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特表2025-501470III/IV族化合物成膜システムのための反応性ガス調節
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-22
(54)【発明の名称】III/IV族化合物成膜システムのための反応性ガス調節
(51)【国際特許分類】
   H10H 20/825 20250101AFI20250115BHJP
   C23C 14/06 20060101ALI20250115BHJP
   H01L 21/203 20060101ALI20250115BHJP
   H10H 20/812 20250101ALN20250115BHJP
【FI】
H01L33/32
C23C14/06 A
C23C14/06 G
H01L21/203 S
H01L33/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534221
(86)(22)【出願日】2022-12-06
(85)【翻訳文提出日】2024-08-05
(86)【国際出願番号】 US2022051978
(87)【国際公開番号】W WO2023081540
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】17/543,296
(32)【優先日】2021-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524215421
【氏名又は名称】ヨルゲンソン,ロビー,ジェイ.
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヨルゲンソン,ロビー,ジェイ.
【テーマコード(参考)】
4K029
5F103
5F241
【Fターム(参考)】
4K029BA41
4K029BA43
4K029BA58
4K029CA06
4K029DC03
5F103AA08
5F103BB22
5F103DD01
5F103DD03
5F103DD04
5F103DD05
5F103DD06
5F103DD07
5F103DD08
5F103DD11
5F103DD13
5F103DD27
5F103GG02
5F103HH03
5F103HH04
5F103JJ03
5F103LL01
5F103LL02
5F103RR06
5F241AA24
5F241AA31
5F241AA43
5F241CA05
5F241CA40
5F241CA64
5F241CA67
(57)【要約】
本発明によれば、得られた半導体構造をPVDスパッタリングすることを用いてテンプレート上に成膜されたIII/IV族化合物の1つ以上の層を備える半導体構造を製造するプロセスが提供される。III族またはIV族の材料は、ガリウム、ハフニウム、インジウム、アルミニウム、シリコン、ゲルマニウム、マグネシウムおよび/またはジルコニウムであってもよい。反応性ガスによって提供される陰イオンは、窒化物、酸化物、ヒ化物、またはリン化物であってもよい。テンプレート上にIII/IV族化合物層を生成するためにスパッタされたIII族またはIV族ターゲット材料と反応させるために使用される真空チャンバーへの反応性ガスの流れは、PVDスパッタリングプロセスの間のデューティサイクル中に、ターゲットリッチ条件と反応性ガスリッチ条件との間で調節され、PVDスパッタリングプロセスの効率を高め、得られた半導体構造内のIII/IV族化合物層の結晶性を向上させる。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソードと複数のアノードとを有する真空チャンバー内にIII/IV族化合物半導体構造を成長させるための方法であって、
(a)前記真空チャンバーに表面を有するテンプレートを提供することと、
(b)前記真空チャンバー内の前記カソードの上部に配置された少なくとも1つのIII族またはIV族のターゲット材料を提供することと、
(c)前記真空チャンバーに反応性ガスを提供することと、
(d)前記III族またはIV族のターゲット材料を取り囲むために前記真空チャンバーに不活性ガスを提供することと、
(e)第1のスパッタリングプロセスを用いて前記テンプレート上に少なくとも第1のIII/IV族化合物層を成長させることと、を備え、前記第1のスパッタリングプロセスは、
(i)電気的に負電荷を帯びたアノードと前記カソードとの間を通過する電子によって前記不活性ガスの原子を衝突させ、それによって、得られた正電荷を帯びた不活性ガスのカチオンが前記ターゲット材料に衝突して前記ターゲット材料を前記真空チャンバー内の前記テンプレートに向けてスパッタし、前記反応性ガスと反応して、前記真空チャンバー内で上昇する前記III/IV族化合物のプラズマを形成し、前記テンプレート上に前記III/IV族化合物の膜を形成するように促すことと、
(ii)前記III族またはIV族のターゲット材料の前記スパッタリングのデューティサイクル中に、ターゲットリッチ条件と反応性ガスリッチ条件との間で前記真空チャンバー内の前記反応性ガスの流れを調節することと、を含み、
(f)前記デューティサイクル中に前記反応性ガスを調節することは、前記ターゲット材料上に前記III/IV族化合物層を形成するための前記スパッタリングプロセスの効率を高め、前記半導体構造内の得られた前記III/IV族化合物層の結晶状態を改善する、方法。
【請求項2】
前記III/IV族化合物は、III族またはIV族の金属カチオンがガリウム(Ga)、インジウム(In)、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、マグネシウム(Mg)、ハフニウム(Hf)、またはジルコニウム(Zr)である窒化物、酸化物、ヒ化物、またはリン化物化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反応性ガスは、窒素(N)、酸素(O)、ヒ化物の前駆体(As-3)、またはリン化物の前駆体(P-3)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記III族ターゲット材料はガリウム(Ga)を含み、前記反応性ガスは窒素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ターゲットリッチ条件はGaリッチ条件を含み、前記反応性ガスリッチ条件は窒素リッチ条件を含む、請求項4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、それぞれ「Array Stamps By Cool Growth」と題され、2020年12月4日に出願された米国仮特許出願第63/121,620号、2021年1月26日に出願された米国仮特許出願第63/141,785号、および2021年2月23日に出願された米国仮特許出願第63/152,531号の優先権の利益を主張するものであると共に、2021年11月7日に出願され、「Method and Apparatus for Micro-LED Array and Active Matrix」と題された米国特許出願第17/520,691号の一部継続出願であり、これらは全て、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
本出願は、先の出願である:
・2016年10月14日に出願され、「System and Method for Light-Emitting Devices on Lattice-Matched Metal Substrates」と題され、そして2017年4月20日に米国特許出願公開第2017/0110626号として公開された米国特許出願第15/294,558号と;
・2015年10月16日に出願され、「Method and Hyper Emission Green Light-Emitting Diode on Lattice-Matched Metal Substrates for Advanced Optical Fiber Networking」と題された米国仮特許出願第62/242,604号と;
に関連し、これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0003】
本出願はまた、先の出願である:
・2006年8月6日に出願され、「III-Nitride Light-Emitting Devices with One or More Resonance Reflectors and Reflective Engineered Growth Templates for Such Devices, and Methods」と題された米国仮特許出願第60/835,934号と;
・2006年8月7日に出願され、「III-Nitride Light-Emitting Devices with One or More Resonance Reflectors and Reflective Engineered Growth Templates for Such Devices, and Methods」と題された米国仮特許出願第60/821,588号と;
・2008年2月25日に出願され、「Current-Injecting/Tunneling Light Emitting Device and Method」と題された米国仮特許出願第61/066,960号と;
・2012年3月14日に出願され、「Metallo-Semiconductor Structures for III-Nitride Devices」と題された米国仮特許出願第61/610,943号と;
・2012年4月13日に出願され、「Structures for III-Nitride Devices」と題された米国仮特許出願第61/623,885号と;
・2012年6月4日に出願され、「Metal-Base Transistors for III-Nitride Devices」と題された米国仮特許出願第61/655,477号と;
・2011年3月29日に発行され、「III-Nitride Light-Emitting Devices with One or More Resonance Reflectors and Reflective Engineered Growth Templates for Such Devices, and Methods」と題された米国特許第7,915,624号と;
・2012年8月28日に発行され、「III-Nitride Light-Emitting Devices with Reflective Engineered Growth Templates and Methods of Manufacture」と題された米国特許第8,253,157号(現在は米国特許第7,915,624号である出願の分割)と;
・2014年11月18日に発行され、「III-Nitride Light-Emitting Devices with Reflective Engineered Growth Templates and Manufacturing Method」と題された米国特許第8,890,183号(現在は米国特許第8,253,157号である出願の分割)と;
・2010年11月30日に発行され、「Current-Injecting/Tunneling Light Emitting Device and Method」と題された米国特許第7,842,939号と;
・2014年10月21日に発行され、「Method of Forming Current-Injecting/Tunneling Light Emitting Device」と題された米国特許第8,865,492号(現在は米国特許第7,842,939号である出願の分割)と;
・2017年3月28日に発行され、「Materials, Structures, and Methods for Optical and Electrical III-Nitride Semiconductor Devices」と題された米国特許第9,608,145号と;
に関連し、これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0004】
本発明は、半導体デバイスの分野およびその製造方法に関し、より具体的には、III/IV族化合物系半導体デバイスをより効率的に成長させるための方法に関する。
【背景技術】
【0005】
半導体は、ガラスのような絶縁体よりも良好に電流を伝導するが、銅のような導体ほどは電流を伝導しない材料である。このような半導体材料は、現代のコンピュータならびに発光デバイス、レーザーダイオード、トランジスタ、放射線検出器、センサ、およびソーラー電池のような多くの他の装置を実現した。
【0006】
シリコンは最も広く使用されている半導体材料である。しかしながら、半導体の他の重要な材料としては、酸化第一銅、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、リン化ガリウム、ヒ化インジウム、硫化鉛、セレン、炭化ケイ素などが挙げられる。
【0007】
このような半導体デバイスは、エレクトロニクス産業においてそれらに先行する真空およびガス充填管に対する多数の利点を示す。例えば、半導体デバイスは、管よりもはるかに少ない電力を使用し、より長く持続し、はるかに小さく構築することができる。
【0008】
通常の銅線では、銅原子は、原子から原子へと自由に移動する電子を有する。この電子の流れが電流を生成する。
【0009】
理想的な状態では、半導体材料は、自由電子がないことを特徴とするため、絶縁体を構成する。しかし、半導体材料にアンチモン、ヒ素、またはリンのようなドーパント不純物がごく少量導入されると、材料内を移動して電流を生成することができる少数の自由電子が生成される。このような半導体材料は、業界では「n型半導体」として知られている。
【0010】
しかしながら、半導体材料にアルミニウム、ホウ素、またはガリウムのような他のドーパント不純物が少量添加されると、少数の原子から電子が奪われて「正孔」が生成される。正孔は、半導体内で原子から原子へと通過することができる。このような正孔の流れが電流を形成する。これは「p型半導体」と呼ばれる。
【0011】
半導体ダイオードは、電流が一方向にのみ流れることを可能にし、整流器として使用される。半導体ダイオードは、ヒ化ガリウム、ゲルマニウム、またはシリコン片を含み、n型領域およびp型領域を有し、それらが接触するところにp-n接合を有する。p型領域が正電荷を有し、n型領域が負電荷を有する場合、半導体内のp型領域はn型領域から電子を引き付け、n型領域はp型領域から正孔を引き付ける。これにより、電流は、半導体ダイオード内のp-n接合を通って流れる。しかし、p型領域を負にし、n型領域を正にすると、電流はp-n接合をほとんど流れない。
【0012】
発光半導体ランプは、わずかな電力の下で光を生成する微小なリン化ガリウムダイオードを含む。発光ダイオード(「LED」)は、電流が流れると光を発する半導体光源である。半導体材料の電子は、そこに含まれる電子正孔と再結合し、それによって、光子の形でエネルギーを放出する。これらの光子のエネルギーに対応する、得られた光の色は、電子が半導体内のバンドギャップを越えるために必要とされるエネルギーによって決定される。
【0013】
LED半導体は、従来の白熱灯に対する多くの利点を示す。これらの利点としては、より低温での動作を可能とする低消費電力、長寿命化、物理的堅牢性の向上、サイズの小型化、および切り替えの高速化が挙げられる。
【0014】
最初の可視スペクトル赤色LEDは、ヒ化ガリウム(GaAs)半導体合金に基づいて、1961年に英国で実証された。モンサント社は、1968年にGaAsPを組み込んだ赤色LEDを量産し、これは、明るさやサイズが問題にならない計算機やその他の機械の数字表示ディスプレイの選択肢となった。
【0015】
マグネシウムドープ窒化ガリウム(GaN)を用いた最初の青色LEDは、1972年に米国で開発された。1980年代後半のGaNエピタキシャル成長およびp型ドーピングにおける重要なブレークスルーにより、中村修二は1993年に高輝度青色LEDを開発することができ、その後、ノーベル物理学賞を受賞した。
【0016】
GaN系化合物のエピタキシャル成長法は、LEDの製造プロセスの改善を可能にした。例えば、緑色LEDは現在、典型的には、従来の非窒化物材料系ではなく、窒化インジウムガリウム(InGaN)/GaN層状構造を基にして製造されることが一般的である。白色LEDは、典型的には、赤色、緑色、および青色の波長を発する複数のLED半導体クリップを組み合わせて使用する。
【0017】
しかしながら、より明るく、より小さく、より堅牢で、より信頼性があり、動作に必要な電力がより少なく、製造コストが安い有色LEDを可能にする、GaN系および他のIII/IV族化合物系膜積層システムの製造プロセスおよび構造に対するさらなる改善を進めることは、非常に有益であろう。このような改善により、様々な産業用および消費者向け電子製品におけるLEDの最終用途が拡大するであろう。
【発明の概要】
【0018】
本発明によれば、得られた半導体構造をPVDスパッタリングすることを用いてテンプレート上に成膜されたIII/IV族化合物の1つ以上の層を備える半導体構造を製造するプロセスが提供される。III族またはIV族の材料は、ガリウム、ハフニウム、インジウム、アルミニウム、シリコン、ゲルマニウム、マグネシウムおよび/またはジルコニウムであってもよい。反応性ガスによって提供される陰イオンは、窒化物、酸化物、ヒ化物、またはリン化物であってもよい。テンプレート上にIII/IV族化合物層を生成するためにスパッタされたIII族またはIV族のターゲット材料と反応させるために使用される真空チャンバーへの反応性ガスの流れは、PVDスパッタリングプロセスの間のデューティサイクル中に、ターゲットリッチ条件と反応性ガスリッチ条件との間で調節され、PVDスパッタリングプロセスの効率を高め、得られた半導体構造内のIII/IV族化合物層の結晶性を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
添付の図面は以下の通りである。
図1】窒化ガリウム(「GaN」)系デバイスを成長させるための方法のフローチャートである。
図2】GaN系デバイスを成長させるためのシステムの概略図である。
図3】GaN構造の概略図である。
図4】低温III/IV族化合物スパッタリングシステムの概略図である。
図5】本発明のいくつかの実施形態による複数の異なるエピタキシャル成長モードを示す一連の概略図である。
図6】本発明の実施形態の1つによる、光抽出の向上のためにGEMMおよび非エピタキシャル金属ミラーを備えたIII族窒化物共振キャビティLED(マイクロキャビティLEDとしても知られる)を示す。
図7】本発明の実施形態の1つによる、多層膜金属半導体構造を含む半導体デバイス構造のブロック図である。
図8】製造プロセスの一連の典型的なデューティサイクルを示す概略図である。
図9】本発明による半導体デバイスを製造するためのPVDスパッタリングプロセスの反応性ガス調節のデューティサイクルを示す概略図である。
図10】CMOSアクティブマトリクスバックプレーン上に成膜されたLED層と組み合わせてミラーとして使用されるn-GaNおよびZrHfNの層を含む本発明における第1の構造の概略図であり、これにより、得られるデバイスが、AM材料への光の伝搬を阻止することが可能になる。
図11】CMOSアクティブマトリクスバックプレーン上に成膜されたLED層と組み合わされたこのようなn-GaNおよびZrHfNミラーを含む第2の構造の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明によれば、得られた半導体構造をPVDスパッタリングすることを用いてテンプレート上に成膜されたIII/IV族化合物の1つ以上の層を備える半導体構造を製造するプロセスが提供される。III族またはIV族の材料は、ガリウム、ハフニウム、インジウム、アルミニウム、シリコン、ゲルマニウム、マグネシウムおよび/またはジルコニウムであってもよい。反応性ガスによって提供される陰イオンは、窒化物、酸化物、ヒ化物、またはリン化物であってもよい。テンプレート上にIII/IV族化合物層を生成するためにスパッタされたIII族またはIV族のターゲット材料と反応させるために使用される真空チャンバーへの反応性ガスの流れは、PVDスパッタリングプロセスの間のデューティサイクル中に、ターゲットリッチ条件と反応性ガスリッチ条件との間で調節され、PVDスパッタリングプロセスの効率を高め、得られた半導体構造内のIII/IV族化合物層の結晶性を向上させる。
【0021】
本出願で使用するとき、「基板」という用語は、その上でエピタキシャル成長プロセスが実施される材料を意味する。適切な基板は、シリコン、サファイア、または他の適する材料を含む。
【0022】
本発明の目的において、「テンプレート」という用語は、エピタキシャル成長に適するベースを形成する1つ以上の層を意味する。適切なテンプレートは、シリコン、サファイア、GaN/シリコン、GaN/サファイア、GaN/窒化アルミニウム(AlN)、GaN/窒化ハフニウム(HfN)、GaN/窒化ジルコニウム(ZrN)、または他の任意の適した材料、構造、パターンテンプレート、または基板を含む。
【0023】
本明細書で使用するとき、「エピタキシャル」という用語は、その材料の物理的に接触している(典型的には層状である)他の無機材料との電気的または電気的光学的関係に基づく無機材料の材料状態(すなわち、プロセスではない)を指し、材料は実質的に格子整合しており(すなわち、2つ以上の材料の原子格子が、予測可能かつ組織化された繰り返し原子格子構造に並んでいる)、材料は実質的に単結晶である。すなわち、格子不整合および層厚の歪みは、(1)デバイス内で望ましくない亀裂を発生させず、(2)デバイスが有用であり得なくなるような、デバイスの望ましくない電気的短絡を引き起こすほど大きい密度を有するおよび/またはそのようなタイプの転位を発生させず、(3)デバイスが有用でなくなるような二次材料相(例えば、介在物、析出物、多結晶粒、および/または複結晶粒)を発生させない。
【0024】
さらに、当業者が理解するように、炭化物、炭酸塩、炭素の単純酸化物(例えば、COおよびCO)、およびシアン化物、ならびに炭素の同素体(例えば、ダイアモンドおよびグラファイト)などの炭素含有化合物は、無機物であるとみなされる。
【0025】
本出願で使用するとき、「III/IV族化合物」という用語は、III族またはIV族の金属カチオンがガリウム(Ga)、インジウム(In)、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、マグネシウム(Mg)、ハフニウム(Hf)、またはジルコニウム(Zr)である窒化物、酸化物、ヒ化物、またはリン化物化合物を意味する。
【0026】
本発明の目的において、「III/IV族ターゲット」は、本発明のPVDスパッタリングプロセス下でスパッタされてIII/IV族化合物材料を生成するIII/IV族周期元素から選択される元素または元素の組み合わせを意味しており、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、マグネシウム(Mg)、ハフニウム(Hf)、および/またはジルコニウム(Zr)を含むが、これらに限定されない。
【0027】
本出願で使用するとき、「反応性ガス」は、PVDスパッタリング真空チャンバーに導入され、スパッタされたIII/IV族ターゲットと反応してIII/IV族化合物を生成するガスを意味しており、窒素(N)、酸素(O)、ヒ化物(As-3)の前駆体、またはリン化物(P-3)の前駆体を含むが、これらに限定されない。
【0028】
本明細書で使用するとき、物理蒸着法(「PVD」)は、薄膜およびコーティングを生成するために使用できる蒸着方法を述べ、陰極アーク蒸着、電子ビームPVD、蒸発性堆積(evaporative deposition)、パルスレーザー蒸着、およびスパッタリングを含む。
【0029】
本発明の目的では、「スパッタリング」は、以下のものの1つ以上を含む:直流(DC)スパッタリング、高周波(RF)スパッタリング、反応性スパッタリング、およびマグネトロンスパッタリング。
【0030】
本出願で使用するとき、「エピタキシャル成長製品」という用語は、PVDプロセス、とりわけスパッタリングによって製造され、発光ダイオード(「LED」)、レーザーダイオード、トランジスタ、検出器、センサなどのような発光デバイスとして機能する半導体製品を意味する。
【0031】
このようなエピタキシャル成長製品は、III/IV族化合物の膜層を基板上に連続的に成膜することによって製造される。さらに、いくつかのエピタキシャル成長製品は、GaN、HfN、またはAlNのような異なる化学成分の交互層から形成されるサンドイッチ構造を必要とする。
【0032】
図1は、GaN系デバイスを成長させるための方法10のフローチャートを表す。いくつかの実施形態では、方法10は単一の成膜チャンバー内で実施される。他の実施形態では、方法10は複数の別々の成膜チャンバーにおいて実施される。方法10は、ステップ12~22のいずれか1つ以上を含む(例えば、いくつかの実施形態では、ステップ14および18は任意である)。ステップ12で、基板(例えばサファイアまたはシリコン)が、後の成膜のために配置される。ステップ14で、基板コンディショニングが実施される。ステップ16で、AlNが、基板上へとスパッタされ、ここで、Xは、スパッタされたAlN材料の厚みを表す。ステップ18で、酸化物を除去するためにAlNコンディショニングが実施される。ステップ20で、AlN層の上にGaNがスパッタされ、ここで、Yは、スパッタされたGaN材料の厚みを表す。いくつかのそのような実施形態では、GaNスパッタリングは、ドーピング(例えばシリコン、マグネシウム、鉄、炭素、または同種のものを用いるドーピング)、および/または吸着原子移動度の増大を含む。ステップ22で、第1のGaN層の上にGaNの第2の層がスパッタされ、ここで、Zは、この第2のスパッタされたGaN層の厚みを表す。いくつかのそのような実施形態では、GaNスパッタリングは、ドーピング(例えばケイ素、マグネシウム、鉄、炭素または同種のものを用いるドーピング)、および/または吸着原子移動度の増大を含む(本明細書において時折EALSと言われる)。いくつかの実施形態では、GaNは、スカンジウム、ジルコニウム、ハフニウム、インジウム、アルミニウム、または他の任意の適切な元素を用いて合金にされる。
【0033】
図2は、GaN系デバイスを成長させるためのシステム30の概略図を表す。いくつかの実施形態では、システム30は、図1の方法を実施するために使用される。システム30は、基板ウェハ34が装填され、仕上げたウェハ34がシステム30から取り出されるロードロック32を含む。システム30は、基板コンディショニングモジュール38(例えば図1のステップ14を実施するためのモジュール)と、AlN成膜モジュール40(例えば図1のステップ16を実施するためのモジュール)と、AlNコンディショニングモジュール42(例えば図1のステップ18を実施するためのモジュール)と、GaN成膜モジュール44(例えば図1のステップ20を実施するためのモジュール)と、ドープされたGaN成膜のためのドーピングモジュール46と、を備える。いくつかの実施形態では、モジュール32~46は、単一の成膜チャンバー内に含まれている。他の実施形態では、モジュール32~46の各々は別個の成膜チャンバーである。いくつかの実施形態では、システム30は、システム30内のモジュール間でウェハを移動させるためのウェハハンドリングロボット48を含む。
【0034】
図3は、GaN構造60の概略図を表す。いくつかの実施形態では、GaN構造60は、図2のシステム30および/または図1の方法10を使用することによって生成される。GaN構造60は、基板層62と、基板層62上にスパッタされたAlN層64(いくつかのそのような実施形態では、AlN層64の厚み=X)と、AlN層64上にスパッタされたGaN層66と、を含み、GaN層66の厚み=Yである。いくつかのそのような実施形態では、GaN層66はドープされる(例えば、シリコン、マグネシウム、または同種のものを用いてドープされる)。第1のGaN層66上に第2のスパッタされたGaN層68がスパッタされていてもよく、GaN層68の厚み=Zである。いくつかのそのような実施形態では、GaN層68はドープされる(例えば、シリコン、マグネシウム、または同種のものを用いてドープされる。)
【0035】
従来の産業システムは、GaN層の成長のために有機金属気相成長法(MOCVD)を使用して、GaN系デバイスを生成する。本発明においては、MOCVDの代わりにIII/IV族化合物のスパッタリングが、特にGaN膜層に一般に使用される。PVDのようなスパッタリングプロセスによって、より少ないウェハの反り、したがってスパッタリングによる、より良いウェハ/デバイスの均質性、より低いプロセス温度、ならびにNHおよびGa(CHのより低コストでの化学的使用等が可能となる。いくつかの実施形態では、スパッタリングプロセスはまた、それほど複雑でない設備要求により、より簡単に利用され、分子線エピタキシー(「MBE」)プロセスよりも低コストである。
【0036】
図4は、III/IV族化合物のPVDスパッタリングシステム80の概略図を表す。スパッタリングシステム80は、真空チャンバー82を含む。真空チャンバーの内部には、ウェハホルダー84およびスパッタリングガンのカソード86がある。2つのアノード88は、カソード86の上方の真空チャンバー82内部に配置されている。電圧源90は、ワイヤ92を介してアノード88に電流を供給する。一方、アルゴン(Ar)のような不活性ガスが、供給タンク94からカソード86の上方の真空チャンバー82に供給される。別個の供給タンクは、真空チャンバー82の上部に導入されるIII/IV族化合物(例えば、窒化物(N)、酸化物(O)、ヒ化物(Ar)、またはリン化物(P))の陰イオン部分に対応するガスを提供する。
【0037】
室温で自然に固体であるHfやAlのような元素は、このPVDスパッタリングプロセスによって基板ウェハ上に容易に成膜することができる。このPVDプロセスでは、カソード86の上部に配置されたHfまたはAlのようなターゲットIII/IV族材料83は本質的に気化され、真空チャンバー82の内部に含まれるウェハホルダー84によって固定された基板ウェハ98上に薄膜として成膜される。アルゴンのような不活性ガスの原子は、電気的に負電荷を帯びたアノード88とカソード86との間を通過する電子によって衝突され、それによって得られた正電荷を帯びたArカチオンがチャンバー内部のカソードの上部に配置されたターゲット材料83に衝突することを促す。HfまたはAl材料の小分子100は、真空チャンバー82の内部に放出され、基板98の下面に向かって「スパッタ」(すなわち、噴霧)される。一方、窒素(N)のような反応性ガス96は、これらのHFまたはAlの小分子100と混ざり合って、真空チャンバー内部で上昇するHfNまたはAlNのプラズマを形成し、基板ウェハ上に結果として得られる膜層を形成する。このスパッタリングプロセスは、反応性HfNまたはAlN化合物の膜の正確で均一な分布を作り出すことが業界内で知られており、様々なターゲット材料に対応する。
【0038】
しかしながら、Gaは、室温付近では自然に液体となる。したがって、業界および研究団体では、GaNのようなガリウム化合物は、Gaターゲットを用いたマグネトロンスパッタリングによって基板上に成膜することができないと考えられていた。液体Gaは、PVDスパッタリングプロセス中にArを蓄積し、それによって気泡を発生させ、最終的にウェハ上にGa液滴を噴出させる。代わりに、業界および研究団体においては、GaNまたは他のGa含有化合物の成膜のために、分子線エピタキシー、有機金属気相成長法、反応性パルスレーザー、またはハイドライド気相成長法のような代替技術が以前は採用されていた。しかし、HfN膜はスパッタリングによって最も良好に作られるので、これは必然的に、製造業者がマグネトロンスパッタリングと分子線エピタキシー、有機金属気相成長法、反応性パルスレーザー、またはハイドライド気相成長法とのように異なる成膜プロセスを交互に行って、例えば、半導体電気デバイスのための交互のHfN-GaN-HfN-GaNサンドイッチを構築することを必要としていた。複数の成膜技術の使用は、製造コストを増加させ、製造プロセス内の複雑性を増加させていた。
【0039】
したがって、本発明のPVDスパッタリングプロセス10は、低温冷却装置104を適用して、マグネトロンスパッタリングガンのカソード86にライン106および108を介して1つ以上の伝熱流体を循環させ、カソード上面上のカップ内に配置される液体Ga材料83の温度を顕著に低下させて、スパッタリングプロセスが開始される前に液体Ga材料83を固体状態に変化させてもよい。このような伝熱流体は、液体窒素または液体水素のような極低温流体、1種以上のアルコール類、または他の適切な伝熱流体から構成されてもよい。いくつかの実施形態では、スパッタリングシステム80が大型ウェハおよび/またはウェハプラッタ製造システムと共に使用される場合、液体窒素および/または液体水素が使用される。しかし、このアイデアは、Gaターゲットに対して約14℃未満の低温、好ましくは0℃未満の極低温、さらにより好ましくは-45℃程度で動作可能なスパッタリングガン86を必要とする。さらに、これらの極低温のために、スパッタリングガンに含まれる通常のゴムシールでは不十分である。したがって、スパッタリングガン86は、GaN成膜に必要なスパッタリングプロセス中にGaターゲットを固体状態に維持するために、この極低温を実行するために必要とされる約-45℃で動作可能な全金属のシールおよび他の適切な構成要素を備えてもよい。
【0040】
いくつかの実施形態では、ウェハサイズが増大するにつれて、電圧源90からの電圧が増大する。いくつかの実施形態では、システム80は、その場所での(in situ)閉じたまたは開いたプロセスをモニタリングするための光学経路110も含む。経路110は、放射率についてコンピュータ補正されたパイロメーターおよび/または光学反射率システムに動作可能に連結される。
【0041】
本明細書に記載されたGaN成長プロセス/システムは、エピタキシャル原子層スパッタリング(EALS)に相補的である。EALSは、スパッタリングまたは反応性スパッタリングを使用して、効果的に、基板上で、金属窒化物複合材料の化学量的なエピタキシャル成長を結果としてもたらすプロセスであり、ここで、形成されている金属窒化物の表面に到達する活性窒素(N)原子に対する金属(例えばGa)の比率は、金属窒化物化合物の化学量論組成と比較して、金属リッチ-Nリッチ条件間で周期的に変動する。いくつかの実施形態では、金属リッチ条件から金属リーン条件への切り替えのこのプロセスは、(1)形成されている金属窒化物の表面に対する金属フラックス(metal flux)を減少させること、または(2)活性窒素フラックスを増大させること、または(3)基板の温度を増大させて(または、形成されている金属窒化物の表面を露出して)、金属吸着原子の蒸発速度を増大させる(すなわち、滞留時間を低下させる)こと、または(1)-(3)の任意の組み合わせによって達成される。いくつかの実施形態では、金属リッチ条件は、表面における不満足な結合(またはダングリングボンド)の影響を弱めて、表面移行(surface migration)を高めることによって、吸着原子の移動度を増大させ、これによって、非柱状段差成長がもたらされ、したがってより高品質で、より滑らかな膜が結果としてもたらされる。一般的に、吸着原子の表面移行の増大により、成長前部(growth front)上の低エネルギーの部位における吸着原子の組み込みが促進されることによって、成膜された材料の結晶品質が改善される。同様に、いくつかの実施形態では、表面温度の増大または低エネルギーイオンの適用で、薄膜品質を向上させるために、吸着原子の表面移行を増大できる。したがって、本発明のいくつかの実施形態では、別々の窒素プラズマ源(例えば、高周波(RF)窒素源)またはイオンビーム支援蒸着でさえも含み得るEALSプロセスが使用される。
【0042】
図5は、本発明のいくつかの実施形態による、複数の様々なエピタキシャル成長モード150を示す概略図である。エピタキシャル膜成長では、成膜された材料(複数可)が、基板152の結晶構造によって決定される原子配列および原子配向を用いて、規則的な結晶を理想的に形成する。本発明のいくつかの実施形態では、到達する原子の表面移動度、ならびに基板およびエピタキシャル膜の特性に応じて、様々な成長モード154、156、および/または158が得られる。基板表面上に到達する原子の表面移動度、ならびに、表面段差の平均テラス長さ、基板の結晶方向および欠陥密度、表面および界面のエネルギー性、膜と基板との間の格子不整合などの他の因子に応じて、エピタキシャル成長プロセスは、(1)上記モードの1つで開始し進行するか、(2)2つ以上のモードの組み合わせであるか、または(3)1つのモードで開始し、その後、他のモードまたは組み合わされた成長モードへと移行する。
【0043】
いくつかの実施形態では、(154aから154bまでの進行によって表される)成長モード154は、二次元「2D」島状成長と呼ばれる。いくつかの実施形態では、モード154において、小さな島が、表面にわたって核を形成し、横方向に成長して層へと合体(coalesce)し、これによって多くの粒界をもたらす。いくつかの実施形態では、(156aから156bまでの進行によって表される)成長モード156は、三次元「3D」島状成長と呼ばれる。いくつかの実施形態では、モード156において、小さな島が、表面にわたって核を形成し、下部の層が仕上げられる前に、さらなる島が初めの島の上部に形成されながら成長し、これによって表面粗さの増大をもたらす(いくつかの実施形態では、モード156は柱状成長を含む)。いくつかの実施形態では、(158aから158bまでの進行によって表される)成長モード158は、ステップフロー成長と呼ばれる。いくつかの実施形態では、モード158において、表面に到達する原子が移行し(migrate)、段差端部に組み込まれて、ステップフローで層を完成させる。いくつかの実施形態では、平均テラス長さと比較して表面拡散が大きい場合に、モード158が生じる。
【0044】
本出願の発明者が所有する米国特許第10,170,303号および米国特許出願第16/234,070号は、本発明のPVDスパッタリングプロセス10のより完全な態様を開示している。これらは、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0045】
本出願の発明者は、例えば、信頼性があり集中的な方法で明るい光を発する能力を高め、一方で得られるLEDデバイスの構造をより小さく、より安価に作製することを可能にする目的で、III/IV族化合物から作製されるエピタキシャル成長製品の構造を改善するために多くの試みを行ってきた。例えば、それらの全体が参照により本明細書に援用される米国特許第7,915,624号、第8,253,157号、および第8,890,183号の中でより完全に開示されているように、それらの間に光キャビティを画定するGEMM層の形態の成長エピタキシャル金属ミラー(「GEMM」)と別個の非エピタキシャル金属ミラーとをLED半導体の構造に追加してもよい。このような構造160を図6に示す。
【0046】
GEMM(168)は、多くの形態の光キャビティ半導体発光体に適している。例えば、高反射性のバルク特性を有するGEMM(168)は、GEMM(168)が部分的に透明かつ部分的に反射性を有するように薄く成長させられてもよい。GEMM(168)の結晶品質が平面で、鏡面反射性があり、デバイス品質となるように、サファイア基板(162)と、内在的にドープされたGaNバッファー層(164)と、デバイス品質のn-GaN層(166)とで構成される平面的なIII/IV族窒化物材料成長テンプレートが使用される。GEMM(168)は、所望の厚さがエピタキシャル臨界厚さ未満であり得るように、n-GaN層(166)に格子整合している。
【0047】
21.tmの最初にドープされたGaNバッファー(164)層および2gmのn-GaN(166)層をサファイア基板(162)上に成長させたら、GEMMが部分的に反射性を有しかつ部分的に透明であるように、GEMM(168)を共振キャビティ(182)のための特定の厚さ(-20nm)に成長させてもよい。GEMM(168)をn-GaN層(166)上に成長させたら、次いで、第2のn-GaN層(170)を、共振キャビティ(182)に最適である特定の厚さ(-1200A)に成長させてもよく、活性領域(172)は、0.25VNGaNの幅内の光場の最大値である波腹に、またはその近くに配置され得る。NGaNは屈折率であり、Xは真空中の発光波長である。
【0048】
この実施形態では、図示されたRCLEDは、約3000Aのキャビティ長(182)(マイクロキャビティのレジーム内である)で、500nmの波長で発光し得る。活性領域(172)で生成された光は、厚く高反射性の非エピタキシャル金属ミラー(180)と、薄く部分的に反射性を有しかつ部分的に透明なGEMM(168)との間で共振する。キャビティは、活性領域(172)によって生成された光がミラー間で共振し得るように、ミラー(168)(180)が間隔を空けて配置されている。ミラー(168)(180)は、活性領域(172)によって生成された光の半波長の整数倍が窒化物材料内のミラー(168)(180)の間に適合し得るように間隔を空けて配置されている。活性領域(172)は、生成された光が両方のミラー(168)(180)からの反射光と構造的に干渉するようにミラー間に配置される。図6に示すように、共振光は、サファイア基板(162)を通ってデバイスのGEMM(168)側から出射する。
【0049】
同様に、その全体が本明細書中に参照により援用される米国特許第7,842,939号および第8,865,492号の中でより完全に開示されているように、活性領域を有するLED半導体は、活性領域に隣接して対向するトンネル障壁(「TB」)構造と、TB構造に隣接して対向するTB成長エピタキシャル金属ミラー(「TB-GEMM」)構造とを含んでもよく、TB-GEMM構造は、活性領域に実質的に格子整合する少なくとも1つの金属と、TB構造の反対側の活性領域に隣接して対向する導電型III族窒化物結晶構造とを含む。
【0050】
その全体が本明細書中に参照により援用される米国特許第9,608,145および第9,978,894号ならびに米国特許出願第15/985,466号の中でより完全に開示されているように、III族窒化物半導体デバイスは、多層膜金属半導体構造(すなわち、PhC-GEMM)を含んでもよい。図7の半導体デバイス190のブロック図においてより明確に示されるように、半導体デバイス構造190は、基板192(例えば、上記のようなSi、GaN、サファイア、GaN-on-サファイア、GaN-on-Si、AlN、AlN-on-サファイア、AlN-on-Siおよび/または同様のもの)と、基板192上の遷移層194(例えば、それぞれ上記したIII-窒化物層または金属材料を含む)と、遷移層194上の金属材料層196(例えば、上記のようなTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、および/または同様のものを含む元素金属、複合材料および/または化合物)と、金属材料層196上のIII-窒化物層198(例えば、上記のようなGaN、AlN、Si、および/または同様のもの)と(ここで、金属材料層196およびIII-窒化物層198は、単一周期200のPhC-GEMM構造を形成する)、PhC-GEMM周期200上の金属キャップ層202(例えば、上記のような金属材料を含む)と、金属キャップ層202上のIII-窒化物キャップ204(例えば、上記のようなIII-窒化物材料を含む)と、半導体デバイス構造206と、を含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、遷移層194、III-窒化物層198、およびIII-窒化物キャップ204は、電気伝導率を増大させるための不純物ドーピング(例えば、n型導電性のためのSiドーピングおよびp型導電性のためのMgドーピング)を含む。
【0052】
金属層196およびIII-窒化物層198は、構造に入射する光の反射率を調整するための単一周期200のPhC-GEMM構造を形成する。任意選択で、いくつかの実施形態では、半導体デバイス190は、複数の周期200(例えば、最大20周期)を含む。
【0053】
金属層196の厚さは約20nmであってよく、III-窒化物層198の厚さは約90nmであってよい。半導体デバイス構造206は、LEDデバイス構造であってもよく、n型III-窒化物層208と、n型III-窒化物層208上に位置する活性領域210と、活性領域210上に位置するp型III-窒化物層212とを含んでもよい。いくつかの実施形態形態では、活性領域210は、1つ以上の発光量子井戸(例えば、InGaN量子井戸(QW)または多重量子井戸(MQW))を含む。
【0054】
いくつかの実施形態形態では、基板192、遷移層194、金属材料層196、III-窒化物層198、金属キャップ層202、III-窒化物キャップ204、および半導体デバイス構造206はそれぞれ、実質的に単結晶であり、前後の各層と実質的に格子整合している。
【0055】
しかし、窒素のような反応性ガス96は、GaまたはHfのようなIII/IV族ターゲット材料83と反応して、PVDスパッタリングプロセス10中に基板ウェハ98上にGaNまたはHfN膜を成膜する、得られるプラズマを形成するために、必ずしも一定の速度で真空チャンバー82に供給されるべきではないことも発見されている(図4参照)。むしろ、真空チャンバー82内への反応性ガス96の流れを制御または調節して、ターゲットリッチ条件と反応性ガスリッチ条件とを交互に繰り返すことが時には有利であることが、本発明において発見された。ターゲットリッチ条件の間、基板ウェハ98に存在する反応性ガスは少なくなる。反応性ガスリッチ条件の間、より多くの反応性ガスが基板ウェハ98に存在する。カソード86上に存在するGaのようなIII/IV族ターゲット材料の体積は、この調節の影響を受けない。しかしながら、反応性ガスリッチ条件状態では、窒素ガス(N)が使用される反応性ガスである場合、真空チャンバー内部に形成された、得られたGaNプラズマは、基板ウェハ98まで垂直に延びる。一方、このようなGaリッチ条件状態の間は、全てのGaNプラズマがウェハ基板に垂直に延びることが抑制される。
【0056】
これ以降、例のために「Gaリッチ条件」状態を使用するが、本発明の目的では、反応性ガス調節の原理は、Hf、Al、In、Si、Ge、Mg、またはZrを含む、Ga以外の他のIII族またはIV族の金属元素に対しても機能することを理解されたい。同様に、「窒素リッチ条件」状態は、例のために使用され、反応性ガス調節の原理は、酸素、ヒ化物の前駆体、またはリン化物の前駆体を含む、窒素以外の他の反応性ガスに対しても機能することを理解されたい。
【0057】
本発明の目的では、真空チャンバー82への反応性ガス96の調節は、流れを完全にオフにするか、完全にオンにするか、またはその中間の何らかの測定可能な流量にする自動制御システム(図示せず)によって調整される弁によって達成されてもよい。代替的に、複数のルーバーパネル(図示せず)を有するシャッターアセンブリのような機械的装置を、PVDスパッタリングプロセス中にプラズマが形成される場所の上方にある真空チャンバー82内部に配置してもよい。調節プロセスは、ルーバーパネルを自動制御して、ルーバーパネルを完全な開放位置、プラズマがさらに上昇して基板ウェハ98の下面に接触し、例えばGaN膜層を形成するのを防止する完全な遮断位置、またはプラズマの上昇が部分的に低減されてGaN膜層の形成を遅らせるその中間の何らかの位置の間で移動させることによって達成される。
【0058】
反応性ガス96の調節プロセスは、Gaリッチおよび窒素リッチ条件の両方を連続的に包含するサイクルの間に実行される。このようなサイクルは、約1HZ~16HZを包含し得、1HZ=1サイクル/秒および16HZ=16サイクル/秒である。これらのサイクルの期間は非常に短いため、真空チャンバー82への反応性ガス96を完全に止める、または真空チャンバー内部の機械的シャッターの上方へのプラズマの上昇を完全に阻止することは、一般に不利である。なぜなら、サイクルの残りの部分の中で流れを再度オンにする時間が不十分だからである。したがって、「窒素リッチ」という用語は、一般に、窒素のような反応性ガス96の流れが減少している、または得られたプラズマが部分的に遮断されているという条件を示すことを意味する。
【0059】
図8は、「オン」条件と「オフ」条件とを交互に繰り返すための、いくつかの異なる可能な「デューティサイクル」の概略図を示す。
【数1】
例えば、50%のデューティサイクルは、TonおよびToffの時間間隔が等しいことを特徴とする。対照的に、75%のデューティサイクルは、Tonの時間間隔がToffの時間間隔の3倍であることを特徴とする。一方、25%のデューティサイクルは、Tonの時間間隔がToffの時間間隔よりも3倍短いことを特徴とする。
【0060】
図9は、本発明の反応性ガス調節プロセスのためのデューティサイクルの概略図を示す。Gaリッチ条件の時間間隔は一般に、真空チャンバー内部の窒素リッチ条件の時間間隔よりも短くするべきである。
【数2】
の場合、
デューティサイクルは________%、好ましくは___________%とすべきである。
【0061】
一方、カーブの振幅は、反応性ガスまたはプラズマの流量レベルを表す。「Y」は窒素リッチ条件の間の窒素ガスの流量を表し、「Z」はGaリッチ条件の間の窒素ガスの流量を表す。したがって、比率Z/Yは、窒素リッチ条件の間の反応性ガスの流量と比較した、Gaリッチ条件の間の反応性ガス流量の割合を表す。一般に、Gaリッチ条件の間のこの比率は、0~50%、好ましくは0~20%であるべきである。同様に、Gaリッチ条件の間の基板ウェハへのプラズマの上昇を妨げるための真空チャンバー内部の機械的シャッター装置の閉塞度は、50~100%、好ましくは80~100%であるべきである。これは、より低いデューティサイクルXを表す。
【0062】
真空チャンバーへの反応性ガスの流れを止める、または減少させると、チャンバー内にある程度の反応性ガスが残っても、Gaターゲットと反応してプラズマを生成する反応性ガスは依然として少なくなる。これは、Gaリッチ条件を生成する。
【0063】
デューティサイクル中に真空チャンバーへの反応性ガスの流れを調節することによって、またはデューティサイクル中に真空チャンバー内部のプラズマの上昇を妨げることによって、基板ウェハ上にIII/IV族化合物をPVDスパッタリングして得られる膜層を形成することのいくつかの利点が達成される。第1に、調節プロセスは、GaN成膜プロセスの効率を高める。GaN成膜プロセスは、実際に高速化することができる。
【0064】
第2に、調節プロセスは、GaN層内の「より良好な」結晶の成長を可能にする。X線スキャン下で、得られた結晶は、より滑らかな表面を示す。さらに、結晶内部の分子欠陥のレベルが低減される。「完全な」エピタキシャル結晶材料は、全ての結晶が同じ方向に配向している。しかし、多結晶材料では、単結晶が異なる方向に配向している。結晶が適切に整列していない場合、層のエピタキシャルGaN材料の内部に「線欠陥」が生じる。電流が半導体LED層を流れると、そのような線欠陥によって漏れ電流が引き起こされ、極端な場合には、LEDの短絡をもたらす可能性がある。これは、LEDの動作の効率を低下させる。
【0065】
さらに、結晶欠陥は、n型材料層およびp型材料層のエピタキシャル成長プロセスを含む、III/IV族化合物から作製される半導体の光学特性に悪影響を及ぼす可能性がある。例えばGaN化合物にシリコンのようなドーパントを添加することにより、層状構造の価電子帯内の電子が、その上方の「禁制領域」まで移動し、禁制領域の上方に位置する伝導帯に近づくことが可能になる。半導体構造のn型GaN層内部の活性領域から出射した光は、GaN材料に吸収されることなく、より容易に伝導帯に通過する。しかし、n型材料における点欠陥によって価電子帯に原子が欠落していると、通常は上昇して禁制層に入る電子は行き場がなくなり、代わりに伝導帯に移動することになる。
【0066】
同様に、マグネシウムのようなドーパントがGaNに添加されてp型材料を生成するとき、価電子帯内の得られた正孔は、禁制領域/バンドギャップ領域、およびさらにその上方の伝導帯から落ちてくる電子によってフィルタリングされる。このカスケード効果により、伝導帯内に新たな正孔が生じ、これは半導体LEDの構造の上部に近いp型GaN層の活性領域から出射される光を可視化するために重要である。しかし、このp型GaN材料の結晶における点欠陥は、p型材料自体を作製することを非常に困難にする。
【0067】
したがって、GaN材料の結晶構造を改善することによって、半導体LEDの光学特性が改善される。これは、上述のように、半導体構造に組み込まれるn型、p型、およびGEMM層にとって重要である。
【0068】
さらに、III/IV族化合物材料の結晶構造における点欠陥も、その中に含まれる金属の反射率を損なう可能性がある。したがって、反応性ガスの調節プロセスを介したこのような点欠陥の低減は、上述の半導体構造のGEMM、トンネル障壁(「TB」)エピタキシャル金属ミラー(「TB-GEMM」)、および金属キャップにとって重要である。
【0069】
III/IV族化合物層の内部に形成された結晶欠陥は、電子が価電子帯から伝導帯へ移動しようとする一方で光が構造を通過することを妨げるので、過度の発熱につながる可能性もある。この熱の蓄積もまた、半導体を故障させる可能性がある。過度の熱の蓄積は、業界による採用のために極めて重要な、より小さな半導体LEDを設計および製造するための努力を妨げる可能性もある。
【0070】
最後に、半導体の中でより結晶的に完全なGaN層を成長させることにより、その上に隣接するHfNおよびZrN層を成長させるためのより滑らかな表面を得られる。このようなHfNおよびZrN層は、半導体LEDの反射率および可視光の放射率を高めるために重要である。
【0071】
PVDスパッタリングプロセスのGaリッチ相の間、正電荷を有するGa原子は、基板ウェハまたは前のIII/IV族化合物層上に分散される。正電荷を帯びたGa原子は、互いに反発して規則的なマトリクスを生成する。窒素ガスの流れがデューティサイクルの窒素リッチ相の間に増加すると、基板または前の層上に分散され、得られた活性窒素原子が、周囲のGa+原子を理想的なパターンで固定する。窒素原子がマトリクス中に到達するためにより多くの時間が必要とされるので、より長い「オフ」サイクルが必要とされ、これは、より低いデューティサイクルにつながる。
【0072】
半導体LED構造の内部に含まれる量子井戸は、多くの場合、InGaNから作られる。このInGaN材料は、通常、青色を生成する。しかし、PVDスパッタリングプロセス中に真空チャンバー内部のカソード上にセットされたターゲット材料に、Gaを犠牲にしてより多くのInを加えることにより、緑色が生成される。Gaを犠牲にしてさらに多くのInを加えることにより、赤色が生成される。しかしながら、InGaN層における格子間隔が結晶欠陥のためにずれている場合には、Inを加えることは熱力学的に困難である。反応性ガス調節プロセスにより、量子井戸のための得られたInGaN層における優れた格子間隔、および半導体構造における層の材料間の優れた格子整合が可能になる。したがって、この反応性ガス調節プロセスは、より良好な緑色および赤色LEDの製造を可能にするはずである。
【0073】
集積デバイス用に集積された機能を提供するための層状材料の成膜は、このような層の機械的配置よりも望ましい。発光デバイスと、ディスプレイ用のアクティブマトリクス(「AM」)および他の装置とを組み合わせることに大きな関心が寄せられている。CMOS AMバックプレーン上へのLEDの機械的配置は、これを行う1つの方法である。これを行うためのより望ましい方法は、CMOSバックプレーン上にLED層を成膜することである。しかしながら、この成膜アプローチに伴う重大な問題は、LEDのエピタキシャル成長において、LEDを成膜する前に成膜するのに適切なミラーがないことである。本発明においては、n-GaNおよびZrHfNの層をこの目的のためのミラーとして使用することができ、これによって、得られたデバイスがAM材料への光の伝搬を阻止することが可能になる。これらの形成された構造では、集積のための熱的考察がより好ましい。
【0074】
上記の明細書および関連図面により、本発明のIII/IV族化合物系半導体デバイスおよび反応性ガス調節プロセスの構造ならびに方法の完全な説明が得られる。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明の多くの代替的な実施形態を行うことができる。したがって、本発明は、本明細書に添付した特許請求の範囲内にある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】