(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-17
(54)【発明の名称】融合タンパク質及びその製造方法と使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/46 20060101AFI20250109BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20250109BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20250109BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20250109BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20250109BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20250109BHJP
C12N 5/07 20100101ALI20250109BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20250109BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20250109BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C07K16/46 ZNA
C07K16/00
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N5/10
C12N5/07
C12P21/02 C
A61K39/395 N
A61P37/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024560807
(86)(22)【出願日】2022-12-16
(85)【翻訳文提出日】2024-09-02
(86)【国際出願番号】 CN2022139667
(87)【国際公開番号】W WO2023125079
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】202111673917.4
(32)【優先日】2021-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524250341
【氏名又は名称】チュー、タオチョン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チュー、タオチョン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG26
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA01
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BD14
4B065CA24
4B065CA44
4C085AA14
4C085BB35
4C085CC05
4C085DD33
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG04
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA42
4H045DA75
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、融合タンパク質及びその製造方法と使用を開示し、更にそれをコードする遺伝子、融合タンパク質の製造方法、当該融合タンパク質を活性成分とする抗アレルギー薬及び当該融合タンパク質の使用を開示する。本発明で提供される融合タンパク質は、配列番号3に示されるアミノ酸残基を有するタンパク質である。本発明の融合タンパク質は、アレルギー反応の細胞内シグナル伝達系の阻害系を活性化して、細胞のアレルギー反応を効果的に阻害し、アレルギー疾患の治療において重要な役割を果たす。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸配列が配列番号3に示されることを特徴とする、融合タンパク質。
【請求項2】
融合タンパク質をコードする遺伝子であって、前記遺伝子のヌクレオチド配列は、
1)配列番号4、
2)請求項1に記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド
から選択されることを特徴とする、融合タンパク質をコードする遺伝子。
【請求項3】
前記遺伝子のヌクレオチド配列は、配列番号4に示されることを特徴とする、請求項2に記載の遺伝子。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の遺伝子を含むことを特徴とする、組換え発現ベクター。
【請求項5】
前記組換え発現ベクターの骨格プラスミドは、pSecTagであることを特徴とする、請求項4に記載の組換え発現ベクター。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の組換え発現ベクターを含み、好ましくは宿主が哺乳動物細胞であることを特徴とする、形質転換体。
【請求項7】
前記哺乳動物の細胞がCHO細胞であることを特徴とする、請求項6に記載の形質転換体。
【請求項8】
請求項1に記載の融合タンパク質の製造方法であって、請求項6又は7に記載の形質転換体を培養して、前記融合タンパク質を発現させ、好ましくは、前記融合タンパク質はアフィニティークロマトグラフィーにより分離・精製し、より好ましくは、前記アフィニティークロマトグラフィーは、マウス抗ヒトIgEアフィニティークロマトグラフィーであることを特徴とする、製造方法。
【請求項9】
活性成分が請求項1に記載の融合タンパク質を含むことを特徴とする、医薬。
【請求項10】
抗アレルギー剤の製造における、請求項1に記載の融合タンパク質の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は出願日が2021年12月31日である中国特許出願2021116739174の優先権を主張する。本出願は上記の中国特許出願の全文を引用する。
【0002】
本発明は、遺伝子工学及び免疫学の分野に属する。具体的には、融合タンパク質、それをコードする遺伝子、融合タンパク質の製造方法、当該融合タンパク質を活性成分とする抗アレルギー薬及び当該融合タンパク質の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
アレルギー疾患は急性疾患及び慢性疾患を引き起こす6番目に多い原因であり、明らかな遺伝的傾向を有する。一般的なアレルギー疾患は、アレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎、花粉症、アトピー性皮膚炎、アレルギー性関節炎、蕁麻疹、アナフィラキシーショックなどを含む。中国人の約10~15%及びアメリカ人の約20%がアレルギー疾患に苦しんでいる。
【0004】
現在、アレルギー疾患の治療に使用される医薬のほとんどは、ステロイドホルモン、抗ヒスタミン薬、充血除去薬、トリプトファンナトリウム、気管支拡張薬など、臨床症状を制御するためのものである。最近、米国FDAは抗IgEモノクローナル抗体の臨床試験を承認した。しかし、これらの薬には異なる程度の副作用を有するため、国内外の多くの医薬品研究開発機関及び製薬会社が新しいタイプの抗アレルギー薬の開発に取り組んでいる。
【0005】
アレルギー反応のメカニズムは、抗原(アレルゲン、アレルギーの原因物質)が体内に侵入すると、マスト細胞及び好塩基球に付着したIgE分子(細胞親和性抗体)に結合し、細胞の免疫受容体チロシン活性化モチーフ(Immunoreceptor Tyrosine-based Activation Motif、略してITAM)の活性化を引き起こし、細胞の生理活性物質の放出を促し、平滑筋の収縮、血管透過性の増加、漿液分泌の増加などの臨床病理学的変化を引き起こす。この病理学的プロセスにおいて、生体のマスト細胞及び好塩基球上の親和性IgE受容体(FcεRI)がアレルギー疾患において重要な役割を果たしている。同時に、二量体IgGがマスト細胞及び好塩基球の細胞膜表面に発現しているFcγRIIB阻害受容体に結合すると、重合が生じ、免疫受容体チロシンベースの阻害モチーフ(Immunoreceptor Tyrosine-based Inhibition Motif、略してITIM)のリン酸化を誘発し、Fc_25RIの活性化シグナルを阻害する。研究によると、FcγRII受容体がFcεRI受容体と架橋結合すると、マスト細胞又は好塩基球に阻害シグナルを誘導し、細胞内活性化経路をブロックすることで、活性メディエーターの放出を阻害し、更にアレルギー反応を阻害することができる(Zhao W, Kepley CL, Morel PA, et al., FcγRIIa, Not FcγRIIb, Is Constitutively and Functionally Expressed on Skin-Derived Human Mast Cells. The Journal of Immunology, 2006, 177(1):694-701)ことを表した。従って、当該反応メカニズムを利用して、アレルギー反応における阻害シグナルを活性化する融合タンパク質を研究することは、アレルギーを治療する新しい方法となるはずである。
【0006】
最新の研究では、ヒトFcγRII遺伝子発現の多型により、少数のヒト皮下肥満細胞はFcγRIIBを発現せず、FcγRIIAを発現することが示されている。FcγRIIA受容体の細胞内末端には、免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)が含まれている。FcγRIIAからFcεRIへの直接架橋(融合タンパク質FP4を得る)は、アレルギー細胞でリン酸化反応を引き起こし、それによって細胞内活性化経路を活性化し、アレルギー細胞の脱顆粒反応を引き起こし、アレルギー疾患を引き起こす可能性がある。しかし、融合タンパク質FP4は、FcγRIIAの発現によって引き起こされるアレルギー反応を克服することができない。
【発明の概要】
【0007】
融合タンパク質FP4がFcγRIIA受容体に結合して、アレルギー反応細胞の脱顆粒を引き起こす先行技術における欠陥を克服するために、本発明は、融合タンパク質及びその製造方法と使用を提供し、前記融合タンパク質は、FcγRIIB受容体のみに結合し、その親和性は、融合タンパク質FP4(アミノ酸配列は、配列番号1に示され、それをコードするDNA配列は、配列番号2に示される)より有意に優れており、IgE受容体FcεRIに対する親和性は変化しない。
【0008】
本発明で提供される融合タンパク質は、名称がMEGであり、配列番号3に示されるアミノ酸残基を有するタンパク質であるか、又は配列番号3のアミノ酸残基配列が、1つ又は複数のアミノ酸残基により置換、欠失しており、配列番号3のアミノ酸残基配列と同じ又はより優れた活性を有する配列番号3に由来するタンパク質である。
【0009】
配列番号3のアミノ酸残基配列は、552個のアミノ酸残基から構成されたタンパク質である。MEGの構造は、
図1に示され、領域A(Fc-ε)(アミノ末端から1~320位のアミノ酸残基)と領域B(Fc-γ)(アミノ末端から321~552位のアミノ酸残基)の2つの部分から構成される。ここで、領域Aは、ヒトIgE免疫グロブリンに由来し、IgE受容体FcεRIに結合する部位を有し、領域BはヒトIgG免疫グロブリンに由来し、IgG受容体FcγRIIに結合する部位を有する。
【0010】
本発明の技術的解決策は下記に示される通りである。
【0011】
本発明により提供される第1の技術的解決策は、アミノ酸配列が配列番号3に示される、融合タンパク質である。
【0012】
本発明により提供される第2の技術的解決策は、ヌクレオチド配列が、
(1)配列番号4、
(2)技術的解決策の1つに記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド
から選択される、融合タンパク質をコードする遺伝子である。
【0013】
いくつかの好ましい実施形態において、前記遺伝子のヌクレオチド配列は、配列番号4に示される。
【0014】
本発明により提供される第3の技術的解決策は、第2の技術的解決策に記載の遺伝子を含む、組換え発現ベクターである。
【0015】
いくつかの好ましい実施形態において、前記組換え発現ベクターの骨格プラスミドはpSecTagである。
【0016】
本発明により提供される第4の技術的解決策は、第3の技術的解決策に記載の組換え発現ベクターを含む、形質転換体であり、好ましくは前記形質転換体の宿主は哺乳動物細胞である。
【0017】
好ましい実施形態として、前記哺乳動物細胞は、CHO細胞である。
【0018】
本発明により提供される第5の技術的解決策は、第1の技術的解決策に記載の融合タンパク質の製造方法であり、前記方法は、第4の技術的解決策に記載の形質転換体を培養して、前記融合タンパク質を発現させることであり、好ましくは、前記タンパク質はアフィニティークロマトグラフィーにより分離・精製し、より好ましくは、前記アフィニティークロマトグラフィーは、マウス抗ヒトIgEアフィニティークロマトグラフィーである。
【0019】
本発明により提供される第6の技術的解決策は、活性成分が第1の技術的解決策に記載の融合タンパク質を含む、医薬である。
【0020】
本発明により提供される第7の技術的解決策は、抗アレルギー剤の製造における第1の技術的解決策に記載の融合タンパク質の使用である。
【0021】
本発明の積極的な進歩効果は:
本発明の融合タンパク質MEGは、その組成分の99.9%がヒト(human)免疫グロブリン由来であるため、当該タンパク質は外来蛋白質の免疫原性を有することなく医薬として体内に入る。体内及び体外の実験結果により、融合タンパク質MEGがマスト細胞又は好塩基球の表面のFcεRIとFcγRIIを効果的に架橋して、アレルギー反応を阻害できることが証明された。本発明の融合タンパク質MEGは、主にアレルギー反応の細胞内シグナル伝達系の阻害系を活性化して、細胞のアレルギー反応を効果的に阻害し、アレルギー疾患の治療において重要な役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】上清及び精製MEGのSDS-PAGE比較図である。
【
図3】融合タンパク質MEGとFcεRI受容体の結合能力を同定した結果図である。
【
図4】融合タンパク質MEGとFcγRIIB受容体の結合能力を同定した結果図である。
【
図5】融合タンパク質MEGとFcγRIIA(即ちFcgRIIA)受容体(A)とFcγRIIB(即ちFcgRIIB)受容体(B)との結合分析図である。
【
図6】融合タンパク質MEGとFcγR(即ちFcgR)との親和性の全面的な分析であり、ここで、FcγRI(即ちFcgRI)、FcγRIIAのHサブタイプ(即ちFcgRIIAH)及びRサブタイプ(即ちFcgRIIAR)、FcγRIIB(即ちFcgRIIB)、FcγRIIIAのFサブタイプ(即ちFcgRIIIAF)及びVサブタイプ(即ちFcgRIIIAV)の親和性は、それぞれ
図6のA-Fに示される通りである。
【
図7】融合タンパク質MEGが体内でアレルゲン誘発性脱顆粒反応を阻害することを示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、実施例の形態によってさらに本発明を説明するが、これによって本発明を前記実施例の範囲内に限定するわけではない。以下の実施例において、具体的な条件が記載されていない実験方法は、通常の方法及び条件、或いは商品の説明書に従って選ばれる。本発明で使用される試薬及び原料は市販品として入手できる。
【0024】
実施例1 MEG分子の発現及び精製
融合タンパク質FP4の発現は、CN1317304Cに示される通りであり、具体的には下記のステップを含む。
【0025】
通常の方法に従って、ヒト末梢血からBリンパ球を分離・精製し、ゲノムDNAを抽出し、特異的プライマーを使用してFcε及びFcγ遺伝子をPCRにより増幅し、Fcε DNAのPCR増幅産物は1155bpであり、Fcγ DNAのPCR増幅産物は928bpであった。PCR産物をそれぞれpCR4-TOPO(INVITROGEN、CA)にクローニングしてFPEFc-ε及びFPGFc-γを得、ヌクレオチド配列分析を実行し、100%正しいヌクレオチド配列を得た後、Fcε及びFcγ遺伝子をそれぞれSfiI-BamHI及びBamHI-NotI制限エンドヌクレアーゼ(NEW ENGLAND BIOLABS)を使用して酵素切断し、制限エンドヌクレアーゼSfiI-NotIを使用してpSecTag(INVITROGEN、CA)発現ベクターを酵素切断し、その後連結してプラスミドpSecTagMEGを得、プラスミドpSecTagMEGに対してヌクレオチド配列分析を実行し、挿入された外来遺伝子配列が配列番号2に示される通りであった。次に、当該プラスミドを通常のエレクトロポレーションを使用してマウス骨髄腫SP2/0細胞にトランスフェクトし、ZEOCINによって薬剤耐性のスクリーニングを実行し、ELISAにより同定し(通常の方法により製造されたマウス抗ヒトIgE抗体を使用してELISAプレートをコーティングし、検体上清を加え、更にヤギ抗ヒトIgE酵素標識抗体を加えた)、FP4(そのアミノ酸配列は、配列番号1で表される)高発現のクローンを得た。
【0026】
MEG(MEG構造は
図1に示される)の構造はFP4と異なり、その違いは下記に示される通りである。
【0027】
(1)ヒト免疫グロブリンIgE Fcε及びIgG Fcγの配列に基づいてMEG遺伝子を合成し、SOE PCR及び酵素切断の方法を使用して、MEG遺伝子をpBG真核発現ベクターにクローニングし、配列決定によって正しいことが確認された後、CHO細胞にトランスフェクトし、50%のCD CHO+50%のDynamis培地で発現させた。
【0028】
(2)GE Mab-selectアフィニティークロマトグラフィー及び陽イオン交換による2段階の精製により高純度のタンパク質を得、SDS-PAGE(結果は
図2に示される)及びHPLC検出により純度は90%以上であり、タンパク質試料は限外濾過によって緩衝液を取り替え、濾過後に定量した。
【0029】
(3)MEGはFP4と比較して、Fc-γのアミノ酸残基にアミノ酸突然変異を起こし、PからDに突然変異した。
【0030】
【0031】
ここで、下線はB領域Fc-γを表す。
【0032】
FP4遺伝子をコードするヌクレオチド配列:
ttcaccccgcccaccgtgaagatcttacagtcgtcctgcgacggcggcgggcacttccccccgaccatccagctcctgtgcctcgtctctgggtacaccccagggactatcaacatcacctggctggaggacgggcaggtcatggacgtggacttgtccaccgcctctaccacgcaggagggtgagctggcctccacacaaagcgagctcaccctcagccagaagcactggctgtcagaccgcacctacacctgccaggtcacctatcaaggtcacacctttgaggacagcaccaagaagtgtgcagattccaacccgagaggggtgagcgcctacctaagccggcccagcccgttcgacctgttcatccgcaagtcgcccacgatcacctgtctggtggtggacctggcacccagcaaggggaccgtgaacctgacctggtcccgggccagtgggaagcctgtgaaccactccaccagaaaggaggagaagcagcgcaatggcacgttaaccgtcacgtccaccctgccggtgggcacccgagactggatcgagggggagacctaccagtgcagggtgacccacccccacctgcccagggccctcatgcggtccacgaccaagaccagcggcccgcgtgctgccccggaagtctatgcgtttgcgacgccggagtggccggggagccgggacaagcgcaccctcgcctgcctgatccagaacttcatgcctgaggacatctcggtgcagtggctgcacaacgaggtgcagctcccggacgcccggcacagcacgacgcagccccgcaagaccaagggctccggcttcttcgtcttcagccgtctagaggtgaccagggccgaatgggagcagaaagatgagttcatctgccgtgcagtccatgaggcagctagcccctcacagaccgtccagcgagcggtgtctgtaaatcccggtaaaggatccgagcccaaatcttgtgacaaaactcacacatgcccaccgtgcccagcacctgaactcctggggggaccgtcagtcttcctcttccccccaaaacccaaggacaccctcatgatctcccggacccctgaggtcacatgcgtggtggtggacgtgagccacgaagaccctgaggtcaagttcaactggtacgtggacggcgtggaggtgcataatgccaagacaaagccgcgggaggagcagtacaacagcacgtaccgggtggtcagcgtcctcaccgtcctgcaccaggactggctgaatggcaaggagtacaagtgcaaggtctccaacaaagccctcccagcccccatcgagaaaaccatctccaaagccaaagggcagccccgagaaccacaggtgtacaccctgcccccatcccgggatgagctgaccaagaaccaggtcagcctgacctgcctggtcaaaggcttctatcccagcgacatcgccgtggagtgggagagcaatgggcagccggagaacaactacaagaccacgcctcccgtgctggactccgacggctccttcttcctctacagcaagctcaccgtggacaagagcaggtggcagcaggggaacgtcttctcatgctccgtgatgcatgaggctctgcacaaccactacacgcagaagagcctctccctgtctccgggtaaatga
【0033】
【0034】
ここで、下線はB領域Fc-γを表す。
【0035】
MEGのヌクレオチド配列:
ttcaccccgcccaccgtgaagatcttacagtcgtcctgcgacggcggcgggcacttccccccgaccatccagctcctgtgcctcgtctctgggtacaccccagggactatcaacatcacctggctggaggacgggcaggtcatggacgtggacttgtccaccgcctctaccacgcaggagggtgagctggcctccacacaaagcgagctcaccctcagccagaagcactggctgtcagaccgcacctacacctgccaggtcacctatcaaggtcacacctttgaggacagcaccaagaagtgtgcagattccaacccgagaggggtgagcgcctacctaagccggcccagcccgttcgacctgttcatccgcaagtcgcccacgatcacctgtctggtggtggacctggcacccagcaaggggaccgtgaacctgacctggtcccgggccagtgggaagcctgtgaaccactccaccagaaaggaggagaagcagcgcaatggcacgttaaccgtcacgtccaccctgccggtgggcacccgagactggatcgagggggagacctaccagtgcagggtgacccacccccacctgcccagggccctcatgcggtccacgaccaagaccagcggcccgcgtgctgccccggaagtctatgcgtttgcgacgccggagtggccggggagccgggacaagcgcaccctcgcctgcctgatccagaacttcatgcctgaggacatctcggtgcagtggctgcacaacgaggtgcagctcccggacgcccggcacagcacgacgcagccccgcaagaccaagggctccggcttcttcgtcttcagccgcctggaggtgaccagggccgaatgggagcagaaagatgagttcatctgccgtgcagtccatgaggcagctagcccctcacagaccgtccagcgagcggtgtctgtaaatcccggtaaagagcccaaatcttgtgacaaaactcacacatgcccaccgtgcccagcacctgaactcctggggggagactcagtcttcctcttccccccaaaacccaaggacaccctcatgatctcccggacccctgaggtcacatgcgtggtggtggacgtgagccacgaagaccctgaggtcaagttcaactggtacgtggacggcgtggaggtgcataatgccaagacaaagccgcgggaggagcagtacaacagcacgtaccgtgtggtcagcgtcctcaccgtcctgcaccaggactggctgaatggcaaggagtacaagtgcaaggtctccaacaaagccctcccagcccccatcgagaaaaccatctccaaagccaaagggcagccccgagaaccacaggtgtacaccctgcccccatcccgggatgagctgaccaagaaccaggtcagcctgacctgcctggtcaaaggcttctatcccagcgacatcgccgtggagtgggagagcaatgggcagccggagaacaactacaagaccacgcctcccgtgctggactccgacggctccttcttcctctacagcaagctcaccgtggacaagagcaggtggcagcaggggaacgtcttctcatgctccgtgatgcatgaggctctgcacaaccactacacgcagaagagcctctccctgtctccgggtaaatga(配列番号4)
【0036】
実施例2 それぞれFcεRI及びFcγRII受容体へのMEGの結合試験
FcεRI受容体との結合試験:1×10
6 CHO 3D10細胞(FcεRI受容体を発現)とそれぞれ5μgのhIgE、5μgのFP4及び5μgの実施例2の精製MEGタンパク質とを4℃で1時間反応させ、洗浄した後5μLの抗ヒトIgE Fc-FITC標識抗体(CALTAG、CA)を加え、フローサイトメトリーで細胞を検出した。結果では、hIgE(
図3のA)及びFP4(
図3のB)と比較して、MEGタンパク質はFcεRI受容体と結合できることを示した。
【0037】
FcγRII受容体との結合試験:1×10
6 HMC-1細胞(FcγRIIB受容体を発現)とそれぞれ5μgのhIgG、5μgのFP4及び5μgの実施例2の精製MEGタンパク質とを4℃で1時間反応させ、洗浄した後5μLの抗ヒトIgG Fc-FITC標識抗体(CALTAG、CA)を加え、フローサイトメトリーで細胞を検出した。結果では、hIgG(
図4のA)及びFP4(
図4のB)と比較して、MEGタンパク質はFcγRIIB受容体と結合できることを示した。
【0038】
実施例3 ELISAによるMEGと異なるタイプのFcγR受容体との結合特性の分析
100μLの適切な濃度(2μg/mL)のMEGを酵素結合プレートに加えて一晩コーティングし、上清を捨て、1%のBSAを含むPBSで2時間ブロックし、PBST(0.05%のトウェイン20を含むPBS)で2回洗浄し、次に、それぞれ適切な濃度のbiotinタグ付きFcγRI、FcγRIIAH、FcgRIIAR、FcgRIIIAF、FcgRIIIAV又はFcγRIIBなどの細胞外ドメインタンパク質(Sino Biological Inc.)を加え、室温で1時間培養した後上清を捨て、PBSTで3回洗浄した。Streptavidin-HRP(BD Biosciences)を加え、室温で1時間培養してbiotinタンパク質を検出し、上清を捨て、PBSTで4回洗浄し、発色性溶液を加えて5~40分間発色させ、650nmにおける吸光度A650を測定した。
【0039】
1回目の結果では、MEGタンパク質はFcγRIIAH(即ち
図5AではFcgRIIAとして示す)には結合せず、FcγRIIB(FcgRIIB)受容体のみに結合し、FcγRIIBに対するMEGの親和性はFP4よりも大幅に優れていることが示された(
図5のBに示す)。
【0040】
2回目は、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIの各サブタイプについて更に分析を実行し、その結果、MEGタンパク質は、FcγRI(即ちFcgRI)(
図6のA)、FcγRIIAのHサブタイプ(即ちFcgRIIAH)(
図6のB)及びRサブタイプ(即ちFcgRIIAR)(
図6のC)、FcγRIIIAのFサブタイプ(即ちFcgRIIIAF)(
図6のE)及びVサブタイプ(即ちFcgRIIIAV)(
図6のF)に結合せず、FcγRIIB(即ちFcgRIIB)受容体のみに結合し、MEGとFcγRIIBの親和性は、FP4(
図6のD)よりも有意に優れていた。
【0041】
実施例4 MEGタンパク質体内におけるアレルゲン誘発性の脱顆粒反応の阻害
トランスジェニックマウス(マウスIgE受容体FcεRIα鎖ノックアウト、ヒトIgE受容体FcεRIα鎖移植)に特異的ヒト抗NP-IgE(Serotech)を皮下注射し、4時間後100μgのアレルゲンNP及び1%のエバンスブルー(EVANS)色素をi.v.注射してから、感作部位で脱顆粒アレルギー反応が発生し、局所皮膚の血管透過性の増加により、青色色素が血管から漏出して組織空間に入り、皮下粘膜が青色反応を示した。対応する皮膚部位を感作させながら同量のMEGタンパク質を加えると、脱顆粒アレルギー反応が完全に阻害され、局所的な皮膚にいかなる反応もなかったが、同量のヒトIgG対照では阻害反応がなかった(
図7を参照)。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-11-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明で提供される融合タンパク質は、名称がMEGであり、配列番号3に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質であるか、又は配列番号3のアミノ酸残基配列が、1つ又は複数のアミノ酸残基により置換、欠失しており、配列番号3のアミノ酸残基配列と同じ又はより優れた活性を有する配列番号3に由来するタンパク質である。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
【
図2】上清及び精製MEGのSDS-PAGE比較図である。
【
図3-1】融合タンパク質MEGとFcεRI受容体の結合能力を同定した結果図である。
【
図4-1】融合タンパク質MEGとFcγRIIB受容体の結合能力を同定した結果図である。
【
図5】融合タンパク質MEGとFcγRIIA(即ちFcgRIIA)受容体(A)とFcγRIIB(即ちFcgRIIB)受容体(B)との結合分析図である。
【
図6-1】融合タンパク質MEGとFcγR(即ちFcgR)との親和性の全面的な分析であり、ここで、FcγRI(即ちFcgRI)、FcγRIIAのHサブタイプ(即ちFcgRIIAH)及びRサブタイプ(即ちFcgRIIAR)、FcγRIIB(即ちFcgRIIB)、FcγRIIIAのFサブタイプ(即ちFcgRIIIAF)及びVサブタイプ(即ちFcgRIIIAV)の親和性は、それぞれ
図6のA-Fに示される通りである。
【
図7】融合タンパク質MEGが体内でアレルゲン誘発性脱顆粒反応を阻害することを示している。
【手続補正3】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸配列が配列番号3に示されることを特徴とする、融合タンパク質。
【請求項2】
融合タンパク質をコードする遺伝子であって、前記遺伝子のヌクレオチド配列は、
1)配列番号4、
2)請求項1に記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド
から選択されることを特徴とする、融合タンパク質をコードする遺伝子。
【請求項3】
前記遺伝子のヌクレオチド配列は、配列番号4に示されることを特徴とする、請求項2に記載の遺伝子。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の遺伝子を含むことを特徴とする、組換え発現ベクター。
【請求項5】
前記組換え発現ベクターの骨格プラスミドは、pSecTagであることを特徴とする、請求項4に記載の組換え発現ベクター。
【請求項6】
請求項
4に記載の組換え発現ベクターを含み、好ましくは宿主が哺乳動物細胞であることを特徴とする、形質転換体。
【請求項7】
前記哺乳
動物細胞がCHO細胞であることを特徴とする、請求項6に記載の形質転換体。
【請求項8】
請求項1に記載の融合タンパク質の製造方法であって、請求項6又は7に記載の形質転換体を培養して、前記融合タンパク質を発現させ、好ましくは、前記融合タンパク質はアフィニティークロマトグラフィーにより分離・精製し、より好ましくは、前記アフィニティークロマトグラフィーは、マウス抗ヒトIgEアフィニティークロマトグラフィーであることを特徴とする、製造方法。
【請求項9】
活性成分が請求項1に記載の融合タンパク質を含むことを特徴とする、医薬。
【請求項10】
アレルギー疾患の治療における使用のための、請求項1に記載の融合タンパク
質。
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】