(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-22
(54)【発明の名称】水中油型乳化化粧品組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/06 20060101AFI20250115BHJP
A61K 8/55 20060101ALI20250115BHJP
A61K 8/63 20060101ALI20250115BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20250115BHJP
A61K 8/97 20170101ALI20250115BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20250115BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20250115BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20250115BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20250115BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20250115BHJP
A61K 8/46 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
A61K8/06
A61K8/55
A61K8/63
A61K8/44
A61K8/97
A61K8/92
A61K8/34
A61K8/37
A61Q19/00
A61K8/81
A61K8/46
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538051
(86)(22)【出願日】2021-12-23
(85)【翻訳文提出日】2024-08-06
(86)【国際出願番号】 IB2021000905
(87)【国際公開番号】W WO2023118914
(87)【国際公開日】2023-06-29
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502189579
【氏名又は名称】エルブイエムエイチ レシェルシェ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(72)【発明者】
【氏名】北村 三矢子
(72)【発明者】
【氏名】小澤 舞
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA121
4C083AA122
4C083AB032
4C083AB052
4C083AC071
4C083AC072
4C083AC122
4C083AC351
4C083AC352
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC661
4C083AC662
4C083AC791
4C083AC792
4C083AD022
4C083AD092
4C083AD491
4C083AD492
4C083AD571
4C083AD572
4C083CC02
4C083CC04
4C083CC05
4C083DD23
4C083DD33
4C083EE01
4C083EE06
(57)【要約】
本発明は、(A)水添レシチン、(B)フィトステロール、(C)アシル基に12~22個の炭素原子を有するアシルグルタミン酸又はその塩、(D)少なくとも(D1)植物油を含む油剤、及び(E)水性媒体を含む水中油型乳化化粧品組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中油型乳化化粧品組成物であって、以下を含むもの:
(A)水添レシチン、
(B)フィトステロール、
(C)アシル基に12~22個の炭素原子を有するアシルグルタミン酸又はその塩、
(D)少なくとも(D1) 植物油を含む油剤、及び
(E)水性媒体。
【請求項2】
前記成分(A)と前記成分(B)とが複合体を形成している、請求項1に記載の水中油型乳化化粧品組成物。
【請求項3】
前記成分(C)が、ステアロイルグルタミン酸又はその塩を含む、請求項1又は2に記載の水中油型乳化化粧品組成物。
【請求項4】
前記成分(D)が(D2)非植物油を更に含み、前記成分(D1)に対する前記成分(D2)の質量比R1(R1=D2/D1)が、0.01~1である、請求項1~3のいずれか一項に記載の水中油型乳化化粧品組成物。
【請求項5】
前記成分(D1)が、不飽和炭化水素系植物油、特にメドウフォーム種子油、大豆油、ヒマシ油、オリーブ油、キメニア油、プラカシ油、パーム油、亜麻仁油、ヒマワリ油、アルガン油、米ぬか油、アボカド油、マカダミア油、モモ核油、アンズ核油、菜種油、スイートアーモンド油、キャノーラ油、コリアンダー油、綿実油、ゴマ油、トウモロコシ胚芽油、小麦胚芽油、パッションフラワー油、ブドウ種子油、ベニバナ油、月見草油、クルミ油、クロスグリ種子油、ムスクローズ油、キャメリナ油、ラズベリー種子油、クランベリー油、ヒマシ油、メドウフォーム油、アナト油、アンドロバ油、ブラジルナッツ油、ブリティ油、モンゴンゴ油、マルラ油、コーヒー油、インカインチ油、ホホバ油、シアバター油、及びそれらの混合物からなる群より選ばれる、請求項1~4のいずれか一項に記載の水中油型乳化化粧品組成物。
【請求項6】
前記成分(D2)が、室温で液体の脂肪アルコールで、18~20の炭素原子を有する分岐及び/又は不飽和炭素鎖を持つもの、グリセロール及びC14-C22脂肪酸のトリグリセリド、ジアルキルカーボネート(例えばジカプリリルカーボネート)及びそれらの混合物からなる群より選ばれる、請求項4に記載の水中油型乳化化粧品組成物。
【請求項7】
親水性増粘剤を更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の水中油型乳化化粧品組成物。
【請求項8】
前記親水性増粘剤が、アクリレート/C10-30アルキルアクリレート、アクリレート/C10-30アルキルアクリレートクロスポリマー、ヒドロキシエチルアクリレート/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム共重合体及びそれらの混合物、好ましくは2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)共重合体、アクリル酸/C10-C30アルキルアクリレート共重合体及びそれらの混合からなる群より選ばれる、請求項7に記載の水中油型乳化化粧品組成物。
【請求項9】
前記成分(A)及び前記成分(B)の総含有量が、前記水中油型乳化化粧品組成物の総質量に基づいて0.01~10質量%、好ましくは0.05~5質量%、さらに好ましくは0.1~2.5質量%の範囲である、請求項1~8のいずれか一項に記載の水中油型乳化化粧品組成物。
【請求項10】
前記成分(C)の総含有量が、前記水中油型乳化化粧品組成物の総質量に基づいて0.01~5質量%、好ましくは0.05~2質量%、さらに好ましくは0.05~1質量%の範囲である、請求項1~9のいずれか一項に記載の水中油型乳化化粧品組成物。
【請求項11】
前記成分(D)の総含有量が、前記水中油型乳化化粧品組成物の総質量に基づいて5~60質量%、好ましくは5~50質量%の範囲である、請求項1~10のいずれか一項に記載の水中油型乳化化粧品組成物。
【請求項12】
少なくとも一つのポリオール、好ましくは少なくとも二つのポリオール、好ましくはグリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール及びそれらの混合物からなる群より選ばれるポリオールを更に含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の水中油型乳化化粧品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型乳化化粧品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
水中油型乳化物は、含有する油によって栄養効果と保護効果を提供する化粧品製品の一形態である。高粘度の水中油型乳化物は、化粧クリームやエッセンスなどのスキンケア製品に使用される。
【0003】
スキンケア用品の一例として、特開2017-105766号公報に開示されたゲル状水中油型乳化組成物があり、これは100MPa以上の高圧条件下で乳化することができる。同文献では、得られる乳化組成物の透明性、ゲルの経時安定性の観点から、乳化は高圧条件下で行うことが好ましいと述べられている。
[発明が解決しようとする課題]
【0004】
近年、化粧品の安全性や環境保護への関心が高まっており、天然由来成分の含有量が高い化粧品の需要が増加している。特開2017-105766号公報に記載されたエマルジョンに使用される炭化水素油やシリコーン油などの油剤を天然由来の油剤に切り替え、同文献に記載された高圧条件下で乳化することにより、水中油型乳化組成物を製造することができるが、その場合でも、これらのエマルジョンの安定性という重要な特性が不十分であることが判明した。
【0005】
また、水中油型乳化化粧料においては、塗布時のテクスチャーも重要であるが、特開2017-105766号公報の油剤を天然由来の油剤に切り替えた水中油型乳化化粧料は、安定性が低いだけでなく、塗布時に軽いテクスチャーを提供することができないという問題がある。
【0006】
そこで、高含有量の天然由来成分を使用しても、塗布時に軽いテクスチャーを提供し、エマルジョンの安定性(エマルジョン形態を維持する安定性)を持つ水中油型乳化化粧品組成物を提供する必要がある。
[課題を解決するための手段]
【0007】
このような背景のもと、本発明は、(A)水添レシチン、(B)フィトステロール、(C)アシル基に12~22個の炭素原子を有するアシルグルタミン酸又はその塩、(D)少なくとも(D1)植物油を含む油剤、及び(E)水性媒体を含む水中油型乳化化粧品組成物を提供する。例に示されるように、該組成物は高含有量の天然由来成分を使用しても、塗布時に軽いテクスチャーを提供し、エマルジョンの安定性を有する。
【0008】
「(A)水添レシチン」は、ここでは「成分(A)」と略称され、他の成分も同様に略称される。
【0009】
多量の油を含む場合でも軽いテクスチャーを提供する水中油型乳化化粧品組成物を得ることを目的として、本発明者は高圧乳化器を使用して水添レシチンとサーファクチンナトリウムを含む水中油型ナノエマルジョン(O/Wナノエマルジョン)を製造した。しかし、この水中油型乳化化粧品組成物ではクリーミングと合体が確認され、エマルジョンの安定性に問題が生じた。エマルジョンの安定性を向上させるための代替品を検討した結果、界面での界面活性剤の三次元構造を修正する必要があることが判明し、さらに、サーファクチンナトリウムよりも嵩張らないアミノ酸系界面活性剤(上記成分(C))を使用することが有用であることが分かった。
【0010】
アミノ酸系界面活性剤を使用することでエマルジョンの安定性は向上したが、天然由来成分の含有量を増やすために植物油を油剤として使用すると合体が観察された。これは、植物油が高いIOB(無機-有機バランス)値を持ち、界面活性剤の親油性基と高い親和性を持つため、構造が崩壊することに起因すると考えられた。この問題をさらに検討した結果、水添レシチン、フィトステロール、及びアミノ酸系界面活性剤を組み合わせた新しい乳化系が、植物油を油剤として使用しても、塗布時に軽いテクスチャーを著しく提供し、エマルジョンの安定性を顕著に向上させることが分かった。この性能は、乳化システムの構成成分の相乗効果によるものであり、乳化システムの構成成分のいずれか一つでも欠けると、このような優れた効果を得ることはできない。
【0011】
特定の実施形態では、水中油型乳化化粧品組成物中で成分(A)と成分(B)が複合体を形成する。成分(A)と成分(B)の複合体を使用することで、水性溶媒中での溶解性及び分散性が成分(A)又は成分(B)単独よりも優れており、植物油の高いIOB値による構造の崩壊を抑制し、エマルジョンの安定性を向上させることができる。
【0012】
特定の実施形態では、水中油型乳化化粧品組成物中の成分(C)はステアロイルグルタミン酸又はその塩を含む。
【0013】
特定の実施形態では、水中油型乳化化粧品組成物中の成分(D)はさらに(D2)非植物性の極性油を含み、成分(D2)と成分(D1)の質量比(R1=D2/D1)は0.01~1の範囲であることが好ましい。
【0014】
特定の実施形態では、水中油型乳化化粧品組成物中の成分(D1)は、以下のグループから選ばれる:不飽和炭化水素系植物油、特にメドウフォーム種子油、大豆油、ヒマシ油、オリーブ油、キメニア油、プラカシ油、パーム油、亜麻仁油、ヒマワリ油、アルガン油、米ぬか油、アボカド油、マカダミア油、モモ核油、アンズ核油、菜種油、スイートアーモンド油、キャノーラ油、コリアンダー油、綿実油、ゴマ油、トウモロコシ胚芽油、小麦胚芽油、パッションフラワー油、ブドウ種子油、ベニバナ油、イブニングプリムローズ油、クルミ油、クロスグリ種子油、ムスクローズ油、キャメリナ油、ラズベリー種子油、クランベリー油、ヒマシ油、メドウフォーム油、アナト油、アンドロバ油、ブラジルナッツ油、ブリティ油、モンゴンゴ油、マルラ油、コーヒー油、インカインチ油、ホホバ油、シアバター油、及びそれらの混合物。
【0015】
特定の実施形態では、水中油型乳化化粧品組成物中の成分(D2)は、以下のグループから選ばれる:常温で液体の脂肪アルコールで、18~20の炭素原子を有する分岐及び/又は不飽和炭素鎖、グリセロールとC14-C22脂肪酸のトリグリセリド、ジアルキルカーボネート(例えばジカプリリルカーボネート)、及びそれらの混合物。
【0016】
特定の実施形態では、水中油型乳化化粧品組成物はさらに親水性増粘剤を含む。親水性増粘剤を組み合わせて化粧クリームを形成しても、塗布時に軽いテクスチャーが得られ、エマルジョンの安定性が優れている。特に、水溶性ポリマーが増粘剤として挙げられる。
【0017】
特定の実施形態では、水中油型乳化化粧品組成物中の親水性増粘剤は、以下のグループから選ばれる:アクリレート/C10-30アルキルアクリレート、アクリレート/C10-30アルキルアクリレートクロスポリマー、ヒドロキシエチルアクリレート/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム共重合体及びそれらの混合物、好ましくは2-アクリルアミド-2-メチルプロパン硫酸(AMPS)共重合体、アクリル酸/C10-C30アルキルアクリレート共重合体及びそれらの混合物。
【0018】
特定の実施形態では、水中油型乳化化粧品組成物中の成分(A)及び成分(B)の総含有量は、全体の質量に対して0.01~10質量%の範囲であり、好ましくは0.05~5質量%、さらに好ましくは0.1~2.5質量%である。特定の実施形態では、成分(C)の総含有量は、全体の質量に対して0.01~5質量%の範囲であり、好ましくは0.05~2質量%、さらに好ましくは0.05~1質量%である。
【0019】
特定の実施形態では、水中油型乳化化粧品組成物中の成分(D)の総含有量は、全体の質量に対して5~60質量%の範囲であり、好ましくは5~50質量%、さらに好ましくは10~25質量%である。
【0020】
特定の実施形態では、水中油型乳化化粧品組成物はさらに少なくとも1つのポリオール、好ましくは少なくとも2つのポリオールを含み、好ましくは以下のグループから選ばれる:グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール及びそれらの混合物。
【0021】
特定の実施形態では、水中油型乳化化粧品組成物はナノエマルジョンである。
【0022】
特定の実施形態では、水中油型乳化化粧品組成物の平均粒子径は50~500nmであり、例えば動的光散乱法によって測定される。
【0023】
本発明はまた、ケラチン材料のケア及び/又はメイクアップのための化粧プロセスを提供し、該プロセスは、前述の水中油型乳化化粧品組成物をケラチン材料、特に皮膚に適用することを含む。
【0024】
本発明はさらに、上記の化粧プロセスを提供し、該プロセスにおいて、水中油型乳化化粧品組成物は長期的なエマルジョン安定性を示し、適用されたケラチン材料に軽いテクスチャーと豊かさを提供し、保湿効果をもたらす。
[発明の効果]
【0025】
本発明によれば、天然由来成分の含有量が増加しても、塗布時に軽いテクスチャーを提供し、優れたエマルジョン安定性を有する水中油型乳化化粧品組成物を提供することが可能である。水中油型乳化化粧品組成物は、塗布後に保湿効果を伴う豊かさも提供する。
[発明の詳細な説明]
【0026】
本発明の好ましい実施形態について以下に詳細に説明する。しかし、本発明は以下に記載される実施形態に限定されるものではない。
【0027】
本発明による水中油型乳化化粧品組成物は、(A)水添レシチン、(B)フィトステロール、(C)アシル基に12~22個の炭素原子を有するアシルグルタミン酸又はその塩、(D)少なくとも(D1)植物油を含む油剤、及び(E)水性媒体を含む。
【0028】
成分(A)
水中油型乳化化粧品組成物は、成分(A)として水添レシチンを含む。水添レシチンは、レシチンに水素を添加(加水素)したものである。レシチンは疎水性基と親水性基を持ち、疎水性基は2つのアシル基(脂肪酸残基)であり、親水性基はリン酸エステル塩のアニオン基と第四級アンモニウム塩のカチオン基である。卵黄由来のレシチンの脂肪酸残基は、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、及びアラキジン酸を含むと言われており、大豆由来のものはパルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、及びリノレン酸を含むと言われている。このようなレシチンを加水素化することによって得られる水添レシチンは、疎水性基が飽和され、親水性基が維持された構造を持つ。言い換えれば、卵黄レシチンの場合、疎水性の脂肪酸残基はパルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、及びベヘン酸残基と考えられ、大豆レシチンの場合はパルミチン酸及びステアリン酸残基と考えられる。
【0029】
本発明の記載において、水添レシチンは卵黄、大豆、トウモロコシ、又は菜種から抽出された天然レシチンの水添生成物、又は合成レシチンの水添生成物であってもよい。天然由来成分の高含有量を得る観点から、水添レシチンは天然レシチンの水添生成物であることが好ましい。特定の実施形態では、成分(A)は上記の単一成分からなる。別の実施形態において、上記の成分の2つ以上の混合物である。混合物の場合、異なる由来の成分の混合物、又は同じ由来だが異なる加水素化度の成分の混合物、又は異なる由来かつ異なる加水素化度の成分の混合物であってもよい。好ましい実施形態では、水添レシチンの加水素化度は実質的に100%(完全に水添されたレシチン)である。
【0030】
成分(A)の総含有量は、水中油型乳化化粧品組成物の総質量に対して、0.01~10質量%、好ましくは0.05~5質量%、さらに好ましくは0.1~2.5質量%の範囲であることが好ましい。
【0031】
成分(B)
水中油型乳化化粧品組成物は、成分(B)としてフィトステロールを含む。特定の実施形態では、単独のフィトステロールが使用される。別の実施形態において、2種類以上の成分(B)の組み合わせが使用される。好ましい実施形態では、1種類又は複数のフィトステロールが、β-シトステロール、カンペステロール、スティグマステロール、ブラシカステロール、及びそれらの混合物から選ばれる。
【0032】
成分(B)の総含有量は、水中油型乳化化粧品組成物の総質量に対して0.005~5質量%、好ましくは0.01~2.5質量%、さらに好ましくは0.02~1質量%の範囲であることが好ましい。
【0033】
成分(B)と成分(A)の質量比は、0.01~1の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0.01~0.5、0.05~0.5、0.1~0.3、さらに好ましくは0.1~0.2の範囲である。
【0034】
好ましい実施形態によれば、水中油型乳化化粧品組成物は、成分(A)と成分(B)が複合体を形成している。複合体とは、成分(A)と成分(B)が物理的又は化学的相互作用によって共存する形態を意味する。このような形態には、成分(A)の親水基と成分(B)の親水基、及び成分(A)の親油基と成分(B)の親油基が同じ方向に規則的に配置される形態が含まれる。好ましい形態は、生体膜に類似した構造である。すなわち、親水基と親油基が同じ方向に向いた水添レシチンの間にフィトステロールが埋め込まれた二重層構造を持つ複合体であり、二重層の各層が水添レシチンの親油基が互いに向き合うように配置されている。この形態の複合体は、例えば、成分(A)と成分(B)を有機溶媒に均一に溶解させ、その後有機溶媒を除去して成分(A)と成分(B)を同時に沈殿させることによって得ることができる。
【0035】
成分(A)単独又は成分(B)単独と比較して、成分(A)と成分(B)の複合体は、水性溶媒中での分散性がより優れており、エマルジョンの安定性もより優れている傾向がある。
【0036】
成分(A)と成分(B)の複合体の総含有量は、水中油型乳化化粧品組成物の総質量に対して0.01~10質量%、好ましくは0.05~5質量%、さらに好ましくは0.1~2.5質量%の範囲であることが好ましい。
【0037】
成分(C)
水中油型乳化化粧品組成物は、アシル基に12~22個の炭素原子を有するアシルグルタミン酸又はその塩を成分(C)として含む。ある実施形態では、成分(C)は上記の単一成分からなる。別の実施形態では、成分(C)は、上記の成分の2種類以上の混合物を含む。成分(C)のアシル基の炭素原子数は、好ましくは14~20、さらに好ましくは14~18、さらに好ましくは16~18、さらに好ましくは18である。
【0038】
成分(C)の例としては、ラウロイルグルタミン酸、ミリストイルグルタミン酸、パルミトイルグルタミン酸、ステアロイルグルタミン酸及びその塩、ならびにそれらの混合物が含まれる。好ましい実施形態では、成分(C)はステアロイルグルタミン酸又はその塩である。
【0039】
ステアロイルグルタミン酸の塩には、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩及びマグネシウム塩が含まれる。特定の実施形態では、成分(C)はアシルグルタミン酸のナトリウム塩を含み、好ましくはステアロイルグルタミン酸ナトリウムを含む。
【0040】
成分(C)に基づくステアロイルグルタミン酸及びその塩の総含有量は、50~100質量%、好ましくは80~100質量%、さらに好ましくは90~100質量%の範囲である。
【0041】
成分(C)の総含有量は、水中油型乳化化粧品組成物の総質量に対して0.01~5質量%、好ましくは0.05~2質量%、さらに好ましくは0.05~1質量%の範囲であることが好ましい。ステアロイルグルタミン酸及びその塩の総含有量は、水中油型乳化化粧品組成物の総質量に対して0.01~5質量%、好ましくは0.05~2質量%、さらに好ましくは0.05~1質量%の範囲であることが好ましい。
【0042】
成分(D)
水中油型乳化化粧品組成物は、成分(D)として植物油(成分(D1))を含む。
【0043】
植物油は、植物由来の原材料から得られる油である。特定の実施形態では、成分(D1)は以下のグループから選ばれる:不飽和炭化水素系植物油、特に不飽和脂肪酸トリグリセリド(メドウフォーム種子油、大豆油、ヒマシ油、オリーブ油、シメニア油、プラカシ油、パーム油、亜麻仁油、ヒマワリ油、アルガン油、米ぬか油、アボカド油、マカダミア油、モモ核油、アンズ核油、菜種油、スイートアーモンド油、キャノーラ油、コリアンダー油、綿実油、ゴマ油、トウモロコシ胚芽油、小麦胚芽油、パッションフラワー油、ブドウ種子油、サフラワー油、イブニングプリムローズ油、クルミ油、クロスグリ種子油、ムスクローズ油、キャメリナ油、ラズベリー種子油、クランベリー油、ヒマシ油、メドウフォーム油、アナト油、アンドロバ油、ブラジルナッツ油、ブリティ油、モンゴンゴ油、マルラ油、コーヒー油、インカインチ油、ホホバ油、シアバター油、及びそれらの混合物)。特定の実施形態では、成分(D)は少なくともメドウフォーム種子油を含む。
【0044】
成分(D1)の総含有量は、水中油型乳化化粧品組成物の総質量に対して1~60質量%、好ましくは5~50質量%、さらに好ましくは10~25質量%の範囲であることが好ましい。
【0045】
特定の実施形態では、水中油型乳化化粧品組成物は成分(D)として非植物油を含まない。ある特定の実施形態において、水中油型乳化化粧品組成物は成分(D)として非植物油を含む。非植物油は植物油以外の油であり、動物油及び鉱物油を含む。非植物油は極性非植物油(成分(D2))又は非極性非植物油のいずれかであり得るが、軽いテクスチャーを得る観点からは極性非植物油が好ましい。
【0046】
好ましくは、該非植物油は以下のグループから選ばれる:脂肪族カルボン酸のモノエステル、脂肪族アルコールのモノエステル、ジアルキルカーボネート及び飽和又は不飽和脂肪族アルコール、炭化水素油又はシリコーン油。具体的な非植物油には、エチル-2-ヘキシルベンゾエート、オクチル-2-ドデシルベンゾエート、イソステアリルベンゾエート、ペンタエリスリチルテトライソステアレート、トリメチロールプロパントリイソステアレート、トリデシルクエン酸、トリデシルトリメリテート、ジカプリルカーボネート、ジ(エチル-2-ヘキシル)-カーボネート、イソステアリルラクテート、オクチルヒドロキシステアレート、オクチルドデシルヒドロキシステアレート、セチルラクテート、ミリスチルラクテート、アルカン、ポリオレフィン、水添ポリオレフィン、スクワラン、フェニルトリメチコン、フェニルジメチコン、フェニルトリメチルシロキシジフェニルシロキサン、ジフェニルジメチコン、ジフェニルメチルジフェニルトリシロキサン、2-フェニルエチルトリメチルシロキシシリケート、及びそれらの混合物。特定の実施形態では、非植物油はシリコーン油ではない。
【0047】
特定の実施形態では、成分(D2)は以下のグループから選ばれる:常温で液体の脂肪アルコールで、18~20個の炭素原子を有する分岐及び/又は不飽和炭素鎖を持つもの、グリセロールとC14-C22脂肪酸のトリグリセリド、ジアルキルカーボネート(ジカプリルカーボネートなど)及びそれらの混合物。
【0048】
特定の実施形態では、水中油型乳化化粧品組成物は成分(D)として香料油をさらに含む。香料油は成分(D1)として適格なもの、又は成分(D2)として適格なものであり得る。
【0049】
成分(D2)の総含有量は、水中油型乳化化粧品組成物の総質量に対して0.01~20質量%、好ましくは0.05~15質量%の範囲であることが好ましい。
【0050】
成分(D)の総含有量は、水中油型乳化化粧品組成物の総質量に対して1~60質量%、好ましくは5~50質量%、さらに好ましくは10~25質量%の範囲であることが好ましい。
【0051】
水中油型乳化化粧品組成物が成分(D)として成分(D1)及び成分(D2)を含む場合、成分(D1)に対する成分(D2)の質量比(R1)(R1=D2/D1)は0.01~1の範囲であり、好ましくは0.05~1、さらに好ましくは0.1~1の範囲である。
【0052】
成分(E)
水中油型乳化化粧品組成物は、成分(E)として水性媒体を含む。特定の実施形態では、水性媒体は完全に水で構成される。別の実施形態では、水性媒体は水と水溶性溶媒(例えば、水溶性低分子モノアルコール)で構成される。
【0053】
成分(E)の総含有量は、水中油型乳化化粧品組成物の総質量に対して、40~90質量%、50~80質量%、好ましくは55~70質量%の範囲であることが好ましい。
【0054】
ある実施形態では、水中油型乳化化粧品組成物はさらにポリオールを含む。ポリオールの例としては、1,3-プロパンジオール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ジプロピレングリコール及びポリエチレングリコールなどのグリコール類、グリセリン、ジグリセリン及びポリグリセリンなどのグリセロール類、ソルビトールなどの糖アルコール、及びそれらの混合物が含まれる。特定の実施形態では、水中油型乳化化粧品組成物は少なくとも1種類のポリオール、好ましくは少なくとも2種類のポリオールを含み、これらはグリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール及びそれらの混合物から選ばれることが好ましい。
【0055】
特定の実施形態では、ポリオールは分子量が1000以下の低分子ポリオールである。ポリオールの分子量は、好ましくは50~1000、より好ましくは70~500、さらに好ましくは80~300の範囲である。
【0056】
ポリオールの総含有量は、水中油型乳化化粧品組成物の総質量に対して、1~40質量%、好ましくは5~30質量%、さらに好ましくは10~25質量%の範囲であることが好ましい。
【0057】
特定の実施形態では、水中油型乳化化粧品組成物はさらに親水性増粘剤を含む。親水性増粘剤は、水溶性ポリマー、(メタ)アクリルポリマー又は多糖類であってもよい。このような親水性増粘剤を含む水中油型乳化化粧品組成物は、適切な粘度を維持しながら優れた安定性を示す。
【0058】
好ましくは、該(メタ)アクリルポリマーは、アクリレート/C10-30アルキルアクリレート、アクリレート/C10-30アルキルアクリレートクロスポリマー、ヒドロキシエチルアクリレート/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム共重合体及びそれらの混合物からなる群から選ばれる。
【0059】
好ましくは、該多糖類は、キサンタンガム、ウェランガム、ジェランガム、ディウタンガム及びそれらの混合物からなる群から選ばれる。
【0060】
親水性増粘剤の総含有量は、水中油型乳化化粧品組成物の総質量に対して、0.01~10質量%、好ましくは0.05~5質量%、さらに好ましくは0.1~1質量%の範囲であることが好ましい。
【0061】
特定の実施形態において、水中油型乳化化粧品組成物は、化粧品で一般的に使用される添加剤も含む。これらの添加剤は、安定剤、保湿剤、pH調整剤、香料、防腐剤、有効成分、抗酸化剤、抗UV剤、美白剤、顔料、着色剤、皮膚調整剤及びそれらの混合物からなる群から選ばれることが好ましい。
【0062】
水中油型乳化化粧品組成物は、乳化粒子を含み、成分(A)~(D)の少なくとも一つが乳化粒子を形成する。水中油型乳化化粧品組成物は、ナノエマルジョンであることが好ましい。該ナノエマルジョンの平均粒子径は、動的光散乱によって測定した場合、50~500 nm、好ましくは50~300 nm、さらに好ましくは50~100 nmの範囲である。エマルジョン粒子の平均粒子径は、動的光散乱に基づく粒子径測定装置(例:DelsaMax CORE、ベックマン・コールター社製)を使用して測定することができる。
【0063】
一実施形態において、本発明による水中油型乳化化粧品組成物は、成分(A)~(E)を親水性増粘剤及び安定剤と共に60~85℃で加熱しながら撹拌混合し、その後、混合物を室温まで冷却して乳化することによって製造される。
【0064】
特に、本発明による水中油型乳化化粧品組成物は、クリーム、液体又は化粧水の形態で使用することができる。本発明による水中油型乳化化粧品組成物は、天然由来成分を多量に含むことが好ましい。特に、天然由来成分の含有量は、ISO16128に従って測定した場合、90%以上、好ましくは91%以上、さらに好ましくは92%以上、さらに好ましくは93%以上、さらに好ましくは94%以上、さらに好ましくは95%以上である。
【0065】
本発明の別の側面は、ケラチン材料、特に皮膚に対して上記の水中油型乳化化粧品組成物を適用することを含む、ケラチン材料のケア及び/又はメイクアップのための化粧プロセスに関する。該化粧プロセスにおいて、水中油型乳化化粧品組成物は長期間のエマルジョン安定性を示し、適用されたケラチン材料に対して軽いテクスチャーと豊かな保湿効果を提供する。
本発明は、以下の非制限的な実施例及び比較例を用いてさらに説明される。
【実施例】
【0066】
実施例1及び比較例1~5
表1に示される相1~相3を75℃に加熱し、相1を1000rpmの撹拌機で撹拌して溶解させた。相2を相1に加え、1000rpmの撹拌機で10分間撹拌して相1と相2の混合物を得た。相3を相1と相2の混合物に加え、1000rpmの撹拌機で10分間撹拌して相1~相3の混合物を得た。相1~相3の混合物を室温まで冷却し、Starburst Mini(株式会社スギノマシン)を使用して200MPaで3回分散させた。こうして、水中油型ナノエマルジョンが得られた。
【0067】
実施例1及び比較例1~5
表1に示される相1~相3を75℃に加熱し、相1を1000rpmの撹拌機で撹拌して溶解させた。相2を相1に加え、100rpmの撹拌機で10分間撹拌して相1と相2の混合物を得た。相3を相1と相2の混合物に加え、1000rpmの撹拌機で10分間撹拌して相1~相3の混合物を得た。相1~相3の混合物を室温まで冷却し、Starburst Mini(株式会社スギノマシン)を使用して200MPaで3回分散させた。こうして、水中油型ナノエマルジョンが得られた。
【0068】
【0069】
以下は、表に記載された材料の詳細です。
・水添レシチンとフィトステロールの複合体:Phytocompo PP、日本精化株式会社
・水添レシチン:EMULMETIK 100、Lucas Meyer Cosmetics by IFF Inc.
・ステアロイルグルタミン酸ナトリウム:AMISOFT HS-11、味の素ヘルシーサプライ株式会社
・サーファクチンナトリウム:KANEKA SURFACTIN、カネカ株式会社
・メドウフォーム種子油:FANCOR MEADOWFOAM SEED OIL、Elementis Co.
・ジカプリリルカーボネート:CETIOL CC、BASF Co.
・水添ポリデセン:SILKFLO 364、Vantage Personal Care Co.
防腐剤:クロルフェネシン及びヒドロキシアセトフェノン
・アクリレート/C10-30アルキルアクリレートクロスポリマー:CARBOPOL ULTREZ 21、Lubrizol Co.
・ヒドロキシエチルアクリレート/アクリロイルジメチルタウレート共重合体ナトリウム:SIMULGEL NS、Seppic Co.
【0070】
[評価]
エマルジョン粒径の測定
エマルジョン粒子の平均粒径は、粒径測定装置(DelsaMax CORE、Beckman Coulter, Inc.製)を使用して動的光散乱法により測定した。結果は表2に示されている。
【0071】
テクスチャー評価
各サンプルは化粧品専門家の評価パネルによって皮膚に塗布され、以下の評価スケールに基づいて評価が行われた。結果は表2に示されている。
A:非常に軽いテクスチャー
B:ほとんど軽いテクスチャーがない
C:全く軽いテクスチャーがない
【0072】
エマルジョンの安定性
各サンプルは透明なガラス容器に充填され、密封された。ガラス容器は50℃の恒温槽に置かれ、1ヶ月間放置された。エマルジョンの安定性は以下の評価スケールに基づいて目視で評価された。結果は表2に示されている。
A:変化なし
B:軽度のクリーミング及び/又は合体
C:クリーミング及び/又は合体
各基準(テクスチャー及び安定性)で「A」の評価を受けた組成物は、本発明において受け入れ可能である
【0073】
【0074】
実施例1及び2で得られた本発明による水中油型乳化化粧品組成物は、水添レシチン、フィトステロール、ステアロイルグルタミン酸ナトリウム及び植物油という大量の天然由来成分を含み、塗布時に軽いテクスチャーを提供し、50℃で1ヶ月経過後も相分離がなく優れた安定性を示した。
【0075】
しかしながら、比較例1~4では、成分Aを含まない(比較例1)、成分A及びBを含まない(比較例2)、又は成分Cを含まない(比較例3及び4)場合、50℃で1ヶ月経過後に相分離が観察された。さらに、植物油(成分D)を非植物油に置き換えた比較例5では、エマルジョンは優れた安定性を示したが、塗布時のテクスチャーが受け入れられないものであった。
【国際調査報告】