(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-17
(54)【発明の名称】マグネシウム電池の電解液、その製造方法及びマグネシウム電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0568 20100101AFI20250109BHJP
H01M 10/054 20100101ALI20250109BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20250109BHJP
【FI】
H01M10/0568
H01M10/054
H01M10/0569
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541139
(86)(22)【出願日】2022-12-07
(85)【翻訳文提出日】2024-07-05
(86)【国際出願番号】 CN2022137098
(87)【国際公開番号】W WO2023155553
(87)【国際公開日】2023-08-24
(31)【優先権主張番号】202210139050.2
(32)【優先日】2022-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513322718
【氏名又は名称】清華大学
【氏名又は名称原語表記】TSINGHUA UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】1 Qinghuayuan, Haidian District, Beijing 100084, China
(74)【代理人】
【識別番号】100082876
【氏名又は名称】平山 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100178906
【氏名又は名称】近藤 充和
(72)【発明者】
【氏名】張 躍鋼
(72)【発明者】
【氏名】范 海燕
(72)【発明者】
【氏名】肖 建華
(72)【発明者】
【氏名】張 馨心
(72)【発明者】
【氏名】林 起源
【テーマコード(参考)】
5H029
【Fターム(参考)】
5H029AJ01
5H029AK02
5H029AK05
5H029AL11
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM06
5H029AM09
5H029HJ02
5H029HJ10
(57)【要約】
本出願はマグネシウム電池の電解液、その製造方法及びマグネシウム電池を開示した。
【解決手段】マグネシウム電池の電解液は、非水溶媒と電解質塩とを含み、前記非水溶媒は、イミダゾール系イオン液体、ピロール系イオン液体、ピペリジン系イオン液体、エーテル系化合物、エステル系化合物、ピリジン系化合物、ニトリル系化合物、スルホン系化合物及びケトン系化合物から選択される1種又は複数種であり、前記電解質塩の化学式は、[Mg
mLi
nX
o(HMDS)
2m+n-oR
p]・M
qである。本出願によるマグネシウム電池の電解液は、各成分の相乗作用により、良好な安定性、比較的に強い水・不純物耐性及び優れた電気化学的性能を有し、マグネシウムの可逆的な沈降・溶解を促進し、過電圧を低下させ、マグネシウム塩が陽極表面にパッシベーション層を形成することを抑制し、マグネシウム電池の充放電比容量及びサイクル安定性を向上させることができる。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水溶媒と、電解質塩とを含むグネシウム電池の電解液であって、
前記非水溶媒は、イミダゾール系イオン液体、ピロール系イオン液体、ピペリジン系イオン液体、エーテル系化合物、エステル系化合物、ピリジン系化合物、ニトリル系化合物、スルホン系化合物及びケトン系化合物から選択される1種又は複数種であり、
前記電解質塩の化学式は、[Mg
mLi
nX
o(HMDS)
2m+n-oR
p]・M
qであり、
前記Xは、ハロゲンイオン及び/又はビストリフルオロメタンスルホニルイミドイオンから選択され、
前記HMDSはヘキサメチルジシラザンイオンを表し、
前記Rは、アルキル基、フルオロアルキル基及びアリール基から選択される1種又は複数種であり、
前記Mは非水溶媒分子錯化剤であり、
前記mは1~6から選択される任意の整数であり、前記nは1~6から選択される任意の整数であり、前記oは1~6から選択される任意の整数であり、前記pは0~6から選択される任意の整数であり、前記qは1~20から選択される任意の整数である、
マグネシウム電池の電解液。
【請求項2】
前記イミダゾール系イオン液体は、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート及び/又は1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホン酸)イミド塩から選択され、
前記ピロール系イオン液体は、N-ブチル-N-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド塩から選択され、
前記ピペリジン系イオン液体は、N-ブチル-N-メチルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド塩から選択される、
請求項1に記載のマグネシウム電池の電解液。
【請求項3】
前記エーテル系化合物は、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサン及びポリエチレングリコールジメチルエーテルから選択される1種又は複数種であり、
前記エステル系化合物は酢酸エチルから選択され、
前記ピリジン系化合物は、ピリジン、2-メチルピリジン、3-メチルピリジン、4-メチルピリジン、2,6-ジクロロピリジン及び2-アミノピリジンから選択され、
前記ニトリル系化合物は、アセトニトリルから選択され、
前記スルホン系化合物は、ジメチルスルホキシドから選択される、
請求項1に記載のマグネシウム電池の電解液。
【請求項4】
前記非水溶媒はテトラヒドロフランであり、前記ハロゲンイオンは塩素イオンである、
請求項1に記載のマグネシウム電池の電解液。
【請求項5】
前記pは、1、2、3、4、5、又は6である、
請求項1に記載のマグネシウム電池の電解液。
【請求項6】
無水マグネシウム塩、無水リチウム塩及び非水溶媒を均一に混合し、25℃~200℃で3~48h反応させ、-30℃~25℃まで冷却して、請求項1に記載のマグネシウム電池の電解液を得るステップを含むマグネシウム電池の電解液の製造方法であって、
前記無水マグネシウム塩は、塩化マグネシウム、フッ化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、ビス(ヘキサメチルジシラジド)マグネシウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドマグネシウム及びグリニャール試薬から選択される1種又は複数種であり、
前記無水リチウム塩は、ビス(トリメチルシリル)アミドリチウム及び第2の無水リチウム塩から選択され、
前記第2の無水リチウム塩は、塩化リチウム、フッ化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム及びビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムから選択される1種又は複数種である、
マグネシウム電池の電解液の製造方法。
【請求項7】
前記無水リチウム塩に対する前記無水マグネシウム塩のモル比が1:(0.1~4)である、
請求項6に記載のマグネシウム電池の電解液の製造方法。
【請求項8】
前記電解質塩の濃度が0.1~10mol/Lである、
請求項6に記載のマグネシウム電池の電解液の製造方法。
【請求項9】
前記電解質塩の濃度が0.1~3mol/Lである、
請求項6に記載のマグネシウム電池の電解液の製造方法。
【請求項10】
正極と、セパレータと、負極と、請求項1~9のいずれか1項に記載のマグネシウム電池の電解液とを備えることを特徴とする、
マグネシウム電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2022年02月15日に提出された「マグネシウム電池の電解液、その製造方法及びマグネシウム電池」という名称の中国特許出願第202210139050.2号の優先権を主張し、この出願の全ての内容は引用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、エネルギー技術分野に属し、具体的にマグネシウム電池の電解液、その製造方法及びマグネシウム電池に関する。
【背景技術】
【0003】
金属マグネシウムは、貯蔵量が豊富であり、コストが低く、環境に優しく、物理化学的性質が比較的に安定であり、デンドライトが成長しにくく、高い理論的な体積比容量(3833mA・h/cm3)を有する。金属マグネシウムを負極材料とするマグネシウム電池システムは、エネルギー密度が高く、コストが低く、安全性が高いなどの優位性を備え、非常に有望な新型エネルギー貯蔵システムの1つである。
【0004】
しかしながら、マグネシウムイオンは、高い電荷密度及び低い還元電位(-2.37V vs.SHE)があるため、大部分の有機溶媒及びマグネシウム塩が金属マグネシウムと反応し、マグネシウム金属の表面にマグネシウムイオンの伝導を阻害するパッシベーション層が生成され、マグネシウム電池の作動に不利である。また、金属マグネシウムの表面は、不純物(例えば、微量の水、酸素ガス、二酸化炭素など)の影響を受けやすく、長時間の充放電過程において電極と電解液との界面が不安定になってマグネシウムイオンを効果的に伝導することができず、さらに電池の充放電の過電圧が大きくなり、沈降・溶解が不均一になり、ひいては短絡の問題を招来し、最終的にマグネシウム電池の失効に至る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これに鑑みて、本出願は、マグネシウム電池の電解液の界面安定性能が低く、不純物の影響を受けやすく、マグネシウムイオンを効果的に伝導できないという問題を解決するために、マグネシウム電池の電解液、その製造方法及びマグネシウム電池を提供する。
【0006】
一方では、本出願の実施例は、
非水溶媒と電解質塩とを含むマグネシウム電池の電解液であって、
非水溶媒は、イミダゾール系イオン液体、ピロール系イオン液体、ピペリジン系イオン液体、エーテル系化合物、エステル系化合物、ピリジン系化合物、ニトリル系化合物、スルホン系化合物及びケトン系化合物から選択される1種又は複数種であり、
電解質塩の化学式は、[MgmLinXo(HMDS)2m+n-oRp]・Mqであり、
ただし、Xはハロゲンイオン及び/又はビストリフルオロメタンスルホニルイミドイオンから選択され、
HMDSはヘキサメチルジシラザンイオンを表し、
Rはアルキル基、フルオロアルキル基及びアリール基から選択される1種又は複数種であり、
Mは非水溶媒分子錯化剤であり、
mは1~6から選択される任意の整数であり、nは1~6から選択される任意の整数であり、oは1~6から選択される任意の整数であり、pは0~6から選択される任意の整数であり、qは1~20から選択される任意の整数である、
マグネシウム電池の電解液を提供する。
【0007】
本出願の一態様の実施例によれば、上記イミダゾール系イオン液体は、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート及び/又は1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホン酸)イミド塩から選択され、
ピロール系イオン液体は、N-ブチル-N-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド塩から選択され、
ピペリジン系イオン液体は、N-ブチル-N-メチルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド塩から選択される。
【0008】
本出願の一態様の実施例によれば、上記エーテル系化合物は、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサン及びポリエチレングリコールジメチルエーテルから選択される1種又は複数種であり、
エステル系化合物は酢酸エチルから選択され、
ピリジン系化合物は、ピリジン、2-メチルピリジン、3-メチルピリジン、4-メチルピリジン、2,6-ジクロロピリジン及び2-アミノピリジンから選択される1種又は複数種であり、
ニトリル系化合物はアセトニトリルから選択され、
スルホン系化合物はジメチルスルホキシドから選択される。
【0009】
本出願の一態様の実施例によれば、上記非水溶媒はテトラヒドロフランであり、ハロゲンイオンは塩素イオンである。
【0010】
本出願の一態様の実施例によれば、上記pは、1、2、3、4、5、又は6である。
【0011】
他方では、本出願の実施例は、
無水マグネシウム塩、無水リチウム塩及び非水溶媒を均一に混合し、25℃~200℃で3h~48h反応させ、-30℃~25℃まで冷却してマグネシウム電池の電解液を得るステップを含むマグネシウム電池の電解液の製造方法であって、
無水マグネシウム塩は、塩化マグネシウム、フッ化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、ビス(ヘキサメチルジシラジド)マグネシウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドマグネシウム及びグリニャール試薬から選択される1種又は複数種であり、
無水リチウム塩は、ビス(トリメチルシリル)アミドリチウム及び第2の無水リチウム塩から選択され、第2の無水リチウム塩は、塩化リチウム、フッ化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム及びビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムから選択される1種又は複数種である、
マグネシウム電池の電解液の製造方法を提供する。
【0012】
本出願の別の態様の実施例によれば、上記無水リチウム塩に対する上記無水マグネシウム塩のモル比は1:(0.1~4)である。
【0013】
本出願の別の態様の実施例によれば、電解質塩の濃度は0.1~10mol/Lである。
【0014】
本出願の別の態様の実施例によれば、電解質塩の濃度は0.1~3mol/Lである。
【0015】
さらに一方では、本出願の実施例は、正極、セパレータ、負極及び上記マグネシウム電池の電解液を含むマグネシウム電池を提供する。
【発明の効果】
【0016】
従来技術に比べて、本出願は少なくとも以下の有益な効果を有する。
【0017】
(1)本出願に係るマグネシウム電池の電解液は、各成分同士の相互の相乗作用により、良好な安定性、比較的に強い水・不純物耐性及び優れた電気化学的性能を付与するとともに、マグネシウムの可逆的な沈降・溶解を促進し、過電圧を低下させ、マグネシウム塩が陽極表面にパッシベーション層を形成することを抑制し、マグネシウム電池の充放電比容量及びサイクル安定性を向上させることができる。
【0018】
(2)本出願に係るマグネシウム電池の電解液の製造方法は、簡単で実行しやすく、装置に対する要求が低く、従来のプロセスとの互換性がよく、大規模な応用の潜在力がある。
【0019】
(3)本出願に係るマグネシウム電池は、良好な充放電比容量及び長いサイクル寿命を有する。
図10から分かるように、上記マグネシウム電池の電解液からなるマグネシウム電池は、充放電比容量が比較的に高く、且つサイクル寿命が長い。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本出願の実施例の技術案をより明確に説明するために、以下、本出願の実施例において使用される必要がある図面を簡単に説明する。明らかに、以下に説明される図面は本出願のいくつかの実施例に過ぎず、当業者にとって、創造的な労働をせずに、図面に基づいて他の図面を得ることもできる。
【
図1】本出願の実施例1のマグネシウム電池の電解液のラマンスペクトルである。
【
図2】本出願の実施例1のマグネシウム電池の電解液の核磁気共鳴スペクトルである。
【
図3】本出願の実施例2のマグネシウム電池の電解液が不純物干渉なしに金属マグネシウムを沈降・溶解するサイクリックボルタンメトリー曲線である。
【
図4】本出願の実施例2のマグネシウム電池の電解液に極微量の水、二酸化炭素、酸素ガスの干渉が存在している場合の、金属マグネシウムを沈降・溶解するサイクリックボルタンメトリー曲線である。
【
図5】本出願の実施例2のマグネシウム電池の電解液に1000ppmのH
2Oの干渉が存在している場合の、金属マグネシウムを沈降・溶解するサイクリックボルタンメトリー曲線である。
【
図6】本出願の比較例1のマグネシウム電池の電解液に極微量の水、二酸化炭素、酸素ガスの干渉が存在している場合の、金属マグネシウムを沈降・溶解するサイクリックボルタンメトリー曲線である。
【
図7】本出願の比較例1のマグネシウム電池の電解液に400ppmのH
2Oの干渉が存在している場合の、金属マグネシウムを沈降・溶解するサイクリックボルタンメトリー曲線である。
【
図8】本出願の実施例2のマグネシウム電池の電解液に極微量の水、二酸化炭素、酸素ガスの干渉が存在している場合の、金属マグネシウムを沈降・溶解する線形走査曲線である。
【
図9】本出願の実施例2のマグネシウム電池の充放電比容量-電圧のグラフである。
【
図10】本出願の実施例2のマグネシウム電池の充放電サイクル-比容量のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本出願の目的、技術案及び有益な技術的効果をより明確にするために、以下、実施例を組み合わせて本出願をさらに詳しく説明する。本明細書で説明される実施例は、本出願を説明するためのものに過ぎず、本出願を限定するものではないことを理解すべきである。
【0022】
本出願では、簡単にするために、いくつかの数値範囲のみを明確に開示している。しかしながら、任意の下限は、任意の上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができ、また、任意の下限は、他の下限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができ、同様に、任意の上限は、任意の他の上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができる。また、明確に記載されていないが、範囲の端点間の各点又は単一の数値は、その範囲に含まれる。したがって、各点又は単一の数値は、それ自体の下限又は上限として任意の他の点又は単一の数値と組み合わせてもよく、又は他の下限又は上限と組み合わせてもよく、明確に記載されていない範囲を形成する。
【0023】
本出願の説明において、明確にするように、特に明記しない限り、「以上」、「以下」は本数を含み、「1種又は複数種」における「複数種」の意味は2種及びそれ以上である。
【0024】
本出願の上記の出願内容は、本出願における各開示の実施形態又は各実施方式を説明することを意図していない。以下の記載は、実施形態を例としてより具体的に説明する。本明細書における複数の箇所において、一連の実施例により指導を提供し、これらの実施例は様々な組み合わせ形態で使用することができる。各実施例において、代表的なグループとして列挙したが、網羅的な列挙と解釈されるべきではない。
【0025】
現在、開発されたマグネシウム電池の電解液において、無機塩及びその類似システム、例えば、無機マグネシウムアルミニウムハロゲン化物塩(MACC)システム、無機マグネシウムリチウム塩化物塩(MLCC)システムなどは、コストが低く、ワンステップ合成などの優位性によって、応用性の面で極めて優位性がある。しかしながら、このようなシステムは安定性が悪く、不純物(例えば、少量の水、酸素ガス、二酸化炭素など)の影響を受けやすく、マグネシウムシートの表面のパッシベーションを引き起こし、さらに電池の充放電の過電圧が大きくなり、沈降・溶解が不均一になり、ひいては短絡の問題を招来し、最終的にマグネシウム電池の失効に至る。
【0026】
これに基づいて、発明者らは多くの研究を行い、良好な水・不純物耐性及び優れた電気化学的性能を有する電解液を提供し、マグネシウムの可逆的な沈降・溶解を促進し、過電圧を低下させ、マグネシウム塩が陽極表面にパッシベーション層を形成することを抑制し、さらにマグネシウム電池の充放電比容量及びサイクル寿命を向上させることを目的とする。
【0027】
(マグネシウム電池の電解液)
本出願の第1態様の実施例は、
非水溶媒及び電解質塩を含むマグネシウム電池の電解液であって、
非水溶媒は、イミダゾール系イオン液体、ピロール系イオン液体、ピペリジン系イオン液体、エーテル系化合物、エステル系化合物、ピリジン系化合物、ニトリル系化合物、スルホン系化合物及びケトン系化合物から選択される1種又は複数種であり、
電解質塩の化学式は、[MgmLinXo(HMDS)2m+n-oRp]・Mqであり、ただし、Xはハロゲンイオン及び/又はビストリフルオロメタンスルホニルイミドイオンから選択され、HMDSはヘキサメチルジシラザンイオンを表し、Rはアルキル基、フルオロアルキル基及びアリール基から選択される1種又は複数種であり、Mは非水溶媒分子錯化剤であり、mは1~6から選択される任意の整数であり、nは1~6から選択される任意の整数であり、oは1~6から選択される任意の整数であり、pは0~6から選択される任意の整数であり、qは1~20から選択される任意の整数である、
マグネシウム電池の電解液を提供する。
【0028】
本出願の実施例に係るマグネシウム電池の電解液によれば、上記電解質塩及び非水溶媒を添加することにより、マグネシウム電池の電解液に良好な安定性、比較的に強い水・不純物耐性及び優れた電気化学的性能を持たせることができるので、マグネシウム電池に高い充放電比容量及びサイクル性能を付与することができる。
【0029】
負極マグネシウム金属は相対的に安定であるが、依然として炭化水素類、アルコール類、フェノール類、アミン類、アルデヒド類、水、二酸化炭素及び酸素などの大部分の還元可能な化合物と反応することができ、電解質溶液にこれらの溶媒を使用する場合、負極マグネシウム金属の表面に電子とイオンがいずれも絶縁されているパッシベーション層が形成され、Mg2+の移動を阻害し、電池性能の十分な発揮に不利である。しかし、本出願の実施例における非水溶媒は、マグネシウムの可逆的な沈降・溶解を実現でき、且つ負極マグネシウム/電解液の界面に絶縁相を形成しないため、マグネシウム電池の充放電比容量及びサイクル安定性能の向上を促進することができる。
【0030】
本出願の実施例によれば、上記電解質塩中のMg2+、Li+、X-、HMDS-、Rと非水溶媒分子錯化剤とがクラスター構造の凝集体を形成し、この凝集体が電解液中のマグネシウムイオンの輸送を促進することができる。次に、HMDS-は強い還元性を有するため、微量の不純物、例えば水、二酸化チタン及び酸素ガスなどと優先的に反応することができ、マグネシウム負極がパッシベーションにされないように保護するとともに、マグネシウム電池の電解液に良好な耐水性能を付与する。
【0031】
いくつかの実施例において、化学式[MgmLinXo(HMDS)2m+n-oRp]・Mqにおいて、mは、1、2、3、4、5、又は6であってもよい。mは、以上の数値の任意の組み合わせの範囲であってもよい。
【0032】
いくつかの実施例において、化学式[MgmLinXo(HMDS)2m+n-oRp]・Mqにおいて、nは1、2、3、4、5、又は6であってもよい。nは、以上の数値の任意の組み合わせの範囲であってもよい。
【0033】
いくつかの実施例において、化学式[MgmLinXo(HMDS)2m+n-oRp]・Mqにおいて、oは1、2、3、4、5、又は6であってもよい。oは、上記数値の任意の組み合わせの範囲であってもよい。
【0034】
いくつかの実施例において、化学式[MgmLinXo(HMDS)2m+n-oRp]・Mqにおいて、pは、0、1、2、2、3、4、5、又は6であってもよい。pは、以上の数値の任意の組み合わせの範囲であってもよい。
【0035】
いくつかの実施例において、化学式[MgmLinXo(HMDS)2m+n-oRp]・Mqにおいて、qは1、4、8、12、16、又は20であってもよい。qは、以上の数値の任意の組み合わせの範囲であってもよい。
【0036】
いくつかの実施例において、イミダゾール系イオン液体は、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート及び/又は1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホン酸)イミド塩から選択される。
【0037】
いくつかの実施例において、ピロール系イオン液体は、N-ブチル-N-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド塩から選択される。
【0038】
いくつかの実施例において、ピペリジン系イオン液体は、N-ブチル-N-メチルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド塩から選択される。
【0039】
本出願の実施例によれば、上記イオン液体は、良好な導電性及び安定な電気化学的電位窓を有し、電解液中のMg2+の移動を促進し、電池のサイクル安定性をさらに向上させることができる。
【0040】
いくつかの実施例において、エーテル系化合物は、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサン及びポリエチレングリコールジメチルエーテルから選択される1種又は複数種である。
【0041】
いくつかの実施例において、エステル系化合物は酢酸エチルから選択される。
【0042】
いくつかの実施例において、ピリジン系化合物は、ピリジン、2-メチルピリジン、3-メチルピリジン、4-メチルピリジン、2,6-ジクロロピリジン及び2-アミノピリジンから選択される1種又は複数種である。
【0043】
いくつかの実施例において、ニトリル系化合物はアセトニトリルから選択される。
【0044】
いくつかの実施例において、スルホン系化合物はジメチルスルホキシドから選択される。
【0045】
いくつかの実施例において、非水溶媒はテトラヒドロフランであり、ハロゲンイオンは塩素イオンである。
【0046】
本出願の実施例によれば、非水溶媒がテトラヒドロフランであり、ハロゲンイオンが塩素イオンである場合、形成されたクラスター構造の凝集体がより安定であり、水・不純物耐性がより優れるとともに、マグネシウムの可逆的な沈降・溶解及び過電圧の低下がより容易になる。
【0047】
いくつかの実施例において、電解液における上記電解質塩の濃度は0.1mol/L~10mol/Lである。電解質塩の濃度は、例えば、0.1mol/L、2mol/L、4mol/L、6mol/L、8mol/L又は10mol/Lであってもよい。マグネシウム電池の電解液における電解質塩の濃度は、上記数値の任意の組み合わせの範囲であってもよい。
【0048】
本出願の実施例によれば、上記濃度範囲内において、無水マグネシウム塩と無水リチウム塩の非水溶媒における反応効率が高く、且つ電解液の粘度が適切であり、Mg2+の輸送に有利である。電解質塩の濃度が0.1mol/Lより低いと、イオン伝導率が低くなり、電池のオーミック分極が比較的に大きくなる。電解質塩の濃度が10mol/Lより高いと、電解液の粘度が増加し、イオンの物質移動拡散が阻害され、電池の濃度分極が増加する。好ましくは、いくつかの実施例において、電解質塩の濃度は0.1mol/L~3mol/Lである。
【0049】
(マグネシウム電池の電解液の製造方法)
本出願の他方では、
無水マグネシウム塩、無水リチウム塩及び非水溶媒を均一に混合し、25℃~200℃で3~48h反応させ、-30℃~25℃まで冷却して、マグネシウム電池の電解液を得ることを含むマグネシウム電池の電解液の製造方法であって、
無水マグネシウム塩は、塩化マグネシウム、フッ化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、ビス(ヘキサメチルジシラジド)マグネシウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドマグネシウム及びグリニャール試薬から選択される1種又は複数種であり、
無水リチウム塩は、塩化リチウム、フッ化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、ビス(トリメチルシリル)アミドリチウム及びビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムから選択される1種又は複数種である、
マグネシウム電池の電解液の製造方法をさらに提供する。
【0050】
本出願の実施例によれば、マグネシウム電池の電解液の製造過程において、電解液が水、酸素ガス又は二酸化炭素に干渉されることを防止するために、水の含有量<0.1ppm、酸素ガスの含有量<0.1ppm且つ不活性ガスが充填されたグローブボックスで行う必要があり、この過程において、無水マグネシウム塩、無水リチウム塩及び非水溶媒はクラスター構造を有する凝集体を形成する。
【0051】
いくつかの実施例において、不活性ガスは、ヘリウムガス及びアルゴンガスのうちの少なくとも1種である。
【0052】
いくつかの実施例において、無水リチウム塩に対する無水マグネシウム塩のモル比は1:(0.1~4)である。例えば、無水リチウム塩に対する無水マグネシウム塩のモル比は、1:0.1、1:1、1:2、1:3又は1:4であってもよい。無水リチウム塩に対する無水マグネシウム塩のモル比は、上記比の任意の組み合わせの範囲であってもよい。
【0053】
本出願の実施例によれば、無機マグネシウム塩と無機リチウム塩が前記錯化剤におけるルイス酸塩基反応は可逆反応である。無水マグネシウム塩のモル数を無水リチウム塩のモル数よりも小さく設定することは、可逆反応が電解質塩を生成する方向に移動することに有利であるので、前記電解質塩の製造効率を向上させる。
【0054】
本出願の実施例に係るマグネシウム電池の電解液の製造方法は簡単であり、製造されたマグネシウム電池の電解液の相互の溶解性が良好であり、システムが安定であるとともに、耐水性及び不純物干渉耐性が強く、マグネシウムと他の金属との共沈降現象が発生しないので、マグネシウム電池の電池性能を向上させる。
【0055】
(マグネシウム電池)
本出願のさらに一方では、正極、セパレータ、負極、及び本出願の第1態様のいずれか1つの実施例に係るマグネシウム電池の電解液を含むマグネシウム電池をさらに提供する。
【0056】
いくつかの実施例において、正極は、正極活物質、導電剤、集電体及びバインダーを含む。正極活物質は、無機遷移金属酸化物、硫化物又はホウ化物であってもよく、好ましくは、正極活物質は、Mo6S8である。
【0057】
いくつかの実施例において、セパレータは、有機高分子膜、導電剤、触媒及びバインダーを含む。
【0058】
いくつかの実施例において、負極は、負極活物質及びバインダーを含む。負極活物質は、マグネシウム金属及びマグネシウム合金のうちの少なくとも1種を含む。
【0059】
本出願の実施例に係るマグネシウム電池は、上記第1の態様のいずれか1つの実施例に係るマグネシウム電池の電解液を含むため、各成分の相乗効果により、良好な安定性、比較的に強い水・不純物耐性及び優れた電気化学的性能を有し、マグネシウムの可逆的な沈降・溶解を促進し、過電圧を低下させ、マグネシウム塩が陽極表面にパッシベーション層を形成することを抑制し、マグネシウム電池の充放電比容量及びサイクル安定性を向上させることができる。これに鑑みて、本出願の実施例に係るマグネシウム電池は、水力、火力、風力及び太陽光発電所などのエネルギー貯蔵電源システム、及び電動工具、軍事設備、航空宇宙などの複数の分野に適用することができる。
【実施例】
【0060】
以下の実施例は、本出願の開示された内容をより具体的に説明するものであり、これらの実施例は、本出願の開示内容の範囲内で各種の修正及び変更を行うことが当業者にとって明らかであるため、説明的なものに過ぎない。特に明記しない限り、以下の実施例において報告されている全ての部、百分率、及び比は重量基準であり、実施例において使用されている全ての試薬は、市販によって得られるが、又は従来の方法に従って合成して得られ、さらなる処理を必要とせずに直接使用することができ、また、実施例において使用されている機器は、全て市販によって得られる。
【0061】
(実施例1)
マグネシウム電池の電解液の調製:酸素と水の含有量が1ppm未満であり、且つアルゴンガスが充填されたグローブボックス中で、0.3mol/Lの無水塩化マグネシウム(MgCl2)、0.15mol/Lの無水ヘキサメチルジシラザンリチウム(LiHMDS)及びテトラヒドロフランを混合し、25℃で24時間反応させ、25℃まで冷却して、マグネシウム電池の電解液を得た。
【0062】
(実施例2)
マグネシウム電池の電解液の調製:酸素と水の含有量が1ppm未満であり、且つアルゴンガスが充填されたグローブボックス中で、0.3mol/Lの無水塩化マグネシウム(MgCl2)、0.15mol/Lの無水ヘキサメチルジシラザンリチウム(LiHMDS)、0.1mol/Lの無水塩化リチウム(LiCl)及びテトラヒドロフランを混合し、25℃で24時間反応させ、25℃まで冷却して、マグネシウム電池の電解液を得た。
【0063】
(比較例1)
マグネシウム電池の電解液の調製:酸素と水の含有量が1ppm未満であり、且つアルゴンガスが充填されたグローブボックス中で、0.3mol/Lの無水塩化マグネシウム(MgCl2)、0.1mol/Lの無水塩化リチウム(LiCl)及びテトラヒドロフランを混合し、25℃で24h反応させ、25℃まで冷却して、マグネシウム電池の電解液を得た。
【0064】
(測定部分)
マグネシウム電池の電解液のラマンスペクトルの測定:電解液を石英管に封入し、He-Neレーザー(632.817nm)を用いて測定し、電解液のラマンスペクトルを得た。
【0065】
マグネシウム電池の電解液の核磁気共鳴の測定:7Li NMR(155,50 MHz、d8-THF、298K、標準試料は1M LiCl/D2O溶液である。)。
【0066】
金属マグネシウムを沈降・溶解するサイクリックボルタンメトリーの測定:カーボンペーパーを作用電極とし、マグネシウムシートを対電極及び参照電極として、Mg/C電池を組み立ててサイクリックボルタンメトリー試験を行った。ここで、走査速度は25mV/sである。
【0067】
金属マグネシウムを沈降・溶解する線形走査の測定:カーボンペーパーを作用電極とし、マグネシウムシートを対電極及び参照電極として、Mg/C電池を組み立ててサイクリックボルタンメトリー試験を行った。ここで、走査速度は25mV/sである。
【0068】
マグネシウム電池の測定:Mo6S8正極、電解液、セパレータ、マグネシウムシート負極を順に取り付けて、マグネシウムフルセルの製造を完成した。電池に対して定電流充放電試験を行い、電池測定の電圧範囲は0.2~2.0Vであり、電池測定のレートは31.1Cである。
【0069】
MgCl
2とLiClとの相互作用の結果が証明され公開されているため、
図1及び
図2では、MgCl
2とLiHMDSとの相互作用に対して特徴付けをした。
図1及び
図2から分かるように、本出願の実施例1のマグネシウム電池の電解質塩のラマンスペクトルのピーク位置は619cm
-1であり、電解質塩が[Mg
mLi
nX
o(HMDS)
2m+n-oR
p]・M
qであるマグネシウム電池の電解液の合成が成功したことが示された。
【0070】
マグネシウム電池の電解液のマグネシウムを沈降・溶解する性能をテストするために、電解液に対する干渉の有無で、実施例2と比較例1の電解液のサイクリックボルタンメトリー曲線を測定した。
【0071】
図3から分かるように、0.4Vでマグネシウムイオンが沈降し始め、酸化ピークが0.1Vでマグネシウムイオンが溶出し始める。
図4から分かるように、マグネシウム電池の電解液に不純物干渉が存在している場合、マグネシウムの沈降電位は0.6Vであり、溶出電位は0.1Vである。従って、この電解液に不純物干渉が存在している場合、依然としてマグネシウムの可逆的な沈降・溶解を良好に実現でき、この電解液が良好な不純物耐性を有することが示された。水含有量が1000ppmであるグローブボックスで製造されたマグネシウム電池の電解液は、マグネシウムを沈降・溶解するサイクリックボルタンメトリー曲線が
図5に示され、マグネシウムの沈降電位が0.5Vであり、溶出電位が0.1Vである。従って、この電解液は、水含有量が高い場合でも、マグネシウムの可逆的な沈降・溶解を良好に実現でき、この電解液が良好な耐水性及び安定性を有することが示された。一方、
図6と
図7から分かるように、比較例1の電解液にLiHMDS塩が存在していない場合、金属マグネシウムを沈降・溶解する酸化還元ピークが観測されず、LiHMDS塩が電解液に耐水性を持たせる重要なポイントであることが示された。
【0072】
また、
図8の線形走査曲線を参照して分かるように、実施例2におけるマグネシウム電池の電解液の電気化学窓は2.8V(vs.Mg
2+/Mg)より大きく、この電解液の電気化学窓が広く、且つ性能が優れていることが示された。
【0073】
実施例2におけるマグネシウム電池の電解液のマグネシウムイオン電池への応用をテストするために、Mg/Mo
6S
8電池に対して充放電性能測定を行い、測定結果を
図9及び10に示す。測定結果は、本出願の実施例のマグネシウム電池の電解液で組み立てられたマグネシウム電池の初始放電比容量が約105mAh g
-1であり、10000サイクル後の比容量が約83mAh g
-1であることが示され、このマグネシウム電池が良好な充放電比容量と安定なサイクル性能を示すことが説明された。
【0074】
以上のように、上記電解質塩及び非水溶媒を添加することにより、マグネシウム電池の電解液に良好な安定性、比較的に強い水・不純物耐性及び優れた電気化学的性能を持たせるので、マグネシウム電池に高い充放電比容量及びサイクル性能を付与することができる。
【0075】
以上は、本出願の具体的な実施形態に過ぎず、本出願の保護範囲はこれに限定されず、当業者であれば、本出願に開示された技術的範囲内において、様々な等価な修正又は置換を容易に想到することができ、これらの修正又は置換はいずれも本出願の保護範囲内に含まれるべきである。したがって、本出願の保護範囲は、特許請求の範囲の保護範囲に準じるべきである。
【国際調査報告】