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特表2025-501499Hathewaya histolytica(またはclostridium histolyticum)を増殖させるための、および1種または複数のプロテアーゼの産生のための培養培地
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-22
(54)【発明の名称】Hathewaya histolytica(またはclostridium histolyticum)を増殖させるための、および1種または複数のプロテアーゼの産生のための培養培地
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20250115BHJP
   C12N 9/50 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
C12N1/20 A
C12N1/20 E
C12N9/50
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535682
(86)(22)【出願日】2023-01-02
(85)【翻訳文提出日】2024-06-14
(86)【国際出願番号】 EP2023050027
(87)【国際公開番号】W WO2023131588
(87)【国際公開日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】22150333.7
(32)【優先日】2022-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】102022121862.7
(32)【優先日】2022-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521327699
【氏名又は名称】ノルドマルク ファーマ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ヘイランド
(72)【発明者】
【氏名】マウゴジャータ スタヴォルツィンスカ-ゲッデ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス シュラーダー
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA23X
4B065AC14
4B065BB02
4B065BB03
4B065BB12
4B065BB29
4B065CA31
4B065CA60
(57)【要約】
本発明は、酵母抽出物、グリシン、アルギニン、グルタミン、セリン、トレオニン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、セレン、および水を含む液体培養培地に関する。本発明は、酵母抽出物、トレオニン、セリン、および水を少なくとも含む、フェドバッチ過程における飼料としての使用のための液体飼料組成物にさらに関する。本発明は、液体培養培地および液体飼料組成物を含むパーツのキット、Hathewaya histolytica(Clostridium histolyticum)を増殖させかつ培養上清から1種または複数のプロテアーゼを獲得するための組成物の使用、ならびに増殖に関する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2.5~100g/Lの酵母抽出物と、
1.0~30g/Lのグリシンと、
1.0~35g/Lのアルギニンと、
0.20~0.80g/Lのグルタミンと、
0.20~1.0g/Lのセリンと、
0.3~3.0g/Lのトレオニンと、
0.4~12mmol/Lのマグネシウムイオン(Mg2+)と、
0.34~3.4mmol/Lのカルシウムイオン(Ca2+)と、
0.00095~0.0152mmol/Lのセレンと、
水と、
を含む、液体培養培地。
【請求項2】
2.5~100g/Lの酵母抽出物と、
1.0~30g/Lのグリシンと、
1.0~35g/Lのアルギニンと、
0.20~0.80g/Lのグルタミンと、
0.20~1.0g/Lのセリンと、
0.3~3.0g/Lのトレオニンと、
100~3000mg/Lの硫酸マグネシウム七水和物と、
50~500mg/Lの塩化カルシウム二水和物と、
0.25~4.00mg/Lの亜セレン酸ナトリウム五水和物と、
水と、
を含む、請求項1に記載の液体培養培地。
【請求項3】
10~30g/Lの酵母抽出物と、
5~8g/Lのグリシンと、
5~8g/Lのアルギニンと、
0.25~0.40g/Lのグルタミンと、
0.37~0.50g/Lのセリンと、
0.50~1.50g/Lのトレオニンと、
300~1700mg/Lの硫酸マグネシウム七水和物と、
100~300mg/Lの塩化カルシウム二水和物と、
0.70~1.60mg/Lの亜セレン酸ナトリウム五水和物と、
水と、
を含む、請求項2に記載の液体培養培地。
【請求項4】
17~25g/Lの酵母抽出物と、
5~7g/Lのグリシンと、
6~7g/Lのアルギニンと、
0.30~0.35g/Lのグルタミンと、
0.37~0.47g/Lのセリンと、
0.8~1.2g/Lのトレオニンと、
700~1300mg/Lの硫酸マグネシウム七水和物と、
150~300mg/Lの塩化カルシウム二水和物と、
1.00~1.40mg/Lの亜セレン酸ナトリウム五水和物と、
水と、
を含む、請求項3に記載の液体培養培地。
【請求項5】
動物または植物に由来するいかなる構成要素も含んでいない、請求項1から4のいずれか一項に記載の液体培養培地。
【請求項6】
6.5~8.2の範囲内のpH値を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の液体培養培地。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の滅菌された液体培養培地。
【請求項8】
Hathewaya histolytica(Clostridium histolyticum)の接種源を付加的に含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の液体培養培地。
【請求項9】
少なくとも20g/Lの酵母抽出物と、
少なくとも3g/Lのトレオニンと、
少なくとも1.5g/Lのセリンと、
水と、
を含む、Hathewaya histolytica(Clostridium histolyticum)の増殖のためのフェドバッチ過程における飼料としての使用のための、液体飼料組成物。
【請求項10】
6.5~8.2の範囲内のpH値を有する、請求項9に記載の液体飼料組成物。
【請求項11】
請求項9または10のいずれかに記載の滅菌された液体飼料組成物。
【請求項12】
請求項1から8のいずれか一項に記載の液体培養培地および請求項9から11のいずれか一項に記載の液体飼料組成物を含む、パーツのキット。
【請求項13】
Hathewaya histolytica(Clostridium histolyticum)を増殖させ、培養上清から少なくとも1種のプロテアーゼを獲得するための、請求項1から8のいずれか一項に記載の液体培養培地および/または請求項9から11のいずれか一項に記載の液体飼料組成物の使用。
【請求項14】
請求項1から8のいずれか一項に記載の液体培養培地においてHathewaya histolytica(Clostridium histolyticum)を増殖させ、培養上清から少なくとも1種のプロテアーゼを獲得する工程を含む、方法。
【請求項15】
増殖は、請求項9から11のいずれか一項に記載の液体飼料組成物の使用によるフェドバッチ操作において実施される、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
序論
本発明は、酵母抽出物、グリシン、アルギニン、グルタミン、セリン、トレオニン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、(例えば、亜セレン酸ナトリウムの形態での)セレン、および水を含む液体培養培地に関する。本発明は、酵母抽出物、トレオニン、セリン、および水を少なくとも含む、フェドバッチ過程における飼料としての使用のための液体飼料組成物にさらに関する。本発明は、液体培養培地および液体飼料組成物を含むパーツのキット、Hathewaya histolytica(以前はClostridium histolyticum)を増殖させ、1種または複数のプロテアーゼを獲得するための液体培養培地および液体飼料組成物の使用、ならびに増殖に関する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術の考察
コラーゲンは、哺乳類生物の主要な構造的構成成分であり、動物体の皮膚および他の部分の総タンパク質含有量の大部分を占める。ヒトにおいて、コラーゲンは、創傷治癒過程および自然老化の過程に特に重要である。隆起(bump)、手術、感染、および事故等の様々な皮膚外傷は、コラーゲンに富みかつプロテオグリカン含有量の増加を有する線維性組織の不規則な蓄積によってしばしば特徴付けられる。損傷を受けているまたは破壊されている正常組織の置き換えに加えて、新しい組織の過度でかつ外観を損なう沈着が、治癒過程の間に形成されることがある。
【0003】
数多くの疾患および病状が、過度のコラーゲン沈着、およびコラーゲンに富む線維性組織の不規則な蓄積と関連する。そのような疾患および病状は、本明細書において集合的に「コラーゲン媒介性疾患」と称される。コラゲナーゼは、コラーゲンを消化する特異的能力を有する酵素である。コラゲナーゼは、ペイロニー病およびデュピュイトラン病等の多様なコラーゲン媒介性疾患を治療するために、ならびに創傷から壊死組織を除去するために使用されている。
【0004】
さらに、コラゲナーゼおよび他のプロテアーゼ(例えば、中性プロテアーゼおよび/またはクロストリパイン等)は、組織解離、ならびに例えば膵島細胞、肝細胞、および腫瘍細胞等の多様な細胞の単離のためにインビトロで使用される。これらの細胞には、研究および診療において多数の用途が見出されている。粗コラゲナーゼまたはプロテアーゼの混合物の1つの一般的な供給源は、細菌発酵過程由来、とりわけHathewaya histolytica(以前はClostridium histolyticum)の発酵由来のものである。
【0005】
Hathewaya(Clostridium)は、グラム陽性細菌の属である。Hathewaya(Clostridium)細菌は嫌気性であり、土、水に、ならびにヒトおよび他の動物の腸管によく見られる。Hathewaya histolytica(Clostridium histolyticum)種は、コラーゲン分解酵素、ならびに例えばコラゲナーゼ(EC 3.4.24.3)、中性プロテアーゼ、およびクロストリパイン(EC 3.4.22.8)等、タンパク質分解活性を有する他の酵素を産生し得る。増殖過程の重要な産物は、コラーゲンに対するタンパク質分解活性を所有する細菌性コラゲナーゼである。これらの酵素は、それらの相対的活性に従って、IおよびII型コラゲナーゼ(以降、「コラゲナーゼI」および「コラゲナーゼII」)としてBondら(非特許文献1参照)によって分類されている。コラゲナーゼおよび他のプロテアーゼは培養培地に分泌され、培養上清から獲得され得る。
【0006】
バイオテクノロジー産業では、薬学的用途における使用のための多数の酵素が、大規模な発酵過程において産生される。例えば、Hathewaya histolytica(Clostridium histolyticum)は、例えばコラゲナーゼ、中性プロテアーゼ、および/またはクロストリパインを含めたプロテアーゼを産生するために増殖される。通常、そのような過程において、培養培地(栄養培地、発酵培地)は、ウシまたはブタ起源の肉(組織)ペプトン等の動物由来構成要素を含む。動物由来成長培地を起源とする外来因子(例えば、ウイルス)が最終産物に存在し得るため、哺乳類病原性因子を含んでいない培養培地を開発することが望ましい。プリオンおよびBSEに関する特定の安全性関連の懸念がある。近年、規制当局は、これらの懸念が対処されることを要請している。それゆえ、産業界は、動物性物質を含んでいない培養培地に向けられる傾向にある。
【0007】
特許文献1には、水、魚ゼラチン、および魚ペプトンが排除されている非哺乳類供給源由来のペプトンを含む、Hathewaya histolytica(Clostridium histolyticum)に対する成長培地が開示されている。非哺乳類供給源由来のペプトンに関する唯一の例は、植物ペプトンである。この成長培地は、魚ゼラチンおよび非哺乳類供給源由来のペプトンが、そのほとんどが不明である多種多様な化合物を含む複合成分であるという事実は悩ましい。さらに、これら成長培地は天然供給源から調製され、それゆえ、それらの含有量の天然変動に供される。
【0008】
酵母抽出物および植物ペプトンは、近年、動物由来の培養培地構成要素の代替物と見なされている。しかしながら、酵母抽出物単独では、ある特定の細菌の十分な成長に必要なすべての栄養素を提供し得ない。特許文献2には、水、非動物起源ペプトンまたはその誘導体、酵母抽出物、ならびにアミノ酸システインおよびアルギニンを含む、Clostridium(現在はHathewaya)属、とりわけClostridium histolyticum(現在はHathewaya histolytica)の細菌に対する動物産物を含んでいない培養培地が開示されている。非動物起源ペプトンは植物に由来する(植物ペプトン)。コラゲナーゼIおよびコラゲナーゼIIを産生するために、Clostridium histolyticum(現在はHathewaya histolytica)の発酵に、特許文献3に従って植物性ペプトンが使用される。植物ペプトンは、これらが複雑でかつ不確定な混合物であるという、およびとりわけ気象条件または植え付け領域が変化した場合、原材料の産生が大きなバッチ変動性にしばしば供されるという欠点を有する。さらに、植物ペプトンの組成は、産生過程および供給元に応じてかなり変動し得る。ゆえに、一定の産物品質を獲得することまたは代替供給元を見出すことは、困難であるまたは単に可能でない。これらの理由で、植物ペプトンは、細菌の増殖のためのほとんどの産業的過程に対する成分として望ましくない。このことは、Hathewaya histolytica(Clostridium histolyticum)の増殖、およびプロテアーゼの産生にとりわけ当てはまる。Hathewaya histolytica(Clostridium histolyticum)は、増殖中に、コラゲナーゼI、コラゲナーゼII、クロストリパイン、および中性プロテアーゼを分泌する。上清におけるこれらすべての酵素の活性は、増殖に使用される植物ペプトンの組成によって強く影響を受け、植物ペプトンの供給源または原材料、メーカー、産生過程に応じて、およびバッチに応じて5倍以上変動し得る。上で概説されるように、そのような産物変動性および単一の供給元への依存は、とりわけ医薬品産業における産業的産生過程にとって最適とは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2133415号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第2865748号明細書
【特許文献3】国際公開第2007/089851号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Bond,M.D.,van Wart,H.E.;Biochemistry,23,3077-91(1984)
【発明の概要】
【0011】
発明の課題
本発明の目的は、(i)細菌の成長を支援し、(ii)培養培地へのタンパク質分解活性を有する酵素の分泌を刺激し、(iii)産物および過程変動性を低下させる、液体培地および/または液体飼料組成物を提供することである。培地が、培養上清における高い容積活性(培養容積あたりの酵素活性)を刺激することが特に好ましい。本発明のさらなる目的は、動物由来構成要素および/または植物由来構成要素の添加なしで、細菌の増殖を可能にする新しいタイプの培養培地を提供することである。培地は、さらに、望ましくない物質によるいかなる汚染も回避するために、および発酵過程に対する過剰に複雑な影響を回避するために、可能な限り少ない構成要素を含むべきである。そのような培養培地は、Hathewaya histolytica(Clostridium histolyticum)種の有効な増殖、ならびに1種または複数のプロテアーゼ、例えばコラゲナーゼI、コラゲナーゼII、中性プロテアーゼ、および/またはクロストリパインの産生を可能にすることがとりわけ望ましい。その中に含まれる1種または複数のプロテアーゼの単離に使用され得る、Hathewaya histolytica(Clostridium histolyticum)液体培養物の上清を提供することは、本発明のさらなる目標である。プロテアーゼの分解が低い、プロテアーゼの産生のための過程を提供することも本発明の目標である。加えて、培養培地は、以下の利益を提供し得る:a)動物ペプトンまたは植物ペプトンを含む培養培地よりも高いバッチ信頼度;b)すべての構成要素が、複数の供給元から適切でかつ一定の品質で獲得され得る;c)Hathewaya histolytica(Clostridium histolyticum)の上清におけるコラゲナーゼの活性が400U/L以上である(PZ活性)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1の態様において、本発明は、
2.5~100g/Lの酵母抽出物、
1.0~30g/Lのグリシン、
1.0~35g/Lのアルギニン、
0.20~0.80g/Lのグルタミン、
0.20~1.0g/Lのセリン、
0.3~3.0g/Lのトレオニン、
0.4~12mmol/Lのマグネシウムイオン(Mg2+)、例えば100~3000mg/Lの硫酸マグネシウム七水和物(MgSO×7HO)、
0.34~3.4mmol/Lのカルシウムイオン(Ca2+)、例えば50~500mg/Lの塩化カルシウム二水和物(CaCl×2HO)、
0.00095~0.0152mmol/Lのセレン、例えば0.25~4.00mg/Lの亜セレン酸ナトリウム五水和物(NaSeO×5HO)、および

を含む、これから本質的になる、またはこれからなる液体培養培地に関する。
【0013】
本明細書において使用される「から本質的になる」という用語は、組成物が、(a)列挙された成分を必ず含み、(b)組成物の基本的なおよび新規の特性に著しく影響を及ぼさない列挙されていない成分を受け入れることを意味するものとする。
【0014】
本発明に従った液体培養培地は、Hathewaya(Clostridium)属の細菌に対する培養培地として、とりわけHathewaya histolytica(Clostridium histolyticum;例えば、Clostridium histolyticum G11および/またはATCC(商標)21000(商標))に対する培養培地として適切である。これは、細菌の十分な成長に、ならびに、任意選択で本発明に従った飼料組成物との組合せで、例えばコラゲナーゼI、コラゲナーゼII、中性プロテアーゼ、および/またはクロストリパイン等の1種または複数のプロテアーゼの有効な産生に要される栄養素を提供する。一実施形態において、本発明の培養培地を用いた、および任意選択で本発明の飼料組成物を用いたHathewaya histolytica(Clostridium histolyticum)の発酵により、上清におけるコラゲナーゼの活性は、400PZ単位/L以上、別の実施形態では600PZ単位/L以上、別の実施形態では1200PZ単位/L以上である。Wuenschに従った1PZ単位は、25℃、pH7.1で1分間あたり1μmolの4-フェニルアゾベンジル-オキシカルボニル-L-プロリル-L-ロイシル-グリシル-L-プロリル-D-アルギニン(PZ)の加水分解を触媒する(Wuensch,E.&Heidrich,H.G.(1963)Hoppe-Seyler’s Z.Physiol.Chem.333,149-51)。
【0015】
2.5g/Lよりも低い濃度の酵母抽出物の使用は、原理上可能であるが、細菌成長および産物収率を低下させ得る。100g/Lよりも高い濃度の酵母抽出物の使用は、原理上可能であるが、細菌成長またはプロテアーゼの分泌という点で大した利益を提供し得ない。一部の実施形態において、液体培養培地における酵母抽出物の濃度は、2.5~80、5.0~60、または10~30g/Lの範囲にある。別の実施形態において、液体培養培地における酵母抽出物の濃度は17~25g/Lの範囲にある。一部の実施形態において、液体培養培地は、20g/Lの酵母抽出物を含む。
【0016】
原理上、任意の酵母抽出物が使用され得る。酵母抽出物および調製のための方法は、当技術分野において周知である。動物ペプトンまたは植物ペプトンとは逆に、酵母抽出物は、産業用バイオリアクターにおける酵母の発酵を含む、より制御された産業的過程によって産生される。この理由で、バッチ信頼度は、植物または動物由来構成要素に対してよりも高い。同じ過程によって産生された異なるバッチの酵母抽出物は、細菌成長およびプロテアーゼの産生という点で同様の性能を提供する。さらに、異なる過程および/または異なる生産者によって産生された酵母抽出物は、互いに代わりになり得、細菌成長およびプロテアーゼの産生という点で同様の性能を提供し得る。要約すると、酵母抽出物は、動物ペプトンおよび植物ペプトンと比して過程堅牢性の増加を提供する。
【0017】
とりわけ、任意の市販の酵母抽出物が使用され得る。非限定的な例は、「BD Yeast Extract Technical」(Becton Dickinson and Company、Miami、FL、USA、品番:288610)、「BD Yeast Extract」(Becton Dickinson、品番:212730)、「BD Bacto Yeast Extract」(Becton Dickinson、品番:212730)である。「BD Yeast Extract Technical」(Becton Dickinson、品番:288610)は、コラゲナーゼおよび他のプロテアーゼの高い収率を提供し、この酵母抽出物を用いた発酵は再現性が良い。さらなる適切な酵母抽出物は、例えば「Difco Yeast Extract,low-dusting(LD)、品番:210933」、Ohlyによって産生された酵母抽出物、Kerry HY-Yeastシリーズ、およびAppliChem製のYeast Extract品番:A1552である。
【0018】
本文において別様に言及されない場合、コラゲナーゼの収率および濃度は、上清のPZ活性によって測定される。上清における中性プロテアーゼの活性は、例えばLin,Y.-C.et al.(1969)J.Biol.Chem.244,789-93;もしくはKunitz,M.1947.Crystalline soybean trypsin inhibitor.II.General properties.J.Gen.Physiol.30:291-310に従って;または実施例1に記載されるように測定され得る。上清におけるクロストリパインの活性は、例えばKezdy,F.J.et al.Biochemistry,1965,4,2302-2308に記載されるように;または実施例2に記載されるように測定され得る。
【0019】
本発明の液体培養培地は、1.0~30g/Lの濃度のグリシンまたはその薬学的に許容される塩を含む。1.0g/Lよりも低い濃度のグリシンの使用は、原理上可能であるが、細菌成長を低下させ得、上清におけるより低いPZ活性をもたらし得る。30g/Lよりも高い濃度のグリシンは、細胞成長または上清におけるPZ活性に対してほとんど利益を有し得ない。1つの実施形態において、本発明の液体培養培地におけるグリシンの濃度は5~8g/Lの範囲にある。別の実施形態において、液体培養培地におけるグリシンの濃度は5~7g/Lの範囲にある。一部の実施形態において、液体培養培地は、6.5g/Lのグリシンを含む。
【0020】
本発明の液体培養培地は、1.0~35g/Lの濃度のアルギニンまたはその薬学的に許容される塩を含む。1.0g/Lよりも低い濃度のアルギニンの使用は、原理上可能であるが、細菌成長を低下させ得、上清におけるより低いPZ活性をもたらし得る。35g/Lよりも高い濃度のアルギニンは、細胞成長または上清におけるPZ活性に対してほとんど利益を有し得ない。1つの実施形態において、本発明の液体培養培地におけるアルギニンの濃度は5~8g/Lの範囲にある。別の実施形態において、本発明の液体培養培地におけるアルギニンの濃度は6~7g/Lの範囲にある。一部の実施形態において、液体培養培地は、6.7g/Lのアルギニンを含む。
【0021】
本発明の液体培養培地は、0.20~0.80g/Lの濃度のグルタミンまたはその薬学的に許容される塩を含む。グルタミンは、細菌成長に対しておよび上清におけるPZ活性に対してプラスの影響を有する。0.20g/Lよりも低い濃度のグルタミンの使用は、原理上可能であるが、細菌成長を低下させ得、上清におけるより低いPZ活性をもたらし得る。0.80g/Lよりも高い濃度のグルタミンは、細胞成長または上清におけるPZ活性に対してほとんど利益を有し得ない。1つの実施形態において、本発明の液体培養培地におけるグルタミンの濃度は0.25~0.40g/Lの範囲にある。別の実施形態において、本発明の液体培養培地におけるグルタミンの濃度は0.30~0.35g/Lの範囲にある。一部の実施形態において、液体培養培地は、0.32g/Lのグルタミンを含む。
【0022】
本発明の液体培養培地は、0.20~1.0g/Lの濃度のセリンまたはその薬学的に許容される塩を含む。セリンは、細菌成長に対してプラスの影響を有するが、産生力に対してマイナスの影響を有する。本明細書において規定される産生力とは、PZ活性対細菌成長の比である。細菌成長は、公知の方法によって、例えば濁度を測定することによって判定され得る。一部の実施形態において、細菌成長は、600nmにおける光学密度を測定することによって判定される。0.20g/Lよりも低い濃度のセリンの使用は、原理上可能であるが、より低い細菌成長をもたらし得る。1.0g/Lよりも高いセリン濃度は、産生力を低下させ得る。一実施形態において、本発明の液体培養培地におけるセリンの濃度は0.37~0.50g/Lの範囲にある。別の実施形態において、本発明の液体培養培地におけるセリンの濃度は0.37~0.47g/Lの範囲にある。一部の実施形態において、液体培養培地は、0.42g/Lのセリンを含む。
【0023】
本発明の液体培養培地は、0.3~3.0g/Lの濃度のトレオニンまたはその薬学的に許容される塩を含む。この範囲内でより低い濃度のトレオニンは、この範囲内でより高い濃度よりも、上清において高いPZ活性を提供する。0.3g/Lよりも低い濃度のトレオニンの使用は、より低い細菌成長をもたらすであろう。3.0g/Lよりも高い濃度のトレオニンは、産生力を低下させ得る。一実施形態において、トレオニンの濃度は3.0g/Lよりも高くない。1つの実施形態において、本発明の液体培養培地におけるトレオニンの濃度は0.5~1.50g/Lの範囲にある。別の実施形態において、本発明の液体培養培地におけるトレオニンの濃度は0.8~1.2g/Lの範囲にある。一部の実施形態において、液体培養培地は、1g/Lのトレオニンを含む。
【0024】
本発明に従った液体培養培地は、0.4~12mmol/Lのマグネシウムイオン(Mg2+)、例えば100~3000mg/Lの硫酸マグネシウム七水和物(MgSO×7HO)を含む。一実施形態において、本発明に従った液体培養培地は、1.2~6.9mmol/Lのマグネシウムイオン(Mg2+)を含む。一実施形態において、液体培養培地における硫酸マグネシウム七水和物の濃度は300~1700mg/Lの範囲にある。別の実施形態において、本発明に従った液体培養培地は、2.8~5.3mmol/Lのマグネシウムイオン(Mg2+)を含む。別の実施形態において、硫酸マグネシウム七水和物濃度は700~1300mg/Lの範囲にある。一部の実施形態において、液体培養培地は、995mg/Lの硫酸マグネシウム七水和物を含む。本発明に従った液体培養培地は、0.34~3.4mmol/Lのカルシウムイオン(Ca2+)、例えば50~500mg/Lの塩化カルシウム二水和物(CaCl×2HO)を含む。一実施形態において、本発明に従った液体培養培地は、0.68~2.0mmol/Lのカルシウムイオン(Ca2+)を含む。一実施形態において、液体培養培地における塩化カルシウム二水和物の濃度は100~300mg/Lの範囲にある。別の実施形態において、本発明に従った液体培養培地は、1.0~2.0mmol/Lのカルシウムイオン(Ca2+)を含む。別の実施形態において、塩化カルシウム二水和物濃度は150~300mg/Lの範囲にある。一部の実施形態において、液体培養培地は、260mg/Lの塩化カルシウム二水和物を含む。1つの実施形態において、マグネシウムおよびカルシウムイオンに対するアニオンは、塩化物、硫酸塩、リン酸塩、および酢酸塩からなる群から選択され得る。他の実施形態において、硫酸マグネシウムがマグネシウムイオンに使用され得、かつ/または塩化カルシウムがカルシウムイオンに使用され得る。本発明に従った液体培養培地は、0.00095~0.0152mmol/Lのセレン、例えば0.25~4.00mg/Lの亜セレン酸ナトリウム五水和物(NaSeO×5HO)を含む。一実施形態において、本発明に従った液体培養培地は、0.0027~0.0061mmol/Lのセレンを含む。一実施形態において、液体培養培地における亜セレン酸ナトリウム五水和物の濃度は0.70~1.60mg/Lの域にある。別の実施形態において、本発明に従った液体培養培地は、0.0038~0.0053mmol/Lのセレンを含む。別の実施形態において、亜セレン酸ナトリウム五水和物濃度は1.00~1.40mg/Lの域にある。一部の実施形態において、液体培養培地は、1.17mg/Lの亜セレン酸ナトリウム五水和物を含む。一部の実施形態において、亜セレン酸ナトリウム(NaSeO)またはその五水和物を使用して、本発明の液体培養培地にセレンを提供する、すなわち、培地は亜セレン酸ナトリウムを含む。他のセレン含有化合物または組成物が使用され得る。セレンの適切な形態を選定することは、当技術分野における熟練者の十分に知識の範囲内にある。培地に導入されたセレンが、十分な生体利用率を有する適切な形態にあり得ることは周知である。このことにより、培地に含まれるセレンが細菌にとって使用可能になる。化合物または組成物が培地に十分なセレンを提供するかどうかは、発酵における所望のプロテアーゼの収率の比較によって簡単に判定され得る。この収率は、亜セレン酸ナトリウムの使用により獲得された収率と比較され得る。必要な場合には、セレンを提供するために使用される亜セレン酸ナトリウムまたはその五水和物以外の化合物または組成物の量を、同じまたは同様の結果が獲得されるように調整し得る。
【0025】
本明細書に記載される本発明の液体培養培地は、水、例えば精製水または注射用水を含み得る。精製水とは、不純物を除去し、それを使用、とりわけ薬学的使用に適切にするために、機械的に濾過されているまたは処理されている水である。注射用水は、さらにより精製され、例えば欧州または米国薬局方においてさらに規定される。1つの実施形態において、液体培養培地は、液体培養培地の全重量に基づき、少なくとも50、60、または70重量パーセントの量の水を含む。一部の実施形態において、液体培養培地は、少なくとも78重量%の量の、または少なくとも90重量%の量の、または少なくとも95重量%の量の水を含む。一部の実施形態において、水は、液体培養培地の残部である。一部の実施形態において、液体培養培地は、例えば上で指定される量の、欧州または米国薬局方に従った精製水または注射用水を含む。
【0026】
一部の実施形態において、液体培養培地は、Hathewaya histolytica(Clostridium histolyticum)の発酵、ならびにコラゲナーゼI、コラゲナーゼII、中性プロテアーゼ、およびクロストリパインからなる群から選択される少なくとも1種のプロテアーゼの産生に使用される。
【0027】
一部の実施形態において、液体培養培地は、10~30g/Lの酵母抽出物、5~8g/Lのグリシン、5~8g/Lのアルギニン、0.25~0.40g/Lのグルタミン、0.37~0.50g/Lのセリン、0.50~1.50g/Lのトレオニン、1.2~6.9mmol/Lのマグネシウムイオン(Mg2+)、0.68~2.0mmol/Lのカルシウムイオン(Ca2+)、0.0027~0.0061mmol/Lのセレン、および水を含む、これから本質的になる、またはこれからなる。一部の実施形態において、液体培養培地は、10~30g/Lの酵母抽出物、5~8g/Lのグリシン、5~8g/Lのアルギニン、0.25~0.40g/Lのグルタミン、0.37~0.50g/Lのセリン、0.50~1.50g/Lのトレオニン、300~1700mg/Lの硫酸マグネシウム七水和物(MgSO×7HO)、100~300mg/Lの塩化カルシウム二水和物(CaCl×2HO)、0.70~1.60mg/Lの亜セレン酸ナトリウム五水和物(NaSeO×5HO)、および水を含む、これから本質的になる、またはこれからなる。一部の実施形態において、液体培養培地は、17~25g/Lの酵母抽出物、5~7g/Lのグリシン、6~7g/Lのアルギニン、0.30~0.35g/Lのグルタミン、0.37~0.47g/Lのセリン、0.8~1.2g/Lのトレオニン、2.8~5.3mmol/Lのマグネシウムイオン(Mg2+)、1.0~2.0mmol/Lのカルシウムイオン(Ca2+)、0.0038~0.0053mmol/Lのセレン、および水を含む、これから本質的になる、またはこれからなる。一部の実施形態において、液体培養培地は、17~25g/Lの酵母抽出物、5~7g/Lのグリシン、6~7g/Lのアルギニン、0.30~0.35g/Lのグルタミン、0.37~0.47g/Lのセリン、0.8~1.2g/Lのトレオニン、700~1300mg/Lの硫酸マグネシウム七水和物、150~300mg/Lの塩化カルシウム二水和物、1.00~1.40mg/Lの亜セレン酸ナトリウム五水和物、および水を含む、これから本質的になる、またはこれからなる。一部の実施形態において、液体培養培地は、20g/Lの酵母抽出物、6.5g/Lのグリシン、6.7g/Lのアルギニン、0.32g/Lのグルタミン、0.42g/Lのセリン、1g/Lのトレオニン、995mg/Lの硫酸マグネシウム七水和物、260mg/Lの塩化カルシウム二水和物、および1.17mg/Lの亜セレン酸ナトリウム五水和物、ならびに水(例えば、精製水)を含む、これから本質的になる、またはこれからなる。
【0028】
酵母抽出物は、再現性のある方式で調製され得るため、本発明の液体培養培地は、高いバッチ安定性を有する安定でかつ再現性のある培養培地を提供し、これは、Hathewaya histolytica(Clostridium histolyticum)の増殖の高い過程堅牢性、ならびに例えばコラゲナーゼI、コラゲナーゼII、中性プロテアーゼ、およびクロストリパイン等のプロテアーゼの産生を提供する。一部の実施形態において、液体培養培地は、動物または植物に由来するいかなる構成要素も含んでいない。そのような動物もしくは植物由来成分は外来因子を含み得、かつ/またはこれらの成分は、メーカー間で、および同じメーカーの異なるバッチ間でさえ変動し得る。Hathewaya histolytica(Clostridium histolyticum)の増殖およびプロテアーゼの産生のために、動物または植物由来成分なしの液体培養培地を使用することは、プロテアーゼの最終消費者により多くの安全性を提供し、発酵における本発明の液体培養培地の信頼度を向上させる。
【0029】
本明細書において使用される「動物に由来する」または「動物由来の(animal derived)」または「動物由来の(animal-derived)」という用語は、動物起源の任意の物質を意味するものとする。本明細書において使用される「植物に由来する」または「植物由来の(plant derived)」または「植物由来の(plant-derived)」という用語は、植物起源の任意の物質を意味するものとする。一部の実施形態において、本明細書において使用される「動物に由来する」または「動物由来の(animal derived)」または「動物由来の(animal-derived)」という用語は、動物起源の任意の物質、および1種または複数の動物由来の物質(例えば、動物由来の酵素)を使用して処理された非動物起源の任意の物質を意味するものとする。一部の実施形態において、本明細書において使用される「植物に由来する」または「植物由来の(plant derived)」または「植物由来の(plant-derived)」という用語は、植物起源の任意の物質、および1種または複数の植物由来の物質(例えば、植物由来の酵素)を使用して処理された非植物起源の任意の物質を意味するものとする。本明細書において使用される「構成要素」または「成分」という用語は、液体培養培地または液体飼料組成物の内容物の任意の物質を意味するものとする。
【0030】
一部の実施形態において、液体培養培地または液体飼料組成物はグルコースを含まない。一部の実施形態において、液体培養培地または液体飼料組成物は、グルコース、ガラクトース、ラクトース、マンノース、ラフィノース、フコース、スクロース、およびアラビノースからなる群から選択される糖類を含まない。一部の実施形態において、液体培養培地または液体飼料組成物はいかなる糖類も含まない。
【0031】
さらなる実施形態において、液体培養培地は消泡剤を含む。消泡剤は、培養培地におけるおよび発酵の間の泡の発生を抑制する。任意の市販の消泡剤が使用され得る。1つの適切な消泡剤は、Dow社製のXIAMETER(商標)ACP-1500(EU)消泡化合物である。消泡剤は、発泡を許容されるレベルまで抑制するのに適切な量で添加され得る。小規模での発酵は、消泡剤の添加なしで行われ得る。大規模の発酵では、消泡剤が添加され得る。
【0032】
一部の実施形態において、液体培養培地は、6.5~8.2の範囲内のpH値を有する。一部の実施形態において、液体培養培地のpH値は、7.2~8.1または7.5~8.0の範囲にある。pH値は、任意の公知の方法によって、例えば適切な緩衝能を有する緩衝剤の添加によってまたは酸もしくは塩基の添加によって調節され得る。一部の実施形態において、例えば約0.5リットル以下の容積を有する上清を用いた前培養ではおよび発酵では、緩衝剤が添加され得る。例えば、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸緩衝剤(MOPS緩衝剤)が使用され得る。一部の実施形態において、例えば上清の容積が約1リットルを上回るフェドバッチ過程ではおよび/または発酵過程では、pH値は継続的に測定され得、酸または塩基(または、増殖過程の時間経過では両方)を添加して、pH値を所望の範囲に保つ。例えば、リン酸および/または水酸化ナトリウムが使用され得る。一部の実施形態において、例えば上清の容積が約0.5~約1Lである発酵過程では、2種の方法のいずれかが使用され得る。
【0033】
さらなる実施形態において、液体培養培地は滅菌される。一部の実施形態において、組成物は、いかなる自己複製生物も含んでいない。滅菌は、当業者に公知の標準的方法によって、例えばオートクレーブ等の例えば熱処理によって達成され得る。一部の実施形態において、滅菌された液体培養培地は、Hathewaya histolytica(Clostridium histolyticum)の接種源を含む。一部の実施形態において、液体培養培地は、いかなる自己複製生物も含んでいないが、Hathewaya histolytica(Clostridium histolyticum)を含んでいる。一部の実施形態において、そのような組成物は、本発明の滅菌された液体培養培地にHathewaya histolytica(Clostridium histolyticum)の接種源を添加することによって調製される。
【0034】
第2の態様において、本発明は、
少なくとも20g/Lの酵母抽出物、
少なくとも3g/Lのトレオニン、
少なくとも1.5g/Lのセリン、および

を含む、これから本質的になる、またはこれからなる、例えばHathewaya histolytica(Clostridium histolyticum)の増殖のためのフェドバッチ過程における飼料としての使用のための液体飼料組成物に関する。
【0035】
本明細書において使用される「フェドバッチ培養」という用語は、増殖の間に、1種または複数の栄養素が、容器、例えばバイオリアクターに与えられ(供給され)、産物はランの終了まで容器にとどまる、バイオテクノロジー過程における操作技法を意味するものとする。フェドバッチ過程についてのさらなる詳細に関しては、例えばTsuneo YamaneおよびShoichi Shimizu(Fed-batch Techniques in Microbial Processes;Advances in Biochem Eng./Biotechnol 1984,30:147-194)を参照されたい。
【0036】
液体飼料組成物および液体培養培地は、異なる組成物である。一部の実施形態において、液体飼料組成物は、少なくとも30、40、または50g/Lの酵母抽出物を含む。一部の実施形態において、液体飼料組成物は、少なくとも4、5、6、7、8、9、または10g/Lのトレオニンを含む。一部の実施形態において、液体飼料組成物は、少なくとも2.0、2.5、3.0、4.5、5.0g/Lのセリンを含む。一部の実施形態において、液体飼料組成物は、50~200g/Lの酵母抽出物、3~60g/Lのトレオニンおよび1.5~40g/Lのセリン、ならびに水を含む、これから本質的になる、またはこれからなる。一部の実施形態において、液体飼料組成物は、70~130g/Lの酵母抽出物、3~10g/Lのトレオニンおよび1.5~10g/Lのセリン、ならびに水を含む、これから本質的になる、またはこれからなる。一部の実施形態において、液体飼料組成物は、100g/Lの酵母抽出物、5g/Lのトレオニンおよび2.5g/Lのセリン、ならびに水を含む、これから本質的になる、またはこれからなる。本明細書に記載される本発明の液体飼料組成物は、液体飼料組成物の全重量に対して、少なくとも50、60、または65重量パーセントの量の水、例えば精製水または注射用水を含む。一部の実施形態において、液体飼料組成物は、少なくとも70重量%、または少なくとも80重量%、または少なくとも95重量%の量の水、例えば精製水または注射用水を含む。一部の実施形態において、水は、液体飼料組成物の残部である。
【0037】
一部の実施形態において、液体飼料組成物は、6.5~8.2の域内のpH値を有する。
【0038】
さらなる実施形態において、液体飼料組成物は滅菌される。一部の実施形態において、組成物は、いかなる自己複製生物も含んでいない。滅菌は、当業者に公知の標準的方法によって、例えばオートクレーブ等の例えば熱処理によって達成され得る。
【0039】
第3の態様において、本発明は、本発明の液体培養培地および本発明の液体飼料組成物を含むパーツのキットに関する。この組み合わせは、例えばフェドバッチ過程における、例えばHathewaya histolytica(Clostridium histolyticum;例えば、Clostridium histolyticum G11および/またはATCC(商標)21000(商標))の発酵、および1種または複数のプロテアーゼの産生に有用である。
【0040】
本発明の第4の態様は、本発明の液体培養培地および/または本発明の液体飼料組成物、ならびに1種または複数のプロテアーゼを含む、Hathewaya histolytica(Clostridium histolyticum、例えばClostridium histolyticum G11および/またはATCC(商標)21000(商標))液体培養物の上清である。1種または複数のプロテアーゼは、コラゲナーゼI、コラゲナーゼII、中性プロテアーゼ、およびクロストリパインからなる群から選択され得る。一部の実施形態において、本発明の液体培養培地および/または液体飼料組成物を使用して調製されたHathewaya histolytica(Clostridium histolyticum)液体培養物の上清は、少なくとも400PZ単位/L(Wuensch単位)、または少なくとも500PZ単位/L、または少なくとも600PZ単位/L、または少なくとも700PZ単位/L、または少なくとも800PZ単位/L、または少なくとも900PZ単位/L、または少なくとも1000PZ単位/L、または少なくとも11000PZ単位/L、または少なくとも1200PZ単位/Lのコラゲナーゼ活性を有する。
【0041】
本発明のこの態様の実施形態は、(a)本発明に従った滅菌された液体培養培地に、Hathewaya histolytica(Clostridium histolyticum)の接種源を提供し、(b)細菌を増殖させ、それによって細菌は液相に1種または複数のプロテアーゼを分泌し;(c)液相から固体、例えば細胞物質および他の粒子状物質を分離し;それによって、1種または複数のプロテアーゼを含むHathewaya histolytica(Clostridium histolyticum)由来の培養上清を獲得する方法によって獲得可能な1種または複数のプロテアーゼを含む、Hathewaya histolytica(Clostridium histolyticum)の培養上清である。一部の実施形態において、上清は、液体フェドバッチ培養から獲得される。したがって、一部の実施形態において、上清は、(a)本発明に従った滅菌された液体培養培地に、Hathewaya histolytica(Clostridium histolyticum)の接種源を提供し、(b)フェドバッチ操作によって細菌を増殖させ、(c)本発明の液体飼料組成物を添加し、(d)液相から固体、例えば細胞物質および他の粒子状物質を分離し;それによって、1種または複数のプロテアーゼを含むClostridium histolyticum由来の培養上清を獲得する方法によって獲得可能である。一部の実施形態において、1種または複数のプロテアーゼは、コラゲナーゼI、コラゲナーゼII、中性プロテアーゼ、およびクロストリパインを含む群から選択され得る。
【0042】
第5の態様において、本発明は、Hathewaya histolytica(Clostridium histolyticum;例えば、Clostridium histolyticum G11および/またはATCC(商標)21000(商標))を増殖させ、培養上清から少なくとも1種のプロテアーゼ、例えばコラゲナーゼIおよび/またはコラゲナーゼIIおよび/または中性プロテアーゼおよび/またはクロストリパイン等、コラゲナーゼ活性を有するプロテアーゼを獲得するための、本発明の液体培養培地の使用に関する。第6の態様において、本発明は、Hathewaya histolytica(Clostridium histolyticum;例えば、Clostridium histolyticum G11および/またはATCC(商標)21000(商標))を増殖させ、培養上清から少なくとも1種のプロテアーゼ、例えばコラゲナーゼIおよび/またはコラゲナーゼIIおよび/または中性プロテアーゼおよび/またはクロストリパイン等、コラゲナーゼ活性を有するプロテアーゼを獲得するための、本発明の液体飼料組成物の使用に関する。
【0043】
第7の態様において、本発明は、
- 本発明の液体培養培地においてHathewaya histolytica(Clostridium histolyticum;例えば、Clostridium histolyticum G11および/またはATCC(商標)21000(商標))を増殖させ、培養上清から少なくとも1種のプロテアーゼを獲得する
工程を含む方法に関する。
【0044】
一部の実施形態において、コラゲナーゼI、コラゲナーゼII、中性プロテアーゼ、および/またはクロストリパインは、上述の方法を用いて獲得される。本発明の方法の一部の実施形態において、培養物のpH値は、これが6.5~8.2の範囲にあるように制御される。一部の実施形態において、培養物のpH値は、これが7.2~8.1または7.5~8の範囲にあるように制御される。
【0045】
本発明の方法の一部の実施形態において、増殖は、好ましくは、飼料としての本明細書に記載される滅菌された液体飼料組成物の使用によって、フェドバッチ操作において好ましくは実施される。そのようなフェドバッチ過程の一部の実施形態において、培養物のpH値は、これが7.2~7.8の域にあるように制御される。
【0046】
一部の実施形態において、本発明に従った方法は、
(a)本発明に従った滅菌された液体培養培地に、Hathewaya histolytica(Clostridium histolyticum細菌;例えば、Clostridium histolyticum G11および/またはATCC(商標)21000(商標))の接種源を提供し;
(b)細菌を増殖させ、任意選択で本発明に従った液体飼料組成物を添加し、それによって細菌は液相に1種または複数のプロテアーゼを分泌し;
(c)液相から固体、例えば細胞物質および他の粒子状物質を分離し、それによって上清を獲得し;
(d)上清から1種または複数のプロテアーゼを獲得し;それによって、Hathewaya histolytica(Clostridium histolyticum)から1種または複数のプロテアーゼを産生する
工程を含む。
【0047】
発酵過程の培養は、増殖の間に継続的にまたは1回もしくは複数の時点で、例えば濁度を判定することによって、および/または培養上清のサンプル(増殖の間に1回または複数の時点で採取され得る)中のプロテアーゼ活性を判定することによってモニターされ得る。一部の実施形態において、液体飼料組成物の添加は、細菌成長速度が指数期に達した時点で開始する。一部の実施形態において、液体飼料組成物の添加は、細菌成長速度が、最大濁度の約40%、50%、60%、または70%に達した時点で開始する。細菌は、15~19時間増殖され得る。酵素比は経時的に変化するため、増殖時間は、1種または複数の標的酵素に従って適合され得る。増殖および細菌成長期をモニターする適切な方法は、例えば特許文献1に開示される。1種または複数のプロテアーゼは、例えば粗形態でまたは精製された状態で、任意の公知の方法によって培養上清から獲得され得る。したがって、一部の実施形態において、工程(d)は、例えば濾過および/またはカラムクロマトグラフィー等の1種または複数の精製工程を含み得る。国際公開第2020/164721号は、Hathewaya histolytica(Clostridium histolyticum)の培養上清から1種または複数のプロテアーゼを獲得するためのいくつかの例となる手順を記載する。
【実施例
【0048】
分析法:
上清におけるWuensch活性の判定は、Wuensch,E.,Heidrich,H.G.;Hoppe-Seyler’s Zeit.Physiol.Chem.,333,149-51(1963)に従って行われてた。Wuenschに従った1PZ単位活性とは、25℃、pH7.1で1分間あたり1μmolの4-フェニル-アゾベンジルオキシカルボニル-L-プロリル-L-ロイシル-グリシル-L-プロリル-D-アルギニンの加水分解を触媒する活性である。本明細書におけるWuensch単位のすべての値は、別様に記述されない場合、PZ単位/リットル(U/L)、すなわち培養培地リットルあたりのWuensch単位で与えられる。
【0049】
クロストリパインおよび中性プロテアーゼの活性は、実施例1および2に記載されるように判定された。
【0050】
濁度を、600nm(OD600)でMettler Toledo UV-VIS分光光度計UV5Nanoにおいてオフラインで測定した。濁度を、空のサンプル(接種源なしの培地)に対して測定する。必要な場合には、測定値が最大で0.6のOD600の測定域にあるように、溶液は希釈されなければならない。
【0051】
材料:
すべての実験において、Clostridium histolyticum G11および/またはATCC(商標)21000(商標)を使用した。ATCC(商標)21000(商標)は、ATCC(米国培養細胞系統保存機関)で入手可能である。酵母抽出物として、「BD Yeast Extract」(Becton Dickinson、品番:288610)を使用した。下で記載される実験において、すべての培養物に、2容積パーセントの前培養物を接種した。1mLの液体培養培地と混合された凍結乾燥Hathewaya histolytica(Clostridium histolyticum G11またはATCC(商標)21000(商標))の1バイアル(バイアルは、最低10CFUを含有すると規定された;分析によれば、バイアルは35×10CFU/バイアルを含有した)の内容物を用いた液体培養培地の接種、および振とうフラスコにおける37℃での嫌気的インキュベーションによって、前培養物を調製した。
【0052】
バイオリアクターとして、Multiforsバイオリアクター(Infors GmbH製、Einsbach、独国)を使用した。さらなる材料、試薬、および装置は、下の実施例に記載される。
【0053】
実施例1:基質N-(3-[フリル]アクリロイル)-グリシンロイシンアミド(FAGLA)を用いた継続的な測光アッセイを使用した、中性プロテアーゼの活性アッセイ
原理:Hathewaya histolytica(またはClostridium histolyticum)由来の中性プロテアーゼは、アミノ酸グリシンとロイシンとの間で基質FAGLA中のペプチド結合の加水分解を触媒する。測光アッセイにおいて、基質変換を、345nmにおける減少する吸光度によって継続的に測定した。ゆえに、吸光度の減少または結果として生じる負の勾配は、基質変換の、ゆえに酵素活性の直接的尺度である。
【0054】
単位規定:1FAGLA単位(1U)は、1分間あたりの1μmolのN-[3-(2-フリル)アクリロイル]-グリシン-L-ロイシンアミドの加水分解として規定される。
【0055】
装置:温度制御型UV-VIS分光光度計(例えば、Cary 50、60、または100、Agilent)、円形振とう器(例えば、Scientific Industries、Vortex Genie2)、UVキュベットセミマイクロ(例えば、Brand、品番759150)、セミマイクロ石英キュベット(例えば、Hellma)、PD-10脱塩カラム(例えば、GE Healthcare、品番17-0851-01)。
【0056】
試薬:精製水、欧州薬局方(Ph.Eur.)、2-モルホリノエタンスルホン酸一水和物、略語MES(例えば、Merck、品番7 1.060126)、塩化カルシウム二水和物(例えば、Merck、品番1.02382)、分光法用のジメチルスルホキシド、略語DMSO(例えば、Merck、品番1.02950.)、Triton(登録商標) X-100(例えば、Sigma-Aldrich、品番23,472-9)、2-プロパノール(例えば、Merck、品番1.01040)、1mol/l水酸化ナトリウム溶液(Merck、品番1.09137)、FA-Gly-Leu-NH2(例えば、Bachem、品番4003615)、現行参照物質中性プロテアーゼNB(REF00236)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、略語Tris(例えば、Merck、品番1.08382.)、1mol/l塩酸(例えば、Merck、品番1.09057)。
【0057】
試薬溶液:
a)MES緩衝液pH6.5:10.67g(0.05mol)の2-モルホリノエタンスルホン酸一水和物および0.735g(0.005mol)の塩化カルシウム二水和物を、およそ800mlの精製水に溶解した。次いで、10mlの2-プロパノール(1%(v/v))を緩衝液混合物に添加した。1mol/l水酸化ナトリウム溶液を用いてpHを室温で6.5に調整し、精製水で最大で1000mlまで充填した。100μlピストンストロークピペットを使用することによって撹拌しながら、0.1mlのTriton X-100を緩衝液に添加して、高粘性Triton X-100溶液(0.01%(v/v))をゆっくりとピペッティングした。界面活性剤を緩衝液混合物に添加し、最後に先端を緩衝液に入れた。均一に達するまで溶液を撹拌した。獲得された緩衝溶液は、0.05mol/lの2-モルホリノエタンスルホン酸および0.005mol/lの塩化カルシウムの濃度を有する。
【0058】
b)FAGLA基質溶液(濃度=2.5mmol/l):まず、0.1M FAGLA溶液を調製した(36.9mgのFAGLAを1.2mlジメチルスルホキシドに溶解した)。次いで、1mlの0.1M FAGLA溶液を、a)に記載される39mlのMES緩衝液pH6.5と混合した。
【0059】
c)参照物質:およそ12~20mgの参照物質中性プロテアーゼNB(Nordmark Biochemicals、Uetersen、独国)を計量し、a)に記載されるMES緩衝液pH6.5を用いて10mg/mlの濃度に調整した。この溶液を氷上で保存した。さらなる希釈物(下に記載される妥当な作業範囲にある)を、MES緩衝液pH6.5を用いてこの溶液から調製した。およそ2.5~3.6mg/mlの参照物質を使用した。吸光度変化は、妥当な作業範囲内になければならない。分析物溶液を、MES緩衝液pH6.5を用いた判定の直前に室温で調製し、すぐに測定した。参照物質の活性を、妥当な作業範囲内の少なくとも1種の希釈物に対して二重測定を行った。
【0060】
d)トリス緩衝液pH9.5:0.606g(0.005mol)のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンおよび0.37g(0.0025mol)の塩化カルシウム二水和物を、およそ400mlの精製水に溶解した。1mol/l塩酸を用いてpHを室温で9.5に調整し、精製水で最大で500mlまで充填した。結果として生じた緩衝液は、0.01mol/lのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンおよび0.005mol/lの塩化カルシウムの濃度を有した。
【0061】
サンプル調製:
少なくとも1回の二重測定を行った。活性に応じて、サンプルを、妥当な作業範囲となるように希釈した(下を参照されたい)。無細胞培養上清の濃縮物からのサンプルを、測定前に、トリス緩衝液pH9.5で平衡化されたPD-10カラムで再緩衝化した。
【0062】
実行:
温度制御型UV-VIS分光光度計において+30℃および345nmの波長で、試験を実施した。345nmにおける吸光度変化を、5分間の時間間隔で判定した。
【0063】
FAGLA基質溶液を、実際の測定の前に、+30℃の水槽においておよそ30分間予熱した。代替的には、0.8ml基質溶液を含むセミマイクロキュベットを、測定の前に、少なくとも10分間UV-VIS光度計において直接予熱し得る。一連の測定を開始する前に、光度計を、基質溶液なしのMES緩衝液pH6.5に対して校正した。測定に関しては、0.8mlの予熱された基質溶液をキュベットに入れた。次いで、0.2mlサンプル溶液を添加し、ピペットで吸い上げる(およそ3回のピストンストローク)ことによって直ちに予混合し、反応混合物全体を使い捨て撹拌スパチュラで混合した。次いで、測定を直ちに開始した。試験における最終容積は1mlであった。各サンプルに関して、少なくとも1回の二重測定を行った。2mmol/lの特定の基質濃度は飽和値を下回った、すなわち、測定される特異的活性は基質濃度に依存する。それゆえ、アッセイにおける基質濃度は厳密に守られなければならず、同一の基質濃度で判定された活性のみが比較可能である。
【0064】
妥当な作業範囲:
評価可能な活性測定の前提条件は、-0.01~-0.035の妥当な作業範囲における1分間あたりの吸光度変化(ΔA 345nm/分)であり、負の勾配の方向は線形でなければならない。値(ΔA 345nm/分)が高すぎる場合には、より強力な希釈が使用されなければならず、値が低すぎる場合には、より低い希釈が使用されるべきである。
【0065】
評価:
現行参照物質を評価した。まず、標的値および許容基準を規定した。二重測定の平均値から参照物質およびサンプルの活性を算出した。測定結果の負の吸光度変化(ΔA/分)を算出するために、0~5分間の値を評価した。評価のための許容基準:全測定値のΔA 345nm/分は、線形の作業域内になければならない。最大偏差は、平均値の≦8%であり得る。大きな偏差がある場合には、測定を繰り返した。
【0066】
以下の式を使用して、未知の濃度を有するサンプルの活性を算出した:
【0067】
【数1】
【0068】
以下の式を使用して、既知の重量を有するサンプルの活性を算出した:
【0069】
【数2】
【0070】
ΔA=345nmにおける1分間あたりの吸収変化
VF=サンプルの希釈倍率
V=1ml(総容積)
v=0.2ml(サンプル容積)
ε=-0.317mM-1cm-1 FAGLAの吸光係数
m=mg単位のサンプル重量
【0071】
実施例2:Clostridium histolyticum由来の培養上清におけるクロストリパイン活性の判定
原理:
酵素クロストリパインは、255nmで光度的に測定される、カルシウムおよび還元剤ジチオトレイトール(DTT)の存在下で、ベンゾイル-L-アルギニンエチルエステル(BAEE)の加水分解を触媒する(Kezdy FJ,Lorand L,Miller KD.Titration of active centers in thrombin solutions.Standardization of the enzyme.Biochemistry 1965;4:2302-2308)。反応が擬0次のものである場合、つまり反応が一定である場合、単位時間あたりの吸光度の増加は、酵素濃度の直接的尺度である。1単位は、2.5mM DTTの存在下において、25℃およびpH7.8で1分間あたり1μmol BAEEの加水分解を触媒する酵素活性の量である。
【0072】
装置:温度制御型キュベットブロックボルテックス、回転子、石英キュベット、d=10mmを有する分光光度計Cary 50(Varian)。
【0073】
試薬:精製水、欧州薬局方およびUSP、ジチオトレイトール(DTT)(Serva、品番20710)、Na-ベンゾイル-L-アルギニン-エチルエステルHCl(BAEE)(Serva、品番14600)、リン酸二水素ナトリウム一水和物(Merck、品番6346)、1N水酸化ナトリウム溶液(Merck、品番09137)、酢酸カルシウム水和物(Kraft、品番15208)
【0074】
試薬溶液:7.5mM DTT溶液:57.8mg DTTを50ml精製水に溶解した。溶液を毎日新たに調製した。1.5mM BAEE溶液:51.8mg BAEEを100ml精製水に溶解した。溶液を毎日新たに調製した。75mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.8:10.35gのリン酸二水素ナトリウムをおよそ800mlの精製水に溶解し、水酸化ナトリウム溶液を用いてpHを室温でpH7,8に精確に調整した。次いで、溶液を精製水で最大で1000mlまで充填した。
【0075】
酵素溶媒:溶液A(活性化なし):1.0mM Ca(OAc):40mg酢酸カルシウム水和物を250ml精製水に溶解した。溶液B(活性化あり):5mM DTTを有する1.0mM Ca(OAc):38.4mg DTTを溶液Aで50mlに溶解した。溶液C(活性化あり):2.5mM DTTを有する1.0mM Ca(OAc):19.2mg DTTを溶液Aで50mlに溶解した。溶液を毎日新たに調製した。
【0076】
参照物質:各分析に関して、同一性のための参照物質としてのコラゲナーゼNB1(Nordmark Biochemicals、Uetersen、独国)も分析した。
【0077】
サンプル調製:無細胞培養上清中のタンパク質濃度を、分光光度法によって280nmにおける吸光度を測定することによって判定した。無細胞培養上清の3つのサンプルを採取し、各サンプルを、溶液Bの1mlあたり20mgのサンプルの濃度に溶液Bで希釈した。
【0078】
これらの希釈されたサンプルのそれぞれを以下のように分割した:
【0079】
【数3】
【0080】
サンプルXおよびサンプルYを+4℃で40分間~4時間インキュベートし、次いで100μlのサンプルXを900μlの溶液Cでさらに希釈し、200μlのサンプルYを200μlの溶液Aでさらに希釈して、測定に備えたサンプルXおよびYを獲得する(「サンプルXm」および「サンプルYm」)。
【0081】
実行:
活性化サンプルXmおよび非活性化サンプルYmを並行して測定した。加えて、ゼロ測定を実施した。以下の量の試薬(25℃に事前に予熱された)を石英キュベットにピペットで入れた:
【0082】
【表1】
【0083】
サンプルXmおよびサンプルYmをそれぞれ最後に添加し、キュベットの内容物を混合し、25℃で5分間混合した直後に255nmで吸光度の変化を測定した。勾配ΔA 255nm/分を、曲線の線形領域において評価した。サンプルの1分間あたりの255nmにおける吸光度の測定された勾配は、5分間全体にわたって線形でなければならず、そうでなければ希釈が適合されなければならない。
【0084】
活性の算出:
以下の式を使用して、活性を算出した:
【0085】
【数4】
【0086】
ΔA255nm:255nmにおける1分間あたりの勾配
:試験において使用された総容積(V=3.1ml)
:試験において使用されたサンプルの容積(V=0.1ml)
0.81:255nmにおけるベンゾイル-L-アルギニンに対するBAEEのモル吸収差、すなわち810M-1cm-1
希釈倍率:無細胞培養上清のサンプルから始まり測定までのすべての希釈の倍率
【0087】
実施例3:液体培養培地の調製
20g/Lの酵母抽出物、6.5g/Lのグリシン、6.7g/Lのアルギニン、0.32g/Lのグルタミン、0.42g/Lのセリン、1.00g/Lのトレオニン、995mg/Lの硫酸マグネシウム七水和物(MgSO×7HO)、260mg/Lの塩化カルシウム二水和物(CaCl×2HO)、および1.17mg/Lの亜セレン酸ナトリウム五水和物(NaSeO×5HO)、ならびに10mgのシリコーンベースの消泡剤(XIAMETER(商標)ACP-1500(EU)消泡化合物)を、約600mlの精製水が事前に充填された1リットルフラスコに添加し、その後フラスコを、最大で1リットルの液体培養培地の全容積まで撹拌下にて精製水で充填した。最後に、液体培養培地をオートクレーブにおいて滅菌した。滅菌後、水中10M水酸化ナトリウム溶液の添加によって、pHを7.5に調整した。
【0088】
実施例4:前培養のための液体培養培地の調製
20gの酵母抽出物、6.5gのグリシン、6.7gのアルギニン、0.32gのグルタミン、0.42gのセリン、1.00gのトレオニン、995mgの硫酸マグネシウム七水和物(MgSO×7HO)、260mgの塩化カルシウム二水和物(CaCl×2HO)、1.17mgの亜セレン酸ナトリウム五水和物(NaSeO×5HO)、および41.86gの3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸緩衝剤、ならびに10mgのシリコーンベースの消泡剤(XIAMETER(商標)ACP-1500(EU)消泡化合物)を、約600mlの精製水が事前に充填された1リットルフラスコに添加した。その後フラスコを、最大で1リットルの液体培養培地の全容積まで撹拌下にて精製水で充填し、水中10M水酸化ナトリウム溶液の添加によって、pHを7.9に調整した。最後に、液体培養培地をオートクレーブにおいて滅菌した。
【0089】
実施例5:液体飼料組成物の調製
100gの酵母抽出物、5gのトレオニン、および2.5gのセリンを、約600mlの精製水が事前に充填された1リットルフラスコに添加し、その後フラスコを、最大で1リットルの液体培養培地の全容積まで撹拌下にて精製水で充填した。最後に、液体培養培地をオートクレーブにおいて滅菌した。
【0090】
実施例6:第1の前培養
100mLエルレンマイヤーフラスコに、実施例4に従って調製した100mL培地を充填した。約1mLの培地をフラスコから取り出し、1バイアルの凍結乾燥Clostridium histolyticum G11(約35×10CFU/バイアル)またはATCC(商標)21000(商標)の内容物をその培地と混合した。培地にこの混合物を接種した。このようにして調製された培養物を、振とうなしで24時間(±1時間)成長させた。成長は、インキュベーターにおける酸素を排除する嫌気的ポット(アネロカルト(Anaerocult)、メーカーMerck)において、または嫌気的ガス雰囲気(窒素85%、二酸化炭素10%、および水素5%)を有する嫌気的作業台において行われた。周囲温度を37℃に保った。
【0091】
実施例7:第2の前培養
1Lバイオリアクターにおける発酵に関しては、100mLエルレンマイヤーフラスコに、実施例4に従って調製した100mL培地を充填した。培地に、5mLの第1の前培養物(第2の前培養培地容積の5%に相当する)を接種した。培養物を、振とうなしで12時間(±0.5時間)成長させた。成長は、実施例6に開示される嫌気的条件下、および37℃の周囲温度で行われた。30Lバイオリアクターにおける発酵に関しては、第2の前培養物を、実施例4に従って調製した1000mL培地が充填された1000mLフラスコにおいて調製した。培地に、50mLの第1の前培養物(第2の前培養培地容積の5%に相当する)を接種した。培養物を、振とうなしで12時間(±0.5時間)成長させた。成長は、実施例6に開示される嫌気的条件下、および37℃の周囲温度で行われた。
【0092】
実施例8:バイオリアクターにおける主培養
1Lバイオリアクターにおける発酵に関しては、開始容積の培地(0.6L)に、12mLの第2の前培養物(培地容積の2%に相当する)を接種した。30Lバイオリアクターにおける発酵に関しては、開始容積の培地(27L)に、540mLの第2の前培養物(培地容積の2%に相当する)を接種した。
【0093】
それぞれのシステムおよびそれぞれの規模に関する発酵パラメーターは、下の表1に示される:
【0094】
表1:2種の異なるバイオリアクターにおける発酵に関するパラメーター
【表2】
【0095】
液体培養培地をバイオリアクターに導入し、滅菌した(オートクレーブにおけるMultifors;Techforsリアクターそれ自体)。その後、接種前に、バイオリアクターに窒素をフラッシュし、少なくとも3時間撹拌した。2容積パーセントの接種源を使用した。実施例7の相当する量の第2の前培養物を、滅菌シリンジを使用して第2の前培養物から取り出し、主培養物に、バイオリアクターの接種ポートを介して接種した。30L規模に関しては、ホースを介してバイオリアクターに前培養物を注ぎ込んだ(前培養物が入った容器を、接種源の正確な量を判定するために秤に置いた)。培養時間は15~19時間、主に17時間であり、実施例5に従って調製した液体飼料組成物の添加を、9時間の発酵後に開始した。
【0096】
以下の表は、Clostridium histolyticum G11を用いた上清において判定されたプロテアーゼの量を示している:
【0097】
【表3】
【0098】
この過程に対するスケールアップは成功し、コラゲナーゼ、クロストリパイン、および中性プロテアーゼのいずれに対する活性を有意に喪失することもなく達成され得ることがはっきりと見られ得る。
【0099】
以下の表は、Clostridium histolyticum ATCC(商標)21000(商標)を用いた上清において判定されたプロテアーゼの量を示している:
【0100】
【表4】
【0101】
酵素の大規模産生は成功し、Clostridium histolyticumの異なる系統を用いて達成され得ることがはっきりと見られ得る。
【国際調査報告】