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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-17
(54)【発明の名称】多重特異性構築物及びその方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20250109BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20250109BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20250109BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20250109BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20250109BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20250109BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20250109BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20250109BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250109BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20250109BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C07K19/00
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 T
A61K39/395 E
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P35/00
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541042
(86)(22)【出願日】2023-01-09
(85)【翻訳文提出日】2024-08-08
(86)【国際出願番号】 CN2023071334
(87)【国際公開番号】W WO2023131329
(87)【国際公開日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2022/070870
(32)【優先日】2022-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2022/117334
(32)【優先日】2022-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520035034
【氏名又は名称】アイ-エムエービー バイオファーマ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ジアン, ウェンチン
(72)【発明者】
【氏名】リー, ジアン
(72)【発明者】
【氏名】チェン, シー
(72)【発明者】
【氏名】リウ, ヤン
(72)【発明者】
【氏名】グオ, ビンシー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA57X
4B065AA57Y
4B065AA72X
4B065AA72Y
4B065AA83X
4B065AA83Y
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA44
4B065CA46
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB31
4C085BB41
4C085BB42
4C085BB43
4C085CC22
4C085CC23
4C085EE01
4C085GG04
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
クローディン6(CLDN6)及び4-1BBを標的とする二重特異性抗体及び多重特異性抗体が提供される。これらの抗体は、CLDN6発現細胞の不在下において、4-1BBに結合することができるが、4-1BBシグナル伝達を活性化することはできない。しかし、CLDN6発現細胞の存在下では、これらの抗体は、CLDN6依存性4-1BBシグナル伝達を誘発することができ、CLDN6発現腫瘍細胞に対する強力な免疫応答をもたらす。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)クローディン-6(「CLDN6」)に特異的に結合する第1の抗体部分と、
(2)4-1BBに特異的に結合する第2の抗体部分と
を含む、多重特異性構築物。
【請求項2】
前記第1の抗体部分が、全長抗体、Fab、Fab’、F(ab’)、scFv、及びsdAbからなる群から選択される、請求項0に記載の多重特異性構築物。
【請求項3】
前記第1の抗体部分が、
(1)配列番号7に記載される配列を含む重鎖可変領域(VH)内のCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列をそれぞれ含むHC-CDR1、HC-CDR2、及びHC-CDR3と、
(2)配列番号8に記載される配列を含む軽鎖可変領域(VL)内のCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列をそれぞれ含むLC-CDR1、LC-CDR2、及びLC-CDR3と
を含む、請求項0または0に記載の多重特異性構築物。
【請求項4】
前記第1の抗体部分が、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、
(a)前記VHは、
(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むHC-CDR1、
(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含むHC-CDR2、及び
(iii)配列番号3のアミノ酸配列を含むHC-CDR3を含み、
(b)前記VLは、
(i)配列番号4のアミノ酸配列を含むLC-CDR1、
(ii)配列番号5のアミノ酸配列を含むLC-CDR2、及び
(iii)配列番号6のアミノ酸配列を含むLC-CDR3を含む、
請求項0~0のいずれか1項に記載の多重特異性構築物。
【請求項5】
前記第1の抗体部分が、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、
(1)前記VHは、配列番号7のアミノ酸配列もしくは配列番号7に対して少なくとも約80%の配列同一性を含むそのバリアントを含み、及び/または
(2)前記VLは、配列番号8のアミノ酸配列もしくは配列番号8に対して少なくとも約80%の配列同一性を含むそのバリアントを含む、
請求項0~0のいずれか1項に記載の多重特異性構築物。
【請求項6】
前記第1の抗体部分が、
(1)配列番号18に記載される配列を含む重鎖可変領域(VH)内のCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列をそれぞれ含むHC-CDR1、HC-CDR2、及びHC-CDR3と、
(2)配列番号19に記載される配列を含む軽鎖可変領域(VL)内のCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列をそれぞれ含むLC-CDR1、LC-CDR2、及びLC-CDR3と
を含む、請求項0~2のいずれか1項に記載の多重特異性構築物。
【請求項7】
前記第1の抗体部分が、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、
(1)前記VHは、
(i)配列番号12のアミノ酸配列を含むHC-CDR1、
(ii)配列番号13のアミノ酸配列を含むHC-CDR2、及び
(iii)配列番号14のアミノ酸配列を含むHC-CDR3を含み、
(2)前記VLは、
(i)配列番号15のアミノ酸配列を含むLC-CDR1、
(ii)配列番号16のアミノ酸配列を含むLC-CDR2、及び
(iii)配列番号17のアミノ酸配列を含むLC-CDR3を含む、
請求項0~2及び6のいずれか1項に記載の多重特異性構築物。
【請求項8】
前記第1の抗体部分が、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、
(1)前記VHは、配列番号18のアミノ酸配列もしくは配列番号18に対して少なくとも約80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み、及び/または
(2)前記VLは、配列番号19のアミノ酸配列もしくは配列番号19に対して少なくとも約80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む、
請求項1~2及び6~7のいずれか1項に記載の多重特異性構築物。
【請求項9】
前記第1の抗体部分とCLDN6の結合が、前記第2の抗体部分が4-1BBを活性化することを誘発する、請求項0~8のいずれか1項に記載の多重特異性構築物。
【請求項10】
前記第2の抗体部分が、4-1BBのCRD3/4領域に特異的に結合する、請求項9に記載の多重特異性構築物。
【請求項11】
前記第2の抗体部分が、全長抗体、Fab、Fab’、F(ab’)、scFv、及びsdAbからなる群から選択される、請求項0~10のいずれか1項に記載の多重特異性構築物。
【請求項12】
前記第2の抗体部分が、sdAbである、請求項11に記載の多重特異性構築物。
【請求項13】
前記sdAbが、配列番号27に記載されるアミノ酸配列を含む単一単量体可変抗体ドメイン内のCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列をそれぞれ含むsdAb-CDR1、sdAb-CDR2、及びsdAb-CDR3を含む、請求項12に記載の多重特異性構築物。
【請求項14】
前記sdAbが、
(1)配列番号24のアミノ酸配列を含むsdAb-CDR1、
(2)配列番号25のアミノ酸配列を含むsdAb-CDR2、及び
(3)配列番号26のアミノ酸配列を含むsdAb-CDR3
を含む、請求項12に記載の多重特異性構築物。
【請求項15】
前記第2の抗体部分が、配列番号27のアミノ酸配列または配列番号27に対して少なくとも約80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む、請求項0~14のいずれか1項に記載の多重特異性構築物。
【請求項16】
前記多重特異性構築物が、二重特異性抗体または二重特異性結合断片である、請求項0~15のいずれか1項に記載の多重特異性構築物。
【請求項17】
(1)前記第1の抗体部分が、
(a)配列番号7に記載される配列を含む重鎖可変領域(VH)内のCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列をそれぞれ含むHC-CDR1、HC-CDR2、及びHC-CDR3と、
(b)配列番号8に記載される配列を含む軽鎖可変領域(VL)内のCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列をそれぞれ含むLC-CDR1、LC-CDR2、及びLC-CDR3とを含み、
(2)前記第2の抗体部分が、配列番号27に記載されるアミノ酸配列を含む単一単量体可変抗体ドメイン内のCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列をそれぞれ含むsdAb-CDR1、sdAb-CDR2、及びsdAb CDR3を含む、
請求項0~5及び9~16のいずれか1項に記載の多重特異性構築物。
【請求項18】
請求項0~17のいずれか1項に記載の多重特異性構築物と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項19】
請求項0~17のいずれか1項に記載の多重特異性構築物をコードする、核酸。
【請求項20】
請求項19に記載の核酸を含む、ベクター。
【請求項21】
請求項19に記載の核酸、または請求項20に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項22】
疾患または状態を治療することを、それを必要とする対象において行う方法であって、前記対象に、有効量の請求項0~17のいずれか1項に記載の多重特異性構築物、または請求項18に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項23】
前記疾患または状態が、がんである、請求項22記載の方法。
【請求項24】
疾患または状態を治療することを、それを必要とする対象において行うための医薬品の調製における、請求項0~17のいずれか1項に記載の多重特異性構築物の使用。
【請求項25】
(1)腫瘍抗原に特異的に結合する第1の抗体部分と、
(2)4-1BBに特異的に結合する第2の抗体部分とを含み、ここで、前記第1の抗体部分と前記腫瘍抗原との結合は、前記第2の抗体部分が4-1BBを活性化することを誘発する、多重特異性構築物。
【請求項26】
前記第2の抗体部分による前記4-1BBの活性化が、前記第1の抗体部分と前記腫瘍抗原との結合後、少なくとも10倍増強される、請求項0に記載の多重特異性構築物。
【請求項27】
前記第2の抗体部分が、4-1BBのCRD3/4領域に特異的に結合する、請求項0または0に記載の多重特異性構築物。
【請求項28】
前記第2の抗体部分が、sdAbである、請求項0~0のいずれか1項に記載の多重特異性構築物。
【請求項29】
前記sdAbが、配列番号27に記載されるアミノ酸配列を含む単一単量体可変抗体ドメイン内のCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列をそれぞれ含むsdAb-CDR1、sdAb-CDR2、及びsdAb-CDR3を含む、請求項0に記載の多重特異性構築物。
【請求項30】
前記sdAbが、
(1)配列番号24のアミノ酸配列を含むsdAb-CDR1、
(2)配列番号25のアミノ酸配列を含むsdAb-CDR2、及び
(3)配列番号26のアミノ酸配列を含むsdAb-CDR3
を含む、請求項0に記載の多重特異性構築物。
【請求項31】
前記腫瘍抗原が、CLDN6である、請求項0~0のいずれか1項に記載の多重特異性構築物。
【請求項32】
2つの重鎖構成要素及び2つの軽鎖構成要素を含む多重特異性構築物であって、
(a)各重鎖構成要素は、配列番号28に記載される配列を含み、各軽鎖構成要素は、配列番号29に記載される配列を含むか、
(b)各重鎖構成要素は、配列番号30に記載される配列を含み、各軽鎖構成要素は、配列番号31に記載される配列を含むか、
(c)各重鎖構成要素は、配列番号32に記載される配列を含み、各軽鎖構成要素は、配列番号33に記載される配列を含むか、
(d)各重鎖構成要素は、配列番号34に記載される配列を含み、各軽鎖構成要素は、配列番号35に記載される配列を含むか、
(e)各重鎖構成要素は、配列番号36に記載される配列を含み、各軽鎖構成要素は、配列番号37に記載される配列を含むか、または
(f)各重鎖構成要素は、配列番号38に記載される配列を含み、各軽鎖構成要素は、配列番号39に記載される配列を含む、前記多重特異性構築物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2022年1月9日に出願された国際特許出願第PCT/CN2022/070870号の優先権を主張するものであり、その内容は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
本出願は、多重特異性分子、例えば、抗CLDN6/抗4-1BB二重特異性抗体、及び疾患または状態を治療することを含むその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
クローディンは、密着した細胞結合の重要な構成要素を形成するタンパク質のファミリーである。クローディン-6(CLDN6)は、タイトジャンクションの形成に関与する4回膜貫通型タンパク質である。成人のヒト正常組織では、CLDN6 mRNA及びタンパク質は存在しない。一方、精巣癌、卵巣癌、子宮癌及び肺腺癌などの様々なヒト固形癌では、CLDN6の転写レベルが高いことが頻繁に検出されている。mRNAレベルと同様に、これらのヒトがんでは、CLDN6タンパク質が高く、均一であることが報告されている。
【0004】
4-1BB(CD137、腫瘍壊死因子スーパーファミリー9)は、TNF-受容体スーパーファミリー(TNFRSF)のメンバーであり、自然免疫細胞と適応免疫細胞の両方の免疫細胞の活性化後に発現される共刺激分子である。4-1BBは、様々な免疫細胞の活性を調節する重要な役割を果たしている。4-1BBアゴニストは、免疫細胞増殖、生存、サイトカインの分泌及び細胞溶解活性CD8 T細胞を増強する。多くの他の研究でも、4-1BBの活性化が免疫応答を増強し、マウスの腫瘍を除去することが示されている。したがって、4-1BBは、がん免疫学における有望な標的分子であることが示唆された。
【0005】
本明細書で言及される刊行物、特許、特許出願及び特許出願公開の開示は全て、その全体が参照により本明細書に援用される。
【発明の概要】
【0006】
一態様において、本明細書で提供されるのは、腫瘍抗原に特異的に結合する第1の抗体部分と、4-1BBに特異的に結合する第2の抗体部分とを含み、ここで、第1の抗体部分と腫瘍抗原との結合は、第2の抗体部分が4-1BBを活性化することを誘発する、多重特異性構築物である。いくつかの実施形態では、第2の抗体部分は、4-1BBのCRD3/4領域に特異的に結合する。
【0007】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、腫瘍抗原に特異的に結合する第1の抗体部分と、4-1BBに特異的に結合する第2の抗体部分とを含み、ここで、第1の抗体部分と腫瘍抗原との結合は、第2の抗体部分が4-1BBを活性化することを誘発する、多重特異性構築物である。いくつかの実施形態では、第2の抗体部分による4-1BBの活性化は、第1の抗体部分と腫瘍抗原との結合後、少なくとも約2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、50倍、100倍、200倍、500倍、または1000倍のいずれか1つ(これらの値の間の任意の範囲を含む)の値分増強される。いくつかの実施形態では、多重特異性構築物は、腫瘍抗原に結合することなく、4-1BBシグナル伝達を活性化する。いくつかの実施形態では、第2の部分は、腫瘍抗原に結合しなければ、4-1BBシグナル伝達を活性化しない。
【0008】
いくつかの実施形態では、a)クローディン-6(「CLDN6」)に特異的に結合する第1の抗体部分と、b)4-1BBに特異的に結合する第2の抗体部分とを含む、多重特異性構築物が提供される。いくつかの実施形態では、第1の抗体部分は、2本の重鎖及び2本の軽鎖を含む、全長抗体を含む。
【0009】
本明細書で提供されるのは、(1)クローディン-6(「CLDN6」)に特異的に結合する第1の抗体部分と、(2)4-1BBに特異的に結合する第2の抗体部分とを含む、多重特異性構築物である。
【0010】
いくつかの実施形態では、第1の抗体部分は、全長抗体、Fab、Fab’、F(ab’)、scFv、及びsdAbからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第1の抗体部分は、(1)配列番号7に記載される配列を含む重鎖可変領域(VH)内のCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列をそれぞれ含むHC-CDR1、HC-CDR2、及びHC-CDR3と、(2)配列番号8に記載される配列を含む軽鎖可変領域(VL)内のCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列をそれぞれ含むLC-CDR1、LC-CDR2、及びLC-CDR3とを含む。いくつかの実施形態では、第1の抗体部分は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、(a)VHは、(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むHC-CDR1、(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含むHC-CDR2、及び(iii)配列番号3のアミノ酸配列を含むHC-CDR3を含み、(b)VLは、(i)配列番号4のアミノ酸配列を含むLC-CDR1、(ii)配列番号5のアミノ酸配列を含むLC-CDR2、及び(iii)配列番号6のアミノ酸配列を含むLC-CDR3を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗体部分は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、(1)VHは、配列番号7のアミノ酸配列もしくは配列番号7に対して少なくとも約80%の配列同一性を含むそのバリアントを含み、及び/または(2)VLは、配列番号8のアミノ酸配列もしくは配列番号8に対して少なくとも約80%の配列同一性を含むそのバリアントを含む。いくつかの実施形態では、第1の抗体部分は、(1)配列番号18に記載される配列を含む重鎖可変領域(VH)内のCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列をそれぞれ含むHC-CDR1、HC-CDR2、及びHC-CDR3と、(2)配列番号19に記載される配列を含む軽鎖可変領域(VL)内のCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列をそれぞれ含むLC-CDR1、LC-CDR2、及びLC-CDR3とを含む。いくつかの実施形態では、第1の抗体部分は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、(1)VHは、(i)配列番号12のアミノ酸配列を含むHC-CDR1、(ii)配列番号13のアミノ酸配列を含むHC-CDR2、及び(iii)配列番号14のアミノ酸配列を含むHC-CDR3を含み、(2)VLは、(i)配列番号15のアミノ酸配列を含むLC-CDR1、(ii)配列番号16のアミノ酸配列を含むLC-CDR2、及び(iii)配列番号17のアミノ酸配列を含むLC-CDR3を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗体部分は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、(1)VHは、配列番号18のアミノ酸配列もしくは配列番号18に対して少なくとも約80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み、及び/または(2)VLは、配列番号19のアミノ酸配列もしくは配列番号19に対して少なくとも約80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む。いくつかの実施形態では、第1の抗体部分とCLDN6の結合は、第2の抗体部分が4-1BBを活性化することを誘発する。
【0011】
いくつかの実施形態では、第2の抗体部分は、4-1BBのCRD3/4領域に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、第2の抗体部分は、全長抗体、Fab、Fab’、F(ab’)、scFv、及びsdAbからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第2の抗体部分は、sdAbである。いくつかの実施形態では、sdAbは、配列番号27に記載されるアミノ酸配列を含む単一単量体可変抗体ドメイン内のCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列をそれぞれ含むsdAb-CDR1、sdAb-CDR2、及びsdAb-CDR3を含む。いくつかの実施形態では、sdAbは、(1)配列番号24のアミノ酸配列を含むsdAb-CDR1;(2)配列番号25のアミノ酸配列を含むsdAb-CDR2;及び(3)配列番号26のアミノ酸配列を含むsdAb-CDR3を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗体部分は、配列番号27のアミノ酸配列または配列番号27に対して少なくとも約80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、多重特異性構築物は、二重特異性抗体または二重特異性結合断片である。いくつかの実施形態では、(1)第1の抗体部分は、(a)配列番号7に記載される配列を含む重鎖可変領域(VH)内のCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列をそれぞれ含むHC-CDR1、HC-CDR2、及びHC-CDR3と、(b)配列番号8に記載される配列を含む軽鎖可変領域(VL)内のCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列をそれぞれ含むLC-CDR1、LC-CDR2、及びLC-CDR3とを含み、(2)第2の抗体部分は、配列番号27に記載されるアミノ酸配列を含む単一単量体可変抗体ドメイン内のCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列をそれぞれ含むsdAb-CDR1、sdAb-CDR2、及びsdAb CDR3を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性構築物と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物が提供される。
【0014】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性構築物をコードする核酸が提供される。いくつかの実施形態では、かかる核酸を含むベクターが提供される。いくつかの実施形態では、かかる核酸またはかかるベクターを含む宿主細胞が提供される。
【0015】
また、本明細書で提供されるのは、疾患または状態を治療することを、それを必要とする対象において行う方法であって、対象に、有効量の本明細書に記載される多重特異性構築物または本明細書に記載される医薬組成物を投与することを含む、方法である。また、本明細書で提供されるのは、疾患または状態を治療することを、それを必要とする対象において行うための医薬品の調製における、本明細書に記載される多重特異性構築物の使用である。いくつかの実施形態では、疾患または状態は、がんである。
【0016】
いくつかの実施形態では、(1)腫瘍抗原に特異的に結合する第1の抗体部分と、(2)4-1BBに特異的に結合する第2の抗体部分とを含み、ここで、第1の抗体部分と腫瘍抗原との結合は、第2の抗体部分が4-1BBを活性化することを誘発する、多重特異性構築物が提供される。いくつかの実施形態では、第2の抗体部分による4-1BBの活性化は、第1の抗体部分と腫瘍抗原との結合後、少なくとも10倍増強される。いくつかの実施形態では、第2の抗体部分は、4-1BBのCRD3/4領域に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、第2の抗体部分は、sdAbである。いくつかの実施形態では、sdAbは、配列番号27に記載されるアミノ酸配列を含む単一単量体可変抗体ドメイン内のCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列をそれぞれ含むsdAb-CDR1、sdAb-CDR2、及びsdAb-CDR3を含む。いくつかの実施形態では、sdAbは、(1)配列番号24のアミノ酸配列を含むsdAb-CDR1;(2)配列番号25のアミノ酸配列を含むsdAb-CDR2;及び(3)配列番号26のアミノ酸配列を含むsdAb-CDR3を含む。いくつかの実施形態では、腫瘍抗原は、CLDN6である。
【0017】
また、本明細書で提供されるのは、2つの重鎖構成要素及び2つの軽鎖構成要素を含む多重特異性構築物であって、ここで、(a)各重鎖構成要素は、配列番号28及び/または配列番号44に記載される配列を含み、各軽鎖構成要素は、配列番号29に記載される配列を含むか、(b)各重鎖構成要素は、配列番号30に記載される配列を含み、各軽鎖構成要素は、配列番号31に記載される配列を含むか、(c)各重鎖構成要素は、配列番号32に記載される配列を含み、各軽鎖構成要素は、配列番号33に記載される配列を含むか、(d)各重鎖構成要素は、配列番号34に記載される配列を含み、各軽鎖構成要素は、配列番号35に記載される配列を含むか、(e)各重鎖構成要素は、配列番号36に記載される配列を含み、各軽鎖構成要素は、配列番号37に記載される配列を含むか、または(f)各重鎖構成要素は、配列番号38に記載される配列を含み、各軽鎖構成要素は、配列番号39に記載される配列を含む、多重特異性構築物である。
【0018】
本出願は、本明細書に記載される多重特異性構築物及び/または本明細書に記載される医薬と、疾患または状態(例えば、がん)を治療するために多重特異性構築物(または医薬組成物)を使用するための添付文書または説明書とを含むキットを提供する。
【0019】
本明細書に記載される様々な実施形態の特性のうちの1つ、いくつか、または全てを組み合わせて、本発明の他の実施形態を形成することができることを理解されたい。本発明のこれら及び他の態様は、当業者には明らかになるであろう。本発明のこれら及び他の実施形態は、以下の詳細な説明によってさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1A】本明細書で開示されるCLDN6×4-1BB二重特異性抗体(BsAb)とCLDN6との結合親和性を示す。
図1B】本明細書で開示されるCLDN6×4-1BB二重特異性抗体(BsAb)とCLDN6との結合親和性を示す。
【0021】
図2A】本明細書で開示されるCLDN6×4-1BB BsAbとCLDN6発現細胞との結合親和性を示す。
図2B】本明細書で開示されるCLDN6×4-1BB BsAbとCLDN6発現細胞との結合親和性を示す。
図2C】本明細書で開示されるCLDN6×4-1BB BsAbとCLDN6発現細胞との結合親和性を示す。
【0022】
図3A】本明細書で開示されるCLDN6×4-1BB BsAbと4-1BBとの結合親和性を示す。
図3B】本明細書で開示されるCLDN6×4-1BB BsAbと4-1BBとの結合親和性を示す。
図3C】本明細書で開示されるCLDN6×4-1BB BsAbと4-1BBとの結合親和性を示す。
図3D】本明細書で開示されるCLDN6×4-1BB BsAbと4-1BBとの結合親和性を示す。
【0023】
図4A】本明細書で開示されるCLDN6×4-1BB BsAbと可溶性4-1BB及び4-1BB発現細胞との結合を示す。
図4B】本明細書で開示されるCLDN6×4-1BB BsAbと可溶性4-1BB及び4-1BB発現細胞との結合を示す。
【0024】
図5A】本明細書で開示されるCLDN6×4-1BB BsAbのCLDN6依存性4-1BB活性化を示す。
図5B】本明細書で開示されるCLDN6×4-1BB BsAbのCLDN6依存性4-1BB活性化を示す。
図5C】本明細書で開示されるCLDN6×4-1BB BsAbのCLDN6依存性4-1BB活性化を示す。
図5D】本明細書で開示されるCLDN6×4-1BB BsAbのCLDN6依存性4-1BB活性化を示す。
【0025】
図6A】本明細書で開示されるCLDN6×4-1BB BsAbによるPBMCの活性化を示す。
図6B】本明細書で開示されるCLDN6×4-1BB BsAbによるPBMCの活性化を示す。
図6C】本明細書で開示されるCLDN6×4-1BB BsAbによるPBMCの活性化を示す。
図6D】本明細書で開示されるCLDN6×4-1BB BsAbによるPBMCの活性化を示す。
図6E】本明細書で開示されるCLDN6×4-1BB BsAbによるPBMCの活性化を示す。
図6F】本明細書で開示されるCLDN6×4-1BB BsAbによるPBMCの活性化を示す。
図6G】本明細書で開示されるCLDN6×4-1BB BsAbによるPBMCの活性化を示す。
図6H】本明細書で開示されるCLDN6×4-1BB BsAbによるPBMCの活性化を示す。
【0026】
図7A】本明細書で開示されるCLDN6×4-1BB BsAbで処置した後のCT26マウス大腸癌腫瘍担持hu4-1BBマウスにおける腫瘍阻害を示す。
図7B】本明細書で開示されるCLDN6×4-1BB BsAbで処置した後のCT26マウス大腸癌腫瘍担持hu4-1BBマウスにおける腫瘍阻害を示す。
【0027】
図8A】本出願のCLDN6×4-1BB BsAbで処置した後の肝機能を示す。
図8B】本出願のCLDN6×4-1BB BsAbで処置した後の肝機能を示す。
【0028】
図9A】本明細書で開示されるCLDN6×4-1BB BsAbで処置した後のMC38マウス結腸腺癌腫瘍担持hu4-1BBマウスにおける腫瘍阻害を示す。
図9B】本明細書で開示されるCLDN6×4-1BB BsAbで処置した後のMC38マウス結腸腺癌腫瘍担持hu4-1BBマウスにおける腫瘍阻害を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
定義
「抗体」という用語は、その最も広い意味で使用され、所望の抗原結合活性を示す限り、限定するものではないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、全長抗体及びその抗原結合断片を含む様々な抗体構造を包含する。「抗体部分」という用語は、全長抗体またはその抗原結合断片を指す。
【0030】
全長抗体は、2本の重鎖及び2本の軽鎖を含む。軽鎖及び重鎖の可変領域は、抗原結合に関与する。重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、それぞれ、「VH」及び「VL」と称され得る。両鎖における可変領域は通常、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる3つの高度に可変のループを含有する(LC-CDR1、LC-CDR2、及びLC-CDR3を含む軽鎖(LC)CDR、HC-CDR1、HC-CDR2、及びHC-CDR3を含む重鎖(HC)CDR)。本明細書に開示される抗体及び抗原結合断片についてのCDR境界は、Kabat、Chothia、またはAl-Lazikaniの規則によって定義または同定され得る(Al-Lazikani 1997;Chothia 1985;Chothia 1987;Chothia 1989;Kabat 1987;Kabat 1991)。重鎖または軽鎖の3つのCDRは、フレームワーク領域(FR)として知られる隣接する区間の間に介在し、CDRよりも高度に保存され、超可変ループを支持する足場を形成する。重鎖及び軽鎖の定常領域は、抗原結合に関与しないが、種々のエフェクター機能を示す。抗体は、それらの重鎖の定常領域のアミノ酸配列に基づいてクラスに割り当てられる。抗体の5つの主要なクラスまたはアイソタイプは、それぞれα、δ、ε、γ、及びμ重鎖の存在によって特徴付けられるIgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMである。主要な抗体クラスのいくつかは、lgG1(γ1重鎖)、lgG2(γ2重鎖)、lgG3(γ3重鎖)、lgG4(γ4重鎖)、lgA1(α1重鎖)、またはlgA2(α2重鎖)などのサブクラスに分けられる。
【0031】
本明細書で使用される「抗原結合断片」という用語は、例えば、ダイアボディ、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv断片、ジスルフィド安定化Fv断片(dsFv)、(dsFv)、二重特異性dsFv(dsFv-dsFv’)、ジスルフィド安定化ダイアボディ(dsダイアボディ)、一本鎖Fv(scFv)、scFv二量体(二価ダイアボディ)、1つ以上のCDRを含む抗体の一部から形成される多重特異性抗体、単一ドメイン抗体(例えば、ラクダ化単一ドメイン抗体)、ナノボディ、ドメイン抗体、二価ドメイン抗体、または抗原に結合するが完全な抗体構造を含まない任意の他の抗体断片を含む、抗体断片を指す。抗原結合断片は、親抗体または親抗体断片(例えば、親scFv)が結合するものと同じ抗原に結合することが可能である。いくつかの実施形態では、抗原結合断片は、1つ以上の異なるヒト抗体に由来するフレームワーク領域にグラフトされた、特定のヒト抗体に由来する1つ以上のCDRを含み得る。
【0032】
「sFv」または「scFv」とも略される「一本鎖Fv」は、一本のポリペプチド鎖に接続されたVH及びVL抗体ドメインを含む、抗体断片である。いくつかの実施形態では、scFvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間のポリペプチドリンカーをさらに含み、これは、scFvが抗原結合のための所望の構造を形成することを可能とする。scFvの概説については、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer-Verlag,New York,pp.269-315(1994)を参照されたい。
【0033】
本明細書で使用される場合、用語「CDR」または「相補性決定領域」は、重鎖及び軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内に見られる非連続的抗原結合部位を意味することが意図されている。これらの特定の領域は、Kabat et al.,J.Biol.Chem.252:6609-6616(1977);Kabat et al.,U.S.Dept.of Health and Human Services,“Sequences of proteins of immunological interest”(1991);Chothia et al.,J.Mol.Biol.196:901-917(1987);Al-Lazikani B.et al.,J.Mol.Biol.,273:927-948(1997);MacCallum et al.,J.Mol.Biol.262:732-745(1996);Abhinandan and Martin,Mol.Immunol.,45:3832-3839(2008);Lefranc M.P.et al.,Dev.Comp.Immunol.,27:55-77(2003);及びHonegger and Pluckthun,J.Mol.Biol.,309:657-670(2001)によって記載されており、定義には、互いに対して比較された場合にアミノ酸残基の重複またはサブセットが含まれる。しかしながら、抗体もしくはグラフト抗体またはそのバリアントのCDRを指すいずれの定義の適用も、本明細書で定義及び使用される用語の範囲内であることが意図される。上に引用される参考文献のそれぞれによって定義されるCDRを包含するアミノ酸残基を比較として以下の表1に記載する。例えば、Abhinandan and Martin,Mol.Immunol.,45:3832-3839(2008);Ehrenmann F.et al.,Nucleic Acids Res.,38:D301-D307(2010);及びAdolf-Bryfogle J.et al.,Nucleic Acids Res.,43:D432-D438(2015)を含む、CDR予測アルゴリズム及びインターフェースが当該技術分野で知られている。本段落において引用される参考文献の内容は、本出願における使用及び本明細書における1つ以上の請求項における可能な包含のために、その全体が参照により本明細書に援用される。
【表1】
【0034】
「Kabatに従う可変ドメイン残基番号付け」または「Kabatに従うアミノ酸位置番号付け」という表現及びそれらの変形は、前出のKabat et al.における抗体の編成の重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインに使用される番号付けシステムを指す。このナンバリングシステムを使用する場合、実際の直鎖状アミノ酸配列は、可変ドメインのFRもしくは超可変領域(HVR)の短縮、またはFRもしくはHVRへの挿入に対応する、より少ないアミノ酸または追加のアミノ酸を含有することがある。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に1つのアミノ酸挿入(Kabatに従うと残基52a)を含み得、また重鎖FR残基82の後に複数の挿入された残基(例えば、Kabatに従うと残基82a、82b及び82cなど)を含み得る。所与の抗体に対する残基のKabat番号付けは、抗体の配列と「標準の」Kabatによって番号付けされた配列との相同領域でのアラインメントによって決定され得る。
【0035】
本明細書中で別段の指示がない限り、免疫グロブリン重鎖中の残基の番号付けは、前出のKabat et al.に従うEUインデックスの番号付けに軽微な修正を加えたものである。簡潔に述べると、重鎖CDR1の前の超可変ループに5残基をさらに追加した。「Kabatに従うEUインデックス」は、ヒトIgG1 EU抗体の残基番号付けを指す。
【0036】
「フレームワーク」または「FR」残基は、本明細書に定義されるCDR残基以外の可変ドメイン残基である。
【0037】
非ヒト(例えば、齧歯類)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト抗体由来の最小配列を含有するキメラ抗体である。ほとんどの場合、ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であって、レシピエントの超可変領域(HVR)に由来する残基が、所望の抗体特異性、親和性及び能力を有するマウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域に由来する残基で置き換えられている、ヒト免疫グロブリンである。いくつかの場合において、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基に置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体に見られない残基を含むことができる。これらの改変は、抗体性能をさらに改良するためになされる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、ここで、超可変ループの全てまたは実質的に全ては、非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応し、FRの全てまたは実質的に全ては、ヒト免疫グロブリン配列のFRである。ヒト化抗体は、任意選択により、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部も含む。さらなる詳細については、Jones et al.,Nature 321:522-525(1986);Riechmann et al.,Nature 332:323-329(1988);及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593-596(1992)を参照されたい。
【0038】
「ヒト抗体」は、ヒトによって産生された抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体、及び/または本明細書に開示されるヒト抗体を作製する技術のうちの任意のものを用いて作製された抗体である。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特に除外する。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリーが含まれる当該技術分野において公知の様々な技術を使用して生成され得る。Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.,222:581(1991)。ヒトモノクローナル抗体の作製には、Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985);Boerner et al.,J.Immunol.,147(1):86-95(1991)に記載されている方法も利用可能である。また、van Dijk and van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol.,5:368-74(2001)も参照されたい。ヒト抗体は、抗原投与に応答してかかる抗体を産生するよう改変されているが、その内因性遺伝子座は無効化されているトランスジェニック動物、例えば、免疫化異種マウスに抗原を投与することによって、調製することができる(XENOMOUSE(商標)技術に関しては、例えば、米国特許第6,075,181号及び同第6,150,584号参照)。また、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術により産生されるヒト抗体については、例えば、Li et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:3557-3562(2006)を参照されたい。
【0039】
本明細書で同定されるポリペプチド及び抗体配列に関する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」または「相同性」は、配列同一性の一部としてあらゆる保存的置換を考慮して配列を整列させた後、比較されるポリペプチド内のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定するためのアライメントは、当該技術分野の技術範囲内の様々な方法、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、Megalign(DNASTAR)、またはMUSCLEソフトウェアなどの一般に利用可能なコンピューターソフトウェアを使用して達成することができる。当業者であれば、比較される配列の全長にわたって最大のアライメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含め、アライメントを評価するのに適切なパラメーターを決定することができる。しかしながら、本明細書における目的上、アミノ酸配列同一性パーセントの値は、配列比較コンピュータープログラムMUSCLE(Edgar,R.C.,Nucleic Acids Research 32(5):1792-1797,2004;Edgar,R.C.,BMC Bioinformatics 5(1):113,2004)を使用して生成される。
【0040】
「相同」とは、2つのポリペプチド間または2つの核酸分子間の配列類似性または配列同一性を指す。比較された2つの配列の両方の位置が同じ塩基またはアミノ酸モノマーサブユニットで占められている場合、例えば、2つのDNA分子のそれぞれの位置がアデニンで占められている場合、分子は、その位置で相同である。2つの配列間の相同性パーセントは、2つの配列により共有されるマッチング位置または相同位置の数を、比較した位置の数で割り、100を掛けた関数である。例えば、2つの配列の10個の位置のうち6個がマッチまたは相同である場合、2つの配列は、60%相同である。例として、DNA配列ATTGCCとTATGGCは、50%相同である。一般に、比較は、2つの配列が最大相同性を与えるように整列されたときになされる。
【0041】
「定常ドメイン」という用語は、免疫グロブリンの他の部分である、抗原結合部位を含有する可変ドメインと比べて、より保存されたアミノ酸配列を有する免疫グロブリン分子の部分を指す。定常領域ドメインは、重鎖のC1、C2及びC3ドメイン(総称して、C)ならびに軽鎖のCHL(またはC)ドメインを含有する。
【0042】
任意の哺乳動物種に由来する抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(「κ」)及びラムダ(「λ」)と呼ばれる2つの明確に異なる種類のうちの1つに割り当てられ得る。
【0043】
「CH1ドメイン」(「H1」ドメインの「C1」とも称される)は、通常、約アミノ酸118~約アミノ酸215(EU番号付けシステム)に及ぶ。
【0044】
「ヒンジ領域」は、一般に、ヒトIgG1のGlu216~Pro230に対応するIgGの領域として定義される(Burton,Molec.Immunol.22:161-206(1985))。他のIgGアイソタイプのヒンジ領域は、重鎖間S-S結合を形成する最初と最後のシステイン残基を同じ位置に配置することによって、IgG1配列と整列し得る。
【0045】
ヒトIgG Fc領域の「CH2ドメイン」(「C2」ドメインとも称される)は、通常、約アミノ酸231~約アミノ酸340に及ぶ。CH2ドメインは、別のドメインと緊密に対合しないという点でユニークである。むしろ、2つのN結合分岐炭水化物鎖は、インタクト天然IgG分子の2つのCH2ドメイン間に挿入される。炭水化物は、ドメイン-ドメイン対合の代替を提供し、CH2ドメインの安定化を助けることができると推測されている。Burton,Molec Immunol.22:161-206(1985)。
【0046】
「CH3ドメイン」(「C3」ドメインとも称される)は、Fc領域のC末端残基からCH2ドメインまでのストレッチを含む(すなわち、抗体配列の約アミノ酸残基341からC末端、典型的に、IgGのアミノ酸残基446または447まで)。
【0047】
本明細書における「Fc領域」または「断片結晶性領域」という用語は、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用され、天然配列のFc領域及びバリアントFc領域を含む。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は様々であり得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、アミノ酸残基の位置Cys226またはPro230から、そのカルボキシル末端まで及ぶものと定義される。Fc領域のC末端のリジン(EU番号付けシステムに従って残基447)は、例えば、抗体の生成もしくは精製の間に、または抗体の重鎖をコードする核酸を遺伝子組み換え操作することによって除去され得る。したがって、インタクト抗体の組成物は、全てのK447残基が除去された抗体集団、K447残基が除去されていない抗体集団、及びK447残基を有する抗体と有しない抗体との混合物を有する抗体集団を含み得る。本明細書に記載される抗体における使用に好適な天然配列Fc領域には、ヒトIgG1、IgG2(IgG2A、IgG2B)、IgG3及びIgG4が含まれる。
【0048】
「Fc受容体」または「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を表す。好ましいFcRは、天然配列のヒトFcRである。さらに、好ましいFcRは、IgG抗体に結合するもの(ガンマ受容体)であり、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIのサブクラスの受容体(これらの受容体のアレルバリアント及び選択的スプライシング形態を含む)が含まれる。FcγRII受容体には、同様のアミノ酸配列を有し、主にその細胞質ドメインが異なる、FcγRIIA(「活性化受容体」)及びFcγRIIB(「抑制性受容体」)が含まれる。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメイン中に免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)を含有する。抑制性受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメイン中に免疫受容体チロシン抑制性モチーフ(ITIM)を含有する。(M.Daeron,Annu.Rev.Immunol.15:203-234(1997)参照。) FcRは、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457-92(1991);Capel et al.,Immunomethods 4:25-34(1994);及びde Haas et al.,J.Lab.Clin.Med.126:330-41(1995)に概説されている。今後同定されるものを含め、他のFcRも本明細書における「FcR」という用語に包含される。
【0049】
本明細書で使用される「エピトープ」という用語は、抗体または抗体部分が結合する抗原上の原子またはアミノ酸の特定の群を指す。2つの抗体または抗体部分は、抗原に対して競合的な結合を示す場合、抗原内の同じエピトープに結合し得る。
【0050】
本明細書で使用される場合、第1の抗体またはその断片が第2の抗体またはその断片の標的抗原結合を等モル濃度の第1の抗体またはその断片の存在下で少なくとも約50%(少なくとも約55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%のいずれか1つなど)阻害する場合、第1の抗体またはその断片は、標的抗原への第2の抗体またはその断片の結合について「競合する」。その逆もまた同様である。相互競合に基づいて抗体を「ビニング」するためのハイスループットプロセスは、PCT公開第WO03/48731号に記載されている。
【0051】
本明細書で使用される場合、「特異的に結合する」、「特異的に認識する」、及び「~に対して特異的」という用語は、標的と抗体または抗体部分との間の結合などの測定可能かつ再現可能な相互作用を指し、生体分子を含む分子の異種集団の存在下で標的の存在を決定するものである。例えば、標的(エピトープであり得る)を特異的に認識する抗体または抗体部分は、他の標的への結合よりも大きな親和性、アビディティで、より容易に、及び/またはより長い持続時間で、この標的に結合する抗体または抗体部分である。いくつかの実施形態では、無関係な標的に対する抗体の結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定した場合、標的への抗体の結合の約10%未満である。いくつかの実施形態では、標的に特異的に結合する抗体は、≦10-5M、≦10-6M、≦10-7M、≦10-8M、≦10-9M、≦10-10M、≦10-11M、または≦10-12Mの解離定数(K)を有する。いくつかの実施形態では、抗体は、異なる種に由来するタンパク質間で保存されているタンパク質上のエピトープに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、特異的結合は、排他的結合を含み得るが、必須ではない。抗体または抗原結合ドメイン結合特異性は、当該技術分野で公知の方法によって実験的に決定することができる。そのような方法には、ウェスタンブロット、ELISA、RIA、ECL、IRMA、EIA、BIACORE(商標)試験及びペプチドスキャンが含まれるが、これらに限定されない。
【0052】
「単離された」抗体(または構築物)は、その産生環境の構成成分から特定され、分離され、及び/または回収されたものである(例えば、天然または組み換え)。好ましくは、単離されたポリペプチドは、その産生環境に由来する他の全ての成分との会合を含まない。
【0053】
本明細書に記載される構築物、抗体、またはその抗原結合断片をコードする「単離された」核酸分子は、それが産生された環境において通常付随する少なくとも1つの混入核酸分子から同定及び分離された核酸分子である。好ましくは、単離された核酸は、産生環境に付随する全ての成分との会合を含まない。本明細書に記載されるポリペプチド及び抗体をコードする単離された核酸分子は、それが自然界に見出される形態または状況とは異なる形態で存在する。したがって、単離された核酸分子は、細胞内に天然に存在する本明細書に記載されるポリペプチド及び抗体をコードする核酸とは区別される。単離された核酸は、核酸分子を通常含有する細胞内に含有される核酸分子を含むが、その核酸分子は、染色体外またはその天然の染色体位置とは異なる染色体位置に存在する。
【0054】
核酸は、別の核酸配列と機能的な関係性に置かれているとき、「作動可能に連結」されている。例えば、プレ配列または分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合、ポリペプチドのDNAに作動可能に連結しており、プロモーターまたはエンハンサーは、コード配列の転写に影響する場合、その配列に作動可能に連結しており、あるいは、リボソーム結合部位は、翻訳を促進するように配置されている場合、コード配列に作動可能に連結されている。一般に、「作動可能に連結される」とは、連結しているDNA配列が隣接していること、分泌リーダーの場合、隣接しており、かつリーディングフレーム内にあることを意味する。しかしながら、エンハンサーは、隣接している必要はない。連結は、簡便な制限部位でのライゲーションにより行われる。そのような部位が存在していない場合は、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーが従来の慣例に従って使用される。
【0055】
「ベクター」という用語は、本明細書で使用される場合、核酸分子に連結される別の核酸を増殖させることが可能な核酸分子を指す。この用語には、自己複製核酸構造としてのベクター、ならびに導入されている宿主細胞のゲノムに組み込まれたベクターが含まれる。ある特定のベクターは、それらが機能的に連結されている核酸の発現を誘導できる。そのようなベクターは、本明細書において、「発現ベクター」と称される。
【0056】
本明細書で使用される「トランスフェクトされた」または「形質転換された」または「形質導入された」という用語は、外因性核酸が宿主細胞に移入または導入されるプロセスを指す。「トランスフェクトされた」または「形質転換された」または「形質導入された」細胞は、外因性核酸によってトランスフェクト、形質転換、または形質導入された細胞である。細胞は、初代対象細胞及びその子孫を含む。
【0057】
「宿主細胞」、「宿主細胞株」、及び「宿主細胞培養物」という用語は、区別なく使用され、外因性核酸が導入された細胞を指し、かかる細胞の子孫を含む。宿主細胞には、「形質転換体」及び「形質転換細胞」が含まれ、初代形質転換細胞及びそれに由来する子孫(継代の数に関わらず)が含まれる。子孫は、親細胞と核酸含有量の点で完全に同一であるとは限らず、変異を含み得る。元の形質転換細胞でスクリーニングまたは選択されたものと同じ機能または生物活性を有する変異体子孫は、本明細書に含まれる。
【0058】
本明細書で使用される場合、「治療」または「治療すること」は、臨床結果を含む有益なまたは望ましい結果を得るためのアプローチである。本出願の目的上、有益なまたは望ましい臨床結果には、次のうちの1つ以上が含まれるが、これらに限定されない:疾患に起因する1つ以上の症状を軽減すること、疾患の程度を低減すること、疾患を安定化すること(例えば、疾患の悪化を防止または遅延させること)、疾患の広がり(例えば、転移)を防止もしくは遅延させること、疾患の再発を予防または遅延させること、疾患の進行を遅延または緩徐させること、疾患状態を改善すること、疾患の寛解(部分的または全体的)を提供すること、疾患の治療に必要な1つ以上の他の医薬の用量を減少させること、疾患の進行を遅延させること、生活の質を向上もしくは改善させること、体重増加を増大させること、及び/または生存期間を延長させること。また、「治療」には、がんの病理学的結果(例えば、腫瘍体積など)の低減も包含される。本出願の方法は、これらの治療の態様のうちのいずれか1つ以上を企図する。
【0059】
がんの文脈において、「治療すること」という用語は、がん細胞の成長を阻害すること、がん細胞の複製を阻害すること、全体腫瘍組織量を減らすこと、及び疾患に関連する1つ以上の症状を改善することのいずれかまたは全てを含む。
【0060】
「阻害」または「阻害する」という用語は、任意の表現型特徴の減少もしくは消失、またはその特徴の発生、程度、もしくは可能性の減少もしくは消失を指す。「低減する」または「阻害する」とは、参照と比較して、活性、機能、及び/または量を減少させること、低下させること、または阻止することである。ある特定の実施形態では、「低減する」または「阻害する」とは、20%以上の全体的な減少をもたらす能力を意味する。別の実施形態では、「低減する」または「阻害する」とは、50%以上の全体的な減少をもたらす能力を意味する。さらに別の実施形態では、「低減する」または「阻害する」とは、75%、85%、90%、95%以上の全体的な減少をもたらす能力を意味する。
【0061】
「アゴナイズすること」または「アゴナイズ」という用語は、任意の表現型特徴、またはその特徴の発生、程度もしくは可能性の増加または増強を指す。「増加する」または「増強する」とは、参照と比較して、活性、機能、及び/または量を減少させること、低下させること、または阻止することである。ある特定の実施形態では、「増加する」または「増強する」とは、例えば、少なくとも約1倍以上の活性、機能、及び/または量の全体的な増加をもたらす能力を意味する。別の実施形態では、「増加する」または「増強する」とは、例えば、参照と比較して少なくとも約5倍以上の活性、機能、及び/または量の全体的な増加をもたらす能力を意味する。さらに別の実施形態では、「増加する」または「増強する」とは、例えば、参照と比較して少なくとも約2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、50倍、100倍、200倍、500倍、もしくは1000倍のいずれか1つ(これらの値の間の任意の範囲を含む)、または参照と比較して約100倍を超える活性、機能、及び/または量の全体的な増加をもたらす能力を意味する。
【0062】
本明細書で使用される「参照」は、比較目的のために使用される任意の試料、標準、またはレベルを指す。参照は、健常試料及び/または非疾患試料から得ることができる。いくつかの例において、参照は、未治療の試料から得ることができる。いくつかの例において、参照は、個体の非疾患試料または未治療試料から得られる。いくつかの例において、参照は、個体または患者ではない1以上の健康な個体から得られる。
【0063】
本明細書で使用される場合、「疾患の発生を遅延する」とは、疾患(がんなど)の発生を先延ばしにする、阻止する、減速させる、遅らせる、安定化させる、抑制する、及び/または延期させることを意味する。この遅延は、病歴及び/または治療される個体に応じて、様々な時間の長さになり得る。当業者に明らかであるように、十分なまたは著しい遅延は、事実上、個体が疾患を発症しないという点で予防を包含し得る。例えば、転移の発生などの末期がんを遅延させることができる。
【0064】
本明細書で使用される「予防すること」は、疾患の素因を有し得るが、まだ疾患と診断されていない個体における疾患の発症または再発に関して予防を提供することを含む。
【0065】
本明細書で使用される場合、機能または活性を「抑制する」とは、目的の条件もしくはパラメーター以外は同じである条件と比較した場合、あるいは、別の条件と比較した場合に、機能または活性が減少することである。例えば、腫瘍成長を抑制する抗体は、抗体がない場合の腫瘍の成長速度と比較して、腫瘍の成長速度を低減させる。
【0066】
本明細書で使用される場合、「基づく」には、本明細書に記載される個体の特徴を評価、決定、または測定すること(及び好ましくは治療を受けるのに好適な個体を選択すること)が含まれる。クローディン-18異常の状態が本明細書に記載される治療の選択、評価、測定、または決定する方法の「基礎として使用される」場合、治療前及び/または治療中に決定されたCLDN6異常、ならびに得られた状態(CLDN6の存在、不在、発現レベル、活性レベル及び/またはリン酸化レベルを含む)は、次のいずれかを評価する際に臨床医によって使用される:(a)個体が最初に治療(複数可)を受けるのに適する可能性が高いもしくは見込みがあること;(b)個体が最初に治療(複数可)を受けるのに適しない可能性が高いもしくは見込みがあること;(c)治療に対する応答性;(d)個体が継続して治療(複数可)を受けるのに適する可能性が高いもしくは見込みがあること;(e)個体が継続して治療(複数可)を受けるのに適しない可能性が高いもしくは見込みがあること;(f)投与量の調節;または(g)臨床上の利益の可能性を予測すること。
【0067】
「対象」、「個体」、及び「患者」という用語は、本明細書において、限定するものではないが、ヒト、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、齧歯類、または霊長類を含む哺乳動物を指すために、区別なく使用される。いくつかの実施形態では、個体は、ヒトである。
【0068】
本明細書に記載される本出願の実施形態は、実施形態から「なること」及び/または「本質的になること」を含むことが理解される。
【0069】
本明細書における「約」という値またはパラメーターへの言及は、その値またはパラメーター自体に対する変形を含む(かつ記載する)。例えば、「約X」に言及する記載は、「X」の記載を含む。
【0070】
本明細書で使用される場合、ある値またはパラメーター「ではない」ことへの言及は、一般にある値またはパラメーター「以外」を意味し、かつ記載する。例えば、方法がXタイプのがんを処置するために使用されないとは、方法がX以外のタイプのがんを処置するために使用されることを意味する。
【0071】
本明細書で使用される「約X~Y」という用語は、「約X~約Y」と同じ意味を有する。
【0072】
本明細書及び添付される特許請求の範囲で使用される場合、単数形の「a」、「or」及び「the」は、別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を包含する。
【0073】
抗体結合親和性
本明細書に記載される多重特異性構築物の抗体部分の結合特異性は、当該技術分野で公知の方法によって実験的に決定することができる。そのような方法には、ウェスタンブロット、ELISA、RIA、ECL、IRMA、EIA、BIACORE(商標)試験及びペプチドスキャンが含まれるが、これらに限定されない。
【0074】
いくつかの実施形態では、結合親和性は、解離定数Kによって測定される。解離定数は、蛍光標識細胞分取(FACS)、フローサイトメトリー、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、表面プラズモン共鳴(SPR)、バイオレイヤー干渉法(例えば、ForteBioによるOctet System参照)、メソスケールディスカバーアッセイ(例えば、MSD-SET参照)、等温滴定カロリメトリー(ITC)、示差走査熱量測定法(DSC)、円二色性(CD)、ストップトフロー分析、及び比色もしくは蛍光タンパク質融解分析;または細胞結合アッセイなどの生化学的または生物物理学的技術を含む、当該技術分野で公知の任意の分析技術によって決定することができる。
【0075】
いくつかの実施形態では、抗体部分と標的抗原(例えば、CLDN6または4-1BB)との間の結合のKは、約10-7M~約10-12M、約10-7M~約10-8M、約10-8M~約10-9M、約10-9M~約10-10M、約10-10M~約10-11M、約10-11M~約10-12M、約10-7M~約10-12M、約10-8M~約10-12M、約10-9M~約10-12M、約10-10M~約10-12M、約10-7M~約10-11M、約10-8M~約10-11M、約10-9M~約10-11M、約10-7M~約10-10M、約10-8M~約10-10M、または約10-7M~約10-9Mである。いくつかの実施形態では、抗体部分と標的抗原(例えば、CLDN6または4-1BB)との間の結合のKは、約10-7M、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、または10-12Mのいずれか1つよりも強い。いくつかの実施形態では、標的抗原(例えば、CLDN6または4-1BB)は、ヒト抗原である。
【0076】
いくつかの実施形態では、抗体部分と標的抗原(例えば、CLDN6または4-1BB)との間の結合のKonは、約10-1-1~約10-1-1、約10-1-1~約10-1-1、約10-1-1~約10-1-1、約10-1-1~約10-1-1、約10-1-1~約10-1-1、または約10-1-1~約10-1-1である。いくつかの実施形態では、抗体部分と標的抗原(例えば、CLDN6または4-1BB)との間の結合のKonは、約10-1-1~約10-1-1、約10-1-1~約10-1-1、約10-1-1~約10-1-1、約10-1-1~約10-1-1、約10-1-1~約10-1-1、または約10-1-1~約10-1-1である。いくつかの実施形態では、抗体部分と標的抗原(例えば、CLDN6または4-1BB)との間の結合のKonは、約10-1-1、10-1-1、10-1-1、10-1-1、10-1-1または10-1-1のいずれか1つ以下である。いくつかの実施形態では、標的抗原(例えば、CLDN6または4-1BB)は、ヒト抗原である。
【0077】
いくつかの実施形態では、抗体部分と標的抗原(例えば、CLDN6または4-1BB)との間の結合のKoffは、約1s-1~約10-6-1、約1s-1~約10-2-1、約10-2-1~約10-3-1、約10-3-1~約10-4-1、約10-4-1~約10-5-1、約10-5-1~約10-6-1、約1s-1~約10-5-1、約10-2-1~約10-6-1、約10-3-1~約10-6-1、約10-4-1~約10-6-1、約10-2-1~約10-5-1、または約10-3-1~約10-5-1である。いくつかの実施形態では、抗体部分と標的抗原(例えば、CLDN6または4-1BB)との間の結合のKoffは、少なくとも約1s-1、10-2-1、10-3-1、10-4-1、10-5-1または10-6-1のいずれか1つである。いくつかの実施形態では、標的抗原(例えば、CLDN6または4-1BB)は、ヒト抗原である。
【0078】
キメラまたはヒト化抗体
いくつかの実施形態では、本出願の多重特異性構築物の抗体部分のうちの1つ以上は、キメラ抗体である。ある特定のキメラ抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号;及びMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851-6855(1984))に記載されている。いくつかの実施形態では、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス由来の可変領域)及びヒト定常領域を含む。いくつかの実施形態では、キメラ抗体は、クラスまたはサブクラスが親抗体のクラスまたはサブクラスから変更されている「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体は、その抗原結合断片を含む。
【0079】
いくつかの実施形態では、キメラ抗体は、ヒト化抗体である。典型的に、親の非ヒト抗体の特異性及び親和性を保持しつつ、ヒトに対する免疫原性を低減するように、非ヒト抗体がヒト化される。一般に、ヒト化抗体は、1つ以上の可変ドメインを含み、HVR、例えば、CDR(またはその一部分)は、非ヒト抗体に由来し、FR(またはその一部分)は、ヒト抗体配列に由来する。ヒト化抗体は、任意選択により、ヒト定常領域の少なくとも一部も含む。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体中のいくつかのFR残基は、例えば、抗体の特異性または親和性を回復または改善するために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基の由来となる抗体)の対応する残基と置換される。
【0080】
ヒト化抗体及びヒト化抗体を作製する方法は、例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)に概説され、さらに、例えば、Riechmann et al.,Nature 332:323-329(1988);Queen et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 86:10029-10033(1989);米国特許第5,821,337号、同第7,527,791号、同第6,982,321号、及び同第78,087,409号;Kashmiri et al.,Methods 36:25-34(2005)(SDR(a-CDR)グラフティングについて記載);Padlan,Mol.Immunol.28:489-498(1991)(「リサーフェイシング」について記載);Dall’Acqua et al.,Methods 36:43-60(2005)(「FRシャッフリング」について記載);ならびにOsbourn et al.,Methods 36:61-68(2005)及びKlimka et al.,Br.J.Cancer,83:252-260(2000)(FRシャッフリングへの「誘導選択」アプローチについて記載)に記載されている。
【0081】
ヒト化に使用され得るヒトフレームワーク領域には、「ベストフィット」法を使用して選択されるフレームワーク領域(例えば、Sims et al.J.Immunol.151:2296(1993)参照);特定の軽鎖可変領域または重鎖可変領域サブグループのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285(1992);及びPresta et al.J.Immunol.,151:2623(1993)参照);ヒト成熟(体細胞変異)フレームワーク領域またはヒト生殖細胞系列フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)参照);及びFRライブラリーのスクリーニングから得られるフレームワーク領域(例えば、Baca et al.,J.Biol.Chem.272:10678-10684(1997)及びRosok et al.,J.Biol.Chem.271:22611-22618(1996)参照)が含まれるが、これらに限定されない。
【0082】
ヒト抗体
いくつかの実施形態では、本出願の多重特異性構築物の抗体部分のうちの1つ以上は、ヒト抗体である(ヒトドメイン抗体、またはヒトDAbとしても知られる)。ヒト抗体は、当該技術分野で公知の種々の技術を使用して産生され得る。ヒト抗体は、一般に、van Dijk and van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol.5:368-74(2001)、Lonberg,Curr.Opin.Immunol.20:450-459(2008)、及びChen,Mol.Immunol.47(4):912-21(2010)に記載されている。完全ヒト単一ドメイン抗体(またはDAb)を産生することが可能なトランスジェニックマウスまたはラットは、当該技術分野で公知である。例えば、US20090307787A1、米国特許第8,754,287号、US20150289489A1、US20100122358A1、及びWO2004049794を参照されたい。
【0083】
ヒト抗体(例えば、ヒトDAb)は、抗原投与に応答して、インタクトヒト抗体またはヒト可変領域を含むインタクト抗体を産生するように改変されたトランスジェニック動物に免疫原を投与することによって、調製され得る。そのような動物は、典型的に、内因性免疫グロブリン遺伝子座に置き換わるか、または染色体外に存在するか、もしくは動物の染色体にランダムに統合される、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の全てまたは一部分を含有する。そのようなトランスジェニックマウスにおいて、内因性免疫グロブリン遺伝子座は、一般に不活性化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得るための方法の概説については、Lonberg,Nat.Biotech.23:1117-1125(2005)を参照されたい。また、例えば、XENOMOUSE(商標)技術について記載する米国特許第6,075,181号及び同第6,150,584号;HuMab(登録商標)技術について記載する米国特許第5,770,429号;K-MMOUSE(登録商標)技術について記載する米国特許第7,041,870号、ならびにVelociMouse(登録商標)技術)について記載する米国特許出願公開第US2007/0061900号も参照されたい。そのような動物によって生成されるインタクト抗体由来のヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせることによって、さらに改変され得る。
【0084】
ヒト抗体(例えば、ヒトDAb)はまた、ハイブリドーマベースの方法によって作ることもできる。ヒトモノクローナル抗体の産生のためのヒト骨髄腫及びマウス-ヒト異種骨髄腫細胞株についても記載されている(例えば、Kozbor J.Immunol.,133:3001(1984);Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51-63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987);及びBoerner et al.,J.Immunol.,147:86(1991)参照)。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されるヒト抗体については、Li et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:3557-3562(2006)にも記載されている。さらなる方法には、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒトIgM抗体の産生について記載)及びNi,Xiandai Mianyixue,26(4):265-268(2006)(ヒト-ヒトハイブリドーマについて記載)に記載されているものが含まれる。ヒトハイブリドーマ技術(Trioma technology)は、Vollmers and Brandlein,Histology and Histopathology,20(3):927-937(2005)及びVollmers and Brandlein,Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology,27(3):185-91(2005)にも記載されている。
【0085】
ヒト抗体(例えば、ヒトDAb)はまた、ヒト由来ファージディスプレイライブラリーから選択されるFvクローン可変ドメイン配列を単離することによって生成され得る。次いで、そのような可変ドメイン配列を所望のヒト定常ドメインと組み合わせることができる。抗体ライブラリーからヒト抗体を選択するための技術は、以下に記載される。
【0086】
置換、挿入、及び欠失バリアント
いくつかの実施形態では、1つ以上のアミノ酸置換を含む抗体バリアントが本明細書に記載される多重特異性構築物に含まれる。置換による変異導入の対象となる部位には、HVR(またはCDR)及びFRが含まれる。保存的置換は、表2の「好ましい置換」という見出しで示される。より実質的な変化は、表2において、「例示的な置換」という見出しで示され、アミノ酸側鎖クラスに関しては、以下にさらに記載される。アミノ酸置換を目的の抗体に導入し、その産物を、所望の活性、例えば、抗原結合の保持/改善、免疫原性の減少、またはADCCもしくはCDCの改善についてスクリーニングすることができる。
【表2】
【0087】
アミノ酸は、共通の側鎖特性に基づいたグループに分類され得る:(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;(3)酸性:Asp、Glu;(4)塩基性:His、Lys、Arg;(5)鎖の方向性に影響する残基:Gly、Pro;及び(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0088】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを別のクラスに交換することを伴う。
【0089】
置換型バリアントの一種は、親抗体の1つ以上の超可変領域残基を置換することを伴う(例えば、ヒト化抗体またはヒト抗体)。一般に、さらなる研究のために選択される、結果として生じるバリアント(複数可)は、親抗体と比べて、ある特定の生物学的特性における変更(例えば、改善)(例えば、親和性の増加、免疫原性の低下)を有することになり、及び/または親抗体の実質的に保持されたある特定の生物学的特性を有することになる。例示的な置換バリアントは、親和性成熟抗体であり、例えば、本明細書に記載されるようなファージディスプレイベースの親和性成熟技術を使用して、簡便に生成され得る。簡潔に述べると、1つ以上のHVR残基を変異させ、バリアント抗体をファージ上に提示させ、特定の生物活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングする。
【0090】
改変(例えば、置換)は、例えば、抗体親和性を改善するために、HVR中になされ得る。そのような改変は、HVRの「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟プロセス中に高頻度で変異を受けるコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury,MethodsMol.Biol.207:179-196(2008)参照)、及び/またはSDR(a-CDR)になされ得、それにより得られたバリアントVHまたはVLを結合親和性について試験する。二次ライブラリーを構築し、二次ライブラリーから再選択することによる親和性成熟は、例えば、Hoogenboom et al.,Methods in Molecular Biology 178:1-37(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,(2001))に記載されている。親和性成熟のいくつかの実施形態では、様々な方法(例えば、エラープローンPCR、鎖シャッフリング、またはオリゴヌクレオチド指向性変異導入)のいずれかによって、成熟について選択された可変遺伝子に多様性が導入される。次いで、二次ライブラリーが作製される。次いで、このライブラリーをスクリーニングして、所望の親和性を有する任意の抗体バリアントを特定する。多様性を導入するための別の方法は、いくつかのHVR残基(例えば、一度に4~6個の残基)がランダム化されるHVR指向性アプローチを伴う。抗原結合に関与するHVR残基は、例えば、アラニンスキャニング変異導入法またはモデリングを使用して、特異的に特定され得る。多くの場合、特に、CDR-H3及びCDR-L3が対象にされる。
【0091】
いくつかの実施形態では、置換、挿入、または欠失は、そのような改変が抗体の抗原結合能力を実質的に低減させない限り、1つ以上のHVR内に生じ得る。例えば、結合親和性を実質的に低減させない保存的改変(例えば、本明細書で提供される保存的置換)がHVR中になされ得る。そのような改変は、HVRの「ホットスポット」またはCDRの外にあってもよい。上に提供されるバリアントVHH配列のいくつかの実施形態では、各HVRは、改変されていないか、または1つ、2つもしくは3つ以下のアミノ酸置換を含有し得る。
【0092】
変異導入の対象となり得る抗体の残基または領域の特定に有用な方法は、「アラニンスキャニング変異導入法」と呼ばれ、Cunningham and Wells(1989)Science,244:1081-1085によって記載されている。この方法では、標的残基のうちのある残基または群(例えば、Arg、Asp、His、Lys、及びGluなどの荷電残基)を特定し、これを中性または負に荷電したアミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)で置き換え、抗体と抗原の相互作用に影響があるかどうかを決定する。最初の置換に対して機能的感受性を示すアミノ酸位置にさらなる置換が導入され得る。代替的にまたは追加的に、抗原-抗体複合体の結晶構造から、抗体と抗原との間の接触点を特定する。そのような接触残基及び隣接残基は、置換の候補として、標的にされるか、または排除され得る。バリアントは、スクリーニングにより、所望の特性を含有するかどうか決定され得る。
【0093】
アミノ酸配列の挿入には、1残基から100以上の残基を含有するポリペプチドまでの長さに及ぶアミノ末端及び/またはカルボキシル末端の融合、ならびに1つまたは複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入バリアントには、酵素(例えば、ADEPTの場合)または抗体の血清中半減期を増加させるポリペプチドを抗体のN末端またはC末端に融合することが含まれる。
【0094】
グリコシル化バリアント
いくつかの実施形態では、本出願の多重特異性構築物の1つ以上の抗体部分は、構築物のグリコシル化の程度が増加または減少するように改変される。抗体に対するグリコシル化部位の付加または除去は、1つ以上のグリコシル化部位が創出または除去されるようにアミノ酸配列を変更することによって、簡便に達成され得る。
【0095】
抗体部分がFc領域を含む場合、Fc領域に結合している炭水化物が改変され得る。哺乳動物細胞によって産生される天然抗体は、典型的に、分岐した二分岐型オリゴ糖を含み、これは、一般に、Fc領域のC2ドメインのAsn297にN-結合により結合している。例えば、Wright et al.TIBTECH 15:26-32(1997)を参照されたい。オリゴ糖は、様々な炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース及びシアル酸、ならびに二分岐型オリゴ糖構造の「幹」中のGlcNAcに結合したフコースを含み得る。いくつかの実施形態では、抗体部分中のオリゴ糖の修飾は、ある特定の特性が改善した抗体バリアントを作製するために行われ得る。
【0096】
いくつかの実施形態では、抗体部分は、Fc領域に(直接的にまたは間接的に)結合したフコースを欠く炭水化物構造を有する。例えば、そのような抗体のフコースの量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%または20%~40%であり得る。フコースの量は、例えば、WO2008/077546に記載されているようなMALDI-TOF質量分析によって測定されるように、Asn297に結合している全ての糖構造の合計(例えば、複合型、混合型及び高マンノース型構造)に対する、Asn297の糖鎖内にあるフコースの平均量を算出することによって決定され得る。Asn297は、Fc領域内の位置297付近(EUナンバリングのFc領域残基)に位置するアスパラギン残基を指すが、Asn297は、抗体の軽微な配列変化に起因して、位置297から上流または下流の約±3アミノ酸、すなわち、位置294~300の間に位置する場合もある。そのようなフコシル化バリアントは、改善されたADCC機能を有し得る。例えば、米国特許出願公開第US2003/0157108号(Presta,L.);US2004/0093621(Kyowa Hakko Kogyo Co.,Ltd)を参照されたい。「脱フコシル化」または「フコース欠損」抗体バリアントに関連する公開物の例としては、US2003/0157108;WO2000/61739;WO2001/29246;US2003/0115614;US2002/0164328;US2004/0093621;US2004/0132140;US2004/0110704;US2004/0110282;US2004/0109865;WO2003/085119;WO2003/084570;WO2005/035586;WO2005/035778;WO2005/053742;WO2002/031140;Okazaki et al.J.Mol.Biol.336:1239-1249(2004);Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004)が挙げられる。脱フコシル化抗体を産生することが可能な細胞株の例としては、タンパク質のフコシル化が欠損しているLec13 CHO細胞(Ripka et al.Arch.Biochem.Biophys.249:533-545(1986);米国特許出願第US2003/0157108A1号、Presta,L;及びWO2004/056312A1、Adams et al.、特に実施例11)、及びアルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子FUT8をノックアウトしたCHO細胞などのノックアウト細胞株(例えば、Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004);Kanda,Y.et al.,Biotechnol.Bioeng.,94(4):680-688(2006);及びWO2003/085107)が挙げられる。
【0097】
いくつかの実施形態では、抗体部分は、二分されたオリゴ糖を有し、例えば、抗体のFc領域に結合している二分岐オリゴ糖がGlcNAcによって二分されている。そのような抗体バリアントは、フコシル化の減少及び/または改善されたADCC機能を有し得る。そのような抗体バリアントの例は、例えば、WO2003/011878(Jean-Mairet et al.);米国特許第6,602,684号(Umana et al.);及びUS2005/0123546(Umana et al.)に記載されている。Fc領域に結合したオリゴ糖に少なくとも1つのガラクトース残基を含む抗体バリアントも提供される。そのような抗体バリアントは、改善したCDC機能を有し得る。そのような抗体バリアントは、例えば、WO1997/30087(Patel et al.);WO1998/58964(Raju、S.);及びWO1999/22764(Raju、S.)に記載されている。
【0098】
Fc領域バリアント
いくつかの実施形態では、1つ以上のアミノ酸修飾が抗体部分のFc領域に導入され得、それにより、Fc領域バリアントが作製される。Fc領域バリアントは、アミノ酸修飾(例えば、置換)を1つ以上のアミノ酸位置に含む、ヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4 Fc領域)を含み得る。
【0099】
いくつかの実施形態では、Fc断片は、全てではないがいくつかのエフェクター機能を有し、抗体部分のin vivo半減期が重要であるが、ある特定のエフェクター機能(補体依存性細胞傷害(CDC)及び抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)など)は不必要または有害である用途に対して、望ましい候補となる。in vitro及び/またはin vivo細胞傷害アッセイを実施して、CDC活性及び/またはADCC活性の低下/枯渇を確認することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを実施して、抗体がFcγR結合を欠く(したがって、ADCC活性を欠く可能性が高い)が、FcRn結合能力を保持していることを確実にすることができる。ADCCを媒介する主な細胞であるNK細胞は、FcγRIIIのみを発現するのに対し、単球は、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。造血細胞におけるFcR発現は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol 9:457-492(1991)の464頁表2に要約されている。目的の分子のADCC活性を評価するためのin vitroアッセイの非限定的な例としては、米国特許第5,500,362号(例えば、Hellstrom,I.et al.Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 83:7059-7063(1986)参照)及びHellstrom,I et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 82:1499-1502(1985);5,821,337(Bruggemann,M.et al.,J.Exp.Med.166:1351-1361(1987)参照)に記載されている。あるいは、非放射性アッセイ法が採用され得る(例えば、フローサイトメトリーのためのACTI(商標)非放射性細胞傷害アッセイ(CellTechnology,Inc.Mountain View,CA;及びCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞傷害アッセイ(Promega,Madison,WI)参照。そのようなアッセイに有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。代替的にまたは追加的に、目的分子のADCC活性は、in vivoで、例えば、Clynes et al.Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 95:652-656(1998)に開示されているような動物モデルで評価され得る。また、C1q結合アッセイを実施して、抗体がC1qに結合することができず、それにより、CDC活性を欠くことを確認することもできる。例えば、WO2006/029879及びWO2005/100402におけるC1q及びC3c結合ELISAを参照されたい。補体活性化を評価するために、CDCアッセイが実施され得る(例えば、Gazzano-Santoro et al.,J.Immunol.Methods 202:163(1996);Cragg,M.S.et al.,Blood 101:1045-1052(2003);及びCragg,M.S.and M.J.Glennie,Blood 103:2738-2743(2004)参照)。FcRn結合及びin vivoクリアランス/半減期の決定は、当該技術分野で公知の方法を使用して実施することもできる(例えば、Petkova et al.,Int’l.Immunol.18(12):1759-1769(2006)参照)。
【0100】
エフェクター機能が低減した抗体には、Fc領域残基238、265、269、270、297、327及び329のうちの1つ以上に置換を含む抗体が含まれる(米国特許第6,737,056号)(ここで、アミノ酸番号付けは、EUインデックスに従う)。例えば、Kabat et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242)を参照されたい。そのようなFc変異体には、アミノ酸位置265、269、270、297及び327のうちの2つ以上に置換を含むFc変異体(ここで、アミノ酸番号付けは、EUインデックスに従う)が含まれ、残基265及び297をアラニンに置換したいわゆる「DANA」Fc変異体も含まれる(米国特許第7,332,581号)(ここで、アミノ酸番号付けは、EUインデックスに従う)。
【0101】
FcRへの結合が改善または低減された特定の抗体バリアントについても記載されている(例えば、米国特許第6,737,056号;WO2004/056312、及びShields et al.,J.Biol.Chem.9(2):6591-6604(2001)参照)。
【0102】
いくつかの実施形態では、Fc断片は、IgG1Fc断片である。いくつかの実施形態では、IgG1 Fc断片は、L234A変異及び/またはL235A変異を含む。いくつかの実施形態では、Fc断片は、IgG2またはIgG4 Fc断片である。いくつかの実施形態では、Fc断片は、S228P、F234A、及び/またはL235A変異を含むIgG4 Fc断片である。
【0103】
いくつかの実施形態では、抗体部分は、ADCCを改善する1つ以上のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の位置298、333、及び/または334(残基はEUナンバリング)における置換を含むFc領域を含む。
【0104】
いくつかの実施形態では、例えば、米国特許第6,194,551号、WO99/51642、及びIdusogie et al.J.Immunol.164:4178-4184(2000)に記載されているように、C1q結合及び/または補体依存性細胞傷害(CDC)に変更(すなわち、改善または減少のいずれか)をもたらす改変がFc領域になされる。
【0105】
いくつかの実施形態では、抗体部分バリアントは、半減期を改変し、及び/または胎児性Fc受容体(FcRn)への結合を変更するアミノ酸置換を1つ以上含むバリアントFc領域を含む。半減期が長く、母胎IgGの胎児への輸送を担う胎児性Fc受容体(FcRn)への結合が改善された抗体(Guyer et al.,J.Immunol.117:587(1976)及びKim et al.,J.Immunol.24:249(1994))については、US2005/0014934A1(Hinton et al.))に記載されている。これらの抗体は、Fc領域のFcRnへの結合を改変する置換を1つ以上含むFc領域を含む。そのようなFcバリアントには、Fc領域残基のうちの1つ以上における置換、例えば、Fc領域残基434の置換を含むものが含まれる(米国特許第7,371,826号)。
【0106】
Fc領域バリアントの他の例に関しては、Duncan&Winter,Nature 322:738-40(1988);米国特許第5,648,260号;米国特許第5,624,821号;及びWO94/29351も参照されたい。
【0107】
システイン操作された抗体バリアント
いくつかの実施形態では、本明細書の多重特異性構築物の1つ以上の抗体部分の1つ以上の残基がシステイン残基で置換された、システイン操作された抗体部分、例えば、「thioMAb」を作製するのが望ましい場合がある。具体的な実施形態では、置換残基は、抗体のアクセス可能な部位に存在する。これらの残基をシステインで置換することにより、反応性チオール基が抗体のアクセス可能な部位に配置されるので、本明細書でさらに記載されるように、これを使用して、抗体を薬物部分またはリンカー-薬物部分などの他の部分にコンジュゲートしてイムノコンジュゲートを作製することができる。いくつかの実施形態では、次の残基のうちのいずれか1つ以上がシステインで置換され得る:重鎖のA118(EU番号付け);及び重鎖Fc領域のS400(EU番号付け)。システイン操作された抗体部分は、例えば、米国特許第7,521,541号に記載されているように作製することができる。
【0108】
抗CLDN6抗体部分
本出願に記載される多重特異性構築物の抗CLDN6抗体部分は、クローディン-6(「CLDN6」)に特異的に結合する任意の抗体部分を含む。
【0109】
クローディン6(CLDN6)
クローディンは、上皮及び内皮に発現し、タイトジャンクションの透過性を決定する傍細胞障壁及び孔を形成する、タイトジャンクション膜タンパク質のファミリーである。クローディンは、がんの発生、進行、及び転移における重要な制御因子として認識されており、組織依存的な発現パターンの違いにより、様々ながんにおいて明確に異なる役割を果たしている(Tabaries et al.(2017).“The role of claudins in cancer metastasis.” Oncogene 36,1176-1190)。クローディン-6(CLDN6)は、クローディンファミリーのメンバーであり、上皮または内皮細胞シートにおける細胞間接着に重要な役割を果たすタイトジャンクション分子として機能する。CLDN6は、4回膜貫通型タンパク質をコードし、サイズは220アミノ酸であり、分子量は23,292Daである。CLDN6は、核受容体スーパーファミリーの分子を標的とし、その遺伝子発現を管理することにより、核受容体活性の制御に関与する細胞接着シグナル伝達の起源であることが同定されている(Sugimoto et al.(2019).“Cell adhesion signals regulate the nuclear receptor activity.”Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.116,24600-24609)。CLDN6は、20種類のヒトがんで有意に上方制御されていると思われる(Zhang et al.(2021)Front.Cell.Dev.Biol.9:726656)。いくつかの実施形態では、CLDN6は、ヒトCLDN6(「hCLDN6」)である。いくつかの実施形態では、hCLDN6は、配列番号40に記載されるアミノ酸配列またはそのバリアント(例えば、翻訳後修飾バリアント及び/またはコンフォメーションバリアント)を含む。
【0110】
例示的な抗CLDN6抗体部分
いくつかの実施形態では、抗CLDN6抗体部分は、CLDN6への結合について、a)重鎖可変領域(V)及び軽鎖可変領域(V)を含み、ここで、a)Vは、i)配列番号1のアミノ酸配列を含むHC-CDR1、ii)配列番号2のアミノ酸配列を含むHC-CDR2、及びiii)配列番号3のアミノ酸配列を含むHC-CDR3を含み、b)Vは、i)配列番号4のアミノ酸配列を含むLC-CDR1、ii)配列番号5のアミノ酸配列を含むLC-CDR2、及びiii)配列番号6のアミノ酸配列を含むLC-CDR3を含む抗体部分と、競合する。いくつかの実施形態では、抗CLDN6抗体部分は、CLDN6への結合について、a)重鎖可変領域(V)及び軽鎖可変領域(V)を含み、ここで、a)Vは、i)配列番号12のアミノ酸配列を含むHC-CDR1、ii)配列番号13のアミノ酸配列を含むHC-CDR2、及びiii)配列番号14のアミノ酸配列を含むHC-CDR3を含み、b)Vは、i)配列番号15のアミノ酸配列を含むLC-CDR1、ii)配列番号16のアミノ酸配列を含むLC-CDR2、及びiii)配列番号17のアミノ酸配列を含むLC-CDR3を含む抗体部分と、競合する。
【0111】
本出願に記載される抗CLDN6抗体部分は、CLDN6に特異的に結合する任意の抗体部分を含む。いくつかの実施形態では、本出願の抗CLDN6抗体部分は、a)配列番号7に記載される配列、または配列番号7に記載される配列に対して少なくとも約80%(例えば、少なくとも約80%、85%、87%、89%、90% 91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%、または99%超のいずれか1つを含む)の配列同一性を有するそのバリアントを含む重鎖可変領域(VH)内のCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列をそれぞれ含む、HC-CDR1、HC-CDR2、及びHC-CDR3と、b)配列番号8に記載される配列、または配列番号8に記載される配列に対して少なくとも約80%(例えば、少なくとも約80%、85%、87%、89%、90% 91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%、または99%超のいずれか1つを含む)の配列同一性を有するそのバリアントを含む軽鎖可変領域(VL)内のCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列をそれぞれ含む、LC-CDR1、LC-CDR2、及びLC-CDR3とを含む。いくつかの実施形態では、そのような抗CLDN6抗体部分のCLDN6(例えば、ヒトCLDN6)に対する親和性は、配列番号7に記載される配列を含む重鎖可変領域(VH)内のCDR1、CDR2、及びCDR3と、配列番号8に記載される配列を含む軽鎖可変領域(VL)内のCDR1、CDR2、及びCDR3とを含む抗CLDN6抗体部分の親和性と同等(例えば、同じ)である。
【0112】
いくつかの実施形態では、抗CLDN6抗体部分は、a)配列番号18に記載される配列、または配列番号18に記載される配列に対して少なくとも約80%(例えば、少なくとも約80%、85%、87%、89%、90% 91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%、または99%超のいずれか1つを含む)の配列同一性を有するそのバリアントを含む重鎖可変領域(VH)内のCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列をそれぞれ含む、HC-CDR1、HC-CDR2、及びHC-CDR3と、b)配列番号19に記載される配列、または配列番号19に記載される配列に対して少なくとも約80%(例えば、少なくとも約80%、85%、87%、89%、90% 91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%、または99%超のいずれか1つを含む)の配列同一性を有するそのバリアントを含む軽鎖可変領域(VL)内のCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列をそれぞれ含む、LC-CDR1、LC-CDR2、及びLC-CDR3とを含む。いくつかの実施形態では、そのような抗CLDN6抗体部分のCLDN6(例えば、ヒトCLDN6)に対する親和性は、配列番号18に記載される配列を含む重鎖可変領域(VH)内のCDR1、CDR2、及びCDR3と、配列番号19に記載される配列を含む軽鎖可変領域(VL)内のCDR1、CDR2、及びCDR3とを含む抗CLDN6抗体部分の親和性と同等(例えば、同じ)である。
【0113】
いくつかの実施形態では、抗CLDN6抗体部分は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、a)VHは、i)配列番号1のアミノ酸配列を含むHC-CDR1、またはHC-CDR1中に最大約3つ(約1、2、3つのいずれかなど)のアミノ酸置換を含むそのバリアント、ii)配列番号2のアミノ酸配列を含むHC-CDR2、またはHC-CDR2中に最大約3つ(約1、2、3つのいずれかなど)のアミノ酸置換を含むそのバリアント、及びiii)配列番号3のアミノ酸配列を含むHC-CDR3、またはHC-CDR3中に最大約3つ(約1、2、3つのいずれかなど)のアミノ酸置換を含むそのバリアントを含み、b)VLは、i)配列番号4のアミノ酸配列を含むLC-CDR1、またはLC-CDR1中に最大約3つ(約1、2、3つのいずれかなど)のアミノ酸置換を含むそのバリアント、ii)配列番号5のアミノ酸配列を含むLC-CDR2、またはLC-CDR2中に最大約3つ(約1、2、3つのいずれかなど)のアミノ酸置換を含むそのバリアント、及びiii)配列番号6のアミノ酸配列を含むLC-CDR3、またはLC-CDR3中に最大約3つ(約1、2、3つのいずれかなど)のアミノ酸置換を含むそのバリアントを含む。
【0114】
いくつかの実施形態では、抗CLDN6抗体部分は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、a)VHは、i)配列番号12のアミノ酸配列を含むHC-CDR1、またはHC-CDR1中に最大約3つ(約1、2、3つのいずれかなど)のアミノ酸置換を含むそのバリアント、ii)配列番号13のアミノ酸配列を含むHC-CDR2、またはHC-CDR2中に最大約3つ(約1、2、3つのいずれかなど)のアミノ酸置換を含むそのバリアント、及びiii)配列番号14のアミノ酸配列を含むHC-CDR3、またはHC-CDR3中に最大約3つ(約1、2、3つのいずれかなど)のアミノ酸置換を含むそのバリアントを含み、b)VLは、i)配列番号15のアミノ酸配列を含むLC-CDR1、またはLC-CDR1中に最大約3つ(約1、2、3つのいずれかなど)のアミノ酸置換を含むそのバリアント、ii)配列番号16のアミノ酸配列を含むLC-CDR2、またはLC-CDR2中に最大約3つ(約1、2、3つのいずれかなど)のアミノ酸置換を含むそのバリアント、及びiii)配列番号17のアミノ酸配列を含むLC-CDR3、またはLC-CDR3中に最大約3つ(約1、2、3つのいずれかなど)のアミノ酸置換を含むそのバリアントを含む。
【0115】
いくつかの実施形態では、抗CLDN6抗体部分は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、VHは、配列番号7のアミノ酸配列もしくは配列番号7に対して少なくとも約80%(例えば、少なくとも約80%、85%、87%、89%、90% 91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%、または99%超のいずれか1つを含む)の配列同一性を有するそのバリアントを含み、及び/またはVLは、配列番号8のアミノ酸配列もしくは配列番号8に対して少なくとも約80%(例えば、少なくとも約80%、85%、87%、89%、90% 91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%、または99%超のいずれか1つを含む)の配列同一性を有するそのバリアントを含む。いくつかの実施形態では、そのような抗CLDN6抗体部分のCLDN6(例えば、ヒトCLDN6)に対する親和性は、配列番号7に記載される配列を含むVHと、配列番号8に記載される配列を含むVLとを含む抗CLDN6抗体部分の親和性と同等(例えば、同じ)である。
【0116】
いくつかの実施形態では、抗CLDN6抗体部分は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、VHは、配列番号18のアミノ酸配列もしくは配列番号18に対して少なくとも約80%(例えば、少なくとも約80%、85%、87%、89%、90% 91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%、または99%超のいずれか1つを含む)の配列同一性を有するそのバリアントを含み、及び/またはVLは、配列番号19のアミノ酸配列もしくは配列番号19に対して少なくとも約80%(例えば、少なくとも約80%、85%、87%、89%、90% 91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%、または99%超のいずれか1つを含む)の配列同一性を有するそのバリアントを含む。いくつかの実施形態では、そのような抗CLDN6抗体部分のCLDN6(例えば、ヒトCLDN6)に対する親和性は、配列番号18に記載される配列を含むVHと、配列番号19に記載される配列を含むVLとを含む抗CLDN6抗体部分の親和性と同等(例えば、同じ)である。
【0117】
本出願の抗CLDN6抗体部分は、当該技術分野で公知の任意の好適なフォーマットであり得る。いくつかの実施形態では、抗CLDN6抗体部分は、全長抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFv、及びsdAbからなる群から選択され得る。
【0118】
いくつかの実施形態では、抗CLDN6抗体部分は、2本の重鎖及び2本の軽鎖を含む、全長抗体を含む。いくつかの実施形態では、全長抗体は、IgG、IgA、IgD、IgE、IgM、ならびにその組み合わせ及びハイブリッドに由来するFc断片からなる群から選択されるFc断片を有する。いくつかの実施形態では、Fc断片は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、ならびにその組み合わせ及びハイブリッドに由来するFc断片からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、Fc断片は、IgG1またはIgG4 Fc断片である。
【0119】
いくつかの実施形態では、Fc断片は、野生型Fcと比較して低減したFcγR結合親和性を有する。いくつかの実施形態では、Fc断片は、N297A、N297Q、N297G、またはL235Eからなる群から選択される1つ以上の置換を含む。いくつかの実施形態では、Fc断片は、N297A、N297Q、N297G、L235E、及び/またはL234A/L235Aからなる群から選択される1つ以上の置換を含むIgG1断片である。いくつかの実施形態では、Fc断片は、N297Aを含むIgG1断片である。いくつかの実施形態では、Fc断片は、N297A、N297Q、N297G、L235E、及び/またはF234A/L235Aを含むIgG4断片である。いくつかの実施形態では、Fc断片は、N297Aを含むIgG4断片である。いくつかの実施形態では、Fc断片は、配列番号42に記載されるアミノ配列を含む。
【0120】
いくつかの実施形態では、抗CLDN6抗体部分は、2本の重鎖及び2本の軽鎖を含む、全長抗体を含み、ここで、重鎖は、配列番号9もしくは配列番号42のアミノ酸配列、もしくは配列番号9もしくは配列番号42に対して少なくとも約80%(例えば、少なくとも約80%、85%、87%、89%、90% 91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%、または99%超のいずれか1つを含む)の配列同一性を有するそのバリアントを含み、及び/または軽鎖は、配列番号11のアミノ酸配列もしくは配列番号11に対して少なくとも約80%(例えば、少なくとも約80%、85%、87%、89%、90% 91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%、または99%超のいずれか1つを含む)の配列同一性を有するそのバリアントを含む。いくつかの実施形態では、そのような抗CLDN6抗体部分のCLDN6(例えば、ヒトCLDN6)に対する親和性は、配列番号9及び/または配列番号42をそれぞれ含む2本の重鎖と、配列番号11をそれぞれ含む2本の軽鎖とを含む抗CLDN6抗体部分の親和性と同等(例えば、同じ)である。
【0121】
いくつかの実施形態では、抗CLDN6抗体部分は、2本の重鎖及び2本の軽鎖を含む、全長抗体を含み、ここで、重鎖は、配列番号10もしくは配列番号43のアミノ酸配列、もしくは配列番号10もしくは配列番号43に対して少なくとも約80%(例えば、少なくとも約80%、85%、87%、89%、90% 91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%、または99%超のいずれか1つを含む)の配列同一性を有するそのバリアントを含み、及び/または軽鎖は、配列番号11のアミノ酸配列もしくは配列番号11に対して少なくとも約80%(例えば、少なくとも約80%、85%、87%、89%、90% 91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%、または99%超のいずれか1つを含む)の配列同一性を有するそのバリアントを含む。いくつかの実施形態では、そのような抗CLDN6抗体部分のCLDN6(例えば、ヒトCLDN6)に対する親和性は、配列番号10及び/または配列番号43をそれぞれ含む2本の重鎖と、配列番号11をそれぞれ含む2本の軽鎖とを含む抗CLDN6抗体部分の親和性と同等(例えば、同じ)である。
【0122】
いくつかの実施形態では、抗CLDN6抗体部分は、2本の重鎖及び2本の軽鎖を含む、全長抗体を含み、ここで、重鎖は、配列番号20のアミノ酸配列、もしくは配列番号20に対して少なくとも約80%(例えば、少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%のいずれかを含む)の配列同一性を含むそのバリアントを含み;及び/または軽鎖は、配列番号22のアミノ酸配列、もしくは配列番号22に対して少なくとも約80%(例えば、少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%のいずれかを含む)の配列同一性を含むそのバリアントを含む。いくつかの実施形態では、そのような抗CLDN6抗体部分のCLDN6(例えば、ヒトCLDN6)に対する親和性は、配列番号20をそれぞれ含む2本の重鎖と、配列番号22をそれぞれ含む2本の軽鎖とを含む抗CLDN6抗体部分の親和性と同等(例えば、同じ)である。
【0123】
いくつかの実施形態では、抗CLDN6抗体部分は、2本の重鎖及び2本の軽鎖を含む、全長抗体を含み、ここで、重鎖は、配列番号21のアミノ酸配列、もしくは配列番号21に対して少なくとも約80%(例えば、少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%のいずれかを含む)の配列同一性を有するそのバリアントを含み;及び/または軽鎖は、配列番号22のアミノ酸配列、もしくは配列番号22に対して少なくとも約80%(例えば、少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%のいずれかを含む)の配列同一性を有するそのバリアントを含む。いくつかの実施形態では、そのような抗CLDN6抗体部分のCLDN6(例えば、ヒトCLDN6)に対する親和性は、配列番号21をそれぞれ含む2本の重鎖と、配列番号22をそれぞれ含む2本の軽鎖とを含む抗CLDN6抗体部分の親和性と同等(例えば、同じ)である。
【0124】
抗4-1BB抗体部分
本出願に記載される多重特異性構築物の抗4-1BB抗体部分は、4-1BBに特異的に結合する任意の抗体部分を含む。いくつかの実施形態では、4-1BBは、ヒト4-1BB(「h4-1BB」)である。h4-1BBは、4つの細胞外システインリッチドメイン(「CRD」、すなわち、CRD1、CDR2、CRD3、及びCRD4)に続いて短い膜貫通ドメイン及びC末端細胞質領域を含むI型膜貫通受容体である。h4-1BBのCRD2及びCRD3は、リガンド4-1BBLと相互作用する(Bitra et al.(2018)J Biol Chem.293(26):9958-9969。他のTNFRと対照的に、h4-1BBは、ジスルフィド連結二量体として存在し、二量体化は、h4-1BBのCRD4内にある対合していないシステイン(Cys121)を介して生じると考えられる。いくつかの実施形態では、h4-1BBは、配列番号41に記載される配列またはそのバリアント(例えば、翻訳後修飾バリアント及び/またはコンフォメーションバリアント)を含む。いくつかの実施形態では、抗4-1BB抗体部分は、4-1BBのCRD3/CRD4領域に結合する。
【0125】
抗4-1BB抗体部分は、当該技術分野で公知の任意の好適なフォーマットであり得る。いくつかの実施形態では、抗4-1BB抗体部分は、全長抗体、Fab、Fab’、F(ab’)、scFv、及びsdAbからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、抗4-1BB抗体部分は、4-1BBに結合する単一ドメイン抗体を含む。
【0126】
例示的な抗4-1BB抗体部分
いくつかの実施形態では、抗4-1BB抗体部分は、配列番号27に記載されるアミノ酸配列、または配列番号27に記載される配列に対して少なくとも約80%(例えば、少なくとも約80%、85%、87%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%、または99%超のいずれかを含む)の配列同一性を有するそのバリアントを有する単一単量体可変抗体ドメイン内のCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列をそれぞれ含むsdAb-CDR1、sdAb-CDR2、及びsdAb-CDR3を含む単一ドメイン抗体(sdAb)を含む。いくつかの実施形態では、そのような抗4-1BB抗体部分の4-1BB(例えば、ヒト4-1BB)に対する親和性は、配列番号27を含む抗4-1BB抗体部分の親和性と同等(例えば、同じ)である。
【0127】
いくつかの実施形態では、抗4-1BB抗体部分は、a)配列番号24のアミノ酸配列を含むsdAb-CDR1、またはsdAb-CDR1中に最大約3つ(約1、2、3つのいずれかなど)のアミノ酸置換を含むそのバリアント;b)配列番号25のアミノ酸配列を含むsdAb-CDR2、またはsdAb-CDR2中に最大約3つ(約1、2、3つのいずれかなど)のアミノ酸置換を含むそのバリアント;及びc)配列番号26のアミノ酸配列を含むsdAb-CDR3、またはsdAb-CDR3中に最大約3つ(約1、2、3つのいずれかなど)のアミノ酸置換を含むそのバリアントを含む、単一ドメイン抗体(sdAb)を含む。
【0128】
いくつかの実施形態では、抗4-1BB抗体部分は、a)配列番号24のアミノ酸配列を含むsdAb-CDR1、配列番号25のアミノ酸配列を含むsdAb-CDR2、及び配列番号26のアミノ酸配列を含むsdAb-CDR3を含む、単一ドメイン抗体(sdAb)を含む。
【0129】
いくつかの実施形態では、抗4-1BB抗体部分は、配列番号27のアミノ酸配列、または配列番号27に記載される配列に対して少なくとも約80%(例えば、少なくとも約80%、85%、87%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%、または99%超のいずれかを含む)の配列同一性を有するそのバリアントを含む、単一ドメイン抗体(sdAb)を含む。いくつかの実施形態では、そのような抗4-1BB抗体部分の4-1BB(例えば、ヒト4-1BB)に対する親和性は、配列番号27を含む抗4-1BB抗体部分の親和性と同等(例えば、同じ)である。
【0130】
多重特異性構築物
一態様において、本明細書で提供されるのは、腫瘍抗原に特異的に結合する第1の抗体部分と、4-1BBに特異的に結合する第2の抗体部分とを含み、ここで、第1の抗体部分と腫瘍抗原との結合は、第2の抗体部分が4-1BBを活性化することを誘発する、多重特異性構築物である。いくつかの実施形態では、第2の抗体部分は、4-1BBのCRD3/4領域に特異的に結合する。
【0131】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、腫瘍抗原に特異的に結合する第1の抗体部分と、4-1BBに特異的に結合する第2の抗体部分とを含み、ここで、第1の抗体部分と腫瘍抗原との結合は、第2の抗体部分が4-1BBを活性化することを誘発する、多重特異性構築物である。いくつかの実施形態では、第2の抗体部分による4-1BBの活性化は、第1の抗体部分と腫瘍抗原との結合後、少なくとも約2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、50倍、100倍、200倍、500倍、または1000倍のいずれか1つ(これらの値の間の任意の範囲を含む)の値分増強される。いくつかの実施形態では、多重特異性構築物は、腫瘍抗原に結合することなく、4-1BBシグナル伝達を活性化する。いくつかの実施形態では、第2の部分は、腫瘍抗原に結合しなければ、4-1BBシグナル伝達を活性化しない。
【0132】
本出願の多重特異性構築物のいくつかの実施形態では、第2の抗体部分は、sdAbである。いくつかの実施形態では、sdAbは、配列番号27に記載されるアミノ酸配列を含む単一単量体可変抗体ドメイン内のCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列をそれぞれ含むsdAb-CDR1、sdAb-CDR2、及びsdAb-CDR3を含む。
【0133】
いくつかの実施形態では、sdAbは、配列番号24のアミノ酸配列を含むsdAb-CDR1、またはsdAb-CDR1中に最大約3つ(約1、2、3つのいずれかなど)のアミノ酸置換を含むそのバリアント;配列番号25のアミノ酸配列を含むsdAb-CDR2、またはsdAb-CDR2中に最大約3つ(約1、2、3つのいずれかなど)のアミノ酸置換を含むそのバリアント;及び配列番号26のアミノ酸配列を含むsdAb-CDR3、またはsdAb-CDR3中に最大約3つ(約1、2、3つのいずれかなど)のアミノ酸置換を含むそのバリアントを含む。
【0134】
いくつかの実施形態では、sdAbは、配列番号27のアミノ酸配列、または配列番号27に記載される配列に対して少なくとも約80%(例えば、少なくとも約80%、85%、87%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%、または99%超のいずれかを含む)の配列同一性を有するそのバリアントを含む。いくつかの実施形態では、そのようなsdAbの4-1BB(例えば、ヒト4-1BB)に対する親和性は、配列番号27を含むsdAbの親和性と同等(例えば、同じ)である。
【0135】
第1の抗体部分が特異的に結合する腫瘍抗原は、当該技術分野で公知の任意の好適な腫瘍抗原であり得る。いくつかの実施形態では、腫瘍抗原は、CLDN6である。
【0136】
いくつかの実施形態では、本出願は、CLDN6と4-1BBの両方に結合する多重特異性構築物を提供する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性構築物は、抗CLDN6抗体部分及び抗4-1BB抗体部分を含む二重特異性抗体である。抗CLDN6抗体部分及び抗4-1BB抗体部分は、本明細書に記載されるもののいずれかであり得る。
【0137】
本出願の多重特異性構築物のいくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性構築物は、抗CLDN6抗体部分及び抗4-1BB抗体部分を含む多重特異性構築物(例えば、二重特異性抗体)であり、ここで、抗CLDN6抗体部分は、(1)配列番号7に記載される配列、または配列番号7に対して少なくとも約80%(例えば、少なくとも約80%、85%、87%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%、または99%超のいずれかを含む)の配列同一性を有するそのバリアントを含む重鎖可変領域(VH)内のCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列をそれぞれ含む、HC-CDR1、HC-CDR2、及びHC-CDR3と、(2)配列番号8に記載される配列、または配列番号8に対して少なくとも約80%(例えば、少なくとも約80%、85%、87%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%、または99%超のいずれかを含む)の配列同一性を有するそのバリアントを含む軽鎖可変領域(VL)内のCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列をそれぞれ含む、LC-CDR1、LC-CDR2、及びLC-CDR3とを含む。いくつかの実施形態では、そのような抗CLDN6抗体部分のCLDN6(例えば、ヒトCLDN6)に対する親和性は、配列番号7に記載されるVHのCDR-1、CDR-2及びCDR-3と、配列番号8に記載されるVLのCDR-1、CDR-2及びCDR-3とを含む抗CLDN6抗体部分の親和性と同等(例えば、同じ)である。いくつかの実施形態では、抗4-1BB抗体部分は、配列番号24のアミノ酸配列を含むsdAb-CDR1、またはsdAb-CDR1中に最大約3つ(約1、2、3つのいずれかなど)のアミノ酸置換を含むそのバリアント;配列番号25のアミノ酸配列を含むsdAb-CDR2、またはsdAb-CDR2中に最大約3つ(約1、2、3つのいずれかなど)のアミノ酸置換を含むそのバリアント;及び配列番号26のアミノ酸配列を含むsdAb-CDR3、またはsdAb-CDR3中に最大約3つ(約1、2、3つのいずれかなど)のアミノ酸置換を含むそのバリアントを含むsdAbを含む。いくつかの実施形態では、抗4-1BB抗体部分は、配列番号27のアミノ酸配列、または配列番号27に対して少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも約80%、85%、87%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99%超のいずれか1つ(これらの値の間の任意の範囲を含む)の配列同一性)を有するそのバリアントを含むsdAbを含む。
【0138】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性構築物は、抗CLDN6抗体部分及び抗4-1BB抗体部分を含む多重特異性構築物(例えば、二重特異性抗体)であり、ここで、抗CLDN6抗体部分は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、VHは、(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むHC-CDR1、またはHC-CDR1中に最大約3つ(約1、2、3つのいずれかなど)のアミノ酸置換を含むそのバリアント、(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含むHC-CDR2、またはHC-CDR2中に最大約3つ(約1、2、3つのいずれかなど)のアミノ酸置換を含むそのバリアント;及び(iii)配列番号3のアミノ酸配列を含むHC-CDR3、またはHC-CDR3中に最大約3つ(約1、2、3つのいずれかなど)のアミノ酸置換を含むそのバリアントを含み、VLは、(i)配列番号4のアミノ酸配列を含むLC-CDR1、またはLC-CDR1中に最大約3つ(約1、2、3つのいずれかなど)のアミノ酸置換を含むそのバリアント;(ii)配列番号5のアミノ酸配列を含むLC-CDR2、またはLC-CDR2中に最大約3つ(約1、2、3つのいずれかなど)のアミノ酸置換を含むそのバリアント;及び(iii)配列番号6のアミノ酸配列を含むLC-CDR3、またはLC-CDR3中に最大約3つ(約1、2、3つのいずれかなど)のアミノ酸置換を含むそのバリアントを含む。いくつかの実施形態では、抗4-1BB抗体部分は、配列番号24のアミノ酸配列を含むsdAb-CDR1、またはsdAb-CDR1中に最大約3つ(約1、2、3つのいずれかなど)のアミノ酸置換を含むそのバリアント;配列番号25のアミノ酸配列を含むsdAb-CDR2、またはsdAb-CDR2中に最大約3つ(約1、2、3つのいずれかなど)のアミノ酸置換を含むそのバリアント;及び配列番号26のアミノ酸配列を含むsdAb-CDR3、またはsdAb-CDR3中に最大約3つ(約1、2、3つのいずれかなど)のアミノ酸置換を含むそのバリアントを含むsdAbを含む。いくつかの実施形態では、抗4-1BB抗体部分は、配列番号27のアミノ酸配列、または配列番号27に対して少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも約80%、85%、87%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99%超のいずれか1つ(これらの値の間の任意の範囲を含む)の配列同一性)を有するそのバリアントを含むsdAbを含む。
【0139】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性構築物は、抗CLDN6抗体部分及び抗4-1BB抗体部分を含む多重特異性構築物(例えば、二重特異性抗体)であり、ここで、抗CLDN6抗体部分は、含み、VHは、配列番号7のアミノ酸配列もしくは配列番号7に対して少なくとも約80%(例えば、少なくとも約80%、85%、87%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%、または99%超のいずれかを含む)の配列同一性を有するそのバリアントを含み、及び/またはVLは、配列番号8のアミノ酸配列もしくは配列番号8に対して少なくとも約80%(例えば、少なくとも約80%、85%、87%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%、または99%超のいずれかを含む)の配列同一性を有するそのバリアントを含む。いくつかの実施形態では、そのような抗CLDN6抗体部分のCLDN6(例えば、ヒトCLDN6)に対する親和性は、配列番号7に記載されるVHと、配列番号8に記載されるVLとを含む抗CLDN6抗体部分の親和性と同等(例えば、同じ)である。いくつかの実施形態では、抗4-1BB抗体部分は、配列番号24のアミノ酸配列を含むsdAb-CDR1、またはsdAb-CDR1中に最大約3つ(約1、2、3つのいずれかなど)のアミノ酸置換を含むそのバリアント;配列番号25のアミノ酸配列を含むsdAb-CDR2、またはsdAb-CDR2中に最大約3つ(約1、2、3つのいずれかなど)のアミノ酸置換を含むそのバリアント;及び配列番号26のアミノ酸配列を含むsdAb-CDR3、またはsdAb-CDR3中に最大約3つ(約1、2、3つのいずれかなど)のアミノ酸置換を含むそのバリアントを含むsdAbを含む。いくつかの実施形態では、抗4-1BB抗体部分は、配列番号27のアミノ酸配列、または配列番号27に対して少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも約80%、85%、87%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99%超のいずれか1つ(これらの値の間の任意の範囲を含む)の配列同一性)を有するそのバリアントを含むsdAbを含む。
【0140】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性構築物は、抗CLDN6抗体部分及び抗4-1BB抗体部分を含む多重特異性構築物(例えば、二重特異性抗体)であり、ここで、抗CLDN6抗体部分は、(1)配列番号18に記載される配列、または配列番号18に対して少なくとも約80%(例えば、少なくとも約80%、85%、87%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%、または99%超のいずれかを含む)の配列同一性を有するそのバリアントを含む重鎖可変領域(VH)内のCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列をそれぞれ含む、HC-CDR1、HC-CDR2、及びHC-CDR3と、(2)配列番号19に記載される配列、または配列番号19に対して少なくとも約80%(例えば、少なくとも約80%、85%、87%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%、または99%超のいずれかを含む)の配列同一性を有するそのバリアントを含む軽鎖可変領域(VL)内のCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列をそれぞれ含む、LC-CDR1、LC-CDR2、及びLC-CDR3とを含む。いくつかの実施形態では、そのような抗CLDN6抗体部分のCLDN6(例えば、ヒトCLDN6)に対する親和性は、配列番号18に記載されるVHのCDR-1、CDR-2及びCDR-3と、配列番号19に記載されるVLのCDR-1、CDR-2及びCDR-3とを含む抗CLDN6抗体部分の親和性と同等(例えば、同じ)である。いくつかの実施形態では、抗4-1BB抗体部分は、配列番号24のアミノ酸配列を含むsdAb-CDR1、またはsdAb-CDR1中に最大約3つ(約1、2、3つのいずれかなど)のアミノ酸置換を含むそのバリアント;配列番号25のアミノ酸配列を含むsdAb-CDR2、またはsdAb-CDR2中に最大約3つ(約1、2、3つのいずれかなど)のアミノ酸置換を含むそのバリアント;及び配列番号26のアミノ酸配列を含むsdAb-CDR3、またはsdAb-CDR3中に最大約3つ(約1、2、3つのいずれかなど)のアミノ酸置換を含むそのバリアントを含むsdAbを含む。いくつかの実施形態では、抗4-1BB抗体部分は、配列番号27のアミノ酸配列、または配列番号27に対して少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも約80%、85%、87%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99%超のいずれか1つ(これらの値の間の任意の範囲を含む)の配列同一性)を有するそのバリアントを含むsdAbを含む。
【0141】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性構築物は、抗CLDN6抗体部分及び抗4-1BB抗体部分を含む多重特異性構築物(例えば、二重特異性抗体)であり、ここで、抗CLDN6抗体部分は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、VHは、(i)配列番号12のアミノ酸配列を含むHC-CDR1、またはHC-CDR1中に最大約3つ(約1、2、3つのいずれかなど)のアミノ酸置換を含むそのバリアント、(ii)配列番号13のアミノ酸配列を含むHC-CDR2、またはHC-CDR2中に最大約3つ(約1、2、3つのいずれかなど)のアミノ酸置換を含むそのバリアント、及び(iii)配列番号14のアミノ酸配列を含むHC-CDR3、またはHC-CDR3中に最大約3つ(約1、2、3つのいずれかなど)のアミノ酸置換を含むそのバリアントを含み、VLは、(i)配列番号15のアミノ酸配列を含むLC-CDR1、またはLC-CDR1中に最大約3つ(約1、2、3つのいずれかなど)のアミノ酸置換を含むそのバリアント;(ii)配列番号16のアミノ酸配列を含むLC-CDR2、またはLC-CDR2中に最大約3つ(約1、2、3つのいずれかなど)のアミノ酸置換を含むそのバリアント;及び(iii)配列番号17のアミノ酸配列を含むLC-CDR3、またはLC-CDR3中に最大約3つ(約1、2、3つのいずれかなど)のアミノ酸置換を含むそのバリアントを含む。いくつかの実施形態では、抗4-1BB抗体部分は、配列番号24のアミノ酸配列を含むsdAb-CDR1、またはsdAb-CDR1中に最大約3つ(約1、2、3つのいずれかなど)のアミノ酸置換を含むそのバリアント;配列番号25のアミノ酸配列を含むsdAb-CDR2、またはsdAb-CDR2中に最大約3つ(約1、2、3つのいずれかなど)のアミノ酸置換を含むそのバリアント;及び配列番号26のアミノ酸配列を含むsdAb-CDR3、またはsdAb-CDR3中に最大約3つ(約1、2、3つのいずれかなど)のアミノ酸置換を含むそのバリアントを含むsdAbを含む。いくつかの実施形態では、抗4-1BB抗体部分は、配列番号27のアミノ酸配列、または配列番号27に対して少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも約80%、85%、87%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99%超のいずれか1つ(これらの値の間の任意の範囲を含む)の配列同一性)を有するそのバリアントを含むsdAbを含む。
【0142】
本出願の多重特異性構築物のいくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性構築物は、抗CLDN6抗体部分及び抗4-1BB抗体部分を含む多重特異性構築物(例えば、二重特異性抗体)であり、抗CLDN6抗体部分は、含み、VHは、配列番号18のアミノ酸配列もしくは配列番号18に対して少なくとも約80%(例えば、少なくとも約80%、85%、87%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%、または99%超のいずれかを含む)の配列同一性を有するそのバリアントを含み、及び/またはVLは、配列番号19のアミノ酸配列もしくは配列番号19に対して少なくとも約80%(例えば、少なくとも約80%、85%、87%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%、または99%超のいずれかを含む)の配列同一性を有するそのバリアントを含む。いくつかの実施形態では、そのような抗CLDN6抗体部分のCLDN6(例えば、ヒトCLDN6)に対する親和性は、配列番号18に記載されるVHと、配列番号19に記載されるVLとを含む抗CLDN6抗体部分の親和性と同等(例えば、同じ)である。いくつかの実施形態では、抗4-1BB抗体部分は、配列番号24のアミノ酸配列を含むsdAb-CDR1、またはsdAb-CDR1中に最大約3つ(約1、2、3つのいずれかなど)のアミノ酸置換を含むそのバリアント;配列番号25のアミノ酸配列を含むsdAb-CDR2、またはsdAb-CDR2中に最大約3つ(約1、2、3つのいずれかなど)のアミノ酸置換を含むそのバリアント;及び配列番号26のアミノ酸配列を含むsdAb-CDR3、またはsdAb-CDR3中に最大約3つ(約1、2、3つのいずれかなど)のアミノ酸置換を含むそのバリアントを含むsdAbを含む。いくつかの実施形態では、抗4-1BB抗体部分は、配列番号27のアミノ酸配列、または配列番号27に対して少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも約80%、85%、87%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99%超のいずれか1つ(これらの値の間の任意の範囲を含む)の配列同一性)を有するそのバリアントを含むsdAbを含む。
【0143】
本出願の多重特異性構築物のいくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性構築物は、抗CLDN6抗体部分及び抗4-1BB抗体部分を含む多重特異性構築物(例えば、二重特異性抗体)であり、ここで、抗CLDN6抗体部分は、含み、VHは、配列番号18のアミノ酸配列を含み、及び/またはVLは、配列番号19のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗4-1BB抗体部分は、配列番号24のアミノ酸配列を含むsdAb-CDR1、またはsdAb-CDR1中に最大約3つ(約1、2、3つのいずれかなど)のアミノ酸置換を含むそのバリアント;配列番号25のアミノ酸配列を含むsdAb-CDR2、またはsdAb-CDR2中に最大約3つ(約1、2、3つのいずれかなど)のアミノ酸置換を含むそのバリアント;及び配列番号26のアミノ酸配列を含むsdAb-CDR3、またはsdAb-CDR3中に最大約3つ(約1、2、3つのいずれかなど)のアミノ酸置換を含むそのバリアントを含むsdAbを含む。いくつかの実施形態では、抗4-1BB抗体部分は、配列番号27のアミノ酸配列、または配列番号27に対して少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも約80%、85%、87%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99%超のいずれか1つ(これらの値の間の任意の範囲を含む)の配列同一性)を有するそのバリアントを含むsdAbを含む。
【0144】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性構築物は、抗CLDN6抗体部分及び抗4-1BB抗体部分を含む多重特異性構築物(例えば、二重特異性抗体)であり、抗4-1BB抗体部分は、4-1BBのCRD3/4領域に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性構築物は、抗CLDN6抗体部分及び抗4-1BB抗体部分を含む多重特異性構築物(例えば、二重特異性抗体)であり、抗4-1BB抗体部分は、sdAbを含む。
【0145】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性構築物は、抗CLDN6抗体部分及び抗4-1BB抗体部分を含む多重特異性構築物(例えば、二重特異性抗体)であり、ここで、抗4-1BB抗体部分は、sdAbを含み、sdAbは、配列番号27に記載されるアミノ酸配列、または配列番号27に対して少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも約80%、85%、87%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99%超のいずれか1つ(これらの値の間の任意の範囲を含む)の配列同一性)を有するそのバリアントを含む単一単量体可変抗体ドメイン内のCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列をそれぞれ含むsdAb-CDR1、sdAb-CDR2、及びsdAb-CDR3を含む。いくつかの実施形態では、そのような抗4-1BB抗体部分の4-1BB(例えば、ヒト4-1BB)に対する親和性は、配列番号27を含む抗4-1BB抗体部分の親和性と同等(例えば、同じ)である。
【0146】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性構築物は、抗CLDN6抗体部分及び抗4-1BB抗体部分を含む多重特異性構築物(例えば、二重特異性抗体)であり、ここで、抗4-1BB抗体部分は、sdAbを含み、sdAbは、配列番号24のアミノ酸配列を含むsdAb-CDR1、またはsdAb-CDR1中に最大約3つ(約1、2、3つのいずれかなど)のアミノ酸置換を含むそのバリアント;配列番号25のアミノ酸配列を含むsdAb-CDR2、またはsdAb-CDR2中に最大約3つ(約1、2、3つのいずれかなど)のアミノ酸置換を含むそのバリアント;及び配列番号26のアミノ酸配列を含むsdAb-CDR3、またはsdAb-CDR3中に最大約3つ(約1、2、3つのいずれかなど)のアミノ酸置換を含むそのバリアントを含む。
【0147】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性構築物は、抗CLDN6抗体部分及び抗4-1BB抗体部分を含む多重特異性構築物(例えば、二重特異性抗体)であり、ここで、抗4-1BB抗体部分は、sdAbを含み、sdAbは、配列番号27のアミノ酸配列、または配列番号27に対して少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも約80%、85%、87%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99%超のいずれか1つ(これらの値の間の任意の範囲を含む)の配列同一性)を有するそのバリアントを含む。いくつかの実施形態では、そのような抗4-1BB抗体部分の4-1BB(例えば、ヒト4-1BB)に対する親和性は、配列番号27を含む抗4-1BB抗体部分の親和性と同等(例えば、同じ)である。
【0148】
いくつかの実施形態では、CLDN6(例えば、ヒトCLDN6)に特異的に結合する抗体(例えば、全長抗体)を含む抗CLDN6抗体部分と、4-1BB(例えば、ヒト4-1BB)に結合する抗体(例えば、単一ドメイン抗体)を含む抗4-1BB抗体部分とを含む多重特異性構築物(例えば、二重特異性抗体)が提供され、ここで、抗CLDN6抗体部分は、(1)配列番号7に記載される配列を含む重鎖可変領域(VH)内のCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列をそれぞれ含むHC-CDR1、HC-CDR2、及びHC-CDR3と、(2)配列番号8に記載される配列を含む軽鎖可変領域(VL)内のCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列をそれぞれ含むLC-CDR1、LC-CDR2、及びLC-CDR3とを含み、抗4-1BB抗体部分は、sdAbを含み、sdAbは、配列番号27に記載されるアミノ酸配列を含む単一単量体可変抗体ドメイン内のCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列をそれぞれ含むsdAb-CDR1、sdAb-CDR2、及びsdAb-CDR3を含む。
【0149】
いくつかの実施形態では、CLDN6(例えば、ヒトCLDN6)に特異的に結合する抗体(例えば、全長抗体)を含む抗CLDN6抗体部分と、4-1BB(例えば、ヒト4-1BB)に結合する抗体(例えば、単一ドメイン抗体)を含む抗4-1BB抗体部分とを含む多重特異性構築物(例えば、二重特異性抗体)が提供され、ここで、抗CLDN6抗体部分は、(1)配列番号18に記載される配列を含む重鎖可変領域(VH)内のCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列をそれぞれ含むHC-CDR1、HC-CDR2、及びHC-CDR3と、(2)配列番号19に記載される配列を含む軽鎖可変領域(VL)内のCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列をそれぞれ含むLC-CDR1、LC-CDR2、及びLC-CDR3とを含み、抗4-1BB抗体部分は、sdAbを含み、sdAbは、配列番号27に記載されるアミノ酸配列を含む単一単量体可変抗体ドメイン内のCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列をそれぞれ含むsdAb-CDR1、sdAb-CDR2、及びsdAb-CDR3を含む。
【0150】
いくつかの実施形態では、CLDN6(例えば、ヒトCLDN6)に特異的に結合する抗体(例えば、全長抗体)を含む抗CLDN6抗体部分と、4-1BB(例えば、ヒト4-1BB)に結合する抗体(例えば、単一ドメイン抗体)を含む抗4-1BB抗体部分とを含む多重特異性構築物(例えば、二重特異性抗体)が提供され、ここで、抗CLDN6抗体部分は、含み、VHは、配列番号7のアミノ酸配列、もしくは配列番号7に対して少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも約80%、85%、87%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99%超のいずれか1つ(これらの値の間の任意の範囲を含む)の配列同一性)を有するそのバリアントを含み、及び/またはVLは、配列番号8のアミノ酸配列、もしくは配列番号8に対して少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも約80%、85%、87%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99%超のいずれか1つ(これらの値の間の任意の範囲を含む)の配列同一性)を有するそのバリアントを含み、抗4-1BB抗体部分は、sdAbを含み、sdAbは、配列番号27のアミノ酸配列、または配列番号27に対して少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも約80%、85%、87%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99%超のいずれか1つ(これらの値の間の任意の範囲を含む)の配列同一性)を有するそのバリアントを含む。いくつかの実施形態では、そのような多重特異性構築物(例えば、二重特異性抗体)のCLDN6及び4-1BBに対する親和性は、配列番号7に記載されるVH及び配列番号8に記載されるVLを含む全長抗体を含む抗CLDN6抗体部分と、配列番号27に記載される配列を含む単一ドメイン抗体を含む抗4-1BB抗体部分とを含む多重特異性構築物の親和性と同等(例えば、同じ)である。
【0151】
いくつかの実施形態では、CLDN6(例えば、ヒトCLDN6)に特異的に結合する抗体(例えば、全長抗体)を含む抗CLDN6抗体部分と、4-1BB(例えば、ヒト4-1BB)に結合する抗体(例えば、単一ドメイン抗体)を含む抗4-1BB抗体部分とを含む多重特異性構築物(例えば、二重特異性抗体)が提供され、ここで、抗CLDN6抗体部分は、含み、VHは、配列番号18のアミノ酸配列、もしくは配列番号18に対して少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも約80%、85%、87%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99%超のいずれか1つ(これらの値の間の任意の範囲を含む)の配列同一性)を有するそのバリアントを含み、及び/またはVLは、配列番号19のアミノ酸配列、もしくは配列番号19に対して少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも約80%、85%、87%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99%超のいずれか1つ(これらの値の間の任意の範囲を含む)の配列同一性)を有するそのバリアントを含み、抗4-1BB抗体部分は、sdAbを含み、sdAbは、配列番号27のアミノ酸配列、または配列番号27に対して少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも約80%、85%、87%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99%超のいずれか1つ(これらの値の間の任意の範囲を含む)の配列同一性)を有するそのバリアントを含む。いくつかの実施形態では、そのような多重特異性構築物(例えば、二重特異性抗体)のCLDN6及び4-1BBに対する親和性は、配列番号18に記載されるVH及び配列番号19に記載されるVLを含む全長抗体を含む抗CLDN6抗体部分と、配列番号27に記載される配列を含む単一ドメイン抗体を含む抗4-1BB抗体部分とを含む多重特異性構築物の親和性と同等(例えば、同じ)である。
【0152】
いくつかの実施形態では、CLDN6(例えば、ヒトCLDN6)に特異的に結合する抗体(例えば、全長抗体)を含む抗CLDN6抗体部分と、4-1BBに特異的に結合する抗4-1BB抗体部分とを含み、ここで、抗4-1BB抗体部分は、抗CLDN6抗体(例えば、全長抗CLDN6抗体)の重鎖の一方または両方のN末端に融合される、多重特異性構築物(例えば、二重特異性抗体)が提供される。いくつかの実施形態では、CLDN6に特異的に結合する抗体(例えば、全長抗体)を含む抗CLDN6抗体部分と、4-1BBに特異的に結合する抗4-1BB抗体部分とを含み、ここで、抗4-1BB抗体部分は、抗CLDN抗体(例えば、全長抗CLDN6抗体)の重鎖の一方または両方のC末端に融合される、多重特異性構築物(例えば、二重特異性抗体)が提供される。いくつかの実施形態では、CLDN6に特異的に結合する抗体(例えば、全長抗体)を含む抗CLDN6抗体部分と、4-1BBに特異的に結合する抗4-1BB抗体部分とを含み、ここで、抗4-1BB抗体部分は、抗CLDN6抗体(例えば、全長抗CLDN6抗体)の軽鎖の一方または両方のN末端に融合される、多重特異性構築物(例えば、二重特異性抗体)が提供される。いくつかの実施形態では、CLDN6に特異的に結合する抗体(例えば、全長抗体)を含む抗CLDN6抗体部分と、抗4-1BB抗体部分とを含み、ここで、抗4-1BB抗体部分は、抗CLDN6抗体(例えば、全長抗CLDN6抗体)の軽鎖の一方または両方のC末端に融合される、多重特異性構築物(例えば、二重特異性抗体)が提供される。
【0153】
いくつかの実施形態では、CLDN6(例えば、ヒトCLDN6)に特異的に結合する抗体(例えば、全長抗体)を含む抗CLDN6抗体部分と、4-1BB(例えば、ヒト4-1BB)に結合する単一ドメイン抗体を含む抗4-1BB抗体部分とを含み、ここで、単一ドメイン抗体は、抗CLDN抗体(例えば、全長抗CLDN抗体)の重鎖の一方または両方のN末端に融合される、多重特異性構築物(例えば、二重特異性抗体)が提供される。いくつかの実施形態では、CLDN6に特異的に結合する抗体(例えば、全長抗体)を含む抗CLDN6抗体部分と、4-1BBに結合する単一ドメイン抗体を含む抗4-1BB抗体部分とを含み、ここで、単一ドメイン抗体は、抗CLDN抗体(例えば、全長抗CLDN抗体)の重鎖の一方または両方のC末端に融合される、多重特異性構築物(例えば、二重特異性抗体)が提供される。いくつかの実施形態では、CLDN6に特異的に結合する抗体(例えば、全長抗体)を含む抗CLDN6抗体部分と、4-1BBに結合する単一ドメイン抗体を含む抗4-1BB抗体部分とを含み、ここで、単一ドメイン抗体は、抗CLDN6抗体(例えば、全長抗CLDN6抗体)の軽鎖の一方または両方のN末端に融合される、多重特異性構築物(例えば、二重特異性抗体)が提供される。いくつかの実施形態では、CLDN6に特異的に結合する抗体(例えば、全長抗体)を含む抗CLDN6抗体部分と、4-1BBに結合する単一ドメイン抗体を含む抗4-1BB抗体部分とを含み、ここで、単一ドメイン抗体は、抗CLDN6抗体(例えば、全長抗CLDN6抗体)の軽鎖の一方または両方のC末端に融合される、多重特異性構築物(例えば、二重特異性抗体)が提供される。
【0154】
いくつかの実施形態では、抗4-1BB抗体部分は、リンカーを介して抗CLDN6抗体部分に融合される。いくつかの実施形態では、リンカーは、ペプチドリンカーである。いくつかの実施形態では、リンカーは、約4~約50アミノ酸の長さを有する。いくつかの実施形態では、リンカーは、(GS)n、(GGGS)n、(GGGGS)n、及び(GSGGS)nからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、nは、0~8である。いくつかの実施形態では、リンカーは、GGGGSGGGGSGGGGSのアミノ酸配列を含む。
【0155】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、重鎖構成要素及び軽鎖構成要素を含む多重特異性構築物であり、ここで、重鎖構成要素は、配列番号28、30、32、34、36、38、44、もしくは45のアミノ酸配列、もしくは配列番号28、30、32、34、36、38、44もしくは45に対して少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも約80%、85%、87%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99%超のいずれか1つ(これらの値の間の任意の範囲を含む)の配列同一性)を有するそのバリアントを含み、及び/または軽鎖は、配列番号29、31、33、35、37、39のアミノ酸配列、もしくは配列番号29、31、33、35、37、39に対して少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも約80%、85%、87%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99%超のいずれか1つ(これらの値の間の任意の範囲を含む)の配列同一性)を有するそのバリアントを含む。
【0156】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、重鎖構成要素及び軽鎖構成要素を含む多重特異性構築物であり、ここで、重鎖構成要素は、配列番号28、30、32、34、36、38、44、もしくは45のアミノ酸配列を含み、及び/または軽鎖は、配列番号配列番号29、31、33、35、37、39のアミノ酸配列を含む。
【0157】
いくつかの実施形態では、2つの重鎖構成要素及び2つの軽鎖構成要素を含む多重特異性構築物が提供され、ここで、(a)各重鎖構成要素は、配列番号28及び/または44に記載される配列を含み、各軽鎖構成要素は、配列番号29に記載される配列を含むか、(b)各重鎖構成要素は、配列番号30及び/または配列番号45に記載される配列を含み、各軽鎖構成要素は、配列番号31に記載される配列を含むか、(c)各重鎖構成要素は、配列番号32に記載される配列を含み、各軽鎖構成要素は、配列番号33に記載される配列を含むか、(d)各重鎖構成要素は、配列番号34に記載される配列を含み、各軽鎖構成要素は、配列番号35に記載される配列を含むか、(e)各重鎖構成要素は、配列番号36に記載される配列を含み、各軽鎖構成要素は、配列番号37に記載される配列を含むか、または(f)各重鎖構成要素は、配列番号38に記載される配列を含み、各軽鎖構成要素は、配列番号39に記載される配列を含む。
【0158】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、CLDN6に特異的に結合する第1の抗体部分と、4-1BBに特異的に結合する第2の抗体部分とを含み、ここで、第1の抗体部分とCLDN6との結合は、第2の抗体部分が4-1BBを活性化することを誘発する、多重特異性構築物である。いくつかの実施形態では、第2の抗体部分による4-1BBの活性化は、第1の抗体部分とCLDN6との結合後、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、50倍、100倍、200倍、500倍、または1000倍増強される。いくつかの実施形態では、多重特異性構築物は、CLDN6に結合しなければ、4-1BBシグナル伝達を活性化しない。いくつかの実施形態では、第2の部分は、CLDN6に結合することなく、4-1BBシグナル伝達を活性化する。
【0159】
4-1BBシグナル伝達活性化は、ウトミルマブ(PF-05082566)及びウレルマブ(BMS-663513)などのアゴニスト抗体について期待される機序である。しかしながら、本開示の抗体のいくつかの抗4-1BBの部分は、そのような活性を必須としていない。実際に、いくつかの実施形態では、本抗体の抗4-1BB部分は、CLDN6結合がない場合には、4-1BBを独立して活性化することができないことが好ましい。実験例が示すように、興味深いことに、抗CLDN6部分が細胞上のCLDN6タンパク質に結合した場合に、かかるCLDN6結合は、4-1BBシグナル伝達の活性化を誘発することができる。
【0160】
一般に用量制限的なオンターゲット肝毒性を伴う既知の抗4-1BBアゴニスト抗体と比較して、本開示の抗体は、はるかに安全であることが企図される。健常な状態ではCLDN6を発現していない肝臓などの組織において、本開示の抗体は、4-1BBシグナル伝達を活性化することができないため、細胞傷害性免疫応答を誘発することは予想されない。対照的に、CLDN6を発現する及び/またはアクセス可能である腫瘍組織では、本抗体は、腫瘍細胞に対する強力な免疫応答を開始することができる。したがって、オンターゲット毒性/固有毒性を被る現在臨床開発中の抗4-1BB抗体とは異なり、本開示の抗体は、がん治療において、強力であると同時に安全であり得る。
【0161】
核酸
本明細書に記載される多重特異性構築物または様々な抗体部分をコードする核酸分子もまた企図される。いくつかの実施形態では、多重特異性構築物または様々な抗体部分の1つ以上のポリペプチドをコードする核酸(または核酸のセット)が提供される。いくつかの実施形態では、多重特異性構築物(例えば、抗CLDN6/抗4-1BB二重特異性抗体)またはそのポリペプチド部分をコードする核酸(または核酸のセット)が提供される。
【0162】
また、本明細書では、本明細書に記載される多重特異性構築物(例えば、抗CLDN6/抗4-1BB二重特異性抗体)、多重特異性構築物のポリペプチド構成要素をコードする核酸(複数可)、または多重特異性構築物(例えば、抗CLDN6/抗4-1BB二重特異性抗体)のポリペプチド構成要素をコードする核酸を含むベクターを含む、単離された宿主細胞も企図される。
【0163】
本出願は、これらの核酸配列のバリアントも含む。例えば、バリアントは、少なくとも中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、本明細書に記載される多重特異性構築物(例えば、抗CLDN6/抗4-1BB二重特異性抗体)または様々な抗体部分をコードする核酸配列にハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む。
【0164】
本出願は、本出願の核酸が挿入されたベクターも提供する。
【0165】
核酸は、多数の種類のベクターにクローニングすることができる。例えば、該核酸は、プラスミド、ファージミド、ファージ派生物、動物ウイルス、及びコスミドが挙げられるがこれらに限定されないベクターにクローニングされ得る。特に重要なベクターとしては、発現ベクター、複製ベクター、プローブ生成ベクター、及び配列決定ベクターが挙げられる。
【0166】
さらに、該発現ベクターは、ウイルスベクターの形態で細胞に提供され得る。ウイルスベクター技術は、当該技術分野で周知であり、例えば、Sambrook et al.(2001,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York)、ならびに他のウイルス学及び分子生物学のマニュアルに記載されている。ベクターとして有用なウイルスとしては、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、及びレンチウイルスが挙げられるがこれらに限定されない。一般に、好適なベクターは、少なくとも1つの生物において機能する複製起点、プロモーター配列、簡便な制限エンドヌクレアーゼ部位、及び1つ以上の選択マーカーを含有する(例えば、WO01/96584;WO01/29058;及び米国特許第6,326,193号参照)。
【0167】
治療方法
個体の疾患または状態を治療する方法も本明細書において提供される。方法は、本明細書に記載される多重特異性構築物(例えば、抗CLDN6/抗4-1BB二重特異性抗体)を個体(例えば、ヒトなどの哺乳動物)に投与することを含む。いくつかの実施形態では、個体は、哺乳動物(例えば、ヒト、非ヒト霊長類、ラット、マウス、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコなど)である。いくつかの実施形態では、個体は、ヒトである。いくつかの実施形態では、個体は、臨床患者、臨床試験志願者、実験動物などである。
【0168】
方法のいくつかの実施形態では、疾患または状態は、増殖性障害である。いくつかの実施形態では、細胞増殖性障害は、がんである。いくつかの実施形態では、がんは、固形腫瘍、黒色腫、腎臓癌、卵巣癌、大腸癌、頭頸部扁平上皮癌(SCCHN)、非小細胞肺癌、または非ホジキンリンパ腫(NHL)である。
【0169】
組成物、キット及び製品
また、本明細書で提供されるのは、本明細書に記載される多重特異性構築物(例えば、抗CLDN6/抗4-1BB二重特異性抗体)、多重特異性構築物のいずれかもしくはその一部をコードする核酸、多重特異性構築物のうちの1つをコードする核酸を含むベクター、または核酸もしくはベクターを含む宿主細胞のいずれか1つを含む、組成物(製剤など)である。
【0170】
本明細書に記載される多重特異性構築物(例えば、抗CLDN6/抗4-1BB二重特異性抗体)の好適な製剤は、所望の純度を有する多重特異性構築物を、任意選択の薬学的に許容される担体、賦形剤または安定剤と混合することによって得ることができる(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))。
【0171】
本明細書に記載される多重特異性構築物(例えば、抗CLDN6/抗4-1BB二重特異性抗体)のいずれか1つを含むキットも提供される。キットは、本明細書に記載される治療の方法のいずれかに有用であり得る。
【0172】
本出願のキットは、好適な包装がなされている。好適な包装には、バイアル、ボトル、ジャー、軟包装(例えば、密封マイラーバッグまたはプラスチック袋)などが含まれるが、これらに限定されない。キットは、任意選択により、緩衝剤及び説明情報などの追加の構成要素を備えてもよい。
【0173】
したがって、本出願は、製品も提供する。製品は、容器と、容器上または容器に付随するラベルまたは添付文書とを含み得る。好適な容器には、バイアル(密封バイアルなど)、ボトル、ジャー、軟包装などが含まれる。一般に、容器は、組成物を保持し、無菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、皮下注射針によって貫通可能な栓を有する静脈内注射用溶液バッグまたはバイアルであってよい)。
【0174】
当業者であれば、本発明の範囲及び趣旨内でいくつかの実施形態が可能であることを認識するであろう。本発明は、ここで、以下の非限定的な実施例を参照することにより、より詳細に記載される。以下の実施例は、本発明をさらに例示説明するが、当然のことながら、その範囲を制限するものとして決して解釈されるべきではない。
【実施例
【0175】
以下の実施例は、当業者らに本発明の作製及び使用方法の完全な開示及び説明を提供するために記載され、本発明者らが発明とみなすものの範囲を限定することが意図されず、また、以下の実験が、実施された全ての実験または唯一の実験であることを表すことも意図されない。使用される数(例えば、量、温度など)に関しては、正確さを確保するように努めたが、多少の実験誤差及び偏差を考慮されたい。以下の実施例は、本出願の純粋な例示であることが意図されており、したがって、本出願をいかなる形でも限定するものとみなされるものではない。以下の実施例及び詳細な説明は、例示として提供されるものであり、限定するためのものではない。
【0176】
実施例1:CLDN6×4-1BB二重特異性抗体の作製
以下の表3に示される例示的なCLDN6×4-1BB二重特異性抗体を設計し、作製した。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【表3-6】
【0177】
実施例2.CLDN6×4-1BB BsAbの抗原結合活性
2.1 CLDN6×4-1BB BsAbとCLDN6との結合親和性
CLDN6-1×4-1BB NA及びCLDN6-1×4-1BB WT(実施例1で調製)のヒトCLDN6に対する結合親和性を表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定した。図1A及び図1Bに示されるように、CLDN6-1×4-1BB NA及びCLDN6-1×4-1BB WTは、CLDN6ウイルス様粒子(VLP)に、それぞれ2.36×10-9M及び1.61×10-9MのKで結合した。
【0178】
ヒトCLDN6を安定して発現するCHO-K1細胞株(CHO-K1-CLDN6)を調製して、CLDN6に対するCLDN6-1×4-1BB NA及びCLDN6-1×4-1BB WTの結合能力を評価した。親CLDN6-1抗体を対照として使用した。簡潔に述べると、CHO-K1-CLDN6細胞を異なる濃度のBsAbとFACS緩衝液中4℃で30分間インキュベートした。次いで、フィコエリトリン(PE)結合抗ヒトIgG抗体を洗浄後に加え、細胞を4℃でさらに30分間インキュベートした。PEの平均蛍光強度(MFI)をFACSによって評価した。図2Aに示されるように、CLDN6-1×4-1BB NA及びCLDN6-1×4-1BB WTは両方ともCLDN6発現細胞に濃度依存的に結合した。
【0179】
OVCAR3及びOV90は、内因性CLDN6の発現があるヒト卵巣癌細胞株である。図2B及び図2Cに示されるように、CLDN6-1×4-1BB NA及びCLDN6-1×4-1BB WTは両方ともOVCAR3及びOV90に結合することが可能であった。全体として、抗CLDN6-1抗体部分を含むBsAbのヒトCLDN6に対する結合親和性は、親CLDN6-1抗体のヒトCLDN6に対する結合親和性と同等である。結合シグナルは、OVCAR3細胞及びOV90細胞の表面上のCLDN6発現レベルとよく相関した。
【0180】
2.2 CLDN6×4-1BB BsAbと4-1BBとの結合親和性
CLDN6-1×4-1BB NA及びCLDN6-1×4-1BB WTのヒト4-1BBに対する結合親和性をSPRによって測定した。図3A図3Dに示されるように、CLDN6-1×4-1BBNA及びCLDN6-1×4-1BB WTは、それぞれ1.64×10-8M及び1.57×10-8MのKでヒト4-1BB単量体に結合した。IgG1 Fc断片と結合した親抗4-1BB sdAb抗体(4-1BB sdAb-Fc)の4-1BBに対する親和性を並行して測定したところ、4.393×10-9MのKを有することがわかった。これにより、BsAbの4-1BB抗体部分の4-1BBに対する親和性は、4-1BB sdAb-Fcの4-1BBに対する親和性と同等であることが示唆された。
【0181】
CLDN6-1×4-1BB NA及びCLDN6-1×4-1BB WTと可溶性組み換えヒト4-1BBとの結合をELISAにより分析した。図4Aに示されるように、CLDN6-1×4-1BB NA及びCLDN6-1×4-1BB WTは両方とも、それぞれ0.129nM及び0.078nMのEC50で、濃度依存的に組み換えヒト4-1BBに結合した。かかるEC50は、4-1BB sdAb-FcのEC50と同等であった。加えて、CLDN6-1×4-1BB NA及びCLDN6-1×4-1BB WTと4-1BB発現HEK293細胞との結合をFACSによって評価した。図4Bに示されるように、CLDN6-1×4-1BB NA及びCLDN6-1×4-1BB WTは両方とも、それぞれ0.406nM及び0.347nMのEC50で、4-1BBに結合することが可能であった。かかるEC50は、4-1BB sdAb-FcのEC50と同等であった。
【0182】
実施例3.CLDN6-1×4-1BB BsAbの機能活性
3.1 細胞株に基づくCLDN6×4-1BB BsAbの機能特性評価
CLDN6×4-1BB二重特異性抗体が4-1BBシグナルを活性化する能力を試験するために、4-1BB及びNFκBルシフェラーゼレポーターを安定して発現するGloResponse(商標)NFκB-luc2/4-1BB Jurkat細胞株をエフェクター細胞として使用し、CLDN6発現細胞(CHO-K1 CLDN6、OVCAR3またはOV90)を標的細胞として使用した。CLDN6を発現しないRKO結腸癌細胞を陰性対照として使用した。
【0183】
簡潔に述べると、GloResponse(商標)NFκB-luc2/4-1BB Jurkat細胞(ウェルあたり5.0×10細胞の密度)を白色96ウェルプレートで5.0×10個の標的細胞と混合した。抗体を連続希釈し、プレートに加えた。37℃で6時間インキュベーションした後、発光量を測定した。図5A図5Dに示されるように、ウレルマブは、CLDN6発現に無関係に4-1BB活性化を誘発したが、本出願の4-1BB sdAb-Fcは、4-1BBに結合することができるにもかかわらず、同じ実験設定下でアゴニスト活性を持たなかった。同様に、CLDN6-1×4-1BB NA及びCLDN6-1×4-1BB WTも、全てのCLDN6発現標的細胞の存在下で、CLDN6の発現レベルに関係なく、NFκB活性を誘導した。対照的に、CLDN6を発現しないRKO細胞を標的細胞として使用した場合、CLDN6-1×4-1BB NA及びCLDN6-1×4-1BB WTは、図5Dに示されるように、ウレルマブと比較して4-1BB活性化が有意に低かった。
【0184】
3.2 CLDN6×4-1BB BsAbによるヒト末梢血単核球(PBMC)の免疫応答促進活性
予め活性化させたヒトPBMCをCLDN6発現細胞またはRKO細胞と10:1のエフェクター対標的(E:T)比で共培養した。異なる濃度の抗体を混合培養物に加えた。48時間後、培養培地中のIL-2またはIFNγのレベルを、ホモジニアスHTRFアッセイを使用して測定した。
【0185】
図6A図6Fに示されるように、PBMCをCLDN6発現標的細胞と共培養した場合、CLDN6-1×4-1BB NA及びCLDN6-1×4-1BB WTは、IL-2及びIFNγ産生を刺激した。しかしながら、図6G及び図6Hに示されるように、CLDN6-1×4-1BB NA及びCLDN6-1×4-1BB WTは、CLDN6を発現しないRKOの存在下では、PBMCからのIL-2またはIFNγの産生を刺激しなかった。これにより、CLDN6-1×4-1BB NA及びCLDN6-1×4-1BB WTの活性が腫瘍抗原の存在に依存することが示唆された。対照的に、4-1BB sdAb-Fcは、このアッセイで不活性であった。
【0186】
実施例4.CLDN6-1×4-1BB BsAbによる腫瘍成長阻害
4.1 CT26同系マウス大腸癌モデル
CT26は、進行性結腸癌のBALB/cマウスから樹立されたN-ニトロソ-N-メチルウレタン-(NNMU)誘導未分化結腸癌細胞株である。CLDN6を内因性に発現するCT26細胞を、BALB/cヒト化4-1BBマウスに皮下移植した。腫瘍が平均100mmまで成長したら、(a)ヒトIgG、(b)CLDN6-1×4-1BB NA(2mg/kg)、(c)CLDN6-1×4-1BB WT(2mg/kg)、または(d)親CLDN6-1抗体と4-1BB sdAb-Fcの組み合わせ(1.8mg/kg及び0.7mg/kg)でマウスを腹腔内処置した。処置は、週2回、合計6回投与された。腫瘍成長は、体積測定によってモニタリングした。図7A及び図7Bに示されるように、CLDN6-1×4-1BB WT及びCLDN6-1×4-1BB NAは両方とも抗腫瘍活性を示したが、CLDN6-1×4-1BB WTは、75%の腫瘍成長阻害(TGI)でさらに強い活性を示した。
【0187】
4.2 MC38同系マウス大腸腺癌モデル
結腸腺癌マウスからMC38腫瘍形成性上皮細胞株を単離した。ヒトCLDN6を発現するように操作したMC38細胞を、C57BL/6ヒト化4-1BBマウスに皮下移植した。腫瘍が平均100mmまで成長したら、(a)ビヒクル(対照)、(b)CLDN6-1×4-1BB NA(1.5mg/kg)、(c)CLDN6-1×4-1BB WT(1.5mg/kg)、または(d)CLDN6-1×4-1BB WT(4.5mg/kg)でマウスを腹腔内処置した。処置は、週1回、合計3回投与された。図9Aを参照されたい。腫瘍成長は、体積測定によってモニタリングした。図9Bに示されるように、CLDN6-1×4-1BB NAは、有意な抗腫瘍活性を示したが、CLDN6-1×4-1BB WTでの処置は、同用量でより大きな腫瘍成長阻害を達成し、高用量では完全な腫瘍退縮に至った。
【0188】
実施例5.CLDN6×4-1BB BsAbの肝毒性評価
t4-1BBアゴニスト抗体療法の主な懸念事項は、ウレルマブの臨床開発で観察されたように、用量制限性の肝毒性である。最も一般的な有害事象は、アラニントランスアミナーゼ(ALT)の上昇、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の上昇及び疲労であった。そのため、CLDN6-1×4-1BB WT及びCLDN6-1×4-1BB NAの肝毒性をさらに評価した。
【0189】
簡潔に述べると、ALT及びAST測定のために、CLDN6-1×4-1BB WTまたはCLDN6-1×4-1BB NAを異なる用量で週2回治療した後、hu4-1BBマウスから血液サンプルを採取した。図8に示されるように、ALT及びASTの有意な上昇は観察されなかった。これにより、他の4-1BBアゴニスト抗体によって一般に誘発される肝毒性のリスクがほとんどないことが示唆された。
【0190】
本開示は、本開示の個々の態様の単一の例示として意図される記載された特定の実施形態によって範囲が限定されるものではなく、機能的に同等である任意の組成物または方法は、本開示の範囲内である。本開示の趣旨または範囲から逸脱することなく、本開示の方法及び組成物に様々な変更及び変形を行うことができることは、当業者には明らかであろう。したがって、本開示は、添付する特許請求の範囲及びその同等物の範囲内にある限り、本開示の変更及び変形を包含することが意図される。
【0191】
本明細書で言及される全ての公開物及び特許出願は、それぞれ個々の公開物または特許出願が参照により本明細書に援用されることが具体的かつ個別に示される場合と同様に、参照により本明細書に援用される。
【0192】
本発明は、本発明の実施に好ましい態様を含むことが本発明人に認められるか、または提案される特定の実施形態の観点から記載されてきた。本開示に照らして、本発明の意図される範囲から逸脱することなく、例示される特定の実施形態に多数の変更及び変化を行うことができることは、当業者には明らかであろう。例えば、コドン冗長性により、タンパク質配列に影響を与えることなく、基礎となるDNA配列に変更を加えることができる。さらに、生物学的機能の同等性の考慮により、生物学的作用の種類または量に影響を与えることなく、タンパク質構造に変更を加えることができる。そのような変更は全て、添付する特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【表4-4】
【表4-5】
【表4-6】
【表4-7】
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
【配列表】
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【国際調査報告】