(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-22
(54)【発明の名称】電磁鋼板用絶縁被膜組成物、電磁鋼板、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 22/00 20060101AFI20250115BHJP
C21D 8/12 20060101ALI20250115BHJP
H01F 1/18 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
C23C22/00 B
C21D8/12 A
H01F1/18
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536199
(86)(22)【出願日】2022-12-16
(85)【翻訳文提出日】2024-06-17
(86)【国際出願番号】 KR2022020651
(87)【国際公開番号】W WO2023113563
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】10-2021-0182146
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジョンウ
(72)【発明者】
【氏名】ハ,ボンウ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ドンギュ
(72)【発明者】
【氏名】ノ,テヨン
【テーマコード(参考)】
4K026
4K033
5E041
【Fターム(参考)】
4K026AA03
4K026AA22
4K026BB05
4K026BB08
4K026BB10
4K026CA18
4K026CA23
4K026CA39
4K026DA02
4K026EB11
4K033AA01
4K033AA02
4K033QA01
4K033QA02
4K033RA03
4K033RA04
4K033SA04
4K033TA03
5E041BC05
5E041BD09
5E041CA02
5E041CA04
5E041HB11
5E041HB14
5E041NN05
(57)【要約】
【課題】クロム酸塩を排除し、互いに異なる形状と大きさを有する無機物粒子を混合して使用し、複合金属リン酸塩および有機/無機複合体を使用することによって、表面の絶縁性、温耐熱性、耐食性、密着性および再コーティング性等の機能を向上させることができる電磁鋼板絶縁被膜コーティング剤組成物、電磁鋼板、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の電磁鋼板用絶縁被膜組成物は、全体組成物100重量%を基準として、第1無機物粒子および第2無機物粒子を含む第1組成物10~50重量%、金属リン酸塩を含む第2組成物10~50重量%、および有機樹脂に無機ナノ粒子が置換された形態の有機/無機複合体を含む第3組成物20~60重量%、を含むことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体組成物100重量%を基準として、
第1無機物粒子および第2無機物粒子を含む第1組成物を10~50重量%、
金属リン酸塩を含む第2組成物を10~50重量%、および
有機樹脂に無機ナノ粒子が置換された形態の有機/無機複合体を含む第3組成物を20~60重量%、含むことを特徴とする電磁鋼板用絶縁被膜組成物。
【請求項2】
前記第1無機物粒子および第2無機物粒子は、種類が異なり、
それぞれ硫酸バリウム(Ba
2SO
4)、二酸化チタン(TiO
2)、炭酸カルシウム(CaCO
3)、Clay(Al
2Si
2O
5(OH)
4)および二酸化ケイ素(SiO
2)からなる群より選択されたものであることを特徴とする請求項1に記載の電磁鋼板用絶縁被膜組成物。
【請求項3】
前記金属リン酸塩は、
Al、Co、Ca、Zn、Mn、Mg、ZrおよびFeからなる群より選択される1種以上の金属を含むことを特徴とする請求項1に記載の電磁鋼板用絶縁被膜組成物。
【請求項4】
前記金属リン酸塩が第1金属リン酸塩および第2金属リン酸塩の複合金属リン酸塩を含む場合、
前記第1金属リン酸塩は、Alリン酸塩であり、前記第2金属リン酸塩は、Co、Ca、Zn、Mn、Mg、ZrおよびFeからなる群より選択される金属を含むものであることを特徴とする請求項1に記載の電磁鋼板用絶縁被膜組成物。
【請求項5】
前記第2組成物100重量%を基準として、前記第1金属リン酸塩は60~80重量%を含み、第2金属リン酸塩を20~40重量%を含むことを特徴とする請求項4に記載の電磁鋼板用絶縁被膜組成物。
【請求項6】
前記有機樹脂は、エポキシ系樹脂、エステル系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、およびエチレン系樹脂からなる群より選択される1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の電磁鋼板用絶縁被膜組成物。
【請求項7】
前記無機ナノ粒子は、SiO
2、Al
2O
3、TiO
2、MgO、ZnOおよびZrO
2からなる群より選択される1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の電磁鋼板用絶縁被膜組成物。
【請求項8】
前記有機/無機複合体は、
エポキシ/SiO
2、エポキシ/Al
2O
3、エポキシ/TiO
2、エステル/SiO
2、エステル/ZnO、アクリル/SiO
2、アクリル/Al
2O
3、アクリル/ZnO、アクリル/ZrO
2、スチレン/SiO
2、スチレン/TiO
2、スチレン/MgO、ウレタン/SiO
2、ウレタン/Al
2O
3、ウレタン/ZnO、エチレン/SiO
2、エチレン/Al
2O
3、エチレン/ZnOからなる群より選択される1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の電磁鋼板用絶縁被膜組成物。
【請求項9】
前記有機/無機複合体において有機樹脂に置換された無機ナノ粒子の置換率は1~50%であることを特徴とする請求項1に記載の電磁鋼板用絶縁被膜組成物。
【請求項10】
前記無機ナノ粒子の平均粒子サイズは1~100nmであることを特徴とする請求項1に記載の電磁鋼板用絶縁被膜組成物。
【請求項11】
電磁鋼板基材と、
前記電磁鋼板基材の表面上に位置する絶縁被膜とを含み、
前記絶縁被膜は、全体組成物100重量%を基準として、
第1無機物粒子および第2無機物粒子を含む第1組成物を10~50重量%、金属リン酸塩を含む第2組成物を10~50重量%、および有機樹脂に無機ナノ粒子が置換された形態の有機/無機複合体を含む第3組成物を20~60重量%、含むことを特徴とする電磁鋼板。
【請求項12】
前記絶縁被膜は、厚さが1~10μmであることを特徴とする請求項11に記載の電磁鋼板。
【請求項13】
電磁鋼板基材を準備する段階と、
前記電磁鋼板基材の表面に、請求項1~10のいずれか1項に記載の絶縁被膜組成物を塗布する段階と、
前記絶縁被膜組成物が塗布された電磁鋼板基材を熱処理する段階と、を含むことを特徴とする電磁鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁鋼板用絶縁被膜組成物、電磁鋼板、およびその製造方法に係り、より詳しくは、環境問題を解決するために、クロム酸塩を排除し、互いに異なる形状と大きさを有する無機物粒子を混合して使用することによって、電磁鋼板コーティング層の緻密性を向上させ、高温耐熱性を満たすために、様々な金属が置換された金属リン酸塩と電磁鋼板素材と接着力に優れた有機/無機複合体とを用いて表面の絶縁性、高温耐熱性、耐食性、密着性および再コーティング性等の機能をを発現させることができる電磁鋼板用絶縁被膜組成物、電磁鋼板、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、無方向性電磁鋼板は、圧延板上のすべての方向に磁気的性質が均一な鋼板であり、モータ、発電機の鉄心、電動機、小型変圧器などに幅広く用いられている。特に、無方向性電磁鋼板は、冷蔵庫、工場用モータなどの電気損失低減のための低鉄損化、真空掃除機用モータなどの小型/高効率化のための高磁束密度化およびOA機器、電気自動車の駆動モータ)などの高出力のための周波数増加に対応する極薄化のための高級化に進んでいる傾向にある。
【0003】
このような高級化の波に乗っている無方向性電磁鋼板において、効率的なエネルギー利用の面で、高絶縁性のためには厚い絶縁被膜(厚膜)は必須である。例えば、中型および大型電動機、発電機および変圧器などに用いられる無方向性電磁鋼板は、モータコアの積層体として用いる場合には、層間電流損失を最小化させるために高い水準の絶縁性を提供する絶縁被膜が要求される。このような高い水準の絶縁性は、耐熱性(Thermal resistance)を有し、応力除去焼鈍(Stress-Relief Annealing、SRA)処理などの熱処理が要求されることがある。
【0004】
また、高級無方向性電磁鋼板は、シリコン含有量が高いため、素材の硬度が増加し、スリッティング(Slitting)および打抜(Punching)加工時、スリッター(Slitter)と金型(Press)に多くのストレス(Stress)が掛かる加工性劣化の問題があるので、厚膜による被膜形成が要求される。このような高級無方向性電磁鋼板は、電気/電子事業の未来を牽引することが予想される。
【0005】
無方向性電磁鋼板の絶縁被膜コーティング剤は、大きく、無機、有機、有機/無機複合コーティング溶液の3種類があり、無機コーティング溶液を先に塗布後、有機コーティング溶液をコーティングする方法も研究されている。絶縁被膜コーティング剤の製造には、無方向性電磁鋼板の絶縁性向上のために様々な組成の組み合わせが検討されており、現在、主要製造業者で製品化されている大部分の絶縁被膜コーティング剤はリン酸塩とクロム酸塩をベースとしている。リン酸塩とクロム酸塩は、素材金属の耐熱性、絶縁性および耐食性を大きく向上させる役割を果たしている。しかし、コーティング液に含まれているクロム酸化物は、人体に悪影響を及ぼし、環境問題を引き起こす虞がある。この問題により、6価クロムをはじめとする重金属物質の使用に対してEU会員国間の有害物質使用禁止に関する規定(RoHS:Restriction of the use of Hazardous Substances)などのような環境規制が強化されていて、クロム酸塩を含む絶縁被膜コーティング剤はその用途が限られる現状がある。したがって、最近は、電磁鋼板コーティング剤の無クロム化が活発に進められているが、クロム酸塩の不使用による耐食性および密着性の弱化を補強するための新たな絶縁被膜コーティング剤に関する研究が必要な状況である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的とするところは、上記の問題を解決するためになされたものであって、環境上の問題を解決するために、クロム酸塩を排除し、互いに異なる形状と大きさを有する無機物粒子を混合して使用し、複合金属リン酸塩および有機/無機複合体を使用することによって、表面の絶縁性、高温耐熱性、耐食性、密着性および再コーティング性等の機能を向上させることができる電磁鋼板用絶縁被膜組成物、電磁鋼板、およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電磁鋼板用絶縁被膜組成物は、全体組成物100重量%を基準として、第1無機物粒子および第2無機物粒子を含む第1組成物を10~50重量%、金属リン酸塩を含む第2組成物を10~50重量%、および有機樹脂に無機ナノ粒子が置換された形態の有機/無機複合体を含む第3組成物を20~60重量%、含むことを特徴とする。
【0008】
第1無機物粒子および第2無機物粒子は、種類が異なり、それぞれ硫酸バリウム(Ba2SO4)、二酸化チタン(TiO2)、炭酸カルシウム(CaCO3)、Clay(Al2Si2O5(OH)4)および二酸化ケイ素(SiO2)からなる群より選択されたものであることがよい。
金属リン酸塩は、Al、Co、Ca、Zn、Mn、Mg、ZrおよびFeからなる群より選択される1種以上の金属を含むことができる。
金属リン酸塩が第1金属リン酸塩および第2金属リン酸塩の複合金属リン酸塩を含む場合、第1金属リン酸塩は、Alリン酸塩であり、第2金属リン酸塩は、Co、Ca、Zn、Mn、Mg、ZrおよびFeからなる群より選択される金属を含むものであることができる。
【0009】
第2組成物100重量%を基準として、第1金属リン酸塩は60~80重量%を含み、第2金属リン酸塩は20~40重量%を含むことができる。
有機樹脂は、エポキシ系樹脂、エステル系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、およびエチレン系樹脂からなる群より選択される1種以上であることがよい。
無機ナノ粒子は、SiO2、Al2O3、TiO2、MgO、ZnOおよびZrO2からなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
【0010】
有機/無機複合体は、エポキシ/SiO2、エポキシ/Al2O3、エポキシ/TiO2、エステル/SiO2、エステル/ZnO、アクリル/SiO2、アクリル/Al2O3、アクリル/ZnO、アクリル/ZrO2、スチレン/SiO2、スチレン/TiO2、スチレン/MgO、ウレタン/SiO2、ウレタン/Al2O3、ウレタン/ZnO、エチレン/SiO2、エチレン/Al2O3、エチレン/ZnOからなる群より選択される1種以上であることがよい。
有機/無機複合体において有機樹脂に置換された無機ナノ粒子の置換率は1~50%であることができる。
無機ナノ粒子の平均粒子サイズは1~100nmであることが好ましい。
【0011】
本発明の電磁鋼板は、電磁鋼板基材と、電磁鋼板基材の表面上に位置する絶縁被膜とを含み、絶縁被膜は、全体組成物100重量%を基準として、第1無機物粒子および第2無機物粒子を含む第1組成物を10~50重量%、金属リン酸塩を含む第2組成物を10~50重量%、および有機樹脂に無機ナノ粒子が置換された形態の有機/無機複合体を含む第3組成物を20~60重量%、含むことができる。
絶縁被膜は、厚さが1~10μmであることが好ましい。
【0012】
本発明の電磁鋼板の製造方法は、電磁鋼板基材を準備する段階と、電磁鋼板基材の表面に、請求項1~10のいずれか1項に記載の絶縁被膜組成物を塗布する段階と、絶縁被膜組成物が塗布された電磁鋼板基材を熱処理する段階と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一実施例によれば、本発明の電磁鋼板用絶縁被膜組成物は、クロムを含まなくても絶縁被膜の耐食性および密着性に優れている電磁鋼板絶縁被膜コーティング剤組成物を提供することができる。
また、本発明の一実施例によれば、絶縁性、高温耐熱性、耐食性、密着性および再コーティング性が同時に優れた高機能性の表面を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【発明を実施するための形態】
【0015】
第1、第2および第3などの用語は多様な部分、成分、領域、層および/またはセクションを説明するために使用されるが、これらに限定されない。これらの用語は、ある部分、成分、領域、層またはセクションを、他の部分、成分、領域、層またはセクションと区別するためにのみ使用される。したがって、以下に述べる第1部分、成分、領域、層またはセクションは本発明の範囲を逸脱しない範囲内で第2部分、成分、領域、層またはセクションと言及される。
ここで使用される専門用語は単に特定の実施例を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。ここで使用される単数形態は文言がこれと明確に反対の意味を示さない限り、複数形態も含む。明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分の存在や付加を除外させるわけではない。
【0016】
ある部分が他の部分の「上」にあると言及する場合、これは直に他の部分の上にあるか、その間に他の部分が介在してもよい。対照的に、ある部分が他の部分の「真上」にあると言及する場合、その間に他の部分が介在しない。
他に定義しなかったが、ここに使用される技術用語および科学用語を含むすべての用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が一般に理解する意味と同じ意味を有する。普通使用される辞書に定義された用語は、関連技術文献と現在開示された内容に符合する意味を有すると追加解釈され、定義されない限り、理想的または非常に公式的な意味で解釈されない。
以下、本発明の実施例について、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳しく説明する。しかし、本発明は種々の異なる形態で実現可能であり、ここで説明する実施例に限定されない。
【0017】
本発明の一実施例による電磁鋼板用絶縁被膜組成物は、全体組成物100重量%を基準として、第1無機物粒子および第2無機物粒子を含む第1組成物を10~50重量%、金属リン酸塩を含む第2組成物を10~50重量%、および有機樹脂に無機ナノ粒子が置換された形態の有機/無機複合体を含む第3組成物を20~60重量%、含むことができる。
本発明の一実施例による電磁鋼板用絶縁被膜組成物は、組成物中の成分および成分比を調節して絶縁性、高温耐熱性、耐食性、密着性および再コーティング性を向上させることができる。
以下、本発明の一実施例による電磁鋼板用絶縁被膜組成物の成分を具体的に説明する。
【0018】
本発明の一実施例による電磁鋼板用絶縁被膜組成物は、全体組成物100重量%を基準として、第1無機物粒子および第2無機物粒子を含む第1組成物10~50重量%を含むことができる。第1組成物は、重量剤の役割、耐熱性および絶縁抵抗を向上させる役割を果たす。第1組成物の含有量が過度に少ない場合、耐熱性および絶縁抵抗特性が劣化する問題が発生する虞がある。逆に、第1組成物の含有量が過度に多い場合、コーティング作業性および耐食性が劣化する問題が発生する虞がある。
第1無機物粒子および第2無機物粒子は、種類が異なり、それぞれ硫酸バリウム(Ba2SO4)、二酸化チタン(TiO2)、炭酸カルシウム(CaCO3)、Clay(Al2Si2O5(OH)4)および二酸化ケイ素(SiO2)からなる群より選択されたものであることがよい。無機物粒子は、その種類によって形態、粒子サイズなどが異なることがよい。例えば、硫酸バリウムの場合、平均粒子サイズが1~3μmの棒柱状、二酸化チタンの場合に平均粒子サイズが50~100nmの球状、炭酸カルシウムの場合に平均粒子サイズが2~5μmの無定形、二酸化ケイ素の場合に平均粒子サイズが2~4μmの無定形、Clayの場合に平均粒子サイズが0.2~5.0μmの板状結晶の形態を使用することができる。第1無機物粒子および第2無機物粒子を形態および粒子サイズが異なる互いに異なる種類の無機物粒子を使用することによって、コーティング層内に無機物の充填含有量調節および無機物分散効果を得ることができる。
【0019】
本発明の電磁鋼板用絶縁被膜組成物は、全体組成物100重量%を基準として、金属リン酸塩を含む第2組成物10~50重量%を含むことができる。
金属リン酸塩は、耐食性と絶縁性を向上させる役割を果たす。
金属リン酸塩は、Al、Co、Ca、Zn、Mn、Mg、ZrおよびFeからなる群より選択される1種以上の金属を含むことができる。具体的には、リン酸塩は、Al、Co、Ca、Zn、MnおよびMgからなる群より選択される1種以上の金属を含むことができる。例えば、Alを含むリン酸塩は第1リン酸アルミニウム(Al(H3PO4)3)、Coを含むリン酸塩は第1リン酸コバルト(Co(H3PO4)2)、Caを含むリン酸塩は第1リン酸カルシウム(Ca(H3PO4)2)、Znを含むリン酸塩は第1リン酸亜鉛(Zn(H3PO4)2)、Mnを含むリン酸塩は第1リン酸マンガン(Mn(H2PO4)2)、Mgを含むリン酸塩は第1リン酸マグネシウム(Mg(H3PO4)2)であることができる。
【0020】
金属リン酸塩が第1金属リン酸塩および第2金属リン酸塩の複合金属リン酸塩を含む場合、第1金属リン酸塩は、Alリン酸塩であり、第2金属リン酸塩は、Co、Ca、Zn、Mn、Mg、ZrおよびFeからなる群より選択される金属を含むものであることがよい。具体的には、第2金属リン酸塩は、Co、Ca、Zn、MnおよびMgからなる群より選択される金属を含むものであることがよい。この場合、第2組成物100重量%を基準として、第1金属リン酸塩のAlリン酸塩は60~80重量%を含み、第2金属リン酸塩は20~40重量%を含むことができる。具体的には、第1金属リン酸塩のAlリン酸塩は65~75重量%含み、第2金属リン酸塩は25~35重量%含むことができる。第1金属リン酸塩のAlリン酸塩の含有量が過度に少ない場合には、耐食性が劣化する問題が発生し、Alリン酸塩の含有量が過度に多い場合には、耐候性が劣化する問題が発生する虞がある。第2金属リン酸塩の含有量が過度に少ない場合には、密着性が劣化する問題が発生し、第2金属リン酸塩の含有量が過度に多い場合には、耐候性が劣化する問題が発生する虞がある。
金属リン酸塩は、金属水酸化物(Mx(OH)y、Mは金属)または金属酸化物(MxO、Mは金属)とリン酸(H3PO4)との反応により製造できる。例えば、85重量%の遊離リン酸リン(H3PO4)を含むリン酸水溶液を100重量部基準とし、金属水酸化物(Mx(OH)y)または金属酸化物(MxO)をそれぞれ投入し、80~90℃で6~10時間反応させると、それぞれの金属リン酸塩を得ることができる。
【0021】
本発明の電磁鋼板用絶縁被膜組成物は、全体組成物100重量%を基準として、有機樹脂に無機ナノ粒子が置換された形態の有機/無機複合体を含む第3組成物を20~60重量%を含むことができる。
有機/無機複合体は、有機樹脂と無機ナノ粒子とからなり、有機樹脂の官能基の一部または全部に無機ナノ粒子が置換されて、有機樹脂および無機ナノ粒子が結合した状態で組成物中に存在することができる。無機ナノ粒子を樹脂に結合させず、単独で添加する場合、無機ナノ粒子同士で凝集し、分散しにくくなる。
有機/無機複合体中の樹脂は、絶縁被膜に絶縁性を付与し、絶縁被膜と鋼板基材との密着性を付与する役割を果たし、無機ナノ粒子は、金属リン酸塩の浸漬(precipitation)やもつれ(agglomeration)現象を防止し、応力除去焼鈍(Stress relief Annealing)後の表面特性をより優れたものにするのに寄与する。
【0022】
有機/無機複合体は、絶縁被膜組成物を、全体組成物100重量%を基準として、20~60重量%含むことができる。具体的には、第3組成物を30~50重量%含むことができ、さらに具体的には、35~45重量%含むことができる。有機/無機複合体が過度に少なく含まれる場合、前述した絶縁性、密着性などが確保しにくい。逆に、有機/無機複合体が過度に多く含まれる場合、相対的に金属リン酸塩の添加が減少して、高温耐熱性などを確保しにくくなることがある。
有機/無機複合体において有機樹脂に置換された無機ナノ粒子の置換率は1~50%であることがよい。具体的には、無機ナノ粒子の置換率は10~30%であることがよい。無機ナノ粒子の置換率が過度に小さい場合、絶縁抵抗特性が劣化する問題が発生する虞がある。逆に、無機ナノ粒子の置換率が過度に大きい場合、耐食性と加工性(打抜性)が劣化する問題が発生する虞がある。
有機樹脂は、有機高分子化合物を意味し、モノマーと対比される概念である。具体的には、有機樹脂は、エポキシ系樹脂、エステル系樹脂、メラミン系樹脂、シロキサン系樹脂、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂およびエチレン系樹脂からなる群より選択される1種以上であることがよい。さらに具体的には、有機樹脂は、エポキシ系樹脂、エステル系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ウレタン系樹脂およびエチレン系樹脂からなる群より選択される1種以上であることがよい。ここで、エポキシ系とは、例えば、主鎖内にエポキシ基またはエポキシ基に由来する基が存在するものを意味する。
【0023】
無機ナノ粒子は、絶縁被膜組成物の浸漬(precipitation)やもつれ(agglomeration)現象を防止し、応力除去焼鈍(Stress relief Annealing)後の特性をより優れたものにするのに寄与する。
無機ナノ粒子は、SiO2、Al2O3、TiO2、MgO、ZnOおよびZrO2からなる群より選択される1種以上であることがよい。具体的には、SiO2、Al2O3、TiO2およびZnOからなる群より選択される1種以上であることがよい。
無機ナノ粒子の平均粒子サイズは1~100nmであることがよい。無機ナノ粒子の平均粒子サイズが過度に小さければ、コーティング溶液中のナノ粒子の分散性が劣化する問題が発生する虞がある。これに対し、無機ナノ粒子の平均粒子サイズが過度に大きければ、コーティングの作業性が劣化する問題が発生する虞がある。
【0024】
有機/無機複合体は、具体的には、エポキシ/SiO2、エポキシ/Al2O3、エポキシ/TiO2、エステル/SiO2、エステル/ZnO、アクリル/SiO2、アクリル/Al2O3、アクリル/ZnO、アクリル/ZrO2、スチレン/SiO2、スチレン/TiO2、スチレン/MgO、ウレタン/SiO2、ウレタン/Al2O3、ウレタン/ZnO、エチレン/SiO2、エチレン/Al2O3、エチレン/ZnOからなる群より選択される1種以上であることがよい。さらに具体的には、エポキシ/SiO2、エステル/SiO2、アクリル/ZnO、スチレン/TiO2、ウレタン/Al2O3、エチレン/Al2O3からなる群より選択される1種以上であることがよい。
前述した成分のほか、絶縁被膜組成物は、塗布を容易にかつ成分を均一に分散させるために溶媒を含むことができる。溶媒の量は特に制限しないが、絶縁被膜組成物の固形分全体100重量部に対して50重量部~1000重量部含むことができる。本発明の一実施例において、重量部とは、成分の重量間の相対的な比率を示す。固形分とは、絶縁被膜組成物中で溶媒など揮発分成分を除いた残りの成分の重量を意味する。
【0025】
本発明の一実施例による電磁鋼板100は、電磁鋼板基材10と、電磁鋼板基材10上に位置する絶縁被膜20とを含む。
電磁鋼板基材10は、一般的な無方向性または方向性電磁鋼板を制限なく使用可能である。本発明の一実施例では、電磁鋼板基材10上に特別な成分の絶縁被膜20を形成することが主要構成であるので、電磁鋼板基材10に関する具体的な説明は省略する。
絶縁被膜20の厚さは1~10μmになってもよい。絶縁被膜20の厚さが過度に薄い場合、適切な絶縁性を確保しにくい。絶縁被膜20の厚さが過度に厚い場合、占積率が低くなる。本発明の一実施例では、薄い厚さの絶縁被膜20を形成しても適切な絶縁性を確保できる。さらに具体的には、絶縁被膜20の厚さは4~8μmになってもよい。
【0026】
絶縁被膜20は、前述した絶縁被膜の組成物中の成分および含有量比が維持できる。具体的には、絶縁被膜20は、全体100重量%を基準として、第1無機物粒子および第2無機物粒子を含む第1組成物が10~50重量%、金属リン酸塩を含む第2組成物が10~50重量%、および有機樹脂に無機ナノ粒子が置換された形態の有機/無機複合体を含む第3組成物が20~60重量%、含むことができる。
また、絶縁被膜20の構成については、絶縁被膜組成物に関連して詳細に説明したので、重複する説明は省略する。
【0027】
本発明の電磁鋼板の製造方法は、電磁鋼板基材を準備する段階と、電磁鋼板基材の表面に絶縁被膜組成物を塗布する段階と、絶縁被膜組成物が塗布された電磁鋼板基材を熱処理する段階とを含む。
まず、電磁鋼板基材を準備する。電磁鋼板基材10は、一般的な無方向性または方向性電磁鋼板を制限なく使用可能である。本発明の一実施例では、電磁鋼板基材10上に特別な成分の絶縁被膜20を形成することが主要な構成であるので、電磁鋼板基材10の製造方法に関する具体的な説明は省略する。
次に、電磁鋼板基材の表面に絶縁被膜組成物を塗布する。絶縁被膜組成物については前述したので、具体的な説明は省略する。
次に、絶縁被膜組成物が塗布された電磁鋼板基材を熱処理する。熱処理温度は200~400℃であることがよい。温度が過度に低ければ、被膜の形成に長時間がかかり、白化現象が発生する。温度が過度に高ければ、割れによる耐食性、耐熱性、絶縁抵抗および耐ブルーイング性が低下する虞がある。
【0028】
以下、本発明の好ましい実施例、これと対比される比較例、およびこれらの評価例を記載する。しかし、下記の実施例は本発明の一実施例に過ぎず、本発明が下記の実施例に限定されるものではない。
実験例1
まず、第1組成物を構成する無機物粒子と第2組成物である金属リン酸塩との混合溶液の相溶性(compatibility)を評価して、使用する無機物粒子の種類と金属リン酸塩を決定するための実験を実施した。無機物粒子と金属リン酸塩との相溶性評価方法は、まず、金属リン酸塩30~70重量%と無機物粒子30~70重量%とを混合して、高速の攪拌機(high speed agitator:1000-3000RPM)で1時間混合(blending)させ、常温で24時間維持させた後に、溶液のゲル化(gelation)および相分離(phase separation)の程度により溶液の相溶性(compatibility)を評価した。
【0029】
相溶性評価において、無機物粒子として、硫酸バリウム(Ba2SO4)、二酸化チタン(TiO2)、Clay(Al2Si2O5(OH)4)、炭酸カルシウム(CaCO3)、シリカ(SiO2)、タルク(3MgO.4SiO2.H2O)を使用しており、各無機物粒子の形状および基本物性は下記表1に示した。
【0030】
【表1】
相溶性評価において、金属リン酸塩として、リン酸に様々な金属(Al、Mg、Mn、Ca、Zn、Co)を置換させたアルミニウムリン酸塩、亜鉛リン酸塩、マグネシウムリン酸塩、コバルトリン酸塩、マンガンリン酸塩、カルシウムリン酸塩を使用しており、各金属リン酸塩の基本物性を下記表2に示した。
【0031】
【0032】
前記の表1と表2の無機物粒子と金属リン酸塩との混合物に対する溶液相溶性(compatibility)評価結果を下記表3に示した。溶液相溶性評価の区分は、◎極めて良い、○良い、△不十分、Χ極めて不十分と表示した。
【0033】
【0034】
表3の評価結果から分かるように、すべての種類の金属リン酸塩は、硫酸バリウム、二酸化チタン、炭酸カルシウム、Clayおよび二酸化ケイ素と良好な相溶性を示し、特に金属リン酸塩と硫酸バリウムおよびClayとの相溶性に優れていた。ただし、タルクの場合、すべての種類の金属リン酸塩と混合した時、相溶性が劣化していることを確認できて、タルクは絶縁被膜コーティング剤組成物の製造から除外した。
【0035】
実験例2
次の実験として、前記実験例1で選択した無機物粒子と金属リン酸塩との混合組成物に有機/無機複合体を混合して、溶液相溶性とコーティング作業性を評価した。金属リン酸塩と無機物粒子との混合比率は1:1で使用し、表3で得られた金属リン酸塩および無機物粒子の混合物と有機/無機複合体との混合重量%はそれぞれ30~70重量%に決定した。表3から分かるように、本発明では、金属リン酸塩とタルクとの組み合わせは溶液相溶性が劣化していて、有機/無機複合体との相溶性評価から除外した。溶液の相溶性(compatibility)は、高速分散機によって分散した金属リン酸塩と無機物粒子との混合物に有機/無機複合体を撹拌機(100~300RPM)で0.5時間混合(blending)させ、常温で6時間維持させた後に、溶液のゲル化(gelation)および相分離(phase separation)の程度により溶液の相溶性(compatibility)を評価した。
【0036】
また、コーティング作業性は、それぞれの溶液を比重1.1~1.4に調整した後、準備された供試片(50PN400)をバーコーターを用いてコーティング厚さ5~7μmに塗布し、200~350℃で20~60秒間硬化した後、表面状態を評価した。ここで、供試片として用いられた50PN400は、比抵抗元素成分として、Si:2.5重量%、Al:0.5重量%、Mn:0.2重量%を含み、板厚さは0.5mmであり、試片の大きさは300mm×80mmである。コーティング表面を十分に硬化させるために、硬化温度および硬化時間を溶液別に最適化した。表4のように、有機/無機複合体の無機物置換比率は20%に固定し、有機高分子樹脂に置換された無機ナノ粒子の種類はSiO2、Al2O3、TiO2、ZnO、ZrO2、MgOであり、無機ナノ粒子サイズは種類別に1~100nmである。
溶液相溶性およびコーティング作業性評価の区分は、◎極めて良い、○良い、△不十分、Χ極めて不十分と表示した。
【0037】
【0038】
前記表4から、金属リン酸塩、無機物粒子および有機/無機複合体の混合溶液の溶液相溶性およびコーティング作業性の評価結果から分かるように、無機物粒子サイズが相対的に大きい炭酸カルシウムおよび二酸化ケイ素が、粒子サイズが小さい硫酸バリウム、二酸化チタン、Clayに比べて溶液相溶性とコーティング作業性が相対的に劣っていた。
【0039】
実験例3
下記表5に、本発明の実施例である第1組成物の混合無機物粒子、第2組成物の混合金属リン酸塩および第3組成物の有機/無機複合体から構成された混合溶液、および比較例の組成比を示した。本発明の実施例では、第1組成物として、第1無機物粒子と第2無機物粒子との2種の無機物粒子を混合して使用しており、第1無機物粒子と第2無機物粒子とを7:3の比率で混合して使用した。また、第2組成物として用いた複合金属リン酸塩は、少なくとも1種以上のリン酸塩を使用し、本実施例では、2種の金属リン酸塩を用いて第1金属リン酸塩と第2金属リン酸塩とを7:3の比率で混合して使用した。コーティング溶液は、コーティング溶液100重量%を基準として、第1組成物、第2組成物および第3組成物をそれぞれ10~50重量%、10~50重量%および20~60重量%、使用した。また、表5で使用した有機/無機複合体において有機樹脂に置換された無機ナノ粒子の置換率は、表4に示したとおり20%に固定した。これとは異なり、比較例1および2は、金属リン酸塩を添加せず、無機物粒子および高分子樹脂だけを混合し、比較例3および4は、無機物粒子を添加せず、金属リン酸塩および高分子樹脂だけを混合してコーティング溶液を製造した。また、比較例5は、無機物粒子を1種使用した点を除けば、実施例と同一の組成比でコーティング溶液を製造した。
【0040】
【0041】
下記表6は、前記表5の組成比で混合されたコーティング溶液をバーコーター(Bar coater)によって塗布して、200~400℃で30~40秒間硬化させた後、表面状態、絶縁性、耐食性、高温耐熱性および再コーティング性を評価して示したものである。コーティング表面を十分に硬化させるために、硬化温度および硬化時間を溶液別に最適化した。コーティング溶液別に一定のコーティング厚さを取得するために、コーティング溶液の固形分を30%前後に調整し、バーカッター(Bar Cater)番号を異ならせてコーティング厚さを約6μmに一定に塗布した。ここで、コーティング厚さは厚さ測定器(delta scope)を用いて測定した。
前記各特性の測定方法は次の通りである。
表面状態:コーティングおよび硬化後に表面の縞および欠陥発生の程度で評価した。本実験では、表面の縞および欠陥発生面積が5%以下の場合◎(極めて優秀)、20%以下の場合○(良好)、30%以下の場合△(普通)、50%以上ではΧ(不良)と表示した。
【0042】
絶縁性:絶縁性は、Franklin Insulation Testerによって測定され、この測定器は単板試験法装置で一定の圧力と一定の電圧下で電磁鋼板の表面絶縁抵抗を測定する装置である。電流の範囲は0~1.000Amp.であり、絶縁測定方法は、測定試験片1枚を全電極の接触子が接触するようにプレート上に置いた後、加圧装置によって300psi(20.4atm)となるように圧力を加えた。試験圧力になった時、すべり抵抗器を調整し、電圧0.5V下で電流計の目盛りを読み、これを層間絶縁性値として評価した。それぞれの試験溶液に対して5枚を評価した。本実験では、絶縁抵抗測定器(ASTM A717-1)によって測定され、絶縁抵抗値が100Ω・cm2/lamination以上の場合◎(極めて優秀)、60Ω・cm2/lamination以上の場合○(良好)、40Ω・cm2/lamination以上の場合△(普通)、20Ω・cm2/lamination以上の場合Χ(不良)と表示した。
耐食性:耐食性評価は、5%、塩化ナトリウム(NaCl)溶液に35℃で8時間露出後、試片のサビ発生の有無を評価した、本実験では、サビ発生面積が5%以下の場合◎(極めて優秀)、10%以下の場合○(良好)、20%以下の場合△(普通)、50%以上ではΧ(不良)と表示した。
【0043】
高温耐熱性:高温耐熱性は、IEC60404-12の連続定格(Continuous rating、180+30℃、2500h)評価で進行させ、高温耐熱性評価前/後の絶縁抵抗、密着性(Cylindrical mandrel bending)および占積率変化の程度を評価した。連続定格評価後、絶縁抵抗、密着性および占積率変化の程度が5%未満の場合◎(極めて優秀)、10%未満の場合○(優秀)、30%未満の場合△(良好)、30%以上の場合Χ(劣化)と表示した。
密着性:密着性は、試験された試片を5、10、20、30、40mmΦの円弧に接して180°曲げた時、被膜の剥離がない最小円弧径で示したものである。ここで、最小円弧径が5mmΦ以下の場合◎(極めて優秀)、10mmΦ以下の場合○(優秀)、20mmΦ以下の場合△(普通)、20mmΦ超過の場合Χ(不良)と表示した。
再コーティング性:再コーティング性は、コーティング溶液で塗布した試片のコーティング層上に、二次コーティング溶液として比較例1のコーティング溶液を塗布および乾燥後、二次コーティング層の表面状態および一次コーティング層との密着性を上述した方法で評価した。本実験では、二次コーティング層との密着性はMandrel Bend Tester(ISO1519)で測定し、5mmΦ以下の場合◎(極めて優秀)、10mmΦ以下の場合○(良好)、20mmΨ以下の場合△(普通)、20mmΦ以上の場合Χ(不良)と表示した。
【0044】
【0045】
表6の評価結果から分かるように、実施例の溶液の表面状態、絶縁性、耐食性、高温耐熱性、密着性および再コーティング性とも、比較例に比べて優れた特性を示した。実施例の溶液では、有機/無機複合体の種類によって一部特性の差はあるが、全般的にすべての特性に優れていた。これに対し、2種の混合無機物粒子、金属リン酸塩および有機/無機複合体の混合組成物を含まない比較例1~比較例4、および無機物粒子、金属リン酸塩および有機/無機複合体の混合組成物を含むが、無機物粒子を1種のみ含む比較例5は、表面状態、絶縁性、耐食性、高温耐熱性、密着性および再コーティング性のうち一部の特性が劣化していることを確認することができた。
【0046】
本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で製造可能であり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態で実施できることを理解するであろう。そのため、以上に記述した実施例はすべての面で例示的であり、限定的ではないと理解しなければならない。
【国際調査報告】