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特表2025-501408アルツハイマー型認知症の処置又は予防における使用のための特定の投与量のフェノチアジン化合物
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  • 特表-アルツハイマー型認知症の処置又は予防における使用のための特定の投与量のフェノチアジン化合物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-17
(54)【発明の名称】アルツハイマー型認知症の処置又は予防における使用のための特定の投与量のフェノチアジン化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 279/28 20060101AFI20250109BHJP
   A61K 31/5415 20060101ALI20250109BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20250109BHJP
   C07D 279/26 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C07D279/28 CSP
A61K31/5415
A61K9/08
A61P25/28
C07D279/26
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024560956
(86)(22)【出願日】2023-01-03
(85)【翻訳文提出日】2024-08-27
(86)【国際出願番号】 EP2023050065
(87)【国際公開番号】W WO2023131606
(87)【国際公開日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】22150214.9
(32)【優先日】2022-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524250503
【氏名又は名称】イムヌジェネティクス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クローン,マルクス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076BB01
4C076BB11
4C076BB29
4C076CC01
4C076CC44
4C076CC46
4C076FF67
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC89
4C086GA13
4C086GA14
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA52
4C086MA60
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA06
4C086NA07
4C086ZA16
4C086ZC41
(57)【要約】
本発明は、第1の態様において、アルツハイマー型認知症の処置及び/又は予防における使用のための式(I)の化合物に関し、式(I)の化合物は<20mgの投与量で投与される。第2の態様において、本発明は、第1の態様に従う化合物を含む医薬組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトのアルツハイマー型認知症の処置及び/又は予防における使用のための式(I)の化合物であって
【化1】
[式中、
R1は、水素原子、ハロゲン原子、メトキシ基、過ハロゲン化アルキル基及び-X-C1~C2アルキル基からなる群から選択され、ここで、Xは硫黄原子又は酸素原子のいずれかであり、
R2は、水素原子又はメチル基であり、
R3、R4は、互いに独立に、水素原子若しくはC1~C4アルキル基のいずれかであるか、又は一緒になって、少なくとも1個のさらなる窒素原子を含む6員のアルキル環を形成し、ここで、少なくとも1個のさらなる窒素は、C1~C3アルキル-R5基で置換されており、R5は、水素原子又はヒドロキシル基であり、
nは、0又は1であり、
mは、0であるか、又は1~4の範囲から選択される整数であり、
pは、0であるか、又は1~3の範囲から選択される整数である]、
投与日1日当たり≦20mgの投与量で投与される、式(I)の化合物。
【請求項2】
投与日1日当たり2~20mgの範囲の投与量で投与される、請求項1に記載の使用のための式(I)の化合物。
【請求項3】
式(Ia)を有する、請求項1又は2に記載の使用のための式(I)の化合物
【化2】
[式中、
R1は、メトキシ基、トリフルオロメチル基及びチオエチル基からなる群から選択され、
R2は、水素原子又はメチル基であり、
R3、R4は、共にメチル基であるか、又は一緒になって、1個のさらなる窒素原子を含む6員のアルキル環を形成し、ここで、1個のさらなる窒素はメチル基で置換されており、
nは、0又は1である]。
【請求項4】
投与日1日当たり5~15mgの範囲、好ましくは6~13.5mgの範囲の投与量で投与され、
より好ましくは投与日1日当たり6~7mgの範囲又は投与日1日当たり12.5~13.5mgの範囲の投与量で投与される、
請求項1から3のいずれか一項に記載の使用のための式(I)又は式(Ia)の化合物。
【請求項5】
式(I)又は式(Ia)の化合物が、式(I)又は式(Ia)の薬学的に許容される塩として使用され、薬学的に許容される塩が、塩化物、硫酸塩、メシル酸塩、ベシル酸塩、トシル酸塩、フマル酸塩、マロン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、グリコール酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩及びマンデル酸塩からなる群から選択される1種以上のアニオン、好ましくはリンゴ酸塩及び/又はマレイン酸塩、より好ましくはマレイン酸塩を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用のための式(I)又は式(Ia)の化合物。
【請求項6】
式(I)若しくは式(Ia)の化合物又は式(I)若しくは式(Ia)の薬学的に許容される塩が、レボメプロマジン、トリフルオペラジン及びチエチルペラジン並びにこれらの化合物の薬学的に許容される塩からなる群から選択され、好ましくはレボメプロマジン若しくはチエチルペラジン又はレボメプロマジンの薬学的に許容される塩若しくはチエチルペラジンの薬学的に許容される塩であり、より好ましくはチエチルペラジン又はチエチルペラジンの薬学的に許容される塩である、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用のための式(I)又は式(Ia)の化合物。
【請求項7】
式(I)又は式(Ia)の化合物が、マレイン酸チエチルペラジンとして使用され、マレイン酸チエチルペラジンが、投与日1日当たり≦31.62mg、より好ましくは3.16~31.62mgの範囲、より好ましくは7.9~23.72mgの範囲、より好ましくは9.48~21.34mgの範囲の投与量で投与される、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用のための式(I)又は式(Ia)の化合物。
【請求項8】
式(I)若しくは式(Ia)の化合物又は式(I)若しくは式(Ia)の薬学的に許容される塩が、経口的又は直腸内に投与される、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用のための式(I)又は式(Ia)の化合物。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項で定義される式(I)若しくは式(Ia)の化合物又は式(I)若しくは式(Ia)の薬学的に許容される塩及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物であって、調製物が、溶液の形態で、2~20mgの範囲の式(I)又は式(Ia)の化合物、好ましくは5~15mgの範囲の式(I)又は式(Ia)の化合物、より好ましくは6~13.5mgの範囲の式(I)又は式(Ia)の化合物を含有する、医薬組成物。
【請求項10】
式(I)若しくは式(Ia)の化合物又は式(I)若しくは式(Ia)の薬学的に許容される塩を含む、注射に好適な溶液の形態の請求項9に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の態様において、アルツハイマー型認知症の処置及び/又は予防における使用のための式(I)の化合物に関し、式(I)の化合物は≦20mgの投与量で投与される。第2の態様において、本発明は、第1の態様に従う化合物を含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
欧州登録特許第2 614 060 B1号(WO 2012/031941 A2)は、脳タンパク質への沈着及び脳ABCC1輸送体の活性の低下を伴うベータ-アミロイドパチー又はアルファ-シヌクレイノパチーの処置のための、チエチルペラジン(IUPAC:2-(エチルスルファニル)-10-[3-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロピル]-10H-フェノチアジン、CAS:1420-55-9)及びその誘導体を開示している。またKrohnらにより記載されている通り、チエチルペラジンは、マウス脳からベータアミロイドを取り除く輸送タンパク質ABCC1を活性化する(Krohn, M.、C. Lange、J. Hofrichter、K. Scheffler、J. Stenzel、J. Steffen、T. Schumacher、T. Bruning、A. S. Plath、F. Alfen、A. Schmidt、F. Winter、K. Rateitschak、A. Wree、J. Gsponer、L. C. Walker及びJ. Pahnke (2011年).「Cerebral amyloid-beta proteostasis is regulated by the membrane transport protein ABCC1 in mice.」 J Clin Invest 2011年、121(10): 3924~3931)。したがって、チエチルペラジンは、アルツハイマー病(AD)のマウスモデルにおいて、血液脳関門の内皮細胞から、それを介して末梢へとアミロイドベータ(Abeta)を排出するのに有効であることが証明された。ABCC1の薬学的な活性化は、脳内へのアミロイド斑の沈着を低減することができることも示された。チエチルペラジンは、この研究ではマウスについて1日当たり15mg/kg体重の濃度で使用されており、これば、マウス及びヒトの間の相対成長倍率が7であることを考慮すると、ヒト等価用量は1日当たり105mgのチエチルペラジンになるはずである。
【0003】
Jepsen、De Bothらは、ABCC1が、ヒト細胞の細胞質からAbetaを排出することができるだけでなく、その過剰発現がAbeta産生を有意に低減し、おそらくはアルファ-、ベータ-及びガンマ-セクレターゼ活性の間接的モジュレーションを介して、アルファ-対ベータ-セクレターゼにより媒介されるアミロイド前駆体タンパク質(APP)の切断比を増大することを示した。蛍光性Abeta-42と共にインキュベートした場合、野生型ヒトBE(2)-m17神経芽細胞腫細胞の79.7%及びABCC1過剰発現BE(2)-m17細胞の68.4%が、蛍光を発するようになる。チエチルペラジンを用いる処置により、Abeta-42を効率的に取り込む野生型細胞が29.6%低減した。ABCC1の同時過剰発現により、この効果が44.4%に増強された。したがって、ABCC1はAbetaの進入から細胞を有効に保護し、チエチルペラジンがこの効果を増幅する(Jepsen, W. M.、M. De Both、A. L. Siniard、K. Ramsey、I. S. Piras、M. Naymik、A. Henderson及びM. J. Huentelman (2020年).「Adenosine triphosphate Binding Cassette subfamily C member 1 (ABCC1) overexpression reduces APP processing and increases alpha-versus beta-secretase activity, in vitro.」Biol Open: bio.054627)。さらに、ABCC1過剰発現BE(2)-m17細胞は、APPプロセシングを非アミロイド形成経路にシフトすることにより、Abeta-42及びAbeta-40の産生を少なくする(Jepsen、De Bothら)。
【0004】
ベータアミロイドパチー、例えばアルツハイマー病(及びパーキンソン病)に関して、チエチルペラジンは、アルツハイマー型認知症及びパーキンソン病の進行を数年にわたって潜在的に遅延させることができると考えられる。この薬物は、EudraCT番号:2014-000870-20の下で第II相臨床試験中である。この臨床試験は、効率に関して必要であると考えられることを考慮して、それぞれ、ヒト1人につき1日当たり26mgのチエチルペラジン及びヒト1人につき1日当たり52mgのチエチルペラジンを用いて行われた。しかし、アルツハイマー病の増大及び平均余命の延長並びに総人口における高齢者の割合の増大を考慮すると、アルツハイマー病の処置のための改善された製剤が依然として求められている。
【発明の概要】
【0005】
したがって、本発明の根本にある客観的な技術的問題は、アルツハイマー病の処置(における使用)のために及び/又はアルツハイマー病の予防において改善された製剤を提供することであった。
【発明を実施するための形態】
【0006】
第1の態様-アルツハイマー型認知症の処置及び/又は予防における使用のための式(I)の化合物
第1の態様において、本発明は、アルツハイマー型認知症の処置及び/又は予防における使用のための式(I)の化合物であって
【0007】
【化1】
[式中、
R1は、水素原子、ハロゲン原子、メトキシ基、過ハロゲン化アルキル基及び-X-C1~C2アルキル基からなる群から選択され、ここで、Xは硫黄原子又は酸素原子のいずれかであり、
R2は、水素原子又はメチル基であり、
R3、R4は、互いに独立に、水素原子若しくはC1~C4アルキル基のいずれかであるか、又は一緒になって、少なくとも1個のさらなる窒素原子を含む6員のアルキル環を形成し、ここで、少なくとも1個のさらなる窒素は、C1~C3アルキル-R5基で置換されており、R5は、水素原子又はヒドロキシル基であり、
nは、0又は1であり、
mは、0であるか、又は1~4の範囲から選択される整数であり、
pは、0であるか、又は1~3の範囲から選択される整数である]、
投与日1日当たり≦20mgの投与量で投与される、式(I)の化合物に関する。
【0008】
好ましくは、アルツハイマー型認知症の処置及び/又は予防における使用のための式(I)の化合物は、投与日1日当たり2~20mgの範囲の投与量で投与される。「投与日1日当たり」とは、≦20mgの投与量が、1週間につき1~7日間の範囲で、好ましくは毎日(1週間につき7日間、すなわち日々)又は1日置き又は2日置きのいずれかで投与され、より好ましくは≦20mgの投与量が毎日又は1日置きに与えられ、より好ましくは≦20mgの投与量が毎日与えられることを意味する。
【0009】
一部の実施形態では、[CH3]m-基(複数可)は、好ましくはフェノチアジン構造の6、7、8及び9から選択される位置に存在し、[CH3]p-基(複数可)は、フェノチアジン構造の1、3及び4から選択される位置に存在する。R2がメチル基である場合には、R2を有する炭素原子は、好ましくはR立体配置を有する。
【0010】
通常は、当業者は、薬物の投与量をできる限り低減するように努めるが、特に活性薬剤(医薬活性成分、API)を用いる処置の有効性は、投与される活性薬剤の量の低減と共に低下することが当業者によって予測される。したがって、当業者は、より低い治療効果及び潜在的により少数の応答性患者と引き換えに、より低い投与量の薬物(より安価でより安全な処置)を提供することを予測する。患者における応答は用量に関係しており、最大効果(Emax)に達するまでは用量を増大することでより大きい応答が生じるということは、一般に認められている原理である(例えば、R. Liebermanら1993年を参照されたい)。しかし驚くべきことに、本発明の状況では、式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩、特にチエチルペラジン、さらに特にチエチルペラジンのマレイン酸塩(複数可)について、ヒトにおける処置の有効性及び処置に対する応答が、より高用量ではなく、より低用量で改善することが見出された。チエチルペラジンは、2-(エチルスルファニル)-10-[3-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロピル]-10H-フェノチアジン(CAS:1420-55-9)であり、マレイン酸チエチルペラジン(CAS:1179-69-7、C30H37N3O8S2)は、(正に帯電した)チエチルペラジンと2つの(負に帯電した)マレイン酸分子の塩である。驚くべきことに、2~20mgの範囲のより低用量のチエチルペラジンに対して、より多くの対象、すなわち30~117%多くの対象が応答することが見出されただけでなく、血漿中Abeta1-40の平均上昇率も、より多量のチエチルペラジンで処置された対象と比較して有意に高く、特に≧20%高かった。さらに、応答者及び非応答者の間の血漿中Abeta1-40の平均濃度差も、より多量のチエチルペラジンで処置された対象と比較して、2~20mgの範囲のより低用量のチエチルペラジンで処置された対象で≧10pg/ml、実質的に増大した。
【0011】
以下で使用される場合、「有する」、「含む(comprise)」若しくは「含む(include)」という用語又はそれらのいかなる任意の文法的変異も、非排他的な意味で使用される。したがって、これらの用語は、この文脈で記載されている実体において、これらの用語によって導入された特徴とは別にさらなる特徴が存在しない状況、及び1つ以上のさらなる特徴が存在する状況の両方を指すことがある。一例として、「AはBを有する」、「AはBを含む(comprises)」及び「AはBを含む(includes)」という表現はすべて、AにおいてBとは別に他の要素が存在しない状況(すなわち、AがBだけから排他的になる状況)、並びに実体Aにおいて、Bとは別に1つ以上のさらなる要素、例えば1つの要素C、複数の要素C及びD、又はさらにそれ以上の要素が存在する状況を指すことがある。また、当業者によって理解される通り、「1つを含む(comprising a)」及び「1つを含む(comprising an)」という表現は、好ましくは「1つ以上を含む」を指し、すなわち「少なくとも1つを含む」と等価である。
【0012】
さらに、以下で使用される場合、「好ましくは」、「より好ましくは」、「最も好ましくは」、「特に」、「さらに特に」、「具体的には」、「より具体的には」という用語又は類似の用語は、さらなる可能性を制限することなく、任意選択の特徴と共に使用される。したがって、これらの用語によって導入された特徴は、任意選択の特徴であり、特許請求の範囲の範囲を制限することを決して意図するものではない。本発明は、当業者に認識される通り、代替の特徴を使用することによって実施することができる。同様に、「一実施形態では」又は類似の表現によって導入された特徴は、本発明のさらなる実施形態に関していかなる制限もなく、本発明の範囲に関していかなる制限もなく、そのように導入された特徴が本発明の任意選択の又は任意選択ではない他の特徴と組み合わされる可能性に関していかなる制限もなく、任意選択の特徴となることが意図されている。
【0013】
「薬学的に許容される」という用語は、本明細書で使用される場合、そのレシピエントに有害でなく、好ましくはその製剤の任意選択の他の成分と適合性があるという意味で、薬学的に許容される塩に関する。好ましくは、薬学的に許容される塩は、中等度に留まる有害な薬物反応を引き起こす、好ましくは軽度に留まる有害な薬物反応を引き起こす、式(I)の化合物の塩である。本明細書で使用される場合、「軽度の」有害反応という用語は、医学的介入を必要としない有害反応、例えば、皮膚発疹、頭痛、消化器障害、疲労等に関し、「中等度の」有害反応は、医学的介入を必要とするが、潜在的に生命を脅かすものではない有害反応である。
【0014】
「アルキル」という用語は、本明細書で使用される場合、その少なくとも1個の炭素原子のうちの少なくとも1個への共有結合によって主鎖に連結している、直鎖又は分岐鎖の飽和炭化水素基を指す。好ましいアルキル基は、直鎖アルキル又は分岐鎖アルキル基である。したがって、アルキル基には、第一級アルキル基、第二級アルキル基、及び第三級アルキル基が含まれる。
【0015】
「処置すること」及び「処置」という用語は、本明細書で言及される疾患若しくは障害、又はそれに伴う症状を有意な程度まで緩和することを指す。前記処置することは、本明細書で使用される場合、本明細書で言及される疾患又は障害に関して健康の完全な回復も含む。処置することは、この用語が本明細書で使用される場合、処置されるすべての対象において有効であるとは限らないことが理解されるべきである。しかしこの用語は、本明細書で言及される疾患又は障害に罹患している対象の、好ましくは統計的に有意な部分が首尾よく処置され得ることを必要とするものとする。一部が統計的に有意であるかどうかは、種々の周知の統計評価ツール、例えば、信頼区間の決定、p値の決定、スチューデントt検定、マン・ホイットニー試験等を使用して、それ以上の困難を伴わずに当業者によって決定され得る。好ましい信頼区間は、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%である。p値は、好ましくは0.1、0.05、0.01、0.005、又は0.0001である。好ましくは、処置は、所与のコホート又は集団の対象の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%に有効であるものとする。好ましくは、アルツハイマー病を処置することは、当業者に公知の神経変性の1種以上のバイオマーカー、例えば、体液(血液、CSF)中のAbeta-40、Abeta-42又はAbeta42/40比、タウタンパク質のリン酸化変異体(例えば、p-Tau181、p-Tau217等)、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、ニューロフィラメント軽鎖(NfL)等を改善すること、並びに/或いは陽電子放出断層撮影(PET)法を使用して決定されたAbeta及び/又はタウの脳内負荷を改善すること、並びに/或いは当業者に公知の1種以上の試験、例えばADAS-Cog、FCSRT、ADCS-iADL、QoL-AD、CDR、MMSE等によって決定される対象の認知能力の低下を緩徐若しくは停止すること又は改善することである。当業者によって理解される通り、アルツハイマー病の処置の有効性は、例えば疾患のステージ及び重症度を含む様々な因子に依存する。「1種以上のバイオマーカーを改善すること」は、対象の処置後又は処置中のそれぞれのバイオマーカーの値が、処置の前よりも健康な対象の参照値からの逸脱が少ないこととして理解されるべきである。「認知能力の低下を緩徐若しくは停止すること又は認知能力を改善すること」は、処置後又は処置中に、処置の前よりも健康な対象の参照値又は公知の参照値からの逸脱が少ない、それぞれの試験からの結果に関する。
【0016】
「予防すること」及び「予防」という用語は、アルツハイマー病に関して、対象において一定期間にわたって健康を保持することを指す。前記期間は、投与された薬物化合物の量、及び本明細書の他所で論じられる対象の個々の因子に依存し得ることを理解されよう。予防は、本発明に従う化合物で処置されたすべての対象において有効であるとは限らないことが理解されるべきである。しかしこの用語は、コホート又は集団の対象の、好ましくは統計的に有意な部分が、本明細書で言及される疾患若しくは障害、又は付随するその症状に罹患することから有効に予防されることを必要とする。好ましくは、この文脈では、普通は、すなわち本発明に従う予防的手段がなければ、本明細書で言及される疾患又は障害を発症するはずの対象のコホート又は集団が想定される。一部が統計的に有意であるかどうかは、本明細書の他所に論じられる種々の周知の統計評価ツールを使用して、それ以上の困難を伴わずに当業者によって決定され得る。
【0017】
「対象」という用語は、本明細書で使用される場合、多細胞動物、好ましくは脊椎動物、より好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトに関する。
【0018】
アルツハイマー型認知症の処置及び/又は予防における使用の一部の実施形態では、式(I)の化合物のR1は、水素原子、塩素原子、チオメチル基、チオエチル基、メトキシ基、エトキシ基及びトリフルオロメチル基からなる群から、好ましくはチオメチル基、チオエチル基、メトキシ基、エトキシ基及びトリフルオロメチル基からなる群から選択される。
【0019】
アルツハイマー型認知症の処置及び/又は予防における使用の一部の実施形態では、
R1は、水素原子、塩素原子、メトキシ基、トリフルオロメチル基及びチオエチル基からなる群から選択され、
R2は、水素原子又はメチル基であり、
R3及びR4は、互いに独立に、メチル若しくはエチル基であるか、又は一緒になって、少なくとも1個のさらなる窒素原子を含む6員のアルキル環を形成し、ここで、少なくとも1個のさらなる窒素はC1~C3アルキル-R5基で置換されており、R5は水素原子又はヒドロキシル基であり、
nは、0又は1であり、
m、pは、それぞれ0である。
【0020】
アルツハイマー型認知症の処置及び/又は予防における使用の一部の実施形態では、式(I)の化合物は、レボメプロマジン、トリフルオペラジン、チエチルペラジン、ペルフェナジン、クロルプロマジン、チオリダジン、ジエタジン、及びそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される。これらの化合物のそれぞれは、脳からベータアミロイドを取り除くABCC1輸送体を活性化することが公知である。
【0021】
アルツハイマー型認知症の処置及び/又は予防における使用の一部の実施形態では、R3及びR4は、1個のさらなる窒素原子を含む6員環を形成し、ここで、さらなる窒素原子はメチル基又は-CH2-CH2-OH基を有する。
【0022】
アルツハイマー型認知症の処置及び/又は予防における使用の一部の実施形態では、化合物は、その式(Ia)を有する
【0023】
【化2】
[式中、
R1は、メトキシ基、トリフルオロメチル基及びチオエチル基からなる群から選択され、
R2は、水素原子又はメチル基(好ましくはR立体配置を有する)であり、
R3、R4は、共にメチル基であるか、又は一緒になって、1個のさらなる窒素原子を含む6員のアルキル環を形成し、ここで、1個のさらなる窒素はメチル基で置換されており、
nは、0又は1である]。
【0024】
アルツハイマー型認知症の処置及び/又は予防における使用の一部の実施形態では、式(Ia)の化合物のR3、R4は、共にメチル基であるか、又は一緒になってピペラジン環を形成し、ここで、さらなる窒素原子はメチル基(4-メチルピペラジン-1-イル基)で置換されている。
【0025】
式(I)又は式(Ia)の化合物は、(非荷電)化合物として使用されるか、又は薬学的に許容されるその塩の形態で使用される。式(I)の化合物又は式(Ia)の化合物の薬学的に許容される塩は、式(I)の化合物又は式(Ia)の化合物に対応するカチオン部分が、好ましくは投与日1日当たり、≦20mg、好ましくは2~20mgの範囲に達するように投与される。
【0026】
好ましくは、薬学的に許容される塩は、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプリン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオール酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、ブチン-1,4-二酸塩、ヘキシン-1,6-二酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、テレフタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、β-ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、アーモンド酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、ムチン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘキサン酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、2-ナフタレン(napthalene)スルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、パルミチン酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、サリチル酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、アルギニン酸塩、及びウンデカン酸塩からなる群から選択される1種以上のアニオンを含む。より好ましくは、薬学的に許容される塩は、塩化物、硫酸塩、メシル酸塩、ベシル酸塩、トシル酸塩、フマル酸塩、マロン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、グリコール酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩及びマンデル酸塩からなる群から選択される1種以上のアニオン、好ましくはリンゴ酸塩及び/又はマレイン酸塩、より好ましくはマレイン酸塩を含む。
【0027】
一部の実施形態では、式(I)又は式(Ia)の化合物は、レボメプロマジン、トリフルオペラジン及びチエチルペラジン並びにこれらの化合物の薬学的に許容される塩からなる群から選択され、好ましくはレボメプロマジン又はチエチルペラジン又はレボメプロマジンの薬学的に許容される塩又はチエチルペラジンの薬学的に許容される塩であり、より好ましくはチエチルペラジン又はチエチルペラジンの薬学的に許容される塩である。
【0028】
好ましくは、式(I)又は式(Ia)の化合物は、単独で、又は式(I)若しくは式(Ia)の2種以上の化合物の混合物として、又は式(I)若しくは式(Ia)の化合物の薬学的に許容される塩として、又は式(I)若しくは式(Ia)の化合物の2種以上の薬学的に許容される塩の混合物として使用される。同様に、式(I)又は式(Ia)の1種以上の化合物と式(I)又は式(Ia)の化合物の1種以上の薬学的に許容される塩の混合物を使用することができる。一部の好ましい実施形態では、式(I)又は式(Ia)の1種以上の化合物は、それらの薬学的に許容される塩の形態だけで使用され、より好ましくは式(I)又は式(Ia)の1種以上の化合物は、それらのマレイン酸塩及び/又はリンゴ酸塩の形態で使用され、より好ましくは式(I)又は式(Ia)の1種以上の化合物は、それらのマレイン酸塩の形態で使用される。塩形態には、水溶液系への溶解度が改善されているという利点がある。
【0029】
上記で示される通り、式(I)の化合物は、アルツハイマー型認知症の処置及び/又は予防における使用において、好ましくは投与日1日当たり≦20mg、好ましくは2~20mgの範囲の投与量で使用される。アルツハイマー型認知症の処置及び/又は予防における使用の一部の実施形態では、式(I)又は式(Ia)の化合物は、投与日1日当たり5~15mgの範囲、好ましくは6~13.5mgの範囲の投与量で投与される。より好ましくは、式(I)又は式(Ia)の化合物は、投与日1日当たり6~7mgの範囲又は投与日1日当たり12.5~13.5mgの範囲の投与量で投与される。
【0030】
本発明の状況では、式(I)又は式(Ia)の化合物の塩が使用される場合、上記で示される重量は、式(I)又は式(Ia)の化合物に関するものであり、すなわち使用されるべきそれぞれの塩の量は、塩の分子量がより高いために、多くなる。しかし、上記で示される通り、式(I)の化合物又は式(Ia)の化合物の薬学的に許容される塩は、式(I)の化合物又は式(Ia)の化合物に対応するカチオン部分が、好ましくは投与日1日当たり≦20mg、好ましくは2~20mgの範囲の量になるように使用される。例えば、マレイン酸チエチルペラジンが使用される場合、チエチルペラジンについて2~20mgの範囲は、3.16~31.62mgの範囲のマレイン酸チエチルペラジンに対応する。(正に帯電した)チエチルペラジンと2つの(負に帯電した)リンゴ酸分子の塩である、リンゴ酸チエチルペラジン(CAS:52239-63-1、C30H41N3O10S2)が使用される場合、チエチルペラジンについて2~20mgの範囲は、3.34~33.42mgの範囲のマレイン酸チエチルペラジンに対応する。同じことが、好ましい範囲及び値に適用される。したがって、一部の実施形態では、式(I)又は式(Ia)の化合物は、式(I)又は式(Ia)の薬学的に許容される塩として、好ましくはマレイン酸チエチルペラジンとして、投与日1日当たり好ましくは≦31.62mg、より好ましくは3.16~31.62mgの範囲、より好ましくは7.9~23.72mgの範囲、より好ましくは9.48~21.34mgの範囲の投与量のマレイン酸チエチルペラジンとして使用される。より好ましくは、マレイン酸チエチルペラジンは、投与日1日当たり9.47~11.07mgの範囲の投与量のマレイン酸チエチルペラジン又は投与日1日当たり19.77~21.34mgの範囲の投与量のマレイン酸チエチルペラジンで投与される。
【0031】
アルツハイマー型認知症の処置及び/又は予防における使用の一部の実施形態では、式(I)若しくは式(Ia)の化合物又は式(I)若しくは式(Ia)の薬学的に許容される塩は、単一用量として投与日1日当たり1回、又は投与日1日当たり2回投与される。
【0032】
アルツハイマー型認知症の処置及び/又は予防における使用の一部の実施形態では、式(I)若しくは式(Ia)の化合物又は式(I)若しくは式(Ia)の薬学的に許容される塩は、経口的又は直腸内に投与される。
【0033】
第2の態様-医薬組成物
第2の態様において、本発明は、≦20mg、好ましくは2~20mgの範囲、より好ましくは5~15mgの範囲、より好ましくは6~13.5mgの範囲の、第1の態様に関する節において上記で定義される通りの式(I)又は式(Ia)の化合物を含む医薬組成物に関する。与えられたすべての定義及び第1の態様に関する節において記載されるすべての好ましい実施形態は、第2の態様に従う医薬組成物にも適用される。
【0034】
医薬組成物はまた、活性化合物の他に、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含むことがある。薬学的に許容される賦形剤には、担体、アジュバント、安定剤及び/又は例えばガレノス製剤化(galenic)の目的のために当業者によって適切とみなされる他の化合物が含まれるが、これらに限定されない。本明細書で言及される場合、本明細書で第1の態様に関する節において上記で特定される式(I)、(Ia)の化合物又はそれぞれの薬学的に許容される塩は、組成物の「活性化合物」であるが、この用語の下で言及される「さらなる活性化合物」が存在してもよい。好ましくは、さらなる活性化合物も、薬学的に活性な化合物である。特定の医薬組成物は、調剤分野で周知の方式で調製され、本明細書において上記で言及される少なくとも1種の活性化合物を、好ましくは少なくとも1種の薬学的に許容される担体又は希釈剤と混ぜ合わせて、又はそうでなければ関連付けて含む。それらの特定の医薬組成物を作製するために、活性化合物(複数可)は、通常は担体又は希釈剤と混合される。結果として得られた製剤は、投与方法に適応させられ、すなわち特定の好ましい実施形態について以下により詳細に概説される通り、錠剤、カプセル剤、坐剤、溶液剤、懸濁液剤等の形態に適応させられるべきである。
【0035】
一実施形態では、医薬組成物は、第1の態様に関する節において上記で定義される通りの式(I)若しくは式(Ia)の化合物又は式(I)若しくは式(Ia)の薬学的に許容される塩及び薬学的に許容される賦形剤を含む単位投与量の調製物である。「単位投与量の調製物」、「単位用量」又は「単位用量形態」とは、対象に投与することができ、物理的及び化学的に安定な単位用量のまま容易に取り扱い、パッケージすることができる、単一用量の式(I) 式(Ia)の化合物又は式(I) 式(Ia)の化合物の薬学的に許容される塩を意味する。
【0036】
単位投与量の調製物は、≦20mgの式(I)又は式(Ia)の化合物、好ましくは2~20mgの式(I)又は式(Ia)の化合物、より好ましくは5~15mgの式(I)又は式(Ia)の化合物、より好ましくは6~13.5mgの式(I)又は式(Ia)の化合物を含有する。より好ましくは、単位投与量の調製物は、6~7mgの範囲又は12.5~13.5mgの範囲の式(I)又は式(Ia)の化合物を含有する。一部の実施形態では、式(I)又は式(Ia)の化合物は、単一用量として投与日1日当たり1回投与され、単位投与量の調製物は、1つの単位投与量の調製物に式(I)又は式(Ia)の化合物の全量を含有するように設計される。一部の実施形態では、式(I)又は式(Ia)の化合物は、投与日1日当たり2回投与され、単位投与量の調製物は、単位投与量の調製物1つにつき式(I)又は式(Ia)の化合物の全量の半分を含有するように設計される。
【0037】
一部の実施形態では、式(I)又は式(Ia)の化合物の薬学的に許容される塩が使用される場合、式(I)の化合物又は式(Ia)の化合物に対応するカチオン部分は、単位投与量の調製物において、≦20mg、好ましくは2~20mgの範囲に達する。一部の実施形態では、マレイン酸チエチルペラジンが使用される場合、単位投与量の調製物は、≦31.62mg、より好ましくは3.16~31.62mgの範囲、より好ましくは7.9~23.72mgの範囲、より好ましくは9.48~21.34mgの範囲のマレイン酸チエチルペラジンを含む。より好ましくは、単位投与量の調製物は、マレイン酸チエチルペラジンを、9.47~11.07mgの範囲のマレイン酸チエチルペラジン又は19.77~21.34mgの範囲の量のマレイン酸チエチルペラジンで含む。一部の実施形態では、式(I)又は式(Ia)の化合物の薬学的に許容される塩は、単一用量として投与日1日当たり1回投与され、単位投与量の調製物は、1つの単位投与量の調製物に式(I)又は式(Ia)の化合物の薬学的に許容される塩の全量を含有するように設計される。一部の実施形態では、式(I)又は式(Ia)の化合物の薬学的に許容される塩は、投与日1日当たり2回投与され、単位投与量の調製物は、単位投与量の調製物1つにつき式(I)又は式(Ia)の化合物の薬学的に許容される塩の全量の半分を含有するように設計される。
【0038】
一部の実施形態では、式(I)若しくは式(Ia)の化合物又は式(I)若しくは式(Ia)の薬学的に許容される塩を含む医薬組成物は、錠剤又は坐剤の形態である。錠剤は好ましくは、好ましくはアラビアゴム、ゼラチン、タルク、ステアリン酸、トウモロコシデンプン、ラクトース、スクロース、β-カロテン及びピーナッツ油からなる群から選択される1種以上の助剤をさらに含む。一部の実施形態では、錠剤は、その外表面上に1つ以上のコーティングを含み、ここで、コーティング材料は、糖、ポリマー材料、並びに糖及びポリマー材料の混合物から選択される。糖コーティングは、好ましくはスクロース、グルコース、ラクトース、マルチトール、マンニトール、イソマルト、ソルビトール、キシリトール及びデンプンの群から選択される1種以上の糖を含む。ポリマーコーティングは好ましくは、好ましくはセルロースエーテル、ビニルポリマー、グリコール、及びアクリル酸(コ)ポリマーからなる群から選択される1種以上のポリマーを含み、ここで、好適なポリマーは当業者に公知である。コーティングは、好ましくはフィラー、着色剤、付着防止剤(antiadhesive)、滑沢剤、流動促進剤、香味剤、懸濁液安定剤、平滑剤(smoothing agent)、及び研磨剤から選択される1種以上のさらなる構成成分を場合により含み、ここで、好適な物質はしたがって当業者に公知である。
【0039】
坐剤は好ましくは、好ましくはラクトース、好ましくはラクトース一水和物及び半合成固体グリセリドからなる群から選択される1種以上の助剤をさらに含む。
【0040】
一部の実施形態では、式(I)若しくは式(Ia)の化合物又は式(I)若しくは式(Ia)の薬学的に許容される塩を含む医薬組成物は、溶液、好ましくは注射に好適な溶液の形態である。
【0041】
注射に好適な溶液は、好ましくは、水、並びにメタ重亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、及びソルビトールの群から選択される1種以上の構成成分をさらに含む。さらに、注射に好適な溶液は好ましくは、<5、好ましくは<4、より好ましくは<3のpH値を有しており、pH値は、好ましくはDIN 19263:2007-05に従ってpH感受性ガラス電極によって決定される。
【0042】
一部の実施形態では、式(I)若しくは式(Ia)の化合物又は式(I)若しくは式(Ia)の薬学的に許容される塩を含む医薬組成物は、エアロゾル、好ましくはスプレー適用に好適なエアロゾルの形態である。
【0043】
処置方法
本発明はまた、アルツハイマー型認知症を処置及び/又は予防するための方法であって、
(a)式(I)の化合物
【0044】
【化3】
[式中、
R1は、水素原子、ハロゲン原子、メトキシ基、過ハロゲン化アルキル基及び-X-C1~C2アルキル基からなる群から選択され、ここで、Xは硫黄原子又は酸素原子のいずれかであり、
R2は、水素原子又はメチル基であり、
R3、R4は、互いに独立に、水素原子若しくはC1~C4アルキル基のいずれかであるか、又は一緒になって、少なくとも1個のさらなる窒素原子を含む6員のアルキル環を形成し、ここで、少なくとも1個のさらなる窒素は、C1~C3アルキル-R5基で置換されており、R5は、水素原子又はヒドロキシル基であり、
nは、0又は1であり、
mは、0であるか、又は1~4の範囲から選択される整数であり、
pは、0であるか、又は1~3の範囲から選択される整数である]
を投与するステップであって、ここで、式(I)の化合物は、好ましくは投与日1日当たり、≦20mg、好ましくは2~20mgの範囲の投与量で投与されるステップと、
(b)それによって、アルツハイマー型認知症を処置及び/又は予防するステップと、
を含む、方法に関する。
【0045】
一部の実施形態では、本発明は、医薬組成物、例えば第2の態様に関する節において上記に記載される医薬組成物を投与するステップを含む、アルツハイマー型認知症を処置及び/又は予防するための方法に関する。ここで、第1及び第2の態様に関する節に記載されるすべての詳細は、処置及び/又は予防方法にも適用される。
【0046】
処置及び/又は予防するための方法は、好ましくはin vivoの方法である。さらに、この方法は、上記で明示的に言及されるステップに加えて複数のステップを含み得る。例えば、さらなるステップは、ステップ(a)の前に、例えばアルツハイマー型認知症を診断すること、及び/又は好ましくは上記で特定される方法に従う式(I)の化合物を用いる処置から利益を受けるとして対象を同定することに関することがある。したがって、好ましくはこの方法は、(i)対象のアルツハイマー型認知症を決定する又は決定されているステップ、並びに(ii)式(I)の化合物を用いる処置から利益を受ける対象を同定する又は同定されているステップのさらなるステップを含む。また、さらなるステップは、ステップ(b)において、本明細書において上記で特定された対象を併用処置することを含むことがある。さらに、前記ステップの1つ以上は、自動化装置によって実施され得る。
【0047】
本発明は、それぞれの依存関係及び後方参照によって示される通り、以下の実施形態及び実施形態の組合せによってさらに説明される。特に、ある範囲の実施形態が言及されている各場合において、用語、例えば「実施形態1~4のいずれか1つの方法」の文脈では、この範囲におけるすべての実施形態が当業者のために明示的に開示されることを意味し、すなわちこの用語の語法は、「実施形態1、2、3、及び4のいずれか1つの方法」と同義であるものとして当業者によって理解されるべきであることを記しておく。
【0048】
一実施形態(1)によれば、本発明は、アルツハイマー型認知症の処置及び/又は予防における使用のための式(I)の化合物であって
【0049】
【化4】
[式中、
R1は、水素原子、ハロゲン原子、メトキシ基、過ハロゲン化アルキル基及び-X-C1~C2アルキル基からなる群から選択され、ここで、Xは硫黄原子又は酸素原子のいずれかであり、
R2は、水素原子又はメチル基であり、
R3、R4は、互いに独立に、水素原子若しくはC1~C4アルキル基のいずれかであるか、又は一緒になって、少なくとも1個のさらなる窒素原子を含む6員のアルキル環を形成し、ここで、少なくとも1個のさらなる窒素は、C1~C3アルキル-R5基で置換されており、R5は、水素原子又はヒドロキシル基であり、
nは、0又は1であり、
mは、0であるか、又は1~4の範囲から選択される整数であり、
pは、0であるか、又は1~3の範囲から選択される整数である]、
投与日1日当たり≦20mgの投与量で投与される、式(I)の化合物に関する。
【0050】
実施形態(1)を具体化する好ましい実施形態(2)は、投与日1日当たり2~20mgの範囲の投与量で投与される、実施形態(1)に従う使用のための前記式(I)の化合物に関する。
【0051】
実施形態(1)又は(2)を具体化する好ましい実施形態(3)は、R1が、水素原子、塩素原子、チオメチル基、チオエチル基、メトキシ基、エトキシ基及びトリフルオロメチル基からなる群から選択され、好ましくはチオメチル基、チオエチル基、メトキシ基、エトキシ基及びトリフルオロメチル基からなる群から選択される、実施形態(1)又は(2)に従う使用のための前記式(I)の化合物に関する。
【0052】
実施形態(1)~(3)のいずれか1つを具体化する好ましい実施形態(4)は、
R1が、水素原子、塩素原子、メトキシ基、トリフルオロメチル基及びチオエチル基からなる群から選択され、
R2が、水素原子又はメチル基であり、
R3及びR4が、互いに独立にメチル若しくはエチル基であるか、又は一緒になって、少なくとも1個のさらなる窒素原子を含む6員のアルキル環を形成し、ここで、少なくとも1個のさらなる窒素はC1~C3アルキル-R5基で置換されており、R5は水素原子又はヒドロキシル基であり、
nが、0又は1であり、
m、pが、それぞれ0である、
実施形態(1)~(3)のいずれか1つに従う使用のための前記式(I)の化合物に関する。
【0053】
実施形態(1)~(4)のいずれか1つを具体化する好ましい実施形態(5)は、レボメプロマジン、トリフルオペラジン、チエチルペラジン、ペルフェナジン、クロルプロマジン、チオリダジン、ジエタジン、及びそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される、前記式(I)の化合物に関する。
【0054】
実施形態(1)~(5)のいずれか1つを具体化する好ましい実施形態(6)は、R3及びR4が、1個のさらなる窒素原子を含む6員環を形成し、ここで、さらなる窒素原子がメチル基又は-CH2-CH2-OH基を有する、実施形態(1)~(5)のいずれか1つに従う使用のための前記式(I)の化合物に関する。
【0055】
実施形態(1)~(6)のいずれか1つを具体化する好ましい実施形態(7)は、化合物が式(Ia)を有する、実施形態(1)~(6)のいずれか1つに従う使用のための前記式(I)の化合物に関する
【0056】
【化5】
[式中、
R1は、メトキシ基、トリフルオロメチル基及びチオエチル基からなる群から選択され、
R2は、水素原子又はメチル基(好ましくはR立体配置を有する)であり、
R3、R4は、共にメチル基であるか、又は一緒になって、1個のさらなる窒素原子を含む6員のアルキル環を形成し、ここで、1個のさらなる窒素はメチル基で置換されており、
nは、0又は1である]。
【0057】
実施形態(1)~(7)のいずれか1つを具体化する好ましい実施形態(8)は、R3、R4が、共にメチル基であるか、又は一緒になってピペラジン環を形成し、ここで、さらなる窒素原子はメチル基(4-メチルピペラジン-1-イル基)で置換されている、実施形態(1)~(7)に従う使用のための前記式(Ia)の化合物に関する。
【0058】
実施形態(1)~(8)のいずれか1つを具体化する好ましい実施形態(9)は、式(I)又は式(Ia)の化合物が、式(I)の化合物又は式(Ia)の化合物の薬学的に許容される塩として使用され、式(I)の化合物又は式(Ia)の化合物に対応するカチオン部分が、好ましくは投与日1日当たり、≦20mg、好ましくは2~20mgの範囲に達するように、式(I)の化合物又は式(Ia)の化合物の薬学的に許容される塩が投与される、実施形態(1)~(8)に従う使用のための前記式(I)又は式(Ia)の化合物に関する。
【0059】
実施形態(1)~(9)のいずれか1つを具体化する好ましい実施形態(10)は、式(I)又は式(Ia)の薬学的に許容される塩が、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプリン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオール酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、ブチン-1,4-二酸塩、ヘキシン-1,6-二酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、テレフタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、β-ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、アーモンド酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、ムチン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘキサン酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、パルミチン酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、サリチル酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、アルギニン酸塩、及びウンデカン酸塩からなる群から選択される1種以上のアニオンを含む、実施形態(1)~(9)のいずれか1つに従う使用のための前記式(I)又は式(Ia)の化合物に関する。
【0060】
実施形態(1)~(10)のいずれか1つを具体化する好ましい実施形態(11)は、式(I)又は式(Ia)の薬学的に許容される塩が、塩化物、硫酸塩、メシル酸塩、ベシル酸塩、トシル酸塩、フマル酸塩、マロン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、グリコール酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩及びマンデル酸塩からなる群から選択される1種以上のアニオン、好ましくはリンゴ酸塩及び/又はマレイン酸塩、より好ましくはマレイン酸塩を含む、実施形態(1)~(10)のいずれか1つに従う使用のための前記式(I)又は式(Ia)の化合物に関する。
【0061】
実施形態(1)~(11)のいずれか1つを具体化する好ましい実施形態(12)は、式(I)若しくは式(Ia)の化合物又は式(I)若しくは式(Ia)の薬学的に許容される塩が、レボメプロマジン、トリフルオペラジン及びチエチルペラジン並びにこれらの化合物の薬学的に許容される塩からなる群から選択され、好ましくはレボメプロマジン又はチエチルペラジン又はレボメプロマジンの薬学的に許容される塩又はチエチルペラジンの薬学的に許容される塩であり、より好ましくはチエチルペラジン又はチエチルペラジンの薬学的に許容される塩である、実施形態(1)~(11)のいずれか1つに従う使用のための前記式(I)又は式(Ia)の化合物に関する。
【0062】
実施形態(1)~(12)のいずれか1つを具体化する好ましい実施形態(13)は、式(I)又は式(Ia)の化合物が、単独で、又は式(I)若しくは式(Ia)の2種以上の化合物の混合物として、又は式(I)若しくは式(Ia)の化合物の薬学的に許容される塩として、又は式(I)若しくは式(Ia)の化合物の2種以上の薬学的に許容される塩の混合物として使用される、実施形態(1)~(12)のいずれか1つに従う使用のための前記式(I)若しくは式(Ia)の化合物又は式(I)若しくは式(Ia)の薬学的に許容される塩に関する。
【0063】
実施形態(1)~(13)のいずれか1つを具体化する好ましい実施形態(14)は、投与日1日当たり5~15mgの範囲、好ましくは6~13.5mgの範囲の投与量で投与される、実施形態(1)~(13)のいずれか1つに従う使用のための前記式(I)又は式(Ia)の化合物に関する。
【0064】
実施形態(1)~(14)のいずれか1つを具体化する好ましい実施形態(15)は、投与日1日当たり6~7mgの範囲又は投与日1日当たり12.5~13.5mgの範囲の投与量で投与される、実施形態(1)又は(14)に従う使用のための前記式(I)又は式(Ia)の化合物に関する。
【0065】
実施形態(1)~(15)のいずれか1つを具体化する好ましい実施形態(16)は、式(I)又は式(Ia)の薬学的に許容される塩として、好ましくはマレイン酸チエチルペラジンとして使用され、好ましくは投与日1日当たり≦31.62mg、より好ましくは3.16~31.62mgの範囲、より好ましくは7.9~23.72mgの範囲、より好ましくは9.48~21.34mgの範囲の投与量のマレイン酸チエチルペラジンで投与される、実施形態(1)~(15)のいずれか1つに従う使用のための前記式(I)又は式(Ia)の化合物に関する。
【0066】
実施形態(16)を具体化する好ましい実施形態(17)は、式(I)又は式(Ia)の薬学的に許容される塩として、好ましくはマレイン酸チエチルペラジンとして使用され、好ましくは投与日1日当たり9.47~11.07mgの範囲の投与量のマレイン酸チエチルペラジン又は投与日1日当たり19.77~21.34mgの範囲の投与量のマレイン酸チエチルペラジンで投与される、実施形態(16)に従う使用のための前記式(I)又は式(Ia)の化合物に関する。
【0067】
実施形態(1)~(17)のいずれか1つを具体化する好ましい実施形態(18)は、式(I)若しくは式(Ia)の化合物又は式(I)若しくは式(Ia)の薬学的に許容される塩が、単一用量として投与日1日当たり1回、又は投与日1日当たり2回投与される、実施形態(1)~(17)のいずれか1つに従う使用のための前記式(I)又は式(Ia)の化合物に関する。
【0068】
実施形態(1)~(18)のいずれか1つを具体化する好ましい実施形態(19)は、式(I)若しくは式(Ia)の化合物又は式(I)若しくは式(Ia)の薬学的に許容される塩が、経口的又は直腸内に投与される、実施形態(1)~(18)のいずれか1つに従う使用のための前記式(I)又は式(Ia)の化合物に関する。
【0069】
本発明の一実施形態(20)は、≦20mg、好ましくは2~20mgの範囲、より好ましくは5~15mgの範囲、より好ましくは6~13.5mgの範囲の量の、実施形態(1)~(19)のいずれか1つに定義される式(I)又は式(Ia)の化合物を含む、医薬組成物に関する。
【0070】
実施形態(20)を具体化する好ましい実施形態(21)は、式(I)又は式(Ia)の化合物が、式(I)又は式(Ia)の薬学的に許容される塩として使用され、式(I)の化合物又は式(Ia)の化合物に対応するカチオン部分が、好ましくはマレイン酸チエチルペラジンとして≦20mg、好ましくは2~20mgの範囲の量になるように、式(I)の化合物又は式(Ia)の化合物の薬学的に許容される塩が使用され、医薬組成物が、≦31.62mg、好ましくは3.16~31.62mgの範囲、より好ましくは7.9~23.72mgの範囲、より好ましくは9.48~21.34mgの範囲の量のマレイン酸チエチルペラジンを含む、実施形態(20)に従う式(I)又は式(Ia)の化合物を含む前記医薬組成物に関する。
【0071】
実施形態(20)又は(21)を具体化する好ましい実施形態(22)は、単位投与量の調製物である、実施形態(20)又は(21)に従う前記医薬組成物に関する。
【0072】
実施形態(20)~(22)のいずれか1つを具体化する好ましい実施形態(23)は、式(I)若しくは式(Ia)の化合物又は式(I)若しくは式(Ia)の薬学的に許容される塩を含む、錠剤又は坐剤の形態の実施形態(20)~(22)のいずれか1つに従う前記医薬組成物に関する。
【0073】
実施形態(23)を具体化する好ましい実施形態(24)は、錠剤が、好ましくはアラビアゴム、ゼラチン、タルク、ステアリン酸、トウモロコシデンプン、ラクトース、スクロース、β-カロテン及びピーナッツ油からなる群から選択される1種以上の助剤をさらに含む、実施形態(23)に従う前記医薬組成物に関する。
【0074】
実施形態(23)を具体化する好ましい実施形態(25)は、坐剤が、好ましくはラクトース、好ましくはラクトース一水和物及び半合成固体グリセリドからなる群から選択される1種以上の助剤をさらに含む、実施形態(23)に従う前記医薬組成物に関する。
【0075】
実施形態(20)~(22)のいずれか1つを具体化する好ましい実施形態(26)は、式(I)若しくは式(Ia)の化合物又は式(I)若しくは式(Ia)の薬学的に許容される塩を含む、溶液、好ましくは注射に好適な溶液の形態の実施形態(20)~(22)のいずれか1つに従う前記医薬組成物に関する。
【0076】
実施形態(26)を具体化する好ましい実施形態(27)は、注射に好適な溶液が、水、並びにメタ重亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、及びソルビトールの群から選択される1種以上の構成成分をさらに含む、実施形態(26)に従う前記医薬組成物に関する。
【0077】
実施形態(26)又は(27)を具体化する好ましい実施形態(28)は、注射に好適な溶液が、<5、好ましくは<4、より好ましくは<3のpH値を有しており、pH値が、好ましくはDIN 19263:2007-05に従ってpH感受性ガラス電極によって決定される、実施形態(26)又は(27)に従う前記医薬組成物に関する。
【0078】
実施形態(28)を具体化する好ましい実施形態(29)は、式(I)若しくは式(Ia)の化合物又は式(I)若しくは式(Ia)の薬学的に許容される塩を含む、エアロゾル、好ましくはスプレー適用に好適なエアロゾルの形態の実施形態(28)に従う前記医薬組成物に関する。
【0079】
本発明は、以下の参照例、比較例、及び実施例によってさらに説明される。
【実施例
【0080】
以下の実施例は、単に本発明を説明するものである。何であれ以下の実施例は、本発明の範囲を制限すると解釈されるものではない。
【0081】
「Abeta1-40」は、ヒトアミロイドベータ(1-40)タンパク質断片(CAS番号131438-79-4、ペプチド配列DAEFRHDSGYEVHHQKLVFFAEDVGSNKGAIIGLMVGGVVを表す。
【0082】
「Abeta1-42」は、ヒトアミロイドベータ(1-42)タンパク質断片(CAS番号107761-42-2)、ペプチド配列DAEFRHDSGYEVHHQKLVFFAEDVGSNKGAIIGLMVGGVVIAを表す。
【0083】
I 方法
I.1 血液サンプリング
静脈血10mlの試料を、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含有する標準化試験管に収集し、1~2回穏やかに振とうした。できるだけ速やかに(最長30分以内)、試料を室温で1600gにおいて10分間遠心分離した。血漿を0.5mlの6つの一定分量に等分した。すべての一定分量を、遠心分離後10分以内にディープフリーザー(-80℃)に入れて凍結させ、使用まで保存した。
【0084】
I.2 血漿中Abetaの決定
Abetaの測定を、ビーズベースのINNO-BIA血漿Abeta形態の免疫アッセイ(Innogenetics/Fujirebio Europe、Gent、Belgium)を製造者のプロトコールに従って使用して実施した。血漿試料及び他のすべてのキット試薬を、製造者のプロトコールに従って調製した。手短には、血漿試料を室温で解凍し、4000gにおいて10分間遠心分離して、生じた可能性があるあらゆるデブリを除去し、ボルテックスし、次に血漿希釈剤を使用して3倍希釈した。フィルタープレートに移した後、希釈した試料、対照及び標準物質を洗浄し、最初のコンジュゲートを添加した後、4℃で振とうしながら一晩インキュベートした。翌日、すべてのウェルを3回洗浄し、検出コンジュゲートと共に室温で1時間インキュベートした。さらに3回洗浄した後、リーディング溶液をすべてのウェルに添加し、2分間振とうした後にLuminex IS 100(Luminex Corporation、Austin、TX、USA)プラットフォームで測定を実施した。使用したLuminex機器設定は、ゲートが7500~15000、試料体積が50μL及び領域ごとのカウントが100ビーズであった。標準曲線計算を、Stata 14.2 (StataCorp、College Station、TX、USA)を使用して4パラメーターのロジスティックフィット(nl log4コマンド)を用いて実施した。
【0085】
すべての標準物質、対照、及び患者の試料を、二つ組で分析し、所与の個体からのすべての試料を、1つの分析単位でアッセイした。2種のバイオマーカー(Abeta1-40及びAbeta1-42)の二つ組の平均化濃度(pg/ml)を計算した。すべての8つの標準曲線フィッティングモデル(4単位×2種のバイオマーカー)において、調整済みR二乗の統計量は0.995よりも高く、曲線フィッティングの質が優れていることが自明である。
【0086】
II 実験及び結果
本明細書では、以下、チエチルペラジンをマレイン酸チエチルペラジンとして使用し、チエチルペラジンに関しては重量ベースの量[mg]で示し、マレイン酸チエチルペラジンの重量ベースの量[mg]は、丸括弧で示す。前臨床的結果に基づいて(Wesolowska、Molnarら2009年、Bateman 2010年、Mawuenyega、Sigurdsonら2010年、Krohn、Langeら2011年、Hofrichter、Krohnら2013年、Roberts、Elbertら2014年、Krohn、Brackeら2015年、Jepsen、De Bothら)、15人のヒト対象を、異なる用量のチエチルペラジンで処置した。1日目(t=0時間目)に、すべての対象から血液試料を採取した。その直後、1日目に対象は第1の用量の6.5mgのチエチルペラジン(10.28mgのマレイン酸チエチルペラジン)を受け、その投与の4時間後に血液試料を採取した。血液サンプリングの直後、第2の用量の6.5mgのチエチルペラジン(10.28mgのマレイン酸チエチルペラジン)を投与し、その4時間後に2回目の血液試料を採取した。2回目の血液サンプリングの後、2つのさらなる用量の6.5mgのチエチルペラジン(10.28mgのマレイン酸チエチルペラジン)を、それぞれ4時間後に投与し、1日の4回目の摂取と12時間後の翌朝の初回摂取との間の夜間は中断し、したがって全体として、1日当たり26mgのチエチルペラジン(41.12mgのマレイン酸チエチルペラジン)を連続3日間にわたって投与した。2日目の最後(48時間目、チエチルペラジンの半減期の4倍)と、3日目の初期(52時間目、チエチルペラジンの半減期の5倍)との間に、定常状態に達した。定常状態が与えられた4日目に、定常状態のチエチルペラジン濃度等を分析するために、2回目の用量の投与の4時間後に血液試料を採取した。チエチルペラジンは、6.5mgのチエチルペラジン(10.28mgのマレイン酸チエチルペラジン)の錠剤1個の形態で、常に経口的に与えられた。
【0087】
血漿中Abetaは、脳内Abeta含量及びAbeta排出の指標とみなされ、血漿中Abeta濃度が高いほど脳内からのAbetaクリアランスが高いことを示す(Ferrero、Williamsら2016年、Sevigny、Chiaoら2016年)。6.5mg(10.28mgのマレイン酸チエチルペラジン)及び13mg(20.56mgのマレイン酸チエチルペラジン)の用量のチエチルペラジンで対象を処置した後、並びに26mg/日のチエチルペラジン(比較用)(41.12mgのマレイン酸チエチルペラジン)を3日間摂取した後、血漿中Abetaを決定した。
【0088】
1日目に6.5mgの初期用量のチエチルペラジン(10.28mgのマレイン酸チエチルペラジン)を摂取した後、血漿中Abeta1-40の上昇が、対象の53%(15人中8人)において見出された。1日目の2回目の投与後、すなわち13mgの用量のチエチルペラジン(20.56mgのマレイン酸チエチルペラジン)の後、対象の87%(15人中13人)において血漿中Abeta1-40が上昇していた。両方の用量により、血漿中Abeta1-40の7.8%の類似の平均上昇があった。
【0089】
連続3日間にわたる1日当たり26mgのチエチルペラジン(41.12mgのマレイン酸チエチルペラジン)では、定常状態で研究対象のわずか40%(15人中6人)において血漿中Abeta1-40の上昇があり、平均変化は6.5%であった。
【0090】
すなわち、血漿中Abeta1-40の上昇を示している研究対象のわずか40%(15人中6人)と比較して、有意に多くの対象、すなわち30~117%の範囲のより多くの対象が、2~20mgの範囲のより低用量のチエチルペラジン、ここでは特に、それぞれ6.5mg(10.28mgのマレイン酸チエチルペラジン)及び13mgのチエチルペラジン(20.56mgのマレイン酸チエチルペラジン)に応答を示した。
【0091】
さらに、より多量の26mgのチエチルペラジン(41.12mgのマレイン酸チエチルペラジン)で処置された対象と比較して、血漿中Abeta1-40の平均上昇も有意により高く、特に≧20%高かった。
【0092】
応答者及び非応答者の間の血漿中Abeta1-40の平均濃度差は、6.5mg、13mg及び26mgのチエチルペラジン(10.28mg、20.56mg、41.12mgのマレイン酸チエチルペラジン)について、それぞれ33.04pg/ml、28.07pg/ml及び16.53pg/mlであった。すなわち、応答者及び非応答者の間の血漿中Abeta1-40の平均濃度差も、より多量の26mgのチエチルペラジン(41.12mgのマレイン酸チエチルペラジン)で処置された対象と比較して、2~20mgの範囲のより低用量のチエチルペラジン、ここでは特に、それぞれ6.5mg(10.28mgのマレイン酸チエチルペラジン)及び13mgのチエチルペラジン(20.56mgのマレイン酸チエチルペラジン)で処置された対象において、定常状態モードで≧10pg/ml(又は≧60%)、実質的に増大した。Abeta1-40の差異及びチエチルペラジン用量は、共にチエチルペラジン血漿レベルと高度に相関していた(Abeta1-40のR2=-0.999、用量のR2=0.998)。
【0093】
したがって、驚くべきことに、ヒトにおけるチエチルペラジン処置の有効性及びチエチルペラジン処置に対する応答は、より高用量のチエチルペラジンではなく、より低用量のチエチルペラジンで改善したことが示された。
【0094】
処置後のAbeta血漿中濃度の決定の結果は、図1に示される。
【0095】
アッセイ間精度を、2種の品質管理(QC)試料(A+B)の4回の反復に基づいて推定し、以下の表1に提示される変動係数(CV)を得た。
【0096】
【表1】
【0097】
アッセイ間精度を、2種のQC試料の4回の反復に基づいて推定し、A又はBについて以下の表2及び3に提示される変動係数(CV)を得た。
【0098】
【表2】
【0099】
【表3】
【0100】
アッセイ間精度を、すべての試料のそれらの平均によって割った二つ組の測定値間の差異(「範囲対平均」)の中央値及び四分位範囲(p25~p75)として推定し、以下の表4に提示する。
【0101】
【表4】
【図面の簡単な説明】
【0102】
図1】異なる用量のチエチルペラジンの投与前(前)及び投与後(後)の処置応答者の個々の血漿中Abeta濃度を示す。アスタリスクは、チエチルペラジン投与前の平均対投与後の平均の有意レベルを示す(*p≦0.05、**p≦0.01、***p≦0.001)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0103】
【非特許文献1】Bateman, R. J. (2010). "O2-03-05: Amyloid-beta production and clearance rates in Alzheimer's disease." Alzheimer's & Dementia 6(4): S101-S101.
【非特許文献2】Ferrero, J., L. Williams, H. Stella, K. Leitermann, A. Mikulskis, J. O'Gorman and J. Sevigny (2016). "First-in-human, double-blind, placebo-controlled, single-dose escalation study of aducanumab (BIIB037) in mild-to-moderate Alzheimer's disease." Alzheimer's & Dementia: Translational Research & Clinical Interventions 2(3): 169-176.
【非特許文献3】Hofrichter, J., M. Krohn, T. Schumacher, C. Lange, B. Feistel, B. Walbroel, H. J. Heinze, S. Crockett, T. F. Sharbel and J. Pahnke (2013). "Reduced Alzheimer's disease pathology by St. John's Wort treatment is independent of hyperforin and facilitated by ABCC1 and microglia activation in mice." Curr. Alzheimer Res. 10(10): 1057-1069.
【非特許文献4】Jepsen, W. M., M. De Both, A. L. Siniard, K. Ramsey, I. S. Piras, M. Naymik, A. Henderson and M. J. Huentelman (2020). "Adenosine triphosphate Binding Cassette subfamily C member 1 (ABCC1) overexpression reduces APP processing and increases alpha- versus beta-secretase activity, in vitro." Biol Open: bio.054627.
【非特許文献5】Krohn, M., A. Bracke, Y. Avchalumov, T. Schumacher, J. Hofrichter, K. Paarmann, C. Froehlich, C. Lange, T. Bruening, O. von Bohlen Und Halbach and J. Pahnke (2015). "Accumulation of murine amyloid-beta mimics early Alzheimer's disease." Brain 138(Pt 8): 2370-2382.
【非特許文献6】Krohn, M., C. Lange, J. Hofrichter, K. Scheffler, J. Stenzel, J. Steffen, T. Schumacher, T. Bruning, A. S. Plath, F. Alfen, A. Schmidt, F. Winter, K. Rateitschak, A. Wree, J. Gsponer, L. C. Walker and J. Pahnke (2011). "Cerebral amyloid-beta proteostasis is regulated by the membrane transport protein ABCC1 in mice." J Clin Invest 121(10): 3924-3931.
【非特許文献7】Mawuenyega, K. G., W. Sigurdson, V. Ovod, L. Munsell, T. Kasten, J. C. Morris, K. E. Yarasheski and R. J. Bateman (2010). "Decreased clearance of CNS beta-amyloid in Alzheimer's disease." Science 330(6012): 1774.
【非特許文献8】Roberts, K. F., D. L. Elbert, T. P. Kasten, B. W. Patterson, W. C. Sigurdson, R. E. Connors, V. Ovod, L. Y. Munsell, K. G. Mawuenyega, M. M. Miller-Thomas, C. J. Moran, D. T. Cross, 3rd, C. P. Derdeyn and R. J. Bateman (2014). "Amyloid-beta efflux from the central nervous system into the plasma." Ann Neurol 76(6): 837-844.
【非特許文献9】Sevigny, J., P. Chiao, T. Bussiere, P. H. Weinreb, L. Williams, M. Maier, R. Dunstan, S. Salloway, T. Chen, Y. Ling, J. O’Gorman, F. Qian, M. Arastu, M. Li, S. Chollate, M. S. Brennan, O. Quintero-Monzon, R. H. Scannevin, H. M. Arnold, T. Engber, K. Rhodes, J. Ferrero, Y. Hang, A. Mikulskis, J. Grimm, C. Hock, R. M. Nitsch and A. Sandrock (2016). "The antibody aducanumab reduces Abeta plaques in Alzheimer’s disease." Nature 537(7618): 50-56.
【非特許文献10】Wesolowska, O., J. Molnar, I. Ocsovszki and K. Michalak (2009). "Differential effect of phenothiazines on MRP1 and P-glycoprotein activity." In Vivo 23(6): 943-947.
【非特許文献11】Lieberman, R., Nelson R. (1993). "Dose-Response and Concentration-Response Relationships: Clinical and Regulatory Perspectives" Therapeutic Drug Monitoring 15:498-502
図1
【手続補正書】
【提出日】2024-08-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0101
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0101】
【表4】
本開示の態様として、以下のものを挙げることができる。
[1]
ヒトのアルツハイマー型認知症の処置及び/又は予防における使用のための式(I)の化合物であって
【化6】
[式中、
R 1 は、水素原子、ハロゲン原子、メトキシ基、過ハロゲン化アルキル基及び-X-C1~C2アルキル基からなる群から選択され、ここで、Xは硫黄原子又は酸素原子のいずれかであり、
R 2 は、水素原子又はメチル基であり、
R 3 、R 4 は、互いに独立に、水素原子若しくはC1~C4アルキル基のいずれかであるか、又は一緒になって、少なくとも1個のさらなる窒素原子を含む6員のアルキル環を形成し、ここで、少なくとも1個のさらなる窒素は、C1~C3アルキル-R 5 基で置換されており、R 5 は、水素原子又はヒドロキシル基であり、
nは、0又は1であり、
mは、0であるか、又は1~4の範囲から選択される整数であり、
pは、0であるか、又は1~3の範囲から選択される整数である]、
投与日1日当たり≦20mgの投与量で投与される、式(I)の化合物。
[2]
投与日1日当たり2~20mgの範囲の投与量で投与される、態様1に記載の使用のための式(I)の化合物。
[3]
式(Ia)を有する、態様1又は2に記載の使用のための式(I)の化合物
【化7】
[式中、
R 1 は、メトキシ基、トリフルオロメチル基及びチオエチル基からなる群から選択され、
R 2 は、水素原子又はメチル基であり、
R 3 、R 4 は、共にメチル基であるか、又は一緒になって、1個のさらなる窒素原子を含む6員のアルキル環を形成し、ここで、1個のさらなる窒素はメチル基で置換されており、
nは、0又は1である]。
[4]
投与日1日当たり5~15mgの範囲、好ましくは6~13.5mgの範囲の投与量で投与され、
より好ましくは投与日1日当たり6~7mgの範囲又は投与日1日当たり12.5~13.5mgの範囲の投与量で投与される、
態様1から3のいずれか一つに記載の使用のための式(I)又は式(Ia)の化合物。
[5]
式(I)又は式(Ia)の化合物が、式(I)又は式(Ia)の薬学的に許容される塩として使用され、薬学的に許容される塩が、塩化物、硫酸塩、メシル酸塩、ベシル酸塩、トシル酸塩、フマル酸塩、マロン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、グリコール酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩及びマンデル酸塩からなる群から選択される1種以上のアニオン、好ましくはリンゴ酸塩及び/又はマレイン酸塩、より好ましくはマレイン酸塩を含む、態様1から4のいずれか一つに記載の使用のための式(I)又は式(Ia)の化合物。
[6]
式(I)若しくは式(Ia)の化合物又は式(I)若しくは式(Ia)の薬学的に許容される塩が、レボメプロマジン、トリフルオペラジン及びチエチルペラジン並びにこれらの化合物の薬学的に許容される塩からなる群から選択され、好ましくはレボメプロマジン若しくはチエチルペラジン又はレボメプロマジンの薬学的に許容される塩若しくはチエチルペラジンの薬学的に許容される塩であり、より好ましくはチエチルペラジン又はチエチルペラジンの薬学的に許容される塩である、態様1から5のいずれか一つに記載の使用のための式(I)又は式(Ia)の化合物。
[7]
式(I)又は式(Ia)の化合物が、マレイン酸チエチルペラジンとして使用され、マレイン酸チエチルペラジンが、投与日1日当たり≦31.62mg、より好ましくは3.16~31.62mgの範囲、より好ましくは7.9~23.72mgの範囲、より好ましくは9.48~21.34mgの範囲の投与量で投与される、態様1から6のいずれか一つに記載の使用のための式(I)又は式(Ia)の化合物。
[8]
式(I)若しくは式(Ia)の化合物又は式(I)若しくは式(Ia)の薬学的に許容される塩が、経口的又は直腸内に投与される、態様1から7のいずれか一つに記載の使用のための式(I)又は式(Ia)の化合物。
[9]
態様1から8のいずれか一つで定義される式(I)若しくは式(Ia)の化合物又は式(I)若しくは式(Ia)の薬学的に許容される塩及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物であって、調製物が、溶液の形態で、2~20mgの範囲の式(I)又は式(Ia)の化合物、好ましくは5~15mgの範囲の式(I)又は式(Ia)の化合物、より好ましくは6~13.5mgの範囲の式(I)又は式(Ia)の化合物を含有する、医薬組成物。
[10]
式(I)若しくは式(Ia)の化合物又は式(I)若しくは式(Ia)の薬学的に許容される塩を含む、注射に好適な溶液の形態の態様9に記載の医薬組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトのアルツハイマー型認知症の処置及び/又は予防における使用のための式(I)の化合物であって
【化1】
[式中、
R1は、水素原子、ハロゲン原子、メトキシ基、過ハロゲン化アルキル基及び-X-C1~C2アルキル基からなる群から選択され、ここで、Xは硫黄原子又は酸素原子のいずれかであり、
R2は、水素原子又はメチル基であり、
R3、R4は、互いに独立に、水素原子若しくはC1~C4アルキル基のいずれかであるか、又は一緒になって、少なくとも1個のさらなる窒素原子を含む6員のアルキル環を形成し、ここで、少なくとも1個のさらなる窒素は、C1~C3アルキル-R5基で置換されており、R5は、水素原子又はヒドロキシル基であり、
nは、0又は1であり、
mは、0であるか、又は1~4の範囲から選択される整数であり、
pは、0であるか、又は1~3の範囲から選択される整数である]、
投与日1日当たり≦20mgの投与量で投与される、式(I)の化合物。
【請求項2】
投与日1日当たり2~20mgの範囲の投与量で投与される、請求項1に記載の使用のための式(I)の化合物。
【請求項3】
式(Ia)を有する、請求項1に記載の使用のための式(I)の化合物
【化2】
[式中、
R1は、メトキシ基、トリフルオロメチル基及びチオエチル基からなる群から選択され、
R2は、水素原子又はメチル基であり、
R3、R4は、共にメチル基であるか、又は一緒になって、1個のさらなる窒素原子を含む6員のアルキル環を形成し、ここで、1個のさらなる窒素はメチル基で置換されており、
nは、0又は1である]。
【請求項4】
投与日1日当たり5~15mgの範囲、好ましくは6~13.5mgの範囲の投与量で投与され、
より好ましくは投与日1日当たり6~7mgの範囲又は投与日1日当たり12.5~13.5mgの範囲の投与量で投与される、
請求項1から3のいずれか一項に記載の使用のための式(I)又は式(Ia)の化合物。
【請求項5】
式(I)又は式(Ia)の化合物が、式(I)又は式(Ia)の薬学的に許容される塩として使用され、薬学的に許容される塩が、塩化物、硫酸塩、メシル酸塩、ベシル酸塩、トシル酸塩、フマル酸塩、マロン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、グリコール酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩及びマンデル酸塩からなる群から選択される1種以上のアニオン、好ましくはリンゴ酸塩及び/又はマレイン酸塩、より好ましくはマレイン酸塩を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用のための式(I)又は式(Ia)の化合物。
【請求項6】
式(I)若しくは式(Ia)の化合物又は式(I)若しくは式(Ia)の薬学的に許容される塩が、レボメプロマジン、トリフルオペラジン及びチエチルペラジン並びにこれらの化合物の薬学的に許容される塩からなる群から選択され、好ましくはレボメプロマジン若しくはチエチルペラジン又はレボメプロマジンの薬学的に許容される塩若しくはチエチルペラジンの薬学的に許容される塩であり、より好ましくはチエチルペラジン又はチエチルペラジンの薬学的に許容される塩である、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用のための式(I)又は式(Ia)の化合物。
【請求項7】
式(I)又は式(Ia)の化合物が、マレイン酸チエチルペラジンとして使用され、マレイン酸チエチルペラジンが、投与日1日当たり≦31.62mg、より好ましくは3.16~31.62mgの範囲、より好ましくは7.9~23.72mgの範囲、より好ましくは9.48~21.34mgの範囲の投与量で投与される、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用のための式(I)又は式(Ia)の化合物。
【請求項8】
式(I)若しくは式(Ia)の化合物又は式(I)若しくは式(Ia)の薬学的に許容される塩が、経口的又は直腸内に投与される、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用のための式(I)又は式(Ia)の化合物。
【請求項9】
請求項1から3のいずれか一項で定義される式(I)若しくは式(Ia)の化合物又は式(I)若しくは式(Ia)の薬学的に許容される塩及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物であって、調製物が、溶液の形態で、2~20mgの範囲の式(I)又は式(Ia)の化合物、好ましくは5~15mgの範囲の式(I)又は式(Ia)の化合物、より好ましくは6~13.5mgの範囲の式(I)又は式(Ia)の化合物を含有する、医薬組成物。
【請求項10】
式(I)若しくは式(Ia)の化合物又は式(I)若しくは式(Ia)の薬学的に許容される塩を含む、注射に好適な溶液の形態の請求項9に記載の医薬組成物。
【国際調査報告】