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特表2025-501570再成形できる熱硬化性樹脂材料の調製プロセス
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  • 特表-再成形できる熱硬化性樹脂材料の調製プロセス 図1
  • 特表-再成形できる熱硬化性樹脂材料の調製プロセス 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-22
(54)【発明の名称】再成形できる熱硬化性樹脂材料の調製プロセス
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/50 20060101AFI20250115BHJP
   C08G 59/38 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
C08G59/50
C08G59/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537823
(86)(22)【出願日】2022-12-19
(85)【翻訳文提出日】2024-08-21
(86)【国際出願番号】 EP2022086691
(87)【国際公開番号】W WO2023117933
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】202121060075
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(31)【優先権主張番号】22156152.5
(32)【優先日】2022-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524170522
【氏名又は名称】サイエンスコ エスアー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】スード, ラーキー
(72)【発明者】
【氏名】ヴォロダル, ヴィナヤック
(72)【発明者】
【氏名】ダージ, ヘマン
(72)【発明者】
【氏名】リーヴェスト, ザビエ
【テーマコード(参考)】
4J036
【Fターム(参考)】
4J036AA05
4J036AB01
4J036AB02
4J036AC01
4J036AC02
4J036AC03
4J036AC05
4J036AC14
4J036AD08
4J036AD21
4J036AF06
4J036AG01
4J036AG07
4J036AH06
4J036AH07
4J036AH09
4J036AH13
4J036AJ18
4J036AK11
4J036DA05
4J036DC38
4J036DC41
4J036HA11
4J036JA01
4J036JA06
(57)【要約】
エポキシ樹脂を硬化することを含む、再成形できる熱硬化性樹脂材料を調製するためのプロセスであって、硬化することが、(a)少なくとも1種のイミダゾール化合物及び(b)少なくとも1種のベンゾトリアゾール化合物を使用して実施されるプロセス。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂を硬化することを含む、再成形できる熱硬化性樹脂材料を調製するためのプロセスであって、硬化することが、(a)少なくとも1種のイミダゾール化合物及び(b)少なくとも1種のベンゾトリアゾール化合物を使用して実施されるプロセス。
【請求項2】
エポキシ樹脂が1種以上のエポキシ樹脂を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
エポキシ樹脂が、二官能性エポキシ樹脂と三官能性エポキシ樹脂との混合物である、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
エポキシ樹脂が、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA)と、トリグリシジルパラ-アミノフェノール(TGAP)との混合物である、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
二官能性エポキシ樹脂が、エポキシ樹脂の総量に対して65重量%~100重量%の量で添加される、請求項3又は4に記載のプロセス。
【請求項6】
三官能性エポキシ樹脂が、エポキシ樹脂の総量に対して25重量%~65重量%の量で添加される、請求項3~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
二官能性エポキシ樹脂と三官能性エポキシ樹脂との混合物中で、二官能性エポキシ樹脂の量が50重量%~90重量%であり、三官能性エポキシ樹脂の量が50重量%~10重量%である、請求項3~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記ベンゾトリアゾール化合物が、前記エポキシ樹脂の百重量部当たり5~50重量部の量で添加される、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記イミダゾール化合物が、前記エポキシ樹脂の百重量部当たり0.1~3.5重量部の量で添加される、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
イミダゾール化合物が1-メチルイミダゾールである、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
エポキシ樹脂及びベンゾトリアゾール化合物が先ず混合され、イミダゾール化合物が混合物に添加される、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセスによって得られる再成形できる熱硬化性樹脂材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再成形できる熱硬化性樹脂材料の調製プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
熱硬化性樹脂材料は、これらの材料が高い融点を有し、及び容易に溶融できないことを意味する、比較的不融性状態をもたらす、熱、触媒、紫外線等の作用による化学反応を受けるであろう又は受けている材料である。それらの使用は、近年、硬化プロセス中に形成される架橋のために発展してきた。硬化は、樹脂のハードニングの強靱化を生み出すように、化学反応が起こるプロセスである。硬化は、UVによって若しくは熱の作用下で、又は硬化剤つまりハードナーと一般に言われる、添加剤の使用によって誘導され得る。架橋プロセスは、熱が加えられる場合に生成物再溶融のリスクを排除し、これらの材料は、コーティング、接着剤、電子ラミネート(プリント回路基板の製造に使用されるなどの)、電気絶縁体、エレクトロニクス、電化製品及び自動車部品(板ばね、ポンプ及び電気部品などの)の部門において必須となりつつある。
【0003】
熱硬化性樹脂材料は、一般に、それらの化学的に架橋した性質のために熱可塑性材料よりも良好な熱機械的特性及び耐化学薬品性を示す。一般に利用される熱硬化性樹脂材料には、加硫ゴム、繊維補強ポリマー複合材料、ポリエステル樹脂、ポリウレタン、メラミン及びエポキシ樹脂が含まれる。
【0004】
特に、エポキシは、低密度、タック、ドレープ、加工性及び低コストなどの、ある種の利点を他の材料を上回って提供する。熱硬化性エポキシ材料は、共反応性硬化剤(ハードナーとしても知られる)、触媒硬化剤(促進剤又は触媒としても知られる)又は両方の存在下で重合させられるエポキシ樹脂から誘導される。傑出した総合性能のおかげで、エポキシ樹脂は、航空宇宙、新エネルギー、電子情報、絶縁体等を含むほとんど全ての工業分野のための様々なコーティング、複合材料及び接着剤を製造するために広く使用されてきた。例えば、エポキシ樹脂は、集積回路及び半導体におけるパッケージング樹脂の90%超の利用を占めており、電子情報産業におけるエポキシ樹脂の需要は、毎年成長すると予測される。
【0005】
一般に、硬化性エポキシ樹脂用の試剤には、ポリアミン、酸無水物、フェノール類等などのハードナー、及び三フッ化ホウ素(BF)錯体、ジシアンジアミド、二塩基性酸ヒドラジド、第三級アミン、イミダゾール化合物等などの硬化触媒が含まれ得る。しかしながら、これらの材料の主な欠点は、それらが耐腐食性に乏しく、且つ高温で不十分な電気的及び機械的特性を有することである。
【0006】
分子セグメントの架橋構造のために、いったんこれらの材料が架橋したら、熱硬化性材料が硬化した場合にそれは修復する又は溶解させることができず、その中にドープされた高コスト充填材はリサイクルすることができなかった。更に、熱硬化性材料は再成形することが困難である。今までのところ、容易に溶融させ、何度も再成形することができる高い機械的強度を持った熱硬化性材料を製造することは困難である。
【0007】
自動車、電化製品、エレクトロニクス等で熱硬化性樹脂材料を使用した後に、再使用するために回復され、再び再成形されるべきであることが、資源リサイクリングの観点から望まれてきた。熱硬化性樹脂材料は、加工中に不可逆の化学変化、架橋を受けるので、それらは、従来法によって再成形することが困難である。これが、近年、この関係分野のプレーヤーが、持続的な発展のために熱的及び機械的特性の損失なしに数回再使用することができる優れた再成形できる特性を有する熱硬化性樹脂材料を開発することを望んできた理由である。
【0008】
熱硬化性材料を調製するための幾つかのアプローチを文献に見いだすことができる。熱可塑性又は熱硬化性の再成形できるソフトポリウレタンの調製方法が、Chen Hong M.,Journal of Polymer Research,2021,28:201によって記載されている。この文書において、異なる再成形できるポリウレタンを合成するための統一方法が提案されている。ポリエチレングリコール(PEG)ジオールがソフトセグメントとして、ポリカプロラクトン(PCL)ジオールがハードセグメントとして、及びヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)が、PEGとPCLLとを連結するための鎖延長剤として選択される。1.2のNCO/OH比を有するポリウレタンは、熱可塑性であり、一方、NCO/OH比2.4を有するものは、熱硬化性である。全てのポリウレタンは、ソフトであり、ほぼ室温で再成形することができる。しかしながら、このプロセスは、制限された変形能及び再加工性を有する熱硬化性ポリウレタンの低い引張強度及び低いガラス転移温度(T)値などの多くの欠点を有する。更に、そのような熱硬化性ポリウレタンは、高性能宇宙応用に好適ではない。
【0009】
動的シリルエーテル結合を含有する並びに良好な形状記憶及び再加工能を有するエポキシ熱硬化性樹脂が、Qinfeng Liu,Macromol.Chem.Phys.,2019,220,1900149に記載されている。この文書において、ビスフェノールAエポキシ樹脂及びポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルが一緒に使用され、エポキシ樹脂が、エポキシ熱硬化性材料を生成するためにカップリング剤((3-アミノプロピル)トリエトキシシラン)と反応させられる。得られた熱硬化性エポキシ樹脂は、良好な再加工、再成形及び形状記憶能を有する。しかしながら、この方法は、幾つかの欠点を抱えている。第一に、本プロセスは、エポキシ熱硬化性材料を得るためにエタノールのような溶媒及び水酸化カリウムの使用を伴い、それは、不純物の成長につながり、精製を必要とする。そのため、得られる材料は、非常に低いガラス転移(T)温度及び引張強度を有する。また、これらの材料は、非常に乏しい熱機械的安定性を有する。全体から見て、そのようなエポキシ熱硬化性材料は、それらを使用するのに不適切なものにする、低い形状回復、乏しい再現性及び小さい歪みを有する。
【0010】
それ故に、先に記載された先行技術によれば、先行技術のプロセスの欠点を克服すること、並びに特に、いかなる溶媒の使用もなしの簡単なプロセスによって調製することができる、再成形できる特性と共に高いガラス転移温度(T)、高い引張強度、耐溶媒性及び熱機械的安定性を有する、速い硬化速度論を持った熱硬化性樹脂材料を製造することが必要とされている。
【発明の概要】
【0011】
上記の欠点は、今、エポキシ樹脂を硬化することを含む、再成形できる熱硬化性樹脂材料を調製するためのプロセスであって、硬化することが(a)少なくとも1種のイミダゾール化合物及び(b)少なくとも1種のベンゾトリアゾール化合物を使用して実施されるプロセスに関する本発明の第1の態様によって克服される。
【0012】
本発明の第2の態様は、本発明によるプロセスによって得られる再成形できる熱硬化性材料に関する。
【0013】
本主題のこれら及び他の特徴、態様及び利点は、以下の記載及び添付の特許請求の範囲を参照してより良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】再成形性効果を示す。
図2】硬化速度論を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
当業者は、本開示が具体的に記載されるもの以外の変形及び修正の対象になることを知っているであろう。本開示は、全てのそのような変形及び修正を包含することが理解されるべきである。本開示は、また、本明細書において言及されるか又は示される全てのそのような工程、特徴、組成物及び化合物を個々に又は一括して、並びにそのような工程又は特徴の任意の又はより多くの任意の及び全ての組合せを包含する。
【0016】
定義
便宜上、本開示の更なる説明の前に、本明細書、及び実施例において用いられる特定の用語がここでまとめられる。これらの定義は、本開示の残りの部分を考慮して読まれる及び当業者によるように理解されるべきである。本明細書において使用される用語は、当業者に認められる及び公知である意味を有するが、しかしながら、便宜上及び完全性のために、特定の用語及びそれらの意味が以下に示される。
【0017】
冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、冠詞の文法的対象の1つ又は2つ以上を(すなわち少なくとも1つを)指すために使用される。
【0018】
用語「及び/又は」は、意味「及び」及び「又は」を含む。
【0019】
用語「含む」、「包含する」、「含んでいる」及び「包含している」は、包括的な、開いた意味において使用され、付加的な要素が包含され得ることを意味する。本明細書の全体にわたって、文脈が他に必要としない限り、「含む」などの、これらの用語及びそれらの変形は、述べられる要素若しくは工程又は要素若しくは工程の群の包含を暗示するが、任意の他の要素若しくは工程又は要素若しくは工程の群の排除を暗示しないことが理解されるであろう。用語「包含している」は、「包含しているが、限定されない」を意味するために使用される。「包含している」及び「包含しているが、限定されない」は、同じ意味で使用される。
【0020】
比、濃度、量、及び他の数値データは、本明細書では、範囲形式で示され得る。そのような範囲形式は、単に便宜上及び簡潔さのために使用されるにすぎず、範囲の限界として明示的に列挙された数値を包含するのみならず、各数値及び部分範囲が明示的に列挙されるかのように、その範囲内に包含される個々の数値又は部分範囲も全て包含すると柔軟に解釈されるべきであることが理解されるべきである。例えば、60℃~180℃の温度範囲は、60℃~180℃の明示的に列挙された範囲のみならず、80℃~110℃、150℃~160℃等などの、部分範囲、並びに135℃及び175.5℃などの、明記された範囲内の小数量を含む、個々の量も包含すると解釈されるべきである。
【0021】
本発明は、エポキシ樹脂を硬化することを含む、再成形できる熱硬化性樹脂材料を調製するためのプロセスであって、硬化することが、(a)少なくとも1種のイミダゾール化合物及び(b)少なくとも1種のベンゾトリアゾール化合物を使用して実施されるプロセスを提供する。
【0022】
本発明はまた、本発明のプロセスによって得られる、再成形できる熱硬化性樹脂材料を提供する。
【0023】
使用される用語「再成形できる」は、本発明の枠組み内で、その熱的及び機械的特性を失うことなく加熱することによって再三再四熱硬化性樹脂材料を再成形することが可能である熱硬化性樹脂材料の特性を指す。熱硬化性樹脂材料は、一般に、加熱又は化学薬品添加すると不可逆的に硬化する、室温で液体の又は展性のある材料である。加熱又は化学薬品添加中に、それは、分子を所定の位置に保持し及び材料の基本的性質を変化させて、それを溶融から防ぐ、架橋と呼ばれる、ある種の結合を形成する。このプロセスは、硬化と呼ばれ、結果として熱硬化性樹脂材料は、それが硬化した後に溶融させる及び再成形することができない。再成形できる特性で、ガラス転移温度(T)、引張強度、破壊歪み、貯蔵弾性率、熱分解温度などのその熱的及び機械的特性の損失なしに熱硬化性樹脂材料を使用することが可能である。再成形できる特性を持った、そのような熱硬化性樹脂材料は、強く、完全に再加工可能であり、且つリサイクルでき、コーティング、接着剤、電子ラミネート(プリント回路基板の製造に使用されるなどの)、電気絶縁材、エレクトロニクス、電化製品及び自動車部品(板ばね、ポンプ及び電気部品などの)のような様々な部門において使用することができる。
【0024】
本発明の脈略の中で、表現「硬化性エポキシ樹脂」は、その通常の意味に従って、すなわち、複数のエポキシド基を含むポリマーであって、前記エポキシ基の互いの反応によって及び/又はそれと好適な硬化剤との反応によって三次元の架橋熱硬化構造を生成し得るポリマーを示すために使用される。本明細書で使用される場合、「エポキシド基」は、隣接エポキシ基、すなわち、1,2-エポキシ基を意味する。本発明により使用されるエポキシ樹脂は、任意の従来のエポキシ樹脂であり得る。
【0025】
エポキシ樹脂の例は、エピクロロヒドリンと、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ヘキサヒドロビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールA、ピロカテコール、レゾルシノール、クレゾール、ノボラック、テトラブロモビスフェノールA、トリヒドロキシビフェニル、ビスレゾルシノール、ビスフェノールヘキサフルオロアセトン、テトラメチルビスフェノールF、ビキシレノールなどの多価フェノールとの反応によって調製されるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;エピクロロヒドリンと、グリセロール、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの多価(シクロ)脂肪族アルコールとの反応によって調製されるポリグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;エピクロロヒドリンと、p-オキシ安息香酸、β-オキシナフトエ酸などのヒドロキシカルボン酸との反応によって調製されるグリシジルエーテルエステル型エポキシ樹脂;フタル酸、メチルフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、エンドメチレンヘキサヒドロフタル酸、トリメリット酸、高分子脂肪族酸などの多塩基性カルボン酸から誘導されるポリグリシジルエステル型エポキシ樹脂;アミノフェノール、アミノアルキルフェノールから誘導されるグリシジルアミノグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;アミノ安息香酸から誘導されるグリシジルアミノグリシジルエステル型エポキシ樹脂;アニリン、トルイジン、トリブロモアニリン、キシリレンジアミン、ジアミノシクロヘキサン、ビスアミノメチルシクロヘキサン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホンから誘導されるグリシジルアミン型エポキシ樹脂;エポキシ化ポリオレフィン、グリシジルヒダントイン、グリシジルアルキルヒダントイン、トリグリシジルシアヌレート;ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アルキルフェノールグリシジルエーテル、安息香酸グリシジル、スチレンオキシドなどのモノエポキシ化合物等である。それらは、独立して又はそれらの2つ以上の混合剤で使用され得る。エポキシ樹脂は、当業者に公知の方法に従って得られ得る。
【0026】
本発明に関連して、エポキシ樹脂は、1種以上のエポキシ樹脂を含むことができる。典型的には、本発明のエポキシ樹脂は、エポキシ樹脂の混合物である。いくつかの実施形態では、エポキシ樹脂は、有利には、二官能性エポキシ樹脂、三官能性エポキシ樹脂、四官能性エポキシ樹脂又はそれらの混合物から選択され得る。
【0027】
いくつかの実施形態では、エポキシ樹脂は、二官能性エポキシ樹脂などの2つのエポキシ基を有する化合物である。二官能性エポキシ樹脂は、一般に、2つの官能性エポキシ基から得られる(1分子当たり2つのエポキシ基を有する)エポキシ樹脂である。そのようなエポキシ樹脂は、芳香族、脂環式又は脂肪族であることができる。二官能性エポキシ樹脂の好ましい例としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格を持ったエポキシ樹脂、ナフタレン骨格を持ったエポキシ樹脂、ビナフタレン骨格を持ったエポキシ樹脂及びノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。より好ましくは二官能性エポキシ樹脂は、ビスフェノール型エポキシ樹脂であり、最も好ましくは二官能性エポキシ樹脂は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA)である。
【0028】
いくつかの実施形態では、エポキシ樹脂は、三官能性エポキシ樹脂などの3つのエポキシ基を有する化合物である。三官能性エポキシ樹脂は、一般に、3つの官能性エポキシ基から得られる(1分子当たり3つのエポキシ基を有する)エポキシ樹脂である。そのようなエポキシ樹脂は、芳香族、脂環式又は脂肪族であることができる。三官能性エポキシ樹脂の好ましい例としては、イソシアヌレート型エポキシ樹脂及びp-アミノフェノール型エポキシ樹脂が挙げられる。より好ましくは三官能性エポキシ樹脂は、アミノフェノール型エポキシ樹脂であり、最も好ましくは三官能性エポキシ樹脂は、トリグリシジルp-アミノフェノール(TGAP)である。
【0029】
いくつかの実施形態では、エポキシ樹脂は、四官能性エポキシ樹脂などの4つのエポキシ基を有する化合物である。四官能性エポキシ樹脂は、一般に、4つの官能性エポキシ基から得られる(1分子当たり4つのエポキシ基を有する)エポキシ樹脂である。そのようなエポキシ樹脂は、芳香族、脂環式又は脂肪族であることができる。四官能性エポキシ樹脂の好ましい例としては、m-キシレンジアミン型エポキシ樹脂及びジフェニルメタン型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0030】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明で使用されるエポキシ樹脂は、二官能性エポキシ樹脂と三官能性エポキシ樹脂との混合物である。
【0031】
1つの好ましい実施形態では、エポキシ樹脂は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA)と三官能性エポキシ樹脂との混合物である。別の実施形態では、エポキシ樹脂は、二官能性エポキシ樹脂とトリグリシジルパラ-アミノフェノール(TGAP)との混合物である。
【0032】
最も好ましい実施形態では、エポキシ樹脂は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA)とトリグリシジルパラ-アミノフェノール(TGAP)との混合物である。
【0033】
いくつかの実施形態では、エポキシ樹脂は、任意選択的に、本発明のエポキシ樹脂及び/又はエポキシ樹脂の混合物とは別の他のエポキシ樹脂を含む。そのようなエポキシ樹脂は、上述の、任意の従来のエポキシ樹脂である。
【0034】
二官能性エポキシ樹脂と三官能性エポキシ樹脂との混合物中の二官能性エポキシ樹脂の量は、エポキシ樹脂の総量に対して一般に少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも65重量%、より好ましくは少なくとも80重量%のものである。その上、それは、混合物中のエポキシ樹脂の総量に対して最大でも90重量%、より好ましくは最大でも80重量%のものである。
【0035】
二官能性エポキシ樹脂と三官能性エポキシ樹脂との混合物中の三官能性エポキシ樹脂の量は、エポキシ樹脂の総量に対して一般に少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも25重量%、より好ましくは少なくとも45重量%のものである。その上、それは、混合物中のエポキシ樹脂の総量に対して最大でも65重量%、より好ましくは最大でも50重量%のものである。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態では、混合物中の二官能性エポキシ樹脂の量は、50重量%~90重量%であり、三官能性エポキシ樹脂の量は、50重量%~10重量%である。好ましくは混合物中の二官能性エポキシ樹脂の量は、65重量%~80重量%であり、三官能性エポキシ樹脂の量は、35重量%~20重量%である。
【0037】
いくつかの実施形態では、本発明で使用されるイミダゾールは、一般に、式(A)
【化1】
(式中、互いに等しいか若しくは異なる、R及びRは、水素、ハロゲン、カルボニル又は炭化水素、好ましくはC~C12アルキル若しくは脂環式(ここで、アルキル基は、線状、分岐若しくは環状であり得る)及び、1つ以上のヘテロ原子若しくはヘテロ原子含有基を任意選択的に含んでいる、アリール基からなる群から独立して選択される)
に相当する。網羅的であることなく、好適なアリール基は、フェニル、トリル、キシリル等からなるリストの中で選択され得る。
【0038】
好ましくはRは、C~C12アルキル基であり、Rは水素であり、より好ましくはRはメチルであり、Rは水素であり、最も好ましくはイミダゾール化合物は1-メチルイミダゾールである。
【0039】
他の実施形態では、本発明で使用されるイミダゾールは、式(B)
【化2】
(式中、互いに等しいか若しくは異なる、R及びRは、水素、ハロゲン、カルボニル又は炭化水素、好ましくはC~C12アルキル若しくは脂環式(ここで、アルキル基は、線状、分岐若しくは環状であり得る)及び、1つ以上のヘテロ原子若しくはヘテロ原子含有基を任意選択的に含んでいる、アリール基からなる群から独立して選択される)
を有するベンズイミダゾール化合物である。網羅的であることなく、好適なアリール基は、フェニル、トリル、キシリル等からなるリストの中で選択され得る。
【0040】
好ましくはRは、C~C12アルキル基であり、Rは水素であり、より好ましくはRはメチルであり、Rは水素であり、最も好ましくはベンズイミダゾール化合物は1-メチルベンズイミダゾールである。
【0041】
本発明で使用されるイミダゾール化合物の量は、一般にエポキシ樹脂の百重量部当たり0.01~5重量部、より好ましくはエポキシ樹脂の百重量部当たり0.1~3.5重量部、更により好ましくはエポキシ樹脂の百重量部当たり0.5~2重量部である。
【0042】
本発明で使用されるベンゾトリアゾール化合物の量は、一般にエポキシ樹脂の百重量部当たり1~65重量部、より好ましくはエポキシ樹脂の百重量部当たり5~50重量部、更により好ましくはエポキシ樹脂の百重量部当たり15~35重量部である。
【0043】
本発明の一実施形態では、エポキシ樹脂、イミダゾール化合物及びベンゾトリアゾール化合物は、同時に混ぜ合わせられる。
【0044】
本発明の別の実施形態では、イミダゾール化合物とベンゾトリアゾール化合物とが先ず混合され、エポキシ樹脂がその後混合物に添加される。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態では、エポキシ樹脂とイミダゾール化合物とが先ず混合され、その後ベンゾトリアゾール化合物が混合物に添加される。
【0046】
本発明の1つの好ましい実施形態では、エポキシ樹脂とベンゾトリアゾール化合物とが先ず混合され、その後イミダゾール化合物が混合物に添加される。
【0047】
本発明で使用されるエポキシ樹脂、イミダゾール化合物及びベンゾトリアゾール化合物は、有利には、室温で乾式混合され、引き続き穏やかに加熱することができる。混合は、いかなる溶媒の使用もなしに単に混合することによって行われる。イミダゾール化合物及びベンゾトリアゾール化合物は、いかなる溶媒の包含もなしにエポキシ樹脂に可溶性であることができる。理論に制約されることなく、溶媒の使用は、相当する硬化熱硬化性材料の高熱特性の低下をもたらし得、溶媒を添加する結果として形成される不純物を除去するための追加の精製工程を必要とし、プロセス全体の作業時間を増加させる。本発明の方法において、反応ミキサーは、溶媒を含まない。
【0048】
得られた混合物は、硬化を受ける。硬化は、一般に、初期硬化段階である室温で先ず行われる。この段階は、発熱を制御し、反応混合物の均質な架橋に役立つ。混合物は、ゲル状態を形成する。これに、広範囲にわたって変わり得る高温での第2の硬化が続く。
【0049】
好ましくは、第2の硬化工程の温度は、50℃~200℃の範囲であり、より好ましくは温度は、80℃~160℃の範囲である。第2の硬化工程は、硬化プロセスを完了するために及び混合物の残っている部分を硬化させるために行われる。混合物は、固体状態まで硬化させられ、成形することができる。ゲル状態を形成することなく混合物を直接高温で硬化させると、粘度をより低くし、混合物がより容易に流れる又は垂れ下がることを可能にする。
【0050】
有利には、様々な添加物、例えば希釈剤、顔料、充填材、繊維材料、染料、樹脂、ポリオレフィン、可塑剤、並びにコールタール、コールタールピッチ及びアスファルト瀝青、例えば、アスファルト瀝青及び芳香族潤滑油抽出物から調製されたブローン瀝青又はカットバック瀝青、パイン油、パインタール、潤滑油及びそれの芳香族抽出物などの非揮発性増量剤が、硬化前に混合物に添加され得る。
【0051】
有利には、エポキシ樹脂、イミダゾール化合物及びベンゾトリアゾール化合物の混合工程後に、溶媒を添加することができる。好適な溶媒は、アセトン、メチルシクロヘキサノン及びジアセトンアルコールなどのケトン;酢酸エチル及び酢酸n-ブチルなどのエステル;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル及びそれらのアセテートなどのグリコールエーテルである。
【0052】
エポキシ樹脂の硬化は、他の硬化剤の添加あり又はなしで達成することができるが;それにもかかわらず、硬化性エポキシ樹脂と組み合わせて他の硬化剤を使用することが好ましい。本明細書において用語「他の硬化剤」は、硬化剤として使用することができる、硬化性エポキシ樹脂のイミダゾール及びベンゾトリアゾール以外の化合物を意味する。
【0053】
エポキシ樹脂用の一般的なクラスの硬化剤は、アミン(ポリアミンを含む)、ポリアミドアミン、ポリアミド、酸、酸無水物、フェノール類、アルコール及びチオールを含む。好適な硬化剤は、本明細書での使用のために選択される硬化性エポキシ樹脂又は樹脂の混合物に応じて、いかなる当業者によってもエポキシ樹脂用の硬化剤から選択することができる。
【0054】
好ましい実施形態によれば、硬化性エポキシ樹脂及び硬化剤の配合物が調製され、使用前のある時間貯蔵され得るように、硬化剤は、室温で硬化性エポキシ樹脂と限られたのみの又はゼロの反応性を有するが、高温で硬化性エポキシ樹脂のエポキシ基と反応することができるものの中で選択される。
【0055】
有利には、硬化は、任意選択的に導電性若しくは熱伝導性充填材又は非伝導性充填材の存在下で行われる。好適な伝導性充填材は、カーボンブラック、黒鉛、金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル、アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ホウ素、ダイヤモンド及びアルミナである。好適な非伝導性充填材は、バーミキュライト、雲母、ウォラストナイト、炭酸カルシウム、チタニア、砂、ガラス、溶融石英、ヒュームドシリカ、硫酸バリウム並びにトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、塩化ビニリデン及び塩化ビニル又はそれらの組合せなどのハロゲン化エチレンポリマーの粒子である。
【0056】
硬化は、有利には、先ず室温で1h~55h、好ましくは8h~45h、より好ましくは15h~35h行われる。最初の室温硬化の後に、それは、20℃~220℃の温度で、好ましくは40℃~190℃の温度で、より好ましくは60℃~180℃の温度で更に硬化させられる。
【0057】
再成形できる熱硬化性樹脂材料は、有利には、先ずエポキシ樹脂及びベンゾトリアゾール化合物を加熱することによって得られる。この混合物は、樹脂混合物を提供するために冷却される。得られた樹脂混合物は、次いで、架橋反応を更に回避するために室温で冷却される。混合物が完全に冷却された後に、イミダゾール化合物が、樹脂混合物に添加され、完全に混合される。得られた混合物は、最終樹脂混合物を得るために真空下で脱気され、混合物は、再成形できる熱硬化性樹脂材料を得るために硬化させられる。
【0058】
1つの好ましい実施形態では、再成形できる熱硬化性樹脂材料は、先ず、二官能性エポキシ樹脂と三官能性エポキシ樹脂とを標準ビーカー中で混合することによって得られる。混合プロセスの間中に混合物中に発生したいかなる気泡についても、真空オーブン中室温で真空を適用することにより樹脂を脱気することでそれは除去される。ベンゾトリアゾールが、次いで樹脂混合物中に添加され、それは、樹脂混合物中に一様に分散させられ、ペースト様の粘性のある混合物を形成する。この混合物は、ベンソトリアゾールを溶融させ、エポキシ樹脂中へ混ぜ込むためにホットプレート上で連続的に撹拌しながら加熱される。混合物は、ベンゾトリアゾールが完全に溶融し、樹脂と混合されたときに透明になる。この混合物は、いかなる過度の架橋反応も回避するために室温に冷却される。この混合物が室温まで完全に冷却されたらすぐに、イミダゾールがこの混合物に添加され、混合物は、次いでオーブン中真空下に室温で脱気される。適切な混合装置によって運転される、任意の従来の混合技法が、前述の成分の混合を達成するために使用され得る。
【0059】
本発明によって得られるような再成形できる熱硬化性樹脂材料は、有利には、90℃~200℃の温度で、好ましくは120℃~180℃の温度で、より好ましくは140℃~150℃の温度で再成形性を示す。
【0060】
本発明によって得られるような、再成形できる熱硬化性樹脂材料は、有利には、70℃~150℃、好ましくは90℃~130℃、より好ましくは110℃~115℃のガラス転移温度(Tg)を示す。ガラス転移温度(Tg)は、20℃/分のスキャン速度での示差走査熱量測定法(DSC)によって中間点でASTM D3418に従って測定される。
【0061】
本発明によって得られるような、再成形できる熱硬化性樹脂材料は、有利には、70MPa以上、好ましくは85MPa以上、より好ましくは99MPa以上の引張強度を示す。引張強度は、Universal Testing Machine(UTM)(Zwick/Z030)によって測定される。
【0062】
本発明の第2の態様は、本発明のプロセスに従って得られる、再成形できる熱硬化性樹脂材料に関する。
【0063】
再成形できる熱硬化性樹脂材料は、一般に、硬化が本発明のプロセス従って(a)少なくとも1種のイミダゾール化合物及び(b)少なくとも1種のベンゾトリアゾール化合物を使用して実施される、エポキシ樹脂を硬化させることによって得られる。
【0064】
本発明のプロセスによって得られるような、再成形できる熱硬化性樹脂材料は、有利には、本明細書で前に記載されたような、少なくとも1種のエポキシ樹脂、少なくとも1種のイミダゾール及び少なくとも1種のベンゾトリアゾール化合物を含む組成物で成形する、コーティングする又は含浸させることによる硬化物品の製造のために使用することができる。硬化生成物は、スチール、アルミニウム、ガラス、木材、コンクリートなどの、多種多様な基材に非常にうまく接着し、組成物は、そのような材料のための、電気装置及びそれの部品を封入するための、及びキャスティング物、ラミネート、成形品及びコーティングを製造するための接着剤として使用することができる。
【0065】
本発明による方法は、先行技術プロセスの欠点を克服し、多数の利点を有する。それは、いかなる溶媒の使用もなしに得られる、それによっていかなる不純物も形成しない及び精製のプロセスを排除する、再成形できる熱硬化性樹脂材料を提供する。本発明のプロセスによって得られるような、再成形できる熱硬化性樹脂材料は、非常に少ない作業時間を伴い、持続可能であり、再使用のために数回再成形することができる。
【0066】
再成形性は、150℃超の温度で得られる。得られた熱硬化性樹脂材料は、110℃超の高いガラス転移温度(Tg)、85MPa超の高い引張強度、良好な熱機械的安定性、優れた形状回復、速い硬化速度論、高い耐溶媒性、高い再現性及び高い歪みを有する。
【0067】
ここで提供される実施例は、本発明の実施形態を更に説明し、実証にするものである。実施例は単に例示目的のために示され、本発明の限定と解釈されるべきではない。
【実施例
【0068】
実施例(本発明による)
以下の実施例は、再成形できる熱硬化性材料の調製プロセスを例示する。
【0069】
原材料:
熱硬化性材料の調製のために、以下の出発原料を使用した:
二官能性エポキシ(LAPOX(登録商標)B11(3101)),Atul Ltd;三官能性エポキシ(Araldite(登録商標)MY 0510CH),Huntsman;ベンゾトリアゾール(BTA),Sigma Aldrich;1-メチルイミダゾール(IM),Sigma Aldrich。
【0070】
DSC技法を使用して再成形できる熱硬化性材料の様々な特性を測定する。使用した機器は、TA Instrument(Q2000)である。Universal Testing Machine(UTM)を使用して機械的特性を測定する。使用した機器は、Zwick-Z030である。
【0071】
化学量論:
エポキシ樹脂、ベンゾトリアゾール及びイミダゾール化学量論を表1にまとめる。化学量論は、実験中に採取される原材料の量間の関係を指す。
【0072】
【表1】
【0073】
混合プロトコル:
二官能性及び三官能性エポキシ材料を化学量論とおり秤量し、ビーカー中で完全に混合した。二官能性及び三官能性エポキシ混合物の混合物を沈降させた。混合プロセス中の気泡取込みの場合には、真空オーブン中室温で真空を適用することによって樹脂を脱気した。ベンゾトリアゾール(BTA)を化学量論とおり秤量し、樹脂混合物中に添加した。ベンゾトリアゾールをエポキシ混合物中に完全に分散させ、ペースト型の粘性のある混合物を形成した。ベンゾトリアゾールは固体であるので、この段階でベンゾトリアゾールは、エポキシ中に可溶性ではなく、分散した形態のみのままであった。この混合物を、1~2分間超ホットプレート上で連続的に撹拌しながら60℃で加熱してベンゾトリアゾールを溶融させ、エポキシ混合物に混ぜ込んだ。ベンゾトリアゾールの完全な溶融後に、混合物は透明になった。直ちに混合物を室温に冷却して更なる架橋反応を回避した。混合物を室温まで冷却した後、メチルイミダゾール(MI)を化学量論とおり樹脂混合物に添加し、完全に混合した。得られた樹脂とハードナー混合物(ベンゾトリアゾール及びメチルイミダゾール)とを、オーブン中真空下に室温で15分間脱気した。樹脂をシリコーン型に注いで試験用の検体を形成した。
【0074】
硬化プロトコル:
ホールド:室温で24h
ホールド:80℃で1h
ランプ:約1hで80℃から160℃へ(80℃→120℃→160℃)
ホールド:160℃で2h
【0075】
樹脂とハードナー混合物とをシリコーン型に注いだ後に、それを室温で24h硬化させた。最初の室温硬化後に、材料をオーブン中80℃で1h更に硬化させた。80℃で1h後に、温度をゆっくり上げて1h以内にオーブンで80℃から160℃に達した。160℃で、材料を2h更に硬化させた。硬化プロセス後に、材料を一晩で室温まで放冷し、平衡させ、その後任意の特性評価に向けて進んだ。
【0076】
その後、サンプルを採取して配合物の様々な特性を測定した。
【0077】
再成形可能特性:
サンプルを形状で成形するために、長方形形状のアルミニウム薄シート金型キャビティを準備した。サンプルを先ず、アルミニウムシート製のキャビティ中150℃で加熱して物品を成形した。物品が作製されるとすぐに、サンプルを再び140℃で加熱して物品を再成形した。元の形状は60秒で回復された。再成形性効果を図1に表す。
【0078】
配合物は高温で優れた再成形性/可逆性を得ているように思われる。再成形性は140℃で得られる。
【0079】
熱的及び機械的特性
サンプルを、DSC分析(TA Instrument-Q2000)及びUTM(Zwick-Z030)のために採取して、それぞれ、熱特性及び機械的特性を測定した。結果を表2に示す。
【0080】
【表2】
【0081】
表2から、サンプルは、115℃のガラス転移温度、引張強度99MPa、破壊歪み6%、貯蔵弾性率2.4GPa、低い水吸収量520時間後に1.5%及び150℃超の再成形性を持った優れた特性を得ているように思われる。
【0082】
硬化速度論
DSC分析(TA Instrument-Q2000)を、サンプルの硬化速度論を理解するために異なるランプ速度でサンプルに関して行った。
ランプ速度350.00℃まで1℃/分、3℃/分、5℃/分及び10.00℃/分。
硬化速度論を図2に示す。図2において、明曲線は、本発明による配合物を表し;暗曲線は、標準配合物(IM/ジシアンジアミド硬化)を表し;点線は、本発明による配合物について硬化が始まる点を表し;斜線は、分析においてフォローされるランプ速度温度を表す。
【0083】
本発明による配合物の硬化は、最大硬化で25分で終わるが、一方、標準配合物の硬化は、最大硬化で40分で終わるように思われる。それ故に、本発明による配合物は、市販の速硬化性配合物(IM/ジシアンジアミド硬化)と比較される場合に速い硬化速度論を有する。
【0084】
貯蔵寿命研究
サンプルをDSC分析(TA Instrument-Q2000)のために採取して準周囲温度で貯蔵寿命を測定した。結果を表3に示す。
【0085】
【表3】
【0086】
0℃及び5℃で24h貯蔵された配合物は、ある百分率の架橋と粘度の増加とを示すように思われる。それは、硬化樹脂の最大の可撓性と最適な物理的特性とを与える。
【0087】
上記の結果によれば、本出願人は、硬化可能量のベンゾトリアゾール化合物及びイミダゾール化合物でエポキシ樹脂を硬化させることによって再成形できる熱硬化性樹脂材料を調製することができる。本発明のプロセスによって得られる、再成形できる熱硬化性樹脂材料は、115℃でのガラス転移温度(Tg)、99MPaの引張強度、6%の破壊歪み、2.4GPaの貯蔵弾性率、熱分解温度(Td)365及び10.9のラップせん断強度を持った優れた熱的及び機械的特性を有する。発明の上記のプロセスによって得られる、再成形できる熱硬化性樹脂材料は、140℃での再成形性、速い硬化速度論及び優れた耐溶媒性を有する。
【0088】
それは、再成形できる特性並びに優れたガラス転移温度及び引張強度を有する熱硬化性樹脂材料を提供し、それは、数回回復される及び再成形されることを可能にし、自動車、コーティング、接着剤及び自動車部品においてこれらの熱硬化性材料を再使用することが可能である。
図1
図2
【国際調査報告】