IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エスビーエス、フリクション、アクティーゼルスカブの特許一覧

<>
  • 特表-摩擦要素の製造方法 図1
  • 特表-摩擦要素の製造方法 図2
  • 特表-摩擦要素の製造方法 図3
  • 特表-摩擦要素の製造方法 図4
  • 特表-摩擦要素の製造方法 図5
  • 特表-摩擦要素の製造方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-22
(54)【発明の名称】摩擦要素の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16D 69/02 20060101AFI20250115BHJP
   F16D 65/092 20060101ALI20250115BHJP
   B22F 3/14 20060101ALI20250115BHJP
   C22C 47/00 20060101ALI20250115BHJP
   B22F 3/10 20060101ALI20250115BHJP
   C22C 33/02 20060101ALI20250115BHJP
   B22F 7/00 20060101ALI20250115BHJP
   B22F 7/08 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
F16D69/02 D
F16D65/092 D
B22F3/14 A
B22F3/14 101B
C22C47/00 Z
B22F3/10 101
C22C33/02 102
C22C33/02 103A
C22C33/02 103E
B22F7/00 B
B22F7/08 B
F16D65/092 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534479
(86)(22)【出願日】2022-11-07
(85)【翻訳文提出日】2024-07-05
(86)【国際出願番号】 DK2022050233
(87)【国際公開番号】W WO2023104265
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】PA202170602
(32)【優先日】2021-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524217481
【氏名又は名称】エスビーエス、フリクション、アクティーゼルスカブ
【氏名又は名称原語表記】SBS Friction A/S
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100224856
【弁理士】
【氏名又は名称】朱牟田 奏人
(72)【発明者】
【氏名】トーベン、アナスン
(72)【発明者】
【氏名】イェスパー、トンネスン
(72)【発明者】
【氏名】トーベン、マドスン
【テーマコード(参考)】
3J058
4K018
4K020
【Fターム(参考)】
3J058BA73
3J058BA78
3J058CA42
3J058CA47
3J058EA07
3J058EA09
3J058FA02
3J058GA31
3J058GA43
3J058GA45
3J058GA46
3J058GA48
3J058GA73
3J058GA92
4K018AB01
4K018AB02
4K018AB03
4K018AB05
4K018AB07
4K018AB08
4K018AB10
4K018AC01
4K018BA02
4K018BA04
4K018BA13
4K018BA20
4K018BB04
4K018BC13
4K018CA02
4K018CA08
4K018DA18
4K018EA01
4K018EA11
4K018KA05
4K020AA10
4K020AA22
4K020AA23
4K020AA24
4K020AC07
4K020BB08
4K020BB29
(57)【要約】
本開示は、摩擦要素の製造方法に関し、本方法は、複数の凸部を備える接続面を有するバックプレートを提供するステップと、焼結組成物を提供し、前記焼結組成物を前記接続面に塗布し、前記焼結組成物を成形して中間摩擦要素を形成するステップと、前記中間要素を焼結プレート間に配置するステップと、10kg/cm~200kg/cmの範囲の圧力を、前記焼結プレート間に加えると同時に、選択的に電流を前記焼結プレート間に印加することにより前記温度を800℃~950℃の範囲の焼結温度まで上昇させるステップと、印加した前記圧力、選択的に印加した前記電流、および前記焼結温度のうちの少なくとも1つを、1時間~10時間の範囲の焼結時間に亘って維持して、前記バックプレート上に摩擦材料を形成するステップと、を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
‐バックプレート(2)を提供するステップであって、前記バックプレート(2)は、複数の凸部(22)を備える接続面(21)を有するステップと、
‐焼結組成物を提供するステップであって、前記焼結組成物は、
0重量%~5重量%の範囲の摩擦変化金属と、
1重量%~10重量%の範囲の繊維成分と、
2.5重量%~12重量%の範囲の金属リン化物と、
6重量%~23重量%の範囲の潤滑剤と、
0重量%~5重量%の範囲の充填剤と、
3重量%~20重量%の範囲の研磨剤と、
0.2重量%~2重量%の範囲の加工助剤と、
残部の鉄と、
を備えるステップと、
‐前記焼結組成物を前記接続面(21)に塗布し、前記焼結組成物を成形して前記バックプレート(2)上に予備焼結パック(41)を有する中間摩擦要素(4)を形成するステップと、
‐1以上の中間摩擦要素(4)を、焼結キャリア(51)と焼結万力プレート(52)との間に、前記バックプレート(2)が前記焼結キャリア(51)に対面するとともに前記予備焼結パック(41)が前記焼結万力プレート(52)に対面した状態で、または、前記バックプレート(2)が前記焼結万力プレート(52)に対面するとともに前記予備焼結パック(41)が前記焼結キャリア(51)に対面した状態で、配置するステップと、
‐以下のステップを同時に実施するステップであって、これらのステップは、
>10kg/cm~200kg/cmの範囲の圧力を、前記焼結万力プレート(52)と前記焼結キャリア(51)との間に適用するステップ、および
>前記焼結万力プレート(52)と前記焼結キャリア(51)との間の温度を800℃~950℃の範囲の焼結温度まで上昇させるステップ、
であるステップと、
前記適用された圧力および前記焼結温度の少なくとも一方を1時間~10時間の範囲の焼結時間に亘って維持して、前記バックプレート(2)上に摩擦材料を形成するステップと、
を備える摩擦要素(1)の製造方法。
【請求項2】
前記焼結キャリア(51)は、焼結アノード(51)であり、
前記焼結万力プレート(52)は、焼結カソード(52)であり、
電流を前記焼結カソード(52)と前記焼結アノード(51)との間に適用して、前記温度を前記焼結温度まで上昇させ、
前記適用された電流、前記適用された圧力、前記焼結温度のうちの少なくとも1つを、前記焼結時間に亘って維持する、
請求項1に記載の摩擦要素(1)の製造方法。
【請求項3】
外部加熱を用いずに、前記温度を前記焼結温度まで上昇させる、
請求項2に記載の摩擦要素(1)の製造方法。
【請求項4】
前記摩擦変化金属は、前記焼結温度未満の融点を有する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の摩擦要素(1)の製造方法。
【請求項5】
前記摩擦変化金属は、前記焼結組成物の1重量%~1.5重量%の範囲で存在する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の摩擦要素(1)の製造方法。
【請求項6】
前記焼結組成物は、4重量%~12重量%の範囲の金属リン化物を備える、
請求項1~5のいずれか一項に記載の摩擦要素(1)の製造方法。
【請求項7】
前記焼結組成物は、
1重量%~10重量%の範囲の繊維成分と、
2.5重量%~12重量%の範囲の金属リン化物と、
6重量%~23重量%の範囲の潤滑剤と、
0重量%~5重量%の範囲の充填剤と、
3重量%~20重量%の範囲の研磨剤と、
0.2重量%~2重量%の範囲の加工助剤と、
残部の鉄と、
を備える、
請求項1~6のいずれか一項に記載の摩擦要素(1)の製造方法。
【請求項8】
前記焼結組成物を成形して中間摩擦要素(4)を形成する前記ステップは、前記バックプレート(2)上の前記焼結組成物に300kg/cm~3300kg/cmの範囲の圧力を加えるステップを備える、
請求項1~7のいずれか一項に記載の摩擦要素(1)の製造方法。
【請求項9】
前記成形は、10秒~10分の範囲の成形時間を有する、
請求項8に記載の摩擦要素(1)の製造方法。
【請求項10】
前記凸部(22)は、前記摩擦材料の厚さの50%~80%の範囲の長さを有して前記接続面(21)から延び、
前記凸部(22)は、60°~120°の範囲の角度を有して前記接続面(21)において傾斜する、
請求項1~9のいずれか一項に記載の摩擦要素(1)の製造方法。
【請求項11】
複数の中間摩擦要素(4)が焼結スタックの2以上の層に配置され、各層は導電材料からなるプレート(101)により隔てられる、
請求項2~10のいずれか一項に記載の摩擦要素(1)の製造方法。
【請求項12】
前記電流は、0~400Vの範囲の電圧および0A~300Aの範囲の電流を有する交流電流である、
請求項2~11のいずれか一項に記載の摩擦要素(1)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、摩擦要素、および摩擦要素の製造方法に関する。摩擦要素は、車両のブレーキシステム、特にディスクブレーキシステム、例えばオートバイ用のディスクブレーキシステムに有用である。
【背景技術】
【0002】
ブレーキシステムでは、可動部品に対して摩擦を与えるブレーキパッドが採用されている。ブレーキパッドを可動部品に対して押し付けることにより、運動が停止され得る。ブレーキシステムのブレーキパッドは、典型的には、ブレーキパッドに十分な硬度および剛性を付与するキャリアプレートに配置される。ブレーキパッドは、様々な材料範囲から構成され得る。各材料は、適切な技術を用いて製造され得る。例えば、ブレーキパッドは、ブレーキパッドの用途に応じて、セラミック材料、ポリマー等の有機材料、または金属を主成分とする材料から作製され得る。例えば、金属成分からなるブレーキパッドは、焼結プロセスで製造され得る。
【0003】
ブレーキパッドを焼結プロセスで製造する場合、焼結組成物がキャリアプレートに塗布され、次いで焼結状態とされる。焼結組成物は、典型的には、ベースマトリックス材料、研磨剤、潤滑剤、繊維、充填剤、および種々の加工助剤を含む。これらの成分の各々により、焼結プロセス、および当該プロセスで作成される最終的なブレーキパッドに機能が提供され得る。
【0004】
焼結は、ブレーキパッドに低い摩耗性、高い熱安定性、およびブレーキ性能を付与するのに適している。例えばオートバイの場合、強力な初期バイトがもたらされ、瞬時のブレーキフィーリング、調整の容易性、パワフルなインストップ性能が得られる。本開示は、ブレーキパッドを製造するための改良された焼結プロセスを提供することを目的とする。
【0005】
焼結加工したブレーキパッドは、通常、金属ベースのブレーキパッドであり、延性金属、特に銅だけでなくニッケルも通常使用されている。これは、延性により、ブレーキパッドが良好なブレーキ性能特性、例えば、ブレーキ時の所望の摩擦係数やさらなる所望の特性を有することができるためである。しかしながら、銅もニッケルも環境的に望まれない重金属である。銅やニッケルを含有するブレーキパッドの摩耗により、必然的に金属が環境中に放出される。
【0006】
ブレーキパッド材料から銅を除去するいくつかの試みがなされてきた。例えば、WO2017/222538は、実質的に銅を含まないと言える摩擦用途用の合金鉄ベースのシステムを開示している。しかし、多量のスズが必要とされる。
【0007】
EP0055205は、鉄道のブレーキで見られる金属ピックアップという問題に取り組んでいる。この問題では、列車のブレーキ時に、車輪鋼の銀が組成シューに移行する。この問題は、鉄道ブレーキ用の焼結粉末金属摩擦材料に銅、マンガン、またはフェロクロムを含有させることにより解決され得る。
【0008】
US2018/031067は、銅を0.5重量%を超えて含まない摩擦材料を開示している。しかしながら、この摩擦材料は焼結プロセスで使用されないため、製造されたブレーキパッドは結果として気孔を有してしまい、望ましくない。
【0009】
特開2006-348379号は、ニッケルを含まない焼結金属摩擦材料を開示しており、この材料は、ニッケルを含む焼結金属摩擦材料と同等の性質を有する。複数の組成物が開示されており、銅を含有するものも銅を含有しないものもあるが、これらの組成物は、鉄とアルミニウムとの特殊な比率を有する。
【0010】
焼結プロセスは、焼結される組成物に適用される少なくとも圧力および温度を伴うが、より多くのパラメータが調節され得る。US4,456,578は、自動車またはオートバイのディスクブレーキ用の摩擦要素の作製方法を開示している。ここでは、電流が焼結される組成物に印加される。このタイプのプロセスは、一般に、導電性焼結または電流アシスト焼結と称される。焼結用組成物は、いずれも、銅、または環境的に望ましくない金属、例えば鉛を含んでいる。
【0011】
摩擦要素を提供するために基板を導電性焼結するさらなる例が、US4,576,872に開示されている。試験したすべての基板が、多量の銅、および場合によりニッケルおよび鉛を含有している。
【0012】
EP3569672は、鉄、ニッケル、亜鉛、スズ、銅、および最大5%の焼結助剤粉末を含む焼結金属摩擦材料を開示している。焼結助剤粉末は、ホウ化鉄粉、リン化鉄粉、リン化銅粉、またはリン青銅粉であり得る。
【0013】
CN109253196は、ブレーキ摩擦対、およびその調製方法を開示している。ブレーキ摩擦対のブレーキパッドは、鉄粉、アルミニウム粉、フェロホスホル粉、薄片グラファイト、低炭素フェロクロム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、および銅粉を有する摩擦材料を含んでいる。調製方法は、混合ステップ、付勢ステップ、および焼結ステップを含んでいる。
【0014】
本開示の目的は、摩擦要素を製造するための改良された焼結プロセスを提供するとともに、摩擦要素を製造するための方法に適した焼結組成物を提供することである。さらなる目的は、環境を損なう重金属を含まない摩擦要素を提供することである。
【発明の概要】
【0015】
本開示は、摩擦要素の製造方法に関し、前記方法は、
バックプレートを提供するステップであって、前記バックプレートは、複数の凸部を備える接続面を有するステップと、
焼結組成物を提供するステップであって、前記焼結組成物は、
0重量%~5重量%の範囲の摩擦変化金属と、
1重量%~10重量%の範囲の繊維成分と、
2.5重量%~12重量%の範囲の金属リン化物と、
6重量%~23重量%の範囲の潤滑剤と、
0重量%~5重量%の範囲の充填剤と、
3重量%~20重量%の範囲の研磨剤と、
0.2重量%~2重量%の範囲の加工助剤と、
残部の鉄と、
を備えるステップと、
前記焼結組成物を前記接続面に塗布し、前記焼結組成物を成形して前記バックプレート上に予備焼結パックを有する中間摩擦要素を形成するステップと、
1以上の中間摩擦要素を、焼結キャリアと焼結万力プレートとの間に、前記バックプレートが前記焼結キャリアに対面するとともに前記予備焼結パックが前記焼結万力プレートに対面した状態で、または、前記バックプレートが前記焼結万力プレートに対面するとともに前記予備焼結パックが前記焼結キャリアに対面した状態で、配置するステップと、
以下のステップを同時に実施するステップであって、これらのステップは、10kg/cm~200kg/cmの範囲の圧力を、前記焼結万力プレートと前記焼結キャリアとの間に適用するステップ、および前記焼結万力プレートと前記焼結キャリアとの間の前記温度を800℃~950℃の範囲の焼結温度まで上昇させるステップ、であるステップと、
前記適用された圧力および前記焼結温度の少なくとも一方を、1時間~10時間の範囲の焼結時間に亘って維持して、前記バックプレート上に摩擦材料を形成するステップと、
を備える。
【0016】
一例において、前記焼結キャリアは焼結アノードであり、前記焼結万力プレートは焼結カソードであり、電流を前記焼結カソードと前記焼結アノードとの間に適用して、前記温度を前記焼結温度まで上昇させ、前記適用された電流、前記適用された圧力、前記焼結温度のうちの少なくとも1つを、前記焼結時間に亘って維持する。例えば、適用された電流と、適用された圧力および焼結温度のうちの少なくとも一方とが、焼結時間に亘り維持され得る。代替的に、焼結キャリアが焼結カソードであってもよく、焼結万力プレートが焼結アノードであってもよい。したがって、例えば、本方法は、1以上の中間摩擦要素を、焼結アノードと焼結カソードとの間に、バックプレートが焼結アノードに対面するとともに予備焼結パックが焼結カソードに対面した状態で、または、バックプレートが焼結カソードに対面するとともに予備焼結パックが焼結アノードに対面した状態で、配置するステップと、以下のステップを同時に実施するステップであって、これらのステップは、10kg/cm~200kg/cmの範囲の圧力を、焼結カソードと焼結アノードとの間に適用するステップ、および、電流を焼結カソードと焼結アノードとの間に適用して前記温度を800℃~950℃の範囲の焼結温度まで上昇させるステップ、であるステップと、前記適用された圧力、前記適用された電流、および前記焼結温度のうちの少なくとも1つを、1時間~10時間の範囲の焼結時間に亘って維持して、前記バックプレート上に摩擦材料を形成するステップと、を備え得る。
【0017】
本開示の文脈において、「焼結組成物」という用語は、本方法に供されて摩擦材料を形成する材料を指す。これに対応して、「摩擦材料」という用語は、本方法において製造される摩擦要素のバックプレート上の材料を指す。
【0018】
本方法は、圧力および焼結温度を同時に適用することを伴い、さらに電流の適用も伴い得る。本開示の文脈において、この処理を「焼結」と称する。電流が適用される場合、本処理は「導電性焼結」と称される。焼結プロセスにおいて、粒子状材料に熱および/または圧力を加える。この目的は、粒子を溶解させて一体化することである。本文脈において、導電性焼結とは、焼結組成物に圧力を加える、例えば、10kg/cm~200kg/cmの範囲の圧力を加え、かつ焼結組成物に電流を適用して加熱することを意味する。温度は、電流の適用以外の手段によって上昇させてもよく、例えば、オーブン内での加熱、または中間摩擦要素または焼結スタック(焼結積層体)に電気的に接続しない加熱要素の使用によってもよい。圧力をkg/cmの単位で示すが、barやMPa等の他の単位で圧力を示してもよい。kg/cmの圧力からbarまたはMPaの圧力を計算することは当業者に周知であるが、一般に、圧力は、0.98MPa~19.6MPaの範囲、または9.8bar~196barの範囲にある。本方法において、800℃~950℃の範囲の焼結温度が選択され、電流が温度を選択された焼結温度まで上昇させるように適用される。焼結アノード、中間摩擦要素、焼結カソード、および任意の付加的要素、例えばさらなる導電材料は、一体として抵抗を有し、当該抵抗、および電流と電圧との関係は、当該抵抗から決定される。電流、すなわち抵抗によって決まる電圧と電流との組み合わせは、自由に選択され得るが、一般に、電流は、400Vまでの電圧および300Aまでの電流を有する交流電流である。しかしながら、電流が400V超の圧力および/または300A超の電流を有し得ることも想定される。同様に、電流が直流電流、例えばパルス直流電流であることも想定される。交流電流の周波数は自由に選択され得るが、周波数は典型的には10Hz~10MHzの範囲にある。
【0019】
本方法では、焼結キャリアおよび焼結万力プレートが採用される。電流を採用する場合、焼結キャリアを焼結アノードと称し、焼結万力プレートを焼結カソードと称する。代替的に、焼結キャリアは焼結カソードであってもよく、焼結万力プレートは焼結アノードであってもよい。焼結アノードおよび焼結カソードを、集合的に焼結電極と称してもよい。「アノード」および「カソード」という用語は、電極同志を、それらの相対的配置および中間摩擦要素の配置に関して区別すべく使用される。特に、電流が焼結アノードおよび焼結カソードに適用される。この電流は、直流電流に限定されず交流電流であってもよい。本文脈において、焼結アノードを第1焼結電極と称する場合があるとともに、焼結カソードを第2焼結電極と称する場合もある。これに対応して、焼結キャリアおよび焼結万力プレートを「焼結プレート」と称する場合がある。
【0020】
外部熱源を使用して温度を焼結温度まで上昇させてもよく、例えば、電流を使用せずに外部熱源を使用することにより、電流のみにより上昇させてもよい。または、電流と例えば外部熱源からの追加の外部加熱との組み合わせにより温度を上昇させてもよい。本文脈において、外部加熱は、任意の外部熱源を使用することにより得ることができる。「外部加熱」という用語は、一般に、任意の所望の熱源を使用して得られる熱を指す。例えば、中間摩擦要素または焼結スタックに電流を適用する以外に、これらをオーブン等に入れてもよい。したがって、本方法が外部加熱を採用しない場合、電流を焼結カソードと焼結アノードとの間に適用することで、温度を上昇させる。一例において、追加の外部加熱を使用しない。例えば、電流のみを使用して、温度を例えば大気温度よりも高い温度に上昇させてもよい。本文脈において、大気温度は、5℃~50℃の範囲の任意の温度である。温度上昇が電流のみを使用して得られ、かつ温度を大気温度を超える温度に上昇させるために追加の外部加熱を採用しない場合、外部加熱のみを使用する焼結プロセス、または外部加熱と電流による加熱との組み合わせを使用する焼結プロセスよりも、焼結の制御が容易である。
【0021】
好適な例において、複数の中間摩擦要素が、焼結プレート間、すなわち焼結電極間に配置される。焼結電極を使用する場合、温度を大気温度を超える温度に上昇させるために追加の外部加熱を採用しないことが好適である。複数の中間摩擦要素を焼結電極間に配置する場合、間の複数の中間要素の摩擦要素の各々は、同一の焼結条件とされる。これは、焼結温度が、焼結電極を流れる電流、したがって摩擦要素の各々も通る電流から得られるためである。これにより、焼結条件の制御がより容易になり、同一品質の複数の摩擦要素を作製することが保証される。例えば、複数の中間摩擦要素は、3列以上の中間摩擦要素を有し、且つ各列が3以上の中間摩擦要素を焼結電極間に有した状態で、焼結電極間に配置され得る。
【0022】
特定の例において、複数の中間摩擦要素が焼結スタックの2以上の層に配置され、各層は導電材料からなるプレートにより隔てられる。加熱は、少なくとも電流を使用して得られる。導電材料からなるプレートで層同士を隔てることにより、すべての中間摩擦要素が同一の電流を受けることが保証される。好適な導電材料は、炭素ベースの材料、例えばグラファイトである。炭素ベースの材料は、導電性を有するだけでなく、熱バリアとしても機能する。これにより、焼結スタック内の異なる層間における温度の均一性が向上する。例えば、導電材料が炭素繊維強化炭素である場合、焼結スタック内の温度のばらつき、例えば焼結スタック内の層間における温度のばらつきを、洗濯された焼結温度の5%以内または3%以内に制限することができる。電流を使用して温度を焼結温度まで上昇させるため、各層が同一の焼結温度を受け、中間摩擦要素の各々は同一の焼結条件となる。温度を大気温度を超える温度に上昇させるために追加の外部加熱を採用しないことが、特に好適である。
【0023】
本方法において、適用された圧力および焼結温度の少なくとも一方を1時間~10時間の範囲の焼結時間に亘って維持して、バックプレート上に摩擦材料を形成する。電流を採用する場合、電流、および適用された圧力と焼結温度とのうちの少なくとも一方を1時間~10時間の範囲の焼結時間に亘って維持して、バックプレート上に摩擦材料を形成する。一般に、温度が800℃~950℃の範囲に維持される限り、温度は焼結温度であるとみなされる。ただし、焼結温度は、800℃~950℃の範囲における任意の温度であり得る。一例において、例えば825℃、850℃、875℃、900℃、または925℃の焼結温度が選択され、温度が選択された焼結温度の50℃以内にある限り、温度は焼結温度であるとみなされる。好適には、追加の外部加熱を使うことなく電流により温度を焼結温度まで上昇させる。また、適用された電流および圧力を焼結時間に亘って維持することが好適である。本文脈において、焼結時間は、焼結温度に達したときを始点とする。例えば、温度が大気温度である場合、例えば、電流を使用して温度を上昇させ焼結時間の開始時および焼結時間中に維持する前に、圧力が適用され得る。特定の例において、追加の外部加熱を使わずに電流により温度を焼結温度まで上昇させ、焼結温度、例えば選択された焼結温度に達したら、電流を調節して温度を焼結温度に維持する。例えば、温度をモニタリングしてもよく、温度を焼結温度、例えば選択された焼結温度±50℃、±40℃、±30℃、±25℃、±20℃、±15℃、±10℃、または±5℃に維持するように、電流をフィードバックループにおいて調節してもよい。焼結時間が終了すると、温度は大気温度まで低下する。一般に、温度が所定の温度限界、例えば200℃未満の温度に達するまで、圧力は維持される。
【0024】
摩擦要素は、バックプレートおよび摩擦材料を備える。摩擦要素は、車両のブレーキシステムで有用である。車両のブレーキシステムでは、摩擦要素の摩擦材料が回転するロータに押し付けられて摩擦を生じさせることでロータの回転を停止させるが、摩擦要素は静止したロータを回転させないためにも使用され得る。典型的には、ロータは環状の形状を有する。ロータがディスク形状を有し得ることも想定される。環状体またはディスク体は軸を有する中心を備え、環状体またはディスク体はこの軸に対して垂直な平面内にあり得る。環状体は、一般に、2つの同心曲線により表され得る。例えば、環状体は2つの同心円により表され得る。そして、ディスク体も同様に、中心の周囲の湾曲として表され得る。環状体は、環状体の軸に対して垂直な平面内において、内面および外面を有する。
【0025】
摩擦要素は、一般にブレーキシステムに装着される。その目的は、ブレーキシステムが作動してロータの回転を停止させるとき、摩擦材料とロータの内面またはロータの外面との接触面積を最大にすることである。ブレーキシステムは、2つの摩擦要素を含む場合もある。方は摩擦材料に装着されてロータの内面に押し付けられるものであり、他方は摩擦材料に装着されてロータの外面に押し付けられるものである。特に、2つの摩擦要素は、環状体の軸に対して垂直な平面において同一位置に装着され得る。
【0026】
ロータは回転方向を有する。また、摩擦要素の寸法は、回転方向に対して規定され得る。したがって、摩擦要素、ひいてはバックプレートも、回転方向により規定される「前端部」および「後端部」を有する。前端部から後端部への方向は、摩擦要素のブレーキ方向を規定する。回転方向は円の外周で表される一方、ブレーキ方向は直線である。これにより、ブレーキ方向は回転方向と重ならない。しかしながら、回転方向は、接線方向の回転方向も規定する。一般に、ロータの寸法にもよるが、ブレーキ方向が接線方向の回転方向から20°を超えて逸脱することはない。
【0027】
本方法において、焼結組成物をバックプレートの接続面に塗布する。焼結組成物を表1にまとめる。
【0028】
【表1】
【0029】
すべての焼結組成物の成分は、焼結組成物の重量に基づく百分率(重量%)として提供される。表1は例示的な成分を示すが、各成分について定成分をいくつ使用してもよいことを理解されたい。例えば、摩擦変化金属は1以上の異なる金属を含み得る。また、潤滑剤は1以上の異なる潤滑剤成分を含み得る、等々。本開示の文脈において、重量は、固体成分については乾燥重量であり、液体成分については環境条件下での成分の重量である。重量は質量とも称され得る。焼結の際、加工助剤は失われ、相対含有量はこれに応じて調節される。
【0030】
液体成分を除き、すべての成分は粉末として提供される。粉末は、一般にマイクロサイズである。例えば、粒子は、1μm~100μmの範囲の寸法を有する。粒子は、任意の寸法分布および形状分布を有し得る。概して、本方法で使用する粒子は、本方法で使用する前に、寸法で分別される、例えばふるいにかけられる。また、粒子は、典型的には寸法範囲の上限のみで分類される。しかしながら、本方法で使用する粒子は、別段の記載がない限り、1μmの下限寸法を有することを理解されたい。さらに、寸法による分別は、小径の粒子の除去を伴い得る。これにより、使用される粒子は、大径の粒子と小径の粒子のいずれもが除去された寸法分別物となる。例えば、寸法は、1μm~1000μmであり得る。焼結組成物をバックプレートに塗布する前に、焼結組成物を十分に混合すべきである。
【0031】
焼結組成物は、金属マトリックスを提供する鉄を含む。金属マトリックスは、焼結組成物の主成分である。一般に、焼結組成物は、少なくとも40重量%の鉄、例えば少なくとも45重量%の鉄、例えば少なくとも50重量%の鉄、例えば少なくとも55重量%の鉄、または少なくとも60重量%の鉄を含む。鉄は、典型的には少なくとも99%の純鉄であるが、鉄がさらなる金属または他の合金元素を含むことも想定される。金属マトリックスは、粒子で提供される。粒子の形状は任意である。例えば、粒子は全体として球形であり得る。例えば、金属マトリックスは、80μm~120μmの範囲のメジアン径を有するとともに狭い粒度分布を有する鉄粒子であり得る。金属マトリックスの鉄粒子は、好適には粗面を有し、これに付随して、比表面積が大きい。これは、例えばブルナウアー・エメット・テラー(BET)吸着法に従うN‐吸着を用いた分類による。例えば、鉄粒子は、少なくとも50m/kg、例えば少なくとも75m/kg、または少なくとも100m/kgの比表面積、例えばBET比表面積を有し得る。理論に束縛されるものではないが、本件発明者らは、少なくとも50m/kgの比表面積が、焼結組成物の鉄粒子および他の粒子状成、ならびにバックプレートの接続面に対するより良好な接触を提供するため、接続面上の凸部に対して予備焼結パックがより良好に一体化すると考えている。この効果は、鉄粒子の比表面積を例えば100m/kg以上に増大させると向上する。そして、大きい比表面積の効果により、焼結組成物が銅またはニッケルを含まない場合でも、優れたブレーキ性能が得られると考えられる。さらに、大きい比表面積を有する鉄粒子について、大きい比表面積により、鉄粒子と潤滑剤との混合が改善されると考えられる。
【0032】
焼結組成物は、繊維成分を含む。一般に、繊維成分は、導電性焼結中に繊維状のままである繊維材料である。任意の適切な繊維材料を、繊維成分として使用することができる。例示的な繊維成分には、鋼繊維、黄銅繊維、青銅繊維、鉱物繊維等の金属繊維、炭化ケイ素繊または他の炭化物繊維、酸化ケイ素繊維、酸化アルミニウム繊維等のセラミック繊維、または他の酸化金属繊維、およびこれらの混合体および組合体が含まれる。繊維成分は、一般に粉末と表わされ得る。繊維成分の粒子は、一般に、50μm~500μm、例えば100μm~300μmの範囲の長さ、および1μm~50μmの範囲の厚さおよび幅を有するロッド形状を有する。
【0033】
焼結組成物は、例えば1重量%~5重量%の範囲の摩擦変化金属を含み得る。高い延性および/または軟性を有する任意の金属を摩擦変化金属として使用することができる。金属の混合体、例えば摩擦変化金属の合金も使用できるが、摩擦変化金属は合金成分を含まないことが好適である。ただし、種々の摩擦変化金属を合金化することなく、種々の摩擦変化金属の粒子を混合して焼結組成物に添加してもよい。本件発明者らは、摩擦変化金属中の合金成分は延性を低下させるため、合金化成分を含まない摩擦変化金属の方がブレーキ性能に良好な効果をもたらすと考えている。例示的な摩擦変化金属は、スズ、銅、ニッケル、鉛、およびこれらの混合体および組合体であるが、他の摩擦変化金属も当分野で知られている。ただし、銅およびニッケルは摩擦変化金属として使用しないことが好適である。さらに、アルミニウムは、一般に摩擦変化金属として有用でない。焼結組成物はアルミニウム、すなわち金属アルミニウムを含まないことが好適である。特に好適な摩擦変化金属は、スズである。摩擦変化金属は、好適には、50μm~200μm、例えば80μm~100μmの範囲の寸法を有する粒子として使用される。一般に、摩擦変化金属粒子は、金属マトリックスの鉄粒子よりも小さくすべきである。これにより、金属マトリックスの鉄粒子における摩擦変化金属粒子のより良好な分布が得られる。特に、焼結温度未満の融点を有する摩擦変化金属、例えばスズを使用することが好適である。本方法において焼結温度未満の融点を有する摩擦変化金属、例えばスズまたは鉛を使用する場合、摩擦材料における摩擦変化金属の最適な分布が焼結プロセスにおいて得られ、摩擦要素のブレーキ性能が向上する。これは、摩擦変化金属が焼結プロセスで溶融しない場合、すなわち摩擦変化金属が銅やニッケルである場合には得られない。理論に束縛されるものではないが、本件発明者らは、溶融時に、溶融した摩擦変化金属が金属マトリックスの鉄粒子の表面上で分布するため、大きい比表面積を有する鉄粒子、例えば、少なくとも50m/kg、特に少なくとも100m/kgのBET比表面積を有する鉄粒子を使用することが好適であると考えている。大きい比表面積を有する鉄粒子の表面領域上で溶融した摩擦変化金属が分布することで、摩擦材料のブレーキ性能が向上すると考えられる。したがって、一例において、鉄粒子は、大きい比表面積、例えば、少なくとも50m/kg、特に少なくとも100m/kgのBET比表面積を有し、摩擦変化金属、例えばスズは、焼結温度未満の融点を有する。
【0034】
焼結組成物は、金属リン化物を含む。本文脈において、金属リン化物は、例えば金属原子およびリン原子がイオンの形態にある状態の金属とリンとの化学的化合物である。したがって、焼結組成物に提供される金属リン化物は、好適には、金属を有する化合物の形態にないリンを含有しない。リン化鉄の場合、化合物形態は、FePまたはFePと表わされ得る。使用時に、リン化鉄が通常フェロホスホルと称される形態にないことが特に好適である。一例において、焼結組成物は、フォロホスホルを含まない。特に、フェロホスホルは、製造方法の制御に悪影響を及ぼす不要な汚染物質を含有する。このため、フェロホスホルが焼結組成物に含まれている場合、金属リン化物を使用することにより意図される効果を得ることができない。
【0035】
本件発明者らは、驚くべきことに、金属リン化物が、摩擦材料の製造における焼結プロセスにおいて特に有用な焼結助剤であること、および、金属リン化物により、製造後の摩擦要素に十分なブレーキ特性を付与しつつも、摩擦変化金属を少量で、すなわち最大5重量%、例えば0.5重量%~1.5重量%または1重量%~1.4重量%の範囲で使用することができることを見出した。理論に束縛されるものではないが、本件発明者らは、焼結温度まで加熱されると、金属リン化物のリン原子が鉄マトリックス中に拡散し、摩擦要素のブレーキ特性に有利となるリンの局所領域が形成されると考えている。リンの局所領域を、「リン含有合金」または「リン含有混合体」と称する場合もある。この効果は、導電性焼結が採用された場合に特に顕著となる。理論に束縛されるものではないが、本件発明者らは、以下のように考えている。導電性焼結では、電流が金属リン化物のリンと相互作用することで、特にリン化物の形態にあるリン原子の拡散がさらに促進される。したがって、電流を使用しない加熱を採用した場合よりも、金属リン化物の効果が一層顕著になる。この効果は、摩擦変化金属が焼結中に溶融する際に特に顕著になると考えられるため、摩擦変化金属は、焼結温度よりも低い融点を有することが好適である。さらに、電流が適用されて温度が焼結温度まで上昇することが好適である。ただし、この効果は、他の摩擦変化金属を使用した場合にも得られると考えられる。したがって、焼結組成物は、焼結組成物の2.5重量%~12重量%の範囲、例えば少なくとも4重量%かつ最大で12重量%、例えば5重量%~10重量%、6重量%~9重量%、または7重量%~8重量%の範囲の金属リン化物を含む。金属リン化物は、アルカリ土類金属リン化物、遷移金属リン化物、1種以上のアルカリ土類金属リン化物の組合体または混合体、1種以上の遷移金属リン化物の組合体または混合体、もしくは、アルカリ土類金属リン化物と1種以上の遷移金属リン化物との組合体または混合体であり得る。例示的な金属リン化物は、リン化鉄およびリン化銅、特に、焼結組成物中に別の形態で含まれる金属のリン化物である。金属リン化物は、1μm~500μm、例えば100μm~200μmの範囲の寸法を有する粒子の状態で粒子形態において存在し得る。
【0036】
本件発明者らは、驚くべきことに、摩擦変化金属が焼結温度未満の融点を有する場合、かつ電流が焼結カソードと焼結アノードとの間に適用される場合、摩擦変化金属の分布がさらに向上し、これにより摩擦材料に摩擦変化金属の摩擦効果を付与しつつも、摩擦変化金属を1.5重量%以下の量で使用することが許容されることを見出した。したがって、一例において、摩擦変化金属は、焼結温度未満の融点を有する。例えば、摩擦変化金属はスズであり、焼結組成物中に1重量%~1.4重量%の範囲で存在する。特に、摩擦変化金属、例えばスズは、80μm~100μmの範囲の寸法を有する粒子として存在し得る。鉄粒子が少なくとも50m/kg、特に少なくとも100m/kgのBET比表面積を有することが、さらに好適である。
【0037】
また、焼結組成物に摩擦変化金属が必要ないことも想定される。焼結組成物が摩擦変化金属を含まない場合、他の成分の含有量は、これに応じて調節される。例示的な焼結組成物を表2に示す。
【0038】
【表2】
【0039】
理論に束縛されるものではないが、本件発明者らは、金属リン化物が、例えば4重量%~12重量%、例えば5重量%~12重量%または6重量%~12重量%の範囲で存在する場合、本発明の方法において摩擦変化金属を用いずに製造した摩擦要素、例えばブレーキパッドは、適切なブレーキ特性を得ることができると考えている。これは、本方法が導電性焼結を伴う場合に、特に関連する。
【0040】
焼結組成物は、潤滑剤、特に固体潤滑剤を含む。当分野で知られた任意の固体潤滑剤を焼結組成物に使用することができる。例示的な固体潤滑剤は、グラファイト、および金属硫化物、例えば二硫化タングステンおよび二硫化モリブデンである。種々の潤滑剤の混合体または組合体を採用することも想定される。好適な潤滑剤は、グラファイトベースの潤滑剤である。したがって、焼結組成物は、グラファイト成分を含み得る。グラファイトでは、炭素原子が六角形構造で配列されており、これが潤滑効果をもたらすと考えられる。グラファイトは、好適な潤滑剤である。潤滑剤は、好適には粒子として使用される。例えば、潤滑剤は、100μm~600μmの範囲の寸法、例えば150μm~350μmの範囲のメジアン径を有するグラファイト粒子であり得る。金属硫化物、例えば二硫化タングステンおよび二硫化モリブデンは、典型的にはグラファイト粒子よりも小さい。例えば、潤滑剤は、100μm未満、例えば最大で60μm、例えば10μm~60μmの範囲の寸法を有する二硫化タングステンまたは二硫化モリブデンの粒子であり得る。潤滑剤は、焼結組成物の6重量%~23重量%の範囲、例えば13重量%~19重量%の範囲の量で存在する。
【0041】
焼結組成物は、充填剤をさらに含み得る。当分野で知られた任意の充填剤を焼結組成物に使用することができる。例示的な充填剤は、非グラファイト炭素、珪藻土、灰、金属フッ化物、金属硫酸塩、およびこれらの組合体である。充填剤は、典型的には、50μm~200μmの範囲の寸法を有する粒子である。充填剤は、焼結組成物の1重量%~5重量%の範囲の量で存在し得る。非グラファイト炭素成分を、「コーク」または「カーボンブラック」と称する場合もある。
【0042】
焼結組成物は、焼結組成物の3重量%~20重量%の範囲、例えば10重量%~15重量%の範囲の量で存在する研磨剤を含む。研磨剤は、金属および/またはメタロイドの酸化物、炭化物または窒化物の粒子、およびこれらの混合体および組立体を含む。したがって、例えば、研磨剤は、アルミニウム、ケイ素、ジルコニウムの酸化物、またはケイ素の炭化物、およびこれらの組合体を含み得る。ただし、他の研磨剤も当業者に容易に入手可能である。特に、研磨剤は、研磨剤の材料の硬度に基づいて分類され得る。一定限度の硬度を有する材料は、本文脈において充填剤または研磨剤であり得る。例えば、金属フッ化物および金属硫酸塩を、本発明の焼結組成物に使用することができる。ここで、それらは、充填剤または研磨剤とみなされ得る。したがって、充填剤および研磨剤の総量は、概して6重量%~28重量%の範囲である。例えば、焼結組成物は、6重量%~28重量%の範囲で存在する研磨剤を含み得る。この研磨剤は、金属酸化物、金属炭化物、金属フッ化物、金属硫酸塩、およびこれらの組み合わせから選択される。一例において、研磨剤は、酸化アルミニウム、例えば10μm~30μmの範囲の寸法を有する酸化アルミニウム粒子、酸化ケイ素、例えば20μm~50μm、および/または100μm~200μmの範囲の寸法を有する酸化ケイ素粒子、および酸化ジルコニウム、例えば50μm~150μmの範囲の寸法を有する酸化ジルコニウム粒子を含む。酸化物は、純粋な酸化物、または混合酸化物、例えばジルコニウムとケイ素の混合酸化物、例えば酸化ジルコニウムが混合酸化物の少なくとも50重量%を構成する混合酸化物であり得る。例えば、潤滑剤は、天然に存在する鉱物酸化物、例えば、主な非酸素成分としてジルコニウムとケイ素を含み、任意で他の非酸素成分、例えば、ハフニウム、鉄、チタン、および他の成分も含む鉱物酸化物であり得る。
【0043】
焼結組成物の粉末成分は混合されるが、混合を補助すべく、加工助剤、例えば導電性焼結中に蒸発する液体が、焼結組成物の乾燥重量の0.2重量%~2重量%、例えば0.6重量%~1重量%の量で添加される。加工助剤が焼結組成物に添加された場合、本開示の文脈において、焼結組成物を焼結混合体と称する場合もある。当業界で知られる任意の加工助剤が使用できるが、加工助剤は、好適にはミネラルオイル、例えば、例えば8~16個の炭素鎖のアルカンまたはシクロアルカン、特に10~13個の炭素原子を有するアルカンを有するパラフィンオイルである。加熱時に、例えば温度を焼結温度まで上昇させる過程で、または少なくとも焼結温度において、加工助剤は焼結組成物から蒸発する。
【0044】
バックプレートおよび摩擦材料は各々厚さを有するが、バックプレートおよび摩擦材料の厚さは摩擦要素の用途により異なる。例えば、ブレーキシステムが使用される車両が重くなるほど、摩擦要素、特に摩擦材料は厚くなる。例えば、オートバイ用のディスクブレーキシステムの場合、バックプレートの厚さは、典型的には1mm~10mm、例えば2mm~5mmの範囲である。摩擦材料の厚さは、典型的には1mm~15mm、例えば2mm~10mmの範囲である。他の関連車両は、電動自転車、例えば電動マウンテンバイクまたは電動カーゴバイク、全地形対応車(ATV)、ユーティリティ・タスク・ビークル(UTV)である。
【0045】
摩擦材料は、ブレーキ方向においてバックプレートの前端部と後端部との間における長さと、ロータが環状体の形状を有する場合に環状体の2つの同心円状の曲線により全体として規定される幅と、を有する。摩擦要素がオートバイ用のディスクブレーキシステムに使用される場合、摩擦要素の長さは、典型的には20mm~150mmの範囲にあり、摩擦材料の幅は、典型的には20mm~100mmの範囲にある。
【0046】
摩擦要素の摩擦材料は、焼結プロセスにおいて調製される。バックプレートの材料は、焼結プロセスで利用される温度に耐えるように選択され得る。焼結プロセスは、電流を焼結スタックに適用するステップを伴うため、バックプレートは導電性を有するべきである。バックプレートを、導電性バックプレートと称する場合もある。例えば、バックプレートは、金属、セラミック材料、または金属とセラミック材料との複合材料から作製される。また、バックプレートは、バックプレートの材料がいずれであっても、コーティング、例えば金属コーティングを有し得る。例えば、バックプレートは、鋼、ステンレス鋼、真鍮、青銅等の合金製であり得るとともに、別の金属、例えば亜鉛でコーティングされ得る。好適な合金は、熱間圧延鋼、例えば欧州規格EN10025に記載のような任意の鋼である。熱間圧延鋼を、低炭素マンガン鋼と称する場合もある。本件発明者らは、驚くべきことに、バックプレートが熱間圧延構造鋼製である場合、本開示の導電性焼結プロセスにおいて、摩擦材料とバックプレートとの特に緊密な一体化が得られることを見出した。特に、電圧が0V~400Vの範囲にあり、かつ電流が0A~300Aの範囲の場合、バックプレートとのより緊密な一体化が得られる。理論に束縛されるものではないが、本件発明者らは、熱間圧延構造鋼の導電性と併せた熱膨張係数、および摩擦材料の組成によって、より緊密な一体化がもたらされると考えている。
【0047】
バックプレートは、複数の凸部を備える接続面を有する。凸部は、接続面から延びるとともに、接続面に対する角度を形成する。角度は、好適には、摩擦要素のブレーキ方向において規定される。角度は、バックプレートの前端部からら20°~160°の範囲に規定され得る。例えば、角度は、60°~120°の範囲、例えば80°~100°の範囲にあり得る。一例において、角度は約90°である。角度が60°~80°の範囲の場合、角度がこの範囲外にある場合よりも、摩擦材料はバックプレートとより緊密に一体化される。
【0048】
バックプレートの接続面は、複数の凸部を備える。凸部がブレーキ方向において複数列に配列されること、および、接続面がブレーキ方向に対して垂直な方向において複数列の凸部を備えることが好適である。ブレーキ方向における1つの列の複数の凸部の位置が、ブレーキ方向において隣の列における複数の凸部と比較してずれていることが特に好適である。したがって、一例において、接続面は、ブレーキ方向において複数の平行な列を有し、これらの列は、好適には、ずらされている。接続面に列をずらした凸部を有することにより、焼結プロセスにおいて、金属マトリックスとバックプレートとの一体化が向上する。
【0049】
全体として、各凸部は、ブレーキ方向に垂直な幅であって、摩擦材料の厚さの20%~100%の範囲の幅を有する。ブレーキ方向における幅も摩擦材料の厚さの20%~100%の範囲にあってもよい。しかし、一例において、ブレーキ方向における幅は、ブレーキ方向に対して垂直な方向における幅よりも小さい。
【0050】
凸部は、接続面からの長さを有して接続面から延びる。凸部の長さは、典型的には、摩擦材料の厚さの20%~100%の範囲であるが、この範囲外の長さであってもよい。凸部の長さが摩擦材料の厚さの50%~80%の範囲の場合、かつ特に凸部の角度が60°~120°の範囲、特に80°~100°の範囲の場合、焼結プロセスにおいて、金属マトリックスとバックプレートとが良好に一体化する。
【0051】
一例において、接続面は、ブレーキ方向において凸部から延びる溝を備える。接続面は、好適には、複数の凸部に対して1の溝、特に各凸部に対して溝を有している。溝は、凸部からバックプレートの前端部または後端部に向かって、例えばブレーキ方向またはブレーキ方向とは反対の方向において延び得る。概して、各溝は、摩擦材料の厚さの10%~30%の範囲の深さを有する。各溝は、関連する凸部から計算されるように、関連する凸部の長さの50%~80%の範囲の長さを有する。溝は、任意の形状を有し得るが、特定の例において、溝は接続面において三角形状を有する。三角形状は、広い方の端部が関連する凸部に隣接し、狭い方の端部がバックプレートの前端部または後端部に向くものである。接続面が各凸部に対して溝を有すること、さらに、複数の凸部がブレーキ方向において列をずらして配置されることが好適である。さらなる例において、接続面は、ブレーキ方向における複数の第1列の凸部であって、溝が各凸部からバックプレートの前端部に向けて延びる第1の複数列の凸部と、ブレーキ方向における第2の複数列の凸部であって、溝が各凸部からバックプレートの後端部に向けて延びる第2の複数列の凸部とを有し、第1の複数列と第2の複数列とは、ブレーキ方向に対して垂直な方向において交互となっている。
【0052】
バックプレートの接続面が凸部に加えて溝を有する場合、金属マトリックスの鉄粒子が溝を充填する。焼結組成物は鉄リン化物を含有するため、焼結プロセスにおける電流が、金属マトリックスと接続面との一体化をより効果的に補助する。これにより、接続面が溝を有する場合、摩擦材料のより強固な一体化が得られる。
【0053】
バックプレートの凸部は、好適には、バックプレートと同一材料から作製される。一例において、本方法は、鋼、ステンレス鋼、真鍮、青銅等の金属または合金から作製されたバックプレートを提供するステップと、複数の溝を接続面に切削加工するステップとを備える。切削加工は、接続面の頂点を始点とし、切削ツールを、バックプレートの後端部または前端部に向けて溝を切削加工しつつ移動させる。溝を、頂点から幅および深さを増大させつつ凸部部位まで切削加工、ここで切削加工を停止する。これにより、三角形状の溝が接続面において頂点と凸部部位との間に提供される。接続面の金属は、凸部部位において接続面に付着したままである。金属を曲げることにより、凸部が凸部部位に形成され、こうして凸部が関連する溝とともに形成される。複数の溝を接続面においてブレーキ方向において切削加工することが好適である。さらに、複数の列であって、各々が複数の溝を有する列を、バックプレートのブレーキ方向において切削加工する、例えば同時に切削加工することが好適である。またさらに、複数の溝をバックプレートの前端部から後端部に向けて切削加工すること、および複数の溝をバックプレートの後端部から前端部に向けて切削加工することが好適である。したがって、接続面は、ブレーキ方向における複数の第1列の凸部であって、溝が各凸部からバックプレートの前端部に向けて延びる第1の複数列の凸部と、ブレーキ方向における第2の複数列の凸部であって、溝が各凸部からバックプレートの後端部に向けて延びる第2の複数列の凸部とを有し得る。そして、第1の複数列と第2の複数列とは、ブレーキ方向に対して垂直な方向において交互となっている。
【0054】
このようにして形成された凸部は、好適には60°~120°、例えば80°~100°の範囲の角度を有する。各凸部は、形状において異なり得る。例えば、凸部は、直線状であっても、屈曲状であっても、フックの形状を有していてもよい。さらに、切削加工により、溝および特に凸部も粗面となる。本件発明者らは、驚くべきことに、凸部ならびに溝の粗面および様々な形状により、金属マトリックスと接続面とのより緊密な相互作用が焼結プロセスにおいて得られることを見出した。これは、上述のように、接続面が切削加工により複数のずれた溝を有する場合にさらに顕著となる。理論に束縛されるものではないが、本件発明者らは、粗面により金属マトリックスとバックプレートの材料とが良好に接触するため、摩擦材料と接続面とがより良好に一体化すると考えている。この効果は、焼結組成物にリン化鉄が含まれ、焼結中に電流を適用することによりさらに顕著になる。
【0055】
焼結混合体をバックプレートの接続面に塗布し、焼結混合体を成形して、バックプレート上に予備焼結パックを有する中間摩擦要素を形成する。成形は、バックプレート上の焼結混合体に300kg/cm~3300kg/cmの範囲、または29MPa~324MPaの範囲、または294bar~3236barの範囲の圧力を加えることにより行われ得る。圧力を、典型的には、少なくとも10秒の成形時間、例えば、10秒~10分間の成形時間に亘って維持する。焼結組成物が焼結温度未満の融点を有する摩擦変化金属を含む場合、成形ステップにおける温度は、摩擦変化金属の融点未満であることが好適である。
【0056】
さらに、導電性焼結は、雰囲気が制御可能なチャンバや炉等で実施することが好適である。導電性焼結は、大気圧に比較して低い圧力で、例えば真空で実施され得る、および/または、雰囲気の組成を、例えば酸化的に不活性な雰囲気に制御する。例えば、N中のHの雰囲気を5vol%のH、95vol%のN等とする。
【0057】
本開示の任意の実施形態は、本開示の任意の態様において用いられ得る。そして、特定の実施形態に対する利点は、実施形態が特定の態様において用いられる場合にも同様に適用される。
【0058】
以下に、実施例を援用するとともに概略図面を参照しつつ、本開示をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1図1は、本開示の摩擦要素を示す。
図2図2は、本開示の摩擦要素を有するブレーキを備えたオートバイの車輪の写真を示す。
図3図3は、本開示の摩擦要素を製造するためのバックプレートを示す。
図4図4は、本開示の中間摩擦要素を示す。
図5図5は、本開示の焼結スタックを示す。
図6図6は、本開示の実施形態の温度プロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0060】
本開示は、図面に示す単数または複数の実施形態に限定されない。したがって、添付の特許請求の範囲で記載された特徴部の後に参照符号が付されていても、このような符号は、特許請求の範囲の理解のしやすさだけを目的として含まれるものであり、特許請求の範囲を限定するものではまったくないことを理解されたい。
【0061】
本開示は、摩擦要素1の製造方法に関し、図1に示されている。摩擦要素1は、バックプレート2と摩擦材料11とを有している。図2は、摩擦要素1を有するブレーキアセンブリ32を備えたオートバイの車輪3の写真を示す。したがって、図2は、タイヤ31とブレーキアセンブリ32とを有する車輪3を示している。摩擦要素1は、図2では見えないが、ブレーキアセンブリ32に配置されている。ロータ33が回転しているとき、ブレーキアセンブリ32の摩擦要素11は、ロータ33に対して押し付けられて摩擦を生じさせることによりロータの回転を停止させる。摩擦要素1およびバックプレート2は、摩擦材料11が使用されるロータ33の回転方向により規定される前端部12および後端部13を有している。
【0062】
摩擦要素1を、任意の標準試験を用いて試験することができる。例えば、摩擦要素1を、ISO6312による剪断試験またはISO6310による圧縮性試験に供することができる。ISO6312は、一般に、ディスクブレーキパッドアセンブリまたはドラムブレーキシューアセンブリにおけるライニング材とキャリアとの間の結合強度を分析する。ISO6310は、一般に、荷重および温度によるブレーキライニングまたはブレーキパッドアセンブリの圧縮変位、およびライニングの熱膨張や熱成長を分析する。摩擦要素1等のブレーキパッドを、ダイナモメータ試験で分析してもよい。例えば、SAE J2522試験(自動車技術会、SAEインターナショナルによる定義)は、油圧式ブレーキ作動装置を備えた自動車の圧力、温度および速度に関する摩擦材料の有効性挙動を評価する。SAE J2522の主たる目的は、同一条件下で摩擦材料を比較することにより、試験されるブレーキパッドの比較を可能にすることである。
【0063】
例1
摩擦変化金属粉末、繊維成分粉末、リン化金属粉末、潤滑剤粉末、充填剤粉末、研磨剤粉末、加工助剤、および残部の鉄粉を混合して焼結組成物を調製した。具体的には、焼結組成物は58重量%の鉄粉を含み、摩擦金属は1.2重量%存在するスズであった。鉄粉は、約90μmのメジアン粒径を有していた。また、ブルナウアー・エメット・テラー(BET)吸着法に従ってN‐吸着を用いて求めた比表面積は、約75m/kgであった。スズは、約80μmのメジアン径を有する粒子として得た。スズ粒子は、全体として非多孔質であった。混合体には、約5重量%のリン化鉄が含まれていた。
【0064】
約200μmのメジアン径を有するグラファイト粒子を、潤滑剤として約15重量%添加した。
【0065】
約100μmのメジアン径を有する鉱物ジルコン粒子を、研磨剤として約12重量%使用した。
【0066】
珪藻土を、充填剤としてさらなる変更なく3重量%提供および適用した。
【0067】
約200μmの平均長さおよび約25μmの幅を有する鋼繊維を、約5重量%添加した。
【0068】
1重量%のパラフィンオイルを加工助剤として添加する前に、粉末状成分を混合した。そして、パラフィンオイルを含む成分を十分に混合した。
【0069】
図3に示すように、熱間圧延された低炭素マンガン鋼から作製されたバックプレート2を提供した。バックプレート2は、約4mmの厚さ、および4cm×4cmの寸法を有し、装着リング14を含むものであった。バックプレート2は、本方法において最終的に製造される摩擦要素1の前端部12および後端部13を規定するものであった。図1も参照のこと。
【0070】
接続面21を凸部22により提供した。凸部22は、接続面21に溝23を切削加工することで得た。これにより、接続面21は、全体として三角形状の溝23を有した。三角形状は、広い方の端部が関連する凸部22に隣接し、狭い方の端部がバックプレート2の前端部12または後端部13に向くものであった。凸部22は、接続面21からほぼ直角に延びるものであった。
【0071】
焼結組成物を約4mm厚さの層として接続面に塗布し、バックプレート2を焼結組成物とともに万力に適用し、約2000kg/cmで、約2分間の成形時間に亘って加圧し、図4に示すような予備焼結パック41を有する中間摩擦要素4を形成した。
【0072】
中間摩擦要素4を焼結スタック100に適用した。焼結スタック100の概略図を、複数の中間摩擦要素4とともに図5に示す。図5は縮尺通りに描かれたものではない。具体的には、6つの中間摩擦要素4を各列が有する4つの列を、導電材料101としての炭素繊維強化炭素(CFC)からなる焼結アソード51、およびCFCからなる導電材料101としてのさらなる層に適用した。そして、中間摩擦要素4からなる別のさらなる層を導電材料101に適用した。導電材料101は、約3cmの厚さを有していた。焼結スタック100は、導電材料101としてのCFCからなる層により隔てられた合計10の中間摩擦要素4からなる層を含んでいた。焼結アノード51と焼結カソード52との間の圧力、ひいては中間摩擦要素4の圧力は、100kg/cmに設定した。
【0073】
焼結アノード51および焼結カソード52を、電源102に電気的に接続した。図5において、電源102は+および-を有して示されているが、電源102は、直流電流、パルス直流電流、または交流電流を提供してもよい。焼結スタック100は、3つの熱電対103を含んでいた。図5は、2つの熱電対103を示しているが、具体的な焼結スタック100において任意の個数の熱電対103が使用され得ることを理解されたい。具体的には、焼結スタック100における中央の導電材料101が、熱電対103を含み、2つのさらなる熱電対が焼結アノード51および焼結カソード52の付近でそれぞれ使用された。熱電対103を電源102およびデータ処理ユニット(図示せず)に電気的に接続して、熱電対103から記録された温度から電源102の電力を制御するためのフィードバックループを規定した。
【0074】
焼結スタックをキャビネット内に収容した。キャビネットは、キャビネットの雰囲気を制御するためのガス入口およびガス出口を有するものであった。キャビネット、ガス入口、およびガス出口は図5に示さない。焼結スタックに圧力を適用した後、キャビネット内の雰囲気を、5重量%のHおよび95重量%のNからなる酸化不活性雰囲気に置換した。
【0075】
焼結温度を835℃に設定し、電源102から交流電流を適用して焼結スタック100の温度を上昇させた。交流電流は、約50Hzの周波数を有し、電流は約380Vの電圧で制御可能であった。温度プロファイルを熱電対103を使用してモニタリングした。これを図6に示す。図6は、Y軸に記録された温度および設定温度を示し、X軸はプロセスのログポイント数を示す。温度を40秒毎に記録した。各温度測定値は、図6におけるログポイントを表す。具体的には、温度を230℃、すなわちスズの融点近くまで上昇させて、230℃で約5分間保持した後、温度を焼結温度835℃まで上昇させた。焼結温度を約1.5時間維持した後、焼結スタック100を冷ました。積極的な冷却は行わなかったが、電源102を150℃の温度に設定して焼結スタック100を徐々に冷ました。したがって、図6は、設定温度「TempSet」、3つの熱電対103が測定した温度「Temp1」、「Temp2」、および「Temp3」をそれぞれ示す。Temp1は、中央の導電材料101の熱電対103が記録した温度であり、Temp2およびTemp3は、他の熱電対103が記録した温度である。また、図6は、上限温度「UTLTemp」および下限温度「LTLTemp」も示す。上限温度および下限温度は、加熱中および温度を焼結温度に維持するステップ中にプロセス温度が逸脱してはならない温度値を示すようプロセスに設定した。図6から明らかなように、Temp1、Temp2、Temp3のすべては、加熱ステップおよび温度を焼結温度に維持するステップにおいて、設定温度TempSet付近にあった。特に、記録された温度は、ほとんど設定温度から逸脱しなかった。焼結スタック100が冷える間に、測定温度は設定温度プロファイルから逸脱したが、この逸脱は製造方法による結果に影響を及ぼすものではない。
【0076】
例2
例1で製造した摩擦要素を、KTM社製1290 Super Duke GTのブレーキ、およびHonda社製CBR650FAバイクのブレーキに装着し、本開示の摩擦要素の主観的評価をデンマークのスベンボルにあるSBS Friction A/Sから入手したSBS-SI-90HH(HS)として知られる市販のブレーキパッドを取り付けたブレーキと比較した。主観的評価を表3にまとめる。ここで、それぞれ「KTM」はKTM社製1290 Super Duke GTであり、「Honda」はHonda社製CBR650FAバイクである。また、それぞれ「HS」は、SBS-SI-90HH(HS)ブレーキパッドであり、「Ex.1」は例1で調製した摩擦要素である。摩擦要素をパラメータ範囲において格付けし、1~5の範囲の主観的スコアを付した。5が最高値である。
【0077】
【表3】
【0078】
表3から明らかなように、例1の摩擦要素は、いずれのバイクでも市販のブレーキパッドを上回るものであった。
【0079】
1 摩擦要素
11 摩擦材料
12 前端部
13 後端部
14 装着リング
2 バックプレート
21 接続面
22 凸部
23 溝
3 ホイール
31 タイヤ
32 ブレーキアセンブリ
33 ロータ
4 中間摩擦要素
41 予備焼結パック
51 焼結アノード
52 焼結カソード
100 焼結スタック
101 導電材料からなるプレート
102 電源
103 熱電対
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】