(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-22
(54)【発明の名称】X線画像データセットを導き出す方法および装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20250115BHJP
A61B 6/40 20240101ALI20250115BHJP
G01T 7/00 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
A61B6/03 530Z
A61B6/40 500G
G01T7/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533222
(86)(22)【出願日】2022-11-10
(85)【翻訳文提出日】2024-07-19
(86)【国際出願番号】 EP2022081524
(87)【国際公開番号】W WO2023110239
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】102021133450.0
(32)【優先日】2021-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524209659
【氏名又は名称】オットー-フォン-ゲーリケ-ウニヴェルズィテート マクデブルク
(74)【代理人】
【識別番号】110003487
【氏名又は名称】弁理士法人東海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ファイファー,ティム
(72)【発明者】
【氏名】フリッシュ,ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】メーヴェス,アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】フリッチ,ベンヤミン
(72)【発明者】
【氏名】ローゼ,ゲオルク
【テーマコード(参考)】
2G188
4C093
【Fターム(参考)】
2G188AA02
2G188BB02
2G188DD05
2G188DD16
2G188DD47
4C093AA22
4C093CA13
4C093EA12
4C093FA16
4C093FA54
(57)【要約】
本発明は、検査対象物のターゲット領域のX線画像データセットを導き出すための方法に関し、この方法では、X線検出器を用いて、このターゲット領域を示す投影画像を撮影し、かつこの投影画像からX線画像データセットが再構成されるが、この際、投影画像の第1部分がターゲット領域上へコリメートされて撮影され、この撮影は、X線装置を用いて、ターゲット領域に、コリメータシステムの少なくとも1つの主放射線開口を通ってX線が照射されることによって行われる。さらに、本発明は、これに対応する装置である検査対象物のターゲット領域のX線画像データセットを導き出すための装置に関する。全般的に、本発明は、医療用X線撮影の分野に関し、特に、コンピュータ断層撮影の断面画像を再構成するための投影を取得することを目的とした医療用X線撮影の分野に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物のターゲット領域のX線画像データセットを導き出すための方法であって、X線検出器を用いて前記ターゲット領域を示す投影画像を撮影し、かつ前記投影画像から前記X線画像データセットを再構成するが、この際、X線装置を用いてコリメータシステムの少なくとも1つの主放射線開口を通して前記ターゲット領域にX線を照射することにより、前記投影画像の第1部分を前記ターゲット領域上へコリメートして撮影する、方法において、
前記X線画像データセット中のトランケーション・アーチファクトを低減するために、前記コリメータシステムの前記主放射線開口を取り囲むまたは前記主放射線開口に隣接する1つまたは複数の副放射線開口を通るX線を、前記ターゲット領域の縁領域に照射することにより、前記投影画像の第2部分を撮影し、かつ前記投影画像の前記第2部分を利用して、前記投影画像の前記第1部分から前記X線画像データセットを決定することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記ターゲット領域のX線検査の過程中で、1つ、いくつかまたは全ての前記副放射線開口のサイズ、位置および/または放射線透過率が変動することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1つ、いくつか、または全ての前記副放射線開口のサイズ、位置および/または放射線透過率の前記変動が、前記X線画像の現在の各品質に応じて適応するように実施されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、前記X線画像データセットを決定する工程において、前記X線検出器の照射領域および非照射領域を自動的に認識する工程と、認識された前記X線検出器の前記照射領域および前記非照射領域を自動的に考慮する工程と、を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記方法は、前記X線検出器の直接照射されない領域中に放射されたX線の散乱放射線を自動的に認識する工程と、認識された前記散乱放射線を前記X線画像データセットを決定する際に自動的に考慮する工程と、を有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
検査対象物のターゲット領域のX線画像データセットを導き出すための装置であって、
前記ターゲット領域を示す投影画像を撮影するためのX線検出器と、前記投影画像から前記X線画像データセットを再構成するための再構成装置と、を有し、
X線装置と、少なくとも1つの主放射線開口を備えたコリメータシステムと、をさらに有し、
前記少なくとも1つの主放射線開口は、X線放射線手段を用いて前記少なくとも1つの主放射線開口を通して前記ターゲット領域にX線を照射することにより、前記投影画像の第1部分を前記ターゲット領域上へコリメートして撮影するためのものである、装置において、
前記コリメータシステムは、前記主放射線開口を取り囲むまたは前記主放射線開口に隣接する1つまたは複数の副放射線開口を有し、
前記1つまたは複数の副放射線開口を通るX線を前記ターゲット領域の縁領域に照射することにより、前記投影画像の第2部分が撮影され、
前記再構成装置は、前記X線画像データセット中のトランケーション・アーチファクトを低減するために、前記投影画像の前記第2部分を利用して、前記投影画像の前記第1部分から前記X線画像データセットを導き出すように備えられていることを特徴とする、装置。
【請求項7】
前記コリメータシステムは、1つ、いくつか、または全ての前記副放射線開口の幅および/または長さを調節するように備えられていることを特徴とする、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記コリメータシステムは、1つまたは2つの空間方向に調節可能な薄層板を備えた可動薄層板システムを有し、前記薄層板によって、1つ、いくつかまたは全ての前記副放射線開口の幅および/または長さを調節することができることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記可動薄層板システムが、前記X線の放射方向で前後に配置された少なくとも2つの個々の薄層板を有し、前記個々の薄層板が、それぞれ放射線透過性を有する複数の開口を有し、かつ互いに対して相対的に変位可能であることを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記コリメータシステムの少なくとも前記副放射線開口を有する部分が、ある空間軸を中心に湾曲して形成されている、特に一定の半径で湾曲して形成されていることを特徴とする、請求項6~9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
請求項1~5のいずれか1項に記載の方法を実施するために備えられていることを特徴とする、請求項6~10のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象物のターゲット領域のX線画像データセットを導き出すための方法に関し、この方法では、X線検出器を用いてターゲット領域を示す投影画像を撮影し、この投影画像からX線画像データセットを再構成するが、この際、X線装置を用いてコリメータシステムの少なくとも1つの主放射開口を通してターゲット領域にX線を照射することにより、投影画像の第1部分をターゲット領域上へコリメートして撮影する。さらに、本発明は、検査対象物のターゲット領域のX線画像データセットを導き出すための相応の装置に関する。総じて、本発明は、医療用X線撮影の分野に関し、特に、コンピュータ断層撮影の断面画像を再構成するための投影を取得することを目的とした医療用X線撮影の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明のある態様では、コンピュータ断層撮影用のX線束を制限するためのコリメータを含む。このコリメータは、例えば、X線を強く減衰させる材料の薄層板を、モータを介してまたは手動により位置決めすることを通して、X線装置(X線管)とX線検出器との間の光路を規定された領域に制限する、機械的またはメカトロニクス装置である。この際、薄層板は直線状または湾曲して構成することができ、厚さが異なっていてもよく、より正確な透視を確保するために面取り部を含むことができる。目的は、画像撮影に十分な可能な限り最小限の放射線線量で、患者を透視することである。例えば、コリメータは、X線写真システム(平面透視)、血管造影システム(同じく平面透視)およびコンピュータ断層撮影システム中で採用される。患者への局所照射を目的とした様々な構造方式で、いわゆるマルチ薄層板コリメータが放射線治療にも利用される。
【0003】
この画像撮影を目的とした冒頭に述べた構成の様式では、X線管とX線検出器との間の光路を目的に合わせて設定するために、コリメータはX線管の直ぐ前に設置される。コリメータとX線検出器との間には、通常、検査対象物(例えば、患者、ファントム、動物、部品)が、台上に位置付けられる。
【0004】
ここで説明する発明は、例えば、3D断面画像演算をベースとして投影画像を生成する(いわゆる再構成する)ためのコリメータに関する。この種の画像撮影では、光路は通常z軸(患者の縦軸)に沿って設定される。この理由には、複数のラインを持つ検出器システムでは、個々のラインにも照射できるという事情がある。多くの場合、再構成された断面画像中で対象となる身体領域を検査できるようにするためには、全てのラインを照射する必要はない。
【0005】
本発明のさらなる応用は、いわゆるフラットパネル検出器によるコンピュータ断層撮影である。これは、いわゆるCアームX線システムを用いて実施されることが多い。この分野では、関心体積(VOI)断面画像生成方法が確立されている。この場合、部分的に患者の関心領域(ターゲット領域)中のみを透視する。しかし、今日では通常、検査対象物(患者)全体を完全に透視することにより、再構成画像中のいわゆるトランケーション・アーチファクトを回避している。トランケーション・アーチファクトは、検査対象物を完全に検知できない場合に発生する。これにより、検知されなかった領域の情報が失われ、画像演算において必須の情報がさらに失われることになる。
【0006】
そのため、関心体積CTでは、検査対象物にとって線量低減という利点があるが、同時に大概、アーチファクトのある(不完全な)画像になるという欠点がある。
【0007】
この理由から、今日のCT診断では、完全なCT撮影を取得することが好ましいが、これは、可能な限り高い画質を達成せねばならないからである。この背景には、診断の枠内で、患者が何に苦しんでいるのか、およびどの身体部位に病理があるのかが事前に不明であることが多いという事情がある。
【0008】
VOI画像撮影は、特にフラットパネル検出器CTにおいて、検査するべき部位が事前にすでに分かっている場合に採用される(例えば、脳の動脈中にステントを移植した後の治療管理)。しかし、現在の技術では、これらのVOI CT撮影は、特に縁部位においてアーチファクトの影響を大きく受け、検査対象物の実際のハウンスフィールド値を表さず、未知のオフセット値の影響を受ける。
【0009】
しかし、線量低減という利点を利用するために、「失われた」画像情報を補償する様々な方法が既に発表されている。例えば、非透視領域における対象物の幾何学形状および減衰特性を仮定した、縁領域から対象物への数学的な遷移モデルが利用される。さらなる方法では、以前に作成されたデータセット(例えば、CT、MRI、超音波、表面スキャンまたはその他の方法)からの具体的な予備情報を利用する。
【0010】
独国特許第102016219817号公報明細書からは、X線画像データセット中のトランケーション・アーチファクトを低減するための提案が明らかになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、検査対象物の限られたターゲット領域について、可能な限り低いX線線量で高画質を達成することができるX線画像データセットを導き出す方法および装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題は、冒頭で述べたタイプの方法において、X線画像データセット中のトランケーション・アーチファクトを低減するために、コリメータシステムの主放射線開口を取り囲むまたは主放射線開口に隣接する1つまたは複数の副放射線開口を通るX線をターゲット領域の縁領域に照射して、投影画像の第2部分を撮影し、かつ投影画像の第2部分を利用して、投影画像の第1部分からX線画像データセットを決定することにより、解決される。このようにして、関心体積とも称されるターゲット領域を、十分な画質で適応させて決定することができ、同時にX線線量を最小化することができる。
【0013】
本発明によれば、コリメータシステムの1つまたは複数の副放射線開口は、X線に対してある透過性を有する。検査対象物の空間的に限定されたさらなる領域が、この副放射線開口を通ってX線で照射される。この際、副放射線開口は、必ずしも貫通開口の意味合いでの完全に「開いた」造形である必要はなく、X線に対して十分な放射線透過性がある限り、1つの材料または組み合わされた材料で、完全にまたは部分的に閉じて形成されていることができる。副放射開口は、例えば、コリメータ開口絞り内で材料を完全な空隙にすることによって、または材料を薄くすることによって、十分な量の放射線が貫通できるように造形することができる。また、このような副放射線開口を、コリメータ開口絞りの周囲の材料よりもX線の吸収率が低い材料からなる挿入物によって造形することも考えられ、その結果、コリメータ開口絞りの高い機械的耐荷重性を引き続き確保することができる。
【0014】
本方法は、以下の特徴の一方または両方を含むことができる。
・ターゲット領域を示す投影画像は、撮影軌道に沿って異なる投影方向から撮影することができる。
・投影画像から、より高次元の、すなわち投影画像よりも高次元を有するX線画像データセットを再構成することができる。
【0015】
本発明のある有利な実施形態によれば、ターゲット領域のX線検査の過程中で、1つ、いくつかまたは全ての副放射線開口のサイズ、位置および/または放射線透過率が変動するように設けられている。これにより、X線検査の過程の間に副放射線開口の機能をよりよく適応させることができ、その結果、X線画像の達成される画質に応じて、場合によっては、サイズ、位置および/または放射線透過率を適合させることができる。例えば、このコリメータシステムは、調節可能なコリメータ開口絞りを有することができ、このコリメータ開口絞りにより、副放射線開口中における上述のパラメータであるサイズ、位置および/または放射線透過率の1つ以上を変更することができる。これによっても、検査対象物の放射線の負荷をさらに低減することができる。
【0016】
本発明の有利なある実施形態によれば、1つ、いくつか、または全ての副放射線開口のサイズ、位置および/または放射線透過率の変動が、X線画像の現在の各品質に応じて適応するように実施されるように設けられている。これにより、特に有利な方法で、画像取得中に副放射線開口を通って照射されるコリメータシステムの縁領域を適応させて調整することが可能になる。この背景には、X線画像の画質が特定の画質を下回ったりまたは上回ったりする場合、例えば、トランケーション・アーチファクトまたは特別な信号対雑音比の特性によって決定される画質を下回ったりまたは上回ったりする場合、副放射線開口を、前述のパラメータに関して適応させて適合させることができ、例えば、完全に閉じた状態までさらに開きまたは閉じることにより、常に画質を十分にしつつ、確実に最低の放射線線量にすることができる。
【0017】
本発明のある有利な実施形態によれば、本方法は、X線画像データセットを決定する工程において、X線検出器の照射領域および非照射領域を自動的に認識する工程と、X線検出器の認識された照射領域および非照射領域を自動的に考慮する工程と、を有するように設けられている。このようにして、本発明による方法は、画像再構成法を繰り返し実施するのにも適している。このような画像再構成法では、個々の画像ピクセルの情報を画像演算プロセスにおいて考慮したり、または無視したりすることができる。このためには、X線検出器の曝射領域(照射領域)と非曝射領域(非照射領域)とを自動的に認識する必要がある。X線検出器の照射領域および非照射領域、または曝射領域および非曝射領域の認識は、例えば、コリメータシステムの開口絞りの位置に基づく演算によって行うことができ、例えば、副放射線開口のパラメータの設定に依存し、場合によっては、X線装置と、コリメータシステムと、X線検出器との間の幾何学的状況を考慮して行うことができる。X線検出器自体の画像画素情報のリアルタイム評価も、例えば閾値法を用いて行うことができる。
【0018】
本発明のある有利な実施形態によれば、本方法は、X線検出器の直接照射されない領域中に放射されたX線の散乱放射線を自動的に認識する工程と、X線画像データセットを決定する際に認識された散乱放射線を自動的に考慮する工程と、を有するように設けられている。このようにして、X線画像の画質をさらに向上させ、および/またはその取得に必要な放射線線量をさらに低減させることができる。例えば、X線検出器において直接的には曝射されない領域中に入射するX線放射線(しかし、散乱効果がゆえに発生するX線放射線(散乱放射線))を測定し、このシステムの物理モデルを考慮してX線画像データセットの決定に含めることができる。X線検出器の直接照射されない領域とは、例えば、少なくとも1つの主放射線開口または少なくとも1つの副放射線開口により、X線装置とX線検出器との間で直線的に接続されていない領域のことである。
【0019】
冒頭で述べた課題は、さらに、検査対象物のターゲット領域のX線画像データセットを導き出すための装置により解決されるが、この装置は、ターゲット領域を示す投影画像を撮影するためのX線検出器と、投影画像からX線画像データセットを再構成するための再構成装置と、を有する装置であって、この装置は、さらに、X線装置と、少なくとも1つの主放射線開口を備えたコリメータシステムと、を有し、この少なくとも1つの主放射線開口は、ターゲット領域上へコリメートして撮影される投影画像の第1部分を撮影するためのものであり、この撮影は、X線放射線手段を用いて、ターゲット領域に、少なくとも1つの主放射線開口を通ってX線が照射されることによって行われるが、ここで、コリメータシステムは、主放射線開口を取り囲むまたは主放射線開口に隣接する1つまたは複数の副放射線開口を有し、1つまたは複数の副放射線開口を通るX線によりターゲット領域の縁領域が照射されることによって、投影画像の第2部分が撮影され、再構成装置は、X線画像データセット中のトランケーション・アーチファクトを低減するために、投影画像の第2部分を利用して、投影画像の第1部分からX線画像データセットを導き出すように設けられている。これによっても、上述の利点が実現される。
【0020】
本発明のある有利な実施形態によれば、コリメータシステムは、1つ、いくつか、または全ての副開口の幅および/または長さを調節するように備えられている。例えば、この装置は、副開口の幅および/または長さを調節するために、例えばモータを介した自動駆動部を有することができる。このようにして、副開口の特定のパラメータ、特にサイズ、位置および/または放射線透過率を変動させることができる。
【0021】
本発明のある有利な実施形態によれば、コリメータシステムは、1つまたは2つの空間方向に調節可能な薄層板を備えた可動薄層板システムを有し、この薄層板によって、1つ、いくつかまたは全ての副開口の幅および/または長さを調節することができるように設けられている。これにより、副開口の幅および/または長さを比較的迅速に調節することができるという利点があり、かつ機構を少ない構築コストで調節可能に造形することができるという利点を有する。
【0022】
本発明のある有利な実施形態によれば、可動薄層板システムは、X線の放射方向で前後に配置された少なくとも2つの個々の薄層板を有し、これらの個々の薄層板が、それぞれ放射線透過性を有する複数の開口を有し、かつ互いに対して相対的に変位可能であるように設けられている。これにより、薄層板システムを簡単かつ信頼性を有するように構築することができる。この放射線透過性開口は、先に述べた副開口と同様に構成されていることができ、例えばスリット形状で形成されていることができる。
【0023】
本発明のある有利な実施形態によれば、コリメータシステムの少なくとも副開口を有する部分が、ある空間軸を中心に、湾曲して形成されていて、特に一定の半径で湾曲して形成されているように設けられている。このようにして、副開口の効果を最適化することができる。
【0024】
本発明のある有利な実施形態によれば、上で説明したタイプの方法を実施するように備えられた装置が設けられている。これにより、この装置は、例えば、プログラミングを用いて、本発明による方法の工程を実行するように備えられた電子制御装置を有することができ、この電子制御装置は、例えば、投影画像の第1部分および第2部分を撮影するために、およびそこからX線画像データセットを決定するように、設けられている。制御装置は、コリメータシステムの制御もするように形成することもできる。
【0025】
本発明は、失われた縁領域情報を補償し、これにより低いX線線量で現実的なハウンスフィールド値を有する高画質を達成するための有利な可能性を扱う。本発明は、主に、関心体積が予め分かっている治療分野での応用を目的としている。しかし、本発明は診断用途にも利用できる。
【0026】
本発明の特殊性は、個々のまたは全てのコリメータ開口絞りを巧みに構成することによって、縁領域の部分的な情報を取得するという点である。ここで、コリメータの開口絞りは、規定された幾何学形状のポケット(「スリット」、例えば先に述べた開口)がコリメータ内の規定された位置に設けられるように構成することができる。これらのポケットは、例えば、正方形、長方形、円形またはこれら以外の考えられる各幾何学形状で構成することができる。ポケットは、完全な材料の空隙として造形することもできるし、または検出器の電子ノイズを上回る光子検出を可能にする材料を薄くすることによって確保することもできる。例えば、さらに高い機械的耐荷重性を確保するために、X線減衰の少ない材料で作られた挿入物により放射線透過性領域を造形することも考えられる。画像再構成方法では、断面ごとに取得されたこれらの情報が考慮され、これが画質の向上に貢献する。
【0027】
このシステムの例示的な技術構成には、とりわけ、以下のコンポーネントが含まれる。
・z方向のコリメーション(光路の設定)のための、減衰性の高い、好ましくは金属材料(例えば、鉛またはタングステン)製の薄層板。
・x方向のコリメーション(光路の設定)のための、減衰性の高い、好ましくは金属材料(例えば、鉛またはタングステン)製の薄層板。
・z方向で可動の薄層板システムは、好ましくは完全に構成されていて、かつz軸の周りで湾曲しているが、スリット状または平面状で構成することもできる。
・z方向に可動な薄層板システムも、同様に規定されたスリットを有することができ、好ましくはz軸の周りで湾曲していることができる。このスリットは、好ましくはx軸に平行に延在するが、z軸に平行であることも、または薄層板面内でこれ以外の自由な空間中に延在することもできる。
・x方向に可動な薄層板システムは、好ましくは規定されたスリットを有し、好ましくはz軸の周りで湾曲している。このスリットは、好ましくはz軸に平行に延在するが、x軸に平行であることもでき、または薄層板面内でこれ以外の自由な空間中に延在することもできる。
・薄層板システムは、2つの薄層板コンポーネントの相対的な動きによって、薄層板システムの放射線透過領域のサイズを、完全に閉鎖するまで変えることができる機構からなる。
【0028】
この適応性を有する薄層板システムの利点は、画像撮影に必須である投影を、CTまたはCアーム・システムの回転または部分的な回転の範囲内で巧みに適合させて、最小限の線量で必要最小限の画質を有するCTデータセットを演算するためのデータセットを生成することができる点である。
【0029】
例えば、薄層板システムは、放射線透過性ポケットを持つ2つの上下に重なる個別の薄層板からなることができる。これらの薄層板は互いに相対的に位置付けることができる。薄層板の造形の目的の1つは、自由なVOI領域を確保し、縁領域で可変の放射線透過性ゾーンを自由に設定できる点である。
【0030】
別の変形例として、例えば電気モータで個別に駆動可能な減結合される変位機構によって、個々の放射線透過性ポケットを設定することができる。
【0031】
さらに有利な構成では、薄層板システムは、z軸の周りにある一定の半径で湾曲されていることにより、ポケットの縁が常にX線放射線と平行に延在し、その結果、均質な減衰が確保される。この半径は、これに応じて2枚の薄層板を上下に重ねた薄層板システムでは、薄層板ごとに個別でありうる。
【0032】
さらに、異なる幾何学特性の体積領域、例えば写真画像撮影における古典的な開口絞りシステムのような円形の体積領域を作るための薄層板システムを達成することも考えられる。この場合の目的も、薄層板領域中に適応するポケットを組み込むことであり、これによって明確な放射線透過領域が形成される。
【0033】
以下、本発明を、図面を用いた実施形態に基づいて、さらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】z軸に沿って見た本発明による装置の構造を示す図である。
【
図2】x軸に沿った見た本発明による装置の構造を示す図である。
【
図4】可動薄層板システムが第1位置にあるところを示す図である。
【
図5】
図4の可動薄層板システムが第2位置にあるところを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
ここでは、X線のビーム方向がy方向に延びる座標系を仮定する。従って、コリメータシステムは、その平面の広がりがx-z平面内に延びるか、または湾曲した構造方式の場合は、x-z平面に対してわずかに湾曲する平面内に延びる。
【0036】
図1および
図2は、検査対象物13のターゲット領域17のX線画像データセットを導き出すための装置の、ある例示的な構造を示している。この装置は、X線装置11、例えばX線管を備えており、このX線装置11によって、X線がコリメータシステム12を介して検査対象物13上に照射され、かつ放射方向で検査対象物13の後方に配置されているX線検出器14上に照射される。コリメータシステム12は、主放射線開口16を有し、この主放射線開口16は、コリメータシステム12の可動薄層板システムによって、その位置およびサイズに関して、場合によっては放射線透過率に関しても設定することができる。
【0037】
X線は、コリメートされた光路15中で、検査対象物13のターゲット領域17を通ってX線検出器14まで伸長することが認識される。X線検出器14では、曝射された領域が、例えばX線に感度を有する検出素子のマトリックス配列部によって評価され、これらの検出素子の信号から各投影画像を形成することができる。この装置は、さらに不図示の制御装置も有する。この制御装置は、コリメータシステム12を制御するために、X線検出器14からデータを読み出すために、およびX線検出器14によって得られた投影画像からX線画像データセットを決定するために、機能する。
【0038】
図3は、コリメータシステム12の概略原理図を示す。このコリメータシステム12は、筐体21を有し、この筐体中には、4つの変位可能な薄層板システム24,25,26,27が配置されている。これらの薄層板システム24,25は、例えばx軸に沿って変位可能であり、薄層板システム26,27はz軸に沿って変位可能である。薄層板システム24,25は、左右に変位可能であり、したがって、互いに向かって変位することも、互いから離れて変位することもできる。薄層板システム26,27は、上下に変位することができ、したがって、互いに対して近づいたり遠ざかったりする。薄層板システム24,25,26,27は、設定に応じて、主放射線開口16を形成する特定の放射線透過領域を規定することができる。
図3では、例示的に破線で、薄層板システムの最大可能開口範囲23、すなわち主放射線開口16の最大サイズの例を示している。薄層板システムは、例えば、モータ駆動部によって自動的に制御することができる。
【0039】
ターゲット領域17の縁領域中、すなわち主放射線開口16の外側に副放射線開口を形成するために、薄層板システム24,25,26,27は、変位可能な単純な開口絞りと比較して付加的な機能を有することができるが、これについては
図4および
図5に基づいて説明する。
【0040】
図4および
図5は、一例として、1つまたは複数の薄層板システム24,25,26,27を実現するために利用することができる薄層板システム30に基づく有利な構成を示すが、この構造は、放射方向で上流の薄層板31と、放射方向で下流の薄層板32と、を備えている。
図4および
図5は、薄層板システムを示すが、それぞれ上方が側面図、かつ下方が平面図である。
【0041】
上流の薄層板31と下流の薄層板32とは、正確にまたは少なくとも実質的に合同の放射線開口33を有するが、これはそれぞれ例えばスリット状の開口33のようなものである。
図4に示すように、上流の薄層板31と下流の薄層板32とが上下に重なって正確に整列して配置されている場合、それらの放射線開口33もまた互いに対して整列しており、その結果、これにより、主放射線開口16の周囲の縁領域中に複数の副放射線開口が形成されている。
図5に示すように、上流の薄層板31と下流の薄層板32とが相対的に互いに対してずれている場合、上流の薄層板31の放射線開口は下流の薄層板32によって覆われ、下流の薄層板32の放射線開口は上流の薄層板31によって覆われているので、整列した放射線開口33によって形成された副放射線開口は閉じられる。これは、
図5中、上流の薄層板31の開口34が閉じていることによって明示されている。
【国際調査報告】