IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ロイヤル カレッジ オブ サージャンズ イン アイルランドの特許一覧

特表2025-501587駆出率が保たれた心不全(HFpEF)を治療するシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-22
(54)【発明の名称】駆出率が保たれた心不全(HFpEF)を治療するシステム
(51)【国際特許分類】
   A61M 60/17 20210101AFI20250115BHJP
   A61M 60/216 20210101ALI20250115BHJP
   A61M 60/31 20210101ALI20250115BHJP
【FI】
A61M60/17
A61M60/216
A61M60/31
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538017
(86)(22)【出願日】2022-12-21
(85)【翻訳文提出日】2024-07-29
(86)【国際出願番号】 EP2022087380
(87)【国際公開番号】W WO2023118390
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】21217170.6
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507038157
【氏名又は名称】ロイヤル カレッジ オブ サージャンズ イン アイルランド
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】アーミル ハミード
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー マローン
(72)【発明者】
【氏名】グレイン マローン
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA04
4C077DD08
4C077HH03
4C077HH13
(57)【要約】
【課題】「駆出率が保たれた心不全(Heart Failure with preserved Ejection Fraction、HFpEF)を治療するシステム」を提供すること。
【解決手段】駆出率が保たれた心不全(Heart Failure with preserved Ejection Fraction、HFpEF)を治療するシステムについて記載される。システムは、対象の心臓の左心室への植え込み向けに構成された血液ポンプ装置と、左心室の壁に血液ポンプ装置を固定するための固定アセンブリと、心室拡張期の間に作動させること、および心室収縮期の間に停止させることを含む対象の心臓サイクルと共働するパターンで血液ポンプ装置を作動および停止させるべく、血液ポンプ装置の出力パラメータを変更するように構成されたコントローラと、を含む。
【選択図】図20
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆出率が保たれた心不全(Heart Failure with preserved Ejection Fraction、HFpEF)を治療するシステム(40、50、60)であって、
対象の心臓の左心室(31)への植え込み向けに構成された血液ポンプ装置(1、90、100、110)であって、作動時に前記心臓の左心房(30)から前記左心室(31)に僧帽弁(34)を介して血液を流すように構成される、前記血液ポンプ装置と、
前記血液ポンプ装置を前記左心室の壁に固定するための固定アセンブリ(39A、39B、39C)と、
心室拡張期の間に作動させること、および心室収縮期の間に停止させることを含む前記対象の心臓サイクルと共働するパターンで前記血液ポンプ装置を作動および停止させるべく、前記血液ポンプ装置の出力パラメータを変更するように構成されたコントローラ(41、43)と、
を含む、システム。
【請求項2】
前記心臓に関連付けられた1つまたは複数のパラメータを検出するために、前記コントローラと通信する少なくとも1つのセンサー(46、51、61、70)をさらに含み、前記コントローラは、前記少なくとも1つのセンサーから受信した前記1つまたは複数の検出されたパラメータに基づいて、前記血液ポンプ装置(1)の前記出力パラメータを変更するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記少なくとも1つのセンサーは、心拍数、大動脈弁の閉止、大動脈弁の開放、僧帽弁の閉止、および僧帽弁の開放から選択される1つまたは複数のパラメータを検出するように構成され、かつ前記コントローラは、前記センサーによって検知された前記1つまたは複数のパラメータに基づいて、前記血液ポンプ装置の作動および停止の頻度を調節するように構成される、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
コントローラ(41、43)は、前記血液ポンプ装置に対する電圧供給の周波数を調整することによって、前記血液ポンプ装置の作動および停止の頻度を調節するように構成される、請求項4に記載のシステム。
【請求項5】
前記少なくとも1つのセンサー(46、51、61、70)は、前記対象の心臓の血圧パラメータを検出するように構成され、前記コントローラは、前記センサーによって検知された前記血圧パラメータに対応するように、前記血液ポンプ装置のポンプ流量を調節するように構成される、請求項2から4のいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
前記センサーは、心房圧力センサーである、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記コントローラ(41、43)は、前記血液ポンプ装置に対する電圧供給の振幅を調整することによって、前記血液ポンプ装置のポンプ流量を調節するように構成される、請求項5または6に記載のシステム。
【請求項8】
前記血液ポンプ装置(100)は、前記左心房(30)の内部から前記ハウジング(2)の前記血液入口(3)への流体連通を提供するように構成された流体延長導管(101)を含む、請求項1から7のいずれかに記載のシステム。
【請求項9】
前記流体延長導管(101)は、前記ハウジング(2)に着脱可能に連結される、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記流体延長導管(101)は、可撓性である、請求項1から9のいずれかに記載のシステム。
【請求項11】
前記血液ポンプ装置(90、100)は、
前記モータ(92)を含む第1円筒形部分(91)と、
前記インペラ(20)を含む第2円筒形部分(93)と、
前記流体入口(3)を含む、前記第1円筒形部分と前記第2円筒形部分とを接続する中央部分(94)と、
前記第1円筒形部分または前記第2円筒形部分に配置された流体出口(4)と、を含み、
前記ロータ(5)は、前記中央部分を通って前記モータから前記インペラに向けて延在している、請求項1から10のいいずれかに記載のシステム。
【請求項12】
前記流体出口(4)は、前記第2円筒形部分(93)の自由端に配置される、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記血液ポンプ装置の前記中央部分(94)は、前記第1円筒形部分(91)と前記第2円筒形部分(93)とを接続する複数の支柱(95)を含み、前記血液入口(3)は、前記複数の支柱(95)によって画定される複数の開口(96)を含む、請求項11または12に記載のシステム。
【請求項14】
ECGおよび心房圧力センサーなどの心臓ペーシングセンサーを含む、請求項2から13のいずれかに記載のシステム。
【請求項15】
ECGおよび心室圧力センサーなどの心臓ペーシングセンサーを含む、請求項2から13にいずれかに記載のシステム。
【請求項16】
前記コントローラ(41、43)は、植え込み可能である、請求項11から15のいずれかに記載のシステム。
【請求項17】
前記血液ポンプ装置に関連付けられた電力ユニット(42)を含み、前記電力ユニットは、植え込み可能である、請求項11から16のいずれかに記載のシステム。
【請求項18】
前記コントローラ(41、43)および前記電力ユニット(42)は、単一の植え込み可能ユニット内に収容される、請求項16または17に記載のシステム。
【請求項19】
前記電力ユニット(42)は、非接触誘導充電向けに構成される、請求項17または18に記載のシステム。
【請求項20】
前記電力ユニット(42)および/または前記コントローラ(41、43)と前記血液ポンプ装置とを動作可能に接続するように構成された電力リード線(97)を含む、請求項16または17に記載のシステム。
【請求項21】
前記血液ポンプ装置は、チャンバ(111)を含み、前記電力リード線は、前記チャンバ内に、スプールに巻かれるか、または巻回された構成で配置される、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記電力リード線(97)の近位端を捕らえ、かつ前記チャンバ(111)から前記電力リード線を引き込むように構成された回収カテーテル(113)を含む、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記左心室へ前記血液ポンプ装置を経皮的に送達するように構成された管腔を有するアクセスシースを含む、請求項11から22のいずれかに記載のシステム。
【請求項24】
前記血液ポンプ装置を前記アクセスシースの前記管腔を通って前進させるための前記血液ポンプ装置向けの送達シャフトを含む、請求項1から23のいずれかに記載のシステム。
【請求項25】
前記送達シャフトおよび前記血液ポンプ装置は、一緒に着脱可能に連結するように構成される、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
前記固定アセンブリは、経皮的送達に適した詰め込まれた位置から、複数の固定アームが心室壁に対向する展開された位置に調節されるように構成された複数の固定アーム(38A、39B、39C)を含む、請求項11から25のいずれかに記載のシステム。
【請求項27】
前記固定アームは、自己展開するように構成される、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記固定アセンブリは、生体内で前記血液ポンプ装置に連結するように構成される、請求項11から27のいずれかに記載のシステム。
【請求項29】
前記固定アセンブリは、固定ハブを含み、前記固定ハブは、前記血液ポンプ装置と、前記ハブから延在する複数の固定アームと、に連結するように構成される、請求項29に記載のシステム。
【請求項30】
前記インペラ(20)は、軸ハブ(21)、および前記ハブに取り付けられた少なくとも2つの羽根(22)を含み、各羽根は、伸長した掃引形状を有する、請求項11に記載のシステム。
【請求項31】
各羽根(22)は、0.20から0.30のハブ対先端の比率(v)を含む、請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
前記インペラ(20)は、前記ハブの対向する側面に配置された2つの羽根(22)を含む、請求項30または31に記載のシステム。
【請求項33】
各羽根(22)は、10から15mmの軸方向長さ、および3から7mmの半径方向幅を有する、請求項30から32のいずれかに記載のシステム。
【請求項34】
各羽根(22)は、前記ハブを中心にして、80°から120°の掃引角度に沿って延在する、請求項30から33のいずれかに記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆出率が保たれた心不全(HFpEF)を治療するシステムに関する。本発明はまた、駆出率が保たれた心不全(HFpEF)を治療する方法、および続発性肺高血圧症を軽減または予防する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
心不全は、心臓が身体に十分に血液を供給できない状態と定義される。人口統計が示唆しているように、人口の高齢化が進むにつれて、心不全の有病率も増加している。HFの主な症状には、運動耐容能が制限され得る呼吸困難および疲労、ならびに肺および/または内臓鬱血および/または末梢浮腫を引き起こし得る体液貯留がある。
【0003】
心臓サイクルには、心臓が血液を全身に送り出す収縮段階と、心臓が血液で満たされる弛緩段階との2つの段階がある。収縮段階(収縮期)に付随する心不全には、駆出率が低下したHF(HF with reduced Ejection Fraction、HFrEF)が含まれ、この状態は、一般に虚血心臓疾患によって引き起こされ、心拍血液量および心拍出量の減少をもたらし、その結果、正常な心臓出力を回復させるために、神経ホルモン応答が生じる。拡張期(収縮期)の間に大動脈への血液のポンピングを補助するように設計されたポンプ装置、および収縮期の間に左心室の収縮を補助するために、心臓リズムと共働するパターンで往復運動する、左心室の2つの壁の間に植え込まれるように設計された収縮装置を含む、収縮段階の間に心臓を補助する左心室補助装置が、これまでに開発されてきた。HFrEFの治療のためのポンプ装置については、US2016/000983およびUS7942804に記載されている。
【0004】
心臓サイクルの弛緩段階(拡張期)に付随する心臓疾患には、駆出率が保たれた心不全(HFpEF)が含まれる。HFpEFは、左心室駆出率が正常またはそれに近い状態(LVEF>50パーセント)でHFの症状および徴候を、患者が有する臨床症候群である。心臓サイクルの初期拡張段階の間に、健康な左心室(Left Ventricle、LV)は、「真空掃除機」として働き、特に運動中に吸引力を高める。HFpEFでは、心筋細胞の硬化により、この弛緩促進作用が失われるため、正常なLV充満は、LVに血液を押し出す左心房(Left Atrial、LA)圧の高さに依存する。この圧力の上昇は、さらに、心房リモデリングおよび続発性肺高血圧症を引き起こす場合があり、これにより、患者が心房細動および右心室(Right Ventricular、RV)機能不全を発症しやすくなる。HFpEF患者の肺動脈が10mmHgずつ上昇すると、3年死亡率の28%増加が付随することが明らかとなっている。ゆえに、HFpEFによる死亡率を効果的に制御する必要性がある。
【0005】
現在までに、無作為臨床試験において、主に疾患の病態生理学的不均一性が原因で、未だHFpEF患者の罹患および死亡率を減少させる薬理学的治療法は証明されていない。米国心臓協会(American Heart Association、AHA)および欧州心臓学会(European Society of Cardiology、ESC)に従う現在の治療戦略は、共存症を治療すること、および利尿剤を使用して鬱血を緩和することに焦点を当てている。
【0006】
経カテーテル左心房-右心房間シャント装置(REDUCE LAP-HF-I)が、HFpEFの可能な治療法としてこれまでに提案されているが、右心室(RV)容積過負荷およびその後のRV障害、ならびに続発性肺高血圧症の悪化は、これらのシャント装置による問題である可能性がある。
【0007】
LV容積を増加させるために内部膨張力を直接加える左心室植え込み可能装置(CORolla)もまた、HFpEFの可能な治療法として提案されている。理論的には、CORolla装置の拡張要素は、HFpEFの全ての形態の治療のために使用される可能性があるが、このような装置の性能は、HFpEF表現型によって著しく変化する心臓リモデリングの程度に大きく左右される。
【0008】
WO2020/081481は、僧帽弁に接続され、かつ心臓サイクルの間に血液を左心房から左心室に送り出すように制御されたポンプを含み、この際、該ポンプが、拡張期の間の心筋灌流の間の低ポンピング速度(第1の流れ)と、心臓サイクルの安静期の間の高ポンピング速度(第2の流れ)との間で連続的に動作する、HFpEFを治療する植え込み可能装置について記載している。僧帽弁にポンプが接続されているため、常にポンプを動作させる必要があり、このため、僧帽弁が完全に閉じることが妨げられる。したがって、心室収縮期の間に、僧帽弁が正常に完全に閉じるときに、左心室から左心房への血液の逆流を防ぐためにポンプを高速で作動させる必要がある。拡張期の間の左心室の圧縮を防ぐために、拡張期の間のポンピング速度を低下させる必要がある。縫製カフを介してポンプを僧帽弁に接続することは、複雑な手技である。加えて、装置は、内径が大きいため、経皮的に送達させることができず、心臓手術が必要となることを意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2016/000983号明細書
【特許文献2】米国特許第7942804号明細書
【特許文献3】国際公開第2020/081481号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、上述の問題のうち少なくとも1つを克服することである。
【0011】
本目的は、拡張期の間に順次作動させ(開いた僧帽弁を通して右心房から左心室に血液を引き込むように左心室を補助するために)、かつ左心室が空になる収縮期の間に停止させるように構成された、左心室に植え込まれた血液ポンプ装置を使用する、HFpEFの治療のためのシステムおよび方法を提供することによって満足される。したがって、(血液の逆流を防止するために)収縮期の間を含めて連続的に動作するWO2020/081481のシステムとは異なり、本発明のシステムは、心室拡張期の間のみ血液ポンプ装置を作動させる。これは、左心室に血液ポンプ装置を植え込むことで可能となる。コントローラは、血液ポンプ装置に動作可能に連結され、かつ心室拡張期の間に作動させること、および心室収縮期の間に停止させることを含む対象の心臓サイクルと共働するパターンで血液ポンプ装置を作動および停止させるように構成される。コントローラは、血液ポンプ装置の一部を形成し得るか、またはECGもしくは心房センサーなどの分離センサーであり得るセンサーから信号を受信してもよい。血液ポンプ装置は、一般に、インペラを含み、理想的には、軸流ポンプである。使用中、血液ポンプ装置は、左心室の壁に固定され、かつ作動時に僧帽弁に隣接する左心室上部の圧が十分に低下し、右心房から左心室に血液を流すことを補助するように配置される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の態様では、本発明は、
対象の心臓の左心室への植え込み向けに構成された血液ポンプ装置と、
左心室の壁に血液ポンプ装置を固定するための固定アセンブリと、
心室拡張期の間に作動させること、および心室収縮期の間に停止させることを含む対象の心臓サイクルと共働するパターンで血液ポンプ装置を作動および停止させるべく、血液ポンプ装置の出力パラメータを変更するように構成されたコントローラと、
を含むシステムを提供する。
【0013】
任意の実施形態では、システムは、駆出率が保たれた心不全(HFpEF)を治療するためのものである。
【0014】
任意の実施形態では、システムは、続発性肺高血圧症を治療、軽減、または予防するためのものである。
【0015】
任意の実施形態では、システムは、心室拡張期の間の左心室の充満障害に付随する病態を治療するためのものである。
【0016】
任意の実施形態では、システムは、心臓に関連付けられた1つまたは複数のパラメータを検出するために、コントローラと通信する少なくとも1つのセンサーを含み、ここで、該コントローラは、センサーから受信した1つまたは複数の検出されたパラメータに基づいて、血液ポンプ装置の出力パラメータを変更するように構成される。
【0017】
任意の実施形態では、コントローラは、血液ポンプ装置の操作のポンプ流量および/または頻度を変更するように構成される。
【0018】
任意の実施形態では、コントローラは、血液ポンプ装置への電源の電圧の振幅を変更するように構成される。ポンプがロータを含む場合、電圧の振幅を変えることにより、ロータの回転速度が変更される。
【0019】
任意の実施形態では、コントローラは、血液ポンプ装置の電源の電圧デューティーサイクルの周波数を変更するように構成される。電圧の周波数を変えることにより、ポンプの作動および停止が制御される。
【0020】
任意の実施形態では、少なくとも1つのセンサーは、圧力センサー、無線圧力センサー、微小電子機械圧力センサー、動脈圧力センサー、心臓出力(Cardiac Output、CO)センサー、血圧センサー、左心室の駆出率、心拍数センサー、モーションセンサー、加速度計、ECG(心電図)センサー、O2飽和センサー、マイクロ加速度計、および超音波測微計からなる群から選択される。圧力センサーは、心室および/または心房圧力センサーとすることができる。
【0021】
任意の実施形態では、センサーは、心臓ペーシングセンサーである。
【0022】
任意の実施形態では、センサーは、心房または心室圧力センサーである。
【0023】
任意の実施形態では、システムは、心臓ペーシングセンサーおよび心房または心室圧力センサーを含む。
【0024】
任意の実施形態では、センサーは、血液ポンプ装置との一体式である。
【0025】
任意の実施形態では、センサーは、心臓組織に連結される。
【0026】
任意の実施形態では、血液ポンプ装置は、インペラを含む。
【0027】
任意の実施形態では、血液ポンプ装置は、軸流ポンプを含む。
【0028】
任意の実施形態では、血液ポンプ装置は、
流体入口、流体出口、および流体入口から流体出口までハウジングを通って延在する管腔を含むハウジングと、
ハウジング内に配置されたロータと、
ロータ上に配置されたインペラと、
作動時にロータを回転させるためにロータに動作可能に連結されたモータと、を含み、
血液ポンプ装置は、作動時に入口から出口までハウジングを通って流体を流すように構成される。
【0029】
任意の実施形態では、ハウジングの流体入口は、僧帽弁を通って左心房内部へと延在する。本実施形態では、血液ポンプ装置は、流体入口の一部のみが左心房内部へと延在する状態で、左心室内部に完全に収まるように構成される。
【0030】
任意の実施形態では、血液ポンプ装置は、左心房の内部からハウジングの流体入口への流体連通を提供するように構成された流体延長導管を含む。
【0031】
任意の実施形態では、流体延長導管は、ハウジングの流体入口に着脱可能に連結される。
【0032】
任意の実施形態では、流体延長導管は、可撓性である。
【0033】
任意の実施形態では、インペラは、ハウジングの流体出口側でロータに配置される。
【0034】
任意の実施形態では、ハウジングは、管状ハウジングである。
【0035】
任意の実施形態では、管状ハウジングは、複数の支柱によって第2円筒形部分に接続された第1円筒形部分を含む。
【0036】
任意の実施形態では、入口および出口は、共通の軸に沿って整列している。
【0037】
任意の実施形態では、血液ポンプ装置は、
モータを含む第1円筒形部分と、
インペラを含む第2円筒形部分と、
流体入口を含む、第1円筒形部分と第2円筒形部分とを接続する中央部分と、
第1円筒形部分または第2円筒形部分に配置された流体出口と、を含み、
ロータは、中央部分を通ってモータからインペラに向けて延在している。
【0038】
任意の実施形態では、流体入口は、ハウジングの中央部分に1つまたは複数の開口を含む。
【0039】
任意の実施形態では、第2部分は、流体出口を含む。本実施形態では、インペラの回転により、血液が流体入口を通って、かつ第2部分を通って流体出口の中から外へ引き出される。
【0040】
任意の実施形態では、ハウジングの第2部分は、ハウジングの第1部分の直径D2よりも大きい直径D1を有する。任意の実施形態では、D1対D2の比率は、3:2から5:2の範囲である。
【0041】
任意の実施形態では、ハウジングの中央部分は、円錐台形状を有する。
【0042】
任意の実施形態では、ハウジングの中央部分は、ハウジングの第1部分と第2部分とを接続する複数の支柱を含む。
【0043】
任意の実施形態では、流体出口は、第1部分に配置される。本実施形態では、第1部分は、流体がモータを通過して流体出口を通って出るようにする流体のための管腔を有する。
【0044】
任意の実施形態では、モータは、ロータの少なくとも一部を取り囲むハウジング内に配置されたステータを含む電磁気モータである。
【0045】
任意の実施形態では、インペラは、軸ハブ、およびそのハブに取り付けられた少なくとも2つの羽根を含み、ここで、各羽根は伸長した掃引形状を有する。
【0046】
任意の実施形態では、各羽根は、0.20から0.30のハブ対先端の比率(v)を有する。
【0047】
任意の実施形態では、インペラは、ハブの対向する側面に配置された2つの羽根を含む。
【0048】
任意の実施形態では、各羽根は、5から20mm、好ましくは、10から15mm、より理想的には、約12から約13mmの軸方向長さを有する。
【0049】
任意の実施形態では、各羽根は、1から10mm、3から7mm、4から6mm、または理想的には、約5mmの半径方向幅を有する。
【0050】
任意の実施形態では、各羽根は、ハブを中心にして、70°から140°、80°から120°、90°から120°、または約100°から約120°の掃引角度で延在する。掃引角度は、羽根がハブを中心にして掃引する角度を指す。これは、図6Bに示した端面図から確認することができ、ここで、羽根がハブを中心にして約100°で延在していることを確認できる。
【0051】
任意の実施形態では、各羽根の半径方向先端とハブハウジングとの間の隙間は、0.1mmから1.5mm、0.3mmから0.7mm、0.4mmから0.6mm、および理想的には、約0.5mmである。
【0052】
任意の実施形態では、コントローラは、センサーから心拍数データを受信して、受信した心拍数データに基づいてリアルタイムで血液ポンプ装置の出力パラメータを変更するように構成される。
【0053】
任意の実施形態では、コントローラは、心拍数データと参照インペラ回転速度データとを比較し、その比較に基づいてインペラ回転速度を計算し、拡張段階の間に血液ポンプ装置を作動させて、計算したインペラ回転速度でインペラを回転させるように構成される。
【0054】
任意の実施形態では、血液ポンプ装置は、最大32Frのデリバリーカテーテルの内部で、典型的には、ガイドワイヤに沿って、心臓の左心室に経皮的に送達されるように寸法取りされる。
【0055】
任意の実施形態では、血液ポンプ装置は、ガイドワイヤに取り付けられるように構成される。
【0056】
任意の実施形態では、固定アセンブリは、血液ポンプ装置に連結された1つまたは複数のアンカー要素(例えば、アーム)を含む。
【0057】
任意の実施形態では、固定アセンブリは、左心室中隔、左心室の心尖部、または左心室中隔および左心室の心尖部に取り付けられるように構成される。
【0058】
任意の実施形態では、固定アセンブリは、経皮的送達に適した詰め込まれた位置から、複数の固定アームが心室壁に対向する展開された位置に調節されるように構成された複数の固定アームを含む。任意の実施形態では、固定アームは、展開後、半径方向外側に広がるように構成される。
【0059】
任意の実施形態では、各固定アームは、例えば、バーブなどの遠位組織係合アンカーを含む。
【0060】
任意の実施形態では、固定アームは、ハウジングの遠位端に接続される。
【0061】
任意の実施形態では、固定アームは、自己展開するように構成される。例えば、各アームは、装置が送達シースの遠位端を越えて前進すると、展開位置の方に付勢されて、自己展開し得る。
【0062】
任意の実施形態では、固定アセンブリは、生体内で血液ポンプ装置に連結するように構成される。
【0063】
任意の実施形態では、固定アセンブリは、血液ポンプ装置およびハブから延在する複数の固定アームに連結するように構成された固定ハブを含む。
【0064】
任意の実施形態では、システムは、血液ポンプ装置の出力パラメータを設定するための電子回路をさらに含み、ここで、該電子回路は、コントローラと血液ポンプ装置との間に連結され、かつ該コントローラは、血液ポンプ装置の出力パラメータを変更するように制御信号を電子回路に送信するように構成される。
【0065】
任意の実施形態では、コントローラは、植え込み向けに構成される。
【0066】
任意の実施形態では、コントローラは、対象の胸部の皮膚下、典型的には、真皮下に植え込まれるように構成される。
【0067】
任意の実施形態では、システムは、血液ポンプ装置に関連付けられた電力ユニットをさらに含む。
【0068】
任意の実施形態では、電力ユニットは、電子回路に関連付けられている。
【0069】
任意の実施形態では、電力ユニットは、植え込み向けに構成される。
【0070】
任意の実施形態では、電力ユニットは、対象の胸部の皮膚下、典型的には、真皮下に植え込まれるように構成される。
【0071】
任意の実施形態では、コントローラおよび電力ユニット(および任意選択で電子回路)は、単一の植え込み可能ハウジング内部に収容される。
【0072】
任意の実施形態では、システムは、電力ユニットと血液ポンプ装置との間の、典型的には、コントローラおよび電子回路を介した電気通信を提供する電力リード線を含む。
【0073】
任意の実施形態では、血液ポンプ装置は、チャンバ、およびそのチャンバ内に、スプールに巻かれるか、または巻回された構成で配置された(例えば、完全に配置された)電力リード線を含む。本実施形態では、血液ポンプ装置は、チャンバ内でスプールに巻かれた電力リード線と共に左心室へと送達される。一旦、血液ポンプ装置が展開すると、電力リード線の近位端が、医療装置を使用して回収されて、対象の胸部の皮膚下に植え込まれ得る植え込み型電力ユニットに(典型的にはコントローラを介して)送達される。
【0074】
任意の実施形態では、システムは、左心室へ血液ポンプ装置を経皮的に送達するように構成された管腔を有するアクセスシースを含む。
【0075】
任意の実施形態では、システムは、血液ポンプ装置をアクセスシースの管腔を通って前進させるための血液ポンプ装置向けの送達シャフトを含む。
【0076】
任意の実施形態では、送達シャフトおよび血液ポンプ装置は、一緒に着脱可能に連結するように構成される。これにより、血液ポンプ装置を送達シャフトに接続し、アクセスシースを通してシャフトを前進させて、装置を送達し、次に、血液ポンプ装置から送達シャフトを取り外すことが可能となる。
【0077】
任意の実施形態では、システムは、アクセスシースの近位端に、典型的には、第1止血弁を介して接続されたハンドルを含む。
【0078】
任意の実施形態では、送達シャフトの近位端は、ハンドルに、典型的には、第2止血弁を介して接続される。
【0079】
任意の実施形態では、ハンドルは、アクセスシースを基準として送達シャフトの軸位置を調節する第1アクチュエータを含む。
【0080】
任意の実施形態では、ハンドルは、アクセスシースを基準として送達シャフトを回転させる第2アクチュエータを含む。
【0081】
任意の実施形態では、コントローラは、心臓の左心室内部に植え込まれるように構成される。任意の実施形態では、コントローラは、血液ポンプ装置と一体式であるか、または血液ポンプ装置に動作可能に接続される。
【0082】
別の態様において、本発明は、方法、例えば、心不全を治療または予防する、例えば、HFpEFなどの心臓病態を患う対象を治療する方法を提供し、該方法は、
対象の心臓内部に血液ポンプ装置を送達して、左心房から左心室に血液を流すように血液ポンプ装置を配置するステップと、
心室拡張期の間に作動させること、および心室収縮期の間に停止させることを含む対象の心臓サイクルと共働するパターンで血液ポンプ装置を作動および停止させるステップと、を含む。
【0083】
任意の実施形態では、方法は、血液ポンプ装置を対象の心臓の左心室の壁に固定することを含む。
【0084】
任意の実施形態では、方法は、駆出率が保たれた心不全(HFpEF)を治療する方法である。
【0085】
任意の実施形態では、方法は、続発性肺高血圧症を軽減または予防する方法である。
任意の実施形態では、方法は、
センサーを用いて対象の心拍数を検知することと、
対象の検知した心拍数と同期するパターンで(例えば、頻度で)血液ポンプ装置を作動および停止させることと、を含む。
【0086】
任意の実施形態では、方法は、時間と共に検知した心拍数の変化に従って、血液ポンプ装置の作動および停止の頻度を調整することを含む。
【0087】
任意の実施形態では、血液ポンプ装置の作動および停止の頻度を調整するステップは、血液ポンプ装置に対する電圧デューティーサイクルの周波数を調整することを含む。
【0088】
任意の実施形態では、方法は、
センサーを用いて対象の心臓の血圧パラメータ、典型的には、心臓の左側の血圧パラメータ、好ましくは、左心房または左心室血圧パラメータを検知することと、
血液ポンプ装置の作動中に、検知した血圧パラメータに適切なポンピング速度で、血液ポンプ装置を作動させることと(例えば、血液ポンプ装置のインペラの回転速度を調整することと)、を含む。
【0089】
任意の実施形態では、方法は、時間と共に検知した血圧パラメータの変化に従って、血液ポンプ装置のポンピング速度を調整することを含む。
【0090】
任意の実施形態では、血液ポンプ装置のポンピング速度を調整するステップは、血液ポンプ装置への電圧供給の振幅を調整することを含む。
【0091】
任意の実施形態では、方法は、血液ポンプ装置のインペラを、5,000rpmから50,000rpmのインペラ回転速度で作動させることを含む。
【0092】
任意の実施形態では、方法は、血液ポンプ装置のインペラを、10,000rpmから40,000rpmのインペラ回転速度で作動させることを含む。
【0093】
任意の実施形態では、方法は、心室拡張期の間に左心室内の圧力を少なくとも5から10mmHg低下させることを含む。
【0094】
任意の実施形態では、方法は、血液ポンプ装置を左心室に経皮的に送達することを含む。
【0095】
任意の実施形態では、血液ポンプ装置は、大腿静脈→腸骨静脈→下大静脈→右心房→心房中隔→左心房→左心室を介して左心室に経皮的に送達される。
【0096】
任意の実施形態では、方法は、センサーを対象の心臓と連通させるか、またはその内部に植え込むことを含む。典型的には、センサーは、血圧パラメータセンサーである。一実施形態では、センサーは、心臓ペーシング装置である。
【0097】
任意の実施形態では、方法は、血圧装置用コントローラを対象に植え込むこと、典型的には、真皮下植え込み式を含む。
【0098】
任意の実施形態では、方法は、血圧装置用の電力ユニットを対象に、典型的には、真皮下に、植え込むことを含む。
【0099】
任意の実施形態では、電力ユニットおよびコントローラ(および任意選択で回路)は、単一の植え込み可能ユニット内に収容され、ここで、方法は、単一ユニットを、典型的には、真皮下に植え込むことを含む。
【0100】
任意の実施形態では、方法は、
心拍数センサーによって、対象の心拍数を検知することと、
コントローラによって、心拍数センサーから受信した、検知心拍数データに基づいて、血液ポンプ装置を作動および停止させることと、を含む。
【0101】
任意の実施形態では、方法は、
血圧パラメータセンサーによって、対象の心臓の血圧パラメータを検知することと、
コントローラによって、血圧センサーから受信した検知血圧パラメータデータに基づいて、血液ポンプ装置のポンピング速度を調整することと、を含む。
【0102】
任意の実施形態では、方法は、電力ユニットを電力リード線を用いて血液ポンプ装置に接続することを含む。
【0103】
任意の実施形態では、方法は、
血液ポンプ装置を左心室に経皮的に送達することと、
典型的には、スプールに巻かれるか、または巻回された構成で、血液ポンプ装置に詰め込まれた電力リード線の近位端を捕らえることと、
電力リード線の近位端を電力ユニットに送達することと、を含む。
【0104】
任意の実施形態では、方法は、電力リード線の近位端を右心房に後退させることを含む。このことは、カテーテル装置のアクセスシースまたは別の形態によって実施され得る。
【0105】
任意の実施形態では、電力リード線の近位端は、少なくとも部分的に経皮的に電力ユニットに送達される。
【0106】
任意の実施形態では、電力リード線は、右心房、上大静脈、および内頚静脈/鎖骨下静脈を介して送達される。
【0107】
任意の実施形態では、方法は、センサーおよびコントローラ(または単一ユニット)を、センサーリード線と連結することを含む。
【0108】
任意の実施形態では、方法は、
アクセスシースの遠位端が左心室内に配置されるようにアクセスシースをガイドワイヤに沿って経皮的に前進させることと、
アクセスシースの管腔に沿ってアクセスシースの遠位端を越えて血液ポンプ装置を前進させることと、
左心室の壁に血液ポンプ装置を固定するために固定モジュールを展開させることと、を含む。
【0109】
任意の実施形態では、方法は、固定モジュールが自己展開するステップを含む。
【0110】
任意の実施形態では、方法は、固定モジュールを左心室に送達することと、血液ポンプ装置を左心室内の固定モジュールに連結することと、を含む。
【0111】
任意の実施形態では、方法は、固定モジュールを左心室の壁に固定するために固定モジュールを展開することと、血圧装置を固定モジュールに連結することと、を含む。
【0112】
本発明のその他の態様および好ましい実施形態については、以下に示される他の請求項で定義および記載される。
【図面の簡単な説明】
【0113】
図1】装置ハウジングの血液入口側から見た本発明のシステムの一部を形成する血液ポンプ装置の斜視図である。
図2】装置ハウジングの血液出口側から見た図1の心臓ポンプ装置の斜視図である。
図3図1の血液ポンプ装置の断面図である。
図4図1の血液ポンプ装置の断面図である。
図5図1の血液ポンプ装置の一部を形成するロータの斜視図である。
図6A図5のロータの一部を形成する掃引羽根インペラの斜視図である。
図6B図5のロータの一部を形成する掃引羽根インペラの端面図である。
図6C図5のロータの一部を形成する掃引羽根インペラの側面図である。
図7】左心室に植え込まれ、かつ左心室の心尖部に固定された本発明のシステムを有するヒトの心臓の図である。
図8】左心室内で、その位置で、僧帽弁に面した入口を有する血液ポンプ装置を示す図7の左心室の分解図であり、拡張期の間に作動させたときに装置がどのように血液をRAからLVに引き込むかを示す図である。
図9】コントローラが心臓の外部に設置され、かつ制御ワイヤによって血液ポンプ装置に電気的に接続され、また対象の胸部に設置されたECGセンサーに電気的に接続された、本発明のシステムの一実施形態の図である。
図10】コントローラが心臓の外部に設置され、かつ制御ワイヤによって血液ポンプ装置に電気的に接続され、また左心室の外壁に植え込まれた心拍数センサーに電気的に接続された、本発明のシステムの別の実施形態の図である。
図11】コントローラが心臓の外部に設置され、かつ無線送信機/受信機によって血液ポンプ装置に電気的に接続され、またセンサーが血液ポンプ装置に連結され、かつ左心室の内壁と接触している、本発明のシステムの別の実施形態の図である。
図12】心臓内での使用のために展開される本発明のシステムの主要構成要素の一実施形態のブロック図である。
図13】心臓内での使用のために展開される本発明のシステムの主要構成要素の別の実施形態のブロック図である。
図14】インペラ先端径対ロータ回転数のグラフである。最大直径範囲に収まる最小インペラ直径での速度は、38348rpmで示されている。
図15】ロータ回転数に対するポンプ流れパラメータの片対数プロットである。最大インペラ直径に基づいて必要とされる最小ロータ回転数は、38348rpmで示されている。
図16】比速度に対するポンプ係数のグラフである。最大直径に基づく最小比速度は、1398.5で示されている。
図17】NPSHRおよびポンプ揚程の想定されるインペラ先端速度に対する比速度(u=13.272m min-1)のグラフである。
図18】本発明のシステムの一部を形成する血液ポンプ装置の第2実施形態を示す。
図19】対象の心臓の左心室に固定された図18の血液ポンプ装置を示す。
図20】本発明のシステムの一部を形成する血液ポンプ装置であって、該装置が左心房と血液ポンプ装置の流体入口との間に流体連通を提供する流体導管を有する第2実施形態を示す。
図21】対象の心臓の左心室に固定された図20の血液ポンプ装置を示す。
図22A】装置の近位端のチャンバ内で、電力/制御リード線が巻回されていることを示している、本発明の一部を形成する血液ポンプ装置の遠位端を示す。
図22B】電力/制御リード線の近位端のループを捕らえ、かつリード線を引き出す回収カテーテルを示す。
図22C】血液ポンプ装置のチャンバから完全に後退された電力/制御リード線およびコントローラ/電力ユニットに動作可能に連結されたリード線の近位端を示す。
図23】血液ポンプ装置を大腿動脈を介して対象の心臓の左心室に送達するカテーテルデリバリーシステムを含む本発明のシステムを示す。
図24】鎖骨下静脈および上大静脈を介して電力リード線の近位端を回収するように展開される回収カテーテルを示す。
図25】鎖骨下静脈、上大静脈、右心房、心房中隔、左心房を通って、左心室へと延在する電力リード線を介して胸部の真皮下に植え込まれた電力ユニット/コントローラに連結された左心室内の血液ポンプ装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0114】
本明細書に記載の全ての刊行物、特許、特許出願、および他の参考文献は、個々の刊行物、特許、または特許出願が、参照により援用されることが具体的かつ個別に示され、その内容が全て記載されているかのように、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に援用される。
【0115】
本明細書で使用される場合、かつ、別段の指定がない限り、以下の用語は、当該用語が当該技術分野において享受し得るあらゆる広義な(またはより狭義な)意味に加えて、以下の意味を有することが意図される。
【0116】
文脈上別段の定めがない限り、本明細書において単数形の用法は複数形を含むものとし、その逆もまた同様とする。ある実体に関連して使用される「a」または「an」という用語は、その実体の1つまたは複数を指すものとする。そのため、用語「a」(または「an」)、「1つまたは複数の」、および「少なくとも1つの」は、本明細書で同じ意味で用いられる。
【0117】
本明細書で使用される場合、用語「含む(comprise)」、または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」などのその変形は、いずれの列挙される項目(例えば、特性、要素、特徴、性質、方法/処理工程、または制限)または項目の群(例えば、特性、要素、特徴、性質、方法/処理工程、または制限)も含み、かつ他の項目または項目の群は除外しないことを示すものと理解される。したがって、本明細書で使用される場合、用語「含む(comprising)」は、包括的またはオープンエンドであり、列挙されていないさらなる項目または方法/処理工程を除外しない。
【0118】
本明細書で使用される場合、用語「疾患」は、生理機能が損なわれて、特定の症状に付随する異常状態を定義するために使用される。この用語は、病因の性質に関係なく(または実際に疾患の病理学的根拠が確立されているかどうかに関係なく)生理機能が損なわれた、いずれの疾患、疾病、異常、病状、病気、病態または症候も包含するために広義に使用される。したがって、感染、外傷、損傷、外科手術、放射線切除、中毒または栄養欠乏から生じる病態も含まれる。
【0119】
加えて、用語「治療」または「治療すること」とは、治療される集団において、疾患の発症または進行を予防もしくは遅延するか、またはその発生率を低減する(または根絶する)、介入(例えば、本発明の装置を使用した左心室の収縮の補助)を指す。この場合、治療という用語は、用語「予防処置」と同意語として使用される。
【0120】
上述した治療および有効量との関係において、対象という用語(文脈が許す限り「個体」、「動物」、「患者」または「哺乳動物」を含むものとする)は、治療が指示される任意の対象、特に哺乳類の対象を定義する。哺乳類の対象としては、ヒト、飼育動物、家畜、動物園の動物、運動競技動物、ペットの動物、例えばイヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ウシ、雌ウシ、霊長類、例えば、類人猿、サル、オランウータンおよびチンパンジー、イヌ科動物、例えば、イヌおよびオオカミ、ネコ科動物、例えば、ネコ、ライオンおよびトラ、ウマ科動物、例えば、ウマ、ロバ、およびシマウマ、食用動物、例えば、ウシ、ブタ、およびヒツジ、有蹄動物、例えば、シカおよびキリン、ならびにげっ歯動物、例えば、マウス、ラット、ハムスター、およびモルモットが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、対象はヒトである。
【0121】
「血液吸引装置」とは、心室、特に左心室に植え込まれるように構成された装置であって、作動時に、拡張期の間に僧帽弁を介して右心房から左心室に血液を流し、したがって、左心室が血液で満たされることを補助することができる装置を意味する。装置は、一般に、インペラを含む。インペラは、典型的には、血液入口および血液出口を有するハウジング内に配置された羽根を有するロータを含む。ハウジングは、一般に管状および伸長した形状であり、ここで、血液入口が、ハウジングの一端または中央に配置され、かつ血液出口が、ハウジングの一端に配置される。インペラは、羽根がハウジングの血液出口に向かって配置された状態で、ハウジング内で回転するように取り付けられる。使用中、装置は、通常、ハウジングの血液入口が、ハウジングの血液出口よりも僧帽弁の近くに位置するように、左心室の壁に固定される。ハウジングは、典型的には、使用時に、僧帽弁の方に向けられる、長手方向軸を有する。装置は、概して、ステータを含む電磁気モータであり得るモータを含む。装置はまた、コントローラおよびセンサーも含み得る。装置は、誘導充電装置を含むか、または誘導充電装置に動作可能に連結され得る。
【0122】
血液吸引装置に適用される「出力パラメータ」は、装置の作動の頻度およびポンプ流れ圧力(例えば、作動中のインペラ回転速度を含む。血液吸引装置の停止段階の間、インペラ回転が維持され得るが、回転速度は作動段階と比べて著しく低下することを理解されよう。したがって、例えば、インペラは、作動段階の回転速度よりも50%以下の回転速度で回転し得る。
【0123】
「心室拡張期の間の作動および心室収縮期の間の停止」とは、血液ポンプ装置が、心室拡張期の少なくとも一部(通常、心室拡張期の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、または100%)の間に作動され、かつ血液ポンプ装置が、心室収縮期の間に停止されることを意味する。例えば、血液ポンプ装置は、システムが大動脈弁の閉止を検出すると(心室収縮期の間)停止され得、システムが大動脈弁の開放を検出すると(心室充満およびその後の心房収縮の間)作動され得る。血液ポンプ装置は、例えば、心臓ペーシングセンサーによって検出された心拍の頻度に基づいた頻度で作動および停止され得る。
【0124】
「アンカー」とは、組織、例えば、心臓の左心室の壁、隔壁、または心尖部と係合するように構成された要素を意味する。固定アセンブリは、1つ、2つ、3つまたはそれ以上のアンカーを含み得る。1つは、左心室中隔に接続され得、もう1つは、左心室の心尖部に接続され得る。固定アセンブリは、血液吸引装置の堅固な接続を確実にするために、展開され、かつ左心室の壁の組織に埋め込まれるように構成されたアンカーを含む。固定は、通常、壁の最低2つの位置で行われる。アンカーは、心臓吸引装置によって生じる繰り返し荷重、ならびにそれらが埋め込まれている組織によって生じる荷重に耐えるように適合される。加えて、アンカーは、筋組織を通るアンカーの貫通によって生じる損傷、ならびに繰り返しおよび連続的な収縮サイクルによって生じる組織へのなんらかのその後の損傷を最小限に抑える設計によって、周辺の組織への損傷を最小限に抑えるように設計される。アンカーは、任意の好適な構造から形成され得る。アンカーは、組織のタイプおよび組織の状態に従って選択される。一実施形態では、アンカーは、固定アセンブリが展開構成で圧縮されている場合、円周方向に膨張する弾性高分子膜によって被包される。
【0125】
一実施形態では、アンカーのうちの少なくとも1つと血液吸引装置との間の連結は、磁石または磁化可能要素を含む。これにより、生体内の標的位置でのアンカーと血液吸引装置との連結が容易になる。一実施形態では、アンカーは、心臓吸引装置と着脱可能に連結するように構成される。これにより、アンカーの1つまたは両方を心臓吸引装置から別々に標的位置に送達することが可能となる。一実施形態では、装置は、第1アンカーを含む第1部分および第2アンカーに連結された心臓吸引装置を含む第2部分の2つの部分で送達される。
【0126】
本発明のシステムは、誘導充電装置を含み得る。「誘導充電装置」とは、エネルギーを移動させて装置を充電するために、電磁場、無線電波、または磁気共鳴充電のうちの任意の1つを使用して、無線で、システムを充電する装置、またはシステムの任意の装置を意味する。例えば、血液吸引装置は、誘導充電装置を含み得る。
【0127】
本発明のシステムは、充満段階(拡張期)の間に、臨床的に効果のある機能的サポートを心臓の左心室に送達するように設計される。システムは、拡張期の間に、植え込まれた心臓の左心室への血液の流れを増加させ、次に、収縮期の間に停止される。一実施形態では、血液ポンプ装置は、心室収縮期の全期間において停止される。コントローラは、生理学的な合図に反応する自動適応型システムとして該システムが作動できるように、プログラム可能なものである。システムは、特定のユーザー要件に対して連続的に適合可能である。血液吸引装置は、コントローラによって、心臓の自然サイクルと共働するパターンで作動し、例えば、拡張期の間に血液吸引装置が作動し、収縮期の間に血液吸引装置が停止するように構成される。したがって、対象の心拍数が増加すると、血液吸引装置の作動および停止の頻度は、センサーから受信した信号に基づいて心拍数に同期して変化する。加えて、コントローラは、センサーから受信した生理学的な合図に基づいてインペラ回転速度を変更することができ、例えば、心拍が上昇している期間の間にインペラ回転速度を増加させ、心拍数が低下している期間の間にインペラ回転速度を減少させることができる。コントローラは、センサーからデータを受信し、保存データと保存参照データとを比較し、かつその比較に基づいて血液吸引装置の出力パラメータを変更するように構成された計算装置を含み得る。
【0128】
コントローラは、心臓の外側で使用するように構成され得る。したがって、システムは、心臓内部に植え込まれた心臓吸引装置と身体の外側に設置されたコントローラとを動作可能に連結する制御リード線を含み得る。制御リード線は、心臓の壁を通って胸部を通り外部のコントローラに向かって延在し得る。別の実施形態では、制御リード線は、左心室から血管系の一部を通って、好適な位置で身体の中から外へ経皮的に延在し得る。コントローラは、対象が着用できるように構成され得る。コントローラは、電源、例えば、バッテリに接続され得る。別の実施形態では、コントローラは、血液吸引装置の一部として、心臓内部に植え込まれるように構成され、かつセンサーからデータを受信するように構成され得る。
【0129】
センサーは、本発明のシステムの一部であり得るか、または本発明のシステムは、分離センサーと共に使用するように構成され得る。例えば、システムは、心臓の左心室に植え込まれるように構成されたセンサーを含み得、ここで、該センサーは、血液吸引装置に動作可能に接続または連結される。これは、心臓収縮/弛緩のパラメータを検知するために、心臓の壁に接触して延在するように構成されるか、または左心室内もしくは別の心室内の血液に接触して、血液のパラメータ(例えば、圧力または流量)を検出するように構成されたワイヤ/センサー要素であり得る。
【0130】
別の実施形態では、センサーは、心臓の外壁に植え込まれ、かつ対象の身体の外側に取り付けられ得るコントローラに動作可能に連結されるように構成される。
【0131】
任意の実施形態では、システムは、コントローラの一部を形成し得るグラフィカルユーザーインターフェースを含む。コントローラは、システムの機能に関連するGUIデータ、例えば、心拍数、血圧、インペラの作動の頻度、インペラの回転速度を表示するように構成され得る。
【0132】
任意の実施形態では、センサーは、左心室の駆出率を検出するように構成される。任意の実施形態では、コントローラは、左心室の検出された駆出率と1つまたは複数の駆出率参照値を比較し、その比較に基づいて血液吸引装置の出力パラメータを変更するように構成される。任意の実施形態では、コントローラは、駆出率が減少していることが検出された場合に、一定期間、血液吸引装置のスイッチを切るように構成される。任意の実施形態では、コントローラは、駆出率が維持されていることが検出された場合に、血液吸引装置の動作を再開するように構成される。
【0133】
システムは、左心室、心臓の活動、またはシステムの活動に関連する信号を送信または受信するための遠隔測定構成要素をさらに含み得る。遠隔測定構成要素は、パルス、心拍数、および心臓の電気的活動などのデータをコントローラに中継する、無線周波数を使用する無線医学的遠隔測定要素を含み得る。
【0134】
コントローラは、メモリ内のプログラム命令の自動実行によって、および/またはユーザーからの外部入力を受信することのいずれかによって、血液吸引装置の動作を制御するように構成され得る。システムのメモリ構成要素としては、ROMおよびRAMメモリを挙げてもよい。コントローラは、マイクロプロセッサの形態をとり得る。
具体例
【0135】
次に、具体的な例を参照しながら本発明について説明する。これらは、単に例示であり、かつ説明のみを目的としたものである。これらは、請求される独占権の範囲または記載される発明をいかなる形でも限定することを意図していない。これらの例は、本発明を実施するために現在企図される最良の形態を構成するものである。
【0136】
各図面、および、まず図1から6を参照すると、本発明のシステムの一部を形成する血液吸引装置が図示されており、概して、参照番号1で示されている。装置1は、血液入口3、血液出口4、および入口3と出口4との間に延在する内部管腔6を備えた外部管状ハウジング2を含む。ハウジングは、30mmの長さ、7.6mmの直径を有する。ロータ5は、離間したベアリング7に取り付けられ、かつ管腔内の回転用の内部管腔6を通って軸方向に延在する。ステータ8は、ロータの近位端を取り囲む血液入口3に隣接してハウジング内に取り付けられ、かつ使用時、血液ポンプ装置の作動中にロータを回転するように機能する。装置を回転させるための電子回路を含むPCB9は、ロータ5を取り囲むハウジングの中央部分に配置される。
【0137】
図3を参照すると、ハウジング2は、仕切り壁12によって中央環状部13と分離された近位部分10および遠位部分11を有する。ハウジングの近位部分は、ステータ8およびPCB9、ならびに装置の作動中の血液用の通路を備えた中央管腔15を収容する環状区画14を含む。PCB9は、以下の構成要素、レジスタ、ダイオード、トランジスタ、マイクロプロセッサ、圧力センサーを含む。
【0138】
具体的には図4から6を参照すると、インペラ装置20は、ロータ5の遠位端に取り付けられ、直径が1.665mmの管状ハブ21およびハブの対向する側面に対称的に装着された伸長した掃引羽根22を含む。各羽根は、13mmの軸方向長さ、および4.995mmの半径方向幅を有し、遠位端から近位端のその長さに沿ってハブを中心にして、図6BでOとして示されている約100°の角度(掃引角度)で掃引する。各羽根と取り囲む外部ハウジングとの間の隙間は、0.5mmである。
【0139】
図7および8は、左心房30、左心室31、大動脈32、および大動脈弁尖33、僧帽弁34、右心房35、右心室36、左心室中隔37、および左心室心尖部38を含むヒトの心臓を示している。血液吸引装置1が、左心室中隔37の下方部分に固定された第1固定アーム39A、および心尖部38に固定された第2固定アーム39Bの2つの固定アームで左心室に植え込まれた状態で示されている。装置は、装置1の血液入口3が僧帽弁34および左心房に向かって面し、かつ血液出口4が左心室の心尖部に面するように配置される。拡張期の間の装置の作動時に、血液は、矢印Aで図示されているように、入口3を通って装置内に流されて、出口4を通って排出され、これにより、右心房から左心室へ血液を移すことが補助される。拡張期が終了すると、僧帽弁が閉じて大動脈弁尖が開き、左心室が収縮して自力で大動脈に血液を送り出すのと同時に、装置は停止される。
【0140】
図9から11は、本発明のシステムのいくつかの実施形態を示しており、先の実施形態を参照して説明した部分には、同じ参照番号が割り当てられている。
【0141】
図9では、本発明のシステム40は、前述の通り心臓のLV内に植え込まれていることが示されている血液吸引装置1、および電力モジュール42およびコントローラ/処理装置43を収容している、対象の身体の外部のコントローラ装置41を含む。制御リード線44は、LVからLVの壁を通って延在し、コントローラ装置41と動作可能に接続する。検知リード線45は、コントローラ装置と対象の胸部に取り付けられたECGセンサー46とを動作可能に接続する。ECGアレイは、図12に示すように、ユーザーの皮膚に設置される1つまたは複数のリード線を有する。ECGリード線は、例えば、皮下に配置されるか、身体の左胸骨傍部などに植え込まれてよい。本実施形態では、ECGは、対象の心臓の電気パラメータをモニタし、コントローラは、その電気パラメータを受信して、拡張期の間に血液吸引装置を作動させ、かつ収縮期の間に血液吸引装置を停止させるように電気パラメータと共働するパターンで血液ポンプ装置1を作動および停止させて、拡張期の間にLV心室が血液で満たされることを補助する。コントローラはまた、センサーから受信したデータに基づいて、血液吸引装置の他のパラメータを制御し、これには、活動期間中(例えば、心拍が安静時心拍数を上回った場合)の拡張期の間にインペラ回転速度を増加させること、および安静期間中の拡張期の間にインペラ回転速度を減少させること、が含まれる。
【0142】
図10は、参照番号50で示されている本発明のシステムの代替実施形態を示しており、先の実施形態を参照して説明した部分には、同じ参照番号が割り当てられている。本実施形態では、左心室収縮パラメータを検出するセンサー51が、キーホール手術によって対象の胸部に植え込まれ、かつ好適な固定手段を使用して左心室の外壁に固定されている。センサーリード線55は、センサー51とコントローラ装置41との間に延在し、左心室収縮パラメータを含むデータをコントローラに提供する。拡張期の間に左心室の充満を増強するためのこのシステムの使用は、図9を参照して前述したものと同じである。
【0143】
図11は、参照番号60で示されている本発明のシステムの代替実施形態を示しており、先の実施形態を参照して説明した部分には、同じ参照番号が割り当てられている。本実施形態では、センサー61は、左心室での装置の展開時に左心室の壁に接触して展開するように構成された血液吸引装置1のハウジングに接続されたワイヤの形態で設けられている。ワイヤは、心臓の電気パラメータを検出し、検出した電気パラメータを、血液吸引装置のハウジングに取り付けられた無線送信機/受信機に中継するように構成される。コントローラは、センサー61からデータを受信し、かつ血液吸引装置に出力パラメータを関連付ける無線受信機/送信機を含む。拡張期の間に左心室の充満を増強するためのこのシステムの使用は、図9を参照して前述したものと同じである。
【0144】
図12は、本発明のシステムの主要構成要素の一実施形態のブロック図を示している。この図に示された実施形態では、インペラポンプを含む血液吸引装置1は、対象の心臓の左心室31に固定されている。心拍数パラメータを検出するように構成されたセンサー70は、心臓の外側に設置される。センサーは、対象の胸部に配置されたECGリード線を含むECGセンサー、または対象の心臓の外部に設置される別のタイプの心拍数パラメータセンサーであってもよい。センサー70は、心拍数パラメータ47、この場合、左心室収縮パラメータを検出するように構成される。
【0145】
センサー70から出力されたセンサーデータは、有線または無線通信のいずれかによって、マイクロプロセッサ/制御ユニット81に通信される。マイクロプロセッサ/制御ユニット81は、受信したセンサーデータに基づいて拡張期および収縮期の時間を連続的に評価し、血液吸引装置1の作動および停止を、心臓サイクルの拡張および収縮段階と同期させるように、最適に同期させるように構成される。
【0146】
使用中、センサー70は、心臓の心拍数パラメータを検出し、センサーデータをマイクロプロセッサ/制御ユニット82に送信する。受信されたセンサーデータは、メモリ84に保存されている命令に従って、マイクロプロセッサ/制御ユニット82によって分析される。次に、マイクロプロセッサ/制御ユニット82は、心臓の自然な収縮サイクルに共働するパターンで心臓吸引装置1を作動させるように、センサーデータに基づいて適切に心臓吸引装置1の出力パラメータを変更するために、制御信号を電力ユニット85および電子回路83に送達し、拡張期の間に装置を作動させ、かつ収縮期の間に装置を停止させる。
【0147】
図13は、本発明のシステムの主要構成要素の別の実施形態のブロック図を示している。本実施形態では、これは図11を参照して説明したシステムと実質的に同じものであり、心拍数パラメータを検知するためのセンサー70は、心臓の左心室内に設置され、検知したデータを、有線または無線通信によって外部のマイクロプロセッサ/制御ユニット81に送信する。本実施形態のシステムの使用は、図11を参照して前述したものと実質的に同じである。
LVへの血液吸引装置の送達
【0148】
装置は、大腿動脈/鎖骨下動脈または大腿静脈/鎖骨下静脈を介して経皮的に送達されてよい。装置はまた、心尖を貫くルートを通って送達され得、それにより、肋間腔に切り込みが入れられ、装置が心尖部を通して送達される。
サポートデータ
【0149】
図4は、本発明の一実施形態による血液吸引装置を示している。図4の実施形態は、プリント回路基板およびステータコイルなどの内部構成要素に対してより広いスペースを与えるために、29Fr(9.66mmのOD)カテーテルでの送達に適しているように設計されている。壁厚は、ある程度カスタマイズ可能であるが、本発明者らは、1mmの壁厚を仮定する。したがって、内部直径は、7.66mmである。隙間および壁厚を0.5mmと仮定すると、本発明のインペラ先端径は、6.6mmを超えることはできない。
【0150】
ポンプパラメータは、Gulich(2020-Page.455)[Gulich,J.,2020.Centrifugal Pumps.4th ed.Springer International Publishing,p.455]に記載されている一連の関連方程式に基づくものである。
【0151】
既知の量には、流量(Qopt)、揚程(Hopt)、使用可能な正味の有効吸込揚程(NPSHA)、キャビテーション安全係数(FNPSH)、およびポンプ効率(ηh)がある。記載される値および任意の計算は、MATLAB(登録商標)スクリプトPump_graph.mに含まれている。
【0152】
ポンプに必要な流量は、ポンプが1回の心拍で移動させる必要がある血液の体積に心拍数を掛けたものであり、m-1で表される。20mlの血液を移動させる必要があり、最悪の場合、心拍数が200bpmであると仮定すると、Qopt=6.66×10-5-1である。
【0153】
必要とされる揚程は、HFpEFにおけるLA高血圧を緩和するのに必要とされる減圧である。これは、最悪のシナリオでは、10mmHgと推定される。この圧力は、流体の比重量(水と同じであると仮定)で割ることによってメートル単位で表現することができ、Hopt=0.1359mである。
【0154】
使用可能な正味の有効吸込揚程は、ポンプの入口での正味の圧力から、メートル単位で表現される流体の蒸気圧を引いたものである。LAの全圧力は、拡張期におけるLAP(20mmHg、これはポンプが作動している場合)、LAの高さ(3cm)、および大気圧(760mmHg)の合計とする。血液の蒸気圧は、水の蒸気圧(47mmHg)と同じであると仮定される。NPSHA=9.995mである。
【0155】
キャビテーション安全係数は、圧力が血液蒸気圧を確実に下回らないようにすることによってキャビテーションの量を制限すると推定され、これは、FNPSH=0.8*NPSHAと推定される。
【0156】
ポンプ効率は、計算することができないが、実験的に導出される必要がある。軸流ポンプの場合、典型的には、ηh=85%である。
【0157】
ここで所望量は、ロータ回転数(n)、インペラ先端径(d2)、ハブ比率(v)、比速度(nq)、圧力係数(ψ)、流量係数(φ)およびキャビテーション係数(σ)である。
【0158】
量は、繰り返し計算可能であるが、実際には、MATLAB(登録商標)スクリプトを使用して、ロータ回転数の増加に伴って量をプロットし、生成されたこれらのパラメータのグラフに基づいて可能なポンプ特性を決定する方が簡単である。図14は、ロータ回転数のある範囲に対して計算された最小インペラ直径を示している。最大インペラ直径(6.66mm)以下の直径の値を選択することによって、ポンプに必要な最小ロータ回転数を38348rpmと決定することができる。
【0159】
図15は、ロータ回転数に対する流れパラメータの片対数グラフである。再度、必要とされる最小ロータ回転数は、38348rpmで示されている。このグラフは、必要とされるロータ回転数で、NPSHR=1.5322mであり、円周速度がu=13.272m分-1であり、かつアプローチ流れ角がβ=0.1455°のパラメータを示している。
【0160】
図16は、比速度に対するポンプ係数を示している。ここで、必要とされる最小ロータ回転数は、比速度に変換されており、このグラフでは1398.5で示されている。係数の値は、グラフ上のこの点で、次のように評価することができる。Ψ=0.0151、φ=0.1465、v=0.0608、およびσ=0.1708。
【0161】
図17は、インペラ先端速度が先に評価された計算済みの円周速度に設定される場合の、NPSHRおよびポンプ揚程対比速度を示している(u=13.272m分-1)。必要とされる比速度は、1398.5で示され、この値でのNPSHRおよび揚程を評価すると、それぞれ、1.5332mおよび0.1360mである。NPSHRのこの値は、図4から評価したものと同じであり、揚程の値は、ポンプの要件として指定されたものと同じである。
【0162】
図7は、比速度の範囲で必要なインペラブレードおよび拡散羽根の数を概説している、Gulich(2020)pg.456から引用した表を示している。この表から、比速度が>290であるため、インペラブレードの数は、2個であるべきであり、拡散羽根の数は、5/7/9個であるべきであることが分かる。
【0163】
ブレード特性の計算を手作業で行うのではなく、CFTurbo(CFturbo GmbH,Germany)と呼ばれるソフトウェアツールを使用してブレード設計を完成させた。このツールは、先のセクションで計算された情報を取り込み、インペラ設計の処理を半自動化する。選択された入力は、前述したような200bpmのHFpEF条件で計算されたものであった。しかし、この条件で計算されたハブ比率は、小さすぎて実用的ではなかった。したがって、異なる心拍数の範囲でコードを再実行し、妥協案としてハブ比率0.25を選択した。最終的なインペラの設計を出力し、完全なCADファイルに含めるように準備した。
【0164】
図18および19を参照すると、本発明のシステムの一部を形成する代替的血液ポンプ装置が図示されており、ここで、先の実施形態を参照して説明した部分には、同じ参照番号が割り当てられている。概して参照番号90で図示される血液ポンプ装置は、血液入口3、血液出口4、およびロータ5を備えたハウジング2を含む。本実施形態では、ハウジングは、ロータ5の近位端に動作可能に連結されたモータ92を含む円筒形近位部分91、ロータ5の遠位部分に装着されたインペラ20および遠位血液出口4を含む円筒形遠位部分93、ならびに血液入口3を含む中央部分94を含む。円筒形遠位部分93は、円筒形近位部分91の直径よりも約2倍大きい直径を有する。中央部分94は、近位部分91から遠位部分93まで連結する複数の支柱95を含み、該支柱は、血液入口として機能する複数の大きな三角形の血液入口開口96を画定する。装置は、約20から30mの長さ、1.5から3mmの近位端での直径、および3から7mmの遠位端での直径を有し、ゆえに、左心室への経皮的送達に適している。電力/制御リード線97は、モータに連結され、装置90から左心房の方へと近位方向に延在する。電力/制御リード線97の遠位端は、対象の胸部で真皮下に植え込まれた電力ユニットに動作可能に連結される(図示せず)。3つの固定アーム39A、39B、および39Cは、ハウジングの円筒形遠位部分93に装着され、かつ、図18に示す詰め込まれた送達構成から、図19に示す外向きに広がった展開構成に枢動可能に調節可能である。アームは、ニチノールで形成されており、かつ一旦、装置90がアクセス/送達シース(図示せず)の遠位端を超えて移動すると、外向きに広がった構成に弾性的に付勢されて、この展開構成へと自己展開する。各アームの先端は、左心室の壁の組織に係合する固定バーブ98を含む。
【0165】
使用中、装置90は、固定アームが詰め込まれた送達構成に制約されている状態で、アクセスシースの近位端に装墳される。次に、装置90は、シースの管腔を通って、左心室に前進し、この際、シースの遠位端の中から外へ展開され、それにより、固定アームが自己展開して、左心室の壁に装置を固定させる。装置は、装置1の血液入口3が僧帽弁34および左心房に向かって面し、かつ血液出口4が左心室31の心尖部に面するように配置される。アクセスシースを通した装置の送達には、装置の近位端に着脱可能に連結された遠位端を有する伸長した送達シャフトを採用してよく、この場合、アクセスシース内に送達シャフトを前進させることによって、装置は、アクセスシースを通って前進する。アクセスシースおよび送達シャフトは、アクセスシースに対して送達シャフトを軸方向に移動させるアクチュエータを有するハンドルと連携し得る。一旦、その場で、電力/制御リード線97がコントローラおよび電力ユニットに連結されると、モータは、コントローラによってセンサーから受信された心臓サイクルデータに基づいて、左心室を血液で充満させることを補助するための心室拡張期の間のモータの作動、および次の、左心室が収縮して血液を排出する場合の心室収縮期の間の停止を含む、心臓サイクルと共働するパターンで作動および停止する。作動/停止の頻度は、センサーによって検出される対象の心拍の変化に基づいて、リアルタイムで調整される。センサーはまた、血圧パラメータデータをコントローラに提供し得、これを使用して、作動段階中にモータの回転速度を制御することができる。このように、本発明のシステムは、例えば、対象の心臓が、運動または身体活動によってより激しく動く必要がある場合に、心臓で検出された血圧に従ってインペラの回転速度を設定し、血圧の変化に従ってインペラ速度を調整することができる。
【0166】
図20および21を参照すると、本発明のシステムの一部を形成する代替的血液ポンプ装置が図示されており、ここで、先の実施形態を参照して説明した部分には、同じ参照番号が割り当てられている。概して参照番号100で図示される血液ポンプ装置は、前述した装置90と同じものであるが、追加として、左心房30の内部から装置90の血液入口開口96への流体連通を提供するように構成された流体延長導管101を含む。導管101は、概して、可撓性であり、かつ装置ハウジングの円筒形遠位部分93の近位端と流体的に嵌合する開放遠位端102、および左心房から血液を受け取る開放近位端103を含む。導管101は、開放近位端103が左心房内に配置されるように左心房30の内部へと部分的に延在するように寸法取りされる。導管の遠位端は、僧帽弁34に固定されるように構成され得る。導管101は、装置100と一体式で形成され得るか、または装置に着脱可能に連結されてよい。この実施形態の使用は、図18の実施形態に関して記載したものと同じである。ただし、血液は、左心房から直接、導管101を通って装置100に流される。
【0167】
図22A、22B、および22Cを参照すると、本発明のシステムの一部を形成する代替的血液ポンプ装置が図示されており、ここで、先の実施形態を参照して説明した部分には、同じ参照番号が割り当てられている。概して参照番号110で図示される血液ポンプ装置は、前述した装置90と同じものである。ただし、装置ハウジングの円筒形近位部分91は、チャンバ111と、モータ92の近位方向にチャンバ111の内部に詰め込まれた電力/制御リード線97を含む。電力/制御リード線97の遠位端は、ループ112を含む。遠位フック114を備えた回収カテーテル113もまた、図示されている。使用中、血液ポンプ装置110は、前述したようにチャンバ111内部でスプールに巻かれた電力/制御リード線97と共に左心室に送達される(図22A)。一旦、装置が左心室に固定され、かつ送達シャフトが装置から取り外されて、引き出されると、回収カテーテル113は、鎖骨下静脈の入口点から上大静脈を通って、右心房を介して左心房内部へと延在する第2アクセスシース(図示せず)を通って前進する。回収カテーテルは、第2アクセスシースを通って、遠位フック114が電力/制御リード線97のループ112をひっかけるまで前進し(図22B)、次に、回収カテーテルは、右心房、上大静脈、および鎖骨下静脈を通って近位方向にリード線97を引き込むよう後退され、そこから、対象の胸部の真皮下に植え込まれた電力ユニット42を含むコントローラ41と電気的に連結可能である(図22C)。本実施形態の装置の使用は、前述したものと同じである。
【0168】
図23から25は、血液ポンプ装置を大腿動脈経路を介して心臓の左心室に送達するために使用される本発明のシステム(図23)、電力リード線の近位端を「ひっかける」ために、鎖骨下静脈を介して左心室に前進される回収カテーテル(図24)、ならびに、対象の胸部の真皮下に植え込まれた電力ユニット/コントローラに、鎖骨下静脈、上大静脈、右心房、心房中隔、左心房を通って、左心室内部へと延在する電力リード線を介して連結された左心室内の装置(図25)を示している。本発明のシステムは、送達装置が引き出されるときに、血液ポンプ装置の送達装置が電力リード線の近位端を右心房の方に引き込むように構成され得る。次に、回収カテーテルは、右心房の方へ前進し、電力リード線の近位端をひっかけて、それを鎖骨下静脈の方に回収し得、この際、植え込まれた電力ユニット/コントローラと連結される。
等価物
【0169】
前述の説明は、本発明の目下の好ましい実施形態を詳述したものである。これらの説明を考慮して当業者によって行われるその実施における多数の修正および変更が予測される。それらの修正および変更は、添付の特許請求の範囲内に包含されることが意図される。
【符号の説明】
【0170】
1 血液ポンプ装置
2 外部管状ハウジング
3 血液入口
4 血液出口
5 ロータ
6 内部管腔
7 離間したベアリング
8 ステータ
9 PCB(電子回路)
10 ハウジング近位部分
11 ハウジング遠位部分
12 ハウジング仕切り壁
13 中央環状部
15 中央管腔
20 インペラ装置
21 管状ハブ
22 伸長した掃引羽根
30 左心房
31 左心室
32 大動脈
33 大動脈弁尖
34 僧帽弁
35 右心房
36 右心室
37 左心室中隔
38 左心室心尖部
39A 第1固定アーム
39B 第2固定アーム
39C 第3固定アーム
40 本発明の第1システム
41 コントローラ装置
42 電力モジュール/ユニット
43 コントローラ/処理装置
44 制御リード線
45 検知リード線
46 ECGセンサー
50 本発明の第2システム
51 センサー
55 センサーリード線
60 本発明の第3システム
61 センサー
70 センサー
81 マイクロプロセッサ/制御ユニット
83 電子回路
84 メモリ
90 血液ポンプ装置
91 円筒形近位部分
92 モータ
93 円筒形遠位部分
94 中央部分
95 支柱
96 血液入口開口
97 電力/制御リード線
98 固定バーブ
100 血液ポンプ装置
101 流体延長導管
102 開放遠位端
103 開放近位端
110 血液ポンプ装置
111 チャンバ
112 ループ
113 回収カテーテル
114 遠位フック
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22A
図22B
図22C
図23
図24
図25
【国際調査報告】