浄し、血の汚れおよび結合組織と壊死部分を除去し、腫瘍を2×2×2mm3の小さい塊に切った。接種ニードルで消毒された実験マウスの右側背部の皮下に接種した。定期的に腫瘍の生長状況を観察し、腫瘍が平均体積100~200mm3に生長すると、腫瘍の大きさおよびマウスの体重によってランダムに群分けして投与した。投与開始前に、すべての動物の体重を測定し、そして腫瘍直径をノギスで測定した。異なる群の間の腫瘍体積が同等になるように、マウスの腫瘍体積によってランダムに群分けを行った。各群にマウスが3匹ずつで、1日に1回経口投与し、投与後、接種部位を観察した。週に2回腫瘍体積およびマウスの体重を測定した。
【0099】
実験の設計および結果は表9に示すように、ここで、P.Oは経口投与で、QDは1日に1回で、TGI(腫瘍体積抑制率)=(1-治療群の腫瘍重量/対照群の腫瘍重量)*100%である。
【0100】
表9 LU0387モデルの設計および結果
【表9】
【0101】
実験において、腫瘍体積は投与日数によって変わったが、結果は
図1の通りである。
図1から、LU0387モデルにおいて同投与量で、実施例1の薬効がTAK-788およびDZD9008よりも良かったことがわかる。実施例5の薬効はTAK-788に類似した。実施例1の投与量の増加につれ、薬効も明らかに増強した。
【0102】
2.2 Ba/F3-EGFR-D770_N771 ins SVD工学的細胞株皮下移植腫瘍モデルに対する体内薬効学研究
細胞株Ba/F3 EGFR D770_N771 ins SVDはRPMI1640 +10%ウシ胎児血清+1%二重抗生物質を使用し、37℃、5% CO2で培養し、週に2-3回継代処理した。細胞のコンフルエンスが80-90%になり、数が要求に達すると、細胞を回収した。0.2ml(1*106個)の細胞を6-8週齢で、体重18-22gの雌ヌードマウスの右側背中に皮下接種した。腫瘍の平均体積が約150-200 mm3に達したら群分けして投与した。投与開始前に、すべての動物の体重を測定し、そして腫瘍直径をノギスで測定した。異なる群の間の腫瘍体積が同等になるように、マウスの腫瘍体積によってランダムに群分けを行った。各群にマウスが3匹ずつで、1日に1回経口投与し、投与後、接種部位を観察した。週に2回腫瘍体積およびマウスの体重を測定した。
【0103】
表10 Ba/F3 EGFR D770_N771 ins SVDモデルの群分け
【表10】
【0104】
表における実施例18および実施例40は特許WO2021180238におけるトランストリペンタアミン構造を有する化合物である。名称および構造を表11に示す。
【0105】
表11 トランス構造の化合物の名称および構造
【表11】
【0106】
実験において、腫瘍体積は投与日数によって変わったが、結果は
図2の通りである。
図2から、Ba/F3-EGFR-D770_N771 ins SVD細胞移植モデルにおいて、同投与量で、実施例1および実施例5はいずれも体内薬効が特許WO2021180238におけるトランストリペンタアミン構造を有する化合物よりも遥かに良く、腫瘍抑制率が1.6倍以上に向上したことがわかる。
【0107】
上記のように、本特許における化合物はEGFRまたはHER2のエクソン20挿入突然変異に良い抑制効果があり、細胞系NCI-H1975およびPC9の細胞増殖にも良い抑制作用がある。EGFRエクソン20挿入突然変異、HER2のエクソン20挿入突然変異、EGFRエクソン19欠失、EGFRエクソン20点突然変異、EGFRエクソン21の点突然変異のうちの一つまたは二つ以上の組み合わせには、それらの薬物は関連疾患に良い治療効果がある。
【0108】
三.実施例1の構造確認および遊離塩基結晶形の研究
【化25】
【0109】
1.構造確認
実施例1の化合物を214mg取り、0.5mLのジクロロメタンおよび0.5mLのアセトニトリルを入れ、全部溶解させてろ過し、ろ液を密封膜のあるサンプル瓶に入れ、孔を開けた後、ドラフトチャンバーにおいてゆっくり揮発させ、顆粒状の結晶を得た(遊離塩基結晶形I)。単結晶回折によって構造確認を行い、結果を
図3に示し、化合物の配置を確認した。
【0110】
2.実施例1の遊離塩基結晶形の研究
実施例1で得られた化合物に対して多形スクリーニングを行い、後続の開発に適する良い結晶形態が見つかるように、その潜在的な結晶形を探した。合成された実施例1を出発原料とし、検出したところ、化合物は結晶度の良い結晶で、かつ無水結晶形であるため、遊離塩基結晶形Iと名付けた。その後、乾式研磨の手段によって無定形の遊離塩基化合物を製造した。以上の2種類を出発原料とし、結晶形スクリーニング実験を行った。
【0111】
2.1 出発原料の製造および特徴付け
2.1.1 実施例1の化合物の遊離塩基結晶形Iの特徴付け
実施例1の化合物の遊離塩基結晶形Iの原料に対して全面的な特徴付けを行った。偏光顕微鏡(PLM)から、原料は結晶度が良い不規則な形状の結晶であることがわかる。
図4は遊離塩基結晶形IのXRPDスペクトルで、
図5は当該結晶形のDSCとTGAの重なったグラフである。示差走査熱量測定(DSC)曲線は230℃に1つの吸熱ピークがあり、溶融ピークになる。熱重量分析(TGA)曲線は分解前に明らかな重量減少がなく、無水結晶形である。
【0112】
表12 遊離塩基結晶形Iの粉末X線回折ピークのデータ
【表12】
【0113】
2.1.2 実施例1の遊離塩基結晶形Iの溶解度テスト
18種類の溶媒において目視測定法によって概略的に化合物の実施例1の遊離塩基結晶形Iの室温条件における溶解度を測定した。結果は表13に示す。遊離塩基結晶形Iはジクロロエタンおよびジクロロメタンのみにおいて溶解度が高く、大半の測定された溶媒において溶解度が低かった。
【0114】
表13 実施例1の遊離塩基結晶形Iの溶解度の目視測定の結果
【表13】
【0115】
2.1.3 無定形原料の製造および特徴付け
736 mgの実施例1の化合物(遊離塩基結晶形I)を取って5時間の乾式研磨を行い、669.86 mgの無定形の製品を製造できた。XRPD検出を行った結果は
図6に示す。
【0116】
2.2 特徴付けにおける物理・化学的検出装置の使用方法およびパラメーター
2.2.1 粉末X線回折(XRPD)
XRPD回折スペクトルはBruker D2 Phaser型によって得られた。被験サンプルを滑らかでバックグラウンドのないケイ素シートに置いて測定した。測定のパラメーターは表14に示す。
【0117】
【0118】
2.2.2 偏光顕微鏡(PLM)
OPTECの光学顕微鏡BK-PolによってPLM分析を行った。少量のサンプルを取り、スライドガラスに載せ、1滴のシリコーン油を滴下して分散させ、さらにカバーガラスをカバーし、顕微鏡において観察した。
【0119】
2.2.3 示差走査熱量測定(DSC)
DSC曲線はTA装置のDSC 250型によって得られた。DSC 250型の装置の測定方法は、精密に適量のサンプルを量って穴を開けた)アルミ坩堝内に置き、10 ℃/minの昇温速度で25℃から最終の温度300 ℃に昇温させ、流速が50 mL/minの窒素ガスでブローした。
【0120】
2.2.4 熱重量分析(TGA)
TGAデータはTA装置のTGA 550型によって得られた。適量のサンプルを表面を取っておいたアルミ坩堝内に置き、10 ℃/minの昇温速度で室温から300 ℃に昇温させ、天秤室を40mL/minの窒素ガスでブローし、サンプル室を25mL/minの窒素ガスでブローした。
【0121】
2.3 実施例1の化合物の遊離塩基結晶多形の研究
主に懸濁結晶化、貧溶媒沈殿、高低温循環や蒸発結晶化などの方法によって製造した。
懸濁結晶化は実施例1の化合物の目視測定の溶解度の結果から、25 ℃および50 ℃の条件において、それぞれ遊離塩基結晶形Iおよび無定形結晶形を出発原料とし、それぞれ選ばれた単一の溶媒(溶媒はジクロロメタン、1,4-ジオキサン、ジクロロエタン、メチル-t-ブチルエーテル、N-メチルピロリドン、酢酸エチル、アセトン、メタノール、ジメチルスルホキシド、酢酸イソプロピル、ブタノン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、水、アセトニトリル、イソプロパノール、エタノール、n-ヘプタンから選ばれる)または混合溶媒において結晶形の製造を行った。計2種類の結晶形が得られ、遊離塩基結晶形Iおよび遊離塩基結晶形IIである。
【0122】
貧溶媒沈殿は実施例1の化合物の目視測定の溶解度の結果から、ジクロロメタンおよびジクロロエタンを良溶媒とし、そして室温(~25 ℃)の撹拌条件においてそれぞれそれに異なる貧溶媒を入れて結晶形の製造を行った。計2種類の結晶形が得られ、遊離塩基結晶形Iおよび遊離塩基結晶形IIIである。
【0123】
高低温循環は化合物に溶媒(溶媒はジクロロメタン、1,4-ジオキサン、ジクロロエタン、メチル-t-ブチルエーテル、N-メチルピロリドン、酢酸エチル、アセトン、メタノール、ジメチルスルホキシド、酢酸イソプロピル、ブタノン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、水、アセトニトリル、イソプロパノール、エタノール、n-ヘプタンから選ばれる)を入れ、さらに50 ℃~5 ℃の温度循環の条件において撹拌して結晶形の製造を行った。計2種類の結晶形が得られ、遊離塩基結晶形Iおよび遊離塩基結晶形IIである。
【0124】
蒸発結晶化は化合物に溶媒を入れ、調製された溶液をろ過してろ液をサンプル瓶に滴下し、開口に覆われた密封膜に穴を開けた後、ドラフトチャンバーにおいてゆっくり揮発させた。2種類の結晶形が得られ、遊離塩基結晶形Iおよび遊離塩基結晶形IVである。遊離塩基結晶形IVを150 ℃に加熱して脱溶媒した後、新たな結晶形を製造し、遊離塩基結晶形Vと名付けた。
【0125】
2.3.1 遊離塩基結晶形Iの製造および特徴付け
遊離塩基結晶形Iは大半の溶媒において得られ、実施例1で得られた化合物は遊離塩基結晶形Iである。その特徴付けの結果を
図4と
図5に示す。
【0126】
2.3.2 遊離塩基結晶形IIの製造および特徴付け
遊離塩基結晶形IIは一部のエタノールを含有する溶媒系において得られ、無定形の化合物を原料とし、単一の溶媒であるエタノールの懸濁結晶化によって遊離塩基結晶形IIが得られる。その特徴付けの結果は
図7と
図8に示すように、遊離塩基結晶形IIのDSC曲線は124℃および230℃に二つの吸熱ピークがあり、TGA曲線は65-150 ℃に4.48%の重量減少があり、そして遊離塩基結晶形IIはエタノールの溶媒系において得られる。上記から、遊離塩基結晶形IIはエタノールの溶媒和物であることが推測される。DSC曲線の124 ℃における吸熱ピークは脱溶媒ピークになる。
【0127】
表15 遊離塩基結晶形IIの粉末X線回折ピークのデータ
【表15】
【0128】
2.3.3 遊離塩基結晶形IIIの製造および特徴付け
遊離塩基結晶形IIIは一部のイソプロパノールを含有する溶媒系において得られ、貧溶媒沈殿によって結晶形を製造する場合、ジクロロメタン/イソプロパノールまたはジクロロエタン/イソプロパノール系において遊離塩基結晶形IIIが見られる。その特徴付けの結果は
図9と
図10に示すように、遊離塩基結晶形IIIのDSC曲線は121℃および230℃に二つの吸熱ピークがあり、TGA曲線は75-145 ℃に9.57%の重量減少があり、そして遊離塩基結晶形IIIは150℃に加熱して脱溶媒した後、XRPDでは遊離塩基結晶形Iに変換する。遊離塩基結晶形IIIはイソプロパノールの溶媒系において得られ、上記から、遊離塩基結晶形IIIはイソプロパノールの溶媒和物で、DSC曲線の121 ℃における吸熱ピークは脱溶媒ピークであることが推測される。
【0129】
表16 遊離塩基結晶形IIIの粉末X線回折ピークのデータ
【表16】
【0130】
2.3.4 遊離塩基結晶形IVの製造および特徴付け
遊離塩基結晶形IVは一部のジクロロエタンを含有する溶媒系において得られる。92.28mgの原料を取り、サンプル瓶に入れ、5.0mLのジクロロエタンを入れて溶解させ、サンプル瓶の上に密封膜を覆い、穴を開けた後、ドラフトチャンバーにおいてゆっくり揮発させ、このように蒸発結晶化によって結晶形IVを製造した。その特徴付けの結果は
図11と
図12に示すように、遊離塩基結晶形IVのDSC曲線は108℃および231℃に二つの吸熱ピークがあり、TGA曲線は25-150 ℃に10.41%の重量減少があった。
1H NMRの結果から、6.14%のみのジクロロエタンの溶媒残留があったことから、当該サンプルに4.27%の水分が含まれることが推測される。上記から、遊離塩基結晶形IVはジクロロエタンと水の混合の溶媒和物であることが推測される。
【0131】
表17 遊離塩基結晶形IVの粉末X線回折ピークのデータ
【表17】
【0132】
2.3.5 遊離塩基結晶形Vの製造および特徴付け
遊離塩基結晶形IVを150 ℃に加熱して脱溶媒した後、XRPDによって特徴付けを行ったところ、新たな結晶形になったと示され、遊離塩基結晶形Vと名付けた。その特徴付けの結果は
図13と
図14に示すように、遊離塩基結晶形VのDSC曲線は231℃に一つの吸熱ピークがあり、TGA曲線は分解前に明らかな重量減少が無かった。上記から、遊離塩基結晶形Vは無水結晶形であることが推測される。
【0133】
表18 遊離塩基結晶形Vの粉末X線回折ピークのデータ
【表18】
【0134】
3.遊離塩基結晶形Iの結晶形の評価
今回のスクリーニングの過程において遊離塩基結晶形Iおよび遊離塩基結晶形Vの2種類の無水結晶形のみが発見され、アセトンおよびアセトニトリルの2種類の溶媒を使用し、それぞれ飽和溶液を調製し、そして25℃または50℃で、両者を競争懸濁を行った結果、遊離塩基結晶形Iは化合物の熱力学的に安定した結晶形であることが推測された。そして、遊離塩基結晶形Vはスクリーニング実験において直接得られず、遊離塩基結晶形IVの脱溶媒のみによって得られた。そのため、遊離塩基結晶形Iのみに対して結晶形の評価を行ったが、乾式研磨、湿式研磨、打錠(30 MPa)、安定性および吸湿性などの研究を含む。
【0135】
研磨実験から、遊離塩基結晶形Iは5分の乾式研磨を経て無定形の状態になったこと、5分の水を入れた湿式後、結晶度に明らかな変化が見られず、5分のエタノールを入れた湿式研磨後、結晶度がやや低下したことがわかった。
打錠実験では、圧力が30MPaの場合、結晶度がやや低下した。
【0136】
安定性実験では、遊離塩基結晶形Iは開放して80℃で3日、60℃で7日、25 ℃/60 %RHで7日、40 ℃/75 %RHで7日、そして25 ℃/90±5 %RHで7日、それぞれサンプルを取ってXRPD検出を行ったことがわかった。結果から、遊離塩基結晶形Iは明らかな変化がなく、薬物の液相検出の結果も変化がなかったことがわかった。
【0137】
遊離塩基結晶形Iに対して動的水蒸気吸着(DVS)テストを行った結果、80 %RHの場合、吸水重量増加が0.66%で、遊離塩基結晶形Iはやや吸湿性があることがわかる。
【0138】
上記のように、式1で表されるこの種類の化合物の空間配置を同定し、特に実施例1の空間構造を同定した。実施例1の化合物の結晶形スクリーニング研究において、計2つの無水結晶形(遊離塩基結晶形Iおよび遊離塩基結晶形V)および3つの溶媒和物(遊離塩基結晶形II、遊離塩基結晶形IIIおよび遊離塩基結晶形IV)が見出された。実験において、遊離塩基結晶形Iは比較的に安定した無水結晶形で、安定した固形の性質を有し、かつやや吸湿性があり、後続の薬物開発に有用であることが見出された。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キナーゼ阻害剤として用いられる化合物であって、式1で表される化合物、あるいはその重水素化物、または薬学的に許容される塩、溶媒和物またはプロドラッグであることを特徴とする、前記化合物。
【化1】
(式1において、XはCH、Nから選ばれる。
R
1は
【化2】
から選ばれ、R
5はH、C1-C3アルキル基、C1-C3フッ化アルキル基である。
R
20、R
21、R
22はそれぞれ独立にメチル基または重水素化メチル基から選ばれる。
R
3はC1-C3アルキル基、C1-C3ハロアルキル基から選ばれる。
R
40、R
41、R
42はそれぞれ独立にH、D、Fから選ばれる。)
【請求項2】
式2で表される化合物、あるいはその重水素化物、または薬学的に許容される塩、溶媒和物またはプロドラッグであることを特徴とする、請求項1に記載のキナーゼ阻害剤として用いられる化合物。
【化3】
【請求項3】
式2において、XはCH、Nから選ばれ、R
3は-CH
3、-CH
2CH
3、-CH
2CF
3から選ばれ、R
40、R
41はいずれもHで、R
42はHまたはFから選ばれることを特徴とする、請求項2記載のキナーゼ阻害剤として用いられる化合物。
【請求項4】
式3で表される化合物、あるいはその重水素化物、または薬学的に許容される塩、溶媒和物またはプロドラッグであることを特徴とする、請求項1に記載のキナーゼ阻害剤として用いられる化合物。
【化4】
【請求項5】
式3において、XはCH、Nから選ばれ、R
3は-CH
3、-CH
2CH
3、-CH
2CF
3で、R
40、R
41はいずれもHで、R
42はHまたはFから選ばれ、 R
5は-CH
3、-CF
3から選ばれることを特徴とする、請求項4に記載のキナーゼ阻害剤として用いられる化合物。
【請求項6】
式1で表される化合物は、以下:
【化5】
であることを特徴とする、請求項1に記載のキナーゼ阻害剤として用いられる化合物。
【請求項7】
前記化合物は、結晶形、無定形または前記溶媒和物で、前記溶媒和物に含まれる溶媒は、非水溶媒または非水溶媒と水からなる混合溶媒であることを特徴とする、請求項1に記載のキナーゼ阻害剤として用いられる化合物。
【請求項8】
構造が式Aで表される化合物で、
【化6】
結晶形が遊離塩基結晶形Iで、当該結晶形の粉末X線回折スペクトルでは、2θが9.76°±0.2°、10.45°±0.2°、16.54°±0.2°、18.66°±0.2°、20.07°±0.2°、25.90°±0.2°の箇所に特徴的な回折ピークがあることを特徴とする、請求項7に記載のキナーゼ阻害剤として用いられる化合物。
【請求項9】
前記遊離塩基結晶形Iの粉末X線回折スペクトルでは、2θが9.07°±0.2°、9.76°±0.2°、10.45°±0.2°、11.53°±0.2°、11.80°±0.2°、12.91°±0.2°、13.79°±0.2°、14.67°±0.2°、15.08°±0.2°、15.63°±0.2°、16.54°±0.2°、17.50°±0.2°、18.66°±0.2°、20.07°±0.2°、21.10°±0.2°、23.29°±0.2°、24.16°±0.2°、25.90°±0.2°の箇所に特徴的な回折ピークがあることを特徴とする、請求項8に記載のキナーゼ阻害剤として用いられる化合物。
【請求項10】
EGFR突然変異および/またはHER2突然変異による関連疾患を治療する薬物の製造における、請求項1~9のいずれか一項に記載のキナーゼ阻害剤として用いられる化合物の使用。
【請求項11】
前記EGFR突然変異および/またはHER2突然変異は、EGFRエクソン20挿入突然変異、HER2エクソン20挿入突然変異、EGFRエクソン19欠失、EGFRエクソン21の点突然変異、EGFRエクソン20の点突然変異のうちの一つまたは二つ以上の組み合わせを含むことを特徴とする、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記のEGFR突然変異および/またはHER2突然変異は、EGFR Del 19/T790M/C797S突然変異、EGFR L858R/T790M/C797S突然変異から選ばれることを特徴とする、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記疾患は、前記EGFR突然変異および/またはHER2突然変異による癌であることを特徴とする、請求項10に記載の使用。
【国際調査報告】