(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-22
(54)【発明の名称】ポリサルコシン-ビタミンE誘導体
(51)【国際特許分類】
A61K 47/62 20170101AFI20250115BHJP
A61K 9/127 20250101ALI20250115BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20250115BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20250115BHJP
A61K 8/88 20060101ALI20250115BHJP
A61K 31/355 20060101ALI20250115BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20250115BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250115BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20250115BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250115BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20250115BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20250115BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20250115BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20250115BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20250115BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20250115BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20250115BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20250115BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20250115BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20250115BHJP
C08G 69/48 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
A61K47/62
A61K9/127
A61K9/51
A61K45/00
A61K8/88
A61K31/355
A61P25/00
A61P35/00
A61P31/00
A61P43/00
A61P9/10
A61P25/28
A61P37/04
A61P29/00
A61P17/02
A61P17/00
A61P25/16
A61P25/14
A61P19/00
A23L33/10
C08G69/48
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536138
(86)(22)【出願日】2022-12-16
(85)【翻訳文提出日】2024-08-06
(86)【国際出願番号】 EP2022086403
(87)【国際公開番号】W WO2023111290
(87)【国際公開日】2023-06-22
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524026366
【氏名又は名称】ポリペプチド セラピューティック ソリューションズ,エス.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】モレロー ボルマー,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ミラヴェット マルティ,ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】アロンソ デ カストロ,シルヴィア
(72)【発明者】
【氏名】ヴィセント,ドーコン,マリア ジーザス
(72)【発明者】
【氏名】ネボット,カルダ,ヴィセント ジョゼップ
【テーマコード(参考)】
4B018
4C076
4C083
4C084
4C086
4J001
【Fターム(参考)】
4B018MD18
4B018MD26
4B018ME14
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4B018MF02
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4J001DA01
4J001DB01
4J001DB10
4J001DD01
4J001DD03
4J001DD08
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4J001GB06
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4J001GD07
4J001GD08
4J001GE02
4J001JA20
4J001JB01
4J001JB03
(57)【要約】
本発明は、ビタミンEベース部分に直接またはリンカーを介して共有結合的に結合されている、繰り返しサルコシンをベースとする単位を含むポリマー、それらの許容される塩、立体異性体および混合物ならびにこれらのポリマーを含む式(II)の複合体に関する。許容される賦形剤または担体と共に本ポリマーおよび/または式(II)の複合体を含む栄養補助食品、医薬、診断および化粧品組成物ならびに本ポリマーおよび/または式(II)の複合体および任意に自己組織化粒子内にカプセル化された薬剤を含む自己組織化粒子も提供する。本発明は、ポリサルコシン-ビタミンE誘導体および/またはそれらの複合体の医薬および診断における使用ならびに可溶化剤、吸収および浸透促進剤、乳化剤または表面安定化剤としての使用にも関する。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビタミンEベース部分に直接またはリンカーを介して共有結合的に結合されている、繰り返しサルコシンをベースとする単位を含むポリマー、またはそれらの医薬、栄養補助食品もしくは化粧品的に許容される塩、あるいは前記ポリマーのいずれかまたはそれらの塩のいずれかの任意の立体異性体または立体異性体の混合物
(ここでは、前記繰り返しサルコシンをベースとする単位は、式(XXIII):
【化1】
を有し、
式中、
R
5はメチル、-CH
2F、-CHF
2および-CF
3からなる群から選択され、R
6およびR
7は独立して水素およびフッ素からなる群から選択され、かつnは5~500の整数であり、かつ前記ビタミンEベース部分は、式(XXIV):
【化2】
を有し、式中、R
2、R
3およびR
4は独立して水素、フッ素、メチル、-CH
2F、-CHF
2および-CF
3からなる群から選択され、かつ破線結合-----はそれぞれ独立して単結合または代わりとして二重結合である)。
【請求項2】
式(I):
【化3】
を有し、
式中、
PAAは式(XXI)および式(XXII):
【化4】
から選択される繰り返しサルコシンをベースとする単位であり、
式中、
「
*1」は、XまたはR
1への前記繰り返しサルコシンをベースとする単位PAAの結合点を示し、「
*2」は、前記ビタミンEベース部分のリンカーLまたは酸素原子への前記繰り返しサルコシンをベースとする単位PAAの結合点を示し、
前記繰り返しサルコシンをベースとする単位PAAが式(XXI)を有する場合にmは1であるという条件で、mは0または1であり、
前記繰り返しサルコシンをベースとする単位PAAが式(XXI)を有する場合にzは1であり、かつ前記繰り返しサルコシンをベースとする単位PAAが式(XXII)を有する場合にzは0であるという条件で、zは0または1であり、
R
1は、-(C
1~C
12)アルキル、-(C
1~C
12)アルキルフェニル、-(C
1~C
6)アルキル-O-(C
1~C
6)アルキル、-CO-(C
1~C
12)アルキル、-CO-(C
1~C
12)アルキルフェニルおよび-CO-(C
1~C
6)アルキル-O-(C
1~C
6)アルキルからなる群から選択され、ここではR
1は任意に、ハロゲン、-OH、-NR
aR
b、-SH、-NHNH
2、-COOR
c、-CF
3および-OCF
3からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換されており、
R
2、R
3およびR
4は独立して水素、フッ素、メチル、-CH
2F、-CHF
2および-CF
3からなる群から選択され、
R
5はメチル、-CH
2F、-CHF
2および-CF
3からなる群から選択され、
R
6およびR
7は独立して水素およびフッ素からなる群から選択され、
nは5~500の整数であり、
Xは-O-または-NH-であり、かつ
Lは、-CH=CH-、-C≡C-、-CH
2-、-N=CH-、-CH=NH-、-NH-、-NH-NH-、-NH-N=CH-、-O-、-O(CH
2)O-、-CO-、-O(CO)-、-(CO)O-、-C(=CH
2)-、-C(=NH)-、-CONH-、-NHCO-、-NH(CO)NH-、-S-、-S-S-、-SO-、-SO
2-、-SO
2NH
2-および-フェニレン-からなる群から選択される1つ以上の部分を含むビラジカル鎖であり、ここではLは任意に、ハロゲン、-OH、-NR
aR
b、-SH、-NHNH
2、-COOR
c、-CF
3、-OCF
3、
【化5】
からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換されており、
式中、Lが-CH
2-部分を含む場合、その炭素原子に結合された2つの水素原子は任意に以下の環:
【化6】
によって置換されており、
PAAが式(XXI)の繰り返しサルコシンをベースとする単位である場合、Lは、アミド結合、カルバメート結合、尿素結合およびアミン結合からなる群から選択される化学的に可能な結合によって前記PAAの窒素原子に結合されており、かつPAAが式(XXII)の繰り返しサルコシンをベースとする単位であり、かつmが1である場合、Lは、アミド結合およびエステル結合からなる群から選択される化学的に可能な結合によって前記PAAのカルボニル基に結合されており、
Lは、エステル結合、カルバメート結合およびエーテル結合からなる群から選択される化学的に可能な結合によって前記ビタミンEベース部分の酸素原子に結合されており、かつ
前記破線結合-----はそれぞれ独立して単結合または代わりとして二重結合であり、かつ
R
a、R
bおよびR
cは独立して、H、-フェニル、-(C
1~C
6)アルキル、-(C
2~C
6)アルケニル、-(C
1~C
6)アルキルフェニルおよび-フェニル(C
1~C
6)アルキルからなる群から選択されるラジカルである、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
nは5~50の整数である、請求項1~2のいずれかに記載のポリマー。
【請求項4】
R
5はメチルであり、かつR
6およびR
7は水素である、請求項1~3に記載のポリマー。
【請求項5】
R
2、R
3およびR
4はメチルであり、かつ前記破線結合-----はそれぞれ単結合である、請求項1~4のいずれかに記載のポリマー。
【請求項6】
前記繰り返しサルコシンをベースとする単位PAAが式(XXI)を有し、zは1であり、かつmは1である、請求項2~5のいずれかに記載のポリマー。
【請求項7】
zは1であり、かつXは-NH-である、請求項6に記載のポリマー。
【請求項8】
前記繰り返しサルコシンをベースとする単位PAAは式(XXII)を有し、かつzは0である、請求項2~5のいずれかに記載のポリマー。
【請求項9】
式(II):
【化7】
(II)
の複合体、またはそれらの医薬、栄養補助食品もしくは化粧品的に許容される塩、あるいは式(II)の複合体のいずれかまたはそれらの塩のいずれかの任意の立体異性体または立体異性体の混合物
(式中、
m、PAA、X、n、L、R
2、R
3、R
4および破線結合は請求項1~8のいずれかに定義されているとおりであり、
sは0または1であり、
前記繰り返しサルコシンをベースとする単位PAAが式(XXII)を有する場合にz’は0であるという条件で、z’は0または1であり、
Zは、栄養補助食品的に活性な薬剤、医薬的に活性な薬剤、細胞標的化剤、診断的に活性な薬剤および化粧品的に活性な薬剤からなる群から選択される薬剤であり、
L’は、-CH=CH-、-C≡C-、-CH
2-、-N=CH-、-CH=NH-、-NH-、-NH-NH-、-NH-N=CH-、-O-、-O(CH
2)O-、-CO-、-O(CO)-、-COO-、-C(=CH
2)-、-C(=NH)-、-CONH-、-NHCO-、-NH(CO)NH-、-S-、-S-S-、-SO-、-SO
2-、-SO
2NH
2-および-フェニレン-からなる群から選択される1つ以上の部分を含むビラジカル鎖であり、ここではL’は任意に、ハロゲン、-OH、-NR
aR
b、-SH、-NHNH
2、-COOR
c、-CF
3、-OCF
3、
【化8】
からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換されており、かつ
R
a、R
bおよびR
cは独立して、H、-フェニル、-(C
1~C
6)アルキル、-(C
2~C
6)アルケニル、-(C
1~C
6)アルキルフェニルおよび-フェニル(C
1~C
6)アルキルからなる群から選択されるラジカルであり、かつL’が、-CH
2-部分を含む場合、その炭素原子に結合された2つの水素原子は任意に以下の環:
【化9】
によって置換されており、
sが0である場合、Zはアミド結合、カルバメート結合、アミン結合、尿素結合、エーテル結合およびエステル結合からなる群から選択される化学的に可能な結合によってXまたは前記PAAサルコシン繰り返し単位に直接結合されており、
Sが1である場合、L’はアミド結合、カルバメート結合、アミン結合、尿素結合、エーテル結合およびエステル結合からなる群から選択される化学的に可能な結合によってZに結合されており、かつL’はアミド結合、カルバメート結合、アミン結合、尿素結合、エーテル結合およびエステル結合からなる群から選択される化学的に可能な結合によってXまたは前記PAAサルコシン繰り返し単位に結合されている)。
【請求項10】
(a)請求項1~8のいずれかに定義されているポリマー、または代わりとして
(b)請求項9に定義されている式(II)の複合体、または代わりとして
(c)請求項1~8のいずれかに定義されているポリマーと請求項9に定義されている式(II)の複合体との組み合わせと、
任意に栄養補助食品的に活性な薬剤、医薬的に活性な薬剤、細胞標的化剤、診断的に活性な薬剤および化粧品的に活性な薬剤からなる群から選択される、自己組織化粒子内にカプセル化された薬剤と
を含む自己組織化粒子。
【請求項11】
ミセル、逆ミセル、平面二重層、結晶ナノ粒子、リポソーム、マイクロバブルおよび脂質ナノ粒子からなる群から選択される、請求項10に記載の自己組織化ナノ粒子。
【請求項12】
1種以上の許容される賦形剤または担体と共に、有効量の
(a)請求項1~8のいずれかに定義されているポリマー、または代わりとして、
(b)請求項9に定義されている式(II)の複合体、または代わりとして、
(c)請求項1~8のいずれかに定義されているポリマーと請求項9に定義されている式(II)の複合体との組み合わせ、または代わりとして、
(d)請求項10に定義されている自己組織化粒子
を含む組成物。
【請求項13】
前記自己組織化粒子中に前記カプセル化された薬剤は、存在する場合、医薬的に活性な薬剤または細胞標的化剤であり、かつ式(II)の複合体において存在する場合、Zは医薬的に活性な薬剤または細胞標的化剤である、医薬に使用するための請求項1~8のいずれかに定義されているポリマー、または代わりとして請求項9に定義されている式(II)の複合体、または代わりとして請求項10に定義されている自己組織化粒子、または代わりとして請求項12に医薬組成物。
【請求項14】
前記自己組織化粒子中に前記カプセル化された薬剤は、存在する場合、診断的に活性な薬剤であり、かつ式(II)の複合体において存在する場合、Zは診断的に活性な薬剤である、診断に使用するための請求項9に定義されている式(II)の複合体または代わりとして、前記自己組織化粒子が式(II)の複合体の非存在下で請求項1~8のいずれかに定義されているポリマーを含む場合にカプセル化された薬剤が前記自己組織化粒子中に存在するという条件で、請求項10に定義されている自己組織化粒子、または代わりとして、請求項12に定義されている診断用組成物。
【請求項15】
担体、可溶化剤、吸収および浸透促進剤、乳化剤または表面安定化剤としての請求項1~8のいずれかに定義されているポリマーの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年12月17日に出願された欧州特許出願第21383149.8号の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、ポリサルコシン-ビタミンE誘導体およびそれらを含む複合体に関し、ここではポリサルコシン-ビタミンE誘導体は、例えば診断薬または治療薬などの他の部分に共有結合的に結合されている。本発明は、ポリサルコシン-ビタミンE誘導体および/またはそれらの複合体を含む組成物、様々な薬剤をカプセル化することができるそれらから形成される自己組織化粒子ならびに医薬、化粧品もしくは食品用途におけるそれらの使用にも関する。
【背景技術】
【0003】
ビタミンEファミリーは、トコフェロールおよびトコトリエノールを含む脂溶性化合物のグループである。トコフェロールおよびトコトリエノールはどちらも、それらの構造中にクロマン環および16個の炭素側鎖を含む。それらの違いは、トコフェロールの炭素側鎖は飽和であるが、トコトリエノールの側鎖は不飽和であるという点にある。各トコフェロールおよびトコトリエノールは、以下に示されているように環上のメチル基の数および位置において異なる4つの異なる形態、すなわちα、β、γ、δで存在する。最も一般的かつ生物学的に活性な形態は、多くの場合にビタミンEと呼ばれるα-トコフェロールである。
【化1】
【0004】
ビタミンEは不可欠な食品成分である。それは生殖のために不可欠な因子であるとされてきた。それは抗酸化、抗血栓溶解および他の治療効果を有する。ビタミンE誘導体の抗酸化特性は、それらの化学構造の6-ヒドロキシクロマン環に関連づけられている。
【0005】
ビタミンEの低い血中濃度は変性疾患の発生のリスクの増加に関連づけられている。これをきっかけに、研究者らは心血管疾患および神経変性疾患、アテローム性動脈硬化症および癌を含む酸化ストレスに関連する慢性疾患を予防するビタミンEの能力を研究するようになった。さらに、細胞シグナル伝達および遺伝子発現へのビタミンEの関与も報告されている。さらに、細胞透過性および所望の標的へのアクセスを高めるための薬物送達システムとして、ならびに造影剤または蛍光プローブとしての医用イメージングのためのビタミンE誘導体の使用の新たな関心が寄せられている。
【0006】
ビタミンEは不安定な分子になりやすい。その上、その不十分な水溶解性がその用途を大きく制限している。その貯蔵寿命を高めるために、ビタミンEは酢酸ビタミンEまたはコハク酸ビタミンE誘導体にするために、クロマン環に結合された6-ヒドロキシ部分が酢酸もしくはコハク酸部分によりエステル化された誘導体の形態で提供されてきた。
【0007】
コハク酸α-トコフェロールは、その癌細胞の増殖阻害に対する活性が実証された最初に報告されたビタミンE誘導体である。しかし、この誘導体は疎水性および毒性が高い。ビタミンEの不十分な水溶解性を克服するための努力が、トコフェルソランとも呼ばれるコハク酸トコフェロールポリエチレングリコール(TPGS)の調製に繋がり、これはポリ(エチレングリコール)(PEG)によるコハク酸ビタミンEのエステル化によって得られる。TPGSは以下:
【化2】
の化学構造を有する。
【0008】
TPGSは、栄養サプリメントおよび薬物送達媒体として米国FDAによって認可されている。それは薬物送達において可溶化剤、吸収および浸透促進剤、乳化剤ならびに表面安定化剤として使用することができる。TPGSは多くの癌種に対する抗癌剤として機能することができる。この点に関しては、TPGSと例えばドキソルビシン、パクリタキセルまたはシスプラチンとの複合体が報告されている。さらにTPGSベースのポリマーは、薬物カプセル化効率、細胞内取込みおよび治療効果を高めることができる。
【0009】
上記に関わらず、TPGSはその構造内へのPEGの包含に関連するいくつかの欠点を有する。PEGはそのステルス性および生体適合性により、薬物送達およびナノ技術において広く使用されており、これは粒子送達システムおよび免疫系を逃れるための生体材料を可能にし、それにより生物系内で長期循環時間を有する。しかしPEGは、加速血液クリアランス(ABC)現象として知られている予期せぬ免疫原性応答を引き起こし、クリアランスの増加およびPEG結合物質の有効性の低下をもたらし得ることが報告されている。さらにPEG複合体は不十分な分解性を示す。
【0010】
従って、先行技術の問題を克服する他のビタミンE誘導体を開発することがなお必要とされている。
【発明の概要】
【0011】
本発明者らは、TPGSなどのPEG含有誘導体とは異なり、生分解性かつ非免疫原性であり、かつ優れた貯蔵寿命を示すポリサルコシン(PSar)をベースとする新しいビタミンE誘導体を開発した。本発明のポリサルコシン-ビタミンE誘導体は両親媒性である。それらは親水性極性頭部すなわちPSarベース部分と、疎水性部分すなわちビタミンEをベースとする部分(「ビタミンEベース部分」と称することがある)とを含む。ハイブリッド化合物として、それらは両成分の特性を有する。従って、一方でそれらはPSarベース部分のおかげで水および有機溶媒において優れた溶解性を示し、他方でそれらはビタミンEベース部分により抗酸化特性を有する。
【0012】
以下の実施例に示されているように、本発明のポリサルコシン-ビタミンE誘導体は、溶媒中でミセルなどの自己組織化粒子を形成し、かつ活性薬剤またはイメージング用造影剤などの分子をカプセル化することができる。ポリサルコシン-ビタミンE誘導体は、類似体TPGSと比較して送達された薬剤の表皮層におけるより高い蓄積を示し、これはPSarベース材料が、PEGに関連する欠点を回避しながらも皮膚送達用途のためにTPGSよりも有利であり得ることを実証している。
【0013】
従って本発明の第1の態様は、ビタミンEベース部分に直接またはリンカーを介して共有結合的に結合されている、繰り返しサルコシンをベースとする単位を含むポリマー、またはそれらの医薬、栄養補助食品もしくは化粧品的に許容される塩、あるいは本ポリマーのいずれかまたはそれらの塩のいずれかの任意の立体異性体または立体異性体の混合物に関し、ここでは繰り返しサルコシンをベースとする単位は、式(XXIII):
【化3】
を有し、
式中、R
5はメチル、-CH
2F、-CHF
2および-CF
3からなる群から選択され、R
6およびR
7は独立して水素およびフッ素からなる群から選択され、かつnは5~500の整数であり、かつビタミンEベース部分は、式(XXIV):
【化4】
を有し、
式中、R
2、R
3およびR
4は独立して水素、フッ素、メチル、-CH
2F、-CHF
2および-CF
3からなる群から選択され、かつ破線結合-----はそれぞれ独立して単結合または代わりとして二重結合である。本発明のポリマーにおいて、繰り返しサルコシンをベースとする単位は、本明細書では「
*」で示されている結合点のいずれかによってビタミンEベース部分に直接またはリンカーを介して共有結合的に結合されている。ビタミンEベース部分は、本明細書では結合と交差している波線
【化5】
で示されている結合点によって、繰り返しサルコシンをベースとする単位に直接またはリンカーを介して共有結合的に結合されている。
【0014】
より詳細には、ビタミンEベース部分に直接またはリンカーを介して共有結合的に結合されている、繰り返しサルコシンをベースとする単位を含むポリマーは、式(I):
【化6】
のポリマーであり、
式中、
PAAは、式(XXI)および式(XXII):
【化7】
から選択される繰り返しサルコシンをベースとする単位であり、
式中、「
*1」は、XまたはR
1(zが0である場合)への繰り返しサルコシンをベースとする単位PAAの結合点を示し、「
*2」は、ビタミンEベース部分のリンカーLまたは酸素原子(mが0である場合)への繰り返しサルコシンをベースとする単位PAAの結合点を示し、
繰り返しサルコシンをベースとする単位PAAが式(XXI)を有する場合にmは1であるという条件で、mは0または1であり、
繰り返しサルコシンをベースとする単位PAAが式(XXI)を有する場合にzは1であり、かつ繰り返しサルコシンをベースとする単位PAAが式(XXII)を有する場合にzは0であるという条件で、zは0または1であり、
R
1は、-(C
1~C
12)アルキル、-(C
1~C
12)アルキルフェニル、-(C
1~C
6)アルキル-O-(C
1~C
6)アルキル、-CO-(C
1~C
12)アルキル、-CO-(C
1~C
12)アルキルフェニルおよび-CO-(C
1~C
6)アルキル-O-(C
1~C
6)アルキルからなる群から選択され、ここではR
1は任意に、ハロゲン、-OH、-NR
aR
b、-SH、-NHNH
2、-COOR
c、-CF
3および-OCF
3からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換されており、
R
2、R
3およびR
4は独立して水素、フッ素、メチル、-CH
2F、-CHF
2および-CF
3からなる群から選択され、
R
5はメチル、-CH
2F、-CHF
2および-CF
3からなる群から選択され、
R
6およびR
7は独立して水素およびフッ素からなる群から選択され、
nは5~500の整数であり、
Xは-O-または-NH-であり、かつ
Lは、-CH=CH-、-C≡C-、-CH
2-、-N=CH-、-CH=NH-、-NH-、-NH-NH-、-NH-N=CH-、-O-、-O(CH
2)O-、-CO-、-O(CO)-、-COO-、-C(=CH
2)-、-C(=NH)-、-CONH-、-NHCO-、-NH(CO)NH-、-S-、-S-S-、-SO-、-SO
2-、-SO
2NH
2-および-フェニレン-からなる群から選択される1つ以上の部分を含むビラジカル鎖であり、ここではLは任意に、ハロゲン、-OH、-NR
aR
b、-SH、-NHNH
2、-COOR
c、-CF
3、-OCF
3、
【化8】
からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換されており、ここではLが-CH
2-部分を含む場合、その炭素原子に結合された2つの水素原子は任意に以下の環:
【化9】
によって置換されており、PAAが式(XXI)の繰り返しサルコシンをベースとする単位である場合、Lは、アミド結合、カルバメート結合、尿素結合およびアミン結合からなる群から選択される化学的に可能な結合によってPAAの窒素原子に結合されており、かつPAAが式(XXII)の繰り返しサルコシンをベースとする単位であり、かつmが1である場合、Lは、アミド結合およびエステル結合からなる群から選択される化学的に可能な結合によってPAAのカルボニル基に結合されており、
Lは、エステル結合、カルバメート結合およびエーテル結合からなる群から選択される化学的に可能な結合によってビタミンEベース部分の酸素原子に結合されており、かつ
破線結合-----はそれぞれ独立して単結合または代わりとして二重結合であり、かつ
R
a、R
bおよびR
cは独立して、H、-フェニル、-(C
1~C
6)アルキル、-(C
2~C
6)アルケニル、-(C
1~C
6)アルキルフェニルおよび-フェニル(C
1~C
6)アルキルからなる群から選択されるラジカルである。
【0015】
本発明のポリサルコシン-ビタミンE誘導体は、他の分子と共有結合を形成していてもよい。従って本発明の別の態様は、式(II):
【化10】
の複合体、またはそれらの医薬、栄養補助食品もしくは化粧品的に許容される塩、あるいは式(II)の複合体のいずれかまたはそれらの塩のいずれかの任意の立体異性体または立体異性体の混合物に関し、
式中、
m、PAA、X、n、L、R
2、R
3、R
4および破線結合は本明細書に定義されているとおりであり、
sは0または1であり、
繰り返しサルコシンをベースとする単位PAAが式(XXII)を有する場合にz’は0であるという条件で、z’は0または1であり、
Zは、栄養補助食品的に活性な薬剤、医薬的に活性な薬剤、細胞標的化剤、診断的に活性な薬剤および化粧品的に活性な薬剤からなる群から選択される薬剤であり、
L’は、-CH=CH-、-C≡C-、-CH
2-、-N=CH-、-CH=NH-、-NH-、-NH-NH-、-NH-N=CH-、-O-、-O(CH
2)O-、-CO-、-O(CO)-、-COO-、-C(=CH
2)-、-C(=NH)-、-CONH-、-NHCO-、-NH(CO)NH-、-S-、-S-S-、-SO-、-SO
2-、-SO
2NH
2-および-フェニレン-からなる群から選択される1つ以上の部分を含むビラジカル鎖であり、ここではL’は任意に、ハロゲン、-OH、-NR
aR
b、-SH、-NHNH
2、-COOR
c、-CF
3、-OCF
3、
【化11】
からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換されており、かつ
R
a、R
bおよびR
cは独立して、H、-フェニル、-(C
1~C
6)アルキル、-(C
2~C
6)アルケニル、-(C
1~C
6)アルキルフェニルおよび-フェニル(C
1~C
6)アルキルからなる群から選択されるラジカルであり、かつ
L’が-CH
2-部分を含む場合、その炭素原子に結合された2つの水素原子は任意に以下の環:
【化12】
によって置換されており、sが0である場合、Zはアミド結合、カルバメート結合、アミン結合、尿素結合、エーテル結合およびエステル結合からなる群から選択される化学的に可能な結合によってXまたはPAAサルコシン繰り返し単位に直接結合されており、
Sが1である場合、L’はアミド結合、カルバメート結合、アミン結合、尿素結合、エーテル結合およびエステル結合からなる群から選択される化学的に可能な結合によってZに結合されており、かつL’はアミド結合、カルバメート結合、アミン結合、尿素結合、エーテル結合およびエステル結合からなる群から選択される化学的に可能な結合によってXまたはPAAサルコシン繰り返し単位に結合されている。
【0016】
上述のようにそれらの両親媒性のおかげで、本発明のポリサルコシン-ビタミンE誘導体は、異なる性質の分子をカプセル化し、かつ送達するために使用することができる例えばミセルまたは脂質ナノ粒子などの自己組織化粒子を溶液中に形成していてもよい。従って、本発明の別の態様は、
(a)本明細書に定義されているポリマー、または代わりとして
(b)本明細書に定義されている式(II)の複合体、または代わりとして
(c)本明細書に定義されているポリマーと式(II)の複合体との組み合わせと、
任意に栄養補助食品的に活性な薬剤、医薬的に活性な薬剤、細胞標的化剤、診断的に活性な薬剤および化粧品的に活性な薬剤からなる群から選択される、自己組織化粒子内にカプセル化された薬剤と
を含む自己組織化粒子に関する。
【0017】
本発明のポリサルコシン-ビタミンE誘導体ならびに本明細書に定義されている式(II)の複合体は、栄養補助食品組成物、医薬組成物、診断用組成物または化粧品組成物などの様々な組成物に製剤化されていてもよい。従って本発明の別の態様は、1種以上の許容される賦形剤または担体と共に、有効量の
(a)本明細書に定義されているポリマー、または代わりとして、
(b)本明細書に定義されている式(II)の複合体、または代わりとして、
(c)本明細書に定義されているポリマーと式(II)の複合体との組み合わせ、または代わりとして、
(d)本明細書に定義されている自己組織化粒子
を含む組成物に関する。
【0018】
本発明のポリサルコシン-ビタミンE誘導体、それらの複合体、自己組織化粒子およびそれらの組成物を医薬、化粧品または食品用途で使用してもよい。従って本発明の別の態様は、医薬に使用するための
(i)本明細書に定義されているポリマー、または代わりとして、
(ii)本明細書に定義されている式(II)の複合体、または代わりとして、
(iii)本明細書に定義されている自己組織化粒子、または代わりとして、
(iv)本明細書に定義されている医薬組成物
に関し、ここでは自己組織化粒子にカプセル化された薬剤は、存在する場合、本明細書に定義されている医薬的に活性な薬剤または細胞標的化剤であり、かつ式(II)の複合体において存在する場合、Zは医薬的に活性な薬剤または細胞標的化剤である。
【0019】
本発明の別の態様は、診断に使用するための
(i)本明細書に定義されている式(II)の複合体、または代わりとして、
(ii)自己組織化粒子が式(II)の複合体の非存在下で本明細書に定義されているポリマーを含む場合にカプセル化された薬剤が自己組織化粒子中に存在するという条件で、本明細書に定義されている自己組織化粒子、または代わりとして、
(iii)本明細書に定義されている診断用組成物
に関し、ここでは自己組織化粒子にカプセル化された薬剤は、存在する場合、診断的に活性な薬剤であり、かつ式(II)の複合体において存在する場合、Zは診断的に活性な薬剤である。
【0020】
別の態様によれば、本発明は担体、可溶化剤、吸収および浸透促進剤、乳化剤または表面安定化剤としての、本明細書に定義されているポリマーの使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】72時間の処理後のHaCaT細胞(A)および線維芽細胞(B)におけるVit E(点線)、TPGS(破線)およびTPSS(実線)のMTSアッセイによる細胞生存度を示す(n=3)。
【
図2】フランツ型拡散セルを用いて8時間の透過後の10mg/mLにおけるTPGSおよびTPSSのDil標識したミセルの共焦点顕微鏡画像のImageJによるDil蛍光強度定量化(画素)を示す。各画像に示されている元の倍率は40×であった。アスタリスクは、ANOVA分析およびその後のボンフェローニ事後試験後の統計的有意差を示す。平均±SEM。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本出願において本明細書で使用される全ての用語は、特に明記しない限り、当該技術分野で知られているそれらの通常の意味で理解されるものとする。本出願で使用されている特定の用語のための他のより具体的な定義が以下に記載されており、本明細書および特許請求の範囲全体を通して適用されることを意図している。
【0023】
本明細書で使用される「約~」または「~前後」という用語は、指定されている値の±10%の値の範囲を指す。例えば「約10」または「10前後」という表現は10の±10%、すなわち9~11を含む。
【0024】
本明細書で使用される不定冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は、「少なくとも1つ(種)」または「1つ(種)以上」と同義である。特に明記しない限り、「その(前記)(the)」などの本明細書で使用される定冠詞は複数の名詞も含む。
【0025】
(C1~Cx)アルキルという用語は、1~x個の炭素原子および単結合のみを含む飽和の直鎖状もしくは分岐鎖状炭化水素鎖を指す。アルキル基の例としては、限定されるものではないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、デシルおよびウンデシルが挙げられる。(C2~Cx)アルケニルという用語は、2~x個の炭素原子および少なくとも1つ以上の二重結合を含む不飽和の分岐鎖状もしくは直鎖状炭化水素鎖を指す。アルケニル基の例としては、限定されるものではないが、エテニル(すなわちビニル)、アリル、プロペニル、ブテニル、ペンテニルおよびヘキセニルが挙げられる。
【0026】
本明細書に定義されている「1つ以上の部分を含むビラジカル鎖」という表現は、本明細書に定義されているビラジカルを包含することを意図している。ビラジカルは、本明細書に沿って示されているように任意に置換されていてもよい。
【0027】
「-(C1~C6)アルキル-O-(C1~C6)アルキル」という用語は、水素原子の1つが-O-(C1~C6)アルキル部分、すなわちアルコキシ基によって置換されている上に定義されているアルキル鎖を指す。このラジカルの例としては、限定されるものではないが、2-メトキシエチル、3-メトキシプロピル、4-メトキシブチル、2-エトキシエチル、3-エトキシプロピルおよび4-エトキシブチルが挙げられる。
【0028】
「-(C1~C12)アルキルフェニル」という用語は、水素原子の1つがフェニル部分によって置換されている上に定義されているアルキル鎖を指す。このラジカルの例としては、限定されるものではないが、ベンジル、2-フェネチルおよび3-フェニルプロピルが挙げられる。
【0029】
「-フェニル(C1~C6)アルキル」という用語は、水素原子の1つが先に定義されているアルキル基によって置換されているフェニルラジカルを指す。このラジカルの例としては、限定されるものではないが、(2-メチル)フェニル、(4-メチル)フェニルおよび(3-エチル)フェニルが挙げられる。
【0030】
「アルキレン」または「フェニレン」という用語は二価のラジカルを指す。
【0031】
「(C6~C12)アリール」という用語は、6~12個の炭素環原子を含む芳香族炭素環式の単環式もしくは二環式環系を指す。アリール部分の例としては、限定されるものではないが、フェニルおよびナフチルが挙げられる。
【0032】
本明細書で使用される「ハロゲン」または「ハロ」という用語は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素、好ましくはフッ素、塩素および臭素、より好ましくはフッ素および塩素を意味する。
【0033】
「1つ以上の~で置換された」という表現は、基が置換することができる十分な位置を有する限り、その基を1つ以上、好ましくは1、2、3、4、5もしくは6個の置換基で置換することができることを意味する。
【0034】
本明細書で使用される「化学的に可能な」という用語は、各原子の化学的原子価を満たす原子の結合性を指し、当業者によって安定であることが期待される。
【0035】
本明細書に開示されている任意の化学構造において、結合と交差している本明細書で使用される波線:
【化13】
および「
*」は、当該分子の残りの部分への結合点を表す。波線およびアスタリスクは互換的に使用される。
【0036】
サルコシンおよびビタミンEベース部分を含むポリマー
本発明の第1の態様は、式(XXIV)のビタミンEベース部分に直接またはリンカーを介して共有結合的に結合されている式(XXIII)の繰り返しサルコシンをベースとする単位を含むポリマー、またはそれらの医薬、栄養補助食品もしくは化粧品的に許容される塩、あるいは本ポリマーのいずれかまたはそれらの塩のいずれかの任意の立体異性体または立体異性体の混合物を指す。
【0037】
本発明のポリマーにおける繰り返しポリサルコシンをベースとする単位は任意の順番で配置されていてもよい。従って、式(XXIII)の繰り返しサルコシンをベースとする単位は、カルボニル基またはアミノ基のいずれかによってビタミンEベース部分に直接またはリンカーを介して結合されていてもよい。
【0038】
繰り返しポリサルコシンベースの部分のこの異なる向きは、本明細書に記載されているポリマーの両親媒性挙動に影響を与えず、従って、示される活性は維持される。
【0039】
医薬、栄養補助食品または化粧品目的のために使用される場合にそれぞれ医薬、栄養補助食品もしくは化粧品的に許容される限り、使用することができる本発明のポリマーの塩の種類に制限はない。「医薬、栄養補助食品もしくは化粧品的に許容される塩」という用語は、よく使用される非毒性塩を包含する。本発明のポリマーの医薬、栄養補助食品もしくは化粧品的に許容される塩の調製は、当該技術分野において周知の方法によって行うことができる。一般にそのような塩は、水、有機溶媒またはそれらの混合物などの好適な溶媒中で本発明のポリマーの遊離酸または塩基の形態を化学量論量の適当な塩基または酸とそれぞれ反応させることによって調製することができる。本発明のポリマーおよびそれらの塩はいくつかの物理的特性において異なってもよいが、それらは本発明の目的のために等価である。
【0040】
本発明のいくつかのポリマーは、様々な立体異性体を生じることができるキラル中心を有していてもよい。本明細書で使用される「立体異性体」という用語は、空間におけるそれらの原子の向きにおいてのみ異なる個々のポリマーの全ての異性体を指す。立体異性体という用語は、鏡像異性体(エナンチオマー)、鏡像異性体の混合物(ラセミ体、ラセミ混合物)、幾何(シス/トランスまたはシン/アンチまたはE/Z)異性体、ならびに互いに鏡像でない2つ以上のキラル中心を有するポリマーの異性体(ジアステレオマー)を含む。本発明はこれらの立体異性体のそれぞれおよびそれらの混合物にも関する。ジアステレオマーおよびエナンチオマーは、クロマトグラフィまたは分別結晶などの従来の技術により分離することができる。光学異性体はエナンチオ特異的合成を用いて得てもよい。あるいは、光学異性体を従来の技術により分割して光学的に純粋な異性体を得ることができる。この分割は、任意のキラル合成中間体または本発明のポリマーに対して行うことができる。
【0041】
本発明の全ての実施形態において、繰り返しサルコシンをベースとする単位およびビタミンEベース部分、それらの医薬、栄養補助食品もしくは化粧品的に許容される塩および任意本ポリマーのいずれかまたはそれらの医薬、栄養補助食品もしくは化粧品的に許容される塩のいずれかの立体異性体または立体異性体の混合物を含むポリマーへの言及は、それらが具体的に言及されていない場合であっても常に意図されている。
【0042】
本発明のポリマーは、溶媒和ポリマーまたは溶媒和物(例えば水和物)のいずれかとして結晶形であってもよい。全てのこれらの形態が本発明の範囲内であることが意図されている。溶媒和の方法は一般に当該技術分野において知られている。本発明の目的のために、水およびエタノールなどの医薬、栄養補助食品もしくは化粧品的に許容される溶媒による溶媒和形態は、非溶媒和形態と等価である。
【0043】
別段の定めがある場合を除き、本開示のポリマーは1つ以上の同位体濃縮された原子の存在においてのみ異なるポリマーも含む。同位体濃縮された原子の例としては、限定されるものではないが、重水素、三重水素、13Cまたは14Cあるいは15Nが濃縮されている窒素原子または18Fが濃縮されているフッ素原子である。
【0044】
本発明のポリマーは、繰り返し単位としてポリサルコシンベースの部分を含む構造である。これらのポリマーは、分子量(平均分子量(MW)または数平均分子量(Mn)であってもよい)、重合度および多分散性指数を特徴とする。分子量は、例えばサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)(ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)ともいう)、マトリックス支援レーザー脱着イオン化飛行時間型質量分析(MALDI-TOF MS)または1H-NMR分光法などの当該技術分野において周知の方法によって測定することができる。これらの方法のいくつかは、以下の実施例により詳細に示されている。
【0045】
本明細書で使用される「繰り返し単位」という用語は、モノマーのサルコシンをベースとする単位を指し、その周囲に示されている括弧によって定められている。括弧の右下の数(文字「n」によって表されている)は、統計学的数としての各モノマー単位の重合度(DP)を指す。DPは、SEC-MALS技術によって与えられるポリマーの分子量をモノマー単位の分子量で割ることにより計算する。DP値は、変数DP(固有の多分散性による)のポリマーを含むガウス分布の中心値として報告される。DP値は開環重合機構が原因で合理的な不確かさを伴い、これは本発明の文脈では±20%、好ましくは±15%、より好ましくは±10%、さらにより好ましくは±5%の範囲内であるとみなしてもよく、特に好ましくは±2%である。
【0046】
「多分散性指数」(PDI)という用語は、分子量分布の広さの尺度として使用される。PDIが大きくなる程、分子量がより広くなる。ポリマーのPDIは、重量平均(MW)/数平均(Mn)分子量の比として計算する。
多分散性指数=Mw/Mn
【0047】
任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた一実施形態では、繰り返しサルコシンをベースとする単位およびビタミンEベース部分を含む本発明のポリマーは、式(I):
【化14】
を有し、
式中、R
1~R
4、X、PAA、L、m、nおよびzは本明細書に定義されているとおりである。
【0048】
式(I)のポリマーは、直接またはリンカーLを介して共有結合的に結合されているポリサルコシンベース部分PAA(式の左部分に描かれている)およびビタミンEベース部分(式の右部分に描かれている)を含む。
【0049】
任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた一実施形態では、繰り返しサルコシンをベースとする単位およびビタミンEベース部分を含むポリマー、特に式(I)のポリマーにおいて、特に実施例に示されているSECまたは1H-NMR分光法によって測定したポリマーの重合度すなわちnは、5~400、5~300、5~200、5~100、5~50、5~40、5~35、5~25であり、より詳細には約6または15または20である。
【0050】
任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた別の実施形態によれば、実施例に開示されているSECによって測定した繰り返しサルコシンをベースとする単位およびビタミンEベース部分を含むポリマー、特に式(I)のポリマーの平均分子量(Mw)は、700~50000Da、より詳細には1000~20000Da、さらにより詳細には1000~5000Daまたは1000~3000Daである。
【0051】
任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた別の実施形態では、実施例に開示されているSECによって測定した繰り返しサルコシンをベースとする単位およびビタミンEベース部分を含むポリマー、特に式(I)のポリマーの多分散性指数は、1.01~1.80、1.01~1.50、1.01~1.30、1.01~1.20、1.01~1.10である。
【0052】
繰り返しサルコシンをベースとする単位およびビタミンEベース部分を含むポリマー、特に式(I)のポリマーにおいて、R5はメチル、-CH2F、-CHF2および-CF3からなる群から選択される。任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた一実施形態によれば、R5はメチルである。
【0053】
繰り返しサルコシンをベースとする単位およびビタミンEベース部分を含むポリマー、特に式(I)のポリマーにおいて、R6およびR7は独立して水素およびフッ素からなる群から選択される。任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた一実施形態によれば、R6およびR7は水素である。
【0054】
繰り返しサルコシンをベースとする単位およびビタミンEベース部分を含むポリマー、特に式(I)のポリマーにおいて、R2、R3およびR4は独立して、水素、フッ素、メチル、-CH2F、-CHF2および-CF3からなる群から選択される。任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた一実施形態によれば、R2、R3およびR4は独立して水素およびメチルからなる群から選択される。
【0055】
一実施形態によれば、繰り返しサルコシンをベースとする単位およびビタミンEベース部分を含むポリマーは、特に式(I)のポリマーにおいて、8種類の可能な異なる形態のビタミンE(α、β、γ、δトコフェロールおよびα、β、γ、δトコトリエノール)のいずれかを包含し得るビタミンE部分を含む。
【0056】
従って任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた一実施形態では、本発明のポリマー、特に式(I)のポリマーにおいて、クロマン環に結合されたアルキル鎖の破線結合はそれぞれ単結合であり、かつR
2、R
3およびR
4は以下の意味:(i)R
2、R
3およびR
4はメチルである、(ii)R
2、R
4はメチルであり、かつR
3は水素である、(iii)R
3およびR
4はメチルであり、かつR
2は水素である、および(iv)R
4はメチルであり、かつR
2およびR
3は水素である、から選択される。より特定の実施形態では、クロマン環に結合されたアルキル鎖の破線結合はそれぞれ単結合であり、かつR
2、R
3およびR
4はメチルである。さらにより詳細には、本発明のポリマーのビタミンEベース部分は、特に式(I)のポリマーにおいて、式(XXIV’):
【化15】
を有する。
【0057】
任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた別の実施形態では、式(I)のポリマーにおいて、クロマン環に結合されたアルキル鎖の破線結合はそれぞれ二重結合であり、かつR2、R3およびR4は以下の意味:(i)R2、R3およびR4はメチルである、(ii)R2、R4はメチルであり、かつR3は水素である、(iii)R3およびR4はメチルであり、かつR2は水素である、および(iv)R4はメチルであり、かつR2およびR3は水素である、から選択される。より特定の実施形態では、クロマン環に結合されたアルキル鎖の破線結合はそれぞれ二重結合であり、かつR2、R3およびR4はメチルである。
【0058】
式(I)のポリマーにおいて、R1は、-(C1~C12)アルキル、-(C1~C12)アルキルフェニル、-(C1~C6)アルキル-O-(C1~C6)アルキル、-CO-(C1~C12)アルキル、-CO-(C1~C12)アルキルフェニルおよび-CO-(C1~C6)アルキル-O-(C1~C6)アルキルからなる群から選択され、ここではアルキル基は本明細書に定義されているように任意に置換されていてもよい。より詳細には、PAAが式(XXI)の繰り返しサルコシンをベースとする単位であり、かつzが1である場合、R1は、-(C1~C12)アルキル、-(C1~C12)アルキルフェニルおよび-(C1~C6)アルキル-O-(C1~C6)アルキルからなる群から選択され、PAAが式(XXII)の繰り返しサルコシンをベースとする単位であり、かつzが0である場合、R1は、-CO-(C1~C12)アルキル、-CO-(C1~C12)アルキルフェニルおよび-CO-(C1~C6)アルキル-O-(C1~C6)アルキルからなる群から選択され、ここでは全てのアルキル基は本明細書に定義されているように任意に置換されていてもよい。
【0059】
任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた一実施形態では、式(I)のポリマーにおいて、特にPAAが式(XXI)の繰り返しサルコシンをベースとする単位であり、かつzが1である場合、R1は、-(C1~C6)アルキル、-(C1~C3)アルキル-O-(C1~C3)アルキルおよび-(C1~C6)アルキルフェニルからなる群から選択され、ここではアルキル基は本明細書に定義されているように任意に置換されていてもよい。より詳細には、R1は、イソプロピル、2-メトキシエチル、n-プロピル、n-ブチル、ネオペンチル、ベンジルおよび2-(2-メトキシエトキシ)エチルからなる群から選択され、さらにより詳細にはR1はイソプロピルである。
【0060】
任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた別の実施形態では、式(I)のポリマーにおいて、特にPAAが式(XXII)の繰り返しサルコシンをベースとする単位であり、かつzが0である場合、R1は、-CO-(C1~C6)アルキル、-CO-(C1~C6)アルキル-O-C1~C3)アルキルおよび-CO-(C1~C6)アルキルフェニルからなる群から選択され、ここではアルキル基は本明細書に定義されているように任意に置換されていてもよい。より詳細には、R1はアセチルである。
【0061】
本発明のポリマーにおいて、ポリサルコシンベースの繰り返し単位は任意の順番で配置されていてもよい。従って式(I)のポリマーにおいて、繰り返しサルコシンをベースとする単位PAAは、式(XXI)および式(XXII):
【化16】
から選択され、
式中、R
5、R
6、R
7およびnは本明細書に定義されているとおりであり、「
*1」は、XまたはR
1への繰り返しサルコシンをベースとする単位PAAの結合点を示し、「
*2」は、ビタミンEベース部分のリンカーLまたは酸素原子への繰り返しサルコシンをベースとする単位PAAの結合点を示す。
【0062】
繰り返しポリサルコシンベースの部分のこの異なる配置は、本明細書に記載されているポリマーの両親媒性挙動に影響を与えず、従って、示される活性は維持される。
【0063】
式(I)のポリマーにおいて、リンカーLは、-CH=CH-、-C≡C-、-CH2-、-N=CH-、-CH=NH-、-NH-、-NH-NH-、-NH-N=CH-、-O-、-O(CH2)O-、-CO-、-O(CO)-、-COO-、-C(=CH2)-、-C(=NH)-、-CONH-、-NHCO-、-NH(CO)NH-、-S-、-S-S-、-SO-、-SO2-、-SO2NH2-および-フェニレン-からなる群から選択される1つ以上の部分を含むビラジカル鎖であり、ここではLは本明細書に定義されているように任意に置換されている。
【0064】
ビラジカルとして、Lの一端はポリサルコシンベースの部分に結合されており、Lの他端はビタミンEベース部分の酸素原子に結合されている。繰り返しサルコシンをベースとする単位PAAが式(XXI)を有する場合に、Lは、アミド結合、カルバメート結合、尿素結合およびアミン結合からなる群から選択される化学的に可能な結合によってPAAの窒素原子に結合されており、より詳細にはこの結合は、リンカーLの左側にある-CO-、-COO-、-(CO)NH-または-CH2-部分と、ポリサルコシンベースの部分の窒素原子との間に形成されている。繰り返しサルコシンをベースとする単位が式(XXII)を有し、かつmが1である場合、Lは、アミド結合およびエステル結合からなる群から選択される化学的に可能な結合によってPAAのカルボニル基に結合されており、より詳細にはこの結合は、リンカーLの左側にある-(O)-または-(N)-部分と、ポリサルコシンベースの部分のカルボニル部分との間に形成されている。
【0065】
さらにLは、エステル結合、カルバメート結合およびエーテル結合からなる群から選択される化学的に可能な結合によってビタミンEベース部分の酸素原子に結合されており、より詳細にはこの結合は、リンカーLの右側にある-CO-、-N(CO)-または-CH2-部分と、ビタミンE誘導体の酸素との間に形成されている。
【0066】
任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた一実施形態では、式(I)のポリマーにおいて、化学的に可能な結合によりLを当該分子の残りの部分に結合させることができる限り、Lは、上に定義されている1~50個の部分、より詳細には2~30または2~20または2~15個の部分を含むビラジカル鎖である。
【0067】
任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた一実施形態によれば、式(I)のポリマーにおいて、PAAは式(XXI)の繰り返しサルコシンをベースとする単位であり、zは1であり、かつmは1であり、すなわち式(I)のポリマーは、式(Ia):
【化17】
のポリマーであり、
式中、R
1~R
7、X、Lおよびnは本明細書に定義されているとおりであり、かつLは、アミド結合、カルバメート結合、尿素結合およびアミン結合からなる群から選択される化学的に可能な結合によってサルコシンをベースとする単位の窒素原子に結合されている。より詳細には、式(Ia)のポリマーにおいて、サルコシンをベースとする単位は、エステル結合およびアミド結合からなる群から選択される化学的に可能な結合によってXに結合されている。
【0068】
式(Ia)のポリマーにおいて、Xは-O-または-NH-である。任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた1つ以上の特定の実施形態では、式(Ia)のポリマーにおいて、Xは-O-である。任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた別のより特定の実施形態では、式(Ia)のポリマーにおいて、Xは-NH-である。
【0069】
より特定の実施形態では、式(Ia)のポリマーは、式(Ia’):
【化18】
のポリマーであり、
式中、n、R
1、XおよびLは本明細書に定義されているとおりであり、かつさらにより詳細には式(Ia)のポリマーは、式(Ia’’):
【化19】
のポリマーであり、
式中、R
1およびnは本明細書に定義されているとおりである。
【0070】
任意に上または下に提供されている実施形態のいずれかと組み合わせた特定の実施形態によれば、式(Ia)のポリマーにおいて、リンカーLは、任意にハロゲン、-OH、-NR
aR
b、-SH、-NHNH
2、-COOR
c、-CF
3および-OCF
3(式中、R
a、R
bおよびR
cは独立して、H、-フェニル、-(C
1~C
6)アルキル、-(C
2~C
6)アルケニル、-(C
1~C
6)アルキルフェニルおよび-フェニル(C
1~C
6)アルキルからなる群から選択されるラジカルである)からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された-(C
1~C
12)アルキレン-、-(C
1~C
6)アルキル-CO-、-CO-(C
1~C
6)アルキル-ならびに式(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)(XII)(XIII)、(XIV)、(XV)、(XVI)、(XVII)、(XVIII)または(XIX):
【化20】
のビラジカルからなる群から選択されるビラジカルであり、
式中、
「
*」は、繰り返しサルコシンをベースとする単位の窒素原子またはビタミンEベース部分の酸素原子へのビラジカルLの結合点を示し、「
*3」は、繰り返しサルコシンをベースとする単位の窒素原子へのビラジカルLの結合点を示し、「
*4」はビタミンEベース部分の酸素原子へのビラジカルの結合点を示し、
bが0である場合、aまたはcの少なくとも1つは0以外であり、かつgが0である場合にfまたはhの少なくとも1つは0以外であるという条件で、a、c、d、e、f、h、jおよびkは独立して、整数0~10、特に0~6であり、bおよびgは独立して整数0~1であり、
X’は-O-または-NH-であり、
pは0または1であり、
破線結合-----はそれぞれ独立して単結合または代わりとして二重結合である。
【0071】
描画されている場合、結合点は本明細書では「*」で示されている。具体的な結合が指定されていない限り、リンカーが任意の方向に互換的に当該分子の残りの部分に結合されていてもよいことを意味する。
【0072】
任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた一実施形態では、式(Ia)のポリマーにおいて、Lは-(C1~C12)アルキレン-、より詳細には-(C1~C6)アルキル-であり、かつ本明細書に定義されているように任意に置換されている。
【0073】
任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた別の実施形態では、式(Ia)のポリマーにおいて、Lは-(C1~C6)アルキル-CO-または-CO-(C1~C6)アルキル-であり、かつ本明細書に定義されているように任意に置換されている。
【0074】
任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた別の実施形態では、式(Ia)のポリマーにおいて、Lは式(III)のビラジカル、より詳細には、bが0であり、かつa+cが2、3、4、5、6、7、8、9、10、11および12から選択される式(III)のビラジカルであり、さらにより詳細には、Lは、bが0であり、かつaおよびcが1である式(III)のビラジカル、すなわち式(IIIa):
【化21】
のビラジカルである。
【0075】
任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた別の実施形態では、式(Ia)のポリマーにおいて、Lは式(IV)、(V)および(VI)から選択されるビラジカルであり、より詳細には、式(IV)のビラジカルにおいて、aは1であり、かつ破線結合は二重結合であり、すなわち式(IV)のビラジカルは式(IVa)を有し、かつ式(V)のビラジカルにおいて破線結合はより詳細には二重結合であり、すなわち式(V)のビラジカルは、式(Va)を有する。
【化22】
【0076】
任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた別の実施形態では、式(Ia)のポリマーにおいて、Lは式(VII)および(VIII)から選択されるビラジカルであり、より詳細には、式(VIII)のビラジカルにおいてaは1である。
【0077】
任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた別の実施形態では、式(Ia)のポリマーにおいて、Lは式(IX)のビラジカル、より詳細にはbおよびgが0であり、かつa、c、d、e、fおよびhが1である式(IX)のビラジカル、すなわち式(IXa):
【化23】
のビラジカルである。
【0078】
任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた別の実施形態では、式(Ia)のポリマーにおいて、Lは式(X)および(XI)から選択されるビラジカルであり、より詳細には式(X)および(XI)のビラジカルにおいて、bおよびgは0であり、かつa、c、d、e、fおよびhは1であり、すなわち式(X)および(XI)のビラジカルはそれぞれ、式(Xa)および(XIa):
【化24】
を有する。
【0079】
任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた別の実施形態では、式(Ia)のポリマーにおいて、Lは式(XII)および(XIII)から選択されるビラジカルであり、より詳細には式(XII)および(XIII)のビラジカルにおいて、bは0であり、かつa、cおよびdは1である。
【0080】
任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた別の実施形態では、式(Ia)のポリマーにおいて、Lは式(XIV)、(XV)、(XVI)、(XVII)および(XVIII)から選択されるビラジカルであり、より詳細には式(XIV)、(XV)、(XVI)、(XVII)および(XVIII)のビラジカルにおいて、bは0であり、かつaおよびcは1である。
【0081】
任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた別の実施形態では、式(Ia)のポリマーにおいて、Lは、pが0であり、かつjおよびkが1である式(XIX)のビラジカルである。任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた別の実施形態では、式(Ia)のポリマーにおいて、Lは、pが1であり、X’が-NH-であり、かつjおよびkが1である式(XIX)のビラジカルである。任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた別の実施形態では、式(Ia)のポリマーにおいて、Lは、pが1であり、X’が-O-であり、かつjおよびkが1である式(XIX)の選択されたビラジカルである。
【0082】
任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせたより特定の実施形態によれば、式(Ia)のポリマーにおいて、Lは、
【化25】
からなる群から選択される式(III)のビラジカルである。
【0083】
任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた別の実施形態によれば、式(I)のポリマーにおいて、PAAは式(XXII)の繰り返しサルコシンをベースとする単位であり、かつzは0であり、すなわち式(I)のポリマーは、式(Ib):
【化26】
のポリマーであり、
式中、R
1~R
7、L、mおよびnは本明細書に定義されているとおりであり、かつmが1である場合、Lは、アミド結合およびエステル結合からなる群から選択される化学的に可能な結合によってPAAのカルボニル基に結合されており、かつmが0である場合、PAAはエステル結合によってビタミンEベース部分の酸素原子に結合されている。より詳細には、式(Ib)のポリマーにおいて、PAAはアミン結合によってR
1に結合されている。
【0084】
任意に上または下に提供されている実施形態のいずれかと組み合わせた特定の一実施形態では、式(Ib)のポリマーにおいて、mは0である。
【0085】
任意に上または下に提供されている実施形態のいずれかと組み合わせた特定の実施形態によれば、式(Ib)のポリマーにおいて、mは1であり、かつリンカーLは、任意にハロゲン、-OH、-NR
aR
b、-SH、-NHNH
2、-COOR
c、-CF
3および-OCF
3(式中、R
a、R
bおよびR
cは独立して、H、-フェニル、-(C
1~C
6)アルキル、-(C
2~C
6)アルケニル、-(C
1~C
6)アルキルフェニルおよび-フェニル(C
1~C
6)アルキルからなる群から選択されるラジカルである)からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された-X’-(C
1~C
12)アルキレン-、-X’-(C
1~C
6)アルキル-CO-ならびに式(III’)、(IV’)、(V’)、(VI’)、(VII)、(VIII)、(IX’)、(X’)、(XI’)、(XII’)(XIII’)、(XIV’)、(XV’)、(XVI’)、(XVII’)、(XVIII’)または(XIX’):
【化27】
のビラジカルからなる群から選択されるビラジカルであり、
式中、
「
*」は、繰り返しサルコシンをベースとする単位のカルボニル基またはビタミンEベース部分の酸素原子へのビラジカルLの結合点を示し、「
*3」は、カルボニル基へのビラジカルLの結合点を示し、「
*4」は、ビタミンEベース部分の酸素原子へのビラジカルの結合点を示し、
bが0である場合、aまたはcの少なくとも1つは0以外であり、かつgが0である場合にfまたはhの少なくとも1つは0以外であるという条件で、a、c、d、e、f、h、jおよびkは独立して整数0~10、特に0~6であり、bおよびgは独立して整数0~1であり、
X’は-O-または-NH-であり、
破線結合-----はそれぞれ独立して単結合または代わりとして二重結合である。
【0086】
描画されている場合、結合点は本明細書では「*」で示されている。具体的な結合が指定されていない限り、リンカーは互換的に当該分子の残りの部分に結合されていてもよいことを意味する。
【0087】
任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた一実施形態では、式(Ib)のポリマーにおいて、Lは-X’-(C1~C12)アルキレン-、より詳細には-X’-(C1~C6)アルキル-であり、かつ本明細書に定義されているように任意に置換されている。
【0088】
任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた別の実施形態では、式(Ib)のポリマーにおいて、Lは-X’-(C1~C6)アルキル-CO-または-X’-(C1~C6)アルキル-であり、かつ本明細書に定義されているように任意に置換されている。
【0089】
任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた別の実施形態では、式(Ib)のポリマーにおいて、Lは式(III’)のビラジカル、より詳細にはbが0であり、かつa+cが2、3、4、5、6、7、8、9、10、11および12から選択される式(III’)のビラジカルであり、さらにより詳細には、Lは、bが0であり、aおよびcが1であり、かつX’が-NH-である式(III’)のビラジカル、すなわち式(IIIa’):
【化28】
のビラジカルである。
【0090】
任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた別の実施形態では、式(Ib)のポリマーにおいて、Lは式(IV’)、(V’)および(VI’)から選択されるビラジカルであり、より詳細には、X’は-NH-であり、さらにより詳細には、式の(IV’)のビラジカルにおいて、aは1であり、かつ破線結合は二重結合であり、すなわち式(IV’)のビラジカルは、式(IVa’)を有し、かつ式(V’)のビラジカルにおいて、破線結合はより詳細には二重結合であり、かつX’は-NH-であり、すなわち式(V’)のビラジカルは、式(Va’)を有する。
【化29】
【0091】
任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた別の実施形態では、式(Ib)のポリマーにおいて、Lは式(VII)および(VIII)から選択されるビラジカルであり、より詳細には、式(VIII)のビラジカルにおいて、aは1である。
【0092】
任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた別の実施形態では、式(Ib)のポリマーにおいて、Lは式(IX’)のビラジカル、より詳細には、bおよびgが0であり、a、c、d、e、fおよびhが1であり、かつX’が-NH-である式(IX’)のビラジカル、すなわち式(IXa’):
【化30】
のビラジカルである。
【0093】
任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた別の実施形態では、式(Ib)のポリマーにおいて、Lは式(X’)および(XI’)から選択されるビラジカルであり、より詳細には式(X’)および(XI’)のビラジカルにおいて、bおよびgは0であり、a、c、d、e、fおよびhは1であり、かつX’は-NH-であり、すなわち式(X’)および(XI’)のビラジカルはそれぞれ、式(Xa’)および(XIa’):
【化31】
を有する。
【0094】
任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた別の実施形態では、式(Ib)のポリマーにおいて、Lは式(XII’)および(XIII’)から選択されるビラジカルであり、より詳細には式(XII’)および(XIII’)のビラジカルにおいて、bは0であり、a、cおよびdは1であり、かつX’は-NH-である。
【0095】
任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた別の実施形態では、式(Ib)のポリマーにおいて、Lは式(XIV’)、(XV’)、(XVI’)、(XVII’)および(XVIII’)から選択されるビラジカルであり、より詳細には式(XIV’)、(XV’)、(XVI’)、(XVII’)および(XVIII’)のビラジカルにおいて、bは0であり、aおよびcは1であり、かつX’は-NH-である。
【0096】
任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた別の実施形態では、式(Ib)のポリマーにおいて、Lは、X’が-NH-であり、かつjおよびkが1である式(XIX’)から選択されるビラジカルである。任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた別の実施形態では、式(Ib)のポリマーにおいて、Lは、X’が-O-であり、かつjおよびkが1である式(XIX’)から選択されるビラジカルである。
【0097】
任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせたより特定の実施形態によれば、式(Ib)のポリマーにおいて、Lは、
【化32】
からなる群から選択される式(III’)のビラジカルである。
【0098】
完全性のために、以下の番号付きの実施形態も本発明の一部を形成する。
【0099】
実施形態1:ビタミンEベース部分に直接またはリンカーを介して共有結合的に結合されている、繰り返しサルコシンをベースとする単位を含むポリマー、またはそれらの医薬、栄養補助食品もしくは化粧品的に許容される塩、あるいは本ポリマーのいずれかまたはそれらの塩のいずれかの任意の立体異性体または立体異性体の混合物
(ここでは、繰り返しサルコシンをベースとする単位は、式(XXIII):
【化33】
を有し、
式中、R
5はメチル、-CH
2F、-CHF
2および-CF
3からなる群から選択され、R
6およびR
7は独立して水素およびフッ素からなる群から選択され、かつnは5~500の整数であり、かつビタミンEベース部分は、式(XXIV):
【化34】
を有し、
式中、R
2、R
3およびR
4は独立して水素、フッ素、メチル、-CH
2F、-CHF
2および-CF
3からなる群から選択され、かつ破線結合-----はそれぞれ独立して単結合または代わりとして二重結合である)。
【0100】
実施形態2:繰り返しサルコシンをベースとする単位は、結合点「
*」のいずれかによってビタミンEベース部分に直接またはリンカーを介して共有結合的に結合されており、かつビタミンEベース部分は、結合と交差している波線
【化35】
で示されている結合点によって、繰り返しサルコシンをベースとする単位に直接またはリンカーを介して共有結合的に結合されている、実施形態1に係るポリマー。
【0101】
実施形態3:式(I):
【化36】
を有する実施形態1~2のいずれかに係るポリマー
(式中、
PAAは、式(XXI)および式(XXII):
【化37】
から選択される繰り返しサルコシンをベースとする単位であり、
式中、「
*1」は、XまたはR
1への繰り返しサルコシンをベースとする単位PAAの結合点を示し、「
*2」は、ビタミンEベース部分のリンカーLまたは酸素原子への繰り返しサルコシンをベースとする単位PAAの結合点を示し、
繰り返しサルコシンをベースとする単位PAAが式(XXI)を有する場合にmは1であるという条件で、mは0または1であり、
繰り返しサルコシンをベースとする単位PAAが式(XXI)を有する場合にzは1であり、かつ繰り返しサルコシンをベースとする単位PAAが式(XXII)を有する場合にzは0であるという条件で、zは0または1であり、
R
1は、H、-(C
1~C
12)アルキル、-(C
1~C
12)アルキルフェニル、-(C
1~C
6)アルキル-O-(C
1~C
6)アルキル、-CO-(C
1~C
12)アルキル、-CO-(C
1~C
12)アルキルフェニルおよび-CO-(C
1~C
6)アルキル-O-(C
1~C
6)アルキルからなる群から選択され、ここではR
1は任意に、ハロゲン、-OH、-NR
aR
b、-SH、-NHNH
2、-COOR
c、-CF
3および-OCF
3からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換されており、
R
2、R
3およびR
4は独立して水素、フッ素、メチル、-CH
2F、-CHF
2および-CF
3からなる群から選択され、
R
5はメチル、-CH
2F、-CHF
2および-CF
3からなる群から選択され、
R
6およびR
7は独立して水素およびフッ素からなる群から選択され、
nは5~500の整数であり、
Xは-O-または-NH-であり、かつ
Lは、-CH=CH-、-C≡C-、-CH
2-、-N=CH-、-CH=NH-、-NH-、-NH-NH-、-NH-N=CH-、-O-、-O(CH
2)O-、-CO-、-O(CO)-、-(CO)O-、-C(=CH
2)-、-C(=NH)-、-CONH-、-NHCO-、-NH(CO)NH-、-S-、-S-S-、-SO-、-SO
2-、-SO
2NH
2-および-フェニレン-からなる群から選択される1つ以上の部分を含むビラジカル鎖であり、ここではLは任意に、ハロゲン、-OH、-NR
aR
b、-SH、-NHNH
2、-COOR
c、-CF
3、-OCF
3、
【化38】
からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換されており、
ここではLが-CH
2-部分を含む場合、その炭素原子に結合された2つの水素原子は任意に以下環:
【化39】
によって置換されており、
PAAが式(XXI)の繰り返しサルコシンをベースとする単位である場合、Lは、化学的に可能な結合によってPAAの窒素原子に結合されており、かつPAAが式(XXII)の繰り返しサルコシンをベースとする単位であり、かつmが1である場合、Lは化学的に可能な結合によってPAAのカルボニル基に結合されており、
Lは、化学的に可能な結合によってビタミンEベース部分の酸素原子に結合されており、かつ
破線結合-----はそれぞれ独立して単結合または代わりとして二重結合であり、かつ
R
a、R
bおよびR
cは独立して、H、-フェニル、-(C
1~C
6)アルキル、-(C
2~C
6)アルケニル、-(C
1~C
6)アルキルフェニルおよび-フェニル(C
1~C
6)アルキルからなる群から選択されるラジカルである)。
【0102】
実施形態4:R1は、-(C1~C12)アルキル、-(C1~C12)アルキルフェニル、-(C1~C6)アルキル-O-(C1~C6)アルキル、-CO-(C1~C12)アルキル、-CO-(C1~C12)アルキルフェニルおよび-CO-(C1~C6)アルキル-O-(C1~C6)アルキルからなる群から選択され、ここではR1は任意に、ハロゲン、-OH、-NRaRb、-SH、-NHNH2、-COORc、-CF3および-OCF3からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換されており、
PAAが式(XXI)の繰り返しサルコシンをベースとする単位である場合、Lは、アミド結合、カルバメート結合、尿素結合およびアミン結合からなる群から選択される化学的に可能な結合によってPAAの窒素原子に結合されており、かつPAAが式(XXII)の繰り返しサルコシンをベースとする単位であり、かつmが1である場合、Lは、アミド結合およびエステル結合からなる群から選択される化学的に可能な結合によってPAAのカルボニル基に結合されており、かつLは、エステル結合、カルバメート結合およびエーテル結合からなる群から選択される化学的に可能な結合によってビタミンEベース部分の酸素原子に結合されている、実施形態1~3のいずれかに係るポリマー。
【0103】
実施形態5:特に実施例に示されているSECまたは1H-NMR分光法によって測定したnは5~400、5~300、5~200、5~100、5~50、5~40、5~35または5~25であり、より詳細にはnは約6、または約15または約20である、実施形態1~4のいずれかに係るポリマー。
【0104】
実施形態6:700~50000Da、より詳細には1000~20000Da、さらにより詳細には1000~5000Daまたは1000~3000Daの実施例に開示されているSECによって測定した平均分子量(Mw)を有する、実施形態1~5のいずれかに係るポリマー。
【0105】
実施形態7:実施例に開示されているSECによって測定した1.01~1.80、1.01~1.50、1.01~1.30、1.01~1.20または1.01~1.10の多分散性指数を有する、実施形態1~6のいずれかに係るポリマー。
【0106】
実施形態8:R5はメチルである、実施形態1~7のいずれかに係るポリマー。
【0107】
実施形態9:R6およびR7は水素である、実施形態1~8のいずれかに係るポリマー。
【0108】
実施形態10:R2、R3およびR4は独立して水素およびメチルからなる群から選択される、実施形態1~9のいずれかに係るポリマー。
【0109】
実施形態11:クロマン環に結合されたアルキル鎖の破線結合はそれぞれ単結合であり、かつR2、R3およびR4は以下の意味:(i)R2、R3およびR4はメチルである、(ii)R2、R4はメチルであり、かつR3は水素である、(iii)R3およびR4はメチルであり、かつR2は水素である、から選択される、および(iv)R4はメチルであり、かつR2およびR3は水素である、実施形態1~10のいずれかに係るポリマー。
【0110】
実施形態12:クロマン環に結合されたアルキル鎖の破線結合はそれぞれ単結合であり、かつR2、R3およびR4はメチルであり、より詳細には、本ポリマーのビタミンEベース部分は、式(XXIV’)を有する、実施形態11に係るポリマー。
【0111】
実施形態13:クロマン環に結合されたアルキル鎖の破線結合はそれぞれ二重結合であり、かつR2、R3およびR4は以下の意味:(i)R2、R3およびR4はメチルである、(ii)R2、R4はメチルであり、かつR3は水素である、(iii)R3およびR4はメチルであり、かつR2は水素である、および(iv)R4はメチルであり、かつR2およびR3は水素である、から選択される、実施形態1~10のいずれかに係るポリマー。
【0112】
実施形態14:クロマン環に結合されたアルキル鎖の破線結合はそれぞれ単結合であり、かつR2、R3およびR4はメチルである、実施形態13に係るポリマー。
【0113】
実施形態15:R1は-(C1~C12)アルキル、-(C1~C12)アルキルフェニル、-(C1~C6)アルキル-O-(C1~C6)アルキル、-CO-(C1~C12)アルキル、-CO-(C1~C12)アルキルフェニルおよび-CO-(C1~C6)アルキル-O-(C1~C6)アルキルからなる群から選択され、ここではアルキル基は本明細書に定義されているように任意に置換されていてもよく、より詳細には、PAAが式(XXI)の繰り返しサルコシンをベースとする単位であり、かつzが1である場合、R1は、-(C1~C12)アルキル、-(C1~C12)アルキルフェニルおよび-(C1~C6)アルキル-O-(C1~C6)アルキルからなる群から選択され、かつPAAが式(XXII)の繰り返しサルコシンをベースとする単位であり、かつzが0である場合、R1は、-CO-(C1~C12)アルキル、-CO-(C1~C12)アルキルフェニルおよび-CO-(C1~C6)アルキル-O-(C1~C6)アルキルからなる群から選択され、ここでは全てのアルキル基は本明細書に定義されているように任意に置換されていてもよい、実施形態3または5~14のいずれかに係るポリマー。
【0114】
実施形態16:特にPAAが式(XXI)の繰り返しサルコシンをベースとする単位であり、かつzが1である場合、R1は、-(C1~C6)アルキル、-(C1~C3)アルキル-O-(C1~C3)アルキルおよび-(C1~C6)アルキルフェニルからなる群から選択され、かつここではアルキル基は本明細書に定義されているように任意に置換されていてもよい、実施形態3または5~15のいずれかに係るポリマー。
【0115】
実施形態17:特にPAAが式(XXI)の繰り返しサルコシンをベースとする単位であり、かつzが1である場合、R1は、イソプロピル、2-メトキシエチル、n-プロピル、n-ブチル、ネオペンチル、ベンジルおよび2-(2-メトキシエトキシ)エチルからなる群から選択され、より詳細にはR1はイソプロピルである、実施形態16に係るポリマー。
【0116】
実施形態18:特にPAAが式(XXII)の繰り返しサルコシンをベースとする単位であり、かつzが0である場合、R1は、-CO-(C1~C6)アルキル、-CO-(C1~C6)アルキル-O-C1~C3)アルキルおよび-CO-(C1~C6)アルキルフェニルからなる群から選択され、かつここではアルキル基は本明細書に定義されているように任意に置換されていてもよい、実施形態3または5~15のいずれかに係るポリマー。
【0117】
実施形態19:特にPAAが式(XXII)の繰り返しサルコシンをベースとする単位であり、かつzが0である場合、R1はアセチルである、実施形態18に係るポリマー。
【0118】
実施形態20:R1はHである、実施形態3~14のいずれかに係るポリマー。
【0119】
実施形態21:繰り返しサルコシンをベースとする単位PAAは式(XXI)を有する、実施形態3~20のいずれかに係るポリマー。
【0120】
実施形態22:zは1であり、かつmは1であり、すなわち式(I)のポリマーは、R1~R7、X、Lおよびnが本明細書に定義されているとおりであり、かつLが、アミド結合、カルバメート結合、尿素結合およびアミン結合からなる群から選択される化学的に可能な結合によってサルコシンをベースとする単位の窒素原子に結合されている式(Ia)のポリマーである、実施形態21に係るポリマー。
【0121】
実施形態23:サルコシンをベースとする単位は、エステル結合およびアミド結合からなる群から選択される化学的に可能な結合によってXに結合されている、実施形態22に係るポリマー。
【0122】
実施形態24:Xは-NH-である、実施形態21~22のいずれかに係るポリマー。
【0123】
実施形態25:Xは-O-である、実施形態21~22のいずれかに係るポリマー。
【0124】
実施形態26:式(Ia’)、より詳細には式(Ia’’)を有する、実施形態21~22のいずれかに係るポリマー。
【0125】
実施形態27:リンカーLは任意にハロゲン、-OH、-NRaRb、-SH、-NHNH2、-COORc、-CF3および-OCF3(式中、Ra、RbおよびRcは独立して、H、-フェニル、-(C1~C6)アルキル、-(C2~C6)アルケニル、-(C1~C6)アルキルフェニルおよび-フェニル(C1~C6)アルキルからなる群から選択されるラジカルである)からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された-(C1~C12)アルキレン-、-(C1~C6)アルキル-CO-、-CO-(C1~C6)アルキル-ならびに式(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)(XII)(XIII)、(XIV)、(XV)、(XVI)、(XVII)、(XVIII)または(XIX)のビラジカルからなる群から選択されるビラジカルである、実施形態21~26のいずれかに係るポリマー。
【0126】
実施形態28:リンカーLは-(C1~C12)アルキレン-、より詳細には-(C1~C6)アルキル-であり、かつ本明細書に定義されているように任意に置換されている、実施形態27に係るポリマー。
【0127】
実施形態29:リンカーLは-(C1~C6)アルキル-CO-または-CO-(C1~C6)アルキル-であり、かつ本明細書に定義されているように任意に置換されている、実施形態27に係るポリマー。
【0128】
実施形態30:リンカーLは式(III)のビラジカル、より詳細には、bが0であり、かつa+cが2、3、4、5、6、7、8、9、10、11および12から選択される式(III)のビラジカルであり、さらにより詳細には、Lは、bが0であり、かつaおよびcが1であり式(III)のビラジカル、すなわち式(IIIa)のビラジカルである、実施形態27に係るポリマー。
【0129】
実施形態31:リンカーLは式(IV)、(V)および(VI)から選択されるビラジカルであり、より詳細には、式(IV)のビラジカルにおいて、aは1であり、かつ破線結合は二重結合であり、すなわち式(IV)のビラジカルは、式(IVa)を有し、かつ式(V)のビラジカルにおいて、破線結合はより詳細には二重結合であり、すなわち式(V)のビラジカルは式(Va)を有する、実施形態27に係るポリマー。
【0130】
実施形態32:リンカーLは式(VII)および(VIII)から選択されるビラジカルであり、より詳細には、式(VIII)のビラジカルにおいてaは1である、実施形態27に係るポリマー。
【0131】
実施形態33:リンカーLは式(IX)のビラジカル、より詳細には、bおよびgが0であり、かつa、c、d、e、fおよびhが1である式(IX)のビラジカル、すなわち式(IXa)のビラジカルである、実施形態27に係るポリマー。
【0132】
実施形態34:リンカーLは式(X)および(XI)から選択されるビラジカルであり、より詳細には式(X)および(XI)のビラジカルにおいて、bおよびgは0であり、かつa、c、d、e、fおよびhは1であり、すなわち式(X)および(XI)のビラジカルはそれぞれ式(Xa)および(XIa)を有する、実施形態27に係るポリマー。
【0133】
実施形態35:リンカーLは式(XII)および(XIII)から選択されるビラジカルであり、より詳細には式(XII)および(XIII)のビラジカルにおいて、bは0であり、かつa、cおよびdは1である、実施形態27に係るポリマー。
【0134】
実施形態36:リンカーLは式(XIV)、(XV)、(XVI)、(XVII)および(XVIII)から選択されるビラジカルであり、より詳細には式(XIV)、(XV)、(XVI)、(XVII)および(XVIII)のビラジカルにおいて、bは0であり、かつaおよびcは1である、実施形態27に係るポリマー。
【0135】
実施形態37:リンカーLは、pが0であり、かつjおよびkが1であるか、あるいは代わりとしてpが1であり、X’が-NH-であり、かつjおよびkが1であるか、あるいは代わりとしてpが1であり、X’が-O-であり、かつjおよびkが1である式(XIX)のビラジカルである、実施形態27に係るポリマー。
【0136】
実施形態38:リンカーLは、
【化40】
からなる群から選択される式(III)のビラジカルである、実施形態27に係るポリマー。
【0137】
実施形態39:リンカーLは式(XVa)および(XVIIa):
【化41】
から選択されるビラジカルであり、式中、「
*」は、繰り返しサルコシンをベースとする単位の窒素原子またはビタミンEベース部分の酸素原子へのビラジカルLの結合点を示し、bが0である場合にaまたはcの少なくとも1つは0以外であるという条件で、aおよびcは独立して整数0~10、特に0~6であり、bは整数0~1であり、より詳細には式(XVa)および(XVIIa)のビラジカルにおいてbは0であり、かつaおよびcは1である、実施形態21~26のいずれかに係るポリマー。
【0138】
実施形態40:繰り返しサルコシンをベースとする単位PAAは式(XXII)を有する、実施形態3~20のいずれかに係るポリマー。
【0139】
実施形態41:zは0であり、すなわち式(I)のポリマーは、式(Ib)のポリマーであり、式中、R1~R7、L、m、およびnは本明細書に定義されているとおりであり、かつmが1である場合、Lは、アミド結合およびエステル結合からなる群から選択される化学的に可能な結合によってPAAのカルボニル基に結合されており、かつmが0である場合、PAAはエステル結合によってビタミンEベース部分の酸素原子に結合されている、実施形態40に係るポリマー。
【0140】
実施形態42:PAAはアミン結合によってR1に結合されている、実施形態41に係るポリマー。
【0141】
実施形態43:mが1であり、かつリンカーLは任意にハロゲン、-OH、-NRaRb、-SH、-NHNH2、-COORc、-CF3および-OCF3からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された-X’-(C1~C12)アルキレン-(式中、Ra、RbおよびRcは独立して、H、-フェニル、-(C1~C6)アルキル、-(C2~C6)アルケニル、-(C1~C6)アルキルフェニルおよび-フェニル(C1~C6)アルキル;-X’-(C1~C6)アルキル-CO-からなる群から選択されるラジカルである)からなる群から選択されるビラジカルならびに式(III’)、(IV’)、(V’)、(VI’)、(VII)、(VIII)、(IX’)、(X’)、(XI’)、(XII’)(XIII’)、(XIV’)、(XV’)、(XVI’)、(XVII’)、(XVIII’)または(XIX’)のビラジカルである、実施形態41~42のいずれかに係るポリマー。
【0142】
実施形態44:リンカーLは-X’-(C1~C12)アルキレン-、より詳細には-X’-(C1~C6)アルキル-であり、かつ本明細書に定義されているように任意に置換されている、実施形態43に係るポリマー。
【0143】
実施形態45:リンカーLは-X’-(C1~C6)アルキル-CO-または-X’-(C1~C6)アルキル-であり、かつ本明細書に定義されているように任意に置換されている、実施形態43に係るポリマー。
【0144】
実施形態46:リンカーLは式(III’)のビラジカル、より詳細にはbが0であり、かつa+cが2、3、4、5、6、7、8、9、10、11および12から選択される式(III’)のビラジカルであり、さらにより詳細には、Lは、bが0であり、aが1であり、かつcが0または1であり、かつX’が-NH-である式(III’)のビラジカル、すなわち式(IIIa’)のビラジカルである、実施形態43に係るポリマー。
【0145】
実施形態47:リンカーLは式(IV’)、(V’)および(VI’)から選択されるビラジカルであり、より詳細には、X’は-NH-であり、さらにより詳細には、式(IV’)のビラジカルにおいて、aは1であり、かつ破線結合は二重結合であり、すなわち式(IV’)のビラジカルは式(IVa’)を有し、かつ式(V’)のビラジカルにおいて、破線結合はより詳細には二重結合であり、かつX’は-NH-であり、すなわち式(V’)のビラジカルは、式(Va’)を有する、実施形態43に係るポリマー。
【0146】
実施形態48:リンカーLは式(VII)および(VIII)から選択されるビラジカルであり、より詳細には、式(VIII)のビラジカルにおいて、aは1である、実施形態47に係るポリマー。
【0147】
実施形態49:リンカーLは式(IX’)のビラジカル、より詳細には、bおよびgが0であり、a、c、d、e、fおよびhが1であり、かつX’が-NH-である式(IX’)のビラジカル、すなわち式(IXa’)のビラジカルである、実施形態43に係るポリマー。
【0148】
実施形態50:リンカーLは式(X’)および(XI’)から選択されるビラジカルであり、より詳細には式(X’)および(XI’)のビラジカルにおいて、bおよびgは0であり、a、c、d、e、fおよびhは1であり、かつX’は-NH-であり、すなわち式(X’)および(XI’)のビラジカルはそれぞれ式(Xa’)および(XIa’)を有する、実施形態43に係るポリマー。
【0149】
実施形態51:リンカーLは式(XII’)および(XIII’)から選択されるビラジカルであり、より詳細には式(XII’)および(XIII’)のビラジカルにおいて、bは0であり、a、cおよびdは1であり、かつX’は-NH-である、実施形態43に係るポリマー。
【0150】
実施形態52:リンカーLは式(XIV’)、(XV’)、(XVI’)、(XVII’)および(XVIII’)から選択されるビラジカルであり、より詳細には式(XIV’)、(XV’)、(XVI’)、(XVII’)および(XVIII’)のビラジカルにおいて、bは0であり、aおよびcは1であり、かつX’は-NH-である、実施形態43に係るポリマー。
【0151】
実施形態53:リンカーLは、X’が-NH-であり、かつjおよびkが1である式(XIX’)から選択されるビラジカルである、実施形態43に係るポリマー。任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた別の実施形態では、式(Ib)のポリマーにおいて、Lは、X’が-O-であり、かつjおよびkが1である式(XIX)から選択されるビラジカルである。
【0152】
実施形態54:リンカーLは、
【化42】
からなる群から選択される式(III’)のビラジカルである、実施形態43に係るポリマー。
【0153】
実施形態55:式(IIIa’’):
【化43】
のリンカーLはビラジカルであり、式中、「
*3」は、カルボニル基へのビラジカルLの結合点を示し、「
*4」は、ビタミンEベース部分の酸素原子へのビラジカルの結合点を示す、実施形態41~42のいずれかに係るポリマー。
【0154】
実施形態56:mは0である、実施形態40~42のいずれかに係るポリマー。
【0155】
式(I)のポリマーの調製のためのプロセスも本発明の一部である。式(I)のポリマーは、当該技術分野において周知の合成プロセスによって調製してもよい。
【0156】
例えば、繰り返しサルコシンをベースとする単位PAAが式(XXI)を有する式(I)のポリマー(すなわち式(Ia)のポリマー)は、以下のスキーム:
【化44】
に示されているように式(A)のポリマーを式(B)のポリマーと反応させることにより調製してもよく、式中、R
Aは-L
1-(CO)-Yまたは-L
2-O-Hまたは-L-LGから選択され、ここでは-L
1-(CO)-は-CO-部分で終端するリンカーLであり、-L
2-O-は-O-部分で終端するリンカーLであり、かつYはOHまたはハロゲン原子であり、LGは脱離基であり、かつn、X、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7およびLは本明細書に定義されているとおりである。
【0157】
RAが-L1-(CO)-Yであり、かつYがOHである場合、アミド結合は化合物(A)と(B)との間で形成されている。この反応は、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムテトラフルオロボレート(DMTMMBF4)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl)またはヒドロキシベンゾ-トリアゾール(HOBt)などの活性化剤の存在下、好ましくはトリエチルアミン(TEA)、N-メチルモルホリン(NMM)またはN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)などの塩基の存在下で、ジメチルホルムアミド、ジクロロメタンまたはクロロホルムなどの好適な溶媒中、室温~溶媒の沸点の温度に含まれる温度、好ましくは室温で行ってもよい。
【0158】
RAが-L1-(CO)-Yであり、かつYがハロゲン原子である場合、この反応は、トリエチルアミンなどの塩基の存在下、テトラヒドロフランなどの好適な溶媒中、室温~溶媒の還流温度に含まれる温度で行ってもよい。式(A)の化合物は、Xがハロゲン原子である場合、当該技術分野において周知の方法によって対応するカルボン酸から調製してもよい。
【0159】
RAが-L2-OHである場合、この反応は、1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI)、炭酸N,N’-ジスクシンイミジル(DSC)または炭酸ビス(トリクロロメチル)(BTC)などのカルボニル源の存在下、アセトニトリルまたは1,4-ジオキサンなどの好適な溶媒中、室温~溶媒の還流温度に含まれる温度で行ってもよい。
【0160】
RAが-L-LGである場合、この反応は、トリエチルアミン(TEA)、N-メチルモルホリン(NMM)またはN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)などの塩基の存在下、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジクロロメタンまたはクロロホルムなどの好適な溶媒中、室温~溶媒の沸点の温度に含まれる温度、好ましくは室温で行ってもよい。脱離基の非限定的な例としてはハロゲン、-OSO2Rおよび-OCORが挙げられ、式中、Rは、任意に1つ以上のハロゲン原子で置換された(C1~C4)アルキル、および任意に(C1~C4)アルキルまたは任意に1つ以上のハロゲン原子で置換された(C1~C4)アルキルで置換された(C6~C12)アリールからなる群から選択される。より詳細には、LGは、ハロゲン、-OSO2CH3(-OMs)、-OSO2C7H7(-OTs)、-OSO2CF3(-OTf)、-OCOCH3(-OAc)、-OCOPh(-OBz)および-OCOCF3(-TFA)から選択される。
【0161】
R
Aが-L
1-(CO)-Yであり、かつYがOHである式(A)の化合物、すなわち式(A
1)の化合物は商業的に入手可能であるか、あるいはビタミンE誘導体である式(C)の化合物を式(D)の化合物と反応させることにより調製してもよい。
【化45】
式中、R
2、R
3およびR
4は本明細書に定義されているとおりであり、かつL
3は2つの-COOH部分で終端するリンカーLである。この反応は、エステル結合の形成のために先に開示されている条件と類似の条件下で行ってもよい。
【0162】
R
Aが-L-LGである式(A)の化合物すなわち式(A
2)の化合物は、エーテル結合の形成のために先に開示されている条件と類似の条件下で、式(C)の化合物を式(E)の化合物と反応させることにより調製してもよい。
【化46】
式中、R’は-COOHまたはそれらの無水物またはエステル誘導体または脱離基である。
【0163】
式(B)の化合物はN-カルボキシ無水物(NCA)、特に3-アルキルオキサゾリジン-2,5-ジオン(式(F)の化合物)の開環重合(ROP)によって調製してもよい。直鎖状ポリサルコシンポリマー(R
1-X-PSar
n)を得るために、式(G)のアミンまたはアルコールを開始剤として使用する。この反応は、ジメチルホルムアミドなどの好適な溶媒中、4℃~室温に含まれる温度、好ましくは約10℃で行う。
【化47】
【0164】
モノマー(NCA)/開始剤(アルコール/アミン)比により、重合度(DP)を制御することができる。繰り返しサルコシンをベースとする単位PAAが式(XXII)を有する式(I)のポリマー(すなわち式(Ib)のポリマー)は、当該技術分野において周知の合成プロセスによって調製してもよい。例えばmが1である式(XXII)の化合物は、式(H)のアミンまたはアルコールを開始剤として使用することにより、式(F)のN-カルボキシ無水物の開環重合(ROP)によって調製してもよい。
【化48】
式中、-L
4-X’-はX’部分で終端するリンカーLであり、式中、X’は-NH-または-O-である。
【0165】
Mが0である場合、式(XXII)の化合物は、開始剤として式(K)のアミンまたはアルコールを使用することにより、式(F)のN-カルボキシ無水物の開環重合(ROP)によって調製してもよい。
【化49】
【0166】
式(J)および(J’)の得られた中間体を式R1-LG(式中、LGは脱離基である)の化合物と反応させて、式(I)の化合物を得てもよい。
【0167】
式(II)の複合体
適当な表面官能性を用いて、細胞を能動的に標的化し、かつ細胞侵入を助けることができる他の分子で本発明のポリマーをさらに修飾し、それにより向上した細胞特異的送達を有する複合体を得てもよい。
【0168】
従って本発明は、直接またはリンカーを介して共有結合により結合されている本発明のポリサルコシンビタミンE誘導体と他の分子との複合体にも関する。従って本発明は、式(II):
【化50】
の複合体またはそれらの医薬、栄養補助食品もしくは化粧品的に許容される塩、あるいは式(II)の複合体のいずれかまたはそれらの塩のいずれかの任意の立体異性体または立体異性体の混合物に関し、
式中、m、PAA、X、n、L、R
2、R
3、R
4および破線結合は本明細書に定義されているとおりであり、
Zは、栄養補助食品的に活性な薬剤、医薬的に活性な薬剤、細胞標的化剤、診断的に活性な薬剤および化粧品的に活性な薬剤からなる群から選択される薬剤であり、
sは0または1であり、かつ
繰り返しサルコシンをベースとする単位PAAが式(XXII)を有する場合にz’は0であるという条件で、z’は0または1であり、
L’は、-CH=CH-、-C≡C-、-CH
2-、-N=CH-、-CH=NH-、-NH-、-NH-NH-、-NH-N=CH-、-O-、-O(CH
2)O-、-CO-、-O(CO)-、-COO-、-C(=CH
2)-、-C(=NH)-、-CONH-、-NHCO-、-NH(CO)NH-、-S-、-S-S-、-SO-、-SO
2-、-SO
2NH
2-および-フェニレン-からなる群から選択される1つ以上の部分を含むビラジカル鎖であり、ここではL’は本明細書に定義されているように任意に置換されている。
【0169】
任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた一実施形態によれば、式(II)の複合体において、PAAは式(XXI)の繰り返しサルコシンをベースとする単位であり、すなわち式(II)の複合体は式(IIa):
【化51】
の複合体であり、
式中、n、X、L、L’、Z、z’、s、R
2~R
7および破線結合は本明細書に定義されているとおりである。
【0170】
任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた別の実施形態によれば、式(II)の複合体において、PAAは式(XXII)の繰り返しサルコシンをベースとする単位であり、すなわち式(II)の複合体は、式(IIb):
【化52】
の複合体であり、
式中、n、L、L’、Z、s、m、R
2~R
7および破線結合は本明細書に定義されているとおりである。
【0171】
任意に上または下に提供されている実施形態のいずれかと組み合わせた一実施形態では、Zは細胞標的化剤である。本明細書で使用される「細胞標的化剤」という用語は、特異的細胞型において発現または過剰発現される受容体に選択的に結合する栄養補助食品的に活性な薬剤、医薬的に活性な薬剤、診断的に活性な薬剤および化粧品的に活性な薬剤などの任意の分子、高分子または生体高分子を指す。細胞標的化基は当該技術分野において周知である。
【0172】
細胞標的化基の例としては、限定されるものではないが、ガラクトサミン、葉酸塩、Her-2結合ペプチド、TLRアゴニスト、β-D-グルコース、Asn-Gly-Argペプチド、angiopep-2、葉酸、アプタマー(A-9、A10、抗gp120、TTA1、sgc8、抗MUC-1、AS1411)、プリマキン、ジドブジン、スーパーオキシドディスムターゼ、プレドニソロン、白金、シスプラチン、スルファメトキサゾール、アモキシシリン、エトポシド、メサラジン、ドキソルビシン、パクリタキセル、5-アミノサリチル酸、デノスマブ、ドセタキセル、カルシトニン、プロアントシアニジン、メトトレキサート、カンプトテシン、ガラクトース、グリチルレチン酸、ラクトース、ヒアルロン酸、オクトレオチド、ラクトビオン酸、β-ガラクトシル部分、アラビノガラクタン、キトサン、アゾ系ポリホスファゼン、アゾ基および4-アミノ-ベンジル-カルバメート、スクシネート、4,4’-ジヒドロキシアゾベンゼン-3-カルボン酸、環状RGDペンタ-ペプチド、アスパラギン酸オクタペプチド、アレンドロネート、トランスフェリン、ビスホスホネートアレンドロネート、モノシアロガングリオシドGM1、グルタチオン、E-セレクチンチオアプタマー、ポロキサマー-407、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子受容体(uPAR)アンタゴニスト、CXCR4ケモカイン受容体アンタゴニスト、GRP78ペプチドアンタゴニスト、RGDペプチド、RGD環状ペプチド、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アンタゴニストペプチド、アミノペプチダーゼ標的化ペプチド、脳ホーミングペプチド、腎臓ホーミングペプチド、心臓ホーミングペプチド、腸ホーミングペプチド、インテグリンホーミングペプチド、血管新生腫瘍内皮ホーミングペプチド、卵巣ホーミングペプチド、子宮ホーミングペプチド、精子ホーミングペプチド、小膠細胞ホーミングペプチド、滑膜ホーミングペプチド、尿路上皮ホーミングペプチド、前立腺ホーミングペプチド、肺ホーミングペプチド(例えばRCPLSHSLICY)、ラミニン受容体結合ペプチド(例えばYIGSR)、皮膚ホーミングペプチド、網膜ホーミングペプチド、膵臓ホーミングペプチド、肝臓ホーミングペプチド、リンパ節ホーミングペプチド、副腎ホーミングペプチド、甲状腺ホーミングペプチド、膀胱ホーミングペプチド、乳房ホーミングペプチド、神経芽細胞腫ホーミングペプチド、リンパ腫ホーミングペプチド、筋肉ホーミングペプチド、創傷血管系ホーミングペプチド、脂肪組織ホーミングペプチド、ウイルス結合ペプチドまたは融合ペプチドが挙げられる。
【0173】
任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた別の実施形態によれば、式(II)の複合体において、Zは抗癌剤である。抗癌剤の非限定的な例としては、限定されるものではないが、シスプラチン、パクリタキセル、5-フルオロウラシル、ゲムシタビン、ハーセプチン、ミトキサントロン、カンタリジン、ドセタキセル、アントラサイクリン薬(ドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、イダルビシン、イリノテカンまたはカンプトテシンが挙げられる。
【0174】
任意に上または下に提供されている実施形態のいずれかと組み合わせた特定の実施形態によれば、Zは、低分子量薬物、ペプチド、抗体、ホルモン、酵素、核酸、タンパク質およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0175】
本明細書で使用される「核酸」という用語はDNAまたはRNAを指す。任意に上または下に提供されている実施形態のいずれかと組み合わせた特定の実施形態では、核酸はいくつか例を挙げると、DNA/RNAハイブリッド、低分子干渉RNA(siRNA)、ミクロRNA(miRNA)、シングルガイドRNA(sgRNA)、ドナーDNA、自己増幅/複製RNA、環状RNA(oRNA)、プラスミドDNA(pDNA)、閉鎖型直鎖状DNA(clDNA)、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)、アンチセンスRNA(aRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)、CRISPRガイドRNA、アンチセンス核酸、デコイ核酸、アプタマーおよびリボザイムであり、二本鎖、一本鎖、ヘリックス、ヘアピンなどのヌクレオチド配列およびそれらの任意の構造的実施形態の両方を包含し、修飾もしくは未修飾塩基を含んでいてもよい。別個の核酸が提供される場合、それらは全てのDNA分子または全てのRNA分子であってもよく、あるいはDNAおよびRNA分子の混合物またはDNAおよびRNA鎖の会合を含む分子であってもよい。
【0176】
核酸は、オリゴもしくはポリ二本鎖RNA、オリゴもしくはポリ二本鎖DNA、オリゴもしくはポリ一本鎖RNA、オリゴもしくはポリ一本鎖DNAなどのポリもしくはオリゴヌクレオチドであってもよい。核酸に含まれているヌクレオチドはそれぞれ、天然に生じるヌクレオチドまたは化学的に修飾された天然に生じないヌクレオチドであってもよい。核酸の鎖長は特に限定されず、核酸は10~200塩基、好ましくは20~180塩基、好ましくは25~100塩基、好ましくは30~50塩基の範囲の短い鎖を有していてもよく、あるいは核酸は200~20000塩基、より好ましくは250~約15000塩基の比較的長い鎖を有していてもよい。
【0177】
任意に上または下に提供されている実施形態のいずれかと組み合わせた特定の実施形態によれば、核酸は閉鎖型直鎖状DNA(clDNA)であり、すなわち二本鎖領域が2つの一本鎖ループによって挟まれて保護されており、それによりダンベル状の分子を生成する分子である。
【0178】
任意に上または下に提供されている実施形態のいずれかと組み合わせたより特定の実施形態では、clDNAはヘアピンループによって両端で共有結合的に閉鎖された目的の二本鎖DNA配列を含むステム領域からなり、clDNAは少なくとも2つの修飾されたヌクレオチドを含む。
【0179】
本明細書で使用される「閉鎖型直鎖状DNA」または「clDNA」という用語は、ヌクレオチドハイブリダイゼーションを可能にする条件下で「ダンベル」または「イヌの骨」状の構造を形成する一本鎖の共有結合的に閉鎖されたDNA分子を指す。従って、clDNAは一本鎖DNA分子によって形成されているが、同じ分子内の2つの相補的な配列のハイブリダイゼーションによる「ダンベル」構造の形成により、2つの一本鎖ループによって挟まれた二本鎖中間セグメントからなる構造が生成される。当業者は、日常的な分子生物学技術を用いて開放もしくは閉鎖型二本鎖DNAからclDNAを生成する方法を知っている。例えば当業者は、例えばリガーゼの作用によってヘアピン型DNAアダプターを開放型二本鎖DNAの両端に結合することによりclDNAを生成できることを知っている。「ヘアピン型DNAアダプター」は、2つの相補的な配列のハイブリダイゼーションによってステムループ構造を形成する一本鎖DNAを指し、ここでは形成されたステム領域は一本鎖ループによって一端で閉鎖されており、かつ他端で開放されている。
【0180】
「修飾されたヌクレオチド」は、塩基、糖またはリン酸基の修飾によって化学的に修飾されているか、あるいはその構造に非天然部分が組み込まれている任意のヌクレオチド(例えば、アデノシン、グアノシン、シチジン、ウラシルおよびチミジン)である。従って修飾されたヌクレオチドは、修飾に応じて天然に生じるものであっても天然に生じないものであってもよい。
【0181】
本開示の文脈において「標識もしくはイメージング剤」ともいう「診断的に活性な薬剤」という表現は、任意のイメージング技術において標識として使用されるか、あるいは特異的構造を増強するあらゆる物質を指す。故にイメージング剤としては、光学イメージング剤、磁気共鳴イメージング剤、放射性同位体および造影剤が挙げられる。イメージング剤または標識剤は当該技術分野において周知である。イメージング剤または標識剤の特定の例は、滅菌された空気、酸素、アルゴン、窒素、蛍光、パーフルオロカーボン、二酸化炭素、二酸化窒素、六フッ化硫黄、キセノンおよびヘリウムなどのガスならびにポジトロン断層法(PET)、コンピューター断層撮影法(CAT)、単一光子放射型コンピューター断層撮影法法、X線、蛍光透視法および磁気共鳴画像法(MRI)で使用される市販の薬剤である。MRIでイメージング剤として使用するのに適した材料の例としては、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)およびガドペンテト酸ジメグルミンなどの現在入手可能なガドリニウムキレート、ならびに鉄、マグネシウム、マンガン、銅およびクロムが挙げられる。CATおよびX線にとって有用な材料の例としては、ジアトリゾ酸およびイオタラム酸によって代表されるイオン性モノマー、イオパミドール、イオヘキソールおよびイオベルソールなどの非イオン性モノマー、イオトロールおよびイオジキサノールなどの非イオン性ダイマーならびにイオン性ダイマー、例えばイオキサグル酸などの静脈内投与のためのヨウ素ベースの材料が挙げられる。他の有用な材料としては、経口使用のためのバリウムおよび酢酸亜鉛などの不溶性塩が挙げられる。いくつかの分子においてイメージング剤は色素である。いくつかの分子においてイメージング剤は蛍光部分である。いくつかの分子において蛍光部分は、蛍光タンパク質、蛍光ペプチド、蛍光色素、蛍光物質またはそれらの組み合わせから選択される。蛍光色素の例としては、限定されるものではないが、キサンテン(例えば、ローダミン、ロドール、フルオレセインおよびそれらの誘導体)、ビマン、クマリンおよびそれらの誘導体(例えば、ウンベリフェロンおよびアミノメチルクマリン)、芳香族アミン(例えば、ダンシル、スクアリン酸色素)、ベンゾフラン、蛍光シアニン、インドカルボシアニン、カルバゾール、ジシアノメチレンピラン、ポリメチン、オキサベンズアントラン、キサンテン、ピリリウム、カルボスチリル、ペリレン、アクリドン、キナクリドン、ルブレン、アントラセン、コロネン、フェナントレン、ピレン、ブタジエン、スチルベン、ポルフィリン、フタロシアニン、ランタニド金属キレート錯体、希土類金属キレート錯体およびそのような色素の誘導体が挙げられる。フルオレセイン色素の例としては、限定されるものではないが、5-カルボキシフルオレセイン、フルオレセイン-5-イソチオシアネート、フルオレセイン-6-イソチオシアネートおよび6-カルボキシフルオレセインが挙げられる。ローダミン色素の例としては、限定されるものではないが、テトラメチルローダミン-6-イソチオシアネート、5-カルボキシテトラメチルローダミン、5-カルボキシロドール誘導体、テトラメチル、テトラエチルローダミン、ジフェニルジメチル、ジフェニルジエチルローダミン、ジナフチルローダミン、ローダミン101スルホニルクロリド(テキサスレッド(TEXAS RED)(登録商標)という商品名で販売されている)が挙げられる。シアニン色素の例としては、限定されるものではないが、Cy3、Cy3B、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、IRDYE680、Alexa Fluor 750、IRDye800CW、ICGが挙げられる。蛍光ペプチドの例としては、GFP(緑色蛍光タンパク質)またはGFPの誘導体(例えば、EBFP、EBFP2、Azurite、mKalama1、ECFP、Cerulean、CyPet、YFP、Citrine、Venus、YPet)が挙げられる。蛍光標識は任意の好適な方法によって検出される。例えば蛍光標識は、フルオロクロムを適当な波長の光で励起させること、および生じた蛍光を検出すること、例えば顕微鏡法、目視検査、写真フィルム、電荷結合素子(CCD)、光電子増倍管などの電子検出器の使用によって検出してもよい。いくつかの分子においてイメージング剤は、ポジトロン断層法(PET)のためにポジトロン放出同位体(例えば18F)で、単一光子放射型コンピューター断層撮影法(SPECT)のためにγ線同位体(例えば99mTc)で、あるいは磁気共鳴画像法(MRI)のために常磁性分子またはナノ粒子(例えば、Gd3+キレートまたはコーティングされた磁鉄鉱ナノ粒子)で標識化されている。いくつかの分子においてイメージング剤は、ガドリニウムキレート、酸化鉄粒子、超常磁性酸化鉄粒子、極微小常磁性粒子、マンガンキレートまたはガリウム含有剤で標識化されている。ガドリニウムキレートの例としては、限定されるものではないが、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTA)および1,4,7-トリアザシクロノナン-N,N’,N’’-三酢酸(NOTA)が挙げられる。いくつかの分子においてイメージング剤は、近赤外(near-IR)イメージングのための近赤外蛍光体、生物発光イメージングのためのルシフェラーゼ(蛍、細菌または腔腸動物)または他の発光分子あるいは超音波のためのパーフルオロカーボン充填自己組織化粒子である。いくつかの分子においてイメージング剤は核プローブである。いくつかの分子においてイメージング剤はSPECTもしくはPET放射性核種プローブである。いくつかの分子において放射性核種プローブは、テクネチウムキレート、銅キレート、放射性フッ素、放射性ヨウ素、インジウムキレートから選択される。Tcキレートの例としては、限定されるものではないが、HYNIC、DTPAおよびDOTAが挙げられる。いくつかの分子においてイメージング剤は、放射性部分、例えば211At、131I、125I、90Y、186Re、188Re、153Sm、212Bi、32P、64Cu、Luの放射性同位体などの放射性同位体などを含有している。
【0182】
式(I)のポリマーのための本明細書において示されている全ての実施形態は、それらが有する全ての一般的な構造のための式(II)の複合体にも当てはまる。また、式(I)のポリマーのために示されている塩および立体異性体に言及されている実施形態も式(II)の複合体に当てはまる。
【0183】
式(II)の複合体において、sが0である場合、Zはアミド結合、カルバメート結合、アミン結合、尿素結合、エーテル結合およびエステル結合からなる群から選択される化学的に可能な結合によってXまたはPAAサルコシン繰り返し単位に直接結合されている。
【0184】
より詳細には、sが0であり、サルコシン繰り返し単位PAAが式(XXI)を有し、かつz’が0である場合、Zはアミド結合およびエステル結合からなる群から選択される化学的に可能な結合によってPAAサルコシン繰り返し単位に直接結合されており、さらにより詳細には、ZとPAAサルコシン繰り返し単位との結合は、Zの-(O)-または-(N)-部分とPAAサルコシン繰り返し単位のカルボニル基との間に形成されていてもよい。
【0185】
sが0であり、サルコシン繰り返し単位PAAが式(XXI)を有し、かつz’が1である場合、Zはアミド結合、カルバメート結合、エステル結合およびアミン結合、尿素結合およびエーテル結合からなる群から選択される化学的に可能な結合によってXに直接結合されており、さらにより詳細には、ZとXとの結合はXの-(O)-または-(N)-部分と、Zの-CO-、-COO-、-CONH-または-CH2-部分との間に形成されていてもよい。
【0186】
sが0でであり、サルコシン繰り返し単位PAAが式(XXII)を有し、かつz’が0ある場合、Zはアミド結合、カルバメート結合、尿素結合およびアミン結合からなる群から選択される化学的に可能な結合によってPAAサルコシン繰り返し単位に直接結合されており、さらにより詳細には、ZとPAAとの結合はPAAの-N-部分と、Zの-CO-、-COO-、-CONH-または-CH2-部分との間に形成されていてもよい。
【0187】
sが1である場合、L’はアミド結合、カルバメート結合、アミン結合、尿素結合、エーテル結合およびエステル結合からなる群から選択される化学的に可能な結合によってZに結合されており、かつL’はアミド結合、カルバメート結合、アミン結合、尿素結合、エーテル結合およびエステル結合からなる群から選択される化学的に可能な結合によってXまたはPAAサルコシン繰り返し単位に結合されている。
【0188】
より詳細には、sが1であり、サルコシン繰り返し単位PAAが式(XXI)を有し、かつz’が0である場合、L’はアミド結合およびエステル結合からなる群から選択される化学的に可能な結合によってPAAサルコシン繰り返し単位に直接結合されており、さらにより詳細には、L’とPAAサルコシン繰り返し単位との結合は、L’の-(O)-または-(N)-部分とPAAサルコシン繰り返し単位のカルボニル基との間に形成されていてもよい。
【0189】
より詳細には、sが1であり、サルコシン繰り返し単位PAAが式(XXI)を有し、かつz’が1である場合、L’は、アミド結合、カルバメート結合、エステル結合、尿素結合、アミン結合およびエーテル結合からなる群から選択される化学的に可能な結合によってXに結合されており、より詳細には、L’とXとの結合はXの-(O)-または-(N)-部分と、L’の-CO-、-OCO-、-NHCO-、または-CH2-部分との間に形成されていてもよい。
【0190】
sが1であり、サルコシン繰り返し単位PAAが式(XXII)を有し、かつz’が0である場合、L’はアミド結合、カルバメート結合、尿素結合およびアミン結合からなる群から選択される化学的に可能な結合によってPAAサルコシン繰り返し単位に直接結合されており、より詳細には、L’とPAAとの結合はPAAの-N-部分と、L’の-CO-、-COO-、-CONH-または-CH2-部分との間に形成されていてもよい。
【0191】
任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた一実施形態では、式(II)の複合体において、L’を化学的に可能な結合によって当該分子の残りの部分に結合させることができる限り、L’は上に定義されている1~50個の部分、より詳細には2~30個または2~20個または2~15個の部分を含むビラジカル鎖である。
【0192】
任意に上または下に提供されている実施形態のいずれかと組み合わせたより特定の実施形態によれば、式(II)の複合体において、サルコシン繰り返し単位PAAが式(XXI)を有し、z’が1であり、かつsが1である場合、リンカーL’は、任意にハロゲン、-OH、-NRaRb、-SH、-NHNH2、-COORc、-CF3および-OCF3(式中、Ra、RbおよびRcは独立して、H、-フェニル、-(C1~C6)アルキル、-(C2~C6)アルケニル、-(C1~C6)アルキルフェニルおよび-フェニル(C1~C6)アルキルからなる群から選択されるラジカルである)からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された-(C1~C12)アルキレン-、-(C1~C6)アルキル-CO-、-CO-(C1~C6)アルキル-ならびに先に定義されている式(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)(XII)(XIII)、(XIV)、(XV)、(XVI)、(XVII)、(XVIII)または(XIX)のビラジカルからなる群から選択されるビラジカルである。
【0193】
任意に上または下に提供されている実施形態のいずれかと組み合わせた別のより特定の実施形態によれば、式(II)の複合体において、サルコシン繰り返し単位PAAが式(XXII)を有し、z’が0であり、かつsが1である場合、リンカーL’は、任意にハロゲン、-OH、-NRaRb、-SH、-NHNH2、-COORc、-CF3および-OCF3(式中、Ra、RbおよびRcは独立して、H、-フェニル、-(C1~C6)アルキル、-(C2~C6)アルケニル、-(C1~C6)アルキルフェニルおよび-フェニル(C1~C6)アルキルからなる群から選択されるラジカルである)からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された-(C1~C12)アルキレン-、-(C1~C6)アルキル-CO-、-CO-(C1~C6)アルキル-ならびに先に定義されている式(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)(XII)(XIII)、(XIV)、(XV)、(XVI)、(XVII)、(XVIII)または(XIX)のビラジカルからなる群から選択されるビラジカルである。
【0194】
任意に上または下に提供されている実施形態のいずれかと組み合わせたより特定の実施形態によれば、式(II)の複合体において、サルコシン繰り返し単位PAAが式(XXI)を有し、z’が0であり、かつsが1である場合、リンカーL’は、任意にハロゲン、-OH、-NRaRb、-SH、-NHNH2、-COORc、-CF3および-OCF3(式中、Ra、RbおよびRcは独立して、H、-フェニル、-(C1~C6)アルキル、-(C2~C6)アルケニル、-(C1~C6)アルキルフェニルおよび-フェニル(C1~C6)アルキルからなる群から選択されるラジカルである)からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された-X’-(C1~C12)アルキレン-、-X’-(C1~C6)アルキル-CO-、-X’-CO-(C1~C6)アルキル-ならびに先に定義されている式(III’)、(IV’)、(V’)、(VI’)、(VII)、(VIII)、(IX’)、(X’)、(XI’)、(XII’)(XIII’)、(XIV’)、(XV’)、(XVI’)、(XVII’)、(XVIII’)または(XIX’)のビラジカルからなる群から選択されるビラジカルである。
【0195】
任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた一実施形態では、Zは式(XX):
【化53】
を有する部分であり、
式中、R
8、R
9およびR
10は独立して水素、フッ素、メチル、-CH
2F、-CHF
2および-CF
3からなる群から選択され、かつ破線結合-----はそれぞれ独立して単結合または代わりとして二重結合である。
【0196】
任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた一実施形態によれば、R8、R9およびR10は独立して水素およびメチルからなる群から選択される。
【0197】
任意に上または下に提供されている実施形態のいずれかと組み合わせた別の実施形態では、式(II)の複合体において、Zは式(XX)のラジカルであり、ここではクロマン環に結合されたアルキル鎖の破線結合はそれぞれ単結合であり、かつR8、R9およびR10は以下の意味:(i)R8、R9およびR10はメチルである、(ii)R8、R10はメチルであり、かつR9は水素である、(iii)R9およびR10はメチルであり、かつR8は水素である、および(iv)R10はメチルである、およびR8およびR9は水素である、から選択される。より詳細には、上記実施形態においてR8、R9およびR10はメチルである。
【0198】
先の実施形態のより特定の実施形態では、R
8、R
9およびR
10はメチルである。より詳細には、式(II)の複合体において、Zは式(XXa):
【化54】
のラジカルであり、さらにより詳細には、Zは式(XXb):
【化55】
のラジカルである。
【0199】
式(II)の複合体は、当該技術分野において周知のプロセスによって調製してもよい。これらのプロセスも本発明の一部を形成する。例えば、繰り返しサルコシンをベースとする単位PAAが式(XXI)を有し、sが0であり、かつXがアミンまたはアルコール基である場合、Zは以下のスキーム:
【化56】
に示されているポリサルコシンベースの部分の調製のためにROPにおいて開始剤として使用することができる。
【0200】
この反応は、ポリマー(B)の調製のために先に言及されている条件下で行うことができる。
【0201】
得られたポリサルコシン誘導体(B’)は、式(I)のポリマーの調製のために開示されているプロセスのいずれかによってリンカーL’を介してビタミンE誘導体に結合させてもよい。
【0202】
Sが1であり、かつXがアミンまたはアルコール基である場合、Zは以下のスキーム:
【化57】
に示されているポリサルコシンベースの部分の調製のためにROPにおいて開始剤として使用することができる。
【0203】
この反応は、ポリマー(B)の調製のために先に言及されている条件下で行うことができる。
【0204】
得られたポリサルコシン誘導体(B’’)は、式(I)のポリマーの調製のために開示されているプロセスのいずれかによってリンカーLを介してビタミンE誘導体に結合されていてもよい。
【0205】
繰り返しサルコシンをベースとする単位PAAが式(XXII)を有する式(II)の複合体は、式(Ib)の化合物のために上に記載されている手順によって調製してもよい。
【0206】
自己組織化粒子
本発明の別の態様は、
(a)本明細書に定義されているポリマー、または代わりとして
(b)本明細書に定義されている式(II)の複合体、または代わりとして
(c)本明細書に定義されているポリマーと式(II)の複合体との組み合わせと、
任意に、栄養補助食品的に活性な薬剤、医薬的に活性な薬剤、細胞標的化剤、診断的に活性な薬剤および化粧品的に活性な薬剤からなる群から選択される自己組織化ナノ/マイクロ粒子の自己組織化粒子内にカプセル化された薬剤と
を含む自己組織化粒子に関する。
【0207】
本明細書で使用される「自己組織化粒子」という用語は、任意の形状、典型的に球状および/または管状の小さい封入された構造を指す。それは、両親媒性ポリマーから形成される当該技術分野で知られている多くの構造のいずれかを包含することを意図している。自己組織化粒子の非限定的な例は、ミセル(本明細書では互換的にミセルワーム(micellar worm)または単に「ワーム」ともいう)、逆ミセル、平面二重層、結晶ナノ粒子、リポソーム、マイクロバブルまたは脂質ナノ粒子を含む。自己組織化ナノ粒子および微小粒子はゲルも形成することができる。
【0208】
自己組織化粒子は、自己組織化ナノ粒子または自己組織化微小粒子であってもよい。本明細書に定義されている「ナノ粒子」は、1~100nmのサイズの最小の端から端までの直径を有する任意の粒子である。本明細書に定義されている「微小粒子」は典型的に、0.1~100μmのサイズの最小の端から端までの直径を有する任意の粒子である。典型的には、複数の粒子を含む組成物では関連する直径は数平均直径である。
【0209】
上記a)の場合、本ポリマーは自己組織化粒子の外殻を形成し、薬剤は内核にカプセル化または充填されている。上記b)の場合、式(II)の複合体は自己組織化粒子の外殻を形成しており、薬剤は任意に内核にカプセル化、すなわち充填されている。上記c)の場合、本明細書に定義されているポリマーおよび式(II)の複合体の両方が自己組織化粒子の外殻を形成しており、薬剤は任意に内核または外殻表面にカプセル化または充填されている。
【0210】
任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた一実施形態では、自己組織化粒子は、ミセル、逆ミセル、平面二重層、結晶ナノ粒子、リポソームおよび脂質ナノ粒子からなる群から選択される。
【0211】
本発明の目的のために「ミセル」という用語は、非極性尾部(疎水性部分)が内側を向いており、極性頭部が外側を向いている溶媒中での本発明のポリサルコシンビタミンE誘導体の配置を指す。典型的にミセルは球状もしくは管状形状を示す。特にミセルは、内核および外殻を含むコアシェル構造である。
【0212】
任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた一実施形態によれば、本発明は、
(a)本明細書に定義されているポリマー、または代わりとして、
(b)本明細書に定義されている式(II)の複合体、または代わりとして、
(c)本明細書に定義されているポリマーと式(II)の複合体との組み合わせと、
任意に栄養補助食品的に活性な薬剤、医薬的に活性な薬剤、細胞標的化剤、診断的に活性な薬剤および化粧品的に活性な薬剤からなる群から選択されるミセル内にカプセル化された薬剤と
を含むミセルに関する。
【0213】
任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた一実施形態では、ミセルは水中に形成されている。
【0214】
任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた別の実施形態では、ミセルは有機溶媒中に形成されている。より詳細には、有機溶媒は、アセトン、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、アセトニトリルおよびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0215】
任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた一実施形態では、ミセルは、拡散秩序化NMR分光法(DOSY)または代わりとして動的光散乱(DLS)によって測定した場合に、5~500nmの水中での流体力学直径(Dh)を有する。
【0216】
任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた別の実施形態によれば、ミセルは、0.01~10mg/mLの水中、25℃および大気圧での臨界ミセル濃度(CMC)を有する。
【0217】
任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた別の実施形態によれば、式(I)のポリマーのカプセル化効率は0.1~100wt%、より詳細には15~60wt%である。カプセル化効率は以下の式:
カプセル化効率(wt%)=(添加された総薬剤-遊離非封入薬剤)(重量%)/添加された総薬剤(重量%)
によって計算する。
【0218】
ミセルは、例えば直接製剤化、共溶媒製剤化、薄膜製剤化および超臨界CO2中での製剤化などの当業者に周知の異なる方法によって調製してもよい。
【0219】
それは、a)本明細書に定義されている本発明のポリマー、式(II)の複合体またはそれらの組み合わせ、および任意に水中でミセル内にカプセル化される薬剤を溶解する工程、または代わりとしてb)本明細書に定義されている本発明のポリマー、式(II)の複合体またはそれらの組み合わせ、および任意に有機溶媒中でミセル内にカプセル化される薬剤を溶解して溶液を得、この溶液を水に添加し、かつ有機溶媒を蒸発させる工程、または代わりとしてc)本明細書に定義されている本発明のポリマー、式(II)の複合体またはそれらの組み合わせ、および任意に有機溶媒中でミセル内にカプセル化される薬剤を溶解して溶液を得、有機溶媒を蒸発させて膜を得、かつ得られた膜を水で溶解する工程のいずれかを含む、本明細書に定義されているミセルの調製のためのプロセスも本発明の一部を形成する。本発明は、上記プロセスによって得ることができるミセルにも関する。
【0220】
「得ることができる」という用語は、その調製プロセスによるミセルを定義するために本明細書で使用される。本発明の目的のために、「得ることができる」、「得られた」という表現および同様の同等の表現は互換的に使用され、いずれの場合にも、「得ることができる」という表現は「得られる」という表現を包含する。
【0221】
任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた一実施形態によれば、本発明は、
(a)本明細書に定義されているポリマー、または代わりとして、
(b)本明細書に定義されている式(II)の複合体、または代わりとして、
(c)本明細書に定義されているポリマーと式(II)の複合体との組み合わせと、
任意に、栄養補助食品的に活性な薬剤、医薬的に活性な薬剤、細胞標的化剤、診断的に活性な薬剤および化粧品的に活性な薬剤からなる群から選択されるミセル内にカプセル化された薬剤と
を含むリポソームに関する。
【0222】
任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた一実施形態によれば、本発明は、
(a)本明細書に定義されているポリマー、または代わりとして、
(b)本明細書に定義されている式(II)の複合体、または代わりとして、
(c)本明細書に定義されているポリマーと式(II)の複合体との組み合わせと、
任意に、栄養補助食品的に活性な薬剤、医薬的に活性な薬剤、細胞標的化剤、診断的に活性な薬剤および化粧品的に活性な薬剤からなる群から選択されるミセル内にカプセル化された薬剤と
を含む脂質ナノ粒子(LNP)に関する。
【0223】
本発明の目的のために「リポソーム」という用語は、1つ以上の水性区画を封入している同心の脂質二重層からなる人工的に調製された自己組織化粒子を指す。リポソームの非限定的な例としては、単層リポソーム、多重層リポソーム、多小胞リポソームおよびポリマー被覆リポソームが挙げられる。
【0224】
「脂質ナノ粒子」という用語は、水性媒体中で安定かつ分散可能な脂質を含むナノメートルのオーダー(例えば、1~1000nm)の典型的に球状の粒子を指す。
【0225】
任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた一実施形態によれば、本発明は、
(a)本明細書に定義されているポリマー、または代わりとして、
(b)本明細書に定義されている式(II)の複合体、または代わりとして、
(c)本明細書に定義されているポリマーと式(II)の複合体との組み合わせと、
任意に、栄養補助食品的に活性な薬剤、医薬的に活性な薬剤、細胞標的化剤、診断的に活性な薬剤および化粧品的に活性な薬剤からなる群から選択されるミセル内にカプセル化された薬剤と
を含む結晶ナノ粒子に関する。
【0226】
本発明の目的のために「結晶ナノ粒子」という用語は、1つ以上の疎水性区画を封入している固体脂質からなる人工的に調製された結晶を指す。
【0227】
「結晶ナノ粒子」という用語は、水性媒体中で安定かつ分散可能な脂質を含むナノメートルのオーダー(例えば1~1000nm)の異なる形状の粒子を指す。
【0228】
本明細書に開示されているリポソームおよび脂質ナノ粒子は、イオン化脂質、カチオン性脂質、双性イオン性脂質、中性脂質またはアニオン性脂質を含む任意の好適な脂質を含んでもよい。
【0229】
好適なイオン化脂質としては、限定されるものではないが、(2S)-2,5-ビス(3-アミノプロピルアミノ)-N-[2-(ジオクタデシルアミノ)アセチル]ペンタンアミド(DOGS)、N1-[2-((1S)-1-[(3-アミノプロピル)アミノ]-4-[ジ(3-アミノプロピル)アミノ]ブチルカルボキサミド)エチル]-3,4-ジ[オレイルオキシ]-ベンズアミド(MVL5)、3β-[N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル]コレステロール(DC-コレステロール)、(1,2-ジステアリルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン(DSDMA)、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン(DLin-DMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン(DLenDMA)、1,2-ジ-y-リノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(γ-DLenDMA)、2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-KC2-DMA、DLin-C2K-DMA、XTC2およびC2Kとしても知られている)、2,2-ジリノレイル-4-(3-ジメチルアミノプロピル)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-KC3-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-(4-ジメチルアミノプロピル)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-KC4-DMA)、1,2-ジリノレイルオキシ-4-(2-ジメチルアミノエチル)-1,3-ジオキソラン(DLen-C2K-DMA)、1,2-ジ-y-リノレニルオキシ-4-(2-ジメチルアミノエチル)-1,3-ジオキソラン(y-DLen-C2K-DMA)、(6Z,9Z,28Z,31Z)-3-(ジメチルアミノ)プロパン酸ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル(DLin-M-C2-DMA、MC2としても知られている)、(6Z,9Z,28Z,31Z)-4-(ジメチルアミノ)ブタン酸ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル(DLin-M-C3-DMA、MC3としても知られている)および3-((6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イルオキシ)-N,N-ジメチルプロパン-1-アミン(DLin-MP-DMA、1-B11としても知られている)が挙げられる。
【0230】
好適なカチオン性脂質としては、限定されるものではないが、N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC)、N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロミド(DDA13)、N-(1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTAP)、N-(1-(2,3-ジオレイルオキシ)-プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、N-[1-(2,3,-ジテトラデシルオキシ)プロピル]-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、N-[1-(2,3,ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORIE)、3β-[N-(N’,N’-ジメチルアミノ-エタン)-カルバモイル]コレステロール(DC-Chol)、ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB)、2,3-ジオレイルオキシ-N-[2-(スペルミンカルボキサミド)エチル]-N,N-ジメチル-1-プロパンアミニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)、エチルホスファチジルコリン(ePC)、およびN,N-ジメチル-2,3-ジオレイルオキシ)プロピルアミン(DODMA)が挙げられる。
【0231】
アニオン性脂質の例としては、限定されるものではないが、ホスファチジルグリセロール、ジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジン酸、N-スクシニルホスファチジルエタノールアミン、N-グルタリルホスファチジルエタノールアミンコレステロールヘミスクシネート(CHEMS)、リシルホスファチジルグリセロール、N-ドデカノイルホスファチジルエタノールアミン、カルジオリピンおよびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0232】
好適な中性脂質は非帯電性もしくは双性イオン性脂質であってもよく、限定されるものではないが、ステロイド、リン脂質およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0233】
ステロイドの例としては、限定されるものではないが、コレステロール、プロゲステロン、コルチゾン、アルドステロン、エストラジオール、テストステロンおよびそれらの組み合わせが挙げられる。リン脂質の例としては、限定されるものではないが、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルセリン(PS)およびホスファチジルイノシトール(PI)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジミリストイルホスファチジルセリン(DMPS)、ジステアロイルホスファチジルセリン(DSPS)、ジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(POPE)およびジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン4-(N-マレイミドメチル-シクロヘキサン-1-カルボキシレート(DOPE-mal)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスホエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイルホスファチジル-エタノールアミン(DSPE)、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DAPC)、ジラウロイルホスファチジルコリン(DLPC)、1-ミリストイル-2-パルミトイルホスファチジルコリン(MPPC)、1-パルミトイル-2-ミリストイルホスファチジルコリン(PMPC)、1-パルミトイル-2-ステアロイルホスファチジルコリン(PSPC)、1,2-ジアラキドイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DBPC)、1-ステアロイル-2-パルミトイルホスファチジルコリン(SPPC)、1,2-ジエイコセノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DEPC)およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0234】
本発明のポリマーならびにそれらの複合体は、脂質ナノ粒子中でステルス脂質として使用してもよい。
【0235】
任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた一実施形態によれば、本発明は、本ポリマー、式(II)の複合体または両方の組み合わせを含む脂質ナノ粒子(LNP)またはリポソームに関し、イオン化可能脂質、カチオン性脂質、中性脂質およびアニオン性脂質のうちの1つ以上をさらに含む。より詳細には、LNPは先に定義されている1種以上の核酸をさらに含む。
【0236】
組成物
本発明は、1種以上の許容される賦形剤または担体と共に、有効量の(a)本明細書に定義されている本発明のポリマー、または代わりとして、(b)本明細書に定義されている式(II)の複合体、または代わりとして、(c)本発明のポリマーと式(II)の複合体との組み合わせ、または代わりとして、(d)本明細書に定義されている自己組織化粒子を含む組成物にも関する。
【0237】
本明細書で使用される「有効量」という用語は、その適用後に有利な効果を与える本発明の組成物の成分の各1つの量を指す。
【0238】
任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた一実施形態では、本組成物は、1種以上の栄養補助食品的に許容される賦形剤または担体と共に、栄養補助食品的に有効量の(a)本明細書に定義されている本発明のポリマー、または代わりとして、(b)本明細書に定義されている式(II)の複合体、または代わりとして、(c)本明細書に定義されているポリマーと式(II)の複合体との組み合わせ、または代わりとして、(d)本明細書に定義されている自己組織化粒子を含む栄養補助食品であり、ここでは自己組織化粒子にカプセル化された薬剤は、存在する場合、栄養補助食品的に活性な薬剤であり、かつ式(II)の複合体において存在する場合、Zは栄養補助食品的に活性な薬剤である。
【0239】
本発明の文脈では、本明細書で互換的に使用される「栄養補助食品(nutraceutical supplement)」、「フードサプリメント(food supplement)」、「ダイエタリーサプリメント(dietary supplement)」または「栄養サプリメント(nutritional supplement)」という用語は、食事に添加して人の食事において欠いていたり十分な量で消費したりできない栄養素を与えることを目的とした製剤を指す。「栄養補助食品的に許容される賦形剤または担体」という用語は、健康に重大な悪影響をもたらすことなくヒトが摂取できる成分を指す。
【0240】
任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた別の実施形態では、本組成物は1種以上の薬学的に許容される賦形剤または担体と共に、治療的有効量の(a)本明細書に定義されているポリマー、または代わりとして、(b)本明細書に定義されている式(II)の複合体、または代わりとして、(c)本明細書に定義されているポリマーと式(II)の複合体との組み合わせ、または代わりとして、(d)本明細書に定義されている自己組織化粒子を含む医薬組成物であり、ここでは自己組織化粒子にカプセル化された薬剤は、存在する場合、医薬的に活性な薬剤または細胞標的化剤であり、かつ式(II)の複合体において存在する場合、Zは医薬的に活性な薬剤または細胞標的化剤である。
【0241】
本明細書で使用される「治療的有効量」という表現は、投与された場合に、対処される疾患の症状の1つ以上の発症を予防するかある程度軽減するのに十分なポリマーの量を指す。治療効果を得るための本発明のポリマーの具体的な用量は、特に患者のサイズ、体重、年齢および性別、疾患の性質および段階、疾患の攻撃性ならびに投与経路を含む個々の患者の特定の環境によって異なり得る。
【0242】
本発明の目的のために「薬学的に許容される」賦形剤または担体という用語は、医学的用途のための組成物の調製のために製薬技術において使用するのに適当な成分を指す。各成分は、本組成物の他の成分と適合可能であるという意味で「許容される」ものでなければならず、ヒトおよび動物の組織または臓器と接触させた状態で使用する場合に過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、免疫原性または他の問題または合併症を有さず、妥当なベネフィット/リスク比に見合っているものでなければならない。
【0243】
任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた一実施形態では、本組成物は1種以上の診断的に許容される賦形剤または担体と共に、診断的に有効な量の(a)本明細書に定義されている式(II)の複合体、または代わりとして、(b)自己組織化粒子が式(II)の複合体の非存在下で本発明のポリマーを含む場合にカプセル化された薬剤が自己組織化粒子中に存在するという条件で、本明細書に定義されている自己組織化粒子を含む診断用組成物であり、ここでは自己組織化粒子にカプセル化された薬剤は、存在する場合、診断的に活性な薬剤であり、かつ式(II)の複合体において存在する場合、Zは診断的に活性な薬剤である。
【0244】
「診断用組成物」という用語は、特に画像診断技術において診断に使用するのに適した組成物を指す。本明細書で使用される「診断的に有効な量」という用語は、特に画像診断用途として画像診断用造影剤として投与された場合に疾患または障害の診断にとって十分な有効量の検出ポリマーを指す。投与される検出ポリマーの用量は当然ながら、投与されるポリマー、投与経路、診断されている特定の状態および同様の検討事項を含む、症例を取り囲む特定の環境によって決定される。本発明の診断用組成物は、1種以上の診断的に許容される賦形剤または担体を含む。「診断的に許容される」という用語は、診断用途を有する組成物を調製するために、診断技術、特に画像診断用途で使用するのに適した賦形剤または担体を指す。患者の体内でのこれらの診断薬の検出は、磁気共鳴画像法(MRI)およびX線による画像診断などで使用される周知の技術により行うことができる。
【0245】
任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた一実施形態では、本組成物は1種以上の化粧品的に許容される賦形剤または担体と共に、化粧品的に有効な量の(a)本明細書に定義されている式(I)のポリマー、または代わりとして、(b)本明細書に定義されている式(II)の複合体、または代わりとして、(c)式(I)のポリマーと式(II)の複合体との組み合わせ、または代わりとして、(d)本明細書に定義されている自己組織化粒子を含む化粧品組成物であり、ここでは自己組織化粒子にカプセル化された薬剤は、存在する場合、化粧品的に活性な薬剤であり、式(II)の複合体において存在する場合、Zは化粧品的に活性な薬剤である。
【0246】
本明細書で使用される「化粧品的に有効量」という用語は、投与された場合にその外観を改善するか、あるいは非医療用途を有しない皮膚、爪または毛髪を美化、保存、調整、清潔化、着色または保護することを目的とした有効量の化粧品的に活性な薬剤を指す。「化粧品的に許容される」または「皮膚科学的に許容される」賦形剤または担体という用語は本明細書において互換的に使用され、特に毒性、不適合性、不安定性、不適当なアレルギー反応を伴わずに、ヒトの皮膚と接触させて使用するのに適当な成分を指す。
【0247】
本発明の組成物は固体もしくは液体形態であってもよい。所望の目的に応じて、当業者であれば、使用するのに最も適当な製剤および賦形剤を知っている。賦形剤または担体の例としては、限定されるものではないが、希釈剤、結合剤、流動促進剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、それらの混合物および最先端技術において知られている他の成分が挙げられる。例えば経口、局所、直腸内もしくは非経口経路(皮下、腹膜内、皮内、筋肉内、静脈内経路などを含む)などの任意の投与経路を使用してもよい。
【0248】
本発明の自己組織化粒子および組成物中に存在する栄養補助食品的に活性な薬剤、医薬的に活性な薬剤、細胞標的化剤は、式(II)の複合体の文脈に定義されている。従って、活性薬剤に関する式(II)の複合体のために示されている全ての実施形態は、自己組織化粒子および組成物にも当てはまる。
【0249】
使用
本発明の別の態様は、医薬に使用するための(i)本明細書に定義されている式(I)のポリマー、または代わりとして、(ii)本明細書に定義されている式(II)の複合体、または代わりとして、(iii)本明細書に定義されている自己組織化粒子、または代わりとして、(iv)本明細書に定義されている医薬組成物に関し、ここでは自己組織化粒子にカプセル化された薬剤は、存在する場合、本明細書に定義されている医薬的に活性な薬剤または細胞標的化剤であり、かつ式(II)の複合体において存在する場合、Zは医薬的に活性な薬剤または細胞標的化剤である。
【0250】
本発明の誘導体によって治療および/または予防することができる疾患の非限定的な例としては、神経変性疾患、神経疾患、癌、感染症、加齢関連疾患、神経炎症、脱髄性疾患、多発性硬化症、虚血性疾患、虚血再灌流障害、アミロイド性疾患、心筋症、脊髄損傷、免疫不全、炎症性疾患、奇病、創傷治癒、皮膚関連疾患およびリソソーム蓄積症が挙げられる。
【0251】
神経変性疾患の非限定的な例としては、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、悩虚血、脳炎後パーキンソニズム、ジストニア、トゥレット障害、周期性四肢運動障害、むずむず脚症候群、注意欠陥多動性障害、ハンチントン病、進行性核上性麻痺、ピック病、前頭側頭型認知症および神経筋疾患が挙げられる。
【0252】
本明細書で使用される「障害」という用語は、全てが正常な機能を損なっているヒトもしくは動物の体またはその部分の1つの異常な状態を反映しているという点で、「疾患」、「症候群」および「状態(病状と同様)」という用語と一般に同義であることを意図しており、それらと互換的に使用され、典型的に徴候および症状を区別することにより明らかになる。
【0253】
例えば、Zが抗癌剤であるか自己組織化粒子内にカプセル化された抗癌剤を含む自己組織化粒子である式(II)の複合体は、癌の治療のために使用してもよい。従って一実施形態では、本発明は、癌の治療および/または予防に使用するための
(i)本明細書に定義されている式(II)の複合体、または代わりとして、
(ii)自己組織化粒子が式(II)の複合体の非存在下で式(I)のポリマーを含む場合にカプセル化された薬剤が自己組織化粒子中に存在するという条件で、本明細書に定義されている自己組織化粒子、または代わりとして、
(iii)本明細書に定義されている医薬組成物
に関し、ここでは自己組織化粒子にカプセル化された薬剤は、存在する場合、抗癌剤であり、かつ式(II)の複合体において存在する場合、Zは抗癌剤である。
【0254】
従って本発明のこの態様は、癌の治療および/または予防のための薬の製造のための、
(i)本明細書に定義されている式(II)の複合体、または代わりとして、
(ii)自己組織化粒子が式(II)の複合体の非存在下で式(I)のポリマーを含む場合にカプセル化された薬剤が自己組織化粒子中に存在するという条件で、本明細書に定義されている自己組織化粒子、または代わりとして、
(iii)本明細書に定義されている医薬組成物
の使用に関し、ここでは自己組織化粒子にカプセル化された薬剤は、存在する場合、抗癌剤であり、かつ式(II)の複合体において存在する場合、Zは抗癌剤である。
【0255】
本発明は、ヒトを含むそれを必要とする対象において、有効量の
(i)本明細書に定義されている式(II)の複合体、または代わりとして、
(ii)自己組織化粒子が式(II)の複合体の非存在下で式(I)のポリマーを含む場合にカプセル化された薬剤が自己組織化粒子中に存在するという条件で、本明細書に定義されている自己組織化粒子、または代わりとして、
(iii)本明細書に定義されている医薬組成物
を投与することを含む癌の治療および/または予防のための方法として考案してもよく、ここでは自己組織化粒子にカプセル化された薬剤は、存在する場合、抗癌剤であり、かつ式(II)の複合体において存在する場合、Zは抗癌剤である。
【0256】
本明細書で使用される「治療する」、「治療すること」および「治療」という用語は、疾患または障害症状の発症を予防または遅延させること、および/または疾患または障害の症状の重症度または頻度を減らすことを含む、疾患または障害に関連する症状を寛解させることを指す。
【0257】
本発明の別の態様は、診断に使用するための
(i)本明細書に定義されている式(II)の複合体、または代わりとして、
(ii)自己組織化粒子が式(II)の複合体の非存在下で式(I)のポリマーを含む場合にカプセル化された薬剤が自己組織化粒子中に存在するという条件で、本明細書に定義されている自己組織化粒子、または代わりとして、
(iii)本明細書に定義されている診断用組成物
に関し、ここでは自己組織化粒子にカプセル化された薬剤は、存在する場合、診断的に活性な薬剤であり、かつ式(II)の複合体において存在する場合、Zは診断的に活性な薬剤である。
【0258】
本発明のこの態様は、診断における
(i)式(II)の複合体、または代わりとして、
(ii)自己組織化粒子が式(II)の複合体の非存在下で式(I)のポリマーを含む場合にカプセル化された薬剤が自己組織化粒子中に存在するという条件で、本明細書に定義されている自己組織化粒子、または代わりとして、
(iii)本明細書に定義されている診断用組成物
の使用に関し、ここでは自己組織化粒子にカプセル化された薬剤は、存在する場合、診断的に活性な薬剤であり、かつ式(II)の複合体において存在する場合、Zは診断的に活性な薬剤である。本発明は、ヒトを含むそれを必要とする対象において
(i)式(II)の複合体、または代わりとして、
(ii)自己組織化粒子が式(II)の複合体の非存在下で式(I)のポリマーを含む場合にカプセル化された薬剤が自己組織化粒子中に存在するという条件で、本明細書に定義されている自己組織化粒子、または代わりとして、
(iii)本明細書に定義されている診断用組成物
を投与することを含む、疾患または状態の診断のための方法として考案してもよく、ここでは自己組織化粒子にカプセル化された薬剤は、存在する場合、診断的に活性な薬剤であり、かつ式(II)の複合体において存在する場合、Zは診断的に活性な薬剤である。
【0259】
これらのイメージング剤の検出は、画像診断技術などの周知の技術により行うことができる。本開示に適した画像診断技術の例としては、限定されるものではないが、磁気共鳴画像法(MRI)、X線、ポジトロン断層法(PET)、単一光子放射型コンピューター断層撮影法(SPECT)、蛍光顕微鏡法およびインビボ蛍光が挙げられる。
【0260】
本発明の別の態様は、本明細書に定義されている式(I)のポリマーの担体、可溶化剤、吸収および浸透促進剤乳化剤または表面安定化剤としての使用に関する。担体として使用する場合、式(I)のポリマーは自己組織化粒子の形態であってもよい。従って、担体、可溶化剤、吸収および浸透促進剤、乳化剤または表面安定化剤として式(I)のポリマーを含む自己組織化粒子の使用も本発明の一部を形成する。
【0261】
本明細書および特許請求の範囲全体を通して「~を含む」という単語およびその単語の変形は、他の技術的特徴、添加剤、成分または工程を排除することは意図していない。さらに「~を含む」という単語は「~からなる」の場合を包含する。本発明のさらなる目的、利点および特徴は、本明細書の考察により当業者に明らかになるか、あるいは本発明の実施によって学習してもよい。以下の実施例および図面は例示として与えられており、本発明を限定することを意図していない。さらに本発明は、本明細書に記載されている特定の好ましい実施形態の全ての可能な組み合わせを包含する。
【実施例】
【0262】
分析方法
NMR分光法
Bruker社(米国マサチューセッツ州ビルリカ)製の300 Ultrashield(商標)を用いて、NMRスペクトルを27℃(300K)で記録した。ソフトウェアTopspin(Bruker社、ドイツのカールスルーエ)でデータを処理した。必要とされる溶媒中に約20~10mg/mLの濃度で試料を調製した。
【0263】
拡散実験
パルス磁場勾配NMR分光法を使用して、NMRシグナルの積分または強度をStejskal-Tanner方程式(Fieber W.ら,Macromolecules 2007,40(15),5372-5378):I=I0exp[-Dγ2g2δ2(Δ-δ/3)](式中、Iは観察された強度、I0は参照強度(減衰されていないシグナル強度)、Dは拡散係数、γは観察された核の磁気回転比、gは勾配強度、δは勾配長さ、Δは拡散時間である)に当てはめることにより、移動拡散を測定した。双極性勾配パルスを用いて刺激エコーシーケンスにより2次元拡散秩序化NMR分光法(DOSY)を行った。遅延長さはΔ=100msで一定に維持し、拡散勾配強度を5%~95%に変えながら各64回のスキャンの32個のスペクトルを取得した。各試料のために拡散勾配長さおよび刺激エコーを最適化した。15mg/mLにおける物理的混合種および架橋材料の分析では、典型的な値δは5msであった。さらに、Stokes-Einstein方程式:Rh=(KB・T)/(6π・η・D)(式中、KBはBoltzman定数(1.3806488・10-23m2・Kg/s2・K)であり、Tは温度(K)であり、ηは動粘性係数(298.15Kおよび0.1MPaにおいてD2Oでは1.095・10-3Kg/m・s)である)を用いて、拡散係数から流体力学的半径(Rh)(単位:nm)を得た(Duro-Castano A.ら, Advanced Materials 2017,29(39),12)。
【0264】
サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)
添加剤として0.1%(w/w)の臭化リチウムを含有するジメチルホルムアミド(DMF)中でのSEC測定の場合、GPC max(Malvern Instruments社)オートサンプラを一体化機器、Tosoh社製のTSKgel Alpha-4000として0.7mL/分の流速および60℃で使用した。Viscoteck TDATM 302を一体化検出システム(屈折率)として使用した。このシステムをPSS社から得られたポリメタクリル酸メチル(PMMA)(Mw=65kDa;PDI=1.05)で較正した。このMw決定のために、一体化された三重検出システム[屈折率、光散乱(2つの角度:7および90°)ならびに差圧粘度計]を使用した。UV-VisのさらなるSEC検出器を使用して、230nmでのα-トコフェロール吸収を測定した。
【0265】
サイズ分布
173°の固定された散乱角度で532nmレーザーを備えたMalvern Zetasizer NanoZS機器を用いて、動的光散乱(DLS)測定を行った。異なる条件(異なる濃度および温度でMilliQまたはKCl(1mM))下でポリマー溶液を調製し、溶液を10分間超音波処理し、必要とされる時間にわたって寝かせ、0.45μmのセルロース膜フィルタで濾過し、測定した。n>3回の測定で3つごとに各ポリマーのサイズ分布を測定し(直径:nm)、ビーム集束および減衰の自動最適化を各試料に適用した。
【0266】
ゼータ電位の測定
Malvern Instruments社(英国のウスターシャー)によって提供された使い捨ての折り畳まれたキャピラリーセルを用い、532nmのレーザーを備えたMalvern ZetasizerNanoZS機器を用いて、ゼータ電位の測定を20℃で行った。1mMのKClのMilliQ水中でポリマー溶液を調製した。この溶液を0.45μmのセルロース膜フィルタで濾過した。n>3回の測定で3つごとに各試料のゼータ電位を測定した。
【0267】
実施例1A
ポリサルコシン-ビタミンE誘導体の調製
水性結合のためのカップリング試薬:4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウム塩化物(DMTMMCl)
2-クロロ-4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン(CDMT、50g、0.28mol、1当量)をテトラヒドロフラン(THF、150mL)に室温で30分間溶解した。次いで、N-メチルモルホリン(NMM、28.8g、0.28mol、1当量)を反応系の中にゆっくりと添加し、白色の固体を沈殿させた。反応系を30分間放置し、生成物(DMTMMCl)を真空下で濾過し、3×100mLのTHFで洗浄した。白色の生成物を真空および気流下で16時間乾燥させた。収率:80~90%。1H NMR(300MHz,D2O)δ4.70(d,J=11.4Hz,2H),4.22(d,J=8.7Hz,8H),4.06-3.87(m,4H),3.63(s,3H)。
【0268】
有機結合のためのカップリング試薬:4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムテトラフルオロボレート(DMTMMBF4)
DMTMMCl(25g、0.09mol、1当量)を水(50mL)に室温で10分間溶解した。並行して、テトラフルオロホウ酸ナトリウム(NaBF4、9.84g、0.09mol、1当量)も水(20mL)に溶解した。次いで、NaBF4溶液をDMTMMCl溶液の中に1滴ずつ滴下し、DMTMMBF4を沈殿させた。白色の生成物(DMTMMBF4)を真空下で濾過し、3×20mLの水で洗浄した。水を除去するために、湿った生成物を凍結乾燥させた。収率:80~90%。1H NMR(300MHz,D2O)δ4.58-4.44(m,2H),4.11-3.89(m,8H),3.89-3.63(m,4H),3.49-3.33(m,3H).19F NMR(282MHz,D2O)δ-150.52(d,J=14.3Hz)。
【0269】
1.1.イソプロピル-ポリ(サルコシン)誘導体(iPr-PSar6、iPr-PSar12、iPr-PSar20)
【化58】
サルコシン-N-カルボキシ無水物(3-メチル-2,5-オキサゾリジンジオン、NCA-Sar(5g、43.47mmol)を撹拌子および栓を備えた丸底フラスコに添加し、3サイクルの真空/N
2でパージし、無水DMF(20mL)に溶解した。次いで、イソプロピルアミン(DP6:746.51μL、513.5mg、8.7mmol、DP12:311.05μL、213.9mg、4.5mmol、DP20:186.63μL、128.39mg、2.17mmol)をDMF(4mL)に溶解し、窒素雰囲気下で反応混合物に添加した。開始剤を添加したら、丸底フラスコを即座にエアロックに接続し、CO
2を逃すのを可能にした。NCA-Sarの総消費がフーリエ変換赤外線(FTIR)分光法によって確認されるまで(1853および1786cm
-1でのNCAシグナルの消失)、混合物を10℃で撹拌した。完了すると、反応混合物は僅かに黄色になった。反応混合物をジエチルエーテル(1:10のDMF:ジエチルエーテル)の中に注いで生成物を沈殿させた。沈殿物を遠心分離(3750rpm、4分間)で単離し、ジエチルエーテルで2回洗浄し、真空乾燥させた。さらなる精製のために、得られた固体をメタノールに500mg/mLで再溶解し、次いでこの溶液をジエチルエーテル(1:10のメタノール:ジエチルエーテル)の中に再度注ぎ、ジエチルエーテルで2回洗浄し、少なくとも2時間真空乾燥させた。最後に固体を蒸留水に再溶解し、凍結させ、凍結乾燥させた。iPrPSar
nを灰色がかった白色の固体として単離した。収率:70~90%。
1H NMR(MeOD):δ=1.16(m,6H,CH
3),2.40(幅広いs,3H,末端N-CH
3),2.89-3.11(幅広いm,65H,ポリマーN-CH
3),3.50(幅広いs,2H,末端-CH
2-)&3.88-4.42(幅広いm,43H,-CH
2-)。
【0270】
得られた生成物をSECおよび
1H NMRによるMn分布およびDPに関して分析した。結果が以下の表1に示されている。
【表1】
【0271】
1.2.コハク酸α-トコフェロール-ポリ(サルコシン)(iPrPSar(6)-succ-VitE、iPrPSar(12)-succ-VitE、iPrPSar(20)-succ-VitE)
【化59】
コハク酸トコフェロール(DP6:4.925g、9.28mmol;DP12:2.621g、4.94mmol;DP20:2.239g、4.22mmol)を撹拌子および栓を備えた丸底フラスコに添加し、3サイクルの真空/N
2でパージし、無水DMF(mL)に溶解し、直接光接触を避けるために蓋で覆った。次いで、DMTMM・BF
4カップリング剤を撹拌子および栓を備えた丸底フラスコに添加し、3サイクルの真空/N
2でパージし、無水DMF(mL)に溶解した。DMTMM・BF
4溶液を不活性雰囲気下でコハク酸トコフェロール溶液の上に添加し、撹拌しながら室温で30分間反応させた。pHが6~7に上昇するまで数滴のN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を添加した。その後、iPrPSar(6)(3g、6.19mmol)、iPrPSar(12)(3g、3.29mmol)またはiPrPSar(20)(4g、2.81mmol)を撹拌子および栓を備えた丸底フラスコに添加し、3サイクルの真空/N
2でパージし、無水DMF(mL)に溶解した。30分後、iPrPSar溶液を不活性雰囲気下で反応混合物の上に添加した。DIPEAの添加により8~9へのpH調整を行った。混合物を室温で48時間撹拌し、直接光接触を避けた。両親媒性ポリマーをジエチルエーテル(1:10のDMF:ジエチルエーテル)の中に注いで生成物を沈殿させた。沈殿物を遠心分離(3750rpm、4分間)で単離し、ジエチルエーテルで2回洗浄し、真空乾燥させた。さらなる精製のために、得られた固体をメタノールに500mg/mLで再溶解し、次いでこの溶液をジエチルエーテル(1:10のメタノール:ジエチルエーテル)の中に再度注ぎ、ジエチルエーテルで2回洗浄し、少なくとも2時間真空乾燥させた。最後に固体を蒸留水に溶解し、全DIPEA精製のために数滴のHClを添加しながら、タンジェンシャルフロー濾過システムにおいて透析濾過した。この溶液を凍結させ、凍結乾燥して灰色がかった白色の固体を得た。収率:70~90%。
1H NMR(MeOD):δ=0.90(m,12H,CH-CH
3),1.04-1.63(幅広いm,30H),1.83(m,2H,-CH
2-CH
2-CCO),1.98(s,3H,CH
3-),2.02(s,CH
3-),2.09(s,CH
3-),2.63(t,2H,-CH
2-CH
2-C=C),2.86-3.15(幅広いs,71H,N-CH
3),3.92-4.55(幅広いs,46H)。
【0272】
得られた生成物をSECおよび
1H NMRによるMn分布およびDPに関して分析した。結果が以下の表2に示されている。
【表2】
【0273】
実施例1B
1.1.官能化ポリ(サルコシン)誘導体(TLR-7,8-PSar20)
【化60】
サルコシン-N-カルボキシ無水物(3-メチル-2,5-オキサゾリジンジオン、NCA-Sar(0.5g、4.34mmol)を撹拌子および栓を備えた丸底フラスコに添加し、3サイクルの真空/N
2でパージし、無水DMSO(3mL)に溶解した。次いで、1-[[4-(アミノメチル)フェニル]メチル]-2-ブチル-イミダゾ[4,5-C]キノリン-4-アミン(DP20:93.99mg、0.22mmol)をDMSO(1mL)に溶解し、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(75.67μL、56.14mg、0.43mmol)で処理し、窒素雰囲気下で反応混合物に添加した。開始剤を添加したら、丸底フラスコを即座にエアロックに接続し、CO
2を逃すのを可能にした。NCA-Sarの総消費がフーリエ変換赤外線(FTIR)分光法によって確認される(1853および1786cm
-1でのNCAシグナルの消失)まで、混合物を室温で撹拌した。完了すると、反応混合物は僅かに黄色になった。反応混合物をテトラヒドロフラン(1:10のDMSO:テトラヒドロフラン)の中に注いで生成物を沈殿させた。沈殿物を遠心分離(3750rpm、4分間)で単離し、テトラヒドロフランで2回洗浄し、真空乾燥させた。さらなる精製のために、得られた固体を200mg/mLでメタノールに再溶解し、次いで、この溶液をジエチルエーテル(1:10のメタノール:ジエチルエーテル)の中に再度注ぎ、ジエチルエーテルで2回洗浄し、少なくとも2時間真空乾燥させた。最後に固体を蒸留水に再溶解し、凍結させ、凍結乾燥させた。TLR-7,8PSar
20を灰色がかった白色の固体として単離した。収率:70~90%。
1H NMR(MeOD):δ=0.95(t,3H,CH
3-),1.46(m,2H,-CH
2-),1.84(m,2H,-CH
2-),2.72(幅広いt,5H,末端N-CH
3&-CH
2-),2.82-3.13(幅広いm,71H,末端N-CH
3),3.89(幅広いs,2H,末端-CH
2-),3.98-4.50(幅広いm,50H,-CH
2-&-CH
2-),5.93(s,2H,-CH
2-),7.05(幅広いd,2H,H-),7.30(幅広いm,3H,H-),7.60(t,1H,H-)7.75(d,1H,H-)&7.95(d,1H,H-)。
【0274】
得られた生成物をSECおよび
1H NMRによるMn分布およびDPに関して分析した。結果が以下の表3に示されている。
【表3】
【0275】
1.2.コハク酸α-トコフェロール-官能化ポリ(サルコシン)(TLR-7,8-PSar(20)-succ-トコフェロール)
【化61】
コハク酸トコフェロール(67.22mg、0.13mmol)を撹拌子および栓を備えた丸底フラスコに添加し、3サイクルの真空/N
2でパージし、無水DMF(1mL)に溶解し、直接光接触を避けるために蓋で覆った。次いで、DMTMM・BF
4(41.55mg、0.13mmol)カップリング剤を撹拌子および栓を備えた丸底フラスコに添加し、3サイクルの真空/N
2でパージし、無水DMF(1mL)に溶解した。DMTMM・BF
4溶液を不活性雰囲気下でコハク酸トコフェロール溶液の上に添加し、撹拌しながら室温で30分間反応させた。pHが6~7に上昇するまで数滴のN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を添加した。その後、TLR-7,8-PSar(20)(0.15g、0.08mmol)を撹拌子および栓を備えた丸底フラスコに添加し、3サイクルの真空/N
2でパージし、無水DMF(2mL)に溶解した。30分後、iPrPSar溶液を不活性雰囲気下で反応混合物の上に添加した。DIPEAの添加により8~9へのpH調整を行った。混合物を室温で48時間撹拌し、直接光接触を避けた。両親媒性ポリマーをジエチルエーテル(1:10のDMF:ジエチルエーテル)の中に注いで生成物を沈殿させた。沈殿物を遠心分離(3750rpm、4分間)で単離し、ジエチルエーテルで2回洗浄し、真空乾燥させた。さらなる精製のために、得られた固体をメタノールに500mg/mLで再溶解し、次いでこの溶液をジエチルエーテル(1:10のメタノール:ジエチルエーテル)の中に再度注ぎ、ジエチルエーテルで2回洗浄し、少なくとも2時間真空乾燥させた。最後に固体を蒸留水に溶解し、全DIPEA除去のために数滴のHClを添加しながら、限外濾過ユニットにおいて精製した。この溶液を凍結させ、凍結乾燥して灰色がかった白色の固体を得た。
収率:70~90%。
1H NMR(MeOD):δ=0.87(m,12H,CH-CH
3),0.94(t,3H,CH
3-),1.02-1.60(幅広いm,32H),1.80(m,4H,-CH
2-)
,1.98(s,3H,CH
3-),2.02(s,3H,CH
3-),2.09(s,3H,CH
3-),2.59(幅広いs,2H,-CH
2-),2.76-3.15(幅広いm,84H,末端N-CH
3),3.80-4.57(幅広いm,57H,-CH
2-&-CH
2-),5.89(s,2H,-CH
2-),7.03(幅広いd,2H,H-),7.27(幅広いm,3H,H-),7.55(t,1H,H-)7.70(d,1H,H-)&7.91(d,1H,H-)。
【0276】
得られた生成物をSECおよび
1H NMRによるMn分布およびDPに関して分析した。結果が以下の表4に示されている。
【表4】
【0277】
実施例1C
1.1.VitE-Gly-OtBuの調製
【化62】
α-トコフェロール(2000mg、4.64mmol)、Boc-Gly-OH(813mg、4.64mmol)およびDMAP(58.48mg、0.48mmol)を撹拌子および栓を備えた丸底フラスコに添加し、3サイクルの真空/N
2でパージし、無水ジクロロメタン(16mL)に溶解した。次いで、DCC(958.09mg、4.64mmol)を4mLの無水ジクロロメタンに溶解し、混合物溶液の上に添加した。この溶液は黄色の透明溶液から白色の濁った外観に変わった。反応混合物を室温で16時間撹拌したままにした。
【0278】
得られた溶液を-20℃で45分間放置し、その後にそれを濾過し、ジクロロメタンを蒸発により除去した。その後、得られた油をヘキサン:酢酸エチル(95:5)を用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィで精製した。生成物Boc-Gly-VitE画分を回収し、濃縮し、最後に真空乾燥させた。
収率:90%。
1H NMR(MeOD):δ=0.90(m,12H,CH-CH3),1.04-1.63(幅広いm,24H),1.45(s,9H,(CH3)3-C-),1.83(m,2H,-CH2-CH2-CCO),1.98(s,3H,CH3-),2.02(s,3H,CH3-),2.09(s,3H,CH3-),2.63(t,2H,-CH2-CH2-C=C),4.08(s,2H,NH-CH2-CCO)。
【0279】
1.2.VitE-Glyの脱保護
【化63】
Boc-Gly-VitE(3000mg、5.1mmol)を15.5mLのジクロロメタン、次いで5.1mLのジクロロメタン:TFA(1:1)に溶解した。混合反応系を4℃で30分間、その後室温で1時間撹拌したままにした。その後、蒸発により溶媒を除去して褐色がかった油を得、-20℃で24時間放置する。この油を250mg/mLの濃度でMeOHに溶解し、150mLのH
2O中で沈殿させた。最後に生成物を凍結乾燥して白色の粉末を得た。
収率:56%。
1H NMR(MeOD):δ=
1H NMR(MeOD):δ=0.90(m,12H,CH-CH
3),1.04-1.63(幅広いm,24H),1.83(m,2H,-CH
2-CH
2-CCO),1.98(s,3H,CH
3-),2.02(s,3H,CH
3-),2.09(s,3H,CH
3-),2.63(t,2H,-CH
2-CH
2-C=C),4.14(s,2H,NH-CH
2-CCO)。
【0280】
1.3.VitE-Gly-PSar(x)を得るためのROP重合
【化64】
VitE-Gly-NH
2(DPについてx=20:529.7mg;x=50:423.8mg)を3サイクルの真空/N
2でパージし、無水DMFに溶解した(DPについてx=20:3mL;x=50:2mL)。
【0281】
サルコシン-N-カルボキシ無水物(3-メチル-2,5-オキサゾリジンジオン、NCA-Sar(DPについてx=20:2500mg、21.72mmol;x=50:5000mg、43.44mmol)を撹拌子および栓を備えた丸底フラスコに添加し、3サイクルの真空/N2でパージし、無水DMFに溶解した(DPについてx=20:7mL;x=50:18mL)。次いで、対応する開始剤VitE-Gly-NH2を窒素雰囲気下10℃で反応混合物に添加した。開始剤を添加したら、丸底フラスコを即座にエアロックに接続し、CO2を逃すのを可能にした。NCA-Sarの総消費がフーリエ変換赤外線(FTIR)分光法によって確認されるまで(1853および1786cm-1でのNCAシグナルの消失)、混合物を10℃で撹拌した。完了すると、反応混合物は僅かに黄色になった。両親媒性ポリマーをジエチルエーテル(1:10のDMF:ジエチルエーテル)の中に注いで生成物を沈殿させ、さらなる精製のために、得られた固体をメタノールに500mg/mLで再溶解し、次いでこの溶液をジエチルエーテル(1:10のメタノール:ジエチルエーテル)の中に再度注いだ。固体を真空乾燥し、凍結乾燥し、生成物として白色の粉末を得た。
【0282】
VitE-Gly-PSar(20):
1H NMR(MeOD):δ=0.90(m,12H,CH-CH3),1.04-1.63(幅広いm,25H),1.83(m,2H,-CH2-CH2-CCO),1.98(s,3H,CH3-),2.02(s,3H,CH3-),2.09(s,3H,CH3-),2.63(t,2H,-CH2-CH2-C=C),2.86-3.15(幅広いs,81H,N-CH3),3.92-4.55(幅広いs,57H)。
収率:75%
【0283】
VitE-Gly-PSar(50):
1H NMR(MeOD):δ=0.90(m,12H,CH-CH3),1.04-1.63(幅広いm,25H),1.83(m,2H,-CH2-CH2-CCO),1.98(s,3H,CH3-),2.02(s,CH3-),2.09(s,CH3-),2.63(t,2H,-CH2-CH2-C=C),2.86-3.15(幅広いs,214H,N-CH3),3.92-4.55(幅広いs,144H)。
収率:75%
【0284】
得られた生成物をSECおよび
1H NMRによるMn分布およびDPに関して分析した。結果が以下の表5に示されている。
【表5】
【0285】
CMCの決定
蛍光色素ナイルレッドを用いて、iPrPSar(x)-VitEポリマーの臨界ミセル濃度を決定した。ナイルレッドは、水性媒体中での不十分な溶解性および蛍光を有する疎水性かつソルバトクロミックな色素である。ナイルレッドを疎水性領域に結合させた場合に励起媒介発光が観察され、従って水中のポリマーの濃度がCMCを超え、かつポリマーミセルが構成される場合に、ナイルレッドは蛍光を発する。
【0286】
500μMの濃度のナイルレッドのストック溶液をアセトン中で調製した。次いで、10μLの調製したストック溶液をマイクロ遠心チューブに添加し、これを暗所に放置してアセトンを蒸発させた。様々な濃度(1×10-4~2mg/mLの範囲)の500μLのポリマー溶液をそれらのマイクロ遠心チューブに添加し、一晩寝かせた。
【0287】
キセノンランプを備えたJASCO分光蛍光光度計FP-8300において試料の分析を行った。試料を550nmで励起させ、575~740nmの発光スペクトルを記録した。記録された最大発光強度をポリマー濃度の対数に対してプロットした。CMCは、調整してプロットした2つの主要な線状の曲線の交点として決定し、データは表6に追加されている。
【表6】
【0288】
可溶化剤およびカプセル化特性
水性ミセル製剤中への固体懸濁液のカプセル化により、疎水性薬物としてカルバマゼピン(logP=2.67)を用いて、iPrPSar-VitEポリマーの可溶化剤特性およびカプセル化能力を試験して証明した。
【0289】
iPrPSar(X)-succ-VitEポリマーを10mg/mLでddH
2Oに可溶化した。次いで、15%(w/w)の比で固体カルバマゼピンを水性ポリマー溶液の上に添加して飽和溶液を得た。ミセル溶液を室温で24時間撹拌させ、直接光接触を避けた。その後、この溶液を13300rpmで2分間遠心分離した。上澄みを単離し、0.22μmのナイロンで濾過した。得られた溶液をMeOH/H
2O(1/1)混合物中で100回希釈し、285nmでのUV分光法によりカルバマゼピン含有量を決定した。
【表7】
【0290】
本発明のポリマーは、TPGSに対して匹敵するかさらに良好なカプセル化効率を示した。
【0291】
ポリマーミセル製剤
サイズ、静電荷、拡散係数および形態などの物理化学的特性を調べるために、ポリサルコシン-ビタミンE誘導体の空およびDil充填ミセルを調製した。Dil色素蛍光体(1,1’-ジオクタデシル-3,3,3’,3’-テトラメチルインドカルボシアニン過塩素酸塩、Dil C18、ThermoFisher社)を1%w/wで疎水性活性薬剤モデルとして使用した。ポリサルコシン-ビタミンE誘導体から調製したミセルをTPGSミセルと比較した。これらの実験で使用するTPGSは商業的に入手可能であり(PMC Isochem社)、以下の表8示されている以下の特性を有していた。
【表8】
【0292】
以前に記載されているGaucherら(GaucherG.ら,Journal of Controlled Release 2005,109(1-3),169-188)から採用された3つの異なる手法(直接、薄膜および共溶媒法)によりミセルを製剤化した。
【0293】
直接製剤の一般的な方法
実施例1で調製したブロックコポリマーiPrPSar(20)-succ-VitE(TPSS)またはTPGS(10mg/mL)を、溶液が均質化するまで室温で連続的に撹拌しながら蒸留水に直接溶解した。この製剤を室温で24時間平衡化させた。製剤を室温で24時間平衡化させた後、1000rpmで10分間遠心分離した。TPGSおよびTPSSの両方について、遠心分離工程において沈降物は認められなかった。この溶液を凍結乾燥して粉末固体を直接得た。蛍光標識されたミセルの調製のために、蒸留水中にブロックコポリマーと共に1%w/wのDilの充填物を直接添加したという違いはあるが、同じ手順に従った。
【0294】
共溶媒製剤の一般的な方法
実施例1で調製したブロックコポリマーiPrPSar(20)-succ-VitE(TPSS)またはTPGS(100mg/mL)をMeOHに溶解し、有機溶媒が蒸発するまで室温で連続的に撹拌しながら蒸留水中に滴下した。製剤を室温で24時間平衡化させた後、1000rpmで10分間遠心分離した。TPGSおよびTPSSの両方について、遠心分離工程において沈降物は認められなかった。この溶液を凍結乾燥し、粉末固体を直接得た。蛍光標識されたミセルの調製のためにブロックコポリペプチドおよび色素をTHF/MeOHに溶解し、かつ上記同じ手順に従うことにより1%w/wのDilの充填を目的としたという違いはあるが、同じ手順に従った。
【0295】
薄膜製剤の一般的な方法
適切なサイズを有する丸底フラスコの中で、実施例1で調製したブロックコポリマーiPrPSar(20)-succ-VitE(TPSS)またはTPGS(100mg/mL)をMeOHに溶解した。次いで、回転エバポレーターでMeOHをゆっくりと除去し、丸底フラスコ内で薄膜層を形成した。生成物を蒸留水(10mg/mL)に溶解した。この溶液を室温で24時間平衡化させた後、1000rpmで10分間遠心分離した。TPGSおよびTPSSの両方について、遠心分離工程において沈降物は認められなかった。この溶液を凍結乾燥して粉末固体を直接得た。蛍光標識されたミセルの調製のために、上記同じ手順に従いながら、ブロックコポリペプチドおよび色素をTHF/MeOHに溶解することにより1%w/wのDil充填物を調製した。
【0296】
DLSおよびDOSY NMRによるサイズ、ゼータ電位測定による静電荷、DOSY NMRによる拡散係数およびTEMによる形態などの、空およびDil充填ミセルの特性を分析した。Dil C18充填およびカプセル化効率に関わらず、遠心分離工程において沈降物が現れなかったため、間接的方法として全ての3つの異なる経路によって調製したミセルではDil C18カプセル化は定量的であると推定することができた。
【0297】
DLSによるサイズおよびゼータ電位による静電荷
Dilを含む場合および含まない場合に得られたミセルを、異なる濃度でサイズおよび静電荷に関してDLSで調べた。結果が以下の表9に示されている。
【表9】
【0298】
その濃度が凝集体を誘導するかどうか決定するために全てのミセルを10および1mg/mLで調べ、これは観察されなかった。TPGSおよびTPSSは完全に水溶性であるため、直接法を用いて空のミセルを製剤化した。Dilの使用および不使用によるミセル製剤法は、全ての値が6~19nmであるため、強度または数による流体力学的直径(Dh)に影響を与えないと思われる。重要なことに、薄膜法により調製したTPGS+Dilおよび直接法により調製したTPSS+Dilは、強度計算により二峰性Dh分布を生じさせた。ゼータ電位に関わらず、決定された静電荷は、調べた両濃度においてTPGSおよびTPSSについて予測されたように中性であった。従って、TPSSと比較してTPGSのミセルDhにおいて有意差は認められない。
【0299】
DOSY NMRによって得られた拡散係数によるサイズ
NMR(DOSY NMR)による拡散秩序化分光法は、二元系およびハイブリッド材料を研究するための強力なツールである。電磁場勾配を印加することにより分子の拡散係数(DC)を計算することができる(Avram,L.ら,Chemical Society Reviews 2015,44(2),586-602,Groves P.,polymer Chemistry 2017,8(44),6700-6708)。その上、Stejskal-Tanner方程式を用いて、複合体分子中の異なる部分について強度遅延プロファイルを得ることができる。TPGSおよびTPSSについてのD
2O中でのDCおよびDhの結果が、以下の表10に示されている。
【表10】
【0300】
重水素化水中で得られたDh値(TPGSでは14.49nm、TPSSでは14.54nm)は、強度方法を用いてDLSによって決定されたDh(10mg/mLにおいてTPGS空ミセルでは14.1nmであって、同じ条件下でTPSSでは14.2nmである)と十分に一致しており、異なる技術によって以前に得られたデータと十分に一致している。両ミセル間の直接比較に関して、DCおよびDh値はそれらの間で非常に近く、DCおよびDhに関して明らかな差は存在しない。
【0301】
脂質ナノ粒子(LNP)製剤
以下の実施例では、使用したオリゴヌクレオチドは、6233bp発現ルシフェラーゼを含有する参照PF461(pCMV-luc))と共に、PlasmidFactory社から購入したpDNAであった。上に示されている特性を有する任意の他のオリゴヌクレオチドを使用して以下の実験を行うことができた。Nanosoft Polymers社からイオン化脂質(6Z,9Z,28Z,31Z)-4-(ジメチルアミノ)ブタン酸ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル(DLin-MC3-DMAまたは単にMC3)を購入した。Avanti Polar Lipids社から遮蔽用脂質1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール-2000(DMG-PEG2000)を購入した。両ポリマーを使用して基準LNPを形成した。LNPを形成するために使用した構造的脂質は、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC、Avanti Polar Lipids社製、850365P)およびコレステロール(Chol、Sigma-Aldrich社、C8667)であった。
【0302】
表11のLNP製剤のために、Darwing Microfluidics社製のマイクロ流体HerringboneMixerを使用した。この反応器は、2つの入口チャネル(1つは水相中のDNAのためのものであり、もう1つはエタノール中の脂質混合物のためのものである)と、1つの出口チャネルを提供する。この混合器の仕様は、
・スライド形式:25×75m
・チャネル深さ:0.08mm
・チャネル幅:0.1~0.5mm
・体積:3.3μL
・混合器の体積:0.47μL
・混合器の長さ:28.7mm
・材料:ガラス
・コネクタ:1/4’’-28継手
である。
【0303】
さらに、2つのプログラム可能なポンプが、シリンジ(NE-1000 Programmable Single Syringe Pump、Syringe Pump社、米国)の流体流速を制御する。このシステムは、0.73μL/h(1mLのシリンジ)~2100mL/h(60mLのシリンジ)の注入速度を受け入れる。
【0304】
この方法は、LNPの形成の再現性ならびにプロセスをスケールアップする可能性を提供する。
【0305】
表11の基準LNPは、以下のように製剤化した。
・50/10/38.5/1.5モル比(MC3/DSPC/コレステロール/DMG-PEG)で脂質をエタノールに溶解し、
・pDNAをpH4の酢酸緩衝液25mMに希釈し、
・アミン:リン酸比(N/P)は4であり、
・流量比は3:1(エタノール:H2O)であり、
・総流量は2mL/分であり、
・管の内径は0.5mmであった。
【0306】
製剤後、LNPをpH7.4の10mMリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に希釈し、遠心濃縮器(Vivaspin(商標)500、Sigma社)で濃縮してエタノールを除去した。DMG-PEGの代わりに式(I)のポリマーを使用し、かつ脂質比が異なっていた(以下の表11に示されている)という違いはあるが、本発明のポリマーを含有する製剤を同様に調製した。
【0307】
表12の基準LNPを、NanoScaler(KNAUER社)を用いて以下のように製剤化した。
・46.3/9.4/42.7/1.6モル比(ALC-0315/DSPC/コレステロール/ALC-0159)で脂質をエタノールに溶解し、
・mRNAをpH4の酢酸緩衝液25mMに希釈し、
・アミン:リン酸比(N/P)は6.2であり、
・流量比は1:3(エタノール:H2O)であり、
・LNPの総流速は4.5mL/分(3mL/分の未希釈LNP+PBSによる1.5mL/分のインライン希釈)。
【0308】
製剤後、LNPをpH7.4の10mMのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)でさらに希釈してエタノール濃度を減少させ、遠心濃縮器(Vivaspin(商標)500、Sigma社)で精製してエタノールを除去した。遮蔽用リピドALC-0159の代わりに式(I)のポリマーを使用し、かつ脂質比が異なっていた(以下の表12に示されている)という違いはあるが、本発明のポリマーを含有する製剤を同様に調製した。
【0309】
LNPの特性評価
サイズおよび多分散性
173°の固定された散乱角度で532nmのレーザーを備えたMalvern ZetasizerNanoZS機器を用いて、異なるN/P比(正に帯電可能なポリマーアミン(N=窒素)基:負に帯電した核酸リン酸(P))、異なるモル比および遮蔽用ポリマーで、mRNAまたはpDNAを含有する製剤化LNPのサイズおよび多分散性(PDI)の測定を行った。石英ガラス製の高性能キュベット(Hellma Analytics社)を用いて50μlの試料を測定した。n≧3回の測定でサイズ分布(直径、nm)を測定した。
【0310】
イオン化脂質としてのMC3を含有する基準LNP、遮蔽用リピドとしてのDMG-PEGおよび積荷としてのpDNAを、MC3/DSPC/コレステロール/DMG-PEGのために50/10/38.5/1.5のモル比で製剤化し、以下の結果を得た。
【表11】
【0311】
1.5%でのDMG-PEGの存在は、LNPを安定化させ、良好なサイズおよびPDIならびに再現可能な製剤を得るのに十分である。
【0312】
表11は、積荷としてpDNAを含有する5%のモル比で製剤化されたiPrPSar(20)-succ-VitEの得られた結果を示す。
【表12】
【0313】
結果は、5%のiPrPSar(20)-succ-VitEでは、低いPDIおよび適当なサイズを示すLNPを得ることができることを示唆している。
【0314】
イオン化脂質としてのALC-0315、遮蔽用リピドとしてのALC-0159および積荷としてのmRNAを含有する基準LNPを、ALC-0315/DSPC/コレステロール/ALC-0159について46.3/9.4/42.7/1.6のモル比で製剤化し、積荷としてのmRNAを含有する5%のモル比で製剤化されたiPrPSar(x)-succ-VitEを用いて結果を得た。結果が以下の表12に示されている:。
【表13】
【0315】
結果は、5%の異なるiPrPSar(x)-succ-VitEでは、低いPDIおよび適当なサイズおよびカプセル化効率(EE%)>90%を示すLNPを得ることができることを示唆している。
【0316】
生物学的評価方法
細胞生存度
インビトロ細胞毒性研究を行うために、2種類の細胞株すなわちCLS Cell Lines Service(ドイツ)によって提供されているヒト不死化非腫瘍性ケラチノサイト(HaCaT細胞)、およびHospital La Fe(スペインのバレンシア)によって提供されているヒト線維芽細胞を使用した。ケラチノサイト培養のために高グルコースダルベッコ改変イーグル培地(DMEM Glutamax、Fisher社、スペイン)を使用し、線維芽細胞培養のためにDMEM(Gibco社、スペイン)を使用し、5%CO2および37℃の加湿インキュベーター(Hucoa-Erloss社、スペイン)内で、両方に2%ペニシリン/ストレプトマイシンおよび50mLのウシ胎児血清(FBS)を添加した。
【0317】
細胞生存度アッセイのために、HaCaT細胞では4,000細胞/ウェル、ヒト線維芽細胞では2,000細胞/ウェルの濃度で、50μLの細胞を96ウェルプレートに播種した。24時間後、50μLの各処理液を添加し、100μLの最終体積に到達させた。MTSアッセイを行う前に細胞を試料または対照と共に72時間インキュベートした。このアッセイのために、20μLのフェナジンメトサルフェート(PMS)および3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2-(4-スルホフェニル)-2H-テトラゾリウム、分子内塩(MTS)(1:20)溶液を添加した。3時間のインキュベーション後、Victor2Wallac(商標)プレートリーダー(Perkin Elmer社、スペイン)を用いて490nmで吸光度値を得た。吸光度値は、未処理対照細胞の100%細胞生存度に対する細胞生存度の割合として表した。直接製剤法によって調製したミセルの形態のTPGSおよびiPrPSar(20)-succ-VitE(TPSS)ならびに遊離ビタミンEを試験した。TPGS、iPrPSar(20)-succ-トコフェロール(TPSS)および遊離ビタミンEの濃度は、0.1~2.57μg/mL当量のビタミンEの範囲であった。
【0318】
図1は、2種類の細胞株すなわちHaCaT細胞およびヒト線維芽細胞におけるインビトロ細胞毒性研究を示す。TPGS、TPSSおよび遊離ビタミンEの濃度範囲では0.1~2.57μg/mL当量のビタミンEの範囲であり、これらの結果から、どの試料およびどの試験した細胞株についても、研究した細胞株において細胞毒性作用が認められないことが分かる。
【0319】
皮膚透過研究
皮膚透過促進剤としての本発明の性質を実証するために、ヒトの皮膚を用いてフランツ型拡散セルによって皮膚透過研究を行った。この場合、ビタミンE誘導体をベースとする両方の両親媒性ミセルの透過能力を調べた。
【0320】
書面によるインフォームドコンセント後に形成外科手術を受けた健康な女性から乳房皮膚試料を得た(スペインのバレンシアにあるHospital La Feによって厚意で寄付された)。切除直後に、メスを用いて皮下脂肪組織を慎重に除去した。この皮膚を4cm2の小片に切断し、アルミニウムホイルで包み、使用するまで-20℃で貯蔵した。個体間のばらつきを減らし、かつより良好な比較結果を得るために、全ての実験で1人のドナーのみの皮膚を使用した。各実験を開始する前に、皮膚を放置して室温(r.t.)で平衡化させた。
【0321】
透過研究では、0.95cm2の拡散面積を有する修正されたフランツ型拡散セル(Logan Instruments社、米国)を用いた。この皮膚を、角質層が上向きに配置されるように、ドナーチャンバーとレセプターチャンバーとの間に慎重に固定した。レセプターチャンバーを8mLの0.01Mリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(pH=7.4)で満たし、37℃のサーモスタット温度を用いて磁気撹拌子により600rpmで撹拌した。30分間の平衡時間後に、固定濃度(10mg/mL)を用いて、100μLの製剤(直接製剤法により調製したTPGS-DilおよびTPSS-Dil)を、標準ピペットを用いてドナーチャンバーに導入した。次いで、ドナーチャンバーをParafilm(登録商標)およびアルミニウムホイルで密閉し、これらの実験を8時間実行した。
【0322】
透過研究後に、皮膚試料をウシ血清アルブミン(PBS-BSA)を含む0.1%リン酸緩衝生理食塩水で2回洗浄し、4%パラホルムアルデヒド(PFA)中に室温で24時間維持した。その後、当該試料を30%スクロースのPBS溶液で洗浄し、4℃で24時間保持した。最後に皮膚試料をPBSで2回洗浄し、使用するまで凍結保存溶液(40%の0.1Mリン酸緩衝液PB、30%のエチレングリコールおよび30%のグリセロール)中に4℃で保存した。
【0323】
最後に、当該試料を最適切断温度(OCT)包含培地内に置き、クリオスタット(バージョンCM1850UV、Leica社、ドイツ)により5μmのスライドを生成し、共焦点顕微鏡法によって試料を分析した。
【0324】
λ-青色40×油浸対物レンズを備えた倒立型DM IRE2顕微鏡により画像を取得し、Acoustic Optical Beam Splitter(AOBS)を備えたTCS SP2システムにより扱った。Dil C18(3)を549nm、DAPIを405nmで励起させた。画像を8ビットのグレースケールで取得し、マルチカラー、マクロおよび3Dコンポーネントを含むLCSソフトウェア(バージョン2.5.1347a、Leica社、ドイツ)で処理した。MilliQ水を用いた同じインキュベーション時間に従う対照組織も分析して自家蛍光を確立した。ImageJソフトウェアを用いて、Dil強度を試料ごとに5回定量化した。
【0325】
共焦点顕微鏡検査(図示せず)およびImageJによる画素定量化(
図2)を行った。表皮層におけるDil蓄積はTPGSよりもTPSSミセルに適用した場合に高いことが観察された。ImageJを用いた画素定量化によって、両系が主に角質層(SC)において蓄積されるが、TPSSミセルはTPGS Dilミセルよりも表皮層において高い蓄積を示すことが観察された。いずれの場合にも、どのDilもレセプターチャンバーにおいて認められた。これらの予備結果は、TPSSがペグ化材料よりもより深い層において高い蓄積を示したので、皮膚送達用途のためのPSarベース材料の使用を実証している。
【0326】
免疫原性アッセイ
免疫学的検定キットMicroVue SC5b-9 Plusを用いてSC5b-9(タンパク質S結合終末補体複合体c5b-9)レベルを決定することにより、補体カスケードの活性化を分析した。さらなる試験のために3人の健康な個体の血清を使用した。用いた濃度は、0.2mg/mLのVitE当量であった。Hepes緩衝食塩水(HBS)を陰性対照として、ザイモサン(0.25mg/mL)を陽性対照として使用した。1部のポリマー懸濁液を4部のヒト血清と混合することにより、全ての試料を一定の撹拌により37℃で1時間インキュベートした。インキュベーション後に、試料を製造業者の希釈緩衝液で100倍(ザイモサンの場合は700倍)に希釈し、製造業者のプロトコルに記載されているようにこのアッセイを行った。表13は、SC5b-9の量および標準誤差平均(SEM)を示す。
【表14】
【0327】
iPrPSar(20)-succ-VitEは、陽性対照のザイモサンよりも10倍少ない免疫原性応答および陰性対照のHBSに匹敵する結果を示している。従って、iPrPSar(20)-succ-VitEはこれらの条件下では免疫原性応答を有していない。
【0328】
先行技術文献
・Fieber W.ら,「両親媒性マルチアームスターブロックコポリマーによる芳香剤のカプセル化に関するNMR拡散および緩和研究(NMR diffusion and relaxation studies of the encapsulation of fragrances by amphiphilic multiarm star block copolymers)」,Macromolecules 2007,40(15),5372-5378
・Duro-Castano A.ら,「ナノキャリア設計のための戦略としての「並外れた」軟集合ChargEポリペプチド(“Extraordinary” Soft-Assembled ChargE Polypeptides as a Strategy for Nanocarrier Design)」,Advanced Materials 2017,29(39),12
・Gaucher G.,ら,「ブロックコポリマーミセル:調製、特性評価および薬物送達への応用(Block copolymer micelles:preparation,characterization and application in drug delivery)」,Journal of Controlled Release 2005,109(1-3),169-188
・Avram,L.ら,「分子ケージおよびカプセルの拡散NMR(Diffusion NMR of molecular cages and capsules)」,Chemical Society Reviews 2015,44(2),586-602
・GrovesP.,「ポリマーに適用される拡散秩序化分光法(DOSY)(Diffusion ordered spectroscopy(DOSY) as applied to polymers)」,polymer Chemistry 2017,8(44),6700-6708
【国際調査報告】