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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-22
(54)【発明の名称】ヒトメソテリン結合物質
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20250115BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20250115BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20250115BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20250115BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20250115BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20250115BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20250115BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20250115BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250115BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20250115BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20250115BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
C07K16/28
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61P35/00
A61K39/395 N
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K39/395 T
A61K39/395 U
A61K39/395 G
A61K39/395 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533052
(86)(22)【出願日】2022-12-09
(85)【翻訳文提出日】2024-07-24
(86)【国際出願番号】 US2022081253
(87)【国際公開番号】W WO2023108114
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】63/288,162
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522242018
【氏名又は名称】メルク・シャープ・アンド・ドーム・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100216839
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏幸
(74)【代理人】
【識別番号】100228980
【弁理士】
【氏名又は名称】副島 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】フリードマン,アーサー
(72)【発明者】
【氏名】ハンダ,マサヒサ
(72)【発明者】
【氏名】シエ,チュン-ミン
(72)【発明者】
【氏名】シン,スジャータ
(72)【発明者】
【氏名】ダブリジファルド,サハバ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェネガス,サンドラ・イザベル
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA02
4B064CA05
4B064CA06
4B064CA08
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA01
4B064DA13
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA57X
4B065AA57Y
4B065AA72X
4B065AA72Y
4B065AA83X
4B065AA83Y
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA16
4C084MA55
4C084MA56
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZB26
4C084ZC75
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB31
4C085BB41
4C085BB43
4C085BB44
4C085CC22
4C085CC23
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG06
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA09
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
4H045GA15
4H045GA26
(57)【要約】
ヒトメソテリンに結合する抗体及びその抗原結合フラグメントが記載されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトメソテリン(MSLN)結合物質であって、
(a)配列番号18に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(V)及び配列番号19に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(V)を含む抗体の6つの相補性決定領域(CDR)、
(b)配列番号10に記載のアミノ酸配列を含むV及び配列番号11に記載のアミノ酸配列を含むVを含む抗体の6つのCDR、または、
(c)配列番号2、26、27、または28に記載のアミノ酸配列を含むV及び配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むVを含む抗体の6つのCDR、を含み、
(a)、(b)、または(c)では、前記CDRが、Kabat、Chothia、AbM、ImMunoGeneTics(IMGT)、またはContactのナンバリングスキームを使用して定義される、前記ヒトメソテリン結合物質。
【請求項2】
前記Vが、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号5に記載のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号6に記載のアミノ酸配列を含むCDR3を含み;前記Vが、配列番号7に記載のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号8に記載のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号9に記載のアミノ酸配列を含むCDR3を含む、請求項1に記載のヒトMSLN結合物質。
【請求項3】
前記Vが、配列番号12に記載のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号13に記載のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号14に記載のアミノ酸配列を含むCDR3を含み;前記Vが、配列番号15に記載のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号16に記載のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号17に記載のアミノ酸配列を含むCDR3を含む、請求項1に記載のヒトMSLN結合物質。
【請求項4】
前記Vが、配列番号20に記載のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号21に記載のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号22に記載のアミノ酸配列を含むCDR3を含み;前記Vが、配列番号23に記載のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号24に記載のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号25に記載のアミノ酸配列を含むCDR3を含む、請求項1に記載のヒトMSLN結合物質。
【請求項5】
前記ヒトMSLN結合物質が、
(i)配列番号2に記載のアミノ酸配列、もしくはアミノ酸配列であって、配列番号2に記載の2番目のアミノ酸残基から116番目のアミノ酸残基までの範囲のアミノ酸配列の2番目のアミノ酸残基から116番目のアミノ酸残基までを有し且つ前記アミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基がピログルタミン酸である前記アミノ酸配列、
(ii)配列番号26に記載のアミノ酸配列、もしくはアミノ酸配列であって、配列番号26に記載の2番目のアミノ酸残基から116番目のアミノ酸残基までの範囲のアミノ酸配列の2番目のアミノ酸残基から116番目のアミノ酸残基までを有し且つ前記アミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基がピログルタミン酸である前記アミノ酸配列、
(iii)配列番号27に記載のアミノ酸配列、もしくはアミノ酸配列であって、配列番号27に記載の2番目のアミノ酸残基から116番目のアミノ酸残基までの範囲のアミノ酸配列の2番目のアミノ酸残基から116番目のアミノ酸残基までを有し且つ前記アミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基がピログルタミン酸である前記アミノ酸配列、または
(iv)配列番号28に記載のアミノ酸配列、もしくはアミノ酸配列であって、配列番号28に記載の2番目のアミノ酸残基から116番目のアミノ酸残基までの範囲のアミノ酸配列の2番目のアミノ酸残基から116番目のアミノ酸残基までを有し且つ前記アミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基がピログルタミン酸である前記アミノ酸配列、を含むV、及び
配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むV
を含む、請求項1に記載のヒトMSLN結合物質。
【請求項6】
配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むV、及び配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むVを含む、請求項5に記載のヒトMSLN結合物質。
【請求項7】
アミノ酸配列であって、配列番号2に記載の2番目のアミノ酸残基から116番目のアミノ酸残基までの範囲のアミノ酸配列の2番目のアミノ酸残基から116番目のアミノ酸残基までを有し且つ前記アミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基がピログルタミン酸である前記アミノ酸配列を含むV;及び配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むV、を含む、請求項5に記載のヒトMSLN結合物質。
【請求項8】
配列番号26に記載のアミノ酸配列を含むV、及び配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むVを含む、請求項5に記載のヒトMSLN結合物質。
【請求項9】
アミノ酸配列であって、配列番号26に記載の2番目のアミノ酸残基から116番目のアミノ酸残基までの範囲のアミノ酸配列の2番目のアミノ酸残基から116番目のアミノ酸残基までを有し且つ前記アミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基がピログルタミン酸である前記アミノ酸配列を含むV;及び配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むV、を含む、請求項5に記載のヒトMSLN結合物質。
【請求項10】
配列番号27に記載のアミノ酸配列を含むV、及び配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むVを含む、請求項5に記載のヒトMSLN結合物質。
【請求項11】
アミノ酸配列であって、配列番号27に記載の2番目のアミノ酸残基から116番目のアミノ酸残基までの範囲のアミノ酸配列の2番目のアミノ酸残基から116番目のアミノ酸残基までを有し且つ前記アミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基がピログルタミン酸である前記アミノ酸配列を含むV;及び配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むV、を含む、請求項5に記載のヒトMSLN結合物質。
【請求項12】
配列番号28に記載のアミノ酸配列を含むV、及び配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むVを含む、請求項5に記載のヒトMSLN結合物質。
【請求項13】
アミノ酸配列であって、配列番号28に記載の2番目のアミノ酸残基から116番目のアミノ酸残基までの範囲のアミノ酸配列の2番目のアミノ酸残基から116番目のアミノ酸残基までを有し且つ前記アミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基がピログルタミン酸である前記アミノ酸配列を含むV;及び配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むV、を含む、請求項5に記載のヒトMSLN結合物質。
【請求項14】
前記ヒトMSLN結合物質が、配列番号10に記載のアミノ酸配列、またはアミノ酸配列であって、配列番号10に記載の2番目のアミノ酸残基から116番目のアミノ酸残基までの範囲のアミノ酸配列の2番目のアミノ酸残基から116番目のアミノ酸残基までを有し且つ前記アミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基がピログルタミン酸である前記アミノ酸配列、を含むV、及び
配列番号11に記載のアミノ酸配列、またはアミノ酸配列であって、配列番号11に記載の2番目のアミノ酸残基から107番目のアミノ酸残基までの範囲のアミノ酸配列の2番目のアミノ酸残基から107番目のアミノ酸残基までを有し且つ前記アミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基がピログルタミン酸である前記アミノ酸配列、を含むV
を含む、請求項1に記載のヒトMSLN結合物質。
【請求項15】
配列番号10に記載のアミノ酸配列を含むV、及び配列番号11に記載のアミノ酸配列を含むVを含む、請求項14に記載のヒトMSLN結合物質。
【請求項16】
アミノ酸配列であって、配列番号10に記載の2番目のアミノ酸残基から116番目のアミノ酸残基までの範囲のアミノ酸配列の2番目のアミノ酸残基から116番目のアミノ酸残基までを有し且つ前記アミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基がピログルタミン酸である前記アミノ酸配列を含むV;及び配列番号11に記載のアミノ酸配列を含むV、を含む、請求項14に記載のヒトMSLN結合物質。
【請求項17】
配列番号10に記載のアミノ酸配列を含むV、及びアミノ酸配列であって、配列番号11に記載の2番目のアミノ酸残基から107番目のアミノ酸残基までの範囲のアミノ酸配列の2番目のアミノ酸残基から107番目のアミノ酸残基までを有し且つ前記アミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基がピログルタミン酸である前記アミノ酸配列を含むV、を含む、請求項14に記載のヒトMSLN結合物質。
【請求項18】
アミノ酸配列であって、配列番号10に記載の2番目のアミノ酸残基から116番目のアミノ酸残基までの範囲のアミノ酸配列の2番目のアミノ酸残基から116番目のアミノ酸残基までを有し且つ前記アミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基がピログルタミン酸である前記アミノ酸配列、を含むV、及び、アミノ酸配列であって、配列番号11に記載の2番目のアミノ酸残基から107番目のアミノ酸残基までの範囲のアミノ酸配列の2番目のアミノ酸残基から107番目のアミノ酸残基までを有し且つ前記アミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基がピログルタミン酸である前記アミノ酸配列、を含むV、を含む、請求項14に記載のヒトMSLN結合物質。
【請求項19】
前記ヒトMSLN結合物質が、配列番号18に記載のアミノ酸配列、またはアミノ酸配列であって、配列番号18に記載の2番目のアミノ酸残基から118番目のアミノ酸残基までの範囲のアミノ酸配列の2番目のアミノ酸残基から118番目のアミノ酸残基までを有し且つ前記アミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基がピログルタミン酸である前記アミノ酸配列、を含むV、及び
配列番号19に記載のアミノ酸配列、またはアミノ酸配列であって、配列番号19に記載の2番目のアミノ酸残基から108番目のアミノ酸残基までの範囲のアミノ酸配列の2番目のアミノ酸残基から108番目のアミノ酸残基までを有し且つ前記アミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基がピログルタミン酸である前記アミノ酸配列、を含むV
を含む、請求項1に記載のヒトMSLN結合物質。
【請求項20】
配列番号18に記載のアミノ酸配列を含むV、及び配列番号19に記載のアミノ酸配列を含むVを含む、請求項19に記載のヒトMSLN結合物質。
【請求項21】
アミノ酸配列であって、配列番号18に記載の2番目のアミノ酸残基から118番目のアミノ酸残基までの範囲のアミノ酸配列の2番目のアミノ酸残基から118番目のアミノ酸残基までを有し且つ前記アミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基がピログルタミン酸である前記アミノ酸配列を含むV;及び配列番号19に記載のアミノ酸配列を含むV、を含む、請求項19に記載のヒトMSLN結合物質。
【請求項22】
配列番号18に記載のアミノ酸配列を含むV、及びアミノ酸配列であって、配列番号19に記載の2番目のアミノ酸残基から108番目のアミノ酸残基までの範囲のアミノ酸配列の2番目のアミノ酸残基から108番目のアミノ酸残基までを有し且つ前記アミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基がピログルタミン酸である前記アミノ酸配列を含むV、を含む、請求項19に記載のヒトMSLN結合物質。
【請求項23】
アミノ酸配列であって、配列番号18に記載の2番目のアミノ酸残基から118番目のアミノ酸残基までの範囲のアミノ酸配列の2番目のアミノ酸残基から118番目のアミノ酸残基までを有し且つ前記アミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基がピログルタミン酸である前記アミノ酸配列、を含むV、及び、アミノ酸配列であって、配列番号19に記載の2番目のアミノ酸残基から108番目のアミノ酸残基までの範囲のアミノ酸配列の2番目のアミノ酸残基から108番目のアミノ酸残基までを有し且つ前記アミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基がピログルタミン酸である前記アミノ酸配列、を含むV、を含む、請求項19に記載のヒトMSLN結合物質。
【請求項24】
前記ヒトMSLN結合物質が、配列番号2、配列番号26、配列番号27、または配列番号28に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むV、ならびに、配列番号3に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むV、を含み、但し、前記Vが、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号5に記載のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号6に記載のアミノ酸配列を含むCDR3を含み;前記Vが、配列番号7に記載のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号8に記載のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号9に記載のアミノ酸配列を含むCDR3を含む、請求項1に記載のヒトMSLN結合物質。
【請求項25】
前記ヒトMSLN結合物質が、配列番号10に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むV、ならびに、配列番号11に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むV、を含み、但し、前記Vが、配列番号12に記載のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号13に記載のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号14に記載のアミノ酸配列を含むCDR3を含み;前記Vが、配列番号15に記載のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号16に記載のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号17に記載のアミノ酸配列を含むCDR3を含む、請求項1に記載のヒトMSLN結合物質。
【請求項26】
前記ヒトMSLN結合物質が、配列番号18に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むV、ならびに、配列番号19に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むV、を含み、但し、前記Vが、配列番号20に記載のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号21に記載のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号22に記載のアミノ酸配列を含むCDR3を含み;前記Vが、配列番号23に記載のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号24に記載のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号25に記載のアミノ酸配列を含むCDR3を含む、請求項1に記載のヒトMSLN結合物質。
【請求項27】
前記ヒトMSLN結合物質が、IgG1アイソタイプの重鎖定常ドメイン及びヒトカッパまたはヒトラムダアイソタイプの軽鎖定常ドメインを含む抗体を含む、請求項1に記載のヒトMSLN結合物質。
【請求項28】
前記重鎖定常ドメインが、配列番号29に記載のアミノ酸配列、または配列番号29に記載の1番目のアミノ酸残基から329番目のアミノ酸残基までの範囲のアミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基から329番目のアミノ酸残基までを有するアミノ酸配列を含む、請求項27に記載のヒトMSLN結合物質。
【請求項29】
前記IgG1アイソタイプの前記重鎖定常ドメインが、前記定常ドメインをエフェクターサイレントにする1つ以上の変異を含むFcドメインを含む、請求項27に記載のヒトMSLN結合物質。
【請求項30】
前記エフェクターサイレント定常ドメインが、
(i)配列番号30に記載のアミノ酸配列、もしくは配列番号30に記載の1番目のアミノ酸残基から329番目のアミノ酸残基まで範囲のアミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基から329番目のアミノ酸残基までを有するアミノ酸配列、
(ii)配列番号31に記載のアミノ酸配列、もしくは配列番号31に記載の1番目のアミノ酸残基から329番目のアミノ酸残基まで範囲のアミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基から329番目のアミノ酸残基までを有するアミノ酸配列、
(iii)配列番号32に記載のアミノ酸配列、もしくは配列番号32に記載の1番目のアミノ酸残基から329番目のアミノ酸残基まで範囲のアミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基から329番目のアミノ酸残基までを有するアミノ酸配列、
(iv)配列番号33に記載のアミノ酸配列、もしくは配列番号33に記載の1番目のアミノ酸残基から329番目のアミノ酸残基まで範囲のアミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基から329番目のアミノ酸残基までを有するアミノ酸配列、
(v)配列番号34に記載のアミノ酸配列、もしくは配列番号34に記載の1番目のアミノ酸残基から329番目のアミノ酸残基まで範囲のアミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基から329番目のアミノ酸残基までを有するアミノ酸配列、
(vi)配列番号35に記載のアミノ酸配列、もしくは配列番号35に記載の1番目のアミノ酸残基から329番目のアミノ酸残基まで範囲のアミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基から329番目のアミノ酸残基までを有するアミノ酸配列、
(vii)配列番号36に記載のアミノ酸配列、もしくは配列番号36に記載の1番目のアミノ酸残基から329番目のアミノ酸残基まで範囲のアミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基から329番目のアミノ酸残基までを有するアミノ酸配列、または
(viii)配列番号37に記載のアミノ酸配列、もしくは配列番号37に記載の1番目のアミノ酸残基から329番目のアミノ酸残基まで範囲のアミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基から329番目のアミノ酸残基までを有するアミノ酸配列
を含む、請求項29に記載のヒトMSLN結合物質。
【請求項31】
前記エフェクターサイレント定常ドメインが、配列番号31に記載のアミノ酸配列、または配列番号31に記載の1番目のアミノ酸残基から329番目のアミノ酸残基までの範囲のアミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基から329番目のアミノ酸残基までを有するアミノ酸配列を含む、請求項30に記載のヒトMSLN結合物質。
【請求項32】
前記軽鎖定常ドメインが、配列番号38に記載のアミノ酸配列を含む前記ヒトカッパアイソタイプを含む、請求項27に記載のヒトMSLN結合物質。
【請求項33】
前記ヒトMSLN結合物質が、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)フラグメント、Fv領域、またはScFvを含む、請求項1に記載のヒトMSLN結合物質。
【請求項34】
請求項1~33のいずれか1つに記載のヒトMSLN結合物質、及び薬学的に許容される担体または希釈剤を含む、組成物。
【請求項35】
がんまたは増殖性疾患の処置を、前記処置を必要とする個体において行うための方法であって、前記がんまたは増殖性疾患を処置するために、請求項1~33のいずれか1項に記載のヒトMSLN結合物質または請求項34に記載の組成物を治療的有効量を前記個体に投与することを含む、前記方法。
【請求項36】
がんまたは増殖性疾患の処置のための、請求項1~33のいずれか1項に記載のヒトMSLN結合物質または請求項34に記載の組成物。
【請求項37】
がんまたは増殖性疾患を処置するための薬品の製造に使用するための、請求項1~33のいずれか1項に記載のヒトMSLN結合物質または請求項34に記載の組成物。
【請求項38】
請求項1~33のいずれかに1つに記載のヒトMSLN結合物質または請求項34に記載の組成物、及び治療薬を含む、がんまたは増殖性疾患を処置するための併用療法。
【請求項39】
前記治療薬が、化学療法薬または治療抗体である、請求項38に記載の併用療法。
【請求項40】
前記抗体が、抗PD1抗体または抗PD-L1抗体である、請求項39に記載の併用療法。
【請求項41】
請求項1~33のいずれか1項に記載のヒトMSLN結合物質をコードする、核酸分子。
【請求項42】
請求項41に記載の核酸分子の1つ以上を含む、発現ベクター。
【請求項43】
請求項42に記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項44】
ヒトMSLN結合物質を生成する方法であって、(a)請求項43に記載の宿主細胞を提供すること;(b)前記ヒトMSLN結合物質を発現するのに適した条件下で培地中で前記宿主細胞を培養すること;及び、(c)前記培地から前記ヒトMSLN結合物質を単離すること、を含む、前記方法。
【請求項45】
検出可能な部分にコンジュゲートされている、請求項1~33のいずれか1項に記載のヒトMSLN結合物質。
【請求項46】
前記検出可能な部分が、磁気共鳴画像法(MRI)またはX線画像法により検出可能である、請求項45に記載のヒトMSLN結合物質。
【請求項47】
ヒトMSLN結合物質であって、前記ヒトMSLN結合物質が、
(i)重鎖のC末端アミノ酸残基Kが除去されること、及び
(ii)VH、VL、重鎖、または軽鎖のN末端アミノ酸残基EまたはQがピログルタミン酸で置換されること、
から選択される、請求項1~33のいずれか1項に記載のヒトMSLN結合物質に対する修飾のうちの1つまたは2つを含む、前記ヒトMSLN結合物質。
【請求項48】
ヒトMSLN結合物質であって、前記ヒトMSLN結合物質が、宿主細胞内で、請求項41に記載の核酸分子または請求項42に記載の発現ベクターを発現させることにより得られる、前記ヒトMSLN結合物質。
【請求項49】
患者内の細胞表面上のヒトMSLNを検出する方法であって、請求項45または46に記載のヒトMSLN結合物質を前記患者に投与すること、及び、前記ヒトMSLN結合物質に結合している前記患者内の前記細胞を検出すること、を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2021年12月10日に提出された米国仮出願第63/288,162号に対する優先権を主張し、この全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、本出願と共にXMLファイルフォーマットで提出されたコンピュータ読み取り可能な配列リストを含有し、この内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。本出願と共に提出されたXMLファイルの配列リストは、「14463-047-228_SEQ_LISTING.xml」という名称であり、2022年12月9日に作成され、サイズが52,002バイトである。
【0003】
分野
本発明は、ヒトメソテリンに結合可能な抗メソテリン抗体及びその抗原結合フラグメントに関する。
【発明の概要】
【0004】
メソテリンは、分化抗原であり、その発現は、正常なヒト組織では胸膜、心膜、及び腹膜の内側を覆う中皮細胞に限定される(Chang & Pastan,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:136-140(1996);Chang et al.,Int.J.Cancer 50:373-381(1992))。しかし、メソテリンは、いくつかのヒトがんにおいて高度に発現している(例えば、ほぼ全ての中皮腫及び膵臓腺癌、ならびに卵巣癌の約70%及び肺腺癌の50%)(Ordonez,Mod Pathol.16:192-197(2003);Argani et al.,Clin.Cancer Res.7:3862-3868(2001);Hassan et al.,Appl.Immunohistochem Mol.Morphol.13:243-247(2005);Ordonez,Am.J.Surg.Pathol.27:1418-1428(2003))。
【0005】
メソテリン遺伝子は、71kDaの前駆体タンパク質をコードし、これが処理されて、巨核球増強因子(MPF)と呼ばれる31kDaのshedタンパク質と、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーで細胞膜に付着する40kDaのフラグメント(メソテリン)になる。MPFは、膵癌細胞株の培養上清から単離され、マウス骨髄培養物でインターロイキン3の巨核球コロニー形成活性を刺激することから、その名称が付けられた。メソテリンの生物学的機能は、不明であるが、最近の研究結果では、メソテリンが、MUC16/CA-125に結合することにより卵巣癌の転移に関与し得ることを示唆する(Rump et al.,J.Biol.Chem.279:9190-9198(2004))。細胞に結合しているメソテリンの少量が血清中に放出され、中皮腫及び卵巣癌患者で増加していることが示されている(Hassan et al.,Clin.Cancer Res.12:447-453(2006))。
【0006】
メソテリンは、正常組織での発現が限られており、いくつかの癌では高い発現を示す、腫瘍特異的治療の有望な候補である。これらの治療は、細胞表面のメソテリンを標的とするか、またはメソテリンに対する免疫反応を誘発する薬剤を含む。診療所にあるか、または臨床試験に入ろうとしている薬剤は、CAT-5001、MORAb-009、及びCRS-207を含む(Hassan&Ho,Eur.J.Cancer 44:46-53(2008))。
【0007】
メソテリンに結合する治療抗体は、がんの処置に有効であり得る。モノクローナル抗体(mAb)は、単独療法と併用療法の両方において、固形腫瘍及び血液疾患の処置に対し最も急速に成長し、最も効果的な治療方策の1つとして浮上している。2015年~2017年に、米国食品医薬品局は、27の治療用mAbを承認し(Tsumoto et al.,Immunotherapy 11:119-127(2019))、2017年に、臨床的に使用されたmAb及びバイオシミラーの総数は、それぞれ、57及び11に増加した(Grilo & Mantalaris,Trends Biotechnol.37:9-16(2019))。2019年末現在、多数の企業が、550を超える新規抗体治療薬の初期段階の臨床試験をサポートしており、これらのうち約半数が腫瘍学の標的に対するものであった(Kaplon et al.,MAbs 12:1-24(2020))。
【0008】
本発明は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むヒトメソテリン(ヒトMSLN)に特異的に結合する抗体及びその抗原結合フラグメントを提供する。これらのヒトMSLN結合物質は、非ヒト霊長類メソテリンへの結合が弱いか、または全く検出されず、がん及び増殖性疾患の処置に有用であり得る。
【0009】
本発明のヒトMSLN結合物質は、(a)配列番号2、26、27、または28に記載のアミノ酸配列を含む重鎖(HC)可変ドメイン(V)及び配列番号3に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖(LC)可変ドメイン(V)、(b)配列番号10に記載のアミノ酸配列を含むV及び配列番号11に記載のアミノ酸配列を含むV、または(c)配列番号18に記載のアミノ酸配列を含むV及び配列番号19に記載のアミノ酸配列を含むVを含む抗体の6つの相補性決定領域(CDR)を含む。ヒトMSLN結合物質のCDR配列は、限定されないが、Kabat、Chothia、AbM、ImMunoGeneTics(IMGT)、またはContactナンバリングスキームを含む、CDR配列を定義するために有用な任意のナンバリングスキームに従って定義され得る。特定の実施形態では、CDRは、KabatまたはIMGTで定義される。特定の実施形態では、CDRは、Kabatで定義される。
【0010】
ヒトMSLN結合物質のさらなる実施形態では、Vは、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号5に記載のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号6に記載のアミノ酸配列を含むCDR3を含み、Vは、配列番号7に記載のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号8に記載のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号9に記載のアミノ酸配列を含むCDR3を含む。
【0011】
ヒトMSLN結合物質のさらなる実施形態では、Vは、配列番号12に記載のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号13に記載のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号14に記載のアミノ酸配列を含むCDR3を含み、Vは、配列番号15に記載のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号16に記載のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号17に記載のアミノ酸配列を含むCDR3を含む。
【0012】
ヒトMSLN結合物質のさらなる実施形態では、Vは、配列番号20に記載のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号21に記載のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号22に記載のアミノ酸配列を含むCDR3を含み、Vは、配列番号23に記載のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号24に記載のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号25に記載のアミノ酸配列を含むCDR3を含む。
【0013】
さらなる実施形態では、ヒトMSLN結合物質は、(i)配列番号2に記載のアミノ酸配列、もしくは配列番号2に記載の2番目のアミノ酸残基から116番目のアミノ酸残基までの範囲のアミノ酸配列の2番目のアミノ酸残基から116番目のアミノ酸残基までを有し且つアミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基がピログルタミン酸であるアミノ酸配列;(ii)配列番号26に記載のアミノ酸配列、もしくは配列番号26に記載の2番目のアミノ酸残基から116番目のアミノ酸残基までの範囲のアミノ酸配列の2番目のアミノ酸残基から116番目のアミノ酸残基までを有し且つアミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基がピログルタミン酸であるアミノ酸配列;(iii)配列番号27に記載のアミノ酸配列、もしくは配列番号27に記載の2番目のアミノ酸残基から116番目のアミノ酸残基までの範囲のアミノ酸配列の2番目のアミノ酸残基から116番目のアミノ酸残基までを有し且つアミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基がピログルタミン酸であるアミノ酸配列;または、(iv)配列番号28に記載のアミノ酸配列、もしくは配列番号28に記載の2番目のアミノ酸残基から116番目のアミノ酸残基までの範囲のアミノ酸配列の2番目のアミノ酸残基から116番目のアミノ酸残基までを有し且つアミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基がピログルタミン酸であるアミノ酸配列、を含むV、及び、配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むV、を含む。さらなる実施形態では、ヒトMSLN結合物質は、配列番号2、配列番号26、配列番号27、または配列番号28に記載のアミノ酸配列を含むV、及び、配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むV、を含む。
【0014】
さらなる実施形態では、ヒトMSLN結合物質は、配列番号10に記載のアミノ酸配列、または配列番号10に記載の2番目のアミノ酸残基から116番目のアミノ酸残基までの範囲のアミノ酸配列の2番目のアミノ酸残基から116番目のアミノ酸残基までを有し且つアミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基がピログルタミン酸であるアミノ酸配列、を含むV、及び、配列番号11に記載のアミノ酸配列、または配列番号11に記載の2番目のアミノ酸残基から107番目のアミノ酸残基までの範囲のアミノ酸配列の2番目のアミノ酸残基から107番目のアミノ酸残基までを有し且つアミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基がピログルタミン酸であるアミノ酸配列、を含むV、を含む。さらなる実施形態では、ヒトMSLN結合物質は、配列番号10に記載のアミノ酸配列を含むV、及び配列番号11に記載のアミノ酸配列を含むV、を含む。
【0015】
さらなる実施形態では、ヒトMSLN結合物質は、配列番号18に記載のアミノ酸配列、または配列番号18に記載の2番目のアミノ酸残基から118番目のアミノ酸残基までの範囲のアミノ酸配列の2番目のアミノ酸残基から118番目のアミノ酸残基までを有し且つアミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基がピログルタミン酸であるアミノ酸配列、を含むV、及び、配列番号19に記載のアミノ酸配列、または配列番号19に記載の2番目のアミノ酸残基から108番目のアミノ酸残基までの範囲のアミノ酸配列の2番目のアミノ酸残基から108番目のアミノ酸残基までを有し且つアミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基がピログルタミン酸であるアミノ酸配列、を含むV、を含む。さらなる実施形態では、ヒトMSLN結合物質は、配列番号18に記載のアミノ酸配列を含むV、及び配列番号19に記載のアミノ酸配列を含むV、を含む。
【0016】
本発明は、さらに、配列番号2、配列番号26、配列番号27、または配列番号28に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むV、ならびに、配列番号3に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むV、を含むヒトMSLN結合物質を提供する。但し、Vは、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号5に記載のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号6に記載のアミノ酸配列を含むCDR3を含み;Vは、配列番号7に記載のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号8に記載のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号9に記載のアミノ酸配列を含むCDR3を含む。
【0017】
本発明は、さらに、配列番号10に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むV;及び配列番号11に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むV、を含むヒトMSLN結合物質を提供する。
【0018】
本発明は、さらに、配列番号10に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%同一性を有するアミノ酸配列を含むV;及び配列番号11に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%同一性を有するアミノ酸配列を含むV、を含むヒトMSLN結合物質を提供する。但し、Vは、配列番号12に記載のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号13に記載のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号14に記載のアミノ酸配列を含むCDR3を含み;Vは、配列番号15に記載のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号16に記載のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号17に記載のアミノ酸配列を含むCDR3、を含む。
【0019】
本発明は、さらに、配列番号18に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むV;及び配列番号19に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むV、を含むヒトMSLN結合物質を提供する。
【0020】
本発明は、さらに、配列番号18に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%同一性を有するアミノ酸配列を含むV;及び配列番号19に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%同一性を有するアミノ酸配列を含むV、を含むヒトMSLN結合物質を提供する。但し、Vは、配列番号20に記載のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号21に記載のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号22に記載のアミノ酸配列を含むCDR3を含み;Vは、配列番号23に記載のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号24に記載のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号25に記載のアミノ酸配列を含むCDR3、を含む。
【0021】
さらなる実施形態では、ヒトMSLN結合物質は、IgG1アイソタイプの重鎖定常ドメインを含む抗体である。特定の実施形態では、重鎖定常ドメインは、配列番号29に記載のアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、重鎖定常ドメインは、配列番号29に記載の1番目のアミノ酸残基から329番目のアミノ酸残基までの範囲のアミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基から329番目のアミノ酸残基までを有するアミノ酸配列を含む。さらなる実施形態では、IgG1アイソタイプの重鎖定常ドメインは、定常ドメインをエフェクターサイレントにする1つ以上の変異を含むFcドメインを含む。特定の実施形態では、エフェクターサイレント定常ドメインは、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、または配列番号37に記載のアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、エフェクターサイレント定常ドメインは、配列番号30に記載のアミノ酸配列、または配列番号30に記載の1番目のアミノ酸残基から329番目のアミノ酸残基までの範囲のアミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基から329番目のアミノ酸残基までを有するアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、エフェクターサイレント定常ドメインは、配列番号31に記載のアミノ酸配列、または配列番号31に記載の1番目のアミノ酸残基から329番目のアミノ酸残基までの範囲のアミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基から329番目のアミノ酸残基までを有するアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、エフェクターサイレント定常ドメインは、配列番号32に記載のアミノ酸配列、または配列番号32に記載の1番目のアミノ酸残基から329番目のアミノ酸残基までの範囲のアミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基から329番目のアミノ酸残基までを有するアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、エフェクターサイレント定常ドメインは、配列番号33に記載のアミノ酸配列、または配列番号33に記載の1番目のアミノ酸残基から329番目のアミノ酸残基までの範囲のアミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基から329番目のアミノ酸残基までを有するアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、エフェクターサイレント定常ドメインは、配列番号34に記載のアミノ酸配列、または配列番号34に記載の1番目のアミノ酸残基から329番目のアミノ酸残基までの範囲のアミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基から329番目のアミノ酸残基までを有するアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、エフェクターサイレント定常ドメインは、配列番号35に記載のアミノ酸配列、または配列番号35に記載の1番目のアミノ酸残基から329番目のアミノ酸残基までの範囲のアミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基から329番目のアミノ酸残基までを有するアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、エフェクターサイレント定常ドメインは、配列番号36に記載のアミノ酸配列、または配列番号36に記載の1番目のアミノ酸残基から329番目のアミノ酸残基までの範囲のアミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基から329番目のアミノ酸残基までを有するアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、エフェクターサイレント定常ドメインは、配列番号37に記載のアミノ酸配列、または配列番号37に記載の1番目のアミノ酸残基から329番目のアミノ酸残基までの範囲のアミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基から329番目のアミノ酸残基までを有するアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、定常ドメインは、配列番号31に記載のアミノ酸配列、または配列番号31に記載の1番目のアミノ酸残基から329番目のアミノ酸残基までの範囲のアミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基から329番目のアミノ酸残基までを有するアミノ酸配列を含む。
【0022】
さらなる実施形態では、軽鎖は、ヒトカッパ軽鎖定常ドメインまたはラムダ軽鎖定常ドメインを含んでもよい。本明細書に開示のさらなる実施形態では、軽鎖定常ドメインは、配列番号38に記載のアミノ酸配列を含むヒトカッパ軽鎖定常ドメインを含んでもよい得る。
【0023】
本発明は、さらに、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)フラグメント、Fv領域、またはScFvを含むヒトMSLN結合物質を提供する。特定の実施形態では、二重特異性抗体が提供され、二重特異性抗体の一方のアームは、Fab’フラグメントまたはScFvからなる群より選択されるヒトMSLN結合物質を含み、二重特異性抗原の他方のアームは、ヒトMSLN以外の抗原に特異的なFab’またはScFvを含む。
【0024】
本開示は、さらに、ヒトMSLN結合物質を提供し、ヒトMSLN結合物質は、以下から選択される本明細書で提供されるヒトMSLN結合物質に対する修飾のうちの1つまたは2つを含む:(i)重鎖のC末端アミノ酸残基Kが除去されていること;及び、(ii)VH、VL、重鎖または軽鎖のN末端アミノ酸残基EまたはQが、ピログルタミン酸で置換されていること。
【0025】
本発明は、さらに、本明細書に開示のヒトMSLN結合物質及び薬学的に許容される担体または希釈剤を含む組成物を含む。
【0026】
本発明は、さらに、処置を必要とする個体のがんまたは増殖性疾患を処置するための方法を提供し、方法は、がんまたは増殖性疾患を処置するために、本明細書に開示のヒトMSLN結合物質または本明細書に開示の組成物の治療的有効量を個体に投与することを含む。
【0027】
本発明は、さらに、がんまたは増殖性疾患の処置のための、本明細書に開示のヒトMSLN結合物質または組成物を提供する。
【0028】
本発明は、さらに、がんまたは増殖性疾患を処置するための薬品の製造に、本明細書に開示のヒトMSLN結合物質を使用するために提供される。
【0029】
本発明は、さらに、本明細書に開示のヒトMSLN結合物質または組成物、及び治療薬を含む、がんまたは増殖性疾患を処置するための併用療法を提供する。さらなる実施形態では、治療薬は、化学療法薬または治療用抗体である。さらに別の実施形態では、抗体は、抗PD1抗体または抗PD-L1抗体である。
【0030】
本発明は、さらに、本明細書に開示のヒトMSLN結合物質のV及び/または本明細書に開示のヒトMSLN結合物質のVをコードする核酸分子を提供する。さらに、本明細書に開示の核酸分子の1つ以上を含む発現ベクターが提供される。さらに、本明細書に開示の核酸分子の1つ以上を含む発現ベクターを含む宿主細胞が提供される。
【0031】
本発明は、さらに、ヒトMSLN結合物質の生成するための方法を提供し、方法は、(a)本明細書に開示の核酸分子の1つ以上を含む発現ベクターを含む宿主細胞を提供すること;(b)ヒトMSLN結合物質を発現するのに適した条件下で培地中で宿主細胞を培養すること、及び、(c)培地からヒトMSLN結合物質を単離すること、を含む。
【0032】
本開示は、さらに、宿主細胞内で本明細書で提供される核酸または発現ベクターを発現させることにより得られるヒトMSLN結合物質を提供する。
【0033】
本発明は、さらに、検出可能な部分にコンジュゲートされている本明細書に開示のヒトMSLN結合物質を提供する。
【0034】
本発明は、さらに、患者の細胞表面上のヒトMSLNを検出するための方法を提供し、方法は、検出可能な部分にコンジュゲートされている本明細書に開示のヒトMSLN結合物質を患者に投与すること、及び、検出可能な部分にコンジュゲートされているヒトMSLN結合物質に結合している患者内の細胞を検出すること、を含む。特定の実施形態では、検出可能な部分は、磁気共鳴画像法(MRI)またはX線画像法で検出可能である。
【0035】
本発明は、さらに、細胞表面上でヒトMSLN結合物質を発現する細胞を提供する。発現されるヒトMSLN結合物質は、全抗体、二重特異性抗体、Fab’フラグメント、ScFv、またはタンデムScFvであり得る。特定の実施形態では、ヒトMSLN結合物質を発現する細胞は、免疫細胞、例えば、T細胞またはNK細胞である。
【0036】
本発明は、さらに、細胞毒素にコンジュゲートされているヒトMSLN結合物質を提供する。ヒトMSLN結合物質は、全抗体、二重特異性抗体、Fab’フラグメント、またはScFvであり得る。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】可溶性及び膜結合型ヒトMSLNに対するSV017.47D7.1C2抗体及び陽性対照MORAB-009のELISA結合を示す。MORAB-009と同様に、SV017.47D7.1C2は、可溶性及び膜結合型ヒトMSLNの両方に結合する。HuMSLNは、ヒトMSLNを指し、CHOK1は、チャイニーズハムスター卵巣K1細胞を指す。
図2】可溶性及び膜結合型ヒトMSLNに対するSV018.20B12.1D1抗体及び陽性対照MORAB-009のELISA結合を示す。SV018.20B12.1D1は、膜結合型ヒトMSLNにより低い効力で可溶性ヒトMSLNに結合する。HuMSLNは、ヒトMSLNを指し、CHOK1は、チャイニーズハムスター卵巣K1細胞を指す。
図3】可溶性及び膜結合型ヒトMSLNに対するSV018.45B6.1G1抗体及び陽性対照MORAB-009のELISA結合を示す。SV018.45B6.1G1は、膜結合型ヒトMSLNよりも低い効力で可溶性ヒトMSLNに結合する。HuMSLNは、ヒトMSLNを指し、CHOK1は、チャイニーズハムスター卵巣K1細胞を指す。
図4】N末端領域MPF(巨核球増強因子)及び40kDaの膜結合メソテリン(細胞表面に連結されているGPI)を放出するエンドプロテアーゼフーリン切断により約70kDaの前駆体タンパク質から生成されたヒトMSLNを示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
定義
本発明がより容易に理解され得るように、特定の技術用語及び科学用語が以下に具体的に定義される。本文書の他の箇所で具体的に定義されていない限り、本明細書で使用される他の全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般に理解する意味を有する。
【0039】
本明細書で使用される場合、添付の特許請求の範囲を含む、「a」、「an」、及び「the」などの単数形の単語は、文脈に別途明示のない限り、対応する複数形の指示対象も含む。
【0040】
本明細書で使用される場合、「メソテリン」または「MSLN」という用語は、正常なヒト組織における発現が、胸膜、心膜、及び腹膜の内側を覆う中皮細胞に限定される分化抗原を指す。MSLNは、エンドプロテアーゼであるフーリンで切断され、N末端領域のMPF(巨核球増強因子)及び40kDaの膜結合メソテリン(細胞表面に連結されているGPI)を放出する約70kDaの前駆体タンパク質から生成される(図4を参照)。ヒトメソテリン前駆体のアミノ酸配列は、配列番号1に示される。成熟形態は、アミノ酸296~622を含む。
【0041】
本明細書で使用される場合、「ヒトMSLN」という用語は、ヒトメソテリンの成熟形態を指し、「アカゲザルMSLN」という用語は、アカゲザル(Macaca mulatta)メソテリンの成熟形態を指す。アカゲザルMSLNの前駆体及び成熟形態のアミノ酸配列が配列番号39に示される。
【0042】
本明細書で使用される場合、「ヒトMSLN結合物質」という用語は、可溶性及び/または膜結合型ヒトMSLNに結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを指す。ヒトMSLN結合物質は、二価抗体テトラマー(2H+2L)、一価抗体(H+L)、ヒトMSLN及び別の標的を標的とする二重特異性抗体、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)フラグメント、Fv領域、及びScFvを含むが、これらに限定されない。
【0043】
本明細書で使用される場合、「親和性」という用語は、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位及びその結合パートナー(例えば、抗原)間の非共有結合相互作用の合計の強さを指す。別途指示のない限り、本明細書で使用される場合、「結合親和性」は、結合ペア(例えば、抗体及び抗原)のメンバー間の1:1相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、一般に、解離定数(KD)で表し得る。親和性は、KinExA及び表面プラズモン共鳴(SPR;Biacore(商標))を含む、当該技術分野で既知の一般的な方法で測定することができる。結合親和性を測定するための具体的な例示的及び例示的な実施形態が以下に記載される。
【0044】
本明細書で使用される場合、「投与」及び「処置」という用語は、動物、ヒト、実験対象、細胞、組織、臓器、または生体液に適用される場合、本明細書に開示のヒトMSLN結合物質を含む外因性の医薬品、治療薬、診断薬、または組成物を、動物、ヒト、対象、細胞、組織、臓器、または生体液に接触させることを指す。細胞の処置は、試薬の細胞との接触、及び試薬の体液との接触(体液は細胞と接触している)を包含する。「投与」及び「処置」は、試薬、診断薬、結合化合物、または別の細胞による、例えば、細胞のin vitro及びex vivo処置も意味する。「対象」という用語は、任意の生物、好ましくは、動物、さらに好ましくは、哺乳動物(例えば、ヒト、ラット、マウス、イヌ、ネコ、ウサギ)を含む。好ましい実施形態では、「対象」という用語は、ヒトを指す。
【0045】
本明細書で使用される「アミノ酸」という用語は、カルボキシル基(-COOH)とアミノ基(-NH)の両方を含む単純な有機化合物を指す。アミノ酸は、タンパク質、ポリペプチド、及びペプチドの構成単位である。アミノ酸は、L型及びD型で生じ、天然のタンパク質、ポリペプチド、及びペプチドでは、L型である。アミノ酸及びそのコード名称は、以下のチャートに示される。
【表1】
【0046】
本明細書で使用される場合、「抗体」または「免疫グロブリン」という用語は、ジスルフィド結合により相互連結されている少なくとも2つの重鎖(HC)及び2つの軽鎖(LC)を含む糖タンパク質を指す。各HCは、重鎖可変領域またはドメイン(V)、及び重鎖定常領域またはドメインで構成されている。各軽鎖は、LC可変領域またはドメイン(V)、及びLC定常ドメインからなる。特定の天然に存在するIgG、IgD、及びIgA抗体では、重鎖定常領域は、3つのドメイン(CH1、CH2、及びCH3)で構成されている。一般に、抗体の基本的な抗体構造単位は、2つのHC/LCペア(2H)を含むY字型のテトラマーである。各テトラマーは、2つの同一のポリペプチド鎖のペアを含み、各ペアは、1つのLC(約25kDa)鎖及びHC鎖(約50~70kDa)(H+L)を有する。各HC:LCペアは、1つのV:1つのVペアを含む。1つのV:1つのVのペアは、「Fab」という用語で呼ばれ得る。従って、各抗体テトラマーは、2つのFab(Y字型抗体の各アームに1つずつ)を含む。特定の実施形態では、抗体は、宿主細胞(例えば、CHO細胞)内で組み換え発現された時に、または精製/保存中に、生じ得るその翻訳後修飾(例えば、重鎖のC末端リジンのクリッピング、グルタミンまたはグルタミン酸のピログルタミン酸への変換)を含んでもよい。
【0047】
LC定常ドメインは、1つのドメインCLで構成されている。ヒトVは、V1、V2、V3、V4、V5、V6、及びV7の7つのファミリーメンバーを含み;ヒトVは、Vκ1、Vκ2、Vκ3、Vκ4、Vκ5、Vκ6、Vλ1、Vλ2、Vλ3、Vλ4、Vλ5、Vλ6、Vλ7、Vλ8、Vλ9、及びVλ10の16のファミリーメンバーを含む。これらのファミリーメンバーはそれぞれ、さらに特定のサブタイプに分類することができる。V及びVは、より保存された領域(フレームワーク領域(FR)と呼ばれる)に点在する超可変領域(相補性決定領域(CDR)空間と呼ばれる)に、さらに細分化することができる。各V及びVは、3つのCDR領域及び4つのFR領域で構成されており、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって、以下の順序で配置されている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。V内のアミノ酸のナンバリングは、Kabatナンバリングスキームを使用して決定され得る。以下を参照のこと:Beranger,et al.,Ed.Ginetoux,Correspondence between the IMGT unique numbering for C-DOMAIN,the IMGT exon numbering,the Eu and Kabat numberings:Human IGHG,Created:17/05/2001,Version:08/06/2016(www.imgt.org/IMGTScientificChart/Numbering/Hu_IGHGnber.htmlでアクセス可能)。
【0048】
抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的な補体系の最初の成分(C1q)を含む宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。通常、重鎖定常ドメインのアミノ酸のナンバリングは、Euナンバリングスキームに従って118から開始する。Euナンバリングスキームは、ヒトIgG1(Eu)のアミノ酸配列に基づいており、これは、Edelman et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.63:78-85(1969)に記載のIgG1のアミノ酸配列のアミノ酸位置118から開始する定常ドメインを有し、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4定常ドメインについては、Beranger et al.,op.citに示される。
【0049】
重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用するCDRを含む結合ドメインを含有する。抗体可変ドメインのCDR配列を定義するための多数の方法は、当該技術分野で利用可能である(以下を参照のこと:Dondelinger et al.,Frontiers in Immunol.9:Article 2278(2018))。一般的なナンバリングスキームは、以下を含む。
Kabatナンバリングスキームは、配列の可変性に基づいており、最も一般に使用される(以下を参照のこと:Kabat et al.Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)(配列により抗体のCDR領域を定義))。Chothiaナンバリングスキームは、構造ループ領域の位置に基づいている(以下を参照のこと:Chothia & Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987);Al-Lazikani et al.,J.Mol.Biol.273:927-948(1997))。AbMナンバリングスキームは、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアで使用される2つの間の妥協案である(以下を参照:Karu et al,ILAR Journal 37:132-141(1995))。Contactナンバリングスキームは、利用可能な複雑な結晶構造の分析に基づいている(以下を参照のこと:www.bioinf.org.uk:Prof.Andrew C.R.Martin’s Group;Abhinandan & Martin,Mol.Immunol.45:3832-3839(2008))。IMGT(ImMunoGeneTics)ナンバリングスキームは、抗体の軽鎖及び重鎖の可変ドメイン、ならびに様々な種のT細胞受容体鎖を含む免疫グロブリンスーパーファミリーのタンパク質配列全てに対して標準化されたナンバリングシステムであり、生殖細胞系列のV配列アラインメントに基づいて1から128まで連続的に残基を数える(以下を参照のこと:Giudicelli et al.,Nucleic Acids Res.25:206-11(1997);Lefranc,Immunol Today 18:509(1997);Lefranc et al.,Dev Comp Immunol.27:55-77(2003))。
【0050】
www.bioinf.org.uk:Prof.Andrew C.R.Martin’s Groupで開示され、以下の表1に再現された以下の一般的な規則は、抗体が結合する抗原のエピトープを含むアミノ酸と特異的に相互作用するアミノ酸を含む抗体配列のCDRを定義するために使用され得る。これらの一般に定常の特徴が発生しない稀な例があるが、Cys残基は、最も保存されている特徴である。
【表2】
【0051】
重鎖及び軽鎖可変領域のヌクレオチド配列全体は、通常、Kabatに従ってナンバリングされるが、可変領域内の3つのCDRは、上述のナンバリングスキームのいずれか1つに従って定義され得る。
【0052】
一般に、技術水準により、多くの場合、重鎖のCDR3領域が、抗体の特異性の主要な決定要因であると認識されており、重鎖のCDR3のみに基づく特異的抗体生成の例が当該技術分野で既知である(例えば、Beiboer et al.,J.Mol.Biol.296:833-849(2000);Klimka et al.,British J.Cancer 83:252-260(2000);Rader et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:8910-8915(1998);Xu et al.,Immunity 13:37-45(2000))。本明細書で使用される場合、「Fcドメイン」または「Fc」という用語は、抗体のCH2ドメイン及びCH3ドメインを含む抗体から得られる結晶化可能なフラグメントドメインまたは領域である。抗体では、2つのFcドメインは、2つ以上のジスルフィド結合、及びCH3ドメインの疎水性相互作用で結合している。Fcドメインは、抗体をプロテアーゼパパインで消化することにより得られ得る。通常、Fcドメイン内のアミノ酸は、Euナンバリング規則に従ってナンバリングされる(以下を参照のこと:Edelmann et al.,Biochem.63:78-85(1969))。
【0053】
本明細書で使用される場合、「抗原」という用語は、体内で免疫応答を誘発する任意の異物を指す。
【0054】
本明細書で使用される場合、「抗原結合フラグメント」という用語は、全長抗体に結合している抗原に特異的に結合する能力、及び/または抗原に特異的に結合するために全長抗体と競合する能力を保持する、全長抗体のフラグメントを含むポリペプチド(複数可)を指す。抗原結合フラグメントの例としては、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fv領域、及びscFvが挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
本明細書で使用される場合、「Fabフラグメント」という用語は、1つの抗体軽鎖ならびに1つの抗体重鎖のCH1及びVを含む抗原結合物質を指す。Fab分子の重鎖は、別の重鎖分子とジスルフィド結合を形成できない。「Fabフラグメント」は、抗体のパパイン切断の産物であり得る。
【0056】
本明細書で使用される場合、「Fab’フラグメント」という用語は、1つの抗体軽鎖と、VならびにCH1ドメイン及びCH2ドメイン間の領域までのCH1ドメイン(その結果、2つのFab’フラグメントの2つの重鎖の間に、鎖間ジスルフィド結合が形成されて、F(ab’)分子が形成され得る)を含有する1つの抗体重鎖の一部またはフラグメントを含む抗原結合物質を指す。
【0057】
本明細書で使用される場合、「F(ab’)2フラグメント」という用語は、2つの抗体軽鎖と、VならびにCH1ドメイン及びCH2ドメイン間の領域までのCH1ドメイン(その結果、2つの重鎖の間に鎖間ジスルフィド結合が形成される)を含有する2つの重鎖を含む抗原結合物質を指す。従って、F(ab’)は、このフラグメントは、2つの重鎖間のジスルフィド結合により結合している2つのFab’フラグメントで構成されている。「F(ab’)「フラグメント」は、抗体のペプシン切断産物であり得る。
【0058】
本明細書で使用される場合、「Fv領域」という用語は、抗体の重鎖と軽鎖の両方に由来する可変領域を含むが定常領域を欠く抗原結合物質を指す。
【0059】
本明細書で使用される場合、「ScFv」または「一本鎖可変フラグメント」という用語は、10~約25個のアミノ酸の短いリンカーペプチドにより融合または互いに連結されているV及びVを含む融合タンパク質を指す。リンカーは、通常、柔軟性を高めるためにグリシンを多く含み、溶解性を高めるためにセリンまたはトレオニンを多く含み、VのN末端をVのC末端に連結することも、その逆で連結することもできる。このタンパク質は、定常領域の除去及びリンカーの導入にもかかわらず、元の免疫グロブリンの特異性を保持する。
【0060】
本明細書で使用される場合、「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合領域を有する小さな抗体フラグメントを含む抗原結合物質を指し、このフラグメントは、同じポリペプチド鎖内の軽鎖可変ドメイン(V)に連結された重鎖可変ドメイン(V)(V-VまたはV-V)を含む。同じ鎖上の2つのドメイン間のペアリングができない程短いリンカーを使用することにより、ドメインは、別の鎖の相補性ドメインとペアリングを余儀なくされ、2つの抗原結合領域が作成される。ダイアボディは、例えば、以下でさらに詳しく記載されている:EP404,097;WO93/11161;及びHolliger et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448。改変型抗体バリアントの概説については、一般に、以下を参照のこと:Holliger and Hudson(2005)Nat.Biotechnol.23:1126-1136。
【0061】
これら及び他の潜在的な構成は、以下に記載されている:Chan & Carter(2010)Nat.Rev.Immunol.10:301。これらの抗体フラグメントは、当業者らに既知の従来の手法を使用して得られ、フラグメントは、インタクト抗体と同じ方法で有用性についてスクリーニングされる。抗原結合フラグメントは、組み換えDNA手法、またはインタクト免疫グロブリンの酵素的または化学的切断により生成することができる。
【0062】
本明細書で使用される場合、用語「単離された」抗体またはその抗原結合フラグメントは、それらが生成される細胞または細胞培養物由来の他の生物学的分子が少なくとも部分的に存在しない。そのような生物学的分子としては、核酸、タンパク質、脂質、炭水化物、または他の物質、例えば、細胞破片及び成長培地が挙げられる。単離抗体または抗原結合フラグメントは、さらに、発現系成分、例えば、宿主細胞またはその成長培地由来の生物学的分子、が少なくとも部分的に存在しないことがある。一般に、「分離された」という用語は、そのような生物学的分子が、完全に存在しないこと、または水、緩衝液、もしくは塩が存在しないこと、または抗体もしくはフラグメントを含む医薬製剤の成分が存在しないことが意図されるものではない。
【0063】
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均質な抗体の集団を指す。すなわち、集団を含む抗体分子は、微量に存在し得る起こり得る自然発生的な変異を除いて、アミノ酸配列が同一である。対照的に、従来の(ポリクローナル)抗体調製物は、通常、可変ドメインに異なるアミノ酸配列を有し、多くの場合、異なるエピトープに特異的である多数の異なる抗体を含む。「モノクローナル」という修飾語は、抗体が実質的に均質な抗体集団から得られるという特性を示しており、特定のいずれかの方法による抗体の生成を必要とするものと解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、Kohler et al.,Nature 256:495(1975)により最初に記載されたハイブリドーマ法で作製されても、組み換えDNA法で作製されてもよい(例えば、以下を参照のこと:米国特許第4,816,567号)。「モノクローナル抗体」は、また、例えば、以下に記載の手法を使用して、ファージ抗体ライブラリから単離され得る:Clackson et al.,Nature 352:624-628(1991)、及びMarks et al.,J.Mol.Biol.222:581-597(1991)。以下も参照のこと:Presta,J.Allergy Clin.Immunol.116:731(2005)。
【0064】
本明細書で使用される場合、「遺伝子」という用語は、生物学的機能に関連する核酸の任意のセグメントを指すために広く使用される。従って、遺伝子は、その発現に必要なコード配列及び/または調節配列を含む。例えば、「遺伝子」は、mRNA、機能性RNA、または特定のタンパク質(調節配列を含む)を発現する核酸フラグメントを指す。「遺伝子」は、例えば、他のタンパク質の認識配列を形成する、発現されていないDNAセグメントも含む。「遺伝子」は、目的の供給源からのクローニング、または既知の、もしくは予測される配列情報から合成することを含む様々な供給源から取得することができ、所望のパラメータを有するように設計された配列を含み得る。遺伝子は、目的の分子をコードする天然ヌクレオチド配列と、目的の分子をコードする合成由来のヌクレオチド配列(例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)ヌクレオチド配列から得られる相補DNA(cDNA))の両方を含む。
【0065】
本明細書で使用される場合、「生殖細胞系列」または「生殖細胞系列配列」という用語は、再構成されていない免疫グロブリンDNA配列の配列を指す。再構成されていない免疫グロブリン配列の任意の好適な供給源が使用され得る。ヒト生殖細胞系列の配列は、例えば、米国国立衛生研究所の国立関節炎・筋骨格・皮膚疾患研究所のウェブサイト上のJOINSOLVER(登録商標)生殖細胞系列データベースから取得され得る。マウス生殖細胞系列の配列は、例えば、以下に記載されるように取得され得る:Giudicelli et al.,Nucleic Acids Res.33:D256-D261(2005)。
【0066】
本明細書で使用される場合、「ライブラリ」という用語は、通常は、一般に、共通のベクターバックボーンにある、関連性があるが多様なポリヌクレオチドの集合体である。例えば、軽鎖または重鎖免疫グロブリンライブラリは、共通のベクターバックボーンに、ヌクレオチド配列が多様であるが関連している軽鎖及び/または重鎖免疫グロブリンをコードするポリヌクレオチドを含有してもよく、例えば、これらの免疫グロブリンは、例えば、本発明の抗体ディスプレイシステムにおいて、他の免疫グロブリンと複合体を形成する能力が機能的に多様であり、特定の抗原に結合する。
【0067】
本明細書で使用される場合、本明細書で考察される「ポリヌクレオチド」という用語は、本発明の一部を形成する。「ポリヌクレオチド」、「ポリ核酸」、「核酸」、または「核酸分子」は、DNA及びRNA(一本鎖または二本鎖)を含む。本発明の実施形態では、ポリヌクレオチド(例えば、免疫グロブリン鎖または本発明の抗体ディスプレイシステムの構成要素をコードするもの)、天然調節(発現制御)配列と並んでいても、プロモーター、内部リボソーム進入部位(IRES)及び他のリボソーム結合部位配列、エンハンサー、応答エレメント、サプレッサー、シグナル配列、ポリアデニル化配列、イントロン、5’-及び3’-非コード領域などを含む異種配列と関連していてもよい。
【0068】
ポリヌクレオチド(例えば、本発明の抗体ディスプレイシステムの免疫グロブリン鎖または構成要素をコードするもの)は、プロモーターと作動可能に結合し得る。「プロモーター」または「プロモーター配列」は、本発明の一実施形態では、細胞内のRNAポリメラーゼに結合し(例えば、直接、または他のプロモーター結合タンパク質もしくは物質を介して)、コード配列の転写を開始することが可能なDNA調節領域である。プロモーター配列は、一般に、転写開始部位により3’末端で区切られ、任意のレベルで転写を開始するために必要な最小数量の塩基またはエレメントを含むように上流(5’方向)に伸長する。プロモーター配列内には、転写開始部位(例えば、ヌクレアーゼS1でマッピングすることにより、都合よく定義される)と、RNAポリメラーゼの結合に関与するタンパク質結合ドメイン(コンセンサス配列)が見出され得る。プロモーターは、エンハンサー配列及びリプレッサー配列を含む他の発現制御配列、または本発明の核酸と作動可能に結合し得る。遺伝子発現を制御するために使用され得るプロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(米国特許第5,385,839号及び同第5,168,062号)、SV40初期プロモーター領域(Benoist,et al.,Nature 290:304-310(1981))、ラウス肉腫ウイルスの3’長末端リピートに含有されるプロモーター(Yamamoto et al.,Cell 22:787-797(1980))、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagner et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:1441-1445(1981))、メタロチオネイン遺伝子の調節配列(Brinster et al.,Nature 296:39-42(1982))、原核生物発現ベクター、例えば、β-ラクタマーゼプロモーター(Villa-Komaroff et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 75:3727-3731(1978))、またはtacプロモーター(DeBoer et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA80:21-25(1983))(“Useful proteins from recombinant bacteria”in Scientific American 242:74-94(1980)も参照のこと)、ならびに酵母または他の真菌由来のプロモーターエレメント、例えば、Gal 4プロモーター、ADC(アルコール脱水素酵素)プロモーター、PGK(ホスホグリセロールキナーゼ)プロモーター、またはアルカリホスファターゼプロモーターを含むが、これらに限定されない。
【0069】
本明細書で使用される場合、「ベクター」、「クローニングベクター」、及び「発現ベクター」という用語は、宿主を形質転換し、任意に、導入配列の発現及び/または複製を促進するために、DNAまたはRNA配列を宿主細胞に導入することができるビヒクル(例えば、プラスミド)を含む。本発明の抗体ディスプレイシステムの免疫グロブリン鎖または構成要素をコードするポリヌクレオチドは、本発明の一実施形態では、ベクター内に存在してもよい。
【0070】
本明細書で使用される場合、「細胞」、「細胞株」、及び「細胞培養」という用語は、互換的に使用され、そのような名称は全て、子孫を含む。従って、「形質転換体」及び「形質転換細胞」という語は、移植数に関係なく、主要な対象細胞及びそれから誘導される培養物を含む。計画的または不慮の変異により、全ての子孫が正確に同一のDNA内容を有するわけではないことも理解される。元々形質転換されている細胞でスクリーニングされたものと同じ機能または生物学的活性を有する変異子孫が含まれる。明確な指定が意図されている場合は、文脈から明らかになるであろう。
【0071】
本明細書で使用される場合、「制御配列」または「調節配列」という用語は、特定の宿主生物において作動可能に連結されているコード配列の発現に必要なDNA配列を指す。真核生物での発現に適した制御配列には、例えば、タンパク質をコードするメッセンジャーRNAの発現のためのプロモーター、オペレーターまたはエンハンサー配列、転写終結配列、及びポリアデニル化配列、ならびにメッセンジャーRNAの翻訳を促進するためのリボソーム結合部位を含む。
【0072】
本明細書で使用される場合、核酸は、別の核酸配列、例えば、調節配列、と機能的な関係に置かれている時に、「作動可能に連結されている」。例えば、プレ配列または分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合、ポリペプチドのDNAに作動可能に連結されているか;プロモーターまたはエンハンサーは、配列の転写に影響を及ぼす場合、コード配列に作動可能に連結されているか;または、リボソーム結合部位は、翻訳を容易にするように配置されている場合、コード配列に作動可能に連結されている。一般に、「作動可能に連結されている」は、連結されているDNA配列が連続していること、ならびに、分泌リーダーの場合は、連続しており、読み取り段階にあることを意味する。しかし、エンハンサーは、連続している必要はない。連結は、都合の良い制限部位においてライゲーションにより行われる。そのような部位が存在しない場合、従来の方法に従って合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーが使用される。
【0073】
本明細書で使用される場合、「コードすること」という用語は、定義されたヌクレオチド配列(すなわち、rRNA、tRNA、及びmRNA)または定義されたアミノ酸配列と、そこから生じる生物学的特性のいずれかを有する生物学的プロセスにおける他のポリマー及び巨大分子の合成のためのテンプレートとして機能するための、ポリヌクレオチド(例えば、遺伝子、cDNA、またはmRNA)内の特定のヌクレオチド配列に固有の特性を指す。従って、遺伝子に対応するmRNAの転写及び翻訳により、遺伝子が細胞または他の生物系内でタンパク質が産生される場合、その遺伝子は、タンパク質をコードする。コード鎖(このヌクレオチド配列が、mRNA配列と同一であり、通常、配列表で提供される)と非コード鎖(遺伝子またはcDNAの転写のテンプレートとして使用)は、双方ともに、その遺伝子またはcDNAのタンパク質または他の産物をコードするものと呼ぶことができる。別途明記のない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」は、互いに縮重したバージョンであり、同じアミノ酸配列をコードする全てのヌクレオチド配列を含む。タンパク質及びRNAをコードするヌクレオチド配列は、イントロンを含んでもよい。
【0074】
本明細書で使用される場合、「発現」という用語は、特定のヌクレオチド配列の転写及び/または翻訳として定義される。
【0075】
本明細書で使用される場合、「処置する」または「処置すること」という用語は、本発明のヒトMSLN結合物質のいずれかを含有する組成物などの治療薬を、必要とする個体に局所、皮下、筋肉内、皮内、または全身に投与することを意味する。個体のがんまたは増殖性疾患の処置に有効な治療薬の量は、個体の傷害または病状、年齢、及び/または体重などの要因、ならびに個体において所望の応答を誘発する治療薬の能力に応じて変動し得る。治療目的が達成されているかどうかは、処置の重症度または進行状況を評価するために、医師または他の熟練医療提供者により通常使用される個体及び/または任意の臨床的測定で評価することができる。従って、これらの用語は、有益な結果が、必要とするヒトまたは動物の個体に与えられているか、または与えられるであろうことを意味する。
【0076】
本明細書で使用される場合、「処置」という用語は、ヒトまたは動物の個体に適用されるような治療的処置及び診断的適用を指す。ヒトまたは動物の個体に適用されるような「処置」は、ヒトまたは動物対象に本発明の抗体または抗原結合フラグメントを接触させることを包含する。
【0077】
本明細書で使用される場合、「治療的有効量」という用語は、処置される個体において所望の効果を達成するのに十分な特定の物質の量を指す。例えば、これは、個体の疾患または障害の重症度を抑制または低減するために必要な量であってよい。
【0078】
本明細書で使用される場合、「併用療法」という用語は、第1の治療薬と第2の治療薬を連続してまたは同時に個体に投与することを含む、ヒトまたは動物の個体の処置を指す。一般に、第1及び第2の治療薬は、混合物ではなく、別々に個体に投与されるが;第1及び第2の治療薬が投与前に混合される実施形態があってよい。
【0079】
「宿主細胞」、「宿主細胞株」、及び「宿主細胞培養」という用語は、互換的に使用され、外因性核酸が導入されている細胞(そのような細胞の子孫を含む)を指す。宿主細胞は、「遺伝子改変型細胞」、「形質転換体」、及び「形質転換細胞」を含み、これは、継代数に関係なく、主要な改変型(例えば、形質転換)細胞及びそこから誘導された子孫を含む。子孫は、核酸の内容が親細胞と完全に同一ではないことがあるが、変異を含有してもよい。元々形質転換されている細胞でスクリーニングまたは選択されたものと同じ機能または生物学的活性を有する変異子孫が本明細書に含まれる。必要に応じて、宿主細胞は、本明細書に記載されるように、融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを安定的または一時的にトランスフェクトすることができる。
【0080】
ヒトMSLN結合物質
本発明のヒトMSLN結合物質は、ヒトMSLNに特異的に結合するキメラまたは完全ヒト抗体またはその抗原結合フラグメントである。ヒトMSLN結合物質は、Vドメイン及びVドメインを含み、各ドメインは、以下の配置で、3つのCDR及び4つのフレームワーク(FR)を含む:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4。
これらのヒトMSLN結合物質は、Vからの3つのCDR、及びVと対になるVからの3つのCDRの特定の組み合わせを含む6つの相補性決定領域(CDR)を含む。CDR配列は、限定されないが、Kabat、Chothia、AbM、ImMunoGeneTics(IMGT)、またはContactナンバリングスキームを含む、CDR配列を定義するために有用な任意のナンバリングスキームに従って定義され得る。CDR配列を定義するためのガイダンスは、www.bioinf.org.uk:Prof.Andrew C.R.Martin’s Groupで開示され、表1に再現されている一般的なルールに見出され得る。
【0081】
特定の実施形態では、CDRは、KabatまたはIMGTで定義される。表2~4に示されるCDRアミノ酸配列は、CDRアミノ酸配列を同定するためのKabatナンバリングスキームに従って示される。
【表3】
【表4】
【表5】
【0082】
CDRアミノ酸配列を同定するための方式のいずれか1つを使用して決定された特定のCDRアミノ酸配列(表1を参照)は、他の任意のナンバリングスキームに従って同定されたCDRアミノ酸配列よりも多いまたは少ないアミノ酸を有するが、CDRアミノ酸配列は、ある程度重複するであろう。従って、Kabatに従って定義されたCDRアミノ酸配列は、限定的なものとして解釈されるべきではなく、CDRアミノ酸配列が別のナンバリングスキームで同定されている任意のヒトMSLN結合物質は、本発明のヒトMSLN結合物質の範囲に入るであろう。但し、そのようなヒトMSLN結合物質のアミノ酸配列が、Kabatにより同定される6つのCDRアミノ酸配列を含む。本明細書に開示の全てのヒトMSLN結合物質については、別途指示のない限り、可変ドメイン全体を含むアミノ酸は、CDRを含むアミノ酸が定義される方法とは無関係に、Kabatナンバリングスキームに従ってナンバリングされる。重鎖定常ドメインは、Euナンバリングスキームに従ってナンバリングされる。
【0083】
いくつかの実施形態では、配列番号18に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(V)及び配列番号19に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(V)を含む抗体の6つの相補性決定領域(CDR)を含むヒトメソテリン結合物質が本明細書で提供される。CDRは、当該技術分野で既知の任意のナンバリングスキームに従って定義することができる。いくつかの実施形態では、CDRは、Kabat、Chothia、AbM、ImMunoGeneTics(IMGT)、もしくはContactナンバリングスキーム、またはそれらの組み合わせを使用して定義される。いくつかの実施形態では、CDRは、表1のナンバリングスキームに従って定義される。
【0084】
いくつかの実施形態では、配列番号10に記載のアミノ酸配列を含むV及び配列番号11に記載のアミノ酸配列を含むVを含む抗体の6つのCDRを含むヒトメソテリン結合物質が本明細書で提供される。CDRは、当該技術分野で既知の任意のナンバリングスキームに従って定義することができる。いくつかの実施形態では、CDRは、Kabat、Chothia、AbM、ImMunoGeneTics(IMGT)、もしくはContactナンバリングスキーム、またはそれらの組み合わせを使用して定義される。いくつかの実施形態では、CDRは、表1のナンバリングスキームに従って定義される。
【0085】
いくつかの実施形態では、配列番号2、26、27、または28に記載のアミノ酸配列を含むV、及び配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むV、を含む抗体の6つのCDRを含むヒトメソテリン結合物質が本明細書で提供される。CDRは、当該技術分野で既知の任意のナンバリングスキームに従って定義することができる。いくつかの実施形態では、CDRは、Kabat、Chothia、AbM、ImMunoGeneTics(IMGT)、もしくはContactナンバリングスキーム、またはそれらの組み合わせを使用して定義される。いくつかの実施形態では、CDRは、表1のナンバリングスキームに従って定義される。
【0086】
本発明の特定の実施形態では、ヒトMSLN結合物質は、(a)配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号5に記載のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号6に記載のアミノ酸配列を含むCDR3を含むVドメイン、ならびに、(b)配列番号7に記載のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号8に記載のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号9に記載のアミノ酸配列を含むCDR3を含むVドメイン、を含み、CDR配列が、Kabatナンバリングスキームで定義される。
【0087】
本発明の特定の実施形態では、ヒトMSLN結合物質は、(a)配列番号12に記載のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号13に記載のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号14に記載のアミノ酸配列を含むCDR3を含むVドメイン、ならびに、(b)配列番号15に記載のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号16に記載のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号17に記載のアミノ酸配列を含むCDR3を含むVドメイン、を含み、CDR配列が、Kabatナンバリングスキームで定義される。
【0088】
本発明の特定の実施形態では、ヒトMSLN結合物質は、(a)配列番号20に記載のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号21に記載のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号22に記載のアミノ酸配列を含むCDR3を含むVドメイン、ならびに、(b)配列番号23に記載のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号24に記載のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号25に記載のアミノ酸配列を含むCDR3を含むVドメイン、を含み、CDR配列が、Kabatナンバリングスキームで定義される。
【0089】
さらなる実施形態では、メソテリン結合物質は、配列番号2、配列番号26、配列番号27、または配列番号28に記載のアミノ酸配列を含むVドメインと、配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むVドメイン、を含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、メソテリン結合物質は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むV、及び配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むV、を含む。
【0091】
いくつかの実施形態では、メソテリン結合物質は、配列番号2に記載の2番目のアミノ酸残基から116番目のアミノ酸残基までの範囲のアミノ酸配列の2番目のアミノ酸残基から116番目のアミノ酸残基までを有し且つアミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基がピログルタミン酸であるアミノ酸配列を含むV;及び配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むV、を含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、メソテリン結合物質は、配列番号26に記載のアミノ酸配列を含むV、及び配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むV、を含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、メソテリン結合物質は、配列番号26に記載の2番目のアミノ酸残基から116番目のアミノ酸残基までの範囲のアミノ酸配列の2番目のアミノ酸残基から116番目のアミノ酸残基までを有し且つアミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基がピログルタミン酸であるアミノ酸配列を含むV;及び配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むV、を含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、メソテリン結合物質は、配列番号27に記載のアミノ酸配列を含むV、及び配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むV、を含む。
【0095】
いくつかの実施形態では、メソテリン結合物質は、配列番号27に記載の2番目のアミノ酸残基から116番目のアミノ酸残基までの範囲のアミノ酸配列の2番目のアミノ酸残基から116番目のアミノ酸残基までを有し且つアミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基がピログルタミン酸であるアミノ酸配列を含むV;及び配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むV、を含む。
【0096】
いくつかの実施形態では、メソテリン結合物質は、配列番号28に記載のアミノ酸配列を含むV、及び配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むV、を含む。
【0097】
いくつかの実施形態では、メソテリン結合物質は、配列番号28に記載の2番目のアミノ酸残基から116番目のアミノ酸残基までの範囲のアミノ酸配列の2番目のアミノ酸残基から116番目のアミノ酸残基までを有し且つアミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基がピログルタミン酸であるアミノ酸配列を含むV;及び配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むV、を含む。
【0098】
さらなる実施形態では、メソテリン結合物質は、配列番号10に記載のアミノ酸配列を含むVドメイン、及び配列番号11に記載のアミノ酸配列を含むVドメイン、を含む。
【0099】
さらなる実施形態では、メソテリン結合物質は、配列番号10に記載のアミノ酸配列を含むV、及び配列番号11に記載のアミノ酸配列を含むV、を含む。
【0100】
さらなる実施形態では、メソテリン結合物質は、配列番号10に記載の2番目のアミノ酸残基から116番目のアミノ酸残基までの範囲のアミノ酸配列の2番目のアミノ酸残基から116番目のアミノ酸残基までを有し且つアミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基がピログルタミン酸であるアミノ酸配列を含むV;及び配列番号11に記載のアミノ酸配列を含むV、を含む。
【0101】
さらなる実施形態では、メソテリン結合物質は、配列番号10に記載のアミノ酸配列を含むV;及び配列番号11に記載の2番目のアミノ酸残基から107番目のアミノ酸残基までの範囲のアミノ酸配列の2番目のアミノ酸残基から107番目のアミノ酸残基までを有し且つアミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基がピログルタミン酸であるアミノ酸配列を含むV、を含む。
【0102】
さらなる実施形態では、メソテリン結合物質は、配列番号10に記載の2番目のアミノ酸残基から116番目のアミノ酸残基までの範囲のアミノ酸配列の2番目のアミノ酸残基から116番目のアミノ酸残基までを有し且つアミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基がピログルタミン酸であるアミノ酸配列、を含むV、及び、配列番号11に記載の2番目のアミノ酸残基から107番目のアミノ酸残基までの範囲のアミノ酸配列の2番目のアミノ酸残基から107番目のアミノ酸残基までを有し且つアミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基がピログルタミン酸であるアミノ酸配列、を含むV、を含む。
【0103】
さらなる実施形態では、メソテリン結合物質は、配列番号18に記載のアミノ酸配列を含むV、及び配列番号19に記載のアミノ酸配列を含むV、を含む。
【0104】
さらなる実施形態では、メソテリン結合物質は、配列番号18に記載の2番目のアミノ酸残基から118番目のアミノ酸残基までの範囲のアミノ酸配列の2番目のアミノ酸残基から118番目のアミノ酸残基までを有し且つアミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基がピログルタミン酸であるアミノ酸配列を含むV;及び配列番号19に記載のアミノ酸配列を含むV、を含む。
【0105】
さらなる実施形態では、メソテリン結合物質は、配列番号18に記載のアミノ酸配列を含むV;及び配列番号19に記載の2番目のアミノ酸残基から108番目のアミノ酸残基までの範囲のアミノ酸配列の2番目のアミノ酸残基から108番目のアミノ酸残基までを有し且つアミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基がピログルタミン酸であるアミノ酸配列を含むV、を含む。
【0106】
さらなる実施形態では、メソテリン結合物質は、配列番号18に記載の2番目のアミノ酸残基から118番目のアミノ酸残基までの範囲のアミノ酸配列の2番目のアミノ酸残基から118番目のアミノ酸残基までを有し且つアミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基がピログルタミン酸であるアミノ酸配列、を含むV、及び、配列番号19に記載の2番目のアミノ酸残基から108番目のアミノ酸残基までの範囲のアミノ酸配列の2番目のアミノ酸残基から108番目のアミノ酸残基までを有し且つアミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基がピログルタミン酸であるアミノ酸配列、を含むV、を含む。
【0107】
本発明のさらなる実施形態では、ヒトMSLN結合物質は、IgGアイソタイプの重鎖(HC)定常ドメインを含む抗体である。特定の実施形態では、重鎖定常ドメインは、天然のIgG1アイソタイプのアミノ酸配列と比較して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のアミノ酸の置換、付加、欠失、またはそれらの組み合わせを含む。
【0108】
配列番号17に示されるアミノ酸配列を含むIgG重鎖定常ドメインまたは1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のアミノ酸の置換、付加、欠失、またはそれらの組み合わせを含むそのバリアント。
【0109】
本発明の特定の実施形態では、本明細書に開示の定常ドメインは、C末端リジンを含んでも、C末端リジンまたはC末端グリシン-リジンジペプチドのいずれかを欠いていてもよい。
【0110】
本明細書に開示の実施形態のいずれかでは、軽鎖は、配列番号38を含むヒトカッパ軽鎖定常ドメインを含んでもよい。
【0111】
エフェクターサイレントFcドメインを含むヒトMSLN結合物質
フルサイズの抗体を含む本発明のエフェクターサイレントヒトMSLN結合物質は、抗体が1つ以上のFcRに測定可能な結合を示さないか、または同じIgGアイソタイプの未修飾抗体と比較して1つ以上のFcRへの結合の減少を示すように修飾されているHC定常ドメインまたはそのFcドメインを含んでもよい。エフェクターサイレント抗体は、さらなる実施形態では、FcγRIIIa、FcγRIIa、及びFcγRIのそれぞれに対して測定可能な結合を示さないことも、同じIgGアイソタイプの未修飾型抗体と比較して、FcγRIIIa、FcγRIIa、及びFcγRIのそれぞれに対する結合の低減を示してもよい。特定の実施形態では、HC定常ドメインまたはFcドメインは、ヒトHC定常ドメインまたはFcドメインである。
【0112】
特定の実施形態では、エフェクターサイレント抗体は、HC定常ドメインの位置297(Euナンバリングシステム)のアスパラギン(Asn)残基のNグリコシル化を欠くように修飾されているIgG1アイソタイプのFcドメインを含む。Nグリコシル化のコンセンサス配列は、Asn-Xaa-Ser/Thr(位置298のXaaは、Pro以外の任意のアミノ酸である)であり、Nグリコシル化のコンセンサス配列は、Asn-Ser-Thrである。この修飾は、HC定常ドメインをコードする核酸分子の位置297のAsnをコードするコドンを、別のアミノ酸、例えば、Ala、Asp、Gln、Gly、またはGluをコードするコドン、例えば、N297A、N297Q、N297G、N297E、またはN297Dと置き換えることにより達成され得る。あるいは、位置298のSerのコドンが、Proのコドンに置換されても、位置299のThrのコドンが、Serのコドン以外の任意のコドンに置換され得る。さらに別の選択肢では、N-グリコシル化コンセンサス配列を含むアミノ酸のそれぞれが、別のアミノ酸と置換されている。そのような修飾型IgG分子は、測定可能なエフェクター機能を有さない。特定の実施形態では、これらの変異型HC分子は、さらに、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の追加のアミノ酸置換、挿入、及び/または欠失を含んでもよく、該置換は、保存的変異または非保存的変異であってよい。さらなる実施形態では、位置297のNグリコシル化を欠くように修飾されているそのようなIgGは、さらに、測定可能なエフェクター機能を排除するために本明細書に開示の1つ以上の追加の変異を含んでもよい。
【0113】
HC定常ドメインのN-グリコシル化を無効にする、位置297で変異した例示的なIgG1 HC定常ドメインは、配列番号36に示される。特定の実施形態では、これらの変異型HC分子は、さらに、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の追加のアミノ酸置換、挿入、及び/または欠失を含んでもよく、該置換は、保存的変異または非保存的変異であってよい。
【0114】
特定の実施形態では、エフェクターサイレント抗体を含むIgG1 HC定常ドメインのFcドメインは、E233P、L234A、L235A、L235E、N297A、N297D、D265S、及びP331S(位置が、Euナンバリングに従って同定される)から選択される1つ以上のアミノ酸置換を含むように修飾され、該HC定常ドメインが、エフェクターサイレントである。特定の実施形態では、修飾型IgG1は、さらに、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の追加のアミノ酸置換、挿入、及び/または欠失を含み、該置換が、保存的変異または非保存的変異であってよい。
【0115】
特定の実施形態では、HC定常ドメインは、L234A、L235A、及びD265S置換を含む(位置は、Euナンバリングに従って同定される)。特定の実施形態では、HC定常ドメインは、位置Pro329のアミノ酸置換と、E233P、L234A、L235A、L235E、N297A、N297D、D265S、及びP331S(位置はEuナンバリングに従って同定される)から選択される少なくとも1つのさらなるアミノ酸置換を含む。これら及び他の置換は、WO9428027;WO2004099249;WO20121300831、米国特許第9,708,406号;同第8,969,526号;同第9,296,815号;Sondermann et al.Nature 406,267-273(2000)に開示される。
【0116】
上記の特定の実施形態では、HC定常ドメインは、L234A/L235A/D265A;L234A/L235A/P329G;L235E;D265A;D265A/N297G;またはV234A/G237A/P238S/H268A/V309L/A330S/P331S置換を含み、位置は、Euナンバリングに従って同定される。特定の実施形態では、HC分子は、さらに、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の追加のアミノ酸置換、挿入、及び/または欠失を含み、該置換は、保存的変異または非保存的変異であってよい。
【0117】
特定の実施形態では、エフェクターサイレント抗体は、IgG1アイソタイプを含み、HC定常ドメインのFcドメインは、IgG1の位置233から位置236のアミノ酸を、ヒトIgG2 HCの対応するアミノ酸で置換すること、ならびに、位置327、330、及び331のアミノ酸をヒトIgG4 HCの対応するアミノ酸で置換すること、によりエフェクターサイレントになるように修飾されており、位置は、Euナンバリングに従って同定される(Armour et al.,Eur.J.Immunol.29(8):2613-24(1999);Shields et al.,J.Biol.Chem.276(9):6591-604(2001))。特定の実施形態では、修飾型IgG1は、さらに、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の追加のアミノ酸置換、挿入、及び/または欠失を含み、該置換が、保存的変異または非保存的変異であってよい。
【0118】
特定の実施形態では、エフェクターサイレント抗体は、ハイブリッドヒト免疫グロブリンHC定常ドメインに融合または連結されているVを含み、これは、N末端からC末端方向で、ヒンジ領域、CH2ドメイン、及びCH3ドメインを含み、ヒンジ領域は、ヒトIgDヒンジ領域またはヒトIgG1ヒンジ領域の少なくとも部分的なアミノ酸配列を含み;CH2ドメインは、ヒトIgG4 CH2ドメインのものであり、この部分は、N末端領域で、ヒトIgG2 CH2またはヒトIgD CH2ドメインのN末端領域の4~37アミノ酸残基で置換されている。そのようなハイブリッドヒトHC定常ドメインは、米国特許第7,867,491号に開示されており、これは、全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0119】
例示的なIgG1 HC定常ドメインには、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、及び配列番号37に記載されているアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むHC定常ドメインを含む。
【0120】
ヒトMSLN結合物質の特定の実施形態では、ヒトMSLN結合物質は、本明細書に開示のIgG1 Fcドメインを含む抗体であり、これは、さらにC末端リジンを含むか、またはC末端リジンまたはC末端グリシン-リジンジペプチドのいずれかを欠いている。
【0121】
本明細書に開示の実施形態のいずれかでは、軽鎖は、配列番号38を含むヒトカッパ軽鎖定常ドメインを含んでもよい。
【0122】
代替的または追加的に、本開示の別の実施形態では、本明細書で提供されるヒトMSLN結合物質及び他のペプチドは、当該技術分野で知られているように、翻訳後修飾を受け得る。翻訳後修飾の例としては、化学修飾、例えば、ジスルフィド結合、オリゴ糖、N末端ピログルタミン酸形成、C末端リジン処理(その結果、リジンが除去される)、脱アミド化、異性化、酸化、糖化、ペプチド結合切断、非還元性架橋、切断、及び当該技術分野で既知のものが挙げられるが、これらに限定されない。参照のこと:Liu,et.al.,Heterogeneity of Monoclonal Antibodies,J.Pharma.Sci.vol.97,no.7,pp.2426-2447(July 2008)。他のタイプの修飾としては、非共有結合性相互作用、立体配座の不均一性、及び凝集(同上)が挙げられる。
【0123】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるヒトMSLN結合物質のN末端EまたはQは、ピログルタミン酸で置換される。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるヒトMSLN結合物質のC末端Kが除去される。他の実施形態では、本明細書で提供されるヒトMSLN結合物質のN末端EまたはQは、ピログルタミン酸で置換され、ヒトMSLN結合物質のC末端K(例えば、重鎖C末端アミノ酸)が除去される。本開示は、本明細書で提供されるヒトMSLN結合物質及びポリペプチドのいずれかの上記翻訳後修飾のいずれかを含む。例えば、いくつかの実施形態では、V領域の最初のN末端アミノ酸が、ピログルタミン酸で置換され、及び/または重鎖のC末端アミノ酸が、除去されることを除いて、47D7と同じ配列を含むヒトMSLN結合物質が本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、V領域の最初のN末端アミノ酸が、ピログルタミン酸で置換され、V領域の最初のN末端アミノ酸が、ピログルタミン酸で置換され、及び/または重鎖のC末端アミノ酸が、除去されることを除いて、20B12と同じ配列を含むヒトMSLN結合物質が、本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、V領域の最初のN末端アミノ酸が、ピログルタミン酸で置換され、V領域の最初のN末端アミノ酸が、ピログルタミン酸で置換され、及び/または重鎖のC末端アミノ酸が、除去されることを除いて、45B6と同じ配列を含むヒトMSLN結合物質が、本明細書で提供される。
【0124】
いくつかの特定の実施形態では、N末端の最初のアミノ酸がピログルタミン酸に置換されていることを除いて、配列番号2、10、11、18、19、及び26~28のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む抗体またはそのフラグメント(例えば、scFv)またはポリタンパク質が本明細書で提供される。
【0125】
他の特定の実施形態では、C末端のKが除去されていることを除いて、配列番号29~37のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む抗体またはそのフラグメントが本明細書で提供される。
【0126】
ヒトMSLNに結合するScFv融合タンパク質
特定の実施形態では、本明細書に開示のV及びVは、Vドメイン及びVドメインがペプチドリンカーで互いに連結されているScFv融合タンパク質として発現される。ペプチドリンカーは、V-Vペアリング及び抗原結合部位の忠実度を損なうことなく、1つの可変領域ドメインのカルボキシル末端を、他の可変ドメインのアミノ末端に結合する。従って、ScFvは、VのC末端がペプチドリンカーでVのN末端に連結されている融合タンパク質、またはVのC末端がペプチドリンカーでVのN末端に連結されている融合タンパク質を含んでもよい。可変ドメインを連結するためのペプチドリンカーは、長さが10から25アミノ酸まで変動し得、通常は(必ずしもそうとは限らないが)G4S構造(例えば、(G4S)、式中、nは、1、2、3、4、または5である)を有する親水性アミノ酸、例えば、グリシン(G)及びセリン(S)で構成されている。より短い長さ(0~4アミノ酸)のペプチドリンカーも使用されているが、より短いリンカーを有するScFvは、マルチマーを形成し得る。一般に、3つの繰り返しG4S単位を含む(G4S)ペプチドが、ScFvペプチドリンカーとして使用される(例えば、以下を参照のこと:Leath et al.,Int.J.Oncol.24:765-771(2004);Holliger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448(1993);Iliades et al.,FEBS Lett.409:437-441(1997))。
【0127】
例示的なScFv融合タンパク質としては、構造V-(G4S)-VまたはV-(G4S)-Vが挙げられ、(a)Vは、配列番号3に記載のアミノ酸配列を含み、Vは、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むか;(b)Vは、配列番号3に記載のアミノ酸配列を含み、Vは、配列番号26に記載のアミノ酸配列を含むか;(c)Vは、配列番号3に記載のアミノ酸配列を含み、Vは、配列番号27に記載のアミノ酸配列を含むか;(d)Vは、配列番号3に記載のアミノ酸配列を含み、Vは、配列番号28に記載のアミノ酸配列を含むか;(e)Vは、配列番号11に記載のアミノ酸配列を含み、Vは、配列番号10に記載のアミノ酸配列を含むか:または、(f)Vは、配列番号19に記載のアミノ酸配列を含み、Vは、配列番号18に記載のアミノ酸配列を含み、nは、1、2、3、4、または5である。
【0128】
本明細書に開示のScFvは、本明細書に開示されるように、HSLNに結合するScFvに、ペプチドリンカーにより連結されているCD3結合物質(ScFv)を含む二重特異性形式で提供され得る。二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE(登録商標))と呼ばれるこれらの分子がT細胞上のCD3と細胞表面に発現しているHSLNに結合する場合、T細胞が腫瘍部位に移動する。
【0129】
本明細書に開示のScFvは、また、がん、自己免疫、及び/または炎症の治療用途のために、細胞毒素、放射性同位元素、サイトカイン、及び酵素と融合され得る。特定の実施形態では、ペプチドリンカーは、1~10個のG4Sペプチドユニットを含んでもよい。
【0130】
さらなる実施形態では、本明細書に開示のScFvは、二重エピトープ結合を付与するように、インタクトIgG分子の異なる位置に連結されていても、挿入されていてもよい。例えば、2つのヘテロ二量体重鎖定常ドメインを含む二重特異性抗体が提供され得、一方の重鎖定常ドメインのN末端は、本明細書に開示のScFvのC末端に融合されており、他方の重鎖定常ドメインのN末端は、ヒトMSLN以外の抗原を標的とするScFvまたはヒトMSLN以外の抗原を標的とするFab’のC末端に融合されている。
【0131】
ヒトMSLN結合物質をコードする核酸分子
本開示は、さらに、本発明のヒトMSLN結合物質をコードする核酸分子を提供する。特定の実施形態では、ヒトMSLN結合物質は、核酸分子でコードされるVドメインと、核酸分子でコードされるVを含む。本明細書に開示のHSLN結合物質をコードする核酸配列は、HSLN結合物質のアミノ酸配列を、HSLN結合物質をコードする核酸配列に逆翻訳することにより取得され得る。そのようにして得られた核酸分子のコドンは、特定の細胞型で翻訳される場合に、一般にまたはより効率的に使用されるコドンに対応するようにさらに修飾され得る。特定の宿主細胞における発現を高めるために核酸分子を逆翻訳及び/または最適化する方法及びコンピュータプログラム(例えば、Integrated DNA Technologies,Inc.(郵便番号52241 米国アイオワ州コマーシャルパーク・コーラルビル1710)から入手可能なIDT Codon Optimization Tool;米国特許第8,326,547号;WO2020024917A1)は、当該技術分野で周知である。
【0132】
特定の実施形態では、HC及びLC(またはV及びV)は、HC及びLC(またはV及びV)のN末端が、リーダーペプチドにN末端で融合されており、分泌経路を通じた抗体の輸送を容易にする融合タンパク質として発現される。特定の実施形態では、ScFv融合タンパク質のN末端は、分泌経路を通じた抗体の輸送を容易にするために、N末端で、リーダーペプチドまたはシグナルペプチドに融合されている。使用され得るリーダー/シグナルペプチドの例としては、配列番号39または配列番号40に記載のアミノ酸配列を含むものが挙げられる。従って、特定の実施形態では、上述の核酸分子は、HSLN結合物質をコードする核酸分子の5’末端に連結されているリーダーペプチドをコードするポリヌクレオチドを含んでもよい。
【0133】
本明細書に開示の核酸分子は、特定の宿主細胞、例えば、酵母もしくは真菌宿主細胞、非ヒト哺乳動物宿主細胞、ヒト宿主細胞、昆虫宿主細胞、または原核生物宿主細胞における核酸分子の発現を高めるために1つ以上のコドンを最適化する1つ以上の置換を含んでもよい。
【0134】
ヒトMSLN結合物質を作成するための方法
本開示は、ヒトMSLN結合物質を作成するための組み換え方法を含み、方法は、以下を宿主細胞に導入することを含む:(i)ヒトMSLN結合物質のV及びV、もしくはヒトMSLN結合物質のHC及びLCをコードする発現ベクター、または、(ii)2つの発現ベクター(一方は、ヒトMSLN結合物質のVもしくはヒトMSLN結合物質のHCをコードし、他方は、ヒトMSLN結合物質のVまたはヒトMSLN結合物質のLCをコードする)。V、V、HC、またはLCをコードする核酸分子またはポリヌクレオチドは、プロモーター及び他の転写及び翻訳調節配列に作動可能に連結されている。宿主細胞は、核酸分子の発現に適した条件及び期間で培養され、その後、宿主細胞及び/または宿主細胞が成長する培地からメソテリン結合物質が単離される。例えば、以下を参照:WO2004041862、WO2006122786、WO2008020079、WO2008142164、またはWO2009068627。発現ベクターは、プラスミドまたはウイルスベクターであってよい。本発明は、アルギナーゼ1結合物質またはその構成要素をコードする核酸分子、例えば、VもしくはHCのみ、またはVもしくはHCのみを含有する宿主または宿主細胞にも関する。
【0135】
ヒトMSLN結合物質の発現のための宿主としての哺乳動物細胞を含む真核生物及び原核生物の宿主細胞は、当該技術分野で周知であり、American Type Culture Collection(ATCC)から入手可能な多くの不死化細胞株を含む。これらは、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NSO、SP2細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えば、HepG2)、A549細胞、3T3細胞、HEK-293細胞、及び他の多数の細胞株を含むが、これらに限定されない。従って、哺乳動物宿主細胞は、ヒト、マウス、ラット、イヌ、サル、ブタ、ヤギ、ウシ、ウマ、及びハムスターの細胞を含む。どの細胞株の発現レベルが高いかを判断することにより、特に好ましい細胞株が選択される。使用され得る他の細胞株は、昆虫細胞株(例えば:Spodoptera frugiperdaまたはTrichoplusia ni)、両生類細胞、細菌細胞、植物細胞、及び真菌細胞である。真菌細胞は、酵母細胞及び糸状菌細胞、例えば、Pichia pastoris、Saccharomyces cerevisiae、及びTrichoderma reeseiを含む。本開示は、本開示のヒトMSLN結合物質を含むか、またはそのようなヒトMSLN結合物質をコードする1つ以上の核酸分子を含むか、またはそのようなヒトMSLN結合物質をコードする1つ以上の核酸分子を含む発現ベクターを含む、任意の宿主細胞を含む。
【0136】
さらに、産生細胞株由来のヒトMSLN結合物質の発現は、多数の既知の手法を使用して増強することができる。例えば、グルタミン合成酵素遺伝子発現システム(GSシステム)は、特定の条件下での発現を強化するための一般的なアプローチである。GSシステムは、欧州特許第0216846B1号、同第0256055B1号、同第0323997B1号、及び同第0338841B1号に関連して全体的または部分的に考察されている。従って、本開示の実施形態では、哺乳動物宿主細胞は、グルタミン合成酵素遺伝子を欠いており、培地中にグルタミンが存在しない状態で成長するが、免疫グロブリン鎖をコードする核酸分子は、宿主細胞における遺伝子の欠失を補完するグルタミン合成酵素遺伝子を含む。本明細書で考察されるヒトMSLN結合物質または核酸(複数可)または発現ベクター(複数可)を含有するそのような宿主細胞、及び、そのような宿主細胞を使用してヒトMSLN結合物質を作成するための本明細書で論じられるような発現方法は、本開示の一部である。
【0137】
本開示は、ヒトMSLN結合物質を含む試料(例えば、培養培地、細胞溶解物、または細胞溶解物画分、例えば、溶解物の可溶性画分)を、精製媒体(例えば、陽イオン交換媒体、陰イオン交換媒体、及び/または疎水性交換媒体)に導入すること、ならびに、媒体に結合しない該試料のフロースルー画分から精製されたヒトMSLN結合物質を収集すること;または、フロースルー画分を廃棄し、結合しているヒトMSLN結合物質を媒体から溶出させて、溶出液を収集すること、を含むヒトMSLN結合物質を精製するための方法を含む。本開示の一実施形態では、媒体は、試料が加えられるカラム内にある。本開示の実施形態では、精製方法は、宿主細胞におけるヒトMSLN結合物質の組み換え発現の後に行われ、例えば、宿主細胞が、最初に溶解し、任意に、溶解物が、培地上での精製前に、不溶性物質から精製されるか、または、ヒトMSLN結合物質が宿主細胞により培養培地に分泌され、培地もしくはその一部が、精製培地に加えられる。
【0138】
一般に、細胞株またはトランスジェニック動物で産生される糖タンパク質に特徴的である、特定の細胞株またはトランスジェニック動物で産生される糖タンパク質は、グリコシル化パターンを有するであろう。従って、ヒトMSLN結合物質の特定のグリコシル化パターンは、ヒトMSLN結合物質を生成するために使用される特定の細胞株またはトランスジェニック動物により異なるであろう。非フコシル化N-グリカンのみを含むヒトMSLN結合物質は、本開示の一部であり、非フコシル化抗体が、通常、in vitro及びin vivoの両方でフコシル化対応部分よりも強力な有効性を示すことが示されているので、有利であることがある(例えば、Shinkawa et al.,J.Biol.Chem.278:3466-3473(2003);米国特許第6,946,292号及び同第7,214,775号)。非フコシル化Nグリカンを有するこれらのヒトMSLN結合物質は、その炭水化物構造がヒト血清IgG中に存在する集団の正常な成分であるので、免疫原性がある可能性は低い。
【0139】
本開示は、チャイニーズハムスター卵巣細胞で産生される免疫グロブリン(CHON結合グリカン)または改変型酵母細胞(改変型酵母細胞(改変型N結合グリカン)、例えば、Pichia pastorisに通常付加されるN結合グリカンを含むヒトMSLN結合物質を含む。例えば、本開示の実施形態では、メソテリン結合物質は、「改変型酵母N結合グリカン」または「CHO N結合型グリカン」(例えば、G0及び/またはG0-F及び/またはG1及び/またはG1-F及び/またはG2-F及び/またはMan)のうちの1つ以上を含む。本開示の実施形態では、ヒトMSLN結合物質は、改変型酵母N結合グリカン、すなわち、G0及び/またはG1及び/またはG2、任意に、さらに、Man5を含む。本開示の実施形態では、ヒトMSLN結合物質は、CHON結合グリカン、すなわち、G0-F、G1-F、及びG2-F、任意に、さらに、G0及び/またはG1及び/またはG2及び/またはMan5を含む。本開示の実施形態では、ヒトMSLN結合物質上の全てのN結合グリカンの約80%~約95%(例えば、約80~90%、約85%、約90%、または約95%)が、改変型酵母N結合グリカンまたはCHO N結合グリカンである。以下を参照のこと:Nett et al.Yeast.28:237-252(2011);Hamilton et al.Science.313:1441-1443(2006);Hamilton et al.Curr Opin Biotechnol.18(5):387-392(2007)。例えば、本開示の実施形態では、改変型酵母細胞が、GFI5.0もしくはYGLY8316、または米国特許第7,795,002号もしくはZha et al.Methods Mol Biol.988:31-43(2013)に記載されている株である。以下も参照のこと:国際特許出願公開第WO2013066765号。
【0140】
投与/医薬組成物
ヒトMSLN結合物質は、ヒトMSLN結合物質及び薬学的に許容される担体を含む好適な医薬組成物で提供され得る。担体は、ヒトMSLN結合物質が投与される希釈剤、補助剤、賦形剤、またはビヒクルであり得る。そのようなビヒクルは、液体、例えば、水及び油、例えば、石油、動物、植物、または合成起源のもの、例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油など、であってよい。例えば、0.4%の生理食塩水及び0.3%のグリシンが使用され得る。これらの溶液は、滅菌されており、通常は、粒子状物質は含まれない。それらは、従来の周知の滅菌手法(例えば、濾過)により滅菌され得る。組成物は、生理学的状態に近づけるために必要とされる薬学的に許容される補助物質(例えば、pH調整剤及び緩衝剤、安定剤、増粘剤、潤滑剤、ならびに着色剤など)を含有してもよい。そのような医薬製剤中の分子または開示の濃度は、広く(すなわち、約0.5%未満、通常は、少なくとも約1~15%または20重量%と同じ程度に)変動し得、選択された特定の投与様式に従って、必要用量、液体体積、粘度などに基づいて主に選択されるであろう。他のヒトタンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン、を含む好適なビヒクル及び製剤は、例えば、以下に記載されている:Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21.sup.st Edition,Troy,D.B.ed.,Lipincott Williams and Wilkins,Philadelphia,Pa.2006,Part 5,Pharmaceutical Manufacturing pp 691-1092、特に以下を参照:pp.958-989。
【0141】
ヒトMSLN結合物質の投与様式は、任意の好適な経路、例えば、非経口投与(例えば、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、もしくは皮下、経肺、経粘膜(経口、鼻腔内、膣内、直腸))または当該技術分野で周知の、当業者に認識されている他の手段、であってよい。
【0142】
ヒトMSLN結合物質は、任意の好適な経路、例えば、静脈内(i.v.)注入もしくはボーラス注射による非経口投与、筋肉内もしくは皮下、または腹腔内投与により、個体(例えば、患者)に投与され得る。iv注入は、例えば、15、30、60、90、120、180、もしくは240分間、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは12時間にわたって投与され得る。
【0143】
がんまたは悪性腫瘍を有する個体に投与される用量は、処置される疾患を軽減するか、または少なくとも部分的に抑制するのに十分であり(「治療的有効量」)、場合により、0.005mg/kg~約100mg/kg、例えば、約0.05mg/kg~約30mg/kg、もしくは約5mg~約25mg/kg、または約4mg/kg、約8mg/kg、約16mg/kg、もしくは約24mg/kg、または例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10mg/kgであってよいが、さらに高い、例えば、約15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、40、50、60、70、80、90、または100mg/kgであってよい。
【0144】
固定単位用量(例えば、50、100、200、500、または1000mg)も投与されても、用量が、患者の表面積(例えば、500、400、300、250、200、または100mg/m)に基づいてもよい。通常、がんまたは悪性腫瘍の処置には、1~8(例えば、1、2、3、4、5、6、7、または8)回の投与が行われ得るが、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、またはそれ以上の投与が行われ得る。
【0145】
ヒトMSLN結合物質の投与は、1日後、2日後、3日後、4日後、5日後、6日後、1週間後、2週間後、3週間後、1ヶ月後、5週間後、6週間後、7週間後、2ヶ月後、3ヶ月後、4ヶ月後、5ヶ月後、6ヶ月後以降に反復され得る。反復の処置方針も可能であり、慢性投与も可能である。反復投与は、同じ用量または異なる用量であってよい。例えば、本開示の方法におけるヒトMSLN結合物質は、8週間にわたり毎週8mg/kgまたは16mg/kgで投与され、その後、さらに16週間にわたり、2週間毎に8mg/kgまたは16mg/kgで投与され、その後、4週間毎に8mg/kgまたは16mg/kgで静脈内注入により投与され得る。
【0146】
ヒトMSLN結合物質は、例えば、6ヶ月以上の期間にわたり、週1回、維持療法により投与され得る。例えば、本開示の方法におけるヒトMSLN結合物質は、単回投与または24、12、8、6、4、もしくは2時間毎の分割投与、またはそれらの任意の組み合わせを使用して、処置の開始から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、もしくは40日目のうちの少なくとも1つに、または代わりに、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20週目のうちのいずれかの1つに、あるいは、その組み合わせで、1日当たり約0.1~100mg/kg、例えば、0.5、0.9、1.0、1.1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、45、50、60、70、80、90、または100mg/kgの量の1日投与量として、提供され得る。
【0147】
ヒトMSLN結合物質は、また、がんを発症するリスクを低減し、がんの進行における事象の発生を遅延させ、及び/またはがんが寛解している時の再発リスクを低減するために、予防的に投与され得る。これは、特に、他の生物学的要因により存在することが既知の腫瘍の場所を特定することが困難である患者に有用であり得る。
【0148】
ヒトMSLN結合物質は、保存のために凍結乾燥され、使用前に好適な担体で再構成され得る。この手法は、従来のタンパク質調製物に有効であることが示されており、周知の凍結乾燥及び再構成手法を用いることができる。
【0149】
併用療法の処置
本開示の併用療法は、ヒトMSLN結合物質を含み、別の治療薬(小分子または抗体)は、増殖性疾患の処置、特に、がんの処置に使用され得る。特定の実施形態では、本開示の併用療法は、黒色腫、非小細胞肺癌、頭頸部癌、尿路上皮癌、乳癌、胃腸癌、多発性骨髄腫、肝細胞癌、非ホジキンリンパ腫、腎臓癌、ホジキンリンパ腫、中皮腫、卵巣癌、小細胞肺癌、食道癌、肛門癌、胆道癌、大腸癌、子宮頸癌、甲状腺癌、または唾液腺癌を処置するために使用され得る。
【0150】
別の実施形態では、本開示の併用療法は、膵癌、気管支癌、前立腺癌、膵癌、胃癌、卵巣癌、膀胱癌、脳もしくは中枢神経系癌、末梢神経系癌、子宮もしくは子宮内膜癌、口腔もしくは咽頭の癌、肝臓癌、腎臓癌、精巣癌、胆道癌、小腸もしくは虫垂癌、副腎癌、骨肉腫、軟骨肉腫、または血液組織のがんを処置するために使用され得る。
【0151】
ヒトMSLN結合物質及び化学療法薬を含む併用療法
本開示の併用療法は、化学療法と組み合わせてがんを有する個体に投与され得る。個体は、本開示の併用療法を受けているのと同時に化学療法を受け得る。個体は、化学療法を完了した後に、本開示の併用療法を受け得る。個体は、併用療法の完了後に、化学療法が投与され得る。本開示の併用療法は、疾患の進行を有する再発性もしくは転移性癌、または再発性癌を有し且つ化学療法を受けているか、もしくは化学療法を完了している個体にも投与され得る。
【0152】
化学療法は、以下の群より選択される化学療法薬を含む得る:
(i)アルキル化剤(限定されないが、二官能アルキル化剤、シクロホスファミド、メクロレタミン、クロラムブシル、及びメルファランを含む)、
(ii)単官能アルキル化剤(限定されないが、ダカルバジン、ニトロソウレア、及びテモゾロミド(経口ダカルバジン)を含む)、
(iii)アントラサイクリン(限定されないが、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、及びバルルビシンを含む)、
(iv)細胞骨格破壊剤(タキサン)(限定されないが、パクリタキセル、ドセタキセル、アブラキサン、及びタキソテールを含む)、
(v)エポチロン(限定されないが、イキサベピロン及びウチデロンを含む)、
(vi)ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(限定されないが、ボリノスタット及びロミデプシンを含む)、
(vii)トポイソメラーゼIの阻害剤(限定されないが、イリノテカン及びトポテカンを含む)、
(viii)トポイソメラーゼII阻害剤(限定されないが、エトポシド、テニポシド、及びタフルポシドを含む)、
(ix)キナーゼ阻害剤(限定されないが、ボルテゾミブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、ベムラフェニブ、及びビスモデギブを含む)。
(x)ヌクレオチドアナログ及び前駆体アナログ(限定されないが、アザシチジン、アザチオプリン、フルオロピリミジン(例えば、カペシタビン、カルモフール、ドキシフルリジン、フルオロウラシル、及びテガフール)、シタラビン、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、メルカプトプリン、メトトレキサート、及びチオグアニン(旧チオグアニン)を含む)、
(xi)ペプチド抗生物質(限定されないが、ブレオマイシン及びアクチノマイシンを含む)、プラチナ系薬剤(限定されないが、カルボプラチン、シスプラチン、及びオキサリプラチンを含む)、
(xii)レチノイド(限定されないが、トレチノイン、アリトレチノイン、及びベキサロテンを含む)、ならびに
(xiii)ビンカアルカロイド及び誘導体(限定されないが、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、及びビノレルビンを含む)。
【0153】
化学療法における化学療法薬の投与量の選択は、いくつかの要因、例えば、エンティティの血清または組織のターンオーバー率、症状のレベル、エンティティの免疫原性、及び処置される個体の標的細胞、組織、または臓器へのアクセス性、により異なる。追加の治療薬の投与は、許容できるレベルの副作用を生じる量であるべきである。従って、各追加治療薬の投与量及び投与頻度は、特定の治療薬、処置されるがんの重症度、及び患者の特性により部分的に異なる。抗体、サイトカイン、及び小分子の適切な用量を選択するためのガイダンスが利用可能である。例えば、以下を参照のこと:Wawrzynczak(1996)Antibody Therapy,Bios Scientific Pub.Ltd,Oxfordshire,UK;Kresina(ed.)(1991)Monoclonal Antibodies,Cytokines and Arthritis,Marcel Dekker,New York,NY;Bach(ed.)(1993)Monoclonal Antibodies and Peptide Therapy in Autoimmune Diseases,Marcel Dekker,New York,NY;Baert et al.(2003)New Engl.J.Med.348:601-608;Milgrom et al.(1999)New Engl.J.Med.341:1966-1973;Slamon et al.(2001)New Engl.J.Med.344:783-792;Beniaminovitz et al.(2000)New Engl.J.Med.342:613-619;Ghosh et al.(2003)New Engl.J.Med.348:24-32;Lipsky et al.(2000)New Engl.J.Med.343:1594-1602;Physicians’ Desk Reference 2003(Physicians’ Desk Reference,57th Ed);Medical Economics Company;ISBN:1563634457;57th edition(November 2002)。適切な投与レジメンの決定は、例えば、処置に影響を与えることが当該技術分野で既知の、または疑われている、あるいは処置に影響を与えることが予測されるパラメータまたは要因を使用して、臨床医により行われ得、例えば、個体の臨床歴(例えば、以前の治療)、処置されるべきがんの種類及びステージ、ならびに併用療法における1つ以上の治療薬に対する反応のバイオマーカーに依存する。
【0154】
従って、本開示は、さらに、プラチナ含有化学療法、ペメトレキセド及びプラチナ化学療法、またはカルボプラチン及びパクリタキセルまたはナブパクリタキセルのいずれかを含む化学療法ステップを含む本開示の併用療法の実施形態を企図する。特定の実施形態では、化学療法ステップとの併用療法は、少なくともNSCLC及びHNSCCを処置するために使用され得る。
【0155】
併用療法は、さらに、化学療法ステップと組み合わせて、任意の増殖性疾患の処置、特に、がんの処置、に使用され得る。特定の実施形態では、本開示の併用療法は、黒色腫、非小細胞肺癌、頭頸部癌、尿路上皮癌、乳癌、胃腸癌、多発性骨髄腫、肝細胞癌、非ホジキンリンパ腫、腎臓癌、ホジキンリンパ腫、中皮腫、卵巣癌、小細胞肺癌、食道癌、肛門癌、胆道癌、大腸癌、子宮頸癌、甲状腺癌、または唾液腺癌を処置するために使用され得る。
【0156】
別の実施形態では、さらに、化学療法ステップと組み合わせた併用療法は、膵癌、気管支癌、前立腺癌、膵癌、胃癌、卵巣癌、膀胱癌、脳もしくは中枢神経系癌、末梢神経系癌、子宮もしくは子宮内膜癌、口腔もしくは咽頭の癌、肝臓癌、腎臓癌、精巣癌、胆道癌、小腸もしくは虫垂癌、副腎癌、骨肉腫、軟骨肉腫、または血液組織のがんを処置するために使用され得る。
【0157】
特定の実施形態では、化学療法ステップとの併用療法は、黒色腫(転移性または切除不能)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBCL)、尿路上皮癌、MSIHC、胃癌、子宮頸癌、肝細胞癌(HCC)、メルケル細胞癌(MCC)、腎細胞癌(進行癌を含む)、及び皮膚扁平上皮癌から選択される1つ以上のがんを処置するために使用され得る。
【0158】
ヒトMSLN結合物質及び治療用抗体を含む併用療法
本開示のヒトMSLN結合物質は、がんまたは増殖性疾患の処置のために、抗体である1つ以上の治療薬と組み合わせて投与され得る。個体は、本開示の併用療法を受けているのと同時に、治療用抗体による処置を受け得る。個体は、治療用抗体による処置を完了した後、本開示の併用療法を受け得る。個体は、併用療法の完了後、治療用抗体による処置を投与され得る。本開示の併用療法は、疾患の進行を有する再発性もしくは転移性癌、または再発性癌を有し且つ化学療法を受けているか、もしくは化学療法を完了している個体にも投与され得る。特定の実施形態では、治療薬は、プログラム細胞死1受容体またはリガンド(それぞれ、PD-1及びPD-L1)を標的とする。
【0159】
ヒトMSLN結合物質との併用療法に使用され得る例示的な抗PD-1抗体は、PD-1に結合し、PD-1がPD-L1に結合するのを阻止する任意の抗体を含む。さらなる実施形態では、例示的な抗PD-1抗体は、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、及びセミプリマブ-rwlcからなる群より選択される。例示的な抗体としては、以下の抗PD-1抗体と、抗PD-1抗体及び薬学的に許容される塩を含む組成物が挙げられる。
【0160】
KEYTRUDA、ランブロリズマブ、MK-3475、またはSCH-900475としても既知のペンブロリズマブは、米国特許第8,354,509号及びWO2009/114335に記載されており、例えば、Hamid,et al.,New England J.Med.369(2):134-144(2013)に開示されるヒト化抗PD-1抗体である。
【0161】
OPDIVO、MDX-1106-04、ONO-4538、またはBMS-936558としても既知のニボルマブは、WO2006/121168及び米国特許第8,008,449号に記載されている完全ヒトIgG4抗PD-1抗体である。
【0162】
セミプリマブ、LIBTAYO、またはREGN2810としても既知のセミプリマブ-rwlcは、WO2015112800及び米国特許第9,987,500号に記載されている組み換えヒトIgG4モノクローナル抗体である。
【0163】
特定の実施形態では、抗PD-1抗体は、(i)エフェクターサイレントHC定常ドメインに融合または連結されているペンブロリズマブの3つのHC-CDRを含むV、及び、(ii)LCカッパまたはラムダ定常ドメインに融合または連結されているペンブロリズマブの3つのLC-CDRを含むV、を含む。
【0164】
特定の実施形態では、抗PD-1抗体は、(i)エフェクターサイレントHC定常ドメインに融合または連結されているニボルマブの3つのHC-CDRを含むVH、及び、(ii)LCカッパまたはラムダ定常ドメインに融合または連結されているニボルマブの3つのLC-CDRを含むV、を含む。
【0165】
特定の実施形態では、抗PD-1抗体は、(i)エフェクターサイレントHC定常ドメインに融合または連結されているセミプリマブ-rwlcの3つのHC-CDRを含むV、及び、(ii)LCカッパまたはラムダ定常ドメインに融合または連結されているニボルマブの3つのLC-CDRを含むV、を含む。
【0166】
特定の実施形態では、抗PD-1抗体のVHは、IgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4 HC定常ドメイン(現在、特定のVに連結されていない)に融合もしくは連結され得るか、または得られる抗PD-1抗体をエフェクターサイレントにする、Fcドメインに1つ以上の変異を含むように修飾されているIgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4 HC定常ドメインに連結されている。
【0167】
ヒトMSLN結合物質を投与するための注射デバイス
本開示は、本明細書に記載のヒトMSLN結合物質またはその医薬組成物を含む注射デバイスも提供する。注射デバイスは、非経口経路、例えば、筋肉内、皮下、または静脈内を介して、患者の体内に物質を導入するデバイスである。例えば、注射デバイスは、注射器(例えば、医薬組成物が予め充填されているもの、例えば、自動注射器)であってよく、これは、例えば、注射されるべき液体(例えば、ヒトMSLN結合物質またはその医薬組成物を含むもの)を保持するためのシリンダーまたはバレル、液体を注射するための皮膚及び/または血管を刺すための針;ならびに液体をシリンダーから、針の穴を通して押し出すためのプランジャー、を含む。本開示の実施形態では、ヒトMSLN結合物質またはその医薬組成物を含む注射デバイスは、静脈内(IV)注射デバイスである。そのようなデバイスは、カニューレまたはトロカール/針を通して対象の体内に導入される液体(例えば、生理食塩水、またはNaCl、乳酸ナトリウム、KCl、CaClを含む乳酸リンゲル液、任意に、グルコースを含む)を保持するための、バッグまたはリザーバーに取り付けられ得るチューブに取り付けられ得るカニューレまたはトロカール/針の中にヒトMSLN結合物質またはその医薬組成物を含む。
【0168】
本開示の実施形態では、ヒトMSLN結合物質またはその医薬組成物は、トロカール及びカニューレが、対象の静脈に挿入され、トロカールが、挿入されたカニューレからが取り外されると、デバイスに導入され得る。IVデバイスは、例えば、末梢静脈(例えば、手もしくは腕のもの);上大静脈もしくは下大静脈、または心臓の右心房内(例えば、中心IV)に、あるいは鎖骨下静脈、内頸静脈、または大腿静脈内に挿入され、例えば、上大静脈または右心房に達するまで心臓に向かって進み得る(例えば、中心静脈ライン)。本開示の実施形態では、注射デバイスは、自動注射器、ジェット注射器、または外部注入ポンプである。ジェット注射器は、表皮を貫通する高圧の狭い液体ジェットを使用して、ヒトMSLN結合物質またはその医薬組成物を患者の体内に導入する。外部輸液ポンプは、ヒトMSLN結合物質またはその医薬組成物を制御された量で患者の体内に送達する医療デバイスである。外部輸液ポンプは、電気的または機械的に駆動され得る。異なるポンプは、異なる方法で作動し、例えば、シリンジポンプは、シリンジのリザーバー内に液体を保持し、可動ピストンは、液体の供給を制御し、エラストマーポンプは、伸縮可能なバルーンリザーバーに液体を保持し、バルーンの弾性壁からの圧力が液体の供給を駆動する。蠕動ポンプでは、一連のローラーが、長い柔軟なチューブを挟み、液体を前方に押し出す。マルチチャネルポンプでは、複数のリザーバーから複数の速度で液体を送ることができる。
【0169】
ヒトMSLN結合物質を含むキット
さらに、本明細書で考察されるように、1つ以上の追加の構成成分(限定されないが、さらなる治療薬を含む)と関連して、本明細書で考察されるように、1つ以上の構成成分(限定されないが、ヒトMSLN結合物質を含む)を含むキットが提供される。ヒトMSLN結合物質及び/または治療薬は、純粋な組成物として、または薬学的に許容される担体と組み合わせて、医薬組成物で製剤化することができる。
【0170】
一実施形態では、キットは、1つの容器(例えば、滅菌ガラスまたはプラスチックバイアル)に、ヒトMSLN結合物質またはその医薬組成物を、別の容器(例えば、滅菌ガラスまたはプラスチックバイアル)に、さらなる治療薬を含む。
【0171】
別の実施形態では、キットは、任意に、単一の共通容器内に医薬組成物中で、一緒に製剤化された1つ以上の治療薬と組み合わせて、ヒトMSLN結合物質またはその医薬組成物を含む本開示の組み合わせを含む。
【0172】
キットが、対象者への非経口投与用の医薬組成物を含む場合、キットは、そのような投与を実施するためのデバイスを含み得る。例えば、キットは、上で考察されるように、1つ以上の皮下注射針または他の注射デバイスを含み得る。従って、本開示は、注射デバイス及びヒトMSLN結合物質を含むキットを含み、例えば、注射デバイスがヒトMSLN結合物質を含むか、またはヒトMSLN結合物質が別の容器に入っている。
【0173】
キットは、キット内の医薬組成物及び剤形に関する情報を含む添付文書を含み得る。一般に、そのような情報は、患者及び医師が同梱の医薬組成物及び剤形を効果的且つ安全に使用する上で役立つ。例えば、開示の組み合わせに関する以下の情報は、添付文書で提供され得る:薬物動態、薬力学、臨床試験、有効性パラメータ、適応症及び使用法、禁忌、警告、注意事項、有害反応、過剰投与、適切な投薬量及び投与、供給方法、適切な保管条件、参考文献、製造元/販売元情報、ならびに特許情報。
【0174】
以下の例は、本開示のさらなる理解を促進することが意図される。
【0175】
一般的な方法
タンパク質ELISA
96ウェルプレートのウェルは、炭酸塩コーティングバッファー(2LのH0中5.3gのNaHCO及び3.2gのNaCO)またはHyClone Dulbeccoリン酸緩衝生理食塩水(DPBS;Hyclone、カタログ番号SH30028.02)中の精製されたヒトまたはアカゲザルMSLN 50μLを、1~2μg/mLの濃度でコーティングし、4℃で一晩インキュベートする。その後、プレートのウェルを、ウェル洗浄液(0.05%のポリソルベート20を含有するリン酸緩衝生理食塩水)で洗浄する。次に、Super BlockブロッキングバッファーT20(Thermo Scientific、#37536)を添加することにより、プレートのウェルを室温で1~2時間ブロックし、その後、ウェル洗浄液で洗浄する。次に、50μL/ウェルのハイブリドーマ上清画分(ニートで使用)、または10μg/mLから開始して、ELISAバッファー(DPBS+0.1%のBSA+0.05%のポリソルベート20)中で4倍または5倍に段階希釈された精製抗体を、ウェルに添加する。次に、プレートを室温で1時間インキュベートし、ウェルをウェル洗浄液で洗浄し、ELISAバッファーで1:3000~5000に希釈された50μL/ウェルの西洋ワサビ過酸化物(HRP)コンジュゲート抗種IgGをウェルに添加する。HRPコンジュゲート抗種IgGは、ヤギ抗マウスIgG-HRP(Southern Biotech、カタログ番号1030-05)、ヤギ抗ラットIgG-HRP(Southern Biotech、カタログ番号3030-05)、及びヤギ抗ヒトIgG-HRP(Jackson Immunologics、カタログ番号109-036-098)を含む。次に、プレートを室温で1時間インキュベートし、ウェルをウェル洗浄液で洗浄し、50μL/ウェルのABTSペルオキシダーゼ基質(Kirkgaard & Perry Laboratories)をウェルに添加する。10分後、ELISAプレートリーダーを使用して、405nmでのODを測定する。
【0176】
CHO細胞に対する細胞ELISA
96ウェルプレートのウェルに十分な細胞を播種して、0日目(アッセイの日)に95~100%のコンフルエンスを得た。0日目に、培地を除去し、50μL/ウェルのハイブリドーマ上清画分、または精製抗体を10μg/mLまたは等モル濃度から開始し、CHO培地(DMEM F12、10%のウシ血清)で4倍または5倍に段階希釈する。次に、プレートを室温または37℃までの温度で1時間インキュベートする。次に、所定濃度のリガンド約50μLを、プレートのウェルに添加し、プレートを室温または37℃までの温度で30分間インキュベートする。プレートのウェルをELISA洗浄液(0.05%のポリソルベート20を含有するPBS)で洗浄する。次に、CHO培地で1:2000に希釈されたHRPコンジュゲート抗種IgGを50μL/ウェルで、ウェルに添加し、プレートを室温または37℃までの温度で1時間インキュベートする。HRPコンジュゲート抗種IgGは、ヤギ抗マウスIgG-HRP(Southern Biotech、カタログ番号1030-05)、ヤギ抗ラットIgG-HRP(Southern Biotech、カタログ番号3030-05)、及びヤギ抗ヒトIgG-HRP(Jackson Immunologics、カタログ番号109-036-098)を含む。プレートのウェルをELISA洗浄液で洗浄する。次に、TMB基質(1ステップ Ultra TMB-ELISA:Thermo Fisher、カタログ番号34029)を50μL/ウェルで、ウェルに追加する。ブランクが青色に変わり始めたら、50μL/ウェルのTMB停止溶液(KPL、カタログ番号50-85-06)をウェルに添加し、A450-A620をELISAリーダーで測定する。
【実施例
【0177】
実施例1
ヒトMSLN結合物質の免疫化及びスクリーニング
全長ヒト成熟MSLNをコードするmRNAを使用して、Trianni(商標)マウス(AbCellera、ブリティッシュコロンビア州バンクーバー)を免疫した。その後、免疫動物の脾臓細胞を単離し、Sp2/0骨髄腫パートナーとの融合に使用して、ハイブリドーマを作成した。次に、ハイブリドーマを96ウェルプレートに別々にプレーティングして、ハイブリドーマライブラリを作成し、プレーティングされたハイブリドーマからの抗体上清画分を、ヒトMSLNへの結合、種間の交差反応性、親和性、全長ヒトMSLNを発現する細胞への結合、及びヒトMSLNへの結合についてスクリーニングした。モノクローナル性を保証するために、陽性結合ウェルをサブクローニング用に選択した。次に、得られたモノクローナルハイブリドーマを、小規模な抗体の産生及び精製に使用した。精製抗体を、別のラウンドのスクリーニング(親和性、エピトープビニング、全長タンパク質結合、ヒトMSLN結合、タンパク質及び細胞結合、ならびに競合アッセイを含む)にかけた。
【0178】
ハイブリドーマクローンSV017.13B12.1E1、SV017.47D7.1C2、SV017.50G3.1B1、SV017.51F4.1A1、SV018.20B12.1D1、及びSV018.45B6.1G1を分析のために選択した。
【0179】
実施例2
抗体産生
市販のプロトコール及びExpiFectamine(商標)CHO試薬(ThermoFisher)を使用して、懸濁液中で成長するExpiCHO(商標)細胞に、抗体発現プラスミド(HC+LC)でトランスフェクトした(Sivasubramanian et al.,MABS9:29-42(2017))。簡単に言うと、0日目に、1mL当たり600万細胞の密度で、細胞1mL当たり1μgの総DNA(LC:HC比3:2)を使用して、細胞をトランスフェクトし、Vi-Cell(Beckman-Coulter)を使用して、95%を超える生存率を測定した。1日目に、ExpiCHO(商標)フィード及びエンハンサーを、細胞培養に添加し、細胞培養温度を32℃に低下させた。5日目に、2回目のEXPI-CHO(商標)フィードを実施し、Vi-Cell(Beckman-Coulter)を使用して、細胞生存率を測定した。細胞生存率が80%を超えたかどうかに応じて、細胞培養を8日目~12日目に採取し、採取された細胞培養液を遠心分離して、細胞及びデブリを除去し、清澄化された上清画分を得た。
【0180】
以下のように、プロテインA樹脂クロマトグラフィー(mAbSelect Sure(商標)LX、GE Healthcare)を使用して、抗体を清澄化した上清画分から精製した。
【0181】
ローディングバッファー中のプロテインA樹脂を、ローラーミキサー上で4℃で一晩、清澄化した上清画分と共にインキュベートした。その後、清澄化された上清画分からプロテインA樹脂を回収し、クロマトグラフィーカラムに移し、10カラム容量(CV)のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄した。次に、pH3.5の20mMの酢酸ナトリウムを含む溶出バッファーを使用して、抗体をクロマトグラフィーカラムから溶出させた。1カラム容量(CV)の画分を収集し、ブラッドフォードアッセイで試験して、タンパク質の存在を判定した。いくつかの場合では、プロテインAの精製の後に、陰イオン交換クロマトグラフィー(Capto(商標)Q、GE Healthcare)が続いた。精製抗体をバッファー交換して、20mMの酢酸ナトリウム、9%のスクロースを含む最終製剤化バッファー(pH5.5)にした。還元及び非還元キャピラリー電気泳動ドデシル硫酸ナトリウム(CE-SDS)(PerkinElmer)で、精製抗体を純度についてチェックし、濃度をA280で測定し、BEH200 UPLC-SEC分析カラム(Waters Corporation)を使用したSEC-UPLC(サイズ排除超高性能液体クロマトグラフィー)で、凝集体含有量を分析した。Endosafe(登録商標)nexgen-MCS(商標)(Charles River)を使用して、エンドトキシンを定量した。完全な質量を、Synapt(登録商標)G2S QTOFまたはXevo(登録商標)G2 TOF(Waters)により確認した。
【0182】
ハイブリドーマクローンSV017.13B12.1E1、SV017.47D7.1C2、SV017.50G3.1B1、SV017.51F4.1A1、SV018.20B12.1D1、及びSV018.45B6.1G1により産生される抗体のアミノ酸配列が表6に示される。
【0183】
実施例3
ヒトMSLNまたはアカゲザルMSLN及びOVCAR3細胞株を発現するように遺伝子修飾されたチャイニーズハムスター卵巣K1(CHOK1)細胞が発現した可溶性タンパク質としても膜結合タンパク質としても、ヒトMSLN及び非ヒト霊長類メソテリン(アカゲザルMSLN)への結合について、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)で、ハイブリドーマクローンSV017.13B12.1E1、SV017.47D7.1C2、SV017.50G3.1B1、SV017.51F4.1A1、SV018.20B12.1D1、及びSV018.45B6.1G1により産生された抗体を評価した。OVACAR3細胞株は、高レベルのヒトMSLNを発現するヒト卵巣癌細胞株である。
【0184】
結果は、表5及び図1~3で提示される。表5に示されるように、全ての抗体は、膜結合型ヒトMSLN(CHOK1またはOVCAR3)に強い結合を示す。クローンSV018.20B12.1D1及びSV018.45.1G1から同定された抗体は、アカゲザルMSLNへの検出されない結合を全く示さず、可溶性ヒトMSLNへの弱い結合を示し、クローンSV017.13B12.1E1、SV017.47D7.1C2、SV017.50G3.1B1、及びSV017.51F4.1A1由来の抗体は、アカゲザルMSLNへの弱い結合を示す。
【表6】
【0185】
図1~3は、ハイブリドーマクローンSV017.47D7.1C2、SV018.20B12.1D1、及びSV018.45B6.1G1から同定された抗体の、陽性対照としてのMORAB-009との比較を示す。MORAB-009は、アマツキシマブという一般名を有し、それぞれ配列番号40及び配列番号41に示される重鎖及び軽鎖を含む抗ヒトMSLN抗体である。データは、ELISAから生成された。
【0186】
図1は、抗体SV017.47D7.1C2が、MORAB-009と同等の効力で膜結合型ヒトMSLNに結合し、膜結合型ヒトMSLNに結合する場合の効力よりも高い効力で可溶性ヒトMSLNに結合し得ることを示す。図2は、抗体SV018.20B12.1D1が、MORAB-009の約半分の効力でヒトMSLNに結合し、膜結合型ヒトMSLNに結合する場合に示すよりも低い効力で可溶性ヒトMSLNに結合することを示す。図3は、抗体SV018.45B6.1G1が、MORAB-009の約半分の効力でヒトMSLNに結合し、膜結合型ヒトMSLNに結合する場合に示すよりも低い効力で可溶性ヒトMSLNに結合し得ることを示す。
【0187】
ELISAの結果は、抗体が、膜結合型ヒトMSLNに強く結合し、膜結合型アカゲザルMSLNに弱く結合するか、または全く結合しないことを示す。膜結合型アカゲザルMSLNへの検出可能な結合を全く示さなかった抗体SV018.20B12.1D1及びSV018.45B6.1G1は、可溶性ヒトMSLNに対し低い効力も示し、これらの抗体がシンクになる能力を低下させていることを示す。
【表7-1】
【表7-2】
【表7-3】
【表7-4】
【表7-5】
【表7-6】
【表7-7】
【表7-8】
【0188】
本開示は、図示された実施形態を参照して本明細書に記載されているが、本開示が、これに限定されるものではないことが理解されるべきである。当業者ら及び本明細書の教示にアクセスできる者は、その範囲内で追加の修正及び実施形態が可能であることを認識するであろう。従って、本開示は、本明細書に添付された特許請求の範囲によってのみ限定される。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
2025501452000001.xml
【国際調査報告】