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特表2025-501513光活性化樹脂組成物及び3D印刷におけるその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-22
(54)【発明の名称】光活性化樹脂組成物及び3D印刷におけるその使用
(51)【国際特許分類】
   C08F 20/20 20060101AFI20250115BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20250115BHJP
   C08G 75/26 20060101ALI20250115BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20250115BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20250115BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20250115BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20250115BHJP
   C07D 327/02 20060101ALN20250115BHJP
   C07D 327/10 20060101ALN20250115BHJP
   C07D 327/00 20060101ALN20250115BHJP
   C07D 313/04 20060101ALN20250115BHJP
   C07D 313/10 20060101ALN20250115BHJP
【FI】
C08F20/20 ZAB
C08F2/50
C08G75/26
B33Y70/00
B33Y10/00
B29C64/106
B33Y80/00
C07D327/02
C07D327/10
C07D327/00
C07D313/04
C07D313/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535989
(86)(22)【出願日】2022-12-16
(85)【翻訳文提出日】2024-08-06
(86)【国際出願番号】 EP2022086511
(87)【国際公開番号】W WO2023111340
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】21306838.0
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515066025
【氏名又は名称】ウニヴェルシテ・ドゥ・オート・アルザス・(ユアッシュア)
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(71)【出願人】
【識別番号】511025226
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ デクス-マルセイユ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE D’AIX-MARSEILLE
【住所又は居所原語表記】Jardin du Pharo, 58, Bld Charles Livon, F-13284 Marseille cedex 07, France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィエ・ソッペラ
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン・ギラヌフ
(72)【発明者】
【氏名】コンストンス・トマ
(72)【発明者】
【氏名】ノエミ・ジル
(72)【発明者】
【氏名】カトリーヌ・リフェイ
【テーマコード(参考)】
4F213
4J011
4J030
4J100
【Fターム(参考)】
4F213AA21
4F213AA34
4F213AB04
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL12
4F213WL24
4F213WL25
4J011QA23
4J011SA61
4J011SA84
4J011UA01
4J011VA01
4J011VA05
4J011WA07
4J030BA03
4J030BA16
4J030BA19
4J030BA41
4J030BA42
4J030BA44
4J030BA48
4J030BB49
4J030BB50
4J030BC32
4J030BC33
4J030BC43
4J030BF12
4J030BG26
4J030BG34
4J100AL59P
4J100AL61P
4J100AL62P
4J100AL63P
4J100AL65P
4J100AL66P
4J100AL67P
4J100AL71P
4J100AL78P
4J100CA01
4J100FA03
4J100FA06
4J100FA18
4J100JA01
4J100JA07
4J100JA37
(57)【要約】
本発明は、多官能性のアクリレート又はメタクリレートのモノマー、開裂性の、又は予備開裂性の基を含む環状モノマー、及び光開始剤を含む光活性化樹脂組成物に関する。本発明はまた、分解性ポリマー、分解性3D印刷成形品、並びにこうしたポリマー及び成形品を製造する方法にも関する。本発明は、分解性3D印刷成形品を製造するための、チオノラクトン又はスルフィドの環状メタクリレートを含むモノマーの使用に更に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光活性化樹脂組成物であって、
- アクリレート官能基及びメタクリレート官能基から独立に選択される、少なくとも2つの官能基を含む第1モノマー(M1)と、
- ラジカル開環を受けることが可能な環状モノマーである第2モノマー(M2)であり、チオカルボニル-オキシ、カルボニル-オキシ、カルボニル-チオ、ジスルフィド、シリルエーテル、及びアセタールからなる群から選択される部分を含み、M2の重合速度が、M1の重合速度と同等であるか、又はそれよりもより速い、第2モノマー(M2)と、
- 光開始剤と
を含む、光活性化樹脂組成物。
【請求項2】
前記第2モノマーM2が、チオカルボニル-オキシ部分を含む、請求項1に記載の光活性化樹脂組成物。
【請求項3】
前記第2モノマーM2が、カルボニル-オキシ及びカルボニル-チオからなる群から選択される部分を含む、請求項1に記載の光活性化樹脂組成物。
【請求項4】
前記第2モノマーM2が、チオノラクトン又はスルフィドの環状メタクリレートを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の光活性化樹脂組成物。
【請求項5】
前記第2モノマーM2が、以下の式(Ia)によって表される、請求項1から4のいずれか一項に記載の光活性化樹脂組成物。
【化1】
(式中、
- mは0、1、2、又は3であり、
- nは0~(2m+5)であり、
- R1はそれぞれ、独立に、水素、ハロゲン、C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、C2~C6アルキニル、C1~C6ヘテロアルキル、C3~C12シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シアノ、ニトロ、-C(O)OH、-C(O)H、-OH、-SH、C1~C6ペルフルオロアルキル、エステル、ケトン、スルホニル、及びアミドからなる群から選択され、
- R2は、水素、ハロゲン、C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、C2~C6アルキニル、C1~C6ヘテロアルキル、C3~C12シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シアノ、ニトロ、-C(O)OH、-C(O)H、-OH、-SH、C1~C6ペルフルオロアルキル、エステル、ケトン、スルホニル、及びアミドからなる群から選択され、
又は2個の隣接するR1、若しくは隣接するR1及びR2は、それらが結合する炭素原子と一緒になってC3~C12炭素環を形成することができる)
【請求項6】
前記第2モノマーが、
【化2】
からなる群から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の光活性化樹脂組成物。
【請求項7】
前記第2モノマーが、以下の式(DOT)で表される、請求項1から6のいずれか一項に記載の光活性化樹脂組成物。
【化3】
【請求項8】
前記第2モノマーが、以下の式(Ib)で表される、請求項1に記載の光活性化樹脂組成物。
【化4】
(式中、
- XはO又はSであり、
- Lは、k個の炭素原子を有するアルキレン鎖を表し、任意選択で、-C(O)O-及び-S-S-から独立に選択される、1つ又は複数の基によって割り込まれ、
- kは1~11であり、
- pは0~(2k+2)であり、
- R3はそれぞれ、独立に、水素、ハロゲン、C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、C2~C6アルキニル、C1~C6ヘテロアルキル、C3~C12シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シアノ、ニトロ、-C(O)OH、-C(O)H、-OH、-SH、C1~C6ペルフルオロアルキル、エステル、ケトン、スルホニル、及びアミドからなる群から選択され、
又は2個の隣接するR3は、それらが結合する炭素原子と一緒になってC3~C12炭素環を形成することができる)
【請求項9】
前記第2モノマーが、
【化5】
からなる群から選択される、請求項8に記載の光活性化樹脂組成物。
【請求項10】
第2モノマーM2の第1モノマーM1に対する質量比が、1/100~20/100、好ましくは1/100~5/100、より好ましくは1/100~3/100、更により好ましくは1.5/100~2.5/100である、請求項1から9のいずれか一項に記載の光活性化樹脂組成物。
【請求項11】
前記第1モノマーが、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETIA)、ペンタエリスリトールテトラ-アクリレート(PETEA)、プロポキシル化グリセリントリアクリレート(EB53)、グリセロールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA又はTTA)、ジ(トリメチロールプロパン)テトラ-アクリレート(DTMPTA)、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)、ジウレタンジメタクリレート(UDMA)、ビスフェノールAグリシジルメタクリレート(ビス-GMA)、ビスフェノールAエトキシレートジアクリレート(ビス-EDA)、及びその混合物から選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載の光活性化樹脂組成物。
【請求項12】
前記第1モノマーが、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETIA)である、請求項1から8のいずれか一項に記載の光活性化樹脂組成物。
【請求項13】
前記光開始剤が、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、アゾビスイソブチロニトリル、4,4'-アゾビス(4-シアノペンタン酸)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、tert-ブチルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-4'-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン、2-メチル-4'-(メチルチオ)-2-モルホリノプロピオフェノン、2,2'-アゾビス[2-メチル-n-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシド、リチウム(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート、及びその混合物から選択され、好ましくはフェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドである、請求項1から12のいずれか一項に記載の光活性化樹脂組成物。
【請求項14】
光開始剤の第1モノマーM1に対する質量比が、1/1000~5/100、好ましくは1/1000~1/100、より好ましくは2/1000~5/1000である、請求項1から13のいずれか一項に記載の光活性化樹脂組成物。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の光活性化樹脂組成物をベースとする分解性ポリマー。
【請求項16】
請求項1から14のいずれか一項に記載の光活性化樹脂組成物を照射する工程を含む、光重合方法。
【請求項17】
照射する工程が、UV光源、例えば、UVレーザー、UVランプ(例えば、水銀ランプ若しくはキノセンランプ)、DLPプロジェクター、LCDプロジェクター、又はLEDによって実行される、請求項16に記載の光重合方法。
【請求項18】
分解性成形品を3D印刷する方法であって、3D成形品の形成を可能にする条件の下、請求項1から14のいずれか一項に記載の光活性化樹脂組成物に照射する工程を含む、方法。
【請求項19】
以下の工程:
(i)請求項1から14のいずれか一項に記載の光活性化樹脂組成物の層を用意する工程と、
(ii)硬化光活性化樹脂層を得るように、工程(i)の層に照射する工程と
を含み、
3D印刷される成形品を形成する硬化層の積層を得るように、工程(i)及び工程(ii)が周期的に繰り返される、
請求項18に記載の方法。
【請求項20】
照射する工程が、UV光源、例えば、レーザー、UVランプ(例えば、水銀ランプ若しくはキノセンランプ)、プロジェクター、LCDプロジェクター、又はLEDによって実行される、請求項18又は19に記載の3D印刷する方法。
【請求項21】
バット内で実行される、請求項18から20のいずれか一項に記載の3D印刷する方法。
【請求項22】
請求項15に記載の分解性ポリマーをベースとする分解性3D印刷成形品。
【請求項23】
請求項22に記載の分解性3D印刷成形品を製造するための、請求項4から9のいずれか一項に規定のチオノラクトン又はスルフィドの環状メタクリレートを含むモノマーの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多官能性のアクリレート又はメタクリレートのモノマー、開裂性の、又は予備開裂性の基を含む環状モノマー、及び光開始剤を含む光活性化樹脂組成物に関する。本発明はまた、分解性ポリマー、分解性3D印刷成形品、並びにこうしたポリマー及び成形品を製造する方法にも関する。本発明は、分解性3D印刷成形品を製造するための、チオノラクトン又はスルフィドの環状メタクリレートを含むモノマーの使用に更に関する。
【背景技術】
【0002】
積層造形及びより特殊には3D印刷は、材料の連続的な積層化を用いて、コンピューターで設計された3D造形物を直接作り出すことによって、伝統的な産業生産を革命的に変えてきた。この技術の急速な発展は、初めに、押し出しノズルを介した、溶融状の、又は半溶融状のポリマーの、コンピューター制御レイヤー・バイ・レイヤー(layer by layer)積層法によって3D造形物を製造することを可能にする熱溶解積層法(FDM)技術の容易さによって成された。しかし、3D印刷は、通常、液槽光重合と称される光硬化方法の発展と共に極めて一般的になった。これらの方法の中でも、デジタルライトプロセッシング(DLP)は、いくつかの魅力的な特徴、例えば、速い構築、低解像度(<100μmの造形)、広いインク粘度許容範囲、及び低コスト故に、特に注目されてきた。この方法は、多官能性のメタクリレート誘導体又はアクリレート誘導体で主に構成される液体樹脂の架橋によって、3D造形物を製作することを可能にする。アクリレートの光重合は、高収率で急速に起こり、副生成物をほぼ生じない。これにより、架橋材料がもたらされ、その機械的性質は、モノマー構造によって調整され得る。更に、こうした造形物は、高い熱的安定性及び高い化学的安定性を付与する、C-C結合の共有結合網目構造によって構成される。
【0003】
しかし、開発された液槽光重合方法は、これまでにいくつかの欠点を示す。第1に、高い安定性は、容易な分解性及びリサイクル性/アップサイクル性に適合しない。大量の3D印刷樹脂は、焼却され、埋立地に貯蔵されることになり、この非常に有望な製造方法を環境に優しくないもの、又は持続可能ではないものにする。第2に、この高い安定性はまた、印刷された材料が、その形成後に除去可能又は消去可能であり得る技術である、サブトラクティブ製造法に適合しない。こうした手法は、3D造形物のテンプレート又は犠牲部分を容易に取り除くものとして極めて興味深く、造形物が鋳造前にポジ印刷であり、最後に宝飾品類で、又はセラミックを製造するために分解される場合、広く使用される技術である。
【0004】
こうした欠点を克服するために、いくつかの解決法が提案されてきた。Barner-Kowollik及びcoll.は、チオール-エン化学、TAD-ポリエーテル連結反応、シラン系モノマー、o-ニトロベンジルエステルモノマー、及びキモトリプシン開裂性モノマーのいずれかをベースとする新規のモノマーを用いた樹脂の製造を記載する(Adv. Funct. Mater. 2018、1801405;Adv. Mater. 2020、32、e2003060;Nat. Commun. 2018、9、2788頁;Adv. Mater. 2019, 31、e1904085;Adv. Funct. Mater. 2020、2006998)。こうした樹脂の刺激及び/又は制御された分解が得られてきた。しかし、こうした戦略は、特に、樹脂を製造するために使用されるモノマーが、産業において従来使用されるアクリレートモノマー又はメタクリレートモノマーと比較して高価である故に、産業規模で適用可能ではない。
【0005】
Zhao及びcoll.(Adv. Funct. Mater. 2020、2007173)並びにBowman及びcoll.(Materials Horizons、2020、7、835頁)は、印刷される造形物へ再印刷性又はリサイクル性を付与する方法として直鎖状ポリマーの3D印刷を報告した。しかし、こうした材料は、特に、有機溶媒中のポリマー溶解度故に、より低い耐化学性を有する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Adv. Funct. Mater. 2018、1801405
【非特許文献2】Adv. Mater. 2020、32、e2003060
【非特許文献3】Nat. Commun. 2018、9、2788頁
【非特許文献4】Adv. Mater. 2019, 31、e1904085
【非特許文献5】Adv. Funct. Mater. 2020、2006998
【非特許文献6】Adv. Funct. Mater. 2020、2007173
【非特許文献7】Materials Horizons、2020、7、835頁
【非特許文献8】Smith等、J. Am. Chem. Soc. 2019、141(4)、1446頁
【非特許文献9】O. Soppera等、J Polym Sci Pol Chem 2003、41、716頁
【非特許文献10】Bingham等、Chem. Commun. 2019、55、55~58頁
【非特許文献11】Bailey等、J. Polym. Sci. Part A Polym. Chem. 1982、20、3021~3030頁
【非特許文献12】Chem. Soc. 2013、19、2606頁
【非特許文献13】J. Am. Chem. Soc. 2009、131、9805頁
【非特許文献14】O.B. Peersen、X. Wu、I. Kustanovich、S. O. Smith、J. Magn. Reson. 1993、104、334~339頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それ故に、3D印刷において使用されるために好適な機械的性質及び化学的性質を有し、容易に分解可能な、費用対効果の高い樹脂を提供する必要性が依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これに関して、発明者等は、多官能性のアクリレート及び/又はメタクリレートモノマー(M1)、チオカルボニル-オキシ、カルボニル-オキシ、カルボニル-チオ、ジスルフィド、シリルエーテル、又はアセタール等の開裂性の、又は予備開裂性の部分を含み、上記のアクリレート及び/又はメタクリレートモノマーの重合速度と同等であるか、又はそれよりもより速い重合速度を有する、ラジカル開環を受けることが可能な環状モノマー(M2)、並びに光開始剤を含む組成物の光重合によって製造され得る樹脂を開発した。発明者等は、上記モノマーM2の組み込みによって、標準的な分解条件を用いることにより、樹脂を有効に分解させ得ることを実証した。更に、ごく少量のモノマーM2のみが必要とされ、樹脂の化学的性質及び機械的性質が、こうしたモノマーM2を欠如した対応する樹脂の化学的性質及び機械的性質と同じであるようにする。更に、モノマーM2を、樹脂組成物に直接組み込むことができ、したがって、従来の樹脂及び市販の樹脂に分解性を付与することができ、故に新規の樹脂組成物を開発する必要性を回避する。本発明の樹脂は、3D印刷、特に液槽光重合に成功裏に適用され、3D印刷成形品の有効な分解が認められた。
【0009】
したがって、本発明は、光活性化樹脂組成物であって、
- アクリレート官能基及びメタクリレート官能基から独立に選択される、少なくとも2つの官能基を含む第1モノマー(M1)と、
- ラジカル開環を受けることが可能な環状モノマーである第2モノマー(M2)であり、チオカルボニル-オキシ、カルボニル-オキシ、カルボニル-チオ、ジスルフィド、シリルエーテル、及びアセタールからなる群から選択される部分を含み、M2の重合速度が、M1の重合速度と同等であるか、又はそれよりもより速い、第2モノマー(M2)と、
- 光開始剤と
を含む、光活性化樹脂組成物に関する。
【0010】
本発明はまた、本明細書で定義された光活性化樹脂組成物をベースとする分解性ポリマーにも関する。
【0011】
本発明はまた、本明細書で定義された光活性化樹脂組成物に照射する工程を含む、光重合方法に更に関する。
【0012】
本発明の別の目的は、分解性成形品を3D印刷する方法であって、3D成形品の形成を可能にする条件下で、本明細書で定義された光活性化樹脂組成物に照射する工程を含む、方法である。
【0013】
本発明の別の目的は、本明細書で定義された分解性ポリマーをベースとする分解性3D印刷成形品である。
【0014】
本発明のさらなる目的は、本明細書で定義された分解性3D印刷成形品を製造するための、本明細書で定義された、チオノラクトン又はスルフィドの環状メタクリレートを含むモノマーの使用である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】i)PETIA+0.2%BAPO+2%DOT(黒丸);ii)PETIA+0.5%BAPO+2%DOT(黒三角);iii)PETIA+0.5%BAPO(×)を含む樹脂組成物のUV暴露下でのFTIRによる光重合動態(1635cm-1のC=Cバンドの変換)を示す図である。
図2】a)本発明の樹脂(PETIA+0.2%BAPO+2%DOT)を用いてDLP印刷によって作製された成形品の画像;b)本発明の樹脂(PETIA+0.2%BAPO+2%DOT)を用いて3D印刷によって作製された成形品の画像である。
図3】比較の樹脂(DOTを含まない)のマイクロチップと比較された、本発明の樹脂(PETIA+0.2%BAPO+2%DOT)で製造されたマイクロチップの、MeOH/THF中KOH5%を用いた溶解実験を示す図である。
図4】様々な分解条件の下、本発明の樹脂(PETIA+0.2%BAPO+2%DOT)で製造された、6μmのマイクロチップ及び10μmのマイクロチップの分解時間を示すグラフである。
図5】MeOH/THF中KOH5%を用いた、本発明の樹脂(PETIA+0.2%BAPO+2%DOT)のDLP-UVセットアップ印刷によって形成された巨視的成形品の分解を示す図である。
図6】撹拌なしの、室温でのMeOH/THF中KOH5質量%溶液における、本発明の樹脂(PETIA+0.2%BAPO+2%DOT)の3D印刷及び比較の樹脂(DOTを含まない)の3D印刷によって形成された中空立方体の分解(上部)、並びに手製の堆肥における、こうした3D印刷中空立方体の生分解(下部)を示す図である。
図7】撹拌なしの、室温でのMeOH/THF中KOH5質量%溶液における、本発明の樹脂(PETIA+0.2%BAPO+2%DOT)の3D印刷及び比較の樹脂(DOTを含まない)の3D印刷によって形成されたエッフェル塔の分解を示す図である。
図8】撹拌なしの、室温でのMeOH/THF中KOH5質量%溶液における、本発明の樹脂(PETIA+0.2%BAPO+2%DOT)の3D印刷及び比較の樹脂(DOTを含まない)の3D印刷によって形成された、積み重ねたサイコロの分解を示す図である。
図9】樹脂PETIA+0.2%BAPOから作製された非分解性造形物が、本発明の樹脂(PETIA+0.2%BAPO+2%DOT)から作製された分解性造形物に埋め込まれる、成形品を製造する特定の方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示において用いられる、x及びyが整数である用語「Cx~Cy」は、対応する炭化水素鎖がx~y個の炭素原子を含むことを意味する。例えば、用語C1~C6が用いられる場合、対応する炭化水素鎖が、1~6個の炭素原子、とりわけ1個、2個、3個、4個、5個、又は6個の炭素原子を含み得ることを意味する。例えば、用語C2~C5が用いられる場合、対応する炭化水素鎖が、2~5個の炭素原子、とりわけ2個、3個、4個、又は5個の炭素原子を含み得ることを意味する。
【0017】
用語「アルキル」は、飽和の、直鎖状又は分枝鎖状の脂肪族基を指す。用語「C1~C6アルキル」は、1~6個の炭素原子を有するアルキルを指す。アルキル(又はC1~C6アルキル)の例には、それに限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、又はヘキシルが挙げられる。
【0018】
用語「アルケニル」は、少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を有する、不飽和の、直鎖状又は分枝鎖状の脂肪族基を指す。用語「C2~C6アルケニル」は、2~6個の炭素原子を有するアルケニルを指す。用語アルケニル(又はC2~C6アルケニル)は、例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、又はヘキセニルを含む。
【0019】
用語「アルキニル」は、少なくとも1個の炭素-炭素三重結合を有する、不飽和の、直鎖状又は分枝鎖状の脂肪族基を指す。用語「C2~C6アルキニル」は、2~6個の炭素原子を有するアルキニルを指す。用語アルキニル(又はC2~C6アルキニル)は、例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、又はヘキシニルを含む。
【0020】
用語<<ヘテロアルキル>>は、脂肪族炭素鎖が、その2個の末端の一方又は両方(特に、分子の残部に結合した末端)で少なくとも1個のヘテロ原子、例えばO、N、若しくはSを含む、及び/又は少なくとも1個のヘテロ原子、例えばO、N、若しくはSで割り込まれる、明細書で定義されたアルキルを指す。ヘテロアルキルの例は、特に、アルコキシ(alcoky)(-O-アルキル)、アルキルチオ(-S-アルキル)、及びアルキルアミノ(-NH(アルキル)又は-N(アルキル)2)である。<<C1~C6ヘテロアルキル>>は、1~6個の炭素原子及び少なくとも1個のヘテロ原子、例えば、O、N、又はSを有するヘテロアルキルを指す。ヘテロアルキル(又はC1~C6ヘテロアルキル)の例には、それに限定されないが、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブチルオキシ、イソブチルオキシ、tert-ブチルオキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、イソブチルチオ、tert-ブチルチオ、ペンチルチオ、ヘキシルチオ、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、ブチルアミノ、イソブチルアミノ、tert-ブチルアミノ、ペンチルアミノ、又はヘキシルアミノが挙げられる。
【0021】
用語「シクロアルキル」は、飽和又は不飽和の、単環式、二環式、又は三環式の脂肪族基を指す。それはまた、縮合、架橋、又はスピロで連結されたシクロアルキル基も含む。用語「C3~C12シクロアルキル」は、3~12個の炭素原子を有するシクロアルキルを指す。シクロアルキル(又はC3~C12シクロアルキル)の例には、それに限定されないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、又はシクロドデシルが挙げられる。用語「シクロアルキル」はまた、架橋カルボシクリル、例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプタニル、ビシクロ[2,2,2]オクタニル、又はアダマンチル、好ましくはビシクロ[2,2,1]ヘプタニルも指すことができる。
【0022】
用語「ヘテロシクロアルキル」は、少なくとも1個の炭素原子が、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子から選択されるヘテロ原子で置き換えられた、上記で定義された、飽和又は不飽和のシクロアルキル基に対応する。有利なことに、ヘテロシクロアルキルは、3~12個の間の環原子を含み、環原子のうちの少なくとも1個は、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子等のヘテロ原子である。二環式又は三環式の場合、環状体は、縮合されてもよく、架橋されてもよく、又はスピロ配置を有してもよい。用語ヘテロシクロアルキルは、例えば、アジリジニル、アゼパニル、ジアゼパニル、ジオキソラニル、ベンゾ[1,3]ジオキソリル、アゼチジニル、オキセタニル、ピラゾリニル、ピラニル、チオモルホリニル、ピラゾリジニル、ピペリジル、ピペラジニル、1,4-ジオキサニル、イミダゾリニル、ピロリニル、ピロリジニル、ピペリジニル、イミダゾリジニル、モルホリニル、1,4-ジチアニル、ピロリジニル、ピリミジニル、オキソゾリニル(oxozolinyl)、オキサゾリジニル、イソオキサゾリニル、イソオキサゾリジニル、チオオキセタニル、チオピラニル、チオモルホリニル、チアゾリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリニル、イソチアゾリジニル、ジヒドロピラニル、ジヒドロフラニル、ジヒドロチオピラニル、ジヒドロチオフェニル、ジヒドロピペリジニル、テトラヒドロピペリジニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、及びテトラヒドロチオフェニルを含む。
【0023】
「シクロアルキル」及び「ヘテロシクロアルキル」はまた、少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を有するシクロアルキル、並びに少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を有するヘテロシクロアルキルにそれぞれ対応する、シクロアルケニル及びヘテロシクロアルケニル、例えば、シクロヘキセニル及びジヒドロピラニルも含む。
【0024】
用語「アリール」は、6~12個の炭素原子を有する、単環式又は二環式の芳香族炭化水素を指す。例えば、用語「アリール」は、フェニル、ビフェニル、又はナフチルを含む。好ましい一実施形態において、アリールはフェニルである。
【0025】
本明細書において、用語「ヘテロアリール」は、5~14個の間の環原子を含む、芳香族の、単環式又は多環式の基に対応し、環原子のうちの少なくとも1個は、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子等のヘテロ原子である。本明細書において、用語「ヘテロアリール」は、「縮合アリールヘテロシクロアルキル」及び「縮合ヘテロアリールシクロアルキル」を更に含む。用語「縮合アリールヘテロシクロアルキル」及び「縮合ヘテロアリールシクロアルキル」は、上記で定義されたアリール又はヘテロアリールがそれぞれ、少なくとも2個の炭素によって、上記で定義されたヘテロシクロアルキル又はシクロアルキルに結合された二環式基に対応する。言い換えれば、アリール又はヘテロアリールは、ヘテロシクロアルキル又はシクロアルキルとの炭素結合を共有する。単環式及び多環式のヘテロアリール基、縮合アリールヘテロシクロアルキル、及び縮合アリールシクロアルキルの例は、ピリジニル、チオフェニル、フラニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサジアゾリル、フラザニル、チアジアゾリル、テトラゾリル、ベンゾフラニル、チアナフタレニル、インドリル、インドリニル、インダニル、キノリニル、イソキノリニル、ベンズイミダゾリル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、トリアジニル、チアントレニル、ベンゾフラニル、ジヒドロベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、イソベンゾチオフェニル、クロメニル、キサンテニル、フェノキサンチニル、ピラジニル、ピラダジニル、インドリジニル、イソインドリル、インダゾリル、プリニル、キノリジニル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、プテリジニル、カルバゾリル、β-カルボリニル、フェナントリジニル、アクリジニル、ピリミジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フラザニル、フェノキサジニル、イソクロマニル、クロマニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、インドリニル、イソインドリニル、オキサゾリジニル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、オキシインドリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサゾリニル、ベンゾオキサジニル、ベンゾチエニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾジアゼピニル、ベンザゼピニル、ベンゾオキサゼピニル、イサチニル、ジヒドロベンゾジオキセピニル、ジヒドロピリジル、ピリミジニル、s-トリアジニル、オキサゾリル、又はチオフラニルであってもよい。縮合アリールヘテロシクロアルキルは、例えば、インドリニル(ピロリジニルに縮合されたフェニル)及びジヒドロベンゾフラニル(ジヒドロフラニルに縮合されたフェニル)である。
【0026】
用語「炭素環」は、飽和又は不飽和の、脂肪族又は芳香族の、単環式又は多環式の炭化水素基を指す。用語「C3~C12炭素環」は、3~12個の炭素原子を有する炭素環を指す。特定の一実施形態において、C3~C12炭素環は、C3~C12シクロアルキル又はアリールである。
【0027】
用語「ペルフルオロアルキル」は、全ての水素原子が、フッ素原子で置き換えられた、上記で定義されたアルキルを指す。用語「C1~C6ペルフルオロアルキル」は、1~6個の炭素原子を有するペルフルオロアルキルを指す。ペルフルオロアルキル(又はC1~C6ペルフルオロアルキル)の一例には、それに限定されないが、トリフルオロメチルが挙げられる。
【0028】
用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素の原子、好ましくはフッ素、塩素、又は臭素、より好ましくは塩素又はフッ素に対応する。
【0029】
用語「エステル」は、Rが任意の炭化水素基である、-C(O)OR又はRC(O)O-の基を指す。特定の一実施形態において、Rは、C1~C6アルキル、C3~C12シクロアルキル、又はアリールである。
【0030】
用語「ケトン」は、R'が任意の炭化水素基である-C(O)R'基を指す。特定の一実施形態において、R'はC1~C6アルキル、C3~C12シクロアルキル、又はアリールである。
【0031】
用語「アミド」は、R''がそれぞれ、独立に、水素又は炭化水素基である、-C(O)N(R'')2基を指す。特定の一実施形態において、R''はそれぞれ、独立に、水素、C1~C6アルキル、C3~C12シクロアルキル、又はアリールである。
【0032】
用語「スルホニル」は、R'''が任意の炭化水素基である-S(O)2-R'''基を指す。特定の一実施形態において、R'''は、C1~C6アルキル、C3~C12シクロアルキル、又はアリールである。
【0033】
用語「アルキレン」は、二価の、飽和の、直鎖状又は分枝鎖状の脂肪族基を指す。1~11個の炭素原子を有するアルキレンの例には、それに限定されないが、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、ペンチレン、イソペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、又はウンデシレンが挙げられる。
【0034】
本明細書で定義された、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、炭素環、及びアルキレンの基は、任意選択で置換される。表現「任意選択で置換される」は、非置換、又は1つ若しくは複数(例えば、1つ、2つ、3つ、若しくは4つ、好ましくは1つ若しくは2つ、より好ましくは1つ)の置換基による置換を意味する。置換基の例には、それに限定されないが、C1~C6ペルフルオロアルキル(例えば、-CF3)、ニトロ(-NO2)、シアノ(-CN)、-SO3H、-OH、-SH、-NH2、-COOH、ハロゲン、C1~C6アルキル、C3~C12シクロアルキル、アリール、エステル、ケトンが挙げられる。
【0035】
本明細書において、表現「光活性化樹脂組成物」は、典型的には、光活性によって樹脂に変えられ得る、液体溶液又は懸濁液の形態の組成物を指す。光活性は、任意の光による活性、典型的には、100nm~1500nmの間に含まれる、1種又は複数の波長で構成される光による活性である。好ましくは、上記光は、紫外(UV)光、可視光、又は近赤外(IR)光、好ましくはUV光である。UV光は、典型的には、100nm~390nmの間に含まれる波長を有する。可視光は、典型的には、390nm~700nmの間に含まれる波長を有する。近IR光は、典型的には、700nm~1500nmの間に含まれる波長を有する。
【0036】
本発明の光活性化樹脂組成物は、
- アクリレート官能基及び/又はメタクリレート官能基から独立に選択される、少なくとも2つの官能基を含む第1モノマー(M1)と、
- ラジカル開環を受けることが可能な環状モノマーである第2モノマー(M2)であって、チオカルボニル-オキシ、カルボニル-オキシ、カルボニル-チオ、ジスルフィド、シリルエーテル、及びアセタールからなる群から選択される部分を含み、M2の重合速度が、M1の重合速度と同等であるか、又はそれよりもより速い、第2モノマー(M2)と、
- 光開始剤と
を含む。
【0037】
第1モノマーM1は、多官能性のアクリレート及び/若しくはメタクリレートのモノマー、又は様々な多官能性のアクリレートモノマー及び/若しくはメタクリレートモノマーの混合物である。第1モノマーM1は、アクリレート官能基及びメタクリレート官能基から独立に選択される、少なくとも2つ(例えば、2つ、3つ、4つ、又は5つ、好ましくは、2つ又は3つ、より好ましくは3つ)の官能基を含む。
【0038】
アクリレート官能基は、特に以下の通りに表され得る。
【0039】
【化1】
【0040】
(式中、
【0041】
【化2】
【0042】
は、それによって上記アクリレート官能基が第1モノマーの残部に取り付けられる結合を示す)
【0043】
メタクリレート官能基は、特に以下の通りに表され得る。
【0044】
【化3】
【0045】
(式中、
【0046】
【化4】
【0047】
は、それによって上記メタクリレート官能基が第1モノマーの残部に取り付けられる結合を示す)
【0048】
特定の一実施形態において、第1モノマーM1は、少なくとも2つ(例えば、2つ、3つ、4つ、又は5つ、好ましくは2つ又は3つ、より好ましくは3つ)の官能基を含み、上記官能基のそれぞれは、アクリレート官能基である。より詳細な一実施形態において、第1モノマーM1は、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETIA)、ペンタエリスリトールテトラ-アクリレート(PETEA)、プロポキシル化グリセリントリアクリレート(EB53)、グリセロールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA又はTTA)、ジ(トリメチロールプロパン)テトラ-アクリレート(DTMPTA)、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)、プロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ビスフェノールAエトキシレートジアクリレート(ビス-EDA)、及びその混合物から選択される。
【0049】
別の特定の実施形態において、第1モノマーM1は、少なくとも2つ(例えば、2つ、3つ、4つ、又は5つ、好ましくは2つ又は3つ、より好ましくは3つ)の官能基を含み、上記官能基のそれぞれは、メタクリレート官能基である。別のより詳細な実施形態において、第1モノマーM1は、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、ポリエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2-ビス-4-(メタクリルオキシエトキシ)フェニルプロパン、トリシクロデカン(tricylodecane)ジメタノールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、2-ヒドロキシ1,3-ジメタクリルオキシプロパン、トリメチロールプロパン(trimethyolpropane)トリメタクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジトリメチロールプロパン(ditrimethyolpropane)テトラメタクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリメタクリレート、ジウレタンジメタクリレート(UDMA)、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、プロポキシル化グリセリルトリメタクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリメタクリレート、ビスフェノールAグリシジルメタクリレート(ビス-GMA)、及びその混合物から選択される。
【0050】
好ましい一実施形態において、第1モノマーは、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETIA)、ペンタエリスリトールテトラ-アクリレート(PETEA)、プロポキシル化グリセリントリアクリレート(EB53)、グリセロールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA又はTTA)、ジ(トリメチロールプロパン)テトラ-アクリレート(DTMPTA)、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)、ジウレタンジメタクリレート(UDMA)、ビスフェノールAグリシジルメタクリレート(ビス-GMA)、ビスフェノールAエトキシレートジアクリレート(ビス-EDA)、及びその混合物から選択される。
【0051】
より好ましい一実施形態において、第1モノマーM1はPETIAである。
【0052】
第1モノマーM1の分子量は、特に限定されない。典型的には、その分子量は、50~800g/モルの間、例えば、500~800g/モルの間に含まれる。
【0053】
特定の一実施形態において、第1モノマーM1は、プレポリマー(又は等価的に「オリゴマー」)形態である。こうした実施形態において、プレポリマーの分子量は、例えば、100~100000g/モルの間に含まれ得る。
【0054】
本発明の組成物における第1モノマーM1の量は、有利なことに、組成物の全質量に対して、1~98.9質量%、好ましくは10~98.9質量%、より好ましくは40~98.9質量%、更により好ましくは60~98質量%である。
【0055】
第2モノマーM2は、チオカルボニル-オキシ(-C(S)O-又は等価的に-OC(S)-)、カルボニル-オキシ(すなわち、-C(O)O-又は等価的に-OC(O)-)、カルボニル-チオ(すなわち、-C(O)S-又は等価的に-SC(O)-)、ジスルフィド、シリルエーテル、及びアセタールからなる群から選択される部分を含み、M1の重合速度と同等であるか、又はそれよりもより速い重合速度を有する、ラジカル開環を受けることが可能な環状モノマーである。
【0056】
好ましくは、第2モノマーM2は、チオカルボニル-オキシ(-C(S)O-又は等価的に-OC(S)-)、カルボニル-オキシ(すなわち、-C(O)O-又は等価的に-OC(O)-)、カルボニル-チオ(すなわち、-C(O)S-又は等価的に-SC(O)-)、ジスルフィド、及びシリルエーテルからなる群から選択される部分を含み、M1の重合速度と同等であるか、又はそれよりもより速い重合速度を有する、ラジカル開環を受けることが可能な環状モノマーである。
【0057】
好ましくは、第2モノマーM2は、チオカルボニル-オキシ(-C(S)O-又は等価的に-OC(S)-)、カルボニル-オキシ(すなわち、-C(O)O-又は等価的に-OC(O)-)、カルボニル-チオ(すなわち、-C(O)S-又は等価的に-SC(O)-)からなる群から選択される部分を含み、M1の重合速度と同等であるか、又はそれよりもより速い重合速度を有する、ラジカル開環を受けることが可能な環状モノマーである。
【0058】
特定の一実施形態において、第2モノマーM2は、チオカルボニル-オキシ部分(-C(S)O-又は等価的に-OC(S)-)を含み、M1の重合速度と同等であるか、又はそれよりもより速い重合速度を有する、ラジカル開環を受けることが可能な環状モノマーである。
【0059】
好ましくは、第2モノマーM2は、カルボニル-オキシ(すなわち、-C(O)O-又は等価的に-OC(O)-)又はカルボニル-チオ(すなわち、-C(O)S-又は等価的に-SC(O)-)からなる群から選択される部分を含み、M1の重合速度と同等であるか、又はそれよりもより速い重合速度を有する、ラジカル開環を受けることが可能な環状モノマーである。
【0060】
本明細書において、「ラジカル開環を受けることが可能な」環状モノマーは、ラジカル種によって開鎖され得る環式化合物であって、上記ラジカル種が、例えば、光開始剤又は成長中のポリマー鎖から誘導される、環式化合物を指す。より詳細には、上記開鎖は、モノマーの部位に上記ラジカル種を付加し、引き続いて典型的には上記部位に隣接する環状鎖の結合の遮断によって起こり得る。
【0061】
本発明によれば、モノマーM2の重合速度は、モノマーM1(又はモノマーM1の混合物が組成物中に含まれる場合、各モノマーM1のそれぞれ)の重合速度と同等である(好ましくは、「等しい」)か、又はそれよりもより速い。
【0062】
表現「モノマーM1の重合速度と同様である」は、モノマーM1の重合速度±20%、好ましくはモノマーM1の重合速度±10%、より好ましくはモノマーM1の重合速度±5%を意味する。
【0063】
特定の一実施形態において、M2の重合速度のM1の重合速度に対する比は、0.8~1.2の間、好ましくは0.9~1.1の間に含まれる。モノマーの重合速度又は重合速度の比は、1H NMR又は赤外分光法によって(好ましくは1H NMR分光法によって)測定され得る。モノマーの重合速度又は重合速度比の測定は、特に、Smith等、J. Am. Chem. Soc. 2019、141(4)、1446頁又はO. Soppera等、J Polym Sci Pol Chem 2003、41、716頁に記載される。
【0064】
第2モノマーは、開裂性の、又は予備開裂性の部分を含む。上記部分は、チオカルボニル-オキシ(-C(S)O-又は等価的に-OC(S)-)、カルボニル-オキシ(すなわち、-C(O)O-又は等価的に-OC(O)-)、カルボニル-チオ(すなわち、-C(O)S-又は等価的に-SC(O)-)、ジスルフィド(-S-S-)、シリルエーテル、及びアセタールからなる群から選択される。
【0065】
本明細書において、「開裂性部分」は、化学反応又は生物学的反応によって、開裂可能な部分、好ましくは選択的に開裂可能な部分を示す。
【0066】
本明細書において、「予備開裂性部分」は、モノマーM2のラジカル開環後に開裂性部分に変換され得る部分を示す。例えば、第2モノマーM2は、上記モノマーのラジカル開環後に、開裂性カルボニル-チオに変換され得る予備開裂性部分であるチオカルボニル-オキシを含むことができる。
【0067】
開裂性の、又は予備開裂性の部分は、好ましくは第2モノマーの環状構造内に含有される。
【0068】
本明細書において、「シリルエーテル」は、以下の式の部分を指す。
【0069】
【化5】
【0070】
(式中、
【0071】
【化6】
【0072】
は、それによって官能基がモノマーの残部に取り付けられる結合を示す)。
シリルエーテルを含有するモノマーにおいて、Si-O原子は、典型的には、モノマーの残部を構成する炭化水素鎖に結合される。
【0073】
本明細書において、「アセタール」は以下の式の部分を指す。
【0074】
【化7】
【0075】
(式中、
【0076】
【化8】
【0077】
は、それによって官能基がモノマーの残部に取り付けられる結合を示す)。
アセタールを含有するモノマーにおいて、O-C-O原子は、典型的には、モノマーの残部を構成する炭化水素鎖に結合される。
【0078】
特定の一実施形態において、第2モノマーは、チオカルボニル-オキシを含む。こうした部分は、典型的には予備開裂性部分である。
【0079】
別の特定の実施形態において、第2モノマーは、カルボニル-オキシ又はカルボニル-チオを含む。こうした部分は、典型的には開裂性である。
【0080】
一実施形態において、上記第2モノマーM2は、チオノラクトン又はスルフィドの環状メタクリレートを含む。
【0081】
本明細書において、「チオノラクトン」は、環状チオノエステル基、すなわち、環状体内にチオカルボニル-オキシ-C(S)O-(又は等価的に-OC(S)-)基を有する環式基を指す。チオノラクトンは以下の通りに図式化され得る。
【0082】
【化9】
【0083】
(式中、円形の弧は炭化水素鎖を示す)
【0084】
特定の一実施形態において、第2モノマーは、以下の式(Ia)によって表される。
【0085】
【化10】
【0086】
(式中、
- mは0、1、2、又は3であり、
- nは0~(2m+5)であり、
- R1はそれぞれ、独立に、水素、ハロゲン、C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、C2~C6アルキニル、C1~C6ヘテロアルキル、C3~C12シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シアノ、ニトロ、-C(O)OH、-C(O)H、-OH、-SH、C1~C6ペルフルオロアルキル、エステル、ケトン、スルホニル、及びアミドからなる群から選択され、
- R2は、水素、ハロゲン、C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、C2~C6アルキニル、C1~C6ヘテロアルキル、C3~C12シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シアノ、ニトロ、-C(O)OH、-C(O)H、-OH、-SH、C1~C6ペルフルオロアルキル、エステル、ケトン、スルホニル、及びアミドからなる群から選択され、
又は2個の隣接するR1、若しくは隣接するR1及びR2は、それらが結合する炭素原子と一緒になってC3~C12炭素環(例えば、フェニル)を形成することができる)
【0087】
上記の式(Ia)において、nは、環状体を置換するR1の数を表す。R1の最大数、すなわち(2m+5)は、mで定義される環状体のサイズに依存する。例えば、
- m=0の場合、nは0~5であり、
- m=1の場合、nは0~7であり、
- m=2の場合、nは0~9であり、
- m=3の場合、nは0~11である。
【0088】
R1はそれぞれ、環状体の任意の炭素原子での置換基であってもよく、式(Ia)は、置換に関して全ての組み合わせを包含する。例えば、m=1及びn=2である一実施形態において、式(Ia)は、以下の式を包含する(限定的ではない)。
【0089】
【化11】
【0090】
(式中、R1及びR2はそれぞれ、上記で定義された通りである)。
R1は、互いに異なっていても、同一であってもよいと理解されるべきである。
【0091】
特定の一実施形態において、第2モノマーは、mが2である、式(Ia)の化合物である。
【0092】
別の特定の実施形態において、第2モノマーは、nが0、1、2、3、又は4である、式(Ia)の化合物である。好ましくは、nは0又は1である。
【0093】
nが0である一実施形態において、式(Ia)の化合物は、以下の通りに表すことができる。
【0094】
【化12】
【0095】
(式中、m及びR2は上記で定義された通りである)。
こうした実施形態において、mは好ましくは2である。
【0096】
nが0である一実施形態は、nが0とは異なり、全てのR1が水素である一実施形態と等価であると理解される。
【0097】
nが1である一実施形態において、第2モノマーは、式(Ia)の化合物、好ましくは以下の通りに表される式(Ia)の化合物である。
【0098】
【化13】
【0099】
(式中、m、R1、及びR2は、本明細書で定義された通りである)。
こうした実施形態において、mは好ましくは2である。
【0100】
特定の一実施形態において、R2は、C2~C6アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シアノ、ニトロ、-C(O)OH、-C(O)H、エステル、ケトン、スルホニル、及びアミドからなる群から選択される。好ましくは、R2はシアノ又はアリール(好ましいアリールはフェニルである)である。
【0101】
別の特定の実施形態において、R1はそれぞれ、独立に、水素又はC1~C6アルキルからなる群から選択され、
又は2個の隣接するR1は、それらが結合する炭素原子と一緒になってC3~C12炭素環(例えば、フェニル)を形成することができる。
【0102】
nが1である一実施形態において、R1は、好ましくは、水素又はC1~C6アルキルである。
【0103】
好ましい一実施形態において、第2モノマーは、以下の式のうちのいずれか1つによって表される。
【0104】
【化14】
【0105】
より好ましい一実施形態において、第2モノマーは、以下の式(DOT)によって表される。
【0106】
【化15】
【0107】
別の実施形態において、第2モノマーは、上記の式(Ia''-1)によって表される。
【0108】
別の実施形態において、第2モノマーは、上記の式(Ia''-2)によって表される。
【0109】
別の実施形態において、第2モノマーは、上記の式(Ia''-3)によって表される。
【0110】
本明細書において、「スルフィド環状メタクリレート」は、その環状体内に、以下の通り表される部分を有する環式基を指す。
【0111】
【化16】
【0112】
(式中、XはO又はSである)
【0113】
特定の一実施形態において、第2モノマーは、以下の式(Ib)で表される。
【0114】
【化17】
【0115】
(式中、
- XはO又はS(好ましくはO)であり、
- Lは、k個の炭素原子を有するアルキレン鎖を表し、任意選択で、-C(O)O-及び-S-S-から独立に選択される、1つ又は複数(好ましくは、1つ又は2つ)の基によって割り込まれ、
- kは1~11(好ましくは2~11、より好ましくは2~8)であり、
- pは0~(2k+2)であり、
- R3はそれぞれ、独立に、水素、ハロゲン、C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、C2~C6アルキニル、C1~C6ヘテロアルキル、C3~C12シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シアノ、ニトロ、-C(O)OH、-C(O)H、-OH、-SH、C1~C6ペルフルオロアルキル、エステル、ケトン、スルホニル、及びアミドからなる群から選択され、
又は2個の隣接するR3は、それらが結合する炭素原子と一緒になってC3~C12炭素環(例えば、フェニル)を形成することができる)
【0116】
上記の式(Ib)において、kは、選択可能な基-C(O)O-の炭素原子を除いた、アルキレン鎖の炭素原子数を表す。
【0117】
上記の式(Ib)において、pは、環状体を置換するR3の数を表す。R3の最大数、すなわち(2k+2)は、kで定義されるL鎖のサイズに依存する。例えば、
- k=1の場合、pは0~4であり、
- k=2の場合、pは0~6である。
【0118】
R3はそれぞれ、環状体の任意の炭素原子での置換基であってもよく、式(Ib)は、置換に関して全ての組み合わせを包含する。例えば、Lが1個の炭素原子を有するアルキレン(k=1)であり、p=2である一実施形態において、式(Ib)は以下の式を包含する。
【0119】
【化18】
【0120】
(式中、X及びR3は、上記で定義された通りである)。
R3は、互いに異なっていても、同一であってもよいと理解されるべきである。
【0121】
特定の一実施形態において、pは0、1、又は2である(好ましくは、pは0である)。pが0である一実施形態は、pが0とは異なり、全てのR3が水素である一実施形態と等価であると理解される。
【0122】
特定の一実施形態において、R3はそれぞれ、水素及びC1~C6アルキルから選択される。
【0123】
別の特定の実施形態において、Lは、kが1~11(好ましくは2~11、より好ましくは2~8)である、k個の炭素原子を有するアルキレン鎖を表す。
【0124】
別の特定の実施形態において、Lは、1個の-C(O)O-基によって割り込まれ、任意選択で1個の-S-S-基によって更に割り込まれる、kが1~11(好ましくは2~11、より好ましくは2~8)である、k個の炭素原子を有するアルキレン鎖を表す。
【0125】
好ましい一実施形態において、第2モノマーは、以下の式(SCM1)~式(SCM7)のいずれか1つで表される。
【0126】
【化19】
【0127】
本発明の組成物における、第2モノマーM2の第1モノマーM1に対する質量比は、5/1000~95/5、好ましくは1/100~20/100、より好ましくは1/100~5/100、更により好ましくは1/100~3/100、例えば、1.5/100~2.5/100であってもよい。
【0128】
特定の一実施形態において、本発明の組成物は、有利なことに、組成物の全質量に対して、40~98.9質量%の、好ましくは60~98質量%の量の第1モノマーM1を含み、第2モノマーM2の第1モノマーM1に対する質量比1/100~20/100、好ましくは1/100~5/100、より好ましくは1/100~3/100、例えば、1.5/100~2.5/100を有する。
【0129】
より詳細な一実施形態において、本発明の組成物は、有利なことに、組成物の全質量に対して、60~98質量%の量の第1モノマーM1を含み、第2モノマーM2の第1モノマーM1に対する質量比1/100~5/100、好ましくは1/100~3/100、より好ましくは1.5/100~2.5/100を有する。
【0130】
本発明の組成物はまた、光開始剤も含む。本明細書において、「光開始剤」は、光による活性で、典型的には100nm~1500nmの間に含まれる、1種又は複数の波長で構成される光による活性で、ラジカルを生じることが可能な有機化合物を指す。特定の一実施形態において、光開始剤は、紫外(UV)光、可視光、又は近赤外(IR)光、好ましくはUV光によって活性化される。
【0131】
本発明の組成物の光開始剤は、光重合において使用される公知の光開始剤の中から選択され得る。
【0132】
UV光開始剤
一実施形態によれば、光開始剤は、ベンゾインエーテル、置換アセトフェノン、ホスフィンオキシドの誘導体、アミノケトン、オキシスルホニルケトン、スルホニルケトン、メタロセン、及びアゾ型化合物からなる群から選択される。
【0133】
特定の一実施形態において、光開始剤は、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(BAPO、Irgacure819)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、4,4'-アゾビス(4-シアノペンタン酸)(acide 4,4'-azobis(4-cyanopentanoique))、1,1'-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、tert-ブチルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(Irgacure1173)、2-ヒドロキシ-4'-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン(Irgacure2959)、2-メチル-4'-(メチルチオ)-2-モルホリノプロピオフェノン(Irgacure907)、2,2'-アゾビス[2-メチル-n-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド](VA-086)、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(Irgacure651又はDMPA)、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシド(Darocure TPO又はLucirin TPO)、リチウム(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート(LAP)、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート(Lucirin TPO-L)、及びその混合物から選択される。
【0134】
可視光開始剤
別の実施形態によれば、光開始剤は、典型的には、水素引き抜き反応及び/又は電子移動によって共に機能する、第1化合物及び第2化合物の組み合わせからなる感光系である。こうした実施形態において、
- 上記第1化合物は、
・弱塩基性アミン、好ましくは第三級アミン、より好ましくはヒドロキシアルキルアミン、とりわけメチルジエタノールアミン、ベンジルアミン、アニリン誘導体、より詳細には、エチルパラジメチルアミノベンゾエート、N-フェニルグリシン、及び
・アスコルビン酸
からなる群から選択され、
- 上記第2化合物は、アクリジン、好ましくはアクリフラビン又はアクリジンオレンジ;フェナジン、好ましくは、サフラニンO;オキサジン;チアジン、好ましくは、ブルーメチレン又はチオニン;キサンテン、好ましくは、エオシンY、ローズベンガル、又はエリスロシン;ローダミン;チオキサンテン;ポリメチン;ケトクマリン、及びチオキサントン
からなる群から選択される。
【0135】
別の実施形態によれば、光開始剤は、典型的には、電子移動によって共に機能する、第1化合物及び第2化合物の組み合わせからなる感光系である。こうした実施形態において、
- 上記第1化合物は、ベンゾインエーテル、好ましくは2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン;又は置換アセトフェノン、例えば、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン若しくは2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オンからなる群から選択され、
- 上記第2化合物は、チオキサントン誘導体、好ましくは、イソプロピルチオキサントン又はクロロチオキサントン;及びコウラミン(couramine)又はその誘導体からなる群から選択される。
【0136】
IR(1光子)光開始剤
好ましくは、吸収が近赤外範囲において求められる場合、光開始剤は、有機染料、例えば、ポリメチン、特にシアニンである。シアニンは、好ましくは、対イオン、例えば、ヨウ化物イオン、過塩素酸イオンを含む、カルボシアニン、フタロシアニン、ナフタロシアニン、及びこれらの染料からの金属錯体、例えば、コバルト、アルミニウム、銅、鉄、鉛、マグネシウム、ニッケル、ケイ素、スズ、チタン、バナジウム、又は亜鉛の金属錯体である。
【0137】
特に、光開始剤は、インドトリカルボシアニン(HITC)であってもよい。光開始剤は、インドトリカルボシアニン及びメチルジエタノールアミンの組み合わせであってもよい。
【0138】
IR(2光子)光開始剤
特定の一実施形態において、光開始剤は、TPS法(多光子技術)に適合し、少なくとも0.1GMの、好ましくは1GMよりも高い、有利なことには100GMよりも高い、2光子吸収断面積(2-photon action cross section)を示す。好適な2光子吸収断面積は、良好な2光子吸収断面積及び/又は励起状態からのラジカル生成の良好な収率によって特徴づけられる。
【0139】
こうした実施形態において、光開始剤は、典型的には、200nm~1500nmの間、優先的には500nm~1000nm、有利なことには700nm~850nmに含まれる波長を有する2光子重合のための2光子吸収に好適な2光子吸収断面積を有する。
【0140】
好ましくは、光開始剤は、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(BAPO)である。
【0141】
本発明の組成物における光開始剤の第1モノマーM1に対する質量比は、1/1000~5/100、好ましくは1/1000~1/100、より好ましくは2/1000~5/1000であってもよい。
【0142】
特定の一実施形態において、本発明の組成物は、有利なことに、
- 組成物の全質量に対して、40~98.9質量%の、好ましくは60~98質量%の量の第1モノマーM1、
- 第2モノマーM2の第1モノマーM1に対する質量比1/100~20/100、好ましくは1/100~5/100、より好ましくは1/100~3/100、例えば、1.5/100~2.5/100、及び
- 光開始剤の第1モノマーM1に対する質量比1/1000~5/100、好ましくは1/1000~1/100、より好ましくは2/1000~5/1000
を含む。
【0143】
特定の一実施形態において、本発明の組成物は、
- ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETIA)、ペンタエリスリトールテトラ-アクリレート(PETEA)、プロポキシル化グリセリントリアクリレート(EB53)、グリセロールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA又はTTA)、ジ(トリメチロールプロパン)テトラ-アクリレート(DTMPTA)、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)、プロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ビスフェノールAエトキシレートジアクリレート(ビス-EDA)、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、ポリエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2-ビス-4-(メタクリルオキシエトキシ)フェニルプロパン、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、2-ヒドロキシ1,3-ジメタクリルオキシプロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリメタクリレート、ジウレタンジメタクリレート(UDMA)、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、プロポキシル化グリセリルトリメタクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリメタクリレート、ビスフェノールAグリシジルメタクリレート(ビス-GMA)、及びその混合物から選択される第1モノマーM1、好ましくはPETIA、
- 上記で定義された第2モノマーM2(好ましくは、式(Ia)又は式(Ib)の化合物、より好ましくはDOT)、並びに
- フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(BAPO、Irgacure819)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、4,4'-アゾビス(4-シアノペンタン酸)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、tert-ブチルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(Irgacure1173)、2-ヒドロキシ-4'-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン(Irgacure2959)、2-メチル-4'-(メチルチオ)-2-モルホリノプロピオフェノン(Irgacure907)、2,2'-アゾビス[2-メチル-n-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド](VA-086)、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(Irgacure651又はDMPA)、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシド(Darocure TPO又はLucirin TPO)、リチウム(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート(LAP)、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート(Lucirin TPO-L)、及びその混合物から選択される光開始剤、好ましくはBAPO
を含む。
【0144】
より詳細な一実施形態において、本発明の組成物は、
- ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETIA)、ペンタエリスリトールテトラ-アクリレート(PETEA)、プロポキシル化グリセリントリアクリレート(EB53)、グリセロールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA又はTTA)、ジ(トリメチロールプロパン)テトラ-アクリレート(DTMPTA)、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)、ジウレタンジメタクリレート(UDMA)、ビスフェノールAグリシジルメタクリレート(ビス-GMA)、ビスフェノールAエトキシレートジアクリレート(ビス-EDA)、及びその混合物から選択される第1モノマーM1、好ましくはPETIA、
- 上記で定義された第2モノマーM2(好ましくは、式(Ia)又は式(Ib)の化合物、より好ましくはDOT)、並びに
- フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(BAPO、Irgacure819)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、4,4'-アゾビス(4-シアノペンタン酸)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、tert-ブチルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(Irgacure1173)、2-ヒドロキシ-4'-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン(Irgacure2959)、2-メチル-4'-(メチルチオ)-2-モルホリノプロピオフェノン(Irgacure907)、2,2'-アゾビス[2-メチル-n-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド](VA-086)、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(Irgacure651又はDMPA)、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシド(Darocure TPO又はLucirin TPO)、リチウム(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート(LAP)、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート(Lucirin TPO-L)、及びその混合物から選択される光開始剤、好ましくはBAPO
を含む。
【0145】
特定の一実施形態において、本発明の組成物は、
- ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETIA)、ペンタエリスリトールテトラ-アクリレート(PETEA)、プロポキシル化グリセリントリアクリレート(EB53)、グリセロールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA又はTTA)、ジ(トリメチロールプロパン)テトラ-アクリレート(DTMPTA)、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)、プロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ビスフェノールAエトキシレートジアクリレート(ビス-EDA)、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、ポリエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2-ビス-4-(メタクリルオキシエトキシ)フェニルプロパン、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、2-ヒドロキシ1,3-ジメタクリルオキシプロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリメタクリレート、ジウレタンジメタクリレート(UDMA)、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、プロポキシル化グリセリルトリメタクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリメタクリレート、ビスフェノールAグリシジルメタクリレート(ビス-GMA)、及びその混合物から選択される第1モノマーM1、好ましくはPETIA、
- 好ましくは、上記の式(Ia''-1)、式(Ia''-2)、式(Ia''-3)、又は式(DOT)の化合物からなる群から選択される、式(Ia)の化合物である第2モノマーM2、並びに
- フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(BAPO、Irgacure819)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、4,4'-アゾビス(4-シアノペンタン酸)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、tert-ブチルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(Irgacure1173)、2-ヒドロキシ-4'-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン(Irgacure2959)、2-メチル-4'-(メチルチオ)-2-モルホリノプロピオフェノン(Irgacure907)、2,2'-アゾビス[2-メチル-n-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド](VA-086)、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(Irgacure651又はDMPA)、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシド(Darocure TPO又はLucirin TPO)、リチウム(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート(LAP)、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート(Lucirin TPO-L)、及びその混合物から選択される光開始剤、好ましくはBAPO
を含む。
【0146】
より詳細な一実施形態において、本発明の組成物は、
- ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETIA)、ペンタエリスリトールテトラ-アクリレート(PETEA)、プロポキシル化グリセリントリアクリレート(EB53)、グリセロールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA又はTTA)、ジ(トリメチロールプロパン)テトラ-アクリレート(DTMPTA)、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)、ジウレタンジメタクリレート(UDMA)、ビスフェノールAグリシジルメタクリレート(ビス-GMA)、ビスフェノールAエトキシレートジアクリレート(ビス-EDA)、及びその混合物から選択される第1モノマー、好ましくはPETIA、
- 好ましくは、上記の式(Ia''-1)、式(Ia''-2)、式(Ia''-3)、又は式(DOT)の化合物からなる群から選択される、式(Ia)の化合物である第2モノマーM2、並びに
- フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(BAPO、Irgacure819)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、4,4'-アゾビス(4-シアノペンタン酸)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、tert-ブチルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(Irgacure1173)、2-ヒドロキシ-4'-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン(Irgacure2959)、2-メチル-4'-(メチルチオ)-2-モルホリノプロピオフェノン(Irgacure907)、2,2'-アゾビス[2-メチル-n-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド](VA-086)、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(Irgacure651又はDMPA)、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシド(Darocure TPO又はLucirin TPO)、リチウム(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート(LAP)、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート(Lucirin TPO-L)、及びその混合物から選択される光開始剤、好ましくはBAPO
を含む。
【0147】
特定の一実施形態において、本発明の組成物は、
- ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETIA)、ペンタエリスリトールテトラ-アクリレート(PETEA)、プロポキシル化グリセリントリアクリレート(EB53)、グリセロールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA又はTTA)、ジ(トリメチロールプロパン)テトラ-アクリレート(DTMPTA)、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)、プロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ビスフェノールAエトキシレートジアクリレート(ビス-EDA)、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、ポリエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2-ビス-4-(メタクリルオキシエトキシ)フェニルプロパン、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、2-ヒドロキシ1,3-ジメタクリルオキシプロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリメタクリレート、ジウレタンジメタクリレート(UDMA)、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、プロポキシル化グリセリルトリメタクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリメタクリレート、ビスフェノールAグリシジルメタクリレート(ビス-GMA)、及びその混合物から選択される第1モノマーM1、好ましくはPETIA、
- 好ましくは、上記の式(SCM1)、式(SCM2)、式(SCM3)、式(SCM4)、式(SCM5)、式(SCM6)、又は式(SCM7)の化合物からなる群から選択される、より好ましくは式(SCM1)又は式(SCM2)の化合物から選択される、式(Ib)の化合物である第2モノマーM2、並びに
- フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(BAPO、Irgacure819)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、4,4'-アゾビス(4-シアノペンタン酸)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、tert-ブチルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(Irgacure1173)、2-ヒドロキシ-4'-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン(Irgacure2959)、2-メチル-4'-(メチルチオ)-2-モルホリノプロピオフェノン(Irgacure907)、2,2'-アゾビス[2-メチル-n-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド](VA-086)、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(Irgacure651又はDMPA)、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシド(Darocure TPO又はLucirin TPO)、リチウム(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート(LAP)、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート(Lucirin TPO-L)、及びその混合物から選択される光開始剤、好ましくはBAPO
を含む。
【0148】
より詳細な一実施形態において、本発明の組成物は、
- ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETIA)、ペンタエリスリトールテトラ-アクリレート(PETEA)、プロポキシル化グリセリントリアクリレート(EB53)、グリセロールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA又はTTA)、ジ(トリメチロールプロパン)テトラ-アクリレート(DTMPTA)、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)、ジウレタンジメタクリレート(UDMA)、ビスフェノールAグリシジルメタクリレート(ビス-GMA)、ビスフェノールAエトキシレートジアクリレート(ビス-EDA)、及びその混合物から選択される第1モノマーM1、好ましくはPETIA、
- 好ましくは、上記の式(SCM1)、式(SCM2)、式(SCM3)、式(SCM4)、式(SCM5)、式(SCM6)、又は式(SCM7)の化合物からなる群から選択される、より好ましくは式(SCM1)又は式(SCM2)の化合物から選択される、式(Ib)の化合物である第2モノマーM2、並びに
- フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(BAPO、Irgacure819)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、4,4'-アゾビス(4-シアノペンタン酸)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、tert-ブチルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(Irgacure1173)、2-ヒドロキシ-4'-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン(Irgacure2959)、2-メチル-4'-(メチルチオ)-2-モルホリノプロピオフェノン(Irgacure907)、2,2'-アゾビス[2-メチル-n-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド](VA-086)、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(Irgacure651又はDMPA)、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシド(Darocure TPO又はLucirin TPO)、リチウム(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート(LAP)、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート(Lucirin TPO-L)、及びその混合物から選択される光開始剤、好ましくはBAPO
を含む。
【0149】
好ましい一実施形態において、本発明の組成物は、
- PETIAである第1モノマーM1、
- 式(Ia)又は式(Ib)の化合物である第2モノマーM2、好ましくはDOT、及び
- BAPOである光開始剤
を含む。
【0150】
別の好ましい実施形態において、本発明の組成物は、
- PETIAである第1モノマーM1、
- 好ましくは、上記の式(Ia''-1)、式(Ia''-2)、式(Ia''-3)、又は式(DOT)の化合物からなる群から選択される式(Ia)の化合物、より好ましくはDOTである、第2モノマーM2
並びに
- BAPOである光開始剤
を含む。
【0151】
別の好ましい実施形態において、本発明の組成物は、
- PETIAである第1モノマーM1、
- 好ましくは、上記の式(SCM1)、式(SCM2)、式(SCM3)、式(SCM4)、式(SCM5)、式(SCM6)、又は式(SCM7)の化合物からなる群から選択される、より好ましくは式(SCM1)又は式(SCM2)の化合物から選択される、式(Ib)の化合物である第2モノマーM2、並びに
- BAPOである光開始剤
を含む。
【0152】
本発明の光活性化樹脂組成物は、任意の好適な溶媒、例えば、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール)、エーテル、ケトン(例えば、直鎖状又は環状のケトン、例えば、アセトン又はシクロヘキサノン)、アルカン(例えば、直鎖状又は環状のアルカン、例えば、ヘキサン又はシクロヘキサン)、及び芳香族炭化水素(例えば、トルエン)の中から選択される溶媒を更に含むことができる。好ましくは、本発明の組成物は溶媒を含まない。
【0153】
本発明の組成物は、任意の好適な添加剤、特に、3D印刷樹脂組成物において通常含まれる添加剤を更に含むことができる。例えば、本発明の組成物は、光吸収剤、光安定剤、光遮蔽剤、阻害剤、有機充填剤若しくは無機充填剤(例えば、有機若しくは無機のナノ粒子、例えば、TiO2、SiO2、金属ナノ粒子等)、界面活性剤、顔料、又は着色料(例えば、フォトクロム及び光異性化化合物)から選択される、1種又は複数の添加剤を更に含むことができる。
【0154】
本発明の組成物は、それに含まれる成分を任意の順で混合することによって調製され得る。混合する工程は、典型的には、室温で、好ましくは1時間~10日の間に含まれる期間、例えば、1日~5日の間で実行され得る。本明細書において、表現「室温」は、5℃~40℃の間、好ましくは15℃~30℃の間の温度を指す。好ましくは、混合する工程は、無光状態で実行される。本発明の組成物は、有利なことに液体又は準液体である。
【0155】
モノマーM1がプレポリマー形態である一実施形態において、本発明の組成物の調製は、他の成分(すなわち、モノマーM2、光開始剤、及び任意選択の添加剤)を添加する工程の前に、モノマーM1のプレポリマーを形成する事前工程を含むことができる。
【0156】
分解性ポリマー(又は等価的に、分解性樹脂)は、本発明の光活性化樹脂組成物に照射することによって生成され得る。したがって、本発明の別の目的は、本明細書で定義された光活性化樹脂組成物に照射する工程を含む、光重合方法である。前述されたように、照射する工程は、光源(又は等価的に「光放射」)、例えばレーザー(例えば、連続波レーザー若しくはパルスレーザー)、レーザーダイオード、ランプ、DLPプロジェクター、LCD(液晶ディスプレイ)プロジェクター、又はLED(発光ダイオード)によって実行される。光(放射)は、100nm~1500nmの間に含まれる1種又は複数の波長で構成され得る。好ましくは、上記光は、紫外(UV)光、可視光、又は近赤外(IR)光である。
【0157】
好ましい一実施形態において、光源はUV光源である。UV光源の例には、それに限定されないが、UVレーザー、UVレーザーダイオード、UVランプ(例えば、水銀ランプ若しくはキノセンランプ)、DLPプロジェクター、LCDプロジェクター、又はLEDが挙げられる。
【0158】
光は、連続光又はパルス光であってもよい。パルス光のパルスの時間長は、マイクロ秒、ナノ秒、又はフェムト秒の程度であってもよい。
【0159】
一般に、本発明の光重合方法の条件、より詳細には、照射する工程の条件は、公知のアクリレート樹脂組成物又はメタクリレート樹脂組成物の、公知の光重合方法において使用される条件と同様のものであってもよい。例えば、光重合方法は、単一光子光重合方法又は多光子(特に2光子)光重合方法の条件の下、実行され得る。更に、本発明の光重合方法、より詳細には、照射する工程を実行するための装置は、公知のアクリレート樹脂組成物又はメタクリレート樹脂組成物の、公知の光重合方法において使用される装置と同様のものであってもよい。例えば、光学系、反照検流計、マスク、レンズ、及び/又は回折格子を備えた設備を使用して、前述された光源を本発明の樹脂組成物に適用することができる。
【0160】
本発明の光重合方法は、分解性であるポリマー(又は等価的に、樹脂)を生成する。本発明の別の目的は、本発明の光重合方法によって得られる分解性ポリマーである。
【0161】
本発明の別の目的は、本明細書で定義された光活性化樹脂組成物をベースとする分解性ポリマーである。
【0162】
本明細書において、「光活性化樹脂組成物をベースとするポリマー」は、光重合に包含される、上記組成物の各成分の反応生成物を含む(好ましくは、それで構成される)ポリマーを指す。光重合に包含される上記成分は、互いに反応して、光重合中にポリマー鎖及び/又はポリマー網目構造を形成する化合物である。本発明の組成物において、こうした成分は、典型的には、上記の第1モノマー及び第2モノマー、並びに上記光開始剤を含む。上記ポリマーは、光重合に包含されない成分、例えば、添加剤、残留モノマー、残留光開始剤、又は任意の副生成物との混合物であってもよい。本発明のポリマーは、組成物の全質量に対して、40~98.9質量%の、好ましくは60~98質量%の量の第1モノマー、第2モノマーM2の第1モノマーM1に対する質量比1/100~20/100、好ましくは1/100~5/100、より好ましくは1/100~3/100、例えば、1.5/100~2.5/100、及び光開始剤の第1モノマーM1に対する質量比1/1000~5/100、好ましくは1/1000~1/100、より好ましくは2/1000~5/1000を含む、本発明の組成物をベースとしてもよい。
【0163】
本発明の光活性化組成物をベースとするポリマー、又は本発明の光重合方法によって得られたポリマーは、分解性であり、生分解性であり得る。分解を得るために、穏やかな条件を上記ポリマーに適用することができる。例えば、上記ポリマーは、塩基性溶液を用いることによって分解され得る。塩基性溶液は、溶媒(例えば、水、アルコール、例えば、メタノール若しくはエタノール、アセトニトリル、アセトン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、トルエン、ジメチルスルホキシド、又はその混合物)の溶液又は懸濁液において、1種又は複数の塩基(例えば、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム等の水酸化物)を含むことができ、例えば、メタノール、水、テトラヒドロフラン、又はその混合物においてKOHを含むことができる。或いは、上記ポリマーは堆肥にされ得る。分解は、室温で実行されてもよく、又は有利なことに、30℃~150℃の間に含まれる温度で加熱することによって促進され得る。分解される試料の条件及びサイズに応じて、上記ポリマーの分解は、数秒間、数分間、数時間、又は数日間にわたって起こり得る。例えば、マイクロメートルの試料の分解は、数秒間にわたって起こることがあり、数cm3の造形物の分解は、数分間又は数時間にわたって起こることがある。
【0164】
本発明の別の目的は、分解性3D印刷成形品を3次元(3D)印刷する方法である。こうした3D印刷方法は、3D印刷成形品の形成を可能にする条件の下、本明細書で定義された光活性化樹脂組成物に照射する工程を含む。
【0165】
本明細書において、用語「3D印刷」は、液体又は準液体の樹脂組成物を硬化させることによって、任意のサイズの任意の3D成形品を製作することを指す。薄い厚さ(例えば、微小サイズ(すなわち、ミクロン範囲のサイズ、典型的には1μm~100μm)又はミリサイズの厚さ(すなわち、ミリメートル範囲のサイズ、典型的には1mm~100mm))及び一定の厚さを有する、成形品の3D印刷は、本明細書において「2.5D印刷」とも称され得る。微小サイズ(すなわち、ミクロン範囲のサイズ、典型的には1μm~100μm)を有する成形品の3D印刷は、本明細書において「3D-微細加工」とも称され得る。
【0166】
本発明の3D印刷方法の照射する工程は、光源(又は等価的に「光放射」)、例えばレーザー(例えば、連続波レーザー若しくはパルスレーザー)、レーザーダイオード、ランプ、DLPプロジェクター、LCDプロジェクター、又はLEDによって実行される。光(放射)は、100nm~1500nmの間に含まれる1種又は複数の波長で構成され得る。好ましくは、上記光は、紫外(UV)光、可視光、又は近赤外(IR)光である。
【0167】
好ましい一実施形態において、光源はUV光源である。UV光源の例には、それに限定されないが、UVレーザー、UVレーザーダイオード、UVランプ(例えば、水銀ランプ若しくはキノセンランプ)、DLPプロジェクター、LCDプロジェクター、又はLEDが挙げられる。
【0168】
光源は、連続光又はパルス光であってもよい。パルス光のパルスの時間長は、ミクロ秒、ナノ秒、又はフェムト秒の程度であってもよい。
【0169】
3D印刷方法の条件は、公知のアクリレート樹脂組成物又はメタクリレート樹脂組成物を用いた、公知の3D印刷方法で使用される条件と同様のものであってもよい。更に、3Dプリンター、より一般的には、本発明の3D印刷方法、より詳細には、照射する工程を実施するための装置は、公知のアクリレート樹脂組成物又はメタクリレート樹脂組成物を用いた、公知の3D印刷方法で使用される装置と同様のものであってもよい。例えば、光学系、反照検流計、マスク、レンズ、及び/又は回折格子を備えた設備を使用して、前述された光源を本発明の樹脂組成物に適用することができる。更に、3D印刷は、特に、印刷される成形品の3D構造を規定するコンピューター利用によって実施され得る。
【0170】
特定の一実施形態において、本発明の3D印刷方法は、バット内で実行される。
【0171】
より詳細な一実施形態において、3D印刷方法は、バット、上記で定義された光源、昇降機、及びビルドプラットフォームを備える3Dプリンターによって実施される。
【0172】
一部の実施形態において、3D印刷方法は、レイヤー・バイ・レイヤーで実行される。こうした実施形態において、3D印刷方法は、好ましくは
(i)本明細書で定義された光活性化樹脂組成物の層を用意する工程と、
(ii)硬化光活性化樹脂層を得るように工程(i)の層に照射する工程と
を含み、
3D印刷される成形品を形成する硬化層の積層を得るように、工程(i)及び工程(ii)が周期的に繰り返される。
【0173】
より詳細には、3D印刷方法は、ステレオリソグラフィー(又は「SLA」)、例えば、2光子又は多光子のステレオリソグラフィーによって実行され得る。ステレオリソグラフィーによる3D印刷方法において、照射する工程は、典型的には、レーザー、より詳細には、UVレーザーを用いて実行される。
【0174】
或いは、3D印刷は、デジタルライトプロセッシング(又は「DLP」)によって実行され得る。こうした実施形態において、照射する工程は、典型的には、DLPプロジェクターを使用して実行される。
【0175】
或いは、3D印刷は、デイライトポリマー印刷(又は「DPP」)によって実行され得る。こうした実施形態において、照射する工程は、典型的には、LCDプロジェクターを使用して実行される。
【0176】
一部の他の実施形態において、3D印刷方法は、連続的に実行される(すなわち、レイヤー・バイ・レイヤーではない)。より詳細には、3D印刷方法は、連続液界面製造(又は「CLIP」)によって実行され得る。こうした実施形態において、照射する工程は、典型的にはUV光を使用して実行される。
【0177】
本発明の別の目的は、本発明の分解性ポリマーをベースとする(又はそれを含む、又はそれで構成される)分解性3D印刷成形品である。本発明の別の目的は、本発明の3D印刷方法によって得られる分解性3D印刷成形品である。
【0178】
上記3D印刷成形品は、分解性であり、生分解性であり得る。分解を得るために、穏やかな条件を上記成形品に適用することができる。分解条件の例は、本発明の分解性ポリマーについて上記で記載されたものである。
【0179】
本発明はまた、本明細書で定義された分解性3D印刷成形品を製造するための、本明細書で定義された、チオノラクトン又はスルフィドの環状メタクリレートを含むモノマー(例えば、式(Ia)又は式(Ib)の化合物)の使用にも関する。
【0180】
本発明はまた、3D印刷に好適な光活性化樹脂組成物を製造するための、本明細書で定義された、チオノラクトン又はスルフィドの環状メタクリレートを含むモノマー(例えば、式(Ia)又は式(Ib)の化合物)の使用にも関する。
【0181】
本発明はまた、分解性成形品を3D印刷するのに好適な光活性化樹脂組成物を製造するための、本明細書で定義された、チオノラクトン又はスルフィドの環状メタクリレートを含むモノマー(例えば、式(Ia)又は式(Ib)の化合物)の使用にも関する。
【0182】
本発明の別の目的は、以下の式(Ia''-1)又は式(Ia''-2)又は式(Ia''-3)の化合物である。
【0183】
【化20】
【0184】
本発明はまた、以下の実施例に更に詳細に記載され、それは、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例
【0185】
材料及び方法
全ての試薬はそのまま使用された。ペンタエリスリトールトリアクリレート、イソプロピルアミン、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(BAPO)、アンモニア(MeOH中4%、2.0モル/L)及び1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBD)及びSPLINT樹脂は市販のものであった。ジベンゾ[c,e]-オキセパン-5-チオン(DOT)は、文献の手順(Bingham等、Chem. Commun.2019、55、55~58頁)に従って合成された。2-メチレン-1,3-ジオキセパン(MDO)は、文献の手順(Bailey等、J. Polym. Sci. Part A Polym. Chem. 1982、20、3021~3030頁)に従って合成された。
【0186】
ポリプロピレン鋳型のFDMは、Ultimaker社製のUltimaker2+で実施された。Curaソフトウェアを用いてGコード印刷ファイルを生じた。ポリプロピレンフィラメントは、Ultimaker社から購入された。ノズル温度は230℃に設定され、ベッド温度は100℃に設定された。全ての層は、ファン冷却なしで、100%スピードで印刷された。ベッドは、印刷前に100℃で30分間加熱された。ポリプロピレン鋳型(PP鋳型)における予備光重合は、全ての試料について、浜松ホトニクス株式会社の、365nmのLC-L5ランプを用いて30秒間行われた。
【0187】
1H NMRスペクトルは、Bruker AC400(400MHz)分光計又はBruker AC300(300MHz)分光計で、298K(20℃)で測定された。データは、以下のように報告された:内部溶媒シグナル(CDCl3の場合7.26ppmのピーク)を参照した化学シフト(ppm)、多重度(s=一重線、d=二重線、t=三重線、q=四重線、quint=五重線、dd=複合二重線、m=多重線、bs=幅広線、app=見かけ)及び結合定数(Hz)。13C{1H}NMRスペクトルは、完全なプロトンデカップリングを用いたBruker AC400(100MHz)分光計又はBruker AC300(75MHz)分光計で測定された。化学シフトは、内部溶媒シグナル(CDCl3の場合77.16ppmのピーク及びCD2Cl2の場合53.84のピーク)からのppmで報告された。実験は、4mmの外径の二酸化ジルコニウムローターを含む市販のBrukerダブルベアリングプローブ(double-bearing probe)で実施された。交差分極(CP)MAS実験について、典型的なパラメーターは、接触時間5ミリ秒、繰り返し時間(recycle delay)5秒、8192スキャン、及びスピン速度10kHzであった。勾配1Hパルスを用いて、Hartman-Hahnミスマッチを避けた(O.B. Peersen、X. Wu、I. Kustanovich、S. O. Smith、J. Magn. Reson. 1993、104、334~339頁)。分解能を改善するために、双極子デカップリングTPPM-15パルスシーケンスが取得時間中に適用された。実験は室温で実施された。化学シフトは、その共鳴が0ppmに設定されたテトラメチルシランを参照された。
【0188】
生成物は、シリカゲル60でのフラッシュカラムクロマトグラフィー(Macherey-Nagel(登録商標)Si60、0.040~0.063mm)によって精製された。
【0189】
375nmで発光するUVレーザーダイオードは、開口数0.4の対物レンズを用いて、単一モード光ファイバー(Corining社製のSMF-28e、コアφ:8μm)中に導入される。3D印刷は、2980×1080ピクセル画像(λirr=365nm、放射照度=10mW.cm-2)を投影することを可能にするDLPプロジェクター(Invision社製のIkarusFull-HD DLP6500光エンジンモジュール)を用いて実施された。
【0190】
PP鋳型は、Ultimaker社製のUltimaker2+で印刷された。Curaソフトウェア(spftware)を用いてGコード印刷ファイルを生じた。ポリプロピレンフィラメントは、Ultimaker社から購入された。ノズル温度は230℃に設定され、ベッド温度は100℃に設定された。全ての層は、ファン冷却なしで、100%スピードで印刷された。ベッドは、印刷前に100℃で30分間加熱された。
【0191】
化合物(Ia''-2=POT)の合成
【0192】
【化21】
【0193】
- 2の合成
【0194】
【化22】
【0195】
2は、Chem. Soc. 2013、19、2606頁に記載の手順に従って合成された。
【0196】
1の溶液(DCM中0.2M、3.0g、17.2mmol、1.0当量)に、0℃のmCPBA(7.1g、41.3mmol、2.4当量)を添加した。室温で12時間撹拌した後、反応混合物を10%K2CO3溶液及びNa2S2O3の飽和水溶液で急冷した。水性層は、分離され、ジクロロメタンで抽出された。合わせた有機層をMgSO4で乾燥させ、ろ過し、真空下で濃縮した。得られた生成物は、溶離液として、ペンタン中10~30%EtOAcを使用した、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製されて、白色固体として2(3.1g、93%)をもたらした。
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 7.36 - 7.20 (m, 5H), 5.22 (d, J = 9.3 Hz, 1H), 2.69 (m, 2H), 2.11 - 1.88 (m, 4H), 1.76 - 1.57 (m, 2H).
【0197】
- (Ia''-2)の合成
【0198】
【化23】
【0199】
2(0.5g、9.64mmol、1.0当量)及びローソン試薬(0.88g、2.18mmol、0.6当量)の混合物を不活性雰囲気下で無水トルエン中に溶解させた。懸濁液を6時間還流させた。室温に冷却した後、溶液を半分濃縮し、シリカゲルの栓でろ過した。ろ液を真空下で濃縮した。粗生成物は、溶離液として、ペンタン中20%EtOAcを使用した、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製されて、暗色の油として化合物(Ia''-2)(2.3g、53%)をもたらした。
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 7.53 - 7.31 (m, 5H), 5.66 - 5.49 (d, J = 9.3 Hz, 1H), 3.61 (m, 1H), 3.08 (m, 1H), 2.17 - 2.05 (m, 4H), 1.94 - 1.67 (m, 2H).
【0200】
6-メチレン-1,4-オキサチエパン-7-オン合成物(=M4=化合物SCM1)の合成
J. Am. Chem. Soc. 2009、131、9805頁より適用された。
【0201】
【化24】
【0202】
- 4の合成
【0203】
【化25】
【0204】
4は、以下の手順に従って合成された:トリエチルアミン(5.18mL、37.3mmol、2.0当量)をジクロロメタン(100mL)中R-ブロモメチルアクリル酸(3)(3.07g、18.6mmol、1.0当量)の冷却された(0℃)溶液に滴下添加した。次いで、6-メルカプト-1-ヘキサノール(2.50g、18.6mmol、1.0当量)を15分間かけて添加し、反応混合物を20時間撹拌した。硫酸アンモニウム(9.0g、78.8mmol、4.2当量)及び硫酸(5mL、2M、10mmol)の水(100mL)中溶液を0℃に冷却し、反応混合物をそれに注ぎ込んだ。この混合物をジエチルエーテル(3×60mL)で抽出した。合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空下で濃縮して、白色固体として4(3.72g、92%)を生じた。
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 6.80 - 6.67 (m, 1H), 6.23 (s, 1H), 4.71 (d, J = 6.0 Hz, 2H), 4.35 (s, 2H), 3.63 (t, J = 6.0 Hz, 2H).
【0205】
- M4(=化合物SCM1)の合成
【0206】
【化26】
【0207】
M4は以下の手順に従って合成された:4(1.5g、6.87mmol、1.0当量)をジクロロメタン(60mL)及びトリエチルアミン(7.6mL、55.0mmol、8.0当量)の混合物中に溶解させ、注射器ポンプによって8時間かけて、ジクロロメタン(650mL)中の2-クロロ-1-メチルピリジニウムクロリド(7.0g、27.5mmol、4.0当量)の還流溶液に添加した。反応混合物を室温に冷却し、ろ過した。溶媒を真空下で蒸発させ、粗生成物を水(100mL)中に溶解させ、ジエチルエーテル(3×30mL)で抽出した。合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を蒸発させ、橙色の液体をもたらした。粗生成物は、溶離液としてジクロロメタンを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製され、淡黄色固体(410mg、30%)としてM4を生じた。
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 5.84 (s, 1H), 5.59 (t, J = 1.3 Hz, 1H), 4.55 - 4.44 (m, 2H), 3.36 (d, J = 1.2 Hz, 2H), 2.99 - 2.90 (m, 2H).
【0208】
(実施例1)
本発明の樹脂組成物の調製
「DOT-PETIA樹脂」のための一般的手順:DOT2質量%及びBAPO光開始剤0.2質量%をトリアクリレートPETIAと混合した。混合物を、光から離して室温で3日間撹拌した。
【0209】
PETIA樹脂(比較の樹脂)について:BAPO光開始剤0.2質量%をトリアクリレートPETIAと混合した。混合物を、光から離して室温で3日間撹拌した。
【0210】
(実施例2)
本発明のポリマーのFTIR特性決定及び機械的性質
光重合は、Thermo-Nicolet6700IR分光計を用いたリアルタイムフーリエ変換赤外分光法によって、その場でモニターされた。KBrペレットを基材として使用し、ポリプロピレン薄膜を使用して大気中の相互作用を回避した。照射は、365nmの中心のバンドパスフィルター(Hamamatsu社製のA9616-07)を備えた100W水銀-キセノンランプ(Hamamatsu社製のLC9588/02A)を使用してその場で実施された。変換率は、1635cm-1バンドの減少から計算された。
【0211】
FTIRによって得られた光重合動態は図1にプロットされる。それらは、モノマーにおけるアクリレート官能基のC=C変換をモニターすることに基づく。BAPO濃度0.5質量%であれば、重合は有効であり、60%を超える最終変換率をもたらし、迅速に変換平衡状態に到達する。この種の動態は、こうしたトリアクリレートモノマーについて標準的である。三官能特性は、極めて速い初期重合速度を確実なものにし、粘度の急速な増加は、重合を停止し、より高い変換を妨げる、媒体の相当なゲル化をもたらす。DOT(2質量%)の添加により、初期速度及び最終変換率(50%)の両方について光重合の有効性が若干低減されるが、依然として3D印刷方法に全体的に適合するように保つ。特に、照射後に定量的に観測される、興味深い機械的性質を材料に与えるための、ポリマーの十分な架橋を含む有効な重合を維持しながら、BAPO濃度を0.2質量%まで減らすことが可能であることが認められ得る。
【0212】
機械的試験は、INSTRON4505動力計近代化ZWICK/ROELL(TestXpert IIソフトウェア)を用いて実施された。Table 1(表1)に示されたように、DOTの添加により、若干より柔らかく、あまり脆くないポリマーをもたらすことによって、ポリマーの機械的性質が少しだけ改質される。ヤング率、引張強度、及び伸長値は、同程度の大きさのままである。
【0213】
【表1】
【0214】
(実施例3)
本発明の樹脂組成物を使用した3D製造
1)光ファイバーでの微細構造化
レーザー微細構造化構成を用いて、本発明のポリマーがレーザー誘起3D微細加工で使用される可能性を実証した。
【0215】
375nmで発光するUVレーザーダイオードは、開口数0.4の対物レンズを用いて、単一モード光ファイバー(Corning社製のSMF-28e、コアφ:8μm)中に導入される。樹脂の液滴をファイバーの他面に垂直に垂らした。毛細管現象により、半径約50μmの準半球状の液滴の形成が確実なものになる。次いで、マイクロチップは、ファイバーの表面で1μW~10μWの間の出力の照射で光生成された。エタノール中での数秒間の浸漬によって洗い流した後、マイクロチップは、光ファイバー上で得られる。
【0216】
2)3D印刷
3D印刷で使用される2つの異なるセットアップ:
DLP印刷のために、発明者等は、2980×1080ピクセル画像(λirr=365nm、放射照度=10mW cm-2)を投影することを可能にするDLPプロジェクター(Invision社製のIkarusFull-HD DLP6500光エンジンモジュール)を使用した。樹脂は、リザーバーにキャストされ、顕微鏡スライドで覆われた。暴露後、未反応樹脂をエタノールで洗い流すことによって取り除いた。2.5D試料は、このセットアップを使用して製造され得る。
【0217】
3D印刷は、Miicraft社製のMiicraft125シリーズで、層厚さ50μmを用いて実施された(385nmUV-LED、層につき暴露時間1秒、第1の層、4つのバッファ層について暴露時間7秒、80%パワフル)。ユーティリティソフトウェアを用いてmiiコード印刷ファイルを生じた。
【0218】
図2に示すように、両方のセットアップを使用して、様々な造形物が様々な外形で製作され、それにより、任意の形状を有する2.5D造形物及び3D造形物を構築することが興味深い。残された黄色着色を見ることがあるが、各部分はその透明性を保つ。相対的に薄い造形物について、着色は、漂白後に薄くなり得る。
【0219】
(実施例4)
分解試験
全ての分解試験は、撹拌なしで、室温で実施された。成形品は、THFに、且つ同じ体積のKOH5質量%のMeOH中溶液に浸漬させた。
【0220】
- チップは、分解溶液中に光ファイバーの端部を浸漬させることによって分解された。図3は、DOTを含まない場合、マイクロチップが、15分後光ファイバーの端部に取り付けられたままであり、その一方で、樹脂にDOTを含む場合、チップ(rip)が、わずか5秒後に分解されることを示す。図4に示されるように、多様な分解溶液:MeOH/THF1:1(v/v)中KOH5質量%、MeOH中KOH5質量%、及び水中KOH5質量%が試験された。最良の結果は、MeOH/THF1:1(v/v)中KOH5質量%で得られた。
【0221】
- DLP造形物を、分解溶液:MeOH/THF1:1(v/v)中KOH5質量%に、複数の時間長で浸漬させた。
【0222】
図5は、材料が大量に分解することを実証する。ダリマスクは、DLP-UVによって作製された巨視的造形物である。この造形物を分解溶液に浸漬させた。17時間後、造形物は、溶液から取り出され、撮影される基材上に置かれる。造形物の分解が既に開始していることに容易に気付くことができる。24時間後、この分解は更により顕著になり、より細かくなり、90時間後、溶液中にもはや造形物を見ることができない。したがって、この結果により、明らかに、分解メカニズムにおけるDOTの役割が確かめられる。
【0223】
- タブレット:cmスケールの小さいタブレットは、FDMによって予め印刷されたポリプロピレン鋳型を用いて製造された。これらのタブレットの質量及び外観は、分解過程の間モニターされた。MeOH/THF中KOH5質量%の使用により、1週間でペレットの完全な溶解をもたらし、その一方で参照のペレットは、3ヵ月でも分解しなかった。
【0224】
分解を加速するために、KOH濃度及び/又は温度を上げた。以下の分解条件:120℃、MeOH/THF中KOH10質量%、24時間を使用して、この密なcmスケールの造形物の完全な溶解を17時間で得ることができた。
【0225】
- 3D印刷:同じ溶液をその時々において使用した(図6上部、図7、及び図8)。より詳細には、KOH5質量%のMeOH中溶液を、同体積のTHFと共に、室温で撹拌なしで使用して3D造形物を分解した。
- 中空立方体について8時間
- エッフェル塔について24時間
- 積み重ねたサイコロについて1時間
【0226】
手製の堆肥の分解:
EDC社製の容積400Lのコンポスターをこれらの実験に使用した。分解は、2021年春に南フランスで実行された。2日毎に、家庭ごみ(皮、果物、野菜、生のハーブ及び乾燥ハーブ、並びに水)を加え、堆肥は定期的に撹拌された。中空立方体は、有機物質の添加中に観測され、分解は視覚的にモニターされた(図6下部)。堆肥において20日後、DOT/PETIA立方体は、ほぼ完全に分解したが、DOTを含まない、PETIAで作製された立方体は変化しなかった。
【0227】
(実施例5)
3D印刷及び分解を組み合わせること
PETIAの安定性を組み合わせたPETIA/DOTポリマーの分解能力により、同じDLP-UVプリンターを使用して、分解性部分及び非分解性部分を有する造形物を製作することを考えることができる。この可能性は、図9において実証される。この実施例において、戦略は、以下の通りである:第1の工程において、造形物(ゴースト及びボール)は、非分解性PETIA/BAPO樹脂で作製される。造形物は、DOT2質量%を含む分解性樹脂中に置かれ、第2パターンが印刷される(パックマンの形)。最後に、造形物は、造形物が含まれるパックマンの頭である。このマトリックスは、KOH5質量%のMeOH/THF中溶液に可溶性であり、その溶解により、含まれた造形物が放出され、それらは分解性マトリックスが消失するのに必要な時間内に分解されない。
【0228】
(実施例6)
重合研究
- PP鋳型における重合
実験
樹脂組成物は、実施例1と同様に調製された。
- 配合物DOT=PETIA(97.8質量%)、BAPO(0.2質量%)、DOT(2質量%) - 樹脂は、全ての化合物が可溶化するまで撹拌された。
【0229】
次いで、樹脂は、ポリプロピレン鋳型(PP鋳型)にキャストされ、光重合は、浜松ホトニクス株式会社の、365nmのLC-L5ランプを用いて、所与の時間及び出力で行われた(上記のセクション「材料及び方法」参照)。
【0230】
分解
光重合後に得られたペレットは、完全な可溶化まで(4時間)、MeOH/THF(1/1)中KOH(10質量%)において還流された。
【0231】
溶液はろ過され、ろ液は、pH約7になるまでHCl(10%)で中和された。ジクロロメタンを用いて抽出され、真空下で濃縮された。
【0232】
再生利用
濃縮後に得られた分解残留物は、完全に可溶化するまでBAPO(1質量%)及びPETIA(30質量%)と混合された。溶液混合物は、PP鋳型にキャストされ、1200mVで30秒間光重合された。固体は、光重合後得られた。
【0233】
- DLP重合
実験
樹脂組成物は、実施例1と同様に調製された。
- 配合物DOT=PETIA(97.8質量%)、BAPO(0.2質量%)、DOT(2質量%) - 樹脂は、全ての化合物が可溶化するまで撹拌された。
- 配合物(1a''-2)=PETIA(91.8質量%)、BAPO(0.2質量%)、化合物(1a''-2)(8質量%) - 樹脂は、全ての化合物が可溶化するまで撹拌された。
- 配合物SCM1(M4)(4質量%):PETIA(95.8質量%)、BAPO(0.2質量%)、SCM1(4質量%) - 樹脂は、全ての化合物が可溶化するまで撹拌された。
- 配合物SCM1(M4)(8質量%):PETIA(91.8質量%)、BAPO(0.2質量%)、SCM1(8質量%) - 樹脂は、全ての化合物が可溶化するまで撹拌された。
【0234】
樹脂は、2つの光ファイバー(φ=250μm)の間にキャストされ、顕微鏡スライドによって覆われた。暴露後、DLP印刷物は、エタノールで洗い流されて、未反応樹脂を取り除いた(実施例3の実験参照)。
【0235】
分解は、完全に溶解するまで、室温で撹拌なしで、KOH(5質量%)のMeOH/THF1/1溶液中に造形物を沈めることによって実施された(実施例4の実験参照)。
【0236】
結果
【0237】
【表2】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】