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特表2025-501547パウチフィルム積層体およびこれを用いて製造された電池ケース
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-22
(54)【発明の名称】パウチフィルム積層体およびこれを用いて製造された電池ケース
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/131 20210101AFI20250115BHJP
   H01M 50/121 20210101ALI20250115BHJP
   H01M 50/129 20210101ALI20250115BHJP
   H01M 50/133 20210101ALI20250115BHJP
   H01M 50/119 20210101ALI20250115BHJP
   H01M 50/105 20210101ALI20250115BHJP
【FI】
H01M50/131
H01M50/121
H01M50/129
H01M50/133
H01M50/119
H01M50/105
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537148
(86)(22)【出願日】2022-12-23
(85)【翻訳文提出日】2024-06-19
(86)【国際出願番号】 KR2022021223
(87)【国際公開番号】W WO2023121402
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0187273
(32)【優先日】2021-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ミン・ヒョン・カン
(72)【発明者】
【氏名】サン・フン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・キョン・ユ
(72)【発明者】
【氏名】ス・ジ・ファン
(72)【発明者】
【氏名】デ・ウォン・ソン
(72)【発明者】
【氏名】フン・ヒ・リム
【テーマコード(参考)】
5H011
【Fターム(参考)】
5H011AA09
5H011BB03
5H011CC02
5H011CC06
5H011CC10
5H011DD03
(57)【要約】
本発明は、外部ストレスに対する抵抗性に優れた高強度の電池ケースを製造することができるパウチフィルム積層体およびこれを用いて製造された電池ケースに関し、本発明のパウチフィルム積層体は、厚さが60μm以上であるガスバリア層と、前記ガスバリア層の一面に配置され、TD方向の引張強度が10kgf/15mm~20kgf/15mmであり、TD方向の伸び率が150%~235%である基材層と、前記ガスバリア層の他面に配置されるシーラント層とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスバリア層と、前記ガスバリア層の一面に配置される基材層と、前記ガスバリア層の他面に配置されるシーラント層とを含み、
前記ガスバリア層の厚さが60μm以上であり、
前記基材層は、TD方向の引張強度が10kgf/15mm~20kgf/15mmであり、TD方向の伸び率が150%~235%である、パウチフィルム積層体。
【請求項2】
前記パウチフィルム積層体を成形深さ9.6mmになるように2カップ成形した後、15mm×80mmのサイズに裁断して製造したサンプルに、100Nおよび150Nの荷重で繰り返して力を加えた時に、破断が発生するまでの力を加えた回数が2000回以上である、請求項1に記載のパウチフィルム積層体。
【請求項3】
前記パウチフィルム積層体を90mm×100mmのサイズに裁断して製造したサンプルを直径1.0mmのピンで20Nの荷重で繰り返して突き刺した時に、穴が開くまでの力を加えた回数が250回以上である、請求項1に記載のパウチフィルム積層体。
【請求項4】
前記パウチフィルム積層体を90mm×100mmのサイズに裁断して製造したサンプルを直径1.0mmのピンで22Nの荷重で繰り返して突き刺した時に、穴が開くまでの力を加えた回数が150回以上である、請求項1に記載のパウチフィルム積層体。
【請求項5】
前記ガスバリア層の厚さは、60μm~100μmである、請求項1に記載のパウチフィルム積層体。
【請求項6】
前記基材層は、TD方向の引張強度が10kgf/15mm~18kgf/15mmである、請求項1に記載のパウチフィルム積層体。
【請求項7】
前記基材層のTD方向の伸び率が170%~235%である、請求項1に記載のパウチフィルム積層体。
【請求項8】
前記基材層は、ポリエチレンテレフタレートフィルムとナイロンフィルムの積層構造である、請求項1に記載のパウチフィルム積層体。
【請求項9】
前記ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚さが5μm~20μmであり、
前記ナイロンフィルムの厚さが20μm~30μmである、請求項8に記載のパウチフィルム積層体。
【請求項10】
前記ガスバリア層は、アルミニウム合金薄膜を含む、請求項1に記載のパウチフィルム積層体。
【請求項11】
前記アルミニウム合金薄膜は、鉄を1.2wt%~1.7wt%含む、請求項10に記載のパウチフィルム積層体。
【請求項12】
前記アルミニウム合金薄膜は、結晶粒度が10μm~13μmである、請求項10に記載のパウチフィルム積層体。
【請求項13】
前記シーラント層は、その厚さが60μm~100μmである、請求項1に記載のパウチフィルム積層体。
【請求項14】
前記シーラント層は、ポリプロピレン、無延伸ポリプロピレン、酸変性ポリプロピレン、ポリプロピレン-ブチレン-エチレン共重合体またはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のパウチフィルム積層体。
【請求項15】
電池ケースであって、
請求項1から請求項14のいずれか一項に記載のパウチフィルム積層体を含む電池ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年12月24日付けの韓国特許出願第10-2021-0187273号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、パウチフィルム積層体およびこれを用いて製造された電池ケースに関し、より詳細には、外部ストレスによるクラックの発生が少ない高強度の電池ケースを製造することができるパウチフィルム積層体およびこれを用いて製造された電池ケースに関する。
【背景技術】
【0003】
二次電池は、デジタルカメラ、P-DVD、MP3P、携帯電話、PDA、ポータブルゲーム機(Portable Game Device)、パワーツール(Power Tool)および電動自転車(E-bike)などの小型製品だけでなく、電気自動車やハイブリッドカーのような高出力を要する大型製品と余剰発電電力や新再生エネルギーを貯蔵する電力貯蔵装置とバックアップ用電力貯蔵装置にも適用され使用されている。
【0004】
通常、二次電池は、電極活物質スラリーを正極集電体および負極集電体に塗布して正極と負極を製造し、これをセパレータ(Separator)の両側に積層することで、所定の形状の電極組立体(Electrode Assembly)を形成した後、電池ケースに電極組立体を収納し、電解質を注入した後、シールする方法により製造される。
【0005】
二次電池は、電極組立体を収容するケースの材質に応じて、パウチ型(Pouch Type)および缶型(Can Type)などに分けられる。パウチ型(Pouch Type)は、柔軟なポリマー材質で製造されたパウチに電極組立体を収容する。また、管型(Can Type)は、金属またはプラスチックなどの材質で製造されたケースに電極組立体を収容する。
【0006】
パウチ型電池ケースは、柔軟性を有するパウチフィルム積層体にプレス加工を施し、カップ部を形成することにより製造される。そして、カップ部が形成されると、前記カップ部の収容空間に電極組立体を収納し、シール部をシールして、二次電池を製造する。
【0007】
このようなプレス加工のうち、絞り(Drawing)成形は、プレス装置にパウチフィルムを挿入し、パンチでパウチフィルム積層体に圧力を印加して、パウチフィルム積層体を延伸させることにより行われる。パウチフィルム積層体は、一般的に、金属材質のガスバリア層の一面にポリエチレンテレフタレートなどの高分子フィルムを積層し、他面にシーラント層が積層された複数の層で形成される。
【0008】
最近、電気自動車用バッテリやESSバッテリのように、高容量電池に対するニーズが高まるにつれて、より多くの電極組立体を収納することができる電池ケースに対するニーズが増加している。これに伴い、パウチ型電池ケースのカップ部の成形深さを増加させるか、上部ケースと下部ケースにそれぞれカップ部を成形してカップ部の体積を増加させる2カップ成形法が試みられている。しかし、カップ部の成形深さを増加させるか、2カップ成形を行う場合、延伸が過剰に発生して電池ケースの剛性が低下し、そのため、物流管理過程や外部で発生するストレスによってクラックが発生する問題がある。
【0009】
したがって、電極組立体の収納体積を増加させることができるように、カップ部の体積が大きく、且つ剛性が高いパウチ型電池ケースの開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記のような問題を解決するためのものであり、ガスバリア層の厚さと、基材層の引張強度および伸び率を特定の範囲に制御してカップ部の成形深さを増加させるか、2カップ成形を実施した後にも優れた剛性を有するパウチフィルム積層体およびこれを用いて製造された電池ケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一側面において、本発明は、厚さが60μm以上であるガスバリア層と、前記ガスバリア層の一面に配置され、TD方向の引張強度が10kgf/15mm~20kgf/15mmであり、TD方向の伸び率が150%~235%である基材層と、前記ガスバリア層の他面に配置されるシーラント層とを含むパウチフィルム積層体を提供する。
【0012】
本発明によるパウチフィルム積層体は、前記パウチフィルム積層体を成形深さ9.6mmに2カップ成形した後、15mm×80mmのサイズに裁断して製造したサンプルに、100Nおよび150Nの荷重で繰り返して力を加えた時に、破断が発生するまで力を加えた回数が2000回以上であることができる。
【0013】
また、本発明によるパウチフィルム積層体は、前記パウチフィルム積層体を90mm×100mmのサイズに裁断して製造したサンプルを直径1.0mmのピンで20Nの荷重で繰り返して突き刺した時に、穴が開くまで力を加えた回数が250回以上であることができる。
【0014】
また、本発明によるパウチフィルム積層体は、前記パウチフィルム積層体を90mm×100mmのサイズに裁断して製造したサンプルを直径1.0mmのピンで22Nの荷重で繰り返して突き刺した時に、穴が開くまで力を加えた回数が150回以上であることができる。
【0015】
前記ガスバリア層の厚さは、60μm~80μmであることができる。
【0016】
好ましくは、前記基材層は、TD方向の引張強度が10kgf/15mm~18kgf/15mmであることができ、TD方向の伸び率が170%~235%であることができる。
【0017】
前記基材層は、ポリエチレンテレフタレートフィルムとナイロンフィルムの積層構造であることができ、ここで、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚さが5μm~20μmであり、前記ナイロンフィルムの厚さが20μm~30μmであることができる。
【0018】
前記ガスバリア層は、アルミニウム合金薄膜を含むことができ、前記アルミニウム合金薄膜は、鉄を1.2wt%~1.7wt%含み、結晶粒度が10μm~13μmであることができる。
【0019】
前記シーラント層は、その厚さが60μm~100μmであることができ、無延伸ポリプロピレン、酸変性ポリプロピレン、ポリプロピレン-ブチレン-エチレン共重合体またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0020】
他の側面において、本発明は、上述の本発明によるパウチフィルム積層体を絞り成形して製造された電池ケースを提供する。
【発明の効果】
【0021】
60μm以上の厚さを有するガスバリア層と、10kgf/15mm~20kgf/15mmのTD方向の引張強度および150%~235%のTD方向の伸び率を有する基材層を適用した本発明によるパウチフィルム積層体は、成形性に優れるだけでなく、成形後にも外部ストレスに対する強い抵抗性を有する。
【0022】
具体的には、本発明のパウチフィルム積層体は、成形深さ9.6mmに2カップ成形した後、15mm×80mmのサイズに裁断して製造したサンプルに100Nおよび150Nの荷重で繰り返して力を加えた時に、破断が発生するまで力を加えた回数が2000回以上であり、前記パウチフィルム積層体を90mm×100mmのサイズに裁断して製造したサンプルを直径1.0mmのピンで20Nの荷重で繰り返して突き刺した時に、穴が開くまで力を加えた回数が250回以上、22Nの荷重で繰り返して突き刺した時に、穴が開くまで力を加えた回数が150回以上であり、外部ストレスに対する抵抗性が非常に優れる。
【0023】
したがって、本発明のパウチフィルム積層体を用いると、電極組立体の収容空間が広くて高いエネルギー密度を実現することができ、物流工程や充放電過程で発生する外部ストレス(stress)による損傷を最小化することができる電池ケースを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態によるパウチフィルム積層体の断面図である。
図2】本発明の一実施形態による電池ケースを図示した図である。
図3】本発明の他の実施形態による電池ケースを図示した図である。
図4】基材層の引張強度測定装置を示す写真である。
図5】パウチフィルム積層体の疲労試験(fatigue test)時に2カップ成形されたパウチフィルム積層体とサンプルの裁断位置を示す写真である。
図6】パウチフィルム積層体の突刺サイクル(puncture cycle)テスト装置を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明をより具体的に説明する。
【0026】
本明細書および特許請求の範囲で使用されている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自己の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈すべきである。
【0027】
本発明において、MD方向(Machine Direction)は、パウチフィルム積層体の長手方向を意味し、TD方向(Transverse Direction)は、パウチフィルム積層体の幅方向を意味する。
【0028】
本発明者らは、電池組立体の収容空間が広くて高いエネルギー密度を実現することができ、物流工程や充放電過程で発生する外部ストレス(stress)によるクラックの発生を抑制することができる電池ケースを製造するために鋭意研究を重ねた結果、パウチフィルム積層体のガスバリア層の厚さおよび基材層のTD方向の引張強度および伸び率を特定の範囲に調節することで、前記のような目的を達成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0029】
<パウチフィルム積層体>
図1には、本発明によるパウチフィルム積層体の一実施形態が図示されている、以下では、図1を参照して、本発明によるパウチフィルム積層体について説明する。
【0030】
図1を参照すると、本発明によるパウチフィルム積層体1は、ガスバリア層20と、前記ガスバリア層の一面に配置される基材層10と、前記ガスバリア層の他面に配置されるシーラント層30とを含む。ここで、前記ガスバリア層20は、その厚さが60μm以上、好ましくは60μm~100μmであり、前記基材層10は、TD方向の引張強度が10kgf/15mm~20kgf/15mm、好ましくは10kgf/15mm~18kgf/15mm、より好ましくは10kgf/15mm~15kgf/15mm、さらに好ましくは10kgf/15mm~13kgf/15mmであり、TD方向の伸び率が150%~235%、好ましくは170%~235%、さらに好ましくは200%~235%であることができる。本発明者らの研究によると、ガスバリア層20の厚さと基材層10のTD方向の引張強度および伸び率が前記範囲を同時に満たす時に、成形性に優れ、且つ成形後、外部ストレスに対する抵抗性が著しく増加することが示されている。これに対し、ガスバリア層の厚さや基材層の引張強度のうち一つが本発明の範囲から逸脱する場合には、成形後、外部ストレスに対する抵抗性が著しく低下することが示されている。
【0031】
具体的には、本発明のパウチフィルム積層体は、カップ部の深さが9.6mmになるように2カップ成形後、15mm×80mmのサイズに裁断して製造したサンプルに、100N(Low force)および150N(high force)の荷重で繰り返して力を加えた時に、破断が発生するまでの力を加えた回数が2000回以上、好ましくは2000回~10000回である。
【0032】
ここで、前記サンプルは、カップ部を含むように裁断され、パウチフィルム積層体のTD方向がサンプルの長手方向と一致するように裁断される。
【0033】
また、前記2カップ成形は、パウチフィルム積層体を2カップ成形装置に挿入し、前記パウチフィルム積層体の一部領域にパンチで圧力を加えてカップ部を形成することで電池ケース100を製造する。ここで、前記圧力は、0.3MPa~1MPa、好ましくは0.3MPa~0.8MPa、より好ましくは0.4MPa~0.6MPa程度であることができる。カップ部の成形時に圧力が低すぎると、絞りが過剰に発生してしわが発生し得、高すぎると、絞りがよく行われず、成形深さが低くなり得る。
【0034】
一方、前記パンチの移動速度は、20mm/min~80mm/min、好ましくは30mm/min~70mm/min、より好ましくは40mm/min~60mm/minであることができる。パンチの移動速度が速すぎると、カップ部の周縁面が十分に延伸されず圧縮力が作用し、座屈(buckling)によるしわ(wrinkle)が発生し得、パンチの移動速度が遅すぎると、成形時にカップ部のコーナーに集中する応力が大きくなってピンホールやクラックの発生が増加し得る。
【0035】
一方、本発明で使用された2カップ成形装置の金型条件は、下記[表1]に示されているとおりである。
【0036】
【表1】
【0037】
また、本発明のパウチフィルム積層体は、前記パウチフィルム積層体を90mm×100mmのサイズに裁断して製造したサンプルを直径1.0mmのピンで20Nの荷重で繰り返して突き刺した時に、穴が開くまでの力を加えた回数が250回以上であり、22Nの荷重で繰り返して突き刺した時に、穴が開くまでの力を加えた回数が150回以上である。このように、本発明のパウチフィルム積層体は、外部から繰り返して力が加えられても、簡単に破断されるか、穴が開かず、成形後にも高い剛性を維持する。したがって、本発明のパウチフィルム積層体で電池ケースを製造する場合、外部の衝撃によって電池ケースが損傷または破損することを効果的に防止することができる。
【0038】
以下、本発明によるパウチフィルム積層体の各層について詳細に説明する。
【0039】
基材層
基材層10は、電池ケースの最外層に配置されて電極組立体を外部衝撃から保護し、電気的に絶縁させるためのものである。
【0040】
前記基材層10は、ポリマー材質からなることができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、アクリル系高分子、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、セルロース、アラミド、ナイロン、ポリエステル、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリアリレート、およびテフロン(登録商標)からなる群から選択される1種以上のポリマー材質からなることができる。
【0041】
前記基材層10は、単層構造であってもよく、図1に図示されているように、互いに異なるポリマーフィルム12、14が積層された多層構造であってもよい。基材層10が多層構造である場合、ポリマーフィルムの間に接着層16aが介在されることができる。
【0042】
一方、前記基材層10は、全厚が10μm~60μm、好ましくは20μm~50μm、さらに好ましくは30μm~50μmであることができる。基材層が多層構造である場合、前記厚さは、接着層を含む厚さである。基材層10が前記範囲を満たす時に、耐久性、絶縁性および成形性に優れる。基材層の厚さが薄すぎると、耐久性が低下し、成形過程で基材層の破損が発生し得、厚すぎると、成形性が低下し得、パウチフィルム積層体フィルムの全厚が増加し、電池収容空間が減少して、エネルギー密度が低下し得る。
【0043】
本発明において、前記基材層は、TD方向の引張強度が10kgf/15mm~20kgf/15mm、より好ましくは10kgf/15mm~18kgf/15mm、より好ましくは10kgf/15mm~15kgf/15mm、さらに好ましくは10kgf/15mm~13kgf/15mm程度であることができる。基材層のTD方向の引張強度が10kgf/15mm未満である場合、カップ成形後に、疲労(fatigue)および突刺(Puncture)抵抗性の改善効果があまりない。一方、基材層のTD方向の引張強度が大きすぎると、成形性が低下し得るため、基材層のTD方向の引張強度は、20kgf/15mm以下であることが好ましい。
【0044】
一方、前記基材層の引張強度は、基材層をTD方向に引張させた時に破断が発生する強度であり、基材層を構成するフィルムまたはフィルム積層体を、TD方向が長手方向になるように裁断して測定用サンプルを作製した後、前記測定用サンプルをUTM装置に装着し、引張させて破断が発生する最大強度を測定する方法で測定されることができる。
【0045】
また、前記基材層は、TD方向の伸び率が150%~235%程度、好ましくは170%~235%、より好ましくは200%~235%、さらに好ましくは210%~235%であることができる。基材層のTD方向の伸び率が前記範囲を満たす時に、ガスバリア層をよく固定し、成形性の改善効果を得ることができる。
【0046】
基材層のTD方向の引張強度および伸び率は、基材層を構成するフィルムの材質、フィルムの製造方法、フィルムの厚さ、接着層の厚さなどの影響を受けて変化する。また、製造会社ごとにフィルム製造工程が異なるため、同一材質、同一厚さのフィルムであっても、製造会社(maker)が異なる場合、引張強度や伸び率などの物性が異なり得る。したがって、基材層を構成するフィルムのメーカー(製造会社)、フィルムの材質、フィルムの厚さ、接着層の厚さなどを適切に選択して、所望の引張強度および伸び率を有する基材層を形成することができる。
【0047】
一実施形態によると、前記基材層10は、ポリエチレンテレフタレート(PolyEthyleneTerephtalate;PET)フィルムとナイロン(Nylon)フィルムを接着層を介在して積層した構造であることができる。ここで、前記ナイロンフィルムが、ガスバリア層20側、すなわち、内側に配置され、ポリエチレンテレフタレートフィルムが、電池ケースの表面側に配置されることが好ましい。
【0048】
ポリエチレンテレフタレート(PET)は、耐久性および電気絶縁性に優れ、PETフィルムが表面側に配置される時に、耐久性および絶縁性に優れる。ただし、PETフィルムの場合、ガスバリア層20を構成するアルミニウム合金薄膜との接着性が弱く、延伸挙動も相違するため、PETフィルムをガスバリア層側に配置する場合、成形過程で基材層とガスバリア層の剥離が発生し得、ガスバリア層が均一に延伸されず、成形性が低下する問題が発生し得る。これに対し、ナイロンフィルムは、ガスバリア層20を構成するアルミニウム合金薄膜と延伸挙動が類似するため、ポリエチレンテレフタレートとガスバリア層との間にナイロンフィルムを配置する場合、成形性の改善効果を得ることができる。
【0049】
前記ポリエチレンテレフタレートフィルムは、その厚さが5μm~20μm、好ましくは5μm~15μm、さらに好ましくは7μm~15μmであることができ、前記ナイロンフィルムは、その厚さが20μm~40μm、好ましくは20μm~35μm、より好ましくは20μm~30μm、さらに好ましくは23μm~27μmであることができる。ポリエチレンテレフタレートフィルムとナイロンフィルムの厚さが前記範囲を満たす時に、成形性および成形後の剛性に優れる。
【0050】
ガスバリア層
ガスバリア層20は、電池ケースの機械的強度を確保し、二次電池の外部のガスまたは水分などの出入りを遮断し、電解質の漏れを防止するためのものである。
【0051】
前記ガスバリア層は、その厚さが60μm以上、好ましくは60μm~100μm、さらに好ましくは60μm~80μmであることができる。ガスバリア層の厚さが60μm以上である場合、成形性が改善して限界成形深さが増加し、成形後の外部ストレスに対する抵抗性が改善する。
【0052】
一方、前記ガスバリア層は、金属材質からなることができ、具体的には、アルミニウム合金薄膜からなることができる。
【0053】
前記アルミニウム合金薄膜は、アルミニウムと、前記アルミニウム以外の金属元素、例えば、鉄(Fe)、銅(Cu)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、シリコン(Si)および亜鉛(Zn)からなる群から選択される1種または2種以上を含むことができる。
【0054】
好ましくは、前記アルミニウム合金薄膜は、鉄(Fe)含有量が1.2wt%~1.7wt%、好ましくは1.3wt%~1.7wt%、より好ましくは1.3wt%~1.45wt%であることができる。アルミニウム合金薄膜内の鉄(Fe)含有量が1.2wt%未満である場合には、アルミニウム合金薄膜の強度が低下して成形時にクラックおよびピンホールが発生し得、1.7wt%を超える場合には、アルミニウム合金薄膜の柔軟性が低下して成形性および屈曲性の向上に限界がある。
【0055】
また、前記アルミニウム合金薄膜は、結晶粒度が10μm~13μm、好ましくは10.5μm~12.5μm、さらに好ましくは11μm~12μmであるアルミニウム合金薄膜を含む。アルミニウム合金薄膜の結晶粒度が前記範囲を満たす時に、カップ成形時にピンホール(Pinhole)や亀裂の発生なく成形深さを増加させることができる。アルミニウム合金薄膜の結晶粒度が13μmを超える場合、アルミニウム合金薄膜の強度が低下し、延伸時に内部応力の分散が難しくてクラックやピンホールの発生が増加し、結晶粒度が10μm未満である場合には、アルミニウム合金薄膜の柔軟性が低下して、成形性および屈曲性の向上に限界がある。
【0056】
前記結晶粒度は、アルミニウム合金薄膜の組成およびアルミニウム合金薄膜の加工法に応じて変化し、アルミニウム合金薄膜の厚さ方向の断面を走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)で観測して測定することができる。具体的には、本発明では、走査電子顕微鏡を用いて、アルミニウム合金薄膜の厚さ方向の断面SEMイメージを取得し、前記SEMイメージで観察される結晶粒のうち任意の30個の結晶粒の最大径を測定した後、これらの平均値を結晶粒度として評価した。
【0057】
具体的には、前記アルミニウム合金薄膜は、合金番号AA8021のアルミニウム合金であることができるが、これに限定されるものではない。
【0058】
シーラント層
シーラント層30は、熱圧着により接着されて、電池ケースを密封するためのものであり、パウチフィルム積層体1の最内層に位置する。
【0059】
シーラント層30は、電池ケースとして成形された後に電解質および電極組立体と接触する面であるため、絶縁性および耐食性を有する必要があり、内部を完全に密閉して内部と外部との物質移動を遮断しなければならないため、高いシール性を有する必要がある。
【0060】
前記シーラント層30は、ポリマー材質からなることができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、アクリル系高分子、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、セルロース、アラミド、ナイロン、ポリエステル、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリアリレート、およびテフロン(登録商標)からなる群から選択される1種以上からなることができ、中でも、引張強度、剛性、表面硬度、耐磨耗性、耐熱性などの機械的物性と耐食性などの化学的物性に優れたポリプロピレン(PP)を含むことが特に好ましい。
【0061】
より具体的には、前記シーラント層30は、ポリプロピレン、無延伸ポリプロピレン(Cast Polypropylene;CPP)、酸変性ポリプロピレン(Acid Modified Polypropylene)、ポリプロピレン-ブチレン-エチレン共重合体またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0062】
前記シーラント層30は、単層構造であってもよく、互いに異なるポリマー材質からなる2以上の層を含む多層構造であってもよい。
【0063】
前記シーラント層は、全厚が60μm~100μm、好ましくは60μm~90μm、さらに好ましくは60μm~80μmであることができる。シーラント層の厚さが薄すぎると、シール耐久性および絶縁性が低下し得、厚すぎると、屈曲性が低下し、パウチフィルム積層体の全厚が増加して、体積に対するエネルギー密度が低下し得る。
【0064】
前記のような本発明のパウチフィルム積層体は、当該技術分野において周知のパウチフィルム積層体の製造方法により製造されることができる。例えば、本発明のパウチフィルム積層体は、ガスバリア層20の上面に接着剤により基材層10を付着し、前記ガスバリア層20の下面に共押出や接着層によりシーラント層30を形成する方法により製造されることができるが、これに限定されるものではない。
【0065】
本発明によるパウチフィルム積層体は、全厚が160μm~200μm、好ましくは180μm~200μmであることができる。パウチフィルム積層体の厚さが前記範囲を満たす時に、パウチ積層体の厚さの増加による電池収容空間の減少、密封耐久性の低下などを最小化し、且つ成形深さを増加させることができる。
【0066】
<電池ケース>
次に、本発明による電池ケースについて説明する。
【0067】
図2および図3には、本発明による電池ケースの実施形態が図示されている。以下、図2および図3を参照して、本発明による電池ケースについて説明する。
【0068】
図2および図3に図示されているように、本発明による電池ケース100は、上述の本発明のパウチフィルム積層体1を絞り(Drawing)成形して製造され、少なくとも一つ以上のカップ部110a、110bを含む。
【0069】
パウチフィルム積層体1は、上述のとおりであるため、具体的な説明は省略する。
【0070】
前記カップ部110a、110bは、電極組立体(図示せず)および電解質(図示せず)を収容するための空間112であり、パウチフィルム積層体1をパンチなどを用いて絞り成形して製造される。ここで、前記絞り成形は、パウチフィルム積層体1のシーラント層側にパンチを押圧して行われることができる。
【0071】
一方、本発明による電池ケース100は、図2に図示されているように、一つのカップ部110aを含んでもよく、図3に図示されているように、2個のカップ部110a、110bを含んでもよい。
【0072】
一方、本発明による電池ケース100は、下部ケース110および上部ケース120を含み、前記カップ部110a、110bは、下部ケース110および上部ケース120のうち一つにのみ形成されてもよく、両方に形成されてもよい。パウチフィルム積層体1を1カップ成形装置で成形する場合、図2に図示されているように、カップ部が1個である電池ケースを製造することができ、2カップ成形装置で成形する場合、図3に図示されているように、下部ケース110と上部ケース120の両方にカップ部が形成された電池ケースを製造することができる。
【0073】
前記カップ部110a、110bに電極組立体を収納し、電解液を注入した後、上部ケース120が下部ケース110の上端に接するように折り畳み(folding)、電極組立体および電解質が外部と遮断されるようにする。
【0074】
その後、上部ケース120と下部ケース110の角部分を熱圧着してシール工程を行う。
【0075】
前記のように製造された本発明の電池ケースは、電極組立体の収容空間が広くて高いエネルギー密度を実現することができ、物流工程や充放電過程で発生する外部ストレス(stress)による損傷を最小化することができる。
【0076】
以下、具体的な実施例により、本発明をより具体的に説明する。
【0077】
実施例1
厚さ80μmのAA8021アルミニウム(Al)合金薄膜(製造会社:SAMAアルミニウム)の一面に、厚さ25μmのナイロンフィルム(商品名:Nylon 6、製造会社:東レ)と厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(製造会社:東レ)をウレタン接着剤を用いてドライラミネーション方式で積層して基材層を形成した。ここで、ウレタン接着剤は、接着層の厚さが5μmになるように塗布した。次に、前記アルミニウム合金薄膜の他面に溶融された酸変性ポリプロピレン(PPa)およびポリプロピレン(PP)をそれぞれ厚さ30μmになるように共押出して厚さ60μmのシーラント層を形成し、パウチフィルム積層体を製造した。
【0078】
実施例2
厚さ80μmのAA8021アルミニウム(Al)合金薄膜(製造会社:SAMAアルミニウム)の一面に、厚さ25μmのナイロンフィルム(商品名:Nylon6、製造会社:HYOSUNG)と厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(製造会社:HYOSUNG)をウレタン接着剤を用いてドライラミネーション方式で積層して基材層を形成した。ここで、ウレタン接着剤は、接着層の厚さが3μmになるように塗布した。次に、前記アルミニウム合金薄膜の他面に溶融されたポリプロピレン(PP)を厚さ30μmになるように押出し、厚さ30μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)を貼り合わせて厚さ60μmのシーラント層を形成し、パウチフィルム積層体を製造した。
【0079】
実施例3
厚さ60μmのAA8021アルミニウム(Al)合金薄膜(製造会社:SAMAアルミニウム)の一面に、厚さ25μmのナイロンフィルム(商品名:Nylon 6、製造会社:東レ)と厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(製造会社:東レ)をウレタン接着剤を用いてドライラミネーション方式で積層して基材層を形成した。ここで、ウレタン接着剤は、接着層の厚さが5μmになるように塗布した。次に、前記アルミニウム合金薄膜の他面に溶融された酸変性ポリプロピレン(PPa)およびポリプロピレン(PP)をそれぞれ厚さ40μmになるように共押出して厚さ80μmのシーラント層を形成し、パウチフィルム積層体を製造した。
【0080】
実施例4
厚さ60μmのAA8021アルミニウム(Al)合金薄膜(製造会社:SAMAアルミニウム)の一面に、厚さ25μmのナイロンフィルム(商品名:Nylon 6、製造会社:HYOSUNG)と厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(製造会社:HYOSUNG)をウレタン接着剤を用いてドライラミネーション方式で積層して基材層を形成した。ここで、ウレタン接着剤は、接着層の厚さが3μmになるように塗布した。次に、前記アルミニウム合金薄膜の他面に溶融されたポリプロピレン(PP)を厚さ30μmになるように押出し、厚さ30μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)を貼り合わせて厚さ60μmのシーラント層を形成し、パウチフィルム積層体を製造した。
【0081】
比較例1
厚さ40μmのAA8021アルミニウム(Al)合金薄膜(製造会社:SAMAアルミニウム)の一面に、厚さ15μmのナイロンフィルム(商品名:Nylon 6、製造会社:HYOSUNG)と厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(製造会社:HYOSUNG)をウレタン接着剤を用いてドライラミネーション方式で積層して基材層を形成した。ここで、ウレタン接着剤は、接着層の厚さが5μmになるように塗布した。次に、前記アルミニウム合金薄膜の他面に溶融された酸変性ポリプロピレン(PPa)およびポリプロピレン(PP)をそれぞれ厚さ40μmになるように共押出して厚さ80μmのシーラント層を形成し、パウチフィルム積層体を製造した。
【0082】
比較例2
厚さ60μmのAA8021アルミニウム(Al)合金薄膜(製造会社:SAMAアルミニウム)の一面に、厚さ15μmのナイロンフィルム(商品名:Nylon 6、製造会社:HYOSUNG)と厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(製造会社:HYOSUNG)をウレタン接着剤を用いてドライラミネーション方式で積層して基材層を形成した。ここで、ウレタン接着剤は、接着層の厚さが5μmになるように塗布した。次に、前記アルミニウム合金薄膜の他面に溶融された酸変性ポリプロピレン(PPa)およびポリプロピレン(PP)をそれぞれ厚さ40μmになるように共押出して厚さ80μmのシーラント層を形成し、パウチフィルム積層体を製造した。
【0083】
比較例3
厚さ40μmのAA8021アルミニウム(Al)合金薄膜(製造会社:SAMAアルミニウム)の一面に、厚さ25μmのナイロンフィルム(商品名:Nylon 6、製造会社:東レ)と厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(製造会社:東レ)をウレタン接着剤を用いてドライラミネーション方式で積層して基材層を形成した。ここで、ウレタン接着剤は、接着層の厚さが5μmになるように塗布した。次に、前記アルミニウム合金薄膜の他面に溶融された酸変性ポリプロピレン(PPa)およびポリプロピレン(PP)をそれぞれ厚さ40μmになるように共押出して厚さ80μmのシーラント層を形成し、パウチフィルム積層体を製造した。
【0084】
比較例4
厚さ80μmのAA8021アルミニウム(Al)合金薄膜(製造会社:SAMAアルミニウム)の一面に、厚さ25μmのナイロンフィルム(商品名:Nylon 6、製造会社:KOLON)と厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(製造会社:KOLON)をウレタン接着剤を用いてドライラミネーション方式で積層して基材層を形成した。ここで、ウレタン接着剤は、接着層の厚さが5μmになるように塗布した。次に、前記アルミニウム合金薄膜の他面に溶融された酸変性ポリプロピレン(PPa)およびポリプロピレン(PP)をそれぞれ厚さ30μmになるように共押出して厚さ60μmのシーラント層を形成し、パウチフィルム積層体を製造した。
【0085】
実験例1:基材層フィルムの引張強度および伸び率の測定
実施例1~4および比較例1~4で使用された基材層フィルム(ナイロンフィルム/接着層/ポリエチレンテレフタレートフィルム積層体)を幅×長さが15mm×80mmになるように裁断してサンプルを製造した。ここで、サンプルの長手方向がパウチフィルム積層体のTD方向と一致するように裁断した。その後、図4に図示されているように、UTM装置に前記サンプルをグリップギャップ(Grip gap)30mmで固定した後、50mm/minの引張速度で前記サンプルを引っ張って破断が発生する強度を引張強度として測定した。
【0086】
また、破断時のグリップギャップを延伸前のグリップギャップ(30mm)で除した後、100をかけた値を伸び率(%)として評価した。
【0087】
測定結果は、下記[表2]に示した。
【0088】
実験例2:疲労試験(fatigue test)
実施例1~4および比較例1~4によって製造されたパウチフィルム積層体それぞれを266mm×240mmのサイズに裁断した後、ダイ(Die)とパンチ(Punch)を備えた2カップ成形装置に装着し、圧力0.5MPa、速度50mm/minでパンチを下降させて絞り成形を行った。ここで、実施例1~4および比較例2のパウチフィルム積層体は、成形深さが9.6mmになるように成形し、比較例1および比較例3のパウチフィルム積層体は、クラックが発生しない限界成形深さである7.0mmに成形した。
【0089】
一方、前記2カップ成形装置の金型条件は、前記[表1]に示されているとおりである。
【0090】
その後、2カップ成形されたパウチフィルム積層体を長さ80mm×幅15mmのサイズに裁断して測定用サンプルを製造した。長手方向がパウチフィルム積層体のTD方向になるように裁断した。図5には、2カップ成形されたパウチフィルム積層体の裁断位置(ボックス領域)が図示されている。次に、UTM装置に前記サンプルをグリップギャップ(Grip gap)30mmで固定した後、lower force 100N、higher force 150Nに設定し、繰り返して力を加えて、前記サンプルが破断するまで力が加えられた回数を測定した。測定結果は、下記[表2]に示した。
【0091】
実験例3:puncture test
実施例1~4および比較例1~4によって製造されたパウチフィルム積層体それぞれを幅90mm×長さ100mmのサイズに裁断して測定用サンプルを作製した。その後、図6に図示されている突刺強度試験機の治具に前記サンプルを挟み、直径1.0mm、チップの曲率0.5mmのピンで前記サンプルにそれぞれ20Nおよび22Nの荷重の力を繰り返して加えて、サンプルに穴が開くまでの回数を測定した。
【0092】
また、前記ピンの落下荷重を変化させながらサンプルに落下させて各サンプルの突刺強度を測定した。
【0093】
測定結果は、下記[表2]に示した。
【0094】
【表2】
【0095】
上記[表2]から、金属層の厚さおよび基材層のTD方向の引張強度および伸び率が本発明の範囲を満たす実施例1~4の場合、疲労試験(fatigue test)、突刺サイクル(puncture cycle)および突刺強度の測定結果が、比較例1~3に比べて著しく優れていることを確認することができる。一方、TD方向の引張強度が大きく、伸び率が小さい基材層を使用した比較例4の場合、突刺強度および突刺サイクル特性には優れているが、成形性が劣り、疲労試験の結果が同一厚さの金属層を使用した実施例1および2に比べて劣っていることを確認することができる。したがって、実施例1~4のパウチフィルム積層体で電池ケースを製造する場合、優れた成形性を維持し、且つ外部ストレスに対する抵抗性が著しく改善する効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0096】
1 パウチフィルム積層体
10 基材層
20 ガスバリア層
30 シーラント層
16a、16b 接着層
100 電池ケース
110 下部ケース
120 上部ケース
110a、110b カップ部
130 ブリッジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】