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特表2025-501405ポンプ、ポンプのための軸受組立体及び軸受組立体を組み立てる方法
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  • 特表-ポンプ、ポンプのための軸受組立体及び軸受組立体を組み立てる方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-17
(54)【発明の名称】ポンプ、ポンプのための軸受組立体及び軸受組立体を組み立てる方法
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/66 20060101AFI20250109BHJP
   F16N 7/38 20060101ALI20250109BHJP
   F16C 19/06 20060101ALI20250109BHJP
   F16C 33/78 20060101ALI20250109BHJP
   F04D 29/063 20060101ALI20250109BHJP
   F04D 19/04 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
F16C33/66 Z
F16N7/38 D
F16C19/06
F16C33/78 Z
F04D29/063
F04D19/04 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024542304
(86)(22)【出願日】2023-02-14
(85)【翻訳文提出日】2024-07-17
(86)【国際出願番号】 GB2023050331
(87)【国際公開番号】W WO2023156765
(87)【国際公開日】2023-08-24
(31)【優先権主張番号】2202041.6
(32)【優先日】2022-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2212169.3
(32)【優先日】2022-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507261364
【氏名又は名称】エドワーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】ホーラー リチャード グリン
(72)【発明者】
【氏名】パティ アレキサンダー ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】マイルズ クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】スチューデント デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ペトル トマス
【テーマコード(参考)】
3H130
3H131
3J216
3J701
【Fターム(参考)】
3H130AA12
3H130AB27
3H130AB60
3H130AC30
3H130BA56E
3H130DB08X
3H130EA01E
3H130EA08E
3H130EB04E
3H130ED04E
3H131CA11
3H131CA22
3J216AA02
3J216CC41
3J216DA17
3J216EA07
3J216FA09
3J701AA02
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA62
3J701BA53
3J701BA56
3J701BA64
3J701BA77
3J701CA01
3J701CA08
3J701CA15
3J701CA17
3J701EA67
3J701FA32
3J701GA29
(57)【要約】
軸受組立体(10)、軸受組立体の組立て方法及びポンプが開示されている。軸受組立体は、ポンプの回転可能なシャフトを取り付けるためのものであり、内輪(14)及び外輪(12)と、内輪及び外輪(14,12)の間に取り付けられた複数の転動可能要素(16)とを備える。軸受組立体は、内輪(14)の外周から半径方向外向きに延びる潤滑オイル案内要素(30)を有する。潤滑オイル案内要素(30)は、傾斜した半径方向表面を備えることができる。傾斜した半径方向表面の少なくとも一部は、内輪及び外輪(14、12)の間の環状隙間に面しており、傾斜した表面の半径方向内側部分は、傾斜した表面の半径方向外側部分よりも転動可能要素(16)に近い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプの回転可能なシャフトを取り付けるための軸受組立体であって、
内輪及び外輪と、前記内輪と前記外輪との間に取り付けられた複数の転動可能要素とを備える軸受と
前記内輪の外周から半径方向外向きに延びる潤滑オイル案内要素であって、前記潤滑オイル案内要素は、半径方向に延びる表面を備え、前記半径方向に延びる表面の少なくとも一部は、前記内輪と前記外輪との間の環状隙間に面している、潤滑オイル案内要素と、
を備える、軸受組立体。
【請求項2】
前記半径方向に延びる表面は傾斜しており、前記傾斜した表面の半径方向内側部分は、前記傾斜した表面の半径方向外側部分よりも前記転動可能要素に近い、請求項1に記載の軸受組立体。
【請求項3】
前記潤滑オイル案内要素は、前記内輪の一端の方に配置されている、請求項1又は2に記載の軸受組立体。
【請求項4】
前記潤滑オイル案内要素は、前記転動可能要素に背を向ける表面上に滴下縁部を備える、請求項1から3のいずれかに記載の軸受組立体。
【請求項5】
前記転動可能要素に背を向ける前記表面は、環状凹部を備え、前記環状凹部の縁部は、前記滴下縁部を構成する、請求項4に記載の軸受組立体。
【請求項6】
前記滴下縁部は、前記転動可能要素に背を向ける前記表面の半径方向内側の縁部と半径方向外側の縁部との間の距離の30と70%の間である、請求項4又は5に記載の軸受組立体。
【請求項7】
前記転動可能要素から最も遠い前記潤滑オイル案内要素の半径方向に延びる表面は、前記転動可能要素から最も遠い前記内輪の半径方向に延びる表面と面一であるか、又は前記転動可能要素から最も遠い前記内輪の半径方向に延びる表面を超えて軸方向に延びている、請求項1から6のいずれかに記載の軸受組立体。
【請求項8】
前記潤滑オイル案内要素は、前記内輪と一体である、請求項1から7のいずれかに記載の軸受組立体。
【請求項9】
前記潤滑オイル案内要素は、環状形を有し、前記内輪に取り付けられている、請求項1から7のいずれかに記載の軸受組立体。
【請求項10】
前記内輪の一部は、前記潤滑オイル案内要素が取り付けられる部分において外径が縮小された薄肉部分を備える、請求項9に記載の軸受組立体。
【請求項11】
前記潤滑オイル案内要素は、圧入、すきま嵌め、締まり嵌め、結合、かしめ、サークリップ、又は接着のうちの少なくとも1つによって前記内輪に取り付けられる、請求項10に記載の軸受組立体。
【請求項12】
前記内輪は、前記外輪を越えて軸方向に延びる軸方向延在部を備え、前記潤滑オイル案内要素は、前記軸方向延在部に取り付けられており、
前記軸受組立体は、
前記軸受の前記外輪を支持するように構成された軸受支持体、
をさらに備え、
前記軸受支持体は、前記外輪の外面の少なくとも一部を取り囲み、前記外輪の1つの端面を横切って前記内輪の前記軸方向延在部に向かって延び、それによって前記内輪と前記外輪との間の前記環状隙間の少なくとも一部を見えなくする半径方向延在部を備え、
前記潤滑オイル案内要素は、前記軸受支持体の前記半径方向延在部よりも前記転動可能要素から離れた位置にある、請求項9から11のいずれかに記載の軸受組立体。
【請求項13】
前記軸受支持体の前記半径方向延在部は、前記軸受の内部と前記軸受の外部との間の潤滑オイルの通過を可能にするように構成された複数の開口を備える、請求項12に記載の軸受組立体。
【請求項14】
前記複数の開口は、少なくとも3つの開口、好ましくは9つの開口を含む、請求項13に記載の軸受組立体。
【請求項15】
前記潤滑オイル案内要素は、前記複数の開口の少なくとも半径方向内側部分を越えて半径方向に延びるように構成されている、請求項13又は14に記載の軸受組立体。
【請求項16】
前記内輪の前記軸方向延在部は、外径が縮小された凹部を備え、前記軸受支持体の前記半径方向延在部は、前記凹部内に延びる、請求項12から15のいずれかに記載の軸受組立体。
【請求項17】
前記軸受支持体の前記半径方向延在部の最内面は、前記内輪の前記外径が縮小された凹部の外面との間の隙間の一面を形成する、請求項16に記載の軸受組立体。
【請求項18】
前記潤滑オイル案内要素が取り付けられている部分における前記内輪の前記外径は、前記軸受支持体が延びる前記凹部の前記外径よりも小さい、請求項7に従属する場合の請求項16又は17に記載の軸受組立体。
【請求項19】
ステータ内でロータを支持する少なくとも1つの回転可能なシャフトを備えるポンプであって、前記少なくとも1つの回転可能なシャフトは、請求項1から18に記載の少なくとも1つの軸受組立体に取り付けられる、ポンプ。
【請求項20】
前記ポンプは、前記軸受組立体の軸方向一方側に潤滑オイルリザーバを備えると共に軸方向他方側に潤滑オイル回収機構を備え、前記潤滑オイル案内要素は、前記潤滑オイル回収機構上に潤滑オイルを案内するように構成され、前記ポンプは、前記潤滑オイル回収機構から前記潤滑オイルリザーバに前記潤滑オイルを移送するための潤滑オイル移送機構をさらに備える、請求項19に記載のポンプ。
【請求項21】
前記ポンプは、複数の向きで動作するように構成された真空ポンプを含む、請求項19又は20に記載のポンプ。
【請求項22】
請求項9から11のいずれかに記載の軸受組立体を組み立てる方法であって、
転動可能要素を内輪及び外輪の内部に取り付けることによって軸受を組み立てるステップと、
環状形を有する潤滑オイル案内要素を前記軸受の前記内輪に取り付けるステップであって、前記潤滑オイル案内要素が前記内輪の外周から半径方向外向きに延びるようになっている、ステップと、
を含む、方法。
【請求項23】
請求項12から18のいずれかに記載の軸受を組み立てる方法であって、前記内輪は、前記外輪を越えて軸方向に延在する軸方向延在部を備え、
前記方法は、前記潤滑オイル案内要素を取り付ける前記ステップの前に行われる、さらなるステップ、すなわち、
前記軸受の前記外輪に軸受支持体を取り付けるステップであって、前記軸受支持体が、前記外輪の1つの端面を横切って前記内輪の前記軸方向延在部に向かって延び、それによって前記内輪と前記外輪との間の前記環状隙間の少なくとも一部を見えなくする半径方向延在部を備える、ステップと、
次に、前記潤滑オイル案内要素を取り付ける前記ステップを実行するステップと、
を含み、
前記潤滑オイル案内要素は、前記軸受支持体の前記半径方向延在部よりも前記転動可能要素から軸方向に離れた位置に取り付けられ、前記軸受支持体の前記半径方向延在部の少なくとも一部が、前記転動可能要素と前記潤滑オイル案内要素との間にあるようになっている、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプのための軸受組立体、軸受組立体を組み立てる法、及びそのような軸受組立体を備えるポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
オイル潤滑式軸受を備えるポンプは、オイル回路を維持し、ポンプ機構から分離することを可能にするために、限られた動作の向きに制限されることが多い。特定の用途では、規格品では対応できない追加の動作の向きが必要とされる。この点で、規格品では、ポンプは回転軸が垂直になるように配向され、オイル潤滑式軸受はロータの下方に配置される。逆さまの向きでは、オイル潤滑式軸受はロータの上方にあるが、どのような向きでも動作するように構成されたポンプでは、ポンプの回転軸は水平とすること又は水平と垂直との間の何らかの角度とすることができる。このような向きに対応するには、ポンプの向きに関係なくオイル回路全体にオイルを分配する方法が必要である。この問題は、オイルフリンガを使用することで対処されている。
【0003】
オイルフリンガは、ポンプのシャフトに取り付けられ、シャフトに沿ってオイルが移動するのを妨げ、シャフトからオイルを遠くに向かわせる働きをするように配置されている。シャフト上にフリンガを配置することは、いくつかの組み立て上の課題があり、ポンプのロータ動特性のバランスが崩れる可能性があり、フリンガを交換する際に、再度バランス調整が必要になる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の態様は、ポンプの回転可能なシャフトを取り付けるための軸受組立体を提供し、上記軸受組立体は、内輪及び外輪と、上記内輪と上記外輪との間に取り付けられた複数の転動可能要素とを含む軸受と、上記内輪の外周から半径方向外向きに延びる潤滑オイル案内要素であって、上記潤滑オイル案内要素は、半径方向に延びる表面を含み、上記半径方向に延びる表面の少なくとも一部は、上記内輪と上記外輪との間の環状隙間に面している、潤滑オイル案内要素と、を備える。
【0005】
軸受組立体の内輪部分から半径方向に延びる潤滑オイル案内要素又はオイルフリンガは、要素がシャフトに直接取り付けられることなく、要素が回転してフリング作用を提供することを可能にする。この構成により、軸受組立体をポンプに取り付ける前に、潤滑オイル案内要素の存在によって必要とされるバランス調整を軸受組立体上で行うことができる。また、潤滑オイル案内要素は、軸受組立体と一緒にポンプに取り付けることができ、追加の取り付けステップの必要性を回避することができる。さらに、潤滑オイル案内要素を交換する必要がある場合は、軸受組立体と一緒に交換することができる。これにより、ポンプを改造することなくオイルフリンガを交換することができる。さらに、従来のポンプにこのような新しい軸受組立体を設けることで、ポンプにオイルフリンガを後付けすることができる。
【0006】
潤滑オイル案内要素は、内輪と外輪との間の環状間隙を少なくとも部分的に横切って延びる半径方向に延びる表面を備えるように配置され、この環状間隙は転動可能要素を閉じ込めるので、この間隙を通って流れるオイルのような潤滑オイルは潤滑オイル案内要素に接触し、軸受組立体が支持するシャフトから離れるように案内される。この構成により、ポンプが作動中であり潤滑オイル案内要素が回転している場合及びポンプが作動しておらずエレメントが静止している場合の両方で、潤滑オイルをシャフトから遠くに案内することができる。
【0007】
いくつかの実施形態では、上記転動可能要素に面する前記半径方向に延びる表面は、傾斜した表面であり、上記半径方向に延びる表面の半径方向内側部分は、上記半径方向に延びる表面の半径方向外側部分よりも上記転動可能要素に近い。
【0008】
傾斜した表面又は角度の付いた表面は、潤滑オイルを軸受から遠くに案内するのを助け、これは、ポンプが動作しておらず、表面に接触する潤滑オイルに遠心力が作用していない場合に特に有利とすることができる。
【0009】
いくつかの実施形態では、上記潤滑オイル案内要素は、上記内輪の軸端の方に配置されている。
【0010】
いつかの実施形態では、上記潤滑オイル案内要素は、上記転動可能要素に背を向ける表面上の滴下縁部を備える。
【0011】
特にポンプが静止しているときに生じる可能性がある1つの潜在的な問題は、表面張力によって潤滑オイル案内要素に付着するオイル又は潤滑オイルが、半径方向外側表面を流れ落ち、次に軸受に背を向ける表面に沿ってシャフトに向かって流れる可能性があることである。いくつかの実施形態では、このような流れは、軸受に背を向ける表面に滴下縁部を設けることによって妨げられる。滴下縁部は、潤滑オイルがこの点に集まって液滴を形成し、この液滴が表面から落下するように流れを妨げる。滴下縁部は、角度の付いた表面、何らかの形態の起伏、リップ又は凹部とすることができる。
【0012】
いつかの実施形態では、上記転動可能要素に背を向ける上記表面は、環状凹部を備え、上記環状凹部の縁部は、上記滴下縁部を構成する。
【0013】
潤滑オイル案内要素の軸受に背を向けた表面の環状凹部又は溝は、表面張力により潤滑オイル案内要素に付着し、この表面に沿って移動するオイル又は潤滑オイルのための滴下縁部をもたらす。これは、ポンプが動作しておらず、潤滑オイル又はオイルが回転力によって潤滑オイル案内要素から飛ばされない場合に特に効果的である。
【0014】
いくつかの実施形態では、上記環状凹部は、半径方向内側の縁部を備え、上記環状凹部は、上記転動可能要素に背を向ける上記表面の半径方向内側の縁部と半径方向外側の縁部との間の距離の30と70%の間である。
【0015】
いくつかの実施形態では凹部又は溝の内縁である滴下縁部は、軸受がシャフトに取り付けられた場合に、潤滑オイルが表面から滴下する前にシャフトに接近しないように、シャフトからある距離を置くことが有利な場合がある。滴下縁部が内輪の内側半径からある距離にある場合、軸受がポンプに取り付けられると、ポンプのハウジングは、滴下縁部を越えて、いくつかの実施形態では凹部の内縁まで延びることができ、潤滑オイルは、ハウジング上に滴下し、ハウジングとシャフトとの間を流れることが妨げられるようになっている。
【0016】
いくつかの実施形態では、上記転動可能要素から最も遠い上記潤滑オイル案内要素の半径方向に延びる表面は、上記転動可能要素から最も遠い上記内側リングの半径方向に延びる表面と面一であるか、又は上記転動可能要素から最も遠い上記内側リングの半径方向に延びる表面を越えて軸方向に延びている。
【0017】
潤滑オイル案内要素が、軸受の内輪の軸方向端部と面一であるか、又は内輪の軸方向端部をわずかに越えて延びる場合が有利であろう。この点で、軸受をポンプに取り付ける際に、軸受が内輪の端部と同一平面上にあるか、又は内輪の端部をわずかに超えて延びるようにすると、軸受組立体がシャフトの凹部内に取り付けられる場合に、軸受組立体をシャフト上に位置決めするのを助けることができる。潤滑オイル案内要素が、ポリマーなどの軸受組立体の内輪よりも柔らかい材料で形成されている場合、潤滑オイル案内要素が内輪をわずかに超えて延びるようにすることで、軸受組立体を所定の位置にはさんで締め付けてそれをクランプするのを助けることができる。
【0018】
いくつかの実施形態では、上記内輪の一部は、上記潤滑オイル案内要素が取り付けられる部分において、外径が縮小された薄肉部分を備える。
【0019】
上記潤滑オイル案内要素を、上記内側リングの外形が縮小された薄肉部分に取り付けることにより、軸方向バックストップ機能を提供することができる。この軸方向バックストップ機能は、稀に発生する軸受の故障時に、軸受内、ひいてはロータ内の過剰な動きに抵抗するのを助け、それにより、回転機構の衝突とそれに続く損傷を防止又は少なくとも抑制することができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、上記潤滑オイル案内要素は、上記内輪と一体である。
【0021】
潤滑オイル案内要素を内輪と一体にすることで、製造が容易になり、堅牢な解決策を提供することもできる。
【0022】
他の実施形態では、上記潤滑オイル案内要素は、環状形を有し、上記内輪に取り付けられている。
【0023】
あるいは、潤滑オイル案内要素は、内輪に取り付けられるか又は結合される別個の要素とすることができる。これにより、特にコンパクトな金属製ばねダンパーのような軸受支持体が使用される場合に、軸受の組み立てが容易になる可能性がある。
【0024】
潤滑オイル案内要素は、多くの方法で内輪に取り付けることができ、これらは、圧入、すきま嵌め、締まり嵌め、結合、かしめ、サークリップ、又は接着のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、上記潤滑オイル案内要素は、ポリマー、複合材、又は金属のうちの1つで形成される。
【0026】
いくつかの実施形態では、上記内輪は、上記外輪を越えて軸方向に延びる軸方向延在部を備え、上記潤滑オイル案内要素は、上記軸方向延在部に取り付けられており、上記軸受組立体は、上記軸受の上記外輪を支持するように構成された軸受支持体をさらに備え、上記軸受支持体は、上記外輪の外面の少なくとも一部を取り囲み、上記外輪の1つの端面を横切って上記内輪の上記軸方向延在部に向かって延び、それによって上記内輪と上記外輪との間の上記環状隙間の少なくとも一部を見えなくする半径方向延在部を備え、上記潤滑オイル案内要素は、上記軸受支持体の上記半径方向延在部よりも上記転動可能要素から離れた位置にある。
【0027】
軸受組立体は、軸受支持体と一体になって構成することができる。有利には、その軸受支持体は、内輪と外輪との間の環状間隙を横切って半径方向に延在するシールド部を備えることができ、このシールド部は、ある程度の潤滑オイル保持をもたらすのを助け、また、堅牢な軸方向及び/又は半径方向の端部ストップ保護を提供するように構成することができる。内輪及び外輪のうちの1つではなく、軸受支持体から延びるシールドを有することで、軸受組立体の製造及び組み立てが容易になる。
【0028】
軸受支持体は、ある程度の潤滑オイル保持をもたらすことができるが、異なる向きで動作するように構成されたポンプに使用される場合、潤滑オイルが軸受から出るための少なくとも1つの経路が存在することが重要であり、従って、いくつかの実施形態では、上記軸受支持体の上記半径方向延在部は、上記軸受の内部と上記軸受の外部との間の潤滑オイルの通過を可能にするように構成された複数の開口を備える。
【0029】
上述したように、ポンプが異なる向きに配置された場合に軸受組立体が機能するためには、潤滑オイルが軸受から出るための通路が有利である。いくつかの実施形態では、これらは軸受支持部の開口によって提供される。開口の数は、軸受支持体の適切な強度を提供するように選択することができ、これは、堅牢な軸方向及び/又は半径方向の端部ストップ保護を提供しながら、ポンプが異なる向きに配置された場合に潤滑オイルの十分な通過を可能にするようになっている。
【0030】
いくつかの実施形態では、上記複数の開口は、少なくとも3つの開口、好ましくは少なくとも9つの開口を含む。
【0031】
ポンプが水平に配向されている場合であっても、軸受内の潤滑オイルの貯留を低減するためには、3又は4以上の開口で十分であることが分かっているが、9つの開口が特に有利であることが分かっている。
【0032】
いくつかの実施形態では、上記潤滑オイル案内要素は、上記複数の開口の少なくとも半径方向内側部分を越えて半径方向に延びるように構成されている。
【0033】
潤滑オイル案内要素が潤滑オイルの効果的な案内を可能にするためには、潤滑オイル案内要素は、上記開口の半径方向内側部分を越えて延びることが有利であろう。
【0034】
いくつかの実施形態では、上記内輪の上記軸方向延在部は、外径が縮小された凹部を備え、上記軸受支持体の上記半径方向延在部は、上記凹部内に延びる。
【0035】
いくつかの実施形態では、上記軸受支持体の上記半径方向延在部の最内面は、上記内輪の上記外形が縮小された外面との間に隙間の一面を形成する。
【0036】
軸受支持体の半径方向延在部は、軸受が故障した場合に、軸方向及び半径方向の端部ストップの少なくとも一方を提供するように構成されている。潤滑オイル案内要素は、さらなる軸方向の端部ストップを提供することができる。
【0037】
いくつかの実施形態において、軸受支持体は、コンパクトなばね金属ダンパーとすることができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、上記潤滑オイル案内要素が取り付けられている部分における上記内輪の上記外径は、上記軸受支持体が延びる上記凹部の上記外径よりも小さい。
【0039】
潤滑オイル案内要素を、軸受支持体が延びる凹部よりも小さい直径を有する外輪の部分に配置することは、潤滑オイル案内要素がさらなる軸方向の端部ストップを提供するのを可能にし、また、軸受組立体を組み立てる場合及びそれをポンプのシャフトに取り付ける場合の両方で、異なる要素の位置決めを助ける。
【0040】
第2の態様は、ステータ内でロータを支持する少なくとも1つの回転可能なシャフトを含むポンプを提供し、上記少なくとも1つの回転可能なシャフトは、第1の態様による少なくとも1つの軸受組立体に取り付けられる。
【0041】
いくつかの実施形態では、上記ポンプは、上記軸受組立体の軸方向一方側に潤滑オイルリザーバを備えると共に軸方向他方側に潤滑オイル回収機構を備え、上記潤滑オイル案内要素は、上記潤滑オイル回収機構上に潤滑オイルを案内するように構成され、上記ポンプは、上記潤滑オイル回収機構から上記潤滑オイルリザーバに上記潤滑オイルを移送するための潤滑オイル移送機構をさらに備える。
【0042】
軸受の潤滑に使用された潤滑オイルは、潤滑オイル回収機構及び潤滑オイル移送機構を使用して再循環させることができ、潤滑オイル案内要素は、潤滑オイルを潤滑オイル回収機構に案内し、潤滑オイル移送機構は、潤滑オイルを回収機構から潤滑オイルリザーバに移送し、そこで潤滑オイルはポンプの潤滑に再使用される。回収機構及び移送機構、並びに当然のことながらリザーバは、貯留及びウイッキング機能を有するフェルト又は繊維状材料とすることができる。潤滑オイルの回収及び再循環は、システム内に十分な量の潤滑オイルを維持するのを助け、軸受の潤滑が断続的になり軸受が損傷するのを阻止する。
【0043】
いくつかの実施形態では、ポンプは真空ポンプを含み、いくつかの実施形態ではターボ分子ポンプを含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、ポンプは、複数の向きで動作するように構成された真空ポンプを含む。
【0045】
真空ポンプでは、軸受の潤滑に使用される潤滑オイルがポンプ室に漏れて真空を汚染するのを阻止することが重要である。従って、実施形態は、真空ポンプに特に適用可能であり、ここでは、潤滑オイル案内要素は、潤滑オイルの進入からポンプ室を保護するのを助ける。
【0046】
複数の向きで動作するように構成された真空ポンプ、及び実際に複数の向きで輸送及び保管される可能性のある真空ポンプは、オイルの漏れのリスクが高く、従って、実施形態の潤滑オイル案内要素は、そのような真空ポンプにおいて特に有効である。
【0047】
第3の態様は、第1の態様による軸受組立体を組み立てる方法を提供し、本方法は、転動可能要素を内輪及び外輪の内部に取り付けることによって軸受を組み立てるステップと、環状形を有する潤滑オイル案内要素を、上記軸受の内輪に取り付けるステップであって、上記潤滑オイル案内要素が上記内輪の外周から半径方向外向きに延びるようになっている、ステップとを含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、上記内輪は、上記外輪を越えて軸方向に延びる軸方向延在部を備え、上記方法は、上記潤滑オイル案内要素を取り付ける上記ステップの前に実行されるステップ、すなわち、上記軸受の上記外輪に軸受支持体を取り付けるステップであって、上記軸受支持体が、上記外輪の1つの端面を横切って上記内輪の上記軸方向延在部に向かって延び、それによって上記内輪と上記外輪との間の上記環状隙間の少なくとも一部を見えなくする半径方向延在部を備える、ステップと、次に、上記潤滑オイル案内要素を取り付ける上記ステップを実行するステップと、含み、上記潤滑オイル案内要素は、上記軸受支持体の上記半径方向延在部よりも上記転動可能要素から軸方向に離れた位置に取り付けられ、上記軸受支持体の上記半径方向延在部の少なくとも一部が、上記転動可能要素と上記潤滑オイル案内要素との間にあるようになっている、
【0049】
上記方法に従って組み立てられた軸受組立体は、潤滑オイル案内要素が軸受組立体の一部であるように組み立てられる。いくつかの実施形態では、軸受支持体も組立体の一部であり、ポンプに取り付けられる前に所定の位置にある。これにより、ポンプに取り付ける前に、軸受組立体のバランス調整、洗浄、検査、及び試験を行うことができる。軸受組立体は、ポンプの製造時、又は軸受が交換されるサービス時にポンプに取り付けることができる。
【0050】
さらなる特定の及び好ましい態様は、独立請求項及び従属請求項に記載されている。従属請求項の特徴は、適宜、独立請求項の特徴と組み合わせること、及び、請求項に明示的に規定されている以外の組み合わせで組み合わせることができる。
【0051】
装置の特徴が、ある機能を提供するために動作可能であると説明される場合、これは、その機能を提供する、又はその機能を提供するように適合又は構成される装置の特徴を含むことを理解されたい。
【0052】
本発明の実施形態は、以下に、添付の図面を参照してさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】一実施形態による一体化されたオイルフリンガを備えた軸受組立体を示す。
図2】ポンプが逆さまに配置され、オイルフリンガがない場合の潤滑オイルの漏れを概略的に示す
図3図2のポンプにオイルフリンガを追加した場合に潤滑オイルの流れがどのように変化するかを概略的に示す。
図4】オイルフリンガが軸方向バックストップとしてどのように機能することができるかを概略的に示す。
図5】潤滑オイル流路のない軸受支持体を使用し、ポンプが逆さまの位置で動作させた場合に、どのようにオイルが蓄積されるかを示す。
図6】潤滑オイルの回収及び移送機構を示す。
図7】一実施形態による軸受組立体を組み立てる方法のステップを示すフロー図を提示する。
図8】一実施形態による一体化オイルフリンガを備えた軸受組立体を概略的に示す。
図9】一実施形態によるさらなる軸受組立体を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
実施形態を詳細に説明する前に、まず、概要について説明する。
【0055】
一体化された潤滑オイル案内要素又はオイルフリンガを有する軸受組立体が開示される。オイルフリンガを有する軸受組立体を提供することは、いくつかの利点を潜在的に提供する。これらは、軸方向のバックストップの提供、シャフトに達する潤滑オイルからの保護、所望の潤滑オイル移送経路に向かう潤滑オイルの案内、軸受の材料と異種材料である可能性のあるフリンガに適切な材料を選択する能力、新しい軸受組立体を取り付ける際のポンプへのオイルフリンガの後付け、及びポンプ内に組み付ける前に軸受組立体を試験することができるので品質及び振動特性の向上を含むことができる。
【0056】
開示内容全体が本明細書に組み込まれている英国特許第2019823号に開示されているコンパクトな金属ばねダンパーなどの、軸受シールドを有する軸受支持体を使用する場合、軸受支持体のシールド部にオイルドレン穴を設けることができる。
【0057】
既存のあらゆる向きの軸受配置では、オイルフリンガを使用することができ、オイルフリンガは、軸受内を通過したオイルをポンプシャフトから遠くに分配し、ポンプ機構へのオイルの伝達を阻止する。従来では、フリンガは、軸受組立体を追加する前にポンプシャフトに取り付けられる別個の構成要素である。これは、シャフトの改造を必要とし、オイルフリンガを整備時に交換するのを困難にしている。軸受の設計及びポンプ内部のオイルフリンガの位置に起因して、軸受が視界を遮るため、組立体が正しいか否かを知ることも困難である。正しくない組立体は、オイルの伝達及び振動の発生を引き起こす可能性があり、どちらも使用されるために製品が出荷される前に観察して見つけることが困難な場合がある。
【0058】
これらの問題の少なくとも一部は、軸受組立体内に潤滑オイル案内要素又はオイルフリンガを組み込むことによって解決されている。
【0059】
図1は、一体化されたオイルフリンガ30を備える軸受組立体10を示す。この実施形態では、オイルフリンガ30は、軸受組立体構成要素10の組み立てを簡素化するのを助ける別個の部品である。軸受組立体10は、アウターレース又は外輪12、転動体又はボール16を保持するための保持器13、及びインナーレース又は内輪14を備える。インナーレース14は、ポンプのシャフトに取り付けられ、そのシャフトと共に回転するように構成されている。インナーレース14は、軸端の外面に取り付けられたオイルフリンガ30を有する。軸受組立体は、本実施形態ではコンパクトな金属製ばねダンパーCMSDである軸受支持体20内に支持されている。軸受支持体20は、シールド26を備え、シールド26は、軸受支持体20と一体であり、軸受からポンプへのオイル損失に対してある程度の保護を可能にする。この実施形態では、シールド26は、少なくとも1つの開口25を備え、軸受からのオイルの何らかの損失を許容するようになっており、これは、ポンプが反転位置又は水平位置で動作する場合に、軸受内のオイルの貯留を抑制するために必要である。シールド26の半径方向の内壁と内輪14の外壁との間には隙間がある。この実施形態では、シールド26は、内輪14の外面の凹部に広がり、内輪とシールド26との間に軸方向の隙間と半径方向の隙間が存在するようになっている。軸受が故障した場合、軸方向及び半径方向の動きは、これらの隙間の大きさによって制限されることになるので、この軸受は、ポンプのための少なくとも一方向の軸方向及び半径方向の両方向のバックアップ軸受をもたらすことができる。
【0060】
オイルフリンガ30は、内輪の軸端のさらなる凹部内に取り付けられ、追加の軸方向ストップを提供する。軸受がシールド26を有する支持体に取り付けられていない実施形態では、オイルフリンガ30は、それ自体で軸方向ストップを提供することができる。
【0061】
この実施形態では、軸受が支持体20に挿入されると、オイルフリンガ30は、インナーレース14に装着される。軸受組立体10に装着されると、フリンガ30及び軸受組立体は、製品に組み込まれる前に一緒に試験することができ、これは、軸受製造業者で行うことができ、このことは、高品質の構成要素が組み立て準備のできた状態で出荷されることを保証する。
【0062】
一体化されたオイルフリンガを有する完全な組立体を試験することで、フリンガの装着後に部品の品質が維持されていることをより確実にすることができる。フリンガの半径方向の位置を管理するために締まり嵌めを使用する場合、部品がインナーレースに押し付けられる際にバリ又はデブリが発生する可能性がある。試験前に発生した可能性のある何らかのデブリを取り除くために、軸受の装着後に組立体を洗浄することが可能な場合がある。組立体がポンプの生産設備で作られたものであれば、このようなことはできない可能性がある。
【0063】
フリンガを作るのに使われる材料は、全ての作動条件及び回転速度で構成要素を管理するために軸受に必要な締まり嵌めを規定することになる。あるいは、フリンガは、接着剤による接着、かしめ、サークリップなど、他の方法で軸受組立体に取り付けることもできる。
【0064】
フリンガを組み立て、製造業者がその後の軸受試験を行うことは、製品品質が維持されることを保証する。
【0065】
オイルフリンガを軸受組立体に組み込むことで、新しい組立体を現場の既存製品又は旧製品に後付けすることができる。フリンガがポンプシャフトに装着される場合、その上にフリンガが押し付けられるシャフト上に適切なサイズのジャーナルが必要となるため、このようなことは不可能である。
【0066】
組立体にオイルフリンガを追加すると、ポンプが逆さまに向けられている場合に、オイルの直接的な移送が防止されるか又は少なくとも抑制される。
【0067】
図2は、オイルフリンガが無い場合の潤滑オイルの通路、及び潤滑オイルがシャフト67に沿ってポンプ室に向かってどのように流れるかを示し、一方で、図3は、オイルフリンガ30を追加することにより、オイルがどのようにシャフト67から遠くに及びポンプ室から遠くに迂回するかを示す。
【0068】
オイルフリンガを備えた軸受組立体を有するポンプは、保管中又は輸送中を含めて、フリンガが軸受からポンプ機構へのオイルの移動を抑制するのに役立つので有益である。ポンプが逆さまに向いている場合、フリンガは、オイルの直接的な移送を妨げる。標準的な軸受では、オイルは軸受シールドを越えてシャフトに沿ってモータ領域に漏れる可能性があり、オイルがポンプ機構の中に移動するか又はポンプ排気口から外に出る場合があるが、いずれにしても軸受を潤滑するための潤滑オイルの供給量が減少し、軸受の故障につながる可能性がある。一体化されたフリンガを有する軸受組立体は、シャフト領域にわたるカバーを備え、オイル移送のリスクが低減し、オイルをポンプの適切な領域内に保つ。
【0069】
軸受組立体にフリンガを装着すると、作動時に軸受領域へのガス移送を抑えるのを助け、ポンプガスによるオイルの汚染を低減するのを助けることができる。
【0070】
フリンガがシャフトに取り付けられた従来の設計では、フリンガが除外されると、製造工程でそれを検出するのは非常に難しく、作動時にポンプがオイルを失い始めるまで気づかない可能性があり、製品の信頼性の問題につながる。
【0071】
フリンガを軸受組立体と一体化されると、これはポンプの組み立て時に忘れられないことを保証するポカヨケ(poke yoke)解決策をもたらし、ポンプに組み付ける前に又は整備時に簡単にチェックすることができる。
【0072】
上述したように、軸受組立体にフリンガを追加すると、軸受に半径方向ストップ51を提供することもできる。図4は、ロータシャフトが図の右側にある軸受の片側を通る断面を概略的に示し、軸受支持体20のシールド26が軸受の軸方向エンドストップ50及び半径方向エンドストップ52をどのように提供するかを示す。オイルフリンガ30は、さらに軸方向ストップ51を提供する。これにより、ポンプ内の過度の動きを軸受組立体で制御することができ、また、万一軸受が故障した場合の安全機構も提供する。これは、ポンプに何らかの他の変更を加えることなく、さらなる安全性及び堅牢性を提供することができるため、従来の製品に軸受を後付けする場合に特に有用である。
【0073】
この実施形態では、オイルフリンガ30がCMSD肩部又はシールド26の下に示されており、バックストップを形成しているのはフリンガの内側部分であるが、軸方向のバックストップは、フリンガの何らかの部分によって提供できることに留意されたい。しかしながら、内側部分は、その堅牢性に起因して、特に効果的なバックストップを提供する。内側部分の表面速度は外側部分よりも低く、静止面に接触するため、相対的な表面速度が低くなる。内側部分の表面速度は外側部分よりも低く、静止面に接することになるため、相対的な表面速度が低くなる。さらに、接触するのはフリンガの厚い部分であり、CMSD肩部の間で圧縮されるため、動きに抵抗するのに効果的である。フリンガの先端部がバックストップとして機能する場合、片側が支持されないことになり、変形し易くなる。
【0074】
フリンガに選択される材料は、軸方向バックストップとしての動作に影響することになり、ポリマー、複合材、金属などの適切に堅牢な材料が有利である。
【0075】
従来の何らかの向きのポンプ設計では、オイルフリンガは、ポンプシャフト上に装着されており、ポンプを整備する場合、オイルフリンガは、ポンプ送給される媒体による過度の変形(creep)又は劣化を防ぐために交換する必要がある。フリンガの取り外し及び再装着は、製品の振動及びロータ動特性を狂わせる可能性があり、最終的には、整備後のスムーズな動作を保証するためにポンプのバランス取りが必要である。
【0076】
オイルフリンガを軸受組立体に追加するか又はオイルフリンガを軸受の内輪と一体化した軸受組立体を提供することで、製造時に軸受がすでに試験されているのでこれらの問題が軽減され、現場整備後のポンプの振動又はロータ動特性の問題が発生する可能性が低くなる。
【0077】
従来のオイルフリンガの取り外し及びその後の装着は特に困難な場合があり、これが正しく配置されるのを保証するために、及び作業時にデブリ/汚染物質の発生を最小限に抑えるのを保証するために、特別な工具が必要である。軸受組立体にフリンガを設けることで、これらのリスクを軽減することができる。
【0078】
実施形態のオイルフリンガは、オイル回収及び移送機構と共にオイル再循環経路を提供するように構成されている。この点で、軸受組立体に流入するオイルは、蓄積及び強力な引き込みを防ぐために、出て行くようにさせる必要がある。垂直(直立)及びある程度水平にポンプを使用する場合、オイルは軸受組立体の底部から出入りする。倒立運転が可能になると、オイルは重力で落下しようとし、ボールの近くに蓄積する(図5の左側の図を参照)。右図に示すオイル逃げ穴25は、オイルが軸受を通過し、フリンガ(ポンプ動作に応じて、回転する又は静止する)上へ、及びそこから再循環フェルトシステムへ流れるようにすることになる。
【0079】
穴の数、位置、大きさ、形状は、軸受内のオイルレベル及び軸受を通る流量に影響を与え、またシールド26の強度にも影響を与えることになる。また、ポンプの位置及び向きはオイルの蓄積に影響を与えることになる。例えば、ポンプを水平方向に取り付けた場合、十分な数のドレン穴を設け、1つの穴が底部に向かうようにすることが重要である。少なくとも3つの穴が上手く機能することが分かっており、9つの穴が望ましい。この点で、穴の数が多いほど、軸受組立体を取り付けることができる向きの自由度が高くなる。
【0080】
図6は、一実施形態による、ポンプが逆さまに配向されている場合に、つまりロータシャフト67を支持する軸受10がモータ及びポンプ機構の垂直方向上方に配置された場合に、ポンプ内に提供されるオイル再循環経路を示す。軸受組立体10は、ポンプハウジング68内にあり、オイルがシャフトに沿ってモータに向かって流れるのを妨げ、オイルを回収機構60に向かって送るオイルフリンガ30を有しており、オイルは、再循環させて軸受を潤滑するために再利用することができる。オイルは、フェルトであるオイル移送機構62によって回収機構60からオイルリザーバ64に向かって毛管作用で運ばれる。リザーバ64から軸受に向かってオイルを送るオイル送出手段66がある。
【0081】
図7は、一実施形態による軸受の組み立て方法を概略的に示す。最初のステップS10において、軸受は、内輪又はインナーレース及び外輪又はアウターレース内にボールなどの転動可能な要素を取り付けることによって形成され、内輪及び外輪が互いに対して回転できるようになっている。
【0082】
いくつかの実施形態では、軸受の外輪に軸受支持体を取り付ける追加ステップS20が実行される。場合によっては、軸受支持体は、内輪と外輪との間の環状隙間を横切って半径方向に延びるシールドを有する。
【0083】
次のステップS30において、潤滑オイル案内要素が軸受の内輪に取り付けられ、これは内輪と外輪との間の環状隙間を少なくとも部分的に横切って延びるようになっている。軸受支持体がある場合、潤滑オイル案内要素は、軸受支持体のシールドを越えて軸方向に取り付けられ、シールドよりも転動要素から離れるようになっている。
【0084】
次に、追加のステップS40があり、ここでは、軸受組立体は、ポンプに取り付ける前に洗浄、検査、及び試験される。
【0085】
図8は、オイルフリンガ30が軸受内輪14と一体になっている軸受組立体のさらなる実施形態を示す。オイルフリンガを軸受内輪と一体にすることで、軸受の製造をより簡単にし、堅牢な解決法を提供することができる。この実施形態では、軸受内輪14の、軸受から離れる方向を向いた表面は(この向きでは軸受の下面である)、環状の凹部又は溝32を備える。この溝又は凹部32は、ロータが回転していない場合に、デフレクタを流れ落ちて下面に沿って流れるオイルの滴下縁部として機能する。この環状凹部32は、凹部の半径方向内縁がロータシャフト67とポンプハウジング68との間の隙間69を半径方向に超えるように配置されているので、例えばロータが回転しなくなった場合にこの凹部から滴下する何らかのオイル又は潤滑オイルは、内輪の表面に沿ってシャフトに向かって移動してハウジングとシャフトとの間の隙間に落下してシャフトに沿ってポンプ室に向かって流れるのではなく、ポンプハウジング部分68上に落下するようになっている。
【0086】
図中の矢印は、ポンプ作動時のオイルの流れを表す。各軌道輪の幅は異なるサイズとすることができ、概してポンプハウジング68にぴったり合うように構成されている。オイルフリンガ又はデフレクタ30は、ポンプハウジング68とロータシャフト67との間の隙間69を越えて延びるように構成されており、上述のように、溝又は凹部32は、ロータが静止している場合に、軸受に背を向ける表面に沿ってシャフトにオイルが漏れるのを妨げるための滴下縁部を呈する。
【0087】
この実施形態では、オイルフリンガ30は、テーパ状又は傘形の形状を有し、オイルフリンガの半径は、軸受から離れるにつれて大きくなっている。
【0088】
図9は、オイルフリンガ及び軸受内軸が一体部品として形成された代替実施形態を示す。この実施形態では、オイルフリンガの軸受に背を向ける表面には凹部はなく、むしろ、それ自体が滴下縁部を形成する角度付きの下端面がある。この実施形態では、フリンガ又はデフレクタ30の形状は、テーパ状ではないが、軸受から離れたデフレクタの半径が軸受に近い半径よりも大きくなるように、やはりシャフトから離れる方向に角度が付けられており、デフレクタに沿って流れる潤滑オイルは、シャフトから離れる方向に偏向されるようになっている。
【0089】
本発明の例示的な実施形態は、添付の図面を参照して本明細書に詳細に開示されているが、本発明は、正確な実施形態に限定されず、添付の請求項及びその均等物によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、当業者によって様々な変更例及び修正例が結果として得られることを理解されたい。
【符号の説明】
【0090】
10 軸受組立体
12 外輪
13 軸受保持器
14 内輪
16 転動可能要素
20 軸受支持体
25 開口
26 シールド
30 潤滑オイル案内要素/オイルフリンガ
32 凹部
50、51 軸方向ストップ
52 半径方向ストップ
60 オイル回収機構
62 オイル移送機構
64 オイルリザーバ
66 オイル送出手段
67 ロータシャフト
68 ポンプハウジング
69 シャフトとハウジングとの間の隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2024-07-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプの回転可能なシャフトを取り付けるための軸受組立体であって、
内輪及び外輪と、前記内輪と前記外輪との間に取り付けられた複数の転動可能要素とを備える軸受と
前記内輪の外周から半径方向外向きに延びる潤滑オイル案内要素であって、前記潤滑オイル案内要素は、半径方向に延びる表面を備え、前記半径方向に延びる表面の少なくとも一部は、前記内輪と前記外輪との間の環状隙間に面している、潤滑オイル案内要素と、
を備える、軸受組立体。
【請求項2】
前記半径方向に延びる表面は傾斜しており、前記傾斜した表面の半径方向内側部分は、前記傾斜した表面の半径方向外側部分よりも前記転動可能要素に近い、請求項1に記載の軸受組立体。
【請求項3】
前記潤滑オイル案内要素は、前記内輪の一端の方に配置されている、請求項1に記載の軸受組立体。
【請求項4】
前記潤滑オイル案内要素は、前記転動可能要素に背を向ける表面上に滴下縁部を備える、請求項1に記載の軸受組立体。
【請求項5】
前記転動可能要素に背を向ける前記表面は、環状凹部を備え、前記環状凹部の縁部は、前記滴下縁部を構成する、請求項4に記載の軸受組立体。
【請求項6】
前記滴下縁部は、前記転動可能要素に背を向ける前記表面の半径方向内側の縁部と半径方向外側の縁部との間の距離の30と70%の間である、請求項4に記載の軸受組立体。
【請求項7】
前記転動可能要素から最も遠い前記潤滑オイル案内要素の半径方向に延びる表面は、前記転動可能要素から最も遠い前記内輪の半径方向に延びる表面と面一であるか、又は前記転動可能要素から最も遠い前記内輪の半径方向に延びる表面を超えて軸方向に延びている、請求項1に記載の軸受組立体。
【請求項8】
前記潤滑オイル案内要素は、前記内輪と一体である、請求項1に記載の軸受組立体。
【請求項9】
前記潤滑オイル案内要素は、環状形を有し、前記内輪に取り付けられている、請求項1に記載の軸受組立体。
【請求項10】
前記内輪の一部は、前記潤滑オイル案内要素が取り付けられる部分において外径が縮小された薄肉部分を備える、請求項9に記載の軸受組立体。
【請求項11】
前記潤滑オイル案内要素は、圧入、すきま嵌め、締まり嵌め、結合、かしめ、サークリップ、又は接着のうちの少なくとも1つによって前記内輪に取り付けられる、請求項10に記載の軸受組立体。
【請求項12】
前記内輪は、前記外輪を越えて軸方向に延びる軸方向延在部を備え、前記潤滑オイル案内要素は、前記軸方向延在部に取り付けられており、
前記軸受組立体は、
前記軸受の前記外輪を支持するように構成された軸受支持体、
をさらに備え、
前記軸受支持体は、前記外輪の外面の少なくとも一部を取り囲み、前記外輪の1つの端面を横切って前記内輪の前記軸方向延在部に向かって延び、それによって前記内輪と前記外輪との間の前記環状隙間の少なくとも一部を見えなくする半径方向延在部を備え、
前記潤滑オイル案内要素は、前記軸受支持体の前記半径方向延在部よりも前記転動可能要素から離れた位置にある、請求項9に記載の軸受組立体。
【請求項13】
前記軸受支持体の前記半径方向延在部は、前記軸受の内部と前記軸受の外部との間の潤滑オイルの通過を可能にするように構成された複数の開口を備える、請求項12に記載の軸受組立体。
【請求項14】
前記複数の開口は、少なくとも3つの開口、好ましくは9つの開口を含む、請求項13に記載の軸受組立体。
【請求項15】
前記潤滑オイル案内要素は、前記複数の開口の少なくとも半径方向内側部分を越えて半径方向に延びるように構成されている、請求項13に記載の軸受組立体。
【請求項16】
前記内輪の前記軸方向延在部は、外径が縮小された凹部を備え、前記軸受支持体の前記半径方向延在部は、前記凹部内に延びる、請求項12に記載の軸受組立体。
【請求項17】
前記軸受支持体の前記半径方向延在部の最内面は、前記内輪の前記外径が縮小された凹部の外面との間の隙間の一面を形成する、請求項16に記載の軸受組立体。
【請求項18】
前記潤滑オイル案内要素が取り付けられている部分における前記内輪の前記外径は、前記軸受支持体が延びる前記凹部の前記外径よりも小さい、請求項7に従属する場合の請求項16又は17に記載の軸受組立体。
【請求項19】
ステータ内でロータを支持する少なくとも1つの回転可能なシャフトを備えるポンプであって、前記少なくとも1つの回転可能なシャフトは、請求項1に記載の少なくとも1つの軸受組立体に取り付けられる、ポンプ。
【請求項20】
前記ポンプは、前記軸受組立体の軸方向一方側に潤滑オイルリザーバを備えると共に軸方向他方側に潤滑オイル回収機構を備え、前記潤滑オイル案内要素は、前記潤滑オイル回収機構上に潤滑オイルを案内するように構成され、前記ポンプは、前記潤滑オイル回収機構から前記潤滑オイルリザーバに前記潤滑オイルを移送するための潤滑オイル移送機構をさらに備える、請求項19に記載のポンプ。
【請求項21】
前記ポンプは、複数の向きで動作するように構成された真空ポンプを含む、請求項20に記載のポンプ。
【請求項22】
請求項9に記載の軸受組立体を組み立てる方法であって、
転動可能要素を内輪及び外輪の内部に取り付けることによって軸受を組み立てるステップと、
環状形を有する潤滑オイル案内要素を前記軸受の前記内輪に取り付けるステップであって、前記潤滑オイル案内要素が前記内輪の外周から半径方向外向きに延びるようになっている、ステップと、
を含む、方法。
【請求項23】
請求項12に記載の軸受を組み立てる方法であって、前記内輪は、前記外輪を越えて軸方向に延在する軸方向延在部を備え、
前記方法は、前記潤滑オイル案内要素を取り付ける前記ステップの前に行われる、さらなるステップ、すなわち、
前記軸受の前記外輪に軸受支持体を取り付けるステップであって、前記軸受支持体が、前記外輪の1つの端面を横切って前記内輪の前記軸方向延在部に向かって延び、それによって前記内輪と前記外輪との間の前記環状隙間の少なくとも一部を見えなくする半径方向延在部を備える、ステップと、
次に、前記潤滑オイル案内要素を取り付ける前記ステップを実行するステップと、
を含み、
前記潤滑オイル案内要素は、前記軸受支持体の前記半径方向延在部よりも前記転動可能要素から軸方向に離れた位置に取り付けられ、前記軸受支持体の前記半径方向延在部の少なくとも一部が、前記転動可能要素と前記潤滑オイル案内要素との間にあるようになっている、請求項22に記載の方法。
【国際調査報告】