(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-22
(54)【発明の名称】コイルコーティングラインにおいてコーティング光沢を管理するための方法
(51)【国際特許分類】
B05D 5/06 20060101AFI20250115BHJP
B05D 3/02 20060101ALI20250115BHJP
B05D 3/06 20060101ALI20250115BHJP
B05D 7/14 20060101ALN20250115BHJP
【FI】
B05D5/06 Z
B05D3/02 E
B05D3/06 101
B05D3/06 102
B05D7/14 G
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535837
(86)(22)【出願日】2022-12-09
(85)【翻訳文提出日】2024-08-13
(86)【国際出願番号】 IB2022061968
(87)【国際公開番号】W WO2023053107
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2021/061770
(32)【優先日】2021-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515214729
【氏名又は名称】アルセロールミタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファリーナ,ファブリス
(72)【発明者】
【氏名】マルゴル,ジャッキー
(72)【発明者】
【氏名】シルベルベール,エリック
(72)【発明者】
【氏名】アンケ,シャルル
(72)【発明者】
【氏名】ドゥフィーズ,トマ
【テーマコード(参考)】
4D075
【Fターム(参考)】
4D075AC54
4D075AC96
4D075BB22
4D075BB22X
4D075BB32Z
4D075BB37Z
4D075BB46Z
4D075BB47Z
4D075BB93X
4D075BB93Y
4D075BB93Z
4D075CB01
4D075DA03
4D075DB01
4D075EA05
(57)【要約】
本発明は、コイルコーティングライン上の移動するストリップ上に形成される有機コーティングの光沢を管理するための方法に関し、本方法は、1)設定光沢値Gs、設定光沢範囲Rs、およびUV硬化前の湿潤フィルムの温度と光沢との間の予め定義された線形数学的関係の比例定数Kを設定するステップ、2)UV硬化デバイスの上流の移動するストリップの少なくともある幅部分における湿潤フィルムの温度Tの測定値を収集し、光沢Gの測定値を収集するステップ、3)Rsを超える、測定された光沢Gの偏差を修正するステップを含み、このステップは、UV硬化デバイスの上流の幅部分における、湿潤フィルムによって到達されるべき修正温度Tcを、等式:Tc=T+K(G-Gs)に従って計算するサブステップを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動するストリップの経路Pに沿って順に、塗料塗布器、赤外線ヒータを備える加熱デバイス、紫外線硬化デバイス、および電子ビーム硬化デバイスを備えるコイルコーティングライン上の移動するストリップへのラドキュア塗料の湿潤フィルムの塗布および硬化によって形成される有機コーティングの光沢を管理するための方法であって、方法は、
- 有機コーティングの設定光沢値G
s、有機コーティングの光沢の設定光沢範囲R
s、および紫外線硬化前の湿潤フィルムの温度と電子ビーム硬化後の有機コーティングの光沢との間の予め定義された線形数学的関係の比例定数Kを設定するステップ、
- 赤外線ヒータの下流および紫外線硬化デバイスの上流の移動するストリップの少なくともある幅部分における湿潤フィルムの温度Tの測定値を収集し、電子ビーム硬化デバイスの下流の少なくともある幅部分における有機コーティングの光沢Gの測定値を収集するステップ、
- 設定光沢範囲R
sを超える、測定された光沢Gの偏差を修正するステップを含み、この修正ステップは、赤外線ヒータの下流および紫外線硬化デバイスの上流の少なくともある幅部分における、湿潤フィルムによって到達されるべき修正温度T
cを、等式1:
T
c=T+K(G-G
s) (1)
に従って計算するサブステップを含む、方法。
【請求項2】
初期ライン設定ステップをさらに含み、
- 複数のプロセスパラメータおよび/またはストリップの規格が収集され、
- 赤外線ヒータの初期電力PW
0、紫外線硬化デバイスの初期UV線量D
0、および紫外線硬化デバイスと電子ビーム硬化デバイスとの間の初期長さL
0のうちの少なくとも1つの初期ライン条件が、収集されたプロセスパラメータおよび/またはストリップの規格を考慮に入れて設定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
修正ステップは、湿潤フィルムが、赤外線ヒータの下流および紫外線硬化デバイスの上流の移動するストリップの少なくともある幅部分において、修正温度T
cに到達するように、赤外線ヒータの電力を調整することをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
コイルコーティングラインが、塗料塗布器の上流のインダクタをさらに備え、修正ステップは、湿潤フィルムが、赤外線ヒータの下流および紫外線硬化デバイスの上流の移動するストリップの少なくともある幅部分において、修正温度T
cに到達するように、インダクタの電力を調整することをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
- 紫外線硬化デバイスが、UVモジュールを備え、
- 設定ステップが、ラドキュア塗料に対して最大温度T
maxを設定することをさらに含み、
- 収集ステップが、UVモジュールのUV線量Dを収集することをさらに含み、
- 修正ステップが、
○ T
cがT
maxを上回るかどうかを評価するサブステップ、
○ 上回らない場合、湿潤フィルムが、赤外線ヒータの下流および紫外線硬化デバイスの上流の移動するストリップの少なくともある幅部分において修正温度T
cに到達するように、赤外線ヒータの電力を調節するサブステップ、
○ T
cがT
maxを上回る場合、
・少なくともある幅部分における湿潤フィルムがUVモジュール内でさらされなければならない修正UV線量D
cを、等式2:
D
c=f
1(D,G,G
s) (2)
に従って計算するサブステップ、をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
修正ステップが、移動するストリップの少なくともある幅部分における湿潤フィルムが、修正UV線量D
cにさらされるように、UVモジュールの電力を調整することをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
- UVモジュールが、経路Pに沿って移動可能であり、
- 設定ステップが、湿潤フィルムがUVモジュール内でさらされ得る最大UV線量D
maxを設定することをさらに含み、
- 収集ステップが、UVモジュールと電子ビーム硬化デバイスとの間の長さLを収集することをさらに含み、
- 修正ステップが、
○ T
cがT
maxを上回る場合、
・D
cがD
maxを上回るかどうかを評価するサブステップ、
・上回らない場合、移動するストリップの少なくともある幅部分における湿潤フィルムが、修正UV線量D
cにさらされるように、UVモジュールの電力を調整するサブステップ、
・D
cがD
maxを上回る場合、等式3:
L
c=f
2(L,G,G
s) (3)
に従って、UVモジュールと電子ビーム硬化デバイスとの間の修正された長さL
cを計算するサブステップ、をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
修正ステップが、値G
sの光沢が、電子ビーム硬化デバイスの下流の移動するストリップの少なくともある幅部分における有機コーティング上で得られるように、UVモジュールと電子ビーム硬化デバイスとの間の長さを修正された長さL
cに調整することをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
- 加熱デバイスが、経路Pの幅に実質的に平行な列を形成する複数の赤外線ヒータIR、IR’、IR’’…IR
iを備え、
- 収集ステップが、赤外線ヒータの下流および紫外線硬化デバイスの上流の移動するストリップの複数の幅部分P、P’、P’’…P
iにおける湿潤フィルムの温度T、T’、T’’…T
iの測定値を収集すること、ならびに電子ビーム硬化デバイスの下流の複数の幅部分P、P’、P’’…P
iにおける有機コーティングの光沢G、G’、G’’…G
iの測定値を収集することを含み、
- 修正ステップが、他とは独立した任意の幅部分P
iについて、設定光沢範囲R
sを超える、測定された光沢G
iの偏差を修正することを含み、この修正ステップS
iが、赤外線ヒータIR
iの下流および紫外線硬化デバイスの上流の幅部分P
iにおける湿潤フィルムによって到達されるべき修正温度T
c
iを、等式:
T
c
i=T
i+K(G
i-G
s) (1
i)
に従って、計算するサブステップC
iを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
修正ステップが、湿潤フィルムが、赤外線ヒータIR
iの下流および紫外線硬化デバイスの上流の移動するストリップの幅部分P
iにおいて修正温度T
c
iに到達するように、赤外線ヒータIR
iの電力を調整することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
- 紫外線硬化デバイスが、経路Pの幅に実質的に平行な列を形成する複数のUVモジュールUV、UV’、UV’’…UV
iを備え、
- 設定ステップが、ラドキュア塗料に対する最大温度T
maxを設定することをさらに含み、
- 収集ステップが、UVモジュールのUV線量D、D’、D’’…D
iを収集することをさらに含み、
- 修正ステップが、
○ T
c
iがT
maxを上回るかどうかを評価するサブステップ、
○ 上回らない場合、湿潤フィルムが、赤外線ヒータIR
iの下流および紫外線硬化デバイスの上流の移動するストリップの幅部分P
iにおいて修正温度T
c
iに到達するように、赤外線ヒータIR
iの電力を調節するサブステップ、
○ T
c
iがT
maxを上回る場合、
・幅部分P
iにおける湿潤フィルムがUVモジュールUV
i内でさらされなければならない修正UV線量D
c
iを、等式2
i:
D
c
i=f
1(D
i,G
i,G
s) (2
i)
に従って計算するサブステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
修正ステップが、移動するストリップの幅部分P
iにおける湿潤フィルムが、修正UV線量D
c
iにさらされるように、UVモジュールUV
iの電力を調整することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
- UVモジュールが、互いに独立して経路Pに沿って移動可能であり、
- 設定ステップが、湿潤フィルムがUVモジュール内でさらされ得る最大UV線量D
maxを設定することをさらに含み、
- 収集ステップが、UVモジュールと電子ビーム硬化デバイスとの間の長さL、L’、L’’…L
iを収集することをさらに含み、
- 修正ステップが、
○ T
c
iがT
maxを上回る場合、
・D
c
iがD
maxを上回るかどうかを評価するサブステップ、
・上回らない場合、移動するストリップの幅部分P
iにおける湿潤フィルムが、UVモジュールUV
iにおいてUV線量D
c
iにさらされるように、UVモジュールUV
iの電力を調整するサブステップ、
・D
c
iがD
maxを上回る場合、等式3
i:
L
c
i=f
2(L
i,G
i,G
s) (3)
に従って、UVモジュールUV
iと電子ビーム硬化デバイスとの間の修正された長さL
c
iを計算するサブステップ、をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
修正ステップが、値G
sの光沢が、電子ビーム硬化デバイスの下流の幅部分P
iにおける有機コーティング上で得られるように、UVモジュールUV
iと電子ビーム硬化デバイスとの間の長さを調整することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
順に、塗料塗布器、赤外線ヒータを備える加熱デバイス、紫外線硬化デバイス、および電子ビーム硬化デバイスを備えるコイルコーティングラインであって、コイルコーティングラインは、コイルコーティングライン上の移動するストリップへのラドキュア塗料の湿潤フィルムの塗布および硬化によって形成される有機コーティングの光沢を管理するための光沢管理ツールをさらに備え、光沢管理ツールが、
- 有機コーティングの設定光沢値G
s、有機コーティングの光沢の設定光沢範囲R
s、および紫外線硬化前の湿潤フィルムの温度と電子ビーム硬化後の有機コーティングの光沢との間の予め定義された線形数学的関係の比例定数Kを設定する設定モジュール、
- 赤外線ヒータの下流および紫外線硬化デバイスの上流の移動するストリップの少なくともある幅部分における湿潤フィルムの温度Tの測定値を収集し、電子ビーム硬化デバイスの下流の少なくともある幅部分における有機コーティングの光沢Gの測定値を収集する取得モジュール、
- 設定光沢範囲R
sを超える、測定された光沢Gの偏差を修正する修正モジュールであって、修正は、赤外線ヒータの下流および紫外線硬化デバイスの上流の少なくともある幅部分における、湿潤フィルムによって到達されるべき修正温度T
cを、等式1:
T
c=T+K(G-G
s) (1)
に従って計算することを含む、修正モジュールを備える、コイルコーティングライン。
【請求項16】
修正ステップが、計算した修正温度T
cを考慮に入れてコイルコーティングラインの設定を調整するサブステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
修正ステップが、計算した修正UV線量D
cを考慮に入れて、赤外線ヒータの電力以外のコイルコーティングラインの設定を調整するサブステップをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項18】
修正ステップが、計算した修正長さL
cを考慮に入れて、赤外線ヒータの電力およびUVモジュールの電力以外のコイルコーティングラインの設定を調整するサブステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項19】
修正ステップが、計算した修正温度T
c
iを考慮に入れてコイルコーティングラインの設定を調整するサブステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項20】
修正ステップが、計算した修正UV線量D
c
iを考慮に入れて、赤外線ヒータIR
iの電力以外のコイルコーティングラインの設定を調整するサブステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
移動するストリップの経路Pに沿って順に、塗料塗布器、赤外線ヒータを備える加熱デバイス、紫外線硬化デバイス、および電子ビーム硬化デバイスを備えるコイルコーティングライン上の移動するストリップ上に有機コーティングを形成する方法であって、方法は、
- 塗料塗布器により、移動するストリップ上にラドキュア塗料の湿潤フィルムを塗布するステップ、
- 赤外線ヒータ内でラドキュア塗料の湿潤フィルムを加熱するステップ、
- 紫外線硬化デバイス内でラドキュア塗料の湿潤フィルムをUVにさらすステップ、
- 電子ビームデバイス内でラドキュア塗料の湿潤フィルムを硬化して、有機コーティングを形成するステップを含み、
有機コーティングの光沢が、
- 有機コーティングの設定光沢値G
s、有機コーティングの光沢の設定光沢範囲R
s、および紫外線硬化前の湿潤フィルムの温度と電子ビーム硬化後の有機コーティングの光沢との間の予め定義された線形数学的関係の比例定数Kを設定すること、
- 赤外線ヒータの下流および紫外線硬化デバイスの上流の移動するストリップの少なくともある幅部分における湿潤フィルムの温度Tの測定値を収集し、電子ビーム硬化デバイスの下流の少なくともある幅部分における有機コーティングの光沢Gの測定値を収集すること、
- 設定光沢範囲R
sを超える、測定された光沢Gの偏差を修正することによって管理され、この修正ステップが、赤外線ヒータの下流および紫外線硬化デバイスの上流の少なくともある幅部分における、湿潤フィルムによって到達されるべき修正温度T
cを、等式1:
T
c=T+K(G-G
s) (1)
に従って計算するサブステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルコーティングライン上の移動するストリップに塗布される有機コーティングの光沢を管理するための方法に関する。特に、移動するストリップは、金属コートされた鋼ストリップである。
【背景技術】
【0002】
コイルコーティングは、最終製品への製作前に金属をコーティングするための連続的な自動プロセスである。鋼またはアルミニウム基板は、圧延機からコイル形態で送達される。金属コイルは、コイルコーティングラインの始めに位置付けられ、1つの連続プロセスにおいて、コイルは、巻き出され、予め洗浄され、前処理され、予めプライマ処理され、および予め塗装された後に、他方の端においてリコイルされ、発送のために包装される。
【0003】
このプロセスによって得られる製品は、コイルコーティングされた金属、予め仕上げられた金属、または予めコーティングされた金属とも称される、予め塗装された金属である。それは、建築用途ならびに電気器具において一般的に使用される。
【0004】
コイルコーティングのために従来使用される塗料は、溶剤系塗料である。それにもかかわらず、紫外線(UVプロセス)または電子ビーム(EB硬化プロセス)を使用した材料の硬化である放射線硬化に近年関心が寄せられている。ラドキュア塗料として知られている対応する塗料は、溶剤を含まず、硬化プロセスは、おそらくは好適な光開始剤と併せた、高エネルギーUV光への暴露、または加速電子への暴露のいずれかによってトリガされる。光開始剤は、UV光を吸収し、フリーラジカルを生成させる。後者は、モノマーの二重結合と反応して、連鎖反応および重合を引き起こす。UV-Cおよび電子ビーム(EB)硬化の場合、開始剤は必要とされない。高放射エネルギーは、重合が自発的に進むのに十分な反応種(ラジカル)を作り出す。
【0005】
ラドキュア塗料の特異性のうちの1つは、コーティング表面の高張力に起因して高光沢の有機コーティングを生成することである。この光沢を低減させ、塗装済み市場の要件(建築市場の場合、通常15-30GUの光沢)に達するために、塗料サプライヤは、溶剤系塗料に関しては、マット剤を追加する。しかしながら、溶剤の欠如に起因してラドキュア塗料がかなり粘性であるため、少量のマット剤しか追加することはできず、それは、低光沢レベルを可能にするものではない。加えて、所望の光沢レベルを達成するためのコーティング表面へのマット剤の移送も、溶剤系塗料と比較したラドキュア塗料の硬化プロセスの速度(1-2秒対12-25秒)に起因して非常に制限される。
【0006】
この問題を軽減する1つの方法は、硬化プロセスを開示するWO81/00683から知られており、ここでは、コーティングは、最初、コーティングが応答性であるが約300nmより低い分布を実質的に有さない波長(UVなど)の硬化放射線で照射され、続いて、300nmより下の波長(EBなど)での実質的な放射を含む、コーティングが応答性である波長の硬化放射線で照射される。この二重硬化は、デュアルキュアとして知られている。光沢制御は、初期放射線のスペクトル分布、強度、もしくは線量、または初期照射ステップと後続照射ステップとの間の時間間隔を含む、オンラインパラメータを調節することによって得られる。
【0007】
それにもかかわらず、これらのオンラインパラメータは、光沢を効率的かつ再現可能な方法で管理するには十分でないということが観察されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、コイルコーティングライン上の移動するストリップへのラドキュア塗料の湿潤フィルムの適用および硬化によって形成される有機コーティングの光沢を効率的かつ再現可能な方法で管理するための方法を提供することによって、従来技術のプロセスの欠点を是正することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のため、本発明の第1の態様は、移動するストリップの経路Pに沿って順に、塗料塗布器、赤外線ヒータを備える加熱デバイス、紫外線硬化デバイス、および電子ビーム硬化デバイスを備えるコイルコーティングライン上の移動するストリップへのラドキュア塗料の湿潤フィルムの塗布および硬化によって形成される有機コーティングの光沢を管理するための方法であって、
- 有機コーティングの設定光沢値Gs、有機コーティングの光沢の設定光沢範囲Rs、および紫外線硬化前の湿潤フィルムの温度と電子ビーム硬化後の有機コーティングの光沢との間の予め定義された線形数学的関係の比例定数Kを設定するステップ、
- 赤外線ヒータの下流および紫外線硬化デバイスの上流の移動するストリップの少なくともある幅部分における湿潤フィルムの温度Tの測定値を収集し、電子ビーム硬化デバイスの下流の少なくともある幅部分における有機コーティングの光沢Gの測定値を収集するステップ、
- 赤外線ヒータの下流および紫外線硬化デバイスの上流の少なくともある幅部分における、湿潤フィルムによって到達されるべき修正温度Tcを、等式1:
Tc=T+K(G-Gs) (1)
に従って計算することによって、設定光沢範囲Rsを超える、測定された光沢Gの偏差を修正するステップを含む。
【0010】
本発明による方法はまた、以下に列挙される任意選択の特徴を、個々に、または組み合わせて、有し得る:
- 修正された温度Tcを計算することは、修正ステップのサブステップである。
- 修正ステップは、計算した修正温度Tcを考慮に入れてコイルコーティングラインの設定を調整するサブステップをさらに含む。
- 本方法は、初期ライン設定ステップをさらに含み、
〇 複数のプロセスパラメータおよび/またはストリップの規格が収集され、
〇 赤外線ヒータの初期電力PW0、紫外線硬化デバイスの初期UV線量D0、および紫外線硬化デバイスと電子ビーム硬化デバイスとの間の初期長さL0のうちの少なくとも1つの初期ライン条件が、収集されたプロセスパラメータおよび/またはストリップの規格を考慮に入れて設定される。
- 修正ステップは、湿潤フィルムが、赤外線ヒータの下流および紫外線硬化デバイスの上流の移動するストリップの少なくともある幅部分において、修正温度Tcに到達するように、赤外線ヒータの電力を調整することをさらに含む。
- コイルコーティングラインは、塗料塗布器の上流のインダクタをさらに備え、修正ステップは、湿潤フィルムが、赤外線ヒータの下流および紫外線硬化デバイスの上流の移動するストリップの少なくともある幅部分において、修正温度Tcに到達するように、インダクタの電力を調整することをさらに含む。
- 紫外線硬化デバイスは、UVモジュールを備える。
- 設定ステップは、ラドキュア塗料に対する最大温度Tmaxを設定することをさらに含む。
- 収集ステップは、UVモジュールのUV線量Dを収集することをさらに含む。
- 修正ステップは、
〇 TcがTmaxを上回るかどうかを評価するサブステップ、
〇 上回らない場合、湿潤フィルムが、赤外線ヒータの下流および紫外線硬化デバイスの上流の移動するストリップの少なくともある幅部分において、修正温度Tcに到達するように、赤外線ヒータの電力を調整するサブステップ、
〇 TcがTmaxを上回る場合、
・少なくともある幅部分における湿潤フィルムがUVモジュール内でさらされなければならない修正UV線量Dcを、等式2:
Dc=f1(D,G,Gs) (2)
に従って計算するサブステップ、をさらに含む。
- 修正ステップは、計算した修正UV線量Dcを考慮に入れて、赤外線ヒータの電力以外のコイルコーティングラインの設定を調整するサブステップをさらに含む。
- 修正ステップは、移動するストリップの少なくともある幅部分における湿潤フィルムが、修正UV線量Dcにさらされるように、UVモジュールの電力を調整することをさらに含む。
- UVモジュールは、経路Pに沿って移動可能である。
- 設定ステップは、湿潤フィルムがUVモジュール内でさらされ得る最大UV線量Dmaxを設定することをさらに含む。
- 収集ステップは、UVモジュールと電子ビーム硬化デバイスとの間の長さLを収集することをさらに含む。
- 修正ステップは、
〇 TcがTmaxを上回る場合、
・DcがDmaxを上回るかどうかを評価するサブステップ、
・上回らない場合、移動するストリップの少なくともある幅部分における湿潤フィルムが、修正UV線量Dcにさらされるように、UVモジュールの電力を調整するサブステップ、
・DcがDmaxを上回る場合、等式3:
Lc=f2(L,G,Gs) (3)
に従ってUVモジュールと電子ビーム硬化デバイスとの間の修正された長さLcを計算するサブステップ、をさらに含む。
- 修正ステップは、計算した修正された長さLcを考慮に入れて、赤外線ヒータの電力およびUVモジュールの電力以外のコイルコーティングラインの設定を調整するサブステップをさらに含む。
- 修正ステップは、値Gsの光沢が、電子ビーム硬化デバイスの下流の移動するストリップの少なくともある幅部分における有機コーティング上で得られるように、UVモジュールと電子ビーム硬化デバイスとの間の長さを修正された長さLcに調節することをさらに含む。
- 加熱デバイスは、経路Pの幅に実質的に平行な列を形成する複数の赤外線ヒータIR、IR’、IR’’…IRiを備える。
- 収集ステップは、赤外線ヒータの下流および紫外線硬化デバイスの上流の移動するストリップの複数の幅部分P、P’、P’’…Piにおける湿潤フィルムの温度T、T’、T’’…Tiの測定値を収集すること、ならびに電子ビーム硬化デバイスの下流の複数の幅部分P、P’、P’’…Piにおける有機コーティングの光沢G、G’、G’’…Giの測定値を収集することを含む。
- 修正ステップは、等式:
Tc
i=Ti+K(Gi-Gs) (1i)
に従って、赤外線ヒータIRiの下流および紫外線硬化デバイスの上流の幅部分Piにおける湿潤フィルムによって到達されるべき修正温度Tc
iを計算することによって、他とは独立した任意の幅部分Piについて、設定光沢範囲Rsを超える、測定された光沢Giの偏差を修正することを含む。
- 修正ステップは、計算した修正温度Tc
iを考慮に入れてコイルコーティングラインの設定を調整するサブステップをさらに含む。
- 修正ステップは、湿潤フィルムが、赤外線ヒータIRiの下流および紫外線硬化デバイスの上流の移動するストリップの幅部分Piにおいて、修正温度Tcに到達するように、赤外線ヒータIRiの電力を調整することをさらに含む。
- 紫外線硬化デバイスは、経路Pの幅に実質的に平行な列を形成する複数のUVモジュールUV、UV’、UV’’…UViを備える。
- 設定ステップは、ラドキュア塗料に対する最大温度Tmaxを設定することをさらに含む。
- 収集ステップは、UVモジュールのUV線量D、D’、D’’…Diを収集することをさらに含む。
- 修正するステップは、
〇 Tc
iがTmaxを上回るかどうかを評価するサブステップ、
〇 上回らない場合、湿潤フィルムが、赤外線ヒータIRiの下流および紫外線硬化デバイスの上流の移動するストリップの幅部分Piにおいて、修正温度Tc
iに到達するように、赤外線ヒータIRiの電力を調節するサブステップ、
〇 Tc
iがTmaxを上回る場合、
・幅部分Piにおける湿潤フィルムがUVモジュールUVi内でさらされなければならない修正UV線量Dc
iを、等式2i:
Dc
i=f1(Di,Gi,Gs) (2i)
に従って計算するサブステップをさらに含む。
- 修正ステップは、計算した修正UV線量Dc
iを考慮に入れて、赤外線ヒータIRiの電力以外のコイルコーティングラインの設定を調整するサブステップをさらに含む。
- 修正ステップは、移動するストリップの幅部分Piにおける湿潤フィルムが、修正UV線量Dc
iにさらされるように、UVモジュールUViの電力を調整することをさらに含む。
- UVモジュールは、互いに独立して経路Pに沿って移動可能である。
- 設定ステップは、湿潤フィルムがUVモジュール内で暴露され得る最大UV線量Dmaxを設定することをさらに含む。
- 収集ステップは、UVモジュールと電子ビーム硬化デバイスとの間の長さL、L’、L’’…Liを収集することをさらに含む。
- 修正ステップは、
〇 Tc
iがTmaxを上回る場合、
・Dc
iがDmaxを上回るかどうかを評価するサブステップ、
・上回らない場合、移動するストリップの幅部分Piにおける湿潤フィルムが、UVモジュールUVi内でUV線量Dc
iにさらされるように、UVモジュールUViの電力を調整するサブステップ、
・Dc
iがDmaxを上回る場合、等式3i:
Lc
i=f2(Li,Gi,Gs) (3)
に従って、UVモジュールUViと電子ビーム硬化デバイスとの間の修正された長さLc
iを計算するサブステップ、をさらに含む。
- 修正ステップは、値Gsの光沢が、電子ビーム硬化デバイスの下流の幅部分Piにおける有機コーティング上で得られるように、UVモジュールUViと電子ビーム硬化デバイスとの間の長さを調整することをさらに含む。
【0011】
本発明の第2の主題は、潤に、塗料塗布器、赤外線ヒータを備える加熱デバイス、紫外線硬化デバイス、および電子ビーム硬化デバイスを備えるコイルコーティングラインからなり、コイルコーティングラインは、コイルコーティングライン上の移動するストリップへのラドキュア塗料の湿潤フィルムの塗布および硬化によって形成される有機コーティングの光沢を管理するための光沢管理ツールをさらに備え、光沢管理ツールは:
- 有機コーティングの設定光沢値Gs、有機コーティングの光沢の設定光沢範囲Rs、および紫外線硬化前の湿潤フィルムの温度と電子ビーム硬化後の有機コーティングの光沢との間の予め定義された線形数学的関係の比例定数Kを設定するために構成される設定モジュール、
- 赤外線ヒータの下流および紫外線硬化デバイスの上流の移動するストリップの少なくともある幅部分における湿潤フィルムの温度Tの測定値を収集し、電子ビーム硬化デバイスの下流の少なくともある幅部分における有機コーティングの光沢Gの測定値を収集するために構成される取得モジュール、
- 赤外線ヒータの下流および紫外線硬化デバイスの上流の少なくともある幅部分における、湿潤フィルムによって到達されるべき修正温度Tcを、等式1:
Tc=T+K(G-Gs) (1)
に従って計算することによって、設定光沢範囲Rsを超える、測定された光沢Gの偏差を修正するために構成される修正モジュールを備える。
【0012】
本発明の他の特徴および利点は、以下の説明においてより詳細に説明される。
【0013】
本発明は、図を参照して、単に説明の目的で提供されるものであり、いかようにも限定的であることは意図されない以下の説明を読むことによってより良好に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】本発明による方法の第1の実施形態のフローチャートである。
【
図3】本発明による方法の第2の実施形態のフローチャートである。
【
図4】本発明による方法の第3の実施形態のフローチャートである。
【
図5】本発明による方法の第4の実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本出願で使用されるような、「上流」、「下流」、「下方」、「上方」、「上」、「下」、「前」、「後」などの空間関連の用語は、コイルコーティングラインの異なる構成要素の位置および配向を指すということに留意されたい。
【0016】
本発明による方法は、金属ストリップなどのストリップを対象としている。炭素鋼またはステンレス鋼のいずれかの鋼、アルミニウム、銅は、金属ストリップの例である。特に、鋼ストリップは、ストリップの片面または両面のいずれかにおいて、むき出しであるか、または金属コーティングでコートされ得る。潜在的な金属コート鋼の例としては、亜鉛めっき鋼、5重量%のアルミニウムを含む亜鉛合金(Galfan(R))でコートされる鋼、55重量%のアルミニウム、約1.5重量%のケイ素を含み、残りは、亜鉛および処理に起因する不可避の不純物からなる、亜鉛合金(Aluzinc(R)、Galvalume(R))でコートされる鋼、8-11重量%のケイ素および2-4重量%の鉄を含み、残りは、アルミニウムおよび処理に起因する不可避の不純物からなる、アルミニウム合金(Alusi(R))でコートされる鋼、アルミニウム(Alupur(R))の層でコートされた鋼、0.5-20%のアルミニウム、0.5-10%のマグネシウムを含み、残りは、亜鉛および処理に起因する不可避の不純物からなる、亜鉛合金でコートされた鋼、アルミニウム、マグネシウム、ケイ素、可能な追加の元素を含み、残りは、亜鉛および処理に起因する不可避の不純物からなる、合金でコートされる鋼が挙げられる。
【0017】
本発明による方法はまた、ラドキュア塗料を対象としている。用語「ラドキュア塗料」は、短波長紫外線(UV)光または電子ビーム(EB)源からの高エネルギー電子を利用して、「硬化される」、または乾燥される、放射線硬化可能な組成物を指す。それらは、通常、液体モノマーおよびオリゴマーを含み、その中に、顔料、充填剤、添加剤、光開始剤が、一般的には溶剤または水のいずれかを必要とせずに、分散され得る。それらは、故に、実質的に無溶剤である。
【0018】
図1を参照すると、本発明によるコイルコーティングライン1は、主に、移動するストリップの経路Pに沿って順に、塗料塗布器2、赤外線ヒータを備える加熱デバイス3、紫外線硬化デバイス4、および電子ビーム硬化デバイス5を備える。
【0019】
経路Pは、コイルコーティングライン内のその入口からその出口まで、ストリップSがたどる経路である。それは、幅および長さを有する。いくつかの設備が、ストリップ上で動作を実施するために、この経路に沿って位置付けられる。
【0020】
塗料塗布器2は、塗料の湿潤フィルムを塗料の設定厚でストリップの片面または両面に塗布するデバイスである。特に、その目的は、ラドキュア塗料の湿潤フィルムを塗布することである。本発明の文脈において、塗料塗布器の技術は限定されない。
【0021】
本発明の変形例によれば、塗料塗布器2は、塗料ロールコータである。それは、回転するロールを用いてストリップの片面または両面をコーティングする自動機械である。それは、ストリップが、ストリップの片面または両面に塗料の層を塗布する機械を通過するように設計される。コイルコーティングラインの構成、使用される塗料のタイプ、およびコーティングされるストリップのタイプに応じて、塗料ロールコータの多数の設計が存在する。当業者は、どの設計が各ケースに最良に適用されるかを知っているであろう。一般的に言うと、塗料ロールコータは、塗料パン、鋼またはセラミックのピックアップロール、およびゴム被覆コーティングロールを備える。塗料パンの目的は、塗料を収容し、循環させ、好ましくは加熱することである。ピックアップロールは、部分的に塗料内に浸漬され得、塗料をピックアップし、それをコーティングロールへ移送するために時計回りまたは反時計回りのいずれかに回転し得る。コーティングロールは、塗料をストリップに移送する。
【0022】
本発明の別の変形例によれば、塗料塗布器2は、カーテンコータである。その場合、塗料のカーテンが、カーテンを通常横断する水平ストリップに塗布される。塗料は、ストリップがバッキングローラ上に支持されている間、カーテンダイまたはカスケードから重力により、ある高さから落ちる。この方法は、高ライン速度および多層コーティングを達成することが可能である。
【0023】
他の塗料塗布器の例としては、ナイフコータ、ディップまたはメニスカスコータ、スロットコータ、メータロッドコータ、スライドコータが挙げられる。
【0024】
塗料は、通常、塗料塗布器を用いてストリップの全幅に塗布される。デフォルトでは、塗料の湿潤フィルムの幅、および結果的に有機コーティングの幅は、ストリップ幅と同じである。
【0025】
塗料塗布器2には、好ましくは、塗料を加熱して設定温度に維持するのに適した少なくとも1つの塗料加熱デバイスが装備される。塗料を加熱すると、その塗布が容易になる。それはまた、赤外線ヒータのレベルにおけるエネルギー要件を最小にし、故に、赤外線ヒータの慣性を最小にするため、光沢管理をさらに容易にする。塗料ロールコータの場合、塗料加熱デバイスは、パンヒータ、すなわち、塗料パン内、またはその周りに位置付けられるヒータであり得る。それはまた、おそらくはパンヒータと組み合わせた、温度制御されるロール、特に、温度制御されるピックアップロールであり得る。カーテンコータの場合、塗料加熱デバイスは、カーテンダイの上流に位置付けられるヒータであり得る。それはまた、おそらくはヒータと組み合わせた、温度制御されるバッキングロールであり得る。
【0026】
塗料塗布器2には、好ましくは、塗料塗布器のレベルで塗料温度および/または湿潤フィルム温度を測定するための温度測定デバイスが装備される。温度デバイスは、例えば、温度センサ、パイロメータ、サーマルカメラであり得る。
【0027】
コイルコーティングライン1は、塗料塗布器2の下流および紫外線(UV)硬化デバイス4の上流の、移動するストリップの経路Pに沿って位置付けられる、赤外線ヒータを備える加熱デバイス3をさらに備える。その目的は、ラドキュア塗料の湿潤フィルムを加熱することである。加熱デバイスは、塗料の湿潤フィルムの表面がUV硬化デバイス内で硬化される前に、塗料の湿潤フィルムの温度制御をさらに改善する。塗料塗布器を出るストリップの温度がいくつかのパラメータ(ストリップの性質、ストリップの幅、ストリップの厚さ、ライン速度など)に依存するレートで低下するため、UV硬化デバイスに入る湿潤フィルムの温度は、時々著しく変化する可能性があり、このことが光沢に悪影響を及ぼす。湿潤フィルムを直接加熱する赤外線のおかげで、湿潤フィルムの温度を、非常に迅速に調整できる。
【0028】
1つの変形例によれば、赤外線ヒータは、移動するストリップの経路Pの全幅をカバーする。その場合、湿潤フィルムは、赤外線ヒータを通る(通過する)とき、その幅に沿って均一に加熱される。
【0029】
別の変形例によれば、加熱デバイス3は、経路Pの幅内に分散される複数の赤外線ヒータを備える。言い換えると、複数の赤外線ヒータは、経路Pの幅に実質的に平行、すなわち、ストリップの移動方向に垂直な列を形成する。明白性の目的のため、本明細書に説明される赤外線ヒータは、互いと独立しており、互いに隣接して位置付けられるが、それらは、互いと物理的に分離不可能であり得る。それらは、単一の加熱デバイスの個々に制御可能な部分であり得る。
【0030】
この設計のおかげで、ストリップ幅における温度変動は、修正され、最小にされ得る。好ましくは、加熱デバイスの出口でのストリップ幅における湿潤フィルムの温度変動は、1℃未満である。それは、ストリップ幅におけるコーティングの光沢均一性を改善する。
【0031】
別の変形例によれば、加熱デバイス3は、移動するストリップの経路に沿って順に、経路Pの全幅をカバーするベースヒータおよび上に説明される複数の赤外線ヒータを備える。ベースヒータは、赤外線ヒータまたはインダクタであり得る。この設計のおかげで、加熱デバイスの出口で湿潤フィルムの正しい温度に到達するために必要されるエネルギーの一部が、ベースヒータによって提供される。複数の赤外線ヒータの各赤外線ヒータは、エネルギーの残りの部分を独立して提供し、また必要に応じてそれを調整できる。
【0032】
加熱デバイス3は、ストリップの上側に塗布される湿潤フィルムが直接加熱されるように、好ましくは経路Pの上に位置付けられる。加熱デバイスはまた、熱勾配を最小にするために、経路Pの上または下に位置付けられ得る。
【0033】
コイルコーティングライン1は、紫外線(UV)硬化デバイス4をさらに備える。この設備の目的は、ラドキュア塗料の湿潤フィルムの表面を硬化することである。この表面硬化は、フィルム表面において非常に微細なテクスチャリングを生成することが観察されており、このことは、嵌合剤および可能な他の装入物と組み合わされて、湿潤フィルムが電子ビームによって完全に硬化されると、有機コーティングの光沢に寄与する。
【0034】
1つの変形例によれば、UV硬化デバイス4は、移動するストリップの経路Pの全幅をカバーする。その場合、湿潤フィルムの表面は、UVにさらされるとき、ストリップの幅に沿って均一に硬化される。
【0035】
別の変形例によれば、UV硬化デバイス4は、経路Pの幅内に分散される複数のUVモジュールを備える。言い換えると、複数のUVモジュールが、経路Pの幅に実質的に平行、すなわち、ストリップの移動方向に垂直な列を形成する。明白性の目的のため、本明細書に説明されるUVモジュールは、互いと独立しており、互いに隣接して位置付けられるが、それらは、互いと物理的に分離不可能であり得る。それらは、単一のUV硬化デバイスの個々に制御可能な部分であり得る。
【0036】
この設計のおかげで、経路/ストリップの異なる幅部分は、異なるUV線量にさらされ得る。それは、ストリップ幅における光沢のばらつきを修正し、最小にすることを助ける。
【0037】
UVAおよびUVBが好ましい。UVAは、320-400nmの長距離UV放射線である。UVBは、280-320nmの短波UV放射線である。それらは、従来のアークUVランプを用いて得ることができる。
【0038】
UV硬化デバイス4は、好ましくは、移動するストリップの経路Pに沿って移動可能である。それは、UV硬化デバイスとEB硬化デバイスとの間の長さが調整されること、すなわち、拡張されること、または短くされることを可能にする。実際に、UV硬化中に引き起こされるしわまたは表面の粗さは、UV硬化とEB硬化との間の時間間隔中にさらに発展されることが観察されており、このことが有機コーティングの光沢に影響を及ぼす。
【0039】
複数のUVモジュールの場合、各UVモジュールは、好ましくは、他とは独立して経路Pに沿って移動可能である。
【0040】
コイルコーティングライン1は、電子ビーム硬化デバイス5をさらに備える。この設備の目的は、ラドキュア塗料の湿潤フィルムを、すなわち、その全厚において、硬化することである。それは、UV硬化中に湿潤フィルムの表面に出現し、UV硬化とEB硬化との間の時間間隔中にさらに発展する表面粗さをさらに凍結する。EBデバイスは、一般的には、以下の条件で動作される:100-200kV、20-50kGy、200ppm O2未満の窒素で不活性化。
【0041】
コイルコーティングライン1は、加熱デバイス3の下流およびUV硬化デバイス4の上流に位置付けられる湿潤フィルム温度測定デバイス6をさらに備える。この湿潤フィルム温度測定デバイスは、湿潤フィルムの温度を、それがUV硬化デバイスに入る前に測定する。それは、移動するストリップの経路Pの全幅に沿って湿潤フィルムの温度を測定し得るか、それは、幅の一部分のみの温度を測定し得る。湿潤フィルム温度測定デバイスの例としては、パイロメータ、サーマルカメラ、熱電対が挙げられる。測定温度は、℃、oF、またはKで表すことができる。
【0042】
湿潤フィルム温度測定デバイスが幅の一部分のみの温度を測定する場合、この部分の測定値は、ストリップ幅全体の光沢を管理するのに十分に関連性があると見なされ得る。
【0043】
代替的に、移動するストリップの経路Pの全幅がカバーされるように、複数の湿潤フィルム温度測定デバイスが、加熱デバイス3の下流およびUV硬化デバイスの上流に位置付けられる。それらは、経路Pの幅に実質的に平行の列を形成する。したがって、加熱デバイスは、好ましくは、経路Pの幅に実質的に平行の列を形成する複数の赤外線ヒータを備え、各赤外線ヒータは、ストリップの幅部分を加熱するのに適しており、そして、その温度は、1つの湿潤フィルム温度測定デバイスによって測定される。
【0044】
UV硬化デバイス内での湿潤フィルムの温度制御をさらに高めるために、湿潤フィルム温度測定デバイス6およびUV硬化デバイス4は、2メートルを超えて、好ましくは1メートルを超えて離されず、または湿潤フィルムの温度は、湿潤フィルムがUV硬化デバイス内で硬化される前に4秒を超えて、好ましくは2秒を超えて測定されない。代替的に、または加えて、湿潤フィルム温度測定デバイスとUV硬化デバイスとの間の移動するストリップの経路Pの部分は、湿潤フィルムがUV硬化デバイス内で硬化される前に、湿潤フィルムを測定温度に保つために熱絶縁され得る。
【0045】
コイルコーティングライン1は、電子ビーム硬化デバイス5の下流に位置付けられる光沢測定デバイス7をさらに備える。この光沢測定デバイスは、EB硬化後の有機コーティングの光沢を測定する。それは、移動するストリップの経路Pの全幅に沿って有機コーティングの光沢を測定できるか、またはそれは、幅の一部分のみでの光沢を測定できる。光沢測定デバイスの例は、光沢計である。測定された光沢は、好ましくは、GU(Gloss Unit)で表される。光沢は、好ましくは、規格ISO2813:2014およびEN13523-2:2021に従って測定される。好ましくは、光沢は、20°ジオメトリ、60°ジオメトリ、または85°ジオメトリで測定され、すなわち、反射角は、20°、60°、または85°のいずれかである。より好ましくは、光沢は、60°ジオメトリで測定される。
【0046】
光沢測定デバイスが幅の一部分のみでの光沢を測定する場合、この部分での測定値は、ストリップ幅全体の光沢を管理するのに十分に関連性があると見なされ得る。
【0047】
代替的に、移動するストリップの経路Pの全幅がカバーされるように、複数の光沢測定デバイスが、EB硬化デバイスの下流に位置付けられる。それらは、経路Pの幅に実質的に平行な列を形成する。したがって、加熱デバイスは、好ましくは、経路Pの幅に実質的に平行な列を形成する複数の赤外線ヒータを備え、各赤外線ヒータは、ストリップの幅部分を加熱するのに適しており、そして、その光沢は、1つの光沢測定デバイスによって測定される。
【0048】
コイルコーティングライン1は、好ましくは、ストリップ速度測定デバイスを装備し、より好ましくは、ガイドロールのレベルに位置付けられる。ストリップ速度測定デバイスの例は、ロール軸上に統合されるタキメータである。
【0049】
コイルコーティングライン1は、塗料塗布器2の上流にインダクタ8をさらに備え得る。それは、ストリップが塗料塗布器に到達する前にストリップを加熱し得る。塗料塗布器内に温まったストリップを有することは、塗料塗布に都合がよい。さらには、インダクタ内でストリップが到達する温度は、後で詳細に説明されるように、潜在的な光沢偏差を修正するために調整され得る。
【0050】
コイルコーティングライン1は、ライン上でコーティングされるべきストリップを巻き戻すためにアンコイラ9を伴う入口セクションをさらに備え得る。アンコイラは、コーティングされるべきストリップの前端が前のストリップの終端に付着され得るように、溶接機または縫製機と組み合わされ得る。
【0051】
代替的に、コイルコーティングラインは、亜鉛めっきラインに結合され得、その結果として、亜鉛めっきラインの槽に含有される金属合金でコーティングされるストリップは、最初にそれをコイル巻きし、次いでそれを巻き戻す必要なしに、有機コーティングで直接コーティングされる。
【0052】
コイルコーティングライン1は、該当する場合には、アンコイラの下流の、ラインの入口セクションに位置する入口アキュムレータ10をさらに備え得る。アキュムレータは、ある量のストリップを「蓄積する」1つの設備である。それは、金属ストリップが蛇行方式で通されるロールの上方および下方バンクのセットであり、それは、2つのロールバンクが離れて広がるために金属の長さを格納する。金属の合計格納長さは、ラインの設計速度、通常60秒の安定状態金属処理時間、に依存する。コイルコーティングラインの入力セクションが終わると、ロールバンクは、互いに向かって移動し、アキュムレータ内の格納金属は、コイルコーティングラインの残りを供給し続ける。
【0053】
コイルコーティングライン1は、該当する場合には、入口セクションの下流、特に入口アキュムレータの下流に位置付けられる、クリーニングセクション11をさらに備え得る。このセクションでは、ストリップは、表面調整ステップに供される。このタイプの調整は、すすぎ、脱脂、および化成処理の中から選択される少なくとも1つのステップを含む。すすぎの目的は、汚れのばらばらの粒子、化成溶液の潜在的な残留物、形成された可能性のある石鹸を除去すること、および清潔かつ反応性の表面を達成することである。脱脂の目的は、有機汚れ、金属粒子、および汚れのすべての痕跡を表面から取り除くことによって表面をクリーニングすることである。好ましくは、脱脂は、アルカリ環境で実施される。化成処理は、表面と化学的に反応し、以て化成層を形成することを可能にする化成溶液をストリップに塗布することを含む。化成層は、塗料の粘着性および耐食性を増加させる。化成処理は、好ましくは、クロムを含有しない酸性溶液である。より好ましくは、化成処理は、ヘキサフルオロチタン酸またはヘキサフルオロジルコニウム酸に基づく。
【0054】
コイルコーティングライン1は、該当する場合には、塗料ロールコータの上流およびクリーニングセクションの下流にプライマセクションをさらに備え得る。このセクションでは、塗料の第1の層が、プライマコーティングを形成するためにストリップ上に塗布され得る。プライマセクションは、プライマ塗料塗布器および硬化設備を備え得る。プライマの性質に応じて、硬化設備は、対流式オーブン、赤外線(または近赤外線)オーブン、または誘導オーブン、UV硬化デバイスおよび/またはEB硬化デバイスなど、オーブンであり得る。
【0055】
コイルコーティングライン1は、EB硬化デバイスの下流に、ラインの出口セクションに位置する出口アキュムレータ12をさらに備え得る。出口アキュムレータは、上に説明される入口アキュムレータと同様である。
【0056】
コイルコーティングライン1は、ライン上でコーティングされたストリップをリコイルするためにリコイラ13をさらに備え得る。リコイラは、ストリップを、ライン上で処理される次のストリップから分離するために、切断部と組み合わされ得る。
【0057】
本発明はまた、移動するストリップSの経路Pに沿って順に、塗料塗布器2、赤外線ヒータを備える加熱デバイス3、紫外線硬化デバイス4、および電子ビーム硬化デバイス5を備えるコイルコーティングライン上の移動するストリップへのラドキュア塗料の湿潤フィルムの塗布および硬化によって形成される有機コーティングの光沢を管理するための光沢管理ツールに関する。
【0058】
光沢管理ツールは、有機コーティングの設定光沢値Gs、有機コーティングの光沢の設定光沢範囲Rs、および紫外線硬化前の湿潤フィルムの温度と電子ビーム硬化後の有機コーティングの光沢との間の予め定義された線形数学的関係の比例定数Kを設定するための設定モジュールを備える。
【0059】
光沢管理ツールは、赤外線ヒータの下流および紫外線硬化デバイスの上流の移動するストリップの少なくともある幅部分における湿潤フィルムの温度Tの測定値を収集し、電子ビーム硬化デバイスの下流の少なくともある幅部分における有機コーティングの光沢Gの測定値を収集するために構成される取得モジュールをさらに備える。
【0060】
光沢管理ツールは、設定光沢範囲Rsを超える、測定した光沢Gの偏差を修正するために構成された修正モジュールをさらに備え、修正は、赤外線ヒータの下流および紫外線硬化デバイスの上流の少なくともある幅部分における、湿潤フィルムによって到達されるべき修正温度Tcを、等式1:
Tc=T+K(G-Gs) (1)
に従って計算することを含む。
【0061】
光沢管理ツールは、例えば、メモリ、およびメモリに結合されるプロセッサで形成される、処理装置を含み得る。電子監視デバイスはまた、表示画面、ならびにキーボードおよびマウスなどの入力/出力手段を含んでもよく、各々が処理装置に接続される。設定モジュール、取得モジュール、および修正モジュールの各々は、プロセッサによって実行可能なソフトウェアとして実装され得る。
【0062】
コイルコーティングラインには、好ましくは、コイルコーティングライン上の光沢の管理を容易にするために光沢管理ツールが装備される。
【0063】
処理の観点からは、上に説明されるコイルコーティング上の移動するストリップへのラドキュア塗料の湿潤フィルムの塗布および硬化によって形成される有機コーティングの光沢の管理は、UV硬化前の湿潤フィルムの温度が重要であるという発見に主に基づく。特に、本発明者らは、コイルコーティングの二重硬化において、UV硬化前の湿潤フィルムの温度とEB硬化後の有機コーティングの光沢との間の線形関係が存在することを観測した。結果として、EB硬化後の光沢のいかなる偏差も、UV硬化前の湿潤フィルムの温度を調整することによって、効率的かつ再現可能な方法で修正できる。
【0064】
本方法は、移動するストリップに適用される。ストリップは、コイルコーティングラインの入口で巻き戻される1つの単一コイルとすることができる。より一般的には、ストリップは、互いに端と端が付着される異なるコイルからなる。コイルは、1つの本質的に連続したストリップを形成し、コイルコーティングラインの出口において到達されるべきその特徴および技術的仕様は、経時的に変化する。ストリップは、ラドキュア塗料の湿潤フィルムが塗布され、好ましくは加熱され、二重硬化されるように、コイルコーティングラインの経路Pに沿って移動される。特に、ストリップは、ラドキュア塗料の湿潤フィルムが、まず、塗料塗布器によってストリップに塗布され、次いで赤外線ヒータによって加熱され、次いで紫外線硬化デバイス内でUVにさらされ、最後に電子ビームデバイス内で硬化されるように、コイルコーティングラインの経路Pに沿って移動される。任意選択的に、ストリップは、塗料塗布器2の上流に位置付けられるインダクタ8により予熱され得る。任意選択的に、ラドキュア塗料は、塗料塗布器内で加熱され得る。
【0065】
本方法の第1の実施形態は、
図2を参照して説明される。
【0066】
光沢を管理するための方法の第1のステップ100は、正しい調整に必要とされる何らかの設定値の設定である。
【0067】
有機コーティングの設定光沢値Gsがまず設定される。この値は、顧客によって、またはコイルコーティングラインのオペレータによって要求される光沢に対応する。実用的観点から、それは、光沢管理ツールに、特に設定モジュールに手動で入力され得る。代替的に、それは、コイルコーティングラインの注文ブックから、特にスケジューリングツールから自動的に取得できる。
【0068】
ストリップの長さに沿った光沢のわずかな偏差は、通常、品質の観点から容認可能であるため、有機コーティングの光沢の設定光沢範囲Rsも設定される。それは、ある範囲として、したがって、最小光沢および最大光沢を伴って入力され得るか、またはそれは、設定光沢値Gsの標準偏差として入力され得る。当然ながら、何らかの理由で、わずかな偏差が回避される必要がある場合、設定光沢値Gsは、最小光沢および最大光沢として入力され得るか、または標準偏差はゼロに設定され得る。実用的観点から、設定光沢範囲Rsは、光沢管理ツールに、特に設定モジュールに手動で入力され得る。代替的に、それは、コイルコーティングラインの管理ツールから、またはコイルコーティングラインの注文ブックから、特にスケジューリングツールから自動的に取得できる。光沢の設定光沢範囲Rsはまた、EN10169:2013などの規格から取得できる。
【0069】
また、光沢管理は、紫外線硬化前の湿潤フィルムの温度と電子ビーム硬化後の有機コーティングの光沢との間の線形数学的関係に依拠するため、この線形数学的関係の比例定数Kは、調整が正確であるように設定される必要がある。
【0070】
比例定数Kは、設定ステップの前に実施される較正ステップにおいて取得できる。この較正ステップ中、コイルコーティングライン上で使用されることになるラドキュア塗料の湿潤フィルムは、異なる温度で加熱され、標準硬化条件で二重硬化によって硬化され、有機コーティングの光沢が測定される。こうして比例定数Kを推論できる。それは、好ましくは、温度単位に応じて、℃/GU、oF/GU、またはK/GUで表される。この較正ステップは、一度限り行われ得、本発明による方法が実施される度に実施される必要はない。
【0071】
実用的観点から、比例定数Kは、紫外線硬化前の湿潤フィルムの温度と電子ビーム硬化後の有機コーティングの光沢との間の予め定義された線形数学的関係から取得され、予め定義された線形数学的関係は、コイルコーティングラインのオペレータに利用可能である。「予め定義された」とは、較正ステップが、好ましくは上に説明されるように、コイルコーティングラインにおいて本方法が実施される前に実行されていることを意味する。比例定数Kは、光沢管理ツールに、特に設定モジュールに手動で入力できる。代替的に、それは、光沢管理ツールに、場合によっては表の形式で入力される予め定義された線形数学的関係を、コイルコーティングラインの注文ブックからの、特にスケジューリングツールからの塗料参照と照らし合わせることによって自動的に取得できる。
【0072】
例えば、鋼のコイルコーティングのための市販のラドキュア塗料の場合、Kは、通常、0.3から1.2の間に含まれるということが確認されている。
【0073】
光沢を管理するための方法の第2のステップ120において、赤外線ヒータの下流および紫外線硬化デバイスの上流の移動するストリップの少なくともある幅部分における湿潤フィルムの温度Tの測定値が収集され、電子ビーム硬化デバイスの下流の少なくともある幅部分における有機コーティングの光沢Gの測定値が収集される。
【0074】
好ましくは、温度は、上に説明されるような湿潤フィルム温度測定デバイスを用いて測定され、光沢は、上に説明されるような光沢測定デバイスを用いて測定される。
【0075】
好ましくは、両方の測定は、光沢の適切な管理を有するのに十分に短い時間間隔で行われる。時間間隔の例は、30秒未満、20秒未満、毎10秒未満、毎5秒未満、毎2秒未満、毎秒未満である。より好ましくは、両方の測定は、実質的に連続的、または連続的である。好ましくは、両方の測定は、光沢の適切な管理を有するのに十分に短い時間間隔で収集される。時間間隔の例は、毎10秒未満、毎5秒未満、毎2秒未満、毎秒未満である。より好ましくは、両方の測定は、実質的に連続的に、または連続的に収集される。好ましくは、測定値は、光沢管理ツール内で、特に取得モジュール内で、より好ましくは、適切なインターフェースを用いて自動的に収集される。
【0076】
「幅部分」とは、移動するストリップが、ストリップ幅内で互いに隣接する部分に概念的に分割されることを意味する。1つの単一幅部分または複数が存在し得る。結果として、湿潤フィルムおよび有機コーティングもまた、同じ幅部分に概念的に分割される。「少なくともある幅部分」とは、本方法が、移動するストリップの1つの幅部分、または複数の幅部分、または全幅のいずれかに対して実施されることを意味する。全幅に対して実施されない場合、以下を測定および収集することが可能である:
- 1つの単一幅部分における湿潤フィルムの温度T(この幅部分における測定が、ストリップ幅全体にわたる平均温度を十分に表すものであると見なされる場合)、または
- 各幅部分における温度が他の部分とは独立して調整され得るように、複数の幅部分における湿潤フィルムの温度。
同様に、したがって以下を測定および収集することが可能である:
- 1つの単一幅部分における有機コーティングの光沢G(この幅部分における測定が、ストリップ幅全体の光沢を管理するのに十分に関連性があると見なされる場合)、または
- 各幅部分における光沢が他の部分に対して独立して管理され得るように、複数の幅部分における有機コーティングの光沢。そのケースにおいて光沢が管理される方法についての詳細は、
図5を参照して後で提供される。
【0077】
1つの変形例において、収集ステップは、設定ステップの後に実施される。
【0078】
別の変形例において、特にコイルコーティングラインの連続動作中、収集ステップは、設定ステップと並行して行われ得る。そのような連続動作の場合、ストリップが互いに端と端が付着される異なるコイルからなるため、ストリップの特徴の変化およびストリップの技術仕様の変化がしばしば発生する。収集ステップが進行中であるなか、設定パラメータのうちの任意の1つ、特に、設定光沢値Gs、設定光沢範囲Rs、および/または定数Kのうちの任意の1つは、指定の光沢の変化またはラドキュア塗料の変化など、何らかの理由で修正される必要があり得る。結果として、設定ステップが実行される。
【0079】
光沢を管理するための方法の第3のステップ130において、設定光沢範囲Rsを上回る、測定された光沢Gの可能性がある偏差が修正される。まず、光沢の可能性のある偏差は、測定された光沢Gを、設定光沢値Gsと、および/または設定光沢範囲Rsと比較することによって評価される。測定された光沢Gが依然として設定光沢範囲Rs内である場合、設定は維持される。測定された光沢Gが設定光沢範囲Rsを超えて逸脱していた場合、赤外線ヒータの下流および紫外線硬化デバイスの上流の移動するストリップの少なくともある幅部分における、湿潤フィルムによって到達されるべき修正温度Tcは、等式1:
Tc=T+K(G-Gs) (1)
に従って計算される。
【0080】
光沢偏差の評価は、いつでも行われ得る。好ましくは、それは、光沢の適切な管理を有するのに十分に短い時間間隔で行われる。時間間隔の例は、30秒未満、20秒未満、毎10秒未満、毎5秒未満、毎2秒未満、毎秒未満である。より好ましくは、評価は、実質的に連続的、または連続的である。
【0081】
修正温度が計算されると、計算の結果、すなわち、修正温度Tcは、好ましくは、ラインオペレータに利用可能になる。ラインオペレータは、必要な修正を行い得る。
【0082】
一般的に言うと、ライン設定は、値Gsの光沢が、電子ビーム硬化デバイスの下流の移動するストリップの少なくともある幅部分における有機コーティング上で得られるように、計算された修正温度Tcを考慮に入れて調整される。特に、ライン設定は、湿潤フィルムが、赤外線ヒータの下流および紫外線硬化デバイスの上流の移動するストリップの少なくともある幅部分において修正温度Tcに到達するように調整される。
【0083】
図2に示される第1の変形例において、修正温度が計算されると、湿潤フィルムが、赤外線ヒータの下流および紫外線硬化デバイスの移動するストリップの少なくともある幅部分において修正温度T
cに到達するように、赤外線ヒータの電力が調整される。赤外線ヒータの電力を調整することは、赤外線ヒータをオンまたはオフにすることを含む。赤外線ヒータの調整のおかげで、赤外線ヒータの下流および紫外線硬化デバイスの上流の幅部分における湿潤フィルムの温度は修正され、光沢値G
sが電子ビーム硬化デバイス下流の幅部分における有機コーティングに対して取得される。赤外線ヒータの電力の調整は、オペレータによって手動で、または光沢管理ツール、特に修正モジュールの支援とともに自動的に、行われ得る。
【0084】
代替的に、コイルコーティングラインに、塗料塗布器の上流にインダクタが装備される場合、修正温度が計算されると、湿潤フィルムが赤外線ヒータの下流および紫外線硬化デバイスの上流の移動するストリップの少なくともある幅部分において修正温度Tcに到達するように、塗料塗布器のレベルでのストリップの温度が調節されるように、インダクタの電力が調整される。光沢を修正するこの代替の方法は、とりわけ、赤外線ヒータが既に最大能力にあり、紫外線硬化デバイスの上流の湿潤フィルムの温度がさらに増加されなければならない場合、有用である。インダクタ内でストリップをさらに加熱することにより、赤外線ヒータによって提供されることになる過熱が低減される。
【0085】
1つの変形例において、修正ステップ130は、収集ステップ120の後に実行される。
【0086】
別の変形例において、特にコイルコーティングラインの連続動作中、修正ステップを、収集ステップと並行して行うことができる。そのような連続動作の場合、ストリップが互いに端と端が付着される異なるコイルからなるため、ストリップの特徴の変化およびストリップの技術仕様の変化がしばしば発生する。それらは、光沢を逸脱させ得る。収集ステップが進行中であるなか、修正ステップは、測定された光沢を修正するために実行される。
【0087】
任意選択的に、本方法は、ステップ10をさらに含み、この間に初期ライン条件が設定される。このステップは、初期ライン設定ステップと称される。上に説明されるように、本方法は、設定光沢範囲Rsを超える測定された光沢のいかなる偏差も修正されるものである。すなわち、コイルコーティングラインにおける生産活動の開始時に、または、例えば、ストリップ形式、塗料の厚さ、塗料の色、またはライン速度の重要な変更の後、ライン条件は、設定光沢値Gsに到達するのに相応しいライン条件からシフトされ得る。そのような場合、赤外線ヒータは、適切に加熱しない場合があり、および/または、修正温度Tcに対応する電力に到達するのにいくらかの時間を必要とし得る。結果として、コーティングされたストリップの一部分は、光沢が規格外であることが理由で破棄されなければならない場合がある。さらには、設定光沢値をもたらすことになる表面粗さを引き起こすために湿潤フィルムがさらされるUV線量は、適切ではない場合がある。そのような場合、赤外線ヒータは、おそらくは強力に加熱することによって、シフトしたUV線量を補償する必要があり、これには時間を要する。ここでも、コーティングされたストリップの一部分は、光沢が規格外であることが理由で破棄されなければならない場合がある。規格外のコーティングされたストリップの長さを最小限にするために、初期ライン条件を設定することが有利である。
【0088】
それを行うためには、第1のサブステップにおいて、複数のプロセスパラメータおよび/またコーティングされたストリップの規格が収集される。プロセスパラメータの例は、初期ライン速度LS0である。それは、好ましくは、次のコイルがコイルコーティングライン上でコーティングされるために推奨されるものである。別の例は、塗料塗布器によってストリップに塗布される湿潤フィルムの初期厚さFTh0である。初期フィルム厚さは、好ましくは、次のコイルがコイルコーティングライン上でコーティングされるために指定される有機コーティングの厚さに対応するものである。別の例は、塗料塗布器の前の、好ましくはインダクタの前の、移動するストリップの温度である。規格の例は、初期ストリップ厚さSTh0、初期ストリップ幅SWd0、塗料色である。好ましくは、初期ライン速度LS0、初期厚さFTh0、初期ストリップ厚さSTh0、初期ストリップ幅SWd0、および塗料色が収集される。実用的観点から、プロセスパラメータおよび/または規格は、光沢管理ツールに、特に設定モジュールに手動で入力され得る。代替的に、それらは、コイルコーティングラインの注文ブックから、特にスケジューリングツールから自動的に取得され得、および/または注文ブックから推論され得る。例えば、初期フィルム厚さFTh0は、注文ブック内で指定される有機コーティングの厚さから推論され得る。
【0089】
プロセスパラメータおよび/または規格が収集されると、第2のサブステップにおいて、初期ライン条件が、収集されたプロセスパラメータおよび/または規格を考慮に入れて設定される。特に、それらは、収集されたプロセスパラメータおよび/または規格から計算される。以下の初期ライン条件が設定され得る:
- 赤外線ヒータの初期電力PW0、
- 紫外線硬化デバイスの、または該当する場合にはUVモジュールの初期UV線量D0、
- 紫外線硬化デバイス、または該当する場合にはUVモジュールと、電子ビーム硬化デバイスとの間の初期長さL0。
【0090】
初期電力PW0は、移動するストリップの質量流量、ストリップの比熱容量、および赤外線収率を知って設定することができる。初期UV線量D0は、初期ライン設定ステップの前に実行される較正ステップにおいて得られるデータに基づいて設定できる。初期長さL0は、初期ライン設定ステップの前に実行される較正ステップにおいて得られるデータに基づいて設定できる。
【0091】
実用的観点から、初期ライン条件は、コイルコーティングラインの管理ツールに手動で入力することができる。代替的に、それらは、コイルコーティングラインの管理ツール内の光沢管理ツールによって自動的に投入することができる。
【0092】
1つの変形例において、初期ライン設定ステップ110は、設定ステップ100の前に実行される。それは、設定光沢値Gs、設定光沢範囲Rs、および定数Kの初期組み合わせに加えて、第1のコイルの生産活動のために既に最適化されているライン条件を用いて生産を開始するのを助ける。生産中、収集ステップおよび修正ステップが、光沢を管理するために実行できる。設定パラメータのうちの任意の1つ、特に、設定光沢値Gs、設定光沢範囲Rs、および/または定数Kのうちの任意の1つが、指定の光沢の変化またはラドキュア塗料の変化のように、何らかの理由で修正される必要があるとき、それは、測定された光沢を設定光沢範囲Rs内に保つために収集ステップ120および修正ステップ130の実行に依拠する。
【0093】
別の変形例において、初期ライン設定ステップ110は、
図2に示されるように、設定ステップ100の後に実行される。このように、初期ライン条件の設定は、設定光沢値G
sを考慮に入れることによって行うことができる。ライン条件は、故に、第1のコイルの生産活動のためにより良好に最適化される。さらには、生産中、設定パラメータのうちの任意の1つ、特に、設定光沢値G
s、設定光沢範囲R
s、および/または定数Kのうちの任意の1つが何らかの理由で修正される必要があるとき、初期ライン設定は、移行期間を最小にするのを助けるために再設定され得る。
【0094】
別の変形例において、初期ライン設定ステップ110は、上に説明される両方の変形例を活用するために設定ステップ100の前および後に実行される。
【0095】
別の変形例において、特にコイルコーティングラインの連続動作中、初期ライン設定ステップは、収集ステップと並行して行うことができる。そのような連続動作の場合、ストリップが互いに端と端が付着される異なるコイルからなるため、ストリップの特徴の変化およびストリップの技術仕様の変化がしばしば発生する。これらの変化のうちの1つが発生するときにライン条件を再初期化することは、設定光沢値にできる限り早く到達するのを助ける。
【0096】
これより本方法の第2の実施形態が、
図3を参照して説明される。
【0097】
この実施形態は、主に、修正ステップが以下を行うために追加のサブステップを含むという点で、第1の実施形態とは異なる:
- 計算された修正温度Tcが、ラドキュア塗料を劣化させる最大温度Tmaxを超えないことを確実にする、および
- それに応じて、測定された光沢Gの偏差を修正する。
【0098】
この構成のおかげで、本方法は、赤外線ヒータ内で加熱されるときの湿潤フィルムの熱劣化をさらに防ぐ。
【0099】
第1の実施形態を説明するときに提供された詳細は、第2の実施形態に当てはまる。追加のステップおよび対応する特徴がこれより詳細に説明される。
【0100】
設定ステップ100は、ラドキュア塗料に対して最大温度Tmaxを設定することをさらに含む。この温度は、塗料サプライヤによって推奨されるものであり得る。それは、代替的に、コイルコーティングラインのオペレータによって、とりわけ温度の関数として塗料モノマーの放射を測定することによって、識別でき、この測定は、赤外線ヒータのレベルで、オフラインまたは可能であればオンラインで行われる。実用的観点から、最大温度Tmaxは、光沢管理ツールに、特に設定モジュールに手動で入力できる。代替的に、それは、光沢管理ツールに入力される異なる最大温度を、コイルコーティングラインの注文ブックからの、特にスケジューリングツールからの塗料参照と照らし合わせることによって自動的に取得できる。
【0101】
収集ステップ120は、UVモジュールのUV線量Dを収集することをさらに含む。UVモジュールの電力は、一般的には、オペレータから、可能であればコイルコーティングラインの管理ツールから知られるが、所与の電力について、湿潤フィルムがさらされる実際のUV線量は、ライン速度LSに伴って変動する。したがって、UV線量は、UVモジュールの電力およびライン速度に基づいて計算され、収集される。ライン速度自体は、一般的には、オペレータから、可能であればコイルコーティングラインの管理ツールから知られる。
【0102】
好ましくは、UV線量は、UVモジュールの電力および/またはライン速度が調整される度に再計算および収集される。より好ましくは、UV線量の収集は、実質的に連続的である。好ましくは、UV線量は、光沢管理ツール内で、特に取得モジュール内で、より好ましくは、適切なインターフェースを用いて自動的に収集される。
【0103】
修正ステップ130中、修正温度Tcが計算されると、それは最大温度Tmaxと比較される。TcがTmaxを下回る場合、第1の実施形態のように、湿潤フィルムが、赤外線ヒータの下流および紫外線硬化デバイスの上流の移動するストリップの少なくともある幅部分において修正温度Tcに到達するように、赤外線ヒータの電力が調整される。代替的に、コイルコーティングラインに、塗料塗布器の上流にインダクタが装備される場合、修正温度が計算されると、湿潤フィルムが赤外線ヒータの下流および紫外線硬化デバイスの上流の移動するストリップの少なくともある幅部分において修正温度Tcに到達するように、塗料塗布器のレベルでのストリップの温度フィルムが調節されるように、インダクタの電力が調整される。
【0104】
TcがTmaxを上回る場合、光沢は、赤外線ヒータの電力またはインダクタの電力をこれ以上増加させることなく修正される必要がある。それを行うための1つの方法は、UVモジュールの電力を調整することである。実際、それは、有機コーティングの光沢に影響を及ぼすことが観測されている。湿潤フィルムに対するUV線量が増加するほど、光沢は減少する。結果として、修正ステップ130は、移動するストリップの少なくともある幅部分における湿潤フィルムがUVモジュール内でさらされなければならない修正UV線量Dcを、等式2:
Dc=f1(D,G,Gs) (2)
に従って計算することをさらに含む。
【0105】
等式(2)は、修正ステップの前に、好ましくは設定ステップの前に実行される較正ステップにおいて取得できる。この較正ステップ中、コイルコーティングライン上で使用されることになるラドキュア塗料の湿潤フィルムは、異なるUV線量にさらされ、標準硬化条件でEBによって硬化され、有機コーティングの光沢が測定される。こうして、関数f1は、各ラドキュア塗料について推論され得る。この較正ステップは、一度限り行われ得、本発明による方法が実施される度に実行される必要はない。
【0106】
好ましくは、ラドキュア塗料の湿潤フィルムがさらされるUV線量と電子ビーム硬化後の有機コーティングの光沢との間の予め定義された数学的関係の関数f1は、設定ステップ中に設定される。「予め定義された」とは、較正ステップが、好ましくは上に説明されるように、コイルコーティングラインにおいて本方法が実施される前に実行されていることを意味する。関数f1は、光沢管理ツールに、特に設定モジュールに手動で入力できる。代替的に、それは、光沢管理ツールに入力される予め定義された数学的関係を、コイルコーティングラインの注文ブックからの、特にスケジューリングツールからの塗料参照と照らし合わせることによって自動的に取得できる。
【0107】
例えば、鋼のコイルコーティングのための市販のラドキュア塗料の場合、f1は、通常、UV線量が増加すると漸近線に向かって減少する光沢曲線に関連することが観測されている。
【0108】
修正UV線量が計算されると、計算の結果、すなわち、修正UV線量Dcは、好ましくは、ラインオペレータに利用可能になる。ラインオペレータは、必要な修正を行うことができる。
【0109】
一般的に言うと、赤外線ヒータの電力以外、および該当する場合にはインダクタの電力以外のライン設定は、値Gsの光沢が、電子ビーム硬化デバイスの下流の移動するストリップの少なくともある幅部分における有機コーティング上で得られるように、計算された修正UV線量Dcを考慮に入れて調整される。
【0110】
図3に示される変形例において、修正UV線量が計算されると、移動するストリップの少なくともある幅部分における湿潤フィルムが、UVモジュール内でUV線量D
cにさらされるように、UVモジュールの電力が調整される。UVモジュールの調整のおかげで、湿潤フィルムがUVモジュール内で幅部分においてさらされるUV線量は、修正され、値G
sの光沢が、電子ビーム硬化デバイスの下流の幅部分における有機コーティング上で得られる。UVモジュールの電力の調整は、オペレータによって手動で、または光沢管理ツールの助けを借りて自動的に行うことができる。
【0111】
これより本方法の第3の実施形態が、
図4を参照して説明される。
【0112】
この実施形態は、主に、修正ステップが以下を行うために追加のサブステップを含むという点で、第2の実施形態とは異なる:
- 計算された修正UV線量Dcが、湿潤フィルムがさらされ得る最大UV線量Dmaxを超えないことを確実にする、
- それに応じて、測定された光沢Gの偏差を修正する。
【0113】
この構成のおかげで、本方法は、光沢に悪影響を及ぼし得るUV硬化デバイス内での湿潤フィルムの過剰な硬化をさらに防ぐ。
【0114】
第1および第2の実施形態を説明するときに提供された詳細は、第3の実施形態に当てはまる。追加のステップおよび対応する特徴がこれより詳細に説明される。
【0115】
この実施形態において、コイルコーティングラインの紫外線硬化デバイスのUVモジュールは、経路Pに沿って移動可能である。したがって、UVモジュールと電子ビーム硬化デバイスとの間の長さLを調整できる。
【0116】
設定ステップ100は、湿潤フィルムがUVモジュール内でさらされ得る最大UV線量Dmaxを設定することをさらに含む。このUV線量は、塗料サプライヤによって推奨されるものであり得る。それは、代替的に、とりわけ較正ステップ中に、コイルコーティングラインのオペレータによって識別され得る。実用的観点から、最大UV線量Dmaxは、光沢管理ツールに、特に設定モジュールに手動で入力できる。代替的に、それは、光沢管理ツールに入力されるさまざまな最大UV線量を、コイルコーティングラインの注文ブックからの、特にスケジューリングツールからの塗料参照と照らし合わせることによって自動的に取得できる。
【0117】
収集ステップ120は、UVモジュールと電子ビーム硬化デバイスとの間の長さLを収集することをさらに含む。この長さは、一般的には、オペレータから、可能であればコイルコーティングラインの管理ツールから知られる。それは、手動で収集できる。好ましくは、それは、光沢管理ツール内で、より好ましくは、適切なインターフェースを用いて自動的に収集される。好ましくは、それは、長さLが修正されるときにのみ収集される。
【0118】
修正ステップ130中、修正UV線量Dcが計算されると、それは最大UV線量Dmaxと比較される。DcがDmaxを下回る場合、移動するストリップの少なくともある幅部分における湿潤フィルムがUVモジュール内でUV線量Dcにさらされるように、UVモジュールの電力/設定が調整される。UVモジュールの調整のおかげで、第2の実施形態のように、湿潤フィルムがUVモジュール内で幅部分においてさらされるUV線量は、修正され、値Gsの光沢が、電子ビーム硬化デバイスの下流の幅部分における有機コーティング上で得られる。
【0119】
DcがDmaxを上回る場合、光沢は、UVモジュールのUV線量をこれ以上増加させることなく修正される必要がある。それを行うための1つの方法は、UVモジュールと電子ビーム硬化デバイスとの間の長さを調節することである。実際、それは、有機コーティングの光沢に影響を及ぼすことが観測されている。UV硬化とEB硬化との間の時間が長いほど、光沢は低くなる。結果として、修正ステップ130は、UVモジュールと電子ビーム硬化デバイスとの間の修正された長さLcを、等式3:
Lc=f2(L,G,Gs) (3)
に従って計算することをさらに含む。
【0120】
等式(3)は、修正ステップの前に、好ましくは設定ステップの前に実行される較正ステップにおいて得ることができる。この較正ステップ中、コイルコーティングライン上で使用されることになるラドキュア塗料の湿潤フィルムは、標準硬化条件でUV硬化およびEB硬化に、2つの硬化の間の変動する時間を伴って、続けてさらされ、有機コーティングの光沢が測定される。こうして、関数f2は、各ラドキュア塗料について推論され得る。この較正ステップは、一度限り行われ得、本発明による方法が実施される度に実行される必要はない。
【0121】
好ましくは、UVモジュールと電子ビーム硬化デバイスとの間の長さと、電子ビーム硬化後の有機コーティングの光沢との間の予め定義された数学的関係の関数f2は、設定ステップ中に設定される。「予め定義された」とは、較正ステップが、好ましくは上に説明されるように、コイルコーティングラインにおいて本方法が実施される前に実行されていることを意味する。関数f2は、光沢管理ツールに、特に設定モジュールに手動で入力できる。代替的に、それは、光沢管理ツールに入力される予め定義された数学的関係を、コイルコーティングラインの注文ブックからの、特にスケジューリングツールからの塗料参照と照らし合わせることによって自動的に取得できる。
【0122】
例えば、鋼のコイルコーティングのための市販のラドキュア塗料の場合、f2は、通常、Lが増加すると漸近線に向かって減少する光沢曲線に関連するということが観測されている。
【0123】
修正された長さが計算されると、計算の結果、すなわち、修正された長さLcは、好ましくは、ラインオペレータに利用可能になる。ラインオペレータは、必要な修正を行うことができる。
【0124】
一般的に言うと、赤外線ヒータの電力以外、該当する場合にはインダクタの電力以外、およびUVモジュールの電力以外のライン設定は、値Gsの光沢が、電子ビーム硬化デバイスの下流の移動するストリップの少なくともある幅部分における有機コーティング上で得られるように、計算した修正された長さLcを考慮に入れて調整される。
【0125】
図4に示される変形例において、修正された長さが計算されると、値G
sの光沢が、電子ビーム硬化デバイスの下流の移動するストリップの少なくともある幅部分における有機コーティング上で得られるように、UVモジュールと電子ビーム硬化デバイスとの間の長さが調整される。長さの調整は、オペレータによって手動で、または光沢管理ツールの助けを借りて自動的に行うことができる。
【0126】
代替的に、とりわけUVモジュールと電子ビーム硬化デバイスとの間の長さを、さらに長くすることも短くすることもできない場合、ライン速度を調整できる。その場合、初期ライン設定が、新規ライン速度、赤外線ヒータの初期電力PW0、紫外線硬化デバイスの初期UV線量D0、および紫外線硬化デバイスと電子ビーム硬化デバイスとの間の初期長さL0を調整するために再度実行される。
【0127】
これより本方法の第4の実施形態が、
図5を参照して説明される。この実施形態は、主に、光沢が、移動するストリップの各幅部分に対して他の部分とは独立して管理されるという点で、第1、第2、および第3の実施形態とは異なる。この構成のおかげで、幅に沿った光沢偏差を生じるストリップの幅に沿った温度偏差は、加熱デバイスの各赤外線ヒータの電力を、他の赤外線ヒータとは独立して調整することによって低減できる。第1、第2、および第3の実施形態を説明するときに提供された詳細は、第4の実施形態に当てはまる。違いはこれより以下に詳細に説明される。
【0128】
本方法の第4の実施形態を実装するために、コイルコーティングラインは、経路Pの幅に実質的に平行な列を形成する、以下ではIR、IR’、IR’’…IRiと識別される複数の赤外線ヒータを備える加熱デバイス3をさらに備える(本方法の第1の実施形態を実施するために使用されるコイルコーティングラインと比較して)。
【0129】
その場合、第2のステップ120は、赤外線ヒータの下流および紫外線硬化デバイスの上流の複数の幅部分における湿潤フィルムの温度の測定値を収集することを含む。その場合、赤外線ヒータの下流および紫外線硬化デバイスの上流の移動するストリップの各幅部分P、P’、P’’…Piは、各時間tにおいて、1つの測定値T、T’、T’’…Tiを割り当てられる。この割り当ては、複数の湿潤フィルム温度測定デバイスにより行われ得る。それはまた、例えばサーマルカメラなど、湿潤フィルムの全幅において湿潤フィルムの温度を測定できる単一の湿潤フィルム温度測定デバイスにより行われ得る。
【0130】
同様に、第2のステップは、EB硬化デバイスの下流の複数の幅部分における有機コーティングの光沢の測定値を収集することを含む。その場合、EB硬化デバイスの下流の移動するストリップの各部分P、P’、P’’…Piは、各時間において、1つの測定値G、G’、G’’…Giを割り当てられる。この割り当ては、複数の光沢測定デバイスにより行われ得る。それはまた、例えば振動光沢計など、有機コーティングの全幅において有機コーティングの光沢を測定できる単一の光沢測定デバイスにより行われ得る。
【0131】
この実施形態において、修正ステップ130は、各幅部分について他とは独立して、設定光沢範囲Rsを超える、測定された光沢の可能性のある偏差を修正することを含む。まず、光沢の可能性のある偏差は、測定した光沢G、G’、G’’…Giを、設定光沢値Gsと、および/または設定光沢範囲Rsと比較することによって分析される。任意の幅部分Piについて、他の部分とは独立して、測定された光沢Giが依然として設定光沢範囲Rs内である場合、赤外線ヒータIRiの設定は維持される。測定された光沢Giが設定光沢範囲Rsを超えて逸脱していた場合、赤外線ヒータIRiの下流および紫外線硬化デバイスの上流の幅部分Piにおける湿潤フィルムによって到達されるべき修正温度Tc
iは、等式1i:
Tc
i=Ti+K(Gi-Gs) (1i)
に従って計算される。
【0132】
任意の幅部分Piについて、修正ステップSiにおいて、修正温度が計算サブステップCiにおいて計算されると、計算の結果、すなわち、修正温度Tc
iは、好ましくは、ラインオペレータに利用可能になる。ラインオペレータは、必要な修正を行うことができる。
【0133】
一般的に言うと、値Gsの光沢が、電子ビーム硬化デバイスの下流の移動するストリップの幅部分Piにおける有機コーティング上で得られるように、ライン設定が、計算された修正温度Tc
iを考慮に入れて調整される。
【0134】
図5に示される第1の変形例において、任意の幅部分P
iについて、修正温度が計算されると、湿潤フィルムが、赤外線ヒータIR
iの下流および紫外線硬化デバイスの上流の移動するストリップの幅部分P
iにおいて修正温度T
c
iに到達するように、ライン設定が調整される。特に、湿潤フィルムが、赤外線ヒータIR
iの下流および紫外線硬化デバイスの上流の幅部分P
iにおいて修正温度T
c
iに到達するように、赤外線ヒータIR
iの電力が調節される。結果として、値G
sの光沢が、電子ビーム硬化デバイスの下流の幅部分P
iにおける有機コーティング上で得られる。
【0135】
この実施形態の第2の変形例によれば、コイルコーティングラインの紫外線硬化デバイスは、経路Pの幅に実質的に平行な列を形成する複数の独立制御可能なUVモジュールUV、UV’、UV’’…UViを備え、収集ステップ120は、UVモジュールのUV線量D、D’、D’’…Diを収集することをさらに含む。
【0136】
この変形例において、任意の幅部分Piについて、修正温度Tc
iが計算されると、それは、最大温度Tmaxと比較される。Tc
iがTmaxを下回る場合、第1の変形例にあるように、湿潤フィルムが、赤外線ヒータIRiの下流および紫外線硬化デバイスの上流の幅部分Piにおいて修正温度Tc
iに到達するように、赤外線ヒータIRiの電力が調整される。
【0137】
Tc
iがTmaxを上回る場合、および第2の実施形態に説明されるように、修正ステップ130は、移動するストリップの幅部分Piにおける湿潤フィルムがUVモジュールUVi内でさらされなければならない修正UV線量Dc
iを、等式2i:
Dc
i=f1(Di,Gi,Gs) (2i)
に従って計算することをさらに含む。
【0138】
修正UV線量が計算されると、計算の結果、すなわち、修正UV線量Dc
iは、好ましくは、ラインオペレータに利用可能になる。ラインオペレータは、必要な修正を行うことができる。
【0139】
一般的に言うと、赤外線ヒータIRiの電力以外、および該当する場合にはインダクタの電力以外のライン設定は、値Gsの光沢が、電子ビーム硬化デバイスの下流の移動するストリップの幅部分Piににおける有機コーティング上で得られるように、計算した修正UV線量Dc
iを考慮に入れて調整される。
【0140】
本実施形態のこの変形例において、修正UV線量Dc
iが計算されると、UVモジュールUViの電力は、移動するストリップの幅部分Piにおける湿潤フィルムが、UVモジュールUVi内でUV線量Dc
iにさらされるように、UVモジュールUViの電力が調整される。結果として、値Gsの光沢が、電子ビーム硬化デバイスの下流の幅部分Piにおける有機コーティング上で得られる。
【0141】
この実施形態の第3の変形例によれば、および第2の変形例との比較では、各UVモジュールは、他とは独立して経路Pに沿って移動可能であり、収集ステップは、UVモジュールと電子ビーム硬化デバイスとの間の長さL、L’、L’’…Liを収集することをさらに含む。
【0142】
この変形例において、任意の幅部分Piについて、修正UV線量Dc
iが計算されると、それは、最大UV線量Dmaxと比較される。Dc
iがDmaxを下回る場合、第2の変形例にあるように、UVモジュールUViの電力は、移動するストリップの幅部分Piにおける湿潤フィルムが、UVモジュールUVi内でUV線量Dc
iにさらされるように、調整される。
【0143】
Dc
iがDmaxを上回る場合、第3の実施形態に説明されるように、修正ステップ130は、UVモジュールUViと電子ビーム硬化デバイスとの間の修正された長さLc
iを、等式3i:
Lc
i=f2(Li,Gi,Gs) (3i)
に従って計算することをさらに含む。
【0144】
修正された長さが計算されると、計算の結果、すなわち、修正された長さLc
iは、好ましくは、ラインオペレータに利用可能になる。ラインオペレータは、必要な修正を行うことができる。
【0145】
本実施形態のこの変形例において、修正された長さLc
iが計算されると、UVモジュールUViと電子ビーム硬化デバイスとの間の長さは、値Gsの光沢が、電子ビーム硬化デバイスの下流の幅部分Piにおける有機コーティング上で得られるように、調整される。
【0146】
任意選択的に、初期ライン設定ステップ110は、その第2のサブステップにおいて、以下の初期ライン条件が第1のサブステップで収集されたプロセスパラメータおよび/または規格を考慮に入れて設定されるという点において、第1の実施形態において説明されるものとは異なる:
- 赤外線ヒータIR、IR’、IR’’…IRiの初期電力PW0、PW0’、PW0’’…PW0
i、
- UVモジュールUV、UV’、UV’’…UViの初期UV線量D0、D0’、D0’’…D0
i、
- UVモジュールUV、UV’、UV’’…UViと電子ビーム硬化デバイスとの間の初期長さL0、L0’、L0’’…L0
i。
【0147】
本発明はまた、移動するストリップの経路Pに沿って順に、塗料塗布器、赤外線ヒータを備える加熱デバイス、紫外線硬化デバイス、および電子ビーム硬化デバイスを備えるコイルコーティングライン上の移動するストリップ上に有機コーティングを形成するための方法に関し、本方法は、
- 塗料塗布器により、移動するストリップ上にラドキュア塗料の湿潤フィルムを塗布するステップ、
- 赤外線ヒータ内でラドキュア塗料の湿潤フィルムを加熱するステップ、
- 紫外線硬化デバイス内でラドキュア塗料の湿潤フィルムをUVにさらすステップ、
- 電子ビームデバイス内でラドキュア塗料の湿潤フィルムを硬化して、有機コーティングを形成するステップを含み、
有機コーティングの光沢は、
- 有機コーティングの設定光沢値Gs、有機コーティングの光沢の設定光沢範囲Rs、および紫外線硬化前の湿潤フィルムの温度と電子ビーム硬化後の有機コーティングの光沢との間の予め定義された線形数学的関係の比例定数Kを設定すること、
- 赤外線ヒータの下流および紫外線硬化デバイスの上流の移動するストリップの少なくともある幅部分における湿潤フィルムの温度Tの測定値を収集し、電子ビーム硬化デバイスの下流の少なくともある幅部分における有機コーティングの光沢Gの測定値を収集すること、
- 設定光沢範囲Rsを超える、測定された光沢Gの偏差を修正することによって管理され、この修正ステップは、赤外線ヒータの下流および紫外線硬化デバイスの上流の少なくともある幅部分における、湿潤フィルムが到達するべき修正温度Tcを、等式1:
Tc=T+K(G-Gs) (1)
に従って計算するサブステップを含む。
【0148】
光沢を管理するための方法に関連して提供されるすべての詳細、およびコイルコーティングラインに関連して提供されるすべての詳細は、有機コーティングを形成する方法に当てはまる。
【0149】
本方法はまた、移動する金属ストリップの経路Pに沿って順に、塗料塗布器、赤外線ヒータを備える加熱デバイス、紫外線硬化デバイス、および電子ビーム硬化デバイスを備えるコイルコーティングライン上で、金属ストリップおよび有機コーティングを備える予め塗装された金属を製造するための方法に関し、本方法は、
- 塗料塗布器により、移動する金属ストリップ上にラドキュア塗料の湿潤フィルムを塗布するステップ、
- 赤外線ヒータ内でラドキュア塗料の湿潤フィルムを加熱するステップ、
- 紫外線硬化デバイス内でラドキュア塗料の湿潤フィルムをUVにさらすステップ、
- 電子ビームデバイス内でラドキュア塗料の湿潤フィルムを硬化して、有機コーティングを形成するステップを含み、
有機コーティングの光沢は、
- 有機コーティングの設定光沢値Gs、有機コーティングの光沢の設定光沢範囲Rs、および紫外線硬化前の湿潤フィルムの温度と電子ビーム硬化後の有機コーティングの光沢との間の予め定義された線形数学的関係の比例定数Kを設定すること、
- 赤外線ヒータの下流および紫外線硬化デバイスの移動するストリップの少なくともある幅部分における湿潤フィルムの温度Tの測定値を収集し、電子ビーム硬化デバイスの下流の少なくともある幅部分における有機コーティングの光沢Gの測定値を収集すること、
- 設定光沢範囲Rsを超える、測定された光沢Gの偏差を修正することによって管理され、この修正ステップは、赤外線ヒータの下流および紫外線硬化デバイスの上流の少なくともある幅部分における、湿潤フィルムによって到達されるべき修正温度Tcを、等式1:
Tc=T+K(G-Gs) (1)
に従って計算するサブステップを含む。
【0150】
光沢を管理するための方法に関連して提供されるすべての詳細、およびコイルコーティングラインに関連して提供されるすべての詳細は、予め塗装された金属を製造するための方法に当てはまる。
【国際調査報告】