(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-22
(54)【発明の名称】成分の放出及び活性化のための粒子の遠隔熱活性化
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20250115BHJP
B01J 2/00 20060101ALI20250115BHJP
B01J 13/14 20060101ALI20250115BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20250115BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20250115BHJP
C09J 11/00 20060101ALI20250115BHJP
C09J 133/12 20060101ALI20250115BHJP
C09D 7/40 20180101ALI20250115BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20250115BHJP
C09D 133/12 20060101ALI20250115BHJP
C09D 125/08 20060101ALI20250115BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20250115BHJP
C09J 125/08 20060101ALI20250115BHJP
C09D 191/06 20060101ALI20250115BHJP
C09J 191/06 20060101ALI20250115BHJP
C09D 11/00 20140101ALI20250115BHJP
C08F 20/10 20060101ALI20250115BHJP
C08F 22/10 20060101ALI20250115BHJP
C08F 2/22 20060101ALI20250115BHJP
C08F 20/00 20060101ALI20250115BHJP
C08F 4/42 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
C08L101/00
B01J2/00 B
B01J2/00 A
B01J13/14
C09J11/04
C09J201/00
C09J11/00
C09J133/12
C09D7/40
C09D7/61
C09D133/12
C09D125/08
C09D201/00
C09J125/08
C09D191/06
C09J191/06
C09D11/00
C08F20/10
C08F22/10
C08F2/22
C08F20/00 510
C08F4/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024528485
(86)(22)【出願日】2022-11-14
(85)【翻訳文提出日】2024-07-12
(86)【国際出願番号】 US2022079840
(87)【国際公開番号】W WO2023087007
(87)【国際公開日】2023-05-19
(32)【優先日】2021-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524179835
【氏名又は名称】ナノ・キャタリティクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Nano Catalytics, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【氏名又は名称】高岡 健
(72)【発明者】
【氏名】マロフスキー,アダム グレッグ
(72)【発明者】
【氏名】レビン,スティーブ
(72)【発明者】
【氏名】ポトルリ,シュリナゲシュ クマール
(72)【発明者】
【氏名】シェイファー,ジェイン モリス
【テーマコード(参考)】
4G004
4G005
4J002
4J011
4J015
4J038
4J039
4J040
4J100
【Fターム(参考)】
4G004AA01
4G004BA00
4G005AA01
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4G005BA01
4G005BB19
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4G005DA04Z
4G005DC34Y
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4J100JA01
4J100JA03
4J100JA07
(57)【要約】
本発明は、マトリックス粒子に関し、(i)マトリックス材料(ii)少なくとも一つのサセプタ要素、及び(iii)少なくとも一つの放出可能成分を含んで成り、マトリックス材料は十分に又は部分的にその物理的/化学的特性を変化させ得;少なくとも一つのサセプタ要素は、マトリックス材料に組み込まれ;少なくとも一つの放出可能成分は化学反応に影響を与え得、マトリックス材料に組み込まれ;少なくとも一つのサセプタ要素は、高周波又はマイクロ波放射を介して熱活性化することができる。本発明はまた、マトリックス材料の中でそのようなサセプタ要素を遠隔で熱活性化又は加熱することに関し、サセプタ要素に近接する放出可能成分は、マトリックス材料から離れて又はマトリックス材料に近接して、解放され、活性化されてその機能を果たし、例えば重合のような化学反応を行う。本発明はまたこのようなマトリックス粒子の調製に関する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリックス粒子であって、
(i)少なくとも一つのマトリックス材料、
(ii)少なくとも一つのサセプタ要素、及び
(iii)少なくとも一つのマトリックス材料に組み込まれ、サセプタ要素に近接する少なくとも一つの放出可能及び/又は活性化可能成分
を含んで成り、
マトリックスは十分に又は部分的にその物理的特性を変化させ得、
少なくとも一つのサセプタ要素は、少なくとも一つのマトリックス材料に組み込まれ、少なくとも一つのサセプタ要素は、電磁放射線を介して熱活性化でき得、及び
少なくとも一つの放出可能及び/又は活性化可能成分は、化学反応に影響を与え得る、マトリックス粒子。
【請求項2】
不連続な領域に組み込まれる1又はそれより多いマトリックスを含んで成り、不連続な領域は1又はそれより多い形状を有し、
不連続な領域は、コーティング又は種々の層を含んで成り、
各領域は約0から複数のサセプタ及び/又は放出可能成分を含んで成り、及び、
マトリックス粒子は、全体として、サセプタを含んで成る少なくとも一つの領域及び放出可能成分を含む少なくとも一つの領域を有する、請求項1に記載のマトリックス粒子。
【請求項3】
マトリックス粒子は、有機、無機、モノマー、オリゴマー、ポリマー材料、若しくはそれらの組合せから得られる及び/又はそれを含んで成る、請求項1に記載のマトリックス粒子。
【請求項4】
フラーレン化合物、グラフェン、単層カーボンナノチューブ、複層カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、ドープカーボンナノチューブ、カーボンシート、1又はそれより多い鉄金属、1又はそれより多い鉄金属の酸化物、SPIONS、1又はそれより多い非鉄金属、1又はそれより多い非鉄金属の酸化物、遷移金属、遷移金属酸化物、炭化ケイ素系材料、窒化ホウ素、及び1又はそれより多いそれらの組合せから成る群から、少なくとも一つのサセプタは選択される、請求項1に記載のマトリックス粒子。
【請求項5】
サセプタの大きさは、約0.1nm~約1000μmの範囲内である、請求項4に記載のマトリックス粒子。
【請求項6】
サセプタは、官能化サセプタ、非官能化サセプタ、又は官能化及び非官能化サセプタの双方を含んで成る、請求項4に記載のマトリックス粒子。
【請求項7】
サセプタは、サセプタと直接又は間接的に接触するマトリックス材料の幾何学的中心に存在する、請求項1に記載のマトリックス粒子。
【請求項8】
サセプタ及び/又は放出可能成分は、マトリックス粒子の外側層の中に存在し、サセプタ及び放出可能成分が直接又は間接的に接触する、請求項1に記載のマトリックス粒子。
【請求項9】
マトリックス粒子は、部分的に又は全体的に変形可能材料の1又はそれより多い層において被覆される、請求項1に記載のマトリックス粒子。
【請求項10】
マトリックス粒子は、部分的に又は全体的に変形可能材料の1又はそれより多い層において被覆され、1又はそれより多い層は、サセプタ及び又は放出可能成分を含む、請求項1に記載のマトリックス粒子。
【請求項11】
マトリックス材料は、サセプタも放出可能成分も含まない、請求項10に記載のマトリックス粒子。
【請求項12】
少なくとも一つの放出可能及び/又は活性化可能成分は、単一の化学物質、化学物質の組合せ、有機化学物質、及び/又は無機化学物質である、請求項1に記載のマトリックス粒子。
【請求項13】
化学物質の成分は、1又はそれより多い触媒、共触媒、共反応物質、酸化剤、反応抑制化合物、促進剤、共促進剤、燃料、爆発性物、又は1又はそれより多いそれらの組合せを含んで成る、請求項1に記載のマトリックス粒子。
【請求項14】
マトリックスが変形する、溶解する、溶融する、膨張する、収縮する、破裂する、可塑化する、溶媒和する、光により影響を受ける又はそれらの組合せの場合、放出可能成分を解放する、請求項1に記載のマトリックス粒子。
【請求項15】
マトリックスは、場合により金属、セラミック、又はガラスを含んで成る支持体で支持される、請求項1に記載のマトリックス粒子。
【請求項16】
粒子は場合により放出可能成分を含んで成る1又はそれより多い化学反応を介して更に化学的に表面改質され、場合によりその後に部分的又は全体的にコーティングを形成することにより表面改質されている、請求項1に記載のマトリックス粒子。
【請求項17】
化学的官能性を有する、請求項1に記載のマトリックス粒子。
【請求項18】
放出可能成分は化学的に官能性のモノマーを含んで成り、マトリックス材料は重合材料を含んで成り、場合によりマトリックス粒子は、重合コーティングで被覆される、請求項1に記載のマトリックス粒子。
【請求項19】
請求項1に記載のマトリックス粒子を調製する方法であって、
(i)乳化重合、分散重合、及び/又は懸濁重合、又は
(ii)コア-シェル重合、
を含む、方法。
【請求項20】
請求項1に記載のマトリックス粒子を調製する方法であって、
(i)ポリマー微粒子をサセプタ及び放出可能成分を含んで成る材料でコーティングすること、
(ii)サセプタ及び放出可能成分を組み込んだ微粒子を、モノマー、オリゴマー、又はポリマー材料でカプセル化すること、及び/又は
(iii)サセプタ及び放出可能成分を融合すること、
(iv)サセプタ及び放出可能成分を、多孔質微小球のコア中の内部細孔又は表面の外部細孔内に封入すること
を含んで成る、方法。
【請求項21】
請求項1に記載のマトリックス粒子を調製する方法であって、共重合する工程を含んで成り、
共重合する工程は、乳化重合、分散重合、懸濁重合又はそれらの組合せを含んで成る、方法。
【請求項22】
化学反応に影響を与える方法であって、
(i)バルク反応混合物を供すること、
(ii)請求項1に記載のマトリックス粒子を供すること、及び
(iii)バルク反応混合物にマトリックス粒子を組み込むこと
を含んで成る、方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法であって、
(iv)バルク反応混合物に少なくとも1つの周波数のRF放射線及び/又は少なくとも1つの周波数のMW放射線を少なくとも1回照射し、マトリックス粒子内に組み込まれたサセプタ要素を熱活性化することを更に含んで成る、方法。
【請求項24】
少なくとも1つの周波数のRF放射線及び/又は少なくとも1つの周波数のMW放射線を照射させることを周期的に実施し、周期が規則的又は不規則である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
電磁放射線は、約1m~1mmの範囲の波長、及び50MHzと30GHzとの間の範囲の周波数を有して成る、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
電磁放射線の周波数は、約915MHz~約2450MHzの範囲内である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
電磁放射線の周波数は、約915MHz~約2450MHzの範囲内及び/又は出力は1~10000Wの範囲内である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
電磁放射線を10秒~60分間照射する、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
反応は重合反応である、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
請求項1に記載のマトリックス粒子から放出可能成分を解放する方法であって、
(a)バルク反応混合物中でマトリックス粒子を分散すること、及び
(b)バルク反応混合物を少なくとも1つの周波数のRF放射線及び/又は少なくとも1つの周波数のMW放射線で少なくとも1回照射し、マトリックス粒子内に組み込まれたサセプタ要素を熱活性化すること
を含んで成る、方法。
【請求項31】
バルク反応混合物であって、
請求項1に記載のマトリックス粒子を含んで成る、バルク反応混合物。
【請求項32】
RF及び/又はMW放射線に影響されない要素を更に含んで成る、請求項31に記載のバルク反応混合物。
【請求項33】
1又はそれより多い可変マトリックス材料は、ワックス、1若しくはそれより多くのポリメチルメタクリレート(PMMA)、スチレン、又は1若しくはそれより多いポリマー、あるいはそれらのコポリマーを含んで成る、請求項1に記載のマトリックス粒子。
【請求項34】
少なくとも一つの放出可能な化学成分は、活性剤又は触媒を含んで成る、請求項1に記載のマトリックス粒子。
【請求項35】
触媒は、1又はそれより多いCu-アセチルアセトン、Cu-2-エチルヘキサノエート、フェロセン、ジメチルアミノメチルフェロセン、又は1若しくはそれより多いそれらの組合せを含んで成る、請求項1に記載のマトリックス粒子。
【請求項36】
請求項25に記載の方法を用いて調製される、物品。
【請求項37】
全体又は一部が、
(i)少なくとも1つの化学的性質を有する重合性組成物又はいくつかの重合性組成物;
(ii)強化コンポジット物品;
(iii)ラミネート物品;
(iv)硬質・ラミネート物品;
(v)可撓性ラミネート物品;
(vi)発泡体;又は
(vii)それらの組合せ
である、請求項36に記載のように調製される物品。
【請求項38】
請求項1に記載のマトリックス粒子を含んで成る組成物であって、組成物は、全体又は一部が接着剤、シーラント、コーティング、塗料、インク、プラスチック、成形プラスチック、熱硬化性プラスチック、成形された熱硬化性プラスチック、又は他のポリマー形成組成物である組成物。
【請求項39】
放出可能及び/又は活性化可能成分は、遷移金属錯体;遷移金属アルコキシド;スタナス(II)ビス(2-エチルヘキサノエート);カルボキシレート、アルコシキド及びスズ、ビスマス、亜鉛、チタンの錯体;ブロック化超酸;ドデシルベンゼンスルホン酸;ジノニルナフタレンスルホン酸;N,N’,N’’,-トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロトリアジン;有機塩基;1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン;1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5);(1,4-ジアザビシクロ2.2.2オクタン);及びそれらの組み合わせから成る群から選択される触媒である、請求項1に記載のマトリックス粒子。
【請求項40】
多層ポリマー組成物であって、
請求項1の第1マトリックス粒子、及び請求項1の1又はそれより多い追加のマトリックス粒子を含んで成り、追加のマトリックス粒子は、1又はそれより多いマトリックス粒子層を形成する第1マトリックス粒子上に位置する、多層ポリマー組成物。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2021年11月11日に出願した米国仮出願第63/278,235号の利益を主張し、この参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、マトリックス粒子に関し、(i)マトリックス材料、(ii)少なくとも一つのサセプタ要素、及び(iii)少なくとも一つの放出可能成分を含んで成り、上記マトリックス材料は十分に(又は完全に、fully)又は部分的にその物理的又は化学的特性を変化させ得;上記少なくとも一つのサセプタ要素は、上記マトリックス材料に組み込まれ;上記少なくとも一つの放出(又は解放、releasable)可能成分は化学反応の影響を与え得、上記マトリックス材料に組み込まれ;上記少なくとも一つのサセプタ要素は、高周波又はマイクロ波放射を介して熱活性化することができる。本発明はまた、マトリックス材料の中でそのようなサセプタ要素を遠隔で熱活性化又は加熱することに関し、サセプタ要素に近接する放出可能成分は、マトリックス材料から離れて又はマトリックス材料に近接して解放され、活性化されてその機能を果たし、例えば重合のような化学反応を行う。本発明はまたそのようなマトリックス粒子の調製に関する。
【背景技術】
【0003】
複合材料(又はコンポジット、composite)の製造では、全体的な加熱を省略(又は排除、eliminate)すると、より高い処理能力(又はスループット、throughput)がもたらされ、成形材料を型から取り出す前に、機器の一部又は成形材料を冷却する必要がなくなる。近年、2成分の混合により反応系を形成して、光による触媒の活性化、又は組成物若しくは同様のものを全体的に加熱することによって重合を開始できる。各方法は元々制限がある。全体的な加熱は、長時間を要し、最大量のエネルギー、及び関連する複雑な機器を用い、加熱と冷却を介して、重合による内部応力に起因する過剰な材料により限定された性能となる。全体的な加熱を、室温よりも低いガラス転移温度を有するエラストマー基板の接着用途には用いることができない。2成分の混合は、同じ又はより複雑であり得、均一な硬化及び適切な各々の混合率を達成するために、複雑な混合又は測定機器を必要とする。元々、光は透明な対象物に限定され、より薄い対象物のみを硬化できるに過ぎず、光、通常は1%を超える過剰な触媒量、通常は過剰な熱エネルギーのインプットを避けるための特別な容器を必要とし、再び複雑な機器を必要とする。一方で、マトリックス粒子の中に組み込まれる活性化触媒及び共触媒は、製品の寿命を向上させる。例えば、熱硬化性プリプレグ及びフィルム接着剤のようなBステージの製品では、寿命及び可使時間を向上させるため、製品を使用するまで冷凍保存する。
【0004】
複合材料の製造において、全体的な加熱をなくすことで、金型からエレメントを脱型する前の冷却工程が不要になり、より高い処理能力を達成することに役立つ。
【0005】
工業生産又は処理では、全体的な加熱を利用しないこと、より大きな対象物を、必要に応じて光を用いる場合と同様に硬化させること、複雑な硬化機器を用いないこと、複雑で金属ベースの成形機器を必要としないこと、2液式又は2パート・システムでは限定される可使時間(又はポットライフ、pot life)又は2パート・システムのように、触媒量を最小限にすることが望まれている。
【0006】
接着において、全体的な加熱は、より高いガラス転移温度を有する厚い基板の使用を制限する。分子量がより大きい材料は、例えば粉砕カーボン・ファイバー及びガラス・ファイバーのようなフィラー又は補強剤をより高い充填量で受け入れる際に障害となる。低分子材料を使用することで、より高いフィラー含有量を使用できる。フィラーの均一な混合、及びレオロジー的な問題のない高い性能は、低分子材料を使う上で利点となる。
【0007】
対象物が十分に透明で、実質的に光を透過させない限り、不透明な対象物を介する化学的な活性化は、上述したように制限されることが多い。不透明な材料に(特に実質的な距離を経て)進入することができる技術が必要である。これは新しい能力を提供し、可能であれば加熱を必要とせず、また、光透過の制限なく、多様なフィラーを様々な程度で充填された対象物において重合を開始できるようになる。
【0008】
現在の技術のように、化学反応における成分の解放は、粒子の内部から生じるイベントに対して、化学反応チャンバーの外側の環境により引き起こさなければならない。これはバルク加熱と同様である、又は外部の光を用いる場合、薄さによって制限される。
【0009】
全体として、化学物質を活性化し、また、全体的な加熱なく、エネルギー使用の最小限化、材料の最小限化、及び触媒の使用の最小限化を達成し、望まれるような高速な化学を達成し、機器の複雑さをなくし、その費用及びスペースを最小限にし、侵襲的な手順を最小限にする又はなくして、必要とされる活性化を達成する必要がある。
【発明の概要】
【0010】
一実施態様では、本発明はマトリックス粒子に関し、(i)マトリックス材料(ii)少なくとも一つのサセプタ要素、及び(iii)マトリックス材料に組み込まれ、サセプタ要素に近接する少なくとも一つの放出可能及び/又は活性化可能成分を含んで成り、マトリックスは十分に(又は完全に、fully)又は部分的にその物理的特性を変化させ得、少なくとも一つのサセプタ要素は、マトリックス材料に組み込まれ、少なくとも一つのサセプタ要素は、電磁放射線を介して熱活性化され得、少なくとも一つの放出可能及び/又は活性化可能成分は化学反応に影響を与え得る。
【0011】
別の実施態様では、本発明は上述のマトリックス粒子に関し、不連続な(又は離散した、discrete)領域に組み込まれた1又はそれより多いマトリックスを含んで成り、不連続な領域は1又はそれより多い形状であり、不連続な領域は、コーティング又は種々の層を含んで成り、各領域は約0から複数のサセプタ及び/又は放出可能成分を含んで成り、また、マトリックス粒子は、全体として、サセプタを含んで成る少なくとも一つの領域及び放出可能成分を含む少なくとも一つの領域を有して成る。
【0012】
更に別の実施態様では、本発明は上述のマトリックス粒子に関し、マトリックス粒子は、有機、無機、モノマー、オリゴマー、ポリマー材料、若しくはそれらの組合せから得られる及び/又はそれを含む。
【0013】
別の実施態様では、本発明は上述のマトリックス粒子に関し、少なくとも一つのサセプタは、フラーレン化合物、グラフェン、単層カーボンナノチューブ、複層カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、ドープカーボンナノチューブ、カーボンシート、1又はそれより多い鉄金属、1又はそれより多い鉄金属の酸化物、超常磁性鉄酸化物(SPIONs)、1又はそれより多い非鉄金属、1又はそれより多い非鉄金属の酸化物、遷移金属、遷移金属酸化物、炭化ケイ素系材料、窒化ホウ素、及び1又はそれより多いこれらの組合せで構成される群から選択される。
【0014】
更なる別の実施態様では、本発明は上述のマトリックス粒子に関し、サセプタの大きさ(又はディメンション、dimension)は、約0.1nm~約1000μmの範囲内である。
【0015】
一実施態様では、本発明は上述のマトリックス粒子に関し、サセプタは、官能化サセプタ、非官能化サセプタ、又は官能化及び非官能化サセプタ双方を含んで成る。
【0016】
別の実施態様では、本発明は上述のマトリックス粒子に関し、サセプタは、サセプタと直接又は間接的に接触するマトリックス材料の幾何学的中心に存在する。
【0017】
更に別の実施態様では、本発明は上述のマトリックス粒子に関し、サセプタ及び/又は放出可能成分は、マトリックス粒子の外側層に存在し、サセプタ及び放出可能成分は直接又は間接的に接触する。
【0018】
一実施態様では、本発明は上述のマトリックス粒子に関し、マトリックス粒子は、部分的に若しくは全体的に変形可能材料の1又はそれより多い層で被覆される。
【0019】
別の実施態様では、本発明は上述のマトリックス粒子に関し、マトリックス粒子は、部分的に若しくは全体的に変形可能材料の1又はそれより多い層で被覆され、1又はそれより多い層が、サセプタ及び又は放出可能成分を含む。
【0020】
更なる別の実施態様では、本発明は上述のマトリックス粒子に関し、マトリックス材料は、サセプタも放出可能成分も含まない。
【0021】
一実施態様では、本発明は上述のマトリックス粒子に関し、少なくとも一つの放出可能及び/又は活性化可能成分は、単一の化学物質、化学物質の組合せ、有機化学物質、及び/又は無機化学物質である。
【0022】
別の実施態様では、本発明は上述のマトリックス粒子に関し、化学物質の成分は、1又はそれより多い触媒、共触媒、共反応物質、酸化剤、反応抑制化合物、促進剤、燃料、爆発性物、又は1又はそれより多いそれらの組合せを含んで成る。
【0023】
更に別の実施態様では、本発明は上述のマトリックス粒子に関し、マトリックスが変形する、溶解する、溶融する、膨張する、収縮する、破裂する、可塑化する、溶媒和する又はそれらの組合せの場合、放出可能成分は解放される。
【0024】
一実施態様では、本発明は上述のマトリックス粒子に関し、電磁放射線の周波数は、約300MHz~約300GHzの範囲内である。
【0025】
別の実施態様では、本発明は上述のマトリックス粒子に関し、電磁放射線の周波数は、約915MHz~約2450MHzの範囲内である。
【0026】
更なる別の実施態様では、本発明は上述のマトリックス粒子に関し、電磁放射線の周波数は、約915MHz~約2450MHzの範囲内及び/又は出力は1~10000Wの範囲内である。
【0027】
別の実施態様では、本発明は上述のマトリックス粒子に関し、マトリックス粒子は上述の周波数の電磁放射線に10秒~60分間さらされる。
【0028】
一実施態様では、本発明は上述のマトリックス粒子に関し、マトリックスは、場合により金属、セラミック、又はガラスを含んで成る支持体で支持される。
【0029】
別の実施態様では、本発明は上述のマトリックス粒子に関し、粒子は、場合により放出可能成分を含んで成る1又はそれより多くの化学反応を介して、更に化学的に表面改質され、化学反応は、場合によりその後部分的又は全体的なコーティングを形成することを含む。
【0030】
更なる別の実施態様では、本発明は上述のマトリックス粒子に関し、化学的官能性を有する。
【0031】
一実施態様では、本発明は上述のマトリックス粒子に関し、放出可能成分は化学的に官能性のモノマーを含んで成り、マトリックス材料は重合材料を含んで成り、場合によりマトリックス粒子は、重合コーティングで被覆される。
【0032】
別の実施態様では、本発明は上述のマトリックス粒子を調製する方法に関し、この方法は、
(i)乳化重合、分散重合及び/又は懸濁重合、又は
(ii)コア-シェル重合
の工程を含む。
【0033】
更なる別の実施態様では、本発明は上述のマトリックス粒子を調製する方法に関し、この方法は、
(i)ポリマー微粒子をサセプタ及び放出可能成分を含んで成る材料でコーティングすること、
(ii)サセプタ及び放出可能成分が組み込まれた微粒子を、モノマー、オリゴマー又はポリマー材料でカプセル化すること、
(iii)サセプタ及び放出可能成分を融合すること、及び/又は
(iv)サセプタ及び放出可能成分を、多孔質微小球のコアの内部細孔又は表面の外部細孔内に取り込むことを含んで成る。
【0034】
一実施態様では、本発明は上述のマトリックス粒子を調製する方法に関し、共重合する工程を含んで成り、共重合する工程は、乳化重合、分散重合、懸濁重合又はそれらの組合せを含んで成る。
【0035】
一実施態様では、本発明は化学反応に影響を与える方法に関し、
(i)バルク反応混合物を供すること、
(ii)上述のマトリックス粒子を供すること、及び
(iii)バルク反応混合物にマトリックス粒子を組み込むこと
を含んで成る。
【0036】
別の実施態様では、本発明は上述の化学反応に影響を与える方法に関し、
(iv)バルク反応混合物に少なくとも1つの周波数のRF放射線、及び/又は少なくとも1つの周波数のMW放射線を少なくとも1回用いて影響を与えて、マトリックス粒子内に組み込まれたサセプタ要素を熱活性化することを更に含んで成る。
【0037】
更なる別の実施態様では、本発明は上述の化学反応に影響を与える方法に関し、少なくとも1つの周波数のRF放射線及び/又は少なくとも1つの周波数のMW放射線により影響を与えることを周期的に実施し、周期が規則的又は不規則である。
【0038】
一実施態様では、本発明は上述の化学反応に影響を与える方法に関し、電磁放射線は、約1m~1mmの範囲の波長、及び50MHz~30GHzの間の範囲の周波数を含んで成る。
【0039】
別の実施態様では、本発明は上述の化学反応に影響を与える方法に関し、電磁放射線の周波数は、約915MHz~約2450MHzの範囲内である。
【0040】
更なる別の実施態様では、本発明は上述の化学反応に影響を与える方法に関し、電磁放射線の周波数は、約915MHz~約2450MHzの範囲内、及び/又は出力は1~10000Wの範囲内である。
【0041】
一実施態様では、本発明は上述の化学反応に影響を与える方法に関し、反応は重合反応である。
【0042】
別の実施態様では、本発明は上述のマトリックス粒子から放出可能成分を解放する方法に関し、
(a)バルク反応混合物の中でマトリックス粒子を分散させること、及び
(b)バルク反応混合物を少なくとも1つの周波数のRF放射線及び/又は少なくとも1つの周波数のMW放射線を用いて、少なくとも1回影響を与え、マトリックス粒子の中に組み込まれたサセプタ要素を熱活性化すること
を含んで成る。
【0043】
更なる別の実施態様では、本発明は上述のマトリックス粒子に関し、1又はそれより多い可変マトリックス材料は、ワックス、1若しくはそれより多くのポリメチルメタクリレート(PMMA)、スチレン、又は1若しくはそれより多いこれらのポリマー若しくはコポリマーを含んで成る。
【0044】
一実施態様では、本発明は上述のマトリックス粒子に関し、少なくとも一つの放出可能な化学成分は、活性剤又は触媒を含んで成る。
【0045】
別の実施態様では、本発明は上述のマトリックス粒子に関し、触媒は、1又はそれより多いCu-アセチルアセトン、Cu-2-エチルヘキサノエート、フェロセン、ジメチルアミノメチルフェロセン、又は1若しくはそれより多いそれらの組合せを含んで成る。
【0046】
更なる別の実施態様では、本発明は上述の方法を用いて調製される物品に関する。
【0047】
更なる別の実施態様では、本発明は上述の方法を用いて調製される物品に関し、全体又は一部が、
(i)少なくとも1つの化学的性質を有する重合性組成物又はいくつかの重合性組成物;
(ii)強化コンポジット物品;
(iii)ラミネート物品;
(iv)硬質・ラミネート物品;
(v)可撓性ラミネート物品;
(vi)発泡体;又は
(vii)それらの組合せ
である。
【0048】
一実施態様では、本発明は上述のマトリックス粒子を含んで成る組成物に関し、組成物は、全体又は一部が接着剤、シーラント、コーティング、塗料、インク、プラスチック、成形プラスチック、熱硬化性プラスチック、成形された熱硬化性プラスチック、又は他のポリマー形成組成物である。
【0049】
別の実施態様では、本発明は上述のマトリックス粒子に関し、放出可能及び/又は活性化可能成分は、遷移金属錯体;遷移金属アルコキシド;スタナス(II)ビス(2-エチルヘキサノエート);カルボキシレート、アルコシキド及びスズ、ビスマス、亜鉛、チタンの錯体;ブロック化超酸;ドデシルベンゼンスルホン酸;ジノニルナフタレンスルホン酸;N,N’,N’’,-トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロトリアジン;有機塩基;1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン;1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5);(1,4-ジアザビシクロ2.2.2オクタン);及びそれらの組み合わせから成る群から選択される触媒である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【0051】
【
図2A】
図2Aは現在利用されている反応射出成形の方法を示す。
【0052】
【
図3A】
図3Aは現在利用されているフィルム・ラミネート接着剤を示す。
【
図3B】
図3Bは本発明の結果として簡素化される方法を示す。
【0053】
【
図4】
図4は本明細書で考えられる本発明のマトリックスの例示的な一般構造及び被覆マトリックスを示す。
【0054】
【
図5A】
図5Aは本明細書で考えられる本発明のマトリックスの例示的な組成構造を示す。
【
図5B】
図5Bは本明細書で考えられる本発明のマトリックスの例示的な組成構造を示す。
【0055】
【
図6】
図6は本明細書で考えられる本発明の例示的なマトリックス、及び被覆マトリックスを示す。マトリックスは対象物にコーティングされ得る、又は種々の対象物のコーティングに配置され得る。
【0056】
【
図7】
図7は例示的な中空粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
【0057】
【
図8】
図8は例示的な中空粒子+SPIONs+銅のSEM画像を示す。
【0058】
【
図9】
図9はカーボンナノチューブ(CNTs)でコーティングされた市販のPMMA(MX500-ML、Soken(綜研))のSEM画像を示す。
【0059】
【
図10】
図10はカーボンナノ構造物(CNS)のサセプタを用いた加熱カーブのグラフである。
【0060】
【
図11】
図11は本発明の粒子のシェル中における、サセプタの選択的な配置を示す概略図である。
【0061】
【
図12】
図12は非共有結合的な相互作用を介して作られるシートを示す略図である。
【0062】
【
図13】
図13は本発明の粒子のシェル中に配置される官能化CNTsの概略図である。
【0063】
【
図14】
図14は触媒をキレートするための微粒子のポスト官能化(post-functionalization)を示す概略図である。
【0064】
【
図15】
図15はミセル微粒子を用いるCNTs及びサセプタの捕捉を示す概略図である。
【0065】
【
図16】
図16はミセル内における微粒子及びCNTsでの触媒の捕捉を示す概略図である。
【0066】
【
図17】
図17はミセル微粒子を用いる、触媒のキレート化及びサセプタの捕捉の概略図である。
【0067】
【
図18】
図18は市販の水性のエマルジョンを用いて生成するコアシェル粒子を示す。
【発明の詳細な説明】
【0068】
一般的に言えば、本発明はマトリックス粒子に関し、(i)マトリックス材料、(ii)少なくとも一つのサセプタ要素、及び(iii)オプションとしての、マトリックス材料に組み込まれる少なくとも一つの放出可能成分を含んで成り、マトリックス材料は十分に又は部分的にその物理的特性及び/又は化学的特性を変化させ得;少なくとも一つのこのサセプタ要素は、マトリックス材料に組み込まれ;そして少なくとも一つの放出可能成分は化学反応に影響を与え得;少なくとも一つのサセプタ要素は、RF又はMW放射線を介して熱活性化できる。
【0069】
別の実施態様では、上述のマトリックス粒子は、化学反応する可能性の高い構成反応物質を含む化学反応混合物の中(例えば重合反応のモノマー又はオリゴマーの中)に組み込まれる、又は分散される。本発明の更なる実施態様では、分散マトリックス粒子を有する化学反応混合物に、無線周波数の電磁放射線又はマイクロ波放射を照射する。EMR(電磁放射線)は、マトリックス粒子内のサセプタ要素を加熱する。次に、この加熱は活性成分を解放し、次に、それは反応混合物中で反応を触媒する(又は触媒作用を及ぼす、catalyze)。従って、RF又はMW放射線がマトリックス粒子からの成分を解放する場合にのみ反応が開始する。
【0070】
定義
【0071】
”可変マトリックス(alterable matrix)”又は”マトリックスを変える(altering matrix)”とは、マトリックス粒子内のマトリックス材料が、十分に又は部分的に変形され、溶解され、溶融され、膨張され、収縮され、破裂され、可塑化され、又は溶媒和され得ることを意味する。換言すると、その物理的及び/又は化学的形態を変えて、活性成分を解放するように変化できるようになる。
【0072】
”サセプタ”とは、電磁放射線、具体的にはラジオ波(又は高周波、radio frequency)及び/又はマイクロ波によって加熱され、又は熱活性化されるように変わるマトリックス粒子内の粒子を意味する。
【0073】
”化学反応に影響を与える”とは、放出可能成分が化学反応を活性化する又は誘発する(trigger)、触媒する、共触媒する、促進する、加速する、共加速する、抑制する、及び/又は加熱できることを意味する。
【0074】
”マトリックス材料”又は”マトリックス”とは、マトリックス粒子中の基材を意味し、その中にサセプタ要素及び/又は放出可能成分及び/又は活性化可能成分が組み込まれる。基材は例えば、モノマー、オリゴマー又はポリマー、又は無機物であり得る。
【0075】
”組み込まれる”とは、サセプタ又は放出可能及び/又は活性化可能成分が、マトリックスと密接して、又は関連して接触した状態で、例えばマトリックスの細孔で、マトリックス材料内で封入又は取り込まれること、あるいは1又はそれより多いマトリックス材料に結合すること(マトリックス内、又はマトリックス材料の1又はそれより多い表面であってよく、十分にマトリックス材料内に封入されていてよい)あるいは物理的な結合により部分的にマトリックス粒子内に埋設され、又は封入マトリックス粒子の表面で部分的に突き出ていてよいことを意味する。
【0076】
”マトリックス粒子”とは、マトリックス材料、サセプタ要素、及び放出可能及び/又は活性化可能成分を含んで成るナノ又はマイクロ粒子(微粒子)を意味し、それは本発明にて説明するように、バルク反応混合物の熱活性化のために用いられる。
【0077】
”EM”とは、ラジオ波(RF)又はマイクロ波(MW)のような高い周波数の電磁放射線を意味する。
【0078】
”放出可能及び/又は活性化可能成分”とは、マトリックス微粒子中に含まれる成分を意味し、それはマトリックス粒子中のサセプタの遠隔の熱活性化(その後放出可能及び/又は活性化可能成分を解放する又は活性化する)において、化学反応に影響を与える役割を果たす。”放出可能及び/又は活性化可能成分”という用語に代わるものとして、”活性成分(active ingredient)”又は”解放される成分(releasable ingredient)”を用いる。換言すると、活性成分は、活性特性だけでなく解放特性をも有する。活性成分は、後述するように多くの実施態様にて、活性を有する化学成分である。
【0079】
”バルク反応混合物”とは、活性成分の解放時にマトリックス粒子により影響を受け得る反応混合物を意味する。バルク反応混合物中では、マトリックス粒子が分散し、その後サセプタの遠隔活性化によって、活性成分を解放する(例えばバルク反応混合物を触媒する)。例として、バルク反応混合物は重合前の材料、及び分子量を増加するための重合後の材料ですらあり得る(例えば、有機又は無機、又は有機-無機の複合反応等いずれかの他の化学反応)。バルク反応混合物は、透明、半透明、又は不透明であり得る。又はバルク反応混合物は、反応が進むにつれて、その透明性が変化し得る。
【0080】
別の実施態様では、本発明は化学反応混合物中にマトリックス粒子を組み込み、化学反応に影響を与える方法に関する。例えば、重合する前に、マトリックス粒を、モノマー混合物の中に分散させてよい。別の実施態様では、本発明は化学反応を活性化することに関し、化学反応は、例えば、高周波(RF)又は、マイクロ波放射のような高周波数電磁放射線(EMR)により、マトリックス粒子中のサセプタを加熱し、その後、放出可能及び/又は活性化可能成分を解放する又は活性化する重合反応である。
【0081】
本開示は、化学反応(化学事象を均一に、必要に応じて活性化する例えば重合反応)を実施するための材料及び方法に関する。本発明で考えられる反応は、反応物質の塊の全体を加熱する必要なく、高充填された材料、不透明材料等の場合の、赤外線、紫外線、又は可視光透過性のような光の制限なく実施できる。
【0082】
いくつかの実施態様では、本発明は、2つの反応成分を混合する必要なく重合する材料及び方法に関し、また、いくつかの実施態様では、2成分を混合する能力を有するが、即時反応又は加速反応は起こらず、及び/又は必要に応じて遅延型反応を起こす能力を有する。例えば、本開示のいくつかの実施態様は、重合において分単位又は時間単位で硬化時間を減らし、金型成形において一日単位又は数週間単位で硬化時間を減らすための低分子量材料及び高性能材料を供する。一実施態様では、本発明は化学成分の活性化による化学的事象を抑制できる。
【0083】
いくつかの実施態様では、本開示は重合のための材料及び方法を供し、例えば、射出成形及び反応射出成形において、高い圧力を結果的に高温と共に必要とする高分子量材料の必要性を削減又は排除し、代わりに工程中又は金型内で、及び必要に応じて分子量を増加させることができる。好ましくは、マトリックス粒子は、低分子量であるマトリックス材料を有する。本発明の低分子量のマトリックス粒子は、フィラーの均一な混合を提供し、不要なレオロジーの問題なく、より高性能な接着を提供する。本発明は、複雑性が少ない機器及び必要に応じた硬化が可能となり、それが材料の調製、保管、包装、及び取り扱いを簡素化する。
【0084】
本開示により提供される低分子量のマトリックス粒子を、接着剤として様々な用途と共に様々な材料に適用できる。本発明はまた局所的な加熱又は熱活性化を供する。本明細書で説明するマトリックス粒子は、必要に応じて重合を活性化する能力を供する。本発明で供される重合は、基板、フィラー、他の添加剤等を介して活性化できる。換言すると、バルク化学混合物又はポア重合(pore-polymerization)混合物の不透明性又は透明性の欠如は、反応の進行に大きな影響を与えない。本明細書で記載される低分子量のマトリックス粒子は、全体的な加熱又は熱活性化に依存しない重合を提供する。
【0085】
本発明の低分子量材料、つまりマトリックス粒子は、パターン状で基板に適用され得、従ってパターン化した接着剤を供する。本発明の低分子量のマトリックス粒子の実施態様は、パターン状に適用され得、それ故に2次元及び3次元の選択的な活性化の双方を含むパターン化した接着剤を供する。
【0086】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載のマトリックス粒子は、2又はそれより多い層を有する硬質又は可撓性ラミネートを含む加工製品を製造するための接着剤のオンデマンド重合を供する。いくつかの実施態様では、本明細書で説明するマトリックス粒子は、感圧材料及びそれらの関連する製品のための接着剤の重合を供する。
【0087】
一実施態様では、本開示の低分子量のマトリックス粒子は、接着剤、コーティングなどの硬化を改善する。これには基板も含んでおり、高充填された材料、不透明材料等を介してエネルギーを通過させる。
【0088】
本発明の実施態様は、改良された非金属成形、ポリマー成形、及び高速金型の製造及び供給のための材料及び方法を供する。
【0089】
本方法はまた、周辺条件下で行うこともできる。局所的な化学事象を起こす熱活性化を、高周波(RF)放射線又はマイクロ波放射線(MW)のような電磁放射線を適用することにより達成する。
【0090】
例えば、カーボンナノチューブのようなサセプタ要素の加熱に起因して溶解する、溶融する、膨張する、衝突する、破裂する、及び/又は変形するマトリックスが、触媒のような化学成分を解放又は活性化し、その後、例えば重合反応又は急速なエネルギーを生成するような反応を触媒する。
【0091】
重合エネルギーの最小化及び精密な重合の制御
【0092】
一実施態様では、本発明は化学反応、及びそれらの効果を活性化するのに必要なエネルギーを最小限に抑えることに関し、具体的には、全体的な加熱を避けて、例えばUV光のような限られたエネルギーの透過を最小限にし、望ましいオーダー又はシリーズが何であれ、必要に応じて1又はそれより多い化学事象を活性化する能力に関する。
【0093】
不透明対象物を介した化学及び重合の活性化
【0094】
UV硬化化学において、制御されない高速反応が、高度な架橋系を生じ得る。靭性を必要とするいくつかの用途では、制御されないUV硬化の反応が、不必要なガラス化及び脆性を引き起こす。本発明の実施態様は、反応混合物の中において、マトリックス粒子の要素としての触媒/共触媒の均一な分布を供する。理論に拘束されるものではないが、反応混合物中での、この均一な分布が、複数のサイトで重合反応を同時に開始することを可能とし、それが一様なポリマー・ネットワークの生成に役立つ。理論に拘束されるものではないが、複数のサイトで同時に反応することは、結果として発熱を制御し、効率を改善する。
【0095】
本発明の実施態様は、マトリックス材料の1又はそれより多い深さにおける、重合用触媒の活性化を供する。触媒は、マトリックス材料の表面上又は表面より下の深さの位置、又はマトリックス材料の中に埋設されてよい。例えば、触媒は、表面より下の深さ約0.01μmまで、約0.01μm~約0.05μm、約0.05μm~約0.1μm、約0.1μm~約0.2μm、約0.2μm~約0.3μm、約0.3μm~約0.4μm、約0.4μm~約0.5μm、約0.5μm~約0.6μm、約0.6μm~約0.7μm、約0.7μm~約0.8μm、約0.8μm~約0.9μm、約0.9μm~約1μm、約1μm~約5μm、約5μm~約10μm、又は約10μmよりも深い位置、及びこれらの間のいずれかの深さの増加幅に位置されてよい。
【0096】
一実施態様では、本発明は固体状態の重合に関し、その場合、分子量が時間の経過と共に増加し、そこでポリマーは既に固体状態である又は高粘度状態であるが、マトリックスの微粒子を含むこと、RF又はMWによる処理によって、重合収率又は分子量を、例えばその場で、増加させることができる。
【0097】
粒子組成及び構造
【0098】
ここで
図5A及び5Bを参照すると、いくつかの実施態様では、本発明のマトリックス粒子は、非常に種々の構成であり得る。マトリックス材料は、場合により変形可能である。いくつかの実施態様では、複数のマトリックスを一実施態様で用いてよい。いくつかの実施態様では、1又はそれより多いサセプタ要素を用いてよい。いくつかの実施態様では、1又はそれより多い放出可能及び/又は活性化可能成分をマトリックス内又はマトリックス上に含めてよい。いくつかの実施態様では、1又はそれより多い放出可能及び/又は活性化可能成分は、1又はそれより多い触媒、共触媒、共反応物質、燃料、爆発性物、他の成分及びそれらの混合物を含む。いくつかの実施態様では、放出可能及び/活性化可能成分は、例えば溶解、膨張、分解(又は衝突、cracking)、光、及び/又は1又はそれより多いそれらの組合せを含む1又はそれより多い手段によって解放される。
【0099】
可変マトリックス材料
【0100】
本明細書で用いられるような、”可変マトリックス”は、加熱されると、その活性成分(例えば化学物質)を解放するように、変形、溶解、溶融、破裂、膨張、収縮、可塑化、及び/又は溶媒和することができる材料を指す。マトリックス粒子は、ほとんどのいずれの幾何学的な構成、形状、又はサイズであってよい。例えば、
図4で示すように、マトリックス粒子は、1又はそれより多い球形、薄いプレート、リボン、シート又はコーティング、棒状又は膨張繊維、例えば発泡体を含む多孔質構造、又は1又はそれより多い不規則又は無定形形状を含む形状で構成されていてよい。
【0101】
いくつかの実施態様では、
図5A及び
図5Bで示すように、マトリックス粒子は連続である。いくつかの実施態様では、マトリックス材料は等方性構造を有する。いくつかの実施態様では、マトリックス材料は不連続である。いくつかの実施態様では、マトリックス材料は異方性構造又は直交異方性構造を有する。いくつかの実施態様では、マトリックス材料は1又はそれより多い材料又は構造の混合物である。いくつかの実施態様では、マトリックス材料は等方性構造及び異方性構造の混合物を含む。
【0102】
マトリックス材料は、当該技術分野で理解されるように、いずれの適切な材料で構成されていてよい。いくつかの実施態様では、マトリックス材料は、モノマー、オリゴマー、又はポリマーであり得る。例えば、マトリックスはメチルメタクリレートを含んで成ることができる。いくつかの実施態様では、マトリックス材料は、ポリマー微粒子で構成する。例えば、ポリマー微粒子を、1又はそれより多くのポリメチルメタクリレート(PMMA)、スチレン、及び/又は1又はそれより多いそれらのポリマー若しくはコポリマーから作ることができる。微粒子はまたポリマーのブレンド、アロイ(alloy)、及び混合物であってもよい。
【0103】
ポリマー微粒子は、ポリマーの微小球及びマイクロカプセルを含むことができる。マイクロカプセルは多孔質である、又は部分的にオープン構造であることもできる。
【0104】
いくつかの実施態様では、微粒子は球形の微粒子である。微粒子は、約0.1μm~約1000μmの有効直径をいずれも有してよい。本明細書で用いられるように、”有効直径”とは、同じ体積又は重量の同等の球形の微粒子の直径を指す。例えば、微粒子は、約0.1μm~約0.5μm、約0.5μm~約1μm、約1μm~約5μm、約5μm~約10μm、約10μm~約50μm、約50μm~約100μm、約100μm~約200μm、約200μm~約300μm、約300μm~約400μm、約400μm~約500μm、約500μm~約600μm、約600μm~約700μm、約700μm~約800μm、約800μm~約900μm、約900μm~約1000μm、及びこれらの間のいずれかの有効直径の増加幅を有することができる。
【0105】
いくつかの実施態様では、微粒子の有効直径は、μm単位で測定される数値の一つであり、又はμm単位で端点を含む以下のいずれかの2つの数値によって定義される範囲内の数値のうち1つである:
0.1,0.2,0.3,0.4,0.5,0.6,0.7,0.8,0.9,1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,20,30,40,50,60,70,80,90,100,200,300,400,500,600,700,800,900,及び1,000。
【0106】
一実施態様では、本明細書で指す微小球は、均質で中実のポリマーマトリックス材料で構成される微粒子であり、一方マイクロカプセルはコア-シェル微粒子であり、その場合、コアは固形、液体、又は中空空間であってよい。微粒子をまた、相互結合した微小球で構成される多孔質なマトリックス材料として調製できる。多孔質なマトリックス材料は、表面上に形成する細孔、又は外部にある細孔及び/又は内部に形成する細孔を含むことができる。細孔は独立していても、又は相互に繋がっていてもよい。細孔は非常に低い質量密度のマトリックス材料をもたらす。細孔は、サセプタ、及び活性化剤、触媒、共触媒、共反応物、酸化剤、反応抑制剤、促進剤、及び/又は1又はそれより多い他の放出可能成分のような放出可能及び/又は活性化可能成分をトラップするために適している。
【0107】
いくつかの実施態様では、マトリックス材料は単分散のポリマー粒子で構成される。いくつかの実施態様では、マトリックス材料は多分散のポリマー粒子で構成される。多分散物は、粒子サイズの狭分散(例えば、単峰性の分布、双峰性の分布、又は三峰性の分布)を含んでよい。いくつかの実施態様では、多分散物は、、粒子サイズの中間分散物を含む。いくつかの実施態様では、多分散物は、、粒子サイズの幅の広い分散物を含む。いくつかの実施態様では、多分散物は、、約1nm~約10nm、約10nm~約50nm、約50nm~約100nm、約100nm~約200nm、約200nm~約400nm、約400nm~約600nm、約600nm~約800nm、約800nm~約1000nm、約1μm、約1μm~約1.5μm、約1.5μm~約2μm、約2μm~約2.5μm、約2.5μm~約3μm、約3μm~約3.5μm、約3.5μm~約4μm、約4μm~約4.5μm、約4.5μm~約5μm、及びこれらの間の全ての増加幅の値の範囲の粒子サイズである。いくつかの実施態様では、平均粒子サイズは約0.1μmまでである。いくつかの実施態様では、平均粒子サイズが、約0.1μm~約0.5μm、約0.5μm~約0.8μm、約0.8μm~約1μm、約1μm~約1.2μm、約1.2μm~約1.5μm、約1.5μm~約1.8μm、約1.8μm~約2μm、約2μm~約4μm、約4μm~約6μm、約6μm~約8μm、約8μm~約10μm、約10μm~約20μm、約20μm~約40μm、約40μm~約60μm、約60μm~約80μm、約80μm~約100μm、約100μm~約200μm、約200μm~約400μm、約400μm~約600μm、約600μm~約800μm、約800μm~約1000μm、及びこれらの間のいずれかの全ての値の範囲の平均粒子サイズである。
【0108】
いくつかの実施態様では、マトリックス粒子中のマトリックス材料は、10kDaまでの分子量を有する。いくつかの実施態様では、マトリックス粒子中のマトリックス材料は、約10kDa~約25kDa、約25kDa~約50kDa、約50kDa~約75kDa、約75kDa~約100kDa、約100kDa~約125kDa、約125kDa~約150kDa、約150kDa~約175kDa、約175kDa~約200kDa、約200kDa~約225kDa、約225kDa~約250kDa、及びこれらの間の全ての増加分のいずれかの値の範囲の分子量を有する。非常に高い分子量を有するマトリックス材料(例えばゴムのような分岐又は架橋したポリマー)も本発明の範囲内である。
【0109】
いくつかの実施態様では、マトリックス材料は、kDa単位で、以下のいずれの数値によって又はkDa単位でこのような範囲の端点を含む以下のいずれか2つの数値によって定義される範囲内の数値によって供される分子量を有する:
200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700,1800、1900、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000、20000、30000、40000、50000、60000、70000、80000、90000、100000、200000、300000、400000、500000、600000、700000、800000、900000、及び1000000。
【0110】
いくつかの実施態様では、ポリマー粒子の分散物は、低い架橋度を有する粒子を含む。いくつかの実施態様では、ポリマー粒子の分散物は、標準又は中間の架橋度を有する粒子を含む。いくつかの実施態様では、ポリマー粒子の分散物は、高い架橋度を有する粒子を含む。
【0111】
サセプタ
【0112】
いくつかの実施態様では、本開示のマトリックス粒子の組成物は、1又はそれより多いサセプタを含む。本発明において、考えられるサセプタは、加熱されて、又は活性化されて熱を生成し得る粒子である。サセプタは、周辺又は隣接するマトリックス材料に比べてより高い加熱速度(又は率)又はより低い熱容量を生み出す材料で構成される。サセプタのより高い加熱速度は、先に定義したように、エネルギー源を適用すると、マトリックス材料をバルク加熱することなく、マトリックスを結果として変化させる。加熱されるサセプタはマトリックス材料の変化を誘発し、それによりマトリックス内の触媒又は抑制剤等の反応に影響を与える要素又は化学成分が、1又はそれより多い化学反応に関与できる。加熱され得るサセプタの実施態様は、1又はそれより多い炭素系又炭化ケイ素系材料を含む。サセプタは、例えば1又はそれより多い遷移金属酸化物、フェライトなど及び/又は1又はそれより多いそれらの組合せを含む、1又はそれより多い鉄又は非鉄材料を含んでよい。遷移金属はTi、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu及びZnを含む。
【0113】
鉄サセプタの実施態様は、1又はそれより多いフェライト粉末、超常磁性鉄酸化物(SPION)粒子などを含み、1又はそれより多いそれらの組合せも含む。サセプタの実施態様は、1又はそれより多いグラフェン、フラーレン、単層カーボンナノチューブ、複層カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、充填又はドープカーボンナノチューブ、カーボンシート、バッキーペーパーなどを含み、1又はそれより多いそれらの組合せも含む。
【0114】
サセプタの実施態様は、高周波(RF)放射線及び/又はマイクロ波(MW)放射線にさらすと熱を発生する1又はそれより多い材料で構成され、マイクロ波加熱は後述する本発明の方法を説明するための例として用いられる。外部から適用されるマイクロ波は、内部でマトリックス加熱を発生できる。理論に拘束されるものではないが、バルク加熱の従来の方法とは異なり、マイクロ波に誘発される加熱速度は、外部の熱源からバルク反応混合物の内部への伝熱の速度(又は割合、rate)に制限されない。従って、マイクロ波加熱は、従来の加熱よりも効率的である。すなわち、マイクロ波加熱は、バルク反応混合物の内部に分散される本発明のマトリックス粒子を有するバルク反応混合物をより速く、均一に加熱する。更に、従来の加熱は、外部の熱源から熱流を介して発生し、従来の加熱は、1又はそれより多い方法(伝導及び/又は対流、貫流及び混合を含む)で表面からバルク反応混合物の中心部に伝播する。
【0115】
従って、バルク反応混合物の表面は、バルク反応混合物の中心部よりも高い温度のままであることが多い。例えば、バルク反応混合物に直接接触する反応容器の外側表面は、バルク反応混合物のすぐ近くの部分を加熱し、中心部に向かって徐々に温度が低くなる。たとえ平衡温度が確立されても、反応容器に近接するバルク反応混合物の壁は、より高温から非常に高温になる可能性が高く、最終生成物に向かって進行するバルク反応混合物に均一でない収率及び化学特性をもたらす。例えば、重合反応において、モノマー及びオリゴマーから出発するバルク反応混合物は、温度に応じてバルク反応混合物の外からコアに向かってに分子量分布を有するか、反応容器により近いほどより高い分解が起きるか、反応容器の壁でより高いゲル化/架橋が起こる。
【0116】
これにより、反応の不均一性を引き起こすむらのある加熱、過熱、及び/又は加熱不足を生じさせ得、それがその後収率に影響を与え、又は他の反応パラメータとの問題を生じさせ得る。しかしながら、バルク反応材料の中心部でも又は外側でもマイクロ波加熱は均一に起こるため、マイクロ波はマトリックス材料を貫通して、ほとんど同時にバルク材料の中心部内のサセプタを熱活性化又は励起させるため、それによりバルク材料内部で熱を発生させ、マトリックスの中心部が、通常の表面よりも均一で高い温度のままにすることができる。すなわち、局所的な加熱源を非常に小さなサイズで生じさせることができる。
【0117】
従って、いくつかの実施態様では、サセプタは、ポリマーのマトリックス材料のようなマトリックス粒子の中心部内に配置され、マイクロ波を適用すると、サセプタは加熱され、その結果マトリックス粒子の中心部を加熱する。いくつかの実施態様では、サセプタは、マトリックス粒子の表面に配置されており、マイクロ波を適用すると、マトリックス材料の表面の局所的で急速な加熱が生じる。
【0118】
サセプタの実施態様は、1又はそれより多い周波数又は周波数の範囲で活性化可能である。周波数は、以下の範囲内の1又はそれより多い周波数を含んでよく、約100MHzまで、約100MHz~約200MHz、約200MHz~約400MHz、約400MHz~約600MHz、約600MHz~約800MHz、約800MHz~約1000MHz、約1000MHz~約1500MHz、約1500MHz~約2000MHz、約2000MHz~約2500MHz、約2500MHz~約5000MHz、約5000MHz~約7500MHz、及びこれらの間の全ての増加幅のいずれかの周波数を含んでよい。好ましい周波数の範囲は900MHz~2500MHzである。
【0119】
いくつかの実施態様では、周波数は、MHz単位で測定される以下の数値の一つであり、又はMHz単位で以下のような端点のいずれか2つの数値によって定義される範囲内である:10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、35、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000及び7500。
【0120】
サセプタの実施態様は1又はそれより多い形状を含む。例えば、サセプタは球形、円筒形状、円盤状、チューブ状、又は直方体状であってよく、1又はそれより多い他の正多角柱形状、1又はそれより多い不規則形状、及び/又はそれらの組合せであってよい。
【0121】
いくつかの実施態様では、サセプタは官能化されている。いくつかの実施態様では、サセプタは官能化及び非官能化サセプタの双方を含む。いくつかの実施態様では、官能基は表面官能基を含み、その場合、官能基を1又はそれより多いモノマー、ポリマーの界面活性剤により付加する。例えば、いくつかの実施態様では、サセプタは1又はそれより多いカルボキシル基、ヒドロキシ基、メチル基などを含んでよい。サセプタは、親水性又は疎水性を増加させる又は減少させる1又はそれより多い官能基を含んでよい。サセプタの領域が、サセプタの他の領域よりもより親水性又は疎水性となるために、サセプタは異なる官能基を含んでよい。例えば、サセプタが極性の端部及び非極性の端部を有するように、サセプタは官能基を有することができる。
【0122】
放出可能及び/又は活性化可能成分
【0123】
いくつかの実施態様では、マトリックス材料は放出可能成分又は活性成分としても既知の1又はそれより多い放出可能及び/又は活性化可能成分を含む。1又はそれより多い放出可能及び/又は活性化可能成分は、ポリマー又はオリゴマー若しくはモノマー又はそれら3つの混合物であり得るマトリックス材料に内包され又は取り込まれ得る。例えば、1又はそれより多い放出可能成分は、微粒子のマトリックス材料の1又はそれより多い細孔(ポア)の中に物理的に内包され、又は取り込まれ得る。いくつかの実施態様では、1又はそれより多い放出可能成分は、化学的にポリマーマトリックス材料の中に内包され得る。つまり、1又はそれより多い放出可能成分は、マトリックス粒子内のマトリックスの1又はそれより多い材料に化学的に結合され得る。放出可能成分は、触媒、共触媒、共反応剤、酸化剤、反応抑制化合物、キレート剤、抑制剤、促進剤、活性剤(表面活性剤を含む、改質剤、燃料、爆発性物、及び/又は1又はそれより多いそれらの組合せ)を含むことができる。放出可能成分は、当該技術分野で理解されるように、いずれかの化学物質、化学物質の組合せ、有機物又は無機物を含むことができる。いくつかの実施態様では、1又はそれより多い放出可能成分は、例えば、アニオン重合、カチオン重合、又はフリーラジカル重合などの重合を開始できる1又はそれより多い化合物を含むことができる。
【0124】
いくつかの実施態様では、1又はそれより多い放出可能成分は、嫌気性の接着におけるような酸化還元反応を含む1又はそれより多い反応を開始する1又はそれより多い成分を含む。例えば、1又はそれより多い放出可能成分は、1又はそれより多いヒドロペルオキシド及び1又はそれより多い遷移金属を含むことができる。1又はそれより多い放出可能成分は、マトリックス内の異なるマイクロカプセル内、異なる細孔内に含まれ、マトリックス材料内にトラップされ、マトリックス材料の1又はそれより多い成分に結合され、又は離れた状態で保持され得、マトリックス材料が加熱される又は活性化されるときのみ接触する。
【0125】
一実施態様では、1又はそれより多い放出可能成分は、フェロセン又は他のメタロセンのような1又はそれより多い金属促進剤又は触媒を含む。1又はそれより多い触媒は、重合を活性化又は不活性化するための過酸化物及び/又は他の化合物と組み合わされ得る。いくつかの実施態様では、触媒は1又はそれより多いCu-アセチルアセトン、Cu-2-エチルヘキサノエート、フェロセン、ジメチルアミノメチルフェロセン、及び/又は1又はそれより多いそれらの組合せを含む。いくつかの実施態様では、1又はそれより多い放出可能成分は、ヒドロキノン又はp-メトキシフェノールのような1又はそれより多いフリーラジカル安定剤を含む。
【0126】
いくつかの実施態様では、例えばアニオン性のシアノアクリレート及び/又はメチレンマロネートを含む組成物を含み、1又はそれより多い放出可能成分は、1又はそれより多い無機塩基又は有機塩基(例えばプロピオン酸ナトリウム)を含んでよい。更なる別の実施例では、エポキシ樹脂のカチオン重合のために、ジアリールヨードニウム及びトリアリールスルホニウム、ブロック化超酸(blocked super acids)、カチオン性の触媒のような1又はそれより多い成分が解放される。いくつかの実施態様では、縮合重合におけるような場合、1又はそれより多い放出可能成分は、アンチモン、ゲルマニウム、チタン及びアルミニウム化合物のような1又はそれより多い触媒を含み得る。
【0127】
燃料及び爆発性物なども、このような材料が用いられ得る別の実施例である。具体的には、燃料又は他の爆発性材料を、単独又は追加材料と共に又は追加材料なしで組み合わせて、説明するように、利用して化学反応を開始でき、単独か又は他の反応材料と組み合わせて、種々の形で大量のエネルギーを放出して、事象(例えば、エンジン内のピストンへの動力の供給から、爆発性デバイス、焼夷的事象、単純な高速加熱現象まで)を促進する。
【0128】
一実施態様では、放出可能成分は、バルク反応混合物の物理特性を変化させ、例えば、特に化学平衡に達して例えば生成物になる際には、その粘性を増加又は減少させ、又はバルク反応混合物に色又は他の光学特性を供する。
【0129】
粒子構造
【0130】
本開示の実施態様は、本明細書で記載する1又はそれより多い粒子、本明細書で記載する1又はそれより多いサセプタ、及び/又は本明細書で記載する1又はそれより多い放出可能成分を含んで成る、マトリックス材料を有するマトリックス粒子の組成物を供する。マトリックス粒子の組成物は、上記に記載するサセプタ及び放出可能成分を含むマトリックス材料として単純に構築してよく、また、用途により要求されるいずれかの幾何学的構成において存在してもよい。例えば、マトリックス粒子が球形又は近似的に球形の構造、リボン又はシート状の構造、棒状又はファイバー状の構造、例えば発泡体を含む多孔質構造、及び/又は1又はそれより多い不規則な構造で存在してよい。いくつかの実施態様では、放出可能成分は物理的に解放されないが、むしろ化学的に活性化されて、その機能を果たしてよいことに留意すべきである。
【0131】
いくつかの実施態様では、マトリックス粒子の組成物は、サセプタ及び/又は活性可能及び/又は放出可能な成分を含む種々の相を有することができる。いくつかの実施態様では、マトリックス粒子の組成物は、サセプタ及び/又は放出可能な成分の双方を含む連続する相を有することができる。いくつかの実施態様では、1又はそれより多いサセプタ、及び/又は活性剤/触媒のような放出可能成分は、マトリックス粒子の組成物中のマトリックス材料の第1層、及び/又は1又はそれより多い後続の、又は交互のコーティング層に含まれ得る。
【0132】
いくつかの実施態様では、粒子組成物は、親水性の化学物質、疎水性の化学物質並びに/又は親水性及び/若しくは疎水性の化学物質を有する1又はそれより多い領域を含む。いくつかの実施態様では、同様に電荷を有するサセプタの官能基及び粒子の化学物質を配列するように、1又はそれより多い官能化サセプタは、粒子組成物の中又は上に配置される。例えば、1又はそれより多いサセプタの親水性領域は、1又はそれより多い親水性の化学物質を有するマトリックス粒子の組成物の1又はそれより多い領域と対応するように配列される。同様に、いくつかの実施態様では、1又はそれより多いサセプタの疎水性領域は、1又はそれより多い疎水性の化学物質を有するマトリックス粒子の組成物の1又はそれより多い領域と対応するように配列される。従って、マトリックス粒子の組成物の中又は上の1又はそれより多いサセプタの配置は、マトリックス粒子の組成物の親水性又は疎水性の領域により管理(direct)できる。
【0133】
マトリックス粒子の組成物の実施態様は、サセプタをマトリックス材料、及び1又はそれより多い放出可能成分と組み合わせる構成を含む。マトリックス粒子の組成物の実施態様は、サセプタが第1のマトリックス材料の表面又は、第1のマトリックス材料と接触する別のマトリックス材料の中に存在でき得る構成を含む。いくつかの実施態様では、粒子組成物は、マトリックス材料の第1の層、及びマトリックス材料の1又はそれより多い追加の隣接する層を含む。例えば、いくつかの実施態様では、マトリックス粒子の組成物は、単一のマトリックス材料又はマトリックス材料層、2つのマトリックス材料層、3つのマトリックス材料層などを含み得る。マトリックス粒子の組成物は、1又はそれより多い均質な層、1又はそれより多い不均質な層、及び/又はそれらの組合せを含み得る。例えば、いくつかの実施態様では、1よりも多いサセプタ又はサセプタの種類が、一つのマトリックス粒子の組成物内に含まれる。追加のサセプタは、同じマトリックス材料の層に、隣接するマトリックス材料の層に、交互のマトリックス材料の層などに配置され得る。
【0134】
いくつかの実施態様では、1よりも多い、活性剤又は触媒のような放出可能成分は、同じマトリックス材料層又は異なるマトリックス層に含まれる。活性剤又は触媒は、同じマトリックス材料層、隣接するマトリックス材料層、交互のマトリックス材料層などに配置され得る。いくつかの実施態様では、1よりも多い放出可能成分が、同じマトリックス材料層又は異なるマトリックス層に含まれる。放出可能成分は、同じマトリックス材料層、隣接するマトリックス材料層、交互のマトリックス材料層などに配置され得る。
【0135】
いくつかの実施態様では、各マトリックス材料層は、サセプタ、活性剤/触媒及び活性剤/触媒のような放出可能成分の1つの組合せを含んで成る。いくつかの実施態様では、各マトリックス材料層は、サセプタ、及び活性剤/触媒のような放出可能成分の1よりも多い組合せを含んで成る。いくつかの実施態様では、マトリックス粒子の組成物は、1よりも多いマトリックス材料層を含み、その場合、各マトリックス材料層は、サセプタ、及び活性剤/触媒のような放出可能成分の同じ組合せを含んで成る。いくつかの実施態様では、粒子組成物は、1よりも多いマトリックス材料層を含み、その場合、各マトリックス材料層は、サセプタ、及び活性剤/触媒のような放出可能成分の異なる組合せを含んで成る。
【0136】
いくつかの実施態様では、マトリックス粒子の組成物は1よりも多いマトリックス材料層を含み、各層は同じ時間内の硬化時間を有するように配合される。いくつかの実施態様では、マトリックス粒子の組成物は、1よりも多いマトリックス材料層を含み、各層が成形構造物におけるような種々の時間の硬化時間を有するように配合される。いくつかの実施態様では、層状のマトリックス材料は、マトリックス材料に適用される材料又は粒子組成物の、応力及び/又は他の物理的特性を管理するように配置される。例えば、いくつかの実施態様では、粒子組成物は、1又はそれより多い活性化可能なマトリックス成分、活性剤、触媒、放出可能成分などを異なる量又は濃度で配合する。
【0137】
マトリックス粒子は、全体又は部分が、場合により、例えば金属、セラミック又はガラスなどを含む粉砕可能又は粉砕不可能な支持体によって支持又は保護され得、また、発泡体のような3次元物において、マトリックス粒子の組成物により被覆された又は含侵された中実物質で支持又は保護され得る。更に例を挙げると、粗面化、とがった(spiked)、又は類似の表面のテクスチャーを有する物体が存在してよく、例えば、構造の下に存在するが、構造を囲むマトリックス材料によるつぶれ防ぐ。別の実施例は、被覆されるビーズ、粒子、顆粒などとしてマトリックス粒子の組成物を含むことができ、金属ガラスビーズ又は加熱を介して表面に被覆されるマトリックス粒子の組成物を溶融する、又は変形するビーズとしてのサセプタを含むんでよい。
【0138】
いくつかの実施態様では、例えば、特定の適用が必要とする場合、複数のマトリックスが用いられる。マトリックスは、1又はそれより多い被覆層、パターン化フィルム又は層、テクスチャー付きの形状などを含む種々の形態で形成され得る。
【0139】
全ての適用において、サセプタは外部の高周波数の電磁放射線(EMR)を介して励起されて、部分又は全体で、周囲の1又は複数のマトリックスを変化させ、例えば変形する又は溶解する又は溶融して、触媒、共触媒、抑制剤、共反応剤又は促進剤、燃料、爆発性物又は他の成分を解放する(その機能を果たすようにする)。いくつかの実施態様では、CNTsのようなサセプタは励起され又は活性されて、マトリックスを加熱する又は熱活性化する。いくつかの実施態様では、マトリックスを加熱する又は熱活性化することにより、マトリックス材料を変形する。
【0140】
マトリック粒子は、例えば接着剤、コーティング、コンポジット、成形用途、及びポリマー系において用いられる配合物にサセプタを供給する効率的な方法を提示する。キャリアとしてマトリック粒子を用いることは、レオロジー的特徴(例えば、CNTsは低添加量でも、粘度の急上昇を引き起こし、処理上の問題をもたらす)を保持するのに役立つ。
。
【0141】
種々のサセプタはまた、特定の適用に応じて用いられる。例えば、不透明なポリマーを硬化する際、単層及び複層カーボンナノチューブ、シート及びファイバー・サセプタは、一般的に、所定の触媒を加熱して解放するために非常に効率的なエネルギーのサセプタ材料を提供する。他の実施例では、光学的な透明性が推進する要因である場合、窒化ホウ素と共にCNTsを、透明性のために用いてよい。
【0142】
サセプタ要素のサイズは、少なくとも1次元では、ナノメートル範囲からマイクロメートル、ミリメートルまでである。例えば、いくつかの実施態様では、サセプタ要素のサイズにおける範囲は、約1nm~10nm、約10nm~約100nm、約100nm~約1μm、約1μm~約10μm、約10μm~約100μm、約100μm~約1000μm、及びこれらの間の全ての増加幅のいずれかのサイズの範囲である。
【0143】
いくつかの実施態様では、サセプタ要素のサイズは、以下にnm単位で測定される数値の1つであり、又はnm単位の範囲の端点又はnm単位でいずれかの2つの追加の数値を含む、いずれかの2つの数値で定義される範囲内である:
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000、20000、30000、40000、50000、60000、70000、80000、90000、100000、200000、300000、400000、500000、600000、700000、800000、900000及び1000000。
【0144】
いくつかの実施態様では、サセプタはマトリックス材料中で均一に分散される。サセプタの分散により、サセプタの重量を最適化して使用できる。いくつかの実施態様では、十分に分散されるサセプタは、サセプタとマトリックス材料との間で強力なファンデルワールス力を結果として生じることができ、これは、本発明の範囲を限定するものとしていずれの理論にも拘束されるものではない。サセプタとマトリックスの相互作用は、共有結合及び非共有結合の双方を介することもできる。
【0145】
サセプタ要素は、カーボンナノチューブ、カーボンナノ構造物、超常磁性の鉄酸化物ナノ粒子(SPIONs)を含む鉄粒子等を含んでよい。
【0146】
触媒、共触媒、抑制剤、共反応剤、促進剤、燃料、爆発性物、他の成分など、及び混合物は、事実上いずれの組成でもよいが、好ましくは最終の粒子が、必要な化学作用に適した濃度で存在する。用途は非常にユニークで、その要件において広く変わる。
【0147】
いくつかの実施態様では、サセプタ要素の濃度は、一般的には、その用途及び最終的な判断者の要請の下0.01%から10%までであってよい。エネルギー要件は、変形温度及びダイナミクス、周囲のマトリックスへの熱伝導、1000分の1秒から10分の1秒の事象の期間から得られる。いくつかの実施態様では、マトリックスは1又はそれより多いワックスを含む。ワックスは1又はそれより多いカルナバ・ワックスのような天然ワックスを含み得る。ワックスは、例えば、ポリエチレンワックスのような1又はそれより多い合成ワックスを含み得る。ワックスは、合成ワックス及び天然ワックスの双方の組合せを含むことができ、その組合せは、シャープな融点を有する。いくつかの実施態様では、ワックスは約50℃~300℃の間の範囲で融点及び/又は変形温度を有する。例えば、ワックスマトリックスは、いくつかの実施態様では、約50℃~約75℃の間、約75℃~約100℃の間、約100℃~約125℃の間、約125℃~約150℃の間、約150℃~約175℃の間、約175℃~約200℃の間、約200℃~約225℃の間、約225℃~約250℃の間、約250℃~約275℃の間、約275℃~約300℃の間、及びこれらの間の全ての増加分のいずれかの融点を有する。
【0148】
マトリックス材料としてのワックス
【0149】
”ワックス”とは、天然に存在する又は合成起源のワックスのいずれかのワックスを意味する。1又はそれより多い天然に存在するワックス及び/又は合成起源のブレンド又は混合物を含み得る。天然に存在するワックスは、植物系のワックス、動物性ワックス、及び鉱物性ワックスを含む。合成ワックスは、物理的又は化学的方法により製造される。混合物であるため、天然に生産されるワックスは、純粋な成分に比べてより柔らかく、より低い温度で溶ける。
【0150】
ワックスは、CnH2n+2の一般的な式をもつ直鎖アルカンであるパラフィンワックスであり得、ここでnは13から80まで変化する。n=13で定義されるパラフィンワックスをトリデカンと呼ばれ、n=80の場合、オクタコンタンである。C13ワックスの融点は。-5.4℃である。同様に、C60ワックスの融点は100℃である。同様に、高級ワックス(C60とC80との間)の融点は、100℃よりも高い。バルク反応混合物を加熱する必要がある温度範囲に応じて、特定の温度範囲内で変化する、変形する、又は溶融する特定のワックスの中心部(又はコア、core)を有するワックス系のマトリックス粒子を調整できる。
【0151】
植物系ワックスの実施例では、非エステル化炭化水素の混合物を含み、エステルよりも多くてよい。植物のエピクチクラ・ワックスは、アルカン、アルキルエステル、ステロールエステル、脂肪酸、一級及び二級アルコール、ジオール、ケトン、アルデヒド、脂肪族アルデヒド、一級及び二級アルコール、β-ジケトン、トリアシルグリセロール、その他多数を含む置換長鎖脂肪族炭化水素の混合物である。植物ワックスの具体的な実施例は、カルナバ・ワックス、キャンデリラ・ワックス、オーリキュリー・ワックス、ホホバ・ワックス、ベイベリー・ワックス、ジャパン・ワックス、ヒマワリ・ワックス、トール・オイル、獣脂ワックス(tallow wax)、ライス・ワックス、獣脂(tallow)を含む。
【0152】
動物性ワックスは、蜜蝋及び他の昆虫により分泌されるワックスを含む。ハチの巣を作る際に使われる蜜蝋の主な成分は、トリアコンタノール及びパルミチン酸のエステルであるパルミチン酸ミリシル・エステルである。スペルマセティはマッコウクジラの頭脂に多量に存在する。主成分の一つはパルミチン酸セチル、別の脂肪酸及び脂肪アルコールのエステルである。ラノリンはウールから得られるワックスであり、ステロールのエステルで構成する。他の動物性ワックスの例は、ラノセリン、シェラック、及びオゾケライトを含む。
【0153】
鉱物性のワックスの例は、モンタン・ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリン(microcrystalline)のワックス、中間体ワックス(intermediate wax)を含む。多くの天然のワックスがエステルを含むが、パラフィンワックスは炭化水素であり、通常、鎖長の同族列のアルカンの混合物である。パラフィンワックスは飽和n-及びイソ-アルカン、ナフテン、及びアルキル-及びナフテン置換芳香族化合物の混合物である。分岐度は、特性に重要な影響を与える。モンタン・ワックスは、石炭及び褐炭から抽出される化石ワックスである。非常に硬く、高濃度な飽和脂肪酸/エステル及びアルコールを反映している。モルタン・ワックスは、約24~30炭素の鎖長を有する長鎖アルキル酸及びアルキルエステルで形成される化学成分を含む。更に、天然のモンタンは、樹脂酸、ポリテルペン及びいくつかのアルコール、ケトン及び他の炭化水素を含み、”純粋な”ワックスではない。鹸化可能ワックスであるモンタンの鹸化価は約92であり、その融点は約80℃である。モンタン・ワックスに加えて、他の天然由来のワックスも、様々な産業における使用が知られており、処理後の原油から得られる石油ワックスを含み、マクロクリスタリン(macrocrystalline)ワックス、マイクロクリスタリン・ワックス、石油及びパラフィンワックスを含む。パラフィンワックスも石油から得られる天然ワックスであり、20~30の炭素原子の平均鎖長を有する直鎖アルカンで主に形成される。
【0154】
合成ワックスは、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレンに基づくワックスを含む。他の合成ワックスは、脂肪酸アミン、フィッシャー・トロプシュ(Fischer Tropsch)、及びポリアミドに基づく。ポリエチレン及び関連誘導体。いくつかのワックスは、400℃でポリエチレンを分解することにより得られる。生成物は、式(CH2)nH2を有し、そこでnは約50~100の間の範囲である。
【0155】
低分子量の合成ポリエチレンワックス(即ち、約10,000未満の分子量)及びワックス様の特性を有するポリエチレンを含む合成ワックスが知られている。このようなワックスは、分子量を制御する適切な条件下でエチレンの直接重合によって形成される。約2,000~4,000の範囲の分子量を有するポリエチレンがワックスであり、約4,000~12,000の範囲の分子量では、ワックス樹脂になる。
【0156】
フィッシャー-トロプシュ・ワックスは、特定の重合合成、具体的にはフィッシャー-トロプシュ合成(高圧、高温及び特別な触媒で一酸化炭素を重合して炭化水素を生成し、次いで蒸留して生成物を液体燃料及びワックスに分離する)によって生成されるポリメチレンワックスである。このようなワックス(マイクロクリスタリン、ポリエチレン及びポリメチレンタイプの炭化水素ワックス)は、例えば空気酸化(30又はそれ未満の酸価、及び25未満でない鹸化価を与える)によって、又は無水マレイン酸又はカルボン酸を用いて化学的に改質され得、又は無水マレイン酸又はカルボン酸で改質され得る。このような改質ワックスは、より簡単に水中で乳化され、また、鹸化され得、又はエステル化され得る。他の既知の合成ワックスは重合されたα-オレフィンである。これらは、20又はそれより多い炭素原子の高級α-オレフィンで形成されるワックスであり、ワックス様の特性を有する。この材料は非常に分岐しており、ブロードな分子量分布を有し、融点の範囲が約54℃~75℃で、約2600~2800の分子量を有する。従って、ワックスは、ベース材料の性質、及び重合又は合成方法に、そしていずれかの化学修飾の使用及び種類を含む結果として生じる化学的構造に応じて異なる。
【0157】
マトリックス粒子は重合、又は物理的な材料破壊、乳化重合、分散重合及び/又は懸濁重合、コア-シェル重合、溶媒分散、流体中の流体及び/又は固体のキャビテーション、サセプタ及び触媒の融合(又は混合、amalgamation)、融合に次ぐ微粉砕、粉砕、及び同様の方法によって製造され得る。
【0158】
図1に示すように、サセプタ要素としてカーボンナノチューブ、及び化学反応を促進するための触媒を含んで成る中実マトリックス粒子を示す。高周波(ラジオ波)放射線をマトリックス粒子に照射し、カーボンナノチューブ粒子を加熱する。これらの粒子は触媒粒子の近傍に組み込まれている。マトリックス材料は、十分に又は部分的に溶融又は変形するが、高周波の結果として、触媒は解放されて、その後、複数のマトリックス粒子が組み込まれている物質の反応を触媒する。
【0159】
本実施態様では、RF又はMWエネルギーは、マトリックス粒子を加熱する、溶融するだけである。マトリックス粒子の加熱速度は、隣接する材料よりも何桁も高いオーダーである。マトリックス粒子の選択的な加熱は、バルク加熱を引き起こすことなく、マトリックス粒子の変形をもたらす。更に、均一に分散されたマトリックス粒子及び粒子のサイズは、隣接する配合物の加熱をほとんど引き起こさない。その結果、RF及びMWエネルギーは、マトリックス粒子の内容物の解放を活性化し、均一で迅速な重合を誘発する。一実施態様では、2%又はそれ未満の典型的にppmの範囲である触媒を必要とする。一実施態様では、触媒のパーセントは、以下に供される数値から選択されるいずれかの数値であり、又は端点としての以下のいずれかの2つの数値により定義される範囲内である:
0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、及び2.0。
【0160】
図2は、現在実施されている反応射出成形及び本発明による反応射出成形を示す。本発明の結果として、複雑な混合を必要しない。加熱硬化の代わりに、RF硬化を行う。スチール金型の使用をなくす又は減らすことにより、全体的な加熱の適用なく、より低い圧下で反応を達成でき、反応はより速い。また硬化時間を大幅に短縮する。
【0161】
図3に示すように、現在実施されているように、フィルム・ラミネート接着剤の場合、複数層のために複数のフィルム・ラインを用いる。本発明の使用では、1ラインを複数層に用いることができる。利点は高速で、加熱が不要で、不透明材料を硬化でき、深度の制限がないことである。生産中に硬化する場合の鋭い制御に加えて、硬化の位置の制御も達成される。
【0162】
一実施態様では、RF又はMWは指向性のソースであり、放射線においては、着目する特定の対象又は領域に焦点を合わせる。
【0163】
一実施態様では、マトリックスは、コーティングを有してよい。いくつかの実施態様では、コーティングは連続である。いくつかの実施態様では、コーティングは不連続である。いくつかの実施態様では、コーティングはパターン化されている。いくつかの実施態様では、コーティングを1又はそれより多い層に位置する。いくつかの実施態様では、コーティングは異方性である。
【0164】
いくつかの実施態様では、コーティングは、例えば絡み合い(エンタングルメント、entanglement)、ファンデルワールス相互作用、1又はそれより多い化学的に結合する化合物を介することなどを含む、1又はそれより多い手段によってマトリックスに付着する。いくつかの実施態様では、コーティングは1又はそれより多いワックス、1又はそれより多い親水性の化合物及び/又は親水性の官能基、1又はそれより多い油、脂肪酸などを含む、非極性のテールを含む非極性成分を有する1又はそれより多い化合物を含む。
【0165】
コーティングは、10nmまで、約10nm~約15nm、約50nm~約100nm、約100nm~約500nm、約500nm~約1μm、約1μm~約2μm、約2μm~約5μm、約5μm~約10μm、約10μm~約50μm、約50μm~約100μm、約100μm~約500μm、約500μm~約1mm、約1mm~約2mm、約2mm~約5mm、約5mm~約10mm、約10mm~約50mm、約50mm~約100mm、約100mm~約500mm、及びこれらの間の全ての増加分のいずれかの厚みを有してよい。
【0166】
マトリックスの実施態様は、制御されたオンデマンド解放を供するために1又はそれより多い追加の要素を含んでよい。例えば、丸い繊維、織物繊維、ポリマー繊維、中空繊維、コンポジットで利用されるような補強繊維、シート、可撓性又は非可撓性材料、発泡体及び他の多孔性構造体、不織布、織布、ポリマースクリム、補強スクリムなどの、マトリックスの活性化が容易ないずれかの表面上で、被覆される又は被覆されないマトリックス、及び又はマトリックスを含むコーティング及び又は不連続コーティングが挙げられる。
【0167】
いくつかの実施態様では、マトリックスは1又はそれより多いフィラーを含む。フィラーの実施態様は、繊維のような粒子を含む。繊維は1又はそれより多い長さを有してよい。繊維は粉砕繊維を含むことができる。フィラーの実施態様は、1又はそれより多いクレイ、骨材、可塑剤、プラスチック粒子、種々の形状のナノ粒子などを含む。
【0168】
粒子を活性化する方法及びその装置
【0169】
粒子活性化、方法及び装置は、種々の種類のサセプタ、活性剤、マトリックス要素、RF及び/又はMWエネルギー源、材料ハンドリング、ソフトウェア、及び制御を含む、完全な”システム”を構成する。
【0170】
速度、時間、単位スループット、形成ファクター、トポロジー、及び単位体積は、所定の材料セットに対して所望の最終成果物又は結果物を生産するために、各用途のために分析され、システムにより調整される依存特性に含まれる。
【0171】
サセプタは外部の高周波数EMRを介して励起されて、周囲の1つ又は複数のマトリックスを一部又は全体で変形させ、触媒、共触媒、共反応剤、又は促進剤を解放する(又は機能するようにする)。CNTsの遠隔ジュール加熱特性のような分野では、CNTsがどのように周囲の材料を加熱するかという物理特性の理論に拘束されるものではないが、加熱されたCNTsは、周囲のマトリックスを変形するように用いられる。
【0172】
最も一般的な形では、約1m~約1mmの波長範囲を有する、つまり300MHz(1m)と300GHz(1mm)との間の周波数を有するマイクロ波電磁放射線を用いて、サセプタを励起させ、周囲のマトリックスを変形させ、触媒又は活性材料を解放する。実際には、種々の電磁波長及び周波数を用いることができ、好ましくは、使用者及び産業用途で現在最も一般的なのは、915MHz及び2450Mhzの周波数である。しかしながら、1又はそれより多い適した周波数は、約100MHzまで、約100MHz~約200MHz、約200MHz~約400MHz、約400MHz~約600MHz、約600MHz~約800MHz、約800MHz~約1GHz、約1GHz~約1.5GHz、約1.5GHz~約2GHz、約2GHz~約2.5GHz、約2.5GHz~約5GHz、約5GHz~約7.5GHz、及びこれらの間の全ての増加分のいずれかの周波数を含んでよい。
【0173】
【0174】
本発明の一実施態様では、電磁放射線を適用する方法、つまりバルク反応混合物の照射を10秒~60秒間行う。別の実施態様では、照射時間は、秒単位で以下から選択されるいずれかの1つの数値、又は秒単位で範囲の端点を含む以下のいずれの2の数値によって定義される範囲内の数値である:
10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、3000、3100、3200、3300、3400、3500及び3600。
【0175】
本発明の一実施態様では、バルク反応混合物を照射するためにEMRをビームとして用い、バルク反応混合物はRF又はMW放射線を浴びる。
【0176】
用途
【0177】
例示的な用途は、以下を含むが、それらに限定するものではない。
【0178】
接着剤による接着
【0179】
触媒、共触媒、及び又は促進剤等を必要に応じて解放し、その場合、全体的な加熱、複数成分の混合、長い重合時間、及び又は、光並びに若しくは表面プライマーの活性化系を用いる場合のような深さの制限の制約は、重合性の組成物の中に成分を所望のように分散させ、接着若しくは接着工程及び若しくは部品を調製する方法内で所望の時間で、必要に応じて活性化することにより排除できる。また、利点は、粘性ダイナミクス(動態、dynamics)を変化させる反応をすることなく、非常に正確に位置決めすることを含む。
【0180】
コーティング
【0181】
触媒、共触媒、及び又は促進剤等を必要に応じて解放し、その場合、全体的な加熱、複数成分の混合、長い重合時間、及び又は、光並びに若しくは表面プライマーの活性化系を用いる場合のような深さの制限の制約は、重合性の組成物の中に成分を所望のように分散させ、コーティング又はコーティング方法及び又は部品を調製する方法内で所望の時間で、必要に応じて活性化することにより排除できる。また、利点は、粘性ダイナミクスを変化させる反応をする前に、及びそのような反応をすることなく流れの制御ができることを含む。シャドー・エリア又は複雑な形状を有する部品において不完全に硬化するなど、UVで硬化可能な系の制限を克服することができる。大きな付属部分を有する3D及び凹部の部品を硬化する場合に制限はない。硬化速度を上流及び下流の工程で合わせることができ、製造スループット(throughputs)のボトルネックを除去することができる。
【0182】
成形及びコンポジット
【0183】
触媒、共触媒、及び又は促進剤等を必要に応じて解放し、その場合、全体的な加熱、複数成分の混合、長い重合時間、及び又は、光並びに若しくは表面プライマーの活性化系を用いる場合のような深さの制限の制約は、重合性の組成物の中に成分を所望のように分散させ、成形又は成形方法及び又は部品を調製する方法内で所望の時間に、必要に応じて活性化することにより排除できる。部品は、多くの材料が充填され得る。部品は断面が14フィート×14フィートと同じ又はそれより大きくなる可能性がある。本説明の文脈において、本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許及び他の参照文献は、特に断りがない場合には、その全体が十分に説明されているかのように、全ての目的に対して本明細書における参照により明示的に組み込まれる。
【0184】
別段の定義がない限り、本明細書で用いられる全ての技術的及び科学的な用語は、本開示が属する当業者によれば通常理解されるのと同じ意味を有する。もし矛盾がある場合、定義を含む本明細書が優先される。
【0185】
明示的に留意される場合を除いて、商標を大文字で示す。
【0186】
特に断りのない限り、全てのパーセンテージ(又はパーセント、percentages)、部数、割合等々は重量基準である。
【0187】
特に断りのない限り、psi単位で表現される圧力はゲージ圧であり、kPa単位で表現される圧力は絶対圧である。しかしながら、圧力差は絶対圧で表現する(例えば、圧力1は、圧力2よりも25psi高い)。
【0188】
量、濃度、又は他の数値若しくはパラメータが範囲、又は上限値及び下限値のリストとして与えられる場合、これは、範囲が個別に開示されているかに関係なく、いずれかの上限及び下限の範囲値から形成される全ての範囲を具体的に開示していると理解されたい。数値の範囲は、本明細書で記載される場合には、特に断りのない限り、範囲はその範囲の端点、範囲内の全ての整数と分数を含むことが意図されている。範囲を定義する場合に説明する特定の値に、本開示の範囲が限定されることを意図するものではない。
【0189】
”約”なる用語を用いる場合、一定の効果又は結果を一定の許容公差内で得ることができることを意図して用い、当業者であればその許容公差を得る方法を知っている。数値又は範囲の端点を説明するために”約”なる用語を用いる場合、本開示は参照される特定の値又は端点を含むと理解されるべきである。
【0190】
本明細書で用いる場合、"含んで成る(comprises)"、 "含んで成る(comprising)" "含む(includes)"、 "含む(including)"、 "有する(has)"、 "有する(having)"又はいずれかの他のこれらの用語の変形は、排他的でない包含をカバーすることを意図する。例えば、要素のリストを含んで成るプロセス、方法、物品、又は装置は、必ずしもそれらの要素のみに限定されず、明示的にリストに記載されてない又は、そのようなプロセス、方法、物品、又は装置に固有な他の要素を含むことができる。
【0191】
”から成る(consisting of)”なる移行句は、請求項に明記されない、いずれの要素、工程、又は成分をも排除するものであり、通常、材料に不随する不純物を除き、記載される材料以外の材料を請求項に含めることを排除する。”から成る(consists of)”という句が、プリアンブルの直後ではなく請求項の本文の節にある場合は、その節に記載される要素のみを限定し、他の要素は全体としての請求項から除外されない。
【0192】
”本質的に構成する(consisting essentially of)”なる移行句は、請求項の範囲を、特定された材料又は工程、及び請求項の発明の基礎及び新規な特徴に実質的に影響を与えないものに限定する。”本質的に構成する”を含む請求項は、”から成る(consisting of)”形式で書かれたクローズド・クレームと、”含んで成る(comprising)”形式で書かれた完全なオープン・クレームとの間の中間の立場である。本明細書で定義される任意の追加物は、そのような追加物について適切なレベルであり、微量な不純物は、"本質的に構成する"なる用語により組成物から除外されない。
【0193】
更に、特に断りがない限り、”又は”、及び”及び/又は”は、包括的であり、排他的でないことを指す。例えば、条件A又はB、あるいはA及び/又はBは、以下のいずれか1つを満たす;Aは真(又は存在する)及びBは偽(又は存在しない)、Aは偽(又は存在しない)及びBは真(又は存在する)、及びA及びB双方は真(存在する)。
【0194】
本明細書で種々の要素及び成分を説明するように”a”又は”an”を使用することは、単に便宜上であって、本開示の一般的な意味を与えるためにすぎない。そのような使用は、1又は少なくとも1つを含むと解釈すべきであり、単数も、それ以外の意味であることが明確でない限り、複数を含む。
【0195】
実験的実施例
【0196】
実施例1-アニオン重合によるメチレンマロネートの重合
【0197】
組成
【0198】
本実施例は、マトリックス粒子を含む硬化性の組成に関し、組成物は、
(a)メチレンマロネート・モノマー
(b)安定剤溶液、及び
(c)活性剤
を含んで成り、
(i)活性剤は、0.1~500ppmのレベルでカチオンを含んで成り;及び
(ii)活性剤は、RFサセプタ(例えば、カーボンナノ構造物)も含む熱変形性及び又は熱可溶性のマトリックス粒子にカプセル化されている。
【0199】
配合
【0200】
重量%で以下の通り配合物を調製し、所望の通り他の変更を追加する:
1.二官能性又はそれより多い官能性のメチレンマロネートのモノマー、オリゴマー、又は樹脂:20%~70.0%;
2.ジエチル、ジプロピル、ジベンジル、ジイソボルニル又は類似のメチレンマロネートのモノマー:20%~70%;及び
3.酸安定剤溶液:0.1%~0.7%。
【0201】
上記配合物に、90%のパラフィンワックス、又はオレフィン系ポリマー、又はオリゴマーワックス等、8%のカーボンナノチューブ、及び2%の活性剤を含んで成る50~5000ナノメートルのマトリックス粒子を加え、粒子が最終的な全組成物において5ppmの活性剤カチオンを示すようにする。
【0202】
マトリックスの検討
【0203】
全体として、活性剤範囲は0.5ppm~500ppmであり、それは0.5%~10%のいずれかのマトリックス粒子の濃度、及び適切な周波数、出力レベル、従って上記粒子を活性化して結果的に重合するのに必要な時間を決定する出力レベルを変化させることにより達成する。
【0204】
MF-透明フィラー
【0205】
その後、化学的にニュートラルなもの、場合により乾燥RF透明フィラー、例えば炭酸カルシウム、ガラス又はガラス粉末、ポリマー粉末のような無機物、木質物(wood)又はその他の有機粉末、シリカ、ケイ酸塩、及びセラミックを用いることにより、上記で作られるような配合物を調整できる。水分が問題である場合は、遷移金属促進剤の組合せ(特に銅ヘキサノエート及び鉄、具体的にはフェロセン)を用いることができる。
【0206】
硬化、基材及び容器
【0207】
配合物が変われば、硬化速度及び従って重合の発熱も変化する。従って、2枚のスライドガラスの間に薄膜フィルムが位置するように、少量の配合物を配置することにより開始すべきであり、そのため材料を最小限に抑えて嫌気状態を作り出し、観察が可能となるようにする。次の段階では、スペーサーを加えて厚いボンドを作ることができる。次の段階では、細い試験管、及び又はシリンジ本体に移行できる。次に、より大きな試験管及び又はシリンジ本体にスケールアップできる。次に、小さなビーカーにスケールアップできる。より大きな体積の材料アセンブリ及び又は容器は油及び/又は水中に配置して、発熱の熱伝導を制御し、危険な状況を避けることができる。
【0208】
基本的に、必要なRFエネルギーを適切に伝えられるように、RF透明材料が、格納容器又は格納容器の一部であることが望ましい。
【0209】
実施例2-嫌気性重合を介するフリーラジカル重合
【0210】
組成
【0211】
本実施例は、硬化性組成物に関し:
(a)アクリレート及び又はメタクリレート・モノマー
(b)ヒドロペルオキシド又はペレスター開始剤、及び
(c)活性剤
を含んで成り、
(i)活性剤は、0.1~100ppm銅のレベルの銅イオン源を含んで成り;
(ii)活性剤を、RFサセプタも含む熱変形性及び又は熱可溶性のマトリックス粒子内にカプセル化させる。
【0212】
配合
【0213】
重量%で以下の通り配合物を調製し、所望の通り他の変更を追加する:
1.トリエチレン・グリコール・ジメタクリレート、ウレタン・ジアクリレート、又はエポキシ・ジアクリレート:20%~70.0%
2.ラウリル、エチル、メチル、エチルヘキシル、シクロヘキシル、イソボルニル・メタクリレート:20%~70%
3.クメンヒドロペルオキシド:0.5%~3.0%
4.安定剤溶液*:0.3%~0.7%
5.サッカリン:0.1%~0.5%。
【0214】
これらの配合に、以下を添加する:90重量%の1又はそれより多いパラフィンワックス、オレフィン系ポリマー、オリゴマーワックス又は類似のマトリックスを含んで成る50~5000ナノメートルのマトリックス粒子;8%カーボンナノチューブ、及び;2%銅エチルヘキサノエート活性剤。これらの成分を添加し、粒子が最終的な組成物において0.6ppmの銅を示すようにする。
【0215】
2%の銅の代わりに、粒子中に2%のフェロセンを有する50%の粒子分散液の配合物に0.06%を添加することもできる。
【0216】
マトリックス検討
【0217】
銅ヘキサノエートの濃度範囲は0.6ppm~60ppmであり、それは0.5%~10%のマトリックス粒子中の化合物の%のマトリックス粒子の濃度、及び適切なRF波長、出力レベル、従って上記粒子を活性化して、重合するのに必要な時間を決定する出力レベルを変化させることにより達成する。
【0218】
RF-透明フィラー
【0219】
化学的にニュートラルなもの、場合により乾燥RF透明フィラー、例えば炭酸カルシウム、ガラス又はガラス粉末のような多くの無機物、ポリマー粉末、木質物又はその他の有機粉末、シリカ、ケイ酸塩、セラミックなどを用いることにより、上記のように作成される配合物を調製した。水分が問題である場合は、遷移金属促進剤の組合せ(特に銅ヘキサノエート及び鉄、具体的はフェロセン)を用いる。
【0220】
硬化、基材及び容器
【0221】
配合物が変われば、硬化速度及び従って重合の発熱も変化する。従って、まず2枚のスライドガラスの間に薄膜フィルムが位置するように、少量の配合物を配置し、そのため材料を最小限に抑え、嫌気状態を作り出し、観察が可能となるようにする。次に、スペーサーを加えて、厚いボンドを作る。次に、細い試験管及び又はシリンジ本体に移行する。次に、より大きな試験管及び又はシリンジ本体にスケールアップする。次に、小さなビーカーにスケールアップする。より大きな体積の材料及び又は容器を油及び/又は水中に配置して、発熱の熱伝導を制御し、危険な状況を避けることができる。基本的に、必要なRFエネルギーを適切に伝えられるように、RF透明材料が、格納容器又は格納容器の一部であることが望ましい。
【0222】
実施例3-コア(中心部)として市販の微粒子を用いる方法
【0223】
本検討は、活性剤を運び、一液型の接着剤配合における硬化を開始するために、マトリックス粒子のコアとしての利用可能な微粒子を使用できることを示す。本検討の主な目的は、銅活性剤を市販品の粒子のコアの表面に付けることにより、アクリル活性剤のキャリアとしてマイクロ/ナノスケールの粒子において、市販のPMMAを使用できることを示すことである。
【0224】
【0225】
**MX-500ML、MP-1441、MX-180TAは、Soken(日本)から入手し、XX6666ZはSekisuikasei(日本)から入手した。
【0226】
以下の配合物を準備し、マトリックス粒子のコアとして市販の種々のPMMA粒子を用いて、マトリックス粒子を調製するための条件を評価した。
【0227】
配合物1-市販のPMMA(MX-500ML)(2g)を、まず10%(100mL)の水酸化ナトリウム溶液で、次に10%(10mL)の塩化第二銅溶液でフィルター洗浄し、脱イオン水ですすいで、乾燥させた。
【0228】
配合物2-市販のPMMA(MX-500ML)(2g)を、まず10%(100mL)水酸化ナトリウム溶液で、次に10%(10mL)の塩化第二銅溶液でフィルター洗浄し、脱イオン水ですすいで、乾燥させた。
【0229】
配合物3-市販のPMMA(MP-1441)(2g)を、まず10%(100mL)の水酸化ナトリウム溶液で、次に10%(10mL)の塩化第二銅溶液でフィルター洗浄し、脱イオン水ですすいで、乾燥させた。
【0230】
配合物4-市販PMMA(XX6666Z)(2g)を、まず10%(100mL)の水酸化ナトリウム溶液で、次に10%(10mL)の塩化第二銅溶液でフィルター洗浄し、脱イオン水ですすいで、乾燥させた。
【0231】
配合物5-市販のPMMA(MP-1441)(5g)を、イソプロパノール中の銅(II)2-エチルヘキサノエート(1g)で超音波処理を行い、追加のイソプロパノールでフィルター洗浄をした。
【0232】
配合物6-市販のPMMA(MX-180TA)(2g)を、イソプロパノール中の塩化第二銅溶液(0.125g)で超音波処理を行い、追加のイソプロパノールでフィルター洗浄をした。
【0233】
配合物7-市販のPMMA(MX-180TA)(4g)を、イソプロパノール中の銅(II)2-エチルヘキサノエート(0.21g)で超音波処理を行い、追加のイソプロパノールでフィルター洗浄をした。
【0234】
配合物8-市販のPMMA(MX-180TA)(4g)を、イソプロパノール中の塩化第二銅溶液(0.2g)で超音波処理を行い、真空濾過した。
【0235】
実施例4-乳化重合を介する粒子コアの調製
【0236】
本検討の主な目的は、乳化重合、具体的にはメタクリレートの乳化重合を介してナノ微粒子のコアを調製することである。例示的な反応の概略図を
図18に示す。ナノ粒子に乳化重合するために、配合物を、水中でメタクリレートの水中油滴型のエマルジョンを用いて調製した。
【0237】
実験1:70℃で、メチル・メタクリレート(3mL)を脱イオン水(16mL)に添加し、不活性ガス下で乳化した。重合反応を((2,2-アゾビス)2-メチル-プロピオンアミジン)二塩酸塩(10~15mg)により触媒し、30分間撹拌した。
【0238】
実験2:70℃で、メチル・メタクリレート(3mL)を脱イオン水(16mL)に添加し、不活性ガス下で乳化した。重合反応を((2,2-アゾビス)2-メチル-プロピオンアミジン)二塩酸塩(10~15mg)により触媒し、40分間、450rpmで撹拌した。
【0239】
実験3:70℃で、メチル・メタクリレート(3mL)を脱イオン水(16mL)に30~40分間で滴下し、不活性ガス下で乳化した。重合反応を((2,2-アゾビス)2-メチル-プロピオンアミジン)二塩酸塩(10~15mg)により触媒し、40分間撹拌した。
【0240】
実験4:銅(II)2-エチルヘキサノエートをメチル・メタクリレート(3mL)に溶解し、70℃の不活性ガス下で、脱イオン水(16mL)に投入した。((2,2-アゾビス)2-メチル-プロピオンアミジン)二塩酸塩(10~15mg)を添加し、40分間、350rpmで撹拌した。
【0241】
実施例5:中空粒子コアの調製方法
【0242】
本検討は、中空粒子-コア構造を調製するための方法を示す。中空粒子の代表的なSEM画像を
図7に示し、SPIONs及び銅と組み合わせた中空コア粒子の代表的なSEM画像を
図8に示す。
【0243】
実験1
【0244】
ジクロロメタン(DCM)中に溶解した5~6%w/wのPMMA(120,000g/mol)の溶液を、ポリビニルアルコール(0.5%~0.6%w/v)の水性媒体に滴下して添加し、500~550rpmで10~15分間撹拌した。DCMが蒸発するまで、溶液を一晩中又は12~18時間放置した。中空粒子をイソプロパノールで3回フィルター洗浄し、再び放置して乾燥させた。
【0245】
実験2
【0246】
ジクロロメタン中に溶解した5~6%w/wのPMMA(15,000g/mol)の溶液を、ポリビニルアルコール(0.5%~0.6%w/v)の水性媒体に滴下して添加し、500~550rpmで10~15分間撹拌した。DCMが蒸発するまで、溶液を一晩中又は12~18時間放置した。中空粒子をイソプロパノールで3回フィルター洗浄し、再び放置して乾燥させた。
【0247】
実験3
【0248】
ジクロロメタン中に銅(II)2-エチルヘキサノエート(12.5mg)を溶解させた第1溶液を調製した。第1溶液に溶解した5~6%w/wのPMMA(15,000g/mol)の第2溶液を、ポリビニルアルコール(0.5%~0.6%w/v)の水性媒体に滴下して添加し、500~550rpmで10~15分間撹拌した。DCMが蒸発するまで、溶液を一晩中又は12~18時間放置した。中空粒子をイソプロパノールで3回フィルター洗浄し、再び放置して乾燥させた。
【0249】
実験4
【0250】
ジクロロメタン中にSPIONs(12.5mg)の分散液を調製した。SPION/ジクロロメタン分散液に溶解した5~6%w/wのPMMA(15,000g/mol)をポリビニルアルコール(0.5%~0.6%w/v)の水性媒体に滴下して添加し、500~550rpmで10~15分間撹拌した。DCMが蒸発するまで、溶液を一晩中又は12~18時間放置した。中空粒子をイソプロパノールで3回フィルター洗浄し、再び放置して乾燥させた。
【0251】
実験5
【0252】
ジクロロメタン中にオレイン酸変性SPIONs(12.5mg)の分散液を調製した。SPION/ジクロロメタン分散液の中に溶解した5~6%w/wのPMMA(15,000g/mol)をポリビニルアルコール(0.5%~0.6%w/v)の水性媒体に滴下して添加し、500~550rpmで10~15分間撹拌した。DCMが蒸発するまで、溶液を一晩中又は12~18時間放置した。中空粒子をイソプロパノールで3回フィルター洗浄し、再び放置して乾燥させた。
【0253】
実験6
【0254】
ジクロロメタン中にオレイン酸変性SPIONs(12.5mg)及び銅(II)2-エチルヘキサノエート(12.5mg)の分散液を調製した。SPION/ジクロロメタン分散液の中に溶解した5~6%w/wのPMMA(15,000g/mol)をポリビニルアルコール(0.5%~0.6%w/v)の水性媒体に滴下して添加し、500~550rpmで10~15分間撹拌した。DCMが蒸発するまで、溶液を一晩中又は12~18時間放置した。中空粒子をイソプロパノールで3回フィルター洗浄し、再び放置して乾燥させた。
【0255】
実施例6-サセプタ及び触媒の融合によりコアを調製するための方法
【0256】
本検討は、マトリックス粒子内でマイクロ波によってサセプタを遠隔で活性化することを示す。この検討で用いられるマトリックスを、融合(又はアマルガム、amalgamation)としてマトリック粒子のサセプタ及び他の成分(又は要素、components)を組み合わせることにより調製した。マトリックス粒子をマイクロ波にさらして活性剤を解放し、その機能を発揮させた。例えば、いくつかの場合では、マイクロ波が、サセプタ、カーボンナノチューブを加熱し、マトリックス粒子から銅触媒を解放し、重合反応を触媒した。
【0257】
実験1
【0258】
80℃で20~30分間、5gのPMMAをキシレンに溶解することにより溶液Aを調製した。5gのカルナバ・ワックスをヒートガンで、キシレン中で溶融することにより溶液Bを調製した。連続的に加熱しながら、A及びBを非常にゆっくりと混合した。銅(II)2-エチルヘキサノエート(0.5%)をA及びBの溶液に添加した。大部分のキシレンが蒸発するまで、溶液を連続的に撹拌して、110℃に加熱した。全てが蒸発する前に、10%のカーボンナノ構造物物を添加し、高せん断で混合した。十分にキシレンが蒸発して、溶液がペースト状になったら、溶液をエタノールに崩した。固体をブレンダーの中の水で粉砕し、一晩中乾燥させて粉末を得た。粉末をミクロンメッシュに通して篩分けして、コア粒子を得た。
【0259】
実験2
【0260】
0.1gのカーボンナノ構造物ペレットの分散液を、30mLのジクロロメタンにて作製した後に、3gのヘキサデシル・トリメチル・アンモニウム・ブロミド(CTAB)を10mLのイソプロパノール及び20mLのジクロロメタンに、700rpmで混合しながら溶解した溶液を加えた。銅(II)2-エチルヘキサノエートを固体の可塑剤(Benzoflex(商標)352)と共に連続的に撹拌している溶液に添加した。乾燥するまでサンプルを放置して撹拌した。
【0261】
実験3
0.1gのカーボンナノチューブと0.2gのCTABの混合物を30mLのジクロロメタン中に作製し、15分間、30%の出力で超音波処理した。追加の50mLのジクロロメタンを添加し、サンプルを追加で15分間、30%の出力で超音波処理した。9.9gのBenzoflex(商標)352(固体可塑剤)及び1gの銅(II)2-エチルヘキサノエートを添加して、手で混合した。撹拌子をサンプルに入れ、ホットプレートで35℃、700rpmで撹拌し、ジクロロメタンを蒸発させながら、粒子の懸濁状態を保持した。
【0262】
実験4
【0263】
10分間の超音波処理することで、0.11gの実験1の粒子の混合物を10mLのジメチル・マロネートに分散させた。1滴のこれらの粒子を顕微鏡のスライドガラスにのせて、電子レンジで60秒間、800W/4Vで加熱して試験した。
【0264】
実施例7-サセプタで微粒子を被覆するための方法
【0265】
本検討は、微粒子(例えば市販のPMMA微粒子)を、カーボンナノチューブ(CNT)又はカーボンナノ構造物(carbon nano-substance、CNS)のようなサセプタで、コーティングする方法を説明する。
【0266】
実験1
【0267】
本実験では、250mgのPMMA(Soken MX-500ML)を水50mLに添加した。その後、マイクロプローブ超音波破砕機を用いて30分間、20%の振幅で超音波処理した。別のフラスコでは、300mgのCNTを120mlの水に添加した。これを、プローブ超音波破砕機を用いて15分間、10%の振幅で超音波処理した。PMMA及び水の分散液をビーカーに取り、室温で連続的に撹拌して、PMMA粒子が沈殿することを避けた。次に、水中に分散させた10mLのCNTsをシリンジに取り、シリンジポンプを用いて、PMMAの分散液に0.5ml/分で滴下して添加した。このサンプルを一晩放置し、被覆されたPMMA粒子を沈殿した。粒子はその後、遠心分離機を用いて分離した。
【0268】
実験2
【0269】
本実験では、250mgのPMMA(Soken MX-500ML)を50mLの水に添加した。その後マイクロプローブ超音波破砕機を用いて30分間、20%の振幅で超音波処理した。別のフラスコでは、300mgのCNSを120mlの水に添加した。これを、プローブ超音波破砕機を用いて15分間、10%の振幅で超音波処理した。PMMA及び水の分散液をビーカーに取って室温で連続的に撹拌し、PMMA粒子が沈殿することを避けた。次に、水中に分散させた10mLのCNTsをシリンジに取り、シリンジポンプを用いて、PMMAの分散液に0.5ml/分で滴下して添加した。このサンプルを一晩放置し、被覆されたPMMA粒子を沈殿した。粒子はその後、遠心分離機を用いて分離した。
【0270】
実験3
【0271】
本実験では、上述した乳化重合方法を用いて調製したPMMA1mlを水9mlに添加した。別のフラスコでは、300mgのCNTを120mlの水に添加した。これを、マイクロプローブ超音波破砕機を用いて15分間、10%の振幅で超音波処理した。CNT及び水の分散液をビーカーに取って室温で連続的に撹拌した。次に、水中に分散された10mLのPMMAをシリンジに取り、シリンジポンプを用いて、CNT分散液に0.5ml/分で滴下して添加した。このサンプルを一晩放置し、被覆されたPMMA粒子を沈殿した。粒子はその後、遠心分離機を用いて分離した。
【0272】
実施例8-乳化共重合を介する微粒子の調製のための方法
【0273】
本検討は、種々のコポリマー(ポリ(エチレングリコール)メタクリレート(PEGMA)、ポリ(エチレングリコール)ジメタクリレート(PEGDMA)、ステアリルメタクリレート、及びメタクリル酸を含む)でPMMAを共重合することによりPMMAを官能化するための方法を供する。
【0274】
実験1
【0275】
70℃で、メチル・メタクリレート(12mL)を脱イオン水(64mL)に滴下して添加し、不活性ガスの存在下で乳化した。重合反応を、((2,2-アゾビス)2-メチル-プロピオンアミジン)二塩酸塩(AIBN)(20mg)により触媒し、30~40分間撹拌した。追加の20mgのAIBNを1.2mLのポリ(エチレングリコール)メタクリレート(PEGMA)と共に添加し、40分間撹拌した。
【0276】
【0277】
実験2
【0278】
70℃で、メチル・メタクリレート(12mL)を脱イオン水(64mL)に滴下して添加し、不活性ガスの存在下で乳化した。重合反応を、((2,2-アゾビス)2-メチル-プロピオンアミジン)二塩酸塩(AIBN)(20mg)により触媒し、10分間撹拌した。追加の20mgのAIBNを1.2mLのポリ(エチレングリコール)メタクリレート(PEGMA)と共に添加し、40分間撹拌した。
【0279】
実験3
【0280】
70℃で、メチル・メタクリレート(12mL)を脱イオン水(64mL)に滴下して添加し、不活性ガスの存在下で乳化した。重合反応を、((2,2-アゾビス)2-メチル-プロピオンアミジン)二塩酸塩(AIBN)(20mg)により触媒し、10分間撹拌した。追加の20mgのAIBNを120μLのポリ(エチレングリコール)メタクリレート(PEGMA)と共に添加し、40分間撹拌した。
【0281】
実験4
【0282】
70℃で、メチル・メタクリレート(12mL)を脱イオン水(64mL)に滴下して添加し、不活性ガスの存在下で乳化した。重合反応を、((2,2-アゾビス)2-メチル-プロピオンアミジン)二塩酸塩(AIBN)(20mg)により触媒し、10分間撹拌した。追加の20mgのAIBNを120μLのポリ(エチレングリコール)ジメタクリレート(PEGDMA)と共に添加し、40分間撹拌した。
【0283】
【0284】
実験5
【0285】
70℃で、メチル・メタクリレート(12mL)を脱イオン水(64mL)に添加し、不活性ガスの存在下で乳化した。重合反応を、((2,2-アゾビス)2-メチル-プロピオンアミジン)二塩酸塩(AIBN)(20mg)により触媒し、10分間撹拌した。追加の20mgのAIBNを1.2mLのポリ(エチレングリコール)ジメタクリレート(PEGDMA)と共に添加し、40分間撹拌した。
【0286】
実験6
【0287】
ヒドロキシエチル・メタクリレート(HEMA)(15g)に溶解したドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の溶液(0.5g)を調製した。この溶液を、70℃に設定したホットバス中の脱イオン水(185g)を入れた丸底フラスコに移し、高速で撹拌した。加熱を止めて、AIBN(0.2g)を添加しながら、溶液を撹拌し続けた。
【0288】
実験7
【0289】
64mLの脱イオン水をいれたフラスコを脱気して、670rpmで20分間撹拌しながら、70℃まで加熱した。次の段階では、1gのステアリルメタクリレートを9mLのメチルメタクリレートに溶解した。この溶液を不活性ガスの存在化で定速撹拌しながら、15分間かけて水に滴下した。添加後、((2,2-アゾビス)2-メチル-プロピオンアミジン)二塩酸塩(AIBN)(40mg)を乳化液(emulsion)に添加し、混合物/溶液を更に1時間撹拌した。
【0290】
【0291】
実験8
【0292】
64mLの脱イオン水を含むフラスコを脱気して、670rpmで20分間その内容物を撹拌しながら70℃まで加熱した。その後、これとは別に、5gのステアリルメタクリレートを5mLのメチルメタクリレートに溶解した。この溶液を不活性ガスの存在化で定速撹拌しながら、15分間かけてフラスコに滴下した。添加後、((2,2-アゾビス)2-メチル-プロピオンアミジン)二塩酸塩(AIBN)(40mg)を乳化液に添加し、更に1時間撹拌した。
【0293】
実験9
【0294】
64mLの脱イオン水を含むフラスコを脱気して、670rpmで20分間その内容物を撹拌しながら70℃まで加熱した。次に、5gのメタクリル酸を5mLのメチルメタクリレートに溶解した。この溶液を不活性ガスの存在化で定速撹拌しながら、15分間かけて水に滴下した。添加後、((2,2-アゾビス)2-メチル-プロピオンアミジン)二塩酸塩(AIBN)(40mg)を乳化液に添加し、更に1時間撹拌した。
【0295】
【0296】
実験10
【0297】
64mLの脱イオン水を含むフラスコを脱気して、670rpmで20分間その内容物を撹拌しながら70℃まで加熱した。次に、1mLのメタクリル酸を5mLのメチルメタクリレートに入れて混合した。この溶液を不活性ガスの存在化で定速撹拌しながら、15分間かけて水に滴下した。添加後、((2,2-アゾビス)2-メチル-プロピオンアミジン)二塩酸塩(AIBN)(40mg)を乳化液に添加し、更に1時間撹拌した。
【0298】
実験11
【0299】
70℃で、メチルメタクリレート(12mL)を脱イオン水(64mL)に滴下して添加し、不活性ガスの存在下で乳化した。重合反応を((2,2-アゾビス)2-メチル-プロピオンアミジン)二塩酸塩(AIBN)(20mg)により触媒し、5分間撹拌した。追加の500μLのグリシジルメタクリレート(GMA)を添加し、不活性ガス下で40分間撹拌した。
【0300】
実験12
【0301】
70℃で、グリシジルメタクリレート(12mL)を脱イオン水(64mL)に滴下して添加、不活性ガス存在下で乳化した。重合反応を((2,2-アゾビス)2-メチル-プロピオンアミジン)二塩酸塩(AIBN)(20mg)により触媒し、40分間撹拌した。
【0302】
実施例9-市販の乳化液で市販品の微粒子をコーティングする方法
【0303】
本検討の目的は、コアとしての市販のPMMA粒子を、簡単なコーティング方法を介してサセプタ及び/又は活性剤を含んで成るシェルで、被覆することである。
【0304】
実験1
【0305】
本実験では、250mgのPMMA(Soken MX-500ML)をビーカーに入った50mLの水に添加した。その後、超音波破砕機で30分間、20%の振幅で超音波処理した。同時に、ポリウレタンに分散した市販品のCNT(SP-05032022-3)を100倍に希釈し、別のビーカーに添加した。PMMA及び水の分散液を室温で撹拌し続け、PMMA粒子の沈殿を避けた。その後、ポリウレタンに分散したCNTs10mlを、シリンジポンプを用いてPMMAの分散液に0.5ml/分で滴下して添加した。サンプルを一晩放置して、被覆されたPMMA粒子を沈殿した。粒子をその後、遠心分離機を用いて分離した。
【0306】
実験2
【0307】
本実験では、250mgのPMMA(Soken MX-500ML)をビーカーに入った50mLの水に添加した。その後、超音波破砕機で30分間、20%の振幅で超音波処理した。同時に、市販品のエポキシ-CNT(SP-05032022-05)を100倍に希釈し、別のビーカーに添加した。PMMA及び水の分散液を室温で撹拌し続け、PMMA粒子の沈殿を避けた。その後、希釈されたエポキシ-CNT10mlを、シリンジポンプを用いてPMMAの分散液に0.5ml/分で滴下して添加した。このサンプルを一晩放置して、被覆されたPMMA粒子を沈殿した。粒子をその後、遠心分離機を用いて分離した。
【0308】
実験3
【0309】
本実験では、250mgのPMMA(Soken MX-500ML)をビーカーに入った50mLの水に添加した。その後、超音波破砕機で30分間、20%の振幅で超音波処理した。同時に、ポリウレタン中に分散した市販品のCNT(SP-05032022-3)を10倍に希釈し、別のビーカーに添加した。PMMA及び水の分散液を室温で撹拌し続け、PMMA粒子の沈殿を避けた。その後、ポリウレタンに分散したCNTs10mlを、シリンジポンプを用いてPMMAの分散液に0.5ml/分で滴下して添加した。サンプルを一晩放置して、被覆されたPMMA粒子を沈殿した。粒子をその後、遠心分離機を用いて分離した。
【0310】
実施例10-サセプタとしてのカーボンナノ構造物を用いるための方法
【0311】
本検討は、マトリックス粒子内の高周波(RF)放射線サセプタとして市販のカーボンナノ構造物を使用することにより、触媒の解放を補助して、重合反応を開始する触媒の機能を発揮させることを示す。例えば、サセプタの加熱が、粒子のマトリックスを溶融させ、それが重合を開始するように銅塩触媒のように化学成分を解放する。本検討の目的は、銅活性剤のキャリアとして市販のPMMA粒子を用いることである。
【0312】
本検討の実験で生成される粒子は、アクリル活性剤用のキャリアとしてマイクロ~ナノスケールの直径を有する市販の粒子を用いて、マトリックス粒子のコアの表面に活性剤を付着させることにより調製した。
【0313】
前述の実験6の微粒子を、以下の加熱時間のコース測定に用いた。
【0314】
実験1
【0315】
実験6の微粒子を採取し、3部のトリアクリレートモノマー(OTA480)(1部の多官能化アクリルモノマー(EBECRYL(登録商標)896)、1部のポリウレタン-アクリレート(EBECRYL(登録商標)8811)(これらは全てAllnex社から)及び5000ppmの4-メトキシフェノール(MEHQ)、2%のクミルヒドロペルオキシド(CHP)及び2%の4,N,N-トリメチルアニリン(DMPT))から成る3gのモノマーにおいて0.10gとなるようにアクリルモノマーの配合物に入れた。加熱実験から得たデータを以下の表4に示す。
【0316】
【0317】
実施例11-CNSサセプタを用いて調製した粒子コアの安定性評価
【0318】
発泡体を用いた検討
【0319】
2つの発泡体を4インチ×4インチの立方体に切断して、発泡体の硬化テストを実施した。試験する前述の実施例9の実験6からのサンプルを、発泡体の1つの上にピペットで添加して、立方体の一方の面を均等に被覆し、その層が発泡体の細孔の上方に貼り付くように十分に厚くした。第2の立方体を第1の立方体の上に配置し、サンプルを完全に被覆した。発泡体の立方体を、スペーサーを用いて2つのスライドの間に配置し、ゴムバンドを用いてガラスのスライドを締結することにより均等な圧力を保持した。締結されたサンプルを、温度カメラの下、マイクロ波チャンバー内に配置した。直接的な加熱からサンプルを隔離するため、サンプルをマイクロ波チャンバー内の絶縁体(又は断熱体、insulator)に配置した。サンプルを800Wの出力で予めセットした時間、電子レンジで加熱した。サンプルを電子レンジから取り出した後、セットアップを慎重に分解した。発泡体が一体に接着されているかどうかをテストするため、発泡体の角を徐々に引き離した。
【0320】
試験する発泡体の種類
【0321】
1/2インチのAirtex高密度発泡体(キャンパーのクッション、ボートの座席、椅子のパッド、ガーデンのベンチ、及び小さな発泡体クッションの製造に使用)。
【0322】
1/8インチのジビニルマット(divinylmat)及び1/2インチのビニル発泡体(コンポジット・ラミネート構造のコア材料として頻繁に使用される。重量を増やすことなく、強度、剛性、及び断熱性を高める。)一般的に、発泡体は容易に形状に適合し、層内で結合して、厚みを出すことができる。
【0323】
アラミド繊維から作られたノーメックス(Nomex)のハニカム。(ハニカムが優れた難燃性の特性を示す。)
【0324】
コンポジットを用いて実施した検討
【0325】
ベア形状をしたシリコン型を用いて、バルクコンポジットの硬化を評価した。1つの5cc体積のベア型を一度に充填し、温度カメラの下、電子レンジの中心に配置した。一度に1つのサンプルのみを入れ、サンプルを温度カメラの視野の下になるように確保した。ベア型を800Wの出力で予めセットした時間、電子レンジで加熱し、電子レンジから取り出して、粘度の変化又は硬化が起こったかどうかを検査した。
【0326】
試験サンプル
【0327】
1.サンプルA:活性剤なしのアクリル接着剤配合物(配合物の詳細については、実施例9の実験1を参照)
2.サンプルB:アクリル接着剤配合物+銅活性剤
3.サンプルC:アクリル接着剤配合物+マトリックス粒子(サセプタ及び銅活性剤の双方を含む)
【0328】
Airtex発泡体を用いて室温で行った実験の結果
【0329】
1.サンプルA:1か月後に硬化しなかった(このサンプルは活性剤を有さない)。
2.サンプルB:30分で硬化した。
3.サンプルC:電子レンジで30秒以内に硬化したが、室温では1か月後でも、硬化しなかった。
【0330】
ジビニルマット、ビニル発泡体、及びハニカムを用いて室温で行った実験の結果
【0331】
1.サンプルA:1か月後硬化しなかった(このサンプルは活性剤を有さない)。
2.サンプルB:30分で硬化した。
3.サンプルC:電子レンジで30秒以内に硬化したが、室温では1か月後でも、硬化しなかった。
【0332】
コンポジットを用いて室温で行った実験の結果
【0333】
1.サンプルA:1か月後硬化しなかった(このサンプルは活性剤を有さない)。
2.サンプルB:30分で硬化した。
3.サンプルC:電子レンジ内で20秒以内に硬化したが、室温では1か月後でも、硬化しなかった。
【0334】
これは、必要に応じて硬化をもたらしながら、本発明のマトリックス粒子の有効性が続く期間を実験的に示す。
【国際調査報告】