(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-22
(54)【発明の名称】溶接性に優れた冷間圧延鋼板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C22C 38/00 20060101AFI20250115BHJP
C22C 38/28 20060101ALI20250115BHJP
C22C 38/50 20060101ALI20250115BHJP
C21D 9/46 20060101ALI20250115BHJP
B23K 35/30 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
C22C38/00 301S
C22C38/28
C22C38/50
C21D9/46 G
B23K35/30 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536256
(86)(22)【出願日】2022-12-16
(85)【翻訳文提出日】2024-06-17
(86)【国際出願番号】 KR2022020580
(87)【国際公開番号】W WO2023113532
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】10-2021-0182147
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】キム、 ジャイイク
【テーマコード(参考)】
4K037
【Fターム(参考)】
4K037EA01
4K037EA05
4K037EA11
4K037EA13
4K037EA15
4K037EA18
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4K037EB11
4K037FA02
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4K037FC04
4K037FE02
4K037FE03
4K037FG00
4K037FJ05
4K037FM02
(57)【要約】
本発明は、冷間圧延鋼板およびその製造方法に関するものであって、一実施例に係る冷間圧延鋼板は、重量%で、炭素(C):0.01ないし0.05%、マンガン(Mn):0.6ないし1.2%、シリコン(Si):0.05%以下(0%は、除く)、リン(P):0.0005ないし0.01%、硫黄(S):0.008%以下(0%は、除く)、アルミニウム(Al):0.0005ないし0.015%、窒素(N):0.0005ないし0.003%、タングステン(W):0.1ないし0.4%、クロム(Cr):1.0ないし2.0%、ジルコニウム(Zr):0.05ないし0.15%、残りFeおよび不可避な不純物を含み、溶接部材の降伏強度が500MPa以上であってもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量%で、炭素(C):0.01ないし0.05%、マンガン(Mn):0.6ないし1.2%、シリコン(Si):0.05%以下(0%は、除く)、リン(P):0.0005ないし0.01%、硫黄(S):0.008%以下(0%は、除く)、アルミニウム(Al):0.0005ないし0.015%、窒素(N):0.0005ないし0.003%、タングステン(W):0.1ないし0.4%、クロム(Cr):1.0ないし2.0%、ジルコニウム(Zr):0.05ないし0.15%、残りFeおよび不可避な不純物を含み、
溶接部材の降伏強度が500MPa以上である、冷間圧延鋼板。
【請求項2】
下記の式1のFCW
,A値が40ないし150を満足する、請求項1に記載の冷間圧延鋼板。
<式1>
FCW
,A=(2.5×[Mn]+1.8×[Cr]+24×[Al])×(18×[W])×(45×[Zr])/(34×[C])
(前記の式1で、[Mn]、[Cr]、[Al]、[W]、[Zr]、および[C]はそれぞれ、Mn、Cr、Al、W、Zr、およびCの含有量を重量%に示す)
【請求項3】
セメンタイトおよびベイナイトのうちの少なくとも一つ以上で構成された組織分率が、面積%として、1ないし7%および残部のフェライトを含む、請求項1に記載の冷間圧延鋼板。
【請求項4】
伸び率が35%以上である、請求項1に記載の冷間圧延鋼板。
【請求項5】
溶接部の偏析指数が、0.15%未満である、請求項1に記載の冷間圧延鋼板。
【請求項6】
-40℃での衝撃エネルギーが50J以上である、請求項1に記載の冷間圧延鋼板。
【請求項7】
重量%で、炭素(C):0.01ないし0.05%、マンガン(Mn):0.6ないし1.2%、シリコン(Si):0.05%以下(0%は、除く)、リン(P):0.0005ないし0.01%、硫黄(S):0.008%以下(0%は、除く)、アルミニウム(Al):0.0005ないし0.015%、窒素(N):0.0005ないし0.003%、タングステン(W):0.1ないし0.4%、クロム(Cr):1.0ないし2.0%、ジルコニウム(Zr):0.05ないし0.15%、残りFeおよび不可避な不純物を含む鋼スラブを加熱するステップと、
加熱されたスラブを820ないし880℃の仕上げ圧延温度で熱間圧延するステップと、
熱間圧延された熱延鋼板を580ないし700℃で巻き取るステップと、
巻き取られた前記熱延鋼板を50ないし90%に冷間圧延するステップと、
冷間圧延された冷間圧延鋼板を700ないし850℃範囲で焼鈍するステップと、を含む、冷間圧延鋼板製造方法。
【請求項8】
前記スラブは、下記の式1のFCW
,A値が40ないし150を満足する、請求項7に記載の冷間圧延鋼板製造方法。
<式1>
FCW
,A=(2.5×[Mn]+1.8×[Cr]+24×[Al])×(18×[W])×(45×[Zr])/(34×[C])
(前記の式1で、[Mn]、[Cr]、[Al]、[W]、[Zr]、および[C]はそれぞれ、Mn、Cr、Al、W、Zr、およびCの含有量を重量%に示す)
【請求項9】
前記鋼スラブを加熱するステップは、1,180℃以上で行われる、請求項7に記載の冷間圧延鋼板の製造方法。
【請求項10】
巻き取られた前記熱延鋼板を冷間圧延するステップ以前に、前記熱延鋼板を酸洗する、請求項7に記載の冷間圧延鋼板製造方法。
【請求項11】
冷間圧延された冷間圧延鋼板を焼鈍するステップ以降に、焼鈍された冷間圧延鋼板を調質圧延するステップをさらに含む、請求項7に記載の冷間圧延鋼板製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板に関するものであって、より詳しくは溶接性に優れた冷間圧延鋼板およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に溶接生産性が最も高く、多様な位置での溶接が容易な溶接方法としては、フラックスコアード溶接(Flux Cored Welding、FCW)法がある。前記フラックスコアード溶接法に用いられる溶接材料は、フラックスコアードワイヤーであって、溶接棒用冷間圧延鋼板を用いて引き抜いたストリップ(Strip)をU字形に加工し、加工されたストリップにフラックス(Flux)を添加している。前記フラックスは、溶接性を確保するために酸化剤を含むフラックス成分と溶接棒の使用特性を向上させるために目的によって多様な合金元素を高純度の粉末形態で混合して添加し、この後、O字形に加工して溶接用ワイヤーとして製造する。このように、前記フラックス成分は、溶接作業性の確保のために添加され、合金元素は、溶接棒の使用用途に適した特性の確保のために添加されている。
【0003】
このとき、高純度の粉末形態で添加されるコア内の合金元素の種類および添加量の変化により、溶接棒素材に求められる多様な特性を確保することになる。例えば、優れた低温靭性が求められる溶接部材を生産するためには、加工されたワイヤーコア部に低温靭性を改善するための合金元素とフラックスとを混合してともに装入しなければならない。
【0004】
また、前記フラックスコアードワイヤー製造のために用いられるワイヤー用冷延鋼材として低炭素鋼が用いられており、一部の特殊用途にはステンレス鋼が用いられている。前記低炭素鋼ベースの溶接棒用冷延鋼材は低合金鋼であるため、溶接棒の使用環境による溶接棒特性を確保するためにはコア内に多量の合金元素添加が必要である。しかし、前記溶接棒に活用される素材の場合、溶接作業性の確保のために適正水準のフラックスを添加する必要があるので、コア内の合金元素投入量を所望の通りに投入するのに制限がある問題がある。具体的には、溶接棒用鋼材の中心部位に多量の酸化剤、スラグ形成剤、アーク安定剤、および合金成分が全て添加されなければならないが、一般にワイヤー鋼材にフラックスを含んで約30ないし60%の容積量を充填することが限界であるので、充填される合金元素によって相違はあるが、重量比では約15ないし25%水準が限界である。
【0005】
このような場合、溶接棒の使用特性を確保するために合金元素の添加量が増加すると、フラックス成分が制限され、安定した溶接特性を確保し難い問題がある。また、これらの合金元素は高純度の粉末形態で添加しなければならないため、溶接棒の製造原価の上昇要因になるだけでなく、大半添加される合金元素の比重が高くなることによって溶接作業時に溶融した添加成分が溶接部の偏析を起こし、溶接不良の要因として作用する問題がある。
【0006】
溶接ワイヤー用ステンレス鋼の場合、根本的に一般の炭素鋼に比べて炭素鋼成分中に存在するニッケル(Ni)の合金元素量が多いので、フラックスとともに添加されるコア合金元素の添加量を一定の部分減らすことができるが、高合金鋼材であって原板素材の価格が高く、特殊用途だけ適用されている問題がある。また、前記ステンレスベースの溶接棒用鋼材の場合、溶接棒ワイヤー加工時の加工硬化によって断線が発生する場合が多いため、別途に焼鈍熱処理を実施しなければならないなど、追加的な工程経由による製造原価の上昇問題を解決しなければならない必要がある。
【0007】
したがって、現在、加工性、具体的には、引抜き加工性および強度、靭性が求められる溶接ワイヤー用冷延鋼材としては、低炭素鋼を造管後、フラックス装入時に強度と低温靭性を確保するために高価な合金元素を高純度粉末形態に調剤してフラックス成分とともに投入する方法が一般に活用されている。前述のように、特性の確保のために添加される合金粉末が高純度でかつ高価であるだけでなく、投入量が多いことによって溶接安定性を確保するためのフラックス成分の添加条件に制約がある問題がある。
【0008】
また、前記添加される高価な合金元素が、前記フラックス内で偏析現象を起こし、溶接作業性を劣化させる問題がある。例えば、前記フラックスコアードワイヤー用鋼板を製造するための方法として、チタニウム(Ti)のような成分を添加することによって、衝撃靭性および強度特性に優れた溶接棒用鋼を製造する方法を試みた。しかし、前記方法は、高価な合金元素を多量で添加するため、原価の上昇の問題と鋼材の延性が低くて引抜き加工性の確保が難しい問題がある。
【0009】
また、フラックス原料にチタニウム(Ti)およびマグネシウム(Mg)のような原料を添加することによって、溶融金属の脱酸反応を促進して溶接欠陥を低減させる技術が提案された。しかし、溶融金属の脱酸効果を十分に得るためには、フラックス中に多くの合金元素を添加する必要があるが、このように多くの合金元素をフラックスに添加することになると、溶接時に微細な粒子が周囲に飛び散るスパッタ(Spatter)現象が多く発生して溶接作業性が低下する問題がある。
【0010】
したがって、極低温用環境で強度および低温靭性に優れた溶接部を得ることができ、溶接作業性および引抜き加工性に優れたフラックスコアードワイヤー溶接棒用冷間圧延鋼板を活用した溶接鋼材およびその製造方法に対する開発が求められている実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする技術的課題は、極低温用環境で強度および低温靭性に優れた溶接部を得ることができ、溶接作業性および引抜き可能性に優れたフラックスコアードワイヤー溶接棒用冷間圧延鋼板を提供することができる。
【0012】
本発明が解決しようとする他の技術的課題は、前記利点を有する冷間圧延鋼板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施形態に係る冷間圧延鋼板は、重量%で、炭素(C):0.01ないし0.05%、マンガン(Mn):0.6ないし1.2%、シリコン(Si):0.05%以下(0%は、除く)、リン(P):0.0005ないし0.01%、硫黄(S):0.008%以下(0%は、除く)、アルミニウム(Al):0.0005ないし0.015%、窒素(N):0.0005ないし0.003%、タングステン(W):0.1ないし0.4%、クロム(Cr):1.0ないし2.0%、ジルコニウム(Zr):0.05ないし0.15%、残りFeおよび不可避な不純物を含んでもよく、溶接部材の降伏強度が500MPa以上であってもよい。
【0014】
一実施形態において、冷間圧延鋼板は、下記の式1のFCW,A値が40ないし150を満たすことができる。
【0015】
<式1>
FCW,A=(2.5×[Mn]+1.8×[Cr]+24×[Al])×(18×[W])×(45×[Zr])/(34×[C])
(前記の式1で、[Mn]、[Cr]、[Al]、[W]、[Zr]、および[C]はそれぞれ、Mn、Cr、Al、W、Zr、およびCの含有量を重量%に示す)
【0016】
一実施形態において、冷間圧延鋼板は、セメンタイトおよびベイナイトのうちの少なくとも一つ以上で構成された組織分率が、面積%として、1ないし7%および残部のフェライトを含んでもよい。一実施形態において、冷間圧延鋼板は、伸び率が35%以上であってもよい。一実施形態において、冷間圧延鋼板は、溶接部の偏析指数が、0.15%未満であってもよい。一実施形態において、冷間圧延鋼板は、-40℃での衝撃エネルギーが50J以上であってもよい。
【0017】
本発明の他の実施形態に係る冷間圧延鋼板の製造方法は、重量%で、炭素(C):0.01ないし0.05%、マンガン(Mn):0.6ないし1.2%、シリコン(Si):0.05%以下(0%は、除く)、リン(P):0.0005ないし0.01%、硫黄(S):0.008%以下(0%は、除く)、アルミニウム(Al):0.0005ないし0.015%、窒素(N):0.0005ないし0.003%、タングステン(W):0.1ないし0.4%、クロム(Cr):1.0ないし2.0%、ジルコニウム(Zr):0.05ないし0.15%、残りFeおよび不可避な不純物を含む鋼スラブを加熱するステップと、加熱されたスラブを820ないし880℃の仕上げ圧延温度で熱間圧延するステップと、熱間圧延された熱延鋼板を580ないし700℃で巻き取るステップと、巻き取られた前記熱延鋼板を50ないし90%に冷間圧延するステップと、冷間圧延された冷間圧延鋼板を700ないし850℃範囲で焼鈍するステップと、を含んでもよい。
【0018】
一実施形態において、前記スラブは、下記の式1のFCW,A値が40ないし150を満たすことができる。
【0019】
<式1>
FCW,A=(2.5×[Mn]+1.8×[Cr]+24×[Al])×(18×[W])×(45×[Zr])/(34×[C])
(前記の式1で、[Mn]、[Cr]、[Al]、[W]、[Zr]、および[C]はそれぞれ、Mn、Cr、Al、W、Zr、およびCの含有量を重量%に示す)
【0020】
一実施形態において、前記鋼スラブを加熱するステップは、1,180℃以上で行われてもよい。一実施形態において、巻き取られた前記熱延鋼板を冷間圧延するステップ以前に、前記熱延鋼板を酸洗してもよい。一実施形態において、冷間圧延された冷間圧延鋼板を焼鈍するステップ以降に、焼鈍された冷間圧延鋼板を調質圧延するステップをさらに含んでもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一実施形態に係る冷間圧延鋼板は、マンガン、クロム、アルミニウム、タングステン、ジルコニウム、および炭素のような主要元素の含有量を制御することによって、強度に優れ、低温靭性に優れ、溶接作業性および加工性に優れた冷間圧延鋼板を提供し、造船産業、資材産業、および建築産業のように多方面の産業分野に用いられる溶接が可能なフラックスコアードワイヤー用の冷間圧延鋼板を提供することができる。
【0022】
本発明の他の実施形態に係る冷間圧延鋼板製造方法は、前記利点を有する冷間圧延鋼板を製造する方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
第1、第2および第3等の用語は、多様な部分、成分、領域、層および/またはセクションを説明するために使用されるが、これらに限定されない。これら用語は、ある部分、成分、領域、層またはセクションを他の部分、成分、領域、層またはセクションと区別するためにだけ使用される。したがって、以下で述べる第1部分、成分、領域、層またはセクションは、本発明の範囲を逸脱しない範囲内で、第2部分、成分、領域、層またはセクションとして言及することができる。
【0024】
ここで使用される専門用語は、単に特定の実施例を言及するためであり、本発明を限定することを意図しない。ここで使用される単数形態は、文句がこれと明確に反対の意味を示さない限り複数形態も含む。明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、ステップ、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特性、領域、整数、ステップ、動作、要素および/または成分の存在や付加を除外させるのではない。
【0025】
ある部分が他の部分の「の上に」または「上に」あると言及する場合、これは直ちに他の部分の上にまたは上にあるか、その間に他の部分が存在することができる。対照的にある部分が他の部分の「真上に」あると言及する場合、その間に他の部分が介在されない。
【0026】
特に定義してはいないが、ここに使用される技術用語および科学用語を含む全ての用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が一般に理解する意味と同一な意味を有する。通常使用される辞典に定義された用語は、関連技術文献と現在開示された内容に合致する意味を有するものと追加解釈され、定義されない限り理想的であるか非常に公式的な意味に解釈されない。
【0027】
また、特に言及しない限り、%は、重量%を意味し、1ppmは、0.0001重量%である。
【0028】
本発明の一実施形態において追加元素をさらに含むという意味は、追加元素の追加量ほど残部の鉄(Fe)を代替して含むことを意味する。
【0029】
以下、本発明の実施形態に対して本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳しく説明する。しかし、本発明は、色々な異なる形態で具現することができ、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0030】
本発明の一実施形態に係る冷間圧延鋼板は、重量%で、炭素(C):0.01ないし0.05%、マンガン(Mn):0.6ないし1.2%、シリコン(Si):0.05%以下(0%は、除く)、リン(P):0.0005ないし0.01%、硫黄(S):0.008%以下(0%は、除く)、アルミニウム(Al):0.0005ないし0.015%、窒素(N):0.0005ないし0.003%、タングステン(W):0.1ないし0.4%、クロム(Cr):1.0ないし2.0%、ジルコニウム(Zr):0.05ないし0.15%、残部Feおよび不可避な不純物を含む。
【0031】
下記では、合金成分の限定理由を説明する。以下、wt%は、%に表記することができる。
【0032】
炭素(C):0.01ないし0.05%
炭素(C)は、鋼の強度確保および溶接時に熱影響部(Heat Affected Zone、HAZ)が母材部と類似の材質特性を有するようにするために添加する元素である。前記炭素の含有量は、0.01ないし0.05%、具体的には、0.012ないし0.048%の範囲であってもよい。
【0033】
前記炭素の含有量が前記範囲の上限値から外れる場合、引抜き加工工程で高い加工硬化によって断線が発生する問題がある。また、溶接継手部で低温亀裂が発生して衝撃靭性が低下するだけでなく、高い強度によって付随的な熱処理を実施しなければならない工程上の問題がある。前記炭素の含有量が前記範囲の下限値から外れる場合、鋼の強度確保および溶接時に熱影響部が母材部と類似の材質特性を有するようにする効果が発現しない問題がある。
【0034】
マンガン(Mn):0.6ないし1.2%
マンガン(Mn)は、代表的な固溶強化元素であって、鋼の強度を高めて熱間加工性を向上させる元素である。前記マンガンの含有量は、0.6ないし1.2%、具体的には、0.65ないし1.15%の範囲であってもよい。
【0035】
前記マンガンの含有量が前記範囲の上限値から外れる場合、多量のマンガンスルフィド(MnS)析出物を形成して鋼の延性および加工性を低下させるだけでなく、中心偏析の発生の要因として作用し、溶接棒製造工程での引抜き作業時に断線を誘発する問題がある。前記マンガンの含有量が前記範囲の下限値から外れる場合、赤熱脆性の発生要因となり、オーステナイトの安定化に寄与し難い問題がある。
【0036】
シリコン(Si):0.05%以下、
シリコン(Si)は、酸素のような特定の元素と結合して鋼板の表面に酸化層を形成して表面特性を劣化させ、耐食性を低下させる要因として作用することができ、溶接金属内の硬質相変態を促進することによって衝撃特性を低下させる要因として作用することができる。前記シリコンの含有量は、0.0005ないし0.0045%の範囲であってもよい。
【0037】
リン(P):0.0005ないし0.010%
リン(P)は、鋼中で固溶元素として存在しながら固溶強化を起こし、強度および硬度を向上させる元素である。前記リンの含有量は、0.0005ないし0.01%、具体的には、0.0008ないし0.0095%の範囲であってもよい。
【0038】
前記リンの含有量が前記範囲の上限値から外れる場合、鋳造時に中心偏析を発生させ、延性が低下してワイヤー加工性を低下させる問題がある。前記リンの含有量が前記範囲の下限値から外れる場合、一定の水準の剛性を維持し難い問題がある。
【0039】
硫黄(S):0.008%以下、
硫黄(S)は、鋼中でマンガン(Mn)と結合して非金属介在物を形成し、赤熱脆性(Red Shortness)の要因になる可能性がある。前記硫黄(S)の含有量は、0.008%以下、具体的には、0.0004ないし0.0075%範囲であってもよい。
【0040】
前記硫黄の含有量が前記範囲の上限値から外れる場合、前記非金属介在物が多量で形成され、前記赤熱脆性が深化する問題がある。また、鋼板の母材靭性を低下させる問題がある。
【0041】
アルミニウム(Al):0.0005ないし0.0150%
アルミニウム(Al)は、アルミニウムキルド鋼で炭酸剤および時効による材質劣化を防止する目的で添加される元素であり、適正な範囲で延性の確保に有利な元素であり、前述した効果は極低温の場合、顕著に発生する。前記アルミニウムの含有量は、0.0005ないし0.015%、具体的には、0.0006ないし0.0148%範囲であってもよい。
【0042】
前記含有量の上限値から外れる場合、アルミニウムオキシド(Al2O3)のような表面介在物が急増して圧延材の表面特性を悪化させ、加工性が低下するだけでなく、溶接熱影響部の結晶粒系に局部的にフェライトが形成されて機械的特性が低下し、溶接後にも溶接ビード(Bead)形状が劣化する問題がある。前記含有量の下限値から外れる場合、酸素の固着力が低下し、時効による材質劣化が発生できる問題がある。
【0043】
窒素(N):0.0005ないし0.003%
窒素(N)は、鋼内部に固溶状態で存在しながら材質強化を強く誘発する元素である。前記窒素の含有量は、0.0005ないし0.003%、具体的には、0.0008ないし0.0029%範囲であってもよい。
【0044】
前記窒素の含有量が前記範囲の上限値から外れる場合、時効性が過度に劣化し、鋼製 造段階で脱窒による負担が増加して製鋼作業性を悪化させる可能性がある。前記窒素の含有量が前記範囲の下限値から外れる場合、目標の剛性を確保し難い問題がある。
【0045】
タングステン(W):0.1ないし0.4%
タングステン(W)は、強度、高温特性、および引抜き加工性を向上させることに効果的であり、極低温でも安定した組織を形成して低温衝撃特性を改善するための元素である。前記タングステンの含有量は、0.1ないし0.4%、具体的には、0.12ないし0.39%範囲であってもよい。
【0046】
前記タングステンの含有量が前記範囲の上限値から外れる場合、強度上昇によって加工性が低下し、表面欠陥を誘発する問題がある。前記タングステンの含有量が前記範囲の下限値から外れる場合、前記高温特性および前記引抜き加工性に対する効果が発現し難い問題があって、フラック造成の安定した運営が難しい問題がある。
【0047】
クロム(Cr):1.0ないし2.0%
クロム(Cr)は、溶接継手部の強度に有利な元素であって、安定したサビ層を形成させる役割を果たして耐食性の向上に寄与する元素である。前記クロムの含有量は、1.0ないし2.0%、具体的には、1.10ないし1.85%範囲であってもよい。
【0048】
前記クロムの含有量が前記範囲の上限値から外れる場合、クロム系炭化物が形成されて脆性を起こす問題があって、加工が容易でない問題がある。前記クロムの含有量が前記範囲の下限値から外れる場合、前記クロムを添加することによって確保される溶接継手部の強度を向上させ、安定したサビ層を形成させ、耐食性の向上に寄与する効果が発現し難い問題がある。
【0049】
ジルコニウム(Zr):0.05ないし0.15%
ジルコニウム(Zr)は、析出物の形成を通じた溶接部の低温靭性の確保の面で有利であるだけでなく、溶接素材の作業性の改善にも大きく寄与する元素である。前記ジルコニウムの含有量は、0.05ないし0.15%、具体的には、0.07ないし0.14%範囲であってもよい。
【0050】
前記ジルコニウムの含有量が前記範囲の上限値から外れる場合、ジルコニウム析出物の量が増加して加工性が低下するだけでなく、作業温度上昇によって操業特性が低下する問題がある。前記ジルコニウムの含有量が前記範囲の下限値から外れる場合、前述した析出物の形成を通じた溶接部の低温靭性の確保および溶接素材の作業性の改善に対する効果が発現し難い問題がある。
【0051】
残部として鉄(Fe)を含む。また、不可避な不純物を含んでもよい。不可避な不純物は、冷間圧延鋼板の製造過程で不可避に混入される不純物を意味する。不可避な不純物については広く知られているので、具体的な説明は省略する。本発明の一実施形態において、前述した合金成分以外に元素の追加を排除するのではなく、本発明の技術思想を損なわない範囲内で多様に含まれてもよい。追加元素をさらに含む場合、残部のFeを代替して含む。
【0052】
一実施形態において、冷間圧延鋼板は、さらにCu、Ti、Nb、Niを含んでもよい。それぞれの成分含有量は、Cu0.03%以下、Ti0.002%以下、Nb0.002%以下、Ni0.02%以下であってもよい。
【0053】
一実施形態において、冷間圧延鋼板は、下記の式1のFCW,A値が40ないし150を満たす。
【0054】
<式1>
FCW,A=(2.5×[Mn]+1.8×[Cr]+24×[Al])×(18×[W])×(45×[Zr])/(34×[C])
(前記の式1で、[Mn]、[Cr]、[Al]、[W]、[Zr]、および[C]はそれぞれ、Mn、Cr、Al、W、Zr、およびCの含有量を重量%に示す)
【0055】
前記の式1のFCW,Aは、溶接作業性および引抜き加工性に及ぼすそれぞれの元素の相関関係に関するものであって、フラックスコアードワイヤー用溶接性に優れた冷間圧延鋼板は、前記の式1の指数のFCW,Aの値が40ないし150、具体的には、45ないし145範囲であってもよい。
【0056】
前記の式1のFCW,A値が前記範囲の上限値から外れる場合、硬質相変態組織の分率が増加して造管および引抜き時に溶接部材の破断が発生する問題がある。前記の式1のFCW,A値が前記範囲の下限値から外れる場合、常温組織が硬質相への変態量が少ないため、加工性の面では有利であるが、強度および低温靭性を確保するためにフラックス内の合金元素量が増加して溶接作業性が低下し、製造原価が向上する問題がある。
【0057】
一実施形態において、冷間圧延鋼板は、セメンタイトおよびベイナイトのうちの少なくとも一つ以上で構成された組織分率が、面積%として、1ないし7%、および残部のフェライトを含む。具体的には、本発明の溶接性に優れた冷間圧延鋼板は、面積%として、セメンタイトおよびベイナイトで構成された組織分率が1ないし7%であり、残部のフェライトを含む微細組織を有してもよい。前記セメンタイトおよび前記ベイナイトで構成された組織分率は、面積%として、1ないし7%、具体的には、1.1ないし6.8%範囲であってもよい。
【0058】
前記セメンタイトおよび前記ベイナイトで構成された組織分率が前記範囲の上限値から外れる場合、引抜き加工時に破断の原因となり、耐食性が劣化する問題がある。前記セメンタイトおよび前記ベイナイトで構成された組織分率が前記範囲の下限値から外れる場合、炭化物の析出が促進されないことによって、鋼中の固溶元素によって変形時効欠陥を発生させる要因として作用する問題がある。
【0059】
一実施形態において、溶接性に優れた冷間圧延鋼板は、伸び率が35%以上であってもよい。具体的には、前記伸び率が、37%範囲以上であってもよい。
【0060】
前記伸び率が前記範囲を満足することによって、フラックスコアードワイヤー溶接棒用冷間圧延鋼板に活用することができる。前記伸び率が前記範囲から外れることによって、溶接ワイヤーの引抜き加工時に断面減少率が低くなって造管加工性が劣化し、加工時に破れのような亀裂が発生する問題が発生する。
【0061】
一実施形態において、溶接性に優れた冷間圧延鋼板は、溶接部の偏析指数が、0.15%未満であってもよい。前記溶接部の偏析指数は、本発明の一実施例に係る溶接性に優れた冷間圧延鋼板を用いて製造されたフラックスコアードワイヤーで溶接した溶接部の偏析指数を意味する。
【0062】
前記溶接部の偏析指数は、溶接部の全体面積で添加元素による偏析部が占める面積の比で表される。前記溶接部の偏析指数は、0.15%以下、具体的には、0.001ないし0.13%範囲であってもよい。前記溶接部の偏析指数が前記範囲から外れる場合、冷間圧延鋼板の溶接性が低下する問題がある。
【0063】
一実施形態において、冷間圧延鋼板は、-40℃での低温衝撃エネルギーが50J以上であってもよい。前記冷間圧延鋼板は、低温環境で溶接部のような部材が低温ショックによって亀裂を誘発して、溶接構造物の安全性に問題を起こす可能性がある。前記冷間圧延鋼板は、低温で衝撃エネルギーが50J以上を満足することによって、低温環境でも安全性を維持することができる。
【0064】
一実施形態において、冷間圧延鋼板は、溶接部材の降伏強度が500MPa以上であってもよい。前記溶接部材の降伏強度は、冷間圧延鋼板を用いて製造されたフラックスコアードワイヤーで溶接した溶接部の降伏強度を意味する。前記溶接部の降伏強度は母材と関係なく適正範囲の降伏強度を維持する必要がある。前記溶接部材の降伏強度が500MPa以上を満足することによって、構造部材に適用時に溶接部の安定性の確保の面で高強度特性を確保することができる。
【0065】
本発明の他の実施形態に係る冷間圧延鋼板の製造方法は、重量%で、炭素(C):0.01ないし0.05%、マンガン(Mn):0.6ないし1.2%、シリコン(Si):0.05%以下(0%は、除く)、リン(P):0.0005ないし0.01%、硫黄(S):0.008%以下(0%は、除く)、アルミニウム(Al):0.0005ないし0.015%、窒素(N):0.0005ないし0.003%、タングステン(W):0.1ないし0.4%、クロム(Cr):1.0ないし2.0%、ジルコニウム(Zr):0.05ないし0.15%、残りFeおよび不可避な不純物を含む鋼スラブを加熱するステップと、加熱されたスラブを熱間圧延するステップと、熱間圧延された熱延鋼板を巻き取るステップと、巻き取られた前記熱延鋼板を冷間圧延するステップと、冷間圧延された冷間圧延鋼板を焼鈍するステップと、を含む。前記鋼スラブに対する詳細な説明は、前述した冷間圧延鋼板と矛盾しない範囲で同一であるので、重複する説明は省略する。
【0066】
まず、鋼スラブを加熱する。前記鋼スラブを加熱するステップは、1,180℃以上で行われてもよい。前記鋼スラブを加熱するステップは、具体的には、1,180ないし1,280℃の温度範囲で行われてもよい。具体的には、鋼スラブは1,190ないし1,270℃の温度範囲で行われてもよい。
【0067】
前記温度範囲の上限値から外れる場合、エネルギー費用が増加するだけでなく、表面スケールの量が増加して材料の損失につながる可能性がある。前記温度範囲の下限値から外れる場合、後続する熱間圧延時に荷重が急激に増加する問題がある。
【0068】
次いで、加熱されたスラブを熱間圧延するステップは、加熱されたスラブを熱間圧延して熱延鋼板を得ることができる。一実施形態において、前記仕上げ圧延温度は、820ないし880℃範囲で行われてもよい。前記仕上げ圧延温度は具体的には、830ないし875℃範囲で行われてもよい。
【0069】
前記仕上げ圧延温度は、前記範囲の上限値から外れる場合、表面スケールの剥離性が低下し、厚さ全般にわたって均一な熱間圧延が行われず、結晶粒微細化が不充分になって結晶粒の粗大化に起因した衝撃靭性の低下を発生させる可能性がある。前記仕上げ圧延温度は、前記範囲の下限値から外れる場合、低温領域で熱間圧延が仕上げされることによって、結晶粒の混粒化が急激に進行され、熱間圧延性および加工性の低下を招く可能性がある。
【0070】
次いで、熱間圧延された熱延鋼板を巻き取るステップは、熱間圧延ステップを経て得られた熱延鋼板を巻き取ることができる。一実施形態において、前記巻き取るステップは、580ないし700℃の巻取り温度で行われてもよい。具体的には、前記巻き取るステップは、590ないし690℃の温度範囲で行われてもよい。
【0071】
前記巻取り温度の上限値から外れる場合、最終製品の組織が粗大化することによって表面材質軟化および造管性を悪化させる問題を発生させる可能性がある。前記巻取り温度の下限値から外れる場合、冷却および維持するステップで、幅方向の温度不均一によって低温析出物の生成挙動の相違を誘発して材質偏差を誘発することによって、加工性が低下する問題がある。
【0072】
次いで、巻き取られた前記熱延鋼板を冷間圧延するステップは、前記熱延鋼板を目標の厚さに冷間圧延して冷間圧延鋼板を得ることができる。一実施形態において、巻き取られた前記熱延鋼板を冷間圧延するステップ以前に、前記熱延鋼板を酸洗することができる。
【0073】
一実施例で、冷間圧延するステップで、冷間圧下率は、50ないし90%の範囲であってもよい。具体的には、前記冷間圧下率は、55ないし85%の範囲であってもよい。
【0074】
前記冷間圧下率が前記範囲の上限値から外れる場合、材質が硬化して圧延機の負荷によって冷間圧延作業性を低下させ、引抜き加工時に亀裂の原因になる問題がある。前記冷間圧下率が前記範囲の下限値から外れる場合、再結晶駆動力が低くて局部的な組織成長が発生するため、均一な材質を確保し難い問題がある。また、最終製品の厚さを考慮するとき、前記熱延鋼板の厚さを下げて作業しなければならないため、熱間圧延作業性を顕著に低下させる問題がある。
【0075】
次いで、冷間圧延された冷間圧延鋼板を焼鈍するステップは、冷間圧延で導入した変形によって強度が高くなった状態で焼鈍を実施することによって目標の強度および加工性を確保することができる。前記冷間圧延された冷間圧延鋼板を焼鈍するステップは、700ないし850℃の温度範囲で行われてもよい。具体的には、前記冷間圧延された冷間圧延鋼板を焼鈍するステップは、710ないし840℃温度範囲であってもよい。
【0076】
前記焼鈍するステップは、前記温度範囲の上限値から外れる場合、ヒートバックル(Heat Buckle)による板破断発生の危険性が増加して焼鈍通板性を低下させる可能性がある。前記焼鈍するステップは、前記温度範囲の下限値から外れる場合、冷間圧延によって形成された変形が十分に除去されないことによって加工性が顕著に低下する問題がある。
【0077】
前記焼鈍するステップ以降、焼鈍された冷間圧延鋼板を調質圧延するステップをさらに含んでもよい。前記焼鈍された冷間圧延鋼板を調質圧延するステップは、圧下率3%以下に適用することができる。具体的には、前記焼鈍された冷間圧延鋼板を調質圧延するステップは、圧下率0.3ないし2.5%以下に適用することができる。
【0078】
前記焼鈍された冷間圧延鋼板を調質圧延するステップで、前記圧下率が前記範囲を満足することによって、素材の形状を制御して目標の表面粗度を得ることができる。前記焼鈍された冷間圧延鋼板を調質圧延するステップで、前記圧下率が過度に高い場合、材質は硬化するが加工性を低下させる問題がある。
【0079】
前記焼鈍するステップ以降、焼鈍された焼鈍板をフラックスコアードワイヤー製造に用いることができる。一実施形態において、フラックスコアードワイヤー用冷間圧延鋼板は、前述した冷間圧延鋼板または冷間圧延鋼板製造方法によって製造された冷間圧延鋼板で構成された外皮および前記外皮内に充填されたフラックスを含んでもよい。
【0080】
本発明の冷間圧延鋼板を含むフラックスコアードワイヤーは、前記フラックスコアードワイヤーの効果を発現することができ、前記効果は、前記フラックス種類と関係なく前述した冷間圧延鋼板または冷間圧延鋼板製造方法によって製造された冷間圧延鋼板によって発現する効果である。したがって、前記フラックスは、フラックスコアードワイヤー分野で一般に用いられるフラックスを用いることができるので、詳細な説明は省略する。
【実施例】
【0081】
<発明鋼1ないし5、比較鋼1ないし6>
下記の表1は、発明鋼1ないし5と比較鋼1ないし6に対する主要成分の組成とFCW,A値を示したものである。前記FCW,A値は、溶接作業性および引抜き加工性に及ぼすそれぞれの元素の相関関係を考慮して設計したものであって、具体的には、FCW,A値は、(2.5×[Mn]+1.8×[Cr]+24×[Al])×(18×[W])×(45×[Zr])/(34×[C])であり、[Mn]、[Cr]、[Al]、[W]、[Zr]、および[C]はそれぞれの含有量であって、重量%を示す。
【0082】
【0083】
前記の表1をみると、発明鋼1ないし発明鋼5は、本発明の鋼板組成を満たすことによって、FCW,A値が40ないし150の値を満足するのを確認することができる。
【0084】
<実施例1ないし4および比較例1ないし5>
前記の表1の発明鋼1ないし5と比較鋼1ないし6を、下記の表2のような工程条件で作業し、発明材1ないし9および比較例1ないし10を製造した。具体的には、前記の表1のスラブを1,230℃で加熱した後、下記の表2に開示された製造条件で、熱間圧延、巻取り、冷間圧延、および連続焼鈍工程を行った。このとき、焼鈍板に対して0.9%の調質圧下率を適用した。
【0085】
【0086】
前記の表2をみると、発明材1ないし9の場合、前記の表1の発明鋼の範囲に含まれる鋼と本発明の製造条件下で行われたことを示す。これと比較して、比較材1ないし4は、前記の表1の発明鋼の範囲に含まれる鋼を用いたが、製造条件において、本発明の製造条件範囲から外れる場合を示す。また、比較材5ないし比較材10は、前記の表1の比較鋼1ないし比較鋼6の鋼種を、本発明の製造条件下で行われたことを示す。
【0087】
<冷間圧延鋼板の特性>
下記の表3は、前記の表2の製造条件を通じて製造された冷間圧延鋼板に対して微細組織の種類と分率、伸び率、通板性、および引抜き加工性を測定した結果値を示す。通板性は、冷間および熱間圧延時に圧延負荷がなく、連続焼鈍時にヒートバックルのような欠陥が発生しない場合、良好(O)と表し、圧延負荷が発生するか連続焼鈍時に板破断のような欠陥が発生した場合、不良(X)と表した。
【0088】
引抜き加工性は、断面減少率61%で、フラックスコアードワイヤーを引抜き加工する過程で破れのような加工欠陥が発生する場合、不良(X)と表し、加工欠陥が発生しない場合、良好(O)と表した。また、製造された冷間圧延鋼板を活用して、幅14mmのストリップに製造した後、前記ストリップをU字形に加工してフラックス成分を充填させ、以降直径が3.1mmのO字形の溶接材料を作った。次いで、溶接材料を引抜きして1.2mmの直径を有するフラックスコアードワイヤーを製造し、これを用いて低温衝撃および引張実験を実施した結果を、下記の表3に表した。
【0089】
また、フラックスコアードワイヤーで溶接した溶接部材に対して走査電子顕微鏡を用いて溶接部の偏析指数を測定した後、前記測定結果を、下記の表3に表した。このとき、前記溶接部材は、直径1.2mmのワイヤーに引抜きして、パイロット(Pilot)溶接機を用いて、電圧29ボルト、電流150ないし180A、溶接速度は分当り40cmの条件で作業した溶接部材を対象に実験を実施した結果である。
【0090】
前記フラックスコアードワイヤーで溶接した溶接部材に対して溶接部の偏析サイズを測定した後、前記測定結果値も、下記の表3に表した。このとき、前記溶接部材は、直径1.2mmのワイヤーに引抜きして、パイロット(Pilot)溶接機を用いて、電圧29ボルト、電流150ないし180A、および溶接速度は分当り40cmの条件で作業した溶接部材を対象に品質評価した結果である。
【表3】
【0091】
前記の表2および表3をみると、合金組成、微細組織特性、および製造条件を全て満足する発明材1ないし9は通板性が良好であるだけでなく、目標のフラックスコアードワイヤー溶接棒用冷間圧延鋼板の材質基準である伸び率35%以上を満足する。また、溶接部材で製造されたワイヤーの偏析指数も0.15%未満で、2次加工時に溶接部の破れや亀裂が発生しないため、優れた加工性を確保することができる。また、-40℃での衝撃エネルギーが50J以上、溶接部材の降伏強度が500MPa以上の優れた強度および低温靭性を確保できるのを確認することができる。
【0092】
これと対比して、比較材1ないし比較材4は、本発明で提示する合金組成の範囲は満たしているが、微細組織特性および製造条件を満たしていない場合であって、比較材1ないし3の場合、圧延通板性が低下し、比較例1ないし4は焼鈍通板性が低下するのを確認することができる。また、伸び率が目標の値より低いか、溶接部材の降伏強度が500MPa未満であり、-40℃での衝撃エネルギー値が-50J以下で、かつ溶接部材の引抜き加工性が不良であるのを確認することができ、全体として目標の特性を確保することができない。
【0093】
また、比較材5ないし比較材10は、本発明で提示した製造条件は満たしているが、合金組成を満たしていない場合であって、本発明の目標の伸び率、溶接部の偏析指数、衝撃エネルギー、および溶接部の降伏強度のような特性が、前記発明材1ないし9に達しないのを確認することができ、大半の場合、引抜き加工時に破れまたは亀裂が発生するのを確認することができる。
【0094】
本発明は、前記実施形態および/または実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態に製造することができ、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的な思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態に実施できることを理解するはずである。したがって、以上で記述した実施形態および/または実施例はあらゆる面で例示的なものであって限定的ではないものと理解しなければならない。
【国際調査報告】