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特表2025-501486免疫賦活MRNA組成物及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-22
(54)【発明の名称】免疫賦活MRNA組成物及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 48/00 20060101AFI20250115BHJP
   C12N 15/24 20060101ALI20250115BHJP
   C12N 15/19 20060101ALI20250115BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20250115BHJP
   C12N 15/88 20060101ALI20250115BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20250115BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20250115BHJP
   A61K 31/7115 20060101ALI20250115BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20250115BHJP
   A61K 38/19 20060101ALI20250115BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20250115BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250115BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250115BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
A61K48/00
C12N15/24 ZNA
C12N15/19
C12N15/12
C12N15/88 Z
A61K31/7088
A61K31/7105
A61K31/7115
A61K45/00
A61K38/19
A61K38/20
A61P35/00
A61P43/00 121
A61P37/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535268
(86)(22)【出願日】2022-12-22
(85)【翻訳文提出日】2024-06-12
(86)【国際出願番号】 EP2022087434
(87)【国際公開番号】W WO2023118411
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】21217374.4
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520265930
【氏名又は名称】イーザアールエヌーエー イムノセラピーズ エンヴェー
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100183656
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100224786
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 卓之
(74)【代理人】
【識別番号】100225015
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 彩夏
(74)【代理人】
【識別番号】100231647
【弁理士】
【氏名又は名称】千種 美也子
(72)【発明者】
【氏名】ランボレズ,フローレンス
(72)【発明者】
【氏名】ブラバンツ,エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】フィルテジェンス,ジェシカ
(72)【発明者】
【氏名】デ コーカー,ステファン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084AA19
4C084DA01
4C084DA18
4C084MA02
4C084MA38
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB26
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
(57)【要約】
本発明は、免疫療法の分野に位置する。より具体的には、本発明がIL-21等の機能的免疫賦活タンパク質をコードし、共賦活分子をコードし、場合によりサイトカイン、及び/又はケモカインと組み合わせて、体内に存在する腫瘍細胞に対する宿主免疫応答を増強する、1つ又は複数の核酸分子の組成物に関する。本発明はさらに、腫瘍及び/又は癌疾患に罹患している患者の治療に使用するための核酸含有組成物又は医薬製剤に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能的免疫賦活タンパク質IL-21をコードし、及び、共賦活分子をコードする、1つ又は複数の単離された非ウイルス核酸分子を含む組成物。
【請求項2】
前記共賦活分子が、4-1BBL, OX40L, ICOS リガンド,及び CD40L含むリストから選択される、又は 4-1BBLである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
サイトカイン及び/又はケモカインをコードする1つ以上の核酸分子をさらに含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
- 前記サイトカインは、IL-7, IL-12, IL-18, IFNlambda(IFNラムダともいう), IL-15sushi, IL-23, I型IFN, II型 IFN, III型 IFNを含むリストから選択される、
及び/又は、
- 前記ケモカインは、CCL19, CCL21, CXCL9, CXCL10, CCL5 及びXCL1を含むリストから選択される、
請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
標的特異的抗原及び/又はチェックポイント阻害剤をさらに含む、請求項1又は4のいずれか一項に記載の組成物。(注:マルチマルチ)
【請求項6】
前記標的特異的抗原が、腫瘍関連抗原又はネオ抗原である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記チェックポイント阻害剤が、PD-1, PD-L1, CTLA4, TIGIT, TIM3, LAG6 及び VISTAの阻害分子を含むリストから選択される、又は
PD-1, PD-L1, 若しくは CTLA4の阻害分子である、
請求項5に記載の組成物
【請求項8】
以下の組み合わせのいずれかをコードする1つ以上の単離された非ウイルス性核酸分子を含む、請求項1に記載の組成物:
- IL-21, 4-1BBL及びIL-7;
- IL-21, 4-1BBL及びIL-15sushi;
- IL-21, 4-1BBL及びIL-18;又は
- IL-21, 4-1BBL及びIFNラムダ。
【請求項9】
前記1つ又は複数の核酸分子が、線状又は環状核酸である、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。(注 マルチマルチ)
【請求項10】
前記1つ又は複数の核酸分子が、RNA及びDNA、RNA、及びmRNAを含む群から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。(注 マルチマルチ)
【請求項11】
前記1つ以上の核酸分子が、5'CAP、ポリ(A)テール及び/又は修飾ヌクレオシドの一以上を含む、又は、
前記1つ以上の核酸分子が、5'CAP、ポリ(A)テール及び/又はN1-メチルシュードウリジンの1つ以上を含む、
請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。(注 マルチマルチ)
【請求項12】
前記1つ又は複数の核酸分子が、ナノ粒子、脂質ナノ粒子若しくはポリマーナノ粒子、又は脂質ナノ粒子中に封入された裸の核酸分子又は核酸の形態である、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。(注 マルチマルチ)
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物を含む、脂質ナノ粒子。(注 マルチマルチ)
【請求項14】
請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物又は請求項13に記載の脂質ナノ粒子、及び少なくとも1つの薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む、医薬製剤。(注 マルチマルチ)
【請求項15】
注射に使用するためのものである、又は、静脈内、腫瘍内、皮内、腹腔内、筋肉内若しくは節内投与するためのものである、又は、腫瘍内投与に使用するためのもの、である、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物若しくは請求項13に記載の脂質ナノ粒子若しくは請求項14に記載の医薬製剤。(注 マルチマルチ)
【請求項16】
ヒト又は獣医学における使用のための、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物若しくは請求項13に記載の脂質ナノ粒子若しくは請求項14に記載の医薬製剤。(注 マルチマルチ)
【請求項17】
放射線療法、標的療法、及び化学療法を含む標準治療癌療法と組み合わせて使用するための、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物若しくは請求項13に記載の脂質ナノ粒子若しくは請求項14に記載の医薬製剤。(注 マルチマルチ)
【請求項18】
細胞増殖性障害の予防及び/又は治療に使用するための、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物若しくは請求項13に記載の脂質ナノ粒子若しくは請求項14に記載の医薬製剤。(注 マルチマルチ)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫療法の分野に位置する。
より具体的には、本発明が体内に存在する腫瘍細胞に対する宿主免疫応答を増強するための、IL-21等の機能的免疫賦活タンパク質及び共賦活分子を、場合によりサイトカイン及び/又はケモカインと組み合わせて、コードする1つ以上の核酸分子の組成物に関する。
【0002】
本発明はさらに、腫瘍及び/又は癌疾患に罹患している患者の治療に使用するための核酸含有組成物又は医薬製剤に関する。
【背景技術】
【0003】
腫瘍細胞に対する免疫応答を活性化することを目的とする免疫療法は癌治療に革命をもたらし、以前は治療不可能であった患者に臨床的利益を提供している。免疫療法の長期的な利益は、癌関連抗原を認識する記憶T細胞の誘導、拡大及び維持を必要とする。
【0004】
チェックポイント阻害剤(CPI) -CTLA-4及びPD-1/PD-L1等のT細胞阻害性受容体を遮断する抗体-の全身送達は、既存のT細胞を再活性化/拡大することによって持続的な臨床応答をもたらしたが、多くの腫瘍はそれらをCPI抵抗性にする免疫抑制ストラテジーズをもたらし、T細胞免疫の増強をもたらす相補的ストラテジーズの開発を必要とする。
【0005】
最適なT細胞応答の誘導は、共賦活リガンド及びサイトカイン又はケモカインによって媒介されるさらなるT細胞活性化シグナルと組み合わせて、T細胞受容体(TCR)に対する抗原提示を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ウイルスベクター、プラスミドDNA及びメッセンジャーmRNAを含む核酸ベースのアプローチは、腫瘍微小環境においてこれらの免疫賦活タンパク質を局所的にコードするために使用されており、腫瘍床に存在する抗原に対する全身性免疫応答の誘導及び増幅をもたらす。
【0007】
免疫賦活タンパク質をコードするこれらの核酸は、又、ワクチン接種の文脈において、同時送達された抗原に対するT細胞応答の生成を促進するために使用され得る。
【0008】
個々の免疫賦活タンパク質はあるレベルの抗腫瘍効力を誘発することができるが、複数の免疫賦活性経路は、治療的利益を増強するためには、同時に標的化される必要がある。
【0009】
しかしながら、最適な有効性を得るためにどの要因を組み合わせるかは、依然として大きな課題であり、これが本発明の主題である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、少なくとも機能的免疫賦活タンパク質IL-21をコードする核酸を含む組成物の(局所)送達が腫瘍減少又は腫瘍増殖遅延をもたらす全身性免疫応答を誘導することを立証した。
【0011】
さらに、機能的免疫賦活タンパク質IL-21をコードする核酸を含む前記組成物と、共賦活分子、サイトカイン、及び/又はケモカインの1つ以上との組み合わせは、観察された効果をさらに高める。
【0012】
本発明は、特に、機能的免疫賦活タンパク質IL-21をコードし、共賦活分子をコードする、1つ又は複数の単離された非ウイルス核酸分子を含む組成物に関する。
【0013】
特定の実施態様では、前記組成物は、サイトカイン及び/又はケモカインをコードする1つ以上の核酸分子をさらに含み得る。
【0014】
本発明は、このような組成物が、とりわけ、送達後の腫瘍体積を減少させることによって抗腫瘍効果を誘導/増強することができ、したがって、抗腫瘍免疫療法のための有望な新しいアプローチを形成するという発明思想の証明を提供する。
【0015】
したがって、本発明は、少なくとも1つの核酸、特に、腫瘍微小環境を修飾するタンパク質をコードするmRNA又はDNA分子の導入を含む、組成物の免疫賦活特性を改善するための溶液を提供し、この溶液は、コードされる機能的免疫賦活タンパク質が、少なくともIL-21であり、場合により共賦活分子、サイトカイン、及び/又はケモカインの1つ以上と組み合わされることを特徴とする。
【0016】
特定の実施態様では、組成物は、IL-21アイソフォーム、特にIL-21アイソフォーム1及びIL-21アイソフォーム2、より具体的にはIL-21アイソフォーム1を含むリストから選択されるIL-21アイソフォームをコードする核酸分子を含む。
【0017】
特定の実施態様では、組成物は、標的特異的抗原、及び/又はチェックポイント阻害剤のうちの1つ又は複数をさらに含む。
【0018】
いくつかの実施態様では、組成物は、4-1BBL、OX40L、ICOSリガンド及びCD40Lを含むリストから選択される共賦活分子を含む。
【0019】
特定の実施態様では、組成物は、IL-7、IL-12、IL-18、IFNラムダ、IL-15sushi IL-23、I型IFN、II型IFN、III型IFNを含むリストから選択されるサイトカインを含む。
【0020】
別の実施態様では、組成物は、CCL19、CCL20、CCL21、CXCL9、CXCL10、CCL4、CCL5及びXCL1を含むリストから選択されるケモカインを含む。
【0021】
特定の実施態様では、組成物は、腫瘍関連若しくは腫瘍特異的抗原又はネオ抗原等の標的特異的抗原を含む。
【0022】
前記標的特異的抗原は、標的細胞(a)から単離された全mRNA、標的細胞(a)の1つ以上の特異的標的mRNA分子、標的細胞(a)のタンパク質溶解物、標的細胞(a)由来の特異的タンパク質、又は合成標的特異的ペプチド若しくはタンパク質、及び標的特異的抗原若しくはその由来ペプチドをコードする合成mRNA若しくはDNAのいずれか1つに由来し得る。
【0023】
特定の実施態様では、本発明の組成物は、チェックポイント阻害剤、例えば、特にPD-1、PD-L1、CTLA4、TIGIT、TIM3、LAG-3及びVISTAの阻害分子;好ましくはPD-1、PD-L1又はCTLA4の阻害分子を含むリストから選択されるチェックポイント阻害剤ポリペプチドを含む。
【0024】
本発明の方法において使用される免疫賦活因子の好ましい組み合わせは、IL-21及び4-1BBLである。
【0025】
他の好ましい実施態様では、IL-21、4-1BBL及びIL-7免疫賦活分子の組み合わせが使用される。
【0026】
さらに他の好ましい実施態様では、IL-21、4-1BBL及びIFNlamda免疫賦活分子の組み合わせ;又はIL-21、4-1BBL及びIL-18の組み合わせが使用される。
【0027】
他の好ましい実施態様では、IL-21、4-1BBL及びIL-15の組み合わせが使用される。他の好ましい実施態様では、IL-21、4-1BBL及びIL-15sushiの組み合わせが使用される。
【0028】
特定の実施態様では、mRNA又はDNA分子は、別個の核酸分子である。
【0029】
別の実施態様では、mRNA又はDNA分子は、1つの単一核酸分子の一部であり、単一核酸分子は2つ以上の免疫賦活タンパク質を同時に発現することができ、例えば、免疫賦活タンパク質をコードする2つ以上のmRNA又はDNA分子は内部リボソーム進入部位(IRES)又は自己切断2aペプチドコード配列によって、単一mRNA又はDNA分子中で連結され得る。
【0030】
特定の実施態様では、組成物中の核酸分子は、RNA、DNA、好ましくはRNA、より好ましくはmRNAを含む群から選択される。
【0031】
特定の実施態様では、組成物の核酸分子は、以下である:5'CAP、ポリ(A)テール及び/又は修飾ヌクレオシド(複数可)のうちの1つ又は複数を含み、前記修飾ヌクレオシドは、N1-メチルシュードウリジンであってもよい。
【0032】
特定の実施態様では、組成物の核酸分子は、ナノ粒子、例えば脂質ナノ粒子又はポリマーナノ粒子、特に脂質ナノ粒子中に封入された裸の核酸分子又は核酸の形態である。
【0033】
本発明は、さらに、本発明によって記載される組成物を含む脂質ナノ粒子を提供する。
【0034】
別の実施態様では、組成物又は脂質ナノ粒子は、イオン化可能な脂質、コレステロール、リン脂質及びPEG化脂質を含む。
【0035】
好ましい実施態様では、組成物又は脂質ナノ粒子は、約35mol%~65mol%のイオン化可能な脂質;約5mol%~25mol%のリン脂質;約0. 5mol%~3. 0mol%のPEG脂質;ステロールの量でバランスされている;特に、50mol%のイオン化可能な脂質、10mol%のリン脂質、1. 5mol%のPEG脂質、及び38.5mol%のステロールを含む。
【0036】
本発明は、さらに、本発明の組成物又は脂質ナノ粒子と、少なくとも1つの薬学的に許容される担体又は賦形剤とを含む医薬製剤を提供する。
【0037】
本発明の医薬製剤は、ワクチンとして特に適している。
【0038】
さらなる態様において、本発明は、注射;より詳細には静脈内、腫瘍内、皮内、腹腔内、筋肉内又は結節内投与、好ましくは腫瘍内投与における使用のための、本明細書に定義される組成物、脂質ナノ粒子又は医薬製剤を提供する。
【0039】
特定の実施態様において、本発明の組成物、脂質ナノ粒子又は医薬製剤は、ヒト又は獣医学における使用のために提供される。
【0040】
好ましい実施態様では、本明細書で定義される組成物、脂質ナノ粒子又は医薬製剤は、放射線療法及び化学療法を含む標準治療癌療法と組み合わせて使用するために提供される。
【0041】
より好ましい実施態様では、本発明の組成物、脂質ナノ粒子又は医薬製剤は、細胞増殖性障害の予防及び/又は治療に使用するために提供される。
【0042】
さらに別の実施態様では、本明細書で定義される組成物、脂質ナノ粒子又は医薬製剤は、対象において腫瘍及び/又は癌に対する免疫応答を誘発する際に使用するために提供される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1図1は、MC38結腸(結腸癌)モデルにおけるIL-21、IL-7、IL-15sushi又は4-1BBLによるmRNA単独療法を示す。 腫瘍体積(mm3)は、無作為化後に腫瘍を測定した各時点について示す。パネルAは、無作為化後0、3及び7日目にFluc mRNA対照(LNPs中に製剤化された、3回の15μg mRNA/投与)での治療を示し、パネルB、C、D、Eは、それぞれIL-21 iso2、IL-7、4-1BBL及びIL-15sushiをコードするmRNAでの同じ投与量及び治療レジメンでの治療を示す。対照及びIL-15sushiについては、完全応答(「CR」)が8匹中2匹(20%)で観察されたが、IL-21 mRNAでの治療は、8匹中6匹(75%)で完全応答を誘発した。IL-7又は4-1BBLを用いた単独療法処置は、腫瘍体積に影響を示さなかった。
図2図2は、MC38(結腸癌)モデルにおけるIL-7及びIL-21とのmRNA組み合わせ療法を示す。 腫瘍体積(mm3)は、無作為化後に腫瘍を測定した各時点について示す。パネルAは、無作為化後0日目、3日目及び7日目のNanoLuc mRNA対照(LNPs中に製剤化された、3回の10μg mRNA/投与)による治療を示し、パネルB及びCは、それぞれIL-21又はIL-7をコードするmRNAを用いたNanoLuc対照mRNAによる治療を示す(各mRNA/投与について5μgの減少投与量で3回)。パネルDは、IL-7及びIL-21をコードするmRNAとの併用療法を表す(各mRNA/投与について5μgの投与量で3回)。
図3図3は、MC38(結腸癌)モデルにおけるIL-15sushi及びIL-21とのmRNA組み合わせによる治療を示す。 腫瘍体積(mm3)は、無作為化後に腫瘍を測定した各時点について示す。パネルAは、IL-21をコードするmRNAによる単独療法(15μg総mRNA/投与で3回)、パネルBは、IL-21及びIL-15sushi mRNAをコードするmRNAによる併用療法(3×7.5μg各mRNA/投与)、パネルCは、IL-21、IL-7及び4-1BBL mRNAをコードするmRNAによる併用療法(3×5μg各mRNA/投与)、パネルDは、IL-21、4-1BBL及びIL-15sushiをコードするmRNAによる併用療法(3×5μg各mRNA/投与)を示す。
図4図4は、IL-21単独療法又はILベースの混合療法による治療後の全身性記憶免疫応答の発生を示す。 腫瘍体積(mm3)は、無作為化後に腫瘍を測定した各時点について示す。IL-21単剤治療(パネルA及びB)又は併用治療(パネルC及びD)で処置した動物における記憶免疫応答の存在を評価した。パネルAは、MC238癌細胞株を新規に注射した未処置動物(n = 12)の腫瘍増殖を示す。パネルBは、IL-21単独療法で以前に処置された再投与マウス(n = 6)における腫瘍増殖を示し、パネルCは、Il-21/4-1BBL/Il-15sushiの併用療法で以前に処置された再投与マウス(n = 6)における腫瘍増殖を示す。パネルDは、IL-21/4-1BBL/IL-7の併用療法で以前に処置された、再投与されたマウス(n = 8)における腫瘍増殖を示す。
図5-A】図5は、IL-21単独療法又はILベースの混合療法による治療後の全身性記憶免疫応答の発生を示す。 腫瘍体積(mm3)は、無作為化後に腫瘍を測定した各時点について示す。パネルAは、TBS緩衝液、空のLNP及び非翻訳IL-21 mRNA LNP処置動物の腫瘍増殖を示す。パネルBは、IL-21、IL-7又は4-1BBL mRNA LNP処置動物の腫瘍増殖を示す。パネルCは、IL-21/IL-7 mRNA LNP組み合わせ、IL-21/4-1BBL mRNA LNP組み合わせ、又はIL-7/4-1BBL mRNA LNP組み合わせで処置した動物の腫瘍増殖を示す。パネルDは、IL-21/IL-7/4-1BBL mRNA LNP組合せの腫瘍増殖を示す。
図5-B】同上
図5-C】同上
図5-D】同上
【発明を実施するための形態】
【0044】
次に、本発明をさらに説明する。以下の節では、本発明の異なる態様をより詳細に定義する。そのように定義された各態様は、そぐわないことが明確に示されない限り、任意の他の態様と組み合わせることができる。特に、好ましい又は有利であると示された任意の特徴は、好ましい又は有利であると示された任意の他の特徴と組み合わせることができる。
【0045】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明らかに別段の指示をしない限り、複数の指示対象を含む。例えば、「化合物」は、1つの化合物又は2つ以上の化合物を意味する。
【0046】
パラメータ、量、持続時間等の測定可能な値に言及する場合、本明細書で使用される「約」又は「およそ」という用語は、開示される発明において実施するのに適切である限り、+/-10%以下、好ましくは+/-5%以下、より好ましくは+/-1%以下、さらにより好ましくは+/-0. 1%以下、及び特定の値からの変動を包含することを意味する。
【0047】
修飾語「約」又は「およそ」は、それ自体を指す値もまた、具体的に、好ましくは、開示されることを理解されたい。
【0048】
全身性抗腫瘍免疫応答を誘導するための新しい方法の探索において、本発明者らは、免疫調節分子をコードするLNP封入核酸を含む組成物の局所投与が有効な抗腫瘍応答を誘導するかどうかを検討した。
【0049】
本発明者らは、予期せぬことに、機能的免疫賦活タンパク質IL-21をコードする核酸を含む組成物は、直接的な腫瘍内注射の際に、強力で持続性の抗腫瘍応答をもたらすことを見出した。
【0050】
IL-21mRNAを4-1BBL及びIL-7をコードするmRNA分子と組み合わせることにより、有効性がさらに増強されることがさらに立証された。
【0051】
本発明は、腫瘍内投与時の腫瘍微小環境の直接調節によって抗腫瘍免疫を活性化及び拡大するのに適しているが、ワクチン接種状況(例えば、筋肉内、結節内又は静脈内免疫)において同時送達された抗原に対するT細胞応答を増強するのにも適している可能性がある。
【0052】
本明細書を通して使用される用語「標的」は、本明細書に記載され得る特定の例に限定されず、腫瘍又は癌細胞が標的化され得る。
【0053】
本明細書を通して使用される用語「標的特異的抗原」は、本明細書に記載され得る特定の例に限定されない。
【0054】
本発明は、腫瘍微小環境を改変する因子を提供することによって抗腫瘍応答を増強することに関連することは、当業者に明らかであろう。
【0055】
本発明の保護範囲を限定することを望まないが、可能なマーカーのいくつかの実施例を以下に列挙する。
【0056】
本明細書を通して使用される用語「抗原提示細胞」は、全ての抗原提示細胞を含む。特定非限定的な例は、樹状細胞、樹状細胞株、b細胞、又はB細胞株である。樹状細胞又はB細胞は、患者又は健康な対象の血液から単離又は生成することができる。
【0057】
患者又は対象は、事前のワクチン接種の対象であっても、なくてもよい。
【0058】
本明細書を通して使用される「癌」及び/又は「腫瘍」という用語は、例示されている癌又は腫瘍のタイプに限定されることを意図するものではない。したがって、この用語は全ての増殖性障害、例えば、新生物、異形成、前癌性又は前癌性病変、異常な細胞増殖、良性腫瘍、悪性腫瘍、癌又は転移を包含し、ここで、癌は、
白血病、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、CNS癌、黒色腫、
卵巣癌、腎臓癌、前立腺癌、乳癌、神経膠腫、
結腸癌、膀胱癌、肉腫、膵臓癌、結腸直腸癌、
頭頸部癌、肝臓癌、骨癌、骨髄癌、胃癌、
十二指腸癌、食道癌、甲状腺癌、血液癌、及びリンパ腫の群から選択される。
【0059】
癌に対する特異的抗原は、例えば、MelanA/MART1、癌生殖細胞系抗原、gplOO、チロシナーゼ、CEA、PSA、Her-2/neu、サバイビン、テロメラーゼであり得る。
【0060】
したがって、本発明は、機能的免疫賦活タンパク質IL-21をコードし、場合により共賦活分子、サイトカイン、及び/又はケモカインの1つ以上をコードする核酸分子を含む組成物を提供する。
【0061】
特に、本発明は、機能的免疫賦活タンパク質IL-21をコードし、共賦活分子をコードする、1つ又は複数の単離された非ウイルス核酸分子を含む組成物を提供する。
【0062】
前記組成物は、サイトカイン及び/又はケモカインをコードする1つ又は複数の核酸分子をさらに任意に含んでもよい。
【0063】
本発明の文脈において、用語「免疫賦活タンパク質」は、その成分のいずれかの活性化を誘導又は増加させることによって免疫系を賦活することができる任意のタンパク質として理解されるべきである。
【0064】
本明細書で使用される場合、前記免疫賦活タンパク質は、例えば、ワクチン投与の結果として、免疫応答における抗原特異性を提供する。
【0065】
本発明の文脈において、用語「インターロイキン21」は、ウイルス感染又は癌性細胞を破壊することができるナチュラルキラー(NK)細胞及び細胞傷害性T細胞を含む、免疫系の細胞に対して強力な調節効果を有するサイトカインとして理解されるべきである。
【0066】
IL-21は持続的な腫瘍免疫を達成するために、継続的かつ増大したCD8+細胞応答を介して抗腫瘍効果を有する。
【0067】
特定の実施態様では、組成物は、IL-21アイソフォーム、特にIL-21アイソフォーム1及びIL-21アイソフォーム2、より具体的にはIL-21アイソフォーム1を含むリストから選択されるIL-21アイソフォームをコードする核酸分子を含む。
【0068】
本発明の文脈において、用語「共賦活分子」は、抗原/主要組織適合複合体(MHC)とのその相互作用後にT細胞受容体(TCR)からT細胞に提供される初期活性化シグナルを増幅又は相殺するように作用し、それによってT細胞分化及び運命に影響を及ぼす、細胞表面分子の不均一な群として理解されるべきである。
【0069】
本明細書で使用される場合、前記共賦活分子は、免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリー、腫瘍壊死因子(TNF)-TNF受容体(TNFR)スーパーファミリー、ならびにT細胞Ig及びムチン(TIM)ドメインファミリーのクラスの分子の1つであり得る。
【0070】
いくつかの実施態様では、共賦活分子は、4-1BBL、OX40L、ICOSリガンド及びCD40Lを含むリストから選択される。
【0071】
本発明の文脈において、用語「サイトカイン」は、細胞シグナル伝達において重要なタンパク質として理解されるべきである。本明細書で使用されるサイトカインは、免疫調節細胞シグナル伝達タンパク質であり、インターフェロン、インターロイキン、リンホカイン、及び腫瘍壊死因子を包含するが、ホルモン又は成長因子は包含しない。
【0072】
サイトカインは、細胞表面受容体を介して作用し、免疫系において特に重要であり、サイトカインは、体液性免疫応答と細胞ベースの免疫応答との間のバランスを調節し、特定の細胞集団の成熟、成長、及び応答性を調節する。
【0073】
特に、本発明において定義されるサイトカインは、IL-7、IL-12、IL-18、IFNラムダ、IL-15sushi、IL-23、I型IFN、II型IFN、III型IFNを含むリストから特に選択され得る。特定の実施態様では、サイトカインは、IL-7、IL-12、IL-18、IFNラムダ、及びIL-15sushiを含むリストから選択される。
【0074】
特定の実施態様では、本発明の組成物は、IL-21アイソフォームをコードする核酸分子、及びサイトカインIL-7アイソフォーム、特にIL-7アイソフォーム1及びIL-7アイソフォーム2、より特にIL-7アイソフォーム1を含むリストから選択されるIL-7アイソフォームをコードする核酸分子を含む。
【0075】
別の特定の実施態様では、本発明の組成物は、IL-21アイソフォーム1及びIL-7アイソフォーム1を、コードする核酸分子を含む。
【0076】
さらに別の具体的な実施態様では、本発明の組成物は、IL-21アイソフォーム1及びIL-15sushiを、コードする核酸分子を含む。
【0077】
本発明の文脈において、用語「ケモカイン」は、白血球、ならびに内皮細胞及び上皮細胞を含む他の細胞型の方向性運動を誘導する細胞によって分泌されるシグナル伝達タンパク質として理解されるべきである。ケモカインは、Gタンパク質結合膜貫通受容体と相互作用する。
【0078】
本明細書で使用する場合、前記ケモカインは、CXC、CC、CX3C及びCモチーフを含む群から選択することができる。いくつかの実施態様において、該ケモカインは、CCL2, CCL3, CCL4, CCL5, CCL6, CCL7, CCL8, CCL9/CCL10, CCL11, CCL12, CCL13, CCL14, CCL15, CCL16, CCL17, CCL18, CCL19, CCL20, CCL21, CCL22, CCL23, CCL24, CCL25, CCL26, CCL27, CCL28, CXCL1, CXCL2, CXCL3, CXCL4, CXCL5, CXCL6, CXCL7, CXCL8, CXCL9, CXCL10, CXCL11, CXCL12, CXCL13, CXCL14, CXCL15, CXCL16, CXCL17, XCL1, XCL1-V21C/V59C, XCL2 CX3CL1を含むリストから選択することができる
【0079】
さらなるケモカインをコードする核酸を腫瘍環境に送達することは、例えば、樹状細胞を誘引するケモカイン(例えば、CCL4, CCL5, CCL19, CCL20, CCL21, XCL1)を使用すること、又はT細胞/NK誘引ケモカイン(例えば、CCL3, CCL5, CXCL9-10_CCL19, XCL1)を使用すること等が、有益であり得る
【0080】
好ましい実施態様において、ケモカインは、CCL19, CCL20, CCL21, CXCL9, CXCL10, CCL4, CCL5 及び XCL1を含むリストから選択される。
【0081】
特定の実施態様では、組成物は、標的特異的抗原及び/又はチェックポイント阻害剤のうちの1つ以上をさらに含む。
【0082】
特定の実施態様では、組成物は、腫瘍抗原である標的特異的抗原を含む。前記標的特異的抗原は、標的細胞(a)から単離された全mRNA、1つ以上の標的特異的mRNA分子、標的細胞(a)のタンパク質溶解物、標的細胞(a)由来の特異的タンパク質、又は合成標的特異的ペプチド若しくはタンパク質、及び標的特異的抗原若しくはその由来ペプチドをコードする合成mRNA若しくはDNAのいずれかの形態で提供され得る。
【0083】
本発明の文脈において、用語「チェックポイント阻害剤」は、免疫活性化及び抗原認識を減少させるために腫瘍細胞によって利用される免疫チェックポイントを遮断する薬物又は分子のタイプとして理解されるべきである。
【0084】
したがって、これらのチェックポイント阻害剤は、又、癌治療を改善するための強力なツールであり得る。
【0085】
特定の実施態様では、組成物は、例えば、前記チェックポイント阻害剤(すなわち、転写及び/又は翻訳)又はその天然リガンドの発現、又はチェックポイント阻害剤活性を低下させることによって、前記チェックポイント阻害剤の調節に直接的又は間接的に影響を及ぼすことができる任意の化合物をコードする1つ以上の核酸分子を含む。
【0086】
限定されるものではないが、そのような阻害剤には、前記チェックポイント阻害剤関連シグナル伝達分子又は経路を遮断するタンパク質、ペプチド、小分子、抗体等が含まれる。
【0087】
特定の実施態様では、チェックポイント阻害剤は、PD-1、PD-L1、CTLA4、TIGIT、TIM3、LAG-3及びVISTAの阻害分子;好ましくはPD-1、PD-L1又はCTLA4の阻害分子を含むリストから選択される。
【0088】
例えば、前記組成物は、PD-1に対する抗PD1抗体、例えばニボルマブ(BMS-936558/MDX1106)、ピジリズマブ(CT-011)又はペンブロリズマブ(MK-3475)を含み得る。あるいは、PD-L1阻害剤、例えば、アテゾリズマブ又はデュルバルマブもまた、本発明の文脈内で適切に使用され得る。
【0089】
例示的なヒト抗CTLA4抗体は、例えばWO 00/37504に詳細に記載されている。これらに限定されるものではないが、3.1.1, 4.1.1, 4.8.1, 4.10.2, 4.13.1, 4.14.3, 6.1.1,ticilimumab,11.6.1, 11.7.1, 12.3.1.1, 及び 12.9.1.1、同様に、tremelimumab及びipilimumabが挙げられる。
【0090】
抗PD-1及び/又は抗PD-L1/PD-L2抗体等の上記の抗チェックポイント阻害剤抗体は、当技術分野において周知である。
【0091】
他のブロッキング抗体は、当業者によって容易に同定され、調製され得る。
【0092】
非常に特定の実施では、本発明は、機能的免疫賦活タンパク質IL-21をコードする及び選択的に以下の1つ以上をコードする、1つ以上の単離された非ウイルス性核酸分子を含む:
- 4-1BBL、OX40L、ICOSリガンド、及びCD40Lを含むリストから選択される共賦活分子;
- IL-7、IL-12、IL-18、IFNラムダ、IL-15sushi、IL-23、I型IFN、II型IFN、III型IFNを含むリストから選択されるサイトカイン;
- CCL19, CCL20, CCL21, CXCL9, CXCL10, CCL4, CCL5 及び XCL1を含むリストから選択されるケモカイン;
- PD-1, PD-L1, CTLA4, TIGIT, TIM3, LAG-3 及び/又は VISTA;の阻害分子;好ましくはPD-1, PD-L1, 又は CTLA4の阻害分子。
【0093】
別の非常に特定の実施態様では、本発明は、機能的免疫賦活タンパク質IL-21をコードし、任意でIL-7、4-1BBL、IFNラムダ、IL-18、IL-15sushi及び/又はCCL5のうちの1つ又は複数をコードする、1つ又は複数の単離された非ウイルス核酸分子を含む組成物を提供する。
【0094】
本発明の方法において使用される免疫賦活因子の好ましい組み合わせは、IL-21及び4-1BBLである。他の好ましい実施態様では、IL-21、4-1BBL及びIL-7免疫賦活分子の組み合わせが使用される。さらに他の好ましい実施態様では、IL-21、4-1BBL及びIL-15sushi免疫賦活分子の組み合わせが使用される。
【0095】
特定の実施態様では、組成物は、IL-21アイソフォーム1及び4-1BBLをコードする核酸分子を含む。
【0096】
別の特定の実施態様では、本発明の組成物は、IL-21アイソフォーム2、4-1BBL、及びIL-7アイソフォーム1をコードする核酸分子を含む。
【0097】
さらに別の具体的な実施態様では、本発明の組成物は、IL-21アイソフォーム2、4-1BBL、及びIL-15sushiをコードする核酸分子を含む。
【0098】
さらに別の実施態様では、本発明の組成物は、IL-21アイソフォーム2、4-1BBL及びIFNラムダをコードする核酸分子を含む
【0099】
さらに別の実施態様では、本発明の組成物は、IL-21アイソフォーム2、4-1BBL及びIL-18をコードする核酸分子を含む。
【0100】
本発明で定義される免疫賦活タンパク質のヒトアミノ酸配列の配列番号を表1に列挙する。
【0101】
本明細書に記載されるアミノ酸配列は限定的ではなく、配列変異を包含し得る〔すなわち、記載される配列に対してパーセンテージ配列同一性(a percentage sequence identity)を有する〕ことが理解されるべきである。
【0102】
したがって、特定の実施態様では、本明細書に記載されるヒトアミノ酸配列は、少なくとも、及び/又は、約、90%, 91%, 92%, 93%, 94%, 95%, 96%, 97%, 98%, 99% 又は 100%が表1に列挙される配列番号と同一である。
【0103】
本発明は、また、免疫賦活タンパク質、共賦活分子、サイトカイン、及び/又はケモカインをコードする核酸を含む組成物を提供することができ、ここでヒトアミノ酸配列は、例えば、本明細書に開示される実施例の部分で使用されるもの等の、表2に示されるような、それぞれのマウスアミノ酸配列によって置換される。
【0104】
したがって、特定の実施態様において、本明細書に記載されるマウスアミノ酸配列は、少なくとも、及び/又は、約、75%, 80%, 85%, 90%, 91%, 92%, 93%, 94%, 95%, 96%, 97%, 98%, 99% 又は 100% が表2に列挙される配列番号と同一である。
【0105】
2つ以上のヌクレオチド又はアミノ酸(AA)配列を比較する目的で、第1のヌクレオチド/AA配列と第2のヌクレオチド/AA配列との間の「配列同一性」の割合は、
[第2のヌクレオチド/AA配列中の対応する位置におけるヌクレオチド/AAと同一である第1のヌクレオチド/AA配列中のヌクレオチド/AAの数]

[第1のヌクレオチド/AA配列中のヌクレオチド/AAの総数]
で除し、
[100%]を乗算する、ことによって計算され得、
ここで、第1のヌクレオチド/AA配列と比較した、第2のヌクレオチド/AA配列中のヌクレオチド/AAの各欠失、挿入、置換又は付加は、単一のヌクレオチド/AA(位置)における差異とみなされる。
あるいは、2つ以上のヌクレオチド/AA配列間の配列同一性の程度が標準設定を使用して、NCBI Blast v2.0等の配列アラインメントのための公知のコンピュータアルゴリズムを使用して計算され得る。
特定の方法はデフォルトパラメータに設定されたWU-BLAST-2のBLASTモジュールを利用し、オーバーラップスパン及びオーバーラップフラクションは、それぞれ1及び0.125に設定される。
【0106】
また、2つのアミノ酸配列間の配列同一性の程度を決定する際に、当業者は、いわゆる「保存的」アミノ酸置換を考慮することができ、これは、一般に、アミノ酸残基が類似の化学構造の別のアミノ酸残基で置換され、ポリペプチドの機能、活性又は他の生物学的特性に、ほとんど又は本質的に影響を及ぼさないアミノ酸置換として記載することができる。そのような保存的置換は、好ましくは、以下の群(a)~(e)内の1つのアミノ酸が同じ群内の 別のアミノ酸残基によって置換される置換である:
(a)小さい脂肪族、非極性又はわずかに極性の残基: Ala、Ser、Thr、Pro及びGly;
(b)極性、負に荷電した残基及びそれらの(非荷電)アミド: Asp、Asn、Glu及びGln;
(c)極性、正に荷電した残基: His、Arg及びLys;
(d)大きい脂肪族、非極性残基: Met、Leu、Ile、Val及びCys;及び
(e)芳香族残基: Phe、T。
特に好ましい保存的置換は、以下の通りである:
AlaからGlyへ、又はSerへ;
ArgからLysへ;
AsnからGlnへ、又はHisへ;
AspからGluへ;
CysからSerへ;
GlnからAspへ;
GluからAspへ;
GlyからAlaへ、又はProへ;
HisからAsnへ、又はGlnへ;
IleからLeuへ、又はValへ;
LeuからIleへ、又はValへ;
LysからArgへ、Glnへ、又はGluへ;
MetからLeuへ、Tyrへ、又はIleへ;
PheからMetへ、Leuへ、又はTyrへ;
SerからThrへ;
ThrからSerへ;
TrpからTyrへ;
TyrからTrpへ;及び/又は
PheからValへ、Ileへ、又はLeuへ。
したがって、一実施態様では、本明細書で先に与えられた所与のパーセンテージ配列同一性を有する配列が参照配列と比較して1、2、3又はそれ以上の保存的アミノ酸置換を有する配列である。
【0107】
一方、本開示の核酸によってコードされる変異抗原/ポリペプチドは、例えば、対象におけるそれらの免疫原性を増強し、それらの発現を増強し、及び/又はそれらの安定性若しくはPK/PD特性を改善する、いくつかの望ましい特性のいずれかを付与するアミノ酸変化を含み得る。
変異抗原/ポリペプチドは、日常的な突然変異誘発技術を用いて作製し、それらが所望の特性を有するかどうかを決定するために、適切にアッセイすることができる。
【0108】
当業者によって認識されるように、(核酸をコードする)タンパク質断片、機能性タンパク質ドメイン、及び相同タンパク質も、又、目的の腫瘍抗原の範囲内であると考えられる。
例えば、参照タンパク質の任意のタンパク質断片(参照抗原配列よりも少なくとも1つのアミノ酸残基が短いが、他の点では同一であるポリペプチド配列を意味する)が、本明細書において提供されるが、ただし、その断片は、免疫原性であり、腫瘍関連抗原に対する防御免疫応答を付与することを条件とする。
参照タンパク質と同一であるが、切断される変異体に加えて、いくつかの実施態様では、抗原が、本明細書で提供又は参照される配列のいずれかに示されるように、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれ以上の変異を含み得る。
抗原/抗原性ポリペプチドは、約4、6、又は8アミノ酸から完全長タンパク質までの長さの範囲であり得る。
【0109】
本発明は、また、表3に記載の免疫賦活タンパク質、共賦活分子、サイトカイン、及び/又はケモカインをコードするマウス特異的核酸分子を提供する。
【0110】
したがって、特定の実施態様では、本明細書に記載されるマウス核酸配列が、少なくとも、及び/又は、約、75%, 80%, 85%, 90%, 91%, 92%, 93%, 94%, 95%, 96%, 97%, 98%, 99% 又は 100%が、表3に列挙される配列番号と同一である。
【0111】
本発明の文脈において、組成物は、免疫賦活タンパク質IL-21をコードする少なくとも1つの核酸分子を含むことを理解することが重要である。
さらに、組成物は、共賦活分子、サイトカイン、及び/又はケモカイン等の別の免疫賦活タンパク質をコードする少なくとも1つ以上の核酸配列を含み得る。
したがって、組成物は、IL-21のみをコードする1つ以上の核酸配列を含んでもよく、又は追加の免疫賦活タンパク質がコードされる場合には、2つ以上の核酸分子を含んでもよい。
あるいは、IL-21及び少なくとも1つの他の免疫賦活タンパク質が、1つの単一の核酸分子によってコードされ得る。
【0112】
組成物は、本明細書で定義される2つ以上のタンパク質をコードする核酸を含む場合、これらは、単一の核酸分子から、又は2つ以上の核酸分子からコードされ得る。
【0113】
特定の実施態様では、免疫賦活タンパク質をコードする2つ以上の核酸分子、特にmRNA又はDNA分子は、したがって、別個の核酸分子である。
別の実施態様では、前記mRNA又はDNA分子は、1つの単一の核酸分子の一部であり、単一の核酸分子は、2つ以上の免疫賦活タンパク質を同時に発現することができる。
この単一のmRNA又はDNA分子は、好ましくは、2つ以上のタンパク質を独立して発現することができる。
好ましい実施態様では、免疫賦活タンパク質をコードする2つ以上のmRNA又はDNA分子は、2つ以上のmRNA配列のそれぞれのアミノ酸配列への別個の翻訳を可能にする内部リボソーム進入部位(IRES)によって、単一のmRNA又はDNA分子中で連結される。
あるいは、自己切断2aペプチドコード配列が、異なる免疫賦活因子のコード配列の間に組み込まれる。
このように、2つ以上の因子は、1つの単一のmRNA又はDNA分子によってコードされ得る。
【0114】
したがって、本発明は、2つ以上の免疫賦活因子をコードするmRNA分子をさらに提供し、2つ以上の免疫賦活因子は、2つ以上のコード配列間のIRESの使用によって、単一のmRNA分子とは別に翻訳される。
あるいは、本発明は、翻訳後の2つのタンパク質配列の切断を可能にする、自己切断2aペプチドコード配列によって分離された2つ以上の免疫賦活因子をコードするmRNA分子を提供する。
【0115】
特定の実施態様では、組成物中の核酸分子は、RNA、DNA、好ましくはRNA、より好ましくはmRNAを含む群から選択される。
【0116】
本発明の文脈における「核酸」は、デオキシリボ核酸(DNA)又は好ましくはリボ核酸(RNA)であり、より好ましくはmRNAであるが、cDNA、組換えにより生成された分子及び化学的に合成された分子を含んでもよい。
本発明によれば、核酸は一本鎖又は二本鎖であり、線状又は閉じた共有結合で環状を形成する分子の形態であってもよい。
核酸は、例えば、DNA鋳型からのインビトロ転写によって調製することができるRNAの形態で、細胞への導入、すなわち、細胞のトランスフェクションに使用することができる。
さらに、RNAは、適用前に、配列の安定化、キャッピング、及び/又はポリアデニル化によって修飾することができる。
【0117】
本発明の文脈において、用語「RNA」は、リボヌクレオチド残基を含み、好ましくは、リボヌクレオチド残基から全体的に又は実質的に構成される分子に関する。
「リボヌクレオチド」は、βD-リボフラノシル基の2'-位に水酸基を有するヌクレオチドに関する。
この用語は、二本鎖RNA、一本鎖RNA、部分的に精製されたRNA等の単離されたRNA、本質的に純粋なRNA、合成RNA、組換えにより生成されたRNA、ならびに1つ又は複数のヌクレオチドの付加、欠失、置換及び/又は改変によって天然に存在するRNAとは異なる修飾RNAを含む。
そのような改変は、例えばRNAの末端(複数可)への、又は、例えばRNAの1つ又は複数のヌクレオチドでの内部への、非ヌクレオチド物質の付加を含み得る。RNA分子中のヌクレオチドは、又、非標準ヌクレオチド、例えば、天然に存在しないヌクレオチド、又は化学的に合成されたヌクレオチド若しくはデオキシヌクレオチドを含み得る。これらの改変されたRNAは、類似体と称され得る。
核酸は、ベクター中に含まれ得る。本明細書で使用される「ベクター」という用語は、プラスミドベクター、コスミドベクター、ラムダファージ等のファージベクター、アデノウイルス若しくはバキュロウイルスベクター等のウイルスベクター、又は細菌人工染色体(BAC)、酵母人工又は天然に存在するRNAの類似体等の人工染色体ベクターを含む、当業者に公知の任意のベクターを含む。
【0118】
本願によれば、「RNA」は、「メッセンジャーRNA」を意味する「mRNA」を含み、好ましくは、それに関連し、鋳型としてDNAを使用して産生され得、ペプチド又はタンパク質をコードする「転写物」に関連する。 mRNAは、典型的には5'非翻訳領域(5'-UTR)、タンパク質又はペプチドコード領域、及び3'非翻訳領域(3'-UTR)を含む。 mRNAは、細胞内及びインビトロで限られたハーフタイムを有する。
好ましくは、mRNAは、DNA鋳型を用いたインビトロ転写によって産生される。本発明の一実施態様では、RNAがインビトロ転写又は化学合成によって得られる。インビトロ転写法は当業者に公知である。例えば、市販されている様々なインビトロ転写キットがある。
【0119】
特定の実施態様では、組成物の核酸分子は、次の以下の1つ又は複数を含む:5'CAP、ポリ(A)テール及び/又は修飾ヌクレオシド(複数可);ここで、前記修飾ヌクレオシドは、N1-メチルシュードウリジンである。
【0120】
本発明の文脈において、用語「5プライムキャップ(5CAP)」は、mRNAキャッピングプロセス中に合成される前駆体メッセンジャーRNA等のいくつかの一次転写物の5'末端上の特別に改変されたヌクレオチドとして理解されるべきである。
特定の実施態様において、インビトロで転写されたmRNA分子は、5' CAP-1、5' CAP-2、5'm6Am構造、又はその誘導体を有し得る。
真核生物の5'キャップは、7-メチルグアノシン(m7G)が三リン酸架橋によって最初の塩基に結合しており、ARCAキャップ類似体(5' CAP-0類似体)として知られる構造を形成している。
本発明の文脈において、用語「5' CAP-1」(CleanCap)は、本明細書において以下に表されるような、第1のキャップ近位ヌクレオチドのリボース糖の第2の炭素に追加のメチル基(2'モノメチル化)を有するCAP-0構造であることを意味する:
【化1】
【0121】
本発明の文脈において、用語「5' CAP-2」は、第2のキャップ近位ヌクレオチドのリボース糖の第2の炭素に追加のメチル基(2'ジメチル化)を有するCAP-1構造であることを意味する。本発明の文脈において、用語「5'm6Am」構造は、第1のヌクレオチドが第6の窒素にメチル基を有するアデノシンであり、N6-メチルアデノシン(m6Am)を形成するCAP-1構造であることを意味する。本明細書で使用される場合、キャッピングは、mRNA製造中のキャッピングストラテジーを含み得る。特定の実施態様では、キャッピングは、キャップ類似体が転写中に組み込まれる「共転写キャッピング」を指し得る。例えば、CleanCap(登録商標)技術は、天然のCap 1構造を生成する、独占的な、共転写5'キャッピング溶液である。別の実施態様では、キャッピングは、酵素ベースの方法を使用して、キャップ類似体がmRNA合成後に組み込まれる「転写後キャッピング」を指し得る。
【0122】
「ヌクレオシド」という語は、リン酸基を有さないヌクレオチドを意味する。さらなる実施態様において、本発明のmRNA分子の1つ以上は、少なくとも1つの修飾ヌクレオシドをさらに含み得る。別の特定の実施態様では、本発明の使用されるmRNA分子のうちの2つ、3つ、4つ、・・・、又はすべてが、少なくとも1つの修飾ヌクレオシドを有する。
【0123】
本発明の別の特定の実施態様では、前記mRNA分子は、シュードウリジン、5-メトキシウリジン、5-メチルシチジン、2-チオウリジン、及びN6-メチルアデノシンを含むリストから選択されるような、少なくとも1つの修飾ヌクレオシドをさらに含む。
【0124】
本発明の特定の実施態様では、前記少なくとも1つの修飾ヌクレオシドは、
4-チオシュードウリジン、
2-チオシュードウリジン、
1-カルボキシメチル-シュードウリジン、
1-エチル-シュードウリジン;
1-プロピニル-シュードウリジン、
1-タウリノメチル-シュードウリジン、
N1-メチル-シュードウリジン、
4-チオ-1-メチル-シュードウリジン、
2-チオ-1-メチル-シュードウリジン、
1-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、
2-チオ-1-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、
ジヒドロシュードウリジン、
2-チオジヒドロシュードウリジン、
4-メトキシ-シュードウリジン、及び
4-メトキシ-2-チオ-シュードウリジンを含むリストから選択されるようなシュードウリジンである。
非常に特定の実施において、前記少なくとも1つの修飾ヌクレオシドは、N1-メチル-シュードウリジンである。
【0125】
本発明の範囲内での使用に適した別のヌクレオシド修飾体は、以下を含む:
ピリジン-4-オンリボヌクレオシド、
5-アザ-ウリジン、
2-チオ-5-アザ-ウリジン、
4-チオ-シュードウリジン、
2-チオ-シュードウリジン、
5-ヒドロキシウリジン、
3-メチルウリジン、
5-カルボキシメチル-ウリジン、
1-カルボキシメチル-シュードウリジン、
5-プロピニル-ウリジン、
1-プロピニル-シュードウリジン、
5-タウリノメチルウリジン、
1-タウリノメチルシュードウリジン、
5-タウリノメチル-2-チオ-ウリジン、
1-タウリノメチル-4-チオ-ウリジン、
5-メチル-ウリジン、
1-メチル-シュードウリジン、
4-チオ-1-メチル-シュードウリジン、
2-チオ-1-メチル-シュードウリジン、
1-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、
2-チオ-1-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、
ジヒドロウリジン、
ジヒドロシュードウリジン、
2-チオ-ジヒドロウリジン、
2-チオ-ジヒドロシュードウリジン、
2-メトキシウリジン、
2-メトキシ-4-チオ-ウリジン、
4-メトキシ-シュードウリジン及び
4-メトキシ-2-チオ-シュードウリジン。
いくつかの実施態様では、mRNAは、以下からなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオシドを含む:
5-アザ-シチジン、
シュードイソシチジン、
3-メチル-シチジン、
N4-アセチルシチジン、
5-フォルミルチチジン、
N4-メチルシチジン、
5-ヒドロキシメチルシチジン、
1-メチル-シュードイソシチジン、
ピロロ-シチジン、
ピロロ-シュードイソシチジン、

2-チオシチジン、
2-チオ-5-メチル-シチジン、
4-チオ-シュードイソシチジン、
4-チオ-1メチル-シュードイソシチジン、
4-チオ-1-メチル-デアザ-シュードイソシチジン、
1-メチル-1-デアザ-シュードイソシチジン、
ゼブラリン、
5-アザ-ゼブラリン、
5-メチル-ゼブラリン、
5-アザ-2-チオゼブラリン、

2-チオゼブラリン、
2-メトキシ-シチジン、
2-メトキシ-5-メチル-シチジン、
4-メトキシ シュードイソシチジン、及び
4-メトキシ1-メチル-シュードイソシチジン。
いくつかの実施態様では、mRNAは、以下の群から選択される少なくとも1つのヌクレオシドを含む:
2-アミノプリン、
2,6-ジアミノプリン、
7-デアザ-アデニン、
7-デアザ-8-アザ-アデニン、
7-デアザ-2-アミノプリン、

7-デアザ-8-アザ-2-アミノプリン、
7-デアザ-2,6-ジアミノプリン、
7-デアザ-8-アザ-2,6-ジアミノプリン、
1-メチルアデノシン、
N6-イソペンテニルアデノシン、

N6-(シスヒドロキシイソペンテニル)アデノシン、
2-メチルチオ-N6-(シス-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン、
N6-グリシニルカルバモイルアデノシン、
N6-トレオニルカルバモイルアデノシン、
2-メチルチオ-N6-トレオニルカルバモイルアデノシン、
N6,N6-ジメチルアデノシン、
7-メチルチオアデニン、
2-メチルチオ-アデニン、及び
2-メトキシアデニン。
いくつかの実施態様では、mRNAは、以下の群から選択される少なくとも1つのヌクレオシドを含む:
イノシン、
1-メチルイノシン、
ウィオシン、
ウィブトシン、
7-デアザ-グアノシン、

7-デアザ-8-アザ-グアノシン、
6-チオ-グアノシン、
6-チオ-7-デアザ-グアノシン、
6-チオ-7-デアザ-8-アザ-グアノシン、
7-メチルグアノシン、

6-チオ-7-メチル-グアノシン、
7-メチルイノノシン、
6-メトキシ-グアノシン、
1-メチルグアノシン、
N2-メチルグアノシン、

N2,N2-ジメチルグアノシン、
8-オキソ-グアノシン、
7-メチル-8-オキソ-グアノシン、
l-メチル-6-チオ-グアイグアノシン、及び
N2,N2-ジメチル-6-チオ-グアノシン。
【0126】
本発明において使用されるmRNA分子は、1つ以上の修飾ヌクレオチドを含有してもよく、特に実施態様において、特定のタイプのヌクレオチドの少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%が修飾ヌクレオチドによって置換されてもよい。異なるヌクレオチド修飾が、同じmRNA分子内に含まれることも排除されない。本発明の非常に特定の実施では、前記mRNA分子中のウリジンの約100%が、N1-メチルシュードウリジンによって置換される。
【0127】
本明細書で使用するとき、用語「ポリ(A)テール」は、複数のアデノシンモノホスフェートを含む部分として理解されるべきであり、当技術分野で周知である。ポリ(A)テールは、一般に、成熟メッセンジャーRNAの産生中に一般に生じる翻訳後修飾の1つポリアデニル化と呼ばれる工程中に産生される;そのようなポリ(A)テールは、前記mRNAの安定性及び半減期に寄与し、可変長であり得る。
特に、ポリ(A)テールは、100個以上のアデノシンヌクレオチドを含む、20個以上のアデノシンヌクレオチドを含む、10個以上のアデノシンヌクレオチドでありえ、例えば、約90個又は約120個のアデノシンヌクレオチド等の、約90~120個のアデノシンヌクレオチドであってもよい。
【0128】
本明細書で使用又は言及される核酸分子は、裸のmRNA若しくはDNA、又は保護されたmRNA若しくはDNAのいずれかであり得る。DNA又はmRNAの保護は、その安定性を増加させるが、ワクチン接種目的のためにmRNA又はDNAを使用する能力を保存する。mRNA及びDNAの両方の保護の非限定的な例は、リポソームカプセル化、プロタミン保護、(カチオン性)脂質リポプレックス化、脂質性、カチオン性若しくはポリカチオン性組成物、マンノシル化リポプレックス化、気泡リポソーム化、ポリエチレンイミン(PEI)保護、リポソーム充填マイクロバブル保護、脂質ナノ粒子等であり得る。
【0129】
本発明は、又、前記mRNA分子の1つ以上が、ナノ粒子に含まれる、本明細書に定義される組成物を提供する。
【0130】
本明細書で使用される場合、用語「ナノ粒子」は、全身、特に腫瘍内、筋肉内又は静脈内投与に適した粒子を作製する直径を有する任意の粒子を指し、特に核酸は、典型的には1000ナノメートル(nm)未満、好ましくは500nm未満、さらにより好ましくは200nm未満、例えば50~200nm、好ましくは80~160nmの直径を有する。
【0131】
本発明の特定の実施態様では、ナノ粒子は、脂質ナノ粒子及びポリマーナノ粒子を含むリストから選択される。
【0132】
本発明はさらに、本発明によって記載される組成物を含む脂質ナノ粒子を提供する。
【0133】
本明細書の文脈において、「脂質ナノ粒子」又はLNPという用語の手段により、1つ又は複数の脂質、例えば様々な脂質の組合せからなるナノサイズの粒子が言及される。LNPにおいて使用される可能性のある脂質は、例えば、少なくとも1つのリン脂質、PEG脂質又はポリサルコシン脂質等の少なくとも1つのポリマー修飾脂質、少なくとも1つのカチオン性又はイオン化可能脂質、少なくとも1つのステロールであり得るが、これらに限定されない。
【0134】
本発明の文脈において、化合物又は脂質の文脈における「イオン化可能」(又は代替的にカチオン性)という語は、イオン(通常はH+イオン)を生成することによって解離することができ、したがってそれ自身が正に荷電する、前記化合物又は脂質中の任意の非荷電 あるいは、前記化合物又は脂質中の任意の非荷電基が電子を生じ得、したがって、負に荷電し得る。
中性脂質は、血液細胞のアニオン膜との相互作用が少なく、したがって、脂質ナノ粒子の生体適合性を改善するので、イオン化可能脂質のpH感受性は、インビボでのmRNA送達に有益である。
本明細書で使用される場合、任意のタイプのイオン化可能な脂質が適切に使用され得る。例えば、適切なイオン化可能な脂質は、S-S結合を介して連結された2つの同一又は異なる尾部(テイル)を含むイオン化可能なアミノ脂質である。
【0135】
本発明の文脈において、用語「PEG脂質」又は代わりに「PEG化脂質」は、PEG(ポリエチレングリコール)基で修飾された任意の適切な脂質を意味する。本発明の文脈において、用語「リン脂質」は、2つの疎水性脂肪酸「尾部」及びリン酸基からなる親水性「頭部」からなる脂質分子であることを意味する。2つの成分は、最も多くの場合、グリセロール分子によって一緒に結合され、したがって、本発明のリン脂質において、好ましくはグリセロールリン脂質である。
【0136】
本発明の文脈において、ステロイドアルコールとしても知られる「ステロール」という用語は、植物、動物及び真菌に天然に存在するステロイドのサブグループであり、又はいくつかの細菌によって産生され得る。本発明の文脈において、例えば、コレステロール等の任意の適切なステロールを使用することができる。
【0137】
本発明の特定の実施態様において、以下の1つ以上が適用される:
- 前記LNPは、約及び10モル%~70モル%の間の(about and between 10 mol% and 70mol%:以下同様)、前記イオン化可能な脂質を含む;
- 前記LNPは、約及び1mol%~40mol%の間の、前記リン脂質を含む;
- 前記LNPは、約及び0.5mol%~10mol%の間の、前記PEG脂質を含む;
前記ステロールの量によってバランスをとる。
【0138】
本発明の好ましい実施態様において、以下の1つ以上が適用される:
- 前記LNPは、約及び35mol%~65mol%の間の、前記イオン性脂質を含む;
- 前記LNPは、約及び5mol%~25mol%の間の、前記リン脂質を含む;
- 前記LNPは、約及び0.5mol%~3.0mol%の間の、前記PEG脂質を含む;
前記ステロールの量によってバランスをとる。
【0139】
別の好ましい実施態様において、本発明のLNPは、50モル%のイオン化可能な脂質、10モル%のリン脂質、1. 5モル%のPEG脂質、及び38.5モル%のステロールを含む。
【0140】
いくつかの実施態様では、脂質の混合物は、脂質ナノ粒子を形成する。いくつかの実施態様では、本発明の組成物は、脂質ナノ粒子中に製剤化される。いくつかの実施態様では、脂質ナノ粒子は、最初に空の脂質ナノ粒子として形成され、投与、特にワクチン投与の直前(例えば、数分~1時間以内)に組成物と組み合わせられる。
【0141】
誤解を避けるために、本発明のLNPは、免疫調節タンパク質をコードする核酸を含む1つ以上の組成物;及び/又は共賦活分子、サイトカイン、及び/又はケモカインをコードする核酸を含む1つ以上の組成物の組み合わせ等の、組成物を含んでもよく、又は複数の組成物を含んでもよい。
【0142】
非常に特定の実施態様では、本発明のLNPは、免疫調節分子をコードする核酸と、腫瘍又は癌細胞に由来するペプチドをコードする1つ又は複数の核酸分子とを含む組成物を含み得る。
例えば、本発明のLNPは、腫瘍に由来するペプチドをコードする核酸を含む組成物を、免疫賦活タンパク質IL-21をコードする1つ以上の核酸と組み合わせて、場合により共賦活分子、サイトカイン、及び/又はケモカインをコードする1つ以上の他の核酸分子と組み合わせて含み得る。
さらに、本発明のLNPは、本発明による前記組成物、前記核酸分子又は前記医薬製剤を含み得ることを理解されたい。
【0143】
いくつかの実施態様では、免疫賦活タンパク質及び/又は腫瘍抗原をコードする2つ以上の異なる核酸分子(例えば、mRNA)を、同じ脂質ナノ粒子中に製剤化することができる。
他の実施態様では、免疫賦活タンパク質又は腫瘍抗原をコードする2つ以上の異なる核酸分子を、別々の脂質ナノ粒子(各核酸は単一の脂質ナノ粒子中に製剤化される)中に製剤化することができる。
次いで、脂質ナノ粒子は単一の組成物(例えば、複数の免疫賦活タンパク質又は腫瘍抗原をコードする複数の核酸を含む)として組み合わせて投与されてもよく、又は別々に投与されてもよい。
【0144】
本明細書で定義される組成物、核酸分子、又は医薬製剤は、構築物を封入して、それらを分解から保護し、細胞取り込みを促進する脂質ナノ粒子(LNP)中に製剤化することができる。
【0145】
本発明は、さらに、組成物又は脂質ナノ粒子と、少なくとも1つの薬学的に許容される担体又は賦形剤とを含む医薬製剤を提供する。
【0146】
特に、本明細書で定義されるように、用語「医薬製剤」は、特に、少なくとも1つの薬学的に許容される担体又は賦形剤と組み合わせて本発明の組成物を含む前記LNPの文脈で使用される。
一方、「医薬製剤」という用語は、本発明の組成物と、少なくとも1つの薬学的に許容される担体又は賦形剤との組み合わせも指し得る(すなわち、LNP内にカプセル化されない)。
この組み合わせは、例えば、LNP中に製剤化することができ、特に、核酸の安定性の延長及び/又は送達の改善を目的とする。
【0147】
本明細書で使用される場合、「製剤」は、2つ以上の生成物又は化合物(例えば、薬剤、モジュレーター、調節剤等)の任意の混合物を指す。それは、溶液、懸濁剤、液体、若しくは水性製剤、又はそれらの任意の組み合わせであり得る。
【0148】
本明細書の文脈において、「医薬製剤」という用語の手段によって、医薬特性を有する製剤を指す。言い換えれば、薬理学的及び/又は生理学的効果を提供する製剤が参照される。医薬製剤は、賦形剤、担体、希釈剤等の1つ又は複数の薬学的に許容される薬剤を含むことができる。
【0149】
いくつかの実施態様において、薬学的に許容される薬剤は、限定されるものではないが、剤形として使用可能な組成物を達成するための生体適合性ビヒクル、アジュバント、添加剤、及び希釈剤を含む。
【0150】
本明細書で使用される場合、及び別段の指定がない限り、「賦形剤」という用語は、期待される貯蔵寿命にわたる変性又は凝集の防止、少量の強力な活性化合物を含有する液体又は固体製剤を増量すること(したがって、「増量剤」、「充填剤」、又は「希釈剤」と呼ばれることが多い)、又は吸収を促進する、粘度を低下させる、又は溶解度を高める等の、最終剤形中の活性化合物に増強を付与すること等の、長期安定化の目的のために含まれる活性化合物と一緒に製剤化される任意の物質として理解されるべきである。
【0151】
本発明の特定の製剤は、例えば以下を含む:
緩衝液:リン酸緩衝液(リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム二水和物)、
その他の添加剤 :塩化カリウム、塩化ナトリウム、スクロース、注射用水、

緩衝液:トリス(トロメタミン)
その他の添加剤 :酢酸ナトリウム、スクロース、注射用水
【0152】
医薬製剤は、ワクチンとして特に適している。
【0153】
本発明の文脈において、本明細書で使用される「ワクチン」という用語は、疾患に対する適応免疫(抗体及び/又はT細胞応答)を提供することが意図される任意の調製物を意味する。そのために、本明細書で意味する用語「ワクチン」は、適応免疫応答がマウントされる(mounted)、少なくとも1つの組成物又は少なくとも1つの脂質ナノ粒子、又は少なくとも1つの医薬製剤を含む。本発明の文脈において、ワクチンという用語は、医薬製剤という用語と互換的に使用することができる。
【0154】
いくつかの実施態様では、前記ワクチンは、リンゲル乳酸緩衝液等の適切な注射緩衝液中に懸濁された裸の核酸を含み得る。
【0155】
本発明のワクチンは、予防薬(例えば、症状の発現前に)、又は治療的に(例えば、腫瘍増殖等の進行中の疾患の症状を積極的に治療又は軽減するために)使用され得る。ワクチンの投与は、ワクチン接種と呼ばれる。
【0156】
さらなる態様では、本発明は、非経口投与で使用するための、より具体的には、静脈内、腫瘍内、皮内、腹腔内、筋肉内又は節内投与、好ましくは腫瘍内投与等の当技術分野で公知のワクチン投与ルートで使用するための、組成物、脂質ナノ粒子又は医薬製剤を提供する。
【0157】
本発明のワクチンは、特に、腫瘍内投与、すなわち、液体物質の腫瘍への直接注入を目的とする。腫瘍に投与された液は、循環中に迅速に、すなわちシステマティカリー(systematically)に吸収される。
【0158】
本発明は、又、静脈内に投与されるワクチン、すなわち、静脈内への液体物質の注入を提供する。静脈内経路は、体全体に流体及び薬物を送達するための最も速い方法であるが、広範な全身曝露をもたらす。
【0159】
本発明の文脈において、ワクチンは、疾患の発症初期、症状の発症後、又は発現若しくは1つ以上の腫瘍抗原を検出した後の個体に、予防的に(prophylactically)(=予防的に:preventive)又は活性ワクチン接種スキームの一部として治療的に投与され得る。
【0160】
いくつかの実施態様において、ワクチンは、単独療法として、又は併用療法として投与され得る。実施例の部分に記載されるように、用語「単独療法」は、単一の免疫賦活タンパク質、例えばIL-21をコードする核酸を含むワクチン投与として理解されるべきである。対照的に、用語「併用療法」は、2つ以上の免疫賦活タンパク質、例えばIL-7と組み合わせたIL-21をコードする核酸を含むワクチン投与を意味する。
【0161】
あるいは、併用療法は、又、IL-21をコードする本発明の組成物の文脈において、他の免疫賦活分子又は化学療法若しくは放射線療法等の他のh標準治療腫瘍治療と組み合わせて、又は組み合わせずに使用され得る
【0162】
別の実施態様では、1つ又は複数の免疫調節タンパク質をコードする核酸を含む本発明の治療薬は、「併用治療」効果をもたらす抗原特異的腫瘍ワクチンと組み合わせて投与することもできる。
【0163】
いくつかの実施態様において、ワクチン(単独療法又は併用療法として)は、単回投与、2回投与、3回投与、4回投与、好ましくは3回投与として、又は、対象がそれを必要とする限り、反復して投与され得る。
【0164】
いくつかの実施態様では、単独療法又は併用療法における投与期間は、これらに限定されないが、1週間、2週間、3週間、4週間、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年であり得、対象がそれを必要とする限り、長く、繰り返し毎年でもよい。
【0165】
別の実施態様では併用治療(すなわち、別の抗腫瘍ワクチンとの単/併用療法)における注射間の投与時間は、1分~30分、30分~1時間、3時間、6時間、12時間、1日、1週間、2週間、3週間、4週間、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年であり得るが、これらに限定されない。
【0166】
前記投与の各々について、投薬は、又、治療の開始時により高い投与量、及び治療の末端に向かってより低い投与量等、変動し得る。
【0167】
特定の実施態様において、本発明は、又、ヒト又は獣医学における使用のための組成物、脂質ナノ粒子、医薬製剤又はワクチンを提供する。
【0168】
ヒト又は獣医学における、本明細書に定義される組成物、脂質ナノ粒子、医薬製剤又は、ワクチンの使用も意図される。最後に、本発明は、組成物、脂質ナノ粒子、本明細書に定義される医薬製剤又はワクチンを、それを必要とする対象に投与することによる、ヒト及び獣医学的障害の予防及び/又は治療のための方法を提供する。
【0169】
より好ましい実施態様では、本明細書で定義される組成物、脂質ナノ粒子又は医薬製剤は、細胞増殖性障害の予防及び/又は治療に使用するために提供される。
【0170】
本出願の文脈において、用語「治療:treatment」、「治療すること:treating」、「処置:treat」等は、所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を得ることを指す。効果は、疾患若しくはその症状を完全に若しくは部分的に予防するという点で予防的であり得、及び/又は疾患及び/若しくは疾患に起因する有害作用の部分的若しくは完全な安定化若しくは治癒という点で治療的であり得る。「治療」は、哺乳動物、特に、ヒトにおける疾患の任意の治療を包含し、以下を含む:(a)疾患又は症状が、疾患又は症状の素因となり得るが、それを有するとまだ診断されていない対象において生じることを防止すること;(b)疾患症状を阻害すること、すなわちその発症を停止すること;又は(c)疾患症状を軽減すること、すなわち疾患又は症状の退縮を引き起こすこと。
【0171】
さらに別の実施態様では、本明細書で定義される組成物、脂質ナノ粒子又は医薬製剤は、対象における腫瘍及び/又は癌に対する免疫応答を誘発する際に使用するために提供される。
【0172】
本明細書を通して使用される「免疫応答」という用語は、本明細書に例示されている免疫応答のタイプに限定されることを意図するものではない。したがって、この用語は、ワクチン接種が、対象にとって有益である全ての腫瘍抗原又は癌抗原を包含する。
【0173】
本発明のワクチンは、免疫応答、特に疾患関連抗原に対する免疫応答、又は腫瘍関連抗原に対する免疫応答等の疾患関連抗原を発現する細胞を誘導するために使用することができる。好ましくは、前記免疫応答は、T細胞応答である。一実施態様では、疾患関連抗原は、腫瘍抗原である。本明細書に記載される本発明の核酸によってコードされる抗原は、好ましくは、疾患関連抗原であるか、又は疾患関連抗原若しくは疾患関連抗原を発現する細胞に対する免疫応答を誘発する。
【0174】
好ましい実施態様では、本発明は、直接インビボ適用のために使用される組成物を提供する。
【0175】
直接的なインビボ送達により、DCに対する強力な活性化賦活が提供され、T細胞誘引及び賦活環境の誘導もたらされる。さらに、抗原mRNAが本発明の組成物と一緒に共送達される場合、これは、種々の腫瘍抗原に対する抗原特異的CD4+及びCD8+ T細胞ならびにCTLの動員をもたらす。特に、前記組成物のインビボ送達は、mRNA自体の取り込み及び翻訳後にDCの成熟(maturation)をおこし、それで、これらのDCによる強力な抗原発現を可能にする。前記組成物及び抗原mRNAの同時送達は、抗原mRNA単独の直接的なインビボ送達と比較して、抗原特異的T細胞の誘導を有意に増強する。これらの観察は、癌に対する強力な抗原特異的免疫応答の誘導のためにmRNA組成物を共送達する価値を指摘する。
【0176】
好ましい実施態様では、本明細書で定義される組成物、脂質ナノ粒子又は医薬製剤は、放射線療法及び化学療法を含む標準的な癌治療と組み合わせて使用するために提供される。
【0177】
本発明は、さらに、それを必要とする患者を、本発明の組成物、脂質ナノ粒子又は医薬製剤又は本発明のワクチンで治療する方法を提供する。
【0178】
本発明はさらに、癌を治療するための、本明細書で定義される組成物、脂質ナノ粒子又は医薬製剤を提供する。
癌に対する能動的免疫療法の場合、組成物、脂質ナノ粒子又は本発明の医薬製剤による治療は、本発明の活性を改善するため、又は異なる治療様式間の相乗作用を利用するために〔例えば、患者の免疫系をサイトカイン(例えば、インターロイキン-2又はインターフェロンアルファ-2b)又はTLR-リガンドで非特異的に賦活することによる本発明に対する免疫応答を改善することにより〕、又は、例えば、本発明とイピリムマブ又はトレメリムマブのような共賦活シグナル修飾薬物との組み合わせにより、本発明の非特異的治療に先行し、組み合わせ、又はその後に免疫調節の任意の非特異的治療を行うことができる。
本発明は、又、本発明自体及び定義された数の他の免疫調節治療が、より積極的な治療計画になるべく使用され、複合治療レジメンも提供する〔例えば、モダリティ1(例えば、サイトカイン)での本発明の逐次的使用、続いて、ワクチン免疫細胞のインビボ又はエクスビボ増殖のための本発明の使用、続いて、これらの細胞の養子細胞移入、続いて、追加のモダリティ(例えば、共賦活受容体シグナル修飾因子)での本発明の併用治療、又は本発明の併用及び/若しくは逐次的使用の任意の可能な組合せ、ならびに追加の免疫調節治療〕。
【0179】
好ましい実施態様において、本発明は、標的特異的抗原とのIL-21の同時発現にあり、それにより、腫瘍環境におけるDCの免疫賦活効果の増加をもたらす。さらに好ましい実施態様において、IL-21、4-1BBL及びIL-7の特定の組合せは、DCの免疫賦活効果を改善するために使用される。別の好ましい実施態様において、IL-21、4-1BBL及びIL-15sushiの特定の組合せは、DCの免疫賦活効果を改善するために使用される。これらの実施態様のすべてにおいて、以下のマーカーのいずれかを同時に導入することができる:サイトカイン及び/又はケモカイン。
【0180】
表1:コードされた免疫賦活タンパク質のヒトアミノ酸配列。
SEQ ID Peptide又はフラグメント NCBI番号 アミノ酸配列
【表1】
【0181】
表2:コードされた免疫賦活タンパク質のマウスアミノ酸配列。
SEQ ID Peptide又はフラグメント NCBI番号 アミノ酸配列
【表2-1】
【表2-2】
【0182】
表3:コードされた免疫賦活タンパク質のマウス核酸配列。
SEQ ID Peptide又はフラグメント NCBI番号 ヌクレオチド配列(DNA)
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【実施例
【0183】
ここで、本発明を、以下の合成及び生物学的実施例の手段によって説明するが、これらは決して本発明の範囲を限定しない。
【0184】
材料及び方法:
mRNAのin vitro転写
種々のサイトカイン(muIL-21、muIL-7及びmuIL-15sushi)、共賦活分子(mu4-1BBL)又はFireFlyルシフェラーゼ又はNanoルシフェラーゼをコードするmRNAを、5'及び3' UTRs及びポリAテールを組み込んだ線状化DNA鋳型(peTheRNAvs3ベクター)からのT7媒介転写によってインビトロで調製した。最終的なmRNAは、Cap1を利用し、ウリジンをN1-メチル擬ウリジンで100%置換する。
【0185】
mRNA脂質ベースのナノ粒子の合成及び精製
NanoAssemblr Benchtop (Precision Nanosystems)を使用して、酢酸ナトリウム緩衝液(100mM、pH4)中のmRNA溶液と、2:1の体積比の脂質溶液とを9mL/分の速度でマイクロ流体混合することによって、脂質ベースのナノ粒子を製造する。脂質溶液は、好適なイオン化可能脂質、DSPC(Avanti)、コレステロール(Sigma)及びDMG-PEG2000(Sunbright GM-020、NOF社)の混合物を含有した。4種の脂質を標準比50/10/38.5/1.5(イオン化可能脂質、ヘルパー脂質、コレステロール、PEG脂質)で混合した。スライドアライザー透析カセット(20K MWCO、3mL、ThermoFisher)を使用して、LNPをTBSに対して透析した(LNP容量よりも10000倍多いTBS容量)。サイズ、多分散性及びゼータ電位を、Zetasizer Nano(Malvern)を用いて測定し、mRNAカプセル化を、標準的なリボグリーンRNAアッセイ(Invitrogen)によって測定した。
【0186】
細胞株:
増殖培地、継代培養比、及び培地更新の推奨を含む、最も最適な培養条件を以下に要約する。接着細胞を回収するために、使用済み増殖培地を廃棄し、細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(Sigma)で2回すすぎ、その後、トリプシン-EDTA(0.05%)(Gibco、Thermo Fisher Scientific)を添加して細胞を緩める。培地の更新は、細胞が約70%のコンフルエントに達したときはいつでも、2~3日毎に行う必要がある。細胞生存率は、Vi-Cell XR Cell Viability Analyzer(Beckman Coulter)を用いて決定した。
【0187】
表4.細胞型特定培養条件
【表4】
略語: DMEM:ダルベッコ変法イーグル培地; FBS:ウシ胎仔血清
【0188】
腫瘍接種及び腫瘍内注射
MC38腫瘍細胞をC57/BL6マウスに接種した。雌C57BL/6JマウスをCharles River Laboratories(フランス)から購入し、標準的なべデイング(bedding)材料を含有する個々に換気されたケージに収容した。動物を維持し、動物実験のための施設(UGhent)及び欧州連合のガイドラインに従って処置した。マウスは、食物及び水への自由なアクセスを有した。実験は、マウスが約7~9週齢であったときに開始した。皮下腫瘍接種の準備のために、2.5%イソフルランを用いてマウスに麻酔をかけ、注射部位を剃毛した。注射部位は、典型的には、左下側腹部の後方/外側面上にある。接種の目的のために、細胞は、培養約1週間であり、解凍後に継代3~5の間である必要がある。
冷腫瘍細胞溶液を、0.5×10e6細胞/50μl PBSの用量で左側腹部に皮下注射した。Caliper装置を用いて、2~3日毎に腫瘍増殖を測定した。以下の式を用いて腫瘍サイズを計算した:(腫瘍幅*腫瘍幅*腫瘍長)/2。腫瘍が平均体積50~100mm3に達したとき、マウスをビヒクル及びmRNA治療群(群あたり8~10匹のマウス)に無作為化し、治療を開始した。
腫瘍を、U-100インスリン針(BD Biosciences, San Diego, CA, USA)を用いて、mRNAを含有するLNPs(20μlのTBS緩衝液中5~15μgのmRNA/投与)又は対照緩衝液(TBS)を用いた単独療法(又は併用療法)として注射した。注射後、マウスを、痛みの苦痛又は合併症の徴候を示すことなく、完全に覚醒するまで、5~10分間、常に、モニターした。マウスを1日おきにモニターし、腫瘍体積をカリパスで測定し、体重を、治療後、週2~3回追跡した
【0189】
併用療法のために、異なるサイトカインをコードするmRNAもs-Ac7-Dog LNPsに製剤化した。腫瘍体積が、50~75mm3に達したときに、3回の腫瘍内投与のmRNA(10μg又は15μgの総mRNA/投与;示されるように)で動物を処置した。無作為化(DR)、DR+3及びDR+7の日に投与を注射にて処置した。対照動物を、等量の無関係なmRNA(NanoLuc)で処置した。腫瘍体積を、キャリパーを用いて示された時点で測定し、立方ミリメートルで記録した。併用療法の効果を、IL-21と、Il-7、IL-15sushi、4-1BBL等の他の免疫調節分子との併用について試験した。
【0190】
データ解析
すべての生データを、Graph Pad Prism version 7ソフトウェアを用いて分析した。
【0191】
結果
実施例1 MC38(結腸癌)モデルにおけるmRNA単独療法の有効性
IL-21 mRNA単独療法を用いた単独療法の有効性を、MC38結腸腺癌モデルにおいて評価した。5×105個のMC-38結腸腫瘍細胞を、C57BL/6マウスにおいて皮下で樹立し、IL-21及び無関係な分子としてFlucをコードするmRNAを、M&Mに記載されるように調製し、LNPsにおいて製剤化した。腫瘍体積が50~75mm3に達したとき、3回の腫瘍内投与のmRNA(15μg総mRNA/投与)で動物を処置した。無作為化(DR)、DR+3及びDR+7の日に投与は、注射処置した。対照動物を、等量の陰性対照mRNAで処置した。腫瘍体積を、キャリパーを用いて示された時点で測定し、立方ミリメートルで記録した。
【0192】
完全奏効(「CR」)は、Fluc mRNA対照(3×15μg総mRNA/投与)で処置された8匹中2匹(20%)において観察された(図1A)。IL-21 mRNA (3×15μg総mRNA /投与)による治療により、6/8例(75%)に完全奏効が認められた(図1B)。図1C図1D及び図1Eは、それぞれIL-7、4-1BBL又はIL-15sushi mRNA単独療法治療(3×15μg総mRNA/投与)に対する有効性の欠如を示す。IL-15sushi投与例は、8例中2例(20%)に完全寛解(「CR」)が認められ、対照群と同様であった(図1E)。
【0193】
実施例2 MC38(結腸癌)モデルにおけるmRNA併用療法の相乗効果
IL-7とIL-21
IL-21をコードするmRNAへのIL-7の付加(addition)は、MC38結腸癌モデルにおける治療の効力を増加させる。
NanoLuc mRNA対照(3×10μg mRNA)による治療は、有効性の欠如を示した(図2A)。IL-21単独療法(3×5μg総mRNA/投与)及びフィラーRNA NanoLuc(3×5μg総mRNA/投与)をコードするmRNAによる治療は、8匹の対象のうち2匹(20%)において完全応答(「CR」)を示し、8匹の動物のうち2匹(20%)において部分応答を示した(図2B)。
IL-7単独療法(3×5μg総mRNA/投与)及びフィラー(filler)RNA NanoLuc(3×5μg総mRNA/投与)をコードするmRNAによる治療は、8匹の対象のうち1匹(20%)において完全応答(「CR」)を示し、8匹の動物のうち2匹(20%)において部分応答を示した(図2C)。
IL-7 及びIL-21 をコードするmRNAの併用療法(3x 5μg各々、10μg総mRNA /投与)により、被験動物8 例中3 例(37.5%)に完全奏効(「CR」)、動物8 例中2 例(20%)に部分奏効(図2D)が得られた。データは、IL-21/IL-7の組み合わせが、単独療法治療と比較した場合、改善された有効性をもたらすことを示した。
【0194】
IL-15sushiとIL-21
IL-21及びIL-15sushi mRNAをコードするmRNA(3×7.5μ各々、15μg総mRNA/投与)による治療は、IL-21単独で観察されるMC38結腸癌モデルにおける治療の効力を増加させないようである(図3B及び図3A参照)。いずれの治療法においても、8匹中6匹(75%)で完全奏効が観察された。
【0195】
IL-7, 4-1BBL及びIL-21
IL-21、IL-7及び4-1BBLをコードするmRNA(3×5μg各mRNA/投与)を組み合わせると、すべての動物で100%の応答が得られた(図3C)。
【0196】
IL-15sushi、4-1BBL、IL-21
IL-21、IL-15sushi、及び4-1BBLをコードするmRNA(3×5μg各mRNA/投与)を組み合わせると、動物8匹中6匹(75%)で完全奏効が得られた(図3D)。
【0197】
実施例3
IL-21単独療法又はIL-21ベースの混合療法による治療後の全身性記憶免疫応答の生成
IL-21単独療法又は併用API療法で処置した動物における記憶免疫応答を評価した。5x105個のMC38腫瘍細胞を接種したマウスを、IL-21単独療法で処置した。15マイクログラムの全mRNAを、先の実施例に記載されるように、腫瘍内に(3回)注射した。腫瘍接種後80日目に、処置群からの完全応答の対象に、5×105個のMC-38結腸腫瘍を反対側の側腹部に再投与した。対照として、12匹の未処置動物にMC38癌も注射した。
【0198】
IL-21単独療法後
未処置動物(n = 12)は、腫瘍増殖を制御することができなかった(図4A)。対照的に、腫瘍内処置を受けた完全応答動物(n = 6)は、同じ癌細胞が再投与されたが、少なくとも接種後22日目まで(6匹中6匹)、再投与されたマウスのいずれにおいても腫瘍増殖は観察されなかった(図4B)。局所療法後の全身性抗癌記憶(systemic anti-cancer memory post local therapy)の生成は、単独療法IL-21で処置されたマウスについて観察された。
【0199】
組み合わせAPI治療後
腫瘍内処置を受けた完全応答動物は、同じ癌細胞が再投与され、接種後少なくとも26日目まで、再投与されたマウスのいずれにおいても腫瘍増殖は観察されなかった:IL-21/4-1BBL/IL-15sushi処置群の6匹中6匹(図4C)及びIL-21/4-1BBL/IL-7処置群の8匹中8匹(図4D)。これらの結果は、IL-21/4-1BBL/IL-15sushi又はIL-21/4-1BBL/IL-7をコードするmRNAの腫瘍内注射は、抗腫瘍効果を有する記憶免疫応答(memory immune response)を誘導することを示す。
【0200】
実施例4
MC38(結腸癌)モデルにおける10μg投与でのIL-7及び4-1BBL mRNA療法とのIL-21の相乗効果
MC38結腸腺癌モデルにおいて、2又は3 mRNAの単独療法 対 併用療法を評価した。5×105個のMC-38結腸腫瘍細胞を、C57BL/6マウスにおいて皮下で樹立した。ntrIL-21(非翻訳IL-21)、IL-21、IL-7及び4-1BBLをコードするmRNAを、M&Mに記載のように調製し、LNPにおいて製剤化した。動物は、腫瘍体積が50~75mm3に達したとき、mRNAs の3回の腫瘍内投与で処置した (投与あたり1 APIでは3.33μgのmRNA、投与あたり2APIでは6.66μgのmRNA、投与あたり3APIでは10μgの総mRNA)で動物を処置した。無作為化(DR)、DR+3及びDR+7の日に投与を、注射にて処置した。対照動物を、等量の非翻訳IL-21 mRNAで処理した。腫瘍体積を、キャリパーを用いて示された時点で測定し、立方ミリメートルで記録した。
【0201】
IL-21 mRNA (3×3.3μg総mRNA /投与)による治療は、7例中3例(42%)で完全奏効(「CR」)を、7例中1例(14%)で部分奏効を誘発した(図5B)。IL-7又はIL-1BBL mRNA単独療法処置(3×3.33μg総mRNA/投与)は、TBS、空のLNP及び非翻訳IL-21 mRNA LNP処置動物に関して、効力の欠如を示した(図5A)。
【0202】
IL-21 及びIL-7 をコードするmRNA(3x 3.33μg各々、6.66μg総mRNA /投与)の併用療法により、7 例中4 例(57%)に完全奏効、7 例中2 例(28%)に部分奏効が認められた(図5C)。データはIL-21/IL-7の組み合わせが、単独療法治療と比較した場合、改善された有効性をもたらすことを示した。IL-21と4-1BBLをコード化したmRNA、及びIL-7と4-1BBLをコード化したmRNAを組み合わせても、7例(14%)のうち1例のCRであって、MC38結節がんモデルにおける治療の有効性が有意に高まるとは思われない(図5C)。
【0203】
IL-21、IL-7、4-1BBLの3分子すべてをコードするmRNAを組み合わせると(3x 3.33μg各mRNA/投与、総mRNA 10μg/投与)、奏効率は85%であった(図5D)。
【引用文献】
【0204】
Kariko, K., Muramatsu, H., Ludwig, J. & Weissm及び. Generating the optimal mRNA for therapy: HPLC purification eliminates immune activation 及び improves translation of nucleoside-modified, protein-encoding mRNA. Nucleic Acids Res. 39, e142 (2011). This study demonstrates the importance of purification of IVT mRNA in achieving potent protein translation 及び in suppressing inflammatory responses.
図1
図2
図3
図4
図5-A】
図5-B】
図5-C】
図5-D】
【配列表】
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【国際調査報告】