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特表2025-501375ミリ波MIMOシステムにおけるビームを選択するための学習方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-17
(54)【発明の名称】ミリ波MIMOシステムにおけるビームを選択するための学習方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/0456 20170101AFI20250109BHJP
   H04B 7/06 20060101ALI20250109BHJP
   H04W 16/28 20090101ALI20250109BHJP
   H04W 24/10 20090101ALI20250109BHJP
【FI】
H04B7/0456 300
H04B7/06 956
H04W16/28 130
H04W24/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541061
(86)(22)【出願日】2023-01-03
(85)【翻訳文提出日】2024-09-06
(86)【国際出願番号】 EP2023050041
(87)【国際公開番号】W WO2023131596
(87)【国際公開日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】22305012.1
(32)【優先日】2022-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506364215
【氏名又は名称】アンスティテュ・マインズ・テレコム
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アイメン・クタリ
(72)【発明者】
【氏名】ハディ・ガウシュ
(72)【発明者】
【氏名】ガヤ・レカヤ・ベン-オスマン
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA42
5K067EE02
5K067EE10
5K067KK02
5K067KK03
5K067LL05
(57)【要約】
本開示は、複数のビームパターンにインデックスを付ける送信機アンテナコードブック、及び複数のビームパターンにインデックスを付ける受信機アンテナコードブックを用い、送信機アンテナコードブックの中で少なくとも1つのビームパターンが選択され、受信機アンテナコードブックの中で少なくとも1つのビームパターンが選択され、選択されたビームパターンは、ビームの1つ又は複数のペアを形成し、該ペアは、送信機アンテナ-受信機アンテナ間で情報を送信するためのチャネルを形成し、ビームペアのサブセットのみをサウンディングするステップと、行列の中でインデックスが付けられるべき、ビームペアのサブセットの送信品質パラメータを測定するステップと、送信機アンテナと受信機アンテナとの間で情報を送信するためのチャネルを形成するために、送信品質パラメータの最大値を有するビームペアを選択するために学習モデルを使用するステップとを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミリ波MIMOシステム(1)におけるビームを選択するための方法であって、前記方法が、少なくとも、複数のビームパターンにインデックスを付ける送信機(Tx)アンテナコードブック、および複数のビームパターンにインデックスを付ける受信機(Rx)アンテナコードブックを使用し、前記送信機アンテナコードブックの中で少なくとも1つのビームパターン(10)が選択され、前記受信機アンテナコードブックの中で少なくとも1つのビームパターンが選択され、前記選択されたビームパターンが、ビームの1つまたは複数のペアを形成し、前記ペアが、送信機アンテナと受信機アンテナとの間で情報を送信するためのチャネルを形成し、
前記方法が、少なくとも、
a.ビームペアを形成する前記送信機アンテナコードブックおよび前記受信機アンテナコードブックのビームパターンのすべての可能な組合せのセットの中で選ばれた、ビームペアのサブセットのみをサウンディングするステップと、
b.行列(S)の中でインデックスが付けられるべき、以前にサウンディングされたビームペアの前記サブセットの送信品質パラメータを測定するステップと、
c.前記行列(S)の因数分解に対応する少なくとも2つの潜在ベクトルを決定するために、サウンディングされるビームペアの前記サブセットに対して、および/またはビームの既定の訓練セットに対して、学習モデルを適用するステップと、
d.サウンディングされないビームペアの前記送信品質パラメータの値を予測し、前記行列(S)を完成させるために、前記少なくとも以前に決定された2つの潜在ベクトルを使用するステップと、
e.前記送信機アンテナと前記受信機アンテナとの間で情報を送信するための前記チャネルを形成するために、前記行列(S)の前記送信品質パラメータのすべての値を比較し、送信品質パラメータの最大値を有する前記ビームペアを選択するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記送信品質パラメータが、信号対雑音比(SNR)および/または受信信号エネルギー(RSE)であり得る、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記適用される学習モデルが、行列因数分解モデルおよび/または非負の行列因数分解モデルである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記学習モデルが、ディープニューラルネットワークによって、および/または畳み込みニューラルネットワークによって、実行される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ビームペアの前記サブセットが、前記送信機(Tx)アンテナコードブックおよび前記受信機(Rx)アンテナコードブックのビームパターンの前記組合せのすべての可能なビームペアの前記セットのうちの、多くとも90%、より良好には多くとも75%、より良好には多くとも50%、より良好には多くとも30%、より良好には多くとも20%、たとえば、約10%に相当する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記送信機(Tx)アンテナと前記受信機(Rx)アンテナとの間で情報を送信する前記チャネルの状態情報が未知である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
各コードブックが、16個を超える、より良好には32個を超える、より良好には64個を超える、より良好には128個を超える、より良好には256個を超える、より良好には512個を超える、より良好には1024個を超える、インデックス付きビームパターン(10)を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記行列(S)が、低ランク行列である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記行列因数分解モデルの潜在因子の数を表すモデル複雑度を示す次元Dが、前記行列(S)の次元よりも小さい、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも2つの潜在ベクトルの係数が、ブロック勾配降下(BGD)法またはブロック座標降下(BCD)法を使用することによって決定される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記送信機(Tx)アンテナと前記受信機(Rx)アンテナとの間で情報を送信するための前記チャネルについての情報を送信するための規格が、5Gまたは6Gである、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ミリ波MIMOシステムにおけるビームを選択するためのコンピュータプログラム製品であって、少なくとも、複数のビームパターンにインデックスを付ける送信機(Tx)アンテナコードブック、および複数のビームパターンにインデックスを付ける受信機(Rx)アンテナコードブックを使用し、前記送信機アンテナコードブックの中で少なくとも1つのビームパターンが選択され、前記受信機アンテナコードブックの中で少なくとも1つのビームパターンが選択され、前記選択されたビームパターンが、ビームの1つまたは複数のペアを形成し、前記ペアが、送信機アンテナと受信機アンテナとの間で情報を送信するためのチャネルを形成し、
前記コンピュータプログラム製品が、サポートを備え、前記サポート上に、プロセッサによって読み取られ得る命令が記憶され、これらの命令が、
a.ビームペアを形成する前記送信機アンテナコードブックおよび前記受信機アンテナコードブックのビームパターンのすべての可能な組合せのセットの中で選ばれた、ビームペアのサブセットのみをサウンディングし、
b.行列(S)の中でインデックスが付けられるべき、以前にサウンディングされたビームペアの前記サブセットの送信品質パラメータの値を測定し、
c.前記行列(S)の因数分解に対応する少なくとも2つの潜在ベクトルを決定するために、サウンディングされるビームペアの前記サブセットに対して、および/またはビームの既定の訓練セットに対して、学習モデルを適用し、
d.サウンディングされないビームペアの前記送信品質パラメータの値を予測し、前記行列(S)を完成させるために、前記少なくとも以前に決定された2つの潜在ベクトルを使用し、
e.前記送信機アンテナと前記受信機アンテナとの間で情報を送信するための前記チャネルを形成するために、前記行列(S)の前記送信品質パラメータのすべての値を比較し、前記送信品質パラメータの最大値を有する前記ビームペアを選択する
ように構成される、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミリ波多入力多出力(Multiple-Input Multiple-Output:MIMO)システムにおける送信機アンテナおよび受信機アンテナによって放射されるビーム間の正確なビーム位置合わせを見つけるための方法に関する。
【0002】
ミリ波MIMOシステムは、5Gにおいて広く使用されており、なお一層大々的に6Gに向けて実装されるはずである。そのようなミリ波MIMOシステムでは、送信機と受信機の両方において多数のアンテナが使用される。そのようなアンテナを用いると、ミリ波伝搬に固有の厳しい経路損失減衰を緩和するために、指向性利得を有する狭いビームが使用されなければならない。その上、多数のアンテナを備えるそのようなシステムでは、複数のビームにインデックスを付ける大規模なコードブックから、狭い送信機ビームおよび受信機ビームが選ばれる。
【0003】
送信機側と受信機側との間でリンクを確立するために必要とされる、高い信号対雑音比(Signal to Noise Ratio:SNR)を有するチャネルを形成するために、送信機と受信機の両方において選ばれるビームが良好に位置合わせされる必要がある。
【背景技術】
【0004】
知られている方法では、ビームの良好に位置合わせされたペアを見つけるために、網羅的な探索が実現されている。そうするために、送信機コードブックと受信機コードブックの両方の中で利用可能なすべてのビームをサウンディングすることによって、また最大のSNRをもたらすビームペアを求めて探索することによって進行する。この方法の主な欠点とは、送信機コードブックと受信機コードブックの両方をサウンディングするために必要とされる、結果として生じるシグナリングオーバーヘッドが、コードブックサイズ、すなわち、コードブックの中でインデックスが付けられたビームパターンの数の積としてスケーリングするという事実である。この方法は小規模なコードブックサイズに対して、たとえば、LTE規格またはWi-Fi規格に対して適合され得るが、そのシグナリングオーバーヘッドは、コードブックのサイズが32×32よりも多数であり得るマッシブミリ波MIMOシステムに対して法外に大きくなる。
【0005】
CHAN WAI MINGらの論文「Kolmogorov Model for large Millimeter-wave antenna arrays:Learning-based Beam Alignment」は、MIMOシステムにおけるビーム位置合わせ問題を解決するための方法を記載している。この方法では、ビームペアのうちの25%のSNRだけが測定され、残りのペアのSNRはコルモゴロフ(Kolmogorov)モデルを適用することによって予測される。
【0006】
ブラインド手法を通じて、すなわち、送信機においても受信機においてもチャネル状態情報を必要とせずに、大量のアンテナおよびサイズが大きいコードブックに適合される最良のビームペア、すなわち、SNRを最大化する送信機コードブックからの1つのビームおよび受信機コードブックからの1つのビームを見つけるための方法に対するニーズがある。
【0007】
本発明は、このニーズを満たすことを特に追求する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】CHAN WAI MINGら、「Kolmogorov Model for large Millimeter-wave antenna arrays:Learning-based Beam Alignment」
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの主題は、マッシブミリ波MIMOシステムにおけるビームを選択するための方法であり、本方法は、少なくとも、複数のビームパターンにインデックスを付ける送信機アンテナコードブック、および複数のビームパターンにインデックスを付ける受信機アンテナコードブックを使用し、前記送信機アンテナコードブックの中で少なくとも1つのビームパターンが選択され、前記受信機アンテナコードブックの中で少なくとも1つのビームパターンが選択され、前記選択されたビームパターンは、ビームの1つまたは複数のペアを形成し、前記ペアは、送信機アンテナと受信機アンテナとの間で情報を送信するためのチャネルを形成し、
本方法は、少なくとも、
a.ビームペアを形成する送信機アンテナコードブックおよび受信機アンテナコードブックのビームパターンのすべての可能な組合せのセットの中で選ばれた、ビームペアのサブセットのみをサウンディングするステップと、
b.行列(S)によって示されるべき、以前にサウンディングされたビームペアの前記サブセットの送信品質パラメータを測定するステップと、
c.前記行列(S)の因数分解に対応する少なくとも2つの潜在ベクトルを決定するために、サウンディングされるビームペアの前記サブセットに対して、および/またはビームの既定の訓練セットに対して、学習モデルを適用するステップと、
d.サウンディングされないビームペアの前記送信品質パラメータの値を予測し、前記行列(S)を完成させるために、前記少なくとも以前に決定された2つの潜在ベクトルを使用するステップと、
e.送信機アンテナと受信機アンテナとの間で情報を送信するためのチャネルを形成するために、前記行列(S)の前記送信品質パラメータのすべての値を比較し、送信品質パラメータの最大値を有するビームペアを選択するステップとを含む。
【0010】
送信品質パラメータは、信号対雑音比(SNR)および/または受信信号エネルギー(Received Signal Energy:RSE)であってよい。
【0011】
本発明による方法は、ビームの最良のペアを見つけることが依然として可能でありながら、従来技術において使用される方法よりも少ないビームペアをサウンディングすることを可能にし、それによって、シグナリングオーバーヘッドを著しく低減する。
【0012】
ビームペアのサブセットのみをサウンディングすることによって、ビームの位置合わせされたペアを求める探索は、計算量的にさほど複雑でなく、シグナリングオーバーヘッドの低減、および低いハードウェア複雑度を可能にする。
【0013】
網羅的な探索方法に反して、本発明による方法は、たとえば、ミリ波MIMOシステムにおいて使用される多数のアンテナ間の通信に対して良好に適合される。
【0014】
サウンディングされるビームペアのサブセットは、学習モデルを訓練するための訓練セットとして使用されてよい。ビームペアの残りは、テストセットとして使用されてよい。したがって、以前に収集されたデータセットへのアクセスを有することは必要でない。
【0015】
学習モデルによって決定された潜在ベクトルが、データベースの中にセーブされてよい。このことは、ハイパーパラメータのクロス検証を必要とせずに、任意の時間においてほとんど瞬時にデータベースから潜在ベクトルを復元することを可能にする。
【0016】
使用される学習モデルの性能を評価するために、モデルの予測品質が、網羅的な探索と比較されてよい。
【0017】
送信機アンテナと受信機アンテナの両方が、少なくとも1つの無線周波数(radio frequency:RF)チェーンに、特に1つの無線周波数(RF)チェーンに接続されてよく、送信機と受信機の両方において使用される完全にアナログのアーキテクチャをもたらす。デジタルのプリコーディングまたは結合を使用しなくてよい。したがって、システムのアーキテクチャはハードウェア複雑度が低い。
【0018】
適用される学習モデルは、行列因数分解モデルおよび/または非負の行列因数分解モデルであってよい。
【0019】
別の実施形態では、学習モデルは、ディープニューラルネットワークによって、および/または畳み込みニューラルネットワークによって、実行されてよい。学習モデルは、オートエンコーダまたは多層パーセプトロンであってよい。
【0020】
行列因数分解モデルおよび/または非負の行列因数分解モデルを使用することは、オフラインで訓練すること、およびチャネルが静的なままであるmmWaveコヒーレンス時間を通して正確に予測することを可能にする。それらのモデルのハイパーパラメータのクロス検証は、オフラインで完全に行われ、専用データセットの中の異なるセットアップ組合せに対して最適な潜在ベクトルおよび最適なハイパーパラメータを記憶する結果となる。
【0021】
ビームペアのサブセットは、送信機アンテナコードブックおよび受信機アンテナコードブックのビームパターンの組合せのすべての可能なビームペアのセットのうちの、多くとも90%、より良好には多くとも75%、より良好には多くとも50%、より良好には多くとも30%、より良好には多くとも20%、たとえば、10%程度に相当してよい。
【0022】
本発明による方法は、ビームの可能なペアのうちの10%のみをサウンディングすることによって、高い確度でビームのすべてのペアのSNRを予測することを可能にする。
【0023】
サウンディングされるビームペアの数は、各コードブックの中のインデックス付きビームパターンの数に依存してよい。各コードブックの中にあるインデックス付きビームパターンが多ければ多いほど、サウンディングされるビームペアの数とすべての可能なビームペアの数との間の比がより小さくなる。反対に、各コードブックの中にあるインデックス付きビームパターンが少なければ少ないほど、サウンディングされるビームペアの数とすべての可能なビームペアの数との間の比がより大きくなる。
【0024】
送信機アンテナと受信機アンテナとの間で情報を送信するチャネルの状態情報は、未知のことがあり、および/または既知のことがある。
【0025】
いくつかの知られている方法に反して、ブラインド手法、すなわち、チャネル状態情報が未知の、および/または既知の手法は、本発明による方法と互換性がある。送信機においても受信機においても、チャネル状態情報のいかなる知識も有する必要がない。
【0026】
このことは、多数のミリ波MIMOシステムにおける方法を容易に実施することを可能にする。その上、このことは、本発明によるプロセスを実行するために必要とされる計算時間およびメモリを低減することを可能にする。
【0027】
方法が適用される間、チャネルは準静的であってよく、すなわち、コヒーレンス時間の間、チャネルは変化しないままである。
【0028】
ビームの各ペアにとってのSNRは、受信信号エネルギー(RSE)によって近似されてよい。
【0029】
チャネル状態情報が未知のとき、この近似を行ってよい。このことは、以前にサウンディングされたビームペアの前記サブセットのSNRを測定するステップを簡略化することを可能にする。したがって、本発明による方法は実施するのがより容易である。
【0030】
各コードブックは、16個を超える、より良好には32個を超える、より良好には64個を超える、より良好には128個を超える、より良好には256個を超える、より良好には512個を超える、より良好には1024個を超える、インデックス付きビームパターンを有してよい。
【0031】
従来技術の網羅的な探索は、アンテナのコードブックの中に少数のインデックス付きビームパターンを有する通信プロトコルに対して動作することができる。たとえば、LTEプロトコルでは、各コードブックは8個のインデックス付きビームパターンを有する。したがって、サウンディングすべきビームの数は64個だけである。
【0032】
しかしながら、5Gまたは6Gなどの大量のアンテナを使用する規格の場合、各アンテナにおけるインデックス付きビームパターンの数は、16個よりも、さらにはそれよりも多数であり得る。したがって、網羅的な探索を実行するためにサウンディングすべきビームの数は、256個よりも多数であることになる。この場合、網羅的な探索によって必要とされる、サウンディングされるビームの数は極めて多く、この従来の方法は効率的でない。
【0033】
本発明による方法は、特に多数のインデックス付きビームパターンを有するコードブックに適している。
【0034】
行列(S)は低ランク行列であってよい。
【0035】
「低ランク行列」によって、行列がその行数または列数よりも小さい、たとえば、3よりも小さい、より良好には2よりも小さい、さらに良好には1よりも小さい、ランクを有することが、理解されるものとする。
【0036】
訓練セットの中で必要とされるデータの最小の個数は、行列(S)のランクに比例してよい。低ランク行列を有することは、小規模な訓練セットを有すること、したがって、少数のビームのみをサウンディングすることを可能にする。
【0037】
行列因数分解モデルの潜在因子の数を表すモデル複雑度を示す次元(D)は、行列(S)の行数および列数に相当する次元よりも小さくてよい。
【0038】
前記少なくとも2つの潜在ベクトルの係数は、ブロック勾配降下法および/またはブロック座標降下法を使用することによって決定されてよい。
【0039】
送信機アンテナと受信機アンテナとの間で情報を送信するためのチャネルについての情報を送信するための規格は、5Gまたは6Gであってよい。
【0040】
本発明による前記方法は、モバイルフォン、タブレット、またはモバイルもしくは固定のコンピュータとして、プロセッサを備える任意の電子デバイス上で自動的に動作する、コンピュータプログラムによって有利に実行される。
【0041】
別の態様によれば、本発明はまた、ミリ波MIMOシステムにおけるビームを選択するためのコンピュータプログラム製品に関し、少なくとも、複数のビームパターンにインデックスを付ける送信機アンテナコードブック、および複数のビームパターンにインデックスを付ける受信機アンテナコードブックを使用し、前記送信機アンテナコードブックの中で少なくとも1つのビームパターンが選択され、前記受信機アンテナコードブックの中で少なくとも1つのビームパターンが選択され、前記選択されたビームパターンは、ビームの1つまたは複数のペアを形成し、前記ペアは、送信機アンテナと受信機アンテナとの間で情報を送信するためのチャネルを形成し、
コンピュータプログラム製品は、サポートを備え、このサポート上に、プロセッサによって読み取られ得る命令が記憶され、これらの命令は、
a.ビームペアを形成する送信機アンテナコードブックおよび受信機アンテナコードブックのビームパターンのすべての可能な組合せのセットの中で選ばれた、ビームペアのサブセットのみをサウンディングし、
b.行列(S)の中でインデックスが付けられるべき、以前にサウンディングされたビームペアの前記サブセットの送信品質パラメータ、詳細には信号対雑音比(SNR)の値を測定し、
c.前記行列(S)の因数分解に対応する少なくとも2つの潜在ベクトルを決定するために、サウンディングされるビームペアの前記サブセットに対して、および/またはビームの既定の訓練セットに対して、学習モデルを適用し、
d.サウンディングされないビームペアの送信品質パラメータの値を予測し、前記行列(S)を完成させるために、前記少なくとも以前に決定された2つの潜在ベクトルを使用し、
e.送信機アンテナと受信機アンテナとの間で情報を送信するためのチャネルを形成するために、前記行列(S)の送信品質パラメータのすべての値を比較し、送信品質パラメータの最大値を有するビームペアを選択するように構成される。
【0042】
本方法に関して上記で説明した特徴がコンピュータプログラム製品に適用される。
【0043】
本発明は、それらの非限定的な実装例の以下の詳細な説明を読み、添付の図面を検討すると、よりよく理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】ミリ波MIMOシステムの一例の概略表現図である。
図2】送信機および受信機に接続された無線周波数チェーンの概略表現図である。
図3】従来の網羅的な探索から得られる行列を示す図である。
図4】本発明による方法から取得される行列を示す図である。
図5】行列因数分解モデルの潜在因子を示す2つの長方形行列をなす、行列の分解を示す図である。
図6】本発明による方法の様々なステップのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1においてミリ波MIMOシステム1が表される。後者は、いくつかの送信機アンテナを備える送信機Tx、およびいくつかの受信機アンテナを備える受信機Rxを備える。図示の例では、送信機Txは基地局であり、受信機Rxはユーザ端末である。各アンテナはビーム10に沿って放射する。送信機Txと受信機Rxの両方が、潜在的に実現可能なビームのコードブックを有する。
【0046】
2つのビーム10、すなわち、送信機側からのビーム10および受信機側からのビーム10が位置合わせされると、通信チャネルが確立され、送信機から受信機へ情報が送信されてよい。図1の例において、送信機ビームTxビーム3は、受信機ビームRxビーム1と位置合わせされる。
【0047】
図2においてわかるように、送信機アンテナと受信機アンテナの両方は、1つの無線周波数チェーン11に接続されてよく、送信機と受信機の両方において使用される完全にアナログのアーキテクチャをもたらす。
【0048】
図3および図4の例では、送信機および受信機の各コードブックは、4つのビームパターン10にインデックスを付ける。
【0049】
図3は、従来技術において使用される網羅的な探索から得られる行列12aを示す。この方法では、すべてのビーム10がサウンディングされ、ビームの組合せによって形成されるすべての16個のチャネルのSNRが評価される。行列12aは、未知の係数を有しない。この行列12aに基づいて、最大のSNR値を決定することが可能である。ビームの最適ペア、すなわち、送信機と受信機との間で情報を交換するための、最良の品質を可能にするチャネルを形成するビームのペアとは、最大のSNRを与えるビームのペアである。この方法は16個のビームをサウンディングすることを必要とした。
【0050】
図4は、本発明の方法から得られる行列12bを示す。この方法では、ビーム10のサブセットだけがサウンディングされる。図示の例では、各側において3つのビーム10だけがサウンディングされ、ビームの組合せによって形成される9個のチャネルのSNRが評価される。行列12bの中で、6個の係数が未知である。
【0051】
最大のSNRを決定するために、したがって、この最大のSNRに対応するビームのペアを選択するために、行列12bを埋めることが必要である。そうするために、本発明の方法は、学習モデルを適用して前記行列の因数分解に対応する少なくとも2つの潜在ベクトルを決定することによる、前記未知の係数の予測に基づく。
【0052】
適用され得る学習モデルは、行列因数分解モデルおよび/または非負の行列因数分解モデルである。そのようなモデルを適用することによって、行列は次元がもっと小さい行列をなして分解されてよい。
【0053】
図5は、学習モデルを適用することによって決定される、行列12bの分解の一例である。行列12bは、潜在ベクトルに対応する行列13およびチャネルを表す行列14をなして分解される。
【0054】
本発明による方法の一実施形態を、図6を参照しながら次に説明する。
【0055】
それぞれ、NT個およびNR個のアンテナが装備された送信機Txおよび受信機Rxが、ビームの位置合わせされた最適なペアを選択することを希望する、ミリ波マッシブMIMOシステムを考慮に入れる。送信機および受信機は各々、1つの無線周波数チェーンに接続される。したがって、アーキテクチャは低複雑度かつ低エネルギーのアーキテクチャである。
【0056】
送信機は、潜在的に実現可能なビームパターンのコードブックTからそのアナログビームフォーマfuを選ぶ。
【0057】
【数1】
【0058】
同様に、受信機は、潜在的に実現可能なビームパターンのコードブックRからそのアナログビームフォーマwiを選ぶ。
【0059】
【数2】
【0060】
それぞれ、送信機および受信機におけるコードブックの濃度を、CT=|T|およびCR=|R|によって示す。したがって、送信機ビームおよび受信機ビームは、定モジュラス制約を満たす。
【0061】
【数3】
【0062】
ただし、|x|はxの絶対値であり、[x]tはベクトルxのエントリtである。
【0063】
今後、送信機コードブックからのビームu∈Tおよび受信機コードブックからのビームw∈Rとして、ビームペア(u;i)∈T×Rを定義する。
【0064】
その上、ビームペア(u;i)に対応する、受信機における信号は、
【0065】
【数4】
【0066】
によって与えられ、ただし、
【0067】
【数5】
【0068】
は、(電力Puを有する)fuに関連するパイロットシンボルであり、
【0069】
【数6】
【0070】
は、単位分散
【0071】
【数7】
【0072】
を有する0平均の加法性白色ガウス雑音である。MIMOチャネルを表す行列を、
【0073】
【数8】
【0074】
によって示す。
【0075】
MIMOチャネルは、狭帯域または広帯域のチャネルモデルであってよい。MIMOチャネルを表す行列はランクL=rank(H)を有し、ただし、L<<(NT,NR)である。
【0076】
ビーム位置合わせ手順の間、Hが準静的であること、および送信機と受信機の両方にHが完全に未知であることをさらに想定する。
【0077】
本発明による方法の最初のステップ21とは、送信機および受信機のビームパターン20のコードブックから各コードブックのサブサンプルをランダムに生成することである。送信機サブサンプルコードブックはTSと示され、受信機サブサンプルコードブックはRSと示される。サブサンプリングされたコードブックは、RS⊂RかつTS⊂Tを検証する。サブサンプリングされたコードブックは、サイズが小さくなるように選ばれ、すなわち、|RS|<<|R|かつ|TS|<<|T|である。サブサンプルコードブックTS×RSは、2つのコードブックTSとRSとの組合せに相当する。
【0078】
次のステップ22とは、前のステップ21において生成された、サブサンプリングされたコードブックTSおよびRSのビームペアをサウンディングすることである。
【0079】
ビームペアのサブセットのみをサウンディングした後、各ペアによって形成されるチャネルに対応するSNRの値を行列の中に記録するステップ23が実行される。
【0080】
ビームペア(u;i)にとっての受信SNRを
【0081】
【数9】
【0082】
として定義する。
【0083】
しかしながら、チャネル状態情報が未知であることを想定するので、受信機はSNRを算出することができない。代わりに、受信機におけるSNRは、受信信号エネルギー(RSE)によって近似される。RSEは以下のように定義される。
【0084】
【数10】
【0085】
詳細には、RSEを評価するために、H、fu、Puの値を知っている必要はない。
【0086】
RSEが各ビームペアにとって真のSNRに近いことを想定する。したがって、選択されるビームペア(u*,i*)は、最大のRSEにつながるビームペアである。
【0087】
【数11】
【0088】
網羅的なビーム位置合わせ方法において行われるように、全体的な送信機コードブックおよび受信機コードブックをサウンディングするのではなく、ビームペアのサブサンプリングされたコードブックが使用される。
【0089】
ビームパターンの送信機コードブックの中のビームフォーミングベクトルuと、ビームパターンの受信機コードブックの中の結合ベクトルiとの結合として、ビームペア(u;i)を示す。
【0090】
次いで、サブサンプリングされたコードブックTS×RSからのビームペアのみをサウンディングする。サブサンプリングされたコードブックTS×RSからの、ビームペア(u;i)の(SNRに対応する)RSEは、
【0091】
【数12】
【0092】
として表現され、ただし、yu,iは、ビームペア(u;i)から得られる受信機信号である。
【0093】
次いで、以下の不完全なSNR行列
【0094】
【数13】
【0095】
を、
【0096】
【数14】
【0097】
として定義することができ、ただし、[S]u,i,∀(u,i)∈T×Rは、Sの要素(u;i)を示す。
【0098】
受信機は、サウンディングされているので、サブサンプリングされたコードブックTS×RSに対応する、Sの中のエントリのSNRを評価することができる。
【0099】
既知のSNR、すなわち、サウンディングされたビームペアのSNRは、学習モデル用の訓練セットKとして使用される。訓練セットKは、サブサンプリングされたコードブックの中でインデックスが付けられたビームペアとして定義され、すなわち、K:={(u;i)|(u;i)∈TS×RS}となる。
【0100】
適用される学習モデルは、行列因数分解モデル(MFモデル)または非行列因数分解モデル(Non-Matrix Factorization Model:NMF)であってよい。
【0101】
以下は、図6におけるステップ24aに対応する、MFモデルが選択される事例を説明する。
【0102】
訓練セットKは、MFモデル、好ましくは低ランクMFモデルを学習するために使用される。学習した後、「未知(unknown)」とラベルが付けられている、Sの中のエントリのSNRを予測するために、MFモデルが適用される。
【0103】
低ランクMFモデルは、2つのD次元潜在ベクトルθu、ψiの間の内積として、サウンディングされるビームペア(すなわち、既知の、Sのエントリ)のSNRをモデリングすることを可能にする。
【0104】
したがって、ビームペア(u;i)のSNRは、
【0105】
【数15】
【0106】
としてモデリングされ、ただし、DはMFモデルの次元である。低ランクMFモデルに起因して、Dは、Sの次元よりも小さいものと、すなわち、D<<(CT,CR)と想定される。
【0107】
MF方法の目標とは、既知の、Sのエントリに対応する潜在ベクトル{θui}(u,i)∈Kを学習することである。
【0108】
訓練セットKの、サンプル(u;i)に対応する潜在ベクトルθu、ψiを学習することは、
【0109】
【数16】
【0110】
として公式化され、ただし、lu,iui)は、訓練セットKのサンプル(u;i)の損失関数である。
【0111】
次いで、全損失関数を得るために、訓練セットKのすべてのサンプル(u;i)にわたって合計し、結果として生じる最適化問題(P)を
【0112】
【数17】
【0113】
と表現し、ただし、(P)のコスト関数は、
【0114】
【数18】
【0115】
として定義される。
【0116】
上記の問題(P)では、サウンディングされるビームペアのSNRが既知であり、すなわち、{[S]u,i|∀(u,i)∈K}であり、学習される必要がある最適化変数は、訓練セットに対応する潜在ベクトル{θui|∀(u,i)∈K}である。
【0117】
別の実施形態では、選択される学習モデルは、図6におけるステップ24bに対応するNMFモデルであってよい。NMFモデルを適用するためのステップは、MFモデルを適用するためのものと同じである。NMFモデルでは潜在ベクトルが非負となるように制約されることが差異である。
【0118】
このNMFモデルでは、ビームペアのSNRは、
【0119】
【数19】
【0120】
によって与えられる。
【0121】
NMF問題に対応する最適化問題(P1)を次のように表現する。
【0122】
【数20】
【0123】
ただし、0は次元Dの全0ベクトルであり、問題(P1)のコスト関数は、MFモデルに対する問題(P)のコスト関数と同じである。
【0124】
(P)と(P1)の両方が、非凸型の最適化問題である。
【0125】
オーバーヘッド比は、
【0126】
【数21】
【0127】
のように定義され、ただし、0<η<1である。
【0128】
それは、網羅的な探索の方法と比較して、本発明のすべての方法のシグナリングオーバーヘッドを推し量る。ηの値が小さければ小さいほど、シグナリングオーバーヘッドがより小さくなる。しかしながら、小さいηは、訓練セットのサイズが小さく、したがって、予測誤差が大きいことを暗示する。したがって、ηと予測誤差との間にトレードオフがある。
【0129】
問題(P)と(P1)の両方の総コスト関数は、以下のように書き直されてよい。
【0130】
【数22】
【0131】
ただし、{λi≧0,μu≧0|∀(u,i)∈K}は、オーバーフィッティングまたはアンダーフィッティングを防止するためにMFモデルまたはNMFモデルを均衡させるための正則化ハイパーパラメータのセットである。これらのハイパーパラメータは、オフラインのクロス検証探索によって最適化される。
【0132】
ステップ24aにおいてMFモデルを選択した後、問題(P)は、図6において、ブロック座標降下(Block Coordinate Descent:BCD)法を使用することによって(ステップ25a)、またはブロック勾配降下(Block Gradient Descent:BGD)を使用することによって(ステップ25b)、解かれてよい。
【0133】
BCD法が適用される場合、変数の1つのブロックが反復的に最適化され、すべての残りのブロックは既知のものと想定される。
【0134】
各ブロックは凸型であるものと見なされる。したがって、MF問題の解は一意であり、
【0135】
【数23】
【0136】
として、閉形式をなして導出され得る。
【0137】
ただし、(k)はイタレーションインデックスであり、IはD×Dの識別行列である。
【0138】
その上、最適潜在ベクトル解
【0139】
【数24】
【0140】
は、連続するイタレーションの間の距離が既定の数εに達するかまたはイタレーションの最大数IMに達すると取得される。
【0141】
上記のBCD式によって生成される、更新のシーケンス
【0142】
【数25】
【0143】
は非増加であり、k→∞につれて停留点に収束する。
【0144】
(著しい複雑度を招く)ブロックごとに閉形式解を有するのではなく、BGD法が適用される場合、BGDは、ブロックごとにT回の勾配ステップを取ることによって進行し、すなわち、
【0145】
【数26】
【0146】
となり、ただし、(k)はイタレーションインデックスであり、α(k)は(0<α(k)<1)となるステップサイズである。
【0147】
NMFモデルが選択される場合、問題(P1)はまた、ブロック座標降下(BCD)法を使用することによって(ステップ25a)、またはブロック勾配降下(BGD)を使用することによって(ステップ25b)、解かれてよい。
【0148】
BCD法およびBGD法は、上記で説明したようにMF方法が適用されるときと同様にして適用される。
【0149】
BCD法によって解かれるNMF問題(P1)の式の解は、
【0150】
【数27】
【0151】
となり、ただし、(k)はBCDイタレーションインデックスであり、aに対して[a]+=max(a,0)が要素ごとに適用され、すなわち、
【0152】
【数28】
【0153】
上へのaのユークリッド投影である。NMFに対するBCDの式の解は、MFに対するBCDの式の解と同じであり、
【0154】
【数29】
【0155】
上への投影演算が後続する。
【0156】
BGD法によって解かれるNMF問題(P1)の式の解は、
【0157】
【数30】
【0158】
となり、ただし、(k)はイタレーションインデックスであり、α(k)は、(0<α(k)<1)となるステップサイズである。
【0159】
BCDおよび/またはBGDの適用は、最適潜在ベクトル
【0160】
【数31】
【0161】
を決定すること、およびステップ26の間にそれを学習モデルに戻すことを可能にする。
【0162】
MF問題(P)またはNMF問題(P1)を解くことによって最適潜在ベクトルを取得した後、これらの最適潜在ベクトルを使用して、サウンディングされなかったビームペアのSNRを予測するステップ27を実行する。
【0163】
サウンディングされなかったビームペアに対するビームペア(u;i)の予測されるSNRは、
【0164】
【数32】
【0165】
として定義され、ただし、Lは、L∪K={ },L∩K=T×Rを満たすテストセットである。
【0166】
予測されたSNRは、不完全な行列を埋めるために使用される。
【0167】
最後に、最適なビームペアを選択するために、行列の中の最大のSNRを求めて探索する(ステップ28)。最高のSNRは、訓練セットKとテストセットLの両方にわたって探索される。
【0168】
最高のSNRは次のように定義される。
【0169】
【数33】
【0170】
次いで、fu*およびwi*が、データ送信用の送信機ビームおよび受信機ビームとして使用される。
【0171】
実施例
以下の例では、下のアルゴリズムが実行される。
【0172】
【表1】
【0173】
この例では、シミュレートされる送信機アンテナおよび受信機アンテナの数は、16個、32個、64個、128個、256個、512個、1024個という範囲の中にある。オーバーヘッド比は、(0.7、0.6、0.5)という範囲の中にある。解決されるべきトレードオフとは、正確な予測を与える最小のオーバーヘッド値、すなわち、最大のSNR値に対応するビームペアの小さい予測誤差を見つけることである。したがって、依然として正確な結果を与える低オーバーヘッド比構成は、すべてのビームをサウンディングするという従来の必要なく、次元が大きいデータセット行列の中の最良のビームペアを選択できることを確証する。
【0174】
MF計算およびNMF計算のために、2つのアルゴリズム、すなわち、交互最小2乗とも呼ばれるBCD、およびBGDを使用した。合計で4つのモデル、すなわち、
- BCDを用いたMF(MF_ALS)、
- BGDを用いたMF(MF_GD)、
- BCDを用いたNMF(NMF_ALS)、および
- BGDを用いたNMF(NMF_GD)の、性能を評価する。
【0175】
ロバストネス目的のために、データセット行列を導くあらゆるエンティティ(チャネル、ビームフォーマー、Txシンボル)が、ランダムに生成される。
【0176】
モデル複雑度とは、行列因数分解を実行するために必要とされる潜在ベクトルの数を意味する。
【0177】
訓練された性能は、オーバーヘッド比の関数の中で訓練セットサンプルに対して適用される誤差関数における平均2乗誤差(Mean Squared Error:MSE)を追跡することに基づく。
【0178】
テスト性能分析は主に、未知のエントリを備えるテストセットサンプルに対するMSEを追跡することに基づく。
【0179】
予測誤差は、網羅的な探索による測定された最大SNRと予測される最大SNRとの間の距離である。
【0180】
以下のTable 7(表2)に結果が示される。
【0181】
【表2】
【0182】
それらの結果は、訓練されたMSEが極めて小さい値を有することを示し、学習された4つのモデルが、提案されるすべてのオーバーヘッド値に対して、訓練されたサンプルにおいて正確に予測することを示す。
【0183】
4つのモデルは、正確な予測、および真のSNR値からの相当短い距離を示す。
【0184】
本発明による方法のおかげで、ビームのうちの10%のみをサウンディングすること、および網羅的な探索と比較して極めて良好な精度を有する良好に位置合わせされたビームペアを選択することが可能である。
【0185】
当然、本発明は上述の実施形態に限定されない。
【0186】
たとえば、本方法は、MIMO以外のマッシブアンテナシステムに適用され得る。たとえば、それは直交周波数分割多重化(Orthogonal frequency-division multiplexing:OFDM)を使用するシステムに適用され得る。自動車業界、マッシブIoTシステム、ワイヤレスセンサネットワーク、およびマルチユーザMIMOなどの、他の適用例もこの方法と互換性がある。
【符号の説明】
【0187】
1 ミリ波MIMOシステム
10 ビーム、ビームパターン
11 無線周波数チェーン
12 行列
13 行列
14 行列
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-09-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミリ波MIMOシステム(1)におけるビームを選択するための方法であって、前記方法が、少なくとも、複数のビームパターンにインデックスを付ける送信機(Tx)アンテナコードブック、および複数のビームパターンにインデックスを付ける受信機(Rx)アンテナコードブックを使用し、前記送信機アンテナコードブックの中で少なくとも1つのビームパターン(10)が選択され、前記受信機アンテナコードブックの中で少なくとも1つのビームパターンが選択され、前記選択されたビームパターンが、ビームの1つまたは複数のペアを形成し、前記ペアが、送信機アンテナと受信機アンテナとの間で情報を送信するためのチャネルを形成し、
前記方法が、少なくとも、
a.ビームペアを形成する前記送信機アンテナコードブックおよび前記受信機アンテナコードブックのビームパターンのすべての可能な組合せのセットの中で選ばれた、ビームペアのサブセットのみをサウンディングするステップと、
b.行列(S)の中でインデックスが付けられるべき、以前にサウンディングされたビームペアの前記サブセットの送信品質パラメータを測定するステップと、
c.前記行列(S)の因数分解に対応する少なくとも2つの潜在ベクトルを決定するために、サウンディングされるビームペアの前記サブセットに対して、および/またはビームの既定の訓練セットに対して、学習モデルを適用するステップと、
d.サウンディングされないビームペアの前記送信品質パラメータの値を予測し、前記行列(S)を完成させるために、前記少なくとも以前に決定された2つの潜在ベクトルを使用するステップと、
e.前記送信機アンテナと前記受信機アンテナとの間で情報を送信するための前記チャネルを形成するために、前記行列(S)の前記送信品質パラメータのすべての値を比較し、送信品質パラメータの最大値を有する前記ビームペアを選択するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記送信品質パラメータが、信号対雑音比(SNR)および/または受信信号エネルギー(RSE)であり得る、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記適用される学習モデルが、行列因数分解モデルおよび/または非負の行列因数分解モデルである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記学習モデルが、ディープニューラルネットワークによって、および/または畳み込みニューラルネットワークによって、実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ビームペアの前記サブセットが、前記送信機(Tx)アンテナコードブックおよび前記受信機(Rx)アンテナコードブックのビームパターンの前記組合せのすべての可能なビームペアの前記セットのうちの、多くとも90%、より良好には多くとも75%、より良好には多くとも50%、より良好には多くとも30%、より良好には多くとも20%、たとえば、約10%に相当する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記送信機(Tx)アンテナと前記受信機(Rx)アンテナとの間で情報を送信する前記チャネルの状態情報が未知である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
各コードブックが、16個を超える、より良好には32個を超える、より良好には64個を超える、より良好には128個を超える、より良好には256個を超える、より良好には512個を超える、より良好には1024個を超える、インデックス付きビームパターン(10)を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記行列(S)が、低ランク行列である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記行列因数分解モデルの潜在因子の数を表すモデル複雑度を示す次元Dが、前記行列(S)の次元よりも小さい、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも2つの潜在ベクトルの係数が、ブロック勾配降下(BGD)法またはブロック座標降下(BCD)法を使用することによって決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記送信機(Tx)アンテナと前記受信機(Rx)アンテナとの間で情報を送信するための前記チャネルについての情報を送信するための規格が、5Gまたは6Gである、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ミリ波MIMOシステムにおけるビームを選択するためのコンピュータプログラムであって、少なくとも、複数のビームパターンにインデックスを付ける送信機(Tx)アンテナコードブック、および複数のビームパターンにインデックスを付ける受信機(Rx)アンテナコードブックを使用し、前記送信機アンテナコードブックの中で少なくとも1つのビームパターンが選択され、前記受信機アンテナコードブックの中で少なくとも1つのビームパターンが選択され、前記選択されたビームパターンが、ビームの1つまたは複数のペアを形成し、前記ペアが、送信機アンテナと受信機アンテナとの間で情報を送信するためのチャネルを形成し、
前記コンピュータプログラムが、サポートを備え、前記サポート上に、プロセッサによって読み取られ得る命令が記憶され、これらの命令が、
a.ビームペアを形成する前記送信機アンテナコードブックおよび前記受信機アンテナコードブックのビームパターンのすべての可能な組合せのセットの中で選ばれた、ビームペアのサブセットのみをサウンディングし、
b.行列(S)の中でインデックスが付けられるべき、以前にサウンディングされたビームペアの前記サブセットの送信品質パラメータの値を測定し、
c.前記行列(S)の因数分解に対応する少なくとも2つの潜在ベクトルを決定するために、サウンディングされるビームペアの前記サブセットに対して、および/またはビームの既定の訓練セットに対して、学習モデルを適用し、
d.サウンディングされないビームペアの前記送信品質パラメータの値を予測し、前記行列(S)を完成させるために、前記少なくとも以前に決定された2つの潜在ベクトルを使用し、
e.前記送信機アンテナと前記受信機アンテナとの間で情報を送信するための前記チャネルを形成するために、前記行列(S)の前記送信品質パラメータのすべての値を比較し、前記送信品質パラメータの最大値を有する前記ビームペアを選択する
ように構成される、コンピュータプログラム。
【国際調査報告】