(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-22
(54)【発明の名称】固体電解質、その製造方法、およびこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01B 1/06 20060101AFI20250115BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20250115BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20250115BHJP
H01B 1/10 20060101ALI20250115BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
H01B1/06 A
H01M10/052
H01M10/0562
H01B1/10
H01B13/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537916
(86)(22)【出願日】2022-12-21
(85)【翻訳文提出日】2024-06-21
(86)【国際出願番号】 KR2022020984
(87)【国際公開番号】W WO2023121307
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0184795
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592000705
【氏名又は名称】リサーチ インスティチュート オブ インダストリアル サイエンス アンド テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【氏名又は名称】沖中 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100171310
【氏名又は名称】日東 伸二
(72)【発明者】
【氏名】クウォン,オーミン
(72)【発明者】
【氏名】ナム,サン チョル
(72)【発明者】
【氏名】パク,ヨン スン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨン サン
(72)【発明者】
【氏名】オ,グァンソク
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ボッキュ
【テーマコード(参考)】
5G301
5H029
【Fターム(参考)】
5G301CA02
5G301CA05
5G301CA08
5G301CA16
5G301CA19
5G301CD01
5G301CE02
5H029AJ03
5H029AJ12
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM12
5H029DJ17
5H029HJ02
(57)【要約】
本発明は、固体電解質、その製造方法、およびこれを含むリチウム二次電池に関する。本発明の一実施例による固体電解質は、ハロゲン元素のうち一部を酸素にドーピングすることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン元素のうち一部が酸素でドーピングされた、アルジロダイト型固体電解質。
【請求項2】
Li
(xy-x-5y+7)P
(1-y)S
(xy-x-5y+6)Cl
x-xyO
4y(1≦x≦2、0.01≦y≦0.3)の組成を有する、請求項1に記載の固体電解質。
【請求項3】
下記式1を満たす、請求項1に記載の固体電解質。
<式1>
3.5≦[S]/[P]≦4.1
(前記式1において、[S]および[P]は、それぞれSおよびPのat%を意味する)
【請求項4】
XRDピーク値が、2θ=15.5°±0.5°、2θ=18°±0.5°、2θ=25.5°±0.5°、2θ=30.2°±0.5°、および2θ=32.5°±0.5°degに回折ピークを有する、請求項1に記載の固体電解質。
【請求項5】
リチウム原料物質、硫黄原料物質、ハロゲン原料物質、およびドーピング原料物質を準備するステップ;
前記原料物質を混合するステップ;および
混合によって得られた結果物を熱処理するステップを含み、
前記ドーピング原料物質は酸素を含む原料物質である、アルジロダイト型固体電解質の製造方法。
【請求項6】
前記ドーピング原料物質は、リン酸塩系化合物を含む、請求項5に記載のアルジロダイト型固体電解質の製造方法。
【請求項7】
前記リン酸塩系化合物は、Li
3PO
4、Li
4SiO
4、Li
4GeO
4、Li
3BO
3、およびLi
3AlO
3からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項6に記載のアルジロダイト型固体電解質の製造方法。
【請求項8】
前記原料物質を準備するステップで、固体電解質100mol%基準に、前記リン酸塩系化合物を0.01~0.3mol%添加する、請求項7に記載のアルジロダイト型固体電解質の製造方法。
【請求項9】
前記リチウム原料物質は、Li
2Sであり、
前記硫黄原料物質は、P
2S
5であり、
前記ハロゲン原料物質は、LiClである、請求項5に記載のアルジロダイト型固体電解質の製造方法。
【請求項10】
Li
(xy-x-5y+7)P
(1-y)S
(xy-x-5y+6)Cl
x-xyO
4y(1≦x≦2、0.01≦y≦0.3)である、請求項5に記載のアルジロダイト型固体電解質の製造方法。
【請求項11】
前記固体電解質は下記式1を満たす、請求項5に記載のアルジロダイト型固体電解質の製造方法。
<式1>
3.5≦[S]/[P]≦4.1
(前記式1において、[S]および[P]は、それぞれSおよびPのat%を意味する)
【請求項12】
正極活物質を含む正極;
負極活物質を含む負極;および
前記正極および負極の間に位置する固体電解質;を含み、
前記固体電解質は、ハロゲン元素のうち一部が酸素でドーピングされたアルジロダイト型である、リチウム二次電池。
【請求項13】
前記固体電解質は、Li
(xy-x-5y+7)P
(1-y)S
(xy-x-5y+6)Cl
x-xyO
4y(1≦x≦2、0.01≦y≦0.3)の組成を有する、請求項12に記載のリチウム二次電池。
【請求項14】
前記固体電解質は下記式1を満たす、請求項12に記載のリチウム二次電池。
<式1>
3.5≦[S]/[P]≦4.1
(前記式1において、[S]および[P]は、それぞれSおよびPのat%を意味する)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池に関し、より詳しくは、固体電解質、その製造方法およびこれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、ITモバイル機器および電気自転車、小型電気車のような小型電力駆動装置の需要が急増することにより、高容量電池に対する関心が増加している。前記高容量電池に対する需要増加により、前記高容量電池の安全性またはエネルギー密度に対する研究が活発に行われている。
【0003】
これにより、既存の二次電池の安全性を改善し、エネルギー密度を高めるための物質として、全固体電池に対する研究が活発に行われている。全固体電池は、既存のリチウム二次電池で使用される液体電解質を固体に代えた電池を意味し、電池内に可燃性の溶媒を使用せず、従来電解液の分解反応のような反応による発火や爆発が全く発生しないため、電池の安全性を改善することができる。また、負極素材としてリチウム金属またはリチウム合金を使用できるため、電池の質量および体積に対するエネルギー密度を向上させることができる。
【0004】
前記全固体電池に使用される固体電解質は、無機系固体電解質が一般に使用されており、前記全固体電池の中でアルジロダイト構造である、Li6PS5Clと同じ組成を有する硫化物系固体電解質について様々な研究が行われている。しかし、前記硫化物系固体電解質は、水分との副反応により、一般的な大気中での取り扱いが難しいという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする技術的課題は、大気中での取り扱いが容易な全固体電池を提供することである。
【0006】
本発明が解決しようとする他の技術的課題は、前記利点を有する全固体電池を製造する方法を提供することである。
【0007】
本発明が解決しようとする他の技術的課題は、前記利点を有する全固体電池を含むリチウム二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施例による固体電解質は、ハロゲン元素のうち一部が酸素にドーピングされたアルジロダイト型であってもよい。一実施例で、固体電解質は、Li(xy-x-5y+7)P(1-y)S(xy-x-5y+6)Clx-xyO4y(1≦x≦2、0.01≦y≦0.3)の組成を有することができる。一実施例で、固体電解質は、下記式1を満たすことができる。
<式1>
3.5≦[S]/[P]≦4.1
(前記式1において、[S]および[P]は、それぞれSおよびPのat%を意味する)
【0009】
一実施例で、固体電解質は、XRDピーク値が、2θ=15.5°±0.5°、2θ=18°±0.5°、2θ=25.5°±0.5°、2θ=30.2°±0.5°、および2θ=32.5°±0.5°degに回折ピークを有することができる。一実施例で、固体電解質の大気露出前のイオンの伝導度が3.1mS/cm以上であることができる。一実施例で、固体電解質は、大気露出前と比較して、大気露出後の前記固体電解質のイオン伝導度の低減率が35%以下であってもよい。
【0010】
本発明の他の実施例による固体電解質の製造方法は、リチウム原料物質、硫黄原料物質、ハロゲン原料物質、およびドーピング原料物質を準備するステップ、前記原料物質を混合するステップ、および混合によって得られた結果物を熱処理するステップを含み、前記ドーピング原料物質は、酸素を含む原料物質であってもよい。一実施例で、前記ドーピング原料物質は、リン酸塩系化合物を含むことができる。
【0011】
一実施例で、前記リン酸塩系化合物は、Li3PO4、Li4SiO4、Li4GeO4、Li3BO3、およびLi3AlO3からなる群より選択される少なくとも1種を含むことができる。一実施例で、前記原料物質を準備するステップで、固体電解質100mol%基準で、前記リン酸塩系化合物を0.01~0.3mol%添加することができる。
【0012】
一実施例で、前記リチウム原料物質はLi2Sであり、前記硫黄原料物質はP2S5であり、前記ハロゲン原料物質はLiClであってもよい。一実施例で、前記ドーピング原料物質は、リン酸塩系化合物を含むことができる。
【0013】
一実施例で、Li(xy-x-5y+7)P(1-y)S(xy-x-5y+6)Clx-xyO4y(1≦x≦2、0.01≦y≦0.3)であってもよい。一実施例で、固体電解質は、下記式1を満たすことができる。
<式1>
3.5≦[S]/[P]≦4.1
(前記式1において、[S]および[P]は、それぞれSおよびPのat%を意味する)
【0014】
本発明の他の実施例によるリチウム二次電池は、正極活物質を含む正極、負極活物質を含む負極、および前記正極および負極の間に位置する固体電解質を含み、前記固体電解質は、ハロゲン元素のうち一部が酸素にドーピングされたアルジロダイト型であってもよい。一実施例で、前記固体電解質は、Li(xy-x-5y+7)P(1-y)S(xy-x-5y+6)Clx-xyO4y(1≦x≦2、0.01≦y≦0.3)の組成を有することができる。
【0015】
一実施例で、前記固体電解質は、下記式1を満たすことができる。
<式1>
3.5≦[S]/[P]≦4.1
(前記式1において、[S]および[P]は、それぞれSおよびPのat%を意味する)
【発明の効果】
【0016】
本発明の一実施例による全固体電池は、Li(xy-x-5y+7)P(1-y)S(xy-x-5y+6)Clx-xyO4y(1≦x≦2、0.01≦y≦0.3)の組成を含むことにより、既存硫化物系固体電解質と比較して、大気中で安定で、初期容量に優れて、寿命に優れた全固体電池を提供することができる。
【0017】
本発明の他の実施例による全固体電池製造方法は、前述した利点を有する全固体電池を製造することができる。
【0018】
本発明の他の実施例によるリチウム二次電池は、前述した利点を有する全固体電池を含むリチウム二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の様々な実施例によるXRDピーク強度に対するグラフである。
【
図2】本発明の一実施例による、固体電解質の製造方法に対するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
第1、第2および第3などの用語は、様々な部分、成分、領域、層および/またはセクションを説明するために使用されるが、これらに限定されない。これらの用語は、ある部分、成分、領域、層またはセクションを他の部分、成分、領域、層またはセクションと区別するためにのみ使用される。したがって、以下で説明する第1の部分、成分、領域、層またはセクションは、本発明の範囲を逸脱しない範囲で、第2の部分、成分、領域、層またはセクションとして言及することができる。
【0021】
ここで使用される専門用語は、単に特定の実施形態を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図するものではない。本明細書で使用される単数形は、文言が明確に反対の意味を示さない限り、複数形も含む。本明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、ステップ、動作、要素及び/又は成分を具体化するものであり、他の特性、領域、整数、ステップ、動作、要素及び/又は成分の存在又は付加を排除するものではない。
【0022】
ある部分が他の部分「上」または「の上」にあると記載されている場合、それはまさに他の部分の上または上にある可能性があり、またはその間に他の部分を伴う可能性がある。対照的に、ある部分が他の部分の「直上」にあると言及する場合、その間に他の部分が介在しない。
【0023】
特に定義されていないが、ここで使用される技術用語及び科学用語を含むすべての用語は、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が一般的に理解する意味と同じ意味を有する。通常使用される辞書で定義された用語は、関連技術文献と現在開示された内容に合致する意味を持つものと追加的に解釈され、定義されない限り、理想的または非常に公式的な意味に解釈されない。
【0024】
また、特に言及しない限り、%は重量%を意味し、1ppmは0.0001重量%である。
【0025】
図1は、本発明の様々な実施例によるXRDピーク強度に対するグラフである。
【0026】
図1を参照すれば、本発明の一実施例による固体電解質は、ハロゲン元素のうち一部が酸素にドーピングされたアルジロダイト型であってもよい。前記固体電解質は、電池製造後の初回充放電反応のように電極材界面に発生する膜のSEI(Solid Electrolyte Interphase)ではなく、例えば、電池設計時、電解液およびセパレータの代替品として使用可能なリチウム(Li)イオン伝導性を有する固体物質を意味する。
【0027】
前記組成を有する本発明の前記固体電解質は、硫黄を含有する化合物であり、硫化物系固体電解質であることができる。具体的に、前記アルジロダイト型は、リチウム(Li)元素、リン(P)元素、硫黄(S)元素、および塩素(Cl)元素などのハロゲン元素を含むアルジロダイト型構造を有することができる。前記固体電解質は、粒子または粉末であってもよく、結晶性または非晶質性を有することができる。
【0028】
一実施例で、前記固体電解質は、Li(xy-x-5y+7)P(1-y)S(xy-x-5y+6)Clx-xyO4y(1≦x≦2、0.01≦y≦0.3)の組成を有することができる。前記固体電解質は、ハロゲン元素のうち一部が酸素にドーピングされることにより、前記固体電解質のイオン伝導度およびセル性能の劣化なしに、水分安全性を高め、大気に露出されても安定性を維持することができる。
【0029】
一実施例で、本発明の前記固体電解質は、下記式1を満たす。
<式1>
3.5≦[S]/[P]≦4.1
(前記式1において、[S]および[P]は、それぞれSおよびPのat%を意味する)
【0030】
前記リンに対する前記硫黄のat%比率は、3.5~4.1であってもよい。前記式1の値が前記範囲を満たすことにより、固体電解質のイオンの伝導度およびセル性能の劣化を防止できる利点がある。
【0031】
前記式1の値が上限値を超える場合、伝導度が低下する問題がある。前記式1の値が下限値を超える場合、水分に対する安定性が低下するという問題がある。
【0032】
一実施例で、前記固体電解質は、X線回折装置(XRD)によって測定されるX線回折パターンにおいて、所定の位置でピーク強度を有することができる。具体的に、前記組成を有する前記固体電解質は、前記X線回折パターンにおいて、XRDピーク値が2θ=15.5°±0.5°deg、2θ=18°±0.5°deg、2θ=25.5°±0.5°deg、2θ=30.2°±0.5°deg、および2θ=32.5°±0.5°degを有することができる。
【0033】
一実施例で、前記固体電解質は、前記XRDピーク値が2θ=17°±0.5°degおよび2θ=21.5°±3°degを持たないことを特徴とすることができる。前記XRDピーク値の2θ=17°±0.5°degおよび2θ=21.5°±3°degは、不純物ピークに相当するものであり、前記固体電解質において前記ピークが観察されない前記固体電解質を有することにより、大気安定性および電気化学的安定性を改善することができる。
【0034】
図2は、本発明の一実施例による、固体電解質の製造方法に対するフローチャートである。
【0035】
図2を参照すれば、本発明の他の実施例による、アルジロダイト型固体電解質の製造方法は、リチウム原料物質、硫黄原料物質、ハロゲン原料物質、およびドーピング原料物質を準備するステップ(S100)、前記原料物質を混合するステップ(S200)、および混合によって得られた結果物を熱処理するステップ(S300)を含む。
【0036】
一実施例で、リチウム原料物質、硫黄原料物質、ハロゲン原料物質、およびドーピング原料物質を準備するステップ(S100)は、例えば、前記リチウム原料物質として、Li2S、前記硫黄原料物質として、P2S5、前記ハロゲン原料物質として、LiClを準備することができる。
【0037】
一実施例で、前記ドーピング原料物質は、酸素を含む原料物質であってもよい。例えば、前記ドーピング原料物質は、リン酸塩系化合物であってもよい。前記リン酸塩系化合物をドーピング原料として使用することにより、既存アルジロダイト固体電解質に比べて大気中で安定であり、初期容量および寿命が改善される。
【0038】
一実施例で、前記リン酸塩系化合物は、Li3PO4、Li4SiO4、Li4GeO4、Li3BO3、およびLi3AlO3からなる群より選択される少なくとも1種を含むことができる。具体的に、前記ドーピング原料物質は、Li3PO4であってもよい。
【0039】
一実施例で、前記原料物質を準備するステップ(S100)は、前記リン酸塩系化合物を0.01~0.3mol%添加することができる。前記リン酸塩系化合物の添加量が前記範囲に相当することにより、一定比率の酸素(O)元素を含む硫化物系固体電解質を含むことができ、水分安定性に優れた固体電解質を提供することができる。
【0040】
前記リン酸塩系化合物の添加量が上限値を超えると、不純物相が形成されたり、イオン伝導度が低下する問題がある。前記リン酸塩系化合物の添加量が下限値を超えると、大気安定化効果が確認しにくいという問題がある。
【0041】
一実施例で、前記アルジロダイト型固体電解質は、Li(xy-x-5y+7)P(1-y)S(xy-x-5y+6)Clx-xyO4y(1≦x≦2、0.01≦y≦0.3)の組成を有することができる。
【0042】
固体電解質の製造方法は、Li2S、P2S5、LiCl、およびLi3PO4原料物質を準備するステップ(S100)は、前述した固体電解質の組成のLi(xy-x-5y+7)P(1-y)S(xy-x-5y+6)Clx-xyO4y(1≦x≦2、0.01≦y≦0.3)に対応するように、前記原料物質を制御することができる。
【0043】
前記原料物質を混合するステップ(S200)は、機械的混合または化学的混合を通して混合することができる。例えば、前記機械的混合は、ペイントシェーカー、ボールミル、ビーズミル、ホモジナイザー、ハンマーミル、および油性ミルなどの方法を活用することができ、前記化学的混合は、溶融急冷法などの方法を活用することができる。具体的に、前記原料物質を混合するステップ(S200)は、油性ミルによって前記原料物質を混合することができる。
【0044】
混合によって得られた結果物を熱処理して合成するステップ(S300)は、焼成工程であり、混合された結果物に熱を加えるステップである。一実施例で、混合によって得られた結果物を熱処理して合成するステップ(S300)は、必要に応じて、乾燥、攪拌、洗浄、整粒、および分級などの追加工程を実施した後、行うことができる。
【0045】
一実施例で、前記熱処理は、不活性雰囲気で行うことができる。前記不活性雰囲気は、非制限的な例として、H2、He、またはAr雰囲気で行うことができる。具体的に、前記不活性雰囲気は、Ar雰囲気であってもよい。
【0046】
一実施例で、前記熱処理は、300℃以上の温度で行うことができる。具体的に、前記熱処理は、300~800℃、具体的に、350~700℃、より具体的に、400~600℃の温度範囲で行うことができる。前記熱処理は、前記温度より低い場合、固相反応および結晶化反応が円滑に行われないという問題がある。
【0047】
このように、前述したステップを経て製造された固体電解質は、Li
(xy-x-5y+7)P
(1-y)S
(xy-x-5y+6)Cl
x-xyO
4y(1≦x≦2、0.01≦y≦0.3)組成を有することができ、前記固体電解質は、大気安定性に優れ、初期容量および寿命が改善される。前記合成された結果物の前記固体電解質に対する詳細な説明は、矛盾しない範囲で前述した
図1と同じである。
【0048】
本発明の他の実施例によるリチウム二次電池は、正極活物質を含む正極、負極活物質を含む負極、および前記正極および負極の間に位置する固体電解質を含むことができる。前記固体電解質は、前述した
図1を参照することができ、前記固体電解質は、前述した
図1と矛盾しない範囲で同じである。
【0049】
前記正極は、LiCoO2、LiNiO2、LiNixMnyO2、Li1+zNixMnyCo1-x-yO2、LiNixCoyAlzO2、LiV2O5、LiTiS2、LiMoS2、LiMnO2、LiCrO2、LiMn2O4、LiFeO2、LiFePO4、およびこれらの組み合わせからなる群のいずれかであり、前記xは、0.3~0.8であり、前記yは、0.1~0.45であり、前記zは、独立的に0~0.2であることができる。前記正極は、より具体的に、LiFePO4、LiCoO2、NCM811、およびNCM622であってもよい。
【0050】
前記負極は、天然黒鉛、人造黒鉛(メソフェーズカーボンマイクロビーズ)、熱分解炭素(pyrolytic carbon)、液晶ピッチ系炭素繊維(Mesophase pitch based carbon fiber)、液晶ピッチ(mesophase pitches)、石油または石炭系コークス(petroleum or coal tar pitch derived cokes)などの炭素質材料;リチウム含有チタン複合酸化物(LTO)、Si、Sn、Li、Zn、Mg、Cd、Ce、Ni、またはFeの金属類(Me);前記金属類で構成された合金類;前記金属類の酸化物(MeOx);および前記金属類(Me)と炭素複合体、およびこれらの組み合わせであってもよい。具体的に、前記負極は、天然黒鉛微粒子、合成黒鉛微粒子、Sn微粒子、Li4Ti5O12微粒子、Si微粒子、Si-C複合微粒子、およびこれらの組み合わせであってもよい。より具体的に、前記負極は、天然黒鉛、人造黒鉛、シリコン、およびこれらの組み合わせであってもよい。
【0051】
このように、本発明の固体電解質を構成として含むリチウム二次電池は、大気中で安定性を維持し、初期容量および寿命を改善することができる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明の具体的な実施例を記載する。しかし、下記の実施例は、本発明の具体的な一実施例であり、本発明が下記の実施例に限定されるものではない。
【0053】
[比較例1]
(Li6PS5Clの準備)
一般的なアルジロダイト固体電解質のLi6PS5Clを準備した。
【0054】
[比較例2]
(Li5.5PS4.5Cl1.5の製造)
Li5.5PS4.5Cl1.5は、乾式ミリングを通して合成される。前記乾式ミリングは、Li2S、P2S5、LiClを油性ミル(Planetary Mill)を利用して8時間300rpmで混合した後、300MPaでペレットを製作し、アルゴン(Ar)雰囲気で550℃熱処理を通じて合成する。
【0055】
[実施例1]
(Li5.465P0.99S4.465Cl1.485O0.04の製造)
Li(xy-x-5y+7)P(1-y)S(xy-x-5y+6)Clx-xyO4yの固体電解質でx=1.5、y=0.01を適用してLi2S、P2S5、LiCl、Li2PO4を定量して、Li3PO4を0.01mol%添加した後、油性ミルを利用して約8時間300rpmで混合した後、300MPaにペレットを製作してアルゴン(Ar)雰囲気で550℃熱処理を通して合成した。
【0056】
[実施例2]
(Li5.395P0.97S4.395Cl1.455O0.12の製造)
Li(xy-x-5y+7)P(1-y)S(xy-x-5y+6)Clx-xyO4yの固体電解質でy=0.03を適用し、Li3PO4を0.03mol%添加する以外は、実施例1と同様に実施した。
【0057】
[実施例3]
(Li5.325P0.95S4.325Cl1.425O0.20の製造)
Li(xy-x-5y+7)P(1-y)S(xy-x-5y+6)Clx-xyO4yの固体電解質でy=0.05を適用し、Li3PO4を0.05mol%添加する以外は、実施例1と同様に実施した。
【0058】
[実施例4]
(Li5.15P0.90S4.15Cl1.35O0.40の製造)
Li(xy-x-5y+7)P(1-y)S(xy-x-5y+6)Clx-xyO4yの固体電解質でy=0.10を適用し、Li3PO4を0.1mol%添加する以外は、実施例1と同様に実施した。
【0059】
[実施例5]
(Li4.80P0.80S3.80Cl1.20O0.80の製造)
Li(xy-x-5y+7)P(1-y)S(xy-x-5y+6)Clx-xyO4yの固体電解質でy=0.20を適用し、Li3PO4を0.2mol%添加する以外は、実施例1と同様に実施した。
【0060】
[実施例6]
(Li4.45P0.70S3.45Cl1.05O1.2の製造)
Li(xy-x-5y+7)P(1-y)S(xy-x-5y+6)Clx-xyO4yの固体電解質でy=0.30を適用し、Li3PO4を0.3mol%添加する以外は、実施例1と同様に実施した。
【0061】
下記表1は、比較例1および2と実施例1~6に対する電気化学評価および水分安定性を評価したものである。前記電気化学評価は、30℃0.1Cイオン伝導度の評価であり、圧粉セルを利用して前記比較例1および2と実施例1~6に対する固体電解質の電気化学評価を行い、電解質を投与した後、300MPaで高密度化した。その後、SUS電極を利用して70MPaの圧力でセルを締結した後、25℃で10mVを印加してインピーダンスを測定した。前記インピーダンスは、イオン伝導度を測定することを意味する。
【0062】
前記水分安定性の評価は、露点が約-40℃のドライルームで粉末状の固体電解質2gを約12時間放置した後、これを回収してインピーダンス、例えば、イオン伝導度を測定したものである。
【0063】
前記リンに対する硫黄のat%比率は、EDS成分マッピング(Mapping)結果を通して確認することができる。低減率は具体的に、((大気露出後のイオン伝導度-大気露出前のイオン伝導度)/(大気露出前のイオン伝導度))×100[%]を意味する。
【0064】
【0065】
前記表1を見ると、本発明の固体電解質は、大気露出前のイオンの伝導度が3.1~9.0mS/cmの範囲であり、実施例1~6を見ると、Li3PO4の添加量が増加するほどイオン伝導度が増加することが確認できる。具体的に、大気露出前のイオン伝導度との場合、Li3PO4の添加量が増加するほどイオン伝導度が低下することが確認でき、大気露出後のイオン伝導度および低減率を通じて、前記Li3PO4添加量が増加するほどイオン伝導度の低減率が減少することを確認することができる。前記イオン伝導度の低減率が減少することから、前記Li3PO4の添加量が増加するほど、大気安定化度が優れていることが確認できる。前記電気伝導度は粒度による変動幅が発生する可能性があり、微粉化の過程で前記電気伝導度が変化する可能性があるため、本発明の実施例が本発明を限定するものではない。具体的に、前記固体電解質は、前記大気露出前と比較して、前記大気露出後のイオンの伝導度低減率が35%以下であってもよい。前記前記固体電解質は、大気露出前および大気露出後を比較した時、前記イオンの伝導度の低減率が35%以下を満たすことにより、水分との副反応により一般的な大気中での取り扱いが難しい問題を解決することができ、イオン伝導度およびセル性能の劣化なしに、水分安定性が改善された固体電解質を提供することができる。
【0066】
本発明は、前記実施例及び/又は実施形態に限定されるものではなく、異なる様々な形態で製造することができ、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や本質的な特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施することができることを理解できるであろう。したがって、前記の実施形態及び/又は実施例は、すべての点で例示的なものであり、限定的ではないと理解されるべきである。
【国際調査報告】