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特表2025-501406近視制御コンタクトレンズ及びそれに関連する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-17
(54)【発明の名称】近視制御コンタクトレンズ及びそれに関連する方法
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/04 20060101AFI20250109BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
G02C7/04
G02B5/18
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024542308
(86)(22)【出願日】2023-01-20
(85)【翻訳文提出日】2024-07-17
(86)【国際出願番号】 GB2023050125
(87)【国際公開番号】W WO2023139384
(87)【国際公開日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】63/301,650
(32)【優先日】2022-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521013611
【氏名又は名称】クーパーヴィジョン インターナショナル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【弁理士】
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(72)【発明者】
【氏名】ブラッドリー アーサー
(72)【発明者】
【氏名】ウェッバー マーティン
(72)【発明者】
【氏名】チェンバレン ポール
(72)【発明者】
【氏名】アルムガム バスカール
(72)【発明者】
【氏名】ハモンド デヴィッド エス
【テーマコード(参考)】
2H006
2H249
【Fターム(参考)】
2H006BC00
2H249AA04
2H249AA18
2H249AA55
(57)【要約】
近視の発症または進行を予防または遅らせるのに使用される眼科用レンズ(112’、200)は、遠方の点物体からの光を焦点面に集束させるための光学ゾーン(202)を備える。光学ゾーンは、焦点面の近傍の光の縦方向の色収差特性を操作するための回折レンズ(206)を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近視の発症または進行を予防または遅らせるのに使用するための眼科用レンズであって、
遠方の点物体からの光を焦点面に集束させるための光学ゾーン
を備え、
前記光学ゾーンは、前記焦点面の近傍の前記光の縦方向の色収差特性を操作するための回折レンズを有する
ことを特徴とする眼科用レンズ。
【請求項2】
前記回折レンズは、自然の眼によって引き起こされる縦方向の色収差を低減するように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の眼科用レンズ。
【請求項3】
前記回折レンズは、自然の眼によって引き起こされる縦方向の色収差を打ち消すように構成されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の眼科用レンズ。
【請求項4】
前記回折レンズは、自然の眼によって引き起こされる縦方向の色収差を反転させるように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の眼科用レンズ。
【請求項5】
前記回折レンズは、正の光学屈折力を有する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の眼科用レンズ。
【請求項6】
前記回折レンズは、+2.0ディオプトリ~+8.0ディオプトリの間の光学屈折力を有する
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の眼科用レンズ。
【請求項7】
前記回折レンズは、+3.0ディオプトリ~+3.4ディオプトリの間の光学屈折力を有する
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の眼科用レンズ。
【請求項8】
前記回折レンズの光学屈折力は、400nm~700nmの波長範囲に亘って、少なくとも1.5ディオプトリだけ変化する
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の眼科用レンズ。
【請求項9】
前記回折レンズは、+6.8ディオプトリ~+7.2ディオプトリの間の光学屈折力を有する
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の眼科用レンズ。
【請求項10】
前記回折レンズの光学屈折力は、400nm~700nmの波長範囲に亘って、少なくとも3.0ディオプトリだけ変化する
ことを特徴とする請求項1乃至6及び9のいずれかに記載の眼科用レンズ。
【請求項11】
前記回折レンズは、複数の同心円状のリング状ゾーンによって囲まれた中央ゾーンを有する
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の眼科用レンズ。
【請求項12】
当該眼科用レンズは、コンタクトレンズである
ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の眼科用レンズ。
【請求項13】
前記中央ゾーンは、1.0mm~1.4mmの間の直径を有する
ことを特徴とする請求項12に記載の眼科用レンズ。
【請求項14】
前記回折レンズの各ゾーンに亘る光学位相が、2πラジアンの間隔に亘って変化する
ことを特徴とする請求項12または13に記載の眼科用レンズ。
【請求項15】
連続的なリング状ゾーンの各々の幅が、直前のリング状ゾーンの幅よりも小さい
ことを特徴とする請求項12乃至14のいずれかに記載の眼科用レンズ。
【請求項16】
当該眼科用レンズは、コンタクトレンズであり、
当該コンタクトレンズは、エラストマー材料、シリコーンエラストマー材料、ヒドロゲル材料、シリコーンヒドロゲル材料、または、それらの混合物、を含む
ことを特徴とする請求項1乃至15のいずれかに記載の眼科用レンズ。
【請求項17】
前記眼科用レンズは、成形コンタクトレンズである
ことを特徴とする請求項1乃至16のいずれかに記載の眼科用レンズ。
【請求項18】
前記光学ゾーンは、0.5ディオプトリ~-15.0ディオプトリの間のベース光学屈折力を有する
ことを特徴とする請求項1乃至17のいずれかに記載の眼科用レンズ。
【請求項19】
前記光学ゾーンは、環状領域と中央領域とを有し、
前記中央領域は、前記回折レンズを含み、
前記環状領域は、前記中央領域のベース屈折力よりも大きい光学屈折力を有する
ことを特徴とする請求項1乃至18のいずれかに記載の眼科用レンズ。
【請求項20】
前記環状領域は、前記光の縦方向の色収差特性を操作するための回折レンズを含まない
ことを特徴とする請求項19に記載の眼科用レンズ。
【請求項21】
前記環状領域の焦点は、近位焦点面上に存在し、
前記中央領域の焦点は、遠位焦点面上に存在し、
前記遠位焦点面は、前記近位焦点面よりも、当該コンタクトレンズの後面から遠く離れている
ことを特徴とする請求項19または20に記載の眼科用レンズ。
【請求項22】
前記環状領域の焦点と前記中央領域の焦点とが、共通の光軸を共有する
ことを特徴とする請求項19乃至21のいずれかに記載の眼科用レンズ。
【請求項23】
当該眼科用レンズは、コンタクトレンズであり、
当該コンタクトレンズの材料の屈折率は、1.40~1.44の間である
ことを特徴とする請求項1乃至22のいずれかに記載の眼科用レンズ。
【請求項24】
請求項1乃至23のいずれかに記載の眼科用レンズを製造する方法であって、
遠方の点物体からの光を焦点面に集束させるための光学ゾーンを含むレンズを形成する工程
を備え、
前記光学ゾーンは、前記焦点面の近傍の前記光の縦方向の色収差特性を操作するための回折レンズを有する
ことを特徴とする方法。
【請求項25】
近視の進行を低減する方法であって、
請求項1乃至23のいずれかに記載の眼科用レンズを、様々な近距離に順応可能な近視の人に提供する工程
を備えたことを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項1乃至23のいずれかに記載の眼科用レンズの複数を、様々な近距離に順応可能な近視の人に提供する工程
を更に備え、
前記複数の眼科用レンズの回折レンズは、異なる光学屈折力を有して、各眼科用レンズは、異なる縦方向の色収差操作をもたらす
ことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、近視の発症または進行を予防するまたは遅らせるように使用される眼科用レンズに関する。本開示はまた、そのようなレンズを製造する方法、及び、そのようなレンズを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近視は、子供と大人とを含む相当数の人々に影響を与えている。近視の目は、遠くの物体からの入射光を網膜の前方の位置に焦点合わせする。その結果、光は網膜に向かって発散し、網膜に到達する時には焦点が外れている。近視を矯正するための従来のレンズ(例えば、眼鏡レンズやコンタクトレンズ)は、遠くの物体からの入射光が目に到達する前に、当該入射光の発散をもたらし、これにより、焦点の位置が網膜上に移動される。
【0003】
数十年前に、子供や若者の近視の進行は、過小矯正、すなわち、焦点を網膜に近づけるが完全に網膜上にまでは近づけない、によって、遅らせたり予防したりできることが提案された。しかしながら、当該アプローチは、必然的に、近視を完全に矯正するレンズで得られる視力と比較して、遠方視力の低下をもたらす。更に、近視の進行を制御するのに過小矯正が有効であるというのは、現在では疑わしいと見なされている。より最近のアプローチは、遠方視力の完全な矯正を提供する領域と、過小矯正すなわち意図的に近視性デフォーカスを誘導する領域と、の両方を有するレンズを提供することである。当該アプローチは、良好な遠方視力を提供しながら、子供や若者の近視の発症または進行を予防または遅らせることができる、と示唆されている。遠方視力の完全な矯正を提供する領域は、通常、ベース屈折力領域と呼ばれ、過小矯正を提供するかまたは意図的に近視性デフォーカスを誘導する領域は、通常、追加屈折力領域または近視性デフォーカス領域と呼ばれる(屈折力が、遠方領域の屈折力(視度)よりも、より正であるか、より少ない負である)。
【0004】
追加屈折力領域の表面(典型的には前面)は、遠方屈折力領域の曲率半径よりも小さい曲率半径を有し、従って、より正またはより少ない負の屈折力(度数)を目に提供する。追加屈折力領域は、入ってくる平行光(すなわち、遠くからの光)を網膜の前方(すなわち、水晶体により近い)の眼中に集束させるように設計される。遠方屈折力領域は、光を集束させて網膜に像を形成するように設計される(すなわち、水晶体からより通い)。
【0005】
近視の進行を低減する別のタイプのコンタクトレンズは、MISIGHT(CooperVision, Inc.)の名前で入手できる、二重焦点コンタクトレンズである。この二重焦点レンズは、老眼の視力を改善するように構成された二焦点コンタクトレンズや多焦点コンタクトレンズとは異なり、遠くの物体と近くの物体との両方を見るために、遠方矯正(すなわち、ベース屈折力)の使用を提供できる所定の光学的寸法で構成される。追加屈折力を有する二重焦点レンズの治療ゾーンは、遠くと近くの両方の視距離で近視性デフォーカスな像を提供する。
【0006】
これらのレンズは、近視の発症または進行を予防または遅らせるのに有益であることが見出されているが、環状の追加屈折力領域は、不所望の視覚的副作用を引き起こし得る。網膜の前方に環状の追加屈折力領域によって集束される光は、焦点から発散して、網膜にデフォーカスされた(焦点がずれた)輪を形成する。従って、これらのレンズの着用者は、特に街灯や車のヘッドライトなどの小さくて明るい物体の場合、網膜上に形成される像の周囲にリングまたは「ハロー」が見える場合がある。また、近くの物体に焦点を合わせるために、目の自然な遠近調節(すなわち、焦点距離を変える目の自然な能力)を使用するのではなく、着用者は環状の追加屈折力領域から生じる網膜の前方の追加の焦点を利用し得てしまう。これは、換言すれば、着用者が、老視矯正レンズが使用されるのと同じ態様でレンズを無意識に(気付かずに)使用し得ることになり、これは、若い対象者にとって望ましくない。
【0007】
本開示は、近視の悪化を防止または遅らせる、若い対象者に使用するための、改善されたレンズを提供する。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、第1の態様によって、近視の発症または進行を予防または遅らせるのに使用するための眼科用レンズを提供する。当該眼科用レンズは、遠方の点物体からの光を焦点面に集束させるための光学ゾーンを備える。前記光学ゾーンは、前記焦点面の近傍の前記光の縦方向の色収差特性を操作するための回折レンズを有する。当該眼科用レンズは、コンタクトレンズであり得る。
【0009】
本開示は、第2の態様によって、第1の態様による眼科用レンズを製造する方法を提供する。
【0010】
本開示は、第3の態様によって、近視の進行を低減する方法を提供する。当該方法は、第1の態様による眼科用レンズを、様々な近距離に順応可能な近視の人に提供する工程を備える。
【0011】
本開示は、第4の態様によって、近視の発症または進行を予防または遅らせるのに使用するための眼科用レンズを提供する。当該眼科用レンズは、環状領域と中央領域とを有する光学ゾーンを備える。前記中央領域は、光の縦方向の色収差特性を操作するための回折レンズを含む。前記環状領域は、前記中央領域のベース屈折力よりも大きい光学屈折力を有する。選択的に、前記環状領域も、前記光の縦方向の色収差特性を操作するための回折レンズを含み得る。
【0012】
もちろん、本開示の一態様に関連して説明される特徴が、本開示の他の態様に組み込まれ得ることが、理解されるであろう。例えば、本開示の方法は、本開示の装置を参照して説明された特徴を組み込み得るし、その逆もまた同様である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A図1Aは、近視の予防に使用される従来のコンタクトレンズの概略平面図である。
【0014】
図1B図1Bは、図1Aのコンタクトレンズの概略側面図である。
【0015】
図2A図2Aは、図1Aのレンズの概略光線図である。
【0016】
図2B図2Bは、遠方の点源から形成された、図1Aのレンズの近位焦点面における光パターンを示す。
【0017】
図2C図2Cは、遠方の点源から形成された、図1Aのレンズの遠位焦点面における光パターンを示す。
【0018】
図3A図3Aは、調節遅延(適応遅延)の状態下の遠視の人の眼または正視の眼の概略図である。
【0019】
図3B図3Bは、近視の人の眼の概略図である。
【0020】
図4図4は、近視を矯正することが意図された従来のコンタクトレンズをした近視の人の眼の概略図である。近視の眼は、近くの対象に焦点を合わせており、調節遅延の状態下にある。
【0021】
図5A図5Aは、本開示の一実施形態に係る、近視の発症または進行を予防または遅らせるために用いられるコンタクトレンズを着用した近視の人の眼の概略図であって、当該コンタクレンズは、色ぼけ(色ぼやけ)の反転を引き起こす回折光学素子を有している。
【0022】
図5B図5Bは、本開示の一実施形態に係る、近視の発症または進行を予防または遅らせるために用いられるコンタクトレンズを着用した近視の人の眼の概略図であって、当該コンタクトレンズは、色ぼけの打ち消しを引き起こす回折光学素子を有している。
【0023】
図6図6は、本開示の幾つかの実施形態に係るコンタクトレンズに使用される様々な回折レンズ(回折光学素子)についての、波長の関数としての光学屈折力の変化の計算を示すグラフである。
【0024】
図7図7は、典型的な正視眼、近視眼及び遠視眼についての、波長の関数としての屈折率異常を示すグラフである。
【0025】
図8図8は、典型的な正視眼、近視眼及び遠視眼と組み合わされる、本開示の一実施形態に係る、+3.2Dの屈折力の回折レンズを有するコンタクトレンズを使用した場合の、波長の関数としての屈折率異常の計算を示すグラフである。
【0026】
図9図9は、典型的な正視眼、近視眼及び遠視眼と組み合わされる、本開示の一実施形態に係る、+7.0Dの屈折力の回折レンズを有するコンタクトレンズを使用した場合の、波長の関数としての屈折率異常の計算を示すグラフである。
【0027】
図10A図10Aは、本開示の一実施形態に係るコンタクトレンズ上に形成された例示的な+3.2Dの回折レンズについてのリング幾何形状を示す。
【0028】
図10B図10Bは、本開示の一実施形態に係るコンタクトレンズ上に形成された例示的な+3.2Dの回折レンズによって生成される光学位相変化を示す。
【0029】
図10C図10Cは、本開示の一実施形態に係るコンタクトレンズ上に形成された例示的な+3.2Dの回折レンズについての表面変調を示す。
【0030】
図10D図10Dは、+3.2Dの回折レンズを含む本開示の一実施形態に係るコンタクトレンズの全体的な表面プロファイルを示す。
【0031】
図11A図11Aは、本開示の一実施形態に係る近視予防用のコンタクトレンズの概略平面図である。
【0032】
図11B図11Bは、図11Aのコンタクトレンズの概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1Aは、近視の進行を遅らせるために使用される従来のレンズの概略平面図を示す(例えば、近視調整)。レンズ1は、概ね瞳孔を覆う光学ゾーン2と、虹彩の上方に位置する周辺ゾーン4と、を備える。周辺ゾーン4は、レンズのサイズを増大して当該レンズ1をより扱いやすくし、当該レンズ1の回転を防止するためのバラストを提供し、及び、レンズ1の着用者の快適性を改善する形状領域を提供する、といったことを含む機械的機能を提供する。光学ゾーン2は、レンズ1の光学機能を提供し、当該光学ゾーン2は、環状領域3及び中央領域5を含む。このレンズ1は、正のベース屈折力を有し、環状領域3の前面の曲率半径は、中央領域5の前面の曲率半径よりも小さい。(これは、図1B及び対応する図2Aの光線図において、誇張された模式形態で図示されている。)。従って、環状領域3は、中央領域5のベース屈折力よりも大きな屈折力を有する。環状領域3の焦点11は、近位焦点面13上にあり、中央領域5の焦点15は、遠位焦点面17上にあり、それは、レンズ1の後面から更に離れている。環状領域3の焦点11及び中央領域5の焦点15は、共通の光軸19を共有する。図2B及び図2Cに示されるように、無限遠の点源の場合、中央領域5によって焦点合わせされる光線は、遠位焦点面17において焦点画像(焦点合わせされた像)23を形成する。中央領域5によって焦点合わせされる光線は、また、近位焦点面13において焦点が合っていない(焦点合わせされていない)ぼやけ(blur)スポット27を生成する。環状領域3によって焦点合わせされる光線は、近位焦点面13において焦点画像21を形成する。環状領域3によって焦点合わせされる光線は、近位焦点面13の後で発散し、当該発散光線は、遠位焦点面17において焦点が合っていない(焦点合わせされていない)環状(輪状)画像25を生成する。
【0034】
前述のように、焦点が合っていない環状画像25は、レンズ1の着用者が焦点の合った遠方画像の周りに「ハロー」を見る結果となり得る。更に、着用者が、老視矯正レンズが使用されるのと同じ態様でレンズを無意識に(気付かずに)使用し得ることになり、これは、若い対象者にとって望ましくない。従って、本開示は、近視の進行を遅らせるために使用される改善されたレンズを提供する。
【0035】
背景として、遠視性デフォーカスの状態では、眼の焦点を再び合わせるために調節(適応)が活性化される、という相当の証拠が存在する。長い波長でのデフォーカス(焦点ずれ)が短い波長でのデフォーカス(焦点ずれ)よりも程度が大きい場合、可視スペクトルの視覚的に重要な中央部分(緑色光)の像面が網膜の後方に存在することを示し、遠視性デフォーカスに帰結する。眼は、このいわゆる色ぼけの信号/パターンに応答して、その調節力(適応力)を高めるが、そうする場合でさえ実際には全体的な画像のぼけを増大させてしまう。この証拠は、色ぼけの信号/パターンが調節(適応)制御の重要な要素であることを示している。
【0036】
図3Aは、遠視眼100(または調節遅延のある正視眼)の概略図である。眼100は、網膜102と、調節可能な水晶体104と、角膜106と、虹彩107と、視神経108と、を含んでいる。眼球内に存在する天然物質によって引き起こされる縦方向の色収差により、異なる波長の光は、網膜102に対して異なる縦方向位置、すなわち眼球の有効光軸に沿った異なる縦方向位置、に焦点を合わせるようになる。この効果が、有彩色光分布110によって図3Aに模式的に示されている。遠視眼100(または調節遅延のある正視眼)では、異なる波長の光が網膜の後方で焦点を合わせる傾向があり、青色光(「B」によって表される)は緑色光(「G」によって表される)よりも網膜の近くで焦点を合わせるようになり、緑色光は赤色光(「R」によって表される)よりも網膜の近くに焦点を合わせるようになる。従って、図3Aに示されるように、遠視性デフォーカスの状態下では、画像の青色光部分は、赤色光部分よりも、より焦点が合っているように見える。この色ぼけの信号/パターン(赤色光が青色光よりも焦点がぼけている)が、遠視性デフォーカスを示している。
【0037】
図3Bは、近視眼100’の概略図である。前述と同様に、眼球内に存在する天然物質によって引き起こされる縦方向の色収差により、異なる波長の光は、網膜102に対して異なる縦方向位置に焦点を合わせるようになる。但し、近視眼100’の場合、色分布110は一般に網膜の前方に存在する。そのため、青色光(「B」によって表される)は緑色光(「G」によって表される)よりも網膜から遠い位置に焦点を合わせるようになり、緑色光は赤色光(「R」によって表される)よりも網膜から遠い位置に焦点を合わせるようになる。従って、近視性デフォーカスの状態下では、青色光は、赤色光よりも、焦点が合っていないように見えて、これが近視性デフォーカスを示す色ぼけの信号/パターンである。
【0038】
図4は、近視を矯正して遠くに焦点を合わせることを可能にすることが意図された従来のコンタクトレンズ112を着用した近視眼100’の概略図である。図4では、眼100’は、遠くの目標物ではなく、近くの目標物を見ている状態で示されている。調節遅延(一時的または持続的)のために、遠視性デフォーカスが存在している。これは、図3Aに示されている遠視眼100内に存在する状態を模倣している。従って、この状態は、従来のコンタクトレンズを使用して眼が実際に近視に対して光学的に矯正されているにもかかわらず、遠視/遠視性デフォーカスの特徴である色ぼけの信号/パターンに帰結する。この特定の色ぼけ信号が存在することにより、当該レンズを着用している被験者にいわゆる「成長」信号が発生する。これは、被験者の既存の近視の悪化を導き得るため、望ましくない。
【0039】
前述の説明を念頭に置いて、図5Aは、本開示の実施形態に従うタイプのコンタクトレンズ112’を着用した近視眼100’の概略図である。図4と同様に、近視眼100’は、調節遅延の条件下で、近くの目標物を見ている状態で示されている。従って、図4と同様に、遠視性デフォーカスが存在している(すなわち、目標物からの光が網膜面の後方で焦点を合わせている)。但し、図4に示される状態とは対照的に、コンタクトレンズ112’は、図4に示されるような遠視性を示す場合と比較して色ぼけの信号/パターンの反転を提供するように、光の縦方向の色収差特性を操作する。
【0040】
図5Aに示される実施形態では、色分布110’がコンタクトレンズ112’によって操作(調整)され、赤色光(「R」によって表される)が緑色光(「G」によって表される)よりも網膜の近くに焦点を合わせるようになり、緑色光が青色光(「B」によって表される)よりも網膜の近くに焦点を合わせるようになる。これは、遠視ではなく近視を示す色ぼけ信号/パターンに帰結することが、理解されるべきである。これは、図3Bの近視眼の場合のように、赤色光が青色光よりも焦点が合っているように見えるからである。このため、近視の特徴である色ぼけ信号の存在により、コンタクトレンズ112’を着用している被験者にいわゆる「停止」信号が発生する。これは、本開示の実施形態に従うコンタクトレンズ112’を着用した近視被験者の近視の進行を遅らせたり止めたりするので、望ましい。
【0041】
図5Bに示される実施形態では、色分布110’がコンタクトレンズ112’によって操作(調整)され、赤色光が緑色光及び青色光の両方と比較して網膜から実質的に同一距離に焦点を合わせるようになる。これは、色ぼけ信号の打ち消し(キャンセル)に帰結することが、理解されるべきである。これは、赤色光が青色光と同程度に焦点が合っているように見えるからである。このシナリオは、色ぼけ信号が不在であるために、コンタクトレンズ112’を着用している被験者にいわゆる「停止」信号を生成する。これは、コンタクトレンズ112’を着用した近視被験者の近視の進行を遅らせるか停止させる。
【0042】
本開示の実施形態に従って近視の発症または進行を予防または遅らせるために使用されるコンタクトレンズ112’は、遠くの点物体からの光を焦点面に集束させる(焦点合わせする)ための光学ゾーンを備える。光学ゾーンは、回折レンズの形態の回折光学要素を形成するように成形される。回折レンズは、焦点面の近傍の光の縦方向の色収差特性を操作する。回折レンズ(フレネルレンズまたは位相フレネルレンズと称されることもある)は、レンズの縁に向かって微細になる一連のゾーンからなるタイプのレンズである。回折レンズは、典型的には、総深度がλ/(n-1)に等しい非常に薄い要素である。ここで、λは、動作波長であり、nは、屈折率である。
【0043】
実施形態では、回折レンズは、人間の眼によって自然に引き起こされる縦方向の色収差を低減するように、すなわち、色ぼけ信号の程度が低減されるように、構成される。他の実施形態では、回折レンズは、人間の眼によって自然に引き起こされる縦方向の色収差を打ち消すように、すなわち、色ぼけ信号/パターンが有効に存在しないように、構成される。他の実施形態では、回折レンズは、人間の眼によって自然に引き起こされる縦方向の色収差を反転するように、すなわち、図5に概略的に示されるように、色ぼけ信号がコンタクトレンズによって操作されて近視性デフォーカスのそれを模倣するように、構成される。
【0044】
3つのシナリオ(人間の眼によって自然に引き起こされる縦方向の色収差の、低減、打ち消し、または、反転)の全てが、成長信号の低減、または、停止信号の導入、のいずれかをもたらし、それらの全てが、本開示の一実施形態に従うコンタクトレンズ112’を着用した被験者の近視の進行を遅らせたり防止したりする効果がある、ということが理解されるべきである。
【0045】
図6は、異なる光学屈折力及び符号(-3D、+3D、及び、+7D)を有する様々な回折レンズ(すなわち、回折光学要素またはDOE)の、波長の関数としての光学屈折力の変化の計算を示すグラフである。図7を参照して、正視眼では、近視性ぼやけの青色画像が見られ、赤色画像は遠視性ぼやけを伴って見える(破線の楕円)。対照的に、近視眼では、赤色の良質な画像とぼやけた青色とが見られる、遠視眼では、その逆(すなわち、青色の焦点が合っていて、赤色がぼやけている)が見られる。
【0046】
図6及び図7の教示を組み合わせて、図8は、屈折力+3.2Dの回折レンズを眼に追加する時の、波長の関数としての屈折率異常(屈折率誤差)の計算を示すグラフである。線「A」は、回折レンズのない正視眼に対応する。線「B」は、+3.2Dの回折レンズを追加した正視眼に対応する。線「C」は、回折レンズのない遠視眼に対応する。線「D」は、+3.2Dの回折レンズを追加した遠視眼に対応する。線「E」は、回折レンズのない近視眼に対応する。線「F」は、+3.2Dの回折レンズを追加した近視眼に対応する。+3.2Dの回折レンズを追加することによって、色ぼけ信号が打ち消され得ることが、留意されるべきである。これは、赤色と青色との色ぼけ(またはデフォーカス(焦点ぼけ))の程度が略等しいという事実から、明らかである(破線の楕円)。赤色の光も青色の光も、他方と比較して焦点が合っていない(ぼけている)ようには見えない。これは、色彩的な成長信号を低減する。これが、調節遅延がある正視眼、または、色ぼけ信号が低減された遠視性焦点眼の場合である。
【0047】
図9は、屈折力+7.0Dの回折レンズを眼に追加する時の、波長の関数としての屈折率異常(屈折率誤差)の計算を示すグラフである。線「A」は、回折レンズのない正視眼に対応する。線「B」は、+7.0Dの回折レンズを追加した正視眼に対応する。線「C」は、回折レンズのない遠視眼に対応する。線「D」は、+7.0Dの回折レンズを追加した遠視眼に対応する。線「E」は、回折レンズのない近視眼に対応する。線「F」は、+7.0Dの回折レンズを追加した近視眼に対応する。+7.0Dの回折レンズを追加することによって、色ぼけ信号が反転され得ることが、留意されるべきである。この態様では、調節遅延のために遠視性デフォーカスの状態にある近視眼の場合、+7.0Dの回折レンズの使用により、色ぼけ信号が遠視性デフォーカスではなく近視性デフォーカスに似る。従って、前述されたように、成長信号ではなく、眼の成長の停止信号が生成される。換言すれば、これらの計算は、より高屈折力の+7.0Dの回折レンズを眼に追加することで、遠視によって生成される色ぼけ信号が逆転され、典型的には近視によって生成される色ぼけ信号と類似したものになり、すなわち、赤色光の焦点が合って青色光の焦点が合わなくなる(破線の楕円)、ということを示している。
【0048】
図10A図10B図10C及び図10Dは、本開示の一実施形態に従った、1つのサンプルの+3.2Dの回折レンズの定量的結果を示す。当該レンズは、1.42の屈折率を有する。図10Aは、リング状の幾何形状(連続する各リングの半径方向位置)を示している。図10Bは、当該レンズによって生成される光学位相変化を示しており、当該変化は、第1次回折によって生成される単焦点レンズについて一般的に要求されるように、各ゾーンにおいて、2πラジアンとゼロとの間を循環する。図10Cは、前記位相を、表面変調の要求される「mm」に変換している。この変換は、レンズ及び周囲の媒体の屈折率に依存する(この例では、1.42と1.336)。図10Dは、8.4mmの曲率半径を有する標準的なコンタクトレンズに当該回折レンズが追加された時の表面プロファイルを示す。一般に、回折レンズの1次回折屈折力は、リング状パターンをより小さくするか、あるいは、位相ステップを2πから4πに増大することによって、増大され得る。このように、必要に応じて、リング状パターンのサイズと位相ステップとの両方が調整され得て、当該回折レンズによって引き起こされる縦方向の色収差の量を増大し得る。当該回折レンズは、複数の同心円状のリング状ゾーンによって取り囲まれた中央ゾーンを有する。幾つかの実施形態では、中央ゾーンは、1.0mm~1.4mmの間の直径を有する。幾つかの実施形態では、当該回折レンズの各ゾーンに亘る光学位相は、2πラジアンの間隔に亘って変化する。幾つかの実施形態では、連続する各リング状ゾーンの幅は、直前のリング状ゾーンの幅よりも狭い。
【0049】
幾つかの実施形態では、回折レンズは、正の光学屈折力ではなく、負の光学屈折力を有する。従って、使用時(眼に着用される時)、これは、縦方向の色収差の低減、打ち消し、または、反転ではなく、正の縦方向の色収差の追加に帰結する。縦方向の色収差のこのような上昇は、特定の状況では有益であり得る。例えば、十分な正の縦方向色収差が追加される場合、青色と赤色のスペクトル成分が各々十分にぼけて(ぼやけて)、成長信号が減衰され得る。
【0050】
本開示の態様(特徴)は、近視の進行を遅らせるための従来技術のレンズの態様(特徴)と組み合わされ得る、ということが理解されるべきである。例えば、図1及び図2を参照して説明された従来のレンズにおいて、光学ゾーン2の中央領域3が、焦点面の近傍の光の縦方向の色収差特性を操作するために、本明細書に開示されているような回折レンズを含むように適合され得る(プロファイルされ得る)。光学ゾーン2の環状領域5は、実質的に変更されない場合がある。このようにして、2つの別箇のメカニズムを介して(すなわち、近視性デフォーカスの停止信号に加えて色ぼけの停止信号を介して)近視制御信号を生成するコンタクトレンズが得られる。当該2つの停止信号は一般に互いに独立していることが、理解されるべきである。
【0051】
図11A及び図11Bは、本開示の実施形態によるコンタクトレンズ200を概略的に示す。コンタクトンズ200は、概ね瞳孔を覆う光学ゾーン202と、虹彩の上方に位置する周辺ゾーン204と、を備える。周辺ゾーン204は、レンズのサイズを増大して当該レンズ200をより扱いやすくし、選択的に当該レンズ200の回転を防止するためのバラストを提供し、及び、レンズ200の着用者の快適性を改善する形状領域を提供する、といったことを含む機械的機能を提供する。光学ゾーン202は、レンズ200の光学機能を提供し、当該光学ゾーン202は、環状領域203及び中央領域205を含む。中央領域205は、本明細書に開示されているような、すなわち、光の縦方向色収差特性を操作するための、回折レンズ206を含む。環状領域203は、中央領域205のベース屈折力よりも大きな光学屈折力を有し、環状領域203の焦点は、近位焦点面上にあり、中央領域205の焦点は、遠位焦点面上にあり、当該遠位焦点面は、近位焦点面よりもコンタクトレンズ200の後面から離れている。縦方向の色収差を操作するための回折レンズに関して本明細書で説明された態様(特徴)が、コンタクトレンズ200の回折レンズ206にも適用される、ということが理解されるべきである。
【0052】
本明細書で使用される場合、コンタクトレンズという用語は、人の眼上に配置され得る眼科用レンズを指す。そのようなコンタクトレンズは、臨床的に許容可能な眼上の(on-eye)動きを提供し、人の眼に結合しない、ことが理解されるであろう。コンタクトレンズは、角膜レンズ(例えば、眼の角膜上に載るレンズ)の形態であり得る。コンタクトレンズは、ヒドロゲルコンタクトレンズまたはシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズなどのソフトコンタクトレンズであり得る。
【0053】
本開示によるコンタクトレンズは、光学ゾーンを備える。光学ゾーンは、光学的機能を有するレンズ部分を包含する。光学ゾーンは、使用時に眼の瞳孔上に位置決めされるように構成される。光学ゾーンは、周辺ゾーンによって取り囲まれている。周辺ゾーンは、光学ゾーンの一部ではないが、レンズが着用される時に光学ゾーンの外側で虹彩の上方に位置し、例えば、レンズのサイズを増大して当該レンズをより扱いやすくしたり、レンズの回転を防止するためのバラストを提供したり、及び/または、レンズ着用者の快適性を改善する形状領域を提供したり、といった機械的機能を提供する。周辺ゾーンは、コンタクトレンズの縁部まで延在し得る。
【0054】
コンタクトレンズは、エラストマー材料、シリコーンエラストマー材料、ヒドロゲル材料、または、シリコーンヒドロゲル材料、あるいは、それらの組み合わせ、を含み得る。コンタクトレンズの分野で理解されているように、ヒドロゲルは、水を平衡状態に保持し、シリコーン含有化合物を含まない材料である。シリコーンヒドロゲルは、シリコーン含有化合物を含むヒドロゲルである。本開示の文脈で説明されるように、ヒドロゲル材料及びシリコーンヒドロゲル材料は、少なくとも10%~約90%(wt/wt)の平衡含水率(EWC)を有する。幾つかの実施形態では、ヒドロゲル材料またはシリコーンヒドロゲル材料は、約30%~約70%(wt/wt)のEWCを有する。比較すると、本開示の文脈で説明されるように、シリコーンエラストマー材料は、約0%~10%未満(wt/wt)の含水率を有する。典型的には、本方法または本装置で使用されるシリコーンエラストマー材料は、0.1%~3%(wt/wt)の含水率を有する。好適なレンズ製剤(組成)の例は、以下の米国一般名(USAN)を有するものを含む:メタフィルコン(methafilcon)A、オキュフィルコン(ocufilcon)A、オキュフィルコン(ocufilcon)B、オキュフィルコン(ocufilcon)C、オキュフィルコン(ocufilcon)D、オマフィルコン(omafilcon)A、オマフィルコン(omafilcon)B、コムフィルコン(comfilcon)A、エンフィルコン(enfilcon)A、ステンフィルコン(stenfilcon)A、ファンフィルコン(fanfilcon)A、エタフィルコン(etafilcon)A、セノフィルコン(senofilcon)A、セノフィルコン(senofilcon)B、セノフィルコン(senofilcon)C、ナラフィルコン(narafilcon)A、ナラフィルコン(narafilcon)B、バラフィルコン(balafilcon)A、サムフィルコン(samfilcon)A、ロトラフィルコン(lotrafilcon)A、ロトラフィルコン(lotrafilcon)B、ソモフィルコン(somofilcon)A、リオフィルコン(riofilcon)A、デレフィルコン(delefilcon)A、ベロフィルコン(verofilcon)A、カリフィルコン(kalifilcon)A、等。
【0055】
代替的に、レンズは、シリコーンエラストマー材料を、含み得る、本質的にそれからなり得る、または、それからなり得る。例えば、レンズは、3~50のショアA硬度を有するシリコーンエラストマー材料を、含み得る、本質的にそれからなり得る、または、それからなり得る。ショアA硬度は、当業者によって理解されているように、従来方法を使用して(例えば、方法DIN53505を使用して)決定され得る。他のシリコーンエラストマー材料が、例えば、NuSil Technology、または、Dow Chemical Company、から取得され得る。
【0056】
例として、レンズは、13mm~15mmの間のレンズ直径を有するヒドロゲルコンタクトレンズまたはシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを含み得る。レンズの光学ゾーンは、7mm~9mmの間の直径を有し得る。
【0057】
コンタクトレンズは、成形コンタクトレンズであり得る。レンズは、キャスト成形プロセス、スピンキャスト成形プロセス、または、旋盤加工プロセス、あるいは、それらの組み合わせ、によって形成され得る。当業者によって理解されているように、キャスト成形とは、凹レンズ部材形成面を有する雌型成形部材と凸レンズ部材形成面を有する雄型成形部材との間にレンズ成形材料を入れることでレンズを成形する工程を指す。
【0058】
前述の説明では、既知の自明または予測可能な等価物を有する完全体(integer)または要素が言及されているが、そのような等価物は、本明細書に個別に記載されているかの如く、本明細書に組み込まれているものである。本開示の真の範囲を決定するためには、特許請求の範囲への参照がなされるべきである。特許請求の範囲は、あらゆるそのような等価物を包含するものと解釈されるべきである。また、有利であったり便利であったり等と説明されている本開示の完全体または特徴が、選択的なものであって、独立請求項の範囲を限定するものではないことも、読者には理解されるであろう。更に、そのような選択的な完全体または特徴は、本開示の幾つかの実施形態では有益である可能性があるが、他の実施形態では望ましくない場合があり得て、従って、他の実施形態では存在しない場合がある、ことが理解されるべきである。
図1A
図1B
図2A-2C】
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図11A
図11B
【手続補正書】
【提出日】2024-07-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近視の発症または進行を予防または遅らせるのに使用するための眼科用レンズであって、
遠方の点物体からの光を近位焦点面及び遠位焦点面に集束させるための光学ゾーン
を備え、
前記光学ゾーンは、前記遠位焦点面の近傍の前記光の縦方向の色収差特性を操作するための回折レンズを有し、
前記光学ゾーンは、環状領域と中央領域とを有し、
前記中央領域は、前記回折レンズを含み、
前記環状領域は、前記中央領域のベース屈折力よりも大きい光学屈折力を有して、前記遠方の点物体からの光を前記近位焦点面に集束させ、
前記環状領域は、前記光の縦方向の色収差特性を操作するための回折レンズを含まない
ことを特徴とする眼科用レンズ。
【請求項2】
前記回折レンズは、自然の眼によって引き起こされる縦方向の色収差を低減するように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の眼科用レンズ。
【請求項3】
前記回折レンズは、自然の眼によって引き起こされる縦方向の色収差を打ち消すように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の眼科用レンズ。
【請求項4】
前記回折レンズは、自然の眼によって引き起こされる縦方向の色収差を反転させるように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の眼科用レンズ。
【請求項5】
前記回折レンズは、正の光学屈折力を有する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の眼科用レンズ。
【請求項6】
前記回折レンズは、+2.0ディオプトリ~+8.0ディオプトリの間の光学屈折力を有する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の眼科用レンズ。
【請求項7】
前記回折レンズは、+3.0ディオプトリ~+3.4ディオプトリの間の光学屈折力を有する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の眼科用レンズ。
【請求項8】
前記回折レンズの光学屈折力は、400nm~700nmの波長範囲に亘って、少なくとも1.5ディオプトリだけ変化する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の眼科用レンズ。
【請求項9】
前記回折レンズは、+6.8ディオプトリ~+7.2ディオプトリの間の光学屈折力を有する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の眼科用レンズ。
【請求項10】
前記回折レンズの光学屈折力は、400nm~700nmの波長範囲に亘って、少なくとも3.0ディオプトリだけ変化する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の眼科用レンズ。
【請求項11】
前記回折レンズは、複数の同心円状のリング状ゾーンによって囲まれた中央ゾーンを有する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の眼科用レンズ。
【請求項12】
当該眼科用レンズは、コンタクトレンズである
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の眼科用レンズ。
【請求項13】
前記中央ゾーンは、1.0mm~1.4mmの間の直径を有する
ことを特徴とする請求項12に記載の眼科用レンズ。
【請求項14】
前記回折レンズの各ゾーンに亘る光学位相が、2πラジアンの間隔に亘って変化する
ことを特徴とする請求項12に記載の眼科用レンズ。
【請求項15】
連続的なリング状ゾーンの各々の幅が、直前のリング状ゾーンの幅よりも小さい
ことを特徴とする請求項12に記載の眼科用レンズ。
【請求項16】
当該眼科用レンズは、コンタクトレンズであり、
当該コンタクトレンズは、エラストマー材料、シリコーンエラストマー材料、ヒドロゲル材料、シリコーンヒドロゲル材料、または、それらの混合物、を含む
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の眼科用レンズ。
【請求項17】
前記眼科用レンズは、成形コンタクトレンズである
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の眼科用レンズ。
【請求項18】
前記光学ゾーンは、0.5ディオプトリ~-15.0ディオプトリの間のベース光学屈折力を有する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の眼科用レンズ。
【請求項19】
前記環状領域の焦点と前記中央領域の焦点とが、共通の光軸を共有する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の眼科用レンズ。
【請求項20】
当該眼科用レンズは、コンタクトレンズであり、
当該コンタクトレンズの材料の屈折率は、1.40~1.44の間である
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の眼科用レンズ。
【請求項21】
請求項1乃至4のいずれかに記載の眼科用レンズを製造する方法であって、
遠方の点物体からの光を近位焦点面及び遠位焦点面に集束させるための光学ゾーンを含むレンズを形成する工程
を備え、
前記光学ゾーンは、前記遠位焦点面の近傍の前記光の縦方向の色収差特性を操作するための回折レンズを有し、
前記光学ゾーンは、環状領域と中央領域とを有し、
前記中央領域は、前記回折レンズを含み、
前記環状領域は、前記中央領域のベース屈折力よりも大きい光学屈折力を有して、前記遠方の点物体からの光を前記近位焦点面に集束させ、
前記環状領域は、前記光の縦方向の色収差特性を操作するための回折レンズを含まない
ことを特徴とする方法。
【国際調査報告】