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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-22
(54)【発明の名称】無方向性電気鋼板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20250115BHJP
   C22C 38/06 20060101ALI20250115BHJP
   C22C 38/60 20060101ALI20250115BHJP
   C21D 8/12 20060101ALI20250115BHJP
   H01F 1/147 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
C22C38/00 303U
C22C38/06
C22C38/60
C21D8/12 A
H01F1/147 175
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537872
(86)(22)【出願日】2022-12-21
(85)【翻訳文提出日】2024-08-07
(86)【国際出願番号】 KR2022020962
(87)【国際公開番号】W WO2023121293
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0184701
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クォン, スビン
【テーマコード(参考)】
4K033
5E041
【Fターム(参考)】
4K033AA01
4K033CA00
4K033CA01
4K033CA02
4K033CA03
4K033CA04
4K033CA05
4K033CA06
4K033CA07
4K033CA08
4K033CA09
4K033DA01
4K033FA01
4K033FA03
4K033FA12
4K033FA13
4K033FA14
4K033HA01
4K033HA02
4K033HA03
4K033HA04
4K033KA00
5E041AA02
5E041AA19
5E041BD09
5E041CA04
5E041HB11
5E041NN01
5E041NN18
(57)【要約】
【課題】スケール除去時のショットボール投射量を高め、電気鋼板の核生成サイトを増加させ、冷延板焼鈍後に微細結晶粒を確保し、電気鋼板の全方向降伏強度を増加させた無方向性電気鋼板及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の無方向性電気鋼板は、重量%で、Si:2.0~6.5%、Al:0.1~1.3%、Mn:0.3~2.0%を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなり、粒径が板厚さの10%以下の結晶粒の面積分率が10.0%~35.0%であり、かつ個数分率が15%~55%であり、Cr:0.2重量%以下(0%を除く)、Sn:0.06重量%以下(0%を除く)、及びSb:0.06重量%以下(0%を除く)のうち1種以上をさらに含み、さらにC、N、S、Ti、Nb、及びVのうち1種以上を0.005重量%以下含むことを特徴とする
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量%で、Si:2.0~6.5%、Al:0.1~1.3%、Mn:0.3~2.0%を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなり、
粒径が板厚さの10%以下の結晶粒の面積分率が10.0%~35.0%であり、かつ個数分率が15%~55%であることを特徴とする無方向性電気鋼板。
【請求項2】
Cr:0.2重量%以下(0%を除く)、Sn:0.06重量%以下(0%を除く)、及びSb:0.06重量%以下(0%を除く)のうち1種以上をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の無方向性電気鋼板。
【請求項3】
さらにC、N、S、Ti、Nb、及びVのうち1種以上を0.005重量%以下含むことを特徴とする請求項1に記載の無方向性電気鋼板。
【請求項4】
Cu:0.01~0.2重量%、P:0.100重量%以下、B:0.002重量%以下、Mo:0.01重量%以下、Mg:0.005重量%以下、及びZr:0.005重量%以下のうち1種以上をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の無方向性電気鋼板。
【請求項5】
平均結晶粒径が5~50μmであることを特徴とする請求項1に記載の無方向性電気鋼板。
【請求項6】
圧延方向に測定した降伏強度及び圧延垂直方向に測定した降伏強度が下記式1及び式2を満たすことを特徴とする請求項1に記載の無方向性電気鋼板。
[式1]
(YP0.2R+YP0.2C)/2≧480
[式2]
│YP0.2R-YP0.2C│/{(YP0.2R+YP0.2C)/2}≦0.025
(式1及び式2中、YP0.2Rは圧延方向に測定した降伏強度(MPa)を示し、YP0.2Cは圧延垂直方向に測定した降伏強度(MPa)を示す。)
【請求項7】
鉄損(W10/1000)が下記式3を満たすことを特徴とする請求項1に記載の無方向性電気鋼板。
[式3]
10/1000≦40+t×240
(式3中、W10/1000は、1000HZの周波数で1.0Tの磁束密度を誘起した時の鉄損(W/kg)を示し、tは鋼板の厚さ(mm)を示す)
【請求項8】
重量%で、Si:2.0~6.5%、Al:0.1~1.3%、Mn:0.3~2.0%を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなるスラブを熱間圧延して熱延板を製造するステップ、
前記熱延板表面に存在するスケールを除去するステップ、
前記スケールが除去された熱延板を冷間圧延して冷延板を製造するステップ、及び、
前記冷延板を冷延板焼鈍するステップを含み、
前記スケールを除去するステップは、ショットボールを15~35kg/(min・m)量で鋼板に投射してスケールを除去するステップを含むことを特徴とする無方向性電気鋼板の製造方法。
【請求項9】
前記ショットボールの平均粒度は0.1~1mmであり、1秒~60秒間投射することを特徴とする請求項8に記載の無方向性電気鋼板の製造方法。
【請求項10】
前記ショットボールの材料はFe系合金であることを特徴とする請求項8に記載の無方向性電気鋼板の製造方法。
【請求項11】
前記冷延板焼鈍するステップは、700~850℃の温度で焼鈍することを特徴とする請求項8に記載の無方向性電気鋼板の製造方法。
【請求項12】
前記スケールを除去するステップの前に熱延板焼鈍するステップをさらに含むことを特徴とする請求項8に記載の無方向性電気鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無方向性電気鋼板及びその製造方法に係り、より詳しくは、スケール除去時のショットボール投射量を高め、表面の累積されたエネルギーを増加させ、圧延方向及び圧延垂直方向で強度を同時に向上させた無方向性電気鋼板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無方向性電気鋼板は、電気エネルギーを機械的エネルギーに変換させるモーターに主に使用されるが、その過程で高い効率を発揮するために、無方向性電気鋼板の優れた磁気的特性が要求される。特に近年、親環境技術が注目されているようになり、全体電気エネルギー使用量の過半を占めるモーター効率を増加させることが非常に重要視されており、そのために優れた磁気的特性を有する無方向性電気鋼板の需要も増加している。
無方向性電気鋼板の磁気的特性は主に鉄損と磁束密度で評価する。鉄損は、特定磁束密度と周波数で発生するエネルギー損失を意味し、磁束密度は、特定磁場下で得られる磁化の程度を意味する。鉄損が低いほど同じ条件でエネルギー効率の高いモーターを製造することができ、磁束密度が高いほどモーターを小型化したり、銅損を減らすことができるので、低い鉄損と高い磁束密度を有する無方向性電気鋼板を作ることが重要である。
【0003】
モーター作動条件によって考慮しなければならない無方向性電気鋼板の特性も変わってくる。モーターに使用される無方向性電気鋼板の特性を評価するための基準で、多くのモーターが商用周波数50Hzで1.5T磁場が印加された時の鉄損であるW15/50を最も重要視している。しかし、様々な用途のモーターが全てW15/50の鉄損を最も重要視しているだけではなく、主な作動条件によって他の周波数や印加磁場での鉄損を評価することもある。特に、最近の電気自動車駆動モーターに使用される無方向性電気鋼板では、1.0T又はそれ以下の低磁場と400Hz以上の高周波での磁気的特性が重要な場合が多いため、W10/400などの鉄損で無方向性電気鋼板の特性を評価することになる。
また、モーターコアは、ステータコアとローターコアに分けられるが、近来におけるHEV駆動モーターなどの小型・高出力化に対する要求を満足させるために、ステータコアに使用される無方向性電気鋼板には、高磁束密度そして低鉄損に優れた磁気特性が強く求められるようになった。
【0004】
また、前記HEV駆動モーターなどの小型・高出力化を達成する手段として、モーターの回転数が高くなる傾向にあるが、HEV駆動モーターは、外径が大きいため、ローターコアには大きい遠心力が作用する点や、構造によってはローターコアブリッジ部と呼ばれる非常に狭い部分(1~2mm)が存在する点などから、ローターコアに使用される無方向性電気鋼板には従来より高強度であることが要求されるようになった。
したがって、モーターコアに使用される無方向性電気鋼板の特性としては、磁気特性が優れていることはもちろん、ローターコア用には高強度であることが、また、ステータコア用には、より高磁束密度・低鉄損であることが理想的である。このように、同じモーターコアに使用される無方向性電気鋼板であっても、ローターコアとステータコアでは要求される特性が大きく異なるが、モーターコアを製造することにおいては、材料収率を高めるなどの観点から、同一な素材鋼板からローターコア材とステータコア材を同時に採取し、その後、それぞれのコア材を積層してローターコア又はステータコアに組み立てることが好ましいと言える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、無方向性電気鋼板及びその製造方法を提供することを目的とする。具体的に、スケール除去時のショットボール投射量を高め、電気鋼板の核生成サイトを増加させ、冷延板焼鈍後に微細結晶粒を確保し、電気鋼板の全方向降伏強度を増加させた無方向性電気鋼板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の無方向性電気鋼板は、重量%で、Si:2.0~6.5%、Al:0.1~1.3%、Mn:0.3~2.0%を含み、及び残部がFe及び不可避的不純物からなり、粒径が板厚さの10%以下である結晶粒の面積分率が10.0%~35.0%であり、かつ個数分率が15%~55%である。
本発明の一実施例による無方向性電気鋼板は、Cr:0.2重量%以下(0%を除く)、Sn:0.06重量%以下(0%を除く)、及びSb:0.06重量%以下(0%を除く)のうち1種以上をさらに含むことができる。
本発明の一実施例による無方向性電気鋼板は、C、N、S、Ti、Nb、及びVのうち1種以上を0.005重量%以下をさらに含むことができる。
本発明の無方向性電気鋼板は、Cu:0.01~0.2重量%、P:0.100重量%以下、B:0.002重量%以下、Mo:0.01重量%以下、Mg:0.005重量%以下、及びZr:0.005重量%以下のうち1種以上をさらに含むことができる。
本発明の無方向性電気鋼板は、平均結晶粒径が5~50μmであることができる。
【0007】
本発明の無方向性電気鋼板は、圧延方向に測定した降伏強度及び圧延垂直方向に測定した降伏強度が下記式1及び式2を満たすことができる。
[式1]
(YP0.2R+YP0.2C)/2≧480
[式2]
│YP0.2R-YP0.2C│/{(YP0.2R+YP0.2C)/2}≦0.025
(式1及び式2中、YP0.2Rは圧延方向に測定した降伏強度(MPa)を示し、YP0.2Cは圧延垂直方向に測定した降伏強度(MPa)を示す。)
鉄損(W10/1000)が下記式3を満たすことができる。
[式3]
10/1000≦40+t×240
(式3でW10/1000は1000Hの周波数で1.0Tの磁束密度を誘起した時の鉄損(W/kg)を示し、tは鋼板の厚さ(mm)を示す)
本発明の一実施例による無方向性電気鋼板の厚さは、0.10~0.30mmであることができる。
【0008】
本発明の無方向性電気鋼板の製造方法は、重量%で、Si:2.0~6.5%、Al:0.1~1.3%、Mn:0.3~2.0%を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなるスラブを熱間圧延して熱延板を製造するステップ、熱延板表面に存在するスケールを除去するステップ、スケールが除去された熱延板を冷間圧延して冷延板を製造するステップ、及び冷延板を冷延板焼鈍するステップを含み、スケールを除去するステップは、ショットボールを15kg/(min・m)~35kg/(min・m)の量で鋼板に投射してスケールを除去する。
ショットボールの材料はFe系合金を使用することができる。
冷延板焼鈍するステップは、700~850℃温度で焼鈍することができる。
スケールを除去するステップの前に熱延板焼鈍するステップをさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スケール除去時にショットボール投射量を高め、微細再結晶を多量形成することができる。これにより、圧延方向(RD方向)及び圧延垂直方向(TD方向)を含む全方向降伏強度が向上する。
また、これにより、親環境自動車用モーター、高効率家電用モーター、スーパープレミアム級電動機の性能を追加的に改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
第1、第2及び第3などの用語は、様々な部分、成分、領域、層及び/又はセクションを説明するために使用されるが、これらに限定されない。これらの用語は、ある部分、成分、領域、層又はセクションを他の部分、成分、領域、層又はセクションと区別するためにのみ使用される。したがって、以下で説明する第1の部分、成分、領域、層又はセクションは、本発明の範囲を逸脱しない範囲で、第2の部分、成分、領域、層又はセクションとして言及することができる。
ここで使用される専門用語は、単に特定の実施形態を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図するものではない。本明細書で使用される単数形は、文言が明確に反対の意味を示さない限り、複数形も含む。本明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、ステップ、動作、要素及び/又は成分を具体化するものであり、他の特性、領域、整数、ステップ、動作、要素及び/又は成分の存在又は付加を排除するものではない。
【0011】
ある部分が他の部分「上」又は「の上」にあると記載されている場合、それはまさに他の部分の上又は上にある可能性があり、又はその間に他の部分を伴う可能性がある。対照的に、ある部分が他の部分の「直上」にあると述べる場合、その間に他の部分が介在することはない。
また、特に記載がない限り、%は重量%を意味し、1ppmは0.0001重量%である。
本発明において、追加元素をさらに含むという意味は、追加元素の追加量だけ残部である鉄(Fe)を代替して含むことを意味する。
別に定義していないが、ここで使用される技術用語及び科学用語を含むすべての用語は、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が一般的に理解する意味と同じ意味を持つ。通常使用される辞書で定義された用語は、関連技術文献と現在開示された内容に合致する意味を持つものと追加的に解釈され、定義されない限り、理想的又は非常に正式な意味に解釈されない。
以下、本発明について、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。しかし、本発明は、様々な異なる形態で実施することができ、ここで説明する実施例に限定されない。
【0012】
本発明の無方向性電気鋼板は、重量%で、Si:2.0~6.5%、Al:0.1~1.3%、Mn:0.3~2.0%を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる。
以下、鋼板合金成分限定の理由から説明する。
Si:2.0~6.5重量%
ケイ素(Si、シリコン)は、材料の比抵抗を高め、鉄損を下げる役割を果たし、添加量が少なすぎると、高周波鉄損改善効果が不十分な場合がある。逆に、多すぎると、材料の硬度が上昇し、冷間圧延性が極度に悪化し、生産性及び打抜性が劣る可能性がある。したがって、前述の範囲でSiを添加することができる。より具体的に、2.5~5.0重量%含むことができる。より具体的に、3.0~4.0重量%含むことができる。
【0013】
Al:0.1~1.3重量%
アルミニウム(Al)は、材料の比抵抗を高め、鉄損を下げる役割を果たす。添加量が少なすぎると、高周波鉄損低減に効果がなく、硝酸塩が微細に形成され、磁性を劣化させる可能性がある。逆に添加量が多すぎると、製鋼と連続鋳造などのすべての工程上の問題を発生させ、生産性を大きく低下させる可能性がある。したがって、前述の範囲でAlを添加することができる。より具体的に、0.5~1.2重量%含むことができる。より具体的に、0.7~1.0重量%含むことができる。
【0014】
Mn:0.3~2.0重量%
マンガン(Mn)は、材料の比抵抗を高め、鉄損を改善し、硫化物を形成する役割を果たす元素である。Mnの添加量が少なすぎると、硫化物が微細に析出し、磁性を低下させる可能性がある。逆にMnの添加量が多すぎると、磁性に不利な{111}集合組織の形成を助長し、磁束密度が低下する可能性があるため、前述の範囲でMnを添加することができる。より具体的に、Mnを0.5~1.5重量%含むことができる。
【0015】
本発明において、比抵抗は55~80μΩ・cmであることができる。
本発明の無方向性電気鋼板は、Cr:0.2%以下(0%を除く)、Sn:0.06%以下(0%を除く)、及びSb:0.06%以下(0%を除く)のうち1種以上をさらに含むことができる。
Cr:0.20重量%以下
クロム(Cr)は、材料の比抵抗を高め、鉄損を減少させる役割を果たす。したがって、前述の範囲でCrを添加することができる。より具体的に、0.010~0.10重量%含むことができる。より具体的に、0.050~0.040重量%を含むことができる。前述のように、追加元素をさらに含む場合、残部のFeを代替して含むことになる。
【0016】
Sn:0.06重量%以下及びSb:0.06重量%以下
錫(Sn)とアンチモン(Sb)は、結晶粒界に偏析する元素であり、結晶粒界を通じた窒素の拡散を抑制し、磁性に有害な{111}集合組織(texture)を抑制し、有利な{100}集合組織を増加させて磁気的特性を向上させるために添加する。SnとSbのそれぞれの添加量が多すぎると、結晶粒成長を妨害して磁性を低下させ、圧延性が悪くなる。したがって、前述の範囲でSn、Sbを添加することができる。より具体的に、Sn:0.005~0.050重量%、及びSb:0.005~0.050重量%を含むことができる。
より具体的に、Sn:0.01~0.02重量%、及びSb:0.01~0.02重量%含むことができる。
【0017】
鋼板母材は、Cu:0.01~0.2重量%、P:0.100重量%以下、B:0.002重量%以下、Mo:0.01重量%以下、Mg:0.005重量%以下、及びZr:0.005重量%以下のうち1種以上をさらに含むことができる。
Cu:0.01~0.20重量%
銅(Cu)は、Mnと一緒に硫化物を形成させる役割を果たす。Cuがさらに添加される場合、添加量が少なすぎると、CuMnSが微細に析出し、磁性を劣化させることができる。Cu添加量が多すぎると、高温脆性が発生し、連続鋳造や熱延時にクラックを形成する可能性がある。より具体的に、Cuを0.05~0.10重量%含むことができる。
【0018】
P:0.100重量%以下
リン(P)は、材料の比抵抗を高める役割を果たすだけでなく、粒界に偏析して集合組織を改善し、比抵抗を増加させ、鉄損を下げる役割を果たすので、追加に添加することができる。ただし、Pの添加量が多すぎると、磁性に不利な集合組織の形成をもたらし、集合組織改善の効果がなく、粒界に過度に偏析して圧延性及び加工性が低下し、生産が困難になる可能性がある。したがって、前述の範囲でPを添加することができる。より具体的に、Pを0.001~0.090重量%含むことができる。より具体的に、Pを0.005~0.085重量%含むことができる。
【0019】
B:0.002重量%以下、Mo:0.01重量%以下、Mg:0.005重量%以下、及びZr:0.005重量%以下
ホウ素(B)、モリブデン(Mo)、マグネシウム(Mg)、ジルコニウム(Zr)の場合、不純物元素と反応して微細な硫化物、炭化物及び硝酸塩を形成し、磁性に有害な影響を与えるため、これら含有量を前述のように制限することができる。
【0020】
鋼板母材は、さらにC、N、S、Ti、Nb、及びVのうち1種以上を0.005重量%以下含むことができる。
C:0.005重量%以下
炭素(C)は、多く添加される場合、オーステナイト領域を拡大し、相変態区間を増加させ、焼鈍時フェライトの結晶粒成長を抑制して鉄損を高める効果を示し、また、Tiなどと結合して炭化物を形成し、磁性を劣化させ、最終製品から電気製品に加工後、使用時に磁気時効によって鉄損を高める。したがって、前述の範囲でCを添加することができる。より具体的に、Cを0.003重量%以下含むことができる。
【0021】
S:0.005重量%以下
硫黄(S)は母材内部に微細な硫化物を形成して結晶粒成長を抑制し、鉄損を弱化させるため、できるだけ低く添加することが好ましい。Sが多量含まれる場合、Mnなどと結合して析出物を形成したり、熱間圧延中に高温脆性を引き起こす可能性がある。したがって、Sを0.005重量%以下でさらに含むことができる。具体的にSを0.0030重量%以下でさらに含むことができる。より具体的に、Sを0.0001~0.0030重量%さらに含むことができる。
【0022】
N:0.005重量%以下
窒素(N)は、Al、Tiなどと強く結合することによって硝酸塩を形成して結晶粒成長を抑制し、析出した場合、磁区移動を妨げるため、少なく含有させることが好ましい。したがって、前述の範囲でNを添加することができる。より具体的に、Nを0.003重量%以下含むことができる。
【0023】
Ti、Nb、V:0.005重量%以下
チタン(Ti)、ニオビウム(Nb)、バナジウム(V)なども強力な炭質貨物形成元素であるため、可能な限り添加しないことが好ましく、それぞれ0.01重量%以下含むようにする。
【0024】
残部はFe及び不可避的不純物からなる。不可避的不純物については、製鋼ステップ及び方向性電気鋼板の製造工程過程で混入される不純物であり、これは当該分野で広く知られているので、具体的な説明は省略する。本発明において、前述の合金成分以外の元素の追加を排除するものではなく、本発明の技術思想を損なわない範囲内で様々に含むことができる。追加元素をさらに含む場合、残部であるFeを代替して含む。
【0025】
本発明の鋼板は、微細粒結晶を鋼板内に確保して機械的強度を向上させると同時に、磁性を適切に確保する。具体的に、粒径が板厚さの10%以下の結晶粒の面積分率が10.0%~35.0%であり、かつ個数分率が15%~55%とすることができる。粒径が板厚さの10%以下の結晶粒は、機械的強度を向上させるのに役立つ。一方、微細結晶粒の面積分率のみを確保し、又は個数分率のみを確保するとき、加工性の面で問題が発生することができる。より具体的に、粒径が板厚さの10%以下の結晶粒の面積分率が15%~35%であり、かつ個数分率が15%~55%とすることができる。
【0026】
本発明において、結晶粒の粒径及び面積/個数分率は、鋼板の圧延面(ND面)と平行な面を基準に測定することができる。測定厚さ位置によって結晶粒の粒径及び面積/個数分率が変動することはないが、具体的な測定厚さ位置は、鋼板厚さの1/2位置であってもよい。結晶粒の粒径は、結晶粒と同じ面積を有する仮想の円を仮定して、その円の直径を結晶粒の粒径と見なすことができる。微細再結晶粒径の下限は特に限定されないが、測定限界分の0.1μmとすることができる。
本発明の無方向性電気鋼板は、平均結晶粒径が5~50μmであることができる。平均結晶粒径が小さすぎると、磁性面で劣り、加工性で劣る。平均結晶粒径が大きすぎると、機械的強度面で劣ることがある。より具体的に、平均結晶粒径が10~40μmであることができる。結晶粒径を調整する方で熱延板のスケール除去時にショットボールの投射量を上向修正し、再結晶時の核生成サイト増加させることにより、微細再結晶の分率を確保することができる。これについては、後述する無方向性電気鋼板の製造方法において詳細に説明するので、重複する説明は省略する。
【0027】
本発明の無方向性電気鋼板は、圧延方向に測定した降伏強度及び圧延垂直方向に測定した降伏強度が下記式1及び式2を満たすことができる。
[式1]
(YP0.2R+YP0.2C)/2≧480
[式2]
│YP0.2R-YP0.2C│/{(YP0.2R+YP0.2C)/2}≦0.025
(式1及び式2中、YP0.2Rは圧延方向に測定した降伏強度(MPa)を示し、YP0.2Cは圧延垂直方向に測定した降伏強度(MPa)を示す。)
式1及び式2を満たすという意味は、圧延方向及び圧延垂直方向で測定した降伏強度が全て優れていることを意味し、これは無方向性電気鋼板を利用してモーターの鉄芯、特に回転子を製造する時、回転子の強度を確保することができ、有用である。
【0028】
本発明の無方向性電気鋼板は、鉄損(W10/1000)が下記式3を満たすことができる。
[式3]
10/1000≦40+t×240
(式3でW10/1000は、1000HZの周波数で1.0Tの磁束密度を誘起した時の鉄損(W/kg)を示し、tは鋼板の厚さ(mm)を示す)
より具体的に、下記式を満たすことができる。
10/1000≦30+t×150
この時、鉄損は圧延方向(RD方向)及び圧延垂直方向(TD方向)で測定した鉄損の平均値であってもよい。より具体的に、鉄損(W10/1000)は、55~70W/kgであることができる。
【0029】
本発明の無方向性電気鋼板の厚さは、0.10~0.30mmであることができる。
本発明の無方向性電気鋼板の製造方法は、スラブを熱間圧延して熱延板を製造するステップ、熱延板表面に存在するスケールを除去するステップ、スケールが除去された熱延板を冷間圧延して冷延板を製造するステップ、及び冷延板を冷延板焼鈍するステップを含む。
【0030】
まず、スラブを熱間圧延する。
スラブの合金成分については、前述の無方向性電気鋼板の合金成分で説明したので、重複する説明は省略する。無方向性電気鋼板の製造過程で合金成分が実質的に変動しないため、無方向性電気鋼板とスラブの合金成分は実質的に同じである。
具体的に、スラブは、重量%で、Si:2.0~6.5%、Al:0.1~1.3%、Mn:0.3~2.0%を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる。
その他の追加元素については、
無方向性電気鋼板の合金成分で説明したので、重複する説明は省略する。
【0031】
スラブを熱間圧延する前に加熱することができる。スラブの加熱温度は制限されないが、スラブを1100~1250℃に加熱することができる。スラブ加熱温度が高すぎると、磁性を損なう析出物が再溶解し、熱間圧延後に微細に析出することができる。
次に、スラブを熱間圧延して熱延板を製造する。熱延板の厚さは2~3.0mmにすることができる。
熱延板を製造するステップの後、熱延板を熱延板焼鈍するステップをさらに含むことができる。熱延板焼鈍は、相変態のない高級電気鋼板を製造する際には実施することが好ましく、最終焼鈍板の集合組織を改善して磁束密度を向上させるのに有効である。
この時、熱延板を焼鈍するステップは、850~1200℃の温度で焼鈍することができる。熱延板焼鈍の温度が低すぎると、未満であれば、組織が成長しないか、又は微細に成長し、磁束密度の上昇効果を期待できない。熱延板焼鈍温度が高すぎると、むしろ磁気特性が劣化し、板状の変形により圧延作業性が悪くなることがある。熱延板焼鈍は必要に応じて磁性に有利な方位を増加させるために行われるものであり、省略も可能である。焼鈍された熱延板を酸洗することができる。
【0032】
次に、熱延板表面に存在するスケールを除去する。本発明では、ショットボールブラストを利用してスケールを除去するが、ショットボールの投射量を高めて、再結晶時の核生成サイト増加による微細再結晶の分率を確保することができる。
スケールを除去するステップは、ショットボールを15~35kg/(min・m)の量で鋼板に投射してスケールを除去するステップを含む。ショットボールの投射量が少なすぎると、核生成サイトが十分に確保できず、微細再結晶を十分に確保することが困難である。逆に、ショットボールの投射量が多すぎると、鋼板表面が多量に損傷するため、上限を適切に調整することができる。より具体的に、17~30kg/(min・m)の量で鋼板に投射することができる。面積当たり同じ量を投射しても、その投射される時間の長さによって微細結晶粒の確保に差が生じるため、本発明の一実施例では、時間及び面積に応じた投射量を定義する。
【0033】
ショットボールの平均粒度は0.1~1mmであり、1秒~60秒間投射することができる。より具体的に、ショットボールの平均粒度は0.3~0.8mmであり、5秒~30秒間投射することができる。ショットボールの平均粒度及びショットボール投射時間も、表面核生成サイトに影響を与える可能性がある。
ショットボールの材料は特に限定されないが、Fe系合金を使用することができる。
ショットボール投射の後、酸洗液に浸漬することにより、投射量を増やした鋼板の表面を滑らかにすることができる。酸洗液は特に限定されず、塩酸を使用することができる。酸洗液の濃度及び浸漬時間が低すぎるか、短かすぎると、投射量を増やした鋼板の粗さが高くなり、表面の問題が発生する可能性がある。逆に、酸洗液の濃度及び浸漬時間が高すぎるか、長がすぎると、鋼板表面が多量に損傷する問題が発生する可能性がある。より具体的に、酸洗液に10~60秒浸漬して酸洗することができる。
【0034】
次に、熱延板を冷間圧延して冷延板を製造する。冷間圧延は、0.15mm~0.65mmの厚さで最終圧延する。必要時に1次冷間圧延と中間焼鈍後、2次冷間圧延を行うことができ、最終圧下率は50~95%の範囲にすることができる。
次に、冷延板焼鈍を行う。冷延板焼鈍は、鋼板断面での結晶粒大きさが5~50μmになるように700~850℃の範囲内で10~1000秒間行う。冷延板焼鈍温度が低すぎると結晶粒が小さくなり、鉄損が劣化する可能性がある。温度が高すぎると、結晶粒が粗大化し、機械的強度が低下する可能性がある。より具体的に、740~820℃範囲で焼鈍することができる。
冷延板焼鈍厚鋼板は、冷間圧延で加工された組織を80面積%以上再結晶させることができる。
次に、冷延板焼鈍後、絶縁皮膜を形成することができる。前記絶縁皮膜は、有機質、無機質及び有機-無機複合皮膜で処理することができ、その他の絶縁が可能な皮膜剤で処理することも可能である。例えば、金属リン酸塩40~70重量%、及びシリカ0.5~10重量%含む絶縁皮膜形成組成物を塗布して形成することができる。
【0035】
以下、実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。しかし、このような実施例は、単に本発明を例示するためのものであり、本発明がこれに限定されるものではない。
実施例
下記表1、表2のスラブを製造した。スラブを1150℃に加熱し、850℃で熱間仕上げ圧延して板厚さ2.3mmの熱延板を製作した。熱間圧延された熱延板は、1100℃で4分間焼鈍した。次に、平均直径0.5μmの鋼鉄ショットボールを下記表3にまとめた投射量及び時間でプラストしてスケールを除去し、酸洗した。その後、冷間圧延して板厚さを0.27mmにした後、800℃で5分間冷延板焼鈍を行った。
この時、各成分含有量はICP湿式分析法で測定した。結晶粒の平均直径、微細粒の面積分率及び個数分率は、試片のTD断面を研磨して100mm以上の面積になるようにEBSDで測定した後、OIM softwareのMerge機能で併合し、Grain Size(diameter)機能で計算した時のAverage、Area fraction、Number fraction値を使用した。
降伏強度はISO 6892-1,2規格に基づいて試験した。鉄損などの磁気的特性は、それぞれの試片に対して、幅60mm×の長さ60mm×枚数5枚の試片を切断し、Single sheet testerで圧延方向と圧延垂直方向を測定した。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
【表4】
【0040】
表1~表4に示すように、合金成分、ショットボール投射量が適切に調整された実施例は、微細再結晶を十分に確保して強度が優れており、圧延方向と圧延垂直方向の降伏強度が偏差が小さいことが確認できる。
一方、合金成分が適切に調整されていない例は、微細再結晶が適切に形成されず、降伏強度数値が劣化することが確認できる。
また、ショットボール投射量が少ない例は、微細再結晶が適切に形成されず、降伏強度数値が劣化することが確認できる。
また、ショットボール投射量が過剰な例は、微細再結晶が複数形成され、降伏強度異方性が劣化することが確認できる。
また、ショットボール投射時間が短すぎたり、長すぎる例は、鋼種1~8に比べて降伏強度及び磁性特性が比較的に劣化することが確認できる。
降伏強度及び磁気特性が比較的劣ることが確認できる。
【0041】
本発明は、実施例に限定されるものではなく、異なる様々な形態で製造することができ、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者は、本発明の技術思想や本質的な特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施することができることを理解できるであろう。したがって、前記で説明した実施例は、すべての点で例示的なものであり、限定的ではないと理解されるべきである。
【国際調査報告】