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特表2025-501382サトラプラチンの手段による血液学的悪性腫瘍の処置
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  • 特表-サトラプラチンの手段による血液学的悪性腫瘍の処置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-17
(54)【発明の名称】サトラプラチンの手段による血液学的悪性腫瘍の処置
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/282 20060101AFI20250109BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALI20250109BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
A61K31/282
C12Q1/68
A61P35/00
A61P35/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541202
(86)(22)【出願日】2022-12-20
(85)【翻訳文提出日】2024-09-04
(86)【国際出願番号】 EP2022087090
(87)【国際公開番号】W WO2023131524
(87)【国際公開日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】2200170.5
(32)【優先日】2022-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524258060
【氏名又は名称】ファルマアンド・シュヴァイツ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Pharma& Schweiz GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】ダーム,フェリックス
(72)【発明者】
【氏名】ツァンダー,ティーロ ヨアヒム
(72)【発明者】
【氏名】レンナー,クリストフ ローベルト
(72)【発明者】
【氏名】マークソン,ゲイブリエル ベンジャミン
【テーマコード(参考)】
4B063
4C206
【Fターム(参考)】
4B063QA13
4B063QA17
4B063QQ08
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QS40
4C206AA01
4C206AA02
4C206JB17
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA05
4C206NA06
4C206ZB26
4C206ZB27
4C206ZC51
(57)【要約】
本発明は、サトラプラチンを使用する医薬用途および処置方法に関する。これらの医薬用途はがん、特に血液学的悪性腫瘍の処置において有用である。本発明はまた、患者層別化方法および処置レジメンの選択方法、ならびに診断方法およびバイオマーカーパネルに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液学的悪性腫瘍の処置における使用のためのサトラプラチンであって、9p21遺伝子座に位置する遺伝子(MTAP、CDKN2B、CDKN2A、またはDMRTA1など);BCL2;TULP3;AOC1;BOC;DDX3X;CRYBG3;SLFN5;ETNK2;BRCA2;USP22;KIAA1683;AP4E1;PAN3;AC073343.11.1;PHF2;KLHDC1;およびWRNからなる群より選択される遺伝子の解析によりそのような処置から利益を得る可能性が高いと同定された患者における使用のためのサトラプラチン。
【請求項2】
血液学的悪性腫瘍がリンパ腫または骨髄腫である、請求項1に記載の使用のためのサトラプラチン。
【請求項3】
リンパ腫または骨髄腫がびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL);バーキットリンパ腫;マントル細胞リンパ腫;末梢性T細胞リンパ腫(PTCL);未分化大細胞型リンパ腫(ALCL);中枢神経系(CNS)の原発性DLBCL;二次性CNSリンパ腫(SCNSL);皮膚T細胞リンパ腫;セザリー症候群;および多発性骨髄腫からなる群より選択される、請求項2に記載の使用のためのサトラプラチン。
【請求項4】
遺伝子が9p21遺伝子座に位置する遺伝子であり、そして解析により当該遺伝子のコピー数の減少を同定する、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のためのサトラプラチン。
【請求項5】
遺伝子がMTAP;CDKN2B;CDKN2A;およびDMRTA1からなる群より選択され、そして解析により当該遺伝子の欠損を同定する、請求項4に記載の使用のためのサトラプラチン。
【請求項6】
血液学的悪性腫瘍がバーキットリンパ腫;DLBCL;CTCL;多発性骨髄腫;ALCL ALK+;およびマントル細胞リンパ腫からなる群より選択される、請求項4または請求項5に記載の使用のためのサトラプラチン。
【請求項7】
遺伝子がBCL2;AOC1;BOC;DDX3X;CRYBG3;SLFN5;ETNK2;BRCA2;USP22;KIAA1683;およびAP4E1からなる群より選択され、そして解析により当該遺伝子の変異を同定する、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のためのサトラプラチン。
【請求項8】
変異が表1および表2に示されている変異から選択される、請求項8に記載の使用のためのサトラプラチン。
【請求項9】
血液学的悪性腫瘍がバーキットリンパ腫;DLBCL;およびALCL ALK+からなる群より選択される、請求項7または請求項8に記載の使用のためのサトラプラチン。
【請求項10】
遺伝子がTULP3;PAN3;AC073343.11.1;PHF2;KLHDC1;BRCA2;およびWRNからなる群より選択され、そして解析により当該遺伝子の高度発現を同定する、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のためのサトラプラチン。
【請求項11】
9p21遺伝子座の喪失を伴う血液学的悪性腫瘍の処置における使用のためのサトラプラチン。
【請求項12】
MTAP;CDKN2B;CDKN2A;およびDMRTA1からなる群より選択される遺伝子の欠損を伴う血液学的悪性腫瘍の処置における使用のためのサトラプラチン。
【請求項13】
欠損がMTAP;CDKN2B;CDKN2A;およびDMRTA1からなる群より選択される遺伝子のコピー数の減少である、請求項12に記載の使用のためのサトラプラチン。
【請求項14】
血液学的悪性腫瘍がバーキットリンパ腫;DLBCL;CTCL;多発性骨髄腫;ALCL ALK+;およびマントル細胞リンパ腫からなる群より選択される、請求項11~13のいずれか一項に記載の使用のためのサトラプラチン。
【請求項15】
BCL2;AOC1;BOC;DDX3X;CRYBG3;SLFN5;ETNK2;BRCA2;USP22;KIAA1683;およびAP4E1からなる群より選択される遺伝子の変異を伴う血液学的悪性腫瘍の処置における使用のためのサトラプラチン。
【請求項16】
変異が表1および表2に示されている群から選択される、請求項15に記載の使用のためのサトラプラチン。
【請求項17】
血液学的悪性腫瘍がバーキットリンパ腫;DLBCL;およびALCL ALK+からなる群より選択される、請求項15または請求項16に記載の使用のためのサトラプラチン。
【請求項18】
TULP3;PAN3;AC073343.11.1;PHF2;KLHDC1;BRCA2;またはWRNの高度発現を伴う血液学的悪性腫瘍の処置における使用のためのサトラプラチン。
【請求項19】
血液学的悪性腫瘍がサトラプラチン処置に良好に反応する可能性を判定する方法であって、
9p21遺伝子座に位置する遺伝子(MTAP、CDKN2B、CDKN2A、またはDMRTA1など);BCL2;TULP3;AOC1;BOC;DDX3X;CRYBG3;SLFN5;ETNK2;BRCA2;USP22;KIAA1683;AP4E1;PAN3;AC073343.11.1;PHF2;KLHDC1;およびWRNからなる群より選択される遺伝子における変化について、血液学的悪性腫瘍の細胞を解析することを含み;
ここで、解析される遺伝子における変化の同定は、その血液学的悪性腫瘍が良好に反応する可能性が高いことを示す、
方法。
【請求項20】
サトラプラチンによる処置への血液学的悪性腫瘍の感受性に特徴的なシグネチャーパネルであって、
MTAP;CDKN2B;CDKN2A;およびDMRTA1からなる群より選択される少なくとも1個の遺伝子のコピー数の喪失;および/または
BCL2;AOC1;BOC;DDX3X;CRYBG3;SLFN5;ETNK2;BRCA2;USP22;KIAA1683;およびAP4E1からなる群より選択される少なくとも1個の遺伝子の変異;および/または
TULP3;PAN3;AC073343.11.1;PHF2;KLHDC1;BRCA2;およびWRNからなる群より選択される少なくとも1個の遺伝子の高度発現
を含む、シグネチャーパネル。
【請求項21】
●コピー数の減少を伴う遺伝子がMTAP;CDKN2B;CDKN2A;およびDMRTA1からなる群より選択され、そして
●血液学的悪性腫瘍がバーキットリンパ腫;DLBCL;CTCL;多発性骨髄腫;ALCL ALK+;およびマントル細胞リンパ腫からなる群より選択される、
請求項20に記載のシグネチャーパネル。
【請求項22】
●変異を伴う遺伝子が: BCL2;AOC1;BOC;DDX3X;CRYBG3;SLFN5;ETNK2;BRCA2;USP22;KIAA1683;およびAP4E1からなる群より選択され、そして
●変異が表1および表2に示されている群から選択され、そして
●血液学的悪性腫瘍がバーキットリンパ腫;DLBCL;およびALCL ALK+からなる群より選択される、
請求項20に記載のシグネチャーパネル。
【請求項23】
遺伝子がTULP3;PAN3;AC073343.11.1;PHF2;KLHDC1;BRCA2;およびWRNからなる群より選択され、そして解析により当該遺伝子の高度発現を同定する、請求項20に記載のシグネチャーパネル。
【請求項24】
サトラプラチンによる処置への血液学的悪性腫瘍の感受性に特徴的なシグネチャーバイオマーカーパネルであって、表1および表2に示されている群から選択される少なくとも1個の遺伝子変異を含み、ここで血液学的悪性腫瘍がバーキットリンパ腫;DLBCL;およびALCL ALK+からなる群より選択される、シグネチャーバイオマーカーパネル。
【請求項25】
免疫チェックポイント療法に非反応性のがんの処置における、第二選択療法としての使用のためのサトラプラチン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、サトラプラチンを使用する医薬用途および処置方法に関する。これらの医薬用途はがん、特に血液学的悪性腫瘍の処置において有用である。本発明はまた、患者層別化方法および処置レジメンの選択方法、ならびに診断方法およびバイオマーカーパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
シスプラチン、カルボプラチンおよびオキサリプラチンは、がんの処置のために世界中で使用されている白金ベースの薬剤である(1)。3剤とも静脈内に投与され、かつ、主に親水性であり、腎毒性、聴器毒性、神経毒性、心毒性、血液学的毒性、肝毒性、および消化器毒性を含む、類似あるいは重複している副作用を伴う。白金毒性は通常、投与量の変更または処置の中止の主な理由である。これは特に、シスプラチンに当てはまり、急性腎臓傷害および低マグネシウム血症を含む2つの最も一般的な腎毒性副作用を伴い、シスプラチン処置患者の最大90%がこの副作用の影響を受けると報告されている(2)。神経毒性および聴器毒性(全患者の60~90%)が、2番目および3番目に一般的な白金毒性であり、オキサリプラチンは主に神経毒性を引き起こし、そしてシスプラチンは聴器毒性を引き起こす。毒性が少なく、より忍容性の高い白金化合物を開発するために、2つのさらなるリガンド部位を有する八面体形体を特徴とする白金(IV)錯体が開発された。それら白金(IV)錯体は、腫瘍細胞内で対応する白金(II)類似体に還元されてアポトーシス細胞に誘導することが、それらの抗がん活性に不可欠であるため、古典的なプロドラッグの概念に従っている(3)。サトラプラチン(ビス-アセタト-アミン-ジクロロ-シクロヘキシルアミン-白金)は新規白金(IV)化合物の主要な例であり、白金感受性前臨床モデルで、そしていくつかの白金耐性前臨床モデルでさえ活性を有する最初の経口第4世代白金化合物として開発されている(4)。過去20年間にわたり、サトラプラチンは種々のインビトロおよびインビボ固形腫瘍モデルで広範囲に研究され(5)、一貫して高い活性を示した(6)。
【0003】
前立腺がんを含む様々ながん実体で臨床開発が行われ、有望な結果が得られたが、前立腺がんは伝統的に白金耐性疾患と考えられてきた。しかしながら、ホルモン難治性前立腺がん患者(HRPC)における第I/II相サトラプラチン単独療法試験では、最大31%の客観的奏効率が示された(7)。これら有望なデータに基づき、第一選択化学療法の後に進行したHRPC患者に対する、プレドニゾンとの併用による第二選択療法としてのサトラプラチンを、プレドニゾンとプラセボの併用と比較して評価する大規模第III相登録試験(SPARC)が開始された。この試験は主要エンドポイントを満たし、そして進行または死亡のリスクにおいて33%の減少を示し(PFS;HR: 0.67;p < 0.001)、疼痛進行のリスクにおいて36%の減少を示し、25%対12%のPSA奏効(少なくとも50%のPSA低下)を示し(p = 0.001)、そして8%対0.7%(p < 0.002)の客観的RECIST奏効率を示した。残念なことに、統計的に有意な全生存期間(OS)の利益(14.3か月対14.3か月;HR: 0.98;p = 0.80)は認められず、臨床開発は中止された(8)。その結果、サトラプラチンは、がんの処置として承認されていない。
【0004】
これまでの臨床試験のデータと一致して、SPARC試験では、サトラプラチン関連毒性は一般に、中程度の悪心、疲労、摂食障害、下痢、および味覚の変化を含み、軽度であることが確認された。特に、腎毒性、脱毛またはさらなる神経毒性が認められないため、この薬剤は、このクラスの薬剤の中でユニークである。
【0005】
高い活性および毒性の軽減を含むサトラプラチンの有利な性質の観点から、サトラプラチンでの処置から利益を得られるであろう患者を同定するために使用され得る新規バイオマーカーに対する、明確な臨床的ニーズが存在する。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、医薬用途に関する多数の態様を提供する。
【0007】
第一の態様において、本発明は、血液学的悪性腫瘍の処置における使用のためのサトラプラチンであって、9p21遺伝子座に位置する遺伝子(MTAP、CDKN2B、CDKN2A、またはDMRTA1など);BCL2;TULP3;AOC1;BOC1;DDX3X;CRYBG3;SLFN5;ETNK2;BRCA2;USP22;KIAA1683;AP4E1;PAN3;AC073343.11.1;PHF2;KLHDC1;およびWRNからなる群より選択される遺伝子の解析により、そのような処置から利益を得る可能性が高いと同定された患者における使用のためのサトラプラチンを提供する。
【0008】
第二の態様において、本発明は、血液学的悪性腫瘍を処置する方法であって、9p21遺伝子座に位置する遺伝子(MTAP、CDKN2B、CDKN2A、またはDMRTA1など);BCL2;TULP3;AOC1;BOC;DDX3X;CRYBG3;SLFN5;ETNK2;BRCA2;USP22;KIAA1683;AP4E1;PAN3;AC073343.11.1;PHF2;KLHDC1;およびWRNからなる群より選択される遺伝子の解析に基づいてそのような処置から利益を得る可能性が高いと同定された患者に、サトラプラチンを投与することを含む方法を提供する。
【0009】
第三の態様において、本発明は、血液学的悪性腫瘍を処置する方法であって、
血液学的悪性腫瘍の細胞を含むサンプルを得ること;
9p21遺伝子座に位置する遺伝子(MTAP、CDKN2B、CDKN2A、またはDMRTA1など);BCL2;TULP3;AOC1;BOC;DDX3X;CRYBG3;SLFN5;ETNK2;BRCA2;USP22;KIAA1683;AP4E1;PAN3;AC073343.11.1;PHF2;KLHDC1;およびWRNからなる群より選択される遺伝子に関連する変化について、血液学的悪性腫瘍の細胞を解析すること;および
当該解析に基づいてそのような処置から利益を得る可能性が高いと同定された患者に、サトラプラチンを投与すること
を含む方法を提供する。
【0010】
第四の態様において、本発明は、9p21遺伝子座の喪失(loss)に関連する血液学的悪性腫瘍の処置における使用のためのサトラプラチンを提供する。
【0011】
第五の態様において、本発明は、MTAP;CDKN2B;CDKN2A;およびDMRTA1からなる群より選択される遺伝子の欠損(deficiency)に関連する血液学的悪性腫瘍の処置における使用のためのサトラプラチンを提供する。その欠損は、当該遺伝子に関するコピー数の喪失であり得る。
【0012】
第六の態様において、本発明は、BCL2;AOC1;BOC1;DDX3X;CRYBG3;SLFN5;ETNK2;BRCA2;USP22;KIAA1683;およびAP4E1からなる群より選択される遺伝子の変異に関連する血液学的悪性腫瘍の処置における使用のためのサトラプラチンを提供する。
【0013】
第七の態様において、本発明は、TULP3;PAN3;AC073343.11.1;PHF2;KLHDC1;BRCA2;またはWRNの高度発現を伴う血液学的悪性腫瘍の処置における使用のためのサトラプラチンを提供する。
【0014】
本発明の第一態様から第七態様のいずれかの適当な実施態様において、血液学的悪性腫瘍はリンパ腫;骨髄腫;および白血病からなる群より選択され得る。そのような血液学的悪性腫瘍の特定の形態については、本明細書の別の箇所に記載する。
【0015】
第八の態様において、本発明は、免疫チェックポイント療法に非反応性のがんの処置における、第二選択療法としての使用のためのサトラプラチンを提供する。
【0016】
第九の態様において、本発明は、免疫チェックポイント療法に非反応性のがんを処置する方法であって、そのようながんを患う患者にサトラプラチンを投与することを含む方法を提供する。
【0017】
本発明はまた、患者層別化/処置レジメンの選択に関する多数の態様を提供する。
【0018】
第十の態様において、本発明は、血液学的悪性腫瘍がサトラプラチン処置に良好に反応する可能性を判定する方法であって、
9p21遺伝子座に位置する遺伝子(MTAP、CDKN2B、CDKN2A、またはDMRTA1など);BCL2;TULP3;AOC1;BOC;DDX3X;CRYBG3;SLFN5;ETNK2;BRCA2;USP22;KIAA1683;AP4E1;PAN3;AC073343.11.1;PHF2;KLHDC1;およびWRNからなる群より選択される遺伝子に関連する変化について、血液学的悪性腫瘍の細胞を解析することを含み;
ここで、解析される遺伝子における変化の同定は、その血液学的悪性腫瘍が良好に反応する可能性が高いことを示す、
方法を提供する。
【0019】
本発明はまた、診断方法に関する多数の態様を提供する。
【0020】
第十一の態様において、本発明は、患者由来の血液学的悪性腫瘍の細胞において、9p21遺伝子座に位置する遺伝子(MTAP、CDKN2B、CDKN2A、またはDMRTA1など);BCL2;TULP3;AOC1;BOC;DDX3X;CRYBG3;SLFN5;ETNK2;BRCA2;USP22;KIAA1683;AP4E1;PAN3;AC073343.11.1;PHF2;KLHDC1;およびWRNからなる群より選択される少なくとも1個の遺伝子を解析することを含む方法を提供し、ここで、
遺伝子が9p21遺伝子座に位置する遺伝子であるとき、解析は、例えばコピー数を評価することにより、欠損が存在するか否かを判定することを含み;
遺伝子がBCL2;AOC1;BOC;DDX3X;CRYBG3;SLFN5;ETNK2;BRCA2;USP22;KIAA1683;およびAP4E1からなる群より選択されるとき、解析は、当該遺伝子の変異についてアッセイすることを含み;そして
遺伝子がTULP3;PAN3;AC073343.11.1;PHF2;KLHDC1;BRCA2;およびWRNからなる群より選択されるとき、解析は、当該遺伝子の高度発現についてアッセイすることを含む。
【0021】
第十二の態様において、本発明は、表1および表2に示されている群から選択される少なくとも1個の遺伝子変異の存在について、患者由来の血液学的悪性腫瘍の細胞を解析することを含む方法を提供する。
【0022】
本発明はまた、バイオマーカーパネルに関する多数の態様を提供する。
【0023】
第十三の態様において、本発明は、サトラプラチンによる処置への血液学的悪性腫瘍の感受性に特徴的なシグネチャーパネルであって、
MTAP;CDKN2B;CDKN2A;およびDMRTA1からなる群より選択される少なくとも1個の遺伝子のコピー数の喪失;および/または
BCL2;AOC1;BOC;DDX3X;CRYBG3;SLFN5;ETNK2;BRCA2;USP22;KIAA1683;およびAP4E1からなる群より選択される少なくとも1個の遺伝子の変異;および/または
TULP3;PAN3;AC073343.11.1;PHF2;KLHDC1;BRCA2;およびWRNからなる群より選択される少なくとも1個の遺伝子の高度発現
を含むパネルを提供する。
【0024】
第十四の態様において、本発明は、サトラプラチンによる処置への血液学的悪性腫瘍の感受性に特徴的であるシグネチャーバイオマーカーパネルであって、表1および表2に示されている群から選択される少なくとも1個の遺伝子変異を含むパネルを提供する。
【0025】
本発明の第一から第七の態様、第十の態様、または第十一から第十四の態様のいずれかの適当な実施態様において、血液学的悪性腫瘍はリンパ腫;骨髄腫;および白血病からなる群から選択され得る。そのような血液学的悪性腫瘍の特定の形態については、本明細書の別の箇所に記載する。
【0026】
細胞株、ひいては腫瘍疾患の遺伝子変異スペクトルは、非常に多様かつ多数である。反応の増強、ひいては効能の増加のためにバイオマーカーとして変異/欠失(deletion)/メチル化の存在を予測することは、先験的には不可能である。これには、血液学的悪性腫瘍の文脈で本明細書に記載されているものなどの、統合された複雑な解析が必要である。
【0027】
さらに、MTAPの予後的意義に関しては、データが一貫していない。多数のがん(NSCLC、マントル細胞リンパ腫、ユーイング肉腫)において、MTAPの喪失が化学療法を受けている患者の予後を悪化させることを示す研究が発表されている。他の著者らは、がんの処置反応を予測するために、関連するバイオマーカーを見つけるための遺伝子解析を行っている。一例として、MTAPが関連するバイオマーカーとして検討され、したがって解析された、卵巣がんの研究が挙げられ得る。しかしながら、MTAP欠失と治療への反応との関連は認められなかった。
【0028】
本発明は、少なくとも、上で概説されている複雑なデータ状況を考慮すると、当業者がサトラプラチンの最適化された効能に関連するバイオマーカーを先験的に予測することが可能ではないため、自明でない。
【0029】
本明細書の記載および特許請求の範囲を通して、「~を含む」という用語およびその変形は「~を含むが限定されない」を意味し、かつ、それらは他の部分、添加物、成分、整数またはステップを除外することを意図しない(そして除外しない)。
【0030】
本明細書の記載および特許請求の範囲を通して、単数形は、文脈上別段の定めがない限り、複数形を包含する。特に、不定冠詞が使用されている場合、文脈上別段の定めがない限り、本明細書は複数形および単数形を考慮していると理解される。
【0031】
本発明の特定の態様、実施態様または例に関連して記載されている特徴、整数、特性、化合物、化学部分または基は、矛盾しない限り、本明細書に記載されているあらゆる他の態様、実施態様または例にも適用できると理解される。
【0032】
本発明の多様な態様は、下にさらに詳細に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本発明の実施態様は、添付の図面を参照して、下にさらに記載されている:
図1図1は、記載されているAUC値によって決定される、種々の由来の腫瘍細胞株におけるサトラプラチンの細胞毒性活性を示している。すべての試験した細胞株にわたるAUC値の中央値は2.35である。腫瘍実体はx軸に示されている。固形臓器がんと比較したとき、造血系およびリンパ系悪性腫瘍において有意に高い活性が認められた(ANOVA p値 = 2.3e-08)。
図2図2は、シスプラチンと比較して、サトラプラチンを使用する際の血液腫瘍細胞株の殺傷力増強を示している。シスプラチンからサトラプラチンを引いたIC50(μM)値のデルタが図示されている。
図3図3は、造血系およびリンパ系がんにわたる遺伝子発現-AUC相関分析のボルケーノプロットを示す。サトラプラチン感受性の増大をもたらす遺伝子が左に図示され、耐性をもたらす遺伝子が右に図示されている。統計学的に有意に達する遺伝子は、黒い四角(感受性)および黒い三角(耐性)として示されている。
図4図4は、造血系およびリンパ系がんにおいて、変異レベルで感受性が高い群と感受性が低い群を分けているシグネチャー遺伝子のボルケーノプロットを示す。サトラプラチン感受性の増大をもたらす遺伝子変異が左に図示され、耐性をもたらす遺伝子変異が右に図示されている。統計学的に有意に達する遺伝子は、黒い四角(感受性)および黒い三角(耐性)として示されている。
図5図5は、造血系およびリンパ系がんにおいて、DNAコピー数減少レベルで感受性が高い群(左)と感受性が低い群(右)を分けているシグネチャー遺伝子のボルケーノプロットを示す。統計学的に有意に達する遺伝子は、黒い四角(感受性)として示されている。
図6図6は、試験した細胞株リスト(y軸)に対するサトラプラチンIC50活性(μM)(x軸)の相関を示す。細胞株はサトラプラチン感受性に従ってリストされ、最も感受性が高いものがトップにリストされている。個々の細胞株のMTAPの状態は、以下のとおりにコードされている:灰色(Grey/Gray) = MTAP wt;黒色 = MTAP喪失;白色 = 状態未定/不明。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本明細書で参照される特許、科学および技術文献は、出願時に当業者が入手可能であった知識を証明するものである。本明細書で引用される発行された特許、公開特許出願および申請中特許出願、および他の発表の開示全体は、それぞれが参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているときと同じ程度まで、参照により本明細書に組み込まれる。矛盾がある場合には、本開示が優先する。
【0035】
本発明の多様な態様は、下にさらに詳細に記載されている。
【0036】
発明の詳細な説明
本発明は、少なくとも部分的には、血液学的悪性腫瘍の細胞において存在するとき、そのがんの化学療法剤サトラプラチンに対する感受性を示す多数の遺伝子関連変化を本発明者らが同定したことに基づいている。
【0037】
サトラプラチンに感受性がある血液がんを同定できるマーカーを同定することは、サトラプラチンによる処置をその処置から治療利益を得られる患者に標的化できるという点で、重要な利点をもたらす。適当な患者に処置を標的化する能力は、最適な臨床結果を達成すること(患者に処置の最も早い時期から高い確率で効能がある処置を提供することを保証することによる)および所望の結果を達成しない治療剤を使用する不必要または無効な処置(不必要な副作用を引き起こすとともに、成功する処置を不当に遅らせ得る処置)を回避することの両方において重要であることは、よく認識されている。
【0038】
問題の遺伝子変化については下に十分に記載されているが、本発明者らにより指摘されたある重要な変化には、9p21遺伝子座の遺伝子(特にMTAPであるが、CDKN2B、CDKN2AおよびDMRTA1もある)に関するコピー数の喪失などの欠損、遺伝子のサブセットの変異(BCL2により例示されるが、これに限定されない)、およびTULP3を含むタンパク質のパネルの高度発現などが含まれる。この同定された変化のそれぞれは、血液学的悪性腫瘍の細胞において存在するとき、そのがんのサトラプラチンによる処置が成功しやすいことを示す。
【0039】
遺伝子座9p21(MTAP、CDKN2B、CDKN2AおよびDMRTA1を含む)の喪失を伴うがんがサトラプラチンによる処置に感受性をより示すという発見は、この薬剤をこれらのがんの処置に非常に有用なものとして特定するものである。9p21の喪失は、そのようながんの処置にそれがなければ用いられ得る免疫チェックポイント療法に対する耐性をもたらすため、サトラプラチンは、それがなければ処置が困難であることが判明し得るがんに必要とされる第二選択療法を提供する。
【0040】
以上のことから、本発明者らの発見により、新たなサトラプラチンの処置方法および医薬用途が可能になり、そしてまた、患者を層別化し、かつ、適切ながんの処置方法を選択できる新規方法が可能になることが理解される。この発見はまた、がん(および特に血液学的悪性腫瘍)の診断において有用な新規方法、ならびに新しく有用なバイオマーカーのパネルを利用可能にする。本発明のこれらの種々の態様は、下の適切な見出しのもとでより詳細に記載されている。
【0041】
発明の処置方法および医薬用途
その第一から第九の態様において、本発明はサトラプラチンを使用する処置方法、またはサトラプラチンの医薬用途に関する。定義されている処置方法および医薬用途は、特定の形態のがんの処置におけるサトラプラチンの使用に関する。
【0042】
特に、本発明の第一から第七の態様は、遺伝子変化またはタンパク質の過剰発現を参照して特徴付けられ得る血液学的悪性腫瘍の処置において有用な処置方法および医薬用途に関する。本発明の第八および第九の態様は、他の形態のがん治療への耐性(特に免疫チェックポイント療法への反応の欠如)を参照して特徴付けられ得るがんの処置において用いられる処置方法および医薬用途を対象とする。
【0043】
本発明のこれらの態様は、本発明者らが、サトラプラチンへの血液学的悪性腫瘍の感受性など、サトラプラチンへのがん細胞の感受性を増加または減少させ、したがってそのような遺伝子変化を有するがんを患う患者がこの薬剤による処置から利益を得るか、または得られないかを示す多数の遺伝子変化を同定したことに、少なくともある程度は基づいている。同定された変化については、別の箇所でより詳細に記載されている。
【0044】
本発明者らは、血液学的悪性腫瘍においてこれらの変化が存在するか否かを同定することが、問題の血液学的悪性腫瘍をどのように効果的に処置し得るかについての有益なガイドラインを提供することを初めて認識する。
【0045】
本発明の第一および第二の態様において、9p21遺伝子座に位置する遺伝子(MTAP、CDKN2B、CDKN2A、またはDMRTA1など);BCL2;TULP3;AOC1;BOC;DDX3X;CRYBG3;SLFN5;ETNK2;BRCA2;USP22;KIAA1683;AP4E1;PAN3;AC073343.11.1;PHF2;KLHDC1;およびWRNからなる群より選択される遺伝子の解析により、サトラプラチンを使用するがんの処置から利益を受ける可能性の高い血液学的悪性腫瘍を患う患者を同定することが可能になる。その解析によりサトラプラチンへの感受性の増大を示す1個以上の遺伝子に関連する変化が同定され得て、それは血液学的悪性腫瘍がこの化学療法剤によく反応することを示唆する。
【0046】
本発明の第三の態様の方法において、患者の血液学的悪性腫瘍由来の細胞をサンプルから得て、そしてそのサンプルを9p21遺伝子座に位置する遺伝子(MTAP、CDKN2B、CDKN2A、またはDMRTA1など);BCL2;TULP3;AOC1;BOC;DDX3X;CRYBG3;SLFN5;ETNK2;BRCA2;USP22;KIAA1683;AP4E1;PAN3;AC073343.11.1;PHF2;KLHDC1;およびWRNからなる群より選択される遺伝子に関して解析する。さらに、1個以上の遺伝子に関連する変化が同定される場合において、このことはその血液学的悪性腫瘍がサトラプラチンに対してよく反応することを示す。そして、サトラプラチンは、この方法でそのような処置から利益を得られる可能性が高いと同定された患者に投与される。
【0047】
本発明の第一、第二または第三の態様のいずれかの適当な実施態様において、遺伝子が9p21遺伝子座に位置する遺伝子であり、そして解析により当該遺伝子に関する欠損(コピー数の減少など)を同定する。例えば、当該遺伝子はMTAP;CDKN2B;CDKN2A;およびDMRTA1からなる群より選択され得て、そして解析により当該遺伝子のコピー数の減少などの欠損を同定し得る。そのような実施態様において、特にコピー数の減少が認められる実施態様において、血液学的悪性腫瘍はバーキットリンパ腫;DLBCL;CTCL;および多発性骨髄腫からなる群より適当に選択され得る。
【0048】
本発明の第一、第二または第三態様のいずれかの適当な実施態様において、遺伝子はBCL2;AOC1;BOC;DDX3X;CRYBG3;SLFN5;ETNK2;BRCA2;USP22;KIAA1683;およびAP4E1からなる群より選択され、そして解析により当該遺伝子の変異を同定する。解析が実施され得る変異の具体例については、本明細書の別の箇所に記載する。これらの実施態様において、血液学的悪性腫瘍はバーキットリンパ腫;DLBCL;およびALCL ALK+からなる群より適当に選択され得る。
【0049】
本発明の第一、第二または第三の態様のいずれかのさらなる適当な実施態様において、遺伝子はTULP3;PAN3;AC073343.11.1;PHF2;KLHDC1;BRCA2;およびWRNからなる群より選択され、そして解析により当該遺伝子の高度発現を同定する。
【0050】
本発明の第四、第五、第六および第七の態様は、血液学的悪性腫瘍を患う患者のサブポピュレーションにおけるサトラプラチンの医薬用途に関する。第四の態様の場合において、サブポピュレーションは、血液学的悪性腫瘍が9p21遺伝子座の喪失に関連するものである。第五の態様において、サブポピュレーションは、血液学的悪性腫瘍がMTAP;CDKN2B;CDKN2A;およびDMRTA1からなる群より選択される遺伝子に関する欠損(MTAP;CDKN2B;CDKN2A;およびDMRTA1からなる群より選択される1個以上の遺伝子のコピー数の減少など)に関連するものである。第六の態様において、サブポピュレーションは、血液学的悪性腫瘍がBCL2;AOC1;BOC;DDX3X;CRYBG3;SLFN5;ETNK2;BRCA2;USP22;KIAA1683;およびAP4E1からなる群より選択される遺伝子の変異に関連するものである。第七の態様において、サブポピュレーションは、血液学的悪性腫瘍がTULP3;PAN3;AC073343.11.1;PHF2;KLHDC1;BRCA2;またはWRNの高度発現に関連するものである。これらのサブポピュレーションのそれぞれは、サトラプラチンを使用する血液学的悪性腫瘍の処置から特別な利益を得ることができる、新たに特定される患者群を代表する。
【0051】
本発明の第八および第九の態様は、免疫チェックポイント療法に非反応性のがんの処置において第二選択療法としてサトラプラチンが用いられる、処置方法および医薬用途を対象とする。
【0052】
問題のがんは、免疫チェックポイント療法に反応しなくなった可能性もあり、あるいは、免疫チェックポイント療法に一度も反応したことがない可能性もある。
【0053】
サトラプラチンが第二選択療法として用いられるがんは、以前に抗PD-1および/または抗PD-L1治療剤により処置されていた可能性がある。例えば、がんは以前にペムブロリズマブにより処置されていた可能性がある。
【0054】
9p21遺伝子座の全部または一部の喪失により、免疫チェックポイント療法が無効になるように、腫瘍微小環境内の免疫応答が変化し得ることが知られている(Han et al., Nat Commun. 2021 Sep 23;12(1):5606)。本発明のこの態様は、そのような変化がまた、サトラプラチンへのがん細胞の感受性を高めるという本発明者らの新たな観察に基づいている。したがって、サトラプラチンは免疫チェックポイント療法に反応しないがんの処置において有用であり、他の方法では臨床的に管理することが困難であると判明し得るこれらのがんのさらなる処置のための重要な機会を患者に提供する。当業者は、適当なインビトロアッセイの使用を含め、がんが免疫チェックポイント療法に非反応性であることを判定できる方法を特定することができる。
【0055】
好適に、本発明の第八または第九の態様に従う処置から利益を得る可能性があるがんは、本開示の別の箇所に記載されている固形腫瘍などの、固形腫瘍であり得る。あるいは、がんは血液学的悪性腫瘍であり得る。
【0056】
患者層別化および処置レジメンの選択
本発明の第十の態様は、血液学的悪性腫瘍の管理における使用のための適当な処置コースを決定するのに使用され得る方法に関する。特に、本発明のこの態様は、血液学的悪性腫瘍がサトラプラチンに有利に反応する可能性が高いか否かについて判定できる方法を提供する。
【0057】
本発明の第十の態様の方法は、血液学的悪性腫瘍の細胞がサトラプラチンに感受性があるか否かを予測することができる、9p21遺伝子座に位置する遺伝子(MTAP、CDKN2B、CDKN2A、またはDMRTA1など);BCL2;TULP3;AOC1;BOC;DDX3X;CRYBG3;SLFN5;ETNK2;BRCA2;USP22;KIAA1683;AP4E1;PAN3;AC073343.11.1;PHF2;KLHDC1;およびWRNからなる群より選択される遺伝子に関連する変化を本発明者らが同定したことを再度利用する。本発明のこの態様の場合において、この情報は、そのような変化が認められる血液学的悪性腫瘍がサトラプラチンによる処置によく反応する可能性が高いことを決定するために使用される。
【0058】
本発明の第十の態様の適当な実施態様において、遺伝子は9p21遺伝子座に位置する遺伝子であり、そして解析により当該遺伝子に関して欠損が存在するか否かを判定する。例えば、遺伝子はMTAP;CDKN2B;CDKN2A;およびDMRTA1からなる群より選択され得て、そして解析により、これらの遺伝子の1個以上に欠損があるか否かを判定する。
【0059】
本発明の第十の態様の適当な実施態様において、遺伝子は9p21遺伝子座に位置する遺伝子であり、そして解析により当該遺伝子のコピー数の減少を同定する。例えば、遺伝子はMTAP;CDKN2B;CDKN2A;およびDMRTA1からなる群より選択され得て、そして解析により、当該遺伝子のコピー数の減少を同定する。そのような実施態様において、血液学的悪性腫瘍は、バーキットリンパ腫;DLBCL;CTCL;多発性骨髄腫;ALCL ALK+;およびマントル細胞リンパ腫からなる群より適当に選択され得る。
【0060】
本発明の第十の態様の適当な実施態様において、遺伝子はBCL2;AOC1;BOC;DDX3X;CRYBG3;SLFN5;ETNK2;BRCA2;USP22;KIAA1683;およびAP4E1からなる群より選択され、そして解析により当該遺伝子の変異を同定する。解析が行われ得る変異の具体例は、本明細書の別の箇所に記載する。これらの実施態様において、血液学的悪性腫瘍は、バーキットリンパ腫;DLBCL;およびALCL ALK+からなる群より適当に選択され得る。
【0061】
本発明のこの態様のさらに適当な実施態様において、遺伝子はTULP3;PAN3;AC073343.11.1;PHF2;KLHDC1;BRCA2;およびWRNからなる群より選択され、そして解析により当該遺伝子の高度発現を同定する。
【0062】
上記の方法は、血液学的悪性腫瘍の細胞を死滅させる処置を同定し、それにより疾患の処置を提供することを意図している。
【0063】
本発明の第十の態様に従う方法は、患者への適切な処置コースを選択するステップを含み得る。そのような方法は、方法の結果に基づいて、患者への処置を処方するステップを含み得る。
【0064】
本発明の第十の態様に従う方法はまた、適当な実施態様において、適当であるとして同定された薬剤を使用する処置を提供するさらなるステップを含み得る。したがって、本発明の第十の態様の方法は、到達した結果に応じて、サトラプラチンによる処置を提供するさらなるステップを任意選択的に含み得る。
【0065】
血液学的悪性腫瘍の診断に有用な方法
本発明の第十一および第十二の態様はいずれも、血液学的悪性腫瘍の細胞を解析する方法を提供する。これらの方法は、血液学的悪性腫瘍を患う患者にケアを提供する臨床医または他の関係者にとって有用であり得る。
【0066】
第十一の態様の方法において、解析は、9p21遺伝子座に位置する遺伝子(MTAP、CDKN2B、CDKN2A、またはDMRTA1など);BCL2;TULP3;AOC1;BOC;DDX3X;CRYBG3;SLFN5;ETNK2;BRCA2;USP22;KIAA1683;AP4E1;PAN3;AC073343.11.1;PHF2;KLHDC1;およびWRNからなる群より選択される少なくとも1個の遺伝子に関して行われる。解析は、前記の少なくとも1個の遺伝子に関連する変化を同定するために実施され得る。
【0067】
遺伝子が9p21遺伝子座に位置する遺伝子(MTAP、CDKN2B、CDKN2A、またはDMRTA1など)である場合、解析は、選択された遺伝子に関して欠損が存在するか否かを判定することを含み得る。本発明の文脈における欠損、およびそれらを解析し得る方法については、本開示の別の箇所に記載する。
【0068】
例として、遺伝子が9p21遺伝子座に位置する遺伝子(MTAP、CDKN2B、CDKN2A、またはDMRTA1など)であるとき、解析は、コピー数の変化を評価することを含み得て、そして変化が存在するときはコピー数の変化を同定することを含み得る。本発明の目的のために、コピー数の喪失は、問題の遺伝子に関する欠損を構成するとみなされ得る。そのような実施態様において、血液学的悪性腫瘍は、バーキットリンパ腫;DLBCL;CTCL;多発性骨髄腫;ALCL ALK+;およびマントル細胞リンパ腫からなる群より選択され得る。
【0069】
遺伝子がBCL2;AOC1;BOC;DDX3X;CRYBG3;SLFN5;ETNK2;BRCA2;USP22;KIAA1683;およびAP4E1からなる群より選択されるとき、解析は、当該遺伝子の変異についてアッセイすることを含む。これらの遺伝子の特定の変異は本明細書の別の箇所に記載され、本発明のこの態様に従う方法を実施する際に開示されている特定の変異の1個以上の有無を判定するために、これらの遺伝子の1個以上が解析され得る。この種の発明の実施態様において、血液学的悪性腫瘍は、バーキットリンパ腫;DLBCL;およびALCL ALK+からなる群より選択され得る。
【0070】
遺伝子がTULP3;PAN3;AC073343.11.1;PHF2;KLHDC1;BRCA2;およびWRNからなる群より選択されるとき、解析は、遺伝子の高度発現をアッセイすることを含む。そのような解析を行う際に使用され得る方法は、本開示の別の箇所で説明されている。
【0071】
解析が「ポジティブ」(つまり、解析は、適宜、欠損(コピー数の変化、遺伝子発現の減少、または遺伝子発現の欠如など)の存在、変異の存在、または高度発現の存在を示す)である場合において、これは問題の血液学的悪性腫瘍が、サトラプラチンによる処置から利益を得られることを示し得る。
【0072】
本発明の第十一および第十二の態様の方法は、試験される血液学的悪性腫瘍の細胞を得るステップを任意選択的にさらに含み得る。細胞は血液サンプルの一部として得られ、または当業者に知られている他の適当な手段によって得ることができる。
【0073】
本発明のバイオマーカーパネル
本発明の第十三および第十四の態様は、シグネチャーバイオマーカーパネルを提供し、血液学的悪性腫瘍のサンプル中のこれらの存在により、悪性腫瘍がサトラプラチンによる処置に感受性があることを特徴付けることができる。
【0074】
本発明の第十三の態様のバイオマーカーパネルは、サトラプラチン処置への感受性を示す多数の遺伝子関連変化を参照して定められる。そのような変化はMTAP;CDKN2B;CDKN2A;およびDMRTA1からなる群より選択される少なくとも1個の遺伝子のコピー数の喪失を含む。それとは別にまたはそれに加えて、そのような変化はBCL2;AOC1;BOC;DDX3X;CRYBG3;SLFN5;ETNK2;BRCA2;USP22;KIAA1683;およびAP4E1からなる群より選択される少なくとも1個の遺伝子の変異を含み得る。その変化はさらにまたは代替として、TULP3;PAN3;AC073343.11.1;PHF2;KLHDC1;BRCA2;およびWRNからなる群より選択される少なくとも1個の遺伝子の高度発現を含む。
【0075】
本発明の第十四の態様のバイオマーカーパネルは、サトラプラチンによる処置への血液学的悪性腫瘍の感受性を示す多数の遺伝子変異の1個以上の存在を参照して定められ、これらの変異は表1および2に示されている。
【0076】
本発明のシグネチャーバイオマーカーパネルは、これら処置を容易にする方法で血液学的状態の特徴付けに有用である、新たに同定されたバイオマーカーの組合せを提供する。これらの組合せ、およびサトラプラチンによる処置への血液学的状態の感受性を判定することにおけるそれらの関連性は、これまで認識されていないか、または、報告されていない。
【0077】
本発明の第十三または第十四の態様のいずれかに従うバイオマーカーパネルは、表1および2に挙げられているマーカーの少なくとも1個を含み、そして表1および2に挙げられているマーカーのすべてを含み得る。
【0078】
関連するバイオマーカーは、本発明の開示と組み合わせて検討される、目的の血液学的悪性腫瘍の診断(組織学または遺伝子マーカーを介する方法など、従来の方法を用いて実施され得る)に基づいて適当に決定され得る。
【0079】
本発明のバイオマーカーパネルは、目的の血液学的悪性腫瘍に関する表1および2に挙げられているマーカーのすべてを含んでよく、またはそのようなマーカーのサブセットを含んでよい。
【0080】
単なる例として、血液学的悪性腫瘍であるDLBCL NOS (GCB)に関する使用する使用のバイオマーカーパネルは、
●BCL2;AOC1;BOC;DDX3X;CRYBG3;ETNK2;SLFN5;BRCA2;FRG1B;KIAA1683;USP22;およびAP4E1からなる群より選択される遺伝子における1個以上の変異および/または
●MTAP;CDKN2B;およびCDKN2Aからなる群より選択される1個以上の遺伝子に関するコピー数の喪失、またはコピー数の減少
を含み得る。
【0081】
本発明のこの実施態様に従うバイオマーカーパネルは、1個以上、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、10個以上、11個以上の上記変異を含み得る。好適には、そのようなバイオマーカーパネルは上記のすべての変異を含み得る。
【0082】
これとは別にまたはこれに加えて、本発明のこの実施態様に従うバイオマーカーパネルは、1個以上、または2個以上の上記コピー数の喪失を含み得る。好適に、そのようなバイオマーカーパネルは、上記コピー数の喪失を含み得る。
【0083】
血液学的悪性腫瘍であるDLBCL NOS (ABC)に関する使用のためのバイオマーカーパネルは、
●BCL2;およびDDX3Xからなる群より選択される遺伝子における1個以上の変異
を含み得る。
【0084】
本発明のこの実施態様に従うバイオマーカーパネルは、上記変異の一方または両方を含み得る。
【0085】
血液学的悪性腫瘍であるバーキットリンパ腫に関する使用のためのバイオマーカーパネルは、
●BCL2;AOC1;BOC;DDX3X;BRCA2;FRG1B;USP22;およびAP4E1からなる群より選択される遺伝子における1個以上の変異および/または
●MTAP、CDKN2B、CDKN2AおよびDMRTA1のそれぞれに関するコピー数の喪失、またはコピー数の減少
を含み得る。
【0086】
本発明のこの実施態様に従うバイオマーカーパネルは、1個以上、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、または7個以上の上記変異を含み得る。好適に、そのようなバイオマーカーパネルは上記のすべての変異を含み得る。
【0087】
これとは別にまたはこれに加えて、本発明のこの実施態様に従うバイオマーカーパネルは、1個以上、2個以上、または3個以上の、上記コピー数の喪失を含み得る。好適に、そのようなバイオマーカーパネルは上記のすべてのコピー数の喪失を含み得る。
【0088】
血液学的悪性腫瘍であるALCL ALK+に関する使用のためのバイオマーカーパネルは、
●DDX3X;SLFN5;およびAP4E1からなる群より選択される遺伝子における1個以上の変異および/または
●MTAP、CDKN2B、CDKN2AおよびDMRTA1のそれぞれに関するコピー数の喪失、またはコピー数の減少
を含み得る。
【0089】
本発明のこの実施態様に従うバイオマーカーパネルは、上記1個以上または2個以上の変異を含み得る。好適に、そのようなバイオマーカーパネルは、上記のすべての変異を含み得る。
【0090】
これとは別にまたはこれに加えて、本発明のこの実施態様に従うバイオマーカーパネルは、上記1個以上、2個以上または3個以上のコピー数の喪失を含み得る。好適に、そのようなバイオマーカーパネルは、上記のすべてのコピー数の喪失を含み得る。
【0091】
血液学的悪性腫瘍である多発性骨髄腫に関する使用のためのバイオマーカーパネルは、
●BRCA2;およびFRG1Bからなる群より選択される遺伝子における1個以上の変異および/または
●MTAP;CDKN2B;およびCDKN2Aからなる群より選択される1個以上の遺伝子に関する、コピー数の喪失、またはコピー数の減少
を含み得る。
【0092】
本発明のこの実施態様に従うバイオマーカーパネルは、上記変異の一方または両方を含み得る。
【0093】
これとは別にまたはこれに加えて、本発明のこの実施態様に従うバイオマーカーパネルは、上記コピー数の喪失の1個以上、または2個以上を含み得る。好適に、そのようなバイオマーカーパネルは上記のすべてのコピー数の喪失を含み得る。
【0094】
血液学的悪性腫瘍であるマントル細胞リンパ腫に関する使用のためのバイオマーカーパネルは、
●FRG1Bにおける1個以上の変異および/または
●MTAP、CDKN2B、CDKN2AおよびDMRTA1のそれぞれに関するコピー数の喪失、またはコピー数の減少
を含み得る。
【0095】
本発明のこの実施態様に従うバイオマーカーパネルは、上記コピー数の喪失の1個以上、2個以上、または3個以上を含む。好適に、そのようなバイオマーカーパネルはすべての上記コピー数の喪失を含み得る。
【0096】
これとは別にまたはこれに加えて、そのようなバイオマーカーパネルはまた、上に示されている変異を含み得る。
【0097】
血液学的悪性腫瘍であるCTCLに関する使用のためのバイオマーカーパネルは、
●MTAP、CDKN2B、CDKN2AおよびDMRTA1のそれぞれに関するコピー数の喪失、またはコピー数の減少
を含み得る。
【0098】
本発明のこの実施態様に従うバイオマーカーパネルは、コピー数の喪失の1個以上、2個以上、または3個以上を含み得る。好適に、そのようなバイオマーカーパネルは上記のすべてのコピー数の喪失を含み得る。
【0099】
血液学的悪性腫瘍の細胞は、本発明に従うバイオマーカーパネルの1個以上のマーカーを含み得る。そのようなマーカーの存在は、血液学的悪性腫瘍がサトラプラチンによる処置に感受性があることを特徴付けることができる。あるいは、血液学的悪性腫瘍の細胞が本発明に従うバイオマーカーパネルの1個以上マーカーを含まない場合、これは血液学的悪性腫瘍がサトラプラチンによる処置に感受性がないことを特徴付けることができる。挙げられている特定の血液学的悪性腫瘍に関連するバイオマーカーパネルに関して上に示されている検討事項はまた、そのような悪性腫瘍を代表する細胞に存在し得るバイオマーカーに適応できる。
【0100】
目的の遺伝子または遺伝子座に関連する変化:変異、高度発現、および遺伝子欠損、および遺伝子座喪失
本発明者らは、血液学的悪性腫瘍の細胞内に存在するとき、血液学的悪性腫瘍を処置するために使用され得る適当な処置レジメンに関する有用なガイダンスを提供する多数の遺伝子関連変化を同定した。これらの変化は、遺伝子の変異、遺伝子の高度発現、および遺伝子の欠損を含む。これらのそれぞれを、さらに下に定義する。
【0101】
遺伝子関連変化は、目的の遺伝子に関して、単独で、または独立して選択される組合せで、調べることができる。
【0102】
本発明者らはまた、特定の遺伝子座の喪失がサトラプラチンへの血液学的悪性腫瘍の感受性における有益な変化に関連することを同定した。この喪失は、本明細書で言及されている遺伝子関連変化の1個以上と組み合わせて調べることができる。
【0103】
本発明者らにより同定された例示的な変化の具体的な詳細は下に示され、そして本発明の多様な態様および実施態様におけるこれらの遺伝子に関連する適切な変化を解釈するとき、文脈上別段の必要がない限り、下の段落における考察事項を用いるべきである。
【0104】
9p21遺伝子座または関連遺伝子の喪失
本発明者らは、血液学的悪性腫瘍の細胞における9p21遺伝子座の喪失が、サトラプラチンへの悪性腫瘍の感受性における増加に関連することを見出した。したがって、9p21遺伝子座の喪失、またはこの遺伝子座に関連する遺伝子の喪失は、血液学的悪性腫瘍がサトラプラチンによる処置によく反応することを示す指標として用いられ得る。
【0105】
変異
本発明者らは、血液学的悪性腫瘍の細胞に存在するBCL2;AOC1;BOC;DDX3X;CRYBG3;SLFN5;ETNK2;BRCA2;USP22;KIAA1683;およびAP4E1の1個以上の遺伝子における変異が、これらの細胞がサトラプラチンへの感受性を増大させることを示し、したがってこの化合物が血液学的悪性腫瘍の処置において効果的に使用され得ることを同定した。
【0106】
目的のこれらの遺伝子のいずれかに関する変異は、野生型遺伝子と比較して血液学的悪性腫瘍の細胞において存在する遺伝子におけるあらゆる変化であり得る。そのような変化はタンパク質遺伝子産物における変化を引き起こさなくてもよく(「サイレント」変異)、あるいは遺伝子産物において検出可能な変化を引き起こしてよい。遺伝子変異の解析は、遺伝子または遺伝子転写物の核酸配列における変化の存在を判定することにより実施され得るか、または遺伝子産物における変化の存在を判定することにより実施され得る(本目的では、遺伝子産物の非存在を判定することも含み得る)。
【0107】
一例として、変異は、野生型遺伝子(またはその転写物)と比較して、遺伝子または遺伝子転写物の核酸配列における以下の変化の1個以上を含み得る:欠失;挿入;置換;またはトランケーション(truncation)(特に遺伝子転写物に関する)。そのような変異は、遺伝子転写物または遺伝子産物に変化をもたらし得るか、または代替遺伝子産物が生成されるように遺伝子転写物のスプライシングを変化させる(例えば、スプライスアクセプターバリアントを生成する)など転写または翻訳プロセスを変化させ得る。
【0108】
同様に、変異は、野生型遺伝子の産物の配列と比較して、遺伝子産物のアミノ酸配列における以下の変化の1個以上を含み得る:欠失;挿入;置換;トランケーション;または遺伝子産物の欠如。
【0109】
変異は、BCL2;AOC1;BOC;DDX3X;CRYBG3;SLFN5;ETNK2;BRCA2;USP22;KIAA1683;およびAP4E1からなる群より独立して選択される1個以上の遺伝子に関して解析され得る。好適に、解析される変異は、BCL2および/またはAOC1および/またはBOCおよび/またはDDX3Xおよび/またはCRYBG3および/またはSLFN5および/またはETNK2および/またはBRCA2および/またはUSP22および/またはKIAA1683および/またはAP4E1に関する。
【0110】
適当な実施態様において、変異はBCL2に関する。適当な実施態様において、変異はAOC1に関する。適当な実施態様において、変異はBOCに関する。適当な実施態様において、変異はDDX3Xに関する。適当な実施態様において、変異はCRYBG3に関する。適当な実施態様において、変異はSLFN5に関する。適当な実施態様において、変異はETNK2に関する。適当な実施態様において、変異はBRCA2に関する。適当な実施態様において、変異はUSP22に関する。適当な実施態様において、変異はKIAA1683に関する。適当な実施態様において、変異はAP4E1に関する。これらの場合のそれぞれにおいて、変異は、同定された遺伝子のみに関するか、または1個以上の他の遺伝子と組み合わせて同定された遺伝子に関して解析され得る。これらの場合のそれぞれにおいて、変異は、同定された遺伝子のみに関するか、または1個以上の他の遺伝子と組み合わせて同定された遺伝子に関して存在し得る。
【0111】
本発明者らが、特定の細胞株において、ひいてはこれらの細胞株が代表する血液学的悪性腫瘍において、サトラプラチン感受性に特に関連するとして同定した特定の変異の詳細を、表1および2に示す。
【0112】
本明細書を通して、BCL2、AOC1、BOC、DDX3X、CRYBG3、SLFN5、ETNK2、BRCA2、USP22、KIAA1683またはAP4E1に関する変異への言及は、文脈上別段の必要がない限り、表1および2に示されているこれらの多様な遺伝子に関する変異のいずれかを包含するものとしてみなされ得る。
【0113】
同様に、本明細書における血液学的悪性腫瘍の特定の形態について関連する変異への言及は、問題の血液学的悪性腫瘍を代表する細胞株に特に関連するものとして表1または表2において同定された変異のいずれかを包含するものとして解釈され得る。
【表1-1】


【表1-2】


【表1-3】


【表2-1】


【表2-2】


【表2-3】

【0114】
BCL2に関する変異は、DLBCL NOS (GCB);DLBCL NOS (ABC);およびバーキットリンパ腫からなる群より選択される血液学的悪性腫瘍について特に関連し得る。
【0115】
血液学的悪性腫瘍であるDLBCL NOS (GCB)について関連する、BCL2についての変異は以下から選択され得る:
●遺伝子産物の200位での変化を引き起こす変異、例えば遺伝子産物の200位でGからSへの変化を引き起こす18番染色体の60985302位でのGからAへの変化;
●遺伝子産物の48位での変化を引き起こす変異、例えば遺伝子産物の48位でIからFへの変化を引き起こす18番染色体の60985758位でのAからTへの変化;
●遺伝子産物の129位での変化を引き起こす変異、例えば遺伝子産物の129位でRからCへの変化を引き起こす18番染色体の60985515位でのCからTへの変化;
●遺伝子産物の59位での変化を引き起こす変異、例えば遺伝子産物の59位でPからTへの変化を引き起こす18番染色体の60985725位でのCからAへの変化;
●18番染色体の60985876位でのサイレント変異、例えばCからAへの変化;
●18番染色体の60985357位でのサイレント変異、例えばCからGへの変化;
●遺伝子産物の59位での変化を引き起こす変異、例えば遺伝子産物の59位でPからLへの変化を引き起こす18番染色体の6098572位でのGからAへの変化;
●18番染色体の60985351位でのサイレント変異、例えばCからGへの変化;
●遺伝子産物の47位での変化を引き起こす変異、例えば遺伝子産物の47位でGからDへの変化を引き起こす18番染色体の60985760位でのCからTへの変化;
●遺伝子産物を発現させなくする変異、例えば18番染色体の60986612位でのAからCへの変化;
●遺伝子産物を発現させなくする変異、例えば18番染色体の60986384位でのAの欠失;および
●遺伝子産物の4位での変化を引き起こす変異、例えば遺伝子産物の4位でAからTへの変化を引き起こす18番染色体の60985890位でのCからTへの変化。
【0116】
血液学的悪性腫瘍であるDLBCL NOS (ABC)について関連する、BCL2についての変異は以下から選択され得る:
●遺伝子産物の198位での変化を引き起こす変異、例えば遺伝子産物の198位でのAからVへの変化を引き起こす18番染色体の60985307位でのCからTへの変化。
【0117】
血液学的悪性腫瘍であるバーキットリンパ腫について関連する、BCL2についての変異は以下から選択され得る:
●18番染色体の60985521位でのサイレント変異、例えばGからTへの変化;
●18番染色体の60985549位でのサイレント変異、例えばGからAへの変化;
●18番染色体の60985492位でのサイレント変異、例えばCからTへの変化;
●18番染色体の60985399位でのサイレント変異、例えばCからTへの変化;
●18番染色体の60985480位でのサイレント変異、例えばGからAへの変化;
●18番染色体の60985410位でのサイレント変異、例えばGからTへの変化;および
●18番染色体の60985348位でのサイレント変異、例えばGからAへの変化。
【0118】
BCL2遺伝子の変異がサトラプラチンへの感受性の増大に関連するという発明者らの発見は、これまでこのような変異はシスプラチンなどの他の白金ベースの化学療法化合物への感受性のマーカーとしては同定されていないので、驚くべきものである。実際に、サトラプラチンによる処置への血液学的悪性腫瘍の感受性を示すものとして本発明者らにより同定された変異の多くは、より一般的な白金ベースの化学療法よりはむしろ、この薬剤に関する感受性に特異的であると考えられる。
【0119】
AOC1についての変異は、多発性骨髄腫;DLBCL NOS (GCB);およびバーキットリンパ腫からなる群より選択される血液学的悪性腫瘍について特に関連し得る。
【0120】
血液学的悪性腫瘍である多発性骨髄腫について関連する、AOC1についての変異は以下から選択され得る:
●遺伝子産物の235位での変化を引き起こす変異、例えば遺伝子産物の235位でQからEへの変化を引き起こす7番染色体の150554261位でのCからGへの変化(下で言及するとおり、2つの異なる多発性骨髄腫細胞株、およびバーキットリンパ腫で認められる変異)。
【0121】
血液学的悪性腫瘍であるDLBCL NOS (GCB)について関連する、AOC1についての変異は以下から選択され得る:
●遺伝子産物の113位での変化を引き起こす変異、例えば遺伝子産物の113位でEからKへの変化を引き起こす7番染色体の150553895位でのGからAへの変化;および
●7番染色体の150554662位でのサイレント変異、例えばGからAへの変化。
【0122】
血液学的悪性腫瘍であるバーキットリンパ腫について関連する、AOC1についての変異は以下から選択され得る:
●遺伝子産物の235位での変化を引き起こす変異、例えば遺伝子産物の235位でQからEへの変化を引き起こす7番染色体の150554261位でのCからGへの変化(2つの異なる多発性骨髄腫細胞株でも認められる変異)。
【0123】
BOCについての変異は、DLBCL NOS (GCB);およびバーキットリンパ腫からなる群より選択される血液学的悪性腫瘍について特に関連し得る。
【0124】
血液学的悪性腫瘍であるDLBCL NOS (GCB)について関連する、BOCについての変異は以下から選択され得る:
●遺伝子産物の331位での変化を引き起こす変異、例えば遺伝子産物の331位でのQからKへの変化を引き起こす3番染色体の112991945位でのCからAへの変化;および
●3番染色体の112993352位でのサイレント変異、例えばGからAへの変化。
【0125】
血液学的悪性腫瘍であるバーキットリンパ腫について関連する、BOCについての変異は以下から選択され得る:
●遺伝子産物の292位での変化を引き起こす変異、例えば遺伝子産物の292位でEからQへの変化を引き起こす3番染色体の112991463位でのGからCへの変化。
【0126】
DDX3Xについての変異は、DLBCL NOS (ABC);DLBCL NOS (GCB);バーキットリンパ腫;およびALCL ALK+からなる群より選択される血液学的悪性腫瘍について特に関連し得る。
【0127】
血液学的悪性腫瘍であるDLBCL NOS (ABC)について関連する、DDX3Xについての変異は以下から選択され得る:
●遺伝子産物の603位での変化を引き起こす変異、例えば遺伝子産物の603位でRからQへの変化を引き起こす染色体Xの41206603位でのGからAへの変化。
【0128】
血液学的悪性腫瘍であるDLBCL NOS (GCB)について関連する、DDX3Xについての変異は以下から選択され得る:
●遺伝子産物の472位での変化を引き起こす変異、例えば遺伝子産物の472位でのHからLへの変化を引き起こす染色体Xの41205581位でのAからTへの変化;
●遺伝子産物の529位での変化を引き起こす変異、例えば遺伝子産物の529位でIからLへの変化を引き起こす染色体Xの41205845位でのAからCへの変化;
●遺伝子産物の537位での変化を引き起こす変異、例えば遺伝子産物の537位でのNからDへの変化を引き起こす染色体Xの41205869でのAからGへの変化;
●遺伝子産物を発現させなくする変異、例えばスプライスアクセプターバリアントの形成を引き起こす染色体Xの41203490位での変化;および
●遺伝子産物を発現させなくする変異、例えばスプライスサイトの改変を引き起こす染色体Xの41203654T位でのTからCへの変化。
【0129】
血液学的悪性腫瘍であるバーキットリンパ腫について関連する、DDX3Xについての変異は以下から選択され得る:
●染色体Xの41204526位でのサイレント変異、例えばGからAへの変化;
●遺伝子産物の653位での変化を引き起こす変異、例えば遺伝子産物の653位でのNからSへの変化を引き起こす染色体Xの41206941位でのAからGへの変化;
●染色体Xの41202597位でのサイレント変異、例えばCからTへの変化;
●染色体Xの41204511位でのサイレント変異、例えばTからCへの変化;
●染色体Xの41206933位でのサイレント変異、例えばAからGへの変化;
●染色体Xの41202546位でのサイレント変異、例えばAからGへの変化;
●染色体Xの41205606位でのサイレント変異、例えばAからGへの変化;
●染色体Xの41205649位でのサイレント変異、例えばTからCへの変化;
●遺伝子産物を発現させなくする変異、例えば染色体Xの41204541位から41204542位までの欠失;
●遺伝子産物を発現させなくする変異、例えば染色体Xの41203654位でのTからGへの変化;
●染色体Xの41203518位でのサイレント変異、例えばTからCへの変化;
●染色体Xの41202498位でのサイレント変異、例えばCからTへの変化。
【0130】
血液学的悪性腫瘍であるPTCL、ALCL ALK+について関連する、DDX3Xについての変異は以下から選択され得る:
●遺伝子産物の567位での変化を引き起こす変異、例えば遺伝子産物の567位でVからMへの変化を引き起こす染色体Xの41206195位でのGからAへの変化。
【0131】
CRYBG3についての変異は、血液学的悪性腫瘍であるDLBCL NOS (GCB)について特に関連し得る。
【0132】
血液学的悪性腫瘍であるDLBCL NOS (GCB)について関連する、CRYBG3についての変異は以下から選択され得る:
●遺伝子産物の79位での変化を引き起こす変異、例えば遺伝子産物の79位でのHからRへの変化を引き起こす3番染色体の97596118位でのAからGへの変化;
●遺伝子産物の788位での変化を引き起こす変異、例えば遺伝子産物の788位でAからPへの変化を引き起こす3番染色体の97634545位でのGからCへの変化;および
●遺伝子産物の5位での変化を引き起こす変異、例えば遺伝子産物の5位でQからHへの変化を引き起こす3番染色体の97595897位でのAからCへの変化。
【0133】
ETNK2についての変異は、血液学的悪性腫瘍であるDLBCL NOS (GCB)について特に関連し得る。
【0134】
血液学的悪性腫瘍であるDLBCL NOS (GCB)について関連する、ETNK2についての変異は以下から選択され得る:
●遺伝子産物の265位での変化を引き起こす変異、例えば遺伝子産物の265位でRからQへの変化を引き起こす1番染色体の204109237位でのGからAへの変化;および
●遺伝子産物の222位での変化を引き起こす変異、例えば遺伝子産物の222位でVからGへの変化を引き起こす1番染色体の204110562位でのAからCへの変化。
【0135】
SLFN5についての変異は、多発性骨髄腫;DLBCL NOS (GCB);およびALCL ALK+からなる群より選択される血液学的悪性腫瘍について特に関連し得る。
【0136】
血液学的悪性腫瘍である多発性骨髄腫について関連する、SLFN5についての変異は以下から選択され得る:
●遺伝子産物の754位での変化を引き起こす変異、例えば遺伝子産物の754位でVからLへの変化を引き起こす17番染色体の33592491位でのGからCへの変化(2つの異なる多発性骨髄腫細胞株で認められる変異);および
●遺伝子産物の495位での変化を引き起こす変異、例えば遺伝子産物の495位でのCからRへの変化を引き起こす17番染色体の33591546位でのTからCへの変化(2つの異なる多発性骨髄腫細胞株で認められるもう1つの変異)。
【0137】
血液学的悪性腫瘍であるDLBCL NOS (GCB)について関連する、SLFN5についての変異は以下から選択され得る:
●遺伝子産物の697位での変化を引き起こす変異、例えば遺伝子産物の697位でのPからSへの変化を引き起こす17番染色体の33592320位でのCからTへの変化。
●遺伝子産物の612位での変化を引き起こす変異、例えば遺伝子産物の612位でNからKへの変化を引き起こす17番染色体の33591899位でのCからAへの変化。
【0138】
血液学的悪性腫瘍であるALCL ALK+について関連する、SLFN5についての変異は以下から選択され得る:
●遺伝子産物の578位での変化を引き起こす変異、例えば遺伝子産物の578位でGからDへの変化を引き起こす17番染色体の33591796位でのGからAへの変化。
【0139】
BRCA2についての変異は、バーキットリンパ腫;DLBCL NOS (GCB);および多発性骨髄腫からなる群より選択される血液学的悪性腫瘍について特に関連し得る。
【0140】
血液学的悪性腫瘍であるバーキットリンパ腫について関連する、BRCA2についての変異は以下から選択され得る:
●遺伝子産物のトランケーションを引き起こす変異、例えば3326位で遺伝子産物のトランケーションを引き起こす13番染色体の32972626位でのAからTへの変化;および
●遺伝子産物の448位での変化を引き起こす変異、例えば遺伝子産物の448位でRからCへの変化を引き起こす13番染色体の32906957位でのCからTへの変化。
【0141】
血液学的悪性腫瘍であるDLBCL NOS (GCB)について関連する、BRCA2についての変異は以下から選択され得る:
●遺伝子産物の326位での変化を引き起こす変異、例えば遺伝子産物の326位でSからRへの変化を引き起こす13番染色体の32906593位でのCからAへの変化;および
●遺伝子産物の3079位での変化を引き起こす変異、例えば遺伝子産物の3079位でVからLへの変化を引き起こす13番染色体の32954261位でのGからCへの変化。
【0142】
血液学的悪性腫瘍である多発性骨髄腫について関連する、BRCA2についての変異は以下から選択され得る:
●遺伝子産物の2668位での変化を引き起こす変異、例えば遺伝子産物の2668位でのRからGへの変化を引き起こす13番染色体の32937341位でのAからGへの変化。
【0143】
FRG1Bについての変異は、多発性骨髄腫;バーキットリンパ腫;DLBCL NOS (GCB);およびマントル細胞リンパ腫からなる群より選択される血液学的悪性腫瘍について特に関連し得る。
【0144】
血液学的悪性腫瘍である多発性骨髄腫について関連する、FRG1Bについての変異以下から選択され得る:
●遺伝子産物のトランケーションを引き起こす変異、例えば159位で遺伝子産物のトランケーションを引き起こす20番染色体の29632660位でのGからTへの変化(2つの異なる多発性骨髄腫細胞株およびDLBCL NOS (GCB)細胞株に関して認められる変異);および
●遺伝子産物の180位の変化を引き起こす変異、例えば遺伝子産物の180位でのEからGへの変化を引き起こす20番染色体の29633900位でのAからGへの変化(バーキットリンパ腫、4つの異なるDLBCL NOS (GCB)細胞株、およびマントル細胞リンパ腫に関しても認められる変異)。
【0145】
血液学的悪性腫瘍であるバーキットリンパ腫について関連する、FRG1Bについての変異は以下から選択され得る:
●遺伝子産物の180位での変化を引き起こす変異、例えば遺伝子産物の180位でEからGへの変化を引き起こす20番染色体の29633900位でのAからGへの変化(多発性骨髄腫、4つの異なるDLBCL NOS (GCB)細胞株、およびマントル細胞リンパ腫に関しても認められる変異);および
●遺伝子産物の41位での変化を引き起こす変異、例えば遺伝子産物の41位でAからTへの変化を引き起こす20番染色体の29625876位および29625877位のCGからTAへの変化。
【0146】
血液学的悪性腫瘍であるDLBCL NOS (GCB)について関連する、FRG1Bについての変異は以下から選択され得る:
●遺伝子産物の180位での変化を引き起こす変異、例えば遺伝子産物の180位でのEからGへの変化を引き起こす20番染色体の29633900位でのAからGへの変化(4つの異なるDLBCL NOS (GCB)細胞株、ならびに多発性骨髄腫、バーキットリンパ腫およびマントル細胞リンパ腫に関して認められる変異);および
●遺伝子産物のトランケーションを引き起こす変異、例えば159位で遺伝子産物のトランケーションを引き起こす20番染色体の29632660位でのGからTへの変化(2つの異なる多発性骨髄腫細胞株に関しても認められる変異)。
【0147】
血液学的悪性腫瘍であるマントル細胞リンパ腫について関連する、FRG1Bについての変異は以下から選択され得る:
●遺伝子産物の180位での変化を引き起こす変異、例えば遺伝子産物の180位でEからGへの変化を引き起こす20番染色体の29633900位でのAからGへの変化(多発性骨髄腫、バーキットリンパ腫、および4つの異なるDLBCL NOS (GCB)細胞株に関しても認められる変異)。
【0148】
KIAA1683についての変異は、血液学的悪性腫瘍であるDLBCL NOS (GCB)について特に関連し得る。
【0149】
DLBCL NOS (GCB)について関連する、KIAA1683についての変異は以下から選択され得る:
●遺伝子産物の1367位での変化を引き起こす変異、例えば遺伝子産物の1367位でのIからFへの変化を引き起こす19番染色体の18367995位でのAからTへの変化;および
●遺伝子産物の496位での変化を引き起こす変異、例えば遺伝子産物の496位でRからLへの変化を引き起こす19番染色体の18376863位でのGからTへの変化。
【0150】
USP22についての変異は、DLBCL NOS (GCB);およびバーキットリンパ腫からなる群より選択される血液学的悪性腫瘍について特に関連し得る。
【0151】
DLBCL NOS (GCB)について関連する、USP22についての変異は以下から選択され得る:
●遺伝子産物の96位での変化を引き起こす変異、例えば遺伝子産物の96位でAからVへの変化を引き起こす17番染色体の20931872位でのCからTへの変化;
●遺伝子産物のトランケーションを引き起こす変異、例えば421位で遺伝子産物のトランケーションを引き起こす17番染色体の20910270位でのTからAへの変化。
【0152】
バーキットリンパ腫について関連する、USP22についての変異は以下から選択され得る:
●17番染色体の20946086位でのサイレント変異、例えばCからAへの変化;
●17番染色体の20946041位でのサイレント変異、例えばCからTへの変化;
●遺伝子産物の19位での変化を引き起こす変異、例えば遺伝子産物の19位でのAからPへの変化を引き起こす17番染色体の20946094位でのCからGへの変化;および
●17番染色体の20907601位でのサイレント変異、例えばAからGへの変化。
【0153】
AP4E1についての変異は、ALCL ALK+;およびバーキットリンパ腫;およびDLBCL NOS (GCB)からなる群より選択される血液学的悪性腫瘍について特に関連し得る。
【0154】
ALCL ALK+について関連する、AP4E1についての変異は以下から選択され得る:
●遺伝子産物の33位での変化を引き起こす変異、例えば遺伝子産物の33位でSからFへの変化を引き起こす15番染色体の51201073位でのCからTへの変化。
【0155】
バーキットリンパ腫について関連する、AP4E1についての変異は以下から選択され得る:
●15番染色体の51226869位でのサイレント変異、例えばTからCへの変化。
【0156】
DLBCL NOS (GCB)について関連する、AP4E1についての変異は以下から選択され得る:
●15番染色体の51216153位でのサイレント変異、例えばAからGへの変化。
【0157】
高度発現
下の例で示されているとおり、ならびに既に記載されている本発明の多様な態様で示されているとおり、TULP3;PAN3;AC073343.11.1;PHF2;KLHDC1;BRCA2;およびWRNからなる群より選択される少なくとも1個の遺伝子の高度発現は、サトラプラチンによる処置への血液学的悪性腫瘍の感受性の増大に関連している。
【0158】
目的の遺伝子の高度発現は、高度転写および/または高度翻訳を参照して決定され得る。したがって、高度発現は遺伝子の転写を示すmRNAにおける増加および/または遺伝子の翻訳を示すタンパク質における増加によって示され得る。高度発現が解析され、そして同定され得る技術の適当な例を、より詳細に下に示す。文脈上別段の必要がない限り、これらの適当な技術のいずれかは、上で同定されたこの性質が注目され得る遺伝子のいずれかに関する高度発現を解析するために実施され得る。
【0159】
本発明の第一、第二、第三、第七、第十、第十一または第十三の態様の適当な実施態様において、高度発現は以下の遺伝子の1個以上に関して解析され得る:TULP3および/またはPAN3および/またはAC073343.11.1および/またはPHF2および/またはKLHDC1および/またはBRCA2および/またはWRN。
【0160】
好適に、高度発現はTULP3に関して解析され得る。好適に、高度発現はPAN3に関して解析され得る。好適に、高度発現はAC073343.11.1に関して解析され得る。好適に、高度発現はPHF2に関して解析され得る。好適に、高度発現はKLHDC1に関して解析され得る。好適に、高度発現はBRCA2に関して解析され得る。好適に、高度発現はWRNに関して解析され得る。これらの場合のそれぞれにおいて、高度発現は、同定された遺伝子のみに関するか、または1個以上の他の遺伝子と組み合わせて同定された遺伝子に関して解析され得る。これらの場合のそれぞれにおいて、高度発現は、同定された遺伝子のみに関するか、または1個以上の他の遺伝子と組み合わせて同定された遺伝子に関して存在し得る。
【0161】
目的の遺伝子の上昇は、任意の適当な比較対象を参照して評価され得る。当業者は、(例えば)、ハウスキーピング遺伝子、または健常な比較対象組織における目的の遺伝子の発現レベルを含み得る、適当な比較対象を容易に同定できる。
【0162】
目的の遺伝子の高度発現が存在すると評価され得るのは、適当な比較対象における発現よりも発現が少なくとも5%大きい、適当な比較対象における発現よりも発現が少なくとも10%大きい、少なくとも25%大きい、少なくとも50%大きい、少なくとも75%大きい、少なくとも100%大きいことを解析が示す場合である。単なる例として、目的の遺伝子の発現が、適当な比較対象における発現よりも少なくとも2倍大きいか、少なくとも3倍大きいか、少なくとも4倍大きいか、少なくとも5倍大きいか、または少なくとも10倍大きいことを解析が示すとき、高度発現が存在すると評価され得る。
【0163】
遺伝子の欠損
本発明の第五の態様は、MTAP;CDKN2B;CDKN2A;およびDMRTA1からなる群より選択される遺伝子の欠損に関連する血液学的悪性腫瘍における医薬用途のためのサトラプラチンに関する。
【0164】
本発明の第十一の態様は、9p21遺伝子座に位置する遺伝子を解析して欠損が存在するか否かを判定し得る方法に関する(これは、血液学的悪性腫瘍がサトラプラチン処置にどのように反応し得るかを決定することにおいて役に立つ)。
【0165】
9p21遺伝子座に位置する遺伝子(および特にMTAP、CDKN2B、CDKN2A、またはDMRTA1)の、欠損の存在についての解析もまた、第一、第二、第三、および第十の態様を含む(が、これらに限定されない)、本発明の他の態様の適当な実施態様を構成する。
【0166】
本目的では、遺伝子の「欠損」への言及は、遺伝子産物の機能が細胞内で失われるあらゆる手段を含む。これは、遺伝子そのものの喪失によるもの(例えば、コピー数の喪失によるもの)か、あるいは遺伝子産物の機能を低下させる遺伝子または遺伝子産物内の変化によるものであり得る。
【0167】
適当な実施態様において、遺伝子の欠損は、遺伝子のコピー数の喪失;遺伝子の転写または翻訳を低下させる変異または修飾;および遺伝子産物の機能を低下させる変異からなる群より選択される。単なる例として、「ストップ」変異(変異によって新規ストップコドンが導入される変異)はそのような変異の適当な実施態様を代表する。
【0168】
したがって、MTAP欠損の場合において、これは、MTAP遺伝子のコピー数の喪失;MTAP遺伝子の転写または翻訳を低下させる変異または修飾;およびMTAP遺伝子産物の機能を低下させる変異からなる群より選択され得る。
【0169】
CDKN2B欠損の場合において、これは、CDKN2B遺伝子のコピー数の喪失;CDKN2B遺伝子の転写または翻訳を低下させる変異または修飾;およびCDKN2B遺伝子産物の機能を低下させる変異からなる群より選択され得る。
【0170】
CDKN2A欠損の場合において、これは、CDKN2A遺伝子のコピー数の喪失;CDKN2A遺伝子の転写または翻訳を低下させる変異または修飾;およびCDKN2A遺伝子産物の機能を低下させる変異からなる群より選択され得る。
【0171】
DMRTA1欠損の場合において、これは、DMRTA1遺伝子のコピー数の喪失;DMRTA1遺伝子の転写または翻訳を低下させる変異または修飾;およびDMRTA1遺伝子産物の機能を低下させる変異からなる群より選択され得る。
【0172】
好適に、欠損についての解析は、MTAPなどの遺伝子の、コピー数の喪失;および/または転写または翻訳を低下させる変異または修飾;および/または機能を低下させる変異を同定するために実施され得る。このような変化の1個以上が認められたとき、欠損が存在すると判定され得る。
【0173】
単なる例として、目的の遺伝子の転写または翻訳における低下に関して評価される欠損は、関連するパラメーターの少なくとも5%の低下、少なくとも10%の低下、少なくとも20%の低下、または少なくとも30%の低下を引き起こし得る。欠損は、関連するパラメーターの少なくとも40%の低下、少なくとも50%の低下、少なくとも60%の低下、少なくとも70%の低下またはそれより高い程度の低下を引き起こし得る。適当な実施態様において、欠損は適当な比較対象と比較して、完全な喪失(100%の低下)であり得る。
【0174】
コピー数の喪失
上記より、目的の遺伝子に関するコピー数の喪失、またはコピー数の減少は、そのような遺伝子に関する欠損に関連性の高い実施態様であることが理解される。
【0175】
下の例において示されているとおり、本発明者らは目的の遺伝子に関するコピー数の喪失、またはコピー数の減少が、サトラプラチンへの血液学的悪性腫瘍の感受性の増大に関連し得ることを見出した。好適に、コピー数の喪失は、9p21遺伝子座に位置する少なくとも1個の遺伝子のコピー数の喪失であり得る。そのような遺伝子の例は、MTAP;CDKN2B;CDKN2A;およびDMRTA1からなる群より選択される遺伝子を含む。したがって、コピー数の喪失は、MTAPおよび/またはCDKN2Bおよび/またはCDKN2Aおよび/またはDMRTA1に関して解析され得る。
【0176】
適当な実施態様において、コピー数の喪失はMTAPに関する。適当な実施態様において、コピー数の喪失はCDKN2Bに関する。適当な実施態様において、コピー数の喪失は、CDKN2Aに関する。適当な実施態様において、コピー数の喪失はDMRTA1に関する。これらの場合のそれぞれにおいて、コピー数の喪失は、同定された遺伝子のみに関するか、または1個以上の他の遺伝子と組み合わせて同定された遺伝子に関して解析され得る。これらの場合のそれぞれにおいて、コピー数の喪失は、同定された遺伝子のみに関するか、または1個以上の他の遺伝子と組み合わせて同定された遺伝子に関して存在し得る。
【0177】
本発明者らは、サトラプラチン感受性の血液学的悪性腫瘍において、上に挙げられている遺伝子間でのコピー喪失の保有率は、最も高いものから最も低いものへの順に、MTAP、次にCDKN2B、次にCDKN2A、次にDMRTA1であることを見出した。したがって、適当な実施態様において、コピー数の喪失、またはコピー数の喪失の解析は、MTAPについてのみであり得る。別の適当な実施態様において、コピー数の喪失、またはコピー数の喪失の解析は、MTAPおよびCDKN2Bについてであり得る。さらに適当な実施態様において、コピー数の喪失、またはコピー数の喪失の解析は、MTAPおよびCDKN2Aについてであり得る。なおさらに適当な実施態様において、コピー数の喪失、またはコピー数の喪失の解析は、MTAPおよびCDKN2AおよびCDKN2Bについてであり得る。
【0178】
MTAP;CDKN2B;CDKN2A;およびDMRTA1からなる群より選択される1個以上の遺伝子に関するコピー数の喪失、またはコピー数の減少は、DLBCL;バーキットリンパ腫;多発性骨髄腫;CTCL;ALCL ALK+;およびマントル細胞リンパ腫からなる群より選択される血液学的悪性腫瘍についてサトラプラチンへの感受性の増大に関連し得る。
【0179】
DLBCLまたは多発性骨髄腫の場合において、サトラプラチンへの感受性の増大は、特に、MTAP;CDKN2B;およびCDKN2Aからなる群より選択される1個以上の遺伝子に関するコピー数の喪失、またはコピー数の減少によって示され得る。サトラプラチンへのDLBCLまたは多発性骨髄腫の感受性の増大は、特に、MTAP、CDKN2BおよびCDKN2Aのそれぞれに関するコピー数の喪失、またはコピー数の減少によって示され得る。
【0180】
バーキットリンパ腫、CTCL、マントル細胞リンパ腫、またはALCL ALK+の場合において、サトラプラチンへの感受性の増大は、特に、MTAP、CDKN2B、CDKN2AおよびDMRTA1のそれぞれに関するコピー数の喪失、またはコピー数の減少によって示され得る。
【0181】
遺伝子の解析
本発明は、血液学的悪性腫瘍の細胞に関連する遺伝子の解析を、多数の異なる状況において利用する。上述のとおり、これらは、9p21遺伝子座の喪失についての解析、欠損についての解析(例えば、遺伝子コピー数の喪失)、目的の遺伝子の(一般的な、あるいは特異的な)変異の存在についての解析、および遺伝子の高度発現についての解析を含む。
【0182】
解析は、患者由来の適当なサンプルについて実施される。このようなサンプルは、例えば、目的の血液学的悪性腫瘍の細胞であり得る。適当な細胞は、例えば、血液サンプルによって採取され得る。
【0183】
選択された解析方法により得られる結果は、適当な参照値と比較され、存在する遺伝子関連変化を同定し得る。
【0184】
9p21遺伝子座の喪失またはコピー数の喪失についての解析
9p21遺伝子座の喪失についての解析または目的の遺伝子に関するコピー数の喪失についての解析は、当業者に知られている任意の適当な技術を用いて実施され得る。コピー数の変化に関して調べられ得る遺伝子の例は、本明細書の別の箇所に示されている。
【0185】
単なる例として、適当な解析は以下の技術のいずれかを用いて実施され得る:全エクソームシークエンシング、全ゲノムシークエンシング、比較ゲノムハイブリダイゼーション(アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションを含む)、または蛍光in situハイブリダイゼーション。
【0186】
目的の遺伝子の変異についての解析
選択された遺伝子の変異についての解析、または1個以上の目的の特定の変異の存在を同定するための解析は、当業者に知られている任意の適当な手段によって実施され得る。そのような遺伝子の例、および本発明の多様な態様または実施態様に関連して調べられ得る特定の変異の例は、本明細書の別の箇所に示されている。
【0187】
例として、適当な解析は以下の技術のいずれかを用いて実施され得る:全エクソームシークエンシング、全ゲノムシークエンシング。
【0188】
目的の遺伝子の高度発現についての解析
目的の遺伝子の高度発現についての解析は、当業者に知られている任意の適当な手段によって実施され得る。高度発現を参照して解析され得る遺伝子の例は、本明細書の別の箇所に示されている。
【0189】
高度発現は、遺伝子転写の増加を示すmRNAの増加の存在について解析することにより判定され得るか、あるいは遺伝子産物を産生するための翻訳の増加を示すタンパク質レベルの増加の存在を解析することにより判定され得る。mRNAレベルに関して解析が実施される場合において、解析は目的の遺伝子の転写物のみに限定され得るか、あるいはトランスクリプトーム全体が解析され得て、結果を目的の遺伝子に関して比較し得る。
【0190】
単なる例として、適当な解析は以下の技術のいずれかを用いて実施され得る:RNAシークエンシング、例えば、次世代シークエンシング解析;定量RT-PCR;および免疫標識(関連する遺伝子産物に関して実施される)。
【0191】
目的の遺伝子に関する欠損についての解析
当業者は、目的の遺伝子に関する欠損を同定し得る、多くの適当な技術を知っている。当業者は、本発明を実施するために、そのような適当な技術のいずれかを利用し得る。
【0192】
上記のとおり、目的の遺伝子(9p21遺伝子座に位置する遺伝子を含む)における欠損は、遺伝子のコピー数の喪失;遺伝子の転写または翻訳を低下させる変異または修飾;または遺伝子産物の機能を低下させる変異を含む、1個以上の理由で生じ得る。適当な技術は、欠損の性質を参照して選択され得る。単なる例として、適当な解析は、以下の技術のいずれかを用いて実施され得る:RNAシークエンシング(上記のとおり)、定量RT-PCR;免疫標識。
【0193】
がんおよび血液学的悪性腫瘍
本発明の多様な態様は、様々ながん、特に血液学的悪性腫瘍の処置において有用であり得る処置方法、医薬用途、患者層別化方法、診断方法およびバイオマーカーパネルに関する。文脈上別段の必要がない限り、がんおよび血液学的悪性腫瘍に関してここに示されている検討事項は、本発明のすべての態様または実施態様に適応できると考えられるべきである。
【0194】
好適に、本発明の文脈における「がん」への言及は、下に記載されている血液学的悪性腫瘍に加えて、神経膠芽腫;びまん性神経膠腫;中皮腫:黒色腫;ならびに食道扁平上皮細胞がん;膀胱尿路上皮がん;膵臓腺がん;非小細胞性肺がん、頭頸部扁平上皮細胞がん;胆管がん;GEJ腺がん;肉腫;副腎皮質がん;腎臓がん;浸潤性乳がん;前立腺がん;および結腸直腸がんからなる群より選択される非血液学的がんも含むとみなされるべきである。
【0195】
しかしながら、本発明は、血液学的悪性腫瘍について特に関連する。血液学的悪性腫瘍はすべての血液がんを包含し、かつ、リンパ腫、骨髄腫および白血病を含み得る。特に、本発明の多様な態様および実施態様は、リンパ腫または骨髄腫に関連して有用であり得る。
【0196】
適当な実施態様において、骨髄腫は多発性骨髄腫である。
【0197】
適当な実施態様において、リンパ腫は成熟B細胞リンパ腫または成熟T細胞リンパ腫である。
【0198】
適当な実施態様において、リンパ腫または骨髄腫は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL);バーキットリンパ腫;マントル細胞リンパ腫;末梢性T細胞リンパ腫(PTCL);未分化大細胞型リンパ腫(ALCL);中枢神経系(CNS)の原発性DLBCL;二次性CNSリンパ腫(SCNSL);皮膚T細胞性リンパ腫;セザリー(Sezary)症候群;および多発性骨髄腫からなる群より選択される。
【0199】
成熟B細胞リンパ腫は、形質細胞骨髄腫(多発性骨髄腫);マントル細胞リンパ腫;バーキットリンパ腫;びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL);DLBL NOS;DLBCL NOS 胚中心B細胞型(GCB);DLBCL NOS 活性化B細胞型(ABC);中枢神経系(CNS)の原発性DLBCL;および二次性CNSリンパ腫(SCNSL)からなる群より選択され得る。
【0200】
好適に、成熟B細胞リンパ腫は、中枢神経系(CNS)の原発性DLBCLであり得る。
【0201】
好適に、成熟B細胞リンパ腫は、C5タイプまたはMCDサブタイプDLBCLであり得る。
【0202】
好適に、前記成熟T細胞リンパ腫は、末梢性T細胞リンパ腫(PTCL);PTCL NOS;未分化大細胞型T細胞リンパ腫(ALCL);未分化大細胞型T細胞リンパ腫;ALK+(ALK+ ALCL);皮膚T細胞リンパ腫(CTCL);セザリー症候群;および原発性皮膚CD30+T細胞リンパ増殖性障害からなる群より選択され得る。
【0203】
好適に、前記成熟T細胞新生物は、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)であり得る。
【0204】
血液学的悪性腫瘍であるDLBCL NOS(GCB)の場合において、サトラプラチンへの感受性の増大は、BCL2;AOC1;BOC;DDX3X;CRYBG3;ETNK2;SLFN5;BRCA2;FRG1B;KIAA1683;USP22;およびAP4E1からなる群より選択される遺伝子における1個以上の変異の存在に関連し得て、かつ/または、サトラプラチンへの感受性の増大は、MTAP;CDKN2B;およびCDKN2Aからなる群より選択される1個以上の遺伝子に関するコピー数の喪失、またはコピー数の減少に関連し得る。
【0205】
血液学的悪性腫瘍であるDLBCL NOS(ABC)の場合、サトラプラチンへの感受性の増大は、BCL2;およびDDX3Xからなる群より選択される遺伝子における1個以上の変異の存在に関連し得る。
【0206】
血液学的悪性腫瘍であるバーキットリンパ腫の場合において、サトラプラチンへの感受性の増大は、BCL2;AOC1;BOC;DDX3X;BRCA2;FRG1B;USP22;およびAP4E1からなる群より選択される遺伝子における1個以上の変異の存在に関連し得て、かつ/または、サトラプラチンへの感受性の増大は、MTAP、CDKN2B、CDKN2AおよびDMRTA1のそれぞれに関するコピー数の喪失、またはコピー数の減少に関連し得る。
【0207】
血液学的悪性腫瘍であるALCL ALK+の場合において、サトラプラチンへの感受性の増大は、DDX3X;SLFN5;およびAP4E1からなる群より選択される遺伝子における1個以上の変異の存在に関連し得て、かつ/または、サトラプラチンへの感受性の増大は、MTAP、CDKN2B、CDKN2AおよびDMRTA1のそれぞれに関するコピー数の喪失、またはコピー数の減少に関連し得る。
【0208】
血液学的悪性腫瘍である多発性骨髄腫の場合において、サトラプラチンへの感受性の増大は、BRCA2;およびFRG1Bからなる群より選択される遺伝子における1個以上の変異の存在に関連し得て、かつ/または、サトラプラチンへの感受性の増大は、MTAP;CDKN2B;およびCDKN2Aからなる群より選択される1個以上の遺伝子に関するコピー数の喪失、またはコピー数の減少に関連し得る。
【0209】
血液学的悪性腫瘍であるマントル細胞リンパ腫の場合において、サトラプラチンへの感受性の増大はFRG1Bにおける1個以上の変異の存在に関連し得て、かつ/または、サトラプラチンへの感受性の増大は、MTAP、CDKN2B、CDKN2AおよびDMRTA1のそれぞれに関するコピー数の喪失、またはコピー数の減少に関連し得る。
【0210】
血液学的悪性腫瘍であるCTCLの場合において、サトラプラチンへの感受性の増大は、MTAP、CDKN2B、CDKN2AおよびDMRTA1のそれぞれに関するコピー数の喪失、またはコピー数の減少に関連し得る。
【0211】
サトラプラチン
サトラプラチン(INN)は、JM-216として、またはビス(アセタト)アンミンジクロロ(シクロヘキシルアミン)白金(IV)としても知られている。
【0212】
サトラプラチンの分子式はC10H22N2Cl2O4Ptであり、そしてその分子量は500.29 Daである。サトラプラチンは、米国特許第5,072,011号および米国特許第5,244,919号で開示されている方法に従って、あるいはUS 6,518,428に開示されている方法の適切な修飾によって合成することができる。
【0213】
サトラプラチンの化学構造は:
【化1】
である。
【0214】
サトラプラチンは、経口経路で吸収される白金(IV)化合物クラスのメンバーである。
【0215】
これらの化合物の親油性、ひいてはそれらの吸収性は、軸方向アセテートリガンドの性質によって大部分が決定されると考えられている。平面四辺形の白金(II)錯体であるシスプラチンおよびカルボプラチンとは異なり、サトラプラチンは八面体の白金(IV)化合物である。
【0216】
本発明における使用に適するサトラプラチンの形態
本明細書に記載されている本発明の多様な態様および実施態様に従う使用のためのサトラプラチンは、経口投与のために好適に調製され得る。同様に、本発明の方法において投与されるとき、サトラプラチンは経口投与され得る。
【0217】
本発明における使用に適するサトラプラチンの用量および治療有効量
当業者は、公開されている入手可能な情報に基づいて、適当な投与量および投与スケジュールを決定することができる。適切な用量および投与スケジュールは、医師などの当業者によって決定され得る。したがって、以下の記載はガイダンスのためだけのものとしてみなされるべきである。
【0218】
例示的な用量は、患者の体重1キログラム当たりのサトラプラチンのミリグラムまたはマイクログラムの量という形で定義され得る。好適に、この事項で定義されるサトラプラチンは、1キログラム当たり約1マイクログラムから1キログラム当たり約500ミリグラムの範囲であり得る。例えば、適当な用量は1キログラム当たり約100マイクログラムから1キログラム当たり約50ミリグラムの間である。単なる例として、体重約70 kgの患者の場合において、サトラプラチンの適当な単位用量は約0.05 mgから2000 mgであり得て、例えば約0.1 mgから1000 mgであり得る。
【0219】
適当な単位用量は、1日当たり1回、2回、3回またはそれより多くの回数で投与され得る。単位用量は、また、1週間当たり1~7回で投与され得る。
【0220】
当業者はさらに、用量は、所定の体表面積当たりに投与されるサトラプラチンの量の形で定義することもできることを理解する。そのような定義において、70 kgの患者は、約1.8平方メートルの体表面積を有するとみなされ得る。この方法で定義される適当な用量は、1平方メートル当たり約50マイクログラムから1平方メートル当たり約15グラムの間であり得て、例えば、1平方メートル当たり約5ミリグラムから1平方メートル当たり約1.5グラム、または1平方メートル当たり約50ミリグラムから1平方メートル当たり約150ミリグラムであり得る。正確な用量は、最終的には主治医の裁量による。
【0221】
適当な実施態様において、サトラプラチンは、35日毎に1~5日目に60~140 mg/m2経口(60-140 mg/m2 po day 1-5 q 35 days)の投与スケジュールでの投与のためのものであり得る。例として、サトラプラチンは、35日毎に1~5日目に80 mg/m2経口の投与スケジュールでの投与のためのものであり得る。あるいは、前記サトラプラチンは、28日毎に1~5日目に60~80 mg/m2経口の投与スケジュールでの投与のためのものであり得る。
【0222】
典型的かつ好ましい投与スケジュールは、35日毎に1~5日目に80 mg/m2経口、35日毎に1~5日目に100 mg/m2経口、35日毎に1~5日目に120 mg/m2経口または35日毎に1~5日目に140mg/m2経口または120であり、一方、併用療法では20 mg/m2または40 mg/m2などの低用量の毎日投与がさらに典型的かつ好ましい。さらに好ましい実施態様において、前記サトラプラチンは、35日毎に1~5日目に80 mg/m2経口の投与スケジュールで投与される。
【0223】
別の実施態様において、典型的かつ好ましい投与スケジュールは、28日毎に1~5日目に60~80 mg/m2経口であり得る。例えば、28日毎に1~5日目に60 mg/m2経口、または28日毎に1~5日目に70 mg/m2経口、または28日毎に1~5日目に80 mg/m2経口の投与スケジュールが好まれ得る。
【0224】
患者の年齢および体重、および処置される血液学的悪性腫瘍またはがんの重症度などの因子に応じて、上で提案される投与量の通常の変更をする必要があり得ることが理解される。
【0225】
患者
本発明の文脈において、「患者」への言及は、がん(例えば、血液学的悪性腫瘍)のための処置を受けている個人、または処置が必要であって適当な処置レジメンが選択されている個人の両方を包含すると解釈されるべきである。第一の解釈は、本発明の第一から第九の態様に関して特に適当であり、そして第二の解釈は、本発明の第十の態様に関して特に適当である。
【0226】
本発明の目的のための患者は、好適にヒトである。
【0227】
処置
本開示の目的のために、「処置」および「処置する」の用語は、治療的処置および予防的(prophylactic)または防止的(preventative)措置の両方を包含するものとしてみなされるべきである。処置は、がんまたは血液学的悪性腫瘍の増殖、進展または拡大などの望ましくない生理学的変化または障害を予防、減速または軽減するために実施され得る。本発明の目的のために、有益なまたは所望の結果には、症状の緩和、疾患の程度の縮減、疾患の安定化状態(すなわち、悪化していない疾患)、疾患進行の遅延または減速、疾患状態の改善または緩和、および寛解(部分的または全体的のいずれでも)が含まれるが、これらに限定されない。
【0228】
処置は、処置を受けないときに予想される生存期間と比較して、生存期間の延長をもたらし得る。それとは別にまたはそれに加えて、処置は、処置を受けないときに予想される生活水準と比較して、生活水準の改善を患者にもたらし得る。
【0229】
処置が必要な個人には、すでに障害を有する個人ならびに障害を有しやすい個人または障害を予防すべき個人が含まれる。
【0230】
本明細書において別段の定めがない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。例えば、Singleton and Sainsbury, Dictionary of Microbiology and Molecular Biology, 2d Ed., John Wiley and Sons, NY (1994); and Hale and Marham, The Harper Collins Dictionary of Biology, Harper Perennial, NY (1991)は、本発明で使用される多くの用語の一般的な辞書を当業者に提供している。本明細書に記載されているものと類似または同等のあらゆる方法および材料が本発明の実施に使用されるが、好ましい方法および材料が本明細書に記載されている。したがって、すぐ下に定義されている用語は、本明細書全体を参照することによって、より完全に説明される。また、本明細書で使用されるとき、単数表現およびその類似の表現は、文脈上明らかにそうではないことが示されない限り、複数形の言及を含む。別段に示されない限り、それぞれ、核酸は5'から3'の方向で左から右に記載され、アミノ酸配列はアミノからカルボキシの方向で左から右に記載されている。本発明は、記載されている特定の方法論、プロトコル、および試薬に限定されることなく、当業者により使用される文脈に応じて異なり得ることが理解されるべきである。
【0231】
本発明の態様は、以下の非限定的な例によって示される。
【実施例
【0232】
実施例1-サトラプラチンは遺伝的に定義されるリンパ系悪性腫瘍において高い細胞毒性活性を示す
材料および方法
細胞株および試薬。表3にリストされている細胞株を試験した。全ての細胞株を、10~15%ウシ胎児血清(Cat# FND500、ExCell Bio、中華人民共和国)を添加した適切な培地中で、温度37℃、5% CO2および湿度95%で培養した。CTG Luminescent Cell Viability Assay (Promega、Madison、WI、USA)を用いて、下に記載されているとおり標準的手順により、細胞生存率を測定した。サトラプラチンはMedChemExpress (上海、PRC)から、そしてシスプラチンはQilu Pharm(済南、山東、PRC)からそれぞれ購入した。両薬剤の1 mMストック溶液を、以前に記載されているとおりに、-20℃で保管するために製造した(5)。
【表3-1】


【表3-2】

【0233】
半数最大阻害濃度(IC50)の決定。対数増殖期に細胞を採取し、Count-star (Inno-Alliance Biotech、USA)を用いて細胞数をカウントした。細胞密度を、それぞれの培地で4.44×104 細胞/mLに調整した。その後、90 μL細胞懸濁液を96ウェルプレートにトリプリケートで加え、最終細胞密度を4×103 細胞/ウェルとした。24時間後、シスプラチンまたはサトラプラチンのいずれかの10 μL段階希釈溶液を各ウェルにトリプリケートで移し、ウェル当たりの最終薬物濃度をそれぞれ100 μM、31.6 μM、10 μM、3.16 μM、1.0 μM、316 nM、100 nM、31.6 nMおよび10 nMとした。37℃、5% CO2の加湿インキュベータ内で、試験プレートを72時間インキュベートし、その後、CTG Cell Viability Assay (Promega)を用いて評価した。その目的のために、プレートを室温で約30分間平衡化した。その後、50 μL CTG試薬を各ウェルに添加した。内容物をオービタルシェーカーで5分間混合して細胞溶解を誘導し、そしてプレートを室温で20分間インキュベートして発光シグナルを安定化させた。発光をEnVision Multi Label Reader (Perkin Elmer、リッチモンド、CA、USA)を用いて記録した。
【0234】
データ解析。データを、GraphPad Prism 5.0 (GraphPad Software、サンディエゴ、CA、USA)およびThink-Cell 11 (Think-Cell Software、ベルリン、ドイツ)を用いて、解析して可視化した。絶対(absolute)IC50を算出するために、シグモイド型用量反応での非線形回帰モデルを用いて、用量反応曲線をフィッティングした。細胞生存率を算出するための式は、
Cxでの細胞生存率(%)=(Cx-M)/(N-M)×100%
であり、Cxは任意の濃度の試験化合物と共に培養した細胞の発光シグナルであり、Mはブランクコントロール(細胞なし)の発光シグナルであり、そしてNは0.25%(v/v)ジメチルスルホキシドを含む培地によるビヒクルコントロールである。絶対IC50は、GraphPad Prism 5.0により作成した用量反応曲線に従って算出した。その後、生の細胞生存率データを用い、Rパッケージdr4plを用いて標準的な4パラメーターモノトニック対数ロジスティック用量反応曲線をフィッティングした(9)。66個の試験細胞株における薬効を調べるために、本発明者らは用量反応曲線からいくつかの指標を計算し、曲線下面積(AUC)の値を薬効の表現として用いた。異なる組織由来の細胞株間での効能は、分散分析により比較し、p値 >0.05は試験適応疾患の間で当該薬剤に対する感受性に有意差がないことを示した。
【0235】
全トランスクリプトームシークエンシング(RNAseq)。ベースライン細胞株サンプルの全RNA抽出は、Qiagen Cat#74106 プロトコル(Qiagen、ヒルデン、ドイツ)に従って実施した。全RNAの完全性を2100 Bioanalyser (Agilent、サンタクララ、CA、USA)により決定し、そしてNanoDrop (Thermo Fisher Scientific、ウォルサム、MA、USA)を用いて定量した。高品質のRNAサンプル(OD260/280 = 1.8-2.2、OD260/230 ≧2.0、RNA完全性数値 ≧7、全RNA >500 ng)のみを使用してシークエンシングライブラリーを構築した。オリゴdT結合磁気ビーズを用いて全RNAからPolyA mRNAを精製し、その後断片化緩衝液により断片化した。これらの短い断片を鋳型として、逆転写酵素およびランダムプライマーを用いて第1鎖cDNAを合成し、続いて標準的な方法により第2鎖cDNAを合成した。合成されたcDNAを用いて、ライブラリー構築プロトコル(TruSeq RNA Sample Preparation v2 Guide)に従って、末端修復、リン酸化および「A」塩基付加を行った。その後、シークエンシングアダプターを両方のサイズのcDNA断片に添加した。cDNA断片のポリメラーゼ連鎖反応増幅の後、250~350 bpの標的を浄化した。ライブラリーの構築後、Qubit 2.0 fluorometer dsDNA HS Assay (Thermo Fisher Scientific)を用いて得られたシークエンシングライブラリーの濃度を定量し、Agilent BioAnalyzer 2100を用いてサイズ分布を解析した。ライブラリーのバリデーション後、HiSeq PE Cluster Kitsを用いたIllumina cBOT Cluster Generation システム(Illumina、San Diego、CA、USA)を使用してクラスターを形成した。2×150 ペアエンドシークエンシングのためのIlluminaが提供するプロトコルに従って、Illumina NovaSeq 6000プラットホームを用いてペアエンドシークエンシングを実施した。
【0236】
遺伝子発現解析。RNAseq fastq 生リードの品質を、FastQCソフトウェア(Babraham Bioinformatics、https://www.bioinformatics.babraham.ac.uk/projects/fastqc/)により確認した。アダプターおよび低品質配列をTrimmomaticソフトウェア(10)によりトリミングした。Bowtieソフトウェア(11)によりリードを参照遺伝子(ENSEMBL GRCh37.66)にマッピングし、そして当該遺伝子発現をMMSEQソフトウェア(12)により算出した。最終発現値は、マッピングされた断片値100万当たりのエクソンモデル1キロベース当たりの断片数を対数(log2)変換したものである。試験した細胞株のそれぞれのコホートについて、本発明者らは、発現データが利用可能な関与する細胞株について49,442個のアノテーションされた遺伝子の遺伝子発現マトリックスから開始した。薬剤感受性と正の相関を持つ遺伝子および薬剤感受性と負の相関を持つ遺伝子を同定するために、66個の細胞株にわたって49,442個の遺伝子の発現をAUC値と相関させた。感受性増大に相関する遺伝子についてはスピアマン相関係数 <-0.55かつp <0.05をカットオフとして用い、一方、耐性に相関する遺伝子についてはスピアマン相関係数 >0.55かつp <0.05をカットオフとして用いた。
【0237】
薬剤反応において異なる挙動を示す細胞株のゲノムの類似性および非類似性を調べるために、発現データを有する関係する細胞株の完全トランスクリプトームにおいて主成分分析(PCA)を実施した。全遺伝子について、サンプルにわたる遺伝子発現とAUCの間のスピアマン相関を算出した。本発明者らは、limmaパッケージ(13)により感受性のより高いグループと感受性のより低いグループとの間で発現変動(DE)遺伝子を同定し、そして当該DE遺伝子において遺伝子オントロジー(GO)エンリッチメント、パスウェイエンリッチメント解析を実施した。MSigDBデータベース(https://www.gsea-msigdb.org/gsea/msigdb)に由来する2,057個のよく精選された遺伝子セットにおいて、遺伝子セットバリエーション解析(GSVA)(14)を実施した。
【0238】
全エクソームシークエンシング(WES)。WESのためのベースライン細胞株サンプルからのゲノムDNA抽出は、MagMAXTM DNA Multi-Sample Ultra 2.0 Kit(ABI、ウォルサム、MA、USA)を用いてKingFisher Flex(Thermo Fisher Scientific)で実施した。ゲノムDNAをNanodropTM 2000 分光光度計(Thermo Fisher Scientific)により定量した。ライブラリー構築には、高品質DNA(濃度 >100 ng/μl、OD260/280 ≧1.8-2.2、OD260/230 ≧2)のみを用いた。ライブラリー構築をSureSelect XT HS2 DNA Reagent Kit (Agilent)のプロトコルに従って実施した。簡潔に記載すると、DNAの品質管理後、まずME220 Focused-ultrasonicator (Covaris、ウーバン、MA、USA)により断片化を実施し、続いて末端修復、dAテーリングおよびライゲーションを実施した。その後、ライゲーション産物をAMPure XP ビーズ(Beckman Coulter、インディアナポリス、IN、USA)を用いて精製し、精製したアダプターをライゲーションしたライブラリーを増幅し、続いてAMPure XP ビーズ(Beckman Coulter、インディアナポリス、IN、USA)を用いてもう一段階精製した。最後に、精製したWESライブラリーを製造業者のプロトコルに従って、NovaSeq 6000 (Illumina)での2×150ペアエンドシークエンシング[NovaSeq 6000 S2 Reagent Kit (Illumina)]により解析した。
【0239】
遺伝子変異解析。WES fastq生データの質を、FastQCソフトウェアにより確認した。アダプターおよび低品質配列を、Trimmomaticソフトウェア(10)によりトリミングした。リードをBWAソフトウェア(15)によりhg19ゲノムにアライメントし、バリアントをGATKソフトウェア(16)によりコーリングし、そしてVEPソフトウェア(17)によりアノテーションした。変異のドライバー状態をCancerGenomeInterpreterデータベース(18)の方法に従って予測した。ウィルコクソンの符号順位検定およびベンジャミニ・ホッホベルグ調整p値を、変異状態と効能エンドポイント(AUC値)との間で算出した。変異を有する細胞株と野生型遺伝子を有する細胞株との間のAUCの差についての計算は、以下の通りである:
AUC差=細胞株についての平均AUC-体細胞点変異を有しない細胞株についての平均AUC。
AUC差 >0は、遺伝子変異が耐性細胞株においてエンリッチされている(AUCが高い)ことを示し、一方、AUC差 <0は、遺伝子変異が感受性細胞株で富化されている(AUCが低い)ことを示す。各遺伝子の最大情報量係数(MIC)をAUCと遺伝子変異状態の間で計算し、そして各遺伝子について、現在のコホート内での変異再発率と全細胞株での変異再発率との比を算出した。
【0240】
コピー数変動の解析。WESデータからアライメントされた配列を用いて、CopyWriteR Rパッケージ(19)により遺伝子コピー数(CN)を推定した。コピー数値 >3である遺伝子をコピー数増幅として定義し、一方、コピー数値 <1である遺伝子コピー数欠失として定義した。ウィルコクソンの符号順位検定およびベンジャミニ・ホッホベルグ調整p値を、増幅/欠失状態と効能エンドポイント(AUC値)との間で算出した。各遺伝子のMICをAUCと増幅/欠失状態の間で計算し、そして各遺伝子について、現在のコホート内での増幅/欠失再発率と全細胞株での再発率との比を算出した。
【0241】
結果
リンパ系悪性腫瘍において、サトラプラチンは高い細胞毒性活性を有する。記載されているとおり、サトラプラチンの細胞毒性活性プロファイルは、66個のがん細胞株の標準的な細胞ベースのアッセイで試験した(表3)。薬効を調べて比較するために、薬効の表現としてAUC値を用いた。分散分析(ANOVA)により、本発明者らは、サトラプラチンについて全てのがん種にわたってAUC値に有意差があることを見出した(図1)。サトラプラチンは固形臓器がん(p値 = 2.3e-08)と比較して、血液学的悪性腫瘍において有意に活性が高かった。したがって、コホートは固形臓器がん(n = 22)と血液学的悪性腫瘍(n = 44)に分けられ、そしてさらなる解析のために後者のみを用いた。サトラプラチンは、標準的なシスプラチン(p値 = 0.009)よりも血液学的悪性腫瘍のグループ内で有意に活性が高く(図2)、そして低マイクロモルからマイクロモル以下のレベルのIC50値を達成した。組織学により分類すると、サトラプラチンは、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、T細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫(MCL)、多発性骨髄腫(MM)およびバーキットリンパ腫(BL)の細胞株で、それぞれ高い活性を示した。さらに、特に注目すべきいくつかの細胞株について統計学的有意性を算出し、特に細胞株OCI-LY3については、サトラプラチンがシスプラチンよりも有意に活性が高く、p値が0.0006であったことが示された。同様の結果が、SU-DHHL-5(p = 0.003)およびSU-DHL-6(p = 0.007)などの他のDLBCL細胞株についても得られた。
【0242】
サトラプラチン感受性の増大につながる過剰発現遺伝子の同定。遺伝子発現解析を用いて、スピアマン相関係数 <-0.55かつp値 <0.05をカットオフとして、サトラプラチン感受性増大と正の相関がある7個の遺伝子を同定した(図3)。最も高いレベルの感受性をもたらす遺伝子はTULP3であり、続いてPAN3、PHF2、KLHDC1、そしてWRNの順であった。BRCA2などの、白金感受性に関連することが知られている他の過剰発現遺伝子は、両方の白金化合物で同定され、このことは解析の妥当性をサポートした。合計で、サトラプラチン耐性につながる31個の過剰発現遺伝子を同定し、MTAPが最も高いスピアマン相関を達成した。
【0243】
サトラプラチン感受性増大につながる単一の遺伝子変異。単一遺伝子レベルでは、変異するとサトラプラチン細胞毒性活性の増大(12個の遺伝子)または低下(7個の遺伝子)のいずれかをもたらす、19個の遺伝子が同定された(図4)。BCL2アポトーシス調節因子は、サトラプラチン細胞毒性活性の増大に関連する単一の最も有意な変異遺伝子であることが判明した。重要なことに、BCL2遺伝子変異はシスプラチン活性についてのマーカーとしては同定されず、サトラプラチン感受性についてのユニークな特徴であると思われる。サトラプラチン感受性を強調するさらなる遺伝子変異は、AOC1、BOC、DDX3X、ETNK2およびUSP22であった。さらに、BRCA2遺伝子変異は、サトラプラチンとシスプラチンの両方についての感受性マーカーとして同定された。
【0244】
DNAコピー数(CN)欠失解析により、9p21遺伝子座の再発性染色体異常が同定される。最後に、記載されているとおりにコピー数解析を実施し、サトラプラチン感受性低下を示すDNA CN増幅レベルにより10個の遺伝子[8番染色体オープンリーディングフレーム 76 (C8orf76)、アルファ1鎖XIV型コラーゲン(COL14A1)、デルリン 1 (DERL1)、配列類似性ファミリー 83 メンバー A (FAM83A)、ヒアルロナンシンターゼ 2 (HAS2)、ミトコンドリアリボソームタンパク質 L13 (MRPL13)、ジンクフィンガーおよびホメオボックス 2 (ZHX2)、NBPFメンバー 9 (NBPF9)、ホスホジエステラーゼ 4D 相互作用タンパク質(PDE4DIP)、およびペプチジルプロリルイソメラーゼ A 様 4G (PPIAL4G)]を同定した。しかしながら、DNA CN 欠失を解析したとき、サトラプラチン感受性増大についてのバイオマーカーとして機能する、9p21遺伝子座に位置することが知られている4個の遺伝子(CDKN2A、CDKN2B、MTAPおよびDMRTA1)を同定した(図5)。本発明者らはサトラプラチン耐性のマーカーとしてMTAP過剰発現を同定したため、MTAP欠損をサトラプラチン活性と関連付ける詳細な解析を実施した(図6)。サトラプラチンについてのIC50値を、MTAP状態(公開されている入手可能なデータセットを用いて定義される)に対してプロットし、MTAP喪失細胞株におけるサトラプラチンの効能が有意に高いことが示された(p = 3.03e-07)。
【0245】
考察
本発明者らは、一般的な血液学的悪性腫瘍におけるサトラプラチン活性についての系統解析を完了し、DLBCLおよびその各細胞株がサトラプラチンに非常に感受性が高く、lC50値は低マイクロモルの用量であるか、あるいはマイクロモル以下の用量でさえあることを示した。シスプラチンと比較すると、サトラプラチンはOCI-LY7細胞などのDLBCL細胞株を死滅させることにおいて有意に優れているだけでなく、さらに、より重要なことに、サトラプラチンは細胞株OCI-LY3を非常に効率的に死滅させた。OCI-LY3細胞株は、それぞれ、MYD88、PIM1、CD79B、CARD11およびPRDM1の変異を含む安定な変異パターン(20)を有しているため、特に興味深い(表4)。これらの変異は、近年Chapuyらにより記載されているとおり、いわゆるクラスター 5 DLBCLの遺伝学的景観に類似している(21)。クラスター 5 DLBCL遺伝子は、高頻度のBCL2増加、一致したMYD88L265P/CD79B変異、およびETV6、PIM1、GRHPR、TBL1XR1およびPRDM1のさらなる変異を含む。これらの変異は、原発性CNSリンパ腫(PCNSL)および/または精巣リンパ腫などの節外性リンパ腫を伴うDLBCL患者について典型的である。彼らの画期的な発表に記載されているとおり、PCNSL患者9人中8人に由来するリンパ腫組織が、C5クラスター基準(フィッシャーの正確確率検定、p <0.001)を満たし、PCNSLに類似する前記C5遺伝学的シグネチャーが受け入れられる基礎を築いた。近年、C5 DLBCLクラスターとPCNSLとの関連性が、MDアンダーソンがんセンター(MD Anderson Cancer Center)のさらなる48人のPCNSL患者に由来するDLBCLサンプルの変異プロファイリングにより確認された。したがって、そして変異パターンに基づいて、OCI-LY3は、最も容認されるPCNSL様ヒトDLBCL細胞株であり、PCNSLの処置のためにサトラプラチンなどの治験化合物の効能を予測し、比較することに非常に適していることが示唆された。
【表4】

【0246】
遺伝子特徴に基づく同様のDLBCL分類システムが、Wrightらによって開発された(22)。彼らは、DLBCL患者サンプルの確率論的分類を発表し、Chapuyデータを検証コホートとして用いた。また、この分類は種々のDLBCLサブタイプ間の遺伝的類似性を明らかにする。彼らが特徴付けたMCDコホートが、変異パターンに関して、Chapuyらによって定義されたC5コホートと大きな類似性を示していることは注目に値する。MCD DLBCLは、主にMYD88L265PおよびCD79Bの変異によって定義され、全症例の30%が節外部位に二次転移し、CNSが最も一般的な部位であることが知られている。C5 DLBCLクラスターと同様に、MCD DLBCLはOCI-LY3細胞株によって最もよく代表される(22)。本明細書に提示されたデータを考慮すると、サトラプラチンは、中枢神経系、網膜硝子体、精巣、および/または乳房のリンパ腫などの原発性節外性リンパ腫を呈するDLBCLの処置において特に有用であるはずである。サトラプラチンは親油性であるため、十分な用量レベルで脳脊髄液に移行することができる(23)。さらに、経口投与が可能であり、神経毒性および聴器毒性がないなどの良好な副作用プロファイルを有していることは、概説されているとおり、特にPCNSLに焦点を当てるサトラプラチンのさらなる研究の理論的根拠を提供する。
【0247】
第2のステップにおいて、本発明者らは、種々のリンパ腫実体の遺伝的特性とサトラプラチン感受性との間の潜在的な関係性をよりよく理解するために、より包括的な分子バイオマーカー解析に着手した。サトラプラチンの作用機序には多くの可能性があり、最も利益を受ける適切な患者をよりよく選択するためには予測バイオマーカーが重要である。驚くことに、BRCA2変異またはBRCA2発現低下などのわずかな遺伝子変化が両方の白金化合物において共通していたが、同定された他の遺伝子変化のほとんどは両者を明確に区別していたため、本発明者らはサトラプラチンとシスプラチンとの間に意味のある相違を明確に示すことができた。単一遺伝子変異解析に注目すると、BCL2、USP22またはETNK2変異のいずれかを有する細胞株において、それぞれ特定のサトラプラチン活性が認められる。興味深いことに、これらの変異はシスプラチンでは認められず、特にBCL2変異との関連性は、以前の臨床試験において観察されたサトラプラチンのより重篤な血液毒性についての潜在的な説明になり得る。さらに、白金耐性と不応性は、固形臓器腫瘍由来の細胞株におけるBCL2などの抗アポトーシス遺伝子の発現亢進と関連している(30)。その研究において、オキサリプラチンとは対照的にサトラプラチンは有意により効果的であり、P53変異状態とは独立してBCL2発現を13倍まで低下させることができた。サトラプラチンのBCL2阻害機能はまた、BCL2過剰発現が重要なドライバーである血液学的疾患との関連性を確立し、ベネトクラクス(venetoclax)によるBCL2阻害は、例えばMCL、急性骨髄白血病および慢性リンパ性白血病の処置のための、多大な臨床的効能を示している(31)。
【0248】
最後に、サトラプラチンは、MTAP/CDKN2A/CDKN2B/DMRTA1を含む9p21遺伝子座における遺伝子コピー数欠失を有する多種多様なリンパ腫細胞株への活性がより高かった。CDKN2Aおよび/またはCDKN2B欠失を有する症例は、T細胞リンパ腫/T細胞急性白血病/皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、PCNSLを含むDLBCL、MCL、およびCLLなど、種々のリンパ腫実体で頻繁にみられる特性である。メチルチオアデノシンホスホリラーゼ(MTAP)遺伝子はCDKN2A腫瘍抑制遺伝子に隣接しており、固形および血液学的悪性腫瘍を含むヒトがんにおいて最も一般的に欠失する遺伝子であるCDKN2Aとしばしば共欠失する。それは全てのがんの約15%において生じ、MTAP欠失は、野生型MTAPと比較すると、生存期間が短く悪性度のより高い腫瘍と関連していることが報告されている(24)。MTAP欠失は、その基質であるメチルチオアデノシン(MTA)の細胞内濃度を上昇させ、そしてS-アデノシル-L-メチオニン(SAM)と競合することにより、MTAはプロテインアルギニンメチルトランスフェラーゼ 5 (PRMT5)に結合して部分的に阻害する。スプライソソーム機構におけるその重要な役割のため、正常なPRMT5の機能は、相同組換えおよびDNA修復を維持するための造血コンパートメントにとって特に重要である(25)。PRMT5ノックアウトマウスで示されているとおり、完全阻害は重篤で、致死的な汎血球減少を引き起こす(26)。近年、MCL細胞株におけるPRMT5の薬理学的阻害により、アポトーシス促進プログラムが再開し、bcl-2阻害剤ベネトクラクスとの相乗作用が生じることが示された(27)。上に記載されているとおり、サトラプラチンはMTAP欠失造血細胞株において高い活性を有するが、それは相同組換え欠損(機能的PRMT阻害)の状況下で重篤なDNA損傷病変を引き起こすためである可能性が最も高い。さらに、シスプラチンと比較して優れた活性を特異的に引き出すユニークなBCL2阻害が同時に観察されることも、重要なポイントであり得る。
【0249】
サトラプラチンは、p16/CDKN2AおよびMTAP喪失の血液学的悪性腫瘍の脆弱性を利用するのに理想的に適しており、リンパ系新生物を除く固体臓器腫瘍において確認できるはずである。本発明者らは、サトラプラチンが、示されている遺伝子変異、遺伝子発現低下、特に9p21欠失/メチル化腫瘍を有する腫瘍の処置のための好ましい白金であるとの仮説を立てている。リンパ腫実体で、サトラプラチンはPCNSLおよびCTCLの処置について特に注目されている。PCNSLについて、del9p21および/またBCL2変異が症例の80%近くに存在する(28)。CTCLについて、CDKN2A/CDKN2Bの欠失は、菌状息肉症(MF)およびセザリー症候群(SS)様のほとんどのサブタイプにおける特徴として記載されている。この欠失は、疾患の進行に伴ってより頻繁に生じる連続するものであり、悪性度のより高い臨床挙動と関連している(29)。全身性SSに向かって進行するとき、MFの局所的な形態において、CDKN2A/Bのコピー数の喪失が増加し、したがってMTAP欠失が増加する。また、代表的なCTCL細胞株 HUT78における、低マイクロモルIC50のサトラプラチンの高効能が、この考えをサポートしている。PCNSLと同様に、この疾患においても、サトラプラチンの親油性がよく適しており、高い処置効能が期待されると考えられる。これらのデータに従って、両実体における臨床試験が準備中である。
【0250】
読者の注意は、本出願に関して本明細書と同時またはそれ以前に提出され、そして本明細書とともに一般に公開されているすべての書類および文書に向けられ、すべてのそのような書類および文書の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0251】
本明細書(添付の特許請求の範囲、要約および図面を含む)において開示されているすべての特徴、および/または開示されている方法またはプロセスのすべてのステップは、そのような特徴および/またはステップの少なくとも一部が相互に排他的である組合せを除き、任意の組合せで組み合わされ得る。
【0252】
本明細書(添付の特許請求の範囲、要約および図面を含む)において開示されているそれぞれの特徴は、明示的に別段の記載がない限り、同一、同等、または類似の目的を果たす代替的な特徴により置き換えられ得る。したがって、明示的に別段の記載がない限り、開示されているそれぞれの特徴は、同等または類似の特徴の一般的な系の、一例に過ぎない。
【0253】
本発明は、前述のいずれの実施態様の詳細にも制限されない。本発明は、本明細書(添付の特許請求の範囲、要約および図面を含む)において開示されている特徴のあらゆる新規なもの、もしくはあらゆる新規な組合せ、または開示されているあらゆる方法もしくはプロセスのステップのあらゆる新規なもの、もしくはあらゆる新規な組合せに及ぶ。
【0254】
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【0255】
発明の例示実施態様
本発明は、以下の番号付けされている実施態様を参照してさらに説明される。
1. 血液学的悪性腫瘍の処置における使用のためのサトラプラチンであって、9p21遺伝子座に位置する遺伝子(MTAP、CDKN2B、CDKN2A、またはDMRTA1など);BCL2;TULP3;AOC1;BOC;DDX3X;CRYBG3;SLFN5;ETNK2;BRCA2;USP22;KIAA1683;AP4E1;PAN3;AC073343.11.1;PHF2;KLHDC1;およびWRNからなる群より選択される遺伝子の解析によりそのような処置から利益を得る可能性が高いと同定された患者における使用のためのサトラプラチン。
2. 血液学的悪性腫瘍がリンパ腫または骨髄腫である、実施態様1に記載の使用のためのサトラプラチン。
3. リンパ腫または骨髄腫が、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL);バーキットリンパ腫;マントル細胞リンパ腫;末梢性T細胞リンパ腫(PTCL);未分化大細胞型リンパ腫(ALCL);中枢神経系(CNS)の原発性DLBCL;二次性CNSリンパ腫(SCNSL);皮膚T細胞リンパ腫;セザリー症候群;および多発性骨髄腫からなる群より選択される、実施態様2に記載の使用のためのサトラプラチン。
4. 遺伝子が9p21遺伝子座に位置する遺伝子であり、そして解析により当該遺伝子のコピー数の減少を同定する、実施態様1~3のいずれか一項に記載の使用のためのサトラプラチン。
5. 遺伝子がMTAP;CDKN2B;CDKN2A;およびDMRTA1からなる群より選択され、そして解析により当該遺伝子の欠損を同定する、実施態様4に記載の使用のためのサトラプラチン。
6. 遺伝子の欠損が当該遺伝子のコピー数の減少である、実施態様5に記載の使用のためのサトラプラチン。
7. 血液学的悪性腫瘍がバーキットリンパ腫;DLBCL;CTCL;多発性骨髄腫;ALCL ALK+;およびマントル細胞リンパ腫からなる群より選択される、実施態様4~6のいずれか一項に記載の使用のためのサトラプラチン。
8. 遺伝子がBCL2;AOC1;BOC;DDX3X;CRYBG3;SLFN5;ETNK2;BRCA2;USP22;KIAA1683;およびAP4E1からなる群より選択され、そして解析により当該遺伝子の変異を同定する、実施態様1~3のいずれか一項に記載の使用のためのサトラプラチン。
9. 変異が表1および表2に示されている変異から選択される、実施態様8に記載の使用のためのサトラプラチン。
10. 血液学的悪性腫瘍がバーキットリンパ腫;DLBCL;およびALCL ALK+からなる群より選択される、実施態様8または実施態様9に記載の使用のためのサトラプラチン。
11. 遺伝子がTULP3;PAN3;AC073343.11.1;PHF2;KLHDC1;BRCA2;およびWRNからなる群より選択され、そして解析により当該遺伝子の高度発現を同定する、実施態様1~3のいずれか一項に記載の使用のためのサトラプラチン。
12. 9p21遺伝子座の喪失を伴う血液学的悪性腫瘍の処置における使用のためのサトラプラチン。
13. MTAP;CDKN2B;CDKN2A;およびDMRTA1からなる群より選択される遺伝子の欠損を伴う血液学的悪性腫瘍の処置における使用のためのサトラプラチン。
14. 欠損がMTAP;CDKN2B;CDKN2A;およびDMRTA1からなる群より選択される遺伝子のコピー数の減少である、実施態様13に記載の使用のためのサトラプラチン。
15. 血液学的悪性腫瘍がバーキットリンパ腫;DLBCL;CTCL;多発性骨髄腫;ALCL ALK+;およびマントル細胞リンパ腫からなる群より選択される、実施態様12~14のいずれか一項に記載の使用のためのサトラプラチン。
16. BCL2;AOC1;BOC;DDX3X;CRYBG3;SLFN5;ETNK2;BRCA2;USP22;KIAA1683;およびAP4E1からなる群より選択される遺伝子の変異を伴う、血液学的悪性腫瘍の処置における使用のためのサトラプラチン。
17. 変異が表1および表2に示されている群から選択される、実施態様16に記載の使用のためのサトラプラチン。
18. 血液学的悪性腫瘍がバーキットリンパ腫;DLBCL;およびALCL ALK+からなる群より選択される、実施態様16または実施態様17に記載の使用のためのサトラプラチン。
19. TULP3;PAN3;AC073343.11.1;PHF2;KLHDC1;BRCA2;またはWRNの高度発現を伴う血液学的悪性腫瘍の処置における使用のためのサトラプラチン。
20. 血液学的悪性腫瘍がサトラプラチン処置に良好に反応する可能性を判定する方法であって、9p21遺伝子座に位置する遺伝子(MTAP、CDKN2B、CDKN2A、またはDMRTA1など);BCL2;TULP3;AOC1;BOC;DDX3X;CRYBG3;SLFN5;ETNK2;BRCA2;USP22;KIAA1683;AP4E1;PAN3;AC073343.11.1;PHF2;KLHDC1;およびWRNからなる群より選択される遺伝子における変化について、血液学的悪性腫瘍の細胞を解析することを含み;
ここで、解析される遺伝子における変化の同定は、その血液学的悪性腫瘍が良好に反応する可能性が高いことを示す、
方法。
21. 遺伝子が9p21遺伝子座に位置する遺伝子であり、そして解析により当該遺伝子の欠損を同定する、実施態様20に記載の方法。
22. 遺伝子が9p21遺伝子座に位置する遺伝子であり、そして解析により当該遺伝子のコピー数の減少を同定する、実施態様21に記載の方法。
23. 遺伝子がMTAP;CDKN2B;CDKN2A;およびDMRTA1からなる群より選択される、実施態様21または実施態様22に記載の方法。
24. 血液学的悪性腫瘍がバーキットリンパ腫;DLBCL;CTCL;多発性骨髄腫;ALCL ALK+;およびマントル細胞リンパ腫からなる群より選択される、実施態様20~23のいずれか一項に記載の方法。
25. 遺伝子がBCL2;AOC1;BOC;DDX3X;CRYBG3;SLFN5;ETNK2;BRCA2;USP22;KIAA1683;およびAP4E1からなる群より選択され、そして解析により当該遺伝子の変異を同定する、実施態様20に記載の方法。
26. 変異が表1および表2に示されている変異から選択される、実施態様25に記載の方法。
27. 血液学的悪性腫瘍がバーキットリンパ腫;DLBCL;およびALCL ALK+からなる群より選択される、実施態様25または実施態様26に記載の方法。
28. 遺伝子がTULP3;PAN3;AC073343.11.1;PHF2;KLHDC1;BRCA2;およびWRNからなる群より選択され、そして解析により当該遺伝子の高度発現を同定する、実施態様20に記載の方法。
29. 血液学的悪性腫瘍を治療する方法であって、9p21遺伝子座に位置する遺伝子(MTAP、CDKN2B、CDKN2A、またはDMRTA1など);BCL2;TULP3;AOC1;BOC;DDX3X;CRYBG3;SLFN5;ETNK2;BRCA2;USP22;KIAA1683;AP4E1;PAN3;AC073343.11.1;PHF2;KLHDC1;およびWRNからなる群より選択される遺伝子の解析に基づいてそのような処置から利益を得る可能性が高いと同定された患者に、サトラプラチンを投与することを含む、方法。
30. 血液学的悪性腫瘍がびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL);バーキットリンパ腫;マントル細胞リンパ腫;末梢性T細胞リンパ腫(PTCL);未分化大細胞型リンパ腫(ALCL);中枢神経系(CNS)の原発性DLBCL;二次性CNSリンパ腫(SCNSL);皮膚T細胞リンパ腫;セザリー症候群;多発性骨髄腫;および白血病からなる群より選択される、実施態様29に記載の方法。
31. 遺伝子が9p21遺伝子座に位置する遺伝子であり、そして解析により当該遺伝子の欠損を同定する、実施態様29または実施態様30に記載の方法。
32. 遺伝子が9p21遺伝子座に位置する遺伝子であり、そして解析により当該遺伝子のコピー数の減少を同定する、実施態様31に記載の方法。
33. 遺伝子がMTAP;CDKN2B;CDKN2A;およびDMRTA1からなる群より選択される、実施態様29~32のいずれか一項に記載の方法。
34. 血液学的悪性腫瘍がバーキットリンパ腫;DLBCL;CTCL;多発性骨髄腫;ALCL ALK+;およびマントル細胞リンパ腫からなる群より選択される、実施態様31~33のいずれか一項に記載の方法。
35. 遺伝子がBCL2;AOC1;BOC;DDX3X;CRYBG3;SLFN5;ETNK2;BRCA2;USP22;KIAA1683;およびAP4E1からなる群より選択され、そして解析により当該遺伝子の変異を同定する、実施態様29に記載の方法。
36. 変異が表1および表2に示されている変異から選択される、実施態様39に記載の方法。
37. 血液学的悪性腫瘍がバーキットリンパ腫;DLBCL;およびALCL ALK+からなる群より選択される、実施態様36に記載の方法。
38. 遺伝子がTULP3;PAN3;AC073343.11.1;PHF2;KLHDC1;BRCA2;およびWRNからなる群より選択され、そして解析により当該遺伝子の高度発現を同定する、実施態様29に記載の方法。
39. 血液学的悪性腫瘍を治療する方法であって、
血液学的悪性腫瘍の細胞を含むサンプルを得ること;
9p21遺伝子座に位置する遺伝子(MTAP、CDKN2B、CDKN2A、またはDMRTA1など);BCL2;TULP3;AOC1;BOC;DDX3X;CRYBG3;SLFN5;ETNK2;BRCA2;USP22;KIAA1683;AP4E1;PAN3;AC073343.11.1;PHF2;KLHDC1;およびWRNからなる群より選択される遺伝子に関連する変化について血液学的悪性腫瘍の細胞を解析すること;および
当該解析に基づいてそのような処置から利益を得る可能性が高いと同定された患者にサトラプラチンを投与すること
を含む、方法。
40. 血液学的悪性腫瘍がびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL);バーキットリンパ腫;マントル細胞リンパ腫;末梢性T細胞リンパ腫(PTCL);未分化大細胞型リンパ腫(ALCL);中枢神経系(CNS)の原発性DLBCL;二次性CNSリンパ腫(SCNSL);皮膚T細胞リンパ腫;セザリー症候群;多発性骨髄腫;および白血病からなる群より選択される、実施態様39に記載の方法。
41. 遺伝子が9p21遺伝子座に位置する遺伝子であり、そして解析により当該遺伝子に関する欠損を同定する、実施態様39に記載の方法。
42. 欠損が遺伝子に関するコピー数の減少である、実施態様41に記載の方法。
43. 遺伝子がMTAP;CDKN2B;CDKN2A;およびDMRTA1からなる群より選択され、そして解析により当該遺伝子のコピー数の減少を同定する、実施態様39~42のいずれか一項に記載の方法。
44. 血液学的悪性腫瘍がバーキットリンパ腫;DLBCL;CTCL;多発性骨髄腫;ALCL ALK+;およびマントル細胞リンパ腫からなる群より選択される、実施態様43に記載の方法。
45. 遺伝子がBCL2;AOC1;BOC;DDX3X;CRYBG3;SLFN5;ETNK2;BRCA2;USP22;KIAA1683;およびAP4E1からなる群より選択され、そして解析により当該遺伝子の変異を同定する、実施態様39に記載の方法。
46. 変異が表1および表2に示されている変異から選択される、実施態様39に記載の方法。
47. 血液学的悪性腫瘍がバーキットリンパ腫;DLBCL;およびALCL ALK+からなる群より選択される、実施態様46に記載の方法。
48. 遺伝子がTULP3;PAN3;AC073343.11.1;PHF2;KLHDC1;BRCA2;およびWRNからなる群より選択され、そして解析により当該遺伝子の高度発現を同定する、実施態様39に記載の方法。
49. 患者由来の血液学的悪性腫瘍の細胞において、9p21遺伝子座に位置する遺伝子(MTAP、CDKN2B、CDKN2A、またはDMRTA1など);BCL2;TULP3;AOC1;BOC;DDX3X;CRYBG3;SLFN5;ETNK2;BRCA2;USP22;KIAA1683;AP4E1;PAN3;AC073343.11.1;PHF2;KLHDC1;およびWRNからなる群より選択される少なくとも1個の遺伝子を解析することを含む方法であり、ここで、
当該遺伝子が9p21遺伝子座に位置する遺伝子であるとき、例えばコピー数を評価することにより、解析は欠損が存在するか否かを判定することを含み;
遺伝子がis: BCL2;AOC1;BOC;DDX3X;CRYBG3;SLFN5;ETNK2;BRCA2;USP22;KIAA1683;およびAP4E1からなる群より選択されるとき、解析は当該遺伝子の変異についてアッセイすることを含み;そして
遺伝子がTULP3;PAN3;AC073343.11.1;PHF2;KLHDC1;BRCA2;およびWRNからなる群より選択されるとき、解析は当該遺伝子の高度発現についてアッセイすることを含む、方法。
50. 血液学的悪性腫瘍がびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL);バーキットリンパ腫;マントル細胞リンパ腫;末梢性T細胞リンパ腫(PTCL);未分化大細胞型リンパ腫(ALCL);中枢神経系(CNS)の原発性DLBCL;二次性CNSリンパ腫(SCNSL);皮膚T細胞リンパ腫;セザリー症候群;多発性骨髄腫;および白血病からなる群より選択される、実施態様49に記載の方法。
51. 9p21遺伝子座に位置する遺伝子がMTAP;CDKN2B;CDKN2A;およびDMRTA1からなる群より選択される、実施態様49または50に記載の方法。
52. 血液学的悪性腫瘍がバーキットリンパ腫;DLBCL;CTCL;多発性骨髄腫;ALCL ALK+;およびマントル細胞リンパ腫からなる群より選択される、実施態様51に記載の方法。
53. 変異が表1および表2に示されている変異から選択される、実施態様49に記載の方法。
54. 血液学的悪性腫瘍がバーキットリンパ腫;DLBCL;およびALCL ALK+からなる群より選択される、実施態様53に記載の方法。
55. 表1および表2に示されている群から選択される少なくとも1個の遺伝子変異の存在について、患者由来の血液学的悪性腫瘍の細胞を解析することを含む、方法。
56. 血液学的悪性腫瘍がバーキットリンパ腫;DLBCL;およびALCL ALK+からなる群より選択される、実施態様55に記載の方法。
57. サトラプラチンによる処置への血液学的悪性腫瘍の感受性に特徴的なシグネチャーパネルであって、
MTAP;CDKN2B;CDKN2A;およびDMRTA1からなる群より選択される少なくとも1個の遺伝子のコピー数の喪失;および/または
BCL2;AOC1;BOC;DDX3X;CRYBG3;SLFN5;ETNK2;BRCA2;USP22;KIAA1683;およびAP4E1からなる群より選択される少なくとも1個の遺伝子の変異;および/または
TULP3;PAN3;AC073343.11.1;PHF2;KLHDC1;BRCA2;およびWRNからなる群より選択される少なくとも1個の遺伝子の高度発現
を含む、パネル。
58. 血液学的悪性腫瘍がびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL);バーキットリンパ腫;マントル細胞リンパ腫;末梢性T細胞リンパ腫(PTCL);未分化大細胞型リンパ腫(ALCL);中枢神経系(CNS)の原発性DLBCL;二次性CNSリンパ腫(SCNSL);皮膚T細胞リンパ腫;セザリー症候群;多発性骨髄腫;および白血病からなる群より選択される、実施態様57に記載のシグネチャーパネル。
59. 遺伝子がMTAP;CDKN2B;CDKN2A;およびDMRTA1からなる群より選択され、そして解析により当該遺伝子のコピー数の減少を同定する、実施態様57に記載のシグネチャーパネル。
60. 血液学的悪性腫瘍がバーキットリンパ腫;DLBCL;CTCL;多発性骨髄腫;ALCL ALK+;およびマントル細胞リンパ腫からなる群より選択される、実施態様59に記載のシグネチャーパネル。
61. 遺伝子がBCL2;AOC1;BOC;DDX3X;CRYBG3;SLFN5;ETNK2;BRCA2;USP22;KIAA1683;およびAP4E1からなる群より選択され、そして解析により当該遺伝子の変異を同定する、実施態様57に記載のシグネチャーパネル。
62. 変異が表1および表2に示されている群から選択される、実施態様57に記載のシグネチャーパネル。
63. 血液学的悪性腫瘍がバーキットリンパ腫;DLBCL;およびALCL ALK+からなる群より選択される、実施態様62に記載のシグネチャーパネル。
64. 遺伝子がTULP3;PAN3;AC073343.11.1;PHF2;KLHDC1;BRCA2;およびWRNからなる群より選択され、そして解析により当該遺伝子の高度発現を同定する、実施態様57に記載のシグネチャーパネル。
65. サトラプラチンによる処置への血液学的悪性腫瘍の感受性に特徴的なシグネチャーバイオマーカーパネル、表1および表2に示されている群から選択される少なくとも1個の遺伝子変異を含む、パネル。
66. 血液学的悪性腫瘍がバーキットリンパ腫;DLBCL;およびALCL ALK+からなる群より選択される、実施態様65に記載のシグネチャーパネル。
67. 免疫チェックポイント療法に非反応性のがんの処置における、第二選択療法としての使用のためのサトラプラチン。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】