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特表2025-501528重金属を捕捉するための捕捉塊の再生方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-22
(54)【発明の名称】重金属を捕捉するための捕捉塊の再生方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/34 20060101AFI20250115BHJP
   C10G 29/10 20060101ALI20250115BHJP
   C10L 3/10 20060101ALI20250115BHJP
   B01J 20/02 20060101ALI20250115BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20250115BHJP
   B01D 15/00 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
B01J20/34 F
C10G29/10
C10L3/10
B01J20/34 G
B01J20/02 A
B01J20/02 B
B01D53/14 100
B01D15/00 J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536370
(86)(22)【出願日】2022-12-12
(85)【翻訳文提出日】2024-08-16
(86)【国際出願番号】 EP2022085453
(87)【国際公開番号】W WO2023117552
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】2114013
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100228175
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 充紀
(72)【発明者】
【氏名】ユゴン アントワーヌ
(72)【発明者】
【氏名】バルトレ カリン
【テーマコード(参考)】
4D017
4D020
4G066
4H129
【Fターム(参考)】
4D017AA03
4D017AA04
4D017AA05
4D017BA13
4D017CA06
4D017CB01
4D017CB10
4D017DA01
4D017EA03
4D020AA10
4D020BA03
4D020BA10
4D020BB01
4D020BC04
4D020CA05
4G066AA46B
4G066AA46D
4G066AB05D
4G066AB15D
4G066AB16D
4G066AE19C
4G066BA01
4G066BA09
4G066BA25
4G066BA26
4G066CA46
4G066CA47
4G066DA01
4G066DA02
4G066DA05
4G066DA09
4G066DA10
4G066FA27
4G066FA37
4G066GA06
4G066GA11
4G066GA31
4G066GA32
4G066GA33
4H129AA02
4H129CA01
4H129CA02
4H129DA07
4H129KC03Y
4H129KD15X
4H129KD16X
4H129KD19X
4H129KD24X
4H129KD28X
4H129KD28Y
4H129NA05
(57)【要約】
本発明は、重金属を捕捉するための捕捉塊を再生する方法であって、この捕捉塊には重金属が充填されており、この捕捉塊は硫化流と接触配置される、方法;重金属含有率が、再生済み捕捉塊であって、再生済み捕捉塊の全重量に相対して0.1重量%~45重量%である、再生済み捕捉塊;および、ガス状または液状の供給原料から重金属を捕捉する方法であって、供給原料を再生済み捕捉塊と接触配置させることを含む、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重金属を含んだ重金属用捕捉塊の活性回復のための方法であって、捕捉塊を硫化流と接触させる、方法。
【請求項2】
重金属を、水銀、ヒ素および鉛からなる群から選ぶ、請求項1に記載の活性回復方法。
【請求項3】
重金属は、水銀である、請求項1または2に記載の活性回復方法。
【請求項4】
硫化流を、硫化水素、ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィドおよびメタンチオールからなる群から選ぶ、請求項1~3のいずれか1つに記載の活性回復方法。
【請求項5】
硫化流を、1h-1~50h-1の液毎時空間速度LHSVまたは10h-1~5000h-1のガス毎時空間速度GHSVで送る、請求項1~4のいずれか1つに記載の活性回復方法。
【請求項6】
硫化流を、0.1MPa~15MPaの圧力および/または0℃~600℃の温度で送る、請求項1~5のいずれか1つに記載の活性回復方法。
【請求項7】
重金属を含んだ捕捉塊は、バルク固体または耐火性酸化物をベースとする多孔質担体を含んでいる担持型固体である、請求項1~6のいずれか1つに記載の活性回復方法。
【請求項8】
重金属を含んだ捕捉塊は、以下の特徴の少なくとも1つを示す、請求項1~7のいずれか1つに記載の活性回復方法:
- 細孔容積は、少なくとも0.1mL/gである、
- 比表面積は、少なくとも10m/gである、
- 形態は、ビーズ状、または円筒、多葉、車輪もしくは中空円筒のタイプの押出成形物状である、
- 少なくとも1種の金属Mが存在し、当該金属Mは、少なくとも部分的にMスルフィドの形態で存在し、前記金属Mは、銅、モリブデン、タングステン、鉄、ニッケルおよびコバルトからなる群から選ばれる。
【請求項9】
重金属を含んだ捕捉塊の重金属含有率は、重金属を含んだ捕捉塊の全重量に対して0.1重量%~50重量%である、請求項1~8のいずれか1つに記載の活性回復方法。
【請求項10】
重金属含有率が、活性回復済み捕捉塊の全重量に対して、0.1重量%~45重量%である、活性回復済み捕捉塊。
【請求項11】
バルク固体または耐火性酸化物をベースとする多孔質担体を含んでいる担持型固体の形態で提供される、請求項10に記載の活性回復済み捕捉塊。
【請求項12】
以下の特徴の少なくとも1つを示す、請求項10または11に記載の活性回復済み捕捉塊:
- 細孔容積は、少なくとも0.1mL/gである、
- 比表面積は、少なくとも10m/gである、
- 形態は、ビーズ状、または円筒、多葉、車輪もしくは中空円筒のタイプの押出成形物状である、
- 少なくとも1種の金属Mが存在し、当該金属Mは、少なくとも部分的にMスルフィドの形態で存在し、前記金属Mは、銅、モリブデン、タングステン、鉄、ニッケルおよびコバルトからなる群から選ばれる。
【請求項13】
重金属は、水銀、ヒ素および鉛からなる群から選ばれる、請求項10~12のいずれか1つに記載の活性回復済み捕捉塊。
【請求項14】
重金属は、水銀である、請求項10~13のいずれか1つに記載の活性回復済み捕捉塊。
【請求項15】
ガス状または液状の供給原料中の重金属の捕捉のための方法であって、供給原料を、請求項1~9のいずれか1つに記載の方法によって入手可能な活性回復済み捕捉塊および請求項10~14のいずれか1つに記載の活性回復済み捕捉塊から選ばれる捕捉塊と接触させることを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重金属(5g/cmを超える密度を示す金属)を含有している液状またはガス状の流出物、特に、石油起源の流出物およびそれらの誘導体、例えば、合成ガスのような産業起源のガス、天然ガスおよび液状炭化水素の処理の分野にある。より正確には、本発明は、ガス状または液状の流出物中に存在する重金属、特に水銀の捕捉に関する。
【背景技術】
【0002】
ある一定の天然の供給原料、例えば、天然ガス凝縮物、原油またはその蒸留から生じた留分および天然ガスは、一定数の金属を含有する可能性があることが知られている。特に、水銀は、世界の多くの地域、例えば、ニジェール湾、南アメリカ、北アフリカまたはアジア太平洋域で生じるガス状または液状の炭化水素に見られる金属性の汚染物質である。
【0003】
炭化水素からの水銀の除去は、いくつかの理由のために産業レベルにおいて望ましい。一方で、水銀は有毒であるので、炭化水素中の水銀の存在により、これらの生成物と接触して作業している作業者にリスクが広げられる。元素の形態にある水銀は、揮発性であり、吸入によって神経毒性の深刻なリスクを呈する。有機物の形態において、水銀は、皮膚接触によって神経毒性の同様のリスクを呈する。
【0004】
他方で、炭化水素中の水銀の存在により、これらの炭化水素をアップグレードするために用いられる従来の処理操作に悪影響が及ぼされる。慣習的に、炭化水素は、触媒反応、例えば、液状炭化水素の水蒸気分解または接触分解によって生じたオレフィンの選択的水素化に供される。実際のところ、用いられる触媒は、一般的に、貴金属、例えば、白金およびパラジウムを含んでおり、水銀によって失活し得る。これは、水銀が、貴金属のナノ粒子とのアマルガムによって触媒の失活を誘導するからである。触媒の活性相の露出表面積の減少、またはそれらの電子状態の変化により、それらの触媒活性の非常に大きな損失がもたらされる。
【0005】
最後に、極低温蒸留に送られるガス中の水銀の存在は、産業事故のリスクに至り得る。極低温交換器は、通常、アルミニウム元素から作られる。ある一定の条件下に、水銀は、アルミニウムとアマルガムにされ、材料の脆化を引き起こす可能性があり、最も深刻なケースにおいて、アルミニウム部分の破裂に至る。
【0006】
とりわけ、これらの理由のために、ガス状または液状の炭化水素流出物から水銀を除去するか、ガス状または液状の炭化水素流出物中の水銀の濃度を少なくとも低下させることが望ましい。
【0007】
産業的に、ガス状または液状の流出物からの水銀の除去は、捕捉塊としても知られている吸着性材料を充填されたガード床中の処理対象の流出物の流通によって行われる。除去対象の不純物、この場合、水銀は、不可逆的に保持され、これは、好ましくは、化学吸着によって、捕捉塊の表面内または表面において行われる。捕捉塊床から排出された流出物は、次いで、精製される。
【0008】
水銀の捕捉は、水銀を、捕捉塊内で、元素硫黄をベースとする活性相と反応させることによって行われることができる。これは、元素硫黄S(固)が、不可逆的に元素水銀Hg(気/液)と反応して、硫化水銀(II)HgS(固)を形成するためである。用語「Hg(気/液)」は、水銀が、ガス状(気)または液状(液)の流動相に溶解していることを意味すると理解される。対照的に、「(固)」は、捕捉塊の活性相および反応の生成物によって形成された固体相を示す。
【0009】
元素硫黄と元素水銀との間の反応は、自発的であり、広い温度範囲、典型的には0℃から150℃にわたって負の自由エネルギーΔG(kJ/mol)を示す。辰砂または黒辰砂と呼ばれる形成された生成物(HgS)は、非常に大きい温度範囲にわたって化学的に不活性で固体である鉱物相である。水銀は、捕捉塊にこのように捕捉され、処理対象の流出物は、精製される。
【0010】
慣習的に、元素硫黄をベースとする捕捉塊は、活性炭タイプの担体上の元素硫黄の含侵の方法によって得られる。
【0011】
しかしながら、活性炭上に堆積された元素硫黄をベースとする捕捉塊は、処理対象の流出物が液状である場合または処理対象の流出物がガス状でありかつ湿っている場合に、安定性の課題を有していることが非常に多い。活性相が水または別の液体によって同伴され得るためである。この現象により、活性相と活性炭の表面との間の弱いエネルギー的相互作用、活性相の酸化またはこれらの媒体中の硫黄の溶解性と関連して、捕捉塊の寿命における大幅な短縮が引き起こされる。
【0012】
これらの欠点を克服するために、金属スルフィドをベースとする捕捉塊を用いることが可能である。硫化銅が用いられるのは、特に、その安定性とその低製造コストのためである。特許文献1には、元素水銀(Hg(気/液))が、不可逆的に硫化銅(II)、CuS(固)を還元して、硫化銅(I)(CuS(固))、および硫化水銀(II)(HgS(固))を形成するという事実が記載されている。それは、気体/固体または液体/固体の反応であり、運動学的観点からなおいっそう有利である。活性相(このケースにおいてはCuS)の比表面積が大きいからである。
【0013】
金属スルフィドは、バルク型または担持型で使用されることができる。この第2の選択肢において、担体の役割は、活性相を分散させることにある。バルク固体として知られている固体は、例えば、特許文献2に記載されている。特許、例えば、特許文献3~5には、本質的にアルミナをベースとする担体上に堆積されたCuSタイプの捕捉塊の使用が記載されている。
【0014】
捕捉塊は、一般的に、非再生の方法において使用される。これは、一旦捕捉されると、水銀は、HgSに変換され、これはそれ自体、固体の表面のところに堆積されるからである。実際のところ、HgSは、非常に熱的に安定な固体であり、酸素下、737℃超でのみ分解する。実際に、これらの塊を再生するために、737℃を超える温度でそれらを処理することが必要であり、エネルギー的に非常に高価であるだろう。さらに、これは、特定の機器を必要とし、ほとんどのケースにおいて、重金属捕捉塊が使用されている工業現場で行われることはないであろう。
【0015】
さらに、Hgと反応するのに有効な銅相は、主にCuS相である。実際のところ、高温で熱力学的に安定な相は、CuS相である。278℃~354℃で行われる研究は、HS/N下のCuOの長期にわたる硫化は、CuSをもたらし、その後に、Cuをもたらすことを特に示す(非特許文献1)。
【0016】
それ故に、従来技術を考慮すると、重金属捕捉塊の活性回復は、ほとんど研究されていない。さらに、より一般的には、活性相に化学吸着されるか、または活性相と反応する元素を捕捉するための使用済み塊体が再生されないのは、化学吸着または化学反応によって捕捉された元素、例えば、水銀は、不可逆的に捕捉されるためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第7645306号明細書
【特許文献2】欧州特許第0480603号明細書
【特許文献3】仏国特許発明第2980722号明細書
【特許文献4】仏国特許発明第2764214号明細書
【特許文献5】米国特許第7560413号明細書
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Yasyerli, S.、Dogu, G.、Ar, I.およびDogu, T.著、Industrial & Engineering Chemistry Research、2001年、40(23)、p。5206-5214
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0019】
(発明の目的)
上記のコンテクストにおいて、本説明の第1の目的は、従来技術の課題を克服すること、および重金属の捕捉のための塊体の活性回復(rejuvenation)のための方法を提供することにある。有利には、活性回復方法により、重金属を捕捉する能力を復活させて、重金属を含んだ捕捉塊にすることが可能となる。それ故に、使用済み捕捉塊は、交換されるために取り外される代わりに再利用されることができる。
【0020】
具体的には、本出願人会社は、驚くべき方法で、金属を含んだ捕捉塊の硫化による活性回復により、前記塊体が、水銀の放出なしで、活性相、例えばそのCuSの形態にある銅の全部または一部の復活により重金属を捕捉する能力を取り戻すことが可能となったことを突き止めた。
【0021】
有利には、本発明による硫化による活性回復の終結の際に、重金属のための捕捉塊は、処理の前の捕捉塊と比較して、重金属を捕捉するための改善された能力を有している。本発明は、ガス状または液状の炭化水素供給原料からの重金属、例えば水銀の除去においてこれらの捕捉塊を使用するための方法にも関する。
【0022】
有利には、本発明による硫化による活性回復により、捕捉塊の寿命を延長すること、その結果として、捕捉塊の装填および取り外しの操作のスペースをあけることがこのように可能となり、これにより、操作を単純にすること、また操作コストを下げることが可能になる。
【0023】
第1の態様によると、上述の目的、また他の利点は、重金属を含んだ重金属用捕捉塊の活性回復のための方法であって、捕捉塊が、硫化流と接触させられる、方法によって得られる。
【0024】
1つまたは複数の実施形態によると、重金属は、水銀、ヒ素および鉛からなる群から選ばれる。
【0025】
1つまたは複数の実施形態によると、重金属は、水銀である。
【0026】
1つまたは複数の実施形態によると、硫化流は、硫化水素、ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド、メタンチオール、または処理条件下に分解して、硫化水素を与えることを可能にするか、金属スルフィド、例えば、銅または鉄のスルフィドの存在中で分解して、硫化分子を与えることを可能にする任意の他の硫黄含有分子からなる群から選ばれる。
【0027】
1つまたは複数の実施形態によると、硫化流が送られる際のガス毎時空間速度(gas hourly space velocity:GHSV)は、10h-1~5000h-1である。
【0028】
1つまたは複数の実施形態によると、硫化流が送られる際の液毎時空間速度(liquid hourly space velocity:LHSV)は、0.1h-1~50h-1である。
【0029】
1つまたは複数の実施形態によると、硫化流は、0.1MPa~15MPaの圧力および/または0℃~600℃の温度で送られる。
【0030】
1つまたは複数の実施形態によると、重金属を含んだ捕捉塊は、バルク固体または耐火性酸化物をベースとする多孔質担体を含んでいる担持型固体である。
【0031】
1つまたは複数の実施形態によると、重金属を含んだ捕捉塊は、以下の特徴の少なくとも1つを示す:
- 細孔容積は、少なくとも0.1mL/gである、
- 比表面積は、少なくとも10m/gである、
- 形態は、ビーズ状、または円筒、多葉、車輪もしくは中空円筒のタイプの押出成形物状である、
- 少なくとも1種の金属Mが存在し、当該金属Mは、少なくとも部分的にMスルフィドの形態で存在し、前記金属Mは、銅、モリブデン、タングステン、鉄、ニッケルおよびコバルトからなる群から選ばれる。
【0032】
1つまたは複数の実施形態によると、重金属を含んだ捕捉塊の重金属含有率は、重金属を含んだ捕捉塊の全重量に対して0.1重量%~50重量%である。
【0033】
第2の態様によると、上述の目的、およびまた他の利点は、第1の態様による方法によって入手可能な捕捉塊、すなわち、重金属含有率が活性回復済み捕捉塊の全重量に対して0.1重量%~45重量%である、活性回復済み捕捉塊によって得られる。
【0034】
1つまたは複数の実施形態によると、活性回復済み捕捉塊は、バルク固体または耐火性酸化物をベースとする多孔質担体を含んでいる担持型固体の形態で提供される。
【0035】
1つまたは複数の実施形態によると、活性回復済み捕捉塊は、以下の特徴の少なくとも1つを示す:
- 細孔容積は、少なくとも0.1mL/gである、
- 比表面積は、少なくとも10m/gである、
- 形態は、ビーズ状、または円筒、多葉、車輪もしくは中空円筒のタイプの押出成形物状にある、
- 少なくとも1種の金属Mが存在し、当該金属Mは、少なくとも部分的に、Mスルフィドの形態で存在し、前記金属Mは。銅、モリブデン、タングステン、鉄、ニッケルおよびコバルトからなる群から選ばれる。
【0036】
1つまたは複数の実施形態によると、重金属は、水銀、ヒ素および鉛からなる群から選ばれる。
【0037】
1つまたは複数の実施形態によると、重金属は、水銀である。
【0038】
第3の態様によると、上述の目的、およびまた他の利点は、ガス状または液状の供給原料中の重金属を捕捉するための方法であって、供給原料を、第1の態様による方法によって入手可能な活性回復済み捕捉塊または第2の態様による活性回復済み捕捉塊と接触させる工程を含む、方法によって得られる。
【0039】
上述の態様による実施形態、およびまた他の特徴および利点は、以下の本説明を読むと明らかになるであろうが、これは単なる例示として与えられるものであり、限定するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0040】
(発明の詳細な説明)
本発明の実施形態が、ここから詳細に記載されることになる。以下の詳細な説明において、多くの具体的な詳細は、本発明のより深い理解を提供するために提示される。しかしながら、本発明が、これらの具体的な詳細なしで実施されることができることは、当業者に明らかであろう。他のケースにおいて、周知の特徴は、本説明を不必要に複雑にすることを回避するために、詳細には説明されていない。
【0041】
(定義)
捕捉塊の組織上および構造上の特性は、当業者に知られている特性評価法によって決定される。
【0042】
以下の本発明の説明において、比表面積は、雑誌“The Journal of the American Chemical Society”, 60, 309 (1938)に記載されているBrunauer-Emmett-Teller法から作成された規格ASTM D 3663-78にしたがって窒素吸着によって決定されたBET比表面積を意味すると理解される。
【0043】
細孔容積、粒体密度、細孔の平均サイズ(または平均径)および細孔分布は、水銀ポロシメトリによって決定される(参照;Rouquerol F., Rouquerol J. and Sing K., “Adsorption by Powders and Porous Solids: Principles, Methodology and Applications”, Academic Press, 1999)。より具体的には、細孔容積は、規格ASTM D4284-92にしたがって濡れ角140°による水銀ポロシメトリによって、例えばMicromeritics(登録商標)ブランドのAutopore III(登録商標)モデル装置によって測定される。
【0044】
水銀ポロシメトリ技術において、ケルビンの法則が適用され、この法則は、圧力と、前記圧力で水銀が浸透する最小の細孔の径と、濡れ角と、表面張力との間の関係を、以下の式にしたがって与え、式中、φは、細孔の径(nm)を表し、tは、表面張力(48.5Pa)を表し、θは、接触角(θ=140度)を表し、Pは、圧力(MPa)を表す:φ=(4tcosθ)・10/P。
【0045】
本特許出願において、用語「含むこと(to comprise)」は、「含むこと(to include)」および「含有すること(to contain)」と同義であり(同じものを意味し)、包括的またはオープンであり、記載されていない他の要素を排除しない。用語「含むこと(to comprise)」は、排他的なクローズドな用語「からなること(to consist of)」を含むと理解される。用語「をベースとする(based on)」は、「の最低80重量%を含む(comprises at least 80% by weight of)」と同義である。既定では、与えられた百分率は、重量%である。さらに、本説明において、用語「本質的に」または「実質的に」は、±5%、好ましくは±1%、大いに好ましくは±0.5%、例えば±0.1%の近似値に相当する。例えば、化合物Aを本質的に含んでいるか、または、それからなる流出物は、最低95重量%の化合物Aを含んでいる流出物に相当する。
【0046】
(実施形態)
第1の態様によると、本発明は、重金属を捕捉するための塊体の活性回復のための方法であって、使用済み捕捉塊、すなわち、取り外されて交換されることが意図される重金属を含んだ塊体に重金属を捕捉する能力を復活させることを可能にする、方法に関する。有利には、本方法は、硫化による重金属を含んだ捕捉塊の活性回復の段階を含む。本発明による処理の終結の際に、活性回復済み捕捉塊は、処理前の使用済み捕捉塊と比較して、重金属を捕捉するための改善された能力を有している。本発明による処理から得られた活性回復済み捕捉塊は、最初のものと再び同じになることはない。それらの使用の間に捕捉された重金属の量が硫化によって除去されないためである。さらに、この処理から得られた活性回復済み捕捉塊の捕捉能力は、フレッシュな塊体のものより依然として実質的に劣っている。これは、この方法が、活性回復の方法であり、再生の方法ではない理由である。
【0047】
本発明によると、重金属を含んだ捕捉塊(「活性回復可能な」または「使用済み」捕捉塊)は、硫化流による硫化の段階a)に供される。
【0048】
本発明による段階a)において、硫化流への供給硫黄は、当業者に知られているあらゆる前駆体であり、例えば、硫化水素または有機硫黄化合物、例えば、ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド、メタンチオール、または処理条件下に分解して、硫化水素を与えることができるか、遷移金属スルフィドの存在中で分解して、別の硫化分子を与えることができる任意の他の硫黄含有分子がある。1つまたは複数の実施形態によると、硫化流中の硫黄のモル%での含有率は、0.01%~100%、好ましくは0.05%~50%、よりなおさら好ましくは0.1%~20%である。
【0049】
硫化流は、ガス状または液状であることができる。好ましくは、硫化流は、ガス状である。
【0050】
1つまたは複数の実施形態によると、硫化流は、液状またはガス状の希釈剤、例えば、窒素を含む。
【0051】
1つまたは複数の実施形態によると、硫化流と活性回復可能な捕捉塊との間の接触温度は、0℃~600℃、好ましくは20℃~400℃、よりなおさら好ましくは30℃~350℃である。有利には、250℃未満で、CuSの形成が促進される。
【0052】
1つまたは複数の実施形態によると、硫化段階の圧力は、0.1MPa~15MPa、好ましくは1~12.5MPa、好ましくは1MPa~10MPaである。
【0053】
1つまたは複数の実施形態によると、活性回復可能な捕捉塊の硫化流との接触が行われる際のガス毎時空間速度(GHSV)は、10h-1~5000h-1、好ましくは50h-1~2000h-1、優先的には100h-1~1100h-1である。用語「GHSV」は、捕捉塊の容積に対する硫化流のガス毎時空間速度、すなわち、硫化流の容積を反応器容積で除算した時間当たりのものを意味すると理解される。反応器容積は、捕捉塊の容積および粒体の間の「空の」容積を含む。
【0054】
1つまたは複数の実施形態によると、活性回復可能な捕捉塊の液状硫化流との接触が行われる際の液毎時空間速度(LHSV)は、0.1h-1~50h-1、好ましくは0.5h-1~20h-1、優先的には1h-1~11h-1である。用語「LHSV」は、捕捉塊の容積に対する硫化流の液毎時空間速度、すなわち、硫化流の容積を反応器容積で除算した時間当たりのものを意味すると理解される。反応器容積は、捕捉塊の容積および粒体間の「空の」容積を含む。
【0055】
1つまたは複数の実施形態によると、活性回復可能な捕捉塊の全重量に対して0.1重量%~50重量%の量の硫黄を含んでいる硫化流は、活性回復可能な捕捉塊を通過する。
【0056】
有利には、本発明による活性回復方法は、形成されたHgSに対して影響がない。本発明による調製方法の段階a)の出口での硫化流中の水銀含有率は、0である。
【0057】
本発明による方法は、現場内(in situ)または現場外(ex situ)で実施されることができる。好ましくは、本発明による方法は、現場内で行われる。
【0058】
本発明による方法は、当業者に知られている任意の方法にしたがって行われることができる。好ましくは、硫化は、活性回復可能な捕捉塊を固定床の形態で含有している反応器内で行われる。
【0059】
1つまたは複数の実施形態によると、重金属のための捕捉塊は、少なくとも2基の反応器(例えば固定床)において使用され、直列にまたは並行に配置されている。有利には、活性回復方法は、重金属の捕捉が停止されることなく行われることができる。これは、重金属のための捕捉塊が使い果たされ、活性回復を必要とする場合に、それが使用されている反応器が、重金属を含有している精製対象の供給原料から切り離され、硫化流と接続されることができるためである。同時に、精製対象の供給原料は、重金属を捕捉する能力を保持している重金属のための捕捉塊(例えばフレッシュなまたは活性回復済み捕捉塊)を含有している1つまたは複数の他の反応器と接続される。
【0060】
本出願人会社は、この活性回復操作が、有利には、いくつかの回数行われ得るだろうことも実証した。
【0061】
本発明による活性回復可能な捕捉塊は、当業者に知られている重金属のための(すなわち、重金属、例えば水銀を含有している)あらゆるタイプの使用済み捕捉塊である。
【0062】
1つまたは複数の実施形態によると、活性回復可能な捕捉塊の重金属(例えば水銀)の原子含有率は、活性回復可能な捕捉塊の全重量に対して、0.1重量%~50重量%、好ましくは0.5重量%~30重量%、よりなおさら好ましくは1.0重量%~20重量%、例えば5重量%~15重量%である。
【0063】
本発明によると、重金属の密度は、5g/cmを超える。1つまたは複数の実施形態によると、重金属は、水銀、ヒ素および鉛からなる群から選ばれる。1つまたは複数の実施形態によると、重金属は、水銀である。
【0064】
1つまたは複数の実施形態によると、活性回復可能な捕捉塊は、以下のものを含有する捕捉塊である:
- 少なくとも1種の金属M;少なくとも部分的に、スルフィドの形態(スルフィド、ジスルフィド)で存在する;前記金属Mは、銅、モリブデン、タングステン、鉄、ニッケルおよびコバルト、好ましくは、銅、鉄、ニッケルおよびコバルト、大いに好ましくは銅および鉄からなる群から選ばれる、
- スルフィドの形態にある少なくとも1種の重金属。
【0065】
1つまたは複数の実施形態によると、活性回復可能な捕捉塊は、活性回復可能な捕捉塊の全重量に対して、最低0.1重量%、好ましくは最低1重量%、大いに好ましくは最低10重量%の金属M(元素の形態にある)を含む。1つまたは複数の実施形態によると、活性回復可能な捕捉塊は、活性回復可能な捕捉塊の全重量に対して、0.1重量%~60重量%、好ましくは1重量%~40重量%、大いに好ましくは10重量%~20重量%の金属M(元素の形態にある)を含む。
【0066】
有利には、硫化処理により、重金属スルフィド(HgS)と同時に形成された金属スルフィド(CuS)を変換(例えば酸化)して、重金属に対して反応性である実体を与えることが可能になる。例えば、この処理により、CuSを再変換して、CuSを与えること、および/またはFeSを再変換して、Feおよび/またはFeSを与えることが可能になる。
【0067】
1つまたは複数の実施形態によると、活性回復可能な捕捉塊は、水銀などの重金属を含有している使用済みCuSベースの捕捉塊である。
【0068】
1つまたは複数の実施形態によると、活性回復可能な捕捉塊は、硫化銅(I)(CuS(固))を含む。1つまたは複数の実施形態によると、活性回復可能な捕捉塊は、硫化銅(I)(CuS(固))、および硫化水銀(II)(HgS(固))を含む。
【0069】
1つまたは複数の実施形態によると、活性回復可能な捕捉塊は、重金属、例えば、水銀を含有しているFeおよび/またはFeSをベースとする使用済み捕捉塊である。1つまたは複数の実施形態によると、活性回復可能な捕捉塊は、重金属、例えば、水銀を含有している使用済みFeSベースの捕捉塊である。
【0070】
1つまたは複数の実施形態によると、活性回復可能な捕捉塊は、硫化鉄(III)(Fe(固))、および/または二硫化鉄(IV)(FeS(固))を含む。1つまたは複数の実施形態によると、活性回復可能な捕捉塊は、硫化鉄(II)(FeS(固))、および二硫化鉄(IV)(FeS(固))、および/または硫化鉄(III)(Fe(固))を含む。
【0071】
本発明による活性回復可能な捕捉塊および前記活性回復可能な捕捉塊の調製のための出発捕捉塊は、「バルク」固体、担持型固体またはそれらの組み合わせであることができる。「バルク」固体は、1種または複数種の前駆体(例えば銅または鉄の前駆体)を1種または複数種のバインダと成形することによって調製された固体を意味すると理解される。担持型固体は、多孔質担体上の活性相(例えば銅または他の活性金属をベースとする)の堆積によって調製された固体を意味すると理解される。この多孔質担体は、耐火性酸化物をベースとするあらゆるタイプの多孔質担体であることができ、例えば、シリカ、アルミナ、シリカ-アルミナ、活性炭またはそれらの組み合わせがある。
【0072】
1つまたは複数の実施形態によると、本発明による活性回復可能な捕捉塊、およびまた前記活性回復可能な捕捉塊の調製のための出発捕捉塊は、ビーズ状、または円筒、多葉、車輪もしくは中空円筒のタイプもしくは当業者によって用いられる任意の他の幾何学的形状の押出成形物状の形態で提供される。
【0073】
1つまたは複数の実施形態によると、本発明による活性回復可能な捕捉塊、およびまた前記活性回復可能な捕捉塊の調製のための出発捕捉塊は、少なくとも1種の金属Mを含み、当該金属Mは、少なくとも部分的にMスルフィドの形態で存在し、前記金属Mは、銅、モリブデン、タングステン、鉄、ニッケルおよびコバルト、好ましくは銅、鉄、ニッケルおよびコバルトからなる群から選ばれる。大いに好ましくは、金属Mは、銅である。
【0074】
1つまたは複数の実施形態によると、本発明による活性回復可能な捕捉塊、およびまた前記活性回復可能な捕捉塊の調製のための出発捕捉塊の細孔容積は、少なくとも0.1mL/gである。
【0075】
1つまたは複数の実施形態によると、本発明による活性回復可能な捕捉塊、およびまた前記活性回復可能な捕捉塊の調製のための出発捕捉塊の比表面積は、少なくとも10m/gである。
【0076】
出発捕捉塊は、当業者に知られている任意の手段によって調製されることができる。例えば、1つまたは複数の実施形態によると、出発捕捉塊は、以下の段階により調製される:
- 担体に、金属M前駆体(例えば、溶液中)を、(例えば、乾燥条件下に)含浸させる、
- 先行段階で得られた生成物を(例えば30分~12時間にわたって、例えば周囲温度で)、静置熟成させる、
- 先行段階で得られた材料を(例えば30分~12時間にわたって、例えば60~150℃の温度で)、乾燥させる、
- 先行段階で得られた材料を(例えば15分~6時間にわたって、例えば200℃~600℃の温度で)、焼成する
- 先行段階で得られた生成物を硫化する(例えば大気圧で、例えば150℃~350℃の温度で、例えば、硫黄前駆体、例えば、1~10モル%のHSを含有しているガス流れ、例えば、窒素下に)硫化する。
【0077】
活性回復可能な捕捉塊の調製は、ガス状または液状の供給原料中の重金属を捕捉する段階によって行われることができ、当該段階は、処理対象供給原料を出発捕捉塊と接触させることを含む。接触操作は、好ましくは、処理対象供給原料を活性回復可能な捕捉塊を固定床の形態で含有している反応器に注入することによって行われることができる。
【0078】
処理対象のガス状または液状の流出物は、重金属、例えば水銀、ヒ素または鉛を種々の形態で含有する可能性がある。例えば、水銀は、元素状または原子状の水銀に対応する「Hg°」の形態で、分子の形態でおよび/またはイオンの形態で、例えばHg2+およびその錯体で見出される可能性がある。処理対象のガス状または液状の流出物中の重金属の濃度は、可変である可能性がある。処理対象のガス状流出物は、優先的には、ガスの容積(Sm)あたり10ng~1gの水銀を含有する可能性がある。処理対象の液状流出物は、優先的には、液体の容積(m)あたり10ng~1gの水銀を含有する可能性がある。さらに、処理対象のこのガス状または液状の流出物は、ヒ素および/または鉛を種々の形態で含有する可能性がある。流出物の鉛含有率は、1重量ppt(part per million:一兆分率、すなわち10-12)~100重量ppm(part per million百万分率、すなわち10-6)であることができ、ヒ素含有率は、100重量ppt~100重量ppb(part per billion十億分率、すなわち10-9)であることができる。これらの重金属は、安全上の理由およびこれらの流出物の処理の有効性の理由にとって有害であるので、それらは、有利には、除去されることができるか、または、少なくともそれらの含有率は、低下させられることができる。最後に、処理対象の流出物は、種々の形で他の元素、例えば硫黄および窒素を種々の形態で含有することができる。特に、硫黄は、有機硫黄の形態、例えばチオールの形態、あるいはまたチオフェンの形態で存在することができる。流出物の硫黄含有率は、1重量ppt~1000重量ppmであることができ、窒素含有率は、1重量ppt~100重量ppmであることができる。有利には、処理対象の流出物中に存在する場合がある窒素も硫黄も、本発明による方法の性能に損失を引き起こさない。
【0079】
処理対象の供給原料の出発捕捉塊との接触は、-50℃~150℃、優先的には0℃~110℃、非常に優先的には20℃~100℃の温度で行われることができる。さらに、処理対象の供給原料の捕捉塊との接触は、0.01MPa~20MPa、優先的には0.1MPa~15MPa、非常に優先的には0.1MPa~12MPaの絶対圧力で行われることができる。
【0080】
処理対象の供給原料を出発捕捉塊と接触させる段階は、0.1h-1~50h-1、好ましくは0.5h-1~20h-1、優先的には1h-1~11h-1の液毎時空間速度(LHSV)で行われることができる。「LHSV」は、捕捉塊の容積に対する供給原料の液毎時空間速度、すなわち、液状供給原料の容積を反応器容積で除算した時間当たりのものを意味すると理解される。反応器容積は、捕捉塊の容積および粒体間の「空の」容積を含む。
【0081】
処理対象の供給原料を出発捕捉塊と接触させる段階は、10h-1~5000h-1、好ましくは50h-1~2000h-1、優先的には100h-1~1100h-1のガス毎時空間速度(GHSV)で行われることができる。「GHSV」は、捕捉塊の容積に対する供給原料のガス毎時空間速度、すなわち、ガス状供給原料の容積を反応器容積で除算した時間当たりのものを意味すると理解される。反応器容積は、捕捉塊の容積および粒体間の「空の」容積を含む。
【0082】
第2の態様によると、ガス状または液状の炭化水素供給原料中に存在する重金属のための(活性回復された)捕捉塊にも関し、このものは、第1の態様による重金属のための捕捉塊の活性回復のための方法によって得られる。
【0083】
本発明による活性回復済み捕捉塊は、少なくとも1種の重金属(例えば水銀)と、少なくとも1種の金属Mとを含み、金属Mは、少なくとも部分的にMスルフィドの形態で存在し、前記金属Mは、銅、モリブデン、タングステン、鉄、ニッケルおよびコバルト、好ましくは銅、鉄、ニッケルおよびコバルトからなる群から選ばれる。大いに好ましくは、金属Mは、銅である。
【0084】
1つまたは複数の実施形態によると、活性回復済み捕捉塊の重金属(例えば水銀)の含有率は、活性回復済み捕捉塊の全重量に対して、0.1重量%~45重量%、好ましくは0.5重量%~30重量%、よりなおさら好ましくは1.0重量%~20重量%、例えば5重量%~15重量%である。
【0085】
本発明による活性回復済み捕捉塊は、優先的には、最低50%(mol/mol)、好ましくは最低70%(mol/mol)、例えば最低90%(mol/mol)のMの形態に硫化された金属M、大いに好ましくは最低95%(mol/mol)のMの形態に硫化された金属Mを示す。活性相を構成する、Mスルフィドの形態で含有される金属の割合は、好ましくは、x≦2、より好ましくはx≦1、大いに好ましくはx=1±0.2または±0.1と確認する。Mスルフィドの形態で含有される硫黄の割合は、好ましくはy≦2と確認する。金属が銅である場合、Mスルフィドの形態で含有される硫黄の割合は、好ましくはy≦2、より好ましくはy≦1、大いに好ましくはy=1±0.2または±0.1と確認する。より有利には、金属が銅である場合、本発明による捕捉塊は、銅の割合および硫黄の割合が、スルフィドの形態で、恒等式x=1±0.1およびy=1±0.1に従うようにされる。
【0086】
硫化された金属M(例えばCuS)および重金属スルフィド(例えばHgS)の存在は、X線回折によって容易に実証される。1つまたは複数の実施形態によると、本発明による活性回復済み捕捉塊のX線回折図では、少なくとも、辰砂もしくは黒辰砂の形態、好ましくは辰砂の形態にある重金属スルフィド、例えばHgSに特徴的な回折ライン、および/または硫化された金属M、例えば、コベライトタイプのCuSに特徴的な回折ラインが現れる。
【0087】
1つまたは複数の実施形態によると、活性回復済み捕捉塊は、ビーズ状、または円筒、多葉、車輪もしくは中空円筒のタイプの押出成形物状の形態または当業者によって用いられる任意の他の幾何学的形状で提供される。
【0088】
1つまたは複数の実施形態によると、活性回復済み捕捉塊の細孔容積は、少なくとも0.1mL/gである。
【0089】
1つまたは複数の実施形態によると、活性回復済み捕捉塊の比表面積は、少なくとも10m/gである。
【0090】
第3の態様によると、本発明は、ガス状または液状の炭化水素供給原料からの重金属、特に水銀の除去において、第2の態様による捕捉塊を使用するための方法にも関する。
【0091】
活性回復済み捕捉塊により、液状およびガス状の流出物の両方を処理することが可能となる。さらに、流出物は、湿潤ガスまたは凝集性化合物の蒸気を含有しているガスであることができ、これによって、捕捉塊の寿命が大幅に短縮されることはない。ガス状流出物の相対湿度は、所与の温度での飽和水蒸気圧に対する水の分圧の比として定義されて、0%~100%、優先的には1%~95%、より優先的には2%~90%であることができる。
【0092】
活性回復済み捕捉塊の使用は、特に、石油起源の液状またはガス状の流出物およびそれらの誘導体の処理に適している。そのような流出物には重金属が含有されているのが一般的である。本発明による方法における処理対象のガス状または液状の流出物は、有利には、燃焼排ガス、バイオガス、合成ガス、天然ガス、天然ガス凝縮物、オイル、液状またはガス状の石油留分、石油化学中間体およびそれらの混合物からなる群から選ばれることができる。好ましくは、本発明による方法における処理対象のガス状または液状の流出物は、燃焼排ガス、合成ガス、天然ガス、天然ガス凝縮物、原油および製油所または石油化学プラントからの液状炭化水素留分からなる群から有利に選ばれる。
【0093】
1つまたは複数の実施形態によると、燃焼排ガスは、ボイラー内の炭化水素、バイオガスおよび石炭の燃焼によって、または燃焼ガスタービン、例えば発電の目的のものによって生じさせられる。1つまたは複数の実施形態によると、燃焼排ガスの温度は、一般的に20℃~60℃であり、圧力は、一般的に0.1MPa(1bar)~0.5MPa(5bar)である。1つまたは複数の実施形態によると、燃焼排ガスは、容積で、50%~80%の窒素、5%~40%の二酸化炭素、1%~20%の酸素、ならびに、潜在的な不純物、例えば、SOおよびNOが、脱酸方法によって上流で除去されていなかったならば、そのような不純物を含む。
【0094】
1つまたは複数の実施形態によると、バイオガスは、メタン化あるいはほかに無酸素の状態での動物または植物の有機物の発酵によって生じたガスである。それは、例えば、有機性廃棄物を含有している埋立地などで天然に、または動物性肥料、有機もしくは農業の廃棄物、もしくは水処理プラントからのスラッジを供給されるメタナイザもしくは消化槽において人工的に生じさせられ得る。バイオガスは、主に(すなわち、最低50重量%の)メタンおよびCOからなり、その割合は、用いられる出発物質の起源により変動する。
【0095】
1つまたは複数の実施形態によると、合成ガスは、一酸化炭素CO、水素H、水蒸気(一般的には飽和状態にある)および二酸化炭素COを含有しているガスである。1つまたは複数の実施形態によると、合成ガスのH/COのモル比は、実質的に2に等しい。1つまたは複数の実施形態によると、二酸化炭素COの含有率は、合成ガスの容積でおよそ10%である。産業界で最も頻繁に遭遇する合成ガスの圧力は、一般的に2MPa(20bar)~3MPa(30bar)であるが、それは、7MPa(70bar)に達する可能性がある。合成ガスは、硫黄含有不純物(HS、COSなど)、窒素含有不純物(NH、HCNなど)およびハロゲン化不純物をさらに含有する可能性がある。
【0096】
1つまたは複数の実施形態によると、天然ガスは、主にガス状炭化水素からなる。1つまたは複数の実施形態によると、天然ガスは、以下の酸性化合物の少なくとも1種を含有する:二酸化炭素CO、硫化水素HS、チオール、硫化カルボニルCOSおよび二硫化炭素CS。これらの酸性化合物中の天然ガスの含有率は、高可変性であり、COおよびHSについて、最高40容積%の範囲にわたることができる。産業界で最も頻繁に遭遇する天然ガスの温度は、20℃~100℃であることができ、その圧力は、1MPa(10bar)~20MPa(200bar)であることができる。
【0097】
1つまたは複数の実施形態によると、天然ガス凝縮物は、液状炭化水素からなり、その生産は、天然ガスの生産と関連する。これらの複合液状混合物は、原油と非常に似ている。
【0098】
1つまたは複数の実施形態によると、製油所からの液状炭化水素は、LPG(C3-C4留分)、ナフサ(C5-C8留分)、ケロセンおよびディーゼルを含む。
【0099】
1つまたは複数の実施形態によると、石油化学プラントからの液状炭化水素は、LPG(C3-C4留分)および分解済みガソリン(または「熱分解ガソリン」、「PyGas」としても知られている)を含む。
【0100】
1つまたは複数の実施形態によると、本発明による方法における処理対象のガス状または液状の流出物の捕捉塊との接触は、-50℃~150℃、優先的には0℃~110℃、より優先的には20℃~100℃の温度で行われることができる。1つまたは複数の実施形態によると、本発明による方法における処理対象のガス状または液状の流出物の捕捉塊との接触は、0.01MPa(0.1bar)~20MPa(200bar)、優先的には0.1MPa(1bar)~15MPa(150bar)、非常に優先的には0.1MPa(1bar)~12MPa(120bar)の絶対圧力で行われることができる。
【0101】
処理対象の供給原料を活性回復済み捕捉塊と接触させる段階は、0.1h-1~50h-1、好ましくは0.5h-1~20h-1、優先的には1h-1~11h-1の液毎時空間速度(LHSV)で行われることができる。「LHSV」は、捕捉塊の容積に対する供給原料の液毎時空間速度、すなわち、液状供給原料の容積を反応器容積で除算した時間あたりのものを意味すると理解される。反応器容積は、捕捉塊の容積および粒体間の「空の」容積を含む。
【0102】
処理対象の供給原料を活性回復済み捕捉塊と接触させる段階は、10h-1~5000h-1、好ましくは50h-1~2000h-1、優先的には100h-1~1100h-1のガス毎時空間速度(GHSV)で行われることができる。「GHSV」は、捕捉塊の容積に対する供給原料のガス毎時空間速度、すなわち、ガス状供給原料の容積を反応器容積で除算した時間当たりのものを意味すると理解される。反応器容積は、捕捉塊の容積および粒体間の「空の」容積を含む。
【0103】
処理対象の液状またはガス状の流出物を(出発または活性回復された)捕捉塊と接触させる前に、前記ガス状または液状の流出物は、前処理され得る。この前処理は、加熱もしくは冷却、圧縮もしくは膨張、および/または望ましくないとみなされる化合物の流出物を除去もしくはその含有率を低減させることを可能にする精製処理からなることができる。例えば、前処理は、ガス状流出物の相対湿度を低下させる段階を含むことができる。ガス状流出物の相対湿度の低下は、当業者に知られている任意の手段、特に、水捕捉塊、例えば、ゼオライトベースのモレキュラーシーブ、例えば、文献WO 2005/047438に記載されているようなグリコール方法、流出物の温度を、例えば3℃から10℃に上昇させることを可能にする熱交換器において流出物を加熱する段階、または流出物を冷却する段階を用いて達成されることができる。
【0104】
(出発または活性回復された)捕捉塊との接触により、有利には、処理対象の流出物中に含有される重金属を捕捉すること、ならびに出発流出物の含有率と比較して重金属の含有率が低下した流出物を得ること、さらには、流出物から重金属を完全に除去することが可能となる。
【0105】
(実施例)
重金属M1のための捕捉塊を調製する。この調製を、本質的にアルミナをベースとする担体S1にCu(NO・3HO溶液を含浸させ、続いて硫化させることによって行う。担体S1の細孔容積は、水銀ポロシメトリ(参照; Rouquerol F., Rouquerol J. and Sing K., "Adsorption by Powders and Porous Solids: Principles, Methodology and Applications", Academic Press, 1999)によって測定されて、0.98mL/gである。従うべきプロトコルは、以下の通りである:
- 含浸溶液を調製する;この調製を、Cu(NO・3HOの、アルミナ担体の細孔容積全体を満たすのに必要な容積を得ることを可能にする容積の水中の溶解によって行う(溶液の濃度:2.04×10-6mol/Cu2+L);
- 先行段階において調製された前記溶液を、ゆっくりとした噴霧によって、多孔質担体に含浸させる;
- 先行段階において得られた生成物を周囲温度で3時間にわたって、密閉容器中で静置熟成させる;
- 先行段階において得られた材料を、90℃で3時間にわたって乾燥させる;
- 先行段階において得られた材料を、管状炉において450℃で湿潤雰囲気下に45分にわたって焼成する;
- 先行段階において得られた生成物を、大気圧で、5モル%のHSを窒素中に希釈されて含有している窒素流下に、250℃の温度で硫化する。
【0106】
重金属M1のための捕捉塊を水銀で飽和させる。この飽和を、N中3500μg/Smの気相中、50℃、2MPa(20bar)下、0.3Sm/時の流れの下に、1000h-1のGHSVで水銀と接触させることによって行い、活性回復可能な捕捉塊M1_satを得る。
【0107】
活性回復可能な捕捉塊M1_satを、350℃、2MPa(20bar)で12時間にわたって、1000h-1のGHSVで、0.3Sm/時の窒素中2容積%のレベルまで希釈されたHSの流れに供して、活性回復済み捕捉塊M1_sat_sulfを得る。
【0108】
このようにして得られた活性回復済み捕捉塊M1_sat_sulfを、再度、気相(N中3500μg/Sm)中、50℃で、2MPa(20bar)下、0.3Sm/時の流れの下に、GHSVが1000h-1になるようにして、水銀の捕捉によって飽和させ、使用済みの活性回復済み捕捉塊M1_sat_sulf_satを得る。
【0109】
すべての塊体の銅および水銀の含有率を、PANanalyticalからのAxios mAX装置上の蛍光X線によって決定する。硫黄含有率の測定を、ThermoFisherScientificからのCHNS/O Flash 2000分析装置を用いて行った。互いに比較されることができるようにするために、水銀による第1の飽和の前に、硫黄含有率をすべて、出発重量に戻した。このために、以下の式を適用する:%X_出発重量=%X_最終重量/(100-%Hg_最終重量)×100。反応Hg+2CuS=HgS+CuSに従ってHgが捕捉されるので、捕捉することが理論上可能である量を算出することが可能である:%Hg_theo=%S_出発重量/(2×M)×MHg;式中、Mは、硫黄のモル質量であり、MHgは、水銀のモル質量である。捕捉されたHgの量(%Hg_出発重量)対理論上捕捉可能な量(%Hg_theo)の比を取り、この比を100倍することによって、「脱水銀」速度(DeHgR)が得られる:DeHgR=%Hg_出発重量/%Hg_theo×100。得られた値を表1に与える(値を元素の重量%として表す)。
【0110】
【表1】
【0111】
塊体M1_sat_sulfは、塊体M1よりも多く硫黄を含有する。硫化処理により、塊体を部分的に再硫化することがこのように可能となり、これにより、捕捉能力の回復がこのように可能となった。さらに、塊体M1_sat_sulf_satは、塊体M1_satよりも多くHgを含有する。初期塊体M1の理論上の最大能力Hg15.7重量%に参照がなされるならば、Hg17.4重量%に到達するという事実は、脱水銀速度111%、すなわち、100%を超える脱水銀速度に到達することに相当する。銅含有率は、変化しない。同様に、Hgの量は、塊体M1_satの硫化により変化しない(M1_satおよびM1_sat_sulfについて同じHg含有率)。硫化は、水銀の脱離にはつながらない。
【0112】
得られた全ての塊体を、X線回折によっても特徴づけた。得られた図(示さず)により、最初に捕捉塊がCuSに特徴的なラインを示すことが示された。Hgの捕捉の後に、これらのラインは消失し、HgSのラインが出現した。次いで、再硫化の後に、CuSのラインが再度出現し、HgSのラインは、依然として存在する。これにより、硫化は、HgSを消失させることなくCuSを再生することを可能にすることが示される。
【国際調査報告】