(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-17
(54)【発明の名称】正極活物質、当該正極活物質を含む電気化学装置および電子装置
(51)【国際特許分類】
H01M 4/505 20100101AFI20250109BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20250109BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20250109BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20250109BHJP
H01M 4/131 20100101ALI20250109BHJP
H01M 10/0567 20100101ALI20250109BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20250109BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20250109BHJP
H01M 4/133 20100101ALI20250109BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20250109BHJP
【FI】
H01M4/505
H01M4/36 C
H01M4/525
H01M10/0566
H01M4/131
H01M10/0567
H01M10/0569
H01M4/587
H01M4/133
H01M50/489
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541688
(86)(22)【出願日】2022-01-29
(85)【翻訳文提出日】2024-07-10
(86)【国際出願番号】 CN2022074938
(87)【国際公開番号】W WO2023142029
(87)【国際公開日】2023-08-03
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514257398
【氏名又は名称】東莞新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】DONGGUAN AMPEREX TECHNOLOGY LIMITED
【住所又は居所原語表記】No.1 Industrial West Road,Songshan Lake High-tech Industrial Development Zone, Dongguan City, Guangdong Province, People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】110002723
【氏名又は名称】高法弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】劉 文元
(72)【発明者】
【氏名】郎 野
【テーマコード(参考)】
5H021
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H021HH06
5H029AJ05
5H029AK03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AM03
5H029AM07
5H029BJ12
5H029DJ04
5H029DJ09
5H029DJ16
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ05
5H029HJ13
5H050AA07
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB07
5H050CB08
5H050DA13
5H050DA19
5H050FA02
5H050FA17
5H050FA18
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA13
(57)【要約】
本発明は、正極活物質(10)、当該正極活物質(10)を含む電気化学装置および電子装置を提供し、正極活物質(10)は、Mn元素およびAl元素を含み、正極活物質(10)粒子は、正極活物質(10)粒子の表面に近い第1領域(11)と、正極活物質(10)粒子の表面から離れた第2領域(12)とを含み、第1領域(11)におけるAl/Mnのモル比をa1とし、第2領域(12)におけるAl/Mnのモル比をa2としたとき、a1とa2は、1.1≦a1/a2≦100を満たす。本発明が提供する正極活物質(10)は、Alを正極活物質(10)の表面に近い領域に集中させることにより、正極のマンガン溶出現象を効果的に改善して電気化学装置のサイクル特性および貯蔵特性を向上させることができるだけでなく、同時に正極活物質におけるAlの総含有量を減少させて正極片の比容量を保持することができ、それにより、電気化学装置の総合特性を向上させることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Mn元素およびAl元素を含み、
正極活物質粒子は、前記正極活物質粒子の表面に近い第1領域と、前記正極活物質粒子の表面から離れた第2領域とを含み、
前記第1領域におけるAl/Mnのモル比をa1とし、前記第2領域におけるAl/Mnのモル比をa2としたとき、a1とa2は、1.1≦a1/a2≦100を満たす、正極活物質。
【請求項2】
a1は1%~30%であり、および/または、a2は0.05%~5%である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項3】
前記正極活物質の質量に対して、前記第1領域におけるAlは、質量百分率で、0.01%~0.5%である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項4】
正極活物質は、Al元素を含むマンガン酸リチウムから選択される、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項5】
(a)前記正極活物質におけるAl/Mnのモル比は、0.1%~10%であることと、
(b)Mn元素は、Mn
3+およびMn
4+を含み、前記第2領域におけるMn
3+/Mn
4+のモル比に対する前記第1領域におけるMn
3+/Mn
4+のモル比の比をeとしたとき、eは、0.80~0.95であることと、
(c)前記正極活物質はLiを含み、前記第1領域におけるLi/Mnのモル比をb1とし、前記第2領域におけるLi/Mnのモル比をb2としたとき、b1とb2は、1≦b1/b2≦2を満たすことと、
のうちの少なくとも1つの条件を満たす、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項6】
M1元素をさらに含み、前記M1元素は、Ni、Co、Nb、Mo、V、W、Zr、Mg、Ti、La、YおよびB元素のうちの少なくとも1種を含み、
前記正極活物質は、
(d)M1/Mnのモル比は、0.1%~5%であることと、
(e)Al/M1のモル比は、1~10であることと、
のうちの少なくとも1つの条件を満たす、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項7】
M2元素をさらに含み、前記M2元素はFおよび/またはSを含み、
前記正極活物質の質量に対して、M2元素は、質量百分率で、0.1%~2%である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項8】
M2元素はF元素を含み、
前記第1領域におけるF/Mnのモル比をd1とし、前記第2領域におけるF/Mnのモル比をd2としたとき、d1とd2は、3≦d1/d2≦50を満たす、請求項7に記載の正極活物質。
【請求項9】
Nb元素をさらに含み、
前記第1領域におけるNb/Mnのモル比をc1とし、前記第2領域におけるNb/Mnのモル比をc2としたとき、c1とc2は、3≦c1/c2≦50を満たす、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項10】
前記正極活物質のDv99は、15μm~50μmであり、
前記正極活物質の粒子径は、
(i)Dv90とDv99は、5μm≦Dv90≦30μm、5μm≦Dv99-Dv90≦21μmを満たすことと、
(ii)Dv10、Dv50およびDv99は、2μm≦Dv10≦10μm、1≦(Dv99-Dv10)/Dv50≦4を満たすことと、
のうちの少なくとも1つの条件を満たす、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項11】
(f)a1とa2は、5≦a1/a2≦90を満たすことと、
(g)前記a1は、5%~30%であることと、
(h)前記正極活物質におけるAl/Mnのモル比は、2%~10%であることと、
(i)b1とb2は、1.1≦b1/b2≦2を満たすことと、
(j)d1とd2は、3≦d1/d2≦25を満たすことと、
(k)前記正極活物質のDv99は、25μm~35μmであることと、
(l)前記正極活物質の粒子径は、8μm≦Dv99-Dv90≦12μmを満たすことと、
(m)前記正極活物質の粒子径は、4μm≦Dv10≦7μm、2≦(Dv99-Dv10)/Dv50≦3を満たすことと、
のうちの少なくとも1つを満たす、請求項1~10のいずれか一項に記載の正極活物質。
【請求項12】
正極、負極および電解液を含み、
前記正極は、請求項1~11のいずれか一項に記載の正極活物質を含み、
前記正極は、正極材料層および正極集電体を含み、
前記正極材料層は、第1正極材料層および第2正極材料層を含み、
前記第1正極材料層は、前記第2正極材料層と前記正極集電体との間に位置し、
前記第1正極材料層におけるMn元素の含有量は、前記第2正極材料層におけるMn元素の含有量よりも大きい、電気化学装置。
【請求項13】
前記電解液の質量に対して、前記電解液は、
(iii)前記電解液は、鎖状カーボネートを含み、前記鎖状カーボネートは、質量百分率で、20%~60%であり、前記鎖状カーボネートは、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートのうちの少なくとも一種を含むことと、
(iv)前記電解液は、ベンゼン含有化合物を含み、前記ベンゼン含有化合物は、質量百分率で、0.01%~5%であり、前記ベンゼン含有化合物は、ビフェニル、フルオロベンゼンおよびシクロヘキシルベンゼンのうちの少なくとも一種を含むことと、
(v)前記電解液は、ポリスチレンを含み、前記ポリスチレンは、質量百分率で、0.01%~5%であることと、
のうちの少なくとも1つの条件を満たす、請求項12に記載の電気化学装置。
【請求項14】
(x)前記電解液の質量に対して、前記ベンゼン含有化合物は、質量百分率で、1%~3%であることと、
(xi)前記電解液の質量に対して、前記ポリスチレンは、質量百分率で、0.01%~3%であることと、
のうちの少なくとも1つを満たす、請求項13に記載の電気化学装置。
【請求項15】
前記負極は、負極材料層を含み、前記負極材料層は負極活物質を含み、前記負極活物質は、天然黒鉛、人造黒鉛およびハードカーボンのうちの少なくとも1種を含み、
前記電気化学装置は、
(vi)前記負極活物質のDv10は、2μm≦Dv10≦10μmを満たすことと、
(vii)前記負極活物質のDv90とDv99は、5μm≦Dv90≦20μm、5μm≦Dv99-Dv90≦25μmを満たすことと、
(viii)前記負極活物質の配向指数の値は、5~30であることと、
(ix)前記負極活物質の黒鉛化度は、92%~96%であることと、
のうちの少なくとも1つの条件を満たす、請求項12に記載の電気化学装置。
【請求項16】
前記電気化学装置は、セパレータを含み、
前記セパレータの示差走査熱量測定によって測定された発熱開始温度は、138℃~145℃である、請求項12に記載の電気化学装置。
【請求項17】
請求項12~16のいずれか一項に記載の電気化学装置を含む、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学分野に関し、特に、正極活物質、当該正極活物質を含む電気化学装置および電子装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、エネルギー密度が高く、サイクル寿命が長く、メモリ効果がないなどの利点を有するため、ウェアラブル装置、スマートフォン、無人航空機、電気自動車および大型エネルギー貯蔵などの装置の分野に幅広く適用されている。リチウムイオン電池は、現在世界で最も発展可能性がある新型のグリーンな化学電源になっているが、同時にリチウムイオン電池の総合特性に対する要件がより高くなっている。
【0003】
リチウムイオン電池における正極活物質は、リチウムイオン電池の特性に影響を与える重要なパラメータである。ここで、正極活物質であるマンガン酸リチウムはリチウムイオン電池に広く適用されるが、マンガン酸リチウムに存在するMn3+は不均化反応が発生しやすく、Mn2+の溶出を引き起こし、次に電解液を介して負極に移動し、固体電解質界面(SEI)を破壊し、活性リチウムの損失を引き起こし、リチウムイオン電池のサイクル特性が悪化する。関連技術において、Mn2+の溶出を改善すると同時に正極の比容量の減衰、電気化学装置のサイクル特性または貯蔵特性の悪化を伴うことが多く、電気化学装置の総合特性の低下をもたらす。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、電気化学装置の総合特性を向上させることができる正極活物質、当該正極活物質を含む電気化学装置および電子装置を提供することにある。
【0005】
本発明の第1態様は、Mn元素およびAl元素を含む正極活物質であって、正極活物質粒子は、前記正極活物質粒子の表面に近い第1領域と、前記正極活物質粒子の表面から離れた第2領域とを含み、第1領域におけるAl/Mnのモル比をa1とし、第2領域におけるAl/Mnのモル比をa2としたとき、a1とa2は、1.1≦a1/a2≦100、好ましくは5≦a1/a2≦90を満たす正極活物質を提供する。a1/a2の値は、1.1、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、もしくは100であり、または上記数値からなる任意の範囲にあり得る。ここで、第1領域とは、正極活物質粒子を2.4mol/Lの硫酸で6時間酸洗浄した後に溶解された部分を指し、第2領域とは、正極活物質粒子を2.4mol/Lの硫酸で6時間酸洗浄した後に溶解されていない部分を指す。
【0006】
本発明者は、第1領域におけるAl/Mnのモル比a1と第2領域におけるAl/Mnのモル比a2との比a1/a2を上記範囲内に調整することにより、正極活物質におけるAlを正極活物質の表面に近い領域に集中させ、それにより、正極のマンガン溶出現象を効果的に改善して電気化学装置のサイクル特性および貯蔵特性を向上させることができるだけでなく、同時に正極活物質におけるAlの総含有量を減少させて正極の高い比容量を保持させ、電気化学装置の総合特性を向上させることができることを発見する。
【0007】
具体的に、a1/a2の値が小さすぎると(例えば1.1未満)、第1領域および第2領域におけるAl/Mnのモル比がほぼ同じであり、あるいは第1領域におけるAl/Mnのモル比が第2領域よりも小さく、即ち正極活物質におけるAlが主に正極活物質粒子の内部に集中している。このため、正極のマンガン溶出現象がほとんど改善されておらず、電気化学装置のサイクル特性および貯蔵特性の向上には不利である。a1/a2の値が徐々に増加するにつれて、得られる正極活物質におけるAlは、主に正極活物質粒子の表面に集中している。このため、正極のマンガン溶出を改善しながら正極の比容量を維持することに寄与しうる。しかし、a1/a2の値が大きすぎると(例えば100超)、即ち第1領域におけるAl/Mnのモル比a1が大きすぎると、正極活物質におけるAlの総含有量が増加し、正極の比容量が低下する。a1/a2の値を上記範囲内に調整することにより、電気化学装置のサイクル特性および貯蔵特性を同時に向上させることに寄与し、且つ正極に高い比容量を保持させ、電気化学装置の総合特性を向上させることができる。
【0008】
本発明のいくつかの実施形態において、正極活物質の質量に対して、第1領域におけるAlは、質量百分率で、0.01%~0.5%である。例えば、第1領域におけるAlは、質量百分率で、0.01%、0.05%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、もしくは0.5%であり、または上記数値からなる任意の範囲にあり得る。第1領域におけるAlの質量百分率を上記範囲内に調整することにより、正極のマンガン溶出を改善すると同時に正極の高い比容量を保持することに寄与し、電気化学装置の総合特性を向上させる。
【0009】
本発明のいくつかの実施形態において、正極活物質は、Al元素を含むマンガン酸リチウム(LMO)から選択される。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態において、第1領域におけるAl/Mnのモル比a1は1%~30%であり、好ましくは5%~30%であり、および/または第2領域におけるAl/Mnのモル比a2は0.05%~5%である。例えば、第1領域におけるAl/Mnのモル比a1は、1%、5%、10%、15%、20%、25%、もしくは30%であり、または上記数値からなる任意の範囲にあり得る。例えば、第2領域におけるAl/Mnのモル比a2は、0.05%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、もしくは0.5%であり、または上記数値からなる任意の範囲にあり得る。
【0011】
第1領域におけるAl/Mnのモル比a1が小さすぎると(例えば1%未満)、正極のマンガン溶出現象を改善して電気化学装置のサイクル特性および貯蔵特性を向上させることができないだけでなく、Alの導入により正極の比容量がある程度低下する。第1領域におけるAl/Mnのモル比a1が大きすぎると(例えば30%超)、正極活物質におけるAlの総含有量が増加し、正極の比容量が低下する。第2領域におけるAl/Mnのモル比a2が小さすぎても(例えば0.05%未満)、大きすぎても(例えば0.5%超)、電気化学装置のサイクル特性および貯蔵特性の改善に不利である。第1領域におけるAl/Mnのモル比a1および/または第2領域におけるAl/Mnのモル比a2を本発明の範囲内に調整することにより、電気化学装置のサイクル特性および貯蔵特性を同時に向上させ、且つ正極の高い比容量を保持し、電気化学装置の総合特性を向上させることに寄与しうる。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態において、正極活物質は、
(a)正極活物質におけるAl/Mnのモル比は、0.1%~10%、好ましくは2%~10%であることと、
(b)Mn元素はMn3+およびMn4+を含み、第2領域におけるMn3+/Mn4+のモル比に対する第1領域におけるMn3+/Mn4+のモル比の比をeとしたとき、eは、0.8~0.95であることと、
(c)正極活物質はLiをさらに含み、第1領域におけるLi/Mnのモル比をb1とし、第2領域におけるLi/Mnのモル比をb2としたとき、b1とb2は、1≦b1/b2≦2、好ましくは1.1≦b1/b2≦2を満たすことと、
のうちの少なくとも1つの条件を満たす。例えば、正極活物質におけるAl/Mnのモル比は、0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、もしくは10%であり、または上記数値からなる任意の範囲にあり得る。例えば、eの値は、0.8、0.83、0.85、0.87、0.9、0.92、もしくは0.95であり、または上記数値からなる任意の範囲にあり得る。例えば、b1/b2の値は、1、1.1、1.2、1.4、1.6、1.8、もしくは2であり、または上記数値からなる任意の範囲にあり得る。
【0013】
正極活物質におけるAl/Mnのモル比が小さすぎると(例えば0.1%未満)、正極のマンガン溶出現象がほとんど改善されておらず、電気化学装置のサイクル特性および貯蔵特性がほとんど改善されていない。正極活物質におけるAl/Mnのモル比が大きすぎると(例えば10%超)、正極の比容量が低下する。正極活物質におけるAl/Mnのモル比を上記範囲内に調整することにより、電気化学装置のサイクル特性および貯蔵特性を向上させることに寄与し、且つ正極に高い比容量を保持させ、電気化学装置の総合特性を向上させる。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態において、正極活物質の質量に対して、Alは、質量百分率で、0.005%~0.1%である。例えば、正極活物質におけるAlは、質量百分率で、0.005%、0.01%、0.02%、0.05%、0.08%、もしくは0.1%であり、または上記数値からなる任意の範囲にあり得る。正極活物質におけるAlの質量百分率を上記範囲内に調整することにより、正極のマンガン溶出を改善すると同時に正極の高い比容量を保持することに寄与し、電気化学装置の総合特性を向上させる。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態において、正極活物質の質量に対して、Mnは、質量百分率で、1.0%~1.2%である。正極活物質におけるMnの質量百分率を上記範囲内に調整することにより、正極のマンガン溶出を改善すると同時に正極の高い比容量を保持することに寄与し、電気化学装置の総合特性を向上させる。
【0016】
第2領域におけるMn3+/Mn4+のモル比に対する第1領域におけるMn3+/Mn4+のモル比の比eは本発明の範囲内にあると、マンガン溶出現象の改善に寄与し、電気化学装置のサイクル特性および貯蔵特性を向上させる。本発明では、第1領域におけるMn3+/Mn4+のモル比および第2領域におけるMn3+/Mn4+のモル比は、eの範囲を満たすものであればよく、特に限定されないが、例えば、第1領域におけるMn3+/Mn4+のモル比が15%~55%であり、第2領域におけるMn3+/Mn4+のモル比が30%~70%である。
【0017】
第1領域におけるLi/Mnのモル比b1と第2領域におけるLi/Mnのモル比b2との比b1/b2を上記範囲内にすることにより、第1領域におけるLi/Mnのモル比b1が第2領域におけるLi/Mnのモル比b2よりも大きく、電気化学装置のサイクル特性を向上させるとともに、正極の比容量を高く維持するのに寄与しうる。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態において、第1領域におけるLi/Mnのモル比b1が58%~98%であり、第2領域におけるLi/Mnのモル比b2が55%~60%である。例えば、第1領域におけるLi/Mnのモル比b1は、58%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、もしくは98%であり、または上記数値からなる任意の範囲にあり得る。第2領域におけるLi/Mnのモル比b2は、55%、55.5%、56%、56.5%、57%、57.5%、58%、58.5%、59%、59.5%、もしくは60%であり、または上記数値からなる任意の範囲にあり得る。第1領域におけるLi/Mnのモル比b1および第2領域におけるLi/Mnのモル比b2を上記範囲内に調整することにより、電気化学装置のサイクル特性を向上させるとともに、正極の比容量を高く維持するのに寄与しうる。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態において、正極活物質はさらにM1元素を含み、M1元素は、Ni、Co、Nb、Mo、V、W、Zr、Mg、Ti、La、YおよびB元素のうちの少なくとも1種を含み、正極活物質は、
(d)M1/Mnのモル比は、0.1%~5%であることと、
(e)Al/M1のモル比は、1~10であることと、
のうちの少なくとも1つの条件を満たす。例えば、M1/Mnのモル比は、0.1%、0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、もしくは5%であり、または上記数値からなる任意の範囲にあり得る。例えば、Al/M1のモル比は、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9、もしくは10であり、または上記数値からなる任意の範囲にあり得る。
【0020】
正極活物質がM1元素を含み、且つM1/Mnのモル比および/またはAl/M1のモル比を上記範囲内にすることにより、電気化学装置の貯蔵特性を向上させるとともに、正極の比容量を高く維持するのに寄与しうる。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態において、正極活物質はさらにM2元素を含み、M2元素はFおよび/またはSを含み、正極活物質の質量に対して、M2元素は、質量百分率で、0.1%~2%である。例えば、M2元素は、質量百分率で、0.1%、0.3%、0.5%、0.8%、1%、1.2%、1.5%、1.8%、もしくは2%であり、または上記数値からなる任意の範囲にあり得る。
【0022】
M2元素の質量百分率が少なすぎると(例えば0.1%未満)、電気化学装置の特性がほとんど改善されていない。M2元素の質量百分率が増加するにつれて、正極の比容量を向上させることに寄与しうる。しかし、M2元素の質量百分率が多すぎると(例えば2%超)、電気化学装置のサイクル特性が悪化する。M2元素の質量百分率を上記範囲内に調整することにより、電気化学装置のサイクル特性を向上させるとともに、正極の比容量を高く維持するのに寄与しうる。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態において、M2元素はF元素を含み、第1領域におけるF/Mnのモル比をd1とし、第2領域におけるF/Mnのモル比をd2としたとき、d1とd2は、3≦d1/d2≦50、好ましくは3≦d1/d2≦25を満たす。例えば、d1/d2の値は、3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、もしくは50であり、または上記数値からなる任意の範囲にあり得る。
【0024】
正極活物質にM2元素を導入することにより、電気化学装置のサイクル特性を向上させることができるが、過剰なM2元素は正極の比容量に影響を与える。d1/d2の値を本発明の範囲内に調整して、第1領域におけるF/Mnのモル比d1を第2領域におけるF/Mnのモル比d2よりも大きくすること、すなわち、正極活物質の表面の領域にF元素を集中させることにより、電気化学装置のサイクル特性を向上させると同時に、正極の比容量を高く維持することができる。本発明では、第1領域におけるF/Mnのモル比d1および第2領域におけるF/Mnのモル比d2は、d1/d2の範囲を満たすものであればよく、特に限定されない。例えば、第1領域におけるF/Mnのモル比d1は1%~2.5%であり、第2領域におけるF/Mnのモル比d2は0.05%~0.5%である。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態において、正極活物質は、Nb元素をさらに含み、第1領域におけるNb/Mnのモル比をc1とし、第2領域におけるNb/Mnのモル比をc2としたとき、c1とc2は、3≦c1/c2≦50を満たす。例えば、c1/c2の値は、3、10、15、20、25、30、35、40、もしくは45であり、または上記数値からなる任意の範囲にあり得る。
【0026】
正極活物質にNb元素を導入し、且つc1/c2の値を上記範囲内にすることにより、電気化学装置のサイクル特性を向上させるのに寄与しうる。本発明では、第1領域におけるNb/Mnのモル比c1および第2領域におけるNb/Mnのモル比c2は、c1/c2の範囲を満たすものであればよく、特に限定されない。例えば、第1領域におけるNb/Mnのモル比c1は1%~5%であり、第2領域におけるNb/Mnのモル比c2は、0.1%~0.8%である。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態において、正極活物質のDv99が15μm~50μm、好ましくは25μm~35μmであり、正極活物質の粒子径は、
(i)Dv90とDv99は、5μm≦Dv90≦30μm、5μm≦Dv99-Dv90≦21μm、好ましくは8μm≦Dv99-Dv90≦12μmを満たすことと、
(ii)Dv10、Dv50およびDv99は、2μm≦Dv10≦10μm、1≦(Dv99-Dv10)/Dv50≦4、好ましくは4μm≦Dv10≦7μm、2≦(Dv99-Dv10)/Dv50≦3を満たすことと、
のうちの少なくとも1つの条件を満たす。
【0028】
例えば、正極活物質のDv99は、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、もしくは50μmであり、または上記数値からなる任意の範囲にあり得る。例えば、正極活物質のDv90は、5μm、8μm、10μm、13μm、15μm、18μm、20μm、23μm、25μm、28μm、もしくは30μmであり、または上記数値からなる任意の範囲にあり得る。Dv99-Dv90の値は、5μm、8μm、10μm、12μm、15μm、18μm、20μm、もしくは21μmであり、または上記数値からなる任意の範囲にあり得る。例えば、正極活物質のDv10は、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、もしくは10μmであり、または上記数値からなる任意の範囲にあり得る。(Dv99-Dv10)/Dv50の値は、1、1.5、2、2.5、3、3.5、もしくは4であり、または上記数値からなる任意の範囲にあり得る。
【0029】
正極活物質のDv99、Dv90およびDv99-Dv90の値を上記範囲内に調整し、あるいは正極活物質のDv99、Dv10および(Dv99-Dv10)/Dv50の値を上記範囲内に調整し、あるいは正極活物質のDv99、Dv90、Dv99-Dv90の値、Dv10および(Dv99-Dv10)/Dv50の値を上記範囲内に調整することにより、いずれも電気化学装置の総合特性を向上させることに寄与しうる。
【0030】
本発明では、正極活物質の調製方法は、本発明の目的を達成することができる限り、特に限定されない。例えば、正極活物質の調製方法は、
原料を混合して、焼成時間をt1として、温度T1で一回目の焼成を行い、中間生成物を得るステップと、
次に、中間原料を加え、中間生成物と混合し、焼成時間をt2として、温度T2で二回目の焼成を行い、正極活物質を得るステップと、
を含みうるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
本発明では、一回目の焼成の温度T1および焼成時間t1、二回目の焼成の温度T2および焼成時間t2は、本発明の目的を達成すればよく、特に限定されない。例えば、T1が800℃~900℃であり、t1が35時間~45時間であり、T2が450℃~600℃であり、t2が5時間~15時間である。
【0032】
本発明では、前記原料および中間原料は、本発明の目的を達成すればよく、特に限定されない。例えば、原料および中間原料は、それぞれ独立して、MnO2、Li2CO3およびAl2O3のうち少なくとも一種を含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
焼成温度および焼成時間は、一般に、正極活物質粒子における正極活物質中の元素の分布に影響を及ぼし、例えば、焼成温度を下げる、および/または焼成時間を短縮すると、元素が正極活物質粒子の表面に近い領域、例えば、本発明の第1領域に分布することになる。焼成温度を上げる、および/または焼成時間を延長すると、元素が正極活物質粒子の表面から離れた領域、例えば、本発明の第2領域に分布することになる。
【0034】
本発明において、正極活物質に元素M1を導入する方法は、本発明の目的を達成すればよく、特に限定されず、例えば、正極活物質の調製時にM1を含有する化合物を添加することができる。本発明では、M1を含有する化合物は、本発明の目的を達成すればよく、特に限定されず、例えば、MgO、酢酸ニッケル、TiO2、ZrO2、Nb2O5、MoO3、V2O5、WO3およびY2O3のうちの少なくとも1種を含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
本発明において、正極活物質に元素M2を導入する方法は、本発明の目的を達成すればよく、特に限定されず、例えば、正極活物質の調製時にM2を含有する化合物を添加することができる。本発明では、M2を含有する化合物は、本発明の目的を達成すればよく、特に限定されず、例えば、MnSおよびLiFのうちの少なくとも1種を含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
本発明の第2態様は、正極、負極および電解液を含む電気化学装置を提供し、正極は本発明のいずれかの実施形態における正極活物質を含み、正極は正極材料層および正極集電体を含み、正極材料層は第1正極材料層および第2正極材料層を含み、第1正極材料層は第2正極材料層と正極集電体との間に位置し、第1正極材料層におけるMn元素の含有量は第2正極材料層におけるMn元素の含有量よりも大きい。第1正極材料層におけるMn元素の含有量が第2正極材料層におけるMn元素の含有量よりも大きいことは、正極のマンガン溶出現象を減少させることに寄与し、電気化学装置のサイクル特性および貯蔵特性を向上させる。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態において、電解液の質量に対して、電解液は
(iii)電解液は鎖状カーボネートを含み、鎖状カーボネートは、質量百分率で、20%~60%であり、鎖状カーボネートは、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)およびエチルメチルカーボネート(EMC)のうちの少なくとも1種を含むことと、
(iv)電解液はベンゼン含有化合物を含み、ベンゼン含有化合物は、質量百分率で、0.01%~5%であり、好ましくは0.01%~3%であり、さらに好ましくは1%~3%であり、ベンゼン含有化合物は、ビフェニル(BP)、フルオロベンゼン(FP)およびシクロヘキシルベンゼン(CHB)のうちの少なくとも1種を含むことと、
(v)電解液はポリスチレン(PS)を含み、ポリスチレンは、質量百分率で、0.01%~5%であり、好ましくは0.01%~3%であることと、
のうちの少なくとも1つの条件を満たす。
【0038】
例えば、鎖状カーボネートは、質量百分率で、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、もしくは60%であり、または上記数値からなる任意の範囲にあり得る。例えば、ベンゼン含有化合物は、質量百分率で、0.01%、0.05%、0.1%、1%、2%、3%、4%、もしくは5%であり、または上記数値からなる任意の範囲にあり得る。例えば、ポリスチレンは、質量百分率で、0.01%、0.05%、0.1%、1%、2%、3%、4%、5%、または上記数値からなる任意の範囲にあり得る。電解液に任意選択的に鎖状カーボネート、ベンゼン含有化合物およびポリスチレンのうちの少なくとも一種を加え、且つその質量百分率を上記範囲内にすることにより、正極活物質と電解液との間に相乗効果を形成することに寄与し、電気化学装置のサイクル特性および貯蔵特性を向上させる。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態において、負極は負極材料層を含み、負極材料層は負極活物質を含み、負極活物質は、天然黒鉛、人造黒鉛およびハードカーボンのうち少なくとも一種を含み、電気化学装置は、
(vi)負極活物質のDv10は、2μm≦Dv10≦10μm、好ましくは3μm≦Dv10≦8μmを満たすことと、
(vii)負極活物質のDv90とDv99は、5μm≦Dv90≦20μm、5μm≦Dv99-Dv90≦25μm、好ましくは5μm≦Dv90≦15μm、5μm≦Dv99-Dv90≦10μmを満たすことと、
(viii)負極活物質の配向指数(OI)の値は、5~30、好ましくは8~20であることと、
(ix)負極活物質の黒鉛化度は、92%~96%、好ましくは93%~95%であることと、
のうちの少なくとも1つの条件を満たす。
【0040】
例えば、負極活物質のDv10は、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、もしくは10μmであり、または上記数値からなる任意の範囲にあり得る。例えば、負極活物質のDv90は、5μm、8μm、10μm、13μm、15μm、18μm、もしくは20μmであり、または上記数値からなる任意の範囲にあり得る。Dv99-Dv90の値は、5μm、8μm、10μm、13μm、15μm、18μm、20μm、23μm、もしくは25μmであり、または上記数値からなる任意の範囲にあり得る。例えば、負極活物質のOIの値は、5、8、10、13、15、18、20、23、25、28、もしくは30であり、または上記数値からなる任意の範囲にあり得る。例えば、負極活物質の黒鉛化度は、92%、93%、94%、95%、もしくは96%であり、または上記数値からなる任意の範囲にあり得る。
【0041】
負極活物質のDv10、負極活物質のDv10、Dv90およびDv99-Dv90の値、負極活物質のOIの値または負極活物質の黒鉛化度のうちの少なくとも1つが本発明の範囲内にすることで、負極活物質と、正極活物質と、電解液との間に相乗効果を形成することに寄与し、電気化学装置のサイクル特性および貯蔵特性の向上に寄与しうる。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態において、電気化学装置は、セパレータを含み、セパレータの示差走査熱量測定(DSC)によって測定された発熱開始温度は、138℃~145℃、好ましくは141℃~143℃、より好ましくは141℃~142℃である。例えば、セパレータの示差走査熱量測定法によって測定された発熱開始温度は、138℃、139℃、140℃、141℃、142℃、143℃、144℃、もしくは145℃であり、または上記数値からなる任意の範囲にあり得る。セパレータのDSCによって測定された発熱開始温度を本発明の範囲内に調整することにより、セパレータと負極材料、正極活物質および電解液との間に相乗効果を形成することに寄与し、電気化学装置のサイクル特性および貯蔵特性の向上に寄与しうる。
【0043】
本発明において、正極活物質における異なる元素のモル比は、当該正極活物質を含有する電気化学装置を0%の充電状態(state of charge)で分解して正極を得た後、測定して得られた異なる元素の含有量から算出される。
【0044】
本発明において、正極集電体は、本発明の目的を達成すればよく、特に制限されず、例えば、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔および複合集電体などを含むことができるが、これらに限定されるものではない。本発明において、正極集電体の厚さは、本発明の目的を達成すればよく、特に制限されず、例えば、厚さは8μm~12μmである。
【0045】
本発明において、正極材料層は、本発明の前記のいずれかの実施形態における正極活物質を含み、正極材料層はさらにバインダーを含むことができる。本発明では、バインダーは、本発明の目的を達成すればよく、特に制限されず、例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム、ポリアクリル酸リチウム、ポリイミド、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリイミド、ポリアミドイミド、スチレンブタジエンゴムおよびポリフッ化ビニリデンのうちの少なくとも1つを含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
本発明において、正極材料層は、導電剤をさらに含むことができる。本発明では、導電剤は、本発明の目的を達成すればよく、特に制限されず、例えば、導電性カーボンブラック(Super P)、カーボンナノチューブ(CNTs)、炭素繊維、鱗片状黒鉛、ケッチェンブラック、グラフェン、金属材料および導電性重合体のうちの少なくとも1つを含むことができるが、これらに限定されるものではない。前記カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブおよび/または多層カーボンナノチューブを含むことができるが、これらに限定されるものではない。前記炭素繊維は、気相成長炭素繊維(VGCF)および/またはナノ炭素繊維を含むことができるが、これらに限定されるものではない。前記金属材料は、金属粉末および/または金属繊維を含んでもよいが、これらに限定されず、具体的には、金属は、銅、ニッケル、アルミニウムおよび銀のうちの少なくとも1つを含むことができるが、これらに限定されるものではない。前記導電性重合体は、ポリフェニレン誘導体、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレンおよびポリピロールのうちの少なくとも1つを含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
選択的に、正極はさらに導電層を含むことができ、導電層は正極集電体と正極材料層との間に位置する。本発明では、導電層の組成は特に限定されず、当該分野で一般的に使用される導電層であってもよく、例えば、前記導電剤および前記バインダーを含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
本発明において、負極は、負極集電体を含むことができ、本発明の負極集電体は、本発明の目的を達成すればよく、特に制限されず、銅箔、銅合金箔、ニッケル箔、ステンレス箔、チタン箔、ニッケルフォーム、銅フォームまたは複合集電体などを含むことができるが、これらに限定されるものではない。本発明において、負極の集電体の厚さは、本発明の目的を達成すればよく、特に制限されず、例えば、厚さは、4μm~12μmである。本発明において、負極材料層は、負極集電体の厚み方向の一方の面に設けられていてもよいし、負極集電体の厚み方向の両面に設けられていてもよい。なお、上記「面」は負極集電体の全ての領域であってもよく、負極集電体の一部の領域であってもよく、本発明は、本発明の目的を達成すればよく、特に限定されない。
【0049】
本発明において、負極材料層は、導電剤をさらに含むことができ、本発明では、導電剤は、本発明の目的を達成すればよく、特に制限されず、例えば、前記導電剤のうちの少なくとも1つを含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
本発明において、負極材料層は、バインダーをさらに含むことができ、本発明では、バインダーは、本発明の目的を達成すればよく、特に制限されず、例えば、前記バインダーのうちの少なくとも1つを含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
選択的に、負極はさらに導電層を含むことができ、導電層は負極集電体と負極材料層との間に位置する。本発明では、導電層の組成は特に限定されず、当該分野で一般的に使用される導電層であってもよく、導電層は、前記導電剤および前記バインダーを含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
本発明では、セパレータは、本発明の目的を達成であってもよく、特に制限されず、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレンを主とするポリオレフィン(PO)系セパレータ、ポリエステルフィルム(例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム)、セルロースフィルム、ポリイミドフィルム(PI)、ポリアミドフィルム(PA)、スパンデックス、アラミドフィルム、織フィルム、不織フィルム(不織布)、微孔性フィルム、複合フィルム、セパレータフィルム、ラミネートフィルムおよび紡糸フィルムなどのうちの少なくとも1つを含むことができるが、これらに限定されるものではなく、好ましくはPPである。本発明のセパレータは、多孔質構造を有することができ、孔径の大きさは、本発明の目的を達成すればよく、特に限定されず、例えば、0.01μm~1μmである。本発明において、セパレータの厚さは、本発明の目的を達成すればよく、特に限定されず、例えば、5μm~500μm、好ましくは25μmである。
【0053】
例えば、セパレータは、基材層および表面処理層を含むことができる。基材層は、多孔質構造の不織布、膜又は複合膜であってもよく、基材層の材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートおよびポリイミドなどのうちの少なくとも1つを含むことができるが、これらに限定されるものではない。任意に、ポリプロピレン多孔質膜、ポリエチレン多孔質膜、ポリプロピレン不織布、ポリエチレン不織布又はポリプロピレン-ポリエチレン-ポリプロピレン多孔質複合膜を使用してもよい。任意に、基材層の少なくとも一つの表面に表面処理層が設けられており、表面処理層は、ポリマー層又は無機物層であってもよく、ポリマーと無機物を混合してなる混合層であってもよい。
【0054】
無機物層は、無機粒子およびバインダーを含むことができるが、これらに限定されるものではなく、本発明では、無機粒子は特に限定されず、例えば、アルミナ、シリカ、マグネシア、チタニア、ハフニア、酸化スズ、セリア、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、炭化ケイ素、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムおよび硫酸バリウムなどのうちの少なくとも1つを含むことができるが、これらに限定されるものではない。本発明では、バインダーは特に限定されず、例えば、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレンおよびポリヘキサフルオロプロピレンのうちの少なくとも1つを含むことができるが、これらに限定されるものではない。ポリマー層は、ポリマーを含み、ポリマーの材料は、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリフッ化ビニリデン、およびポリ(フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン)などのうちの少なくとも1つを含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
本発明において、電解液は、リチウム塩をさらに含むことができ、本発明では、リチウム塩は、本発明の目的を達成すればよく、特に限定されず、例えば、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiClO4、LiB(C6H5)4、LiCH3SO3、LiCF3SO3、LiN(SO2CF3)2、LiC(SO2CF3)3、LiSiF6、LiBOBおよびジフルオロホウ酸リチウムのうちの少なくとも1つを含むことができるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、リチウム塩はLiPF6を含む。
【0056】
本発明において、電解液は、非水溶媒をさらに含むことができ、本発明では、非水溶媒は、本発明の目的を達成すればよく、特に限定されず、例えば、カーボネート化合物、カルボキシレート化合物、エーテル化合物およびその他の有機溶媒のうちの少なくとも1つを含むことができるが、これらに限定されるものではない。前記カーボネート化合物は、環状カーボネート化合物および/またはフルオロカーボネート化合物のうちの少なくとも1つを含むことができるが、これらに限定されるものではない。前記環状カーボネートは、炭酸エチレン(エチレンカーボネートとも呼ばれ、ECと略称する)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)およびビニルエチレンカーボネート(VEC)のうちの少なくとも1つを含むことができるが、これらに限定されるものではない。フルオロカーボネート化合物は、炭酸フルオロエチレン(フルオロエチレンカーボネートとも呼ばれ、FECと略称する)、1,2-ジフルオロエチレンカーボネート、1,1-ジフルオロエチレンカーボネート、1,1,2-トリフルオロエチレンカーボネート、1,1,2,2-テトラフルオロエチレンカーボネート、1-フルオロ-2-メチルエチレンカーボネート、1-フルオロ-1-メチルエチレンカーボネート、1,2-ジフルオロ-1-メチルエチレンカーボネート、1,1,2-トリフルオロ-2-メチルエチレンカーボネート、およびトリフルオロメチルエチレンカーボネートうちの少なくとも1つを含むことができるが、これらに限定されるものではない。前記カルボキシレート化合物は、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸tert-ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、γ-ブチロラクトン、デカノリド、バレロラクトン、メバロノラクトン、およびカプロラクトンのうちの少なくとも1つを含むことができるが、これらに限定されるものではない。前記エーテル化合物は、ジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、エトキシメトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、およびテトラヒドロフランのうちの少なくとも1つを含むことができるが、これらに限定されるものではない。前記その他の有機溶媒は、ジメチルスルホキシド、1,2-ジオキソラン、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチル-2-ピロリドン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリオクチル、およびリン酸エステルのうちの少なくとも1つを含むことができるが、これらに限定されるものではない。電解液の質量に対して、前記非水溶媒は、質量百分率で、15%~80%であり、例えば、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、もしくは80%であり、または上記数値からなる任意の範囲にあり得る。
【0057】
本発明の電気化学装置は、特に制限されなく、電気化学反応が発生する任意の装置を含んでもよい。いくつかの実施態様において、電気化学装置は、リチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池(リチウムイオン電池)、リチウム重合体二次電池およびリチウムイオン重合体二次電池等を含むが、これらに限定されない。
【0058】
電気化学装置の調製プロセスは当業者によく知られており、本発明は特に限定されず、例えば、以下のステップを含むことができるがそれに限定されない。正極、セパレータおよび負極を順に積層し、且つ必要に応じてそれを巻く、折るなどして巻回構造の電極アセンブリを得て、電極アセンブリを包装袋に入れ、電解液を包装袋に注入して封口し、電気化学装置を得る。あるいは、正極、セパレータおよび負極を順に積層した後、テープで積層構造全体の4つの角を固定して積層構造の電極アセンブリを得て、電極アセンブリを包装袋に入れ、電解液を包装袋に注入して封口し、電気化学装置を得る。また、電気化学装置の内部の圧力上昇、過充放電等を防止するために、必要に応じて過電流防止素子、リード板等を包装袋に入れてもよい。
【0059】
本発明の第3態様は、本発明の前記のいずれかの実施形態における電気化学装置を含む電子装置を提供する。本発明によって提供される電気化学装置は、良好なサイクル特性および貯蔵特性を有し、正極は、より高い比容量を有する。したがって、本発明によって提供される電子装置は、より長い使用寿命および良好の特性を有する。
【0060】
本発明の電子装置は特に限定されず、先行技術に用いられる公知の任意の電子装置であってもよい。いくつかの実施形態において、電子装置は、ノートコンピューター、ペン入力型コンピューター、モバイルコンピューター、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯型ファクシミリ、携帯型コピー機、携帯型プリンター、ステレオヘッドセット、ビデオレコーダー、液晶テレビ、ポータブルクリーナー、携帯型CDプレーヤー、ミニディスク、トランシーバー、電子ノートブック、電卓、メモリーカード、ポータブルテープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、自動車、オートバイ、補助自転車、自転車、照明器具、おもちゃ、ゲーム機、時計、電動工具、閃光灯、カメラ、大型家庭用ストレージバッテリー、およびリチウムイオンコンデンサーなどを含むが、これらに限定されていない。
【0061】
本発明は、Mn元素およびAl元素を含む正極活物質を提供し、正極活物質粒子は、正極活物質粒子の表面に近い第1領域と、正極活物質粒子の表面から離れた第2領域とを含み、第1領域におけるAl/Mnのモル比をa1とし、第2領域におけるAl/Mnのモル比をa2としたとき、a1とa2は、1.1≦a1/a2≦100を満たす。第1領域におけるAl/Mnのモル比a1、および第1領域におけるAl/Mnのモル比a1と第2領域におけるAl/Mnのモル比a2との比a1/a2を上記範囲内に調整することにより、正極活物質におけるAlを正極活物質の表面に近い領域に集中させ、正極のマンガン溶出現象を効果的に改善して電気化学装置のサイクル特性および貯蔵特性を向上させることができるだけでなく、同時に正極活物質におけるAlの総含有量を減少させて正極の高い比容量を保持させ、電気化学装置の総合特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
本発明の実施例の技術的解決策をより明確に説明するために、以下では実施例で使用する必要がある図面を簡単に説明する。以下で説明する図面は本発明の実施例の一部に過ぎず、当業者はこれらの図面に基づいて他の実施例を得ることができることは明らかである。
【0063】
【
図1】
図1は本発明のいくつかの実施例における正極活物質粒子の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
本発明の目的、技術的解決策、及び利点をよく明らかにするために、以下では、図面を参照して実施例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明する。説明された実施例は本発明の一部の実施例に過ぎず、全部の実施例ではないことは明らかである。本発明の実施例に基づいて、当業者によって得られた他のすべての実施例は、本発明の保護範囲に入る。
【0065】
図1は本発明のいくつかの実施形態における正極活物質粒子の断面模式図を示す。これから分かるように、第1領域11は正極活物質10の粒子の表面に近い領域であり、第2領域12は正極活物質10粒子の表面から離れた領域である。
なお、本発明の発明を実施するための形態において、リチウムイオン電池を電気化学装置の例として本発明を説明するが、本発明の電気化学装置はリチウムイオン電池に限定されない。
【0066】
実施例
以下では、実施例及び比較例を挙げて、本発明の実施形態をより詳しく説明する。各種の試験及び評価は下記の通りに行われる。なお、別に断らない限り、「%」は質量基準である。
【0067】
測定方法および装置:
元素の含有量測定:
a)濃度が2.4mol/Lの硫酸溶液を調製し、
b)正極活物質50g(リチウムイオン電池を2.5Vまで満放電し、セラミックナイフで正極上の正極材料層を削り取り、正極活物質層を400℃で5時間焼成し、正極活物質を得る)を取り、
c)硫酸溶液300mLと正極活物質50gとを混合し、磁気撹拌機に置いて撹拌し、撹拌速度を200r/minに固定し、
d)6時間後に撹拌を停止して静置し、4時間静置した後に濾紙で吸引濾過し、濾液を取り、誘導結合プラズマ発光分光計(型番:Thermo ICAP6300)を使用して測定し、第1領域における異なる元素間のモル比、例えば、Al/Mnのモル比、Li/Mnのモル比、Nb/Mnのモル比およびF/Mnのモル比などを計算して得ることができ、
e)吸引濾過後のサンプルを85℃で8時間乾燥させ、
f)乾燥後のサンプルに対して誘導結合プラズマ発光分光計(型番:Thermo ICAP6300)を用いて測定し、第2領域における異なる元素間のモル比、例えば、Al/Mnのモル比、Li/Mnのモル比、Nb/Mnのモル比およびF/Mnのモル比などを計算して得た。
【0068】
Mn3+/Mn4+モル比の測定:
X線光電子分光法(XPS)により、正極活物質の第1領域および第2領域のMn3+/Mn4+モル比を測定した。
【0069】
サイクル特性の測定:
25℃の条件で、リチウムイオン電池を0.5Cで4.2Vまで定電流充電し、さらに4.2Vの条件で0.05Cまで定電圧充電し、次に1Cの定電流で2.8Vまで放電し、放電容量をD01として記録した。前記操作ステップに従ってリチウムイオン電池に複数回の「0.5C充電-1C放電」のサイクルプロセスを行い、500サイクルし、500回目のサイクル後の放電容量をD1として測定した。25℃での500サイクル後の容量維持率(%)=D1/D01×100%。
【0070】
貯蔵特性の測定:
リチウムイオン電池を25℃の環境で30min静置した後、0.2Cのレートにて4.2Vまで定電流充電し、さらに4.2Vの定電圧で0.05Cまで充電し、30min静置し、次に0.5Cのレートにて2.8Vまで放電し、この時の放電容量をリチウムイオン電池の貯蔵前の容量として記録した。次に満充電状態の電池を約60℃のオーブンに入れて約7日間貯蔵した後、その貯蔵後の容量を測定した。具体的なテストプロセスは、以下のとおりであった。リチウムイオン電池を25℃の環境で30min静置し、次に0.2Cのレートにて4.2Vまで定電流充電し、4.2Vの定電圧で0.05Cまで充電し、30min静置し、次に0.5Cのレートにて2.8Vまで放電し、この時の放電容量をリチウムイオン電池の貯蔵後の容量として記録した。
60℃での高温貯蔵容量維持率=貯蔵後の容量/貯蔵前の容量×100%。
各実施例または比較例について、4つのリチウムイオン電池を測定し、その平均値を最終結果とした。
【0071】
比容量の測定:
実施例または比較例の正極およびリチウム金属を用いてボタン電池を製造し、25℃の環境において、ボタン電池を上限電圧4.2Vになるまで0.5C(即ち、理論容量を2時間完全放電する電流値)の充電電流で定電流および定電圧充電を行い、次に最終電圧2.8Vになるまで0.2Cの放電電流で定電流放電を行い、初回放電容量を記録した。正極の質量に対する初回放電容量の比を正極の比容量として記録された。各実施例または比較例について、4つの正極を測定し、その平均値を最終結果とした。ここで、正極の質量は、正極集電体の質量を差し引いた質量であった。ここで、ボタン電池の調製方法は当該分野の既知の調製方法を用いて調製し、ボタン電池における電解液は各実施例または比較例に用いられる電解液であった。
【0072】
セパレータの発熱開始温度の測定:
DSCを用いて測定し、10℃/minの昇温速度でセパレータのDSC曲線を得て、DSC曲線からセパレータの発熱開始温度を得た。
【0073】
粒子径の測定方法:
正極活物質または負極活物質の粒度は、レーザー粒度計(型番:Mastersize3000)を用いて測定した。Dv10、Dv50、Dv90、Dv99は、粒子のレーザ散乱式粒度計による体積基準の分布において累積体積が10%、50%、90%、99%となる直径であった。
【0074】
実施例1-1
<正極活物質の調製>
一次焼成:Al/Mnモル比がx1、Li/Mnモル比がy1となるように、原料である、MnO2、Al2O3およびLi2CO3を混合し、温度T1で焼成時間t1の間焼成し、中間生成物が得られ、
二次焼成:Al2O3、Li2CO3および中間生成物をさらに混合し、温度T2で焼成時間t2の間焼成し、正極活物質が得られ、得られた正極活物質はAl元素を含むマンガン酸リチウム(LMO)であった。
【0075】
ここで、二次焼成時に加えたAl2O3中のAlと中間生成物中のMnとのAl/Mnモル比はx2であり、二次焼成時に加えたLi2CO3中のLiと中間生成物中のMnとのLi/Mnモル比はy2であり、原料MnO2はAlを含有し且つAl/Mnモル比はx0であった。正極活物質のDv99は45μmであり、Dv90は26μmであり、Dv50は11.2μmであり、Dv10は6μmであった。
【0076】
<正極の調製>
前記調製された正極活物質、導電剤であるアセチレンブラック、バインダーであるポリフッ化ビニリデンを質量比96.5:2:1.5で混合し、N-メチルピロリドン(NMP)を加え、真空撹拌機で均一に撹拌し、正極スラリーを得て、正極スラリーの固形分は70wt%であった。正極スラリーを厚さが12μmの正極集電体であるアルミニウム箔の一つの表面に均一に塗工し、アルミニウム箔を120℃で1時間乾燥処理し、片面に正極材料層が塗工された正極を得た。アルミニウム箔の他方の面に以上のステップを繰り返し、両面に正極材料層が塗布された正極を得た。次に、冷間プレス、裁断、スリッティング(slitting)を行った後、120℃の真空の条件で1時間乾燥させ、サイズが74mm×867mmの正極を得た。
【0077】
<負極の調製>
負極活物質である人造黒鉛、導電剤であるアセチレンブラック、バインダーであるスチレンブタジエンゴム(SBR)、増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)を質量比95:2:2:1で混合し、脱イオン水を加え、真空撹拌機で均一に撹拌し、負極スラリーを得て、負極スラリーの固形分は75wt%であった。負極スラリーを厚さが12μmの負極集電体である銅箔の一つの面に均一に塗工し、銅箔を120℃で乾燥させ、コート層の厚さが130μmの片面に負極材料層が塗工された負極を得た。アルミニウム箔の他方の面に以上のステップを繰り返し、負極材料層が両面に塗布された負極を得た。次に、冷間プレス、裁断、スリッティングを行った後、120℃の真空の条件で1時間乾燥させ、サイズが78mm×875mmの負極を得た。ここで、負極材料のDv99が30μmであり、Dv90が18μmであり、Dv10が5μmであり、OIの値が18であり、黒鉛化度が96%である。
【0078】
<電解液の調製>
乾燥のアルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、EC、PC、DEC、EMCを質量比5:1:4:7で混合して有機溶媒を得て、次に有機溶媒にリチウム塩LiPF6を加えて溶解し且つ均一に混合し、電解液を得た。ここで、LiPF6の電解液における質量百分率は12.5%であり、残りは有機溶媒であった。
【0079】
<セパレータの調製>
厚さ7μmの多孔質ポリエチレン薄膜(セルガード社製)を用い、セパレータの発熱開始温度は141℃であった。
【0080】
<リチウムイオン電池の調製>
前記調製された正極、セパレータ、負極を順に積み重ね、セパレータを正極と負極との間に介在して隔離の役割を果たし、巻き取って電極アセンブリを得た。電極アセンブリをアルミプラスチックフィルム包装袋に入れ、乾燥した後に電解液を注入して、真空パッケージ、静置、フォーメーション(formation)、サイドカット(Side Cutting)等の工程を経て、リチウムイオン電池が得られた。
【0081】
実施例1-2~実施例1-8
調製パラメータを表1に示すように調整した以外は、実施例1-1と同様に行った。
【0082】
実施例2-1~実施例2-4
調製パラメータを表2に示すように調整した以外は、実施例1-4と同様に行った。
【0083】
実施例3-1~実施例3-5、実施例3-7および実施例3-8
<正極活物質の調製>において、一次焼成時に添加するM1元素に対応する化合物およびその含有量を調整し、各元素のモル比が表3に示す正極活物質を作製した以外は、実施例1-4と同様に行った。
【0084】
実施例3-6
<正極活物質の調製>において、一次焼成時に、M1/Mnモル比が1.0%となるようにM1元素に対応する化合物を添加し、二次焼成時に、中間生成物中のMnに対するM1のモル比が2.6%となるようにM1元素に対応する化合物を添加し、各元素のモル比が表3に示す正極活物質を作製した以外は、実施例1-4と同様に行った。
【0085】
実施例3-9
<正極活物質の調製>において、一次焼成時に、M1/Mnモル比が1.0%となるようにM1元素に対応する化合物を添加し、二次焼成時に、中間生成物中のMnに対するM1のモル比が1.0%となるようにM1元素に対応する化合物を添加し、各元素のモル比が表3に示す正極活物質を作製した以外は、実施例1-4と同様に行った。
【0086】
実施例3-10~実施例3-13
M2元素の質量百分率が表3に示す質量百分率になるように、一次焼成時にM2に対応する化合物を添加した以外は、実施例1-4と同様に行った。
【0087】
実施例3-14
M2元素の質量百分率が表3に示す質量百分率になるように、一次焼成時にM2に対応する化合物を添加した以外は、実施例3-7と同様に行った。
【0088】
実施例4-1~実施例4-3
調製パラメータを表4に示すように調整した以外は、実施例1-4と同様に行った。
【0089】
実施例5-1~実施例5-6
電解液の調製時に、ベンゼン含有化合物およびPSを表5に従って添加し、関連する調製パラメータを調整した以外は、実施例1-4と同様に行った。
【0090】
比較例1-1および比較例1-2
調製パラメータを表1に示すように調整した以外は、実施例1-4と同様に行った。
【0091】
各実施例および比較例の関連調製パラメータ及び特性の測定は表1~表5に示すとおりであった。
【0092】
【0093】
実施例1-1~実施例1-8、比較例1-1~比較例1-2から、正極活物質の第1領域におけるAl/Mnのモル比a1と第2領域におけるAl/Mnのモル比a2との比a1/a2は本発明の範囲内であれば、電気化学装置における正極の比容量、電気化学装置のサイクル特性および貯蔵特性を同時に向上させることができることがわかる。同時に、eの値は本発明の範囲内である場合、得られる電気化学装置は、良好なサイクル特性および貯蔵特性を同時に有し、電気化学装置中の正極は、より高い比容量も有する。実施例1-1~実施例1-8、比較例1-1から、第1領域におけるAl/Mnのモル比a1は本発明の範囲内にある場合、得られる電気化学装置は良好なサイクル特性および貯蔵特性を同時に有し、電気化学装置中の正極も高い比容量を有することがわかる。実施例1-1~実施例1-8から、第2領域におけるAl/Mnのモル比a2および正極活物質のAl/Mnモル比は本発明の範囲内にある場合、得られる電気化学装置は良好なサイクル特性および貯蔵特性を同時に有し、電気化学装置中の正極も高い比容量を有することがわかる。
【0094】
【0095】
実施例1-4、実施例2-1~実施例2-4から、正極活物質の第1領域におけるLi/Mnのモル比b1と第2領域におけるLi/Mnのモル比b2との比b1/b2は本発明の範囲内にある場合、得られる電気化学装置は良好なサイクル特性および貯蔵特性を同時に有し、電気化学装置中の正極も高い比容量を有することがわかる。b1/b2の値が大きくなるにつれて、電気化学装置のサイクル特性および貯蔵特性は徐々に向上する傾向を示す。
【0096】
【0097】
実施例1-4、実施例3-1~実施例3-14から、M1元素および/またはM2元素を添加することにより、電気化学装置のサイクル特性および貯蔵特性、及び電気化学装置における正極の比容量をさらに向上させることができることがわかる。実施例3-1~実施例3-9から、正極活物質に本発明の範囲内のM1元素を導入し、且つM1/Mnモル比、Al/M1モル比、c1/c2の値を本発明の範囲内にすることにより、得られる電気化学装置は良好なサイクル特性および貯蔵特性を同時に有し、電気化学装置中の正極も高い比容量を有することがわかる。実施例3-10~実施例3-13から、正極活物質に本発明の範囲内のM2元素を導入し、且つM2元素の質量百分率、d1/d2の値を本発明の範囲内にすることにより、得られる電気化学装置は良好なサイクル特性および貯蔵特性を同時に有し、電気化学装置中の正極も高い比容量を有することがわかる。実施例1-4および実施例3-14から、M1元素およびM2元素を同時に導入することにより、電気化学装置のサイクル特性および貯蔵特性、及び電気化学装置における正極の比容量をさらに向上させることができることがわかる。
【0098】
【0099】
一般に、正極活物質の粒子径は、例えば、サイクル特性および貯蔵特性などの電気化学装置の特性に影響を与える。実施例1-4、実施例4-1~実施例4-3から、正極活物質のDv90、Dv10、Dv99-Dv90の値、(Dv99-Dv10)/Dv50の値は本発明の範囲内にある場合、得られる電気化学装置は良好なサイクル特性および貯蔵特性を同時に有し、電気化学装置中の正極も高い比容量を有することがわかる。
【0100】
【0101】
一般に、電気化学装置の電解液中の成分の種類およびその含有量は、例えば、サイクル特性および貯蔵特性などの電気化学装置の特性に影響を与える。実施例1-4、実施例5-1~実施例5-3から、電解液にベンゼン含有化合物を含み且つその種類および質量百分率は本発明の範囲内にある場合、得られる電気化学装置はより良好なサイクル特性および貯蔵特性を同時に有することがわかる。実施例1-4、実施例5-4および実施例5-5から、電解液にPSを含み且つその質量百分率は本発明の範囲内にある場合、得られる電気化学装置はより良好なサイクル特性および貯蔵特性を同時に有することがわかる。実施例1-4および実施例5-6から、ベンゼン含有化合物およびPSは良好な相加効果を有し、電気化学装置のサイクル特性および貯蔵特性をさらに向上させることができることがわかる。
【0102】
上記の記載は本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を限定するものではなく、本発明の主旨と原則の範囲内で行われるいかなる補正、同等な置換、改善等は、本発明の保護範囲に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0103】
10 正極活物質、11 第1領域、12 第2領域。
【国際調査報告】