(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-17
(54)【発明の名称】トラクションネットワークのバイラテラル給電ライドスルー電力利用システム及び制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/06 20060101AFI20250109BHJP
H02J 3/28 20060101ALI20250109BHJP
B60M 3/04 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H02J3/06
H02J3/28
B60M3/04 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541232
(86)(22)【出願日】2022-11-16
(85)【翻訳文提出日】2024-07-09
(86)【国際出願番号】 CN2022132262
(87)【国際公開番号】W WO2023173783
(87)【国際公開日】2023-09-21
(31)【優先権主張番号】202210261871.3
(32)【優先日】2022-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516379320
【氏名又は名称】西南交通大学
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】李 群湛
(72)【発明者】
【氏名】黄 小▲紅▼
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ 波
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ 乃▲キ▼
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066AA04
5G066AA09
5G066HA06
5G066HB08
5G066HB09
5G066JA05
5G066JB03
(57)【要約】
本発明は、トラクションネットワークのバイラテラル給電ライドスルー電力利用システム及び制御方法を提供し、電気鉄道の給電の技術分野に関する。変電所TSaに設置される電力変換装置BCSaとコントローラCCa、及び変電所TSbに設置される電力変換装置BCSbとコントローラCCbを含み、変電所TSaと変電所TSbの間のトラクションネットワークOCSはバイラテラル給電を採用し、コントローラCCaは変電所TSaの電力情報をリアルタイムで取得するために使用され、コントローラCCbは変電所TSbの電力情報をリアルタイムで取得するために使用され、コントローラCCaとコントローラCCbは光ファイバを介してOFLに対して情報交換を行い、コントローラCCaは情報交換結果に応じて電力変換装置BCSaを制御してライドスルー電力を利用するか、又はコントローラCCbは情報交換結果に応じて電力変換装置BCSbを制御してライドスルー電力を利用し、それによって電力網に戻るライドスルー電力が所定の要件を満たす。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクションネットワークのバイラテラル給電ライドスルー電力利用システムであって、
トラクション変電所TSaに設置される電力変換装置BCSaとコントローラCCaを含み、電力変換装置BCSaは交流ポートJaを介してトラクションバスTSBaに接続され、トラクションバスTSBaには電圧変成器PTaが設置され、トラクションフィーダFa1とトラクションフィーダFa2に電流変成器CTa1と電流変成器CTa2がそれぞれ設置され、前記電圧変成器PTa、電流変成器CTa1及び電流変成器CTa2の計測端子はコントローラCCaの入力端子に接続され、
トラクション変電所TSbに設置される電力変換装置BCSbとコントローラCCbをさらに含み、電力変換装置BCSbは交流ポートJbを介してトラクションバスTSBbに接続され、トラクションバスTSBbに電圧変成器PTbが設置され、トラクションフィーダFb1とトラクションフィーダFb2に電流変成器CTb1と電流変成器CTb2がそれぞれ設置され、前記電圧変成器PTb、電流変成器CTb1及び電流変成器CTb2の計測端子はコントローラCCbの入力端子に接続され、
前記コントローラCCaとコントローラCCbは光ファイバを介してOFLを接続して情報交換を行い、トラクション変電所TSaとトラクション変電所TSbの間のトラクションネットワークOCSはバイラテラル給電を採用し、コントローラCCaは変電所TSaの電力情報をリアルタイムで取得するために使用され、コントローラCCbは変電所TSbの電力情報をリアルタイムで取得するために使用され、コントローラCCaとコントローラCCbは情報交換結果に応じて電力変換装置BCSa、電力変換装置BCSbをそれぞれ制御してライドスルー電力を利用し、それによってトラクション変電所TSa又はトラクション変電所TSbから電力網に戻るライドスルー電力が所定の要件を満たす、ことを特徴とするトラクションネットワークのバイラテラル給電ライドスルー電力利用システム。
【請求項2】
前記トラクション変電所TSaは同相給電を採用し、トラクション変電所TSaのトラクションバスTSBaはトラクションフィーダFa1を介してトラクションネットワークOCSに給電し、トラクションフィーダFa2を介して左側隣接給電区間トラクションネットワークOCSaに給電し、トラクションネットワークOCSと左側隣接給電区間トラクションネットワークOCSaはセクショナライザを介して接続される、ことを特徴とする請求項1に記載のトラクションネットワークのバイラテラル給電ライドスルー電力利用システム。
【請求項3】
前記トラクション変電所TSbは同相給電を採用し、トラクション変電所TSbのトラクションバスTSBbはトラクションフィーダFb1を介してトラクションネットワークOCSに給電し、トラクションフィーダFb2を介して右側隣接給電区間トラクションネットワークOCSbに給電し、トラクションネットワークOCSと右側隣接給電区間トラクションネットワークOCSbはセクショナライザを介して接続される、ことを特徴とする請求項1に記載のトラクションネットワークのバイラテラル給電ライドスルー電力利用システム。
【請求項4】
前記電力変換装置BCSaは整流装置ADCaとインバータ装置DACaを含み、整流装置ADCaの直流側は共通直流バスDCBaを介してエネルギー貯蔵装置ESDa及びインバータ装置DACaの直流側に接続され、インバータ装置DACaの三相交流側はトラクション変電所TSaの配電システムバスDSBaに接続され、前記コントローラCCaの出力端子は電力変換装置BCSaの制御端子に接続される、ことを特徴とする請求項1に記載のトラクションネットワークのバイラテラル給電ライドスルー電力利用システム。
【請求項5】
前記電力変換装置BCSbは整流装置ADCbとインバータ装置DACbを含み、整流装置ADCbの直流側は共通直流バスDCBbを介してエネルギー貯蔵装置ESDb及びインバータ装置DACbの直流側に接続され、インバータ装置DACbの三相交流側はトラクション変電所TSbの配電システムバスDSBbに接続され、前記コントローラCCbの出力端子は電力変換装置BCSbの制御端子に接続される、ことを特徴とする請求項1に記載のトラクションネットワークのバイラテラル給電ライドスルー電力利用システム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のトラクションネットワークのバイラテラル給電ライドスルー電力利用システムに基づく制御方法であって、
前記コントローラCCaとコントローラCCbはトラクション変電所TSaとトラクション変電所TSbのリアルタイム電力情報をそれぞれ取得するステップと、
コントローラCCaとコントローラCCbはそれぞれ取得したリアルタイム電力情報に応じて情報交換を行うステップと、
コントローラCCaは情報交換結果に応じて電力変換装置BCSaを制御してライドスルー電力を利用し、コントローラCCbは情報交換結果に応じて電力変換装置BCSbを制御してライドスルー電力を利用し、それによってトラクション変電所TSaから電力網に戻るライドスルー電力又はトラクション変電所TSbから電力網に戻るライドスルー電力が所定の要件を満たすステップと、を含む、ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のトラクションネットワークのバイラテラル給電ライドスルー電力利用システムに基づく制御方法。
【請求項7】
前記トラクション変電所TSaとトラクション変電所TSbはいずれも同相給電を採用し、前記制御方法において、
コントローラCCaがトラクション変電所TSaのリアルタイム電力情報を取得するステップは、コントローラCCaがトラクションバスTSBaの電圧Ua、トラクションフィーダFa1の電流Ia1、トラクションフィーダFa2の電流Ia2をリアルタイムで検出するステップと、コントローラCCaがトラクションバスTSBaの電圧UaとトラクションフィーダFa1の電流Ia1に応じてトラクション変電所TSaからトラクションネットワークOCSに供給される有効電力Pcaを計算するステップと、コントローラCCaがトラクションバスTSBaの電圧UaとトラクションフィーダFa2の電流Ia2に応じてトラクション変電所TSaから左側隣接給電区間トラクションネットワークOCSaに供給される有効電力Pcaaを計算するステップと、を含み、
コントローラCCbが変電所TSbのリアルタイム電力情報を取得するステップは、コントローラCCbがトラクションバスTSBbの電圧Ub、トラクションフィーダFb1の電流Ib1、トラクションフィーダFb2の電流Ib2をリアルタイムで検出するステップと、コントローラCCbがトラクションバスTSBbの電圧UbとトラクションフィーダFb1の電流Ib1に応じてトラクション変電所TSbからトラクションネットワークOCSに供給される有効電力Pcbを計算し、コントローラCCbがトラクションバスTSBbの電圧UbとトラクションフィーダFb2の電流Ib2に応じてトラクション変電所TSbから右側隣接給電区間トラクションネットワークOCSbに供給される有効電力Pcbbを計算するステップと、を含み、
トラクション変電所からトラクションネットワークへ流れる電力は正、トラクションネットワークからトラクション変電所へ流れる電力は負である、ことを特徴とする請求項6に記載の制御方法。
【請求項8】
前記コントローラCCaとコントローラCCbはそれぞれ取得したリアルタイム電力情報に応じて情報交換を行う前記ステップは、コントローラCCaは光ファイバを介してOFLに対して有効電力Pcaと有効電力PcaaデータをコントローラCCbに送信し、コントローラCCbは光ファイバを介してOFLに対して有効電力Pcbと有効電力PcbbデータをコントローラCCaに送信するステップを含む、ことを特徴とする請求項7に記載の制御方法。
【請求項9】
前記コントローラCCaは情報交換結果に応じて電力変換装置BCSaを制御してライドスルー電力を利用し、コントローラCCbは情報交換結果に応じて電力変換装置BCSbを制御してライドスルー電力を利用し、それによってトラクション変電所TSaから電力網に戻るライドスルー電力又はトラクション変電所TSbから電力網に戻るライドスルー電力が所定の要件を満たす前記ステップは、
Pca>0、Pcb<0且つPca+Pcb=0であり、コントローラCCaとコントローラCCbはトラクションネットワークOCSが無負荷動作条件にあると判定し、有効電力Pcaと有効電力Pcbはライドスルー電力であり、トラクションフィーダFa1からトラクションフィーダFb1に流れると、このとき、有効電力Pca≧Pcbb≧0であると、コントローラCCbは電力変換装置BCSbを制御して配電システムバスDSBbに給電するか、又はエネルギー貯蔵装置ESDbをエネルギー貯蔵状態で動作させ、両者の電力の和=Pca-Pcbbであると同時に、コントローラCCaは電力変換装置BCSaを制御して待機させ、有効電力Pcbb≧Pcaであると、コントローラCCbは電力変換装置BCSbを制御して待機させると同時に、コントローラCCaは電力変換装置BCSaを制御して待機させるステップと、
Pcb>0、Pca<0且つPca+Pcb=0であり、コントローラCCaとコントローラCCbはトラクションネットワークOCSが無負荷動作条件にあると判定し、有効電力Pcaと有効電力Pcbはライドスルー電力であり、トラクションフィーダFb1からトラクションフィーダFa1に流れると、このとき、有効電力Pcb≧Pcaa≧0であると、コントローラCCaは電力変換装置BCSaを制御して配電システムバスDSBaに給電するか、又はエネルギー貯蔵装置ESDaをエネルギー貯蔵状態で動作させ、両者の電力の和=Pcb-Pcaaであると同時に、コントローラCCbは電力変換装置BCSbを制御して待機させ、有効電力Pcaa≧Pcbであると、コントローラCCaは電力変換装置BCSaを制御して待機させると同時に、コントローラCCbは電力変換装置BCSbを制御して待機させるステップと、
|Pca+Pcb|>0且つPca>0、Pcb>0であり、コントローラCCaとコントローラCCbはトラクションネットワークOCSがトラクション動作条件にあると判定すると、コントローラCCaは電力変換装置BCSaを制御してエネルギー貯蔵装置ESDaを放電状態で動作させ、エネルギー貯蔵装置ESDaの放電電力≦Pcaであると同時に、コントローラCCbは電力変換装置BCSbを制御してエネルギー貯蔵装置ESDbを放電状態で動作させ、エネルギー貯蔵装置ESDbの放電電力≦Pcbであるステップと、を含む、ことを特徴とする請求項6に記載の制御方法。
【請求項10】
前記コントローラCCaは情報交換結果に応じて電力変換装置BCSaを制御してライドスルー電力を利用し、コントローラCCbは情報交換結果に応じて電力変換装置BCSbを制御してライドスルー電力を利用し、それによってトラクション変電所TSaから電力網に戻るライドスルー電力又はトラクション変電所TSbから電力網に戻るライドスルー電力が所定の要件を満たす前記ステップは、
Pca<0且つPcb<0であり、コントローラCCaとコントローラCCbはトラクションネットワークOCSが制動動作条件にあると判定すると、このとき、
Pcaa<0であると、コントローラCCaは電力変換装置BCSaを制御して配電システムバスDSBaに給電するか、又はエネルギー貯蔵装置ESDaをエネルギー貯蔵状態で動作させ、両者の電力の和=|Pca|+|Pcaa|であり、Pcaa>0且つPcaa<|Pca|であると、コントローラCCaは電力変換装置BCSaを制御して配電システムバスDSBaに給電するか、又はエネルギー貯蔵装置ESDaをエネルギー貯蔵状態で動作させ、両者の電力の和=|Pca|-|Pcaa|であり、Pcaa>0且つPcaa≧|Pca|であると、コントローラCCaは電力変換装置BCSaを制御して待機させるステップと、
Pcbb<0であると、コントローラCCbは電力変換装置BCSbを制御して配電システムバスDSBbに給電するか、又はエネルギー貯蔵装置ESDbをエネルギー貯蔵状態で動作させ、両者の電力の和=|Pcb|+|Pcbb|であり、Pcbb>0且つPcbb<|Pcb|であると、コントローラCCbは電力変換装置BCSbを制御して配電システムバスDSBbに給電するか、又はエネルギー貯蔵装置ESDbをエネルギー貯蔵状態で動作させ、両者の電力の和=|Pcb|-|Pcbb|であり、Pcbb>0且つPcbb≧|Pcb|であると、コントローラCCbは電力変換装置BCSbを制御して待機させるステップと、をさらに含む、ことを特徴とする請求項9に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2022年03月17日に提出された、中国特許出願202210261871.3の利益を主張しており、当該出願の内容は引用により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本発明は、交流電気鉄道トラクション給電の技術分野に関し、特にトラクションネットワークのバイラテラル給電ライドスルー電力利用システム及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0003】
電化鉄道の電気的分相はトラクション給電システム全体の中の弱い部分であり、電気的分相のニュートラルセクションはデッドセクションを形成し、給電の中断を引き起こす。ニュートラルセクションのデッドセクションは一般的に数十メートルしかないが、列車を制御して自動分相通過を行う停電距離は500メートル以上に達し、列車の良好な運転を著しく制約し、さらには坂道を上る際に列車の坂道停止事故を引き起こすこともある。電化鉄道のバイラテラル給電は、区間の位置する電気的分相をなくし、ここのデッドセクションをなくし、列車の連続給電を保証すると同時に、過剰分相の危険性をなくすことができる。バイラテラル給電には、給電の信頼性が高く、電力網の電圧レベルが良く、給電能力が高く、電力損失が小さいなどのメリットがある。
【0004】
通常、バイラテラル給電トラクションネットワークは両側のトラクション変電所を介して電力網と並列構造を形成し、トラクションネットワークが無負荷の場合、トラクションネットワークには電力と電流が流れ、対応するこの電力をライドスルー電力(対応する電流を平衡電流と呼ぶ)と呼ぶ。このとき、ライドスルー電力が一方側のトラクション変電所から流入し、他方側のトラクション変電所から流出し、すなわち、ライドスルー電力が電力網からトラクションネットワークのトラクション変電所に流入するとき、負荷(電力消費)状態にあり、ライドスルー電力がトラクションネットワークから電力網のトラクション変電所に流入するとき、発電状態にある。バイラテラル給電が電力網の構造を変えたからこそ、バイラテラル給電を実施するには2つの重要な技術的問題を解決する必要がある。
【0005】
1つ目は、電力網とトラクションネットワークの継電保護の問題であり、継電保護はより広い保護範囲を持ち、電力網の故障時にトラクションネットワークを連動してトリップさせて潮流の伝達を遮断する機能などを持つ必要がある。これについては、電力網に送電線保護を配置したり、トラクションネットワークに段階的保護を配置したりすることなどによって完璧に解決することができる。
【0006】
2つ目は、ライドスルー電力の電力網への影響と計量の問題である。ライドスルー電力が電力網に戻ると、当該トラクション変電所が発電することに相当し、逆送電力を逆方向計量し、すなわち、発電として取り扱い、別のトラクション変電所の消費電力と相殺すると、ユーザーは経済的損失がない。ライドスルー電力が電力網に戻るときに逆送電力を計量されないか順方向計量されると、ユーザーに経済的損失をもたらし、このような場合、バイラテラル給電がどのようにライドスルー電力を減らすか、またはライドスルー電力をどのように利用して、バイラテラル給電の優位性を正常に発揮すると同時に、電力網とユーザーへの影響を減らし、電力消費の効益を高めるかを研究する必要がある。
【0007】
バイラテラル給電ライドスルー電力の鍵が電力網に戻る電力であるという難題を考慮して、現在、電化鉄道トラクションネットワークのバイラテラル給電ライドスルー電力利用技術を提案し、区間の位置する電気的分相をキャンセルし、デッドセクションをなくすと同時に、ライドスルー電力を利用可能な電力と電気エネルギーに転化し、電力網に戻る電力は要件を満たし、さらには0になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の第1目的は、変電所TSaと変電所TSbの間にあるライドスルー電力の利用を効果的に解決することができ、それによって電力網に戻るライドスルー電力が所定の要件を満たすトラクションネットワークのバイラテラル給電ライドスルー電力利用システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下の技術的手段によって実現される。
【0010】
トラクションネットワークのバイラテラル給電ライドスルー電力利用システムであって、トラクション変電所TSaに設置される電力変換装置BCSaとコントローラCCaを含み、電力変換装置BCSaは交流ポートJaを介してトラクションバスTSBaに接続され、トラクションバスTSBaには電圧変成器PTaが設置され、トラクションフィーダFa1とトラクションフィーダFa2に電流変成器CTa1と電流変成器CTa2がそれぞれ設置され、前記電圧変成器PTa、電流変成器CTa1及び電流変成器CTa2の計測端子はコントローラCCaの入力端子に接続され、
トラクション変電所TSbに設置される電力変換装置BCSbとコントローラCCbをさらに含み、電力変換装置BCSbは交流ポートJbを介してトラクションバスTSBbに接続され、トラクションバスTSBbに電圧変成器PTbが設置され、トラクションフィーダFb1とトラクションフィーダFb2に電流変成器CTb1と電流変成器CTb2がそれぞれ設置され、前記電圧変成器PTb、電流変成器CTb1及び電流変成器CTb2の計測端子はコントローラCCbの入力端子に接続され、
前記コントローラCCaとコントローラCCbは光ファイバを介してOFLを接続して情報交換を行い、ここで、トラクション変電所TSaとトラクション変電所TSbの間のトラクションネットワークOCSはバイラテラル給電を採用し、コントローラCCaは変電所TSaの電力情報をリアルタイムで取得するために使用され、コントローラCCbは変電所TSbの電力情報をリアルタイムで取得するために使用され、コントローラCCaとコントローラCCbは情報交換結果に応じて電力変換装置BCSa、電力変換装置BCSbをそれぞれ制御してライドスルー電力を利用し、それによってトラクション変電所TSa又はトラクション変電所TSbから電力網に戻るライドスルー電力が所定の要件を満たす。
【0011】
さらに、前記トラクション変電所TSaは同相給電を採用し、トラクション変電所TSaのトラクションバスTSBaはトラクションフィーダFa1を介してトラクションネットワークOCSに給電し、トラクションフィーダFa2を介して左側隣接給電区間トラクションネットワークOCSaに給電し、トラクションネットワークOCSと左側隣接給電区間トラクションネットワークOCSaはセクショナライザを介して接続される。
【0012】
さらに、前記トラクション変電所TSbは同相給電を採用し、トラクション変電所TSbのトラクションバスTSBbはトラクションフィーダFb1を介してトラクションネットワークOCSに給電し、トラクションフィーダFb2を介して右側隣接給電区間トラクションネットワークOCSbに給電し、トラクションネットワークOCSと右側隣接給電区間トラクションネットワークOCSbはセクショナライザを介して接続される。
【0013】
さらに、前記電力変換装置BCSaは整流装置ADCaとインバータ装置DACaを含み、整流装置ADCaの直流側は共通直流バスDCBaを介してエネルギー貯蔵装置ESDa及びインバータ装置DACaの直流側に接続され、インバータ装置DACaの三相交流側はトラクション変電所TSaの配電システムバスDSBaに接続され、前記コントローラCCaの出力端子は電力変換装置BCSaの制御端子に接続される。
【0014】
さらに、前記電力変換装置BCSbは整流装置ADCbとインバータ装置DACbを含み、整流装置ADCbの直流側は共通直流バスDCBbを介してエネルギー貯蔵装置ESDb及びインバータ装置DACbの直流側に接続され、インバータ装置DACbの三相交流側はトラクション変電所TSbの配電システムバスDSBbに接続され、前記コントローラCCbの出力端子は電力変換装置BCSbの制御端子に接続される。
【0015】
本発明の別の目的は、
コントローラCCaとコントローラCCbはトラクション変電所TSaとトラクション変電所TSbのリアルタイム電力情報をそれぞれ取得するステップと、
コントローラCCaとコントローラCCbはそれぞれ取得したリアルタイム電力情報に応じて情報交換を行うステップと、
コントローラCCaは情報交換結果に応じて電力変換装置BCSaを制御してライドスルー電力を利用し、コントローラCCbは情報交換結果に応じて電力変換装置BCSbを制御してライドスルー電力を利用し、それによってトラクション変電所TSaから電力網に戻るライドスルー電力又はトラクション変電所TSbから電力網に戻るライドスルー電力が所定の要件を満たすステップと、を含む、上記トラクションネットワークのバイラテラル給電ライドスルー電力利用システムに基づく制御方法を提供する。
【0016】
さらに、前記トラクション変電所TSaとトラクション変電所TSbはいずれも同相給電を採用し、前記制御方法において、
コントローラCCaがトラクション変電所TSaのリアルタイム電力情報を取得するステップは、コントローラCCaがトラクションバスTSBaの電圧Ua、トラクションフィーダFa1の電流Ia1、トラクションフィーダFa2の電流Ia2をリアルタイムで検出するステップと、コントローラCCaがトラクションバスTSBaの電圧UaとトラクションフィーダFa1の電流Ia1に応じてトラクション変電所TSaからトラクションネットワークOCSに供給される有効電力Pcaを計算するステップと、コントローラCCaがトラクションバスTSBaの電圧UaとトラクションフィーダFa2の電流Ia2に応じてトラクション変電所TSaから左側隣接給電区間トラクションネットワークOCSaに供給される有効電力Pcaaを計算するステップと、を含み、
コントローラCCbが変電所TSbのリアルタイム電力情報を取得するステップは、コントローラCCbがトラクションバスTSBbの電圧Ub、トラクションフィーダFb1の電流Ib1、トラクションフィーダFb2の電流Ib2をリアルタイムで検出するステップと、コントローラCCbがトラクションバスTSBbの電圧UbとトラクションフィーダFb1の電流Ib1に応じてトラクション変電所TSbからトラクションネットワークOCSに供給される有効電力Pcbを計算し、コントローラCCbがトラクションバスTSBbの電圧UbとトラクションフィーダFb2の電流Ib2に応じてトラクション変電所TSbから右側隣接給電区間トラクションネットワークOCSbに供給される有効電力Pcbbを計算するステップと、を含み、
トラクション変電所からトラクションネットワークへ流れる電力は正、トラクションネットワークからトラクション変電所へ流れる電力は負である。
【0017】
さらに、コントローラCCaとコントローラCCbがそれぞれ取得したリアルタイム電力情報に応じて情報交換を行う前記ステップは、コントローラCCaは光ファイバを介してOFLに対して有効電力Pcaと有効電力PcaaデータをコントローラCCbに送信し、コントローラCCbは光ファイバを介してOFLに対して有効電力Pcbと有効電力PcbbデータをコントローラCCaに送信するステップを含む。
【0018】
さらに、コントローラCCaは情報交換結果に応じて電力変換装置BCSaを制御してライドスルー電力を利用し、コントローラCCbは情報交換結果に応じて電力変換装置BCSbを制御してライドスルー電力を利用し、それによってトラクション変電所TSaから電力網に戻るライドスルー電力又はトラクション変電所TSbから電力網に戻るライドスルー電力が所定の要件を満たす前記ステップは、
Pca>0、Pcb<0且つPca+Pcb=0であり、コントローラCCaとコントローラCCbはトラクションネットワークOCSが無負荷動作条件にあると判定し、有効電力Pcaと有効電力Pcbはライドスルー電力であり、トラクションフィーダFa1からトラクションフィーダFb1に流れると、このとき、有効電力Pca≧Pcbb≧0であると、コントローラCCbは電力変換装置BCSbを制御して配電システムバスDSBbに給電するか、又はエネルギー貯蔵装置ESDbをエネルギー貯蔵状態で動作させ、両者の電力の和=Pca-Pcbbであると同時に、コントローラCCaは電力変換装置BCSaを制御して待機させ、有効電力Pcbb≧Pcaであると、コントローラCCbは電力変換装置BCSbを制御して待機させると同時に、コントローラCCaは電力変換装置BCSaを制御して待機させるステップと、
Pcb>0、Pca<0且つPca+Pcb=0であり、コントローラCCaとコントローラCCbはトラクションネットワークOCSが無負荷動作条件にあると判定し、有効電力Pcaと有効電力Pcbはライドスルー電力であり、トラクションフィーダFb1からトラクションフィーダFa1に流れると、このとき、有効電力Pcb≧Pcaa≧0であると、コントローラCCaは電力変換装置BCSaを制御して配電システムバスDSBaに給電するか、又はエネルギー貯蔵装置ESDaをエネルギー貯蔵状態で動作させ、両者の電力の和=Pcb-Pcaaであると、コントローラCCbは電力変換装置BCSbを制御して待機させ、有効電力Pcaa≧Pcbであると、コントローラCCaは電力変換装置BCSaを制御して待機させると同時に、コントローラCCbは電力変換装置BCSbを制御して待機させるステップと、
|Pca+Pcb|>0、Pca>0、Pcb>0であり、コントローラCCaとコントローラCCbはトラクションネットワークOCSがトラクション動作条件にあると判定すると、コントローラCCaは電力変換装置BCSaを制御してエネルギー貯蔵装置ESDaを放電状態で動作させ、エネルギー貯蔵装置ESDaの放電電力≦Pcaであると同時に、コントローラCCbは電力変換装置BCSbを制御してエネルギー貯蔵装置ESDbを放電状態で動作させ、エネルギー貯蔵装置ESDbの放電電力≦Pcbであるステップと、を含む。
【0019】
さらに、コントローラCCaは情報交換結果に応じて電力変換装置BCSaを制御してライドスルー電力を利用し、コントローラCCbは情報交換結果に応じて電力変換装置BCSbを制御してライドスルー電力を利用し、それによってトラクション変電所TSaから電力網に戻るライドスルー電力又はトラクション変電所TSbから電力網に戻るライドスルー電力が所定の要件を満たす前記ステップは、
Pca<0且つPcb<0であり、コントローラCCaとコントローラCCbはトラクションネットワークOCSが制動動作条件にあると判定すると、このとき、
Pcaa<0であると、コントローラCCaは電力変換装置BCSaを制御して配電システムバスDSBaに給電するか、又はエネルギー貯蔵装置ESDaをエネルギー貯蔵状態で動作させ、両者の電力の和=|Pca|+|Pcaa|であり、Pcaa>0且つPcaa<|Pca|であると、コントローラCCaは電力変換装置BCSaを制御して配電システムバスDSBaに給電するか、又はエネルギー貯蔵装置ESDaをエネルギー貯蔵状態で動作させ、両者の電力の和=|Pca|-|Pcaa|であり、Pcaa>0且つPcaa≧|Pca|であると、コントローラCCaは電力変換装置BCSaを制御して待機させるステップと、
Pcbb<0であると、コントローラCCbは電力変換装置BCSbを制御して配電システムバスDSBbに給電するか、又はエネルギー貯蔵装置ESDbをエネルギー貯蔵状態で動作させ、両者の電力の和=|Pcb|+|Pcbb|であり、Pcbb>0且つPcbb<|Pcb|であると、コントローラCCbは電力変換装置BCSbを制御して配電システムバスDSBbに給電するか、又はエネルギー貯蔵装置ESDbをエネルギー貯蔵状態で動作させ、両者の電力の和=|Pcb|-|Pcbb|であり、Pcbb>0且つPcbb≧|Pcb|であると、コントローラCCbは電力変換装置BCSbを制御して待機させるステップと、をさらに含む。
【0020】
本発明の作動原理は以下の通りである。通常、バイラテラル給電トラクションネットワークは電力網と並列構造を形成し、トラクションネットワークが無負荷の場合、電力網から送電された電力の一部はトラクションネットワークを流れ、対応するこの電力をライドスルー電力(対応する電流を平衡電流と呼ぶ)と呼ぶ。送電線、トラクションネットワークの分布容量には充電電流と充電電力がさらに発生する。ライドスルー電力はトラクションネットワークに沿って流れ、縦方向成分に属し、充電電力は負荷と同様に横方向成分と呼ばれる。トラクションネットワークが無負荷の場合、ライドスルー電力を計測する有効成分を選択するだけで、ライドスルーの状況を反映でき、トラクション変電所の引込線、トラクションフィーダ及びトラクションネットワークの任意の便利な部位で計測できる。トラクション変電所の同相給電とトラクションネットワークバイラテラル給電は給電アームの延長に等価し、伴走車両のうちトラクション列車は制動列車の回生電力をより高い確率で吸収でき、最終的に電力網に戻る回生電力を大幅に低減し、さらに0にする。トラクション負荷によって大きな横方向成分が発生し、電力網に戻るライドスルー電力の値以上である場合、横方向成分効果のみを示し、すなわち、等価なトラクション動作条件である。トラクションネットワークの負荷が回生制動動作条件である場合、発生する回生制動エネルギーは最初に隣接する給電区間に消費され、余剰の回生エネルギーはトラクション変電所を介して電力網にフィードバックされる。バイラテラル給電のための2つのトラクション変電所の電圧と電流情報を利用して、バイラテラル給電区間トラクションネットワークの動作条件を判定し、無負荷の動作条件では、電力変換装置によってライドスルー電力をエネルギー貯蔵装置に貯蔵するか、又は変電所自家の電力消費システムに変換し、それによって電力網に戻るライドスルー電力が所定の要件を満たし、トラクション動作条件(又は等価なトラクション動作条件)では、エネルギー貯蔵装置はエネルギーを放出して列車に使用し、回生制動動作条件(このとき、ライドスルー電力もある)では、電力変換装置によって回生電力とライドスルー電力をともにエネルギー貯蔵装置に貯蔵するか、又は変電所自家の電力消費システムに変換し、それによって電力網に戻る電力が所定の要件を満たす。
【発明の効果】
【0021】
従来技術と比べて、本発明の有益な効果は以下の通りである。
1.電力網の鉄道への給電構造を変えずに、トラクションネットワークのライドスルー電力を利用し、ライドスルー電力が電力網とユーザーに与える悪影響を取り除き、バイラテラル給電のメリットを十分に発揮する。
2.同相給電を基礎とした上でバイラテラル給電を実施することは、給電アームの回生エネルギーの利用により有利であり、回生制動エネルギーの直接利用率を高め、通常の場合、電力網に戻る回生電力と電気エネルギーが所定の要件を満たすことができ、さらには0になり得る。
3.電力変換装置はトラクション変電所のエネルギー貯蔵装置と配電システムに接続して給電することができ、ライドスルー電力を利用するほか、余剰の回生制動電気エネルギーを利用することもできる。
4.技術が先進的で信頼性が高く、実施しやすい。
【0022】
図面は、本発明の実施例の更なる理解を提供するために使用され、明細書の一部を構成し、以下の発明を実施するための形態とともに本発明の実施例を説明するために使用されるが、本発明の実施例を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明のバイラテラル給電と電力網との接続関係の模式図である。
【
図3】本発明の電力変換装置BCSaの構造模式図である。
【
図4】本発明の電力変換装置BCSbの構造模式図である
【発明を実施するための形態】
【0024】
当業者が本発明の技術案をよりよく理解するために、以下、図面及び具体的な実施形態を参照して本発明をさらに説明する。
【0025】
実施例1
バイラテラル給電と電力網との接続関係の単線の模式図は、
図1に示され、バイラテラル給電トラクションネットワークOCSは両側のトラクション変電所TSaとトラクション変電所TSbを介して電力網Gと並列構造を形成する。並列シャントの原理によると、バイラテラル給電によって、トラクションネットワークOCSで電力網Gに平行な電流成分が発生し、平衡電流と呼ばれ、ライドスルー電力が発生し、鉄道の電気料金問題に影響を与える。バイラテラル給電の2つの変電所の一次側の電気料金は逆送電力の逆方向計量方法を採用すると、この問題をよく解決でき、逆送電力を計量しないか、又は逆送電力を順方向計量すると、鉄道のさらなる負担になる。
【0026】
このため、
図2に示すように、本実施例は、トラクションネットワークのバイラテラル給電ライドスルー電力利用システムを提供し、トラクション変電所TSaに設置される電力変換装置BCSaとコントローラCCaを含み、電力変換装置BCSaは交流ポートJaを介してトラクションバスTSBaに接続され、トラクションバスTSBaには電圧変成器PTaが設置され、トラクションフィーダFa1とトラクションフィーダFa2に電流変成器CTa1と電流変成器CTa2がそれぞれ設置され、前記電圧変成器PTa、電流変成器CTa1及び電流変成器CTa2の計測端子はコントローラCCaの入力端子に接続され、
トラクション変電所TSbに設置される電力変換装置BCSbとコントローラCCbをさらに含み、電力変換装置BCSbは交流ポートJbを介してトラクションバスTSBbに接続され、トラクションバスTSBbに電圧変成器PTbが設置され、トラクションフィーダFb1とトラクションフィーダFb2に電流変成器CTb1と電流変成器CTb2がそれぞれ設置され、前記電圧変成器PTb、電流変成器CTb1及び電流変成器CTb2の計測端子はコントローラCCbの入力端子に接続され、
前記コントローラCCaとコントローラCCbは光ファイバを介してOFLを接続して情報交換を行い、トラクション変電所TSaとトラクション変電所TSbの間のトラクションネットワークOCSはバイラテラル給電を採用し、コントローラCCaは変電所TSaの電力情報をリアルタイムで取得するために使用され、コントローラCCbは変電所TSbの電力情報をリアルタイムで取得するために使用され、コントローラCCaとコントローラCCbは情報交換結果に応じて電力変換装置BCSa、電力変換装置BCSbをそれぞれ制御してライドスルー電力を利用し、それによってトラクション変電所TSa又はトラクション変電所TSbから電力網に戻るライドスルー電力が所定の要件を満たす。
【0027】
本実施例の応用シーンでは、トラクション変電所TSaとトラクション変電所TSbの間の電気的分相を取り消し、即ち、トラクション変電所TSaとトラクション変電所TSbの間のトラクションネットワークOCSはバイラテラル給電を採用する。また、背景技術で述べたように、トラクション変電所のトラクション変圧器の二次側にリアクトルを直列に接続することで平衡電流を低減するか、又はトラクション変電所に電圧補償装置を追加することで電圧位相補償を実現してバイラテラル給電の2つのトラクション変電所の出力電圧差を低減する必要があり、本実施例では、これら2つの措置について必須ではない。即ち、本実施例は、これら2つの措置を採用してもよいしこれら2つの措置を採用しなくてもよく、本実施例のコアは、ライドスルー電力、又はライドスルー電力がある、トラクション変電所に戻る電力を利用することであり、ライドスルー電力の発生を抑制するのではなく、ライドスルー電力が発生した後の対応に重点をおいており、これは本実施例を従来技術と区別する鍵となる。また、本実施例は、ライドスルー電力を利用するという技術構想をもとに、実際の動作条件では、列車の制動時に発生する回生電力が元々存在するライドスルー電力とともにトラクション変電所に戻ることがあるため、本実施例でいうライドスルー電力利用は、ライドスルー電力を含む、トラクション変電所に戻る電力を利用することを指してもよい。ライドスルー電力の利用によって、前記トラクション変電所TSaから電力網に戻るライドスルー電力又は前記トラクション変電所TSbから電力網に戻るライドスルー電力が所定の要件を満たし、さらにライドスルー電力の電力網とユーザーへの悪影響を取り除き、バイラテラル給電のメリットを充分に発揮する。
【0028】
好ましくは、本実施例におけるトラクション変電所TSaは同相給電を採用し、トラクション変電所TSaのトラクションバスTSBaはトラクションフィーダFa1を介してトラクションネットワークOCSに給電し、トラクションフィーダFa2を介して左側隣接給電区間トラクションネットワークOCSaに給電し、トラクションネットワークOCSと左側隣接給電区間トラクションネットワークOCSaはセクショナライザを介して接続される。
【0029】
ここで、変電所TSaが同相給電技術を採用すると、給電アームが延長し、伴走車両のうちトラクション列車は制動列車の回生電力をより高い確率で吸収でき、回生制動エネルギーの直接利用率を高め、最終的に電力網に戻る回生電力を大幅に低減し、さらに0にする。メンテナンスを容易にするために、本実施例は、トラクション変電所TSaのトラクションネットワークに電気セクションを設置し、即ち、トラクションネットワークOCSと左側隣接給電区間トラクションネットワークOCSaとの間に電気セクションを設置する。電気セクションが設置されることで、一方では、セクショニング計測制御保護技術と組み合わせて使用し、列車が停電することなく点検やメンテナンスを容易にし、他方では、変電所TSbに設置された電気セクションと組み合わせることで、トラクションネットワークOCSの動作条件を検出して分析することもできる(トラクションネットワークOCSが無負荷であるか否かを検出して分析することを含み、無負荷時に変電所に戻る電力はライドスルー電力であり、具体的な分析について、実施例2を参照できる)。
【0030】
好ましくは、本実施例におけるトラクション変電所TSbは同相給電を採用し、トラクション変電所TSbのトラクションバスTSBbはトラクションフィーダFb1を介してトラクションネットワークOCSに給電し、トラクションフィーダFb2を介して右側隣接給電区間トラクションネットワークOCSbに給電し、トラクションネットワークOCSと右側隣接給電区間トラクションネットワークOCSbはセクショナライザを介して接続される。
【0031】
ここで、変電所TSbが同相給電技術を採用すると、給電アームが延長し、伴走車両のうちトラクション列車は制動列車の回生電力をより高い確率で吸収でき、回生制動エネルギーの直接利用率を高め、最終的に電力網に戻る回生電力を大幅に低減し、さらに0にする。メンテナンスを容易にするために、本実施例は、変電所TSbのトラクションネットワークに電気セクションを設置し、即ち、トラクションネットワークOCSと右側隣接給電区間トラクションネットワークOCSbとの間に電気セクションを設置してもよい。電気セクションが設置されることで、一方では、セクショニング計測制御保護技術と組み合わせて使用し、列車が停電することなく点検やメンテナンスを容易にし、他方では、トラクション変電所TSaに設置された電気セクションと組み合わせることで、トラクションネットワークOCSの動作条件を検出して分析することもできる(トラクションネットワークOCSが無負荷であるか否かを検出して分析することを含み、無負荷時に変電所に戻る電力はライドスルー電力であり、具体的な分析について、実施例2を参照できる)。
【0032】
好ましくは、
図3に示すように、前記電力変換装置BCSaは整流装置ADCaとインバータ装置DACaを含み、整流装置ADCaの直流側は共通直流バスDCBaを介してエネルギー貯蔵装置ESDa及びインバータ装置DACaの直流側に接続され、インバータ装置DACaの三相交流側はトラクション変電所TSaの配電システムバスDSBaに接続され、前記コントローラCCaの出力端子は電力変換装置BCSaの制御端子に接続される。
【0033】
ここで、ライドスルー電力、又はライドスルー電力を含む逆送電力がトラクション変電所TSaに流れると、コントローラCCaはエネルギー貯蔵装置ESDaを制御して、トラクション変電所TSaに流れるライドスルー電力、又はライドスルー電力を含む逆送電力を貯蔵してもよいし、トラクション変電所TSaに流れるライドスルー電力、又はライドスルー電力を含む逆送電力を配電システムバスDSBaに流して配電システムの関連電気装置に利用されるように制御し、それによって前記変電所TSaから電力網に戻るライドスルー電力が所定の要件を満たす。
【0034】
好ましくは、
図4に示すように、前記電力変換装置BCSbは整流装置ADCbとインバータ装置DACbを含み、整流装置ADCbの直流側は共通直流バスDCBbを介してエネルギー貯蔵装置ESDb及びインバータ装置DACbの直流側に接続され、インバータ装置DACbの三相交流側はトラクション変電所TSbの配電システムバスDSBbに接続され、前記コントローラCCbの出力端子は電力変換装置BCSbの制御端子に接続される。
【0035】
ここで、ライドスルー電力、又はライドスルー電力を含む逆送電力が変電所TSbに流れるとき、コントローラCCbはエネルギー貯蔵装置ESDbを制御して、変電所TSbに流れるライドスルー電力、又はライドスルー電力を含む逆送電力を貯蔵してもよいし、変電所TSbに流れるライドスルー電力、又はライドスルー電力を含む逆送電力を配電システムバスDSBbに流して配電システムの関連電気装置に利用されるように制御し、それによって前記変電所TSbから電力網に戻るライドスルー電力が所定の要件を満たす。
【0036】
以上のように、本発明の実施例のトラクションネットワークのバイラテラル給電ライドスルー電力利用システムは少なくとも以下の利点を有する。
【0037】
1.電力網の鉄道への給電構造を変えずに、トラクションネットワークのライドスルー電力を利用し、ライドスルー電力が電力網とユーザーに与える悪影響を取り除き、バイラテラル給電のメリットを十分に発揮する。
2.同相給電を基礎とした上でバイラテラル給電を実施することは、給電アームの回生エネルギーの利用により有利であり、回生制動エネルギーの直接利用率を高め、通常の場合、電力網に戻る回生電力と電気エネルギーが所定の要件を満たすことができ、さらには0になり得る。
3.電力変換装置はトラクション変電所のエネルギー貯蔵装置と配電システムに接続して給電することができ、ライドスルー電力を利用するほか、余剰の回生制動電気エネルギーを利用することもできる。
4.技術が先進的で信頼性が高く、実施しやすい。
【0038】
実施例2
図5に示すように、本実施例は、実施例1に提供するトラクションネットワークのバイラテラル給電ライドスルー電力利用システムに基づく制御方法を提供し、
コントローラCCaとコントローラCCbはトラクション変電所TSaとトラクション変電所TSbのリアルタイム電力情報をそれぞれ取得するステップS100と、
コントローラCCaとコントローラCCbはそれぞれ取得したリアルタイム電力情報に応じて情報交換を行うステップS200と、
コントローラCCaは情報交換結果に応じて電力変換装置BCSaを制御してライドスルー電力を利用し、コントローラCCbは情報交換結果に応じて電力変換装置BCSbを制御してライドスルー電力を利用し、それによってトラクション変電所TSaから電力網に戻るライドスルー電力又はトラクション変電所TSbから電力網に戻るライドスルー電力が所定の要件を満たすステップS300と、を含む。
【0039】
好ましくは、前記トラクション変電所TSaとトラクション変電所TSbはいずれも同相給電を採用し、前記方法において、
コントローラCCaとコントローラCCbがトラクション変電所TSaとトラクション変電所TSbのリアルタイム電力情報をそれぞれ取得するステップS100は、コントローラCCaがトラクションバスTSBaの電圧Ua、トラクションフィーダFa1の電流Ia1、トラクションフィーダFa2の電流Ia2をリアルタイムで検出し、コントローラCCaがトラクションバスTSBaの電圧UaとトラクションフィーダFa1の電流Ia1に応じてトラクション変電所TSaからトラクションネットワークOCSに供給される有効電力Pcaを計算し、コントローラCCaがトラクションバスTSBaの電圧UaとトラクションフィーダFa2の電流Ia2に応じてトラクション変電所TSaから左側隣接給電区間トラクションネットワークOCSaに供給される有効電力Pcaaを計算するステップと、
コントローラCCbがトラクションバスTSBbの電圧Ub、トラクションフィーダFb1の電流Ib1、トラクションフィーダFb2の電流Ib2をリアルタイムで検出し、コントローラCCbがトラクションバスTSBbの電圧UbとトラクションフィーダFb1の電流Ib1に応じてトラクション変電所TSbからトラクションネットワークOCSに供給される有効電力Pcbを計算し、コントローラCCbがトラクションバスTSBbの電圧UbとトラクションフィーダFb2の電流Ib2に応じてトラクション変電所TSbから右側隣接給電区間トラクションネットワークOCSbに供給される有効電力Pcbbを計算するステップと、を含み、
トラクション変電所からトラクションネットワークへ流れる電力は正、トラクションネットワークからトラクション変電所へ流れる電力は負である。
【0040】
ここで、トラクション変電所からトラクションネットワークに流れる電力が正であることは、トラクション変電所TSaからトラクションネットワークOCS又は左側隣接給電区間トラクションネットワークOCSaに流れる電力のみが正であることを指すだけでなく、トラクション変電所TSbからトラクションネットワークOCS又は右側隣接給電区間トラクションネットワークOCSbに流れる電力が正であることも指す、トラクションネットワークからトラクション変電所に流れる電力が負であることは、トラクションネットワークOCS又は左側隣接給電区間トラクションネットワークOCSaからトラクション変電所TSaに流れる電力が負であることを指すだけでなく、トラクションネットワークOCS又は右側隣接給電区間トラクションネットワークOCSbからトラクション変電所TSbに流れる電力が負であることも指す。
【0041】
好ましくは、前記コントローラCCaとコントローラCCbがそれぞれリアルタイムで取得した電力情報に応じて情報交換を行うステップS200は以下を含む。前記コントローラCCaとコントローラCCbがそれぞれ取得したリアルタイム電力情報に応じて情報交換を行う前記ステップは、コントローラCCaは光ファイバを介してOFLに対して有効電力Pcaと有効電力PcaaデータをコントローラCCbに送信し、コントローラCCbは光ファイバを介してOFLに対して有効電力Pcbと有効電力PcbbデータをコントローラCCaに送信するステップを含む。
【0042】
好ましくは、コントローラCCaは情報交換結果に応じて電力変換装置BCSaを制御してライドスルー電力を利用し、コントローラCCbは情報交換結果に応じて電力変換装置BCSbを制御してライドスルー電力を利用し、それによってトラクション変電所TSaから電力網に戻るライドスルー電力又はトラクション変電所TSbから電力網に戻るライドスルー電力が所定の要件を満たす前記ステップS300は、
Pca>0、Pcb<0且つPca+Pcb=0であり、コントローラCCaとコントローラCCbはトラクションネットワークOCSが無負荷動作条件にあると判定し、有効電力Pcaと有効電力Pcbはライドスルー電力であり、トラクションフィーダFa1からトラクションフィーダFb1に流れると、このとき、有効電力Pca≧Pcbb≧0であると、コントローラCCbは電力変換装置BCSbを制御して配電システムバスDSBbに給電するか、又はエネルギー貯蔵装置ESDbをエネルギー貯蔵状態で動作させ、両者の電力の和=Pca-Pcbbであると、コントローラCCaは電力変換装置BCSaを制御して待機させ、有効電力Pcbb≧Pcaであると、コントローラCCbは電力変換装置BCSbを制御して待機させると同時に、コントローラCCaは電力変換装置BCSaを制御して待機させるステップS301と、
Pcb>0、Pca<0且つPca+Pcb=0であり、コントローラCCaとコントローラCCbはトラクションネットワークOCSが無負荷動作条件にあると判定し、有効電力Pcaと有効電力Pcbはライドスルー電力であり、トラクションフィーダFb1からトラクションフィーダFa1に流れると、このとき、有効電力Pcb≧Pcaa≧0であると、コントローラCCaは電力変換装置BCSaを制御して配電システムバスDSBaに給電するか、又はエネルギー貯蔵装置ESDaをエネルギー貯蔵状態で動作させ、両者の電力の和=Pcb-Pcaaであると同時に、コントローラCCbは電力変換装置BCSbを制御して待機させ、有効電力Pcaa≧Pcbであると、コントローラCCaは電力変換装置BCSaを制御して待機させると同時に、コントローラCCbは電力変換装置BCSbを制御して待機させるステップS302と、
|Pca+Pcb|>0、且つPca>0、Pcb>0であり、コントローラCCaとコントローラCCbはトラクションネットワークOCSがトラクション動作条件にあると判定すると、コントローラCCaは電力変換装置BCSaを制御してエネルギー貯蔵装置ESDaを放電状態で動作させ、エネルギー貯蔵装置ESDaの放電電力≦Pcaであると同時に、コントローラCCbは電力変換装置BCSbを制御してエネルギー貯蔵装置ESDbを放電状態で動作させ、エネルギー貯蔵装置ESDbの放電電力≦PcbであるステップS303と、を含む。
【0043】
好ましくは、コントローラCCaは情報交換結果に応じて電力変換装置BCSaを制御してライドスルー電力を利用し、コントローラCCbは情報交換結果に応じて電力変換装置BCSbを制御してライドスルー電力を利用し、それによってトラクション変電所TSaから電力網に戻るライドスルー電力又はトラクション変電所TSbから電力網に戻るライドスルー電力が所定の要件を満たす前記ステップ300は、ステップS304をさらに含み、
ステップS304は、Pca<0且つPcb<0であり、コントローラCCaとコントローラCCbはトラクションネットワークOCSが制動動作条件にあると判定すると、このとき、
ステップS304-1において、Pcaa<0であると、コントローラCCaは電力変換装置BCSaを制御して配電システムバスDSBaに給電するか、又はエネルギー貯蔵装置ESDaをエネルギー貯蔵状態で動作させ、両者の電力の和=|Pca|+|Pcaa|であり、Pcaa>0且つPcaa<|Pca|であると、コントローラCCaは電力変換装置BCSaを制御して配電システムバスDSBaに給電するか、又はエネルギー貯蔵装置ESDaをエネルギー貯蔵状態で動作させ、両者の電力の和=|Pca|-|Pcaa|であり、Pcaa>0且つPcaa≧|Pca|であると、コントローラCCaは電力変換装置BCSaを制御して待機させ、
ステップS304-2において、Pcbb<0であると、コントローラCCbは電力変換装置BCSbを制御して配電システムバスDSBbに給電するか、又はエネルギー貯蔵装置ESDbをエネルギー貯蔵状態で動作させ、両者の電力の和=|Pcb|+|Pcbb|であり、Pcbb>0且つPcbb<|Pcb|であると、コントローラCCbは電力変換装置BCSbを制御して配電システムバスDSBbに給電するか、又はエネルギー貯蔵装置ESDbをエネルギー貯蔵状態で動作させ、両者の電力の和=|Pcb|-|Pcbb|であり、Pcbb>0且つPcbb≧|Pcb|であると、コントローラCCbは電力変換装置BCSbを制御して待機させる。
【0044】
以上は、本発明の好ましい実施形態に過ぎず、なお、上記の好ましい実施形態は本発明に対する制限とみなすべきではなく、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲で定められた範囲に準じるものである。当業者は、本発明の精神及び範囲を逸脱しない範囲で、いくつかの改良及び修正を加えることもでき、これらの改良及び修正も本発明の保護範囲とみなされるものとする。
【符号の説明】
【0045】
300 ステップ
S100 ステップ
S200 ステップ
S300 ステップ
S301 ステップ
S302 ステップ
S303 ステップ
S304 ステップ
S304-1 ステップ
S304-2 ステップ
ADCa 整流装置
ADCb 整流装置
BCSa 電力変換装置
BCSb 電力変換装置
CCa コントローラ
CCb コントローラ
CTa1 電流変成器
CTa2 電流変成器
CTb1 電流変成器
CTb2 電流変成器
DACa インバータ装置
DACb インバータ装置
DCBa 共通直流バス
DCBb 共通直流バス
DSBa 配電システムバス
DSBb 配電システムバス
ESDa エネルギー貯蔵装置
ESDb エネルギー貯蔵装置
Fa1 トラクションフィーダ
Fa2 トラクションフィーダ
Fb1 トラクションフィーダ
Fb2 トラクションフィーダ
G 電力網
Ia1 電流
Ia2 電流
Ib1 電流
Ib2 電流
Ja 交流ポート
Jb 交流ポート
OCS トラクションネットワーク
OCS バイラテラル給電トラクションネットワーク
OCSa 左側隣接給電区間トラクションネットワーク
OCSb 右側隣接給電区間トラクションネットワーク
Pca 有効電力
Pcaa 有効電力
Pcb 有効電力
Pcbb 有効電力
PTa 電圧変成器
PTb 電圧変成器
TSa 変電所
TSa トラクション変電所
TSb 変電所
TSb トラクション変電所
TSBa トラクションバス
TSBb トラクションバス
Ua 電圧
Ub 電圧
【国際調査報告】