(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-17
(54)【発明の名称】歯科矯正用ハイブリッドブラケット
(51)【国際特許分類】
A61C 7/14 20060101AFI20250109BHJP
A61C 7/28 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
A61C7/14
A61C7/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024564619
(86)(22)【出願日】2022-03-28
(85)【翻訳文提出日】2024-07-16
(86)【国際出願番号】 US2022022146
(87)【国際公開番号】W WO2023091177
(87)【国際公開日】2023-05-25
(32)【優先日】2021-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524268760
【氏名又は名称】マイケル・スチュアート・ジョンストン
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・スチュアート・ジョンストン
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052JJ03
(57)【要約】
歯科矯正用ブラケットであって、頬側部分、および頬側部分の反対側の舌側部分であって、頬側部分および舌側部分が、ブラケットの長さを画定する、頬側部分および舌側部分と、頬側部分および舌側部分を相互接続する近心コネクタと、ブラケットの幅を画定する、長さに直交して延びる距離であって、近心コネクタの最も近位の端から遠位方向に延びる、距離とを備え、幅は、臼歯の遠心面の近位で終わるように寸法決定される、歯科矯正用ブラケット。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科矯正用ブラケットであって、
頬側部分、および前記頬側部分の反対側の舌側部分であって、前記頬側部分および前記舌側部分が、前記ブラケットの長さを画定する、頬側部分および舌側部分と、
前記頬側部分および前記舌側部分を相互接続する近心コネクタと、
前記ブラケットの幅を画定する、前記長さに直交して延びる距離であって、前記近心コネクタの最も近位の端から遠位方向に延びる、距離とを備え、
前記幅は、臼歯の遠心面の近位で終わるように寸法決定される、歯科矯正用ブラケット。
【請求項2】
前記頬側部分は、前記臼歯の頬側面に隣接するように適合され、前記舌側部分は、前記臼歯の舌側面に隣接するように適合され、前記近心コネクタは、前記臼歯の近心面に隣接するように適合される、請求項1に記載の歯科矯正用ブラケット。
【請求項3】
前記頬側部分は、頬側接着パッドを備える、請求項1に記載の歯科矯正用ブラケット。
【請求項4】
前記舌側部分は、舌側接着パッドを備える、請求項1に記載の歯科矯正用ブラケット。
【請求項5】
前記頬側部分および前記舌側部分を相互接続する咬合コネクタをさらに備える、請求項1に記載の歯科矯正用ブラケット。
【請求項6】
咬合窓が、前記咬合コネクタと前記近心コネクタとの間に画定される、請求項5に記載の歯科矯正用ブラケット。
【請求項7】
前記頬側部分に接続される頬側管をさらに備える、請求項1に記載の歯科矯正用ブラケット。
【請求項8】
前記頬側管は、1つまたは複数の外接弧線スロットを備える、請求項7に記載の歯科矯正用ブラケット。
【請求項9】
前記頬側管は、弾性フックを備える、請求項8に記載の歯科矯正用ブラケット。
【請求項10】
前記舌側部分に接続される舌側シースアタッチメントをさらに備える、請求項1に記載の歯科矯正用ブラケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科技術、およびより詳細には、歯科矯正用ハイブリッドブラケットに関する。
【背景技術】
【0002】
第1および/または第2大臼歯への歯科矯正装置の装着は、大臼歯の遠心面の一部分における、またはこれに沿った歯肉組織の存在によって、しばしば抑制または阻止される。こういった場合の装着は、患者に強い不快感をもたらし、および/または、この領域内の歯肉組織を排除するための外科的処置を必要とする。
【0003】
典型的な装置装着方法としては、バンド、クラウン、およびROC(removed occlusal crown(歯冠除去))が挙げられる。現在の歯科矯正用バンドおよびクラウンは、大臼歯を取り囲み、特に歯の遠位面の歯肉組織に衝突する。簡単に言うと、これらの固定装置の各々が、臼歯後方の歯肉組織に侵入して、患者に不快感をもたらす。
【0004】
故に、これらの方法は、完全に萌出した大臼歯には適切である一方、より若年の歯科矯正患者における部分的に萌出した大臼歯は、現在のデバイスでは、それが痛みを与えるために、難題である。すでに当該処置の知識があるより若年の患者の場合、この痛みは、治療の中断、または患者の治療計画全体を通して常に苦情の種になり得る。
【0005】
したがって、単純に大臼歯の遠位まで延びないことにより、臼歯後方の歯肉に衝突せず、以て、完全に萌出していない大臼歯への装着を依然として可能にしながら患者への望ましくない痛みを排除する歯科矯正用ハイブリッドブラケットが必要とされている。さらには、本発明は、患者にとってより快適な処置を提供し、軟組織手術の必要性を排除する。
【発明の概要】
【0006】
本発明の1つの態様において、歯科矯正用ブラケットは、頬側部分、および頬側部分の反対側の舌側部分であって、頬側部分および舌側部分が、ブラケットの長さ80(
図5に示されるような)を画定する、頬側部分および舌側部分と、頬側部分および舌側部分を相互接続する近心コネクタと、ブラケットの幅90(
図2に示されるような)を画定する、長さに直交して延びる距離であって、近心コネクタの最も近位の端から遠位方向に延びる、距離とを提供し、幅は、臼歯の遠心面の近位で終わるように寸法決定される。
【0007】
本発明の別の態様において、歯科矯正用ブラケットの頬側部分は、臼歯の頬側面に隣接するように適合され、舌側部分は、臼歯の舌側面に隣接するように適合され、近心コネクタは、臼歯の近心面に隣接するように適合され、頬側部分は、頬側接着パッドを備え、舌側部分は、舌側接着パッドを備え、また頬側部分および舌側部分を相互接続する咬合コネクタをさらに提供し、咬合窓が、咬合コネクタと近心コネクタとの間に画定され、また頬側部分に接続される頬側管をさらに提供し、頬側管は、1つまたは複数の外接弧線スロットを備え、頬側管は、弾性フックを備え、頬側管は、ヘッドギア管もしくはリップバンパー管を備え、ならびに/または歯科矯正用ブラケットは、舌側部分に接続される舌側シースアタッチメントを有する。
【0008】
本発明のこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、以下の図面、説明、および請求項を参照してより良好に理解されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】大臼歯の頬側面を例証する、本発明の例示的な実施形態の側方立面図である。
【
図2】大臼歯の舌側面を例証する、本発明の例示的な実施形態の側方立面図である。
【
図3】大臼歯の遠心面を例証する、本発明の例示的な実施形態の側方立面図である。
【
図4】大臼歯の近心面を例証する、本発明の例示的な実施形態の側方立面図である。
【
図5】大臼歯の咬合面を例証する、本発明の例示的な実施形態の上部平面図である。
【
図6A】
図3の線6A-6Aに沿って見た、本発明の例示的な実施形態の詳細図である。
【
図7】大臼歯の咬合面を例証する、本発明の例示的な実施形態の上部平面図である。
【
図8】ブラケットが歯肉縁上の構成にある状態で大臼歯の頬側面を例証する、本発明の例示的な実施形態の側方立面図である。
【
図9】ブラケットが歯肉下の構成にある状態で大臼歯の頬側面を例証する、本発明の例示的な実施形態の側方立面図である。
【
図10】ブラケットが歯肉縁上の構成にある状態で大臼歯の舌側面を例証する、本発明の例示的な実施形態の側方立面図である。
【
図11】ブラケットが歯肉下の構成にある状態で大臼歯の舌側面を例証する、本発明の例示的な実施形態の側方立面図である。
【
図12】接続された装置を伴う、大臼歯の舌側面を例証する、本発明の例示的な実施形態の側方立面図である。
【
図13】接続された装置を伴う、本発明の例示的な実施形態の上部平面図である。
【
図14】大臼歯の頬側面を例証する、本発明の例示的な実施形態の側方立面図である。
【
図15】大臼歯の舌側面を例証する、本発明の例示的な実施形態の側方立面図である。
【
図16】本発明の例示的な実施形態の上部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の詳細な説明は、本発明の例示的な実施形態を実行する、現在企図される最良モードのものである。本説明は、限定的意味でとられるべきでなく、本発明の範囲が添付の請求項によって最良に規定されるため、本発明の一般原理を例証する目的のためだけになされるものである。
【0011】
広範には、本発明の実施形態は、臼歯の複数の表面に係合するように寸法決定および適合される本体部を有する歯科矯正用ハイブリッドブラケットを提供し、本体部は、臼歯の遠心面の近位で終端する。
【0012】
図1~
図16を参照すると、本発明は、複数の歯科矯正用ハイブリッドブラケット10、32、46、54、68を含み得る。各歯科矯正用ハイブリッドブラケット10、32、46、54、68は、臼歯12の非遠心面に係合するように寸法決定および適合される。各歯科矯正用ハイブリッドブラケット10、32、46、54、68は、咬合コネクタ22、40、48、56、および/または近心コネクタ24、42、50、58、70によってそれぞれ橋渡しされる、頬側接着パッド16、34、64、72、および舌側接着パッド26、44、52、60、78を有する。特定の実施形態において、咬合窓22aおよび56aは、咬合コネクタ22、56と、隣接する近心コネクタ24、58との間に画定され得る。頬側、舌側、近心、遠心、および咬合という歯科用語は、臼歯12に対する関連構成要素の場所を示すということ、具体的には、関連構成要素が臼歯12のその部分に隣接するということを理解されたい。
【0013】
特定の実施形態において、頬側管18、36、66、および74は、それぞれ頬側接着パッド16、34、64、72に沿って配設され得る。各頬側管18、36、66、および74は、1つまたは複数のスロット28(頬側管18、36、66、および74の本体部に取り囲まれる)、ならびにフック20、38、76、および/またはヘッドギア管もしくはリップバンパー管30などの補助管を提供し得る。スロット28は、弧線スロットまたは複数の補助弧線スロットであり得、同様に、フック20、38、76および/または補助管30は、補助歯科矯正装置および/またはゴムひも(図示せず)に係合するように寸法決定および適合される。
【0014】
舌側接着パッド26、44、52、60、および78は、除去可能な金属装置構成要素のための装着点を可能にする舌側シースアタッチメントを有し得る。咬合コネクタ22、40、48、56は、省略され得るが、その場合強度が減少される。近心コネクタ24、42、50、58、および70は、咬合コネクタ22、40、48、56が存在する場合、省略され得るが、この場合も強度が減少される。近心コネクタ24、42、50、58、70は、歯肉下レベルまたは歯肉縁上レベルまで延び得る。舌側接着パッド26、44、52、60、78および頬側接着パッド16、34、64、72もまた、歯肉下レベルまたは歯肉縁上レベルまで延び得る。
【0015】
頬側接着パッド16、34、64、72、舌側接着パッド26、44、52、60、78、咬合コネクタ22、40、48、56、ならびに近心コネクタ24、42、50、58、および70は、歯科矯正用セメント/接着剤を用いて臼歯12の関連表面に接着され得る。全体として、本発明は、歯科矯正用ハイブリッドブラケット10、32、46、54、および68全体を、臼歯12の遠心面と整合することなく、故にその表面の歯肉組織14に衝突することなく、臼歯12に接着するように機能する。組織衝突が排除されるため、装置は、患者にとってより快適なものであり、歯科矯正医が装着するのにより容易である。
【0016】
固定式エキスパンダ62、TPA、Herbst装置、MARA装置、ノンコンプライアンス矯正器、ハビット装置、大臼歯遠心移動装置、補助装置、およびスペース維持器などの追加の歯科矯正および/または整形外科装置が、舌側接着パッド26、44、52、60、78、またはハイブリッドブラケット10、32、46、54、および68の他の要素のうちのいずれかに装着され得る。追加の歯科矯正装置は、歯科矯正用ハイブリッドブラケット10、32、46、54、68に直接はんだ付けされ得るか、またはそれは、除去可能な接続として構成され得る。歯科矯正用ハイブリッドブラケット10、32、46、54、68は、臼歯12の完全な萌出前に歯科矯正装置の配置を可能にする。
【0017】
本発明は、ブラケットのコンピュータ数値制御(CNC)成形、鋳造、射出成形、レーザ焼結、および3D印刷を含むがこれらに限定されない、アディティブまたはサブトラクティブ製造によって作製され得る。
【0018】
本発明を使用する方法は、以下を含み得る。上に開示される歯科矯正用ハイブリッドブラケット10、32、46、54、68が提供され得る。臼歯12が清浄された後、臼歯12は、エッチングされ、水洗され、プライム処理され、歯科矯正用ハイブリッドブラケット10、32、46、54、68が、歯科矯正用接着剤/セメントを用いて臼歯12に直接的に接着される。歯科矯正用ハイブリッドブラケット10、32、46、54、68は、保持および強度のために、臼歯12に対して舌側に、頬側に、咬合により、および近心に、接着される。
【0019】
多くの歯科矯正および整形外科装置は、口蓋エキスパンダ、下顎エキスパンダ、ハビット装置、スペース維持装置、下顎前方移動装置、萌出装置、ブレース、および他の固定式歯科矯正装置など、歯科矯正用ハイブリッドブラケットに装着され得る。
【0020】
本明細書内で使用される場合、「約」または「およそ」という用語は、指定した数字のプラスマイナス10%以内の値の範囲を指すか、または、指定の数字が存在しない場合、意図した目的のために良好に動作するために当業者により理解されるような逸脱を示すものと解釈されるべきである。「実質的に」という用語は、全体の最大90%以上を指す。本明細書内の値の範囲の列挙は、限定することは意図されず、むしろ、別途記載のない限り、その範囲内に入る任意およびすべての値を個々に指すものであり、そのような範囲内の各々別個の値は、それが本明細書内に個々に列挙されるかのように、本明細書に組み込まれる。しかしながら、値および/または数値の範囲は、単に例として本明細書内で提供され、説明した実施形態の範囲に対する限定とみなされないということも理解されたい。任意およびすべての例の使用、または本明細書内で提供される例示言語(「例えば」、「など」、または同様のもの)は、実施形態をより良好に明らかにすることが単に意図され、実施形態または請求項の範囲に対して制限を課すものではない。本明細書内の言語は、任意の特許請求されない要素を、開示された実施形態の実践にとって必須であることを示すものと解釈されるべきではない。
【0021】
以下の説明において、「第1」、「第2」、「上」、「下」、「上方」、「下方」、および同様のものなどの用語は、利便性の言葉であり、逆のことが具体的に記載されない限り、限定する用語として解釈されるべきではないということを理解されたい。詳細には、方向の用語は、立面図への参照を通じて解釈され得、用語「上方へ」は、関連図の上部余白の方へ向けられ、用語「下方へ」は、関連図の下部余白へ向けられる。
【0022】
当然ながら、前述は、本発明の例示的な実施形態に関し、修正が、以下の請求項に明記されるような本発明の趣旨および範囲から逸脱することなくなされ得るということを理解されたい。
【国際調査報告】