(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-22
(54)【発明の名称】液体バリアコーティング組成物のためのロジン改質アクリル系エマルジョン
(51)【国際特許分類】
C08F 2/30 20060101AFI20250115BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20250115BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20250115BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20250115BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20250115BHJP
C09D 133/06 20060101ALI20250115BHJP
C08F 220/12 20060101ALI20250115BHJP
C08F 220/00 20060101ALI20250115BHJP
D21H 19/10 20060101ALI20250115BHJP
D21H 21/14 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
C08F2/30 Z
C09D5/02
C09D7/63
C09D7/61
C09D201/00
C09D133/06
C08F220/12
C08F220/00 510
D21H19/10 Z
D21H21/14 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536009
(86)(22)【出願日】2022-12-15
(85)【翻訳文提出日】2024-08-13
(86)【国際出願番号】 US2022053023
(87)【国際公開番号】W WO2023114407
(87)【国際公開日】2023-06-22
(32)【優先日】2021-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521037411
【氏名又は名称】ベーアーエスエフ・エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【氏名又は名称】黒田 晋平
(72)【発明者】
【氏名】ティトゥス・デイヴィッド・レマン
(72)【発明者】
【氏名】ゲイリー・ディーター
【テーマコード(参考)】
4J011
4J038
4J100
4L055
【Fターム(参考)】
4J011AA05
4J011KA15
4J011KB14
4J011KB22
4J011KB29
4J038CC021
4J038CG031
4J038CG141
4J038CG151
4J038JA60
4J038MA10
4J038MA14
4J038PB04
4J038PC10
4J100AL03P
4J100AL03Q
4J100AL04R
4J100CA05
4J100DA01
4J100DA04
4J100DA09
4J100DA25
4J100EA07
4J100FA03
4J100FA04
4J100FA08
4J100FA20
4J100FA27
4J100FA34
4J100JA01
4L055AG50
4L055AG56
4L055AG71
4L055AG82
4L055AG89
4L055AG94
4L055AG97
4L055BE08
4L055EA20
4L055EA29
4L055EA30
4L055FA19
4L055FA30
4L055GA05
(57)【要約】
本開示は、少なくとも1つの樹脂を含むスチレン非含有ポリマーエマルジョンを製造する方法であって、前記樹脂がバイオ再生可能な供給源に由来する方法を提供する。本開示の水性エマルジョンは、コーティングでの使用に適している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーエマルジョンを製造する方法であって、
i)水性溶液中に少なくとも1つの樹脂を含む樹脂分散液を提供するステップと、
ii)少なくとも1つのポリマーシードおよび少なくとも1つの共重合性モノマーを含む重合混合物を前記樹脂分散液に添加するステップと、
iii)前記重合混合物、前記樹脂分散液および前記ポリマーシードのラジカルエマルジョン重合によって水中のポリマーエマルジョンを調製するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの樹脂が、バイオ再生可能な供給源に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの樹脂が、ロジンエステルを含む、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの樹脂が、フマル酸エステルを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの樹脂が、125mgKOH/g~200mgKOH/gの酸価を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの樹脂が、600g/mol~800g/molの数平均分子量(Mn)および1500g/mol~15,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
エマルジョン重合モノマーが、2つの別個の供給物、供給物1および供給物2として添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記供給物1のT
gが、ASTM D3418-15によって測定される場合、-25℃~-15℃である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記供給物2のT
gが、ASTM D3418-15によって測定される場合、20℃~40℃である、請求項7または請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記共重合性モノマーが、メチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
開始剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記開始剤が、レドックス開始剤である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記開始剤が、イソアスコルビン酸(IAA)、t-ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項11または請求項12に記載の方法。
【請求項14】
触媒をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記触媒が、硫酸銅(II)(CuSO
4)を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリマーエマルジョンが、スチレンを実質的に含まない、請求項1から15のいずれか一項に記載のポリマーエマルジョン。
【請求項17】
請求項1から15のいずれか一項に記載のポリマーエマルジョンを含む水性組成物。
【請求項18】
請求項17に記載の水性組成物と、
基材と、
を含む、コーティング。
【請求項19】
前記基材が、紙、板紙、および厚紙からなる群から選択される、請求項18に記載のコーティング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、スチレンを含まない多段ポリマー、ならびに様々な用途で使用するための多段ポリマーを含有するコーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷および包装市場は、機能性包装用途のために、食品接触要件を満たし、良好な液体バリア性能および耐ブロック性を有するコーティング分散液を必要としている。多くの既存のコーティングには、スチレンが含まれる。しかしながら、そのような用途のためのスチレンの使用は、起こり得る健康上の懸念のためにあまり望ましくなくなってきている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現在使用されているコーティングの改善が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、ポリマーエマルジョンを製造する方法であって、
i)水溶液中に少なくとも1つの樹脂を含む樹脂分散液を提供するステップと、
ii)少なくとも1つのポリマーシードおよび少なくとも1つの共重合性モノマーを含む重合混合物を樹脂分散液に添加するステップと、
iii)重合混合物、樹脂分散液およびポリマーシードのラジカルエマルジョン重合によって水中のポリマーエマルジョンを調製するステップと、を含む、方法を提供する。
【0005】
樹脂は、フマル酸エステルなどのバイオ再生可能な供給源に由来するロジンを含み得る。
【0006】
本開示はさらに、ポリマーエマルジョンの水性組成物およびコーティングを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本特許請求される発明は、本出願に記載の実施形態に関して限定されるものではない。当業者には明らかであるように、その趣旨および範囲から逸脱することなく、修正および変形を行うことができる。本明細書に列挙されたものに加えて、本開示の範囲内の機能的に等価な方法、配合物、および装置は、前述の説明から当業者には明らかであろう。そのような修正および変形は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されている。本開示は、添付の特許請求の範囲の用語によってのみ限定されるべきであり、そのような特許請求の範囲が権利を与えられる均等物の全範囲を伴う。本開示は、方法、試薬、化合物、または組成物に限定されず、当然のことながらそれらは変化し得ることを理解されたい。本明細書で使用される用語は、実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図していないことも理解されたい。
【0008】
さらに、明細書および特許請求の範囲における「(a)」、「(b)」、「(c)」、「(d)」などの用語は、同様の要素を区別するために使用され、必ずしも連続的または時系列的な順序を説明するためのものではない。そのように使用される用語は、適切な状況下で交換可能であり、本明細書に記載の主題の実施形態は、本明細書に記載または例示されている以外の順序でも実施可能であることを理解されたい。「(A)」、「(B)」、および「(C)」、または「(a)」、「(b)」、「(c)」、「(d)」、「(i)」、「(ii)」などの用語が方法または使用またはアッセイのステップに関する場合、ステップ間に時間または時間間隔の一貫性はない。すなわち、本出願において本明細書の上記または下記に別段の指示がない限り、ステップは同時に実施されてもよいし、このようなステップ間に数秒、数分、数時間、数日、数週、数ヶ月、あるいは数年の時間間隔があってもよい。
【0009】
本特許請求される発明の目的のために、本開示の特徴または態様がマーカッシュ群に関して記載されている場合、当業者は、本開示がそれによってマーカッシュ群の任意の個々の要素または要素のサブグループに関しても記載されていることを認識するであろう。
【0010】
本特許請求される発明の目的のために、本明細書に開示されるすべての範囲はまた、ありとあらゆる可能な部分範囲およびその部分範囲の組み合わせを包含する。本明細書全体を通して定義される範囲は、終点の値も含む。すなわち1~10の範囲は、1と10の両方がその範囲に含まれることを意味する。疑義を避けるため付言すると、出願人は、適用法に従って同等の権利を有するものとする。列挙された範囲はいずれも、同じ範囲を少なくとも等しい半分、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1などに分割することを十分に説明し、可能にするものとして容易に認識することができる。非限定的な例として、本明細書で論じられる各範囲は、下3分の1、中3分の1、上3分の1などに容易に分割することができる。また、当業者によって理解されるように、例えば「最大で」、「少なくとも」、「より大きい」、「未満」などのすべての文言は、列挙された数を含み、上で論じたように部分範囲に後で分割することができる範囲を指す。最後に、当業者によって理解されるように、範囲は個々の要素を含む。したがって、例えば、1~3個の細胞を有する群は、1、2、または3個の細胞を有する群を指す。同様に、1~5個の細胞を有する群は、1、2、3、4または5個の細胞を有する群などを指す。
【0011】
本明細書で論じられる材料および方法を説明する文脈における(特に以下の特許請求の範囲の文脈における)用語「a」、「an」、「the」、および同様の指示対象の使用は、本明細書に特に指示されない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、単数および複数の両方を包含すると解釈されるべきである。
【0012】
本明細書を通して使用される「約」という用語は、小さな変動を記載および説明するために使用される。例えば、「約」という用語は、±5%以下、例えば±2%以下、±1%以下、±0.5%以下、±0.2%以下、±0.1%以下または±0.05%以下を指す。本明細書におけるすべての数値は、明示的に示されているかどうかにかかわらず、「約」という用語によって修飾される。「約」という用語によって修飾された値は、もちろん特定の値を含む。例えば、「約5.0」は、5.0を含まなければならない。
【0013】
以下の節では、主題の異なる態様がより詳細に定義される。そのように定義された各態様は、そうでないことが明確に示されていない限り、他の任意の1つ以上の態様と組み合わせることができる。好ましいまたは有利であると示された任意の特徴は、好ましいまたは有利であると示された他の任意の1つ以上の特徴と組み合わせることができる。
【0014】
本明細書全体を通して「一実施形態(one embodiment)」または「一実施形態(an embodiment)」への言及は、その実施形態に関して記載される特徴、構造、または特性が、本特許請求される発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体の様々な箇所において「一実施形態では(in one embodiment)」または「一実施形態では(in an embodiment)」という語句が出現した場合、必ずしもすべてが同じ実施形態を指しているわけではないが、参照することができる。さらに、特徴、構造、または特性は、1つ以上の実施形態において、本開示から当業者に明らかであるように、任意の適切な様式で組み合わされてよい。さらに、当業者には理解されるように、本明細書に記載のいくつかの実施形態には、他の実施形態に含まれる他の特徴ではない特徴がいくつか含まれるが、様々な実施形態の特徴の組合せは本主題の範囲内であり、異なる実施形態を形成することを意味する。例えば、添付の特許請求の範囲において、特許請求される実施形態のいずれも、任意の組合せで使用することができる。
【0015】
本明細書に開示されたプロセスを、実施形態を参照して説明したが、これらの実施形態は、本特許請求される発明の原理および用途の単なる例示であることを理解されたい。本特許請求される発明の精神および範囲から逸脱することなく、本特許請求される発明の方法および装置に対して様々な修正および変形を行うことができることが当業者には明らかであろう。したがって、本特許請求される発明は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内にある修正および変形を含むことが意図されており、上記の実施形態は、限定ではなく例示を目的として提示されている。本明細書に引用された全ての特許および刊行物は、他の組み込まれた記述が具体的に提供されない限り、記載されたその特定の教示について参照により本明細書に組み込まれる。
【0016】
本明細書に記載のすべての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書で提供されるありとあらゆる例または例示的な言語(例えば、「など(such as)」)の使用は、単に材料および方法をよりよく説明することを意図しており、特に請求されない限り、範囲を限定するものではない。
【0017】
本特許請求される発明の目的のために、「ポリマー」という用語は、モノマーからの形成反応で生じて巨大分子を与える単一のポリマーまたはポリマーの混合物を指す。
【0018】
本特許請求される発明の目的のために、「ポリマーエマルジョン」は、水溶性および/または水分散性ポリマーを含むエマルジョンまたはコロイド分散液を指す。
【0019】
本特許請求される発明の目的のために、「樹脂分散液」は、水に分散した樹脂を指す。
【0020】
本特許請求される発明の目的のために、「ポリマーシード」は、重合において種として作用するポリマーを指す。
【0021】
本特許請求される発明の目的のために、界面活性剤は、液体の表面張力、2つの液体間の界面張力、または液体と固体との間の界面張力を低下させる表面活性化合物として定義される。界面活性剤および乳化剤という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0022】
本特許請求される発明の目的のために、「水溶性」は、組成物の関連する成分または成分が分子レベルで水相に溶解され得ることを意味する。
【0023】
本特許請求される発明の目的のために、「水分散性」は、組成物の関連する成分または成分が水相に分散されてよく、安定なエマルジョンまたは懸濁液を形成することを意味する。
【0024】
本特許請求される発明の目的のために、結合剤または固体結合剤は、顔料および充填剤を含まない、本特許請求される発明のポリマーエマルジョンの不揮発性成分である。
【0025】
本特許請求される発明の目的のために、「支持樹脂」という用語は、酸性成分の中和時に水に分散させることができるスチレン系モノマー、アクリル系モノマーおよび/または酸性モノマーを含む低分子量コポリマー(約1500 g/mol~35,000 g/molの重量平均分子量)を指す。
【0026】
本特許請求される発明の目的のために、本明細書で使用される「水性(aqueous)」または「水性(water-borne)」という用語は、有機溶媒以外の主な分散媒としてのかなりの割合の水を指す。
【0027】
モノマーまたは繰り返し単位における(メタ)の使用は、任意のメチル基を示す。本特許請求される発明の目的のために、「コポリマー」という用語は、コポリマーがラジカル重合によって得られるブロックコポリマーまたはランダムコポリマーを含むことを意味する。
【0028】
本特許請求される発明の目的のために、本明細書で使用される「二峰性粒径分布」という用語は、粒径分布の2つの異なる群を指す。本特許請求される発明の目的のために、本明細書で使用される「多峰性粒径分布」という用語は、粒径分布の2を超える異なる群を指す。
【0029】
本特許請求される発明の目的のために、「界面活性剤を含まない」という用語は、界面活性剤を使用せずに重合が行われ、エマルジョンの形成前または形成中のいずれの時点においても界面活性剤が組成物に添加されなかったことを意味することを意図する。
【0030】
本明細書で使用される場合、「(メタ)アクリレートモノマー」という用語は、アクリレート、メタクリレート、ジアクリレート、およびジメタクリレートモノマーを含む。
【0031】
本明細書で使用される場合、「理論ガラス転移温度」または「理論Tg」という用語は、Foxの式を使用して計算されたポリマーまたはコポリマーの推定Tgを指す。Foxの式は、例えば、L.H.Sperling,「Introduction to Physical Polymer Science」,2nd Edition,John Wiley&Sons,New York,p.357(1992)およびT.G.Fox,Bull.Am.Phys.Soc,1,123(1956)に記載されているように、ポリマーまたはコポリマーのガラス転移温度を推定するために使用されてよく、その両方が、参照により本明細書に組み込まれる。例えば、モノマーa、b、...、およびiから誘導されるコポリマーの理論ガラス転移温度は、以下の式に従って計算することができる。
1Tg=waTga+wbTgb+…+wiTgi
式中、waはコポリマー中のモノマーaの重量分率であり、Tgaはモノマーaのホモポリマーのガラス転移温度であり、wbはコポリマー中のモノマーbの重量分率であり、Tgbはモノマーbのホモポリマーのガラス転移温度であり、wiはコポリマー中のモノマーiの重量分率であり、Tgiはモノマーiのホモポリマーのガラス転移温度であり、Tgはモノマーa、b、...、およびiに由来するコポリマーの理論ガラス転移温度である。
【0032】
数平均分子量(Mn)は、ポリマー中のすべてのポリマー鎖の統計的平均分子量であり、以下によって定義される。
Mn=(ΣNiMi)/ΣNi
式中、Miは鎖の分子量であり、Niはその分子量の鎖の数である。
【0033】
重量平均分子量(Mw)は、以下によって定義される。
Mw=(ΣNiMi2)/ΣNi
【0034】
Mnと比較して、Mwは、分子量平均への寄与を決定する際に鎖の分子量を考慮する。鎖が大きいほど、鎖はMwに寄与する。
【0035】
より高い平均分子量(Mz)は、以下の式によって定義され得る。
Mz=(ΣNiMi3)/ΣNi
【0036】
分散性指数または多分散性指数(PDI)は、所与のポリマーサンプル中の分子量の分布の尺度である。ポリマーのPDIを計算する。
PDI=Mw/Mn
重量平均分子量および統計平均分子量は上記で定義される。
【0037】
本明細書で使用される「コーティング」という用語は、紙に適用される任意の表面処理を指す。本明細書で使用される「バリア特性」という用語は、空気、油、グリース、およびより高い表面強度などの様々な材料に対する紙の抵抗の増加を指す。本明細書で開示される「耐ブロック性」という用語は、2つの表面に塗布されたときに、接触時または圧力が加えられたときにコーティングがそれ自体にくっつかない能力を指す。本明細書で開示される「耐油性および/または耐グリース性」という用語は、コーティング上の基材が、表面スポットもしくは汚れの形成、または基材を通る油/グリースの透過に抵抗する能力を指す。
【0038】
本開示の目的のために、本明細書で使用される紙または板紙基材または紙製品は、任意の製造品であり得、その少なくとも一部は、本特許請求される発明に従ってコーティングされた紙を含む。本特許請求される発明は、単層または多層のいずれかで作製された紙製品、例えば紙積層体、プラスチック積層体を包含する。本明細書で互換的に使用される「再パルプ化」または「再パルプ化性」という用語は、後続の紙シート形成のために再湿潤および繊維化の操作を受けるコート紙または板紙基材の能力である。本明細書で互換的に使用される「リサイクル」または「リサイクル可能性」という用語は、使用済み処理された紙および板紙が新しい紙および板紙に処理される能力である。
【0039】
本明細書で使用される「紙ベースの基材」または「板紙基材」という用語は、手動または機械的に折り畳むことができる任意の種類のセルロース系繊維ベースの製品を指す。
【0040】
本開示は、多層粒子を含むポリマーエマルジョンの製造方法を提供する。多層粒子は、疎水性成分およびバイオ再生可能成分を含み得る。具体的には、多層粒子は、表面上に配列された官能基を有する疎水性コアを含み得る。
【0041】
多層粒子は、アクリレートモノマーおよび支持樹脂から誘導されてもよい。例えば、多層粒子は、コアシェル粒子からいわゆる「ドングリ」粒子に及ぶことができ、第2の層は、連続的、半連続的または不連続的に第1の層のかなりの部分を(例えば、第2の層が粒子表面の5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以下、35%以下、40%以下、45%以下、または50%以下を形成するように)取り囲む。いくつかの実施形態では、第1の層および第2の層は、多層粒子内に第1および第2のドメインを形成し、第2の層は、第1の層の少なくとも一部を取り囲む。
【0042】
多層粒子のバイオ再生可能成分は、全粒子質量のパーセンテージとして、約20 重量%以上、約25 重量%以上、約30 重量%以上、約35 重量%以上、約40 重量%以下、約45 重量%以下、約50 重量%以下、55 重量%以下、60 重量%以下、またはこれらの終点によって包含される任意の値であり得る。
【0043】
多層粒子は、1)モノマーの第1の供給物(「供給物1」)、2)モノマーの第2の供給物(「供給物2」)、3)バイオ再生可能成分、4)レドックス開始剤、4)触媒、および5)界面活性剤を組み合わせることによって合成され得る。
【0044】
本開示は、水中に少なくとも1つの樹脂を有する樹脂分散液を提供するステップと、少なくとも1つのポリマーシードおよび重合混合物を樹脂分散液に添加するステップと、を含む、ポリマーエマルジョンを調製するための方法を提供する。重合混合物は、少なくとも1つの共重合性モノマーを有する。この方法は、重合混合物、樹脂分散液およびポリマーシードのラジカルエマルジョン重合によって水中でポリマーエマルジョンを調製することを含む。
【0045】
本特許請求される発明の一態様は、ポリマーエマルジョンを調製するための方法であって、
i)水溶液中に少なくとも1つの樹脂を含む樹脂分散液を提供するステップと、
ii)少なくとも1つのポリマーシードおよび少なくとも1つの共重合性モノマーを含む重合混合物を樹脂分散液に添加するステップと、
iii)重合混合物、樹脂分散液およびポリマーシードのラジカルエマルジョン重合によって水中のポリマーエマルジョンを調製するステップと、を少なくとも含む、方法に関する。
【0046】
開始剤も反応混合物中に存在し得る。開始剤は、重合プロセスを開始するために使用され得る。触媒はまた、反応混合物中に存在し得る。
【0047】
樹脂は、支持樹脂であってもよい。樹脂は、全体的にまたは部分的に、バイオ再生可能な供給源から誘導され得る。適切な供給源には、例えば、植物、樹木、および木材パルプ化プロセスの副産物が含まれ得る。
【0048】
バイオ再生可能樹脂は、ロジンエステルを含み得る。好適なロジンエステルとしては、例えば、フマル酸エステルが挙げられ得る。
【0049】
ロジンエステルは、約125 mgKOH/g以上、150 mgKOH/g以上、約155 mgKOH/g以上、約160 mgKOH/g以上、約165 mgKOH/g以上、約170 mgKOH/g以上、約175 mgKOH/g以下、約180 mgKOH/g以下、約185 mgKOH/g以下、約190 mgKOH/g以下、約195 mgKOH/g以下、約200 mgKOH/g以下の酸価、またはこれらの終点によって包含される任意の値であり得る。
【0050】
ロジンエステルの数平均分子量(Mn)は、約600 g/mol以上、約620 g/mol以上、約640 g/mol以上、約660 g/mol以上、約680 g/mol以上、約700 g/mol以下、約720 g/mol以下、約740 g/mol以下、約760 g/mol以下、約780 g/mol以下、約800 g/mol以下、またはこれらの終点によって包含される任意の値であり得る。
【0051】
ロジンエステルの重量平均分子量(Mw)は、約1500 g/mol以上、約2000 g/mol以上、約2500 g/mol以上、約3000 g/mol以上、約3500 g/mol以上、約4000 g/mol以上、約4500 g/mol以下、約5000 g/mol以下、約5500 g/mol以下、約6000 g/mol以下、約6500 g/mol以下、約7000 g/mol以下、約10,000 g/mol以下、約15,000 g/mol以下、またはこれらの終点によって包含される任意の値であり得る。
【0052】
ポリマーを調製する場合、ロジンエステルは水溶液中に分散され得る。適切な水溶液は、例えば、アンモニア水を含み得る。アンモニア水中のロジンエステルの濃度は、オーブン(150℃、30分)またはマイクロ波固体分析器のいずれかによって決定される場合、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以下、約35%以下、約40%以下であってもよい。
【0053】
次いで、界面活性剤を水相中のロジンエステルの分散液に添加することができる。適切な界面活性剤としては、例えば、Disponil AFX 1080またはCalfax DB45が挙げられ得る。界面活性剤は、反応混合物中に約0.1 重量%以上、約0.2 重量%以上、約0.3 重量%以上、約0.4 重量%以上、約0.5 重量%以上、約0.6 重量%以下、約0.7 重量%以下、約0.8 重量%以下、約0.9 重量%以下、約1 重量%以下、またはこれらの終点によって包含される任意の値の量で存在してもよい。
【0054】
次いで、レドックス開始剤を添加することによってエマルジョンを開始することができる。適切なレドックス開始剤としては、例えば、イソアスコルビン酸(IAA)、t-ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)、エリトビン酸ナトリウム、メタ重硫酸ナトリウム、またはそれらの組み合わせなどのレドックス開始剤が挙げられ得る。
【0055】
開始剤は、約60分以上、約70分以上、約80分以上、約90分以下、約100分以下、約110分以下、約120分以下、またはこれらの終点によって包含される任意の値の期間にわたって反応混合物に供給され得る。
【0056】
開始剤は、約60℃以上、約65℃以上、約70℃以下、約75℃以下、約80℃以下、またはこれらの終点によって包含される任意の値の温度で反応混合物に供給され得る。
【0057】
触媒を添加してもよい。適切な触媒には、例えば、硫酸銅(II)(CuSO4)および硫酸鉄(II)が含まれ得る。
【0058】
エマルジョン重合モノマーは、2つの別個の供給物:供給物1および供給物2として添加され得る。供給物1は、多層粒子のコアを含み得る。供給物1は、疎水性アクリルコポリマーを含み得る。供給物1は、供給物2の理論Tgよりも低くてもよい第1の理論Tgを有してもよい。
【0059】
供給物2は、疎水性アクリルコポリマーを含み得る。供給物2は、供給物1の理論Tgよりも高くてもよい第2の理論Tgを有してもよい。
【0060】
いくつかの実施形態では、DSCによって測定される場合、第1の理論Tgは、ASTM D3418-15によって測定される場合、約-30℃以上、約-25℃以上、約-24℃以上、約-23℃以上、約-22℃以上、約-21℃以上、約-20℃以上、約-19℃以下、約-18℃以下、約-17℃以下、約-16℃以下、約-15℃以下、約-10℃以下、またはこれらの終点によって包含される任意の値であり得る。例えば、第1の理論Tgは、とりわけ、約-25℃~約-15℃、約-18℃~約-10℃、約-22℃~約-15℃であり得る。
【0061】
第2のコポリマーは、DSCを使用して測定した場合、約10℃以上、約15℃以上、約20℃以上、約25℃以上、約30℃以下、約35℃以下、約40℃以下、約45℃以下、約50℃以下のTg、またはこれらの終点によって包含される任意の値、例えば、とりわけ20℃~40℃、10℃~25℃、30℃~50℃を有し得る。
【0062】
いくつかの実施形態では、多段ポリマー(または多層粒子)は、示差走査熱量測定(DSC)を使用して測定して、0℃以上、約1℃以上、約2℃以上、約3℃以上、約4℃以上、約5℃以上、約6℃以下、約7℃以下、約8℃以下、約9℃以下、約10℃以下、またはこれらの終点によって包含される任意の値の単一のTgを示す。ガラス転移温度は、ASTM D 3418-12e1を用いて中点温度を測定することにより、示差走査熱量測定(DSC)により求めることができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、供給物1は、アクリル系コポリマーを含み得る。アクリル系コポリマーには、1つ以上の(メタ)アクリレートモノマーから誘導されるコポリマーが含まれる。アクリル系コポリマーは、純粋なアクリルポリマー(すなわち、主に(メタ)アクリレートモノマーから誘導されるコポリマー)、スチレンアクリルポリマー(すなわち、スチレンおよび1つ以上の(メタ)アクリレートモノマーから誘導されるコポリマー)またはビニルアクリルポリマー(すなわち、1つ以上のビニルエステルモノマーおよび1つ以上の(メタ)アクリレートモノマーから誘導されるコポリマー)であり得る。
【0064】
供給物1は、1つ以上の軟質エチレン性不飽和モノマー、ならびに1つ以上の硬質エチレン性不飽和モノマーを含んでもよい。
【0065】
本明細書で使用される場合、「軟質エチレン性不飽和モノマー」という用語は、ホモポリマー化された場合、示差走査熱量測定(DSC)を使用して測定して0℃以下のガラス転移温度を有するポリマーを形成するエチレン性不飽和モノマーを指す。軟質エチレン性不飽和モノマーは当技術分野において公知であり、例えば、エチルアクリレート(Tg=-24℃)、ブチルアクリレート(n-ブチルアクリレート、Tg=-54℃)、sec-ブチルアクリレート(Tg=-26℃)、sec-ブチルアクリレート(Tg=-26℃)、イソブチルアクリレート(Tg=-24℃)、n-ヘキシルアクリレート(Tg=-45℃)、n-ヘキシルメタクリレート(Tg=-5℃)、2-エチルヘキシルアクリレート(Tg=-85℃)、2-エチルヘキシルメタクリレート(Tg=-10℃)、オクチルメタクリレート(Tg=-20℃)、n-デシルメタクリレート(Tg=-30℃)、イソデシルアクリレート(Tg=-55℃)、ドデシルアクリレート(Tg=-3℃)、ドデシルメタクリレート(Tg=-65℃)、2-エトキシエチルアクリレート(Tg=-50℃)、2-メトキシアクリレート(Tg=-50℃)、および2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート(Tg=-70℃)が挙げられる。
【0066】
いくつかの実施形態では、供給物1は、ホモポリマー化されると、ASTM D3418-15によって測定される場合、DSCを使用して測定した場合、約-30℃以上、約-25℃以上、約-24℃以上、約-23℃以上、約-22℃以上、約-21℃以上、約-20℃以上、約-19℃以下、約-18℃以下、約-17℃以下、約-16℃以下、約-15℃以下、約-10℃以下、またはこれらの終点によって包含される任意の値のガラス転移温度を有するポリマーを形成する、軟質エチレン性不飽和モノマーを含んでもよい。例えば、第1の理論Tgは、とりわけ、約-25℃~約-15℃、約-18℃~約-10℃、約-22℃~約-15℃であり得る。
【0067】
特定の実施形態では、軟質エチレン性不飽和モノマーは、(メタ)アクリレートモノマーであり得る。特定の実施形態では、供給物1は、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される軟質エチレン性不飽和モノマーを含んでもよい。
【0068】
供給物1は、供給物1に使用されるモノマーの総重量に基づいて、少なくとも50重量%(例えば、少なくとも50重量%、少なくとも55重量%、少なくとも60重量%、少なくとも65重量%、少なくとも70重量%、少なくとも75重量%、または少なくとも80重量%、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも97重量%、少なくとも99重量%、または少なくとも99.9重量%)の1つ以上の軟質エチレン性不飽和モノマーを含んでもよい。
【0069】
供給物1は、上記の任意のパーセンテージから上記の任意の他のパーセンテージの範囲の1つ以上の軟質エチレン性不飽和モノマーの量を含んでもよい。例えば、供給物1は、使用されるモノマーの総重量に基づいて、50%~99.9重量%(例えば、90%~97重量%、50%~85重量%、70%~99重量%、例えば)の1つ以上の軟質エチレン性不飽和モノマーを含んでもよい。
【0070】
例示的なアクリレートおよびメタクリレートモノマーとしては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、2-メチルヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アルキルクロトネート、ビニルアセテート、ジ-n-ブチルマレエート、ジ-オクチルマレエート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシ(メタ)アクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-プロピルヘプチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メチルポリグリコール(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、1,6ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、およびそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、供給物1は、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、および2-エチルヘキシルアクリレートからなる群から選択される1つ以上のアクリレートモノマーを含んでもよい。
【0071】
供給物1は、硬質エチレン性不飽和モノマーを含んでもよい。適切な硬質エチレン性不飽和モノマーは、メチルメタクリレート、Tg=125℃を含み得る。
【0072】
メチルメタクリレートは、使用されるモノマーの総重量に基づいて、組成物中に約30 重量%以上、約35 重量%以上、約40 重量%以下、約45 重量%以下、約50 重量%以下、またはこれらの終点に包含される任意の値もしくは範囲、例えば30~50 重量%、または35~45 重量%の量で存在してもよい。
【0073】
供給物1は、モノマーの総重量に基づいて、1つ以上のカルボン酸含有モノマーを含んでもよい。適切なカルボン酸含有モノマーは当技術分野で公知であり、α,β-モノエチレン性不飽和モノ-およびジカルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ジメタクリル酸、エチルアクリル酸、アリル酢酸、ビニル酢酸、メサコン酸、メチレンマロン酸、シトラコン酸、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0074】
供給物1は、使用されるモノマーの総重量に基づいて、0重量%以上(例えば、少なくとも0.5重量%、少なくとも1重量%、少なくとも1.5重量%、少なくとも2重量%、少なくとも2.5重量%、少なくとも3重量%、少なくとも3.5重量%、少なくとも4重量%、または少なくとも4.5重量%)の1つ以上のカルボン酸含有モノマーを含んでもよい。供給物1は、使用されるモノマーの総重量に基づいて、5%以下(重量基準)(例えば、4.5%以下(重量基準)、4%以下(重量基準)、3.5%以下(重量基準)、3%以下(重量基準)、2.5%以下(重量基準)、2%以下(重量基準)、1.5%以下(重量基準)、1%以下(重量基準)、または0.5%以下(重量基準))の1つ以上のカルボン酸含有モノマーを含んでもよい。
【0075】
供給物1は、上記の最小パーセンテージのいずれかから上記の最大パーセンテージのいずれかまでの範囲の1つ以上のカルボン酸含有モノマーの量を含み得る。例えば、供給物1は、使用されるモノマーの総重量に基づいて、0重量%~5重量%(例えば、0重量%~2.5重量%の1つ以上のカルボン酸含有モノマー)の1つ以上のカルボン酸含有モノマーを含み得る。特定の実施形態では、供給物1は、0重量%~5重量%(例えば、0重量%~3重量%、0重量%~2.5重量%、または0重量%~1.5重量%)のイタコン酸を含み得る。
【0076】
供給物1は、スチレンを実質的に含まなくてもよい。言い換えると、供給物1中のスチレンの量は、1 重量%以下、0.5 重量%以下、0.1 重量%以下、または0 重量%であってもよい。
【0077】
供給物2は、単一のエチレン性不飽和モノマーに由来するホモポリマーを形成してもよく、エチレン性不飽和モノマーに由来するコポリマーを形成してもよい。いくつかの実施形態では、供給物2はアクリル系ポリマーを含んでもよい。アクリル系ポリマーには、1つ以上の(メタ)アクリレートモノマーに由来するポリマーが含まれる。特定の実施形態では、供給物2から形成されたポリマーは、エチレン性不飽和結合を有し得る。
【0078】
供給物2は、1つ以上のエチレン性不飽和モノマーを含んでもよい。本明細書で使用される場合、「エチレン性不飽和モノマー」という用語は、単独重合されると、DSCを使用して測定した場合に、0℃を超えるTgを有するポリマーを形成するエチレン性不飽和モノマーを指す。エチレン性不飽和モノマーは当技術分野で知られており、例えば、メチルアクリレート(Tg=10℃)、メチルメタクリレート(Tg=120℃)、エチルメタクリレート(Tg=65℃)、ブチルメタクリレート(Tg=20℃)、tert-ブチルメタクリレート(Tg=118℃)、イソブチルメタクリレート(Tg=53℃)、酢酸ビニル(Tg=30℃)、ヒドロキシエチルアクリレート(Tg=15℃)、ヒドロキシエチルメタクリレート(Tg=57℃)、シクロヘキシルアクリレート(Tg=19℃)、シクロヘキシルメタクリレート(Tg=92℃)、2-エトキシエチルメタクリレート(Tg=16℃)、2-フェノキシエチルメタクリレート(Tg=54℃)、ベンジルアクリレート(Tg=6℃)、ベンジルメタクリレート(Tg=54℃)、ヒドロキシプロピルメタクリレート(Tg=76℃)、スチレン(Tg=100℃)、アクリルアミド(Tg=165℃)、アクリロニトリル(Tg=125℃)、n-tert-ブチルアクリルアミド(Tg=128℃)、イソボルニルアクリレート(Tg=94℃)、イソボルニルメタクリレート(Tg=110℃)、およびそれらの組み合わせを含む。
【0079】
いくつかの実施形態では、供給物2は、ホモポリマー化されると、DSCを使用して測定した場合、少なくとも80℃(例えば、少なくとも85℃、少なくとも90℃、少なくとも95℃、少なくとも100℃、少なくとも105℃、少なくとも110℃、少なくとも115℃、または少なくとも120℃)のTgを有するポリマーを形成する1つ以上のエチレン性不飽和モノマーを含み得る。
【0080】
いくつかの実施形態では、供給物2は、使用されるモノマーの総重量に基づいて、50重量%以上の1つ以上のエチレン性不飽和モノマー(例えば、65重量%以上、75重量%以上、80重量%以上、85重量%以上、88重量%以上、90重量%以上、91重量%以上、92重量%以上、93重量%以上、94重量%以上、または95重量%以上のエチレン性不飽和モノマー)を含み得る。
【0081】
いくつかの実施形態では、供給物2は、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、および2-エチルヘキシルアクリレート、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上のエチレン性不飽和モノマーを含んでもよい。特定の実施形態では、供給物2は、使用されるモノマーの総重量に基づいて、少なくとも10%(例えば、少なくとも10重量%、少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも92重量%、少なくとも95重量%、少なくとも96重量%、少なくとも97重量%、または少なくとも98重量%)のメチルメタクリレート、ブチルアクリレート、および2-エチルヘキシルアクリレートおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上のエチレン性不飽和モノマーを含んでもよい。
【0082】
供給物2は、スチレンを実質的に含まなくてもよい。言い換えると、供給物2中のスチレンの量は、1 重量%以下、0.5 重量%以下、0.1 重量%以下、または0 重量%であってもよい。
【0083】
エチレン性不飽和モノマーに加えて、供給物2はまた、1つ以上のエチレン性不飽和酸モノマーを含んでもよい。
【0084】
いくつかの実施形態では、供給物2は、モノマーの総重量に基づいて1つ以上のカルボン酸含有モノマーを含み得る。適切なカルボン酸含有モノマーは当技術分野で公知であり、α,β-モノエチレン性不飽和モノ-およびジカルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ジメタクリル酸、エチルアクリル酸、アリル酢酸、ビニル酢酸、メサコン酸、メチレンマロン酸、シトラコン酸、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0085】
供給物2は、使用されるモノマーの総重量に基づいて、0重量%以上(例えば、少なくとも0.5重量%、少なくとも1重量%、少なくとも1.5重量%、少なくとも2重量%、少なくとも2.5重量%、少なくとも3重量%、少なくとも3.5重量%、少なくとも4重量%、または少なくとも4.5重量%)の1つ以上のカルボン酸含有モノマーを含んでもよい。供給物2は、使用されるモノマーの総重量に基づいて、5%以下(重量基準)(例えば、4.5%以下(重量基準)、4%以下(重量基準)、3.5%以下(重量基準)、3%以下(重量基準)、2.5%以下(重量基準)、2%以下(重量基準)、1.5%以下(重量基準)、1%以下(重量基準)、または0.5%以下(重量基準))の1つ以上のカルボン酸含有モノマーを含んでもよい。
【0086】
供給物2は、上記の最小パーセンテージのいずれかから上記の最大パーセンテージのいずれかまでの範囲の1つ以上のカルボン酸含有モノマーの量を含み得る。例えば、供給物2は、使用されるモノマーの総重量に基づいて、0重量%~5重量%の1つ以上のカルボン酸含有モノマー(例えば、0重量%~2.5重量%の1つ以上のカルボン酸含有モノマー)を含み得る。特定の実施形態では、供給物2は、0重量%~5重量%(例えば、0重量%~3重量%、0重量%~2.5重量%、または0重量%~1.5重量%)のイタコン酸を含み得る。
【0087】
供給物2から形成されたコポリマーは、第2のコポリマーの総重量に基づいて、約5%以下、約4 重量%以下、約3 重量%以下、約2 重量%以下、約1 重量%以下、約0.5 重量%以下またはこれらの終点によって包含される任意の値の酸含有量を有し得る。
【0088】
多段粒子中の第1のコポリマーと第2のコポリマーの重量比は、50:50~75:25の範囲、例えば50:50、60:40、70:30、75:25、またはこれらの終点によって包含される任意の値であり得る。
【0089】
供給物2のモノマーは、全粒子重量に対して、多段粒子中に約2.5 重量%以上、例えば、約5 重量%以上、約10 重量%以上、約15 重量%以上、約20 重量%以下、約25 重量%以下、約30 重量%以下、約35 重量%以下、約40 重量%以下、またはこれらの終点によって包含される任意の値、例えば約2.5 重量%~約40 重量%、約10 重量%~約25 重量%、約5 重量%~約15 重量%、または約35 重量%~約40 重量%の量で存在し得る。
【0090】
特定の実施形態では、エマルジョン重合モノマーは、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、および追加の官能性モノマー、例えばアクリル酸、メチルアクリル酸、および/またはイタコン酸の混合物を含み得る。
【0091】
特定の実施形態では、エマルジョン重合混合物中に存在するメチルメタクリレートモノマーの量は、全エマルジョン重合混合物のパーセンテージとして、約40 重量%以上、約41 重量%以上、約42 重量%以上、約43 重量%以上、約44 重量%以上、約45 重量%以上、約46 重量%以下、約47 重量%以下、約48 重量%以下、約49 重量%以下、約50 重量%以下、またはこれらの終点によって包含される任意の値であり得る。
【0092】
特定の実施形態では、エマルジョン重合混合物中に存在するブチルアクリレートモノマーの量は、全エマルジョン重合混合物のパーセンテージとして、約30 重量%以上、約31 重量%以上、約32 重量%以上、約33 重量%以上、約34 重量%以上、約35 重量%以上、約36 重量%以下、約37 重量%以下、約38 重量%以下、約39 重量%以下、約40 重量%以下、またはこれらの終点によって包含される任意の値であり得る。
【0093】
特定の実施形態では、エマルジョン重合混合物中に存在する2-エチルヘキシルアクリレートモノマーの量は、全エマルジョン重合混合物のパーセンテージとして、約5 重量%以上、約10 重量%以上、約15 重量%以上、約20 重量%以下、約25 重量%以下、約30 重量%以下、またはこれらの終点によって包含される任意の値であり得る。
【0094】
特定の実施形態では、エマルジョン重合混合物は、1つ以上の官能性モノマーを含んでもよい。官能性モノマーは、アクリル酸モノマー、メチルアクリル酸モノマー、およびイタコン酸モノマーの1つ以上を含み得る。官能性モノマーは、全エマルジョン重合混合物のパーセンテージとして、エマルジョン重合混合物中に0重量%以上、約0.1 重量%以上、約0.2 重量%以上、約0.3 重量%以上、約0.4 重量%以上、約0.5 重量%以上、約0.6 重量%以上、約0.7 重量%以上、約0.8 重量%以上、約0.9 重量%以上、約1.0 重量%以下、約1.1 重量%以下、約1.2 重量%以下、約1.3 重量%以下、約1.4 重量%以下、約1.5 重量%以下、約1.6 重量%以下、約1.7 重量%以下、約1.8 重量%以下、約1.9 重量%以下、約2.0 重量%以下、またはこれらの終点によって包含される任意の値の量で存在してもよい。
【0095】
供給物1および2は、約60分以上、約70分以上、約80分以上、約90分以下、約100分以下、約110分以下、約120分以下、またはこれらの終点によって包含される任意の値の期間にわたって反応混合物に供給され得る。
【0096】
供給物1および2は、約60℃以上、約65℃以上、約70℃以下、約75℃以下、約80℃以下、またはこれらの終点によって包含される任意の値の温度で反応混合物に供給され得る。
【0097】
供給物1と供給物2のモノマーの重量比は、約50:50以上、約55:45以上、約60:40以上、約65:35以下、約70:30以下、約75:25以下、約80:20以下、またはこれらの終点によって包含される任意の値であり得る。
【0098】
特定の実施形態では、界面活性剤が存在してもよい。適切な界面活性剤としては、例えば、Aerosol OT75が挙げられ得る。エマルジョン重合混合物中に存在する界面活性剤の量は、全エマルジョン重合混合物のパーセンテージとして、0 重量%以上、約0.1 重量%以上、約0.2 重量%以上、約0.3 重量%以上、約0.4 重量%以上、約0.5 重量%以上、約0.6 重量%以上、約0.7 重量%以上、約0.8 重量%以上、約0.9 重量%以上、約1.0 重量%以下、約1.1 重量%以下、約1.2 重量%以下、約1.3 重量%以下、約1.4 重量%以下、約1.5 重量%以下、約1.6 重量%以下、約1.7 重量%以下、約1.8 重量%以下、約1.9 重量%以下、約2.0 重量%以下、またはこれらの終点によって包含される任意の値を含み得る。
【0099】
多層粒子の平均直径は、動的光散乱によって決定される場合、約100 nm以上、約150 nm以上、約200 nm以上、約250 nm以上、約300 nm以上、約350 nm以下、約400 nm以下、約450 nm以下、約500 nm以下、約550 nm以下、約600 nm以下、またはこれらの終点によって包含される任意の値であり得る。
【0100】
エマルジョンの固形分含有量は、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以下、約45%以下、約48%以下、約50%以下、またはこれらの終点を包含する任意の値であり得る。
【0101】
エマルジョンのpHは、約7.5以上、約7.6以上、約7.7以上、約7.8以上、約7.9以上、約8.0以上、約8.1以上、約8.2以下、約8.3以下、約8.4以下、約8.5以下、約8.6以下、約8.7以下、約8.8以下、約8.9以下、約9.0以下、またはこれらの終点を包含する任意の値であり得る。
【0102】
エマルジョンは、グリットを実質的に含まなくてもよい。換言すれば、エマルジョン中のグリットの量は、約1%以下、約0.9%以下、約0.8%以下、約0.7%以下、約0.6%以下、約0.5%以下、約0.4%以下、約0.3%以下、約0.2%以下、または約0.1%以下であり得る。グリットの量は、125または45ミクロンフィルターを用いて100グラムのエマルジョンを濾過し、水でフラッシュし、オーブン中で乾燥させ、次いでグリットの量を秤量することによって決定され得る。
【0103】
エマルジョンは、貯蔵条件下で安定であり得る。エマルジョンの安定性は、他の因子の中でも、貯蔵期間後に存在する凝固の量を測定することによって決定され得る。凝固の程度は、以下の実施例にさらに記載されるように、貯蔵期間後の分子量の分析によって決定され得る。エマルジョンの安定性はまた、以下の実施例にさらに記載されるように、貯蔵期間後に酸価を測定することによって決定され得る。
【0104】
適切な試験期間は、例えば、約1週間以上、約2週間以上、約3週間以上、約4週間以上、または約5週間以上であり得る。貯蔵試験期間中の温度は、例えば、約50℃であってもよい。
【0105】
上記の多段階ポリマー(または多層粒子)の1つ以上を含む水性組成物も提供される。水性組成物は、顔料、充填剤、分散剤、合体剤、消泡剤、界面活性剤、増粘剤、殺生物剤、およびそれらの組み合わせを含む1つ以上の添加剤をさらに含むことができる。組成物中の添加剤の選択は、水性組成物中に分散された多段ポリマー(または多層粒子)の性質、ならびに組成物の意図される用途を含む多くの要因によって影響される。場合によっては、組成物は、例えば、食品安全性適合コーティング組成物を含むコーティング組成物であり得る。いくつかの実施形態では、組成物は、50グラム/リットル以下の揮発性有機化合物を含む。
【0106】
水性組成物は、40%を超える固形分、例えば約40%以上、約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上または約70%以上を含み得る。
【0107】
いくつかの実施形態では、水性組成物は、1つ以上の界面活性剤をさらに含むことができる。適切な界面活性剤には、例えば、Disonil A1080、Calfax DB45、Dowfax 2A-1、Aeorosol OT 75(ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム)、およびそれらの組み合わせが含まれ得る。
【0108】
組成物は、水性組成物の全成分の総重量に基づいて、0重量%以上(例えば、0重量%、少なくとも0.5重量%、少なくとも1重量%、少なくとも1.5重量%、少なくとも2重量%、少なくとも2.5重量%、少なくとも3重量%、少なくとも3.5重量%、少なくとも4重量%、少なくとも4.5重量%、少なくとも5重量%、少なくとも5.5重量%、少なくとも6重量%、少なくとも6.5重量%、少なくとも7重量%、少なくとも7.5重量%、少なくとも8重量%、少なくとも8.5重量%、少なくとも9重量%、または少なくとも9.5重量%)の1つ以上の界面活性剤を含むことができる。組成物は、水性組成物の全成分の総重量に基づいて、10%以下(重量基準)(例えば、9.5%以下(重量基準)、8%以下(重量基準)、8.5%以下(重量基準)、8%以下(重量基準)、7.5%以下(重量基準)、7%以下(重量基準)、6.5%以下(重量基準)、6%以下(重量基準)、5.5%以下(重量基準)、5%以下(重量基準)、4.5%以下(重量基準)、4%以下(重量基準)、3.5%以下(重量基準)、3%以下(重量基準)、2.5%以下(重量基準)、2%以下(重量基準)、1.5%以下(重量基準)、1%以下(重量基準)、または0.5%以下(重量基準))の1つ以上の界面活性剤を含むことができる。
【0109】
組成物は、上記の任意の最小パーセンテージから上記の任意の最大パーセンテージの範囲の量の1つ以上の界面活性剤を含むことができる。例えば、組成物は、水性組成物の全成分の総重量に基づいて、0重量%~10重量%の1つ以上の界面活性剤(例えば、0重量%~3重量%の1種類以上の界面活性剤、0重量%~2.5重量%の1種類以上の界面活性剤、0重量%~1.5重量%の1種類以上の界面活性剤、または0重量%~1重量%の1つ以上の界面活性剤)を含むことができる。いくつかの実施形態では、組成物は、界面活性剤を実質的に含まない(すなわち、組成物は、0.1%以下(重量基準)を含む)。
【0110】
適切な顔料の例としては、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、またはそれらの組み合わせなどの金属酸化物が挙げられる。特定の実施形態では、組成物は二酸化チタン顔料を含む。市販の二酸化チタン顔料の例は、Kronos WorldWide,Inc.(クランベリー、ニュージャージー州)から入手可能なKRONOS(登録商標)2101、KRONOS(登録商標)2310、DuPontから入手可能なTI-PURE(登録商標)R-900(ウィルミントン、デラウェア州)、またはMillenium Inorganic Chemicalsから市販されているTIONA(登録商標)AT1である。二酸化チタンは、濃縮分散液形態でも入手可能である。二酸化チタン分散液の例は、KRONOS(登録商標)4311であり、Kronos WorldWide,Inc.からも入手可能である。
【0111】
適切な充填剤の例には、炭酸カルシウム、ネフェリンシェナイト、(25%ネフェリン、55%長石ナトリウムおよび20%長石カリウム)、長石(アルミノケイ酸塩)、珪藻土、焼成珪藻土、タルク(水和ケイ酸マグネシウム)、アルミノケイ酸塩、シリカ(二酸化ケイ素)、アルミナ(酸化アルミニウム)、粘土、(水和ケイ酸アルミニウム)、カオリン(カオリナイト、水和ケイ酸アルミニウム)、マイカ(含水ケイ酸アルミニウムカリウム)、パイロフィライト(水酸化ケイ酸アルミニウム)、パーライト、バライト(硫酸バリウム)、ウォラストナイト(メタケイ酸カルシウム)、およびそれらの組み合わせが含まれる。特定の実施形態では、組成物は炭酸カルシウム充填剤を含む。
【0112】
適切な分散剤の例は、多酸分散剤および疎水性コポリマー分散剤である。多酸分散剤は、典型的には、部分的または完全にそれらのアンモニウム、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたは低級アルキル四級アンモニウム塩の形態であるポリアクリル酸またはポリメタクリル酸などのポリカルボン酸である。疎水性コポリマー分散剤には、アクリル酸、メタクリル酸またはマレイン酸と疎水性モノマーとのコポリマーが含まれる。特定の実施形態では、組成物は、BASF SEから市販されているポリアクリル酸型分散剤、例えばPigment Disperser Nを含む。
【0113】
乾燥中の膜形成を助ける適切な合体剤には、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0114】
適切な増粘剤の例としては、疎水性修飾エチレンオキシドウレタン(HEUR)ポリマー、疎水性修飾アルカリ可溶性エマルジョン(HASE)ポリマー、疎水性修飾ヒドロキシエチルセルロース(HMHEC)、疎水性修飾ポリアクリルアミド、およびそれらの組み合わせが挙げられる。HEURポリマーは、ジイソシアネートと疎水性炭化水素基でエンドキャップされたポリエチレンオキシドとの直鎖反応生成物である。HASEポリマーは、(メタ)アクリル酸のホモポリマー、または(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレートエステル、または疎水性ビニルモノマーで修飾されたマレイン酸のコポリマーである。HMHECには、疎水性アルキル鎖で修飾されたヒドロキシエチルセルロースが含まれる。疎水変性ポリアクリルアミドとしては、アクリルアミドと疎水性アルキル鎖で変性されたアクリルアミド(N-アルキルアクリルアミド)とのコポリマーが挙げられる。特定の実施形態では、コーティング組成物は、疎水性修飾ヒドロキシエチルセルロース増粘剤を含む。
【0115】
消泡剤は、コーティング組成物の混合および/または塗布中の泡立ちを最小限に抑える働きをする。適切な消泡剤としては、ポリシロキサン、ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、およびそれらの組み合わせなどのシリコーン油消泡剤が挙げられる。例示的なシリコーン系消泡剤としては、BYK USA Inc.(ウォリングフォード、コネチカット州)から入手可能なBYK(登録商標)-035、Evonik Industries(ホープウェル、バージニア州)から入手可能なTEGO(登録商標)シリーズの消泡剤、およびAshland Inc.(コビントン、ケンタッキー州)から入手可能なDREWPLUS(登録商標)シリーズの消泡剤が挙げられる。
【0116】
適切な界面活性剤には、非イオン性界面活性剤およびアニオン性界面活性剤が含まれる。非イオン性界面活性剤の例は、約7~約18個の炭素原子のアルキル基を有し、約6~約60個のオキシエチレン単位を有するアルキルフェノキシポリエトキシエタノール;長鎖カルボン酸のエチレンオキシド誘導体;長鎖アルコールの類似のエチレンオキシド縮合物、およびそれらの組み合わせである。例示的なアニオン性界面活性剤としては、スルホスクシネートのアンモニウム塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、および低級アルキル四級アンモニウム塩、高級脂肪アルコール硫酸塩、アリールスルホネート、アルキルスルホネート、アルキルアリールスルホネート、およびそれらの組み合わせが挙げられる。特定の実施形態では、組成物は、BASF SEから市販されている、LUTENSOL(登録商標)TDA 8またはLUTENSOL(登録商標)AT-18などの非イオン性アルキルポリエチレングリコール界面活性剤を含む。特定の実施形態では、組成物は、アニオン性アルキルエーテル硫酸塩界面活性剤を含む。特定の実施形態では、組成物は、Pilot Chemicalから市販されているCALFAX(登録商標)DB-45などのアニオン性ジフェニルオキシドジスルホネート界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、Aeorosol OT75などのアニオン性界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、硫酸塩界面活性剤を実質的に含まない(すなわち、組成物は、0.1%以下(重量基準)を含む)。いくつかの実施形態では、組成物は、スルホネート界面活性剤を実質的に含まない(すなわち、組成物は、0.1%以下(重量基準)を含む)。いくつかの実施形態では、組成物は、硫酸塩界面活性剤およびスルホネート界面活性剤を実質的に含まない(すなわち、組成物は、0.1%以下(重量基準)を含む)。
【0117】
適切な殺生物剤は、貯蔵中のコーティング組成物中の細菌および他の微生物の増殖を阻害するために組み込むことができる。例示的な殺生物剤としては、2-[(ヒドロキシメチル)アミノ]エタノール、2-[(ヒドロキシメチル)アミノ]2-メチル-1-プロパノール、o-フェニルフェノール、ナトリウム塩、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(MIT)、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(CIT)、2-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン(OTT)、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-3-イソチアゾロン、ならびにそれらの許容され得る塩および組み合わせが挙げられる。適切な殺生物剤には、コーティング中のカビまたはその胞子の成長を阻害する殺カビ剤も含まれる。殺カビ剤の例としては、2-(チオシアノメチルチオ)ベンゾチアゾール、3-ヨード-2-プロピニルブチルカルバメート、2,4,5,6-テトラクロロイソフタロニトリル、2-(4-チアゾリル)ベンズイミダゾール、2-N-オクチル4-イソチアゾリン-3-オン、ジヨードメチルp-トリルスルホン、ならびにそれらの許容され得る塩および組み合わせが挙げられる。ある特定の実施形態において、コーティング組成物は、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オンまたはその塩を含有する。このタイプの殺生物剤には、Arch Chemicals,Inc(アトランタ、ジョージア州)から市販されているPROXEL(登録商標)BD20が含まれる。
【0118】
任意に組成物に組み込むことができる他の適切な添加剤としては、レオロジー調整剤、湿潤剤および展着剤、レベリング剤、導電性添加剤、接着促進剤、ブロッキング防止剤、耐破砕剤および耐クローラ剤、凍結防止剤、腐食防止剤、帯電防止剤、難燃剤および膨張性添加剤、染料、蛍光増白剤および蛍光添加剤、UV吸収剤および光安定剤、キレート剤、洗浄性添加剤、架橋剤、平坦化剤、凝集剤、湿潤剤、保湿剤、潤滑剤、着臭剤、油、ワックスおよび滑り止め、土壌撥水剤、防汚剤、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0119】
コーティング組成物は、噴霧、圧延、ブラッシング、または塗布を含む任意の適切なコーティング技術によって表面に塗布することができる。コーティング組成物は、特定の用途に必要に応じて、単一のコーティングで、または複数の連続したコーティング(例えば、2コートまたは3コート)で適用することができる。一般に、コーティング組成物は周囲条件下で乾燥させる。しかしながら、特定の実施形態では、コーティング組成物は、例えば、加熱および/または空気をコーティング上に循環させることによって乾燥させることができる。
【0120】
コーティング組成物は、例えば、紙、板紙、および厚紙を含むがこれらに限定されない様々な表面に塗布することができる。
【0121】
本明細書に記載のコーティング組成物から形成されたコーティングも提供される。一般に、コーティングは、本明細書に記載のコーティング組成物を表面に塗布し、コーティングを乾燥させてコーティングを形成することによって形成される。コーティング厚さは、コーティングの適用に応じて変化し得る。
【0122】
本特許請求される発明の一態様は、本明細書に開示される水性組成物を含む少なくとも1つの層でコーティングされた少なくとも1つの表面を含む基材に関する。本特許請求される発明の一実施形態では、基材は紙または板紙である。
【0123】
本明細書に開示される水性組成物は、水、水分、グリース、油、および/または酸素耐性を付与するために任意の基材と共に使用することができる。本特許請求される発明の一実施形態では、基材は、紙、板紙、または厚紙などのセルロース系基材であり得る。セルロース系基材は、例えば、紙コップ(例えば、使い捨てまたはリサイクル可能な紙コップを含む)、乾燥食品用(例えば、コーヒー、紅茶、粉末スープ、粉末ソースなど)、液体用(例えば、化粧品、洗浄剤、飲料など)、チューブラミネートの、紙製キャリーバッグの、アイスクリーム、菓子類(例えば、チョコレートバー、ミューズリーバー)用の紙ラミネートおよび共押出品の、紙製粘着テープの、厚紙製コップ(例えば、紙コップ)、ヨーグルト容器、スフレコップの、食事用トレイ、または肉用トレイの、巻き段ボール容器(例えば、缶、ドラム)の、外装用の耐湿性カートン(例えば、ワインボトル、食品)の、コーティング段ボール製のフルーツボックスの、ファーストフード用皿の、クランプシェルの、飲料用カートン、洗剤や洗浄剤などの液体用カートン、冷凍食品用カートン、氷の包装(氷コップ、円錐形のアイスクリームウエハースの包装材など)の、紙ラベルの、植木鉢(flower pot)や植木鉢(plant pot)の、紙袋を含むことができる。
【0124】
本特許請求される発明の別の態様は、本明細書に開示される水性組成物を含むコート紙または物品に関する。本特許請求される発明の一実施形態では、本明細書に開示される水性組成物を含むコート紙または物品は、コート紙の約2 g/m2~約30 g/m2の範囲のコーティング重量を有する。本特許請求される発明の一実施形態では、本明細書に開示される水性組成物を含むコート紙または物品は、コート紙の約10 g/m2~約25 g/m2の範囲のコーティング重量を有する。本特許請求される発明の別の実施形態では、コート紙は、ASTM WK20008に従って測定される60℃および60 psiで24時間の3以上の耐ブロック性を有する。本特許請求される発明の別の実施形態では、コート紙は、ASTM WK20008に従って測定して、60℃および60 psiで24時間、4以上の耐ブロック性を有する。本特許請求される発明のさらに別の実施形態では、紙は耐油性および/または耐脂性を示す。
【0125】
本特許請求される発明の別の態様は、セルロース系繊維を本明細書に開示される水性組成物と接触させるステップを少なくとも含む紙の製造方法に関する。本特許請求される発明の一実施形態では、セルロース系繊維を水性組成物と接触させるステップは、セルロース系繊維を含む紙ウェブを、水性組成物を含む水性分散液でコーティングすることを含む。本特許請求される発明の別の実施形態では、セルロース系繊維を本明細書に開示される水性組成物と接触させることは、(i)水性組成物を含む水性分散液をセルロース系繊維と混合してスラリーを形成することと、(ii)セルロース系繊維および水性組成物のスラリーから紙ウェブを形成することと、を含む。
【0126】
本特許請求される発明の別の実施形態において、水性組成物は、基材上にコーティングされる。例えば、水性組成物は、紙ウェブ上にコーティングとして提供され得る。水性組成物は、2 g/m2以上、例えば3 g/m2以上、4 g/m2以上、5 g/m2以上、6 g/m2以上、7g/m2以上、8 g/m2以上、9 g/m2以上、10 g/m2以上、11 g/m2以上、12 g/m2以上、13 g/m2以上、14 g/m2以上、15 g/m2以上、16 g/m2以上、17 g/m2以上、18 g/m2以上、19 g/m2以上、20 g/m2以上、21 g/m2以上、22 g/m2以上、23 g/m2以上、24 g/m2以上、25 g/m2以上、26 g/m2以上、27 g/m2以上、28 g/m2以上または29 g/m2以上のコーティング重量を有することができる。本特許請求される発明の一実施形態では、水性組成物は、30 g/m2以下、例えば、29 g/m2以下、28 g/m2以下、27 g/m2以下、26 g/m2以下、25 g/m2以下、24 g/m2以下、23 g/m2以下、22 g/m2以下、21 g/m2以下、20 g/m2以下、19 g/m2以下、18 g/m2以下、17 g/m2以下、16 g/m2以下、15 g/m2以下、14 g/m2以下、13 g/m2以下、12 g/m2以下、11 g/m2以下、10 g/m2以下、9 g/m2以下、8 g/m2以下、7 g/m2以下、6 g/m2以下、5 g/m2以下、4 g/m2以下、または3 g/m2以下のコーティング重量を有することができる。本特許請求される発明のさらに別の実施形態では、水性組成物は、2 g/m2~30 g/m2、例えば3 g/m2~30 g/m2、4 g/m2~30 g/m2、5 g/m2~30 g/m2、または10 g/m2~25 g/m2のコーティング重量を有することができる。コーティング重量は、セルロース系基材1平方メートル当たりのコーティングのグラムの単位で報告することができ、塗布されたコーティングの量およびコーティングが塗布されるセルロース系基材の表面積によって直接計算することができる。本特許請求される発明の一実施形態では、水性組成物は、コーティングされたセルロース系基材の重量に基づいて、15 重量%未満の量で適用され得る。いくつかの実施形態では、水性組成物は、基材の重量に対して、0.01 重量%~5 重量%、例えば、0.1 重量%~5 重量%、0.5 重量%~5 重量%、0.1 重量%~4 重量%、0.1 重量%~3 重量%、0.1 重量%~2.5 重量%、または0.1 重量%以上、0.5 重量%以上、1 重量%以上、1.5 重量%以上であり得る。
【0127】
本特許請求される発明の一実施形態では、水性組成物は、0.40ミル以上、例えば0.5ミル以上、0.6ミル以上、0.7ミル以上、0.8ミル以上、0.9ミル以上、1ミル以上、1.1ミル以上、1.2ミル以上、1.3ミル以上、1.4ミル以上、1.5ミル以上、1.6ミル以上、1.7ミル以上、1.8ミル以上、1.9以上の厚さを有することができる。本特許請求される発明の一実施形態では、水性組成物は、2ミル以下、例えば1.9ミル以下、1.8ミル以下、1.7ミル以下、1.6ミル以下、1.5ミル以下、1.4ミル以下、1.3ミル以下、1.2ミル以下、1ミル以下、0.9ミル以下、0.8ミル以下、0.7ミル以下、0.6ミル以下、または0.5ミル以下の厚さを有することができる。水性組成物は、いくつかの実施形態では、0.4ミル~2ミル、例えば0.5ミル~1.8ミル未満、0.6ミル~1.6ミル、または0.7ミル~1.5ミルの厚さを有することができる。コーティング厚さは、コーティングの密度およびコーティングされたセルロース系基材の重量に基づいて計算することができる。
【0128】
本特許請求される発明の一実施形態では、コーティングに水性組成物が提供される。本特許請求される発明の別の実施形態では、コーティングは、基材の1つ以上の表面上にあり得る。本特許請求される発明の目的のために、基材は、紙コップまたは紙袋も指す。紙コップは、内面、外面、底部、および側部を有することができる。水性組成物は、紙コップの第1の表面および/または第2の表面上にあり得る。第1の表面は、側部の内面および/または底部の内面のうちの1つ以上を含むことができる。いくつかの実施形態では、内面の一部のみ、例えば10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、またはすべてが、コーティングされる。本特許請求される発明の一実施形態では、内面全体が、コーティングされている。本特許請求される発明の一実施形態では、第2の表面は、側部の外面および/または底部の外面のうちの1つ以上を含む。本特許請求される発明の別の実施形態では、外面の一部のみ、例えば10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、またはすべてが、コーティングされる。本特許請求される発明のさらに別の実施形態では、外面全体がコーティングされている。
【0129】
水性組成物は、ミルまたは印刷法で抄紙機を使用してセルロース系基材上にコーティングされ得る。
【0130】
本特許請求される発明の一実施形態では、水性組成物は、基材、例えばセルロース系繊維で形成された紙ウェブ全体に提供される。本特許請求される発明のさらに別の実施形態では、水性組成物は、いずれの場合も基材の重量に対して、基材の重量に対して4 重量%~30 重量%、例えば5 重量%~30 重量%、5 重量%~29 重量%、5 重量%~28 重量%、5 重量%~27 重量%、5 重量%~26 重量%、5 重量%~20 重量%、または4 重量%以上、5 重量%以上、6 重量%以上、7 重量%以上、8 重量%以上、9 重量%以上、もしくは10 重量%以上からであり得る。
【0131】
水性組成物は、水性組成物を基材に添加するための当技術分野で公知の任意の方法を使用して、セルロース系基材などの基材に添加され得る。本特許請求される発明の一実施形態では、方法は、セルロース系繊維を含む紙ウェブを、水性組成物を含む水性分散液でコーティングすることを含むことができる。本特許請求される発明の別の実施形態において、方法は、水性組成物を含む水性分散液を紙ウェブ上に噴霧することを含むことができる。本特許請求される発明のさらに別の実施形態では、方法は、水性組成物を含む水性分散液を、セルロース系繊維を含む水性スラリーと混合して混合物を形成すること、およびセルロース系繊維と水性組成物との混合物から紙ウェブを形成することを含むことができる。
【0132】
本特許請求される発明の一実施形態では、水性組成物は、水性組成物を含まない用途と比較して、基材に耐水性、耐湿性、グリース耐性、耐油性および/または酸素耐性を付与することができる。基材はまた、漏れまたは汚染の低減または排除を示し得る。水性組成物を含む基材の耐液水性および耐水蒸気性は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるTAPPI T 441(2001)に記載されているCobb法で試験することができる。この方法は、標準化された条件下で指定された時間に紙、板紙、および段ボールによって吸収される液体の水または水蒸気の量を決定する。本特許請求される発明の一実施形態では、本明細書に記載のコーティングされた基材は、この試験方法に記載の耐水性試験に合格する。吸水性は、これらに限定されないが、サイジングおよび多孔性を含む紙または板紙の様々な特性の関数であり得る。
【0133】
本特許請求される発明の一実施形態では、30分間にわたって、水性組成物を含む基材は、Tappi T441によって決定されるように、約10 g/m2以上、約12 g/m2以上、約14 g/m2以上、約16 g/m2以上、約18 g/m2以上、約20 g/m2以下、約22 g/m2以下、約24 g/m2以下、約26 g/m2以下、約30 g/m2以下のCobb値、またはこれらの終点によって包含される任意の値を示すことができる。
【0134】
さらに、本明細書に記載の水性組成物を含む基材は、最終的な紙製品に切断/形成する前に、ブロッキングの傾向、すなわち、コーティングされた表面の別のコーティングされた表面への接着、または紙ロール上に巻かれたときの押出コート紙のコーティングされていない表面へのコーティングされた表面の接着を、最小限に示し得る。耐ブロッキング性は、ASTM WK20008に記載されているI.C.Block testerを使用して試験することができる。
【0135】
非限定的な例示として、本開示の特定の実施形態の例を以下に示す。
【実施例】
【0136】
本特許請求される発明の態様は、本発明の特定の態様を説明するために記載され、その限定として解釈されるべきではない以下の実施例によってより完全に説明される。
【0137】
材料:
水性組成物に使用されたモノマー略語は、以下の通りである。
【0138】
AAは、Aldrich Chemical Companyから入手したアクリル酸の略語である。
【0139】
BAは、Aldrich Chemical Companyから入手したn-ブチルアクリレートの略語である。
【0140】
MAAは、Aldrich Chemical Companyから入手したメタクリル酸の略語である。
【0141】
MMAは、Aldrich Chemical Companyから入手したメチルメタクリレートの略語である。
【0142】
AMSは、Aldrich Chemical Companyから入手したα-メチルスチレンである。
【0143】
2-EHAは、Aldrich Chemical Companyから入手した2-エチルヘキシルアクリレートの略語である。
【0144】
STYは、Aldrich Chemical Companyから入手したスチレンの略語である。
【0145】
APSは、Aldrich Chemical Companyから入手した過硫酸アンモニウムの略語である。および
【0146】
TBHPは、Aldrich Chemical Companyから入手したtert-ブチルヒドロペルオキシドの略語である。
【0147】
イソアスコルビン酸は、Aldrich Chemical Companyから入手する。
【0148】
Filtrez(商標)530は、高い軟化点および高い酸価、Tg=105.8℃;酸価=195 mgKOH/グラム;Gardner-Holdtによる粘度G(2.3秒)、60% NVエタノール、25℃;Mn=656 Da.;Mw=2011 Da.;PDI=3.07を有するアルコール可溶性フマル酸変性ロジンエステルであり、Lawterから入手可能である。
【0149】
Filtrez(商標)531は、高い軟化点および中程度に高い酸価(Tg=105℃);酸価=176 mgKOH/グラム;Gardner-Holdtによる粘度L(3.6秒)、60% NVエタノール、25℃;Mn=746 Da.;Mw=3636 Da.;PDI=4.87を有するアルコール可溶性フマル酸変性ロジンエステルであり、Lawterから入手可能である。
【0150】
Filtrez(商標)3320は、マレイン酸変性ロジンエステルであり、融点=123℃;酸価=64 mgKOH/グラム;粘度D(1.4秒、Gardner-Holdtにより、60% NVトルエン、25℃);Mn=875 Da.;Mw=2516 Da.;PDI=2.88であり、Lawterから入手可能である。
【0151】
Filtrez(商標)5014Aは、アルコール可溶性フマル酸変性ロジンエステルであり、Tg=85℃;酸価=175 mgKOH/グラム;Gardner-Holdtによる粘度J(3.1秒)、60% NVエタノール、25℃;Mn=760 Da.;Mw=6605 Da.;PDI=8.69であり、Lawterから入手可能である。
【0152】
Calfax DB 45は、パイロットから入手可能なC12(分岐)ナトリウムジフェニルオキシドジスルホネートである。
【0153】
エアロゾルOT75は、Solvayから入手可能なジオクチルスルホコハク酸ナトリウム溶液、界面活性剤である。
【0154】
Disponil AFX1080は、BASFから入手可能なアルキルアリールポリグリコールエーテルサルフェート、アンモニウム塩、乳化剤である。
【0155】
試験方法:
分子量測定:ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)スペクトルをWaters 2695機器で取得し、これを使用して、40℃で移動相としてテトラヒドロフラン(THF)およびRI検出器を使用してポリマーの分子量を測定した。すべてのサンプルを、ポリスチレン分子量標準に対して較正された溶出時間を使用して、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)および多分散性(PDI)について分析した。
【0156】
固形分測定:分散液の固形分は、約0.5 g~約2 gの分散液サンプルを140℃のオーブン中で1時間乾燥させることによって重量測定により測定した。
【0157】
粘度測定:粘度は、20℃~25℃でBrookfield LVによって測定した。
【0158】
体積平均粒径を含む粒径決定:分散液の粒径は、Microtrac製のナノフレックス粒径計を使用して測定した。
【0159】
酸価測定:ASTM D664-95に従って電位差滴定によって酸価(acid value)または酸価(acid number)を測定した。
【0160】
ガラス転移温度測定:ガラス転移温度(Tg)を、ASTM D3418-15に従って示差走査熱量測定(DSC)によって測定した。
【0161】
最低膜形成温度(MFFT)決定:MFFTはASTM D2354-10に従って測定した。
【0162】
耐ブロック性:耐ブロック性試験は、ASTM WK20008に従って測定した。耐ブロック性試験を実施して、加圧下および高温でのポリマー結合剤がそれ自体およびコーティングされていない紙に付着する耐性を決定した。試験は、標準温度、圧力、および時間にさらされたときにコーティングされた基材が受ける粘着性および損傷の程度を測定する。コート紙料のロールは、紙の均一性に応じて、最大60 psiの内圧を達成することができる。熱帯条件下(30℃および95%の相対湿度)で保管または輸送されると、コート紙層が一緒に粘着する可能性があり、最悪のシナリオでは、紙またはコーティングが著しく損傷する可能性がある。耐ブロック性試験を50℃および60 psiで24時間行った。サンプルを1×3インチに切断し、2枚のシートをブロック試験装置内でコーティング・ツウ・ペーパー(フェイス・ツウ・バック、F-B)またはコーティング・ツウ・コーティング(フェイス・ツウ・フェイス、F-F)で積層した。次いで、ばねを層の上に配置して、サンプルに一定量の圧力を加えた。装置全体を50℃で24時間の湿潤条件が可能なオーブンに入れた。この試験には、Koehler Instrument K53000 I.C.ブロック試験機を使用した。ブロック試験が完了したら、サンプルを取り出し、サンプルのタックおよび損傷について監視した。以下、評価システムについて説明する。
【0163】
耐ブロック性試験の評価システム。
【0164】
【0165】
Cobb試験。Cobb試験は、TAPPI T 441(2001)に従って測定された。この方法は、標準化された条件下で指定された時間に非吸収性紙、板紙および段ボールによって吸収される水の量を決定するための手順を記載する。これは、CobbおよびLowe、Cobbおよび他の研究者による研究に基づいている。吸水率は、サイジング、多孔性などの紙または板紙の様々な特性の関数である。この方法は、一般に、サイジングされた紙、板紙および段ボール繊維板に適用可能である。適切な試験を行うために、5枚(8.5インチ×11インチ)のシートが使用される。一般に、5枚の反復試験片の紙を試験する。
【0166】
ヒートシール試験。ヒートシール試験は、ASTM F2029に従って測定した。半自動ヒートシーラーを使用して、特定の温度、圧力、およびシール時間(例えば、1秒間の滞留時間、40psi、125~250℃)でASTM F2029に従ってサンプルをシールした。プラスチックフィルム、ラミネートフィルムおよび他の包装フィルムのホットタック試験を決定するために、ホットタック剥離強度試験機が使用される。一方、接着剤およびラミネートフィルムの剥離、剪断、引張および他の試験項目にも使用される。
【0167】
実施例1:1つのモノマー供給物を使用する35%のフマル酸変性ロジンエステル含有量を含むポリマー樹脂分散液の合成
冷却器、温度計、窒素注入口およびオーバーヘッド撹拌機を備えた反応容器に、脱イオン水(90.8グラム)、Calfax DB45(1.25グラム、45%固形分)およびフマル酸変性ロジンエステル分散液(Filtrez 531、506.5グラム、28%固形分)を添加し、窒素流下で70℃に加熱した。イソアスコルビン酸(2.26グラム)、水酸化アンモニウム(1.12グラム、29%)および脱イオン水(27.74グラム)を添加し、撹拌しながら2~3分間保持した。硫酸銅(0.02グラム)および脱イオン水(8.56グラム)を添加し、撹拌しながら3~5分間保持した。モノマー供給混合物(メチルメタクリレートMMA、55.94グラム;n-ブチルアクリレートBA、128.13グラム;エアロゾルOT75、4.62グラム(75%固形分);および2-エチルヘキシルアクリレート2-EHA、82.05グラム)を100分間にわたって添加し、続いて2.85グラムの脱イオン水でフラッシュした。開始剤供給(43.81グラムの脱イオン水中のtertiary-ブチルヒドロペルオキシド(3.37グラム、70 重量%))をモノマー供給と同時に開始し、100分間継続し、続いて30分間保持した。2つの別個の溶液(エリソルビン酸ナトリウム、19.27グラム、脱イオン水1.5g中固形分12%)および(tertiary-ブチルヒドロペルオキシド、1.41グラム、70 重量%、8.46グラムの脱イオン水中)を60分間にわたって同時に添加し、続いて30分間保持した。反応塊を30℃に冷却し、濾過した。35%のフマル酸変性ロジンエステル含有量を含有する所望の水性ポリマー樹脂分散液を以下の特性で得た:固形分=39.9 重量%;Tg=-26℃;pH=8.6;粒径(体積平均直径、dv)=222 nm;Mn=23.82 kDa Mw=69.72 kDa、PDI=2.97;粘度=28 cps。
【0168】
実施例2:1つのモノマー供給物を使用する様々な濃度のフマル酸変性ロジンエステル含有量を含むポリマー樹脂分散液の合成
実施例1の合成手順に従って、様々な濃度のフマル酸変性ロジンエステル含有量を含有する6つの異なる実施例の水性ポリマー樹脂分散液を合成した。特性を以下の表1に示す。
【0169】
【0170】
実施例3:2つのモノマー供給物を使用する35%のフマル酸変性ロジンエステル含有量を含むポリマー樹脂分散液の合成
冷却器、温度計、窒素注入口およびオーバーヘッド撹拌機を備えた反応容器に、脱イオン水(90.8グラム)、Calfax DB45(1.25グラム、45%固形分)およびフマル酸変性ロジンエステル分散液(Filtrez 531、503グラム、28%固形分)を添加し、窒素流下で70℃に加熱した。イソアスコルビン酸(2.19グラム)、水酸化アンモニウム(1.04グラム、29%)および脱イオン水(26.06グラム)を添加し、撹拌しながら3分間保持した。硫酸銅(0.02グラム)および脱イオン水(8.56グラム)を添加し、撹拌しながら3分間保持した。第1のモノマー混合物(メチルメタクリレートMMA、31.66グラム;n-ブチルアクリレートBA、62.52グラム;エアロゾルOT75、2.28グラム(75%固形分);および2-エチルヘキシルアクリレート2-EHA、37.73グラム)を50分かけて添加した。最初の添加後、第2のモノマー混合物(メチルメタクリレートMMA、84.42グラム;n-ブチルアクリレートBA、34.3グラム;エアロゾルOT75、2.28グラム(75%固形分);および2-エチルヘキシルアクリレート2-EHA、13.19グラム)を50分かけて添加し、続いて4.5グラムの脱イオン水でフラッシュした。開始剤供給(42.7グラムの脱イオン水中のtert-ブチルヒドロペルオキシド(3.28グラム、70重量%))をモノマー供給と同時に開始し、100分間継続し、続いて後重合中に撹拌しながら30分間保持した。2つの別個の溶液(エリソルビン酸ナトリウム19.27グラム(12%固形分)の1.5グラム脱イオン水中)および(8.43グラムの脱イオン水8.43グラム中のtert-ブチルヒドロペルオキシド(1.41グラム、70 重量%))を60分にわたって同時に添加し、続いて30分間保持した。反応物を30℃に冷却し、濾過した。35%のフマル酸変性ロジンエステル含有量を含有する所望の水性ポリマー樹脂分散液を以下の特性で得た:固形分=40 重量%;Tg=6C;pH=8.7;粒径(体積平均直径、dv)=225 nm;Mn=28.65 kDa Mw=84.48 kDa、PDI=2.95;粘度=34 cPs。
【0171】
実施例4:2種のモノマー供給物を使用した40%のフマル酸変性ロジンエステル含有量を含むポリマー樹脂分散液の合成
実施例3の手順に従って、40%のフマル酸変性ロジンエステル含有量を含有する所望のポリマー樹脂分散液を以下の特性で得た:固形分=39.8 重量%;Tg=5C;pH=8.6;粒径(体積平均直径、dv)=180 nm;Mn=24.22 kDa Mw=73.12 kDa;PDI=3.02;粘度=29 cPs。
【0172】
実施例5:過硫酸アンモニウム開始剤と比較したレドックス開始剤
以下の比較実施例2でさらに説明するように、様々な量のロジンおよび異なる開始剤、レドックス開始剤としてのtert-ブチルヒドロペルオキシドまたは熱開始剤としての過硫酸アンモニウム(APS)のいずれかを使用して、3つのエマルジョンを調製した。使用した開始剤に応じて異なる温度でエマルジョンを処理した。熱開始剤を使用する場合、反応物を85℃に加温した。レドックス開始剤を使用する場合、反応を70℃で行った。経時的なパーセント変換を測定し、表2に示す。そこに示されるように、レドックス開始剤を使用する調製物は両方ともほぼ完全な変換を達成したが、APSを使用する調製物はよりゆっくりと反応し、100%の変換には達しなかった。
【0173】
【0174】
実施例6:ロジンのパーセンテージの関数としての吸水および耐ブロック性
8つのエマルジョン配合物を有効性について試験した。比較実施例はスチレンを含有し、残りの実施例はスチレンを含まない。具体的には、様々な量のロジンエステルを含む配合物について、吸水性および耐ブロック性を試験し、結果を表3に示した。
【0175】
【0176】
示されるように、それぞれ35または40%のロジンと共に供給物1および供給物2のモノマーを含む配合物は、吸水について好ましい結果および耐ブロッキング性について同等の結果を示した。
【0177】
実施例7:コーティングの吸水および耐ブロック性
2つの異なるスチレンを含まないエマルジョンを、ロジンエステル(35%)を使用して配合した。多層粒子は、5~7℃のTgを示した。使用した疎水性モノマーは、メチルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、および2-エチルヘキシルアクリレートであり、重量比は、1:1.97:1.19であった。モノマーの比は、供給物1と供給物2が50:50であった。使用した開始剤は、tert-ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)およびアスコルビン酸を含むレドックス開始剤であった。重合温度は、70℃であった。一方のエマルジョンは官能性モノマーとしてアクリル酸(AA)を含み(ロジンエマルジョン1)、他方のエマルジョンは官能性モノマーなしで調製した(ロジンエマルジョン2)。エマルジョンを、SBSボードおよびC1Sボードの両方で標準的なエマルジョンに対して試験して、吸水および耐ブロック性を決定した。試験したエマルジョンの特性を以下の表4に示す。
【0178】
【0179】
ボードを、ロッドコーティング塗布またはフレキソアニロックス塗布のいずれかを使用してコーティングした。ロッドコーティングには、1/0ロッドを5~8 g/m2の荷重で使用した。コーティングを60℃で1分間乾燥させ、次いで、相対湿度50%、25℃で1~4日間コンディショニングした。Cobb試験は、室温で30分間行った。耐ブロック性試験は、60ポンドの力下で、50℃で24時間にわたって実施した(コーティングからコーティングおよび基材へのコーティング)。
【0180】
フレキソアニロックス塗布のために、使用したアニロックスは、6~7 g/m2の荷重を有する2×120 Lpiアニロックスであった。フレキソプレートを80℃で1分間乾燥させ、次いで25℃および相対湿度50%で1~4日間コンディショニングした。Cobb試験は、室温で20分間行い、耐ブロッキング性試験は、ロッドコーティング塗布について記載したように行った。
【0181】
SBS単独ならびにC1S単独の吸水および耐ブロッキング性を、上記の配合物を使用してロッドまたはフレキソコーティングされたボードに対して試験した。使用した板紙およびコーティング方法と共に、ロジンエマルジョン1および2ならびに標準の浸透およびCobb値を以下の表5に示す。
【0182】
【0183】
表5に示すように、本開示のエマルジョンは、現在入手可能なエマルジョンと一致しているかまたは改善されている。
【0184】
実施例8:表面張力
次いで、上記の2つのロジンエマルジョンを標準に対して試験して、ロッドコーティングまたはフレキソ法のいずれかを使用して適用された、SBS板紙上のコーティングの総表面エネルギーを決定した。結果を以下の表6に示す。基準として、水の表面張力は72.8 mN/m(ミリニュートン/メートル)であり、比較実施例1の表面張力は、41.7 mN/mであり、ロジンエマルジョン1および2は約34.5 mN/mである。
【0185】
【0186】
実施例9:加水分解安定性
2つのエマルジョン調製物を50℃で加水分解安定性について試験した。示された貯蔵期間後に酸価および分子量の両方を決定することによって安定性を決定した。結果を以下の表7に示す。
【0187】
【0188】
実施例10:50℃貯蔵での加水分解安定性
本発明の種々の水性ポリマー樹脂を50℃で加水分解安定性について試験した。安定性は、示された貯蔵期間後の沈降、相分離および凝固の検査によって決定した。結果を以下の表8に示す。貯蔵期間の終わりとは対照的に、重合プロセスの終わりにグリット%を決定した。貯蔵安定性に関して、良好/安定の評価は、凝集なし、相分離なし、および沈降なしを示す。
【0189】
【0190】
実施例11:ヒートシール試験
ヒートシール試験は、ASTM F2029に従って測定した。ロジンエマルジョン2のヒートシール試験を、C1S紙に5~6 gsm(グラム/平方メートル)の理論コート重量を塗布したコーティングの二重層を用いて、異なる温度(140℃~240℃)で行った。エマルジョンは、表9に示すように、比較実施例1よりも優れたヒートシール性能を示した。
【0191】
【0192】
実施例12:2つのモノマー供給物を使用する35%のフマル酸変性ロジンエステル含有量を含むポリマー樹脂分散液の合成
冷却器、温度計、窒素導入口およびオーバーヘッド撹拌機を備えた反応容器に、脱イオン水(18グラム)、Disponil AFX 1080(2.55グラム、80%固形分)およびフマル酸変性ロジンエステル分散液(Filtrez 5014A、545グラム、固形分28.2%)を添加し、窒素流下で70℃に加熱した。イソアスコルビン酸(2.45グラム)、水酸化アンモニウム(1.12グラム、29%)および脱イオン水(23.01グラム)を添加し、撹拌しながら3分間保持した。硫酸銅(0.03グラム)および脱イオン水(2.85グラム)を添加し、撹拌しながら3分間保持した。第1のモノマー混合物(メチルメタクリレートMMA、35.3グラム;n-ブチルアクリレートBA、64.89グラム;アクリル酸、1.86グラム;エアロゾルOT75、2.29グラム、(75%固形分);および2-エチルヘキシルアクリレート2-EHA、40.88グラム)を50分かけて添加した。次いで、第2のモノマー混合物(メチルメタクリレートMMA、89.3グラム;n-ブチルアクリレートBA、37.45グラム;アクリル酸、1.86グラム;エアロゾルOT75、2.29グラム(75%固形分);および2-エチルヘキシルアクリレート2-EHA、14.3グラム)を50分間にわたって添加し、続いて4.5グラムの脱イオン水でフラッシュした。開始剤供給(tertiary-ブチルヒドロペルオキシド、3.61グラム、70 重量%、46.93グラムの脱イオン水中)をモノマー供給と同時に開始し、100分間継続し、続いて後重合中に撹拌しながら30分間保持した。2つの別個の溶液(エリソルビン酸ナトリウム、19.27グラム、1.5グラム脱イオン水中12%固形分)および(tertiary-ブチルヒドロペルオキシド、2.97グラム、70 重量%、17.83グラムの脱イオン水中)を30分間にわたって同時に添加し、続いて30分間保持した。反応物を30℃に冷却し、濾過した。35%のフマル酸変性ロジンエステル含有量を含有する所望の水性ポリマー樹脂分散液を以下の特性で得た:固形分=45.7 重量%;Tg=5C;pH=8.13;粒径(体積平均直径、dv)=159 nm;Mn=23.85 kDa、Mw=135.26 kDa、PDI=5.67;粘度=58.50 cPs。
【0193】
比較実施例1:部分的に中和された酸官能性支持樹脂を含むアクリルエマルジョンポリマーの合成
以下に記載される酸官能性ポリマーは、米国特許第5,461,60号明細書、同第4,414,370号明細書および同第4,529,787号明細書(これらは全て参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるような高温連続重合プロセスによって調製された。均一な環境で比較的高温で連続フリーラジカル重合プロセスを使用してポリマーを作製した。高い反応温度は、連鎖移動剤を使用せずに低分子量ポリマーを生成する。重合ステップ後、樹脂を脱揮装置に通して、未反応モノマーおよびプロセス溶媒を除去した。上記の手順を用いて、ポリマー(酸官能性ポリマー樹脂)を30 重量%のα-メチルスチレン、33 重量%のスチレン%、6 重量%の2-エチルヘキシルアクリレート、および31 重量%の以下の特性を有するアクリル酸:Tg=141℃;酸価=227 mgKOH/グラム;Mn=3.4 kDa;PDI=2.88;およびMw=9.75 kDa、から作製した。
【0194】
上記の酸官能性ポリマーを、撹拌および加熱下で酸基の画分を塩基で中和することによって水中に分散させた。例えば、28.5 重量%固形分での水性ポリマー樹脂分散液を、上記で合成した220グラムのポリマー樹脂を473.7グラムの脱イオン水および50.3グラムのアンモニア(29 重量%活性)に、冷却器およびオーバーヘッドスターラーを備えた反応容器に添加することによって、調製した。この混合物を撹拌下で88℃~92℃に加熱し、4時間保持した後、室温に冷却し、濾過して、以下の特性を有するポリマー分散液を得た:ポリマー固形分=28.5 重量%;pH=8.0;粘度=200 cPs;および粒径(体積平均直径、dv)=<10 nm。
【0195】
上記の部分的に中和された酸官能性支持樹脂の合成に続いて、レオロジーが制御されたアクリルエマルジョンポリマーの合成を完了させた。冷却器、温度計、窒素注入口およびオーバーヘッド撹拌機を備えた反応容器に、脱イオン水(31.1グラム)および上記のポリマー樹脂支持体分散液(93.4グラム、28.5%固形分)を添加し、窒素流下で82℃に加熱した。過硫酸アンモニウム(0.66グラム)および脱イオン水(51.2グラム)を添加し、撹拌しながら3分間保持した。モノマー混合物(メチルメタクリレート、17グラム;ブチルアクリレート、38.8グラム;および2-エチルヘキシルアクリレート、24.9グラム)を90分間にわたって添加し、続いて1.3グラムの脱イオン水でフラッシュし、30分間保持した。tert-ブチルヒドロペルオキシド(0.4グラム)および脱イオン水(2.38グラム)を添加し、10分間保持した。エリソルビン酸ナトリウム(1.4グラム)および脱イオン水(3.2グラム)を15分かけて添加し、10分間保持した。反応物を周囲温度に冷却し、濾過した。以下の特性を有する所望のポリマー樹脂エマルジョンを得た:25℃での粘度は、Brookfield LV、スピンドル#3によって30 rpm、30秒で測定して、1150 cpsである;固形分は48 重量%である;Tg=-27C;MFFT=<5C;酸価=64 mgKOH/グラム;粒径(体積平均直径、dv)=81 nm;およびMw=826 kDa。
【0196】
比較実施例2:1つのモノマー供給物を使用する25%のフマル酸変性ロジンエステル含有量を含むポリマー樹脂分散液の合成
冷却器、温度計、窒素導入口およびオーバーヘッド撹拌機を備えた反応容器に、脱イオン水(319グラム)、Disponil AFX1080(2.5グラム、80%固形分)およびフマル酸変性ロジンエステル分散液(Filtrez 531、313.8グラム、28.3%固形分)を添加し、窒素流下で85℃に加熱した。第1の開始剤(過硫酸アンモニウムAPS 100%(1.35グラム)および脱イオン水(12.15グラム))を添加し、3~5分間保持した。モノマー混合物(メチルメタクリレートMMA、125.21グラム;n-ブチルアクリレートBA、79.5グラム;エアロゾルOT75、4.38グラム(75%固形分);および2-エチルヘキシルアクリレート2-EHA、58.13グラム)を120分間にわたって添加し、続いて15グラムの脱イオン水でフラッシュした。開始剤供給(過硫酸アンモニウムAPS 100%(1.35グラム)および脱イオン水(12.15グラム))をモノマー供給の60分後に開始し、撹拌しながら60分間継続した。APSおよびモノマー供給の終了時に、反応混合物を後重合中に撹拌しながら30分間保持した。2つの別個の溶液:エリソルビン酸ナトリウム、19.27グラム、12%固形分;1.9グラムの脱イオン水に溶解し、17.83グラムの脱イオン水17.83グラム中のtert-ブチルヒドロペルオキシド(2.97グラム、70重量%)を30分かけて同時に添加し、続いて30分間保持した。反応物を30℃に冷却し、濾過した。25%のフマル酸変性ロジンエステル含量を含有する所望のポリマー樹脂分散液は、以下の特性で得られる:固形分=34.6 重量%;Tg=-26C;pH=8.3;粒径(体積平均直径、dv)=1851 nm;Mn=40.62 kDa、Mw=119.80 kDa;PDI=2.95;粘度=16 cps。
【国際調査報告】